(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(54)【発明の名称】多層人工皮革の一種とその作成方法、自動車用シート、および自動車
(51)【国際特許分類】
D06N 3/00 20060101AFI20230609BHJP
B32B 5/08 20060101ALI20230609BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20230609BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
D06N3/00
B32B5/08
B32B27/12
B60N2/58
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021514416
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(85)【翻訳文提出日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 CN2020078680
(87)【国際公開番号】W WO2021179187
(87)【国際公開日】2021-09-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521102188
【氏名又は名称】カナディアン ジェネラル-タワー(チャンシュー)カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ドンチン ユ
(72)【発明者】
【氏名】アニン ワン
【テーマコード(参考)】
3B087
4F055
4F100
【Fターム(参考)】
3B087DE03
3B087DE05
4F055AA01
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4F055BA12
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4F055HA10
4F100AJ04B
4F100AK03A
4F100AK10A
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4F100DD27
4F100DG12B
4F100EH01
4F100GB33
4F100JD02
(57)【要約】
【構成】人工皮革およびその作成方法を提供する。人工皮革は、表面としての樹脂層と、樹脂層に基材として結合されたベース生地とで構成される。ベース生地は、2つのラミネートとして規則性を有して配置された少なくとも2つの単層構造で構成される。各単層構造は、当該層のいくつかの経糸および/または緯糸、あるいは他の1つまたは複数の層のいくつかの経糸および/または緯糸と織り合わされて複数の結合点が形成され、これにより、2つのラミネートとして規則性を有して配置された少なくとも2つの単層構造が織りプロセスにおいて互いに結合され、多層合成ベース生地が形成される。樹脂層およびベース生地内で厚さ方向に分散する複数の通気孔を含む人工皮革は、引張強度や引き裂き抵抗などの機械的特性をそのままに維持して、使い勝手にほぼ影響がないまま、そのような人工皮革を自動車用シートに取り入れた場合には、乗り心地を向上させることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面としての樹脂層と、
前記樹脂層に基材として結合されたベース生地と、で構成される人工皮革であり、
前記ベース生地は、
2つのラミネートとして規則性を有して配置された少なくとも2つの単層構造であり、前記少なくとも2つの単層構造の各単層が経糸と緯糸とを有し、前記少なくとも2つの単層構造の各単層が前記各単層の経糸および緯糸で織られ、前記少なくとも2つの単層構造の各単層が前記各単層におけるいくつかの経糸および/または緯糸、あるいは前記少なくとも2つの単層構造のうちの他の1つまたは複数の単層構造におけるいくつかの経糸および/または緯糸と織り合わされて、複数の結合点が形成され、これにより、前記2つのラミネートとして規則性を有して配置された少なくとも2つの単層構造が互いに結合され、多層合成ベース生地が形成される、少なくとも2つの単層構造と、
前記人工皮革に形成され、前記樹脂層および前記ベース生地内で前記人工皮革の厚さ方向に分散する1つまたは複数の通気孔と、を有することを特徴とする人工皮革。
【請求項2】
前記各単層構造における経糸および緯糸は、平織り構造、ツイル織り構造、およびサテン織り構造のうちの1つまたは複数を形成する、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項3】
前記経糸および緯糸は各々ポリエステル糸およびCVC糸のいずれかである、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項4】
前記経糸および緯糸は、海島フィラメント、32本のステープル糸、40本のステープル糸および長繊維糸DTYのうちの少なくとも1つで作られている、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項5】
