(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】抗IL13Rα2抗体、その抗原結合フラグメントおよび使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230608BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20230608BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230608BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230608BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20230608BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230608BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230608BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20230608BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230608BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20230608BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230608BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230608BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230608BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230608BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230608BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230608BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20230608BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/30 ZNA
C12P21/08
C07K19/00
C07K14/725
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12Q1/04
A61K39/395 U
A61P35/00
A61K38/16
A61K48/00
A61K47/68
A61K35/17
A61K35/15
G01N33/53 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563449
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2022-10-18
(86)【国際出願番号】 SE2021050419
(87)【国際公開番号】W WO2021230792
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522408647
【氏名又は名称】エリセラ セラピューティクス アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ディ
(72)【発明者】
【氏名】サレン,ティナ
(72)【発明者】
【氏名】エッサンド,マグナス
(72)【発明者】
【氏名】ペルソン ロソルム,ヘレナ
(72)【発明者】
【氏名】ホフストロム,カミラ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ヤスミン
(72)【発明者】
【氏名】アストルガ ウェルス,ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ルース,アネッテ
(72)【発明者】
【氏名】パロウ,ヴェンデラ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA14
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QQ96
4B063QR48
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4B063QS10
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4B065AA26X
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4C076AA95
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4C076CC41
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4C076FF70
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA22
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4C084CA53
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB26
4C085AA14
4C085BB17
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA70
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、IL13Rα2に結合できる抗体、またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体およびその抗原結合フラグメントは特に、キメラ抗原受容体(CAR)の構築およびIL13Rα2発現癌疾患の治療のためのCARに基づく免疫療法において有用である。
【選択図】
図16C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL13Rα2)に結合できる、抗体、またはその抗原結合フラグメントであって、IL13Rα2中のアミノ酸番号68~75の第1のβ鎖、前記第1のβ鎖の後のループ、IL13Rα2中のアミノ酸番号101~109の第2のβ鎖、前記第2のβ鎖の前のループ、およびIL13Rα2中のアミノ酸番号124~128の第3のβ鎖を含むIL13Rα2のβシート領域内のエピトープに対する特異性を有する、抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
IL13Rα2中の、アミノ酸番号67~81、すなわち、VEYELKYRNIGSETW(配列番号44)、アミノ酸番号96~106、すなわち、DLNKGIEAKIH(配列番号45)、およびアミノ酸番号123~128、すなわち、WAETTY(配列番号46)からなる群より選択される、少なくとも1つのペプチド、好ましくは少なくとも2つのペプチド、およびより好ましくは全ての3つのペプチドを含むエピトープに対する特異性を有する、請求項1に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
アミノ酸配列YSPFY(配列番号3)を含む、好ましくはアミノ酸配列YSPFYM(配列番号9)を含む、およびより好ましくはアミノ酸配列ARYSPFYMDY(配列番号10)を含む可変重鎖(VH)ドメイン相補性決定領域3(CDR3)を含む、請求項1または2に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
アミノ酸配列GYSFPP(配列番号4)を含む、好ましくはアミノ酸配列QQGYSFPPT(配列番号11)を含む、好ましくはその配列からなる可変軽鎖(VL)ドメイン相補性決定領域3(CDR3)を含む、請求項1~3のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
アミノ酸配列SGSY(配列番号1)を含む、好ましくはアミノ酸配列GFTFSGSY(配列番号105)を含む、好ましくはその配列からなる可変重鎖(VH)ドメイン相補性決定領域1(CDR1)を含む、請求項1~4のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
延長されたVHドメインCDR1が、アミノ酸配列GFTFSGSYMS(配列番号6)を含む、好ましくはその配列からなる、請求項5に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
アミノ酸配列YGSGGY(配列番号2)を含む、好ましくはアミノ酸配列IYGSGGYT(配列番号7)を含む、好ましくはその配列からなる可変重鎖(VH)ドメイン相補性決定領域2(CDR2)を含む、請求項1~6のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
延長されたVHドメインCDR2が、アミノ酸配列SIYGSGGYTY(配列番号8)を含む、好ましくはその配列からなる、請求項7に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
アミノ酸配列QSISSY(配列番号12)を含む、好ましくはその配列からなる可変軽鎖(VL)ドメイン相補性決定領域1(CDR1)を含む、請求項1~8のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
アミノ酸配列AASを含む、好ましくはその配列からなる可変軽鎖(VL)ドメイン相補性決定領域2(CDR2)を含む、請求項1~9のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
アミノ酸配列EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSGSYMSWVRQAPGKGLEWVSSIYGSGGYTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARYSPFYMDYWGQGTLVTVSS(配列番号13)を含む、好ましくはその配列からなる可変重鎖(VH)ドメイン;および
アミノ酸配列DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGYSFPPTFGQGTKLEIK(配列番号14)を含む、好ましくはその配列からなる可変軽鎖(VL)ドメイン
を含む、請求項1~10のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL13Rα2)に結合できる抗体、またはその抗原結合フラグメントであって:
アミノ酸配列GFTFX
1X
2X
3X
4を含み、好ましくはその配列からなる可変重鎖(VH)ドメイン相補性決定領域1(CDR1)であって、各X
n、n=1~4、は、G、A、SおよびYからなる群より独立に選択される、可変重鎖(VH)ドメイン相補性決定領域1(CDR1);
アミノ酸配列IB
1B
2B
3B
4B
5B
6Tを含み、好ましくはその配列からなるVHドメインCDR2であって、各B
m、m=1~6、は、G、SおよびYからなる群より独立に選択される、VHドメインCDR2;
アミノ酸配列AR-Z
H-Z
1DYを含む、好ましくはその配列からなるVHドメインCDR3であって、Z
1は、F、M、IおよびLからなる群より選択され、Z
Hは、VVRSTYGY(配列番号15)、YGHYAYGSY(配列番号16)、YSSSGWYYGF(配列番号17)、TPYSAY(配列番号18)、RYRSHRPGLS(配列番号19)、FHPRYGY(配列番号20)、GSYSHYGAHY(配列番号21)、YYHYDYGYYY(配列番号22)、YSPFY(配列番号3)、RNYWEHGGGS(配列番号24)、HHYGYYPPGSVYY(配列番号25)、およびVEYTYYGSEGSPV(配列番号26)からなる群より選択されるアミノ酸配列である、VHドメインCDR3;
アミノ酸配列QSISSY(配列番号12)を含む、好ましくはその配列からなる可変軽鎖(VL)ドメインCDR1;
アミノ酸配列AASを含む、好ましくはその配列からなるVLドメインCDR2;および
アミノ酸配列QQ-Z
L-Tを含む、好ましくはその配列からなるVLドメインCDR3であって、Z
Lは、TYYSPH(配列番号28)、DYYLF(配列番号29)、SYSTPY(配列番号30)、FYSYPL(配列番号31)、AFSPS(配列番号32)、SYDTLL(配列番号33)、ALSSLP(配列番号34)、FSTRLS(配列番号35)、GYSFPP(配列番号4)、STYPF(配列番号37)、YGSNPL(配列番号38)、およびRYNGLF(配列番号39)からなる群より選択されるアミノ酸配列である、VLドメインCDR3、
を含む、抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
アミノ酸配列GFTFX
1X
2X
3X
4MX
5を含む、好ましくはそれからなる延長VH CDR1を含み、各X
n、n=1~5、は、G、A、SおよびYからなる群より独立に選択される、請求項12に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
X5が、SまたはGである、請求項13に記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
アミノ酸配列JIB
1B
2B
3B
4B
5B
6TYを含む、好ましくはそれからなる延長VH CDR2を含み、各B
m、m=1~6、は、G、SおよびYからなる群より独立に選択されかつJは、A、Y、GおよびSからなる群より選択される、請求項12~14のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項16】
X
1が、SまたはYであり;
X
2が、SまたはGであり;
X
3が、SまたはYであり;
X
4が、A、YまたはGである、
請求項12~15のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
B
1が、SまたはYであり;
B
2が、Gであり;
B
3が、S、GまたはYであり;
B
4が、Gであり;
B
5が、SまたはGであり;および
B
6が、SまたはYである、
請求項12~16のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項18】
Z
H-Z
1が、YGHYAYGSYF(配列番号40)、TPYSAYI(配列番号41)、GSYSHYGAHYL(配列番号42)、およびYSPFYM(配列番号9)からなる群より選択されるアミノ酸配列である、請求項12~17のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項19】
Z
Lが、DYYLF(配列番号29)、FYSYPL(配列番号31)、ALSSLP(配列番号34)、およびGYSFPP(配列番号4)からなる群より選択されるアミノ酸配列である、請求項12~18のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項20】
配列番号101のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVHドメインCDR1、配列番号53のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVH CDR2、配列番号65のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVH CDR3、配列番号12のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVL CDR1、AASアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVL CDR2、および配列番号76のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVL CDR3;または
配列番号102のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVHドメインCDR1、配列番号55のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVH CDR2、配列番号68のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVH CDR3、配列番号12のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVL CDR1、AASアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVL CDR2、および配列番号78のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVL CDR3;または
配列番号104のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVHドメインCDR1、配列番号54のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVH CDR2、配列番号70のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVH CDR3、配列番号12のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVL CDR1、AASアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVL CDR2、および配列番号81のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVL CDR3;または
配列番号105のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVHドメインCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVH CDR2、配列番号10のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVH CDR3、配列番号12のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVL CDR1、AASアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVL CDR2、および配列番号11のアミノ酸配列を含む、好ましくはその配列からなるVL CDR3、
を含む、請求項12~19のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項21】
アミノ酸配列EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSGSYMSWVRQAPGKGLEWVSSIYGSGGYTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARYSPFYMDYWGQGTLVTVSS(配列番号13)を含む、好ましくはその配列からなるVHドメイン;および
アミノ酸配列DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGYSFPPTFGQGTKLEIK(配列番号14)を含む、好ましくはその配列からなるVLドメイン;または
アミノ酸配列EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARYGHYAYGSYFDYWGQGTLVTVSS(配列番号86)を含む、好ましくはそれからなるVHドメイン;および
アミノ酸配列DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQDYYLFTFGQGTKLEIK(配列番号87)を含む、好ましくはその配列からなるVLドメイン;または
アミノ酸配列EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFYGSYMGWVRQAPGKGLEWVSYISGYGGYTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARTPYSAYIDYWGQGTLVTVSS(配列番号88)を含む、好ましくはそれからなるVHドメイン;および
アミノ酸配列DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFYSYPLTFGQGTKLEIK(配列番号89)を含む、好ましくはその配列からなるVLドメイン;または
アミノ酸配列EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFYSYGMSWVRQAPGKGLEWVSYISGGGSYTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGSYSHYGAHYLDYWGQGTLVTVSS(配列番号90)を含む、好ましくはそれからなるVHドメイン;および
アミノ酸配列DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQALSSLPTFGQGTKLEIK(配列番号91)を含む、好ましくはその配列からなるVLドメイン;または
アミノ酸配列EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSGSYMSWVRQAPGKGLEWVSSIYGSGGYTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARYSPFYMDYWGQGTLVTVSS(配列番号13)を含む、好ましくはそれからなるVHドメイン;および
アミノ酸配列DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGYSFPPTFGQGTKLEIK(配列番号14)を含む、好ましくはその配列からなるVLドメイン、
を含む、請求項12~20のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項22】
前記抗原結合フラグメントが、単鎖可変フラグメント(scFv)である、請求項1~21のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項23】
薬物としての使用のための請求項1~22のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項24】
神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭頸部癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、肺癌、尿路上皮癌およびカポジ肉腫からなる群より選択される疾患の治療またはその発症を遅延することにおける使用のための請求項1~22のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項25】
請求項1~22のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む抗原認識ドメイン;
膜貫通ドメイン;および
細胞内シグナル伝達ドメイン、
を含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項26】
前記膜貫通ドメインが、表面抗原分類28(CD28)の膜貫通ドメインの全て、または一部、CD8αの膜貫通ドメインの全て、または一部、CD27の膜貫通ドメインの全て、または一部、CD137の膜貫通ドメインの全て、または一部、CD134の膜貫通ドメインの全て、または一部、CD3εの膜貫通ドメインの全て、または一部、CD3ζの膜貫通ドメインの全て、または一部、CD3γの膜貫通ドメインの全て、または一部、CD3δの膜貫通ドメインの全て、または一部、TCRαの膜貫通ドメインの全て、または一部、およびTCRβの膜貫通ドメインの全て、または一部からなる群より選択され、好ましくは前記膜貫通ドメインが、CD28の膜貫通ドメインの全て、または一部およびCD8αの膜貫通ドメインの全て、または一部からなる群より選択される、請求項25に記載のCAR。
【請求項27】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、表面抗原分類3のゼータ鎖(CD3ζ)、CD28、CD137、ICOS、CD27、CD40、CD134、および/またはMyd88からなる群より選択され、好ましくは前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ζおよび/またはCD137からなる群より選択される、請求項25または26に記載のCAR。
【請求項28】
薬物としての使用のための請求項25~27のいずれかに記載のCAR。
【請求項29】
神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭頸部癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、肺癌、尿路上皮癌およびカポジ肉腫からなる群より選択される疾患の治療またはその発症を遅延することにおける使用のための請求項25~27のいずれかに記載のCAR。
【請求項30】
請求項1~22のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む抗原認識ドメインを含むT細胞受容体(TCR)複合体。
【請求項31】
薬物としての使用のための請求項30に記載のTCR複合体。
【請求項32】
神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭頸部癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、肺癌、尿路上皮癌およびカポジ肉腫からなる群より選択される疾患の治療またはその発症を遅延することにおける使用のための請求項30に記載のTCR複合体。
【請求項33】
請求項1~22のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント;および
エフェクター分子であって、検出可能標識、細胞毒素、金属、別の抗体またはその抗原結合フラグメント、核酸配列、および脂質二重層ドッキング部分からなる群より好ましくは選択される、エフェクター分子、
を含むコンジュゲート。
【請求項34】
前記エフェクター分子が、細胞毒素である、薬物としての使用のための請求項33に記載のコンジュゲート。
【請求項35】
前記エフェクター分子が、細胞毒素である、神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭頸部癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、肺癌、尿路上皮癌およびカポジ肉腫からなる群より選択される疾患の治療またはその発症を遅延することにおける使用のための請求項33に記載のコンジュゲート。
【請求項36】
請求項1~22のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント、請求項25~27のいずれかに記載のCARおよび/または請求項30に記載のTCR複合体をコードする核酸分子。
【請求項37】
薬物としての使用のための請求項36に記載の核酸分子。
【請求項38】
神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭頸部癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、肺癌、尿路上皮癌およびカポジ肉腫からなる群より選択される疾患の治療またはその発症を遅延することにおける使用のための請求項36に記載の核酸分子。
【請求項39】
請求項36に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項40】
薬物としての使用のための請求項39に記載のベクター。
【請求項41】
神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭頸部癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、肺癌、尿路上皮癌およびカポジ肉腫からなる群より選択される疾患の治療またはその発症を遅延することにおける使用のための請求項39に記載のベクター。
【請求項42】
