(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする粗製熱分解オイルを精製する方法
(51)【国際特許分類】
C10G 25/00 20060101AFI20230608BHJP
B01J 20/08 20060101ALI20230608BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20230608BHJP
B01J 20/12 20060101ALI20230608BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20230608BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20230608BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20230608BHJP
C01B 3/36 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C10G25/00
B01J20/08 A
B01J20/10 A
B01J20/10 C
B01J20/12 A
B01J20/12 C
B01J20/18 B
B01J20/18 E
B01J20/20 B
B01J20/20 D
B01J20/26 C
C01B3/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567674
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2021061768
(87)【国際公開番号】W WO2021224287
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】フルヴィオ・ジャコモ・ブルネッティ
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・ピンコス
(72)【発明者】
【氏名】グリゴリー・アンドレ・シェフチェンコ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ピラルスキー
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・ハウプト
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ミューラー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ケプケ
(72)【発明者】
【氏名】アルミン・ランゲ・デ・オリヴェイラ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエレ・イフラント
【テーマコード(参考)】
4G066
4G140
4H129
【Fターム(参考)】
4G066AA05B
4G066AA20B
4G066AA22B
4G066AA61B
4G066AA63B
4G066AA64B
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4G066BA20
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4H129NA01
4H129NA21
4H129NA43
(57)【要約】
本発明は、プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする粗製の窒素含有、硫黄含有及びハロゲン含有熱分解オイルを精製する方法であって、(i) (a) IUPAC周期表の1、2、6、7、8、9、10、11、12、13族の元素金属若しくはそれらの混合物若しくは合金;(b) IUPAC周期表の1、2、6、7、8、9、10、11、12、13族の金属の酸化物若しくはそれらの混合物;(c) IUPAC周期表の1、2族の金属のアルコキシド若しくはそれらの混合物;(d) 請求項に定義される固体収着剤;又は少なくとも2種の捕捉剤(a)、(b)、(c)若しくは(d)の組み合わせ、から選択される捕捉剤による処理に、粗製熱分解オイルを供する工程;(ii) 粗製熱分解オイルと比べて削減された窒素分、硫黄分及びハロゲン分を有する精製熱分解オイル画分、並びに粗製熱分解オイル中に存在する硫黄、窒素及びハロゲンの少なくとも一部と結合した捕捉剤を含む画分へ、得られた生成物を分離する工程を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする粗製の窒素含有、硫黄含有及びハロゲン含有熱分解オイルを精製する方法であって、
(i)
(a) IUPACの元素周期表の1、2、6、7、8、9、10、11、12、13族の元素金属若しくはそれらの混合物若しくはそれらの合金;
(b) IUPACの元素周期表の1、2、6、7、8、9、10、11、12、13族の金属の酸化物若しくはそれらの混合物;
(c) IUPACの元素周期表の1、2族の金属のアルコキシド若しくはそれらの混合物;
(d) 活性炭、アルミナ、シリカ、クレイ材料、ゼオライト、イオン交換樹脂、吸収性有機ポリマー若しくはそれらの組み合わせから選択される固体収着剤;
又は少なくとも2種の捕捉剤(a)、(b)、(c)若しくは(d)の組み合わせ
から選択される、硫黄、窒素及びハロゲンと結合する能力のある捕捉剤による処理に、粗製熱分解オイルを供する工程;
(ii) 粗製熱分解オイルと比べて削減された窒素分、硫黄分及びハロゲン分を有する精製熱分解オイル画分、並びに粗製熱分解オイル中に存在する硫黄、窒素及びハロゲンの少なくとも一部と結合した捕捉剤を含む画分へ、得られた生成物を分離する工程
を含む、方法。
【請求項2】
粗製熱分解オイルが重金属分を更に有し、工程(ii)で得られた精製熱分解オイルが削減された重金属分を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(i)で使用される捕捉剤(a)が、IUPACの元素周期表の1、2、6、8、9、10、11、12又は13族から選択される元素金属又はそれらの混合物又はそれらの合金である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
捕捉剤(a)が、捕捉剤(b)、捕捉剤(d)又はそれらの組み合わせから選択されるさらなる捕捉剤と組み合わせて使用され、捕捉剤(b)が、好ましくはIUPACの元素周期表の6、7、8、9、10、11又は12族の金属の酸化物又はそれらの混合物であり、捕捉剤(d)が、好ましくはゼオライトである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(i)で使用される捕捉剤(b)が、IUPACの元素周期表の2、6、7、8、9、10、11、12、13族の金属の酸化物又はそれらの組み合わせであり、処理が、水素の存在下で、100~500℃、好ましくは150~300℃の範囲の温度で実行される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
捕捉剤(b)が、カルシウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、若しくは亜鉛の酸化物又はそれらの混合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
処理が5~500bar、好ましくは20~150barの範囲の水素分圧で実行される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
捕捉剤(c)が、炭素原子数1~20のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属アルコキシド、炭素原子数5~20のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属シクロアルコキシド又はそれらの組み合わせである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
工程(ii)における分離が、濾過、抽出、蒸留、膜分離又はそれらの組み合わせを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(ii)が、極性溶媒、好ましくは、水、酸性水溶液、塩基性水溶液、水混和性有機溶媒及びそれらの混合物から選択される極性溶媒による抽出を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)が、窒素分、硫黄分及びハロゲン分に富む底部生成物、並びに削減された窒素分、硫黄分及びハロゲン分を有する蒸気を得るための蒸留を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
蒸気が、大気圧で最大350℃、好ましくは最大200℃の沸騰温度を有する画分、及び大気圧で200℃以上、好ましくは350℃以上の沸騰温度を有する画分へ分離される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(i)プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする粗製の窒素含有、硫黄含有及びハロゲン含有熱分解オイルを用意する工程;
(ii)請求項1から12のいずれか一項に記載の方法に粗製熱分解オイルを供する工程;並びに
(iii)工程(ii)で得られた精製熱分解オイルを部分酸化に供してシンガスを生成する工程
を含む、シンガスの製造の方法。
【請求項14】
プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする熱分解オイルより低い分子量を有する炭化水素化合物の製造の方法であって、
