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特表2023-525510治療用タンパク質の送達のために細胞を遺伝子改変する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(54)【発明の名称】治療用タンパク質の送達のために細胞を遺伝子改変する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20230609BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230609BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20230609BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20230609BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230609BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230609BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230609BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20230609BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230609BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
C12N15/09 100
A61P3/00
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K35/28
A61K35/15
A61K35/17
A61K38/17
C12N5/10 ZNA
C12N5/0781
C12N5/0783
C12N15/864 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567228
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2021062054
(87)【国際公開番号】W WO2021224416
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/020,894
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350465
【氏名又は名称】セレクティス ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ジュイレラ アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥシャトー フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ホン パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ポアロ ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ビュセル ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ボイン アレックス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084CA53
4C084NA20
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC211
4C084ZC212
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087NA20
4C087ZB21
4C087ZC21
(57)【要約】
本開示は、特定の細胞型、より特定すると導入遺伝子を発現させるように操作した細胞における治療用タンパク質を患者の脳内へ送達するための人工エクソン(ArtEx)の挿入により、細胞を遺伝子改変する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 内因性イントロンゲノム領域を含む細胞を提供する工程、
- 前記細胞に、外因性コード配列を含むポリヌクレオチドテンプレートを導入する工程であって、前記ポリヌクレオチドテンプレートが、
(a)挿入部位の上流のイントロン配列と相同である、第1の相同ポリヌクレオチド配列、
(b)分岐点およびスプライスアクセプターを含む、第1の強いスプライス部位配列;
(c)2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
(d)関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
(e)2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
(f)第1のエクソンのコード配列のコピー;
(g)スプライスドナーを含む第2の強いスプライス部位配列;および
(h)挿入部位の下流のイントロン配列と相同である、第2の相同ポリヌクレオチド配列
を含む、工程;
- 外因性コード配列が、第1のエクソンまたはそのコピーと共に、内因性遺伝子座で転写されるように、好ましくは相同組換えによる、前記イントロン配列への前記外因性ポリヌクレオチドの組み込みを誘導する工程
を含む、外因性コード配列を内因性イントロンゲノム領域の挿入部位に組み込むための方法。
【請求項2】
前記組み込みが、人工エクソン(Artex)を形成し、かつ少なくとも1つの造血細胞系列への外因性コード配列の発現を得るために造血幹細胞(HSC)に導入される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
外因性コード配列が、遺伝子疾患を処置するための関心対象のタンパク質をコードする、請求項1~2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
外因性コード配列が、前駆細胞における発現のためのものである、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
外因性コード配列が、FANCA、FANCC、またはFANCGから選択されるタンパク質を発現する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
外因性コード配列が、関心対象のタンパク質の赤血球における発現を可能にする、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
外因性コード配列が、HBB、PKLR、またはRPS19から選択されるタンパク質を発現する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
外因性コード配列が、顆粒球における発現のためのものである、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
外因性コード配列が、HAX1、CYBA、CYBB、NCF1、NCF2、またはNCF4から選択されるタンパク質を発現する、請求項9記載の方法。
【請求項10】
外因性コード配列が、巨核球における発現のためのものである、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
外因性コード配列が、Factor 8、Factor 9、Factor 11、またはWASから選択されるタンパク質を発現する、請求項11記載の方法。
【請求項12】
外因性コード配列が、単球における発現のためのものである、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
外因性コード配列が、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、およびCDKL5から選択されるタンパク質を発現する、請求項13記載の方法。
【請求項14】
外因性コード配列が、B細胞における発現のためのものである、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
外因性コード配列が、ADA、IL2RG、WAS、またはBTKから選択されるタンパク質を発現する、請求項15記載の方法。
【請求項16】
外因性コード配列が、T細胞における発現のためのものである、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
外因性コード配列が、ADA、IL2RG、WAS、BTK、またはCCR5から選択されるタンパク質を発現する、請求項5記載の方法。
【請求項18】
外因性配列の発現が、内因性遺伝子座、とりわけ挿入部位の下流のイントロン配列の発現も可能にする、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
外因性コード配列の発現が、関心対象のタンパク質をもたらし、内因性欠損タンパク質のクロスコレクションを可能にする、請求項1~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
操作された治療用細胞を産生するためにエクスビボで行われる、請求項1~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
以下の配列を含む内因性遺伝子座での挿入のための外因性ポリヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、AAVベクターなどの挿入ベクター:
(a)挿入部位の上流のイントロン配列と相同である、第1の相同ポリヌクレオチド配列、
(b)分岐点およびスプライスアクセプターを含む、第1の強いスプライス部位配列;
(c)2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
(d)関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
(e)2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
(f)第1のエクソンのコード配列のコピー;
(g)スプライスドナーを含む第2の強いスプライス部位配列;および
(h)挿入部位の下流のイントロン配列と相同である、第2の相同ポリヌクレオチド配列。
【請求項22】
第1および第2の相同配列が、tmem119、s100a9、cd11b、b2m、cx3cr1、mertk、cd164、tlr4、tlr7、cd14、fcgr1a、fcgr3a、tbxas1、dok3、abca1、tmem195、mr1、csf3r、fgd4、tspan14、tgfbri、ccr5、gpr34、serpine2、slco2b1、p2ry12、olfml3、p2ry13、hexb、rhob、jun、rab3il1、ccl2、fcrls、scoc、siglech、slc2a5、lrrc3、plxdc2、usp2、ctsf、cttnbp2nl、atp8a2、lgmn、mafb、egr1、bhlhe41、hpgds、ctsd、hspa1a、lag3、csf1r、adamts1、f11r、golm1、nuak1、crybb1、ltc4s、sgce、pla2g15、ccl3l1、abhd12、ang、ophn1、sparc、pros1、p2ry6、lair1、il1a、epb41l2、adora3、rilpl1、pmepa1、ccl13、pde3b、scamp5、ppp1r9a、tjp1、ak1、b4galt4、gtf2h2、trem2、ckb、acp2、pon3、agmo、tnfrsf17、fscn1、st3gal6、adap2、ccl4、entpd1、tmem86a、kctd12、dst、ctsl2、abcc3、pdgfb、pald1、tubgcp5、rapgef5、stab1、lacc1、tmc7、nrip1、kcnd1、tmem206、hps4、dagla、extl3、mlph、arhgap22、cxxc5、p4ha1、cysltr1、fgd2、kcnk13、gbgt1、c18orf1、cadm1、bco2、adrb1、c3ar1、large、leprel1、liph、upk1b、p2rx7、slc46a1、ebf3、ppp1r15a、il10ra、rasgrp3、fos、tppp、slc24a3、havcr2、nav2、apbb2、clstn1、blnk、gnaq、ptprm、frmd4a、cd86、tnfrsf11a、spint1、ppm1l、tgfbr2、cmklr1、tlr6、gas6、hist1h2ab、atf3、acvr1、abi3、lrp12、ttc28、plxna4、adamts16、rgs1、icam1、snx24、ly96、dnajb4、およびppfia4から選択される内因性遺伝子座と相同である、請求項22記載の挿入ベクター。
【請求項23】
外因性コード配列によってコードされる治療用タンパク質が、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、およびCDKL5(SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:35 - 表1を参照のこと)と少なくとも80%のポリペプチド配列同一性を有する、請求項22または23記載の挿入。
【請求項24】
請求項1~21のいずれか一項記載の1つの方法に従って得られることを特徴とする、操作された細胞。
【請求項25】
外因性ポリヌクレオチド配列が、内因性遺伝子座のイントロンに挿入されていることを特徴とする、操作された細胞であって、前記ポリヌクレオチド配列が、
- 分岐点およびアクセプター部位を含む、第1の強いスプライス部位配列;
- 2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
- 治療用タンパク質などの関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
- 2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
- 前記遺伝子座に対して内因性である先行エクソンのコード配列のコピー;
- スプライスドナー部位を含む第2の強いスプライス部位配列
を含む、操作された細胞。
【請求項26】
外因性ポリヌクレオチド配列が、tmem119、s100a9、cd11b、B2m、Cx3cr1、mertk、cd164、tlr4、tlr7、cd14、fcgr1a、fcgr3a、tbxas1、dok3、abca1、tmem195、mr1、csf3r、fgd4、tspan14、tgfbri、ccr5、gpr34、serpine2、slco2b1、P2ry12、Olfml3、P2ry13、Hexb、Rhob、Jun、Rab3il1、Ccl2、Fcrls、Scoc、Siglech、Slc2a5、Lrrc3、Plxdc2、Usp2、Ctsf、Cttnbp2nl、Atp8a2、Lgmn、Mafb、Egr1、Bhlhe41、Hpgds、Ctsd、Hspa1a、Lag3、Csf1r、Adamts1、F11r、Golm1、Nuak1、Crybb1、Ltc4s、Sgce、Pla2g15、Ccl3l1、Abhd12、Ang、Ophn1、Sparc、Pros1、P2ry6、Lair1、Il1a、Epb41l2、Adora3、Rilpl1、Pmepa1、Ccl13、Pde3b、Scamp5、Ppp1r9a、Tjp1、Ak1、B4galt4、Gtf2h2、Trem2、Ckb、Acp2、Pon3、Agmo、Tnfrsf17、Fscn1、St3gal6、Adap2、Ccl4、Entpd1、Tmem86a、Kctd12、Dst、Ctsl2、Abcc3、Pdgfb、Pald1、Tubgcp5、Rapgef5、Stab1、Lacc1、Tmc7、Nrip1、Kcnd1、Tmem206、Hps4、Dagla、Extl3、Mlph、Arhgap22、Cxxc5、P4ha1、Cysltr1、Fgd2、Kcnk13、Gbgt1、C18orf1、Cadm1、Bco2、Adrb1、C3ar1、Large、Leprel1、Liph、Upk1b、P2rx7、Slc46a1、Ebf3、Ppp1r15a、Il10ra、Rasgrp3、Fos、Tppp、Slc24a3、Havcr2、Nav2、Apbb2、Clstn1、Blnk、Gnaq、Ptprm、Frmd4a、Cd86、Tnfrsf11a、Spint1、Ppm1l、Tgfbr2、Cmklr1、Tlr6、Gas6、Hist1h2ab、Atf3、Acvr1、Abi3、Lrp12、Ttc28、Plxna4、Adamts16、Rgs1、Icam1、Snx24、Ly96、Dnajb4、およびPpfia4から選択される内因性遺伝子座に挿入される、請求項26記載の操作された細胞。
【請求項27】
関心対象のタンパク質が、IDUA、IDS、ARSA、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、CDKL5、FANCA、FANCC、FANCG、HBB、PKLR、RPS19、HAX1、CYBA、CYBB、NCF1、NCF2、NCF4、Factor 8、Factor 9、Factor 11、WAS、IL2RG、またはBTKである、請求項26または27記載の操作された細胞。
【請求項28】
外因性コード配列によってコードされる治療用タンパク質が、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、およびCDKL5(SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:35 - 表1を参照のこと)と少なくとも80%のポリペプチド配列同一性を有する、請求項28記載の操作された細胞。
【請求項29】
イントロンが、第1と第2のコーディングエクソン間に位置する、請求項25~29のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項30】
2自己切断ペプチドをコードする第1および第2が異なる、請求項25~30のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項31】
2自己切断の少なくとも1つが、SEQ ID NO:216およびSEQ ID NO:217から選択される、請求項25~31のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項32】
第1のスプライス部位が、SEQ ID NO:206またはSEQ ID NO:207を含む、請求項1記載の操作された細胞。
【請求項33】
遺伝子座に対して内因性である遺伝子座に対して内因性である先行エクソンのコード配列が書き換えられている、請求項1記載の操作された細胞。
【請求項34】
内因性遺伝子が、tmem119、s100a9、cd11b、B2m、Cx3cr1、mertk、cd164、tlr4、tlr7、cd14、fcgr1a、fcgr3a、tbxas1、dok3、abca1、tmem195、mr1、csf3r、fgd4、tspan14、tgfbri、ccr5、gpr34、serpine2、slco2b1、P2ry12、Olfml3、P2ry13、Hexb、Rhob、Jun、Rab3il1、Ccl2、Fcrls、Scoc、Siglech、Slc2a5、Lrrc3、Plxdc2、Usp2、Ctsf、Cttnbp2nl、Atp8a2、Lgmn、Mafb、Egr1、Bhlhe41、Hpgds、Ctsd、Hspa1a、Lag3、Csf1r、Adamts1、F11r、Golm1、Nuak1、Crybb1、Ltc4s、Sgce、Pla2g15、Ccl3l1、Abhd12、Ang、Ophn1、Sparc、Pros1、P2ry6、Lair1、Il1a、Epb41l2、Adora3、Rilpl1、Pmepa1、Ccl13、Pde3b、Scamp5、Ppp1r9a、Tjp1、Ak1、B4galt4、Gtf2h2、Trem2、Ckb、Acp2、Pon3、Agmo、Tnfrsf17、Fscn1、St3gal6、Adap2、Ccl4、Entpd1、Tmem86a、Kctd12、Dst、Ctsl2、Abcc3、Pdgfb、Pald1、Tubgcp5、Rapgef5、Stab1、Lacc1、Tmc7、Nrip1、Kcnd1、Tmem206、Hps4、Dagla、Extl3、Mlph、Arhgap22、Cxxc5、P4ha1、Cysltr1、Fgd2、Kcnk13、Gbgt1、C18orf1、Cadm1、Bco2、Adrb1、C3ar1、Large、Leprel1、Liph、Upk1b、P2rx7、Slc46a1、Ebf3、Ppp1r15a、Il10ra、Rasgrp3、Fos、Tppp、Slc24a3、Havcr2、Nav2、Apbb2、Clstn1、Blnk、Gnaq、Ptprm、Frmd4a、Cd86、Tnfrsf11a、Spint1、Ppm1l、Tgfbr2、Cmklr1、Tlr6、Gas6、Hist1h2ab、Atf3、Acvr1、Abi3、Lrp12、Ttc28、Plxna4、Adamts16、Rgs1、Icam1、Snx24、Ly96、Dnajb4、およびPpfiから選択される、請求項1記載の操作された細胞。
【請求項35】
内因性遺伝子が、S100A9またはCD11bである、請求項1記載の操作された細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、遺伝子療法の分野、より具体的には、遺伝性の遺伝子疾患の治療および予防に関する。特に、本開示は、特定の細胞型、より特定すると導入遺伝子を発現させるように操作した細胞における治療用タンパク質を患者の脳内へ送達するための人工エクソン(ArtEx)の挿入により、細胞を遺伝子改変する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
先天性代謝異常は、遺伝子(しばしば酵素をコードする)の欠陥による単一遺伝子障害の大きな1つのクラスである。この遺伝子欠損は、種々の組織に未分解基質の蓄積を招き、その結果、しばしば中枢神経系を侵し得る様々異なる臨床症状をもたらす。これらの疾患の標準治療(利用可能な場合)はしばしば、治療用タンパク質の静脈内送達を伴う。これは、治療用タンパク質が罹患細胞によって取り込まれるにつれてその病態を改善し、これにより欠損を補正する。1つの細胞において作られた(または治療的に送達された)遺伝子産物が罹患細胞によって取り込まれることで欠損を補正するこの戦略は、クロスコレクションと称される。しかしながら、血漿へのタンパク質の治療的送達は、タンパク質が血液脳関門を通過できない(または不十分な量のタンパク質しか血液脳関門を通過しない)ために、これらの患者において見られる神経学的欠陥を回復させることはない。したがって、静脈内移入、または遺伝子療法で肝臓もしくは任意の他の臓器を治療用タンパク質生産工場に変換するなどの、治療用タンパク質を血漿に送達するこれらの疾患の治療戦略はいずれも、この疾患の神経学的症状を回復させることができないだろう。
【0003】
したがって、遺伝子疾患を処置するために脳に送達する方法および治療用組成物に対して重要な必要性がある。
【0004】
この背景情報は、情報提供を目的としてのみ提供される。先行情報のいずれも、本発明に対する先行技術を構成するものと承認することは必ずしも意図されておらず、また、そのように解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0005】
概要
前述の諸態様の一般的な説明および下記の詳細な説明は、共に例示的なものであり、したがって、これらの説明は、諸態様の範囲を制限しないものと理解されるべきである。
【0006】
一局面では、本発明は、マクロファージなどの複数の造血細胞系列、より特定すると脳に存在する組織常在性ミクログリア細胞において活性である適切な遺伝子座で共発現される治療用遺伝子産物を含む、遺伝子改変された造血幹細胞(HSC)を提供する。本明細書に記載される方法は、骨髄細胞系列およびそれらに由来する組織での治療用遺伝子産物の外因性発現を通じて、患者を処置することができる。本発明は、造血細胞系列に由来する脳に存在するミクログリア細胞により健常アレルを脳内に交差発現させて有害アレルのクロスコレクションを得ることに、特に有利である。
【0007】
別の局面では、本発明は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)-Cas、メガヌクレアーゼおよびmegaTAL(メガヌクレアーゼに融合された転写活性化因子様(TAL))などのプログラム可能なヌクレアーゼと、遺伝子座の相同組換え修復(HDR)を促進するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を備えたその遺伝子座に対する修復テンプレートの送達を使用した、造血幹細胞(HSC)またはiPS細胞のエクスビボ改変に依拠する。相補的DNA(cDNA)などの治療用遺伝子産物の組み込みを含むこの戦略を使用して、修復テンプレートDNAにコードされる任意の遺伝子改変を標的遺伝子座に組み込むことができる。いくつかの態様では、治療用遺伝子産物は、標的遺伝子座の調節制御下にあり、造血細胞、特にミクログリア細胞での発現を促進するだろう。改変された細胞は、その後、養子細胞移入または自家HSC移植を通じて患者に戻すことができる。このプロセスは、治療用遺伝子産物を、身体の処置のために全身に送達し、また疾患の症状全体の処置のために脳に局所的に送達する。
【0008】
別の局面では、本発明は、
(i)遺伝子改変された造血幹細胞(HSC)を得る工程であって、HSCが、患者から単離されたか、または患者に由来する人工多能性幹(iPS)細胞からHSCへと分化させて得られ、遺伝子改変されたHSCが、ミクログリア細胞で発現される遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子を含むように操作されている、工程;および
(ii)遺伝子改変されたHSCが患者の脳内に導入遺伝子を発現するミクログリア細胞へと分化するように、それらを患者に生着させる工程
を含む、患者の脳内に導入遺伝子を発現させるための方法を提供する。
【0009】
別の局面では、本発明は、
(i)遺伝子改変された造血幹細胞(HSC)を得る工程であって、HSCが、適合ドナーから単離されたか、または適合ドナーに由来する人工多能性幹(iPS)細胞からHSCへと分化させて得られ、遺伝子改変されたHSCが、ミクログリア細胞で発現される遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子を含むように操作されている、工程;および
(ii)遺伝子改変されたHSCが患者の脳内に導入遺伝子を発現するミクログリア細胞へと分化するように、それらを患者に生着させる工程
を含む、患者の脳内に導入遺伝子を発現させるための方法を提供する。
【0010】
別の局面では、本発明は、TMEM119、CD11B、B2m、CX3CR1、またはS100A9から選択される遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子を有する、単離されたHSCまたはiPS細胞を提供し、前記導入遺伝子は、前記遺伝子の内因性プロモーターの転写制御下にある。いくつかの態様では、HSCまたはiPS細胞は、医薬として使用するためのものである。いくつかの態様では、HSCまたはiPS細胞は、導入遺伝子と相同な内因性遺伝子の発現の欠損を有する患者の処置(クロスコレクション)において使用するためのものである。いくつかの態様では、HSCまたはiPS細胞は、リソソーム蓄積症の処置において使用するためのものである。
【0011】
いくつかの態様では、ミクログリア細胞において発現される遺伝子座は、TMEM119、S100A9、CD11B、B2m、Cx3cr1、MERTK、CD164、Tlr4、Tlr7、Cd14、Fcgr1a、Fcgr3a、TBXAS1、DOK3、ABCA1、TMEM195、MR1、CSF3R、FGD4、TSPAN14、TGFBRI、CCR5、GPR34、SERPINE2、SLCO2B1、P2ry12、Olfml3、P2ry13、Hexb、Rhob、Jun、Rab3il1、Ccl2、Fcrls、Scoc、Siglech、Slc2a5、Lrrc3、Plxdc2、Usp2、Ctsf、Cttnbp2nl、Atp8a2、Lgmn、Mafb、Egr1、Bhlhe41、Hpgds、Ctsd、Hspa1a、Lag3、Csf1r、Adamts1、F11r、Golm1、Nuak1、Crybb1、Ltc4s、Sgce、Pla2g15、Ccl3l1、Abhd12、Ang、Ophn1、Sparc、Pros1、P2ry6、Lair1、Il1a、Epb41l2、Adora3、Rilpl1、Pmepa1、Ccl13、Pde3b、Scamp5、Ppp1r9a、Tjp1、Ak1、B4galt4、Gtf2h2、Trem2、Ckb、Acp2、Pon3、Agmo、Tnfrsf17、Fscn1、St3gal6、Adap2、Ccl4、Entpd1、Tmem86a、Kctd12、Dst、Ctsl2、Abcc3、Pdgfb、Pald1、Tubgcp5、Rapgef5、Stab1、Lacc1、Tmc7、Nrip1、Kcnd1、Tmem206、Hps4、Dagla、Extl3、Mlph、Arhgap22、Cxxc5、P4ha1、Cysltr1、Fgd2、Kcnk13、Gbgt1、C18orf1、Cadm1、Bco2、Adrb1、C3ar1、Large、Leprel1、Liph、Upk1b、P2rx7、Slc46a1、Ebf3、Ppp1r15a、Il10ra、Rasgrp3、Fos、Tppp、Slc24a3、Havcr2、Nav2、Apbb2、Clstn1、Blnk、Gnaq、Ptprm、Frmd4a、Cd86、Tnfrsf11a、Spint1、Ppm1l、Tgfbr2、Cmklr1、Tlr6、Gas6、Hist1h2ab、Atf3、Acvr1、Abi3、Lrp12、Ttc28、Plxna4、Adamts16、Rgs1、Icam1、Snx24、Ly96、Dnajb4、およびPpfia4からなる群より選択される。いくつかの態様では、導入遺伝子の複数のコピーが、2A自己切断ペプチド配列によって隔てられた同じ遺伝子座に組み込まれる。
【0012】
独立した態様として、本特許出願は、外因性コード配列を内因性イントロンゲノム領域に組み込むための方法であって、前記外因性コード配列を、好ましくは、前記ゲノム領域の第1の内因性エクソンと第2の内因性エクソンとの間に組み込むことが可能である、方法を提示する。いくつかの態様では、図2に図示されるこの方法は、HSCの幹細胞性および種々の骨髄系細胞への分化能を保持する利点を有する。いくつかの態様では、導入遺伝子は、レアカットエンドヌクレアーゼおよび/またはウイルスベクターを使用してHSCまたはiPS細胞に挿入されている。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、AAVベクターである。「ArtEx」とも称される該方法は、内因性遺伝子座の転写制御下に置かれた導入遺伝子をコードする人工エクソンを、好ましくはイントロン配列に、前記遺伝子座に存在する内因性エクソンの発現を不活化することなく挿入することが可能である。
【0013】
該方法は、より特定すると、以下の工程の1つまたは複数を含む:
- 内因性イントロンゲノム領域を含む細胞を提供する工程、
- 前記細胞に、外因性コード配列を含むポリヌクレオチドテンプレートを導入する工程であって、前記ポリヌクレオチドテンプレートが、
(a)挿入部位の上流のイントロン配列と相同である、第1の相同ポリヌクレオチド配列、
(b)分岐点およびスプライスアクセプターを含む、第1の強いスプライス部位配列;
(c)2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
(d)関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
(e)2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
(f)第1のエクソンのコード配列のコピー;
(g)スプライスドナーを含む第2の強いスプライス部位配列;および
(h)挿入部位の下流のイントロン配列と相同である、第2の相同ポリヌクレオチド配列
を含む、工程;ならびに任意で
- 外因性コード配列が、第1および好ましくは第2のエクソンまたはそれらのコピーと共に、前記内因性遺伝子座で転写されるように、好ましくは相同組換えによる、前記イントロン配列への前記外因性ポリヌクレオチドの組み込みを誘導する工程。
【0014】
この方法は、多様な遺伝子疾患、とりわけ遺伝性疾患における、欠損タンパク質の発現のクロスコレクションに特に有用である。
【0015】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、ムコ多糖症I型(シャイエ、ハーラー・シャイエまたはハーラー症候群)を処置するためのIDUAである。
【0016】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、ムコ多糖症II型(ハンター)を処置するためのIDSである。
【0017】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、ムコ多糖症VI型(マロトー・ラミー)を処置するためのARSBである。
【0018】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、ムコ多糖症VII型(スライ)を処置するためのGUSBである。
【0019】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、X連鎖副腎白質ジストロフィーを処置するためのABCD1である。
【0020】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ)を処置するためのGALCである。
【0021】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、異染性白質ジストロフィーを処置するためのARSAである。
【0022】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、ゴーシェ病を処置するためのGBAである。
【0023】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、フコシドーシスを処置するためのFUCA1である。
【0024】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、アルファ-マンノシドーシスを処置するためのMAN2B1である。
【0025】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、アスパルチルグルコサミン尿症を処置するためのAGAである。
【0026】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、ファーバーを処置するためのASAH1である。
【0027】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、テイ・サックスを処置するためのHEXAである。
【0028】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、ポンペを処置するためのGAAである。
【0029】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、ニーマン・ピックを処置するためのSMPD1である。
【0030】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、ウォルマン症候群を処置するためのLIPAである。
【0031】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、CDKL5欠損関連疾患のためのCDKL5である。
【0032】
他の目的、特にベクター、細胞および結果として生じた細胞の集団、ならびに本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体例は、本発明の具体的な態様を示している一方で、当業者にはこの詳細な説明から本発明の精神および範囲内での種々の変更および改変が明らかになるので、これらは単なる例証として示されるものと理解されるべきである。
【0033】
当業者であれば、下記の図面が例証を目的としたものにすぎないことを理解するだろう。図面は、決して本教示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】ミクログリアを含む骨髄細胞系列への治療用遺伝子発現を標的としたエクスビボ遺伝子療法プラットフォームの図式。
図2】本発明による組織常在性骨髄系細胞(ミクログリア細胞を含む)への治療用遺伝子発現を得るための1つの遺伝子編集戦略の概略図。提唱される戦略は、選択された内因性遺伝子座のイントロン配列を標的とし、その中でも、TMEM119、MERTK、CD164、TLR7、CD14、FCGR3A(CD16)、TBXAS1、DOK3、ABCA1、TMEM195、TLR4、MR1、FCGR1A(CD64)、CSF3R、FGD4、TSPAN14、CXCR3、CD11B、S100A9およびB2Mが好ましい遺伝子座である。本出願に明示されるこの戦略は、前記遺伝子座に存在する内因性プロモーターの転写制御下での、骨髄系細胞における治療用タンパク質の転写および発現のための、内因性イントロン配列への外因性治療用遺伝子挿入を可能にする。
図3】ミクログリアにおける標的とされる遺伝子座(TMEM119)の発現パターン。ヒト初代HSCを、ヒトミクログリア細胞に分化させるためにNBSGWマウスに移植した。CD11bマーカーを、確立されたミクログリア細胞特異的分化マーカーとして使用する。A:操作された細胞の3つのリプリケート(CCR5遺伝子座での、ポリヌクレオチドテンプレートとしてAAVおよびレアカットエンドヌクレアーゼとしてTALE-ヌクレアーゼを使用した、部位特異的挿入)。B:操作していない初代HSC。これらの実験は、ヒトHSCが、脳におけるミクログリア細胞回転に寄与し、本発明による脳への治療用分子送達のためのビヒクルとして役立ち得ることを示す。
図4】操作されたHSC細胞に対して行ったPCR実験。BFPレポーター遺伝子をCCR5遺伝子座に挿入した。A:予想される遺伝子座での導入遺伝子の組み込みを示しているPCR陽性結果。B:BFPのフローサイトメトリー測定は、ゲノム修飾率が、発現に影響を与えず、骨髄特異的分化(CD14マーカー)と相関したことを示す。
図5】マウス脳ホモジネート由来のミクログリアでの発現パターン。CD11bマーカーを、確立されたミクログリア細胞特異的分化マーカーとして使用した。A:CD11b/CCR5。B:CD11B/F4-80を対照として使用した。C:CD11b/CX3CR1。D:CD11b/TMEM119。結果は、CX3CR1およびTMEM119が、F4-80発現レベルに対してより均一に発現される(TMEM119)かまたは少なくとも同等に発現される(CX3CR1)かのいずれかであることを示しており、したがって、本発明の方法による脳への治療用ポリペプチド送達のためにミクログリアにおいて導入遺伝子を発現させるのに、CCR5よりも適切な遺伝子座と思われる。
図6】イントロン配列を標的とすることによる骨髄系細胞での治療用遺伝子の特異的発現を得るための遺伝子編集戦略の概略図。この戦略は、副次的効果(NHEJ事象)を回避するという大きな利点を有する。
図7】実施例に描写する実験準備の概略図。
図8】A. CD11bまたはS100A9遺伝子座でのGFPの標的化組み込み後のCD14hi HSCの中のGFP+細胞の百分率。B. CD11b遺伝子座でのGFP標的化組み込み後のCD11bおよびGFPについてのCD14hi HSCのフローサイトメトリー結果。C. S100A9遺伝子座でのGFP標的化組み込み後のS110A9およびGFPについてのCD14hi HSCのフローサイトメトリー結果。
図9】CD11bまたはS100A9遺伝子座でのIDUA遺伝子の標的化組み込み後のIDUA定量化結果。
図10】S100A9遺伝子座でのGFPの標的化組み込み後の血液中(A)または骨髄中(B)で検出されたヒト細胞の百分率によって特徴付けられるキメラ現象の百分率を未処置(UT)細胞と比較したもの。マウスおよびヒトCD45陽性細胞の定量化による、脾臓でのキメラ現象を示しているフローサイトメトリーの例。
図11】血液中(A)または骨髄中(B)のhCD45+またはhCD45およびhCD33+細胞におけるS100A9遺伝子座でのGFPの標的化組み込みの百分率。
図12】A. 脳におけるキメラ現象の百分率(ヒト細胞の百分率)。B. 脳において検出されたヒト細胞内のミクログリア細胞(P2RY12/TMEM119+細胞)の百分率。
図13-1】A. レンチウイルスベクターによって編集されたHSCまたはCD11bもしくはS100A9遺伝子座での標的化人工エクソン挿入によって編集されたHSCによるIDUA発現の、未処理HSC(対照)と比較した増加。
図13-2】B. 編集されたHSCの移植後の血液、脾臓、骨髄中で検出されたヒト細胞のキメラ現象の百分率。C. ヒト細胞およびヒトミクログリア細胞(TMEM119+およびP2RY12+)の脳における検出。
図14】病的細胞型において欠損タンパク質のクロスコレクションを得るために異なる造血細胞系列に導入遺伝子を発現させるという観点からの、HSCまたはiPSにおけるArtEx挿入による、疾患を処置するための本発明の方法の概略図。HSCは、エクスビボで操作され、患者に注入される。ArtExとは、クロスコレクションのためのタンパク質をコードする配列を含む人工エクソンが、遺伝子標的化挿入によって、内因性遺伝子座にある他のエクソンの発現を変化させることなく、前記遺伝子座にあるイントロンに導入されることを意味する。遺伝子座は、それぞれの選択された細胞系列または細胞型(前駆細胞、血液細胞、T細胞、B細胞、血小板、好中球、単球…)でのその発現のために選択される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
患者の脳内に導入遺伝子を発現させるための方法が本明細書に開示される。該方法は、遺伝子改変された造血幹細胞(HSC)またはiPS細胞(HSCへと分化可能)を得ることを含み、該細胞は、少なくともミクログリア細胞において発現される遺伝子座に、細胞に組み込まれる治療用タンパク質をコードする導入遺伝子を含む。該方法は、遺伝子改変されたHSCを患者に生着させることによって、該細胞がミクログリア細胞へと分化し、患者の脳において治療用タンパク質を発現させることをさらに含む。造血幹細胞またはiPS細胞は、患者に由来する(自家アプローチ)またはドナーに由来する(同種他家アプローチ)ことができる。本発明は、遺伝子疾患または障害、例えば、代謝性疾患またはリソソーム蓄積症(LSD)を治すための治療用タンパク質の患者への送達のための方法と見なすことができ、該患者は、該タンパク質の欠陥コピーを発現する。該細胞は、少なくともミクログリア細胞で発現される遺伝子座への、機能性タンパク質をコードする導入遺伝子の標的化挿入によって改変され、それにより疾患を処置する。本発明の方法はまた、遺伝子操作されたHSCから生じたミクログリアによって発現される治療用タンパク質または酵素を脳に送達することによって、中枢神経系疾患(遺伝的原因ものまたはそうでないもの)に取り組むことも可能にする。
【0036】
治療用タンパク質は、導入遺伝子に対応する機能性タンパク質を保有しない脳内の他の細胞に影響を及ぼし得るまたは該細胞によって取り込まれ得るように、ミクログリア細胞から排泄されてもよい。本発明はまた、高レベルの治療薬を産生する操作されたHSC細胞の産生のための方法も提供し、これらの操作された細胞の集団の患者への導入が、必要とされるタンパク質を供給して、疾患または病態を処置するだろう。
【0037】
したがって、本発明の方法および組成物を使用して、ミクログリア細胞において発現される遺伝子座から治療上有益なタンパク質を導入遺伝子から発現させ、遺伝性の代謝性疾患の欠陥タンパク質と置き換えるかまたは治療用タンパク質もしくは酵素を脳に送達することができる。例えば、L-ドーパをドーパミンに変換するためにミクログリアによって脳でドーパ-デカルボキシラーゼ[EC 4.1.1.28]を発現させることができ、これがパーキンソン病の症状を軽減する。
【0038】
加えて、本発明は、ミクログリア細胞において発現される遺伝子座への配列の挿入によるこれらの疾患の処置のための方法および組成物を提供する。
【0039】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、患者または適合ドナーから単離されたHSC細胞に導入される。いくつかの態様では、導入遺伝子は、iPS細胞に由来するHSCに導入されるか、または、HSCに分化する前にiPS細胞に導入される。HSCがミクログリア細胞へと分化するにつれて、これらは、脳内の細胞への送達のための治療有効量の置換タンパク質を発現するだろう。
【0040】
ここで、本発明の現在の好ましい態様について詳細に言及するが、これは、図面および以下の実施例と一緒に、本発明の原理を説明するのに役立つものである。これらの態様は、当業者が本発明を実施できるように十分詳細に説明するものであり、また、他の態様を利用してもよいこと、ならびに本発明の精神および範囲から逸脱することなく構造的、生物学的および化学的変更を行ってもよいことが理解される。別途定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0041】
本発明の実施は、別途指示しない限り、当技術分野の技能の範囲内にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を用いる。そのような技術は、文献に詳しく説明されている。例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition (1989);Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel et al. eds. (1987));the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.);PCR: A Practical Approach (M. MacPherson et al. IRL Press at Oxford University Press (1991));PCR 2: A Practical Approach (M. J. MacPherson, B. D. Hames and G. R. Taylor eds. (1995));Antibodies, A Laboratory Manual (Harlow and Lane eds. (1988));Using Antibodies, A Laboratory Manual (Harlow and Lane eds. (1999));および Animal Cell Culture (R. I. Freshney ed. (1987))を参照されたい。
【0042】
本明細書において具体的に定義しない限り、使用されるすべての技術用語および科学用語は、遺伝子療法、生化学、遺伝学、免疫学、がんおよび分子生物学の分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。分子生物学における一般用語の定義は、例えば、Benjamin Lewin, Genes VII, published by Oxford University Press, 2000 (ISBN 019879276X);Kendrew et al. (eds.);The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Publishers, 1994 (ISBN 0632021829);および Robert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by Wiley, John & Sons, Inc., 1995 (ISBN 0471186341)に見いだすことができる。
