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特表2023-525391NK細胞の活性化及び増幅のために遺伝的に操作された細胞株、及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】NK細胞の活性化及び増幅のために遺伝的に操作された細胞株、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20230608BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230608BHJP
   C12N 5/02 20060101ALI20230608BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20230608BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
C12N5/02
C12N15/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570168
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(85)【翻訳文提出日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 KR2021007091
(87)【国際公開番号】W WO2021251707
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0069854
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0046107
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326683
【氏名又は名称】サムスン ライフ パブリック ウェルフェア ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG LIFE PUBLIC WELFARE FOUNDATION
(71)【出願人】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ドク
(72)【発明者】
【氏名】ド、ジュンサン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ティ ミン-チャン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジンホ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BA16
4B065CA24
4B065CA44
(57)【要約】
NK細胞の活性化のために、遺伝的に操作された細胞に係り、一態様によるNK細胞の活性化のために、遺伝的に操作された細胞によれば、試料からNK細胞の増殖及び活性化を相乗的に誘導することができ、NK細胞を増殖する方法、またはそれによって増殖されたNK細胞を、抗体治療剤などに有用に使用することができる効果がある。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜結合性インターロイキン-18(mbIL-18)、膜結合性インターロイキン-21(mbIL-21)及びOX40Lを発現するように、遺伝的に操作された、NK細胞の培養のための培養補助細胞。
【請求項2】
前記培養補助細胞は、K562細胞、RPMI8866細胞、EBV_LCL細胞、721.221細胞、HFWT細胞及びNK-92細胞でなる群のうちから選択される、請求項1に記載の培養補助細胞。
【請求項3】
膜結合性インターロイキン-21及び膜結合性インターロイキン-21を暗号化する核酸を含む、請求項1に記載の培養補助細胞。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の培養補助細胞を含む、NK細胞培養用組成物。
【請求項5】
NK細胞の集団を含む血液試料を得る段階と、
前記混合されたNK細胞の集団の少なくとも一部分を、NK細胞を活性化させるために、遺伝的に操作された細胞と接触させる段階であり、前記遺伝的に操作された細胞は、膜結合性インターロイキン-18(mbIL-18)、膜結合性インターロイキン-21(mbIL-21)及びOX40Lを発現するように、遺伝的に操作された段階と、を含む、NK細胞を増殖させる方法。
【請求項6】
前記接触させる段階は、前記遺伝的に操作された細胞と混合されたNK細胞の集団を共培養し、前記NK細胞のサブ集団を増幅させる段階を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記共培養は、サイトカインの存在下で行われるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記サイトカインは、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8(CXCL8)、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18、IL19、IL20、IL21、IL22、IL23、IL24、IL25、IL26、IL27、IL28、IL29、IL30、IL31、IL32、IL33、IL35及びIL36からなる群のうちから選択される1種以上である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記サイトカインは、IL-18及びIL-21である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記共培養は、2日間ないし30日間遂行される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記血液試料は、全血試料である、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝的に操作された細胞は、50Gyないし300Gyの放射線で処理されたものである、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年6月9日出願された大韓民国特許出願第10-2020-0069854号、及び2021年4月8日出願された大韓民国特許出願第10-2021-0046107号を優先権として主張し、前記明細書全体は、本出願の参考文献である。
【0002】
本発明は、NK細胞の活性化及び増幅のために、遺伝的に操作された細胞株、及びその用途、具体的には、それを利用したNK細胞を増殖する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
NK細胞(natural killer cell)は、先天的免疫に重要な細胞毒性リンパ球の一種類である。該NK細胞は、ウイルス感染された細胞や癌細胞に反応するが、それら反応は、該NK細胞のさまざまな活性受容体(activating receptor)と抑制受容体(inhibitory receptor)とが、対象細胞が有するそれぞれのリガンドと反応して出すシグナル(signal)によって左右される。一般的に、活性シグナルが抑制シグナルより強ければ、該NK細胞は、該対象細胞を攻撃することができるが、該抑制シグナルがさらに強ければ、攻撃しない。従って、正常細胞は、該NK細胞の抑制受容体リガンド(MHC:major histocompatibility complex)が存在し、抑制シグナルを出すので、該NK細胞に攻撃されない。
