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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(54)【発明の名称】金属酸化物系のSCR触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/20 20060101AFI20230609BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20230609BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230609BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230609BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230609BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20230609BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20230609BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20230609BHJP
   B01J 23/34 20060101ALI20230609BHJP
   B01J 23/847 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
B01J23/20 A
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/28 301G
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 400
B01J35/04 301E
B01J37/02 301C
B01J23/30 A
B01J23/34 A
B01J23/847 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569102
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 US2021032411
(87)【国際公開番号】W WO2021231838
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/024,661
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】510170730
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ セントラル フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】リウ,フートン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユエチン
(72)【発明者】
【氏名】シエ,シャオホワ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,コー
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA18
3G091AB02
3G091AB05
3G091AB06
3G091AB08
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4G169BC62B
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4G169BC66B
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4G169FB14
4G169FB23
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4G169FC02
4G169FC08
4G169ZA14B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
(57)【要約】
本開示は、エンジン排気中の窒素酸化物(NO)排出を低減することができるSCR触媒組成物を提供する。触媒組成物は、セリアを含有する還元可能な金属酸化物担体と、レドックス促進剤として1つ以上の遷移金属酸化物と、酸性促進剤としてニオブ、タングステン、ケイ素、モリブデン、又はそれらの組み合わせの酸化物と、を含む。レドックス促進剤及び酸性促進剤は両方とも、還元可能な金属酸化物担体上に担持されている。そのような組成物でコーティングされたSCR触媒物品、そのような触媒組成物及び物品を調製するためのプロセス、そのような触媒物品を備える排気ガス処理システム、並びにそのような触媒物品及びシステムを使用して排気ガス流中のNOを還元させるための方法が更に提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物(NO)の軽減のための選択的触媒還元(SCR)触媒組成物であって、
セリアを含む還元可能な金属酸化物担体と、
1つ以上の遷移金属酸化物を含むレドックス促進剤と、
ニオブ、タングステン、ケイ素、モリブデン、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む酸性促進剤と、を含み、前記レドックス促進剤及び前記酸性促進剤が、前記還元可能な金属酸化物担体上に担持されている、選択的触媒還元触媒組成物。
【請求項2】
前記還元可能な金属酸化物担体が、酸化物基準で、前記還元可能な金属酸化物担体の約20重量%~約100重量%の範囲の量のセリアを含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記還元可能な金属酸化物担体が、ジルコニア、アルミナ、シリカ、チタニア、バリア、ニオビア、酸化スズ、酸化イットリウム、希土類金属の酸化物、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記希土類金属が、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、及びガドリニウムから選択される、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記レドックス促進剤及び前記酸性促進剤の両方が、前記還元可能な金属酸化物担体上に含浸される、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記レドックス促進剤の少なくとも一部分及び前記酸性促進剤の少なくとも一部分が、混合金属酸化物の形態で前記還元可能な金属酸化物担体上に担持される、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記レドックス促進剤が、前記還元可能な金属酸化物上に含浸され、前記酸性促進剤の少なくとも一部分が、前記レドックス促進剤上に配置される、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記酸性促進剤が、前記触媒組成物の総重量に基づいて、約2重量%~約20重量%の範囲の量で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記酸性促進剤が、前記触媒組成物の総重量に基づいて、約6重量%~約10重量%の範囲の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項10】
前記酸性促進剤が、酸化ニオブ(V)(Nb)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記レドックス促進剤が、前記触媒組成物の総重量に基づいて、約0.2重量%~約10重量%の範囲の量で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記レドックス促進剤が、前記触媒組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%~約3重量%の範囲の量で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項13】
前記レドックス促進剤が、銅、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項14】
前記レドックス促進剤が、銅、マンガン、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項15】
前記レドックス促進剤が、鉄の酸化物を更に含む、請求項14に記載の触媒組成物。
【請求項16】
前記還元可能な金属酸化物担体が、前記還元可能な金属酸化物担体の重量で少なくとも約20重量%のセリアを含み、
前記レドックス促進剤が、銅の酸化物、マンガンの酸化物、又はその両方であって、存在する各酸化物が、前記触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約0.5重量%~約10重量%の範囲の量である銅の酸化物、マンガンの酸化物、又はその両方と、任意選択的に、前記触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約0.1重量%~約10重量%の範囲の量の鉄の酸化物と、を含み、
前記酸性促進剤が、酸化ニオブ(V)(Nb)であり、前記触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約6重量%~約10重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項17】
前記鉄の酸化物が、Feであり、前記触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約2重量%~約8重量%の範囲の量で存在する、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項18】
アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、及びそれらの組み合わせから選択される還元不可能な耐火性金属酸化物担体を更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項19】
前記触媒組成物のアンモニア貯蔵容量が、40℃のNH吸着温度で昇温脱着(TPD)によって測定される場合、触媒組成物1グラム当たり約200μモル未満である、請求項1~18のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項20】
10%の水蒸気の存在下、空気中で650℃において50時間エージングさせた後、200℃のガス流中の窒素酸化物(NO)の転化が、前記触媒組成物が以下の条件下:250,000h-1の排気ガスの毎時の体積ベースの空間速度(前記排気ガスは、500ppmのNO、500ppmのNH、10%のO、5%のCO、5%のHO、及び残りはNのガス混合物を含む)で試験されたとき、約70%より大きい、請求項1~19のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項21】
窒素酸化物(NO)を軽減するためのSCR触媒物品であって、前記SCR触媒物品が、基材であって、その少なくとも一部分の上に配置された請求項1~20のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)触媒組成物を有する基材を備える、SCR触媒物品。
【請求項22】
前記基材が、ハニカム基材である、請求項21に記載のSCR触媒物品。
【請求項23】
前記ハニカム基材が、フロースルー基材又はウォールフローフィルタである、請求項22に記載のSCR触媒物品。
【請求項24】
排気ガス流を生成する内燃エンジンから下流に、かつそれと流体連通して位置する、請求項22~24のいずれか一項に記載のSCR触媒物品を備える、排気ガス処理システム。
【請求項25】
前記SCR触媒物品が、密結合の位置にあり、前記排気ガス処理システムが、前記SCR触媒物品から下流に、かつそれと流体連通して位置する、従来のSCR触媒物品を更に備え、前記従来のSCR触媒物品が、銅促進ゼオライト又は鉄促進ゼオライトを含む、請求項24に記載の排気ガス処理システム。
【請求項26】
前記SCR触媒物品から上流に、かつそれと流体連通して配置される、第1の尿素注入器と、前記SCR触媒物品から下流に配置され、前記従来のSCR触媒物品から上流に、かつそれと流体連通して配置される、第2の尿素注入器と、を備える、請求項25に記載の排気ガス処理システム。
【請求項27】
排気ガス流を処理する方法であって、前記方法が、内燃エンジンからの前記排気ガス流を、請求項21~23のいずれか一項に記載の触媒物品又は請求項24~26のいずれか一項に記載の排気ガス処理システムと、前記排気ガス流中の窒素酸化物(NO)のレベルを低減するために十分な時間及び温度で接触させることを含む、方法。
【請求項28】
セリアを含む還元可能な金属酸化物担体と、1つ以上の遷移金属酸化物を含むレドックス促進剤と、ニオブ、タングステン、ケイ素、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む酸性促進剤と、を含む選択的触媒還元(SCR)触媒組成物を調製するための方法であって、前記レドックス促進剤及び前記酸性促進剤が、前記還元可能な金属酸化物担体上に担持され、前記方法が、
前記還元可能な金属酸化物担体を、レドックス促進剤前駆体及び酸性促進剤前駆体と接触させることと、
前記還元可能な金属酸化物担体を焼成することと、を含む、方法。
【請求項29】
接触することが、順次、前記還元可能な金属酸化物担体を最初に前記レドックス促進剤前駆体に含浸させること、続いて前記酸性促進剤前駆体による2回目の含浸を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
接触することが、順次、前記還元可能な金属酸化物担体を最初に前記酸性促進剤前駆体に含浸させること、続いて前記レドックス促進剤前駆体による2回目の含浸を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
接触することが、前記還元可能な金属酸化物担体を前記レドックス促進剤前駆体及び前記酸性促進剤前駆体に共含浸させることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
焼成することが、前記1回目の含浸後に前記還元可能な金属酸化物担体を焼成することと、前記2回目の含浸後に前記還元可能な金属酸化物担体を焼成することと、を含む、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項33】
