(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】列車の補助的なエネルギーの生成および貯蔵
(51)【国際特許分類】
B60L 7/24 20060101AFI20230608BHJP
F16D 61/00 20060101ALI20230608BHJP
F16D 65/12 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
B60L7/24 D
F16D61/00
F16D65/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568947
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(85)【翻訳文提出日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 US2020049251
(87)【国際公開番号】W WO2021230898
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520188271
【氏名又は名称】エコリューション ケイダブリュエイチ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Ecolution kWh, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テン-ゴーチエ,ジョニー
(72)【発明者】
【氏名】メディナ テン,ヨハンヌ,ジー.
【テーマコード(参考)】
3J058
5H125
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA62
3J058AA87
3J058AB19
3J058BA78
3J058CB22
3J058CD26
3J058CD28
3J058CD30
3J058CD33
3J058FA21
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125CB02
5H125CB07
5H125FF07
(57)【要約】
本発明は、列車の運転による補助的なエネルギー生成に関し、特に、発電機と組み合わせたディスクブレーキロータの回転に関連したエネルギーの生成に関する。ディスクブレーキロータの回転によって、発電機に供給される回転エネルギーが発生する。発電機は、そのエネルギーを貯蔵用として一連のバッテリーに送る。バッテリーは、列車の台枠内および/または列車の車両自体の中に格納されていてもよい。列車からバッテリーを取り外すことによって、あるいは、列車の車両または台枠に付随する複数のコンセント、ソケットまたはコネクタを介して、バッテリーからのエネルギーを利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の台車内の複数の車軸に複数のディスクブレーキを有する前記列車においてエネルギーを発生させるためのシステムであって、
周縁と、その周縁のまわりに配置された複数のコネクタと、を有するディスクブレーキロータと、
発電機と、
前記列車の前記台車内で前記発電機を位置決めするための支持枠と、
前記ディスクブレーキロータに接した前記複数のコネクタに前記発電機を機械的に接続するための連結器と、を備え、
前記複数のコネクタは一連の溝を含み、前記連結器は、前記溝と噛み合わせるための複数の歯を有する連結器部材を含む、システム。
【請求項2】
列車の台車内の複数の車軸に複数のディスクブレーキを有する前記列車においてエネルギーを発生させるためのシステムであって、
周縁と、その周縁のまわりに配置された複数のコネクタと、を有するディスクブレーキロータと、
発電機と、
前記列車の前記台車内で前記発電機を位置決めするための支持枠と、
前記ディスクブレーキロータに接した前記複数のコネクタに前記発電機を機械的に接続するための連結器と、を備え、
前記連結器は、前記ディスクブレーキロータの円周の少なくとも一部のまわりに配置されたチェーンと、前記チェーンと噛み合わせるための複数の歯を有する連結器部材と、を含む、システム。
【請求項3】
列車の台車内の複数の車軸に複数のディスクブレーキを有する前記列車においてエネルギーを発生させるためのシステムであって、
周縁と、その周縁のまわりに配置された複数のコネクタと、を有するディスクブレーキロータと、
発電機と、
前記列車の前記台車内で前記発電機を位置決めするための支持枠と、
前記ディスクブレーキロータに接した前記複数のコネクタに前記発電機を機械的に接続するための連結器と、を備え、
前記支持枠は、前記複数の車軸に平行にのびる一対のロッドと、前記ディスクブレーキロータに近接して前記2本のロッドの間に設けられた横枠部材と、を含む、システム。
【請求項4】
列車の台車内の複数の車軸に複数のディスクブレーキを有する前記列車においてエネルギーを発生させるためのシステムであって、
