(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】延長された酸化還元酵素モチーフを有する免疫原性ペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230608BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230608BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230608BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230608BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230608BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230608BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230608BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230608BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230608BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230608BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230608BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230608BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230608BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20230608BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230608BHJP
C07K 14/74 20060101ALN20230608BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K19/00
C12N5/0783
A61P37/06
A61P35/00
A61P31/00
A61P37/02
A61P37/08
A61P25/00
A61P3/10
A61P27/02
A61K48/00
A61K39/00 H
C12N15/53
C12N15/12
C07K14/74
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567650
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2021062002
(87)【国際公開番号】W WO2021224397
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518370219
【氏名又は名称】アンシス・エスア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミロス・エラック
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA45
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB321
4C084ZB322
4C084ZC351
4C084ZC352
4C085AA02
4C085BA01
4C085BB11
4C085BB22
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA86
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、MHCクラスII T細胞エピトープ及び酸化還元酵素モチーフを含む、活性の増加した免疫原性ペプチド、並びに対象における免疫応答の制御におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)酸化還元酵素アミノ酸モチーフ、
b)抗原性タンパク質のMHCクラスII T細胞エピトープ、及び
c)a)とb)との間における、0~7アミノ酸のリンカー
を含み、前記酸化還元酵素モチーフが、以下の配列:
Z(B)
n[CST]X
mC-又はZ(B)
nCX
m[CST]-
(式中、Zは、R(アルギニン)、K(リジン)及びH(ヒスチジン)等の塩基性アミノ酸を除き、アミノ酸D(アスパラギン酸)、E(グルタミン酸)、及び/又はA(アラニン)を除いた、任意のアミノ酸又は非天然アミノ酸であり;
(B)は任意のアミノ酸であり;
nは0~2の整数であり;
Xは任意のアミノ酸であり;
mは、2、0、1、又は3であり;
前記酸化還元酵素モチーフ中のハイフン(-)は、リンカー(c)若しくはエピトープ(b)のN末端又はリンカー(c)若しくはエピトープ(b)のC末端に対する酸化還元酵素モチーフの結合点を示す)
を有する、免疫原性ペプチド。
【請求項2】
Zが、W、G、S、T、C、V、L、I、M、P、F、Y、N、及びQからなる群から選択される、請求項1に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項3】
Zが、アミノ酸:G、W、及びPを含む群から選択される、請求項1又は2に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項4】
mが2である、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項5】
Xが、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項6】
1つ又は複数のXが塩基性アミノ酸であり、好ましくは、前記1つ又は複数のXがRである、請求項1~5のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項7】
前記酸化還元酵素モチーフが、Z(B)
nCRC(配列番号3~5)、Z(B)
nCRXC(配列番号6~8)又はZ(B)
nCRXXC(配列番号9~11)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項8】
前記エピトープが、9~30アミノ酸、好ましくは9~25アミノ酸、より好ましくは9~20アミノ酸の長さを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項9】
12~50アミノ酸、好ましくは12~40アミノ酸、より好ましくは12~30アミノ酸の長さを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項10】
前記抗原性タンパク質が、自己抗原、可溶性アロ因子、移植片から放出された同種抗原、細胞内病原体の抗原、遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されたウイルスベクターの抗原、腫瘍関連抗原又はアレルゲンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項11】
リンカーが0~4アミノ酸のリンカーである、請求項1~10のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項12】
前記酸化還元酵素モチーフが、前記抗原性タンパク質のMHCクラスII T細胞エピトープのN末端又はC末端の11アミノ酸の領域内において天然に存在しない、請求項1~11のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項13】
MHCクラスII T細胞エピトープが、天然において前記酸化還元酵素モチーフを含まない、請求項1~12のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項14】
チオレドックスモチーフ中の少なくとも1つのXがP又はYである、請求項1~13のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項15】
チオレドックスモチーフが、Z(B)
nCPYC(配列番号12~14);Z(B)
nCGHC(配列番号15~17);Z(B)
nCHGC(配列番号18~20);Z(B)
nCRLC(配列番号21~23);Z(B)
nCGFC(配列番号24~26);Z(B)
nCHPC(配列番号27~29);Z(B)
nCGPC(配列番号30~32);Z(B)
nCC(配列番号33~35);Z(B)
nCRC(配列番号36~38);Z(B)nCKC(配列番号39~41);Z(B)
nCRPYC(配列番号42~44);Z(B)
nCKPYC(配列番号45~47);Z(B)
nCRGHC(配列番号48~50);Z(B)
nCKGHC(配列番号51~53);Z(B)
nCRHGC(配列番号54~56);Z(B)
nCKHGC(配列番号57~59);Z(B)
nCRRLC(配列番号60~62);Z(B)
nCKRLC(配列番号63~65);Z(B)
nCRGFC(配列番号66~68);Z(B)
nCKGFC(配列番号69~71);Z(B)
nCRHPC(配列番号72~74);Z(B)
nCKHPC(配列番号75~77);Z(B)
nCRGPC(配列番号78~80);及びZ(B)
nCKGPC(配列番号81~83)からなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項16】
以下の配列:
Z(B)
n-CPYC-GW-YRSPFSRVV-HLYR(配列番号84~86)、
Z(B)
n-CPYC-GW-YRSPFSRVV-K(配列番号87~89)、
Z(B)
n-CPYC-VRY-FLRVPSWKI-TLF(配列番号90~92)、
Z(B)
n-CPYC-VRY-FLRVPSWKI-TLFK(配列番号448~450)、
Z(B)
n-CPYC-VRY-FLRVPSWKI-TLFKK(配列番号124~126)及び
Z(B)
n-CPYC-SLQP-LALEGSLQK-RG(配列番号93~95)
のいずれか1つを含むペプチドから選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項17】
Z(B)
nが、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のペプチドをコードし、DNA、pDNA、cDNA、RNA、及びmRNA又はこれらの改変バージョンを含む群から選択される、ポリヌクレオチド。
【請求項19】
医療における使用のための、請求項1~17のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド又は請求項18に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
自己免疫疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種移植片拒絶、又は可溶性アロ因子、アレルゲンへの曝露、若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されたウイルスベクターに対する免疫応答の治療及び/又は予防における使用のための、請求項1~17及び19のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド又は請求項18又は19に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
1型糖尿病の治療及び/又は予防における使用のための、以下の配列:Z(B)
n-CPYC-SLQP-LALEGSLQK-RG(配列番号93~95)
(式中、Z(B)
nは、
W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGR
から選択される)を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド、又はそのような免疫原性ペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項22】
ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)自己抗原及び/又は抗MOG抗体によって引き起こされるか又は悪化し、より好ましくは、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、横断性脊髄炎、副腎白質ジストロフィー、白質消失症、及び風疹による精神遅滞からなる群から選択される脱髄性障害の治療又は予防における使用のための、配列:Z(B)
n-CPYC-VRY-FLRVPSWKI-TLF(配列番号90~92)(式中、Z(B)
nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される)を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド、又はそのような免疫原性ペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項23】
請求項1~17のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチドを調製する方法であって、
(a)前記抗原性タンパク質のMHCクラスII T細胞エピトープからなるペプチド配列を供給する工程と、
(b)酸化還元酵素モチーフを、前記モチーフと前記エピトープとが互いに隣接するか、又は最大で7アミノ酸のリンカーによって隔てられるように、前記ペプチド配列に連結する工程と
を含む、方法。
【請求項24】
抗原を提示するAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の集団を得る方法であって、
- 末梢血細胞を供給する工程と;
- 前記細胞を、請求項1~17のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド、又はそのような免疫原性ペプチドをコードするポリヌクレオチドと接触させる工程であって、
特に、前記ペプチドが、
a)酸化還元酵素アミノ酸モチーフ、
b)抗原性タンパク質のMHCクラスII T細胞エピトープ、及び
c)a)とb)との間における、0~7アミノ酸のリンカー
を含み、前記酸化還元酵素モチーフが、以下の配列:
Z(B)
n[CST]X
mC-又はZ(B)
nCX
m[CST]-
(式中、Zは、R(アルギニン)、K(リジン)及びH(ヒスチジン)等の塩基性アミノ酸を除き、アミノ酸D(アスパラギン酸)、E(グルタミン酸)、及び/又はA(アラニン)を除いた、任意のアミノ酸又は非天然アミノ酸であり;
(B)は任意のアミノ酸であり;
nは0~2の整数であり;
Xは任意のアミノ酸であり;
mは、2、0、1、又は3であり;
前記酸化還元酵素モチーフ中のハイフン(-)は、リンカー(c)若しくはエピトープ(b)のN末端又はリンカー(c)若しくはエピトープ(b)のC末端に対する酸化還元酵素モチーフの結合点を示す)
である、工程と;
- 前記細胞をIL-2の存在下で増殖させる工程と
を含む、方法。
【請求項25】
抗原を提示するAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の集団を得る方法であって、
- 請求項1~17のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド又はそのような免疫原性ペプチドをコードするポリヌクレオチドを供給する工程であって、
特に、前記ペプチドが、
a)酸化還元酵素アミノ酸モチーフ、
b)抗原性タンパク質のMHCクラスII T細胞エピトープ、及び
c)a)とb)との間における、0~7アミノ酸のリンカー
を含み、前記酸化還元酵素モチーフが、以下の配列:
Z(B)
n[CST]X
mC-又はZ(B)
nCX
m[CST]-
(式中、Zは、R(アルギニン)、K(リジン)及びH(ヒスチジン)等の塩基性アミノ酸を除き、アミノ酸D(アスパラギン酸)、E(グルタミン酸)、及び/又はA(アラニン)を除いた、任意のアミノ酸又は非天然アミノ酸であり;
(B)は任意のアミノ酸であり;
nは0~2の整数であり;
Xは任意のアミノ酸であり;
mは、2、0、1、又は3であり;
前記酸化還元酵素モチーフ中のハイフン(-)は、リンカー(c)若しくはエピトープ(b)のN末端又はリンカー(c)若しくはエピトープ(b)のC末端に対する酸化還元酵素モチーフの結合点を示す)
である、工程と;
- 前記ペプチド又はポリヌクレオチドを対象に投与する工程と;
- 前記対象から抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の前記集団を得る工程と
を含む、方法。
【請求項26】
自己免疫疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種移植片拒絶、又は可溶性アロ因子、アレルゲンへの曝露、若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されたウイルスベクターに対する免疫応答の治療及び/又は予防における使用のための、請求項24又は25の方法によって得られ得る、抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の集団。
【請求項27】
個体における自己免疫疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種移植片拒絶、又は可溶性アロ因子、アレルゲンへの曝露、若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されたウイルスベクターに対する免疫応答を治療及び/又は予防するための医薬であって、請求項1~17のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド、そのような免疫原性ペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は請求項26に記載の細胞集団を含む、医薬。
【請求項28】
個体における自己免疫疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種移植片拒絶、又は可溶性アロ因子、アレルゲンへの曝露、若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されたウイルスベクターに対する免疫応答を治療又は予防する方法で使用するための医薬あって、前記方法が
- 前記個体の末梢血細胞を供給する工程と、
- 前記細胞を、請求項1~17のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド又はそのような免疫原性ペプチドをコードするポリヌクレオチドと接触させる工程と、
- 前記細胞を増殖させる工程と、
- 前記増殖させた細胞を前記個体に投与する工程と
を含む、医薬。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
抗原に対する望ましくない免疫応答の生成を阻止するために、いくつかの戦略が記載されている。WO2008/017517は、所与の抗原性タンパク質のMHCクラスII抗原及び酸化還元酵素モチーフを含むペプチドを使用した新しい戦略を記載する。これらのペプチドは、CD4+T細胞を細胞溶解性CD4+T細胞と呼ばれる細胞溶解特性を有する細胞型に変換する。これらの細胞は、アポトーシス誘発を通して、ペプチドが由来する抗原を提示する抗原提示細胞(APC)を死滅させることが可能である。WO2008/017517は、アレルギー及び自己免疫疾患、例えばI型糖尿病のためにこの概念を実証する。本明細書では、インスリンは自己抗原として作用することができる。
【0002】
WO2009101207及びCarlierら(2012)Plos one 7,10 e45366は、抗原特異的細胞溶解性CD4+細胞をより詳細に更に記載する。
【0003】
WO2016059236は、追加のヒスチジンが酸化還元酵素モチーフに近接して存在する、MHCクラスIIエピトープを含む更に改変されたペプチドを開示する。WO2018162498は、HCPYC酸化還元酵素モチーフ及びインスリンMHCクラスII T細胞エピトープを含む、糖尿病の処置のためのペプチドを開示する。
