(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(54)【発明の名称】迂回軌道を有するボールスプライン
(51)【国際特許分類】
F16D 1/06 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
F16D1/06 110
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549478
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(85)【翻訳文提出日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 KR2020002515
(87)【国際公開番号】W WO2021167137
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0019065
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519441073
【氏名又は名称】ウォン エスティー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(71)【出願人】
【識別番号】522438828
【氏名又は名称】アラート イノベーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】リ,テク ウォン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヒョク ド
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ギ ドン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ドン ヒョプ
(72)【発明者】
【氏名】フォスナイト,ウィリアム ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】エリオット,マーティン アール
(57)【要約】
本発明は、棒状のスプライン軸(110)と、前記スプライン軸(110)が挿入され、その長手方向に沿って移動可能に備えられるナット部と、前記ナット部とスプライン軸(110)との間に備えられて循環する複数のボール(150)と、を含み、前記ナット部は、スプライン軸(110)が挿入される中空体のナット(120)と、前記ナット(120)の長手方向の両側に備えられ、スプライン軸(110)が挿入される中空体のリテーナ(130)と、を含み、前記スプライン軸(110)には、凹んで長手方向に沿って延長された少なくとも一つの軌道部が形成され、前記ナット(120)には、スプライン軸(110)が挿入される中空部の内面部(121)に凹んで長手方向に沿って形成された少なくとも一つの負荷軌道溝(125)と、前記負荷軌道溝(125)と並んで長手方向に沿って形成された少なくとも一つの非負荷循環部(127)と、が備えられ、前記リテーナ(130)には、一側は、負荷軌道溝(125)の端部と向かい合い、他側は、非負荷循環部(127)の端部と向かい合う湾曲して凹んだ循環溝(133)が少なくとも一つ形成され、前記ボール(150)は、長手方向の両側のリテーナ(130)の循環溝(133)において方向が切り替えられ、軌道部と負荷軌道溝(125)との間、及び非負荷循環部(127)に沿って循環移動し、前記軌道部は、長手方向に沿って形成された軌道溝(111)と、長手方向の両側が軌道溝(111)に連結された迂回軌道部(111-1)と、を含む、迂回軌道を有するボールスプライン(100)に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状のスプライン軸(110)と、前記スプライン軸(110)が挿入され、その長手方向に沿って移動可能に備えられるナット部と、前記ナット部と前記スプライン軸(110)との間に備えられて循環する複数のボール(150)と、を含み、前記ナット部は、前記スプライン軸(110)が挿入される中空体のナット(120)と、前記ナット(120)の長手方向の両側に備えられ、前記スプライン軸(110)が挿入される中空体のリテーナ(130)と、を含み、
