(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】トリガベースの光ワイヤレス通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/114 20130101AFI20230608BHJP
【FI】
H04B10/114
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501261
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 EP2021067081
(87)【国際公開番号】W WO2022008240
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】シグニファイ ホールディング ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】SIGNIFY HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 48,5656 AE Eindhoven,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】ブルシュケ アンドレアス フェリックス アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】タオ ハイミン
(72)【発明者】
【氏名】アルランドゥ カルネクマル
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA17
5K102AB05
5K102AD01
5K102AD12
5K102AH26
5K102AL11
5K102AL23
5K102AL28
5K102AN01
5K102PB02
5K102PB14
5K102PH32
5K102PH33
5K102RD05
5K102RD11
5K102RD28
(57)【要約】
高速光通信は、高スループットアプリケーションを満足するために非常に魅力的である。一方、通信システムの光トランシーバのアイドル状態に起因するエネルギ浪費を低減することも望ましい。本発明は、アクセスポイント(1200)及びエンドポイントデバイス(1100)の両方が、少なくとも2つの異なる動作状態、通常動作状態及び低電力状態で動作することができることを開示する。低電力状態は、デフォルト状態であり、通常動作状態は、有効なトリガが検出される場合にのみイネーブルにされる。高速光リンク(60)を確立するために、エンドポイントデバイス(1100)は、まず、低電力状態におけるアクセスポイント(1200)に光トリガ信号(50)を送信する。アクセスポイント(1200)は、光トリガ信号(50)を検出した後有効なトリガ信号が識別される場合にのみ通常動作状態に切り替わる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ワイヤレス通信ネットワークにおいてアクセスポイントを動作させる方法であって、当該方法は、前記アクセスポイントが、
第1の光チャネルでエンドポイントデバイスからの第1の光信号を検出するために低電力状態で動作することと、
前記第1の光信号を検出した後にトリガ信号を生成することと、
前記生成されたトリガ信号に基づいて前記低電力状態から通常動作状態に切り替わることと、
前記エンドポイントデバイスと高速光データリンクを確立するために前記通常動作状態で動作することと、
予め定められた期間、いずれのエンドポイントデバイスともアクティブな高速光データリンクがない場合、前記通常動作状態から前記低電力状態に戻ることと、
を含み、
前記アクセスポイントは、前記低電力状態において、前記通常動作状態におけるよりも少ない電力を消費し、
前記トリガ信号を生成する前に、当該方法は、前記アクセスポイントが、
前記第1の光信号を検出すると、前記第1の光チャネルで前記エンドポイントデバイスと高速光データリンクの設定についてネゴシエートすること、
を含み、
前記トリガ信号を生成するステップは、前記高速光データリンクの設定が前記アクセスポイントと前記エンドポイントデバイスとの間で合意された後に行われ、
前記高速光データリンクは、前記第1の光チャネルとは異なる光データチャネルで確立される、方法。
【請求項2】
前記低電力状態は、前記アクセスポイントにおけるあるハードウェアコンポーネントをディスエーブルにすることによって又はあるハードウェアコンポーネントをディスエーブルにし、異なるハードウェアコンポーネントをイネーブルにすることによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の光信号は、赤外線信号である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
当該方法は、前記アクセスポイントが、別のアクセスポイントからの第2のトリガ信号を受信すると前記低電力状態とスリープ状態との間で切り替わることを含み、前記アクセスポイントは、前記スリープ状態において、前記低電力状態におけるよりも少ない電力を消費する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アクセスポイントは、スレーブアクセスポイントであり、前記第2のトリガ信号を送信する他のアクセスポイントは、マスタアクセスポイントである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スレーブアクセスポイントは、前記マスタアクセスポイントを介してバックボーンネットワークに接続される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記スレーブアクセスポイントは、前記マスタアクセスポイントから給電される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
光ワイヤレス通信ネットワークにおいてエンドポイントデバイスを動作させる方法であって、当該方法は、前記エンドポイントデバイスが、
第1の光チャネルで第1の光信号を送信するために低電力状態で動作することと、
前記第1の光信号を送信した後に前記低電力状態から通常動作状態に切り替わることと、
アクセスポイントと高速光データリンクを確立するために前記通常動作状態で動作することと、
高速光リンクの当面の必要性がない場合、前記通常動作状態から前記低電力状態に切り替わることと、
を含み、
前記エンドポイントデバイスは、前記低電力状態において、前記通常動作状態におけるよりも少ない電力を消費し、
前記第1の光信号を送信した後、前記通常動作状態に切り替わる前に、当該方法は、前記エンドポイントデバイスが、
前記第1の光チャネルで前記アクセスポイントと高速光データリンクの設定についてネゴシエートすることと、
前記高速光データリンクの設定が前記アクセスポイントと前記エンドポイントデバイスとの間で合意された後に通常動作状態に切り替わることを決定することと、
を含み、
前記高速光データリンクは、前記第1の光チャネルとは異なる光データチャネルで確立される、方法。
【請求項9】
高速光データリンクの設定が前記アクセスポイントと前記エンドポイントデバイスとの間で合意されることができなかった場合、当該方法は、前記エンドポイントデバイスが、
前記第1の光チャネルで第2の光信号を送信するために前記低電力状態に留まること、又は
前記低電力状態からスリープ状態に切り替わること、
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
光ワイヤレス通信ネットワークにおけるアクセスポイントであって、当該アクセスポイントは、
1つ以上の光フロントエンドを含む光トランシーバと、
電力管理ユニットと、
コントローラと、
を含み、
当該アクセスポイントは、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成される、アクセスポイント。
【請求項11】
光ワイヤレス通信ネットワークにおけるエンドポイントデバイスであって、当該エンドポイントデバイスは、
1つ以上の光フロントエンドを含む光トランシーバと、
電力管理ユニットと、
コントローラと、
を含み、
当該エンドポイントデバイスは、請求項8又は9に記載の方法を実施するように構成される、エンドポイントデバイス。
【請求項12】
請求項10に記載の少なくとも1つのアクセスポイントと、請求項11に記載の少なくとも1つのエンドポイントデバイスとを含む、光ワイヤレス通信ネットワーク。
【請求項13】
コンピューティングプログラムであって、当該プログラムが処理手段を含むアクセスポイントによって実行された場合、前記アクセスポイントの前記処理手段に請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法を実行させるコード手段を含む、コンピューティングプログラム、又はコンピューティングプログラムであって、当該プログラムが処理手段を含むエンドポイントデバイスによって実行された場合、前記エンドポイントデバイスの前記処理手段に請求項8又は9に記載の方法を実行させるコード手段を含む、コンピューティングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Li-Fiネットワーク等、光ワイヤレスシステム(optical wireless system)の分野に関する。とりわけ、少なくとも2つの動作状態を有するトリガベースの光ワイヤレス通信システム(trigger-based optical wireless communication system)に関する様々な方法、装置、システム、及びコンピュータ可読媒体が本明細書で開示される。
【背景技術】
【0002】
ラップトップ、タブレット、スマートフォン等、ますます多くの電子デバイスがワイヤレスでインターネットに接続することを可能にするために、ワイヤレス通信は、データレート及びリンク品質に関するこれまでにない要件に直面し、IoT(Internet-of-Things)に関する新たなデジタル革命を踏まえ、このような要件は年々高まっている。Wi-Fi(登録商標)等の無線周波数技術(Radio frequency technology)は、この革命に取り組むにはスペクトルキャパシティ(spectrum capacity)が限られている。一方、ライトフィデリティ(light fidelity)(Li-Fi)は、その本質的なセキュリティ強化(intrinsic security enhancement)、及び、可視光、紫外線(UV)、赤外線(IR)スペクトルの利用可能な帯域幅でより高いデータレートをサポートするケイパビリティ(capability)でますます注目を集めている。さらに、Li-Fiは指向性があり、光遮断材料によって遮蔽され、同じ帯域幅を空間的に再利用することにより、Wi-Fi(登録商標)と比較して、設定エリア内により多くのアクセスポイントを配備する可能性を備える。ワイヤレス無線周波数通信に対するこれらの重要な優位性は、Li-FiをIoTアプリケーションのための混雑した無線スペクトル(crowded radio spectrum)への圧力を緩和する有望なソリューションにしている。Li-Fiの他の利点としては、特定のユーザに保証される帯域幅、及び電磁干渉を受けやすいエリアにおいて安全に機能する能力(ability)が挙げられる。それゆえ、Li-Fiは、次世代のイマーシブコネクティビティ(immersive connectivity)を可能にする非常に有望な技術である。
【0003】
照明ベースの通信の分野ではいくつかの関連するターミノロジーがある。可視光通信(VLC:visible-light communication)は、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)等の強度変調光源によって、人間の目の持続性(persistence)よりも速くデータを送信する。Li-Fiは、日常照明器具(everyday luminaire)、例えば、室内照明又は屋外照明等の照明源によって発せられる光に信号を埋め込み、斯くして、照明器具からの照明を情報のキャリアとして使用することを可能にするために用いられることが多い。斯くして、光は、部屋等の対象環境を照らすための可視照明寄与(典型的には、光の主要な目的)と、環境に情報を提供するための埋め込まれた信号(典型的には、光の副次的な機能と考えられる)との両方を含み得る。このような場合、変調は、典型的には、人間の知覚を超えるように十分に高い周波数で、又は、少なくとも、目に見える一時的な光アーティファクト(例えば、フリッカ及び/又はストロボアーティファクト等)が、人間が気づかない若しくは少なくとも人間が許容できるように十分に弱くなるように及び/若しくは十分に高い周波数で行われる。斯くして、埋め込まれた信号は、主要な照明機能に影響を与えない。すなわち、ユーザは、全体的な照明を知覚するだけで、当該照明に変調されているデータの効果は知覚しない。