【0004】
癌細胞のうち一部は、細胞表面にMHCの異常が生じ、低減しうる。そのような場合には、NK細胞の抑制シグナルがなく、該NK細胞が対象細胞を攻撃することになる。パーフォリン(perforin)を分泌し、感染細胞や癌細胞の細胞膜に孔を作り、そこにグランザイム(granzyme)を出し、その細胞を死滅させる細胞毒性を有する。B細胞リンパ腫患者、及び多くの癌患者の場合、該NK細胞の数や、抗癌活性に欠陥が発見されており、該NK細胞の機能異常は、そのような癌の発生と密接な関連を有していることが知られている。
【0005】
従って、そのようなNK細胞の抗癌力を活用した癌患者の治療法が台頭してきているが、高性能の多くのNK細胞を確保するための増幅法の開発が重要である。また、該NK細胞の機能の低下や異常のある人は、癌や各種疾患との関連性が知られ、該NK細胞の活性度測定法開発が要求されている。
【0006】
従来報告されたNK細胞の増殖方法は、高価の多様なサイトカインを高濃度で利用したり、末梢血液単核球や癌細胞株を共に使用したりする方法である。ところで、それらは、そのコストが必要となるだけではなく、増幅率も、あまり高くないという実情である。また、多数の研究においては、NK細胞以外にも、T細胞など、他のリンパ球の増幅が伴われて示され、該NK細胞基盤の免疫細胞治療に、不適切な面を示したりもする。従って、該NK細胞のみを選択的に増幅するための効率的な方法に係わる開発が主な課題の対象になっており、それに係わる研究がなされているが(韓国登録特許10-1525199)、まだ不備な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一態様は、膜結合性インターロイキン-18(mbIL-18:membrane bound interleukin-18)、膜結合性インターロイキン-21(mbIL-21:membrane bound interleukin-21)及び/またはOX40Lを発現するように、遺伝的に操作された細胞株、または培養補助細胞(feeder cell)を提供するものである。
【0008】
他の態様は、混合されたNK細胞の集団(mixed immune cells)を含む血液試料を得る段階と、前記NK細胞の集団の少なくとも一部分を、NK細胞を活性化させるために、遺伝的に操作された細胞と接触させる段階であり、前記遺伝的に操作された細胞は、膜結合性インターロイキン-18(mbIL-18)、膜結合性インターロイキン-21(mbIL-21)及び/またはOX40Lを発現するように、遺伝的に操作された段階と、を含む、NK細胞を増殖させる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様は、膜結合性インターロイキン-18(mbIL-18:membrane bound interleukin-18)、膜結合性インターロイキン-21(mbIL-21:membrane bound interleukin-21)及び/またはOX40Lを発現するように、遺伝的に操作された細胞株を提供する。一実施形態において、前記細胞株は、膜結合性インターロイキン-18(mbIL-18)、膜結合性インターロイキン-21(mbIL-21)及びOX40Lを発現するように、遺伝的に操作されたものでもあり得る。
【0010】
前記細胞株は、NK細胞のみを選択的に増幅させる培養補助細胞としても使用され得る。一般的には、NK細胞増殖に使用される代表的な栄養補助細胞であるK562細胞株は、NK細胞の増殖のために使用されるだけであるので、K562細胞株自体が増殖することがあってはならない。従って、該NK細胞と培養する前、前記K562細胞株に強力な放射線(例えば、50~100Gy)の照射を介する前処理を行い、前記K562細胞株自体は、全く増殖せず、該NK細胞の増殖のみの一助となるようにする。一方、該NK細胞の効率的な増殖のためには、IL-2、IL-15のようなほとんどのサイトカインが、該NK細胞に持続的に露出されなければならない。従って、癌細胞株基盤栄養補助細胞に、IL-2及び/またはIL-15のようなサイトカインを発現するように、遺伝的に操作する場合、放射線の照射などで前処理した癌細胞株自体が培養過程において、長期間生存することができないが、該NK細胞の選択的増殖効率が落ちるという問題点がある。一実施例においては、K562-OX40Lの存在下において、該NK細胞を、IL-18またはIL-21に短期間露出させた場合、21日目までは、細胞増幅効果が示されなかったが、IL-18及びIL-21に同時に露出させた場合、28日以後、細胞増幅効果が示されることを確認した。従って、IL-18及びIL-21の場合、培養開始日、ただ1回の露出、及び短期間の露出にもかかわらず、該NK細胞の増殖に効果がある。すなわち、一態様によるmbIL-18及びmbIL-21を発現するように、遺伝的に操作された培養補助細胞株は、IL-18及びIL-21の短期間発現にもかかわらず、NK細胞増殖効率が低下されないが、該NK細胞のみを選択的に増幅させることができる。
【0011】
本明細書において使用される用語「培養補助細胞(feeder cells)(支持細胞とも言う)」とは、放射線の照射によって分裂増殖する能力はないが、代謝活性があるために、さまざまな代謝物質を生産し、目的NK細胞の増殖の一助とする細胞を意味しうる。本明細書においても使用可能な培養補助細胞としては、遺伝子が導入された動物細胞株として、ヒト慢性骨髄白血病細胞株(例えば、K562細胞)、RPMI8866、EBV_LCL、721.221、HFWT、NK-92などであり得る。
【0012】
本明細書において、用語「遺伝的操作(genetic engineering)」または「遺伝的に操作された(genetically engineered)」とは、細胞につき、1以上の遺伝的変形(genetic modification)を導入する行為、またはそれによって作られた細胞を意味する。
【0013】
詳細には、前記遺伝的に操作された細胞は、前述の遺伝子をコーディングする外因性遺伝子(exogenous gene)を含むものでもあり得る。用語「外因性(exogenous)」とは、言及された分子(referenced molecule)、または言及された活性(referenced activity)が宿主細胞に導入されたものを意味する。該分子は、例えば、宿主染色体内への挿入によるようなコーディング核酸(encoding nucleic acid)の宿主遺伝物質内への導入、またはプラスミドのような非染色体遺伝物質としての導入がなされうる。該コーディング核酸の発現と係わり、前記用語「外因性」とは、前記コーディング核酸が、個体内に、発現可能な形態に導入されたことを示す。生合成の活性と係わり、前記用語「外因性」とは、宿主母細胞に導入した活性を示す。その起源(source)は、例えば、宿主母細胞に導入された後、言及された活性を発現する同質性(homologous)コーディング核酸または異質性(heterologous)コーディング核酸でもある。それにより、用語「内人性(endogenous)」とは、前記宿主細胞に存在する言及された分子または活性を示す。類似して、コーディング核酸の発現と係わり、前記用語「内人性」とは、個体内に含まれたコーディング核酸の発現を示す。用語「異質性(heterologous)」とは、言及された種以外の他起源からの分子または活性を示し、用語「同質性(homologous)」とは、宿主母細胞からの分子または活性を示す。従って、コーディング核酸の外因性発現は、異質性コーディング核酸または同質性コーディング核酸のうちいずれか一方、またはその両方を利用することができる。