前記スプライン軸(110)には、凹んで長手方向に沿って延長された少なくとも一つの軌道部が形成され、前記ナット(120)には、前記スプライン軸(110)が挿入される中空部の内面部(121)に凹んで長手方向に沿って形成された少なくとも一つの負荷軌道溝(125)と、前記負荷軌道溝(125)と並んで長手方向に沿って形成された少なくとも一つの非負荷循環部(127)と、が備えられ、
前記リテーナ(130)には、一側は、前記負荷軌道溝(125)の端部と向かい合い、他側は、前記非負荷循環部(127)の端部と向かい合う湾曲して凹んだ循環溝(133)が少なくとも一つ形成され、前記ボール(150)は、長手方向の両側のリテーナ(130)の循環溝(133)において方向が切り替えられ、前記軌道部と前記負荷軌道溝(125)との間、及び、前記非負荷循環部(127)に沿って循環移動し、
前記軌道部は、長手方向に沿って形成された軌道溝(111)と、長手方向の両側が前記軌道溝(111)に連結された迂回軌道部(111-1)と、を含むことを特徴とする迂回軌道を有するボールスプライン(100)。
【請求項2】
前記迂回軌道部(111-1)は、前記軌道溝(111)と並んで形成された迂回軌道溝(111b)と、前記迂回軌道溝(111b)の長手方向の両側から傾斜して延長され、前記軌道溝(111)に連結された傾斜軌道溝(111b-1)と、からなることを特徴とする請求項1に記載の迂回軌道を有するボールスプライン(100)。
【請求項3】
前記迂回軌道部(111-1)は、前記軌道溝(111)を挟んで両側に備えられたことを特徴とする請求項2に記載の迂回軌道を有するボールスプライン(100)。
【請求項4】
前記迂回軌道部(111-1)は、前記軌道溝(111)よりも深く形成され、前記ボール(150)は、前記迂回軌道部(111-1)と前記負荷軌道溝(125)との間に遊隙を有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の迂回軌道を有するボールスプライン(100)。
【請求項5】
前記リテーナ内面部(131)は、円筒状に形成され、前記循環溝(133)は、前記リテーナ内面部(131)に開口されたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の迂回軌道を有するボールスプライン(100)。
【請求項6】
前記負荷軌道溝(125)は、前記軌道溝(111)と向い合って形成され、前記負荷軌道溝(125)の長手方向の両側端部には、拡張された軌道拡張部(125a)が形成されたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の迂回軌道を有するボールスプライン(100)。
【請求項7】
ボールブッシュ部をさらに含み、前記ボールブッシュ部は、前記ナット(120)の内面部に凹んで長手方向に沿って形成された少なくとも一つのブッシュ負荷軌道溝(125-1)と、前記ブッシュ負荷軌道溝(125-1)から離隔した位置に長手方向に沿って形成された少なくとも一つのブッシュ非負荷循環部(127-1)と、前記リテーナ(110)のナット(120)に向かう内側に、一側は、ブッシュ負荷軌道溝(125-1)と向かい合い、他側は、ブッシュ非負荷循環部(127-1)と向かい合って、湾曲して凹んで形成された少なくとも一つのブッシュ循環溝(133-1)と、両側のブッシュ循環溝(133-1)において方向が切り替えられ、前記ブッシュ負荷軌道溝(125-1)と前記スプライン軸(110)の外面との間、及び、前記ブッシュ非負荷循環部(127-1)に沿って循環移動する複数の転動体(150-1)と、を含むことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の迂回軌道を有するボールスプライン(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールスプラインに係り、さらに詳しくは、一部の区間において、スプライン軸に対してナット部が一定の角度で回転して移動することができる迂回軌道を有するボールスプラインに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールスプラインは、自動化産業及び半導体産業分野において、直線運動を正確に伝達する直線運動用軸受の一種である。
