(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】難燃性ポリエステルブレンド
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20230608BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20230608BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20230608BHJP
C08K 5/5313 20060101ALI20230608BHJP
C08K 5/523 20060101ALI20230608BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20230608BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C08L67/00 ZBP
C08L67/04
C08K3/32
C08K5/5313
C08K5/523
C08L23/26
C08K5/3492
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567600
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2021061434
(87)【国際公開番号】W WO2021224136
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ロト,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】クレンツ,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ミンゲス,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ウスケ,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ホイスラー,ミヒャエラ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB214
4J002CF03Y
4J002CF05W
4J002CF06W
4J002CF07W
4J002CF19X
4J002DH036
4J002EU197
4J002EW048
4J002EW136
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD138
4J002GB01
4J002GC00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【解決手段】
熱可塑性ポリエステル、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(ε-カプロラクトン)とは異なる生分解性ポリエステル、ホスフィン酸塩及びメタロセン触媒を用いて製造された極性を変化させたポリオレフィンワックスを含有する熱可塑性成形組成物に関し、種々のタイプの難燃性成形物の製造のための熱可塑性成形組成物の使用方法に関し、得られた成形物に関し、及び、熱可塑性ポリエステルを含有する熱可塑性成形組成物の難燃性を改善するためのメタロセン触媒を用いて製造された極性を変化させたポリオレフィンワックスの使用方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性成形組成物であって、
A) 10~99.6質量%の、C)とは異なる熱可塑性ポリエステル;
B) 0.1~30質量%の、ポリ(ε-カプロラクトン);
C) 0.1~30質量%の、B)とは異なる生分解性ポリエステル;
D) 0.1~30質量%のホスフィン酸塩;
E) 0~20質量%の、窒素含有難燃剤;
F) 0~15質量%の、少なくとも1つのアルキル基で置換されたフェニル環を有する芳香族リン酸エステル;
G) 0.05~1質量%の、メタロセン触媒を用いて製造されたポリオレフィンワックス(前記ポリオレフィンワックスは、ポリオレフィンワックスをα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体と反応させることにより極性を変化させた、エチレンのホモポリマー、エチレンと直鎖又は分枝状の、置換又は非置換の及び3~18個の炭素原子を有する1種以上の1-オレフィンとのコポリマー、又はプロピレンのホモポリマーである。);
H) 0~50質量%の、さらなる追加物質
を含み、成分A)~H)の質量%の合計が100%である、
熱可塑性成形組成物。
【請求項2】
前記成分G)が、ポリオレフィンワックスを無水マレイン酸と反応させることにより極性を変化させた、エチレンのホモポリマー、又は、直鎖又は分枝状の、置換又は非置換の及び3~18個の炭素原子を有する1種以上の1-オレフィンとエチレンとのコポリマーである、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリエステルA)が、芳香族ジカルボン酸に、及び、脂肪族及び/又は芳香族ジヒドロキシ化合物、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はこれらの混合物に基づき、前記ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレートは、1質量%以下、好ましくは0.75質量%以下の1,6-ヘキサンジオール及び/又は2-メチル-1,5-ペンタンジオールをさらなるモノマーユニットとして包含し得る、請求項1又は2に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項4】
前記成分C)が、
C1) C1)及びC2)に基づき30~70mol%の、脂肪族ジカルボン酸又はその混合物、
C2) C1)及びC2)に基づき30~70mol%の、芳香族ジカルボン酸又はその混合物、
C3) C1)及びC2)に基づき98.5~100mol%の1,4-ブタンジオール又は1,3-プロパンジオール又はその混合物、
C4) C1~C3)に基づき0.05~1.5質量%の鎖延長剤、
からなり、好ましくは、
成分C)は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)又はポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)である、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項5】
前記成分D)が、下記式(I)のホスフィン酸塩又は/及び下記式(II)のジホスフィン酸塩
【化1】
[式中、
R
1及びR
2は、同一であるか又は異なり、水素原子、又は、直鎖又は分枝の形態にある、C
1-C
6-アルキル基、及び/又はアリール基、又は
【化2】
(式中、R’は、水素原子、フェニル基又はトルイル基を表す)を表し;
R
3は、直鎖又は分枝の形態にある、C
1-C
10-アルキレン基又はC
6-C
10-アリーレン基、C
1-C
10-アルキル-C
6-C
10-アリーレン基又はC
6-C
10-アリールC
1-C
10-アルキレン基を表し;
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K及び/又はプロトン化した窒素塩基を表し;
mは、1~4を表し;
nは、1~4を表し;
xは、1~4を表す]
又はこれらのポリマーからなる、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項6】
前記成分D)のR
1及びR
2が、互いに独立して、水素原子、メチル基又はエチル基である、請求項5に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項7】
前記成分E)が、メラミン(下記式I)及びシアヌル酸又はイソシアヌル酸(下記式Ia及びIb):
【化3】
【化4】
の反応生成物である、請求項1~6のうちいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項8】
ISO11357によるDSC法(20K/分における1回目加熱曲線)により測定される前記成分F)の融点が、50~150℃である、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項9】
前記成分F)が、
一般式(III)
【化5】
一般式(IV)
【化6】
一般式(V)
【化7】
(式中、
互いに独立して、
R
1は、水素原子、メチル基又はイソプロピル基を表し、
nは、0~7を表し、
R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基又はイソプロピル基を表し、
mは、1~5を表し、
R’’は、水素原子、メチル基、エチル基又はシクロプロピル基を表し、
但し、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6部分の少なくとも1つは、アルキル部分である。)
又はこれらの混合物から成る、請求項1~8のうちいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項10】
前記一般式III、IV及びVの置換基が、
R
1は、水素原子を表し、及び/又は
R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6はメチル基を表し、及び/又は
mは、1又は2を表す、請求項9に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項11】
前記成分F)が、
【化8】
からなる、請求項10に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項12】
請求項1~11のうちいずれか1項に記載のポリエステル成形組成物の使用を含む、繊維、フィルム及び成形物の製造方法。
【請求項13】
請求項1~11のうちいずれか1項に記載のポリエステル成形組成物から得られる繊維、フィルム又は成形物。
【請求項14】
メタロセン触媒によって製造されるポリオレフィンワックスの使用方法であって、
前記ポリオレフィンワックスが、
熱可塑性ポリエステルを含む熱可塑性成形組成物の難燃性を改善するための、
ポリオレフィンワックスをα,β-不飽和カルボン酸又はそれらの誘導体と反応させることにより極性を変化させた、
エチレンのホモポリマー、エチレンと、直鎖又は分枝、置換又は非置換であり得、及び3~18個の炭素原子を有する1種以上のオレフィンとのコポリマー、又はプロピレンのホモポリマーである、
ポリオレフィンワックスの使用方法。
【請求項15】
前記熱可塑性成形組成物が、最大0.4mmの壁厚を有する薄壁部品である、請求項14に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリエステル、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(ε-カプロラクトン)とは異なる生分解性ポリエステル、ホスフィン酸塩及びメタロセン触媒を用いて製造された極性を変化させたポリオレフィンワックスを含有する熱可塑性成形組成物に関し、種々のタイプの難燃性成形物の製造のための熱可塑性成形組成物の使用方法に関し、得られた成形物に、及び、熱可塑性ポリエステルを含有する熱可塑性成形組成物の難燃性を改善するためのメタロセン触媒を用いて製造された、極性を変化させたポリオレフィンワックスの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリエステルは、長く使用されている歴史のある材料である。これらの材料の機械的、熱的、電気的及び化学的特性と並んで重要性を増しつつある要因は、難燃性及び高いグローワイヤー耐性のような特性である。ここでの例は、家庭用品部門(例えば、プラグ)及びエレクトロニクス部門(例えば、ブレーカーの保護カバー)における適用である。
