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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(54)【発明の名称】圧縮機用ダンピングシステム
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/00 20060101AFI20230609BHJP
   F04C 18/16 20060101ALI20230609BHJP
   F16C 17/03 20060101ALI20230609BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
F04C29/00 G
F04C18/16 J
F16C17/03
F16J15/06 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568812
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 US2021032031
(87)【国際公開番号】W WO2021231600
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/024,334
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521301840
【氏名又は名称】ジョンソン・コントロールズ・タイコ・アイピー・ホールディングス・エルエルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100119426
【弁理士】
【氏名又は名称】小見山 泰明
(72)【発明者】
【氏名】ピリス,ジョセフ・ウッドロー
(72)【発明者】
【氏名】ティクセン,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】アーメントラウト,リチャード・ウィッテン
【テーマコード(参考)】
3H129
3J011
3J040
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129AA21
3H129AB03
3H129BB21
3H129CC09
3H129CC17
3J011AA06
3J011AA12
3J011BA16
3J011BA17
3J011CA01
3J011JA02
3J011KA02
3J011MA02
3J011RA03
3J040AA17
3J040BA02
3J040EA16
3J040HA15
(57)【要約】
圧縮機(12)用のスクイズフィルムダンパアセンブリ(100)は、圧縮機(12)の回転子シャフト(72)の周りに配置されるように構成されたダンパスリーブ(112)を含む。ダンパスリーブ(112)は、ダンパスリーブ(112)の内周(145)に形成された圧力ダムポケット(166)を含む。圧力ダムポケット(166)は、潤滑油(24)の流れを受容し、かつ回転子シャフト(72)の回転を介して潤滑油(24)の流れを加圧するように構成されている。ダンパスリーブ(112)は、圧力ダムポケット(166)からダンパスリーブ(112)の外周(134)まで延在する出口通路(142)を含む。スクイズフィルムダンパアセンブリ(100)はまた、軸受ハウジング(110)を含み、軸受ハウジング(110)は、ダンパスリーブ(112)の周りに配置されて、ダンパスリーブ(112)の外周(134)と軸受ハウジング(110)との間に延在するダンパ隙間(116)を形成する。ダンパ隙間(116)は、出口通路(142)に流体結合されており、かつ圧力ダムポケット(166)から潤滑油(24)の流れを受容するように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機用のスクイズフィルムダンパアセンブリであって、
前記圧縮機の回転子シャフトの周りに配置されるように構成されたダンパスリーブであって、
前記ダンパスリーブの内周に形成されており、かつ潤滑油の流れを受容して、前記回転子シャフトの回転を介して前記潤滑油の流れを加圧するように構成された、圧力ダムポケット、及び
前記圧力ダムポケットから前記ダンパスリーブの外周まで延在する出口通路を備える、ダンパスリーブと、
軸受ハウジングであって、前記軸受ハウジングが、前記ダンパスリーブの周りに配置されて前記ダンパスリーブの前記外周と前記軸受ハウジングとの間に延在するダンパ隙間を形成し、前記ダンパ隙間が、前記出口通路に流体結合されており、かつ前記圧力ダムポケットから前記潤滑油の流れを受容するように構成されている、軸受ハウジングと、を備える、スクイズフィルムダンパアセンブリ。
【請求項2】
前記圧力ダムポケットが、前記ダンパスリーブの前記内周の少なくとも一部に沿って延在する弓形スロットを備える、請求項1に記載のスクイズフィルムダンパアセンブリ。
【請求項3】
前記ダンパスリーブと前記軸受ハウジングとの間に延在する回転防止ピンを備え、前記回転防止ピンが、前記ダンパスリーブの前記軸受ハウジングに対する回転移動を遮断し、かつ前記ダンパスリーブの前記軸受ハウジングに対する半径方向の移動を可能にする、請求項1に記載のスクイズフィルムダンパアセンブリ。
【請求項4】
前記軸受ハウジング内に形成されており、かつ前記軸受ハウジングの内周まで延在する、第1の入口通路と、
前記ダンパスリーブ内に形成されており、かつ前記ダンパスリーブの前記外周から前記圧力ダムポケットまで延在する、第2の入口通路と、を備え、前記第1の入口通路が、前記第2の入口通路に流体結合されて、スクイズフィルムダンパアセンブリの潤滑油供給通路を形成する、請求項1に記載のスクイズフィルムダンパアセンブリ。
【請求項5】
前記潤滑油供給通路が、前記圧縮機の潤滑油供給部から前記潤滑油の流れを受容し、かつ前記潤滑油の流れを前記圧力ダムポケットに向けて誘導するように構成されている、請求項4に記載のスクイズフィルムダンパアセンブリ。
【請求項6】
前記圧力ダムポケットと前記ダンパスリーブの軸方向端面上に形成された開口部との間に延在する入口通路を備え、前記入口通路が、前記圧縮機の潤滑油供給部から前記潤滑油の流れを受容し、かつ前記潤滑油の流れを前記圧力ダムポケットに向けて誘導するように構成されている、請求項1に記載のスクイズフィルムダンパアセンブリ。
【請求項7】
前記圧力ダムポケットが、前記圧縮機の前記回転子シャフトの本体内に形成された通路から前記潤滑油の流れを受容するように構成されている、請求項1に記載のスクイズフィルムダンパアセンブリ。
【請求項8】
前記軸受ハウジング内に形成された出口ポートを備え、前記出口ポートが、前記ダンパ隙間から前記潤滑油の流れの少なくとも一部を受容し、かつ前記潤滑油の流れの前記一部を前記スクイズフィルムダンパアセンブリから吐出するように構成されている、請求項1に記載のスクイズフィルムダンパアセンブリ。
【請求項9】
前記出口ポートが、重力方向に対して、前記スクイズフィルムダンパアセンブリの短手方向中心線の上方にある前記軸受ハウジングの一部内に形成されている、請求項8に記載のスクイズフィルムダンパアセンブリ。
【請求項10】
圧縮機であって、
軸を中心として回転するように構成されたシャフトと、
前記シャフトの周りに配置されたダンパスリーブであって、前記ダンパスリーブが、前記ダンパスリーブの内径に形成された圧力ダムポケット、及び前記圧力ダムポケットに流体結合されており、かつ前記圧力ダムポケットから前記ダンパスリーブの外径に延在する、出口通路を備え、前記圧力ダムポケットが、前記圧縮機の潤滑油供給部から潤滑油を受容するように構成されており、前記シャフトが、前記軸を中心として回転するときに、前記圧力ダムポケット内で前記潤滑油を加圧して加圧された潤滑油を生成するように構成されている、ダンパスリーブと、
軸受ハウジングであって、前記軸受ハウジングが、前記ダンパスリーブの周りに配置されて前記ダンパスリーブと前記軸受ハウジングとの間に延在するダンパ隙間を形成し、前記ダンパ隙間が、前記出口通路に流体結合されており、かつ前記出口通路から前記加圧された潤滑油を受容するように構成されている、軸受ハウジングと、を備える、圧縮機。
【請求項11】
前記圧力ダムポケットが、前記ダンパスリーブの前記内径の少なくとも一部に沿って延在する弓形スロットを備える、請求項10に記載の圧縮機。
【請求項12】
前記弓形スロットが、前記ダンパスリーブの衝突面で終端し、前記衝突面が、前記軸に対して半径方向外向きに延在し、かつ前記出口通路の一部を形成する、請求項11に記載の圧縮機。
【請求項13】
前記出口通路が、前記圧力ダムポケットの第1の端部に流体結合されており、前記ダンパスリーブが、前記第1の端部の反対側にある前記圧力ダムポケットの第2の端部に流体結合された入口通路を備え、前記入口通路が、前記潤滑油供給部から前記圧力ダムポケット内に前記潤滑油を誘導するように構成されている、請求項10に記載の圧縮機。