前記酸性促進剤前駆体が、ニオブ(V)塩又はタングステン(VI)塩である、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記酸性促進剤前駆体が、シュウ酸ニオブアンモニウムである、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記レドックス促進剤前駆体が、銅、マンガン、鉄、又はそれらの任意の組み合わせの塩を含む、請求項29~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記レドックス促進剤前駆体が、酸性銅塩を含む、請求項29~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記レドックス促進剤前駆体が、塩基性銅塩を含む、請求項29~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記レドックス促進剤前駆体が、[Cu(NH)]2+を含む、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2020年5月14日に出願された米国仮出願第63/024,661号に対する優先権の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、エンジン排気中の窒素酸化物を選択的に還元することができる選択的触媒還元(SCR)触媒組成物、そのような組成物でコーティングされたSCR触媒物品、そのようなSCR触媒物品を備える排気ガス処理システムなどの排気ガス処理触媒の分野、排気ガス流をそのようなSCR触媒物品又はそのような排出処理システムで処理する方法、及びそのようなSCR触媒組成物を調製するためのプロセスに関する。
【0003】
長い年月にわたって、窒素酸化物(NO)の有害な構成要素が大気汚染を引き起こしてきた。例示的な窒素酸化物種には、とりわけ、一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO)が含まれる。NOは、内燃エンジン(例えば、自動車及びトラック)、燃焼設備(例えば、天然ガス、石油、石炭によって加熱を行う発電所)、並びに硝酸生成プラントなどからの排気ガスに含有される。NO含有ガス混合物を処理して、大気汚染を減少させるために、様々な処理方法が使用されてきた。1つの処理タイプは、窒素酸化物の触媒還元を伴う。例示的なプロセスには、(1)一酸化炭素、水素、又は低分子量炭化水素が還元剤として使用される非選択的還元プロセス、及び(2)アンモニア又はアンモニア前駆体が還元剤として使用される選択的還元プロセス、が含まれる。選択的還元プロセスでは、酸素を豊富に含む排気流において化学量論量の還元剤を用いて高度な窒素酸化物除去を達成することができる。
【0004】
選択的還元プロセスは、SCR(選択的触媒還元)プロセスと称される。SCRプロセスは、大気中の酸素の存在下で窒素還元体(例えば、アンモニア又は尿素)を用いた窒素酸化物の触媒還元を使用し、結果として主に窒素及び流れの形成をもたらす。
4NO+4NH+O→4N+6HO(標準SCR反応)
2NO+4NH+O→3N+6HO(低速SCR反応)
NO+NO+2NH→2N+3HO(高速SCR反応)
【0005】
SCRプロセスで採用される現在の触媒は、銅促進ゼオライトを含む。しかし、世界中の規制により、車両からの排出量をこれまで以上に削減することが義務付けられている。低温(<200℃)でのNOの効率的な除去は、満たされていないニーズであり、一般的に業界にとって大きな課題である。Cu促進ゼオライトは、ディーゼル車のSCR用の最も活性なタイプの触媒であるが、そのようなSCR触媒は、200℃未満では十分な活性を欠く。低温では、Cu促進ゼオライト触媒は、NO還元に有効になり得る前にアンモニア(NH)で飽和する必要もあり、これは、還元体(例えば、尿素注入)に対する応答を遅くする。酸化バナジウム/チタニア(V/TiO)系の触媒は、飽和に達するために必要なNHが少なくて済むが、銅促進ゼオライト触媒に比べて低温での活性がはるかに低い。バナジウム系の触媒の別の欠点は、そのような触媒を使用すると、Vが大気中に放出される可能性に関連する環境問題である。したがって、優れた低温NO還元活性、良好な水熱エージング安定性を有し、金属促進ゼオライト又はバナジウムに依存しないSCR触媒組成物を提供することが当技術分野において望ましいであろう。
【0006】
本開示は、概して、排気ガス流中の窒素酸化物(NO)の軽減に有効な金属酸化物系の選択的触媒還元(SCR)触媒組成物を提供する。本開示によるいくつかの実施形態では、ある特定の金属酸化物系の触媒は、水熱エージング後、低温(<200℃)では、従来の銅チャバザイト(Cu-CHA)参照触媒と比較して、NH(又は尿素)を使用するNOの選択的触媒還元(SCR)に対してより活性である。金属酸化物系の触媒のNH貯蔵能力は、Cuチャバザイト参照物の約1/5未満であり、したがって、これらの触媒は、還元体(例えば、尿素又はNH)の注入に対して、従来のCuチャバザイト参照触媒よりもはるかに応答性が高い可能性がある。そのような金属酸化物系の触媒は、第1のSCR触媒が、冷えた状態でのエンジン始動中など、低温NO制御に関与する、二重尿素注入システムによる密結合のSCR用途で特に有利であり、そのためNO活性が高く、反応がより速いという利点を提供し得る。
【0007】
したがって、一態様では、排気ガス流中の窒素酸化物(NO)の軽減に有効な選択的触媒還元(SCR)触媒組成物が提供される。SCR触媒組成物は、セリアを含む還元可能な金属酸化物担体と、1つ以上の遷移金属酸化物を含むレドックス促進剤と、ニオブ、タングステン、ケイ素、モリブデン、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む酸性促進剤と、を含み、レドックス促進剤及び酸性促進剤は、還元可能な金属酸化物担体上に担持されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、還元可能な金属酸化物担体は、還元可能な金属酸化物担体の約20重量%~約100重量%の範囲の量のセリアを含む。いくつかの実施形態では、還元可能な金属酸化物担体は、ジルコニア、アルミナ、シリカ、チタニア、バリア、ニオビア、酸化スズ、酸化イットリウム、希土類金属の酸化物、又はそれらの組み合わせを更に含む。いくつかの実施形態では、希土類金属は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、及びガドリニウムから選択される。
【0009】
いくつかの実施形態では、レドックス促進剤及び酸性促進剤の両方は、還元可能な金属酸化物担体構成要素に含浸される。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤の少なくとも一部分及び酸性促進剤の少なくとも一部分は、混合金属酸化物の形態で還元可能な金属酸化物担体上に担持される。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、還元可能な金属酸化物上に含浸され、酸性促進剤の少なくとも一部分は、レドックス促進剤上に配置される。
【0010】
いくつかの実施形態では、酸性促進剤は、触媒組成物の総重量に基づいて、約2重量%~約20重量%の範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、酸性促進剤は、触媒組成物の総重量に基づいて、約6重量%~約10重量%の範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、酸性促進剤は、酸化ニオブ(V)(Nb)である。
【0011】
いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、触媒組成物の総重量に基づいて、約0.2重量%~約10重量%の範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、触媒組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%~約3重量%の範囲の量で存在する。
【0012】
いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、銅、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、銅、マンガン、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、鉄の酸化物を更に含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、還元可能な金属酸化物担体は、還元可能な金属酸化物担体の少なくとも約20重量%のセリアを含み、レドックス促進剤は、銅の酸化物、マンガンの酸化物、又はその両方であって、存在する各酸化物は、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約0.5重量%~約10重量%の範囲の量にある、銅の酸化物、マンガンの酸化物、又はその両方と、任意選択的に、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約0.1重量%~約10重量%の範囲の量の鉄の酸化物と、を含み、酸性促進剤は、酸化ニオブ(V)(Nb)であり、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約6重量%~約10重量%の範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、鉄の酸化物は、Feであり、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約2重量%~約8重量%の範囲の量で存在する。
【0014】
いくつかの実施形態では、触媒組成物は、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、及びそれらの組み合わせから選択される還元不可能な耐火性金属酸化物担体を更に含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、触媒組成物のアンモニア貯蔵容量は、40℃のNH吸着温度で昇温脱離(TPD)によって測定される場合、触媒組成物1グラム当たり約200μモル未満である。
【0016】
いくつかの実施形態では、触媒組成物、約10%の水蒸気の存在下、空気中で650℃において50時間エージングさせた後、200℃でのガス流中の窒素酸化物(NO)の転化は、触媒組成物が以下の条件下:250,000h-1の排気ガスの毎時の体積ベースの空間速度(排気ガスは、500ppmのNO、500ppmのNH、10%のO、5%のCO、5%のHO、及び残りはNのガス混合物を含む)で試験されたとき、約70%より大きい。
【0017】
別の態様では、内燃エンジンの排気ガスからの窒素酸化物(NO)を軽減するために有効なSCR触媒物品が提供される。SCR触媒物品は、基材であって、その少なくとも一部の上に配置された本明細書に開示されるような選択的触媒還元(SCR)触媒組成物を有する基材を備える。
【0018】
いくつかの実施形態では、基材はハニカム基材である。いくつかの実施形態では、ハニカム基材は、フロースルー基材又はウォールフローフィルタである。
【0019】
更に別の態様では、排気ガス流を生成する内燃エンジンから下流に、かつそれと流体連通して位置する、本明細書に開示されるようなSCR触媒物品を備える排気ガス処理システムが提供される。
【0020】
いくつかの実施形態では、SCR触媒物品は、密結合の位置にあり、排気ガス処理システムは、SCR触媒物品から下流に、かつそれと流体連通して位置する、従来のSCR触媒物品を更に備え、従来のSCR触媒物品は、銅又は鉄促進ゼオライトを含む。いくつかの実施形態では、排気ガス処理システムは、SCR触媒物品から上流に、かつそれと流体連通して配置される、第1の尿素注入器と、SCR触媒物品から下流に配置され、従来のSCR触媒物品から上流に、かつそれと流体連通して配置される、第2の尿素注入器と、を備える。
【0021】
更なる態様では、内燃エンジンからの排気ガス流を処理する方法が提供される。内燃エンジンからの排気ガス流を処理する方法は、排気ガス流を、各々本明細書に開示されるような触媒物品又は排気ガス処理システムと、排気ガス流中の窒素酸化物(NO)のレベルを低減するために十分な時間及び温度で接触させることを含む。
【0022】
更に別の態様では、セリアを含む還元可能な金属酸化物担体と、1つ以上の遷移金属酸化物を含むレドックス促進剤と、ニオブ、タングステン、ケイ素、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む酸性促進剤と、を含む選択的触媒還元(SCR)触媒組成物を調製するための方法が提供され、レドックス促進剤及び酸性促進剤は、還元可能な金属酸化物担体上に担持されている。この方法は、還元可能な金属酸化物担体を、レドックス促進剤前駆体及び酸性促進剤前駆体と接触させることと、還元可能な金属酸化物担体を焼成することと、を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、接触させることは、順次、還元可能な金属酸化物担体を最初にレドックス促進剤前駆体に含浸させること、続いて酸性促進剤前駆体による2回目の含浸を含む。いくつかの実施形態では、接触させることは、順次、還元可能な金属酸化物担体を最初に酸性促進剤前駆体に含浸させること、続いてレドックス促進剤前駆体による2回目の含浸を含む。いくつかの実施形態では、接触させることは、還元可能な金属酸化物担体をレドックス促進剤前駆体及び酸性促進剤前駆体に共含浸させることを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、焼成することは、1回以上の、第1の含浸後に還元可能な金属酸化物担体を焼成すること、及び第2の含浸後に還元可能な金属酸化物担体を焼成することを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、焼成することは、第1の含浸後に還元可能な金属酸化物担体を焼成すること、及び第2の含浸後に還元可能な金属酸化物担体を焼成することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、酸性促進剤前駆体は、ニオブ(V)塩又はタングステン(VI)塩である。いくつかの実施形態では、酸性促進剤前駆体は、シュウ酸ニオブアンモニウムである。
【0027】
いくつかの実施形態では、レドックス促進剤前駆体は、銅、マンガン、鉄、又はそれらの任意の組み合わせの塩を含む。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤前駆体は、酸性銅塩を含む。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤前駆体は、塩基性銅塩を含む。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤前駆体は、[Cu(NH)]2+を含む。
【0028】