【0003】
市場は、ハロゲンフリーの難燃性系を有する熱可塑性ポリエステルへ益々高まる関心を示している。ここで、難燃剤に課される重要な条件は、浅い内色素、高分子加工中の適切な熱安定性、及びまた、強化及び非強化ポリマーにおける効果的な難燃性である。
ホスフィネート及び窒素含有相乗剤及びそれぞれにリン酸とメラミンの反応生成物(メラミンポリホスフェート)からなるハロゲンフリーの難燃剤添加混合物の有効性は、基本的に、UL94V燃焼試験に記載されている;特許文献1、特許文献2を参照のこと。
【0004】
特許文献3は、慣用の難燃剤、例えばホスフィン酸塩及びメラミン化合物だけでなく、金属酸化物と金属水酸化物との、又はその他の塩との組み合わせについて記載している。
【0005】
そのような処方の特有な問題は、その機械的特性が脆弱性を含むことであり、使用中に早期の破砕をしばしば引き起こすことである(破断引張歪み)。ポリマー混合物に基づく種々の取り組みが述べられてきており:市販の衝撃改質剤(Lotader(登録商標)、Paraloid(登録商標)、Metablen(登録商標)として市販されている製品)の使用が、機械的特性の顕著な改善をもたらすが、それによって今度は、薄い壁厚を有する難燃性製品を実現することが不可能となる。その理由は、当該添加剤は高い可燃性であり、大体においてエチレン又はブタジエンに基づくものであるためである。したがって、強い難燃性製品は、種々のエラストマーとPBTの混合物によってしばしば達成される(特許文献4及び特許文献5)が、同様の不都合も生じている。
【0006】
特許文献6は、流動性向上剤だけではなく衝撃改質剤としてのゴムを含むポリエステル混合物について記載している。これらの混合物において、機械的特性は改善され得るが、ゴムの添加は、今度はレオロジー特性を損なう。
【0007】
商用として流通している難燃剤ABS及びPC添加剤レゾルシノールビスジフェニルホスフェート(RDP、CAS番号:57583-54-7)及びビスフェノールA ジフェニルホスフェート(BDP、CAS番号:5945-33-5)は、移行に関しての不都合を示している(非特許文献1参照のこと)。
【0008】
特許文献7は、ハロゲンフリーの難燃性系を有し及び良好な機械的特性(破断引張歪み)及び難燃特性を有する熱可塑性ポリエステル成形組成物について記載している。さらに、加工性、及び、加工中や所望の適用(特に薄壁部品)における添加剤の移行挙動が、改善された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許公開第1423260号公報
【特許文献2】欧州特許公開第1084181号公報
【特許文献3】独国特許公開第19960671号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0167406号公報
【特許文献5】欧州特許公開第2476730号公報
【特許文献6】国際公開第2006/018127号公報
【特許文献7】国際公開第2017/063841号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Polymer Degradation and Stability、2002年、第77巻(2)、第267-272頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、難燃性特性のさらなる改善と同時に、特に押出時における良好な加工性が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の目的は、ハロゲンフリーの難燃性システムを有し、及び特に肉薄部分における良好な難燃性特性によって特に特徴付けられる、ポリエステル成形組成物を提供することにある。さらに、特に押し出しにおける加工も改善されるであろう。
【0013】
その結果、下記の成形組成物が見出された。
熱可塑性成形組成物であって、
A) 10~99.65質量%の、C)とは異なる熱可塑性ポリエステル;
B) 0.1~30質量%の、ポリ(ε-カプロラクトン);
C) 0.1~30質量%の、B)とは異なる生分解性ポリエステル;
D) 0.1~30質量%の、ホスフィン酸塩;
E) 0~20質量%の、窒素含有難燃剤;
F) 0~15質量%の、少なくとも1つのアルキル基で置換されたフェニル環を有する芳香族リン酸エステル;
G) 0.05~1質量%の、メタロセン触媒を用いて製造されたポリオレフィンワックス(前記ポリオレフィンワックスは、ポリオレフィンワックスをα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体と反応させることにより極性を変化させた、エチレンのホモポリマー、エチレンと直鎖又は分枝状の、置換又は非置換の及び3~18個の炭素原子を有する、1種以上の1-オレフィンとのコポリマー、又はプロピレンのホモポリマーである。);
H) 0~50質量%の、さらなる追加物質、
を含み、成分A)~H)の質量%の合計が100%である、
熱可塑性成形組成物。
【0014】
成分G
本発明による熱可塑性成形組成物は、詳細には、メタロセン触媒を用いて製造されたポリオレフィンワックス(前記ポリオレフィンワックスは、ポリオレフィンワックスをα,β-不飽和カルボン酸又はこれらの誘導体と反応させることにより極性を変化させた、エチレンのホモポリマー、エチレンと、直鎖又は分枝状の、置換又は非置換の及び3~18個の炭素原子を有する、1種以上の1-オレフィンとのコポリマー、又はプロピレンのホモポリマーである。)を、成形組成物の総質量に基づき0.05~1質量%、好ましくは0.07~0.7質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%の量において、成分Gとして存在することを特徴とする。
【0015】
加工助剤、例えば、長鎖脂肪酸、例としてモンタンワックス(炭素原子数が28~32の鎖長を有する直鎖状の飽和カルボン酸)は、一般的には燃焼挙動に対する悪影響を有するのであるが、本発明の発明者らにより、メタロセン触媒を用いて製造された極性を変化させたポリオレフィンワックスは、特に肉薄部分において燃焼挙動に対しプラスの影響を有することが見出された。さらに、押出における加工性が特に改善され、即ち、加工中における添加物のデポジットがないか又は減少し、特に、ダイドルール(die drool)がないか又は減少した。
【0016】
1-オレフィンは、直鎖又は分枝状、置換又は非置換であり得、及び3~18個の炭素原子、好ましくは3~6個の炭素原子を有し得る。例としては、プロペン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び1-オクタジエン、またスチレンである。好ましいものは、プロペン又は1-ブテンとのエチレンのコポリマーである。コポリマーは、70~99.9質量%、好ましくは80~99質量%のエチレン含有量を有する。1-オレフィンが置換されている場合、置換基は、好ましくは、1-オレフィンの二重結合と結合する芳香族ラジカルである。
【0017】
出発原料として使用される、即ち極性を変化させていない、ポリオレフィンワックスの特に適したものは、エチレンのホモポリマー、又は、エチレンと1種以上の1-オレフィンとのコポリマーであって、滴点が90~130℃、より好ましくは100~120℃の範囲、140℃における溶融粘度が10~10,000mPa.s、より好ましくは50~5000mPa.sの範囲、及び20℃における密度が0.89~1.05g/cm3、より好ましくは0.91~0.99g/cm3の範囲のものである。エチレンとコモノマーとしての1種以上の1-オレフィンとのコポリマーの場合において、コポリマー単位は、ブロック中に優位に不規則か又は優位に存在し得る。1-オレフィンがプロピレンの場合において、プロピレンの配列は、イソタクチック、シンジオタクチック又は部分的にアタックチックであり得る。
【0018】
出発原料、即ち極性を変化させていないもの、として使用されるさらに適したポリオレフィンワックスは、メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレンホモポリマーであり、及び好ましくは170℃にて測定された溶融粘度が20~50,000mPa.sを有するものである。そのようなワックスの軟化点(リング/ボール)は、一般的には90~165℃、好ましくは90~145℃である。好適なワックスは、イソタクチック又はシンジオタクチック構造が高割合の高度に結晶性の生成物、及び低い結晶性であり主にアタクチック構造のものの両方である。プロピレンホモポリマーの結晶化度は、重合に使用される触媒の適切な選択による既知の方法及び重合化条件の手段による既知の方法における幅広い制限内で変化させられ得る。
【0019】
変化させていない、即ち、無極性の、メタロセンタイプの触媒を用いた出発ワックスは、多数の資料、例えば、欧州特許公開第0571882号公報及び欧州特許公開第0416566号公報によって知られている。
【0020】
当該出発物質のポリオレフィンワックスの製造のためのメタロセン触媒は、式M1Lxで表されるキラル又は非キラルの遷移金属化合物である。遷移金属化合物M1Lxは、少なくとも1つのπリガンド、例えば、シクロペンタジエニルリガンド、が結合している、少なくとも1つの中心金属原子M1を含むものである。さらに、置換基、例えばハロゲン原子又はアルキル基、アルコキシル基又はアリール基が、中心金属原子M1と結合し得る。M1は、好ましくは元素周期表のIII、IV、V又はVI属の元素、例えば、Ti、Zr又はHfである。本発明の目的のために、シクロペンタジエンリガンドは、非置換のシクロペンタジエニルラジカル及び置換されたシクロペンタジエニルラジカル、例えばメチルシクロペンタジエニル基、インデニル基、2-メチルインデニル基、2-メチル-4-フェニル-インデニル基、テトラヒドロインデニル基、又はオクタヒドロフルオレニル基である。πリガンドは、架橋されているか又は非架橋、単架橋又は多架橋であり得、環系を経た架橋を含むものがあり得る。また、用語メタロセンは、多核メタロセンとして知られる、1つ以上のメタロセンフラグメントを有する化合物を指す。これらは、任意の置換基パターン、及び架橋の形態を有し得る。当該多核メタロセンの個々のメタロセンフラグメントは、同じタイプのものか又は互いに異なるものであり得る。当該多核メタロセンの例は、例えば、欧州特許公開第0632063号公報に記載されている。
【0021】
メタロセンの構造式及び共溶媒によるその活性化の例は、とりわけ、欧州特許公開第0571882号公報及び欧州特許公開第0416566号公報に記載されている。
【0022】
ポリオレフィンワックスは、好ましくはフリーラジカル形成剤(free-radical former)の存在下で、ポリオレフィンワックスをα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体と反応させることにより、極性を変化させられる。
【0023】
好適なα,β-不飽和カルボン酸又はそれらの誘導体の例は、アクリル酸又はメタクリル酸又はこれらのエステル又はアミド、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸のモノエステル、例えばモノアルキルマレエート、マレイン酸のジエステル、例えばジアルキルマレエート、又はマレイン酸のアミド、例えば、マレイミド又はN-アルキル置換のマレイミドである。また、これらの化合物の混合物を使用することも可能である。好ましいものは、マレイン酸及びその誘導体であり、特に好ましいものは、無水マレイン酸である。α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体は、出発物質のポリオレフィンワックスに基づき、0.1~20質量%の量で使用される。