【0014】
従って、前記細胞は、mbIL-18、mbIL-21及び/またはOX40Lを暗号化する核酸を含むものでもあり得る。さらに詳細には、前記細胞は、mbIL-18、mbIL-21及び/またはOX40Lを暗号化する核酸を含むベクターで形質転換されたものでもあり得る。
【0015】
本明細書において使用される用語「ベクター」とは、適切な宿主細胞において、目的タンパク質を発現することができるベクターであり、遺伝子挿入物が発現されるように、作動自在に連結された調節要素を含む遺伝子作製物を称する。一実施例によるベクターは、プローモーター、オペレーター、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナル及び/またはインヘンサのような発現調節要素を含むものでもあり、該ベクターのプローモーターは、構成的または誘導性でもある。また、前記ベクターは、宿主細胞内において、安定して前記融合タンパク質を発現させることができる発現用ベクターでもある。前記発現用ベクターは、当業界において、植物、動物または微生物において、外来のタンパク質を発現するのに使用される通常のものを使用することができる。組み換えベクターは、当業界に公知された多様な方法を介しても構築される。例えば、前記ベクターは、該ベクターを含む宿主細胞を選択するための選択性マーカーを含み、複製可能なベクターである場合、複製起源を含むものでもあり得る。また、該ベクターは、自家複製したり、宿主DNAに導入されたりもし、前記ベクターは、プラスミド、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス及びワクシニアウイルスによって構成される群のうちからも選択される。
【0016】
また、前記ベクターにおいて、前述の融合タンパク質を暗号化するポリヌクレオチド配列は、プローモーターに作動自在に連結されてもいる。本明細書で使用されている用語「作動自在に連結された」とは、核酸発現調節配列(例:プローモーター、シグナル配列、または転写調節因子結合位置のアレイ)と異なる核酸配列間の機能的な結合を意味し、それにより、前記調節配列は、前記他の核酸配列の転写及び/または翻訳を調節することになる。
【0017】
本明細書において「膜結合性インターロイキン(membrane bound interleukin)は、細胞膜に結合されたインターロイキンを意味するものでり、細胞外にインターロイキンを分泌するものとは区別される意味でもある。mbIL-18は、配列番号1の核酸配列またはそのアミノ酸配列と、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上または約99%以上の配列相同性を有するものでもあり得る。mbIL-21は、配列番号2の核酸配列またはそのアミノ酸配列と、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上または約99%以上の配列相同性を有するものでもあり得る。
【0018】
本発明において使用される用語「OX40L」とは、OX40(CD134)のリガンドであり、TNFファミリーの構成員であり、B細胞、大食細胞、内皮細胞及び樹枝状細胞(DC)を始めとした活性化された抗原提示細胞(APC)上で発現すると知られている。OX40Lは、配列番号3の核酸配列またはそのアミノ酸配列と、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上または約99%以上の配列相同性を有するものでもあり得る。
【0019】
他の態様は、膜結合性インターロイキン-18(mbIL-18)、膜結合性インターロイキン-21(mbIL-21)及び/またはOX40Lを発現するように、遺伝的に操作された細胞を含むNK細胞培養用組成物を提供する。
【0020】
前記遺伝的に操作された細胞の具体的な内容は、前述の通りである。
【0021】
一実施形態によるmbIL-18、mbIL-21及びOX40Lを発現するように、遺伝的に操作された細胞を含むNK細胞培養用組成物は、NK細胞(例えば、自然殺害細胞)の増幅及び/または活性化を誘導することができ、該NK細胞の培養、分離または増殖などにも有用に使用される。
【0022】
さらに他の態様は、混合されたNK細胞(mixed immune cells)の集団を含む血液試料を得る段階と、前記混合されたNK細胞の集団の少なくとも一部分を、該NK細胞を活性化させるために、遺伝的に操作された細胞と接触させる段階であり、前記遺伝的に操作された細胞は、膜結合性インターロイキン-18(mbIL-18)、膜結合性インターロイキン-21(mbIL-21)及び/またはOX40Lを発現するように、遺伝的に操作された段階と、を含む、NK細胞を増殖させる方法を提供する。
【0023】
一実施形態において、前記接触させる段階は、前記遺伝的に操作された細胞と混合されたNK細胞の集団を共培養し、前記NK細胞のサブ集団(subpopulation)を刺激、活性化または増幅(expanding)させる段階を含むものでもあり得る。
【0024】
本明細書において用語「NK細胞の刺激」とは、試験管内または生体内において、自然殺害細胞の活性、例えば、細胞毒性活性を増大させるか、あるいは活性化された自然殺害細胞が、生成、増加、増幅または増殖されることを意味しうる。
【0025】
一実施形態において、前記NK細胞の非制限的例には、大食細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、肥満細胞、単核球、樹枝状細胞、好酸球、自然殺害細胞、好塩基球、好中球が含まれる。従って、特定実施形態として、前記NK細胞は、大食細胞、Bリンパ球、Tリンパ球(CD8+CTL)、肥満細胞、単核球、樹枝状細胞、好酸球、自然殺害細胞、好塩基球または好中球からなる群のうちから選択されたいずれか一つでもある。特定実施形態において、NK細胞は、自然殺害細胞またはTリンパ球でもある。前記混合されたNK細胞は、大食細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、肥満細胞、単核球、樹枝状細胞、好酸球、自然殺害細胞、好塩基球及び好中球からなる群のうちから選択された1以上を含むものでもあり得る。
【0026】