【0004】
いずれの戦略も、[CST]XXC(配列番号1)又はCXX[CST](配列番号2)型(式中、Cはシステイン残基を表し、[CST]は、システイン、セリン又はトレオニン残基のいずれか1つを表し、Xは任意のアミノ酸残基を表す)の4アミノ酸酸化還元酵素モチーフの使用に立脚している。そのような免疫原性ペプチドを使用する処置の有効性を向上させるために、より活性なペプチド及び/又はより強力な酸化還元酵素モチーフの探索が続けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/017517
【特許文献2】WO2009101207
【特許文献3】WO2016059236
【特許文献4】WO2018162498
【特許文献5】WO2012/069568
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Carlierら(2012)Plos one 7,10 e45366
【非特許文献2】Zhangら(2005) Nucleic Acids Res 33、W180~W183(PREDBALB)
【非特許文献3】Salomon及びFlower(2006) BMC Bioinformatics 7、501頁(MHCBN)
【非特許文献4】Schulerら(2007) Methods Mol. Biol.409、75~93頁(SYFPEITHI)
【非特許文献5】Donnes及びKohlbacher(2006) Nucleic Acids Res. 34、W194~W197(SVMHC)
【非特許文献6】Kolaskar及びTongaonkar(1990) FEBS Lett. 276、172~174頁
【非特許文献7】Guanら(2003) Appl. Bioinformatics 2、63~66頁(MHCPred)
【非特許文献8】Singh及びRaghava(2001) Bioinformatics 17、1236~1237頁(Propred)
【非特許文献9】Liebersら(1996)Clin. Exp. Allergy 26、494~516頁
【非特許文献10】Tomazzolliら(2006) Anal. Biochem. 350、105~112頁
【非特許文献11】Holmgren(2000) Antioxid. Redox Signal. 2、811~820頁
【非特許文献12】Jacquotら(2002) Biochem. Pharm. 64、1065~1069頁
【非特許文献13】Fomenkoら(2003) Biochemistry 42、11214~11225頁
【非特許文献14】Fomenkoら(2002) Prot. Science 11、2285~2296頁
【非特許文献15】Vijayasaradhiら(1995) J. Cell. Biol. 130、807~820頁
【非特許文献16】Copierら(1996) J. lmmunol. 157、1017~1027頁
【非特許文献17】Mahnkeら(2000) J. Cell Biol.151、673~683頁
【非特許文献18】Bonifacio及びTraub(2003) Annu. Rev. Biochem. 72、395~447頁
【非特許文献19】Schnelzer & Kent(1992) lnt. J. Pept. Protein Res. 40、180~193頁
【非特許文献20】Tamら、(2001) Biopolymers 60、194~205頁
【非特許文献21】「McCutcheon's Detergents and Emulsifiers Annual」(MC Publishing Crop.社、Ridgewood、New Jersey、1981)
【非特許文献22】「Tensid-Taschenbuch」、第2版(Hanser Verlag社、Vienna、1981)
【非特許文献23】「Encyclopaedia of Surfactants」(Chemical Publishing Co.社、New York、1981)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、抗原のMHCクラスII T細胞エピトープ及び酸化還元酵素アミノ酸モチーフを含む新規の免疫原性ペプチドであって、R、K及びH等の塩基性アミノ酸でなく、A、D及びEでない、任意のアミノ酸が、前記モチーフのN若しくはC末端に直近して、又は1つ又は複数の更なるアミノ酸が介在することで前記モチーフのN若しくはC末端に間接的に隣接して存在することができる、免疫原性ペプチドを提供する。
【0008】
本発明は、下記態様に関する:
【0009】
態様1:
a)酸化還元酵素アミノ酸モチーフ、
b)抗原性タンパク質のT細胞エピトープ、及び
c)a)とb)との間における、0~7アミノ酸のリンカー
を含み、前記酸化還元酵素モチーフが、以下の配列:
Z(B)n[CST]XmC-(配列番号96~109)又はZ(B)nCXm[CST]-(配列番号110~123)
(式中、Zは、好ましくは、R(アルギニン)、K(リジン)及びH(ヒスチジン)等の塩基性アミノ酸を除き、好ましくは、アミノ酸D(アスパラギン酸)、E(グルタミン酸)、及び/又はA(アラニン)を除いた、任意のアミノ酸又は非天然アミノ酸であり;
(B)は任意のアミノ酸であり;
nは0~2の整数であり;
Xは任意のアミノ酸であり;
mは0~4の整数であり、好ましくは、mは1、2、又は3であり、より好ましくは、mは2であり;
前記酸化還元酵素モチーフ中のハイフン(-)は、リンカー(c)若しくはエピトープ(b)のN末端又はリンカー(c)若しくはエピトープ(b)のC末端に対する酸化還元酵素モチーフの結合点を示す)
を有する、免疫原性ペプチド。
【0010】
一実施形態では、ZはWでない。
【0011】
前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0012】
態様2:前記酸化還元酵素モチーフにおいて:
Zは、R(アルギニン)、K(リジン)及びH(ヒスチジン)等の塩基性アミノ酸を除き、アミノ酸A(アラニン)、D(アスパラギン酸)、及び/又はE(グルタミン酸)を除いた、任意のアミノ酸又は非天然アミノ酸であり;前記T細胞エピトープがMHCクラスIIエピトープである、
態様1による免疫原性ペプチド。
【0013】
一実施形態では、NKT及びMHCクラスII T細胞エピトープのいずれでもあるエピトープを含む免疫原性ペプチドは、本発明から除外される。
【0014】
好ましい実施形態では、Zは、W、G、S、T、C、V、L、I、M、P、F、Y、N、及びQからなる群から選択され、最も好ましくは、Zは、P、W又はGである。
【0015】
一実施形態では、ZはWでない。
【0016】
前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0017】
態様3:Zが、アミノ酸:G(グリシン)、I(イソロイシン)、L(ロイシン)、P(プロリン)、及びV(バリン)を含む群から選択される、態様1又は2による免疫原性ペプチド。
【0018】
態様4:Zが、アミノ酸:W(トリプトファン)、F(フェニルアラニン)及びY(チロシン)を含む群から選択される、態様1又は2による免疫原性ペプチド。
【0019】
態様5:Zが、アミノ酸:S(セリン)及びT(トレオニン)を含む群から選択される、態様1又は2による免疫原性ペプチド。
【0020】
態様6:ZがM(メチオニン)である、態様1又は2による免疫原性ペプチド。
【0021】
態様7:Zが、アミノ酸:N(アスパラギン)及びQ(グルタミン)を含む群から選択される、態様1又は2による免疫原性ペプチド。
【0022】
態様8:Xが、C(システイン)、S(セリン)、又はT(トレオニン)を除く任意のアミノ酸である、態様1~7のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
【0023】
態様9:1つ又は複数のXが塩基性アミノ酸であり、好ましくは、前記1つのXが、以下の式:
Z(B)nCRC(配列番号3~5)、Z(B)nCRXC(配列番号6~8)又はZ(B)nCRXXC(配列番号9~11)
のいずれか1つの、態様1又は2によるモチーフ中のように、Rである、態様1~8のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
【0024】
態様10:抗原性タンパク質の前記T細胞エピトープが、NKT細胞エピトープである、態様1による免疫原性ペプチド。
【0025】
態様11:前記エピトープが、7~30アミノ酸、好ましくは7~25アミノ酸、より好ましくは7~20アミノ酸の長さを有する、態様10による免疫原性ペプチド。
【0026】
態様12:11~50アミノ酸、好ましくは11~40アミノ酸、より好ましくは11~30アミノ酸の長さを有する等、10~50アミノ酸、好ましくは10~40アミノ酸、より好ましくは10~30アミノ酸の長さを有する、態様10又は11による免疫原性ペプチド。
【0027】
態様13:前記エピトープが、9~30アミノ酸、好ましくは9~25アミノ酸、より好ましくは9~20アミノ酸の長さを有する、態様2~9のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
【0028】
態様14:12~50アミノ酸、好ましくは12~40アミノ酸、より好ましくは12~30アミノ酸の長さを有する、態様2~9、又は13のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
【0029】
態様15:前記抗原性タンパク質が、自己抗原、可溶性アロ因子(soluble allofactor)、移植片から放出された同種抗原、細胞内病原体の抗原、遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されたウイルスベクターの抗原、腫瘍関連抗原又はアレルゲンである、態様1~14のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
【0030】
態様16:リンカーが0~4アミノ酸のリンカーである、態様1~15のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
【0031】
態様17:前記酸化還元酵素モチーフが、前記抗原性タンパク質のT細胞エピトープのN末端又はC末端の11アミノ酸の領域内において天然に存在しない、態様1~16のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
【0032】
態様18:T細胞エピトープが、天然において前記酸化還元酵素モチーフを含まない、態様1~17のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
【0033】
態様19:モチーフ中の少なくとも1つのXがP若しくはYであるか、又は、前記酸化還元酵素モチーフが、Z(B)nCPYC(配列番号12~14);Z(B)nCGHC(配列番号15~17);Z(B)nCHGC(配列番号18~20);Z(B)nCRLC(配列番号21~23);Z(B)nCGFC(配列番号24~26);Z(B)nCHPC(配列番号27~29);Z(B)nCGPC(配列番号30~32);Z(B)nCC(配列番号33~35);Z(B)nCRC(配列番号36~38);Z(B)nCKC(配列番号39~41);Z(B)nCRPYC(配列番号42~44);Z(B)nCKPYC(配列番号45~47);Z(B)nCRGHC(配列番号48~50);Z(B)nCKGHC(配列番号51~53);Z(B)nCRHGC(配列番号54~56);Z(B)nCKHGC(配列番号57~59);Z(B)nCRRLC(配列番号60~62);Z(B)nCKRLC(配列番号63~65);Z(B)nCRGFC(配列番号66~68);Z(B)nCKGFC(配列番号69~71);Z(B)nCRHPC(配列番号72~74);Z(B)nCKHPC(配列番号75~77);Z(B)nCRGPC(配列番号78~80);及びZ(B)nCKGPC(配列番号81~83)を含む群から選択される、態様2~9、又は13~18のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
【0034】
態様20:態様2~9、又は13~19のいずれか1つの好ましい実施形態では、免疫原性ペプチドは、以下の配列:
Z(B)n-CPYC-GW-YRSPFSRVV-HLYR(配列番号84~86)、
Z(B)n-CPYC-GW-YRSPFSRVV-K(配列番号87~89)、及び
Z(B)n-CPYC-VRY-FLRVPSWKI-TLF(配列番号90~92)、
Z(B)n-CPYC-SLQP-LALEGSLQK-RG(配列番号93~95)、
のいずれか1つを含み、
より好ましくは、前記配列のいずれの1つにおいても、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0035】
態様21:態様1~20のいずれか1つによる免疫原性ペプチドをコードし、好ましくは、単離されたデオキシリボ核酸(DNA)、プラスミドDNA(pDNA)、コードDNA(cDNA)、リボ核酸(RNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)又はこれらの改変バージョンから選択される核酸。一部の実施形態では、前記核酸は、遺伝子療法のために使用することができる(ウイルス)ベクター又はプラスミド中に必要に応じて組み込まれる発現カセットの一部であってよく、薬学及び遺伝子療法の分野において公知の技法に従って投与される、カプセル化又は裸のDNA又はRNAの形態で存在していてもよい。
【0036】
態様22:医療における使用、特に、自己免疫疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種移植片拒絶、又は可溶性アロ因子、アレルゲンへの曝露、若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されたウイルスベクターに対する免疫応答の治療及び/又は予防における使用のための、態様1~20のいずれか1つによる免疫原性ペプチド、又は態様21による核酸。
【0037】
特に、本発明は、前記MHCクラスII T細胞エピトープが、(プロ)インスリン、グルタミン酸脱炭酸酵素65(GAD65)、インスリノーマ抗原-2(IA-2)、熱ショックタンパク質(HSP)、膵島特異的グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、イモゲン-38、亜鉛トランスポーター-8(ZnT8)、膵臓十二指腸ホメオボックス因子1(PDX1)、クロモグラニンA(CHGA)、及び膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)のエピトープである、1型糖尿病の治療及び/又は予防における使用のための、態様2~20のいずれか1つによる免疫原性ペプチド、又はそのような免疫原性ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。好ましい実施形態では、前記エピトープは、9アミノ酸、好ましくは、9~25又は9~20アミノ酸等の9~30アミノ酸の最小長さを有する。
【0038】
特に、前記免疫原性ペプチドは、以下の配列:Z(B)n-CPYC-SLQP-LALEGSLQK-RG(式中、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される)を含む。
【0039】
特に、本発明は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)自己抗原及び/又は抗MOG抗体によって引き起こされるか又は悪化される、より好ましくは、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、横断性脊髄炎、副腎白質ジストロフィー、白質消失症、及び風疹による精神遅滞からなる群から選択される脱髄性障害の治療又は予防における使用のための、前記MHCクラスII T細胞エピトープがミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)自己抗原のエピトープである、態様2~20のいずれか1つによる免疫原性ペプチド、又はそのような免疫原性ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。好ましい実施形態では、前記エピトープは、9アミノ酸、好ましくは、9~25又は9~20アミノ酸等の9~30アミノ酸の最小長さを有する。
【0040】
特に、前記免疫原性ペプチドは、配列:Z(B)n-CPYC-VRY-FLRVPSWKI-TLF(配列番号90~92)、Z(B)n-CPYC-VRY-FLRVPSWKI-TLFK(配列番号448~450)、又はZ(B)n-CPYC-VRY-FLRVPSWKI-TLFKK(配列番号124~126)(式中、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される)を含む。
【0041】
態様23:態様1~22のいずれか1つによる免疫原性ペプチドを調製する方法であって、
(a)前記抗原性タンパク質のT細胞エピトープからなるペプチド配列を供給する工程と、
(b)酸化還元酵素モチーフを、前記モチーフと前記エピトープとが互いに隣接するか、又は最大で7アミノ酸のリンカーによって隔てられるように、前記ペプチド配列に連結する工程と
を含む、方法。
【0042】
態様24:抗原を提示するAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の集団を得る方法であって、
- 末梢血細胞を供給する工程と;
- 前記細胞を、態様1~20のいずれか1つによる免疫原性ペプチド、又は態様21による核酸と接触させる工程であって、特に、前記ペプチドが、
a)酸化還元酵素アミノ酸モチーフ、
b)抗原性タンパク質のT細胞エピトープ、及び
c)a)とb)との間における、0~7アミノ酸のリンカー
を含み、前記酸化還元酵素モチーフが、以下の配列:
Z(B)n[CST]XmC-(配列番号96~109)又はZ(B)nCXm[CST]-(配列番号110~123)
(式中、Zは、好ましくは、R(アルギニン)、K(リジン)及びH(ヒスチジン)等の塩基性アミノ酸を除き、好ましくは、アミノ酸D(アスパラギン酸)、E(グルタミン酸)、及び/又はA(アラニン)を除いた、任意のアミノ酸又は非天然アミノ酸であり;
(B)は任意のアミノ酸であり;
nは0~2の整数であり;
Xは任意のアミノ酸であり;
mは0~4の整数であり、好ましくは、mは1、2、又は3であり、より好ましくは、mは2であり;
前記酸化還元酵素モチーフ中のハイフン(-)は、リンカー(c)若しくはエピトープ(b)のN末端又はリンカー(c)若しくはエピトープ(b)のC末端に対する酸化還元酵素モチーフの結合点を示す)
である、工程と;
- 前記細胞をIL-2の存在下で増殖させる工程と
を含む、方法。
【0043】
態様25:前記酸化還元酵素モチーフにおいて、Zが、R(アルギニン)、K(リジン)及びH(ヒスチジン)等の塩基性アミノ酸を除き、アミノ酸A(アラニン)、D(アスパラギン酸)、及び/又はE(グルタミン酸)を除いた、任意のアミノ酸又は非天然アミノ酸であり;前記T細胞エピトープがMHCクラスIIエピトープである、態様24による方法。
【0044】
好ましい実施形態では、Zは、W、G、S、T、C、V、L、I、M、P、F、Y、N、及びQからなる群から選択され、好ましくは、Zは、W、G及びPである。
【0045】
一実施形態では、NKT及びMHCクラスII T細胞エピトープのいずれでもあるエピトープを含む免疫原性ペプチドは、本発明から除外される。
【0046】
一実施形態では、ZはWでない。
【0047】
前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0048】
態様26:抗原特異的NKT細胞の集団を得る方法であって、
- 末梢血細胞を供給する工程と;
- 前記細胞を、態様1、3~11、13~20のいずれか1つによる免疫原性ペプチド、又は前記ペプチドをコードする核酸と接触させる工程であって、特に、前記ペプチドが、
a)酸化還元酵素アミノ酸モチーフ、
b)抗原性タンパク質のNKT細胞エピトープ、及び
c)a)とb)との間における、0~7アミノ酸のリンカー
を含み、前記酸化還元酵素モチーフが、以下の配列:
Z(B)n[CST]XmC-(配列番号96~109)又はZ(B)nCXm[CST]-(配列番号110~123)