【請求項14】
前記入口通路が、前記ダンパスリーブの外径上に形成された第1の開口部を備え、前記軸受ハウジングが、前記軸受ハウジングの内径上に形成された第2の開口部を備える追加の入口通路を備え、前記入口通路と前記追加の入口通路とが、互いに流体結合されており、前記圧縮機が、前記ダンパスリーブと前記軸受ハウジングとの間に半径方向に配置されており、かつ前記第1の開口部及び前記第2の開口部の周りに延在する、シールを含み、前記追加の入口通路が、前記潤滑油供給部から前記入口通路まで前記潤滑油を誘導するように構成されている、請求項13に記載の圧縮機。
【請求項15】
前記入口通路が、前記ダンパスリーブの軸方向端面に形成された軸方向開口部を備え、前記軸方向開口部が、前記潤滑油供給部に流体結合されて、前記潤滑油供給部から前記入口通路への前記潤滑油の流れを可能にする、請求項13に記載の圧縮機。
【請求項16】
前記シャフトに軸方向力を加えるように構成されたバランスピストンアセンブリを備え、前記入口通路は、前記バランスピストンアセンブリに流体連結され、前記バランスピストンアセンブリから前記潤滑油を受容するように構成されている、請求項13に記載の圧縮機。
【請求項17】
前記シャフトが、
前記軸に沿って延在し、かつ前記潤滑油供給部から前記潤滑油を受容するように構成された、内部通路と、
前記内部通路から前記シャフトの外径に延在する半径方向通路であって、前記内部通路及び前記圧力ダムポケットが、前記半径方向通路を介して互いに流体結合されて、前記内部通路から前記圧力ダムポケット内への前記潤滑油の流れを可能にする、半径方向通路と、を備える、請求項10に記載の圧縮機。
【請求項18】
スクリュー圧縮機であって、
軸を中心として回転するように構成された回転子シャフトと、
前記回転子シャフトの周りに配置されたダンパスリーブであって、前記ダンパスリーブが、入口通路、出口通路、及び前記入口通路と前記出口通路との間に延在する圧力ダムポケットを備え、前記入口通路が、第1の圧力で潤滑油を受容し、かつ前記潤滑油を前記圧力ダムポケット内に誘導するように構成されており、前記回転子シャフト及び前記圧力ダムポケットが、前記軸を中心とした前記回転子シャフトの回転中に、前記圧力ダムポケット内で前記潤滑油を協働的に加圧して、前記第1の圧力よりも大きい第2の圧力を有する加圧された潤滑油を生成するように構成されている、ダンパスリーブと、
軸受ハウジングであって、前記軸受ハウジングが、ダンパスリーブの周りに配置されて前記ダンパスリーブと前記軸受ハウジングとの間にダンパ隙間を形成し、前記ダンパ隙間が、前記出口通路に流体結合されており、前記出口通路が、前記加圧された潤滑油を前記圧力ダムポケットから前記ダンパ隙間内に誘導するように構成されている、軸受ハウジングと、を備える、スクリュー圧縮機。
【請求項19】
前記第2の圧力が、前記第1の圧力よりも5ポンド毎平方インチ(psi)、10psi、20psi、30psi、40psi、50psi、又は50psi超大きい、請求項18に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項20】
前記ダンパスリーブと前記軸受ハウジングとの間に延在する回転防止ピンを備え、前記回転防止ピンが、前記軸を中心とし、かつ前記軸受ハウジングに対する前記ダンパスリーブの回転移動を遮断するように構成されており、かつ前記軸に対する及び前記軸受ハウジングに対する前記ダンパスリーブの半径方向の移動を可能にするように構成されている、請求項18に記載のスクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年5月13日に出願された「DAMPING SYSTEM FOR COMPRESSOR」と題する米国仮出願第63/024,334号の優先権及び利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
本セクションは、以下に記載及び/又は特許請求される本技術の様々な態様に関連し得る、当該技術の様々な態様を読者に紹介することを意図する。本考察は、本開示の様々な態様のより良い理解を容易にするために、読者に背景情報を提供するのに役立つと考えられる。したがって、これらの記載は、この観点から読むべきものであって、いかなる種類の承認として読むべきものではないことを理解されたい。
【0003】
暖房、換気、空調、及び/又は冷凍(HVAC&R)システムは、典型的に、圧縮機を介し、回路を通して流体(例えば、冷媒)を循環させて、1つ以上の更なる流体(例えば、水及び/又は空気)と熱エネルギーを交換することによって、構造又は他の制御された空間における温度制御を維持する。HVAC&Rシステムで利用され得る1つのタイプの圧縮機は、一般に、中空ケーシング内に取り付けられた1つ以上の円筒形の回転子を含むスクリュー圧縮機である。ツインスクリュー圧縮機の回転子は、典型的に、回転子の円周の周りに延在するねじ山を形成する、回転子の外側半径方向表面上に螺旋状に延在するローブ(又はフルート)及び溝(又はフランク)を有する。動作中、回転子のねじ山は一緒に噛み合い、一方の回転子上のローブは、他方の回転子上の対応する溝と噛み合って、回転子間に一連の隙間を形成する。隙間は、圧縮機入口又はポートと連通し、かつ回転子が回って流体を圧縮するにつれて流体の体積を連続的に減少させる、圧縮チャンバを協働的に形成する。このようにして、圧縮機は、流体を圧縮機入口から圧縮機出口まで誘導し得る。場合によっては、回転子の回転は、圧縮機の動作中に圧縮機のハウジングを通して伝播する振動を生成し得る。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの実施形態では、圧縮機用のスクイズフィルムダンパアセンブリは、圧縮機の回転子シャフトの周りに配置されるように構成されたダンパスリーブを含む。ダンパスリーブは、ダンパスリーブの内周に形成された圧力ダムポケットを含み、圧力ダムポケットは、潤滑油の流れを受容し、かつ回転子シャフトの回転を介して潤滑油の流れを加圧するように構成されている。ダンパスリーブは、圧力ダムポケットからダンパスリーブの外周まで延在する出口通路を含む。スクイズフィルムダンパアセンブリはまた、軸受ハウジングであって、ダンパスリーブの周りに配置されてダンパスリーブの外周と軸受ハウジングとの間に延在するダンパ隙間を形成する、軸受ハウジングを含む。ダンパ隙間は、出口通路に流体結合されており、かつ圧力ダムポケットから潤滑油の流れを受容するように構成されている。
【0005】
いくつかの実施形態では、圧縮機は、軸を中心として回転するように構成されたシャフトと、シャフトの周りに配置されたダンパスリーブと、を含む。ダンパスリーブは、ダンパスリーブの内径に形成された圧力ダムポケット、及び圧力ダムポケットに流体結合されている出口通路を含む。出口通路は、圧力ダムポケットからダンパスリーブの外径まで延在する。圧力ダムポケットは、圧縮機の潤滑油供給部から潤滑油を受容するように構成されている。シャフトは、軸を中心として回転するときに、圧力ダムポケット内で潤滑油を加圧して加圧された潤滑油を生成するように構成されている。圧縮機はまた、軸受ハウジングであって、ダンパスリーブの周りに配置されてダンパスリーブと軸受ハウジングとの間に延在するダンパ隙間を形成する、軸受ハウジングを含む。ダンパ隙間は、出口通路に流体結合されており、かつ出口通路から加圧された潤滑油を受容するように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、スクリュー圧縮機は、軸を中心として回転するように構成された回転子シャフトと、回転子シャフトの周りに配置されたダンパスリーブと、を含む。ダンパスリーブは、入口通路、出口通路、及び入口通路と出口通路との間に延在する圧力ダムポケットを含む。入口通路は、第1の圧力で潤滑油を受容し、かつ潤滑油を圧力ダムポケット内に誘導するように構成されている。回転子シャフト及び圧力ダムポケットは、軸を中心とした回転子シャフトの回転中に、圧力ダムポケット内で潤滑油を協働的に加圧して、第1の圧力よりも大きい第2の圧力を有する加圧された潤滑油を生成するように構成されている。スクリュー圧縮機はまた、軸受ハウジングであって、ダンパスリーブの周りに配置されてダンパスリーブと軸受ハウジングとの間にダンパ隙間を形成する、軸受ハウジングを含む。ダンパ隙間は、出口通路に流体結合されており、出口通路は、加圧された潤滑油を圧力ダムポケットからダンパ隙間内に誘導するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一態様による、暖房、換気、空調、及び/又は冷凍(HVAC&R)システムのためのスクリュー圧縮機パッケージの一実施形態の概略図である。
図2】本開示の一態様による、HVAC&Rシステムで利用され得るスクリュー圧縮機の一実施形態の断面平面図である。
図3】本開示の一態様による、HVAC&Rシステムのスクリュー圧縮機で使用され得るスクイズフィルムダンパアセンブリ及び回転子シャフトの一実施形態の断面軸図である。
