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特表2023-525518新規アンキリンリピート結合タンパク質とその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(54)【発明の名称】新規アンキリンリピート結合タンパク質とその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230609BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230609BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230609BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230609BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230609BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230609BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230609BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 38/55 20060101ALI20230609BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230609BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20230609BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C07K14/47
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C12P21/02 A
A61P31/14
A61K48/00
A61K38/55
A61P43/00 111
A61K47/64
A61K39/395 P
A61K39/395 S
A61K39/395 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567265
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 IB2021000320
(87)【国際公開番号】W WO2021224686
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/145,192
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/020,882
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/069,174
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/057,477
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/021,024
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】515146556
【氏名又は名称】モレキュラー パートナーズ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】アムステュツ パトリック
(72)【発明者】
【氏名】カラブロ ヴァーレリー ペリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルザー マルセル
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA03
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA94
4C076CC29
4C076CC35
4C076CC41
4C076EE59M
4C076FF31
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA03
4C084BA41
4C084CA53
4C084DC40
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB331
4C084ZC201
4C085AA13
4C085AA14
4C085BA71
4C085BB22
4C085CC31
4C085DD62
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045EA20
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、コロナウイルススパイクタンパク質に対する結合特異性を有する1つ以上の設計されたアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質、そのようなタンパク質をコードする核酸、そのようなタンパク質または核酸を含む医薬組成物、及びコロナウイルス疾患、特にSARS-CoV-2によって引き起こされる疾患の治療におけるそのようなタンパク質、核酸または医薬組成物の使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第1のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記組換え結合タンパク質。
【請求項2】
前記第1のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項3】
前記第1のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択される、請求項1に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項4】
第2のアンキリンリピートドメインをさらに含む請求項1~3のいずれか1項に記載の組換え結合タンパク質であって、前記第2のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記組換え結合タンパク質。
【請求項5】
前記第2のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項6】
前記第2のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択される、請求項4に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項7】
第3のアンキリンリピートドメインをさらに含む請求項4~6のいずれか1項に記載の組換え結合タンパク質であって、前記第3のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記組換え結合タンパク質。
【請求項8】
前記第3のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項9】
前記第3のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択される、請求項7に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項10】
前記第1、第2、及び第3のアンキリンリピートドメインが、以下のようなアミノ酸配列を含み、N末端からC末端に向かって配置される、請求項7に記載の組換え結合タンパク質:
(i)配列番号6、1、及び3と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(ii)配列番号4、2、及び1と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(iii)配列番号4、6、及び3と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(iv)配列番号6、3、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(v)配列番号7、3、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(vi)配列番号8、4、及び1と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(vii)配列番号3、6、及び7と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(viii)配列番号4、1、及び8と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(ix)配列番号3、6、及び9と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(x)配列番号9、3、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xi)配列番号1、6、及び9と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xii)配列番号9、6、及び1と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xiii)配列番号6、9、及び10と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xiv)配列番号3、9、及び11と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xv)配列番号10、9、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xvi)配列番号11、9、及び3と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xvii)配列番号5、1、及び3と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xviii)配列番号1、2、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xix)配列番号3、5、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xx)配列番号6、3、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxi)配列番号7、3、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxii)配列番号8、5、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxiii)配列番号6、10、及び11と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxiv)配列番号3、10、及び10と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxv)配列番号5、6、及び9と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxvi)配列番号9、3、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxvii)配列番号9、6、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxviii)配列番号5、9、及び10と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxix)配列番号6、9、及び11と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxx)配列番号10、9、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxxi)配列番号11、9、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxxii)配列番号3、76、及び77と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
または(xxxiii)配列番号3、85、及び77と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列。
【請求項11】
前記結合タンパク質がポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが、配列番号68、69、79、及び89~91からなる群から選択される配列と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項7~10のいずれか1項に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項12】
前記結合タンパク質がコロナウイルススパイクタンパク質に結合する、請求項1~11のいずれか1項に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項13】
前記スパイクタンパク質がSARS-CoV-2スパイクタンパク質である、請求項12に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項14】
前記第1、第2、及び/または第3のアンキリンリピートドメインが、約100nM以下の解離定数(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する、請求項12または13に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項15】
少なくとも1つのアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記アンキリンリピートドメインが、約100nM以下の解離定数(KD)でコロナウイルススパイクタンパク質に結合する、前記組換え結合タンパク質。
【請求項16】
少なくとも1つの血清アルブミン結合ドメインをさらに含む、いずれかの先行請求項に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項17】
前記血清アルブミン結合ドメインが、配列番号47~49からなる群から選択される配列と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項16に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項18】
ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号12~42、75、84、87、及び88からなる群から選択される配列と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質。
【請求項19】
前記ポリペプチドが配列番号31と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項18に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項20】
前記ポリペプチドが配列番号39と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項18に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項21】
前記ポリペプチドが配列番号75と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項18に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項22】
前記ポリペプチドが配列番号84と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項18に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項23】
前記ポリペプチドが配列番号87と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項18に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項24】
前記ポリペプチドが配列番号88と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項18に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項25】
前記ポリペプチドが配列番号12~42、75、84、87、及び88からなる群から選択される配列と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項18に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項26】
前記ポリペプチドが配列番号12~42、75、84、87、及び88からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項18に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項27】
ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが、配列番号31、配列番号39、配列番号75、配列番号84、配列番号87、または配列番号88のアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質。
【請求項28】
前記結合タンパク質がコロナウイルススパイクタンパク質に結合する、請求項18~27のいずれか1項に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項29】
前記スパイクタンパク質がSARS-CoV-2スパイクタンパク質である、請求項28に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項30】
前記結合タンパク質が、約100nM以下の解離定数(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する、請求項28または29に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項31】
前記結合タンパク質が、コロナウイルスによる細胞の感染を阻害することができる、請求項1~30のいずれか1項に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項32】
前記結合タンパク質が、SARS-CoV-2による細胞の感染を阻害することができる、請求項1~30のいずれか1項に記載の組換え結合タンパク質。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか1項に記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸。
【請求項34】
前記核酸が、配列番号70または配列番号70と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項35】
前記核酸が、配列番号71または配列番号71と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項36】
前記核酸が、配列番号72または配列番号72と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項37】
前記核酸が、配列番号73または配列番号73と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項38】
前記核酸が、配列番号74または配列番号74と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項39】
前記核酸が、配列番号80または配列番号80と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項40】
前記核酸が、配列番号81または配列番号81と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項41】
前記核酸が、配列番号82または配列番号82と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項42】
前記核酸が、配列番号83または配列番号83と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項43】
前記核酸が、配列番号78または配列番号78と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項44】
前記核酸が、配列番号86または配列番号86と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項45】
前記核酸が、配列番号92または配列番号92と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項46】
前記核酸が、配列番号93または配列番号93と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項47】
前記核酸が、配列番号94または配列番号94と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項48】
前記核酸が、配列番号95または配列番号95と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、請求項33に記載の核酸。
【請求項49】
請求項33~48のいずれか1項に記載の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項50】
請求項49に記載の宿主細胞を、前記組換え結合タンパク質が発現する条件下で培養することを含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の組換え結合タンパク質を作製する方法。
【請求項51】
請求項1~32のいずれか1項に記載の組換え結合タンパク質または請求項33~48のいずれか1項に記載の核酸と、薬学的に許容される担体または賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項52】
対象におけるコロナウイルス感染症を治療する方法であって、前記方法が、請求項1~32のいずれか1項に記載の少なくとも1つの結合タンパク質の有効量、または請求項33~48のいずれか1項に記載の核酸の有効量、または請求項51に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、前記方法。
【請求項53】
対象におけるコロナウイルス感染症を予防する方法であって、前記方法が、請求項1~32のいずれか1項に記載の少なくとも1つの結合タンパク質の有効量、または請求項33~48のいずれか1項に記載の核酸の有効量、または請求項51に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、前記方法。
【請求項54】
対象におけるコロナウイルス感染症を検出する方法であって、前記方法が、
a)対象から試料を得ることと;
b)前記試料を、請求項1~32のいずれか1項に記載の少なくとも1つの結合タンパク質と接触させることと;
(c)コロナウイルス感染症の存在を検出することと、を含む、前記方法。
【請求項55】
前記コロナウイルス感染症がSARS-CoV-2によって引き起こされる、請求項52~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記対象がヒトである、請求項52~55のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナウイルススパイクタンパク質に対する結合特異性を有する1つ以上の設計されたアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質、そのようなタンパク質をコードする核酸、そのようなタンパク質または核酸を含む医薬組成物、及びコロナウイルス疾患、特にSARS-CoV-2によって引き起こされる疾患の治療におけるそのようなタンパク質、核酸または医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
28~32kbのプラス鎖RNAゲノムを有するCoronaviridaeは、最大のエンベロープ型RNAウイルスである。コロナウイルスは、多くのさまざまな哺乳類や鳥類の種に感染する。それらは、呼吸器系、肝臓系、胃腸系、及び神経系のさまざまな急性疾患及び慢性疾患の原因となっている。風邪は、軽度のコロナウイルス感染症の例である。2003年のSARSの大流行と2012年のMERSの大流行は、どちらもコロナウイルスによって引き起こされた。SARS-CoV-2(2019-nCoVとも呼ばれる)は、COVID-19を引き起こすウイルス系統である。
【0003】
コロナウイルスには、スパイクタンパク質、エンベロープタンパク質、膜タンパク質、及びヌクレオキャプシドタンパク質として知られる4つの構造タンパク質がある。スパイクタンパク質は、細胞侵入に関与するウイルス膜タンパク質である。
【0004】
コロナウイルスは、密にグリコシル化されたスパイクタンパク質を利用して、宿主細胞に侵入する。スパイクタンパク質は3つのサブユニットで構成され、ウイルス膜を宿主細胞膜と融合させるために実質的な構造再編成を受ける準安定融合前立体配座で存在する三量体クラスI融合タンパク質である。このプロセスは、S1サブユニットが宿主細胞受容体に結合するときに誘起される。受容体結合は融合前三量体を不安定化し、S1サブユニットの脱落とS2サブユニットの安定した融合後の立体配座への移行をもたらす。宿主細胞受容体に係合するために、S1の受容体結合ドメイン(RBD)は、受容体結合の決定基を一時的に隠したり露出したりするヒンジのような立体配座の動きを起こす。これらの2つの状態は、「ダウン」立体配座と「アップ」立体配座と呼ばれ、ダウンは受容体にアクセスできない状態に対応し、アップは受容体にアクセスできる状態に対応し、安定性が低いと考えられている。スパイクタンパク質が「アップ」立体配座になると、宿主細胞のアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体への結合が起こり、ウイルスが細胞内に入ることができる。スパイクタンパク質の「アップ」立体配座への「活性化」は、フューリンまたはTMPRSS2などの酵素によって実行され得る。これらの酵素は、スパイクタンパク質を開くことによって作用でき、ヌクレオキャプシドタンパク質をウイルスキャプシドから細胞内に移動させ、感染をもたらす。
【0005】
細胞がコロナウイルスに感染すると、免疫系(または治療剤)は非感染細胞に損傷を与えることなく、ウイルス感染細胞のみを標的にしなければならないため、治療オプションはより困難になる。スパイクタンパク質の不可欠な機能のため、それは抗体を介した中和の標的を表す。したがって、コロナウイルス療法の1つのアプローチは、スパイクタンパク質を中和することによって細胞へのウイルスの結合を阻害し、細胞の感染を防ぐことである。
【0006】
DARPin(登録商標)タンパク質は、遺伝子操作されたアンキリンリピートタンパク質であり、抗体模倣タンパク質のように機能し、典型的には、高い特異性と高い親和性の標的結合を示す。DARPin(登録商標)タンパク質は、設計された1つ以上のアンキリンリピートリピートドメインを含む。設計されたアンキリンリピートドメインは、天然のアンキリンリピートタンパク質に由来し、設計されたそれぞれのアンキリンリピートドメインは典型的には、高い特異性と親和性で標的タンパク質に結合する。DARPin(登録商標)タンパク質は、高い特異性、安定性、有効性、及び親和性により、ならびに単一特異性、二重特異性、または多重特異性タンパク質を生成するためのフォーマットの柔軟性により、さまざまな臨床応用のための魅力的な治療剤である。例えば、WO2011/135067は、がん及び加齢性黄斑変性症などの眼疾患を含む他の病理学的状態の治療に使用するためのDARPin(登録商標)タンパク質について記載している。DARPin(登録商標)は、Molecular Partners AGが所有する登録商標である。
【0007】
本発明の根底にある技術的問題は、コロナウイルス、好ましくはSARS-CoV-2に対する結合特異性を有する1つ以上の設計されたアンキリンリピートドメインを含む新規組換え結合タンパク質を同定することである。そのような組換え結合タンパク質は、コロナウイルスの細胞への結合を阻害するため、及び細胞のウイルス感染を防ぐために有用であり得る。そのような組換え結合タンパク質及びそのようなタンパク質を含む医薬組成物は、SARS-CoV-2によって引き起こされるコロナウイルス疾患などのコロナウイルス疾患を予防、治療、または診断する方法に、及び/またはコロナウイルス、好ましくSARS-CoV-2を検出する方法にさらに有用であり得る。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に提供される開示に基づいて、当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、または日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の実施形態(E)によって包含されることが意図されている。
【0009】
1. 第1の実施形態では、本発明は、第1のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第1のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0010】
1a. 実施形態1aでは、本発明は、第1のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第1のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0011】
1b. 実施形態1bでは、本発明は、第1のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第1のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、及び77からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0012】
2. 第2の実施形態では、本発明は、前記第1のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0013】
2a. 実施形態2aでは、本発明は、前記第1のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1aに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0014】
2b. 実施形態2bでは、本発明は、前記第1のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、及び77からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1bに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0015】
3. 第3の実施形態では、本発明は、前記第1のアンキリンリピートドメインが配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択される、実施形態1に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0016】
3a. 実施形態3aでは、本発明は、前記第1のアンキリンリピートドメインが配列番号1~11からなる群から選択される、実施形態1aに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0017】
3b. 実施形態3bでは、本発明は、前記第1のアンキリンリピートドメインが配列番号1~11、76、及び77からなる群から選択される、実施形態1bに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0018】
4. 第4の実施形態では、本発明は、第2のアンキリンリピートドメインをさらに含む実施形態1~3のいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質であって、前記第2のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0019】
4a. 実施形態4aでは、本発明は、第2のアンキリンリピートドメインをさらに含む実施形態1a、2a、または3aのいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質であって、前記第2のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0020】
4b. 実施形態4bでは、本発明は、第2のアンキリンリピートドメインをさらに含む実施形態1b、2b、または3bのいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質であって、前記第2のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、及び77からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0021】
5. 第5の実施形態では、本発明は、前記第2のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態4に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0022】
5a. 実施形態5aでは、本発明は、前記第2のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態4aに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0023】
5b. 実施形態5bでは、本発明は、前記第2のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、及び77からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態4bに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0024】
6. 第6の実施形態では、本発明は、前記第2のアンキリンリピートドメインが配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択される、実施形態4に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0025】