(式中、Zは、好ましくは、R(アルギニン)、K(リジン)及びH(ヒスチジン)等の塩基性アミノ酸を除き、好ましくは、アミノ酸D(アスパラギン酸)、E(グルタミン酸)、及び/又はA(アラニン)を除いた、任意のアミノ酸又は非天然アミノ酸であり、免疫原性ペプチドのN末端又はC末端に対応し;
(B)は任意のアミノ酸であり、nは0~2の整数であり;
mは1~4の整数であり、好ましくは、mは1、2、又は3であり、より好ましくは、mは2であり;
Xは任意のアミノ酸であり;
前記酸化還元酵素モチーフ中のハイフン(-)は、リンカー(c)若しくはエピトープ(b)のN末端又はリンカー(c)若しくはエピトープ(b)のC末端に対する酸化還元酵素モチーフの結合点を示す)
である、工程と;
- 前記細胞をIL-2の存在下で増殖させる工程と
を含む、方法。
【0049】
好ましい実施形態では、Zは、G、S、T、C、V、L、I、M、P、F、Y、N、及びQからなる群から選択され、好ましくは、Zは、P、W、又はGである。
【0050】
一実施形態では、ZはWでない。
【0051】
前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0052】
態様27:抗原を提示するAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の集団を得る方法であって、
- 態様1~9若しくは13~20のいずれか1つによる免疫原性ペプチド、又は前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドを供給する工程であって、特に、前記ペプチドが、
a)酸化還元酵素アミノ酸モチーフ、
b)抗原性タンパク質のMHCクラスII T細胞エピトープ、及び
c)a)とb)との間における、0~7アミノ酸のリンカー
を含み、前記酸化還元酵素モチーフが、以下の配列:
Z(B)n[CST]XmC-(配列番号96~109)又はZ(B)nCXm[CST]-(配列番号110~123)
(式中、Zは、好ましくは、R(アルギニン)、K(リジン)及びH(ヒスチジン)等の塩基性アミノ酸を除き、好ましくは、アミノ酸D(アスパラギン酸)、E(グルタミン酸)、及び/又はA(アラニン)を除いた、任意のアミノ酸又は非天然アミノ酸であり;
(B)は任意のアミノ酸であり;
nは0~2の整数であり;
Xは任意のアミノ酸であり;
mは0~4の整数であり、好ましくは、mは1、2、又は3であり、より好ましくは、mは2であり;
前記酸化還元酵素モチーフ中のハイフン(-)は、リンカー(c)若しくはエピトープ(b)のN末端又はリンカー(c)若しくはエピトープ(b)のC末端に対する酸化還元酵素モチーフの結合点を示す)
である、工程と;
- 前記ペプチドを対象に投与する工程と;
- 前記対象から抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞の前記集団を得る工程と
を含む、方法。
【0053】
好ましい実施形態では、Zは、W、G、S、T、C、V、L、I、M、P、F、Y、N、及びQからなる群から選択され、より好ましくはZは、G、W、又はPである。
【0054】
一実施形態では、NKT及びMHCクラスII T細胞エピトープのいずれでもあるエピトープを含む免疫原性ペプチドは、本発明から除外される。
【0055】
一実施形態では、ZはWでない。
【0056】
前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0057】
態様28:抗原特異的NKT細胞の集団を得る方法であって、
- 態様1、3~11、13~20のいずれか1つによる免疫原性ペプチド、又は前記ペプチドをコードする核酸を供給する工程であって、特に、前記ペプチドが、
a)酸化還元酵素アミノ酸モチーフ、
b)抗原性タンパク質のNKT細胞エピトープ、及び
c)a)とb)との間における、0~7アミノ酸のリンカー
を含む、
(式中、Zは、R(アルギニン)、K(リジン)及びH(ヒスチジン)等の塩基性アミノ酸を除き、アミノ酸D(アスパラギン酸)、E(グルタミン酸)、及び/又はA(アラニン)を除いた、任意のアミノ酸又は非天然アミノ酸であり;
(B)は任意のアミノ酸であり;
nは0~2の整数であり;
Xは任意のアミノ酸であり;
mは0~4の整数であり、好ましくは、mは1、2、又は3であり、より好ましくは、mは2であり;
前記酸化還元酵素モチーフ中のハイフン(-)は、リンカー(c)若しくはエピトープ(b)のN末端又はリンカー(c)若しくはエピトープ(b)のC末端に対する酸化還元酵素モチーフの結合点を示し;
Xは任意のアミノ酸であり;
(B)は任意のアミノ酸である)
工程と;
- 前記ペプチドを対象に投与する工程と;
- 前記対象から抗原特異的NKT細胞の前記集団を得る工程と
を含む、方法。
【0058】
好ましい実施形態では、Zは、G、S、T、C、V、L、I、M、P、F、Y、D、E、N、及びQからなる群から選択され、より好ましくは、Zは、G、W、又はPである。
【0059】
一実施形態では、ZはWでない。
【0060】
前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0061】
態様29:自己免疫疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種移植片拒絶、又は可溶性アロ因子、アレルゲンへの曝露、若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されたウイルスベクターに対する免疫応答の治療及び/又は予防における使用のための、態様24~29の方法によって得られ得る、抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞又はNKT細胞の集団。
【0062】
態様30:個体における自己免疫疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種移植片拒絶、又は可溶性アロ因子、アレルゲンへの曝露、若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されたウイルスベクターに対する免疫応答を治療及び/又は予防する方法であって、態様1~20のいずれか1つによる免疫原性ペプチド、態様21による核酸、又は態様29による細胞集団を前記個体に投与する工程を含む、方法。
【0063】
態様31:個体における自己免疫疾患、細胞内病原体による感染症、腫瘍、同種移植片拒絶、又は可溶性アロ因子、アレルゲンへの曝露、若しくは遺伝子療法若しくは遺伝子ワクチン接種に使用されたウイルスベクターに対する免疫応答を治療又は予防する方法であって、
- 前記個体の末梢血細胞を供給する工程と、
- 前記細胞を、態様1~20のいずれかによる抗原性ペプチド、又は態様21による核酸と接触させる工程と、
- 前記細胞を増殖させる工程と、
- 前記増殖させた細胞を前記個体に投与する工程と
を含む、方法。
【0064】
態様32:治療的有効量の態様1~20のいずれか1つによる免疫原性ペプチド又はそのような免疫原性ペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与する工程を含む、(ヒト)対象における1型糖尿病を治療する方法であって、前記T細胞エピトープが、(プロ)インスリン、グルタミン酸脱炭酸酵素65(GAD65)、インスリノーマ抗原-2(IA-2)、熱ショックタンパク質(HSP)、膵島特異的グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、イモゲン-38、亜鉛トランスポーター-8(ZnT8)、膵臓十二指腸ホメオボックス因子1(PDX1)、クロモグラニンA(CHGA)、及び膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)のMHCクラスIIエピトープである、方法。好ましい実施形態では、前記エピトープは、9アミノ酸、好ましくは、9~25又は9~20アミノ酸等の9~30アミノ酸の最小長さを有する。
【0065】
より詳細には、前記免疫原性ペプチドは、以下の配列:Z(B)n-CPYC-SLQP-LALEGSLQK-RG(配列番号93~95)(式中、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される)を有する。
【0066】
態様33:治療的有効量の態様1~20のいずれか1つによる免疫原性ペプチド又はそのような免疫原性ペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与する工程を含む、(ヒト)対象における、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)自己抗原及び/又は抗MOG抗体によって引き起こされるか又は悪化する脱髄性障害を治療又は予防する方法であって、前記T細胞エピトープが、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)のMHCクラスIIエピトープである、方法。好ましい実施形態では、前記エピトープは、9アミノ酸、好ましくは、9~25又は9~20アミノ酸等の9~30アミノ酸の最小長さを有する。
【0067】
より好ましくは、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、横断性脊髄炎、副腎白質ジストロフィー、白質消失症、及び風疹による精神遅滞からなる群から選択される。
【0068】
より好ましくは、前記免疫原性ペプチドは、配列:Z(B)n-CPYC-VRY-FLRVPSWKI-TLF(配列番号90~92)、Z(B)n-CPYC-VRY-FLRVPSWKI-TLFK(配列番号448~450)、又はZ(B)n-CPYC-VRY-FLRVPSWKI-TLFKK(配列番号124~126)(式中、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される)を含む。
【0069】
上記態様のいずれかの一実施形態では、NKT及びMHCクラスII T細胞エピトープのいずれでもあるエピトープを含む免疫原性ペプチドは、本発明から除外される。
【0070】
前記態様のいずれか1つの好ましい実施形態では、リンカーは、少なくとも1個のアミノ酸、少なくとも2個のアミノ酸、少なくとも3個のアミノ酸、又は少なくとも4個のアミノ酸を含む。好ましくは、前記リンカーは、2~7個のアミノ酸、3~7個のアミノ酸、又は4~7個のアミノ酸等の、1~7個のアミノ酸を含む。
【0071】
前記態様のいずれか1つの更なる実施形態では、Xのいずれか1つ又は(B)は、塩基性アミノ酸であり得る。別の実施形態では、Xのいずれか1つ又は(B)は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。なお更なる実施形態では、Xのいずれか1つ又は(B)は、塩基性アミノ酸を除く任意のアミノ酸である。
【0072】
本発明のペプチドは、これらのペプチドを使用して生成された細胞溶解性CD4+T細胞において、先行技術のペプチドと比較してIFN-ガンマ及びsFasL産生量が増加するという利点を有する。前記CD4+T細胞におけるグランザイムB産生量も増加すると考えられる。
【0073】
これらのマーカーの発現量の増加は、先行技術のペプチドと比較して、細胞溶解性CD4+T細胞を生成する本発明のペプチドの能力がより高いことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】免疫原性ペプチドP91~P108の還元活性の動態を表す図である。DTTを陽性対照として使用し、ブランクはアッセイ緩衝液を表す。結果を、経時的な相対蛍光単位(RFU)で表す。実施例の部でアッセイを詳細に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本発明は特定の実施形態に関して記載されるが、本発明はそれに限定されず、添付の請求項によって限定されるだけである。請求項の中のいかなる参照符号も、請求範囲を限定するものと解釈されるべきでない。以下の用語又は定義は、本発明の理解を助けるためにだけ提供される。本明細書で特記されない限り、本明細書で使用される全ての用語は、それらが本発明の分野の当業者にとって有するものと同じ意味を有する。本明細書で提供される定義は、当業者が理解するもの未満の請求範囲を有するものと解釈されるべきでない。
【0076】
別途指示されない限り、具体的に詳細に記載されない全ての方法、工程、技術及び操作は、当業者に明らかになるように、それ自体公知の様式で実行することができ、及び実行されている。例えば標準のハンドブック、上で言及した一般的な背景技術、及びその中の更なる引用文献に再び言及される。
【0077】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに別途指図しない限り、単数及び複数の両方の指示を含む。用語「任意の」は、本明細書で使用される通り、態様、請求項又は実施形態に関して使用される場合、任意の単一のもの(すなわち誰か)、並びに、言及される前記態様、請求項又は実施形態の全ての組合せを指す。
【0078】
本明細書で使用される用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised of)」は、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」又は「含有している(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていないメンバーも、要素も、方法工程も排除しない。前記用語は、実施形態「事実上からなる」及び「からなる」も包含する。
【0079】
エンドポイントによる数値範囲の列挙は、それぞれの範囲の中に包含される全ての数字及び分数、並びに列挙されるエンドポイントを含む。
【0080】
測定可能な値、例えばパラメーター、量、期間等を指す場合に本明細書で使用される用語「約」は、そのような変動が開示される発明で実行するのに適当である限り、指定値の及びそれから+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、更により好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含するものである。修飾子「約」が指す値は、それ自体も具体的に、及び好ましくは開示されることを理解すべきである。
【0081】
本明細書で使用されるように、「疾患の治療で使用するための組成物」で使用される用語「使用するための」は、対応する治療方法、及び疾患の治療のための医薬の製造のための調製物の対応する使用も開示するものとする。
【0082】
本明細書で使用される用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結される12~200アミノ酸のアミノ酸配列を含む分子を指すが、それは非アミノ酸構造を含むことができる。
【0083】
本明細書で使用される用語「免疫原性ペプチド」は、免疫原性である、すなわち、免疫応答を導き出すことが可能なT細胞エピトープを含むペプチドを指す。
【0084】
本発明によるペプチドは、従来の20アミノ酸又はその改変バージョンのいずれかを含有することができるか、又は、化学的ペプチド合成によって、若しくは化学的若しくは酵素的改変によって組み込まれる天然に存在しないアミノ酸を含有することができる。
【0085】
本明細書で使用される用語「抗原」は、巨大分子、一般的にはタンパク質(多糖の有無にかかわらず)の、又は1つ又は複数のハプテンを含み、T又はNKT細胞エピトープを含むタンパク質性の組成物で作製される構造を指す。
【0086】
本明細書で使用される用語「抗原性タンパク質」は、1つ又は複数のT又はNKT細胞エピトープを含むタンパク質を指す。本明細書で使用される自己抗原又は自己抗原性タンパク質は、体内に存在するヒト若しくは動物タンパク質又はその断片を指し、それは同じヒト又は動物の体の中で免疫応答を導き出す。
【0087】
用語「食品又は医薬抗原性タンパク質」は、食品又はワクチン等の医薬品中に存在する抗原性タンパク質を指す。
【0088】
用語「エピトープ」は、抗原性タンパク質の1つ又はいくつかの部分(コンホメーション依存エピトープを規定することができる)を指し、それは、抗体又はその部分(Fab'、Fab2'等)又はB若しくはT若しくはNKT細胞の細胞表面に提示される受容体が特異的に認識、結合し、それは、前記結合によって免疫応答を誘導することができる。
【0089】
本発明との関連で、用語「T細胞エピトープ」は、優勢、亜優勢又は劣勢のT細胞エピトープ、すなわち、Tリンパ球の細胞表面で受容体によって特異的に認識及び結合される抗原性タンパク質の部分を指す。この用語は、本明細書中で定義されるようなNKT細胞エピトープ及びMHCクラスII T細胞エピトープの両方を包含する。エピトープが優勢、亜優勢又は劣勢であるかどうかは、エピトープに対して導き出される免疫反応に依存する。優勢は、タンパク質の全ての可能なT細胞エピトープの中で、そのようなエピトープがT細胞によって認識され、それらを活性化することができる頻度に依存する。
【0090】
抗原性タンパク質からのT細胞エピトープの特定及び選択は、当業者に公知である。
【0091】
本発明との関連で適するエピトープを特定するために、抗原性タンパク質の単離されたペプチド配列を、例えば、T細胞生物学の技法によって検査して、ペプチド配列がT細胞応答を導き出すかどうかを決定する。T細胞応答を導き出すことが見出されたペプチド配列を、T細胞刺激活性を有すると定義する。
【0092】
ヒトT細胞刺激活性を、例えば、T1Dを有する個体から得られたT細胞をT1Dに関与する自己抗原に由来するペプチド/エピトープを用いて培養し、例えば、トリチウム標識したチミジンの細胞取り込みによって測定した場合に、ペプチド/エピトープに応答してT細胞の増殖が生じるかどうかを決定することによって更に検査することができる。T細胞によるペプチド/エピトープに対する応答の刺激指数を、ペプチド/エピトープに応答した最大CPMを対照CPMで割り算したものとして計算することができる。バックグラウンドレベルの2倍以上のT細胞刺激指数(S.I.)は、「陽性」とみなされる。陽性の結果を使用して、検査したペプチド/エピトープの群について各ペプチド/エピトープの平均刺激指数を計算する。
【0093】
必要に応じて、非天然(又は改変された) T細胞エピトープを、MHCクラスII分子又はCD1d分子に対するそれらの結合親和性について更に検査することができる。これは種々の手法で実施することができる。例えば、所与のクラスII又はCD1d分子についてホモ接合性である細胞の溶解により、可溶性HLAクラスIIを得る。後者は、アフィニティークロマトグラフィーによって精製する。可溶性クラスII分子又はCD1dを、同クラスII分子又はCD1d分子に対する強い結合親和性により生成されたビオチン標識参照ペプチドを用いてインキュベートする。次に、クラスII結合又はCD1d結合について評価されるペプチドを異なる濃度でインキュベートし、ニュートラアビジンの添加により、クラスII結合から参照ペプチドを追い出すそれらの能力を計算する。
【0094】
例えば、微細マッピング技法によって最適なT細胞エピトープを決定するために、T細胞刺激活性を有し、したがって、T細胞生物学の技法によって決定される少なくとも1つのT細胞エピトープを含むペプチドを、ペプチドのアミノ又はカルボキシ末端のいずれかにおけるアミノ酸残基の付加又は欠失によって改変し、検査をすることで、改変されたペプチドに対するT細胞反応性の変化を決定する。未改変のタンパク質配列中で重複する領域を共有する2つ以上のペプチドが、T細胞生物学の技法によって決定されるヒトT細胞刺激活性を有することが見出された場合、そのようなペプチドの全て又は一部分を含む更なるペプチドを生成することができ、これらの更なるペプチドを同様の手順によって検査することができる。この技法の後、ペプチドを選択し、組換え又は合成により生成する。ペプチド/エピトープに対するT細胞応答の強度(例えば、刺激指数)及び個体の集団におけるペプチドに対するT細胞応答の頻度を含む、様々な要因に基づき、T細胞エピトープ又はペプチドを選択する。
【0095】
