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特表2023-525308RcoMタンパク質ベースの一酸化炭素スカベンジャーおよび一酸化炭素中毒の処置のための調製物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】RcoMタンパク質ベースの一酸化炭素スカベンジャーおよび一酸化炭素中毒の処置のための調製物
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20230608BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20230608BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20230608BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20230608BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230608BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230608BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C07K14/47 ZNA
A61K38/16
A61P7/00
A61P39/02
A61K33/00
A61K33/24
A61P7/06
A61P9/00
A61P17/02
A61P15/00
A61P7/02
A61P31/00
A61P7/04
A61P31/04
A61P9/10
A61P9/12
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568413
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2021031698
(87)【国際公開番号】W WO2021231370
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/022,821
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504279968
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ローズ, ジェイソン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ディマルティノ, アンソニー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】テヘロ ブラヴォ, ヘスス
(72)【発明者】
【氏名】グラッドウィン, マーク トーマス
(72)【発明者】
【氏名】デント, マシュー アール.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA02
4C084BA22
4C084BA23
4C084DC50
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA401
4C084ZA421
4C084ZA511
4C084ZA521
4C084ZA531
4C084ZA541
4C084ZA551
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZB321
4C084ZB351
4C084ZC371
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA08
4C086HA11
4C086HA25
4C086MA02
4C086MA06
4C086NA05
4C086ZA36
4C086ZA40
4C086ZA42
4C086ZA51
4C086ZA52
4C086ZA53
4C086ZA54
4C086ZA55
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB32
4C086ZB35
4C086ZC37
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA24
4H045FA74
(57)【要約】
CO中毒を有する対象における一酸化炭素(CO)が結合したヘモグロビン、ミオグロビンおよびシトクロムcオキシダーゼからのCOの迅速な排除のための方法が記載されている。本開示の治療法は、合理的に設計され、改変された、CO代謝の調節因子(RcoM)タンパク質およびその医薬組成物の使用を含み、これは、毒された組織から一酸化炭素を捕捉する。組換えRcoM組成物は血液中に注入され、そこで一酸化炭素を迅速に隔離し、細胞呼吸、酸素輸送および酸素利用に対する一酸化炭素の毒性効果を制限する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え一酸化炭素代謝の調節因子(RcoM)タンパク質であって、ヘム結合ドメイン(HBD)を含み、前記HBDのアミノ酸配列が、配列番号2と少なくとも90%同一であり、H74、C94、M104、M105、C127およびC130のうちの1つまたは複数にアミノ酸置換を含む、組換えRcoMタンパク質。
【請求項2】
H74における前記置換が、H74S、H74T、H74M、H74W、H74A、H74L、H74I、H74VおよびH74Gから選択され、
C94における前記置換が、C94S、C94T、C94H、C94W、C94M、C94A、C94L、C94I、C94VおよびC94Gから選択され、
M104における前記置換が、M104S、M104T、M104H、M104W、M104A、M104L、M104I、M104VおよびM104Gから選択され、
M105における前記置換が、M105S、M105T、M105H、M105W、M105A、M105L、M105I、M105VおよびM105Gから選択され、
C127における前記置換が、C127S、C127T、C127M、C127A、C127L、C127I、C127VおよびC127Gから選択され、ならびに/または
C130における前記置換が、C130S、C130T、C130M、C130A、C130L、C130I、C130VおよびC130Gから選択される、請求項1に記載の組換えRcoMタンパク質。
【請求項3】
前記HBDの前記アミノ酸配列が、配列番号2と少なくとも95%同一であり、C94、M104、C127およびC130のうちの1つまたは複数にアミノ酸置換を含む、請求項1に記載の組換えRcoMタンパク質。
【請求項4】
前記HBDが、
C94S置換、
C127S置換およびC130S置換、
C94S置換、C127S置換およびC130S置換、
M104A置換、C127S置換およびC130S置換、
M104H置換、C127S置換およびC130S置換、
M104L置換、C127S置換およびC130S置換、
C94S置換、M104A置換、C127S置換およびC130S置換、
C94S置換、M104H置換、C127S置換およびC130S置換、または
C94S置換、M104L置換、C127S置換およびC130S置換を含む、請求項1に記載の組換えRcoMタンパク質。
【請求項5】
前記RcoMタンパク質の前記アミノ酸配列が、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13もしくは配列番号14を含むかもしくはそれからなり、または
前記RcoMタンパク質の前記アミノ酸配列が、H74、C94、M104、C127、C130およびM105のうちの1つもしくは複数におけるアミノ酸置換を除いて、配列番号1もしくは配列番号2を含むかもしくはそれからなる、請求項1に記載の組換えRcoMタンパク質。
【請求項6】
前記RcoMタンパク質が、N末端タグまたはC末端タグを含む、請求項1に記載の組換えRcoMタンパク質。
【請求項7】
前記タグが親和性タグである、請求項6に記載の組換えRcoMタンパク質。
【請求項8】
前記親和性タグが、His6、FLAG、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、c-Myc、マルトース結合タンパク質(MBP)、プロテインAまたはプロテインGである、請求項7に記載の組換えRcoMタンパク質。
【請求項9】
前記タグが切断可能である、請求項6に記載の組換えRcoMタンパク質。
【請求項10】
血液または動物組織中のヘモグロビン、ミオグロビンまたはミトコンドリアから一酸化炭素を除去するin vitro方法であって、前記血液または動物組織を、請求項1に記載の組換えRcoMタンパク質の有効量と接触させ、それによって、前記血液または動物組織中のヘモグロビンから一酸化炭素を除去することを含む、方法。
【請求項11】
対象における一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法であって、前記対象に、請求項1に記載のRcoMタンパク質の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項12】
前記組換えRcoMタンパク質を投与する前に、一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する対象を選択することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記対象が、それらの血液中に少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%の一酸化炭素ヘモグロビンを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記組換えRcoMタンパク質が、静脈内注入、腹腔内注射または筋肉内注射によって投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記組換えRcoMタンパク質が、1日当たり約0.1g~約300gの用量で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記組換えRcoMタンパク質が、還元剤を含む医薬組成物として投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記還元剤が、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン(NAC)、メチレンブルー、グルタチオン、シトクロムb5/b5-還元酵素、ヒドララジン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオトレイトール(DTT)、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
対象におけるシアン化物中毒を処置する方法であって、前記対象に、請求項1に記載の組換えRcoMタンパク質の治療有効量を投与することを含み、前記RcoMタンパク質が、その酸化形態で存在し、それによって、前記対象におけるシアン化物中毒を処置する、方法。
【請求項19】
前記組換えRcoMタンパク質を投与する前に、シアン化物中毒を有する対象を選択することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記組換えRcoMタンパク質が、酸化剤を含む医薬組成物として投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記酸化剤が、酸素含有ガス混合物、酸素含有液体混合物、フェリシアン化物塩、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
対象における硫化水素(HS)中毒を処置する方法であって、前記対象に、請求項1に記載の組換えRcoMタンパク質の治療有効量を投与することを含み、前記RcoMタンパク質が、その還元形態で存在し、それによって、前記対象におけるHS中毒を処置する、方法。
【請求項23】
前記組換えRcoMタンパク質を投与する前に、HS中毒を有する対象を選択することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組換えRcoMタンパク質が、還元剤を含む医薬組成物として投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記還元剤が、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン(NAC)、メチレンブルー、グルタチオン、シトクロムb5/b5-還元酵素、ヒドララジン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、トレハロース、ジチオトレイトール(DTT)、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
対象における血液を置き換える方法であって、前記対象に、請求項1に記載の組換えRcoMタンパク質の治療有効量を投与し、それによって、前記対象における血液を置き換えることを含む、方法。
【請求項27】
前記対象が、赤血球および/もしくはヘモグロビンの欠乏に関連するか、または組織への酸素送達の低減に関連する疾患、障害または傷害を有するかまたはそれを発症するリスクを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記疾患、障害または傷害が、出血性障害、出血エピソード、貧血、ショック、虚血、低酸素症、無酸素症、低酸素血症、火傷、潰瘍、異所性妊娠、小赤血球症、横紋筋融解症、ヘモグロビン症、球状赤血球症、溶血性尿毒症症候群、サラセミア、播種性血管内凝固、脳卒中または黄熱病を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記出血エピソードが、抗凝固剤過量、動脈瘤、血管破裂、手術、外傷、胃腸出血、妊娠、出血もしくは感染症から生じるか、
前記出血性障害が、血友病A、血友病B、血友病C、第VII因子欠乏症、第XIII因子欠乏症、血小板障害、凝固異常、ソラマメ中毒、血小板減少症、ビタミンK欠乏症もしくはフォン-ウィルブランド病を含むか、
前記貧血が、小球性貧血、鉄欠乏性貧血、ヘム合成異常、グロビン合成異常、鉄芽球性異常、正常球性貧血、慢性疾患性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血、大球性貧血、巨赤芽球性貧血、悪性貧血、二形性貧血、未熟児貧血、ファンコニ貧血、遺伝性球状赤血球症、鎌形赤血球貧血、温熱自己免疫性溶血性貧血もしくは寒冷凝集素性溶血性貧血を含むか、または
ショックが、敗血症性ショック、出血性ショックもしくは血液量減少性ショックを含む、
請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、心筋梗塞、脳卒中、虚血再灌流傷害、肺高血圧症または血管攣縮に罹患しているかまたはそれに罹患するリスクを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記組換えRcoMタンパク質が前記対象に静脈内投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記組換えRcoMタンパク質が、ペグ化されているか、重合化されているか、または架橋されている、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記対象に、第2の血液交換製剤、血液製剤または全血を投与することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の血液交換製剤が、ヘモグロビン系酸素運搬体、人工赤血球または酸素放出化合物を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記血液製剤が、濃厚赤血球、血漿または血清を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が、ヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が、非ヒト動物である、請求項11に記載の方法。
【請求項38】
請求項1に記載の組換えRcoMタンパク質および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項39】
還元剤または酸化剤をさらに含む、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記還元剤が、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン(NAC)、メチレンブルー、グルタチオン、シトクロムb5/b5-還元酵素、ヒドララジン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオトレイトール(DTT)、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記酸化剤が、酸素含有ガス混合物、酸素含有液体混合物、フェリシアン化物塩、キノン、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記組換えRcoMタンパク質が、ペグ化されているか、重合化されているかまたは架橋されている、請求項38に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参考としてその全体が本明細書に援用される、2020年5月11日に出願された米国仮出願第63/022,821号に基づく利益を主張している。
【0002】
分野
