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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】化合物の磁気開裂
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/00 20060101AFI20230608BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230608BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C07K1/00
C12M1/00 A
C12P21/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568936
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2021062681
(87)【国際公開番号】W WO2021228971
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】20174469.5
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521002017
【氏名又は名称】プレオミクス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】PREOMICS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クルカ,ニルス・アー
(72)【発明者】
【氏名】ハーティンガー,カトリン
(72)【発明者】
【氏名】ケーゼマン,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ベヒター,ジャスミン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB15
4B029BB20
4B029DG10
4B029GA03
4B064AG01
4B064CC30
4H045AA40
4H045AA50
4H045EA50
4H045EA60
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1個の分子中の少なくとも1個の共有結合を開裂する方法であって、前記方法が、(a)少なくとも1個の磁性体と前記少なくとも1個の分子とを衝突させること、および/または(b)前記少なくとも1個の磁性体を動かすことによって少なくとも1個の非磁性粒子と前記少なくとも1個の分子との衝突を引き起こすことを含む、方法を提供する。実施形態では、分子は、懸濁液または溶液中にあり、(a)溶液または懸濁液は、緩衝液または体液などの液体サンプルであり、分子は、核酸であり、(b)溶液または懸濁液は、飲料水またはプールの水であり、分子は、巨大分子汚染物質であり、(c)溶液または懸濁液は、下水であり、分子は、生体巨大分子であり、(d)溶液または懸濁液は、食品または飲料であり、分子は、グルテンであり、(e)溶液または懸濁液は、タンパク質、ポリペプチドおよび/もしくはペプチド、増殖培地用のタンパク質性原材料、および/またはシャンプー、コンディショナーもしくは石鹸などのパーソナルケア製品用のタンパク質性原材料を含み、分子は、前記またはタンパク質、ポリペプチドおよび/もしくはペプチドであり、(f)溶液または懸濁液は、巨大分子毒素を含み、分子は、前記巨大分子毒素であり、あるいは(g)溶液または懸濁液は、不所望な酵素活性を含み、分子は、前記酵素活性を呈するタンパク質である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の分子中の少なくとも1個の共有結合を開裂する方法であって、前記方法が、
(a)少なくとも1個の磁性体と前記少なくとも1個の分子とを衝突させること、および/または
(b)前記少なくとも1個の磁性体を動かすことによって少なくとも1個の非磁性粒子と前記少なくとも1個の分子との衝突を引き起こすこと
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1個の磁性体が、変動運動または振動運動を実施し、好ましくは、前記運動が、変動磁場または振動磁場によって引き起こされ、好ましくは、前記磁場が、電流および/または電磁石によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記衝突が、前記少なくとも1個の共有結合を開裂するのに十分な量のエネルギーを前記分子に伝達する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1個の分子が、溶液または懸濁液中にあり、好ましくは、前記少なくとも1個の分子および前記少なくとも1個の磁性体が、反応器内に位置している、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法を、バッチ方式で、例えば、底が閉じた容器である反応器を使用することによって実施する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法を連続方式で実施し、例えば、前記溶液または懸濁液が、好ましくは、
(a)少なくとも2つの開口部を有する反応器内で、
前記少なくとも1個の磁性体上を流れることが可能であり、および/または
(b)前記溶液もしくは懸濁液が流れている間に前記磁性体の運動が生じる、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1個の磁性体および前記反応器の寸法が、前記少なくとも1個の磁性体がその平均位置を中心として自由にまたは実質的に自由に動くようなものであり、好ましくは、自由運動または実質的に自由な運動が、並進運動および回転運動の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または好ましくは6つすべての軸を中心としているか、またはそれらに沿ったものであり、好ましくは、前記自由運動または実質的に自由な運動が、2つの軸に沿った少なくとも並進を含む、請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1個の分子が、巨大分子または鎖状分子であり、前記巨大分子または鎖状分子が、少なくとも2つの構築ブロックを含むか、またはこれらからなり、好ましくは、前記構築ブロックが、アミノ酸、ヌクレオチド、リボヌクレオチド、糖類、ホスフェート、脂質、脂肪酸、糖、グリセリド、または前述のうちのいずれかの組み合わせである、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1個の分子の少なくとも1個の共有結合を開裂するさらなる手段を、前記少なくとも1個の分子と接触させ、前記さらなる手段が、好ましくは、酵素、化学物質、および/または触媒である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
(a)前記溶液または懸濁液が、緩衝液または体液などの液体サンプルであり、前記分子が、核酸であり、
(b)前記溶液または懸濁液が、飲料水またはプールの水であり、前記分子が、巨大分子汚染物質であり、
(c)前記溶液または懸濁液が、下水であり、前記分子が、生体巨大分子であり、
(d)前記溶液または懸濁液が、食品または飲料であり、前記分子が、グルテンであり、
(e) 前記溶液または懸濁液が、タンパク質、ポリペプチドおよび/もしくはペプチド、増殖培地用のタンパク質性原材料、および/またはシャンプー、コンディショナーもしくは石鹸などのパーソナルケア製品用のタンパク質性原材料を含み、前記分子が、前記またはタンパク質、ポリペプチドおよび/もしくはペプチドであり、
(f)前記溶液または懸濁液が、巨大分子毒素を含み、前記分子が、前記巨大分子毒素であり、あるいは
(g)前記溶液または懸濁液が、不所望な酵素活性を含み、前記分子が、前記酵素活性を呈するタンパク質である、
請求項4から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1個の分子中の少なくとも1個の共有結合を開裂するための変動磁場または振動磁場を生成するための磁性体および手段の使用。
【請求項12】
(a)導電体、好ましくは少なくとも1個のコイル、より好ましくはヘルムホルツコイル、
(b)容器および/または容器アレイ、例えば、マイクロタイタープレート、ならびに
(c)前記容器内の少なくとも1個の磁性体、または前記容器アレイ内の容器当たり少なくとも1個の磁性体
を含むか、またはこれらからなり、
前記少なくとも1個の磁性体が、使用時に前記導電体によって、好ましくは前記導体をコイルとして実装することによって、かつ前記容器または前記容器アレイが前記コイル内に位置していることによって生成される磁場の影響下にあるように、要素(a)および(b)が構成されており、
前記磁性体および前記容器の寸法が、操作時に、前記磁性体が並進の少なくとも2つの軸に沿って自由に動くようなものであり、
前記磁性体が、強磁性材料またはフェリ磁性材料を含むか、またはこれらからなる、
デバイス。
【請求項13】
請求項12に記載のデバイスを備える、液体ハンドリングロボット。
【請求項14】
(a)導電体、好ましくは少なくとも1個のコイル、より好ましくはヘルムホルツコイル、
(b)少なくとも2つの開口部を有する少なくとも1個の容器、および
(c)少なくとも1個の磁性体
を含むか、またはこれらからなり、
要素(a)、(b)、および(c)が、
(i)前記少なくとも1個の磁性体が、使用時に前記コイルによって生成される磁場の影響下にあるように、かつ
(ii)使用時に管状要素を通って流れる液体が前記磁性体と接触するように、
構成されており、
前記磁性体が、強磁性材料またはフェリ磁性材料を含むか、またはこれらからなる、
デバイス。
【請求項15】
(a)容器および/または容器アレイ、
(b)少なくとも1個の磁性体、好ましくは容器当たり少なくとも1個の磁性体、
(c)導電体、ならびに
(d)任意選択的に、請求項14に記載のデバイスを組み立てるための、および/または請求項1から10のいずれか1項に記載の方法を実施するための指示を有するマニュアル
を含むか、またはこれらからなり、
前記磁性体および前記容器の寸法が、操作時に、前記磁性体が並進の少なくとも2つの軸に沿って自由に動くようなものであり、
前記磁性体が、強磁性材料またはフェリ磁性材料を含むか、またはこれらからなる、
キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個の分子中の少なくとも1個の共有結合を開裂する方法であって、前記方法が、(a)少なくとも1個の磁性体と前記少なくとも1個の分子とを衝突させること、および/または前記少なくとも1個の磁性体を動かすことによって少なくとも1個の非磁性粒子と前記少なくとも1個の分子との衝突を引き起こすことを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、特許出願および製造業者のマニュアルを含む多くの文書が引用されている。これらの文書の開示は、本発明の特許性に関連するとは考えられていないが、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。より具体的には、すべての参照文書は、個々の文書それぞれが具体的かつ個別に示されて参照によって組み込まれるかのように、同程度に参照によって組み込まれる。
【0003】
多くの産業プロセスでは、比較的大きな分子の開裂が必要になる。なぜなら、これらの分子が不所望な特性を有する一方で、それらの開裂生成物は、許容可能であるか、または所望な特性さえ有するからである。そのような比較的大きな分子の例は、タンパク質性分子から炭水化物および核酸に及ぶ生物学的起源の分子を含む。例示的なプロセスは、望ましくない酵素活性を、前記活性を付与する酵素の開裂によって除去することと、毒性タンパク質を含む組成物を解毒し、毒素の開裂生成物がもはや毒性活性を呈さないことと、緩衝液、特に長い核酸不含の緩衝液などの核酸不含の試薬を製造することとを含む。
【0004】
多くの場合、酵素がこれらの開裂プロセスに使用される。しかしながら、これらの酵素は、前述のプロセスが日常的に大規模に実施されることを考慮すると、大量に製造または取得する必要がある。したがって、例えば、生細胞を製造に用いる場合、または酵素を動物源から精製する必要がある場合、酵素製造は、複雑なプロセスであるのみならず、汚染のリスクも伴い得る。また、酵素は、多くの場合、記載されている開裂プロセスについて依然として第1の選択肢であるが、これは、生体分子の望ましくない活性を減少または消失させるために、生物学的起源のさらなる別の薬剤が使用されることを意味することに留意する必要がある。また、酵素は、デリケートな物質であり、典型的には、非常に厳密に定義された条件下でしか活性を保持せず、pHまたは熱による酸化または変性などの修飾によって機能の喪失が引き起こされることがある。
【0005】
磁石の使用は、一般的に、生物学的起源の分子および組成物の処理と相容れないものではない。非常によく知られている使用は、外部磁場の影響下で回転し、液体、溶液、および懸濁液の迅速な混合をもたらす、磁気撹拌棒である。
【0006】
US2010/068781には、内部に磁石を有する容器であって、磁石の表面と容器の内壁との間に薄い液体膜だけが存在するように該磁石が容器の断面に正確に合致する、容器が記載されている。磁石は、自由に運動することができない。