追加的に、及び/又は、代替的に、抗原性タンパク質内のT細胞エピトープを特定するために、1つ又は複数のin vitroアルゴリズムを使用することができる。好適なアルゴリズムとして、Zhangら(2005) Nucleic Acids Res 33、W180~W183(PREDBALB);Salomon及びFlower(2006) BMC Bioinformatics 7、501頁(MHCBN);Schulerら(2007) Methods Mol. Biol.409、75~93頁(SYFPEITHI);Donnes及びKohlbacher(2006) Nucleic Acids Res. 34、W194~W197(SVMHC);Kolaskar及びTongaonkar(1990) FEBS Lett. 276、172~174頁、Guanら(2003) Appl. Bioinformatics 2、63~66頁(MHCPred)及びSingh及びRaghava(2001) Bioinformatics 17、1236~1237頁(Propred)に記載されているアルゴリズムが挙げられるが、これらに限定されない。特に、そのようなアルゴリズムは、抗原性タンパク質内において、MHC II分子の溝及び異なるHLA型についての同溝にフィットする、又はCD1d分子に結合する、1つ又は複数のオクタ又はノナペプチド配列の予測を可能にする。
【0096】
用語「MHC」は、「主要組織適合抗原」を指す。ヒトでは、MHC遺伝子はHLA(「ヒト白血球抗原」)遺伝子として知られる。一貫して追従される規則はないが、一部の文献ではHLAタンパク質分子を指すのにHLAを使用し、HLAタンパク質をコードする遺伝子を指すのにMHCを使用する。このように、本明細書で使用する場合、用語「MHC」及び「HLA」は同等物である。ヒトのHLA系は、マウスでのその同等物、すなわちH2系を有する。最も熱心に研究されたHLA遺伝子は、9つのいわゆる古典的MHC遺伝子:HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA DQB1、HLA-DRA及びHLA-DRB1である。ヒトでは、MHCは3つの領域:クラスI、II及びIIIに分類される。A、B及びC遺伝子はMHCクラスIに属すが、6つのD遺伝子はクラスIIに属する。MHCクラスI分子は、細胞表面でベータ2ミクログロブリンと会合する、3つのドメイン(アルファ1、2及び3)を含有する単一の多形鎖で構成される。クラスII分子は、2つの鎖(アルファ1及び2、並びにベータ1及び2)を各々含有する、2つの多形鎖で構成される。
【0097】
クラスI MHC分子は、事実上全ての有核細胞で発現される。
【0098】
クラスI MHC分子との関連で提示されるペプチド断片は、CD8+Tリンパ球(細胞溶解性Tリンパ球又はCTL)によって認識される。CD8+Tリンパ球は、刺激性抗原を有する細胞を溶解することができる細胞溶解性エフェクターに頻繁に成熟する。クラスII MHC分子は活性化リンパ球及び抗原提示細胞の上で主に発現される。CD4+Tリンパ球(ヘルパーTリンパ球又はTh)は、マクロファージ又は樹状細胞のような抗原提示細胞の上で通常見出されるクラスII MHC分子によって提示される特異なペプチド断片の認識で活性化される。CD4+Tリンパ球は増殖し、抗体媒介及び細胞媒介の応答を支持するIL-2、IFN-ガンマ及びIL-4等のサイトカインを分泌する。
【0099】
機能的HLAは、内因性並びに外来の、潜在的に抗原性のペプチドが結合する深い結合溝によって特徴付けられる。溝は、明確な形状及び物理化学的性質によって更に特徴付けられる。ペプチド末端が溝の末端にピン留めされるという点で、HLAクラスI結合部位は閉鎖的である。それらは、保存されたHLA残基との水素結合のネットワークにも関与する。これらの制限を考慮すれば、結合するペプチドの長さは8、9又は10残基に限定される。しかし、最高12アミノ酸残基のペプチドもHLAクラスIに結合することが可能であることが実証された。異なるHLA複合体の構造の比較は、ペプチドが比較的直線状の伸長した立体配置を採用するか又は溝からはみ出る中央の残基を含むことができる、結合の一般様式を確認した。
【0100】
HLAクラスI結合部位と対照的に、クラスII部位は両端が開放的である。これは、ペプチドが実際の結合領域から伸長し、それによって両端で「張り出す」ことを可能にする。したがって、クラスII HLAは、9から25を超えるアミノ酸残基の様々な長さのペプチドリガンドに結合することができる。HLAクラスIに類似して、クラスIIリガンドの親和性は「定常」及び「可変」構成要素によって決定される。定常部分は、HLAクラスII溝の中の保存された残基と結合したペプチドの主鎖の間で形成される水素結合のネットワークから再びもたらされる。しかし、この水素結合パターンはペプチドのN-及びC末端残基に制限されず、全鎖に分布する。後者は、それが複合型ペプチドの立体配置を厳密に直線状の様式の結合に制限するので重要である。これは、全てのクラスIIアロタイプに共通する。ペプチドの結合親和性を決定する第2の構成要素は、クラスII結合部位の中の多型のある特定の位置のために変動する。異なるアロタイプは溝の中に異なる相補的ポケットを形成し、それによって、ペプチドのサブタイプ依存性選択又は特異性を説明する。重要なことに、クラスIIポケットの中に保持されるアミノ酸残基への制約は、クラスIの場合より一般に「ソフト」である。異なるHLAクラスIIアロタイプの間に、ペプチドの大いにより多くの交差反応性がある。MHC II分子の溝にフィットするMHCクラスII T細胞エピトープの+/-9アミノ酸(すなわち8、9又は10)の配列は、通常P1~P9と番号付けされる。エピトープのN末端の追加のアミノ酸はP-1、P-2等と番号付けされ、エピトープのC末端側のアミノ酸はP+1、P+2等と番号付けされる。MHCクラスII分子によって認識されMHCクラスI分子によって認識されないペプチドは、MHCクラスII限定T細胞エピトープと称される。
【0101】
用語「NKT細胞エピトープ」は、NKT細胞の細胞表面における受容体によって特異的に認識及び結合される、抗原性タンパク質の一部を指す。特に、NKT細胞エピトープは、CD1d分子によって結合されるエピトープである。NKT細胞エピトープは、一般モチーフ[FWYHT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYHT](配列番号127)を有する。この一般モチーフの別バージョンは、位置1及び/又は位置7に代替物[FWYH]を有し、したがって、[FWYH]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYH](配列番号128)を有する。
【0102】
この一般モチーフの別バージョンは、位置1及び/又は位置7に代替物[FWYT]を有する、すなわち、[FWYT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYT](配列番号129)を有する。この一般モチーフの別バージョンは、位置1及び/又は位置7に代替物[FWY]を有する、すなわち、[FWY]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWY](配列番号130)を有する。
【0103】
位置1及び/又は7におけるアミノ酸にかかわらず、上記一般モチーフの別バージョンは、位置4に代替物[ILM]、例えば、[FWYH]-X(2)-[ILM]-X(2)-[FWYH](配列番号131)又は[FWYHT]-X(2)-[ILM]-X(2)-[FWYHT](配列番号132)又は[FWY]-X(2)-[ILM]-X(2)-[FWY](配列番号133)を有する。
【0104】
上記配列モチーフについて、配列を手動又はDe Castro E.ら(2006) Nucleic Acids Res. 34(Web Server issue):W362~W365によるScanProsite等のアルゴリズムを使用して走査することにより、タンパク質におけるCD1d結合モチーフを特定することができる。
【0105】
「ナチュラルキラーT」又は「NKT」細胞は、非古典的なMHC複合体分子CD1dによって提示される抗原を認識する、非従来的なTリンパ球の特徴的なサブセットを構成する。現在、NKT細胞の2つのサブセットが記載されている。I型NKT細胞は、不変異体NKT細胞(iNKT)とも呼ばれ、最も数が多い。これらは、マウスではValphal4、ヒトではValpha24である不変アルファ鎖でできた、アルファ-ベータT細胞受容体(TCR)の存在を特徴とする。このアルファ鎖は、限られた数のベータ鎖を通じて可変部と会合している。2型NKT細胞は、アルファ-ベータTCRを有するが、多形アルファ鎖を有する。しかし、NKT細胞の他のサブセットが存在することは明らかであり、その表現型はまだ完全には明らかにされていないが、CD1d分子との関連で提示される糖脂質によって活性化されるという特徴を共有する。
【0106】
NKT細胞は、通常、NKG2D及びNK1.1を含むナチュラルキラー(NK)細胞受容体の組合せを発現する。NKT細胞は自然免疫系の一部であり、これらは、完全なエフェクター能力を獲得する前に増殖を必要としないことにより、獲得免疫系と区別することができる。これらのメディエーターの大半は前もって生成され、転写を必要としない。NKT細胞は、細胞内病原体及び腫瘍の拒絶に対する免疫応答における、主要な関与者であることが示されている。自己免疫疾患及び移植拒絶反応の制御におけるこれらの役割も提唱されている。
【0107】
認識ユニットであるCD1d分子は、MHCクラスI分子の構造とよく似た構造を有しており、ベータ-2ミクログロブリンの存在を含む。CD1d分子は、2本のアルファ鎖を境界とし疎水性の高い残基を含む、深い裂け目を特徴とし、これが脂質鎖を受容する。両端においてこの裂け目が開いていることにより、より長い鎖を収容することが可能となる。CD1dに対する古典的リガンドは、合成アルファガラクトシルセラミド(アルファGalCer)である。しかしながら、糖脂質及びリン脂質、ミエリン中に見出された天然脂質スルファチド、微生物ホスホイノシトールマンノシド並びにアルファ-グルクロノシルセラミドを含む、多くの他の天然代替リガンドが記載されている。当該技術分野における共通認識(Matsudaら(2008)、Curr. Opinion Immunol.、20 358~368頁;Godfreyら(2010)、Nature rev. Immunol 11、197~206頁)は、今もなお、CD1dは脂質鎖を含むリガンドにのみ結合するというものであり、言い換えると、概ね、CD1d中に埋め込まれた脂質尾部とCD1dから突き出た糖残基頭部基とからできた、共通の構造である。
【0108】
本発明との関連で使用されるエピトープに関して本明細書で使用される用語「相同体」は、天然に存在するエピトープと少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有し、それによって抗体又はB及び/又はT細胞の細胞表面受容体に結合するエピトープの能力を維持する分子を指す。エピトープの特定の相同体は、多くても3つ、特に多くても2つ、特に1つのアミノ酸で改変される天然のエピトープに対応する。
【0109】
本発明のペプチドに関して本明細書で使用される用語「誘導体」は、少なくともペプチド活性部分(すなわち、酸化還元モチーフ及び細胞溶解CD4+T細胞活性を導き出すことが可能なMHCクラスIIエピトープ)を含有し、及び、それに加えてペプチドを安定させるか又はペプチドの薬物動態学的若しくは薬力学的特性を変更すること等の異なる目的を有することができる相補部分を含む分子を指す。
【0110】
本明細書で使用される、2つの配列の「配列同一性」という用語は、同一のヌクレオチド又はアミノ酸を有する位置の数を、2つの配列を整列させたときの短い方の配列におけるヌクレオチド又はアミノ酸の数で割り算したものに関する。特に、配列同一性は70%~80%、81%~85%、86%~90%、91%~95%、96%~100%、又は100%である。
【0111】
本明細書で使用される用語「ペプチドをコードするポリヌクレオチド(又は、核酸)」及び「ペプチドをコードするポリヌクレオチド(又は、核酸)」は、適当な環境で発現されるとき、関連するペプチド配列又はその誘導体若しくは相同体の生成をもたらすヌクレオチド配列を指す。そのようなポリヌクレオチド又は核酸には、そのペプチドをコードする正常な配列、並びに要求される活性を有するペプチドを発現することが可能であるこれらの核酸の誘導体及び断片が含まれる。本発明によるペプチド又はその断片をコードする核酸は、哺乳動物を起源とするか、又は哺乳動物、特にヒトのペプチド断片に対応するペプチド又はその断片をコードする配列である。そのようなポリヌクレオチド又は核酸分子は、自動合成機及び遺伝子コードの周知のコドンアミノ酸関係を使用して、容易に調製することができる。そのようなポリヌクレオチド又は核酸は、細菌、例えば大腸菌(Escherichia coli)、酵母細胞、ヒト細胞、動物細胞又は植物細胞等の適切な宿主におけるポリヌクレオチド又は核酸の発現及びポリペプチドの産生に適応しているプラスミドを含む発現ベクターに取り込まれてもよい。治療的手段のために、本明細書中に開示される免疫原性ペプチドをコードするポリヌクレオチドを、発現系、カセット、プラスミド又はウイルス及び非ウイルス発現系等のベクター系の一部とすることができる。治療的目的で知られているウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、及びレトロウイルスである。非ウイルスベクターも使用することができ、非限定的な例として、Sleeping Beauty(SB)又はPiggyBac(PB)に由来するベクター系等の、トランスポゾン系ベクター系が挙げられる。他の担体、例えば、限定されることなく、ナノ粒子、カチオン性脂質、リポソーム等を通じて核酸を送達することもできる。
【0112】
用語「塩基性アミノ酸」はブレンステッド-ローリー及びルイス塩基のように作用する任意のアミノ酸を指し、天然の塩基性アミノ酸、例えばアルギニン(R)、リジン(K)又はヒスチジン(H)、又は非天然の塩基性アミノ酸、例えば、限定されずに以下のものが含まれる:
- リジン変異体、例えばFmoc-β-Lys(Boc)-OH(CAS番号219967-68-7)、L-オルニチン又はオルニチンとも呼ばれるFmoc-Orn(Boc)-OH(CAS番号109425-55-0)、Fmoc-β-Homolys(Boc)-OH(CAS番号203854-47-1)、Fmoc-Dap(Boc)-OH(CAS番号162558-25-0)又はFmoc-Lys(Boc)OH(DiMe)-OH(CAS番号441020-33-3);
- チロシン/フェニルアラニン変異体、例えばFmoc-L-3Pal-OH(CAS番号175453-07-3)、Fmoc-β-HomoPhe(CN)-OH(CAS番号270065-87-7)、Fmoc-L-β-HomoAla(4-ピリジル)-OH(CAS番号270065-69-5)又はFmoc-L-Phe(4-NHBoc)-OH(CAS番号174132-31-1);
- プロリン変異体、例えばFmoc-Pro(4-NHBoc)-OH(CAS番号221352-74-5)又はFmoc-Hyp(tBu)-OH(CAS番号122996-47-8);
- アルギニン変異体、例えばFmoc-β-Homoarg(Pmc)-OH(CAS番号700377-76-0)。
【0113】
用語「免疫障害」又は「免疫疾患」は、免疫系の反応が生物体における機能不全又は非生理的状況の責任を負うか又は維持する疾患を指す。免疫障害には、とりわけ、アレルギー性障害及び自己免疫性疾患が含まれる。
【0114】
本明細書で使用される用語「アレルギー性疾患」又は「アレルギー性障害」は、アレルゲンと呼ばれる特定の物質(花粉、刺傷、薬物、又は食品等)に対する免疫系の過敏性反応を特徴とする疾患を指す。アレルギーは、個々のアトピー性患者が、自らが感作されたことがあるアレルゲンと遭遇した場合に決まって観察される徴候及び症状の集合であり、様々な疾患、特に、気管支喘息等の呼吸器疾患及び症状の発症につながる可能性がある。様々な種類の分類が存在し、多くの場合、アレルギー性障害は、哺乳動物の身体においてそれがどこで生じるかに応じて、異なる名称を有する。「過敏性」は、個体において、自らが感作されたことがあるアレルゲンに曝露されたときに生じる、望ましくない(傷害性で、不快感を生じ、場合によっては致命的である)反応である。「即時型過敏症」はIgE抗体の産生に依存し、したがって、アレルギーに相当する。
【0115】
用語「自己免疫性疾患」又は「自己免疫性障害」は、生物体がそれ自身の構成成分部分を「自己」として認識する(分子未満のレベルまで)ことができないことによる、それ自身の細胞及び組織に対する生物体の異常な免疫応答からもたらされる疾患を指す。疾患の群は、2つのカテゴリー(臓器特異的で全身性疾患)では分裂され得る。
【0116】
「アレルゲン」は、素因のある、特に遺伝的に素因のある個体(アトピー性)患者において、lgE抗体の生成を導き出す物質、通常巨大分子又はタンパク質性組成物として定義される。同様の定義が、Liebersら(1996)Clin. Exp. Allergy 26、494~516頁に提示されている。
【0117】
用語「1型糖尿病」(T1D)又は「糖尿病1型」(「1型真性糖尿病」又は「免疫媒介性糖尿病」としても公知であり、若しくは以前は「若年発症糖尿病」又は「インスリン依存性糖尿病」としても公知)は、通常小児期中の感受性個体において発症する自己免疫障害である。自己免疫メカニズムによるほとんどのインスリン産生膵ベータ細胞の破壊がTID病因の根底にある。簡潔に述べると、生物は、インスリン産生を管理する膵ベータ細胞に対する免疫寛容を損失して、ベータ細胞の自己破壊を招く自己抗体の産生と関連づけられる免疫応答、主に細胞媒介性の免疫応答を誘導する。
【0118】
本明細書で脱髄性疾患又は障害の枠組みの中で使用される用語「脱髄」は、ニューロンの軸索を取り囲むミエリン鞘の傷害及び/又は分解を指し、これは結果として病変又はプラークの形成を伴う。脱髄に起因して、罹患した神経に沿うシグナル伝導が障害され、感覚、運動、認知、及び/又はその他の神経学的機能における不全等の、神経学的症状を引き起こす可能性がある。脱髄性疾患に罹っている患者における具体的な症状は、疾患及び疾患進行状態によって異なる。これらとして、霧視及び/又は複視、運動失調症、クローヌス、構語障害、疲労、不器用、手の麻痺、不全片麻痺、性感の消失、協調運動障害、錯感覚、眼球麻痺、筋肉協調運動障害、筋力低下、感覚消失、視力障害、神経学的症状、不安定な歩行(歩調)、痙性不全対麻痺、失禁、聴覚の問題、会話の問題、並びにその他を挙げることができる。脱髄性疾患は、中枢神経系脱髄性疾患と末梢神経系脱髄性疾患とに階層化することができる。或いは、脱髄性疾患は、脱髄の原因、すなわち、ミエリンの破壊(脱髄ミエリン破壊性)、又は異常及び変性ミエリン(ミエリン形成不全白質ジストロフィー性)に従って分類することができる。MSは、当該技術分野において、中枢神経系の脱髄性障害と考えられている(Lubetzki及びStankoff.(2014). Handb Clin Neurol. 122、89~99頁)。そのような脱髄性疾患及び障害の他の具体的だが非限定的な例として、視神経脊髄炎(NMO)、急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(AIDP)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、急性横断性脊髄炎、進行性多巣性白質脳症(PML)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)又はその他の遺伝性脱髄性障害が挙げられる。
【0119】
本明細書及び当該技術分野において「MS」と略される用語「多発性硬化症」は、中枢神経系に影響を与える自己免疫障害を意味する。MSは、若年成人において最も一般的な非外傷性身体障害性疾患であって(Dobson及びGiovannoni、(2019) Eur. J. Neurol. 26(1)、27~40頁)、中枢神経系に影響を与える最も一般的な自己免疫障害である(Berer及びKrishnamoorthy(2014) FEBS Lett. 588(22)、4207~4213頁)と考えられている。MSは、身体から精神にわたり精神医学的問題にまで及ぶ、多数の異なる症状によって対象において顕在化する可能性がある。典型的な症状として、霧視又は複視、筋力低下、片目の失明、並びに協調運動及び感覚の困難が挙げられる。多くの場合、MSは、再発寛解型疾患の所以である早期の炎症と、非再発性進行を引き起こす遅発性の神経変性とを有する2段階疾患、すなわち、二次進行型MS、及び一次進行型MSとみなされ得る。当該分野において進歩がなされつつあるものの、本疾患の決定的な根底原因は、これまでにはっきりしておらず、150を超える一塩基多型がMS易罹患性に関連づけられている(International Multiple Sclerosis Genetics Consortium Nat Genet.(2013). 45(11):1353~60頁)。ビタミンD欠乏症、喫煙、紫外線B(UVB)曝露、小児肥満及びエプスタイン・バーウイルスによる感染が、疾患発症に寄与していると報告されている(Ascherio(2013) Expert Rev Neurother. 13(12 Suppl)、3~9頁)。