【0024】
好適なフリーラジカル形成剤は、反応条件下で十分な範囲までフリーラジカルを分解する化合物である。特に好適なフリーラジカル形成剤は、有機過酸化物、例えば、アルキル、アリール又はアラルキルペルオキシド、例えば、ジ-tert-ブチルペルオキシド又はジクミルペルオキシド、ペルオキシエステル、例えばtert-ブチルペルアセテート又はtert-ブチルペルベンゾエート、又はヒドロペルオキシド、例えばtert-ブチルヒドロペルオキシド又はクメンペルオキシドである。さらに可能なフリーラジカル形成剤は、脂肪族アゾ化合物、例えば、アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)又は、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)である。好ましいものは、ジアルキルペルオキシド、特に好ましくは、ジ-tert-ブチルペルオキシドである。フリーラジカル形成剤は、濃縮して、出発物質のポリオレフィンワックスに基づき、0.1~5質量%の量で使用される。
【0025】
出発物質のポリオレフィンワックスとα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体との反応は、連続するか又はバッチ式かのどちらかで行い得る。バッチ式の手順において、ワックスは、その軟化点以上の温度まで加熱され、そしてα,β不飽和カルボン酸又はその誘導体及びフリーラジカル形成剤が、適切な時間中連続してか又は1以上に分割してのどちらかで、必要に応じ不活性ガス雰囲気下で攪拌下に溶融物へ導入される。反応温度は、ワックスの軟化点より高い、好ましくは100~200℃、特に好ましくは130~180℃である。計量投入の完了後、混合物は、同じ温度又は異なる温度にて反応させられ得、必要に応じ、添加後のさらなるフリーラジカル形成剤のさらなる量が添加される。反応中に形成される揮発性の成分又は余剰の揮発性の出発成分は、例えば、減圧下で留去されるか、又は不活性ガスを用いて揮散させることにより除去され得る。
【0026】
極性ワックス、即ち、本発明の成分Gは、好ましくは酸又は鹸化価が0.5~120mgKOH/g、より好ましくは1~100mgKOH/g、最も好ましくは5~80mgKOH/gを有し、好ましい溶融粘度が20~50,000mPa.s、より好ましくは25~5,000mPa.s、最も好ましくは30~500mPa.sを有し、及び好ましい軟化点(リング/ボール)が90~165℃、好ましくは90~145℃を有する。
【0027】
好ましくは、成分G)は、ポリオレフィンワックスと無水マレイン酸とを反応させることにより極性を変化させた、エチレンのホモポリマー又はエチレンと直鎖又は分枝状の置換又は非置換であり3~18個の炭素原子を有する1種以上の1-オレフィンとのコポリマーである。より好ましくは、ポリオレフィンワックスと無水マレイン酸とを反応させることにより極性を変化させた、エチレンのホモポリマーである。
【0028】
このタイプの生成物は、例えば、Licocene(登録商標)PE MA 4221微粒子として、クラリアントプラスチックアンドコーティングス(Clariant Plastic&Coatings)(ドイツ国)GmbHから市販で入手可能である。
【0029】
成分A
本発明の成形組成物は、成分(A)として、成形組成物の総質量に基づき10~99.65質量%、好ましくは20~92.83質量%、及び特に35~86.8質量%の、B)又はC)とは異なる少なくとも1種の熱可塑性ポリエステルを含む。
【0030】
一般的に、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族及び/又は芳香族ジヒドロキシ化合物に基づくポリエステルA)が使用される。
【0031】
芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジヒドロキシ化合物に基づくポリエステルが、好ましく、特に、2~10個の炭素原子を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物が、好ましいポリエステルの第1の基であるようなものが好ましい。
【0032】
芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジヒドロキシ化合物に基づくこれらのポリエステルは、それ自体周知であり及び文献に記載されている。これらは、主鎖中に、芳香族ジカルボン酸から誘導された芳香族環を含むものである。また、芳香族環は、例えば、ハロゲン原子、例えば、塩素原子及び臭素原子による、又は、C1-C4-アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、及びn-ブチル基、イソブチル基及びtert-ブチル基による置換基を有し得る。
【0033】
芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジヒドロキシ化合物に基づくこれらのポリエステルは、芳香族ジカルボン酸又はこれらのエステル又はその他のエステル形成誘導体と、脂肪族ジヒドロキシ化合物との反応(それ自体周知の方法において)により製造され得る。
【0034】
言及され得る好ましいジカルボン酸は、2,6-ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸及びイソフタル酸及びこれらの混合物である。30mol%まで、好ましくは10mol%までの芳香族ジカルボン酸が、脂肪族又は環状脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸により置換され得る。より好ましいものは、ジカルボン酸としてのテレフタル酸であり、即ち、より好ましいポリエステルA)は、ポリアルキレンテレフタレートである。
【0035】
脂肪族ジヒドロキシ化合物の中で、好ましいものは、2~6個の炭素原子を有するジオール、特に、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコール及びこれらの混合物である。
【0036】
言及され得る特に好ましいポリエステル(A)は、2~6個の炭素原子を有するアルカンジオールから生成するポリアルキレンテレフタレートである。これらの中でも、好ましいものは特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート及びこれらの混合物である。さらに好ましいものは、PET及び/又はPBTであり、これは、1質量%まで、好ましくは0.75質量%までの1,6-ヘキサンジオール及び/又は2-メチル-1,5-ペンタンジオールをさらなるモノマー単位として含むものである。
【0037】
ポリエステル(A)の固有粘度は、一般的に50~200、好ましくは80~160の範囲(ISO1628に基づき、フェノール/o-ジクロロベンゼン(25℃にて質量比1:1)混合物の0.5質量%の溶液中で測定された)である。
【0038】
好ましいものは、特に、100meq/kgまでのポリエステル、好ましくは50meq/kgまで、及び特に40meq/kgまでのカルボキシル末端基含有量を有するポリエステルである。これらのポリエステルは、例として、ドイツ国特許公開第4401055号公報の方法により製造され得る。カルボキシ末端基含有量は、通常、滴定法(例えば、電位差滴定法)により決定される。
【0039】
PETリサイクレート(スクラップPETとしても知られる)、所望により、PBTのようなポリアルキレンテレフタレートとの混合物を使用することが、さらに有利である。
【0040】
用語再生品は、一般的に下記を意味する:
1)製造業における再生品として知られるもの:これらは、重縮合中又は加工中の生産廃棄物、例えば、射出成型成形からのスプルー、射出成形又は押出成形からの立ち上げ時の原料、又は、押出シート又はフィルムからのエッジトリムである。
2)使用済みの再生品:これらは、末端消費者により利用された後に収集及び処理されたプラスチック製品である。ミネラルウォーター、ソフトドリンク及びジュースためのブロー成形のPETボトルは、容易で量的条件から重要な品目である。
【0041】
両タイプの再生品とも、再粉砕材料としてか又はペレットの形態の両方で使用され得る。後者の場合において、粗リサイクル材料は、分離されそして精製され、そして次いで押出機を用いて溶融されペレット化される。これは、通常、取り扱い特性及び自由流動特性、そして、加工におけるさらなる工程のための計量を促進するものである。
【0042】
エッジ長さは、10mmまでであるべきであり、及び、好ましくは8mm未満であるべきである。
【0043】
ポリエステルは、加工中に(痕跡量の水分により)加水分解を受けるため、リサイクルされた原料を予備乾燥することが望ましい。乾燥後の痕跡量の水分含有量は、好ましくは<0.2%、特に<0.05%である。
【0044】
言及される他の基は、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導された完全芳香族ポリエステルのものである。
【0045】
好適な芳香族ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジヒドロキシ化合物に基づくポリエステルについて既に記載されている化合物である。好ましいものは、5~100mol%のイソフタル酸及び0~95mol%のテレフタル酸の混合物を使用すること、特に、約80%~50%のテレフタル酸及び20~50%のイソフタル酸の混合物を使用することである。
【0046】
芳香族ジヒドロキシ化合物は、好ましくは、下記一般式
【化1】
(式中、
Zは、最大でも8個の炭素原子を有するアルキレン基又はシクロアルキレン基、12個までの炭素原子を有するアリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子又は硫黄原子、又は化学結合を表し、及び、式中、mは、0~2の値を表す。)を有する。
【0047】
また、化合物中のフェニレン基は、C1-C6-アルキル基又はアルコキシル基、及びフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子による置換を有し得る。
【0048】
これらの化合物のための、親化合物の例は、
・ジヒドロキシビフェニル、
・ジ(ヒドロキシフェニル)アルカン、
・ジ(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、
・ジ(ヒドロキシフェニル)スルフィド、
・ジ(ヒドロキシフェニル)エーテル、
・ジ(ヒドロキシフェニル)ケトン、
・ジ(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、
・α,α’-ジ(ヒドロキシフェニル)ジアルキルベンゼン
・ジ(ヒドロキシフェニル)スルホン、
・ジ(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、
・レゾルシノール、及びヒドロキノン、
・及びまた、環がアルキル化されたか及び環がハロゲン化されたこれらの誘導体
である。
【0049】
これらの中でも、好ましいものは、
・4,4’-ジヒドロキシビフェニル、
・2,4-ジ(4’-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、
