(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】二次電池のセパレーターコーティング用バインダー及びこれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/42 20210101AFI20230608BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20230608BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230608BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20230608BHJP
H01M 50/437 20210101ALI20230608BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20230608BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20230608BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230608BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230608BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20230608BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20230608BHJP
【FI】
H01M50/42
H01M50/417
H01M50/414
H01M50/423
H01M50/437
H01M50/44
H01M50/403 D
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/451
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564235
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 KR2021007977
(87)【国際公開番号】W WO2022220336
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0047159
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】イ・ゴウン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ボオク
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ギュンテ
(72)【発明者】
【氏名】オ・セウク
(72)【発明者】
【氏名】キム・チャンボム
(72)【発明者】
【氏名】パク・ジヘ
(72)【発明者】
【氏名】クォン・セマン
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC02
5H021CC04
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE08
5H021EE10
5H021EE15
5H021EE21
5H021HH01
5H021HH03
(57)【要約】
(メタ)アクリロニトリルから誘導される第1の構造単位、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、又は(メタ)アクリレートから誘導される第2の構造単位、及び、(アセト)アミド系から誘導される第3の構造単位からなる(メタ)アクリル系共重合体を含有してなる、二次電池のセパレーターコーティング用バインダー、これを含む二次電池用セパレーター、及び二次電池に関するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロニトリルから誘導される第1の構造単位、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、又は(メタ)アクリレートから誘導される第2の構造単位、及び、(アセト)アミド系から誘導される第3の構造単位からなる(メタ)アクリル系共重合体を含有してなる、二次電池のセパレーターコーティング用バインダー。
【請求項2】
前記(アセト)アミド系から誘導される前記第3の構造単位は、前記(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して、1~30重量%で含まれる、請求項1に記載の二次電池のセパレーターコーティング用バインダー。
【請求項3】
前記(メタ)アクリロニトリルから誘導される前記第1の構造単位は、前記(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して、30~70重量%含まれ、前記(メタ)アクリル酸、前記(メタ)アクリル酸塩、又は前記(メタ)アクリレートから誘導される前記第2の構造単位は、前記(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して、30~70重量%含まれる、請求項1に記載の二次電池のセパレーターコーティング用バインダー。
【請求項4】
多孔性基材、及び該多孔性基材の少なくとも一面に位置するコーティング層を含み、該コーティング層は、(メタ)アクリロニトリルから誘導される第1の構造単位、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、又は(メタ)アクリレートから誘導される第2の構造単位、及び、(アセト)アミド系から誘導される第3の構造単位からなる(メタ)アクリル系共重合体を含む、二次電池用セパレーター。
【請求項5】
前記多孔性基材は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、環状オレフィンコポリマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ガラス繊維、テフロン(登録商標)、及びポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択されるいずれか1つの高分子、又はこれらのうちの2種以上の共重合体あるいは混合物から形成された高分子膜である、請求項4に記載の二次電池用セパレーター。