【0120】
したがって、MSを、再発性(この場合、炎症が支配的な特徴である)から進行性(神経変性支配的)に及ぶスペクトル内に存在する、単一の疾患とみなすことができる。それ故、本明細書中で使用される用語である多発性硬化症は、あらゆる種類の疾患経過分類に属する、あらゆる型の多発性硬化症を包含する。特に、本発明は、最初のエピソードからなる症候群(CIS)、再発寛解型MS(RRMS)、二次進行型MS(SPMS)、一次進行型MS(PPMS)、更には、MSが疑われるRIS(radiology isolated syndrome)を有すると診断されたか、又はそうであると疑われる、強力な治療戦略の対象となる患者を想定している。RISは、厳密にはMSの疾患過程とみなされないが、脳及び/又は脊髄の磁気共鳴像(MRI)における、MS病変に相当するが他の診断からは一見説明がつかない異常を示す対象を分類するために使用される。CISは、中枢神経系における炎症及び脱髄によって引き起こされる、神経学的症状の最初のエピソード(定義では、24時間超持続する)である。RISと同様に、CISと分類された対象は、MSが発達し続ける可能性もそうでない可能性もあるが、脳MRI上にMS様病変を示す対象は、MSが発達する可能性がより高い。RRMSはMSの最も一般的な疾患経過であり、MSを有する対象の85%がRRMSと診断される。RRMSと診断された患者は、本発明の観点では好ましい群の患者である。RRMSは、新たな又は増加する神経学的症状に罹症すること、別な言い方をすれば、再発又は増悪を特徴とする。RRMSでは、前記再発の後、症状の部分的又は完全な寛解の期間が続き、これら寛解期間中は疾患進行を経験しない、及び/又はそれが観察されない。RRMSを、活動期RRMS(新たなMRI活性の再発及び/又は証拠)、非活動期RRMS、悪化RRMS(再発後、規定の期間にわたって身体障害が増大する)、又は非悪化RRMSに更に分類することができる。RRMSと診断された対象の一部分はSPMS疾患経過へと進行し、これは、経時的な神経学的機能の進行性の悪化、すなわち、身体障害の蓄積を特徴とする。活動期(再発及び/又は新たなMRI活性)、非活動期、進行期(経時的な疾患の悪化)、又は非進行期SPMS等の、SPMSの下位分類を行うことができる。最後に、PPMSは、早期の再発又は寛解を伴わず、症状の発症からの神経学的機能の悪化及びその結果としての身体障害の蓄積を特徴とする、MS疾患経過である。活動期PPMS(時折の再発及び/又は新たなMRI活性)、非活動期PPMS、進行期PPMS(新たなMRI活性によらない、経時的な疾患の悪化の証拠)及び非進行期PPMS等の、更なるPPMS下位群を形成することができる。一般に、MS疾患経過は、重症度(再発の場合)及び継続期間の両面において、再発及び寛解期間の実質的な対象間変動性を特徴とする。
【0121】
MSに対していくつかの疾患修飾療法が利用可能であり、したがって、本発明を代替的な治療戦略として、又はこれらの既存の療法と組み合わせて使用してもよい。医薬有効成分の非限定的な例として、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、グラチラマー酢酸塩、グラチラマー酢酸塩、ペグインターフェロンベータ-1a、テリフルノミド、フィンゴリモド、クラドリビン、シポニモド、フマル酸ジメチル、フマル酸ジロキシメル、オザニモド、アレムツズマブ、ミトキサントロン、オクレリズマブ、及びナタリズマブが挙げられる。或いは、本発明を、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、及び副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)等であるがこれらに限定されない、再発管理を目的とした治療又は処方と組み合わせて使用してもよい。更に、本発明を、特定の症状を緩和することを目的とした療法と組み合わせて使用してもよい。非限定的な例として、膀胱の問題、腸管機能不全、うつ病、浮動性めまい、回転性めまい、感情の変化、疲労、そう痒、疼痛、性的な問題、痙直、振戦、及び歩行困難からなる群から選択される症状を改善又は回避することを目的とした処方が挙げられる。
【0122】
MSは、3つの互いに絡み合った顕著な特性、すなわち、1)中枢神経系における病変形成、2)炎症、及び3)ニューロンのミエリン鞘の分解を特徴とする。従来は中枢神経系及び白質の脱髄性疾患と考えられてきたにもかかわらず、より最近の報告により、皮質及び深部灰白質の脱髄が白質脱髄を上回る可能性があることが表面化している(Kutzelniggら(2005). Brain. 128(11)、2705~2712頁)。どのように分子レベルでMSが引き起こされるかについて、主に2つの仮説が提唱されている。広く受け入れられている「アウトサイド・イン仮説」は、中枢神経系に移動し疾患プロセスを開始する、末梢自己反応性エフェクターCD4+T細胞の活性化に基づく。中枢神経系に入ると、前記T細胞はAPCによって局所的に再活性化され、更なるT細胞及びマクロファージを動員して、炎症病変を成立させる。注目すべきことに、MS病変は、病変端部に主に見出されるCD8+T細胞と、病変のより中心において見出されるCD4+T細胞とを含むことが示されている。これらの細胞は、脱髄、オリゴデンドロサイトの破壊、及び軸索損傷を引き起こし、神経機能障害に至ると考えられている。更に、炎症の制限及び修復の開始を行うように免疫調節ネットワークが誘発されて、結果として、臨床的寛解によって反映される、少なくとも部分的な再ミエリン化が生じる。にもかかわらず、十分な治療がなければ、更なる罹症により疾患の進行に至ることが多い。
【0123】
MSの発症は、患者のMRI上において見たところ古く不活性な病変が典型的に出現することによって裏付けられるように、最初の臨床症状が検出されるよりかなり前に始まっていると考えられている。診断方法の開発の進展により、MSは今では疾患の臨床的顕在化の前であっても検出することができる(すなわち、前症候性MS)。本発明との関連において、「MSの治療」及び類似の表現は、症候性及び前症候性MSの両方に対する治療及び治療戦略を想定している。特に、免疫寛容原性ペプチド及び/又はその結果としての細胞溶解性CD4+T細胞が前症候性MS患者を治療するために使用される場合、疾患は、臨床的顕在化が部分的、又は更には完全に回避される可能性がある程の早期に停止される。対象がインターフェロンベータ治療に対して完全には反応性でないMSも、用語「MS」に包含される。
【0124】
用語「視神経脊髄炎」又は「NMO」及び、「ドゥヴィック病」としても知られる「NMOスペクトル障害(NMOSD)」は、白血球及び抗体が主に視神経及び脊髄を攻撃するが、脳にも攻撃する可能性がある、自己免疫障害を指す(Wingerchuk 2006、Int MS J. 2006 May;13(2):42~50頁で概説されている)。視神経に対する損傷は、疼痛及び失明を引き起こす腫脹及び炎症を生じさせ、脊髄に対する損傷は、脚又は腕における脱力又は麻痺、感覚消失、並びに膀胱及び腸管機能の問題を引き起こす。NMOは再発寛解型疾患である。再発中、視神経及び/又は脊髄に対する新たな損傷が、身体障害の蓄積に至る可能性がある。MSとは異なり、この疾患の進行期はない。したがって、攻撃を防止することが良好な長期的結果にとって非常に重要である。抗MOG抗体と関連する場合では、抗MOG抗体がミエリン鞘に対する攻撃を誘発し、結果として脱髄をもたらす可能性があると考えられる。大部分の場合において、NMOの原因は、自己抗原に対する特異的な攻撃による。最大で対象の3分の1が、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)と呼ばれるミエリンの構成要素に対抗する自己抗体について陽性である可能性がある。抗MOG関連NMOを有する人々も同様に、横断性脊髄炎及び視神経炎のエピソードを有する。本出願の枠組み内で特に想定されているのは、MOG自己抗原によって誘導される、及び/又は抗MOG抗体によって引き起こされるNMOである。多くのNMO患者は、アクアポリン-4(AQP4)に対する自己抗体を発達させる。
【0125】
用語「治療的有効量」は、患者で所望の治療的又は予防的効果をもたらす本発明のペプチド又はその誘導体の量を指す。例えば、疾患又は障害に関して、それは、疾患又は障害の1つ又は複数の症状をある程度低減する量、特に、疾患又は障害に関連するかそれを引き起こす生理的又は生化学的パラメーターを部分的又は完全に正常に戻す量である。一般的に、治療的有効量は、正常な生理的状況の改善又は復旧へ導く、本発明のペプチド又はその誘導体の量である。例えば、免疫障害によって侵された哺乳動物を治療的に治療するために使用される場合、それは前記哺乳動物の体重1kg当たりの1日量のペプチドである。或いは、投与が遺伝子療法による場合、裸のDNA又はウイルスベクターの量は、本発明のペプチド、その誘導体又は相同体の妥当な投薬量の局所生成を確実にするように調整される。
【0126】
ペプチドを指す場合の用語「天然」は、配列が天然に存在するタンパク質(野生型又は突然変異体)の断片と同一であるという事実に関する。それと対照的に、用語「人工」は、そのように天然に存在しない配列を指す。人工配列は、限定的な改変、例えば天然に存在する配列の中で1つ又は複数のアミノ酸を変更/削除/挿入することによって、又は、天然に存在する配列のN若しくはC末端でアミノ酸を付加/除去することによって天然配列から得られる。
【0127】
この関連で、通常はエピトープスキャンニングとの関連で、ペプチド断片が抗原から生成されると理解される。偶然に、そのようなペプチドがそれらの配列中にT細胞エピトープ(MHCクラスIIエピトープ又はCD1d結合エピトープ)を含み、それらの近傍に本明細書中で定義されるような改変された酸化還元モチーフを有する配列を含む可能性がある。或いは、前記エピトープと前記酸化還元酵素モチーフの間に、最大で11アミノ酸、最大で7アミノ酸、最大で4アミノ酸、最大で2アミノ酸、又は更には0アミノ酸(言い換えれば、エピトープ及び酸化還元酵素モチーフが互いに隣接している)のアミノ酸配列が存在し得る。好ましい実施形態では、そのような天然に存在するペプチドは放棄される。
【0128】
本明細書では、アミノ酸はそれらのフルネーム、それらの3文字略記号又はそれらの1文字略記号で呼ばれる。
【0129】
本明細書では、アミノ酸配列のモチーフは、Prositeのフォーマットに従って書かれる。モチーフは、配列の特異的部分でのある特定の配列多様性を記載するために使用される。記号X又はBは、本明細書中で、任意のアミノ酸が受け入れられる位置のために使用される。記号Zは、本明細書中で、R、K、若しくはH等の塩基性アミノ酸ではないか、又はW、若しくはAではない、任意のアミノ酸が受け入れられる位置のために使用される。角括弧(「[]」)の間に所与の位置のための許容されるアミノ酸を掲載することによって、代替的なアミノ酸が指示され得る。例えば、[CST]は、Cys、Ser又はThrから選択されるアミノ酸を表す。代替物として排除されるアミノ酸は、中括弧(「{}」)の間にそれらを掲載することによって指示することができる。例えば、{AM}は、Ala及びMet以外の任意のアミノ酸を表す。必要に応じてモチーフの中の異なる要素は、ハイフン(-)によって互いから分離される。アミノ酸同士を識別するために、酸化還元酵素モチーフの外のアミノ酸を外部アミノ酸と呼ぶ場合があり、酸化還元モチーフ内のアミノ酸を内部アミノ酸と呼ぶ。
【0130】
T細胞エピトープ、例えば、MHCクラスII T細胞エピトープ又はNKT細胞エピトープ(又はCD1d結合ペプチドエピトープ)及び還元活性を有する改変されたペプチドモチーフ配列を含むペプチドは、それぞれ、抗原提示細胞への抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞、細胞溶解性NKT細胞の集団を生成することが可能である。
【0131】
したがって、その最も広い意味で、本発明は、免疫反応を誘発する能力を有する抗原(自己又は非自己)の少なくとも1つのT細胞エピトープ(MHCクラスII T細胞エピトープ又はNKT細胞エピトープ)、及びペプチドジスルフィド結合上に還元活性を有する改変されたチオレダクターゼ配列モチーフを含むペプチドに関する。T細胞エピトープ及び改変された酸化還元モチーフ配列はペプチドの中で互いに直近していることができるか、又は必要に応じて1つ又は複数のアミノ酸(いわゆる、リンカー配列)によって分離されてもよい。必要に応じて、ペプチドはエンドソーム標的配列及び/又は追加の「隣接」配列を更に含む。
【0132】
本発明のペプチドは、免疫反応を誘発する能力を有する抗原(自己又は非自己)のT細胞エピトープ、及び改変された酸化還元モチーフを含む。ペプチドの中のモチーフ配列の還元活性は、例えばインスリンの溶解性が還元後に変更されるインスリン溶解性アッセイで、又はインスリン等の蛍光標識基質によって、スルフヒドリル基を還元するその能力について検査することができる。そのようなアッセイの例は蛍光ペプチドを使用し、Tomazzolliら(2006) Anal. Biochem.350、105~112頁に記載される。FITC標識を有する2つのペプチドは、それらがジスルフィド架橋を通して互いと共有結合するときに自己失活する。本発明によるペプチドによる還元の結果、還元された個々のペプチドは再び蛍光性になる。
【0133】
改変された酸化還元モチーフは、T細胞エピトープのアミノ末端側に、又はT細胞エピトープのカルボキシ末端に配置され得る。
【0134】
還元活性を有するペプチド断片は、グルタレドキシン、ヌクレオレドキシン、チオレドキシン及び他のチオール/ジスルフィド酸化還元酵素を含む小ジスルフィド還元酵素であるチオレダクターゼに遭遇される(Holmgren(2000) Antioxid. Redox Signal. 2、811~820頁、Jacquotら(2002) Biochem. Pharm. 64、1065~1069頁)。還元活性を有するペプチド断片は、多官能性で偏在性であり、多くの原核生物及び真核生物中に見出される。それらは、例えば、Fomenkoら.((2003) Biochemistry 42、11214~11225頁;Fomenkoら(2002) Prot. Science 11、2285~2296頁))(式中、Xは任意のアミノ酸を表す)及びWO2008/017517から周知である、位置1及び/又は4にシステインを含む保存される活性ドメインコンセンサス配列内の酸化還元活性システインを通して、タンパク質(例えば、酵素)上のジスルフィド結合に関して還元活性を発揮することが知られている。よって、このモチーフはCXX[CST](配列番号2)又は[CST]XXC(配列番号1)のいずれかである。そのようなドメインはまた、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)及びホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC等の、より大きなタンパク質においても見出される。本発明は、より多くの効力及び活性を求めて、前記モチーフを再設計した。
【0135】
更に詳細に説明する場合、本発明のペプチドは、化学合成によって作製することができ、化学合成は、非天然アミノ酸を取り込むことを可能にする。したがって、上記で列挙される酸化還元改変酸化還元モチーフ中の「C」は、システイン、或いはメルカプトバリン、ホモシステイン又はチオール官能基を有する他の天然若しくは非天然アミノ酸等の、チオール基を有する別のアミノ酸を表す。還元活性を有するためには、改変された酸化還元モチーフ中に存在するシステインは、システインジスルフィド架橋の部分として存在すべきではない。それにもかかわらず、酸化還元改変酸化還元モチーフは、メチル化システイン等の改変されたシステインを含んでもよく、それは、遊離チオール基を有するシステインにin vivoで変換される。
【0136】
ペプチドは、安定性又は溶解度を高めるための改変、例えば、N末端NH2基又はC末端COOH基の改変(例えば、COOHの、CONH2基への改変)を更に含み得る。
【0137】
改変された酸化還元モチーフを含む本発明のペプチドでは、モチーフは、エピトープがMHC溝にフィットするか又はCD1d受容体に結合する場合、モチーフがMHC又はCD1d受容体結合溝の外側に留まるように位置する。改変された酸化還元モチーフは、ペプチドの中のエピトープ配列の直近に[言い換えると、モチーフとエピトープとの間のゼロアミノ酸のリンカー配列]置かれるか、又は、7アミノ酸以下のアミノ酸配列を含むリンカーによってT細胞エピトープから分離される。特に、リンカーは1、2、3、4、5、6又は7アミノ酸を含む。特定の実施形態は、エピトープ配列と、改変された酸化還元モチーフ配列との間に0、1又は2アミノ酸のリンカーを有するペプチドである。ペプチドリンカーの他に、ペプチドの部分を互いに(例えば改変された酸化還元モチーフ配列とT細胞エピトープ配列を)連結するリンカーとして、他の有機化合物を使用することができる。
【0138】
本発明のペプチドは、T細胞エピトープ及び改変された酸化還元モチーフを含む配列のN又はC末端に、追加の短いアミノ酸配列を更に含むことができる。そのようなアミノ酸配列は、本明細書では「隣接配列」と一般的に呼ばれる。隣接配列は、エピトープと、エンドソーム標的配列との間に、及び/又は改変された酸化還元モチーフと、エンドソーム標的配列との間に配置することができる。エンドソーム標的配列を含まないある特定のペプチドでは、ペプチド中の改変された酸化還元モチーフ及び/又はエピトープ配列のN及び/又はC末端に短いアミノ酸配列が存在してよい。特に隣接配列は、1~7アミノ酸の配列、最も詳細には1、2、3、又は4アミノ酸、最も好ましくは2アミノ酸の配列である。特に好ましい隣接配列は、単一又は2つのリジン残基(K又はKK)である。
【0139】
改変された酸化還元モチーフは、エピトープからN末端に位置され得る。或いは、改変された酸化還元モチーフは、エピトープからC末端に位置され得る。
【0140】
本発明のある特定の実施形態では、単一エピトープ配列及び改変された酸化還元モチーフ配列を含む、ペプチドが提供される。更なる特定の実施形態では、改変される酸化還元モチーフは、ペプチド中で数回(1、2、3、4回又は更に多い回)、例えば、1つ又は複数のアミノ酸によって互いと間隔を取り得る改変された酸化還元モチーフの繰り返しとして、又は互いと直近している繰り返しとして現れる。或いは、1つ又は複数の改変された酸化還元モチーフは、T細胞エピトープ配列のN及びC末端の両方で提供される。
【0141】
本発明のペプチドに関して想定される他の変形として、各エピトープ配列が、改変された酸化還元モチーフに先行され、及び/又は改変された酸化還元モチーフが続くT細胞エピトープ配列の繰り返し(例えば、「改変された酸化還元モチーフ-エピトープ」の繰り返し又は「改変された酸化還元モチーフ-エピトープ-改変された酸化還元モチーフ」の繰り返し)を含有するペプチドが挙げられる。本明細書中では、改変された酸化還元モチーフは全て、同じ配列を有するが、必須ではない。改変された酸化還元モチーフをそれ自体が含むエピトープを含むペプチドの反復性配列はまた、「エピトープ」及び「改変された酸化還元モチーフ」の両方を含む配列を生じることが知られている。そのようなペプチドでは、1つのエピトープ配列内の改変された酸化還元モチーフは、第2のエピトープ配列の外側の改変された酸化還元モチーフとして機能を果たす。
【0142】
通常、本発明のペプチドは、唯一のT細胞エピトープを含む。以下で記載するように、タンパク質配列中のT細胞エピトープは、機能性アッセイ及び/又は1つ又は複数のin silica予測アッセイによって同定され得る。T細胞エピトープ配列中のアミノ酸は、MHCタンパク質の結合溝中のそれらの位置に従って付番される。ペプチド内に存在するT細胞エピトープは、8~25アミノ酸のように7~30アミノ酸、更に詳細には8~16アミノ酸からなり、更に最も詳細には8、9、10、11、12、13、14、15又は16アミノ酸からなる。
【0143】
より詳細な実施形態では、T細胞エピトープは、7、8又は9アミノ酸の配列からなる。更なる特定の実施形態では、T細胞エピトープは、MHCクラスII分子によってT細胞に提示されるエピトープ[MHCクラスII制限T細胞エピトープ]である。通常、T細胞エピトープ配列は、MHC IIタンパク質の裂け目にフィットするオクタペプチド又はより具体的にはノナペプチド配列を指す。