【0003】
図1に示すように、従来のボールスプライン10は、ボール1が収納され、ボール1の一側面が露出する負荷軌道溝2を有し、前記負荷軌道溝2に沿って循環するボール1が、リテーナ3の循環溝4に沿って非負荷循環孔5に進入するとともに、無限軌道が形成されて、ボール1が循環するようになる。ナット6において、ボール1が収納される負荷軌道溝2は、その断面が、曲律半径がボールの半径よりも大きな円弧状に形成されてもよいが、中央の円形の中心軸の左右に、同じ2つの円弧を形成させるように加工してから、ボール1が収納されることにより、中央の円形の中心軸の左右に形成された2つの接点において、ボール1が負荷軌道溝2に接触するようにしてもよい。前記ボール1が負荷軌道溝2に収納される場合、ボール1が密着する2つの接点がボール1の中心となす角を大きくして、ボール1が負荷軌道溝2から抜けないようにし、負荷軌道溝2からリテーナ3の循環溝4に沿って非負荷循環孔5に移動するとき、ボール1の円滑な循環のために、負荷軌道溝2の先端に湾曲面を形成する。ボール1は、移動時、湾曲面に沿って移動するので、衝撃が発生せず、騒音や振動が発生しない。
【0004】
スプライン軸10がナット6に挿入される場合、ナット6の内径に突出したボール1が挿入されるように、スプライン軸10には、軌道溝9が長手方向に沿って延長されて凹んで形成されることにより、スプライン軸10が、ナット6において、ボール1によって柔らかい前後運動を正確に行うことができるようになる。ボール1の循環によって、スプライン軸8の長さにかかわらず、前後進動作が可能になることである。
【0005】
スプライン軸8に形成される軌道溝9も断面を円弧状にしてもよいが、負荷軌道溝2の加工と同じ方式で加工することにより、ボール1が4つの接点で接触(4点接触)して転動する。
【0006】
図1における図面符号7は、ナット6とリテーナ3との間に備えられるシールを示すものであり、4aは、リテーナ3に備えられた内向き突出した循環突起を示すものである。
【0007】
図1に示すようなボールスプラインにおいて、リテーナ3が結合されたナット6は、スプライン軸10に沿って、その長手方向に往復運動が可能であるが、スプライン軸10に対して回転することはできない。
【0008】
図2は、従来技術のボールスプラインに結合された移動手段の一部を示す概略断面図である。
図2は、ボールスプラインのアプリケーションを説明するための図である。
【0009】
図2に示すように、移動手段Vにおいて、ナット6の外側に断面が円形である中空体のブラケットIBが設置され、その外側に転がり軸受Bが設置され、転がり軸受Bの内輪と一体で回転するようにブラケットIBにホイールWが設置される。このような構造において、移動手段Vは、ホイールWに対して回転可能に支持される転がり軸受Bによって、
図2の紙面に垂直な方向への前後進移動が可能になる。
図2に示すように、スプライン軸8の外側端部にピニオンPが設置され、スプライン軸8が外側に押されて上下方向に設置されたラックRに噛み合い(
図2の一点鎖線部分を参照)、スプライン軸8が回転駆動されるとき、移動手段Vは、ラックRに沿って上下方向に移動するようになる。
図2に示すような前後方向への移動が可能であり、スプライン軸8の端部に設置されたピニオンPがラックRに噛み合って、上下方向に移動することができる。
【0010】
このような運動に必要なボールスプライン10において、スプライン軸8が外側に押されてピニオンPがラックRに向かって前進するとき、ピニオンPのギアがラックRのギア間に位置せず、ピニオンPのギアがラックRのギアにぶつかってピニオンPとラックRが噛み合わなく、ピニオンPやラックRの破損の原因になるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した従来技術が有する問題点を解決するために提案されたものであって、迂回軌道部を備え、スプライン軸に対して、ナットが一定の範囲で回転することができる迂回軌道を有するボールスプラインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的のために、本発明は、棒状のスプライン軸と、前記スプライン軸が挿入され、その長手方向に沿って移動可能に備えられるナット部と、前記ナット部とスプライン軸との間に備えられて循環する複数のボールと、を含み、前記ナット部は、スプライン軸が挿入される中空体のナットと、前記ナットの長手方向の両側に備えられ、スプライン軸が挿入される中空体のリテーナと、を含み、前記スプライン軸には、凹んで長手方向に沿って延長された少なくとも一つの軌道部が形成され、前記ナットには、スプライン軸が挿入される中空部の内面部に凹んで長手方向に沿って形成された少なくとも一つの負荷軌道溝と、前記負荷軌道溝と並んで長手方向に沿って形成された少なくとも一つの非負荷循環部と、が備えられ、前記リテーナには、一側は、負荷軌道溝の端部と向かい合い、他側は、非負荷循環部の端部と向かい合う湾曲して凹んだ循環溝が少なくとも一つ形成され、前記ボールは、長手方向の両側のリテーナの循環溝において方向が切り替えられ、軌道部と負荷軌道溝との間、及び非負荷循環部に沿って循環移動し、前記軌道部は、長手方向に沿って形成された軌道溝と、長手方向の両側が軌道溝に連結された迂回軌道部と、を含む、迂回軌道を有するボールスプラインを提供する。
【0013】
上記において、迂回軌道部は、軌道溝と並んで形成された迂回軌道溝と、前記迂回軌道溝の長手方向の両側から傾斜して延長され、軌道溝に連結された傾斜軌道溝と、からなることを特徴とする。
【0014】
上記において、迂回軌道部は、軌道溝を挟んで両側に備えられたことを特徴とする。
【0015】
上記において、迂回軌道部は、軌道溝よりも深く形成され、前記ボールは、迂回軌道部と負荷軌道溝との間に遊隙を有することを特徴とする。
【0016】
上記において、リテーナ内面部は、円筒状に形成され、前記循環溝は、リテーナ内面部に開口されたことを特徴とする。
【0017】
上記において、負荷軌道溝は、軌道溝と向い合って形成され、前記負荷軌道溝の長手方向の両側端部には、拡張された軌道拡張部が形成されたことを特徴とする。
【0018】
上記において、ボールブッシュ部をさらに含み、前記ボールブッシュ部は、ナットの内面部に凹んで長手方向に沿って形成された少なくとも一つのブッシュ負荷軌道溝と、前記ブッシュ負荷軌道溝から離隔した位置に長手方向に沿って形成された少なくとも一つのブッシュ非負荷循環部と、前記リテーナのナットに向かう内側に、一側は、ブッシュ負荷軌道溝と向かい合い、他側は、ブッシュ非負荷循環部と向かい合って、湾曲して凹んで形成された少なくとも一つのブッシュ循環溝と、両側のブッシュ循環溝において方向が切り替えられ、ブッシュ負荷軌道溝とスプライン軸の外面との間、及びブッシュ非負荷循環部に沿って循環移動する複数の転動体と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明による迂回軌道を有するボールスプライン100によれば、迂回軌道部111-1を備え、スプライン軸110に対して、ナット120が一定の範囲で回転可能であり、回転遊隙を有し、迂回軌道部111-1の軌道傾斜部111b-1とボール150との接触による軌道傾斜部111b-1の損傷が防止され、ナット120の回転によって、スプライン軸110とリテーナ130の干渉によるリテーナ130の損傷が防止され、大きな曲げ抵抗を有するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来技術のボールスプラインを示す分解斜視図である。
【
図2】ボールスプラインの適用例の概略的な一部正面断面図である。
【
図3】本発明による迂回軌道を有するボールスプラインを一部省略して示す斜視図である。
【
図4】本発明による迂回軌道を有するボールスプラインに含まれたスプライン軸の一部斜視図及び断面図である。
【
図5】本発明による迂回軌道を有するボールスプラインに含まれたナットを示す斜視図である。
【
図6】本発明による迂回軌道を有するボールスプラインの長手方向の一部断面図及び一部拡大図である。
【
図7】本発明による迂回軌道を有するボールスプラインに含まれたリテーナの斜視図である。
【
図8】本発明による迂回軌道を有するボールスプラインの変形例を一部切開して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付された図面を参照して、本発明による迂回軌道を有するボールスプラインについて詳述する。
【0022】
図3は、本発明による迂回軌道を有するボールスプラインを一部省略して示す斜視図であり、