【0004】
IEEE 802.15.7可視光通信パーソナルエリアネットワーク(VPAN:visible-light communication personal area network)規格は、対象のアプリケーションを4つのトポロジ(ピアツーピア、スター、ブロードキャスト、協調(coordinated))にマッピングする。光ワイヤレスPAN(OWPAN:Optical Wireless PAN)は、通信に、UV、IR等、不可視光も許容する、VPANよりも一般的な用語である。Li-Fiは、双方向データ通信をサポートするために広範囲の光スペクトルを利用する、光ワイヤレス通信(OWC:optical wireless communication)技術の派生技術として一般に受け入れられている。
【0005】
Li-Fiシステムにおいて、信号は、さまざまな適切な変調技術のいずれかに従って、光のプロパティ、典型的には強度を変調することによって埋め込まれる。高速通信の場合、可視光通信ではなく赤外線(IR)通信が用いられることがよくある。紫外線及び赤外線放射は人間の目には見えないが、スペクトルのこれらの領域を利用する技術は、屈折率の場合等、波長依存性の結果としてばらつきが生じる可能性はあるが、同様である。多くの場合、紫外線及び/又は赤外線を利用することは、これらの周波数範囲が人間の目には見えず、よりフレキシビリティがシステムに導入されることができるため、有利である。無論、紫外量子(ultraviolet quantum)は、赤外及び/又は可視光に比べてより高いエネルギレベルを有するため、状況によっては紫外光の使用が望ましくない場合もある。
【0006】
変調に基づいて、光における情報は、任意の適切な光センサを使用して検出されることができる。例えば、光センサは、フォトダイオードであってもよい。光センサは、専用のフォトセル(ポイントディテクタ)、場合によってはレンズ、リフレクタ、ディフューザ又は蛍光体コンバータ(低速用)を備えたフォトセルのアレイ、又はフォトセル(ピクセル)のアレイ及びアレイに像を形成するためのレンズであってもよい。例えば、光センサは、スマートフォン、タブレット又はラップトップ等のユーザデバイスにプラグインするドングルに含まれる専用のフォトセルであってもよく、又は、センサは、統合されてもよく及び/又は3D顔認識のために元々は設計されている赤外線ディテクタのアレイ等、二重目的であってもよい。どちらにしても、これにより、ユーザデバイス上で動作するアプリケーションは、光を介してデータを受信することが可能になる。
【0007】
WO2019111018A1は、光を受け、受けた光に応答して検出信号を生成するように構成されるフォトディテクタデバイスと、検出信号を受信して処理し、レシーバ信号を生成するように構成されるレシーバ回路と、フォトディテクタデバイス又はレシーバ回路からの出力を所定の周波数又は周波数範囲について監視し、監視された出力が、受けた光がOWC信号を表すことを示すことに応答して、ウェイクアッププロシージャを実行し、少なくとも信号処理回路を第1の低電力状態から第2の高電力状態へと移すように構成されるウェイクアップ回路とを含む光ワイヤレス通信(OWC)レシーバに関する。
【0008】
WO2017042593A1は、第1のデバイスと、複数のさらなるデバイスと、第1のデバイスにデータを送信するためにさらなるデバイスのいずれかによって使用可能な共通通信チャネルとを有する光ワイヤレスネットワークにおける通信方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
エネルギ効率の向上は、経済的な考慮又はグリーン環境に対するポジティブな貢献に関して常に望ましい。しかしながら、エネルギ効率の向上を提供するソリューションは、システム性能の低下を招くことが多い。例えば、アクセスポイントのエネルギ消費を抑える1つのやり方として、デューティサイクリング制御によって実施されることがあり、これは、アクセスポイントが周期的にオン及びオフされることを意味する。この方法のペナルティは、エンドポイントデバイスがアクセスポイントに接続される平均レイテンシが、相応に増加することである。斯くして、本発明者らは、エネルギ効率とシステム性能との間のトレードオフが光ワイヤレス通信システムを設計する際に必要とされることを認識している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記に鑑み、本開示は、光ワイヤレス通信システムのエネルギ消費の無駄を回避するためのメカニズムを提供するための方法、装置、システム、コンピュータプログラム及びコンピュータ可読媒体に関する。とりわけ、本発明の目的は、請求項1に記載のアクセスポイントの方法によって、請求項8に記載のエンドポイントデバイスの方法によって、請求項10に記載のアクセスポイントによって、請求項11に記載のエンドポイントデバイスによって、請求項12に記載の光ワイヤレス通信ネットワークによって、及び請求項13に記載のコンピュータプログラムによって達成される。
【0011】
したがって、高速光通信リンクを確立するためのアクセスポイント及び/又はエンドポイントデバイスのエネルギ効率を向上させるために、アクセスポイント及び/又はエンドポイントデバイスは、少なくとも2つの動作状態で動作するように構成される。エンドポイントデバイスの存在が、アクセスポイントが低電力状態から通常動作状態に切り替わることをトリガするために必要とされ、その逆も同様である。このようにして、エネルギ効率とアクセスレイテンシのバランスが提供される。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、アクセスポイントの方法が提供される。光ワイヤレス通信ネットワーク(optical wireless communication network)においてアクセスポイントを動作させる方法であって、当該方法は、アクセスポイントが、第1の光チャネル(optical channel)でエンドポイントデバイスからの第1の光信号(optical signal)を検出するために低電力状態で動作することと、第1の光信号を検出した後にトリガ信号を生成することと、生成されたトリガ信号に基づいて低電力状態から通常動作状態に切り替わることと、エンドポイントデバイスと高速光データリンク(high-speed optical data link)を確立するために通常動作状態で動作することと、予め定められた期間、いずれのエンドポイントデバイスともアクティブな高速光データリンクがない場合、通常動作状態から低電力状態に戻ることとを含み、アクセスポイントは、低電力状態において、通常動作状態におけるよりも少ない電力を消費し(dissipate)、高速光データリンクは、第1の光チャネルとは異なる光データチャネル(optical data channel)で確立される。
【0013】
有益なことに、アクセスポイントは、低電力状態と通常動作状態の、少なくとも2つの異なる状態で動作する。低電力状態において、アクセスポイントは、高速光データリンクをサポートすることができず、主にエンドポイントデバイスの存在を検出するために検出モードで動作する。エンドポイントデバイスを保持しているユーザの動き又は存在を検出するために、PIRセンサ又はマイクロ波センサ等、専用の存在センサを使用する代わりに、エンドポイントデバイスの存在は、エンドポイントデバイスからの第1の光信号を受信すると検出される。第1の光信号は、エンドポイントデバイスの識別情報を含んでもよく、したがって、アクセスポイントは、エンドポイントデバイスが光ネットワークにアクセスするために信頼できるデバイスであるかどうかを判断してもよい。
【0014】
ユーザの存在は確認されるが、このようなエンドポイントデバイスがない、又は高速光データリンクを確立する当面の必要性がないエンドポイントデバイスがあるという異なるシナリオを考えると、アクセスポイントは、誤って通常動作モードに切り替わるようにトリガされる可能性があり、これは、不必要なエネルギ消費につながる。本発明では、第1の光信号が、アクセスポイントが通常動作モードに切り替わることをトリガするエンドポイントデバイスからの明確な要求を提出するために使用される。
【0015】
アクセスポイントは、オンデマンドベースで通常動作状態に移行する。予め定められた期間、いずれのエンドポイントデバイスともアクティブな高速光データリンクがない場合、アクセスポイントは、デフォルト状態として低電力状態に戻る。予め定められた期間は、製造業者、ユーザ、又はデバイス自身によるプリセット値であってもよい。値は、アプリケーションシナリオ、性能若しくはユーザエクスペリエンスに関連する要件、又は省電力についての期待(expectation)に従って決定されてもよい。予め定められた期間が長いほど、エネルギ消費の観点からは効率が悪くなるが、データ通信性能への影響も少なくなる。
【0016】
有利には、トリガ信号を生成する前に、方法はさらに、アクセスポイントが、第1の光信号を検出すると、第1の光チャネルでエンドポイントデバイスと高速光データリンクの設定についてネゴシエートする(negotiate)ことを含み、トリガ信号を生成するステップは、高速光データリンクの設定がアクセスポイントとエンドポイントデバイスとの間で合意された(agreed)後に行われる。
【0017】
1つのオプションは、アクセスポイントが、第1の光信号を第1の光チャネル上で送信することが可能である任意のエンドポイントデバイスに従事するように努め(try to serve)得るように、検出された第1の光信号から直ちに、有効なトリガ信号(valid trigger signal)が識別されることである。代替的に、アクセスポイント及びエンドポイントデバイスは、高速データリンクの準備のためにシグナリング情報を交換するために第1の光チャネルで低電力及び低データレート通信を使用してもよい。好ましい実施例では、アクセスポイント及びエンドポイントデバイスは、高速光データリンクの設定についてネゴシエートしてもよく、有効なトリガ信号は、高速光データリンクの設定がアクセスポイントとエンドポイントデバイスとの間で合意された後にのみ識別されてもよい。設定は、データレート、帯域幅、データチャネルインデックス、高速光データリンクに使用されるべき変調又はコーディングスキームに関連してもよい。また、設定は、アクセスポイント及びエンドポイントデバイスが高速光データリンクを確立する前の遅延に合意する(agree upon)ような、タイムスケジュールに関連してもよい。斯くして、アクセスポイントは、通常動作モードに直ちに切り替わらず、タイムスケジュールに従って切り替わってもよい。
【0018】
好ましいセットアップにおいて、アクセスポイントの低電力状態は、アクセスポイントにおけるあるハードウェアコンポーネントをディスエーブルにする(disable)ことによって又はあるハードウェアコンポーネントをディスエーブルにし、異なるハードウェアコンポーネントをイネーブル(enable)にすることによって達成される。
【0019】
1つのオプションにおいて、アクセスポイントは、通常動作状態から低電力状態へ切り替わる場合に少なくとも1つのハードウェアコンポーネントをディスエーブルにする。別のオプションでは、異なるハードウェアコンポーネントが、通常動作状態と低電力状態とで使用される。したがって、通常動作状態から低電力状態へ切り替わる場合、通常動作状態に関連する第1のハードウェアコンポーネント又は第1のハードウェアコンポーネントのセットがディスエーブルにされ、低電力状態に関連する第2のハードウェアコンポーネント又は第2のハードウェアコンポーネントのセットがイネーブルにされる。さらなるオプションでは、同じハードウェアコンポーネントのセットが両方の状態において使用され、低電力状態におけるより低い電力消費(power dissipation)は、より低いバイアス電流、より低いクロック速度等、異なる構成(configuration)を介して達成される。
【0020】
一例において、第1の光信号は、赤外線信号である。
【0021】
第1の光信号は、狭帯域の赤外線信号であることが有利である。斯くして、このような狭帯域の信号を送信及び受信することは、非常に電力効率を良くすることができる。
【0022】
他の例において、方法はさらに、アクセスポイントが、別のアクセスポイントからの第2のトリガ信号を受信すると低電力状態とスリープ状態との間で切り替わることを含み、アクセスポイントは、スリープ状態において、低電力状態におけるよりも少ない電力を消費する。
【0023】
