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特表2023-525499巻線に使用される絶縁導体、それに由来する巻線及び対応する製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(54)【発明の名称】巻線に使用される絶縁導体、それに由来する巻線及び対応する製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/02 20060101AFI20230609BHJP
   H01B 13/16 20060101ALI20230609BHJP
   H01F 5/06 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
H01B7/02 A
H01B13/16 B
H01F5/06 H
H01F5/06 Q
H01F5/06 W
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566218
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2021061482
(87)【国際公開番号】W WO2021219889
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】2004300
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ビュッシ
(72)【発明者】
【氏名】クレマン・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ゴネタン
【テーマコード(参考)】
5G309
5G325
【Fターム(参考)】
5G309MA01
5G325KA01
5G325KB01
5G325KC02
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの導電体、及び、n層からなり、「n」は、1以上の整数であり、n番目の層は、少なくとも50質量%のポリアリールエーテルケトンを含む疑似アモルファス組成物Cからなる最外層である、導電体を覆う絶縁コーティングを含む、絶縁導体に関する。本発明は、絶縁導体を製造する方法、絶縁導体の2つの部分を使用して熱溶接する方法、及び絶縁導体の巻線を熱溶接することによって得ることができるコイルにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの導電体、及び、
n層からなり、「n」は、1以上の整数であり、n番目の層は、少なくとも50質量%のポリアリールエーテルケトンを含む疑似アモルファス組成物Cからなる最外層である、前記導電体を覆う絶縁コーティング、
を含む、絶縁導体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの導電体が、銅若しくはその合金、アルミニウム、ニッケル又は銀を含む、請求項1に記載の絶縁導体。
【請求項3】
前記組成物Cのメルトフローインデックスが、380℃及び5kgの荷重下で、1~100cm/10分の範囲の値を有し、優先的には2~85cm/10分の範囲の値を有し、極めて優先的には5~60cm/10分の範囲の値を有する、請求項1又は2に記載の絶縁導体。
【請求項4】
前記組成物Cが、ポリアリールエーテルケトン以外の他の1つの熱可塑性物質及び/又はフィラー及び/又は添加剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の絶縁導体。
【請求項5】
他の前記熱可塑性物質が、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー(FEP)、パーフルオロアルコキシ-アルカンコポリマー(PFA)、パーフルオロエラストマー(FFKM)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルイミド/ポリジメチルシロキサン(PEI/PDMS)ブロックコポリマー、ポリ(エーテルサルフォン)(PES)、ポリサルフォン(PSU)、ポリフェニレンサルフォン(PPSU)、ポリ(フェニレンサルファイド)、ポリフェニレンエーテル(PPE)及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の絶縁導体。
【請求項6】
前記組成物Cが、前記少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンから本質的になる又はからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の絶縁導体。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンが、テレフタル単位及びイソフタル単位から本質的になり、優先的にはテレフタル単位及びイソフタル単位からからなり、前記テレフタル単位は式(I)を有し、
【化1】
前記イソフタル単位は式(II)を有し、
【化2】
テレフタル単位及びイソフタル単位の合計に対する、前記テレフタル単位のモル比率が、0%~85%、優先的には45%~75%、より優先的には48%~75%、極めて優先的には58%~73%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の絶縁導体。
【請求項8】
前記少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンが、式(III)の単位
【化3】
及び式(IV)の単位
【化4】
を含むコポリマーであり、
単位(III)及び単位(IV)の合計に対する、前記単位(III)のモル比率が、0%~99%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の絶縁導体。
【請求項9】
前記少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンが、式(III)の単位
【化5】
及び式(V)の単位
【化6】
を含むコポリマーであり、
単位(III)及び単位(V)の合計に対する、前記単位(III)のモル比率が、0%~99%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の絶縁導体。
【請求項10】
前記n番目の層が、5マイクロメートル~1000マイクロメートル、優先的には10マイクロメートル~750マイクロメートル、より優先的には25マイクロメートル~500マイクロメートル、極めて優先的には50マイクロメートル~250マイクロメートルの範囲の平均厚さを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の絶縁導体。
【請求項11】
前記整数nが、2以上である、請求項1~10のいずれか一項に記載の絶縁導体。
【請求項12】
前記絶縁コーティングが、前記少なくとも1つの導電体及び前記コーティングのn番目の層の間に、特に(n-1)番目の層に、前記n番目の層の融点以上の融点を有する熱可塑性ポリマーを含む半結晶組成物である、少なくとも1つの中間層を含む、請求項11に記載の絶縁導体。
【請求項13】
前記少なくとも1つの中間層、特に(n-1)番目の層が、式(III)の単一の繰り返し単位からなるホモポリマーからなる、請求項12に記載の絶縁導体。
【化7】
【請求項14】
前記絶縁コーティングが、前記少なくとも1つの導電体及び前記コーティングのn番目の層の間に、特に(n-1)番目の層に、架橋熱硬化性ポリマーを含む組成物である、少なくとも1つの中間層をすべて含む(allcomprise)、請求項11に記載の絶縁導体。
【請求項15】
適切な場合に(n-1)層からなる絶縁コーティングで覆われた、前記少なくとも1つの導電体を提供する工程、及び、融点Tを有する前記組成物Cを提供する工程を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の絶縁導体の製造方法であって、
を厳密に超える温度で組成物Cを加熱して、組成物Cの溶融物を得る工程、
固体又は溶融状態で、前記組成物Cを、適切な場合に絶縁コーティングの(n-1)層で覆われた前記導電体に塗布して、固体又は溶融状態で、組成物Cで覆われた導電体を得る工程、及び、
前記溶融物を十分に迅速に冷却して、コーティング層のn番目の層を、疑似アモルファスの形態で得る工程、
を含む、方法。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の絶縁導体の2つの部分間の熱溶接の方法であって、
前記2つの部分が同一の疑似アモルファス化学組成物Cで形成された周辺層を有し、組成物Cがガラス転移温度T及び融点Tを有し、
-絶縁導体の2つの部分を接触させる工程、
-T超の温度で加熱することによって、2つの合体した部分の集合体(assembly)を形成するために、接触させた絶縁導体の2つの部分の一部を合体させる工程、及び、
-十分な時間、組成物Cの温度T超の温度で加熱を維持することによって、2つの合体した部分の集合体の組成物Cを結晶化させる工程、
を含む、方法。
【請求項17】
組成物Cが、結晶化工程の間に、WAXSによって測定される、厳密に7%より大きい結晶化度まで結晶化され、優先的には10%以上又は15%以上又は20%以上又は実際に25%以上の結晶化度まで結晶化される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
