(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(54)【発明の名称】植物由来エクソソームを産生する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/04 20060101AFI20230609BHJP
【FI】
C12N5/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568545
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 TR2021050454
(87)【国際公開番号】W WO2021230847
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512081166
【氏名又は名称】イェディテペ・ウニヴェルシテシ
【氏名又は名称原語表記】YEDITEPE UNIVERSITESI
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】シャヒン,フィクレッティン
(72)【発明者】
【氏名】ソグトマズ オズデミール,バハール
(72)【発明者】
【氏名】ボズクルト,バトゥハン トゥルハン
(72)【発明者】
【氏名】キルバシュ,オウス カーン
(72)【発明者】
【氏名】タシュル,パキゼ ネスリハン
(72)【発明者】
【氏名】デルマン,ユミト ジェム
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA88X
4B065AC20
4B065BB12
4B065BB20
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、植物組織培養ベースの細胞懸濁培養物から植物由来エクソソームを産生する方法に関する。本発明の目的は、治療剤および薬物担体などの目的で使用する植物懸濁培養の利点を利用することによる、高体積および純度で均質植物エクソソームを産生することである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を含む、植物組織培養ベースの細胞懸濁培養物から植物由来エクソソームを産生する方法;
- 植物細胞懸濁培養物を得る、
〇 植物から損傷方法により得た、継代培養後2~3週間以内に液体培養に移す準備ができている定期的に継代培養したカルス培養物を製造する、
〇 カルス培養物を1~5mmの小片に分け、該小片を、フラスコが10~50%満たされるように、エレンマイヤーフラスコに入れる、
〇 スクロース、6-ベンジルアミノプリン、1-ナフタレン酢酸、ムラシゲ・スクーグビタミン含有塩混合物を含むように、エレンマイヤーフラスコに液体培養培地を調製する、
〇 液体培養物を増殖中継続して光下に維持し、20~26℃の温度で80~120rpmの撹拌速度で撹拌する、
〇 5~10日の間隔で真空濾過系を介して継代培養を実施する、
〇 3~5継代培養毎に1回、無菌スチール篩を篩過させる、
- 植物培養培地と単離溶液を、20回倒置することにより1:1比で混合する、
- 1500gで10分間、+4℃で遠心分離する、
- 遠心分離工程後、総量の90%を占め、タンパク質および他の細胞の老廃物を含む上清および10%を占め、エクソソームが回収される下澄液として分離された2相を得る、
- 注意深く上清を引き抜き、廃棄する、
- エクソソームを含む下澄液を清潔なチューブに移す、
- 単離溶液を水で1:1比に希釈し、1000xgで10分間遠心分離することにより得た水性二相系の上清として溶液Cを得る、
- エクソソームを含む上記下澄液に1:1比で溶液Cを加えて、10回倒置する、
- 混合物を12000~14000gで10分間、+4℃で遠心分離する、
- 上清を回収したら、エバポレーターの手段により溶液Cにおけるエタノール(EtOH)を除去する、
- 最終生成物として得られたエクソソームを貯蔵する。
【請求項2】
植物組織としてタバコ葉を使用することにより特徴づけられる、請求項1の植物由来エクソソームを産生する方法。
【請求項3】
植物組織としてステビア葉を使用することにより特徴づけられる、請求項1の植物由来エクソソームを産生する方法。
【請求項4】