請求項1~22のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント、請求項25~27のいずれかに記載のCAR、請求項30に記載のTCR複合体、請求項36に記載の核酸および/または請求項39に記載のベクターを含む細胞。
【請求項43】
細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、単球、およびマクロファージからなる群より選択される、好ましくはT細胞である、請求項42に記載の細胞。
【請求項44】
薬物としての使用のための請求項42または43に記載の細胞。
【請求項45】
神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭頸部癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、肺癌、尿路上皮癌およびカポジ肉腫からなる群より選択される疾患の治療またはその発症を遅延することにおける使用のための請求項42または43に記載の細胞。
【請求項46】
請求項1~22のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメント、請求項25~27のいずれかに記載のCAR、請求項30に記載のTCR複合体、請求項33に記載のコンジュゲート、請求項36に記載の核酸分子、請求項39に記載のベクターおよび/または請求項42または43に記載の細胞、および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項47】
薬物としての使用のための請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭頸部癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、肺癌、尿路上皮癌およびカポジ肉腫からなる群より選択される疾患の治療またはその発症を遅延することにおける使用のための請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項49】
請求項1~22のいずれかに記載の抗体、またはその抗原結合フラグメントと生体試料を接触させること;および
前記生体試料の少なくとも1つの細胞に結合された、前記抗体、またはその抗原結合フラグメントの量を測定すること、それによりIL13Rα2陽性細胞として前記少なくとも1つの細胞を特定すること、
を含む、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL13Rα2)陽性細胞を特定する方法。
【請求項50】
インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL13Rα2)のエピトープであって、IL13Rα2中のアミノ酸番号68~75の第1のβ鎖、第1のβ鎖の後のループ、IL13Rα2中のアミノ酸番号101~109の第2のβ鎖、第2のβ鎖の前のループ、およびIL13Rα2中のアミノ酸番号124~128の第3のβ鎖を含むIL13Rα2のβシート領域内にある、エピトープ。
【請求項51】
IL13Rα2中の、アミノ酸番号67~81、すなわち、VEYELKYRNIGSETW(配列番号44)、アミノ酸番号96~106、すなわち、DLNKGIEAKIH(配列番号45)、およびアミノ酸番号123~128、すなわち、WAETTY(配列番号46)からなる群より選択される、少なくとも1つのペプチド、好ましくは少なくとも2つのペプチド、およびより好ましくは全ての3つのペプチドを含む、請求項50に記載のエピトープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は一般に、抗IL13Rα2抗体およびその抗原結合フラグメント、ならびに特に、癌治療でのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫療法は、癌治療を激変させた。しかし、高悪性度型脳癌である神経膠芽腫は、免疫療法のブレークスルーからまだ利益を得ておらず、この疾患は致死性のままである。癌細胞の表面上で発現される抗原に対するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにエクスビボで改変された、患者由来のT細胞の養子移入は、現在集中的に研究されている免疫療法の一形態である。人工の膜貫通型CAR分子は、細胞外の抗原結合部分、通常は抗体由来の単鎖可変フラグメント(scfv)、ヒンジ領域、膜貫通ドメインならびにT細胞受容体複合体(CD3ζ)由来であり、および1種または複数のT細胞共刺激分子、例えば、CD28、4-1BB由来である細胞内シグナル伝達ドメインからなる。従って、CAR T細胞治療は、抗体の特異性と、Tリンパ球の殺傷効力を組み合わせる。CD19標的化CAR T細胞は、難治性B細胞悪性腫瘍の治療に極めて効果的であり、米国および欧州の両方で急性リンパ性白血病および非ホジキンリンパ腫への適用が認可されている。固形腫瘍を標的にするCAR T細胞は、まだ認可されていない。CAR NKおよびCAR マクロファージと命名されたCAR分子を用いてNK細胞およびマクロファージを改変する考え方もまた、探求されてきた。
【0003】
表面抗原分類213A2(CD213A2)としても知られる、インターロイキン-13受容体サブユニットα-2(IL13Rα2)は、インターロイキン-13(IL-13)を結合する膜タンパク質である。IL13Rα2は、IL13Rα1(CD213A1)と密接に関係し、これは、インターロイキン-4受容体アルファ(IL4Rα)、IL-13およびIL-4受容体により共有されるサブユニット、と受容体複合体を形成する。IL-13がIL13Rα1/IL4Rα受容体複合体に結合すると、JAK1、STAT3およびSTAT6の活性をもたらすシグナル伝達プロセスが開始される。明らかな対照をなして、IL13Rα2は、モノマーとして高い親和性でIL-13を結合し、有効な細胞質ドメインを欠き、そのためシグナルメディエーターとして機能しないようである。IL13Rα2は、精巣および脳下垂体での多少の発現を除き、健全ヒト細胞および組織中ではわずかに発現される。しかし、IL13Rα2は、神経膠芽腫を含む、これを癌治療の標的にする種々の癌中で選択的に過剰発現されることが明らかになった。
【0004】
IL13Rα2に対するCAR T細胞は、神経膠芽腫の患者について、小さい臨床試験で評価された(Clin Cancer Res 2015,21:4062-4072)。1人の患者では、治療は、IL13Rα2陰性腫瘍クローンが成長して元に戻るまで、一定期間にわたり持続的退行をもたらした(N Engl J Med 2016,375:2561-2569)。
【0005】
米国特許第9,914,909号は、IL13Rα2に結合するIL-13またはそのバリアント、膜貫通領域、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞外ドメインを含むCARを発現するT細胞を開示する。CAR T細胞は、神経膠芽腫の治療に有用であると言われている。
【0006】
米国特許第9,868,788号は、ヒトIL13Rα2の細胞外部分およびイヌIL13Rα2と少なくとも90%の配列同一性を有する細胞外の部分をまたぐ線形エピトープに特異的に結合する抗体を開示する。化学療法剤に結合された抗体は、神経膠芽腫の治療に有用であると言われている。
【0007】
米国特許第10,308,719号は、IL13Rα2およびこの抗体フラグメントを含むCAR構築物に結合する抗体、およびそのフラグメント、ならびに神経膠芽腫の治療でのそれらの使用を開示する。抗体は、IL-13とIL13Rα2との間の相互作用を抑制する。IL13Rα2のN結合型グリコシル化は、IL13Rα2に対する抗体の相互作用に寄与する。
【0008】
Mol Cancer Ther 2008,7(6):1579-1587、は、抗IL13Rα2(scFv)-PE38免疫毒素を得るために、ヒトscFv抗体ファージライブラリーと緑膿菌外毒素(PE)から得られる単鎖Fv(scFv)のIL13Rα2に対する融合体を開示する。しかし、得られる免疫毒素は、IL-13とPEの間の融合体の形態(IL-13-PE38)で以前に開発された免疫毒素に比べて、より高い抗腫瘍作用を媒介しなかった。これは、標的抗原に対する免疫毒素のscFv部分の低い親和性のためであった。
IL13Rα2の過剰発現を特徴とする神経膠芽腫および他の癌の治療における改善の必要性がまだ存在する。
【発明の概要】
【0009】
抗IL13Rα2抗体およびその抗原結合フラグメントを提供することが、一般的な目的である。
CAR系免疫療法で有用なこのような抗IL13Rα2抗体およびその抗原結合フラグメントを提供することが、特定の目的である。
このおよび他の目的は、本明細書で開示の実施形態により実現される。
本発明は、独立請求項で定められる。本発明のさらなる実施形態は、従属請求項で定められる。
【0010】
実施形態の態様は、IL13Rα2に結合できる抗体、またはその抗原結合フラグメントに関する。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、IL13Rα2中のアミノ酸番号68~75の第1のβ鎖、第1のβ鎖の後のループ、IL13Rα2中のアミノ酸番号101~109の第2のβ鎖、第2のβ鎖の前のループ、およびIL13Rα2中のアミノ酸番号124~128の第3のβ鎖を含むIL13Rα2のβシート領域内のエピトープに対して特異性を有する。
【0011】
別の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列GFTFX1X2X3X4を含む可変重鎖(VH)ドメイン相補性決定領域1(CDR1)を含み、各Xn、n=1~4、は、G、A、SおよびYからなる群より独立に選択される。抗体、またはその抗原結合フラグメントはまた、アミノ酸配列IB1B2B3B4B5B6Tを含むVHドメインCDR2を含み、各Bm、m=1~6、は、G、SおよびYからなる群より独立に選択される。抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列AR-ZH-Z1DYを含むVHドメインCDR3をさらに含み、Z1は、F、M、IおよびLからなる群より選択され、ZHは、VVRSTYGY(配列番号15)、YGHYAYGSY(配列番号16)、YSSSGWYYGF(配列番号17)、TPYSAY(配列番号18)、RYRSHRPGLS(配列番号19)、FHPRYGY(配列番号20)、GSYSHYGAHY(配列番号21)、YYHYDYGYYY(配列番号22)、YSPFY(配列番号3)、RNYWEHGGGS(配列番号24)、HHYGYYPPGSVYY(配列番号25)、およびVEYTYYGSEGSPV(配列番号26)からなる群より選択されるアミノ酸配列である。抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列QSISSY(配列番号12)を含む可変軽鎖(VL)ドメインCDR1ならびにアミノ酸配列AASを含むVLドメインCDR2をさらに含む。抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列QQ-ZL-Tを含むVLドメインCDR3をさらに含み、ZLは、TYYSPH(配列番号28)、DYYLF(配列番号29)、SYSTPY(配列番号30)、FYSYPL(配列番号31)、AFSPS(配列番号32)、SYDTLL(配列番号33)、ALSSLP(配列番号34)、FSTRLS(配列番号35)、GYSFPP(配列番号4)、STYPF(配列番号37)、YGSNPL(配列番号38)、およびRYNGLF(配列番号39)からなる群より選択されるアミノ酸配列である。
【0012】
本発明はまた、本発明による抗体、またはその抗原結合フラグメント、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む抗原認識ドメインを含むCAR;本発明による抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む抗原認識ドメインを含むT細胞受容体(TCR)複合体;ならびに本発明による抗体、またはその抗原結合フラグメントおよびエフェクター分子を含むコンジュゲートに関する。
【0013】
本発明はさらに、IL13Rα2のエピトープに関する。エピトープは、IL13Rα2中のアミノ酸番号68~75の第1のβ鎖、第1のβ鎖の後のループ、IL13Rα2中のアミノ酸番号101~109の第2のβ鎖、第2のβ鎖の前のループ、およびIL13Rα2中のアミノ酸番号124~128の第3のβ鎖を含むIL13Rα2のβシート領域内にある。
【0014】
さらなる態様はまた、本発明による抗体、またはその抗原結合フラグメント、CARおよび/またはTCR複合体をコードする核酸分子;核酸分子を含むベクター;本発明による抗体、またはその抗原結合フラグメント、CAR、TCR複合体、核酸および/またはベクターを含む細胞;ならびに、本発明による抗体、またはその抗原結合フラグメント、CAR、TCR複合体、コンジュゲート、核酸分子、ベクターおよび/または細胞、ならびに薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物に関する。
【0015】
本発明はまた、薬物としての使用のための、特にIL13Rα2発現癌疾患を治療するまたは発症を遅らせることにおける使用のための、本発明による抗体、またはその抗原結合フラグメント、CAR、TCR複合体、コンジュゲート、核酸分子、ベクター、細胞、および/または医薬組成物に関する。
【0016】
本発明はまた、IL13Rα2陽性細胞を特定する方法にも関する。方法は、生体試料を本発明に従って、抗体、またはその抗原結合フラグメントと接触させること、および生体試料の少なくとも1つの細胞に結合された抗体、またはその抗原結合フラグメントの量を測定し、それによりIL13Rα2陽性細胞として少なくとも1つの細胞を特定することを含む。
【0017】
実施形態の抗体、およびその抗原結合フラグメントは、単鎖可変フラグメント(scFv)フォーマットに変換される場合もまた、L13Rα2上のエピトープに特異的に結合し、かつIL13Rα2に対する高度に特異的で強力な結合を保持する。実施形態の抗体の抗原結合フラグメントに基づくCAR構築物は、CAR T細胞免疫療法で使用される場合、高い細胞傷害能力を示し、それによりIL13Rα2発現癌の治療で使用できる。
そのさらなる目的および利点と一緒に、いくつかの実施形態は、添付図面とともに、以下の説明を参照することにより最も良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)結果を示す。1E10B9 scFv(B9 scFv)およびmAb47 scFv(47 scFv)の細菌上清を、3種の異なる濃度(2、20および200倍希釈)でELISAにより、ヒトIL13Rα2および無関係タンパク質(ストレプトアビジン)への結合に関しスクリーニングした。2つのコロニー(クローン_1およびクローン_2)を、2つのscFvのそれぞれについて評価した。ストレプトアビジン特異的scFv G-strep-1を、参照として含めた。結合を、HRP標識抗FLAG抗体により検出し、吸光度値を、450nmで測定した(y軸)。報告値は、2回の平均である。また、ブランク値(scFvなしで、培地のみを添加したものから得たシグナル)を、差し引いた。
【
図2】均一時間分解蛍光(HTRF)結果を示す。1E10B9 scFv(X-ME107-B9)およびmAb47 scFv(X-ME107-47)の細菌上清を、HTRFによりIL13Rα2への結合に関してスクリーニングした。無関係のscFvを、無関係のタンパク質に結合することが予測される陰性対照として含めた。結合シグナル(665nm)およびバックグラウンド/ノイズシグナル(615nm)を、測定し、シグナルの比率であるR値を、各試料について計算した(y軸)。報告値は、2回の平均である。また、ブランク値(scFvなしで、培地のみを添加したものから得たシグナル)を、差し引いた。
【
図3-1】44種の精製W-ME107 scFvおよび参照クローンmAb47 scFvのゲル電気泳動法を示す。
【
図3-2】44種の精製W-ME107 scFvおよび参照クローンmAb47 scFvのゲル電気泳動法を示す。
【
図4】ELISA結果を示す。ヒトIL13Rα2-avi(中空バー)、ヒトIL13Rα2-Fc(黒色バー)、マウスIL13Rα2-Fc(濃い灰色バー)、ヒトIL13Rα1-Fc(上方向斜縞模様バー)、無関係のタンパク質(中実ドットバー)、およびストレプトアビジン(薄灰色バー)に対する44個のW-ME107 scFvクローン、参照クローンmAb47 scFvおよびG-strep-1 scFvの450nmでの吸光度(y軸)として測定した結合シグナル。
【
図5】細胞株へのscFv結合の結果を示す。選択されたscFvを、ヒト神経膠芽腫細胞株U-87MG(高レベルのhIL13Rα2を内因性に発現)、またはヒト非小細胞肺癌細胞A549(陰性対照として)のいずれかとインキュベートした。細胞を、抗FLAG-PE抗体でさらに染色し、フローサイトメトリーで分析した。細胞へのscFvの結合は、平均蛍光強度(MFI、y軸)として示される。
【
図6-1】IL-13が存在するおよび存在しない場合のIL13Rα2へ結合する12種のW-ME107 scFvクローンの表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラムを示す。また、ストレプトアビジンscFv G-strep-1(陰性対照、ストレプトアビジンに結合すると予測される)のセンサーグラムを含む。精製クローン47 scFvの活性は、検出されなかった。
【
図6-2】IL-13が存在するおよび存在しない場合のIL13Rα2へ結合する12種のW-ME107 scFvクローンの表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラムを示す。また、ストレプトアビジンscFv G-strep-1(陰性対照、ストレプトアビジンに結合すると予測される)のセンサーグラムを含む。精製クローン47 scFvの活性は、検出されなかった。
【
図6-3】IL-13が存在するおよび存在しない場合のIL13Rα2へ結合する12種のW-ME107 scFvクローンの表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラムを示す。また、ストレプトアビジンscFv G-strep-1(陰性対照、ストレプトアビジンに結合すると予測される)のセンサーグラムを含む。精製クローン47 scFvの活性は、検出されなかった。
【
図6-4】IL-13が存在するおよび存在しない場合のIL13Rα2へ結合する12種のW-ME107 scFvクローンの表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラムを示す。また、ストレプトアビジンscFv G-strep-1(陰性対照、ストレプトアビジンに結合すると予測される)のセンサーグラムを含む。精製クローン47 scFvの活性は、検出されなかった。
【
図6-5】IL-13が存在するおよび存在しない場合のIL13Rα2へ結合する12種のW-ME107 scFvクローンの表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラムを示す。また、ストレプトアビジンscFv G-strep-1(陰性対照、ストレプトアビジンに結合すると予測される)のセンサーグラムを含む。精製クローン47 scFvの活性は、検出されなかった。
【
図6-6】IL-13が存在するおよび存在しない場合のIL13Rα2へ結合する12種のW-ME107 scFvクローンの表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラムを示す。また、ストレプトアビジンscFv G-strep-1(陰性対照、ストレプトアビジンに結合すると予測される)のセンサーグラムを含む。精製クローン47 scFvの活性は、検出されなかった。
【
図6-7】IL-13が存在するおよび存在しない場合のIL13Rα2へ結合する12種のW-ME107 scFvクローンの表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラムを示す。また、ストレプトアビジンscFv G-strep-1(陰性対照、ストレプトアビジンに結合すると予測される)のセンサーグラムを含む。精製クローン47 scFvの活性は、検出されなかった。
【
図7-1】エピトープビニング実験のセンサーグラムを示す。10nMのhIL13Rα2-aviを、クローンmAb47 mIgG1固定化表面に注入し、かつ10倍モル過剰(100nM)のヒトIL-13、W-ME107-10、W-ME107-27、W-ME107-75またはW-ME107-117とプレインキュベートした。対照試料として、10倍モル過剰のBI-8 scFv(陰性対照)またはクローン47 mIgG1(陽性対照)とプレインキュベートした10nMのhIL13Rα2-aviも評価した。
【
図7-2】エピトープビニング実験のセンサーグラムを示す。10nMのhIL13Rα2-aviを、クローンmAb47 mIgG1固定化表面に注入し、かつ10倍モル過剰(100nM)のヒトIL-13、W-ME107-10、W-ME107-27、W-ME107-75またはW-ME107-117とプレインキュベートした。対照試料として、10倍モル過剰のBI-8 scFv(陰性対照)またはクローン47 mIgG1(陽性対照)とプレインキュベートした10nMのhIL13Rα2-aviも評価した。
【
図8】IL13αR2に対するW-ME107-117のHDX-MSマッピングからの残差プロットを示し、出力図形は、異なる時点を示し、縦線は、ペプチド当りの差異を合計を示す。区画領域中の2つの縦線の間の測定値は、統計的に有意でない(抗原単独間の差異またはscFvの存在下での差異は、95%の信頼水準で反復分散を超えなかった)。
【
図9】ELISA結果を示す。結合シグナル、450nmでの吸光度(y軸)を、ペプチドおよびhIL13Rα2抗原(x軸)に対しプロットした。W-ME107-117 scFv(黒色バー)およびW-ME107-75(灰色バー)の結合は、hIL13Rα2に対して唯一検出された。
【
図10】IL-13(黒色)との複合体中のIL13Rα2(薄灰色、残基31~328)の構造(PDBコード3LB6)を示し、W-ME107-117のエピトープを強調している。HDX-MSにより決定されるエピトープ配列は、濃い灰色に着色され、受容体のドメイン1上に位置している。左パネルは、模式図的表現による構造を示し、β鎖は矢印で、およびヘリックスはスパイラルとして表現される。エピトープ配列は、2つのβシート(鎖4、3、6、7)の1つの上に認められ、鎖3、6、7中、および鎖3と4の間および鎖5と6の間のループ領域中の残基を含み、両ループは、ドメイン2に面する。右パネルは、表面表現による構造を示し、IL-13は取り除かれ、エピトープ領域がリガンドと相互作用しないことを強調している。IL-13結合部位は、黒色円として表される。
【
図11】レンチウィルス構築物の略図を示す。EF1αプロモーターを利用して、選択scFvおよび細胞内T細胞活性化ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)の発現を駆動する。T2A自己切断ペプチドを用いて、CAR構築物および検出のために使用された、緑色蛍光タンパク質(GFP)を分離する。
【
図12】CAR T細胞の細胞殺傷結果を示す。ルシフェラーゼ発現U-87MG細胞(IL13Rα2を発現)またはMel526細胞(IL13Rα2を発現していない)を、異なるCAR T細胞構築物と共に、0:1~25:1の範囲の標的に対するエフェクター比率で24時間共培養した。標的細胞の生存率を、ルシフェラーゼ活性を測定することにより評価した。共培養物中の標的細胞の相対生存率(y軸)を、未治療対照(腫瘍細胞のみ)と比較して測定した。アッセイを、生物学的および実験的な反復により実施した。値は、平均±SEMとして示される。
【
図13】標的認識時の異なるCAR T細胞構築物の増殖を示す。CAR T細胞を、青紫色素で染色し、4日間U-87MGと共培養した。ロバスタチンとの共培養は、非複製対照としての役割をする。標的認識時に複製されたCAR T細胞は、細胞分裂の数(0、1、2、3および4またはそれを超える分裂)に従って分類された。図は、分裂中のCD3
+GFP
+細胞のパーセンテージを示す。パーセンテージは、各分裂ピーク内の総CD3
+GFP
+集団の%を測定することにより評価された。代表的データを示す。
【
図14A】HDX-MSにより明らかになったW-ME107-10、W-ME107-27およびW-ME107-75のエピトープ配列を強調する図である。(A)IL-13(黒色)との複合体でのIL13Rα2(薄灰色)の構造(PDBコード3LB6)は、
図10の視野に比べて180度回転されている。エピトープ配列は、番号を付した残基境界と共に濃い灰色に着色され、ドメイン2で始まる1つの配列を除いて、全て、受容体のドメイン3上に位置している。構造は、模式的表現で示される。(B~E)は、IL13Rα2を表面表現で示し、結合データと共にHDX-MSデータに基づき、W-ME107-10、W-ME107-27およびW-ME107-75で予測されるエピトープの差異を強調する。エピトープ領域は、濃い灰色で着色される。IL-13(黒色)は、明確にするために、模式的表現のままである。(B)および(C)は、それぞれ、W-ME107-10およびW-ME107-27の予測結合領域を示す。(D)では、W-ME107-75の結合領域が、濃い灰色で示される。W-ME107-75は、多くの実験でW-ME107-10およびW-ME107-27とは異なる挙動を示し、従って異なる結合部位を有すると予測される。エピトープは、受容体の極めてC末端部分、残基329~337を含む。これらの残基は、報告された構造中では見えないが、図では点線として含まれる。それらは、W-ME107-75結合中では重要であると推定される。理由は、それらがマウスIL13Rα2中では非保存であるからである。(E)ここでは、タンパク質構造は、180度回転されており、W-ME107-10およびW-ME107-27ではエピトープの一部であるがW-ME107-75ではエピトープの一部でない、ペプチド228~245の始まりは、濃い灰色として見られる。
【
図14B】HDX-MSにより明らかになったW-ME107-10、W-ME107-27およびW-ME107-75のエピトープ配列を強調する図である。(A)IL-13(黒色)との複合体でのIL13Rα2(薄灰色)の構造(PDBコード3LB6)は、
図10の視野に比べて180度回転されている。エピトープ配列は、番号を付した残基境界と共に濃い灰色に着色され、ドメイン2で始まる1つの配列を除いて、全て、受容体のドメイン3上に位置している。構造は、模式的表現で示される。(B~E)は、IL13Rα2を表面表現で示し、結合データと共にHDX-MSデータに基づき、W-ME107-10、W-ME107-27およびW-ME107-75で予測されるエピトープの差異を強調する。エピトープ領域は、濃い灰色で着色される。IL-13(黒色)は、明確にするために、模式的表現のままである。(B)および(C)は、それぞれ、W-ME107-10およびW-ME107-27の予測結合領域を示す。(D)では、W-ME107-75の結合領域が、濃い灰色で示される。W-ME107-75は、多くの実験でW-ME107-10およびW-ME107-27とは異なる挙動を示し、従って異なる結合部位を有すると予測される。エピトープは、受容体の極めてC末端部分、残基329~337を含む。これらの残基は、報告された構造中では見えないが、図では点線として含まれる。それらは、W-ME107-75結合中では重要であると推定される。理由は、それらがマウスIL13Rα2中では非保存であるからである。(E)ここでは、タンパク質構造は、180度回転されており、W-ME107-10およびW-ME107-27ではエピトープの一部であるがW-ME107-75ではエピトープの一部でない、ペプチド228~245の始まりは、濃い灰色として見られる。
【
図14C】HDX-MSにより明らかになったW-ME107-10、W-ME107-27およびW-ME107-75のエピトープ配列を強調する図である。(A)IL-13(黒色)との複合体でのIL13Rα2(薄灰色)の構造(PDBコード3LB6)は、