【0007】
US6,806,050には、分析手順で一般的に使用されているような常磁性粒子を取り扱うためのデバイスが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の欠点を考慮して、望ましくない活性を有する分子を開裂する改善された手段および方法が必要とされており、前記手段および方法は、さらなる別の化学的または生物学的に活性な薬剤の使用を必要としない。
【0009】
したがって、本発明の根底にある技術的問題は、そのような手段および方法、より具体的には、生物学的起源のものを含む鎖状分子および巨大分子を開裂または断片化する非化学的および非酵素的な手段および方法の提供に見ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この技術的問題は、特許請求の範囲の主題、ならびに以下に開示されている態様および実施形態によって解決される。
【0011】
より具体的には、第1の態様では、本発明は、少なくとも1個の分子中の少なくとも1個の共有結合を開裂する方法であって、前記方法が、(a)少なくとも1個の磁性体と前記少なくとも1個の分子とを衝突させること、および/または(b)前記少なくとも1個の磁性体を動かすことによって少なくとも1個の非磁性粒子と前記少なくとも1個の分子との衝突を引き起こすことを含む、方法を提供する。
【0012】
「開裂」という用語は、開始分子の断片が形成されるように共有結合を破壊することを指す。開裂は、安定した断片または中間反応種を直接的にもたらし得、これらは、存在する他の分子と反応して安定した生成物を生成する。他の分子は、水を含み得るか、またはより一般的に言えば、反応種との安定した付加物をこれらが形成される程度に形成することができる任意の分子を含み得る。「開裂」および「断片化」という用語は、本明細書では、「開裂生成物」および「断片」という用語と同等に使用される。
【0013】
開裂される共有結合は、特に限定されることはない。単結合、ならびに二重結合および三重結合が含まれ、これらはすべて、同じ種類の原子間(例えば、C-C結合)または異なる原子間(例えば、C-N結合またはC-O結合)にあり得る。巨大分子の構築ブロックを連結する官能基に生じる結合、例えば、ペプチド結合、ホスホエステルを含むエステル結合、およびグリコシド結合が好ましい。そのような好ましい結合は、一般的に、例えばC=C結合と比較してより低い結合エネルギーを有し、したがって、より少ないエネルギーを反応混合物に伝達する手法で操作する場合、本発明の方法による開裂を受けやすいと理解される。
【0014】
以下で明らかになるように、本発明は、処理される材料に伝達されるエネルギーの量を制御することを可能にし、それによって、共有結合をそれらの結合エネルギーに応じて標的にする手段を提供する。そうは言っても、一般的に、伝達すべきエネルギーには広い範囲が存在し、それによって、前記範囲にわたって異なる種類の分子の同時開裂が生じる;実施例を参照されたい。
【0015】
所与の分子から得られる断片の数は、特に限定されることはなく、2個の断片および任意のより高い数、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、20個、50個、100個、200個、500個、1000個以上の断片の間で変動し得る。本発明の非酵素的および非化学的な開裂プロセスに基づいて、以前は達成可能でなかった断片化パターンを生成することができる。この文脈において、「断片化パターン」という用語は、断片化の部位と、所与の分子から得られる断片の平均サイズおよびサイズ分布との両方を指す。
【0016】
得られる断片のサイズについても、これは特に限定されることはない。サイズは、好ましくは、以下にさらに開示されている方法を制御するパラメータ(周波数、アンペア数、電力、磁束密度など)によって制御され得る。例えば、前記分子と比較して小さな1個、2個、または1桁の数の部分のみが開裂される場合、断片のサイズは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、または任意の他の2桁の数の原子から、前記分子に対してサイズが匹敵する断片までの範囲にあり得る。
【0017】
「少なくとも1個の分子」という用語は、「単一分子適用」とも呼ばれる、正確にまたはおよそ1個の分子を使用する適用を包含する。個々の分子を調べるまたは取り扱う必要はないが、少数の分子を断片化する必要がある場合、1fmol~1μmolの量が「少なくとも1個の分子」という用語に包含される。巨視的な量も、例えば、1μmol~10molの範囲で包含される。後者の適用は、水、飲料、および食品の処理の分野で大規模に日常的に実施されるプロセスを含む、以下でさらに詳細に説明される好ましい実施形態の観点からも好ましい。特に、フロースルー反応器における本発明の適用の文脈では、処理すべき量に実質的に制限はなく、これは、10mol、例えば、10~1010molを十分に上回り得る。実際に、そのような連続プロセス(詳細については、以下をさらに参照)の文脈では、絶対量は、特に限定されることはない。例えば、毎時1mol~毎時10または10molまでの流量が想定される。
【0018】
本発明の方法を実施する場合、開裂すべき分子に加えて、他の分子が存在する可能性があり、一般的に存在すると理解される。
【0019】
さらに、開裂すべき分子は、単一の分子種に属していても、または程度の差はあるが密接に関連した分子、例えば、ポリクローナル抗体のファミリーを形成していてもよい。
【0020】
検討される分子の両方の種類の混合物(開裂すべき分子との混合物、および開裂が不要であるかまたは回避すべきである分子との混合物)が想定される。
【0021】
「衝突する」という用語は、前記磁性体と前記分子との間の相対運動を指す。衝突は、1回より多く生じ得る。衝突は、一般的に、磁性体および分子が密接に接触することを伴うであろう。空間的に近接したそのような状況下では、動く磁性体(または動く非磁性粒子;以下を参照)間のエネルギー伝達が可能であり、結合開裂に必要なエネルギーを前記分子に付与する。
【0022】
あるいはまたはさらに、例えば、複数の磁性体が使用される場合および/または1個以上の非磁性粒子(詳細については、以下をさらに参照)が存在する場合、所与の磁性体の運動は、分子と別の磁性体または非磁性粒子との衝突のトリガーとして作用し得る。言い換えるなら、所与の磁性体は、所与の分子と衝突し得、および/または前記分子と他の磁性体もしくは粒子との衝突を引き起こし得、いずれの種類の衝突も、前記分子の共有結合の開裂を引き起こすことができる。後者の種類の衝突は、前記磁性体の運動の「間接的」効果とも称され、第1の態様の方法の項目(b)によって定義される。選択肢(a)および(b)は、一般的に、ビーズの少なくとも1個の磁性体および少なくとも1個の非磁性粒子が存在する場合、一緒に生じるであろう。しかしながら、純粋に間接的な効果による断片化も同様に想定される。
【0023】
共有結合の開裂に加えて、本発明の方法は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、および疎水性相互作用などの他の種類の分子内および分子間相互作用を妨害するためにも使用され得る。
【0024】
この方法は、単一の磁石、すなわち、一片のフェリ磁性、強磁性、または常磁性材料として実装され得る単一の磁性体を用いて実施され得る。磁性体の代替的な実装形態は、以下にさらに開示されている。
【0025】
前記単一の磁石または単一の磁性体の代わりに、複数の磁性体または磁石を使用してもよい。磁性体の数は、特に限定されることはないが、1桁または2桁の数の磁性体、例えば、正確に、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、40個、または50個の磁性体または磁石が好ましい。磁性体の数は、これが明示されている程度で、限定的であると理解される。言い換えるなら、第1の態様の方法は、他の手段を含み得るが、そのような可能性は、明示的に指定されているよりも多くの磁性体が存在する選択肢には及ばない。異なる数の磁石を使用する方法の好結果の性能は、実施例で実証されている。
【0026】
磁性体および磁石については、強磁性およびフェリ磁性材料が好ましい。
したがって、磁性体および磁石は、これらの好ましい実装形態では、分析手順で一般的に使用される常磁性粒子とは区別されるべきである。さらに、常磁性粒子は、μmの範囲にあるが、本発明の磁石および磁性体は、好ましくはmm~cmのサイズ範囲にあり、より大きな容器、管、または反応器の場合、より大きくてもよい。
【0027】
通常、本発明の方法は、定義された空間、例えば、反応器内で実践される。前記空間はまた、前記少なくとも1個の分子が溶液または懸濁液中にある場合に限り、溶液または懸濁液の総体積によって定義され得る。
【0028】
そのような状況下では、磁性体の数はまた、それらの総体積に関して間接的に定義され得る。好ましくは、すべての磁性体によって占有されている前記総体積は合わせて、反応器の体積、溶液の体積、または懸濁液の体積の0.01%~98%の間、より好ましくは0.1%~75%、0.1%~50%、0.1%~40%、0.1%~30%、0.1%~20%、または0.1%~10%の間である。
【0029】
開裂すべき分子の構造および起源は、限定されることはない。生物学的起源の巨大分子が好ましい;詳細については、以下を参照されたい。実施例は、選択されたパラメータ設定による方法によって異なる種類の分子の開裂が可能になることと、さらに、それぞれの変更されたパラメータ設定で異なる種類の分子の開裂を依然として提供しながら前記パラメータ設定が変更可能であることとを実証している。
【0030】
本発明者等は、驚くべきことに、急速に動く磁石が巨大分子の断片化を引き起こすことができることを発見した。留意すべきは、そのような断片化が、所与の巨大分子を開裂すると知られている確立された化学物質または生物学的物質が存在しないときに生じることである。この予想外の可能性は、本明細書では「磁気誘導開裂」、またはタンパク質に適用される場合は「磁気誘導タンパク質分解」とも称される。
【0031】
この前例のない発見は、本発明の好ましい実施形態を構成し、かつ以下でさらにより詳細に説明される一連の用途への道を開く。これらの用途に共通しているのは、技術的に確立されたプロセスの重大な欠陥が克服されていることである。さらに説明すると、現在までのところ、第1の生体分子に由来する望ましくない活性は、多くの場合、望ましくない活性を含む反応混合物に生物学的起源のさらなる分子を添加することによって減少または消失させられている。生物学的起源、例えば酵素のそのようなさらなる分子は、第1の生物学的分子を開裂することまたはその開裂を触媒することによって望ましくない活性を減少または消失させる有利な特性を有するが、これはまた、得られる生成物の最終的に不所望な汚染物質を提示する可能性がある。これは、多くの酵素が、それらの製造方法を理由に100%純粋ではなく、有害または免疫原性特性を有し得る構成要素をさらに含むという事実によって悪化する。
【0032】
さらに、酵素の製造は、一般的に、かなりの費用を伴う複雑なプロセスである。
本発明は、望ましくない分子または活性の除去または不活化に限定されることはない。開裂の生成物に焦点が当てられている用途、例えば、得られた断片または断片のうちの1つが、活性剤(この用語は、薬物に限定されることはない)、医薬品、診断の観点または分析目的で対象の化合物である用途もある。
【0033】
本発明の方法はそれぞれ、これらの欠陥を克服するか、またはそのような必要性に対処する。巨大分子を開裂するための化学物質または生物学的物質についての要件はもはやない。この方法は、実装が簡単である。その目的のための例示的または好ましい機器、デバイス、およびキットも本発明の対象であり、以下でさらに説明される。例示的には、この方法は、核酸を断片化する目的で適用された;実施例1を参照されたい。タンパク質への適用も実施例で同様に実証されている。
【0034】
好ましい実施形態では、前記少なくとも1個の磁性体は、変動運動または振動運動を実施する。
【0035】
例えば、磁性体は、上下左右に動き、この運動は、規則的または反復的な成分を有していてもよいが、そうである必要はなく、空間方向は、特に限定されることはない。また、磁性体は、通常は並進運動に加えて、1つ以上の軸を中心に回転し得る。想定される種類の運動のより正確な説明については、以下をさらに参照されたい。反応器、すなわち、入れ物、エンクロージャ、または容器が使用される限り、磁性体は、前記反応器の壁にぶつかっても、または繰り返しぶつかってもよいが、そうである必要はない。したがって、磁性体は、常に運動しているが(本発明の方法の特定の実装形態によって特に指定されない場合、例えば、断続的な運動)、そのような運動は、一般的に有向運動ではない。また、前記運動は、おそらく不規則であるにもかかわらず、一般的に、言及されたエンクロージャまたは入れ物内に位置する平均位置を中心としており、磁性体は、反応器から離れない。磁性体の運動には、一般的に、1つ以上の並進成分があり、前記平均位置は、前記反応器の中央のどこかにあり得る。したがって、この運動は、マグネチックスターラーによって実施される運動(回転)とは異なり、磁石の平均位置は、混合または撹拌すべき液体を含む容器の底部またはその近くにある。
【0036】