本開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下に簡潔に説明される添付の図面とともに以下の詳細な説明を閲読することで明らかになるだろう。本開示は、上記の実施形態のうちの2つ、3つ、4つ、又はそれを超える任意の組み合わせ、並びに本開示に記載される任意の2つ、3つ、4つ、又はそれを超える特徴又は要素の組み合わせを、そのような特徴又は要素が本明細書の具体的な実施形態の説明で明示的に組み合わされているか否かにかかわらず、含む。本開示は、文脈が別途明らかに他のことを示さない限り、本開示のいずれかの分けることが可能な特徴又は要素が、その様々な態様及び実施形態のうちのいずれかにおいて、組み合わせ可能であると意図されるように閲覧されるべきであるように、全体として読み取られることが意図される。本開示の他の態様及び利点は、以下で明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
開示の実施形態の理解を提供するために、添付図面が参照され、添付図面では、参照符号は、開示の例示的な実施形態の構成要素を指す。図面は、例示的にすぎず、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載される開示は、添付の図において、限定としてではなく、例として図示される。図を簡潔かつ明確にするために、図に図示される特徴は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。更に、適切であると考えられる場合、参照標識が、対応又は類似する要素を示すために図の間で繰り返されている。
【0030】
図1】ウォールフローフィルタ基材の断面図を示す。
図2図1のハニカムタイプ基材がウォールフローフィルタに相当する、図1に対して拡大された断面の切断図である。
図3図3A、3B、及び3Cは、本開示のいくつかの実施形態による、3つの可能なコーティング構成を示す。
図4】本開示のいくつかの実施形態による、SCR触媒物品が利用されている、排出処理システムの模式図を示す。
図5】本開示のいくつかの実施形態による、SCR触媒物品が利用されている、排出処理システムの別の模式図を示す。
図6】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図7】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図8】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図9】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図10】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図11】本開示のいくつかの実施形態による、NO形成(形成されたppmでの濃度)対温度のプロットを示す。
図12】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図13】本開示のいくつかの実施形態による、NO形成(形成されたppmでの濃度)対温度のプロットを示す。
図14】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図15】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図16】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図17】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図18】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図19】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図20】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図21】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図22】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図23】本開示のいくつかの実施形態による、NO転化率対温度のプロットを示す。
図24】本開示のいくつかの実施形態による、アンモニア脱着対温度のプロットを示す。本開示のある特定の新鮮なものの実施形態とエージングしたものの実施形態との間の比較アンモニア脱着速度が示されている。
図25】本開示のいくつかの実施形態による、アンモニア脱着のグラフ描写を示す。本開示のある特定の新鮮な実施形態とエージングした実施形態との間の比較アンモニア脱着量が示されている。
図26】本開示のいくつかの実施形態による、水素消費対温度のプロットを示す。
図27】本開示のいくつかの実施形態による、水素消費対温度のプロットを示す。
図28図28A、28B、及び28Cは、本開示のいくつかの実施形態による、水素消費対温度のプロットを示す。
【0031】
各図で参照されている例については、以下で更に詳しく説明する。
【0032】
定義
本開示で使用される用語に関して、以下の定義が提供される。
【0033】
本明細書における冠詞「a」及び「an」は、目的語の1つ又は2つ以上(例えば、少なくとも1つ)を指す。したがって、「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では同義的に使用される。本明細書に引用される任意の範囲は全て、包括的である。全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を表現し、説明するために使用される。例えば、「約」は、その数値が±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、又は±0.05%だけ変更され得ることを意味する。全ての数値は、明示的に示されているかどうかに関係なく、「約」という用語で修飾される。「約」という用語によって修飾された数値には、特定の識別された値が含まれる。例えば、「約5.0」は、5.0を含む。
【0034】
本明細書での値の範囲の列挙は、本明細書で別途指示がない限り、範囲内に含まれる各個別の値を個別に参照する簡略法として機能することのみを意図し、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているのと同様に本明細書に組み込まれる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「軽減」という用語は、任意の手段によって引き起こされる量の減少を意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「AMO」は、選択的アンモニア酸化触媒を指す。AMOは、1つ以上の金属(Ptなど、これに限定されない)を含有する触媒、及びアンモニアを窒素に転化するために好適なSCR触媒であり得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、「BET表面積」という用語は、N吸着によって表面積を決定するためのBrunauer、Emmett、Tellerの方法を参照するその通常の意味を有する。細孔径及び細孔容積は、BETタイプのN吸着又は脱着実験を使用して決定することもできる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「触媒」という用語は、化学反応を促進する材料を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「触媒性物品(catalytic article)」又は「触媒物品(catalyst article)」という用語は、所望の反応を促進するために使用される構成要素を指す。本触媒性物品は、少なくとも1つの触媒性コーティングがその上に配置された「基材」を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、「CSF」は、ウォールフローモノリスである触媒化煤フィルタを指す。ウォールフローフィルタは、交互に位置する入口チャネル及び出口チャネルを備え、入口チャネルが、出口端部に差し込まれており、出口チャネルが、入口端部に差し込まれている。入口チャネルに入る、煤を運搬する排気ガス流は、出口チャネルから出る前に、フィルタ壁を通過させられる。煤の濾過及び再生に加えて、CSFは、下流のSCR触媒を加速させるために、又はより低い温度における煤粒子の酸化を促進するために、CO及びHCをCO及びHOに酸化させるための、又はNOをNOに酸化させるための酸化触媒を運搬し得る。CSFは、LNT触媒の後ろに位置する場合、HS酸化機能を有し、LNT脱硫プロセスの間にHS排出を抑制することができる。SCR触媒組成物は、SCRoFと呼ばれるウォールフローフィルタ上に直接コーティングすることもできる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「DOC」は、ディーゼル酸化触媒を指す。DOCは、ディーゼルエンジンの排気ガス中の炭化水素及び一酸化炭素を転化することができる。DOCは、1つ以上の白金族金属、例えば、パラジウム及び/又は白金、担体材料、例えば、アルミナ、HC貯蔵のためのゼオライト、並びに任意選択的に促進剤及び/又は安定剤を含み得る。
【0042】
一般に、「有効」という用語は、定義された触媒活性又は貯蔵/放出活性に関して、重量又はモルによる、例えば、約35%~約100%有効である、例えば、約40%、約45%、約50%、又は約55%~約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又は約95%有効であることを意味するために使用される。
【0043】
「排気流」又は「排気ガス流」という用語は、固体又は液体の粒子状物質を含有し得る流動ガスの任意の組み合わせを指す。流れは、ガス状成分を含み、例えば、液滴、固体粒子などのある特定のガス状成分を含有し得る、内燃エンジンの排気である。燃焼エンジンの排気ガス流は、燃焼生成物(CO及びHO)、不完全燃焼生成物(一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC))、窒素酸化物(NO)、可燃性及び/又は炭素質微粒子状物質(煤)、並びに未反応の酸素及び窒素を更に含み得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「含浸された」又は「含浸」は、担体材料の多孔質構造の中への触媒性材料の浸透を指す。
【0045】
「流体連通で」という用語は、同じ排気ラインに位置する物品を指すために本明細書で使用され、すなわち、共通の排気流は、互いに流体連通している物品を通過する。流体連通している物品は、排気ライン内で相互に隣接し得る。代替的に、流体連通している物品は、「ウォッシュコートモノリス」などの1つ以上の物品によって分離され得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「LNT」は、リーンNOトラップを指す。「LNT」は、希薄条件中にNOを吸着するために好適な白金族金属、セリア、及びアルカリ土類捕捉材料(例えば、BaO又はMgO)を含有する触媒であり得る。リッチ条件下で、NOが放出され、窒素に還元される。
【0047】
本明細書で使用される場合、「モレキュラーシーブ」という句は、ゼオライトなどの骨格材料、及び他の骨格材料(例えば、同形置換された材料)を指し、これらは、微粒子形態で、かつ1つ以上の促進剤金属と組み合わせて、触媒として使用され得る。モレキュラーシーブは、一般に四面体型の部位を含有し、平均細孔径が約20オングストローム(Å)以下の実質的に均一な細孔分布を有する、酸素イオンの広範な三次元網目構造に基づく材料である。
【0048】
モレキュラーシーブは、主に、SiO/AlO四面体の頑強な網目構造によって形成される空隙の形状に従って区別することができる。空隙への入口は、入口開口部を形成する原子について、6個、8個、10個、又は12個の環原子から形成される。モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブのタイプ、並びにモレキュラーシーブ格子に含まれるカチオンのタイプ及び量に応じて、直径が約3Å~約10Åの範囲である、かなり均一な細孔径を有する結晶性材料である。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ゼオライト」という用語は、モレキュラーシーブの特定の例を指す。一般に、ゼオライトは、コーナー共有TO四面体(式中、Tは、Al又はSiである)で構成されるオープン三次元骨格構造を有するアルミノシリケートとして定義される。この開示の目的のために、「アルミノシリケートゼオライト」という用語は、骨格内で同形的に置換されたリン又は他の金属を含まない。すなわち、「アルミノシリケートゼオライト」は、SAPO、AlPO、及びMeAlPO材料のようなアルミノホスフェート材料を除外し、一方で、より広い用語である「ゼオライト」は、アルミノシリケート及びアルミノホスフェートを含む。この開示のために、SAPO、A1PO、及びMeA1PO材料は、非ゼオライト性モレキュラーシーブとみなす。ゼオライトは、共通の酸素原子により結合されて三次元網目構造を形成するSiO/AlO四面体を含み得る。アニオン性骨格の電荷のバランスをとるカチオンは、骨格酸素と緩く関連しており、残りの細孔容積は水分子で満たされている。非骨格カチオンは一般に交換可能であり、水分子は除去可能である。多種多様なカチオンが、これらの細孔を占め得、これらのチャネルを通って移動し得る。
【0050】
コーティング層に関連する「上」及び「上方」という用語は、同義語として使用され得る。本明細書で使用される場合、「の上に直接」という用語は、直接接触していることを意味する。開示される物品は、ある特定の実施形態では、第2のコーティング層「上」に1つのコーティング層を含むと示され、そのような文言は、コーティング層間の直接接触が要求されない、介在層を伴う実施形態を包含することが意図されている(すなわち、「上」は「上に直接」とは同等ではない)。
【0051】
「SCRoF」とは、ウォールフローフィルタ上に直接コーティングされたSCR触媒組成物を指す。
【0052】
本明細書で使用される場合、「実質的にない」とは、「ほとんど又は全くない」又は「意図的に添加されていない」ことを意味し、微量及び/又は不注意な量しか含まないことも意味する。例えば、「実質的に含まない」とは、示される組成全体の重量に基づいて、2重量%(重量%)未満、1.5重量%未満、1.0重量%未満、0.5重量%未満、0.25重量%、又は0.01重量%未満を意味する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、触媒組成物、すなわち触媒性コーティングが、ウォッシュコートの形態で配置されるモノリシック材料を指す。いくつかの実施形態では、基材は、フロースルーモノリス及びモノリシックウォールフローフィルタである。「モノリシック基材」への言及は、入口から出口まで均質かつ連続的である単一構造を意味する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「担持された」という用語は、「の上に分散された」、「の中に組み込まれた」、「の上に含浸された」、「の上に」、「の中に」、「の上に堆積された」、又は関連するその他を意味する。