周縁と、その周縁のまわりに配置された複数のコネクタと、を有するディスクブレーキロータと、
発電機と、
前記列車の前記台車内で前記発電機を位置決めするための支持枠と、
前記ディスクブレーキロータの円周の少なくとも一部のまわりに配置されたチェーンと、を備え、前記ディスクブレーキロータは、前記複数のコネクタと前記チェーンと噛み合わせるための複数の歯を有する連結器部材を留める、システム。
【請求項5】
列車の台車内の複数の車軸に複数のディスクブレーキを有する前記列車においてエネルギーを発生させるためのシステムであって、
周縁と、その周縁のまわりに配置された複数のコネクタと、を有するディスクブレーキロータと、
発電機と、
前記列車の前記台車内で前記発電機を位置決めするための支持枠と、
前記ディスクブレーキロータの円周の少なくとも一部のまわりに配置されたチェーンと、
前記発電機を連結器部材に機械的に接続している接続部材と、
を備え、
前記支持枠は、
前記複数の車軸に平行にのびる一対のロッドと、
前記ディスクブレーキロータに近接して前記2本のロッドの間に配置された横枠部材と、を含み、
前記ディスクブレーキロータは、前記複数のコネクタと前記チェーンと噛み合わせるための複数の歯がある前記連結器部材を留める、システム。
【請求項6】
前記発電機は、前記発電機を前記連結器に機械的に接続するための接続部材を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記ディスクブレーキロータの前記複数のコネクタに対して前記連結器を適所に保持するためのブラケットをさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記発電機によるエネルギーの生成を選択的に制御するクラッチをさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記横枠部材は、上枠部材と、下枠部材と、一対の端部材と、を含む、請求項3または5に記載のシステム。
【請求項10】
前記発電機は、前記発電機を前記連結器に機械的に接続するシャフトを備え、前記上枠部材と前記下枠部材のうちの少なくとも一方は、前記シャフトを回転可能に受けるための開口を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数のコネクタは、各々テーパ端を有する複数の細長い部材を含み、前記チェーンは、前記複数の細長い部材の前記複数のテーパ端と噛み合う、請求項2、4、5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記支持枠は、前記複数の車軸と平行にのびる一対のロッドと、前記ディスクブレーキロータに近接して前記2本のロッドの間に配置された横枠部材と、を含む、請求項1、2、4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記横枠部材は、上枠部材と、下枠部材と、一対の端部材と、を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記発電機は、前記発電機を前記連結器に機械的に接続するシャフトを備え、前記上枠部材と前記下枠部材のうちの少なくとも一方は、前記シャフトを回転可能に受けるための開口を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記発電機は一対の発電機であり、前記連結器部材は一対のスプロケットである、請求項1、2、4および5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記複数のコネクタは一連の溝を含む、請求項2~5のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年5月14日に出願された米国特許仮出願第63/024,888号の優先権の利益を主張するものであり、その開示内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
Erlstonらによる米国特許公開第2008/0078631号およびBodensteinらによる米国特許公開第2012/0091724号の文書および参考文献について、それらの内容全体を本明細書に援用する。
【0003】
本発明は、車両の運転による補助的なエネルギー生成に関し、特に、回転エネルギーを電気エネルギーに変換して貯蔵し、後から使用することができるようにするための発電機との組み合わせで、列車の動きによってエネルギーを生成して貯蔵することに関する。
【背景技術】
【0004】
鉄道系統には、米国内だけでも貨物や乗客の輸送用に約14万マイル(約22万5300km)の軌条がある。この広大な鉄道網は、米国本土で貨物(輸入品と輸出品の両方)を移動させるための効率的な方法になっている。2017年の統計によれば、年間で500万トンの貨物と8万5千人の乗客が列車で輸送されている。2018年現在、鉄道はトンマイル単位で貨物の総移動量の約28%を占め、乗客の移動距離は50万マイル(約80万5千km)を上回る。