・α,α’-ジ(4’-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、
・2,2-ジ(3’-メチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、及び
・2,2-ジ(3’-クロロ-4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、
及び特に、
・2,2-ジ(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、
・2,2-ジ(3’,5-ジクロロジヒドロキシフェニル)プロパン、
・1,1-ジ(4’-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
・3,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、
・4’,4’-ヒドロキシフェニルジフェニルスルホン、及び
・2,2-ジ(3’,5’-ジメチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロパン
又はこれらの混合物である。
【0050】
また、勿論、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジヒドロキシ化合物に基づくポリエステル及び完全芳香族ポリエステルの混合物を使用することも可能である。これらは、一般的に、20~98質量%のポリアルキレンテレフタレート及び2~80質量%の完全芳香族のポリエステルを含む。
【0051】
また、勿論、コポリエーテルエステルのようなポリエステルブロックコポリマーを使用することも可能である。
【0052】
このタイプの生成物は、それ自体周知であり、及び、文献、例えば、米国特許第3,561,014号明細書中に記載されている。対応する生成物は、例えば、Hytrel(登録商標)(デュポン社)によって市販されている。
【0053】
また、ハロゲンフリーのポリカーボネートも、本発明のポリエステルである。好適なハロゲンフリーのポリカーボネートは、下記一般式:
【化2】
(式中、Qは、単結合、C
1-C
8-アルキレン基、C
2-C
3-アルキリデン基、C
3-C
8-シクロアルキリデン基、C
6-C
12-アリーレン基、又は、他に-O-、-S-、又は-SO
2-を表し、及び、mは、0~2の整数を表す。)
のビフェノールに基づくようなものである。
【0054】
ビフェノールのフェニレン基は、C1-C6-アルキル基又はC1-C6-アルコキシ基のような置換基を有し得る。
【0055】
一般式のビフェノールの好ましい例は、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンである。特に好ましいものは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、及びまた、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンである。
【0056】
また、ホモポリカーボネート又はコポリカーボネートの両方は、成分A)として好適であり、好ましいものは、ビスフェノールAのコポリカーボネート、並びにビスフェノールAホモポリマーである。
【0057】
好適なポリカーボネートは、周知の方法において、特に好ましくは、使用されるビフェノールの総量に基づき0.05~2.0mol%の少なくとも3官能性の化合物、例えば3個以上のフェノール性OH基を有するもの、を取り込むことにより、分枝状であり得る。
【0058】
特に好適なものとして実証済みのポリカーボネートは、相対粘度ηrelが1.10~1.50、特に1.25~1.40を有する。これは、平均分子量Mw(重量平均)が10000~200000g/mol、好ましくは20000~80000g/molに相当する。一般式のビスフェノールは、それ自体周知であり、又は、周知の方法により製造され得る。
【0059】
ポリカーボネートは、例えば、界面過程においてホスゲンとビスフェノールを、又は、均一相の過程においてホスゲンとビスフェノールとを反応させることによって製造され得(ピリジン法として知られる)、及びそれぞれの場合において、所望の分子量は、周知の連鎖停止剤の適切な量を使用することにより周知の方法により達成される。(ポリジオルガノシロキサン含有ポリカーボネートに関し、例えばドイツ国特許公開第3334782号公報を参照のこと。)。
【0060】
好適な連鎖停止剤の例は、フェノール、p-tert-ブチルフェノール、また他に、長鎖アルキルフェノール、例えば、4-(1,3-テトラメチルブチル)フェノール(ドイツ国特許公開第2842005号においてみられるような)、又は、アルキル置換基中に合計8~20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノール又はジアルキルフェノール(ドイツ国特許公開第3506472号においてみられるような)、例えば、p-ノニルフェニル、3,5-ジ-tert-ブチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-ドデシルフェノール、2-(3,5-ジメチルへプチル)フェノール及び4-(3,5―ジメチルへプチル)フェノールである。
【0061】
本発明の目的のために、ハロゲンフリーのポリカーボネートの語句は、ハロゲンフリーのビフェノールから、ハロゲンフリーの連鎖停止剤から、及び所望によりハロゲンフリーの分岐剤から作られており、ここで例えば、界面過程におけるホスゲンを用いるポリカーボネートの製造から得られる、加水分解性の塩素のppmレベルにおける下位の量の含有量は、本発明の目的のためのハロゲン含有の用語に値するものとみなされるものではない。ppmレベルの量の加水分解性の塩素の含有量を有するこのタイプのポリカーボネートは、本発明の目的のためのハロゲンフリーのポリカーボネートである。
【0062】
言及され得るその他の好適な成分A)は、アモルファスのポリエステルカーボネートであり、ここでホスゲンは、イソフタル酸及び/又はテレフタル酸単位のような芳香族ジカルボン酸単位により製造プロセスの間に置換され得る。文献は、現在のところ、欧州特許公開第711810号公報にさらに詳細が述べられ得る。
【0063】
モノマー単位としてのシクロアルキル部分を有するその他の好適なコポリカーボネートは、欧州特許公開第365916号公報に記載されている。
【0064】
さらに、ビスフェノールAは、ビスフェノールTMCにより置き換えられ得る。このタイプのポリカーボネートは、Covestro(APEC HT(登録商標))から市販され入手可能である。
【0065】
成分B
本発明の成形組成物は、成分B)として、成形組成物の総質量に基づき、0.1~30質量%、好ましくは0.5~15質量%、特に1~10質量%、及び非常に特別に好ましくは1~5質量%の、ポリε-カプロラクトンを含む。
【0066】
このタイプのポリエステルは、下記構造:
【化3】
(式中nは200~600を表す。)で表される。
【0067】
これらは、通常、ε-カプロラクトンの開環重合により製造される。
【0068】
これらのポリマーは、半結晶であり、及び、生分解性ポリエステルに分類される。
【0069】
ROMPPオンライン百科事典によると、これらは、生物学的活性のある環境(コンポスト等)中で微生物の存在下にて分解するポリマーである。(酸化型分解性ポリエステル及びUVによるポリエステル分解とは対照をなしている。)。
【0070】
好ましい成分B)の平均分子量Mwは、5000~200000g/mol、特に50000~140000g/mol(ヘキサフルオロイソプロパノール及び0.05%のトリフルオロ酢酸カリウムを溶媒として用い、PMMAを標準として用いて、GPCの方法により測定される)である。
【0071】
融解範囲(DSC、DIN11357に基づき20K/分)は、一般的には80~150℃、好ましくは100~130℃である。
【0072】
このタイプの製品は、例えばIngevity社より、Capa(登録商標)として市販で入手可能である。
【0073】
成分C
本発明の成形組成物は、成分C)として、成形組成物の総質量に基づき、0.1~30質量%、好ましくは0.5~15質量%、特に1~10質量%、及び非常に特別に好ましくは1~5質量%の、B)及びA)とは異なる生分解性ポリエステルを含む。
【0074】
上記は、好ましくは脂肪族-芳香族ポリエステルを意味することを意図している。
【0075】
脂肪族-芳香族ポリエステルC)の語句は、直鎖、鎖延長された、及び好ましくは分枝状及び鎖延長された、ポリエステルを意味し、例として国際公開第96/15173号公報から国際公開第96/15176号公報又は国際公開第98/12242号公報に記載されているようなものであり、ここに明確に参照として取り込まれる。種々の半芳香族ポリエステルの混合物も、同様に使用され得る。より最近の興味深い開発は、再生可能な原料に基づくものである(国際公開第2010/034689号公報参照のこと)。特に、ポリエステルC)の語句は、エコフレックス(Ecoflex)(登録商標)(BASF SE社)のような製品を意味する。
【0076】
好ましいもののなかで、ポリエステルC)は、重要な成分:
C1) C1)~C2)に基づき、30~70mol%、好ましくは40~60mol%、特に好ましくは50~60mol%の、脂肪族ジカルボン酸又はその混合物、好ましくは下記リスト:アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びブラシル酸、
C2) C1)~C2)に基づき、30~70mol%、好ましくは40~60mol%、特に好ましくは50~60mol%の、芳香族ジカルボン酸又はその混合物、好ましくは下記:テレフタル酸、
C3) C1)~C2)に基づき、98.5~100mol%の、1,4-ブタンジオール及び1,3-プロパンジオール、
C4)C1~C3)に基づき、0.05~1.5mol%、好ましくは0.1~0.2mol%の鎖延長剤、特に、ジ-又は多官能性イソシアネート、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート、及び所望により分枝剤、好ましくは:トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及び特にグリセロール
を含むポリエステルである。
【0077】
好ましく使用され得る脂肪族二塩基酸及び対応する誘導体C1)は、6~20個の炭素原子、好ましくは8~10個の炭素原子を有するようなものである。これらは、直鎖又は分枝状の両方であり得る。しかし、原則として、多数の炭素原子、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸を使用することも可能である。
【0078】
一例として、以下の2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、α-ケトグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、スベリン酸及びイタコン酸が言及され得る。ここで、これらのジカルボン酸又はエステル形成性誘導体を、個々に又はこれらの2種以上の混合物として使用することも可能である。
【0079】
アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸又はこれらのエステル形成性誘導体又はこれらの混合物を使用することが好ましい。アジピン酸又はセバシン酸又はそれぞれのこれらのエステル形成性誘導体又はこれらの混合物を使用することが特に好ましい。
【0080】
特に、好ましいものは、下記の脂肪族-芳香族ポリエステル:ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)である。