6a. 実施形態6aでは、本発明は、前記第2のアンキリンリピートドメインが配列番号1~11からなる群から選択される、実施形態4aに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0026】
6b. 実施形態6bでは、本発明は、前記第2のアンキリンリピートドメインが配列番号1~11、76、及び77からなる群から選択される、実施形態4bに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0027】
7. 第7の実施形態では、本発明は、第3のアンキリンリピートドメインをさらに含む実施形態4~6のいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質であって、前記第3のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0028】
7a. 実施形態7aでは、本発明は、第3のアンキリンリピートドメインをさらに含む実施形態4a、5a、または6aのいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質であって、前記第3のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0029】
7b. 実施形態7bでは、本発明は、第3のアンキリンリピートドメインをさらに含む実施形態4b、5b、または6bのいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質であって、前記第3のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、及び77からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0030】
8. 第8の実施形態では、本発明は、前記第3のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態7に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0031】
8a. 実施形態8aでは、本発明は、前記第3のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態7aに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0032】
8b. 実施形態8bでは、本発明は、前記第3のアンキリンリピートドメインが、配列番号1~11、76、及び77からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態7bに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0033】
9. 第9の実施形態では、本発明は、前記第3のアンキリンリピートドメインが配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択される、実施形態7に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0034】
9a. 実施形態9aでは、本発明は、前記第3のアンキリンリピートドメインが配列番号1~11からなる群から選択される、実施形態7aに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0035】
9b. 実施形態9bでは、本発明は、前記第3のアンキリンリピートドメインが配列番号1~11、76、及び77からなる群から選択される、実施形態7bに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0036】
10. 第10の実施形態では、本発明は、前記第1、第2、及び第3のアンキリンリピートドメインが、以下のようなアミノ酸配列を含み、N末端からC末端に向かって配置される、実施形態7、7aまたは7bに記載の組換え結合タンパク質に関する:
(i)配列番号6、1、及び3と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(ii)配列番号4、2、及び1と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(iii)配列番号4、6、及び3と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(iv)配列番号6、3、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(v)配列番号7、3、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(vi)配列番号8、4、及び1と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(vii)配列番号3、6、及び7と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(viii)配列番号4、1、及び8と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(ix)配列番号3、6、及び9と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(x)配列番号9、3、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xi)配列番号1、6、及び9と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xii)配列番号9、6、及び1と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xiii)配列番号6、9、及び10と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xiv)配列番号3、9、及び11と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xv)配列番号10、9、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xvi)配列番号11、9、及び3と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xvii)配列番号5、1、及び3と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xviii)配列番号1、2、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xix)配列番号3、5、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xx)配列番号6、3、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxi)配列番号7、3、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxii)配列番号8、5、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxiii)配列番号6、10、及び11と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxiv)配列番号3、10、及び10と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxv)配列番号5、6、及び9と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxvi)配列番号9、3、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxvii)配列番号9、6、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxviii)配列番号5、9、及び10と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxix)配列番号6、9、及び11と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxx)配列番号10、9、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxxi)配列番号11、9、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxxii)配列番号3、76、及び77と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;または(xxxiii)配列番号3、85、及び77と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列。
【0037】
10a. 実施形態10aでは、本発明は、実施形態10(xx)に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0038】
10b. 実施形態10bでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号68と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0039】
10c. 実施形態10cでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号68と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0040】
10d. 実施形態10dでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号68のアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0041】
10e. 実施形態10eでは、本発明は、実施形態10(xxviii)に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0042】
10f. 実施形態10fでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号69と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0043】
10g. 実施形態10gでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号69と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0044】
10h. 実施形態10hでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号69のアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0045】
10i. 実施形態10iでは、本発明は、実施形態10(xxxii)に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0046】
10j. 実施形態10jでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号79と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0047】
10k. 実施形態10kでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号79と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0048】
10l. 実施形態10lでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号79のアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0049】
10m. 実施形態10mでは、本発明は、実施形態10(xxxii)に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0050】
10n. 実施形態10nでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号89~91からなる群から選択される配列と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0051】
10o. 実施形態10oでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号89~91からなる群から選択される配列と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0052】
10p. 実施形態10pでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号89~91からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0053】
11. 第11の実施形態では、本発明は、前記結合タンパク質がコロナウイルススパイクタンパク質に結合する、実施形態1~10pのいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0054】
12. 第12の実施形態では、本発明は、前記スパイクタンパク質がSARS-CoV-2スパイクタンパク質である、実施形態11に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0055】
13. 第13の実施形態では、本発明は、前記第1、第2、及び/または第3のアンキリンリピートドメインが、約100nM以下の解離定数(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する、実施形態11及び12のいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0056】
14. 第14の実施形態では、本発明は、少なくとも1つのアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記アンキリンリピートドメインが、約100nM以下の解離定数(KD)でコロナウイルススパイクタンパク質に結合する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0057】
15. 第15の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの血清アルブミン結合ドメインをさらに含む、いずれかの先行実施形態に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0058】
16. 第16の実施形態では、本発明は、前記血清アルブミン結合ドメインが、配列番号47~49からなる群から選択される配列と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態15に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0059】
16a. 実施形態16aでは、本発明は、前記組換え結合タンパク質が、少なくとも約30時間、好ましくは少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、または少なくとも約45時間のマウスにおける終末相半減期を有する、実施形態15及び16のいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0060】
17. 第17の実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号12~42、75、84、87、及び88からなる群から選択される配列と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0061】
17a. 実施形態17aでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号31と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0062】
17b. 実施形態17bでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号39と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0063】
17c. 実施形態17cでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号75と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0064】
17d. 実施形態17dでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号84と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0065】
17e. 実施形態17eでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号87と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0066】
17f. 実施形態17fでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号88と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0067】
17g. 実施形態17gでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号12~42からなる群から選択される配列と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0068】
17h. 実施形態17hでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号12~42、及び75からなる群から選択される配列と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0069】
18. 第18の実施形態では、本発明は、前記ポリペプチドが配列番号12~42、75、84、87、及び88からなる群から選択される配列と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態17に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0070】
18a. 実施形態18aでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号31と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0071】
18b. 実施形態18bでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号39と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0072】
18c. 実施形態18cでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号75と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0073】
18d. 実施形態18dでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号84と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0074】
18e. 実施形態18eでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号87と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0075】
18f. 実施形態18fでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号88と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0076】
18g. 実施形態18gでは、本発明は、前記ポリペプチドが配列番号12~42からなる群から選択される配列と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態17gに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0077】
18h. 実施形態18hでは、本発明は、前記ポリペプチドが配列番号12~42、及び75からなる群から選択される配列と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態17hに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0078】
19. 第19の実施形態では、本発明は、前記ポリペプチドが配列番号12~42、75、84、87、及び88からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、実施形態17に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0079】
19a. 実施形態19aでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号31のアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0080】
19b. 実施形態19bでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号39のアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0081】
19c. 実施形態19cでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号75のアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0082】
19d. 実施形態19dでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号84のアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0083】
19e. 実施形態19eでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号87のアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0084】
19f. 実施形態19fでは、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号88のアミノ酸配列を有する、前記組換え結合タンパク質に関する。
【0085】
19g. 実施形態19gでは、本発明は、前記ポリペプチドが配列番号12~42からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、実施形態17gに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0086】
19h. 実施形態19hでは、本発明は、前記ポリペプチドが配列番号12~42、及び75からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、実施形態17hに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0087】
20. 第20の実施形態では、本発明は、前記結合タンパク質がコロナウイルススパイクタンパク質に結合する、実施形態17~19hのいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0088】
21. 第21の実施形態では、本発明は、前記スパイクタンパク質がSARS-CoV-2スパイクタンパク質である、実施形態20に記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0089】
22. 第22の実施形態では、本発明は、前記結合タンパク質が、約100nM以下の解離定数(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する、実施形態20及び21のいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0090】
23. 第23の実施形態では、本発明は、前記結合タンパク質が、コロナウイルスによる細胞の感染を阻害することができる、実施形態1~22のいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0091】
24. 第24の実施形態では、本発明は、前記結合タンパク質が、SARS-CoV-2による細胞の感染を阻害することができる、実施形態1~22のいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質に関する。
【0092】
25. 第25の実施形態では、本発明は、実施形態1~24のいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0093】
25a. 実施形態25aでは、本発明は、前記核酸が、配列番号70または配列番号70と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0094】
25b. 実施形態25bでは、本発明は、前記核酸が、配列番号71または配列番号71と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0095】
25c. 実施形態25cでは、本発明は、前記核酸が、配列番号72または配列番号72と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0096】
25d. 実施形態25dでは、本発明は、前記核酸が、配列番号73または配列番号73と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0097】
25e. 実施形態25eでは、本発明は、前記核酸が、配列番号74または配列番号74と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0098】
25f. 実施形態25fでは、本発明は、前記核酸が、配列番号80または配列番号80と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0099】
25g. 実施形態25gでは、本発明は、前記核酸が、配列番号81または配列番号81と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0100】
25h. 実施形態25hでは、本発明は、前記核酸が、配列番号82または配列番号82と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0101】
25i. 実施形態25iでは、本発明は、前記核酸が、配列番号83または配列番号83と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0102】
25j. 実施形態25jでは、本発明は、前記核酸が、配列番号78または配列番号78と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0103】
25k. 実施形態25kでは、本発明は、前記核酸が、配列番号86または配列番号86と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0104】
25l. 実施形態25lでは、本発明は、前記核酸が、配列番号92または配列番号92と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0105】
25m. 実施形態25mでは、本発明は、前記核酸が、配列番号93または配列番号93と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0106】
25n. 実施形態25nでは、本発明は、前記核酸が、配列番号94または配列番号94と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0107】
25o. 実施形態25oでは、本発明は、前記核酸が、配列番号95または配列番号95と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0108】
26. 第26の実施形態では、本発明は、実施形態25~25oのいずれか1つに記載の核酸分子を含む宿主細胞に関する。
【0109】
27. 第27の実施形態では、本発明は、実施形態1から24のいずれか1つに記載の組換え結合タンパク質を作製する方法であって、前記組換え結合タンパク質が発現する条件下で実施形態26の宿主細胞を培養することを含む、方法に関する。
【0110】
28. 第28の実施形態では、本発明は、実施形態1~24のいずれか1つに記載の結合タンパク質または実施形態25~25oのいずれか1つに記載の核酸と、薬学的に許容される担体または賦形剤と、を含む医薬組成物に関する。
【0111】
29. 第29の実施形態では、本発明は、対象におけるコロナウイルス感染症を治療する方法であって、前記方法が、実施形態1から24のいずれか1つに記載の少なくとも1つの結合タンパク質の有効量、または実施形態25~25oのいずれか1つに記載の核酸の有効量、または実施形態28に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、前記方法に関する。
【0112】
29a. 実施形態29aでは、本発明は、前記方法が治療的治療方法である、実施形態29に記載の治療する方法に関する。
【0113】
29b. 実施形態29bでは、本発明は、前記方法が予防的治療方法である、実施形態29に記載の治療する方法に関する。
【0114】
29c. 実施形態29cでは、本発明は、対象におけるコロナウイルス感染症を予防する方法であって、前記方法が、実施形態1から24のいずれか1つに記載の少なくとも1つの結合タンパク質の有効量、または実施形態25~25oのいずれか1つに記載の核酸の有効量、または実施形態28に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、前記方法に関する。
【0115】
29d. 実施形態29dでは、本発明は、対象におけるコロナウイルス感染症を診断する方法で使用するための、実施形態1~24のいずれか1つに記載の少なくとも1つの結合タンパク質、または実施形態25~25oのいずれか1つに記載の核酸、または実施形態28に記載の医薬組成物に関する。
【0116】
29e. 実施形態29eでは、本発明は、対象におけるコロナウイルス感染症を診断する方法であって、対象からの試料をインビトロまたはエクスビボで、実施形態1~24のいずれか1つに記載の少なくとも1つの結合タンパク質と接触させるステップを含む、前記方法に関する。
【0117】
29f. 実施形態29fでは、本発明は、対象におけるコロナウイルス感染症を検出する方法であって、前記方法は、
(a)対象から試料を得ることと;
(b)前記試料を、実施形態1~24のいずれか1つに記載の少なくとも1つの結合タンパク質と接触させることと;
(c)コロナウイルス感染症の存在を検出することと、を含む、前記方法に関する。
【0118】
29g. 実施形態29gでは、本発明は、対象におけるコロナウイルス感染症を治療または予防する方法で使用するための、実施形態1~24のいずれか1つに記載の少なくとも1つの結合タンパク質、または実施形態25~25oのいずれか1つに記載の核酸、または実施形態28に記載の医薬組成物に関する。
【0119】
30. 第30の実施形態では、本発明は、前記コロナウイルス感染症がSARS-CoV-2によって引き起こされる、実施形態29~29gのいずれか1つに記載の方法に関する。
【0120】
31. 第31の実施形態では、本発明は、前記対象がヒトである、実施形態29、29a、29b、29c、29e、29f、29g、及び30のいずれか1つに記載の方法、または実施形態29dに記載の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0121】
図1】2019-nCoVスパイクタンパク質プロトマーは、さまざまなアンキリンリピートタンパク質(DARPin(登録商標)タンパク質)の提案された結合部位を示している。
図2】ダウン立体配座の2019-nCoVスパイクタンパク質プロトマー。
図3】hACE2結合部位が上昇していることを示す、アップ立体配座の2019-nCoVスパイクタンパク質プロトマー。hACE2は、スパイクタンパク質のアップ立体配座に結合するが、ダウン立体配座には結合しないと考えられている。
図4】hACE2結合部位の位置、S1/S2切断部位、及びS2’切断部位を示す2019-nCoVスパイクタンパク質プロトマー。分子成熟の間、スパイクタンパク質は三量体化し、S1/S2部位で切断された。それは非共有複合体として膜に提示されれる。膜融合には、スパイクタンパク質の受容体結合とタンパク質分解処理の協調作用が必要である。立体配座遷移のための最初のエネルギー障壁が必要である。理論に拘束されることは望まないが、このエネルギー障壁は、(i)hACE2受容体に結合することと、(ii)S2’部位でのタンパク質分解を開始することと、によって克服される。宿主細胞表面でのACE2との相互作用は、S2’部位の切断を引き起こすと考えられている。この切断は、広範な不可逆的な構造変化を介して膜融合のためにタンパク質を活性化することが提案されている。
図5】スパイクタンパク質に結合する単一のアンキリンリピートドメインを含むさまざまな組換え結合タンパク質(モノドメイン及びモノパラトピックのDARPin(登録商標)結合タンパク質)の100nMでのSARS-CoV-2 VSV偽型ウイルス阻害。バーが短いほど、ウイルス阻害が強いことを示す。
図6】スパイクタンパク質に結合する単一のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質(モノドメイン及びモノパラトピックのDARPin(登録商標)結合タンパク質)の代表的なSPR(表面プラズモン共鳴)トレース。
図7】スパイクタンパク質に結合する3つのアンキリンリピートドメインを含むさまざまな組換え結合タンパク質(マルチドメイン及びマルチパラトピックのDARPin(登録商標)結合タンパク質)の100nMでのSARS-CoV-2 VSV偽型ウイルス阻害。バーが短いほど、ウイルス阻害が強いことを示す。