エンドデバイスの存在に関連する電力状態の制御に加えて、アクセスポイントは、別のアクセスポイントからの第2のトリガ信号に従って自身の電力状態を調整してもよい。好ましくは、エネルギ消費をさらに減らすために、アクセスポイントは、第2のトリガ信号を受信するとスリープ状態に及びスリープ状態から切り替わってもよい。スリープ状態において、アクセスポイントは、エンドデバイスの存在を検出することができず、スリープ状態から低電力状態へウェイクアップするために他のアクセスポイントが第2のトリガ信号を提供することに依拠する。斯くして、スリープ状態は、アクセスポイントが第2のトリガ信号にのみ応答し、また、他の機能はディスエーブルにされてもよく、又は好ましくは、ディスエーブルにされる、パワーオフ状態と同様である。
【0024】
第2のトリガ信号は、あるスケジュールに従って配されてもよく、又は、他のアクセスポイントにおけるイベントによってトリガされてもよい。一例として、低電力状態で動作する他のアクセスポイントは、まず、アクセスポイントに第2のトリガ信号を送信してスリープ状態に入るよう要求してもよく、その後、エンドポイントデバイスの存在を検出すると、他のアクセスポイントは、エンドポイントデバイスのハンドオーバの場合に低電力状態に入るようアクセスポイントをウェイクアップするために別の第2のトリガ信号を送信してもよい。この例では、他のアクセスポイントは、部屋の入り口近くに、斯くして、存在情報をより早く取得するように位置してもよい。
【0025】
好ましくは、アクセスポイントは、スレーブアクセスポイントであり、第2のトリガ信号を送信する(from which the second trigger signal is received)他のアクセスポイントは、マスタアクセスポイントである。
【0026】
展開(deployment)に依存して、マスタアクセスポイントは、デイジーチェーン構成(daisy chain configuration)に従う等、2つ以上のスレーブアクセスポイントに接続してもよい。また、マスタアクセスポイントは、より高度な存在検出ケイパビリティ(more advanced presence detection capability)を有してもよい。一例として、エンドポイントデバイスの潜在的な軌道を知ることにより、マスタアクセスポイントは、選択的にスレーブアクセスポイントに第2のトリガ信号を送信してもよい。
【0027】
好ましいセットアップにおいて、スレーブアクセスポイントは、マスタアクセスポイントを介してバックボーンネットワークに接続される。
【0028】
マスタアクセスポイントは、Ethernet(登録商標)スイッチ等、バックボーンネットワークへのインターフェースを含んでもよく、接続されたすべてのスレーブアクセスポイントは、同じEthernetスイッチを介してバックボーンネットワークに接続されてもよい。
【0029】
別の好ましいセットアップにおいて、スレーブアクセスポイントは、マスタアクセスポイントから給電される。
【0030】
システム展開の観点から、スレーブアクセスポイントがマスタアクセスポイントから給電されることは非常に便利である。より有利なことには、このセットアップは、PoE(Power-over-Ethernet)技術を使用して、同じツイストペアEthernetケーブルを介してデータ及び電力を提供する等、以前の設定と組み合わされることができる。したがって、マスタアクセスポイントはさらに、給電機器(PSE:power sourcing equipment)として動作するように構成され、スレーブアクセスポイントは、受電デバイス(PD:powered device)として動作するように構成される。異なる電力クラスがPoE規格によってサポートされており、斯くして、マスタアクセスポイントは、その動作状態に応じてスレーブアクセスポイントへの電力デリバリ(power delivery)を制御してもよい。
【0031】
本発明の第2の態様によれば、エンドポイントデバイスの方法が提供される。光ワイヤレス通信ネットワークにおいてエンドポイントデバイスを動作させる方法であって、当該方法は、エンドポイントデバイスが、第1の光チャネルで第1の光信号を送信するために低電力状態で動作することと、第1の光信号を送信した後に低電力状態から通常動作状態に切り替わることと、アクセスポイントと高速光データリンクを確立するために通常動作状態で動作することと、高速光リンクの当面の必要性(immediate need)がない場合、通常動作状態から低電力状態に切り替わることとを含み、エンドポイントデバイスは、低電力状態において、通常動作状態におけるよりも少ない電力を消費し、高速光データリンクは、第1の光チャネルとは異なる光データチャネルで確立される。
【0032】
別の例では、高速光リンクの当面の必要性がない場合、エンドポイントデバイスは、通常動作状態から低電力状態又はスリープ状態のいずれかに切り替わってもよく、エンドポイントデバイスは、スリープ状態において、低電力状態におけるよりも少ない電力を消費してもよい。
【0033】
アクセスポイントとの高速光データリンクを確立するために、エンドポイントデバイスは、アクセスポイントが通常動作状態ではない場合等、イニシアチブを取ってアクセスポイントに第1の光信号を送信する。このようなウェイクアップ信号において伝えられるべき情報は非常に限られることを考えると、第1の光信号は、低データレート及び狭帯域のものであり、エンドポイントデバイスの低電力状態で送信される。低電力状態は、エンドポイントデバイスのデフォルト状態である。第1の光信号を送信した後、エンドポイントデバイスは、高速光データリンクを確立するために通常動作状態に切り替わる。高速リンクを行う当面の必要性がない場合、エンドポイントデバイスは、エネルギ消費をさらに減らすために低電力状態、又はスリープ状態に戻る。低電力状態又はスリープ状態への切り替えの判断は、アプリケーションプロファイル、ユーザプリファレンス、又はエンドポイントデバイスのバッテリ状態に依存してもよい。
【0034】
スリープ状態から低電力状態へ戻ることは、ユーザコマンド、スケジュールされたイベント、又は高速光リンク上でアプリケーションデータを送信又は受信する要求等、アプリケーションからの要求によってトリガされてもよい。
【0035】
有利には、第1の光信号を送信した後、通常動作状態に切り替わる前に、方法はさらに、エンドポイントデバイスが、第1の光チャネルでアクセスポイントと高速光データリンクの設定についてネゴシエートすることと、高速光データリンクの設定がアクセスポイントとエンドポイントデバイスとの間で合意された後に通常動作状態に切り替わることを決定することとを含む。
【0036】
一例として、高速光データリンクの設定がアクセスポイントとエンドポイントデバイスとの間で合意されることができなかった場合、方法はさらに、エンドポイントデバイスが、第1の光チャネルで第2の光信号を送信するために低電力状態に留まること、又は、低電力状態からスリープ状態に切り替わることを含む。
【0037】
エンドポイントデバイスは高速光データリンクを確立する必要性を有するが、合意(agreement)がアクセスポイントとなされていないことが起こり得る。例えば、第1の光チャネルのチャネル品質から導出され得る、光データチャネルの予期される悪いチャネル条件に起因して、所要のデータレートが満たされることができない場合である。エンドポイントデバイスは、新たなネゴシエーション(negotiation)を開始するためにさらなる光ウェイクアップ信号を送信することを継続してもよい。エンドポイントデバイスはエリア内を巡り(roam around)得るので、エンドポイントデバイスとアクセスポイントとの間のチャネル条件は、その間に改善される可能性があり、又は、エンドポイントデバイスは、別のアクセスポイントに近づく可能性がある。斯かる意味において、エンドポイントデバイスは、高速データリンクを確立するためのより良い機会を得る可能性がある。
【0038】
本発明の第3の態様によれば、アクセスポイントが提供される。光ワイヤレス通信ネットワークにおけるアクセスポイントであって、当該アクセスポイントは、1つ以上の光フロントエンド(optical front end)を含む光トランシーバ(optical transceiver)と、電力管理ユニット(power management unit)と、コントローラとを含み、当該アクセスポイントは、本発明によるアクセスポイントの方法のいずれかを実施するように構成される。
【0039】
アクセスポイントの第1のセットアップにおいて、アクセスポイントは、狭帯域の第1の光チャネルのための第1の光フロントエンドと広帯域の光データチャネルのための第2の光フロントエンドの、2つの専用光フロントエンドを有する。同じベースバンドモジュール、又はモデムが、2つの光フロントエンドによって共有されてもよい。モデムの異なる設定が、異なるチャネルで動作する場合に適用され、異なる処理速度及び消費電力レベルをもたらしてもよい。コントローラは、現在の動作状態に応じてベースバンドモジュールに異なる設定を適用するように構成される。
【0040】
第2のセットアップにおいて、アクセスポイントは、各々が光フロントエンドモジュール及びモデムを含む、2つの専用光トランシーバを有する。第1の光トランシーバは、第1の光チャネルで低データレート通信を行う、低電力狭帯域IRトランシーバであってもよい。第2の光トランシーバは、データ通信に使用される高電力及び高性能トランシーバであってもよい。好ましくは、第2の光トランシーバはさらに、LED又は垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL:vertical-cavity surface-emitting laser)フロントエンドを含む。
【0041】
第3のセットアップにおいて、アクセスポイントは、単一の光トランシーバのみを有してもよい。異なる動作状態は、異なる構成設定(configuration setting)によって達成される。
【0042】
異なるセットアップは、電力効率、デバイスのフォームファクタ、及び/又はハードウェアコスト間のバランスを考慮して採用されてもよい。
【0043】
一例として、アクセスポイントは、第1の光チャネルでエンドポイントデバイスからの第1の光信号を検出するためにアクセスポイントの低電力状態で動作するように構成される第1の光レシーバ(optical receiver)と、エンドポイントデバイスと高速光データリンクを確立するためにアクセスポイントの通常動作状態で動作するように構成される光トランシーバと、アクセスポイントが低電力状態で動作すべきか、通常動作状態で動作すべきかを判断するように構成されるコントローラと、コントローラの判断に従って光トランシーバへの電力供給(power supply)を制御するように構成される電力管理ユニットとを含み、第1の光レシーバはさらに、第1の光信号が検出された後にトリガ信号を生成するように構成され、コントローラはさらに、トリガ信号が生成されると低電力状態から通常動作状態への切り替えを決定する、及び、予め定められた期間、いずれのエンドポイントデバイスともアクティブな高速光データリンクがない場合、通常動作状態から低電力状態への切り替えを決定するように構成され、アクセスポイントは、低電力状態において、通常動作状態におけるよりも少ない電力を消費し、高速光データリンクは、第1の光チャネルとは異なる光データチャネルで確立される。
【0044】
この例では、専用の第1の光レシーバが、第1の光チャネルで受信するために採用されている。データリンクのための光トランシーバと比較して、第1の光レシーバは、低データレート受信ケイパビリティを有するかなり低い消費電力のものである。
【0045】
別の例では、アクセスポイントは、エンドポイントデバイスと高速光データリンクを確立するためにアクセスポイントの通常動作状態で動作する、及び、第1の光チャネルでエンドポイントデバイスからの第1の光信号を検出するために、光トランシーバのあるハードウェアコンポーネントをディスエーブルにする又はあるハードウェアコンポーネントをディスエーブルにし、異なるハードウェアをイネーブルにすることによって、アクセスポイントの低電力状態で動作するように構成される光トランシーバと、アクセスポイントが低電力状態で動作すべきか、通常動作状態で動作すべきかを判断するように構成されるコントローラと、コントローラの判断に従って光トランシーバへの電力供給を制御するように構成される電力管理ユニットとを含み、光トランシーバはさらに、アクセスポイントの低電力状態において第1の光信号が検出された後にトリガ信号を生成するように構成され、コントローラはさらに、トリガ信号が生成されると低電力状態から通常動作状態への切り替えを決定する、及び、予め定められた期間、いずれのエンドポイントデバイスともアクティブな高速光データリンクがない場合、通常動作状態から低電力状態への切り替えを決定するように構成され、アクセスポイントは、低電力状態において、通常動作状態におけるよりも少ない電力を消費し、高速光データリンクは、第1の光チャネルとは異なる光データチャネルで確立される。