図4】本開示の一態様による、図3の線4-4内で見た、スクイズフィルムダンパアセンブリの一部の一実施形態の断面側面図である。
図5】本開示の一態様による、スクリュー圧縮機のスクイズフィルムダンパアセンブリに含まれ得るダンパスリーブの一部の一実施形態の概略図である。
図6】本開示の一態様による、HVAC&Rシステムのスクリュー圧縮機で使用され得るスクイズフィルムダンパアセンブリ及び回転子シャフトの一実施形態の断面軸図である。
図7】本開示の一態様による、図6の線7-7内で見た、スクイズフィルムダンパアセンブリの一部の一実施形態の断面側面図である。
図8】本開示の一態様による、HVAC&Rシステムで利用され得るスクリュー圧縮機の一実施形態の断面平面図である。
図9】本開示の一態様による、HVAC&Rシステムのスクリュー圧縮機で使用され得るスクイズフィルムダンパアセンブリ及び回転子シャフトの一実施形態の断面軸図である。
図10】本開示の一態様による、図9の線10-10内で見た、スクイズフィルムダンパアセンブリの一部の一実施形態の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の1つ以上の特定の実施形態について以下で説明する。説明するこれらの実施形態は、本開示の技術の例にすぎない。加えて、これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実装例の全ての特徴が本明細書で説明されていない場合がある。任意のそのような実際の実装例の開発においては、あらゆる任意の工学又は設計プロジェクトと同様に、開発者固有の目標を達成するためには、システム関連及び業界関連の制約への準拠など、実装例ごとに異なる可能性がある多くの実装例固有の決定を行う必要があることを理解されたい。更に、そのような開発努力は、複雑かつ時間がかかるものであり得るが、それにもかかわらず、本開示の恩恵を受ける当業者にとっては、設計、製作、及び製造の決まりきった仕事であることを理解されたい。
【0009】
本開示の様々な実施形態の要素を導入するとき、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、要素のうちの1つ以上が存在することを意味することが意図される。「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、包括的であることが意図され、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。追加的に、本開示の「一実施形態(one embodiment)」又は「一実施形態(an embodiment)」への言及は、列挙された特徴を同様に内蔵する追加の実施形態の存在を排除するものとして解釈されることを意図するものではないことを理解されたい。
【0010】
暖房、換気、空調、及び/又は冷凍(HVAC&R)システムは、圧縮機(例えば、スクリュー圧縮機)を有する蒸気圧縮システムを含み得、圧縮機は、蒸気圧縮システムの配管又は導管を通して流体を循環させるように構成されている。例えば、スクリュー圧縮機は、圧縮機入口を通して比較的低い圧力の蒸気流(例えば、冷媒の流れ)を引き込み、圧縮機出口を通して比較的高い圧力で蒸気流を吐出し得る。したがって、スクリュー圧縮機は、蒸気圧縮システムを通る流体循環を促進する。
【0011】
典型的には、スクリュー圧縮機は、圧縮機の中空の回転子ハウジング又はケーシング内に配置された1つ以上の円筒形回転子を含む。回転子は、一般に、回転子のそれぞれの円周の周りに延在するねじ山を形成する、回転子のそれぞれの外側半径方向表面上に配置された螺旋状に延在するローブ及び溝を有する。圧縮機の動作中、回転子は、回転子間の境界面で噛み合って、回転子のローブと溝との間に延在する一連の隙間を形成する。隙間は、回転子ハウジングの長さに沿って延在する圧縮チャンバを協働的に形成する。圧縮チャンバは、回転子ハウジングの一端で吸引ポート(例えば、圧縮機入口の近くの軸方向又は半径方向ポート)、及び回転子ハウジングの反対端で吐出ポート(例えば、圧縮機出口の近くの軸方向又は半径方向ポート)と流体連通している。回転子が回転すると、ローブと溝との間の隙間は、吸引ポートから吐出ポートに向かって体積が連続的に減少し得る。このようにして、圧縮機入口に入る低圧蒸気は、圧縮チャンバ内で圧縮され、圧縮機出口を通って高圧蒸気として吐出される。
【0012】
各圧縮機回転子は、回転子の対向する端部から延在する回転子シャフトを含む。一般に、1つ以上の軸受(例えば、玉軸受、ころ軸受若しくは転がり軸受、及び/又はスラスト軸受などの減摩軸受)は、回転子シャフトと係合して、回転子を回転子ハウジングに回転可能に結合する。したがって、軸受は、回転子ハウジングに対する回転子の回転を促進する。場合によっては、回転子の回転は、圧縮チャンバ内の高圧流体の流れ及び/又は回転子内に存在し得るバランスの偏心の結果として生じる振動(例えば、回転子の振動)を生成し得る。典型的な軸受は、圧縮機の動作中に生成される回転子の振動が回転子から軸受を通って回転子ハウジング内に転送されるように、比較的低い又は無視できる程度のダンピング係数を有する。回転子の振動は、回転子ハウジングから圧縮機の他の構成要素に伝播し得る。
【0013】
場合によっては、特定の圧縮機構成要素への過剰な回転子の振動の伝達は、経時的にこれらの構成要素に機械的摩耗及び/又は性能低下を引き起こし得る。したがって、スクイズフィルムダンパなどのダンピングデバイスは、各回転子シャフトと回転子ハウジングとの間に取り付けられて、圧縮機の動作中に生成され得る回転子の振動を減衰させ得る。スクイズフィルムダンパは、典型的には、回転子シャフトの円周の周りに配置されたダンパスリーブを含む。潤滑油の層(例えば、油膜)が、ダンパスリーブとスクイズフィルムダンパのダンパハウジングとの間に延在するダンパ隙間内に配置されている。専用の潤滑油ポンプを使用して、ダンパ隙間内の潤滑油を加圧する。圧縮機の動作中、ダンパ隙間内の加圧された潤滑油は、(例えば、ダンパハウジングに対する)ダンパスリーブの半径方向の移動に抵抗し得、したがって、ダンパスリーブが、回転子シャフトの振動(例えば、半径方向の振動)を減衰させる対抗力を回転子シャフトに印加することを可能にし得る。したがって、スクイズフィルムダンパは、回転子から圧縮機ハウジングへの回転子の振動の伝播を緩和又は実質的に排除し得る。残念ながら、ダンパ隙間内の潤滑油の加圧のために潤滑油ポンプを利用することは、費用がかかる可能性があり、よって、スクリュー圧縮機の全体的な製造、維持、及び/又は動作コストを増加させる可能性がある。更に、潤滑油ポンプは、経時的にスクイズフィルムダンパがより効果的に動作しなくなり得る原因となる性能低下の影響を受けやすい場合がある。
【0014】
スクイズフィルムダンパに加圧された潤滑油を供給する専用の潤滑油ポンプを利用せずにスクイズフィルムダンパの動作を可能にすることは、スクリュー圧縮機の全体的な製造、維持、及び/又は動作コストを低減し得、かつ圧縮機の信頼性を向上させ得ることが現在認識されている。したがって、本開示の実施形態は、スクイズフィルムダンパアセンブリを対象とし、スクイズフィルムダンパアセンブリは、潤滑油供給部から受容した潤滑油を加圧(例えば、自己加圧)して、加圧された潤滑油をスクイズフィルムダンパアセンブリのダンパ隙間内に誘導するように構成されている。このようにして、スクイズフィルムダンパアセンブリは、ダンパ隙間を潤滑油で加圧するように構成された専用の潤滑油ポンプを利用することなく、スクリュー圧縮機の回転子の振動を減衰させるように動作し得る。すなわち、本開示のスクイズフィルムダンパアセンブリは、十分に加圧された潤滑油の供給を生成して潤滑油内の気泡形成を回避又は緩和し得、それによって、外部ポンプ又は圧力生成デバイスを利用することなく、スクイズフィルムダンパの効果的な動作を可能にする。これら及び他の特徴について図面を参照して以下で説明する。
【0015】