エレンマイヤーフラスコにおける液体培養培地を、20~30g/Lスクロース、6-ベンジルアミノプリン、1~3mg/L 1-ナフタレン酢酸、3.5~4.5g/L ムラシゲ・スクーグビタミン含有塩混合物を含むように調製することを特徴とする、請求項1の植物由来エクソソームを産生する方法。
【請求項5】
タバコ葉が植物組織として使用されるとき、エレンマイヤーフラスコにおける液体培養培地が0,1~0,8mg/L 6-ベンジルアミノプリンを含むことを特徴とする、請求項1の植物由来エクソソームを産生する方法。
【請求項6】
ステビア葉が植物組織として使用されるとき、エレンマイヤーフラスコにおける液体培養培地が1~4mg/L 6-ベンジルアミノプリンを含むことを特徴とする、請求項1の植物由来エクソソームを産生する方法。
【請求項7】
最終生成物である植物由来エクソソームが等分され、-80℃で最大12カ月貯蔵される、請求項1の植物由来エクソソームを産生する方法。
【請求項8】
最終生成物である植物由来エクソソームが凍結乾燥され、粉末形態で+4℃で最大36カ月貯蔵される、請求項1の植物由来エクソソームを産生する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、植物組織培養ベースの細胞懸濁培養物から植物由来エクソソームを得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
細胞内の物質の輸送および保存において、小胞と称され、脂質二重層により細胞質液から隔離される小さな嚢が関与する。エクソソームは、植物を含む原核生物から高等真核生物までの多くの生物により遊離され、種々のサイズの脂質二重層小胞を含む、小胞である[非特許文献1]。該小胞は、細胞機能に影響を与えるために、他の細胞に情報を伝達する能力を有する。エクソソームを介するシグナル伝達は、タンパク質、脂質、核酸および糖からなる多数の異なるカテゴリーの生体分子の手段により実施される。その発見以来、エクソソームの多くの種々の適用が、生物学および医学の分野において開発されている。例えば、がん、免疫系疾患ならびにALSおよびアルツハイマーなどの神経変性疾患の病因、診断および処置におけるエクソソームの使用が知られている。これらに加えて、薬物およびCRISPR-Cas9などの遺伝子療法における担体としてのエクソソームの使用が、それらが細胞駆動型であり、血液脳関門を通過する能力を有するとの事実により、多数研究されている[非特許文献2]。
【0003】
先端技術においては、エクソソーム研究は主にヒトエクソソームで行われている。種々の細胞株、体液および個体ならびにがんなどの種々の疾患を示す細胞株から得たエクソソームで、ヒトのほぼ完全なエクソソーム地図が描かれている。植物を含む全ての真核生物がエクソソームを産生する。今日まで実施されている植物により産生されるエクソソームの研究の数は限られているが、グレープフルーツ[非特許文献3]およびレモン(Citrus lemon)[非特許文献4]がエクソソームを産生し、これらエクソソームがインビトロおよびインビボ研究でがん細胞の増殖を抑制することが示されている。本発明の分野での他の試験は、4種の異なる植物から得たエクソソームとマウス細胞の相互作用を示し、植物エクソソームが種の壁を越えて哺乳動物細胞に影響することを証明している[非特許文献5]。植物自体に対する植物エクソソームの効果についてのいくつかの研究もある。植物がエクソソームを分泌し、病原体ストレス下で自身を保護することを示す研究がある[非特許文献6]。
【0004】
植物エクソソーム研究は、ヒトエクソソーム研究と比較して、いくつかの課題を提出する。これが、植物エクソソーム研究の数が限られている最も重要な理由の一つである。エクソソーム研究で使用される植物は、地方市場から得られる。しかしながら、制御されていない条件下で成長し、収穫後長時間放置された植物は、複数試験間で予測できない結果をもたらし得る。さらに、果実などの未成熟組織からエクソソームを抽出したとき、除去が必要な多くの植物化学物質(植物により産生される種々の生物活性物質)がある。これらの課題が克服されれば、植物由来エクソソームは、がんで示した効果を、他の疾患の処置においても同様に示す可能性がある[非特許文献3、4]。
【0005】
植物は、進化の過程で、移動できないため、生息地で危険となり得る状況に対して自身を保護する防御機構を発達させている[非特許文献7]。よって、種々の分子経路を発達させ、多数の特有の分子を産生することが可能である。これらの分子は、長い間、医学、食物、顔料、化粧などの多くの産業で使用されてきている[非特許文献8]。