【0046】
本発明の第4の態様によれば、エンドポイントデバイスが提供される。光ワイヤレス通信ネットワークにおけるエンドポイントデバイスであって、当該エンドポイントデバイスは、1つ以上の光フロントエンドを含む光トランシーバと、電力管理ユニットと、コントローラとを含み、当該エンドポイントデバイスは、本発明によるエンドポイントデバイスの方法のいずれかを実施するように構成される。
【0047】
アクセスポイントと同様に、エンドポイントデバイスも、異なるセットアップによって実装されてもよい。エンドポイントデバイスは、アクセスポイントよりも電力効率、フォームファクタ、及び/又はコストに関するより厳しい要件を有する可能性があることに留意されたい。斯くして、アクセスポイントによって採用されるセットアップではなく、異なるセットアップが、エンドポイントデバイスによって採用されてもよい。
【0048】
エンドポイントデバイスの一例として、エンドポイントデバイスは、第1の光チャネルで第1の光信号を送信するためにエンドポイントデバイスの低電力状態で動作するように構成される第1の光トランスミッタ(optical transmitter)と、アクセスポイントと高速光データリンクを確立するためにエンドポイントデバイスの通常動作状態で動作するように構成される光トランシーバと、エンドポイントデバイスが低電力状態で動作すべきか、通常動作状態で動作すべきかを判断するように構成されるコントローラと、コントローラの判断に従って光トランシーバへの電力供給を制御するように構成される電力管理ユニットとを含み、コントローラはさらに、第1の低電力光トランスミッタが第1の光信号を送信した後に低電力状態から通常動作状態への切り替えを決定する、及び、高速光リンクの当面の必要性がない場合、通常動作状態から低電力状態への切り替えを決定するように構成される。エンドポイントデバイスは、低電力状態において、通常動作状態におけるよりも少ない電力を消費し、高速光データリンクは、第1の光チャネルとは異なる光データチャネルで確立される。
【0049】
エンドポイントデバイスの別の例では、エンドポイントデバイスは、アクセスポイントと高速光データリンクを確立するためにエンドポイントデバイスの通常動作状態で動作するように構成される光トランシーバであって、光トランシーバはさらに、第1の光チャネルで第1の光信号を送信するために、光トランシーバのあるハードウェアコンポーネントをディスエーブルにする又はあるハードウェアコンポーネントをディスエーブルにし、異なるハードウェアをイネーブルにすることによって、エンドポイントデバイスの低電力状態で動作するように構成される、光トランシーバと、エンドポイントデバイスが低電力状態で動作すべきか、通常動作状態で動作すべきかを判断するように構成されるコントローラと、コントローラの判断に従って光トランシーバへの電力供給を制御するように構成される電力管理ユニットとを含み、コントローラはさらに、第1の低電力光トランスミッタが第1の光信号を送信した後に低電力状態から通常動作状態への切り替えを決定する、及び、高速光リンクの当面の必要性がない場合、通常動作状態から低電力状態への切り替えを決定するように構成される。エンドポイントデバイスは、低電力状態において、通常動作状態におけるよりも少ない電力を消費し、高速光データリンクは、第1の光チャネルとは異なる光データチャネルで確立される。
【0050】
本発明の第5の態様によれば、光ワイヤレス通信ネットワークが提供される。光ワイヤレス通信ネットワークは、本発明による少なくとも1つのアクセスポイントと、本発明による少なくとも1つのエンドポイントデバイスとを含む。
【0051】
本発明はさらに、コンピュータプログラムであって、当該プログラムが処理手段を含むアクセスポイントによって実行された場合、アクセスポイントの処理手段に本発明による方法のいずれかを実行させるコード手段を含む、コンピュータプログラムに具現されてもよい。
【0052】
本発明はさらに、コンピュータプログラムであって、当該プログラムが処理手段を含むエンドポイントデバイスによって実行された場合、エンドポイントデバイスの処理手段に本発明による方法のいずれかを実行させるコード手段を含む、コンピュータプログラムに具現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図面中、参照文字は、一般に、異なる図にわたって同じ部分を指す。また、これらの図面は、必ずしも正しい縮尺ではなく、その代わりに、全般的に、本発明の原理を例示することに重点が置かれている。
【
図1】OWCネットワーク、及びこれに接続されるバックボーンネットワークの概要を示す。
【
図2】Li-Fiアクセスポイントの基本的な構成要素を概略的に示す。
【
図3】複数の光フロントエンドを有するLi-Fiアクセスポイントの基本的な構成要素を概略的に示す。
【
図4】Li-Fiエンドポイントの基本的な構成要素を概略的に示す。
【
図5】Li-Fiアクセスポイント又はLi-Fiエンドポイントに含まれる光フロントエンドの基本的な構成要素を概略的に示す。
【
図7】光ワイヤレス通信ネットワークにおけるアクセスポイントの基本的な構成要素を概略的に示す。
【
図8】光ワイヤレス通信ネットワークにおけるアクセスポイントの一実装形態を概略的に示す。
【
図9】光ワイヤレス通信ネットワークにおけるエンドポイントデバイスの基本的な構成要素を概略的に示す。
【
図10】光ワイヤレス通信ネットワークにおけるエンドポイントデバイスの一実装形態を概略的に示す。
【
図11】マスタスレーブベースのLi-Fiシステムを示す。
【
図12】光ワイヤレス通信ネットワークにおけるアクセスポイントを動作させる方法のフローチャートを示す。
【
図13】光ワイヤレス通信ネットワークにおけるアクセスポイントを動作させる方法の別の実施形態のフローチャートを示す。
【
図14】光ワイヤレス通信ネットワークにおけるエンドポイントデバイスを動作させる方法のフローチャートを示す。
【
図15】光ワイヤレス通信ネットワークにおけるエンドポイントデバイスを動作させる方法の別の実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
ここで、本発明の様々な実施形態が、
図1に示されるように、光ワイヤレス通信(OWC)ネットワークシステム100、より具体的には、Li-Fiネットワークシステムに基づいて述べられる。説明のために、Li-Fiネットワーク100は、IPルータ15及びEthernet(登録商標)スイッチ14を介してバックボーンネットワーク20に接続されているが、実際のシステムでは、より多くのルータ及びスイッチが、バックボーンネットワークをLi-Fiネットワークに接続するために展開されてもよい。この例では、Li-Fiネットワークとバックボーンネットワークとの間の接続は、バックボーン接続21と呼ばれる。バックボーン接続は、Ethernet(登録商標)等の有線接続、又は無線周波数(RF)若しくはミリ波に基づくワイヤレス接続であることができる、安定した高速リンクである。また、バックボーン接続は、エンドポイントが光マルチセルワイヤレスネットワークで実行しているものとは異なる別の種類の光ワイヤレスリンクであることもできる。他の種類の光ワイヤレスリンクの一例は、自由空間ポイントツーポイント光リンク(free space point-to-point optical link)であることができる。
【0055】
Li-Fiシステムの概要及びネットワークアーキテクチャ
ローカルエリアネットワーキングのためのワイヤレス通信技術として、Li-Fiは、最後の数十メートルの接続性を提供するためにWi-Fi(登録商標)と同様の役割を果たす。Li-Fiネットワーク100は、複数の光アクセスポイント(AP)120及びネットワークデバイス又はエンドポイント(EP)110を含んでもよい。各エンドポイント110は、アクセスポイント120のそれぞれの1つに選択的に関連付けられ、同期される。Li-Fi AP120は、Li-Fiデバイス又はLi-Fiエンドポイント(EP)110へのアクセスを提供するために、1つ又は複数の光フロントエンド又はLi-Fiトランシーバ(TRX)121に接続されてもよい。破線で示された台形は、個々のLi-Fiトランシーバ121の視野(FoV)又はカバレッジを示している。EP110は、Li-Fi AP120のカバレッジ内に位置する場合にのみ、当該AP120からのダウンリンク通信を受信することが可能となる。光通信の対称的なアップリンク及びダウンリンクを仮定することにより、双方向光リンクが、同じ条件下で構築されることができる。光通信リンクの見通し線特性のため、隣接するアクセスポイント120は、互いの間に直接光リンクを有さないが、隣接するアクセスポイント120のカバレッジのオーバーラップしたエリアに位置するエンドポイント110は、両方のアクセスポイントからの光信号を検出することが可能である。
【0056】
一例では、Li-Fi AP120は、G.hn、 ITU G.9960及びG.9961に従って追加の機能性を有するドメインマスタとして動作し、複数のLi-Fi EP110を管理してもよい。一実装例では、EPが一方のドメインから他方のドメインにローミングする場合にハンドオーバが起こる。別の実装例では、各Li-Fi AP120は、最大255個のLi-Fi EPであることができる、複数のLi-Fi EPをホストする個々のドメインを管理するドメインマスタとして動作される。このようなLi-Fi AP120は、典型的には、天井に位置する。これらは、特に通信が可視光に基づかない場合、照明器具とコロケート(collocate)されてもよいが、必ずしもそうである必要はない。Li-Fi AP120の主な機能としては、AP120の存在を周囲のLi-Fi EP110にアドバタイズすること、Li-Fi EP110を登録及び解除すること、関連付けられているLi-Fi EP110間で媒体アクセス制御(MAC:medium access control)スケジューリングを行うこと、EP110から干渉レポートを集めること、干渉レポートに応答してローカルスケジュールを調整すること、及び/又は、Li-Fiコントローラ13にネイバ関係を報告すること等が挙げられる。干渉回避のためのMACスケジューリング等、Li-Fi AP120の機能のいくつかは、Li-Fiコントローラ13によって集中的に実装されてもよい。
【0057】
Li-Fi EP又はLi-Fiデバイス110は、エンドデバイスがLi-Fiネットワーク100に接続することを容易にするエンドユーザモデムである。現在、Li-Fi EP110は、典型的には、ラップトップ又は他のエンドデバイスに接続される専用エンティティである。将来的には、Li-Fi EP110は、スマートフォン、タブレット、コンピュータ、リモートコントローラ、スマートテレビ、ディスプレイデバイス、ストレージデバイス、家電製品、又は他のスマート電子デバイスに部分的又は完全に統合される可能性がある。
【0058】
Li-Fiネットワーク100内の複数のアクセスポイント120に接続されるLi-Fiコントローラ又は中央コントローラ13が存在してもよい。Li-Fiコントローラ又は中央コントローラ13は、トポロジ及びネイバ関係に関する情報の導出、干渉抑制のための異なるLi-Fiアクセスポイント(AP)間のスケジューリングの決定等、必要に応じてLi-Fiシステムを集中的に制御することを担う。さらに、Li-Fiコントローラ13は、ITマネージャ等、ユーザ又は管理者が、複数のLi-Fi AP間のスケジュールをコンフィギュレーションする、これらのLi-Fi APからのレポートを監視する、及び/又はシステム性能に関するさらなる統計情報を導出することを可能にするユーザインターフェースを提供するために用いられてもよい。典型的には、個々のAPから見えるLi-Fiコントローラ13は1つだけであるようにされ、これは、Li-Fiコントローラ13への及びLi-Fiコントローラ13からのトラフィックが、仮想LAN(VLAN)等を介して、それ自身のネットワークセグメント内に隔離されるようなネットワークコンフィギュレーションによって達成される。さらに、CAPWAP(Control and Provisioning of Wireless Access Points)プロトコル等のプロトコルが、複数のコントローラを発見する、及び、インフラストラクチャに参加するアクセスポイントをホスト/管理するための空きリソースを有する1つのコントローラを選択するために使用されることができる。
【0059】