【0144】
より詳細な実施形態では、T細胞エピトープは、7、8、又は9アミノ酸の配列からなる。更なる特定の実施形態では、T細胞エピトープは、CD1d分子によって提示されるエピトープ[NKT細胞エピトープ]である。通常、NKT細胞エピトープ配列は、CD1dタンパク質に結合し、これによって提示される7アミノ酸ペプチド配列を指す。
【0145】
本発明のペプチドのT細胞エピトープは、タンパク質の天然のエピトープ配列に対応することができるか、又は、天然のT細胞エピトープ配列と同様に改変されたT細胞エピトープがMHC裂け目内で結合する又はCD1d受容体に結合するその能力を保持する場合には、その改変バージョンであってもよい。改変されたT細胞エピトープは、MHCタンパク質又はCD1d受容体に対して天然のエピトープと同じ結合親和性を有することができるが、より低い親和性を有することもできる。特に、改変されたペプチドの結合親和性は、元のペプチドより10分の1以上、特に5分の1以上低い。本発明のペプチドは、タンパク質複合体に安定化効果を有する。したがって、ペプチド-MHC又はCD1d複合体の安定化効果は、MHC又はCD1d分子への改変されたエピトープのより低い親和性を補償する。
【0146】
ペプチドの中にT細胞エピトープ及び還元性化合物を含む配列は、MHCクラスII決定因子の中でのプロセシング及び提示のために後期エンドソームへのペプチドの取り込みを促進するアミノ酸配列(又は、別の有機化合物)に更に連結することができる。後期エンドソーム標的化はタンパク質の細胞質テールに存在するシグナルによって媒介され、良好に同定されたペプチドモチーフに対応する。後期エンドソーム標的配列は、MHCクラスII分子による抗原由来のT細胞エピトープのプロセシング及び効率的な提示を可能にする。そのようなエンドソーム標的化配列は、例えば、gp75タンパク質(Vijayasaradhiら(1995) J. Cell. Biol. 130、807~820頁)、ヒトCD3ガンマタンパク質、HLA-BM 11(Copierら(1996) J. lmmunol. 157、1017~1027頁)、DEC205受容体の細胞質テール(Mahnkeら(2000) J. Cell Biol.151、673~683頁)の中に含有される。エンドソームへの選別シグナルとして機能するペプチドの他の例は、Bonifacio及びTraub(2003) Annu. Rev. Biochem. 72、395~447頁のレビューの中で開示される。或いは、配列は、抗原に対するT細胞応答を克服することなく後期エンドソームでの取り込みを促進する、タンパク質からの亜優勢又は劣勢なT細胞エピトープのそれであってよい。後期エンドソーム標的化配列は、効率的な取り込み及びプロセシングのために抗原由来のペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端に位置することができ、最高10アミノ酸のペプチド配列等の隣接配列を通してカップリングさせることもできる。標的化目的のために劣勢なT細胞エピトープを使用する場合、後者は抗原由来のペプチドのアミノ末端に一般的に位置する。
【0147】
或いは、本発明は、CD1d分子に結合する能力を付与する疎水性残基を含むペプチドの生成に関する。そのようなペプチドは、投与すると、APCによって取り込まれ、後期エンドソームに向けられ、そこでCD1d上にロードされAPCの表面で提示される。前記疎水性ペプチドは、一般配列[FW]-XX-[ILM]-XX-[FWTH](配列番号134)又は[FWTH]-XX-[ILM]-XX-[FW](配列番号135)(式中、位置P1及びP7は、フェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)等の疎水性残基によって占有される)に対応するモチーフを特徴とする。ただし、P7は、それがトレオニン(T)又はヒスチジン(H)等の、フェニルアラニン又はトリプトファンを代替する疎水性残基を許容するという意味で、任意性がある。位置P4は、イソロイシン(I)、ロイシン(L)又はメチオニン(M)等の脂肪族残基によって占有される。本発明は、天然でCD1d結合モチーフを構成する疎水性残基でできたペプチドに関する。一部の実施形態では、前記モチーフのアミノ酸残基は、通常は、15 CD1dに結合する能力を増加させる残基による置換によって改変される。特定の実施形態では、モチーフは、一般モチーフ[FW]-XX-[ILM]-XX-[FWTH](配列番号134)とより密接にフィットするように改変される。特に、ペプチドは、位置7にF又はWを含むように生成される。
【0148】
したがって、本発明は、抗原性タンパク質のペプチド及び特異的免疫反応を導き出すことにおけるそれらの使用を想定する。これらのペプチドは、それらの配列の中に、すなわち、多くても10、好ましくは7アミノ酸以下で分離されている還元性化合物及びT細胞エピトープを含む、タンパク質の断片に対応することもできる。或いは、及びほとんどの抗原性タンパク質では、本発明のペプチドは、還元性化合物、特に本明細書に記載される還元性の改変された酸化還元モチーフを、抗原性タンパク質のT細胞エピトープのN末端又はC末端に結合させることによって生成される(それの直近に、又は多くても10、特に多くても7アミノ酸のリンカーにより)。更に、タンパク質のT細胞エピトープ配列及び/又は改変された酸化還元モチーフを改変することができ、及び/又は、天然に存在する配列と比較して、1つ又は複数の隣接配列及び/又は標的配列を導入すること(又は、改変すること)ができる。したがって、本発明の特色を目的の抗原性タンパク質の配列の中で見出すことができるかどうかによって、本発明のペプチドは「人工の」又は「天然に存在する」配列を含むことができる。
【0149】
本発明のペプチドは、実質的に長さが多様であり得る。ペプチドの長さは、13又は14アミノ酸と様々であってよく、すなわち、ヒスチジンを有する改変された酸化還元モチーフ5アミノ酸、最大20、25、30、40又は50アミノ酸がエピトープに隣接している8~9アミノ酸のエピトープからなる。例えば、ペプチドは、40アミノ酸のエンドソーム標的配列、約2アミノ酸の隣接配列、5アミノ酸の本明細書中に記載するようなモチーフ、4アミノ酸のリンカー及び9アミノ酸のT細胞エピトープペプチドを含み得る。
【0150】
したがって、特定の実施形態では、完全ペプチドは、13アミノ酸から最大20、25、30、40、50、75又は100アミノ酸からなる。より詳細には、還元化合物が本明細書中に記載するような改変された酸化還元モチーフである場合、エンドソーム標的配列を有さない、必要に応じてリンカーに結合されたエピトープ及び改変された酸化還元モチーフを含む(人工又は天然)配列(本明細書中で、「エピトープ改変酸化還元モチーフ」配列と称される)の長さは、重要である。「エピトープ改変酸化還元モチーフ」はより詳細には、13、14、15、16、17、18又は19アミノ酸の長さを有する。13又は14~19アミノ酸のそのようなペプチドは、必要に応じてそのサイズがあまり重要ではないエンドソーム標的シグナルにカップリングされ得る。
【0151】
上記で詳述するように、特定の実施形態では、本発明のペプチドは、T細胞エピトープ配列に連結された本明細書中に記載するような還元改変酸化還元モチーフを含む。
【0152】
更なる特定の実施形態では、本発明のペプチドは、それらの天然配列内に酸化還元特性を有するアミノ酸配列を含まないT細胞エピトープを含むペプチドである。
【0153】
しかしながら、代替的な実施形態では、T細胞エピトープは、エピトープの、MHC裂け目への又はCD1d分子への結合を保証するアミノ酸の任意の配列を含み得る。抗原性タンパク質の目的のエピトープが、そのエピトープ配列内に本明細書中に記載するような改変された酸化還元モチーフを含む場合、本発明による免疫原性ペプチドは、本明細書中に記載するような改変された酸化還元モチーフの配列及び/又は(裂け目内に埋まっているエピトープ内に存在する改変された酸化還元モチーフに反して)結合された改変された酸化還元モチーフが還元活性を保証することができるようにエピトープ配列にN又はC末端でカップリングされた別の還元配列を含む。
【0154】
したがって、T細胞エピトープ及びモチーフは、互いに直近しているか、又は分離されており、重複しない。「直近している」又は「分離されている」の概念を評価するために、MHC裂け目又はCD1d分子にフィットする8又は9アミノ酸配列が決定され、ヒスチジンを含む酸化還元テトラペプチド若しくは改変された酸化還元モチーフペンタペプチドを有するこのオクタペプチド又はノナペプチド間の距離が決定される。
【0155】
概して、本発明のするペプチドは天然ではなく(したがって、それ自体タンパク質の断片でない)、T細胞エピトープに加えて、それにより改変された酸化還元モチーフが最大7、より詳細には最大4又は最大2アミノ酸からなるリンカーによってT細胞エピトープから即座に分離される本明細書中に記載するような改変された酸化還元モチーフを含有する人工ペプチドである。
【0156】
酸化還元酵素モチーフ及びMHCクラスII T細胞エピトープを含むペプチド(又はそのようなペプチドを含む組成物)の哺乳動物への投与(すなわち、注射)時に、ペプチドは、抗原由来T細胞エピトープを認識するT細胞の活性化を導き出し、表面受容体の還元を通して更なるシグナルをT細胞に提供することが示されている。この最適上限の活性化は、T細胞エピトープを提示する細胞に対する細胞溶解性特性、並びにバイスタンダーT細胞に関する抑制特性を獲得するT細胞を生じる。
【0157】
更に、酸化還元酵素モチーフ及びNKT細胞エピトープを含むペプチド(又はそのようなペプチドを含む組成物)の哺乳動物への投与(すなわち、注射)時に、ペプチドは、抗原由来T細胞エピトープを認識するT細胞の活性化を導き出し、CD1d表面受容体への結合を通して更なるシグナルをT細胞に提供することが示されている。この活性化は、T細胞エピトープを提示する細胞に対する細胞溶解性特性を獲得するNKT細胞を生じる。このようにして、抗原由来T細胞エピトープ、及びエピトープの外側に改変された酸化還元モチーフを含有する本発明で記載するペプチド又はペプチドを含む組成物は、人間を含む哺乳動物の直接的な免疫化に使用することができる。したがって、本発明は、医薬としての使用のための本発明のペプチド及びそれらの誘導体の使用を提供する。したがって、本発明は、本発明による1つ又は複数のペプチドを、それを必要とする患者に投与することを含む治療方法を提供する。
【0158】
本発明は、細胞溶解性特性を持つ抗原特異的なT細胞が小ペプチドによる免疫化によって導き出され得る方法を提供する。(i)抗原由来のT細胞エピトープをコードする配列及び(ii)酸化還元特性を有するコンセンサス配列を含有し、更に必要に応じて効率的なMHCクラスII提示又はCD1d受容体結合のためのペプチドの、後期エンドソームへの取り込みを促進する配列も含むペプチドは、細胞溶解性CD4+T細胞又はNKT細胞をそれぞれ導き出すことが見出されている。
【0159】
本発明のペプチドの免疫原性特性は、免疫反応の治療及び防止において特に目的となる。
【0160】
本明細書に記載されるペプチドは医薬として使用され、特に哺乳動物、特にヒトにおける免疫障害の予防又は治療のための医薬の製造のために使用される。
【0161】
本発明は、本発明のペプチド、その相同体又は誘導体を使用することによってそのような治療又は防止を必要とする哺乳動物の免疫障害の治療又は防止の方法であって、上記方法は、例えば、免疫障害の症状を低減するために、免疫障害を患うか、又は免疫障害のリスクがある上記哺乳動物に、治療上有効な量の本発明のペプチド、その相同体又は誘導体を投与する工程を含む方法について記載している。ヒト及び動物、例えばペット及び畜産動物の両方の治療が想定される。ある実施形態では、治療される哺乳動物はヒトである。上で言及される免疫障害は、特定の実施形態では、アレルギー性疾患及び自己免疫性疾患から選択される。
【0162】
本明細書中で規定するようなペプチドを含む本発明のペプチド又は医薬組成物は好ましくは、皮下又は筋肉内投与を通して投与される。好ましくは、ペプチド又はそれを含む医薬組成物は、肘と肩の中間の上腕の側部の領域で皮下に注射する(SC)ことができる。2回以上の別個の注射が必要な場合、それらは両腕に同時投与することができる。
【0163】
本発明によるペプチド又はそれを含む医薬組成物は、治療上有効な用量で投与される。例示的であるが非限定的な投薬レジメンは、50~1500μg、好ましくは100~1200μgである。より具体的な投薬スキームは、患者の状態及び疾患の重症度によって50~250μg、250~450μg又は850~1300μgであってよい。投薬レジメンは、同時に又は連続的に、単回投与又は2、3、4、5若しくはそれより多い回数の用量での投与を含むことができる。例示的な非限定的投与スキームは、以下の通りである:
- 各々25μg(各々100μL)の2回の別個の注射による50μgのペプチドのSC投与と、続く各々12.5μg(各々50μL)の2回の別個の注射による25μgのペプチドの3回の連続注射を含む低用量スキーム。
- 各々75μg(各々300μL)の2回の別個の注射による150μgのペプチドのSC投与と、続く各々37.5μg(各々150μL)の2回の別個の注射による75μgのペプチドの3回の連続投与を含む中間用量スキーム。
- 各々225μg(各々900μL)の2回の別個の注射による450μgのペプチドのSC投与と、続く各々112.5μg(各々450μL)の2回の別個の注射による225μgのペプチドの3回の連続投与を含む高用量スキーム。
【0164】
公知の酸化還元酵素モチーフ及びT細胞エピトープを含む免疫原性ペプチドの例示的な用量スキームは、ClinicalTrials.govにおいて識別子NCT03272269で見出すことができる。
【0165】
本発明は、改善された酸化還元酵素モチーフ及び抗原性タンパク質のT細胞エピトープを含み、必要に応じて0~7アミノ酸のリンカーによって隔てられた、免疫原性ペプチドを提供する。
【0166】
用語「酸化還元酵素モチーフ」、「チオール酸化還元酵素モチーフ」、「チオレダクターゼモチーフ」、「チオレドックスモチーフ」又は「酸化還元モチーフ」は、本明細書で同義語として使用され、1つの分子(還元体、水素又は電子供与体とも呼ばれる)から別のもの(酸化体、水素又は電子受容体とも呼ばれる)への電子の移動に関与するモチーフを指す。
【0167】
好ましい実施形態では、前記酸化還元酵素モチーフは、以下の一般アミノ酸配列:
Z(B)n[CST]XmC-(配列番号96~109)又はZ(B)nCXm[CST]-(配列番号110~123)
(式中、Zは、好ましくは、R(アルギニン)、K(リジン)及びH(ヒスチジン)等の塩基性アミノ酸を除き、好ましくは、アミノ酸D(アスパラギン酸)、E(グルタミン酸)、及び/又はA(アラニン)を除いた、任意のアミノ酸又は非天然アミノ酸であり;
(B)は任意のアミノ酸であり;
nは0~2の整数であり;
Xは任意のアミノ酸であり;
mは0~4の整数であり、好ましくは、mは1、2、又は3であり、より好ましくは、mは2であり;
前記酸化還元酵素モチーフ中のハイフン(-)は、リンカー(c)若しくはエピトープ(b)のN末端又はリンカー(c)若しくはエピトープ(b)のC末端に対する酸化還元酵素モチーフの結合点を示す)
を含む群から選択される。
【0168】
好ましくは、前記Zは、W、G、S、T、C、V、L、I、M、P、F、Y、N、及びQからなる群から選択されるか、又は非天然非塩基性アミノ酸である。
【0169】
好ましくは、前記Xは、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、及びEからなる群から選択される。
【0170】
前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。好ましい実施形態では、Xは、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。
【0171】
好ましい実施形態では、Xは、本明細書中で定義されるような塩基性アミノ酸又は非天然塩基性アミノ酸を除く任意のアミノ酸である。
【0172】
好ましい実施形態では、免疫原性ペプチドは、1~7アミノ酸の隣接アミノ酸配列、最も詳細には、1、2、3、又は4アミノ酸、最も好ましくは2アミノ酸の配列を含み得る。特に好ましい実施形態では、前記側方配列は、1つ又は2つ以上のK残基(リジンアミノ酸残基)を含むか、又はこれからなる。
【0173】
好ましい実施形態では、前記酸化還元酵素モチーフは、Z(B)nCPYC(配列番号142~144)、Z(B)nSPYC(配列番号145~147)、Z(B)nTPYC(配列番号148~150)、Z(B)nCPYC(配列番号151~153)、Z(B)nCPYS(配列番号154~156)、又はZ(B)nCPYT(配列番号157~159)等の、Z(B)n[CST]PYC(配列番号136~138)又はZ(B)nCPY[CST](配列番号139~141)である。これらのモチーフのいずれか1つにおいて、Zは、好ましくは、R、K及びH等の塩基性アミノ酸ではなく、必要に応じてD、E、及び/又はAをも除いた、任意のアミノ酸であり得る。これらのモチーフのいずれか1つにおいて、(B)は、好ましくは塩基性アミノ酸ではない、任意のアミノ酸であり得、nは、0~2の整数である。前記ペプチドの好ましい実施形態では、Z(B)nは、以下の配列を有さない:K;KH;R;又はRH。前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0174】
好ましい実施形態では、前記酸化還元酵素モチーフは、Z(B)nCHGC(配列番号166~168)、Z(B)nSHGC(配列番号169~171)、Z(B)nTHGC(配列番号172~174)、Z(B)nCHGC(配列番号175~177)、Z(B)nCHGS(配列番号178~180)、又はZ(B)nCHGT(配列番号181~183)等の、Z(B)n[CST]HGC(配列番号160~162)又はZ(B)nCHG[CST](配列番号163~165)である。これらのモチーフのいずれか1つにおいて、Zは、好ましくは、R、K及びH等の塩基性アミノ酸ではなく、必要に応じてD、E、及び/又はAをも除いた、任意のアミノ酸であり得る。これらのモチーフのいずれか1つにおいて、(B)は、好ましくは塩基性アミノ酸ではない、任意のアミノ酸であり得、nは、0~2の整数である。前記ペプチドの好ましい実施形態では、Z(B)nは、以下の配列を有さない:K;KH;R;又はRH。前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0175】
好ましい実施形態では、前記酸化還元酵素モチーフは、Z(B)nCGPC(配列番号190~192)、Z(B)nSGPC(配列番号193~195)、Z(B)nTGPC(配列番号196~198)、Z(B)nCGPC(配列番号199~201)、Z(B)nCGPS(配列番号202~204)、又はZ(B)nCGPT(配列番号205~207)等の、Z(B)n[CST]GPC(配列番号184~186)又はZ(B)nCGP[CST](配列番号187~189)である。これらのモチーフのいずれか1つにおいて、Zは、好ましくは、R、K及びH等の塩基性アミノ酸ではなく、必要に応じてD、E、及び/又はAをも除いた、任意のアミノ酸であり得る。具体例では、Zは、K、R又は本明細書中で定義されるような非天然アミノ酸である。これらのモチーフのいずれか1つにおいて、(B)は、好ましくは塩基性アミノ酸ではない、任意のアミノ酸であり得、nは、0~2の整数である。前記ペプチドの好ましい実施形態では、Z(B)nは、以下の配列を有さない:K;KH;R;又はRH。前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0176】
好ましい実施形態では、前記酸化還元酵素モチーフは、Z(B)nCGHC(配列番号214~216)、Z(B)nSGHC(配列番号217~219)、Z(B)nTGHC(配列番号220~222)、Z(B)nCGHC(配列番号223~225)、Z(B)nCGHS(配列番号226~228)、又はZ(B)nCGHT(配列番号229~231)等の、Z(B)n[CST]GHC(配列番号208~210)又はZ(B)nCGH[CST](配列番号211~213)である。これらのモチーフのいずれか1つにおいて、Zは、好ましくは、R、K及びH等の塩基性アミノ酸ではなく、必要に応じてD、E、及び/又はAをも除いた、任意のアミノ酸であり得る。これらのモチーフのいずれか1つにおいて、(B)は、好ましくは塩基性アミノ酸ではない、任意のアミノ酸であり得、nは、0~2の整数である。前記ペプチドの好ましい実施形態では、Z(B)nは、以下の配列を有さない:K;KH;R;又はRH。前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0177】