【0043】
本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、該当する場合はいつでも、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆もまた同様である。以下に示される定義のいずれかが、参照により本明細書に組み入れられる任意の文書を含めた任意の他の文書の単語の使用法と矛盾する場合には、反対の意味が明確に意図されない限り(例えば、その用語が元来使用される文書において)、本明細書およびその関連する特許請求の範囲を解釈する目的で下記の定義が常に優先されるものとする。「または」の使用は、別途表明しない限り、「および/または」を意味する。本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明確にそうでないと示していない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの細胞(a cell)」という用語は、その混合物を含め、複数の細胞を含む。「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含んでいる(including)」の使用は、互換的であり、限定を意図するものではない。さらに、1つまたは複数の態様の説明が「含んでいる(comprising)」という用語を使用する場合、当業者は、いくつかの特定の事例について、1つまたは複数の態様を「から本質的になる」および/または「からなる」という言語を使用して代替的に記載することができることを理解するだろう。
【0044】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、それが一緒に使用されている数の数値のプラスまたはマイナス10%を意味する。
【0045】
本明細書において使用される場合、「造血幹細胞」(または「HSC」)という用語は、自己再生能を有し、かつ、顆粒球(例えば、前骨髄球、好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球(例えば、網赤血球、赤血球)、栓球(例えば、巨核芽球、血小板産生巨核球、血小板)、単球(例えば、単球、マクロファージ)、樹状細胞、ミクログリア、破骨細胞およびリンパ球(例えば、NK細胞、B細胞およびT細胞)を含むがこれらに限定されない多様な系列を含む成熟血液細胞への分化能を有する、未熟血液細胞のことを指す。そのような細胞がCD34+細胞を含んでも含まなくてもよいことは、当技術分野において公知である。CD34+細胞は、CD34細胞表面マーカーを発現する未熟細胞である。ヒトでは、CD34+細胞は、上で定義された幹細胞の性質を有する細胞の亜集団を含むと考えられるが、マウスでは、HSCは、CD34-である。加えて、HSCはまた、長期再増殖能を有するHSC(LT-HSC)および短期再増殖能を有するHSC(ST-HSC)のことも指す。LT-HSCおよびST-HSCは、機能的ポテンシャルおよび細胞表面マーカー発現に基づいて区別される。例えば、いくつかの態様では、ヒトHSCは、CD34+、CD38-、CD45RA-、CD90+、CD49F+、およびlin-(CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD10、CD11B、CD19、CD20、CD56、CD235Aを含む成熟系列マーカーに陰性)である。マウスでは、骨髄LT-HSCは、CD34-、SCA-1+、C-kit+、CD135-、Slamfl/CD150+、CD48-、およびlin-(Ter119、CD11b、Gr1、CD3、CD4、CD8、B220、IL7raを含む成熟系列マーカーに陰性)であるが、ST-HSCは、CD34+、SCA-1+、C-kit+、CD135-、Slamfl/CD150+、およびlin-(Ter119、CD11b、Gr1、CD3、CD4、CD8、B220、IL7raを含む成熟系列マーカーに陰性)である。加えて、ST-HSCは、恒常性条件下でLT-HSCよりも、静止性が低く(すなわち、より活動的であり)、増殖性である。しかしながら、LT-HSCは、より大きな自己再生能を有する(すなわち、これらは、成人期を通じて生存し、レシピエントに繰り返し継代移植することができる)が、ST-HSCは、限定された自己再生能を有する(すなわち、これらは、限定された期間だけ生存し、継代移植能を有さない)。これらのHSCのいずれかを、本明細書に記載される方法のいずれかにおいて使用することができる。いくつかの態様では、ST-HSCは、高度に増殖性であり、したがって、分化した子孫をより迅速に生じることができるので有用である。
【0046】
本明細書において使用される場合、「レシピエント」は、移植片、例えば、造血幹細胞の集団または分化した細胞の集団を含有する移植片を受け取る患者である。レシピエントに投与される移植細胞は、例えば、自家、同系または同種他家の細胞であり得る。
【0047】
本明細書において使用される場合、「ドナー」は、1つまたは複数の細胞が、レシピエントへの該細胞またはその子孫の投与前に単離される、ヒトまたは動物である。1つまたは複数の細胞は、例えば、レシピエントへの該細胞またはその子孫の投与前に本発明の方法に従って増大、濃縮または維持される、造血幹細胞の集団であり得る。
【0048】
本明細書において使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、薬学的に許容される担体、例えば、製薬業界において一般的に使用されている担体と組み合わされた活性薬剤のことを指す。「薬学的に許容される」という語句は、本明細書においては、健全な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当なベネフィット/リスク比に見合う、そのような化合物、材料、組成物および/または剤形のことを指すために用いられる。
【0049】
本明細書において使用される場合、「投与すること」という用語は、本明細書に開示されるような化合物、細胞または細胞の集団を、所望の部位に薬剤の少なくとも部分的な送達をもたらす方法または経路によって、対象内に設置することを指す。本明細書に開示される化合物または細胞を含む薬学的組成物は、対象において有効な治療をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。
【0050】
本明細書において使用される場合、「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチド、例えばデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成された断片、ならびに連結、開裂、エンドヌクレアーゼ作用およびエキソヌクレアーゼ作用のいずれかによって生成された断片のことを指す。核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド(DNAおよびRNAなど)もしくは天然に存在するヌクレオチドの類似体(例えば、天然に存在するヌクレオチドのエナンチオマー形態)である単量体、または両方の組み合わせから構成され得る。修飾ヌクレオチドは、糖部分および/またはピリミジンもしくはプリン塩基部分に変化を有し得る。糖修飾には、例えば、1つまたは複数のヒドロキシル基のハロゲン、アルキル基、アミンおよびアジド基での置換が含まれ、または、糖をエーテルもしくはエステルとして官能化することができる。さらに、糖部分全体を、アザ糖および炭素環式糖類似体などの立体的かつ電子的に類似した構造で置換することができる。塩基部分における修飾の例としては、アルキル化プリンおよびピリミジン、アシル化プリンもしくはピリミジン、または他の周知の複素環式置換基が挙げられる。核酸単量体は、ホスホジエステル結合またはそのような連結の類似物によって連結することができる。核酸は、一本鎖または二本鎖のいずれであってもよい。
【0051】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、互換的に使用され、アミノ酸残基の重合体のことを指す。この用語はまた、1つまたは複数のアミノ酸が対応する天然に存在するアミノ酸の化学類似体または修飾誘導体である、アミノ酸重合体にも適用される。
【0052】
「配列特異的試薬」とは、ゲノム遺伝子座の発現を改変するという観点から、ゲノム遺伝子座からの選択されたポリヌクレオチド配列(好ましくは少なくとも9bp、より好ましくは少なくとも10bp、さらにより好ましくは少なくとも12pb長の)を特異的に認識する能力を有する、任意の活性分子のことを意味する。一態様では、安定した変異を誘導する配列特異的試薬は、ニッカーゼまたはエンドヌクレアーゼ活性を有する試薬である。
【0053】
「エンドヌクレアーゼ」という用語は、DNAまたはRNA分子、好ましくはDNA分子内の核酸間の結合の加水分解(切断)を触媒可能な、任意の野生型またはバリアント酵素のことを指す。エンドヌクレアーゼは、DNAまたはRNA分子をその配列に関わりなく切断するのではなく、「標的配列」または「標的部位」とさらに称される特異的なポリヌクレオチド配列においてDNAまたはRNA分子を認識かつ切断する。
【0054】
「有効量」または「治療有効量」は、対象(例えば、ヒト)に投与された場合に、疾患を処置するのを十分に助ける、本明細書に記載される組成物の量のことを指す。「治療有効量」を構成する組成物の量は、細胞調製物、病態およびその重症度、投与の様式、ならびに処置されるべき対象の年齢に応じて変動するが、当業者であれば自身の知識および本開示を考慮して日常的に決定することができる。単独で投与される個々の有効成分または組成物に言及するとき、治療有効用量は、その成分または組成物単独のことを指す。併用物に言及するとき、治療有効用量は、逐次、並行または同時のいずれで投与されても治療効果をもたらす、有効成分、組成物または両方の組み合わせた量のことを指す。
【0055】
エンドヌクレアーゼは、典型的には10塩基対(bp)長を超えるポリヌクレオチド認識部位を有する場合に、レアカットエンドヌクレアーゼとして分類することができる。いくつかの態様では、レアカットエンドヌクレアーゼは、14~55bpの認識部位を有する。レアカットエンドヌクレアーゼは、規定された遺伝子座でDNA二本鎖切断(DSB)を誘導することによって相同組換を大幅に増加させ、それにより、遺伝子修復または遺伝子挿入療法を可能にする(Pingoud, A. and G. H. Silva (2007). Nat. Biotechnol. 25(7): 743-4)。
【0056】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、亜鉛イオンの配位を通じてその構造が安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である1つまたは複数のジンクフィンガーを通じて配列特異的様式でDNAに結合する、タンパク質またはより大きなタンパク質内のドメインである。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語は、しばしば、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略される。
【0057】
「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1つまたは複数のTALE反復ドメイン/単位を含むポリペプチドである。反復ドメインは、TALEがその同族標的DNA配列に結合する際に関与する。単一の「反復単位」(「反復」とも称される)は、典型的には、33~35アミノ酸長であり、天然に存在するTALEタンパク質内の他のTALE反復配列と少なくともある程度の配列相同性を示す。
【0058】
ジンクフィンガーおよびTALE結合ドメインは、例えば、天然に存在するジンクフィンガーまたはTALEタンパク質の認識ヘリックス領域の操作(1つまたは複数のアミノ酸の変更)を介して、所定のヌクレオチド配列に結合するように「操作する」ことができる。それゆえ、操作されたDNA結合タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、天然に存在しないタンパク質である。DNA結合タンパク質を操作するための方法の非限定的な例は、設計および選択である。設計されたDNA結合タンパク質は、その設計/組成が主に合理的基準に起因する、天然には存在しないタンパク質である。設計の合理的基準には、既存のZFPおよび/またはTALEの設計および結合データの情報を記憶するデータベース内の情報を処理するための置換規則およびコンピューター処理アルゴリズムの適用が含まれる。例えば、米国特許第6,140,081号;第6,453,242号;および第6,534,261号を参照されたい;また、WO 98/53058;WO 98/53059;WO 98/53060;WO 02/016536およびWO 03/016496ならびに米国特許出願公開第20110301073号も参照されたい。
【0059】
いくつかの態様では、エンドヌクレアーゼは、操作されており、天然には見いだされない。いくつかの態様では、エンドヌクレアーゼは、ファージディスプレイ、相互作用トラップまたはハイブリッド選択などのプロセスを使用して生成される。例えば、米国特許第5,789,538号;第5,925,523号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,200,759号;ならびにWO 95/19431;WO 96/06166;WO 98/53057;WO 98/54311;WO 00/27878;WO 01/60970;WO 01/88197;WO 02/099084および米国特許出願公開第2011/0301073号を参照されたい。
【0060】
「組換え」は、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換のプロセスのことを指す。本開示の目的として、「相同組換え(HR)」は、例えば、細胞における二本鎖切断の修復の間に相同組換え修復機構を介して行われる、そのような交換の特殊な形態のことを指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列相同性を必要とし、一般に、相同組換えまたはNHEJ修復によって内因性遺伝子座(「標的」配列)に組み込むために「ドナー」分子(「ポリヌクレオチドテンプレート」とも称される)を使用する。これは、ドナーから標的への遺伝情報の移行を導く。いかなる特定の理論に制約されることも望まないが、そのような移行は、切断された標的とドナーとの間に形成されるヘテロ二重鎖DNAのミスマッチ補正、および/または、標的の一部となる遺伝情報の再合成にドナーが使用される「合成依存性鎖アニーリング」、および/または関連プロセスを伴い得る。そのような特殊なHRは、しばしば、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全部が標的ポリヌクレオチドに組み込まれるように、標的分子の配列の変更をもたらす。
【0061】
「変異」とは、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、40、50、またはそれ以上のヌクレオチド/アミノ酸の、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)またはポリペプチド配列中の置換、欠失、挿入であると意図される。いくつかの態様では、変異は、遺伝子またはその調節配列のコード配列に影響を及ぼし得る。それは、ゲノム配列の構造またはコードされるmRNAの構造/安定性にも影響を及ぼし得る。
【0062】
「ベクター」とは、それが連結されている別の核酸を輸送可能な核酸分子のことを意味する。本発明における「ベクター」としては、染色体、非染色体、半合成または合成核酸からなり得る、ウイルスベクター、プラスミド、オリゴヌクレオチド、RNAベクターまたは直鎖状もしくは環状DNAもしくはRNA分子が挙げられるが、それらに限定されない。好ましいベクターは、自律複製が可能なもの(エピソーマルベクター)および/またはこれらが連結されている核酸の発現が可能なもの(発現ベクター)である。多数の好適なベクターが、当業者に公知であり、市販されている。ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、コロナウィルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えば、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病および水泡性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えば、ピコルナウイルスおよびアルファウイルス、ならびにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘およびカナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルスが挙げられる。他のウイルスとしては、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例としては、トリ白血病肉腫、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプマウイルスが挙げられる(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, Third Edition, B. N. Fields, et al., Eds., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
【0063】
本明細書において使用される場合、「遺伝子座」という用語は、ゲノム内のDNA配列(例えば、遺伝子)の特定の物理的位置である。「遺伝子座」という用語は、染色体上または感染因子のゲノム配列上のレアカットエンドヌクレアーゼ標的配列の特定の物理的位置のことを指すことができる。そのような遺伝子座は、本発明に従って配列特異的エンドヌクレアーゼによって認識および/または切断される標的配列を含むことができる。本発明の関心対象の遺伝子座は、細胞の遺伝物質の本体(すなわち、染色体)に存在する核酸配列だけでなく、非限定的な例としてプラスミド、エピソーム、ウイルス、トランスポゾンまたはミトコンドリアのような細胞小器官中のものなどの、前記遺伝物質の本体とは独立して存在し得る遺伝物質の一部にも当てはまることが理解される。
【0064】
「切断」という用語は、ポリヌクレオチドの共有結合骨格の破壊のことを指す。切断は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解を含むがこれらに限定されない、様々な方法によって開始することができる。一本鎖切断と二本鎖切断の両方が可能であり、二本鎖切断は、2つの別個の一本鎖切断事象の結果として起こり得る。二本鎖DNA、RNA、またはDNA RNAハイブリッド切断は、平滑末端または付着末端のいずれかの生成をもたらし得る。
【0065】
「同一性」は、2つの核酸分子またはポリペプチド間の配列同一性のことを指す。同一性は、比較のために整列され得る各配列中の位置を比較することによって決定することができる。比較された配列中のある位置が同じ塩基によって占有される場合、それらの分子はその位置において同一である。核酸またはアミノ酸配列間の類似性または同一性の程度は、核酸配列によって共有される位置における同一のまたは一致するヌクレオチドの数の関数である。2つの配列間の同一性を算出するために、GCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一部として利用可能であるFASTAまたはBLASTを含む、種々の整列アルゴリズムおよび/またはプログラムを使用してもよく、例えば、デフォルト設定で使用することができる。例えば、本明細書に記載される特定のポリペプチドに対して少なくとも70%、85%、90%、95%、98%または99%の同一性を有し、かつ、好ましくは実質的に同じ機能を示すポリペプチド、ならびにそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが想定される。
【0066】
本明細書において使用される場合、「処置する(treat)」、「処置(treatment)」、「処置すること(treating)」などの用語は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に防止するという観点から予防的であってもよく、かつ/または、疾患および/または疾患に起因する有害作用の部分的または完全な治癒という観点から治療的であってもよい。本明細書において使用される場合の「処置」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の処置を包含し、(a)疾患に罹り易い可能性があるがまだ疾患を有すると診断されていない対象においてその疾患が生じることを予防すること;(b)その疾患を阻害すること、すなわち、その発生を停止すること;および(c)その疾患を緩和すること、例えば、疾患の退縮を引き起こすこと(例えば、疾患の症状を完全にまたは部分的に取り除くために)が含まれる。
【0067】
細胞との関連における「増大」は、同一であってもまたは同一でなくてもよい細胞の初期細胞集団からの、1つまたは複数の特徴的な細胞型の数の増加のことを指す。増大に使用される初期細胞は、増大から生成された細胞と同じでなくてもよい。
【0068】
「細胞集団」は、生物学的供給源、例えば、血液産物または組織から単離され、かつ1つを超える細胞に由来する、真核哺乳動物、好ましくはヒトの細胞のことを指す。
【0069】
「濃縮された」は、細胞集団との関連で使用される場合、1つまたは複数のマーカー、例えば、CD34+の存在に基づいて選択された細胞集団のことを指す。
【0070】
「CD34+細胞」という用語は、その表面にCD34マーカーを発現する細胞のことを指す。CD34+細胞は、例えばフローサイトメトリーおよび蛍光標識された抗CD34抗体を使用して、検出および計数することができる。
【0071】
「CD34+細胞が濃縮された」は、細胞集団がCD34マーカーの存在に基づいて選択されていることを意味する。したがって、選択方法後の細胞集団中のCD34+細胞の百分率は、CD34マーカーに基づく選択工程前の初期細胞集団中のCD34+細胞の百分率よりも高い。例えば、CD34+細胞は、CD34+細胞が濃縮された細胞集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%または少なくとも90%を占め得る。
【0072】
「対象」または「患者」という用語は、本明細書において使用される場合、非ヒト霊長類およびヒトを含めた動物界のすべてのメンバーを含む。
【0073】
数値の限界または範囲が本明細書において表明される場合、その終点が含まれる。また、数値の限界または範囲内のすべての値および部分範囲も、それが明確に書き出されたかのように、同じく具体的に含まれる。
【0074】
治療的方法
一態様では、本発明は、
(i)遺伝子改変された造血幹細胞(HSC)を得る工程であって、HSCが、患者から単離されたか、または患者に由来する人工多能性幹(iPS)細胞からHSCへと分化させて得られたものであり、遺伝子改変されたHSCが、ミクログリア細胞で発現される遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子を含むように操作されている、工程;および
(ii)遺伝子改変されたHSCが患者の脳内に導入遺伝子を発現するミクログリア細胞へと分化するように、それらを患者に生着させる工程
を含む、患者の脳内に導入遺伝子を発現させるための方法を提供する。
【0075】
別の態様では、本発明は、
(i)遺伝子改変された造血幹細胞(HSC)を得る工程であって、HSCが、適合ドナーから単離されたか、または適合ドナーに由来する人工多能性幹(iPS)細胞からHSCへと分化させて得られたものであり、遺伝子改変されたHSCが、ミクログリア細胞で発現される遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子を含むように操作されている、工程;および
(ii)遺伝子改変されたHSCが患者の脳内に導入遺伝子を発現するミクログリア細胞へと分化するように、それらを患者に生着させる工程
を含む、患者の脳内に導入遺伝子を発現させるための方法を提供する。
【0076】
別の態様では、本発明は、遺伝子改変されたHSCの有効量を患者に投与することを含む、患者における疾患または病態を処置する方法であって、遺伝子改変されたHSCが、ミクログリア細胞で発現される遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子を含むように操作されており、遺伝子改変されたHSCが、患者においてミクログリア細胞へと分化し、患者の脳内に導入遺伝子を発現させる、方法を提供する。いくつかの態様では、HSCは、適合ドナーから単離されたか、または適合ドナーに由来する人工多能性幹(iPS)細胞からHSCへと分化させて得られた。いくつかの態様では、HSCは、患者から単離されたか、または患者に由来する人工多能性幹(iPS)細胞からHSCへと分化させて得られた。
【0077】
いくつかの態様では、患者は、単一遺伝子疾患または病態を有する。いくつかの態様では、患者は、導入遺伝子と相同な内因性遺伝子の発現の欠損を有する。いくつかの態様では、患者は、リソソーム蓄積症を有する。いくつかの態様では、疾患または病態は、ムコ多糖症I型(シャイエ、ハーラー・シャイエまたはハーラー症候群)、ムコ多糖症II型(ハンター症候群)、ムコ多糖症VI型(マロトー・ラミー症候群)、ムコ多糖症VII型(スライ病)、X連鎖副腎白質ジストロフィー、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病)、異染性白質ジストロフィー、ゴーシェ病、フコシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、ファーバー病、テイ・サックス病、ポンペ病、ニーマン・ピック病、およびウォルマン病から選択される。いくつかの態様では、患者は、中枢神経系(CNS)疾患を有する。いくつかの態様では、CNS疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症から選択される。いくつかの態様では、患者は、CDKL5欠損関連疾患を有する。いくつかの態様では、CDKL5欠損症は、早期乳児てんかん性脳症(EIEE)、非典型的レット症候群、CDKL5関連てんかん性脳症、およびウエスト症候群から選択される。
【0078】
該方法は、自家処置の一部または同種処置の一部であることができる。自家とは、患者を処置するために使用される細胞が、前記患者を起源とすることを意味する。同種他家とは、患者を処置するために使用される細胞または細胞集団が、前記患者を起源せずドナーを起源とすることを意味する。
【0079】
いくつかの態様では、細胞は、免疫抑制処置を受けている患者に投与される。一態様では、投与された細胞は、少なくとも1つの免疫抑制剤に対して抵抗性になっている。いくつかの態様では、免疫抑制処置は、患者内の遺伝子改変されたHSCの選択および増大を助ける。
【0080】
細胞の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、埋め込みまたは移植を含む、任意の簡便な手法で行ってもよい。本明細書に記載される組成物は、患者に対して、皮下に、皮内に、腫瘍内に、節内に、髄内に、筋肉内に、静脈内もしくはリンパ内注射によって、または腹腔内に投与してもよい。一態様では、細胞組成物は、静脈内注射によって投与され、そこで、骨髄に移動することができる。
【0081】
個別の必要性は変動するものの、特定の疾患または病態に対する所与の細胞型の有効量の最適範囲の決定は、当技術分野の技能の範囲内である。有効量は、治療的または予防的有益性を提供する量のことを意味する。投与される投与量は、レシピエントの年齢、健康および体重、併用治療の種類(もしあれば)、処置の頻度および所望の効果の性質に依存する。いくつかの態様では、細胞または細胞集団の投与は、体重1kg当たり約104~109個の細胞の投与を含む。いくつかの態様では、約105~106個の細胞/kg(体重)が投与される。その範囲内の細胞数のすべての整数値が想定される。
【0082】
細胞は、1つまたは複数の用量で投与することができる。別の態様では、細胞の有効量は、単回用量として投与される。別の態様では、細胞の有効量は、1を超える用量として一定期間にわたって投与される。投与のタイミングは、主治医の判断の範囲内であり、患者の臨床状態に依存する。
【0083】
いくつかの態様では、遺伝子改変されたHSC細胞を投与することは、患者を骨髄機能廃絶および/または免疫抑制レジメンで処置して、宿主骨髄幹細胞を枯渇させ、拒絶反応を防止することを含むことができる。いくつかの態様では、患者に、化学療法および/または放射線療法が施行される。いくつかの態様では、患者に、減量化学療法レジメンが施行される。いくつかの態様では、標準用量の25%のブスルファンを用いた減量化学療法レジメンは、コンディショニング関連毒性を低減させながら、改変された細胞の有意な生着を達成するのに十分であり得る(Aiuti A. et al. (2013), Science 23; 341 (6148))。より強力な化学療法レジメンは、内因性HSCの枯渇剤としてブスルファンとフルダラビンの両方を投与することに基づくことができる。いくつかの態様では、ブスルファンおよびフルダラビンの用量は、標準的な同種他家移植において用いられる用量の大体50%および30%である。別の態様では、細胞は、CD20と反応する薬剤、例えば、リツキサン(Rituxan)などのB細胞アブレーション療法に続いて、投与される。いくつかの態様では、患者に、化学療法剤、例えば、フルダラビン、体外放射線療法(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATHなどの抗体が投与される。
【0084】
ある特定の態様では、遺伝子改変された細胞は、免疫抑制剤を含む併用療法として対象に投与される。例示的な免疫抑制剤としては、シロリムス、タクロリムス、シクロスポリン、ミコフェノラート、抗胸腺細胞グロブリン、コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート、移植後シクロホスファミドまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの態様では、対象は、GVHDに対する予防としてシロリムスまたはタクロリムスでのみ事前処置される。いくつかの態様では、細胞は、免疫抑制剤の前に対象に投与される。いくつかの態様では、細胞は、免疫抑制剤の後に対象に投与される。いくつかの態様では、細胞は、免疫抑制剤と並行して対象に投与される。いくつかの態様では、細胞は、免疫抑制剤なしで対象に投与される。いくつかの態様では、遺伝子改変された細胞を受けている患者は、6ヶ月、5ヶ月、4ヶ月、3ヶ月、2ヶ月、1ヶ月、3週間、2週間、または1週間未満、免疫抑制剤を受ける。
【0085】
導入遺伝子および疾患
本明細書において使用される場合の導入遺伝子は、疾患関連遺伝子の治療用タンパク質をコードする。疾患関連遺伝子は、疾患において何らかの形で欠陥を有するものである。いくつかの態様では、処置しようとする疾患および導入遺伝子を下記表1に示す。
【0086】
(表1)単一遺伝子疾患およびその処置のための導入遺伝子
【0087】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、およびCDKL5から選択される遺伝子のコード配列を含む。
【0088】
いくつかの態様では、IDUAのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:2を含む。
【0089】
いくつかの態様では、IDSのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:3を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:4を含む。
【0090】
いくつかの態様では、ARSBのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:5を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:6を含む。
【0091】
いくつかの態様では、GUSBのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:7を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:8を含む。
【0092】
いくつかの態様では、ABCD1のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:9を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:10を含む。
【0093】
いくつかの態様では、GALCのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:11を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:12を含む。
【0094】
いくつかの態様では、ARSAのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:13を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:14を含む。
【0095】
いくつかの態様では、PSAPのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:15を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:16を含む。
【0096】
いくつかの態様では、GBAのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:17を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:18を含む。
【0097】
いくつかの態様では、FUCA1のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:19を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:20を含む。
【0098】
いくつかの態様では、MAN2B1のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:21を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:22を含む。
【0099】
いくつかの態様では、AGAのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:23を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:24を含む。
【0100】
いくつかの態様では、ASAH1のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:25を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:26を含む。
【0101】
いくつかの態様では、HEXAのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:27を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:28を含む。
【0102】
いくつかの態様では、GAAのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:30を含む。
【0103】
いくつかの態様では、SMPD1のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:31を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:32を含む。
【0104】
いくつかの態様では、LIPAのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:33を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:34を含む。
【0105】
いくつかの態様では、CDKL5のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:35を含み、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:36を含む。
【0106】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、および35のいずれか1つから選択されるヌクレオチド配列の1つまたは複数のコピーを含む。
【0107】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、および36のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の1つまたは複数のコピーを含む。
【0108】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34および36のいずれか1つのバリアントである治療用タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0109】
治療用タンパク質をコードする特定のヌクレオチド配列は、その長さ全体にわたって、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33または35におけるコード配列と同一であり得る。あるいは、治療用タンパク質をコードする特定のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34および36のポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重またはコドン使用頻度の差異に起因する、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33または35の代替形態であり得る。いくつかの態様では、導入遺伝子は、治療用タンパク質をコードするヌクレオチド配列と高度に同一、少なくとも90%同一である、またはSEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33もしくは35に示されるコードヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である、ヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、導入遺伝子は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33または35に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0110】
本発明の治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む導入遺伝子が治療用タンパク質の組換え産生に使用されるとき、ポリヌクレオチドは、完全長ポリペプチドまたはその断片のコード配列を単独で;完全長ポリペプチドまたは断片のコード配列を他のコード配列(例えば、リーダーもしくは分泌配列、プレ-、もしくはプロもしくはプレプロ-タンパク質配列、または他の融合ペプチド部分をコードするもの)と共にリーディングフレーム内に含み得る。ポリヌクレオチドはまた、転写されるが翻訳されない配列、スプライシングおよびポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位ならびにmRNAを安定化させる配列などの非コード5'および3'配列も含有し得る。
【0111】
いくつかの態様では、治療用タンパク質は、本発明の遺伝子編集細胞による分泌を可能にする分泌シグナルペプチドをさらに含むことができる。そのようなシグナルペプチドのいくつかの例を下記表2に列記する。
【0112】
(表2)有用なシグナルペプチドの例
【0113】
いくつかの態様では、治療用タンパク質は、細胞膜透過性ペプチド(CPP)およびアポリポタンパク質などの細胞取り込みを可能にするペプチドをさらに含むことができる。細胞膜透過性ペプチドおよびアポリポタンパク質の例を下記表3に列記する。
【0114】
(表3)有用なCPPおよびアポリポタンパク質の例
【0115】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34および36におけるアミノ酸配列を有する治療用タンパク質をコードするヌクレオチド配列に対して少なくとも90%同一、より好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む。
【0116】
BestFitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 10 for Unix, Genetics Computer Group. University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711)などの公知のコンピュータープログラムを利用する従来の手段を利用して、特定の核酸分子が、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33または35に示されるヌクレオチド配列のいずれか1つに対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるかを決定してもよい。
【0117】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、または34の治療用タンパク質のアミノ酸配列(いくつかの、1個、1~2個、1~3個、1~5個、5~10個、または10~20個のアミノ酸残基が、任意の組み合わせで、置換、欠失または付加されている)を有する治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0118】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、その長さ全体にわたってSEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34または36に示されるアミノ酸配列を有する治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドに対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるポリヌクレオチドを含む。
【0119】
いくつかの態様では、導入遺伝子によって発現される治療用タンパク質は、該タンパク質の野生型アミノ酸配列、例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34または36のいずれかに対して同一である。
【0120】
いくつかの態様では、導入遺伝子によって発現される治療用タンパク質は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34または36のいずれかの機能的断片またはバリアントである。
【0121】
いくつかの態様では、治療用タンパク質は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34または36のポリペプチド、ならびに、活性を有し、かつSEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34または36のポリペプチド、または関連性のある部分に対して少なくとも90%の同一性、より好ましくはSEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34または36のポリペプチドに対して少なくとも96%、97%または98%の同一性、さらにより好ましくはSEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34または36のポリペプチドに対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を含むポリペプチドおよび断片を含む。
【0122】
治療用タンパク質は、融合タンパク質などのより大きなタンパク質の一部であってもよい。しばしば、分泌もしくはリーダー配列、プロ-配列、または安定性を支援し得る他の配列を含有する追加のアミノ酸配列を含むことが有利である。
【0123】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32または34のいずれかの生物学的に活性な断片をコードする。断片は、全体的に前述の治療用タンパク質の1つのアミノ酸配列の全部ではなく一部と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドである。完全長治療用タンパク質と同様、断片は、「独立して存在する」か、または断片が一部分または領域を形成するより大きなポリペプチド内に、最も好ましくは単一の連続領域として含まれてもよい。いくつかの態様では、断片は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34または36に規定される約10個の連続アミノ酸から構成することができる。
【0124】
いくつかの態様では、断片は、例えば、アミノ末端を含む連続した一連の残基もしくはカルボキシル末端を含む連続した一連の残基の欠失、または一方がアミノ末端を含み一方がカルボキシル末端を含む2つの連続した一連の残基の欠失以外は、治療用タンパク質のアミノ酸配列を有する、切断型ポリペプチドを含む。また、好ましいのは、構造的または機能的属性を特徴とする断片、例えば、アルファ-ヘリックスおよびアルファ-ヘリックス形成領域、ベータ-シートおよびベータ-シート形成領域、ターンおよびターン形成領域、コイルおよびコイル形成領域、親水性領域、疎水性領域、アルファ両親媒性領域、ベータ両親媒性領域、可動性領域、表面形成領域、基質結合領域ならびに高い抗原性指数領域を含む、断片である。機能的断片は、類似した活性または改善された活性を有するものを含め、野生型タンパク質のタンパク質活性を媒介するものである。
【0125】
いくつかの態様では、断片は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34または36のいずれかのN末端および/またはC末端の1~20個のアミノ酸(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアミノ酸)を欠如し得る。
【0126】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34または36のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド、またはSEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34または36の対応する断片に対して少なくとも90%の同一性を有するその機能的断片をコードし、それらはすべて、治療用タンパク質の生物学的活性を保持する。この群には、規定された配列および断片のバリアントが含まれる。いくつかの態様では、バリアントは、保存的アミノ酸置換により基準配列から変化したもの、すなわち、ある残基が別の似た特性を有するものに置き換わったものである。典型的な置換は、Ala、Val、LeuおよびIleの間;SerおよびThrの間;酸性残基AspおよびGluの間;AsnおよびGlnの間;ならびに塩基性残基LysおよびArgの間、または芳香族残基PheおよびTyrの間の置換である。いくつかの態様では、導入遺伝子は、1~20個のアミノ酸が任意の組み合わせで置換、欠失または付加されたポリペプチドバリアントをコードする。
