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特表2023-525463障害または外傷患者に静脈血の短期的緊急酸素化を提供するためのI.V.流体への溶存酸素の注入
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  • 特表-障害または外傷患者に静脈血の短期的緊急酸素化を提供するためのI.V.流体への溶存酸素の注入 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(54)【発明の名称】障害または外傷患者に静脈血の短期的緊急酸素化を提供するためのI.V.流体への溶存酸素の注入
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/32 20060101AFI20230609BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20230609BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
A61M1/32 500
A61P17/02
A61K33/00
A61P7/00
A61K47/06
A61K47/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561138
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 CA2021050463
(87)【国際公開番号】W WO2021203199
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/006,339
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】323006507
【氏名又は名称】ジーアイエス ベンチャーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】ビーティ,マイケル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C077
4C086
【Fターム(参考)】
4C076DD35
4C076DD60
4C077AA03
4C077BB09
4C077CC03
4C077DD15
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH20
4C077JJ03
4C077JJ22
4C077KK25
4C086AA02
4C086HA08
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA05
4C086ZA51
4C086ZA89
(57)【要約】
本発明は、静脈血中の適切な酸素レベルを維持し、それによって障害または外傷患者に短期的酸素化サポートを提供するために高レベルの機械的に注入された溶存酸素を含む静脈内流体、血液、または人工血液が使用されうるプロセスに関する。一態様では、酸素化サポートを必要とする障害または外傷対象において対象中の適切な酸素レベルを維持するために使用するための生物流体を酸素化するためのシステムおよびプロセスが提供され、このプロセスは、酸素源から酸素ガスを供給するステップと、酸素富化生物流体を得るために、ある量の供給された酸素を生物流体に溶存させるステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素化サポートを必要とする障害または外傷を有する対象において前記対象中の適切な酸素レベルを維持するために使用するための生物流体を酸素化するためのプロセスであって、
酸素源から酸素ガスを供給するステップと、
酸素富化生物流体を得るために、前記供給された酸素を前記生物流体に溶存させるステップと、
を含むプロセス。
【請求項2】
前記生物流体に溶存させた前記供給された酸素の供給量と実質的に等しい量の第一ガスを除去するステップをさらに含む、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記酸素富化生物流体が前記対象に導入されたときに、前記対象の血流中のガス塞栓の形成を少なくとも減少または阻止するために、前記供給量の酸素を溶存させるステップと、前記供給量と実質的に等しい量の前記第一ガスを除去するステップとは、全ガス圧(TGP)の上昇を避けるために同時に行われる、
請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第一ガスは窒素である、
請求項2または3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記酸素富化生物流体を適合リザーバに導くステップ、または前記酸素富化生物流体を前記対象の循環中に直接送達するステップをさらに含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記適合リザーバは、IVバッグまたはボトルである、