-互いに接触する領域を有する1組のターンを形成する、請求項1~14のいずれか一項に記載の絶縁導体を巻く工程、
-請求項16又は17に記載の方法によって前記領域を熱溶接する工程
によって得ることができるターン(turns)の巻線を含む、コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁コーティングとして、ポリアリールエーテルケトンに基づく周辺層を含む、絶縁導体の分野に関する。
【0002】
本発明はまた、これらの絶縁導体が特に好適に使用される、電気巻線の分野にも関する。
【背景技術】
【0003】
電気巻線では、絶縁材料は、まず、第一に導体を、特に部分放電に関して、操作電圧で絶縁しなければならない。絶縁材料は、高い機械的ストレス及び/又は温度ストレスにも耐えなければならない。この目的のために、絶縁材料としてポリアリールエーテルケトンを含む絶縁導体のいくつかの開発が、既に使用されている。ポリアリールエーテルケトンは、優れた耐火性を示し、かつ、少量の煙及びその他の有害なガスのみを排出するという利点も有する。
【0004】
巻線の絶縁は、慣例的に2つの段階で実施される。
i)導体それ自体を、一般的に「エナメル」という名称で表示される絶縁層で絶縁する工程、
ii)次に、絶縁導体を巻き巻線を形成させた後、一般的に「含浸ワニス」という名称で表示される化学物質を用いて巻線を含浸させる工程、を含む。
【0005】
ポリアリールエーテルケトンである「エナメル」を用いた導体の絶縁は、先行技術に記載されている。
【0006】
たとえば、少なくとも25%の結晶化度まで結晶化されたポリエーテルエーテルケトンの絶縁層を含む米国特許第10,186,345号の絶縁導体が知られている。このような絶縁導体を製造する方法は、i)ポリエーテルエーテルケトンテープを用いて絶縁導体を導体の周辺に巻き付ける工程、ii)テープを加熱して、ポリマーを溶融させる工程、及びiii)溶融テープを冷却して、少なくとも25%のポリマーの結晶化度を得る工程、を含む。
【0007】
さらに、導体、特に銅又はアルミニウム導体の表面上の酸化物層の厚さを制御することで、導体への絶縁材料の接着力を増強させることも知られている。これにより、特に特定の場合に、絶縁材料の良好な接着のために一般的に必要とされる、ベース層の使用を省略することができる。米国特許出願第2014/0224522号では、特に、絶縁材料との良好な接着を得るための5nm~300nmの酸化物層の有益な効果が説明されている。カナダ国特許出願第3,019,024号では、その一部として酸化物層を有さない導体も、接着に対して有益な効果を有することが述べられている。酸化物層の完全な除去は、とりわけ、保護雰囲気下で、イオンプラズマを用いた処理によって可能である。
【0008】
「含浸ワニス」を用いた巻線の含浸は、先行技術からよく知られているが、PAEKワニスについては直接説明されていない。含浸ワニスは、特に、コイルのターン(turns)に強固に結合し、かつ、それにより振動に対する機械的耐性を増強させることができる。含浸ワニスは、巻線内に存在する空気を大幅に除去して、外部の化学的攻撃に対する保護を提供し、かつ、コイルの全体の絶縁耐力を向上させることができる。
【0009】
米国特許第10,325,695号にのみ、ポリエーテルイミド(PEI)の層を金属導体に塗布して絶縁導体を形成する工程、そのあと絶縁導体を積層する工程、及び最後にスタック上にPEEKを押し出す工程を含む、絶縁導体のスタックを製造する方法が記載されている。
【0010】
現在、これまで以上により要求される機械的及び/又は温度及び/又は化学的条件にさらされることができる巻線を提供する要求が存在する。現在、導体の絶縁材料がポリアリールエーテルケトンに基づく組成物を含み、かつ、ターンがポリアリールエーテルケトンに基づく組成物によって合わせて保持される、電気巻線を提供する要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第10,186,345号
【特許文献2】米国特許出願第2014/0224522号
【特許文献3】カナダ国特許出願第3,019,024号
【特許文献4】米国特許第10,325,695号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的の1つは、ポリアリールエーテルケトンに基づく組成物によって、電気巻線に、合わせて保持されることができ、最外層として、ポリアリールエーテルケトンを含む層(「エナメル」)を有する、絶縁導体を提供することである。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、これらの絶縁導体を得るための方法を提供することである。
【0014】
本発明のもう1つの目的は、含浸工程に代わる絶縁導体間の熱溶接の方法を提供することである。言い換えれば、本発明のもう1つの目的は、絶縁導体が、絶縁導体のスタックに合わせて保持されることを確実にするための代替方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、第一に、
‐少なくとも1つの導電体、及び、
‐前記導電体を覆う絶縁コーティング
を含む、絶縁導体に関する。
【0016】
絶縁コーティングは、n層からなり、「n」は、1以上の整数である。コーティングのn番目の層は、最外層であり、かつ、疑似アモルファス組成物Cからなる。組成物Cは、少なくとも50質量%のポリアリールエーテルケトンを含む。
【0017】
本発明からのもの等の絶縁導体は、高温での適用のためにそれを使用しようとする当業者にとって、一見すると、ほとんど役に立たないように見えるだろう。具体的には、ポリアリールエーテルケトンに基づく組成物の使用は、良好な高温耐性を示すという利点を有する。しかしながら、この耐性は、本質的にアモルファスの形態である同一の組成物よりも、部分的に又は完全に結晶化状態の組成物でさらに良好であることが知られている。したがって、当業者は、コーティングとして、本質的にアモルファスの形態である組成物を有する絶縁導体から直感的に遠ざかるだろう。
【0018】
発明者らの革新的かつ驚くべき発想は、絶縁コーティングの合体による熱溶接の方法を実施できるようにするために、中間製品として疑似アモルファス組成物の外層を含むコーティングを有する絶縁導体を製造することであった。組成物が結晶化可能であるために、合体後に結晶化することができ、それによって、良好な温度耐性特性を獲得することができる。その結果、発明者らは、あわせて熱溶接された絶縁導体の集合体を設計することができ、絶縁コーティングの最外層を構成する組成物は、最終的に少なくとも部分的に結晶化状態であった。
【0019】
その一方で、発明者らは、それらの融点より低い温度では、非常に乏しい又はほとんど存在しない絶縁コーティング間の合体によって、少なくとも部分的に結晶化したコーティングでは、熱溶接方法を実施できないことを観察した。
【0020】
特定の実施形態では、前記少なくとも1つの導電体が、銅若しくはその合金、アルミニウム、ニッケル又は銀を含む。
【0021】
特定の実施形態では、組成物Cのメルトフローインデックスが、380℃及び5kgの荷重下で、1~100cm/10分の範囲の値を有する。組成物Cのメルトフローインデックスが、優先的には2~85の範囲の値、より好ましくは2~60cm/10分の範囲の値を有する。
【0022】
特に特定の実施形態では、組成物Cのメルトフローインデックスが、2~20cm/10分又は20~60cm/10分又は60~85cm/10分の値を有し得る。
【0023】
特定の実施形態では、組成物Cが、ポリアリールエーテルケトン以外の他の1つの熱可塑性物質及び/又はフィラー及び/又は添加剤をさらに含む。他の熱可塑性物質は、特に、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー(FEP)、パーフルオロアルコキシ-アルカンコポリマー(PFA)、パーフルオロエラストマー(FFKM)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルイミド/ポリジメチルシロキサン(PEI/PDMS)ブロックコポリマー、ポリ(エーテルサルフォン)(PES)、ポリサルフォン(PSU)、ポリフェニレンサルフォン(PPSU)、ポリ(フェニレンサルファイド)、ポリフェニレンエーテル(PPE)及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0024】
特定の実施形態では、組成物Cが、前記少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンから本質的になる又はからなる。
【0025】
特定の実施形態では、前記少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンが、テレフタル単位及びイソフタル単位から本質的になり、優先的にはテレフタル単位及びイソフタル単位からからなり、テレフタル単位は式(I)を有し、
【0026】
【化1】
イソフタル単位は式(II)を有し、
【0027】
【化2】
テレフタル単位及びイソフタル単位の合計に対する、テレフタル単位のモル比率が、0%~85%である。
【0028】
テレフタル単位及びイソフタル単位の合計に対する、テレフタル単位のモル比率が、優先的には45%~75%、より優先的には48%~75%、極めて優先的には58%~73%である。