【0081】
芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体C2)は、好ましくは、個々に、又はその2種以上の混合物の形態にて使用され得る。特に好ましいものは、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体、例えばジメチルテレフタレートの使用である。
【0082】
ジオールC3)- 1,4-ブタンジオール及び1,3-プロパンジオール -は、再生可能原料の形態で得られる。また、言及されるジオールの混合物を使用することも可能である。
【0083】
一般的に、使用方法は、ポリエステルC)の総質量に基づき、0.05~1.5質量%、好ましくは0.1~1.0質量%、及び特に好ましくは0.1~0.3質量%の分岐剤、及び/又は、ポリエステルC)の総質量に基づき、0.05~1質量%、好ましくは0.1~1.0質量%の、多官能性イソシアネート、イソシアヌレート、オキサゾリン、無水カルボン酸、例えば無水マレイン酸、エポキシド(特に、エポキシド含有ポリ(メタ)アクリレート)、少なくとも3価のアルコール又は少なくとも3塩基性カルボン酸からなる群から選択される鎖延長剤C4)から作られる。鎖延長剤C4)として使用され得る化合物は、多官能性であり、及び特に二官能性イソシアネート、イソシアヌレート、オキサゾリン又はエポキシドである。
【0084】
分岐剤とみなされ得るその他の化合物は、鎖延長剤であり、及びまた、少なくとも3個の官能基を有するアルコール又はカルボン酸誘導体である。特に好ましい化合物は、3~6個の官能基を有する。一例として、下記:酒石酸、クエン酸、マレイン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸及び無水ピロメリット酸;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン;ペンタエリスリトール、ポリエーテルトリオール及びグリセロールが言及され得る。好ましいものは、ポリオール、例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールであり、及び特にグリセロールである。成分C4)を用いて、擬塑性特性を有する生分解性ポリエステルを構築することも可能である。融液のレオロジーを改善し;生分解性ポリエステルの容易な加工が可能となる。
【0085】
一般的に、重合手順中の比較的初期の時点にて、分岐(少なくとも三官能性)化合物を添加することが好ましい。
【0086】
好ましい二官能性鎖延長剤の例は、トリレン2,4-ジイソシアネート、トリレン2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、ナフチレン1,5-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びメチレンビス(4-イソシアナートシクロヘキサン)である。特に好ましいものは、イソホロンジイソシアネートであり、及び特にヘキサメチレン1,6-ジイソシアネートである。
【0087】
ポリエステルC)の数平均分子量(Mn)は、一般的に、5000~100000g/molの範囲、特に10000~75000g/molの範囲、好ましくは15000~38000g/molの範囲であり、一方、重量平均分子量(Mw)は、一般的には、30000~300000g/mol、好ましくは60000~200000g/molであり、及びこれらのMw/Mn比は、1~6、好ましくは2~4である。固有粘度は、好ましくは50~450、好ましくは80~250g/ml(ISO307に基づき、o-ジクロロベンゼン/フェノール(質量比50/50)中で測定される)である。溶融点は、85~150℃の範囲、好ましくは95~140℃の範囲である。
【0088】
EN ISO1133-1 DE(190℃、2.16kg重量)に基づくMVR(メルトボリュームレート)は、一般的に0.5~8cm3/10分、好ましくは0.8~6cm3/10分である。DIN EN12634に基づく酸価は、一般的には0.01~1.2mgKOH/g、好ましくは0.01~1.0mgKOH/g、及び特に好ましくは0.01~0.7mgKOH/gである。
【0089】
成分D
本発明の成形組成物は、成分D)として、成形組成物の総質量に基づき、0.1~30質量%、好ましくは5~25質量%、及び特に10~25質量%の、ホスフィン酸塩を含む。
【0090】
好ましいものは、下記式(I)のホスフィン酸塩及び/又は下記式(II)のジホスフィン酸塩:
【化4】
[式中、
R
1及びR
2は、同一又は異なり、水素原子、又は、直鎖又は分枝の形態の、C
1-C
6-アルキル基、及び/又はアリール基、又は
【化5】
(式中、R’は水素原子、フェニル基又はトルイル基を表す。)を表し;
R
3は、直鎖又は分枝の形態にある、C
1-C
10-アルキレン基又はC
6-C
10-アリーレン基、-アルキルアリーレン基、又は-アリールアルキレン基を表し;
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr,Mn、Li、Na、K及び/又はプロトン化した窒素塩基を表し;
mは、1~4を表し;
nは、1~4を表し;
xは、1~4を表す]
又はこれらのポリマーである。
【0091】
前記成分D)のR1及びR2は、同一又は異なり、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基及び/又はフェニル基であることが好ましい。
【0092】
成分DのR3は、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-オクチレン基又はn-ドデシレン基、フェニレン基又はナフチレン基;メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、tert-ブチルフェニレン基、メチルナフチレン基、エチルナフチレン基又はtert-ブチルナフチレン基;フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基又はフェニルブチレン基であることが好ましい。
【0093】
R1及びR2は、水素原子、メチル基、エチル基、及びM=Mg、Ca、Zn、Alであることが好ましく、ここで特に好ましいものは、Alヒドロホスファイト及びAlジエチルホスフィネートである。
【0094】
ホスフィネートは、好ましくは、水溶液からの対応する金属塩の沈殿により製造される。しかし、また、ホスフィネートは、支持剤としての好適な無機金属酸化物又は金属スルフィド(白色顔料、例えばTiO2、SnO2、ZnO、ZnS、SiO2)の存在下に沈殿され得る。これは、熱可塑性ポリエステルのためのレーザーマーキング可能な難燃剤として使用され得る表面修飾顔料を与える。
【0095】
成分E
本発明の成形組成物は、成分E)として、成形組成物の総質量に基づき、0~20質量%、好ましくは1~20質量%、及び特に1~15質量%の、窒素含有難燃剤、好ましくはメラミン化合物、より好ましくはメラミンシアヌレートを含み得る。
【0096】
本発明に好適なメラミンシアヌレート(成分E)は、好ましくは、等モル量のメラミン(一般式I)及びシアヌル酸又はイソシアヌル酸(一般式Ia及びIb):
【化6】
【化7】
の反応生成物である。
【0097】
これは、例えば、出発原料の水溶液の90~100℃における反応を経て得られる。市販製品は、d99値が50μmより小さい、平均d50粒径が1.5~7μmの白色粉末である。
【0098】
その他の好適な化合物(しばしば、塩又は付加化合物とも称される)は、メラミンサルフェート、メラミン、メラミンボレート、メラミンオキサレート、メラミンホスフェート prim.、メラミンホスフェートsec.、及びメラミンピロホスフェートsec.、メラミンネオペンチルグリコールボレート、及びまた高分子メラミンホスフェート(例えば、CAS番号56386-64-2又は218768-84-4)である。
【0099】
好ましいものは、平均縮合度を表す数nが20~200の、及び、リン原子のモル当たりの1,3,5-トリアジン含有量が1.1~2.0molの、メラミン、メラム、メレム、メロン、アンメリン、アンメリド、2-ウレイドメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、及びジアミノフェニルトリアジンからなる群より選択される1,3,5-トリアジン化合物である、1,3,5-トリアジン化合物から誘導されたメラミンポリホスフェート塩である。これらの塩のn値は、一般的に、40~150、及びリン原子対1,3,5-トリアジン化合物のモル比が1.2~1.8であることが好ましい。さらに、欧州特許公開第1095030号公報にあるように製造された10質量%水性スラリーのpHは、一般的に4.5より高く、好ましくは少なくとも5.0である。pHは、一般的に、300mlのビーカーに25gの塩及び225gの25℃の純水を入れ、得られた水性スラリーを30分間攪拌し、そしてpHを測定することにより、測定される。縮合度の数平均である上記n値は、31P固体NMRの方法により測定され得る(J.R.van Wazer, C.F.Callis, J.Shoolery及びR.Jones, J.Am.Chem.Soc.,第78巻,第5715頁(1956年)は、隣接したリン酸基の数が、オルトホスフェート、ピロホスフェート及びポリホスフェートの間の明白な鑑別を可能にする固有のケミカルシフトにより与えられることを開示している。)。欧州特許公開第1095030号公報はさらに、n値が20~200であり、当該1,3,5-トリアジン化合物の1,3,5-トリアジン含有量が1.1~2.0molの1,3,5-トリアジン化合物である1,3,5-トリアジン化合物の所望のポリホスフェート塩を製造する方法を記載している。当該プロセスは、オルトリン酸により1,3,5-トリアジン化合物をそのオルトリン酸塩に変換し、次いでオルトリン酸塩を1,3,5-トリアジン化合物のポリホスフェートに変換するために脱水及び熱処理を行うことを含む。好ましくは、当該熱処理は、少なくとも300℃、及び好ましくは少なくとも310℃にて行われる。1,3,5-トリアジン化合物のオルトリン酸塩に加えて、他の1,3,5-トリアジンホスフェート、例えば、オルトホスフェートの混合物及びピロホスフェートの混合物を含めたもの、の使用も同様に可能である。
【0100】
【0101】
本発明の目的のための成分E)は、例としてのベンゾグアナミンそれ自体及びその付加体又は塩の例だけではなく、窒素原子上で置換された誘導体及びそれらの付加体又は塩であることも目的としている。
【0102】
その他の好適な成分E)は、アンモニウムポリホスフェート(NH
4PO
3)
n(式中、nは約200~1000、好ましくは600~800を表す。)であり、及び一般式IV
【化8】
で表されるトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)又はその芳香族カルボン酸Ar(COOH)
m(式中、Arは、モノ-、ビ-又は三核の芳香族六員環系を表し、及びmは、2、3又は4を表す。)との反応生成物、任意に互いの混合物である。
【0103】
好適なカルボン酸の例は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸、メロファン酸、プレニト酸、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、ナフタレンジカルボン酸、及びアントラセンカルボン酸である。
【0104】