【請求項6】
前記コーティング層は、多孔膜コーティング用スラリーを前記多孔性基材上に塗布して形成される、請求項4に記載の二次電池用セパレーター。
【請求項7】
前記多孔膜コーティング用スラリーは、前記(メタ)アクリル系共重合体を含有してなるバインダー、無機粒子、及び溶媒を含有する、請求項6に記載の二次電池用セパレーター。
【請求項8】
前記無機粒子は、SiO
2、アルミナ(Al
2O
3)、Al(OH)
3、AlO(OH)、TiO
2、BaTiO
3、Mg(OH)
2、MgO、Ti(OH)
4、クレー(clay)、ガラス粉末、又はこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の二次電池用セパレーター。
【請求項9】
前記無機粒子は、前記(メタ)アクリル系共重合体と、15~35:65~85の割合(固形分比)で混合される、請求項7に記載の二次電池用セパレーター。
【請求項10】
前記コーティング層の厚さは、1~6μmである、請求項4に記載の二次電池用セパレーター。
【請求項11】
請求項4~10のいずれか1項に記載の二次電池用セパレーターを含む二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池のセパレーターコーティング用バインダー及びこれを含む二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学電池用セパレーターは、電池内で正極と負極とを隔離し、イオン伝導度を継続的に維持させることで、電池の充電と放電を可能にする中間膜である。なお、電池が、異常な挙動によって高温環境に晒されると、セパレーターは、低い温度での溶融特性によって機械的に収縮したり損傷を受けたりすることがある。この場合、正極と負極とが互いに接触して電池が発火する現象が生じることもある。このような問題を克服するため、無機物でセパレーターをコーティングしてセパレーターの収縮を抑制し、電池の安定性を確保する技術が試みられている。
【0003】
例えば、大韓民国特許第10-2016-0061202号には、基材の一面に、(メタ)アクリル酸塩及び(メタ)アクリロニトリルの重合で形成されたアクリル系共重合体、及びポリビニルアルコール系化合物を含むコーティング層を位置させるリチウム二次電池用セパレーターが開示されている。しかし、この技術は、アクリル系共重合体の接着性能が十分でないため、ポリビニルアルコール系化合物をさらに導入する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】KR10-2016-0061202A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、多孔性基材に対する接着力と耐熱性を向上させることにより、セパレーターの耐熱特性が大きく向上し得る二次電池のセパレーターコーティング用バインダーを提供するためになされたものである。また、本発明は、上記二次電池のセパレーターコーティング用バインダーを含む二次電池のセパレーターを提供するためになされたものである。さらに、本発明は、上記二次電池のセパレーターを含む二次電池を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明の一具現例は、(メタ)アクリロニトリルから誘導される第1の構造単位;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、又は(メタ)アクリレートから誘導される第2の構造単位;及び、(アセト)アミド系から誘導される第3の構造単位;からなる(メタ)アクリル系共重合体を含有してなる、二次電池のセパレーターコーティング用バインダーを提供する。
【0007】
また、本発明の他の具現例は、多孔性基材、及び上記多孔性基材の少なくとも一面に位置するコーティング層を含み、上記コーティング層は、(メタ)アクリロニトリルから誘導される第1の構造単位;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、又は(メタ)アクリレートから誘導される第2の構造単位;及び、(アセト)アミド系から誘導される第3の構造単位;からなる(メタ)アクリル系共重合体を含む、二次電池用セパレーターを提供する。
【0008】
本発明のさらなる他の具現例は、上記二次電池用セパレーターを含む二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る(メタ)アクリル系共重合体を含んでなるバインダーを、二次電池のセパレーターコーティングに適用することで、多孔性基材に対する接着力と耐熱性を向上させ、セパレーターの耐熱特性を大きく向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具現例について詳述する。但し、これらは本発明の例示に過ぎず、本発明は、これらの例によって制限されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0011】
本発明者らは、(メタ)アクリロニトリルから誘導される第1の構造単位、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、又は(メタ)アクリレートから誘導される第2の構造単位、及び(アセト)アミド系から誘導される第3の構造単位を含む(メタ)アクリル系共重合体を製造し、多孔膜コーティング用スラリーを包含させてセパレーターのコーティングを行った結果、セパレーターの接着力と耐熱性が大きく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
<バインダーの製造>
本発明の一具現例は、(メタ)アクリロニトリルから誘導される第1の構造単位;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、又は(メタ)アクリレートから誘導される第2の構造単位;及び、(アセト)アミド系から誘導される第3の構造単位;からなる(メタ)アクリル系共重合体を含む二次電池のセパレーターコーティング用バインダーを提供する。
【0013】