次に図面に目を向けると、図1は、蒸気圧縮システム10の一部の一実施形態の概略図である。蒸気圧縮システム10は、上記の考察のように、蒸気圧縮システム10の様々な回路又は導管を通して流体(例えば、冷媒、別の適切なガス)の流れを循環させ得る圧縮機12を含む。モータ14は、圧縮機12と一体化されるか、又はそれ以外の場合、圧縮機12に結合され得、圧縮機12の動作を駆動するために使用され得る。圧縮機12は、吸入導管16を介して低圧冷媒又はガス18の流れを受容し得、かつ吐出導管22を介して加圧冷媒又はガス20の流れを吐出し得る。いくつかの実施形態では、圧縮機12の動作を促進するために使用される潤滑油24の一部は、圧縮機12から吐出される加圧冷媒20と混合され得る。したがって、蒸気圧縮システム10は、潤滑油24を加圧冷媒20の流れから分離するように構成された油分離器26を含み得る。油分離器26は、加圧冷媒20が吐出ポート30を介して吐出されることを可能にしながら、潤滑油24が加圧冷媒20(例えば、ガス)から分離し、かつ油分離器26の収集チャンバ28内で合体することを可能にする。したがって、加圧冷媒20は、吐出ポート30から蒸気圧縮システム10の残りの部分に流れ得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、収集チャンバ28内の加圧冷媒20から分離された潤滑油24は、圧縮機12に潤滑油24を供給する潤滑油供給部32に向かって排水され得る。したがって、収集チャンバ28内に収集された潤滑油24は、それが濾過及び/又は冷却された後に再利用するために、圧縮機12に向けて戻され得る。例えば、いくつかの実施形態では、蒸気圧縮システム10は、油分離器26と潤滑油供給部32との間に流体結合された濾過器31(例えば、油濾過器)及び潤滑油冷却器33を含み得る。濾過器31は、潤滑油24の流れから混入物を濾過するように構成されている。潤滑油冷却器33は、潤滑油24の温度を低下させるように構成されている。いくつかの実施形態では、ポンプ35が、油分離器26と濾過器31との間に流体結合され得、潤滑油24を収集チャンバ28から濾過器31に誘導するように構成され得る。圧縮機12は、シャフトシール、並びに潤滑油供給部32から潤滑油24の少なくとも一部を受容するように構成された1つ以上の軸受及びスクイズフィルムダンパアセンブリ34を含み得る。以下で詳細に考察するように、スクイズフィルムダンパアセンブリ34は、(例えば、専用の潤滑油ポンプを利用することなく)潤滑油供給部32を形成して受容した潤滑油24を加圧して、圧縮機12の1つ以上の回転子36の回転中に生成され得る振動(例えば、回転子の振動)の減衰を可能にするように構成されている。
【0017】
図2は、圧縮機12の一実施形態の断面図を示している。考察を容易にするために、圧縮機12及びその構成要素は、長手方向軸40、垂直軸42、及び短手方向軸44を参照して説明される場合がある。垂直軸42及び短手方向軸44は、長手方向軸40に対して半径方向に延在することに留意されたい。圧縮機12は、圧縮機12の作業構成要素(例えば、軸受、回転子)を包有する圧縮機ハウジング46を含む。圧縮機ハウジング46は、吸入部48(例えば、吸引側部)、回転子ハウジング50(例えば、圧縮部)、及び吐出部52(例えば、吐出側部)を含み得る。
【0018】
図示の実施形態では、圧縮機12は、回転子ハウジング50内に配置されており、かつそれぞれ第1の軸60及び第2の軸62の周りを回転するように構成されている、雄回転子56及び雌回転子58を含む。雄回転子56及び雌回転子58は各々、長手方向軸40に実質的に平行な方向に、第1の軸60及び第2の軸62もまた長手方向軸40に平行に延在するように、少なくとも吸入部48から吐出部52まで延在する。雄回転子56は、雄回転子56の周りに円周方向に配置された1つ以上の突出するローブ64を含む。同様に、雌回転子58は、雌回転子58の周りに円周方向に配置された1つ以上の対応する溝66を含む。雌回転子58の溝66は、雄回転子56のローブ64を受容する、及び/又はそれと係合するように構成されている。
【0019】
吸入部48は、蒸気圧縮システム10の流体回路から流体(例えば、低圧冷媒又はガス18)を受容するように構成された吸入ポートを含む。具体的には、流体は、吸入ポート内に引き込まれて、回転子ハウジング50内に配置された回転子56、58に向かって誘導され得る。雄回転子56のローブ64は、雌回転子58上の対応する溝66と噛み合って、回転子56、58間に一連の隙間を形成し得る。隙間は、圧縮機12によって受容された流体を連続的に圧縮するように協働し得、かつ圧縮された流体を吐出部52内に形成された吐出ポートに向けて誘導し得る。例えば、圧縮機12の動作中に、隙間は、回転子56、58が第1及び第2の軸60、62を中心として回転するときに、(例えば、長手方向軸40に沿って)連続的に体積が減少して、吸入部48から吐出部52への回転子56、58の長さに沿って流体を圧縮し得る。その後、圧縮された流体は続いて、吐出部52の吐出ポートを介して圧縮機12から流出し得る。
【0020】
圧縮機12の動作中、軸力70が、雄回転子56の雄回転子シャフト72及び/又は雌回転子58の雌回転子シャフト74に与えられ得る。いくつかの実施形態では、軸力70は、雄回転子シャフト72及び/又は雌回転子シャフト74の周りに半径方向に配置されたスラスト軸受76などの1つ以上の軸受に伝達され得る。図2の図示された実施形態は、雄回転子シャフト72に関連付けられた1つのスラスト軸受76及び雌回転子シャフト74に関連付けられた1つのスラスト軸受76を有する圧縮機12を示しているが、圧縮機12は、雄及び雌回転子シャフト72、74のうちの一方又は両方の周りに(例えば、互いに隣接して)配置された2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は6つを超えるスラスト軸受76を含み得ることに留意されたい。
【0021】
特定の実施形態では、バランスピストン80(例えば、バランスピストンアセンブリ)などの力印加デバイスが、圧縮機ハウジング46の一部内(例えば、吸入部48)に配置されて、雄回転子シャフト72、雌回転子シャフト74、又はその両方に調節力82(例えば、対抗力)を与えるように構成され得る。したがって、バランスピストン80は、スラスト軸受76に印加される軸力70の大きさを減少させ得る。例えば、バランスピストン80は、吸入部48のチャンバ84内に配置され得、チャンバ84を第1のチャンバ86及び第2のチャンバ88に分割し得る。いくつかの実施形態では、第1のチャンバ86は、(例えば、ポンプ35からの)潤滑油24の加圧された流れを受容するように構成され得、第1のチャンバ86内の潤滑油24は、バランスピストン80が調節力82を生成しかつ雄回転子シャフト72に印加することを可能にし得る。以下で考察するように、いくつかの場合では、第1のチャンバ86内の加圧された潤滑油24の一部は、(例えば、バランスピストン80の水抜き穴を介して)バランスピストン80を通り過ぎて流れ得る。結果として、潤滑油24は、第2のチャンバ88内に、かつ/又は圧縮機12の他の構成要素に向かって流れ得る。
【0022】
図示の実施形態に示すように、圧縮機12はまた、雄及び雌回転子56、58を支持するように構成された複数の軸受94(例えば、減摩軸受)を含み得る。具体的には、軸受94の第1のセットが、雄回転子56の雄回転子シャフト72の周りに配置され得、かつそれを支持するように構成され得、軸受94の第2のセットが、雌回転子58の雌回転子シャフト74の周りに配置され得、かつそれを支持するように構成され得る。軸受94は、雄及び雌回転子56、58を第1及び第2の軸60、62の周りでより効率的に回転させることを可能にする。いくつかの実施形態では、複数の導管98(例えば、圧縮機ハウジング46内のチャネル又は通路、外部パイプ)が、潤滑油供給部32から延在して、潤滑油24が圧縮機12に向かってかつ/又は圧縮機12内に流れることを可能にし得る。このようにして、潤滑油24は、軸受94、スラスト軸受76、回転子56、58、及び/又は様々な他の圧縮機構成要素に供給され得る。
【0023】
上述のように、軸受94のダンピング係数は、圧縮機12の動作中に回転子56、58によって生成された振動を、回転子56、58から、軸受94を通して、圧縮機ハウジング46に転送させ得る、比較的無視できる程度のものであり得る。したがって、圧縮機12は、圧縮機ハウジング46への回転子の振動の伝播を低減又は実質的に排除するために、回転子56、58によって生成される振動を減衰させるように構成されたスクイズフィルムダンパアセンブリ34を備え得る。図示の実施形態では、2つのスクイズフィルムダンパアセンブリ34が、雄回転子シャフト72の周りに配置されており、2つのスクイズフィルムダンパアセンブリ34が、雌回転子シャフト74の周りに配置されている。他の実施形態では、任意の適切な数のスクイズフィルムダンパアセンブリ34が、雄及び雌回転子シャフト72、74の周りに配置され得ることを理解されたい。更に、スクイズフィルムダンパアセンブリ34は、雄及び雌回転子シャフト72、74に沿った任意の適切な位置に位置してもよく、図2の図示された実施形態に示すそれぞれの場所に限定されないことを理解されたい。
【0024】
スクイズフィルムダンパアセンブリ34の特徴をよりよく例示し、かつ次の議論を容易にするためのものとして、図3は、本明細書でスクイズフィルムダンパアセンブリ100と称される、雄回転子56のスクイズフィルムダンパアセンブリ34のうちの1つの一実施形態の断面軸図である。より具体的には、スクイズフィルムダンパアセンブリ100は、本明細書でシャフト72とも呼ばれる雄回転子シャフト72の周りに配置され得る。スクイズフィルムダンパアセンブリ100は、雄回転子シャフト72とともに実装されているように以下に説明されるが、スクイズフィルムダンパアセンブリ100は、雌回転子シャフト74とともに、又は任意の他の適切な駆動シャフト若しくは動力伝達シャフト上に実装され得ることを理解されたい。
