(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】ディスクブレーキ用作動装置
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20230608BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20230608BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20230608BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20230608BHJP
【FI】
B60T13/74 G
F16D65/18
F16D121:24
F16D125:40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568924
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 IB2021053826
(87)【国際公開番号】W WO2021229375
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】102020000010954
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521259127
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】カザディオ,アンドレ
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
【Fターム(参考)】
3D048BB43
3D048BB60
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH58
3D048QQ07
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA63
3J058AA69
3J058AA73
3J058AA78
3J058AA83
3J058AA87
3J058BA41
3J058BA67
3J058CC15
3J058CC63
3J058CC77
3J058FA06
(57)【要約】
ディスクブレーキ(2)のための作動装置(1)は、ピストン(7)と、作動軸(8)の周りの回転において軸方向に拘束され作動可能な第1ランプ部(101)を有する第1ランプボール運動変換器(100)と、ピストン(7)に結合された第2ランプ部(102)と、第1ランプ部(101)および第2ランプ部(102)によって形成された傾斜路(103)間に接触して介在する複数の転動体(29)と、第2ランプ部(102)とピストン(7)の間に接続された第2ねじナット運動変換器(4)と、トルクリミッタ(10)とを備え、第1ランプ部(101)と第2ランプ部(102)とのねじり接続を実施し、ねじり接続における所定の限界トルクに達するまで、作動軸(8)を中心として一緒に回転し、所定の限界トルクを超えると、作動軸(8)を中心とした第2ランプ部(102)に対する第1ランプ部(101)の回転を切り離す。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキディスク(2)のための作動装置(1)であって、前記作動装置(1)は、
作動軸(8)に沿って摺動可能に支持されたピストン(7)と、
第1ランプボール運動変換器(100)であって、
軸方向に拘束され、作動軸(8)の周りを回転して作動可能な第1ランプ部(101)と、
前記ピストン(7)に結合され、前記第1ランプ部(101)に対向する第2ランプ部(102)と、
前記第1ランプ部(101)および前記第2ランプ部(102)によって形成された傾斜路(103)間に接触して介在する複数の回転要素(29)を有し、
前記第2ランプ部(102)に対する前記第1ランプ部(101)の回転が、前記第1ランプ部(101)に対して、前記ピストン(7)と共に、前記作動軸(8)に沿った前記第2ランプ部(102)の制動並進をもたらす、第1ランプボール運動変換器(100)と、
前記作動軸(8)を中心とした前記ピストン(7)に対する前記第2ランプ部(102)の回転が、前記作動軸(8)に沿って、前記第2ランプ部(102)に対する前記ピストン(7)の補償移動をもたらすように、前記第2ランプ部(102)と前記ピストン(7)の間に連結された第2ねじおよびナット運動変換器(4)と、