【0127】
CDKL5欠損関連疾患:
早期乳児てんかん性脳症(EIEE)疾患
早期乳児てんかん性脳症(EIEE)は、発作を特徴とする神経学的障害である。この障害は、新生児において、通常は生後3ヶ月以内(ほとんど生後10日以内)にてんかん性発作の形で発症する。幼児は主に、強直性発作(体の筋硬直、一般に背部、脚部および腕部の筋硬直を引き起こす)を有するが、また部分発作も、そして稀にではあるが、ミオクローヌス発作(上半身、腕部または脚部の筋反射または攣縮を引き起こす)も経験し得る。症状の発現は、1日当たり100回超起こる場合がある。その障害を有するほとんどの幼児は、大脳半球の一部もしくは全部の発達不良または構造異常を示す。一部の症例は、代謝障害によってまたはいくつかの異なる遺伝子の変異によって引き起こされる。多くの症例の原因は、確定できていない。早期乳児てんかん性脳症にはいくつかの種類がある。EEGは、高電圧の棘徐波放電とそれに続く低活動の特徴的なパターンを明らかにしている。このパターンは、「バーストサプレッション」として知られている。この疾患に関連する発作は処置が難しく、この症候群は重度に進行性である。この病態の一部の子供は、続けて、ウエスト症候群およびレノックス・ガストー症候群などの他のてんかん性障害を発症する。
【0128】
EIEEは、異なる病因の結果であり得る。多くの症例は、構造的な脳異常に関連している。一部の症例は、起源が遺伝性か否かを問わない代謝障害(シトクロムCオキシダーゼ欠損症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII欠損症)または脳形成異常(孔脳症または片側巨脳症など)に起因する。EIEEの遺伝的変種は、とりわけARX(Xp22.13)、CDKL5(Xp22)、SL25A22(11p15.5)およびSTXBP1(9q34.1)などのある特定の遺伝子の変異に関連している。この遺伝子異常は、神経機能障害または脳形成不全に関係しているため、この遺伝子異常がEIEEを招くと考えられている。
【0129】
非典型的レット症候群
非典型的レット症候群は、子供がレット症候群の症状のいくつかを有するが診断基準をすべて満たしていない場合に診断される、神経発達障害である。古典型レット症候群のように、非典型的レット症候群は、ほとんどが女児に発症する。非典型的レット症候群を有する子供は、レット症候群において見られるものよりも軽度または重度のいずれかである症状を有し得る。非典型的レット症候群のいくつかの亜型が定義されている。早発性発作型は、生後数ヶ月の発作とその後のレットの特徴(発達上の問題、言語能力の喪失、および繰り返される手絞りまたは手洗いの動作を含む)の発現を特徴とする。早発性発作型は、X連鎖CDKL5遺伝子(Xp22)の変異によって頻繁に引き起こされる。
【0130】
CDKL5関連てんかん性脳症疾患
CDKL5関連てんかん性脳症は、早期てんかん(第1段階)と、次に乳児けいれん(第2段階)と、最後に多病巣性および難治性ミオクローヌスてんかん(第3段階)とからなる、3段階進化を特徴とする。例えば、Bahi-Buisson et al. Epilepsia. 49:1027-1037 (2008)を参照されたい。サイクリン依存性キナーゼ様5(CDKL5)の遺伝子異常は、早発性のてんかん性脳症を引き起こす。
【0131】
ウエスト症候群疾患
ウエスト症候群は、けいれん、ヒプスアリスミアと呼ばれる異常な脳波パターンおよび時に知的障害を特徴とする、てんかんの一種である。生じるけいれんは、全身を半分に曲げる極端な折り畳みもしくは「サラーム」の動作にまで及ぶ場合もあるが、軽度にも至らない肩部攣縮もしくは眼変化である場合もある。これらのけいれんは、通常、生後数ヶ月で始まり、時に、薬物治療の助けを受けることができる。ウエスト症候群には多くの異なる原因があり、明確な原因が特定できれば、症候性のウエスト症候群と診断することができる。原因が特定できなければ、潜因性ウエスト症候群と診断される。ウエスト症候群の明確な原因は、罹患者の大体70~75%において特定することができる。X連鎖ウエスト症候群(X連鎖乳児けいれん症候群またはISSX)は、X染色体上のCDKL5遺伝子またはARX遺伝子の変異によって引き起こされ得る。
【0132】
ムコ多糖症
ムコ多糖症(MPS)は、酵素欠陥に関連する変性性の遺伝子疾患である。特に、MPSは、グリコサミノグリカン(GAG)と呼ばれる複合糖分子の段階的な代謝を触媒するリソソーム酵素の欠損または不活性によって引き起こされる。これらの酵素欠損は、罹患対象の細胞、組織、特に、細胞リソソームにGAGの蓄積を引き起こし、罹患対象の外見、身体能力、臓器機能、大抵の場合に精神発達に影響を及ぼす、永続的で進行性の細胞損傷を導く。
【0133】
MPSの7種の別個の臨床上のカテゴリーに対応する11種の別個の酵素欠陥が特定されている。各MPSは、ムコ多糖、すなわちヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸を分解する1つまたは複数の酵素の欠損または不活性を特徴とする。
【0134】
MPS Iは、症状の重症度に基づいて3種の亜型に分類される。3種の型はすべて、アルファ-L-イズロニダーゼ(IDUA)という酵素の欠如、または不十分なレベルから生じる。MPS Iの親から生まれた子供は、欠陥遺伝子を保有する。
【0135】
MPS I H(ハーラー症候群またはアルファ-L-イズロニダーゼ欠損症とも呼ばれる)は、MPS I亜型の最重症型である。発達遅延が1歳の終わりに明らかとなり、患者は、通常、2歳~4歳の間に発達を停止する。これに続いて、進行性の精神的退化および身体技能の喪失が起こる。言語が、聴覚消失および舌肥大により制限される場合もある。やがて、透明な角膜層が曇るようになり、網膜が変性し始める場合もある。手根管症候群(または体の他の部分での同様の神経の圧迫)および関節可動域性制限が共通する。罹患した子供は、出生時にかなり大きく正常に見える場合があるが、鼠径部(股間に)または臍部(腹部内の臍帯が通る場所)にヘルニアを有し得る。身長の伸びは正常より速い場合があるが、1歳の終わりまでに減速を始め、多くの場合は3歳前後に止まる。多くの子供が短い体幹および4フィート未満の最大背丈で成長する。2年目には、独特な顔貌(平たい顔、低い鼻梁および突き出た額を含む)がより顕著となる。2歳までに、肋骨が広がり、オール型になる。しばしば、肝臓、脾臓および心臓が肥大する。子供は、喘鳴および反復性の上気道と耳の感染を経験し得る。一部の子供には摂食困難が起こる場合があり、多くが周期的な腸管障害を経験する。ハーラー症候群を有する子供は、しばしば、閉塞性気道疾患、気道感染および心合併症により10歳までに死亡する。
【0136】
MPS I S(シャイエ症候群)は、MPS 1の最軽症型である。症状は、一般に、5歳以降に現れ始め、診断は最も一般的には10歳以降に行われる。シャイエ症候群を有する子供は、正常な知性を有するかまたは軽度の学習障害を有し得る;一部は、精神医学上の問題を有し得る。緑内障、網膜変性および角膜混濁が、視力を大きく損なう場合がある。他の問題としては、手根管症候群または他の神経圧迫、関節の硬直、鷲手および足の変形、短頚、ならびに大動脈弁疾患が挙げられる。一部の罹患者はまた、閉塞性気道疾患および睡眠時無呼吸も有する。シャイエ症候群を有する人は、成人期まで生きることができる。
【0137】
MPS I H-S(ハーラー・シャイエ症候群)は、ハーラー症候群単独よりも重症度が低い。症状は、一般に、3歳~8歳の間で始まる。子供は、中度の知的障害および学習困難を有し得る。骨格および全身の異常としては、低身長、顎の顕著な小ささ、進行性の関節硬直、脊髄圧迫、角膜混濁、聴覚消失、心疾患、粗な顔貌、および臍部ヘルニアが挙げられる。呼吸障害、睡眠時無呼吸および心疾患は、青年期に発症し得る。MPS I H-Sを有する一部の人は、呼吸し易くするために睡眠時に持続陽圧呼吸療法が必要である。平均余命は、一般に、10代後半または20代前半までである。
【0138】
MPS II(ハンター症候群としても知られている)は、イズロン酸スルファターゼという酵素の欠如によって引き起こされる。ハンター症候群は、2つの臨床亜型を有し、(ハンター症候群は、X連鎖劣性遺伝を示すので)母親のみが欠陥遺伝子を息子に継代し得る唯一のムコ多糖症である。ハンター症候群の発生率は、男児出生の100,000~150,000件に1件と推定されている。
【0139】
IDS遺伝子の変異がMPS IIを引き起こす。IDS遺伝子は、グリコサミノグリカン(GAG)と呼ばれる大きな糖分子の分解に関与するI2S酵素を産生するための指示を与える。具体的には、I2Sは、ヘパラン硫酸およびデルマタン硫酸と呼ばれる2つのGAG中に存在する硫酸化アルファ-L-イズロン酸と呼ばれる分子から、硫酸として知られる化学基を除去する。I2Sは、異なる種類の分子を消化およびリサイクルする細胞内コンパートメントであるリソソーム中に位置する。
【0140】
ムコ多糖症VI型(MPS VI)またはマロトー・ラミー病は、重度の身体的障害があり、精神知的退行がないことを特徴とする、ムコ多糖症群のリソソーム蓄積症である。この稀なムコ多糖症の有病率は、1/250,000~1/600,000(出生)件である。重症型では、最初の臨床症状が6~24ヶ月の間に生じ、徐々に際立ってくる:顔異形症(巨舌、口が常に半開きで厚い特徴)、関節の制限、極めて重度の多発性異骨症(扁平椎、脊椎後弯、脊柱側彎、鳩胸、X脚、長期の骨変形)、体が小さい(1.10m未満)、肝腫大、心臓弁障害、心筋症、難聴、角膜混濁。知的発達は通常は、正常または実質的に正常であるが、聴覚障害および眼科的障害が学習困難を引き起こし得る。疾患の症状および重症度は、患者間でかなり変動し、中間型、またはさらに極めて穏やかな型も存在する(心臓血管障害に関連する脊椎骨端-骨幹端異形成症)。他のムコ多糖症と同じく、マロトー・ラミー病は、ムコ多糖代謝の酵素(N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ(アリールスルファターゼBとも呼ばれる)(ARSB)が適例である)の欠陥に関連する。この酵素は、デルマタン硫酸の硫酸基を代謝する(Neufeld et al.: "The mucopolysaccharidoses" The Metabolic Basis of Inherited Diseases, eds. Scriver et al, New York, McGraw-Hill, 1989, p. 1565-1587)。この酵素欠陥は、デルマタン硫酸の段階的な分解を遮断し、それにより貯蔵組織のリソソーム中にデルマタン硫酸が蓄積されることになる。
【0141】
ムコ多糖症VII型(MPS VII)またはスライ病は、ムコ多糖症群の極めて稀なリソソーム蓄積症である。症候学は、極端に不均一である:出生前型(非免疫性の胎児胎盤全身浮腫)、重症新生児型(異形症、ヘルニア、肝脾腫大、内反足、異骨症、顕著な低血圧ならびに成長遅滞および生存の場合には最重度知的欠損に発展する神経学的障害を伴う)および青年期または成人年齢でも発見された極めて穏やかな型(胸椎後彎)。この疾患は、種々のグリコサミノグリカン(デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸およびコンドロイチン硫酸)のリソソームへの蓄積に関わっているベータ-D-グルクロニダーゼ(GUSB)の欠陥に起因する。現時点で、この疾患に対する有効な治療法はない。
【0142】
X連鎖副腎白質ジストロフィー
副腎白質ジストロフィー(ALD)は、子供では大脳型ALDまたは成人では副腎脊髄ニューロパチー(AMN)のいずれかで1/20,000人(男性)が罹患するX連鎖疾患である。子供のALDがより重症型で、5~12歳で神経学的症状を発症する。中枢神経系の脱髄が急速に進行し、数年以内に死亡する。AMNは、より軽症型の疾患であり、15~30歳でより進行的な経過で発症する。副腎不全(アジソン病)が、依然としてALDの唯一の臨床症状であり得る。ALDの主要な生化学的異常は、ペルオキシソームにおけるβ-酸化不全が原因の超長鎖脂肪酸(VLCFA)の蓄積である。
【0143】
ABCD1遺伝子の650を超える変異によって、X連鎖副腎白質ジストロフィーが引き起こされることが判明している。この病態は、様々な度合いの認知障害および運動障害ならびにホルモンの不均衡を特徴する。X連鎖副腎白質ジストロフィーを引き起こす変異は、この障害を有する人の約75パーセントであらゆるALDPの産生を抑制する。X連鎖副腎白質ジストロフィーを有する他の人は、ALDPを産生できるが、そのタンパク質はその正常な機能を発揮できない。機能的なALDPがほとんどない場合、VLCFAは分解されず、これらは体内に貯留する。これらの脂肪の蓄積は、副腎(各腎臓上部の小さな腺)に、また体内の多くの神経を取り巻く絶縁脂肪層(ミエリン)に有毒であり得る。研究は、VLCFAの蓄積が脳において炎症反応を引き起こし、これがミエリンの分解を導き得ると示唆している。これらの組織の破壊が、X連鎖副腎白質ジストロフィーの徴候および症状を招く。
【0144】
グロボイド細胞白質ジストロフィー
小児グロボイド細胞白質ジストロフィー(GLD、ガラクトシルセラミドリピドーシスまたはクラッベ病)は、中枢および末梢神経系における稀な常染色体劣性遺伝性の変性障害である。米国での発生率は、1:100.000と推定される。この障害は、グロボイド細胞(複数の核を有する細胞)の存在、神経の保護ミエリン層の変性および脳における細胞の喪失を特徴とする。GLDは、重度の精神減退および運動遅滞を引き起こす。この障害は、ミエリン代謝の必須酵素であるガラクトセレブロシド-β-ガラクトシダーゼ(GALC)の欠損によって引き起こされる。疾患はしばしば、6月齢までの幼児が罹患するが、青年期または成人においても出現し得る。症状としては、過敏性、原因不明の発熱、手足の硬直(緊張過度)、発作、食物摂食に関連する問題、嘔吐ならびに精神および運動能力の発達遅延が挙げられる。追加の症状としては、筋力低下、痙縮、難聴および失明が挙げられる。
【0145】
ガラクトシルセラミダーゼ遺伝子(GALC)は、長さが約60kbであり、17個のエクソンからなる。多数の変異および多型がマウスおよびヒトGALC遺伝子において特定されており、異なる重症度のGLDを引き起こす。
【0146】
異染性白質ジストロフィー
異染性白質ジストロフィーは、スルファチドと呼ばれる脂肪の細胞内蓄積を特徴とする遺伝性障害である。この蓄積は、とりわけ、神経を絶縁して保護する物質であるミエリンを産生する神経系の細胞に影響を及ぼす。ミエリンによって覆われている神経細胞は、白質と呼ばれる組織を作る。ミエリン産生細胞におけるスルファチド蓄積は、脳および脊髄(中枢神経系)、脳と脊髄を筋肉につなぐ神経、ならびに感触、痛み、熱および音などの感覚を検知する感覚細胞(末梢神経系)を含めた神経系全体にわたって、白質の進行性の破壊(ロイコジストロフィー)を引き起こす。
【0147】
異染性白質ジストロフィーを有する人では、白質損傷が、進行性の知的機能および運動技能(例えば、歩行能力)の低下を引き起こす。罹患者はまた、四肢における感覚の喪失(末梢ニューロパチー)、失禁、発作、麻痺、会話不能、失明、および聴覚消失も発症する。最終的に、彼らは、周囲への関心を喪失し、無反応になる。神経学的障害が異染性白質ジストロフィーの主な特徴である一方で、スルファチド蓄積の他の臓器および組織への影響も報告されており、ほとんどが、胆嚢に関わる。
【0148】
この障害を有する者全体の約50~60パーセントが罹患する異染性白質ジストロフィーの最も一般的な型は、遅発性幼児型と呼ばれる。この型の障害は、通常、生後2年目に現れる。罹患した子供は、習得したあらゆる会話を喪失し、弱くなり、歩行に関する問題(歩行障害)を生じる。この障害が悪化するにつれて、一般に、筋緊張が最初に減少し、その後、固縮するまで高まる。異染性白質ジストロフィーの遅発性幼児型を有する者は、典型的には、幼児期までしか生存できない。
【0149】
異染性白質ジストロフィーを有する者の20~30パーセントでは、4歳~青年期の間に発症する。この若年型では、この障害の最初の徴候は、行動障害および学業困難の増大であり得る。この障害の進行は、遅発性幼児型よりも遅く、罹患者は、診断後約20年生存する場合がある。
【0150】
異染性白質ジストロフィーを有するほとんどの者は、アリールスルファターゼAという酵素を製造するための指示を与えるARSA遺伝子に変異を有する。この酵素は、細胞のリサイクルセンターであるリソソームと呼ばれる細胞組織中に位置する。リソソーム内で、アリールスルファターゼAは、スルファチドの分解を助ける。異染性白質ジストロフィーを有する少数の者は、PSAP遺伝子に変異を有する。この遺伝子は、種々の脂肪の分解において酵素を支援するより小さなタンパク質へと開裂(切断)されるタンパク質を製造するための指示を与える。これらのより小さなタンパク質の1つは、サポシンBと呼ばれ;このタンパク質は、アリールスルファターゼAと共にスルファチドを分解するように働く。
【0151】
ARSAまたはPSAP遺伝子の変異は、スルファチドを分解する能力の減少をもたらし、その結果、これらの物質が細胞内に蓄積する。過剰なスルファチドは、神経系に有毒である。蓄積は、ミエリン産生細胞を徐々に破壊し、異染性白質ジストロフィーにおいて生じる神経系の機能不全を導く。
【0152】
いくつかの症例では、非常に低いアリールスルファターゼA活性を有する者は、異染性白質ジストロフィーの症状を示さない。この病態は、シュードアリールスルファターゼ欠損症と呼ばれる。
【0153】
異染性白質ジストロフィーの成人型は、この障害を有する者の大体15~20パーセントが罹患する。この型では、最初の症状は10代以降に現れる。しばしば、アルコール依存症、薬物乱用、または学校もしくは仕事上の困難などの行動障害が、出現する最初の症状である。罹患者は、妄想または幻覚などの精神医学症状を経験する場合がある。異染性白質ジストロフィーの成人型を有する人は、診断後20~30年生存する場合がある。この期間中に、相対的に安定な期間もあれば、より急速な減退の期間もある。
【0154】
異染性白質ジストロフィーは、顕微鏡下で見たときにスルファチドの蓄積を伴う細胞が出現することからその名称が付けられている。スルファチドは、異染性と言われる顆粒を形成し、異染性は、検査のために染色した際に顆粒が周囲の細胞物質とは異なって色を取り込むことを意味している。
【0155】
ゴーシェ病
ゴーシェ病は、体の臓器および組織の多くに影響を及ぼす遺伝性障害である。この病態の徴候および症状は、罹患者間で広範に変化する。研究者らは、それらの特性上の特徴に基づいてゴーシェ病の数種類の型を記載している。
【0156】
1型ゴーシェ病は、この病態の最も一般的な型である。1型は、通常は脳および脊髄(中枢神経系)に影響を及ぼさないので、非神経障害性ゴーシェ病とも呼ばれる。この病態の特徴は、軽度から重度にまで及び、幼児期~成人期のあらゆる時点に現れ得る。主な徴候および症状としては、肝臓と脾臓の肥大(肝脾腫大)、低い赤血球数(貧血)、血小板減少によって引き起こされる容易な打撲(血小板減少症)、肺疾患、ならびに骨痛、骨折および関節炎などの骨異常が挙げられる。
【0157】
2型および3型ゴーシェ病は、中枢神経系に影響を及ぼす問題を特徴とするので、この障害の神経障害性型として知られている。上述した徴候および症状に加えて、これらの病態は、異常眼球運動、発作、および脳損傷を引き起こし得る。2型ゴーシェ病は、通常、幼児期に始まる命に関わる医学的問題を引き起こす。3型ゴーシェ病も、神経系に影響を及ぼすが、2型よりもゆっくりと悪化する傾向がある。
【0158】
ゴーシェ病の最も重症型は、周産期致死型と呼ばれる。この病態は、出生前または幼児期から始まる重度のまたは命に関わる合併症を引き起こす。周産期致死型の特徴としては、出生前の体液蓄積によって引き起こされる広汎性腫脹(胎児水腫);乾燥した鱗状の皮膚(魚鱗癬)または他の皮膚異常;肝脾腫大;独特な顔貌;および深刻な神経学的問題を挙げることができる。その名称が示す通り、ゴーシェ病の周産期致死型を有するほとんどの幼児は、出生後わずか数日しか生存できない。
【0159】
ゴーシェ病の別の型は、主に心臓に影響を及ぼし、心臓弁の硬化(石灰化)を引き起こすので、心血管型として知られている。ゴーシェ病の心血管型を有する人はまた、眼異常、骨疾患、および脾臓の軽度な肥大(脾腫)を有する場合もある。
【0160】
GBA遺伝子の変異がゴーシェ病を引き起こす。GBA遺伝子は、ベータ-グルコセレブロシダーゼと呼ばれる酵素を製造するための指示を与える。この酵素は、グルコセレブロシドと呼ばれる脂肪性の物質を糖(グルコース)およびより単純な脂肪分子(セラミド)へと分解する。GBA遺伝子の変異は、ベータ-グルコセレブロシダーゼの活性を強く低減または排除する。この酵素が十分にないと、グルコセレブロシドおよび関連物質は、細胞内で有毒レベルまで貯留し得る。組織および臓器は、これらの物質の異常な蓄積および貯蔵によって損傷を受け、ゴーシェ病の特性上の特徴を引き起こす。
【0161】
フコシドーシス
フコシドーシスは、身体の多くの領域、とりわけ脳に影響を及ぼす病態である。罹患者は、年齢と共に悪化する知的障害を有し、多くが中年期以降に認知症を発症する。この病態を有する人はしばしば、歩行などの運動技能の発達遅延を有し;彼らが身に付けた技能は時間と共に低下する。フコシドーシスの追加の徴候および症状としては、発育障害;異常な骨の発達(多発性異骨症);発作;異常な筋硬直(痙縮);皮膚上に小さな暗赤色の斑点を形成する拡張した血管の塊(被角血管腫);「粗な(coarse)」と言われることの多い独特な顔貌;反復性気道感染;および異常に大きな腹部臓器(内臓巨大症)が挙げられる。
【0162】
重症例では、症状は、典型的には幼児期に現れ、罹患者は通常、幼児期後期まで生きる。より軽度な症例では、症状は1歳または2歳に始まり、罹患者は成人中期まで生存する傾向がある。
【0163】
過去に、研究者らは、この病態の2つの型を症状および発症年齢に基づいて記載していたが、現在の見解では、この2つの型は、実際には、徴候および症状が重症度により変動する単一の障害であるとされている。
【0164】
FUCA1遺伝子の変異がフコシドーシスを引き起こす。FUCA1遺伝子は、アルファ-L-フコシダーゼと呼ばれる酵素を製造するための指示を与える。この酵素は、ある特定のタンパク質および脂肪に結合している糖分子(オリゴ糖)の複合体(糖タンパク質および糖脂質)の分解において役割を果たす。アルファ-L-フコシダーゼは、分解プロセスの終わりにかけてフコースと呼ばれる糖分子の断離(切断)に関わっている。
【0165】
FUCA1遺伝子変異は、アルファ-L-フコシダーゼ酵素の活性を大幅に低減または排除する。酵素活性の欠如は、糖脂質および糖タンパク質の不完全な分解をもたらす。これらの部分的にしか分解されなかった化合物は、全身の種々の細胞および組織内に徐々に蓄積し、細胞に機能不良を引き起こす。脳細胞は、糖脂質および糖タンパク質の貯留に特に敏感であり、これが細胞死をもたらし得る。脳細胞の喪失がフコシドーシスの神経学的症状を引き起こすと考えられている。糖脂質および糖タンパク質の蓄積はまた、肝臓、脾臓、皮膚、心臓、膵臓および腎臓などの他の臓器にも起こり、フコシドーシスの追加の症状の一因となっている。
【0166】
アルファ-マンノシドーシス
アルファ-マンノシドーシスは、臨床的に十分特徴付けられている常染色体劣性遺伝性のリソソーム蓄積障害である(M. A. Chester et al., 1982, in Genetic Errors of Glycoprotein Metabolism pp 90-119, Springer Verlag, Berlin)。糖タンパク質は通常、リソソームにおいて段階的に分解されるが、その工程の1つ、すなわち、N連結糖タンパク質の規則的な分解中の非還元末端からのアルファ連結マンノース残基の切断は、リソソームのα-マンノシダーゼ(EC 3.2.1.24)という酵素によって触媒される。しかしながら、アルファ-マンノシドーシスでは、α-マンノシダーゼという酵素の欠損が、マンノースが豊富なオリゴ糖の蓄積をもたらす。結果として、リソソームは、サイズが増大して膨張し、これが細胞機能を損なう。
【0167】
α-マンノシドーシスの症状としては、精神運動遅滞、運動失調、聴覚障害、末梢血中のリンパ球空胞化、および骨格変化が挙げられる。
【0168】
MAN2B1遺伝子の変異がアルファ-マンノシドーシスを引き起こす。この遺伝子は、アルファ-マンノシダーゼという酵素を製造するための指示を与える。この酵素は、細胞中の物質を消化およびリサイクルするコンパートメントであるリソソームにおいて働く。リソソーム内で、この酵素は、ある特定のタンパク質に結合している糖分子(オリゴ糖)の複合体(糖タンパク質)を分解するのを助ける。特に、アルファ-マンノシダーゼは、マンノースと呼ばれる糖分子を含有するオリゴ糖を分解するのを助ける。
【0169】
MAN2B1遺伝子の変異は、マンノースを含有するオリゴ糖の分解においてアルファ-マンノシダーゼ酵素がその役割を発揮できないようにする。これらのオリゴ糖は、リソソーム中に蓄積し、細胞に機能不良を引き起こし、最終的に死に至る。組織および臓器は、オリゴ糖の異常な蓄積とその結果生じた細胞死によって損傷を受け、アルファ-マンノシドーシスの特性上の特徴を招く。
【0170】
アスパルチルグルコサミン尿症
アスパルチルグルコサミン尿症は、進行性の精神機能の衰退を引き起こす病態である。アスパルチルグルコサミン尿症を有する幼児は、出生時には健康に見え、発達は、典型的には幼児期早期を通して正常である。2歳または3歳前後に明らかとなるこの病態の最初の徴候は通常、言語発達遅滞である。軽度の知的障害がその後に現れるようになり、学習がゆっくりとした速度で起こる。青年期において知的障害が次第に悪化する。この障害を有するほとんどの人は、彼らが学習した会話能力の多くを失い、罹患した成人は、通常、語彙に数個の単語しか持たない。アスパルチルグルコサミン尿症を有する成人は、発作または運動に関する障害を発症する場合がある。
【0171】
この病態を有する人はまた、骨が次第に弱くなり骨折し易くなる(骨粗鬆症)、異常に大きな関節運動範囲(過度可動性)、および弛緩性皮膚を有する場合もある。罹患者は、離れた目(両眼隔離)、小さな耳および厚ぼったい唇を含む特徴的な顔立ちを有する傾向がある。鼻は短くて幅広く、顔は通常四角形である。この病態を有する子供は、その年齢のわりに背が高いことがあるが、思春期の急成長の欠如は、一般的に、小柄な成人を招く。罹患した子供はまた、頻繁な上気道感染を有する傾向がある。アスパルチルグルコサミン尿症を有する者は、通常、成人中期まで生存する。
【0172】
AGA遺伝子の変異がアスパルチルグルコサミン尿症を引き起こす。AGA遺伝子は、アスパルチルグルコサミニダーゼと呼ばれる酵素を産生するための指示を与える。この酵素は、リサイクルセンターとして作用する細胞内構造体であるリソソームにおいて活性である。リソソーム内で、この酵素は、ある特定のタンパク質に結合している糖分子(オリゴ糖)の複合体(糖タンパク質)を分解するのを助ける。
【0173】
AGA遺伝子変異は、リソソームにおいてアスパルチルグルコサミニダーゼ酵素の欠如または欠乏をもたらし、糖タンパク質の正常な分解を抑制する。結果として、糖タンパク質は、リソソーム内に貯留し得る。過剰な糖タンパク質は、細胞の正常な機能を妨害し、細胞の破壊をもたらし得る。糖タンパク質の貯留は、脳内の神経細胞に特に影響を及ぼすようであり;これらの細胞の喪失がアスパルチルグルコサミン尿症の徴候および症状の多くを引き起こす。
【0174】
ファーバー病
ファーバー病は、体内の脂肪の分解および使用(脂質代謝)に障害のある遺伝性の病態である。この病態を有する人は、体の細胞および組織全体にわたる、特に関節周囲の脂質(脂肪)の異常な蓄積を有する。ファーバー病は、3つの典型的な症状を特徴とする:しわがれた声または弱い泣声、皮膚下および他の組織中の小さな脂肪の塊(脂肪肉芽腫)、ならびに腫脹した有痛関節。他の症状として、呼吸困難、肝臓と脾臓の肥大(肝脾腫大)、および発達遅延を挙げてもよい。研究者らは、特性上の特徴に基づいてファーバー病の7種の型を記載している。この病態は、ASAH1遺伝子の変異によって引き起こされ、常染色体劣性の様式で遺伝する。
【0175】
テイ・サックス病
テイ・サックス病は、脳および脊髄中の神経細胞(ニューロン)を次第に破壊していく稀な遺伝性障害である。
【0176】
テイ・サックス病の最も一般的な型は、幼児期に明らかになる。この障害を有する幼児は、典型的には、3~6月齢まで正常に見えるが、その頃に、発達が遅れ、運動に使われる筋力が低下する。罹患幼児は、寝返り、座るおよび這うなどの運動技能を喪失する。彼らはまた、大きな音に対する過剰驚愕反応を発現する。疾患が進行するにつれて、テイ・サックス病を有する子供は、発作、視野および聴覚消失、知的障害、ならびに麻痺を経験する。眼検査で特定することができる桜実紅斑と呼ばれる眼異常が、この障害の特徴である。テイ・サックス病のこの幼児重症型を有する子供は、通常、幼児期早期までしか生きられない。
【0177】
テイ・サックス病の他の型は、極めて稀である。徴候および症状は、幼児期、青年期または成人期に現れ得るが、通常は幼児型で見られるものよりも軽度である。特性上の特徴としては、筋力低下、筋協調の喪失(運動失調)および他の運動に関する障害、会話障害、ならびに精神病が挙げられる。これらの徴候および症状は、テイ・サックス病の遅発型を有する人の間で広範に変化する。
【0178】
HEXA遺伝子の変異がテイ・サックス病を引き起こす。HEXA遺伝子は、脳および脊髄において重要な役割を果たすベータ-ヘキソサミニダーゼAと呼ばれる酵素の一部を製造するための指示を与える。この酵素は、有害物質を分解してリサイクルセンターとして作用する細胞内構造体であるリソソーム中に位置する。リソソーム内で、ベータ-ヘキソサミニダーゼAは、GM2ガングリオシドと呼ばれる脂肪性の物質を分解するのを助ける。
【0179】
HEXA遺伝子の変異は、ベータ-ヘキソサミニダーゼAの活性を妨害し、酵素によるGM2ガングリオシドの分解を抑制する。結果として、この物質は、特に脳および脊髄中のニューロンにおいて、有毒レベルまで蓄積する。GM2ガングリオシドの貯留によって引き起こされる進行性の損傷は、これらのニューロンの破壊を導き、これがテイ・サックス病の徴候および症状を引き起こす。
【0180】
テイ・サックス病は、リソソーム酵素の機能を損ない、GM2ガングリオシドの貯留を伴うので、この病態は時にリソソーム蓄積障害またはGM2-ガングリオシドーシスと称される。
【0181】
ポンペ病
ポンペ病(II型グリコーゲン蓄積症;酸性アルファ-グルコシダーゼ欠損症;酸性マルターゼ欠損症;GAA欠損症;GSD II;II型糖原病;糖原病、全身型、心臓型;カルディオメガリア グリコゲニカ ディフューサ(cardiomegalia glycogenica diffusa);酸性マルターゼ欠損症;AMD;またはアルファ-1,4-グルコシダーゼ欠損症としても知られている)は、リソソーム酵素の酸性アルファ-グルコシダーゼ(GAA)(酸性マルターゼとしても知られている)の遺伝子の変異を特徴とする、常染色体劣性の代謝性遺伝子疾患である。GAA遺伝子の変異は、グリコーゲン、マルトースおよびイソマルトース中のα-1,4およびα-1,6連結を加水分解するGAA酵素の能力を排除または低減する。結果として、グリコーゲンがリソソームおよび体全体の細胞の細胞質中に蓄積し、細胞および組織破壊に至る。特に影響を受ける組織としては、骨格筋および心筋が挙げられる。蓄積したグリコーゲンは、進行性の筋力低下を引き起こし、心肥大、歩行困難および呼吸機能不全を招く。
【0182】
典型的幼児発症型疾患、非典型的幼児発症型疾患および後期発症型疾患を含めたポンペ病の3つの型が特定されている。典型的幼児発症型は、筋力低下、低い筋緊張、肝腫大および心欠陥を特徴とする。疾患の発生率は、大体140,000人に1人である。この型の疾患を有する患者は、しばしば、生後1年以内に心不全で死亡する。この疾患の非典型的幼児発症型は、運動技能の遅延、進行性の筋力低下、およびいくつかの例では心肥大を特徴とする。この型の疾患を有する患者は、しばしば、呼吸不全が原因で幼児期早期までしか生きられない。この疾患の後期発症型は、幼児期、青年期または成人期の後期に見られる場合があり、脚部および胴体の進行性の筋力低下を特徴とする。
【0183】
ニーマン・ピック病
ニーマン・ピック病は、多くの体組織に影響を及ぼす病態である。それは、重症度により異なる広範囲の症状を有する。ニーマン・ピック病は、4種類の主要な型:A型、B型、C1型、およびC2型に分割される。これらの型は、遺伝的要因ならびに病態の徴候および症状に基づいて分類される。
【0184】
ニーマン・ピック病A型を有する幼児は、通常、3月齢までに肝臓と脾臓の肥大(肝脾腫大)を呈し、体重が増えず想定される速度で成長しない(発育不良)。罹患した子供は、1歳前後までは正常に発達するが、その頃、進行性の精神的能力および運動の喪失(精神運動発達退行)を経験する。ニーマン・ピック病A型を有する子供はまた、広範囲に及ぶ肺損傷(間質性肺疾患)も発症し、これは、反復性肺感染を引き起こし、最終的に呼吸不全に至る場合もある。すべての罹患した子供が、眼検査で特定することができる桜実紅斑と呼ばれる眼異常を有する。ニーマン・ピック病A型を有する子供は、一般に、幼児期早期までしか生存できない。
【0185】
ニーマン・ピック病B型は、通常、幼児期中期に見られる。この型の徴候および症状は、A型と類似しているが、それほど重症ではない。ニーマン・ピック病B型を有する人は、しばしば、肝脾腫大、反復性肺感染、および低い血中血小板数(血小板減少症)を有する。彼らはまた、低身長および骨石灰化の遅れ(骨年齢の遅延)も有する。罹患者の約3人に1人が、桜実紅斑眼異常または神経学的障害を有する。ニーマン・ピック病B型を有する人は、通常、成人期まで生存する。
【0186】
ニーマン・ピック病A型およびB型は、SMPD1遺伝子の変異によって引き起こされる。この遺伝子は、酸性スフィンゴミエリナーゼと呼ばれる酵素を産生するための指示を与える。この酵素は、異なる種類の分子を分解およびリサイクルする細胞内コンパートメントであるリソソーム中に見いだされる。酸性スフィンゴミエリナーゼは、スフィンゴミエリンと呼ばれる脂肪(脂質)からセラミドと呼ばれる別の種類の脂質への変換に関わっている。SMPD1の変異は、酸性スフィンゴミエリナーゼの欠乏を導き、その結果、スフィンゴミエリンの分解が低下し、この脂肪が細胞に蓄積することになる。この脂肪の貯留は、細胞に機能不良を引き起こし、最終的に細胞は死に至る。時間と共に、細胞の喪失が、ニーマン・ピック病A型およびB型を有する人において脳、肺、脾臓および肝臓を含む組織および臓器の機能を損なう。
【0187】
ウォルマン病
リソソーム酸性リパーゼ欠損症は、体内の脂肪およびコレステロールの分解および使用(脂質代謝)に関する障害を特徴とする遺伝性の病態である。罹患者では、有害な量の脂肪(脂質)が全身の細胞および組織に蓄積し、これが一般的に肝疾患を引き起こす。この病態には2つの型がある。最も重症で稀な型は、幼児期に始まる。より重症度が少ない型は、幼児期~成人後期に始まる場合がある。
【0188】
リソソーム酸性リパーゼ欠損症の重症の早期発症型では、生後1週間以内に全身、特に肝臓に脂質が蓄積する。この脂質の蓄積は、肝臓と脾臓の肥大(肝脾腫大)、体重増加不良、皮膚および白眼への黄染(黄疸)、嘔吐、下痢、脂肪便(脂肪便症)、ならびに食物からの栄養の吸収低下(吸収不良)を含むいくつかの健康上の問題を招く。加えて、罹患した幼児はしばしば、各腎臓上部の小さなホルモン産生腺(副腎)に石灰沈着、低い血中鉄量(貧血)および発達遅延を有する。瘢痕組織が急速に肝臓に形成され、肝疾患(肝硬変)に至る。この型のリソソーム酸性リパーゼ欠損症を有する幼児は、多臓器不全および深刻な栄養失調を呈し、一般に、1歳までしか生存できない。
【0189】
リソソーム酸性リパーゼ欠損症の後期発症型では、徴候および症状は様々で、通常は幼児期中期に始まるが、これらは成人後期までのあらゆる時点に現れ得る。ほぼすべての罹患者が肝肥大(肝腫大)を呈し;脾臓肥大(脾腫)が生じることもある。約3人に2人が肝線維化を有し、最終的に肝硬変に至る。後期発症型を有する者の大体3人に1人が吸収不良、下痢、嘔吐、および脂肪便症を有する。この型のリソソーム酸性リパーゼ欠損症を有する者は、肝酵素の増加および高いコレステロールレベルを有する場合があり、これは血液検査で検出することができる。
【0190】
この後期発症型のリソソーム酸性リパーゼ欠損症を有する幾人かは、動脈壁に脂肪性沈着物の蓄積(アテローム性動脈硬化症)を呈する。これらの沈着物は、一般の人々でもよく見られるが、通常、リソソーム酸性リパーゼ欠損症を有する人ではより早い年齢で始まる。沈着物は動脈を狭め、心臓発作または卒中の機会を高める。後期発症型リソソーム酸性リパーゼ欠損症を有する者の期待寿命は、関連する健康問題の重症度に依存する。
【0191】
リソソーム酸性リパーゼ欠損症の2つの型は、一度は別個の障害であると考えられていた。早期発症型はウォルマン病として知られていて、後期発症型はコレステロールエステル蓄積症として知られていた。これらの2つの障害は、同じ遺伝的要因を有し、今のところ単一の病態型であると見なされているが、リソソーム酸性リパーゼ欠損症の型を区別するためにこれらの名称が今でも時々使用されている。
【0192】
LIPA遺伝子の変異がリソソーム酸性リパーゼ欠損症を引き起こす。LIPA遺伝子は、リソソーム酸性リパーゼと呼ばれる酵素を産生するための指示を与える。この酵素は、細胞がもはや必要としない物質を消化およびリサイクルするリソソームと呼ばれる細胞コンパートメント中に見いだされる。リソソーム酸性リパーゼ酵素は、コレステロールエステルおよびトリグリセリドなどの脂質を分解する。これらのプロセスを通じて産生される脂質であるコレステロールおよび脂肪酸は、体により使用されるか、または除去のために肝臓に輸送される。
【0193】
LIPA遺伝子の変異は、機能的なリソソーム酸性リパーゼの欠乏(欠損)を導く。その病態の重症度は、作用酵素がどれだけ利用可能かに依存する。早期発症型のリソソーム酸性リパーゼ欠損症を有する者は、正常な酵素活性を有しない。後期発症型を有する者は、いくらかの酵素活性が残存していると考えられ、その量が一般に徴候および症状の重症度を決める。
【0194】
リソソーム酸性リパーゼ活性の減少は、リソソーム内でコレステロールエステル、トリグリセリドおよび他の脂質の蓄積をもたらし、複数の組織に脂肪の貯留を引き起こす。体がこれらの脂質を分解してコレステロールを産生できないと、代替のコレステロール産生法が増え、正常より高い血中コレステロールレベルに至る。過剰な脂質は、除去のために肝臓に輸送される。これらの多くは、適切に分解されないため、体から除去できない;代わりに、これらは肝臓に蓄積して、肝疾患をもたらす。組織中の進行性の脂質蓄積は、臓器機能不全ならびにリソソーム酸性リパーゼ欠損症の徴候および症状をもたらす。
【0195】
造血幹細胞
本明細書において使用される場合、造血幹細胞(HSC)は、赤血球、白血球(リンパ系細胞および骨髄系細胞を含む)を含む数種類の血液細胞のいずれかに分化する能力を有する、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトの細胞のことを指す。HSCは、インビボ長期生着能を有する造血細胞を含むことができる。長期生着能(例えば、長期造血幹細胞)は、動物モデルまたはインビトロモデルを使用して判定することができる。候補ヒト造血幹細胞集団の長期生着能の動物モデルとしては、SCID-hu骨モデル(Kyoizumi et al. (1992) Blood 79:1704;Murray et al. (1995) Blood 85(2) 368-378)およびインユーテロ(in utero)ヒツジモデル(Zanjani et al. (1992) J. Clin. Invest. 89:1179)が挙げられる。ヒト造血の動物モデルの概説については、Srour et al. (1992) J. Hematother. 1:143-153およびその中に引用されている参考文献を参照されたい。幹細胞のインビトロモデルは、5~8週間後のストローマ共培養で産生されたクローン化可能細胞の数の限界希釈法に基づく、長期培養開始細胞(LTCIC)アッセイである(Sutherland et al. (1990) Proc. Nat'l Acad. Sci. 87:3584-3588)。LTCICアッセイは、別の一般的に使用される幹細胞アッセイである敷石状領域形成細胞(CAFC)アッセイと、またインビボ長期生着能と相関することが示されている(Breems et al. (1994) Leukemia 8:1095)。
【0196】
造血幹細胞(HSC)は、骨髄中に存在し、異なる成熟した血液細胞型および組織のすべてを生じる固有の能力を有する。HSCは、自己再生細胞である:これらは増殖しても、その娘細胞の少なくとも一部はHSCのままであり、その結果、幹細胞のプールが枯渇することはない。その他の細胞は、リンパ球を産生するリンパ球系共通前駆細胞および単球を産生する骨髄系共通前駆細胞に分化する。
【0197】
いくつかの態様では、本明細書における遺伝子改変に使用される造血幹細胞は、骨髄から単離される。いくつかの態様では、HSCは、針またはシリンジを使用して、骨盤の腸骨稜から採取することができる。
【0198】
いくつかの態様では、造血幹細胞は、ヒトの臍帯血または動員性末梢血に由来することができる。ヒトの末梢血から得られた造血幹細胞は、様々な戦略の1つによって動員され得る。骨髄から末梢血への造血幹細胞の動員を誘導するために使用できる例示的な薬剤としては、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体4(CXCR4)アンタゴニスト、例えばAMD3100(プレリキサホルおよびMOZOBIL(Genzyme, Boston, Mass.)としても知られている)および顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)が挙げられ、その組み合わせは、臨床実験においてCD34+細胞を急速に動員することが示されている。加えて、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド2(CXCL2、またGROβとも称される)は、骨髄から末梢血への造血幹細胞動員を誘導可能な別の薬剤の典型である。本発明の組成物および方法と共に使用するための造血幹細胞の動員を誘導可能な薬剤は、互いに組み合わせて使用してもよい。例えば、CXCR4アンタゴニスト(例えば、AMD3100)、CXCL2および/またはGCSFを、骨髄から末梢血への造血幹細胞の動員を誘導するために単一の混合物で逐次または同時に対象に投与してもよい。造血幹細胞動員の誘導因子としてのこれらの薬剤の使用は、例えば、Pelus, Current Opinion in Hematology 15:285 (2008)に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0199】
いくつかの態様では、HSCは、骨髄からHSCを動員する薬剤を血液ドナーに注射している間に、循環末梢血から採取される。いくつかの態様では、骨髄から末梢血へHSCを動員する薬剤は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)などのサイトカインである。いくつかの態様では、末梢血から単離されたHSCの集団は、CD34+細胞が濃縮され、少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも90%のCD34+細胞を含む。
【0200】
いくつかの態様では、動員性末梢血(MPB)白血球アフェレーシスのために、CD34+細胞は、一般に、CliniMACSなどの免疫磁気ビーズを使用して処理および濃縮することができる。精製されたCD34+細胞は、好ましくは配列特異的試薬(例えば、mRNA)を含むエレクトロポレーションバッファーに移す12~24時間前に、培養バッグに、好ましくは300ng/mlの細胞培養等級の幹細胞因子(SCF)(Amgen Inc., Thousand Oaks, CA, USA)の存在下、好ましくは300ng/mlのFMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3L)、好ましくは100ng/ml前後のトロンボポエチン(TPO)および好ましくは60ng/ml超のさらなるインターロイキンIL-3(すべて、Cell Genix Technologiesから)と共に、無血清培地中1×106個の細胞/mlで播種することができる。エレクトロポレーションを行ったら、細胞を培養培地に戻し、その後、食塩水に再懸濁し、注入用シリンジに移す。
【0201】
細胞混合物中の特定の細胞集団を濃縮または枯渇するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、細胞集団は、密度分離、ロゼット形成四量体抗体複合体が媒介する濃縮/枯渇、磁気活性化細胞選別(MACS)、マルチパラメーター蛍光ベース分子表現型、例えば蛍光活性化細胞選別(FACS)、またはそれらの任意の組み合わせによって濃縮または枯渇することができる。まとめて、細胞集団を濃縮または枯渇するこれらの方法は、一般に本明細書において、細胞集団を「選別する」または濃縮された(+)もしくは枯渇された(-)細胞集団を形成もしくは生成するための「条件下で」細胞を接触させると称され得る。
【0202】
動員された細胞を収集したら、取り出された造血幹細胞を、本明細書に記載されるように遺伝子改変し、次いで、それを必要とする患者(ドナーであっても、またはドナーと少なくとも部分的にHLAが一致した対象などの別の対象であってもよい)に本明細書に記載されるような疾患の処置のために注入することができる。
【0203】
いくつかの態様では、これらの細胞は、好ましくは単一のドナーまたは患者を起源とする、細胞の集団を形成する。これらの細胞の集団は、最も高い製造規範要件に従うよう閉鎖培養レシピエント下で増大させることができ、患者に注入する前に凍結することができ、それにより「既製品」または「すぐに使える」治療用組成物を提供する。
【0204】
いくつかの態様では、HSCは、CD34+である。いくつかの態様では、HSCは、さらに、CD133+、CD90+、CD38-、CD45RA-、Lin-、またはそれらの任意の組み合わせとして記載することができる。
【0205】
いくつかの態様では、ミクログリア細胞へと分化可能なHSCは、多能性幹細胞、例えば人工多能性幹細胞(iPS)に由来する。例えば、Abud et al., Neuron 94, 278-293 (2017)を参照されたい。いくつかの態様では、iPS細胞を、本明細書に記載されるように遺伝子改変し、次いで、HSC細胞へと分化させる。いくつかの態様では、iPS細胞を、HSCへと分化させ、次いで、本明細書に記載されるようにHSCを遺伝子改変する。さらなる態様では、例えば、国際特許出願第PCT/EP2018/083180号に記載されているように、iPS細胞およびHSCへとリプログラミングする前に細胞を遺伝子編集することができる。いくつかの態様では、造血幹細胞を、処置しようとする患者から単離するかまたは適合ドナーから単離することができる。
【0206】
いくつかの態様では、造血幹細胞は、処置しようとする患者または適合ドナーからの細胞に由来する人工多能性幹(iPS)細胞から得られる。
【0207】
いくつかの態様では、HSCを、遺伝子改変および/またはこれらの細胞の患者への注入前に、エクスビボで増大させることができる。例えば、米国特許第9,580,426号;第9,956,249号;第9,527,828号;第9,428,748号;第9,394,520号;第9,328,085号;第9,226,942号;第9,115,341号;第8,927,281号を参照されたい。
【0208】