本開示は、組換え一酸化炭素代謝の調節因子(RcoM)タンパク質およびその医薬組成物に関する。本開示は、一酸化炭素(CO)中毒、シアン化物中毒および硫化水素中毒の処置のための、ならびに代用血液としての、組換えRcoMタンパク質および組成物の使用にさらに関する。
【0003】
政府の支援の承認
本発明は、国立衛生研究所によって与えられた認可番号HL098032、HL125886、HL136857、HL103455、HL110849およびHL007563のもとで政府の支援によりなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
背景
吸入によって一酸化炭素に曝露することが、環境中毒の主要な原因である。個体は、住宅火災、室内で使用される発電機もしくは屋外用バーベキューグリル、または閉鎖空間での自殺未遂の間など、種々の異なる状況下で空気中の一酸化炭素に曝露される可能性がある。一酸化炭素は、細胞内で、ヘモグロビンおよびヘムタンパク質、特に呼吸輸送鎖の酵素に結合する。ヘモグロビンおよび他のヘムタンパク質に結合した一酸化炭素が蓄積すると、酸素送達および酸化的リン酸化のための酸素利用が損なわれる。これにより、最終的に、脳および心臓などの生命の維持に必要な臓器への重篤な低酸素傷害および虚血性傷害がもたらされる。血中に5~10%を超える炭素一酸化炭素ヘモグロビンを蓄積する個体は、脳傷害および神経認知機能障害のリスクがある。非常に高い一酸化炭素ヘモグロビンレベルを有する患者は、典型的には、不可逆的な脳傷害、呼吸不全および/または心血管虚脱を患う。
【0005】
標準的な動脈および静脈の血液ガス解析ならびにCO-オキシメトリーにより一酸化炭素中毒を迅速に診断する方法の利用可能性にもかかわらず、また一酸化炭素中毒のリスク因子の認知にもかかわらず、この毒性曝露に利用可能な解毒剤は存在しない。現在の治療法は、フェイスマスクによって100%の酸素を与えることであり、可能な場合には、患者を高圧酸素に曝露することである。高圧酸素療法は、ヘモグロビンからの一酸化炭素の放出速度を増加させ、一酸化炭素の自然クリアランスを加速させることである。しかし、この治療法は、一酸化炭素クリアランス速度にあまり効果がなく、高圧酸素設備の複雑さに基づき、この治療法は、本技術分野において利用することができない。さらに、高圧酸素療法は、処置の大幅な遅れおよび輸送コストを伴うことが多い。よって、一酸化炭素ヘモグロビン血症としても公知の一酸化炭素中毒を処置するための効果的で、迅速かつ容易に利用可能な治療法に対する需要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
本開示は、COに対する親和性の高い、組換え一酸化炭素代謝の調節因子(RcoM)タンパク質およびCOスカベンジャーとしてのそれらの使用について記載する。本開示のRcoMタンパク質は、CO結合ヘモグロビン、ミオグロビンおよびシトクロムcオキシダーゼ(ミトコンドリア内)からCOを除去することができ、よって、一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法において、および代用血液として使用することができる。
【0007】
組換えRcoMタンパク質が本明細書において提供される。一部の実施形態では、組換えRcoMタンパク質は、配列番号2に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するヘム結合ドメイン(HBD)を含む。一部の例では、HBDのアミノ酸配列は、配列番号2に対して少なくとも90%同一であり、H74、C94、M104、M105、C127およびC130のうちの1つまたは複数にアミノ酸置換を含む。他の例では、HBDは、野生型アミノ酸配列を有する。組換えRcoMタンパク質は、全長RcoM(例えば、配列番号1のRcoM)であってもよく、またはHBDからなるかもしくはそれから本質的になるRcoMなどの切断されたRcoMであってもよい。特定の例では、組換えRcoMタンパク質は、N末端またはC末端に親和性タグ、例えば、切断可能な親和性タグを含む。
【0008】
本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質を含む医薬組成物がさらに提供される。一部の実施形態では、医薬組成物は、還元剤または酸化剤をさらに含む。
【0009】
血液または動物組織中のヘモグロビン、ミオグロビンまたはミトコンドリア(シトクロムcオキシダーゼ)から一酸化炭素を除去するin vitro方法も本明細書において提供される。一部の実施形態では、本方法は、血液または動物組織を本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質の有効量と接触させることを含む。
【0010】
対象における一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法がさらに提供される。一部の実施形態では、本方法は、対象に、本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質または医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。一部の例では、組換えRcoMタンパク質は、還元剤を含む医薬組成物として投与される。
【0011】
対象におけるシアン化物中毒を処置する方法も提供される。一部の実施形態では、本方法は、対象に、本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質または医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。一部の例では、RcoMタンパク質は、その酸化形態で存在する。
【0012】
対象における硫化水素(HS)中毒を処置する方法がさらに提供される。一部の実施形態では、本方法は、対象に、本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質または医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。一部の例では、RcoMタンパク質は、その還元形態で存在する。
【0013】
対象における血液を置き換える方法がさらに提供される。一部の実施形態では、本方法は、対象に、本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質または医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。
【0014】
本開示の前述の目的および要件ならびに他の目的および要件は、添付の図面を参照して進められる以下の詳細な説明からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】P.xenovorans由来のRcoM-1オルソログのアミノ酸配列(配列番号1)が示される。RcoM-1は、PASドメイン(配列番号1の残基1~154)およびLytTRドメイン(配列番号1の残基155~267)を含有する。他の細菌由来の相同なPASおよびLytTRドメインの結晶構造も示される。PASドメイン構造は、E.coliの直接酸素センサー(DOS)タンパク質に由来し(Kurokawa et al., J Biol Chem 279(19): 20186-20193, 2004)、LytTRドメイン構造は、S.aureusの転写因子AgrAに由来する(Sidote et al., Structure 16(5):727-735, 2008)。
【0016】
図2】PAS CO結合ドメインのみを含み、N末端のメチオニンが欠如するように切断されたP.xenovorans由来のRcoM-1のアミノ酸配列(配列番号2の残基2~154)。ヘム結合残基は太字で指し示されている。RcoM-1におけるヘム配位環境を概説する模式図も示される。
【0017】
図3】PAS CO結合ドメインの重要な領域のみを含むようにさらに切断されたP.xenovorans由来のRcoM-1のアミノ酸配列(配列番号3)。ヘム結合残基は太字である(配列番号1を参照して番号付けしたH74、C75およびM104)。E.coliのDOSタンパク質からのPASドメインと、I-TASSERオンラインモデリングサーバーを使用して開発したRcoM-1 PASドメインの相同モデルとの構造アライメントも示される。破線は、提案された切断部位の位置を指し示す。ヘム結合残基はスティックとして示される。
【0018】
図4】ストップフローUV-Vis分光法(stopped-flow UV-Vis spectroscopy)を使用して測定した、37℃の好気条件下での、WT全長RcoM-1の存在下のヘモグロビン-CO転移速度論。ヘモグロビン-CO(Hb-CO)およびFe(II)RcoM-1の濃度は20μMであり、実験は三連で実施した。Hb-COの喪失に関するデータを二重指数曲線に適合させたところ、1.4秒という低速の相半減期(t1/2)を呈した。Fe(II)-CO RcoMの増加に関するデータを一重指数曲線に適合させたところ、0.93秒という半減期を呈した。
【0019】
図5】UV-Vis分光法を使用して測定した、37℃の嫌気条件下での、WT全長RcoM-1の存在下のヘモグロビン-CO転移速度論。ヘモグロビン-COとFe(II)RcoM-1の濃度は、それぞれ、15μMおよび15.8μMであった。530、562、および583nmの吸光度の変化を、Fe(II)からFe(II)-CO RcoMへの遷移を追跡するものであり、これらを一重指数曲線に適合させたところ、50秒という半減期を呈した。
【0020】
図6】P.xenovoransのRcoM-1(配列番号1)とH.crassostreaeのRcoMホモログ(配列番号4)のアミノ酸アライメント。P.xenovoransのRcoM-1の残基H74、C94およびM104は、H.crassostreaeのRcoMホモログ由来の残基H57、C75およびM85に対応する。
【0021】
図7】WT RcoM-1とC94S置換を含有するHBD16 RcoM-1のUV-Visスペクトルの比較。全長野生型RcoM-1の可視スペクトル(左)。C94S突然変異を有するRcoM-1の単離されたヘム結合ドメイン(HBD)の可視スペクトル(右)。第二鉄(Fe(III))、デオキシ第一鉄(Fe(II))、および第一鉄-CO種(Fe(II)-CO)のスペクトルが示されている。表は、各ピークの推定モル吸光率(mM-1cm-1)と共に、各種のピーク最大値の波長(nmで)を指し示す。
【0022】
図8】HBD C94Sにおける安定したO付加物に関するエビデンス。C94S突然変異を有するRcoM1の単離されたヘム結合ドメイン(HBD)は酸素に結合することができる。還元剤である亜ジチオン酸ナトリウムの存在下での第一鉄(Fe(II))種の可視スペクトルは*で指し示されている。還元剤が除去されると、Fe(II)の脱塩後のスペクトルが得られる。空気曝露後に、540nmと575nm付近に最大値を有する、オキシ第一鉄スペクトルの形成が観察される(Fe(II)、空気曝露)。タンパク質の再酸化により、図7に示される第二鉄スペクトルと一致する第二鉄スペクトルが得られる(Fe(III)、re-ox)。
【0023】
図9】C94S置換を有する切断されたHBD16 RcoMは、WT RcoMと同じCOオンレート(on rate)を有する。RcoM1の第一鉄ヘム結合ドメイン(HBD)の一酸化炭素(CO)との反応速度論は、ストップフロー技法によって決定された。(左上)タンパク質のソーレー帯の詳細;矢印は、吸光度変化の方向を指し示す。(右上)スペクトルの可視域の詳細。矢印は、吸光度変化の方向を指し示す。(左下)選択した波長における時間に対する吸光度変化。異なるCO濃度での速度の計算により、1.2×10-1-1という反応に関する会合速度が得られる。野生型の全長タンパク質に関して類似する値が得られる。
【0024】
図10】C94S突然変異を有するRcoM1のヘム結合ドメイン(HBD)に関するCO解離速度の決定。第一鉄-CO複合体は一酸化窒素(NO)の存在下で解離するため、反応を吸光度変化によってモニターした。COが解離すると、NOがヘムに結合し、吸光度スペクトルに変化を引き起こす。過剰なNOは、COがヘムに再結合するのを防止する。(左上)スペクトルの可視域の詳細。矢印は、吸光度変化の方向を指し示す。(右上)吸光度変化の時間経過によって4.9×10-2-1という解離速度の決定が可能になる。
【0025】
図11】C94S突然変異を有するFe(III)HBD RcoM-1の熱アンフォールディング。アンフォールディングは、420nmにおけるヘムのソーレー極大の吸光度変化によってモニターされる。試料を各温度で5分間平衡化させた後、各UV-Visスペクトルを記録した。20℃~75℃の間で観察されたソーレー強度の小さな損失は、ヘム配位数の変化に起因する可能性が高い。75℃~98℃の間のソーレー強度の損失は、熱アンフォールディングに起因するタンパク質からのヘムの喪失を原因とした。(左上)20℃~98℃の各温度で記録したC94S突然変異を有するFe(III)HBD RcoM-1のUV-Visスペクトル。(右上)温度の関数としてのソーレー極大(420nm)での吸光度値。(左下)75℃~98℃の間の熱アンフォールディング中に記録したUV-Visスペクトル。(右下)75℃~98℃の間の熱アンフォールディング中に記録した温度の関数としてのソーレー極大における吸光度。これらのデータを使用して、融解温度Tが91℃であることを決定した。
【0026】
図12】WT(図12A)ならびにCys置き換えタンパク質バリアントCC HBD(図12B)、C94S(図12C)およびCCC HBD(図12D)におけるRcoMヘム結合ドメイン(HBD)切断種に関する電子吸収(UV-Vis)スペクトルの比較。第二鉄(Fe(III))、デオキシ第一鉄(Fe(II))、および第一鉄-CO種(Fe(II)-CO)、およびオキシ第一鉄(Fe(II)-O)に関するスペクトルが表示されている。
【0027】
図13】それぞれCys94を有するMet104バリアントCC M104A(図13A)およびCC M104H(図13B)におけるRcoM HBD切断種に関する電子吸収(UV-Vis)スペクトルの比較。第二鉄(Fe(III))、デオキシ第一鉄(Fe(II))、および第一鉄-CO種(Fe(II)-CO)、およびオキシ第一鉄(Fe(II)-O)に関するスペクトルが表示されている。(図13C)これらのバリアントにおける配位圏変化を強調するRcoMに関するタンパク質由来のリガンドスイッチング機構の模式図である。
【0028】
図14】それぞれCys94→Ser置換を有するMet104バリアントCCC M104A(図14A)、CCC M104L(図14B)およびCCC M104H(図14C)におけるRcoM HBD切断種に関する電子吸収(UV-Vis)スペクトルの比較。第二鉄(Fe(III))、デオキシ第一鉄(Fe(II))、および第一鉄-CO種(Fe(II)-CO)、およびオキシ第一鉄(Fe(II)-O)に関するスペクトルが表示されている。(図14D)これらのバリアントにおける配位圏変化を強調するRcoMに関するタンパク質由来のリガンドスイッチング機構の模式図である。
【0029】
図15】RcoM HBD切断物の酸素結合親和性(P50)の定量。酸素に結合したヘムタンパク質のフラクションを、光学キュベットを備えたトノメーター装置を使用するUV-Vis分光法を使用して、酸素分圧の関数として測定した。(図15A)酸素分圧(PO2)の関数としてのCC HBD RcoMバリアントに関するUV-Visの特徴の代表的なスペクトル変化。酸素を含まない(デオキシ)ヘムタンパク質および酸素が結合した(オキシ+Fe(III))ヘムタンパク質のフラクションに関してプロットした、CC HBD(図15B)、C94S HBD(図15C)およびCCC HBD(図15D)に関する酸素結合曲線。低酸素圧での自己酸化は、おそらくいくつかの第二鉄ヘムの形成を説明する。曲線を非線形の、単一部位結合モデルに適合させ、P50を定量化した。
【0030】
図16】RcoM WT HBD(図16A)およびHBD切断物であるCC HBD(図16B)、C94S(図16C)およびCCC HBD(図16D)へのCO結合に関する2次速度定数(kon,CO)の決定。COの各濃度におけるCO結合速度を、ストップフローUV-Vis分光法を使用して測定し、一重指数に適合させた。各データ点は、これらの速度に関する2~3回の反復測定値の平均値を表す。各曲線に線形回帰を適用し、二次速度定数を傾きとして推定した。
【0031】
図17】WT HBD RcoM切断物に関する自己酸化速度(koxid)の代表的な決定。(図17A)Fe(III)タンパク質およびFe(II)-Oタンパク質の参照スペクトル。(図17B)Fe(II)-O WT HBDに関するUV-Visの特徴のスペクトル変化。(図17C)542nmおよび573nmにおけるスペクトル変化を一重指数に適合させ、koxidを決定した。
【0032】
図18】WT RcoMならびにRcoM HBDバリアントであるC94S、CC HBDおよびCCC HBDに関するリガンド結合パラメーターおよびヘム安定性の特性の概要。
図19】37℃における尿素の存在下でのFe(III)CCC HBD RcoMの代表的なアンフォールディング。(図19A)415nmのヘムソーレー極大における吸光度変化によってアンフォールディングをモニターした。試料を10分間平衡化させた後、各UV-Visスペクトルを記録した。(図19B)アンフォールディングデータをS字曲線に適合させ、タンパク質試料の半分がアンフォールドされる変性剤の濃度([D]50)を決定した。
【0033】
図20】RcoM HBD切断物と過酸化水素の間の反応性の欠如。Fe(III)WT HBD(図20A)ならびにバリアントであるCCC HBD(図20B)、CCC M104A HBD(図20C)およびCCC M104H HBD(図20D)をpH7.4、25℃で500μMの過酸化水素と共にインキュベートし、30分間にわたって2分ごとにUV-Vis分光法によってモニターした。最小のスペクトル変化を各バリアントについて観察したところ、過酸化水素がRcoM HBD切断物のFe(III)ヘム中心と反応して、高酸化種を生成しないことが示唆された。