トルクリミッタ(10)であって、前記トルクリミッタ(10)は、
前記第1ランプ部(101)と前記第2ランプ部(102)とのねじり接続を行い、前記第1ランプ部(101)と前記第2ランプ部(102)が前記ねじり接続における所定の限界トルクに達するまで、前記作動軸(8)を中心として一緒に回転し、
前記所定の限界トルクを超えると、前記作動軸(8)を中心とした前記第2ランプ部(102)に対する前記第1ランプ部(101)の回転を切り離すトルクリミッタ(10)、とを備えた作動装置(1)。
【請求項2】
前記第2ランプ部(102)は、前記第2ねじおよびナット運動変換器(4)のねじ本体(5)に直接形成されている、請求項1に記載の作動装置(1)。
【請求項3】
前記ピストン(7)が、
前記第2ねじおよびナット運動変換器(4)のナット(6)を形成するように、前記ねじ本体(5)にねじ込まれた、ねじ切りされたピストン内面(12)を有する円筒壁(14)と、
前記作動軸(8)を中心とする前記ピストン(7)の回転を防止する回転防止手段とを形成する、請求項2に記載の作動装置(1)。
【請求項4】
前記ねじ本体(5)が、
前記作動軸(8)に対して同心で、前記ピストン(7)の前記内ねじと螺合する外ねじを有する円筒形の側壁(18)と、
前記ピストン(7)の前進方向に面するねじ前壁(20)及び前記ねじ前壁(20)とは反対側のねじ後壁(21)であって、前記ねじ後壁(21)が前記傾斜路(103)の一つ又は複数の第2転動軌道(22)を形成する、ねじ前壁(20)及びねじ後壁(20)と、
前記外ねじに対して半径方向および軸方向内側に延び、前記トルクリミッタ(10)を収容する連結座(19)とを形成する、請求項3に記載の作動装置(1)。
【請求項5】
前記第1ランプ部(101)が、ロータ本体(23)によって形成され、
前記ロータ本体(23)が、
前記ピストン(7)の前進方向に面し、前記傾斜路(103)の1つ又は複数の第1転動軌道(28)を形成するロータ前壁(26)と、
前記ロータ前壁(26)から突出し、前記作動軸(8)と同軸で、前記トルクリミッタ(10)に接続された駆動軸(24)であって、前記第2ランプ部(102)が、前記駆動軸(24)の中心に回転可能に支持される、駆動軸(24)と、を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の作動装置(1)。
【請求項6】
前記ねじ後壁(21)が、前記連結座(19)に開口する貫通孔(43)を形成し、
前記貫通孔(43)を通して前記駆動軸(24)が前記連結座(19)内に延び、
前記貫通孔(43)が、前記ロータ本体(23)に対して、前記ねじ本体(5)を中心にして回転可能に支持する、請求項4及び5による作動装置(1)。
【請求項7】
軸受アセンブリ(105)が、前記ロータ本体(23)を前記作動軸(8)に対して軸方向に当接して同心に支持し、
前記軸受アセンブリ(105)は、前記ロータ本体(23)の内部に配置されている、請求項5記載の作動装置(1)。
【請求項8】
前記回転要素(29)は、前記第1ランプ部(101)と前記第2ランプ部(102)との間に介在し、前記駆動軸(24)上に支持された格納ケージ(30)によってさらに格納されている、請求項5記載の作動装置(1)。
【請求項9】
前記第1ランプ部(101)、前記第2ランプ部(102)および前記回転要素(29)は、前記作動軸(8)の方向において相互に接触するように弾性的に押し付けられる、請求項1乃至8のいずれかに記載の作動装置(1)。
【請求項10】
前記第1ランプボール運動変換器(100)と前記トルクリミッタ(10)の組立体を軸方向に押すように構成された、軸方向予圧ばね(42)を備える、請求項9に記載の作動装置(1)。
【請求項11】
前記軸方向予圧ばね(42)は、前記駆動軸(24)に支持され、前記駆動軸(24)の自由端部と前記ねじ本体(5)の前記前壁(20)との間にクランプされている、請求項4及び5に記載の作動装置(1)。
【請求項12】
前記駆動軸(24)が、タイロッド(46)を収容する軸方向貫通孔を形成し、
前記タイロッド(46)が、
前記ねじ本体(5)の前壁(20)に対して軸方向に着座している拡大前端部分と、
前記ロータ本体(23)の内部空洞に突出する後端部分とを有し、
前記タイロッド(46)の前記後端部分と前記ロータ本体(23)の前記内側空洞の底面との間に、転がり軸受け(47)を介在させて、軸方向予圧ばね(42')が挟持される、請求項4及び5に記載の作動装置(1)。
【請求項13】