【0006】
多くの植物ベースの分子または生成物が発見されているが、この分野は、なお新しい研究および発見の余地がある[非特許文献9]。長年、発達が完了した全植物が、植物ベースの分子の産生のために使用されている。しかしながら、最近、植物細胞懸濁培養物が植物由来生成物の産生により適することが証明されている。植物細胞懸濁培養物は、光、湿度および温度などの変数を一定に保ちながら、カルス培養物を液体培地で一定の混合をすることにより実施される[非特許文献10]。発達が完了した全植物と比較して、植物細胞懸濁培養物は、短期間で高質量収率を達成できる[非特許文献9]。さらに、土壌で成長した植物は、生物学的病原体または残留農薬などの汚染のリスクがある[非特許文献11]。土壌ベースの農業は、細胞懸濁培養物と比較して、環境条件が制御されていない[非特許文献12]。
【0007】
収率が安定することに加えて、植物細胞懸濁培養物は、安定かつ再現性のある植物ベースの生成物を得ることを可能とする。環境因子が一定であるとの事実により、生成物が通常の変化により影響を受けることが防止される。産生される細胞が単一細胞クローンであるとの事実も一貫性を確実とする。さらに、植物細胞懸濁培養物の使用により、産生後処理が容易となる。単純な濾過または遠心分離工程が、植物細胞と懸濁液培地を互いに分ける。他の利点は、細胞懸濁培養物の大規模産生およびスケールアップの可能性を含む[非特許文献13]。
【0008】
近年、生物学系における植物由来エクソソームの活性の探索、特に分子含量およびナノ小胞構造分析における研究が勢いを増している。結果として、極めて高純度の極めて大量の植物由来エクソソームを研究に使用する必要がある。今日のエクソソーム単離方法が細胞を標的とするよう開発されているため、全植物または果実の使用により得られた溶液は、これらの方法で単離するには汚染されすぎている。この理由により、地方市場からの果実または全植物として研究されたサンプルから得たエクソソームは、研究に関して、相当な疑いを引き起こす。
【0009】
哺乳動物細胞培養物から得たエクソソームで実施される研究において、環境条件に依存して、細胞はエクソソームの分子含量を制御および変化させることが決定されている。従って、植物細胞により分泌されるエクソソームの生体分子含量も、環境条件に非常に影響されることが予測される。本来の植物の特徴として、土壌塩分濃度、土壌における重要な鉱物および微量元素の利用可能性、空気中の水分量および環境における光量などの天然因子に加えて、人工的因子および時折の天然事象も非常に重要である。これらの結果として、均質的に同じ特徴を有し、性質が経時的に変化せず、将来も変化しないと考えられる単一標準エクソソームを、上記方法(制御されていない環境)で成長し続ける植物から得ることが極めて困難である。この理由のため、文献の科学的研究の実験法の後の副研究で示された再現性のある結果は、疑われる。これらの加えて、エクソソームを得るために使用される果実ベースの研究において、植物の作物生産計画に依存するとの事実により、中断のない期間でかつ大規模の両者での研究を実施する顕著な試みはない。
【0010】
欧州特許EP3576844(当分野で知られる出願)は、がん処置および創傷治癒に使用するための植物由来エクソソームに関する。該文献に記載される発明は、がん処置の間、人体に毒性作用を引き起こさず、健常細胞を損傷させず、何ら感染リスクがない、低コストの生成物の提供を可能とする。該発明の生成物において、小麦草、ニンニクおよび生姜が、単独でまたは組み合わせで、植物源として発明に使用され得る。
【0011】
米国特許出願US2018271773A1は、植物汁液から産生された細胞外小胞を含む組成物に関する。該細胞外小胞は、皮膚白化、加湿およびシワ低減効果など優れた皮膚状態改善効果を有し、脱毛の予防効果を示す。
【発明の概要】
【0012】
発明の概要
本発明の目的は、治療剤および薬物担体などの目的で使用する植物懸濁培養の利点を利用することによる、高体積および純度で植物エクソソームを産生することである。
【0013】
本発明の他の目的は、均質エクソソーム培養の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の詳細な記載