【0034】
図21】全長およびHBD切断物RcoMバリアントに関する硝酸塩還元データの概要。第一鉄タンパク質(10~15μM)を、2.5mMの亜ジチオン酸ナトリウムの存在下で、37℃にて1~5mMの亜硝酸ナトリウムとインキュベートした。(図21A)UV-Vis分光法を使用して、Fe(II)ヘムのFe(II)-NOへの変換をモニターした。(図21B~21C)562nmと578nmにおけるスペクトルの特徴の変化を一重指数曲線に適合させ、亜硝酸塩還元速度の実測値を決定した。速度の実測値を亜硝酸塩濃度の関数としてプロットし、線形回帰を各プロットに適用し、二次速度定数を傾きとして推定した。
【0035】
図22】37℃における好気条件下での、ヘモグロビン(Hb)からWT RcoM HBD(図22A)ならびにRcoM HBDバリアントであるCC HBD(図22B)、C94S HBD(図22C)およびCCC HBD(図22D)へのin vitroCO転移に関する代表的な速度論的トレース。COが結合したHb(20μM)を等モルのオキシ第一鉄RcoMと共にインキュベートし、HbからRcoMへのCO転移をUV-Vis分光法を使用してモニターした。各COが結合したヘムタンパク質のフラクションをスペクトルデコンボリューションを使用して決定し、対応する速度論的トレースを一重または二重指数方程式に適合させた。各COが結合した種の半減期を表示し、二重指数に適合した曲線について、高速種の半減期と振幅を表示した。
【0036】
図23】37℃における好気条件下での、赤血球(RBC)に封入されたHbCOから細胞外RcoM HBD切断物へのCO転移をモニターする速度論的トレース。ヘムタンパク質を等モル濃度(50~100μM)でインキュベートし、各時点での遠心分離によって、RBCを細胞外RcoMから分離した。UV-Vis分光法を使用して、HbからWT HBD RcoM(図23A)およびC94S HBD RcoM(図23B)へのCO転移をモニターした。各COが結合したヘムタンパク質のフラクションをスペクトルデコンボリューションを使用して決定し、対応する速度論的トレースを一重指数方程式に適合させた。データ点は3回の試験の平均値±SEMを表し、各実験におけるCOHbの半減期が表示されている。
【0037】
図24】in vivoでの致命的なCO中毒モデルにおいて、C94SおよびCCC HBD RcoMバリアントは、HbCOからCOを捕捉する。マウスにおける重度のCO中毒のin vivoモデルに関する模式図(上)。麻酔し、機械的に換気されたマウスを、空気中で、3,000ppmのCOに4.5分間曝露させ、その後、Fe(II)-O CCC HBD RcoMを体重1g当たり10μLの注射体積で静脈内注入した(ヘムタンパク質濃度を表に列挙した、下)。血液試料(15μL)は、注入の直前および直後、ならびにCO曝露の25分後に採取した。各時点で、遠心分離によってRBCを血漿から分離し、分離したRBCペレットと血漿試料を-80℃で直ちに凍結させる。次に、RBCからのCOが結合したヘモグロビンのフラクション(%HbCO)およびCOが結合したRcoMのフラクション(%RcoM-CO)をスペクトルデコンボリューションを使用して決定した。RcoMの注入により、PBSによる注入と比較して、COが結合したHbのフラクション(Δ%HbCO)のより大きな低下がもたらされた。
【発明を実施するための形態】
【0038】
配列表
添付の配列表に列挙された核酸配列およびアミノ酸配列は、37 C.F.R. 1.822において定義されたように、ヌクレオチド塩基に関する標準的な文字略語、およびアミノ酸に関する三文字コードを使用して示されている。各核酸配列の1本鎖のみが示されているが、相補鎖は、表示された鎖のいずれかを参照して含まれるものと理解される。配列表は、18.7KBの、2021年5月3日に作成されたASCIIテキストファイルとして提出され、参照により本明細書に組み込まれる。添付の配列表において:
配列番号1は、P.xenovorans由来の全長WT RcoM-1のアミノ酸配列である。
配列番号2は、LytTRドメインを欠く切断されたRcoM-1のアミノ酸配列である(HBD16)。
配列番号3は、LytTRドメインおよびPASドメインの一部を欠く切断されたRcoM-1のアミノ酸配列である(HBD12)。
配列番号4は、H.crassostreae由来のWT RcoMのアミノ酸配列である。
配列番号5は、タバコエッチ病ウイルス(TEV)からの切断部位のアミノ酸配列である。
配列番号6は、トロンビンからの切断部位のアミノ酸配列である。
配列番号7は、RcoMバリアントであるC94S HBDのアミノ酸配列である。
配列番号8は、RcoMバリアントであるC127S/C130S HBDのアミノ酸配列である。
配列番号9は、RcoMバリアントであるCCC HBDのアミノ酸配列である。
配列番号10は、RcoMバリアントであるCC M104A HBDのアミノ酸配列である。
配列番号11は、RcoMバリアントであるCC M104H HBDのアミノ酸配列である。
配列番号12は、RcoMバリアントであるCCC M104A HBDのアミノ酸配列である。
配列番号13は、RcoMバリアントであるCCC M104H HBDのアミノ酸配列である。
配列番号14は、RcoMバリアントであるCCC M104L HBDのアミノ酸配列である。
【0039】
詳細な説明
I.略語
CO 一酸化炭素
S 硫化水素
Hb ヘモグロビン
Hb-CO 一酸化炭素ヘモグロビン
HBOC ヘモグロビン系酸素運搬体
HBD ヘム結合ドメイン
NO 一酸化窒素
RcoM 一酸化炭素代謝の調節因子
TEV タバコエッチウイルス
WT 野生型
II.用語および方法
【0040】
別段に言及されていなければ、専門用語は従来の用途に従って使用される。分子生物学における一般的用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes X, published by Jones & Bartlett Publishers, 2009;およびMeyers et al. (eds.), The Encyclopedia of Cell Biology and Molecular Medicine, published by Wiley-VCH in 16 volumes, 2008;ならびに他の同様の参照文献に見い出すことができる。
【0041】
本明細書で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が別段に明確に指し示していなければ、単数と複数の両方を指す。例えば、用語「抗原(an antigen)」は、単一または複数の抗原を含み、「少なくとも1つの抗原(at least one antigen)」という表現と等価であると考えることができる。本明細書で使用される場合、用語「含む(comprise)」は「含む(include)」を意味する。核酸またはポリペプチドに関して与えられる、ありとあらゆる塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子質量の値は、近似値であり、別段に指し示されていなければ、便宜的に与えられていることがさらに理解されるべきである。本明細書に記載のものに類似するかまたは等価な多くの方法および材料が使用され得るが、特に好適な方法および材料が本明細書に記載されている。矛盾する場合には、用語の説明を含む本明細書が支配的となる。さらに、材料、方法、および例は、例示に過ぎず、限定を意図するものではない。
【0042】
様々な実施形態の検討を容易にするために、以下の用語の説明を提供する。
【0043】
投与:いずれかの有効な経路によって、対象に、治療剤(例えば、組換えRcoMタンパク質)などの薬剤を提供するかまたは与えること。例示的な投与経路には、以下に限定されないが、注射または注入(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、髄腔内、静脈内、脳室内、線条体内、頭蓋内および脊髄内など)、経口、管内、舌下、直腸、経皮、鼻内、膣および吸入経路が含まれる。
【0044】
親和性タグ:アフィニティークロマトグラフィーなどの親和性ベースの精製技法を使用して精製を補助するための、組換えタンパク質またはポリペプチドに加えられるペプチド配列。親和性タグの例としては、以下に限定されないが、アルブミン結合タンパク質、アルカリホスファターゼ、AU1エピトープ、AU5エピトープ、バクテリオファージT7エピトープ、バクテリオファージV5エピトープ、ビオチンカルボキシ担体タンパク質、ブルータングウイルスタグ、カルモデュリン結合ペプチド、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、セルロース結合ドメイン、キチン結合ドメイン、コリン結合ドメイン、ジヒドロ葉酸還元酵素、E2エピトープ、FLAGエピトープ、ガラクトース結合タンパク質、緑色蛍光結合タンパク質、Glu-Glu(E-Eタグ)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、インフルエンザヘマグルチニン、HaloTag(登録商標)、ヒスチジン親和性タグ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、HSVエピトープ、ケトステロイドイソメラーゼ、KT3エピトープ、LacZ、ルシフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、Mycエピトープ、NusA、PDZドメイン、PDZリガンド、ポリアルギニン、ポリアスパルテート、ポリシステイン、ポリヒスチジン、ポリフェニルアラニン、プロフィニティeXact、プロテインC、S1-タグ、Sタグ、ブドウ球菌プロテインA(プロテインA)、ブドウ球菌プロテインG(プロテインG)、Strep-タグ、ストレプトアビジン、低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)、チオレドキシン、TrpE、ユビキチン、およびVSV-G(例えば、Kimple et al., Curr Protoc Protein Sci 73: 9.9.1-.9.9.23, 2013, doi:10.1002/0471140864.ps0909s73を参照されたい)が挙げられる。
【0045】
貧血:赤血球および/またはヘモグロビンの欠乏。貧血は最も一般的な血液の障害であり、酸素を組織に転移するための血液の能力の低減をもたらす。すべてのヒト細胞は生存のために酸素に依存するため、貧血の度合が様々であることにより広範囲に及ぶ臨床帰結を有し得る。貧血の3つの主要な分類には、過剰な失血(出血のように急性的に、または少量の失血により慢性的に)、過剰な血液細胞の破壊(溶血)または赤血球産生不全(造血不全)が含まれる。
【0046】
用語「貧血」は、以下に限定されないが、小球性貧血、鉄欠乏性貧血、ヘモグロビン異常症、ヘム合成異常、グロビン合成異常、鉄芽球性異常、正常球性貧血、慢性疾患性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血、大球性貧血、巨赤芽球性貧血、悪性貧血、二形性貧血、未熟児貧血、ファンコニ貧血、遺伝性球状赤血球症、鎌形赤血球貧血、温熱自己免疫性溶血性貧血、寒冷凝集素性溶血性貧血を含むすべての種類の臨床貧血を指す。
【0047】
貧血の重症例では、または失血の進行中には、輸血が必要な場合がある。医者は、いくつかの臨床的に容認される基準のいずれかを使用して、貧血を有する対象を処置するために輸血が必要であることを決定する。例えば、敗血症に対する早期目標設定治療のために現在容認されているRiversプロトコールは、ヘマトクリット値が30を超え続けていることを要求する。
【0048】
無酸素症:全体としての身体または身体の領域に酸素が完全に供給されなくなった病的状態。
【0049】
解毒剤:一酸化炭素などの毒の作用を中和するかまたは打ち消す薬剤。
【0050】
出血性障害:血液凝固能の低下および継続的な出血につながる幅広い範囲の医学的問題に対する一般用語。医師は、例えば、凝固異常、異常出血および凝固障害などの用語で出血性障害を指すこともある。出血性障害には、異常な(または病的な)出血をもたらす任意の先天性、後天性または誘導性の欠陥が含まれる。例としては、以下に限定されないが、血友病A(第VIII因子の欠乏)、血友病B(第IX因子の欠乏)、血友病C(第XI因子の欠乏)、他の凝固因子欠乏症(第VII因子または第XIII因子など)、異常レベルの凝固因子阻害剤、血小板障害、血小板減少症、ビタミンK欠乏およびフォン-ウィルブランド病などの凝固または止血が不十分な障害が挙げられる。
【0051】
出血エピソード:制御できない、過剰なおよび/または病的な出血の発生を指す。出血エピソードは、例えば、薬物誘導性の出血(非ステロイド性抗炎症薬またはワルファリンによって誘導される出血など)、抗凝固剤の過量または中毒、動脈瘤、血管破裂、手術および外傷(例えば、擦過傷、挫傷、裂傷、切創、または銃創を含む)により生じる場合がある。出血エピソードは、がん、胃腸潰瘍などの疾患、または感染症から生じる場合もある。
【0052】
血液交換製剤または代用血液:心血管系において体液量を満たす、ならびに/または酸素および他の血液ガスを運搬するために使用される組成物。代用血液には、例えば、増量剤(血液量を増加させるため)および酸素治療薬(血液中で酸素を輸送するため)が含まれる。酸素治療薬としては、例えば、ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)およびパーフルオロカーボン(PFC)が挙げられる。好ましい代用血液は、ヘモグロビンの酸素運搬能を模倣し、交差マッチングまたは適合性試験を要求せず、貯蔵寿命が長く、長い血管内半減期(数日から数週間を超える)を呈し、副作用および病原体が存在しないものである。
【0053】
一酸化炭素(CO):十分に高濃度で遭遇すると、ヒトおよび動物にとって毒性である、無色、無臭かつ無味のガス。COは、正常な動物の代謝中にも低レベルで生じる。
【0054】
一酸化炭素ヘモグロビン(HbCO):正常な代謝中にCOが吸入されるかまたは生成されると、赤血球において形成される一酸化炭素(CO)とヘモグロビン(Hb)の安定な複合体。
【0055】
一酸化炭素ヘモグロビン血症または一酸化炭素中毒:血液中の過剰な量の一酸化炭素の存在によって生じる状態。典型的には、100百万分率(ppm)またはそれを超えるCOへの曝露が、一酸化炭素ヘモグロビン血症を引き起こすのに十分である。軽度の急性CO中毒の症状には、ふらつき、混乱、頭痛、めまい、およびインフルエンザ様の作用が含まれ、より大量の曝露は、中枢神経系および心臓の重大な毒性につながり、死に至ることもある。急性中毒後には、長期的な後遺症が発生することも多い。一酸化炭素は、妊婦の胎児に深刻な影響を与える可能性もある。低レベルの一酸化炭素への慢性的曝露は、鬱、混乱、記憶喪失につながる場合がある。一酸化炭素は、主に、血液中でヘモグロビンと組み合わさり、一酸化炭素ヘモグロビン(HbCO)を形成することによって、ヒトにおいて有害効果を引き起こす。これにより、酸素がヘモグロビンに結合するのが防止され、血液の酸素運搬能が低減し、低酸素症につながる。さらに、ミオグロビンおよびミトコンドリアのシトクロムオキシダーゼが悪影響を受けると考えられている。一酸化炭素ヘモグロビンはヘモグロビンに戻ることができるが、HbCO複合体はかなり安定しているため、回復には時間がかかる。CO中毒に対する現在の処置方法には、100%の酸素を投与すること、または高圧酸素療法を提供することが含まれる。
【0056】
脳虚血または虚血性脳卒中:脳へのまたは脳内の動脈が部分的にまたは完全にブロックされた結果、組織の酸素需要が供給酸素を上回る場合に発生する状態。虚血性脳卒中後に酸素および他の栄養素が不足して、脳卒中の結果として、脳はダメージを受ける。
【0057】
凝固異常:血液凝固に関する身体の機構における欠陥に関する医学的用語。
【0058】
接触:直接的な物理的会合状態に置くこと;固体形態と液体形態の両方を含む。in vivo方法に関連して使用される場合、「接触」は投与することも含む。
【0059】
シアン化物中毒:シアン化水素ガスおよびシアン化物塩などのいくつかの形態のシアン化物への曝露により生じる中毒の種類。シアン化物中毒は、住宅火災からの煙の吸入、金属研磨剤、特定の殺虫剤および特定の種子(リンゴの種子など)への曝露によって発生し得る。シアン化物中毒の初期症状としては、頭痛、めまい、急速な心拍数、息切れおよび嘔吐が挙げられる。その後の症状としては、痙攣、心拍数の低下、血圧低下、意識喪失、および心停止が挙げられる。
【0060】
シトクロムcオキシダーゼ:呼吸電子伝達鎖の一部である酵素。この酵素はミトコンドリア内に見られる。
【0061】
ソラマメ中毒:グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠乏症の一般名;いくつかの原因に応答する非免疫性溶血性貧血を特徴とするX連鎖劣性遺伝性病。
【0062】
融合タンパク質:2つの異なる(異種)タンパク質の少なくとも一部を含むタンパク質。
【0063】
胃腸出血:咽頭から直腸までの胃腸管におけるいずれかの形態の出血(失血)を指す。
【0064】
ヘモグロビン(Hb):脊椎動物および他の動物における血液の赤血球における鉄を含有する酸素輸送金属タンパク質。ヒトでは、ヘモグロビン分子は4つの球状タンパク質サブユニットの集合体である。各サブユニットは、非タンパク質であるヘム基と強固に会合したタンパク質鎖から構成される。各タンパク質鎖を、グロビンフォールド配置で一緒に接続したアルファ-ヘリックス構造セグメントのセットへと配置させ、この配置は他のヘム/グロビンタンパク質において使用されるのと同じフォールディングモチーフであるため、このように呼ばれている。このフォールディングパターンは、ヘム基に強力に結合するポケットを含有する。