【0025】
図3の図示された実施形態では、スクイズフィルムダンパアセンブリ100は、シャフト72の円周の周りに配置された軸受ハウジング110又はダンパハウジングを含む。軸受ハウジング110は、吸入部48などの圧縮機ハウジング46の一部に圧入され、ねじ込まれ、又はそうでなければ結合された、金属スリーブを含み得る。他の実施形態では、軸受ハウジング110は、圧縮機ハウジング46の一部を含み得る。すなわち、軸受ハウジング110は、本明細書で考察する軸受ハウジング110の特徴を含むように機械加工又は他の方法で製造された圧縮機ハウジング46の一部を含み得る。軸受ハウジング110の1つ以上の特徴は、例えば、圧縮機ハウジング46と一体的に形成され得る。
【0026】
ダンパスリーブ112(例えば、動圧軸受)が、軸受ハウジング110とシャフト72との間に位置決めされており、シャフト72の円周の周りに延在する。ダンパスリーブ112は、本明細書ではダンパスリーブ112とシャフト72との間に延在する軸受隙間114と呼ばれる第1の隙間と、本明細書ではダンパスリーブ112と軸受ハウジング110との間に延在するダンパ隙間116と呼ばれる第2の隙間と、を形成する。ダンパスリーブ112及び軸受ハウジング110は各々、軸受隙間114及びダンパ隙間116が第1の軸60の少なくとも一部に沿って軸方向に延在するように、第1の軸60の周りに実質的に同心円状に位置決めされ得る。図示の実施形態では、回転防止ピン120が、軸受ハウジング110とダンパスリーブ112との間で(例えば、第1の軸60に対して)半径方向に延在する。以下で詳細に考察するように、回転防止ピン120は、ダンパスリーブ112が軸受ハウジング110に対して、(例えば、第1の軸60に対し)半径方向に移動することを可能にしながら、軸受ハウジング110に対するダンパスリーブ112の回転運動を実質的に遮断し得る。
【0027】
図示の実施形態では、軸受ハウジング110は、軸受ハウジング110の幅にわたって半径方向に延在する第1の入口通路126及び第2の入口通路128を含む。したがって、第1及び第2の入口通路126、128は、軸受ハウジング110の内周129又は内径(例えば、内面)に形成されたそれぞれの開口部で終端し得る。ダンパスリーブ112は、各々がダンパスリーブ112の外周134又は外径(例えば、外面)から軸受隙間114に延在する、第1の入口チャネル130及び第2の入口チャネル132を含む。第1及び第2の入口通路126、128は、第1及び第2の入口チャネル130、132に流体結合されている。第1及び第2の入口通路126、128から第1及び第2の入口チャネル130、132への潤滑油24の流れは、それぞれ、一組のシール136(例えば、「O」リング)によって更に促進される。具体的には、シール136は、第1の入口通路126、第2の入口通路128、第1の入口チャネル130、及び第2の入口チャネル132のそれぞれの開口部の周りに位置決めされ得、軸受ハウジング110とダンパスリーブ112との間に延在し得る。このようにして、シール136は、本明細書では転送通路140と称する入口通路126、128と入口チャネル130、132との間に延在するダンパ隙間116のそれぞれの部分を、ダンパ隙間116の残りの部分から隔離し得る(例えば、流体的にシールし得る)。したがって、シール136は、第1及び第2の入口通路126、128からダンパ隙間116内への実質的な流体の流れを直接遮断しながら、第1及び第2の入口通路126、128から、第1及び第2の入口チャネル130、132を通り、軸受隙間114内へ流れる流体の流れを促進し得る。
【0028】
図示の実施形態に示すように、ダンパスリーブ112は、軸受隙間114からダンパ隙間116に(例えば、第1の軸60に対して)半径方向に延在する第1の出口チャネル142又は通路、及び第2の出口チャネル144又は通路を含む。具体的には、第1及び第2の出口チャネル142、144は、ダンパスリーブ112の内周145又は内径(例えば、内面)からダンパスリーブ112の外周134又は外径(例えば、外面)まで延在し得る。したがって、第1及び第2の出口チャネル142、144は、ダンパ隙間116を軸受隙間114に流体的に結合する。出口ポート146が、軸受ハウジング110内に形成されており、以下に考察するように、ダンパ隙間116を圧縮機12の別の領域に流体的に結合する。第1及び第2の入口通路126、128、第1及び第2の入口チャネル130、132、軸受隙間114、第1及び第2の出口チャネル142、144、ダンパ隙間116、及び出口ポート146は、スクイズフィルムダンパアセンブリ100を通る潤滑油の循環を可能にする潤滑油回路160を集合的に形成し得る。
【0029】
例えば、図示の実施形態に示すように、第1及び第2の入口通路126、128は、導管98を介して潤滑油供給部32に流体結合され得る。したがって、第1及び第2の入口通路126、128は、潤滑油供給部32から潤滑油24の流れを受容し得、潤滑油24を転送通路140内に誘導し得る。転送通路140は、第1及び第2の入口チャネル130、132を通して軸受隙間114内に潤滑油24を誘導する。続いて潤滑油24は、軸受隙間114から、第1及び第2の出口チャネル142、144を通り、ダンパ隙間116を通って、出口ポート146内に流れ得る。出口ポート146は、使用済みの潤滑油を圧縮機12で再利用するためにダンパ隙間116から潤滑油供給部32に向けて戻して循環させるために、潤滑油供給部32に流体結合され得る。
【0030】
第1及び第2の入口通路126、128は、図3の図示された実施形態では、潤滑油供給部32に直接流体結合されているように示されているが、他の実施形態では、第1及び第2の入口通路126、128は、別の領域又は構成要素から潤滑油24の流れを受容するために、圧縮機12又は蒸気圧縮システム10の任意の他の適切な領域又は構成要素に流体結合され得ることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態では、第1及び第2の入口通路126、128は、バランスピストン80の第1のチャンバ86、バランスピストン80の第2のチャンバ88、又はその両方に流体結合され得る。したがって、そのような実施形態では、第1及び第2の入口通路126、128は、導管98の代わりに、バランスピストン80の第1及び/又は第2のチャンバ86、88から潤滑油24を受容するように構成され得る。
【0031】
図示の実施形態では、ダンパスリーブ112は、第1の入口チャネル130と第1の出口チャネル142との間に延在する第1の圧力ダムポケット166、及び第2の入口チャネル132と第2の出口チャネル144との間に延在する第2の圧力ダムポケット168を含む。第1及び第2の入口チャネル130、132は、第1及び第2の圧力ダムポケット166、168のそれぞれの第1の端部167に又はその近くに位置決めされ得、第1及び第2の出口チャネル142、144は、第1及び第2の圧力ダムポケット166、168のそれぞれの第2の端部169に又はその近くに位置決めされ得る。第1及び第2の圧力ダムポケット166、168は、ダンパスリーブ112内に形成されており、かつダンパスリーブ112の内周145又は内径の少なくとも一部に沿って延在(例えば、円周方向に延在)する、溝、チャネル、又は弓形スロットによって形成され得る。更に、第1及び第2の圧力ダムポケット166、168は、ダンパスリーブ112の軸方向長さ170(例えば、図4に示すように)のセクションに沿って延在し得る。以下で詳細に考察するように、圧縮機12の動作中に、第1及び第2の圧力ダムポケット166、168は、シャフト72の回転を介して潤滑油供給部32から受容した潤滑油24の加圧を可能にし、それによって、潤滑油24がダンパ隙間116内に流れるのを促進する。このようにして、ダンパスリーブ112を取り囲む加圧された潤滑油24の層が、ダンパ隙間116内に形成される。
【0032】
圧力ダムポケット166、168のうちの1つ(例えば、第1の圧力ダムポケット166)をより良く示すため、かつ以下の考察を容易にするためのものとして、図4は、図3の線4-4内で見た、スクイズフィルムダンパアセンブリ100の一実施形態の部分断面図である。明確にするために、図4の図示された実施形態では、出口ポート146は、軸受ハウジング110内の図3の図示された実施形態とは異なる場所に位置決めされていることに留意されたい。更に、第1の圧力ダムポケット166が主に以下で考察されるが、第2の圧力ダムポケット168は、本明細書で考察される第1の圧力ダムポケット166の特徴の一部又は全てを含み得ることを理解されたい。
【0033】