【0029】
特定の実施形態では、前記少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンが、式(III)の単位、
【0030】
【化3】
及び式(IV)の単位、
【0031】
【化4】
を含むコポリマーであり、単位(III)及び単位(IV)の合計に対する、前記単位(III)のモル比率が、0%~99%である
【0032】
特定の実施形態では、前記少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンが、式(III)の単位、
【0033】
【化5】
及び式(V)の単位、
【0034】
【化6】
を含むコポリマーであり、単位(III)及び単位(V)の合計に対する、前記単位(III)のモル比率が、0%~99%である。
【0035】
特定の実施形態では、n番目の層が、5マイクロメートル~1000マイクロメートルの範囲の厚さを有する。優先的には、n番目の層が、10マイクロメートル~750マイクロメートル、より優先的には25マイクロメートル~500マイクロメートル、極めて優先的には50マイクロメートル~250マイクロメートルの範囲の厚さを有する。
【0036】
特定の実施形態では、整数「n」が、2以上である。
【0037】
特定の実施形態では、絶縁コーティングが、前記少なくとも1つの導電体及びコーティングのn番目の層の間に、特に(n-1)番目の層に、n番目の層の融点以上の融点を有する熱可塑性ポリマーを含む半結晶組成物である、少なくとも1つの中間層を含む。
【0038】
特定の実施形態では、絶縁コーティングが、前記少なくとも1つの導電体及びコーティングのn番目の層の間に、特に(n-1)番目の層に、式(III)の単一の繰り返し単位からなるホモポリマーである、少なくとも1つの中間層を含む。
【0039】
【化7】
【0040】
特定の実施形態では、絶縁コーティングが、前記少なくとも1つの導電体及びコーティングのn番目の層の間に、特に(n-1)番目の層に、架橋熱硬化性ポリマーを含む組成物である、少なくとも1つの中間層を含む。
【0041】
本発明は、絶縁導体を製造する方法にも関する。方法は、適切な場合に(n-1)層からなる絶縁コーティングで覆われた、前記少なくとも1つの導電体を提供する工程、及び、融点Tを有する組成物Cを提供する工程を含み、方法は、
を厳密に超える温度で組成物Cを加熱して、組成物Cの溶融物を得る工程、
固体又は溶融状態で、組成物Cを、適切な場合に絶縁コーティングの(n-1)層で覆われた前記導電体に塗布して、固体又は溶融状態で、組成物Cで覆われた導電体を得る工程、及び、
組成物Cの溶融物を十分に迅速に冷却して、コーティングのn番目の層を、疑似アモルファスの形態で得る工程を含む。
【0042】
本発明は、さらに、熱溶接された本発明による絶縁導体の2つの部分間を製造する方法にも関する。両方の部分が同一の疑似アモルファス化学組成物Cで形成された周辺層を有する絶縁コーティングを有し、組成物Cがガラス転移温度Tを有し、前記方法が、
-絶縁導体の2つの部分を接触させる工程、
-T超の温度で加熱することによって、2つの合体した部分の集合体(assembly)を形成するために、接触させた絶縁導体の2つの部分の一部を合体させる工程、及び、
-十分な時間、組成物Cの温度T超の温度で加熱を維持することによって、2つの合体した部分の集合体の組成物Cを結晶化させる工程を含む。
【0043】
特定の実施形態では、組成物Cが、結晶化工程の間に、WAXSによって測定される、厳密に7%より大きい結晶化度まで結晶化される。
【0044】
優先的には、組成物Cが、10%以上又は15%以上又は20%以上又はさらに25%以上の結晶化度まで結晶化される。
【0045】
本発明は、
-互いに接触する領域を有する1組のターンを形成する、本発明の絶縁導体を巻く工程、
‐本発明の熱溶接する方法によって接触領域を熱溶接する工程、によって得ることができるターン(turns)の巻線を含むコイルにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、導電体の様々な断面形状を表す。
図2図2は、単一の層を有する絶縁コーティングを含む絶縁導体を概略的に表す。
図3図3は、2以上のnで、n層を有する絶縁コーティングを含む絶縁導体を概略的に表す。
図4図4は、厳密に2層を有する絶縁コーティングを含む絶縁導体を概略的に表す。
図5図5は、n番目の層が押し出しによって生成される、絶縁導体を製造する方法の工程を概略的に表す。
図6図6は、n番目の層がテープを巻くことによってすべて生成(produucedall)される、絶縁導体を製造する方法の工程を概略的に表す。
図7図7は、熱溶接の工程を概略的に表す。
図8図8は、単一の層を有する絶縁コーティングを含む絶縁導体から形成された、3つの熱溶接されたターンのスタックを概略的に表す。
図9図9は、2つの層を有する絶縁コーティングを含む絶縁導体から形成された、3つの熱溶接されたターンのスタックを概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
定義
として記載される、用語「ガラス転移温度」は、20℃/分の加熱速度を使用して、規格NF ISO 11357-2:2020による示差走査熱量測定(DSC)によって測定される、少なくとも部分的にアモルファスポリマーが、ゴム状からガラス状に変化する又はその逆に変化する温度を意味することを理解される。本発明で、ガラス転移温度について言及する場合、特に他に示さない限り、これはより具体的には、この規格に定義された工程中間点でのガラス転移温度である。本発明のPAEKに基づく組成物は、DSC分析で、特に、適切な場合には、いくつかの異なる非混和性ポリマーの存在により、任意選択的にいくつかのガラス転移段階を示し得る。この場合、ガラス転移温度は、PAEK又はPAEKの混合物のガラス転移工程に対応する、ガラス転移温度を意味することを理解される。
【0048】
として記載される、用語「融点」は、第一の加熱において、20℃/分の加熱速度を使用して、規格NF EN ISO 11357-3:2018による示差走査熱量測定(DSC)によって測定される、少なくとも部分的に結晶化したポリマーが、粘性液体状態に変化する温度を意味することを理解される。本発明で、融点について言及する場合、他に示さない限り、これはより具体的には、この規格に定義されたピーク融点である。本発明のPAEKに基づく組成物は、DSC分析で、特に様々な結晶形態の存在により、及び/又は所定のポリマーについて、任意選択的にいくつかの融解ピークを示し得る。この場合、組成物の融点は、融解ピークの最も高い温度に対応する融点を意味することを理解される。
【0049】
用語「疑似アモルファス」ポリマー、「疑似アモルファス」組成物はそれぞれ、そのガラス転移温度を下回る温度で、本質的にアモルファスの形態である、ポリマー、組成物をそれぞれ意味することを理解される。それにもかかわらず、ポリマー、組成物はそれぞれ、十分な時間、そのガラス転移温度を上回る温度にされると、結晶化することができる。本発明の意味内で、「疑似アモルファス」ポリマー、「疑似アモルファス」組成物はそれぞれ、そのガラス転移温度を下回る温度で、特に25℃で、0%~7%の結晶化度を有する。
【0050】
「結晶化度」は、WAXSによって、測定され得る。例として、分析は、Nano-inXider(登録商標)タイプの装置を用いて、広角X線散乱(WAXS)によって、以下の条件で、実施され得る
‐波長:銅の主Kα1線(1.54Å)
‐発電機出力:50kV-0.6mA
‐観測モード:トランスミッション
‐カウント時間:10分。
【0051】
したがって、回折角の関数としての散乱強度のスペクトルが得られる。このスペクトルは、アモルファスハロに加えてスペクトル上にピークがみられる場合、結晶の存在を識別することができる。スペクトルでは、結晶のピークの面積(ACを指す)及びアモルファスハロの面積(AHを指す)を測定することができる。そして、PEKK中の結晶性PEKKの質量部分を、(AC)/(AC+AH)比を使用して、推定する。
【0052】
用語「ポリマーの混合物」は、巨視的に均一なポリマーの組成物を意味することを理解される。用語は、相溶性及び/又は混和性ポリマーの混合物を含み、混合物は、個別に考慮されるこれらのポリマーのガラス転移温度の中間の温度を有する。用語はまた、マイクロメートル単位で分散した相互に非混和性相から構成される組成物も含む。
【0053】
用語「コポリマー」は、コモノマーと呼ばれ、かつ、化学的に異なる少なくとも2つのタイプのモノマーの共重合から生じる、ポリマーを意味することを理解される。したがって、コポリマーは、少なくとも2つの繰り返し単位から形成される。3以上の繰り返し単位でも形成され得る。
【0054】
適切な場合、頭字語「PAEK」は、「ポリアリールエーテルケトン」と、「PAEKs」は、「ポリアリールエーテルケトン類」、かつ、「PAEK(s)」は「ポリアリールエーテルケトン」又は「ポリアリールエーテルケトン類」の記載に対応する。
【0055】
本特許出願に記載されたすべての範囲には、他の言及がない限り、境界値が含まれる。
【0056】
絶縁電線コーティングの組成物C
組成物Cは、ポリアリールエーテルケトンに基づく疑似アモルファス組成物である。少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンが、より強固な根拠に基づき、疑似アモルファスの形態である。
【0057】