【0065】
ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC):酸素運搬体として機能し、代用血液として使用することができる、精製、組換え、および/または修飾ヘモグロビンの輸血可能な液体。いくつかのHBOCが公知であり、および/または臨床開発中である。HBOCの例としては、以下に限定されないが、DCLHb(HEMASSIST(商標);Baxter)、MP4(HEMOSPAN(商標);Sangart)、ピリドキシル化Hb POE-コンジュゲート(PHP)+カタラーゼ&SOD(Apex Biosciences)、O-R-PolyHbA(HEMOLINK(商標);Hemosol)、PolyBvHb(HEMOPURE(商標);Biopure)、PolyHb(POLYHEME(商標);Northfield)、rHb1.1(OPTRO(商標);Somatogen)、PEG-Hemoglobin(Enzon)、OXYVITA(商標)およびHBOC-201(Greenburg and Kim, Crit Care 8(Suppl 2):S61-S64, 2004;te Lintel Hekkert et al., Am J Physiol Heart Circ Physiol 298:H1103-H1113, 2010;Eisenach, Anesthesiology 111:946-963, 2009)が挙げられる。
【0066】
血友病:凝固を制御する身体能力を損なういくつかの遺伝性の遺伝病の名称。
【0067】
出血:循環系からの血液の喪失。出血は、体内の血管から血液が漏れる内面から、あるいは膣、口もしくは直腸などの自然開口部、または皮膚の裂け目のいずれかからの外部から起こり得る。
【0068】
異種:異種タンパク質またはポリペプチドは、異なる供給源または種に由来するタンパク質またはポリペプチドを指す。
【0069】
硫化水素中毒:硫化水素(HS)への過剰な曝露により生じる中毒の種類。HSは、ミトコンドリアシトクロム酵素中の鉄に結合し、細胞呼吸を防止する。低濃度のHSへの曝露は、眼刺激、喉の痛み、咳、吐き気、息切れ、肺水腫、疲労、食欲不振、頭痛、イライラ、記憶力低下およびめまいを引き起こす場合がある。高レベルの曝露は、即時虚脱、呼吸不能および死を引き起こす場合がある。
【0070】
出血性ショック:細胞機能に必要な酸素および栄養素の不適切な送達をもたらす、組織灌流の低減した状態。最も一般的な種類である血液量減少性ショックは、貫通外傷および鈍的外傷、胃腸出血、および産科出血などの臨床的病因による循環血液量の喪失により生じる。
【0071】
低酸素血症:動脈血中の酸素濃度の異常な欠乏。
【0072】
低酸素症:全身としての身体(全身的な低酸素症)または身体の領域(組織の低酸素症)が適切な酸素供給を受けられなくなった病態。
【0073】
虚血:例えば、1つまたは複数の血管の収縮または閉塞によって、身体の臓器、組織、または部分への血液供給の減少が引き起こされる血管現象。虚血は、血管収縮または血栓症または塞栓症により生じることもある。虚血は、直接的な虚血性傷害、酸素供給の低減によって引き起こされる細胞死に起因する組織損傷につながる場合がある。
【0074】
虚血/再灌流傷害:虚血/再灌流傷害は、血流の不足中に起こる即時傷害に加えて、血流が回復した後に起こる組織傷害にも関与する。この傷害の多くは、虚血組織中に放出された化学製品およびフリーラジカルによって引き起こされることが現在理解されている。
【0075】
組織が虚血にさらされると、一連の化学的事象が開始され、最終的に細胞の機能不全および壊死に至る可能性がある。虚血が血流の回復により終了する場合、第2の一連の有害事象が結果として起こり、さらなる傷害が生じる。よって、対象において血流が一過性に減少または遮断されると常に、結果として生じる傷害は、虚血期間中に発生する直接的傷害と、その後に発生する間接的または再灌流傷害という2つの構成要素に関与する。虚血時間が長い場合、低酸素により生じる直接的な虚血損傷が支配的である。比較的短時間の虚血では、間接的または再灌流に媒介される損傷がますます重要になる。一部の事例では、再灌流によって生じる傷害は、虚血それ自体によって誘導される傷害よりも重症である場合がある。このような直接機序と間接機序による傷害の相対的な寄与のパターンは、すべての臓器で起こることが示されている。
【0076】
単離された:「単離された」生物学的構成成分(核酸分子、タンパク質、または細胞など)は、その構成成分が天然に存在する生物の細胞、血液もしくは組織、または生物それ自体における他の生物学的構成成分、例えば、他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質ならびに細胞から実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸分子およびタンパク質は、標準的な精製方法によって精製されたものを含む。この用語は、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸分子およびタンパク質、ならびに化学的に合成された核酸分子およびタンパク質も包含する。
【0077】
メトヘモグロビン:ヘム構成成分における鉄が第一鉄(+2)から第二鉄(+3)状態へと酸化された、酸化形態のヘモグロビン。これは、ヘモグロビン分子を、組織へと酸素を有効に輸送および放出できなくする。通常、総ヘモグロビンの約1%が、メトヘモグロビン形態で存在する。
【0078】
小赤血球症:血液中の微小赤血球(異常に小さい赤血球)の存在によって特徴付けられる血液障害。
【0079】
ミオグロビン:脊椎動物およびほとんどの哺乳動物の筋組織において見られるヘム含有グロビンタンパク質。ミオグロビンは、筋肉細胞において酸素を運搬および保存する。
【0080】
酸化剤:別の物質から電子を受容する(物質を「酸化する」とも称される)ことが可能な物質。酸化剤は、化学反応において電子を獲得し、還元される。酸化剤は、「電子受容体」としても公知である。本明細書における一部の実施形態では、酸化剤は、キノン、例えば、ベンゾキノンまたはナフタキノンである。他の実施形態では、酸化剤は、酸素含有ガス混合物、酸素含有液体混合物、フェリシアン化物塩、またはこれらの任意の組合せである。一部の例では、電子伝達体(例えば、TMPDまたはクリスタルバイオレット)は、電子伝達を容易にするために酸化剤と組み合わせて使用される。本明細書における一部の実施形態では、RcoMの酸化は、可視光への曝露によって行われる。
【0081】
Paraburkholderia xenovorans:土壌に見られる紅色細菌の一種。P.xenovoransは、グラム陰性の好気性細菌である。P.xenovoransは、9.7Mbの最も大きな公知の原核生物ゲノムの1つを有する。この細菌は、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を効率的に分解することが可能である。P.xenovoransは、Burkholderia xenovoransとしても公知である。
【0082】
ペプチドまたはポリペプチド:その単量体が、アミド結合により一体に接合されたアミノ酸残基である、ポリマー。アミノ酸がアルファ-アミノ酸である場合、L-光学異性体またはD-光学異性体のいずれを使用することができ、L-異性体が好ましい。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、本明細書で使用される場合、いずれかのアミノ酸配列を包含し、改変されたRcoMタンパク質を含む改変された配列を含むことが意図される。用語「ペプチド」および「ポリペプチド」は、天然に存在するタンパク質、および組換えまたは合成により産生されるものを網羅することが特に意図される。
【0083】
保存的アミノ酸置換は、それがなされた場合に、元のタンパク質の特性への干渉が最小となる置換であり、すなわち、このような置換によってタンパク質の構造、特に機能は保存され、有意に変化されない。保存的置換の例は以下の表に示されている。
【表6】
【0084】
保存的置換は、一般に、(a)例えば、シートまたはヘリックス立体構造としての、置換の区域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩を維持する。
【0085】
タンパク質特性に最大の変化を生じさせることが一般に予想される置換は、非保存的な、例えば、(a)親水性残基、例えば、セリンもしくはトレオニンが、疎水性残基、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリンもしくはアラニンに代えて(またはそれにより)置換される;(b)システインもしくはプロリンが、他のいずれかの残基に代えて(またはそれにより)置換される;(c)電気陽性側鎖を有する残基、例えば、リシン、アルギニン、もしくはヒスチジンが、電気陰性残基、例えば、グルタミンもしくはアスパラギン酸に代えて(またはそれにより)置換される;または(d)嵩高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、側鎖を持たない残基、例えば、グリシンに代えて(またはそれにより)置換される変化となる。
【0086】
薬学的に許容される担体:有用な薬学的に許容される担体が、慣例的である。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, The University of the Sciences in Philadelphia, Editor, Lippincott, Williams, & Wilkins, Philadelphia, PA, 21st Edition (2005)は、本明細書に開示されるタンパク質および他の組成物の医薬送達に好適な組成物および製剤について記載する。一般に、担体の性質は、用いられている特定の投与方式に依存することになる。例えば、非経口製剤は、通常、ビヒクルとして薬剤的および生理学的に許容される流体、例えば、水、生理的食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどを含む注射可能な流体を含む。固体組成物(散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形態)は、従来の非毒性固体担体は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含んでもよい。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンなどの、微量の無毒補助的物質を含有することができる。
【0087】
疾患の防止、処置または軽快:疾患の「防止」は、疾患の完全な発症を阻害することを指す。「処置」は、発症し始めた後に、疾患または病態の兆候または症状を軽快する治療介入、例えば、CO中毒を有する対象の血液中のHbCOの低減を指す。「軽快」は、疾患の兆候または症状の数または重症度の低減を指す。
【0088】
精製された:精製されたという用語は、絶対的な精製を要求せず、むしろ、相対的用語として意図される。よって、例えば、精製されたペプチド調製物は、ペプチドまたはタンパク質が、細胞内のその天然環境におけるペプチドまたはタンパク質よりも豊富に存在するものである。一実施形態では、調製物は、タンパク質またはペプチドが、調製物の総ペプチドまたはタンパク質含量の少なくとも50%を占めるように精製される。実質的な精製は、他のタンパク質または細胞の構成成分からの精製を示す。実質的に精製されたタンパク質は、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または98%の純度である。よって、具体的な、非限定的な一例では、実質的に精製されたタンパク質は、他のタンパク質または細胞の構成成分を90%含まない。
【0089】
組換え:組換え核酸またはタンパク質は、天然に存在しない配列を有するか、または2個の天然状態では分離されている配列のセグメントの人工的組合せによって作製された配列を有する核酸またはタンパク質である。この人工的組合せは、多くの場合、化学的合成によって、または単離された核酸のセグメントの人工操作、例えば、遺伝子操作技法によって達成される。組換えという用語は、天然核酸分子またはタンパク質の一部の付加、置換、または欠失によって変更された核酸およびタンパク質を含む。
【0090】
還元剤:化学的酸化還元反応において別の化学種へと電子を失う(または「供与する」)元素または化合物。還元剤は典型的に、そのより低い可能な酸化状態の1つにあり、電子供与体として公知である。酸化還元反応において電子を失うため、還元剤は酸化される。例示的な還元剤としては、以下に限定されないが、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、シトクロムb5/b5-還元酵素、ヒドララジン、土類金属、ギ酸および亜硫酸塩化合物が挙げられる。
【0091】
一酸化炭素代謝の調節因子(RcoM):CO感知および転写調節に関与する一部の原核生物に見られるタンパク質。RcoMタンパク質は、N末端のPASドメインおよびDNAに結合するLytTRドメインを含有する。PASドメインは、六配位b型ヘム部分を含有し、COおよび一酸化窒素(NO)に強く結合する。PASドメインの残基His74およびMet104は、ヘムFe(II)の軸リガンドとしての役割を果たし、COまたはNOの結合に際してMet104が転置される。好気性のグラム陰性細菌であるParaburkholderia xenovorans(Burkholderia xenovoransとしても公知)は、およそ93%の配列同一性を共有し、COに対して非常に高い親和性を有する、2つの相同タンパク質、RcoM-1およびRcoM-2を発現する。RcoM-1およびRcoM-2は、好気的CO酸化および嫌気的CO酸化を調節することが可能なCOセンサーとして作用する。P.xenovoransのRcoM-1の野生型アミノ酸配列は、配列番号1として本明細書に記載されている。種々の細菌種からのRcoMホモログ(およびUniProt ID)は表3に列挙されている。
【0092】
横紋筋融解症:機械的、物理的または化学的な外傷による骨格筋組織の急速な破壊。クレアチンホスホキナーゼ酵素および他の細胞副産物の血液系への大量放出、ならびにそれらのうちのいくつかが腎臓に対して傷害性である筋分解産物の蓄積による急性腎不全が主な結果である。
【0093】
配列同一性/類似性:2つもしくはそれよりも多い核酸配列、または2つもしくはそれよりも多いアミノ酸配列の間の同一性は、配列間の同一性または類似性の観点から表現される。配列同一性は、同一性パーセンテージの観点から測定することができ;パーセンテージが高いほど、配列はより同一である。配列類似性は、類似性パーセンテージの観点から測定することができ(これは、保存的アミノ酸置換を考慮に入れる);パーセンテージが高いほど、配列はより類似する。核酸またはアミノ酸配列のホモログまたはオルソログは、標準的な方法を使用してアラインされた場合に、相対的に高い程度の配列同一性/類似性を保有する。オルソロガスなタンパク質またはcDNAが、より遠縁の種と比較して(ヒトとC.elegansの配列など)、より近縁の種に由来する場合に(ヒトとマウスの配列など)、この相同性は、より有意である。
【0094】
比較のための配列のアライメント方法は、当技術分野で周知である。様々なプログラムおよびアライメントアルゴリズムは、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981;Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970;Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988;Higgins & Sharp, Gene, 73:237-44, 1988;Higgins & Sharp, CABIOS 5:151-3, 1989;Corpet et al., Nuc. Acids Res. 16:10881-90, 1988;Huang et al. Computer Appls. in the Biosciences 8, 155-65, 1992;およびPearson et al., Meth. Mol. Bio. 24:307-31, 1994. Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990に記載されており、配列アライメント方法および相同性計算に関する詳細な考察を提示する。
【0095】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990)は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxに関連して使用するために、National Center for Biological Information(NCBI)およびインターネット上を含むいくつかの供給源から利用可能である。追加情報は、NCBIウェブサイトに見い出すことができる。
【0096】
球状赤血球症:ドーナッツ形状ではなく球状形状である赤血球(red blood cell)(または赤血球(erythrocyte))の産生によって特徴付けられる自己溶血性貧血。
【0097】
対象:ヒトと非ヒト哺乳動物の両方を含むカテゴリーである、脊椎動物の生物を含む、生きている多細胞生物。
【0098】
サラセミア:遺伝性の常染色体劣性血液疾患。サラセミアでは、遺伝子の欠陥により、ヘモグロビンを構成するグロビン鎖のうちの1つの合成速度の低減がもたらされる。グロビン鎖のうちの1つの合成の低減により、異常なヘモグロビン分子の形成がもたらされ、その結果、サラセミアに特徴的な症状である貧血が引き起こされる。