図10の視野に比べて180度回転されている。エピトープ配列は、番号を付した残基境界と共に濃い灰色に着色され、ドメイン2で始まる1つの配列を除いて、全て、受容体のドメイン3上に位置している。構造は、模式的表現で示される。(B~E)は、IL13Rα2を表面表現で示し、結合データと共にHDX-MSデータに基づき、W-ME107-10、W-ME107-27およびW-ME107-75で予測されるエピトープの差異を強調する。エピトープ領域は、濃い灰色で着色される。IL-13(黒色)は、明確にするために、模式的表現のままである。(B)および(C)は、それぞれ、W-ME107-10およびW-ME107-27の予測結合領域を示す。(D)では、W-ME107-75の結合領域が、濃い灰色で示される。W-ME107-75は、多くの実験でW-ME107-10およびW-ME107-27とは異なる挙動を示し、従って異なる結合部位を有すると予測される。エピトープは、受容体の極めてC末端部分、残基329~337を含む。これらの残基は、報告された構造中では見えないが、図では点線として含まれる。それらは、W-ME107-75結合中では重要であると推定される。理由は、それらがマウスIL13Rα2中では非保存であるからである。(E)ここでは、タンパク質構造は、180度回転されており、W-ME107-10およびW-ME107-27ではエピトープの一部であるがW-ME107-75ではエピトープの一部でない、ペプチド228~245の始まりは、濃い灰色として見られる。
【
図14D】HDX-MSにより明らかになったW-ME107-10、W-ME107-27およびW-ME107-75のエピトープ配列を強調する図である。(A)IL-13(黒色)との複合体でのIL13Rα2(薄灰色)の構造(PDBコード3LB6)は、
図10の視野に比べて180度回転されている。エピトープ配列は、番号を付した残基境界と共に濃い灰色に着色され、ドメイン2で始まる1つの配列を除いて、全て、受容体のドメイン3上に位置している。構造は、模式的表現で示される。(B~E)は、IL13Rα2を表面表現で示し、結合データと共にHDX-MSデータに基づき、W-ME107-10、W-ME107-27およびW-ME107-75で予測されるエピトープの差異を強調する。エピトープ領域は、濃い灰色で着色される。IL-13(黒色)は、明確にするために、模式的表現のままである。(B)および(C)は、それぞれ、W-ME107-10およびW-ME107-27の予測結合領域を示す。(D)では、W-ME107-75の結合領域が、濃い灰色で示される。W-ME107-75は、多くの実験でW-ME107-10およびW-ME107-27とは異なる挙動を示し、従って異なる結合部位を有すると予測される。エピトープは、受容体の極めてC末端部分、残基329~337を含む。これらの残基は、報告された構造中では見えないが、図では点線として含まれる。それらは、W-ME107-75結合中では重要であると推定される。理由は、それらがマウスIL13Rα2中では非保存であるからである。(E)ここでは、タンパク質構造は、180度回転されており、W-ME107-10およびW-ME107-27ではエピトープの一部であるがW-ME107-75ではエピトープの一部でない、ペプチド228~245の始まりは、濃い灰色として見られる。
【
図14E】HDX-MSにより明らかになったW-ME107-10、W-ME107-27およびW-ME107-75のエピトープ配列を強調する図である。(A)IL-13(黒色)との複合体でのIL13Rα2(薄灰色)の構造(PDBコード3LB6)は、
図10の視野に比べて180度回転されている。エピトープ配列は、番号を付した残基境界と共に濃い灰色に着色され、ドメイン2で始まる1つの配列を除いて、全て、受容体のドメイン3上に位置している。構造は、模式的表現で示される。(B~E)は、IL13Rα2を表面表現で示し、結合データと共にHDX-MSデータに基づき、W-ME107-10、W-ME107-27およびW-ME107-75で予測されるエピトープの差異を強調する。エピトープ領域は、濃い灰色で着色される。IL-13(黒色)は、明確にするために、模式的表現のままである。(B)および(C)は、それぞれ、W-ME107-10およびW-ME107-27の予測結合領域を示す。(D)では、W-ME107-75の結合領域が、濃い灰色で示される。W-ME107-75は、多くの実験でW-ME107-10およびW-ME107-27とは異なる挙動を示し、従って異なる結合部位を有すると予測される。エピトープは、受容体の極めてC末端部分、残基329~337を含む。これらの残基は、報告された構造中では見えないが、図では点線として含まれる。それらは、W-ME107-75結合中では重要であると推定される。理由は、それらがマウスIL13Rα2中では非保存であるからである。(E)ここでは、タンパク質構造は、180度回転されており、W-ME107-10およびW-ME107-27ではエピトープの一部であるがW-ME107-75ではエピトープの一部でない、ペプチド228~245の始まりは、濃い灰色として見られる。
【
図15A】改変CAR T細胞のプロファイリングおよびキャラクタリゼーションを示す。(A)は、非刺激対照(モック)CAR T細胞、W-ME107-10 CAR T細胞、W-ME107-27 CAR T細胞、W-ME107-55 CAR T細胞、W-ME107-75 CAR T細胞およびW-ME107-117 CAR T細胞の培地中へのIFNγ分泌を示す。
【
図15B】改変CAR T細胞のプロファイリングおよびキャラクタリゼーションを示す。(B)は、U87UUまたはU343MG腫瘍細胞と共培養した対照(モック)CAR T細胞、W-ME107-10 CAR T細胞、W-ME107-27 CAR T細胞、W-ME107-55 CAR T細胞、W-ME107-75 CAR T細胞およびW-ME107-117 CAR T細胞の培地中へのIFNγ分泌を示す。
【
図15C】改変CAR T細胞のプロファイリングおよびキャラクタリゼーションを示す。(C)は、経時的な、対照(モック)CAR T細胞、W-ME107-10 CAR T細胞、W-ME107-27 CAR T細胞、W-ME107-55 CAR T細胞、W-ME107-75 CAR T細胞およびW-ME107-117 CAR T細胞中のCAR発現を示す。
【
図15D】改変CAR T細胞のプロファイリングおよびキャラクタリゼーションを示す。(D)腫瘍細胞刺激の存在または非存在下での対照(モック)CAR T細胞、W-ME107-27 CAR T細胞、およびW-ME107-117 CAR T細胞上の表面活性化マーカー(PD1、TIM-3、LAG-3、CD69およびCD25)を示す。
【
図16A】改変CAR T細胞が、インビボで神経膠芽腫腫瘍増殖を調節することを示す。(A)実験手順の概略図。
【
図16B】改変CAR T細胞が、インビボで神経膠芽腫腫瘍増殖を調節することを示す。(B)は、対照(モック)CAR T細胞、W-ME107-10 CAR T細胞、W-ME107-75 CAR T細胞およびW-ME107-117 CAR T細胞について腫瘍移植後の様々な日数での腫瘍増殖を示す。
【
図16C】改変CAR T細胞が、インビボで神経膠芽腫腫瘍増殖を調節することを示す。(C)は、対照(モック)CAR T細胞、W-ME107-10 CAR T細胞、W-ME107-75 CAR T細胞およびW-ME107-117 CAR T細胞について腫瘍移植後の様々な日数でのマウスの生存パーセントを示す。
【
図17A】scFvの重鎖および軽鎖の異なる相補性決定領域(CDR)がCAR-T細胞のCAR発現に影響を与えることを示す。(A)各構築物でのヒトジャーカット細胞上のCAR発現。(ns:統計的有意性なし;*:P<0.05;**:P<0.01)。
【
図17B】scFvの重鎖および軽鎖の異なる相補性決定領域(CDR)がCAR-T細胞のCAR発現に影響を与えることを示す。(B)各構築物における形質導入細胞およびCAR表面染色シグナルの指標としてのGFPシグナルを示す代表的プロット。
【
図18A】改変CAR T細胞の基底レベル活性化は、細胞内シグナル伝達ドメインが取り除かれると、減少することを示す。(A)CARまたはデコイCAR(細胞内シグナル伝達ドメインを含まないCAR分子、dCARと命名される)を発現するために使用されるレンチウィルス構築物の概略図。
【
図18B】改変CAR T細胞の基底レベル活性化は、細胞内シグナル伝達ドメインが取り除かれると、減少することを示す。(B)概略図は、細胞膜上のCAR分子およびデコイCAR分子を示す。
【
図18C】改変CAR T細胞の基底レベル活性化は、細胞内シグナル伝達ドメインが取り除かれると、減少することを示す。(C)刺激なしで、形質導入の7日後の異なるCAR-T細胞構築物からのIFNγ分泌。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態は一般に、抗IL13Rα2抗体およびその抗原結合フラグメント、ならびに特に、癌治療でのその使用に関する。
本実施形態は、インターロイキン-13受容体サブユニットα-2(IL13Rα2)に対し特異性を有する抗体、およびその抗原結合フラグメントに関する。実施形態の抗体および抗原結合フラグメントは特に、IL13Rα2の発現および提示を特徴とする癌疾患を含む種々の疾患のキメラ抗原受容体(CAR)およびCAR系免疫療法での使用に特に好適である。
【0020】
IL13Rα2に対する抗体CAR構築物は、背景技術セクションで引用された文献で例示されるように、当技術分野において既知である。しかし、先行技術の解決策は、癌治療でのそれらの使用を制限する種々の欠点を有する。例えば、モノクローナル抗IL13Rα2抗体1E10B9(米国特許第9,868,788号;Debinski,et al.,New agents for targeting of IL-13RA2 expressed in primary human and canine brain tumors,PLoS One 2013,8(10):e77719)は、実施例セクションで示されるように、IgG抗体から単鎖可変フラグメント(scFv)フォーマットへ変換されるとヒトIL13Rα2に特異的に結合するその能力を失う。抗体フォーマット間での交替時の抗原結合の消失は、IgGからscFvへ移行する場合は特に、珍しいことではない。抗原結合部位の構造に影響を与える変更されたタンパク質折り畳みは、これを最もうまく説明できる。従って、先行技術のモノクローナル抗IL13Rα2抗体1E10B9は、IgG型で使用され得るが、scFvフォーマットへの変換には好適でなく、そのためCAR系免疫療法での使用に適さない。
【0021】
モノクローナル抗IL13Rα2抗体mAb47(米国特許第10,308,719号;Balyasnikova et al.,Characterization and immunotherapeutic implications for a novel antibody targeting interleukin(IL)-13 receptor α2,J Biol Chem 2012,287(36):30215-30227;Kim et al.,A novel single-chain antibody redirects adenovirus to IL13Rα2-expressing brain tumors,Sci Rep 2015,5:18133)は、scFvフォーマットへの変換時にヒトIL13Rα2への結合の保持を示した。しかし、CAR系免疫療法での本発明のscFvを用いた比較例では、mAb47 scFvに基づいて生成されたCAR T細胞は、ごくわずかな標的細胞殺傷を示したに過ぎないが、一方、本実施形態により生成されたCAR T細胞は、低いエフェクター:標的細胞比ですでに、十分な細胞傷害能力を示した。従って、実施形態による抗体の抗原結合フラグメントは、CAR系免疫療法で使用する場合、抗体mAb47の抗原結合フラグメントより優れている。さらに、抗体mAb47は、受容体IL13Rα2への結合時に、リガンドインターロイキン-13(IL-13)と競合するが、一方、実施形態のいくつかの抗体、およびその抗原結合フラグメントは、IL13Rα2への結合についてIL-13と競合しない。
【0022】
本明細書では、本明細書で記載の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントの可変領域中の全てのアミノ酸は従って、International ImMunoGeneTics(IMGT)information system and nomenclature(Lefranc et al.,Dev Comp Immunol.(2003)1:55-77)に準拠して番号が付され、特定される。
【0023】
ヒトIL13Rα2タンパク質配列中のアミノ酸番号は、受入番号NP_000631および2021年4月26日付けバージョンNP_000631.1のNCBI参照配列ならびに本明細書で下に提示された配列(配列番号107)に従う。
MAFVCLAIGC LYTFLISTTF GCTSSSDTEI KVNPPQDFEI VDPGYLGYLY LQWQPPLSLD HFKECTVEYE LKYRNIGSET WKTIITKNLH YKDGFDLNKG IEAKIHTLLP WQCTNGSEVQ SSWAETTYWI SPQGIPETKV QDMDCVYYNW QYLLCSWKPG IGVLLDTNYN LFYWYEGLDH ALQCVDYIKA DGQNIGCRFP YLEASDYKDF YICVNGSSEN KPIRSSYFTF QLQNIVKPLP PVYLTFTRES SCEIKLKWSI PLGPIPARCF DYEIEIREDD TTLVTATVEN ETYTLKTTNE TRQLCFVVRS KVNIYCSDDG IWSEWSDKQC WEGEDLSKKT LLRFWLPFGF ILILVIFVTG LLLRKPNTYP KMIPEFFCDT
【0024】
抗体、またはその抗原結合フラグメントの特異性は、および/または結合力に基づいて決定できる。親和性は、抗原と、抗体、またはその抗原結合フラグメントとの解離のための平衡定数、(KD)により表され、抗原決定基、すなわち、エピトープと、抗体、またはその抗原結合フラグメント上の抗原結合との間の結合強度の尺度である。 KDの値が小さいほど、抗原決定基と、抗体、またはその抗原結合フラグメントとの間の結合強度が強い。あるいは、親和性はまた、1/KDである、親和性定数(KA)として表すこともできる。当業者には自明であるように、親和性は、目的の特異的抗原に応じて、それ自体既知である方法によって決定できる。
【0025】
結合力は、抗体、またはその抗原結合フラグメントと、関連抗原の間の結合力の尺度である。結合力は、抗原決定基と、抗体、またはその抗原結合フラグメント上のその抗原結合部位との親和性、および抗体、またはその抗原結合フラグメント上に存在する関連結合部位数、の両方に関連する。
【0026】
典型的には、抗体またはその抗原結合フラグメントは、10-5~10-12モル/リットル(M)以下、および好ましくは10-7~10-12M以下およびより好ましくは10-8~10-12Mの平衡解離定数(KD)で、すなわち、105~1012M-1以上、および好ましくは107~1012M-1以上およびより好ましくは108~1012M-1の親和性定数(KA)でそれらの抗原に結合する。
通常、10-4Mより大きいいずれかのKD値(または104M-1より小さいいずれかのKA値)は、非特異的結合を示すと見なされる。
【0027】
好ましくは、実施形態の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば5nM未満の親和性でIL13Rα2に結合する。
抗体、またはその抗原結合フラグメントの抗原または抗原決定基に対する特異的結合は、それ自体既知の任意の好適な方法で決定でき、例えば、スキャチャード解析および/またはラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)およびサンドイッチ競合アッセイなどの競合結合アッセイ;ルミネックス(登録商標)マルチプレックスアッセイおよびそれ自体当該技術分野において既知の種々のこれらの変種を含む。
【0028】
本発明者らは、IL13Rα2中で新規エピトープまたは抗原決定基領域を見出し、これは、抗体およびその抗原結合フラグメントによる標的に極めて好適である。特に、この新規エピトープを標的化する抗体およびその抗原結合フラグメントは、CAR系免疫療法において有用である。このエピトープは、
図10に示すように、IL13Rα2のドメイン1中の第2のおよび最大βシートに対応する。これは、受容体のN末端部分であり、ドメイン1は、相互上の2つのβシートで折り畳まれたβサンドイッチからなる。エピトープは、最大βシート中の4鎖の3鎖中に位置し、IL13Rα2に対しIL-13の結合部位から離れた領域中に存在する。
図10を参照されたい。
【0029】
このβシート中のエピトープに特異的に結合する抗体、およびその抗原結合フラグメントは、IL13Rα2に対し高い特異性を有し、IL13Rα1への結合を示さなかった。抗原結合フラグメントは、CAR T細胞系免疫療法で、IL13Rα2を発現する癌細胞に対し、優れた細胞傷害能力を示した。
【0030】
実施形態の態様は従って、IL13Rα2に結合できる抗体、またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体、またはその抗原結合フラグメントは、IL13Rα2中のアミノ酸番号68~75の第1のβ鎖、第1のβ鎖の後のループ、IL13Rα2中のアミノ酸番号101~109の第2のβ鎖、第2のβ鎖の前のループ、およびIL13Rα2中のアミノ酸番号124~128の第3のβ鎖を含むIL13Rα2のβシート領域またはドメイン内のエピトープに対して特異性を有する。
【0031】
IL13Rα2のアミノ酸配列は、配列番号107で示される。アミノ酸番号68~75は、アミノ酸配列EYELKYRN(配列番号108)に対応し、アミノ酸番号101~109は、アミノ酸配列IEAKIHTLL(配列番号109)に対応し、およびアミノ酸番号124~128は、アミノ酸配列AETTY(配列番号110)に対応する。
【0032】
図10は、エピトープを形成する、3、6および7と番号を付けた3つのβ鎖のまわりにハッチングを施した楕円を有する、ドメイン1の最大のβシートを示す。β鎖6および7は、アルファヘリックスおよび屈曲部を含むループ領域で相互接続される。β鎖3および6は、2つの折り返し部および2つのβ鎖(番号4および5、β鎖4は、鎖3、6、7と共に最大βシートに属し、およびβ鎖5は、ドメイン1の第1のより小さいβシートに属する)を含むアミノ酸配列で相互接続される。
【0033】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、IL13Rα2中のアミノ酸番号67~81、アミノ酸番号96~106およびアミノ酸番号123~128からなる群より選択される、エピトープ領域とも称される、少なくとも1つのペプチドを含むエピトープに対する特異性を有する。
ある実施形態では、第1のペプチドまたはエピトープ領域(VEYELKYRNIGSETW、配列番号44)は、IL13Rα2中のβ鎖3およびβ鎖3の後の折り返し部に実質的に対応する。第2のペプチドまたはエピトープ領域(DLNKGIEAKIH、配列番号45)は、β鎖6およびその前のループのショートストレッチに実質的に対応し、一方、第3のペプチドまたはエピトープ領域(WAETTY、配列番号46)は、β鎖7に実質的に対応する。
【0034】
抗体、またはその抗原結合フラグメントは、IL13Rα2のβシート領域中のこれらの3つのペプチドまたはエピトープ領域の少なくとも1つに対する特異性を有する。従って、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、第1のペプチドまたはエピトープ(VEYELKYRNIGSETW、配列番号44)に対する特異性を有し、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、第2のペプチドまたはエピトープ領域(DLNKGIEAKIH、配列番号45)に対する特異性を有し、または抗体、またはその抗原結合フラグメントは、第3のペプチドまたはエピトープ領域(WAETTY、配列番号46)に対する特異性を有する。
【0035】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、IL13Rα2のβシート領域中のこれらの3つのペプチドまたはエピトープ領域の少なくとも2つに対する特異性を有する。従って、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、第1のペプチドまたはエピトープ(VEYELKYRNIGSETW、配列番号44)および第2のペプチドまたはエピトープ領域(DLNKGIEAKIH、配列番号45)に対する特異性を有し、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、第1のペプチドまたはエピトープ領域(VEYELKYRNIGSETW、配列番号44)および第3のペプチドまたはエピトープ領域(WAETTY、配列番号46)に対する特異性を有し、または抗体、またはその抗原結合フラグメントは、第2のペプチドまたはエピトープ領域(DLNKGIEAKIH、配列番号45)および第3のペプチドまたはエピトープ領域(WAETTY、配列番号46)に対する特異性を有する。
【0036】
好ましい実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、IL13Rα2のβシート領域中のこれらの3つのペプチドまたはエピトープ領域の全てに対する、すなわち、第1のペプチドまたはエピトープ領域(VEYELKYRNIGSETW、配列番号44)、第2のペプチドまたはエピトープ領域(DLNKGIEAKIH、配列番号45)および第3のペプチドまたはエピトープ領域(WAETTY、配列番号46)に対する特異性を有する。
【0037】
本発明はまた、IL13Rα2のエピトープに関する。このエピトープは、IL13Rα2中のアミノ酸番号68~75の第1のβ鎖、第1のβ鎖の後のループ、IL13Rα2中のアミノ酸番号101~109の第2のβ鎖、第2のβ鎖の前のループ、およびIL13Rα2中のアミノ酸番号124~128の第3のβ鎖を含むIL13Rα2のβシート領域内にある。
【0038】
ある実施形態では、エピトープは、IL13Rα2中のアミノ酸番号67~81、すなわち、VEYELKYRNIGSETW(配列番号44)、アミノ酸番号96~106、すなわち、DLNKGIEAKIH(配列番号45)、およびアミノ酸番号123~128、すなわち、WAETTY(配列番号46)からなる群より選択される、少なくとも1つのペプチド、好ましくは少なくとも2つのペプチド、およびより好ましくは3つ全てのペプチドを含む。
【0039】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列YSPFY(配列番号3)を含む可変重鎖(VH)ドメイン相補性決定領域3(CDR3)を含む。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列YSPFYM(配列番号9)を含むVHドメインCDR3を含む。特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列ARYSPFYMDY(配列番号10)を含む、好ましくはそれからなるVHドメインCDR3を含む。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列GYSFPP(配列番号4)を含む可変軽鎖(VL)ドメインCDR3を含む。
特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列QQGYSFPPT(配列番号11)を含む、好ましくはそれからなるVLドメインCDR3を含む。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列SGSY(配列番号1)を含むVHドメインCDR1を含む。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列GFTFSGSY(配列番号106)を含む、好ましくはそれからなるVHドメインCDR1を含む。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列SGSYMS(配列番号5)を含み、好ましくはアミノ酸配列GFTFSGSYMS(配列番号6)を含み、好ましくはそれからなる延長VHドメインCDR1を含む。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列YGSGGY(配列番号2)を含むVHドメインCDR2を含む。
特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列IYGSGGYT(配列番号7)を含む、好ましくはそれからなるVHドメインCDR2を含む。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列SIYGSGGYTY(配列番号8)を含む、好ましくはそれからなる延長VHドメインCDR2を含む。
本明細書で使用される場合、延長CDRは、IMGT命名法に従って定義されたCDRのアミノ酸を越える少なくとも1つの追加のアミノ酸残基を含むアミノ酸配列に関する。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列QSISSY(配列番号12)を含む、好ましくはそれからなるVLドメインCDR1を含む。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列AASを含む、好ましくはそれからなるVLドメインCDR2を含む。
抗体、またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの上記の実施形態のVHドメインおよび/またはVLドメインCDR領域、好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは少なくとも3つの、およびさらにより好ましくは少なくとも4つの、少なくとも5つのまたは全てのCDR領域を含み得る。
【0040】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも2つの上記のVHドメインおよび/またはVLドメインCDR領域を含む。このような実施形態は、上で定義されるVHドメインCDR1およびVHドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1およびVHドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1およびVLドメインCDR1を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR2およびVHドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR2およびVLドメインCDR1を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR2およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR3およびVLドメインCDR1を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR3およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR3およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVLドメインCDR1およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVLドメインCDR1およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;および上で定義されるVLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント、を含む。
【0041】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも3つの上記のVHドメインおよび/またはVLドメインCDR領域を含む。このような実施形態は、上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2およびVHドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2およびVLドメインCDR1を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR3およびVLドメインCDR1を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR3およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR3およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VLドメインCDR1およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VLドメインCDR1およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;このような実施形態は、上で定義されるVHドメインCDR2、VHドメインCDR3およびVLドメインCDR1を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR2、VHドメインCDR3およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR2、VHドメインCDR3およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR2、VLドメインCDR1およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR2、VLドメインCDR1およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR2、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR3、VLドメインCDR1およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR3、VLドメインCDR1およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR3、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;および上で定義されるVLドメインCDR1、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント、を含む。