熱溶接工程で良好な合体を可能にするのは、組成物の本質的にアモルファスな特性である。したがって、少なくとも1つのポリアリールエーテルケトン、組成物Cのそれぞれは、有利には、5.0%以下、3.0%以下、さらに1.0%未満、理想的には約0%の結晶化度を有する。
【0058】
組成物Cは、溶融し、かつ、その後、本質的にアモルファスの形態で冷却され得るように十分に遅いが、T及びT間で加熱されると、妥当な時間スケールで結晶化し得るように十分に速い、T及びT間の晶析速度を有さなければならない。
【0059】
有利には、規格ASTM D1238-10により測定される、組成物Cの粘度は、380℃及び5kgの荷重下で、1~100cm/10分の範囲の値を有し、優先的には2~60cm/10分の範囲の値を有する。これらの粘度の範囲は、本発明によるいくつかの絶縁導体間の熱溶接中の、組成物Cの層間の良好な合体を可能にするために、特に有利である。これらの粘度の範囲は、組成物Cの押し出しによる、本発明の絶縁導体の製造に対しても、有利である。
【0060】
組成物Cは、優先的に、125℃以上、より好ましくは145℃以上及び極めて好ましくは150℃以上のガラス転移温度Tを有する。
【0061】
組成物Cは、優先的に、250℃以上及びより好ましくは270℃以上の融点Tを有する。組成物Cは、特に、280℃以上、290℃以上、300℃以上、310℃以上、320℃以上又は実際には330℃以上の融点を有し得る。
【0062】
組成物Cは、少なくとも50質量%の少なくとも1つのポリアリールエーテルケトンを含む。それは、本出願の残りの部分で、ポリアリールエーテルケトンに基づく組成物と等しい意味である。
【0063】
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、以下の式の単位を含み、
【0064】
【化8】
式中、
‐Ar及びArはそれぞれ2価の芳香族基を意味し、
‐Ar及びArは、好ましくは、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、3,3’位で2価の1,1’-ビフェニレン、3,4’位で2価の1,1’-ビフェニル、1,4-ナフチレン、1,5-ナフチレン及び2,6-ナフチレンから選択され得、
‐Xは、電子吸引性基を意味し、好ましくはカルボニル基及びスルホニル基から選択され得、
‐Yは、酸素原子、硫黄原子、または‐(CH)‐及びイソプロピリデン等のアルキレン基から選択される基を示す。
【0065】
これらのX及びY単位において、X基の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より特に少なくとも80%はカルボニル基であり、かつ、Y基の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より特に少なくとも80%は酸素原子を表す。
【0066】
好ましい実施形態では、X基の100%はカルボニル基を意味し、かつY基の100%は酸素原子を表す。
【0067】
PAEKの質量又は、適用できる場合には、組成物CのPAEKsの質量の合計は、組成物の総質量の、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92.5%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.9%又は100%を表し得る。
【0068】
特定の実施形態では、組成物Cは本質的にPAEK(s)からなり、すなわち、組成物の総質量の90%~99.9%をPAEK(s)として含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、組成物CはPAEK(s)からなり、すなわち、組成物の総質量の少なくとも99.9%、理想的には100%がPAEK(s)からなる。
【0070】
有利には、PAEK(s)は、
‐PEKKとして知られる、ポリエーテルケトンケトンであり、PEKKは、1つ又は複数の式-Ph-O-Ph-C(O)-Ph-C(O)-の単位を含み、
‐PEEKとして知られる、ポリエーテルエーテルケトンであり、PEEKは、1つ又は複数の式-Ph-O-Ph-O-Ph-C(O)-の単位を含み、
‐PEKとして知られる、ポリエーテルケトンであり、PEKは、1つ又は複数の式-Ph-O-Ph-C(O)-の単位を含み、
‐PEEKKとして知られる、ポリエーテルエーテルケトンケトンであり、PEEKKは、1つ又は複数の式-Ph-O-Ph-O-Ph-C(O)-Ph-C(O)-の単位を含み、
‐PEEEKとして知られる、ポリエーテルエーテルエーテルケトンであり、PEEEKは、1つ又は複数の式-Ph-O-Ph-O-Ph-O- Ph-C(O)-の単位を含み、
‐PEDEKとして知られる、ポリエーテルジフェニルエーテルケトンであり、PEDEKは、1つ又は複数の式-Ph-O-Ph-Ph-O-Ph-C(O)-の単位を含み、
‐それの混合物及び、
‐上記の単位の少なくとも2つを含むコポリマー
から選択され得、
式中、Phはフェニレン基を示し、-(C)O-はカルボニル基を示し、各フェニレンは独立してオルト(1,2)、メタ(1,3)又はパラ(1,4)型であることが可能であり、優先的にはメタ型又はパラ型である。
【0071】
さらに、欠陥、末端基及び/又はモノマーは、上記のポリマー中にごく少量で、取り込まれ得るが、しかしながら、それらの特性に影響を与えることない。
【0072】
特定の実施形態では、組成物Cは、テレフタル単位及びイソフタル単位を含む、ポリエーテルケトンケトンポリマーを含み、テレフタル単位及びイソフタル単位を含む、ポリエーテルケトンケトンポリマーから本質的になり又はテレフタル単位及びイソフタル単位を含む、ポリエーテルケトンケトンポリマーから実際になり、テレフタル単位は式(I)、
【0073】
【化9】
を有し、イソフタル単位は式(II)、
【0074】
【化10】
を有する。
【0075】
PEKKファミリー等の所定のファミリーのポリマーについて、用語「1つ又は複数の単位を含む」は、これ/これらの単位が、ポリマー中に少なくとも50%のモル比率を有することを意味することを理解される。この/これらの単位は、ポリマー中の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92.5%、少なくとも95%、少なくとも99%又は少なくとも99.9%のモル比率を表し得る。用語「単位から本質的になる」は、単位が、ポリマー中に95%~99.9%のモル比率を表すことを、意味することを理解される。最後に、用語「単位からなる」は、単位が、ポリマー中に少なくとも99.9%のモル比率を表すことを、意味することを理解される。
【0076】
好ましくは、ポリエーテルケトンケトンは、イソフタル単位「I」及びテレフタル単位「T」から本質的になり、さらに実際にはイソフタル単位「I」及びテレフタル「T」単位からなる。
【0077】
好ましくは、適切な場合、ポリエーテルケトンケトンがランダムコポリマーである。T単位及びI単位の合計に対する、T単位のモル比率の選択は、ポリエーテルケトンケトンの晶析速度の特性を調整することができる要因の1つである。
【0078】
T単位及びI単位の合計に対する、T単位の所定のモル比率は、公知の手段で、重合中に反応物のそれぞれの濃度を調整することによって、得ることができる。
【0079】
PEKK(s)のT単位及びI単位の合計に対する、T単位のモル比率は、特に、0~5%、5%~10%、10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、45%~48%、48%~51%、51%~54%、54%~58%、58%~62%、62%~65%、65%~68%、68%~73%、73%~75%、75%~80%又は80%~85%の範囲であり得る。
【0080】
特定の実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、T単位及びI単位の合計に対するT単位のモル比率が45%~75%の範囲で、「T」単位及び「I」単位から本質的になり又は実際には、T単位及びI単位の合計に対する、T単位のモル比率が45%~75%の範囲で、「T」単位及び「I」単位からなる。
【0081】
具体的には、この範囲のモル比率では、ポリエーテルケトンケトンは、一方では、十分に速い冷却によって、本質的にアモルファスの形態で得ることができ、かつ、そのガラス転移温度超で加熱されると、十分に速く結晶化できる、適切な晶析速度を有する。したがって、T単位及びI単位の合計に対するこれらのT単位のモル比率は、単一のポリエーテルケトンケトンから本質的になり又は実際には、ポリエーテルケトンケトンからなる、組成物Cに特に適切である。T単位及びI単位の合計に対するT単位のモル比率は、優先的に48%~75%であり、非常に好ましくは58%~73%である。T単位及びI単位の合計に対するT単位のモル比率は、特に約60%又は約70%であり得る。
【0082】
組成物Cは、優先的には、式(III)の単一の繰り返し単位、
【0083】
【化11】
からなるポリエーテルエーテルケトンからならない。
【0084】
これは、このポリマーが、そのT超で加熱された場合、急速に結晶化して、良好な層と層との合体を非常に困難にするからである。
【0085】
この観察から、それにも関わらず、様々な方法で、上のホモポリマーの晶析速度を低減すると予想することができる。
【0086】
第一の態様は、式(III)の単位からなるホモポリマーの構造中に、特定の数の欠陥を導入すること、すなわちその化学的構造を変更することである。