【0099】
治療有効量:処置されている対象において所望の効果を達成するのに十分な、化合物または組成物、例えば、単離されたRcoMタンパク質または組換えRcoMタンパク質の量。例えば、これは、血液もしくは組織において一酸化炭素を捕捉する、血液中のHbCOのレベルの低減させる、および/または一酸化炭素中毒に関連する1つもしくは複数の兆候もしくは症状の低減に必要な量であり得る。
【0100】
潰瘍:皮膚、眼または粘膜の開放創であり、排他的ではないが、多くの場合、最初の擦過傷によって引き起こされ、一般に、炎症、感染、および/または治癒を妨げる医学的状態によって維持される。
【0101】
血管攣縮:脳卒中の原因の一つで、脳に供給する血管の痙攣によって二次的に発生する。この種の脳卒中は、典型的には、くも膜下動脈瘤出血の後に続き、血管攣縮は、出血事象の2~3週間以内に遅れて発症する。同様の種類の脳卒中は鎌状赤血球症を合併することがある。
IV.組換えRcoMタンパク質
【0102】
一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置するための、有効で、迅速かつ容易に利用可能な治療法に対する必要性が存在する。本開示は、一酸化炭素に対して非常に高い親和性を呈し、よって、COスカベンジャーとして使用することができる組換え一酸化炭素代謝の調節因子(RcoM)タンパク質を提供する。本開示のRcoMタンパク質は、硫化水素もしくはシアン化物中毒を処置するために使用されてもよく、または代用血液として使用されてもよい。
【0103】
RcoMタンパク質は、N末端のPASフォールドドメインをC末端のDNA結合LytTRドメインにカップリングさせるCO感知の細菌転写調節因子として最初に同定された(図1を参照されたい)。RcoMタンパク質は、COおよび一酸化窒素(NO)へ強く結合する六配位b型ヘム部分を含有する。PASドメイン残基His74およびMet104(配列番号1に関する)は、ヘムFe(II)軸リガンドとして機能し、COまたはNOの結合時にMet104の転置を伴う。P.xenovorans由来の2つのRcoMホモログ(RcoM-1およびRcoM-2)は、in vivoで機能的であり、好気的CO酸化および嫌気的CO酸化を調節することが可能なCOセンサーとして作用する。
【0104】
RcoMは、COに対して非常に高い親和性を呈し、酸素よりもCOに対して選択的である。これらの特性に鑑みて、本開示のRcoMタンパク質は、COが結合したヘモグロビン、ミオグロビンおよびシトクロムcオキシダーゼからCOを直接的に捕捉して、一酸化炭素中毒を処置するのに理想的である。本開示のRcoMタンパク質を使用して、シアン化物もしくはHS中毒を処置するか、または代用血液として使用することもできる。安定性を増強する、CO親和性を高める、および/またはRcoMタンパク質の酸素親和性を低下させる定方向突然変異も本明細書にさらに記載される。
【0105】
野生型(WT)および改変型RcoMタンパク質について以下に記載されている。WTアミノ酸配列(配列番号1)では、LytTRドメイン(DNA結合)に下線を付し、配列の残りの部分はPASドメインである(図1を参照されたい)。本明細書に開示される切断されたRcoMタンパク質(配列番号2、3および7~14)は、LytTRドメインを含有しない(図2および3を参照されたい)。すべてのRcoM配列(配列番号1~3および7~14)において、太字の残基は、配列番号1に関して番号付けされたH74、C94、M104、C127、C130およびM105に対応する。
P.xenovorans由来のWT RcoM-1(29kDa):
【化1】
HBD16 RcoM(16kDa)切断物:
【化2】
HBD12 RcoM(12kDa)切断物:
【化3】
【0106】
本開示全体を通して、別段に指し示されている場合を除き、特定のアミノ酸残基は、配列番号1の全長WT RcoM-1を参照して番号付けされている。表1は、配列番号1~3においてそれぞれ対応する残基の位置を列挙する。
表1. WTおよび切断されたRcoM配列において重要な残基
【表1】
【0107】
8つのRcoM HBDバリアントは、配列番号2のHBD16に基づいて生成された。表2は、それらの各アミノ酸置換および完全なアミノ酸配列と一緒に、各バリアントを列挙する(太字の残基は置換を指し示す)。
表2. RcoM HBD16バリアント
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0108】
COに対して非常に高い親和性を呈する組換え一酸化炭素代謝の調節因子(RcoM)タンパク質が本明細書において提供される。一部の実施形態では、組換えRcoMタンパク質は、ヘム結合ドメイン(HBD)を含み、HBDのアミノ酸配列は、配列番号2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である。一部の実施形態では、HBDのアミノ酸配列は、野生型配列である(配列番号2など)。他の実施形態では、HBDのアミノ酸配列は、H74、C94、M104、M105、C127およびC130のうちの1つまたは複数にアミノ酸置換を含む。一部の例では、HBDのアミノ酸配列は、配列番号2と少なくとも90%または少なくとも95%同一であり、C94、M104、C127およびC130のうちの1つまたは複数にアミノ酸置換を含む。
【0109】
本開示のRcoMタンパク質は、ヘムリガンド親和性および/もしくは特異性を変更する、ならびに/またはタンパク質安定性を増強するために、種々の残基におけるアミノ酸置換などによって、改変されてもよい。一部の実施形態では、RcoMタンパク質は、単一のアミノ酸置換を含む。他の実施形態では、RcoMタンパク質は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは少なくとも6つのアミノ酸置換を含む。一部の例では、アミノ酸置換は、保存的置換である。
【0110】
一部の例では、組換えRcoMタンパク質は、H74に置換を含み、これはヘム配位ヒスチジンである。具体的な非限定的な例では、置換は、H74S、H74T、H74M、H74W、H74A、H74L、H74I、H74VおよびH74Gから選択される。
【0111】
一部の例では、組換えRcoMタンパク質は、C94に置換を含み、これは、Fe(II)ヘム配位システインである。具体的な非限定的な例では、置換は、C94S、C94T、C94H、C94W、C94M、C94A、C94L、C94I、C94VおよびC94Gから選択される。
【0112】
一部の例では、組換えRcoMタンパク質は、M104に置換を含み、これは、Fe(II)ヘム配位メチオニンである。具体的な非限定的な例では、置換は、M104S、M104T、M104H、M104W、M104A、M104L、M104I、M104VおよびM104Gから選択される。
【0113】
一部の例では、組換えRcoMタンパク質は、M105に置換を含み、これは、非ヘム配位メチオニンである。具体的な非限定的な例では、置換は、M105S、M105T、M105H、M105W、M105A、M105L、M105I、M105VおよびM105Gから選択される。
【0114】
一部の例では、組換えRcoMタンパク質は、C127に置換を含み、これは、非ヘム配位システインである。具体的な非限定的な例では、置換は、C127S、C127T、C127M、C127A、C127L、C127I、C127VおよびC127Gから選択される。
【0115】
一部の例では、組換えRcoMタンパク質は、C130に置換を含み、これは、非ヘム配位システインである。具体的な非限定的な例では、置換は、C130S、C130T、C130M、C130A、C130L、C130I、C130VおよびC130Gから選択される。
【0116】
一部の例では、組換えRcoMタンパク質は、C94に単一のアミノ酸置換、M104に単一のアミノ酸置換、C94およびM104に2つのアミノ酸置換、C127およびC130に2つのアミノ酸置換、C94、C127およびC130に3つのアミノ酸置換、M104、C127およびC130に3つのアミノ酸置換、H74、C94およびM104に3つのアミノ酸置換、C94、M104、C127およびC130に4つのアミノ酸置換、C94、M104、M105、C127およびC130に5つのアミノ酸置換、H74、C94、M104、C127およびC130に5つのアミノ酸置換、またはH74、C94、M104、M105、C127およびC130に6つのアミノ酸置換を含む。具体的な非限定的な例では、組換えRcoMタンパク質は、C94S置換;C127S置換およびC130S置換;C94S置換、C127S置換およびC130S置換;C94S置換およびM104L置換;M104A置換、C127S置換およびC130S置換;M104H置換、C127S置換およびC130S置換;M104L置換、C127S置換およびC130S置換;C94S置換、M104A置換、C127S置換およびC130S置換;C94S置換、M104H置換、C127S置換およびC130S置換;C94S置換、M104L置換、C127S置換およびC130S置換;H74S置換、C94S置換およびM104L置換;C94S置換、M104L置換、M105L置換、C127S置換およびC130S置換;またはH74S置換、C94S置換、M104L置換、M105L置換、C127S置換およびC130S置換を含む。
【0117】
特定の例では、RcoMタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13または配列番号14を含むかまたはそれからなる。
【0118】
一部の実施形態では、RcoMタンパク質は、配列番号1~3のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。一部の例では、RcoMタンパク質は、配列番号1~3のいずれか1つを含むかまたはそれからなる。
【0119】
一部の例では、RcoMタンパク質のアミノ酸配列は、H74、C94、M104、C127、C130およびM105のうちの1つまたは複数におけるアミノ酸置換を除き、配列番号1、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0120】
具体的な例では、RcoMタンパク質のアミノ酸配列は、H74S置換、C94S置換、M104A、M104HおよびM104Lから選択されるM104置換、M105L置換、C127S置換、C130S置換、またはそれらの任意の組合せを除き、配列番号1からなる。他の例では、タンパク質のアミノ酸配列は、H74S置換、C94S置換、M104A、M104HおよびM104Lから選択されるM104置換、M105L置換、C127S置換、C130S置換、またはこれらの任意の組合せを除き、配列番号2からなる。また他の具体的な例では、タンパク質のアミノ酸配列は、H74S置換、C94S置換、M104A、M104HおよびM104Lから選択されるM104置換、M105L置換、C127S置換、C130S置換、またはこれらの任意の組合せを除き、配列番号3からなる。
【0121】
バイオインフォマティクス分析を使用して、種々の微生物の112rcoM遺伝子を同定したところ、そのうちの44個は好気的CO代謝に関連する。同定されたrcoM遺伝子のうちの1つは中温性微生物(Hydrogenophaga crassostreae)に由来し、これは、熱的安定性の増強されたRcoMタンパク質を発現すると考えられている。よって、一部の実施形態では、組換えRcoMタンパク質は、表3に列挙した種のうちの1つに由来し、列挙したUniProt IDを有するタンパク質である。
表3. RcoM遺伝子ホモログを有する微生物
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0122】
上記に列挙したRcoMホモログのアミノ酸配列は、それらが2020年5月11日にUniProtのデータベースにおいて示されたように参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
一部の実施形態では、RcoMタンパク質は、Hydrogenophaga crassostreaeに由来する。一部の例では、RcoMタンパク質は、配列番号4と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有する。一部の例では、RcoMタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号4を含むかまたはそれからなる。
H. crassostreae由来の全長RcoM配列
【0124】
【化4】
【0125】
具体的な非限定的な例では、RcoMタンパク質は、配列番号4と少なくとも90%同一であり、P.xenovorans由来のRcoM-1ホモログに関して上に記載されたアミノ酸置換のうちの1つまたは複数を含有する(アライメントに関して図6を参照されたい)。
【0126】
一部の実施形態では、組換えRcoMタンパク質は、N末端、C末端、または両方においてタグを含む。一部の例では、タグは、タンパク質の精製を補助するための親和性タグなどの親和性タグである。His6、FLAG、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、c-Myc、マルトース結合タンパク質(MBP)、プロテインAまたはプロテインGのうちの1つまたは複数などの、任意の好適な親和性タグを使用することができる。具体的な例では、親和性タグは、His6タグである。一部の例では、親和性タグは切断可能である。具体的な例では、切断タグは、アミノ酸配列ENLYFQ[G/S](配列番号5)を有するTEV由来の切断部位を含む。他の具体的な例では、切断タグは、アミノ酸配列LVPRGS(配列番号6)を有するトロンビン由来の切断部位を含む。
【0127】
一部の実施形態では、組換えRcoMタンパク質は、タグを含まない。
【0128】
一部の実施形態では、組換えRcoMタンパク質は、酸化形態で存在する(Fe(II)である、RcoMのCOに結合したヘムが酸化されてFe(III)となる)。RcoMの酸化は、例えば、酸化剤への曝露によって達成され得る。一部の実施形態では、酸化剤は、酸素含有ガス混合物、酸素含有液体混合物、フェリシアン化物塩、またはこれらの任意の組合せである。他の実施形態では、酸化剤は、キノン、例えば、ベンゾキノンまたはナフタキノンである。一部の例では、電子伝達体(例えば、TMPDまたはクリスタルバイオレット)は、電子伝達を容易にするために酸化剤と組み合わせて使用される。他の実施形態では、RcoMの酸化は、可視光への曝露によって遂行される。例えば、Fe(II)であるCOに結合したヘムを有するRcoMは、空気の存在下で約1~12時間の期間、0.15W/cm~140W/cmの範囲の強度で、光ファイバーまたは放熱スクリーンのいずれかを使用して、白色光に曝露(例えば、ハロゲンランプなどの白熱電球への曝露によって)することができる。同様の方法は、Kerby et al.(J. Bacteriol 190:3336-3343, 2008)、Bouzhir-Sima et al.(J Phys Chem B 120:10686-10694, 2016)およびSalman et al.(Biochem 58:4028-4034, 2019)に記載されている。
V.医薬組成物
【0129】
本明細書に記載の組換えRcoMタンパク質は、単離されたタンパク質として、または医薬組成物の一部として投与され得る。したがって、本明細書に開示される組換えRcoM、またはその誘導体、および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、および必要に応じて1つまたは複数の他の有効(治療用)成分を含む医薬組成物が本明細書において提供される。賦形剤は、製剤の他の成分と適合性であり、かつそのレシピエントにとって有害ではないという意味において「許容される」。医薬組成物の適当な製剤化は、選ばれる投与経路などのいくつかの要因に依存する。周知の技法および賦形剤のうちのいずれかが好適であるように、かつ当技術分野において理解されているように使用されてもよい。本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠の作製、湿式粉砕、乳化、封入、捕集または圧縮プロセスによって、当技術分野で公知の任意の方法で製造されてもよい。
【0130】
一部の実施形態では、本明細書に開示される1つまたは複数の組換えRcoMタンパク質を、1つまたは複数のその薬学的に許容される担体および必要に応じて、1つまたは複数の他の治療用成分と一緒に含む医薬組成物が開示される。賦形剤/担体は、製剤の他の成分と適合性であり、かつそのレシピエントにとって有害ではないという意味において「許容され」なければならない。医薬組成物の適当な製剤化は、選ばれる投与経路に依存する。周知の技法および賦形剤のうちのいずれかが好適であるように、かつ当技術分野において理解されているように使用されてもよい。一部の実施形態では、組成物は、以下の賦形剤のうちの1つまたは複数を含む:N-アセチルシステイン、クエン酸ナトリウム、グリシン、ヒスチジン、グルタミン酸、ソルビトール、マルトース、マンニトール、トレハロース、ラクトース、グルコース、ラフィノース、デキストロース、デキストラン、フィコール、ゼラチン、ヒドロキシエチルデンプン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、m-クレゾール、塩化ミリスチルガンマ-ピコリニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、2-ペノキシエタノール(penoxythanol)、硝酸フェニル水銀、チメロサール、アセトン重亜硫酸ナトリウム、アルゴン、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸(ナトリウム/酸)、重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、システイン/システイン酸HCl、亜ジチオン酸ナトリウム(ハイドロサルファイトNa、スルホキシル酸Na)、ゲンチジン酸、ゲンチジン酸エタノールアミン、グルタミン酸一ナトリウム、グルタチオン、ホルムアルデヒドスルホキシレートナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メチオニン、モノチオグリセロール(チオグリセロール)、窒素、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、アルファトコフェロール、アルファトコフェロールコハク酸水素塩、およびチオグリコール酸ナトリウム。本開示は、参照により本明細書に組み込まれるPramanick et al., Pharma Times 45(3): 65-77, 2013に開示されたいずれかを含む、他の賦形剤も企図する。