「振動」という用語は、規則的な運動を示すが、「変動」という用語は、より広く、不規則な運動も包含する。その点では、特に優先はない。実際には、多くの場合、磁石が、開裂すべき分子と衝突するのみならず、磁性体および分子を収容するために使用される反応器またはエンクロージャの少なくとも1つの壁とも衝突することを考慮すると、不規則な運動がより頻繁に生じる。いずれの場合も、複数の分子またはその巨視的な量を本発明の方法によって処理すべきである限り、磁性体が、一般的に繰り返しで前記巨大分子と、また開裂すべきすべてまたは実質的にすべての分子と繰り返しで接触することがこの運動によって確実になる。上述のように、前記磁性体の運動はまた、前記分子とさらなる磁性体および/または非磁性粒子との衝突を、それらが存在する程度に引き起こし得る。そのような場合、共有結合に対する所与の磁性体の作用は、前記所与の磁性体と分子との間の「直接的な」衝突とは対照的に、「間接的」と呼ぶこともできる。重要なのは、そのような間接的な作用が、開裂を引き起こすのに十分であり、すなわち、磁性体と分子との間の衝突が必要ないことである。
【0037】
言い換えるなら、関連する態様では、本発明は、少なくとも1個の分子中の少なくとも1個の共有結合を開裂する方法であって、前記方法が、非磁性ビーズの存在下で該少なくとも1個の分子に対して少なくとも1個の磁性体を動かすことを含む、方法を提供する。
【0038】
非磁性ビーズの好ましい実施形態については、以下をさらに参照されたい。前記非磁性ビーズのサイズは、開裂すべき分子の質量と前記少なくとも1個の磁性体の質量との間であり得る。
【0039】
非磁性ビーズの存在下での前記分子に対する前記磁性体の前記相対運動は、前記分子と前記非磁性粒子との間の衝突を引き起こすと理解される。当然のことながら、前記磁性体と前記分子との間の衝突、すなわち「直接的な衝突」もそのような設定で生じ得るが、その点では要件はない。
【0040】
好ましくは、前記少なくとも1個の磁性体は、変動運動または振動運動を実施する。
本発明の先の開示されている態様のいずれかの好ましい実施形態では、前記運動は、変動磁場または振動磁場によって引き起こされる。
【0041】
磁場は、磁石の位置および/または運動を制御する一般的な手段である。本発明によると、磁性体が動くことが考慮されるため、この好ましい実施形態では、変動磁場または振動磁場が使用される。そのような磁場はいずれも有用であり得る。
【0042】
前記磁場が電流によって生成されることが好ましい。電場および磁場が相互に関連していること、特に、電流が磁場を生成することは十分に確立されている。結果として、電流を制御することは、それによって生成される磁場を制御する手段である。
【0043】
あるいはまたはさらに、前記磁場は、外部磁石によってそれぞれ生成または変調され得る。「外部」という用語は、そのような磁石が前記反応器内に位置していないことを意味する。外部磁石は、永久磁石であり得る。外部磁石を使用する場合、前記磁性体の変動運動または振動運動は、前記磁性体に対する前記外部磁石の対応する動きによって引き起こされる。
【0044】
好ましい実施形態では、該磁場は、電磁石によって生成される。本明細書で使用される場合、「電磁石」という用語は、その最も単純な実装形態では、使用時に電流が流れる導電体の部分を包含する。磁場をより良好に制御するために、またはより強い磁場を生成する目的のために、電磁石の特定の実装形態が想定され、これらは、以下でさらに開示されている好ましい実施形態の対象である。
【0045】
好ましい実施形態では、前記電流は、変動または振動する。この挙動は、一般的な「波」とも称され得る。電流の量は、アンペア数として知られている。電流の時間プロファイルは、本明細書では、「波形」とも称される。
【0046】
好ましい実施形態では、時間の関数としての前記電流のアンペア数は、(i)矩形関数、(ii)正弦関数、(iii)三角関数、(iv)鋸歯状関数、または(v)(i)~(iv)のいずれか1つの組み合わせもしくはコンボリューション(convolution)である。
【0047】
電流が振動または変動することを考慮すると、これはまた、パターン(i)~(v)にも当てはまり、すなわち、前記矩形関数および前記三角関数は、実際には、矩形関数および三角関数を繰り返している。「パターン」という用語は、所与の基本事象が少なくとも1回繰り返される一連の事象を示す。より広い意味合いでは、繰り返しは、正確な繰り返しである必要はなく、時間グラフにおける矩形などの長さは、変化し得る(これは事実上、周波数、好ましい周波数、および以下でさらに明示されている周波数の好ましい時間依存性の変化に相当する)。
【0048】
すべての実施形態(i)~(v)は、本明細書では、「交流」とも称される。
特に好ましいのは、前記矩形関数(矩形波または方形波と称される)、より具体的には、繰り返し矩形関数のパターンである。本発明者等は、驚くべきことに、このパターンが磁性体の特に激しい運動を引き起こし、そのような激しい運動が開裂に関して特に効率的であることを見出した。前記矩形関数において、高電流および低電流(またはオフの電流)の時間間隔は、同じであっても、または異なっていてもよい。そうは言っても、開裂は、電流の複数の他の時間プロファイル(波形)についても実証されている;実施例6を参照されたい。
【0049】
前記時間間隔の長さを制御する手段は、当業者に知られており、例えば、これらは、パルス幅変調(PWM)と称される。留意すべきは、反応混合物に伝達されるエネルギーが、電流の周波数および振幅によって支配されるのみならず、前記時間間隔の相対的持続時間によっても支配されることである。
【0050】
第1の態様の方法のさらなる好ましい実施形態では、前記衝突は、少なくとも1個の共有結合を開裂するのに十分な量のエネルギーを前記分子に伝達する。衝突がある物体から別の物体にエネルギーを伝達する手段であることは十分に確立されている。受容体によって受け取られたエネルギーは、前記物体(ここでは分子)の内部エネルギーに変換され、その断片化を引き起こし得る。
【0051】
共有結合に含まれるエネルギーは知られており、これらのエネルギーは、特に触媒がない場合、開裂に必要なエネルギーも定義する。ほとんどの共有結合エネルギーは、100~1200kJ/molの範囲にあり、例えば、Chemistry:Atoms First 2e,ISBN 978-1-947172-63-0を参照されたい。共有結合エネルギーのいくつかの例を挙げると、345kJ/molの結合エネルギーとしてのC-C結合、290kJ/molのC-N結合、および350kJ/molのC-O結合がある。
【0052】
先に開示されている好ましい実施形態は、選択された特定の実装形態の全体的な結果を明示する手段である。開裂すべき分子に伝達されるエネルギーは、前記分子内の少なくとも1個の共有結合が解離に必要な量のエネルギーを受け取るようなものでなければならない。
【0053】
概算として、磁性体によって共有結合に伝達されるエネルギーの量は、磁場によって磁性体に伝達されるエネルギー以下である。単位体積当たりの磁場のエネルギーは、Emag=1/2B/μによって定義され、Bおよびμの定義については、以下をさらに参照されたい。Emagはまた、磁場を発生させる電流のエネルギー以下である。後者のエネルギーは、Ecurr=UItとして推定することができ、Uは、電圧であり、Iは、磁場を生成する電流のアンペア数であり、tは、電流が流れる時間である。言い換えるなら、B、U、I、およびtのうちのいずれかを制御することは、磁性体によって共有結合に伝達されるエネルギーの量を制御する手段である。
【0054】
そうは言っても、第1の態様の方法の詳細な実装形態を明示する他の手段がある。これは、より直接的に制御または測定可能な複数のパラメータのうちの1つ以上を明示することを含む。これらのパラメータは、電流の周波数およびアンペア数を含み、さらに、反応器およびコイルの寸法を、それらが使用される場合に限り含み得る。また、磁場の強度、好ましくは磁性体の部位における磁場の強度は、実装形態の詳細を定量的に明示する手段である。これらすべての場合において、先の要件(結合を開裂するのに十分なエネルギーの伝達)が満たされることを確実にするパラメータ値またはパラメータ値の組み合わせが好ましい。以下に、言及されたパラメータの好ましい範囲が明示されている。
【0055】
好ましい実施形態では、前記電流は、所与の周波数、好ましくは0.1Hz~20MHz、より好ましくは10Hz~2kHz、さらにより好ましくは50~500Hzまたは90~300Hzまたは100~200Hzの周波数で変動または振動する。例示的または好ましい周波数は、70、120、130、160、および240Hzも含む。したがって、さらなる好ましい範囲は、70~240Hzである。これらの手段は、正弦波電流のみならず、例えば、繰り返し矩形パターンを含む本明細書で明示されているすべての電流プロファイルにも適用されると理解される。周波数という用語は、変動に、すなわち、規則的ではない時間依存性挙動(例えば、本明細書では「振動」とも称される規則的な時間挙動)にも適用することができ、変動の時間スケールを特徴付ける手段である。そのような場合、「周波数」という用語は、変動の平均周波数を指すと理解される。
【0056】
本明細書に含まれる実施例は、本発明の方法がある範囲の周波数にわたって機能することを実証している。
【0057】
少なくとも、1桁~2桁のmL範囲の容量を有する反応器の場合、および標準的な96ウェルプレートのウェルの場合、80~300Hzのより低い周波数が特に良好に機能し、その一方で、約1000Hzなどのかなりより高い周波数は、磁性体の振動を誘発するが、反応器の容量のかなりの部分をカバーする全範囲の運動を引き起こさない可能性があることが分かる。これは、より高い周波数が有益ではないという意味ではない。また、これらの周波数は、より低い周波数と組み合わせて使用してもよい(以下を参照)。
【0058】
より一般的に言うなら、好ましい周波数範囲は、磁性体が振動または回転するのみならず、本発明の方法で処理すべき材料の体積全体または実質的に体積全体を探る並進運動を実施することを確実にする範囲である。反応器を利用し、処理すべき材料が溶液または懸濁液中にある実装形態では、前記体積は、前記反応器に含まれる前記溶液または懸濁液の総体積である。言い換えるなら、1桁~2桁のmL範囲の容量を有する反応器および96ウェルプレートに関する指示が先に与えられているが、周波数範囲は、かなりより小さな容量、かなりより大きな容量、または特別な形状を有する反応器への適合が必要であり得る。例を挙げるなら、高密度マイクロタイタープレート(例えば、1536ウェルプレート)のウェルなどのより小さな容量の場合、約1kHzなどのより高い周波数では、より低い周波数でより大きな容器において見られる運動に匹敵する磁性体の運動が生じることが予想される。いずれの場合も、当業者は、本明細書で与えられた指示があれば、前記少なくとも1個の磁性体の運動を制御するパラメータを簡単な手法で探り最適化することができる。以下でさらに説明されるように、並進運動を、好ましくは回転に加えて実施する磁性体が好ましい。
【0059】
さらなる好ましい実施形態では、前記方法は、前記磁性体の温度を上げることを含む。これは、前記磁性体の運動を引き起こす磁場の使用にある程度固有の効果である。これは、誘導加熱としても知られている。温度の上昇は、磁性体の表面で主に生じ得るか(当技術分野では「スキニング」とも称される)、または磁性体全体に影響を与え得る。周波数(好ましい範囲については、先を参照)は、温度が上昇する程度および/またはこれが磁性体において主に生じる程度を制御する手段である。一例を挙げるなら、磁性体の表面の加熱が所望される場合、10kHz~20kHzの範囲の周波数が好ましい。この周波数範囲は、好ましくは、断片化に好ましい周波数に加えて適用される。
【0060】
好ましい実施形態では、前記周波数は、前記方法が実施されている間中ずっと一定に保たれる。
【0061】
別の好ましい実施形態では、前記周波数は、時間の関数として変化する。
さらなる好ましい実施形態では、1つより多くの周波数が、所与の時点で適用される。そのような場合、そのような複数の周波数の各周波数は、先に与えられている好ましい間隔のうちのいずれかから選択され得る。周波数が2つである場合に特に好ましいのは、第1の周波数が50Hz~500Hzの間にあり、第2の周波数が80Hz~20MHzの間にあることである。言い換えるなら、この好ましい実施形態は、複数の周波数の重ね合わせをもたらす。第1の周波数についてのさらなる好ましい範囲は、先に開示されている範囲である。第2の周波数についての好ましい範囲は、100Hz~100kHz、100Hz~10kHz、100Hz~5kHz、例えば、100Hz~1kHzである。
【0062】
1つより多くの周波数は、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、および10個の異なる周波数を含む。そのような複数の周波数は、単一の周波数の代わりに全体に適用することができ、このことは、それらが方法の実施全体にわたって適用されることを意味する。また、複数の周波数または異なる複数の周波数をより長い期間内において異なる時間間隔で適用してもよい。該より長い期間内において、かつ1つより多くの周波数が適用される時間間隔に加えて、1個以上、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の時間間隔があってもよく、その際、1つの周波数のみが適用される。
【0063】
本発明者等は、驚くべきことに、1つより多くの周波数が適用されるレジームが、収量に関してより優れた性能を発揮することを見出した。「収量」は、方法の開始時の(断片化されていない)分子の総数と比較した断片化されている分子の相対量を示す。
【0064】