【0055】
本明細書で使用される場合、「上流」及び「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに応じた相対的方向を指し、エンジンが上流位置にあり、テールパイプ並びにフィルタ及び触媒などの任意の汚染軽減物品がエンジンの下流にある。基材の入口端部は、「上流」端部又は「前」端部と同義である。出口端部は、「下流」端部又は「後」端部と同義である。上流ゾーンは、下流ゾーンの上流にある。上流ゾーンは、エンジン又はマニホールドのより近くにあり得、下流ゾーンは、エンジン又はマニホールドから更に離れ得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、「ウォッシュコート」は、「基材」、例えば、ハニカムフロースルーモノリス基材、又は処理されるガス流の通過を可能にするために十分に多孔性であるフィルタ基材に適用される材料(例えば、触媒)の薄くて付着性のあるコーティングの技術においてその通常の意味を有する。本明細書で使用され、かつHeck,Ronald and Farrauto,Robert,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience,2002,pp.18-19に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリシック基材又は下層のウォッシュコート層の表面に配置された材料の組成的に異なる層を含む。ウォッシュコートは、液体中に特定の固形物含有量(例えば、約10~50重量%)の触媒を含有するスラリーを調製し、次いで、これを基材上にコーティングさせ、乾燥させて、ウォッシュコート層を提供することによって形成され得る。基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含有し得、各ウォッシュコート層は、何らかの態様が異なることができ(例えば、粒径又は結晶子相のような、ウォッシュコートの物理的特性が異なり得る)、かつ/又は化学触媒機能が異なり得る。
【0057】
別途指示されない限り、全ての部分及び割合は、重量による。別途指示されない場合、「重量パーセント(重量%)」又は「重量によるパーセント」は、いかなる揮発性物質も含まない組成物全体に基づく、すなわち、乾燥固体含有量に基づく。
【0058】
SCR触媒組成物
本開示の一態様では、排気ガス流中の窒素酸化物(NO)の軽減に有効な選択的触媒還元(SCR)触媒組成物が提供される。SCR触媒組成物は、セリア(CeO)を含む還元可能な金属酸化物担体と、1つ以上の遷移金属酸化物を含むレドックス促進剤と、ニオブ、タングステン、ケイ素、モリブデン、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む酸性促進剤と、を含み、レドックス促進剤及び酸性促進剤は、還元可能な金属酸化物担体上に担持されている。触媒組成物の個々の成分の各々は、本明細書の以下で更に説明される。
【0059】
還元可能な金属酸化物担体
本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物は、セリア(CeO)を含む還元可能な金属酸化物担体を含む。本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、沈殿、会合、分散、含浸、又は他の好適な方法によってレドックス促進剤及び/又は酸性促進剤を受け取る材料を指す。「還元可能な金属酸化物」とは、還元雰囲気(例えば、水素)に供されると、金属酸化物内の金属原子の少なくとも一部分を還元原子価状態で含有する金属酸化物を指す。例えば、セリア中のセリウム(CeO、Ce4+)は、還元条件に供されると、セリウム原子の少なくとも一部分をCe3+原子価状態で含有し得る。
【0060】
還元可能な金属酸化物担体中に存在するセリアの量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、還元可能な金属酸化物担体は、酸化物基準で、還元可能な金属酸化物担体の約20重量%~約100重量%の範囲の量のセリアを含む。ある特定の実施形態では、還元可能な金属酸化物担体は、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は更に少なくとも約99.9%のセリア(酸化物基準で、還元可能な金属酸化物担体の全重量に基づく)を含む。いくつかの実施形態では、還元可能な金属酸化物担体は、酸化物基準で、100重量%の量のセリアである。いくつかの実施形態では、還元可能な金属酸化物担体は、セリアからなるか、又は本質的にセリアからなると記載することができる。還元可能な金属酸化物担体は、いくつかの実施形態では、他の金属酸化物を実質的に含まないと記載することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、還元可能な金属酸化物担体は、セリアに加えて、一般に金属酸化物の形態の様々な金属成分を含み得、セリアと混合酸化物を形成し得る。そのような実施形態は、「ドープされた」とも呼ばれ得る。還元可能な金属酸化物担体に含まれ得るそのような金属酸化物の非限定的な例として、ジルコニア、アルミナ、シリカ、チタニア、バリア、酸化スズ、希土類金属の酸化物、及びそれらの組み合わせが挙げられる。「希土類金属」という用語は、スカンジウム、イットリウム、ニオブ、及び元素周期表に定義されるランタニド系列の金属を指す。ランタニド系列の金属としては、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムが挙げられる。いくつかの実施形態では、還元可能な金属酸化物担体は、ランタン、ネオジム、イットリウム、プラセオジム、サマリウム、ガドリニウム、及びそれらの混合物から選択される。希土類金属酸化物は、特定の元素の原子価に応じて、一酸化物、二酸化物、三酸化物、四酸化物などのような希土類金属の様々な酸化状態を含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、セリアを含む還元可能な金属酸化物担体は、ジルコニア、アルミナ、シリカ、チタニア、バリア、酸化スズ、希土類金属酸化物、又はそれらの組み合わせを更に含む。いくつかの実施形態では、セリアを含む還元可能な金属酸化物担体は、ニオブ、ランタン、プラセオジム、ネオジム、イットリウム、サマリウム、及びガドリニウムから選択される希土類金属の酸化物を更に含む。
【0063】
レドックス促進剤
本明細書に開示されるSCR触媒組成物は、1つ以上の遷移金属酸化物を含むレドックス促進剤を含む。本明細書で使用される場合、「遷移金属酸化物」という用語は、遷移金属の任意の酸化物を指し、2つ以上の遷移金属酸化物の混合物を含み得る。酸化物は、特定の遷移金属の原子価に応じて、一酸化物、二酸化物、三酸化物、四酸化物などのような遷移金属の様々な酸化状態を含み得る。本明細書で使用される場合、「遷移金属」という用語は、周期表のdブロック内の任意の金属元素を指し、これは、周期表の第3族~第12族を含むが、白金族金属(すなわち、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、銀、金、ルテニウム、及びロジウムは、除外される)を除外する。遷移金属酸化物には、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、カドミウム、ランタン、ハフニウム、タンタル、タングステン、及び水銀の酸化物が含まれる。いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物には、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、及び亜鉛のうちの1つ以上の酸化物が含まれる。いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物には、銅、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、又はそれらの組み合わせの酸化物が含まれる。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、銅、マンガン、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、銅の酸化物及びマンガンの酸化物を含む。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、酸化銅(CuO)である。いくつかの実施形態では、酸化還元促進剤は、MnO、MnO、Mn、Mn、又はそれらの混合物などのマンガンの酸化物である。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、FeO、Fe、Fe、又はそれらの混合物などの酸化鉄を更に含む。いくつかの実施形態では、酸化還元促進剤は、CuOとFeの混合物などの酸化銅と酸化鉄との混合物である。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、銅の酸化物及びマンガンの酸化物を含み、酸化鉄を更に含む。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤の一部分又は全部は、混合酸化物、例えば、ニオブと銅、ニオブとマンガン、ニオブと鉄、ニオブ、銅、及びマンガン、又はニオブ、銅、及び鉄の混合酸化物の形態で酸性促進剤と組み合わせて存在する。
【0064】
SCR触媒組成物中に存在するレドックス促進剤の量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、触媒組成物の総重量に基づいて、かつ遷移金属酸化物として計算される場合、約0.1%~約10%の範囲の重量による量で存在する。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、触媒組成物の重量に基づいて、かつ遷移金属酸化物として計算される場合、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、1.0%、約1.5%、約2.0%、約2.5%、約3.0%、約3.5%、約4.0%、約4.5%、約5.0%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7.0%、約7.5%、約8.0%、約8.5%、約9%、約9.5%、又は約10%の範囲の重量による量で存在する。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、触媒組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%~約10重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、触媒組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%~約3重量%の範囲の量で存在する。
【0065】
いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、酸化銅(CuO)であり、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約0.5重量%~約3重量%、又は約1重量%~約2重量%など、約0.1重量%~約10重量%の範囲の量で存在する。
【0066】
いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、マンガンの酸化物であり、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約0.5重量%~約5重量%、又は約1重量%~約3重量%など、約0.1重量%~約10重量%の範囲の量で存在する。
【0067】
いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、銅の酸化物、マンガンの酸化物、又はその両方を含み、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約0.1重量%~約10重量%の範囲の量の鉄の酸化物を更に含む。いくつかの実施形態では、酸化鉄は、Feである。いくつかの実施形態では、Feは、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約2重量%~約8重量%の量で存在する。
【0068】
いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、酸化銅(CuO)及び酸化マンガン(MnO)を含み、両方の酸化物の組み合わせは、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約0.1重量%~約10重量%の範囲の量で存在する。特定の実施形態では、レドックス促進剤は、酸化物基準で、約0.5重量%~約3重量%の範囲の量のCuO、及び約0.5重量%~約7重量%の範囲の量のMnOを含む。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約0.1重量%~約10重量%の範囲の量の鉄の酸化物を更に含む。いくつかの実施形態では、酸化鉄は、Feである。いくつかの実施形態では、Feは、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約2重量%~約8重量%など、約0.5重量%~約8重量%の範囲の量で存在する。
【0069】
いくつかの実施形態では、レドックス促進剤は、酸化銅(CuO)と酸化鉄(Fe)との混合物であり、両方の酸化物の組み合わせは、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約0.1重量%~約10重量%の範囲の量で存在する。特定の実施形態では、触媒組成物の総重量に基づいて、CuOは、酸化物基準で、約0.1重量%~約2重量%の範囲の量で存在し、Feは、酸化物基準で、約3重量%~約7重量%など、約0.1%~約10%の範囲の量で存在する。
【0070】
酸性促進剤
本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物は、酸性促進剤を含む。「促進剤」とは、所望の化学反応又は機能、本開示ではアンモニアによるNOの還元に対する活性を増強する種を意味する。「酸性」とは、促進剤が、還元可能な酸化物担体上に分散されると、修飾された担体の酸性度を増加させることを意味する。増加した酸性度は、アンモニアの吸着-脱着実験におけるアンモニアの取り込み又は吸着の増加によって定量化することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、酸性促進剤の存在は、いくつかのアンモニア吸着部位を増加させることによってSCR触媒の活性、特に低温での活性を増強させると考えられている。