前記樹脂層から最も離れて位置する、前記ベース生地の最も外側の単層構造は第1の表面層であり、前記樹脂層に近い、最も内側で最も外側の単層構造は第2の表面層であり、前記第1の表面層の経糸および緯糸の少なくとも一方は海島フィラメントで作られており、前記ベース生地は前記第1の表面層の片側に起毛構造を備え、前記樹脂層は前記第2の表面層に接合される、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項6】
前記ベース生地は2つまたは3つの単層構造で構成される、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項7】
前記樹脂層は、PVC層、PU層、ポリオレフィン層、ハロゲン化ポリオレフィン層、ポリアクリル酸層、ポリプロピレンエステル層、シリコーンゴム層、ポリエーテル層、ポリエステル層またはポリアミド層のいずれかである、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項8】
前記ベース生地と前記樹脂層との厚さ比は約0.7から約2.0である、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項9】
前記ベース生地の厚さは約0.4mmから約0.75mmである、請求項8に記載の人工皮革。
【請求項10】
人工皮革を作成する方法であり、
(a)経糸および緯糸のグループを少なくとも2つ指定して、各グループの経糸および緯糸を単層構造に織り込んで少なくとも2つの単層構造を形成するステップを含む織りプロセスを行うステップであり、各単層構造が、前記各単層のいくつかの経糸および/または緯糸、あるいは他の1つまたは複数の層のいくつかの経糸および/または緯糸と織り合わされて、複数の結合点を形成し、2つのラミネートとして規則性を有して配置された前記少なくとも2つの単層構造が前記織りプロセスによって互いに結合して、多層合成ベース生地を形成するステップと、
(b)前記ベース生地と前記樹脂層とを互いに接合して、前記人工皮革を形成するステップと、
(c)前記人工皮革に穴を開けて、前記樹脂層および前記ベース生地内で厚さ方向に分散する複数の通気孔を形成するステップと、を含むことを特徴とする人工皮革の作成方法。
【請求項11】
前記ベース生地の片方の表面を研磨して、前記表面に起毛構造を備えたベース生地を形成するステップであり、前記起毛構造が位置する前記単層構造の経糸および緯糸の少なくとも一方が海島糸で形成されているステップと、
前記ベース生地の他方の表面を前記樹脂層に接合して人工皮革を形成するステップと、をさらに含む請求項10に記載の作成方法。
【請求項12】
前記ベース生地の非接合表面を研磨して、前記表面に起毛構造を備えたベース生地を形成するステップであり、前記起毛構造が位置する前記単層構造における経糸および緯糸の少なくとも一方が海島糸で形成されているステップ、をさらに含む、請求項10に記載の作成方法。
【請求項13】
請求項1に記載の人工皮革を有する自動車用シート。
【請求項14】
請求項13に記載の自動車用シートを有する自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の内装の技術分野に関する。特に、本発明は、多層人工皮革とその作成方法、自動車用シート、および当該多層人工皮革を取り入れた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用シートの製造において、皮革生地は重要な素材である。皮革生地は通気性と快適性に優れているという特徴があり、消費者に大変に人気がある。皮革の加工中には数多くの汚染物質が生じ、環境に深刻な影響を及ぼす。さらに、皮革生地は、価格が高い、利用率が低い、希少であるなど、複数の欠点がある。
【0003】
人工皮革生地には、環境にやさしい、低価格である、無尽蔵であるなど、多くの利点がある。さらに、最先端の製造技術によれば、本革と同程度の快適さと美しさを有する人工皮革を製造することもできる。したがって、当業界における関係者は、本革生地の代わりに人工皮革生地を使用することを望んでいる。しかしながら、人工皮革には、本革よりも通気性が劣るという無視することのできない欠点がある。人々の車両の乗り心地に対する要求の高まりにより、人工皮革の通気性を向上させて、人工皮革を本革の完璧な代替品へと発展させることが不可避となっている。そのため、人工皮革に穴を開けることが関係者によって検討されているが、人工皮革に穴を開けることは、その強度を大幅に低下させることになる。さらに悪いことに、穴が高密度に存在した場合、人工皮革が非常に傷つきやすくなり、使用できなくなることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した現在の事情に鑑み、本発明の主な目的は、自動車用シートおよび自動車に取り入れることのできる多層人工皮革の一種およびその作成方法を提供して、本明細書中に説明する既存の技術による人工皮革の問題点を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術スキームを採用する。
【0006】
第1の態様では、本明細書に開示する本発明は、表面としての樹脂層と、樹脂層に基材として結合されたベース生地と、で構成される人工皮革である。ベース生地は、2つのラミネートとして規則性を有して配置された少なくとも2つの単層構造で構成され、各単層構造は、当該層の経糸および緯糸で織られている。各単層構造は、当該層のいくつかの経糸および/または緯糸、あるいは他の1つまたは複数の層のいくつかの経糸および/または緯糸で織られて、複数の結合点が形成される。そのようにして、2つのラミネートとして規則性を有して配置された少なくとも2つの単層構造が織りプロセスによって互いに結合され、多層合成ベース生地が形成される。人工皮革は、樹脂層およびベース生地内に厚さ方向に分散した複数の通気孔を含む。