【0005】
また、鉄道は通常、トラック輸送などの手段よりもエネルギー効率の高い貨物輸送方法であり、統計上、貨物列車では貨物1トンあたり平均約470マイル(約756.4km)になり得ることが示されている。その結果、比率としては高めであるにもかかわらず、鉄道による貨物の移動は、輸送関連の排出量では約2%を占めるにすぎない。このような理由から、特に連邦政府の予測では、今後数十年の間に貨物の輸送量が大幅に増加する可能性が高いことが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況であるにもかかわらず、鉄道会社は依然として、成功する上での困難と障害に直面している。特に、軌条は鉄道会社によって私的に所有されているため、これらの軌条を維持するためのコストは相当なものになり得る。最近の研究によれば、貨物鉄道会社は、資本支出およびメンテナンスに、収入1ドルに対して40セントよりも大きな金額(それぞれコストの約半分すなわち1ドルに対して約20セントを占める)を費やしている。これは、資本支出が平均で収入の約3%である他業種や製造業者よりも著しく高い。
【0007】
アムトラックやメトラなどの旅客鉄道についてみると、ほとんどの旅客鉄道会社は、利用する駅や軌条の大半を所有していない。また、設備の維持管理にも大きなコストがかかる。その結果、利幅があるとしても非常に低いことが珍しくない。旅客輸送の列車システムおよび企業の多くは、かなりの助成を受けており、他の形態の個人輸送と経済的に競争するのに苦労している。一例として、アムトラックは、1971年に発足して以来、毎年赤字である。
【0008】
鉄道は、より環境に優しい輸送手段であるが、他のタイプのエネルギーに関する地球規模の環境問題を考慮すると、よりクリーンなエネルギーを利用し、排出量を抑えるためにさらに努力をする必要性と需要が依然として存在する。
【0009】
したがって、本発明の目的は、列車の運転から副産物としてシームレスに電力を生成して貯蔵するための効果的かつ効率的なシステムおよび方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、列車の本来の動作を利用して、電力を発生させて貯蔵し、収入を生み出す方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、環境に優しい電力を発生させて貯蔵するために、列車を活用する方法を提供することである。
【0012】
本発明の上記の目的および特徴ならびに他の目的および特徴は、本明細書、図面および特許請求の範囲に照らして明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、列車の動作によってエネルギーを発生させることに関する。一実施形態では、本発明は、列車の台車における車軸に動作可能に取り付けられるエネルギー生成システムを備える。エネルギー生成システムは、列車の車軸に取り付けられたディスクブレーキロータまたは他の任意の回転部材に留められる運動伝達機構(チェーン、Vベルトまたはノッチ付きタイミング式ベルト、無段変速機、機械的歯車装置またはギアボックスまたは流体ベースのトルク変換器)を利用して、スプロケットおよびこれに付随するシャフトを用いて回転エネルギーを発電機に伝達する。その後、発電機が当該エネルギーを複数のバッテリーなどのエネルギー貯蔵ユニットに送る。別の実施形態では、スプロケットがディスクブレーキロータに直接留められる。ブラケットを利用して、スプロケットをディスクブレーキに対して適所に保持してもよい。あるいは、スプロケットをディスクブレーキキャリパーの上に配置してもよいおよび/またはディスクブレーキキャリパーに取り付けてもよい。
【0014】
バッテリーは、列車の貨車または台枠の下または内部および/または列車の車両それ自体に格納されていてもよい。ラックを利用して、バッテリーを垂直に積み重ねて格納量を増すことができるようにしてもよい。充電後にバッテリーを取り外すことによって、あるいは、機器や車両を接続して充電することができるようにするための車両に設けられたアダプタやコネクタを通じて、バッテリーに蓄えられたエネルギーを利用することができる。
【0015】
発電機を列車の台車内の適所に保持しやすくするために、支持枠を利用してもよい。支持枠には、対向する台車側枠部材の間にのびる一対のシャフトまたはロッドが含まれていてもよい。一対のシャフトに横枠部材が取り付けられまたは接続され、ディスクブレーキロータと平行にのびている。横枠部材は、上枠部材と、下枠部材と、車軸が中央の穴を通ってのびて中で自由に回転できるように一緒に取り付けられた一対の端部材と、を含んでもよい。枠部材には、シャフトを回転可能に受け入れる大きさの開口がある。開口内でのシャフトの回転を容易にするために、ブッシングを利用してもよい。発電機と枠部材の表面にあるかこれらに取り付けられたブラケット部材によって、発電機を取り外し可能に枠に接続することができる。