請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記送達するステップは、前記酸素富化生物流体を前記対象の静脈循環に直接注入するステップを含む、
請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記酸素富化生物流体は、溶存酸素のレベルが高い、
請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記酸素富化生物流体は、酸素飽和度が約100%より大きい、
請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記酸素富化生物流体は、酸素飽和度が少なくともおよそ400%である、
請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記生物流体は、滅菌水、静脈内(IV)流体、血液、または人工血液である、
請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記人工血液は、ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)またはパーフルオロカーボン(PFC)である、
請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)は、オキシグロビンである、
請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記対象は、ヒトまたは非ヒト動物である、
請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセスにしたがって生成される酸素富化生物流体。
【請求項16】
酸素化サポートを必要とする障害または外傷対象における前記対象中の適切な酸素レベルを維持するための請求項15に記載の前記酸素富化生物流体の使用。
【請求項17】
障害および/または外傷を有する患者の血液を酸素化する方法であって、酸素化サポートを必要とする障害または外傷対象に対して前記対象中の適切な酸素レベルを維持するために請求項15に記載の前記酸素富化生物流体を投与するステップを含む方法。
【請求項18】
酸素化サポートを必要とする障害または外傷を有する対象に対して、前記対象中の適切な酸素レベルを維持するために酸素富化生物流体を投与するためのシステムであって、
前記対象の動脈酸素飽和度を得て、得られた動脈酸素飽和度のレベルに依存する一つ以上の信号を出力するように構成された酸素センサプローブと、
プロセッサと、
そこに具現化された命令を含む少なくとも一つのメモリデバイスであって、前記命令は、前記プロセッサによって実行されたときに前記プロセッサに前記適切な酸素飽和度レベルの閾値範囲を下回る動脈酸素飽和度のレベルを示す一つ以上の信号を識別させる、メモリデバイスと、
酸素富化生物流体源と、
前記プロセッサによって制御され、前記プロセッサが適切な酸素飽和度レベルの閾値範囲を下回る動脈酸素飽和度のレベルを示す一つ以上の信号を識別したときに、ある量の前記酸素富化生物流体を前記対象に送達するように構成されたレギュレータと、
を含むシステム。
【請求項19】
酸素化サポートを必要とする障害または外傷を有する対象に対して、前記対象中の適切な酸素レベルを維持するために酸素富化生物流体を投与する方法であって、
酸素センサプローブを使用して対象の動脈酸素飽和度のレベルを感知するステップと、
前記感知されたレベルが適切な酸素レベルの閾値範囲を下回る場合に、酸素富化生物流体の送達速度を増加させるようにレギュレータを制御するステップと
を含む方法。
【請求項20】
前記レギュレータはIV点滴マシンを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる2020年4月7日に出願された「障害または外傷患者に静脈血の短期的緊急酸素化を提供するためのI.V.流体への溶存酸素の注入」と題する米国特許仮出願第63/006,339号の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、障害または外傷患者に短期的酸素化サポートを提供するために静脈内流体、血液、または人工血液に酸素を注入するシステムおよびプロセスに関する。諸態様において、このプロセスは、障害または外傷患者に送達されたときに静脈血中の適切な酸素レベルを維持するために高レベルの機械的に注入された溶存酸素を含有する静脈内流体、血液、または人工血液を生成する。
【背景技術】
【0003】
長年の医学的問題は、障害または外傷患者のための静脈血の酸素化に関する。患者は、肺炎もしくはウイルス感染もしくは慢性閉塞性肺疾患等の肺機能を損なう疾患に起因して、または銃撃もしくは自動車事故によるもの等の誘発性外傷に起因して、または肺移植中等の外科的処置に起因して、肺機能に障害が起こすことがある。
【0004】
患者に酸素を提供するための現在のアプローチには、
・可変割合の純酸素(80~100%)を含むマスクまたは鼻腔チューブ