【0007】
本発明の一実施形態では、各単層構造の経糸および緯糸は、平織り構造、ツイル織り構造、およびサテン織り構造のうちの1つまたは複数を形成する。
【0008】
本発明の別の実施形態では、経糸および緯糸はそれぞれポリエステル糸および/またはCVC糸である。
【0009】
本発明の別の実施形態では、経糸および緯糸は、海島フィラメント、32本のステープル糸、40本のステープル糸、および長繊維糸DTYのうちの少なくとも1つで作られている。
【0010】
本発明の別の実施形態では、ベース生地の、樹脂層から最も遠くに位置する最も外側の単層構造が第1の表面層であり、一方で、樹脂層に近く、最も内側で最も外側の単層が第2の表面層である。第1の表面層の経糸および緯糸の少なくとも一方は海島フィラメントで作られている。ベース生地は、第1の表面層の片側に起毛構造を備え、樹脂層は、第2の表面層に接着されている。
【0011】
本発明の別の実施形態では、ベース生地は2つまたは3つの単層構造で構成される。
【0012】
本発明の別の実施形態では、樹脂層は、PVC層、PU層、ポリオレフィン層、ハロゲン化ポリオレフィン層、ポリアクリル酸層、ポリプロピレンエステル層、シリコーンゴム層、ポリエーテル層、ポリエステル層またはポリアミド層である。
【0013】
本発明の別の実施形態では、ベース生地と樹脂層の厚さ比は、0.7:2.0である。
【0014】
本発明の別の実施形態では、ベース生地の厚さは、0.4mm~0.75mmである。
【0015】
別の態様において、本明細書に開示する本発明は、人工皮革を作成する方法(以下「作成方法」)である。当該作成方法は、以下のステップを含んで構成される。
【0016】
S1:経糸および緯糸のグループを少なくとも2つ指定して、経糸と緯糸の各グループを単層構造に織り、少なくとも2つの単層構造を形成する。各単層構造は、当該層のいくつかの経糸および/または緯糸、あるいは他の1つまたは複数の層のいくつかの経糸および/または緯糸と織り合わされて、複数の結合点が形成される。そのようにして、2つのラミネートとして規則性を有して配置された少なくとも2つの単層構造が織りプロセスによって互いに結合され、多層合成ベース生地が形成される。
【0017】
S3:ベース生地を樹脂層に接合して人工皮革を形成する。
【0018】
S5:人工皮革に穴を開けて、樹脂層およびベース生地内で厚さ方向に分散する複数の通気孔を形成する。
【0019】
本発明の作成方法の一実施形態では、以下のように、S1とS3の間にもう1つステップが存在する。
【0020】
S2:ベース生地の片方の表面を研磨して、前記表面に起毛構造を備えたベース生地を形成する。当該起毛構造が位置する単層構造における経糸および緯糸の少なくとも一方は海島糸で作られている。
【0021】
S3における接合は、ベース生地の他方の表面を樹脂層に接着して人工皮革を形成するステップで実現される。
【0022】
本発明の作成方法の別の実施形態では、以下のように、S3とS5の間にもう1つステップが存在する。
【0023】
S4:ベース生地の非接合表面を研磨して、前記表面に起毛構造を備えたベース生地を形成する。当該起毛構造が位置する単層構造における経糸および緯糸の少なくとも一方は、海島糸で作られている。
【0024】
別の態様において、本明細書に開示する本発明は、本明細書で説明する人工皮革のいずれかの実施形態で構成される自動車用シートである。
【0025】
別の態様において、本明細書に開示する本発明は、本明細書で説明する自動車用シートを含んで構成される自動車である。
【発明の効果】
【0026】
本明細書の開示に係る人工皮革の引張強度および引き裂き抵抗などの機械的特性は、人工皮革に多層のベース生地層を設け、異なる単層構造を織り技術によって互いに結合させることで、強化することができる。本明細書に記載の人工皮革に穴を開けて自動車用シートに用いた場合であっても、引張強度や引き裂き抵抗などの機械的特性を維持することができる。また、使い勝手にもほぼ影響がないため、本明細書に記載の自動車用シートの乗り心地が向上し、本革生地を置き換えることができる。さらに、ベース生地は、経糸と緯糸とを介して互いに結合された複数のラミネートで構成されているため、厚さ方向の研磨または処理を別の方法で行った場合であっても、ベース生地は実質的に無傷である。さらに、この種の人工皮革の製造プロセスにおいて生じる汚染は本革加工を行う場合よりもはるかに少ないという事実によって、本発明の人工皮革は、環境保護に関する法令や基準をより良く満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の好ましい実施形態を、以下の図面を参照して説明する。当該図面は以下を含む。