Li-Fiシステムの1つの例示的な実装例では、Li-Fi同期サーバ16が、システムに接続され、これは、異なるG.vlcドメインのG.vlc媒体アクセス制御(MAC)サイクルを同期する(又はアラインする)ことを担う。これは、近隣の(neighboring)AP120を検出する、及び、近隣のAP120のオーバーラップしたエリアに位置するEP110への干渉を回避するためにいくつかの共通タイムスロットをアラインする(align)ために必要である。光リンクの見通し線特性のため、近隣のAP120は、典型的には、互いからの信号を直接検出することができない。しかしながら、2つの近隣のAP120のオーバーラップしたエリアに位置するEP110は、近隣のAP120が同時に送信している場合に干渉を受ける可能性がある。このような状況を回避するために、近隣のAP120を共通のタイムベースに同期させる、及びこれらが同じ時点に送信するのを防止するようにすることが必要であり得る。ネットワーク同期のための好ましいオプションの1つは、PTP(Precision Time Protocol)、IEEE 1588v2を用いることである。PTPは、サブマイクロ秒の精度を提供し、これは、G.vlcドメイン間MACアライメント(inter G.vlc domain MAC alignment)にとって十分である。PTPの精度を保つために、Ethernet(登録商標)スイッチのサポートが必要であり、これもPTPが可能であるべきである。PTPの精度を保つために、Ethernet(登録商標)ネットワーク内のどの要素もPTPを扱う必要があり、ゆえに、どのような展開(deployment)においても選択されるスイッチは、PTPモードをサポートし、それに応じて動作するように構成される必要がある。
【0060】
また、PTPが既存のインフラストラクチャによってサポートされていないレガシーシステムにLi-Fiシステムが展開されるべきであることも起こり得る。したがって、追加の措置が、異なる、恐らくは準最適なやり方で近隣のAP120を同期させるために取られるべきであり、それに応じて、近隣のAP120間の非理想的な同期に対処するためにEP110のための解決策が見出されるべきである。
【0061】
詳細なシステムの説明
Li-Fi AP
Li-Fi AP120は、Li-Fiネットワーク100を確立するための重要なユニットである。いくつかのシナリオでは、Li-Fi AP120は、既存のITインフラストラクチャとLi-Fiネットワーク100の間のインターフェースも形成する。Li-Fi AP120のハイレベルのブロック図が
図2に示されている。
【0062】
一方の側では、Li-Fi AP120は、有線接続(Ethernet(登録商標))、又はワイヤレス接続(RF、ミリ波、又はLi-Fi EPが実行しているものとは異なる他の種類の光ワイヤレス)であることができる、バックボーンネットワークへのインターフェース124を有する。他方の側では、Li-Fi AP120は、1つ以上のLi-Fi EP110との光リンクを可能にするための光フロントエンド121を有する。さらに、Li-Fi AP120は、異なる変調スキーム間の変換及びアナログ信号のコンディショニングの観点で、バックボーンネットワーク20上のデータと光リンク上のデータとの間の双方向翻訳又は変換を実施する機能も実行する。それゆえ、Li-Fi AP120は、少なくとも、デジタルモジュレータ及びデモジュレータコンポーネント123及びアナログフロントエンド122も含む。送信経路において、アナログフロントエンド(AFE)122は、光フロントエンドを駆動するためにベースバンド信号をコンディショニング及び増幅するためのプログラマブル増幅器、フィルタ、及びドライバを含んでもよい。受信経路について、AFE122は、さらなるデジタル処理のために受信信号を調整する(accommodate)ための減衰器、低ノイズ増幅器、フィルタ、及びプログラマブル利得増幅器を含んでもよい。
【0063】
少なくとも光源及び光センサを含む光フロントエンド121は、電気信号及び光信号間の変換を実施する。トランスミッタチェーンにおいて、光フロントエンド121は、電気的な送信信号を光源を介して出力される光信号に変換するために使用される。レシーバチェーンにおいて、光フロントエンド121は、受信した光信号を、さらなる信号処理のために光センサを介して出力される電気信号に変換するために使用される。光フロントエンド121は、Li-Fiトランシーバ(TRX)とも呼ばれ、
・ LiFi-トランスミッタ(Tx)は、AFEから得られる電気信号を(例えば、LEDによって発せられるべき)光信号に変換し、
・ Li-Fi レシーバ(Rx)は、(例えば、フォトダイオードから)受信した光信号をAFEのための電気信号に変換する。
【0064】
Li-Fi AP120は、単一のLi-Fi TRX121、又は複数のLi-Fi TRX121に接続され、異なる光路で光信号を送信することが可能であってもよい。Li-Fi AP120が複数のLi-Fi TRX121に接続される場合、Li-Fi APは、通信リンクを確立するために、これらを1つのコヒーレント信号として扱ってもよく、又は(部分的に)別個のインコヒーレント信号として扱ってもよい。
図3は、複数のLi-Fi TRX121を有するLi-Fi AP120の一例を示している。Li-Fiインターフェースコンポーネント125が、複数のLi-Fi TRX121に送られる又複数のLi-Fi TRX121から受信されるデータを分割又は結合するために採用される。
【0065】
Li-Fi EP
Li-Fi EP又はLi-Fiデバイス110のハイレベルの概要が
図4に示されている。Li-Fi AP120と同様に、Li-Fi EP110は、少なくとも、光フロントエンド111、アナログフロントエンド112、デジタルモジュレータ/デモジュレータ113、及びエンドデバイス又はプロセッサへのインターフェース114を含む。
【0066】
Li-Fi EP110は、ケーブルを介して別個のエンティティとしてエンドデバイスに接続されてもよく、又は部分的若しくは全体的にエンドデバイスに統合されてもよい。ラップトップ、スマートフォン、リモートコントローラ等、多くのエンドデバイスにとって、Ethernet(登録商標)は、エンドデバイスのオペレーティングシステムにおいて確立されたインターフェースである。Li-Fiは、追加的又は代わりにエンドデバイスに通信インターフェースを提供するために使用されてもよい。エンドデバイスのオペレーティングシステムへのLi-Fi EP又はLi-Fiデバイスのシステム統合を簡素化するために、Ethernet(登録商標) over USBを用いることが有利である。それゆえ、1つのオプションにおいて、Li-Fi EP又はLi-Fiデバイス110は、標準USBケーブル又はプラグを介してエンドデバイスに接続されることができる。Ethernet over USBを使用する例の場合、Li-Fi EP110は、Ethernet over USBインターフェース114を含み、USBケーブル115を介してエンドデバイスに接続してもよい。また、Li-Fi EP110は、Li-Fi AP120と同様、1つ以上のクライアント光TRX111に接続されてもよい。代替的に、各トランシーバ/レシーバが異なるそれぞれの方向に向けられるセグメント化されたトランスミッタ/レシーバを有する単一の光フロントエンドも想定される。
【0067】
別の例では、異なるインターフェース114がLi-Fi EPをエンドデバイスのオペレーションシステムに接続するために使用されてもよく、対応するインターフェース114(Ethernet over USB)及び/又はケーブル115が相応に置き換えられるべきである。
【0068】
図5は、Li-Fi AP120及びLi-Fi EP110に含まれる又は接続される光フロントエンド又は光TRX111、121の例示的な構成要素を示している。光TRX111、121は、少なくとも、光源1211、光センサ1212、ドライバ1213、及び増幅器1214を含む。光源1211は、電気的な送信信号を出力光信号に変換するために使用され、発光ダイオード(LED:Light-emitting diode)、レーザダイオード(LD:Laser diode)、又は垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser )であることが可能である。光センサ1212は、受信した光信号を出力電気信号に変換するために使用され、PINフォトダイオード(pin-photodiode)、アバランシェフォトダイオード、又は他のタイプの光センサであることが可能である。ドライバ1213は、主に、光源1211に必要とされる電力を調整するために使用される。増幅器1214は、主に、光センサ1212によって受信された信号を、電気回路におけるさらなる処理に適した信号にするようにコンディショニングするために使用される。一例では、増幅器1214は、1つ以上の演算増幅器で実装される電流-電圧コンバータである、トランスインピーダンス増幅器(TIA:transimpedance amplifier)であることが可能である。TIAは、最小量のノイズで信号を増幅するために受光センサ又はフォトダイオード1212の近くに位置してもよい。
【0069】
Li-Fiシステムにおけるインターコネクション(inter-connection)
典型的に、Li-Fi AP120は、天井に展開される。このようなAP120は、通信アクティビティを行うためにまず給電される必要がある。それゆえ、AP120への接続は、電力及びデータの両方のことを意味する。AP120は、一方ではバックボーン接続21を介してクラウド、又はバックボーンネットワーク20との双方向リンクをセットアップし、他方では、AP120は、光リンクを介して1つ以上の関連付けられているEP110と通信する。EP110は、典型的には、EPが結合される又は統合されているエンドデバイスから電力を得、光リンクを介して関連付けられているAP120と通信する。
【0070】
バックボーンネットワークへのLi-Fi APの接続
Li-Fi AP120がバックボーンネットワーク20に接続されるために、異なるオプションが取られることができる。
【0071】
一態様において、データ及び電力はLi-Fi APに一緒に(jointly)に供給されてもよく、これは、電力線通信(PLC:power line communication)による単一の電力ケーブル又はPower over Ethernet(登録商標)(PoE)による単一のEthernet(登録商標)ケーブルを介して実装されることができる。
【0072】
PLCは、既存の電力線ケーブル、すなわち、デバイスに主電源を供給するためのケーブルを、データ通信にも利用する。HomePlug(登録商標)又はG.hn等、普及しているPLC通信規格は、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)技術を利用し、これは、Li-Fiシステムにも広く採用されている。したがって、PLCシステム及びLi-Fiシステムの物理層(PHY:physical layer)は、両システムで使用される変調方法及び同期方法等、非常に類似する可能性がある。しかしながら、一般に、OFDMはバイポーラ信号を使用するのに対し、光ドメインにおける伝送はユニポーラである。その結果、光ネットワークにおける伝送に何らかの適応が必要である可能性がある。シンプルな解決策は、光伝送前にOFDMベースのPLC信号の復調及びその後の再変調を必要としないDCオフセットの使用、又は代替的に、ACO-OFDM、DCO-OFDM、ADO-OFDM及び/又はフリップOFDM等のユニポーラOFDM変調技術を用いた復調及びその後の再変調の使用である。それゆえ、典型的には天井で照明器具とコロケートされる、Li-Fi AP120が、既存の電力ケーブルを利用してバックボーンネットワーク20へのデータ接続も得ることは非常に好都合であり得る。
【0073】
しかしながら、主電源線がアンテナとして機能し、主電源線上に存在する通信信号と干渉する可能性のあるあらゆる種類の望ましくない信号を拾う可能性があることを考えると、PLCシステムのチャネルはかなりノイズが多いことも認識される。斯くして、Li-Fi over PLC対応デバイスは、このような外部干渉に対処することが重要である。さらに、主電源線上の通信信号は、製造時に予測されることができず、一日のうちでも変化する可能性がある、ある量の減衰を経験する。インパクトファクタとしては、建物ごとに異なるケーブルの長さ、高周波に対して多かれ少なかれ短絡を形成し、スイッチオン又はオフがなされる電力負荷等が挙げられる。
【0074】
PLCシステムによって導入されるシグナルインテグリティ(signal integrity)の問題に対処するための既知の解決策は、Li-Fi over PLC対応デバイスに、主電源線を介して受けるPLC通信信号を復号するためのPLCデコーダを設けることである。通信信号の障害はデジタル的に処理される。例えば、狭帯域干渉物(narrowband interferer)は、OFDM変調信号の1つのサブキャリアにエラーをもたらす。誤り訂正アルゴリズムを用いて再構成データは訂正されてもよい。その後、再構成データは、少なくとも1つのLEDに流れるLED電流を変調するためにアナログドメインに再び変換される。このようにして、データの損失が低減される、よりロバストなオペレーティングデバイスが提供されることができるが、この解決策の不利な点の1つは、デバイスのサイズが大きくなり、複雑で、コストがかかるということである。