・挿管および機械式レスピレータ/ベンチレータへの接続
・患者から血液を除去し、酸素を血液中のヘモグロビンに移動させる膜を通過させてから酸素化された血液を患者中に流して戻す体外式膜型人工肺(ECMO:External Corporeal Membrane Oxygenation)
が含まれる。
【0005】
これらのアプローチに関し、マスクは、肺が重度に障害を伴っておらず、肺でまだ十分なガス交換が起きている場合にのみ機能する。そのため、マスクは胸部創傷、肺内の流体レベルが高い場合、または横隔膜筋/神経刺激の障害を伴う場合には不十分である。
【0006】
挿管について言えば、これは肺外傷をそれ自体で引き起こす高リスクの処置である。この外傷の結果として、患者が死亡するかまたはこれらの機械から外されることができなくなる重大なリスクがある。
【0007】
最後に、ECMOマシンは、手術室等の無菌環境で使用するための非常に高価な据置型機器であり、導入手順に起因する大幅な時間遅延を伴うことに留意されたい。同時に、ECMOマシンは、血液中に適切なレベルの酸素が維持されることを確保することによって肺機能が一時的にではあるが十分に置き換えることができる可能性を示している。
【0008】
したがって、障害および/または外傷患者の血液の酸素化のための改善されたシステム、ならびに障害または外傷患者に短期的酸素化サポートを提供するために静脈内流体、血液、または人工血液に酸素を注入するための改善されたプロセスが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、障害または外傷患者に短期的酸素化サポートを提供するために静脈内流体、血液、または人工血液に酸素を注入するシステムおよびプロセスに関する。
【0010】
諸態様において、このプロセスは、障害または外傷患者に送達されたときに静脈血中の適切な酸素レベルを維持するために高レベルの機械的に注入された溶存酸素を含有する静脈内流体、血液、または人工血液を生成する。
【0011】
一実施形態において、本開示は、酸素化サポートを必要とする障害または外傷対象において対象中の適切な酸素レベルを維持するために使用するための生物流体を酸素化するためのプロセスに関し、このプロセスは、
酸素源から酸素ガスを供給するステップと、
酸素富化生物流体を得るために、ある量の供給された酸素を生物流体に溶存させるステップと
を含む。
【0012】
一態様では、このプロセスは、生物流体に溶存させた供給された酸素の量と実質的に等価なある量の第一ガスを除去するステップをさらに含む。
【0013】
一態様では、酸素富化生物流体が対象に導入されたときに対象の血流中のガス塞栓の形成を少なくとも減少または阻止するために、当該量の供給された酸素を溶存させるステップと、当該量の第一ガスを除去するステップとは、全ガス圧(TGP:total gas pressure)の上昇を避けるために同時に行われる。
【0014】
一態様では、第一ガスは窒素である。
【0015】
一態様では、このプロセスは、酸素富化生物流体を適合リザーバに導くステップ、または酸素富化生物流体を対象の循環中に直接送達するステップをさらに含む。
【0016】
一態様では、適合リザーバはIVバッグまたはボトルである。
【0017】
一態様では、送達するステップは、酸素富化生物流体を対象の静脈循環に直接注入するステップを含む。
【0018】
一態様では、酸素富化生物流体は溶存酸素のレベルが高い。
【0019】
一態様では、酸素富化生物流体は酸素飽和度が約100%より大きい。
【0020】
一態様では、酸素富化生物流体は酸素飽和度が少なくともおよそ400%である。
【0021】
一態様では、生物流体は、滅菌水、静脈内(IV:intra‐venous)流体、血液、または人工血液である。
【0022】
一態様では、人工血液は、ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC:hemoglobin‐based oxygen carriers)またはパーフルオロカーボン(PFC:perflourocarbons)である。
【0023】
さらなる態様では、HOBCはオキシグロビンである。
【0024】
一態様では、対象はヒトまたは非ヒト動物である。
【0025】
一実施形態では、本開示は、プロセスにしたがって生成される酸素富化生物流体に関し、このプロセスは、酸素源から酸素ガスを供給するステップと、酸素富化生物流体を得るために、ある量の供給された酸素を生物流体に溶存させるステップと、を含む。
【0026】
一実施形態では、本開示は、酸素化サポートを必要とする障害または外傷対象における対象中の適切な酸素レベルを維持するための酸素富化生物流体の使用に関する。
【0027】
一実施形態では、本開示は、酸素化サポートを必要とする障害または外傷対象に対して対象中の適切な酸素レベルを維持するために酸素富化生物流体を投与するステップを含む、障害および/または外傷患者の血液を酸素化する方法に関する。
【0028】