上記(メタ)アクリロニトリルは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル又はこれらの組み合わせを含むことができる。
上記(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸であり得る。
上記(メタ)アクリル酸塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミン塩、又はこれらの組み合わせを含むことができる。(メタ)アクリル酸塩としては、例えば、アクリル酸リチウム、メタクリル酸リチウム、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸マグネシウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸アンモニウムなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0014】
上記(メタ)アクリレートから誘導される構造単位は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステル、及び側鎖に官能基を有する(メタ)アクリレートに由来することができ、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するものであり得る。
上記(アセト)アミド系は、アセトアミド、アミド系化合物であり得る。
【0015】
本発明は、バインダーの接着力及び耐熱性を高めるため、(アセト)アミド系から誘導される構造単位を共重合体に包含させる。(アセト)アミド系によって接着力と耐熱性が向上する理由は、(メタ)アクリロニトリルと(メタ)アクリル酸に比べてガラス転移温度が高く、(メタ)アクリロニトリルに比べて水素結合又はイオン結合のような凝集力及び接着性能を発現させ得る、電気陰性度の高い元素がより多いためである。
【0016】
しかしながら、(アセト)アミド自体の反応性と原料間の相溶性によって、(アセト)アミド系の使用量が多いほどバインダー共重合体の重合安定性と反応性に影響を与え得るため、(アセト)アミド系は、バインダー共重合体の主成分として使用できないという問題点があった。
【0017】
本発明において、(アセト)アミド系から誘導される第3の構造単位は、上記(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して、1~30重量%で含まれることが好ましい。第3の構造単位が1重量%未満で含まれる場合、接着力及び耐熱性の向上効果が十分でなく、30重量%を超えて含まれる場合、低分子量の高分子が得られるか、重合転換率が低下することがある。
【0018】
本発明では、(アセト)アミド系から誘導される第3の構造単位の他に、(メタ)アクリロニトリルから誘導される第1の構造単位、及び、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、又は(メタ)アクリレートから誘導される第2の構造単位を、調節された重量比でバインダー共重合体に包含させる。
【0019】
(メタ)アクリロニトリルは、(メタ)アクリル酸に比べてガラス転移温度と融点が高いため、(メタ)アクリロニトリルから誘導される構造単位を使用する場合、セパレーターの耐熱性を大きく向上させることができ、(メタ)アクリル酸は、カルボキシル基により無機物との水素結合又はイオン結合、基材との親和度が向上し、これにより、(メタ)アクリロニトリルよりも高い接着性能を示すことができる。
【0020】
従って、本発明は、(メタ)アクリロニトリルから誘導される第1の構造単位、及び(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、又は(メタ)アクリレートから誘導される第2の構造単位を、調節された重量比でバインダー共重合体に包含させる。
【0021】
本発明の一実施例によれば、上記(メタ)アクリロニトリルから誘導される第1の構造単位は、上記(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して30~70重量%含まれ、上記(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、又は(メタ)アクリレートから誘導される第2の構造単位は、(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して30~70重量%含まれることが好ましい。
【0022】
(メタ)アクリロニトリルから誘導される第1の構造単位の含有量が30重量%未満である場合、接着力は良いが、(メタ)アクリロニトリルの使用による耐熱性の向上効果が十分に得られないことがある。
【0023】
本発明においてバインダーとして使用する共重合体は、上記単量体の他に、その他のこれらと共重合可能な単量体を含有しても良い。その他の共重合可能な単量体としては、スチレン系単量体、オレフィン類、ジエン系単量体、ハロゲン原子含有単量体、酢酸ビニル、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、複素環含有ビニル化合物、アミド系単量体が挙げられる。
【0024】
上記(メタ)アクリル系共重合体は、上記のような単位が、交互に分布する交互重合体、ランダムに分布するランダム重合体、又は一部の構造単位がグラフトされるグラフト重合体など、種々の形態であり得る。
【0025】
上記(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、150,000~950,000であり、好ましくは、200,000~600,000であり得る。 (メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が上記の範囲を満たす場合、当該(メタ)アクリル系共重合体及びこれを含むセパレーターは、優れた接着力と、耐熱性及び通気度を発揮することができる。上記重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて測定したPEO換算の平均分子量であり得る。
【0026】
上記(メタ)アクリル系共重合体は、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合、又はバルク重合など、公知の多様な方法によって製造することができる。