【0042】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも4つの上記のVHドメインおよび/またはVLドメインCDR領域を含む。このような実施形態は、上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2、VHドメインCDR3およびVLドメインCDR1を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2、VHドメインCDR3およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2、VHドメインCDR3およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2、VLドメインCDR1およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2、VLドメインCDR1およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR3、VLドメインCDR1およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR3、VLドメインCDR1およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR3、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VLドメインCDR1、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR2、VHドメインCDR3、VLドメインCDR1およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR2、VHドメインCDR3、VLドメインCDR1およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR2、VHドメインCDR3、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR2、VLドメインCDR1、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;および上で定義されるVHドメインCDR3、VLドメインCDR1、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント、を含む。
【0043】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも5つの上記のVHドメインおよび/またはVLドメインCDR領域を含む。このような実施形態は、上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2、VHドメインCDR3、VLドメインCDR1およびVLドメインCDR2を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2、VHドメインCDR3、VLドメインCDR1およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2、VHドメインCDR3、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2、VLドメインCDR1、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR3、VLドメインCDR1、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント;および上で定義されるVHドメインCDR2、VHドメインCDR3、VLドメインCDR1、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメント、を含む。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、6つ全ての上記のVHドメインおよびVLドメインCDR領域を含む。このような実施形態は、上で定義されるVHドメインCDR1、VHドメインCDR2、VHドメインCDR3、VLドメインCDR1、VLドメインCDR2およびVLドメインCDR3を含む抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む。
【0044】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSGSYMSWVRQAPGKGLEWVSSIYGSGGYTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARYSPFYMDYWGQGTLVTVSS(配列番号13)を含む、好ましくはそれからなるVHドメインを含む。
【0045】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGYSFPPTFGQGTKLEIK(配列番号14)を含む、好ましくはそれからなるVLドメインを含む。
特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号13のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるVHドメインおよび配列番号14のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるVLドメインを含む。
【0046】
実施形態の特に好ましい抗体は、本明細書でME107-117またはW-ME107-117と表記され、対応するその抗原結合フラグメントは、ME107-117 scFvまたはW-ME107-117 scFvと表記される。この抗体およびその抗原結合フラグメントは、IL13Rα2のβシート領域(
図10)中のエピトープに特異的に結合し、上述のVHおよびVLドメインCDR領域を含む。
【0047】
実施形態の別の態様は、IL13Rα2に結合できる抗体、またはその抗原結合フラグメントに関する。抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列GFTFX1X2X3X4を含む、好ましくはそれからなるVHドメインCDR1を含み、各Xn、n=1~4、は、G、A、SおよびYからなる群より独立に選択される。抗体、またはその抗原結合フラグメントはまた、アミノ酸配列IB1B2B3B4B5B6Tを含む、好ましくはそれからなるVHドメインCDR2を含み、各Bm、m=1~6、は、G、SおよびYからなる群より独立に選択される。抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列AR-ZH-Z1DYを含む、好ましくはそれからなるVHドメインCDR3をさらに含み、Z1は、F、M、IおよびLからなる群より選択され、ZHは、VVRSTYGY(配列番号15)、YGHYAYGSY(配列番号16)、YSSSGWYYGF(配列番号17)、TPYSAY(配列番号18)、RYRSHRPGLS(配列番号19)、FHPRYGY(配列番号20)、GSYSHYGAHY(配列番号21)、YYHYDYGYYY(配列番号22)、YSPFY(配列番号3)、RNYWEHGGGS(配列番号24)、HHYGYYPPGSVYY(配列番号25)、およびVEYTYYGSEGSPV(配列番号26)からなる群より選択されるアミノ酸配列である。抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列QSISSY(配列番号12)を含む、好ましくはそれからなるVLドメインCDR1を含む。抗体、またはその抗原結合フラグメントはまた、アミノ酸配列AASを含む、好ましくはそれからなるVLドメインCDR2、およびアミノ酸配列QQ-ZL-Tを含む、好ましくはそれからなるVLドメインCDR3を含み、ZLは、TYYSPH(配列番号28)、DYYLF(配列番号29)、SYSTPY(配列番号30)、FYSYPL(配列番号31)、AFSPS(配列番号32)、SYDTLL(配列番号33)、ALSSLP(配列番号34)、FSTRLS(配列番号35)、GYSFPP(配列番号4)、STYPF(配列番号37)、YGSNPL(配列番号38)、およびRYNGLF(配列番号39)からなる群より選択されるアミノ酸配列である。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列GFTFX1X2X3X4MX5を含む、好ましくはそれからなる延長VH CDR1を含む。この実施形態では、各Xn、n=1~5、は、G、A、SおよびYからなる群より独立に選択される。
ある実施形態では、X5は、SまたはGである。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列JIB1B2B3B4B5B6TYを含む、好ましくはそれからなる延長VH CDR2を含む。この実施形態では、各Bm、m=1~6、は、G、SおよびYからなる群より独立に選択され、Jは、A、Y,GおよびSからなる群より選択される。
ある実施形態では、Jは、A、YおよびSからなる群から選択される。
ある実施形態では、X1は、SまたはYであり、X2は、SまたはGであり、X3は、SまたはYであり、X4は、A、YまたはGである。
ある実施形態では、B1は、SまたはYであり、B2は、Gであり、B3は、S、GまたはYであり、B4は、Gであり、B5は、SまたはGであり、B6は、SまたはYである。
ある実施形態では、ZH-Z1は、YGHYAYGSYF(配列番号40)、TPYSAYI(配列番号41)、GSYSHYGAHYL(配列番号42)、およびYSPFYM(配列番号9)からなる群より選択されるアミノ酸配列である。
ある実施形態では、ZLは、DYYLF(配列番号29)、FYSYPL(配列番号31)、ALSSLP(配列番号34)、およびGYSFPP(配列番号4)からなる群より選択されるアミノ酸配列である。
【0048】
現時点で好ましい抗原結合フラグメントの実施形態は、本明細書で、W-ME107-7、W-ME107-10、W-ME107-16、W-ME107-27、W-ME107-55、W-ME107-67、W-ME107-75、W-ME107-112、W-ME107-117、W-ME107-128、W-ME107-150およびW-ME107-156と称される。従って、好ましい抗体は、これらの抗原結合フラグメントに対応するCDR領域ならびにVHおよびVLドメインを有する。表1はVHドメインCDR1、表2はVHドメイン延長CDR1、表3はVHドメインCDR2を示し、表4はVHドメイン延長CDR2を示す。表5はVHドメインCDR3、表6はVLドメインCDR3を示す。W-ME107-7、W-ME107-10、W-ME107-16、W-ME107-27、W-ME107-55、W-ME107-67、W-ME107-75、W-ME107-112、W-ME107-117、W-ME107-128、W-ME107-150およびW-ME107-156の全ては、共通のVLドメインCDR1のQSISSY(配列番号12)および共通のVLドメインCDR2のAASを有する。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0049】
実施形態の特に好ましい抗原結合フラグメントは、W-ME107-10、W-ME107-27、W-ME107-75およびW-ME107-117であり、特に好ましい抗体は、W-ME107-10、W-ME107-27、W-ME107-75およびW-ME107-117のVHおよびVL CDR領域を有する抗体である。
【0050】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、表1、3および5に示す、好ましくは表2、4および5で特定されるクローンW-ME107-10のVH CDR領域を含む。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、共通VLドメインCDR1およびCDR2領域と一緒に表6で特定されるクローンW-ME107-10のVL CDR3を含む。
【0051】
特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、表1、3および5に示す、好ましくは表2、4および5で特定されるクローンW-ME107-10のVH CDR領域、および共通のVLドメインCDR1およびCDR2領域と一緒に表6で特定されるクローンW-ME107-10のVL CDR3領域を含む。
【0052】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、表1、3および5に示す、好ましくは表2、4および5で特定されるクローンW-ME107-27のVH CDR領域を含む。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、共通VLドメインCDR1およびCDR2領域と一緒に表6で特定されるクローンW-ME107-27のVL CDR3を含む。
【0053】
特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、表1、3および5で特定される、好ましくは表2、4および5で特定されるクローンW-ME107-27のVH CDR領域、および共通のVLドメインCDR1およびCDR2領域と一緒に表6で特定されるクローンW-ME107-27のVL CDR3領域を含む。
【0054】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、表1、3および5で特定される、好ましくは表2、4および5で特定されるクローンW-ME107-75のVH CDR領域を含む。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、共通VLドメインCDR1およびCDR2領域と一緒に表6で特定されるクローンW-ME107-75のVL CDR3を含む。
【0055】
特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、表1、3および5で特定される、好ましくは表2、4および5で特定されるクローンW-ME107-75のVH CDR領域、および共通のVLドメインCDR1およびCDR2領域と一緒に表6で特定されるクローンW-ME107-75のVL CDR3領域を含む。
【0056】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、表1、3および5で特定される、好ましくは表2、4および5で特定されるクローンW-ME107-117のVH CDR領域を含む。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、共通VLドメインCDR1およびCDR2領域と一緒に表6で特定されるクローンW-ME107-117のVL CDR3を含む。
【0057】
特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、表1、3および5で特定される、好ましくは表2、4および5で特定されるクローンW-ME107-117のVH CDR領域、および共通のVLドメインCDR1およびCDR2領域と一緒に表6で特定されるクローンW-ME107-117のVL CDR3領域を含む。
【0058】
W-ME107-10は、(配列番号86):EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARYGHYAYGSYFDYWGQGTLVTVSS
のVHドメインおよび(配列番号87):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQDYYLFTFGQGTKLEIKのVLドメインを含む。
【0059】
W-ME107-27は、(配列番号88):
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFYGSYMGWVRQAPGKGLEWVSYISGYGGYTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARTPYSAYIDYWGQGTLVTVSS
のVHドメインおよび(配列番号89):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFYSYPLTFGQGTKLEIKのVLドメインを含む。
【0060】
W-ME107-75は、(配列番号90):
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFYSYGMSWVRQAPGKGLEWVSYISGGGSYTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGSYSHYGAHYLDYWGQGTLVTVSS
のVHドメインおよび(配列番号91):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQALSSLPTFGQGTKLEIKのVLドメインを含む。
【0061】
W-ME107-117は、(配列番号13):
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSGSYMSWVRQAPGKGLEWVSSIYGSGGYTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARYSPFYMDYWGQGTLVTVSS
のVHドメインおよび(配列番号14):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGYSFPPTFGQGTKLEIKのVLドメインを含む。
【0062】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントのVHドメインは、リンカーを介してVLドメインに融合される。抗体、およびその抗原結合フラグメント中のVHおよびVLドメインを相互接続する種々のこのようなリンカーは、実施形態により使用され得る。特定の実施形態では、リンカーは、ペプチドリンカーである。例えば、ペプチドリンカーは、アミノ酸グリシン(G)および/またはセリン(S)を含み得る、例えばこれらからなり得る。このようなペプチドリンカーの非限定的例は、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号27)を含む、好ましくはこれからなる。
【0063】
当業者は、アミノ酸の欠失または付加を含む、1つ、2つ、3つ、4つまたはさらに多くのアミノ酸配列中のアミノ酸残基の置換などの軽度の変化が、抗体またはその抗原結合フラグメントのIL13Rα2に結合すその能力などの機能特性に影響を与えることなく発生し得ることを理解するであろう。変化は、重鎖および/または軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列中、CDR領域の外側、すなわちフレームワーク領域のアミノ酸配列中、またはCDRのアミノ酸配列中およびCDR領域の外側のアミノ酸配列の両方中に存在し得る。従って、いくつかの実施形態はまた、本明細書で提示するまたは配列表中のアミノ酸配列のいずれかと、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、およびより好ましくは少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する抗体またはその抗原結合フラグメントも包含する。
【0064】
本明細書で使用される場合、配列同一性は、ペプチドまたはタンパク質配列などの、2つのアミノ酸配列間の配列類似性を指す。類似性は、配列間の構造的および/または機能的関連性を決定するための配列アラインメントにより決定される。アミノ酸配列間の配列同一性は、National Center for Biotechnology Information(NCBI),Bethesda,Md.,USAから、例えば、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi経由で入手できるNeedleman-Wunsch Global Sequence Alignment Toolを用いて、デフォルトパラメーター設定(タンパク質アラインメントの場合、Gap costs Existence:11 Extension:1)を使用して、配列のアラインメントを比較することにより決定できる。本明細書で言及される配列比較およびパーセンテージの特定は、このソフトウエアを用いて決定された。例えば、あるアミノ酸配列に対する配列同一性のレベルを比較する場合、これは、好ましくは、アミノ酸配列の全長に対して実施されるべきである、すなわち、高い全体同一性評価を生ずる高い同一性オーバーラップの短い領域を回避するために、グローバルアライメント法が使用される。例えば、5つのアミノ酸を有する短いポリペプチドフラグメントは、全体のアミノ酸配列内の5つのアミノ酸領域と100%同一配列を有し得るが、これは、フラグメントが、アミノ酸配列中の位置と同等の他の位置で同一のアミノ酸をまた有する、より長い配列の一部を形成しない限り100%のアミノ酸同一性を与えない。比較される配列における同等位置が同一のアミノ酸で占められる場合、分子は、その位置で同一である。同一性のパーセンテージとしてのアラインメントの点数化は、比較される配列により共有される位置での同一アミノ酸の数の関数である。配列を比較する場合、最適アラインメントは、配列中の可能な挿入および欠失を考慮するために、1種または複数の配列中に導入されるギャップを必要とする場合がある。
【0065】
ある実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。別の実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体である。
ある実施形態では、抗体は、遺伝子操作された抗体、例えば、単鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、ヒト化抗体、二重特異的抗体、または多重特異性抗体である。ある実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。本明細書で使用される場合、キメラ抗体は、1つの種由来の定常ドメインおよび第2の種由来の可変ドメインを含む抗体を指す。
ある実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。本明細書で使用される場合、ヒト化は、元の起源の抗体より真のヒト抗体により高い類似性の構造および免疫学的機能を有するように改変される非ヒト起源由来の少なくとも1つのCDR領域を有する抗体を指す。ヒト化抗体の例は、ヒト抗体にグラフト化された非ヒト抗体由来のCDR領域を有する抗体である。ヒト化は、追加でまたは代わりに、非ヒトアミノ酸配列をヒト配列により似させるための選択アミノ酸置換を含む。
【0066】
好適な抗体作製方法は、当技術分野において既知である。例えば、標準ハイブリドーマ法は、Harlow and Lane(eds.),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988)、およびCA.Janeway et al.(eds.),Immunobiology,5th Ed.,Garland Publishing,New York,N.Y.(2001)に記載されている。
【0067】
モノクローナル抗体は、培養物中の連続継代性細胞株により抗体分子の産生を可能にするいずれかの技術により調製され得る。これらは、限定されないが、最初にNature 256:495-497,1975に記載されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Immunol Today 4:72,1983;Proc Natl Acad Sci 80:2026-2030,1983)およびEBVハイブリドーマ技術(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R Liss Inc,New York N.Y.,pp 77-96,(1985))を含む。
ポリクローナル抗体は、IL13Rα2抗原を含む免疫原で動物を免疫化し、その免疫された動物から抗血清を収集することにより調製され得る。限定されないが、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、ヤギ、ヒツジ、ブタまたはウマを含む広範囲の動物種が、抗血清の産生に使用できる。
【0068】
あるいは、抗体、およびその抗原結合フラグメントは、本明細書で記載のファージディスプレイ選択を用いて選択的に産生され得る。
本明細書で使用される場合、抗体の抗原結合フラグメントは、単鎖抗体、Fvフラグメント、scFvフラグメント、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fdフラグメント、単一ドメイン抗体(sdAb)、scFv-Fcフラグメント、di-scFvフラグメントおよびCDR領域からなる群から選択できる。現時点で好ましい抗原結合フラグメントの実施形態は、単鎖可変フラグメント(scFv)である。
【0069】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、IL13Rα2に、好ましくはヒトIL13Rα2に特異的に結合する。ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、追加でまたは代わりに、非ヒトIL13Rα2に特異的に結合する。このような非ヒトIL13Rα2の非限定的例は、イヌのIL13Rα2、ネコIL13Rα2、ウシIL13Rα2、ウマIL13Rα2、ヒツジIL13Rα2、ラットIL13Rα2および/またはマウスIL13Rα2を含む。
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、ヒトIL13Rα1に結合しない。
【0070】
実施形態のある態様は、キメラ抗原受容体(CAR)に関する。CARは、実施形態による抗体またはその抗原結合フラグメントを含む抗原認識ドメインを含む。CARはまた、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
一般に、CARは、外部ドメイン、膜貫通ドメイン、およびエンドドメインを含む。CARの外部ドメインは、scFvであってよい、抗原認識領域を含む。外部ドメインはまた、シグナルタグまたはCARを小胞体中へ誘導するペプチドを含み得る。
【0071】
膜貫通ドメインは、細胞膜を横切るCARの部分である。一般に、膜貫通ドメインは、任意の膜貫通型タンパク質から誘導できる。ある実施形態では、膜貫通ドメインは、疎水性アルファヘリックスを含む。CAR中に含まれ得る膜貫通ドメインの非限定的例は、表面抗原分類28(CD28)の膜貫通ドメインの全てまたは一部、CD8αの膜貫通ドメインの全てまたは一部、CD27の膜貫通ドメインの全てまたは一部、CD137(4-1BB)の膜貫通ドメインの全てまたは一部、CD134(OX40)の膜貫通ドメインの全てまたは一部、CD3εの膜貫通ドメインの全てまたは一部、CD3ζの膜貫通ドメインの全てまたは一部、CD3γの膜貫通ドメインの全てまたは一部、CD3δの膜貫通ドメインの全てまたは一部、TCRαの膜貫通ドメインの全てまたは一部、およびTCRβの膜貫通ドメインの全てまたは一部、好ましくは、CD28の膜貫通ドメインの全てまたは一部またはCD8αの膜貫通ドメインの全てまたは一部を含む。
【0072】