本明細書において、用語「自然殺害細胞(natural killer cells)」または「NK細胞」とは、先天性免疫系の主要成分を構成する細胞毒性リンパ球であり、大型顆粒リンパ球(LGL:large granular lymphocyte)と定義され、リンパ系前駆細胞(CLP:common lymphoid progenitor)生成のBリンパ球及びTリンパ球から分化された第3の細胞を構成する。前述の「自然殺害細胞」または「NK細胞」とは、任意の組織供給源(source)に由来するさらなる変形がない自然殺害細胞を含み、成熟した自然殺害細胞だけではなく、自然殺害前駆細胞を含むものでもあり得る。前記自然殺害細胞は、インターフェロンまたは大食細胞由来サイトカインに対する反応によって活性化され、自然殺害細胞は、「活性化受容体」及び「抑制性受容体」として標識される、細胞の細胞毒性活性を制御する2種類型の表面受容体を含む。該自然殺害細胞は、任意の供給源、例えば胎盤組織、胎盤灌流液、臍帯血、胎盤血、末梢血、脾臓、肝臓などからの造血細胞、例えば、造血幹細胞または前駆体からも生成され得る。
【0027】
一実施形態において、前記自然殺害細胞は、活性化された自然殺害細胞でもある。前記活性化された自然殺害細胞は、母細胞、例えば、造血細胞または自然殺害前駆細胞に比べ、細胞毒性、または自然殺害細胞の本然の免疫調節能が活性化された細胞を意味しうる。具体的実施例において、活性化された自然殺害細胞は、CD3-CD56+である。
【0028】
一実施形態において、活性化された自然殺害細胞、または活性化された自然殺害細胞が豊富な(enriched)集団は、1種以上の機能的に関連するマーカー、例えば、CD16、CD57、CD69、CD94、CD161、CD158a、CD158b、NKp30、NKp44、NKp46、DNAM-1、2B4、NKp46、CD94、KIR(例えば、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR3DL1)、及び活性化受容体のNKG2ファミリー(例えば、NKG2A、NKG2C、NKG2D)を検出することによっても評価されすることができる。
【0029】
一実施形態において、前記共培養は、サイトカインの存在下においても行われる。
【0030】
本明細書において使用される用語「サイトカイン」とは、細胞信号伝逹の役割を行うタンパク質(5~20kDa)を意味しうる。該サイトカインは、細胞によって放出され、該サイトカインを放出する細胞、及び/または他の細胞の挙動に影響を与える。該サイトカインの非制限的例には、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、腫瘍懐死因子、モノカイン及びコロニー刺激因子が含まれる。該サイトカインは、免疫細胞、例えば、大食細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、肥満細胞、単核球、内皮細胞、線維母細胞及び間質細胞を始めとする(しかし、それらに制限されるものではない)広範囲な細胞によっても生成され得る。該サイトカインは、1以上の類型の細胞によっても生成され得る。該サイトカインは、受容体を介して作用し、免疫系において、特に重要であり、体液性免疫反応と細胞系免疫反応との均衡を調節し、細胞集団の成熟、成長及び反応性(responsiveness)を調節する。本明細書のサイトカインは、自然発生サイトカインでもあり、あるいは自然発生サイトカインの突然変異バージョンでもある。本出願において使用される「自然発生」とは、また野生型とも称され、対立遺伝子変種を含む。自然発生サイトカインの突然変異されたバージョンまたは「突然変異」とは、サイトカインの機能、活性及び/または特異性を変化させるために、自然発生配列に対してなされた特定突然変異を称する。一実施形態において、該突然変異は、サイトカインの機能、活性及び/または特異性を向上させることができる。他の実施形態において、該突然変異は、サイトカインの機能、活性及び/または特異性を低減させることができる。該突然変異は、サイトカインの1以上のアミノ酸残基の欠失または付加を含むものでもあり得る。
【0031】
前記サイトカインは、BMP(Bone Morphogenetic Protein)ファミリー、CCL(cheomkine ligands)ファミリー、CMTM(CKLF-like MARVEL transmembrane domain containing member)ファミリー、CXCL(C-X-C motif ligamd)ファミリー、GDF(Growth/Differentiation Factor)ファミリー、成長ホルモン、IFN(interferon)ファミリー、IL(interleukin)ファミリー、TNF(Tumor Necrosis Factors)ファミリー、GPI(glycophosphatidylinositol)、SLUPR-1(secreted Ly-6/uPAR-related protein 1)、SLUPR-2(secreted Ly-6/uPAR-related protein 2)、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択されるいずれか一つでもありえる。
【0032】
一実施形態において、前記サイトカインは、インターロイキン、またはその突然変異である。多数のインターロイキンは、補助CD4Tリンパ球だけではなく、単核球、大食細胞及び内皮細胞によって合成される。該インターロイキンは、Tリンパ球及びBリンパ球、並びに造血細胞の発達及び分化を促進させることができる。該インターロイキンの非制限的例には、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8(CXCL8)、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18、IL19、IL20、IL21、IL22、IL23、IL24、IL25、IL26、IL27、IL28、IL29、IL30、IL31、IL32、IL33、IL35またはIL36が含まれる。その故、特定実施形態において、前記サイトカインは、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8(CXCL8)、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18、IL19、IL20、IL21、IL22、IL23、IL24、IL25、IL26、IL27、IL28、IL29、IL30、IL31、IL32、IL33、IL35またはIL36の野生型及び突然変異形態を始めとする(しかし、それらに制限されるのではない)インターロイキン、またはその突然変異である。
【0033】
他の実施形態において、前記共培養に添加されるサイトカインは、IL-18及びIL-21でもある。さらに詳細には、前記共培養は、IL-2及びIL-15の存在下で培養しながら、IL-18及びIL-21を培養培地に添加することを含むものでもあり得る。前記IL-21は、1ないし20ng/ml、1ないし15ng/ml、1ないし10ng/ml、または2ないし8ng/mlの濃度でもっても使用される。前記IL-18は、10ないし200ng/ml、10ないし180ng/ml、20ないし160ng/ml、20ないし120ng/ml、20ないし40ng/ml、20ないし80ng/ml、40ないし160ng/ml、40ないし120ng/ml、40ないし80ng/ml、80ないし160ng/ml、または80ないし120ng/mlの濃度でもっても使用される。一実施形態において、共培養時、前記IL-18及び前記IL-21に細胞を露出させることにより、NK細胞の増殖をさらに相乗的に増大させることができる。
【0034】