これらは、欧州特許公開第584567号公報に基づき、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと酸又はそれらのアルキルエステル又はそれらのハロゲン化物との反応により製造される。
【0105】
このタイプの反応生成物は、架橋も有し得るモノマー及びオリゴマーエステルの混合物である。オリゴマー化度は、通常2~100、好ましくは2~20である。好ましいものは、THEIC及び/又はその反応生成物のリン含有窒素化合物との混合物、特に、(NH4PO3)n又はメラミンピロホスフェート又は重合化メラミンホスフェートである。混合比率、例えば、(NH4PO3)n対THEICの比率は、成分E)の総質量に基づき、好ましくは90~50:10~50質量%、特に80~50:50~20質量%である。
【0106】
その他の好適な化合物は、下記式V:
【化9】
(式中、R及びR’は、1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル基、好ましくは水素原子を表し、及び、特にそれらのリン酸、ホウ酸及び/又はピロリン酸との付加物を表す。)
で表されるベンゾグアナミン化合物である。
【0107】
また、好ましいものは、下記式VI:
【化10】
(式中、R及びR’は、一般式Vで定義されたものを表す。)で表されるアラントイン化合物であり、及びまた、これらのリン酸、ホウ酸及び/又はピロリン酸との塩であり、
及び、また、下記一般式VII
【化11】
(式中Rは、一般式Vで定義されたものを表す。)
で表されるグリコールウリル及びこれらの上記酸との塩である。
【0108】
好適な生成物は、市販で入手可能であり、又は、ドイツ国特許公開第19614424号公報によるものである。
【0109】
本発明により使用され得るシアノグアニジン(一般式VIII)は、例えば、カルシウムシアナミドを炭酸と反応させることにより、次いでpH9~10においてシアナミドが二量化しシアノグアニジンを得る。
【化12】
【0110】
商業上得られる製品は、融点が209℃~211℃の白色粉末である。
【0111】
本発明においては、下記の粒径分布:
d98<25μm、好ましくは<20μm、
d50<4.5μm、好ましくは<3μm、
を有するメラミンシアヌレートを使用することが非常に好ましい。
【0112】
一般的に、当業者は、d50値は、粒子の50%がこれより小さく、及び粒子の50%がこれより大きいものである粒径値であることを理解している。
【0113】
粒径分布は、レーザー散乱(ISO13320との類推により)を用いて決定される。
【0114】
成分F
本発明の成形組成物は、成分F)として、成形組成物の総質量に基づき、0~15質量%、好ましくは0.1~15質量%、特に0.5~10質量%の、少なくとも1つのアルキル置換されたフェニル環を有する芳香族リン酸エステルを含み得る。
【0115】
好ましい芳香族リン酸エステルの溶融点は、ISO11357に基づくDSCを用いて測定される、20K/分における1回目加熱曲線により、好ましくは50~150℃、より好ましくは60~110℃である。
【0116】
好ましい成分F)は、下記式(III)
【化13】
下記式(IV)
【化14】
又は、下記式(V)
【化15】
(式中、
互いに独立して、
R
1は、水素原子、メチル基又はイソプロピル基、好ましくは水素原子を表し、
nは、0~7、好ましくは0を表し、
R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基又はイソプロピル基、好ましくはメチル基を表し、
mは、1~5、好ましくは1~2を表し、
R’’は、水素原子、メチル基、エチル基又はシクロプロピル基、好ましくはメチル基又は水素原子を表し、
但し、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6部分の少なくとも1つは、アルキル部分である。)
又はこれらの混合物からなる。
【0117】
R6及びR4部分は同一であることが好ましく、及び特にR2~R6部分は同一であることが好ましい。
【0118】
【0119】
これらの化合物は、Daihaci社からのPX-200(登録商標)、CAS番号139189-30-3、又はICL-IP社からのSol―DP(登録商標)として市販で入手可能である。
【0120】
成分H
本発明の成形組成物は、成分H)として、組成物の総質量に基づき、0~50質量%、特に40質量%までのその他の追加物質及び加工助剤を含み得る。
【0121】
通常使用される追加物質H)は、例えば、成形組成物の総質量に基づき、40質量%まで、好ましくは15質量%までの弾性重合体(また、しばしば、衝撃改質剤、エラストマー又はゴムと称される)である。
【0122】
非常に一般的には、これらは、下記:エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、ビニルアセテート、スチレン、アクリロニトリル、及びアルコール成分中に1~18個の炭素原子を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの少なくとも2種のモノマーから好ましく構成されるコポリマーである。
【0123】
このタイプのポリマーは、例えば、Houben-Weyl、Methoden der organischen Chemie、第14/1巻、第392~406頁(Georg-Thieme出版、シュトッツガルト、ドイツ国、1961年)、及びC.B.Bucknallによる研究論文「Toughened Plastics」(Applied Science出版、ロンドン、英国、1977年)に記載されている。
【0124】
これらのエラストマーのいくつかの好ましいタイプを、下記に記載する。
【0125】
エラストマーの好ましいタイプは、エチレン-プロピレン(EPM)及びエチレン-プロピレン-ジエン(EPDM)ゴムとして知られるようなものである。
【0126】
通常、EPMゴムは、残余の二重結合を実質的に有しないものであり、一方で、EPDMゴムは、100個の炭素原子あたり1~20個の二重結合を有し得る。
【0127】
EPDMゴムのジエンモノマーの言及され得る例は、共役ジエン、例えばイソプレン及びブタジエン、5~25個の炭素原子を有する非共役ジエン、例えば1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエン及び1,4-オクタジエン、環状ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン及びジシクロペンタジエン、及びまた、アルケニルノルボルネン、例えば、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ブチリデン-2-ノルボルネン、2-メタアリル-5-ノルボルネン及び2-イソプロぺニル-5-ノルボルネン、及びトリシクロジエン、例えば3-メチルトリシクロ[5.2.12,6]-3,8-デカジエン、及び、これらの混合物であり得る。好ましいものは、1,5-ヘキサジエン、5-エチリデンノルボルネン及びジシクロペンタジエンである。EPDMゴムのジエン含有量は、好ましくは、ゴムの総質量に基づき、0.5~50質量%、特に1~8質量%である。
【0128】
また、EPM及びEPDMゴムは、好ましくは、反応性カルボン酸又はこれらの誘導体とグラフト化されている。これらの例は、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート)及びまた無水マレイン酸である。
【0129】
エチレンと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はこれらの酸のエステルとのコポリマーは、好ましいゴムのその他の群である。また、このゴムは、ジカルボン酸、例えばマレイン酸及びフマル酸、又はこれらの酸の誘導体、例えばエステル及び無水物、及び/又はエポキシ基を含有するモノマーを含み得る。ジカルボン酸誘導体を含有するか又はエポキシ基を含有するこれらのモノマーは、好ましくは、ジカルボン酸基及び/又はエポキシ基を含み及び下記一般式I、II、III又はIV:
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
(式中、R
1~R
9は、それぞれ独立して、水素原子又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、及び、mは、1~20の整数を表し、gは、0~10の整数を表し、及びpは、0~5の整数を表す。)
を有するものを含むモノマーをモノマー混合物へ添加することによりゴム中に取り込まれる。
【0130】
R1~R9部分は、水素原子を表し、mは0又は1を表し、及び、gは1を表すことが好ましい。対応する化合物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アリルグリシジルエーテル、及びビニルグリシジルエーテルである。
【0131】
一般式I、II及びIVの好ましい化合物は、マレイン酸、無水マレイン酸及びエポキシ基を有するメタ(アクリレート)、例えばグリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレート及び第3級アルコールとのエステル、例えばtert-ブチルアクリレートである。後者は、遊離のカルボキシル基を有さないが、それらの挙動は、遊離酸に近いものであり、ゆえにしたがって潜在的なカルボキシ基を有するモノマーと称される。
【0132】
コポリマーは、50~98質量%のエチレン、0.1~20質量%のエポキシ基及び/又はメタクリル酸を含むモノマー及び/又は無水基を含むモノマーからなることが有利であり、残余の量(100質量%まで)は(メタ)アクリレートである。
【0133】
特に好ましいものは、
50~98質量%、特に55~95質量%の、エチレン、
0.1~40質量%、特に0.3~20質量%の、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸、及び/又は無水マレイン酸、及び
1~45質量%、特に10~40質量%の、n-ブチルアクリレート及び/又は2-エチルヘキシルアクリレート、
のコポリマーである。
【0134】
その他の好ましい(メタ)アクリレートは、メチル、エチル、プロピル、イソブチル及びtert-ブチルエステルである。
【0135】
また、これらと同時に使用され得るコモノマーは、ビニルエステル及びビニルエーテルである。
【0136】
上記のエチレンコポリマーは、それ自体周知の方法により、好ましくは、高圧及び昇温条件下でのランダム共重合により製造され得る。適切な方法は、広く周知である。
【0137】
その他の好ましいエラストマーは、エマルジョンポリマーであり、その製造は、例えば、Blackleyによる研究論文「Emussion Polymerization」に記載されている。使用され得る乳化剤及び触媒、はそれ自体周知である。
【0138】
原則として、均質構造化エラストマー又はシェル構造を有するものを使用することが好ましい。シェル型構造は、個々のモノマーの一連の添加により決定される。ポリマーの形態は、この一連の添加に影響を及ぼす。
【0139】
ここで言及され得るモノマーは、単に例示であるが、エラストマーのゴム部分の製造のためには、アクリレート、例えばn-ブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレート、対応するメタクリレート、ブタジエン及びイソプレン、及びまたこれらの混合物である。これらのモノマーは、その他のモノマー、例えばスチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテルと、その他のアクリレート又はメタクリレート、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート又はプロピルアクリレートと共重合され得る。