(i)プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする粗製の窒素含有、硫黄含有及びハロゲン含有熱分解オイルを用意する工程;
(ii)請求項1から12のいずれか一項に記載の方法に粗製熱分解オイルを供する工程;並びに
(iii)工程(ii)で得られた精製熱分解オイルを(スチーム)熱分解装置ユニットでの処理に供し、より低分子量の炭化水素化合物を含むストリームを単離する工程
を含む、方法。
【請求項15】
(スチーム)熱分解装置向け供給原料又はシンガスを生成するための部分酸化ユニット向けの供給原料としての、請求項1から12のいずれか一項に記載された方法によって入手可能な精製熱分解オイルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする粗製熱分解オイルを精製して、用意された粗製熱分解オイルと比べて低減された窒素分、硫黄分及びハロゲン分を有する精製熱分解オイルを得る方法に関する。本発明は更に、例えば、(スチーム)熱分解装置向け供給原料又はシンガスを生成するための部分酸化ユニット向け供給原料としての、前記熱分解オイルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチック廃棄物は、今なお大部分は埋め立てられるか熱発生のために焼かれている。化学的リサイクルは、廃プラスチック材料を有用な化学物質に変換する、魅力的な方法である。プラスチック廃棄物を化学的にリサイクルするための重要な技法は熱分解である。熱分解は、不活性雰囲気中でのプラスチック廃棄物の熱分解であり、熱分解ガス、液体熱分解オイル及びチャー(残渣)等の付加価値生成物を与え、ここでは熱分解オイルが主生成物である。熱分解ガス及びチャーは、例えば、加熱を目的とする反応器向けの、熱を発生させる燃料として使用することができる。熱分解オイルは、シンガス製造の供給源として使用することができ、及び/又は例えば(スチーム) 熱分解装置中でエチレン、プロピレン、C4留分等の化学供給原料へ加工することができる。
【0003】
通常、プラスチック廃棄物は、異なるタイプのポリマーで構成される混合プラスチック廃棄物である。ポリマーはしばしば、塩素、フッ素、硫黄及び窒素等の、リサイクルする努力を複雑にする他の元素と組み合わされた炭素及び水素で構成される。炭素及び水素以外の元素は、それらが熱分解オイルのさらなる加工に使用される触媒を失活又は被毒させ得るので粗製熱分解オイルのさらなる加工の間に有害となることがある。(スチーム)クラッキングの間に、ハロゲン含有化合物は、ハロゲン化水素を放出することで腐食によって熱分解装置を損傷する場合がある。硫黄含有化合物は、熱分解装置で使用される触媒を失活若しくは被毒させる恐れがあり、又は熱分解装置生成物を汚染する恐れがある。窒素含有不純物はまた下流の触媒を被毒し得る。更に、それらは加熱した場合に爆発性のNOxを形成することにより安全問題を引き起こし得る。ポリ塩化ビニル(PVC)を含む混合プラスチックが熱分解される場合、炭素二重結合を有する化合物及び塩化水素が形成される。PVCから解放された塩化水素は、炭素-炭素二重結合を有する化合物を攻撃して塩素有機化合物の形成を引き起こす。プラスチック廃棄物は、通常、ポリマーの性能を改善するために組み込まれた安定剤及び可塑剤等のヘテロ原子含有添加剤を含んでいる。そのような添加剤は、またしばしば窒素、ハロゲン及び硫黄を含有する化合物並びに重金属を含む。例えば、廃エンジンオイル、変圧器油、作動油及びマシン油は、重金属摩耗物を含み得る。重金属はしばしば有毒であり、熱分解オイルの品質は重金属不純物の存在によって低下する。更に、プラスチック廃棄物はしばしば、炭素及び水素以外の元素もまた含み得る残渣を有する不純なプラスチックであることがある。したがって、熱分解オイル中の窒素分、硫黄分、ハロゲン分並びに重金属分の削減は、熱分解オイルの利益を生み出す加工にとって不可欠である。特に、炭素及び水素に富み、炭素及び水素以外の元素が少ない高品質熱分解オイルは、下流の精製プロセスでの触媒失活及び腐食問題を防止する供給原料として好ましい。
【0004】
したがって、熱分解オイル中の窒素分、硫黄分、ハロゲン分及び、好ましくはまた重金属分の削減によりプラスチック廃棄物熱分解オイルを格上げする方法は非常に望ましい。更に、経済的な方法で高価値の最終生成物に変換することができる高品質のプラスチック廃棄物熱分解オイルを提供することは望ましい。
【0005】
国際公開第2020/008050号は、プラスチック廃棄物から炭化水素燃料及び追加の炭化水素を生成する方法を記載している。方法は、一次クラッキング設備(熱分解設備又はクラッキング設備)に廃棄物を晒して炭化水素ガスを得る工程を含む。次いで、得られた炭化水素ガスは、触媒水素化に晒されて炭化水素流体を得、続いて前記流体を分別分離して少なくとも1種の最終生産物を得る。方法は、CaO等の鉱物の存在下で一次クラッキングを実行して塩素及び硫黄分を削減することによって、得られた炭化水素ガスを格上げする工程を含む。
【0006】
米国特許出願公開第2013/0043160号は、アルカリ金属及びラジカル捕捉物質を用いて供給原料を処理することによって、重油、ビチューメン、シェールオイル等のオイル供給原料から硫黄、窒素及び金属を除去する方法を記載している。
【0007】
吸着及び溶媒抽出は、液体炭化水素燃料から硫黄及び窒素化合物を除去するための公知の技法である。例えば、国際公開第2017/100617号は、異なる吸着剤を用いる、炭化水素等の流体からの酸素、硫黄及び窒素ヘテロ原子の除去を記載している。米国特許第6,248,230号は、水素化脱硫設備の上流の有効な前処理としての吸着及び溶媒抽出によって、天然極性化合物、すなわち硫黄及び窒素を含有する化合物の除去によりより純粋な燃料を生産する方法を記載している。
【0008】
水素化処理又は水素化加工は、触媒の存在下で高い圧力及び温度で水素を使用して、原油から硫黄及び窒素不純物を除去するための公知の技法である。更に、存在する場合、不飽和炭化水素は水素化される。触媒は、通常、支持体と複合化された少なくとも1種の6族金属成分及び少なくとも1種の8、9又は10族金属成分を含む。これらの水素化処理触媒の活性形及び安定形は硫化された形態である。しばしば、それらは調製後には酸化物形態であり、したがって、使用される前に硫化水素を使用して硫化を受けなければならない。水素化脱硫(HDS)において、硫黄化合物は水素化されクラッキングされる。炭素-硫黄結合は壊れ、大部分の硫黄はアミン洗浄により煙道ガスから除去され得る硫化水素に変換される。水素化脱窒素(HDN)において、窒素化合物は水素化されクラッキングされる。炭素-窒素結合は壊れ、窒素はアンモニアに変換され、工程から放出される。技術は、粗製熱分解オイルから窒素及び硫黄不純物を除去するための触媒の犠牲については語っていない。
【0009】
R. Serefentseは、使用済みタイヤから得られる熱分解オイルの脱硫について異なる方法をProcedia Manufacturing 35 (2019), 762-769頁に記載している。
【0010】
前述の文書のいずれも、プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする熱分解オイルの硫黄分、窒素分及びハロゲン分の同時削減には注目していない。下流のクラッキング及び関連する精製プロセスに使用される触媒及び反応器は高価であるので、プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする粗製熱分解オイルの窒素分、硫黄分及びハロゲン分を削減する方法を有することは非常に望ましい。
【0011】
したがって、その窒素分、硫黄分及びハロゲン分を削減し、好ましくは、存在する場合には重金属分も削減することによって、プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする熱分解オイルの品質を改善する方法を提供することが、第1の目的である。第2の目的は、未処理の熱分解オイルと比べて、その削減された窒素分、硫黄分及びハロゲン分、並びに、特に削減された重金属分により、例えば(スチーム) 熱分解装置向け供給原料又は部分酸化向け供給原料として、更により容易に加工することができる、窒素含有、硫黄含有及びハロゲン含有プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする熱分解オイルを提供することである。
【0012】
驚くべきことに、以下に説明されるような単純で経済的な方法によってこれらの目的が達成されることが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2020/008050号
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0043160号
【特許文献3】国際公開第2017/100617号
【特許文献4】米国特許第6,248,230号
【特許文献5】欧州特許第0713906号
【特許文献6】国際公開第95/03375号
【特許文献7】米国特許第7,897,028号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Procedia Manufacturing 35 (2019), 762-769頁
【非特許文献2】Ind. Eng. Chem. Res.、48巻、2号、953頁、2009年
【非特許文献3】Energy &Fuels, 2015, 29, 1881-1891頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、第1の態様によると、本発明は、プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする窒素含有、硫黄含有及びハロゲン含有粗製熱分解オイルを精製する方法であって、
(i)
(a) IUPACの元素周期表の1、2、6、7、8、9、10、11、12、13族の元素金属若しくはそれらの混合物若しくはそれらの合金;