本発明の植物由来エクソソームを産生する方法の図を、次のとおり記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【0016】
【0017】
【
図3】動的光散乱法によるステビア植物細胞懸濁培養物から得たエクソソームのサイズ分布の測定を示す。
【0018】
【
図4】動的光散乱法によるステビア植物細胞懸濁培養物から得たエクソソームのサイズ分布の測定を示す。
【0019】
【
図5】SEM画像による種々の植物培養からのタバコ植物から得たエクソソームの形態およびサイズの図を示す。
【0020】
【
図6】SEM画像による種々の植物培養からのステビア植物から得たエクソソームの形態およびサイズの図を示す。
【0021】
【
図7】フローサイトメトリーによるタバコ細胞から得たエクソソームの特徴づけについて実施した対照群のグラフを示す。
【0022】
【
図8】フローサイトメトリーによるタバコ細胞から得たエクソソームのCD 9タンパク質の測定のグラフを示す。
【0023】
【
図9】フローサイトメトリーによるタバコ細胞から得たエクソソームのCD 63タンパク質の測定のグラフを示す。
【0024】
【
図10】フローサイトメトリーによるタバコ細胞から得たエクソソームのHSP70タンパク質の測定のグラフを示す。
【0025】
【
図11】フローサイトメトリーによるステビア細胞から得たエクソソームの特徴づけについて実施した対照群のグラフを示す。
【0026】
【
図12】フローサイトメトリーによるステビア細胞から得たエクソソームのCD9タンパク質の測定のグラフを示す。
【0027】
【
図13】フローサイトメトリーによるステビア細胞から得たエクソソームのCD63タンパク質の測定のグラフを示す。
【0028】
【
図14】フローサイトメトリーによるステビア細胞から得たエクソソームのHSP70タンパク質の測定のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、次の工程を含む、植物組織培養ベースの細胞懸濁培養物から植物由来エクソソームを産生する方法に関する:
- 植物細胞懸濁培養物を得る、
〇 植物から(好ましくはタバコ葉またはステビア葉から)損傷方法により得た、継代培養後2~3週間以内に液体培養に移す準備ができている定期的に継代培養したカルス培養物を製造する、
〇 カルス培養物を1~5mmの小片に分け、該小片を、フラスコが10~50%満たされるように、エレンマイヤーフラスコに入れる、
〇 20~30g/Lスクロース、(タバコ葉の場合0.1~0.8mg/L使用またはステビア葉の場合1~4mg/L使用)6-ベンジルアミノプリン、1~3mg/L 1-ナフタレン酢酸、3.5~4.5g/L ムラシゲ・スクーグビタミン含有塩混合物を含むように、エレンマイヤーフラスコに液体培養培地を調製する、
〇 液体培養物を増殖中継続して光下に維持し、20~26℃の温度で80~120rpmの撹拌速度で撹拌する、
〇 5~10日の間隔で真空濾過系を介して継代培養を実施する、
〇 3~5継代培養毎に1回、無菌スチール篩を篩過させる、
- 植物培養培地と、分子量の25~45kDaの2~4%ポリエチレングリコールおよび分子量の450~650kDaの1~2%デキストランを含む単離溶液を、20回倒置することにより1:1比で混合する、
- 1500gで10分間、+4℃で遠心分離する、
- 遠心分離工程後、総量の90%を占め、タンパク質および他の細胞の老廃物を含む上清および10%を占め、エクソソームが回収される下澄液として分離された2相を得る、
- 注意深く上清を引き抜き、廃棄する、
- エクソソームを含む下澄液を清潔なチューブに移す、
- 単離溶液を水で1:1比に希釈し、1000xgで10分間遠心分離することにより得た水性二相系の上清として溶液Cを得る、
- エクソソームを含む上記下澄液に1:1比で溶液Cを加えて、10回倒置する、
- 混合物を12000~14000gで10分間、+4℃で遠心分離する、
- 上清を回収したら、エバポレーターの手段により溶液Cにおけるエタノール(EtOH)を除去する、
- 最終生成物として得られたエクソソームを貯蔵する(等分後-80℃で最大12カ月または凍結乾燥後粉末で+4℃で最大36カ月)。
【0030】