一実施形態において、前記共培養は、2日間ないし30日間、共培養されるものでもあり得る。
【0035】
一実施形態において、前記遺伝的に操作された細胞は、50Gyないし300Gyの放射線で処理されたものでもあり得る。
【0036】
一実施形態において、前記試料は、個体、例えば、ヒトを含む哺乳類に由来する生物学的試料でもある。また、前記生物学的試料は、個体から分離されたものでもあり、血液、全血、血清、血漿、リンパ、尿、糞便、組織、細胞、器官、骨髄、唾液、喀痰、脳脊髄液、またはそれらの組み合わせでもある。また、前記生物学的試料は、末梢血液単核球(PBMC)、精製されたNK細胞、または一次性休止期の細胞(primary resting cell)(すなわち、血液から分離されたばかりのもの)を含むものでもあり得る。
【0037】
さらに他の態様は、前記NK細胞の増殖方法によって製造されたNK細胞を提供する。
【0038】
さらに他の態様は、前記免疫細胞、またはその細胞集団を有効成分として含む細胞治療剤を提供する。
【0039】
さらに他の態様は、前記免疫細胞、またはその細胞集団を有効成分として、癌または感染性疾患の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0040】
さらに他の態様は、前記免疫細胞、またはその細胞集団を医薬の製造に使用するための用途を提供する。
【0041】
さらに他の態様は、前記免疫細胞、またはその細胞集団を個体に投与する段階を含む疾患治療方法を提供する。
【0042】
本明細書において用語「疾患」とは、1つの病理的状態、特に、癌、感染性疾患、炎症性疾患、代謝性疾患、自家免疫性障害、退行性疾患、細胞死滅関連疾患及び移植片拒否を意味しうる。
【0043】
本明細書において用語「治療」とは、疾患、障害または病態、またはその1以上の症状の軽減、進行抑制または予防を称するか、あるいはそれを含み、「有効成分」または「薬剤学的有効量」とは、疾患、障害または病態、またはその1以上の症状の軽減、進行抑制または予防に十分な、本願で提供される発明を実施する過程において利用される組成物の任意の量を意味しうる。
【0044】
本明細書において、用語「投与する」、「導入する」及び「移植する」とは、相互交換的に使用され、一実施形態による組成物の所望する部位への少なくとも部分的局所化をもたらす方法または経路による個体内への一実施形態による組成物の配置を意味しうる。一実施形態による組成物の細胞、または細胞成分の少なくとも一部を、生存する個体内の所望する位置に伝達する任意の適切な経路によっても投与される。個体投与後、細胞の生存期間は、短ければ、数時間、例えば、24時間ないし数日、あるいは長ければ、数年でもある。
【0045】
本明細書において、用語「分離された細胞」、例えば、「分離された免疫細胞」とは、細胞が、起源となる組織、例えば、造血細胞から実質的に分離された細胞を意味する。
【0046】
一実施形態において、薬学的組成物の投与方法は、特別に制限されるものではないが、目的とする方法により、静脈内、皮下、腹腔内、吸入または局所適用のように、非経口投与するか、あるいは経口投与することができる。投与量は、患者の体重・年齢・性別・健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率、及び疾患の重症度などにより、その範囲が多様である。一日投与量は、治療を必要とする個体に投与されることによって軽減された疾病状態に対する治療に十分な、一態様による治療用物質の量を意味する。該治療用物質の効果的な量は、特定化合物、疾病状態及びその深刻度、治療を必要とする個体によって異なり、それは、当業者により、一般的に決定されうる。非制限的な例として、一態様による組成物の人体に対する投与量は、患者の年齢・体重・性別、投与形態、健康状態及び疾患程度によっても異なる。体重が70kgである成人患者を基準にするとき、例えば、約1,000~10,000細胞/回、1,000~100,000細胞/回、1,000~1000,000細胞/回、1,000~10,000,000細胞/回、1,000~100,000,000細胞/回、1,000~1,000,000,000細胞/回、1,000~10,000,000,000細胞/回であり、一定時間間隔で、1日1回、あるいは数回に分けて投与することもでき、一定時間間隔で何回投与することができる。
【0047】
「個体」とは、疾患の治療を必要とする対象を意味し、さらに具体的には、ヒト、または非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、犬、猫、馬及び牛のような哺乳類を意味する。
【0048】
一実施形態による薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体及び/または添加物を含むものでもあり得る。例えば、滅菌水、生理食塩水、慣用の緩衝剤(リン酸、クエン酸、それ以外の有機酸など)、安定剤、塩、酸化防止剤(アスコルビン酸など)、界面活性剤、懸濁液剤、等張化剤または保存剤などを含むものでもあり得る。局所投与のために、生体高分子(biopolymer)のような有機物、ヒドロキシアパタイトのような無機物、具体的には、コラーゲンマトリックス、ポリ乳酸の重合体または共重合体、ポリエチレングリコールの重合体または共重合体、及びその化学的誘導体などと組み合わさせるものを含むものでもあり得る。一実施形態による薬学的組成物が注射に適切な剤形に調剤される場合には、免疫細胞、免疫細胞、またはその活性を増大させる物質は、薬学的に許容可能な担体中に溶解されているか、あるいは溶解されている溶液状態に凍結されたものでもあり得る。
【0049】
一実施形態による薬学的組成物は、その投与方法や剤形により、必要な場合、懸濁液剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性化剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、還元剤、酸化防止剤などを適切に含むものでもあり得る。前述のところに例示されたものを始めとし、本発明に適する薬学的に許容される担体及び製剤は、文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences, 19th ed., 1995]に詳細に記載されている。一実施形態による薬学的組成物は、当該発明が属する技術分野において当業者であるならば、容易に実施することができる方法により、薬学的に許容される担体及び/または賦形制を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造されるか、あるいは多容量容器内に内入させても製造される。そのとき、該剤形は、油性媒質中または水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、あるいは粉末、顆粒、錠剤またはカプセル型でもありうる。
【発明の効果】
【0050】
一態様による遺伝的に操作された細胞によれば、遺伝的に操作されていない細胞に比べ、NK細胞の増殖及び活性に少なくとも2倍ないし数倍増大させることができるので、NK細胞を増殖させ、細胞治療剤としても使用されえる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1A】一態様による培養補助細胞において、mbIL-18及びmbIL-21の発現特性を確認したグラフである。