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る人工皮革の断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る人工皮革の断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る人工皮革の断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る本発明の人工皮革の作成方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を様々な実施形態に基づいて以下に説明するが、本明細書に列挙するもの以外にも多くの本発明の実施形態が存在するものとする。本明細書における本発明の詳細な説明では、一部の特定の特徴のみを具体的かつ詳細に説明するものとする。本発明の本質についての混乱を回避するために、当技術分野において周知の方法、プロセス、手順、または構成要素は、本明細書においては詳細に説明しない。
【0030】
さらに、本明細書で参照する図面はすべて例示のみを目的としたものであり、すべての図面が必ずしも一定の縮尺で描画されているわけではないことは当業者には明らかである。
【0031】
別途明示しない限り、あるいは文脈上指定しないかぎり、「有する」、「包含する」および「含む」などの語、ならびにこれらと同様の語や文言は、排他的または網羅的な語ではなく、包括的な語として解釈すべきものとする。すなわち、これらの語ならびに同様の語および文言は、「~を含むが、これに限定されるものではない」と解釈すべきものとする。
【0032】
本明細書では、数値を指定して参照する。範囲を含むすべての数値(例えば、寸法および比率)の指定は、通常、0.1、1.0、または10.0刻みで適宜(+)または(-)方向に変動する可能性のある近似値である。すべての数値の指定は、「約」という接頭語を伏して理解すべきものとする。本明細書において単数の表記を使用した場合、文脈上明示しない限り、単数および複数の双方を意味するものとする。本明細書で引用するすべての刊行物、ならびに優先権文書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0033】
本明細書中の本発明の説明における「第1の」および「第2の」という語は、説明の目的にのみ使用され、相対的な重要性を示したり示唆したりするものではない。さらに、本明細書中の本発明の説明における「いくつかの」、「複数の」などの語は、2つ以上を意味するものとする。
【0034】
本発明は、自動車用シートなどの自動車に取り入れることのできる人工皮革である。自動車用シートの生地は人工皮革で構成することができる。
【0035】
皮革を加工することで生じる深刻な環境汚染と、穴を開けることで引き起こされる非常に低い引張強度や引き裂き抵抗など従来の人工皮革の著しく劣悪な機械的特性とに鑑みると、そのような人工皮革を自動車用シートに用いることは難しい。
図1から
図3に示すように、本発明の人工皮革は、表面としての樹脂層と、樹脂層に基材として結合されたベース生地とからなる。樹脂層2とベース生地1は、2つのラミネートのように互いに結合することができる。ベース生地1は、2つのラミネートとして規則性を有して配置された少なくとも2つの単層構造で構成され、これには、2つの単層構造、3つの単層構造、またはより多くの単層構造などが含まれる。各単層構造は、当該層の経糸および緯糸で織られる。すなわち、経糸および緯糸のグループ(例えば、内側経糸11および内側緯糸12、表面経糸11および表面緯糸14、第1の経糸11’および第1の緯糸12’、第2の経糸13’および第1の緯糸14’、第3の経糸15’および第3の緯糸16’など)が存在する。各単層構造は、当該層のいくつかの経糸および/または緯糸、あるいは他の1つまたは複数の層のいくつかの経糸および/または緯糸と織り合わされて、複数の結合点が形成される。本発明の一実施形態では、各単層構造を、当該層のいくつかの経糸、あるいは他の1つまたは複数の層のいくつかの緯糸と織り合わせて、複数の結合点を形成することもできる。本発明の別の実施形態では、各単層構造を、当該層のいくつかの緯糸、あるいは1つまたはそれ以上の他の層のいくつかの経糸と織り合わせて、複数の結合点を形成することもできる。また、各単層を、上述の両方の方法によって他の1つまたは複数の層と織り合わせて、複数の結合点を形成することもできる。そのようにして、2つのラミネートとして規則性を有して配置された少なくとも2つの単層構造が織りプロセスによって互いに結合され、多層合成ベース生地が形成される。言い換えれば、任意の2つの単層構造について、第1の単層構造における経糸および緯糸を、それぞれ第1の経糸および第1の緯糸と規定し、第2の単層構造における経糸および緯糸を、それぞれ第2の経糸および第2の緯糸として規定する。本発明の実施形態では、いくつかの第1の経糸は、いくつかの第2の経糸と織り合わせることができ、いくつかの第1の緯糸は、いくつかの第2の経糸と織り合わせることができる。または、いくつかの第1の緯糸をいくつかの第2の経糸と織り合わせて、いくつかの第2の経糸をいくつかの第1の経糸と織り合わせて、2つの単層構造間に結合点を形成してもよい。これにより、当該2つの単層構造を繋ぎ合わせることができる。さらに、追加の単層構造をこのように織り技術によって繋ぎ合わせることができる。なお、これらの2つの単層構造は、実質的に隣接する単層構造または隣接しない単層構造を含むことに留意したい。3つ以上の単層構造がある場合、1つの単層構造における経糸および緯糸は、2つ以上の単層構造の経糸および緯糸と織り合わせることができる。そのような複数の層のすべてを本明細書で詳細に説明するものではないが、本発明では複数の層をこのように織ることができる。これらの単層構造を任意の織り技術によって繋ぎ合わせて、多層合成ベース生地を形成することができる。