さらなる好ましい実施形態では、前記周波数は、1つより多くの周波数が適用される場合は複数の周波数は、経時的に一定ではなく、好ましくは、2つ以上の周波数の間で、好ましくは周期的に切り替えられるか、または徐々に変化させられる。
【0065】
例示的なレジームは、(120Hz~1000Hz)、(200Hz~1000Hz)、または(100Hz~800Hz)であり、式中、nは、整数、例えば、2~1000の間、例えば、10~100の間の整数であり、括弧内の周波数パターンが繰り返される回数を明示している。
【0066】
一定の周波数および/または一定のアンペア数での時間間隔の持続時間は、特に限定されることはない。1秒~1日、例えば、1分~1時間の時間間隔が想定される。
【0067】
さらなる好ましい実施形態では、前記電流は、(a)20mA~100Aの間、好ましくは0.1~20Aの間のアンペア数Iを有し、(b)前記磁石を、0.02~10A/mの間、好ましくは10~10A/mの間の磁場強度に曝し、および/または(c)1秒~1週間、例えば、1分~24時間、10分~5時間、または15分~4時間の期間tにわたって印加される。先の範囲に関連して同様に下限および上限を定義する例示的または好ましい値は、30分、1時間、および2時間を含む。
【0068】
本発明の方法は、ある範囲の期間にわたって例示されている;以下の実施例を参照されたい。
【0069】
先に開示されているように、時間の関数としてのアンペア数は、本明細書に開示されている周波数によって支配される時間スケールで変動し、変動の時間スケールで一定のアンペア数は存在しないことに留意されたい。しかしながら、実践的な目的のために、かつ電気力学における慣習に沿って、交流電流は、その平均アンペア数の観点で定量化することができる。先の値は、その意味合いでの平均アンペア数である。留意すべきは、平均が、好ましくは変動の時間スケールにわたることである。すなわち、断続電流が使用されている限り、電流がオンのときは、好ましくは先に明示されている範囲内の平均アンペア数になり、電流がオフのときは、ゼロアンペア数になる。
【0070】
磁場強度Hは、電界の強さを決定し、1メートル当たりのAで測定される。Hは、磁束密度Bと区別する必要があり、この磁束密度Bは、電流の磁場を強化するためにコアが使用される設定において特に関連する;以下を参照されたい。
【0071】
好ましい実施形態では、変動または振動の振幅は、(a)一定であるか、または(b)好ましくは前記変動もしくは振動の時間スケールよりも遅い時間スケールで経時的に変化する。
【0072】
この実施形態は、前記電流の運動の振幅に関連する。電流の振動または変動の振幅は、アンペア数によって支配される。
【0073】
さらなる好ましい実施形態では、前記電流は断続的であり、および/または前記アンペア数は、経時的に、好ましくは周期的に変化する。この経時的な変化は、一般的に、交流電流の周波数によって定義される時間スケールよりも遅い時間スケールにある。言い換えるなら、この実施形態の意味合いで交流電流が経時的に変化する場合、電流の時間依存性は、2つのパターンまたは波の重ね合わせである:交流電流に固有の一般的に速い変動、および一般的により遅い変化。
【0074】
例示的な断続的なパターンは、オン(1分)-オフ(1分)の配列の繰り返しである。他の好ましい時間間隔は、先に与えられている。断続的なパターンの利点によって、特に反応器の内容物の加熱が観察される場合に、温度を一定または実質的に一定に保つことが可能になる。
【0075】
さらなる好ましい実施形態では、0~1000W、好ましくは1~200Wの電力が印加される。
【0076】
さらなる好ましい実施形態では、電流は、電源によって供給される。好ましくは、電源は、約0~240V、例えば、1~75Vの範囲の電位または電圧Uを有する。これらの値は、印加される平均電圧を指す。
【0077】
さらなる好ましい実施形態では、前記電磁石は、少なくとも1個のコイルを含み、好ましくは、該コイルは、(a)1~10回の間、好ましくは10~1000回の間などの複数回の巻線を有し、および/または(b)少なくとも1個のヘルムホルツコイルを含み、および/または(c)少なくとも1個のコアを含む。
【0078】
複数のコイルの数の例は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、150、200、300、400、および500である。
【0079】
「ヘルムホルツコイル」という用語は、当技術分野で確立されており、それらの回転対称軸が整列または一致するように離間された典型的には2個の同一のコイルの構成を指す。コイル間の空間の磁場は、特に均一であり、および/または特に強い。少なくとも1個のヘルムホルツコイルの構成は、2個のヘルムホルツコイルであり得る。
【0080】
複数のコイルのさらなる構成は、特に均一な磁場の拡張された空間領域をもたらすと知られている。さらなる例は、マクスウェルコイルである。
【0081】
コアは、磁場の効果を強化する役割を果たす。コアは、好ましくは、鉄、特に軟鉄などの強磁性材料製である。磁束密度Bは、以下のように磁場強度に関連する:B=μμH.μは、真空の透磁率であり、したがって、基本的な物理定数である。他方で、μは、比透磁率であり、磁場の影響下にあるときの強磁性コアなどの所与の材料による磁束密度の強化の度合いを決定する。典型的には、コアとして使用すべき強磁性材料についてのμは、10~10の間、例えば、200000~400000の間、例えば、約300000である。好適なコア材料は、粉末金属、積層金属、アニールされた鉄などのアニールされた金属、セラミック、および固体金属を含む。
【0082】
コアの不存在下でのBの好ましい値は、10-8~10テスラ(T)の間、例えば、10-5~1Tの間、例えば、1桁のmT範囲、例えば、1mT~10mTの間、または1mT~5mTの間である。特定の比透磁率を有するコアが使用される場合、Bの値は、前記比透磁率で乗算される。したがって、コアの存在下でのBの好ましい値は、10-2~10の間、例えば、1~10Tの間である。一般的に、これらの値は、磁性体の部位におけるまたは前記反応器内のBを指す。
【0083】
形状に関しては、好ましいコイルは、円形である。好ましい直径は、1mm~1mの間、または1mm~0.5mの間、例えば、2mm~300mmの間、または2mm~200mmの間である。正方形、矩形、または三角形の形を有するコイルなどの異なる形状も想定される(すなわち、巻線のすべてまたは一部が、正方形、矩形、または三角形である)。最後に、コイルが電磁石についての必須要件ではないことに留意して、2本の逆平行の電線の構成を使用することもできる(「逆平行」とは、所与の時点で2本の電線を流れる電流の方向を指す)。
【0084】
さらなる好ましい実施形態では、1個より多くのコイル、好ましくは、2~10個、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、もしくは10個のコイル、または10~1000個のコイルが使用される。各コイルは1回または複数回の巻線を有し得ると理解され、好ましい巻線数は、本明細書で先に開示されている。
【0085】
さらなる好ましい実施形態では、前記磁性体は、(a)単一の磁石であるか、または(b)粒子の集合体であって、そのうちの少なくとも1つが磁石であり、かつ前記粒子の集合体が前記少なくとも1個の磁石の磁場によって媒介されている、粒子の集合体である。
【0086】
最も単純な構成では、前記少なくとも1個の磁性体は、単一の磁石によって実現される。単一の磁石のサイズは、大きく異なる場合があり、使用すべき反応器または容器の寸法に応じて適切に選択され得る。この相対的なサイズの基準(磁石のサイズ対容器のサイズ)に関しては、以下を参照されたい。磁性体のサイズを選択する際に、反応器または反応混合物中の存在する他の物質が考慮され得る限り、そのような他の物質は、開裂すべき分子(複数可)および/または非磁性ビーズに加えて、サンプルのさらなる成分を含む。
【0087】
完全を期すために、有用な磁石のサイズの例示的な値は、ここでは、以下の値およびそれによって定義される範囲のいずれかを含む、0.1mm~10cmの間、例えば、0.2mm~2cmの間で与えられる:0.3cm、0.4cm、0.5cm、0.6cm、0.7cm、0.8cm、0.9cm、および1cm。同じ好ましいサイズおよびサイズ範囲が、本明細書で考慮される任意の磁性体に適用され、また、複数の磁性体および/または磁石が使用される実装形態にも適用される。一般的に、これらの長さは、前記磁性体の最大延在部分を指す。したがって、一例を挙げるなら、ディスク形の磁石は、3×1または5×2mmなどの寸法を有し得る。同様に、立方体は、1×1×1mm~5×5×5mmの間の寸法を有し得る。
【0088】
あるいは、先に定義されているような複数の磁石が使用され得る。例示的であり、それでいて非限定的な数字は、1桁および2桁の範囲、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、および10である。また、10個超、例えば、20個、30個、40個、または50個の磁石が使用され得る。これらの数字は、複数の容器または反応器(例えば、マイクロタイタープレート)の構成が使用される場合にも、1個の反応器または容器を指す。
【0089】
前記磁石の形に関して、特に制限はなく、磁石の自由な運動を不利に妨げない形が好ましい。例示的な形は、スティック、バー、円筒、ロッド、端が丸くなったロッド、立方体、直方体、角柱、球体、細長いおよび扁平の楕円体、ディスク、四面体、八面体、十二面体、および二十面体を含む。
【0090】
実施例は、この方法を、異なる数の磁石、ならびに異なる形、サイズおよび材料の磁石を用いて実施することができると示す。
【0091】
そのようなセットアップは、先に開示されている「集合体」とはなおも区別する必要がある。後者は、多数の粒子(最も単純な場合、強磁性ビーズなどの1個の粒子またはビーズ)が、単一または少数(例えば、数十個)の磁石(場合によって本発明に従って磁場によって強化されている)の影響下で集合して、本質的に単一の磁石のように挙動する単一の磁性体になる、セットアップを指す。完全を期すために、複数の磁性体も用いることができ、これらはそれぞれ、またはこれらの一部は、上記の集合体から得られる。しかしながら、これは、多くの状況下ではあまり起こり得ない。特に、これが起こらないための対策が講じられていない場合、1つより多くの集合体を同じ反応器または容器に入れると、単一のより大きな集合体が形成され得る(これはまた、磁場内にあれば磁石のように挙動もする)。
【0092】
さらなる好ましい実施形態では、(a)前記磁石は、強磁性材料またはフェリ磁性材料を含むか、またはこれらからなり、(b)先に定義されている前記集合体の粒子は、強磁性材料、フェリ磁性材料、常磁性材料、および/または反磁性材料から、好ましくは、強磁性材料およびフェリ磁性材料から選択される材料を含むか、またはこれらからなり、ならびに/あるいは(c)該磁石および/または該粒子は、好ましくは、(i)化学的安定性を付与するコーティング、(ii)機械的安定性または硬度を付与するコーティング、(iii)触媒によるコーティング、(iv)プローブおよびプライマーなどの核酸によるコーティング、(v)IMAC、TiO、およびZrOなどのキレート剤によるコーティング、(vi)(1)C18、C8、ベンゼンなどの逆相基、(2)ヒドロキシル基などのHILIC基、(3)スルホン酸、リン酸、カルボン酸などのカチオン交換基、(4)第一級、第二級、第三級、および第四級アミノ基などのアニオン交換基、および(5)(1)~(4)のうちのいずれか1つの任意の組み合わせから選択されることが好ましいクロマトグラフィー材料によるコーティング、(vii)グロブリン、特に免疫グロブリン、ストレプトアビジン、ビオチン、プロテインA、プロテインGから選択されることが好ましいリガンド結合タンパク質および/またはそれらの同族リガンド、酵素、例えば、酸化還元酵素、トランスフェラーゼ、リガーゼ、例えば、ポリメラーゼ、加水分解酵素、例えば、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、ヌクレアーゼ、サッカリダーゼ、リパーゼ、リアーゼ、およびイソメラーゼによるコーティング、ならびに(viii)(i)~(vii)のうちのいずれかの組み合わせから選択されるコーティングでコーティングされている。
【0093】
前記磁石に好適な材料は、以下の元素およびそれらの合金を含む:ネオジム-鉄、ネオジム-鉄-ホウ素(例えば、NdFe14B)、コバルト、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、鉄、ニッケル、酸化鉄、マンガン-ビスマス、マンガン-アンチモン、マンガン-ヒ素、イットリウム-鉄酸化物、クロム酸化物、ユウロピウム酸化物、およびサマリウム-コバルト。特に好ましい材料は、ネオジム-鉄およびサマリウム-コバルトである。
【0094】
それほど好ましくない実施形態では、特にそのような常磁性材料の磁化率が高い場合、常磁性材料を使用して、「磁石」と称されるものを実現することもできる。
【0095】
(c)(i)による好適なコーティングは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、パリレン、窒化チタン、ポリイミド、クロロポリマー、およびフルオロポリマー、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。
【0096】
さらなる好ましい実施形態では、前記少なくとも1個の分子は、溶液または懸濁液中にある。そのような場合、断片化すべき分子は、液相に溶解または懸濁しており、磁性体は、前記液相内に位置している(開裂を確実にするためにプロセスの総時間のうちのかなりの割合で)。