【0131】
一部の実施形態では、医薬組成物のRcoMタンパク質は、ペグ化されているか、重合化されているか、または架橋されている。
【0132】
一部の実施形態では、医薬組成物は、ネイティブもしくは組換えグロビン分子、例えば、ネイティブもしくは組換えヘモグロビンもしくはニューログロビンを含むか、またはヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)をさらに含む。一部の例では、HBOCは、DCLHb(HEMASSIST(商標);Baxter)、MP4(HEMOSPAN(商標);Sangart)、ピリドキシル化Hb POE-コンジュゲート(PHP)+カタラーゼ&SOD(Apex Biosciences)、O-R-PolyHbA(HEMOLINK(商標);Hemosol)、PolyBvHb(HEMOPURE(商標);Biopure)、PolyHb(POLYHEME(商標);Northfield)、rHb1.1(OPTRO(商標);Somatogen)、PEG-Hemoglobin(Enzon)、OXYVITA(商標)もしくはHBOC-201、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0133】
本明細書に開示される医薬組成物は、局所または全身処置が望まれるかどうか、および処置される区域に応じて、種々の経路によって投与され得る。
【0134】
医薬組成物は、非経口(皮下、経皮、筋肉内、静脈内、動脈内、および髄内を含む)、または腹腔内投与に好適なものを含むが、最も好適な経路は、例えば、レシピエントの状態および障害に依存し得る。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内への、または注射もしくは注入による;あるいは頭蓋内、例えば、髄腔内もしくは脳室内への投与が含まれる。非経口投与は、単回ボーラス用量の形態であってもよく、または例えば、継続的灌流ポンプによるものであってもよい。従来の医薬担体、水性、粉末または油性ベース、増粘剤などが必要であるかまたは望ましい場合がある。一部の実施形態では、化合物は、薬学的に許容される希釈剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝剤、保水剤、保湿剤、可溶化剤、保存剤などと共にこのような医薬組成物中に含有されてもよい。当業者は、ガイダンスとして様々な薬理学の参照文献を参照することができる。例えば、Modern Pharmaceutics, 5th Edition, Banker & Rhodes, CRC Press (2009);およびGoodman & Gilman's The Pharmaceutical Basis of Therapeutics, 13th Edition, McGraw Hill, New York (2018)を参考にすることができる。組成物は、単位剤形で存在するのが好都合である場合があり、薬学の技術分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。典型的には、これらの方法は、本明細書に開示される単離された組換えRcoM分子またはその誘導体(「有効成分」)を1つまたは複数の付属成分を構成する担体と関連付けさせるステップを含む。一般に、組成物は、有効成分を液体担体または微細に分割された固体担体またはその両方と均一かつ密接に関連させ、次いで、必要であれば、生成物を所望の組成物へと成形することによって調製される。
【0135】
組換えRcoMタンパク質は、注射による非経口投与用に製剤化されてもよい。注射用組成物は、追加の保存剤と共に、単位剤形中、例えばアンプルまたは複数回用量容器中に存在してもよい。医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中で懸濁剤、溶液剤またはエマルションなどの形態をとる場合があり、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤を含有し得る。組成物は、単位用量または複数回用量容器中、例えば、密封されたアンプルおよびバイアル中に存在してもよく、使用の直前に滅菌液体担体、例えば、生理食塩水または滅菌パイロジェンフリー水の添加のみを要求する粉末形態またはフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即時注射溶液剤および懸濁剤は、前述の種類の滅菌散剤、顆粒剤および錠剤から調製されてもよい。
【0136】
非経口投与用医薬組成物は、活性化合物の水性および非水性(油性)滅菌注射溶液を含み、これらは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および組成物を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有する場合があり;かつ水性および非水性滅菌懸濁液は、懸濁化剤および増粘剤を含んでもよい。好適な親油性溶媒またはビヒクルは、ゴマ油などの脂肪油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームを含む。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含有し得る。必要に応じて、懸濁剤は、化合物の溶解度を増加させ、高濃度溶液剤の調製を可能にする好適な安定剤または薬剤を含有してもよい。
【0137】
特に上述した成分に加えて、上記医薬組成物が、問題の医薬組成物の種類に関して当技術分野で慣用的な他の薬剤を含んでもよい(例えば、経口投与に好適なものとして香味剤を挙げることができる)ことが理解されるべきである。
【0138】
単位投与用医薬組成物は、以下に記載した有効用量、またはその適切な分量の有効成分を含有するものである。用語「単位剤形」は、ヒト対象および他の哺乳動物に対して単位投薬量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、好適な医薬賦形剤を伴って、所望の治療効果を生じるよう計算された所定の量の活性物質を含有する。
【0139】
RcoMタンパク質は、広い投薬範囲にわたり有効であり得、一般に、治療有効量で投与され得る。しかし、実際に投与される化合物の量は、通常、処置される状態、選ばれる投与経路、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重、および応答、患者の症状の重症度などを含む関連する状況によって、医師によって決定されることが理解されよう。
【0140】
一部の実施形態では、本開示の組換えRcoMタンパク質は、1日当たり約0.01g~約1000gの治療有効量で投与することができる。一部の例では、組換えRcoMタンパク質の用量は、約0.1g~約900g、約0.1g~約800g、約0.1g~約700g、約0.1g~約600g、約0.1g~約500g、約0.1g~約400g、約0.1g~約300g、約0.1g~約200g、約0.1g~約100g、約1g~約900、約1g~約800、約1g~約700g、約1g~約600、約1g~約500、約1g~約400、約1g~約300g、約1g~約200g、約1g~約100g、約10g~約900、約10g~約800g、約10g~約700g、約10g~約600g、約10g~約500g、約10g~約400g、約10g~約300g、約10g~約200g、もしくは約10g~約100g、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲である。
【0141】
単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせる有効成分の量は、処置される宿主および特定の投与方式に応じて変わることになる。本明細書に開示される一部の実施形態では、医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体(賦形剤)と組み合わせて、本開示のRcoMタンパク質(有効成分として)のうちの1つまたは複数を含む。
【0142】
一部の実施形態では、1つまたは複数の組換えRcoMタンパク質は、医薬組成物の約0.01%~約50%を構成する。一部の実施形態では、1つまたは複数のRcoMタンパク質は、約0.01%~約50%、約0.01%~約45%、約0.01%~約40%、約0.01%~約30%、約0.01%~約20%、約0.01%~約10%、約0.01%~約5%、約0.05%~約50%、約0.05%~約45%、約0.05%~約40%、約0.05%~約30%、約0.05%~約20%、約0.05%~約10%、約0.1%~約50%、約0.1%~約45%、約0.1%~約40%、約0.1%~約30%、約0.1%~約20%、約0.1%~約10%、約0.1%~約5%、約0.5%~約50%、約0.5%~約45%、約0.5%~約40%、約0.5%~約30%、約0.5%~約20%、約0.5%~約10%、約0.5%~約5%、約1%~約50%、約1%~約45%、約1%~約40%、約1%~約35%、約1%~約30%、約1%~約25%、約1%~約20%、約1%~約15%、約1%~約10%、約1%~約5%、約5%~約45%、約5%~約40%、約5%~約35%、約5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約20%、約5%~約15%、約5%~約10%、約10%~約45%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、約10%~約20%、約10%~約15%、またはこれらの範囲のうちの1つ以内の値を構成する。具体的な非限定的な例は、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約0.75%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲を含む。前述のすべては、医薬組成物の重量パーセンテージを表す。
【0143】
患者に投与される組換えRcoMタンパク質の量は、投与されるもの、投与の目的、例えば予防または治療、患者の状態、投与方法などに応じて変わることになる。治療適用では、組成物は、疾患およびその合併症の症状を治癒させるかまたは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で、疾患または状態をすでに患っている患者に投与することができる。
【0144】
一部の実施形態では、医薬組成物は、従来の滅菌技法によって滅菌することができ、または滅菌濾過することができる。水性溶液は、そのまま、または凍結乾燥して使用するためにパッケージングされてもよく、凍結乾燥された調製物は投与前に滅菌水性担体と組み合わされる。一部の実施形態では、RcoMタンパク質調製物のpHは、約3~約11、約5~約9、約5.5~約6.5、または約5.5~約7.5である。ある特定の前記賦形剤、担体、または安定剤の使用により、医薬の塩の形成がもたらされることになる。
【0145】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、還元剤を含む。一部の例では、還元剤は、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、亜ジチオン酸ナトリウム、メチレンブルー、グルタチオン、B5/B5-還元酵素/NADH、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、ジチオトレイトール、またはこれらの組合せから選択される。ヘム分子を含有する鉄を還元する特性を有する他の薬剤も使用することができる。
【0146】
他の特定の実施形態では、医薬組成物は、酸化剤を含む。一部の例では、酸化剤は、酸素含有ガス混合物、酸素含有液体混合物、フェリシアン化物塩、またはこれらの任意の組合せから選択される。
【0147】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、RcoMタンパク質または医薬組成物を無酸素環境で生成および維持することによって、脱酸素化され得る。
VI.CO、HSおよびシアン化物中毒を処置する方法
【0148】
本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質(セクションIVを参照されたい)は、一酸化炭素に対して極めて高い親和性を呈する。この特性に基づいて、本開示のRcoMタンパク質は、一酸化炭素中毒に対する解毒剤としてなど、種々のin vivoおよびin vitro方法において使用することができる。シアン化物および硫化水素(HS)中毒を処置するための本開示のRcoMタンパク質の使用についても記載されている。
【0149】
対象における一酸化炭素ヘモグロビン血症(一酸化炭素中毒)を処置する方法も本明細書において提供される。一部の実施形態では、本方法は、対象に、本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質、または組換えRcoMタンパク質を含有する医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、RcoMタンパク質またはその医薬組成物の投与前に、一酸化炭素ヘモグロビン血症(一酸化炭素中毒)を有する対象を選択することを含む。一部の例では、対象は、その血液中に少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%の一酸化炭素ヘモグロビンを有する。一部の実施形態では、RcoMタンパク質は、その還元形態で存在する。一部の例では、還元剤は、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン(NAC)、メチレンブルー、グルタチオン、シトクロムb5/b5-還元酵素、ヒドララジン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオトレイトール(DTT)、トレハロース、還元糖質(ソルビトールまたはマンニトールなど)、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0150】
対象の血液または組織を本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質または医薬組成物と接触させることによって、対象の血液または組織中のネイティブのヘモグロビン、ミオグロビンまたはミトコンドリア(すなわち、ミトコンドリア内のシトクロムcオキシダーゼに由来する)から一酸化炭素を除去する方法が本明細書においてさらに提供される。一部の実施形態では、本方法は、対象の血液または組織を本開示のRcoMタンパク質またはその医薬組成物と接触させる前に、一酸化炭素ヘモグロビン血症(一酸化炭素中毒)を有する対象を選択することを含む。一部の例では、対象は、それらの血液中に少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%の一酸化炭素ヘモグロビンを有する。一部の実施形態では、RcoMタンパク質は、その還元形態で存在する。一部の例では、還元剤は、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン(NAC)、メチレンブルー、グルタチオン、シトクロムb5/b5-還元酵素、ヒドララジン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオトレイトール(DTT)、トレハロース、還元糖質(ソルビトールまたはマンニトールなど)、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0151】
対象の血液または組織を本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質または医薬組成物と接触させることによって、対象の血液または組織中のネイティブのヘモグロビン、ミオグロビンまたはミトコンドリア(ミトコンドリア内のシトクロムcオキシダーゼなど)から硫化水素を除去する方法も本明細書において提供される。一部の例では、本方法は、対象の血液または組織をRcoMタンパク質または医薬組成物と接触させる前に、硫化水素中毒を有する対象を選択するステップをさらに含む。対象に、本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質または医薬組成物の治療有効量を投与することによって、対象における硫化水素中毒を処置する方法がさらに提供される。一部の例では、本方法は、RcoMタンパク質または医薬組成物を投与する前に、硫化水素中毒を有する対象を選択するステップをさらに含む。これらの方法の一部の実施形態では、RcoMタンパク質は、その還元形態で存在する。医薬組成物中に含める還元剤の例としては、以下に限定されないが、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン(NAC)、メチレンブルー、グルタチオン、シトクロムb5/b5-還元酵素、ヒドララジン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオトレイトール(DTT)、トレハロース、還元糖質(ソルビトールまたはマンニトールなど)、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0152】