前記第1ランプボール運動変換器(100)、前記第2ねじおよびナット運動変換器(4)、および前記トルクリミッタ(10)が、少なくとも部分的または完全に内側ピストンキャビティ(7)内に収容されている、請求項1乃至12のいずれかに記載の作動装置(1)。
【請求項14】
前記トルクリミッタ(10)が、少なくとも部分的または完全に、前記第2ねじおよびナット運動変換器(4)の前記ねじ本体(5)の内側空洞に収容されている、請求項1乃至13のいずれかに記載の作動装置(1)。
【請求項15】
前記トルクリミッタ(10)が、
前記第2ランプ部(102)の連結座(19)に回転が固定された状態で結合され、
前記第1ランプ部(101)に形成された駆動シャフト(24)と係合するように弾性的にバイアスされた1つ又は複数のジョー(31)を備える、請求項1乃至14のいずれかに記載の作動装置(1)。
【請求項16】
前記トルクリミッタ(10)が、前記ねじ本体(5)と回転が固定された状態で結合され且つ前記ロータ本体(23)の前記駆動軸(24)と係合するように弾性的にバイアスされた1つ又は複数のジョー(31)を有する、請求項4及び5に記載の作動装置(1)。
【請求項17】
前記連結座(19)は、前記作動軸(8)に関して互いに径方向に対向する2つの当接面(44)および2つの側部案内面(44')を形成し、
前記ジョー(31)は、前記側部案内面(44')の間に収容され、前記作動軸(8)に対して半径方向に案内され、
プリロードされた弾性要素(32)が、前記当接面(44)と前記ジョー(31)の間に配置されている、請求項15または16に記載の作動装置(1)。
【請求項18】
前記トルクリミッタ(10)が、前記駆動軸(24)に関して相互に反対側に配置された2つのジョー(31)を備える、請求項15乃至17のいずれかに記載の作動装置(1)。
【請求項19】
ディスクブレーキ(2)であって、
ブレーキディスク部分を収容するディスク空間を画定する2つの間隔をあけた側壁を有するキャリパと、
前記キャリパを車両に固定する手段と、
前記ディスク空間を跨いで延び、前記側壁を互いに接続する接続構造体と、
前記側壁の各々に形成され、少なくとも1つの摩擦パッドを収容するように構成された少なくとも1つのパッドシートと、
前記側壁の一方または両方に拘束され、前記摩擦パッドを前記ブレーキディスクに押し付けてクランプするように構成されたスラスト手段とを備え、
前記スラスト手段が、請求項1乃至18のいずれかに記載の作動装置(1)を有する、ディスクブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキ用の作動装置、特に電気機械式ディスクブレーキ用の作動装置、およびこのような作動装置を備えたディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじに関連したギヤモータを含み、このギヤモータによって発生したトルクをディスクブレーキパッドに向けられた線形制動力に変換するディスクブレーキ用アクチュエータ装置が、知られている。
【0003】
ボールねじは、これらの作動装置において2つの機能を果たす。第1機能は、パッドがディスクブレーキに制動トルクを加えるように、制動力をディスクブレーキパッドに伝達することである。第2機能は、パッドの摩耗を回復、補償することである。
【0004】
ボールねじアクチュエータは、ブレーキ荷重をディスクブレーキパッドに伝達し、摩耗を補償するのに適しているが、いくつかの欠点がある。
【0005】
実際、これらの作動装置は、高い軸方向寸法、すなわち、制動力の適用方向において、高いコスト、騒音及び重量を有する。
【0006】
ボールねじアクチュエータの別の欠点は、非線形の前進法則を定義することが不可能であることによって決定される。実際、ボールねじは、一定のねじピッチを有し、したがって、ねじの回転角度に正比例する直線的な前進則を有する。
【0007】
一方、ピストンパッドディスクの接触が達成されるまでピストンを接近させるステップと、パッドをブレーキディスクに対してクランプするためにピストンを締め付けるステップという明確なステップにより適合する非線形前進を有する作動装置を有することが望ましい。
【0008】
さらに既知の作動装置は、いわゆる「ボールインランプ」機構である。ボールインランプ機構は、回転運動を並進運動に変換するための機構でもあり、相互に回転可能な2つの対面構成要素と、2つの対面構成要素の間に接触して介在し、2つの構成要素に形成された転動軌道(またはランプ)内に受け入れられる複数のボールから構成される。転がりトラックは、2つの向かい合った構成要素間の相対的な回転が楔効果をもたらし、それらの軸方向の並進が互いに離れるように、螺旋状に展開する。