【0087】
組成物Cは、式(III)の単位、
【0088】
【化12】
及び式(IV)の単位、
【0089】
【化13】
を含むポリマーを含み、ポリマーから本質的になり又は実際にはポリマーからなり得る。
【0090】
優先的には、コポリマーは、式(III)の単位及び式(IV)の単位から本質的になり又は実際には、式(III)の単位及び式(IV)の単位からなる。
【0091】
優先的には、適切な場合、ポリマーはランダムコポリマーである。
【0092】
(III)単位及び(IV)単位の合計に対する(III)単位のモル比率は、0%~99%、優先的には0%~95%の範囲であり得る。
【0093】
特定の変形例では、組成物は、式(III)の単位、
【0094】
【化14】
及び、式(IVa)の単位、
【0095】
【化15】
を含み、式(III)の単位及び式(IVa)の単位から本質的になり又は実際には、式(III)の単位及び式(IVa)の単位からなるポリマーを含み、ポリマーから本質的になり又は実際には、ポリマーからなり得る。
【0096】
優先的には、ポリマーは、式(III)の単位及び式(IVa)の単位から本質的になり又は実際には、に式(III)の単位及び式(IVa)の単位からなる。
【0097】
優先的には、適切な場合、ポリマーはランダムコポリマーである。
【0098】
(III)単位及び(IVa)単位の合計に対する(III)単位のモル比率は、0%~99%、優先的には5%~95%の範囲であり得る。
【0099】
組成物Cは、式(III)の単位、
【0100】
【化16】
及び式(V)の単位、
【0101】
【化17】
を含むポリマーを含み、ポリマーから本質的になり又は実際にはポリマーからなり得る。
【0102】
特定の変形例では、組成物Cは、式(III)の単位、
【0103】
【化18】
及び、式(Va)の単位、
【0104】
【化19】
を含み、式(III)の単位及び式(Va)の単位から本質的になり又は実際には、式(III)の単位及び式(Va)の単位からなるポリマーを含み、ポリマーから本質的になり又は実際には、ポリマーからなり得る。
【0105】
(III)単位及び(Va)単位の合計に対する(III)単位のモル比率は、0%~99%、優先的には5%~95%の範囲であり得る。
【0106】
優先的には、ポリマーは、式(III)の単位及び式(Va)の単位から本質的になり又は実際には、に式(III)の単位及び式(Va)の単位からなる。
【0107】
優先的には、適切な場合、ポリマーはランダムコポリマーである。
【0108】
(III)単位及び(Va)単位の合計に対する(III)単位のモル比率は、0%~99%、優先的には0%~95%の範囲であり得る。
【0109】
式(III)の繰り返し単位からなるホモポリマーの結晶化を低減するための第二の態様は、結晶化に長い時間がかかる別の1つのPAEKとそれを混合することである。この他のPAEKは、特に、I単位及び/又はT単位から本質的になり、好ましくはI単位及び/又はT単位からなるPEKKであり得る。
【0110】
式(III)の繰り返し単位からなるPEEKホモポリマーの晶析速度を低減するための第三の態様は、PAEK以外の別のポリマー、特にアモルファスポリマーと混合することである。PAEKs、特にPEKK又はPEEKと相溶することができる、アモルファスポリマーの1つは、たとえばポリエーテルイミドである。
【0111】
式(III)の繰り返し単位からなるPEEKホモポリマーの結晶化を低減するための第四の態様は、本明細書では詳しく説明しないが、晶析速度の調整剤として作用する、添加剤を加えることであろう。
【0112】
特定の具体的な実施形態では、組成物Cは、特に、単一のPAEKから本質的になり又は単一のPAEKからなり、単一のPAEKは、
-特に、上記のI単位及びT単位から本質的になり又は上記のI単位及びT単位からなるPEKK、
-上記の式(III)の単位及び式(IV)の単位から本質的になり又は上記の式(III)の単位及び式(IV)の単位からなるポリマー、及び
-上記の式(III)の単位及び式(V)の単位から本質的になり又は上記の式(III)の単位及び式(V)の単位からなるポリマー、
から選択される。
【0113】
特定の実施形態では、組成物Cは、実質的に均一な組成及び/又は粘度の単一のPAEKを含み、実質的に均一な組成及び/又は粘度の単一のPAEKから本質的になり又は、実質的に均一な組成及び/又は粘度の単一のPAEKからなる。
【0114】
特定の実施形態では、組成物Cは、いくつかの異なるPAEKsを含み、いくつかの異なるPAEKsから本質的になり又はいくつかの異なるPAEKsからなり、すなわち、特に、異なる化学組成及び/又は異なる粘度を有する。
【0115】
特定の具体的な実施形態では、組成物Cは、異なる化学組成の少なくとも2つのPAEKs、より具体的には、
-特に、上記のI単位及びT単位から本質的になり又は上記のI単位及びT単位からなるPEKK及びこのPEKKに加えて、
-少なくとも1つの以下のポリマー、PEK、PEEKEK、PEEK、特に、上記の式(III)の単位及び式(V)の単位から本質的になり又は上記の式(III)の単位及び式(V)の単位からなるポリマー、PEEKK、PEKEKK、PEEEK、PEDEK又は、上記の式(III)の単位及び式(IV)の単位から本質的になり又は上記の式(III)の単位及び式(IV)の単位からなるポリマーを、組成物Cの総量の50質量%未満、好ましくは組成物Cの30質量%以下の含有量で、
含む。
【0116】
特定の具体的な実施形態では、組成物Cは、いくつかのPAEKsの混合物を含み、PAEKsは、繰り返し単位の異なるモル比率を有するPAEKのコポリマーである。特に、組成物Cは、「T型」単位及び「I単位」の合計に対する、「T型」単位の異なるモル比率を有する、PEKKsのコポリマーの混合物を含み得る。組成物Cは、コポリマーの混合物も含み得、コポリマーの混合物は、式(III)の単位及び式(IV)又は式(V)の単位をそれぞれ含み、式(III)の単位及び式(IV)又は式(V)の単位からそれぞれ本質的になり、あるいは実際には、式(III)の単位及び式(IV)又は式(V)の単位からそれぞれなり、(III)の単位及び式(IV)の単位の合計に対する、又は(III)の単位及び式(V)の単位の合計に対する、式(III)の単位の異なるモル比率をそれぞれ有する。
【0117】
特定の具体的な実施形態では、組成物Cは、いくつかのPAEKsの混合物も含み得、PAEKsは、異なる粘度のPAEKのコポリマーである。
【0118】
最終的に、組成物Cは、PAEKsのコポリマーの混合物も含み得、PAEKsは、繰り返し単位の異なるモル比率及び異なる粘度を有するPAEKのコポリマーである。
【0119】
特定の実施形態では、組成物Cは、PAEKsのファミリーに属さない1つ又は複数の他のポリマー、特に他の熱可塑性ポリマーをさらに含み得る。
【0120】
特定の実施形態では、組成物Cは、欧州出願第2767986号及び米国特許第9,543,058号に記載されたフルオロポリマー等の少なくとも1つのフルオロポリマーとPAEK(s)の混合物を含む。フルオロポリマーは、優先的に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(ビニルフルオライド)(PVF)、ポリ(ビニリデンフルオライド)(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、パーフルオロアルコキシポリマー、パーフルオロアルコキシ-アルカンコポリマー(PFA)、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー(FEP)、ポリ(エチレン-co-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、パーフルオロエラストマー(FFKM)、パーフルオロポリエーテル(PFPE)及びそれらの混合物、からなるリストから選択され得る。
【0121】
フルオロポリマーが一般的にPAEKsと非混和性であるので、これらの実施形態で、組成物Cは、有利には、前記少なくとも1つのPAEK中へのフルオロポリマーの粒子の分散体である。
【0122】
特定の実施形態では、組成物Cは、PAEK(s)及びポリエーテルイミド(PEI)、シリコーン-ポリイミドコポリマー又は欧州出願第0323142号及び米国特許第8013251号に記載されたポリマー等の他のポリシロキサン/ポリイミドブロックコポリマー(ポリエーテルイミド/ポリジメチルシロキサン(PEI/PDMS)等)の混合物を含む。
【0123】
特定の実施形態では、組成物Cは、前述の熱可塑性物質の代替的に又は前述の熱可塑性物質に付加的に、ポリフェニレンサルフォン(PPSU)、ポリサルフォン(PSU)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリ(フェニレンサルファイド)(PPS)、ポリ(エチレンテレフタラート)(PET)、ポリアミド(PA)、ポリベンゾイミダゾール(polybenzimidizole)(PBI)、ポリ(アミド-イミド)(PAI)、ポリ(エーテルサルフォン)(PES)、ポリ(アリールサルフォン)、ポリ(エーテルイミドサルフォン)、ポリフェニレン、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール及びそれらの混合物、を含み得る。
【0124】
特定の具体的な実施形態では、組成物Cは、