【0016】
本発明の追加の態様および利点については、以下でさらに説明するが、その一部は、以下の説明から明らかになるか、本発明の実施から学ぶことができる。
【0017】
本発明の上述したおよび/または追加の態様および利点は、添付の図面と組み合わせた実施形態の以下の説明から明白かつ容易に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、一対の車軸を有する列車の基本的な台車の側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す列車の台車および車輪の上面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す列車の台車および車輪の正面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す列車の台車に設置された本発明のエネルギー生成システムの上面図である。
【
図5】
図5は、
図4の線5-5に沿って切った列車の台車とエネルギー生成システムの断面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示す列車の台車とエネルギー生成システムの部分分解図である。
【
図7】
図7は、車軸に一対の車輪を有する本発明のエネルギー生成システムの正面斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す本発明のエネルギー生成システムの構成要素を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明のエネルギー生成システムの構成要素の上面図である。
【
図11】
図11は、スプロケットがディスクブレーキロータに直接留められた状態を示す、本発明のエネルギー生成システムの構成要素の別の実施形態を示す断面図である。
【
図12】
図12は、本発明のエネルギー生成システムと併用するためのクラッチの一実施形態の部分斜視図である。
【
図13】
図13は、スプロケットがディスクブレーキロータに直接留められており、チェーンを使用することを示す本発明のエネルギー生成システムの構成要素の別の実施形態を示す断面図である。
【
図14】
図14は、バッテリーの格納配置の一実施形態を列車の台枠とともに示す底面斜視図である。
【
図15】
図15は、ラックを利用するバッテリーの格納配置の別の実施形態の斜視図である。
【
図16】
図16は、バッテリーを格納するためのラックの一実施形態の斜視図である。
【
図18】
図18は、ラックの1つの棚に取り付け可能な複数のバッテリーを示す部分分解図である。
【
図19】
図19は、本発明のエネルギー生成システムの別の実施形態を示す斜視図である。
【
図20】
図20は、本発明のエネルギー生成システムの別の実施形態を示す斜視図である。
【
図21】
図21は、本発明のエネルギー生成システムの別の実施形態を示す斜視図である。
【0019】
上述した説明および図面は、単に本発明を説明するものであり、本開示を目の前にした当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、その変更および改変が可能であるため、本発明はこれらに限定されるものでない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は多くの異なる形で実施可能であるが、本開示は本発明の原理の例示として意図され、本発明を開示された実施形態に限定することを意図しない旨を理解した上で、具体的な実施形態を図面に示し、本明細書で詳細に説明する。
【0021】
図1~
図3を参照すると、現時点の先行技術で実現されているような列車の台車10の基本的な構成要素が、それぞれ軌条(図示せず)に適合する車輪14を有する一対の車軸12との関連で示されている。各々の車軸12と接して一対のディスク18があり、ディスク18には、キャリパが押しつけられたときに列車を停止または減速させるために、ディスクブレーキロータ16を取り付けることができるようになっている。台車10自体には、台車の横梁22によって互いに連結された一対の側枠部材20が含まれる。車軸12は、軸箱24を介して、台車の側枠部材20に対して回転可能に連結されている。
【0022】
軸箱24の底と側枠部材20の下面との間には、列車の台車10および台車に載っているものに対する一次サスペンションとして機能するように、各々の車輪に近接して一対のばね30が設けられている。台車の横梁22と接した状態で、空気ばね32としての二次サスペンション部材が図示されている。空気ばね32の上に揺れ枕34があり、揺れ枕34には、鉄道車両または台枠と接続するための心皿部材40を有する心皿36が含まれている。鉄道車両322または台枠320との接続を容易にするために、揺れ枕34の上からピン38がのびていてもよい。ここでは列車の台車の一実施形態を図示し、開示しているが、様々な部品または異なる数の車軸と車輪を有する他の列車の台車を使用してもよく、本発明の範囲から逸脱しないことが理解される。