(b) IUPACの元素周期表の1、2、6、7、8、9、10、11、12、13族の金属の酸化物若しくはそれらの混合物;
(c) IUPACの元素周期表の1、2族の金属のアルコキシド若しくはそれらの混合物;
(d) 活性炭、アルミナ、シリカ、クレイ材料、ゼオライト、イオン交換樹脂、吸収性有機ポリマー若しくはそれらの組み合わせから選択される固体収着剤;
又は少なくとも2種の捕捉剤(a)、(b)、(c)及び(d)の組み合わせ
から選択される、硫黄、窒素及びハロゲンと結合する能力のある捕捉剤による処理に、粗製熱分解オイルを供する工程;
(ii) 粗製熱分解オイルと比べて削減された窒素分、硫黄分及びハロゲン分を有する精製熱分解オイル画分、並びに粗製熱分解オイル中に存在する硫黄、窒素及びハロゲンの少なくとも一部と結合した捕捉剤を含む画分へ、得られた生成物を分離する工程を含む方法に関する。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、本発明による方法によって精製された熱分解オイルを部分酸化に供することによって、シンガス(また合成ガスとしても知られる)、すなわち主として水素及び一酸化炭素からなるガス混合物を製造する方法に関する。
【0017】
したがって、本発明は、また
(i)プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする粗製の窒素含有、硫黄含有及びハロゲン含有熱分解オイルを用意する工程;
(ii)粗製熱分解オイルを本明細書において定義される方法に供する工程;並びに
(iii)工程(ii)で得られた精製熱分解オイルを部分酸化に供してシンガスを生成する工程
を含む、シンガスの製造の方法に関する。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、高分子量炭化水素化合物を低分子量炭化水素化合物に変換する方法であって、上記及び以下に定義される方法によって入手可能な熱分解オイルを(スチーム) 熱分解装置ユニットに供給する工程、(スチーム) 熱分解装置ユニット中で熱分解オイルを処理する工程、及びより低分子量の炭化水素化合物を含むストリームを単離する工程を含む方法に関する。
【0019】
したがって、本発明は、またプラスチック廃棄物の熱分解を起源とする熱分解オイルより低分子量を有する炭化水素化合物の製造の方法であって、
(i)プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする粗製の窒素含有、硫黄含有及びハロゲン含有熱分解オイルを用意する工程;
(ii)粗製熱分解オイルを本明細書において定義される方法に供する工程、並びに
(iii)工程(ii)で得られた精製熱分解オイルを(スチーム) 熱分解装置ユニットでの処理に供する工程、及びより低分子量の炭化水素化合物を含むストリームを単離する工程を含む方法に関する。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、(スチーム) 熱分解装置向け供給原料、又はシンガスを生成するための部分酸化ユニット向け供給原料としての、本明細書の方法によって入手可能な精製熱分解オイルの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
前述の本発明の方法にはいくつかの利点が付随する。本発明による本方法によって精製された熱分解オイルは、数ppm以内のレベルの非常に低い窒素分、硫黄分及びハロゲン分によって区別される。有利なことに、本発明の方法は、異なるヘテロ原子、すなわち窒素、硫黄、ハロゲンを、及び存在する場合は重金属も、粗製熱分解オイルから同時に除去することを可能にする。したがって、精製熱分解オイルは、追加の前処理をしないで(スチーム) 熱分解装置に供給することができ、その結果、追加コストが回避される。例えば、選別及び浄化等のプラスチック廃棄物の前処理を最小限にし、又は更に省略することができる。有利には、本方法は工業規模で実行することができる。更に、本方法は経済的である。特に、本方法は、シンガスを生成する部分酸化ユニット向け供給原料として使用することができる高品質熱分解オイルを用意することを可能にする。また、環境に優しい供給原料、例えばクラッキング設備、改質設備等の何らかの下流の加工設備で使用される触媒のより長い使用寿命の提供等の追加の利点がある。
【0022】
また驚くべきことに、他の目的も、前述の本発明による方法によって解決されることがわかった。
【0023】
本発明の文脈においては、用語「熱分解」とは、不活性条件下で寿命の尽きたプラスチックの熱分解又は分解に関し、ガス、液体及び固体チャー画分をもたらす。熱分解の間に、プラスチックは、H2等のガス、C1~C4-アルカン、C2~C4-アルケン、エチン、プロピン、1-ブチン、25~500℃の沸騰温度を有する熱分解オイル及びチャーを含む種々様々の化学物質に変換される。用語「熱分解」は、遅い熱分解、速い熱分解、フラッシュ接触反応及び接触熱分解を含む。これらのタイプの熱分解は、加工温度、加熱速度、滞留時間、供給原料粒径等が異なり、結果として異なる生成物の品質をもたらす。
【0024】
本発明の文脈においては、用語「熱分解オイル」とは、プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする何らかのオイルを意味すると理解される。
【0025】
本発明の文脈においては、用語「プラスチック廃棄物」とは、使用の後、すなわち、プラスチック材料がその有用な寿命の終わりに達した後、廃棄される何らかのプラスチック材料を指す。プラスチック廃棄物は、汚れ、接着材料、充填剤、残渣等を含む、純粋なポリマー状プラスチック廃棄物、混合プラスチック廃棄物又はフィルム廃棄物であってもよい。プラスチック廃棄物は、窒素分、硫黄分、ハロゲン分を有し、場合によって重金属分も有する。プラスチック廃棄物は、任意のプラスチック材料を含有する供給源を起源とすることができる。したがって、用語「プラスチック廃棄物」とは、使用済みのタイヤ並びに農業及び園芸用プラスチック材料を含む、工業用及び家庭用プラスチックの廃棄物を含む。用語「プラスチック廃棄物」とは、また、使用済みのモーター油、マシン油、グリース、ワックス等の、使用済みの石油系炭化水素材料を含む。
【0026】
典型的には、プラスチック廃棄物は、炭化水素プラスチック、例えば、ポリエチレン(HDPE、LDPE)及びポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン及びそれらのコポリマー等、並びに炭素、水素、及び塩素、フッ素、酸素、窒素、硫黄、シリコーン等の他の元素で構成されるポリマー等、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等の塩素化プラスチック等、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等の窒素含有プラスチック等、ポリエステル等の酸素含有プラスチック、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)等、シリコーン及び/又は硫黄架橋したゴムを含む異なるプラスチック材料の混合物である。PETは有益な再販売の価値を有するので、PETプラスチック廃棄物は熱分解の前にしばしば選別される。したがって、熱分解されるプラスチック廃棄物は、プラスチック材料の乾燥質量に対してしばしば約10質量%未満、好ましくは約5質量%未満のPETを含み、最も好ましくは実質上PETを含まない。電気電子機器からの廃棄物の主成分の1つはポリ塩化ビフェニル(PCB)である。典型的には、プラスチック材料は、添加剤、例えば、加工助剤、可塑剤、難燃剤、顔料、光安定剤、潤滑剤、衝撃改質剤、帯電防止剤、抗酸化剤等を含む。これらの添加剤は、炭素及び水素以外の元素を含んでもよい。例えば、臭素は、主として難燃剤に関係して見出される。重金属化合物は、プラスチック中で耐光性顔料及び/又は安定剤として使用されてもよく;カドミウム、亜鉛及び鉛は、プラスチック製作に使用される熱安定剤及びスリップ剤中に存在してもよい。プラスチック廃棄物は、残渣も含むことができる。本発明の意味において残渣は、プラスチック廃棄物に接着している夾雑物である。添加剤及び残渣は、通常、乾燥質量プラスチックの総質量に対して50質量%未満、好ましくは30質量%未満、より好ましくは20質量%未満、更により好ましくは10質量%未満の量で存在する。
【0027】
本発明の文脈においては、粗製の窒素、硫黄及びハロゲン含有熱分解オイルは、硫黄含有化合物、窒素含有化合物及びハロゲン含有化合物を含んでいる。いくつかの実施形態において、粗製熱分解オイルはまた重金属化合物を含んでいる。言いかえれば、熱分解オイルは、炭化水素化合物のほかに、ハロゲン、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を有する炭化水素化合物を含み、存在する場合には重金属も含む。用語「硫黄含有化合物」とは、硫黄に加えて、酸素、窒素、ハライド等の他のヘテロ原子等を含む炭化水素化合物を含む分子中に少なくとも1個の硫黄ヘテロ原子を含む炭化水素化合物に関する。硫黄含有化合物の例としては、チオール、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルフィン酸、スルホン酸、スルホン酸アミド、スルホン酸エステル、硫酸のエステル、チオケトン、チオカルボン酸、チオエステル、ジチオカルボン酸、チオシアナート、スルホン酸アミド等が挙げられる。用語「窒素含有化合物」とは、窒素に加えて、例えば酸素、硫黄、ハロゲン等の他のヘテロ原子を含む炭化水素化合物を含む少なくとも1個の窒素ヘテロ原子を含む炭化水素化合物に関する。窒素含有化合物の例としては、アミン、イミン、アミド、イミド、アジド、アゾ化合物、オキシム、ヒドラゾン、ヒドラジン、シアネート、ナイトレート、ニトリル、ニトリト、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、オキシム、N含有ヘテロ芳香族、カルバミン酸エステル、スルホン酸アミド、チオシアナート、スルホン酸アミドが挙げられる。用語「ハロゲン含有化合物」とは、ハロゲンに加えて、例えば、酸素、硫黄、窒素等の他のヘテロ原子を含む炭化水素化合物を含む、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1個のハロゲンヘテロ原子を含む炭化水素化合物に関する。例としては、脂肪族ハライド、(ヘテロ)芳香族ハライド、脂肪族芳香族ハライド、ハロゲン化アシル等が挙げられる。用語「重金属含有化合物」とは、重金属に加えて、酸素、硫黄、窒素及びハロゲン等の他のヘテロ原子を含む炭化水素化合物を含む化合物中に、重金属から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む炭化水素化合物又はそれらの混合物に関する。本発明の文脈においては、硫黄含有化合物、窒素含有化合物、ハロゲン含有化合物、及び存在する場合には重金属含有化合物は、硫黄含有不純物、窒素含有不純物、ハロゲン含有不純物、及び存在する場合には重金属含有不純物と称される。