【0140】
エラストマーの軟質相又はゴム相(ガラス転移温度が0℃より低い)は、コア部、外殻又は中間シェル(構造が2つのシェルを有するエラストマーの場合にて)であり得る。また、1つ以上のシェルを有するエラストマーは、ゴム相からなる1つ以上のシェルを有し得る。
【0141】
エラストマーの構造中にゴム相の他に1つ以上の硬成分(ガラス転移温度が20℃より高い)が含まれる場合、これらは、一般的には、原則的なモノマーとして、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-メチルスチレン、p―メチルスチレン、又はアクリレート又はメタクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート又はメチルメタクリレートを重合化することによって製造される。これらの他に、ここで比較的少量の他のコモノマーを使用することも可能である。
【0142】
いくつかの場合において、表面において反応基を有するエマルジョンポリマーを使用することが有利であることが証明されている。このタイプの基の例は、エポキシ基、カルボキシ基、潜在的なカルボキシ基、アミノ基及びアミド基及びまた下記一般式
【化21】
(式中、置換基は下記のように定義される:
R
10は、水素原子又はC
1-C
4-アルキル基を表し、
R
11は、水素原子又はC
1-C
5-アルキル基又はアリール基、特にフェニル基を表し、
R
12は、水素原子又はC
1-C
10-アルキル基、C
6-C
12-アリール基又は-OR
13を表し、
R
13は、C
1-C
5-アルキル基又はC
6-C
12-アリール基を表し、任意にO-又はN-含有基により置換されている、
Xは、化学結合、C
1-C
10-アルキレン基又はC
6-C
12-アリーレン基、又は
【化22】
を表し、
YはO-Z又はNH-Zを表し、そして
Zは、C
1-C
10-アルキレン基又はC
6-C
12-アリーレン基を表す。)
で表されるモノマーの同時使用により導入され得る官能基である。
【0143】
また、欧州特許公開第208187号公報に記載されているグラフトモノマーも、表面における反応基を導入するために好適である。
【0144】
言及され得るその他の例は、アクリルアミド、メタクリルアミド及び置換されたアクリレート又はメタクリレート、例えば、(N-tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート、(N,N-ジメチルアミノ)エチルアクリレート、(N,N-ジメチルアミノ)メチルアクリレート及び(N,N-ジエチルアミノ)エチルアクリレートである。
【0145】
また、ゴム相の粒子は、架橋されていても良い。架橋モノマーの例は、1,3-ブタジエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート及びジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、及びまた欧州特許公開第50265号公報に記載されている化合物である。
【0146】
また、グラフト結合モノマーとして知られるモノマー、即ち、重合の間に異なる速度で反応する2つ以上の重合可能な二重結合を有するモノマー、を使用することも可能である。好ましいものは、少なくとも1個の反応基が他のモノマーとして同じ速度で重合する一方で他の反応基(又は複数の反応基)が、例えばより顕著により緩やかに重合するタイプの化合物を使用することである。種々の重合速度は、ゴム中の不飽和二重結合の一定の割合を生じさせる。そして、他の相がこのタイプのゴム上にグラフトされる場合、ゴム中に存在する少なくともいくつかの二重結合がグラフトモノマーと反応し化学結合を形成する、即ち、グラフトされた相は、グラフトベースに結合する少なくとも一定度数の化学結合を有する。
【0147】
このタイプのグラフト結合モノマーの例は、アリル基を含有するモノマー、特にエチレン性不飽和カルボン酸のアリルエステル、例えば、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート及びジアリルイタコネート、及び対応するこれらのジカルボン酸のモノアリル化合物である。これらの他に、広範なその他の好適なグラフト結合モノマーがある。さらなる詳細のために、参考文献、例えば米国特許第4,148,846号明細書が挙げられ得る。
【0148】
衝撃改質モノマー中のこれらの架橋結合モノマーの割合は、一般的に、衝撃改質ポリマーに基づき、5質量%まで、好ましくは多くとも3質量%である。
【0149】
いくつかの好ましいエマルジョンポリマーを下記に一覧する。まずここで言及されるのは、コア及び少なくとも1つの外殻(シェル)を有するグラフトポリマーであって、下記構造を有するものである。
【表2】
【表3】
【0150】
これらのグラフトポリマー、特にABSポリマー及び/又はASAポリマーは、好ましくは、40質量%までの量でPBTが衝撃改質のために使用され、任意に40質量%までのポリエチレンテレフタレートとの混合物において使用される。このタイプのブレンド製品は、商標Ultradur(登録商標)S(以前にはUltrablend(登録商標)S、BASF AG社からの)として得られるものである。
【0151】
また、構造が1つ以上のシェルを有するグラフトポリマーの代わりに、均質のもの、即ち単一シェル、1,3-ブタジエン、イソプレン及びn-ブチルアクリレートからなるエラストマー又はこれらのコポリマーからなるものを使用することもまた可能である。これらの製品もまた、架橋モノマー又は反応基を有するモノマーの同時使用により製造され得る。
【0152】
好ましいエマルジョンポリマーの例は、n-ブチルアクリレート-(メタ)アクリル酸コポリマー、n-ブチルアクリレート-グリシジルアクリレート又はn-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、n-ブチルアクリレートからなるか又はブタジエンに基づく内部コアを有し上記コポリマーからなる外殻を有するグラフトポリマー、及び反応基を供給するコモノマーとエチレンとのコポリマーである。
【0153】
また、記載されたエラストマーは、その他の慣用の方法により、例えば懸濁重合により製造され得る。
【0154】
また、好ましいものは、ドイツ国特許公開第3725576号公報、欧州特許公開第235690号公報、ドイツ国特許公開第3800603号公報及び欧州特許公開第319290号公報に記載されるような、シリコンゴムである。
【0155】
また、もちろん、上記に一覧されたタイプのゴムの混合物を使用することも可能である。
【0156】
言及され得る繊維状又は微粒子充填剤H)は、ガラス繊維、ガラスビーズ、アモルファスシリカ、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、胡紛、マイカ、硫酸バリウム、長石及び粉末石英である。繊維状充填剤H)の使用量は、一般的には、成形組成物の総質量に基づき、50質量%まで、特に35質量%まで、及び微粒子充填剤の使用量は、成形組成物の総質量に基づき、30質量%まで、特に10質量%までである。
【0157】
言及され得る好ましい繊維充填剤は、アラミド繊維及びチタン酸カリウム繊維であり、及び特に好ましいものは、Eガラスの形態のガラス繊維である。これらは、市販品の形態中、粗紡又は細切ガラスの形態において使用され得る。
【0158】
非常にレーザー吸収性のある充填剤、例えば炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン又はカーボンナノチューブの使用量は、成形組成物の総質量に基づき、好ましくは1質量%未満、特に好ましくは0.05質量%未満である。
【0159】
熱可塑性物質との相溶性を改善するために、繊維状充填剤は、シラン化合物で表面前処理されたものであり得る。
【0160】
好適なシラン化合物は、下記一般式
【化23】
のようなものであり、置換基の定義は下記:
【化24】
(式中、
nは、2~10、好ましくは3~4の整数を表し、
mは、1~5、好ましくは1~2の整数を表し、
kは、1~3、好ましくは1の整数を表す。)
のとおりである。
【0161】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、及び、また、対応するシランであって、置換基Xとしてのグリシジル基を含むものである。
【0162】
表面コーティングのためのシラン化合物の一般的に使用される量は、(Hに基づき)、0.05~5質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、及び特に0.2~0.5質量%である。
【0163】
また、針状鉱物も好適である。
【0164】
本発明の目的のために、針状鉱物充填剤は、非常に発達した針状特性を有する鉱物充填剤である。一例は、針状ウォラストナイトである。鉱物は、好ましくはL/D(長さ対直径)比が8:1~35:1、好ましくは8:1~11:1を有する。鉱物充填剤は、任意に、上述したシラン化合物で前処理されているものであり得るが、前処理は必須ではない。
【0165】
本発明の熱可塑性成形組成物は、成分H)として、通常の加工助剤、例えば、安定化剤、酸化遅延剤、熱に起因する分解及びUV光に起因する分解に対する剤、潤滑油及び離型剤、着色剤、例えば染料及び顔料、可塑剤等を含み得る。
【0166】
酸化遅延剤及び熱安定剤の言及され得る例は、熱可塑性成形組成物の総質量に基づき1質量%までの量の、立体障害性フェノール及び/又はホスファイト、ヒドロキノン、芳香族第2アミン、例えばジフェニルアミン、これらの基の置換された要素、及びこれらの混合物である。
【0167】
言及され得るUV安定剤であり一般的に成形組成物に基づき2質量%までの量で使用されるものは、種々の置換されたレゾルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノンである。
【0168】
添加され得る着色剤は、無機及び有機顔料、及びまた染料、例えば、ニグロシン及びアントラキノンである。例として欧州特許公開第1722984号公報、欧州特許公開第1353986号公報又はドイツ国特許公開第10054859号公報は、特に好適な着色剤を述べている。
【0169】
さらに、好ましいものは、10~40個、好ましくは16~22個の炭素原子を有する飽和又は不飽和芳香族カルボン酸と2~40個、好ましくは2~6個の炭素原子を含む飽和脂肪族アルコール又はアミンとのエステル又はアミドである。
【0170】
カルボン酸は一塩基又は二塩基であり得る。言及され得る例は、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸、及び特に好ましくはステアリン酸、カプリル酸及びまたモンタン酸(30~40個の炭素原子を有する脂肪酸の混合物)である。
【0171】
脂肪族アルコールは、一水酸基~四水酸基を持つものであり得る。アルコールの例は、n-ブタノール、n-オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びペンタエリスリトールであり、好ましいものは、グリセロール及びペンタエリスリトールである。
【0172】
脂肪族アミンは、単官能性~三官能性のものであり得る。これらの例は、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びジ(6-アミノヘキシル)アミンであり、ここで特に好ましいものは、エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンである。好ましいエステル又はアミドは、対応して、グリセロールジステアレート、グリセロールトリステアレート、エチレンジアミンジステアレート、グリセロールモノパルミテート、グリセロールトリラウレート、グリセロールモノベヘネート及びペンタエリスリトールテトラステアレートである。