【0023】
以下、
図4~
図10を参照すると、本発明のエネルギー生成システム100の一実施形態が、二対のディスクブレーキロータ116と、四対の発電機102と、支持枠104と、機械式連結器106と、チェーン108と、接続部材110とを有するものとして示されている。エネルギー生成システム100は、既存の台車または新しい台車とともに使用するために、列車の台車の枠に収まるように設計されている。ここではエネルギー生成システムを、車輪ごとのディスクブレーキとの関連で用いるように図示し、開示しているが、台車の選択されたディスクブレーキに使用してもよく、本発明の範囲から逸脱しないことが理解される。生じたエネルギーを、後で使用するためにエネルギー貯蔵システム310に送ってもよい。
【0024】
図10を参照すると、ディスクブレーキロータ116の一実施形態では、このディスクブレーキロータ116が、円周方向に溝124がある環状形のものとして示されている。ディスクブレーキロータ116は、車輪14の回転に伴って回転するように、車軸12に接続されたディスク18にかぶさって嵌まり、ディスク18に取り付けられる大きさと形状である。
【0025】
機械式連結器106は、円周方向に間隔をあけて複数の歯112が設けられたスプロケットすなわちギアとして示されている。複数の歯112は、ディスクブレーキロータ116の縁の周囲に配置されるローラーチェーン108の対応する開口128と噛み合い、回転を容易にする大きさである。チェーン108とディスクブレーキロータ116との機械的な接続を容易にするために、溝124を形成するスポークすなわち細長い部材120には、チェーン108のリンクの開口128と噛み合わせるためのテーパ端122が設けられている。さらに、ここではチェーンを図示し、開示しているが、Vベルトまたはノッチ付きタイミングベルト、無段変速機、機械的歯車装置またはギアボックス、あるいは流体ベースのトルクコンバータなどであるがこれらに限定されるものではない他の回転コンベアまたは運動伝達機構を利用してもよいことが理解される。また、ここではテーパ端を図示して開示しているが、チェーンまたは他の回転コンベヤを、摩擦もしくは他の既知のコネクタまたは接続方法によってディスクブレーキロータ116に留めてもよいことが理解される。特に、様々なコネクタを、ディスクブレーキロータ116の円周に沿って設けられたチャネル126の中に固定または配置することができる。さらに、ここではチェーン108を図示して開示しているが、
図13に示すように、機械式連結器106がチェーンを必要とせず、ディスクブレーキロータ116に形成された溝124に直接噛み合う形でもよいことが理解される。また、
図11に示すように、チェーン108を利用して、ディスクブレーキロータ116の回転とともに機械式連結器106を回転しやすくしてもよいことが理解される。
【0026】
また、ここではディスクブレーキを図示して開示しているが、車軸に取り付けられた円形または環状の他の部材を含むがこれらに限定されるものではない、列車の車軸に取り付けたり連結したりすることが可能な(すなわち、車輪と一緒に回転する)他の回転部材と本発明のエネルギー生成システムとを併用してもよいことが理解される。他の構成要素を用いる場合、本明細書で開示するようにエネルギーを発生させるために、機械式連結器を留めるようにカスタマイズしたり、チェーンまたは他の回転コンベヤを構成要素に巻き付けて、構成要素を留めることができるようにカスタマイズしたりすることも可能である旨が理解される。
【0027】
機械式連結器106は、シャフト110として示される接続部材に、当該接続部材が中心を通る形で接続されている。連結器106をディスクブレーキロータ116に対する適切な位置に維持するために、ブラケット140を使用してもよい。動作時のディスクキャリパと同様に、ブラケット140は、ディスクブレーキロータ116の表面に対して平行に保たれる。ディスクブレーキの動作を妨げないようにするために、連結器106とブラケット140は、ディスクブレーキロータ116のまわりでキャリパから離れて配置されている。
【0028】
再び
図7を参照すると、一対の側壁142によって内部に空洞が形成されたブラケット140が、ディスクブレーキロータ116にまたがって配置されている。側壁142には対向する穴144が貫通して設けられ、この穴にシャフト110の一部を挿入して連結器106が溝124と整列できるようになっている。このブラケットでは、一方の側壁だけに穴144が設けられていてもよいことが理解される。穴144にブッシングを挿入して、シャフト110を回転しやすくしてもよい。ここでは別個のブラケットを図示して開示しているが、スペースを節約したり取り付けやすくしたりするには、スプロケット自体に対して、あるいはスプロケットと噛み合わせるチェーンを通すことができるようにするために、キャリパをスプロケット用のブラケットの1つとして機能させてもよいことが理解される。