【0028】
本発明の文脈においては、用語「重金属」とは、密度>4.51g/cm3(20℃で)を有する金属又はメタロイドを指す。例としては、ヒ素、アンチモン、ビスマス、セレン、スズ、カドミウム、クロム、銅、水銀、ニッケル及び鉛が挙げられる。
【0029】
本発明の文脈においては、省略表記法としての(スチーム)クラッキングは、スチームクラッキング等の熱クラッキング、及び接触水素化クラッキング及び流動接触クラッキング(FCC)等の接触クラッキングの両方を含む。同様の方式において、省略表記法としての(スチーム) 熱分解装置は、スチーム熱分解装置等の熱クラッキング反応器、並びに接触水素化クラッキング反応器及び流動接触クラッキング反応器等の接触クラッキング反応器を含む。
【0030】
本発明の文脈においては、用語「室内温度(room temperature)」とは、「室温(ambient temperature)」とも称され、20℃の温度を意味する。
【0031】
本明細書及び特許請求項に使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容が明白に他に指示しなければ、複数への言及を含む。
【0032】
「基本的に」という語は、本発明の文脈において、「完全に」、「全体として」及び「すべて」という語を包含する。この語は、90%以上、例えば95%以上;99%以上;又は100%の割合を包含する。
【0033】
本発明の文脈においては、用語「それらの組み合わせ」とは、記述される要素の1つ又は複数を包括する。
【0034】
本発明の文脈においては、用語「それらの混合物」とは、記述される要素の1つ又は複数を包括する。
【0035】
本発明の文脈においては、用語「捕捉剤」とは、粗製熱分解オイル中に存在する硫黄、窒素、ハロゲン、及び存在する場合には重金属分の少なくとも一部と、物理的に又は化学的に結合するために犠牲になる試剤を指す。捕捉メカニズムは、炭素-硫黄、炭素-窒素及び/又は炭素-ハロゲン結合の切断を伴い、硫黄、窒素及び/又はハロゲンの無い炭化水素化合物を放出し、捕捉剤による窒素、硫黄及び/又はハロゲンの捕捉が相伴い得る。或いは、粗製熱分解オイル中に存在する窒素含有、硫黄含有及び/又はハロゲン含有化合物は、吸着されるか、そうでなければ、捕捉剤にそういうものとして物理的に結合されてもよい。
【0036】
本発明の文脈において、用語「族」とは、アラビア数字と組み合わせてIUPACの元素周期表の族を指す。
【0037】
用語「ハロゲン」とは、各事例においてフッ素、臭素、塩素又はヨウ素を表す。
【0038】
適切な粗製熱分解オイルは、窒素含有、硫黄含有及びハロゲン含有プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする。前記熱分解オイルの製造に供給原料として使用されるプラスチック材料は、使用されている(live)プラスチック材料の最後を含む任意の供給源に由来してもよい。熱分解オイルの硫黄、窒素、ハロゲン、及び存在する場合は重金属の含有率は、変動してもよく、加工した廃プラスチック材料のタイプ、及び用いられた熱分解条件に依存する。熱分解方法はそういうものとして公知である。それらは、例えば、欧州特許第0713906号及び国際公開第95/03375号に記載されている。また、適切な熱分解オイルは市販されている。粗製熱分解オイルは典型的には15℃で液体である。本発明の用語において「15℃で液体」とは、熱分解オイルが、DIN EN ISO 12185に従って求めて15℃及び1013mbarで、最大1.0g/mLの密度、例えば0.70~0.98g/mLの範囲の密度を有することを意味する。
【0039】
熱分解に供する廃プラスチック材料に応じて、粗製熱分解オイルは、硫黄、窒素、ハロゲン、及び存在する場合は重金属の、変動する含有率を有し得る。粗製熱分解オイルは、典型的には少なくとも30mg/Lの硫黄分、少なくとも30mg/Lの窒素分及び少なくとも30mg/Lのハロゲン分を有する。
【0040】
一実施形態において、粗製熱分解オイルは、粗製熱分解オイルの全体積に対して40mg/L以上、例えば50mg/L以上;又は100mg/L以上;又は500mg/L以上の硫黄分を有する。別の実施形態において、粗製熱分解オイルは、粗製熱分解オイルの全体積に対して100~5000mg/L、しばしば500~4000mg/Lの硫黄分を有する。
【0041】
一実施形態において、粗製熱分解オイルは、粗製熱分解オイルの全体積に対して50mg/L以上、例えば100mg/L以上;又は500mg/L以上;又は800mg/L以上の窒素分を有する。別の実施形態において、粗製熱分解オイルは、粗製熱分解オイルの全体積に対して800~4000mg/L、しばしば900~3000mg/Lの窒素分を有する。
【0042】
一実施形態において、粗製熱分解オイルは、粗製熱分解オイルの全体積に対して40mg/L以上、例えば80mg/L以上;又は120mg/L以上;又は400mg/L以上;又は600mg/L以上のハロゲン分を有する。別の実施形態において、粗製熱分解オイルは、粗製熱分解オイルの全体積に対して、100~1000mg/L、しばしば120~900mg/Lのハロゲン分を有する。
【0043】
有機フッ素、有機塩素、有機臭素及び/又は有機ヨウ素化合物は、典型的には粗製熱分解オイル中のハロゲン分としての起源である。特に、ハロゲン分は、90%以上、例えば95%以上又は更に100%の、臭素分及び塩素分である。とりわけ、ハロゲン分は、90%以上、例えば95%以上又は更に100%の塩素分である。
【0044】
粗製熱分解オイルが重金属分も有する事例において、重金属分は、粗製熱分解オイルの全体積に対して少なくとも1mg/Lである。一実施形態において、粗製熱分解オイルは、粗製熱分解オイルの全体積に対して1mg/L~3mg/L、又は1~4mg/Lの重金属分を有する。
【0045】
工程(i)
本発明による精製方法の第1の実施形態において、粗製熱分解オイルは、IUPACの元素周期表の1、2、6、7、8、9、10、11、12、13族の元素金属又はそれらの混合物又はそれらの合金である捕捉剤(a)により処理される。これらの中でも、捕捉剤(a)が、IUPACの元素周期表の1、2、6、8、9、10、11、12若しくは13族から選択される元素金属又はそれらの混合物又はそれらの合金である場合が、より優先される。1族の好ましい金属は、リチウム、ナトリウム及びカリウムを含む。2族の好ましい金属は、カルシウム及びマグネシウムを含む。8族の好ましい金属は鉄である。12族の好ましい金属は亜鉛である。13族の好ましい金属は、アルミニウム及びホウ素を含む。特に好ましい捕捉剤(a)は、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素及び鉄であり、しかしまたリチウム、カリウム、カルシウム及び亜鉛、並びにそれらの合金も好ましい。適切な合金は、特にアルカリ金属の合金である。特に、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム又はホウ素、特にナトリウムが好ましい。
【0046】
特に、例えばカルシウム、アルミニウム、鉄又は亜鉛等の低反応性の金属を用いるいくつかの実施形態において、さらなる捕捉剤、特に捕捉剤(b)又は捕捉剤(d)の存在下で処理を行うことは有利であり得る。適切な捕捉剤(b)は、IUPACの元素周期表の6、7、8、9、10、11又は12族の金属の酸化物又はその混合物、特に酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄(III)、酸化銅及び酸化亜鉛を含む。捕捉剤(d)についての例はゼオライトを含む。
【0047】
捕捉剤(a)は、粗製熱分解オイル中に存在する硫黄分、窒素分、ハロゲン分と関係する少なくとも化学量論的な量、好ましくは超化学量論的な量で使用される。例えば、捕捉剤(a)の量は、必要とする化学量論的な量の0.1~10倍、好ましくは必要とする化学量論的な量の0.5~5倍である。
【0048】
化学量論的な量の捕捉剤(a)は、ハロゲン1モル当たり1当量の元素金属、硫黄1モル当たり2当量の元素金属、及び窒素1モル当たり3当量の元素金属であることを意味する。
【0049】
処理は、連続的に又はバッチ式に達成することができる。粗製熱分解オイルの総量に対する捕捉剤(a)の量は、バッチ法においてしばしば0.01~10質量%、好ましくは0.02~5質量%、特に0.03~3質量%の範囲にある。連続法において、粗製熱分解オイルの総量に対する捕捉剤(a)の量は、しばしば0.01~50質量%、好ましくは0.02~40質量%、特に0.03~30質量%の範囲にある。特に、連続法において、できるだけ高度な低減を達成するためにいくつかの反応器を直列に配置することは有利であり得る。