【0075】
一方、電力がEthernet(登録商標)ケーブルを介して供給されることができる場合、Li-Fi APが、既存のITインフラストラクチャを利用して電力及びバックボーンネットワーク20への接続の両方を得ることも好都合であり得る。PoE(Power over Ethernet(登録商標))は、IEEE802.3af/at規格に述べられ、現在、IEEE Task Force P802.3btにおいて4ペアパワー(4-pair power)に向けて拡張されている。PoEは、制御及び通信目的のためのデータ線に沿って、PSE(Power Sourcing Equipment)から(複数の)PD(Powered Device)に40V~48Vの電源電圧レベルを供給することが意図されている。PSEデバイスは、PoEスイッチとも呼ばれる。PoE照明システムにおいて、PDは、光源、ユーザインターフェースデバイス及びセンサであってもよい。PSEは、典型的には、IEC/TR 60083規格に準拠する等、主電源から給電される。従来のPoEシステムは、ネットワーク及びそのエンドポイント、したがって、PSE及びPD間でデータ及び電力をトランスポートする。
【0076】
それゆえ、データは、例えば、Ethernet(登録商標)プロトコルを使用するEthernet(登録商標)接続を介して、制御デバイスによって受信されることができる。データは、Power over Ethernet(登録商標)システムのデバイス間でEthernet(登録商標)プロトコルを介して通信される。それゆえ、Ethernet(登録商標)コントローラの形態のマイクロチップが、デバイス間の通信リンクを確立するために使用されることができ、これは、オープンシステムインターコネクションモデル(OSI(Open Systems Interconnection)モデル)のメディアアクセス制御(MAC:Media Access Control)及び物理層(PHY)をサポートする。
【0077】
Ethernet(登録商標)接続は、例えば、光ファイバ、電線、又はツイストペアケーブル、例えば、Cat 3ケーブル、Cat 4ケーブル、Cat 5ケーブル、Cat 5eケーブル、Cat 6ケーブル、Cat 6Aケーブル、Cat 7ケーブル、Cat 7Aケーブル、Cat 8ケーブル、Cat 8.1ケーブル、Cat 8.2ケーブル等であることができる。Ethernet(登録商標)接続は、複数ペアのケーブル、例えば、2ペア、3ペア、4ペア、又はそれ以上のペアのケーブルを有することができる。ケーブルは、非シールド又はシールド、とりわけ、個別又は全体的にシールドされることができる。電力及びデータは、Ethernet(登録商標)接続の同じファイバ、ワイヤ、又はケーブルを介して、又はEthernet(登録商標)接続の異なるファイバ、ワイヤ、又はケーブルを介して伝送されてもよい。光ファイバを介した電力伝送の場合、電力は、データ受信デバイスのソーラーセルユニットによって受けられる光子の形態で伝送されることができる。
【0078】
PoEシステムにおけるデータ受信デバイスは、1つ以上のポートを含むことができる。各ポートは、1つ以上のピンを含むことができる。ピンは、電力、データ、又は電力及びデータを受けるように構成されることができる。追加的に、又は代替的に、ポートは、光子の形態で電力を受けるための1つ以上のソーラーセルユニットを含むこともできる。ポートはEthernet(登録商標)接続を介して電力及びデータを受けることができるため、一部のピンに電力が供給され、他のピンにEthernet(登録商標)接続を介してデータが供給されることができる。代替的に、又は追加的に、ピンには、Ethernet(登録商標)接続を介して電力及びデータが供給されることもできる。
【0079】
別の態様では、データ及び電力は別個にLi-Fi APに供給されてもよく、オプションは、電力ケーブル及びEthernet(登録商標)ケーブル(バックボーンネットワークへの有線接続)の両方、又は電力ケーブル及びバックボーン20へのワイヤレスリンク(光ワイヤレスリンク又は自由空間光リンク)の組み合わせを介すことがあり得る。
【0080】
好ましくは、Li-Fiシステムは、Wi-Fi(登録商標)システム又はセルラーシステム等、既存のワイヤレス通信システムに統合されてもよい。したがって、Li-Fi AP120は、Wi-Fi(登録商標)アクセスポイント又はセルラー基地局に統合又は直接接続されてもよい。Li-Fi AP120とWi-Fi(登録商標)アクセスポイント又はセルラー基地局との間の信号の変換又は翻訳を有することにより、Wi-Fi(登録商標)システム又はセルラーシステムの既存のインフラストラクチャが、Li-Fi AP120のためのバックボーンネットワーク20への接続を提供するために用いられることができる。
【0081】
Li-Fi APへのLi-Fi EPの接続
Li-Fi EP110は、Li-Fi AP120を介してLi-Fiシステムにアクセスし、関連付けられているLi-Fi AP120は、ローカルAPと呼ばれることが多い。Li-Fi EP110とLi-Fi AP120の接続には考慮されるべきいくつかの側面がある。
- カバレッジ:Li-Fi EPは、そのロケーション、その向き、Li-Fi APのポジショニング、及びLi-Fi EPのトランスデューサ/センサカバレッジエリアのサイズに依存して、必ずしもLi-Fi APを見ることができるとは限らない可能性がある。
- ダウンリンク干渉:複数の光ダウンリンクのオーバーラップしたカバレッジエリアにあるLi-Fi EPは、これらのLi-Fi APが同時に送信する場合に干渉を受ける。
- アップリンク干渉:Li-Fi EPが、関連付けられているLi-Fi APに、別のLi-Fi EPがこの同じLi-Fi APに送信している際に信号を送信することは、Li-Fi APにおけるアップリンク干渉を引き起こす。
- ハンドオーバ:Li-Fi EPの移動性のため、Li-Fi EPがあるLi-Fi APのカバレッジエリアから近隣のLi-Fi APに移動する場合にハンドオーバが必要とされる。すなわち、(例えば、ユーザデバイス、クライアントデバイス、携帯電話等に接続される又は含まれる)Li-Fi EPが現在のセルから近隣のセルに移動する場合、アクティブな通信は、当該近隣のセルのノード又はアクセスポイントに引き継がれなければならない。ハンドオーバは、進行中の通信又はデータ転送の途絶を減らすためにできるだけ早く行われることが意図されており、これを促進するために準備期間を含んでもよい。既存のLi-Fi APとのリンクが切れる前に新しいLi-Fi APへのリンクを準備及び確立するために利用可能な時間が不十分である場合、Li-Fi EPは、接続がない期間を経験する可能性がある。光リンクの見通し線特性に起因するLi-Fiセルの比較的小さなサイズを考慮すると、シームレスなハンドオーバは、リンク品質及びユーザ体験を保証するために重要である。
【0082】
基本的に、Li-Fi EP110は、双方向光リンク、又はハイブリッドのダウンリンク及びアップリンクを介してLi-Fi AP120に接続されることができる。ここでは、ダウンリンクは、Li-Fi AP120からLi-Fi EP110への通信リンクを意味し、アップリンクは、Li-Fi EP110からLi-Fi AP120への通信リンクを意味することに留意されたい。双方向光リンクは、Li-Fi EP110とLi-Fi AP120との間の比較的対称的な接続を可能にする。したがって、ダウンリンク及びアップリンクの両方が、上述したように同様のLi-Fi通信の利点を享受する。しかしながら、ウェブサーフィン又はビデオストリーミングのため等、いくつかのアプリケーションシナリオでは、Li-Fi APとLi-Fi EPとの間のリンクは、Li-Fi AP120からLi-Fi EP110への光ダウンリンクと、Li-Fi EP120からLi-Fi AP110への無線周波数(RF)アップリンクとの組み合わせである、ハイブリッドリンクであることもできる。RFリンクは、Wi-Fi(登録商標)、BLE、若しくはZigbee(登録商標)等、普及している短距離ワイヤレス通信プロトコルに従ってもよく、又は、4G若しくは5Gセルラー等、セルラー通信プロトコルに従ってもよい。
【0083】
Li-Fi AP120は、Li-Fi AP機能及びWi-Fi(登録商標)アクセスポイント又はセルラー基地局機能の両方をサポートするコンボデバイスを介して構築されてもよいというオプションに戻ると、このようなハイブリッドリンクは、Li-Fi AP側のコントローラによってシームレスに処理されることができる。Li-Fi EP110は、典型的には、スマートフォン、タブレット、コンピュータ、又は他のスマートデバイスであることができる、エンドデバイスに接続又は統合されるので、エンドデバイスは、ハイブリッドリンクで使用される短距離ワイヤレス通信プロトコル又はセルラープロトコルのハードウェアサポートを既に有する可能性がある。それゆえ、このようなハイブリッドリンクはエンドデバイスの既存のリソースも活用し、受信経路のみを必要とし、送信経路を必要としないLi-Fi EPのための簡素化された解決策を提供してもよい。EP110のコスト、消費電力(power consumption)、及びフォームファクタは、このようにしてさらに低減され得る。相応にして、Li-Fi AP120も、主として、光ダウンリンクを介してLi-Fi EP110にデータを送るための光トランスミッタを含むことにより簡素化されるのに対し、Li-Fi EP110からAP120へのRFベースのアップリンクは、コンボデバイス又はコロケートされるWi-Fi(登録商標)アクセスポイント/セルラー基地局におけるRFレシーバを活用することにより、又はLi-Fi AP120自身に含まれる専用のRFレシーバを介して受信されてもよい。
【0084】
光マルチセルワイヤレスネットワーク内のスケジューリング及び干渉抑制
複数のLi-Fi AP120が隣り合わせに展開される場合、又は複数のEP110が同じローカルAP120若しくは隣接するAP120に関連付けられる場合、干渉のない光通信のために媒体アクセス制御(MAC)が必要となる。時分割多重アクセス(TDMA:time-division multiple access)、周波数分割多重アクセス(FDMA:frequency-division multiple access)、キャリアセンス多重アクセス(CSMA:carrier-sense multiple access)、符号分割多重アクセス(CDMA:code division multiple access)、空間分割多重アクセス(space-division multiple access)、又は1つ以上の上記のメカニズムの組み合わせ等、異なるMACメカニズムが光マルチセルワイヤレスネットワークで用いられることが可能である。TDMAは、時分割多重化スキームに基づき、無線リソース(radio resource)が時間ドメインでスケジュールされ、異なるタイムスロットは、典型的には周期的な繰り返しフレーム構造又はMACサイクルで異なるトランスミッタに割り当てられる。FDMAは、周波数分割多重化に基づき、異なる周波数帯域が、同時送信のために異なるデバイスに割り当てられる。光通信において、FDMAは、波長分割多重化に基づく、波長分割多重アクセス(WDMA:wavelength division multiple access)に発展されることも可能である。FDMAの別の先進的なバージョンは、直交周波数分割多重アクセス(OFDMA:orthogonal frequency-division multiple access)であり、各デバイスは、全帯域のうちの1つ以上のサブキャリアを使用し得る。OFDMAは、よりフレキシブルに異なるユーザに異なるデータレート又はサービス品質を提供し、一方、このようなダイバーシティにもかかわらず、高いリソース効率が維持されることができる。CSMAは、典型的には、「リッスンビフォアトーク(listen-before-talk)」アプローチを用い、デバイスは、共有媒体で送信する前に他のトラフィックがないことを確認する(verify)。CSMAは疎なネットワークで広く使用され、ノードの密度が高くなる場合、さらなる衝突回避技術が必要になる。CDMAは、典型的には、スペクトラム拡散の上に構築され、一般的な形態は、直接シーケンススペクトラム拡散(direct-sequence spread spectrum)に基づく直接シーケンスCDMA(direct-sequence CDMA)であり、異なるデバイスが、互いに直交する異なる拡散コードで同時にメッセージを送信する。無線リンク(radio link)と比較して典型的にはより小さい光リンクのFoVを考えると、空間分割多重アクセスも、ここでは非常に魅力的な解決策であり得る。