図8】スパイクタンパク質に結合する3つのアンキリンリピートドメインを含むさまざまな組換え結合タンパク質(マルチドメイン及びマルチパラトピックのDARPin(登録商標)結合タンパク質)の1nMでのSARS-CoV-2 VSV偽型ウイルス阻害。バーが短いほど、ウイルス阻害が強いことを示す。
図9a】スパイクタンパク質に結合する単一のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質のSPR(表面プラズモン共鳴)トレース。4つまたは5つの濃度のSPRフィッティング曲線は、これらのモノドメイン、モノパラトピックDARPin(登録商標)結合タンパク質の高い結合親和性(例えば、2桁のpM範囲)を裏付けている。
図9b】スパイクタンパク質に結合する単一のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質のSPR(表面プラズモン共鳴)トレース。4つまたは5つの濃度のSPRフィッティング曲線は、これらのモノドメイン、モノパラトピックDARPin(登録商標)結合タンパク質の高い結合親和性(例えば、2桁のpM範囲)を裏付けている。
図9c】スパイクタンパク質に結合する単一のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質のSPR(表面プラズモン共鳴)トレース。4つまたは5つの濃度のSPRフィッティング曲線は、これらのモノドメイン、モノパラトピックDARPin(登録商標)結合タンパク質の高い結合親和性(例えば、2桁のpM範囲)を裏付けている。上のパネルは配列番号9を表し、下のパネルは配列番号10を表す。
図10】GFP標識されたVSV偽型SARS-CoV-2ウイルスに感染したGFP陽性のVero E06細胞を示す蛍光顕微鏡画像。DARPin(登録商標)構築物ALE043(配列番号25)及びvS07_M101E04では、ウェル1(濃度100nM)とウェル6(濃度3.125nM)に感染細胞は見られないが、アイソタイプ陰性対照(hisタグ付きMP0250)についてのウェル1及び6において、Vero E06細胞の視認できるGFP標識されたVSV偽型SARS-CoV-2ウイルスの感染がある。ウェル12のDARPin(登録商標)タンパク質濃度が低い場合(0.049nM)、感染したVero E06細胞(GFP陽性)がすべての構築物で見られる。
図11】マルチドメインDARPin(登録商標)結合タンパク質によるVSV偽型SARS-CoV-2ウイルスの中和。試験された構築物(ALE030、ALE031など)の名称は、図に示されている。
図12】マルチドメインDARPin(登録商標)結合タンパク質によるVSV偽型SARS-CoV-2 ウイルスの中和。試験された構築物(ALE030、ALE033など)の名称は、図に示されている。
図13】縁の周りの境界ゾーン、及び0.0064~100nmまでのそれぞれの希釈値についての三重のウェル、及び対照ウェルを含む、実施例4で使用される試験プレートのマップ。
図14a】実施例4から得られた試験プレートの写真。
図14b】実施例4から得られた試験プレートの写真。
図14c】実施例4から得られた試験プレートの写真。
図14d】実施例4から得られた試験プレートの写真。
図14e】実施例4から得られた試験プレートの写真。
図14f】実施例4から得られた試験プレートの写真。
図15a】ALE033の特性評価(表5、試料3を参照されたい)。コロナウイルススパイクタンパク質への高親和性結合を示すSPR(表面プラズモン共鳴)トレースである。経時的に標的結合の喪失は観察されなかった。
図15b】ALE033の特性評価(表5、試料3を参照されたい)。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)プロファイル(モル質量対時間)を示している。凝集体やオリゴマーは観察されなかった。CD(円偏光二色性)スペクトル(提供なし)では、85℃までアンフォールディングは検出されなかった。
図16】ALE030のSPR(表面プラズモン共鳴)トレース(表5、試料1を参照されたい)。
図17】ALE038のSPR(表面プラズモン共鳴)トレース(表5、試料7を参照されたい)。
図18a】実施例5から得られた試験プレートの写真。
図18b】実施例5から得られた試験プレートの写真。
図18c】実施例5から得られた試験プレートの写真。
図18d】実施例5から得られた試験プレートの写真。
図19】CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Promega)で測定した細胞防御。実施例7を参照されたい。
図20】バイオレットクリスタル染色後に得られた試験プレートの写真。実施例8を参照されたい。
図21a】CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Promega)で測定した細胞防御。実施例8を参照されたい。
図21b】CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Promega)で測定した細胞防御。実施例8を参照されたい。
図21c】CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Promega)で測定した細胞防御。実施例8を参照されたい。
図22a】SARS-CoV-2のスパイク外部ドメイン(灰色)に結合したALE049(黄色:HSA結合ドメイン;シアン、青、マゼンタ:RBD結合ドメイン)の分子モデル。
図22b】SARS-CoV-2のスパイク外部ドメイン(灰色)に結合したALE058(黄色:HSA結合ドメイン、青:RBD結合ドメイン、緑:S1-NTD結合ドメイン、赤:S2結合ドメイン)の分子モデル。
図23】多重特異性結合タンパク質ALE049及びALE058によるSARS-CoV-2 VSV偽型ウイルスの中和。実施例8を参照されたい。
図24】実施例9で使用したELISA法。
図25】ALE033、ALE048、及びALE049の平均血清濃度データ。実施例9を参照されたい。
図26a】予防的シリアンゴールドハムスターモデルにおけるSARS-CoV-2感染の治療におけるALE049の有効性。実施例10を参照されたい。
図26b】予防的シリアンゴールドハムスターモデルにおけるSARS-CoV-2感染の治療におけるALE049の有効性。実施例10を参照されたい。
図26c】予防的シリアンゴールドハムスターモデルにおけるSARS-CoV-2感染の治療におけるALE049の有効性。実施例10を参照されたい。
図26d】予防的シリアンゴールドハムスターモデルにおけるSARS-CoV-2感染の治療におけるALE049の有効性。実施例10を参照されたい。
図26e】予防的シリアンゴールドハムスターモデルにおけるSARS-CoV-2感染の治療におけるALE049の有効性。実施例10を参照されたい。
図27】4日目に撮影したハムスターの肺組織の代表的な組織病理学顕微鏡写真。左側のパネル:1600μgのALE049で処置した動物の健康なハムスターの肺組織(群1)。右側のパネル:プラセボ注射を受けた動物の疾患の肺組織(群4)。
図28】実施例11及び12で評価されたSARS-CoV-2スパイクタンパク質の変異の構造可視化。A)完全な三量体のSARS-CoV-2スパイクタンパク質の表現。偽ウイルス中和アッセイで分析されたすべての残基が青い球体として視覚化されている。ALE049及びALE109に組み込まれている個々のDARPin(登録商標)ドメインの結合領域は、青(RBD)、緑(NTD)、及び赤(S2)で着色されている。B)英国B.1.1.7(del69-70、del145、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、D1118H)で最初に同定されたバリアントを表す単量体スパイクタンパク質構造。C)南アフリカB.1.351(D80A、D215G、E484K、N501Y、A701V)で最初に同定されたバリアントを表す単量体スパイクタンパク質構造。PDBファイル6xcnは、PyMolバージョン2.1.1(Schrodinger,LLC)で図を生成するために使用された。すべての変異を視覚化するために、ループ518~520、676~689、811~813、及びcryo-EM構造で欠落しているNTDドメインの領域は、NTDドメインのテンプレートとしてのPDBファイル6zgeを使用してBIOVIA Discovery Studioソフトウェアに含まれるMODELLERでモデル化された(BIOVIA,Dassault Systemes,BIOVIA Discovery Studio 2021)。
図29】(A)ノックアウト実験用に生成されたALE109構築物の視覚的表示。それぞれのノックアウト(ko)構築物について、示されたSARS-CoV-2結合DARPin(登録商標)ドメインが非結合DARPin(登録商標)ドメインに置き換えられた。HSA:HSA結合DARPin(登録商標)ドメイン、RBD:RBD結合DARPin(登録商標)ドメイン、NTD:NTD結合DARPin(登録商標)ドメイン、S2:S2結合DARPin(登録商標)ドメイン。実施例11を参照されたい。(B)野生型スパイクタンパク質を発現するVSV-SARS-CoV-2偽ウイルスに対するALE109及びk.o.構築物の中和プロファイル。(C)上のパネル:SARS-CoV-2(100pfu)を介した細胞変性効果に対するDARPin(登録商標)分子の防御効果。描かれているのは、ALE109またはk.o.構築物によって付与される細胞防御のパーセンテージである。細胞防御は、Cell Titer-Gloを使用する細胞生存率アッセイで細胞内ATPレベルを測定することにより、3日間のインキュベーション後に決定された。下のパネル:SARS-CoV-2ウイルス複製の阻害は、リアルタイムRT-PCRによって定量化され、ALE109またはk.o.構築物の量を増やしながら100pfuのSARS-CoV-2に曝露されたVero E6細胞の上清に存在するウイルスゲノム等価物のパーセンテージとして表される。(D)分析された構築物のIC50/EC50値と効力ランキング。
図30】実施例12の手順の概略図。
図31】実施例12で観察された細胞変性効果を示す表。DARPin(登録商標)結合タンパク質R1bは、この図ではRBD-2と呼ばれている。
図32】マルチドメインDARPin(登録商標)結合タンパク質によるVSV偽型SARS-CoV-2 ウイルスの中和。試験された構築物(ALE049、ALE058など)の名称は、図に示されている。
図33】1mg/kg投与後のBALB/cマウスにおけるALE058の平均血清濃度-時間プロファイル。
図34】1mg/kg投与後のBALB/cマウスにおけるALE109、ALE126、ALE129、及びALE133の平均血清濃度-時間プロファイル。
図35】概略研究の概要。体重と体温を毎日測定し、スワブ、血液、及び組織をそれぞれの群について3匹の動物から採取し、それぞれ3日目と5日目に安楽死させた。
図36】0日目から5日目までの時間経過における5つの研究群すべての体重測定値の平均とSEM。
図37a】3匹の動物の3日目の肺ホモジネートの生ウイルス滴定によるウイルス定量化。
図37b】3匹の動物の5日目の肺ホモジネートの生ウイルス滴定によるウイルス定量化。
図37c】3匹の動物の3日目の肺におけるゲノムコピーのqPCR測定によるウイルス定量化。
図37d】3匹の動物の5日目の肺におけるゲノムコピーのqPCR測定によるウイルス定量化。
図38a】炎症の徴候の4つのカテゴリにグループ化された平均組織病理学的スコアの合計。
図38b】影響を受けた血管の4つのカテゴリにグループ化された平均組織病理学的スコアの合計。
図38c】肺胞の4つのカテゴリにグループ化された平均組織病理学的スコアの合計。
図38d】気管支の4つのカテゴリにグループ化された平均組織病理学的スコアの合計。
【発明を実施するための形態】
【0122】
概要
本明細書に開示されるのは、コロナウイルススパイクタンパク質、特にSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する結合特異性を有する1つ以上の設計されたアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質である。結合タンパク質をコードする核酸、結合タンパク質または核酸を含む医薬組成物、及び結合タンパク質、核酸、または医薬組成物を使用する方法も開示される。
【0123】
本発明による組換え結合タンパク質は、1つ以上の結合部位でコロナウイルススパイクタンパク質に結合し、それによってウイルスを中和する。これらの結合部位を図1に示す。一実施形態では、組換え結合タンパク質はスパイクタンパク質上の3つの部位に結合する。
【0124】
理論に縛られることは望まないが、本発明の設計されたアンキリンリピートタンパク質は、(i)受容体結合を阻害することにより;(ii)スパイクタンパク質の立体配座の変化のアロステリック阻害を提供することにより;及び/または(iii)スパイクタンパク質の活性化に必要なプロテアーゼ部位をブロックすることにより作用すると考えられる。図1に示すように、設計されたアンキリンリピートリピートドメイン1(DARPin(登録商標)1)は、アンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体結合をブロックすることによって作用すると理解されている。設計されたアンキリンリピートリピートドメイン1及び2(DARPin(登録商標)1及び2)は、スパイクタンパク質の立体配座の変化を防ぎ、スパイクタンパク質を効果的に閉じた配置に固定することによって作用するとさらに理解されている。設計されたアンキリンリピートリピートドメイン3(DARPin(登録商標)3)は、立体配座の変化をさらに阻害し、プロテアーゼ結合をブロックすると理解されている。これらの設計されたアンキリンリピートドメインは個々のタンパク質としてスパイクタンパク質に結合でき、及び/またはそれを阻害できる。マルチドメイン、多重特異性タンパク質によるマルチエピトープ標的化は、スパイクタンパク質のさらに強力な中和を提供し、エスケープ変異の可能性を最小限に抑えると考えられている。
【0125】
記載されている設計されたアンキリンリピートタンパク質のさらなる利点は、Fc媒介マクロファージまたは補体活性化の欠如による急性肺炎症(ALI)の発生率を低下させ得ることである(Liu et al.,JCI Insight,2019 4(4):e123158に記載されるように)。設計されたアンキリンリピートタンパク質は、モノクローナル抗体ではアクセスできないエピトープにも対応し得る。
【0126】
記載された設計されたアンキリンリピートタンパク質のさらなる利点は、免疫原性が低く、オフターゲット効果がないことである。DARPin(登録商標)候補は、迅速、低コストかつ高収率の製造、及び4℃で最大数年の貯蔵寿命を含む、有利な開発特性も示す。
【0127】
定義
本明細書で特に定義しない限り、本発明に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈で特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載の細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質及び核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法及び技術は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。
【0128】
「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」という用語は、別の記載がない限り、制限のない用語と解釈されるべきである。本発明の態様が特徴を「含む」と記載されている場合、実施形態はまた、その特徴「からなる」または「本質的にからなる」と考えられる。本明細書で提供される任意の及びすべての例、または例示的な用語(例えば、「~など」)の使用は、単に本開示をよりよく示すことを意図しており、別の請求がない限り、本開示の範囲の限定を提示するものではない。本明細書中のいかなる文言も、本開示の実施に不可欠なものとして、非請求の要素を示すとして解釈されるべきではない。実施例以外で、または別段の指示がある場合を除いて、本明細書で使用される成分の量または反応条件を表すすべての数字は、すべての場合において、関連する技術分野の当業者によって解釈される「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、別段の記載がない限り、所与の数値の±10%に相当する。
【0129】
本明細書における値の範囲の言及は、本明細書中に別の指示がない限り、範囲及びそれぞれの端点に含まれるのそれぞれの個別の値を個々に参照する簡略方法として機能することを意図しており、それぞれの個別の値及び端点は本明細書に個別に言及されているかのように、本明細書に組み入れられる。
【0130】
「核酸」または「核酸分子」という用語は、一本鎖または二本鎖のいずれかのリボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)分子であり得るポリヌクレオチド分子を指し、DNAまたはRNAの改変型及び人工型を含む。核酸分子は、単離された形態で存在するか、または組換え核酸分子またはベクターに含まれ得る。
【0131】
本発明の文脈において、「タンパク質」という用語は、ポリペプチドを含む分子を指し、ポリペプチドの少なくとも一部は、単一のポリペプチド鎖内及び/または複数のポリペプチド鎖間で二次、三次、及び/または四次の構造を形成することによって、定義された三次元配置を有するか、または獲得することができる。タンパク質が2つ以上のポリペプチド鎖を含む場合、個々のポリペプチド鎖は、例えば2つのポリペプチド間のジスルフィド結合によって、非共有結合または共有結合で連結され得る。二次構造及び/または三次構造を形成することにより、定義された三次元配置を個別に持つ、または獲得できるタンパク質の一部は、「タンパク質ドメイン」と呼ばれる。そのようなタンパク質ドメインは、当業者に周知である。
【0132】
組換えタンパク質、組換えポリペプチドなどで使用される場合、「組換え」という用語は、前記タンパク質またはポリペプチドが当業者に周知の組換えDNA技術を使用して産生されることを意味する。例えば、ポリペプチドをコードする組換えDNA分子(例えば、遺伝子合成によって産生される)は、細菌発現プラスミド(例えば、pQE30、QIAgen)、酵母発現プラスミド、哺乳動物発現プラスミド、または植物発現プラスミド、またはインビトロ発現を可能にするDNAにクローニングすることができる。例えば、そのような組換え細菌発現プラスミドが適切な細菌(例えば、Escherichia coli)に挿入される場合、これらの細菌は、この組換えDNAによってコードされるポリペプチド(複数可)を産生することができる。それに対応して産生されたポリペプチドまたはタンパク質は、組換えポリペプチドまたは組換えタンパク質と呼ばれる。
【0133】
本発明の文脈において、「結合タンパク質」という用語は、結合ドメインを含むタンパク質を指す。結合タンパク質はまた、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の結合ドメインを含み得る。好ましくは、前記結合タンパク質は組換え結合タンパク質である。より好ましくは、本発明の結合タンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質に対する結合特異性を有するアンキリンリピートドメインを含む。
【0134】
「標的」という用語は、核酸分子、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、炭水化物、もしくはそのような個々の分子の任意の部分を含む任意の他の天然に存在する分子などの個々の分子、またはそのような分子の2つ以上の複合体、または全細胞もしくは組織試料、または任意の非天然化合物を指す。好ましくは、標的は、天然または非天然のポリペプチドまたはタンパク質、あるいは化学修飾、例えば、天然または非天然のリン酸化、アセチル化、またはメチル化を含むポリペプチドまたはタンパク質である。
【0135】
本発明の文脈において、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して連結された複数の、すなわち2つ以上のアミノ酸の鎖からなる分子を指す。好ましくは、ポリペプチドは、ペプチド結合を介して連結された8個を超えるアミノ酸からなる。「ポリペプチド」という用語には、システインのS-S架橋によって一緒に連結された複数のアミノ酸の鎖も含まれる。ポリペプチドは当業者に周知である。
【0136】
特許出願WO2002/020565及びForrer et al.,2003(Forrer,P.,Stumpp,M.T.,Binz,H.K.,Pluckthun,A.,2003. FEBS Letters 539,2-6)には、リピートタンパク質の特徴とリピートドメインの特徴、技術、及び応用に関する一般的な説明が含まれている。「リピートタンパク質」という用語は、1つ以上のリピートドメインを含むタンパク質を指す。好ましくは、リピートタンパク質は、1、2、3、4、5または6個のリピートドメインを含む。さらに、前記リピートタンパク質は、追加の非リピートタンパク質ドメイン、ポリペプチドタグ及び/またはペプチドリンカーを含み得る。リピートドメインは結合ドメインであり得る。
【0137】
「リピートドメイン」という用語は、構造単位として2つ以上の連続するリピートモジュールを含むタンパク質ドメインを指し、前記リピートモジュールは構造的相同性及び配列相同性を有する。好ましくは、リピートドメインはN末端及び/またはC末端のキャッピングモジュールも含む。明確にするために、キャッピングモジュールはリピートモジュールであり得る。そのようなリピートドメイン、リピートモジュール、及びキャッピングモジュール、配列モチーフ、ならびに構造的相同性及び配列相同性は、アンキリンリピートドメイン(Binz et al.,J.Mol.Biol.332,489-503,2003;Binz et al.,Nature Biotech.22(5):575-582(2004);WO2002/020565;WO2012/069655)、ロイシンリッチリピートドメイン(WO2002/020565)、テトラトリコペプチドリピートドメイン(Main,E.R.,Xiong,Y.,Cocco,M.J.,D’Andrea,L.,Regan,L.,Structure 11(5),497-508,2003)、及びアルマジロリピートドメイン(WO2009/040338)の例から当業者によく知られている。そのようなリピートドメインは、反復したアミノ酸配列を含むタンパク質とは異なり、反復したアミノ酸配列ごとに個々のドメインを形成できることは当業者にさらによく知られている(例えば、フィブロネクチンのFN3ドメイン)。
【0138】
「アンキリンリピートドメイン」という用語は、構造単位として2つ以上の連続するアンキリンリピートモジュールを含むタンパク質ドメインを指し、前記アンキリンリピートモジュールは構造的相同性及び配列相同性を有する。
【0139】
設計されたリピートタンパク質、設計されたリピートドメインなどで使用される場合、「設計された」という用語は、そのようなリピートタンパク質及びリピートドメインがそれぞれ人工であり、天然には存在しないという性質を指す。本発明の結合タンパク質は設計されたリピートタンパク質であり、それらは少なくとも1つの設計されたリピートドメインを含む。好ましくは、設計されたリピートドメインは、設計されたアンキリンリピートドメインである。
【0140】
「標的相互作用残基」という用語は、標的との直接相互作用に寄与するリピートモジュールのアミノ酸残基を指す。
【0141】
「フレームワーク残基」または「フレームワーク位置」という用語は、フォールディングトポロジーに寄与する、すなわち前記リピートモジュールのフォールディングに寄与する、または隣接モジュールとの相互作用に寄与するリピートモジュールのアミノ酸残基を指す。そのような寄与は、リピートモジュール内の他の残基との相互作用、またはα-ヘリックスまたはβ-シートに見られるポリペプチド骨格構造への影響、または線形ポリペプチドまたはループを形成するアミノ酸ストレッチへの関与である可能性があり得る。そのようなフレームワーク及び標的相互作用残基は、物理化学的方法、例えばX線結晶学、NMR及び/またはCD分光法によって、または構造生物学及び/またはバイオインフォマティクスの専門家によく知られている既知及び関連する構造情報との比較によって得られた構造データの分析によって同定することができる。
【0142】
「リピートモジュール」という用語は、もともと天然に存在するリピートタンパク質のリピート単位に由来する、設計されたリピートドメインの反復するアミノ酸配列及び構造単位を指す。リピートドメインに含まれるそれぞれのリピートモジュールは、天然に存在するリピートタンパク質のファミリーまたはサブファミリー、好ましくはアンキリンリピートタンパク質のファミリーの1つ以上のリピート単位に由来する。さらに、リピートドメインに含まれるそれぞれのリピートモジュールは、例えば実施例1に記載のように、標的上で選択されたリピートドメインから得られ、同じ標的特異性を有する相同リピートモジュールから推定される「リピート配列モチーフ」を含み得る。
【0143】
したがって、「アンキリンリピートモジュール」という用語は、天然に存在するアンキリンリピートタンパク質のリピート単位に元々由来するリピートモジュールを指す。アンキリンリピートタンパク質は、当業者に周知である。
【0144】
リピートモジュールは、標的特異的リピートドメインを選択する目的でライブラリー内でランダム化されていないアミノ酸残基を含む位置(「非ランダム化位置」または「固定位置」は、本明細書では交換可能に使用される)、及び標的特異的リピートドメインを選択する目的でライブラリー内でランダム化されているアミノ酸残基を含む位置(「ランダム化された位置」)を含み得る。ランダム化されていない位置は、フレームワーク残基を含む。ランダム化された位置は、標的相互作用残基を含む。「ランダム化されている」とは、システイン以外のアミノ酸、またはグリシン、システイン、及びプロリン以外のアミノ酸などの、リピートモジュールのアミノ酸位置で2つ以上のアミノ酸が許容されたことを意味し、例えば、通常の20個の天然に存在するアミノ酸のいずれかが許容された、または20個の天然に存在するアミノ酸のほとんどが許容されたことを意味する。
【0145】
「リピート配列モチーフ」という用語は、1つ以上のリピートモジュールから推定されるアミノ酸配列を指す。好ましくは、前記リピートモジュールは、同じ標的に対して結合特異性を有するリピートドメインに由来する。そのようなリピート配列モチーフは、フレームワーク残基位置及び標的相互作用残基位置を含む。前記フレームワーク残基の位置は、リピートモジュールのフレームワーク残基の位置に対応する。同様に、前記標的相互作用残基の位置は、リピートモジュールの標的相互作用残基の位置に対応する。リピート配列モチーフは、ランダム化されていない位置とランダム化されている位置を含む。
【0146】
「リピート単位」という用語は、1つ以上の天然に存在するタンパク質の配列モチーフを含むアミノ酸配列を指し、ここで、前記「リピート単位」は複数のコピーで見られ、タンパク質のフォールディングを決定するすべての前記モチーフに共通の定義されたフォールディングトポロジーを示す。このようなリピート単位の例としては、ロイシンリッチリピート単位、アンキリンリピートリピート単位、アルマジロリピート単位、テトラトリコペプチドリピート単位、HEATリピート単位、及びロイシンリッチバリアントリピート単位が挙げられる。
【0147】
「アンキリンリピートドメイン」という用語は、天然に存在するアンキリンリピートタンパク質のリピート単位に元々由来する、少なくとも1つのアンキリンリピートモチーフを含むドメインを指す。一般に、アンキリンリピートモチーフは、ループによって分離された2つのアルファヘリックスを形成する約33残基を含む。アンキリンリピートタンパク質は、当該技術分野で知られている。例えば、すべてが参照によりその全体が組み込まれる、国際特許公開番号WO2002/020565、WO2010/060748、WO2011/135067、WO2012/069654、WO2012/069655、WO2014/001442、WO2014/191574、WO2014/083208、WO2016/156596、及びWO2018/054971を参照されたい。アンキリンリピートドメインは、任意選択で、適切なキャッピングモジュールをさらに含む。
【0148】
アンキリンリピートドメインは、標準的な組換えDNA技術を使用して、任意選択で半減期延長ドメインを用いて、本開示に従ってより大きなアンキリンリピートタンパク質にモジュール式に組み立てることができる(例えば、Forrer,P.,et al.,FEBS letters 539,2-6,2003、WO2012/069655、WO2002/020565を参照されたい)。
【0149】
アンキリンリピートドメインは、代替的な標的(例えば、細胞または物質)と結合するよりも、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、及び/またはより大きな親和性で特定の標的(例えば、細胞または物質)と反応または結合する場合、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」(本明細書では交換可能に使用される)。例えば、コロナウイルスのスパイクタンパク質に特異的に結合するアンキリンリピートドメインは、他の非コロナウイルススパイクタンパク質に結合するよりも、より大きな親和性、結合力、より容易に、及び/またはより長い持続時間でコロナウイルススパイクタンパク質に結合するアンキリンリピートドメインである。この定義を読むことにより、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合するアンキリンリピートドメインが、第2の標的に特異的または優先的に結合してもしなくてもよいことも理解される。そのため、「特異的結合」は必ずしも排他的結合を(含めることはできれるが)必要とするわけではない。一般に、指定されたアッセイ条件下で、アンキリンリピートドメインは特定の標的分子に優先的に結合し、試験試料中に存在する他の成分には有意な量で結合しない。
【0150】
目的の分子に特異的に結合するアンキリンリピートドメインを選択または特徴付けるために、さまざまなアッセイ形式を使用することができる。例えば、標的と特異的に反応するアンキリンリピートドメインを同定するために使用できる多くのアッセイの中で、固相ELISAイムノアッセイ、免疫沈降、BIAcore(商標)(GE Healthcare,Piscataway,NJ)、蛍光活性化細胞分取(FACS)、Octet(商標)(ForteBio,Inc.,Menlo Park,CA)及びウエスタンブロット分析などがある。典型的には、特異的または選択的な反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍、より典型的には、バックグラウンドの10倍を超えるものであろう。さらに具体的には、アンキリンリピートドメインは、平衡解離定数(KD)値が1μM未満、例えば100nM未満、10nM未満、1nM未満、100pM未満、10pM未満、または1pM超である場合、標的に「特異的に結合する」と言われる。
【0151】
D値は、しばしば結合親和性と呼ばれる。結合親和性は、1つの結合パートナーの接触残基(複数可)とその結合パートナーの接触残基(複数可)との間の非共有相互作用の合計の強度を測定する。特に明記しない限り、本明細書中で使用される場合、「結合親和性」とは、結合ペアまたは結合パートナーのメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。1つの結合パートナーに対して2つの結合ドメインを含む結合タンパク質の場合、結合親和性は、結合タンパク質と結合パートナーの間の1:2の相互作用を反映する結尾久親和性を指し得る。
【0152】
結合親和性の種々の測定方法が当該技術分野で知られており、これらのいずれも、本発明において使用することができる。例えば、本明細書で例示されるように、結合親和性は、KD値として表すことができ、これは、特定のアンキリンリピートドメインとその結合標的の解離速度を指す。KDは、「オフ速度(Koff)」とも呼ばれる解離速度の会合速度または「オン速度(Kon)」に対する比率である。したがって、KDは、Koff/Konに等しく、モル濃度(M)で表され、KDが小さいほど結合の親和性が強い。
【0153】
D値は、任意の適切な方法を使用して決定することができる。KDを測定するための1つの例示的な方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である(例えば、Nguyen et al.Sensors(Basel).2015 May 5;15(5):10481-510を参照されたい)。KD値は、BIACORE(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用するSPRによって測定することができる。BIAcore速度論的分析は、表面上に固定化された分子(例えば、エピトープ結合ドメインを含む分子)を有するチップからの抗原の結合及び解離を分析することを含む。タンパク質のKDを決定する別の方法は、バイオレイヤー干渉法を使用することによるものである(例えば、Shah et al.J Vis Exp.2014;(84):51383を参照されたい)。KD値は、OCTET(登録商標)テクノロジー(Octet QKe system,ForteBio)を使用して測定できる。代替的に、または付加的に、Sapidyne Instruments(Boise,ID)から入手可能なKinExA(登録商標)(Kinetic Exclusion Assay)アッセイも使用することができる。2つの結合パートナー間の結合親和性を評価するのに適した任意の方法が本明細書に包含される。表面プラズモン共鳴(SPR)が特に好ましい。最も好ましくは、KD値はPBS中でSPRによって決定される。
【0154】
「PBS」という用語は、137mMのNaCl、10mMのリン酸塩、及び2.7mMのKClを含み、pH7.4を有するリン酸緩衝水溶液を意味する。
【0155】
「治療する」という用語及びそれに関連する言葉は、必ずしも100%または完全な治癒を意味するものではない。むしろ、当業者が潜在的な利益または治療効果を有すると認識するさまざまな程度の治療が存在する。この点で、本明細書に記載のコロナウイルス感染を治療する方法は、任意の量または任意のレベルの治療を提供することができる。さらに、本開示の方法によって提供される治療は、1つ以上の状態または症状の治療(すなわち、軽減)を含むことができる。例示的な態様では、方法は、対象の生存を増加させることによって治療する。「治療」という用語には、予防的(予防的)治療も含まれる。
【0156】
所与の疾患または状態における治療応答は、その疾患または状態に固有の標準化された応答基準によって決定することができる。治療を受けている対象は、疾患に関連する症状の改善という有益な効果を経験し得る。
【0157】
コロナウイルススパイクタンパク質を標的とする組換え結合タンパク質
コロナウイルススパイクタンパク質に対する結合特異性を有する、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の設計されたアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質が、本明細書に記載される。好ましい実施形態では、コロナウイルススパイクタンパク質に対する結合特異性を有する2つ、3つ、またはそれ以上の設計されたアンキリンリピートドメインを含むそのような組換え結合タンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質上の2つ、3つ、またはそれ以上の異なるエピトープを標的とする。