【0050】
捕捉剤(a)と一緒に使用される場合、捕捉剤(b)は、バッチ法において、該当する場合、粗製熱分解オイルの総量に対してしばしば0.01~10質量%、好ましくは0.02~5質量%、特に0.03~3質量%の量で使用される。捕捉剤(a)と一緒に使用される場合、捕捉剤(b)は、連続法において、該当する場合、しばしば0.01~50質量%、好ましくは0.02~40質量%、特に0.03~30質量%の量で使用される。捕捉剤(d)は、該当する場合、粗製熱分解オイルの総量に対して10質量%以内の量で使用される。
【0051】
捕捉剤は、粗製熱分解オイルに一度に又は分割して添加されてもよい。
【0052】
捕捉剤及び粗製熱分解オイルの間で緊密な接触が生じ得るように、粗製熱分解オイルの全体にわたって捕捉剤(a)並びに存在する場合は捕捉剤(b)及び/又は捕捉剤(d)を分散させることは有利であり得る。例として、ナトリウムが鉱油中で分散体の形態で使用されてもよい。細分化されたナトリウム金属分散体は、寸法が1ミクロン以下の粒子からなっていてもよい。
【0053】
窒素又はアルゴンの雰囲気等の不活性雰囲気下で処理を行うことは有利であり得る。
【0054】
処理は、鉱油又は鉱油と異なる炭化水素等の溶媒のある状態又はない状態で実行することができる。例えば、処理はナフサの存在下で実行することができる。
【0055】
処理は、典型的には200~500℃の範囲、好ましくは250~300℃の範囲の温度で実行される。
【0056】
滞留時間は、一般に、0.1から20時間以内、好ましくは10時間以内、例えば、0.2~10時間、より好ましくは5時間以内、例えば0.2~5時間である。
【0057】
この工程は、典型的には0.9~1.1気圧、好ましくは0.95~1.05気圧、好ましくは1気圧の圧力で行われる。この工程はまた、1.11気圧~3気圧等の高い圧力で行われてもよい。好ましくは、処理は大気圧で実行される。
【0058】
一旦金属又は合金での処理が終わったら、過剰金属又は合金は、酸性又は塩基性であってもよい水等の水素供与体の添加によって破壊することができる。工程(i)からの生成物は、固体を分離するために、分離工程に供される。
【0059】
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、元素金属(又は合金)は、熱分解オイル中の硫黄分、窒素分、ハロゲン分、及び存在する場合は重金属分と反応して、1種又は複数種の無機生成物を形成すると考えられる。次いで、有機の精製熱分解オイルに加えて無機の生成物も、次の工程において分離されてもよい。元素金属がアルカリ金属又はアルカリ土類金属である場合、金属は、例えば、米国特許第7,897,028号又は米国特許出願公開第2013/0043160号に記載のように無機生成物から回収されてもよい。
【0060】
従来の加熱反応器が、小さなバッチのバッチ式処理に使用されてもよい。また、連続法内に、又はこれらの小さなバッチ操作として、この処理を統合することは可能である。
【0061】
本発明による精製方法の第2の実施形態において、粗製熱分解オイルは、IUPACの元素周期表の1、2、6、7、8、9、10、11、12、13族の金属の酸化物又はそれらの混合物である捕捉剤(b)により処理される。本発明の文脈においては、用語「IUPACの元素周期表の1、2、6、7、8、9、10、11、12、13族の金属の酸化物の混合物」とは、個々の金属酸化物の混合物、並びに混合酸化物及び複合酸化物を含む。
【0062】
好ましくは、処理は、水素の存在下、高温及び高圧で実行される。温度は、典型的には100~500℃、好ましくは150~300℃の範囲にある。処理は通常、5~500bar、好ましくは20~150bar、より好ましくは20~100barの範囲の水素分圧で実行される。水素分圧が約3bar未満である場合、コークスがより盛んに捕捉剤に生成される。反対に、水素分圧が500barより高い場合、反応器又は周辺設備の建築費が増加し得るので、経済的に実行不可能である。滞留時間は、一般に0.1から20時間以内、好ましくは10時間以内、例えば0.2~10時間、より好ましくは5時間以内、例えば0.2~5時間である。
【0063】
第2の実施形態において、捕捉剤(b)は、好ましくはIUPACの元素周期表の2、6、7、8、9、10、11、12、13族の金属の酸化物又はそれらの混合物である。
【0064】
2族の適切な金属酸化物は酸化カルシウムである。6族の適切な金属酸化物は、クロム、モリブデン及びタングステンの酸化物、例えば酸化クロム(III)、酸化モリブデン(VI)及び酸化タングステン(VI)である。7族の適切な金属酸化物は酸化マンガンである。8族の適切な金属酸化物は酸化鉄(III)である。9族の適切な金属酸化物は、酸化コバルト(II)等の酸化コバルトである。10族の適切な金属酸化物、酸化ニッケル(II)及び酸化パラジウム(II)等のニッケル及びパラジウムの酸化物である。11族の適切な金属酸化物は酸化銅(II)である。12族の適切な金属酸化物は酸化亜鉛(II)である。好ましい実施形態において、捕捉剤(b)は、2、6、8、9、10、11、12、13族の1つの金属酸化物、例えば酸化カルシウム、酸化ニッケル、酸化銅又は酸化亜鉛を含む。
【0065】
同様に、混合金属酸化物、例えばCo-Mo、Ni-Mo、Ni-Cu、Cu-Zn、Cu-Cr、Mo-Co又はCu-Co-Mo-Mnの混合酸化物が好ましい。
【0066】
捕捉剤(b)は自立する、すなわち、捕捉剤は、支持体(又は担体)として役立つ別の材料を必要としないか、又は、支持体を必要とするかのいずれであってもよい。支持体は、典型的には高い空隙率を有する固体物質を含む。特に有益な支持体は、特にガンマ又はイータ形態のアルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、チタニア、酸化亜鉛及びジルコニアを含む。支持体はまたゼオライト化合物を含んでもよい。捕捉剤は、ボール、リング又は他の方法で形成される形状等の望ましい形状に捕捉剤を形成されるのを支援するためのバインダーを含んでもよい。
【0067】
金属酸化物又は複合金属酸化物は、水素の存在下で、反応温度で活性化金属種に部分還元されることが目論まれる。このことは、特に元素の周期表の6、7、8、9、10、11又は12族から選択される金属の酸化物又はそれらの複合酸化物に当てはまる。生じた活性化金属は、炭素-硫黄、炭素-窒素及び/又は炭素-ハロゲン結合を切断することができる。硫黄、窒素及び/又はハロゲンは、活性化金属又は酸化物によって、例えば、金属硫化物及び/又は金属ハライドの形成によって捕捉される。接触水素処理とは対照的に、硫化水素、水素ハロゲニド又はアンモニアは、基本的に生じない。
【0068】
或いは、IUPACの元素周期表の1又は2族の金属酸化物等の強塩基性金属酸化物、例えば酸化カルシウムの金属陽イオンは、粗製熱分解オイル中に存在する窒素含有、硫黄含有及びハロゲン含有化合物の窒素、硫黄及びハロゲンヘテロ原子と直接に反応して、結果として不飽和化合物の中間体形成をもたらし得る。水素は、不飽和化合物を水素化する役目をする。
【0069】
第2の実施形態は、バッチ式又は連続的に実行されてもよい。第2の実施形態は、通常、撹拌オートクレーブ等の適切な反応器において実行される。捕捉剤は、固定床又は可動性の形態、例えば流動床反応器のいずれにおいて使用されてもよい。また、同一組成の1種又は複数種の捕捉剤床又はいくつかの捕捉剤床を有する反応器が適切であり、捕捉剤床の組成は床毎に異なっている。更に、捕捉剤床は任意選択的に異なる捕捉剤層で構成されてもよい。
【0070】
捕捉剤(b)は、典型的には粗製熱分解オイル中に存在する硫黄分、窒素分、ハロゲン分、及び存在する場合は重金属分と関係する少なくとも化学量論的な量、好ましくは超化学量論的な量で使用される。粗製熱分解オイルの総量に対する捕捉剤(b)の量は、バッチ式方法においてしばしば0.01~10質量%、好ましくは0.02~5質量%、特に0.03~3質量%の範囲にある。連続法において、粗製熱分解オイルの総量に対する捕捉剤(b)の量は、しばしば0.01~50質量%、好ましくは0.02~40質量%、特に0.03~30質量%の範囲にある。特に、連続法において、できるだけ高度な低減を達成するためにいくつかの反応器を直列に配置することは有利であり得る。
【0071】
化学量論的な量の捕捉剤(b)は、ハロゲン1モル当たり1当量の金属陽イオン、硫黄1モル当たり2当量の金属陽イオン、及び窒素1モル当たり3当量の金属陽イオンであることを意味する。
【0072】
第3の実施形態において、粗製熱分解オイルは、IUPACの元素周期表の1及び2族のアルコキシド及びそれらの組み合わせから選択される捕捉剤(c)を用いる処理に供される。これらの中で、炭素原子数1~20のアルカリ金属又はアルカリ土類金属アルカノレート、炭素原子数5~20のアルカリ金属又はアルカリ土類金属シクロアルコキシド又はそれらの混合物が優先される。適切なアルカリ金属はナトリウム及びカリウムを含み、適切なアルカリ土類金属はカルシウム及びマグネシウムを含む。
【0073】