一実施形態では、本開示は、酸素化サポートを必要とする障害または外傷対象に対して対象中の適切な酸素レベルを維持するために酸素富化生物流体を投与するためのシステムに関し、このシステムは対象の動脈酸素飽和度を得、得られた動脈酸素飽和度のレベルに依存する一つ以上の信号を出力するように構成された酸素センサプローブと、プロセッサと、そこに具現化された命令を含む少なくとも一つのメモリデバイスであって、命令は、プロセッサによって実行されたときにプロセッサに適切な酸素飽和度レベルの閾値範囲を下回る動脈酸素飽和度のレベルを示す一つ以上の信号を識別させる、メモリデバイスと、酸素富化生物流体源と、プロセッサによって制御され、プロセッサが適切な酸素飽和度レベルの閾値範囲を下回る動脈酸素飽和度のレベルを示す一つ以上の信号を識別したときに、ある量の酸素富化生物流体を対象に送達するように構成されたレギュレータと、を含む。
【0029】
一実施形態では、本開示は、酸素化サポートを必要とする障害または外傷対象に対して対象中の適切な酸素レベルを維持するために酸素富化生物流体を投与する方法に関し、この方法は、酸素センサプローブを使用して対象の動脈酸素飽和度のレベルを感知するステップと、感知されたレベルが適切な酸素レベルの閾値範囲を下回る場合に、酸素富化生物流体の送達速度を増加させるようにレギュレータを制御するステップと、を含む。
【0030】
一態様では、レギュレータはIV点滴マシンを含む。
【0031】
次に、本出願の実施形態例を示す添付の図面を例として参照する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】滅菌水酸素化プロセスの概略図を示す。
図2】リサイクルを特徴とする滅菌水酸素化プロセスの代替的概略図を示す。
図3】酸素化静脈内流体の注入のためのプロセスの概略図を示す。
図4】酸素化静脈内流体の制御された注入のためのプロセスの概略図を示す。
図5】フロースルー処理による血液への酸素の注入のためのプロセスの概略図を示す。
図6】バッチ処理による血液への酸素の注入のためのプロセスの概略図を示す。
図7】リサイクルを使用することによる血液への酸素の注入のためのプロセスの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1~4を参照すると、静脈血中の適切な酸素レベルを維持し、それによって障害または外傷患者に短期的酸素化サポートを提供するために高レベルの機械的に注入された溶存酸素を含有する静脈内流体が使用されうるシステムおよびプロセスに関する第一の一般的実施形態が提供される。
【0034】
予めパッケージされた市販の静脈内(IV)流体は、一般に
・滅菌水
・塩類、糖類またはコロイド
を含み、
・呼吸性アシドーシスを制御するためにアルカリ化剤を含有してもよく、
・追加の薬物注入と組み合わせてもよい。
【0035】
患者の静脈内に通常投与されるIV流体または点滴の種類は、
・塩類または糖類を含む、および含まない乳酸リンゲル液
・等張液
〇 0.9%NaCl、乳酸塩、5%デキストロース
・低張液
〇 0.45%NaCl、0.5%NaCl、0.33%NaCl
・高張液
〇 5%デキストロース、10%デキストロース、3%NaCl、25%アルブミン、TPN液
・コロイド溶液
〇 原形質ゲル、ポリゲリン、デキストロン、ヘスパン、プラズマネート
を含む。
【0036】
IV流体バッグには様々な構成があるが、それらは全て滅菌環境で滅菌水のプールから組み立てられる。
【0037】
一実施形態では、本発明は、二段階のプロセスを含む。
【0038】
図1に示すように、滅菌水サプライ(滅菌水のプール)10が、酸素源13を含む酸素化システム12と接触させられる。高レベルの溶存酸素が滅菌水サプライ10に注入されて富化滅菌水サプライ(滅菌水貯蔵部)14が生成された後、図3に示すように任意の既知のIV点滴レギュレータ18と共に使用するために市販のIVバッグ/ボトル(酸素化IVバッグ)16がパッケージされる。
【0039】
図3に示すように、IV点滴(点滴レギュレータ)18がその後、対象(患者)2の静脈系のヘモグロビンに必要な溶存酸素を提供する。いくつかの態様において、ヘモグロビンは、天然または人工血液中に見られるものでありうる。
【0040】
図4に示すように、プロセッサ110と少なくとも一つのメモリデバイス(メモリ)112とを含む自動フィードバック制御システム100を使用し、一つ以上の動脈酸素プローブ22からの測定値および結果の信号により、そのシステム100がIV点滴マシン18のレギュレータ(自動制御可能点滴レギュレータ)20を作動させて酸素富化生物流体源16の点滴速度、ひいては患者における動脈溶存酸素レベルを機械的に制御および調節することにより、本プロセスはさらに強化されうる。
【0041】
特に、酸素センサプローブ22は、患者/対象2の動脈酸素飽和度を得、得られた動脈酸素飽和度のレベルに依存する一つ以上の信号を出力するように構成される。そこに具現化された命令を含む少なくとも一つのメモリデバイス110であって、命令は、プロセッサ110によって実行されたときにプロセッサ110に適切な酸素飽和度レベルの閾値範囲を下回る動脈酸素飽和度のレベルを示す一つ以上の信号を識別させる。酸素富化生物流体源16がシステム100に提供され、プロセッサ110によって制御されるレギュレータ20は、プロセッサ100が適切な酸素飽和度レベルの閾値範囲を下回る動脈酸素飽和度のレベルを示す一つ以上の信号を識別したときに、ある量の酸素富化生物流体16を患者/対象2に送達するように構成される。