【0097】
液体の取り扱いは、入れ物によって容易になる。したがって、好ましい実施形態では、前記少なくとも1個の分子および前記少なくとも1個の磁性体は、反応器内に位置している。本明細書で使用される場合、「反応器」という用語は、総称的に、前記少なくとも1個の分子および前記少なくとも1個の磁性体が位置しており、かつ本発明によって相互作用(「反応」)することができる、エンクロージャまたは入れ物を指す。あるいは、この用語は、特に限定されることはなく、容器、底が閉じた容器、蓋付きの容器、底が閉じた蓋付きの容器、完全に閉じたまたは密閉された容器、管状要素、およびそれらに応じて設計された反応器を通る連続的な液体流を可能にする少なくとも2つの開口部を有する要素を包含する。反応器はまた、開口部を有する、任意選択的に拡張部または容器および/またはバルブを有する1つ以上のチャネルを備える、マイクロ流体デバイス、すなわち、小型化されたデバイスとして実装され得る。
【0098】
好ましい実施形態では、前記方法を、バッチ方式で、例えば、底が閉じた容器である反応器を使用することによって実施する。
【0099】
例示的な好ましい容器は、5μL~1L、好ましくは10μL~50mLの間の体積を保持するように構成されたものであり、より好ましくは、30μL、40μL、100μL、150μL、200μL、250μL、500μL、1mL、1.5mL、2mL、5mL、15mL、および50mLのうちのいずれかの体積を保持するように構成されたものである。
【0100】
さらなる好ましい実施形態では、前記方法を連続方式で実施し、例えば、前記溶液または懸濁液は、好ましくは、(a)少なくとも2つの開口部を有する反応器内で、前記少なくとも1個の磁性体上を流れることが可能であり、および/または(b)前記溶液もしくは懸濁液が流れている間に前記磁性体の運動が生じる。
【0101】
項目(a)は、反応器が、少なくとも2つの開口部を有する管状要素であることを定義する。断面は、特定の用途および実施されるプロセスの規模に応じて大きく異なり得る。したがって、0.1mm~1mの間、例えば、0.5mm~10cmの間の断面のみならず、これらの範囲外の値も想定される。
【0102】
形に関して、管状要素は、単純かつ好都合な実装形態であるかもしれないが、これらがフロースルーをもたらすことを考慮すると、他の形も想定される。そのような反応器は、開裂すべき分子を含む溶液または懸濁液のフロースルーを制御または変更する手段を含み得、一般的に、これらを含むであろう。言い換えるなら、フロースルーは、本発明の方法の性能、開裂度、および収量を最終的に支配する磁性体の運動を制御するパラメータに加えて、さらなるパラメータである。
【0103】
さらなる好ましい実施形態では、(a)前記磁性体の運動は、前記反応器と相対的なものであり、および/あるいは(b)前記少なくとも1個の磁性体の平均位置は、好ましくは前記運動を著しく制限することなく、好ましくは、(i)前記磁場に基づいて、および/または(ii)前記磁性体を保持するフィルタ、メッシュ、膜もしくはスポンジ、または前記磁性体を前記反応器に接続する細線、フィラメント、電線もしくはばねによって、前記反応器に対して実質的に一定である。
【0104】
項目(a)は、磁性体および分子の相対運動が同時に、磁性体および反応器の相対運動、最も単純な場合では同じ種類の運動(すなわち、反応器に対する分子の運動を無視する場合)を示唆していることを単に明示しているだけである。
【0105】
項目(b)は、磁性体が、反応器から飛び出すことまたはフロースルー反応器から洗い流されることを防止するための手段を提供する。
【0106】
さらなる好ましい実施形態では、前記少なくとも1個の磁性体および前記反応器の寸法は、前記少なくとも1個の磁性体がその平均位置を中心として自由にまたは実質的に自由に動くようなものである。
【0107】
したがって、この実施形態は、液体の薄層のみが磁石と容器の内壁との間、例えば円筒形容器内の円筒形磁石を通過することができる制限された運動のための設計とは区別される必要があり、容器の内径は、磁石の(外)径よりわずかに大きいだけである。
【0108】
容易に分かるように、自由運動の要件は、反応器、容器、または管の寸法または断面と比較して小さな最大延在部分を有する磁石、例えば、1.5mLの容器内の3mmの磁石について満たされている。「容器と比較して小さな」とは、一般的に、磁石の最大寸法が、反応器、容器、または管の最小寸法よりも小さいことを意味する。言い換えるなら、磁石の最大寸法は、前記反応器、容器、または管状要素における最小の通路または断面を通過するように適合していなくてはならない。最小寸法より小さなとは、好ましくは、前記反応器、容器、または管の前記最小寸法または断面の3/4、2/3、1/2、1/3、1/4、または10%を意味する。したがって、磁性体または磁石の最大寸法は、前記反応器、容器、または管の前記最小寸法または断面の3/4、2/3、1/2、1/3、1/4、または10%以下であり得る。
【0109】
先のことから明らかであるように、磁性体および容器は、薄い液体サンプル膜だけが磁性体と容器の内壁とを分離するようなものではない。さらに説明するなら、薄膜がある場合、磁性体が動くとせん断力が生じるであろう。留意すべきは、せん断力が生じるためには、磁性体が容器内に適切に収まっている必要があることである。したがって、磁性体の自由運動は、そのような設定では生じ得ない。そうでなければ、適切に収まることも、薄い液膜も、せん断力もないであろう。
【0110】
好ましい実施形態では、自由運動または実質的に自由な運動は、並進運動および回転運動の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または好ましくは6つすべての軸を中心としているか、またはそれらに沿ったものであり、好ましくは、前記自由運動または実質的に自由な運動は、少なくとも2つの軸に沿った並進を含む。
【0111】
点状オブジェクトの場合、3つの運動自由度、すなわち、三次元空間にまたがる3つの独立した方向での並進がある。拡張オブジェクトの場合、さらに3つの自由度があり、これは、3つの独立した回転軸によって定義することができる。
【0112】
先の例(1.5mLの容器内の3mmの磁石)は、6つの軸すべてに沿ったまたはこれらを中心とした自由運動の実装形態であると考えられる。特に、これは、並進運動の列挙された少なくとも2つの軸に沿った運動の自由を含み、それ自体、言及された制限されている運動設計とは明確に区別される。本明細書の教示があれば、当業者は、そのような運動をもたらす第1の態様の方法の最も適切なパラメータを容易に決定することができる;例えば、先ほどの周波数に関するコメントを参照されたい。
【0113】
さらなる好ましい実施形態では、前記少なくとも1個の磁性体は、前記反応器の少なくとも1つの壁と衝突する。これは、必須ではないが、欠点ではない。衝突は、繰り返し生じ得る。留意すべきは、そのような実施形態でも、1.5mLの容器内の3mmの磁石のように、その中に含まれる液相を移動する際に壁に繰り返しぶつかる自由運動が好ましいことである。
【0114】
さらなる好ましい実施形態では、前記コイルまたは前記少なくとも1個のコイルの内径は、前記反応器または複数の反応器、例えば、反応器のアレイを前記コイル内に配置することができるようなものである。
【0115】
この実施形態の例示的な実装形態は、円筒形の容器であるか、またはコイルによって取り囲まれた円筒形の断面を有する容器である。
【0116】
さらに、反応器の上方、その下方、またはそれに隣接する少なくとも1個のコイルを有する構成も想定され、機能的である(重要なのは、磁場が磁石の箇所で生成されることである)。また、磁束密度の最大磁場強度の箇所に位置すべき磁性体についての要件もない。
【0117】
同様に、容器が回転対称の主軸を有すると仮定すると、前記軸は、コイルの対称軸と整列し得るか、または同軸でさえあり得るが、そうである必要はない。2つの軸の間で任意の角度を使用してもよい。
【0118】
さらなる好ましい実施形態では、前記反応器は、円形の断面を有し、前記コイルまたは少なくとも1個のコイルの内径は、前記反応器の外径よりもわずかに大きいだけである。使用される要素およびそれらの製造時の精度に応じて、「わずかに大きな」は、例えば、1.0001、1.001、1.01、または1.1倍を包含し得る。
【0119】
さらなる好ましい実施形態では、前記反応器の壁の少なくとも一部は、透磁性である。反応器全体が透磁性材料製であることがより好ましい。
【0120】
好適な材料は、プラスチック、ポリプロピレンなどのポリマー、ガラス、およびセラミックを含む。透磁率の要件を念頭に置きつつ、金属も使用することができる。
【0121】
さらに、反応器の少なくとも1つの壁は、透磁率の要件に注意を払いつつ、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、パリレン、窒化チタン、銅、ニッケル、銀、クロム、エポキシ樹脂、亜鉛、スズ、エバールーブ、シリカ、ホスフェート、ゴム、クロロポリマー、および/またはフルオロポリマー、好ましくは、金、窒化チタン、およびポリテトラフルオロエチレンから選択される少なくとも1種の材料でコーティングまたは不動態化され得る。
【0122】
さらなる好ましい実施形態では、前記方法は、(a)-100~100セルシウス度、好ましくは約20セルシウス度などの周囲温度、および/または(b)0.1~10barの間の圧力、好ましくは約1barなどの周囲圧力で実施される。
【0123】
言い換えるなら、本発明は、周囲条件下で好都合に実践することができる。そうは言っても、正確な条件は、開裂すべき分子に依存し得るか、またはこれらに応じて最適化され得る。温度および/または圧力を変更すると、保護ガス雰囲気の使用のように、より良好な性能がもたらされ得る。
【0124】
さらなる好ましい実施形態では、前記少なくとも1個の分子は、巨大分子または鎖状分子であり、前記巨大分子または鎖状分子は、少なくとも2つの構築ブロックを含むか、またはこれらからなり、好ましくは、前記構築ブロックは、アミノ酸、ヌクレオチド、リボヌクレオチド、糖、糖類、ホスフェート、脂肪酸、グリセリド、または前述のうちのいずれかの組み合わせである。
【0125】
言い換えるなら、「分子」という用語は、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、糖類、および脂質を包含する。核酸は、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド含み、RNAおよびDNAであり得るか、またはこれらを含み得る。脂質は、トリグリセリド、ホスファチジル化合物、およびスフィンゴ脂質を含む。分子は、先のいずれかのものの組み合わせであり得るか、またはこれらを含み得る。分子がタンパク質性かつ生物学的起源である場合に限り、これは、翻訳後修飾を伴うタンパク質であってもよく、例えば、前記タンパク質は、N-および/またはO-グリコシル化、リン酸化、および/またはプレニル化されていてもよい。
【0126】
「巨大分子」および「鎖状分子」という用語は、考慮される分子が複数の同一または関連する構築ブロックで作製されていると捉えることができることを示すために使用される。「鎖」という用語はさらに、分子の線形トポロジーを示唆しており、構造生物学の分野で周知のように、生物学的起源の鎖分子が、線形の一次構造を有する一方で、定義された二次構造および三次構造を仮定し得ることを認めるものである。
【0127】
構築ブロック間の接合の化学物質に関して、分子は、ポリマー、重縮合物、およびそれらの組み合わせを含む。重縮合物は、モノマーから形成される鎖分子であり、形成中に、より具体的には、隣接する2つの構築ブロック間の結合が形成されるときに、水が排出される。これは、例えば、ポリペプチドが遊離アミノ酸から形成される場合、およびポリペプチドが生細胞内のリボソームにおいて組み立てられる場合、ポリペプチドに適用される。
【0128】
分子量は、特に限定されることはなく、構築ブロックの数も、特に限定されることはなく、2、3、4、5、6、7、8、または9もの低さであり得る。より一般的に言えば、構築ブロックの数の一般的な範囲は、10~100000、例えば、50~1000である。好ましい分子量範囲は、1kDa~10MDaであり、これらの範囲外の値も同様に意図的に想定されており、例えば、染色体を開裂する場合、分子量範囲は、例えばヒト染色体1の場合、約2×10MDaまでに及ぶ。
【0129】
さらなる好ましい実施形態では、前記少なくとも1個の分子の少なくとも1個の共有結合を開裂するさらなる手段を、前記少なくとも1個の分子と接触させ、前記さらなる手段は、好ましくは、酵素、化学物質、および/または触媒である。化学物質は、酸(例えば、HCl、HNO、HSO、およびHIO)および塩基(例えば、NaOHおよびKOH)などの技術的に確立された化学物質を含む。有用な触媒は、酵素に加えて、以下の非酵素触媒を含む:スルホン化炭素質表面、金属酸化物、H型ゼオライト、Zn2+およびMg2+などの金属イオン。
【0130】
この実施形態で列挙された手段を完全に回避することが本発明によって実現されることを認識しつつも、調整または強化された適用のために、新たに発見された「磁気誘導開裂」と技術的に確立された開裂手段との組み合わせが有益であり得ると考えられる。
【0131】