CARのエンドドメインは、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを含む。CAR中に含まれ得るこのようなシグナル伝達ドメインの非限定的例は、CD3のゼータ鎖(CD3ζ)、CD28、CD137(4-1BB)、ICOS、CD27、CD40、OX40(CD134)、またはMyd88、好ましくはCD3ζおよび/またはCD137を含む。
ある実施形態では、CARは、抗原認識ドメインと膜貫通ドメインとを相互連結するヒンジドメインまたはスペーサーを含む。
【0073】
実施形態の関連態様は、実施形態による抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む抗原認識ドメインを含むT細胞受容体(TCR)複合体を規定する。
TCRは、主要組織適合抗原(MHC)分子に結合されるペプチドとして抗原のフラグメントの認識に関与する、T細胞の表面上で見出される分子である。TCRが抗原性ペプチドおよびMHCとかみ合うと、T細胞は、シグナル伝達、すなわち、関連酵素、共受容体、分化アダプター分子、および活性化または放出される転写因子により媒介される一連の生化学的イベントを介して活性化される。TCR複合体は通常、CD3γ鎖、CD3δ鎖、および2つのCD3ε鎖と結合されるTCR分子である。これらの鎖は、TCRおよびζ鎖(ゼータ鎖)と結合して、T細胞中で活性化シグナルを生成する。TCR、ζ鎖、およびCD3分子は一緒に、TCR複合体を構成する。
使用可能なTCRの非限定的例は、CMVpp65 TCRおよびTARP TCRを含む。
【0074】
実施形態の別の態様は、実施形態による抗体、またはその抗原結合フラグメントおよびエフェクター分子を含むコンジュゲートに関する。
実施形態のコンジュゲートは、標的化ドメインまたは分子およびエフェクタードメインまたは分子として、抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む。抗体、またはその抗原結合フラグメントは、腫瘍細胞を含むIL13Rα2発現細胞にコンジュゲートを向ける。
【0075】
実施形態の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、種々のいわゆるエフェクタードメインまたは分子と接続して使用され得る。ある実施形態では、エフェクター分子は、検出可能標識、細胞毒素、金属、別の抗体、またはその抗原結合フラグメント、核酸配列、および脂質二重層ドッキング部分(lipid bilayer docking moiety)からなる群より選択される。
【0076】
ある実施形態では、エフェクタードメインは、検出および診断目的のために使用され得る。このような場合、エフェクタードメインは、放射標識、蛍光標識、化学発光標識などの、検出可能な標識である。コンジュゲートはその後、例えば対象の身体中で、IL13Rα2発現細胞などのIL13Rα2の診断およびイメージングのために使用できる。特定の検出可能な標識に応じて種々の画像化手法、例えば、X線イメージング、磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放出断層撮影(PET)、または単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)をその後、使用し得る。
【0077】
検出可能な標識の使用の代わりに、実施形態の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、抗体、またはその抗原結合フラグメントの少なくとも1つのアミノ酸残基中の水素または炭素などの元素を、その同位体、例えば、水素の代わりに重水素および12Cの代わりに13Cで置換することにより検出され得る。
【0078】
常磁性金属および放射性同位元素を含む金属も、イメージング目的のためにエフェクタードメインとして使用できる。
細胞毒素、または細胞傷害薬は、コンジュゲートが抗体、またはその抗原結合フラグメントを使用して細胞を標的化すると、細胞傷害性を発現しIL13Rα2発現細胞を死滅させるためのエフェクタードメインとして使用できる。細胞毒素の典型的な例は、化学療法剤である。限定されないが、アルキル化剤、代謝拮抗薬、抗微小管阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、および細胞傷害性抗生物質を含む任意の化学療法剤を、実施形態に従って使用できる。
別の実施形態では、エフェクタードメインは、アポトーシスタグであり、これは、IL13Rα2を発現しかつコンジュゲートにより標的化される細胞によりアポトーシスの誘導をもたらす。このようなアポトーシスタグの例は、TRAILタンパク質である。
さらに別の実施形態では、エフェクタードメインは、T細胞またはB細胞エピトープ、またはT細胞またはB細胞エピトープをコードする核酸配列であり、これは、エピトープに対するT細胞またはB細胞免疫の特異的誘導を引き起こす。
エフェクタードメインは、別の抗体、またはその抗原結合フラグメントであってよい。例えば、エフェクタードメインは、IgGまたは他の免疫グロブリンのFcドメインであり得る。Fcドメインを次に使用して、プロテインAアフィニティカラムを介する精製を可能にする。追加で、または代わりに、Fcドメインは、コンジュゲートのインビボ半減期を改善し得る。さらに、Fc領域は、コンジュゲートのダイマー化/多量体化を可能にする。
【0079】
実施形態のさらなる態様は、実施形態による抗体、またはその抗原結合フラグメント、CARおよび/またはTCR複合体をコードする核酸分子を含む。核酸分子は、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、および核酸配列を含み、DNAまたはRNAの高分子を通常意味し、これは、一本鎖または二本鎖であってよく、天然、非天然または改変されたヌクレオチドを含んでよく、およびこれは、天然の、非天然のまたは改変されたヌクレオチド間結合、例えば、非改変オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間で認められるリン酸ジエステルではなく、ホスホロアミデート結合またはホスホロチオエート結合を含んでもよい。核酸分子はまた、相補的DNA(cDNA)およびメッセンジャーRNA(mRNA)も含む。
【0080】
核酸分子はまた、実施形態による抗体、またはその抗原結合フラグメント以外の分子もコードし得る。このような別の分子の例は、ヘリコバクター・ピロリ(HP)好中球有効活性化タンパク質(NAP)であり、HP-NAPは、H.pylori細菌感染症において病原性因子として作用するドデカマータンパク質である。それは、12のモノマーサブユニットから作製され、各サブユニットは、4つのアルファヘリックスからなる。HP-NAPの表面は、強く正に帯電し、ヒト白血球(WBC)(leukocyteとも表記される)と相互作用する能力およびこれを活性化する能力を有する。
【0081】
実施形態の別の態様は、実施形態による核酸分子を含むベクターに関する。
ベクターは、好ましくは発現ベクター、すなわち、発現ベクターを含む、宿主T細胞などの、宿主細胞中で転写されるおよび翻訳されるなど、発現され得るコード配列を含む少なくとも1種の核酸分子を含むベクターである。発現ベクターは、ある実施形態では、DNA分子、RNA分子、プラスミド、エピソームプラスミドおよびウィルスベクターから選択される。
ある実施形態では、ベクターは、ウィルスベクターである。特定の実施形態では、ウィルスベクターは、レンチウィルスベクター、アデノウィルスベクター、アデノ随伴ウィルスベクター、レトロウィルスベクター、セムリキ森林ウィルス、ポリオウィルスおよびハイブリッドベクターからなる群から選択される。
【0082】
レンチウィルスは、レトロウィルスのサブクラスである。それらは、非分裂細胞のゲノム中へ組み込むそれらの能力のために、遺伝子送達媒体(ベクター)として適合される。それは、他のレトロウィルスは分裂細胞にのみ感染できるので、レンチウィルス固有の特徴である。RNAの形態のウィルスのゲノムは、ウィルスがT細胞などの細胞に侵入したときに逆転写されて、DNAを産生し、これはその後、ウィルスインテグラーゼ酵素により、ゲノム中の位置に挿入される。ベクター(ここではプロウィルスと呼ばれる)は、ゲノムに留まり、細胞が分裂するとき、細胞の子孫に伝えられる。安全性の理由から、レンチウィルスベクターは通常、それらの複製に必要とされる遺伝子を決して含まない。レンチウィルスを作製するために、いくつかのプラスミドが、いわゆるパッケージング細胞株、通常はHEK293、に遺伝子導入される。一般にパッケージングプラスミドと呼ばれる、1つまたは複数のプラスミドは、ビリオンタンパク質、例えば、カプシドおよび逆転写酵素などをコードする。別のプラスミドは、ベクターによって送達される遺伝物質を含有する。それは転写されて、一本鎖のRNAウィルスゲノムを産生し、かつΨ(プシー)配列の存在によりマークが付けられる。この配列を使って、ビリオン中にゲノムをパッケージする。
【0083】
レトロウィルスは、現在の遺伝子治療手法の中心的役割をになうものの1つである。モロニーマウス白血病ウィルスなどの組換えレトロウィルスは、宿主ゲノム中に安定に組み込む能力を有する。それらは宿主ゲノムへの組み込みを可能にする逆転写酵素を含む。レトロウィルスベクターは、複製能力があるまたは複製欠損のいずれかであり得る。複製欠損ベクターは、最もよくある選択肢である。理由は、ウィルスが、追加のラウンドのビリオン複製およびパッケージングのために必要な、他の遺伝子で置換された、または欠失された遺伝子のためのコード領域を有しているためである。これらのウィルスは、T細胞に感染およびそれらのウィルス負荷量を送達できるが、その後、細胞溶解および細胞死に繋がる典型的溶菌経路を継続できない。ベクターがレンチウィルスまたはレトロウィルスベクターの場合には、CARおよび/またはTCR複合体およびHP-NAPおよび/または免疫学的に同等のHP-NAPフラグメントをコードする核酸配列は好ましくは、RNA配列である。
【0084】
本明細書で使用される場合、アデノウィルスベクターは、アデノウィルスベクターおよびアデノウィルス由来ウィルスベクターを含む。
アデノウィルスDNAは、ゲノム中に組み込まれず、細胞分裂中に複製されない。アデノ由来ウィルスベクターは、アデノウィルスベースであるが、種々の改変、例えば、複製タンパク質、すなわち調節タンパク質、表面タンパク質などをコードするヌクレオチド配列に関連する改変が行われている。
【0085】
アデノ随伴ウィルス(AAV)は、ヒトおよびいくらかの霊長類種に感染する小さいウィルスである。AAVは、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染でき、そのゲノムを宿主細胞のゲノムに組み込み得る。さらに、AAVはほとんど、エピソームとしてそのまま存在し、長く安定な発現を行う。AAVは、一本鎖のDNAをパッケージングし、第2の鎖合成のプロセスを必要とするが、自己相補的アデノ随伴ウィルス(scAAV)は、両鎖をパッケージし、これは一緒にアニールして二重鎖DNAを形成する。第2の鎖合成をスキップすることにより、scAAVは、細胞中での急速発現を可能にする。ベクターがアデノウィルスベクターである場合、CARおよび/またはTCR複合体およびHP-NAPおよび/または免疫学的に同等のHP-NAPフラグメントをコードする核酸配列は好ましくは、DNA配列である。
【0086】
セムリキ森林ウィルスは、9つのタンパク質をコードする約13,000個の塩基対のゲノムを有するプラス鎖RNAウィルスである。ゲノムの5’側3分の2はRNA合成に関する4つの非構造タンパク質をコードし、構造タンパク質が3’側3分の1にコードされる。構造タンパク質のうち、Cタンパク質は、宿主細胞由来の脂質二重層により覆われた二十面体カプシドを構成する。ウィルスの最外表面は、外殻を形成する、相互接続三量体中に配置された糖タンパク質E1およびE2ヘテロダイマーによりほぼ完全に覆われている。三量体は、ヌクレオキャプシドと結合するE2細胞質ドメインにより膜中に固定される。その広範な宿主範囲および効率的複製のために、それはベクターとしても開発された。
【0087】
ハイブリッドベクターは、2種以上のベクターの性質を有するように遺伝子操作されるベクターウィルスである。例えば、ハイブリッドベクターは、アデノウィルスとレンチウィルスの組み合わせであり得る。
【0088】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメント、CARおよび/またはTCR複合体をコードする核酸分子は、プロモーターの転写制御下にある。ある実施形態では、プロモーターは、ヒトEF1αプロモーター、CMVプロモーターおよびCAGプロモーターからなる群から、好ましくはEF1αプロモーターから選択される。
ある実施形態では、ベクターは、EF1αプロモーターなどのプロモーターの転写制御下でCARおよび/またはTCR複合体をコードする核酸分子を含む。ベクターはまた、好ましくは分泌のためのシグナルペプチドを有し、かつ誘導性NFAT-IL-2プロモーターなどの誘導性プロモーターの転写制御下で、HP-NAPをコードする核酸分子を含む。
実施形態のさらなる態様は、実施形態による抗体、またはその抗原結合フラグメント、CAR、TCR複合体、核酸分子および/またはベクターを含む細胞に関する。
核酸またはベクターは、次に、細胞中で転写されて、抗体、またはその抗原結合フラグメント、CARおよび/またはTCR複合体を細胞中で産生できる。
いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、単球、およびマクロファージからなる群より選択される。特定の実施形態では、細胞は、T細胞である。
【0089】
実施形態はまた、実施形態による抗体、またはその抗原結合フラグメント、CAR、TCR複合体、細胞、コンジュゲート、核酸、および/またはベクター、および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物に関する。
【0090】
薬学的に許容可能な担体は、医薬組成物の他の成分と適合性がある、薬学的に許容可能な担体、ビークルおよび/または賦形剤またはこれらの組み合わせを含む。このような薬学的に許容可能な担体の非限定的例は、生理食塩水または緩衝化注射溶液などの注射溶液を含む。
【0091】
実施形態はまた、エフェクター分子が、薬物として使用するための実施形態による細胞毒素、核酸分子、ベクター、細胞および/または医薬組成物である、抗体、またはその抗原結合フラグメント、CAR、TCR複合体、コンジュゲートに関する。
特定の実施形態では、エフェクター分子が、実施形態による細胞毒素、核酸分子、ベクター、細胞および/または医薬組成物である、抗体、またはその抗原結合フラグメント、CAR、TCR複合体、コンジュゲートは、癌細胞上のIL13Rα2の発現を特徴とする癌疾患、すなわち、IL13Rα2発現癌疾患の治療または発症の遅延化において使用できる。
【0092】
いくつかの実施形態では、IL13Rα2発現癌疾患は、神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭頸部癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、肺癌、尿路上皮癌、メラノーマおよびカポジ肉腫からなる群より選択される。
【0093】
さらなる実施形態は、患者のIL13Rα2発現癌を治療、低減および/または予防する方法に関する。方法は、有効量の抗体、またはその抗原結合フラグメント、CAR、TCR複合体、コンジュゲートを患者に投与することを含み、エフェクター分子は、実施形態による細胞毒素、核酸分子、ベクター、細胞および/または医薬組成物である。
【0094】
本明細書で使用される場合、有効量は、望ましい結果を得るのに必要な投与および時間のための有効な量を示す。例えば、腫瘍増殖を抑制することにおいて、有効量は、細胞の投与なしで得られる応答に比べて、例えば、寛解、腫瘍負荷量の低減を誘導し、および/または腫瘍伝播または増殖を防止する量である。有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別および/または体重などの因子に応じて変化し得る。本明細書で使用される治療すること、または治療は、当技術分野において十分に理解されており、臨床結果を含む、有益な、または所望の結果を得るための手法を意味する。有益な、または所望の臨床結果としては、1つまたは複数の症状または状態の軽減または改善、疾患の程度の縮減、疾患の状態の安定化、すなわち悪化を防ぐ、疾患のまん延の防止、疾患進行の遅延または減速化、疾患状態の改善または緩和、疾患の再発の縮減、および寛解を挙げ得る。治療すること、または治療はまた、治療を受けていない場合の予測生存期間に比べて、生存期間の延長も含み得る。
【0095】
本明細書で使用される場合、防止または予防は、当該技術分野において十分に理解されており、疾患の発生を遷延または遅延させ得ことを含む、疾患または状態を発症するリスクを低減するまたは防止する手法を意味する。例えば、遺伝的または遺伝的素因によるなどの疾患を発症し易い患者は、疾患の発症を防止する、そのリスクを低減する、それを遅延化するおよび/または緩徐化するための実施形態による抗体、またはその抗原結合フラグメント、細胞、コンジュゲートおよび/または医薬組成物の投与についての恩恵を受け得る。
【0096】
患者は好ましくは、ヒトである。しかし、実施形態は、獣医学用途、すなわち、例えば、霊長類、サル、類人猿、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、マウス、ラットおよびモルモットを含む非ヒト哺乳動物などの、非ヒト患者にも適用し得る。実施形態による抗体、またはその抗原結合フラグメント、細胞、コンジュゲートおよび/または医薬組成物は、種々の経路、例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内または腫瘍内投与により患者に投与され得る。
【0097】
本発明はまた、IL13Rα2陽性細胞を特定する方法にも関する。方法は、生体試料を、実施形態による抗体、またはその抗原結合フラグメントと接触させること、および生体試料の少なくとも1つの細胞に結合した抗体、またはその抗原結合フラグメントの量を測定すること、それにより少なくとも1つの細胞をIL13Rα2陽性細胞として特定することを含む。
【0098】
ある実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、同位体を含むか、または前に本明細書で記載のように、ビオチン-アビジンまたはビオチン-ストレプトアビジン結合を使用するなどの、検出可能な標識に融合されるまたは結合される。
あるいは、IL13Rα2陽性細胞は、フローサイトメトリー(FCM)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて検出され得る。
【0099】
実施例
本明細書の実施例は、癌の治療のためのキメラ抗原受容体(CAR)細胞療法における使用のためのIL13Rα2を標的とするヒト単鎖抗体可変フラグメント(scFv)の開発を記載する。
【0100】
実施例1-scFvへの1E10B9およびmAb47 IgGの変換およびELISAおよびHTRFによる結合キャラクタリゼーション
文献調査は、2つの既存のモノクローナル抗IL13Rα2、すなわち、1E10B9(米国特許第9,868,788号;Debinski,et al.,New agents for targeting of IL-13RA2 expressed in primary human and canine brain tumors,PLoS One 2013,8(10):e77719)およびmAbクローン47(mAb47)(米国特許第10,308,719号;Balyasnikova et al.,Characterization and immunotherapeutic implications for a novel antibody targeting interleukin(IL)-13 receptor α2,J Biol Chem 2012,287(36):30215-30227;Kim et al.,A novel single-chain antibody redirects adenovirus to IL13Rα2-expressing brain tumors,Sci Rep 2015,5:18133)を明らかにした。これらは両方とも、ハイブリドーマ技術により生成されたマウス抗体である。1E10B9の場合、ヒトとイヌの配列との間で100%の相同性を有する、IL13Rα2の細胞外ドメインの一部をコードするペプチドフラグメントが、合成され、免疫原として使用された。得られた抗体1E10B9は、従って、受容体のヒトおよびイヌ両方の相同分子種を結合する。mAb47は、免疫原として受容体の完全細胞外領域(IL13Rα2-Fc)を用いることにより得られた。ヒトIL13Rα2に対する報告された親和性は、KD=1.4nMであり、ヒトIL13Rα1またはマウスIL13Rα2には結合しないことが認められた(Balyasnikova et al.,Characterization and immunotherapeutic implications for a novel antibody targeting interleukin(IL)-13 receptor α2,J Biol Chem 2012,287(36):30215-30227)。また、この抗体は、IL13Rα2への結合に関して、IL-13と競合する。
【0101】
1E10B9およびmAb47のscFvタンパク質をコードする遺伝子が、合成され、タンパク質が、細菌中で発現され、ELISAおよび均一時間分解蛍光(HTRF)によりヒトIL13Rα2への結合について試験された。これらのアッセイの結果は、mAb47 scFvのみがその完全長の親IgG対応物の結合能力を保持することを示した。
【0102】
材料と方法
遺伝子合成
1E10B9およびmAb47の重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変ドメインの配列は、それぞれ、米国特許第9,868,788号および同第10,308,719号から得た。1E10B9のVHの最初の7つのアミノ酸は、特許に含まれていなかった。完全なVH遺伝子を生成するために、最も相同なマウスVH遺伝子の最初の7つのアミノ酸を、IMGTデータベース(http://www.imgt.org/3Dstructure-DB/cgi/DomainGapAlign.cgi)での検索に基づいて含めた。グリシン-セリンリンカー((Gly
4Ser)
3)を介してVLにVHを融合することにより、対応するscFv構築物1E10B9 scFv(X-ME107-B9とも呼ばれる)(配列番号92)およびmAb47 scFv(X-ME107-47とも呼ばれる)(配列番号93)をコードする遺伝子を、形成した。
1E10B9 scFv(VH+リンカー+VL+3xFLAG+Hisx6)(配列番号92)
【化1】
mAb47 scFv(VH+リンカー+VL+3xFLAG+Hisx6)(配列番号93)
【化2】
【0103】
1E10B9 scFvおよびmAb47 scFvの合成およびサブクローニングを、GenScript(Piscataway,NJ,USA)により実施した。これらのコドン最適化を、Escherichia coli発現に基づいて実施した。合成後、scFv遺伝子を、制限酵素SfiIおよびNotIを用いてpHAT-6ベクター(SciLifeLab,Stockholm,Sweden)中に挿入した。pHAT-6ベクターは、C末端にトリプルFLAGタグおよびヘキサヒスチジン(Hisx6)タグを有する分泌されるscFvをもたらす。
【0104】
ベクターを、Top10 E.coli中に形質転換し、目的の配列を,
塩基配列決定(GATC、Germany)により確認した。
【0105】
タンパク質発現
1E10B9 scFvおよびmAb47 scFvのscFv当り2つのコロニーの小規模発現を、96ディープウェルプレートで実施した。
一晩のインキュベーション後、細菌を、遠心沈降し、上清を、ELISAおよびHTRFの両方による機能評価に使用した。
【0106】
ELISA
ヒトIL13Rα2-avi(実施例A1参照)、および陰性対照タンパク質ストレプトアビジンを、384-ELISAウェルプレートに、PBS中の1μg/mlを4℃で一晩コートした。
【0107】
プレートを、ミリQ水で2回洗浄し、ブロッキング緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)+0.05%ツイーン20(登録商標)を補充したリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS))中で2時間ブロックした。細菌上清中に存在するトリプルFLAGタグ付きscFv 1E10B9およびmAb47を、ブロッキング緩衝液中で1:2、1:20および1:200に希釈し、結合させた。ストレプトアビジン特異的アッセイ対照scFv(G-strep-1)も含めた。結合の検出を、HRP標識抗FLAG M2抗体(Sigma-Aldrich #A8592)により可能にし、続いて1-step Ultra TMB ELISA基質(Thermofisher Scientific #34029)とインキュベーションした。比色分析シグナル発生を、1Mの硫酸を添加することにより停止し、プレートを、450nmで読み取った。全ての試料を、二重にアッセイした。
【0108】
均一時間分解蛍光(HTRF)
1E10B9、mAb47および陽性アッセイ対照scFvを、アッセイ緩衝液(0.1%BSAを補充したPBS)中で1:5に希釈し、ヒトIL13Rα2-aviおよび無関係のタンパク質(両方ともアッセイ緩衝液中で200nMに希釈)に結合させた。結合の検出を、ドナー分子テルビウム標識抗FLAG抗体(Cisbio #611FG2TL)および受容体分子ストレプトアビジン標識XL665(Cisbio #610SAXL)により可能にした。プレートを、暗所下、室温で2時間インキュベートした後、Envision分光計(Perkin Elmer)により615nm(バックグラウンド/ノイズシグナル)および665nm(結合シグナル)で分析した。全ての試料を、二重にアッセイした。
【0109】
結果
1E10B9 scFvおよびmAb47 scFvをコードする4μgのベクターを、GenScriptから得た。これらのDNA塩基配列決定法は、正しい配列を確認した。小規模発現を実施し、これらの小セットの抗原に対する結合を、ELISAおよびHTRFを用いて分析した。
【0110】
これらの分析の結果は、mAb47 scFvがヒトIL13Rα2を認識することを示した(
図1および2)。1E10B9 scFvは、ELISAでもHTRFでも、含まれる抗原のいずれかに対する検出可能なシグナルを生じなかった。
【0111】
結論
マウスIgG抗体1E10B9およびmAb47に特異的なIL13Rα2のVHおよびVLをコードするscFv遺伝子は、うまく合成され、pHAT6中に挿入され、タンパク質が発現され、ELISAおよびHTRFにより結合について分析された。
【0112】
mAb47 scFvは、ヒトIL13Rα2に対する保持された結合を示し、陰性対照タンパク質に対する結合は、検出されなかった。
1E10B9 scFvは、しかし、ヒトIL13Rα2への結合を示さなかった。これは、その完全長IgG対応物について報告されたこと(Kim et al.,A novel single-chain antibody redirects adenovirus to IL13Rα2-expressing brain tumors,Sci Rep 2015,5:18133)とは対照的である。抗体フォーマット間での交替時の抗原結合の消失は、IgGからscFvへ移行する場合は特に、珍しいことではない。抗原結合部位の構造に影響を与える変更されたタンパク質折り畳みは、これを最もうまく説明できる。
【0113】
実施例2-ファージライブラリーを用いるヒトおよびマウスIL13Rα2に対するファージディスプレイ選択
ファージディスプレイ選択を実施して、ヒトおよびマウスIL13Rα2に特異的なscFvフラグメントの単離を可能にした。scFvを、2つの異なるヒトファージライブラリー(SciLifeLib1および2)から選択した。ELISAによる合計920個のクローンの一次選別は、673個の陽性クローンをもたらし、これらは塩基配列決定に送られた。これらのうちの304個は、ユニークな配列であることがわかった。
【0114】
材料と方法
抗原
ファージディスプレイ選択用の抗原として使用されるヒトおよびマウスバージョンのIL13Rα2を、表7に記載する。
【表7】
【0115】
ファージディスプレイ選択