上記を念頭に置いて、図4の図示された実施形態に示すように、軸受隙間114は、ダンパスリーブ112のそれぞれの端部184(例えば、軸方向端部)から第1の圧力ダムポケット166まで延在する第1の部分180及び第2の部分182を含み得る。したがって、第1の圧力ダムポケット166は、ダンパ隙間116の第1及び第2の部分180、182間に延在する軸受隙間114の第3の部分186を画定する。いくつかの実施形態では、軸受隙間114の第1及び第2の部分180、182の半径方向寸法は、(例えば、軸受隙間114の第3の部分186に沿った)第1の圧力ダムポケット166の半径方向寸法と比較して比較的小さくあり得る。本明細書に記載するように、半径方向寸法は、シャフト72の外周194又は外径とダンパスリーブ112の内周145又は内径との間の半径方向の距離を指し得る。例えば、いくつかの実施形態では、軸受隙間114の第1及び第2の部分180、182の半径方向寸法は、約1000分の5インチであり得る。軸受隙間114の第1の圧力ダムポケット166の半径方向寸法は、第1及び第2の部分180、182の半径方向寸法の2倍、3倍、又は3倍超であり得る。したがって、軸受隙間114の半径方向寸法は、(例えば、第1の軸60に沿って)ダンパスリーブ112の端部184間で変化する。
【0034】
図示の実施形態では、第1の圧力ダムポケット166は、第1の入口通路126、転送通路140、及び第1の入口チャネル130によって概ね画定された潤滑油供給通路190を介して、潤滑油供給部32に流体結合されている。潤滑油供給通路190は、潤滑油24がシャフト72の外面に向かって流れて、シャフト72の外面に物理的に接触し得るように、潤滑油供給部32から軸受隙間114内への潤滑油24の流れを可能にする。いくつかの実施形態では、1つ以上の軸受シール196が、ダンパスリーブ112の端部184の近くに位置し得、圧縮機ハウジング46の一部など、軸受隙間114からスクイズフィルムダンパアセンブリ100を取り囲む環境198内又は外部への潤滑油24の流れを阻害又は実質的に遮断するように構成され得る。
【0035】
例えば、軸受シール196は、ダンパスリーブ112の内周145からシャフト72の外周194に向かって延在し得るラビリンスシール又は他の適切なシールを含み得る。したがって、軸受シール196は、ダンパスリーブ112の端部184の近くで、ダンパスリーブ112とシャフト72との間の潤滑油の漏出を緩和又は実質的に低減し得る。すなわち、軸受シール196は、潤滑油供給通路190から軸受隙間114に入る実質的に全ての潤滑油が、第1及び第2の出口チャネル142、144(例えば、図3を参照)を通ってダンパ隙間116内に誘導されることを確実にし得る。
【0036】
特定の実施形態では、軸受シール196は、ダンパスリーブ112の内周145の一部の周りのみに延在し得る。例えば、図5の図示された実施形態に示すように、軸受シール196は、第1の入口チャネル130の出口に近接する、ダンパスリーブ112の内周145の特定のセクション200に沿って(例えば、軸方向に沿って)延在し得る。他の実施形態では、軸受シール196の一部又は全てが、軸受隙間114に入る潤滑油24の一部が軸受隙間114から周囲環境198内に染み出得るように、スクイズフィルムダンパアセンブリ100から省略され得る。例えば、そのような実施形態では、軸受隙間114から染み出る潤滑油24は、軸受94のうちの1つなど、(例えば、圧縮機12内に設置された構成の)スクイズフィルムダンパアセンブリ100に隣接する構成要素に向かって誘導され得る。
【0037】
図4を参照しながら、以下の考察を続ける。以下で詳細に考察するように、第1の軸60を中心としたシャフト72の回転中に、シャフト72の外面と第1の圧力ダムポケット166内の潤滑油24との間の粘性せん断力は、第1の出口チャネル142(図3)から、及びダンパ隙間116内への加圧された潤滑油24の吐出を可能にする。したがって、スクイズフィルムダンパアセンブリ100は、ダンパ隙間116を周囲環境198から流体的にシールして、ダンパ隙間116から及び周囲環境198内への加圧された潤滑油24の漏出を遮断又は実質的に緩和するように構成された、複数の円周シール206を含み得る。例えば、スクイズフィルムダンパアセンブリ100は、ダンパスリーブ112の外周134の周りに配置されており、かつ軸受ハウジング110とダンパスリーブ112との間に延在する(例えば、半径方向に延在する)、第1の円周シール208及び第2の円周シール210を含み得る。したがって、第1及び第2の円周シール208、210は、ダンパ隙間116を周囲環境198から流体的に隔離する流体のシールの形成を促進する。
【0038】
上記の考察のように、シール136は、転送通路140からダンパ隙間116への流体の流れを直接遮断し、逆もまた同様に遮断するように構成されている。したがって、シール136は、ダンパ隙間116から潤滑油供給通路190内への高圧潤滑油の流れを阻害し得る。換言すると、シール136は、ダンパ隙間116内の高圧潤滑油が転送通路140内に流れることを遮断しながら、低圧潤滑油が潤滑油供給部32から転送通路140を通って、軸受隙間114内に流れることを可能にする。出口ポート146は、加圧された潤滑油24の少なくとも一部分がダンパ隙間116から吐出され、かつ軸受94、潤滑油供給部32、又は他の圧縮機構成要素など、圧縮機12の別の適切な構成要素に向かって流れることを可能にし得る。
【0039】
図3を参照しながら、以下の考察を続ける。上述のように、軸受94は、シャフト72を支持し、かつ第1の軸60を中心としたシャフト72の回転をガイドするように構成されている。いくつかの実施形態では、軸受94とシャフト72との間の公差は、圧縮機12の動作中にシャフト72が(例えば、第1の軸60に対して)半径方向に振動又は揺れることを可能にし得る。軸受隙間114の半径方向寸法(例えば、少なくとも軸受隙間114の第1及び第2の部分180、182に沿った)は比較的小さい(例えば、その1000分の5インチ未満)ため、ダンパスリーブ112は、シャフト72のそのような振動又は揺れ運動中にシャフト72とともに半径方向に移動し得る。換言すると、軸受隙間114の全体的な半径方向寸法は比較的小さく、かつ潤滑油24のフィルム又は層で充填されているため、シャフト72とダンパスリーブ112との間の相対的な半径方向の移動は、実質的に無視できる程度のものである。したがって、シャフト72が(例えば、第1の軸60に対して)半径方向に振動するとき、シャフト72及びダンパスリーブ112は、軸受ハウジング110に対して集合的に移動し得る。
【0040】
ダンパ隙間116の半径方向寸法は、軸受隙間114の全体的又は平均的な半径方向寸法(例えば、軸受隙間114の第1及び第2の部分180、182に少なくとも沿った)と比較して、比較的大きくあり得る。非限定的な例として、ダンパ隙間116は、ダンパスリーブ112と軸受ハウジング110との間に半径方向に延在する半径方向寸法を含み得、これは、軸受隙間114の全体的又は平均的な半径方向寸法の2倍、3倍、又は3倍超である。したがって、シャフト72の振動及び/又は揺れる半径方向の移動の間、ダンパスリーブ112は、軸受ハウジング110内で半径方向に移動して、ダンパ隙間116の様々なセクションに沿ってダンパ隙間116の半径方向寸法を周期的に増加及び減少させ得る。ダンパ隙間116内の加圧された潤滑油24は、軸受ハウジング110内のダンパスリーブ112のそのような半径方向の移動に抵抗する対抗力をダンパスリーブ112に印加し得る。したがって、ダンパ隙間116内の加圧された潤滑油24は、ダンパスリーブ112が、シャフト72の半径方向の振動の振幅を減衰させ得る力をシャフト72上に印加することを可能にする。
【0041】
いくつかの実施形態では、油分離器26から吐出された潤滑油24は、油分離器26内の温度及び/又は圧力に起因して、冷媒又は他のガスを吸収している場合がある。吸収されたガス(例えば、冷媒)は、潤滑油24の圧力が閾値圧力値(例えば、油分離器26内の圧力未満の圧力値)未満に低下したときに、溶液から出て、潤滑油24内に気泡を形成し得る。以下に考察するように、スクイズフィルムダンパアセンブリ100内の潤滑油24を、ガスが溶液中に入った圧力(例えば、油分離器26内)を超える圧力に加圧することによって、潤滑油24内の気泡形成が減少又は実質的に排除され得る。スクイズフィルムダンパアセンブリ100は、油分離器26から受容した潤滑油24を自己加圧し、したがって、ダンパ隙間116内の潤滑油24が実質的に気泡を含まないことを確実にするように構成されている。気泡を含まない潤滑油24は、スクイズフィルム(例えば、ダンパ隙間116内の潤滑油24層)が、圧縮機の動作中に発生し得る圧縮機のシャフトの振動を効果的にダンピングすることを可能にする。
【0042】
ダンパ隙間116の半径方向寸法は、シャフト72が軸受94によって許容される半径方向のシャフト72の移動の上限閾値量にわたって揺れる場合でも、ダンパスリーブ112が軸受ハウジング110に機械的に接触しないように寸法設定され得ることを理解されたい。このようにして、ダンパ隙間116は、軸受94が圧縮機12の動作中に雄回転子56の半径方向の荷重の実質的に全てを支持し、かつ雄回転子56の半径方向の荷重をスクイズフィルムダンパアセンブリ100の構成要素に転送しないことを確実にし得る。