より好ましい実施形態では、前記酵素は、前記分子がポリペプチド、タンパク質、またはペプチドである場合、プロテアーゼであり、前記分子が核酸またはオリゴヌクレオチドである場合、ヌクレアーゼであり、前記分子がリボ核酸またはオリゴリボヌクレオチドである場合、リボヌクレアーゼであり、前記分子がオリゴ糖または多糖である場合、サッカリダーゼまたはグリコシダーゼである。好ましいプロテアーゼは、トリプシン、LysC、GluC、AspN、ArgC、およびキモトリプシンを含む。
【0132】
留意すべきは、前記分子が、アミノ酸、ヌクレオチド、および糖類の任意の組み合わせを含み得ることである。例えば、これは、ペプチド性部分またはタンパク質性部分と、グリコシド結合などによって前記部分に結合した糖類との両方を含み得る。例は、グリコシル化タンパク質である。グリコシル化タンパク質の断片化は、糖類の除去もしくは断片化および/またはペプチド性部分もしくはタンパク性質部分の断片化を含み得るか、またはこれらからなり得る。断片化が、先に開示されているさらなる手段によって改善または調節される限り、なかでも、グリコシダーゼが用いられ得る。
【0133】
先のさらなる開裂手段と組み合わせてもよいがそうでなくてもよい別の好ましい実施形態では、非磁性ビーズが、反応混合物、例えば、前記溶液または懸濁液に添加され得る。そのような非磁性ビーズは、磁性体に任意選択的に含まれる粒子とは異なり、さらに、分析で一般的に使用される常磁性ビーズとは異なる。非磁性ビーズは、セラミックビーズ、ポリマービーズ、ガラスビーズ、または金属ビーズであり得、金属は、非磁性金属である。サイズに関して、これらは、好ましくは、1μm~5mmの間、例えば、0.1mm~2mmの間の範囲にある。また、前記非磁性粒子は、磁性体または磁石のサイズと比較して同じまたは同様のサイズ範囲を有することが好ましい。
【0134】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、そのようなビーズは、少なくとも1個の磁性体の作用によって動き回る際にせん断力を発揮することができ、次いで、そのせん断力は、前記少なくとも1個の共有結合の開裂を促進する。また、非磁性粒子が開裂すべき分子の運動を制限することによって、前記分子と磁性体との衝突の確率(換言するなら、単位時間当たりの衝突数)が増加すると考えられる。これによって、本発明の方法の収量または性能が上がる。
【0135】
さらなる好ましい実施形態では、不活性粘性液体および/またはゲル、例えば、ポリアクリルアミドゲルまたはアガロースゲルが前記サンプルに添加される。特定の理論に縛られることを望むものではないが、断片化すべき分子(複数可)をゲルまたは粘性液体に埋め込むことは、磁性体からまたは存在する場合に限り任意の非磁性粒子から前記分子(複数可)へのエネルギー伝達を向上する手段であると考えられており、それによって、収量が向上する。実施例1では、アガロースが使用される。
【0136】
本発明の第1の態様の方法のさらなる好ましい実施形態では、(a)溶液または懸濁液は、緩衝液または体液などの液体サンプルであり、分子は、核酸であり、(b)溶液または懸濁液は、飲料水またはプールの水であり、分子は、毒素などの巨大分子汚染物質であり、(c)溶液または懸濁液は、下水であり、分子は、抗生物質またはペプチドホルモンなどの生体分子であり、(d)溶液または懸濁液は、食品または飲料であり、分子は、グルテンであり、(e)溶液または懸濁液は、タンパク質、ポリペプチドおよび/もしくはペプチド、増殖培地用のタンパク質性原材料、および/またはシャンプー、コンディショナーもしくは石鹸などのパーソナルケア製品用のタンパク質性原材料を含み、分子は、前記またはタンパク質、ポリペプチドおよび/もしくはペプチドであり、(f)溶液または懸濁液は、巨大分子毒素を含み、分子は、前記巨大分子毒素であり、あるいは(g)溶液または懸濁液は、不所望な酵素活性を含み、分子は、前記酵素活性を呈するタンパク質である。
【0137】
これらの好ましい実施形態は、大規模なプロセスが本発明の方法によってどれほど改善しやすいかを示す。
【0138】
特に、それらの技術的に確立された実装形態では、核酸含有量を減少させるためのプロセスは、一般的に、UV光またはフィルタリングを必要とする。これは、本発明のプロセスによって回避することができる。核酸含有量の減少は、長い核酸、特に、コード配列を含むものを指すと理解される。そのような長い核酸を本発明の方法で断片化することによって、より短い断片が得られ、この方法を微調整することによって、断片の平均長を制御することができる。長い核酸とは対照的に、断片は、通常、緩衝液などの組成物において許容され得る。核酸は、DNAおよびRNAを含む。
【0139】
試薬および緩衝液の核酸汚染が不所望である例示的な分野は、法医学である。実施例1は、DNAの断片化を示す。
【0140】
衛生および健康安全の確立された基準を満たす飲料水およびプールの水を提供するためには、典型的には、塩素またはオゾンなどの攻撃的な化学物質の使用が必要とされる。本発明は、そのような危険物質の取り扱いの省略を可能にする。
【0141】
多くの毒素、特に、ボツリヌス毒素、ジフテリア毒素、コレラ毒素、およびリシンなどの非常に毒性の高い化合物は、生物学的起源のものであり、本質的にタンパク質性である。本発明に従った「磁気誘導タンパク質分解」によるこれらの毒素の断片化は、ヒトと接触させるべき材料または組成物においてそれらが潜在的に存在することから生じるリスクを制御する好都合な手段である。原理の証明に関しては、実施例4を参照し、これは、本発明によって処理されると酵素の活性が消失することを示す。
【0142】
以下のさらなる態様がそれに関連する:
第2の態様では、本発明は、緩衝液中の核酸含有量を減少させる方法であって、前記方法が、先に開示されている第1の態様の方法を含み、前記緩衝液が、前記溶液または懸濁液である、方法を提供する。好ましくは、前記核酸は、長い核酸、すなわち、1つ以上のコード配列を含む核酸である。
【0143】
第3の態様では、本発明は、溶液または懸濁液中に存在する不所望な酵素活性を減少させる方法であって、前記方法が、先に開示されている第1の態様の方法を、前記酵素活性を含む前記溶液または懸濁液に適用することを含む、方法を提供する。実施例4を参照されたい。
【0144】
第4の態様では、本発明は、巨大分子毒素を含む溶液または懸濁液を解毒または滅菌する方法であって、前記方法が、第1の態様の方法を、巨大分子毒素を含む前記溶液または懸濁液に適用することを含む、方法を提供する。
【0145】
好ましくは、第2、第3、および第4の態様の前記方法は、先にさらに定義されている連続方式で実施される。
【0146】
第5の態様では、本発明は、少なくとも1個の分子中の少なくとも1個の共有結合を開裂するための変動磁場または振動磁場を生成するための磁性体および手段の使用を提供する。
【0147】
第1の態様の方法の好ましい実施形態は、必要な変更を加えて、第5の態様の使用に適用される。
【0148】
第6の態様では、本発明は、(a)導電体、好ましくは少なくとも1個のコイル、より好ましくはヘルムホルツコイル、(b)容器および/または容器アレイ、例えば、マイクロタイタープレート、ならびに(c)前記容器内の少なくとも1個の磁性体、または前記容器アレイ内の容器当たり少なくとも1個の磁性体を含むか、またはこれらからなり、
前記少なくとも1個の磁性体が、使用時に前記導電体によって、好ましくは前記導電体をコイルとして実装することによって、かつ前記容器または前記容器アレイが該コイル内に位置していることによって生成される磁場の影響下にあるように、要素(a)および(b)が構成されている、デバイスを提供する。
【0149】
そのようなデバイスは、第1の態様の方法に合わせて調整される。留意すべきは、別々のコイルが各容器もしくは容器アレイに近接して配置されるという要件、または前記容器それぞれがそれ自体のコイルによって取り囲まれるという要件がないことである。代わりに、前記容器アレイを収容するのに適切な寸法の単一のコイルが使用され得る。この文脈において好ましいのは、拡張された空間領域にわたって均一な磁場を生成する先に開示されているヘルムホルツコイルである。
【0150】
第1の態様の方法の好ましい実施形態は、これらが、導電体、容器(複数可)、および磁性体の詳細を提供する限り、必要な変更を加えて、第6の態様のデバイスに適用される。
【0151】
第6の態様のデバイスの好ましい実施形態では、前記デバイスは、制御ユニットをさらに備えるか、またはさらにこれからなり、前記制御ユニットは、第1の態様の方法を実施するように構成されている。
【0152】
特に好ましい実施形態では、前記制御ユニットは、ロードされたコンピュータプログラム製品を有し、このコンピュータプログラム製品は、第1の態様の方法を実施するための命令を含む。
【0153】
関連する態様では、本発明は、第1の態様の方法を実施するための命令を含むコンピュータプログラム製品を提供する。
【0154】
第6の態様の好ましい実施形態では、前記デバイスは、液体ハンドリングロボットに備えられている。
【0155】
これに関連するが、別の態様では、本発明は、第6の態様のデバイスを備える液体ハンドリングロボットを提供する。
【0156】
第7の態様では、本発明は、第1の態様の方法を実施するための、第6の態様のデバイスの使用を提供する。
【0157】
第8の態様では、本発明は、(a)導電体、好ましくは少なくとも1個のコイル、より好ましくはヘルムホルツコイル、(b)少なくとも2つの開口部を有する少なくとも1個の容器、および(c)少なくとも1個の磁性体を含むか、またはこれらからなり、
要素(a)、(b)、および(c)が、(i)前記少なくとも1個の磁性体が、使用時に前記コイルによって生成される磁場の影響下にあるように、かつ(ii)使用時に管状要素を通って流れる液体が前記磁性体と接触するように構成されている、デバイスを提供する。
【0158】
第1の態様の方法の好ましい実施形態は、これらが、導電体、管状要素、および磁性体の詳細を提供する限り、必要な変更を加えて、第8の態様のデバイスに適用される。
【0159】
例えば、第8の態様の前記デバイスは、好ましくは、前記デバイスの使用時に前記磁性体の運動を著しく制限することなく、前記磁性体を保持するフィルタ、メッシュ、膜もしくはスポンジ、または前記磁性体を前記反応器に接続する細線、フィラメント、電線もしくはばねを備え得る。
【0160】
該デバイスの特に好ましい実施形態は、分子量カットオフフィルタであるフィルタを含む。そのようなフィルタは、カットオフ未満の分子量を有する分子をすべて通過させながら、カットオフ超の分子量を有する物質をすべて保持する。そのような装備されたデバイスにサンプルを連続方式で通過させることによって、断片は、それらのサイズがカットオフ未満であるとフィルタを通過し、さらにより小さな断片へのさらなる断片化は生じないであろう。
【0161】
これは、断片サイズの狭い分布を得るために使用され得る。
第9の態様では、本発明は、第2、第3および第4の態様、ならびにそれに関連する態様のうちのいずれか1つの方法を実施するための、第8の態様のデバイスの使用を提供する。
【0162】
第10の態様では、本発明は、(a)容器および/または容器アレイ、(b)少なくとも1個の磁性体、好ましくは容器当たり少なくとも1個の磁性体、(c)導電体、ならびに(d)任意選択的に、第6の態様のデバイスを組み立てるための、および/または第1の態様の方法を実施するための指示を有するマニュアルを含むか、またはこれらからなる、キットを提供する。
【0163】
マイクロタイタープレートなどの技術的に確立されているアレイを含む任意の容器アレイが使用され得ると理解される。アレイは、二次元(例えば、8×12、ならびに例えば384および1536個の容器を有するより高密度の既知のマイクロタイタープレート)または一次元(「ストリップ」と称される)、例えば、8または12個の容器を有するものであり得る。
【0164】
第1の態様の方法の好ましい実施形態は、これらが、導電体、容器(複数可)、および磁性体の詳細を提供する限り、必要な変更を加えて、第10の態様のキットに適用される。
【0165】
関連する態様では、(a)の容器または容器アレイの代わりに管状要素などのフロースルー反応器を備えるキットが提供される。
【0166】
これらのキットは、先にさらに開示されているように、ユーザが本発明のデバイスを組み立てることを可能にする構成要素を提供する。また、キットは、前記構成要素が別々に提供されることに基づいて、ユーザにある程度の柔軟性を与えるか、または本発明の所望の用途の要件に適合した調整されたデバイスを組み立てることを可能にする。
【0167】
好ましい実施形態では、前記キットは、先に定義されている溶液または懸濁液を調製するための1つ以上の緩衝液をさらに含むか、またはさらにこれらからなる。
【0168】
さらなる好ましい実施形態では、前記キットは、タンパク質、酵素、化学物質、および触媒から選択される1つ以上のものをさらに含むか、またはさらにこれらからなる。
【図面の簡単な説明】
【0169】
図1】第1レーン:100bp DNAラダー。左側:酵母は煮沸しただけであった。DNAはポケットに残り、アガロースゲルに移動しなかった。右側:酵母は磁気断片化で処理した。ポケット内のシグナルが減少し、DNA断片の暗影(cloud)がゲル内で観察できる。
図2】マーカー:PageRuler(商標)Plus染色済みタンパク質ラダー。「断片化」:磁気断片化によって処理されたタンパク質。CA:炭酸脱水酵素。BSA:ウシ血清アルブミン。NIST:NISTヒト抗体。GP:グリコーゲンホスホリラーゼ。
図3】SDS-PAGEゲル(実施例3)
図4】アガロースゲル(実施例3)
図5】炭酸脱水酵素の開裂(SDS-PAGE)