【0071】
酸性促進剤の例には、ニオブ、バナジウム、タングステン、ケイ素、及びモリブデンの酸化物が含まれる。いくつかの実施形態では、酸性促進剤は、ニオブ、タングステン、ケイ素、モリブデン、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む。いくつかの実施形態では、酸性促進剤は、タングステンの酸化物を含む。いくつかの実施形態では、酸性促進剤は、WOである。いくつかの実施形態では、酸性促進剤は、ニオブの酸化物を含む。いくつかの実施形態では、酸性促進剤は、酸化ニオブ(V)(Nb)である。
【0072】
触媒組成物中に存在する酸性促進剤の量は、変化し得る。いくつかの実施形態では、酸性促進剤は、組成物の総重量に基づいて、かつ金属酸化物として計算される場合、約2%~約15%の範囲の重量による量で存在する。いくつかの実施形態では、酸性促進剤は、組成物の重量に基づいて、かつ金属酸化物として計算される場合、約2.0重量%、約3.0重量%、約4.0重量%、約5.0重量%、約6重量%、約7.0重量%、又は約8.0重量%~約9重量%、約10.0%、約11.0重量%、約12.0重量%、約13.0重量%、約14.0重量%、又は約15.0重量%の範囲の重量による量で存在する。いくつかの実施形態では、酸性促進剤は、触媒組成物の総重量に基づいて、かつ金属酸化物として計算される場合、約4重量%~約12重量%の範囲の重量による量で存在する。いくつかの実施形態では、酸性促進剤は、酸化ニオブ(V)(Nb)であり、触媒組成物の総重量に基づいて、かつ金属酸化物として計算される場合、約6重量%~約10重量%の範囲の重量による量で存在する。
【0073】
還元不可能な耐火性金属酸化物担体
いくつかの実施形態では、触媒組成物は、還元不可能な耐火性金属酸化物担体を更に含む。例えば、触媒組成物の残りは、還元不可能な耐火性金属酸化物担体上に担持され得る。「還元不可能な耐火性金属酸化物担体」という用語は、本明細書で上述した還元可能な金属酸化物担体と区別するために使用される。本明細書で使用される場合、「耐火性金属酸化物」とは、ガソリン又はディーゼルエンジン排気と関連付けられる温度などの高温で化学的及び物理的安定性を呈する、金属酸化物材料を指す。
【0074】
還元不可能な好適な耐火性金属酸化物には、バルクアルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、及びそのような使用で知られている他の材料、並びに原子でドープされた組み合わせを含み、かつ高表面積又は活性化アルミナなどの活性化合物を含む、それらの物理的混合物又は化学的組み合わせが含まれる。耐火性金属酸化物担体に関する「高表面積」という用語は、20Åを超える細孔及び広い細孔分布を有する金属酸化物担体粒子を指す。高表面積の耐火性金属酸化物担体、例えば、「ガンマアルミナ」又は「活性アルミナ」とも称されるアルミナ担体材料は、最大で約200m/gなど、1グラム当たり60平方メートル(「m/g」)を超える新鮮な材料のBET表面積を呈し得る。そのような活性化アルミナはまた、アルミナのガンマ相とデルタ相との混合物であり得るが、相当量のエータ、カッパ、及びシータアルミナ相も含有し得る。例示的なアルミナとしては、大細孔ベーマイト、ガンマ-アルミナ、及びデルタ/シータアルミナが挙げられる。例示的なプロセスにおいて出発材料として使用される市販のアルミナとしては、高かさ密度のガンマ-アルミナ、低又は中かさ密度の大細孔ガンマ-アルミナ、並びに低かさ密度の大細孔ベーマイト及びガンマ-アルミナなどの、活性アルミナが挙げられ得る。そのような材料は、得られる触媒組成物に耐久性を提供することができる。
【0075】
耐火性金属酸化物(例えば、ドープされた耐火性金属酸化物)の組み合わせの例としては、アルミナ-ジルコニア、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、及びバリア-ランタナ-ネオジミアアルミナが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されるSCR触媒組成物における還元不可能な耐火性金属酸化物担体は、Siでドープされたアルミナ材料(約1%~10%のSiO-Alを含むがこれに限定されない)などのドープ材料、Siでドープされたチタニア材料(約1%~10%のSiO-TiOを含むがこれに限定されない)などのドープチタニア材料、又はSiでドープされたジルコニア(約5%~30%のSiO-ZrOを含むがこれに限定されない)などのドープジルコニア材料であり得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、還元不可能な耐火性金属酸化物担体は、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、還元不可能な耐火性金属酸化物担体は、アルミナである。
【0077】
SCR触媒組成物の調製
本開示のSCR触媒組成物は、還元可能な金属酸化物担体を、レドックス促進剤及び酸性促進剤の好適な前駆体と接触させることによって調製することができる。代替的に、還元可能な金属酸化物担体、レドックス促進剤、及び酸性促進剤の各々の前駆体を組み合わせ、反応させて、混合酸化物を形成することができる。本明細書で使用される場合、「前駆体」という用語は、触媒の焼成又は使用時に、分解するか、そうでなければ触媒活性種(すなわち、対応する金属酸化物又は混合酸化物)に転化し得る、成分(例えば、金属、塩、イオン、化合物など)を指す。レドックス促進剤及び酸性促進剤の水溶性化合物若しくは塩又は水分散性化合物若しくは複合体は、前駆体を還元可能な金属酸化物担体粒子上に含浸又は堆積させるために使用される液体媒体が、触媒組成物中に存在し得る任意の成分と不利に反応せず、この液体媒体が、加熱及び/又は真空の適用時に揮発又は分解によって除去することが可能である限り、前駆体として使用することができる。
【0078】
レドックス促進剤及び酸性促進剤は、還元可能な金属酸化物担体に分散、含浸、配置、又は含有されていると記載することができる。レドックス促進剤及び酸性促進剤は、任意の好適な手段、例えば、含浸、共沈、又は当技術分野で公知の他の方法によって、還元可能な金属酸化物担体の中又は上に導入することができる。各方法は、本明細書の以下で更に説明される。
【0079】
含浸
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物を調製する方法は、微粒子形態の還元可能な金属酸化物担体を、酸性促進剤前駆体及びレドックス促進剤前駆体を個別に又は混合物として含む溶液で処理(含浸)することを含む。開示されたSCR触媒組成物は、いくつかの実施形態では、初期湿潤含浸法によって調製され得る。毛細管含浸又は乾式含浸とも呼ばれる初期湿潤含浸技術は、異種材料、例えば、触媒の合成に一般的に使用される。例えば、前駆体(例えば、酸性促進剤前駆体又はレドックス促進剤前駆体、又は両方、各々本明細書に開示されている)を水溶液又は有機溶液に溶解し、次いで金属イオン含有溶液を含浸させる材料に添加し(例えば、還元可能な金属酸化物担体)、これは、添加された溶液の容積と同じ細孔容積を含む。毛細管現象によって、溶液が材料の細孔に引き込まれる。材料の細孔容積を超えて添加された溶液によって、溶液輸送が、毛細管現象プロセスから、はるかに遅い拡散プロセスに変わる。次いで、含浸した材料を乾燥及び焼成して、溶液中の揮発性成分を除去し、材料の表面に活性種(例えば、対応する金属酸化物)を堆積させることができる。最大充填量は、溶液における前駆体の溶解度によって制限される。含浸した材料の濃度プロファイルは、含浸中及び乾燥中の細孔内の物質移動条件に依存する。
【0080】
開示された触媒は、担体の飽和体積に対して過剰量の金属前駆体溶液が使用される湿式含浸法によっても調製することができる。過剰の溶液は、昇温で触媒スラリーを加熱乾固することによって蒸発させることができる。得られた材料は、乾式含浸手順で説明したように、更に乾燥及び焼成することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、SCR触媒組成物を調製する方法は、還元可能な金属酸化物担体をレドックス促進剤前駆体、続いて酸性促進剤前駆体で順次含浸させることを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、酸性促進剤前駆体は、ニオブ(V)塩又はタングステン(VI)塩などのニオブ又はタングステンの塩である。塩としては、例えば、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩化物などが挙げられる。いくつかの実施形態では、酸性促進剤前駆体は、塩化ニオブ又はシュウ酸ニオブアンモニウムである。
【0083】
いくつかの実施形態では、レドックス促進剤前駆体は、1つ以上の遷移金属を含む。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤前駆体は、銅、マンガン、鉄、又はそれらの組み合わせを含む。例えば、レドックス促進剤前駆体は、銅(II)、マンガン(II)、(III)、若しくは(IV)、鉄(III)、又はそれらの組み合わせの塩であり得る。塩としては、例えば、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩化物などが挙げられる。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤前駆体は、酸性塩である。「酸性塩」とは、水中の溶液としてのレドックス促進剤前駆体が、溶液に7.0未満、例えば、約1~約6.5のpH値を提供することを意味する。そのような塩には、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩などが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤前駆体は、アンモニウムイオンを含む塩基性塩である。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤前駆体は、[Cu(NH)]2+を含むか、又は[Cu(NH4)]2+である。そのような塩基性銅溶液は、過剰の水酸化アンモニウムを、硝酸銅などの可溶性銅塩の溶液に添加することによって調製することができる。
【0084】
ある特定の実施形態では、1つ以上の遷移金属塩(例えば、銅、マンガン、鉄、又はそれらの組み合わせの塩)が還元可能な金属酸化物担体上に含浸され、次いで酸性促進剤前駆体(例えば、ニオブ(V)塩又はタングステン(VI)塩)が、遷移金属で含浸された還元可能な金属酸化物担体に含浸される。いくつかの実施形態では、銅で含浸された還元可能な金属酸化物担体は、酸性促進剤前駆体での含浸の前、後、又は同時に鉄塩で更に含浸される。特定の実施形態では、銅塩が還元可能な金属酸化物担体上に含浸され、次いでニオブ(V)塩が、銅で含浸された還元可能な金属酸化物担体上に含浸される。特定の実施形態では、銅塩が還元可能な金属酸化物担体上に含浸され、次いでニオブ(V)塩及び鉄塩が、銅で含浸された還元可能な金属酸化物担体上に共含浸される。いくつかの実施形態では、銅が還元可能な金属酸化物担体上に塩基性銅種[Cu(NH)]2+として含浸され、次いでシュウ酸ニオブアンモニウムとしてのニオブが、銅で含浸された還元可能な金属酸化物担体上に含浸される。
【0085】
他の実施形態では、SCR触媒組成物を調製するための方法は、還元可能な金属酸化物担体を、各々本明細書で上述したような、1つ以上のレドックス促進剤前駆体及び酸性促進剤前駆体で共含浸させることを含む。そのような技術は、当業者に知られており、例えば、米国特許第9,018,427号、同第7,605,107号、同第8,722,564号、及び同第4,499,209号に開示され、これらの各々は、関連する教示のために参照により本明細書に組み込まれる。例えば、酸性促進剤前駆体及びレドックス促進剤前駆体は、溶液中で組み合わせることができ、還元可能な金属酸化物担体上に添加することができ、各々本明細書で上に記載されている。このように、酸性促進剤及びレドックス促進剤は、均一に混合され、還元可能な金属酸化物担体材料上に滴下され、同時に還元可能な金属酸化物の表面に高度に分散した活性複合体を形成する。共含浸に続いて、レドックス促進剤、酸性促進剤、及び還元可能な金属酸化物担体を含有するSCR触媒組成物は、一般に、以下に記載するように焼成される。したがって、共含浸は、共含浸及び/又はその後の焼成中に生じる材料の混合のために、酸性促進剤及びレドックス促進剤が還元可能な金属酸化物担体上に順次堆積される材料とは異なる特性を呈し得ることが理解される。
【0086】
いくつかの実施形態では、共含浸のための酸性促進剤前駆体は、ニオブ(V)塩又はタングステン(VI)塩などのニオブ又はタングステンの塩である。塩としては、例えば、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩化物などが挙げられる。いくつかの実施形態では、酸性促進剤前駆体は、塩化ニオブ又はシュウ酸ニオブアンモニウムである。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤前駆体は、1つ以上の遷移金属を含む。いくつかの実施形態では、共含浸のためのレドックス促進剤前駆体は、銅、マンガン、鉄、又はそれらの組み合わせを含む。例えば、レドックス促進剤前駆体は、銅(II)、マンガン(II)、(III)、若しくは(IV)、鉄(III)、又はそれらの組み合わせの塩であり得る。塩としては、例えば、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩化物などが挙げられる。いくつかの実施形態では、レドックス促進剤前駆体は、マンガン塩である。いくつかの実施形態では、マンガン塩は、硝酸マンガンである。いくつかの実施形態では、マンガン塩及びニオブ(V)塩がセリア材料に共含浸されて、セリウム/マンガン/ニオブ混合酸化物を形成する。
【0087】
他の実施形態では、銅塩が還元可能な金属酸化物担体上に含浸され、次いで鉄塩及びニオブ(V)塩が還元可能な金属酸化物担体上に共含浸される。焼成後、共含浸されたニオブ及び鉄の少なくとも一部分は、酸化銅で含浸された還元可能な金属酸化物担体上に担持された混合酸化物の形態で存在し得る。いくつかの実施形態では、銅が塩基性銅種[Cu(NH)]2+として還元可能な金属酸化物担体上に含浸され、次いでシュウ酸ニオブアンモニウムとしてのニオブ及び硝酸鉄としての鉄が、銅で含浸された還元可能な金属酸化物担体上に共含浸される。
【0088】
他の実施形態では、鉄塩及びニオブ(V)塩が共含浸されて、還元可能な金属酸化物担体上に担持された鉄/ニオブ混合酸化物が形成され、銅塩が還元可能な金属酸化物担体上に含浸される。
【0089】