本発明は、植物組織培養ベースの細胞懸濁培養物から植物由来エクソソームを産生する方法に関する。該方法において、まず、タバコおよびステビア細胞懸濁培養物を作り、次いで植物エクソソームを該細胞懸濁培養物を使用して得る。
【0031】
本発明の範囲内で、培養培地は糖、塩、ビタミンおよびホルモンで確実に処理される。この方法で、6-ベンジルアミノプリンはホルモンとして好ましい(6-ベンジルアミノプリン;ベンジルアデニン、BAPまたはBAは、細胞分裂を促進することにより、植物成長および発達応答を促進し、開花を設定し、果実の豊かさを刺激する、第一世代合成サイトカイニンである)。定期的に継代培養され、損傷方法により植物(好ましくはタバコ葉またはステビア葉)から得たカルス組織は、適当なホルモン濃度で該葉組織を刺激することにより、形成される。得られたカルス組織の性質がある種のホルモンの助けを借りて連続して保存される、カルス培養物が調製される。タバコおよびステビアは異なる植物種であり、カルス培養物を保護するためにある種のホルモンで定期的に刺激する必要がある。これらのホルモンは種間で変わる。糖、塩およびビタミンも変わり得るが、同じ糖および塩比がタバコおよびステビアで適当であることが判明している。これらのホルモンは種間で変わる。糖、塩およびビタミンも変わり得る。先端技術においては広く使用されるビタミンを含むムラシゲ・スクーグ塩混合物[非特許文献14]は、ここで使用するビタミン-塩混合物として考えられる。該ムラシゲ・スクーグ混合物は、それを発明した研究者らにちなんで名づけられており、植物組織培養にしばしば使用される、培地組成物である。「ビタミン塩混合物」は、ここでは、ムラシゲ・スクーグ粉末を使用して得た液体-液体培地をいう。使用するムラシゲ・スクーグは、ムラシゲ・スクーグビタミン含有塩混合物[非特許文献10]が3,5~4,5g/L[非特許文献11]を含むように、調製される。
【0032】
今回実施した研究により、植物細胞培養に使用した培地からの植物から得たエクソソームの単離により、エクソソーム均質性、生成物の量および遺伝的適用の観点で、きわめて重要な利点をもたらすことが決定した。植物由来エクソソームの生物活性試験に際して、最も重要な障害の一つであった、均質エクソソーム培養が得られないとの課題は、本発明の範囲内で解決された。本発明の方法において、エクソソームは植物細胞懸濁培養物において単一細胞型により培地に分泌され、該細胞は制御された条件下で成長する。故に、実験的研究の実施に必要なエクソソームの産生中に生ずる小胞構造および含量の差の最小化を長期にわたり可能とする。本発明の他の利点は、植物組織培養に使用される培地が、エクソソーム精製に使用される果実抽出物よりはるかに少ない汚染物を含むことである。従って、時間および効率両者の観点で、顕著な利点がエクソソーム単離に見られる。
【0033】
本発明の範囲内で、植物で必要な成長条件および地域と一般に無関係である、植物からエクソソームを精製するための方法が提供される。本発明の分野で、果実ベースの研究において、植物は特徴的に生成物を産生するのに特定の日数がかかり、かつ所望量のエクソソームを得るために必要な面積が大きすぎるとの事実などの課題は、本発明の方法により解決される。植物培養にバイオリアクターを使用することにより、植物での研究が意図される細胞のエクソソームは、時間と無関係に、きわめて大量で、より小さな面積で得られ得る。
【0034】
本発明の範囲内で、植物組織培養における細胞集団からエクソソームを得ることにより、環境変化に対する植物細胞の応答を試験できる。さらに、植物由来エクソソームカーゴの制御において特有のタンパク質を小胞構造に入れることにより、植物細胞の遺伝的変化の応答を細胞特異的とすることができる。
【0035】
本発明の範囲内で、等分または凍結乾燥工程が、最終産物であるエクソソームの保存に、長期に適用される。等分は、凍結-解凍工程の繰り返しを防止する。凍結乾燥は、+4度での長期安定性を提供する。これらの工程は、最終生成物の正しい貯蔵に使用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0036】
【非特許文献1】Thery, C., Zitvogel, L., &Amigorena, S. (2002). Exosomes: composition, biogenesis and function. Nature ReviewsImmunology, 2(8), 569.