図4は、本発明による迂回軌道を有するボールスプラインに含まれたスプライン軸の一部斜視図及び断面図であり、
図5は、本発明による迂回軌道を有するボールスプラインに含まれたナットを示す斜視図であり、
図6は、本発明による迂回軌道を有するボールスプラインの長手方向の一部断面図及び一部拡大図であり、
図7は、本発明による迂回軌道を有するボールスプラインに含まれたリテーナの斜視図であり、
図8は、本発明による迂回軌道を有するボールスプラインの変形例を一部切開して示す斜視図である。
【0023】
図3及び
図5に示すように、本発明による迂回軌道を有するボールスプライン100は、棒状のスプライン軸110と、前記スプライン軸110が挿入され、スプライン軸110の長手方向に沿って移動可能に備えられるナット部と、前記ナット部とスプライン軸110との間に備えられて循環する複数のボール150と、を含む。
【0024】
前記ナット部は、スプライン軸110が挿入される円筒状の中空体のナット120と、前記ナット120の長手方向の両側に備えられ、スプライン軸110が挿入される中空体のリテーナ130と、を含む。前記ナット120は、ベアリング鋼のような高炭素鋼で製造される。前記リテーナ130は、円板から内径部が除去されたドーナツ状を有する。前記リテーナ130は、エンジニアリングプラスチック(ナイロン6、ナイロン66、またはこれらにガラス繊維を入れたもの)で製造されてもよいが、ナット120と同様に、ベアリング鋼のような金属で製造されてもよい。前記ナット120とリテーナ130との間には、図示しておらず、同様に中空体であるシールが含まれ得る。前記リテーナ130は、
図1に示すように、ボルトによってナット120に結合され得る。
【0025】
前記スプライン軸110には、凹んで長手方向に沿って延長された少なくとも一つの軌道部が形成される。前記スプライン軸110は、断面が円形である棒状の外面に軌道部が凹んで加工されて製造されてもよい。前記軌道部は、互いに対向する位置に2つが備えられてもよく、90°の間隔で4つが備えられてもよい。前記スプライン軸110は、端部に直径が縮小された軸取付部113が備えられてもよい。前記軸取付部113にキー溝(図示せず)が形成され、ピニオン等が設置される。
【0026】
前記ナット120には、スプライン軸110が挿入される中空部の内面部121に凹んで長手方向に沿って形成された少なくとも一つの負荷軌道溝125と、前記負荷軌道溝125と並んで長手方向に沿って形成された少なくとも一つの非負荷循環部127と、が備えられる。前記負荷軌道溝125と非負荷循環部127は、スプライン軸110に備えられた軌道部と同じ個数で備えられる。非負荷循環部127は、ナット120に、その長手方向に沿って形成された貫通孔として形成されてもよい。前記負荷軌道溝125は、軌道部と向い合う位置に形成される。
【0027】
前記リテーナ130のナット120に向かう面である内側面には、湾曲して凹んだ循環溝133が形成される。前記循環溝133は、少なくとも一つ形成される。前記循環溝133は、軌道部と同じ個数で形成される。前記循環溝133の一側は、負荷軌道溝125の端部と向い合い、他側は、非負荷循環部127の端部と向い合う。
【0028】
前記ボール150は、長手方向の両側のリテーナ130の循環溝133において方向が切り替えられ、軌道部と負荷軌道溝125との間に転走し、非負荷循環部127に沿って循環移動する。ボール150の循環は、公知の技術であるので、これについての説明を省略する。
【0029】
前記軌道部は、スプライン軸110の長手方向に沿って形成された軌道溝111と、長手方向の両側が軌道溝111に連結された迂回軌道部111-1と、を含む。ナット120に回転方向の外力が作用するか、またはスプライン軸110に回転方向の外力が作用すると、ボール150は、迂回軌道部111-1と負荷軌道溝125との間に沿って移動するようになり、スプライン軸110に対して、ナット120が、一定の角度だけ回転することができるようになる。
【0030】
前記迂回軌道部111-1は、軌道溝111から離隔し、軌道溝111と並んで形成された迂回軌道溝111bと、前記迂回軌道溝111bの長手方向の両側から傾斜して延長され、軌道溝111に連結された傾斜軌道溝111b-1と、からなる。ボール150が、軌道溝111と負荷軌道溝125との間に転走してから、負荷軌道溝125と迂回軌道部111-1との間に移動する場合、傾斜軌道溝111b-1、迂回軌道溝111b、さらに他側の傾斜軌道溝111b-1に沿って移動し、軌道溝111に沿って移動する。