【0009】
ボールインランプ機構は、ボールねじよりもはるかに小さい軸方向寸法を有し、(ボール傾斜路のコンフォメーションに従って)2つの向かい合った構成要素の相対回転角に応じて非常に高い線形または非線形のいずれかの制動力を発生させることが可能である。
【0010】
しかしながら、既知のボールインランプ機構は、軸方向移動が非常に制限されており、ディスクブレーキパッドの摩耗を回復することが困難であるという欠点がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、先行技術の欠点の少なくともいくつかを回避するような特徴を有するディスクブレーキ用作動装置を提供することである。
【0012】
本発明の特定の目的は、制動効率が同じであるかまたは改善されている、小さな軸方向寸法および低コストおよび重量を有するディスクブレーキ用の作動装置を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる特定の目的は、非線形前進法則で構成可能なディスクブレーキ用作動装置を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、現在ねじ運動変換器の使用と両立しない小さな軸方向寸法と、現在ランプボール方式の使用と両立しないパッド摩耗を回復するためのピストンの余分なトラベルという一見矛盾する要求を調和させることにある。
【0015】
これら及び他の目的は、請求項1に記載のディスクブレーキ用作動装置によって達成される。
【0016】
従属請求項は、本発明の好ましい有利な実施形態に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明をよりよく理解し、その利点を理解するために、そのいくつかの非限定的な例示的実施形態が、添付の図面を参照して以下に説明され、その中で、以下のように説明される。
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるディスクブレーキの透視図である。
【0019】
【
図2】
図2は、本発明の実施形態によるディスクブレーキの細部の半径方向平面に沿って取られた断面図である。
【0020】
【
図3】
図3は、本発明の実施形態によるディスクブレーキのための作動装置の分解図である。
【0021】
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施形態によるディスクブレーキ用作動装置の部分的に組み立てられた透視図である。
【0022】
【
図4B】
図4Bは、
図4Aのディスクブレーキ用作動装置の組み立てられた状態の透視図である。
【0023】
【0024】
【
図5A】
図5Aは、本発明の実施形態による、作動装置の特定の図である。
【0025】
【
図5B】
図5Bは、
図3のものに対する代替実施形態による作動装置の詳細の分解図である。
【0026】
【
図6A】
図6Aは、第1動作構成における、作動軸に直交する断面図である。
【0027】
【
図6B】
図6Bは、第2動作構成における、作動軸に直交する断面図である。
【0028】
【
図7】
図7は、本発明のさらなる実施形態によるディスクブレーキの細部の径方向平面に沿ってとられた断面図である。
【0029】
【
図8】
図8は、本発明のさらなる実施形態によるディスクブレーキのための作動装置の分解斜視図である。
【0030】
【
図8A】
図8Aは、
図8に示されたディスクブレーキのための作動装置のさらなる分解図である。
【0031】
【
図9】
図9は、本発明のさらなる実施形態による、部分的に組み立てられたディスクブレーキ用作動装置の透視図である。
【0032】
【0033】
【
図10A】
図10Aは、本発明の実施形態によるディスクブレーキ用の作動装置の半径方向断面図である。
【0034】
【
図11A】
図11Aは、本発明の実施形態によるディスクブレーキ用の作動装置の部分的に組み立てられた透視図である。
【0035】
【0036】
【
図12】
図12は、さらなる実施形態によるディスクブレーキ用作動装置の径方向断面図である。
【0037】
【0038】
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の説明において、用語「前」の向きは、特に指定しない限り、ピストンの前進(制動)方向における側面、面、表面などの向きに関するものであり、用語「後」の向きは、ピストンの後退方向における側面、面、表面などの向きに関するものである。半径方向」、「円周方向」、「軸方向」という用語は、特に指定しない限り、ピストンの作動軸に関して意図されるものである。