好ましい実施形態では、前記酸化還元酵素モチーフは、Z(B)nCGFC(配列番号238~240)、Z(B)nSGFC(配列番号241~243)、Z(B)nTGFC(配列番号244~246)、Z(B)nCGFC(配列番号247~249)、Z(B)nCGFS(配列番号250~252)、又はZ(B)nCGFT(配列番号253~255)等の、Z(B)n[CST]GFC(配列番号232~234)又はZ(B)nCGF[CST](配列番号235~237)である。これらのモチーフのいずれか1つにおいて、Zは、好ましくは、R、K及びH等の塩基性アミノ酸ではなく、必要に応じてD、E、及び/又はAをも除いた、任意のアミノ酸であり得る。これらのモチーフのいずれか1つにおいて、(B)は、好ましくは塩基性アミノ酸ではない、任意のアミノ酸であり得、nは、0~2の整数である。前記ペプチドの好ましい実施形態では、Z(B)nは、以下の配列を有さない:K;KH;R;又はRH。前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0178】
好ましい実施形態では、前記酸化還元酵素モチーフは、Z(B)nCRLC(配列番号262~264)、Z(B)nSRLC(配列番号265~267)、Z(B)nTRLC(配列番号268~270)、Z(B)nCRLC(配列番号271~273)、Z(B)nCRLS(配列番号274~276)、又はZ(B)nCRLT(配列番号277~279)等の、Z(B)n[CST]RLC(配列番号256~258)又はZ(B)nCRL[CST](配列番号259~261)である。これらのモチーフのいずれか1つにおいて、Zは、好ましくは、R、K及びH等の塩基性アミノ酸ではなく、必要に応じてD、E、及び/又はAをも除いた、任意のアミノ酸であり得る。これらのモチーフのいずれか1つにおいて、(B)は、好ましくは塩基性アミノ酸ではない、任意のアミノ酸であり得、nは、0~2の整数である。前記ペプチドの好ましい実施形態では、Z(B)nは、以下の配列を有さない:K;KH;R;又はRH。前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、KW、KP、RW、RP、HW、HP、PH、WH、PK、WK、PR、及びWRから選択される。
【0179】
好ましい実施形態では、前記酸化還元酵素モチーフは、Z(B)nCHPC(配列番号286~288)、Z(B)nSHPC(配列番号289~291)、Z(B)nTHPC(配列番号292~294)、Z(B)nCHPC(配列番号295~297)、Z(B)nCHPS(配列番号298~300)、又はZ(B)nCHPT(配列番号301~303)等の、Z(B)n[CST]HPC(配列番号280~282)又はZ(B)nCHP[CST](配列番号283~285)である。これらのモチーフのいずれか1つにおいて、Zは、好ましくは、R、K及びH等の塩基性アミノ酸ではなく、必要に応じてD、E、及び/又はAをも除いた、任意のアミノ酸であり得る。これらのモチーフのいずれか1つにおいて、(B)は、好ましくは塩基性アミノ酸ではない、任意のアミノ酸であり得、nは、0~2の整数である。前記ペプチドの好ましい実施形態では、Z(B)nは、以下の配列を有さない:K;KH;R;又はRH。前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0180】
本発明に係る免疫原性ペプチドの具体例は、以下である:
【0181】
Z(B)n-CPYC-V-QYIKANSKFIGIT-EL(配列番号304~306)(式中、Z(B)nは本明細書中で定義される通りであり、-CPYC-(配列番号307)はチオレドックスモチーフを表し、-V-はリンカーであり、-QYIKANSKFIGIT-(配列番号308)は破傷風毒素のT細胞エピトープであり、-ELはC末端隣接配列である)。前記ペプチドの好ましい実施形態では、Z(B)nは、以下の配列を有さない:K;KH;R;又はRH。前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0182】
Z(B)n-CHGC-V-QYIKANSKFIGIT-EL(配列番号309~311)(式中、Z(B)nは本明細書中で定義される通りであり、-CHGC-(配列番号312)はチオレドックスモチーフを表し、-V-はリンカーであり、-QYIKANSKFIGIT-(配列番号308)は破傷風毒素のT細胞エピトープであり、-ELはC末端隣接配列である)。前記ペプチドの好ましい実施形態では、Z(B)nは、以下の配列を有さない:K;KH;R;又はRH。前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0183】
Z(B)n-CPYC-GG-FIGLMYY(配列番号313~315)(式中、Z(B)nは本明細書中で定義される通りであり、-CPYC-(配列番号307)はチオレドックスモチーフを表し、-GG-はリンカーであり、-FIGLMYY-(配列番号316)は、アデノウイルス(Ad5)のヘキソンタンパク質のNKT細胞エピトープであり、C末端隣接配列は存在しない)。前記ペプチドの好ましい実施形態では、Z(B)nは、以下の配列を有さない:K;KH;R;又はRH。前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0184】
Z(B)n-CPYC-GW-YRSPFSRVV-HLYR(配列番号317~319)(式中、Z(B)nは本明細書中で定義される通りであり、-CPYC-(配列番号307)はチオレドックスモチーフを表し、-GW-はリンカーであり、-YRSPFSRVV-(配列番号320)はMOGタンパク質のT細胞エピトープであり、-HLYR(配列番号321)はC末端隣接配列である)。前記ペプチドの好ましい実施形態では、Z(B)nは、以下の配列を有さない:K;KH;R;又はRH。前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0185】
Z(B)n-CPYC-GW-YRSPFSRVV-K(配列番号322~324)又はZ(B)n-CPYC-GW-YRSPFSRVV-KK(配列番号325~327)(式中、Z(B)nは本明細書中で定義される通りであり、-CPYC-(配列番号307)はチオレドックスモチーフを表し、-GW-はリンカーであり、-YRSPFSRVV-(配列番号320)はMOGタンパク質のT細胞エピトープであり、-K又は-KKはC末端隣接配列である)。前記ペプチドの好ましい実施形態では、Z(B)nは、以下の配列を有さない:K;KH;R;又はRH。前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0186】
Z(B)n-CPYC-VRY-FLRVPSWKI-TLF(配列番号328~330)(式中、Z(B)nは本明細書中で定義される通りであり、-CPYC-(配列番号307)はチオレドックスモチーフを表し、-VRY-はリンカーであり、-FLRVPSWKI-(配列番号331)はMOGタンパク質のT細胞エピトープであり、-TLFはC末端隣接配列である)。前記ペプチドの好ましい実施形態では、Z(B)nは、以下の配列を有さない:K;KH;R;又はRH。前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。C末端側方配列TLFは、1つ又は2つのK残基によって補充することができる。
【0187】
Z(B)n-CPYC-SLQP-LALEGSLQK-RG(配列番号332~334)(式中、Z(B)nは本明細書中で定義される通りであり、-CPYC-(配列番号307)はチオレドックスモチーフを表し、-SLQP-(配列番号335)はリンカーであり、-LALEGSLQK-(配列番号336)は(プロ)インスリンタンパク質のMHCクラスII T細胞エピトープであり、-RGはC末端隣接配列である)。前記ペプチドの好ましい実施形態では、Z(B)nは、以下の配列を有さない:K;KH;R;又はRH。
【0188】
特に好ましい実施形態では、配列:W-CPYC-SLQP-LALEGSLQK-RG(配列番号337)及びP-CPYC-SLQP-LALEGSLQK-RG(配列番号338)におけるように、ZはW又はPであり、nは0である。前記ペプチドの更なる特定の実施形態では、Z(B)nは、W、P、G、KW、KP、KG、RW、RP、RG、HW、HP、HG、PH、WH、GH、PK、WK、GK、PR、WR、及びGRから選択される。
【0189】
本発明のペプチドは、試料中のクラスII制限CD4+T細胞を検出するin vitro診断方法で使用することもできる。この方法では、試料をMHCクラスII分子及び本発明によるペプチドの複合体と接触させる。CD4+T細胞は、複合体の試料中の細胞との結合を測定することによって検出され、ここで、細胞への複合体の結合は試料中のCD4+T細胞の存在の指標となる。複合体は、ペプチド及びMHCクラスII分子の融合タンパク質であってよい。或いは、複合体中のMHC分子は四量体である。複合体は可溶性分子として提供することができるか、又は担体に結合していてよい。
【0190】
本発明のペプチドは、試料中のNKT細胞を検出するin vitro診断方法で使用することもできる。この方法では、試料をCD1d分子及び本発明に係るペプチドの複合体と接触させる。NKT細胞は、複合体の試料中の細胞との結合を測定することによって検出され、ここで、細胞への複合体の結合は試料中のNKT細胞の存在の指標となる。複合体は、ペプチド及びCD1d分子の融合タンパク質であってよい。
【0191】
したがって、特定の実施形態では、本発明の治療及び防止の方法は、本明細書中に記載するような免疫原性ペプチドの投与を含み、ここで、ペプチドは、治療されるべき疾患において役割を果たす抗原性タンパク質のT細胞エピトープ(例えば、上述したようなもの)を含む。更なる特定の実施形態では、使用されるエピトープは、優勢エピトープである。
【0192】
本発明によるペプチドは、ペプチドを合成することによって調製され、ここで、T細胞エピトープ及び改変された酸化還元モチーフは、0~5アミノ酸で分離されている。ある特定の実施形態では、改変された酸化還元モチーフは、タンパク質中に存在するような配列構成を保存するようにエピトープ配列の外側に1、2又は3つの突然変異を導入することによって得られ得る。通常、P-2及びP-1におけるアミノ酸、並びにP+10及びP+11におけるアミノ酸は、天然配列の部分であるノナペプチドに関して、ペプチド配列において保存される。これらの隣接残基は概して、MHCクラスII又はCD1d分子への結合を安定化する。他の実施形態では、エピトープのN末端又はC末端にある配列は、T細胞エピトープ配列を含有する抗原性ペプチドの配列とは無関係である。
【0193】
したがって、ペプチドを設計する上記方法に基づいて、ペプチドは、化学的ペプチド合成、組換え発現方法、又はより例外的な場合では、タンパク質のタンパク質分解性又は化学的断片化によって生成される。
【0194】
上記方法において生成されるようなペプチドは、in vitro及びin vivo方法で、T細胞エピトープの存在に関して検査することができ、in vitroアッセイでそれらの還元活性に関して検査することができる。最終的な品質管理として、ペプチドをin vitroアッセイで検査して、ペプチドが、改変された酸化還元モチーフを有するペプチド中にも存在するエピトープ配列を含有する抗原を提示する抗原提示細胞に関して、アポトーシス経路を介して細胞溶解性であるCD4+T又はNKT細胞を生成することができるかどうかを検証することができる。
【0195】
本発明のペプチドは、組換えDNA技法を使用して、細菌、酵母、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞において生成され得る。ペプチドの限定長さを考慮して、ペプチドは、化学的ペプチド合成によって調製することができ、ここで、ペプチドは、異なるアミノ酸を互いにカップリングすることによって調製される。化学的合成は、例えばD-アミノ酸、天然に存在しない側鎖を有するアミノ酸又はメチル化システイン等の改変された側鎖を有する天然アミノ酸のインクルージョンに特に適している。
【0196】
化学的ペプチド合成は十分に記述されており、ペプチドは、Applied Biosystems社及び他の企業等の企業に発注され得る。
【0197】
ペプチド合成は、固相ペプチド合成(SPPS)又は逆に溶液相ペプチド合成のいずれかとして実施され得る。最良の公知のSPPS方法は、t-Boc及びFmoc固相化学である:
【0198】
ペプチド合成中に、いくつかの保護基が使用される。例えば、ヒドロキシル及びカルボキシ官能基は、t-ブチル基によって保護され、リジン及びトリプトファンは、T-Bocによって保護され、アスパラギン、グルタミン、システイン及びヒスチジンは、トリチル基によって保護され、アルギニンは、pbf基によって保護される。適切である場合、そのような保護基は、合成後にペプチド上に残され得る。ペプチドは、SPPSの範囲を超えるタンパク質合成を達成する非常に大きな可能性を提供する、元々Kentによって記載され(Schnelzer & Kent(1992) lnt. J. Pept. Protein Res. 40、180~193頁)、例えばTamら、(2001) Biopolymers 60、194~205頁に概説されたようにライゲーション戦略(無保護のペプチド断片の化学選択的カップリング)を使用して、互いに連結させてより長いペプチドを形成することができる。100~300残基のサイズを有する多くのタンパク質が、この方法によって首尾よく合成されている。合成ペプチドは、SPPSの大きな前進のため、生化学、薬理学、神経生物学、酵素学及び分子生物学の研究分野においてますます重大な役割を果たし続けている。
【0199】
或いは、ペプチドは、コードヌクレオチド配列を含む適切な発現ベクターにおいて本発明のペプチドをコードする核酸分子を使用することによって合成され得る。そのようなDNA分子は、自動DNA合成機及び遺伝子コードの周知のコドンアミノ酸関係を使用して、容易に調製することができる。そのようなDNA分子はまた、オリゴヌクレオチドプローブ及び従来のハイブリダイゼーション方法論を使用してゲノムDNAとして又はcDNAとして得られ得る。そのようなDNA分子は、細菌、例えば大腸菌(Escherichia coli)、酵母細胞、動物細胞又は植物細胞等の適切な宿主におけるDNAの発現及びポリペプチドの産生に適応しているプラスミドを含む発現ベクターに取り込まれてもよい。
【0200】
目的のペプチドの物理特性及び化学特性(例えば、溶解度、安定性)を検査して、ペプチドが治療用組成物における使用に適している/適する予定であるかどうかを決定する。通常、これは、ペプチドの配列を調節することによって最適化される。必要に応じて、ペプチドは、合成後に当該技術分野で公知の技法を使用して修飾され得る(化学的修飾、例えば官能基を付加/欠失させる)。
【0201】
標準的な酸化還元酵素モチーフ及びMHCクラスII T細胞エピトープを含む免疫原性ペプチドの作用機序は、上記で引用したPCT出願WO2008/017517及び本発明者らの出版物で開示されている実験データを用いて実証されている。標準的な酸化還元酵素モチーフ及びCD1d結合NKT細胞エピトープを含む免疫原性ペプチドの作用機序は、上記で引用したPCT出願WO2012/069568及び本発明者らの出版物で開示されている実験データを用いて実証されている。
【0202】
本発明は、抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞(MHCクラスIIエピトープを含む、本明細書中に開示される免疫原性ペプチドを使用する場合)、又は抗原特異的細胞溶解性NKT細胞(CD1d分子に結合するNKT細胞エピトープ含む、本明細書中に開示される免疫原性ペプチドを使用する場合)をin vivo又はin vitroで生成する方法を提供する。
【0203】
本発明は、抗原特異的CD4+T細胞又はNKT細胞の産生に関するin vivo方法について記載する。特定の実施形態は、本明細書に記載される本発明のペプチドで動物(ヒトを含む)を免疫化し、次に、免疫化された動物からCD4+T細胞又はNKT細胞を単離することによってCD4+T細胞又はNKT細胞を生成又は単離する方法に関する。本発明は、APCに向けた抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞又はNKT細胞の生成のためのin vitro方法を記載する。本発明は、APCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞及びNKT細胞を生成する方法を提供する。
【0204】
一実施形態では、末梢血細胞の単離、本発明による免疫原性ペプチドによるin vitroでの細胞集団の刺激、及び刺激された細胞集団の、特にIL-2の存在下での増量を含む方法が提供される。本発明による方法は、多数のCD4+T細胞が生成され、抗原性タンパク質に特異的であるCD4+T細胞を生成することができる(抗原特異的エピトープを含むペプチドを使用することによって)という利点を有する。
【0205】
代わりの実施形態では、CD4+T細胞はin vivoで、すなわち本明細書に記載される免疫原性ペプチドの対象への注射、及びin vivoで生成される細胞溶解性CD4+T細胞の収集によって生成することができる。
【0206】
本発明の方法によって得られ得るAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞は、アレルギー反応の防止及び自己免疫疾患の治療における免疫療法のための哺乳動物への投与に関して特に関心が持たれる。同種異系細胞及び自己細胞の使用はともに想定される。
【0207】
細胞溶解性CD4+T細胞集団は、以下で本明細書中に記載するように得られる。
【0208】
一実施形態では、本発明は、特定のNKT細胞を増殖させる手法であって、結果として、
(i)サイトカイン産生の増加
(ii)抗原提示細胞の接触及び可溶性因子依存性排除の増加
を含むがこれらに限定されない、活性の増加を伴う手法を提供する。したがって、その結果は、細胞内病原体、自己抗原、同種因子、アレルゲン、腫瘍細胞へのより効率的な応答、及び遺伝子療法/遺伝子ワクチン接種において使用された移植及びウイルスタンパク質に対する免疫応答のより効率的な抑制である。
【0209】
本発明はまた、体液又は器官において必要とされる特性を有するNKT細胞の特定に関する。上記方法は、NK1.1、CD4、NKG2D及びCD244の発現を含む表面表現型による、NKT細胞の特定を含む。次に、細胞を、CD1d分子が提示することが可能なペプチドとして定義される、NKT細胞エピトープと接触させる。次に、細胞を、IL-2又はIL-15又はIL-7の存在下でin vitroで増殖させる。
【0210】
本明細書中に記載するような抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞又はNKT細胞は、医薬として、より詳細には、養子細胞療法における使用のために、より詳細には、急性アレルギー反応及び多発性硬化症等の自己免疫疾患の再発の治療において使用することができる。記載される通りに生成した単離された細胞溶解性CD4+T細胞又はNKT細胞又は細胞集団、特に抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞又はNKT細胞集団は、免疫障害の予防又は治療のための医薬の製造のために使用される。単離又は生成された細胞溶解性CD4+T細胞又はNKT細胞を使用した治療の方法が、開示される。
【0211】
WO2008/017517で説明される通り、APCに向けた細胞溶解性CD4+T細胞は、細胞の発現特性に基づいて天然のTreg細胞から区別することができる。特に、細胞溶解性CD4+T細胞集団は、天然のTreg細胞集団と比較して以下の特徴の1つ又は複数を実証する:
活性化の後のCD103、CTLA-4、Fasl及びICOSを含む表面マーカーの発現の増加、CD25の中間的発現、CD4、ICOS、CTLA-4、GITRの発現、及びCD127(IL7-R)の低い発現か無発現、CD27の無発現、転写リプレッサーFoxp3のではなく、転写因子T-bet及びegr-2(Krox-20)の発現、IFN-ガンマの高い生成、及びIL-10、IL-4、IL-5、IL-13又はTGF-ベータの無又は極微量の生成。