バイオパニングを、2種のヒト合成scFvファージライブラリー、SciLifeLib1およびSciLifeLib2(SciLifeLab,Stockholm,Sweden)を採用し、4選択ラウンドの濃縮を使用して実施した。SciLifeLib1および2は、以前に報告されたもの(Sall,et al.,Protein Eng Des Sel(2016)29:427-437)に設計および構成が似ている、未感作ヒト合成scFvライブラリーである。手短に説明すると、ヒト生殖系列遺伝子IGHV3-23およびIGKV1-39を、ライブラリー骨格として使用し、クンケル変異誘発を用いて、6つの相補性決定領域(CDR)の4つ中に多様性、すなわち、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3およびCDR-L3、を導入した。ビオチン化試料(hIL13Rα2-avi)に対しては、選択を、ストレプトアビジンコート磁気ビーズ(Dynabeads M-280,ThermoFisher Scientific,#11206D)を用いて実施した。同様にして、タンパク質G結合磁気ビーズ(Dynabeads ThermoFisher Scientific,#10004D)を用いて、Fc融合mIL13Rα2-Fcを捕捉した。2つのトラックで、異種間反応性scFvを優先的に選択するために、抗原を、異なるラウンドでヒトとマウスIL13Rα2との間で交替させた。さらに、別の2つのトラックでは、ヒトIL-13(Prospec #cyt-446)を、選択緩衝液に含めた。淘汰圧を、徐々に抗原量を減らすことにより、および異なるラウンド間の洗浄の回数と強さを増加させることにより高めた。抗原結合ファージの溶出を、トリプシン-アプロチニン手法を用いて実施した。ファージ標的タンパク質インキュベーションステップを除く全体選択プロセスを、自動化し、Kingfisher Flex robotで実施した。異なるパラメーターの組み合わせは、6つの異なる選択トラックの全体を包含するスキームを生じた。
【0116】
scFvの再クローニングおよび発現
可溶性scFvを産生させるために、各選択トラックの第3および第4のラウンドからファージミドDNAを単離した。
プール中で、scFvフラグメントをコードする遺伝子を、制限酵素消化し、スクリーニングベクターpHAT-6中にサブクローニングし、C末端でのトリプルFLAGタグおよびヘキサヒスチジン(His6)タグと共にscFvの分泌のためのシグナルをもたらした。構築物をその後、TOP10 E.coli中に形質転換した。単一コロニーを、採取し、培養し、96ウェルフォーマットでの可溶性scFv発現をIPTG誘導した。合計で、細菌上清中に存在する920個のscFvクローンを、一次ELISA選別のために調製した。
【0117】
ELISA選別
マウスIL13Rα2-Fcを、384ELISAウェルプレートにPBS中の1μg/mlを用いて、4℃で一晩直接コートし、一方、ヒトIL13Rα2-aviを、ストレプトアビジンを介して、同様にPBS中の1μg/mlを用いて、4℃で一晩間接的にコートした。2つの陰性対照タンパク質、ストレプトアビジンおよびBSAもまた、コートした。
【0118】
細菌上清中に存在するFLAGタグ付きW-ME107 scFvクローンを、ブロッキング緩衝液(0.5%BSA+0.05%ツイーン20(登録商標)で補充したPBS)で1:3に希釈し、コートしたタンパク質に結合させた。結合の検出を、HRP標識抗FLAG M2抗体(Sigma-Aldrich #A8592)により可能にし、続いて、TMB ELISA基質(Thermofisher Scientific #34029)とインキュベーションした。比色分析シグナル発生を、1Mの硫酸を添加することにより停止し、プレートを、450nmで読み取った。全ての試料を、二重にアッセイした。また、2つの参照scFvのmAb47 scFvおよびG-strep-1 scFvを、含めた。
【0119】
DNA塩基配列決定法
ヒトおよび/またはマウスIL13Rα2への結合を示す673個の陽性scFvクローンを、Sanger DNA塩基配列決定法のために、GATC Biotech(Ebersberg,Germany)に送った。
【0120】
結果
合計6つの選択トラックを、SciLifeLib1および2を使用して、ヒトおよび/またはマウスIL13Rα2に対し並行して実施した。選択scFvクローンの再クローニング後に、92個のクローン(コロニー)を、選択ラウンド3および4から採取し、合計920個の選択クローンを得た。
【0121】
ELISA選別は、別個の結合特性を有する673個の潜在的ヒットを特定した。ヒットの大部分は、ヒトIL13Rα2に対する結合のみを示し、残りのヒットは、ヒトおよびマウスIL13Rα2の両方に対する結合を示した。
673個のヒットのDNA塩基配列決定法は、304個のユニークな配列のW-ME107クローンを特定した。
【0122】
結論
ヒトおよび/またはマウスIL13Rα2に結合するscFvクローンは、ファージディスプレイ選択によりうまく単離された。920クローンの初期ELISA選別および673個の陽性ヒットのDNA塩基配列決定法後に、合計304個のユニークな配列のscFvクローンが、特定された。クローンの大部分は、ヒトIL13Rα2にのみ結合したが、1セットは、ヒトおよびマウスIL13Rα2の両方への結合を示した。
【0123】
実施例3-ELISAおよびHTRFによる304個の配列ユニークなscFvクローンの二次選別
304個の配列ユニークなscFvクローンのさらなる順位付けを促進するために、二次ELISA選別および均一時間分解蛍光(HTRF)選別を、全ての配列ユニーククローンに対し実施した。
これらの分析は、初期ELISA選別(実施例2)の結果を確証し、結合特異性に基づき、2つの主要クローン群を特定した。1つの群は、ヒトIL13Rα2にのみ結合し、一方で他の群は、ヒトおよびマウスIL13Rα2の両方に結合するクローンを含んだ。
生成されたELISAおよびHTRFデータを用いて、クローンの数をさらに低減し、160個のscFvのリストを生成した。これらの160個のクローンは、2つの主要基準に基づいて選択された:1)マウスおよびヒトIL13Rα2の両方に対する高いシグナルを示すこと(異種間反応性)または2)ヒトIL13Rα2に対し高いシグナルを示し、無関係標的に対する低いバックグラウンドシグナルを示すこと。
【0124】
材料と方法
ELISA
ヒトIL13Rα2-aviは、384ELISAウェルプレートにストレプトアビジンを介して間接的にコートされ、マウスIL13Rα2-Fcおよび陰性対照タンパク質ストレプトアビジンおよび無関係のタンパク質は、ウェルに直接コートされた。この実施例で使用したIL13Rα2タンパク質の詳細は、表7に記載される。
プレートを4℃で一晩コート後、プレートを、ミリQ水で2回洗浄し、ブロッキング緩衝液(0.5%BSA+0.05%ツイーン20(登録商標)を補充したPBS)中で2時間ブロックした。細菌上清中に存在するトリプルFLAGタグ付きW-ME107 scFvクローンを、ブロッキング緩衝液中で1:10に希釈し、結合させた。結合の検出を、HRP標識抗FLAG M2抗体(Sigma-Aldrich #A8592)により可能にし、続いて、1-step Ultra TMB ELISA基質(Thermofisher Scientific #34029)とインキュベーションした。比色分析シグナル発生を、1Mの硫酸を添加することにより停止し、プレートを、450nmで分析した。
全ての試料を、二重にアッセイした。また、2つの陽性対照のmAb47 scFvおよびG-strep-1を、含めた。
【0125】
HTRF
W-ME107 scFvクローン、ならびに参照のmAb47 scFvおよびG-strep-1 scFvを、アッセイ緩衝液(0.1%BSAで補充したPBS)中で1:5に希釈し、アッセイ緩衝液中で200nMに希釈されたhIL13Rα2-aviまたは無関係の抗原に結合させた。結合の検出を、ドナー分子テルビウム標識抗FLAG抗体(Cisbio #611FG2TL)および受容体分子ストレプトアビジン標識XL665(Cisbio #610SAXL)により可能にした。プレートを、暗所下にて室温で2時間インキュベートした後、615nm(バックグラウンド/ノイズシグナル)および665nm(結合シグナル)にてEnvision分光計(Perkin Elmer)で分析した。665nmの値を、615nmの値で除算して、各試料のR値を得た。
全ての試料を、二重にアッセイした。
【0126】
結果
ELISA
scFvクローンは、結合特異性に基づいて2つの主要群に分割され得る。scFvの大部分を含む、第1の群は、ヒトIL13Rα2にのみ結合し、一方で第2の群に属するクローンは、ヒトおよびマウスIL13Rα2の両方に結合した。参照クローンmAb47 scFvは、ヒトIL13Rα2への結合のみを示した。
HTRF
304個のscFvクローンもまた、FRETベース均質溶液アッセイでヒトIL13Rα2への結合に関して分析された。このアッセイでもまた、遙かに多数のクローンが、ヒトIL13Rα2への明らかな結合を示し、このアッセイに含まれた陰性対照に対しては有意な結合を示さなかった。意外にも、mAb47 scFvは、極めて低い結合シグナルを示した。
【0127】
結論
ELISAおよびHTRF選別は、ファージディスプレイ選択により単離された304個の配列ユニークなscFvクローンに対しうまく実施された。実施例4の同じ試料に対し行われたルミネックスアッセイからの結果と合わせて、この結果に基づき、160個のクローンが、SPRによるさらなるスクリーニングのために選択された。これらの160個のクローンは、それらの結合特性に基づいて2つのサブセットに分割され得る;i)ヒトIL13Rα2のみに結合するクローン、およびii)ヒトおよびマウスIL13Rα2の両方に結合するクローン。
【0128】
実施例4-ルミネックスによる304個のscFvクローンの結合特異性評価
この実施例では、全ての304個のユニークなscFvクローン、ならびに参照クローンmAb47 scFvを、ルミネックスベース手法で特異性についてさらに評価した。
この分析は、304個の8個のクローンがいくつかの無関係のタンパク質に対し非特異的結合を示したことを、示した。残りの296個のクローン、ならびに参照クローンmAb47は、それらの目的の抗原、ヒトIL13Rα2に対する特異的な結合を示した。
【0129】
この実施例4で示されたルミネックス(登録商標)データと一緒に、実施例3の同じ試料で生成されたELISAおよびHTRFデータを用いて、クローンの数をさらに低減し、160個のscFvのリストを生成した。ルミネックス(登録商標)での良好な性能に加えて、これらの160個のクローンは、2つの主要基準に基づいて選択された:1)マウスおよびヒトIL13Rα2の両方に対する高いシグナルを示すこと(異種間反応性)または2)ヒトIL13Rα2に対し高いシグナルを示し、無関係標的に対する低いバックグラウンドシグナルを示すこと。
【0130】
材料と方法
ビオチン化ヒトIL13Rα2-aviおよび31個のビオチン化無関係タンパク質を個別に、特異的ニュートラアビジン結合ルミネックスビードIDにコンジュゲートした。結合後、全てのビードIDを、混合し、アッセイ緩衝液(3%BSA、0.05%ツイーン20(登録商標)および10μg/mlのニュートラアビジンを補充したPBS)で1:10に希釈した、細菌上清中に存在するscFvクローンとインキュベートした。31個の無関係タンパク質のそれぞれについて、少なくとも1個の陽性対照scFvを含めた。クローンの特定のタンパク質結合ビードへの結合を、R-PE標識抗FLAG M2(Prozyme #PJ315)抗体により可能にし、続いて、FlexMAP 3D測定器で分析した。
全ての試料を二重にアッセイし、中央値強度蛍光(MFI)に対応する、得られた結合シグナルの平均値を、各ビードIDに対する各クローンについて計算した。
【0131】
結果
304個のscFvクローンのうち296個の選別物は、ヒトIL13Rα2に対する特異的結合を示した。8個のクローンはしかし、ヒトIL13Rα2への結合に加えて、いくつかの無関係タンパク質への結合を示した。
注目すべきことに、31個の無関係タンパク質のそれぞれについて、少なくとも1個の陽性対照scFvが、アッセイされた。これらの全ては、予測通りそれらの同族抗原と特異的に相互作用した。これは、全ての抗原がそれらのそれぞれのビーズに機能的に結合されたことを保証する。
【0132】
結論
32プレックスルミネックス(登録商標)ベースアッセイは、ファージディスプレイ選択により単離された304個の配列ユニークなscFvクローンに対しうまく実施された。8個のscFvのみが、アッセイに含まれた無関係のタンパク質に対し非特異的結合を示した。残りの296個のクローン、および参照クローンmAb47は、それらの目的の抗原のヒトIL13Rα2に対する特異的結合を示し、31個の無関係のタンパク質のいずれに対しても有意な結合を示さなかった。
【0133】
実施例5-SPRによる160個の配列ユニークなscFvの動力学的選別
実施例4からの160個のW-ME107 scFvクローン、ならびに参照クローンmAb47 scFvを、異なるクローンの効率的順位付けを可能にする動力学的選別ベース手法で表面プラズモン共鳴法(SPR)により、さらなるキャラクタリゼーションのために選択した。
【0134】
材料と方法
動力学的選別を、BIACORE(登録商標)T200測定器(GE Healthcare)で実施した。捕捉リガンドとして機能する、抗FLAG M2抗体(Sigma-Aldrich #F1804)を、製造業者の推奨条件に従い、CM5-Sアミンセンサーチップの4つ全ての表面上に固定した。
【0135】
細菌上清中に存在する160個のFLAGタグ付きW-ME107クローンを、注入し、チップ表面上に捕捉し、続いて、50nMでhIL13Rα2-avi、hIL13Rα2-FcまたはmIL13Rα2-Fcを、注入した。この試験で使用したIL13Rα2タンパク質の詳細は、表8に記載される。表面は、10mMのグリシン-HCl pH2.2で再生された。全ての実験は、ランニング緩衝液(0.05%ツイーン20(登録商標)で補充したHBS、pH7.5)中、25℃で実施された。
【0136】
抗FLAG M2抗体が固定されている表面の、参照表面の応答曲線を差し引くことにより、全てのscFvクローンについて応答曲線センサーグラムを得た。データを、BIACORE(登録商標)T200 Evaluation 3.1ソフトウェアを用いて分析した。
【表8】
【0137】
結果
抗FLAG M2抗体をCM5 Sチップの4つ全ての面上に固定し、類似のRUレベルの捕捉scFvクローンを得た。50nMでのIL13Rα2注入後、各表面は、低pH酸溶液を用いてうまく再生された。
【0138】
データの分析を、センサーグラムの目視検査(示さず)により実施した。クローンは、結合特性;(i)ヒトIL13Rα2-aviおよびヒトIL13Rα2-Fcの両方、ならびにマウスIL13Rα2-Fcに結合するscFvクローン;(ii)ヒトIL13Rα2バリアントの両方に結合するが、マウスIL13Rα2-Fcには測定可能な結合を示さないscFvクローン;(iii)ヒトIL13Rα2-aviのみに結合するが、ヒトIL13Rα2-Fcには結合しないscFv、そのうちの少数は、マウスIL13Rα2-Fcに対する結合も示す、に基づいて3つの群に分割され得ることが、センサーグラムから明らかであった。
【0139】
160個のscFvの44個の結合パターンを、表9に記載する。このセットは、ヒト受容体への結合に基づいて最も有望と考えられた。より具体的には、高い結合応答および好ましい遅い乖離速度(slow off-rate)が、考慮された。加えて、異種間反応性を示すクローンが、含められた。
【表9】
【0140】
結論
動力学的選別は、異なる結合特性;(i)ヒトIL13Rα2-aviおよびFc融合ヒトIL13Rα2(IL13Rα2-Fc)の両方、ならびにマウスIL13Rα2-Fcに結合するクローン、(ii)ヒトIL13Rα2バリアントの両方に結合するが、マウスIL13Rα2-Fcには測定可能な結合を示さないクローン、および(iii)ヒトIL13Rα2-aviのみに結合するが、ヒトIL13Rα2-Fcには測定可能な結合を示さないクローン、を示すクローンを生じ、そのうちのいくつかは、マウスIL13Rα2-Fcに対する結合も示す。生成されたデータは、異なるクローンの効率的順位付け、およびクローンの数の160から44へのさらなる低減を可能にした。
【0141】
実施例6-44個のscFvクローンの小規模タンパク質精製およびELISA分析
44個のクローンおよび参照クローンmAb47 scFvを、小規模タンパク質産生および精製のために、例3~5に示された結果に基づいて選択した。
【0142】
タンパク質精製を、プロテインAまたはニッケル結合磁気ビーズを用いて、Kingfisher Flex測定器により96ウェルフォーマットで実施した。全ての44個のW-ME107 scFvクローンは、十分な純度で、および十分なタンパク質濃度で精製可能であった。参照クローンmAb47 scFvは、しかし、発現不十分であり、それにより低い純度および濃度を示した。
ELISAで分析した場合、ほとんどの精製されたクローンは、それらの予測される抗原、ヒトおよび/またはマウスIL13Rα2への結合を示した。
【0143】
材料と方法
産生および精製
44+1個のscFvクローンのそれぞれを、15mlのE.coli培養物中で産生した。30℃で18時間のタンパク質産生後、細胞を、B-PER試薬(Thermofisher Scientific #78248)により溶解し、W-ME107 scFvクローンと参照クローンmAb47 scFvの清澄化された細菌性溶解物を、プロテインA-結合磁気ビーズ(Thermofisher Scientific #88846)またはMagneHis Ni粒子磁気ビーズ(Promega #V8548)とそれぞれ混合して、Kingfisher Flex機器での精製を可能にした。溶出されたscFvクローンの緩衝液を、Zeba 96ウェルスピン脱塩プレート(Thermofisher Scientific #89807)を用いて、PBSに交換した。
【0144】
精製されたscFvクローンを、純度および健全性を測定するために還元条件下でゲル電気泳動法により分析し、タンパク質濃度を、製造業者推奨条件に従って標準BCA(ビシンコニン酸)アッセイ(Thermofisher Scientific #23227)により測定した。
【0145】
ELISA
ヒトIL13Rα2-avi、ヒトIL13Rα2-FcおよびマウスIL13Rα2-Fcを、PBS中の1μg/mlの濃度で、384-ELISAウェルプレートに37℃で45分間コートした。この実施例で使用したIL13Rα2タンパク質の詳細は、表8に記載される。3つの陰性対照タンパク質(ストレプトアビジン、BSAおよび無関係のタンパク質)もまた、コートした。FLAGタグ付きscFvを、ブロッキング緩衝液(0.5%BSA+0.05%ツイーン20(登録商標)を補充したPBS)中で1μg/mlに希釈し、コートしたタンパク質に結合させた。結合の検出を、HRP標識抗FLAG M2抗体(Sigma-Aldrich #A8592)により可能にし、続いてTMB ELISA基質(Thermofisher Scientific #34029)とインキュベーションした。比色分析シグナル発生を、1Mの硫酸を添加することにより停止し、プレートを、450nmで読み取った。
参照クローンmAb47 scFvおよび陽性アッセイ対照G-strep-1 scFv(ストレプトアビジンに特異的)を含む、全ての試料を、二重にアッセイした。
【0146】
結果
産生および精製
44個のW-ME107 scFvについて、SDS-PAGEは、十分な試料純度、すなわち、scFv予測分子量(約30kDa)に相関する1つの主要バンドおよび、存在しないか、またはほんのわずかの弱いE.coli由来タンパク質バンドを示した(
図3)。
参照クローンmAb47は、しかし、低い試料純度を示し、複数のE.coli由来タンパク質バンドを有した。また、その予測分子量に対応するタンパク質バンドは、ゲル上の全ての他のバンドに比べてかなり弱く、このクローンの低い試料濃度を示した。
精製されたscFv試料のタンパク質濃度は、標準BCAアッセイにより測定された。全ての44個のW-ME107 scFvクローンは、0.1~0.6mg/mlの範囲の十分なタンパク質濃度で精製された。
【0147】
ELISA
精製されたW-ME107 scFvクローンのほとんどは、それらの目的の抗原、ヒトおよび/またはマウスIL13Rα2への結合を示し、コートした陰性対照タンパク質に対しては、非結合または極めて低い結合を示した。しかし、低または非抗原結合を示すいくつかのクローンが存在した。
【0148】
結論
44個のW-ME107 scFvクローンおよび参照クローンmAb47は、Kingfisher Flex機器で小規模で精製された。参照クローンmAb47を除く、全てのscFvクローンは、十分な試料純度および十分なタンパク質濃度を示した。
ELISAベース手法でアッセイした場合、クローンの大部分は、それらの目的の抗原、ヒトおよび/またはマウスIL13Rα2への結合を示した。しかし、いくつかのクローンは、予測通りには機能せず、低い結合または非抗原結合を有した。
【0149】
実施例7-ELISAによる44個のscFvクローンのヒトIL13Rα1に対する結合の調査
実施例6で小規模タンパク質精製のための選択された44個のクローンおよび参照クローンmAb47 scFvを、ELISAベース手法を用いてヒトIL13Rα1への結合について試験した。
結果は、全てのW-ME107 scFvクローンがそれらの目的の抗原、ヒトおよび/またはマウスIL13Rα2への結合を示し、ヒトIL13Rα1に対しては有意な結合がなかったことを、示した。同じ結果はが、参照クローンmAb47 scFvについても得られた。
【0150】
材料と方法
コーティングタンパク質hIL13Rα2-avi(実施例A1)、hIL13Rα2-Fc(RnD Systems #7147-IR)、mIl13Rα2-Fc(RnD Systems #539-IR)およびhIL13Rα1-Fc(RnD Systems #146-IR)を、PBS中で1μg/mlに希釈し、384ウェルELISAプレートに直接コートした。2つの陰性対照タンパク質、ストレプトアビジンおよび無関係のタンパク質もまた、コートした。4℃で一晩コーティングタンパク質とのプレートのインキュベーション後に、プレートを、ミリQ水で2回洗浄し、ブロッキング緩衝液(0.5%BSA+0.05%ツイーン20(登録商標)を補充したPBS)中で2時間ブロックした。細菌上清中に存在するトリプルFLAGタグ付きW-ME107 scFvクローンを、ブロッキング緩衝液中で1:10に希釈し、結合させた。結合の検出を、HRP標識抗FLAG M2抗体(Sigma-Aldrich #A8592)により可能にし、続いて、1-step Ultra TMB ELISA基質(Thermofisher Scientific #34029)とインキュベーションした。比色分析シグナル発生を、1Mの硫酸を添加することにより停止し、プレートを、450nmで分析した。
参照クローンmAb47 scFvおよび陽性ELISA対照G-strep-1 scFv(ストレプトアビジンに特異的)を含む、全ての試料を、二重にアッセイした。
【0151】
結果
全てのW-ME107 scFvクローンは、以前に報告されたように(実施例3および実施例5)、それらの目的の抗原、ヒトおよび/またはマウスIL13Rα2への結合を示した(
図4)。ヒトIL13Rα1に対して、または陰性対照タンパク質に対して、有意な結合は、いずれのクローンの場合も、検出できなかった。
参照クローンmAb47 scFvは、ヒトIL13Rα2に対してのみ結合を示し、マウスIL13Rα2またはヒトIL13Rα1へは結合を示さず、および陽性アッセイ対照G-strep-1 scFvは、ストレプトアビジンコートウェルに結合した。
【0152】
結論
ヒトIL13Rα1に対する有意な結合は、細菌上清からアッセイされた場合、44個のいずれのW-ME107 scFvクローンでも、または参照クローンmAb47 scFvでも、検出できなかった(
図4)。
動力学的選別結果(実施例5)とは対照的に、ここでの全てのクローンは、aviタグ付きおよびFc融合の両方のヒトIL13Rα2タンパク質への結合を示した。対照的に、実施例5では、44個のクローンの12個は、Fc融合バリアントへの測定可能な結合を示さなかった。この矛盾は、2つの方法の感度の差異により説明できる可能性が高いが、実験構成の差異による可能性もある。この実施例では、受容体は、表面に付着され、一方で実施例5および9では、受容体は溶液中にある。受容体のタグまたは融合タンパク質の差異は、どのように抗原が挙動するか、および異なるエピトープが2つの実験構成中でどのように異なって提示されるかに関して大きな影響を与え得る。
マウスIL13Rα2への結合は、以前のSPRデータ(実施例5)とうまく相関する、すなわち、親和性選別で標的に対し測定可能な結合を示さないscFvはまた、この実験構成では、「非バインダー」と見なされる。
いくつかのscFvは、全ての分析されたタンパク質(W-ME107-97、W-ME107-101、W-ME107-129、W-ME107-130、W-ME107-137、W-ME107-141、W-ME107-151、W-ME107-157で代表される)に対して低いシグナルを示した(
図4)。
【0153】
実施例8-細胞結合
選択scFvのIL13Rα2発現細胞への結合を評価して、標的細胞の表面上の受容体に対する結合も確認した。
【0154】
材料と方法
IL13Rα2発現細胞に対するscFv結合を、100ngの精製scFv(実施例6)をヒト神経膠芽腫細胞株U-87MG(確認済みIL13Rα2発現を有するオリジナルUppsala Universityクローン、PMID:27582061)またはヒト非小細胞肺癌細胞(A549)の1x105個の細胞と室温(RT)(約20~25℃)で20分間インキュベートすることにより評価した。ヒト神経膠芽腫細胞株U-87MGは、高レベルのヒトIL13Rα2(hIL13Rα2)を内因性に発現し、一方、ヒト非小細胞肺癌細胞は、hIL13Rα2を発現しない。
洗浄(1xPBS、0.1%BSA、3mMのEDTA)後、FLAGタグを、室温で20分間PE標識抗FLAG抗体を用いて染色した。読み取りを、CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman Coulter,CA)を用いて実施した。
【0155】
結果
選択scFvをIL13Rα2発現細胞とインキュベートして、標的細胞の表面上の受容体に対する結合も確認した。全てのscFvは、高レベルのhIL13Rα2を内因性に発現するヒト神経膠芽腫細胞株U-87MGに特異的に結合し得るが、陰性対照のヒト非小細胞肺癌細胞(A549)には結合しなかった(
図5)。
【0156】
結論
フローサイトメトリーは、選択W-ME107クローンの細胞結合能力をうまく評価し、選択W-ME107クローンは、標的細胞株に対し異なる結合力を示した。オフターゲット、すなわち、非神経膠腫への結合は、この結合アッセイでは観察されなかった。
【0157】
実施例9-11個のW-ME107 scFvクローンに対するSPRによる単一サイクル動力学
単一サイクル動力学的手法を用いた表面プラズモン共鳴法(SPR)分析を、実施例5、7および8の結果に基づいて選択された11個の最も有望なW-ME107クローン、および参照クローンmAb47 scFvに対して実施して、それぞれ、ヒトIL13Rα2-avi、ヒトIL13Rα2-FcおよびマウスIL13Rα2-Fcに対するそれらの動力学的パラメーターを決定した。
得られたデータの解析は、ヒトおよびマウスIL13Rα2に両方に対する低ナノモル範囲のKD値を示す最高親和性結合クローンを示した。
【0158】
材料と方法
捕捉リガンドとして機能する、抗FLAG M2抗体(Sigma-Aldrich #F1804)を、製造業者の推奨条件に従い、BIACORE(登録商標)T200測定器(GE Healthcare)のCM5-Sアミンセンサーチップの4つ全ての表面上に固定した。
プロテインA精製FLAGタグ付きW-ME107クローンを、それぞれ注入し、クローン間の応答単位(RU)が等しくなるように、チップ表面上に捕捉した。参照クローンmAb47は、しかし、タンパク質精製があまりに低い収率であったので(実施例6)細菌上清から非精製で捕捉された。
3倍希釈系列の1.2~100nMの間の5種の濃度範囲からなる、それぞれヒトIL13Rα2-avi、ヒトIL13Rα2-FcおよびマウスIL13Rα2-Fcを、ランニング緩衝液(0.05%のツイーン20(登録商標)を補充したHBS、pH7.5)中で調製し、順次チップ上に注入した。解離段階(dissociation phase)の後、チップ表面を、10mMのグリシン-HCl pH2.1で再生した。
抗FLAG M2抗体が固定されている表面の、参照表面の応答曲線を差し引くことにより、全てのscFvクローンの応答曲線センサーグラムを得た。データを、BIAevalバージョン3.1(GE Healthcare)を用いて解析し、動力学的パラメーターを、1:1ラングミュア結合モデルを仮定して計算した。
【0159】
結果
データは、全てのW-ME107クローンがヒトhIL13Rα2-aviに対し、低ナノモル~ナノモル範囲の親和性を示し、最高の親和性クローンは、3.1nMのKD値を有するW-ME107-27であったこと、を示した(表10)。
4つのクローン(W-ME107-112、W-ME107-117、W-ME107-128およびW-ME107-156)以外の全ては、マウスバージョンの受容体にも結合した。これは、実施例5で示したデータとよく相関した。