【0040】
図を参照すると、ディスクブレーキ2用の作動装置1は、以下の構成を有する。
【0041】
作動軸8に沿って摺動可能に支持されたピストン7。
【0042】
第1ランプボール運動変換器100。第1ランプボール運動変換器100は、軸方向に静止し、作動軸8の周りの回転可能な第1ランプ部101と、ピストンに結合され、第1ランプ部101に面する第2ランプ部102と、第1ランプ部101と第2ランプ部102によって形成される傾斜路103間に接触して介在する複数の回転要素(ボール)29とを有する。これにより、第2ランプ部102に対する第1ランプ部101の回転が、作動軸8に沿った、第1ランプ部101に対するピストン7とともに第2ランプ部102の制動移動をもたらす。
【0043】
ボール再循環のない第2ねじとナット運動変換装置4。第2ねじとナット運動変換装置4は、第2ランプ部102とピストン7との間に接続されており、作動軸8を中心とするピストン7に対する第2ランプ部102の回転が、作動軸8に沿った、第2ランプ部102に対するピストン7の更なる補償並進をもたらす。
【0044】
トルクリミッタ10(または、言い換えれば、ねじりクラッチ)。
トルクリミッタ10は、
- 第1ランプ部101と第2ランプ部102とのねじり接続を行い、前記ねじり接続において所定の限界トルクに達するまで、第1ランプ部101と第2ランプ部102は作動軸8を中心に一緒に回転し、
- 前記所定の限界トルクを超えると、前記作動軸8を中心とした前記第2ランプ部102に対する前記第1ランプ部101の回転を切り離す。
【0045】
それにより、ピストンパッドブレーキディスクの係合が達成されるまでピストン7をパッドに接近させる第1ステップ(摩耗したパッド厚さを補償するために必要な余分なトラベルのステップ)において、第1ランプボール運動変換器100の両ランプ部101、102は、第2ねじナット運動変換器4のみの作用により、一緒に回転してピストン7を前進させる。
【0046】
第1接近ステップの終了時、ピストンパッドディスクブレーキ押圧係合は、第1ランプ部101と第2ランプ部102との間のねじり接続において所定の限界トルクを超えるまで、ピストン7のさらなる前進に対する機械抵抗を増大し、それらの相対回転により、第1ランプボール運動変換器100の作用のみによって、ピストン7の制動並進(非常に限られた制動移動に対して)が行われる。
【0047】
第1ランプ部101は、入力軸または一般的な入力回転要素3、例えば減速ギヤまたは電気モータに接続することができる。
【0048】
従来、ピストン7は、ディスクブレーキ2のディスクブレーキパッド9上に、作動軸8の方向に軸力を伝達するように構成されている。
【0049】
有利には、このように構成された作動装置1は、従来技術の作動装置よりもコンパクトかつ軽量である。
【0050】
さらに、作動装置1は、ボールねじを使用する必要がなく、小さな寸法で、軽量で、および低コストである。
【0051】
さらに、このように構成された作動装置1は、高い力と良好な運動可逆性を有する制動走行、高い効率、およびパッド9の摩耗を補償するための不可逆的で低い力の走行という要件を調和させるものである。
【0052】
このように構成された作動装置1は、2つの異なる動作ステップを経て、回転要素3からのトルクを直線的な力に変換する。第1ステップでは、ピストン7をディスクブレーキ2のパッド9に接近させることにより、ディスクブレーキ2のパッド9の摩耗を回復させる。この動作は、高くない力、すなわち制動力よりも低い力によって、第2ねじナット運動変換器4によって達成される。実際の制動、すなわちディスクブレーキ2のパッド9上でのピストン7による制動力の発生は、第2ステップで行われる。制動力を発生させるピストン7の並進運動は、第2ランプボール運動変換器100によって発生される。
【0053】
第1ランプボール運動変換器100の詳細な説明
【0054】
本発明の実施形態によれば、第1ランプ部101はそれ自体が装置1の入力回転要素3を形成してもよく、第2ランプ部102は第2ねじ・ナット運動変換器4のねじ本体5に直接形成されてもよい。
【0055】
これにより、作動装置1のコンパクト性が向上し、作動軸8の方向におけるその空間要件が低減される。
【0056】
有利な実施形態によれば、第1ランプ部101は、作動軸8の方向に延びる周方向ロータ壁25と、ロータ前壁26と、ロータ後壁27とを有する実質的に円筒形のロータ本体23により形成されている。
【0057】