いくつかの態様では、細胞は、ドナーから単離され、ドナーは、HLAが一致した兄弟姉妹のドナー、HLAが一致した非血縁ドナー、部分的に一致した非血縁ドナー、ハプロタイプ一致の血縁ドナー、自家ドナー、HLAが一致しないドナー、ドナーのプールまたはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの態様では、治療用細胞の集団は、同種他家である。いくつかの態様では、治療用細胞の集団は、自家である。いくつかの態様では、治療用細胞の集団は、ハプロタイプ一致のものである。
【0209】
遺伝子改変された細胞
いくつかの態様では、本発明は、本明細書に記載される方法の態様のいずれか1つに従って得ることが可能な遺伝子改変されたHSCまたはiPS細胞を提供する。
【0210】
いくつかの態様では、本発明は、ミクログリア細胞において少なくとも転写活性である遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子を含む遺伝子改変されたHSCまたはiPS細胞を提供し、該導入遺伝子は、該遺伝子座の内因性プロモーターの転写制御下にある。いくつかの態様では、導入遺伝子は、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、およびCDKL5からなる群より選択される遺伝子のコード配列を含む。
【0211】
いくつかの態様では、導入遺伝子の複数コピーがHSCまたはiPS細胞に組み込まれる。いくつかの態様では、複数コピーは、異なる遺伝子座で組み込まれる。いくつかの態様では、複数コピーは、同じ遺伝子座で組み込まれる。いくつかの態様では、同じ遺伝子座で組み込まれる複数コピーは、2A自己切断ペプチド配列によって隔てられている。
【0212】
いくつかの態様では、導入された導入遺伝子は、ミクログリア細胞において内因性プロモーターの制御下にある。いくつかの態様では、ミクログリア細胞において活性である遺伝子座は、TMEM119、S100A9、CD11B、B2m、Cx3cr1、MERTK、CD164、Tlr4、Tlr7、Cd14、Fcgr1a、Fcgr3a、TBXAS1、DOK3、ABCA1、TMEM195、MR1、CSF3R、FGD4、TSPAN14、TGFBRI、CCR5、GPR34、SERPINE2、SLCO2B1、P2ry12、Olfml3、P2ry13、Hexb、Rhob、Jun、Rab3il1、Ccl2、Fcrls、Scoc、Siglech、Slc2a5、Lrrc3、Plxdc2、Usp2、Ctsf、Cttnbp2nl、Atp8a2、Lgmn、Mafb、Egr1、Bhlhe41、Hpgds、Ctsd、Hspa1a、Lag3、Csf1r、Adamts1、F11r、Golm1、Nuak1、Crybb1、Ltc4s、Sgce、Pla2g15、Ccl3l1、Abhd12、Ang、Ophn1、Sparc、Pros1、P2ry6、Lair1、Il1a、Epb41l2、Adora3、Rilpl1、Pmepa1、Ccl13、Pde3b、Scamp5、Ppp1r9a、Tjp1、Ak1、B4galt4、Gtf2h2、Trem2、Ckb、Acp2、Pon3、Agmo、Tnfrsf17、Fscn1、St3gal6、Adap2、Ccl4、Entpd1、Tmem86a、Kctd12、Dst、Ctsl2、Abcc3、Pdgfb、Pald1、Tubgcp5、Rapgef5、Stab1、Lacc1、Tmc7、Nrip1、Kcnd1、Tmem206、Hps4、Dagla、Extl3、Mlph、Arhgap22、Cxxc5、P4ha1、Cysltr1、Fgd2、Kcnk13、Gbgt1、C18orf1、Cadm1、Bco2、Adrb1、C3ar1、Large、Leprel1、Liph、Upk1b、P2rx7、Slc46a1、Ebf3、Ppp1r15a、Il10ra、Rasgrp3、Fos、Tppp、Slc24a3、Havcr2、Nav2、Apbb2、Clstn1、Blnk、Gnaq、Ptprm、Frmd4a、Cd86、Tnfrsf11a、Spint1、Ppm1l、Tgfbr2、Cmklr1、Tlr6、Gas6、Hist1h2ab、Atf3、Acvr1、Abi3、Lrp12、Ttc28、Plxna4、Adamts16、Rgs1、Icam1、Snx24、Ly96、Dnajb4、およびPpfia4からなる群より選択される。
【0213】
いくつかの態様では、遺伝子改変されたHSCまたはiPS細胞は、TMEM119、CD11B、B2m、CX3CR1、またはS100A9から選択されるミクログリア細胞において転写活性である遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子を含み、該導入遺伝子は、該遺伝子座の内因性プロモーターの転写制御下にある。
【0214】
いくつかの態様では、遺伝子改変された造血幹細胞は、造血幹細胞を直接遺伝子改変することによって得られる。いくつかの態様では、遺伝子改変された造血幹細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞を遺伝子改変し、iPS細胞を造血幹細胞になるように分化させることによって得られる。
【0215】
いくつかの態様では、造血幹細胞(HSC)またはiPS細胞は、該細胞がミクログリア細胞に分化したら導入遺伝子を発現可能となるように遺伝子改変される。いくつかの態様では、細胞において遺伝子改変される遺伝子座は、ミクログリア細胞において転写活性である。
【0216】
いくつかの態様では、濃縮されたHSCの集団は、細胞を遺伝子改変するための方法に供される。いくつかの態様では、濃縮された集団は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%またはそれ以上のCD34+ HSCを含む。
【0217】
いくつかの態様では、HSCまたはiPS細胞は、配列特異的試薬を使用して遺伝子改変される。いくつかの態様では、配列特異的試薬は、ミクログリア細胞において発現される遺伝子座中に存在する1つまたは複数の配列を認識する。いくつかの態様では、配列特異的試薬は、細胞において核酸を切断する。
【0218】
いくつかの態様では、本発明は、導入遺伝子をHSCまたはiPS細胞に組み込むことを含む、遺伝子改変されたHSCまたはiPS細胞を作製するための方法を提供する。いくつかの態様では、該方法は、細胞を、ミクログリア細胞において発現される遺伝子座で核酸配列を切断する配列特異的試薬と接触させることを含む。いくつかの態様では、該方法は、細胞を、導入遺伝子を含むドナー核酸と接触させることをさらに含む。
【0219】
いくつかの態様では、本発明の細胞を遺伝子編集するために使用される配列特異的試薬は、レアカットエンドヌクレアーゼ、例えば、TALE-ヌクレアーゼ(Cellectis trademark TALEN(登録商標)で市販されている)である。好ましい試薬は、本明細書の表4に報告される標的配列の1つまたは複数を切断する。
【0220】
いくつかの態様では、配列特異的試薬は、CX3CR1のイントロン、好ましくは、第1のコーディングエクソンと第2のコーディングエクソンとの間に位置するCX3CR1の第1のイントロン(SEQ ID NO:76)を標的とする。本発明はまた、SEQ ID NO:77~87と類似したCX3CR1の内因性ポリヌクレオチド配列を優先的に標的とする特異的TALEヌクレアーゼも提供する。いくつかの態様では、配列特異的試薬は、SEQ ID NO:97~106と類似した内因性配列を標的とするgRNAを使用したCRISPR-CasまたはCRISPR-Cpfである。
【0221】
いくつかの態様では、配列特異的試薬は、CD11Bのイントロン、好ましくはCD11Bの第1のイントロンを標的とする。本発明はまた、SEQ ID NO:108~137と類似したCD11Bの内因性ポリヌクレオチド配列を優先的に標的とする特異的TALEヌクレアーゼも提供する。一部の態様では、配列特異的試薬は、SEQ ID NO:138~147と類似した内因性配列を標的とするgRNAを使用したCRISPR-CasまたはCRISPR-Cpfである。
【0222】
いくつかの態様では、配列特異的試薬は、S100A9のイントロン、好ましくはS100A9の第1のイントロンを標的とする。本発明はまた、SEQ ID NO:149~178と類似したS100A9の内因性ポリヌクレオチド配列を優先的に標的とする特異的TALEヌクレアーゼも提供する。一部の態様では、配列特異的試薬は、SEQ ID NO:179~188と類似した内因性配列を標的とするgRNAを使用したCRISPR-CasまたはCRISPR-Cpfである。
【0223】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドテンプレートは、本明細書に記載されるような導入遺伝子のコード配列を含む。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドテンプレートは、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、およびCDKL5からなる群より選択される遺伝子のコード領域を含む。
【0224】
いくつかの態様では、ドナー核酸は、本明細書に記載されるようなSEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35からなる群より選択されるヌクレオチド配列およびそのバリアントを含む。
【0225】
いくつかの態様では、ドナー核酸は、本明細書に記載されるようなSEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列およびそのバリアントを含む治療用タンパク質をコードする。
【0226】
いくつかの態様では、配列特異的試薬は、DNA結合ドメインおよび触媒活性を示す別のドメインを含むキメラポリペプチドであることができる。そのような触媒活性は、相同組換えによる遺伝子組み込みが容易になる付着末端を創出することによって遺伝子挿入を優先的に遂行するニッカーゼまたはダブルニッカーゼであることができる。
【0227】
いくつかの態様では、ヌクレアーゼ試薬は、NHEJまたは相同組換え機構を誘導し、このことは、ミクログリア細胞において発現されるゲノム遺伝子座に安定かつ継承可能な変異を導入するという利点を有する。
【0228】
「ヌクレアーゼ試薬」とは、それ自体でまたはガイドRNA Cas9などの複合体のサブユニットとして、標的細胞におけるヌクレアーゼ触媒反応、好ましくはエンドヌクレアーゼ反応に寄与し、好ましくは核酸配列標的の切断を導く、核酸分子のことを意味する。
【0229】
本発明のヌクレアーゼ試薬は、一般に、「配列特異的ヌクレアーゼ試薬」であり、このことは、これらが、細胞において所定の遺伝子座(さらに言うと「標的化遺伝子」と称される)でDNA切断を誘導することができることを意味する。配列特異的試薬によって認識される核酸配列は、「標的配列」と称される。前記標的配列は、通常、ソフトウェアおよびhttp://www.ensembl.org/index.htmlなどのヒトゲノムデータベースから入手可能なデータを使用して決定することができるように、細胞のゲノム、より広範にはヒトゲノムにおいて稀であるかまたは固有であるように選択される。
【0230】
いくつかの態様では、遺伝子座内の配列を特異的に切断する本発明に従って使用される配列特異的ヌクレアーゼ試薬はまた、遺伝子座での外因性テンプレートの組み込みの誘導にも使用することができる。「外因性配列」は、選択された遺伝子座に当初存在しなかった任意のヌクレオチドまたは核酸配列のことを指す。外因性配列は、好ましくは、本明細書における疾患を処置するための本明細書に記載されるような治療用ポリペプチドをコードする配列を含む。コードされているポリペプチドを発現させるために本発明の方法に従うポリヌクレオチドの挿入によって遺伝子改変される内因性配列は、広く外因性コード配列と称される。いくつかの態様では、標的化遺伝子挿入は、本明細書に記載されるような治療用ポリペプチドをコードする外因性配列を含む。
【0231】
ファージディスプレイおよびツーハイブリッド系を含むDNA結合ドメインに適用可能な例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号;第5,925,523号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,410,248号;第6,140,466号;第6,200,759号;および第6,242,568号;ならびにWO 98/37186;WO 98/53057;WO 00/27878;WO 01/88197およびGB 2,338,237に開示されている。
【0232】
標的部位の選択;ヌクレアーゼならびに融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築方法は、当業者に公知であり、米国特許出願公開第20050064474号および第20060188987号に詳細に記載されており、これらの公報は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0233】
DNAドメインは、標的とされる遺伝子座において最適な任意の配列に結合するように操作することができる。いくつかの態様では、細胞は、ミクログリア細胞において転写活性である遺伝子座に結合するように操作されている配列特異的試薬を用いて遺伝子改変される。操作されたDNA結合ドメインは、天然に存在するDNA結合ドメインと比較して、新規の結合特異性を有することができる。操作法としては、合理的設計および様々な種類の選択が挙げられるが、それらに限定されない。合理的設計としては、例えば、三重(または四重)ヌクレオチド配列および個々の(例えば、ジンクフィンガー)アミノ酸配列を含むデータベースを使用することを含み、各三重または四重ヌクレオチド配列は、特定の三重または四重配列に結合するDNA結合ドメインの1つまたは複数のアミノ酸配列と関連する。例えば、米国特許第6,453,242号および第6,534,261号を参照されたく、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。また、TAL-エフェクタードメインの合理的設計を行うこともできる。例えば、米国特許出願公開第2011/0301073号を参照されたい。
【0234】
加えて、これらおよび他の参考文献において開示されるように、DNA結合ドメイン(例えば、多指ジンクフィンガータンパク質)を、任意の好適なリンカー配列(例えば、5個以上のアミノ酸のリンカーを含む)を使用して一緒に連結させてもよい。例えば、6個以上のアミノ酸長の例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号;第6,903,185号;および第7,153,949号を参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のDNA結合ドメイン間に好適なリンカーの任意の組み合わせを含んでもよい。また、米国特許出願公開第2011/0301073号も参照されたい。
【0235】
導入遺伝子を含む外因性/ドナー配列は、その長さ全体にわたって、ミクログリア細胞において発現される遺伝子座内の配列と同一ではない。ドナー配列は、関心対象の場所で効率的なHDRを可能にするために、相同な2つの領域に隣接する非相同配列を含有することができる。あるいは、ドナーは、DNA中の標的とされる場所と相同な領域を有していなくてもよく、切断後にNHEJ依存的末端結合によって標的部位に組み込んでもよい。加えて、ドナー配列は、細胞クロマチン中の関心対象の領域と相同でない配列を含有するベクター分子を含むことができる。ドナー分子は、細胞クロマチンと相同ないくつかの不連続領域を含有することができる。例えば、関心対象の領域に通常存在しない配列の標的化挿入のために、前記配列は、ドナー核酸分子中に存在することができ、関心対象の領域中の配列と相同な領域に隣接することができる。
【0236】
いくつかの態様では、配列特異的試薬は、例えばWO 2004067736に記載されているようなホーミングエンドヌクレアーゼ、例えばUrnov F.ら(Nature 435:646-651 (2005))により記載されているようなジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、例えばMussolinoら(Nucl. Acids Res. 39(21):9283-9293 (2011))により記載されているようなTALE-ヌクレアーゼ、または例えばBoisselら(Nucleic Acids Research 42 (4):2591-2601 (2013))により記載されているようなMegaTALヌクレアーゼなどの「操作された」または「プログラム可能な」レアカットエンドヌクレアーゼをコードする核酸である。
【0237】
いくつかの態様では、エンドヌクレアーゼ試薬は、細胞内に一過性に発現され、このことは、RNA、より特定するとmRNA、タンパク質またはタンパク質と核酸を混合した複合体(例えば:リボヌクレオタンパク質)の場合のように、その試薬がゲノム内に組み込まれないまたは長期間にわたって持続しないはずであることを意味する。
【0238】
いくつかの態様では、配列特異的試薬は、標的とされる遺伝子座にDNA二本鎖切断を導入するヌクレアーゼであり、その後続の修復を利用して、様々な成果が達成される。いくつかの態様では、相同組換えに基づく修復経路を使用して、導入されたDNA相同テンプレートから情報をコピーすることができる。そのような相同組換え修復(HDR)は、外因性ポリヌクレオチド配列上に存在するプロモーターの制御下で発現させることができる外因性ポリヌクレオチド配列(例えば、米国特許第8,921,332号を参照のこと)、例えば、本明細書に記載されるような導入遺伝子の特異的付加を促進することができる。いくつかの態様では、本明細書に記載されるような導入遺伝子は、内因性プロモーターの制御下で、遺伝子破壊が達成されると同時に発現させることができる。遺伝子破壊が達成されるいくつかの態様では、導入遺伝子は、内因性遺伝子の停止コドンに挿入され、自己切断2AペプチドまたはIRES配列を含む。より好ましい態様では、導入遺伝子は、遺伝子破壊なしで内因性プロモーターの制御下で発現される。いくつかの態様では、非相同末端結合(NHEJ)修復経路を利用することができる(例えば、米国特許第9,458,439号;He et al., Nucleic Acids Research, 44 e85, https://doi.org/10.1093/nar/gkw064を参照のこと)。
【0239】
いくつかの態様では、1つまたは複数の標的化ヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas、ZFNSまたはTALEN)は、ミクログリア細胞において発現される遺伝子座の標的配列(例えば、細胞クロマチン)において二本鎖切断を創出する。いくつかの態様では、治療用タンパク質をコードし、切断の領域と隣接するヌクレオチド配列と相同性を有する導入遺伝子を含むドナーポリヌクレオチドが、細胞に導入される。二本鎖切断の存在は、ドナー配列の組み込みを容易にすると示されている。ドナー配列は、物理的に組み込まれてもよく、あるいは、ドナーポリヌクレオチドが、相同組換えを介した切断の修復テンプレートとして使用され、その結果、ドナーと同様のヌクレオチド配列の全部または一部が細胞クロマチンに導入される。したがって、ミクログリア細胞において発現される遺伝子座にある細胞クロマチン中の配列を変更することができ、ある特定の態様では、ドナーポリヌクレオチド中に存在する配列を含むように改変することができる。
【0240】
いくつかの態様では、外因性ヌクレオチド配列(導入遺伝子を含む「ドナー配列」)は、ミクログリア細胞において発現される関心対象の遺伝子座中のゲノム配列と相同であるが同一ではない配列を含有することができ、それにより、相同組換えが促され、関心対象の遺伝子座中に非同一配列が挿入される。いくつかの態様では、関心対象の遺伝子座中の配列と相同なドナー配列の部分は、置き換わるゲノム配列に対して約70~99%(またはその間の任意の整数)の配列同一性を示す。他の態様では、ドナー配列とゲノム配列との間の相同性は、例えば、100個を超える連続塩基対のドナー配列とゲノム配列との間でヌクレオチドが1個だけ異なる場合、99%よりも高い。ドナー配列の非相同部分は、導入遺伝子をコードする新たな配列(viz配列)が関心対象の遺伝子座に導入されるように、関心対象の遺伝子座中に存在しない配列を含有する。いくつかの態様では、非相同配列は、一般に、関心対象の遺伝子座中の配列と相同または同一である50~1,000個の塩基対(またはその間の任意の整数値)または1,000を超える任意の数の塩基対の配列に隣接する。いくつかの態様では、ドナー配列は、最初の配列と相同ではなく、非相同組換え機構によってゲノムに挿入される。
【0241】
ヌクレアーゼは、導入遺伝子の挿入のためにミクログリア細胞において活性である遺伝子を標的とすることができる。いくつかの態様では、ヌクレアーゼは、天然に存在しない、すなわち、DNA結合ドメインおよび/または切断ドメインが操作されている。例えば、天然に存在するヌクレアーゼまたはヌクレアーゼ系のDNA結合ドメインを、選択された標的部位に結合するように変更してもよい(例えば、同族結合部位とは異なる部位に結合するように操作されているメガヌクレアーゼまたは操作された単一ガイドRNAを利用するCRISPR/Cas系)。他の態様では、ヌクレアーゼは、異種DNA結合ドメインおよび切断ドメインを含む(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ;TAL-エフェクターヌクレアーゼ;異種切断ドメインを有するメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)。
【0242】
いくつかの態様では、ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)である。天然に存在するメガヌクレアーゼは、15~40塩基対の切断部位を認識し、一般的に4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-CystボックスファミリーおよびHNHファミリーに分類される。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼとしては、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIが挙げられる。それらの認識配列は既知である。また、米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379-3388;Dujon et al. (1989) Gene 82:115-118;Perler et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 1125-1127;Jasin (1996) Trends Genet. 12:224-228;Gimble et al. (1996) J. Mol. Biol. 263:163-180;Argast et al. (1998) J. Mol. Biol. 280:345-353およびNew England Biolabsのカタログも参照されたい。
【0243】
いくつかの態様では、ヌクレアーゼは、操作された(天然に存在しない)ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)を含む。いくつかの態様では、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性を、非天然標的部位に結合するように操作することができる。例えば、Chevalier et al. (2002) Molec. Cell 10:895-905;Epinat et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:2952-2962;Ashworth et al. (2006) Nature 441:656-659;Paques et al. (2007) Current Gene Therapy 7:49-66;米国特許出願公開第20070117128号を参照されたい。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインを、ヌクレアーゼとの関連で全体的に変更してもよく(すなわち、ヌクレアーゼが同族切断ドメインを含むように)または異種切断ドメインに融合させてもよい。
【0244】
いくつかの態様では、DNA結合ドメインは、天然に存在するまたは操作された(天然に存在しない)TALエフェクターDNA結合ドメインを含む。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2011/0301073号を参照されたい。キサントモナス属の植物病原性細菌は、重要な作物において多くの疾患を引き起こすことが知られている。キサントモナスの病原性は、植物細胞に25を超える異なるエフェクタータンパク質を注入する保存されたIII型分泌(T3S)系に依存する。中でも、これらの注入されたタンパク質は、植物転写活性化因子を模倣し、植物トランスクリプトームを操作する、転写活性化因子様エフェクター(TALE)である(Kay et al. (2007) Science 318:648-651)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含有する。最もよく特徴付けられているTALEの1つは、キサントモナス・キャンペストリス・pv.ベシカトリア(Xanthomonas campestgris pv. Vesicatoria)由来のAvrBs3である(Bonas et al. (1989) Mol Gen Genet 218: 127-136およびWO 2010/079430を参照のこと)。TALEは、タンデム反復の集中したドメインを含有し、各反復は、これらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要なおよそ34個のアミノ酸を含有する。加えて、これらは、核局在化配列および酸性転写活性化ドメインを含有する(概説については、Schornack S, et al. (2006) J Plant Physiol 163(3): 256-272を参照のこと)。加えて、植物病原性細菌のラルストニア・ソラナセアラム(Ralstonia solancearum)では、R.ソラナセアラム次亜種1系統GMI1000および次亜種4系統RS1000において、キサントモナスのAvrBs3ファミリーと相同なbrg11およびhpx17で表される2つの遺伝子が見いだされている(Heuer et al. (2007) Appl and Envir Micro 73(13): 4379-4384を参照のこと)。これらの遺伝子は、互いにヌクレオチド配列において98.9%同一であるが、hpx17の反復ドメインにおける1,575bpの欠失だけが異なる。しかしながら、両遺伝子産物は、キサントモナスのAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性を有する。
【0245】
いくつかの態様では、標的遺伝子座中の標的部位に結合するDNA結合ドメインは、植物病原菌のキサントモナス(Boch et al. (2009) Science 326: 1509-1512およびMoscou and Bogdanove (2009) Science 326: 1501を参照のこと)およびラルストニア(Heuer et al. (2007) Applied and Environmental Microbiology 73(13): 4379-4384を参照のこと)に由来するものと類似したTALエフェクターからの操作されたドメインである;米国特許第8,420,782号および第8,440,431号ならびに米国特許出願公開第2011/0301073号。
【0246】
いくつかの態様では、DNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質を含む。いくつかの態様では、ジンクフィンガータンパク質は、最適な標的部位に結合するように操作されているという点で天然に存在しない。例えば、Beerli et al. (2002) Nature Biotechnol. 20:135-141;Pabo et al. (2001) Ann. Rev. Biochem. 70:313-340;Isalan et al. (2001) Nature Biotechnol. 19:656-660;Segal et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12:632-637;Choo et al. (2000) Curr. Opin. Struct. Biol. 10:411-416;米国特許第6,453,242号;第6,534,261号;第6,599,692号;第6,503,717号;第6,689,558号;第7,030,215号;第6,794,136号;第7,067,317号;第7,262,054号;第7,070,934号;第7,361,635号;第7,253,273号;および米国特許出願公開第2005/0064474号;第2007/0218528号;第2005/0267061号を参照されたく、これらはすべて、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0247】
操作されたジンクフィンガー結合ドメインまたはTALEドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して、新規の結合特異性を有することができる。操作方法としては、合理的設計および様々な種類の選択が挙げられるが、それらに限定されない。合理的設計としては、例えば、三重(または四重)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することを含み、各三重または四重ヌクレオチド配列は、特定の三重または四重配列に結合するジンクフィンガーの1つまたは複数のアミノ酸配列と関連する。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第6,453,242号および第6,534,261号を参照されたい。
【0248】
いくつかの態様では、DNAドメイン(例えば、多指ジンクフィンガータンパク質またはTALEドメイン)を、任意の好適なリンカー配列(例えば、5個以上のアミノ酸長のリンカーを含む)を使用して一緒に連結させてもよい。また、6個以上のアミノ酸長の例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号;第6,903,185号;および第7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載されるDNA結合タンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間に好適なリンカーの任意の組み合わせを含んでもよい。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の強化が、例えば、共有のWO 02/077227に記載されている。
【0249】
DNA結合ドメインならびに融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築方法は、当業者に公知であり、米国特許第6,140,0815号;第789,538号;第6,453,242号;第6,534,261号;第5,925,523号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,200,759;WO 95/19431;WO 96/06166;WO 98/53057;WO 98/54311;WO 00/27878;WO 01/60970 WO 01/88197;WO 02/099084;WO 98/53058;WO 98/53059;WO 98/53060;WO 02/016536およびWO 03/016496ならびに米国特許出願公開第2011/0301073号に詳細に記載されている。
【0250】
任意の好適な切断ドメインをDNA結合ドメインに機能的に連結させて、ヌクレアーゼを形成することができる。例えば、ZFP DNA結合ドメインをヌクレアーゼドメインに融合させることで、ZFN(その意図する核酸標的をその操作された(ZFP)DNA結合ドメインを通じて認識し、ヌクレアーゼ活性によりZFP結合部位近くでそのDNAを断離できる機能的エンティティ)が創出されている。例えば、Kim et al. (1996) Proc Nat'l Acad Sci USA 93(3):1156-1160を参照されたい。さらに最近では、様々な生物におけるゲノム改変のためにZFNが使用されている。例えば、米国特許出願公開第2003/0232410号;第2005/0208489号;第2005/0026157号;第2005/0064474号;第2006/0188987号;第2006/0063231号;および国際公開公報WO 07/014275を参照されたい。同じく、TALE DNA結合ドメインをヌクレアーゼドメインに融合させて、TALENが創出されている。例えば、米国特許出願公開第2011/0301073号を参照されたい。
【0251】
上述したように、切断ドメインは、DNA結合ドメインと異種であってもよい。例えばジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ由来の切断ドメイン、またはTALEN DNA結合ドメインおよび切断ドメイン、またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼ由来の切断ドメイン。異種切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインが由来し得る例示的なエンドヌクレアーゼとしては、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるが、それらに限定されない。例えば、2002-2003 Catalogue, New England Biolabs, Beverly, Mass.;および Belfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379-3388を参照されたい。DNAを切断する追加の酵素が既知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;リョクトウヌクレアーゼ;膵臓DNase I;小球菌ヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;またLinn et al. (eds.) Nucleases, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1993)も参照されたい。これらの酵素(またはその機能的断片)の1つまたは複数を、切断ドメインおよび切断ハーフドメインの供給源として使用することができる。
【0252】
同様に、切断ハーフドメインは、上に示したような、切断活性に二量体化を必要とする任意のヌクレアーゼまたはその部分に由来することができる。一般に、融合タンパク質が切断ハーフドメインを含む場合、切断には2つの融合タンパク質が必要である。あるいは、2つの切断ハーフドメインを含む単一タンパク質を使用することができる。2つの切断ハーフドメインは、同じエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来することができるか、または、各切断ハーフドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来することができる。加えて、2つの融合タンパク質がそれぞれの標的部位に結合すると、例えば二量体化によって切断ハーフドメインが機能的切断ドメインを形成可能にする空間的配向に切断ハーフドメインが互いに置かれるように、2つの融合タンパク質の標的部位が互いに配置されることが好ましい。したがって、ある特定の態様では、標的部位の近傍端は、5~8ヌクレオチドまたは15~18ヌクレオチド隔てられている。しかしながら、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が2つの標的部位間に介在することができる(例えば、2~50ヌクレオチド対またはそれ以上)。一般に、切断の部位は、標的部位間にある。
【0253】
いくつかの態様では、二量体化した切断ハーフドメインは、標的とされるDNAが完全に切断されるのではなく一方の鎖上にニックが形成されるように、1つの不活性な切断ドメインと1つの活性な切断ドメインを含む(「ニッカーゼ」、米国特許出願公開第2010/0047805号を参照のこと)。他の態様では、両方のDNA鎖上にニックが形成された標的を切断するために、そのようなニッカーゼの2つのペアが使用される。
【0254】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在しており、DNAに(認識部位で)配列特異的に結合することができ、結合部位でまたはその近くでDNAを切断することができる。ある特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から離れた部位でDNAを切断し、分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素のFok Iは、一方の鎖上でその認識部位から9ヌクレオチドで、他方の鎖上でその認識部位から13ヌクレオチドで、DNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;第5,436,150号および第5,487,994号;ならびにLi et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4275-4279;Li et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2764-2768;Kim et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:883-887;Kim et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:31,978-31,982を参照されたい。一態様では、融合タンパク質は、少なくとも1つのIIS型制限酵素由来の切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)および1つまたは複数のジンクフィンガー結合ドメイン(操作されていても、いなくてもよい)を含む。
【0255】
切断ドメインが結合ドメインから分離可能である例示的なIIS型制限酵素は、Fok Iである。この特定の酵素は、二量体として活性である。Bitinaite et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 10,570-10,575。したがって、本開示の目的として、開示される融合タンパク質において使用されるFok I酵素の部分は、切断ハーフドメインと見なされる。したがって、ジンクフィンガー-Fok I融合物を使用した細胞配列の標的化二本鎖切断および/または標的化置換のために、各々Fok I切断ハーフドメインを含む2つの融合タンパク質を使用して、触媒活性な切断ドメインを再構成することができる。あるいは、1つのDNA結合ドメインおよび2つのFok I切断ハーフドメインを含有する単一ポリペプチド分子を使用することもできる。
【0256】
切断ドメインまたは切断ハーフドメインは、機能的切断ドメインを形成するために、切断活性を保持するまたは多量体化(例えば、二量体化)する能力を保持する、タンパク質の任意の部分であることができる。
【0257】
例示的なIIS型制限酵素は、その全体が本明細書に組み込まれる国際公開公報WO 07/014275に記載されている。追加の制限酵素はまた、分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインも含有し、本開示によってこれらが想定される。例えば、Roberts et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:418-420を参照されたい。
【0258】
ある特定の態様では、切断ドメインは、例えば、米国特許出願公開第2005/0064474号;第2006/0188987号および第2008/0131962号(それらのすべての開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)に記載されていように、ホモ二量体化を最小化または抑制する1つまたは複数の操作された切断ハーフドメイン(二量体化ドメイン変異体とも称される)を含む。Fok Iの446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537、および538位のアミノ酸残基はすべて、Fok I切断ハーフドメインの二量体化に影響する標的である。
【0259】
偏性のヘテロ二量体を形成するFok Iの例示的な操作された切断ハーフドメインとしては、第1の切断ハーフドメインがFok Iの490および538位のアミノ酸残基に変異を含み、第2の切断ハーフドメインがアミノ酸残基486および499に変異を含む、ペアが挙げられる。
【0260】
したがって、一態様では、490における変異は、Glu(E)をLys(K)に置換し;538における変異は、Iso(I)をLys(K)に置換し;486における変異は、Gln(Q)をGlu(E)に置換し;そして、499位における変異は、Iso(I)をLys(K)に置換する。具体的には、本明細書に記載される操作された切断ハーフドメインは、1つの切断ハーフドメインにおいて490位(E→K)および538位(I→K)を変異させて「E490K:1538K」と表される操作された切断ハーフドメインを生成することによって、別の切断ハーフドメインにおいて486位(Q→E)および499位(I→L)を変異させて「Q486E:I499L」と表される操作された切断ハーフドメインを生成することによって調製された。本明細書に記載される操作された切断ハーフドメインは、異常な切断が最小化または無効化されている偏性のヘテロ二量体変異体である。例えば、米国特許出願公開第2008/0131962号を参照されたく、その開示は、参照によりその全体がすべての目的で組み入れられる。
【0261】
いくつかの態様では、操作された切断ハーフドメインは、486、499および496位(野生型FokIに対して付番された)に変異、例えば、486位の野生型Gln(Q)残基をGlu(E)残基に、499位の野生型Iso(I)残基をLeu(L)残基に、496位の野生型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基に置換する、変異(それぞれ「ELD」および「ELE」ドメインとも称される)を含む。他の態様では、操作された切断ハーフドメインは、490、538および537位(野生型FokIに対して付番された)に変異、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基に、538位の野生型Iso(I)残基をLys(K)残基に、537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基に置換する、変異(それぞれ「KKK」および「KKR」ドメインとも称される)を含む。他の態様では、操作された切断ハーフドメインは、490および537位(野生型FokIに対して付番された)に変異、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基に、537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基に置換する、変異(それぞれ「KIK」および「KIR」ドメインとも称される)を含む(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2011/0201055号を参照されたい)。本明細書に記載される操作された切断ハーフドメインは、任意の好適な方法を使用して、例えば、米国特許出願公開第2005/0064474号;第2008/0131962号;および第2011/0201055号に記載されているような野生型切断ハーフドメイン(Fok I)の部位特異的変異誘発によって調製することができる。
【0262】
いくつかの態様では、ヌクレアーゼは、いわゆる「スプリット-酵素」技術を使用して、核酸標的部位においてインビボでアセンブルされてもよい(例えば、米国特許出願公開第2009/0068164号を参照のこと)。そのようなスプリット酵素の構成要素は、別個の発現構築物上でそれぞれ発現されてもよく、または、1つのオープンリーディングフレーム内で、個々の構成要素が、例えば、自己切断2AペプチドまたはIRES配列によって隔てられるように連結させることができる。構成要素は、個々のジンクフィンガー結合ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであり得る。
【0263】
ヌクレアーゼは、例えば、WO 2009/042163および2009/0068164に記載されていような酵母ベースの染色体系において、使用前に活性についてスクリーニングすることができる。ヌクレアーゼ発現構築物は、当技術分野において公知の方法を使用して容易に設計することができる。例えば、米国特許出願公開第2003/0232410号;第2005/0208489号;第2005/0026157号;第2005/0064474号;第2006/0188987号;第2006/0063231号;および国際公開公報WO 07/014275を参照されたい。ヌクレアーゼの発現は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えば、ラフィノースおよび/またはガラクトースの存在下で活性化(抑制解除)され、グルコースの存在下で抑制されるガラクトキナーゼプロモーターの制御下にあってもよい。
【0264】
いくつかの態様では、エンドヌクレアーゼ試薬は、とりわけ、Doudna, J.ら(Science 346 (6213): 1077) (2014))およびZetsche, B.ら(Cell 163(3): 759-771 (2015))による教示の通り、Cas9またはCpf1などのRNAガイドエンドヌクレアーゼとの関連で使用されるRNAガイドであり、その教示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0265】
いくつかの態様では、細胞は、CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)/Cas(CRISPR関連)ヌクレアーゼ系を使用して遺伝子改変される。CRISPR/Casは、ゲノム操作に使用することができる細菌系をベースとした操作されたヌクレアーゼ系である。それは、多くの細菌および古細菌の獲得免疫応答の一部に基づく。ウイルスまたはプラスミドが細菌に侵入すると、侵入体のDNAのセグメントが「免疫」応答によってCRISPR RNA(crRNA)に変換される。このcrRNAは、次いで、部分的に相補的な領域を通じて、tracrRNAと呼ばれる別の種類のRNAと会合して、Cas9ヌクレアーゼを、「プロトスペーサー」と呼ばれる標的DNA中のcrRNAと相同な領域に導く。Cas9は、DNAを切断して、crRNA転写物内に含有される20ヌクレオチドガイド配列によって指定される部位のDSBで平滑末端を生成する。Cas9は、部位特異的なDNA認識および切断のために、crRNAとtracrRNAの両方を必要とする。この系は、現在、crRNAとtracrRNAを組み合わせて1つの分子(「単一ガイドRNA」)にできるように操作されており、またCas9ヌクレアーゼが任意の所望の配列を標的とするように導くために単一ガイドRNAのcrRNA相当部分を操作することができる(Jinek et al. (2012) Science 337, p. 816-821, Jinek et al., (2013), eLife 2:e00471、およびDavid Segal, (2013) eLife 2:e00563を参照されたい)。