図6】サンプルのSDS-PAGE。マーカー:Page Ruler Plus。すべてのサンプル#1~#12について、サンプル「開始」と比較した場合に、無傷の炭酸脱水酵素の量がより少ないことが観察される。炭酸脱水酵素の濃度は、磁気開裂に基づいて低下した。
【実施例
【0170】
実施例は、本発明を説明するものである。
実施例1
DNAの磁気断片化
材料
100μgのタンパク質を含有する新鮮なS.セレビシエ(S.cerevisiae)ペレットをすべての実験に使用した。円筒形の2mm×2mmのサマリウムコバルト磁石を磁性体として使用した。ゲルは、Nippon Geneticsのミドリグリーン(MG10)で染色した。1×TAEは、50×TAE(200mlのHO中に入った48.44gのTris、12.1mlの酢酸、3.7224gのEDTA)からの希釈液によって調製した。100bp DNAラダーは、Nippon Genetics(MWD100)から使用した。0.2gのクレゾールレッド(114472-5G)+9mlのグリセロール(G6279-500ML)+21mlのHOを混合することによって、6×DNAローディング緩衝液を調製した。ゲル調製のためのアガロースは、Nippon Geneticsから購入した(Ag01;#D00248)。
【0171】
方法
アガロースゲルは、煮沸によって、1.2gのアガロースを60mlの1×TAE中で希釈することで調製した。溶液が冷めた後に、5μlのミドリグリーンを添加し、小さなゲルを注いだ。サンプル調製物は、常に100μgの酵母S.セレビシエ細胞を用いて調製した。細胞を、100μlのHO、pH7で可溶化し、95℃および1000rpmで10分間煮沸した。磁気断片化処理のために、サマリウムコバルト磁石を加え、細胞を、160Hzの周波数の磁場において、約1mTの磁束密度で4時間さらにインキュベートした。2μlの6×ローディングダイを10μlの各サンプルに添加し、アガロースゲルにロードした。DNAラダーサンプルを直接的にロードした。ゲルを100Vで約1時間泳動した。
【0172】
結果
図1およびその説明を参照されたい。
【0173】
考察
煮沸されているがそれ以外は未処理の酵母DNAは、大き過ぎるため、期待通りにアガロースゲルに移動することができない。それぞれのレーンは、DNA断片がないように見えるため、酵母のゲノムDNAを使用してDNA断片化を示すことができる。磁気断片化による処理後に、200~1500bpの長さの様々なサイズの断片の範囲を示す暗影がDNAゲルにおいて見られる。
【0174】
実施例2
タンパク質の磁気断片化
材料
炭酸脱水酵素(CA、sol.02.04.19)、BSA(BioRad、64124165)、NIST mAb(14HBD-D-002、sol.16.02.19)、およびグリコーゲンホスホリラーゼ(GP、sol.25.03.19)を断片化実験に使用した。PageRuler(商標)Plus染色済みタンパク質ラダー、10~250kDaをマーカーとして使用した(Thermo Scientific(商標)、11832124)。円筒形の3mm×3mmのNdFeB磁石を磁性体として使用した。PAAゲルをゲル電気泳動に使用した(BioRad Criterion Midi、64316288)。4×Laemmliサンプル緩衝液(BioRad、64172364)を使用して、ゲル電気泳動のためのサンプルを調製した。1×泳動緩衝液(25mMのTris、0.1%のSDS、192mMのグリシン;BioRad、20200415)を電気泳動中に使用した。ゲルをクマシーブリリアントブルーR-250(BioRad 64105295)によって染色した。ゲルを脱色するために、10%の酢酸(BioRad、20200420)を使用した。
【0175】
方法
超純水中に入った1μg/μlの濃度の100μgのタンパク質を、120Hzの設定値によって、約1mTの磁束密度で、1cmの内径に200回の巻線を有する単一コイルセットアップにおいて、単一のエッペンドルフ1.5mL容器について、18時間、磁気断片化によって処理した。15μgのタンパク質を含有する15μlの溶液を各5μlの4×ローディングダイ(Laemmli緩衝液)と混合し、合計20μlをPAAゲルにロードした。SDS-PAGEは、200Vで40分間実施した。クマシーブリリアントブルー溶液を使用してゲルを1時間染色した。脱色は、脱色溶液を用いて電子レンジにおいて440Wで行い、10分間加熱し、1分間冷却し、次いで、水で濯いだ。このサイクルを1回繰り返した。
【0176】
結果
図2を参照されたい。
【0177】
考察
すべてのタンパク質は、明らかに減少したシグナルを示し、わずかなシグナルしか処理後に残っていない。これは、既存のタンパク質の断片化および除去を明確に示す。生成された断片は、ペプチドがSDS-PAGEで十分に染色されていないため、期待通りにはっきりと見ることはできない。
【0178】
実施例3:幅広いパラメータにわたって同じパラメータを使用した異なる化合物クラスの断片
材料
パリレンコーティングを有するネオジム永久磁石を使用した(円筒形;2mm×2mm)。さらなる非磁性体には、シリカビーズ(直径1mm)を使用した。SDS-PAGE分析のための試薬は、BioRadによって提供された:Criterion Midi Gelをゲル電気泳動に使用し、タンパク質ローディングダイは、4×Laemmliサンプル緩衝液であり、ゲルのための染色緩衝液は、クマシーブリリアントブルーR-250であった。泳動緩衝液は、25mMのTris、0.1%のSDS、および192mMのグリシンで自作し、脱色緩衝液は、脱イオン水中に入った10%の酢酸であった。タンパク質サイズマーカーとしては、Thermo FisherのPage Ruler Plusを使用した。
【0179】
DNAゲル分析のための試薬は、Nippon Geneticsによって提供された:アガロースゲルのためのアガロース、DNAのための蛍光色素としてのミドリグリーン。DNAローディング緩衝液は、0.2gのクレゾールレッドおよび9mlのグリセロールで自作した。泳動緩衝液は、自作の50×TAE緩衝液(200mlのHO中に入った48.44gのTris、12.1mlの酢酸、3.7224gのEDTA)から希釈した1×TAE緩衝液であった。DNA断片化を示すために、自社製の酵母ペレット(OD600=0.6の超純水中に入った1mlのS.セレビシエ溶液に由来)を使用した。タンパク質の断片化は、Sigma Aldrichの炭酸脱水酵素(CA)を用いて実証した。
【0180】
ヘルムホルツコイルセットアップ(円周440mm、コイルの高さ15mm、70回の巻線、6層、1層当たり12回の巻線)を使用して、外部の振動磁場を生成した。定義された周波数で方形波を作成するために、オンライントーンジェネレータ(https://onlinetonegenerator.com/)をアンプ(SMSL SA-50 2×50W)と組み合わせて使用した。
【0181】
方法
電界強度の範囲で断片化を実証するために、3つの周波数を選択した:70Hz、100Hz、130Hz。
【0182】
周波数の設定値当たり3つの標準酵母ペレットを使用して、DNAサンプルを処理した。ペレットを、100μlの超純水に再懸濁し、0.5mlのスクリューキャップ管に移し、1個の磁石および5個のさらなる非磁性体(先を参照)を加えた。
【0183】
タンパク質サンプルを処理するために、周波数の設定値当たり100μlの超純水において各25μgのCAの3つのアプローチを行い、1個の磁石および5個のさらなる非磁性体を加えた。
【0184】
抵抗を決定するために、ヘルムホルツコイルと直列に接続された長さ2.6mのケーブルを測定したところ、0.5オームであった。
【0185】
各実験の前に、ガウスメータを較正し、コイルの固定位置での磁場強度を測定した。その後、サンプルをコイルに配置し、プロセスを開始した。電圧結果をアンプで測定し、コイルの電圧をコイルの最初および最後の巻線において直接的に測定した。
【0186】
すべてのサンプルを2時間処理した。
測定値を記録し、以下の式を使用して電流を計算した(表1を参照):
I=V/R、ただし、R=0.5オーム
処理後に、20μlの炭酸脱水酵素サンプル(5μgの炭酸脱水酵素を含有する)を7μlの4倍タンパク質ローディングダイと混合し、1000rpmで10分間振とうしながら95℃で煮沸した。次いで、サンプルを、同じ手法で調製した投入サンプル(5μgの断片化されていない炭酸脱水酵素を含有する)と一緒にSDS-PAGEゲルにロードした。ゲル電気泳動は、200Vで40分間行った。20μlの酵母サンプルを、4μlの6倍DNAローディングダイとともに添加し、アガロースゲルに直接的にロードした。陽性対照については、S.セレビシエペレット(先のもの)を水に再懸濁し、1000rpmで振とうしながら95℃で10分間煮沸し、超音波処理した(10サイクル、30秒のオン/オフ、Diagenode Bioruptur)。陰性対照は、未処理の酵母DNAのサンプルであった(断片化または超音波処理なしで再懸濁した酵母20μl)。
【0187】
アガロースゲルの調製:
1.2gのアガロースを、完全に溶解するまで440Wの電子レンジで段階的に煮沸することによって、60mlの1×TAE緩衝液に再懸濁した。溶液が冷めた後に、5μlのミドリグリーンを添加し、12・6cmの寸法を有する小さなゲルを注いだ。電気泳動は、100Vで1時間行った。
【0188】
結果
【0189】
【表1】
【0190】
【表2】
【0191】
【表3】
【0192】
図3および4も参照されたい。
サンプルは、周波数の昇順でロードした。CA0は、開始サンプル、すなわち、記載されているヘルムホルツコイルでの処理前の炭酸脱水酵素である。これは、25kDa~35kDaの間に明確なバンドを形成する。CA1~CA9は、処理された炭酸脱水酵素サンプルである。ゲル内のバンドは消失している。
【0193】
サンプルは、周波数の昇順でロードした。酵母0は、開始サンプル、すなわち、記載されているヘルムホルツコイルでの処理前の酵母である。1つの明るいDNAバンドを見ることができ、期待通りにレーンのローディングバッグ(loading bag)に付着している。Y1~Y9は、処理された酵母サンプルである。各レーンは、レーンに分布する色あせた明るいDNA含有量を示す。DNA CO(対照)は、煮沸および超音波処理した酵母である。色あせたわずかだけ明るいDNA含有量をレーンにおいて見ることができる。
【0194】
考察
計算された磁束密度は、測定値と一致していた(表3を参照)。タンパク質の断片化は、周波数70Hz~130Hzの試験範囲(図3を参照)または磁束密度1.85mT~3.58mTの試験範囲でそれぞれ生じた。同じ範囲でDNAの断片化が生じた(図4を参照)。
【0195】
したがって、広範囲のパラメータにわたってタンパク質と同じ設定でDNAを断片化することができると結論付けることができる。
【0196】
実施例4~8:これらの実施例は、本発明の方法が、方法を制御するために使用され得る広範囲のパラメータにわたって上手く機能することを実証している。
【0197】
実施例4:異なる時間間隔における単一タンパク質の磁気開裂
材料
パリレンコーティングを有するネオジム永久磁石を使用した(円筒形;2mm×2mm)。さらなる非磁性体には、セラミックビーズ(直径1mm)を使用した。炭酸脱水酵素(CA)は、Sigma Aldrichによって提供された。ペプチドのクリーンアップには、PreOmicsのiST緩衝液を使用した(キットとして入手可能)。超純水(LC-MSグレード)は、Thermo Fisherによって提供された。
【0198】
ヘルムホルツコイルセットアップを使用して、外部の振動磁場を生成した。方形波を模倣するようにプログラムされたカスタマイズされた電源を使用した。
【0199】
SDS-PAGE分析のための試薬は、BioRadによって提供された:Criterion Midi Gelをゲル電気泳動に使用し、タンパク質ローディングダイは、4×Laemmliサンプル緩衝液であり、ゲルのための染色緩衝液は、クマシーブリリアントブルーR-250であった。泳動緩衝液は、25mMのTris、0.1%のSDS、および192mMのグリシンで自作し、脱色緩衝液は、脱イオン水中に入った10%の酢酸であった。タンパク質サイズマーカーとしては、Thermo FisherのPage Ruler Plusを使用した。
【0200】
方法
サンプル当たり、100μlの超純水中に入った50μgの炭酸脱水酵素を、1個の磁石および5個のさらなる非磁石体を使用して、ヘルムホルツコイルを有する0.5mlのスクリューキャップ管内で処理した(材料を参照)。電源は、以下の設定に設定した:
FreqGen:250000;PWM期間:8191;PWM値:4000(120Hzの周波数および1.4~1.6Vの電流に相当)。
【0201】
インキュベーション時間ごとに、サンプルの複製を作成し、以下のように分割した:
- サンプル#1および#2の場合、10分
- サンプル#3および#4の場合、30分
- サンプル#5および#6の場合、60分
- サンプル#7および#8の場合、120分
インキュベーション後に、10μlのサンプル#3~#8をSDSゲルにロードし、SDS-PAGEを200Vで40分間実施した。処理前の濃度を示すために、5μgの炭酸脱水酵素のサンプルもゲルにロードし、これは、10μl中で0.5μg/μl=5μgであった。図5を参照されたい。
【0202】