ロータ前壁26は、ピストン7の前進方向に面し、傾斜路103の1つ以上、好ましくは3つの第1転動軌道28を形成するとともに、ロータ前壁26から作動軸8と同軸上に突出し、トルクリミッタ10に接続された駆動シャフト24を形成している。駆動軸24はさらに、第2ランプ部102のための回転可能な、センタリングサポートを形成してもよい。
【0058】
周方向ロータ壁25は、作動トルク/回転を伝達するために、作動軸8の周りに、例えばロータ後壁27に延びる歯50を形成してもよい。
【0059】
代替の実施形態(
図12)によれば、ロータ本体23は、作動装置1における軸方向に延びた駆動軸24と、駆動軸24とは反対側のロータ本体23の後側に延びた入力軸の両方を形成する軸48の径方向拡大部として形成されている。
【0060】
実施形態によれば、第1運動変換器100は軸受アセンブリ105を有する。軸受アセンブリ105は、第1ランプ部101、特にロータ本体23を、作動軸8に対して同心に且つ並進方向に静止して、作動装置1の作動中に発生する軸方向荷重を支持し、場合によっては、歯50との係合による径方向荷重も支えるように構成されている。
【0061】
有利には、軸受アセンブリ105は、ロータ本体23の内部に、ロータ本体23と同軸に、場合によっては歯50の位置に(そこに半径方向の反力制約を直接与えるために)配置される。
【0062】
軸受アセンブリ105は、4点接触転がり軸受で構成されてもよい。
【0063】
実施形態によれば、ねじ本体5の後部ねじ壁21は、ロータ本体23に面し、カムトラック103の少なくとも1つ、好ましくは3つの第2転動軌道22を形成している。
【0064】
有利には、互いに向かい合う第1転動軌道28と第2転動軌道22は、それらの間にそれぞれ転動ボール29を収容している。
【0065】
ランプ部101、102の傾斜路103は、作動軸8に対して螺旋状に(言い換えれば、偏心して円周方向に)延びる。ランプ部101、102の各々は、例えば、円周方向に連続して配置され、分離リブによって互いに分離されて、予定位置に転動体(ボール)29を収容する、2または3の転動路103を形成しても良い。
【0066】
傾斜路103は、作動軸8の方向に可変ピッチの螺旋として構成され、非線形な回転並進変換則を定義する。
【0067】
実施形態によれば、少なくとも1つの傾斜路103は、ボール29の動きを半径方向に制限するように形成されている。
【0068】
有利には、これにより、少なくとも1つのボール29が対応する傾斜路103から脱落する危険性が回避される。
【0069】
有利な実施形態によれば、転動ボール29はさらに、第1ランプ部101と第2ランプ部102との間、すなわちロータ本体23とねじ本体5との間に介在され、有利には駆動軸24に(回転可能に)支持されている格納ケージ30によって収容されている。
【0070】
実施形態によれば、格納ケージ30は、転動ボール29が半径方向に逃げるのを防止するために、半径方向に開いたまたは閉じて包囲するベーン104またはボールシートを形成している。
【0071】
実施形態によれば、第1ランプ部101、第2ランプ部102、及び転動体(ボール)29は、作動軸8の方向に相互接触するように弾性的に押圧される。
【0072】
これにより、傾斜路におけるボール振動の発生や騒音の発生を回避し、各構成要素を予定位置に保持することができる。
【0073】
実施形態(
図11A、11B)によれば、作動装置1は、第1ランプ部101を第2ランプ部102に向かって、言い換えれば、ロータ本体23に対してねじ本体5を軸方向に押すように構成された軸方向予圧ばね42を有する。同じ軸方向予圧ばね42を、第1運動変換器100とトルクリミッタ10との組立体に軸方向予圧を与えるように配置してもよい。
【0074】
軸方向予圧ばね42は、駆動軸24に(例えばシーガーリング41を介して)支持され、駆動軸24の自由(正面)端部分(ピストン7の前進方向に向く)と、ねじ本体5の前壁20(例えばコイルばね、直列の一つ以上のベルビルばね、又は波ばね)との間に締め付けられる。
【0075】
実施形態(
図10、10A)によれば、駆動軸24(ロータ本体23と一体的に形成されている)は、軸方向貫通孔を形成している。軸方向貫通孔はタイロッド46を収容する。タイロッドは、ねじ本体5の前壁20に対して軸方向に(ピストン7の前進方向と反対方向に)静止するきのこ形または板状の前端部と、ロータ本体23の内部空洞に突出する後端部とを有する。タイロッド46に挿入された軸方向予圧ばね42'(有利にはベルビルスプリング、直列の1つまたは複数のベルビルスプリング、または1つまたは複数のコイルばね)は、例えばシーガーリングによってタイロッド46上に支持され、タイロッド46の後端部分とロータ本体23の内側キャビティの底面との間に、好ましくは(転がり)軸受け47を介在させてクランプされてもよい。