還元可能な金属酸化物担体にレドックス促進剤前駆体及び酸性促進剤前駆体を含浸又は共含浸させる上記の方法のうちのいずれかに続いて、含浸された担体を焼成することができる。例示的な焼成プロセスは、空気中で約400℃~約800℃の温度で約10分~約16時間の熱処理を含む。焼成ステップ中及び/又は触媒組成物の使用の初期段階中に、レドックス促進剤前駆体及び酸性促進剤前駆体は、触媒活性金属酸化物形態に転化される。焼成中の温度は、約750℃未満であり得る。いくつかの実施形態では、焼成温度は、一定期間、約300℃~約700℃、約300℃~約600℃、約350℃~約550℃、約400℃~約500℃、又は約425℃~約475℃の範囲にある。いくつかの実施形態では、焼成温度は、約700℃、約600℃、約500℃、約450℃、約400℃、又は約350℃未満であり、下限は約300℃である。いくつかの実施形態では、焼成の時間は、約1時間~約16時間、約1時間~約10時間、又は3時間~約6時間(例えば、約16時間、約15時間、約14時間、約13時間、約12時間、約11時間、約10時間、約9時間、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、又は約1時間未満であり、下限は約10分である)の範囲にある。含浸及び焼成は、所望のレベルの含浸に達するために、必要に応じて繰り返すことができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、焼成されたSCR触媒組成物、又は組成物を含む物品は、エージングされる。エージングは、様々な条件下で行うことができ、本明細書で使用される場合、「エージング」は、ある範囲の条件(例えば、温度、時間、及び大気)を包含すると理解される。例示的なエージングプロトコルは、焼成された組成物を、10%蒸気中で約50時間650℃の温度に、10%蒸気中で約20時間750℃の温度に、又は10%蒸気中で約16時間800℃の温度に供することを含む。しかしながら、これらのプロトコルは、限定を意図するものではなく、温度は、より低く、又は高くあり得(例えば、400℃以上、例えば、約400℃~約900℃、約600℃~約900℃、又は約650℃~約900℃の温度を含むがこれらに限定されない)、時間は、より短く、又はより長くあり得(例えば、約1時間~約50時間、又は約2時間~約25時間の時間を含むがこれらに限定されない)、大気は、(例えば、その中に存在する異なる量の蒸気及び/又は他の成分を有するように)調整することができる。
【0091】
SCR触媒組成物活性
本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物は、排気ガス流中の窒素酸化物(NO)の少なくとも一部分を分解するために有効である。「少なくとも一部分」とは、排気ガス流中の全NOの何パーセントかが分解及び/又は還元されることを意味する。例えば、いくつかの実施形態では、排気ガス流中の全NOの、重量又はモルによる、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%が分解及び/又は還元される。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物は、様々な温度でのSCR活性によって特徴付けることができる。例えば、ある特定の実施形態では、SCR触媒は、熱エージング処理後に200℃で約70%以上のNO転化を呈し、熱エージング処理は、10体積%の蒸気及び残りは空気の存在下で650℃において50時間行われる。NO転化率は、100℃から450℃への0.5℃/分の温度勾配で、疑似定常状態条件下で250,000h-1の毎時の体積ベースの空間速度を有し、500ppmのNO、500ppmのNH、10%のO、5%のCO、5%のHO、残りはNのガス混合物を含む排気ガスのNO転化を指す。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物は、以下の条件下で昇温脱着(TPD)によって測定される場合、1グラム当たり約200μモル未満のアンモニア(NH)のアンモニア脱着値によって特徴付けることができる:空気流(200SCCM)の中で200℃において30分間前処理する、40℃に冷却し、1体積%のHOを含有するNのキャリアガス(合計200SCCM)中で500ppmのNHで1時間飽和させる、1体積%のHOを含有するN(200SCCM)で同じ温度にて1時間パージする、1体積%のHOを含有するN(200SCCM)の流れの中で10℃/分の速度で700℃まで加熱する。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなSCR触媒は、200℃を超えるとH消費のピークを示す可能性がある従来のCu-CHAゼオライト触媒と比較して、約160℃~約190℃など、200℃未満で高強度のH消費ピークを呈することによって特徴付けることができる。例えば、ある特定の実施形態では、本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物は、以下の条件下で温度プログラム還元(TPR)によって測定される場合、200℃未満で最初のH-TPRピークを示す:5%のO/Heの流れ(40SCCM)の中で300℃において1時間前処理;室温まで冷却し、10%のH/Ar(40SCCM)でパージすること;10%のH/Ar(40SCCM)の流れの中で10℃/分の速度にて850℃まで加熱すること。
【0095】
SCR触媒物品
別の態様では、内燃エンジン排気ガスから窒素酸化物(NO)を軽減するために有効なSCR触媒物品が提供され、該SCR触媒物品は、基材と、基材のその少なくとも一部の上に配置された、本明細書で開示されるようなSCR触媒を含むウォッシュコートと、を含む。
【0096】
基材
いくつかの実施形態では、本SCR触媒組成物は、SCR触媒の触媒性物品を形成するために基材上に配置される。基材を含む触媒性物品は、一般に、排気ガス処理システムの一部として用いられる(例えば、触媒物品としては、本明細書に開示されるSCR触媒組成物を含む物品が挙げられるが、それらに限定されない)。基材は、三次元であり、円柱に似た、長さ及び直径及び体積を有する。形状は、必ずしも円柱に一致する必要はない。長さは、入口端部及び出口端部によって画定される軸方向長さである。
【0097】
いくつかの実施形態では、開示されるSCR触媒のための基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用される任意の材料から構成され得、金属又はセラミックのハニカム構造を含み得る。基材は、ウォッシュコート組成物が適用及び接着される複数の壁面を有し得、それによって触媒の基材として機能する。
【0098】
セラミック基材は、任意の好適な耐火性材料、例えば、コージライト、コージライト-α-アルミナ、チタン酸アルミニウム、チタン酸ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコン、珪線石、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、葉長石、α-アルミナ、アルミノケイ酸塩などから作製され得る。
【0099】
基材はまた、1つ以上の金属又は金属合金を含む、金属であり得る。金属基材は、チャネル壁に開口部又は「パンチアウト」を有するような任意の金属基材を含み得る。金属基材は、ペレット、圧縮金属繊維、波形シート、又はモノリシック形態などの様々な形状で用いられ得る。金属基材の特定の例には、耐熱性の卑金属合金、鉄が実質的又は主要な成分である合金が含まれる。そのような合金は、ニッケル、クロム、及びアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の合計は、いずれの場合にも基材の重量に基づいて、少なくとも約15重量%(重量パーセント)の合金、例えば、約10重量%~約25重量%のクロム、約1重量%~約8重量%のアルミニウム、及び約0重量%~約20重量%のニッケルを有利に含み得る。金属基材の例としては、直線的なチャネルを有するもの、ガス流を妨害し、チャネル間のガス流の連通を開くために軸方向チャネルに沿って突出したブレードを有するもの、並びにブレード及びモノリス全体にわたる半径方向のガス輸送を可能にする、チャネル間のガス輸送を増強させるための穴も有するものが挙げられる。
【0100】
通路が、それを通る流体の流れに対して開放されるように、基材の入口又は出口面からそこを通って延在する微細で平行なガス流路を有するタイプのモノリシック基材(「フロースルー」基材)が用いられ得る。別の基材は、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細な実質的に平行なガス流路を有するタイプのものであり、各通路は、基材本体の一方の端部において遮断され、交互に通路は、反対側の端面において遮断され得る(「ウォールフローフィルタ」)。フロースルー及びウォールフロー基材はまた、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際出願公開第2016/070090号に教示されている。
【0101】
いくつかの実施形態では、触媒基材は、ウォールフローフィルタ又はフロースルー基材の形態のハニカム基材を含む。いくつかの実施形態では、基材は、ウォールフローフィルタである。いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材である。フロースルー基材及びウォールフローフィルタが、本明細書で以下に更に議論される。
【0102】
フロースルー基材
いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材(例えば、フロースルーハニカムモノリシック基材を含むモノリシック基材)である。フロースルー基材は、通路が流体流に対して開いているように、基材の入口端部から出口端部まで延在している微細で平行なガス流路を有する。流体の入口から流体の出口までの本質的に直線の経路である通路は、壁によって画定されており、壁の上又は壁の中において、触媒コーティングは、通路を通って流れるガスが触媒性材料と接触するように、配置されている。フロースルー基材の流路は、薄い壁のチャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形などのあらゆる好適な断面形状及びサイズであり得る。フロースルー基材は、上記のようにセラミック又は金属であり得る。
【0103】
フロースルー基材は、例えば、約50インチ~約1200インチの体積と、約60セル毎平方インチ(cpsi)~約500cpsi、又は最大で約900cpsi、例えば、約200cpsi~約400cpsiのセル密度(入口開口部)と、約50ミクロン~約200ミクロン又は約50ミクロン~約400ミクロンの壁厚とを有することができる。
【0104】
ウォールフローフィルタ基材
いくつかの実施形態では、基材はウォールフローフィルタであり、これは一般に、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細で実質的に平行なガス流路を有する。各通路は、基材本体の一端において遮断され、交互に通路は、反対側の端面において遮断され得る。そのようなモノリシックウォールフローフィルタ基材は、断面の平方インチ当たり最大約900以上の流路(又は「セル」)を含み得るが、はるかに少ない数が用いられ得る。例えば、基材は、1平方インチ当たり約7~約600、より一般的には約100~約400のセル(「cpsi」)を有し得る。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形である断面を有することができる。ウォールフローフィルタ基材は、上記に説明されるようにセラミック又は金属であり得る。
【0105】
図1を参照すると、例示的なウォールフローフィルタ基材は、円筒形と、直径D及び軸方向長さLを有する円筒形の外面とを有する。モノリシックウォールフローフィルタ基材の断面図が、交互になっている閉塞通路及び開放通路(セル)を示す、図2に図示される。遮断又は閉塞端部100は、開放流路101と交互になっていて、各対向端はそれぞれ開放及び遮断されている。フィルタは、入口端102及び出口端103を有する。多孔質セル壁104を横切る矢印は、開放セル端に進入し、多孔質セル壁104を通って拡散し、開放出口セル端から退出する、排気ガス流を表す。閉塞端部100は、ガス流を妨げ、セル壁を通して拡散を促進する。各セル壁は、入口側104a及び出口側104bを有する。通路は、セル壁によって包囲されている。ウォールフローフィルタ物品基材は、例えば、約50インチ、約100インチ、約200インチ、約300インチ、約400インチ、約500インチ、約600インチ、約700インチ、約800インチ、約900インチ、又は約1000インチ~約1500インチ、約2000インチ、約2500インチ、約3000インチ、約3500インチ、約4000インチ、約4500インチ、又は約5000インチの体積を有し得る。ウォールフローフィルタ基材は、約50ミクロン~約2000ミクロン、例えば、約50ミクロン~約450ミクロン、又は約150ミクロン~約400ミクロンの壁厚を有し得る。
【0106】
ウォールフローフィルタの壁は、多孔質であり、機能性コーティングを配置する前では、少なくとも約40%又は少なくとも約50%の壁多孔度を有し、平均細孔径は、少なくとも約10ミクロンである。例えば、ウォールフローフィルタ物品基材は、いくつかの実施形態では、≧40%、≧50%、≧60%、≧65%、又は≧70%の多孔度を有し得る。例えば、ウォールフローフィルタ物品基材は、触媒性コーティングを配置する前では、約50%、約60%、約65%、又は約70%~約75%の壁多孔度、及び約10ミクロン又は約20ミクロン~約30ミクロン又は約40ミクロンの平均細孔径を有し得る。本明細書で使用される場合、「壁多孔度」及び「基材多孔度」という用語は、同じ意味であり、置き換え可能である。多孔度は、空隙容量(又は細孔容積)を基材材料の総体積で割った比率である。細孔径及び細孔径分布は、典型的には、Hgポロシメトリー測定によって決定される。
【0107】
基材コーティングプロセス
本開示のSCR触媒性物品を生成するために、本明細書に記載されるような基材を本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物と接触させて、コーティングを提供する(すなわち、触媒組成物の粒子を含むスラリーを基材上に配置する)。コーティングは、「触媒コーティング組成物」又は「触媒コーティング」である。「触媒組成物」及び「触媒コーティング組成物」は、同義語である。
【0108】
触媒組成物に加えて、コーティングスラリーは、任意選択的に、アルミナ、シリカ、酢酸ジルコニウム、コロイド状ジルコニア、若しくは水酸化ジルコニウム、会合性増粘剤、及び/又は界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性、若しくは両性の界面活性剤を含む)の形態の結合剤を含有し得る。他の例示的な結合剤としては、ボヘマイト、ガンマ-アルミナ、又はデルタ/シータアルミナ、並びにシリカゾルが挙げられる。存在する場合、結合剤は、ウォッシュコートの総充填量の約1~5重量%の量で使用され得る。酸性又は塩基性の種をスラリーに添加して、pHを調整することができる。例えば、いくつかの実施形態では、スラリーのpHは、水酸化アンモニウム又は硝酸水溶液の添加によって調整される。スラリーのpH範囲は、約3~約6であり得る。