金属アルコキシドを調製するのに適しているアルカノールは、Rが直鎖状又は分岐C1~C20-アルキル基である式R-OHの化合物である。例としては、メタノール;エタノール;n-プロパノール、イソプロパノール;n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール;1-,2-,3-ペンタノール、イソペンタノール、tert-ペンタノール、ネオペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール;1-、2-及び3-ヘキサノール;1-、2-、3-及び4-ヘプタノール;1-、3-及び4-オクタノール;1-、2-、3-、4-及び5-ノナノール;1-、2-、3-、4-及び5-デカノール;1-、2-、3-、4-、5-及び6-ウンデカノール;1-、2-、3-、4-、5-及び6-ドデカノール;1-、2-、3-、4-、5-、6-及び7-トリデカノール;1-、2-、3-、4-、5-、6-及び7-テトラデカノール(ミリスチルアルコール);1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-及び8-ペンタデカノール;1-オクタデカノール(ステアリルアルコール)、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-及び9-オクタデカノール;1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-及び10-ノナデカノール;並びに1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-及び10-エイコサノール;並びにこれら及び同族体の分岐異性体が挙げられる。アルカリ金属シクロアルコキシド及びアルカリ土類金属シクロアルコキシドを調製するのに適しているアルコールは、例えば、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、シクロノナノール、シクロデカノール、シクロウンデカノール、シクロドデカノール、シクロトリデカノール、シクロテトラデカノール、シクロペンタデカノール、シクロヘキサデカノール、シクロヘプタデカノール、シクロオクタデカノール、シクロノナデカノール及びシクロエイコサノール;及びこれらの脂環式化合物のアルキル化誘導体を含む。また、水素化ナフトール等も適切である。
【0074】
好ましくは、金属アルコキシドは、炭素原子数1~6、特に炭素原子数1~5又は1~4のナトリウム又はカリウムアルコキシドである。これらの中で、ナトリウムメトキシド(またナトリウムメタノラート、ナトリウムメチラートとも称される)、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ペントキシド及びカリウムtert-ペントキシドが優先される。
【0075】
アルコキシドは何らかの公知の方法によって;例えば(i)対象となる金属で、必要な無水アルコールを処理することによって;(ii)平衡で存在する水の共沸蒸留及び除去を用いて、必要な無水アルコールで、対象となる金属水酸化物を処理することによって;又は(iii)低級アルコレートを、対象となる高級アルコールと反応させ、続いて低級アルコールを留去することによって調製されてもよい。調製はまた、インサイチューで粗製熱分解オイルの存在下で行われてもよい。
【0076】
窒素又はアルゴンの雰囲気等の不活性雰囲気下で反応を行うことは有利であり得る。
【0077】
処理は、バッチ式又は連続的に実行することができる。
【0078】
化学量論的に必要とされる量の金属アルコキシドは、窒素分、硫黄分、ハロゲン分、及び存在する場合は重金属分に基づく。粗製熱分解オイルの全窒素、硫黄及びハロゲン分、及び存在する場合は重金属分に対して、過剰の金属アルコキシドを使用することは有利であり得る。例えば、金属アルコレートの量は、必要とする化学量論的な量の0.1~20倍、好ましくは必要とする化学量論的な量の0.5~10倍である。粗製熱分解オイルの総量に対する捕捉剤(c)の量は、バッチ式方法において、しばしば0.01~10質量%、好ましくは0.02~5質量%、特に0.03~3質量%の範囲にある。連続法において、粗製熱分解オイルの総量に対する捕捉剤(c)の量は、しばしば0.01~50質量%、好ましくは0.02~40質量%、特に0.03~30質量%の範囲にある。特に、連続法において、できるだけ高度な低減を達成するためにいくつかの反応器を直列に配置することは有利であり得る。
【0079】
滞留時間は、一般に0.1から20時間以内、好ましくは10時間以内、例えば0.2~10時間、より好ましくは5時間以内、例えば0.2~5時間である。
【0080】
処理は、使用されるアルコレートの対応するアルコール等の溶媒のある状態又はない状態で実行することができる。実施形態において、金属アルコキシドは、好ましくは10~50質量%の間、好ましくは20及び40質量%又は25及び35質量%の間の量においてアルコール中の溶液の形で存在し、ここで、パーセンテージは、溶液の総質量に対する質量パーセントである。この溶液は、新たに調製され又は商業的に得られる。
【0081】
処理は、典型的には100~500℃又は140~500℃の範囲、好ましくは150~300℃の範囲の温度で実行される。この工程は、0.9~1.1気圧、好ましくは0.95~1.05気圧、好ましくは1気圧の圧力で行われてもよい。この工程はまた、高圧(例えば、1.11気圧~30気圧)で行われてもよい。好ましくは、処理は大気圧で実行される。
【0082】
従来の加熱反応器は、小さなバッチのバッチ式処理に使用されてもよい。この処理は、連続法内に、又は小さなバッチ操作においても同様に、統合されてもよい。
【0083】
反応が完了したら、過剰アルコキシドは、酸性又は塩基性であってもよい水の添加によって、好ましくは硫酸等の鉱酸の添加によって破壊されてもよい。
【0084】
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、金属アルコキシドは、熱分解オイル中の硫黄分、窒素分、ハロゲン分、及び存在する場合は重金属分と反応して、1種又は複数種の無機及び有機生成物を形成すると考えられる。無機及び有機生成物は次の工程で分離されてもよい。
【0085】
第4の実施形態において、粗製熱分解オイルは、固体捕捉剤(d)により処理され、すなわち、粗製熱分解オイルは、活性炭、アルミナ、シリカ、クレイ材料、ゼオライト、イオン交換樹脂、吸収性有機ポリマーから選択される固体収着剤と物理的に接触させ、処理された熱分解オイル及び載荷した収着剤が得られる。前述の捕捉剤(d)は、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。例えば、2種の異なる捕捉剤(d)が直列に吸着カラムに充填されてもよい。
【0086】
収着剤は吸着剤及び吸収剤を含む。したがって、固体収着剤は、粗製熱分解オイルの窒素分、硫黄分、ハロゲン分、及び存在する場合は重金属分を、少なくとも部分的に吸着又は吸収する主要及び基本機能を有する。窒素含有、硫黄含有、ハロゲン含有、及び存在する場合は重金属含有化合物も、粗製熱分解オイルから物理収着及び/又は化学収着によって除去されてもよい。物理吸着の場合には、窒素含有、硫黄含有、ハロゲン含有、及び存在する場合には重金属含有化合物は、ファンデルワールス力又は静電力等の比較的弱い力によって固体収着剤の表面に吸着されてもよい。化学収着の場合には、窒素含有、硫黄含有、ハロゲン含有、及び存在する場合には重金属含有化合物は、吸着された化合物の電子配置が変化するように前記化合物及び収着剤の固体表面の間で形成された弱い化学結合によって収着剤の表面に吸着され得る。
【0087】
一実施形態において、固体収着剤は活性炭である。活性炭は粉末又は粒状炭素であってもよい。活性炭は、しばしば0.1~1.5mm、例えば0.5~1.0mmの範囲の直径を有する。典型的には、それは大きい比表面積、例えば約300~2000m2/gを有する。また典型的には、それは十分明確な微孔質構造、例えば約1.5nmの平均孔径を有する。一実施形態において、銅及び鉄等の金属が活性炭に組み込まれてもよい。好ましい例としては、0.1~1.5mmの範囲の直径を有する活性炭、活性炭GPP-20(登録商標)(Chemviron社, Belgiumから入手可能)及び粒状活性炭が挙げられる。例としては、Ind. Eng. Chem. Res.、48巻、2号、2009年の953頁のtable 1(表1)に記載の市販活性炭試料も挙げられる。活性炭は新しい活性炭であっても、ReSorb SC(登録商標)(Jacobi carbon社から入手可能)等の再活性炭であってもよい。
【0088】
別の実施形態において、固体収着剤はアルミナである。アルミナは本質的に酸性でも中性でもよい。
【0089】
別の実施形態において、固体収着剤はシリカである。例は、BASF SE社、Germanyから市販されているPerlkat(登録商標)、例えばシリカペレットPerlkat(登録商標)97-0又はPerlkat(登録商標)79-3である。別の例は、60Å(0.040-0.063mm)の孔径を有するシリカゲルゲル(Merck社から入手可能)である。
【0090】
別の実施形態において、固体収着剤はクレイ鉱物である。適切なクレイ鉱物は、カオリン、カオリナイト、ベントナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト及びフラーの土を含む。これらの中で、ベントナイト、カオリン、カオリナイト及びモンモリロナイトが優先される。
【0091】
別の実施形態において、固体収着剤はゼオライトである。ゼオライトは、微孔質であり、頂点共有AlO2及びSiO2四面体から形成されるアルカリ又はアルカリ土類金属の結晶性アルミノケイ酸塩である。Ag+、Cu+、Ni2+及びZn2+のような金属がゼオライトに組み込まれてもよい。市販されているゼオライトは、Sasol社(Germany)から入手可能なSiral(登録商標)、特にSiral(登録商標)40である。
【0092】
別の実施形態において、固体収着剤はイオン交換樹脂である。一実施形態において、イオン交換樹脂は酸性の陽イオン性交換体である。好ましくは、イオン交換樹脂は、Amberlyst(登録商標)15又はAmberlyst(登録商標)35(Dow Chemicals社から入手可能)等のポリスチレンスルホン酸樹脂触媒樹脂である。
【0093】
別の実施形態において、固体収着剤は吸収性有機ポリマーである。適切なポリマーは、Energy &Fuels, 2015, 29, 1881-1891頁(DOI: 10.10217ef502210z)に記載のような、2,4,5,7-テトラニトロフルオレノン(TENF)等のπ受容体により官能化されたポリ(メタクリル酸グリシジル)(PGMA)系ポリマー等の官能化ポリ(メタクリル酸グリシジル)系粒子を含む。