【0158】
設計されたアンキリンリピートモチーフまたはモジュールを含む、記載された組換え結合タンパク質またはその結合ドメインは、本明細書ではDARPin(登録商標)タンパク質とも呼ばれる。Stumpp et al.,Curr Opin Drug Discov Devel.10(2):153-9(2007);及びBinz et al.,Nature Biotech.22(5):575-582(2004)を参照されたい。DARPin(登録商標)タンパク質は、標的タンパク質に対する高い特異性と高い結合親和性を有する抗体模倣体とみなすことができれる。一般に、DARPin(登録商標)タンパク質は、少なくとも1つのアンキリンリピートドメイン、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、またはそれ以上のアンキリンリピートドメインを含む。
【0159】
本明細書に記載のアンキリンリピートドメインは、一般に、構造を提供するコア骨格、及び標的に結合する標的結合残基を含む。構造コアには保存されたアミノ酸残基が含まれ、標的結合表面には標的に応じて異なるアミノ酸残基が含まれる。
【0160】
国際特許公開第WO2002/020565、及びBinz et al.,Nature Biotech.22(5):575-582(2004)は、標的に特異的に結合するタンパク質の選択/スクリーニングに使用できるアンキリンリピートタンパク質のライブラリーを記載する。そのようなライブラリーを作成する方法も提供される。
【0161】
複数のアンキリンリピートドメインを(共有結合または非共有結合のいずれかを介して)連結して、二重特異性または多重特異性分子を形成することができる。そのような分子の1つを図1に示す。ここでは、3つの個別のコロナウイルススパイクタンパク質結合ドメインが結合して、多重特異性分子を形成している。リンカーは、3つの結合ドメインを結ぶ破線で示されている。
【0162】
コロナウイルススパイクタンパク質
上記のように、コロナウイルススパイクタンパク質は魅力的な治療標的である。コロナウイルススパイクタンパク質を中和することで、哺乳動物細胞の感染を防ぎ、コロナウイルス疾患が対象に定着するのを防ぐことができる。本発明による組換え結合タンパク質は、哺乳動物コロナウイルスに特異的である。好ましくは、設計されたアンキリンリピートタンパク質は、マウス、ラット、イヌ、ウサギ、サル、またはヒト起源のコロナウイルスに特異的である。より好ましくは、設計されたアンキリンリピートタンパク質は、ヒト起源のコロナウイルスに特異的である。コロナウイルスSARS-CoV-2が最も好ましい。本明細書で使用される場合、「SARS-CoV-2」という用語には、野生型ウイルス(COVID-19パンデミックの初期に感染したヒトで見つかったSARS-CoV-2など)とその変異型またはバリアントとの両方が含まれる。一実施形態では、「SARS-CoV-2」という用語には、野生型及び特定のバリアントB.1.1.7(いわゆる「英国バリアント」)、及びB.1.351(いわゆる「南アフリカバリアント」)が含まれる。
【0163】
本明細書に記載の組換え結合タンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質に特異的に結合するアンキリンリピートドメインを含む。一実施形態では、本明細書に記載の組換え結合タンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質に特異的に結合する2つ、3つ、またはそれ以上のアンキリンリピートドメインを含む。一実施形態では、本明細書に記載の組換え結合タンパク質は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に特異的に結合する1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のアンキリンリピートドメインを含む。
【0164】
コロナウイルススパイクタンパク質に関する本開示で目的の標的ドメインには、受容体結合ドメイン(RBDドメイン)、S1 NTDドメイン、及びS2ドメインが含まれるが、これらに限定されない。これらのドメインは当該技術分野で知られている(例えばWrapp et al.,Science 367,1260-1263(2020)を参照されたい)。
【0165】
コロナウイルススパイクタンパク質に結合する本発明によるアンキリンリピートドメインを表1に提供する。
【0166】
【表1】
【0167】
したがって、一実施形態では、本発明は、第1のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第1のアンキリンリピートドメインが、上記の表1に示される、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換え結合タンパク質に関する。
【0168】
一実施形態では、本発明は、第1のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第1のアンキリンリピートドメインが、上記の表1に示される、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する、アミノ酸配列を含む、組換え結合タンパク質に関する。一実施形態では、本発明は、第1のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第1のアンキリンリピートドメインが、上記の表1に示される、配列番号1~11、76、及び77からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換え結合タンパク質に関する。一実施形態では、本発明は、第1のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第1のアンキリンリピートドメインが、上記の表1に示される、配列番号1~11からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換え結合タンパク質に関する。
【0169】
一実施形態では、本発明は、第1のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第1のアンキリンリピートドメインが、表1に示される、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択される、組換え結合タンパク質に関する。
【0170】
表1に列挙されるアンキリンリピートドメインは、二重特異性または多重特異性の分子を提供するために任意の方法で組み合わせることができる。第1、第2、及び第3のアンキリンリピートドメインは、同一の配列を有し得る。第1、第2、及び第3のアンキリンリピートドメインは、異なる配列を有し得る。
【0171】
したがって、一実施形態では、本発明は、第2のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第2のアンキリンリピートドメインが、上記の表1に示される、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換え結合タンパク質に関する。
【0172】
一実施形態では、本発明は、第2のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第2のアンキリンリピートドメインが、上記の表1に示される、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換え結合タンパク質に関する。一実施形態では、本発明は、第2のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第2のアンキリンリピートドメインが、上記の表1に示される、配列番号1~11、76、及び77からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換え結合タンパク質に関する。一実施形態では、本発明は、第2のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第2のアンキリンリピートドメインが、上記の表1に示される、配列番号1~11からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換え結合タンパク質に関する。
【0173】
一実施形態では、本発明は、第2のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第2のアンキリンリピートドメインが、表1に示される、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択される、組換え結合タンパク質に関する。
【0174】
一実施形態では、本発明は、上で定義されるような、第3のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第3のアンキリンリピートドメインが、上記の表1に示される、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換え結合タンパク質に関する。
【0175】
一実施形態では、本発明は、上で定義されるような、第3のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第3のアンキリンリピートドメインが、上記の表1に示される、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換え結合タンパク質に関する。一実施形態では、本発明は、上で定義されるような、第3のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第3のアンキリンリピートドメインが、上記の表1に示される、配列番号1~11、76、及び77からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換え結合タンパク質に関する。一実施形態では、本発明は、上で定義されるような、第3のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第3のアンキリンリピートドメインが、上記の表1に示される、配列番号1~11からなる群から選択されるアンキリンリピートドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換え結合タンパク質に関する。
【0176】
一実施形態では、本発明は、上で定義されるような、第3のアンキリンリピートドメインを含む組換え結合タンパク質であって、前記第3のアンキリンリピートドメインが、表1に示される、配列番号1~11、76、77、及び85からなる群から選択される、組換え結合タンパク質に関する。
【0177】
本発明はさらに、以下のようなアミノ酸配列を有し、N末端からC末端に向かって配置される、第1、第2、及び第3のアンキリンリピートドメインの特定の組み合わせに関する:
(i)配列番号6、1、及び3と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(ii)配列番号4、2、及び1と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(iii)配列番号4、6、及び3と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(iv)配列番号6、3、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(v)配列番号7、3、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(vi)配列番号8、4、及び1と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(vii)配列番号3、6、及び7と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(viii)配列番号4、1、及び8と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(ix)配列番号3、6、及び9と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(x)配列番号9、3、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xi)配列番号1、6、及び9と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xii)配列番号9、6、及び1と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xiii)配列番号6、9、及び10と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xiv)配列番号3、9、及び11と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xv)配列番号10、9、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xvi)配列番号11、9、及び3と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xvii)配列番号5、1、及び3と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xviii)配列番号1、2、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xix)配列番号3、5、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xx)配列番号6、3、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxi)配列番号7、3、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxii)配列番号8、5、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxiii)配列番号6、10、及び11と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxiv)配列番号3、10、及び10と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxv)配列番号5、6、及び9と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxvi)配列番号9、3、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxvii)配列番号9、6、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxviii)配列番号5、9、及び10と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxix)配列番号6、9、及び11と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxx)配列番号10、9、及び5と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxxi)配列番号11、9、及び6と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(xxxii)配列番号3、76、及び77と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;または(xxxiii)配列番号3、85、及び77と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列。
【0178】
一実施形態では、本発明は、上に挙げた実施形態(xx)による組換え結合タンパク質に関する。さらなる実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが、配列番号68と、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。別の実施形態では、組換え結合タンパク質はポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが配列番号68のアミノ酸配列を有する。
【0179】
一実施形態では、本発明は、上に挙げた実施形態(xxviii)による組換え結合タンパク質に関する。さらなる実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが、配列番号69と、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。別の実施形態では、組換え結合タンパク質はポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが配列番号69のアミノ酸配列を有する。
【0180】
一実施形態では、本発明は、上に挙げた(xxxii)による組換え結合タンパク質に関する。さらなる実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが、配列番号79と、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。別の実施形態では、組換え結合タンパク質はポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが配列番号79のアミノ酸配列を有する。
【0181】
一実施形態では、本発明は、上に挙げた(xxxiii)による組換え結合タンパク質に関する。さらなる実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが、配列番号89~91からなる群から選択される配列と、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。別の実施形態では、組換え結合タンパク質はポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが配列番号89~91からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0182】
別の実施形態では、本発明の組換え結合タンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。別の実施形態では、スパイクタンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。
【0183】
別の実施形態では、少なくとも1つのアンキリンリピートドメインを含む本発明の組換え結合タンパク質は、約100nM以下の結合親和性(KD)でコロナウイルススパイクタンパク質に結合する。別の実施形態では、スパイクタンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。
【0184】
別の実施形態では、本発明の組換え結合タンパク質は、第1、第2、及び/または第3のアンキリンリピートドメインを含み、前記第1、第2、及び/または第3のアンキリンリピートドメインは、約100nM以下の結合親和性(KD)でコロナウイルススパイクタンパク質に結合する。別の実施形態では、スパイクタンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。
【0185】
例示的な実施形態では、本発明の組換え結合タンパク質は、約100nM以下、約50nM以下、約40nM以下、約30nM以下、約20nM以下、約10nM以下、約5nM以下、約2nM以下、約1nM以下、約900pM以下、約800pM以下、約700pM以下、約600pM以下、約500pM以下、約400pM以下、約300pM以下、約250pM以下、約200pM以下、約150pM以下、約100pM以下、約50pM以下、約40pM以下、約30pM以下、約25pM以下、約20pM以下、約15pM以下、約10pM以下、約5pM以下、または約1pM以下のKD値でコロナウイルススパイクタンパク質、好ましくはSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合する。例示的な一実施形態では、組換え結合タンパク質は、約10nM以下のKD値でコロナウイルススパイクタンパク質、好ましくはSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合する。別の例示的な実施形態では、組換え結合タンパク質は、約1nM以下のKD値でコロナウイルススパイクタンパク質、好ましくはSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合する。
【0186】
特定の実施形態では、コロナウイルススパイクタンパク質は、ヒトコロナウイルススパイクタンパク質である。特定の実施形態では、コロナウイルススパイクタンパク質は、ヒトSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。
【0187】
特定の実施形態では、組換え結合タンパク質は、少なくとも1つのヒト血清アルブミン結合ドメインをさらに含み得る。実施形態では、少なくとも1つのヒト血清アルブミンドメインは、N末端、C末端、またはその両方に位置し得る。
【0188】
特定の実施形態では、血清アルブミン結合ドメインは、配列番号47~49からなる群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、血清アルブミン結合ドメインは、配列番号47と、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0189】
さらなる実施形態では、本発明の組換え結合タンパク質は、マウスにおいて少なくとも約30時間、好ましくは少なくとも約35時間、より好ましくは少なくとも約40時間、より好ましくは少なくとも約45時間の終末相半減期を有する。前記終末相半減期は、好ましくは、実施例9に記載されるように、Balb/cマウスにおいて決定される。
【0190】
アンキリンリピートドメインの特に好ましい組み合わせを表2に挙げる。ここで、Hはヒト血清アルブミンを表し、R3b、R2aなどは上記の表1で定義した通りである:
【表2】
【0191】
別の実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号12~42、75、84、87、及び88からなる群から選択される配列と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記スパイクタンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約100nM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。
【0192】
別の実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが、配列番号12~42、75、84、87、及び88からなる群から選択される配列と、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する、アミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。別の実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが、配列番号12~42、及び75からなる群から選択される配列と、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する、アミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。別の実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが、配列番号12~42からなる群から選択される配列と、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する、アミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記スパイクタンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約100nM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。
【0193】
別の実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号12~42、75、84、87、及び88からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記スパイクタンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約100nM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。
【0194】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の組換え結合タンパク質であって、コロナウイルスによる細胞の感染を阻害することができる、組換え結合タンパク質に関する。別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の組換え結合タンパク質であって、SARS-CoV-2による細胞の感染を阻害することができる、組換え結合タンパク質に関する。
【0195】
別の実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが、配列番号31と、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する、アミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。別の実施形態では、組換え結合タンパク質はポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが配列番号31のアミノ酸配列を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記スパイクタンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約100nM以下、約10nM以下、約1nM以下、約100pM以下、または約10pM未満、または約1pM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約1nM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、マウスにおいて少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、または少なくとも約45時間の終末相半減期を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、マウスにおいて少なくとも約40時間の終末相半減期を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、50℃を超える、60℃を超える、70℃を超える、または80℃を超えるTmで高い熱安定性を示す。一実施形態では、前記結合タンパク質は、60℃を超えるTmで高い熱安定性を示す。一実施形態では、前記結合タンパク質は、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.5nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、アミノ酸配列、結合親和性、終末相半減期、熱安定性、SARS-CoV-2 VSV偽ウイルス阻害のIC50、及びSARS-CoV-2阻害のIC50に関して、このパラグラフに挙げた特性から選択される2、3、4、5、または6つの特性の組み合わせを有する。例示的な一実施形態では、本発明はポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号31と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、前記結合タンパク質が約1nM以下の結合親和性(KD)でSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合し、前記結合タンパク質が、マウスにおいて少なくとも約40時間の終末相半減期を有し、前記結合タンパク質が、60℃を超えるTmで高い熱安定性を示し、前記結合タンパク質が、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害し、及び/または、前記結合タンパク質が、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する、組換え結合タンパク質に関する。
【0196】
別の実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが、配列番号39と、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する、アミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。別の実施形態では、組換え結合タンパク質はポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが配列番号39のアミノ酸配列を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記スパイクタンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約100nM以下、約10nM以下、約1nM以下、約100pM以下、または約10pM未満、または約1pM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約1nM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、マウスにおいて少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、または少なくとも約45時間の終末相半減期を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、マウスにおいて少なくとも約20時間の終末相半減期を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、50℃を超える、60℃を超える、70℃を超える、または80℃を超えるTmで高い熱安定性を示す。一実施形態では、前記結合タンパク質は、60℃を超えるTmで高い熱安定性を示す。一実施形態では、前記結合タンパク質は、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.5nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.4nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、アミノ酸配列、結合親和性、終末相半減期、熱安定性、SARS-CoV-2 VSV偽ウイルス阻害のIC50、及びSARS-CoV-2阻害のIC50に関して、このパラグラフに挙げた特性から選択される2、3、4、5、または6つの特性の組み合わせを有する。一実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号39と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、前記結合タンパク質が約1nM以下の結合親和性(KD)でSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合し、前記結合タンパク質が、マウスにおいて少なくとも約20時間の終末相半減期を有し、前記結合タンパク質が、60℃を超えるTmで高い熱安定性を示し、前記結合タンパク質が、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害し、及び/または、前記結合タンパク質が、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する、組換え結合タンパク質に関する。
【0197】
別の実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが、配列番号75と、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する、アミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。別の実施形態では、組換え結合タンパク質はポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが配列番号75のアミノ酸配列を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記スパイクタンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約100nM以下、約10nM以下、約1nM以下、約100pM以下、または約10pM未満、または約1pM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、マウスにおいて少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、または少なくとも約45時間の終末相半減期を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、マウスにおいて少なくとも約30時間の終末相半減期を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約1nM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、50℃を超える、60℃を超える、70℃を超える、または80℃を超えるTmで高い熱安定性を示す。一実施形態では、前記結合タンパク質は、60℃を超えるTmで高い熱安定性を示す。一実施形態では、前記結合タンパク質は、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.5nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.4nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、アミノ酸配列、結合親和性、終末相半減期、熱安定性、SARS-CoV-2 VSV偽ウイルス阻害のIC50、及びSARS-CoV-2阻害のIC50に関して、このパラグラフに挙げた特性から選択される2、3、4、5、または6つの特性の組み合わせを有する。一実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号75と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、前記結合タンパク質が約1nM以下の結合親和性(KD)でSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合し、前記結合タンパク質が、マウスにおいて少なくとも約30時間の終末相半減期を有し、前記結合タンパク質が、60℃を超えるTmで高い熱安定性を示し、前記結合タンパク質が、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害し、及び/または、前記結合タンパク質が、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する、組換え結合タンパク質に関する。