【0266】
系のRNA構成要素をコードするCRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)遺伝子座、およびタンパク質をコードするcas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansen et al., 2002. Mol. Microbiol. 43: 1565-1575;Makarova et al., 2002. Nucleic Acids Res. 30: 482-496;Makarova et al., 2006. Biol. Direct 1: 7;Haft et al., 2005. PLoS Comput. Biol. 1: e60)は、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の遺伝子配列を構成する。微生物宿主におけるCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子ならびにCRISPR媒介核酸切断の特異性をプログラム可能な非コードRNA要素の組み合わせを含有する。
【0267】
II型CRISPRは、最もよく特徴付けられている系の1つであり、4つの逐次的な工程で標的化DNA二本鎖切断を行う。第1に、2つの非コードRNAであるpre-crRNAアレイおよびtracrRNAがCRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAがpre-crRNAの反復領域にハイブリダイズし、pre-crRNAから個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのプロセシングを媒介する。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体が、crRNA上のスペーサーと、標的認識のための追加要件であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の次の標的DNA上のプロトスペーサーとの間のワトソン-クリック塩基対形成を介して、Cas9を標的DNAに導く。最後に、Cas9が標的DNAの切断を媒介して、プロトスペーサー内で二本鎖切断を創出する。CRISPR/Cas系の活性は、3つの工程を含む:(i)「適応」と呼ばれるプロセスにおける将来の攻撃を防ぐための外来DNA配列のCRISPRアレイへの挿入、(ii)関連タンパク質の発現、ならびにアレイの発現およびプロセシング、それに続く(iii)外来核酸とのRNA媒介干渉。したがって、細菌細胞において、いわゆる「Cas」タンパク質のいくつかが、CRISPR/Cas系の自然の機能に関与し、外来DNAの挿入などの機能において役割を果たす。
【0268】
ある特定の態様では、Casタンパク質は、天然に存在するCasタンパク質の「機能的誘導体」であってもよい。天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列ポリペプチドと共通した定性的な生物学的特性を有する化合物である。「機能的誘導体」としては、非限定的に、天然配列の断片ならびに天然配列ポリペプチドおよびその断片の誘導体が挙げられるが、但し、これらは、対応する天然配列ポリペプチドと共通した生物学的活性を有するものとする。本明細書において想定される生物学的活性は、DNA基質を断片に加水分解する機能的誘導体の能力である。「誘導体」という用語は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、共有結合修飾、およびその融合体を共に包含する。Casポリペプチドまたはその断片の好適な誘導体としては、Casタンパク質またはその断片の変異体、融合体、共有結合修飾が挙げられるが、それらに限定されない。Casタンパク質またはその断片だけでなく、Casタンパク質またはその断片の誘導体も含む、Casタンパク質は、細胞から得てもよく、または化学的に合成してもよく、またはこれらの2つの手順の組み合わせによって得てもよい。細胞は、天然でCasタンパク質を産生する細胞であってもよく、または、天然でCasタンパク質を産生し、内因性Casタンパク質をより高い発現レベルで産生するようにもしくは外部から導入された核酸(その核酸は、内因性Casと同じまたは異なるCasをコードする)からCasタンパク質を産生するように遺伝子操作された細胞であってもよい。いくつかの場合において、細胞は、天然でCasタンパク質を産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝子操作されている。また、本発明の意義において、Zetsche, B.ら(Cell 163(3): 759-771 (2015))によって教示されるようなエンドヌクレアーゼCpf1も、RNAガイドエンドヌクレアーゼに包含される。
【0269】
Cas9関連CRISPR/Cas系は、2つのRNA非コード構成要素:同一の直接反復(DR)によって離間されたヌクレアーゼガイド配列(スペーサー)を含有する、tracrRNAおよびpre-crRNAアレイを含む。CRISPR/Cas系を使用してゲノム操作を達成するために、これらのRNAの両方の機能が存在しなければならない(Cong et al., (2013) Sciencexpress 1/10.1126/science 1231143を参照のこと)。いくつかの態様では、tracrRNAおよびpre-crRNAは、別々の発現構築物を介してまたは別々のRNAとして供給される。他の態様では、キメラRNAが構築され、この場合、操作された成熟crRNA(標的特異性を付与する)がtracrRNA(Cas9との相互作用を供給する)に融合されてキメラcr-RNA-tracrRNAハイブリッド(単一ガイドRNAとも呼ばれる)が創出される。
【0270】
送達方法
ヌクレアーゼ、これらのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドならびに細胞を遺伝改変するための本明細書に記載されるタンパク質および/またはポリヌクレオチドを含む組成物は、任意の好適な手段によってインビボまたはエクスビボ送達され得る。
【0271】
いくつかの態様では、ポリペプチドは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞への導入の結果として、細胞内にてインサイチューで合成されてもよい。いくつかの態様では、ポリペプチドは、細胞外で産生させ、その後に細胞に導入することができる。細胞にポリヌクレオチド構築物を導入するための方法は、当技術分野において公知であり、非限定的な例として、ポリヌクレオチド構築物が細胞のゲノムに組み込まれる安定な形質転換法、ポリヌクレオチド構築物が細胞のゲノムに組み込まれない一過性の形質転換法およびウイルス媒介法が挙げられる。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、組換えウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス)、リポソームなどによって細胞に導入してもよい。例えば、一過性の形質転換法としては、例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションまたは粒子衝突が挙げられる。細胞内で発現させるという観点から、ポリヌクレオチドをベクター、より特定するとプラスミドまたはウイルスに含めることができる。
【0272】
いくつかの態様では、細胞に、エンドヌクレアーゼ試薬をコードする核酸がトランスフェクトされる。いくつかの態様では、エンドヌクレアーゼ試薬の80%が、トランスフェクション後30時間、好ましくは24時間、より好ましくは20時間までに分解される。
【0273】
いくつかの態様では、mRNAによってコードされるエンドヌクレアーゼを、例えば、Kore A.L.ら(Locked nucleic acid (LNA)-modified dinucleotide mRNA cap analogue: synthesis, enzymatic incorporation, and utilization (2009) J Am Chem Soc. 131 (18):6364-5)によって記載されているように、当技術分野において周知の技術に従ってその安定性を増強するキャップを備えて合成することができる。
【0274】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物はまた、CRISPR/Cas系、ジンクフィンガーまたはTALENタンパク質の1つまたは複数をコードする配列を含有するベクターを使用して送達してもよい。プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどを含むがこれらに限定されない、任意のベクター系を使用してもよい。また、米国特許第6,534,261号;第6,607,882号;第6,824,978号;第6,933,113号;第6,979,539号;第7,013,219号;および第7,163,824号も参照されたく、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。さらに、これらのベクターのいずれもが、処置に必要な配列の1つまたは複数を含んでもよいことが明らかであろう。したがって、1つまたは複数のヌクレアーゼおよびドナー構築物が細胞に導入される場合、ヌクレアーゼおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、同じベクター上または異なるベクター上に担持され得る。複数のベクターが使用される場合、各ベクターは、1つまたは複数のヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物をコードする配列を含み得る。
【0275】
従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子移入法を使用して、ヌクレアーゼをコードする核酸およびドナー構築物を細胞(例えば、哺乳動物細胞)および標的組織に導入することができる。
【0276】
ウイルスベクター送達系としては、細胞への送達後にエピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有するDNAおよびRNAウイルスが挙げられる。遺伝子療法手順の概説については、Anderson, Science 256:808-813 (1992);Nabel & Feigner, TIBTECH 11:211-217 (1993);Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162-166 (1993);Dillon, TIBTECH 11:167-175 (1993);Miller, Nature 357:455-460 (1992);Van Brunt, Biotechnology 6(10):1149-1154 (1988);Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36 (1995);Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin 51(1):31-44 (1995);Haddada et al., in Current Topics in Microbiology and Immunology, Doerfler and Bohm (eds.) (1995);およびYu et al., Gene Therapy 1:13-26 (1994)を参照されたい。
【0277】
いくつかの態様では、核酸の非ウイルス送達の方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリステック、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、裸のRNA、キャップRNA、人工ビリオン、およびDNAの薬剤強化取り込みが挙げられる。例えば、Sonitron 2000システム(Rich-Mar)を使用したソノポレーションも、核酸の送達に使用することができる。
【0278】
いくつかの態様では、細胞にトランスフェクトするためにエレクトロポレーション工程を使用することができる。いくつかの態様では、これらの工程は、典型的には、参照により組み入れられるWO 2004/083379の特に23ページ25行から29ページ11行に記載されているように、平行平板電極間に100ボルト/cm超5,000ボルト/cm未満のパルス電場を処理容積全体にわたって実質的に均一に生み出す平行平板電極を含む、密閉チャンバー内で行われる。1つのそのようなエレクトロポレーションチャンバーは、好ましくは、電極ギャップの2乗(cm2)をチャンバー容積(cm3)で割った商によって定義される幾何因子(geometric factor)(cm-1)を有し、ここで、幾何因子は、0.1cm-1未満またはそれに等しく、細胞と配列特異的試薬の懸濁液は、0.01~1.0ミリジーメンスに及ぶ範囲の導電率を有するように調整された培地中に存在する。一般に、細胞の懸濁液は、1つまたは複数のパルス電場を受ける。この方法により、懸濁液の処理容積は拡大縮小可能であり、チャンバー内での細胞の処理時間は実質的に均一である。
【0279】
いくつかの態様では、異なる導入遺伝子または複数コピーの導入遺伝子を1つのベクターに含めることができる。ベクターは、2Aペプチドをコードする配列などのリボソームスキップ配列をコードする核酸配列を含むことができる。ピコルナウイルスのアフトウイルス亜群において特定された2Aペプチドは、コドンによってコードされる2つのアミノ酸間にペプチド結合を形成することなく、1つのコドンから次のコドンへリボソーム「スキップ」を引き起こす(Donnelly et al., J. of General Virology 82: 1013-1025 (2001);Donnelly et al., J. of Gen. Virology 78: 13-21 (1997);Doronina et al., Mol. And. Cell. Biology 28(13): 4227-4239 (2008);Atkins et al., RNA 13: 803-810 (2007)を参照のこと)。
【0280】
「コドン」とは、リボソームによって1つのアミノ酸残基へと翻訳されるmRNA上(またはDNA分子のセンス鎖上)の3つのヌクレオチドのことを意味する。したがって、ポリペプチドがフレーム内にある2Aオリゴペプチド配列によって隔てられている場合に、2つのポリペプチドをmRNA内の単一の連続したオープンリーディングフレームから合成することができる。そのようなリボソームスキップ機構は、当技術分野において周知であり、単一のメッセンジャーRNAによってコードされるいくつかのタンパク質の発現のためにいくつかのベクターによって使用されることが知られている。
【0281】
一態様では、本発明による配列特異的試薬をコードするポリヌクレオチドは、細胞に、例えばエレクトロポレーションによって直接導入される、mRNAであることができる。いくつかの態様では、パルス電場の使用によって細胞への材料送達のために生きている細胞を一時的に透過性にすることができるcytoPulse技術を使用して、細胞をエレクトロポレーションすることができる。PulseAgile(BTX Havard Apparatus, 84 October Hill Road, Holliston, Mass. 01746, USA)エレクトロポレーション波長の使用に基づくこの技術は、パルス持続時間、強度ならびにパルス間隔の正確な制御を与える(米国特許第6,010,613号および公開国際出願WO 2004/083379を参照のこと)。これらのパラメーターはすべて、細胞死率が最小でトランスフェクション効率の高い最良な条件に到達するように変更することができる。最初の高い電場パルスによって膜孔形成が可能となり、その後のより低い電場パルスによってポリヌクレオチドを細胞に移動させることが可能になる。
【0282】
追加の例示的な核酸送達系としては、Amaxa Biosystems(Cologne, Germany)、Maxcyte, Inc.(Rockville, Md.)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston, Mass.)およびCopernicus Therapeutics Inc.によって提供されるもの(例えば、米国特許第6,008,336号を参照のこと)が挙げられる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号;第4,946,787号;および第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、TransfectamおよびLipofectin)。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに好適な陽イオン性および中性の脂質としては、Felgner、WO 91/17424、WO 91/16024のものが挙げられる。
【0283】
免疫脂質(immunolipid)複合体などの標的化リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal, Science 270:404-410 (1995);Blaese et al., Cancer Gene Ther. 2:291-297 (1995);Behr et al., Bioconjugate Chem. 5:382-389 (1994);Remy et al., Bioconjugate Chem. 5:647-654 (1994);Gao et al., Gene Therapy 2:710-722 (1995);Ahmad et al., Cancer Res. 52:4817-4820 (1992);米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、および第4,946,787号を参照のこと)。
【0284】
いくつかの態様では、ドナー配列および/または配列特異的試薬は、ウイルスベクターによってコードされる。いくつかの態様では、アデノウイルスベースの系を使用することができる。アデノウイルスベースのベクターは、多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターにより、高力価および高レベルの発現が得られている。このベクターは、比較的単純な系で大量に産生することができる。また、アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターが、例えば、核酸およびペプチドのインビトロ産生において、ならびにインビボおよびエクスビボ遺伝子療法手順のために、細胞に標的核酸を形質導入するために使用される(例えば、West et al., Virology 160:38-47 (1987);米国特許第4,797,368号;WO 93/24641;Kotin, Human Gene Therapy 5:793-801 (1994);Muzyczka, J. Clin. Invest. 94:1351 (1994)を参照のこと)。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号;Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260 (1985);Tratschin, et al., Mol. Cell. Biol. 4:2072-2081 (1984);Hermonat & Muzyczka, PNAS 81:6466-6470 (1984);および Samulski et al., J. Virol. 63:03822-3828 (1989) を含め、多数の刊行物に記載されている。
【0285】
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠陥のある非病原性のパルボウイルスアデノ随伴2型ウイルスをベースとした有望な代替遺伝子送達系である。すべてのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAV 145bpの逆位末端反復のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入細胞のゲノムへの組み込みによる効率的な遺伝子移入および安定な導入遺伝子送達が、このベクター系の重要な特徴である(Wagner et al., Lancet 351:9117 1702-3 (1998), Kearns et al., Gene Ther. 9:748-55 (1996))。非限定的な例として、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV 8.2、AAV9およびAAV rh10を含む他のAAV血清型、ならびにAAV2/8、AAV2/5およびAAV2/6などの偽型AAVも、本発明に従って使用することができる。
【0286】
いくつかの態様では、細胞に、1つまたは複数のカスパーゼ阻害剤の有効量をAAVベクターと組み合わせて投与する。
【0287】
ヌクレアーゼをコードする配列およびドナー構築物は、同じまたは異なる系を使用して送達することができる。例えば、ドナーポリヌクレオチドは、ウイルスベクターによって運ぶことができ、一方で、1つまたは複数のヌクレアーゼは、mRNA組成物として送達することができる。
【0288】
いくつかの態様では、1つまたは複数の試薬は、ナノ粒子を使用して細胞に送達することができる。いくつかの態様では、ナノ粒子は、CD105などのHSC表面タンパク質に対して特定の親和性を有する抗体(Uniprot #P17813)などのリガンドで被覆される。いくつかの態様では、ナノ粒子は、ポリヌクレオチド形態の配列特異的試薬がポリベータアミノエステルのポリマーと複合体を形成し、ポリグルタミン酸(PGA)で被覆されている、生分解性のポリマーナノ粒子である。
【0289】
内因性イントロンゲノム遺伝子座へのエクソン組み込みのための戦略
特定の態様として、本特許出願は、外因性コード配列を好ましくはゲノム領域の第1と第2の内因性コーディングエクソン間に組み込むことを可能にする、外因性コード配列を内因性イントロンゲノム領域に組み込むための方法を提示する。
【0290】
前記方法は、例えば、図2に図示されるように、前記ゲノム領域への前記エクソンが、一般に、第1のエクソンの上流に位置する共通の内因性プロモーターから活性に転写される場合に、特に有用である。
【0291】
前記方法は、外因性コード配列と一緒に転写を可能にしながら、内因性エクソン領域をコードする転写物の崩壊を防ぐという利点を有する。
【0292】
一般に、前記方法は、以下の工程の1つまたは複数を含む:
- 内因性イントロンゲノム領域を含む細胞を提供する工程、
- 前記細胞に、外因性コード配列を含むポリヌクレオチドテンプレートを導入する工程であって、
前記ポリヌクレオチドテンプレートが、5'から3'の方向に、
・挿入部位の上流のイントロン配列と相同である、第1の相同ポリヌクレオチド配列であって、一方で好ましくは分岐点を含まない、前記の第1のポリヌクレオチド配列;
・好ましくは分岐点およびスプライスアクセプターを含む、第1の強いスプライス部位配列;
・2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
・関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
・2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
・任意で書き換えられた、第1のエクソンのコード配列のコピー;
・好ましくはスプライスドナーを含む、第2の強いスプライス部位配列;および
・挿入部位の下流のイントロン配列と相同である、第2の相同ポリヌクレオチド配列
を含むまたはからなる、工程;
- 外因性コード配列が、第1のエクソンおよび好ましくは第2の(内因性)エクソンまたはそれらのコピーと共に、前記内因性遺伝子座で転写されるように、好ましくは相同組換えによる、前記イントロン配列への前記外因性ポリヌクレオチドの組み込みを誘導する工程。
【0293】
一般に、第1のエクソンのコピーの下流にある第2の相同ポリヌクレオチドは、第2のエクソンの適切なRNAスプライシングおよび発現を可能にするために、分岐点、好ましくは、内因性配列内に最初に存在する分岐点を含む。
【0294】
好ましい態様として、前記の第1のエクソンの配列のコピーは、コドン最適化のためにかつ/または内因性遺伝子座配列とのヌクレオチド配列相同性を低下させるために、ポリヌクレオチドレベルで書き換えることができる。
【0295】
上記工程の各々は、当技術分野で周知の方法を使用することによって行うことができる。好ましい態様によれば、またHSCまたはそれから分化した細胞による治療用タンパク質の送達に従えば、細胞は、例えば、参照により組み入れられるWO2018/189360に記載されている方法のように、患者自身、ドナーまたはiPS細胞を起源とするものであり得る。
【0296】
本方法の工程は、一般に、エクスビボで行われるが、このことは、細胞がヒトの体外で培養および製造されることを意味する。一般に、細胞は、生殖細胞またはヒト胚から生じた細胞ではなく、該方法は、ヒトの生殖細胞系列または遺伝的同一性を改変することを意図していない。
【0297】
相同組換えによる前記イントロン配列へのポリヌクレオチドテンプレートの組み込みは、挿入部位でのレアカットエンドヌクレアーゼの切断によって容易になり得る。したがって、エクソン組み込みのための前記方法はこのように、挿入部位で前記イントロン配列を切断するために本出願において既に記載したような、レアカットエンドヌクレアーゼ、特にTALE-ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、CRISPRを、細胞に導入するかまたは細胞で発現させる工程を含んでもよい。
【0298】
したがって、挿入部位は、一般に、前記レアカットエンドヌクレアーゼの標的配列によって決定される。したがって、挿入部位は、レアカットエンドヌクレアーゼ標的配列内に含まれ、それ自体が、選択された遺伝子座のイントロン配列に、より特定すると本明細書に開示されるようなHSCの操作のための本発明によって想定される遺伝子座に含まれる。
【0299】
好ましい遺伝子座は、少なくとも2つの内因性エクソン配列を含む治療用タンパク質の発現および送達のために選択されたもの、特に、CXCR3(SEQ ID NO:76)、CD11B(SEQ ID NO:107)、S100A9(SEQ ID NO:148)、TMEM119(SEQ ID NO:189)、MERTK(SEQ ID NO:190)、CD164(SEQ ID NO:191)、TLR7(SEQ ID NO:192)、CD14(SEQ ID NO:193)、FCGR3A(CD16)(SEQ ID NO:194)、TBXAS1(SEQ ID NO:195)、DOK3(SEQ ID NO:196)、ABCA1(SEQ ID NO:197)、TMEM195(SEQ ID NO:198)、TLR4(SEQ ID NO:199)、MR1(SEQ ID NO:200)、FCGR1A(CD64)(SEQ ID NO:201)、CSF3R(SEQ ID NO:202)、FGD4(SEQ ID NO:203)およびTSPAN14(SEQ ID NO:204)、およびB2M(SEQ ID NO:205)から選択されるイントロン配列の1つである。
【0300】
外因性コード配列を組み込むために使用されるポリヌクレオチドテンプレートは、通常、上で言及したイントロン配列と相同な第1および第2のポリヌクレオチド配列、または前記ポリヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90もしくはさらに好ましくは少なくとも95%同一のものを含む。第1および第2の相同配列は、一般に、それぞれ、挿入部位の上流および下流にある内因性配列と、好ましくは、50塩基対(bp)超にわたって、より好ましくは100bp、200bp、500bp超にわたって、さらにより好ましくは50~500bp相同である。
【0301】
提唱された方法の通り、内因性イントロンゲノム配列に挿入しようとするポリヌクレオチドテンプレートは、外因性コード配列の上流および下流に強いスプライス部位配列を含む。スプライス部位は、スプライセオソームによってエクソンが特定されて介在するイントロンが除去される、特定のモチーフである。外因性スプライス部位配列は、クローニングによって、または代替的に、相同配列に変異を導入することによって導入することができる。強いスプライス部位を特定または設計する基準およびそのような配列の例は、文献、例えば、Shepard, P. Jら[Efficient internal exon recognition depends on near equal contributions from the 3' and 5' splice sites (2011) Nucleic acids research, 39(20), 8928-37]に提供される。
【0302】
第1の相同配列(すなわち、上流相同配列または左相同アーム)は、一般に、第2のエクソン配列の10~100bp、好ましくは20~50bp上流に一般に位置する分岐点を除外するように選択される。分岐点配列のヒトコンセンサスは、一般にyUnAyであり、ここで、Aは、分岐点であり、小文字のピリミジン(「y」)は、大文字のUおよびAほど十分に保存されていない。分岐点は、通常、イントロンの3'端の21~34ヌクレオチド上流に位置するが、いわゆるポリピリミジントラクトは、分岐点の4~24ヌクレオチド下流にまたがる[Gao, K., et al. (2008). Human branch point consensus sequence is yUnAy. Nucleic acids research, 36(7), 2257-67]。
【0303】
2A自己切断ペプチド、または2Aペプチドは、細胞内で組換えタンパク質の切断を誘導できる18~22aa長のペプチドの一クラスである。2Aペプチドは、ウイルスのゲノム内の2A領域に由来する。2Aペプチドファミリーの4つのメンバー:P2A、E2A、F2AおよびT2Aが、生命科学の研究において度々使用されている。より一般的に使用されているF2Aは、口蹄疫ウイルス18に由来する;E2Aは、ウマ鼻炎Aウイルスに由来する;P2Aは、ブタテッショウウイルス-1 2Aに由来する;T2Aは、トーセア・アシグナウイルス(Thosea asigna virus)2Aに由来する[Liu et al. (2017). “Systematic comparison of 2A peptides for cloning multi-genes in a polycistronic vector”. Scientific Reports. 7 (1)]。
【0304】
外因性コード配列を内因性イントロンゲノム領域に組み込むための本方法は、HSCに制限されずあらゆる細胞型に広く適用可能であり、内因性遺伝子座に挿入できる外因性コード配列の種類を問わないため、それ自体を発明と見なすことができる。
【0305】
しかしながら、前記方法は、本明細書に記載されるような治療用細胞を産生させるためにとりわけHSCに適合することが分かっている。遺伝子の修正されたコピーまたは追加のコピーを組み込みその後の分化したHSCにおいて発現させて遺伝的欠損のクロスコレクションを得るために、上記方法を使用することが大いに有利である。実際に、このことによって、挿入によって標的化された内因性遺伝子座の発現が可能な限り保存され、したがって、細胞分化および生じた細胞の細胞機能が妨害されにくい。これは、とりわけ、脳においてミクログリア機能を発揮するためにマクロファージへと分化するように意図された操作されたHSCを用いて企図される。
【0306】
したがって、本発明は、外因性コード配列を内因性イントロンゲノム領域に組み込むための上述かつ図2に図示された方法によって得ることが可能な細胞、とりわけ、遺伝子療法に特化した、とりわけ欠損アレルのクロスコレクションのための細胞を包含する。この遺伝子挿入は、図14により具体的に記載されているように、HSCにおいて、より分化した段階、例えば、疾患の処置のために、治療用タンパク質の脳への送達に使用される細胞、特にマクロファージおよびミクログリア細胞での発現を得るために行うことができる。
【0307】
先に述べたように、本発明は、内因性イントロンゲノム領域または遺伝子座に存在する内因性エクソン、とりわけ、挿入部位の下流の配列の発現を不活化することなく、この遺伝子座に外因性コード配列を組み込むための一般的方法に向けられる。したがって、この方法は、導入遺伝子ゲノム組み込みにおいて一般的に観察されるいわゆる「対極効果」を防ぐ。
【0308】
前記方法は、以下の工程を含む:
- 内因性イントロンゲノム領域を含む細胞を提供する工程、
- 前記細胞に、外因性コード配列を含むポリヌクレオチドテンプレートを導入する工程であって、前記ポリヌクレオチドテンプレートが、
(a)挿入部位の上流のイントロン配列と相同である、第1の相同ポリヌクレオチド配列、
(b)分岐点およびスプライスアクセプターを含む、第1の強いスプライス部位配列;
(c)2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
(d)関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
(e)2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
(f)第1のエクソンのコード配列のコピー;
(g)スプライスドナーを含む第2の強いスプライス部位配列;および
(h)挿入部位の下流のイントロン配列と相同である、第2の相同ポリヌクレオチド配列
を含む、工程;ならびに任意で
- 外因性コード配列が、第1のエクソンまたはそのコピーと共に、前記内因性遺伝子座で転写されるように、好ましくは相同組換えによる、前記イントロン配列への前記外因性ポリヌクレオチドの組み込みを誘導する工程。
【0309】
本発明の方法によって、上記組み込みは、例えば少なくとも1つの造血細胞系列への外因性コード配列の発現を得るために造血幹細胞(HSC)に導入することができる、人工エクソン(Artex)を形成する。
【0310】
いくつかの好ましい態様では、前記外因性コード配列は、図14に示されるような前駆細胞、赤血球、顆粒球、巨核球、単球、B細胞および/またはT細胞において発現させるための、遺伝子疾患を処置するための関心対象のタンパク質をコードする。
【0311】
いくつかの態様によれば、この方法は、FANCA、FANCC、またはFANCGから選択されるタンパク質を前駆細胞において発現させるために使用される。
【0312】
いくつかの態様によれば、この方法は、HBB、PKLR、またはRPS19から選択されるタンパク質を赤血球において発現させるために使用される。
【0313】
いくつかの態様によれば、この方法は、HAX1、CYBA、CYBB、NCF1、NCF2、またはNCF4から選択されるタンパク質を顆粒球において発現させるために使用される。
【0314】
いくつかの態様によれば、この方法は、Factor 8、Factor 9、Factor 11、またはWASから選択されるタンパク質を巨核球において発現させるために使用される。
【0315】
いくつかの態様によれば、この方法は、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、およびCDKL5から選択されるタンパク質を単球において発現させるために使用される。
【0316】
いくつかの態様によれば、この方法は、ADA、IL2RG、WAS、またはBTKから選択されるタンパク質をB細胞において発現させるために使用される。
【0317】
いくつかの態様によれば、この方法は、ADA、IL2RG、WAS、BTK、またはCCR5から選択されるタンパク質をT細胞において発現させるために使用される。
【0318】
したがって、前記外因性コード配列の発現は、関心対象のタンパク質を生じ、内因性欠損タンパク質のクロスコレクションが可能となる。この方法は、図14に列記される疾患、とりわけ、今までに特定されているリソソーム蓄積症(LSD)の複数の型の少なくとも1つの処置のための操作された治療用細胞を産生するためにエクスビボで行うことができる。
【0319】
本発明はまた、上記方法を行うために使用できる挿入ベクター、例えばAAVベクター、好ましくはAAV6であって、以下の配列:
(a)挿入部位の上流のイントロン配列と相同である、第1の相同ポリヌクレオチド配列、
(b)分岐点およびスプライスアクセプターを含む、第1の強いスプライス部位配列;
(c)2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
(d)関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
(e)2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
(f)第1のエクソンのコード配列のコピー;
(g)スプライスドナーを含む第2の強いスプライス部位配列;および
(h)挿入部位の下流のイントロン配列と相同である、第2の相同ポリヌクレオチド配列
を含む内因性遺伝子座での挿入のための外因性ポリヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、ベクターにも向けられる。
【0320】
好ましい態様では、前記の第1および第2の相同配列は、tmem119、s100a9、cd11b、b2m、cx3cr1、mertk、cd164、tlr4、tlr7、cd14、fcgr1a、fcgr3a、tbxas1、dok3、abca1、tmem195、mr1、csf3r、fgd4、tspan14、tgfbri、ccr5、gpr34、serpine2、slco2b1、p2ry12、olfml3、p2ry13、hexb、rhob、jun、rab3il1、ccl2、fcrls、scoc、siglech、slc2a5、lrrc3、plxdc2、usp2、ctsf、cttnbp2nl、atp8a2、lgmn、mafb、egr1、bhlhe41、hpgds、ctsd、hspa1a、lag3、csf1r、adamts1、f11r、golm1、nuak1、crybb1、ltc4s、sgce、pla2g15、ccl3l1、abhd12、ang、ophn1、sparc、pros1、p2ry6、lair1、il1a、epb41l2、adora3、rilpl1、pmepa1、ccl13、pde3b、scamp5、ppp1r9a、tjp1、ak1、b4galt4、gtf2h2、trem2、ckb、acp2、pon3、agmo、tnfrsf17、fscn1、st3gal6、adap2、ccl4、entpd1、tmem86a、kctd12、dst、ctsl2、abcc3、pdgfb、pald1、tubgcp5、rapgef5、stab1、lacc1、tmc7、nrip1、kcnd1、tmem206、hps4、dagla、extl3、mlph、arhgap22、cxxc5、p4ha1、cysltr1、fgd2、kcnk13、gbgt1、c18orf1、cadm1、bco2、adrb1、c3ar1、large、leprel1、liph、upk1b、p2rx7、slc46a1、ebf3、ppp1r15a、il10ra、rasgrp3、fos、tppp、slc24a3、havcr2、nav2、apbb2、clstn1、blnk、gnaq、ptprm、frmd4a、cd86、tnfrsf11a、spint1、ppm1l、tgfbr2、cmklr1、tlr6、gas6、hist1h2ab、atf3、acvr1、abi3、lrp12、ttc28、plxna4、adamts16、rgs1、icam1、snx24、ly96、dnajb4、およびppfia4から選択される内因性遺伝子座と相同である。
【0321】
本発明はまた、前記方法のいずれかによって得ることが可能な操作された細胞、より特定すると、外因性ポリヌクレオチド配列が、内因性遺伝子座のイントロンに挿入されており、前記ポリヌクレオチド配列が、好ましくは、
- 分岐点およびアクセプター部位を含む、第1の強いスプライス部位配列;
- 2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
- 治療用タンパク質などの関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
- 2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
- 前記遺伝子座に対して内因性である先行エクソンのコード配列のコピー;
- スプライスドナー部位を含む第2の強いスプライス部位配列
を含むことを特徴とする、操作された細胞も包含する。
【0322】
2. いくつかの好ましい態様にさらによれば、前記の操作された細胞における前記外因性ポリヌクレオチド配列は、tmem119、s100a9、cd11b、B2m、Cx3cr1、mertk、cd164、tlr4、tlr7、cd14、fcgr1a、fcgr3a、tbxas1、dok3、abca1、tmem195、mr1、csf3r、fgd4、tspan14、tgfbri、ccr5、gpr34、serpine2、slco2b1、P2ry12、Olfml3、P2ry13、Hexb、Rhob、Jun、Rab3il1、Ccl2、Fcrls、Scoc、Siglech、Slc2a5、Lrrc3、Plxdc2、Usp2、Ctsf、Cttnbp2nl、Atp8a2、Lgmn、Mafb、Egr1、Bhlhe41、Hpgds、Ctsd、Hspa1a、Lag3、Csf1r、Adamts1、F11r、Golm1、Nuak1、Crybb1、Ltc4s、Sgce、Pla2g15、Ccl3l1、Abhd12、Ang、Ophn1、Sparc、Pros1、P2ry6、Lair1、Il1a、Epb41l2、Adora3、Rilpl1、Pmepa1、Ccl13、Pde3b、Scamp5、Ppp1r9a、Tjp1、Ak1、B4galt4、Gtf2h2、Trem2、Ckb、Acp2、Pon3、Agmo、Tnfrsf17、Fscn1、St3gal6、Adap2、Ccl4、Entpd1、Tmem86a、Kctd12、Dst、Ctsl2、Abcc3、Pdgfb、Pald1、Tubgcp5、Rapgef5、Stab1、Lacc1、Tmc7、Nrip1、Kcnd1、Tmem206、Hps4、Dagla、Extl3、Mlph、Arhgap22、Cxxc5、P4ha1、Cysltr1、Fgd2、Kcnk13、Gbgt1、C18orf1、Cadm1、Bco2、Adrb1、C3ar1、Large、Leprel1、Liph、Upk1b、P2rx7、Slc46a1、Ebf3、Ppp1r15a、Il10ra、Rasgrp3、Fos、Tppp、Slc24a3、Havcr2、Nav2、Apbb2、Clstn1、Blnk、Gnaq、Ptprm、Frmd4a、Cd86、Tnfrsf11a、Spint1、Ppm1l、Tgfbr2、Cmklr1、Tlr6、Gas6、Hist1h2ab、Atf3、Acvr1、Abi3、Lrp12、Ttc28、Plxna4、Adamts16、Rgs1、Icam1、Snx24、Ly96、Dnajb4、およびPpfia4から選択される内因性遺伝子座に挿入することができる。好ましい内因性遺伝子座は、S100A9またはCD11bである。
【0323】
本発明のいくつかの好ましい態様によれば、前記外因性ポリヌクレオチド配列は、図2に図示されるように、第1と第2の内因性コーディングエクソン間に位置するイントロンに挿入される。2自己切断ペプチドをコードする第1および第2は、一般に、望ましくない稀な組換え事象を回避するために異なっており、SEQ ID NO:216およびSEQ ID NO:217から選択することができる。
【0324】
いくつかの好ましい態様によれば、上で言及した第1のスプライス部位は、実施例に示されるようにSEQ ID NO:206またはSEQ ID NO:207を含む。
【0325】
コード配列、特に、図2に図示されるような本組み込み法の結果として相同組換えにより置換できる第1の内因性エクソンのコード配列を、コドン最適化して(すなわち書き換えて)、ポリヌクレオチド配列多様性を付与し、内因性遺伝子座での望ましくない組換え事象を防ぐことができる。したがって、本発明は、より特定すると、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、およびCDKL5(SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:35 - 表1も参照のこと)から選択される治療用タンパク質をコードする1つの外因性配列が、TMEM119、MERTK、CD164、TLR7、CD14、FCGR3A(CD16)、TBXAS1、DOK3、ABCA1、TMEM195、TLR4、MR1、FCGR1A(CD64)、CSF3R、FGD4、TSPAN14、CXCR3、CD11B、S100A9、およびB2Mから選択される1つの遺伝子座で、より特定すると、そのイントロンポリヌクレオチド配列または前記ポリヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90もしくは少なくとも95%同一の任意のイントロン配列(動物界全体、特定するとヒト種における、これらの配列の変動性を考慮に入れて)に組み込まれている、操作された細胞を提供する。
【0326】
したがって、本発明は、より具体的には、以下の操作された細胞型の1つを対象とする:
- IDUAが、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- IDSが、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- ARSBが、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- GUSBが、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- ABCD1が、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- GALCが、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- ARSAが、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- PSAPが、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- GBAが、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- FUCA1が、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- MAN2B1が、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- AGAが、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- ASAH1が、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- HEXAが、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- GAAが、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- SMPD1が、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- LIPAが、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;
- CDKL5が、CXCR3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:76に導入されている;