【0076】
有利には、第1運動変換器100、第2運動変換器4、およびトルクリミッタ10は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、ピストン7の内部空洞に収容され、したがって同じ軸方向空間を占有する。
【0077】
さらなる利点として、トルクリミッタ10は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、第2運動変換器4の内部空洞に、好ましくはねじ本体5の内部空洞に収容され、したがって同じ軸方向空間を占める。
【0078】
ピストン7および第2ねじ・ナット運動変換器4の詳細な説明
【0079】
実施形態によれば、ピストン7は、作動軸8と同心の実質的に中空の円筒形状を有し、外側ピストン表面11および内側ピストン表面12を規定する円筒壁14と、側壁14に対して横断し、ピストン7の前端部に形成され、作動状態においてディスクブレーキ2のパッド9に面しているヘッド壁13を備えている。
【0080】
好ましい実施形態によれば、内側ピストン表面12は、ねじ本体5にねじ込まれて螺合し、第2ナットおよびねじ運動変換器4のナット6を形成する。
【0081】
実施形態によれば、ピストン7は、回転防止手段、例えばシリンダ16''内に形成され作動軸8の方向に延びる1つ又は複数の対応するガイド16'にスライド可能に収容された1つ又は複数の半径方向突出部16を形成し、軸方向移動を可能にするとともにシリンダ16''に対してピストン7が回転するのを防止している。
【0082】
実施形態によれば、突出部16は、好ましくは鋼製で、円筒壁14の(ねじ付き)孔15に挿入又はねじ込まれ、作動軸8に対して半径方向に向けられたグラブねじによって形成されてもよい。
【0083】
作動軸8を中心とするピストン7の回転と、作動軸8の方向へのねじ5の並進とを阻止することによって、ピストン7の内部ねじにねじ込まれたねじ本体5の回転は、作動軸8に沿ったピストン7の並進をもたらす。
【0084】
実施形態によれば、円筒壁14は、ヘッド壁13の側に、ダストシールを収容するように適合された周方向溝17を形成してもよい。
【0085】
好ましい実施形態によれば、スクリューボディ5は、以下を形成する。
【0086】
作動軸8に対して同心で、ピストン7の内ねじと螺合する外ねじを有する円筒形側壁18。
【0087】
ピストン7の前進方向に面する前部ねじ壁20と、前部ねじ壁20に対向する後部ねじ壁21。
【0088】
好ましくは、外側ねじ山に対して半径方向および軸方向の内側に配置され、トルクリミッタ10を収容する連結座(カップリングシート)19。
【0089】
この構成は、装置1の軸方向寸法のさらなる低減に寄与する。
【0090】
実施形態によれば、後部ねじ壁21は、連結座19内に通じる貫通孔43を形成し、この貫通孔を通って駆動軸24が連結座19内に延在している。
【0091】
貫通孔43は、ロータ本体23に対してねじ本体5を中心とし、回転可能な支持部を形成している。
【0092】
ねじ側壁18とねじ前壁20との間の周縁は、ピストン7によって形成されたナット6へのねじ本体5の挿入およびねじ込みを容易にするために、面取りされている。
【0093】
トルクリミッタ10の詳細な説明
【0094】
実施形態によれば、トルクリミッタ10は、ねじ本体5に回転可能に一体的に結合され、駆動軸24と係合するように弾性的にバイアスされた1つ以上、好ましくは2つのジョー31を有する。
【0095】
実施形態によれば、連結座19は、作動軸8に関して互いに径方向に対向する2つの当接面44と、2つの側部案内面44'とを形成している。ジョー31(スライドで構成されてもよい)は、側部案内面44'の間に収容され、作動軸8に対して半径方向に案内される。予め荷重が加えられた弾性要素32、例えば圧縮ばね33は、当接面44とジョー31の間に配置されている。
【0096】
ジョー31と駆動軸24のねじり係合部分は、干渉による(弾性予圧を伴う)回転的に一体的な嵌合を形成するように形成されている。
【0097】
特に、駆動軸24のねじり係合部分は、2つの平坦で平行な対向面38を有していてもよく、一方、ジョー31は、駆動軸24に面する台形状の結合面34を形成してもよい(
図8、8A)。
【0098】