【0198】
別の実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが、配列番号84と、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する、アミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。別の実施形態では、組換え結合タンパク質はポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが配列番号84のアミノ酸配列を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記スパイクタンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約100nM以下、約10nM以下、約1nM以下、約100pM以下、または約10pM未満、または約1pM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、マウスにおいて少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、または少なくとも約45時間の終末相半減期を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、マウスにおいて少なくとも約40時間の終末相半減期を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約1nM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、50℃を超える、60℃を超える、70℃を超える、または80℃を超えるTmで高い熱安定性を示す。一実施形態では、前記結合タンパク質は、60℃を超えるTmで高い熱安定性を示す。一実施形態では、前記結合タンパク質は、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.5nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.4nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、アミノ酸配列、結合親和性、終末相半減期、熱安定性、SARS-CoV-2 VSV偽ウイルス阻害のIC50、及びSARS-CoV-2阻害のIC50に関して、このパラグラフに挙げた特性から選択される2、3、4、5、または6つの特性の組み合わせを有する。一実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号84と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、前記結合タンパク質が約1nM以下の結合親和性(KD)でSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合し、前記結合タンパク質が、マウスにおいて少なくとも約40時間の終末相半減期を有し、前記結合タンパク質が、60℃を超えるTmで高い熱安定性を示し、前記結合タンパク質が、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害し、及び/または、前記結合タンパク質が、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する、組換え結合タンパク質に関する。
【0199】
別の実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが、配列番号87と、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する、アミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。別の実施形態では、組換え結合タンパク質はポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが配列番号87のアミノ酸配列を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記スパイクタンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約100nM以下、約10nM以下、約1nM以下、約100pM以下、または約10pM未満、または約1pM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、マウスにおいて少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、または少なくとも約45時間の終末相半減期を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、マウスにおいて少なくとも約35時間の終末相半減期を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約1nM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、50℃を超える、60℃を超える、70℃を超える、または80℃を超えるTmで高い熱安定性を示す。一実施形態では、前記結合タンパク質は、60℃を超えるTmで高い熱安定性を示す。一実施形態では、前記結合タンパク質は、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.5nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.4nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、アミノ酸配列、結合親和性、終末相半減期、熱安定性、SARS-CoV-2 VSV偽ウイルス阻害のIC50、及びSARS-CoV-2阻害のIC50に関して、このパラグラフに挙げた特性から選択される2、3、4、5、または6つの特性の組み合わせを有する。一実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号87と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、前記結合タンパク質が約1nM以下の結合親和性(KD)でSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合し、前記結合タンパク質が、マウスにおいて少なくとも約35時間の終末相半減期を有し、前記結合タンパク質が、60℃を超えるTmで高い熱安定性を示し、前記結合タンパク質が、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害し、及び/または、前記結合タンパク質が、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する、組換え結合タンパク質に関する。
【0200】
別の実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが、配列番号88と、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する、アミノ酸配列を有する、組換え結合タンパク質に関する。別の実施形態では、組換え結合タンパク質はポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが配列番号88のアミノ酸配列を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記スパイクタンパク質はSARS-CoV-2スパイクタンパク質である。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約100nM以下、約10nM以下、約1nM以下、約100pM以下、または約10pM未満、または約1pM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、マウスにおいて少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、または少なくとも約45時間の終末相半減期を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、マウスにおいて少なくとも約40時間の終末相半減期を有する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、約1nM以下の結合親和性(KD)で前記コロナウイルススパイクタンパク質に結合する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、50℃を超える、60℃を超える、70℃を超える、または80℃を超えるTmで高い熱安定性を示す。一実施形態では、前記結合タンパク質は、60℃を超えるTmで高い熱安定性を示す。一実施形態では、前記結合タンパク質は、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.5nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.4nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する。一実施形態では、前記結合タンパク質は、アミノ酸配列、結合親和性、終末相半減期、熱安定性、SARS-CoV-2 VSV偽ウイルス阻害のIC50、及びSARS-CoV-2阻害のIC50に関して、このパラグラフに挙げた特性から選択される2、3、4、5、または6つの特性の組み合わせを有する。一実施形態では、本発明は、ポリペプチドを含む組換え結合タンパク質であって、前記ポリペプチドが配列番号88と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、前記結合タンパク質が約1nM以下の結合親和性(KD)でSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合し、前記結合タンパク質が、マウスにおいて少なくとも約40時間の終末相半減期を有し、前記結合タンパク質が、60℃を超えるTmで高い熱安定性を示し、前記結合タンパク質が、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスのウイルス侵入を阻害し、及び/または、前記結合タンパク質が、1nM以下のIC50値で、VeroE6細胞におけるSARS-CoV-2のウイルス侵入を阻害する、組換え結合タンパク質に関する。
【0201】
半減期延長部分
「半減期延長部分」は、半減期延長部分のない同じタンパク質と比較して、本明細書に記載の組換え結合タンパク質のインビボでの血清半減期を延長する。半減期延長部分の例としては、ポリヒスチジン、Glu-Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリンドメイン、マルトース結合タンパク質(MBP)、ヒト血清アルブミン(HSA)結合ドメイン、またはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、半減期延長部分は、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリンドメイン、ヒト血清アルブミン(HSA)結合ドメイン、またはポリエチレングリコール(PEG)である。
【0202】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え結合タンパク質は、本明細書で「血清アルブミン結合ドメイン」とも呼ばれる、血清アルブミン(好ましくはヒト血清アルブミンなど)に特異的に結合するアンキリンリピートドメインを含む。本明細書に記載の組換え結合タンパク質はまた、1つを超える血清アルブミン結合ドメイン、例えば、2つ、または3つ、またはそれ以上の血清アルブミン結合ドメインを含み得る。したがって、本明細書に記載の組換え結合タンパク質は、第1及び第2の血清アルブミン結合ドメイン、または第1、第2、及び第3の血清アルブミン結合ドメインを含み得る。以下に提供される実施形態は、そのような第1の血清アルブミン結合ドメイン、第2の血清アルブミン結合ドメイン、及び/または第3の血清アルブミン結合ドメインを記載する。
【0203】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の半減期延長部分は、配列番号47~49のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、血清アルブミン結合ドメインを含む。例示的な実施形態では、本明細書に記載の半減期延長部分は、配列番号47~49のいずれか1つと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の半減期延長部分は、配列番号47と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。例示的な実施形態では、本明細書に記載の半減期延長部分は、配列番号47と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0204】
いくつかの実施形態では、2つ以上の血清アルブミン結合ドメインが好ましい。いくつかの実施形態では、2つの血清アルブミン結合ドメインがN末端に位置する。例示的な実施形態では、組換え結合タンパク質は、N末端からC末端に向かって、(i)血清アルブミンに特異的に結合するアンキリンリピートドメイン;(ii)血清アルブミンに特異的に結合するアンキリンリピートドメイン;及び(iii)コロナウイルススパイクタンパク質に特異的に結合する1つ以上のアンキリンリピートドメインを含む。特定の実施形態では、N末端血清アルブミン結合ドメイン(本明細書では血清アルブミン結合ドメイン1とも呼ばれる)は、配列番号47と、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第2の血清アルブミン結合ドメイン(本明細書では血清アルブミン結合ドメイン2とも呼ばれる)は、配列番号47と、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0205】
いくつかの実施形態では、半減期延長部分は免疫グロブリンドメインを含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンドメインはFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、既知の重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、またはIgA(α)のいずれか1つに由来する。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、既知の重鎖アイソタイプまたはサブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)のいずれか1つに由来する。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgG1のFcドメインである。
【0206】
いくつかの実施形態では、Fcドメインは、Fcドメインの中断されていない天然配列(すなわち、野生型配列)を含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、改変された生物学的活性をもたらすバリアントFcドメインを含む。例えば、エフェクター活性を低減または排除するために(例えば、国際特許公開第WO2005/063815)、及び/または組換え結合タンパク質の産生中の均一性を高めるために、少なくとも1つの点変異または欠失をFcドメインに導入することができる。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgG1のFcドメインであり、以下のエフェクターヌル置換:L234A、L235A、及びG237A(Euナンバリング)のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgG1のC末端位置(すなわち、EuナンバリングによるK447)に位置するリジンを含まない。リジンが存在しないと、組換え結合タンパク質の産生中の均一性が高まり得る。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、C末端位置(K447、Euナンバリング)に位置するリジンを含む。
【0207】
アンキリンリピートドメイン
いくつかの実施形態では、配列番号1~11、47、76、77、及び85の配列と比較して、本発明の組換え結合タンパク質の任意のアンキリンリピートドメインにおいて、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個以下の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~11、47、76、77、及び85の配列と比較して5個以下の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~11、47、76、77、及び85の配列と比較して4個以下の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~11、47、76、77、及び85の配列と比較して3個以下の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~11、47、76、77、及び85の配列と比較して2個以下の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~11、47、76、77、及び85の配列と比較して1個以下の置換が行われる。いくつかの実施形態では、置換(複数可)は、配列番号1~11、47、76、77、及び85の配列を含むタンパク質のKD値と比較して、1000倍を超えて、100倍を超えて、または10倍を超えてKD値を変化させない。特定の実施形態では、置換は、表3による保存的置換である。特定の実施形態では、置換は、アンキリンリピートドメインの構造コア残基の外側、例えばアルファヘリックスを接続するベータループにおいて行われる。
【0208】
【表3】
【0209】
特定の実施形態では、置換は、アンキリンリピートドメインの構造コア残基内で行われる。例えば、アンキリンドメインはコンセンサス配列:DxxGxTPLHLAxxxGxxxlVxVLLxxGADVNAx(配列番号50)(式中、「x」は任意のアミノ酸(好ましくはシステイン、グリシン、もしくはプロリンではない)を示す);またはDxxGxTPLHLAAxxGHLEIVEVLLKzGADVNAx(配列番号51)、(式中、「x」は任意のアミノ酸(好ましくはシステイン、グリシン、もしくはプロリンではない)を表し、「z」はアスパラギン、ヒスチジン、もしくはチロシンからなる群から選択される)を含む。一実施形態では、置換は、「x」と指定された残基に対して行われる。別の実施形態では、置換は、「x」で示される残基の外側で行われる。
【0210】
さらに、本発明の組換え結合タンパク質の任意のアンキリンリピートドメインの最後から2番目の位置は、「A」もしくは「L」であり得、及び/または最後の位置は「A」もしくは「N」であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、それぞれのアンキリンリピートドメインは、配列番号1~11、47、76、77、及び85のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であり、任意選択で最後から2番目の位置のAがLで置換されている、及び/または最後の位置のAはNで置換されている、アミノ酸配列を含む。例示的な実施形態では、それぞれのスパイクタンパク質結合ドメインは、配列番号1~11、47、76、77、及び85のいずれか1つと90%同一であり、任意選択で、最後から2番目の位置のAがLで置換されている、及び/または最後の位置のAがNで置換されている、アミノ酸配列を含む。さらに、本発明の結合タンパク質に含まれるいずれかのアンキリンリピートドメインの配列は、任意選択でそのN末端にG、S、またはGSを含み得る(下記参照)。
【0211】
さらに、本発明の組換え結合タンパク質に含まれるそれぞれのアンキリンリピートドメインは、任意選択で、そのN末端に「G」、「S」、または「GS」配列を含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、それぞれのアンキリンリピートドメインは、配列番号1~11、47、76、77、及び85のいずれか1つと、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であり、かつそのN末端にGSをさらに含む(例えば、配列番号1~11、47、76、77、及び85にあるように)か、またはGSの代わりにGまたはSのみを含む、アミノ酸配列を含む。
【0212】
特定の実施形態では、組換え結合タンパク質とその標的(スパイクタンパク質または血清アルブミン)との間の親和性は、KDの単位として記載される。例示的な実施形態では、KDは、約10-1M以下、約10-2M以下、約10-3M以下、約10-4M以下、約10-5M以下、約10-6M以下、約10-7M以下、約10-8M以下、約10-9M以下、約10-10M以下、約10-11M以下、約10-12M以下、約10-13M以下、約10-14M以下、約10-5M~約10-15M、約10-6M~約10-15M、約10-7M~約10-15M、約10-8M~約10-15M、約10-9M~約10-15M、約10-10M~約10-15M、約10-5M~約10-14M、約10-6M~約10-14M、約10-7M~約10-14M、約10-8M~約10-14M、約10-9M~約10-14M、約10-10M~約10-14M、約10-5M~約10-13M、約10-6M~約10-13M、約10-7M~約10-13M、約10-8M~約10-13M、約10-9M~約10-13M、または約10-10M~約10-13Mである。
【0213】
例示的な実施形態では、組換え結合タンパク質は、約900nM以下、約800nM以下、約700nM以下、約600nM以下、約500nM以下、約400nM以下、約300nM以下、約250nM以下、約200nM以下、約150nM以下、約100nM以下、約50nM以下、約40nM以下、約30nM以下、約20nM以下、約10nM以下、約5nM以下、約2nM以下、約1nM以下、約900pM以下、約800pM以下、約700pM以下、約600pM以下、約500pM以下、約400pM以下、約300pM以下、約200pM以下、約100pM以下、約10pM以下、または約1pM以下のKD値でスパイクタンパク質または血清アルブミンに結合する。例示的な一実施形態では、組換え結合タンパク質は、100nM以下のKD値でスパイクタンパク質または血清アルブミンに結合する。別の例示的な実施形態では、組換え結合タンパク質は、10nM以下のKD値でスパイクタンパク質または血清アルブミンに結合する。
【0214】
リンカー
本明細書に記載の組換え結合タンパク質は、リンカーを含み得る。「リンカー」は、2つの別個の実体(例えば、図1に示すDARPin(登録商標)1とDARPin2(登録商標))を互いに結合する分子または分子群であり、2つの実体の間に間隔と柔軟性を提供して、それぞれの標的に結合できる立体配座を達成できる。タンパク質リンカーが特に好ましく、それらは、当該技術分野で周知の標準的な組換えDNA技術を使用して、組換え結合タンパク質のコンポーネントとして発現させることができる。
【0215】
アンキリンリピートドメインは、例えば、ジスルフィド結合、ポリペプチド結合、または架橋剤によって共有結合的に、または非共有結合的に、連結され、ヘテロ二量体タンパク質を生成することができる。組換え結合タンパク質は、コロナウイルススパイク結合ドメインと任意選択の半減期延長部分との間にリンカーを含むことができる。
【0216】
いくつかの実施形態では、リンカー部分は、ペプチジルリンカーである。いくつかの実施形態では、プチジルリンカーは、約1~50のアミノ酸残基を含む。例示的なリンカーとしては、例えば、グリシンリッチペプチド;グリシン及びセリンを含むペプチド;配列[Gly-Gly-Ser]n(式中、nは1、2、3、4、5、または6である)を有するペプチド;または配列[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]n(配列番号54)(式中、nは1、2、3、4、5、または6である)を有するペプチドが挙げられる。グリシンリッチペプチドリンカーは、残基の少なくとも25%がグリシンであるペプチドリンカーを含む。グリシンリッチペプチドリンカーは、当該技術分野で周知である(例えば、Chichili et al.Protein Sci.2013 February;22(2):153-167)。
【0217】
いくつかの実施形態では、ペプチジルリンカーは、プロリン-トレオニンリッチリンカーである。例示的な実施形態では、リンカーは、配列番号52のプロリン-トレオニンリッチペプチドリンカーである。別の例示的な実施形態では、リンカーは、配列番号53のプロリン-トレオニンリッチペプチドリンカーである。
【0218】
いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号53のアミノ酸配列を含む。より長いプロリン-トレオニンリッチペプチドリンカーの例は、配列番号84及び88に見られる。
【0219】
N末端及びC末端のキャッピング配列
本明細書に開示される組換え結合タンパク質のアンキリンリピートドメインは、N末端またはC末端のキャッピング配列を含み得る。キャッピング配列とは、アンキリンリピート配列モチーフ(複数可)のN末端またはC末端に融合された追加のポリペプチド配列を指し、前記キャッピング配列は、アンキリンリピート配列モチーフ(複数可)と緊密な三次相互作用(すなわち、三次構造相互作用)を形成し、それによって、側面のアンキリンリピートドメインの疎水性コアが溶媒に露出するのを防ぐキャップを提供する。
【0220】
N-及び/またはC末端のキャッピング配列は、リピート単位に隣接する天然に存在するリピートタンパク質に見出されるキャッピング単位または他の構造単位に由来し得る。キャッピング配列の例は、国際特許公開番号WO2002/020565とWO2012/069655、米国特許公開番号US2013/0296221におおいて、及びInterlandi et al.,J Mol Biol.2008 Jan 18;375(3):837-54によって記載されている。N末端アンキリンリピートキャッピングモジュール(すなわち、N末端キャッピングリピート)の例は、配列番号55~57であり、アンキリンリピートC末端キャッピングモジュール(すなわち、C末端キャッピングリピート)の例は、配列番号58を含む。
【0221】
核酸及び方法
一実施形態では、本発明は、本明細書で定義される組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0222】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号70または配列番号70と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0223】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号71または配列番号71と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0224】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号72または配列番号72と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0225】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号73または配列番号73と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0226】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号74または配列番号74と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0227】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号80または配列番号80と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0228】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号81または配列番号81と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0229】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号82または配列番号82と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0230】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号83または配列番号83と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0231】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号78または配列番号78と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0232】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号86または配列番号86と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0233】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号92または配列番号92と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0234】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号93または配列番号93と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0235】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号94または配列番号94と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0236】
一実施形態では、本発明は、前記核酸が、配列番号95または配列番号95と同じアミノ酸配列をコードするそのバリアントを含むか、またはそれらからなる、先行実施形態の1つに記載の組換え結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0237】
本発明はさらに、前記核酸分子を含むベクターに関する。一実施形態では、ベクターは発現ベクターである。
【0238】
本発明はさらに、前記核酸分子または前記ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0239】
一実施形態では、本発明は、本明細書で定義される組換え結合タンパク質を作製する方法であって、前記組換え結合タンパク質が発現する条件下で本明細書で定義される宿主細胞を培養することを含む、方法に関する。
【0240】
組成物、使用、及び治療方法
本明細書に記載の組換え結合タンパク質を使用して、コロナウイルスに感染した対象を治療することができる。一実施形態では、対象はコロナウイルスSARS-CoV-2に感染している。
【0241】
したがって、一実施形態では、本発明は、本明細書で定義される結合タンパク質または核酸と、薬学的に許容される担体または賦形剤と、を含む医薬組成物に関する。
【0242】
医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含んでもよい。標準的な薬学的担体としては、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水または水/油のエマルションなどのエマルション、及びさまざまな種類の湿潤剤が挙げられる。
【0243】
医薬組成物は、例えば、酸性化剤、添加剤、吸着剤、エアゾール噴射剤、空気置換剤、アルカリ化剤、固化防止剤、抗凝固剤、抗菌防腐剤、酸化防止剤、防腐剤、基剤、結合剤、緩衝剤、キレート剤、コーティング剤、着色剤、乾燥剤、洗剤、希釈剤、消毒剤、崩壊剤、分散剤、溶解促進剤、染料、皮膚軟化剤、乳化剤、乳化安定剤、充填剤、フィルム形成剤、風味増強剤、香料、フローエンハンサー、ゲル化剤、造粒剤、保湿剤、潤滑剤、粘膜接着剤、軟膏基剤、軟膏、油性ビヒクル、有機基剤、トローチ剤基剤、顔料、可塑剤、研磨剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、皮膚浸透剤、可溶化剤、溶剤、安定剤、座薬基剤、界面活性剤、界面活性剤、懸濁化剤、甘味剤、治療剤、増粘剤、等張化剤、毒性剤、増粘剤、吸水剤、水混和性共溶媒、水軟化剤、または湿潤剤を含む、任意の薬学的に許容される成分を含むことができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、the Handbook of Pharmaceutical Excipients,Third Edition,A.H.Kibbe(Pharmaceutical Press,London,UK,2000)を参照されたい。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)を参照されたい。
【0244】
医薬組成物は、生理学的に適合するpHを達成するように製剤化することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物のpHは、例えば、約4もしくは約5と約8.0との間、または約4.5と約7.5との間、または約5.0と約7.5との間であり得る。例示的な実施形態では、医薬組成物のpHは5.5から7.5の間である。