【0173】
また、種々のエステル又はアミドの混合物、又はエステルとアミドを組み合わせて、任意の所望の混合比において使用することも可能である。
【0174】
好適な潤滑剤及び離型剤は、例えば、長鎖脂肪酸(例えば、ステアリン酸又はベヘン酸)、これらの塩(例えばカルシウムステアレート又は亜鉛ステアレート)、又はモンタンワックス(28~32個の炭素原子の鎖長を有する直鎖、飽和カルボン酸の混合物)、カルシウムモンタネート又はナトリウムモンタネート、及びまた、低分子量ポリエチレンワックス及び低分子量ポリプロピレンワックスである。
【0175】
可塑剤の例は、ジオクチルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、炭化水素油である。
【0176】
また、本発明の成形組成物は、成形組成物の総質量に基づき0~2質量%の、フッ素含有エチレンポリマーを含有し得る。これらは、フッ素含有エチレンポリマーの総質量に基づき、55~76質量%、好ましくは70~76質量%のフッ素含有量を有するエチレンのポリマーである。
【0177】
これらの例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー及び共重合可能なエチレン性不飽和モノマーの比較的少量(一般的に50質量%まで)を含むテトラフルオロエチレンコポリマーである。これらは、例えば、Schildknechtにより「Vinyl and Related Polymers」、Wiley出版、1952年、第484-494頁、及びWallにより「フルオロポリマー」(Wiley Interscience,1972年)に記載されている。
【0178】
これらのフッ素含有エチレンポリマーは、成形組成物中に均一な分布を有し、及び好ましくは粒径d50(数平均)が0.05~10μm、特に0.1~5μmの範囲を有する。これらの小さな粒径は、フッ素含有エチレンポリマーの水分散液の使用及びこれらをポリマー用融液に取り込むことにより特に好ましく達成され得る。
【0179】
本発明の熱可塑性成形組成物の製造
本発明の熱可塑性成形組成物は、それ自体周知の方法により製造され、慣用の攪拌装置、例えばスクリュー押出機、ブラベンダーミキサー又はバンバリーミキサー中で出発成分を混合し、そして次いでこれらを押出すことにより製造され得る。そして、押出物は冷却されそして粉砕される。また、(ドラム中で又はその他の方法にて、個々の成分のペレットで)個々の成分をプレミックスすることも可能であり、そして次に残りの出発原料を個々に及び/又は同様に混合物中に添加することも可能である。混合温度は、一般的には230~290℃である。
【0180】
その他の操作形態において、個別の成分は、ポリエステルプレポリマーと混合され、配合され及びペレット化され得る。次に、得られたペレットは、不活性ガス下の固相中で、連続的に又はバッチ式に、成分A)の溶融点以下の温度にて所望の粘度が達成されるまで濃縮される。
【0181】
本発明の成形組成物は、良好な機械的特性及び難燃特性を特徴とする。本発明の発明者らにより、メタロセン触媒を用いて製造された極性を変化させたポリオレフィンワックスが燃焼挙動、特に薄壁部品の燃焼挙動に好影響を与えることが見いだされた。さらに、特に押出しにおけるプロセスが改善され、即ち、プロセス中の添加剤のデポジットが無いか又は減少し、特にダイドルールが無いか又は減少した。
【0182】
本発明の成形組成物から製造された成形物は、内部部品又は外部部品の製造、好ましくは、下記部門:電気、家具、スポーツ、機械工学、サニタリー及び衛生、医学、パワー工学及び駆動技術、自動車及びその他の輸送手段、又は電気通信、消費者向けの電子機器、家庭用機器、機械工学、熱部門のための機器及び装置のためのハウジング材料、又は据付工事のための留め具部分、及びあらゆるタイプのコンテナ及び換気部分用、のいずれかの耐荷重性又は機械機能を有する部品の製造に使用される。
【0183】
これらの材料は、繊維、ホイル、及び任意の型の成形物、特に、プラグ、スイッチ、ハウジング部品、ハウジングカバー、ヘッドランプベゼル、シャワーヘッド、接続金具、アイロン、ロータリースイッチ、ストーブ制御装置、フライヤーの蓋、ドアハンドル、(リア)ミラーハウジング、(テールゲート)スクリーンワイパー、光学的伝導体のための被覆材料、網状絶縁ケーブルFOC(光ファイバーケーブル)用途のためのモノフィラメントのためのルースバッファーチューブ及び網状絶縁ケーブルのためのモノフィラメントとしての用途における製造に好適である。
【0184】
したがって、本発明はさらに、本発明によるポリエステル成形組成物の使用方法を含む、繊維、フィルム及び成形品の製造方法に関し、及び、本発明によるポリエステル成形組成物から得られる繊維、フィルム、又は成形品に関する。
【0185】
好ましくは、熱可塑性成形組成物は、好ましい肉厚が最大0.4mmである薄壁部品である。好ましい薄壁部品は、上記の様な繊維、ホイル及び成形品から選択される。
【0186】
電気及びエレクトロニクス部門において本発明のポリエステルを用いて製造され得る装置は、プラグ、プラグ部品、プラグコネクタ、ケーブルハーネス部品、サーキットマウント、サーキットマウント部品、三次元射出成形のサーキットマウント、電気コネクタ要素、電子機械工学部品及び光電子工学部品である。
【0187】
自動車内装における可能な使用は、ダッシュボード、ステアリングカラムスイッチ、シート部品、ヘッドレスト、センターコンソール、ギアボックス部品、及びドアモジュールの用途のものであり、及び自動車外装における可能な使用は、ドアハンドル、ヘッドランプ部品、外装ミラー部品、ウインドシールドワイパー部品、ウインドシールドワイパー保護ハウジング、装飾グリル、ルーフレイル、サンルーフフレーム及び外装車体部品の用途のものである。
【0188】
キッチン及び家庭用部門におけるポリエステルの可能な使用は、キッチン用品、例えば、フライヤー、アイロン、ボタン、及びまたガーデン及びレジャー部門、例えば、かんがいシステム又はガーデン用品、のための部品の製造である。
【0189】
さらに、本発明は、メタロセン触媒を用いて製造されるポリオレフィンワックスであって、前記ポリオレフィンワックスが、熱可塑性ポリエステルを含む熱可塑性成形組成物の難燃性の改善のための、α,β-不飽和カルボン酸又はそれらの誘導体とポリオレフィンワックスを反応させることにより極性を変化させた、エチレンのホモポリマー、直鎖又は分枝、置換又は非置換であり得、及び3~18個の炭素原子を有する1種以上のオレフィンとのエチレンのコポリマー、又はプロピレンのホモポリマーである、ポリオレフィンワックスの使用方法に関する。好適なポリオレフィンワックス、好適な熱可塑性ポリエステル及び好適な熱可塑性成形組成物が、上記に言及される。
【0190】
本発明を、下記の実施例により、さらに説明する。
【実施例】
【0191】
実施例
成形組成物の成分/成形組成物の製造/試験片
【0192】
成分A:
固有粘度IVが130ml/g及びカルボキシ末端基含有量が34meq/kgのポリブチレンテレフタレート(BASF SE社からのUltradur(登録商標)B 4520)(IVは、DIN53728及びISO1628に基づき、フェノール/o-ジクロロベンゼンの1:1混合物の0.5質量%の溶液中で、25℃にて測定された。)。
【0193】
成分B:
ポリ-(ε)-カプロラクトン(Ingevity社からのCapa(登録商標)6500):Mw(GPC、ヘキサフルオロイソプロパノール/0.05%のトリフルオロ酢酸カリウム、PMMA標準):99300g/molであり、固有粘度IVが226ml/g(IVは、DIN53728及びISO1628に基づき、フェノール/o-ジクロロベンゼンの1:1混合物の0.5質量%の溶液中で、25℃にて測定された。)。溶融範囲(DSC、DIN11357に基づき20K/分):58~60℃。
【0194】
成分C:
コポリエステル:ポリブチレンアジペート-コ-テレフタレート、溶融点(DSC、DIN11357に基づき20K/分):100~120℃。BASF SE社からのEcoflex(登録商標)FブレンドC1200。
【0195】
成分D/1:
Alジエチルホスフィネート(クラリアント社(Clariant GmbH)からのEcolit(登録商標)OP1230)。
【0196】
成分F/1:
芳香族リン酸エステル:溶融範囲(DSC、DIN11357に基づき20K/分):92~100℃。大八化学工業株式会社からのPX-200。
【化25】
【0197】
成分F/2:
芳香族リン酸エステル:(DSC、DIN11357に基づき20K/分):102~110℃。ICL-IPヨーロッパ社からのFyrolflex(登録商標)SOL-DP。
【化26】
【0198】
成分H/1:
PTFE粉末。DyneonGmbH社からの3MからのTF2071PPFE。TDS粒径は500μm(ISO12086)及び密度が2.16g/cm3(ISO12086)である。
【0199】
成分G:
無水マレイン酸グラフト化メタロセン系ポリエチレンワックス。クラリアント社からのLicocene(登録商標)PE MA4221微粒子。
【0200】
成分H/2:
安定剤、BASF SE社からのイルガフォス(Irgafos)(登録商標)168。
【0201】
成形組成物の製造
表1における本発明及び比較例の成形組成物を、ZE25二軸押出機を用いて製造した。温度プロファイルを一定に保ち、ゾーン1における240℃から260℃(ゾーン2~9)に上昇させた。回転率を130rpmに設定し、処方に基づき処理量約7.5~9.6kg/時間を得た。押出物を水浴中に引き出し、そしてペレット化した。次に、ペレットを射出成形により加工した。
【0202】
特性の試験
表1に一覧した試験のための試験片を、Arburg420C射出成形機中で、溶融温度約270℃にて、及び型温約80℃にて押出成形した。負荷試験のための試験片を、ISO527-2:/993に基づき製造し、及び、耐衝撃性試験のための試験片をISO179-2/1eAに基づき製造した。
【0203】
MVR試験を、ISO1133に基づき行った。
【0204】
成形組成物の難燃性は、まずUL94V法(Underwriters Laboratories Inc. ,安全性の標準、「Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances」、第14~18頁、ノースブルック、1998年)により測定した。
【0205】
グローワイヤー耐性GWFI(グローワイヤー燃焼性指標)を、DIN EN60695-2-12に基づきプラーク上で試験した。GWFI試験は、電位を送る部分と接触するプラスチックのための一般適合試験である。決定される温度は、下記条件:(a)試験片の発火が無い、又は(b)グローワイヤーへの曝露の終了後の赤熱時間又は残光時間が30秒、及び下張りに発火が無い、の1つが3回の一連の試験において満たされる最も高い温度である。
【0206】
表1(比較例V1~V4、本発明E1)において成分A)~H)の合計を100質量%とする。成形品の組成物及び試験の結果を表1に纏める。
【表4】
ISO307に基づく粘度数
2)ISO1133に基づく溶融粘度比率
【0207】
表1のデータから、本発明のポリエステル成形組成物E1が、特に薄壁部分(0.4mmにおけるUL94試験)における改善された燃焼挙動を示すものであることが明らかである。使用された成分Gの量は、難燃性D/1の増加(V2~V4)よりもUL94燃焼挙動におけるより高い効果を有していた。さらに、本発明の成形組成物は、押出用途における特に改善された加工特性(ノズルにおけるデポジットが無い)を示した。
【国際調査報告】