伝達トルクが限界ねじりモーメントより低い場合、駆動軸24はジョー31の間に係合し、ジョー31は駆動軸24と一体的に回転可能である。
【0099】
制限ねじりモーメントを超えると、駆動軸24は圧縮ばね33の弾性力に抗してジョーを互いに離れるように広げるので、ロータ本体23のねじ本体5に対する相対回転を許容する。
【0100】
このように構成されたトルクリミッタ10は、メンテナンスが容易であり、必要に応じて摩耗したジョー31を交換するための簡単な構造を有している。
【0101】
有利には、トルクリミッタ10は、駆動軸24に対して相互に対向して配置された2つのジョー31を有する。
【0102】
実施形態によれば、各ジョー31は、駆動シャフト24に面する結合面34と、駆動シャフト24に対してジョー31をバイアスするばね要素32が作用するバイアス面35とを形成している。
【0103】
有利には、バイアス面35は、弾性要素32の端部を収容するための座部40を形成している。
【0104】
更なる実施形態によれば、結合面34は、結合面34が台形又は多角形の開放チャネルの形に形成されるように、横方向に延びるか又はバイアス面35に対して傾斜した2つの壁又は収容面37間に配置された実質的に平面状の中央面36を有する。
【0105】
実施形態によれば、駆動軸24の結合部分は、2つの対向する湾曲した円筒形又は楕円形のセグメント面39の間に配置された2つの実質的に平面状の対照面38を形成している。
【0106】
有利には、シャフト24のコントラスト表面38と湾曲した表面39との間の移行領域は、局所的な接触圧力、そして表面上の摩耗を減少させるように、接合(内側角度を欠く)または面取りされている。さらに、これにより、ジョー31をシャフト24の材料よりも硬度の低い材料で作ることができる。
【0107】
駆動シャフト24とジョー31との間の係合構成において、ジョー31の中央面36は、駆動シャフト24の対応する対照面38に対して接触し、ジョー31の収容壁又は収容面37は、曲面39で駆動シャフト24を包含する。
【0108】
ジョー31の連結座19からの軸方向への意図しない脱出は、タイロッド46(
図10)のキノコ状頭部前端またはスプリング42(
図11A、11B)が、ジョー31をキノコ状頭部またはスプリング42とねじ本体5内に形成された当接壁45との間の空間内に保持することによって外側の通路を少なくとも部分的に塞いで防止している。
【0109】
実施形態(
図3)によれば、作動装置1は、駆動軸24に固定された保持リング41(例えば、鋼製シーガーリング)を備え、保持リング41とねじ本体5の当接壁45との間でジョー31を保持し、連結座19からのジョー31の解放を防止している。
【0110】
代替の実施形態(
図13A、13B)によれば、トルクリミッタ10は、第1運動変換器100の第1ランプ部101と第2ランプ部102との間に接続されたねじりばね51、例えばコイルばねを有する。
【0111】
ねじりばね51のモーメント変形曲線は、所定の限界トルク以下では、板状コイルばね51が第1ランプ部101と第2ランプ部102とを実質的に一体的に回転結合し、所定の限界トルク以上では、ねじりばね51が第2ランプ部102に対する第1ランプ部101の相対回転を可能にするように漸次変形させられるように選択される。
【0112】
実施形態によれば、トーションスプリング51の第1端部はロータ本体23、特に駆動軸24に一体的に接続され、トーションスプリング51の第2端部はねじ本体5に一体的に接続されている。
【0113】
実施形態によれば、所定の制限トルクは、800Nmmと400Nmmの間、好ましくは690Nmmと490Nmmの間、さらに好ましくは640Nmmと540Nmmの間、さらに好ましくは所定の制限トルクは590Nmmである。
【0114】
有利には、この量の所定の制限トルクは、ディスクブレーキ2によって生じる制動トルクの不安定性または不規則性の現象の発生を防止する。
【0115】
ディスクブレーキ2の説明
【0116】
ディスクブレーキ2は、公知の態様において、ブレーキディスク部を収容するディスク空間を区画する二つの離間した側壁を含むキャリパと、キャリパを車両に固定する手段と、ディスク空間を跨いで延び、側壁を互いに接続する接続構造体と、前記側壁の各々に形成され、少なくとも1つの摩擦パッドを収容するように適合された少なくとも1つのパッドシートと、一方または両方の側壁に拘束され、摩擦パッドをブレーキディスクに対してバイアスしてクランプするように適合されたスラスト手段とを備える。
【0117】
本発明によれば、スラスト手段は、ここに記載の作動装置1を構成している。
【国際調査報告】