【0085】
複数のAP120を有するTDMAベースのマルチセルネットワークでは、直接通信がないことに起因して、隣接するAP120は時として同期したMACサイクルを有さない可能性がある。1つのMACサイクル又はスーパーフレームの持続時間は、典型的には、ネットワーク内のすべてのAP120について同じであるが、MACサイクルの開始時刻は、個々のAP120について異なり得る。MACサイクルの開始時刻は、ワイヤレス媒体を連続するタイムスロットに分割するためのローカル時間基準としてAPによって使用されることに留意されたい。2つの隣接するAP120間のMACサイクルのこのようなオフセットは、オーバーラップしたエリア内のEP110との通信のために時間スロットが1つのAP120に独占的に割り当てられる場合でも、これら2つの隣接するAP120のオーバーラップしたカバレッジエリアに位置するEP110に干渉を引き起こす可能性がある。それゆえ、AP120は、共通のタイムベースに同期する必要があり得る。共通のタイムベースは、同期ハンドシェイク(synchronization handshake)を介して、ネットワーク上で配布される基準クロック(同期Ethernet(登録商標)クロック等)を介して、若しくはネットワーク内の専用の同期サーバを介して得られてもよく、又は主電源のゼロクロス等、共通の信号から導出されてもよい。しかしながら、ネットワーク内の不確実な遅延又は干渉に起因して、タイミング基準に対するAPのタイミング同期の不確実性(timing synchronization uncertainty)が依然としてあり得る。少なくとも2つの隣接するAP120のオーバーラップしたエリアに位置するEP110が、通常のデータ通信リンク又は帯域外シグナリングメッセージ(out-of-band signaling message)であり得る、これらのAPからのダウンリンク通信に基づいて、少なくとも2つのAP120のMACサイクルに関するタイミング情報を導出することが依然として必要であり得る。少なくとも2つのAP120のMACサイクルに関する導出されたタイミング情報に基づいて、EP110はさらに、2つの隣接するAP120のうちの少なくとも一方が、他方とアラインされるように自身のMACサイクルを調整するのを支援してもよい。
【0086】
トリガベースの光ワイヤレス通信システム
Li-Fiネットワークを展開するために、Li-Fi APが照明器具に統合されるか否かに依存して、Li-Fiシステムは、非スタンドアロンモード又はスタンドアロンモードに分類されてもよい。
【0087】
第1のオプションでは、Li-Fi APは、照明器具のセンサスロットの使用を介して非スタンドアロンモードで照明器具に組み込まれる。APは、主電源又はPoEから直接給電されてもよく、又は、好ましくは、APは、照明器具から直接給電される。AP間の接続は、非シールドツイストペア(UTP:unshielded twisted pair )で15m又はシールドツイストペア(STP:shielded twisted pair)で40mに制限される距離のペア又は2本のワイヤ(IEEE 100BASE-T1又は1000BASE-T1等)で実現されてもよい。APは、Ethernet(登録商標)スイッチ(Ethernet-Switch)を介してバックボーンネットワーク又はインターネット(WAN)に接続してもよい。好ましくは、マスタスレーブアーキテクチャが、2つ以上のLi-Fi APを組織化する(organize)ために使用されてもよい。マスタAPのみがEthernetスイッチを含み、スレーブAPは、マスタAP内のEthernetスイッチのポートと2本のワイヤを介して接続される。Ethernetスイッチのポートは、ON/OFFの切り替えが可能である。異なる電力クラスが、異なるポートに対して実装されてもよい。スレーブAPは、有効なトリガ信号(valid trigger signal)を検出するための低電力検出回路で主に動作してもよく、Li-Fiエンドデバイス(例えば、Li-Fiケイパビリティを有するユーザ機器:ドングル、ラップトップ、スマートフォン等)がカバレッジエリアで検出される場合にのみ通常動作モードに切り替わってもよい。Li-Fiエンドデバイスは、APが低電力モードから通常動作モードに切り替わることをトリガするためにIRリモートRC5プロトコルによる等低電力光リンクを通じて光信号を送信してもよい。したがって、高速リンクが必要ない場合、APは電力を節約することができる。
【0088】
第2のオプションでは、Li-Fi APは、スタンドアロンモードで照明器具とは別個に置かれる。AP間の接続は、UTPの場合15m又はSTPの場合40mに制限される距離の2本のワイヤ(例えば、IEEE PoDL - リモート給電のEthernet技術等)で実現されてもよい。第1のオプションと同様に、マスタスレーブアーキテクチャが、2つ以上のLi-Fi APを組織化するために使用されてもよく、スレーブAPは、有効なトリガ信号を検出するための低電力検出回路で主に動作してもよい。
【0089】
トリガベースのLi-Fiシステムが
図6に示されている。アクセスポイント1200は、低電力状態と通常動作状態の、少なくとも2つの異なる状態で動作することができる。デフォルトで、アクセスポイント1200は、第1の光チャネルでエンドポイントデバイス1100からの第1の光信号50を検出するために低電力状態で動作する。第1の光信号50を検出した後に有効なトリガ信号が識別される場合にのみ、アクセスポイント1200は、エンドポイントデバイス1100と高速光データリンク60を確立するために低電力状態から通常動作状態に切り替わる。予め定められた期間、いずれのエンドポイントデバイス1100ともアクティブな高速光データリンク60がない場合、アクセスポイント1200は、低電力状態に戻る。アクセスポイントは、低電力状態においてより少ない電力を消費するので、トリガベースの動作により、アクティブなリンクを待つ等、アイドル動作に起因するエネルギの浪費が、相応に低減される。
【0090】
高速光データリンク60は、第1の光チャネルとは異なる光データチャネルで確立される。光データチャネルは、高データレート通信をサポートするために大きな帯域幅のものであり、可視光、紫外線(UV)、又は赤外線(IR)スペクトルで展開されてもよい。第1の光チャネルは、低データレート低電力光通信をサポートするために狭い帯域幅のものであり、光データチャネルと比較して、同じ又は異なる周波数帯域に位置してもよい。好ましくは、第1の光チャネルは、低電力狭帯域IRチャネルである。
【0091】
エンドポイントデバイス1100も、少なくとも2つの異なる動作状態を有する。データリンクを開始するために、エンドポイントデバイス1100は、まず、第1の光チャネルで第1の光信号50を送信するために低電力状態で動作し、その後、アクセスポイント1200と高速光データリンク60を確立するために通常動作状態に切り替わる。高速光リンク60の当面の必要性がない場合、エンドポイントデバイス1100は、通常動作状態から低電力状態又はスリープ状態のいずれかに切り替わる。低電力状態又はスリープ状態へ戻るかどうかの判断は、アプリケーションプロファイル、ユーザプリファレンス、又はエンドポイントデバイスのバッテリ状態に応じてなされてもよい。例えば、次の高速データリンクの確立まで比較的大きな間隔が予想される場合、エンドポイントは、スリープ状態、又はパワーオフ状態にさえ切り替わることを選択してもよい。
【0092】
好ましくは、シグナリング交換(signaling exchange)が、通常動作モードに切り替わる前に低電力状態においてアクセスポイントとエンドポイントデバイスとの間で第1の光チャネルで実施されてもよい。例えば、アクセスポイント及びエンドポイントデバイスは、高速光データリンクの設定についてネゴシエートしてもよく、有効なトリガ信号は、高速光データリンクの設定がアクセスポイントとエンドポイントデバイスとの間で合意された後にのみ識別されてもよい。設定は、データレート、帯域幅、データチャネルインデックス、高速光データリンクに使用されるべき変調又はコーディングスキームに関連してもよい。また、設定は、アクセスポイント及びエンドポイントデバイスが高速光データリンクを確立する前の遅延に合意する(agree upon)ような、タイムスケジュールに関連してもよい。斯くして、アクセスポイントは、通常動作モードに直ちに切り替わらず、タイムスケジュールに従って切り替わってもよい。斯くして、アクセスポイント及び/又はエンドポイントデバイスが誤って通常動作モードに切り替わる可能性はさらに低減される。
【0093】
図7は、アクセスポイントの基本的な構成要素を概略的に示している。アクセスポイントは、1つ以上の光フロントエンド121、1255を含む光トランシーバ1211と、電力管理ユニット1245と、コントローラ128とを含む。電力管理ユニット1245は、デバイスの現在の動作状態に従ってLi-Fi機能ブロックをアクティブモード又はスリープモードのいずれかに設定するように構成される。コントローラ128は、トリガイベントに従って電力管理ユニットを制御するように構成される。任意選択的に、光トランシーバ1211はさらに、エンドポイントデバイスからの第1の光信号の受信のために使用される、別の専用光レシーバ1255を含む。一実施形態によれば、双方向リンクが、高速データリンクの設定のネゴシエーションのために第1の光チャネルで確立されることになり、モジュール1255は、狭帯域IRトランシーバ等、専用の低電力トランシーバであってもよい。第1の光チャネルが光データチャネルと同じ周波数帯に位置する場合、低電力状態は、同じ光フロントエンド121等、同じハードウェアコンポーネントを異なる構成で使用することにより達成されてもよい。
【0094】
一例として、1255は、ドングル等、エンドポイントデバイスの存在を検出する必要があるだけなので、既存のIRリモート制御プロトコル、例えば、RC5若しくはRC6、又はより単純なバージョンを利用する低電力IRレシーバである。別の例では、RC5又はRC6は、データ通信のためのLi-Fi IRフロントエンド111で実装されてもよく、Li-Fi IR LED111が、RCコードのためだけに機能が低減された低電力モードで動作されてもよい。
【0095】
図8は、アクセスポイントの詳細な実装形態を提供する。光トランシーバ1211は、少なくとも光フロントエンド121、アナログフロントエンド122、デジタルモジュレータ/デモジュレータ/モデム123、及びバックボーンネットワークへのインターフェース124を含む完全なLi-Fiトランシーバとして実現される。第1の光信号は、通常動作モードと比較して異なる構成で同一の光フロントエンド121を介して受信されてもよい。電力管理ユニット1245は、低電力状態においてアナログフロントエンド122、モデム123、及びインターフェース124等の光トランシーバ1211内の他のモジュールのすべて又は一部をオフにするように構成されてもよい。任意選択的に、光トランシーバ1211は、アクセスポイントの前述の実施形態に従ってさらなる専用の低電力光レシーバ又はトランシーバ1255を含んでもよい。
【0096】
図9は、光ワイヤレス通信ネットワークにおけるエンドポイントデバイスの基本的な構成要素を概略的に示している。エンドポイントデバイスは、1つ以上の光フロントエンド111、1155を含む光トランシーバ1111と、電力管理ユニット1145と、コントローラ118とを含む。電力管理ユニット1145は、エンドポイントデバイスの現在の動作状態に従ってLi-Fi機能ブロックをアクティブモード又はスリープモードのいずれかに設定するように構成される。コントローラ118は、電力管理ユニット1145を制御するように構成される。任意選択的に、光トランシーバ1111はさらに、第1の光信号の送信のために使用される、別の専用光トランスミッタ1155を含む。一実施形態によれば、双方向リンクが、高速データリンクの設定のネゴシエーションのために第1の光チャネルで確立されることになり、モジュール1155は、狭帯域IRトランシーバ等、専用の低電力トランシーバであってもよい。第1の光チャネルが光データチャネルと同じ周波数帯に位置する場合、低電力状態は、同じ光フロントエンド111等、同じハードウェアコンポーネントを異なる構成で使用することにより達成されてもよい。
【0097】