【0031】
ボール150は、軌道溝111に2点接触し、負荷軌道溝125に2点接触して、4点接触して転動することができる。軌道溝111と負荷軌道溝125が、ボール150の半径よりも大きな曲律半径を有する円弧状に形成され、2点接触して転動してもよい。これは、従来、公知の技術であるので、これについての詳細な説明を省略する。
【0032】
図4に示すように、前記迂回軌道部111-1は、軌道溝111を挟んで円周方向の両側に備えられてもよい。前記迂回軌道部111-1は、軌道溝111よりも深く形成され、前記ボール150は、迂回軌道部111-1と負荷軌道溝125との間に遊隙を有してもよい。ボール150は、迂回軌道部111-1と負荷軌道溝125との間に遊隙を有することにより、スプライン軸110に対して、ナット120も回転方向に遊隙を有することができ、
図2に示すようなラック-ピニオンの噛合い過程において、円滑な噛合いが行われることができる。
【0033】
図2及び
図3の図面符号111aは、迂回軌道溝111bと並んだ軌道溝111の部分を示すものである。
【0034】
図5及び
図6に示すように、前記負荷軌道溝125は、軌道溝111と向かい合い、前記負荷軌道溝125の長手方向の両側端部には、拡張された軌道拡張部125aが備えられる。ボール150が移動して、前記軌道拡張部125aに至ると、軌道拡張部125aと迂回軌道部111-1との間においてボール150の遊隙量が大きくなり、よって、ボール150による傾斜軌道溝111b-1の損傷が抑制または防止され得る。
【0035】
図7に示すように、前記リテーナ内面部131は、円筒状に形成され、前記循環溝133は、リテーナ内面部131に開口し、循環溝133は、内径側に、リテーナ内面部131に開口した内面開口部135を有する。したがって、前記リテーナ130の半径方向の内側には、リテーナ内面部131から内向き突出した構成が備えられず、リテーナ130が移動されるとき、傾斜軌道溝111b-1との干渉が発生することなく、傾斜軌道溝111b-1との干渉によるリテーナ130の破損が発生しない。
【0036】
図8に示すように、本発明による迂回軌道を有するボールスプライン100は、ボールブッシュ部をさらに含む。前記スプライン軸110には、互いに対向する位置に軌道部が形成され、軌道部間にボールブッシュ部が備えられる。前記ボールブッシュ部が備えられることにより、ナット120に作用する半径方向への荷重に対する剛性が向上する。前記軌道部が180°の角度で離隔して、2つ形成され、前記両側の軌道部間にボールブッシュ部が備えられる。
【0037】
前記ボールブッシュ部は、ナット120の内面部に凹んで長手方向に沿って形成された少なくとも一つのブッシュ負荷軌道溝125-1と、前記ブッシュ負荷軌道溝125-1から離隔した位置に長手方向に沿って形成された少なくとも一つのブッシュ非負荷循環部127-1と、前記リテーナ110のナット120に向かう内側に、一側は、ブッシュ負荷軌道溝125-1と向い合い、他側は、ブッシュ非負荷循環部127-1と向かい合って湾曲して凹んで形成された少なくとも一つのブッシュ循環溝133-1と、両側のブッシュ循環溝133-1において方向が切り替えられ、ブッシュ負荷軌道溝125-1とスプライン軸110の外面との間、及びブッシュ非負荷循環部127-1に沿って循環移動する複数のボール150-1と、を含む。前記ブッシュ非負荷循環部127-1は、長手方向に沿って貫通した貫通孔として形成されてもよい。前記ブッシュ負荷軌道溝125-1は、スプライン軸110の断面が円弧状である外面と向い合う。前記ボール150-1は、ブッシュ負荷軌道溝125-1とスプライン軸110の外面(断面が円弧である外面)との間に転走し、ブッシュ循環溝133-1において方向が切り替えられ、ブッシュ非負荷循環部127-1に案内され、ブッシュ非負荷循環部127-1に沿って移動して無限循環される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明による迂回軌道を有するボールスプライン100は、様々なアプリケーションに用いられ得る。
【国際調査報告】