【0109】
スラリーを粉砕して粒径を減少させ、粒子の混合を増強することができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、又は他の同様の機器で達成されることができ、スラリーの固形物含有量は、例えば、約20~40重量%など、約20~60重量%であり得る。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約10~約40ミクロン、好ましくは10~約30ミクロン、より好ましくは約10~約15ミクロンのD90粒径によって特徴付けられる。D90は、専用の粒径分析装置を使用して決定される。
【0110】
本SCR触媒組成物は、例えば、本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物を含有する1つ以上のウォッシュコートの形態で適用され得る。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中に触媒の特定の固形物含有量(例えば、約10重量%~約60重量%)を含有するスラリーを調製することによって形成され、これは、次いで、当技術分野で知られている任意のウォッシュコート技術を使用して基材に適用され、乾燥及び焼成されて、コーティング層を提供する。複数のコーティングが適用される場合、各ウォッシュコートが適用された後、及び/又は所望の数の複数のウォッシュコートが適用された後、基材は、乾燥及び/又は焼成される。1つ以上の実施形態では、触媒性材料は、ウォッシュコートとして基材に適用される。
【0111】
いくつかの実施形態では、焼成は、約100℃~約150℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、乾燥は、ガス雰囲気中で実施される。いくつかの実施形態では、ガス雰囲気は、酸素を含む。いくつかの実施形態では、乾燥は、約20分~約3時間、又は約50分~約2.5時間の範囲など、約10分~約4時間の範囲の期間にわたって実施される。
【0112】
いくつかの実施形態では、焼成は、約300℃~約900℃、約400℃~約650℃、又は約450℃~約600℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、焼成は、ガス雰囲気中で実施される。いくつかの実施形態では、ガス雰囲気は、酸素を含む。いくつかの実施形態では、焼成は、約10分~約8時間、約20分~約3時間、又は約30分~約2.5時間の範囲の期間にわたって実施される。
【0113】
焼成の後に、上記のウォッシュコート技術により得られる触媒充填量は、基材のコーティングされた重量とコーティングされていない重量の差を計算することにより求めることが可能である。当業者に明らかであるように、触媒充填量は、スラリーのレオロジーを変えることによって修正することができる。更に、ウォッシュコート層(コーティング層)を生成させるためのコーティング/乾燥/焼成プロセスを必要に応じて繰り返して、コーティングを、所望の充填水準又は厚さに構築する、すなわち2つ以上のウォッシュコートを適用し得ることを意味している。
【0114】
本SCR触媒性コーティングは、1つ以上のコーティング層を含み得、1つ以上の層は、本SCR触媒組成物を含む。触媒性コーティングは、基材の少なくとも一部の上に配置され、かつこれに付着している、1つ以上の薄い付着性コーティング層を含み得る。コーティング全体は、個々の「コーティング層」を備える。
【0115】
コーティングの構成
いくつかの実施形態では、本SCR触媒性物品は、1つ以上の触媒層の使用、及び1つ以上の触媒層の組み合わせを含み得る。触媒材料は、基材壁の入口側のみ、出口側のみ、入口側及び出口側の両方に存在し得るか、又は壁自体は、全体的若しくは部分的に触媒材料からなり得る。触媒性コーティングは、基材壁表面上及び/又は基材壁の細孔内、すなわち、基材壁の「中」及び/又は「上」にあり得る。したがって、「基材上に配置されたウォッシュコート」という句は、任意の表面上、例えば、壁表面上及び/又は細孔表面上を意味する。
【0116】
ウォッシュコートは、異なるコーティング層が基材と直接接触し得るように適用され得る。代替的に、1つ以上の「アンダーコート」が存在し得、それによって、触媒コーティング層又はコーティング層の少なくとも一部分は、基材と直接接触しない(むしろ、アンダーコートと接触する)。コーティング層の少なくとも一部分がガス流又は雰囲気に直接さらされないように(むしろ、オーバーコートと接触するように)、1つ以上の「オーバーコート」が存在し得る。
【0117】
代替的に、本触媒組成物は、ボトムコーティング層上のトップコーティング層中に存在し得る。触媒組成物は、トップ層及びボトム層中に存在し得る。任意の1つの層は、基材の軸方向長さ全体に延在し得、例えば、ボトム層は、基材の軸方向長さ全体に延在し得、トップ層はまた、ボトム層の上方で基材の軸方向長さ全体に延在し得る。トップ層及びボトム層の各々は、入口端部及び/又は出口端部延在し得る。
【0118】
例えば、ボトムコーティング層及びトップコーティング層の両方は、同じ基材端から延在することができ、トップ層は、部分的又は完全にボトム層をオーバーレイし、またボトム層は、基材の部分長又は全長に延在し、トップ層は、基材の部分長又は完全長に延在している。代替的に、トップ層が、ボトム層の一部分をオーバーレイし得る。例えば、ボトム層は、基材の全長に延在し得、トップ層は、入口端又は出口端から、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%まで延在し得る。
【0119】
代替的に、ボトム層は、入口端部及び/又は出口端部から、基材の長さの約10%、約15%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、又は約95%まで延在し得、トップ層は、入口端部及び/又は出口端部から、基材の長さの約10%、約15%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、又は約95%まで延在し得、トップ層の少なくとも一部分は、ボトム層をオーバーレイする。この「オーバーレイ」ゾーンは、例えば、基材の長さの約5%~約80%、例えば、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、又は約70%まで延在し得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるような基材上に配置された本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物は、触媒基材の長さの少なくとも一部の上に配置された第1のウォッシュコートを含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコート(同じであるか、又は異なる触媒若しくは触媒成分を含む)は、第1のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置されている。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置されている。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約50%~約100%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約20%~約40%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、入口端部から出口端部まで延在している。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約20%~約40%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、入口端部から出口端部まで延在している。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約50%~約100%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部の上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、全長の100%をカバーする触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、全長の100%をカバーする第1のウォッシュコート上に配置されている。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、全長の100%をカバーして触媒基材上に直接配置され、第1のウォッシュコートは、全長の100%をカバーして第2のウォッシュコート上に配置される。
【0122】
触媒性コーティングは、有利には、「ゾーン化」させることができ、ゾーン化された触媒性層を含む、すなわち、触媒性コーティングは、基材の軸方向の長さにわたって様々な組成物を含有する。これの構成はまた、「横方向にゾーン化された」と説明され得る。例えば、層は、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%に延在して、入口端から出口端に向かって延在し得る。別の層が、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%に延在して、出口端から入口端に向かって延在し得る。異なるコーティング層は、互いに隣接している場合があり、互いに重なっていない場合がある。代替的に、異なる層が、互いの一部分にオーバーレイして、第3の「中間」ゾーンを提供し得る。中間ゾーンは、例えば、基材の長さの約5%~約80%、例えば、基材の長さの約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、又は約70%に延在し得る。
【0123】
本開示のゾーンは、コーティング層の関係によって画定される。異なるコーティング層に関しては、いくつかの可能なゾーニング構成がある。例えば、上流ゾーン及び下流ゾーンが存在し得る、上流ゾーン、中間ゾーン、及び下流ゾーンが存在し得る、4つの異なるゾーンが存在し得るなどである。2つの層が隣接し、重複しない場合、上流ゾーン及び下流ゾーンが存在する。2つの層がある程度重複する場合、上流、下流、及び中間のゾーンが存在する。例えば、コーティング層が基材の全長にわたって延在し、異なるコーティング層が出口端から特定の長さで延在し、第1のコーティング層の一部分をオーバーレイする場合、上流及び下流のゾーンが存在する。
【0124】
例えば、SCR物品は、第1のウォッシュコート層を含む上流ゾーンと、異なる触媒材料又は成分を含む第2のウォッシュコート層を含む下流ゾーンと、を含み得る。代替的に、上流ゾーンは第2のウォッシュコート層を含み得、下流ゾーンは第1のウォッシュコート層を含み得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に配置され、第2のウォッシュコートは、出口端から、全長の約50%~約90%の長さまで、触媒基材上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に配置され、第2のウォッシュコートは、入口端から、全長の約50%~約90%の長さまで、触媒基材上に配置されている。
【0126】
図3a、3b、及び3cは、本開示のいくつかの実施形態による、ウォールフローフィルタ基材又はモノリシックフロースルー基材上のSCR触媒組成物コーティングなど、2つのコーティング層を有するいくつかの可能なコーティング層構成を示す。コーティング層201(トップコート)及び202(ボトムコート)が配置されている基材壁200が示されている。これは簡略化された図であり、多孔質ウォールフローフィルタ基材の場合、細孔、及び細孔壁に付着したコーティングは、図示されておらず、閉塞された端部は、図示されていない。図3aでは、コーティング層201及び202はそれぞれ、基材の全長に延在し、トップ層201は、ボトム層202にオーバーレイしている。図3aの基材は、ゾーン化されたコーティング構成を含まない。図3bは、出口から基材の長さの約50%に延在して、下流ゾーン204を形成するコーティング層202と、入口から基材の長さの約50%に延在し、上流ゾーン203を提供するコーティング層201と、を有するゾーン化された構成を例示している。図3cでは、コーティング層202は、出口から基材の長さの約50%に延在し、トップコーティング層201は、入口から長さの50%を超えて延在し、層202の一部分をオーバーレイし、上流ゾーン203、中間オーバーレイゾーン205ボトム、及び下流ゾーン204を提供する。
【0127】
いくつかの実施形態では、基材は、ハニカム基材であり得る。いくつかの実施形態では、ハニカム基材は、フロースルー基材又はウォールフローフィルタであり得る。
【0128】
排気ガス処理システム
更なる態様では、排気ガス流を生成する内燃エンジンから下流に、かつそれと流体連通して位置付けられる、本明細書に開示されるようなSCR物品を備える排気ガス処理システムが提供される。エンジンは、例えば、化学量論的燃焼に必要とされる空気よりも多くの空気を用いる燃焼条件、すなわち希薄条件で動作する、ディーゼルエンジンであり得る。いくつかの実施形態では、エンジンは、固定源(例えば、発電機又はポンプ場)に関連したエンジンであり得る。いくつかの実施形態では、排出物処理システムは、1つ以上の追加の触媒構成要素を更に含む。排出処理システム内に存在する様々な触媒成分の相対的配置は、変動し得る。
【0129】
本排気ガス処理システム及び本開示の方法では、排気ガス流は、上流端部に入り、下流端部から出ることによって、物品又は処理システムに受け取られる。基材又は物品の入口端部は、「上流」端部又は「前」端部と同義である。出口端部は、「下流」端部又は「後」端部と同義である。処理システムは、一般に、内燃エンジンの下流にあり、かつ内燃エンジンと流体連通している。
【0130】
本明細書に開示されるシステムは、本明細書に開示されるようなSCR触媒性物品を含み、1つ以上の追加の構成要素を更に含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の構成要素は、ディーゼル酸化触媒(DOC)、煤フィルタ(触媒化又は無触媒化され得る)、尿素注入構成要素、アンモニア酸化触媒(AMO)、低温NO吸収剤(LT-NA)、リーンNOトラップ(LNT)、及びそれらの組み合わせから選択される。システムは、例えば、本明細書に開示されるようなSCR触媒、DOC、及び還元剤注入器、煤フィルタ、AMO、又はLNTを含む1つ以上の物品を含有し得る。還元剤注入器を含む物品は、還元物品である。還元システムは、還元剤注入器及び/又はポンプ及び/又はリザーバなどを含む。本処理システムは、煤フィルタ及び/又はアンモニア酸化触媒を更に含み得る。煤フィルタは、無触媒化又は触媒化(CSF)され得る。例えば、処理システムは、上流から下流まで、DOCを含む物品、CSF、尿素注入器、SCR物品、及びAMOを含有する物品を備え得る。LNTもまた、含まれ得る。
【0131】