図10は、エンドポイントデバイスの一実装形態を概略的に示している。光トランシーバ1111は、少なくとも光フロントエンド111、アナログフロントエンド112、デジタルモジュレータ/デモジュレータ/113、及びLi-Fiトランシーバが接続される又は含まれるエンドデバイスへのインターフェース114を含む完全なLi-Fiトランシーバとして実装される。第1の光信号は、通常動作モードと比較して異なる構成で同一の光フロントエンド111を介して送信されてもよい。電力管理ユニット1145は、低電力状態においてアナログフロントエンド112、モデム113、及びインターフェース114等の光トランシーバ1111内の他のモジュールのすべて又は一部をオフにするように構成されてもよい。任意選択的に、光トランシーバ1111は、エンドポイントデバイスの前述の実施形態に従ってさらなる専用の低電力光トランスミッタ又はトランシーバ1155を含んでもよい。
【0098】
アクセスポイント及び/又はエンドポイントデバイスが専用の低電力光レシーバ(アクセスポイント)又はトランスミッタ(エンドポイントデバイス)又はトランシーバ(アクセスポイント、エンドポイントデバイス)を含むオプションでは、以下の電力状態が定義されてもよい。
・ 通常動作状態(normal operation state):すべてのコンポーネントがアクティブ(「オン」)である。
・ 低電力状態(low power state):低電力光レシーバ(アクセスポイント)又は低電力光トランスミッタ(エンドポイントデバイス)又は低電力光トランシーバ(アクセスポイント、エンドポイントデバイス)がアクティブ(「オン」)である。高速リンクのための光トランシーバ(光フロントエンド111、121、アナログフロントエンド112、122、モデム113、123、エンドポイントインターフェース114)は「オフ」又は非給電状態(unpowered state)である。アクセスポイントのEthernetインターフェース124はスリープモードであり、EEE(Energy Efficient Ethernet) IEEE 802.3az規格による等、周期的同期クロック信号を受信することが可能である。
・ スリープ状態(sleep state)又はパワーオフ状態(power-off state):低電力光レシーバ(アクセスポイント)又は低電力光トランスミッタ(エンドポイントデバイス)又は低電力光トランシーバ(アクセスポイント、エンドポイントデバイス)は「オフ」である。高速リンクのための光トランシーバ(光フロントエンド111、121、アナログフロントエンド112、122、モデム113、123、エンドポイントインターフェース114)は「オフ」である。アクセスポイントのEthernetインターフェース124は、ディープスリープモード(deep sleep mode)であり、マスタアクセスポイントからの第2のトリガ信号によってトリガされることになる。それゆえ、スリープ状態又はパワーオフ状態において、スレーブアクセスポイントは、スケジュール又はトリガイベントに従ってマスタアクセスポイントによってのみウェイクアップされることができる。エンドポイントデバイスの場合、ユーザコマンド、スケジュールされたタイマ(scheduled timer)、又はアプリケーションからの要求によってのみウェイクアップされることができる。
【0099】
図11は、マスタスレーブ構造で配置される複数のAPの図を提供する。スレーブAP(slave AP)と比較して、マスタAP(master AP)はさらに、1つ以上のスレーブAPにバックボーンネットワークへのアクセスを提供するEthernetスイッチを含んでもよく、アクセスは、1000BASE-T1インターフェースを介する等、Ethernet規格に従って提供されてもよい。さらに、マスタAPは、1つ以上のスレーブAPに電力を供給するように構成されてもよい。PoE技術により、マスタAPは、電力及びデータを同じケーブルを介してスレーブAPに供給してもよい。有利には、PoDL(Power over Data Line)技術が、データ及び電力のために1つのツイストペアしか必要としないので、マスタ及びスレーブAP間の給電のために採用されてもよい。
【0100】
一例として、マスタAPはデフォルトで通常動作状態で動作し、スレーブAPはデフォルトでエンドポイントデバイスを検出するために低電力状態で動作する。スレーブAPは、1つのツイストペアを介して給電され、非常に低い電力を消費する(低電力IRレシーバのみがアクティブである)。有効なトリガ信号を検出すると、Ethernetインターフェース124が、Ethernetリンクを確立するためにアクティブにされ、モデム123、アナログフロントエンド122、及び光フロントエンド121が、エンドポイントデバイスと高速データリンクを確立するためにアクティブにされる。
【0101】
さらなる実施形態は、さらなる電力削減のためにマスタAPとスレーブAPとの間でプロトコルを実装することである。有益には、マスタAPは、スケジュール又はイベントに従って第2のトリガ信号を介してスレーブAPをオン又はオフにしてもよい。例えば、マスタAPは、まず、スレーブAPに第2のトリガ信号を送信し、スレーブAPに、電力をさらに低減するために低電力状態からスリープ状態又はパワーオフ状態へ切り替わることを指示してもよい。スリープ状態において、アクセスポイントは、エンドデバイスの存在を検出することができず、スリープ状態から低電力状態へウェイクアップするために他のアクセスポイントが別の第2のトリガ信号を提供することに依拠する。第2のトリガ信号は、マスタAPとスレーブAPを接続するケーブルを介して送信される。
【0102】
別の例では、マスタAP及びスレーブAPの両方が、エンドポイントデバイスからのトリガを待つ低電力状態に入ってもよい。マスタAPは、接続されているスレーブAPの状態をさらに考慮して自身の動作状態を決定してもよい。例えば、少なくとも1つの接続されているスレーブAPが通常動作モードである場合、マスタAPのEthernetスイッチは動作モードを維持し、マスタAPの残りの部分はエンドポイントデバイスによってトリガされるために低電力状態に入ってもよい。
【0103】
図12は、光ワイヤレス通信ネットワークにおけるアクセスポイントを動作させる方法500のフロー図を示している。方法500は、アクセスポイント1200が、ステップS501において、第1の光チャネルでエンドポイントデバイス1100からの第1の光信号50を検出するために低電力状態で動作することを含み、ステップS502において、アクセスポイントは、第1の光信号を検出した後に有効なトリガ信号を識別する。ステップS503において、アクセスポイントは、有効なトリガ信号を識別すると低電力状態から通常動作状態に切り替わる。その後、ステップS504において、アクセスポイント1200は、エンドポイントデバイス1100と高速光データリンク60を確立するために通常動作状態で動作する。予め定められた期間、いずれのエンドポイントデバイス1100ともアクティブな高速光データリンク60がない場合、アクセスポイントは、ステップS505において、通常動作状態から低電力状態に戻る。
【0104】
図13は、方法500の別の実施形態のフロー図を示している。有効なトリガ信号を識別するステップS502はさらに、アクセスポイント1200が、第1の光信号50を検出すると、第1の光チャネルでエンドポイントデバイス1100と高速光データリンク60の設定についてネゴシエートするステップS506を含み、ステップS507において、高速光データリンク60の設定がアクセスポイント1200とエンドポイントデバイス1100との間で合意された後、ステップS502において、有効なトリガ信号が識別される。
【0105】
図14は、光ワイヤレス通信ネットワーク100におけるエンドポイントデバイス1100を動作させる方法600のフロー図を示している。方法600は、エンドポイントデバイス1100が、ステップS601において、第1の光チャネルで第1の光信号50を送信するために低電力状態で動作することを含む。ステップS602において、エンドポイントデバイスは、第1の光信号50を送信した後に低電力状態から通常動作状態に切り替わり、ステップS603において、アクセスポイント1200と高速光データリンク60を確立するために通常動作状態で動作する。高速光リンク60の当面の必要性がない場合、エンドポイントデバイス1100は、ステップS604において、通常動作状態から低電力状態又はスリープ状態に切り替わる。
【0106】
図15は、エンドポイントデバイスを動作させる方法600の別の実施形態のフロー図を示している。第1の光信号50を送信した後、通常動作状態に切り替わる前に、方法600はさらに、エンドポイントデバイス1100が、ステップS605において、第1の光チャネルでアクセスポイント1200と高速光データリンク60の設定についてネゴシエートすることと、ステップS606において、高速光データリンク60の設定がアクセスポイント1200とエンドポイントデバイス1100との間で合意された後に通常動作状態に切り替わることを決定することとを含む。
【0107】
本発明による方法は、コンピュータ実施方法(computer implemented method)としてコンピュータで、又は専用のハードウェアで、又は両方の組み合わせで実施されてもよい。
【0108】
本発明による方法のための実行可能コードは、コンピュータ/機械可読記憶手段に記憶されてもよい。コンピュータ/機械可読記憶手段の例としては、不揮発性メモリデバイス、光記憶媒体/デバイス、ソリッドステート媒体、集積回路、サーバ等が挙げられる。好ましくは、コンピュータプログラムプロダクトは、当該プログラムプロダクトがコンピュータで実行される場合に本発明による方法を実行するためのコンピュータ可読媒体に記憶された非一時的プログラムコード手段を含む。
【0109】
方法、システム及びコンピュータ可読媒体(一時的及び非一時的)は、上述の実施形態の選択された態様を実施するために提供されてもよい。
【0110】
用語「コントローラ」は、本明細書では、一般に、数ある機能の中でもとりわけ、1つ以上のネットワークデバイス又はコーディネータの動作に関連する様々な装置を述べるために使用される。コントローラは、本明細書で論じられる様々な機能を実行するように、数多くのやり方で(例えば、専用ハードウェアを用いて)実装されることができる。「プロセッサ」は、本明細書で論じられる様々な機能を実行するように、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされてもよい、1つ以上のマイクロプロセッサを採用する、コントローラの一例である。コントローラは、プロセッサを用いて、又はプロセッサを用いずに実装されてもよく、また、一部の機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するためのプロセッサ(例えば、1つ以上のプログラムされたマイクロプロセッサ、及び関連回路)との組み合わせとして実装されてもよい。本開示の様々な実施形態で採用されてもよいコントローラ構成要素の例としては、限定するものではないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field-programmable gate array)が挙げられる。
【0111】
様々な実装形態では、プロセッサ又はコントローラは、1つ以上の記憶媒体(本明細書では「メモリ」と総称され、例えば、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM等の揮発性及び不揮発性コンピュータメモリ、コンパクトディスク、光ディスク等)に関連付けられてもよい。一部の実装形態では、これらの記憶媒体は、1つ以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、本明細書で論じられる機能の少なくとも一部を実行する、1つ以上のプログラムでエンコードされてもよい。様々な記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内に固定されてもよく、あるいは、それらの記憶媒体上に記憶されている1つ以上のプログラムが、本明細書で論じられる本発明の様々な態様を実施するために、プロセッサ又はコントローラ内にロードされることができるように、可搬性であってもよい。用語「プログラム」又は「コンピュータプログラム」は、本明細書では、1つ以上のプロセッサ又はコントローラをプログラムするために採用されることが可能な、任意のタイプのコンピュータコード(例えば、ソフトウェア又はマイクロコード)を指すように、一般的な意味で使用される。
【0112】
本明細書で使用される用語「ネットワーク」は、任意の2つ以上のデバイス間での、及び/又はネットワークに結合された複数のデバイスの間での、(例えば、デバイス制御、データ記憶、データ交換等のための)情報の転送を容易にする、(コントローラ又はプロセッサを含む)2つ以上のデバイスの任意の相互接続を指す。
【国際調査報告】