意外にも、全ての分析されたクローンは、hIL13Rα2-aviへの結合を明確に示したが、約半分のみが、Fc融合ヒト構築物(hIL13Rα2-Fc)への結合を示した。これは、hIL13Rα2-aviに対して高い応答を示した(>50RU)がFc融合ヒト構築物に対してはほとんど何の応答も示さなかった、W-ME107-10、W-ME107-27、W-ME107-55、W-ME107-112、W-ME107-143およびW-ME107-150により実証された。これは、動力学的選別分析(実施例5)中にも確認された。
【0160】
ヒトIL13Rα2-aviへの参照クローンmAb47 scFv(細菌上清中に存在する)の結合親和性、K
D(M)は、1.1nMと特定された。
【表10】
全てのscFv試料は、細菌上清中に存在するクローンmAb47 scFvを除いて精製試料として存在する。「--」として報告された値は、結合パラメーターが決定できなかったことを示す。「**」として報告された値は、低結合応答(RU)のために不確定データであることを示す。
【0161】
結論
11個のW-ME107 scFvクローンおよび参照クローンmAb47に対する単一サイクル反応速度手法は、BIACORE(登録商標)T200機器でうまく実施された。ヒトIL13Rα2-avi、ヒトIL13Rα2-FcおよびマウスIL13Rα2-Fcのそれぞれについて各クローンの得られた動力学的パラメーターは、動力学的選別分析(実施例5)の間に得られた推定親和性とよく相関した。最高の親和性結合クローン、W-ME107-27は、3.1nMのKD値を有した。W-ME107-27はまた、マウスIL13Rα2-Fcに対しても最高の親和性(KD=2.4nM)を示したクローンであった。
【0162】
意外にも、この実施例では、いくつかのクローンはhL13Rα2-aviへの良好な結合を示したが、hIL13R2α2-Fcに対してはそうではなかった(W-ME107-10、W-ME107-27、W-ME107-55、W-ME107-112、W-ME107-143およびW-ME107-150)。これは、これらのタンパク質構築物中に含まれたアミノ酸はほとんど同一であるという事実にもかかわらずである(表8)。しかし、異なるエピトープは、2つの構築物では異なって提示される可能性がある。例えば、Fc融合により起こるダイマー化は、いくつかのエピトープの立体障害を引き起こす可能性がある。
【0163】
実施例10-ナノDSFによる11個のW-ME107 scFvクローンのTm測定
11個の精製W-ME107 scFvクローンを、安定性を評価するためにPrometheus NT.48機器でのナノDSFによる融解温度、Tm(℃)測定に供した。
【0164】
材料と方法
ナノDSF技術は、タンパク質が熱変性を受けている間にそのタンパク質の固有蛍光を測定し、それにより天然の条件下でタンパク質のアンフォールディングの特性を明らかにする。
プロテインA精製W-ME107 scFvクローン(実施例6)を、PBSで0.1mg/mlに希釈し、「高感度」キャピラリー(NanoTemper #PR-C006)に毛管力によりロードし、次にこれをPrometheus NT.48機器に取り付けた。融解温度傾斜部を、20℃~95℃、1℃/分加熱に設定した。
トリプトファン排出を、330nmおよび350nmで測定し、計算された比率を温度に対してプロットして、各クローンの融解曲線を得て、これからTm値を、ソフトウェアPR.ThermoControl(NanoTemper Inc)を用いて推定した。
【0165】
結果
融解温度を、ナノDSFにより決定した。表11は、11個のscFvクローンのそれぞれのTm値(変曲点)を示す。
【表11】
【0166】
結論
融解温度、Tm(℃)を、11個全てのW-ME107 scFvクローンについて決定できた。Tm値は、予測範囲内にあり、それぞれ55℃と57℃の幾分低いTm値を示したW-ME107-27およびW-ME107-143を除き全てのクローンで、約60℃<Tm<70℃であった。
また、全てのクローンは、2つの融解イベントを示したW-ME107-7を除き1個のみの融解イベントを示した。これはおそらく、トリプトファン含有混入物またはW-ME107-7の不均一混合物(存在するフォールドおよびミスフォールド集団)に起因する可能性がある。
決定されたTm値は、タンパク質安定性測定値として使用でき、得られたデータは、この分析に含まれた他のscFvクローンに比べて、クローンW-ME107-27およびW-ME107-143では、より低い安定性を示す。
【0167】
実施例11-SPRによるIL13Rα2へのW-ME107 scFvの結合のIL13阻害の解析
12個のW-ME107 scFvクローンおよび参照クローンmAb47 scFvを、SPRに基づく手法を用いて受容体への結合についてIL13と競合するそれらの能力について解析した。
各W-ME107クローンを、SPRチップ表面に固定された抗FLAG M2抗体上に捕捉し、IL13α2受容体それ自体に、ならびにIL-13とプレインキュベートされたIL13Rα2に結合させた。
12個のクローンのうちの7個、W-ME107-7、W-ME107-10、W-ME107-27、W-ME107-55、W-ME107-67、W-ME107-112、W-ME107-150が、受容体への結合に関してIL-13競合を示したことが見出された。ここで、いくつかのクローンは、存在するIL-13との結合のほぼ完全な喪失を示し、いくつかのクローンは、受容体への結合の部分的喪失のみを示した。陰性対照タンパク質とプレインキュベートされたIL13Rα2へのクローンの結合は、受容体結合を遮断できなかった。これらの知見は、これら7個のクローンが、受容体上のIL-13のリガンド結合部位と重なり合う、またはそれに極めて接近して、結合エピトープを有することを示す。
【0168】
IL-13の存在により影響を受けなかった5個のクローン、すなわち、W-ME107-16、W-ME107-75、W-ME107-117、W-ME107-128、およびW-ME107-156は、IL13Rα2のIL-13結合部位とは異なるエピトープに結合した。
参照クローンmAb47 scFvは、この実験では、結合活性を示さず、そのため、データを取得できなかった。しかし、文献では、この抗体がIL13Rα2への結合に関しIL-13と競合することが報告されている(Balyasnikova et al.,Characterization and immunotherapeutic implications for a novel antibody targeting interleukin(IL)-13 receptor α2,J Biol Chem 2012,287(36):30215-30227)。
【0169】
材料と方法
捕捉リガンドとして機能する、抗FLAG M2抗体(Sigma-Aldrich #F1804)を、製造業者の推奨条件に従い、BIACORE(登録商標)T200機器(GE Healthcare)でECD/NHS化学によりCM5-Sアミンセンサーチップの4つ全ての表面上に固定した。
12個のプロテインA精製FLAGタグ付きW-ME107クローン(実施例6)、陽性参照クローンmAb47および陰性対照G-strep-1 scFv(ストレプトアビジンに特異的)を、注入し、チップ表面上に捕捉し、続いて100nMのhIL13Rα2-avi(実施例A1)、100nMのhIL13Rα2-avi+200nMのIL13(Prospec #cyt-446)、100nMのIL13Rα2-avi+200nMのストレプトアビジン(Sigma-Aldrich #SA4762)または200nMのストレプトアビジンを注入した。表面を、10mMのグリシン-HCl pH2.1で再生した。全ての実験は、0.05%ツイーン20(登録商標)を補充されたHBS、pH7.5中、25℃で実施された。
抗FLAG M2抗体が固定されている表面の、参照表面の応答曲線を減算することにより、全てのscFvクローンの応答曲線センサーグラムを得た。
【0170】
結果
抗FLAG M2抗体は、CM5シリーズSチップの4つ全ての面上にうまく固定された。scFvクローン捕捉および抗原注入後に、チップ表面は、低pHによりうまく再生された。
全ての12個のW-ME107 scFvクローンは、hIL13Rα2に対して、ならびに陰性対照ストレプトアビジンとプレインキュベートされたhIL13Rα2に対して結合を示した。また、いずれのクローンも、ストレプトアビジン単独に対する結合を示さなかった。
クローンを、IL-13とプレインキュベートされたhIL13Rα2に対する結合に関して試験した場合、5個のクローン(W-ME107-16、W-ME107-75、W-ME107-117、W-ME107-128、およびW-ME107-156)のみが、受容体リガンド複合体に対する保持された結合を示した。残りの7個のクローン(W-ME107-7、W-ME107-10、W-ME107-27、W-ME107-55、W-ME107-67、W-ME107-112およびW-ME107-150)について、結合は、IL-13の存在によりほとんど完全に遮断され、これは、応答単位(RU)の減少により示された(
図6)。
参照クローンmAb47 scFvの結合活性は、認められなかった。予想通り、陰性対照G-strep-1 scFvは、ストレプトアビジンとプレインキュベートされたhIL13Rα2、ならびにストレプトアビジン単独に対する結合のみを示した。
【0171】
結論
結果は、12個のW-ME107 scFvクローンのうちの7個が、IL-13が存在する場合hIL13Rα2受容体を結合できなかったことを示した。これらの結果は、これらのクローンが、受容体上のIL-13のリガンド結合部位と重なり合う、または極めて接近して、結合エピトープを有したことを示す。残りの5個のクローンは、IL-13が受容体に結合された場合にも、hIL13Rα2に結合できた。
IL-13と結合の競合を示す全てのクローンはまた、以前に実施した動力学的測定でFc融合ヒトIL13Rα2構築物(hIL13Rα2-Fc、RnD systems #7147-IR)への検出可能な結合が全くないこと、または極めてわずかな結合を示した(実施例5および実施例9)。
【0172】
実施例12-クローンmAb47 mIgG1を用いるエピトープビニング実験
完全長抗体クローンmAb47 mIgG1を、購入し、SPRベースのエピトープビニング手法で解析した。また、ヒトIL13Rα2に対するその反応速度定数を、測定した。
クローンmAb47 mIgG1は、以下の範囲でヒトIL13Rα2に対し、平衡解離定数(KD(M))として定義される親和性、KD=0.9nMを示した。
さらに、エピトープビニングデータは、クローンmAb47 mIgG1が、ヒトIL13Rα2への結合に関し、IL-13、W-ME107-10 scFvおよびW-ME107-27 scFvと競合または干渉したことを示した。これは、それらが全て、受容体上で、重なり合うエピトープ、または近接したエピトープを有することを示した。データはまた、W-ME107-75 scFvおよびW-ME107-117 scFvがヒトIL13Rα2への結合に関し、クローンmAb47 mIgG1と干渉しなかったことを示し、従ってそれらが離れた非オーバーラップエピトープを有することを示す。
【0173】
材料と方法
単一サイクル動力学、SCK
参照クローンmAb47 mIgG1(Creative Biolabs #NEUT-1190QC)を、10nMのNaAc pH4.0中の50μg/mlに希釈し、製造業者推奨条件に従いNHS/EDC化学を使用してCM5シリーズSチップ上に固定した。ヒトIL13Rα2-aviの5種の濃度からなる、50nMから0.2nMの範囲の4倍希釈系列を、チップ表面上に順次注入した。
結合センサーグラムを、ブランク参照表面センサーグラム(リガンド固定なし)で減算し、1:1ラングミュア結合モデルに当てはめて、動力学的パラメーター、Ka(M-1s-1)、Kd(s-1)およびKD(M)を取得した。
【0174】
エピトープビニング
10nMのhIL13Rα2-aviを、単独でまたは10倍モル過剰(100nM)のヒトIL-13(Prospec #cyt-446)またはW-ME107-10、W-ME107-27、W-ME107-75またはW-ME107-117 scFvクローンとプレインキュベートして、固定化されたクローンmAb47 mIgG1表面に、注入した。対照試料として、10倍モル過剰のBI-8 scFv(陰性対照)またはクローンmAb47 mIgG1(陽性対照)とプレインキュベートされた10nMのhIL13Rα2-aviも、評価した。結合段階(association phase)後に、チップ表面を、10nMのグリシン-HCl、pH2.1を用いて再生した。結合センサーグラムを、ブランク参照表面センサーグラム(固定された抗体なし)で減算し、各試料の結合レベル、応答単位(RU)を取得可能できた。
【0175】
結果
クローンmAb47 mIgG1は、NHS/EDC化学を使用してCM5シリーズSチップ上にうまく固定され、10nMのグリシン-HCl、pH2.1で再生後、活性が維持された。
hIL13Rα2に対するクローンmAb47 mIgG1の親和性は、ナノモル以下の範囲で、0.9nMのK
D値であると特定された。観察された結合速度定数(k
a)および解離速度定数(k
d)は、それぞれ、5.9x10
5M
-1s
-1および5.4x10
-4s
-1であると特定された。
エピトープビニングは、hIL13Rα2が10倍のモル過剰のヒトIL-13、W-ME107-10 scFv、W-ME107-27 scFvまたは陽性対照クローンmAb47 mIgG1とそれぞれプレインキュベートされ、続いてクローンmAb47 mIgG1固定化表面上に注入された場合、観察される結合応答(RU、y軸)は、hIL13Rα2単独の注入に比べて減少したことを示した(
図7)。これは、W-ME107-75 scFv、W-ME107-117 scFvおよび陰性対照BI-8 scFvについては観察されず、これらの場合には、結合応答は、hIL13Rα2単独の注入とほとんど同じであった(
図7)。
【0176】
結論
ヒトIL13Rα2に対する参照クローンmAb47 mIgG1の親和性は、ナノモル以下の範囲であると特定された(0.9nMのKD値)。
エピトープビニング結果は、W-ME107-10およびW-ME107-27、ならびにヒトIL-13は、hIL13Rα2受容体への結合に関し、参照クローンmAb47 mIgG1と競合したことを示した。
エピトープビニング分析からの結果は、以前に実施したW-ME107 scFvクローン(実施例11)に対するSPR分析とよく相関した。この実施例は、W-ME107-10 scFvおよびW-ME107-27 scFvは、hIL13Rα2への結合に関しヒトIL-13と競合し、一方でW-ME107-75およびW-ME107-117は、競合しなかったことを示した。
【0177】
まとめると、実施例11および12の結果は、W-ME107-10およびW-ME107-27、ならびに参照クローンmAb47は、ヒトIL13α2受容体上のヒトIL-13結合部位に結合されるか、または極めて接近しており、一方でW-ME107-75およびW-ME107-117は、そうではなかったことを示した。IL-13およびクローンmAb47の重なり合うエピトープはまた、Balyasnikova et al.,Characterization and immunotherapeutic implications for a novel antibody targeting interleukin(IL)-13 receptor α2,J Biol Chem 2012,287(36):30215-30227により示唆されている。この文献では、彼らは、プレートベース競合アッセイを用いて、この抗体によるヒト可溶性IL-13とhIL13Rα2の間の相互作用の顕著な阻害を示した。
【0178】
実施例13-HDX-MSによるエピトープマッピング実験
タンパク質が重水(D2O)を含む緩衝液中に溶解されると、ヘテロ原子(例えば、-OH、-NH、-SH)に付着されたそれらの水素は、重水素により置換される。水素-重水素交換質量分析(HDX-MS)では、重水素取り込みの速度は、ペプチド主鎖アミド基(-NHCO-)の分子内水素結合の程度と相関する。既に水素結合に関与している主鎖アミド-NH水素、例えば、αヘリックスまたはβシートに位置する-NHCO-水素は、それらの水素を受容体と共有するために利用できるそれらのNH水素よりもよりゆっくり交換する。従って、無秩序な領域中に位置する主鎖アミドHは、βシートまたはαヘリックスに関与するそれらの水素よりも速く交換する。
【0179】
いまでは、リガンドのタンパク質標的への結合は、水素結合中に局所的変化、例えば、構造安定化または不安定化、をもたらすので、この技術を用いて、タンパク質複合体の結合界面を特定できる。大抵の水素の場合、H/D交換は、短寿命であり、ポリペプチド鎖が水含有溶液と接触すると直ちに、-OD、-SDとして取り込まれた重水素は、水素により再度置換される。この減少は、「逆交換」と呼ばれ、それは、アミノ酸残基の側鎖に位置するヘテロ原子に結合された重水素では非常に速い。幸いにも、酸性条件(pH約2.3)および0℃近くの温度下では、ペプチド主鎖アミド基(-NDCO-)での逆交換は、液体クロマトグラフィーおよび質量分析法(LC-MS)による分析に適合する時間枠まで遅くなる。このようにして、各D原子はH原子より1質量単位重くなるので、組み込みの程度は、MSによりモニターできる。さらに、重水素ラベル表示が酵素タンパク質分解とさらに組み合わされる場合には、タンパク質内の異なる領域の重水素化プロファイルを、モニターできる。
【0180】
材料と方法
対照試料(IL13Rα2単独)を、3μLのヒトIL13Rα2-avi(実施例A1参照)(1.6mg/mL)を24μLの重水素化PBSと混合することにより調製した。抗原/scFv複合体を、以下のように調製した:40μLのhIL13Rα2-avi(1.6mg/mL)を、34.5μLのW-ME107-117 scFv(1.46mg/mL)、74μLのW-ME107-10 scFv(0.68mg/mL)、57.2μLのW-ME107-27 scFv(0.88mg/mL)および122.8μLのW-ME107-75 scFv(0.41mg/mL)と、各scFvに対し30kDaの平均分子量を用いて、1:1抗原/scFvモル比で混合した。複合体を、10kDaタンパク質濃縮機Amicon Ultra 0.5mLを用いて初期の40μLに濃縮した。標識反応を、3μLの抗原/scFv複合体と24μLの重水素化PBSとを4分間、10分間および60分間混合することにより、実施した(二重で実施したW-ME107-27およびW-ME107-75の4分インキュベーション以外は、三重で実施)。インキュベーション後に、反応を、6Mの尿素、100mMのTCEPおよび0.5%のTFAを含む25μLの溶液を加えて、pHを約2.3、温度を約4℃に下げることによりクエンチした。
【0181】
試料を、自動化HDX-MSシステム(CTC PAL/Biomotif HDX)で分析した。このシステムで試料は2℃で自動的に標識、クエンチ、消化、洗浄および単離された。試料を、固定化ペプシンカラム(2.1x30mm)を用いて60μL/分で2分間消化し、続いて2mmIDx10mm長さのC-18プレカラム(ACE HPLC Columns,Aberdeen,UK)を用い、0.1%ギ酸を400μl/分で1分間使用して、オンライン脱塩ステップを実施した。消化性ペプチドを次に、60μL/分で操作される2mmI.Dx50mm長さのHALO C18/1.8μm分析カラムを用いて、0.1%ギ酸中のACNの18分の8~55%直線勾配により分離した。m/z400で120,000の分解能で動作するLTQ Elite Orbitrap質量分析計(Thermo Fisher Scientific)を使用して、全ての実験を実施した。
全てのHDX-MSデータを、10ppmのプリカーサー質量許容誤差、0.05Da MS/MS質量誤差を用いて、専用データベースでペプチド特定に使用されたHDExaminerバージョン2.5.1.Mascotにより処理した。
【0182】
結果
本HDX-MS実験では、IL13Rα2は、2種の異なる実験条件下で、重水素化緩衝液を用いて重水素で標識された。1セットの実験はIL13Rα2単独を使用し、もう一方では、IL13Rα2は、等モル濃度のW-ME107-117 scFvの存在下で標識された。標識後に、反応が停止され、タンパク質は、タンパク分解性酵素により消化された。その後のステップでは、消化IL13Rα2由来の各重水素化ペプチドの個別の質量が、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)により測定された。これらの実験条件下で、IL13Rα2単独と、W-ME107-117 scFvの存在下でのIL13Rα2との間の重水素取り込みの差異は、W-ME107-117 scFvの結合に起因する重水素取り込みの変化のみに帰属され得る。現在では、抗体が抗原/抗体境界(エピトープ)で重水素取り込みの減少をもたらすことは、当該技術分野において周知であるので、これらの2つの実験条件の間の重水素取り込みの差異が特定され、エピトープの位置を決定するために、IL-13を含むIL13Rα2の3次元(3D)構造中にマッピングされた(PDB 3LB6,Lupardus,et al.,Structure(2010)18:332-342)。IL13Rα2単独と、W-ME107-117 scFvの存在下でのIL13Rα2との間の統計的有意差(スチューデントのt検定、実験状態当り3回の反復実験、および99%信頼区間、p<0.01)を有するIL13Rα2由来のペプチドが、特定され、それらが15~20オングストロームの間の領域にクラスター化され、scFvの正確な結合を可能にする十分な溶媒露出を示す場合、そのエピトープに属するとされた。
【0183】
次のペプチドが、W-ME107-117 scFvに対するエピトープとして特定された:位置67~81に対応するアミノ酸配列VEYELKYRNIGSETW(配列番号44)、位置96~106に対応するアミノ酸配列DLNKGIEAKIH(配列番号45);および位置123~128に対応するアミノ酸配列WAETTY(配列番号46)(
図8および表12と13)。これらの3つの配列は、IL13Rα2のドメイン1にマップされ、このベータサンドイッチドメインの第2のβシートの一部である。エピトープ領域は、さらに具体的には、隣接するβ鎖3、6および7、β鎖3の後のループおよびβ鎖6の前のループからなる(
図10)。これらのループの両方は、受容体のドメイン2の方を指している。エピトープ領域は、連続表面領域を形成し、これは、抗原/抗体境界で典型的に認められるものと一致した。βシートから突き出ているアミノ酸は、主に大きなアミノ酸(Trp、Lys、HisおよびGlu)であり、抗体への潜在的な水素結合のためのいくつかの荷電基を提供した。これらの残基は、報告された構造中で明確な電子密度を有し、相互にスタッキング相互作用を形成すると見なされた。エピトープ領域は、ドメイン1の側面上にあり、これは、IL-13とは相互作用しなかった。
【表12】
【表13】
【0184】
クローンW-ME107-10、W-ME107-27およびW-ME107-75にマップされたペプチドは、異なる組み合わせで重なり合い、ドメイン2で開まった1つのペプチドを除いて、全てドメイン3に位置した。ペプチドは、
図14で全てハイライト表示され、開始および終了アミノ酸は、数字でマークされる(
図14A)。W-ME107-10のHDX-MSは、次の2つのペプチドを与えた:アミノ酸番号228~245に対応するFTFQLQNIVKPLPPVYLT(配列番号43)およびアミノ酸番号253~271に対応するEIKLKWSIPLGPIPARCFD(配列番号36)。W-ME107-27についての結果は、アミノ酸番号323~337に対応する追加のペプチドSEWSDKQCWGLNDIF(配列番号23)を有する同じ2つのペプチドを与え、残基332~337は、組換えタンパク質の親和性タグ由来である。W-ME107-75にマップされたエピトープは、上記と同じアミノ酸番号253~271および323~337を有する2つのペプチドからなった。
【0185】
これらの3つの異なるペプチドの3次元構造へのマッピングは、それらが全て、IL13Rα2のC末端領域に向かってクラスター形成することを示した。クローンW-ME107-10およびW-ME107-27の両方は、ペプチド228~245を有した。このペプチドはドメイン2で始まり、ドメイン3まで続いた。ペプチドの先頭に近接して、Gln231、Gln233およびAsn234は、どの残基も構造中で相互作用するようには見えないが、IL-13の結合部位に極めて接近していた(
図14E)。IL13Rα2の構造の解析は、scFvがこれらの残基と相互作用し同時に前述の他のペプチドと交互作用することは困難と思われることを示す。IL13Rα2の立体構造変化は、HDX-MS結果におけるこれらの残基の含有を説明し得る。
【0186】
クローンW-ME107-75は、そのエピトープ中にペプチド228~245を欠き、IL-13との結合に関し競合しないことが明らかになったが、一方、他の2つのクローンは、競合した。ペプチド253~271は、228~245に隣接し、かつIL-13結合部位側に位置し、リガンドへの結合を形成するArg268を有する。全ての3つのクローンは、エピトープマッピングにおいて、このペプチドを共有した。しかし、W-ME107-75の異なる結合プロファイルのために、このscFvはW-ME107-10およびW-ME107-27と同じ方式でペプチド253~271と結合するようには見えないが、むしろ、ペプチド253~271の先頭でより多く結合すると思われる(
図14D)。
【0187】
ペプチド323~337は、まさに受容体のC末端部分であり、228~245の反対側に位置する。Protein Data Bank(PDB)で報告された構造は、残基329で終わり、C末端分がどこへ続くかを述べることはできない。これは、この構造のフレキシブルな領域である可能性が高い。異なるscFvがどのようにマウスIL13Rα2に結合したかについての実施例5および9からのデータを考察し、次いで保存された残基が構造中のどこに位置するかを調査することは、なぜW-ME107-75がW-ME107-10およびW-ME107-27とは異なるかに対するさらに多くの考えをもたらした。ドメインの先端に沿って延び、残基237~241、263~269および323~326からなる、マウスおよびヒトIL13Rα2中の保存残基のバンドが存在する。W-ME107-27は、W-ME107-10のようにこの領域に結合すると考えられるが、ペプチド323~326との相互作用を欠く(
図14Bおよび14C)。他方、W-ME107-75は、この保存領域にそれほど結合しなかったが、むしろ、アミノ酸残基253~266およびまさにC末端残基332~337に結合する。これは、W-ME107-10およびW-ME107-27に比べて、ドメイン3からさらに下方の領域を意味する。
【0188】
さらに、HDX-MSエピトープマッピング試験からの結果は、実施例12のデータおよび実施例5および9のscFvに対する結合および非結合データを有するマウスおよびヒトの配列アラインメントの分析とよく相関した。クローンW-ME107-117は、受容体の1つの領域にマップし、これは、IL-13結合部位から離れている。クローンW-ME107-10、W-ME107-27およびW-ME107-75は全て、hIL13Rα2上の類似の領域にマップされたが、W-ME107-10およびW-ME107-27は、共通の1つのペプチドを有し、これは、W-ME107-75では欠けていた。このペプチドは、IL-13リガンドの結合部位と重なり合う小さい領域を有した。これらの3つのscFvがどのようにマウス受容体に結合するか、および保存残基がどこに位置しているかの差異はまた、異なるエピトープをさらに特定するのを支援し得る。
【0189】
実施例14-ペプチドアレイを用いるscFvのエピトープマッピング
W-ME107-10、W-ME107-27、W-ME107-75およびW-ME107-117 scFvクローンのヒトIL13Rα2に対するエピトープマッピングは、4つのクローンに対するエピトープとして受容体の2つの異なる部分を示した(実施例13)。W-ME107-10、W-ME107-27およびW-ME117-75は、ドメイン3上の、類似の、または重なり合う領域を結合するように見え、一方でW-ME107-117は、ドメイン1上の異なるエピトープに結合した。クローンW-ME107-117のHDX-MSマッピングの初期の結果は、ドメイン1の両側にわたり広がるいくつかの異なるペプチドを生じた。エピトープを絞り込むために、IL13Rα2上にaa(アミノ酸)39~102を包含する1aaのシフトを有する15aaの長いペプチドを合成し、ELISAベース手法でアッセイした。
アレイに含まれた60個のペプチドのいずれかへのW-ME107-117 scFvの結合は検出できなかった。結合は、完全細胞外ドメインを包含するタンパク質に対してのみ検出できた。これは、W-ME107-117 scFvが、IL13Rα2受容体中で、直鎖ペプチドエピトープではなく立体構造エピトープを有したことが示された、実施例13での知見を補強した。