【0094】
本発明によると、収着剤の形状形態は重要ではない。例えば、収着剤は、粒状、球状及び微粒子形状のいずれであってもよく、又は粉末であってもよい。捕捉剤(d)は、吸着剤床において層状で混合され、又は、別個の吸着剤床において純粋な形態で使用されてもよい。
【0095】
捕捉剤(d)は、バッチ法又は連続法において粗製熱分解オイルに添加され、バッチ式方法においては、0.01~10質量%、好ましくは0.02~5質量%、特に0.03~3質量%の範囲の量の捕捉剤(d)を提供する。連続法においては、粗製熱分解オイルの総量に対する捕捉剤(d)の量は、しばしば0.01~50質量%、好ましくは0.02~40質量%、特に0.03~30質量%の範囲にある。特に、連続法において、できるだけ高度な低減を達成するためにいくつかの反応器を直列に配置することは有利であり得る。
【0096】
固体収着性試剤は、支持なしに自立することができ、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、炭素等の不活性多孔基材と混合され、又はそれに支持されてもよい。
【0097】
固体収着剤との接触は、収着剤の固定床又は流動床を適宜並流又は向流の条件下で使用するバッチ又は連続条件下であってもよい。接触を果たす好ましい様式は、収着剤の固定床に液体供給原料のストリームを通すことである。一方の吸着/吸収床を、他方が再生されている間に用いる、二床システムは連続生産に望ましい。吸着剤床は、室温等の15~35℃、又は必要な場合熱分解オイルの沸騰温度以内の高温で操作することができる。処理は、典型的には0.9~1.1気圧、好ましくは0.95~1.05気圧、好ましくは1気圧の圧力で実行される。
【0098】
工程(i)の後、吸着された材料は、捕捉剤(d)を再生するために選択される脱着剤の使用によって除去されてもよい。この脱着剤は、粗製熱分解オイルの収着質成分を置き換える能力のある材料である。例えば、収着剤は、C1~C6-アルカノール等の極性溶媒の使用により再生されてもよい。Amberlyst樹脂は酸を用いて再生することができ、活性炭は高温のスチーム又は窒素を使用して、熱処理によって再生することができる。
【0099】
前述の収着剤は、2種以上の組み合わせで使用されてもよい、例えば、イオン交換樹脂を用いる処理に、イオン交換樹脂以外の収着剤を用いる処理を続けてもよい。
【0100】
処理の後に、捕捉剤、すなわち捕捉剤(a)、捕捉剤(b)、捕捉剤(c)、捕捉剤(d)、及び該当する場合それらの任意の使用される組み合わせは、反応器中に残して再使用することができ、又は、工程(i)で得られた生成物と共に放出されてもよい。それらは、放出される場合、分離されなければならず、その後に、粗製熱分解オイルと比べて削減された窒素分、硫黄分及びハロゲン分を有する精製熱分解オイル画分を使用することができる。
【0101】
工程(ii)
工程(i)から得られた生成物は、粗製熱分解オイルと比べて削減された窒素分、硫黄分及びハロゲン分を有する精製熱分解オイル画分、並びに粗製熱分解オイル中に存在する硫黄、窒素及びハロゲンの少なくとも一部と結合した捕捉剤を含む画分に分離される。特に、工程(ii)は濾過、抽出、蒸留、膜分離又はそれらの組み合わせを含む。
【0102】
一般に、粗製熱分解オイル中に存在する硫黄、窒素及びハロゲンの少なくとも一部と結合した捕捉剤(a)又は(b)、並びに過剰捕捉剤は、遠心分離によって分離することができる。同様に、それらは、精製熱分解オイルを有する又はそれからなる軽質の有機相から濾過によって分離することができる。
【0103】
さらなる実施形態は、抽出、好ましくは液-液抽出を含む。得られた生成物は、極性溶媒を用いて抽出されて硫黄分、窒素分、ハロゲン分、及び存在する場合は重金属分に富む第1の相(抽出物)、並びに粗製熱分解オイルと比べて削減された硫黄分、窒素分、ハロゲン分、及び存在する場合は重金属分を有する精製熱分解オイルを含む第2の相(ラフィネート)を与える。極性とは、溶媒分子が、酸素及び水素等の非常に異なる電気陰性度の原子間の結合を有する、大きい双極子モーメントを有することを意味する。処理された熱分解オイルは双極子モーメントをほとんど又は全く有しないので、このことは有利である。
【0104】
適切な極性溶媒は、硫黄含有、窒素含有、ハロゲン含有、及び存在する場合は重金属含有化合物を溶解するために必要な可溶化特性を有する溶媒をすべて含む。好ましくは、極性溶媒は、水、酸性水溶液、塩基性水溶液、水混和性有機溶媒及びそれらの混合物から選択される。無機極性溶媒の例は、水、無機酸性水溶液及び無機塩基性水溶液である。無機酸性水性酸は、希釈された鉱酸、例えば硫酸、リン酸及び塩酸を含む。無機塩基性溶液は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸水素塩及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、例えば水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、炭酸水素カルシウム及び炭酸カルシウムの水溶液を含む。有機極性溶媒の例は、酢酸又はプロピオン酸等の有機C1~C10アルカンカルボン酸、アセトニトリル等のニトリル、アセトン等の飽和ケトン、ジクロロメタン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル、飽和C1~C6-モノカルボン酸のC1~C6-アルキルアミド及びジ-C1~C6-アルキルアミド、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン等のラクタム、又はメタノール、エタノール等のC1~C6-アルカノール等の水溶液を含む。
【0105】
典型的には、工程(i)において得られた生成物は選択される溶媒を用いて1回又は複数回抽出され、ラフィネートと合わせられる。捕捉剤が、捕捉剤(a)、特に1若しくは2族の金属、又は捕捉剤(c)である場合、抽出は特に適切である。
【0106】
別の実施形態において、工程(i)において得られた生成物は、粗製熱分解と比べて削減された窒素分、硫黄分及びハロゲン分を有する精製熱分解オイルを得るために、膜分離に供される。
【0107】
別の実施形態において、工程(i)において得られた生成物は、低揮発性成分に富み、硫黄分、窒素分及びハロゲン分(及び存在する場合は重金属分も)に富む熱分解オイルであり、また捕捉剤も含む底部生成物;並びに揮発性成分に富み、硫黄分、窒素分及びハロゲン分が低減した(及び存在する場合は重金属分も低減した)熱分解オイルであるガス状の頂部生成物を得るために、高温での蒸留に供される。得られたガス状の頂部生成物は、冷却され、少なくとも1つのさらなる蒸留に供して、より価値のある留分を得ることができる。蒸留は、典型的には0.9~1.1気圧、好ましくは0.95~1.05気圧、好ましくは1気圧の圧力で実行される。いくつかの実施形態において、減圧で蒸留を行うことは有利であり得る。例えば、蒸留は、典型的には100℃以上、例えば100~400℃の温度で実行される。
【0108】
好ましくは、蒸留は分別蒸留である。
【0109】
大気圧で350℃未満、例えば、340℃未満、又は320℃未満又は300℃未満、又は250℃未満、特に200℃未満の沸騰温度を有する画分は、好ましくは(スチーム) 熱分解装置に供給されて、価値のある炭化水素が得られる。
【0110】
底部生成物は、供給原料として再びクラッキングされ使用されてもよい。
【0111】
本方法に従って得られた上記に記載の熱分解オイルは、通常、硫黄分が、未処理の粗製熱分解オイルのそれより少なくとも40%低く、より好ましくは少なくとも50%低い。
【0112】
本方法に従って得られた上記に記載の熱分解オイルは、通常、窒素分が、未処理の粗製熱分解オイルのそれより少なくとも40%低く、より好ましくは少なくとも50%低い。
【0113】
本方法に従って得られた上記に記載の熱分解オイルは、通常、ハロゲン分が、未処理の粗製熱分解オイルのそれより少なくとも40%低く、より好ましくは少なくとも50%低い。
【0114】
本方法に従って得られた上記に記載の熱分解オイルは通常、存在する場合は重金属分が、未処理の粗製熱分解オイルのそれより少なくとも40%低く、より好ましくは少なくとも50%低い。
【0115】
別の態様は、(スチーム) 熱分解装置向け供給原料として上記に定義された方法によって入手可能である、350℃以内、好ましくは200℃以内の沸騰温度を有する精製熱分解オイルの使用に関する。
【0116】
したがって、本発明は、またプラスチック廃棄物の熱分解を起源とする熱分解オイルより低分子量を有する炭化水素化合物の製造の方法であって、
(i)プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする粗製の窒素含有、硫黄含有及びハロゲン含有熱分解オイルを用意する工程;
(ii)本明細書において記載の方法に粗製熱分解オイルを供する工程;並びに
(iii)工程(ii)で得られた精製熱分解オイルを(スチーム) 熱分解装置ユニットでの処理に供する工程、及びより低分子量の炭化水素化合物を含むストリームを単離する工程を含む方法に関する。
【0117】
接触クラッキングに加えて熱スチームクラッキングも、熱分解オイルから開始する低分子量炭化水素化合物を製造する公知の方法である。
【0118】
本発明は、またシンガスの製造の方法であって、
(i)プラスチック廃棄物の熱分解を起源とする粗製の窒素含有、硫黄含有及びハロゲン含有熱分解オイルを用意する工程;
(ii)粗製熱分解オイルを本明細書において記載の方法に供する工程;並びに
(iii)工程(ii)で得られた精製熱分解オイルを部分酸化に供してシンガスを生成する工程を含む方法に関する。
【0119】