【0027】
重合に使用する重合開始剤としては、例えば、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシジカーボネート、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、α,α’-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、又は過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどが挙げられる。重合反応温度は、50~90℃とすることができる。
【0028】
上記(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリロニトリルから誘導される第1の構造単位30~70重量%;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、又は(メタ)アクリレートから誘導される第2の構造単位30~70重量%;及び、(アセト)アミド系から誘導される第3の構造単位1~30重量%の重合で形成され得る。上記3種のモノマーが上記含有量比で重合されて形成されたアクリル系共重合体は、多孔性基材に対する接着力と耐熱性が向上することにより、セパレーターに適用して耐熱特性を大きく向上させることができる。
【0029】
重合体のpH調節のために金属水酸化物を使用することができる。好ましくは、金属水酸化物として、NaOH、又はLiOHを使用することができる。
【0030】
本発明の他の具現例は、上記(メタ)アクリル系共重合体を含有してなるバインダー、無機粒子、及び溶媒を含む多孔膜コーティング用スラリーを提供する。
上記無機粒子は、コーティング層に含まれる場合、熱によるセパレーターの収縮をさらに防止することで、正極と負極との間の短絡を抑制することができ、また、リチウムイオンの抵抗を最小化して電池の性能を改善することができる。
上記無機粒子は、SiO2、アルミナ(Al2O3)、Al(OH3)、AlO(OH)、TiO2、BaTiO3、Mg(OH)2、MgO、Ti(OH)4、クレー(clay)、ガラス粉末、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0031】
無機粒子は、(メタ)アクリル系共重合体と、15:35~65~85の割合(固形分比)で混合されることが好ましい。
【0032】
上記溶媒として、水及び有機溶媒の両方を使用することができる。溶媒の量は、固形分の濃度が、好ましくは5~90重量%、より好ましくは10~50重量%となる量に調整して使用される。
【0033】
スラリーの混合装置は、上記成分を均一に混合し得る装置であれば、特に限定されず、ボールミル、サンドミル、顔料分散器、擂潰機、超音波分散器、ホモゲナイザー、プラネタリーミキサーなどを使用することができるが、高い分散シェアを与えることができる、ビーズミル、ロールミル、フィルミックスなどの高分散装置を使用することが特に好ましい。
【0034】
<無機物コーティングセパレーターの製造>
本発明の他の具現例は、多孔性基材;及び、この多孔性基材の少なくとも一面に位置するコーティング層を含み、上記コーティング層は、(メタ)アクリロニトリルから誘導される第1の構造単位;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、又は(メタ)アクリレートから誘導される第2の構造単位;及び、(アセト)アミド系から誘導される第3の構造単位;からなる(メタ)アクリル系共重合体を含む二次電池用セパレーターを提供する。
【0035】
二次電池用セパレーターは、負極と正極とを隔離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、多孔性基材、及びこの多孔性基材の少なくとも一面に位置するコーティング層を含むことができる。
【0036】
上記多孔性基材は、多数の気孔を有し、通常、電気化学素子に使用される基材であり得る。多孔性基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、環状オレフィンコポリマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ガラス繊維、テフロン(登録商標)、及びポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択されるいずれか1つの高分子、又はこれらの2種以上の共重合体あるいは混合物で形成された高分子膜であり得るが、これらに制限されない。
【0037】
多孔性基材は、約1μm~40μmの厚さを有することができ、例えば、1μm~30μm、1μm~20μm、5μm~15μm、又は10μm~15μmの厚さを有することができる。
【0038】
上記コーティング層は、バインダーとして、(メタ)アクリロニトリルから誘導される第1の構造単位;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、又は(メタ)アクリレートから誘導される第2の構造単位;及び、(アセト)アミド系から誘導される第3の構造単位;からなる(メタ)アクリル系共重合体を含むことができる。この(メタ)アクリル系共重合体を、基材上のコーティング層の形成時にバインダーとして使用する場合、多孔性基材に対する接着力と耐熱性を向上させることで、セパレーターの耐熱特性を向上することができる。
【0039】
上記コーティング層は、上記多孔膜コーティング用スラリーを多孔性基材上に塗布することで、基材の一面に位置することができる。多孔膜コーティング用スラリーは、上述の通りである。
【0040】
多孔膜コーティング用スラリーを多孔性基材上に塗布する方法は、特に制限されない。例えば、ディップ(dip)コート法、ダイ(die)コート法、グラビア(gravure)コート法、コンマ(comma)コート法などを使用することができる。
【0041】
乾燥方法としては、例えば、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥温度は、使用する溶媒の種類によって異なる。溶媒には、水又はアルコール水溶液を使用することができる。乾燥温度範囲は、60~120℃が好ましい。