【0043】
上述のように、スクイズフィルムダンパアセンブリ100は、専用の潤滑油ポンプを利用することなく、潤滑油24でダンパ隙間116を自己加圧するように構成され得る。したがって、スクイズフィルムダンパアセンブリ100は、ダンパ隙間116内の加圧された潤滑油の供給を促進及び維持するように構成された専用の潤滑油ポンプを利用することなく、上記で考察した技術に従って圧縮機12のシャフトの振動を減衰させるように動作し得る。
【0044】
例えば、図3の図示された実施形態では、シャフト72は、圧縮機12の動作中に第1の軸60を中心として反時計回り方向204に回転するように構成されている。上述のように、回転防止ピン120は、さもなければシャフト72の回転を介して誘発され得るダンパスリーブ112の(例えば、第1の軸60を中心とした)回転運動を阻害し得る。したがって、回転防止ピン120は、スクイズフィルムダンパアセンブリ100の動作中に、ダンパスリーブ112の第1及び第2の入口チャネル130、132が、軸受ハウジング110の第1及び第2の入口通路126、128と円周方向及び半径方向に整列したままとなることを確実にし得る。すなわち、回転防止ピン120は、シャフト72が、軸受ハウジング110及びダンパスリーブ112に対して(例えば、第1の軸60の周りで)回転し得ると同時に、ダンパスリーブ112が軸受ハウジング110に対して回転的に静止したままであることを確実にし得る。シール136は、ダンパスリーブ112と軸受ハウジング110との間の流体シールを依然として維持しながら、軸受ハウジング110に対するダンパスリーブ112のわずかな半径方向の移動を説明し得ることを理解されたい。
【0045】
上記の考察のように、(例えば、対応する入口チャネル130、132を介して)第1及び第2の圧力ダムポケット166、168に入る潤滑油24は、シャフト72の外面に物理的に接触し得る。シャフト72の第1の軸60を中心とした(例えば、反時計回り方向204の)回転は、シャフト72の外面と圧力ダムポケット166、168内の潤滑油24との間に粘性せん断力を生成し、これは、圧力ダムポケット166、168に沿ってシャフト72の回転方向に潤滑油24を押し進めるのに十分である。すなわち、シャフト72と潤滑油24との間の粘性せん断力により、シャフト72が第1及び第2の圧力ダムポケット166、168に沿って反時計回り方向204に潤滑油24を押し進めることができ、それによって、追加の潤滑油24を、第1及び第2の入口チャネル130、132を介して第1及び第2の圧力ダムポケット166、168内に引き込む。シャフト72は、第1及び第2の圧力ダムポケット166、168に沿って(例えば、反時計回り方向204に)連続的に(例えば、粘性せん断によって)潤滑油24を押し進め得、潤滑油24を圧力ダムポケット166、168のそれぞれの衝突面220、222上に誘導し得る。衝突面220、222は、第1及び第2の出口チャネル142、144の一部を画定するダンパスリーブ112の壁224であり得る。壁224は、壁224が圧力ダムポケット166、168の輪郭(例えば、弓形の輪郭)を突然終端させるように、第1の軸60に対して概ね半径方向に延在し得る。潤滑油24が圧力ダムポケット166、168の端上に突然衝突すると、より高い圧力が生じ、それによって、潤滑油24が圧力ダムポケット166、168に入る圧力よりも高い圧力で、潤滑油24が圧力ダムポケット166、168から吐出されることを可能にする。
【0046】
ダンパ隙間116の全体的又は平均的な半径方向寸法は、圧力ダムポケット166、168に沿ったダンパ隙間116の半径方向寸法と比較して比較的小さくあり得るため、(例えば、反時計回り方向204で)圧力ダムポケット166、168に沿ってシャフト72によってせん断された、又はそうでなければ押し進められた潤滑油24の実質的に全ては、衝突面220、222上に衝突し得、出口チャネル142、144の近くで停滞し得、一方、潤滑油24の少量の一部は、出口チャネル142、144を迂回し得、軸受隙間114に沿って(例えば、反時計回り方向204に)流れ続け得る。出口チャネル142、144の近くの、シャフト72の連続的な潤滑油24のせん断と組み合わされた潤滑油24の停滞は、圧力ダムポケット166、168内、特に出口チャネル142、144の近くの潤滑油24を加圧する。したがって、出口チャネル142、144は、入口チャネル130、132における軸受隙間114によって潤滑油24が受容される圧力よりも大きい圧力で、加圧された潤滑油24をダンパ隙間116内に吐出し得る。非限定的な例として、潤滑油24とシャフト72との間の粘性せん断は、出口チャネル142、144が、潤滑油24が入口チャネル130、132を介して軸受隙間114に入る吸入圧力よりも5ポンド毎平方インチ(psi)、10psi、20psi、30psi、40psi、50psi、60psi、70psi、又は70psi超大きい吐出圧力で加圧された潤滑油24を吐出することを可能にし得る。したがって、スクイズフィルムダンパアセンブリ100は、外部潤滑油ポンプを利用することなく、潤滑油24でダンパ隙間116を自己加圧し得る。すなわち、スクイズフィルムダンパアセンブリ100は、例えば、潤滑油供給部32から第1の圧力で潤滑油24を受容し得、ダンパ隙間116内の潤滑油24を、第1の圧力よりも大きい第2の圧力まで加圧し得る。
【0047】
図3の図示された実施形態では、スクイズフィルムダンパアセンブリ100は、2つの圧力ダムポケット166、168を含むが、スクイズフィルムダンパアセンブリ100は、任意の他の適切な数の圧力ダムポケットを含み得ることを理解されたい。例えば、スクイズフィルムダンパアセンブリ100は、ダンパスリーブ112内に形成されており、かつシャフト72の円周の周りに配列された、1つ、2つ、3つ、4つ、又は4つ超の圧力ダムポケットを含み得る。更に、圧力ダムポケット166、168の円弧長(例えば、それぞれの入口チャネル130、132とそれぞれの出口チャネル142、144との間の弓形の寸法)は、任意の適切な寸法を含み得、図3の図示された実施形態に示す寸法に限定されないことを理解されたい。例えば、圧力ダムポケット166、168の各々は、シャフト72の外周194の約20パーセント、約30パーセント、約40パーセント、又は40パーセント超の周りに延在し得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の圧力ダムポケット166、168の半径方向寸法は、シャフト72の円周に沿って実質的に一定であり得る。他の実施形態では、第1及び第2の圧力ダムポケット166、168の半径方向寸法は、シャフト72の円周に沿って変化し得る。例えば、そのような実施形態では、入口チャネル130、132の近くの第1及び第2の圧力ダムポケット166、168の半径方向寸法は、出口チャネル142、144の近くの圧力ダムポケット166、168の半径方向寸法よりも大きくても小さくてもよい。
【0049】
出口ポート146は、加圧された潤滑油24の一部をダンパ隙間116から受容し、かつ加圧された潤滑油24をダンパ隙間116から吐出するように構成されている。具体的には、出口ポート146は、加圧された潤滑油24を潤滑油供給部32に向けて、油冷却器に向けて、又は圧縮機12若しくは蒸気圧縮システム10の別の適切な構成要素若しくは領域に向けて戻すように誘導し得る。このようにして、出口ポート146は、使用済み潤滑油24(例えば、加熱された潤滑油)が、潤滑油24内の気泡形成を可能にし得るダンパ隙間116内の潤滑油24の過度の加熱を避けるために、出口チャネル142、144から受容した新しく冷たい加圧された潤滑油24と交換され得るように、ダンパ隙間116を通る潤滑油の連続的な流れを可能にし得る。
【0050】
出口ポート146の断面積は、第1及び第2の出口チャネル142、144の累積断面積未満であり得ることを理解されたい。したがって、出口ポート146は、潤滑油24が第1及び第2の出口チャネル142、144を介してダンパ隙間116に供給され得る進入速度よりも小さい退出速度で潤滑油24を吐出するように構成され得る。したがって、出口ポート146は、シャフト72の回転を介して生成された加圧された潤滑油24の流れが、ダンパ隙間116内の潤滑油24の加圧を可能にし、かつ維持するのに十分であることを確実にし得る。いくつかの実施形態では、出口ポート146は、軸受ハウジング110の(重力方向に対して)上部の近くに位置決めされ得る。本明細書で使用されるとき、軸受ハウジング110の上部は、重力方向に対して、第1の軸60を通って延在し、かつ短手方向軸44に概ね平行に配向された、スクイズフィルムダンパアセンブリ100の短手方向中心線228の上方にある軸受ハウジング110の任意の部分を示し得る。したがって、出口ポート146は、スクイズフィルムダンパアセンブリ100の動作中に潤滑油24内に蓄積され得、ダンパ隙間116の上部の近くに凝集し得る、ガス(例えば、ガス又は冷媒気泡)を受容し得、かつ吐出し得る。