【0042】
諸態様において、適切な酸素飽和度レベルの閾値範囲は、約100%未満、約95%未満、約90%未満、または約85%未満である。
【0043】
本発明の一つの利点は、結果として得られる酸素注入IVバッグ/ボトル16が本質的に可搬であり、それにより現場での幅広い使用が可能になることである。これらのバッグ16は、病室、病院の緊急治療室および手術室、救急車、エピデミックおよびパンデミック、武力紛争、世界保健機関および国家が緊急事態宣言などにおいて使用することができる。
【0044】
水性環境に高い溶存酸素レベルを注入するためのいくつかの技術がある。当業者にとって、水への酸素の注入は様々なやり方で行われうる。例えばこれは、微細気泡拡散、分子レベルの注入、膜浸透などを通じて行われうる。
【0045】
IV流体の酸素化における重要な問題は、血流へのIV注入により血液中に致命的となりうる塞栓が形成される(すなわち減圧症または気泡病)ポイントまで溶存ガス圧を上昇させるのを避けることである。これは、被害者が高圧環境から低圧環境に移動する際に血流から窒素が放出されることから最も一般的に発生することに留意されたい。
【0046】
一態様では、本システムおよびプロセスは、IV流体中の高レベルの溶存酸素を提供する。いくつかの態様では、本システムおよびプロセスは、酸素飽和度が約100%より大きいIV流体を提供する。さらなる態様では、IV流体中の溶存酸素は、血流に注入されたときに塞栓を引き起こさずに飽和度400%以上に増加させられうる。
【0047】
図5~7を参照すると、酸素を血液に直接注入するためのECMOマシンの代替物に関する第二の一般的実施形態が提供される。
【0048】
図5に示すように、本発明のこの実施形態では、酸素源13を含む血液酸素化システム(血液酸素化注入システム)24を使用して、酸素が血液または人工血液(低酸素血液)26に直接注入されて、酸素富化血液または人工血液26が生成される。生成された酸素富化血液または人工血液26は、図5に示すように手術室でのようにフロースルーで使用されることもできる。あるいは、血液酸素化システム24は、図6に示すように、所与の血液型の血液または人工血液(所与の血液型の酸素化されていない貯蔵血液)30に酸素を注入して所与の血液型の酸素富化血液または人工血液(所与の血液型の酸素化された貯蔵血液)32をバッチで貯蔵のために生成するために使用されることができる。
【0049】
ECMOマシンは、溶存ガス圧を維持しながら酸素化のために膜プロセスを使用するが、この実施形態は、血液または人工血液中の塞栓の形成を阻止するために溶存ガス圧を維持しながら既存の微細拡散または分子注入プロセスを使用する。
【0050】
血液および人工血液の直接酸素化に関しては、これにはFDA/欧州により獣医用途に承認されたオキシグロビン等、全てのクラスのヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)および全てのクラスのパーフルオロカーボン(PFC)が含まれる。
【0051】
図2に示すような実施形態によれば、滅菌水のプール10が酸素化システム12で処理されて、プール10の酸素含有量が継続的に増加および/または補充されうる。同様に、図7に示すように、所与の血液型の血液または人工血液のプール(所与の血液型の貯蔵血液)34が酸素化システム24で処理されて、プール34の酸素含有量が継続的に増加および/または補充増加されうる。
【0052】
実施形態によれば、本開示のシステムおよびプロセスは、ヒトおよび非ヒト動物の両方に広範な用途を見出すことができる。
【0053】
上に提示された様々な実施形態は単なる例であり、決して本開示の範囲を限定することを意図しない。本明細書に記載される革新の変形例は、実施形態例の恩恵を受ける通常の技術をもつ当業者には明らかであり、そのような変形例は本開示の意図された範囲内である。特に、上述の実施形態の一つ以上からの特徴が、上に明示的に記載されないかもしれない特徴のサブコンビネーションを含む代替的実施形態を作り出すために選択されうる。加えて、上述の実施形態の一つ以上からの特徴が、上に明示的に記載されないかもしれない特徴の組み合わせを含む代替的実施形態を作り出すために選択され組み合わせられうる。そのような組合せおよびサブコンビネーションに適した特徴は、本開示を全体として検討すれば当業者には容易に明らかであろう。本明細書に記載される主題は、技術の全ての適切な変化を網羅および包含することを意図する。
【0054】
記載された実施形態のある改変および修正が行われうる。したがって、上で論じた実施形態は例示的であり、限定的ではないと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】