図1B】一態様による培養補助細胞と、mIL-18及びmIL-21との併合イメージ(左)、並びにmIL-18及びmIL-21の量を蛍光強度でもって定量化したグラフ(右)である。
図2A】K562-OX40L細胞の存在下において、NK細胞を、IL-21単独、またはIL-18及びIL-21に短期間露出させたとき、NK細胞の増幅倍数を示したグラフである。
図2B】K562-OX40L細胞の存在下において、NK細胞を、IL-21単独、またはIL-18及びIL-21に短期間露出させたとき、NK細胞の純度を示したグラフである。
図2C】K562-OX40L細胞の存在下において、NK細胞を、IL-21単独、またはIL-18及びIL-21に長期間露出させたとき、NK細胞の増幅倍数を示したグラフである。
図3】一態様による培養補助細胞を利用し、NK細胞の増幅(左)及び純度(右)を比較したグラフである。
図4A】一態様による培養補助細胞を利用し、健常人供与者(HD)において増幅されたNK細胞で発現されたマーカーを比較したグラフである。
図4B】一態様による培養補助細胞を利用し、健常人供与者(HD)において増幅されたNK細胞で発現されたマーカーを比較したグラフである。
図5A】一態様による培養補助細胞を利用し、健常人供与者(HD)において増幅されたNK細胞で発現するサイトカインを確認したグラフである。
図5B】一態様による培養補助細胞を利用し、健常人供与者(HD)において増幅されたNK細胞のCD107a脱顆粒分析結果を示したグラフである。
図6A】一態様による培養補助細胞を利用し、健常人供与者(HD)において増幅されたNK細胞の細胞毒性を確認したグラフである。
図6B】一態様による培養補助細胞を利用し、健常人供与者(HD)において増幅されたNK細胞のADCC細胞毒性を確認したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の理解の一助とするために、望ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をさらに容易に理解するために提供されるのみ、下記実施例により、本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例
【0053】
[実施例]
実施例1.遺伝的に操作された培養補助細胞(feeder cell)の製造
膜結合性インターロイキン-18(mbIL-18)、膜結合性インターロイキン-21(mbIL-21)及びOX40を発現する培養補助細胞を製造した。具体的には、ヒト由来mbIL18遺伝子(配列番号1)及びmbIL21遺伝子(配列番号2)を、レンチウイルスベクターであるpCDH-CMV-RFPにクローニングし、組み換えレンチウイルス生産用ベクターを作製した。その後、ウイルス生産のために、前記作製された組み換え遺伝子(pCDH-CMV-RFP-mbIL-1821)を、293FT細胞にパッケージングベクターと共に、Lipofectamin3000(Invitrogen)を利用して形質注入させた。時間が経た後、新たな培地に交換し、48時間細胞を培養した後、ウイルスが含有された培地を回収した。回収された培地は、500×gで10分間遠心分離し、0.45μmフィルタを利用し、ウイルスが含有された純粋な培地のみを分離し、mbIL18-mbIL21発現レンチウイルスを生産した。その後、下記比較例1のK562-OX40L細胞を含む培地9mlに、mbIL18-mbIL21発現レンチウイルス1mlを溶かし、ポリブレン(polybrene)(8μg/ml)と共に添加し、48時間細胞培養を進めた。次に、感染された細胞だけ選別するために、超高速流細胞自動分離器を利用し、緑色蛍光及び赤色蛍光をいずれも発現する細胞だけ選別し、mbIL18-mbIL21の発現いかんを、流細胞分析器(FACS)を介して分析し、mbIL18-mbIL21が発現されたK562細胞株(以下、「K562-OX40L-mbIL18-mbIL21」ともする)を生産した。
【0054】
[比較例]
比較例1.遺伝的に操作された培養補助細胞の製造
OX40Lを発現する培養補助細胞を製造した。具体的には、ヒト由来OX40L遺伝子(配列番号3)を、レンチウイルスベクターであるpLVX-IRES-ZsGreenにクローニングし、組み換えレンチウイルス生産用ベクターを作製した。その後、ウイルス生産のために、前記組み換え遺伝子(OX40L-pLVX-IRES-ZsGreen)を、293FT細胞にパッケージングベクターと共に、Lipofectamin3000(Invitrogen)を利用して形質注入させた。時間が経た後、新たな培地に交換し、48時間細胞を培養した後、ウイルスが含有された培地を回収した。回収された培地は、500×gで10分間遠心分離し、0.45μmフィルタを利用し、ウイルスが含有された純粋な培地のみを分離し、OX40L発現レンチウイルスを生産した。その後、K562細胞を含む培地(RPMI 1640)9mlに、OX40L発現レンチウイルス1mlを溶かし、ポリブレン(8μg/ml)と共に添加し、48時間細胞培養を進めた。次に、感染された細胞だけ選別するために、超高速流細胞自動分離器を利用し、緑色蛍光を発現する細胞だけ選別し、OX40Lの発現いかんを、流細胞分析器(FACS)を介して分析し、OX40Lが発現されたK562細胞株(以下、「K562-OX40L」ともする)を生産した。
【0055】
[実験例]
実験例1.遺伝的に操作された培養補助細胞の細胞特性
一態様による遺伝的に操作された培養補助細胞のmbIL-18発現特性及びmbIL-21発現特性を確認するために、mRNA及び表面タンパク質の発現レベルを確認した。
【0056】
具体的には、前記実施例1で製造したK562-OX40L-mbIL18-mbIL21細胞株、及び比較例1で製造したK562-OX40L細胞株の総RNAを、RNeasy Mini Kit(Qiagen,Venlo、オランダ)を使用して分離し、IMPLEN Nanophotometer P330(IMPLEN、ミュンヘン、ドイツ)を使用して定量化した。その後、分離されたRNAを、QuantiTect Reverse Transcription Kit(Qiagen)を使用し、cDNAに転換した後、QuantiTect SYBR Green PCR Kit(Qiagen)及びRotor-Gene Q(Qiagen)を使用し、標準20μl反応体積でPCRを遂行した。そのとき、プライマーは、下記表1を使用し、全ての実験を3回反復実施した。
【0057】
【表1】
【0058】
図1Aは、一態様による培養補助細胞において、mbIL-18及びmbIL-21の発現特性を確認したグラフである。
【0059】
図1Bは、一態様による培養補助細胞と、mIL-18及びmIL-21との併合イメージ(左)、並びにmIL-18及びmIL-21の量を蛍光強度でもって定量化したグラフ(右)である。
【0060】
その結果、図1Aに示されているように、実施例1の培養補助細胞においては、mbIL-18mRNA及びmbIL-21mRNAが検出されたが、比較例1の培養補助細胞においては、mbIL-18mRNA及びmbIL-21mRNAが検出されなかった。また、図1Bに示されているように、比較例1の培養補助細胞と比較し、実施例1の培養補助細胞表面において、さらに多量のIL-18及びIL-21が持続的に発現されることを確認することができた。