【0051】
図6は、スクイズフィルムダンパアセンブリ100及びシャフト72の別の実施形態の断面軸図であり、ここでは第1及び第2の入口チャネル130、132は、(例えば、短手方向軸44に沿った)半径方向の代わりに、(例えば、第1の軸60に沿った)軸方向に潤滑油24を受容するように構成されている。図7は、図6の線7-7内で見た、スクイズフィルムダンパアセンブリ100及びシャフト72の断面図である。明確にするために、図7の図示された実施形態では、出口ポート146は、軸受ハウジング110内の図6の図示された実施形態とは異なる場所に位置決めされていることに留意されたい。図6及び図7について以下で同時に考察する。
【0052】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の入口チャネル130、132は、ダンパスリーブ112の軸方向表面232又は軸方向端面上に形成されており、かつ潤滑油供給部32又は別の適切な潤滑油源に流体結合されている、軸方向開口部230を含み得る。したがって、第1及び第2の入口チャネル130、132は、軸方向開口部230で潤滑油24の流れを受容し得、潤滑油24を第1及び第2の圧力ダムポケット166、168に向けて誘導し得る。潤滑油24が軸方向に(例えば、第1の軸60に沿って)第1及び第2の入口チャネル130、132に入ることを可能にすることによって、第1の入口通路126、第2の入口通路128、及びシール136は、スクイズフィルムダンパアセンブリ100から省略され得る。
【0053】
図8は、圧縮機12の一実施形態の断面図であり、ここでは雄回転子シャフト72及び雌回転子シャフト74は、スクイズフィルムダンパアセンブリ34に潤滑油24を供給するように構成された内部潤滑油通路250を含む。例えば、雄回転子シャフト72は、(例えば、第1の軸60に沿って)雄回転子シャフト72の本体を通って吸入部48から圧縮機ハウジング46の吐出部52まで延在する、第1の潤滑油通路252を含む。同様に、雌回転子シャフト74は、(例えば、第2の軸62に沿って)雌回転子シャフト74の本体を通って吸入部48から圧縮機ハウジング46の吐出部52まで、延在する、第2の潤滑油通路254を含む。第1及び第2の通路252、254は、雄及び雌回転子シャフト72、74のそれぞれの端部に形成されており、かつ潤滑油24の流れを受容するように構成された、軸方向開口部256を含み得る。例えば、軸方向開口部256は、潤滑油供給部32、バランスピストン80の第1若しくは第2のチャンバ86、88、又は第1及び第2の通路252、254に潤滑油24を供給するように構成された圧縮機12の別の適切な潤滑油源に流体結合され得る。以下に考察されるように、複数の半径方向通路260は、雄及び雌回転子シャフト72、74内に形成され得、第1及び第2の通路252、254から潤滑油24をスクイズフィルムダンパアセンブリ34に誘導するように構成され得る。
【0054】
図8のスクイズフィルムダンパアセンブリ34の特徴をよりよく例示し、次の考察を容易にするために、図9は、本明細書でスクイズフィルムダンパアセンブリ270と称される、雄回転子56のスクイズフィルムダンパアセンブリ34のうちの1つ、及び雄回転子シャフト72の一実施形態の断面軸図である。雌回転子シャフト74及び雌回転子シャフト74に対応するスクイズフィルムダンパアセンブリ34は、以下に考察するスクイズフィルムダンパアセンブリ270及び雄回転子シャフト72の特徴の一部又は全てを含み得ることを理解されたい。
【0055】
図9の図示された実施形態に示すように、シャフト72は、第1の通路252から半径方向外向きに延在する、第1の半径方向通路272及び第2の半径方向通路274を含む。第1及び第2の半径方向通路272、274は、潤滑油24が軸受隙間114を満たしてシャフト72を取り囲み得るように、潤滑油24を軸受隙間114内に誘導するように構成されている。上記の考察した技術に従って、シャフト72は、第1の軸60を中心とした回転を介して、第1及び第2の圧力ダムポケット166、168で潤滑油24を加圧し得、第1及び第2の出口チャネル142、144を介して加圧された潤滑油24をダンパ隙間116内に押し進め得る。したがって、スクイズフィルムダンパアセンブリ270は、圧縮機12の動作中に発生し得るシャフト72の振動を減衰させるように動作し得る。図8の図示された実施形態では、シャフト72は2つの半径方向通路272、274を含むが、他の実施形態では、シャフト72は任意の適切な数の半径方向通路を含み得ることを理解されたい。
【0056】
図10は、図9の線10-10内で見た、スクイズフィルムダンパアセンブリ270及びシャフト72の断面図である。図10の図示された実施形態では、出口ポート146は、軸受ハウジング110内の図9の図示された実施形態とは異なる場所に位置決めされている。シャフト72を通る潤滑油24の供給を可能にすることによって、第1及び第2の入口通路126、128、シール136、及び第1及び第2の入口チャネル130、132は、スクイズフィルムダンパアセンブリ270から省略され得ることを理解されたい。具体的には、シャフト72を通る潤滑油の供給を可能にすることによって、第1及び第2の入口チャネル130、132は、ダンパスリーブ112から省略され得る。したがって、ダンパスリーブ112は、ダンパスリーブ112を通して第1及び第2の圧力ダムポケット166、168内に潤滑油を誘導するための入口通路(例えば、入口チャネル130、132のうちの一方又は両方)を含まない。
【0057】
特定の実施形態では、図3及び図6のスクイズフィルムダンパアセンブリ100は、スクイズフィルムダンパアセンブリ270の代わりに、図9のシャフト72の周りに配置され得る。したがって、スクイズフィルムダンパアセンブリ34は、潤滑油源の組み合わせから潤滑油24を受容し得、かつ本明細書に図示及び説明される実施形態に限定されないことを理解されたい。すなわち、本明細書で考察するスクイズフィルムダンパアセンブリ34、100、270の実施形態は、互いに排他的ではないことを理解されたい。
【0058】
上記のように、本開示の実施形態は、スクイズフィルムダンパに加圧された潤滑油を供給するように構成された専用の潤滑油ポンプを利用することなく、スクイズフィルムダンパの動作を可能にするのに有用な1つ以上の技術的効果を提供し得る。具体的には、本明細書で考察するスクイズフィルムダンパアセンブリの実施形態は、潤滑油供給部から受容された潤滑油を自己加圧し、かつ加圧された潤滑油をスクイズフィルムダンパアセンブリのダンパ隙間内に誘導するように構成されている。このようにして、スクイズフィルムダンパアセンブリは、スクイズフィルムダンパアセンブリのダンパ隙間を加圧するように構成された専用の潤滑油ポンプを利用することなく、スクリュー圧縮機の回転子の振動を減衰させるように動作し得る。したがって、スクイズフィルムダンパアセンブリは、スクリュー圧縮機の全体的な製造、維持、及び/又は動作コストを低減し得、圧縮機の信頼性を更に向上させ得る。本明細書における技術的効果及び技術的問題は、例であり、限定するものではないことを理解されたい。実際、本明細書に記載の実施形態は、他の技術的効果を有し得、かつ他の技術的問題を解決することができることに留意されたい。
【0059】
ある特定の特徴及び実施形態のみを図示及び説明してきたが、当業者であれば、特許請求の範囲に列挙された主題の新規の教示及び利点から実質的に逸脱することなく、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状、及び比率、温度及び圧力などのパラメータの値、取り付け配置、材料の使用、色、並びに向きなどにおける変形形態などの多くの修正及び変更を想到し得る。任意のプロセス又は方法ステップの順番又はシーケンスは、代替実施形態に従って、変更又は再順序付けされ得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨に収まる全てのそのような修正及び変更を包含することが意図されていることを理解すべきである。
【0060】
更に、例示的な実施形態の簡潔な説明を提供するために、現在考えられている最良の形態に関係しないもの、又は有効化に関係しないものなど、実際の実装例の全ての特徴が説明されていない場合がある。任意のエンジニアリング又は設計プロジェクトにおけるように、任意のそのような実際の実装例の開発では、多くの実装例固有の決定がなされ得ることを理解されたい。そのような開発努力は、複雑かつ時間がかかるものであり得るが、それにもかかわらず、過度の実験をすることなく、本開示の恩恵を受ける当業者にとっては、設計、製作、及び製造の決まりきった仕事である。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】