【非特許文献2】Corrado, C., Raimondo, S., Chiesi, A., Ciccia, F., De Leo, G., &Alessandro, R. (2013). Exosomes as intercellular signaling organelles involved in health and disease: basic science and clinical applications. International journal of molecular sciences, 14(3), 5338-5366.
【非特許文献3】Zhuang, X., Teng, Y., Samykutty, A., Mu, J., Deng, Z., Zhang, L., ... &Zhang, H. G. (2016). Grapefruit-derived nanovectors delivering therapeutic miR17 through an intranasal route inhibit brain tumor progression. Molecular Therapy, 24(1), 96-105.
【非特許文献4】Raimondo, S., Naselli, F., Fontana, S., Monteleone, F., Dico, A. L., Saieva, L., ... & De Leo, G. (2015). Citrus limon-derived nanovesicles inhibit cancer cell proliferation and suppress CML xenograft growth by inducing TRAIL-mediated cell death. Oncotarget, 6(23), 19514.
【非特許文献5】Ju, S., Mu, J., Dokland, T., Zhuang, X., Wang, Q., Jiang, H., ... &Roth, M. (2013). Grape exosome-like nanoparticles induce intestinal stem cells and protect mice from DSS-induced colitis. Molecular Therapy, 21(7), 1345-1357.
【非特許文献6】Meyer, D., Pajonk, S., Micali, C., O’Connell, R., &Schulze‐Lefert, P. (2009). Extracellular transport and integration of plant secretory proteins into pathogen‐induced cell wall compartments. The Plant Journal, 57(6), 986-999.
【非特許文献7】Zadnikova, P., Smet, D., Zhu, Q., Straeten, D. V. D., &Benkova, E. (2015). Strategies of seedlings to overcome their sessile nature: auxin in mobility control. Frontiers in Plant Science, 6, 218.
【非特許文献8】Fabricant, D. S., &Farnsworth, N. R. (2001). The value of plants used in traditional medicine for drug discovery. Environmental health perspectives, 109(suppl 1), 69-75.
【非特許文献9】Rao, S. R., &Ravishankar, G. A. (2002). Plant cellcultures: chemical factories of secondary metabolites. Biotechnology advances, 20(2), 101-153.
【非特許文献10】Mustafa, N. R., De Winter, W., Van Iren, F., &Verpoorte, R. (2011). Initiation, growth and cryopreservation of plant cell suspension cultures. Nature protocols, 6(6), 715.
【非特許文献11】Hellwig, S., Drossard, J., Twyman, R. M., &Fischer, R. (2004). Plant cell cultures for the production of recombinant proteins. Nature biotechnology, 22(11), 1415.
【非特許文献12】Nalawade, S. M., &Tsay, H. S. (2004). In vitro propagation of some important Chinese medicinal plants and their sustainable usage. In Vitro Cellular & Developmental Biology-Plant, 40(2), 143-154.
【非特許文献13】Yue, W., Ming, Q. L., Lin, B., Rahman, K., Zheng, C. J., Han, T., &Qin, L. P. (2016). Medicinal plant cell suspension cultures: pharmaceutical applications and high-yielding strategies for the desired secondary metabolites. Critical reviews in biotechnology, 36(2), 215-232.
【非特許文献14】Murashige, T., & Skoog, F. (1962). A revised medium for rapid growth and bioassays with tobacco tissue cultures. Physiologiaplantarum, 15(3), 473-497.
【国際調査報告】