【0029】
シャフト110は、交流(「AC」)または直流(「DC」)のいずれかの形でエネルギーを発生させるための発電機102に機械的に接続されている。一実施形態では、発電機はオルタネータである。エネルギーは、列車の車両、台枠または台車の内外または車両のエネルギーシステム内のエネルギー貯蔵部品またはシステム310に伝送および/または貯蔵される。これには、オルタネータ/バッテリーバスへの給電および/または別個の車両電子回路への給電が含まれていてもよい。ここではディスクブレーキ1つあたり2つの発電機を示したが、ディスクブレーキ1つあたり1つ以上の発電機を利用してもよいことが理解される。
【0030】
ここで
図12を参照すると、望ましい場合または必要な場合にエネルギーを発生させるだけのために、エネルギー生成システム100にクラッチ160が備えられていてもよい。図示の確動クラッチ160には、シャフト110の端に設けられたジョー部材162と、発電機102用の従動軸166に配置された対応するジョー部材164とが含まれる。クラッチ160が噛み合うと、対応するジョー部材162、164が噛み合って、発電機102への回転運動の伝達が可能になる。噛み合いが解除されると、シャフト110は、エネルギーを発電機102に伝達せずに回転する。同様に、エネルギーの発生を電子的にシャントすることもできるため、エネルギーを発生させていないときの負荷は最小である。
【0031】
ディスクブレーキロータ116に対して発電機102を定位置に維持するために、支持枠104を利用してもよい。
図4、
図6および
図7を参照すると、列車の台車枠の側枠部材20の間に一対のロッド202が設けられた状態で、支持枠104の一実施形態が示されている。ロッド202は、穴206を有する対応のブラケット204を通っておよび/または側枠部材20自体の内側の一部に設けられた穴208を通って側枠部材20に接続されてもよい。ここではブラケットと穴を図示して開示しているが、他の既知の手段によってロッドまたは他の接続部材を側枠部材に取り付けるか相対させてもよいことが理解される。
【0032】
それぞれのディスクブレーキロータ116に近接して平行に一対の横枠部材210が設けられ、ロッド202に取り付けられるかロッド202に接続されている。設置を容易にするために、横枠部材210には、上枠部材212と、下枠部材214と、一対の端部材216とが含まれる。上枠部材212および下枠部材214には各々、対応する凹状の中央開口218が設けられ、車軸12が当該開口を通ってのびて自由に回転することができるようになっている。回転を容易にし、上下の枠部材を保護するために、中央の凹状の開口でブッシング部材を利用してもよい。
【0033】
上枠部材212および下枠部材214の1つ以上には円形の開口220が貫通して設けられ、シャフト110の一部を収容して開口220の中で自由に回転させることができるようになっている。シャフトの回転を容易にし、枠部材を摩損や磨耗から保護するために、ブッシングを利用してもよい。開口は、ブレーキディスクキャリパまたは他の列車部品と干渉しないように位置がずれている。列車の台車や台車内の列車の構成要素の特定の構造に応じて、枠部材内または枠部材間で、開口を移動させてもよいことが理解される。
【0034】
端部材216には各々、ロッド202またはその一部を貫通して受け入れる大きさと形状の開口222が形成されている。ロッド202が円形または弧状である場合、あるいは他の断面形状のロッドに対して望まれる場合、上枠部材212と下枠部材214の対向する角に切り取られた部分224によって形成される、対応する開口を利用することができる。枠部材212、214、216がロッド202のまわりで位置決めされると、ボルト、リベットまたは他のコネクタによって、これらに対応する貫通穴230および232を通して枠部材同士を固定することができる。また、溶接または他の既知の手段を用いて枠部材同士が固定されるおよび/または枠部材がロッドに取り付けられるか、あるいは接続されてもよいことが理解される。ここでは別個の部品として図示しているが、ロッドを挿入してロッドに取り付けるための開口を上枠部材と下枠部材に設けてもよく、これらの開口を、ロッドを列車の台車に設置する前に位置決めしてもよいことが理解される。
【0035】
エネルギー生成システム100を支持するために、発電機102を支持枠104に取り付けてもよい。支持枠が発電機に取り付けられている一実施形態を、ボルト246を用いて対応する穴244を介して枠部材212、214に取り付けるための一対の穴242が形成されたL字形ブラケット240を有するものとして
図6に示す。ここではブラケットをL字形でボルトを用いて取り付けられるものとして示したが、別の大きさと形状であってもよく、端部材と一体であっても、他の既知の手段を用いて端部材に接続されていてもよいことが理解される。