【0061】
実験例2.K562-OX40L細胞、及びIL18、IL21の添加を介するNK細胞活性化の確認
一態様による、遺伝的に操作された培養補助細胞のNK細胞活性化効能を予測するために、予備実験でとして、K562-OX40L細胞のサイトカインの添加によるNK細胞活性化程度を確認した。
【0062】
具体的には、前記比較例1で製造したK562-OX40L細胞株を、5% COが供給された培養器において、37℃、25mlの完全RPMI 1640培地(FBS(ペニシリン及びストレプトマイシンを含有する))が入っているT-25フラスコで培養させた。その後、400×g条件下で3分間遠心分離を進め、5mlの完全RPMI 1640培地において、細胞ペレットを再浮遊させ、培養補助細胞を収穫した。その後、前記培養補助細胞の過度な成長を防止するために、前記培養補助細胞に、Gammacell 3000 Elan放射器を利用し、100Gyでガンマ線を照射し、その後の実験に使用した。
【0063】
末梢血液単核球(PBMCs)の分離のために、健常人供与者の全血:PBSを、1:2比率(10ml全血:20ml PBS)に希釈し、15ml Lymphoprep上でオーバレイした。次に、常温で25分間、1,200×g条件でブレーキなしに遠心分離を進め(加速1、減速0)、バフィーコート層(buffy coat layer)から細胞を収穫し、7分間、400×gでPBSで3回洗浄した。前記分離された末梢血液単核球3×10個、及び100Gy照射のK562-OX40L 0.5×10個を、1ml NK細胞培地が含まれた24ウェルプレート上に接種した後、20U/mlIL-2が含有された1ml NK細胞培地を追加し、総培地体積は、2ml/ウェルに、IL-2の最終濃度は、10U/mlにした後、ソフトにピペッティングして混合させた後、37℃ 5% COの培養器で培養した。培養7日目、培地に100U/mlのIL-2、及び5ng/mlのIL-15を培地に添加し、新たな培地に2,3日ごとに交換しながら、14日間培養した。その後、5ng/mlのIL-21、及び/または25,50,100ng/mlのIL-18を培養0日目に添加し、14日間追加培養した。
【0064】
NK細胞の増幅は、FITC(fluorescein isothiocyanate)接合マウス抗ヒトCD3及びPE-Cy5接合マウス抗ヒトCD56のモノクローナル抗体を使用して確認し、K562細胞と、IL-2/IL-15処理したときのNK細胞の純度を基線にし、それぞれの増幅倍数を確認した。
【0065】
図2Aは、K562-OX40L細胞の存在下において、NK細胞を、IL-21単独、またはIL-18及びIL-21に短期間露出させたとき、NK細胞の増幅倍数を示したグラフである。
【0066】
図2Bは、K562-OX40L細胞の存在下において、NK細胞を、IL-21単独、またはIL-18及びIL-21に短期間露出させたとき、NK細胞の純度を示したグラフである。
【0067】
その結果、図2Aに示されているように、NK細胞のIL-18及びIL-21に対する短期露出の影響は、21日までにおいては、確認されなかった。しかしながら、28日後、NK細胞の増幅が顕著に増大することを確認することができた。また、図2Bに示されているように、Il-18及びIL-21のいずれにも短期露出されたNK細胞は、28日目、IL-21単独処理した場合に比べ、NK細胞純度が高いことを確認することができた。
【0068】
図2Cは、K562-OX40L細胞の存在下において、NK細胞を、IL-21単独、またはIL-18及びIL-21に長期間露出させたとき、NK細胞の増幅倍数を示したグラフである。
【0069】
その結果、図2Cに示されているように、K562-OX40L細胞は、IL-18及びIL-21を共に処理したとき、IL-18またはIL-21をそれぞれ処理したときに比べ、NK細胞の活性を約2倍ないし4倍ほど増大させることを確認することができた。
【0070】
そのような結果は、OX40Lを発現する細胞が、NK細胞の活性を顕著に増大させるだけではなく、さらなるIL-18及びIL-21の短期間の処理によっても、NK細胞の活性を相乗的に増大させることができるということを意味する。すなわち、OX40Lを発現する培養補助細胞は、IL-18及びIL-21の処理により、NK細胞活性に相乗的効果を示すことができる。
【0071】
実験例3.K562-OX40L-mbIL18-mbIL21細胞を介するNK細胞の活性化及び増幅
前記実験例2の結果を基に、前記実施例1で製造されたK562-OX40L-mbIL18-mbIL21細胞のNK細胞の活性に及ぼす影響を確認した。
【0072】
具体的には、前記実施例1のK562-OX40L-mbIL18-mbIL21細胞株を、5% COが供給された培養器において、37℃、25mlの完全RPMI 1640培地が入っているT-25フラスコで培養させた。その後、400×g条件下で3分間遠心分離を進め、5mlの完全RPMI 1640培地において、細胞ペレットを再浮遊させ、培養補助細胞を収穫した。その後、前記培養補助細胞の過度な成長を防止するために、前記培養補助細胞に、Gammacell 3000 Elan放射器を利用し、100Gyでガンマ線を照射し、その後の実験に使用した。前記実験例2と同一方法で分離された末梢血液単核球3×10個、及び100Gy照射されたK562-OX40L-mbIL18-mbIL21 0.5×10個を、1ml NK細胞培地が含まれた24ウェルプレート上に接種した後、20U/mlIL-2が含有された1ml NK細胞培地を追加し、総培地体積は、2ml/ウェルに、IL-2の最終濃度は、10U/mlにした後、ソフトにピペッティングして混合させた後、37℃、5% COの培養器で培養した。培養7日目、培地に100U/mlのIL-2、及び5ng/mlのIL-15を培地に添加し、新たな培地に2,3日ごとに交換しながら、14日間培養した。対照群としては、K562細胞を使用した。NK細胞の活性化度は、前記実験例2と同一に、NK細胞の純度及び増幅倍数を確認した。
【0073】
図3は、一態様による培養補助細胞を利用し、NK細胞の増幅(左)及び純度(右)を比較したグラフである。
【0074】
その結果、図3に示されているように、実施例1の培養補助細胞は、対照群と比較し、NK細胞の増幅倍数が顕著に増大することを確認することができた。特に、対照群の場合、NK細胞が培養後、35日目まで増大した後、それ以上の増大を示していない。しかしながら、実施例1の場合、培養後42日目まで著しい上昇を示し、その後、低減する様相を示したが、持続的な増幅が可能であるということを確認することができた。また、対照群細胞を利用して培養したNK細胞と比較し、実施例1の培養補助細胞を利用して培養したNK細胞の純度が有意的に高いということを確認することができた。
【0075】
すなわち、一態様による培養補助細胞は、NK細胞の活性を顕著に増大させるだけではなく、NK細胞の長期培養が可能であるなので、NK細胞を大量増殖させ、細胞治療剤として使用することができる。
【0076】
実験例4.K562-OX40L-mbIL18-mbIL2細胞によって増幅されたNK細胞の表現型の特性