【0036】
本発明の人工皮革では、ベース生地は、多層合成ベース生地として提供される。さらに、本発明における単層構造は、接合や縫製を含む他の技術ではなく、織り技術によって繋ぎ合わされる。本発明の一実施形態では、ベース生地は、この方法で一個ずつ糸から織られ、これにより、引張強度および引き裂き抵抗などの人工皮革の機械的特性が向上する。本発明の別の実施形態では、単層構造間の結合を織りプロセスによって信頼度の高いものにすることができる。これにより、引張強度および引き裂き抵抗などの人工皮革の機械的特性がさらに向上する。さらに、ベース生地は、経糸と緯糸とを介して互いに結合された複数のラミネートで構成されるため、厚さ方向の研磨または処理を別の方法で行った場合であっても、ベース生地は実質的に無傷である。さらに、この種の人工皮革の製造プロセスにおいて生じる汚染は本革加工を行う場合よりもはるかに少ないという事実によって、本発明の人工皮革は、環境保護に関する法令や基準をより良く満たすことができる。
【0037】
多層構造によって、本発明の人工皮革の機械的特性の安定性、特に穴あけ後の引張強度および引き裂き抵抗の安定性が向上する。一方で、単一ラミネートのベース生地を備えた従来技術の人工皮革の機械的特性は、穴あけ後に劣り、不安定になる。
【0038】
さらに、本発明の人工皮革では、厚さ方向に複数の通気孔が設けられ、樹脂層およびベース生地内に分散している。つまり、このような通気孔が人工皮革全体を貫通している。
【0039】
単層構造は織り技術によって互いにまたは相互に結合されているため、本発明の人工皮革に穴を開けた後でも、当該単層構造は結合状態を維持する。各単層構造内の織り点(同一単層構造内の経糸と緯糸のインターフェース)は他の単層構造の織り点とはずれており、すなわち1つの単層構造のみが穴の中で切断されている。また、各単層構造内の経糸と緯糸間にも一定のずれがあるため、穴を開けたとしても、各単層構造内の経糸と緯糸をすべて破損させることはない。そのため、この種の人工皮革には通気孔が設けられているが、引張強度や引き裂き抵抗などの機械的特性は高いままであり、その貼付性能にもほぼ影響がない。また、本発明の人工皮革には通気孔が設けられているため、通気性が向上する。本発明の人工皮革を自動車の自動車用シートに用いることで、シートの通気性を向上させることもできる。特に、各シートの下にエアルーバーを設けた一部の自動車では、エアルーバーを介してシート表面に素早く空気を送ることができるため、乗り心地がさらに向上する。
【0040】
具体的には、通気孔の数に制限はなく、例えば、10個、20個、あるいはそれ以下またはそれ以上の通気孔を人工皮革に設けることができる。本発明の一実施形態では、よりエレガントな外観を実現するために、複数の通気孔を所定のパターンの形状に配置するなど、特定の順序で配置することが好ましい。通気孔の形状の詳細に関しては本発明では具体的には規定しないが、複数の形状が可能である。そのような通気孔は、例えば、円形の穴、角形の穴、または他の形状の穴であってもよい。
【0041】
なお、本明細書で説明する人工皮革は、自動車用シートに取り入れるように開示されているが、本発明の人工皮革は他の用途に用いることもできる。例えば、本発明の人工皮革を自動車の内装の他の部分に用いたり、家庭用のシートやベッドなど他の分野に用いることもできる。
【0042】
当然のことながら、単層構造の経糸および緯糸の数や密度は必要に応じて設定可能であり、本発明には規定はないが、無制限である。
【0043】
各単層構造の経糸と緯糸は、平織り構造、ツイル織り構造、サテン織り構造のうちの1つまたは複数を形成する。すなわち、任意の2つの単層構造における経糸と緯糸が同一の構造または異なる構造を形成してもよいし、1つの単層構造における経糸と緯糸がさまざまな構造を形成してもよい。そのような単層構造では、別々の部位がそれぞれ異なる構造を有することになる。3つ以上の単層構造を含む本発明の一実施形態では、いくつかの単層構造の経糸と緯糸で同一の構造を形成して、残りの単層構造の経糸と緯糸で同一の構造を形成してもよい。または、任意の2つの単層構造における経糸と緯糸が異なる構造を形成することもできる。例えば、1つの単層構造における経糸と緯糸で平織り構造を形成する一方で、別の単層構造の経糸および緯糸でサテン織り構造を形成することもできる。上述した構造、すなわち平織り構造、ツイル織り構造およびサテン織り構造は、参照により本明細書に組み込まれる従来の織りプロセスによって形成されるため、これらの平織り構造、ツイル織り構造およびサテン織り構造は、本明細書では詳述しない。
【0044】
例えば、
図1および
図2に示す本発明の実施形態では、多層ベース生地1は2つの単層構造で構成される。以下、これら2つの単層構造をそれぞれ「表面層」および「内層」として示す。樹脂層2に接合された単層構造は「内層」として示し、他方の単層構造は「表面層」として示す。内層の経糸および緯糸は、「内側経糸11」および「内側緯糸12」として示す。表面層の経糸および緯糸は、「表面経糸13」および「表面緯糸14」として示す。
図1に示す本発明の実施形態では、外側表面14と表面経糸13とを織り合わせる場合、内層も共に織り込まれる。
図2に示す本発明の実施形態では、経糸11と内側緯糸12とを織り合わせる場合、内層も共に織り込まれる。
【0045】
本発明の別の実施形態では、多層ベース生地1は3つの単層構造で構成され、これらはそれぞれ第1の単層構造、第2の単層構造、および第3の単層構造である。