残りの溶液を100μlのSTOP緩衝液(PreOmics iSTキットを参照)とともに添加し、PreOmics iSTプロトコルに記載されているように、以下のペプチドのクリーンアップを実行した。溶出したペプチド溶液を、すべての液体が蒸発するまで45℃のSpeedVacにおいて乾燥させ、ペレットを16μlのLC-LOAD緩衝液において溶解させた(PreOmics iSTキットを参照)。2μlの溶解したペプチドをLC-MSにロードした。サンプルは、Thermo LTQ Orbitrap XLと組み合わされたThermoFisher Scientific Easy n-LC 1200システムで分析した。45分の勾配を適用して自社製のC18カラムにおいてペプチドを分離し、DDA Top 10法を使用してタンデム質量分析を実施した。デフォルト設定のMaxQuantソフトウェアを使用して、MS/MSデータを酵母データベースに対して検索した。
【0203】
結果
【0204】
【表4】
【0205】
考察
SDS-PAGE分析は、炭酸脱水酵素サンプルの入力濃度と比較して、断片化後の残留している無傷の炭酸脱水酵素を示す。断片化は、30分から始まり120分後に断片化が完了するまで、異なる時間内で生じることが実証された。
【0206】
ペプチドの分析は、全試験時間にわたって磁気開裂が生じたことを示す。インキュベーションの各期間から、炭酸脱水酵素の開裂に由来するペプチドが明らかになった。
【0207】
実施例5:異なる周波数でのタンパク質の磁気開裂
材料
ネオジム永久磁石を使用した(円筒形;2mm×2mm)。ペプチドのクリーンアップには、PreOmicsのiST緩衝液を使用した(キットとして入手可能)。超純水(LC-MSグレード)は、Thermo Fisherによって提供された(pH7)。100μgのタンパク質を含有する自社製の酵母ペレット(OD600=0.6の超純水中に入った1mlのS.セレビシエ溶液に由来)を、完全なプロテオームを有するサンプルとして使用した。
【0208】
単一のコイルセットアップ(8個の小さなコイルが直列になっており、1個のコイルは1個の反応容器を含み、1個のコイルの直径は1.1cmであり、コイルは2.0cmの高さにまでなる)を使用して、外部の振動磁場を生成した。定義された周波数で方形波を作成するために、オンライントーンジェネレータ(https://onlinetonegenerator.com/)をアンプ(SMSL SA-50 2×50W)と組み合わせて使用した。
【0209】
方法
周波数の設定値当たり2つの標準酵母ペレットを使用した。ペレットを、1.5mlの反応容器中に入った100μlの超純水に再懸濁し、サンプル当たり1個の磁石を加えた。サンプルを、12Vおよび様々な周波数の設定値で、15分間、上記のコイルセットアップでインキュベートした。
【0210】
【表5】
【0211】
インキュベーション後に、PreOmics iST緩衝液を使用して、標準的なiSTプロトコルに従ってサンプルを精製した。
【0212】
溶出後に、サンプルをSpeedVac(45℃)において乾燥させ、40μlのLC-Load(PreOmics iST緩衝液)に再懸濁した。
【0213】
2μlの溶解したペプチドをLC-MSにロードした。サンプルは、Thermo LTQ Orbitrap XLと組み合わされたThermoFisher Scientific Easy n-LC 1200システムで分析した。45分の勾配を適用して自社製のC18カラムにおいてペプチドを分離し、DDA Top 10法を使用してタンデム質量分析を実施した。デフォルト設定のMaxQuantソフトウェアを使用して、MS/MSデータを酵母データベースに対して検索した。
【0214】
結果
【0215】
【表6】
【0216】
考察
実験は、タンパク質が異なる周波数で開裂されることを示した。120Hzおよび1000Hzの重なった周波数の場合、特に良好な結果が得られた。
【0217】
単一の周波数の場合、明らかにされたペプチドの量は、240Hz付近の周波数で特に高いことが見出された。
【0218】
実施例6:異なる数の磁石を使用したタンパク質の磁気開裂
材料
永久ネオジム磁石を使用した(球状、直径2mm、ニッケルめっき)。ペプチドのクリーンアップには、PreOmicsのiST緩衝液を使用した(キットとして入手可能)。超純水(LC-MSグレード)は、Thermo Fisherによって提供された(pH7)。自社製の酵母ペレット(OD600=0.6の1mlのS.セレビシエ溶液に由来)を、完全なプロテオームを有するサンプルとして使用した。
【0219】
単一のコイルセットアップ(8個の小さなコイルが直列になっており、1個のコイルは1個の反応容器を含み、1個のコイルの直径は1.1cmであり、コイルは2.0cmの高さにまでなる)を使用して、外部の振動磁場を生成した。定義された周波数で方形波を作成するために、オンライントーンジェネレータ(https://onlinetonegenerator.com/)をアンプ(SMSL SA-50 2×50W)と組み合わせて使用した。
【0220】
方法
磁石の数量当たり2つの標準酵母ペレットを使用した。ペレットを、1.5mlの反応容器中に入った100μlの超純水に再懸濁し、規定量の磁石をサンプルに加えた。
サンプル#1および#2:1個の磁石
サンプル#3および#4:2個の磁石
サンプル#5および#6:3個の磁石
サンプル#7および#8:4個の磁石
サンプルを、最大容量出力で、120Hzで、1時間にわたって、上記のコイルセットアップでインキュベートした。
【0221】
インキュベーション後に、PreOmics iST緩衝液を使用して、標準的なiSTプロトコルに従ってサンプルを精製した。
【0222】
溶出後に、サンプルをSpeedVac(45℃)において乾燥させ、40μlのLC-Load(PreOmics iST緩衝液)に再懸濁した。2μlの溶解したペプチドをLC-MSにロードし、受け取られたクロマトグラムを、MaxQuantを使用して分析した。
【0223】
結果
【0224】
【表7】
【0225】
考察
実験は、タンパク質が、異なる量の磁石で開裂されることを示した。4個の磁石の場合、特に良好な結果が得られた。
【0226】
実施例7:異なる磁石材料によるタンパク質の磁気開裂
材料
異なる永久磁石を使用した(方法:サンプルによる磁石を参照)。ペプチドのクリーンアップには、PreOmicsのiST緩衝液を使用した(キットとして入手可能)。超純水(LC-MSグレード)は、Thermo Fisherによって提供された(pH7)。自社製の酵母ペレット(OD600=0.6の1mlのS.セレビシエ溶液に由来)を、完全なプロテオームを有するサンプルとして使用した。
【0227】
単一のコイルセットアップ(8個の小さなコイルが直列になっており、1個のコイルは1個の反応容器を含み、1個のコイルの直径は1.1cmであり、コイルは2.0cmの高さにまでなる)を使用して、外部の振動磁場を生成した。定義された周波数で方形波を作成するために、オンライントーンジェネレータ(https://onlinetonegenerator.com/)をアンプ(SMSL SA-50 2×50W)と組み合わせて使用した。
【0228】
方法
磁石の種類当たり2つの標準酵母ペレットを使用した。ペレットを、1.5mlの反応容器中に入った100μlの超純水に再懸濁し、サンプル当たり1個の磁石を加えた。サンプルを、最大容量で、120Hzで、1時間にわたって、上記のコイルセットアップでインキュベートし、磁石を以下のように分割した:
サンプル#1+#2:2×2mmのネオジムディスクN35
サンプル#3+#4:2×2mmのネオジムディスクN42
サンプル#5+#6:2×2mmのSaCoディスク0.11kgプル
サンプル#7+#8:3x2mmのSaCoディスク0.19kgプル
インキュベーション後に、PreOmics iST緩衝液を使用して、標準的なiSTプロトコルに従ってサンプルを精製した。
【0229】
溶出後に、サンプルをSpeedVac(45℃)において乾燥させ、40μlのLC-Load(PreOmics iST緩衝液)に再懸濁した。
【0230】
2μlの溶解したペプチドをLC-MSにロードし、受け取られたクロマトグラムを、MaxQuantを使用して分析した。
【0231】
結果
【0232】
【表8】
【0233】
考察
実験は、タンパク質が、異なる磁石で開裂されることを示した。特に良好な結果は、サマリウムコバルト磁石、3×2mm、0.19kgプルで得られた。
【0234】
実施例8:異なる磁石材料、形、サイズ、およびコーティングによるタンパク質の磁気開裂
材料
異なる永久磁石を使用した(方法:サンプルによる磁石を参照)。ペプチドのクリーンアップには、PreOmicsのiST緩衝液を使用した(キットとして入手可能)。超純水(LC-MSグレード)は、Thermo Fisherによって提供された(pH7)。自社製の酵母ペレット(OD600=0.6の1mlのS.セレビシエ溶液に由来)を、完全なプロテオームを有するサンプルとして使用した。
【0235】
単一のコイルセットアップ(8個の小さなコイルが直列になっており、1個のコイルは1個の反応容器を含み、1個のコイルの直径は1.1cmであり、コイルは2.0cmの高さにまでなる)を使用して、外部の振動磁場を生成した。定義された周波数で方形波を作成するために、オンライントーンジェネレータ(https://onlinetonegenerator.com/)をアンプ(SMSL SA-50 2×50W)と組み合わせて使用した。
【0236】
方法
磁石の種類当たり2つの標準酵母ペレットを使用した。ペレットを、1.5mlの反応容器中に入った100μlの超純水に再懸濁し、サンプル当たり1個の磁石を加えた。サンプルを、最大容量で、120Hzで、1時間にわたって、上記のコイルセットアップでインキュベートし、磁石を以下のように分割した:
サンプル#1+#2:ディスク磁石φ5mm、高さ5mm、フェライト
サンプル#3+#4:球状、φ5mm、ネオジム、金めっき
サンプル#5+#6:ディスク磁石、φ3mm、高さ1mm、ネオジム、パリレンコーティング
サンプル#7+#8:ディスク磁石、φ5mm、高さ5mm、ネオジム、テフロン(登録商標)被覆
サンプル#9+#10:球状φ3mm、ネオジム、クロムめっき
サンプル#11+#12:ディスク磁石φ3mm、高さ1mm、ネオジム、ニッケルめっき
サンプル#13+#14:直方体/切石5×1.5×1mm、ネオジム、ニッケルめっき
サンプル#15+#16:TiNコーティングされたネオジムディスク、φ3mm、高さ1mm
サンプル#17+#18:球状φ2mm、ネオジム、ニッケルめっき
サンプル#19+#20:ディスクφ2mm、高さ2mm、ネオジム、ニッケルめっき
サンプル#21+#22:ディスクφ3mm、高さ2mm、ネオジム、ニッケルめっき
サンプル#23+#24:ディスクφ3mm、高さ3mm、ネオジム、ニッケルめっき
インキュベーション後に、PreOmics iST緩衝液を使用して、標準的なiSTプロトコルに従ってサンプルを精製した。
【0237】
溶出後に、サンプルをSpeedVac(45℃)において乾燥させ、40μlのLC-Load(PreOmics iST緩衝液)に再懸濁した。
【0238】
2μlの溶解したペプチドをLC-MSにロードし、受け取られたクロマトグラムを、MaxQuantを使用して分析した。
【0239】
結果
【0240】
【表9-1】
【0241】
【表9-2】
【0242】
考察
実験は、タンパク質が、異なる磁石で開裂されることを示した:異なるサイズ、異なる材料、異なる形、および異なるコーティング。特に良好な結果は、ネオジムディスク磁石、3×1mm、TiNコーティングで得られた。
【0243】
実施例9:異なる波形を使用した磁気開裂
材料
パリレンコーティングを有するネオジム永久磁石を使用した(円筒形;2mm×2mm)。非磁性体として、1mmのシリカビーズを使用した。ヘルムホルツコイルを使用して、外部の振動磁場を生成した。定義された周波数で異なる波形を作成するために、オンライントーンジェネレータ(https://onlinetonegenerator.com/)を使用した。
【0244】
SDS-PAGEのための材料は、Biorad(Criterion Midi Gel;4×Laemmliサンプル緩衝液;クマシーブリリアントブルーR-250)およびThermo Fisher(Page Ruler Plus)から購入した。ゲルを泳動させるために、自作の緩衝液を使用した(25mMのTris、0.1%のSDS、192mMのグリシン)。着色ゲルを10%の希釈酢酸で脱色した。
【0245】
方法
サンプル当たり20μgの炭酸脱水酵素を、0.5mlのスクリューキャップ管内で、50μlの超純水(LC-MSグレード、Fisher Scientific)において処理した。サンプル当たり1個の磁石および5個の非磁性体を加えた。サンプルは、ヘルムホルツコイル内に配置された容器内で、それぞれ90分間、110Hzで、各波形について3重に処理した。異なる波形を以下のように適用した:
サンプル#1~サンプル#3:方形波関数
サンプル#4~サンプル#6:正弦関数
サンプル#7~サンプル#9:鋸歯状関数
サンプル#10~サンプル#12:三角関数
処理後に、20μlのサンプル(最初に使用した炭酸脱水酵素8μgに相当)を7μlのLaemmliサンプル緩衝液と混合し、1000rpmで10分間振とうしながら95℃で煮沸し、SDSゲルにロードした。最初に使用した開始量の炭酸脱水酵素に対応する別のサンプルを同じ手法で調製した。このいわゆる「開始」サンプルもゲルにロードした。SDS-PAGEは、200Vで40分間実施した。
【0246】
結果
図6を参照されたい。
【0247】
考察
この実験は、タンパク質の磁気開裂を異なる波形で行うことができることを実証している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】