【0036】
ブラケットまたは接続部材250が発電機102と一体であってもよいし、ボルト、溶接または他の既知の手段を用いて発電機102に取り付けられていてもよい。ブラケット250には穴252があり、穴252は、ボルトを通して、ブラケット240、250、ひいては発電機102および枠部材212、214を一緒に固定することができるようにするために、穴248と整列される。
【0037】
さらに、列車の台車の構造次第では、発電機がディスクブレーキロータの位置からずれていてもよいことが理解される。発電機102がディスクブレーキロータ116とずれている一例が、発電機102の保持または発電機102への固定用のプレートまたはベース部材400を有するものとして示されている。プレート400は、ブラケット402を介してロッド202に取り付けられていてもよい。
【0038】
図20を参照すると、システムには、望ましい場合にスプロケット106とシャフト110から斜めになる位置に発電機102を取り付けることができるように、トランスファーケース410が含まれていてもよい。
図21は、トランスファーケース410とそれに取り付けられた発電機102がブレーキディスクローター116に対して垂直であることを示している。
【0039】
また、トランスファーケース410には、望ましい場合には減速比を変更するための歯車装置を含んでもよい。また、無段変速機または固定歯車式変速機を使用して、変化した速度に応じて減速比を変更してもよい。エネルギー生成システムと併用するための歯車系の一例を、シャフト410を中心に回転するとともに、シャフト110のまわりで回転する傘歯車408を発電機102に留める、第1の傘歯車406を有するものとして示す。スペースと望ましい出力に応じて、大きさ、タイプおよび数の異なる歯車を使用してもよいことが理解される。
【0040】
作動時、ディスクブレーキロータ116のスポーク120の1つ以上のテーパ端122は、チェーン108の開口に噛み合う。ディスクブレーキロータ116が回転すると、スプロケット106の歯112が動いてチェーン108の開口128から外れたり開口128と噛み合ったりするため、チェーン108、ひいてはスプロケット106とシャフト110も回転することになる。このように、車輪14が動くと、ディスクブレーキロータ116も動き、発電機102に向かうシャフト110が動くことで、列車に貯蔵されるエネルギーが発生する。望ましい場合、クラッチ160を利用して、それぞれの発電機102へのエネルギーの伝達を選択的に制御することができるようにしてもよい。
【0041】
エネルギーの発生量を増すか最適化するために、スプロケット106の大きさとディスクブレーキロータ116または他の回転構成要素との比を変更してもよいことが理解される。一例として、チェーン108が巻き付けられるディスクブレーキロータ116の直径とスプロケットまたは連結器106との1つの比は1:9であり、ディスクブレーキロータ116が1回転すると、それに取り付けられたスプロケット106およびシャフト110は9回転することになる。この比は、より高速(例えば、時速35マイルから時速65マイルの間(約56km/時から約104km/時))で走行する列車でのエネルギー発生量を増加させるために採用することができる。他の比では、使用する発電機のタイプや列車の平均速度を含む可変要素によって決定される理想的な比が異なるであろうことが理解される。
【0042】
エネルギー生成システム200で発生したエネルギーを、1つ以上のエネルギー制御ユニットまたは電気変換器に供給してもよい。その後、エネルギー制御ユニットまたは電気変換器が、列車の車両322および/または貨車または台枠320上の区分室または格納領域内にある複数のバッテリー310にエネルギーを伝達する。電気変換器およびシステムは、車両の状態、バッテリー充電レベル、バッテリーまたはデバイスのバッテリーへの引き込みおよび周囲条件に基づいて電気出力を調節し、エネルギー生成を強化する。様々な異なるバッテリーを利用することができるが、本発明と併用することが可能なバッテリーの一例として、蓄電容量5.3kWhのパナソニック(登録商標)バッテリーがあげられる。
【0043】
列車用のバッテリー格納配置の様々な実施形態を
図14~
図17に示す。図示のように、バッテリー310は、列車車両の台枠320の中または下および/または列車の車両322自体の中に格納されてもよいことが理解される。列車の台枠または貨車320の下に取り付けられるか配置される複数のバッテリー310の一実施形態を
図14に示す。片側21個ずつで合計42個のバッテリーを示したが、使用する特定の貨車とバッテリーに応じて、使用するバッテリーの個数と配置を変更してもよく、本発明の範囲から逸脱しないことが理解される。
【0044】