【0245】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるコロナウイルス感染症を治療する方法であって、前記方法が、本明細書で定義されるいずれか1つに記載の少なくとも1つの結合タンパク質の有効量、または本明細書で定義される核酸の有効量、または本明細書で定義される医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法に関する。対象は、治療方法が投与された場合、重症度の異なるコロナウイルス感染症に関連する症状のいずれかを示している可能性がある。
【0246】
いくつかの実施形態では、治療方法の単回投与で十分であり得る。他の実施形態では、反復投与が必要な場合がある。対象の年齢及び一般的な健康状態、対象のコロナウイルス感染の状態、ならびにコロナウイルス感染に関連する症状の重症度など、さまざまな因子が投与の回数と頻度に影響を及ぼす。
【0247】
いくつかの実施形態では、この方法は、予防方法、すなわち対象におけるコロナウイルス感染を予防する方法である。そのような方法では、本明細書で定義される少なくとも1つの結合タンパク質の有効量、または本明細書で定義される核酸の有効量、または本明細書で定義される医薬組成物の有効量が対象に投与される。典型的には、予防方法が投与された場合、対象はコロナウイルス感染症に関連する症状を示さない。
【0248】
いくつかの実施形態では、予防方法の単回投与で十分であり得る。他の実施形態では、反復投与が必要な場合がある。対象の年齢及び一般的な健康状態、ならびに対象のコロナウイルスへの曝露のリスクなど、さまざまな因子が投与の回数と頻度に影響を及ぼす。
【0249】
特定の実施形態では、コロナウイルス感染はSARS-CoV-2によって引き起こされる。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0250】
本明細書に記載の結合タンパク質は、非経口、経鼻、経口、肺、局所、膣、または直腸の投与などの任意の適切な投与経路を介して対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、非経口投与に適した製剤として、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び意図するレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含み得る水性及び非水性の等張無菌注射液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び防腐剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁液が挙げられる。追加の詳細については、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,eds.,pages 238-250(1982)、及びASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4th ed.,pages 622-630(1986))を参照されたい。
【0251】
本明細書に記載の結合タンパク質は、鎮痛剤などの別の治療剤と組み合わせて使用することができる。それぞれの治療剤は、同時に(例えば、同じ医薬で、または同時に)、同時に(すなわち、別々の医薬で、任意の順序で次々に投与される)、または任意の順序で逐次的に投与することができる。併用療法における治療剤が異なる剤形である場合(例えば、ある薬剤が錠剤またはカプセルであり、別の薬剤が無菌液体である場合)、及び/または、それらが異なる投与スケジュールで投与される場合、例えば、少なくとも1日1回投与される鎮痛薬と、週に1回または2週間に1回など、より少ない頻度で投与される生物療法薬との場合、逐次投与は有用であり得る。
【0252】
検出または診断の方法
一実施形態では、本発明は、対象におけるコロナウイルス感染症を診断する方法で使用するための、本明細書に記載の少なくとも1つの結合タンパク質に関する。
【0253】
一実施形態では、本発明は、対象におけるコロナウイルス感染症を診断する方法であって、対象からの試料をインビトロまたはエクスビボで、本明細書に記載の少なくとも1つの結合タンパク質と接触させるステップを含む、前記方法に関する。
【0254】
一実施形態では、本発明は、対象におけるコロナウイルスを検出する方法であって、前記方法は、
a)対象から試料を得ることと;
b)前記試料を、本明細書に記載の少なくとも1つの結合タンパク質と接触させることと;
(c)コロナウイルスの存在を検出することと、を含む、方法に関する。
【0255】
前記方法及び使用において、試料は、血液、脳脊髄液、血漿、または尿などの体液から得ることができる。試料はまた、粘液から(鼻腔、口腔咽頭、もしくは膣スワブなどを介して)得てもよく、または固形組織試料(例えば、生検から)であってもよい。
【0256】
試料は、これらの方法のいずれかで使用する前に保存できる。例えば、試料は、前記方法で使用する前に、適切な期間、極低温凍結に供することができる。
【0257】
前記方法及び使用において、対象は、重症度の異なるコロナウイルス感染に関連する症状を示している可能性がある。代替的に、対象は無症候性であり得る。この方法及び使用は、死因を調査するために、生きていない対象から得られた試料に対しても実施することもできる。
【実施例
【0258】
以下に開示する出発物質及び試薬は当業者に知られており、市販されており、及び/または周知の技術を用いて調製することができる。
【0259】
物質
化学薬品はSigma-Aldrich(USA)から購入した。オリゴヌクレオチドは、Microsynth(Switzerland)から得た。特に明記しない限り、DNAポリメラーゼ、制限酵素、及び緩衝液は、New England Biolabs(USA)またはFermentas/Thermo Fisher Scientific(USA)から得た。誘導性E.coli発現株、例えばE.coliXL1-blue(Stratagene,USA)またはBL21(Novagen,USA)をクローニング及びタンパク質産生に使用した。
【0260】
分子生物学
別段の記載がない限り、既知のプロトコール(例えば、Sambrook J.,Fritsch E.F.and Maniatis T.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory 1989,New Yorkを参照された)に従って方法を実施する。
【0261】
細胞及びウイルス
ATCC(Manassas,VA 20110 USA)から購入したVero E6細胞(アフリカミドリザル腎臓細胞、ATCC(登録商標)CRL1586(商標))を、10%のFBS及び補充成分(2mMのL-グルタミン、非必須アミノ酸及び100U/mlのペニシリン100μg/mlのストレプトマイシン及びHEPES、すべてBiochrom,Berlin,Germanyから入手)を含む細胞培養培地DMEM(FG0445)中で、37℃、CO2なしで継代した。SARS-CoV-2(2019-nCoV/IDF0372/2020)を、2%FBS及び補充成分(2%-FBS-MEM)を含むMEM中のVero E6細胞内で37℃で増殖させた。ウイルスは、実験期間中、密閉ホイル(Biorad,microseal B-film,MSB 1001)で覆われた通気口のないフラスコ、24ウェルまたは96ウェルプレートでCO2なしで培養した。
【0262】
設計されたアンキリンリピートタンパク質ライブラリー
設計されたアンキリンリピートタンパク質ライブラリーを生成する方法は、例えば、米国特許第7,417,130号;Binz et al.2003(示した場所);Binz et al.2004(示した場所)に記載されている。そのような方法により、ランダム化されたアンキリンリピートモジュール及び/またはランダム化されたキャッピングモジュールを有する設計されたアンキリンリピートタンパク質ライブラリーを構築できる。例えば、そのようなライブラリーは、固定されたN末端キャッピングモジュールまたはランダム化されたN末端キャッピングモジュール、1つ以上のランダム化リピートモジュール、及び固定されたC末端キャッピングモジュールまたはランダム化されたC末端キャッピングモジュールに基づいて適宜組み立てることができる。好ましくは、そのようなライブラリーは、リピートまたはキャッピングモジュールのランダム化された位置にアミノ酸C、G、M、N(G残基の前)、及びPのいずれも有しないように組み立てられる。
【0263】
さらに、そのようなライブラリー中のそのようなランダム化されたモジュールは、ランダム化されたアミノ酸位置を有する追加のポリペプチドループ挿入を含み得る。そのようなポリペプチドループ挿入の例は、抗体の補体決定領域(CDR)ループライブラリーまたはデノボ生成ペプチドライブラリーである。例えば、そのようなループ挿入は、ガイダンスとしてヒトリボヌクレアーゼLのN末端アンキリンリピートドメインの構造を使用して設計できる(Tanaka,N.,Nakanishi,M,Kusakabe,Y,Goto,Y.,Kitade,Y,Nakamura,K.T.,EMBO J.23(30),3929-3938,2004)。10個のアミノ酸が2つのアンキリンリピートの境界近くに存在するベータターンに挿入されるこのアンキリンリピートドメインと同様に、アンキリンリピートタンパク質ライブラリーは、アンキリンリピートドメインの1つ以上のベータターンに挿入された可変長(例えば1~20個のアミノ酸)のランダム化されたループ(固定された位置及びランダム化された位置で)を含み得る。
【0264】
アンキリンリピートタンパク質ライブラリーの任意のそのようなN末端キャッピングモジュールは、好ましくはRILLAA、RILLKA、またはRELLKAモチーフを有し(例えば、配列番号55の21位から26位までに存在する)、アンキリンリピートタンパク質ライブラリーの任意のそのようなC末端キャッピングモジュールは、好ましくはKLN、KLA、またはKAAモチーフを有する(例えば、配列番号58の最後の3アミノ酸に存在する)。
【0265】
そのようなアンキリンリピートタンパク質ライブラリーの設計は、標的と相互作用するアンキリンリピートドメインの既知の構造によって導かれ得る。プロテインデータバンク(PDB)固有のアクセッションまたは識別コード(PDB-ID)によって識別されるこのような構造の例は、1WDY、3V31、3V30、3V2X、3V2O、3UXG、3TWQ-3TWX、1N11、1S70、及び2ZGDである。
【0266】
N2C及びN3Cの設計されたアンキリンリピートタンパク質ライブラリーなどの設計されたアンキリンリピートタンパク質ライブラリーの例が記載されている(米国特許第7,417,130号;Binz et al.2003(示した場所);Binz et al.2004(示した場所))。N2C及びN3Cの数字は、N末端キャッピングモジュールとC末端キャッピングモジュールの間に存在するランダム化されたリピートモジュールの数を表す。
【0267】
リピート単位とモジュール内の位置を定義するために使用される命名法は、Binz et al.2004(示した場所)に基き、アンキリンリピートモジュールとアンキリンリピート単位の境界が1アミノ酸位置だけシフトされているという変更を有する。例えば、Binz et al.2004(示した場所)のアンキリンリピートモジュールの1位は、本開示のアンキリンリピートモジュールの2位に対応し、その結果、Binz et al.2004(示した場所)のアンキリンリピートモジュールの33位は、本開示の次のアンキリンリピートモジュールの位置1に対応する。
【0268】
実施例1:SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する結合特異性を有するアンキリンリピートドメインを含む結合タンパク質の選択
概要
リボソームディスプレイ(Hanes,J.and Pluckthun,A.,PNAS 94,4937-42,1997)を使用して、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(RBDドメイン;S1 NTDドメイン;S2ドメイン)の異なるドメインに対する結合特異性を有する複数のアンキリンリピートドメインは、Binz et al.2004(示した場所)によって記載されたものと同様の方法で、DARPin(登録商標)ライブラリーから特定の条件と追加の選択解除ステップで選択された。組換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質標的ドメインに対する選択されたクローンの結合と特異性は、E.coli粗抽出物均一時間分解蛍光(HTRF)によって評価され、複数のSARS-CoV-2スパイクタンパク質特異的結合タンパク質が成功裏に選択されたことを示している。例えば、配列番号1~11のアンキリンリピートドメインは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する結合特異性を有するアンキリンリピートドメインを含む選択された結合タンパク質のアミノ酸配列を構成する。
【0269】
標的及び選択材料としてのスパイクタンパク質ドメイン
スパイクタンパク質ドメインは、標的及び選択材料として使用された。選択に使用されたタンパク質は、SARS-CoV-2 Sタンパク質外部ドメイン(SARS2-Secto-d72-GCN4-Streptag)、SARS-Cov-2 Sタンパク質(S1+S2 ECT、His-tag;Sinobiological 40589-V08B1)、Bio-COVID-19_S1タンパク質_His_Avitag(Acro Biosystems)、SARS2-S1-Flag-3Streptag、COVID-19_S_タンパク質_RBD_Fc(Acro Biosystems)、及びSARS2-S1B-2Streptagから構成された。そのような標的タンパク質は、配列番号43~45及び59~67のポリペプチドから選択された。標準的な方法を用いてタンパク質をビオチン化した。
【0270】
リボソームディスプレイによるSARS-CoV-2スパイクタンパク質特異的アンキリンリピートタンパク質の選択
設計されたアンキリンリピートタンパク質ライブラリー(N2C及びN3C)は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質断片に対するリボソームディスプレイ選択で使用された(Binz et al.,Nat Biotechnol 22,575-582(2004);Zahnd et al.,Nat Methods 4,269-279(2007);Hanes et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95,14130-14135(1998)を参照されたい)。
【0271】
標的及びライブラリーごとに4回の選択ラウンドを実行した。4ラウンドの選択では、ラウンド1からラウンド4への選択圧を増加させるために、標的濃度の減少と洗浄ストリンジェンシーの増加を使用する、標準的なリボソームディスプレイ選択を採用したBinz et al.2004(示した場所))。それぞれの選択ラウンド後の逆転写(RT)-PCRサイクルの数を連続的に減らし、結合剤の濃縮による収量を調整した。次いで、得られた12個のプールを結合剤スクリーニングに供した。
【0272】
選択されたクローンは、粗抽出物HTRFによって示されるように、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD、S2、及びS1-NTDドメインに特異的に結合する。
【0273】
溶液中のSARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD、S2、及びS1-NTDドメインに特異的に結合する個別に選択されたアンキリンリピートタンパク質は、標準プロトコールを使用して、アンキリンリピートタンパク質発現タンパク質発現Escherichia coli細胞の粗抽出物を使用する均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイによって同定された。リボソームディスプレイによって選択されたアンキリンリピートタンパク質クローンをpQE30(Qiagen)発現ベクターの誘導体にクローニングし、E.coli XL1-Blue(Stratagene)に形質転換し、LB寒天(1%ブドウ糖と50μg/mlアンピシリンを含む)に播種し、37℃で一晩インキュベートした。単一のコロニーを、165μlの増殖培地(1%ブドウ糖と50μg/mlのアンピシリンを含むLB)を含む96ウェルプレートにつついて入れ(それぞれのクローンを単一のウェルに入れる)、37℃で一晩、800rpmで振盪しつつインキュベートした。新鮮な96ディープウェルプレートに、8.5μlの一晩培養物とともに、50μg/mlのアンピシリンを含む150μlの新鮮なLB培地を接種した。37℃、850rpmで120分間インキュベーションした後、発現をIPTG(最終濃度0.5mM)で誘導し、6時間続けた。細胞をプレートの遠心分離によって回収し、上清を廃棄し、ペレットを-20℃で一晩凍結した後、8.5μlのB-PERII(Thermo Scientific)に再懸濁し、室温で1時間振盪しながら(600 rpm)インキュベートした。次いで、160μlのPBSを添加し、遠心分離(3220gで15分間)によって細胞破片を除去した。
【0274】
溶解したそれぞれのクローンの抽出物を、PBSTB(0.1%Tween 20(登録商標)及び0.2%(w/v)BSA、pH7.4を補充したPBS)中の1:200希釈として、20nM(最終濃度)のビオチン化スパイクタンパク質ドメイン、1:400(最終濃度)の抗6His-D2 HTRF抗体-FRETアクセプターコンジュゲート(Cisbio)、及び1:400(最終濃度)の抗strep-Tb抗体FRETドナーコンジュゲート(Cisbio,France)と一緒に、384ウェルプレートのウェルに適用し、4℃で120分間インキュベートした。HTRFはTecan M1000で、励起波長340nm、バックグラウンド蛍光検出用の620±10nm発光フィルター、及び特異的結合の蛍光シグナル検出用の665±10nm発光フィルターを使用して読み取られた。
【0275】
スパイクタンパク質への特異的結合を評価するために、それぞれの溶解クローンの抽出物をビオチン化スパイクタンパク質ドメインへの結合について試験した。
【0276】
結合タンパク質のさらなる分析及び選択
合計909の結合剤と阻害剤が特定された。結合プロファイルに基づいて、360の候補が選択され、96ウェル形式で発現され、DNA配列決定と並行して均一になるまで精製された。候補は、サイズ排除クロマトグラフィー、Sypro-Orange熱安定性評価(Niesen et al.,Nat Protoc 2,2212-2221,(2007)を参照されたい)、ProteOn表面プラズモン共鳴(SPR)標的親和性評価、ELISA、hACE2-競合HTRF実験、SDS-PAGE、及び/またはSARS-CoV-2偽型ウイルス阻害アッセイによって生物物理学的に特性評価された。これらのデータに基づいて、RBD、S1-NTD、またはS2ドメインに結合する11の候補(配列番号1~11)をさらなる分析のために選択した。この分析には、マルチドメイン形式の31の組み合わせ(配列番号12~42)も含まれており、新しい作用機序を探索し、阻害効力、エピトープ及び標的の多様性、配列の多様性、及び/または生物物理学的特性を決定した。マルチドメイン構築物は、以前に記載されたようにギブソンアセンブリを使用して調製された(Binz,H.K.et al.MAbs 9,1262-1269,(2017)を参照されたい)。本発明の結合タンパク質は、精製または検出を容易にするためにそれらのN末端にHisタグ(配列番号46)を付けて発現させ、以下に記載する実験でこのHisタグ付き形態で試験した。
【0277】
追加の結合タンパク質の操作
最初に同定された結合タンパク質のさらなる開発では、標的タンパク質に対する、改善された親和性、及び/または標的タンパク質からの低下したオフ速度、またはマウスにおける改善されたなどの改善された薬物動態特性などの特性を有する結合タンパク質が種々の方法を使用して生成された。1つのアプローチでは、最初に同定された結合タンパク質(「親」結合タンパク質)が、親和性成熟のための適切な出発点として選択された。親和性成熟手順は、出発点として使用されるアンキリンリピートドメインのそれぞれのランダム化された位置の飽和変異導入を伴った。親和性成熟手順によって生成された配列は、競合HTRFによって低いオフ速度についてスクリーニングされた。それによって同定された有益な変異は、タンパク質工学によって結合タンパク質に組み合わされた。親和性が成熟し、操作された結合タンパク質の結合特性は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって検証された。別のアプローチでは、アンキリンリピートドメインのN末端及び/またはC末端のキャッピングモジュールの特定のアミノ酸残基は、アンキリンリピートドメイン及びアンキリンリピートドメインを構成するタンパク質の、延長された終末相半減期を含む改善された薬物動態特性を達成するために変更された。そのような改変されたアミノ酸残基は、大部分が表面に露出した残基であった(例えば、PCT/EP2020/085855を参照されたい)。
【0278】
一例では、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のS1-NTDドメインに対する結合特異性を有するアンキリンリピートドメイン、すなわちvS07_08F10v27(配列番号76)及びvS07_08F10v47(配列番号85)は、疎水性を低下させるため及び/またはその標的への結合親和性を増加させるため、及び/またはその標的からのオフ速度減少するために、アンキリンリピートリピートドメインvS07_08F10(配列番号9)に多数の変異を導入することによって生成された。疎水性の減少(例えば、N末端及びC末端キャッピングモジュールの残基を改変することによる)は、SECによって検出される多量体化の量を減少させ、粘度を低下させ、及び/またはマウスにおける薬物動態特性を改善した。いくつかの変異した残基は、「親」結合タンパク質に対する単一部位変異導入アプローチを使用する親和性成熟プロセスで特定され、これにより、潜在的な結合残基は、縮重プライマーを使用するPCRによって20アミノ酸すべてにランダム化された。個々のバリアントは、競合HTRFスクリーニングを使用して改善されたオフ速度について試験された。いくつかの個々の変異は、HTRFシグナルを少なくとも2倍から3倍増加させた。例として、vS07_08F10v47(配列番号85)には、以下が含まれる:
IR1_V11T:第1の内部リピートモジュールでは、オフ速度の改善を示すHTRF競合アッセイで2~3倍高いシグナルに基づいて、11位のバリンがトレオニンに変異された;
IR2_S3K:第2の内部リピートモジュールでは、オフ速度の改善を示すHTRF競合アッセイで1.5~2倍高いシグナルに基づいて、3位のセリンがリジンに変異された;
IR2_I4V:第2の内部リピートモジュールでは、親タンパク質と比較してオフ速度の改善及びタンパク質の多量体化の減少を示すHTRF競合アッセイで1.5~2倍高いシグナルに基づいて、4位のイソロイシンがバリンに変異された;
IR2_R14Q:第2の内部リピートモジュールでは、オフ速度の改善を示すHTRF競合アッセイで3倍を超える高いシグナルに基づいて、位置14のアルギニンがグルタミンに変異された;
IR2_V15S:第2の内部リピートモジュールでは、オフ速度の改善を示すHTRF競合アッセイで1.5~2倍高いシグナルに基づいて、15位のバリンがセリンに変異された;
C_W3V:C末端キャッピングモジュールでは、親タンパク質と比較してオフ速度の改善及びタンパク質の多量体化の減少を示すHTRF競合アッセイで1.2~1.5倍高いシグナルに基づいて、3位のトリプトファンがバリンに変異された;
C_I4V:C末端キャッピングモジュールでは、オフ速度の改善を示すHTRF競合アッセイで2~3倍高いシグナルに基づいて、4位のイソロイシンがバリンに変異された;
C_I6V:C末端キャッピングモジュールでは、オフ速度の改善を示すHTRF競合アッセイで2~3倍高いシグナルに基づいて、6位のイソロイシンがバリンに変異された。
【0279】
別の例では、改善された特性を有するSARS-CoV-2スパイクタンパク質のS2ドメインに対する結合特異性を有するアンキリンリピートドメイン、すなわち配列番号77のアンキリンリピートドメインは、アンキリンリピートドメインvS07_14G03(配列番号10)に多数の変異を導入することによって生成された。
【0280】
配列番号76、77、及び85などの操作された結合タンパク質は、配列番号1~11について上記したのと同様に生物物理学的に特性評価された。さらに、そのような操作された結合ドメイン(例えば、配列番号75、84、87、及び88)の1つ以上を含むマルチドメイン形式の組み合わせが生成され、配列番号12~42についての上記と同様に、新しい作用機序を探索し、阻害効力、エピトープ及び標的の多様性、配列の多様性、及び/または生物物理学的特性を決定した。
【0281】
実施例2:SPR結合アッセイ
表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを使用して、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対する本発明の結合タンパク質の結合親和性を決定した。
【0282】
すべてのSPRデータは、実行緩衝液としてPBS-T(0.005%Tween20)を使用するBio-Rad ProteOn XPR36装置を使用して生成された。新しいニュートラアビジンセンサーチップ(NLC)は、Bio-Radのマニュアルに従って空気初期化及び調整された。
【0283】
モノドメインDARPinタンパク質:社内で化学的にビオチン化(リジン経由)されたSARS-CoV-2 スパイクタンパク質(Sino Biologics、カタログ番号 40589-V08B1、ロットMF14MA0701)を約3400RU(30ug/ml、30ul/分、300秒)まで捕捉した。2回の緩衝液注入(100ul/分、60秒)に続いて2回の12.5mMのNaOHの再生ステップ(100ul/分、18秒)が、最初の注射の前に適用された。モノドメインDARPinタンパク質を、会合のために100ul/分で180秒間、(50/16.7/5.6/1.9/0.6nM(または、配列番号9及び10については16.7/5.6/1.9/0.6nM)で)注入し、3600秒間(100ul/分で)、解離を記録した。リガンドは、12.5mMのNaOHパルスで再生された(100ul/分、18秒)。データは、空の表面と緩衝液注入に対して二重に参照され、1:1ラングミュアモデルに従ってフィッティングされた。
【0284】
マルチドメインDARPinタンパク質:社内で化学的にビオチン化(リジン経由)されたSARS-CoV-2(COVID-19)Sタンパク質RBD(からログSPD-C5255、ロットBV3539b-203FF1-203K)を、約1000RU(775ng/ml、30ul/分、300秒)まで捕捉した。2回の緩衝液注入(100ul/分、60秒)に続いて2回の12.5mMのNaOHの再生ステップ(100ul/分、18秒)が、最初の注射の前に適用された。会合のために、それぞれのマルチドメインDARPin構築物(例えば、ALE033、ALE030、ALE038、ALE049、ALE058を含む)の25nMの単一濃度を、会合のために100ul/分で180 秒間注入し、解離が36000秒間(100ul/分)記録された。データは、空の表面と緩衝液注入に対して二重に参照された。結合力の増加により、測定時間中に有意な解離を記録することはできなかった。
【0285】
SPRアッセイの例示的な結果は、図6、9a~c、15a、16、及び17、ならびに表4に示されている。実施例4も参照されたい。
【0286】
配列番号1~11によるアンキリンリピートドメインは、SPRを使用して、特定のコロナウイルススパイクタンパク質ドメインへの結合親和性について試験された(示されない限り、マルチトレース)。さらに、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、熱安定性測定(Tm)、及びSARS-CoV-2 VSV偽ウイルス中和アッセイなど、本明細書の実施例に記載の方法を使用して、他の生物物理学的及び機能的特性も試験した。
【0287】
結果は、以下の図9a~cならびに表4a及び4bに示す。
【0288】
【表4】
【表5】
【0289】
配列番号1~8は、標的物質としてbio-RBD Fc Acro(配列番号45)及びbio-S1 Acro(配列番号43)を使用して、表4aに示されるのと同様の親和性で、スパイクタンパク質のRBDドメインまたはS1ドメインに結合することがSPRによって示された。配列番号9は、標的物質としてbio-S1 Acro(配列番号43)を使用して、2.0E-08MのKD(シングルトレース)でスパイクタンパク質のS1ドメインに結合することが示された。配列番号9及び配列番号10は、標的物質としてS ecto U(配列番号61)を使用して、それぞれ1.2E-09 M及び7.9E-10MのKDでスパイクタンパク質の外部ドメインに結合することが示された(図9c参照)。配列番号76は、配列番号9で観察されたのとほぼ同じKDでスパイクタンパク質のS1ドメインまたは外部ドメインに結合することが示されたが、配列番号85は、配列番号9または配列番号76よりもさらに高い結合親和性(すなわち、より低いKD)でスパイクタンパク質のS1ドメインまたは外部ドメインに結合することが見出された。配列番号10、11、及び77は、例えばHTRFアッセイによって、スパイクタンパク質のS2ドメインに結合することが示された。表4bは、配列番号3、5、6、9、及び10のそれぞれが、サイズ排除クロマトグラフィーにおいて単量体であったことを示している。さらに、SARS-CoV-2 VSV偽ウイルスに対して試験した場合、高い熱安定性(>85℃)及びナノモル範囲のIC50値(例えば、2nM未満)が配列番号のいくつかについて示されている。
【0290】
マルチドメインDARPinタンパク質については、結合力の増加により、測定時間中に有意な解離を記録できなかった(例えば、図15a、16、及び17を参照されたい)。マルチドメインタンパク質(例えば、ALE049及びALE058のものを含む)の見かけの親和性は、SPRの限界を超えており、サブpMの標的親和性を示している(データ示さず)。
【0291】
実施例3:機能スクリーニング
この実施例は、SARS-CoV-2 VSV偽型ウイルスアッセイを使用するモノドメイン及びマルチドメインのタンパク質の機能スクリーニングについて記載する。このアッセイの結果を図5~8に示す。
【0292】
感染阻害は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)偽ウイルスアッセイ(psVSV)を使用して評価された。このアッセイでは、VSVの糖タンパク質が、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)とホタルルシフェラーゼ(LUC)でタグ付けされたSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質の武漢バリアントに置き換えられていた。1nM、10nM、または100nMの候補の添加後の感染の阻害は、EGFP及びLUCの活性の単純な定量化によって測定された(Torriani,G.et al.,Virology 531,57-68(2019)を参照されたい)。
【0293】
図5及び7は、それぞれ、スパイクタンパク質の単一の部位(モノドメインDARPin(登録商標)タンパク質)と、スパイクタンパク質の3つの部位(マルチドメインDARPin(登録商標)タンパク質)に結合する種々の組換え結合タンパク質の100nMでの偽型SARS-CoV-2ウイルス阻害を示す。バーが短いほど、ウイルス阻害が強いことを示す。図8は、図7を繰り返するが、1nMにおけるものである。図6 は、モノドメイン組換え結合タンパク質の代表的なSPRトレースを示す。このデータは、出願人がサブナノモルの抗ウイルス活性を有するマルチドメインDARPin(登録商標)タンパク質の構造を迅速に確立できたことを示している。組換え結合タンパク質のさらなる合理的な設計は、効力をさらに増大させた。
【0294】
実施例 4:SARS-CoV-2 VSV偽ウイルス(PsV nCoV)を使用する中和アッセイ
細胞
Vero E6、9 Costar 3610、透明底、白色プレートに播種した。
【0295】
疑SARS-CoV-2(PsV nCoV)
2000IU/ウェル (25μL)
80’000IU/mL=8×104IU/mL
4000IU/ウェルにより、1.6×105IU/mLとなった。
【0296】
プレートあたり100×35μL。4mLのウイルス×8プレート=32mLを調製。
【0297】
約1×106IU/mLでC15を得た。
【0298】
26mLの培地2%FCS(ウシ胎仔血清)に6mlのストック。全部で32mL
【表6】
【0299】
ヒト血清アルブミン
ヒト血清アルブミン(HSA)の3.0mMのストック溶液を使用して、HSAの10μMの溶液を調製した。
【0300】
この溶液の培地は、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、2%FCS(ウシ胎仔血清)、及び20μMのHEPES緩衝液(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を含んでいた。
【0301】
試料希釈
2倍希釈液を調製した。それぞれの希釈液を1体積(PsV nCoV)と混合した。
【0302】
試料1~14:20μMでストック
100nMで300μL(四重、4×70μL)を調製した。
【0303】
希釈1:/1/10:
ストック20μMの15μL+135μLのPBSを取った、最終濃度2μM
希釈2:1/20:
希釈1の15μL+285μLの20μMのHSAと2%FCSを含むデミリューDMEMをとった。
【0304】
最終濃度100nM
陰性対照:
希釈1陰性対照。
【0305】
希釈1:/1/16.5:
ストック167μMの10μL+157μLのPBSを取った、最終濃度10μM
希釈2:1/10:
ストック10μMの15μL+135μLのPBSを取った、最終濃度1μM
希釈3:/1/10:
希釈2の30μL+270μLの20μMのHSAと2%FCSを含むデミリューDMEMをとった。
【0306】
陽性対照:
100nMで300μL(四重、4×70μL)を調製した。
【0307】
希釈1:/1/10:
ストック10μMの15μL+135μLのPBSを取った、最終濃度1μM
希釈2:1/10:
希釈1の30μL+270μLの20μMのHSAと2%FCSを含むデミリューDMEMをとった。最終濃度100nM
【0308】
準備
・ V底プレートに
・ 試料の最初の1/10希釈を調製した。必要体積4×70μl=280μl。2%FCS及び10mMのHEPESを含む300μlの培地を調製した
・ 四重の試料に70μlを分注した
・ V底プレートで2倍希釈を実施した
【0309】
方法及び結果
37℃で1時間インキュベーションする前に、1体積(35μl)のPsV nCOVをそれぞれのウェルに添加した。次いで、細胞を50μl/ウェルで感染させ、再び37℃で90分間インキュベートした。次いで、接種物を除去し、150μlの培地2%FCSを添加し、37℃で16時間の最終インキュベーションをした。最終インキュベーション期間の後、アッセイを停止し、倒立蛍光顕微鏡を使用して、感染した細胞(EGFP+)を適切な希釈でカウントした。細胞の固定は必要なかった。次いでルシフェラーゼアッセイを行った。細胞培地の一部を除去し(150μlから100μl)、50μlのGlow(PROMEGA)をそれぞれのウェルに加えた。結果は、Berthold(登録商標)TriStar LB941照度計を約1秒間使用して読み取った。ソフトウェアGraph Pad Prism 7を使用してデータを分析し、結果を表6に示す。