本発明の文脈においては、シンガスは、合成ガスとしても知られ、主成分として一酸化炭素(CO)及び水素(H2)を含むガスの混合物である。大気圧で200℃以上、好ましくは350℃以上の沸騰温度を有する画分が、好ましくは工程(iii)で部分酸化に供される。特に、200℃を超える沸点を有する精製された熱分解オイルは、シンガスに変換されてもよい。工程(ii)において得られた熱分解オイルは、酸素(O2)、空気、スチーム(H2O)又はすべてのガス化剤の組み合わせを用いて、しばしば800~1000℃の範囲の高温及び1~20barの範囲の圧力で部分酸化される。工程(iii)において得られたシンガスは、アルカン、オレフィン、酸素化物、及びエタノール等のアルコールに変換することができる。これらの化学物質は、ディーゼル燃料、ガソリン及び他の液体燃料にブレンドするか、又はそれらとして直接使用することができる。シンガスはまた、熱及び電力を製造するために直接燃焼することもできる。
【0120】
したがって、別の態様は、シンガスを製造する部分酸化ユニット向け供給原料としての、本明細書において定義される方法によって得ることができる、200℃を超える、好ましくは350℃を超える沸騰温度を有する精製熱分解オイルの使用に関する。
【0121】
本発明は次の実施例によってより詳細に説明される。
【実施例】
【0122】
短縮形:Ex.は実施例を意味する;hr(s)は時間を意味する;c.p.o.は粗製熱分解オイルを意味する;r.t.は室内温度(室温(ambient temperature))を意味する;Tは温度を意味する;wt.-%は質量パーセントを意味する。
【0123】
出発材料:
供給原料として変動する窒素分、硫黄分及び塩素分を含む粗製熱分解オイルを使用した。粗製熱分解オイルは、欧州特許第0713906号に記載の方法と類似して調製した。
【0124】
以下の粗製熱分解オイルを使用した:
* 60mg/Lの硫黄分、830mg/Lの窒素分及び150mg/Lの塩素分を有する熱分解オイル1、
* 900mg/Lの硫黄分、1800mg/Lの窒素分及び185mg/Lの塩素分を有する熱分解オイル2、
* 100mg/Lの硫黄分、730mg/Lの窒素分及び530mg/Lの塩素分を有する熱分解オイル3。
【0125】
生成物分析:
EN ISO 2084に従って全硫黄分を求めた。
【0126】
DIN 51444に従って全窒素分を求めた。
【0127】
ASTM D 5808に従って塩素分を求め、存在する場合は臭化物及びヨウ化物を、塩化物として計算する。
【0128】
ASTM D 6045-9に従ってSaybolt色標準を求めた。
【0129】
I. 捕捉剤(a)による処理とそれに続く抽出
(実施例1)
(バッチ装置):ナトリウムの使用
熱分解オイル(20g)及びナトリウム(鉱油中20質量%、1g、8.7mmol、0.2gの元素ナトリウムに対応する)をオートクレーブ反応器に装入した。同時に窒素を用いてパージしながら、反応器を閉じ、次いで280℃に加熱した。1時間温度を保持した。次いで、反応混合物を冷却し、次いで濾過した。Table 1(表1)に示される抽出剤により濾液の一部を抽出して有機硫黄、窒素及び塩素化合物が低減した熱分解オイルを含む有機相を得た。Table 1(表1)は、粗製及び精製熱分解オイルの硫黄分、窒素分及び塩素分を提示する。
【0130】
【0131】
(実施例2)
(バッチ装置):ナトリウムの使用
下記を別にして、実施例1のプロトコルによって実施例2を実行した:35gの熱分解オイル及び0.3222gのナトリウム(鉱油中20質量%)をオートクレーブ反応器に装填し、280℃で2時間反応混合物を保持した。表2に列挙された抽出剤(水、それぞれ5質量%のH2SO4、5質量%のHCl及び5質量%の酢酸を含む水)を用いて濾液のアリコートを抽出して、有機硫黄、窒素及び塩素化合物が低減した熱分解オイルを含む有機相を得た。Table 2(表2)は、粗製及び精製熱分解オイルの硫黄分、窒素分及び塩素分を提示する。
【0132】
【0133】
(実施例3)
(バッチ装置):ナトリウムの使用
下記を別にして、実施例1のプロトコルによって実施例3を実行した:35gの熱分解オイル及び0.782gのナトリウム(鉱油中20質量%)をオートクレーブ反応器に装填し、280℃で2時間反応混合物を保持した。表3で列挙された抽出剤(水及び5質量% H2SO4を含む水)により濾液のアリコートを抽出して有機硫黄、窒素及びハライド化合物が低減した熱分解オイルを含む有機相を得た。Table 3(表3)は、粗製及び精製熱分解オイルの硫黄分、窒素分及びハライド分を提示する。
【0134】
【0135】
(実施例4)
(バッチ装置):マグネシウムの使用
実施例1を繰り返したが、0.2gのナトリウムの代わりに0.13gのマグネシウムを使用し、280℃で2時間反応混合物を保持した。分析試料を濾過し水で抽出して、有機硫黄、窒素及びハライド化合物が低減した熱分解オイルを含む有機相を得た。Table 4(表4)は、水抽出後の粗製及び精製熱分解オイルの硫黄分、窒素分及びハライド分を提示する。
【0136】
【0137】
II. 捕捉剤(a)による処理とそれに続く蒸留
(実施例5)
実施例1-3のプロトコルと類似して得られたナトリウム処理した熱分解オイルを大気圧で蒸留して180℃以内の沸騰温度を有する画分及び180~200℃の範囲の沸騰温度を有するさらなる画分及び残渣(液溜め)を得た。Table 5(表5)にS分、N分及びハロゲン分を示す。
【0138】
【0139】
III. 捕捉剤(c)による処理及び水による抽出
(実施例6)
一般手順:
粗製熱分解オイルを、窒素下でオートクレーブ反応器又はフラスコ中、大過剰のアルコキシドの存在下で、table 6(表6)、table 7(表7)及びtable 8(表8)に示す温度で加熱した。粉末としてカリウムtert-ブトキシドを使用した以外は、対応するアルコール中30質量%の溶液としてアルコキシドを使用した。分析試料を水で抽出し、特性評価した。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
IV. 捕捉剤(b)による処理
(実施例7)
一般に水素化/脱水素化反応において使用される、不活性担体に支持された酸化物触媒又は混合酸化物触媒を、捕捉剤として使用した。典型的な実験において、35gの熱分解オイルを、水素及び対応する捕捉剤(b)(15質量%、5g)の存在下、オートクレーブ中で加熱した。次いで、反応を冷却し、精製されたオイルを濾過して捕捉剤を除去した。次いで、濾液を分析したところ、削減された量の硫黄、窒素及びハロゲンを示した。Table 9(表9)及びtable 10(表10)に結果をまとめる。
【0144】
以下の金属の酸化物触媒又は混合酸化物触媒を使用した:
捕捉剤(b1):Cu、Co、Mo、Mn
捕捉剤(b2):Cu、Zn
捕捉剤(b3):Ni、Cu
捕捉剤(b4):Cu、Cr
捕捉剤(b5):Zn
捕捉剤(b6):Mo、Co
【0145】
【0146】
【0147】
(実施例8)
5gの捕捉剤(b1)の代わりに、35gの熱分解オイル及び2.5gの捕捉剤(b1)を使用して、実施例7aのプロトコルを繰り返した。結果を下記table 11(表11)にまとめる。
【0148】
【0149】
(実施例9)
35gの熱分解オイル及び以下のtable 12(表12)に表示される捕捉剤を使用して、実施例7のプロトコルを繰り返した。
【0150】
【0151】
(実施例10)
連続的設備において実施例7のプロトコルを、2.1kgの熱分解オイル、180mLの捕捉剤(b8)、60g/hrの流速、T=250℃、及び50barのH2の圧力を用いることによって繰り返した。2.1kgの熱分解オイルをシステムにポンプ注入し、浄化された供給原料を得た。以下のtable 13(表13)に結果をまとめる。
【0152】
【0153】
(実施例11)
典型的な実験において:15gの熱分解オイルをオートクレーブ中で、水素及びtable 12(表12)で表示される過剰の捕捉剤(b)(粉末、5質量%、0.75g)の存在下で加熱した。次いで、反応を冷却し、そのようにして精製されたオイルを濾過した。次いで濾液を分析したところ、削減された量の硫黄、窒素及びハロゲンを示した。結果を以下のtable 14(表14)にまとめる。
【0154】
【0155】
(実施例12)
実施例11のプロトコルを繰り返したが、CuOの代わりにCaOを使用して実施例12aでのように、硫黄、窒素及びハライドが低減した比較可能な熱分解オイルを得た。
【0156】
V. 捕捉剤(d)による処理
(実施例13)
典型的な実験において、20gの熱分解オイルを捕捉剤(d)と共に、以下のtable 15(表15)に規定した温度で2時間撹拌した。捕捉剤がビーズ粒子の形態である場合、得られた懸濁液は紙フィルターで濾過し、収着剤が細粉である場合、得られた懸濁液を吸収剤詰め物(20g)に通した。
【0157】
【0158】
捕捉剤 番号
捕捉剤(d1):酸性酸化アルミニウム
捕捉剤(d2):活性酸化アルミニウム90、中性
捕捉剤(d3):シリカゲル60(0.040-0.063mm)
捕捉剤(d4):活性炭、0.5-1mm
捕捉剤(d5):カオリン
捕捉剤(d6):カオリナイト
捕捉剤(d7):モンモリロナイト
捕捉剤(d8):モンモリロナイトK 10
捕捉剤(d9):粒状活性炭GPP-20(登録商標)
捕捉剤(d10):粒状活性炭、再活性化Resorb SC(登録商標)
捕捉剤(d11):シリカペレットPerlkat(登録商標)97-0 3050
捕捉剤(d12):シリカペレットPerlkat(登録商標)79-3 1040
捕捉剤(d13):シリカアルミナ、Siral(登録商標)40
捕捉剤(d14):ベントナイト
【0159】
(実施例14)
丸底フラスコ中で、Dow社からの2.5gのAmberlyst(登録商標)35イオン交換樹脂を用いて実施例10で得られた熱分解オイルを処理した。室温で2時間撹拌した後に、そのようにして処理した熱分解オイルを紙フィルターで濾過した。次いで濾液を分析したところ、削減された量のN-成分を示した。以下のtable 16(表16)に結果をまとめる。
【0160】
【国際調査報告】