-特に、上記のI単位及びT単位から本質的になり又はI単位及びT単位からなるPEKK、上記の式(III)の単位及び式(IV)の単位から本質的になり又は式(III)の単位及び式(IV)の単位からなるポリマー、及び、上記の式(III)の単位及び式(V)の単位から本質的になり又は式(III)の単位及び式(V)の単位からなるポリマーから選択されるPAEK、
-FEP、PFA、FFKM、PEI、PEI/PDMS、PES、PSU、PPSU、PPS、PPE及びそれらの混合物からなるリストから選択される別の1つのポリマー、
との混合物から本質的になり又は混合物からなる。
【0125】
組成物Cは、特に、
-T単位及びI単位の合計に対するT単位のモル比率が45%~75%の範囲で、I単位及びT単位から本質的になり又はI単位及びT単位からなるPEKK、
-FEP、PFA、FFKM、PEI、PEI/PDMS、PES、PSU、PPSU、PPS、PPE及びそれらの混合物からなるリストから選択される別の1つのポリマー、
との混合物から本質的になり又は混合物から得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、組成物は、フィラー及び/又は添加剤をさらに含み得る。
【0127】
フィラーのうち、補強フィラーを言及することができる。したがって、組成物は、組成物の総質量に対して、50質量%未満のフィラー、好ましくは40質量%未満のフィラー、より好ましくは25質量%未満のフィラーを含み得る。
【0128】
添加剤のうち、安定剤(光、特にUV及び熱安定剤、たとえば、リン酸塩等)、蛍光増白剤、染料、顔料、流動剤、溶融状態での組成物の粘度を調整するための添加剤、組成物の晶析速度を調整するための添加剤、組成物の熱容量を調整するための添加剤又はこれらの添加剤の組み合わせを言及することができる。したがって、組成物は、組成物の総質量に対して、10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満の添加剤を含み得る。
【0129】
絶縁電線の構造
図2図3及び図4を参照して、本発明の絶縁導体(1、10)は、
-少なくとも1つの導電体(2、12)、及び
-n層(5、13、14、15)からなり、「n」は、1以上の整数である、前記導電体を覆う絶縁コーティング(5、11)
を含む。
【0130】
層の数は、中心から周辺に向かって増加する。最外層又はn番目の層は、上記の組成物Cからなる。
【0131】
絶縁コーティング、絶縁コーティングの各層及び、特に、n番目の層はそれぞれ、有利には、規格IEC 62634‐2‐1:2018により測定され、1KHz及び25℃で測定される、3.5以下、優先的には3.3以下及び極めて好ましくは3.1以下の誘電率を有する。
【0132】
絶縁コーティング、絶縁コーティングの各層及び、特に、n番目の層はそれぞれ、5マイクロメートル~1000マイクロメートル、優先的には10マイクロメートル~750マイクロメートル、より優先的には25マイクロメートル~500マイクロメートル、極めて好ましくは50マイクロメートル~250マイクロメートルの範囲の平均厚さを有する。厚さは、絶縁導体の薄片について顕微鏡又は当業者に知られた他の方法によって、測定され得る。
【0133】
絶縁コーティングの各層の厚さ、特に、n番目の層の厚さは、有利には、比較的均一である。所定の層についての、最大の厚さに対する最小の厚さによって定義される比率は、絶縁導体の全領域にわたって実質的に、好ましくは、少なくとも0.75、少なくとも0.8、少なくとも0.85、少なくとも0.9、少なくとも0.95である。
【0134】
導電体は、一般的に、1つの軸に沿った細長い形状である。本発明の意味内では、導電体は、単一の導電体又はいくつかの導電体からなる他のロービングを意味する。
【0135】
導電軸に垂直な導電体の断面は、任意の幾何学的な形状を有することができ、特に図1を参照して、形状は、任意選択的に丸みを帯びた端(c、d)を有する正方形(a)、長方形(b)、円形(e)又は楕円形(f)である。
【0136】
導電体は、20℃で測定された高い伝導率、特に5×10S/m以上、優先的には、1×10S/m以上、極めて好ましくは3×10S/m以上の伝導率、を有する材料を意味することを理解される。
【0137】
導電体は、特に、銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、錫から選択される金属を含み得る。
【0138】
特定の実施形態では、導電体は、純金属、たとえば、銅、アルミニウム、金、銀又はニッケルであり得る。
【0139】
特定の実施形態では、導電体は、たとえば、銅-錫合金(ブロンズ)、銅-ニッケル合金、銅-亜鉛合金又はその他の銀-銅合金等の合金であり得る。
【0140】
特定の実施形態では、導電体は、コアが第一の導電体からなり、かつ、コアを囲むシェルが第二の導体からなる、コア-シェル構造を有することができ、この構造は、各導電体の有利な特性の使用を可能にする。
【0141】
導電体は、特に、アルミニウムコア(軽さ)及び銅シェル(良好な伝導特性)からなり得る。シェルのサイズは、特に、コアのサイズと比較して非常に薄くてもよく、これはメッキと呼ばれる。導電体は、特に、銀メッキされた銅又はニッケルメッキされた銅からなり得る。
【0142】
特定の実施形態では、導電体は、銅からなり又は、適切な場合、銅シェルを含む。
【0143】
酸化可能な導電体の場合、導体の外表面は、任意選択的に酸化物層を有し得る。厚すぎる酸化物層は、絶縁コーティングの導電体への接着を低減する傾向があるため、一般的に望ましくない。本発明では、絶縁コーティングと接触する外表面がどのような形態か、先験的に仮定することなく、銅等の導電体の材料について一般的に言及する。したがって、銅からなる導電体は、その外表面の状態が明示的に特定されていない場合、その外表面上に酸化物層を有し得又は有し得ない。
【0144】
特定の実施形態では、特に外表面が銅又はアルミニウム、特に銅であるものは、酸化物層の厚さは、300μm以下、優先的には200μm以下である。酸化物層の厚さは、特に、150μm以下、100μm以下、50μm以下、25μm以下、10μm以下又は5μm以下であり得る。
【0145】
特定の実施形態では、導電体の外表面は、酸化物層を有さない又は酸化物層を本質的に有さない。
【0146】
導電体は、任意選択的にその端を除いて、n層からなる絶縁コーティングで覆われている。
【0147】
図2に表されるもの等の特定の実施形態では、絶縁導体1は、導電体2及び単一の及び唯一の層5のみからなる絶縁コーティングからなり、層5は、組成物Cであり、かつ、導電体2を覆っている。
【0148】
図3及び図4に表わされるもの等の特定の実施形態では、絶縁導体10は、導電体12及び、最外層であるn番目の層15並びに導電体12とn番目の層15の間における1つ又は複数の中間層(13、14)の少なくとも2つの層を含む絶縁コーティング11からなる。
【0149】
図3を参照して、整数nが厳密に2超の場合、導電体12は、中心から周辺に向けて層の昇順に、(n‐2)つの中間層13、1つの(n-1)番目の層14及び1つのn番目の層15によって、覆われている。
【0150】
図4を参照して、整数nが2の場合、(n-1)番目の層14は、導電体12とn番目の層の間における直接的な界面で、唯一の1つの中間層である。
【0151】
中間層の存在は任意選択的であるが、それにも関わらずいくつかの利点を有し得る。
【0152】
特定の実施形態では、ベース層Cは、適切な場合、絶縁コーティング及び導電体の間におけるより良好な接着を確実にするために、特に有用であり得る。
【0153】
特定の実施形態では、特定の中間層、特に(n-1)番目の層は、絶縁導体の2つ部分の間の熱溶接工程中に、n番目の層よりも実質的に軟化されにくくするために又はまったく軟化しないようにするために配合され得る。これにより、熱溶接中に、絶縁導体の2つの部分の導電体が接触する、あらゆるリスクを防ぐことができる。
【0154】
第一の実施形態では、特定の中間層、特に(n-1)番目の層が、半結晶形態であり、n番目の層の融点以上の融点を有する、熱可塑性ポリマーを含み、熱可塑性ポリマーから本質的になり又は熱可塑性ポリマーからなる。(n番目の層は、疑似アモルファスの形態であり、20℃/分の勾配を用いた第一の加熱で、融点が常に直接測定可能ではない可能性があり、この場合には、DSCで使用されるサンプルは、組成物Cのガラス転移温度T超で十分な時間加熱され、融点を決定できるようにするために結晶化し得る。)
【0155】
(n-1)番目の層は、組成物Cのそれと同一の化学組成であり得るが、n番目の層のCと異なり、半結晶の形態であり得る。
【0156】
(n-1)番目の層は、組成物Cとは異なる化学組成を有し得る。特定の実施形態では、(n-1)番目の層の熱可塑性ポリマーは、別の1つのPAEKであり得る。特に、組成物Cは、式(III)の単一の繰り返し単位からなる、ポリエーテルエーテルケトンホモポリマーからなり得る。他の実施形態では、(n-1)番目の層の熱可塑性ポリマーは、PAEK以外のポリマーであり得る。
【0157】
第二の実施形態では、特定の中間層、特に(n-1)番目の層が、架橋された熱硬化性ポリマーを含み、架橋された熱硬化性ポリマーから本質的になり、又は架橋された熱硬化性ポリマーからなる。熱硬化性ポリマーは、特に、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド-イミド及びそれらの混合物からなるリストから、選択され得る。