- IDUAが、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- IDSが、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- ARSBが、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- GUSBが、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- ABCD1が、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- GALCが、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- ARSAが、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- PSAPが、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- GBAが、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- FUCA1が、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- MAN2B1が、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- AGAが、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- ASAH1が、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- HEXAが、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- GAAが、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- SMPD1が、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- LIPAが、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;
- CDKL5が、CD11B遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:107に導入されている;

- IDUAが、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- IDSが、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- ARSBが、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- GUSBが、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- ABCD1が、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- GALCが、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- ARSAが、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- PSAPが、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- GBAが、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- FUCA1が、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- MAN2B1が、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- AGAが、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- ASAH1が、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- HEXAが、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- GAAが、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- SMPD1が、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- LIPAが、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;
- CDKL5が、S100A9遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:148に導入されている;

- IDUAが、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- IDSが、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- ARSBが、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- GUSBが、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- ABCD1が、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- GALCが、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- ARSAが、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- PSAPが、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- GBAが、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- FUCA1が、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- MAN2B1が、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- AGAが、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- ASAH1が、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- HEXAが、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- GAAが、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- SMPD1が、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- LIPAが、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;
- CDKL5が、TMEM119遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:189に導入されている;

- IDUAが、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- IDSが、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- ARSBが、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- GUSBが、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- ABCD1が、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- GALCが、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- ARSAが、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- PSAPが、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- GBAが、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- FUCA1が、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- MAN2B1が、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- AGAが、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- ASAH1が、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- HEXAが、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- GAAが、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- SMPD1が、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- LIPAが、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;
- CDKL5が、MERTK遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:190に導入されている;