【0310】
【表7】
【0311】
試料1~14は、1.5nM未満のIC50、ほとんどの場合0.7nM未満を示し、疑似SARS-CoV-2の強力な阻害剤であることが判明した。試料2及び11は特に強力であり、IC50は0.1nM未満であった。図5は、GFP標識されたVSV偽型SARS-CoV-2ウイルスに感染したGFP陽性のVero E06細胞を示す蛍光顕微鏡画像を示す。図5のALE043は、上記の表6の試料番号12に対応する。ACO268とvS07_M101E04は、それぞれ陰性対照と陽性対照である。
【0312】
図11は、SARS-CoV-2 VSV偽型ウイルスの中和を示している。
【0313】
図12は、試料1(ALE030)、4(ALE033)、9(ALE038)、13(ALE042)、及び14(ALE043)のSARS-CoV-2 VSV偽型ウイルスの中和を示している。陽性対照も含まれている(vS07_M101E04)。
【0314】
図11及び12では、候補の滴定は、50nM~50pM(2 倍希釈)であった。10μMのHSAの存在は、アッセイに影響を及ぼさないようであった(HSA結合剤を含まない対照M101E04を参照されたい)。結果は、半減期が延長されたマルチドメイン構築物がPsV nCoVの強力な阻害剤であり、IC50値が約100pMであることを示している。
【0315】
実施例5:ウイルス中和活性;DARPin(登録商標)タンパク質の微量滴定アッセイ(オープンセルシステム)
この実施例では、試料はSARS-CoV-2 ウイルス試料(すなわち、偽ウイルスではない)に対して試験された。以下の表8に示す化合物の試料は、100nM、20nM、4nM、0.8nM、0.16nM、0.032nM、及び0.0064nMの希釈で調製した。
【0316】
【表8】
【0317】
以下の対照試料も調製した:
・ 抗体陽性血清(患者由来):1:100、1:500、1:2500、1:625、…
・ 抗体陰性血清:1:100、1:500、1:2500、1:625、…
・ 陰性対照DARPinタンパク質:ACO268、HSA結合DARPinタンパク質
・ ACE2
・ ウイルス逆滴定
培地:MEM、2%FCS、L-Glut、NEAA、Neo、Pen Add:10μMのHSA(ヒト血清アルブミン)希釈ストック1:300
【0318】
アッセイの前日に、試験する化合物2つにつき、コンフルエントなVeroE6細胞(オープンシステム)を含む96ウェルプレートを調製した。すべての試験は三重で実行された。図13は、縁の周りの境界ゾーン、及び0.0064~100nmまでのそれぞれの希釈値についての三重のウェル、及び対照ウェルを含む試験プレートのマップを示している。
【0319】
試料を、2%FCS(ウシ胎仔血清)及び10μMのHSA(ヒト血清アルブミン)を含む1mlの培地中で100nMに希釈した。2%FCS及び10μMのHSAを含む100μlの培地は、行4~11のすべてのウェルに加えられた。100μlの希釈した試験化合物または対照(100nM)を、行2に加え、125μlを行3に加えた。行3から開始して行10まで、上の列の25μlを下の列と混合することによって(毎回、液体をピペットで上下に5回移動させてウェルを完全に混合した)1:5に段階希釈した。
【0320】
MEM、2%FCS、10μMのHSA中で1000TCID50/mlでプレートあたり6mlのウイルス懸濁液を調製した(TCID50は50%の組織培養感染量である)。100μlのウイルス懸濁液(100TCID50)を行3~10のそれぞれのウェルに加えた。プレートを37℃で1時間インキュベートした。次いで、VeroE6細胞を含む96ウェルプレートから培地を除去した。200μlの試験化合物/ウイルス混合物を細胞を含む96ウェルプレートに移し、プレートを37℃で3日間インキュベートした。次いで、CPEを顕微鏡及びクリスタルバイオレット染色によって決定した。
【0321】
実施例4の結果を図14a~14fに示す。青色の細胞は100%の活性を示す。無色の細胞は活動がないことを示す。明確に示されるように、32pMまで細胞のほぼ完全な防御があり、本発明の組換え結合タンパク質がコロナウイルススパイクタンパク質、特にSARS-CoV-2スパイクタンパク質の非常に強力な阻害剤であることを示している。
【0322】
実施例6:ウイルス中和活性;DARPin(登録商標)タンパク質の微量滴定アッセイ(オープンセルシステム)
この実施例では、アンキリンリピート結合ドメインをSARS-CoV-2ウイルスに対して試験した。以下の表9に示すアンキリンリピート結合ドメインの試料を、200nM、100nM、20nM、2nM、及び0.2nMの希釈で調製した。
【0323】
【表9】
【0324】
以下の対照試料も調製した:
・ ACE2 100nM、20nM、4nM、0.8nM、0.16nM
・ ウイルス逆滴定
使用された材料:ビオチン化ヒトACE-2 Fc、Acro Biosystems(カタログ番号AC2-H82F9)
培地:MEM、2%FCS、L-Glut、NEAA、Neo、Pen Add:10μMのHSA(ヒト血清アルブミン)希釈ストック1:300
【0325】
アッセイの前日に、試験する化合物2つにつき、コンフルエントなVeroE6細胞(オープンシステム)を含む96ウェルプレートを調製した。すべての試験は四重で実行された。図13のように、それぞれの96ウェルプレートは、境界ゾーン、次いで、200nm~0.2nMの異なる濃度のウェルの行が含まれていた。
【0326】
試料を、2%FCS(ウシ胎仔血清)及び10μMのHSA(ヒト血清アルブミン)を含む1mlの培地中で200nMに希釈した。2%FCS及び10μMのHSAを含む100μlの培地をすべてのウェルに加えた。ACE2対照ウェルは、示された濃度のACE2を使用して類似の方法で調製された。
【0327】
MEM、2%FCS、10μMのHSA中で1000TCID50/mlでプレートあたり10mlのウイルス懸濁液を調製した。100μlのウイルス懸濁液(100TCID50)を、プレートの端のウェル(すなわち境界ウェル)を除いて、それぞれのウェルに添加した。プレートを密封して37℃で1時間インキュベートした。次いで、VeroE6細胞を含む96ウェルプレートから培地を除去した。200μlの試験化合物/ウイルス混合物を細胞を含む96ウェルプレートに移し、プレートを密封し、37℃で2~3日間インキュベートした。次いで、CPEを顕微鏡またはメチルブルー染色によって決定した。
【0328】
実施例5の結果を図18a~18dに示す。青色の細胞は100%の活性を示す。無色の細胞は活動がないことを示す。明確に示されるように、20nMまで、またはそれ以下でさえ、細胞の完全な、またはほぼ完全な防御があり、本発明の組換え結合タンパク質がコロナウイルススパイクタンパク質、特にSARS-CoV-2スパイクタンパク質の非常に強力な阻害剤であることを示している。具体的には、完全な防御が、vS07_12C06について2nMまで、vS07_29B10及びvS07_23E04について20nMまで、vS07_19G10について100nMまで(20nMでほぼ完全な防御)で観察された。vS07_14G03について、部分的な防御が、2~200nMで観察された。
【0329】
実施例7:ウイルス中和活性;低濃度範囲でのDARPin(登録商標)タンパク質の滴定
生きているSARS-CoV-2による細胞の感染を阻害する本発明の組換え結合タンパク質の能力をさらに調査するために、i)PromegaからのCellTiter-Glo(登録商標)及びii)クリスタルバイオレット染色によってVero E06細胞の細胞生存率を測定する2つの異なるアッセイを実施した。試験した試料を表10に示し、結果を図19に示す。
【0330】
【表10】
【0331】
すべての試料は20μMストックで提供され、最初に10μMのHSAを含む2%FCS培地中で800pM、400pM、200pM、100pM、50pM、25pM、12.5pM、6.25pM、及び3.125pMに希釈され、次いでウイルス懸濁液で1:2にさらに希釈された。
【0332】
調製
・ 試験の前日に、2つの化合物あたり80%コンフルエントなVeroE6細胞(オープンシステム)を含む96ウェルプレートを準備した(化合物は三重で試験される)。
【0333】
・ 化合物を、2%FCS及び10μMのHSAを含む、1mlのMEM培地で800pMに希釈した。
【0334】
・ すべての化合物は、2%FCS及び10μMのHSAを含む、100μlのMEM培地で100μlの希釈化合物を混合することにより1:2で段階希釈された。
【0335】
・ 試験での境界効果を避けるために、境界ウェルはフリー(細胞と培地のみ)に保たれた。
【0336】
・ 細胞に対する化合物の非特異的効果を特定するために、化合物と細胞のみを含む対照行が予見された(対照;行2)
・ 3行目~9行目まで、化合物は、200pMから3.125pMまで1:2に段階的に希釈された。
【0337】
・ 行10及び11において、2%FCS及び10μMのHSAを含むMEM培地をウイルス対照及び細胞対照用に追加した。
【0338】
試験手順
プレートのレイアウトは、図13に示したレイアウトと同様であったが、化合物濃度は上記のとおりである。
【0339】
・ 2%FCS及び10μMのHSAを含むMEM培地中の1000TCID50/mlのSARS-CoV-2(2019-nCoV/IDF0372/2020)を含むウイルス懸濁液(プレートあたり10ml)
・ 100μlのウイルス懸濁液(100TCID50)を行3~10のそれぞれのウェルに加え、他のすべてのウェルには培地を加えた。
【0340】
・ プレートを37℃で1時間インキュベートした。
【0341】
・ 80%コンフルエントのVeroE6細胞培地を含む96ウェルプレートから培地を除去し、200μlの試験化合物/ウイルス混合物を細胞を含む96ウェルプレートに加えた。
【0342】
・ 培養物を37℃で3日間インキュベートした
・ qPCRによるウイルスゲノムコピーの分析について:100μlの上清を400μlのAVL緩衝液+400μlの100%EtOHで不活性化->不活性化された上清はBSL3ラボから流出した
・ 細胞生存率を決定するために:100μlのCellTiter-Glo(登録商標)(Promega)基質を調製し、製造業者のプロトコールに従って添加し、プレートを2分間振盪し、蛍光赤色をGloMax(登録商標)(Promega)で分析した。
【0343】
結果
CellTiter-Glo(登録商標)発光生存率アッセイによる試験の結果を図19に示す。VK:ウイルス対照;ZK:細胞対照。Vero E06細胞の完全な防御は、約25pMの試験化合物で観察された。ALE033、ALE042、及びALE048では、細胞の完全な防御が25pMまで観察された。ALE049、ALE053、及びALE058に対する防御は幾分効果が低かったが、細胞の少なくとも部分的な防御は、これらの化合物についても25pMで観察された。結論として、本発明のマルチドメイン結合タンパク質は、ピコモル濃度でSARS-CoV-2による細胞の感染を阻害することができる。
【0344】
実施例8:配列番号31(ALE049)または配列番号39(ALE058)を含む多重特異性結合タンパク質のさらなる特性評価
配列番号31または配列番号39のアミノ酸配列を含む多重特異性結合タンパク質のさらなる特性評価には、SDS-PAGE(結果:分解なしの完全に無傷のサイズ;データ示さず)、質量分析(結果:予想される分子量;データ示さず)、静的光散乱組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー、円偏光二色性、保存安定性(結果:60℃で1週間安定;データ示さず)、血清安定性(結果:血清中 37℃で1週間安定;データ示さず)、表面プラズモン共鳴、SARS-CoV-2偽型ウイルス阻害アッセイ、生ウイルス阻害アッセイ、マウス薬物動態分析(実施例9を参照されたい)、及びハムスター有効性モデル(実施例10を参照されたい)が含まれていた。
【0345】
実験方法と結果
円偏光二色性
円偏光二色性測定は、キュベットに挿入されたモニターセンサーを備えた1cmの光路長のキュベット(Hellma)を使用して、Jasco J-815で実行された。222nmでのMREは、20℃から90℃までの温度勾配(加熱及び冷却)で追跡された。190~250nmのスペクトルは、20℃での可変温度測定の前後に取得された。タンパク質はPBSで0.25μMで測定された。
【0346】
表面プラズモン共鳴親和性決定
SPRアッセイは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対する多重特異性結合タンパク質の結合親和性を決定するために使用された。SPR実験は、実施例2に記載のように行った。
【0347】
SARS-CoV-2 VSV偽型ウイルスアッセイ
結合タンパク質は、SARS-CoV-2 VSV偽型ウイルスアッセイで阻害効力について評価された。このアッセイは、例えば実施例3及び4に詳細に記載されているように実施した。
【0348】
SARS-CoV-2生ウイルスアッセイ
結合タンパク質は、実施例5に記載されるのと同様に、SARS-CoV-2ウイルスアッセイにおいて阻害効力について評価された。簡潔に述べると、結合タンパク質は、以下に記載されるように、以下の培地:MEM、2% FCS、L-Glut、NEAA、Neo、Pen、10μMのHSA(ヒト血清アルブミン)を添加(希釈ストック1:300)を使用して、96ウェルプレート中で、100nM、20nM、4nM、0.8nM、0.16nM、0.032nM、及び0.0064nMの希釈で調製された。すべての試験は三重で実行された。アッセイの前日に、試験する化合物2つにつき、コンフルエントなVeroE6細胞(オープンシステム)を含む96ウェルプレートを調製した。試験プレートは、図13に示すのと同様に、縁の周りの境界ゾーン、及び0.0032nM~50nmまでのそれぞれの最終希釈値についての三重のウェル、及び対照ウェルを含んで設計された。試料を、2%FCS(ウシ胎仔血清)及び10μMのHSA(ヒト血清アルブミン)を含む1mlの培地中で100nMに希釈した。2%FCS及び10μMのHSAを含む100μlの培地は、行4~11のすべてのウェルに加えられた。100μlの希釈した試験化合物または対照(100nM)を、行2に加え、125μlを行3に加えた。行3から開始して行10まで、上の列の25μlを下の列と混合することによって(毎回、液体をピペットで上下に5回移動させてウェルを完全に混合した)1:5で段階希釈した。1プレートあたり6mlのウイルス懸濁液をMEM、2%FCS、10μMのHSA中1’000TCID50/mlで調製した。レーン3~10のそれぞれのウェルに100μlのウイルス懸濁液(100TCID50)を添加した。プレートを37℃で1時間インキュベートした。次いで、VeroE6細胞を含む96ウェルプレートから培地を除去した。200μlの試験化合物/ウイルス混合物を細胞を含む96ウェルプレートに移し、プレートを37℃で3日間インキュベートした。次いで、細胞変性効果を、顕微鏡及びクリスタルバイオレット染色によって決定した。ここで、青色の細胞は100%の活性を示し、無色の細胞は活性がないことを示す(図20を参照されたい)。代替的に、CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Promega;図21a~cを参照されたい)を使用した。後者については、1’000、10’000、または100’000TCID50が使用された。
【0349】
図20に明確に示されるように、ALE049とALE058の両方について0.08nMまで細胞の完全またはほぼ完全な防御があり、本発明の組み換え結合タンパク質がコロナウイルススパイクタンパク質、特にSARS-CoV-2スパイクタンパク質、及びコロナウイルス、特にSARS-CoV-2による細胞の感染の非常に強力な阻害剤であることを示している。対応する結果を図21a~cに示すが、これもALE049とALE058の両方に対する強力な阻害を実証している。これらのアッセイで効率的な阻害を達成するために必要な組換え結合タンパク質の正確な濃度は、使用したウイルス負荷に依存していた。ALE049とALE058の両方で、SARS-CoV-2の強力な阻害がピコモル範囲で観察され、ALE049では50pMまで低下した。ALE049及びALE058のIC50値を以下の表11に示す。これらのウイルス阻害値は、これまでに報告された最も強力なSARS-CoV-2阻害を表している。
【0350】
薬物候補の分子モデル
ALE049の分子モデル(図22A)は、極低温電子顕微鏡データ(データ示さず)に基づいて構築された。最初のステップでは、結合ドメインのモデル構造番号2が生成された。コンセンサス設計のアンキリンリピートドメインPDB:2xeeがテンプレートとして使用された。変異は固定バックボーンを有するRosettaRemodelで導入され、構造はRosettaRelaxで洗練された。半径0.3ÅのRosettaClusterを使用して40の精密な構造をクラスター化し、最大クラスターからの最低エネルギーモデルを最終モデルとして使用した。次いでこのモデルは、ドメイン番号2のスパイクタンパク質とドメイン番号2の複雑な構造から生成された観察された電子密度へのフィッティングに使用され、ドメイン番号2RBDの三量体の座標を含むPDBファイルが生成された。この三量体モデルは、図22Aに示すように、スパイク外部ドメインに結合したALE049の概念モデリングの入力構造として使用された。同様に、ALE058の分子モデルも構築された(図22B)。ALE058のこのモデルは、極低温電子顕微鏡データと、S2結合ドメインの概略構造予測に基づいている。
【0351】
配列番号31(ALE049)または配列番号39(ALE058)のアミノ酸配列を含む多重特異性結合タンパク質はそれぞれ、2つの臨床的に検証された全身半減期延長のための血清アルブミン結合ドメインにC末端で融合された3つのSARS-CoV-2スパイクタンパク質結合剤の組み合わせを含む。得られた5ドメインタンパク質を発現、精製し、生物物理学的特性、標的親和性、及びウイルス阻害に関して詳細に特性評価した。多重特異性結合タンパク質は、E.coliの細胞質において高レベルで可溶性形態で発現された。精製されたタンパク質は単量体であり、高い熱安定性(Tm>88℃)、及び円偏光二色性によって評価される可逆的なアンフォールディング、及び60℃での加速保存安定性アッセイにおける高い安定性(データ示さず)である。それらの見かけの親和性はSPRの限界を超えており、サブpMの標的親和性を示している(データ示さず)。psVSVアッセイでは、多重特異性結合タンパク質は、3pM~138pMまたは0.24ng/ml~11.04ng/mlの範囲のIC50値でウイルス侵入を阻害した(表11、図23を参照されたい)。psVSVアッセイの結果は、生ウイルスアッセイ結果とよく相関し、感染阻害は25pM~100pMまたは2ng/ml~8ng/mlの濃度で観察された(表11、図21a~cを参照されたい)。
【0352】
【表11】
【0353】
図23は、スパイクタンパク質のRBDドメインの存在下で試験された本発明の組換え結合タンパク質によるSARS-CoV-2 VSV偽ウイルスの中和をさらに示す。図23は、RBDドメインが、3つのRBD結合ドメインを含むALE049と強力に競合するが、1つのRBD結合ドメイン、1つのS1-NTD結合ドメイン、及び1つのS2結合ドメインを含むALE058とは競合しないことを示している。ALE049は、単離されたRBDドメインと競合すると効力を失ったが、ALE058における単一のRBD結合剤の競合は、ALE058の効力に大きな影響を及ぼさなかった。理論に拘束されることを望むわけではないが、このデータは、ALE049とALE058が異なる作用機序によってSARS-CoV-2を阻害することを確認しているようである。ALE049はRBD/ACE-2相互作用の中和に強く依存しているようであるが、ALE058は、マルチモード結合と、RBD/ACE-2相互作用の中和を超えて、分子のS1-NTD-S2アームの独立した中和効力も利用する多様な作用機序と、を示しているようである。したがって、図23に示したデータに基づくと、ALE049とALE058は異なる作用機序を持っているように見え、図22に示した2つの分子の分子モデルと一致している。
【0354】
本発明の結合タンパク質で観察されるような高い効力は、感染開始時の非常に低いウイルス力価が想定されるSARS-CoV-2の治療及び予防における使用の鍵となる。重要なことに、最も豊富なSARS-CoV-2血清型のいくつかのスパイクタンパク質バリアントは、多重特異性結合タンパク質によって高い効力でブロックされ(表12を参照)、ウイルスエスケープに対する堅牢性と現在のパンデミックにおける予防的治療での使用の可能性を示し、将来のパンデミックの可能性をも示している。マウス実験では、試験した最高用量(50mg/kg、iv)まで有害事象は観察されなかった。
【0355】
【表12】
【0356】
実施例9:マウスにおける本発明の多重特異性結合タンパク質の薬物動態分析
マウスにおける本発明の多重特異性組換え結合タンパク質のPK特性を評価するために、薬物動態(PK)試験を実施した。このようなPK特性は、動物薬力学研究、毒物学研究、またはヒト臨床試験における本発明の多重特異性結合タンパク質の用量予測に有用である。
【0357】
調査した本発明の多重特異性結合タンパク質は、N末端からC末端に向かって、2つのHSA特異的結合ドメインとそれに続く3つのスパイクタンパク質特異的結合ドメインを含む(表2を参照されたい)。HSA特異的結合ドメインは、マウスの血清アルブミンと交差反応する。
【0358】
このPK研究では、ナイーブなメスBALB/cマウスは、化合物の1mg/kgの目標用量レベルで単回静脈内ボーラス注射を受けた。化合物投与後5分~165時間の間のいくつかの時点で血液試料を採取した。血清濃度は、ELISAベースの分析方法で決定された。
【0359】
6時間以降、濃度-時間プロファイルは、最後のサンプリング時点である165時間まで、ほぼ単一指数関数的な減少に似た血清濃度のゆっくりとした着実な減少を示した。濃度時間プロファイルから、非コンパートメント分析を使用して薬物動態パラメーターを決定した。
【0360】
この実施例では、次の多重特異性結合タンパク質を試験した。
【0361】
【表13】
【0362】
インビボ動物実験
試験項目は、尾静脈への単回静脈内ボーラス注射として健康なメスBALB/cマウス(試験項目あたり6匹のマウス)に投与された。目標用量レベルは1mg/kgであった。それぞれの化合物の研究のために、6匹のマウスを同数の動物を持つ2つの群に分けた。薬物動態調査のために、それぞれのマウスから4つずつの血清試料を、5分、6時間、24時間、48時間、72時間、96時間、及び165時間の時点で伏在静脈から採取した。それぞれのサンプリング時点への個々の動物の割り当ては、所定のスキームに従った。血液は室温で約30分間保持して凝固を可能にし、続いて遠心分離した(5分/12000g/4℃)。その後、血清を凍結し、分析まで-20℃で保存した。インビボ実験では、大きな問題や薬物関連の有害作用は報告されなかった。
【0363】
ELISA法
捕捉のための抗DARPin(登録商標)抗体1-1-1によって認識されるDARPin(登録商標)部分の共通エピトープと、検出を容易にするために試験された結合タンパク質に存在するN-末端のHisタグとを使用する、ELISA法(図24を参照されたい)を、多重特異性結合タンパク質の血清濃度を測定するために使用した。図24(結合タンパク質の例としてALE049を示す)に示すELISA設定スキームでは、血清試料中のDARPin(登録商標)足場エピトープを介して多重特異性結合タンパク質を捕捉する抗DARPin(登録商標)抗体1-1-1に結合する、ELISAプレートに固定化されたモノクローナルヤギ抗ウサギIgGを使用する。捕捉されたDARPin(登録商標)分子は、マウス抗RGS-His-IgG-HRPコンジュゲートを使用して検出される。aSA:抗血清アルブミン、aRBD:抗受容体結合ドメイン(RBD)
【0364】
試験手順
ウェルあたり100μLのPBS中の10nmol/Lのポリクローナルヤギ抗ウサギIgG抗体(Ab18)をNUNC Maxisorb ELISAプレート上に4℃で一晩コーティングした。ウェルあたり300μLのPBST(0.1%Tween20を補充したPBS)で5回洗浄した後、Heidolph Titramax1000シェーカー(450rpm)で室温(RT)で1時間、0.25%カゼインを補充した300μLのPBST(PBST-C)でウェルをブロッキングした。上記のようにプレートを洗浄した。ウェルあたり100μLの5nmol/LのPBST-C中のウサギ抗DARPin(登録商標)1-1-1抗体を添加し、プレートを軌道振盪(450rpm)しながら室温(22℃)で1時間インキュベートした。上記のようにプレートを洗浄した。
【0365】
PBST-C中で希釈した(最終血清濃度が1%(最終血清濃度5%の最初の1:20希釈)になるようにナイーブマウス血清を補充)、1ウェルあたり100μLの希釈血清試料(1:20~1:312500、1:5希釈ステップ)、多重特異性結合タンパク質の品質管理試料(100、10、及び1nmol/L)、または多重特異性結合タンパク質標準曲線試料(0、及び50~0.001nmol/L、1:3希釈ステップ)を450rpmで振盪しながら、室温で2時間適用した。上記のようにプレートを洗浄した。
【0366】
次いで、ウェルをPBST-C中の100μLのマウス抗RGS-His-HRP IgG(Ab06)1:2000とともにインキュベートし、室温、450rpmで1時間インキュベートした。上記のようにプレートを洗浄した。ELISAは、ウェルあたり100μLのTMB基質溶液を5分間使用して発色し、ウェルあたり100μLの1mol/LのH2SO4を添加して停止した。450nmでの吸光度と620nmでの吸光度の差を計算した。試料は、2つの異なるプレートで二重で測定した。
【0367】
アッセイの性能をモニターするために、既知の濃度の品質管理試料を測定に含めた。
【0368】
CertaraのPhoenix WinNonlin(商標)8.0プログラムを使用して、薬物動態データ分析を実施した。静脈内ボーラス注射を介して投与された動物の平均濃度-時間データに基づく研究の薬物動態パラメーターの計算は、非コンパートメント分析(NCAモデル200-202、IVボーラス、線形台形線形補間)を使用して実行された。
【0369】
計算された薬物動態パラメーターには、少なくとも以下が含まれていた:AUCinf_pred、AUCラスト、AUC_%extrapol、AUC_%Back_Ext_pred、Cmax、Tmax、Cl_pred、Vss_pred、t1/2(HL_Lambda_z)。
【0370】
結果を表14及び図25に示す。
【0371】
【表14】
【0372】
結果及び結論
単指数排出相では、ALE033、ALE048、及びALE049の血清濃度は、それぞれ45.8時間、50.8時間、及び49.6時間の半減期で減少した。ALE033、ALE048、及びALE049のクリアランスは、それぞれ0.00094、0.00091、及び0.00081L/(h*kg)であると決定された。ALE033、ALE048、及びALE049の分布量(Vss)は、それぞれ0.058、0.063、及び0.055L/kgと計算された。Vssについて決定された値は、モノクローナル抗体と同様に、ALE033、ALE048、及びALE049が動物の全身循環に大きく限定されていることを示している。
【0373】
結論として、用量レベル1mg/kgでの静脈内投与後、本発明の3つの試験された多重特異性結合タンパク質は、マウスにおけるアルブミンの半減期の範囲の全身半減期を示す。マウス及びヒトにおけるアルブミンの半減期、ならびに以前のデータ(Binz et al.,MAbs 9,1262-1269(2017))を考慮すると、ヒトにおけるALE049の終末相半減期は、約 3 週間に外挿されると予想される。ヒトにおけるALE033及びALE048の終末相半減期も同様に外挿されると予想される。
【0374】
実施例10:シリアンハムスターにおけるSARS-CoV-2阻害有効性実験
ALE049の有効性は、SARS-CoV-2感染の予防的治療のシリアンハムスターモデルでさらに評価された。
【0375】
シリアンハムスターは、それぞれ6匹のメスの動物の4つの群に分けられた。群は、配列番号31のアミノ酸配列を有する16μg、160μg、または1600μgの多重特異性結合タンパク質、またはプラセボで盲検的に処置された。処置注射(ip、腹腔内)は、5×104TCID50(100μl中)のSARS-CoV-2(BetaCoV/Munich/BavPat1/2020)による動物の鼻腔内感染(0日目)の24時間前(-1日目)に行われた。-2日目に、体重を測定し、採血し、最初の喉のスワブを実施した。動物は4日目に安楽死させ、組織を採取し、肉眼的病理学を実施した。喉のスワブをウイルス輸送培地に毎日採取し、等分して保存した。剖検時に、肉眼的病理検査が実施された。肺葉を検査し、背側から見た影響を受けた肺組織のパーセンテージの推定を行った。左肺葉と鼻甲介は、組織病理学のために10%中性緩衝ホルマリン中で保存された。これらの組織の右側をホモジナイズし、Taqman PCR及びウイルス力価測定にかけた。さらに、他の臓器が収集された。ウイルス学的分析のために組織試料を凍結し、秤量し、感染培地中でホモジナイズし、力価測定前に短時間遠心分離した。すべての動物の肺甲介及び鼻甲介に対して組織病理学を実施した。10%ホルマリンで固定した後、左肺及び左鼻甲介の切片をパラフィンに包埋し、組織学的検査のために組織切片をH&Eで染色した。ウイルス学的分析では、四重の10倍段階希釈を使用して、Vero E6のコンフルエント層のウイルス力価を決定した。この目的のために、試料(咽喉スワブ及び組織ホモジネート)の段階希釈を行い、Vero E6単層上で37℃で1時間インキュベートした。Vero E6単層を洗浄し、37℃で4~6日間インキュベートした後、プレートにWST8のスコアを付けた。ウイルス力価(TCID50)は、Spearman-Karberの方法を使用して計算された。読み出しには、体重、肺病変、ウイルス力価、及び組織病理学の観察が含まれていた。
【0376】
組織病理学
10%中性緩衝ホルマリンで固定した後、左肺、左鼻甲介、及び気管の切片をパラフィンに包埋した。組織切片は、組織病理学的評価のためにヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。肺胞炎及び肺胞損傷の程度が、0%;1~25%;26~50%;または>50%であった場合、それぞれ0、1、2、または3の半定量的スコアが与えられた。肺の炎症の程度と重症度の累積スコアは、動物ごとの肺胞炎の合計スコアを提供した(表15の列「程度+重症度の合計」を参照されたい)。肺胞炎、細気管支炎、及び気管支炎の重症度については、炎症細胞が存在しない場合、数が少ない場合、数が中程度の場合、または多数の場合に、それぞれ0、1、2、または3の半定量的スコアが与えられた。肺胞浮腫、肺胞出血、及びII型肺細胞過形成の存在については、それらが存在しない場合または存在する場合にそれぞれ0または1のスコアが与えられた。表16では、肺胞浮腫、肺胞出血、及びII型肺細胞過形成の存在は、数値スコアの代わりに「はい」及び「いいえ」で示されている。
【0377】
読み出しには、体重、肺病変、ウイルス力価、及び組織病理学の観察が含まれていた。1600μgの用量で、ALE049は肺のウイルス力価の有意な低下を示した(図26a)。モデルは高い動物間のばらつきを示したが、ウイルス力価の用量依存的減少(図26a)、肉眼的に決定された肺病変の用量依存的減少(図26b)、及び体重減少の用量依存的減少(図26b)、及び体重減少の用量依存的減少(図26c)の傾向が観察され、160μgと1600μgの用量の両方が抗ウイルス活性を示したことを示している。咽頭スワブのウイルス力価はさらに、1600μgの用量、及びより少ない程度ではあるが160μgの用量がウイルス力価を阻害し、及び/または、4日間感染後の期間の喉のウイルス力価の低下を加速させたことを示した(図26d)。鼻甲介におけるウイルス力価(図26e)及び組織病理学データ(表15及び16、図27)により、1600μgの用量が最も強力な抗ウイルス防御効果を有することが確認された。これらの有望な初期の発見に基づいて、さらなる動物実験が進行中である。
【0378】
【表15】

【表16】
【0379】
実施例11:SARS-CoV-2バリアント阻害有効性実験
ALE049(配列番号31)及びALE109(配列番号75)の有効性は、SARS-CoV-2バリアントB.1.1.7(「英国バリアント」)及びB.1.351(「南アフリカバリアント」)、及びスパイクタンパク質に単一の変異を有するSARS-CoV-2バリアントに対して評価された。
【0380】
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質は、ヒトACE2受容体への結合を介して細胞侵入を媒介する。SARS-CoV-2は、ネコやミンクなどの非霊長類宿主にも感染し得る(Oude Munnink et al.,2021,Science 371,172-177)。複数宿主のライフスタイルの無差別性は、多くの場合、ウイルスの新しい宿主への初期の、まだ最適ではない適応の指標である。これは、固有の動的可塑性と、さらなるヒトへの適応の可能性を示唆している。スパイクタンパク質内の受容体結合ドメイン(RBD)は、ACE2との界面を形成する。部位変異導入スキャニングと構造解析により、L455、F456、A475、F486、F490、及びQ493など、この相互作用に重要なアミノ酸残基が明らかになった(Yan et al.,2020,Science 367,1444-1448;Yi et al.,2020,Cell Mol Immunol 17,621-630)。特に、単一アミノ酸置換N439R、L452K、N470T、E484P、Q498Y、及びN501Tは、ヒトACE2に対する親和性を高めることが示されている(Yi et al.,2020(示した場所))。これらの実験結果と一致して、変異N439Kと変異N501Yは、急速に広がるSARS-CoV2スパイクバリアントに現れ、受容体結合の促進と伝達率の増加に関連している(Thomson et al.,2021,Cell,https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.01.037)。RBDドメインも免疫原性があり、他の残基の中でも、K444、E484、及びF486が中和抗体の結合に重要であることが示されている(Ku et al.,2021,Nat Commun 12,469)。
【0381】
この実施例では、ALE049及びALE109の中和能力に対するスパイクタンパク質の選択された変異の影響を分析した(図28)。
【0382】
Hisタグ付き一価RBD結合剤、ALE049、ALE109、及びALE109のドメインノックアウトバリアントの生成