図3に示すように、第1の単層構造の経糸および緯糸は、「第1の経糸11’」および「第1の緯糸12’」として示す。第2の単層構造の経糸および緯糸は、「第2の経糸13’」および「第2の緯糸14’」として示す。第3の単層構造の経糸および緯糸は、「第3の経糸15’」および「第3の緯糸16’」として示す。このような本発明の実施形態では、第2の緯糸14’と第2の経糸13’とを織り合わせる場合、第1の単層構造も共に織り込まれる。第3の緯糸16’と第3の経糸15’とを織り合わせる場合、第2の単層構造も共に織り込まれる。第1の経糸11’も第2の単層構造と織り合わされ、一方で、第2の経糸13’も第3の単層構造と折り合わされる(
図3には不図示)。
【0046】
なお、
図1および
図3は、それぞれ一方の単層構造の経糸を他方の単層構造の緯糸と織り合わせた実施形態を示す。一方で、
図2は、一方の単層構造の緯糸を他方の単層構造の経糸と織り合わせた実施形態を示す。実際、
図1および
図3に示す本発明の実施形態においても、緯糸は、
図1に示す本発明の実施形態が提供する方法で織ることができる。さらに、
図1に示す本発明の実施形態においても、経糸は、
図1に示す本発明の実施形態が提供する方法で織ることができる。例えば、
図1に示す本発明の実施形態では、表面の経糸と内側の緯糸とは、
図2に示す方法で一緒に織ることができる。
【0047】
各単層構造において、経糸および緯糸は、同一材料または異なる材料で形成することができる。本発明の一実施形態では、経糸および緯糸は、それぞれポリエステル糸および/またはCVC糸である。本発明の好ましい実施形態では、経糸および緯糸は、海島フィラメント、32本のステープル糸、40本のステープル糸、および長繊維糸DTYのうちの1つまたは複数から形成される。海島フィラメントで作られたベース生地を用いた本発明の実施形態では、基層は、手触りが柔らかく、よくドレープし、軽くて薄いテクスチャーを有し、良好な通気性および耐水性、ならびに高強度を有し、天然のセーム革よりはるかに優れている。なお、上ではポリエステル糸とCVC糸のみを列挙したが、本発明では、150d、100d、75d、21sPC糸など、より多くの種類の糸を経糸および緯糸として使用できることに留意したい。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、ベース生地の最も外側の2つの単層構造は、それぞれ第1の表面層および第2の表面層である。すなわち、ベース生地において、樹脂層から最も遠くに位置する最も外側の単層構造が第1の表面層であり、一方で、樹脂層に近く、最も内側で最も外側の単層は第2の表面層である。第1の表面層の経糸および緯糸の少なくとも一方は海島フィラメントで作られている。さらに、ベース生地は、第1の表面層の片側に起毛構造を備えており、樹脂層は第2の表面層に接合されている。本発明の実施形態では、
図1および
図2に示すように2つの単層構造が設けられており、図示のベース生地では、表面層が第1の表面層であり、内層が第2の表面層である。内層が樹脂層に接合した状態でベース生地の表面層を研磨して表面に小さなベルベットを形成すると、人工皮革の両表面の見た目および手触りが本革のようになる。これにより、本発明の人工皮革は、本革の完璧な代替品となる。さらに、本発明の人工皮革は、より多くの目的に使用することができる。特に、自動車用シートに取り入れると、シートをより快適にすることができる。人工皮革は、砥石車、サンドペーパー、または本明細書に説明したようにベルベットを形成することができる、本明細書で指定しない任意のツールを用いて研磨することができる。
【0049】
本発明の実施形態では、樹脂層は、PU層またはPVC層であってもよいし、PUとPVCの混合層であってもよい。樹脂層がPVC層である場合、より耐久性および引き裂き耐性に優れ、傷付きにくく、難燃性の高い人工皮革が得られる。さらに、樹脂層は、1つの副層のみを備えてもよいし、ラミネートとして規則性を有して配置された複数の副層を備えてもよい。
【0050】
本発明の一実施形態では、樹脂層は、2つのラミネートとして規則性を有して配置された表皮副層と接着副層とで構成される。樹脂層は接着副層を介してベース生地に接合される。本発明の別の実施形態では、樹脂層は、3つのラミネートとして規則性を有して配置された表皮副層、発泡副層および接着副層で構成される。すなわち、この段落で説明した本発明の実施形態とは異なる発泡副層が追加される。このような本発明の実施形態においては、樹脂層は接着副層を介してベース生地に接合された状態を維持し、同時に、発泡副層は、人工皮革に緩衝性を与え、これにより人工皮革をより弾力のあるものにする。自動車用のシートに取り入れた場合、乗り心地をさらに向上させることができる。樹脂層がPVC層である本発明の一実施形態では、表皮副層には、PVC樹脂、安定剤、可塑剤、カラーペーストおよびフィラーが包含される。接着副層には、PVC樹脂、可塑剤、フィラーなどが包含される。発泡副層には、PVC樹脂、可塑剤、カラーペースト、フィラー、および発泡剤が包含される。樹脂層がPU層である本発明の一実施形態では、表皮副層には、PU樹脂、カラーペーストおよびフィラーが包含される。接着副層には、PU樹脂、フィラーなどが包含される。発泡副層には、PU樹脂、カラーペースト、フィラー、発泡剤などが包含される。さらに、樹脂層には、表皮副層のベース生地から離れた側に配置された表面処理剤副層も含まれる。最初に樹脂層を形成し、次に樹脂層をベース生地に接合することができる。本発明の一実施形態では、表皮副層をベース紙(剥離紙など)上に形成し、オーブン内で乾燥させる。次に、発泡した副層を表皮副層上に形成し、オーブンで乾燥させる。続いて、接着副層を発泡副層上に形成し、よく織られたベース生地と接合させる。その後、ベース生地と樹脂層(ベース紙を含む)とをオーブンで焼く。次に、人工皮革からベース紙を取り除く。言うまでもなく、取り外した後のベース紙はリサイクルが可能である。