対象の血液または組織を本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質または医薬組成物と接触させることによって、対象の血液または組織中のネイティブのヘモグロビン、ミオグロビンまたはミトコンドリアに由来する(例えば、ミトコンドリア内のシトクロムcオキシダーゼに由来する)シアン化物を除去する方法が本明細書においてさらに提供される。一部の例では、本方法は、対象の血液または組織をRcoMタンパク質または医薬組成物と接触させる前に、シアン化物中毒を有する対象を選択するステップをさらに含む。対象に、本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質または医薬組成物の治療有効量を投与することによって、対象におけるシアン化物中毒を処置する方法も提供される。一部の例では、本方法は、RcoMタンパク質または医薬組成物を投与する前に、シアン化物中毒を有する対象を選択するステップをさらに含む。これらの方法の一部の実施形態では、RcoMタンパク質は、その酸化形態で存在する。一部の例では、酸化剤は、酸素含有ガス混合物、酸素含有液体混合物、フェリシアン化物塩、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0153】
本明細書に開示されるin vivo方法の一部の実施形態では、RcoMタンパク質または医薬組成物は、静脈内または筋肉内に投与される。一部の例では、RcoMタンパク質または医薬組成物は、静脈内注入、腹腔内注射または筋肉内注射によって投与される。
【0154】
一部の実施形態では、RcoMタンパク質は、1日当たり約0.1~約300gの用量で、単独で、または医薬組成物の一部としてのいずれかで、投与される。さらなる用量範囲は、セクションVにおいて上記されている。
【0155】
血液または動物組織中のヘモグロビン、ミオグロビンまたはミトコンドリアに由来する(例えば、ミトコンドリア内のシトクロムcオキシダーゼに由来する)一酸化炭素を除去するin vitro方法であって、血液または動物組織を、本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質の有効量と接触させることを含む、方法も本明細書において提供される。一部の実施形態では、RcoMタンパク質は、その還元形態で存在する。
【0156】
血液または動物組織中のヘモグロビン、ミオグロビンまたはミトコンドリアに由来する(例えば、ミトコンドリア内のシトクロムcオキシダーゼに由来する)硫化水素を除去するin vitro方法であって、血液または動物組織を、本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質の有効量と接触させることを含む、方法が本明細書においてさらに提供される。一部の実施形態では、RcoMタンパク質は、その還元形態で存在する。
【0157】
血液または動物組織中のヘモグロビン、ミオグロビンまたはミトコンドリアに由来する(例えば、ミトコンドリア内のシトクロムcオキシダーゼに由来する)シアン化物を除去するin vitro方法であって、血液または動物組織を、本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質の有効量と接触させることを含む、方法も本明細書において提供される。一部の実施形態では、RcoMタンパク質は、その酸化形態で存在する。
【0158】
本開示の方法の一部の実施形態では、組換えRcoMタンパク質は、ペグ化されているか、重合化されているか、または架橋されている。
VII.代用血液としての組換えRcoM
【0159】
本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質は、酸素に結合し、酸素を運搬することが可能である(図8および15A~15D;実施例3および4を参照されたい)。よって、本開示のRcoMタンパク質を代用血液として使用することが企図される。
【0160】
血液を置き換えるおよび/または対象の組織への酸素送達を増加させる方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、本方法は、対象に、本明細書に開示される組換えRcoMタンパク質または医薬組成物の治療有効量を投与し、それによって、血液を置き換えるおよび/または対象における酸素送達を増加させることを含む。
【0161】
処置される対象は、例えば、血液体積の増加または組織への酸素送達の増加を必要とする任意の対象である。一部の実施形態では、対象は、赤血球および/もしくはヘモグロビンの欠乏に関連するか、または組織への酸素送達の低減に関連する疾患、障害または傷害を有するかまたはそれを発症するリスクを有する。一部の例では、疾患、障害または傷害は、出血性障害、出血エピソード、貧血、ショック、虚血、低酸素症、無酸素症、低酸素血症、火傷、潰瘍、異所性妊娠、小赤血球症、横紋筋融解症、ヘモグロビン症、球状赤血球症、溶血性尿毒症症候群、サラセミア、播種性血管内凝固、脳卒中または黄熱を含む。
【0162】
一部の実施形態では、組換えRcoMタンパク質で処置される対象における出血エピソードは、抗凝固剤過量、動脈瘤、血管破裂、手術、外傷、胃腸出血、妊娠、出血または感染症により生じる。
【0163】
一部の実施形態では、組換えRcoMタンパク質で処置される対象における出血性障害は、血友病A、血友病B、血友病C、第VII因子欠乏症、第XIII因子欠乏症、血小板障害、凝固異常、ソラマメ中毒、血小板減少症、ビタミンK欠乏症またはフォン-ウィルブランド病を含む。
【0164】
一部の実施形態では、処置される対象における貧血は、小球性貧血、鉄欠乏性貧血、ヘム合成異常、グロビン合成異常、鉄芽球性異常、正常球性貧血、慢性疾患性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血、大球性貧血、巨赤芽球性貧血、悪性貧血、二形性貧血、未熟児貧血、ファンコニ貧血、遺伝性球状赤血球症、鎌形赤血球貧血、温熱自己免疫性溶血性貧血または寒冷凝集素性溶血性貧血を含む。
【0165】
一部の実施形態では、処置される対象におけるショックは、敗血症性ショック、出血性ショックまたは血液量減少性ショックを含む。
【0166】
一部の実施形態では、処置される対象は、血流の減少に関連する疾患または状態を患っているかまたは患うリスクを有し、その結果、対象の処置には酸素送達の増加が有益である。本開示の方法を使用して処置することができる疾患または状態の例としては、以下に限定されないが、虚血、心筋梗塞、脳卒中、虚血再灌流傷害、血圧上昇、肺高血圧症(新生児肺高血圧症、原発性肺高血圧症、および二次性肺高血圧症を含む)、全身性高血圧症、皮膚潰瘍、急性腎不全、慢性腎不全、血管内血栓症、虚血性中枢神経系事象、血管攣縮(脳動脈血管攣縮など)、溶血性状態、末梢血管疾患、外傷、心停止、全身手術または臓器移植が挙げられる。
【0167】
一部の実施形態では、組換えRcoMタンパク質は、対象に静脈内投与される。
【0168】
一部の実施形態では、本方法は、対象に、第2の血液交換製剤、血液製剤または全血を投与することをさらに含む。一部の例では、第2の血液交換製剤は、ヘモグロビン系酸素運搬体、人工赤血球または酸素放出化合物を含む。一部の例では、血液製剤は、濃厚赤血球、血漿または血清を含む。
【0169】
一部の例では、対象は、ヒトである。他の例では、対象は、非ヒト動物である。
【0170】
本開示のRcoMタンパク質およびネイティブまたは組換えグロビン分子(ネイティブまたは組換えヘモグロビンまたはニューログロビン)、またはヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)などの酸素運搬体を含む組成物も提供される。一部の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤、またはその両方をさらに含む。一部の例では、組成物中のRcoMタンパク質は、ペグ化されているか、重合化されているか、または架橋されている。
VIII.実施形態
【0171】
実施形態1.組換え一酸化炭素代謝の調節因子(RcoM)タンパク質であって、ヘム結合ドメイン(HBD)を含み、HBDのアミノ酸配列が、配列番号2と少なくとも90%同一であり、H74、C94、M104、M105、C127およびC130のうちの1つまたは複数にアミノ酸置換を含む、組換えRcoMタンパク質。
【0172】
実施形態2.
H74における置換が、H74S、H74T、H74M、H74W、H74A、H74L、H74I、H74VおよびH74Gから選択され、
C94における置換が、C94S、C94T、C94H、C94W、C94M、C94A、C94L、C94I、C94VおよびC94Gから選択され、
M104における置換が、M104S、M104T、M104H、M104W、M104A、M104L、M104I、M104VおよびM104Gから選択され、
M105における置換が、M105S、M105T、M105H、M105W、M105A、M105L、M105I、M105VおよびM105Gから選択され、
C127における置換が、C127S、C127T、C127M、C127A、C127L、C127I、C127VおよびC127Gから選択され、ならびに/または
C130における置換が、C130S、C130T、C130M、C130A、C130L、C130I、C130VおよびC130Gから選択される、実施形態1に記載の組換えRcoMタンパク質。
【0173】
実施形態3.HBDのアミノ酸配列が、配列番号2と少なくとも95%同一であり、C94、M104、C127およびC130のうちの1つまたは複数にアミノ酸置換を含む、実施形態1または実施形態2に記載の組換えRcoMタンパク質。
【0174】
実施形態4.HBDが、
C94S置換、
C127S置換およびC130S置換、
C94S置換、C127S置換およびC130S置換、
M104A置換、C127S置換およびC130S置換、
M104H置換、C127S置換およびC130S置換、
M104L置換、C127S置換およびC130S置換、
C94S置換、M104A置換、C127S置換およびC130S置換、
C94S置換、M104H置換、C127S置換およびC130S置換、または
C94S置換、M104L置換、C127S置換およびC130S置換
を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組換えRcoMタンパク質。
【0175】
実施形態5.
RcoMタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13もしくは配列番号14を含むかもしくはそれからなり、または
RcoMタンパク質のアミノ酸配列が、H74、C94、M104、C127、C130およびM105のうちの1つもしくは複数におけるアミノ酸置換を除いて、配列番号1もしくは配列番号2を含むかもしくはそれからなる、
実施形態1~4のいずれか1つに記載の組換えRcoMタンパク質。
【0176】
実施形態6.RcoMタンパク質が、N末端タグまたはC末端タグを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の組換えRcoMタンパク質。
【0177】
実施形態7.タグが親和性タグである、実施形態6に記載の組換えRcoMタンパク質。
【0178】
実施形態8.親和性タグが、His6、FLAG、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、c-Myc、マルトース結合タンパク質(MBP)、プロテインAまたはプロテインGである、実施形態7に記載の組換えRcoMタンパク質。
【0179】
実施形態9.タグが切断可能である、実施形態6~8のいずれか1つに記載の組換えRcoMタンパク質。
【0180】
実施形態10.血液または動物組織中のヘモグロビン、ミオグロビンまたはミトコンドリアから一酸化炭素を除去するin vitro方法であって、血液または動物組織を、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組換えRcoMタンパク質の有効量と接触させ、それによって、血液または動物組織中のヘモグロビンから一酸化炭素を除去することを含む、方法。
【0181】
実施形態11.対象における一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法であって、対象に、実施形態1~9のいずれか1つに記載のRcoMタンパク質の治療有効量を投与することを含む、方法。
【0182】
実施形態12.組換えRcoMタンパク質を投与する前に、一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する対象を選択することをさらに含む、実施形態11に記載の方法。
【0183】
実施形態13.対象が、それらの血液中に少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%の一酸化炭素ヘモグロビンを有する、実施形態11または実施形態12に記載の方法。
【0184】
実施形態14.組換えRcoMタンパク質が、静脈内注入、腹腔内注射または筋肉内注射によって投与される、実施形態11~13のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
実施形態15.組換えRcoMタンパク質が、1日当たり約0.1g~約300gの用量で投与される、実施形態11~14のいずれか1つに記載の方法。
【0186】
実施形態16.組換えRcoMタンパク質が、還元剤を含む医薬組成物として投与される、実施形態11~15のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
実施形態17.還元剤が、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン(NAC)、メチレンブルー、グルタチオン、シトクロムb5/b5-還元酵素、ヒドララジン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオトレイトール(DTT)、またはこれらの任意の組合せを含む、実施形態16に記載の方法。
【0188】
実施形態18.対象におけるシアン化物中毒を処置する方法であって、対象に、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組換えRcoMタンパク質の治療有効量を投与することを含み、RcoMタンパク質が、その酸化形態で存在し、それによって、対象におけるシアン化物中毒を処置する、方法。
【0189】
実施形態19.組換えRcoMタンパク質を投与する前に、シアン化物中毒を有する対象を選択することをさらに含む、実施形態18に記載の方法。
【0190】
実施形態20.組換えRcoMタンパク質が、酸化剤を含む医薬組成物として投与される、実施形態18または実施形態19に記載の方法。
【0191】
実施形態21.酸化剤が、酸素含有ガス混合物、酸素含有液体混合物、フェリシアン化物塩、またはこれらの任意の組合せを含む、実施形態20に記載の方法。
【0192】
実施形態22.対象における硫化水素(HS)中毒を処置する方法であって、対象に、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組換えRcoMタンパク質の治療有効量を投与することを含み、RcoMタンパク質が、その還元形態で存在し、それによって、対象におけるHS中毒を処置する、方法。
【0193】
実施形態23.組換えRcoMタンパク質を投与する前に、HS中毒を有する対象を選択することをさらに含む、実施形態22に記載の方法。
【0194】
実施形態24.組換えRcoMタンパク質が、還元剤を含む医薬組成物として投与される、実施形態22または実施形態23に記載の方法。
【0195】
実施形態25.還元剤が、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン(NAC)、メチレンブルー、グルタチオン、シトクロムb5/b5-還元酵素、ヒドララジン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、トレハロース、ジチオトレイトール(DTT)、またはこれらの任意の組合せを含む、実施形態24に記載の方法。
【0196】
実施形態26.対象における血液を置き換える方法であって、対象に、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組換えRcoMタンパク質の治療有効量を投与し、それによって、対象における血液を置き換えることを含む、方法。
【0197】
実施形態27.対象が、赤血球および/もしくはヘモグロビンの欠乏に関連するか、または組織への酸素送達の低減に関連する疾患、障害または傷害を有するかまたはそれを発症するリスクを有する、実施形態26に記載の方法。
【0198】
実施形態28.疾患、障害または傷害が、出血性障害、出血エピソード、貧血、ショック、虚血、低酸素症、無酸素症、低酸素血症、火傷、潰瘍、異所性妊娠、小赤血球症、横紋筋融解症、ヘモグロビン症、球状赤血球症、溶血性尿毒症症候群、サラセミア、播種性血管内凝固、脳卒中または黄熱病を含む、実施形態27に記載の方法。
【0199】
実施形態29.