- IDUAが、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- IDSが、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- ARSBが、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- GUSBが、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- ABCD1が、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- GALCが、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- ARSAが、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- PSAPが、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- GBAが、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- FUCA1が、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- MAN2B1が、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- AGAが、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- ASAH1が、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- HEXAが、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- GAAが、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- SMPD1が、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- LIPAが、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;
- CDKL5が、CD164遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:191に導入されている;

- IDUAが、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- IDSが、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- ARSBが、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- GUSBが、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- ABCD1が、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- GALCが、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- ARSAが、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- PSAPが、遺伝子座TLR7で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- GBAが、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- FUCA1が、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- MAN2B1が、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- AGAが、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- ASAH1が、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- HEXAが、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- GAAが、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- SMPD1が、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- LIPAが、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;
- CDKL5が、TLR7遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:192に導入されている;

- IDUAが、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- IDSが、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- ARSBが、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- GUSBが、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- ABCD1が、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- GALCが、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- ARSAが、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- PSAPが、遺伝子座CD14で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- GBAが、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- FUCA1が、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- MAN2B1が、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- AGAが、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- ASAH1が、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- HEXAが、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- GAAが、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- SMPD1が、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- LIPAが、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;
- CDKL5が、CD14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:193に導入されている;

- IDUAが、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- IDSが、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- ARSBが、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- GUSBが、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- ABCD1が、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- GALCが、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- ARSAが、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- PSAPが、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- GBAが、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- FUCA1が、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- MAN2B1が、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- AGAが、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- ASAH1が、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- HEXAが、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- GAAが、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- SMPD1が、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- LIPAが、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;
- CDKL5が、FCGR3A遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:194に導入されている;

- IDUAが、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- IDSが、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- ARSBが、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- GUSBが、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- ABCD1が、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- GALCが、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- ARSAが、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- PSAPが、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- GBAが、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- FUCA1が、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- MAN2B1が、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- AGAが、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- ASAH1が、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- HEXAが、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- GAAが、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- SMPD1が、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- LIPAが、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;
- CDKL5が、TBXAS1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:195に導入されている;

- IDUAが、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- IDSが、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- ARSBが、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- GUSBが、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- ABCD1が、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- GALCが、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- ARSAが、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- PSAPが、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- GBAが、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- FUCA1が、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- MAN2B1が、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- AGAが、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- ASAH1が、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- HEXAが、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- GAAが、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- SMPD1が、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- LIPAが、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;
- CDKL5が、DOK3遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:196に導入されている;

- IDUAが、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- IDSが、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- ARSBが、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- GUSBが、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- ABCD1が、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- GALCが、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- ARSAが、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- PSAPが、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- GBAが、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- FUCA1が、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- MAN2B1が、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- AGAが、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- ASAH1が、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- HEXAが、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- GAAが、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- SMPD1が、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- LIPAが、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;
- CDKL5が、ABCA1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:197に導入されている;

- IDUAが、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- IDSが、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- ARSBが、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- GUSBが、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- ABCD1が、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- GALCが、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- ARSAが、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- PSAPが、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- GBAが、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- FUCA1が、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- MAN2B1が、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- AGAが、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- ASAH1が、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- HEXAが、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- GAAが、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- SMPD1が、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- LIPAが、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;
- CDKL5が、TMEM195遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:198に導入されている;

- IDUAが、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- IDSが、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- ARSBが、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- GUSBが、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- ABCD1が、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- GALCが、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- ARSAが、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- PSAPが、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- GBAが、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- FUCA1が、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- MAN2B1が、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- AGAが、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- ASAH1が、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- HEXAが、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- GAAが、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- SMPD1が、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- LIPAが、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;
- CDKL5が、TLR4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:199に導入されている;

- IDUAが、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- IDSが、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- ARSBが、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- GUSBが、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- ABCD1が、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- GALCが、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- ARSAが、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- PSAPが、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- GBAが、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- FUCA1が、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- MAN2B1が、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- AGAが、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- ASAH1が、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- HEXAが、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- GAAが、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- SMPD1が、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- LIPAが、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;
- CDKL5が、MR1遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:200に導入されている;

- IDUAが、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- IDSが、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- ARSBが、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- GUSBが、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- ABCD1が、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- GALCが、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- ARSAが、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- PSAPが、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- GBAが、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- FUCA1が、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- MAN2B1が、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- AGAが、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- ASAH1が、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- HEXAが、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- GAAが、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- SMPD1が、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- LIPAが、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;
- CDKL5が、FCGR1A遺伝子座で、好ましくはID NO:201に導入されている;

- IDUAが、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- IDSが、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- ARSBが、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- GUSBが、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- ABCD1が、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- GALCが、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- ARSAが、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- PSAPが、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- GBAが、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- FUCA1が、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- MAN2B1が、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- AGAが、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- ASAH1が、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- HEXAが、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- GAAが、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- SMPD1が、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- LIPAが、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;
- CDKL5が、CSF3R遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:202に導入されている;

- IDUAが、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- IDSが、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- ARSBが、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- GUSBが、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- ABCD1が、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- GALCが、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- ARSAが、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- PSAPが、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- GBAが、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- FUCA1が、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- MAN2B1が、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- AGAが、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- ASAH1が、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- HEXAが、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- GAAが、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- SMPD1が、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- LIPAが、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;
- CDKL5が、FGD4遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:203に導入されている;

- IDUAが、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- IDSが、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- ARSBが、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- GUSBが、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- ABCD1が、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- GALCが、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- ARSAが、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- PSAPが、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- GBAが、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- FUCA1が、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- MAN2B1が、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- AGAが、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- ASAH1が、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- HEXAが、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- GAAが、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- SMPD1が、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- LIPAが、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;
- CDKL5が、TSPAN14遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:204に導入されている;