【0042】
上記コーティング層の厚さは、1~6μmが好ましい。1μm未満の場合は、セパレーターの耐熱特性が顕著に減少するという問題があり、6μmを超える場合は、セパレーターの厚さが厚すぎて電池のエネルギー密度を減少させ、抵抗が増加する原因になり得る。
【0043】
上記コーティング層は、分散剤をさらに含むことができる。この分散剤は、上記(メタ)アクリル系共重合体と異なるアクリル系化合物を含むことができる。
【0044】
本発明の他の具現例は、上記二次電池用セパレーターを備える二次電池を提供する。この二次電池は、正極、負極、電解液、及び上記二次電池用セパレーターを含んで構成され得る。二次電池は、リチウムイオン二次電池であり得る。
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、本実施例における部及び%は、特に記載しない限り、重量基準である。
【0046】
<製造例>
バインダーの製造
反応容器に、単量体混合物100重量部に対して、蒸留水600重量部と、金属水酸化物であるNaOH又はLiOHを5~20重量部加えて撹拌し、高純度窒素気体を注入しながら、60℃に昇温させた。分解型開始剤である過硫酸アンモニウムを、単量体混合物100重量部に対して、0.3重量部加えた後、60℃で8時間、溶液重合反応を進行させた。次に、室温で冷却してアクリル系共重合体(重合体A)を製造した。
【0047】
多孔膜コーティング用スラリーの製造
無機粒子として、アルミナ(平均粒径0.5μm)と、重合体Aとを、85:15(固形分比)になるよう混合し、さらに蒸留水を固形分濃度が24%になるように添加して混合した。この混合物をボールミル法によって十分に分散させ、スラリーを製造した。
【0048】
無機物コーティングセパレーターの製造
ポリエチレン多孔性基材の一面に、製造したスラリーをコンマコート法で塗布し、6μm厚さのコーティング層を形成した後、60~85℃の温度で温風乾燥させ、無機物コーティングセパレーターを製造した。
【0049】
<実施例1>
単量体混合物として、(メタ)アクリロニトリル52重量部、(メタ)アクリル酸43重量部、及び(アセト)アミド5重量部の単量体混合物を使用した以外は、製造例と同様にして二次電池用バインダー及びセパレーターを製造した。
【0050】
<実施例2>
単量体混合物として、(メタ)アクリロニトリル45重量部、(メタ)アクリル酸40重量部、及び(アセト)アミド15重量部の単量体混合物を使用した以外は、製造例と同様にして二次電池用バインダー及びセパレーターを製造した。
【0051】
<実施例3>
単量体混合物として、(メタ)アクリロニトリル40重量部、(メタ)アクリル酸30重量部、及び(アセト)アミド30重量部の単量体混合物を使用した以外は、製造例と同様にして二次電池用バインダー及びセパレーターを製造した。
【0052】
<比較例1>
単量体混合物として、(メタ)アクリロニトリル60重量部、及び(メタ)アクリル酸40重量部の単量体混合物を使用した以外は、製造例と同様にして二次電池用バインダー及びセパレーターを製造した。
【0053】
<比較例2>
単量体混合物として、(メタ)アクリロニトリル59重量部、(メタ)アクリル酸39重量部、及びポリビニルアルコール2重量部の単量体混合物を使用した以外は、製造例と同様にして二次電池用バインダー及びセパレーターを製造した。
【0054】
<比較例3>
単量体混合物として、(メタ)アクリロニトリル20重量部、(メタ)アクリル酸80重量部の単量体混合物を使用した以外は、製造例と同様にして二次電池用バインダー及びセパレーターを製造した。
【0055】
<比較例4>
単量体混合物として、(メタ)アクリロニトリル10重量部、(メタ)アクリル酸85重量部、及び(アセト)アミド5重量部の単量体混合物を使用した以外は、製造例と同様にして二次電池用バインダー及びセパレーターを製造した。
【0056】
【0057】
<実験例1>:接着力試験
実施例1~3及び比較例1~4で製造されたセパレーターを、幅18mm、長さ100mmの大きさに裁断して試験片を準備した。幅40mm、長さ100mmの面積を有するアクリルプレートに、幅20mm、長さ40mmの面積を有する両面テープを貼り付けた。準備されたセパレーターを両面テープの上に貼着した後、ハンドローラで5回軽く押した。
【0058】
上記試験片をUTM(20kgfロードセル)に装着してセパレーターの一側部分を引張強度測定機の上側クリップに、セパレーターの一面に貼り付けたテープを下側クリップに固定し、100mm/minの速度で180°剥離強度を測定した。1サンプル当たり、試験片を5個以上製作して測定し、その平均値を計算した結果を表2に示す。
【0059】
<実験例2>:耐熱性試験
上記実施例1~3及び比較例1~4で製造されたセパレーターを、縦横の大きさが3×5cmになるように裁断して試験片を準備し、この試験片を150℃のオーブン中に1時間放置した後、収縮率を測定した結果を表2に示す。
【0060】
【0061】
表2において、本発明に係る実施例1~3のセパレーターは、(アセト)アミドを含有しない比較例1のセパレーター、及び(アセト)アミドを含有せずにポリビニルアルコールを含有する比較例2のセパレーターと比べて、接着力の平均値が高く、標準偏差が小さく、熱収縮率が同等以上であった。
【0062】
また、実施例1~3において、(アセト)アミドの含有量が多いほど接着力と耐熱性能が向上することがわかった。このことから、本発明のようにアクリル系共重合体の成分として(アセト)アミドを含有させた場合、従来技術のようにポリビニルアルコール系高分子を混合することなく接着力及び耐熱性能が向上することがわかった。
【0063】
また、実施例1~3のセパレーターは、(メタ)アクリロニトリルの含有量が、それぞれ、20重量%である比較例3のセパレーター、10重量%である比較例4のセパレーターと比べて、同等以上の接着力及び耐熱性を示すことがわかった。特に、比較例4のセパレーターは、(メタ)アクリロニトリルの含有量が少ないため、(アセト)アミドが含まれているにもかかわらず、接着力は良好であるが、耐熱特性が発現していないことがわかった。これにより、(メタ)アクリロニトリルが、本発明のように30重量%以上で共重合体内に含まれている場合にのみ、接着力及び耐熱性能の両方が発現可能であることがわかった。
【国際調査報告】