【0051】
樹脂層は、PU(ポリウレタン)層またはPVC(ポリ塩化ビニル)層だけでなく、他の熱可塑性または熱硬化性材料層であってもよく、これには、ポリオレフィン層、ハロゲン化ポリオレフィン層、ポリアクリル酸層、ポリプロピレンエステル層、シリコーンゴム層、ポリエーテル層、ポリエステル層またはポリアミド層などが含まれる。樹脂層が複数の副層を含む本発明の実施形態では、各副層の材料は、上述の本発明の実施形態による樹脂層の材料に応じて調整することができる。
【0052】
当然のことながら、本発明の実施形態では、人工皮革の全体的な厚さに関して特定の要件を規定してもよい。特に、ベースとなる生地が薄すぎると、十分に高い機械的特性が得られない。一方で、ベースとなる生地が厚すぎると、樹脂層が薄くなりすぎて、人工皮革に対する顧客の一般的な要件を満たすことができなくなる。本発明の好ましい実施形態では、ベース生地と樹脂層との厚さ比は、0.7~2.0に等しく、例えば、0.7、0.71、0.72、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.95、1.0、1.1、1.2、1.4、1.6、1.8、1.9または2.0である。好ましくは、厚さ比は0.71~0.92に設定され、すなわち、ベース生地の厚さを樹脂層の厚さよりも薄くすることで、人工皮革の厚さに関する一般的な要件を満たしながら、引張強度および引き裂き抵抗などの人工皮革の機械的特性を向上させることができる。
【0053】
本発明の実施形態では、ベース生地の厚さは、0.4mm~0.75mmに設定され、これには、例えば、0.4mm、0.44mm、0.5mm、0.55mm、0.60mm、0.65mm、0.67mm、0.70mm、0.72mm、0.75mmなどが含まれる。ベース生地の厚さは0.5mm~0.65mmに設定することが好ましく、経糸および緯糸の太さを調整することで具体的に達成することができる。これに対応して、樹脂層の厚さは、0.4mm~1.0mmに設定され、これには、例えば、0.4mm、0.45mm、0.5mm、0.56mm、0.6mm、0.65mm、0.68mm、0.69mm、0.70mm、0.71mm、0.72mm、0.73mm、0.75mm、0.8mm、0.87mm、0.92mm、0.97mm、1.0mmなどが含まれる。本発明の好ましい実施形態では、樹脂層の厚さは、0.65mm~0.75mmに設定される。
【0054】
なお、本発明の実施形態におけるベース生地の厚さおよび樹脂層の厚さは、本明細書中で参照する数値範囲に完全に限定されないことに留意したい。
【0055】
さらに、本発明は、人工皮革の作成方法を含む。当該人工皮革の作成方法は、本発明の人工皮革を作成するのに使用することができ、
図4に示すように、以下のステップを含んで構成される。
【0056】
S1:経糸および緯糸のグループを少なくとも2つ織り合わせ、経糸と緯糸の各グループを単層構造に織り、少なくとも2つの単層構造を形成する。各単層構造は、当該層におけるいくつかの経糸および/または緯糸、あるいは他の1つまたは複数の層におけるいくつかの経糸および/または緯糸と織り合わされて、複数の結合点が形成され、当該少なくとも2つの単層構造が織り方法によって互いに結合される。具体的には、様々な単層構造を上記の織り方によって互いに結合して、多層合成ベース生地を形成することができる。
【0057】
S3:ベース生地を樹脂層に接合して人工皮革を形成する。具体的には、生地層は、カレンダリング、テープキャスティング、押し出し、コーティング、または浸漬のうちの1つまたは複数によって樹脂層に接合可能である。
【0058】
S5:人工皮革に穴を開けて、樹脂層およびベース生地内で分散する複数の通気孔を人工皮革の厚さ方向に形成する。通気孔を設ける具体的な方法は、本明細書で説明した方法に従う。
【0059】
この方法で製造した人工皮革は、本明細書で説明した人工皮革の実施形態の様々な利点および効果を有する。その詳細はここでは繰り返さない。
【0060】
実際のアプリケーションの状況で利用する場合などを含め、本発明の実施形態では、S1の前に紡績ステップが存在する。つまり、経糸と緯糸とは織りを行う前に形成される(すなわち、S1を「織り」と呼ぶこともできる)。言うまでもなく、経糸と緯糸は、事前に紡績されたものを直接購入することも可能である。
【0061】
起毛構造を備えた人工皮革は、以下のように、本明細書に開示する方法によって形成することができる。
【0062】
第1の方法:ベース生地を形成した後、まずベース生地を研磨し、次に樹脂層に接合する。具体的には、以下のように、S1とS3の間にもう1つステップが存在する。
【0063】
S2:ベース生地の片方の表面(すなわち、第1の表面層の、第2の層とは反対側を向いた表面)を砥石またはやすりで研磨して、当該片方の表面に起毛構造を備えたベース生地を形成する。ここで、当該起毛構造が位置する単層構造(すなわち、第1の表面層)における経糸および緯糸の少なくとも一方は、海島フィラメントで形成されている。