- IDUAが、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- IDSが、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- ARSBが、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- GUSBが、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- ABCD1が、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- GALCが、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- ARSAが、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- PSAPが、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- GBAが、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- FUCA1が、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- MAN2B1が、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- AGAが、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- ASAH1が、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- HEXAが、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- GAAが、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- SMPD1が、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;
- LIPAが、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている;および
- CDKL5が、B2M遺伝子座で、好ましくはSEQ ID NO:205に導入されている。
【0327】
そのような操作された細胞、好ましくは、ヒト細胞は、より特定すると、これらが、1つの内因性遺伝子座に以下を含むポリヌクレオチド配列を含むことを特徴とする:
- 好ましくは分岐点およびアクセプター部位を含む、第1の強いスプライス部位配列;
- 2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
- 治療用タンパク質などの関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
- 2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
- 好ましくは書き換えられた、前記遺伝子座に対して内因性である先行エクソンのコード配列のコピー;
- 任意で、好ましくはスプライスドナー部位を含む、第2の強いスプライス部位配列。
【0328】
本発明はまた、上記細胞の操作を実施するのに有用な挿入ベクター、とりわけAAVベクター、より好ましくはLing, C.らによって記載されているようなAAV6ベクター[High-Efficiency Transduction of Primary Human Hematopoietic Stem/Progenitor Cells by AAV6 Vectors: Strategies for Overcoming Donor-Variation and Implications in Genome Editing (2016) Scientific Reports 6: 35495]として使用することができる、DNAテンプレートまたは任意のポリヌクレオチドに関する。そのようなポリヌクレオチドは、これらが、以下の配列の1つまたは複数を含むことを特徴とする:
- 分岐点およびアクセプター部位を含む、第1の強いスプライス部位;
- 2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
- 関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
- 2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
- 好ましくは書き換えられた、前記遺伝子座に対して内因性である先行エクソンのコード配列のコピー;
- 任意で、スプライスドナー部位を含む第2の強いスプライス部位。
【0329】
好ましい態様によれば、前記ポリヌクレオチドはまた、先に記載したような内因性遺伝子座と相同な上流および下流配列も含む。一般に、これらの上流および下流配列の少なくとも一方または両方は、イントロン配列、とりわけ、本明細書においてSEQ ID NO:76、SEQ ID NO:107、SEQ ID NO:148およびSEQ ID NO:189~SEQ ID NO:205と称されるイントロン配列、より好ましくは、そのようなイントロン配列とのみ相同なイントロン配列(すなわち、該遺伝子座に存在するスパニングエクソン配列を有する)と相同である。
【0330】
組成物
本発明はまた、本明細書に記載されるような遺伝子操作されたHSCまたはiPS細胞の有効量を含む組成物にも向けられる。いくつかの態様では、本発明は、本明細書に記載されるような遺伝子操作されたHSCまたはiPS細胞の有効量を含む薬学的組成物を提供する。
【0331】
いくつかの態様では、組成物は、医薬として使用することができる。いくつかの態様では、組成物は、本明細書に記載されるような単一遺伝子疾患を処置するために使用することができる。
【0332】
いくつかの態様では、組成物は、集団中の細胞の少なくとも40%が本明細書に記載されるいずれか1つの方法に従って改変されている、細胞集団を含む。いくつかの態様では、集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%が本明細書に記載されるいずれか1つの方法に従って改変されている。いくつかの態様では、組成物は、細胞の100%が本明細書に記載されるように遺伝子改変されている純粋な細胞集団を含む。
【0333】
遺伝子改変された細胞は、単独で、または希釈剤および/もしくは他の成分と組み合わせた薬学的組成物としてのいずれかで投与することができる。いくつかの態様では、薬学的組成物は、本明細書に記載されるような遺伝子改変されたHSCまたはiPS細胞を1つまたは複数の薬学的にまたは生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含むことができる。そのような組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水などの緩衝液;グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸、例えばグリシン;抗酸化物質;キレート剤、例えばEDTAまたはグルタチオン;補助剤(例えば、水酸化アルミニウム);および保存料を含んでもよい。いくつかの態様では、組成物は、静脈内投与用に製剤化される。
【0334】
遺伝子改変されたHSCまたはiPS細胞は、疾患の処置における医薬として使用することができる。いくつかの態様では、遺伝子改変されたHSCまたはiPS細胞は、導入遺伝子と相同な内因性遺伝子の発現に欠損を有する患者の処置(クロスコレクション)において使用するためのものである。いくつかの態様では、遺伝子改変されたHSCまたはiPS細胞は、リソソーム蓄積症の処置において使用するためのものである。いくつかの態様では、遺伝子改変されたHSCまたはiPS細胞は、ムコ多糖症I型(シャイエ、ハーラー・シャイエまたはハーラー症候群)、ムコ多糖症II型(ハンター症候群)、ムコ多糖症VI型(マロトー・ラミー症候群)、ムコ多糖症VII型(スライ病)、X連鎖副腎白質ジストロフィー、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病)、異染性白質ジストロフィー、ゴーシェ病、フコシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、ファーバー病、テイ・サックス病、ポンペ病、ニーマン・ピック病、およびウォルマン病から選択される疾患の処置において使用するためのものである。
【0335】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなHSCおよびiPS細胞は、凍結保存することができる。いくつかの態様では、細胞は、対象からの単離後かつ任意の遺伝子改変前に凍結保存することができる。いくつかの態様では、遺伝子改変された細胞は、遺伝子改変後かつ対象への注入前に凍結保存される。いくつかの態様では、遺伝子改変された細胞は、エクスビボで増大させた後に凍結保存される。
【0336】
一態様では、本発明は、(a)遺伝子改変されたHSCまたはiPS細胞の存続可能な組成物、(b)HSCまたはiPS細胞の凍結保存に十分な量の凍結保存剤;および(c)薬学的に許容される担体を含む、凍結保存させた薬学的組成物を提供する。
【0337】
本明細書において使用される場合、「凍結保存」は、(典型的には)77Kまたは-196℃(液体窒素の沸点)などの低い氷点下温度まで冷却することによる、細胞の保存のことを指す。凍結保存はまた、任意の凍結保存剤の非存在下で細胞を0℃~10℃の間の温度で貯蔵することも指す。これらの低い温度では、細胞死に導くだろう生化学反応を含めた任意の生物学的活性は、効果的に停止される。低温で冷凍するまたは室温へ温めることによる損傷から細胞を保護するために、凍結保護剤が氷点下温度でしばしば使用される。
【0338】
いくつかの態様では、冷凍に伴う傷害作用は、(a)凍結保護剤の使用、(b)冷凍速度の制御、および(c)分解反応を最小限に抑えるのに十分に低い温度での貯蔵によって避けることができる。
【0339】
使用することができる凍結保護剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、ポリビニルピロリジン、ポリエチレングリコール、アルブミン、デキストラン、スクロース、エチレングリコール、i-エリトリトール、D-ソルビトール、D-マンニトール、D-ソルビトール、i-イノシトール、D-ラクトース、塩化コリン、アミノ酸、メタノール、アセトアミド、グリセロールモノアセテート、および無機塩類が挙げられるが、それらに限定されない。好ましい態様では、低濃度で細胞に無毒な液体であるDMSOが使用される。低分子であることで、DMSOは、自由に細胞を透過し、水と合わさることでその冷凍能が改変されて氷形成からの損傷を防ぐことにより細胞内小器官を保護する。血漿の添加(例えば、20~25%の濃度まで)は、DMSOの保護効果を高めることができる。DMSOの添加後、細胞は、冷凍するまで0~4℃で維持すべきであるが、それは、約1%のDMSO濃度が4℃以上の温度で有毒であるからである。
【0340】
異なる凍結保護剤(Rapatz, G., et al., 1968, Cryobiology 5(1):18-25)および異なる細胞型は、異なる最適冷却速度を有する(例えば、骨髄系幹細胞の生存およびそれらの移植能に対する冷却速度の影響については、Rowe, A. W. and Rinfret, A. P., 1962, Blood 20:636;Rowe, A. W., 1966, Cryobiology 3(1):12-18;Lewis, J. P., et al., 1967, Transfusion 7(1):17-32;および Mazur, P., 1970, Science 168:939-949を参照のこと)。水が氷へと変わる融合段階相の熱は最小限に抑えるべきである。冷却手順は、例えば、プログラム可能な冷凍装置またはメタノール浴手順の使用によって行うことができる。
【0341】
徹底した冷凍を行った後、細胞を素早く長期低温貯蔵容器に移すことができる。一態様では、増大されたHSCまたはIPS細胞を液体窒素(-196℃)またはその蒸気(-165℃)中で低温貯蔵することができる。そのような貯蔵は、熱放散および窒素損失が最小限に抑えられるような極低真空および内部超断熱を有する大型サーモスコンテナーと似た高効率液体窒素冷凍庫の利用によって大きく促進される。
【0342】
特定の態様では、Current Protocols in Stem Cell Biology, 2007(Mick Bhatia, et. al., ed., John Wiley and Sons, Inc.)に記載されている凍結保存手順を使用し、これは参照により本明細書に組み入れられる。大概は、10cm組織培養プレート上のHSCが大体50%の集密度に達したら、プレート内の培地を吸引し、HSCをリン酸緩衝食塩水ですすぐ。次いで、付着しているHSCを3mlの0.025%トリプシン/0.04% EDTA処理により解離させる。トリプシン/EDTAを培地7mlによって中和し、解離したHSCを200×gで2分間の遠心によって収集する。上清を吸引除去し、HSCのペレットを培地1.5mlに再懸濁する。100% DMSOの1mlアリコートをHSCの懸濁液に加え、穏やかに混合する。次いで、このDMSO中のHSC懸濁液の1mlアリコートを凍結保存に備えてCRYULESに分注する。滅菌貯蔵CRYULESは、好ましくは、内部にねじ式のキャップを有しており、汚染なく容易な取り扱いが可能である。好適なラッキングシステムが、市販されており、個々の標本のカタログ化、貯蔵および検索に使用することができる。
【0343】
HSC、特に骨髄または末梢血由来のHSCの操作、凍結保存および長期貯蔵のための留意事項および手順は、例えば、以下の参考文献(参照により本明細書に組み入れられる)にて見付けることができる:Gorin, N.C., 1986, Clinics In Haematology 15(1):19-48;Bone-Marrow Conservation, Culture and Transplantation, Proceedings of a Panel, Moscow, Jul. 22-26, 1968, International Atomic Energy Agency, Vienna, pp. 107-186。
【0344】
生存細胞の凍結保存の他の方法、またはその改変が、利用可能であり、使用が想定される(例えば、コールドメタルマイナー技術(cold metal-minor techniques);Livesey, S. A. and Linner, J. G., 1987, Nature 327:255;Linner, J. G., et al., 1986, J. Histochem. Cytochem. 34(9):1123-1135;米国特許第4,199,022号、第3,753,357号および第4,559,298号、これらはすべて、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0345】
いくつかの態様では、凍結したHSCまたはiPS細胞を素早く融解させ(例えば、37℃~41℃で維持された水浴中)、融解したら氷上で直ちに冷却する。特に、凍結したHSCまたはiPS細胞を含有するクライオジェニックバイアルは、温かい水浴に首まで浸すことができ;穏やかな回転によって、融解するにつれて細胞懸濁液が確実に混合され、温水から内部の氷塊への熱移動が増すだろう。氷が完全に溶けたらすぐ、バイアルを直ちに氷中に置くことができる。
【0346】
一態様では、凍結保存後の融解手順は、Current Protocols in Stem Cell Biology, 2007(Mick Bhatia, et al., ed., John Wiley and Sons, Inc.)に記載されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。クライオフリーザーからクライオジェニックバイアルを取り出したら直ぐに、バイアルの外側に霜がつかなくなるまでバイアルを10~30秒手の間で転がす。次いで、内容物が融解するのを目視できるまで、バイアルを37℃の水浴中で直立保持する。バイアルを95%エタノール中に浸すかまたは70%エタノールを吹きかけ、水浴からの微生物を殺菌し、無菌フード内で風乾させる。次いで、バイアルの内容物を、無菌技術を使用して培地9mlを含有する10cmの無菌培養に移す。次いで、37℃、5%加湿CO2のインキュベーター内で、HSCを培養し、さらに増大させることができる。
【0347】
融解時の細胞凝集を防ぐためにHSCまたはIPS細胞を処理することが望ましい場合がある。凝集を防ぐために、凍結の前および/または後にDNaseの添加(Spitzer, G., et al., 1980, Cancer 45:3075-3085)、低分子量デキストランおよびクエン酸塩の添加、ヒドロキシエチルデンプンの添加(Stiff, P. J., et al., 1983, Cryobiology 20:17-24)を含むがこれらに限定されない、種々の手順を使用することができる。
【0348】
凍結保護剤は、ヒトに有毒であれば、融解したHSCまたはiPS細胞の治療的使用前に除去すべきである。DMSOを凍結保存剤として用いる態様では、DMSOは重篤な毒性を有するわけではないので、細胞の喪失を回避するためにこの工程を省くことが好ましい。しかしながら、凍結保護剤の除去が望まれる場合、除去は、好ましくは融解時に達成される。
【0349】
凍結保護剤を除去する1つの方法は、影響のない濃度まで希釈することである。これは、培地の添加、続いて、必要であれば、細胞をペレットにするための1回または複数回の遠心サイクル、上清の除去、および細胞の再懸濁によって達成することができる。例えば、融解した細胞中の細胞内DMSOを、回収された細胞に悪影響のないレベル(1%未満)まで低減させることができる。これは、DMSO除去中に生じる損傷を与えかねない浸透勾配を最小限に抑えるためにゆっくり行われることが好ましい。
【0350】
凍結保護剤の除去後、細胞計数(例えば、血球計算盤の使用による)および生死判別試験(例えば、トリパンブルー色素排除による;Kuchler, R. J. 1977, Biochemical Methods in Cell Culture and Virology, Dowden, Hutchinson & Ross, Stroudsburg, Pa., pp. 18-19;1964, Methods in Medical Research, Eisen, H. N., et al., eds., Vol. 10, Year Book Medical Publishers, Inc., Chicago, pp. 39-47)を行って、細胞の生存を確認することができる。
【0351】
一態様では、融解した細胞は、本明細書に記載されるような標準的な生死判別アッセイ(例えば、トリパンブルー色素排除)および微生物無菌性アッセイによって試験され、レシピエントに対するそれらの同一性を確認および/または判定するために試験される。
【0352】
本教示は、種々の態様と併せて記載しているが、本教示がそのような態様に限定されることを意図するものではない。むしろ、本教示は、当業者に認識されるように、種々の変更物、改変物および同等物を包含する。
【0353】
本開示を通して、種々の刊行物、特許および公開された特許明細書が、引用を特定することにより参照される。これらの刊行物、特許および公開された特許明細書の開示は、本発明が関係する技術の最先端をより詳しく説明するために参照により本開示に組み入れられる。
【0354】
(表4)本発明の細胞を遺伝子編集するために規定される好ましい標的配列
【0355】
本開示の通り、本発明は、より特定すると、以下の項目を包含する:
1. 以下の工程を含む、患者の脳内に導入遺伝子を発現させるための方法:
(i)遺伝子改変された造血幹細胞(HSC)を得る工程であって、HSCが、患者から単離されたか、または患者に由来する人工多能性幹(iPS)細胞からHSCへと分化させて得られ、遺伝子改変されたHSCが、ミクログリア細胞で発現される遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子を含むように操作されている、工程;および
(ii)遺伝子改変されたHSCが患者の脳内に導入遺伝子を発現するミクログリア細胞へと分化するように、それらを患者に生着させる工程。
【0356】
2. 以下の工程を含む、患者の脳内に導入遺伝子を発現させるための方法:
(i)遺伝子改変された造血幹細胞(HSC)を得る工程であって、HSCが、適合ドナーから単離されたか、または適合ドナーに由来する人工多能性幹(iPS)細胞からHSCへと分化させて得られ、遺伝子改変されたHSCが、ミクログリア細胞で発現される遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子を含むように操作されている、工程;および
(ii)遺伝子改変されたHSCが患者の脳内に導入遺伝子を発現するミクログリア細胞へと分化するように、それらを患者に生着させる工程。
【0357】
3. 前記遺伝子座が、TMEM119、S100A9、CD11B、B2m、Cx3cr1、MERTK、CD164、Tlr4、Tlr7、Cd14、Fcgr1a、Fcgr3a、TBXAS1、DOK3、ABCA1、TMEM195、MR1、CSF3R、FGD4、TSPAN14、TGFBRI、CCR5、GPR34、SERPINE2、SLCO2B1、P2ry12、Olfml3、P2ry13、Hexb、Rhob、Jun、Rab3il1、Ccl2、Fcrls、Scoc、Siglech、Slc2a5、Lrrc3、Plxdc2、Usp2、Ctsf、Cttnbp2nl、Atp8a2、Lgmn、Mafb、Egr1、Bhlhe41、Hpgds、Ctsd、Hspa1a、Lag3、Csf1r、Adamts1、F11r、Golm1、Nuak1、Crybb1、Ltc4s、Sgce、Pla2g15、Ccl3l1、Abhd12、Ang、Ophn1、Sparc、Pros1、P2ry6、Lair1、Il1a、Epb41l2、Adora3、Rilpl1、Pmepa1、Ccl13、Pde3b、Scamp5、Ppp1r9a、Tjp1、Ak1、B4galt4、Gtf2h2、Trem2、Ckb、Acp2、Pon3、Agmo、Tnfrsf17、Fscn1、St3gal6、Adap2、Ccl4、Entpd1、Tmem86a、Kctd12、Dst、Ctsl2、Abcc3、Pdgfb、Pald1、Tubgcp5、Rapgef5、Stab1、Lacc1、Tmc7、Nrip1、Kcnd1、Tmem206、Hps4、Dagla、Extl3、Mlph、Arhgap22、Cxxc5、P4ha1、Cysltr1、Fgd2、Kcnk13、Gbgt1、C18orf1、Cadm1、Bco2、Adrb1、C3ar1、Large、Leprel1、Liph、Upk1b、P2rx7、Slc46a1、Ebf3、Ppp1r15a、Il10ra、Rasgrp3、Fos、Tppp、Slc24a3、Havcr2、Nav2、Apbb2、Clstn1、Blnk、Gnaq、Ptprm、Frmd4a、Cd86、Tnfrsf11a、Spint1、Ppm1l、Tgfbr2、Cmklr1、Tlr6、Gas6、Hist1h2ab、Atf3、Acvr1、Abi3、Lrp12、Ttc28、Plxna4、Adamts16、Rgs1、Icam1、Snx24、Ly96、Dnajb4、およびPpfia4からなる群より選択される、項目1または2に記載の方法。
【0358】
4. 前記遺伝子座が、cx3cr1である、項目1~3のいずれかに記載の方法。
【0359】
5. 前記遺伝子座が、cd11bである、項目1~3のいずれかに記載の方法。
【0360】
6. 前記遺伝子座が、tmem119である、項目1~3のいずれかに記載の方法。
【0361】
7. 前記遺伝子座が、s100a9である、項目1~3のいずれかに記載の方法。
【0362】
8. 細胞が、配列特異的試薬および導入遺伝子を含むドナー配列を使用して遺伝子改変されている、項目1~7のいずれかの方法。
【0363】
9. 導入遺伝子を含むドナー配列がウイルスベクター内で細胞に提供される、項目8の方法。
【0364】
10. ウイルスベクターが、AAVベクターである、項目9の方法。
【0365】
11. 配列特異的試薬が、操作されたレアカットエンドヌクレアーゼを含む、項目8~10のいずれかの方法。
【0366】
12. 操作されたレアカットエンドヌクレアーゼが、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)-Cas、メガヌクレアーゼ、およびmegaTALからなる群より選択される、項目11の方法。
【0367】
13. 配列特異的試薬が、核酸として細胞に提供される、項目12の方法。
【0368】
14. 核酸がmRNAである、項目13の方法。
【0369】
15. 前記導入遺伝子が、ムコ多糖症I型(シャイエ、ハーラー・シャイエまたはハーラー症候群)を処置するためのIDUAを含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0370】
16. 前記導入遺伝子が、ムコ多糖症II型(ハンター)を処置するためのIDSを含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0371】
17. 前記導入遺伝子が、ムコ多糖症VI型(マロトー・ラミー)を処置するためのARSBを含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0372】
18. 前記導入遺伝子が、ムコ多糖症VII型(スライ)を処置するためのGUSBを含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0373】
19. 前記導入遺伝子が、X連鎖副腎白質ジストロフィーを処置するためのABCD1を含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0374】
20. 前記導入遺伝子が、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ)を処置するためのGALCを含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0375】
21. 前記導入遺伝子が、異染性白質ジストロフィーを処置するためのARSAを含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0376】
22. 前記導入遺伝子が、ゴーシェ病を処置するためのGBAを含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0377】
23. 前記導入遺伝子が、フコシドーシスを処置するためのFUCA1を含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0378】
24. 前記導入遺伝子が、アルファ-マンノシドーシスを処置するためのMAN2B1を含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0379】
25. 前記導入遺伝子が、アスパルチルグルコサミン尿症を処置するためのAGAを含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0380】
26. 前記導入遺伝子が、ファーバーを処置するためのASAH1を含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0381】
27. 前記導入遺伝子が、テイ・サックスを処置するためのHEXAを含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0382】
28. 前記導入遺伝子が、ポンペを処置するためのGAAを含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0383】
29. 前記導入遺伝子が、ニーマン・ピックを処置するためのSMPD1を含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0384】
30. 前記導入遺伝子が、ウォルマン症候群を処置するためのLIPAを含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0385】
31. 前記導入遺伝子が、CDKL5欠損関連疾患を処置するためのCDKL5を含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0386】
32. tmem119、cd11b、またはcx3cr1から選択される遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子を有し、前記導入遺伝子が前記遺伝子の内因性プロモーターの転写制御下にある、遺伝子改変されたHSCまたはiPS細胞。
【0387】
33. 医薬として使用するための、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0388】
34. 前記導入遺伝子と相同な内因性遺伝子の発現に欠損を有する患者の処置(クロスコレクション)において使用するための、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0389】
35. リソソーム蓄積症の処置において使用するための、項目33に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0390】
36. 前記導入遺伝子が、ムコ多糖症I型(シャイエ、ハーラー・シャイエまたはハーラー症候群)の処置において使用するためのIDUAを含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0391】
37. 前記導入遺伝子が、ムコ多糖症II型(ハンター)の処置において使用するためのIDSを含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0392】
38. 前記導入遺伝子が、ムコ多糖症VI型(マロトー・ラミー)の処置において使用するためのARSBを含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0393】
39. 前記導入遺伝子が、ムコ多糖症VII型(スライ)の処置において使用するためのGUSBを含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0394】
40. 前記導入遺伝子が、X連鎖副腎白質ジストロフィーを処置するためのABCD1を含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0395】
41. 前記導入遺伝子が、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ)の処置において使用するためのGALCを含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0396】
42. 前記導入遺伝子が、異染性白質ジストロフィーの処置において使用するためのARSAを含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0397】
43. 前記導入遺伝子が、ゴーシェ病の処置において使用するためのGBAを含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0398】
44. 前記導入遺伝子が、フコシドーシスの処置において使用するためのFUCA1を含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0399】
45. 前記導入遺伝子が、アルファ-マンノシドーシスの処置において使用するためのMAN2B1を含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0400】
46. 前記導入遺伝子が、アスパルチルグルコサミン尿症の処置において使用するためのAGAを含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0401】
47. 前記導入遺伝子が、ファーバーの処置において使用するためのASAH1を含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0402】
48. 前記導入遺伝子が、テイ・サックスを処置するためのHEXAを含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0403】
49. 前記導入遺伝子が、ポンペの処置において使用するためのGAAを含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0404】
50. 前記導入遺伝子が、ニーマン・ピックの処置において使用するためのSMPD1を含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0405】
51. 前記導入遺伝子が、ウォルマン症候群の処置において使用するためのLIPAを含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0406】
52. 前記導入遺伝子が、CDKL5欠損関連疾患の処置において使用するためのCDKL5を含む、項目32に記載のHSCまたはiPS細胞。
【0407】
53. 前記導入遺伝子の複数のコピーが、2A自己切断ペプチド配列によって隔てられた同じ遺伝子座に組み込まれる、項目32~50のいずれか1つに記載のHSCまたはiPS細胞。
【0408】
54. 項目32~51のいずれかに記載のHSCまたはiPS細胞を含む、薬学的組成物。
【0409】
55. 以下の工程を含む、外因性コード配列を内因性イントロンゲノム領域の挿入部位に組み込むための方法:
- 内因性イントロンゲノム領域を含む細胞を提供する工程、
- 前記細胞に、外因性コード配列を含むポリヌクレオチドテンプレートを導入する工程であって、前記ポリヌクレオチドテンプレートが、
(a)挿入部位の上流のイントロン配列と相同である、第1の相同ポリヌクレオチド配列、
(b)分岐点およびスプライスアクセプターを含む、第1の強いスプライス部位配列;
(c)2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
(d)関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
(e)2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
(f)第1のエクソンのコード配列のコピー;
(g)スプライスドナーを含む第2の強いスプライス部位配列;および
(h)挿入部位の下流のイントロン配列と相同である、第2の相同ポリヌクレオチド配列
を含む、工程;
- 外因性コード配列が、第1および好ましくは第2のエクソンまたはそれらのコピーと共に、前記内因性遺伝子座で転写されるように、好ましくは相同組換えによる、前記イントロン配列への前記外因性ポリヌクレオチドの組み込みを誘導する工程。
【0410】
56. 以下の配列を含む内因性遺伝子座での挿入のための外因性ポリヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、AAVベクターなどの挿入ベクター:
(a)挿入部位の上流のイントロン配列と相同である、第1の相同ポリヌクレオチド配列、
(b)分岐点およびスプライスアクセプターを含む、第1の強いスプライス部位配列;
(c)2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
(d)関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
(e)2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
(f)第1のエクソンのコード配列のコピー;
(g)スプライスドナーを含む第2の強いスプライス部位配列;および
(h)挿入部位の下流のイントロン配列と相同である、第2の相同ポリヌクレオチド配列。
【0411】
57. 前記の第1および第2の相同配列が、tmem119、s100a9、cd11b、b2m、cx3cr1、mertk、cd164、tlr4、tlr7、cd14、fcgr1a、fcgr3a、tbxas1、dok3、abca1、tmem195、mr1、csf3r、fgd4、tspan14、tgfbri、ccr5、gpr34、serpine2、slco2b1、p2ry12、olfml3、p2ry13、hexb、rhob、jun、rab3il1、ccl2、fcrls、scoc、siglech、slc2a5、lrrc3、plxdc2、usp2、ctsf、cttnbp2nl、atp8a2、lgmn、mafb、egr1、bhlhe41、hpgds、ctsd、hspa1a、lag3、csf1r、adamts1、f11r、golm1、nuak1、crybb1、ltc4s、sgce、pla2g15、ccl3l1、abhd12、ang、ophn1、sparc、pros1、p2ry6、lair1、il1a、epb41l2、adora3、rilpl1、pmepa1、ccl13、pde3b、scamp5、ppp1r9a、tjp1、ak1、b4galt4、gtf2h2、trem2、ckb、acp2、pon3、agmo、tnfrsf17、fscn1、st3gal6、adap2、ccl4、entpd1、tmem86a、kctd12、dst、ctsl2、abcc3、pdgfb、pald1、tubgcp5、rapgef5、stab1、lacc1、tmc7、nrip1、kcnd1、tmem206、hps4、dagla、extl3、mlph、arhgap22、cxxc5、p4ha1、cysltr1、fgd2、kcnk13、gbgt1、c18orf1、cadm1、bco2、adrb1、c3ar1、large、leprel1、liph、upk1b、p2rx7、slc46a1、ebf3、ppp1r15a、il10ra、rasgrp3、fos、tppp、slc24a3、havcr2、nav2、apbb2、clstn1、blnk、gnaq、ptprm、frmd4a、cd86、tnfrsf11a、spint1、ppm1l、tgfbr2、cmklr1、tlr6、gas6、hist1h2ab、atf3、acvr1、abi3、lrp12、ttc28、plxna4、adamts16、rgs1、icam1、snx24、ly96、dnajb4、およびppfia4から選択される内因性遺伝子座と相同である、項目56に記載の挿入ベクター。
【0412】
58. 前記外因性コード配列によってコードされる前記治療用タンパク質が、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPAおよびCDKL5(SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:35 - 表1を参照のこと)と少なくとも80%のポリペプチド配列同一性を有する、項目56または57に記載の挿入。
【0413】
59. 以下を含む外因性ポリヌクレオチド配列が、内因性遺伝子座に挿入されていることを特徴とする、操作された細胞:
- 分岐点およびアクセプター部位を含む、第1の強いスプライス部位配列;
- 2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
- 治療用タンパク質などの関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
- 2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
- 前記遺伝子座に対して内因性である先行エクソンのコード配列のコピー;
- スプライスドナー部位を含む第2の強いスプライス部位配列。
【0414】
60. 前記外因性ポリヌクレオチド配列が、tmem119、s100a9、cd11b、B2m、Cx3cr1、mertk、cd164、tlr4、tlr7、cd14、fcgr1a、fcgr3a、tbxas1、dok3、abca1、tmem195、mr1、csf3r、fgd4、tspan14、tgfbri、ccr5、gpr34、serpine2、slco2b1、P2ry12、Olfml3、P2ry13、Hexb、Rhob、Jun、Rab3il1、Ccl2、Fcrls、Scoc、Siglech、Slc2a5、Lrrc3、Plxdc2、Usp2、Ctsf、Cttnbp2nl、Atp8a2、Lgmn、Mafb、Egr1、Bhlhe41、Hpgds、Ctsd、Hspa1a、Lag3、Csf1r、Adamts1、F11r、Golm1、Nuak1、Crybb1、Ltc4s、Sgce、Pla2g15、Ccl3l1、Abhd12、Ang、Ophn1、Sparc、Pros1、P2ry6、Lair1、Il1a、Epb41l2、Adora3、Rilpl1、Pmepa1、Ccl13、Pde3b、Scamp5、Ppp1r9a、Tjp1、Ak1、B4galt4、Gtf2h2、Trem2、Ckb、Acp2、Pon3、Agmo、Tnfrsf17、Fscn1、St3gal6、Adap2、Ccl4、Entpd1、Tmem86a、Kctd12、Dst、Ctsl2、Abcc3、Pdgfb、Pald1、Tubgcp5、Rapgef5、Stab1、Lacc1、Tmc7、Nrip1、Kcnd1、Tmem206、Hps4、Dagla、Extl3、Mlph、Arhgap22、Cxxc5、P4ha1、Cysltr1、Fgd2、Kcnk13、Gbgt1、C18orf1、Cadm1、Bco2、Adrb1、C3ar1、Large、Leprel1、Liph、Upk1b、P2rx7、Slc46a1、Ebf3、Ppp1r15a、Il10ra、Rasgrp3、Fos、Tppp、Slc24a3、Havcr2、Nav2、Apbb2、Clstn1、Blnk、Gnaq、Ptprm、Frmd4a、Cd86、Tnfrsf11a、Spint1、Ppm1l、Tgfbr2、Cmklr1、Tlr6、Gas6、Hist1h2ab、Atf3、Acvr1、Abi3、Lrp12、Ttc28、Plxna4、Adamts16、Rgs1、Icam1、Snx24、Ly96、Dnajb4、およびPpfia4から選択される内因性遺伝子座に挿入される、項目59に記載の操作された細胞。
【0415】
61. 前記外因性コード配列によってコードされる前記治療用タンパク質が、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPAおよびCDKL5(SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:35 - 表1を参照のこと)と少なくとも80%のポリペプチド配列同一性を有する、項目59または60に記載の操作された細胞。
【0416】
本発明を一般的に説明してきたが、ある特定の具体例を参照することによってさらなる理解を得ることができ、これらの具体例は、例証を目的としてのみ本明細書に提供され、特許請求される発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0417】
実施例1:材料および方法
細胞培養:
HSC培養:GCS-F動員Leukopak(Miltenyi)から調製したHSCを融解し、1×最終濃度のCD34+増大カクテル(# 02691, Stemcell Technologies)およびPen-Strep(# 15140-122, Gibco Life Technologies)を含むSTEM Span II培地(cat. # 09655, Stemcell Technologies)から構成されるHSC培地に、0.4×106個の細胞/mlで播種した。TALENトランスフェクションおよびAAV形質導入の前に、融解後の回収のため、細胞を37℃および5%CO2で48時間インキュベートした。
【0418】
修復テンプレート構築物:
S100A9について、Vigeneから入手したAAV6粒子を使用して、合成エクソン配列をS100A9遺伝子座の第1のイントロンに挿入した。このドナーは、このイントロン領域に対する左相同アーム(SEQ ID NO:209)、それに続く3'アルブミンスプライシングシグナル配列(SEQ ID NO:206)、それに続くGSGリンカーをコードする配列(SEQ ID NO:215)、それに続くP2Aペプチドをコードする配列(SEQ ID NO:224)、それに続くEGFP(SEQ ID NO:218)またはIDUA(SEQ ID NO:2)をコードする停止コドンなしの配列、それに続くT2A自己切断ペプチド(SEQ ID NO:225)、それに続くS100A9の第1のエクソン(SEQ ID NO:210)、それに続く5'アルブミンスプライシングシグナル配列(SEQ ID NO:208)、それに続くこのイントロン領域に対する右相同アーム(SEQ ID NO:211)を含有する。
【0419】
CD11bについて、Vigeneから入手したAAV6粒子を使用して、合成エクソン配列をCD11b遺伝子座の第1のイントロンに挿入した。このドナーは、このイントロン領域に対する左相同アーム(SEQ ID NO:212)、それに続く3'アルブミンスプライシングシグナル配列(SEQ ID NO:206)、それに続くGSGリンカーをコードする配列(SEQ ID NO:215)、それに続くP2A自己切断ペプチド(SEQ ID NO:224)、それに続くEGFP(SEQ ID NO:218)またはIDUA(SEQ ID NO:2)をコードする停止コドンなしの配列、それに続くT2A自己切断ペプチド(SEQ ID NO:225)、それに続く書き換えられたCD11bの第1のエクソン(SEQ ID NO:213)、それに続く5'アルブミンスプライシングシグナル配列(SEQ ID NO:208)、それに続くこのイントロン領域に対する右相同アーム(SEQ ID NO:214)を含有する。
【0420】
TALE-ヌクレアーゼ試薬:
CD11b(SEQ ID NO:TALEN_CD11B左およびSEQ ID NO:TALEN_CD11B右)、およびS100A9(SEQ ID NO:TALENS100A9左およびSEQ ID NO:TALEN S100A9右)を標的とするTALE-ヌクレアーゼをコードするmRNAを、過去に記載されているプロトコルに従って作製した(Poirot et al. 2015)。標的とされる配列は、CD11b遺伝子座について
、S100A9遺伝子座について
である。TALENは、WO2011072246に記載されているようなFok-1ヌクレアーゼ触媒ヘッドを含む、Cellectis(8 rue de la Croix Jarry, Paris, France)によって設計されたTALE-ヌクレアーゼヘテロ二量体を表記した商標である。
【0421】
遺伝子編集プロトコル:トランスフェクション
融解の48時間後、HSCを遺伝子編集した。このために、HSCを採取し、PBSで1回洗浄し、高性能エレクトロポレーションバッファー(# 45-0802, BTX)に10×106個の細胞/mlの濃度で再懸濁した。TALEN mRNAを、細胞懸濁液と、TALENアーム毎に細胞100万個当たり5μgで混合した。細胞とmRNAの混合物を、BTX PulseAgileで、表5に示されるプログラムを使用してエレクトロポレーションした。予め温めておいた増大培地に、HSCを2×106個の細胞/mlの最終濃度で移した。
【0422】
(表5)HSCのためのBTX PulseAgile設定
【0423】
遺伝子編集:AAV調製および形質導入:
エレクトロポレーション後すぐに、HSCに、AAVを細胞1個当たり0.3e4、1e4または3.2e4個のウイルスゲノム(vg/細胞)を含む種々の用量で形質導入し、回収のために、37℃で15分間インキュベートし、30℃に22時間移した。翌日、細胞を計数し、増大培地中に0.2~0.6×106個の細胞/mlで希釈し、37℃で培養した。
【0424】
骨髄分化
CD11bおよびS100A9のような骨髄遺伝子はHSCでは発現されない。これらの編集された遺伝子座の形質発現を確認するために、HSCを骨髄分化培地中でインキュベートした。トランスフェクション/形質導入の24時間後、HSCを計数して、STEM Span II(Stemcell Technologies, cat. no. 09655)中に希釈しPen/strepを補充した骨髄増大サプリメント(Stemcell Technologies, cat. no. 02694)に、2e5個の細胞/mLで再懸濁した。次いで、骨髄増大培地中の細胞を非組織培養処理プレートに入れ、3~4日毎に継代し、大体2e5個の細胞/mLで播種した。培養下で14日後、細胞をフローサイトメトリー染色のために回収し、かつ/またはIDUA分泌のために播種した。
【0425】
IDUA分泌アッセイ
骨髄分化の14日後、細胞を同数(2e5個の細胞/ウェル)で非組織培養96ウェル培養プレートに播種し、骨髄培地中37℃でインキュベートした。播種の4日後、上清を収集し、市販のELISA(G-Biosciences, cat: IT2013)を使用してIDUAの量を特徴付けた。
【0426】
インビボマウス実験
Jackson Laboratoriesから6週齢の雌のNSGマウスを取り寄せ、自由に水と餌が摂取できる状態で収容した。マウスは、HSC移植のためにブスルファン(Sigma Aldrich, cat. no. B3625)で事前にコンディショニングされた(pre-conditioned)。ブスルファンは、DMSO中に再構成してPBS中でさらに希釈し、注射の初日に新調した。次に、0.2umのシリンジフィルターを使用して、ブスルファンを滅菌した。HSCを注射する前に、マウスに、15mg/kgのブスルファンを1日1回3日連続でi.p.注射した。注射当日、3%イソフルラン(isoflorine)で動物に麻酔をかけ、後眼窩注射によって1.5e6個のHSCを注射した。注射の16週間後、血液、骨髄および脳中のヒト細胞の存在を分析することによって生着を評価した。
【0427】
脳単離
最初に4%イソフルラン(isofluorane)でマウスに麻酔をかけ、冷PBS 50mLを灌流した。脳を抽出して、5% FBS+Pen/Strepを含むDMEM 5mL中に入れ、すべてのマウスおよび組織を処理している間、これを氷上で維持した。すべての脳を抽出したら、滅菌はさみを使用して脳を小片にカットし、16gの針に3回通してホモジナイズした。脳組織をさらに消化するために、脳ホモジネートに500ug/mLのパパインおよび20U/mLのDNase Iを加え、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、残っている脳組織を40μMのセルストレーナーに通して、新鮮DMEMで洗浄した。次いで、細胞を、30% Percoll勾配に再懸濁し、70% Percoll勾配の上に載せ、600gで25分間スピンしてミエリンを除去した。Percoll勾配の中間相の細胞を回収し、洗浄し、フローサイトメトリー用に染色するかまたはゲノムDNA抽出用に維持した。
【0428】
フローサイトメトリー
細胞を400×gで5分間スピンダウンした。上清を除去し、細胞をFACSバッファー(PBS中1mM EDTA+0.5%BSA)中で1回洗浄した。洗浄後、FACSバッファー中5μg/mLに希釈したFc block(BD Bioscience, cat. no. 564220)50μLに細胞を再懸濁した。4℃で5分間のインキュベーション後、FACSバッファー中に希釈した表面抗体マスターミックス50μLを細胞に加え、4℃でさらに30分間インキュベートした。次いで、細胞をFACSバッファー中で2回洗浄し、続いて、Fixative/Perm溶液(BD Bioscience, cat. no. 554722)100μuL中にて4℃で20分間固定した。細胞を透過処理バッファー中で1回洗浄し、続いて、細胞内抗体ミックス(透過処理バッファー中に希釈)中にて4℃で30分間インキュベートした。細胞を透過処理バッファー中でもう1回洗浄し、BD Cantoでの解析前にFACSバッファー100~200μLに再懸濁した。
【0429】
インビトロ骨髄分化のために、以下の抗体を使用した:CD11b APC(Miltenyi 130-110-554)、CD14 VioBlue(Miltenyi 130-113-152)、およびS100A9 PE(Invitrogen MA5-28130)。骨髄細胞の染色のために、以下の抗体を使用した:hCD45 PE-Cy7(BD 103114)、mCD45 V450(BD 560501)、CD33 PE(Miltenyi 130-113-349)、CD3 PerCP-Cy5.5(BD 560835)、CD34 APC-V770(Miltenyi 130-113-180)、CD19 FITC(BD 555412)。単離した脳細胞の染色のために、以下の抗体を使用した:hCD45 FITC(Miltenyi 130-113-117)、mCD45 APC-Cy7(BD 557659)、P2RY12 BV421(Biolegend 392106)、精製TMEM119(Biolegend 853302)、抗mIgG2b AF647(Biolegend 406716)、CD11b PE(Biolegend 101208)。抗体毎に、蛍光マイナスワン(FMO)対照および単染色コンペンセーションビーズを含めた。
【0430】
実施例2:GFPの発現のための人工エクソン(ArtEx)は、エクソン#1と#2の間に挿入することで、発現のために適切に処理され得る - インビトロ結果
骨髄遺伝子S100A9またはCD11bの2つの最初のエクソン間への人工エクソンの挿入は、S100A9またはCD11bの内因性発現を損なうことなく、骨髄細胞系列からの治療用タンパク質の発現を達成するはずである。概念実証のために、本発明者らは、各遺伝子のイントロン領域を標的とするTALEN、および発現モニタリングを可能にするGFPカセットを担持するAAVドナーを作製した。本発明者らのアプローチの系列特異的発現の対照として、本発明者らは、すべての血液細胞系列で発現されるより古典的なセーフハーバーアプローチとして、プロモーター含有GFPカセットをAAVS1遺伝子座に挿入するための試薬も作製した。
【0431】
予刺激したHSCに、AAVS1、S100A9およびCD11b遺伝子座を標的とするTALEN mRNAをトランスフェクトし、漸増用量の対応するAAV-GFP修復テンプレートで形質導入した。次いで、編集したHSCを骨髄様細胞に分化させた。14日後、分化した細胞をフローサイトメトリーによってスクリーニングし、異なる細胞サブセットにおけるGFP発現を特徴付けた。
【0432】
分化の14日後、細胞の40~60%がCD14+であった。CD14高発現細胞の中で、GFP発現によって定義される遺伝子編集率は、主に使用されたAAV用量に応じて26%~60%の範囲であり、CD11bおよびS100A9遺伝子座についてそれぞれ最大値56%および60%が達成された(図8A)。本発明者らはまた、CD14高発現細胞における内因性S100A9およびCD11bの発現も評価した。すべてのCD14高発現細胞は、これらが編集された(GFP+)かまたは編集されていない(GFP-)かに関係なく、CD11bおよびS100A9に陽性であった(図8Bおよび8C)。
【0433】
いずれかの遺伝子座での相当量のGFP細胞の存在は、GFPカセットが最初の2つのエクソン間に適切に挿入されたこと、そして、本発明者らが加えたスプライシングシグナルがスプライシング細胞機構によって適切に処理されたことを実証している。このArtEx戦略は、挿入遺伝子(すなわちGFP)タンパク質と内因性CD11bまたはS100A9タンパク質の両方が翻訳可能な二機能性のmRNA分子の発現を可能にする。
【0434】
実施例3:IDUAの発現のための人工エクソンは、エクソン#1と#2の間に挿入することで、発現および分泌のために適切に処理され得る - インビトロ結果
予刺激したHSCに、S100A9およびCD11b遺伝子座を標的とするTALEN mRNAをトランスフェクトし、漸増用量の対応するAAV-IDUA修復テンプレートで形質導入した。編集したHSCを骨髄分化培地に入れた。14日後、骨髄様分化細胞を濃縮なしにIDUA産生のために播種した(骨髄の%、40~60%)。3日後に細胞上清を収集し、ELISAによってIDUAを定量した。本発明者らは、CD11bおよびS100A9遺伝子座で編集された細胞が、未編集対照よりもそれぞれ10倍および15倍多いIDUAを分泌したことを観察した(図9)。
【0435】
これらの結果は、ArtEx戦略が、治療用タンパク質の特異的発現および分泌を可能にすることを裏付けている。
【0436】
実施例4:編集されたHSCは、動物モデルの血液および骨髄にうまく生着した:インビボ結果
本発明者らの治療アプローチに基づくHSCのより重要な特徴の1つは、1回の介入後に一生にわたる編集細胞の供給を提供する能力である。そのために、HSCは、骨髄に生着し、増殖し、後に体内の複数の組織に定植する血液細胞を産生する必要がある。
【0437】
このHSCの能力のいくつかの知見を提供するために、免疫不全動物モデルを使用した。S100A9遺伝子座を標的とする前述のGFPカセットで編集されたHSCを、編集の24時間後に、コンディショニングされた雌のNSGに注射した。この動物モデルは、動物骨髄にてヒトHSCの生着を継続することが示されている。
【0438】
編集されたHSCの注射の16週間後、すべての動物で血液および骨髄における生着が研究群間で同様のレベルで検出され、平均で血液において3.3%および骨髄において40.8%であった(図10AおよびB)。加えて、動物の脾臓においてヒト細胞の24~30%を検出することもできた(図10C)。より重要なことに、これらのコンパートメントのすべてで編集された細胞を検出することができた。
【0439】
これらの動物の血液中の編集細胞の存在を分析した。バルクヒトCD45細胞で、本発明者らは、S100A9遺伝子座で編集されたHSCを注射した動物の血液中に、平均で1.4%のGFP+細胞を発見した。しかしながら、このモデルにおいてCD33+細胞と規定される骨髄コンパートメントを分析すると、編集率は、バルク集団よりも2倍高い3.3%まで増加した(図11A)。
【0440】
編集細胞の百分率を骨髄においても分析し、ヒト細胞の1.3%がGFP+であった。加えて、骨髄中のhCD45+およびCD33+ヒト細胞の2.8%がGFP+であった(図10B)。
【0441】
実施例5:編集されたHSCは、動物モデルの脳にうまく生着した:インビボ結果
この治療アプローチの別の潜在的利点は、HSCに由来するミクログリアが、脳コンパートメントにおいて欠損LSD酵素を分泌することができ、これにより、これらのLSD疾患に関連する破壊的な神経学的症状の処置が可能になるという能力である。この潜在的特徴について調査するために、前述の動物の脳におけるヒト細胞の存在を分析した。
【0442】
マウスの脳の単離および細胞の処理の後、マウスの脳において相当量のヒト細胞を検出することができた。脳における細胞の平均2.7%がヒト起源であった(図12A)。より重要なことに、これらのヒト細胞の18.5%は、P2RY12およびTMEM119ミクログリアマーカーを使用して、由来するミクログリアを含有していた(図12B)。これらの2つのマーカーは、これらの動物の末梢血に存在するどのヒト細胞にも見いだされなかったので、抽出の間に末梢血液細胞により脳単離物が汚染される可能性を除いた。
【0443】
この脳コンパートメントにおいて、GFP陽性細胞は、それぞれ全ヒト細胞およびヒトミクログリア細胞の少なくとも1.2%および1.6%を占めた。
【0444】
実施例6:ArtExで編集されたHSCは、高い分泌プロファイルを有する
ArtExで編集されたHSCを、治療用タンパク質を分泌する能力について、古典的なレンチウイルス編集HSCと比較した。
【0445】
未処理HSC、IDUAの発現を可能にするレンチウイルスベクターで形質導入されたHSC、およびS100A9またはCD11b遺伝子座でIDUAの標的化組み込みを行ったHSCは、先行実施例に記載の通りである。編集されたHSCを骨髄分化培地に入れた。14日後、骨髄様分化細胞をIDUA産生のために播種した。3日後に細胞上清を収集し、ELISAによってIDUAを定量した。本発明者らは、CD11bおよびS100A9遺伝子座で編集された細胞が、未編集対照よりもそれぞれ10倍および15倍多いIDUAを分泌したことを観察した(図13A)。
【0446】
結果から、ArtExで編集されたHSCはIDUA分泌を10倍の倍数で刺激できたが、レンチウイルスベクターで形質導入されたHSCはIDUA分泌を5倍の倍数で刺激することが実証される。
【0447】
加えて、マウスでの生着効率についてHSCを試験し、過去に観察されているように、編集されたHSCは、効率的に骨髄(50%)、脾臓(41%)および血液(45%)に生着することができ、最も重要なことに、脳には相当量のミクログリア細胞を伴って最大3,3%で生着することができた(図13BおよびC)。
【0448】
これらの結果はまとめて、ArtEx戦略が、たとえ脳であっても高レベルの治療用タンパク質を分泌できる可能性を有することを明らかにしている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14
【配列表】
2023525510000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 内因性イントロンゲノム領域を含む細胞を提供する工程、
- 前記細胞に、外因性コード配列を含むポリヌクレオチドテンプレートを導入する工程であって、前記ポリヌクレオチドテンプレートが、
(a)挿入部位の上流のイントロン配列と相同である、第1の相同ポリヌクレオチド配列、
(b)分岐点およびスプライスアクセプターを含む、第1の強いスプライス部位配列;
(c)2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
(d)関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
(e)2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
(f)第1のエクソンのコード配列のコピー;
(g)スプライスドナーを含む第2の強いスプライス部位配列;および
(h)挿入部位の下流のイントロン配列と相同である、第2の相同ポリヌクレオチド配列
を含む、工程;
- 外因性コード配列が、第1のエクソンまたはそのコピーと共に、内因性遺伝子座で転写されるように、好ましくは相同組換えによる、前記イントロン配列への前記外因性ポリヌクレオチドの組み込みを誘導する工程
を含む、外因性コード配列を内因性イントロンゲノム領域の挿入部位に組み込むための方法。
【請求項2】
前記組み込みが、人工エクソン(Artex)を形成し、かつ少なくとも1つの造血細胞系列への外因性コード配列の発現を得るために造血幹細胞(HSC)に導入される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
外因性コード配列が、遺伝子疾患を処置するための関心対象のタンパク質をコードする、請求項1~2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
外因性コード配列が、前駆細胞における発現のためのものである、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
外因性コード配列が、FANCA、FANCC、またはFANCGから選択されるタンパク質を発現する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
外因性コード配列が、関心対象のタンパク質の赤血球における発現を可能にする、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
外因性コード配列が、HBB、PKLR、またはRPS19から選択されるタンパク質を発現する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
外因性コード配列が、顆粒球における発現のためのものである、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
外因性コード配列が、HAX1、CYBA、CYBB、NCF1、NCF2、またはNCF4から選択されるタンパク質を発現する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
外因性コード配列が、巨核球における発現のためのものである、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
外因性コード配列が、Factor 8、Factor 9、Factor 11、またはWASから選択されるタンパク質を発現する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
外因性コード配列が、単球における発現のためのものである、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
外因性コード配列が、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、およびCDKL5から選択されるタンパク質を発現する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
外因性コード配列が、B細胞における発現のためのものである、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
外因性コード配列が、ADA、IL2RG、WAS、またはBTKから選択されるタンパク質を発現する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
外因性コード配列が、T細胞における発現のためのものである、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
外因性コード配列が、ADA、IL2RG、WAS、BTK、またはCCR5から選択されるタンパク質を発現する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
外因性配列の発現が、内因性遺伝子座、とりわけ挿入部位の下流のイントロン配列の発現も可能にする、請求項1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
外因性コード配列の発現が、関心対象のタンパク質をもたらし、内因性欠損タンパク質のクロスコレクションを可能にする、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
以下の配列を含む内因性遺伝子座での挿入のための外因性ポリヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、AAVベクターなどの挿入ベクター:
(a)挿入部位の上流のイントロン配列と相同である、第1の相同ポリヌクレオチド配列、
(b)分岐点およびスプライスアクセプターを含む、第1の強いスプライス部位配列;
(c)2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
(d)関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
(e)2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
(f)第1のエクソンのコード配列のコピー;
(g)スプライスドナーを含む第2の強いスプライス部位配列;および
(h)挿入部位の下流のイントロン配列と相同である、第2の相同ポリヌクレオチド配列。
【請求項21】
第1および第2の相同配列が、tmem119、s100a9、cd11b、b2m、cx3cr1、mertk、cd164、tlr4、tlr7、cd14、fcgr1a、fcgr3a、tbxas1、dok3、abca1、tmem195、mr1、csf3r、fgd4、tspan14、tgfbri、ccr5、gpr34、serpine2、slco2b1、p2ry12、olfml3、p2ry13、hexb、rhob、jun、rab3il1、ccl2、fcrls、scoc、siglech、slc2a5、lrrc3、plxdc2、usp2、ctsf、cttnbp2nl、atp8a2、lgmn、mafb、egr1、bhlhe41、hpgds、ctsd、hspa1a、lag3、csf1r、adamts1、f11r、golm1、nuak1、crybb1、ltc4s、sgce、pla2g15、ccl3l1、abhd12、ang、ophn1、sparc、pros1、p2ry6、lair1、il1a、epb41l2、adora3、rilpl1、pmepa1、ccl13、pde3b、scamp5、ppp1r9a、tjp1、ak1、b4galt4、gtf2h2、trem2、ckb、acp2、pon3、agmo、tnfrsf17、fscn1、st3gal6、adap2、ccl4、entpd1、tmem86a、kctd12、dst、ctsl2、abcc3、pdgfb、pald1、tubgcp5、rapgef5、stab1、lacc1、tmc7、nrip1、kcnd1、tmem206、hps4、dagla、extl3、mlph、arhgap22、cxxc5、p4ha1、cysltr1、fgd2、kcnk13、gbgt1、c18orf1、cadm1、bco2、adrb1、c3ar1、large、leprel1、liph、upk1b、p2rx7、slc46a1、ebf3、ppp1r15a、il10ra、rasgrp3、fos、tppp、slc24a3、havcr2、nav2、apbb2、clstn1、blnk、gnaq、ptprm、frmd4a、cd86、tnfrsf11a、spint1、ppm1l、tgfbr2、cmklr1、tlr6、gas6、hist1h2ab、atf3、acvr1、abi3、lrp12、ttc28、plxna4、adamts16、rgs1、icam1、snx24、ly96、dnajb4、およびppfia4から選択される内因性遺伝子座と相同である、請求項20記載の挿入ベクター。
【請求項22】
外因性コード配列によってコードされる治療用タンパク質が、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、およびCDKL5(SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:35 - 表1を参照のこと)と少なくとも80%のポリペプチド配列同一性を有する、請求項20または21記載の挿入ベクター
【請求項23】
請求項1~19のいずれか一項記載の1つの方法に従って得られることを特徴とする、操作された細胞。
【請求項24】
外因性ポリヌクレオチド配列が、内因性遺伝子座のイントロンに挿入されていることを特徴とする、操作された細胞であって、前記ポリヌクレオチド配列が、
- 分岐点およびアクセプター部位を含む、第1の強いスプライス部位配列;
- 2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
- 治療用タンパク質などの関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
- 2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
- 前記遺伝子座に対して内因性である先行エクソンのコード配列のコピー;
- スプライスドナー部位を含む第2の強いスプライス部位配列
を含む、操作された細胞。
【請求項25】
関心対象のタンパク質が、IDUA、IDS、ARSA、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、CDKL5、FANCA、FANCC、FANCG、HBB、PKLR、RPS19、HAX1、CYBA、CYBB、NCF1、NCF2、NCF4、Factor 8、Factor 9、Factor 11、WAS、IL2RG、またはBTKである、請求項23または24記載の操作された細胞。
【請求項26】
遺伝子座に対して内因性である先行エクソンのコード配列が書き換えられている、請求項23~25のいずれか一項記載の操作された細胞。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
[本発明1001]
- 内因性イントロンゲノム領域を含む細胞を提供する工程、
- 前記細胞に、外因性コード配列を含むポリヌクレオチドテンプレートを導入する工程であって、前記ポリヌクレオチドテンプレートが、
(a)挿入部位の上流のイントロン配列と相同である、第1の相同ポリヌクレオチド配列、
(b)分岐点およびスプライスアクセプターを含む、第1の強いスプライス部位配列;
(c)2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
(d)関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
(e)2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
(f)第1のエクソンのコード配列のコピー;
(g)スプライスドナーを含む第2の強いスプライス部位配列;および
(h)挿入部位の下流のイントロン配列と相同である、第2の相同ポリヌクレオチド配列
を含む、工程;
- 外因性コード配列が、第1のエクソンまたはそのコピーと共に、内因性遺伝子座で転写されるように、好ましくは相同組換えによる、前記イントロン配列への前記外因性ポリヌクレオチドの組み込みを誘導する工程
を含む、外因性コード配列を内因性イントロンゲノム領域の挿入部位に組み込むための方法。
[本発明1002]
前記組み込みが、人工エクソン(Artex)を形成し、かつ少なくとも1つの造血細胞系列への外因性コード配列の発現を得るために造血幹細胞(HSC)に導入される、本発明1001の方法。
[本発明1003]
外因性コード配列が、遺伝子疾患を処置するための関心対象のタンパク質をコードする、本発明1001~1002のいずれかの方法。
[本発明1004]
外因性コード配列が、前駆細胞における発現のためのものである、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
外因性コード配列が、FANCA、FANCC、またはFANCGから選択されるタンパク質を発現する、本発明1004の方法。
[本発明1006]
外因性コード配列が、関心対象のタンパク質の赤血球における発現を可能にする、本発明1001~1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
外因性コード配列が、HBB、PKLR、またはRPS19から選択されるタンパク質を発現する、本発明1006の方法。
[本発明1008]
外因性コード配列が、顆粒球における発現のためのものである、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1009]
外因性コード配列が、HAX1、CYBA、CYBB、NCF1、NCF2、またはNCF4から選択されるタンパク質を発現する、本発明1009の方法。
[本発明1010]
外因性コード配列が、巨核球における発現のためのものである、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1011]
外因性コード配列が、Factor 8、Factor 9、Factor 11、またはWASから選択されるタンパク質を発現する、本発明1011の方法。
[本発明1012]
外因性コード配列が、単球における発現のためのものである、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1013]
外因性コード配列が、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、およびCDKL5から選択されるタンパク質を発現する、本発明1013の方法。
[本発明1014]
外因性コード配列が、B細胞における発現のためのものである、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1015]
外因性コード配列が、ADA、IL2RG、WAS、またはBTKから選択されるタンパク質を発現する、本発明1015の方法。
[本発明1016]
外因性コード配列が、T細胞における発現のためのものである、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1017]
外因性コード配列が、ADA、IL2RG、WAS、BTK、またはCCR5から選択されるタンパク質を発現する、本発明1005の方法。
[本発明1018]
外因性配列の発現が、内因性遺伝子座、とりわけ挿入部位の下流のイントロン配列の発現も可能にする、本発明1001~1018のいずれかの方法。
[本発明1019]
外因性コード配列の発現が、関心対象のタンパク質をもたらし、内因性欠損タンパク質のクロスコレクションを可能にする、本発明1001~1019のいずれかの方法。
[本発明1020]
操作された治療用細胞を産生するためにエクスビボで行われる、本発明1001~1020のいずれかの方法。
[本発明1021]
以下の配列を含む内因性遺伝子座での挿入のための外因性ポリヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、AAVベクターなどの挿入ベクター:
(a)挿入部位の上流のイントロン配列と相同である、第1の相同ポリヌクレオチド配列、
(b)分岐点およびスプライスアクセプターを含む、第1の強いスプライス部位配列;
(c)2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
(d)関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
(e)2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
(f)第1のエクソンのコード配列のコピー;
(g)スプライスドナーを含む第2の強いスプライス部位配列;および
(h)挿入部位の下流のイントロン配列と相同である、第2の相同ポリヌクレオチド配列。
[本発明1022]
第1および第2の相同配列が、tmem119、s100a9、cd11b、b2m、cx3cr1、mertk、cd164、tlr4、tlr7、cd14、fcgr1a、fcgr3a、tbxas1、dok3、abca1、tmem195、mr1、csf3r、fgd4、tspan14、tgfbri、ccr5、gpr34、serpine2、slco2b1、p2ry12、olfml3、p2ry13、hexb、rhob、jun、rab3il1、ccl2、fcrls、scoc、siglech、slc2a5、lrrc3、plxdc2、usp2、ctsf、cttnbp2nl、atp8a2、lgmn、mafb、egr1、bhlhe41、hpgds、ctsd、hspa1a、lag3、csf1r、adamts1、f11r、golm1、nuak1、crybb1、ltc4s、sgce、pla2g15、ccl3l1、abhd12、ang、ophn1、sparc、pros1、p2ry6、lair1、il1a、epb41l2、adora3、rilpl1、pmepa1、ccl13、pde3b、scamp5、ppp1r9a、tjp1、ak1、b4galt4、gtf2h2、trem2、ckb、acp2、pon3、agmo、tnfrsf17、fscn1、st3gal6、adap2、ccl4、entpd1、tmem86a、kctd12、dst、ctsl2、abcc3、pdgfb、pald1、tubgcp5、rapgef5、stab1、lacc1、tmc7、nrip1、kcnd1、tmem206、hps4、dagla、extl3、mlph、arhgap22、cxxc5、p4ha1、cysltr1、fgd2、kcnk13、gbgt1、c18orf1、cadm1、bco2、adrb1、c3ar1、large、leprel1、liph、upk1b、p2rx7、slc46a1、ebf3、ppp1r15a、il10ra、rasgrp3、fos、tppp、slc24a3、havcr2、nav2、apbb2、clstn1、blnk、gnaq、ptprm、frmd4a、cd86、tnfrsf11a、spint1、ppm1l、tgfbr2、cmklr1、tlr6、gas6、hist1h2ab、atf3、acvr1、abi3、lrp12、ttc28、plxna4、adamts16、rgs1、icam1、snx24、ly96、dnajb4、およびppfia4から選択される内因性遺伝子座と相同である、本発明1022の挿入ベクター。
[本発明1023]
外因性コード配列によってコードされる治療用タンパク質が、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、およびCDKL5(SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:35 - 表1を参照のこと)と少なくとも80%のポリペプチド配列同一性を有する、本発明1022または1023の挿入。
[本発明1024]
本発明1001~1021のいずれかの1つの方法に従って得られることを特徴とする、操作された細胞。
[本発明1025]
外因性ポリヌクレオチド配列が、内因性遺伝子座のイントロンに挿入されていることを特徴とする、操作された細胞であって、前記ポリヌクレオチド配列が、
- 分岐点およびアクセプター部位を含む、第1の強いスプライス部位配列;
- 2A自己切断ペプチドをコードする第1の配列;
- 治療用タンパク質などの関心対象のタンパク質をコードする外因性配列;
- 2A自己切断ペプチドをコードする第2の配列;
- 前記遺伝子座に対して内因性である先行エクソンのコード配列のコピー;
- スプライスドナー部位を含む第2の強いスプライス部位配列
を含む、操作された細胞。
[本発明1026]
外因性ポリヌクレオチド配列が、tmem119、s100a9、cd11b、B2m、Cx3cr1、mertk、cd164、tlr4、tlr7、cd14、fcgr1a、fcgr3a、tbxas1、dok3、abca1、tmem195、mr1、csf3r、fgd4、tspan14、tgfbri、ccr5、gpr34、serpine2、slco2b1、P2ry12、Olfml3、P2ry13、Hexb、Rhob、Jun、Rab3il1、Ccl2、Fcrls、Scoc、Siglech、Slc2a5、Lrrc3、Plxdc2、Usp2、Ctsf、Cttnbp2nl、Atp8a2、Lgmn、Mafb、Egr1、Bhlhe41、Hpgds、Ctsd、Hspa1a、Lag3、Csf1r、Adamts1、F11r、Golm1、Nuak1、Crybb1、Ltc4s、Sgce、Pla2g15、Ccl3l1、Abhd12、Ang、Ophn1、Sparc、Pros1、P2ry6、Lair1、Il1a、Epb41l2、Adora3、Rilpl1、Pmepa1、Ccl13、Pde3b、Scamp5、Ppp1r9a、Tjp1、Ak1、B4galt4、Gtf2h2、Trem2、Ckb、Acp2、Pon3、Agmo、Tnfrsf17、Fscn1、St3gal6、Adap2、Ccl4、Entpd1、Tmem86a、Kctd12、Dst、Ctsl2、Abcc3、Pdgfb、Pald1、Tubgcp5、Rapgef5、Stab1、Lacc1、Tmc7、Nrip1、Kcnd1、Tmem206、Hps4、Dagla、Extl3、Mlph、Arhgap22、Cxxc5、P4ha1、Cysltr1、Fgd2、Kcnk13、Gbgt1、C18orf1、Cadm1、Bco2、Adrb1、C3ar1、Large、Leprel1、Liph、Upk1b、P2rx7、Slc46a1、Ebf3、Ppp1r15a、Il10ra、Rasgrp3、Fos、Tppp、Slc24a3、Havcr2、Nav2、Apbb2、Clstn1、Blnk、Gnaq、Ptprm、Frmd4a、Cd86、Tnfrsf11a、Spint1、Ppm1l、Tgfbr2、Cmklr1、Tlr6、Gas6、Hist1h2ab、Atf3、Acvr1、Abi3、Lrp12、Ttc28、Plxna4、Adamts16、Rgs1、Icam1、Snx24、Ly96、Dnajb4、およびPpfia4から選択される内因性遺伝子座に挿入される、本発明1026の操作された細胞。
[本発明1027]
関心対象のタンパク質が、IDUA、IDS、ARSA、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、CDKL5、FANCA、FANCC、FANCG、HBB、PKLR、RPS19、HAX1、CYBA、CYBB、NCF1、NCF2、NCF4、Factor 8、Factor 9、Factor 11、WAS、IL2RG、またはBTKである、本発明1026または1027の操作された細胞。
[本発明1028]
外因性コード配列によってコードされる治療用タンパク質が、IDUA、IDS、ARSB、GUSB、ABCD1、GALC、ARSA、PSAP、GBA、FUCA1、MAN2B1、AGA、ASAH1、HEXA、GAA、SMPD1、LIPA、およびCDKL5(SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:35 - 表1を参照のこと)と少なくとも80%のポリペプチド配列同一性を有する、本発明1028の操作された細胞。
[本発明1029]
イントロンが、第1と第2のコーディングエクソン間に位置する、本発明1025~1029のいずれかの操作された細胞。
[本発明1030]
2自己切断ペプチドをコードする第1および第2が異なる、本発明1025~1030のいずれかの操作された細胞。
[本発明1031]
2自己切断の少なくとも1つが、SEQ ID NO:216およびSEQ ID NO:217から選択される、本発明1025~1031のいずれかの操作された細胞。
[本発明1032]
第1のスプライス部位が、SEQ ID NO:206またはSEQ ID NO:207を含む、本発明1001の操作された細胞。
[本発明1033]
遺伝子座に対して内因性である遺伝子座に対して内因性である先行エクソンのコード配列が書き換えられている、本発明1001の操作された細胞。
[本発明1034]
内因性遺伝子が、tmem119、s100a9、cd11b、B2m、Cx3cr1、mertk、cd164、tlr4、tlr7、cd14、fcgr1a、fcgr3a、tbxas1、dok3、abca1、tmem195、mr1、csf3r、fgd4、tspan14、tgfbri、ccr5、gpr34、serpine2、slco2b1、P2ry12、Olfml3、P2ry13、Hexb、Rhob、Jun、Rab3il1、Ccl2、Fcrls、Scoc、Siglech、Slc2a5、Lrrc3、Plxdc2、Usp2、Ctsf、Cttnbp2nl、Atp8a2、Lgmn、Mafb、Egr1、Bhlhe41、Hpgds、Ctsd、Hspa1a、Lag3、Csf1r、Adamts1、F11r、Golm1、Nuak1、Crybb1、Ltc4s、Sgce、Pla2g15、Ccl3l1、Abhd12、Ang、Ophn1、Sparc、Pros1、P2ry6、Lair1、Il1a、Epb41l2、Adora3、Rilpl1、Pmepa1、Ccl13、Pde3b、Scamp5、Ppp1r9a、Tjp1、Ak1、B4galt4、Gtf2h2、Trem2、Ckb、Acp2、Pon3、Agmo、Tnfrsf17、Fscn1、St3gal6、Adap2、Ccl4、Entpd1、Tmem86a、Kctd12、Dst、Ctsl2、Abcc3、Pdgfb、Pald1、Tubgcp5、Rapgef5、Stab1、Lacc1、Tmc7、Nrip1、Kcnd1、Tmem206、Hps4、Dagla、Extl3、Mlph、Arhgap22、Cxxc5、P4ha1、Cysltr1、Fgd2、Kcnk13、Gbgt1、C18orf1、Cadm1、Bco2、Adrb1、C3ar1、Large、Leprel1、Liph、Upk1b、P2rx7、Slc46a1、Ebf3、Ppp1r15a、Il10ra、Rasgrp3、Fos、Tppp、Slc24a3、Havcr2、Nav2、Apbb2、Clstn1、Blnk、Gnaq、Ptprm、Frmd4a、Cd86、Tnfrsf11a、Spint1、Ppm1l、Tgfbr2、Cmklr1、Tlr6、Gas6、Hist1h2ab、Atf3、Acvr1、Abi3、Lrp12、Ttc28、Plxna4、Adamts16、Rgs1、Icam1、Snx24、Ly96、Dnajb4、およびPpfiから選択される、本発明1001の操作された細胞。
[本発明1035]
内因性遺伝子が、S100A9またはCD11bである、本発明1001の操作された細胞。
他の目的、特にベクター、細胞および結果として生じた細胞の集団、ならびに本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体例は、本発明の具体的な態様を示している一方で、当業者にはこの詳細な説明から本発明の精神および範囲内での種々の変更および改変が明らかになるので、これらは単なる例証として示されるものと理解されるべきである。
【国際調査報告】