【0158】
絶縁導体を製造する方法
絶縁導体を製造する方法は、
‐導電体を提供する工程、
‐絶縁コーティングを形成することを意図したn層に組成物を提供する工程、及び、
‐絶縁コーティングを形成する並びに導電体に接着するn層を形成させるために、組成物を絶縁導体に塗布する工程、
を含む。
【0159】
図5及び図6を参照して、方法は、要求された寸法で導電体を得るために、導電体を形成する第一の工程100を含み得る。電線の直径及び/又はより一般的な寸法は、冷間成形方法、特に延伸及び/又は圧延若しくは押し出し方法によって調整され得る。
【0160】
方法は、導電体の表面外観を洗浄110及び/又は修正する第二の工程を含み得る。この工程は、適切な場合、特に、導電体から粗い汚れを除去すること及び/又は表面粗さを制御すること及び/又は酸化物層の厚さを制御することを可能にする。
【0161】
この工程は、特に、以下の処理、
‐化学的前洗浄、たとえば、適切な溶媒又は酸を使用する洗浄、
‐機械的前洗浄、たとえば、研磨、
‐カナダ国出願第3019024号に記載される、窒素、アルゴン又は水素の保護ガス雰囲気中でのプラズマ処理であって、特定の実施形態では、酸化物層を除去することを可能にする処理、
のうちの少なくともいくつかを含み得る。
【0162】
絶縁コーティングの様々な層は、導電体の「エナメル化」の通常の技術によって、1つ1つ又は特定の場合には、少なくとも2つの連続する層を同時に、製造され得る。これらの技術には、特に、押し出し、粉体塗布方法、液体含浸方法又はその他の導電体の周辺へのテープの巻き付けが、含まれる。
【0163】
組成物は、絶縁コーティング層として製造されるために使用される前に、有利には、その水分含有量を最小化するために乾燥工程を経得る。
【0164】
適切な場合、様々な中間層120の製造は、以下ではさらに説明されず、それらの組成物は非常に多様な特性であり得、かつ、それらを製造する方法は、当業者に一般的に知られている。
【0165】
以下の実施形態は、絶縁コーティングのn番目の層及び(n-1)番目の層がn番目の層と同時に製造される場合には、適切な場合、(n-1)番目の層の製造を例示する。
【0166】
絶縁コーティングのn番目の層の製造は、
‐組成物Cの溶融物を得るために、厳密に組成物の融点超の温度で、組成物Cを加熱する工程130、
‐固体又は溶融状態で、組成物Cを、適切な場合に絶縁コーティングの(n-1)層で覆われた前記導体140に塗布して、固体又は溶融状態で、組成物Cで覆われた導体を得る工程、及び、
‐溶融物を十分に迅速に冷却150して、コーティング層のn番目の層を、疑似アモルファスの形態で得る工程、
を含む。
【0167】
特定の実施形態(図5)では、n番目の層は、適切な場合、(n-1)層の絶縁コーティングで覆われた導電体上への組成物Cの押し出しによって製造され得る。組成物Cの押し出し温度は、優先的には(T+5)℃~(T+100)℃、極めて好ましくは(T+10)℃~(T+75)℃である。
【0168】
特定の実施形態(図6)では、n番目の層は、適切な場合、(n-1)層の絶縁コーティングで覆われた導電体の周辺に組成物Cのテープを巻き付けることによって製造され得る。組成物Cのテープの巻線を、その後、任意の適切な加熱手段によって溶融させる。
【0169】
その後、溶融コーティングのn番目の層は、特定の時間、強制対流又は自由対流によって、液体の形態又は気体の形態の冷却流体と接触させることによって、冷却され得る。
【0170】
特定の実施形態では、溶融コーティングのn番目の層は、水槽に浸漬されることによって、冷却される。水の温度は、液体のリサイクルによって、調整され得る。冷却速度は、水の温度及び/又は水槽の長さを制御することによって調整され得る。
【0171】
特定の実施形態では、溶融コーティングのn番目の層は、空気中で、特に強制空気対流によって、冷却される。
【0172】
組成物Cの結晶化特性に応じて、当業者は、コーティングのn番目の層が疑似アモルファスの形態であるために、溶融物の十分に迅速な冷却を得るための最適な冷却方法を選択する方法を知り得る。
【0173】
特定の実施形態では、整数「n」は1である。これらの実施形態では、導電体は、組成物Cとの接着性を向上させるために、有利には、組成物Cの融点に近く、一般的に下回る温度にされ得る。導電体は、たとえば、200℃以上、225℃以上、250℃以上、275℃以上、又は300℃以上の温度にされ得る。
【0174】
導電体が、そこから酸化物層を除去するためにプラズマ処理される場合の実施形態では、組成物Cの層を製造する工程が、新しい形態の酸化物の再形成を防ぐために、保護雰囲気下でも実施される。
【0175】
特定の実施形態では、整数「n」は2以上である。これらの実施形態では、(n‐1)番目の層及びn番目の層は、有利には、共押し出し(co-extrusion)又はタンデム押し出し方法によって、押し出しされ得る。特に、整数nが2である場合、絶縁コーティングの2つの層は、同時に、優先的には、上の実施形態の1つで説明したように、予熱された導電体上に、押し出しされ得る。
【0176】
熱溶接方法
熱溶接方法は、
‐同一の疑似アモルファス化学組成物Cで形成された周辺層を有し、組成物Cがガラス転移温度T及び融点Tを有する、本発明の絶縁導体の2つの部分を提供する工程、
‐絶縁導体の2つの部分を接触させる工程、及び、
‐接触させた絶縁導体の2つの部分を加熱する工程
を含む。
【0177】
特定の実施形態では、2つの導体部分は、単一絶縁導体から得られてもよい。
【0178】
特定の実施形態では、2つの導体部分は、2つの異なる絶縁導体から得られてもよい。これらの絶縁導体は、それらの絶縁コーティングの周辺層が、疑似アモルファスの形態である同一の化学組成物Cで形成されている限り、同一の構造を有し得又は有し得ない。
【0179】
図7を参照して、熱溶接方法は、絶縁導体の2つの部分を接触させる第一の工程200を含む。特定の圧力が、有利には、絶縁導体の2つの部分間の良好な接触を確立し、かつ、維持するために、絶縁導体の2つの部分に、加えられ得る。
【0180】
熱溶接方法は、接触させた絶縁導体の2つの部分の一部を合体させて、2つの合体した部分の集合体を形成する第二の工程210、及びT超の温度で接触領域を加熱することによって、2つの合体した部分の集合体の組成物Cを結晶化させる第三の工程220を、さらに含む。
【0181】
組成物Cが、T超の温度で加熱される場合、最初に実質的な結晶化を引き起こすことなく軟化して、絶縁導体の2つの部分の周辺層の合体を可能にする。
【0182】
超の温度で2つの合体した部分を、十分な時間、保持することにより、組成物Cを、所望の結晶化度まで結晶化することを可能にする。
【0183】
接触領域の加熱は、特に、熱風の吹き付け、加熱炉中で又はその他の導電体に電流を流すこと(抵抗加熱)によって、実施され得る。
【0184】
特定の実施形態では、接触領域の加熱は、(T+20)℃以上の温度、優先的には、(T+30)℃以上の温度で実施される。
【0185】
特定の実施形態では、接触領域の加熱は、(T-5)℃以下の温度、優先的には、(T-10)℃以下の温度で実施される。
【0186】
特定の実施形態では、接触領域の加熱は、(T+T)/2~Tの範囲の温度で実施される。
【0187】
有利な実施形態では、絶縁導体の2つの部分に特定の圧力を使用することにより、接触領域の加熱温度を下げることを可能にする。
【0188】
特定の実施形態では、接触領域の十分に長い加熱により、WAXSによって測定される、厳密に7%より大きい結晶化度を達成することを可能にする。優先的には、10%以上、15%以上、20%以上又は実際には25%以上の結晶化度を達成することを可能にする。
【0189】
巻線
本発明の絶縁導体は、互いに接触する領域を有する1組のターンを形成する巻線を形成するように曲げられ得、これらのターンは、本発明の熱溶接方法によって互いに溶接され得る。
【0190】
特定の実施形態では、ターンの熱溶接は、高温空気の噴出による巻き付け方法と同時に、実施され得る。
【0191】
図8及び図9は、3つのターンのスタックの2つの特定の実施形態を、概略的に示す。
【0192】
図8は、nが1である、絶縁導体から作られた、3つのターンのスタック30を表す。導電体2は、組成物Cのマトリックス8によって、あわせて保持され、かつ、互いに絶縁されている。
【0193】
図9は、nが2である、絶縁導体から作られた、3つのターンのスタック40を表す。導電体12は、組成物Cの層14及び組成物Cのマトリックス18によって、絶縁され、組成物Cのマトリックスは、ターンがあわせて保持されることを確実にしている。
【実施例
【0194】
実施例1 PEKKの単一の層を用いてシースされた絶縁銅電線
【0195】
絶縁体の単一の層を用いてシースされた銅電線の製造は、前記電線の周辺へのPEKKの溶融押し出しの連続工程によって実施された。
【0196】
標準銅電線を所望の寸法まで延伸することによって得られた直径1mmの銅電線のコイルを使用した。
【0197】
銅電線の表面仕上げは粗く、かつ、延伸油の残渣を含み、後者は、最初にエタノールを用いて脱脂した。
【0198】
いくつかのPEKKs、特に以下を比較した。
‐380℃及び5kgの荷重下で、37cm/10分のメルトフローインデックスを有する、Arkema社製のKEPSTAN(登録商標)6000レンジのPEKKであるP1。KEPSTAN(登録商標)6000レンジのポリマーは、テレフタル単位及びイソフタル単位からなるPEKKsであり、テレフタル単位及びイソフタル単位の合計に対する、テレフタル単位のモル比率が約60%である。