実施例1及びWalserら、2020(bioRxiv preprint doi:https://doi.org/10.1101/2020.08.25.256339)に記載されているように選択及びクローニングされたアンキリンリピートタンパク質構築物を、E.coli BL21細胞に形質転換し、LB寒天培地(1%ブドウ糖と50μg/mlアンピシリンを含む)に播種し、次いで37℃で一晩インキュベートした。それぞれの構築物について、単一のコロニーをTB培地(1%ブドウ糖及び50μg/mlアンピシリンを含む)につつき入れ、230rpmで振盪しながら37℃で一晩インキュベートした。新鮮なTB培地(50μg/mlアンピシリンを含む)に1:20の一晩培養物を接種し、37℃、230rpmでインキュベートした。OD600=1.1でIPTG(最終濃度0.5mM)の添加により培養物を誘導し、37℃、230rpmでさらに5時間インキュベートした。遠心分離(10分間、5000×g)によって収穫を行った。超音波処理による細胞破壊の後、62.5℃で30分間の熱処理とその後の遠心分離(15分間、12000×g)により一次回収を行った。20mMのイミダゾールと1%トリトンX-100を上清に添加し、0.22μmで遠心分離した上清を、1%Triton X-100による洗浄ステップと及び250mM イミダゾールによるステップ溶出を含む、N-末端Hisタグを使用する固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(HisTrap FF crude,Cytiva,Sweden)によってさらに精製した。次のステップでは、IMACステップの溶出画分をサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200,Cytiva,Sweden)に適用し、目的の画分をプールして濃縮した。最後に、エンドトキシンの除去と滅菌ろ過及び品質管理のために、濃縮試料を0.22μm Mustang Eフィルターでろ過した。
【0383】
モノクローナル参照抗体、RA1及びRA2の生成
モノクローナル抗体RA1及びRA2(米国食品医薬品局は、COVID-19の治療のためのカクテルとして投与されるRA1及びRA2の緊急使用許可を発行した)からの公開されている可変ドメインの配列を使用して、Evitria AG(Switzerland)で対応するcDNA断片を合成し、独自の発現ベクターにクローニングされた。定常免疫グロブリンhIgG1鎖またはカッパ軽鎖を含む生成されたベクターは、Evitriaによるチャイニーズハムスター卵巣細胞へのトランスフェクションに使用された。滅菌ろ過した細胞上清を、HiTrap MabSelectカラムによるアフィニティー精製と、それに続く、PBS pH7.4中でのHiLoad 26/600 Superdex 200カラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。アッセイで使用する前に、選択した画分をプールし、(SDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー、及びエンドトキシン測定により)品質管理を行った。
【0384】
VSV-SARS-CoV-2偽型変異ベクターの生成
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質をコードするプラスミドpCAGGS(Walser et al.,2020(示した場所))を、単一及び複数のスパイクタンパク質変異体を生成するためのテンプレートとして使用した。変異をコードするフォワード及びリバースの相補的プライマーは、Microsynth(Balgach,Switzerland)によって合成された。高忠実度のPhusion ポリメラーゼ(New England Biolabs,USA)をすべてのDNA増幅に使用した。
【0385】
スパイクタンパク質の単一変異は、高忠実度のPhusionポリメラーゼ(New England Biolabs,USA)を使用して、スパイクのORFの2つのPCR断片を介して生成された。第1の断片は、スパイクのORFの上流でアニーリングする一般的なフォワードプライマー(pCAGGS-5)と、変異をコードする特定のリバースプライマーを介して生成された。第2の断片は、変異をコードする特定のフォワードプライマーとリバースプライマー(rbglobpA-R)を使用して生成された。2つの断片をゲル精製し、フランキングプライマーを追加せずにアセンブリPCRのインプットとして使用した。
【0386】
多変異スパイクタンパク質の場合、それぞれの変異をコードする相補的なプライマー(フォワード及びリバース)のペアが設計された。断片1は、フォワードプライマーpCAGGS-5及び変異1をコードするリバースプライマーを使用して生成された。断片2は、変異1をコードするフォワードプライマー及び変異2をコードするリバースプライマーを使用して生成された。後続の断片はすべて同様に生成された。DNA断片をゲル精製し、等モル量で混合した。この混合物は、外部プライマーpCAGGS-5及びrbglobpA-Rを使用する完全なスパイクのORFの再構築に使用された。
【0387】
単一変異スパイクタンパク質と複数変異スパイクタンパク質の両方について、完全長のスパイクのORFをアガロースゲルから分離し、制限酵素NheI/EcoRIで消化し、pCAGGSベクターバックボーンに挿入した。正確な配列は、Microsynth(Balgach,Switzerland)によってスパイクタンパク質の全ORFを配列決定することによって検証された。
【0388】
変異解析及びALE109ドメインノックアウトについてのVSV-SARS-CoV-2偽型中和アッセイ
偽型のウイルス系は、糖タンパク質遺伝子(G)が削除され、緑色蛍光タンパク質とルシフェラーゼをコードする遺伝子に置き換えられたVSV*ΔG-Lucベクターである組換え体に基づいていた(Berger Rentsch and Zimmer,PLoS One.2011;6(10):e25858)。疑似ウイルスは、以前に報告されたように生成された(Torriani et al.,Virology.2019 May;531:57-68;Torriani et al.,J Virol.2019 Mar 5;93(6):e01744-18)。中和アッセイでは、化合物の最初の希釈に続いて、20μMのヒト血清アルブミンを補充したDMEM-2%[vol/vol]FCS(CSL Behring)中での四重の3倍希釈を行った。混合物を等量のウェルあたり250IUの SARS-CoV-2 偽ウイルスを含むDMEM-2%FCSと混合し、37℃で90分間インキュベートした。混合物を、37℃で90分間、底が透明な白色の壁の96ウェルプレート内のVero E6細胞に接種した。接種物を取り除き、新鮮な培地を加え、細胞をさらに37℃で16時間インキュベートした。ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega,Madison,US)に従って細胞を溶解し、Berthold(登録商標)TriStar LB941ルミノメーターを使用して発光を記録した。生データ(相対光単位値)は、GraphPad Prism v8.01にエクスポートされ、中和%値は、未処理のPsVシグナルに対して正規化された。95%信頼区間のIC50は、対数(阻害剤)対正規化応答曲線の設定にフィッティングされた非線形回帰適合のモデルによって推定された。
【0389】
細胞及びウイルス
Vero E6細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)と補充成分(2mMのL-グルタミン、1%非必須アミノ酸、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、0.06%重炭酸ナトリウム、すべてBioswisstec,Schaffhausen,Switzerlandから)を含む、最小必須培地(MEM)(カタログ番号M3303)中で37℃、85%を超える湿度と5%CO2で継代された。SARS-CoV-2(2019-nCoV/IDF0372/2020)は、2%FBSと補充成分を含むMEM(2%-FBS-MEM)中、37℃、85%を超える湿度と5%CO2でのVero E6細胞内で増殖させた。ウイルス力価は、他の箇所に記載されているように、標準的なプラークアッセイによって決定された。
【0390】
CellTiter-Glo及びリアルタイムRT-PCRによって決定された本物のSARS-CoV-2のウイルス中和
モノドメイン及びマルチドメインのアンキリンリピート結合タンパク質のウイルス中和能力は、細胞生存率アッセイで防御された細胞のATPレベルを測定することにより、100 TCID50 SARS-CoV-2について決定された。DARPin(登録商標)タンパク質は、96ウェルプレート内で、100μlの10μMのHSAが強化された細胞培養培地(2%-FBS-MEM)中で40nMから2.4pMまで1:4で段階希釈された。希釈されたDARPin(登録商標)タンパク質を、100μlの2%-FBS-MEM+HSA中の100 TCID50 SARS-CoV-2と混合し、37℃で1時間インキュベートした。DARPin(登録商標)タンパク質/ウイルス混合物(200μl)を80%コンフルエントのVero E6細胞に移した。対照は、最大の細胞変性効果を決定するためにウイルス懸濁液のみに曝露されたVero E6細胞と、細胞のベースライン状態を決定するために培地のみでインキュベートされた細胞とからなった。プレートを37℃、85%を超える湿度と5%CO2で3日間インキュベートした。細胞生存率は、メーカーのプロトコール(CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay,Promega,Madison,USA)に記載されているように、すべてのウェルから100μlの上清を除去し、100μlのCellTiter-Glo試薬を加えることによって決定した。オービタルシェーカーで2分間振盪した後、混合物を不透明壁プレートに移し、GloMax装置(Promega)を使用して室温で10分間インキュベートした後、発光を読み取った。ウイルス複製の阻害を決定するために、以前に取り出した上清(100μl)を400μlのAVL緩衝液(Qiagen,Hilden,Germany)及び400μlの100%エタノールで不活化し、MagNAPure 96システム(Roche,Basel,Switzerland)を使用して100μlで抽出及び溶出した。ウイルスRNAは、5μlのRNA及び45μlのTaqMan Fast Virus 1-Step Master Mix(Life Technologies,Zug,Switzerland)を使用して、E遺伝子を標的とするリアルタイムRT-PCRによって定量化された(参照Eurosurveillance | Detection of 2019 novel coronavirus(2019-nCoV)by real-time RT-PCR)。回帰分析と内部標準を使用して、ウイルスゲノム等価物(ge)を計算した。
【0391】
多重特異性DARPin(登録商標)分子ALE049及びALE109または参照抗体1もしくは2(それぞれRA1及びRA2)を使用した中和試験の結果を表17に示す。表18は、スパイクタンパク質バリアントに対する個々の結合剤としてのALE049(配列番号31)の3つのスパイクタンパク質結合ドメインの活性を示す。
【0392】
【表17-1】

【表17-2】

【表18-1】

【表18-2】
【0393】
これらの結果は、ALE049がバリアントB.1.1.7及びB.1.351を、1桁台前半のng/mL範囲のIC50値で野生型と同じくらい効率的に中和できることを示している。ALE109は、B.1.351バリアントを、1桁台前半のng/mL範囲のIC50値で野生型と同じくらい効率的に同様に中和する。英国バリアントB.1.1.7に対する ALE109のわずかな効力の低下 が観察された(IC50値70ng/ml)。それにもかかわらず、英国バリアントB.1.1.7に対するALE109の効力は治療範囲内であった。興味深いことに、ALE109のRBD結合剤(すなわちR1b)は、B.1.1.7 に対して野生型と同じ中和能力を保持していた。ALE109で観察されたわずかな効力低下は、S2ドメインの露出した変異(潜在的にP681H及びT716I)単独またはNTD変異との組み合わせによって引き起こされる可能性がある。このわずかな効力低下の原因となる構造的決定要因は現在調査中である。まとめると、結果は、試験された多重特異性結合タンパク質であるALE049とALE109の両方が、1桁台前半のng/mL範囲のIC50値で野生型を強力に中和し、B.1.1.7(英国)及びB.1.351(SA)を、治療範囲内のIC50値(すなわち、1桁台前半から2桁台のng/mL範囲)で中和したことを示した。
【0394】
多重特異性DARPin(登録商標)分子ALE049とALE109の両方も、試験したすべての個々の変異に対して十分に防御したが、ALE049と3つすべての一価DARPin(登録商標)RBD結合剤についてのF486Vは例外であった。F486はACE2結合にとって重要な残基であるため、ウイルスに対する選択圧はその保存に有利に働き、したがって、ALE049の結合に重要な固定要素を維持する。以前の構造解析では、F486がALE049の3つの関連しているが異なるRBD結合剤のコア相互作用残基として特定されていたため、ALE049に対するこの変異の大きな影響は驚くべきことではない(Walser et al.2020(示した場所))。その結果、変異F486VはALE049分子のスパイクタンパク質への結合を不安定にする。まとめると、DARPin(登録商標)分子の多重特異性設計から予想されるように、我々の分析は、本発明の多重特異性DARPin(登録商標)分子が、最も頻繁に観察される変異、及び中和抗体の結合に影響を与えることが知られている変異を有するスパイクタンパク質に対して非常に強力であり続けることを確認する。
【0395】
図29は、SARS-CoV-2の野生型に対するALE109の単一ドメインノックアウト(k.o.)構築物の中和効力を示している。これらの実験は、SARS-CoV-2に対する中和活性へのALE109の3つのスパイクタンパク質結合DARPin(登録商標)ドメインのそれぞれの寄与を決定した。ALE109と比較して、NTDノックアウト構築物では効力の低下は観察されかったが、RBD及びS2ノックアウト構築物ではいくらかの効力の低下が観察された。理論に拘束されることを望むものではないが、ALE109のNTD結合ドメインは、例えば、変異スパイクタンパク質への結合力を増加させることにより、SARS-CoV-2の変異型またはバリアントに対するALE109の中和活性において重要な役割を果たすと考えられている。
【0396】
実施例12:SARS-CoV-2のウイルス継代
以前の研究では、ウイルスエスケープ変異体が治療の選択圧の下で急速に出現し得るが示されている(Ku et al.,2021(示した場所);Andreano et al.,2020,DOI:10.1101/2020.12.28.424451)。Baum et al.,Science 369,1014-1018(2020)から翻案したウイルス継代モデルを使用して、一価のDARPin(登録商標)結合剤R1b(配列番号3)及び単一分子として適用されたモノクローナル抗体S309、RA1、及びRA2と比較した、多重特異性DARPin(登録商標)タンパク質ALE049及びALE109ならびに参照抗体のカクテルRA1及びRA2の治療圧からのウイルスエスケープのリスクを推定した。S309は、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)から回復した患者から分離された抗体であり、細胞及び動物モデルでSARS-CoV-2感染に対して有効であることが示されている(Pinto et al.,Nature,Vol 583,p.290-295,9 July 2020)。S309は、RA1及びRA2と同じ方法で調製した(上記の実施例11を参照されたい)。
【0397】
実験プロトコール:
DARPin(登録商標)タンパク質及びモノクローナル抗体の100/μgmlから0.032μg/mlまでの1:5段階希釈を2%FBS、補充成分、及び10μMのヒト血清アルブミン(HSA;CSL Behring,Switzerland)を含む最小必須培地(MEM)(2%-FBS-MEM + HSA)で調製した。2%-FBS-MEM+HSA中の1.5×106プラーク形成単位(pfu)のSARS-CoV-2(野生型と比較して以下の変化を含むフランス単離株:V367F;E990A)を含むウイルス懸濁液500ulを500μlの段階希釈したDARPin(登録商標)タンパク質またはモノクローナル抗体と混合し、続いて37℃で1時間インキュベートした。次いで、混合物を12ウェルプレート中の80%コンフルエントのVero E6細胞に移し、37℃、85%を超える湿度と5%CO2で4日間インキュベートした。それぞれの培養ウェルは、顕微鏡によって細胞変性効果(CPE)について評価された。顕著なCPEを示した(20%を超える)DARPin(登録商標)タンパク質または抗体の濃度が最も高いウェルから上清を取り出し、全RNA抽出とさらなる継代に使用された。その後の継代ラウンドでは、選択したウェルの残りの900μlの上清を2%-FCS-MEM+HSA中で4mlに希釈し、その500μlをDARPin(登録商標)タンパク質または抗体の段階希釈物と混合し、インキュベートし、混合物を上記のように新鮮なVero E6細胞を含む12ウェルプレートに移した。4日後に細胞培養ウェルのCPEを再度評価し、明らかなウイルス複製(CPE)を示すDARPin(登録商標)タンパク質または抗体濃度が最も高いウェルの上清を回収し、追加の継代に使用した(図30を参照されたい)。この方法で合計4つの継代が実行された。
【0398】
結果:
抵抗性エスケープバリアントは、抗ウイルスタンパク質の濃度を増加させる選択圧を維持しながら、新鮮な細胞に対する最大の選択圧下で有意なウイルス誘発性細胞変性効果を示す培養上清を継代することによって選択された。図31は、1回目から4回目のインキュベーションサイクル(継代番号1~番号4)後に得られた結果を示している。4日間の第1のインキュベーションサイクルの後(継代番号1)、一価DARPin(登録商標)結合剤Rb1及び多重特異性DARPin(登録商標)タンパク質ALE049及びALE109、ならびにモノクローナル抗体RA1及び2つのモノクローナル抗体RA1及びRA2のカクテルは、同じ濃度0.4μg/mLで防御を付与した。モノクローナル抗体S309は効率が低く、防御のためにより高い濃度(10μg/mL)を必要とした。単一分子としてのモノクローナル抗体RA2は、試験された最高濃度の50μg/mLまでは防御的ではなかった。継代2から4までの継続的な選択圧下で、一価DARPin(登録商標)結合剤Rb1、及び個々のモノクローナル抗体RA2及びRA1は、ウイルス誘発性の細胞変性効果から細胞を防御する能力を失い、試験した最高の選択圧まで完全なCPEを示した。対照的に、単一分子または混合物としての2つの多重特異性DARPin(登録商標)タンパク質ALE049及びALE109、ならびに2つのモノクローナル抗体(RA1及びRA2)のカクテルは、4回の継代を通じて効果を維持し、CPEから細胞を防御した。
【0399】
多特異性DARPin(登録商標)タンパク質ALE049及びALE109は、単剤としてそれぞれ濃度2μg/mL及び10μg/mLで4回の継代後のエスケープ変異体の選択を妨げた。一方、2つの多重特異性DARPin(登録商標)タンパク質ALE049及びALE109の組み合わせは、0.08μg/mLという低濃度でも有効性を保持していた。抗体カクテルRA1及びRA2は継代4の後、0.4μg/mLの濃度でエスケープ変異体の選択を妨げた。
【0400】
実施例13:SARS-CoV-2 VSV偽ウイルス(PsV nCoV)を使用する中和アッセイにおけるいくつかの多重特異性結合タンパク質の比較
SARS-CoV-2 VSV偽ウイルス(PsV nCoV)を用いる中和アッセイにおいて、本発明のいくつかの多重特異性結合タンパク質を比較した。中和アッセイは、上記の実施例4に記載したのと同様に行った。試験された多重特異性結合タンパク質には、ALE049、ALE058、ALE109、ALE126、ALE129、及びALE133が含まれていた。ALE049、ALE058、及びALE109は上記で説明されている。ALE126、ALE129、及びALE133は、vS07_08F10v27(配列番号76)を含むALE109と比較してさらに操作されたS1-NTD結合ドメイン(vS07_08F10v47;配列番号85)を含む。ALE126、ALE129、及びALE133は、S1-NTD結合ドメインとS2結合ドメイン(配列番号77)を連結するリンカーの長さのみが互いに異なる。
【0401】
PsV nCoVアッセイの結果をnMで示されたEC50値とともに図32に示す。実験は、試験されたすべての多重特異性結合タンパク質が、このSARS-CoV-2 VSV偽ウイルス中和アッセイで全体的に匹敵する中和能力を持っていることを示した。試験されたすべての構築物のEC50値は、20~50pMの範囲であった。
【0402】
実施例14:マウスにおける本発明の多重特異性結合タンパク質の薬物動態分析
マウスにおける本発明のいくつかの多重特異性組換え結合タンパク質のPK特性を評価するために、別の薬物動態(PK)試験を実施した。このようなPK特性は、動物薬力学研究、毒物学研究、またはヒト臨床試験における本発明の多重特異性結合タンパク質の用量予測に有用である。
【0403】
PK研究は、本質的に実施例9に記載のように実施した。
【0404】
この研究では、次の多重特異性結合タンパク質を試験した。
【表19】
【0405】
実施例9にも記載されているように、CertaraのPhoenix WinNonlin(商標)8.0プログラムを使用して、薬物動態データ分析を実施した。静脈内ボーラス注射を介して投与された動物の平均濃度-時間データに基づく研究の薬物動態パラメーターの計算は、非コンパートメント分析(NCAモデル200-202、IVボーラス、線形台形線形補間)を使用して実行された。
【0406】
計算された薬物動態パラメーターには、少なくとも以下が含まれていた:AUCinf_pred、AUClast、AUC_%extrapol、AUC_%Back_Ext_pred、Cmax、Tmax、Cl_pred、Vss_pred、t1/2(HL_Lambda_z)。結果を表20ならびに図33及び34に示す。
【0407】
【表20】
【0408】
結果及び結論
結果は、ALE109が、前駆体分子ALE058と比較して、全身投与について改善された薬物動態特性を有することを実証した。血清濃度時間プロファイルの単一指数関数的消失相では、ALE109血清濃度は31.5時間の半減期で減少したが、ALE058は20時間の半減期を示した。さらに、さらに操作された結合タンパク質ALE126、ALE129、及びALE133は、ALE109と比較した場合、さらに長い半減期、すなわちそれぞれ36.7時間、41.4時間、及び41.1時間の半減期を示した。
【0409】
実施例15:ロボロフスキードワーフハムスターモデルにおける2つの多重特異性結合タンパク質、ALE049及びALE109の治療効果のインビボ評価
この研究では、ロボロフスキードワーフハムスターモデルを使用して、SARS-CoV-2に対する潜在的な抗ウイルス剤としての本発明の2つの多重特異性結合タンパク質の有効性を評価した。ロボロフスキードワーフハムスターモデルは、重度の臨床徴候(例えば、体重減少または体温低下)、上気道と下気道の両方でのウイルス複製、及び組織病理学的変化によって示されるように、SARS-CoV-2感染に対する感受性が高いため、SARS-CoV-2研究にとって貴重な非トランスジェニックげっ歯類モデルである(Trimpert et al.,Cell Reports 33,108488,December 8,2020)。
【0410】
したがって、この研究の目的は、体重減少、上気道及び下気道におけるSARS-CoV-2の複製、ならびに組織病理学的変化を阻害または防止するALE049及びALE109の治療可能性を調査することであった。
【0411】
試験された結合タンパク質ALE049及びALE109は、長時間作用型活性をサポートするために、ヒト血清アルブミン(HSA)(及びハムスター血清アルブミン)に結合するドメインで延長された血清半減期である。インビトロデータは、両方の結合タンパク質による細胞培養力価測定実験で、SARS-CoV-2ウイルス感染の強力な阻害を示した。
【0412】
研究デザインでは、それぞれ6匹の動物からなる5つの群を使用し、SARS-CoV-2の接種後0、6、または24時間後に試験した結合タンパク質による処置を行った。研究デザインを図35に示する(この実施例では、ALE049はMP0420とも呼ばれる)。動物は、静脈内投与の安全で再現性のある代替手段として役立つ腹腔内(i.p.)投与により処置された。群1の動物は、0時間に20mg/kgのALE049で処置された。群2~4の動物は、それぞれ感染後0時間、6時間、または24時間に20mg/kgのALE109 で処置された。対照群(群5)の動物は、0時間にプラセボ(すなわち、試験されたタンパク質のみのビヒクル)で処置された。SARS-CoV-2による感染は、鼻腔内(i.n.)経路を介して行われた。そのための用量と感染経路は、以前の(モデル開発)研究の結果に基づいていた。動物の体重を量り、体温を毎日測定した。剖検を実施するために、感染後3日目及び5日目にそれぞれの群のそれぞれ3匹の動物を安楽死させた。肺及び咽頭組織のウイルス負荷は、qPCRまたはウイルス滴定及びプラーク形成単位(PFU)のカウントによって決定された。安楽死後に、選択した組織の組織病理学的変化を評価した。
【0413】
材料
製剤緩衝液及びすべての試験項目及び対照項目の製剤は、投与日に調製し、それぞれの群に適切な量に分注し、投与まで4℃で保存した。投与される試験/対照項目の体積は、動物あたり100μLとし、投与日に測定した動物の体重に調整した。感染物質はSARS-CoV-2のBetaCoV/Germany/BavPat1/2020株であった。
【0414】
動物
6~9週齢、研究開始日-2での体重範囲が20~25グラムの範囲のロボロフスキードワーフハムスター(Phodopus roborovskii)を使用した。
【0415】
手順
麻酔と鎮痛
感染及び安楽死の前に、メデトミジン、ミダゾラム、及びブトルファノールを、それぞれ0.15、2.0、及び2.5mg/kgの用量で注射して動物を麻酔した。感染後、麻酔は0.15mg/kgアチパメゾールで拮抗された。
【0416】
腹腔内投与
腹腔内投与のために、首の皮膚と背中の皮膚を親指と指でつかむことによって動物を固定した。その後、動物が手のひらに背を向けて休むように手をひっくり返した。動物の頭部は器官への/器官の注射/損傷を防ぐために下向きに保ち、針は鼠径部領域の正中線の左側、第4と第5の乳腺/乳頭の間に挿入した。最後に、針はスムーズな動きで取り除かれた。
【0417】
鼻腔内投与
鼻腔内投与のために、動物を仰向けに保持し、ピペットを使用して接種物(20μl)を両方の鼻孔に均等に分配した。動物は、完全な接種物が吸入されるまで仰向けに保たれ、その後回復するためにケージに戻された。
【0418】
組織学のためのサンプリング
選択された組織からの組織病理学的分析は、実験的または人道的なエンドポイント(すなわち、2、5、及び7日目)で安楽死させたすべての動物について実施した。4%ホルマリンで最低48時間固定した後、肺と喉の切片をパラフィンに包埋し、組織切片を染色して組織学的検査を行った。
【0419】
エンドポイント血清試料
感染後2、5、及び7日目の血清試料を安楽死中に収集し、すぐに血餅活性化剤を含む適切なチューブに移した。
【0420】
ウイルス学的分析
ウイルスRNAの検出
製造者の使用説明書に従って、RTP DNA/RNA Virus Mini Kit(Stratec,Birkenfeld,Germany)を使用して、鼻洗浄液と気管スワブからRNAを抽出した。組織試料からのRNA抽出には、innuPREP Virus DNA/RNA Kit(Analytic Jena,Jena,Germany)を使用した。ウイルスRNAは、製造者の使用説明書に従って、StepOnePlus RealTime PCR System(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)上で、NEB Luna Universal Probe One-Step RT-qPCR(New England Biolabs,Ipswich,MA,USA)及び2019-nCoV RT-qPCRプライマー及びプローブ(E_Sarbeco)によるワンステップRT qPCR反応を使用して定量化された。次いで、ウイルスRNAコピーを、前述のように細胞RPL18に対して正規化した。絶対定量化のための標準曲線は、細菌人工染色体としてクローン化され、E.coli.で増殖された全長ウイルスゲノムから得られたSARS-CoV-2 RNAの段階希釈から作成された。
【0421】
複製可能なウイルスの検出
二重の10倍段階希釈を使用して、Vero E6細胞のコンフルエント層のウイルス力価を決定した(Vero E6細胞でのSARS-CoV-2力価測定)。この目的のために、試料(肺組織ホモジネート)の段階希釈を行い、Vero E6単層上で37度で2時間インキュベートした。細胞を洗浄し、1.5%アビセルを含む半固体細胞培養培地を重層し、37度で48時間インキュベートした後、プレートを4%ホルマリンで固定し、プラーク計数用に0.75%クリスタルバイオレットで染色した。
【0422】
組織病理学
選択された組織からの組織病理学的分析は、実験的または人道的なエンドポイントに達したために安楽死させられたすべての動物に対して行われた。4%ホルマリンで48時間固定した後、肺の切片をパラフィンに包埋し、組織切片を染色して組織学的検査を行った。
【0423】
結果
この研究の目的は、COVID-19ロボロフスキードワーフハムスターモデルにおける結合タンパク質ALE049及びALE109の治療の可能性を評価することであった。この評価のために、ハムスターは動物あたり105PFUのSARS-CoV-2鼻腔内チャレンジの0、6、または24時間後に、20mg/kgの結合タンパク質で治療的に処置された。
【0424】
感染後0、6、または24時間のいずれかに本発明の結合タンパク質で処置した24匹の動物はすべて屠殺の日(すなわち、3日目または5日目)まで生存したが、プラセボ群の6匹中5匹の動物は重度の臨床症状及び体重減少のために、3日目までに研究終点の前に研究から除外されなければならなかった。体重の平均は、5つの研究群のそれぞれで決定された。プラセボ群は、3日目の時点まで体重の着実な減少を示した。この時点の後、プラセボ群からの1匹の動物のみがさらなる評価のために5日目に持ち越された。すべての試験タンパク質で処置された群は、体重減少がないか、またはわずかな体重減少しか示さなかった。処置のさまざまな時点を比較した場合、またはALE049とALE109を比較した場合、臨床症状または体重減少に関して有意差は観察されなかった(図36を参照されたい)。一般に、ウイルス感染または処置のいずれかに対する個々の動物の応答には多少のばらつきがあるようであり、体重減少が比較的広範囲に広がった。
【0425】
肺ホモジネートの生ウイルス力価測定及びプラーク計数による肺のウイルス力価の測定は、すでに3日目に生ウイルスの減少が観察できることを示した(図37A)。これは、ウイルスチャレンジの直後に治療が開始された時点(0時間の時点)で特に顕著であった。それでも、ウイルスチャレンジの6時間後または24時間後に投与されたALE109による処置注射は、すでに3日目に感染性ウイルスの負荷のかなりの減少を示した。この効果は、5日目に残っている3匹の動物でさらに顕著であるように見えた。結合タンパク質で処置した動物12匹中5匹のみが、肺ホモジネート中に検出可能な感染性ウイルスを有していた(図37B)。qPCRによって検出されたウイルスRNAゲノムコピーの減少は、感染性ウイルスの排除よりもかなり遅いように見えた。3日目には、0時間のそれぞれの時点で3匹の動物のうち1匹のみが肺でウイルスRNAの減少を示した(図37C)。ウイルスゲノムレベルでは、結合タンパク質処置群とプラセボ群の間のより顕著な差異は、感染後5日目にのみ発生し、処置の初期の時点でウイルスゲノムRNAのより良好な減少の傾向が再び観察された(図37D)。0時間の時点で ALE049とALE109を比較すると、ALE049の方がウイルス除去が優れている傾向が見られた。
【0426】
異なる組織のさまざまなパラメーターの組織病理学的評価は、0(明らかな組織病理学的徴候なし)から4(最も重度の組織病理学的徴候)までのランク付けでスコア化された。すべてのスコアは、異なる処置群について平均され、4つのセット:i)炎症、ii)血管、iii)肺胞、及びiv)気管支に分類された。すべての平均化されたパラメーターの合計グラフを図38A~38Dに示す。一般に、4つのカテゴリすべてで、結合タンパク質で処置されたハムスターとプラセボで処置されたハムスターの間に明確な差異が観察された。組織病理学的評価によると、すべての結合タンパク質処置は、プラセボ群と比較した場合、気管支(図38D)、肺胞(図38C)、及び血管(図38B)の組織損傷の減少に最も強い影響を及ぼし、炎症細胞(図38A)の減少に対する影響は最も低かった。ウイルス感染後6時間の時点でALE109で処置した群は、結合タンパク質で処置したすべての群の中で、炎症と組織損傷の最小の減少を示した。
【0427】
結論
105PFUのウイルス接種で、ロボロフスキードワーフハムスターモデルは、適切なCOVID-19疾患モデルであり、未処置の動物は一般に、安楽死の基準に達する強い臨床症状を発症する。ウイルスチャレンジの0時間後のALE049、またはウイルスチャレンジの0、6、または24時間後のALE109による動物の治療処置は、すべての結合タンパク質処置群に匹敵する重篤な臨床症状の有意な減少をもたらした。24匹の結合タンパク質処置動物はいずれも、3日目または5日目の公式の屠殺時点の前に安楽死基準に達することなく、一方で6匹のプラセボ処置動物では、2日目に2匹の動物、3日目に別の3匹の動物が強い臨床症状を発症し、研究から除外されなければならなく、5日目まで研究に残ったプラセボで処置された動物は1匹だけであった。
【0428】
感染性ウイルスまたはウイルスゲノムコピーのウイルス負荷に関しては、すべての結合タンパク質処置群で明らかな減少が観察された。この減少は3日目から5日目にかけて増加し、早期に処置を行った処置群は、より顕著な減少で応答したようである。0時間に投与されたALE049をALE109と比較すると、ALE049処置群は、処置群あたりの動物数がかなり少ないことを考慮すると、わずかに良好に反応した。
【0429】
肺の組織病理学的所見は、プラセボ群と比較した場合、すべての結合タンパク質処置群の病理学的スコアの明らかな減少を示した。これらの調査結果は、この研究で試験された処置レジメンとは無関係であるようである。
【0430】
結論として、ALE049とALE109の両方が、ロボロフスキードワーフハムスターモデルを使用して、SARS-CoV-2感染に対する治療の可能性を実証した。
【0431】
本明細書は、本明細書内で引用されている参考文献の教示に照らして最も完全に理解される。本明細書内の実施形態は、本発明の実施形態の例示を提供するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。当業者は、多くの他の実施形態が本発明に包含されることを容易に認識する。本開示で引用されたすべての刊行物、特許、及びGenBank配列は、その全体が参照により組み込まれる。参照により組み込まれた資料がこの仕様と矛盾または不一致である限り、仕様はそのような資料に取って代わりれる。本明細書における任意の参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術であることを認めるものではない。
【0432】
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、または日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9c
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図38d
【配列表】
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【国際調査報告】