【0212】
更に、細胞溶解性T細胞はCD45RO及び/又はCD45RAを発現し、CCR7、CD27を発現せず、高レベルのグランザイムB及び他のグランザイム並びにFasリガンドを提示する。
【0213】
WO2008/017517で説明される通り、APCに向けた細胞溶解性NKT細胞は、細胞の発現特性に基づいて非細胞溶解性NKT細胞から区別することができる。特に、細胞溶解性CD4+NKT細胞集団は、非細胞溶解性NKT細胞集団と比較して以下の特徴の1つ又は複数を実証する:NK1.I、CD4、NKG2D及びCD244の発現。
【0214】
本発明のペプチドは、生きている動物、一般的にヒトへの投与の後に、第三者T細胞に抑制性活性を発揮する特異的T細胞を導き出す。
【0215】
具体的な実施形態では、本発明の細胞溶解性細胞集団は、FasL及び/又はインターフェロンガンマの発現によって特徴付けられる。具体的な実施形態では、本発明の細胞溶解性細胞集団は、グランザイムBの発現によって更に特徴付けられる。
【0216】
本発明のペプチドは、ある特定の抗原の特異的なT細胞エピトープを含むが、同じ抗原の他のT細胞エピトープに対する免疫反応によって導き出される障害の防止又は治療に、或いはある特定の状況では、更には他の異なる抗原が、本発明のペプチドによって活性化されるT細胞の近傍でMHCクラスII分子又はCD1d分子による同じメカニズムを通して提示される場合に他の異なる抗原の他のT細胞エピトープに対する免疫応答によって導き出される障害の治療のために使用することができることを、このメカニズムはまた暗示し、実験結果がそのことを示している。
【0217】
上述する特徴を有し、更に抗原特異的であり、すなわち、抗原特異的な免疫応答を抑制することが可能な細胞型の単離細胞集団が開示される。
【0218】
本発明は、薬学的に許容可能な担体を更に含む本発明による1つ又は複数のペプチドを含む医薬組成物を提供する。上記で詳述するように、本発明はまた、医薬としての使用のための組成物に又は組成物を使用することで免疫障害の哺乳動物を治療する方法に、及び免疫障害の防止又は治療のための医薬の製造のための組成物の使用に関する。医薬組成物は、例えば、免疫障害、特に風媒性のアレルギー及び食品が媒介するアレルギー、並びにアレルギーが原因の疾患を治療又は防止するのに適したワクチンである。本明細書で更に記載される医薬組成物の一例として、本発明によるペプチドは、水酸化アルミニウム(アラム(alum))等の、哺乳動物への投与に好適なアジュバントの上に吸着される。通常、アラム上に吸着されたペプチド50μgは、皮下経路によって2週間隔で3回注射される。経口、鼻腔内又は筋肉内を含めて他の投与経路が可能であることは、当業者に明らかなはずである。更に、注射の回数及び注射する量は、治療する状態によって異なることができる。更に、それらがMHC-クラスII提示及びT細胞活性化においてペプチド提示を促進するならば、アラム以外の他のアジュバントを使用することができる。したがって、有効成分を単独で投与することが可能であるが、それらは医薬製剤として一般的に提示される。獣医及びヒト使用のための本発明の製剤は、上記の少なくとも1つの有効成分を、1つ又は複数の薬学的に許容される担体と一緒に含む。本発明は、有効成分として、本発明による1つ又は複数のペプチドを、薬学的に許容可能な担体と混合して含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、治療又は予防の方法に関して以降指示されるもの等の有効成分の治療的有効量を含むべきである。必要に応じて、組成物は他の治療成分を更に含む。好適な他の治療成分、並びにそれらが属するクラスに依存するそれらの通常の投薬量は当業者に周知であり、免疫障害を治療するために使用される他の公知の薬物から選択することができる。
【0219】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」は、例えば組成物を溶解、分散若しくは拡散することによって治療する部位へのその適用若しくは伝播を容易にするために、及び/又はその有効性を損なうことなくその保存、輸送若しくは取扱いを容易にするために、それと一緒に有効成分が製剤化される任意の材料又は物質を意味する。それらには、全溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌及び抗真菌剤(例えばフェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)、等張剤(糖又は塩化ナトリウム等)等が含まれる。組成物中の免疫原性ペプチドの作用期間を制御するために、追加の成分が含まれてもよい。薬学的に許容される担体は、固体又は液体又は液体を形成するために圧縮される気体であってよく、すなわち、この発明の組成物は濃縮液、乳剤、溶液、粒状体、粉剤、噴霧剤、エアゾール、懸濁液、軟膏、クリーム、錠剤、ペレット又は粉末として好適に使用することができる。医薬組成物及びそれらの製剤で使用するための好適な医薬担体は当業者に周知であり、本発明の中でのそれらの選択に特に制限はない。それらには、添加剤、例えば湿潤剤、分散剤、展着剤、接着剤、乳化剤、溶媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤(例えば、フェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)、等張剤(糖又は塩化ナトリウム等)等が含まれてもよいが、それらが製薬慣行と一貫している場合に限られ、すなわち哺乳動物に恒久的な傷害を与えない担体及び添加剤に限る。本発明の医薬組成物は、任意の公知の方法で、例えば有効成分を選択された担体材料及び適当な場合には界面活性剤等の他の添加剤と一緒に、一段階又は多段階手順で均一に混合し、コーティングし、及び/又は磨砕することによって調製することができる。それらは、例えば通常約1~10μmの直径を有するマイクロスフェアの形でそれらを得る目的で、すなわち、有効成分の制御されたか又は持続的放出のためのマイクロカプセルの製造のために、微粉化によって調製することもできる。
【0220】
本発明の医薬組成物で使用するのに好適である、搾出剤又は乳化剤としても知られる界面活性剤は、優れた乳化、分散及び/又は湿潤特性を有する非イオン性、カチオン性及び/又はアニオン性の材料である。好適なアニオン性界面活性剤には、水溶性石鹸及び水溶性の合成界面活性剤の両方が含まれる。好適な石鹸は、アルカリ若しくはアルカリ土類金属塩、高級脂肪酸(C10~C22)の非置換の若しくは置換されたアンモニウム塩、例えばオレイン酸若しくはステアリン酸のナトリウム若しくはカリウム塩、又はヤシ油若しくは獣脂オイルから入手できる天然脂肪酸混合物のものである。合成界面活性剤には、ポリアクリル酸のナトリウム又はカルシウム塩;脂肪スルホン酸塩及び硫酸塩;スルホン化されたベンズイミダゾール誘導体及びアルキルアリールスルホン酸塩が含まれる。脂肪スルホン酸塩又は硫酸塩は通常アルカリ又はアルカリ土類金属塩、非置換のアンモニウム塩又は8~22の炭素原子を有するアルキル若しくはアシル基で置換されるアンモニウム塩、例えば、リグニンスルホン酸又はドデシルスルホン酸のナトリウム又はカルシウム塩、又は天然脂肪酸から得られる脂肪アルコール硫酸塩の混合物、硫酸又はスルホン酸エステル(ラウリル硫酸ナトリウム等)及び脂肪アルコール/エチレンオキシド付加物のスルホン酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩の形である。好適なスルホン化されたベンズイミダゾール誘導体は、8~22の炭素原子を一般的に含有する。アルキルアリールスルホン酸の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸又はジブチル-ナフタレンスルホン酸又はナフタレン-スルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物のナトリウム、カルシウム又はアルカノールアミン塩である。対応するリン酸塩、例えばリン酸エステルの塩、及びp-ノニルフェノールとエチレン及び/又はプロピレンオキシドの付加物、又はリン脂質も好適である。例えば、この目的のための好適なリン脂質は、ケファリン又はレシチンタイプの天然(動物又は植物細胞を起源とする)又は合成リン脂質、例えば、ホスファチジル-エタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセリン、リゾレシチン、カルジオリピン、ジオクタニルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びそれらの混合物である。
【0221】
好適な非イオン性界面活性剤には、分子中に少なくとも12の炭素原子を含有するアルキルフェノール、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪族アミン又はアミドのポリエトキシル化及びポリプロポキシル化誘導体、アルキルアレーンスルホン酸塩及びジアルキルスルホコハク酸塩、例えば、脂肪族及び脂環式アルコールのポリグリコールエーテル誘導体、飽和及び不飽和脂肪酸及びアルキルフェノールが含まれ、誘導体は、(脂肪族)炭化水素部分に3~10のグリコールエーテル基及び8~20の炭素原子を、アルキルフェノールのアルキル部分に6~18の炭素原子を一般的に含有する。更なる好適な非イオン性界面活性剤は、アルキル鎖に1~10の炭素原子を含有するポリプロピレングリコール、エチレンジアミノポリプロピレングリコールとのポリエチレンオキシドの水溶性付加物であり、その付加物は20~250のエチレングリコールエーテル基及び/又は10~100のプロピレングリコールエーテル基を含有する。そのような化合物は、プロピレングリコール単位につき1~5のエチレングリコール単位を通常含有する。非イオン性界面活性剤の代表的な例は、ノニルフェノール-ポリエトキシエタノール、ヒマシ油ポリグリコールエーテル、ポリプロピレン/ポリエチレンオキシド付加物、トリブチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコール及びオクチルフェノキシポリエトキシエタノールである。ポリエチレンソルビタン(ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等)、グリセロール、ソルビタン、スクロース及びペンタエリスリトールの脂肪酸エステルも、好適な非イオン性界面活性剤でもある。好適なカチオン性界面活性剤には、ハロ、フェニル、置換されたフェニル又はヒドロキシで必要に応じて置換される4炭化水素基を有する四級アンモニウム塩、特にハライドが含まれる;例えば、N置換基として少なくとも1つのC8C22アルキル基(例えば、セチル、ラウリル、パルミチル、ミリスチル、オレイル等)及び、更なる置換基として、非置換であるかハロゲン化された低級アルキル、ベンジル及び/又はヒドロキシ-低級アルキル基を含有する四級アンモニウム塩。
【0222】
この目的のために好適な界面活性剤のより詳細な記載は、例えば、「McCutcheon's Detergents and Emulsifiers Annual」(MC Publishing Crop.社、Ridgewood、New Jersey、1981)、「Tensid-Taschenbuch」、第2版(Hanser Verlag社、Vienna、1981)及び「Encyclopaedia of Surfactants」(Chemical Publishing Co.社、New York、1981)に見出すことができる。本発明によるペプチド、その相同体又は誘導体(並びに、用語「有効成分」に全て含まれるそれらの生理的に許容される塩又は医薬組成物)は、治療される状態に適当であり、化合物、ここでは投与されるタンパク質及び断片、に適当である任意の経路によって投与することができる。可能な経路には、領域性、全身性、経口(固体の形又は吸入)、直腸、経鼻、局所(目、口内及び舌下を含む)、経膣及び非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、動脈内、クモ膜下及び硬膜外を含む)が含まれる。好ましい投与経路は、例えばレシピエントの状態で、又は治療される疾患で異なることができる。本明細書で記載されるように、担体は、製剤の他の成分に適合し、レシピエントに有害でないという意味において、最適には「許容される」。製剤には、経口、直腸、経鼻、局所(口内及び舌下を含む)、経膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、動脈内、クモ膜下及び硬膜外を含む)投与に適するものが含まれる。
【0223】
非経口投与に適する製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、及びその製剤を予定レシピエントの血液と等張にする溶質を含有することができる水性及び非水性の無菌注射溶液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含むことができる水性及び非水性の無菌懸濁液が含まれる。製剤は、単位用量又は多回用量容器、例えば密封アンプル及びバイアルで提示することができ、使用直前に無菌の液体担体、例えば注射用水を付加するだけでよい、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時使用の注射溶液及び懸濁液は、前に記載した種類の無菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
【0224】
一般的な単位薬量製剤は、本明細書で上に挙げたような有効成分の日用量又は単位下位日用量、又はその適当な分数を含有するものである。上で特に指摘した成分に加えて、本発明の製剤は、問題の製剤タイプに関係する技術分野で慣用される他の薬剤を含むことができることを理解すべきであり、例えば、経口投与に適するものは着香料を含むことができる。本発明によるペプチド、その相同体又は誘導体は、より低い頻度の投薬を可能にするために、又は所与の発明化合物の薬物動態学的若しくは毒性プロファイルを改善するために有効成分の放出を制御及び調節することができる、有効成分として1つ又は複数の本発明の化合物を含有する制御放出医薬製剤(「制御放出製剤」)を提供するために使用することができる。個別の単位が1つ又は複数の本発明の化合物を含む経口投与のために適合させた制御放出製剤は、従来の方法によって調製することができる。組成物中の有効成分の作用期間を制御するために、追加の成分が含まれてもよい。したがって、制御放出組成物は、適当なポリマー担体、例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン等を選択することによって達成することができる。薬物放出の速度及び作用期間は、有効成分を粒子、例えばマイクロカプセル、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル等に組み込むことによって制御することもできる。投与経路によっては、医薬組成物は、保護コーティングを必要とすることがある。注射のために好適な医薬形態には、無菌の水性溶液又は分散液、及びその即時使用の調製のための無菌の粉末が含まれる。したがって、この目的のための一般的な担体には、生体適合性の水性緩衝液、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等及びそれらの混合物が含まれる。いくつかの有効成分を組み合わせて使用する場合、それらは治療される哺乳動物において必ずしも共同の治療効果を同時に直接的にもたらすとは限らないという事実を考慮して、対応する組成物は、2つの成分を別々であるが隣接したリポジトリ又はコンパートメントに含有する医療用のキット又はパッケージの形であってもよい。後者との関連で、各有効成分は、したがって、他の成分のそれと異なる投与経路に好適な方法で製剤化することができ、例えば、それらのうちの1つは経口又は非経口製剤の形であってよく、他は静脈内注射又はエアゾールのためのアンプルの形である。
【0225】
本発明で得られるような細胞溶解性CD4+T細胞は、in vitro及びin vivoで実証されるように、MHCクラスII依存性同族活性化後にAPCアポトーシスを誘導して、樹状細胞及びB細胞の両方に影響を及ぼして、(2)IL-10及び/又はTGF-βの非存在下で接触依存性メカニズムによってバイスタンダーT細胞を抑制する。WO2008/017517で詳細に議論されるように、細胞溶解性CD4+T細胞は天然及び適応性のTregから区別することができる。
【0226】
CD1d分子に結合する能力を付与する疎水性残基を含む本発明の免疫原性ペプチドは、投与すると、APCによって取り込まれ、後期エンドソームに向けられ、そこでCD1d上にロードされAPCの表面で提示される。CD1d分子によって提示されると、ペプチド中のチオレダクターゼモチーフが、NKT細胞を活性化し細胞溶解性NKT細胞にする能力を増強する。前記免疫原性ペプチドは、IFN-ガンマ等のサイトカインの産生を活性化し、これにより、CD4+T細胞及びCD8+T細胞を含む他のエフェクター細胞を活性化させることになる。WO2012/069568で詳細に議論されるように、CD4+及びCD8+T細胞はいずれも、抗原を提示する細胞の排除に関与することができる。
【0227】
本発明は、限定する意図のない以下の実施例によってここから例示される。更に、本明細書に記載される全ての参考文献は、参照により本明細書に明示的に含まれる。
【実施例】
【0228】
(実施例1)
ペプチド設計
更なる隣接アミノ酸のT細胞エピトープとの関連における酸化還元酵素モチーフの活性に対する効果を評価するため、以下のペプチド(Table 1~6(表1~6))を合成し、1つ又は複数のアミノ酸が隣接していないか、又はHが隣接する酸化還元酵素モチーフを含む免疫原性ペプチドと比較した。検査された全てのペプチドは、リンカーと、T細胞エピトープと、必要に応じて、C末端隣接配列とを含む。
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
(実施例2)
ペプチドの還元活性を評価するための方法論
Tomazzolliら(2006) Anal. Biochem. 350、105~112頁に記載される蛍光アッセイを使用して、ペプチドの還元酵素活性を決定する。FITC標識を有する2つのペプチドは、それらがジスルフィド架橋を通して互いと共有結合するときに自己失活する。本発明によるペプチドによる還元の結果、還元された個々のペプチドは再び蛍光性になる。これらのペプチドを用いた全ての検査を二重で行い、各検査を2回実施した。ジチオトレイトール(100%還元活性)及び水(0%還元活性)を用いて対照実験を行う。
【0236】
本発明のペプチドを、それらの還元活性について検査する。
【0237】
図1は、ペプチド91~108(table 6(表6)を参照)の還元活性の動態を示す。負に帯電したアミノ酸であるE又はDを含む酸化還元酵素モチーフを有するペプチド(ペプチド106及び107)を除き、検査した全てのペプチドが、モチーフHCPYC(ペプチド108、配列番号447)を有する先行技術のペプチドと比較して、より高い還元活性を呈した。酸化還元酵素モチーフの前にW、P又はG等のかさ高い疎水性アミノ酸を有する免疫原性ペプチドは、最も高い還元活性を示した。
【0238】
(実施例3)
細胞溶解性CD4+T細胞株によるインターフェロンガンマの放出
インターフェロンガンマは、細胞溶解性CD4+T細胞を特徴付ける重要なマーカーである。
【0239】
免疫原性ペプチドを用いてT1D患者(T1D07)に由来するナイーブCD4+T細胞をプライミング及び刺激することで、特定のCD4+T細胞株を得ることができる。複数回(例えば12回)の刺激の後、細胞を、前記免疫原性ペプチドをロードした(2μM)自己LCL B細胞と共培養することができる。24時間後、上清を回収し、多重アッセイによってIFN-ガンマを測定する。
【0240】
(実施例4)
細胞溶解性CD4+T細胞株によるFasL放出
上記実施例3で説明したように免疫原性ペプチドを用いて生成しておいたT細胞株を分割し、前記免疫原性ペプチドを用いて自己LCL B細胞株をAPCとして使用する4回の連続的なin vitro刺激を通じて刺激することができる。各刺激(全部で4回)の11日目に、細胞を、自己B細胞によって提示されたそれらの対応するペプチドで再刺激した後、FasLについて検査する。24時間(刺激1及び2)又は72時間(刺激3及び4)の共培養後、上清を回収する。
【配列表】
【国際調査報告】