【0190】
材料と方法
IL13Rα2の一続きの74個のaa、aa39~102に相当する、60個のN末端ビオチン化ペプチドを、注文し、JPT Peptide Technologies(Germany)で合成した。到着時に、ペプチドを、0.5mg/mlの最終濃度に無菌DMSO(ジメチルスルホキシド)中で溶解した。
384ELISAウェルプレートを、4℃で一晩1μg/mlのストレプトアビジンおよびPBS中の1μg/mlのhIL13Rα2-Fcでコートした。ブロッキング緩衝液(0.5%BSAおよび0.05%ツイーン20(登録商標)で補充したPBS)中でのプレートの洗浄およびブロッキング後に、ブロッキング緩衝液中でそれぞれ0.25μg/mlおよび1μg/mlに希釈された、ビオチン化ペプチドおよびビオチン化バージョンのIL13Rα2 ECD、hIL13Rα2-aviを、30分間結合させた。精製されたW-ME107-117およびW-ME107-75を、ブロッキング緩衝液中で1μg/mlに希釈し、1時間結合させた。
結合の検出を、HRP標識抗FLAG M2抗体(Sigma-Aldrich #A8592)により可能にした。結合シグナル発生を、TMB ELISA基質(Thermofisher Scientific #34029)の添加により開始し、1Mの硫酸の添加により終了した。プレートを、450nmで分析した。
各試料を二重でアッセイし、これから平均吸光度値を、ブランクウェル値を減算した後に取得した。
【0191】
結果
アレイに含まれたペプチドのいずれかへのW-ME107-117 scFvの結合は、検出できなかった。結合は、hIL13Rα2-aviおよびhIL13Rα2-Fcに対してのみ検出された(
図9)。予測通り、ペプチドアレイ内に現れないエピトープを有するW-ME107-75 scFvは、IL13Rα2のECDドメインに対してのみ結合を示した。実験を、10倍高い濃度のペプチドを用いて反復し同じ結果を得た。
【0192】
結論
W-ME107-117 scFvのエピトープマッピング試験は、W-ME107-10、W-ME107-27およびW-ME107-75 scFvクローンのエピトープが見つかったIL13Rα2の反対側上に位置するエピトープを示した。
図10に示す構造は、W-ME107-117が、ベータシート(βシート)ドメインに折り畳まれるループ領域により連結された3つのベータ鎖(β鎖)から構成されるIL13Rα2の一部を結合することを示す。エピトープ中に含まれるβシートおよび2つのループは、リガンドIL-13を結合するIL13Rα2の部分には存在しない。従って、W-ME107-117は、リガンド結合と干渉しない。ペプチドアレイへの結合の非存在は、実施例12から得られた結果と共に、W-ME107-117が立体構造エピトープを有することを明らかにした実施例13の結果を補強する。
【0193】
実施例15-レンチウィルス構築およびT細胞改変
この実施例は、選択scFvに基づきキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を構築し、標的細胞殺傷アッセイでCAR T細胞を試験した。
【0194】
材料と方法
T細胞の形質導入のためのウィルスベクター構築
選択scFvを、CD137(4-1BB)由来の共刺激ドメインおよびCD3ζ由来の刺激ドメインを含む第二世代CAR構築物中に組み込んだ。CARカセットを、伸長因子-1α(EF1α)プロモーターの制御下で、第三世代自己不活性化(SIN)レンチウィルスベクター(SBI,System Biosciences,Mountain View,CA)中に挿入した(
図11)。緑色蛍光タンパク質(GFP)を、CARカセットの後に組み込み、自己切断T2A配列により分離した。全ての組換え配列を、GenScript(Piscataway,NJ)から購入した。ウィルス粒子の産生を、構築されたCARレンチウィルスプラスミドおよび対応するヘルパープラスミドを用いて293T細胞の一時的遺伝子導入により行った。ウィルス粒子含有上清を、採取し、超遠心分離し、その後実験に使用した。
【0195】
T細胞改変
ヒト末梢血単核球(PBMC)を、2x106個の細胞/mlの濃度で3日間にわたりOKT-3(50ng/ml,BioLegend San Diego,CA)およびIL-2(100IU/ml,Proleukin,Novartis,Basel,Switzerland)を用いて活性化した。活性化後、T細胞(2x106個の細胞)を、10mg/mlの硫酸プロタミン(Sigma-Aldrich、St.Louis,MO)およびIL-2(100IU)と共に30μlの濃縮レンチウィルス中に再懸濁し、37℃で4時間インキュベートした。T細胞を、翌日に類似の方法で形質導入し、100IU/mlのIL-2の最終濃度で培地(10%FBS、1%PeSt、1%ピルビン酸ナトリウムを補充したRPMI1640)中に再懸濁した。7日後、CAR T細胞を、GFP発現に基づく選別により濃縮した(BD FACSAriaIII,BD Bioscience,San Jose,CA)。選別細胞を、製造業者のプロトコルに従いimmunocult試薬(STEMCELL Technologies,Vancouver,CA)を用いて増殖させた。
【0196】
死滅アッセイ
天然でhIL13Rα2を発現している、ヒト神経膠芽腫細胞株U-87MG、およびhIL13Rα2を発現していないメラノーマ細胞株Mel526を最初に、ルシフェラーゼシグナルを細胞生存率の読み出しシグナルとして使用するために、ホタルルシフェラーゼを発現するようにレンチウィルスプラスミドを用いて改変し、CAR T細胞に曝露した。これらの標的細胞を24時間、0、0.2、1、5または25CAR T細胞:1標的細胞のエフェクター(CAR T細胞):標的(腫瘍細胞)細胞比率でCAR改変T細胞と共培養した。CAR T細胞および陰性対照(CD19標的化CAR T細胞)を、この実施例で使用した。ホタルルシフェラーゼ活性を、標的細胞生存率の測定値として使用し、ONE-Glo Luciferaseアッセイシステム(Promega Biotech AB,Sweden)を使用して測定した。
【0197】
結果
全ての試験したCAR T細胞構築物は、hIL13Rα2発現神経膠芽腫細胞(U-87MG)を特異的に死滅させたが、抗原陰性メラノーマ細胞(Mel526)を死滅させなかった(
図12)。陰性対照(CD19標的化CAR T細胞)は、どの癌細胞株もCD19を発現しないことから予測されるように、どの癌細胞株も死滅させなかった。
W-ME107-10 scFv、W-ME107-75 scFvおよびW-ME107-117 scFvにそれぞれ基づく、W-ME107-10 CAR、W-ME107-75 CARおよびW-ME107-117 CAR T細胞は、低いエフェクター:標的細胞比率で既に十分な細胞傷害能力を示した。他方では、W-ME107-27 scFvおよびW-ME107-55 scFvに基づくW-ME107-27 CARおよびW-ME107-55 CAR T細胞は、より高いエフェクター:標的比率でのみ死滅を示した(
図12)。以前に報告されたmAb47 scFv(J Biol Chem 2012,287:30215-30227,Mol Ther 2016,24(2):354-363)に基づき産生された、基準X-ME107-47(mAb47)CAR T細胞は、ごくわずかな標的細胞の死滅を示した。
【0198】
実施例16-増殖アッセイ
この実施例は、標的細胞と共培養した場合の種々のCAR T細胞の増殖能力を調査した。
【0199】
材料と方法
産生されたCAR T細胞を、抗原陽性標的細胞の遭遇時の細胞増殖を追跡するために、CellTrace Violet Label(ThermoFisher)で標識した。CellTrace Violet標識T細胞を、非刺激のまま残すか、または標的U-87MG細胞(1:1比率)と共培養した。培養物を、未処理のまま残すか、または10μMのロバスタチン(Sigma-Aldrich、対照としてT細胞増殖を防ぐために)で4日間処理した後、フローサイトメトリーにより分析した(BD FACSCantoII,BD Bioscience)。ヒストグラムで認められる青紫色素の希釈(ピークパターン)を、細胞増殖と見なした。
【0200】
結果
約半分のW-ME107-55およびW-ME107-27が、腫瘍細胞との共培養時に分裂した。印象的なことに、ほとんどのW-ME107-10 CAR、W-ME107-75 CARおよびW-ME107-117 CAR T細胞は、標的細胞と出会うと、2回またはそれを超えて分裂した(
図13)。参照mAb47(X-ME107-47)CAR T細胞もまた、標的腫瘍細胞と共培養時に増殖したが、mAb47 CAR T細胞の半分のみが2回またはそれを超えて分裂した事実を考慮すると、増殖は、W-ME107-10 CAR、W-ME107-75 CARおよびW-ME107-117 CAR T細胞よりも少なかった。予測通り、CD19標的化CAR T細胞は、U-87MG細胞との培養では増殖しなかった。まとめると、W-ME107-10 CAR、W-ME107-75 CARおよびW-ME107-117 CAR T細胞は、標的細胞認識時に、高い増殖能力を示した。結果は、参照mAb47 CAR T細胞と異なり、W-ME107-10 CAR、W-ME107-75 CARおよびW-ME107-117 CAR T細胞は、標的細胞と効率的に相互作用でき、それにより高い増殖能力を実現できることを示している。
【0201】
実施例17-CAR T細胞のプロファイリングおよびキャラクタリゼーション
この実施例は、サイトカイン放出プロファイル、表面マーカー発現およびCAR発現状態によりCAR T細胞を調査し、特徴付けた。
【0202】
材料と方法
ヒトCAR T細胞を、実施例15に記載のようにレンチウィルス構築物を用いて改変した。細胞を、分析までIL-2(25IU/mL)を補充した細胞培地中で培養するか、または分析前に、刺激物質として3人のドナーのPBMCを使用して急速増殖プロトコルで増殖させた。
【0203】
非刺激CAR T細胞からのIFNγ分泌
モック(対照として)、W-ME107-55 CAR、W-ME107-27 CAR、W-ME107-10 CAR、W-ME107-75 CARおよびW-ME107-117 CAR T細胞を、レンチウィルスベクターを用いて改変し、標準細胞培地中で培養した(実施例15)。レンチウィルス形質導入後7日目に、CAR T細胞(200μLの培地中の2x105個の細胞/ウェル)を、96ウェルプレートに播種し、追加して1日培養した後、上清を、採取した。細胞培養上清中へCAR T細胞により分泌されたIFNγを、ELISA(Mabtech,Sweden)により定量化した。
【0204】
腫瘍刺激CAR T細胞からのIFNγ分泌
モック(対照として)、W-ME107-55 CAR、W-ME107-27 CAR、W-ME107-10 CAR、W-ME107-75 CARおよびW-ME107-117 CAR T細胞を、レンチウィルスベクターを用いて改変し(実施例15)、急速増殖プロトコルを用いて増殖させた。増殖後、CAR T細胞を、IL-2(25IU/mL)を補充した細胞培地中で3日間静置し、CAR T細胞を、96ウェルプレート中に種々の比率のU87UUまたはU343MG腫瘍細胞と共に播種し、さらに2日間培養した後、上清を、採取した。細胞培養上清中へ分泌されたIFNγを、ELISA(Mabtech,Sweden)により定量化した。
【0205】
細胞表面上のCAR発現レベル
モック(対照として)、W-ME107-55 CAR、W-ME107-27 CAR、W-ME107-10 CAR、W-ME107-75 CARおよびW-ME107-117 CAR T細胞を、レンチウィルスベクターを用いて改変し、標準細胞培地中で培養した(実施例15)。レンチウィルス形質導入後の3、6および12日目に、CAR T細胞を、CD3、CARについて染色し(抗ヒトIg(H+L)抗体を用いて)、フローサイトメトリーで分析した。経時的CAR発現レベルを、ヒストグラムとして各CAR T細胞について示した。
【0206】
腫瘍刺激の前および後のCAR T細胞表面活性化マーカー発現
モック(対照として)、W-ME107-27 CARおよびW-ME107-117 CAR T細胞を、レンチウィルスベクターを用いて改変し(実施例15)、急速増殖プロトコルを用いて増殖させた。改変CAR T細胞を、アッセイ前に3日間IL-2(25IU/mL)を補充した細胞培地中で静置した。静置したCAR T細胞を、96ウェルプレート中に直接播種し、単独で培養し、分析した;またはU87UU腫瘍細胞と1日間共培養した。CAR T細胞を、フローサイトメトリーで分析する前にPD1、Tim-3、LAG-3、CD69、CD25、およびCD3について染色した。データを、CAR T細胞中の特異的マーカー陽性細胞のパーセンテージとして示した(CD3陽性およびGFP陽性細胞としてゲートを設定)。
【0207】
結果
定常状態では、レンチウィルスベクターでT細胞形質導入の直後に、W-ME107-55 CAR、およびW-ME107-27 CAR T細胞は、多量のIFNγを分泌し、一方でW-ME107-10 CAR、W-ME107-75 CARおよびW-ME107-117 CAR T細胞は、モックCAR T細胞対照と比べて、比較的少量のIFNγを分泌した(
図15A)。他方では、改変CAR T細胞が腫瘍細胞と共培養された場合、W-ME107-10 CAR、W-ME107-75 CARおよびW-ME107-117 CAR T細胞は、用量依存的により多量のIFNガンマ(IFNγ)を発現し、一方、W-ME107-55 CAR、およびW-ME107-27 CAR T細胞は、腫瘍細胞刺激に応答してIFNγをほとんど分泌しなかった(
図15B)。
表面CAR発現レベルを経時的に分析して、我々は、全てのCAR T細胞が、レンチウィルス形質導入後に細胞表面上で発現されたCAR分子を有することを観察した。しかし、W-ME107-55 CAR、およびW-ME107-27 CARの発現は、時間と共に減少し、一方でW-ME107-10 CAR、W-ME107-75 CARおよびW-ME107-117 CARは、細胞表面上に最初から類似のレベルを保持した(
図15C)。
腫瘍細胞刺激の存在下および非存在下で改変CAR T細胞上の表面活性化マーカーを調査することにより、我々は、W-ME107-27 CAR T細胞がすでに、腫瘍細胞刺激なしで発現されたより高いレベルのこれらの活性化マーカーを有し、追加の腫瘍刺激は、マーカー発現レベルに影響を与えなかったことに気付いた。他方では、これらのマーカーは、非刺激W-ME107-117 CAR T細胞では低いレベルのままであり、一方で腫瘍細胞刺激時にそれらの発現は劇的に増大した(
図15D)。
まとめると、これらの結果は、W-ME107-55 CAR、およびW-ME107-27 CAR T細胞は、標的依存性ではない基底レベル活性化を有し、かつこの基底レベル活性化は、標的腫瘍細胞に対するCAR T細胞のより低い応答性に繋がることを示した。
【0208】
実施例18-CAR T細胞は神経膠芽腫腫瘍増殖をインビボで調節する
この実施例は、動物モデルでの神経膠芽腫腫瘍増殖の調節における種々のCAR T細胞の効力を調査した。以前のデータはW-ME107-55 CAR、およびW-ME107-27 CAR T細胞が非特異的標的非依存性基底レベル活性化を有することを示唆したので、我々は、W-ME107-10 CAR、W-ME107-75 CARおよびW-ME107-117 CAR T細胞の抑制効力を解析した。
【0209】
材料と方法
ヒトCAR T細胞を、実施例15に記載のようにレンチウィルス構築物を用いて改変した。以前のデータは、W-ME107-10 CAR、W-ME107-75 CARおよびW-ME107-117 CAR細胞が増殖においてより良好であり、より低い基底レベル活性化を有することを示したので、我々は、これらのCAR T細胞をインビボで評価した。ヒト神経膠芽腫細胞U343MG-Luc(5μL中の1x10
5個の細胞)を、ホタルルシフェラーゼを発現するように改変し、ヌードマウスの頭蓋内に移植した。注入を、ハミルトンシリンジおよび定位注入フレームを用いて、ブレグマから1mm前方および1.5mm右および2.7mmの深さで実施した。腫瘍移植後の7日目に、マウスを、同じ位置で頭蓋内投与されたモックT細胞(対照として)または種々のCAR T細胞(2百万細胞)により治療した。マウスを、IVISシステム(NightOWL)を使って、ルシフェラーゼシグナルのイメージングにより追跡し、現地で承認された動物倫理許可に厳格に従い重度症状の発生時に安楽死させた。実験手順概略図を、
図16Aに示す。ルシフェラーゼシグナル(平均+SEM)を、腫瘍増殖の指標として、および各治療群におけるマウスの生存をカプランマイヤー曲線として示し、ゲーハン-ブレスロウ-ウィルコクソン(Gehan-Breslow-Wilcoxon)検定を使用して比較した。
【0210】
結果
試験した全ての3つのCAR T細胞(W-ME107-10 CAR T、W-ME107-75 CAR TおよびW-ME107-117 CAR T)は、モックT細胞治療群に比べて、治療群でのより低いルシフェラーゼシグナルにより示されるように、腫瘍増殖を調節できた(
図16B)。加えて、W-ME107-75 CAR T細胞治療およびW-ME107-117 CAR T細胞治療の両方は、現在のアッセイ条件でマウス生存の有意な改善を示した(
図16C)。
【0211】
実施例19-CDRは差次的にCAR発現および機能に影響する
この実施例は、CDR領域中のアミノ酸をアラニンで置換することにより、異なる構築物間のCAR発現レベル差異の機序を調査した。以前のデータはW-ME107-27およびW-ME107-117がCAR表面発現の最大の差異を有することを示唆したので、我々は、これらの2つのクローンおよびW-ME107-117とは異なった、W-ME107-27中の置換アミノ酸を調査した。
【0212】
材料と方法
ウィルス構築およびT細胞改変
アミノ酸置換を有するDNA構築物(詳細は表14)を、GenScriptに注文し、レンチウィルスベクター中にサブクローニングした。レンチウィルス構築を、実施例15に記載した。ヒトジャーカットT細胞株を、レンチウィルス構築物で改変した。改変細胞を、細胞培地(10%FBS、1%PeSt、1%ピルビン酸ナトリウムを補充したRPMI1640)中で、ウィルス形質導入の4日後でのフローサイトメトリーによる分析まで、培養した。
【表14】
【0213】
CAR発現分析
改変細胞を、CARについて染色し(抗ヒトIg(H+L)抗体を用いて)、フローサイトメトリーで分析した。GFP陽性細胞からのCAR陽性細胞のパーセンテージを、ゲートし、提示した。
【0214】
結果
W-ME107-27-Ala2、W-ME107-27-Ala4、W-ME107-27-Ala5は、GFP陽性形質導入T細胞からの有意により高いCAR発現を示した。W-ME107-27-Ala1、W-ME107-27-Ala3は、W-ME107-27と類似のレベルのCAR発現を示した(
図17A、17B)。これらの結果は、重鎖中のCDR2および軽鎖中のCDR3が、CAR表面発現に影響することにおいて最も関与したことを示す。
【0215】
実施例20-基底レベル活性化は、細胞内シグナル伝達ドメインと関連する
この実施例は、CAR分子の細胞内シグナル伝達ドメインを除去する(デコイCAR)ことにより、改変CAR T細胞の基底レベル活性化の機序を調査した。以前のデータはW-ME107-27およびW-ME107-117がCAR表面発現の最大の差異を有することを示唆したので、我々は、これらの2つのクローンを調査する。
【0216】
材料と方法
ウィルス構築およびT細胞改変
デコイCARを有するDNA構築物を、GenScriptに注文し、レンチウィルスベクター中にサブクローニングし(
図18A)、これは、W-ME107-27dCARおよびW-ME107-117dCARを生成した。レンチウィルス構築を、実施例15に記載した。ヒトT細胞を、レンチウィルス構築物で改変した。
【0217】
IFNγ分泌
改変細胞を、ウィルス形質導入後の7日間にわたり25IUのIL-2/mLを供給した細胞培地(10%FBS、1%PeSt、1%ピルビン酸ナトリウムを補充したRPMI1640)中で培養した。改変細胞(2x105個の細胞/ウェル)を次に、さらなるサイトカイン補充なしに、96ウェルプレート中の200μLの細胞培地中に播種した。細胞培養上清を、24時間後に採取し、上清中のIFNγを、ELISA(Mabtech,Sweden)により測定した。
【0218】
結果
W-ME107-27およびW-ME107-117 CAR T細胞の両方は、定常状態でIFNγを分泌し、一方でW-ME107-27 CAR T細胞は、有意により高い量のIFNγを分泌した(
図18C)。細胞内シグナル伝達ドメインが除去された場合、W-ME107-27dCARおよびW-ME107-117dCARは両方とも、それらの対応物に比べて、有意に少ないIFNγ分泌を示した(
図18C)。モックT細胞は、IFNγを分泌しなかった(
図18C)。これらの結果は、改変CAR T細胞の基底レベル活性化は、その細胞内シグナル伝達ドメインと関連することを示す。
【0219】
実施例A1-組換えヒトIL13Rα2(hIL13Rα2-avi)の調製
ビオチン化hIL13Rα2を、クローン化し、単離した。
材料と方法
【0220】
材料
MultiBac Expression System Kit,Geneva Biotech,NaN
SalI,G|TCGAC Thermo Fischer Scientific,FD0644
XhoI,C|TCGAG Thermo Fischer Scientific,FD0694
KpnI,GGTAC|C Thermo Fischer Scientific,FD0524
PstI,CTGCA|G,Thermo Fischer Scientific,FD0615
Rapid DNA Ligation Kit,Thermo Fischer Scientific,K1422
Creリコンビナーゼ、NEB,M0298
GeneJET Plasmid Miniprep Kit,Thermo Fischer Scientific,K0503
PureLink HiPure Plasmid DNA Mini kit,Thermo Fisher Scientific,K210002
LA,Sigma,L7025
LB Broth,Sigma,L03022
One Shot Mach1 T1 Phage-Resistant Chemically Competent E.coli,Thermo Fischer Scientific,C862003
One Shot PIR1 Chemically Competent E.coli,Thermo Fischer Scientific,C101010
Spectamycin,Sigma,S4014
ゲンタマイシン、Sigma,G1397
IPTG,ThermoFisher,15529019
BluoGal,ThermoFisher,15519028
テトラサイクリン、Bioline,87030
DH10EmBacyコンピテント細胞(multibac kitから調製)
Stellar Competent Cells,Clontech,636763.
17AEAMOP_ME107h_pMA-T,Gene Art
17AEAMPP_BirA_pMA-T,Gene Art
pFastBac順方向、GGA TTA TTC ATA CCG TCC CA
pACEBac1 逆方向(SV40 polyA),TGA AAT TTG TGA TGC TAT TGC
pIDS 順方向、CGA TAC TAG TAT ACG GAC C
pIDS 逆方向、CCG TGC GTT TTA TTC TGT C
ヘペス、VWR,441487M
グリセロール、VWR,444485B
ツイーン80(登録商標)(Surfact-Amps 80),Pierce,0028328
イミダゾール、Merck,1.04716.0250
NaCl,VWR,27800.360
HisTrap excel 1 ml,GE Healthcare,17-3712-05
HiLoad Superdex 200 16/60,GE Healthcare,28-9893-35
Novex Sharp Pre-stained Protein Standard,Invitrogen,LC5800
NuPAGE抗酸化剤、Invitrogen,NP0005
NuPAGE LDSサンプルバッファー、Invitrogen,NP0007
NuPAGE MES SDSランニング緩衝液20X,Invitrogen,NP000202
NuPAGE Novex 4-12% Bis-Tris Protein Gels 1.0 mm 10-well,Invitrogen,NP0321BOX
NuPAGE Novex 4-12% Bis-Tris Protein Gels 1.0 mm 15-well,Invitrogen,NP0323BOX
Pierce Protein Concentrator 10K 5-20 ml,Thermo Scientific,88527
Anti-6Xヒスチジンタグ抗体、Abcam,ab18184
Commassie Protein Assay Reagent,Thermo Fisher Scientific,1856209
【0221】
hIL13Rα2-aviのクローニング
ヒトIL13Rα2のECDドメイン(ユニプロットQ14627 aa29~331)を、バキュロウィルス/Sf9システム中でBirAと共発現させて、ビオチン化受容体を産生した。遺伝子構築物中で、天然のシグナルペプチド(aa1~28)を、培地中へのタンパク質の分泌のために、gp67バキュロウィルスシグナルペプチドに交換した。Aviタグを、BirAによる標的化ビオチン化を促進するために、受容体に対しC末端に組み込み、続いて精製のためにHis6タグを組み込んだ。これは、Trp331の後に付加されるC末端アミノ酸配列GLNDIFEAQKIEWHEHHHHHH(配列番号111)を与えた。構築物は、クローニング部位SalIとXhoIに挟まれ、ヨトウガのためにコドン最適化された。同様に、大腸菌BirAリガーゼ遺伝子は、XhoIとKpnIに挟まれ、コドン最適化された。遺伝子を、GeneArt、ThermoFisherに注文した(ベクター17AEAMOP_ME107h_pMA-Tおよびベクター17AEAMPP_BirA_pMA-T)。
ドナーベクターpIDS中の受容体ベクターpACEBac1およびBirA中のhIL13Rα2-aviのmultibac構築物を、製造業者のプロトコルに従って作製した。ベクター配列を、GATCでの塩基配列決定により確認した。2つのベクターを、Cre-Lox組換えにより融合し、hIL13Rα2-AVIhis/BirA構築物を形成した。この構築物を、バクミド中への遺伝子転位のため、DH10EmbacYに形質転換した。陽性クローンの選択を、これらの細胞の青/白スクリーニングにより実施した。最終的に、バクミドを、単離し、遺伝子の組み込みについてPCRにより分析した。
【0222】
hIL13Rα2-aviの発現およびキャラクタリゼーション
バクミドを、Sf9細胞に遺伝子導入して、バキュロウィルスを産生した。ヒトIL13Rα2を、48時間の間2.3Lの遺伝子導入Sf9培養液中で発現させ、HisTrap Exelカラム上に捕捉することにより、培地から採取した。カラムを、緩衝液A(50mMのヘペスpH7.0、150mMのNaCl、9mMのイミダゾール、10%のグリセロールおよび10μMのツイーン80(登録商標))で平衡化した。カラムを緩衝液Aで洗浄後、タンパク質を、緩衝液B(50mMのヘペスpH7.0、150mMのNaCl、9mMのイミダゾール、10%のグリセロール、10μMのツイーン80(登録商標)および300mMのイミダゾール)で溶出した。
【0223】
分割量を含むタンパク質をプールし濃縮した後、試料を、50mMのヘペスpH7.0、150mMのNaCl、10%のグリセロールおよび10μMのツイーン80(登録商標)を用いて、スーパーデックス200 16/60カラムで最終精製した。SDS PAGEによる最も純粋なタンパク質画分を、選択し、プールし濃縮した。精製されたhIL13Rα2受容体を、SDSゲルで泳動して、純度およびサイズを決定した。クローンmAb47単鎖対照への結合を、ELISAおよびウェスタンブロットにより確認した。受容体をまた、MS分析のために、Xiaofang Cao,Clinical Proteomics Mass Spectrometry,Science for Life Laboratoryに送付した。試料を、3回実験したが、配列の一部のみがカバーされた。我々は、タンパク質のIDが正しかったと結論できた。
【0224】
上述の実施形態は、本発明のいくつかの例示的実施例として理解されたい。種々の修正、組み合わせおよび変更が本発明の範囲または趣旨から逸脱することなくその実施形態に対しなされ得ることは、当業者には明らかであろう。特に、技術的に可能な場合には、異なる実施形態での異なる部分の解決策を、他の構成で組み合わせることができる。しかし、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】