出血エピソードが、抗凝固剤過量、動脈瘤、血管破裂、手術、外傷、胃腸出血、妊娠、出血もしくは感染症から生じるか、
出血性障害が、血友病A、血友病B、血友病C、第VII因子欠乏症、第XIII因子欠乏症、血小板障害、凝固異常、ソラマメ中毒、血小板減少症、ビタミンK欠乏症もしくはフォン-ウィルブランド病を含むか、
貧血が、小球性貧血、鉄欠乏性貧血、ヘム合成異常、グロビン合成異常、鉄芽球性異常、正常球性貧血、慢性疾患性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血、大球性貧血、巨赤芽球性貧血、悪性貧血、二形性貧血、未熟児貧血、ファンコニ貧血、遺伝性球状赤血球症、鎌形赤血球貧血、温熱自己免疫性溶血性貧血もしくは寒冷凝集素性溶血性貧血を含むか、または
ショックが、敗血症性ショック、出血性ショックもしくは血液量減少性ショックを含む、実施形態28に記載の方法。
【0200】
実施形態30.対象が、心筋梗塞、脳卒中、虚血再灌流傷害、肺高血圧症または血管攣縮に罹患しているかまたはそれに罹患するリスクを有する、実施形態26に記載の方法。
【0201】
実施形態31.組換えRcoMタンパク質が対象に静脈内投与される、実施形態26~30のいずれか1つに記載の方法。
【0202】
実施形態32.組換えRcoMタンパク質が、ペグ化されているか、重合化されているか、または架橋されている、請求項26~31のいずれか1つに記載の実施形態。
【0203】
実施形態33.対象に、第2の血液交換製剤、血液製剤または全血を投与することをさらに含む、実施形態26~32のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
実施形態34.第2の血液交換製剤が、ヘモグロビン系酸素運搬体、人工赤血球または酸素放出化合物を含む、実施形態33に記載の方法。
【0205】
実施形態35.血液製剤が、濃厚赤血球、血漿または血清を含む、実施形態33に記載の方法。
【0206】
実施形態36.対象が、ヒトである、実施形態11~35のいずれか1つに記載の方法。
【0207】
実施形態37.対象が、非ヒト動物である、実施形態11~35のいずれか1つに記載の方法。
【0208】
実施形態38.実施形態1~9のいずれか1つに記載の組換えRcoMタンパク質および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【0209】
実施形態39.還元剤または酸化剤をさらに含む、実施形態38に記載の医薬組成物。
【0210】
実施形態40.還元剤が、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン(NAC)、メチレンブルー、グルタチオン、シトクロムb5/b5-還元酵素、ヒドララジン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオトレイトール(DTT)、またはこれらの任意の組合せを含む、実施形態39に記載の医薬組成物。
【0211】
実施形態41.酸化剤が、酸素含有ガス混合物、酸素含有液体混合物、フェリシアン化物塩、キノン、またはこれらの任意の組合せを含む、実施形態39に記載の医薬組成物。
【0212】
実施形態42.組換えRcoMタンパク質が、ペグ化されているか、重合化されているか、または架橋されている、実施形態38~41のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【実施例
【0213】
(実施例1)
好気的環境におけるHbCO由来のCOのRcoM-1への転移
ヘモグロビン-CO(Hb-CO)転移速度を、37℃の好気的条件下、WTの全長RcoM-1(配列番号1)の存在下で評価し、RcoM-1およびヘモグロビンの異なるリガンド結合種に関する消衰係数に基づくストップフローUV-Vis分光法および標準デコンボリューション法を使用して測定した。Hb-COおよびFe(II)RcoM-1の濃度は20μMであり、実験は三連で実施した。ヘモグロビン-COの喪失に関するデータを二重指数曲線に適合させたところ、1.4秒という低速の相半減期(t1/2)を呈した。Fe(II)-CO RcoMの増加に関するデータを一重指数曲線に適合させたところ、0.93秒という半減期を呈した。結果を図4に示す。このデータは、RcoMがCOに対して高い親和性を有し、Hb由来のCOのRcoMへの迅速かつ効率的転移を可能にすることを実証する。
(実施例2)
嫌気的環境におけるHb-CO由来のCOのRcoM-1への転移
【0214】
37℃の嫌気的条件下、WTの全長RcoM-1(配列番号1)の存在下でのヘモグロビン-CO転移速度をUV-Vis分光法を使用して測定した。Hb-COおよびFe(II)RcoM-1の濃度は、それぞれ、15μMおよび15.8μMであった。Fe(II)からFe(II)-CO RcoMへのTHE遷移を追跡する、530、562、および583nmでの吸光度変化を、一重指数曲線に適合させたところ、50秒という半減期を呈した。結果を図5に示す。これらの結果は、RcoM-1が、Hb-CO種由来のCOを捕捉することが可能であり、したがって、in vivoでCOスカベンジャーとして使用することができることを実証する。
(実施例3)
C94C置換を有する切断されたRcoM(HBD C94S)の特徴付け
【0215】
この実施例は、PASドメインを欠き、C94S置換を有する改変されたRcoMタンパク質(配列番号7)を特徴付けるための研究について説明する。これらの研究の結果は、ヘム結合残基を変更することにより、RcoMのガス結合特性を変更することができることを実証する。
安定性
【0216】
HBD C94S突然変異体は、WT RcoM-1よりもはるかに安定している。RcoMのこの突然変異体形態は、WT RcoMよりも高濃度で保存することができる(WT RcoMに関する約130mMと比較して、約480mMのヘム)。HBD C94Sは、安定化還元剤の非存在下で、亜ジチオン酸塩(例えば、DTT、TCEP)を使用して還元することもできる。さらに、RcoMの酸化形態および還元形態は、4℃で1週間を超えて保存した場合に、凝集に対して安定である。研究は、Fe(III)RcoM-1 HBD C94Sに関するTが90℃であることを実証した(セプタムで密封したキュベット内で嫌気的条件下、7μMのRcoM濃度で記録した)。同じ条件下で、WT RcoM-1は、約40℃で不可逆的にアンフォールドした。
UV-Visスペクトルの比較
【0217】
全長野生型RcoM-1およびHBD C94S RcoMに関するスペクトルを評価した。第二鉄(Fe(III))、デオキシ第一鉄(Fe(II))および第一鉄-CO種(Fe(II)-CO)に関するスペクトルを決定した。各種のピーク最大値に関する波長(nmで)を、各ピークに関する推定モル吸光率(mM-1cm-1)と一緒に計算した。結果を図7に示す。予想通り、Fe(II)とFe(II)-COのスペクトルは、WTとHBD C94SのRcoMタンパク質間で非常に類似していた。しかし、Fe(III)のスペクトルは非常に異なって見え、Fe(III)ヘム配位環境が、C94S置換の結果として変化したことを実証した。
【0218】
さらなる研究によって、HBD C94Sにおける安定したO付加物に関するエビデンスが提供された。HBD C94Sを過剰な亜ジチオン酸塩で還元し、第一鉄Fe(II)種を生成した。次いで、還元したHBD C94Sを脱塩し、UV-Vis試料を微好気的条件下で調製した。微好気的条件下でのUV-Visスペクトルを記録した後に、キュベットのキャップを外して空気を導入し、スペクトルを再記録して、酸素結合種を明らかにした(RcoM濃度=8μM)。図8は、還元剤の存在下での第一鉄(Fe(II))種、脱塩後のFe(II)種、空気曝露後のFe(II)種および再酸化されたFe(III)種に関する可視スペクトルを示す。
HBD C94S RcoM-COの会合速度および解離速度
【0219】
HBD C94S RcoMの第一鉄ヘム結合ドメイン(HBD)の一酸化炭素(CO)との反応の速度論を、ストップフロー技法によって決定した(図9)。この研究は、10μMのRcoM濃度、55~287μMのCO濃度、および37℃の温度で行った。異なるCO濃度での速度の計算によって1.2×10-1-1の反応に関する会合速度(kon)が得られた。野生型の全長タンパク質に関して、同様の値が得られた。よって、COのオンレートは、C94S置換によって影響を受けなかった。
【0220】
HBD C94Sに関するCO解離速度を、10μMのRcoM濃度、2mMの一酸化窒素(NO)濃度(1mMのProliNONOateを使用して生成した)および37℃の温度を使用して決定した。NOの存在下で第一鉄-CO複合体が解離する場合に、吸光度変化によって反応をモニターした。COが解離すると、NOがヘムに結合し、吸光度スペクトルに変化を引き起こす。過剰なNOは、COがヘムに再結合するのを防止する。吸光度変化の時間経過によって、4.9×10-2-1の解離速度の決定が可能となった(図10)。
HBD C94Sの熱アンフォールディング
【0221】
420nmのヘムソーレー極大における吸光度変化によって、アンフォールディングをモニターした(図11)。試料を各温度で5分間平衡化させた後、各UV-Visスペクトルを記録した。20℃~75℃の間で観察されたソーレー強度の小さな損失は、ヘム配位数の変化に起因する可能性が高い。75℃~98℃の間のソーレー強度の損失は、熱アンフォールディングに起因するタンパク質からのヘムの喪失を原因とした。C94S突然変異を有するFe(III)HBD RcoM-1に関するUV-Visスペクトルを20℃~98℃の間の各温度で記録した。HBD C94SのTが91℃であることを決定した。
(実施例4)
RcoMヘム結合ドメイン(HBD)バリアント
【0222】
この実施例は、いくつかの切断されたRcoM HBDバリアントの生成および特徴付けについて説明する。
【0223】
8つのRcoMバリアントを生成した。表4に列挙したバリアントをクローニングすることに成功し、E.coliで発現させ、均一になるまで精製した。バリアントは、Paraburkholderia xenovorans由来のRcoM-1のヘム結合ドメイン(HBD)を包含し、溶解度、安定性、およびCO捕捉特性を増強するために様々な突然変異(残基C94、M104、C127、およびC130のうちの1つまたは複数に)を保有する。発現したバリアントは、C末端の6-Hisタグも含んだ。6-Hisタグを含むバリアントは17kDaであった。
表4. RcoM HDB16バリアント
【表4-1】
【表4-2】
【0224】
RcoM HBD WTおよびバリアントに関する電子吸収(UV-Vis)スペクトルを図12A~12D、13A~13Bおよび14A~14Cに示す。M104バリアントにおける配位圏変化を強調するRcoMに関するタンパク質由来のリガンドスイッチング機構に関する模式図を図13Cに示す。CCC M104バリアントに関する配位圏変化を強調するRcoMに関するタンパク質由来のリガンドスイッチング機構に関する模式図を図14Dに示す。
【0225】
RcoM HBD切断物における酸素結合親和性の定量(P50)を図15A~15Dに示す。酸素に結合したヘムタンパク質のフラクションを、光学キュベットを備えたトノメーター装置を使用するUV-Vis分光法を使用して、酸素分圧の関数として測定した。酸素分圧(PO2)の関数としてのCC HBD RcoMバリアントに関するUV-Visの特徴における代表的なスペクトル変化を図15Aに示す。CC HBD、C94S HBDおよびCCC HBDに関する酸素結合曲線を図15B~15Dに示す。RcoM WT HBDおよびHBDバリアントであるCC HBD、C94S HBDおよびCCC HBDへのCOの結合に関する二次速度定数(kon,CO)を決定した(図16A~16D)。COの各濃度におけるCO結合速度を、ストップフローUV-Vis分光法を使用して測定し、一重指数に適合させた。各曲線に線形回帰を適用し、二次速度定数を傾きとして推定した。結果は以下の通りであった:
【表7】
【0226】
WT HBD RcoMに関する自己酸化速度(koxid)が0.87時間-1であることを決定した。図17Aは、Fe(III)およびFe(II)-Oタンパク質に関する参照スペクトルを示す。Fe(II)-O WT HBDに関するUV-Visの特徴のスペクトル変化を図17Bに示す。542nmおよび573nmにおけるスペクトル変化を一重指数に適合させ、koxidを決定した(図17C)。図18は、WT RcoMならびにRcoM HBDバリアントであるC94S、CC HBDおよびCCC HBDに関するリガンド結合パラメーターおよびヘム安定性の特性の概要を提供する表を示す。
【0227】
尿素の存在下で(0M、4Mおよび8Mの尿素)、Fe(III)CCC HBD RcoMのアンフォールディングを評価した。415nmのヘムソーレー極大における吸光度変化によって、アンフォールディングをモニターした。試料を10分間平衡化させた後、各UV-Visスペクトルを記録した(図19A)。アンフォールディングデータをS字曲線に適合させて、タンパク質試料の半分がアンフォールドであった変性剤の濃度([D]50)を決定した(図19B)。CCC HBDに関する[D]50は、4.6Mであった。
【0228】
RcoM HBDバリアントと過酸化水素の間の反応性も評価した。Fe(III)WT HBDならびにバリアントであるCCC HBD、CCC M104A HBDおよびCCC M104H HBDを、pH7.4、25℃で、500μMの過酸化水素と共にインキュベートし、30分の経過にわたり、2分ごとにUV-Vis分光法によってモニターした(図20A~20D)。最小のスペクトル変化を各バリアントについて観察したところ、過酸化水素がRcoM HBD切断物のFe(III)ヘム中心と反応して、高酸化種を生成しないことが示唆された。
【0229】
全長およびHBD切断物のRcoMバリアントに関する亜硝酸塩による還元を評定した。第一鉄タンパク質(10~15μM)を、2.5mMの亜ジチオン酸ナトリウムの存在下で、37℃にて1~5mMの亜硝酸ナトリウムとインキュベートした。UV-Vis分光法を使用して、Fe(II)ヘムのFe(II)-NOへの変換をモニターした(図21A)。562nmおよび578nmでのスペクトルの特徴の変化を一重指数曲線に適合させ、亜硝酸塩還元の速度の実測値を決定した。速度の実測値を亜硝酸塩濃度の関数としてプロットし、線形回帰を各プロットに適用し、二次速度定数を傾きとして推定した(図21B~21C)。
【0230】
RcoMのCO捕捉能力を評定するために、追加の研究を実施した。37℃の好気的条件下で、WT RcoM HBDならびにRcoM HBDバリアントであるCC HBD、C94S HBDおよびCCC HBDへのヘモグロビン(Hb)からのin vitroCO転移に関する速度論的トレースを開発した。COが結合したHb(20μM)を等モルのオキシ第一鉄 RcoMと共にインキュベートし、HbからRcoMへのCO転移をUV-Vis分光法を使用してモニターした。各COが結合したヘムタンパク質のフラクションをスペクトルデコンボリューションを使用して決定し、対応する速度論的トレースを一重または二重指数方程式に適合させた。各COに結合した種の半減期を図22A~22Dに表示し、高速種の半減期および振幅を二重指数に適合した曲線について表示した。図23A~23Bは、37℃における好気条件下での、赤血球(RBC)に封入されたHbCOから細胞外RcoM HBD切断物へのCO転移をモニターする速度論的トレースを示す。ヘムタンパク質を等モル濃度(50~100μM)でインキュベートし、各時点での遠心分離によって、RBCを細胞外RcoMから分離した。UV-Vis分光法を使用して、HbからWT HBD RcoM(図23A)およびC94S HBD RcoM(図23B)へのCO転移をモニターした。各COが結合したヘムタンパク質のフラクションをスペクトルデコンボリューションを使用して決定し、対応する速度論的トレースを一重指数方程式に適合させた。WT HBDおよびC94S HBDの存在下でのCOHbの半減期は、それぞれ、24±6秒および23±5秒であった。
【0231】
これらの結果は、RcoM HBDバリアントが、急性CO中毒中にin vivoで起こる可能性の高いものに類似する好気的条件下で、RBCが封入したHbからCOを迅速に捕捉することを実証する。RcoM HBDバリアントは、HbCOからのCO転移が好気的条件下で進行するように、酸素よりもCOに対して選択的である。
(実施例5)
マウスにおけるRcoM HBDバリアントの毒性スクリーニング
【0232】
組換えによって発現したRcoM切断物を、1mMまたは10mMの濃度および体重1g当たり10μLの注射体積で、尾静脈カテーテルを介して、健康なマウスに導入した。48時間の期間にわたり、挙動(ネスティングを含む)をモニターし、その後、屠殺し、毒性評定のための血液を収集した。結果を表5に示す。RcoM切断物で処理したすべてのマウスに関する肝機能(ASTおよびALT)および腎機能(BUNおよびクレアチニン)を指し示す血液化学の結果は、リン酸緩衝食塩水(PBS)を与えた対照マウスの結果と同等であった。これらの結果は、RcoM切断物の静脈内注入によって、マウスの臓器特異的毒性が惹起されなかったことを指し示す。
表5. 毒性スクリーニングの結果
【表5】
【0233】
(実施例6)
in vivoでのRcoM CO捕捉
HbCOからCOを捕捉するC94SおよびCCC HBD RcoMバリアントの能力を、致死的なCO中毒のマウスモデルにおいて評価した。麻酔し、機械的に換気したマウスを、空気中で3,000ppmのCOに4.5分間曝露させ、続いて、体重1g当たり10μLの注射体積でFe(II)-O CCC HBD RcoMを静脈内注入した(図24に示されたヘムタンパク質濃度)。血液試料(15μL)は、注入の直前および直後、ならびにCO曝露の25分後に採取した。各時点で、遠心分離によってRBCを血漿から分離し、分離したRBCペレットと血漿試料を-80℃で直ちに凍結させた。次に、RBCからCOが結合したヘモグロビンのフラクション(%HbCO)およびCOが結合したRcoMのフラクション(%RcoM-CO)をスペクトルデコンボリューションを使用して決定した。RcoMの注入により、PBSによる注入と比較して、COが結合したHbのフラクション(Δ%HbCO)のより大きな低下がもたらされ(図24)、これは、RcoMがin vivoでCOを捕捉することが可能であることを指し示した。
【0234】
本開示の主題の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を鑑みて、例示された実施形態は本開示の例に過ぎず、本開示の範囲の限定として解釈されるべきではないことが認識されるべきである。むしろ、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、これらの請求項の範囲および趣旨の範囲内にあるすべてを請求する。
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【配列表】
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【国際調査報告】