‐380℃及び5kgの荷重下で、それぞれ37cm/10分及び65cm/10分のメルトフローインデックスを有する、Arkema社製のKEPSTAN(登録商標)7000レンジの2つのPEKKsであるP2及びP3。KEPSTAN(登録商標)7000レンジのポリマーは、テレフタル単位及びイソフタル単位からなるPEKKsであり、テレフタル単位及びイソフタル単位の合計に対する、テレフタル単位のモル比率が約70%である。
【0199】
電線にわずかな張力をかけるために、コイルを、クリール上に配置した。
【0200】
一定の走行速度「V」生み出すことができる引っ張りローラーによって、電線を動かした。
【0201】
設定温度が500℃に設定されたヒートガンの前を通過させることによって、電線を加熱した。
【0202】
その後、電線をコーティングヘッドに移し、電線の移動軸に対して垂直に配置された単軸押出機によって供給して、その後、溶融ポリマーで電線をコーティングした。
【0203】
単軸押出機に供給するために、ポリマーを150℃で12時間乾燥させた。その後、この動く銅電線をコーティングするために、銅電線の直径よりも大きい直径の円形ダイから出る前に、ポリマーを、押し出し機の上流に配置されたホッパー中に導入し、その後、スクリューに沿って溶融させ、かつ、移し、その後、コーティングヘッドを通過させた。押し出し温度を「T」で示す。
【0204】
コーティング操作に続いて、その後、ポリマーをその移動中に空気中で冷却して、かつ、シースされた電線を、適応速度ワインダー(adaptive speed winder)で巻きとった。
【0205】
それらの疑似アモルファスの状態を、X線測定の代替の迅速かつ簡便な実施方法であるDSCによって確認した。DSC分析を、規格NF EN ISO 11357-3:2018に従って、第一の加熱で、20℃/分の加熱速度を使用して、融解ピークが存在しないことを確認することによって又は低温結晶化ピークを確認することによって、実施した。
【0206】
シースの平均厚さ「th」は、電子顕微鏡によって、エナメル化された電線の断面について測定できた。
【0207】
【表1】
【0208】
実施例2 PEKKの2つの層でシースされた絶縁銅電線
【0209】
実施例1で得られた疑似アモルファスP2ポリマー層を用いてシースされた電線は、190℃~310℃の範囲の温度、たとえば、250℃の温度で、十分な時間、優先的には、1分間~30分間、たとえば、5分間、結晶化するように加熱することによって、アニール可能であった。
【0210】
結晶化したP2ポリマー層を用いてシースされた電線を、その後、押し出しによって、溶融P1ポリマーの層を用いて覆うことができ、その後、P1が疑似アモルファスの形態であるために、空気中で冷却した。
【0211】
実施例3 フィルム接着性
【0212】
PEEKフィルムを、キャストフィルム押し出し法によって調製した。
【0213】
いくつかのPEKKs、特に以下を比較した。
‐実施例1のポリマーP1及びポリマーP2、並びに、
‐380℃及び5kgの荷重下で、37cm/10分のメルトフローインデックスを有する、Arkema社製のKEPSTAN(登録商標)8000レンジのPEKKであるP4。KEPSTAN(登録商標)8000レンジのポリマーは、テレフタル単位及びイソフタル単位からなるPEKKsであり、テレフタル単位及びイソフタル単位の合計に対する、テレフタル単位のモル比率が約80%である。
【0214】
したがって、組成物P1、P2及びP4の疑似アモルファスのフィルムを調製することができ、下に、「F-P1_am」、「F-P2_am」及び「F-P4_am」と示した。
【0215】
同一の化学組成及び厚さ「th」の2つのフィルムを、その端を除いて、接触させ、その後、温度「T」で2分間加熱した。
【0216】
冷却後、手で、接触させていない端から2つのフィルムを剥がそうとすることによって、その接着性を実験的に評価した(表2を参照)。表中「n」は、接着性なし、「w」は弱い接着性及び「g」は良好な接着性を意味する。
【0217】
それらの疑似アモルファスの外観(「Am」)又は逆に、結晶性の外観(「C」)を、DSCによって確認した(表3を参照)。
【0218】
「n/a」という表現は、測定が行われなかったことを意味する。
【0219】
【表2】
【0220】
【表3】
【0221】
表2及び表3に示す結果から、以下のことがわかり得る。
‐F-P1_am/F-P1_am集合体は、幅広い範囲の温度、180℃~285℃で良好な接着性を有するが、加熱される短い期間中に、結晶化する時間を有さない。しかしながら、P1ポリマーの特性を考慮すると、F-P1_am/F-P1_am集合体は、たとえば、285℃で、より長時間、たとえば20分間、加熱された場合に、結晶化し得る。
‐F-P2_am/F-P2_am集合体は、320℃で良好な接着性を示し、かつ、2分間の加熱によって結晶化した形態で得られた。実施された試験では、幅広い範囲の温度、180℃~285℃で弱い接着性も得ることができた。
‐F-P4_am/F-P4_am集合体は、330℃~340℃で良好な接着性を示し、かつ、2分間の加熱によって結晶化した形態で得られた。
【0222】
したがって、これらの3つのポリマーは、本発明の絶縁導体の絶縁コーティングの最外層として使用され得る疑似アモルファスのポリマーである。熱溶接の実用化の間に、当業者が関心を持つ基準、i)接着性(可能な限り良好であることが望ましい)、ii)結晶性(十分であることが望ましい)、iii)加熱温度(可能な限り低いことが望ましい)、iv)結晶化工程の時間(十分に短いことが望ましい)及び彼らに生じる他のあらゆる処理制約を考慮すると、彼らはこれらのポリマーの1つ又は他を選び得る。ポリマーP1及びポリマーP2が、比較的穏やかな熱溶接温度で、良好な接着性及び十分な結晶化度を有する熱溶接を得るために、最も適しているようだ。しかしながら、ポリマーP1は、ポリマーP2よりも遅く結晶化する。
【0223】
ポリマーP3も使用可能であるが、より高い加熱温度が必要であり、かつ、ポリマーP2のそれよりも速い晶析速度により、それらの使用をわずかにより困難である。
【0224】
実施例4 絶縁電線の接着性
【0225】
PEKKの層を用いてシースされた絶縁電線の溶接性を決定するために、同一の組成物P2又はP4のシースを有する2つの電線を、様々な加熱温度及び接触圧力並びにこれらの様々な温度及び圧力条件下の接触時間で、熱溶接しようとすることによって、試験#1~#8を実施した。
【0226】
おおよそ75マイクロメートルに等しい平均厚さを有するPEKKの層によってシースされた絶縁電線を得るために、直径3ミリメートルの銅電線を、実施例1の製造方法により、実施例1のポリマーP2及びポリマーP4を用いて、覆った。
【0227】
試験#1~#7で使用した電線を、実施例1と同様に、空気中での冷却によって、疑似アモルファスの形態で得た。
【0228】
試験#8(比較)で使用した電線を、銅電線の加熱によって絶縁シースのPEKK層がインラインで結晶化させたことを除いて、試験#5~#7と同様に製造した。
【0229】
様々な圧力で接触させるために、同一の電線の2つの部分を、5cmの長さで、垂直軸でのみ移動できる、スチール保持装置(電線の幅に調整可能)内に導入した。電線は、垂直軸に沿って他の上部に配置され、接触長さ「I」でオフセットした。上記の保持装置を、摂氏で表現される加熱温度「T」及びメートルトン(mT)で表現される圧力「P」に設定された加熱プラテンを有するカーバープレス(Carver press)に配置した。
【0230】
装置を、これらの圧力及び温度条件で、20分間保持した。その後、装置を取り出し、放置して、室温(23℃)まで冷却した。
【0231】
このようにして、得られた二電線系(two-wire system)を特徴づけした。接着の度合いを、Zwick引張試験機で、5mm/分の速度で、界面のせん断試験を実施することによって推定した。測定した接着力「Adh」は、接触長さ「I」によって正規化された引き抜き力「F」に対応する。
【0232】
様々な試験の結果を下の表4に示す。
【0233】
【表4】
*非常に弱い接着性、試験の設定をしているときに電線が剥がれる。
**粘着性なし
【0234】
試験は、0.5~1mTの圧力(試験#1~#4)で、ポリマーP2(適度な晶析速度)で作られた疑似アモルファスの絶縁層を有する電線は、幅広い範囲の温度で、電線同士を強く接着し得、かつ、絶縁層のポリマーの融点を十分に下回る温度であることを、示す。最高の接着性値が、230℃の圧縮温度で得られ、それは、理論に縛られることなく、本発明者らによると、後者を可能な限り最適に生成する時間を与える十分に遅い晶析速度及び接着性を生み出すポリマーの移動性の点で最適条件に対応する。
【0235】
疑似アモルファスの状態で、ポリマーP4(高い晶析速度)で作られた絶縁層は、接着性を生み得るが、温度及び圧力のウィンドウは狭いようであり、試験で使用した圧力では、接着レベルは低いままである(試験#7並びに比較試験#5及び#6を参照)。
【0236】
拡大解釈すると、式(III)の繰り返し単位からなるホモポリマー等のよりさらに高い晶析速度を有するPAEKsは、ポリマーP4よりもさらに適していないようだ。
【0237】
比較試験#8で分かるように、絶縁層が既に結晶状態である場合、これらの温度範囲で、電線を互いに接着させることは不可能である。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】