本発明のエネルギー生成システム100を有する列車の台車10に貨車320を解放可能に取り付けることができるように、貨車320には、その角のまわりに複数のツイストロック324がある。その後、台枠に貨物を積載してもよいし、台枠が乗客またはバッテリーを運ぶための列車の車両の一部であってもよい。台枠の上に載せることができる異なるタイプのコンテナの例として、ホッパ車、無蓋車、フラットカー、ボックスカー、リーファー、タンカー車などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
列車の車両322内のラック340に格納されているバッテリーの一実施形態を
図15~
図18に示す。ラック340には、棚の幅および/または奥行きに沿って水平にすることを含むがこれに限定されるものではない様々な構成でバッテリー310を格納するための任意の数のレベルまたは棚342が含まれていてもよい。
【0046】
ラック340には、貨車320の上部にボルト止めまたは他の方法で固定することができるようにするために、複数の穴346が設けられた足344が含まれていてもよい。格納量を増やすために、ラックの棚が様々な高さの層になるように、棚を異なるレベルに配置してもよい。複数の開口352が間隔をあけて形成された垂直支柱350があることで、バッテリー310を収容するために必要性または需要に応じて棚342を異なる高さに調整することができる。ラック340を支持するために、支柱350の間にラックの側面と背面にクロス部材354を用いてもよい。
【0047】
図16に示すラックの例には、バッテリーを
図16に示すように平らに格納することができるように密に配置された複数の棚が含まれている。列車の車両内部の高さ、バッテリーの特定の寸法と配置をはじめとする複数の要因に応じて、棚の配置と高さを変更してもよいことが理解される。
【0048】
バッテリー格納量を増加または最大化するために、ラックを複数列で配置して、列車の車両内に複数のラックを格納することができるようにしてもよい。再び
図15に示す実施形態を参照すると、台枠および/または列車の車両は、それぞれ合計432個のバッテリー用に、6つの棚にバッテリーを9個並べたラック4つを2列で収容することができる。バッテリーの蓄電容量を5kWhとすると、合計2,160kWhの蓄電量となる。なお、列車の1つの車両で車両自体および/または台枠の中にバッテリーを格納することができることを理解されたい。
【0049】
列車の移動時にバッテリー310を適所に保持するために、格納時にラック340の棚342に固定または取り付けてもよい。棚には、一連のブロックまたは保持部材374、376を、ねじ、ボルトまたは他のコネクタによって取り付けることができるようにする複数の開口370、372が、間隔をあけて設けられていてもよい。対応する保持部材または壁378がバッテリー310の一端からのび、保持部材374の対応する開口に取り外し可能に挿入するためのピンまたは他のコネクタ380を含んでいる。バッテリーの他端には、角が切り取られた部分が含まれていてもよく、これによって、保持部材376との接続用に、複数の穴384が間隔をあけて設けられたプレートまたは接続部材382を、そこまでのびるピンまたは支柱386と、ボルトまたは他のコネクタ392とに取り付けることができる。図示のように、プレート382には、バッテリー310の単一の角を取り付けるか、隣接するバッテリー310の対向する角を取り付けるかに応じて、2つまたは3つの穴384を含むことができる。
【0050】
列車の車両には、蓄積された電力を他のバッテリー、機器または機械に送ることができるように、バッテリーに接続するエネルギー分配システムを含んでもよいことが理解される。エネルギー分配システムには、バッテリー310から他のバッテリー、機器または機械に電力を転送するためのコネクタおよびアダプタが含まれていてもよい。再び
図15を参照すると、アダプタおよびコネクタ362、364、366は、列車の車両322の側面にはめることができるパネル360に含まれてもよい。アダプタおよびコネクタには、120Vのソケット362、220Vのソケット364、電気自動車のバッテリーの高速充電用の急速充電アダプタ366が含まれていてもよいが、これらに限定されるものではない。また、遠隔使用のために充電後にバッテリーを取り外して交換してもよいことが理解される。
【0051】
ソフトウェアアプリケーションを利用して、生成されてバッテリーに蓄積されるエネルギーの量を追跡してもよい。発生したエネルギーのうち列車で消費されるエネルギーの量についても、望ましい場合には追跡し、使用量をモニターして充電するようにしてもよい。遠隔測定装置を利用して、蓄えられたエネルギーと使われたエネルギーについて収集された情報を遠隔送信してもよい。
【0052】
上述した説明および図面は、単に本発明を説明するものであり、本開示を目の前にした当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、その変更および改変が可能であるため、本発明はこれらに限定されるものでない。
【国際調査報告】