K562-OX40L-mbIL18-mbIL2細胞によって増幅されたNK細胞の表現型特性を確認した。具体的には、前記実験例2において増幅された健常人供与者(HD)由来NK細胞2×10個を、FACSバッファ(FBS 1%含むPBS)で洗浄した後、APC-Cyanine7接合マウス抗ヒトCD3、及びPE-Cyanine7接合抗ヒトCD56のメンブレン抗体で15分間処理した。その後、細胞を得て、それぞれ異なる蛍光接合された抗ヒトCD16,CD69,NKG2D,NKp30,NKp44,NKp46,CD94,CD158a及びCD158bのメンブレン抗体で30分間追加染色した。その後、前記細胞をFACSバッファで洗浄した後、FACS Caliburを利用してデータを獲得し、Kaluzaで分析した。
【0077】
図4A及び図4Bは、一態様による培養補助細胞を利用し、健常人供与者(HD)において増幅されたNK細胞で発現されたマーカーを比較したグラフである。
【0078】
その結果、図4A図4Bに示されているように、OX40L、mbIL18及びmbIL21を発現する培養補助細胞によって増幅されたNK細胞は、高いNK純度(>90%)を示すだけではなく、培養初期と比較し、14日目に、NK細胞活性化マーカーの発現が増大するということを確認することができた。
【0079】
すなわち、一態様による培養補助細胞によって増幅されたNK細胞は、NK細胞の完全な機能的特性を有するということが分かる。
【0080】
実験例5.K562-OX40L-mbIL18-mbIL2細胞によって増幅されたNK細胞の活性化度の確認
活性化受容体の発現が増大することによって増幅されたNK細胞の活性化も、増大することになるために、実施例1の培養補助細胞を利用して増幅した健常人供与者(HD)由来NK細胞のサイトカイン放出、及び細胞毒性による免疫調節活性を評価した。
【0081】
5-1.細胞内IFN-γの測定
免疫調節活性を評価するために、細胞内IFN-γを測定し、NK細胞の細胞毒性を評価した。具体的には、実施例1の培養補助細胞を利用して増幅した健常人供与者(HD)由来NK細胞2×10個を、brefeldin A(BD Biosciences)及びMonensin(BD Biosciences)の存在下において、96ウェル丸底プレートにおいて、37℃、5% COにおいて5時間培養した。その後、細胞を得て、FACSで洗浄した後、抗ヒトCD3及び抗ヒトCD56のメンブレン抗体で20分間染色した。洗浄して固定させて透過させた後、NK細胞を、氷において、PE接合された抗ヒトIFN-γ抗体で30分間追加して染色した。その後、前記細胞を洗浄した後、FACS Calibur流細胞分析器を使用して分析した。
【0082】
図5Aは、一態様による培養補助細胞を利用し、健常人供与者(HD)において増幅されたNK細胞で発現するサイトカインを確認したグラフである。
【0083】
その結果、図5Aに示されているように、NK細胞が増幅される間、健常人供与者由来NK細胞におけるIFN-γ発現レベルが有意に上昇したことを確認することができた。
【0084】
5-2.CD107a脱顆粒化及び細胞毒性の確認
前述の5-1において増幅された健常人供与者(HD)由来NK細胞2×10個、標的細胞(K562、U266、RPMI8226)2×10個、及びPE接合された抗ヒトCD107aを、96ウェル丸底プレート(96 well U bottom plate)において培養した。1時間後、Monensin及びbrefeldin A(BD Biosciences)を追加した後、4時間追加培養した。その後、NK細胞を、抗ヒトCD3及び抗ヒトCD56抗体で染色して得た。
【0085】
図5Bは、一態様による培養補助細胞を利用し、健常人供与者(HD)において増幅されたNK細胞のCD107a脱顆粒分析結果を示したグラフである。
【0086】
その結果、図5Bに示されているように、培養初期(0日目)と比較し、14日後、健常人供与者由来NK細胞と培養した全ての細胞(K562、U266、RPMI8226)において、CD107a発現が顕著に増大したことを確認することができた。
【0087】
すなわち、活性が増大されたNK細胞が、健常人供与者の末梢血液単核球において、成功裏に生成されたことを意味する。従って、一実施形態によるOX40L、mbIL18及びmbIL21を発現する培養補助細胞は、活性が増大されたNK細胞の生成に効果的である。
【0088】
実験例6.K562-OX40L-mbIL18-mbIL2細胞によって増幅されたNK細胞の細胞毒性の確認
一態様による培養補助細胞によって増幅されたNK細胞の抗体治療剤としての効能を確認するために、細胞毒性を確認した。
【0089】
具体的には、標的細胞に対するNK細胞の14日目細胞毒性を、CFSE基盤分析によって4時間測定した。具体的には、FACSバッファにおいて、標的細胞を37℃でら10分間、0.5μM CFSEで染色し、完全培地で2回洗浄した。その後、該標的細胞5×10個を、96ウェル丸底プレートに三重に配し、前記健常人供与者(HD)由来NK細胞、及び多発性骨髄種(MM)患者由来NK細胞を、それぞれE:T(effector-to-target)比率0.5:1、1:1及び2:1で混合した。プレートを、1,500rpmで3分間遠心分離した後、37℃、5% COの培養器で4時間培養した。その後、混合された細胞をFACSチューブに移し、それぞれのチューブに、1μlの1mg/mL PI(propidium iodide)(Sigma Aldrich、セントルイス、MO、米国)を添加した。その後、FACS Caliburで細胞を獲得し、Kaluzaソフトウェアを使用して分析した。死んだ標的細胞の百分率(CFSF陽性及びPI陽性)は、自発的に死んだ標的細胞の百分率を差し引いた後で計算した。
【0090】
図6Aは、一態様による培養補助細胞を利用し、健常人供与者(HD)において増幅されたNK細胞の細胞毒性を確認したグラフである。
【0091】
図6Bは、一態様による培養補助細胞を利用し、健常人供与者(HD)において増幅されたNK細胞のADCC細胞毒性を確認したグラフである。
【0092】
その結果、図6Aに示されているように、実施例1の培養補助細胞を利用して増幅されたNK細胞は、K562培養補助細胞を利用して増幅されたNK細胞と同一細胞毒性を示すということを確認することができた。また、図6Bに示されているように、実施例1の培養補助細胞を利用して増幅されたNK細胞は、K562培養補助細胞を利用して増幅されたNK細胞と、リツキシマブ(Rituximab)に結合されたRaji細胞とにおいて、類似したADCC活性を示すということを確認することができた。
【0093】
すなわち、一態様による培養補助細胞によって増幅されたNK細胞は、細胞毒性を示す抗体治療剤として活用可能である。
前述の本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の当業者であるならば、本発明の技術的思想や、必須な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態に容易に変形が可能であるということを理解することができるであろう。従って、以上で記述された実施例は、全ての面において、例示的なものであり、限定的ではないということが理解されなければならない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
【配列表】
2023525391000001.app
【国際調査報告】