【0064】
このような本発明の実施形態では、S3には以下が含まれる。
【0065】
ベース生地の他方の表面(すなわち、第2の表面層の、第1の表面層とは反対側を向いた面)を接合して、人工皮革を形成する。
【0066】
第2の方法:ベース生地を形成した後、当該ベース生地を樹脂層に接合して研磨する。具体的には、以下のように、S3とS5の間にもう1つステップが存在する。
【0067】
S4:ベース生地の非接合表面(ベース生地の、樹脂層から離れた側の表面、すなわち第1の表面層)を研磨して、当該片方の表面に起毛構造を備えたベース生地を形成する。ここで、当該起毛構造が位置する単層構造における経糸および緯糸の少なくとも一方は、海島フィラメントで形成されている。
【0068】
ベース生地を最初に研磨してから樹脂層に接合するか、ベース生地を最初に樹脂層に接合してから研磨するかにかかわらず、本発明では、研磨技術を用いて、ベース生地の片方の表面に起毛構造(またはベルベット構造)を設ける。本明細書で説明するように、人工皮革の両面は、基本的に本革と同じ見た目および手触りであり、本発明の人工皮革は本革を容易に置き換えることができるとともに、そのような人工皮革の用途の可能性をさらに広げるものである。本発明では、第1の表面層の研磨の深さは限定されず、必要に応じて深さを変更することができる。研磨は返品率を非常に高くする要因となり、品質管理を困難にする。また、研磨中のオペレーションは容易ではない。しかしながら、本発明のベース生地は多層のベース生地であり、異なるラミネートにおいて経糸と緯糸とが結合点を形成し、これにより全体が形成される。第1の表面層に対する研磨量は厳密である必要はなく、研磨の深さの大小は重要ではない。したがって、最も外側の単層構造が研磨によって剥がれた場合であっても、他の単層構造が存在するため、ベース生地の全体的な性能は要件を満たすことができる。したがって、人工皮革の認定率を大幅に向上させることができる。さらに、本明細書に記載した利点によって、ベース生地の研磨がより容易になり、これにより本発明の人工皮革の生産効率を向上させることができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、S3の前に、紡績、織り、さらに研磨まで行われたベース生地を処理して、そして樹脂層に接合するステップを行うこともできる。本発明の実施形態では、ベース生地を最初に樹脂層に接合し、次に研磨し、そして研磨を行った後にベース生地を処理することもできる。
【0070】
本発明の実施形態では、種類の異なる経糸および緯糸を使用することができる。本発明の作成方法で製造した本発明の人工皮革と、従来技術(以下「比較用従来技術」)によって製造した単層構造を有する人工皮革との詳細な比較については、以下の表1-4にまとめた実施形態1~5を参照されたい。緯糸は、比較用従来技術に係る単層構造を有する人工皮革の製造中に補強された。次に、比較用従来技術および実施形態1~5の人工皮革の機械的特性について、それぞれ穴あけの前後に試験を行った。試験結果を表1~4に示す。なお、表においては、人工皮革(比較用従来技術の単層構造人工皮革および本発明の多層人工皮革を含む)の伸長方向を横方向(交差方向)とし、伸長方向に対する垂直方向を縦方向(機械方向)とする。「左」および「右」という語は、それぞれ縦方向における2方向を指す。「中間」という語は、縦方向における中間を指す。寸法N/3cmは、幅3cmのサンプルが耐え得る最大引張強度を指す。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
上記の表に明示されているように、本発明の人工皮革の引張強度および引き裂き抵抗は、穴あけ前後の両方において比較用従来技術よりも大幅に高い。また、実施形態1~5では2層の多層ベース生地で作られた人工皮革のみを記載したが、その機械的特性は非常に良好であるため、3層以上のベース生地で作られた人工皮革はさらに大幅に優れた機械的特性を有するものと考えられる。したがって、構造の最適化を行った後、単層の人工皮革に穴を開けることで引き起こされる大きな機械的特性の損失と安定性の低下の問題を、多層ベース生地を使用することで解決することができる。これにより、既存の本革生地を置き換えて、良好な社会的利益を生み出すことができる。さらに、本革生地と比較して、多層人工皮革はコスト面で大きな利点があり、より多くの目的に使用することができる。
【0076】
また、本明細書に開示するように、本発明は、本発明の人工皮革を取り入れた自動車用シートを備えた自動車を提供する。
【0077】
相互に相反する特徴がないという前提の下で、本明細書に開示する実施形態は、それぞれ自由に組み合わせることができる、または互いに重ね合わせることができることは、当業者には明らかである。
【0078】
本明細書に開示する実施形態は、例示的な実施形態を示すことのみを目的としており、限定を意図したものではない。当業者によってなされた上記の詳細の明らかなまたは均等な変形または置換は、本発明の基本原理から逸脱することなく、本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0079】
1 ベース生地
2 樹脂層
11 内側経糸
12 内側緯糸
11 表面経糸
14 表面緯糸
11’ 第1の経糸
12’ 第1の緯糸
13’ 第2の経糸
14’ 第1の緯糸
15’ 第3の経糸
16’ 第3の緯糸
【国際調査報告】