排出処理システム内に存在する様々な触媒成分の相対的配置は、変動し得る。処理システムは、一般に、内燃エンジンの下流にあり、かつ内燃エンジンと流体連通している。
【0132】
本開示のいくつかの実施形態による1つの例示的な排出処理システムが図4に示される。図4は、排出処理システム20の概略図を示す。示されるように、排出処理システムは、内燃エンジンなどの内燃エンジン22から下流に直列している複数の触媒構成要素を備えることができる。触媒成分のうちの1つ以上は、本明細書に記載されるようなSCR触媒物品である。SCR触媒物品は、追加の触媒材料と比較して、多数の追加の触媒材料と組み合わせることができ、かつ/又は様々な位置に置くことができる。図4は、直列の5つの触媒構成要素24、26、28、30、及び32を図示しているが、触媒構成要素の総数は、変動し得、5つの構成要素は、単なる一例である(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、及び6つの構成要素は、非限定的な例である)。当業者であれば、各物品の相対位置を、本明細書に図示されているものとは異なる順序で配置することが望ましい場合があることを認識するであろう。そのような代替的な順序付けが、本開示によって企図される。
【0133】
限定するものではないが、表1は、いくつかの実施形態の様々な排気ガス処理システム構成を提示する。各触媒は、エンジンが触媒Aの上流にあり、それが触媒Bの上流にあり、それが触媒Cの上流にあり、それが触媒Dの上流にあり、それが触媒Eの上流にある(存在する場合)ように排気導管を介して次の触媒に接続されることに留意されたい。表中の構成要素A~Eに対する参照は、図4の同じ記号で相互参照され得る。
【0134】
表1に記載されるLNT触媒は、NOトラップとして従来から使用されている任意の触媒であり得、卑金属酸化物(例えば、BaO、MgO、CeOなど)と、触媒性NO酸化及び還元のための白金族金属(例えば、Pt及びRh)と、を含むNO吸着体組成物を含み得る。
【0135】
表1に記載されるLT-NA触媒は、低温(<250℃)でNO(例えば、NO又はNO)を吸着し、高温(>250℃)でそれをガス流に放出することができる、任意の触媒であり得る。放出されたNOは、一般に、本明細書に開示されるように、下流のSCR又はSCRoF触媒上でN及びHOに転化される。例えば、LT-NA触媒は、Pd促進ゼオライト又はPd促進耐火性金属酸化物を含み得る。
【0136】
表中のSCRへの言及は、本開示のSCR触媒組成物を含み得るSCR触媒を指す。SCRoF(又はフィルタ上のSCR)への言及は、本開示のSCR触媒組成物を含み得る微粒子又は煤フィルタ(例えば、ウォールフローフィルタ)を指す。SCR及びSCRoFの両方が存在する場合、1つ若しくは両方が本開示のSCR触媒を含み得るか、又は触媒のうちの1つが従来のSCR触媒を含み得る。
【0137】
表中のAMOへの言及は、本開示のいくつかの実施形態の触媒から下流に提供されて、漏れた一切のアンモニアを排気ガス処理システムから除去することができるアンモニア酸化触媒を指す。いくつかの実施形態では、AMO触媒は、PGM成分を含み得る。いくつかの実施形態では、AMO触媒は、PGM成分を有するボトムコートと、SCR機能を有するトップコートと、を含み得る。
【0138】
当業者によって認識されるように、表1に列挙された構成では、構成要素A、B、C、D、又はEのうちの任意の1つ以上は、ウォールフローフィルタのような微粒子フィルタ上に、又はフロースルーハニカム基材上に配置することができる。いくつかの実施形態では、エンジン排気システムは、エンジンの近くの位置に(密結合の位置、CCに)搭載された1つ以上の触媒組成物を含み、車体の下の位置に(床下位置、UFに)追加の触媒組成物がある。いくつかの実施形態では、排気ガス処理システムは、尿素注入構成要素を更に含み得る。
【表1】
【0139】
本開示のいくつかの実施形態による、別の例示的で非限定的な排出物処理システムが、図5に示される。図5は、本明細書に開示されるようなSCR物品(SCR1)がエンジン及び尿素注入器から下流の密結合の位置にある、排気処理システムの概略図を示す。任意選択的なDOCは、下流に配置され、その後にCSFが続く。第2の尿素注入器は、任意選択的にAMO物品と組み合わされて、従来の(例えば、金属促進ゼオライト)物品である第2のSCR触媒物品(SCR2)から上流に位置する。
【0140】
エンジン排気の処理方法
本発明の別の態様は、内燃エンジン、例えば、ガソリンエンジン又はディーゼルエンジンの排気ガス流を処理する方法を対象とする。一般に、この方法は、排気ガス流を本開示の触媒性物品又は本開示の排出物処理システムと接触させることを含む。この方法は、本開示の1つ以上の実施形態によるSCR触媒物品をエンジンから下流に置くことと、エンジン排気ガス流を触媒の上に流すことと、を含むことができる。1つ以上の実施形態では、この方法は、上記のように、追加の触媒構成要素をエンジンの下流に置くことを更に含む。いくつかの実施形態では、この方法は、排気ガス流を、本開示の触媒性物品又は排気ガス処理システムと、排気ガス流中に存在し得る1つ以上のNO成分のレベルを低減するために十分な時間及び温度で接触させることを含む。
【0141】
本触媒組成物、本物品、本システム、及び本方法は、内燃エンジン、例えば、ガソリン、小型ディーゼル及び大型ディーゼルエンジンの排気ガス流の処理に好適であり得る。触媒組成物はまた、静止した工業プロセスからの排出物の処理、屋内空気からの有害若しくは有毒物質の除去、又は化学反応プロセスにおける触媒作用にも好適である。
【実施例
【0142】
本開示の態様は、以下の実施例によってより完全に示され、これらは、本開示のある特定の態様を示すために記載され、態様を限定するものとして解釈されるべきではない。いくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成又はプロセスステップの詳細に限定されず、かつ他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践又は実行することができることを理解されたい。別段の定めがない限り、全ての部分及びパーセンテージは重量によるものであり、全ての重量パーセントは乾燥ベースで表され、すなわち、別途指示がない限り、含水量は除外される。
【0143】
実施例1.銅チャバザイト(Cu-CHA)ゼオライト(参照物)
従来の銅促進チャバザイトSCR触媒を参照物として調製した。銅イオンをチャバザイトゼオライトのH形態にイオン交換し、イオン交換されたゼオライトを焼成して、3.75重量%~4.5重量%の銅充填量(CuOとして測定)を有する触媒を得た。
【0144】
実施例2.セリア上の4%の酸化ニオブ
セリア上に4%の酸化ニオブを含有する触媒材料を、所定の体積のシュウ酸ニオブ酸アンモニウム(CNNbO)溶液(1.0M)のCeO上への初期湿潤含浸、続いて昇温速度5℃/分、550℃での2時間の焼成によって調製した。
【0145】
実施例3.セリア上の8%の酸化ニオブ
セリア上に8%の酸化ニオブを含有する触媒材料を、2倍量のシュウ酸ニオブ酸アンモニウムを使用して、実施例2に従って調製した。
【0146】
実施例4.セリア上の12%の酸化ニオブ
セリア上に12%の酸化ニオブを含有する触媒材料を、3倍量のシュウ酸ニオブ酸アンモニウムを使用して、実施例2に従って調製した。
【0147】
実施例5.セリア上の10%の酸化タングステン
セリア上に10%の酸化タングステンを含有する触媒材料を、所定の体積のタングステン酸アンモニウムメタ水和物(H284112)溶液(1.0M)のCeO上への初期湿式含浸、続いて昇温速度5℃/分、550℃での2時間の焼成によって調製した。
【0148】
実施例6.セリア上の15%の酸化タングステン
セリア上に15%の酸化タングステンを含有する触媒材料を、1.5倍量のタングステン酸アンモニウムメタ水和物を使用して、実施例5に従って調製した。
【0149】
実施例7.セリア上の20%の酸化タングステン
セリア上に20%の酸化タングステンを含有する触媒材料を、2倍量のタングステン酸アンモニウムメタハイドレートを使用して、実施例5に従って調製した。
【0150】
実施例8.セリア上の8%の酸化ニオブ/1%の酸化銅(塩基性銅源)
セリア上に8%の酸化ニオブ及び1%の酸化銅(CuOとして)を含有する触媒材料を、初期湿潤含浸によって調製した。0.5MのCu(NH(NO溶液を、25%の水酸化アンモニウム水溶液(16のNH/Cuのモル比)をCu(NO溶液に添加することによって調製した。所定の体積の溶液を、CeO上に初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。シュウ酸ニオブ酸アンモニウム(CNNbO)を調製した(1.0M)。所定の体積のこの溶液を、調製したCuO/CeO上に初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。
【0151】
実施例9.セリア上の8%の酸化ニオブ/1%の酸化銅(酸性銅源)
セリア上に8%の酸化ニオブ及び1%の酸化銅(CuOとして)を含有する触媒材料を、初期湿潤含浸によって調製した。1.25MのCu(NO溶液を調製した。所定の体積の溶液を、CeOに初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。シュウ酸ニオブ酸アンモニウム(CNNbO)を調製した(1.0M)。所定の体積のこの溶液を、調製したCuO/CeOに初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。
【0152】
実施例10.セリア上の8%の酸化ニオブ/1%の酸化銅(酸性銅源)
セリア上に8%の酸化ニオブ及び1%の酸化銅(CuOとして)を含有する触媒材料を、初期湿潤共含浸によって調製した。硝酸銅(Cu(NO)及びシュウ酸ニオブ酸アンモニウム(CNNbO)の溶液を調製した(銅及びニオブ含有量については1.0M)。所定の体積の溶液を、CeO上に初期湿潤共含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。
【0153】
実施例11.セリア上の1%の酸化銅/8%の酸化ニオブ(酸性銅源)
セリア上に8%の酸化ニオブ及び1%の酸化銅(CuOとして)を含有する触媒材料を、初期湿潤含浸によって調製した。シュウ酸ニオブ酸アンモニウム(CNNbO)を調製した(1.0M)。所定の体積のこの溶液を、CeO上に初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。1.25MのCu(NO溶液を調製した。所定の体積の溶液を、調製したNb/CeO上に初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。
【0154】
実施例12.セリア上の8%の酸化ニオブ/0.5%の酸化銅(塩基性銅源)
セリア上の8%の酸化ニオブ及び0.5%酸化銅(CuOとして)を、初期湿潤含浸によって調製した。0.5MのCu(NH(NO溶液を、25%の水酸化アンモニウム水溶液(16のNH/Cuのモル比)をCu(NO溶液に添加することによって調製した。所定の体積の溶液を、CeO上に初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。シュウ酸ニオブ酸アンモニウム(CNNbO)を調製した(1.0M)。所定の体積のこの溶液を、調製したCuO/CeO上に初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。
【0155】
実施例13.セリア上の8%の酸化ニオブ/1.5%の酸化銅(塩基性銅源)
セリア上に8%の酸化ニオブ及び1.5%の酸化銅(CuOとして)を含有する触媒材料を、実施例12の手順を使用する初期湿潤含浸によって調製したが、Cu(NH(NO溶液の量を3倍に増加させた。
【0156】
実施例14.セリア上の8%の酸化ニオブ/3%の酸化銅(塩基性銅源)
セリア上に8%の酸化ニオブ及び3%の酸化銅(CuOとして)を含有する触媒材料を、実施例12の手順を使用する初期湿式含浸によって調製したが、Cu(NH(NO溶液の量を6倍に増加させた。
【0157】
実施例15.セリア上の酸化ニオブ8%/酸化マンガン2%
セリア上に8%の酸化ニオブ及び2%の酸化マンガン(MnOとして)を含有する触媒材料を、初期湿潤共含浸によって調製した。硝酸マンガン(Mn(NO)及びシュウ酸ニオブ酸アンモニウム(CNNbO)の溶液を調製した(マンガン及びニオブ含有量については1.0M)。所定の体積の溶液を、CeO上に初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。
【0158】
実施例16.セリア上の酸化ニオブ8%/酸化マンガン2%
セリア上に8%の酸化ニオブ及び2%の酸化マンガン(MnOとして)を含有する触媒材料を、初期湿潤含浸によって調製した。硝酸マンガン(Mn(NO)の1M溶液を調製した。所定の体積の溶液を、CeO上に初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。シュウ酸ニオブ酸アンモニウム(CNNbO)の1M溶液を調製した。所定の体積の溶液を、MnO/CeO上に初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。
【0159】
実施例17.セリア上の2%の酸化マンガン/8%の酸化ニオブ
セリア上に8%の酸化ニオブ及び2%の酸化マンガン(MnOとして)を含有する触媒材料を、初期湿潤含浸によって調製した。シュウ酸ニオブ酸アンモニウム(CNNbO)の1M溶液を調製した。所定の体積の溶液を、CeO上に初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。硝酸マンガン(Mn(NO)の1M溶液を調製した。所定の体積の溶液を、Nb/CeO上に初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。
【0160】
実施例18.セリア上の8%の酸化ニオブ/3%の酸化鉄/1%の酸化銅
セリア上に8%の酸化ニオブ、3%の酸化鉄(Feとして)、及び1%の酸化銅(CuOとして)を含有する触媒材料を、初期湿潤含浸によって調製した。0.5MのCu(NH(NO溶液は、25%の水酸化アンモニウム水溶液(16のNH/Cuのモル比)をCu(NO溶液に添加することによって調製した。所定の体積の溶液を、CeO上に初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。硝酸鉄(III)(Fe(NO)及びシュウ酸ニオブ酸アンモニウム(CNNbO)の溶液を調製した(鉄及びニオブ含有量については1.0M)。所定の体積の溶液を、調製したCuO/CeO上に初期湿潤共含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。
【0161】
実施例19.セリア上の8%の酸化ニオブ/5%の酸化鉄/1%の酸化銅
セリア上に8%の酸化ニオブ、5%の酸化鉄(Feとして)、及び1%の酸化銅(CuOとして)を含有する触媒材料を、実施例18に従って調製したが、追加の硝酸鉄を使用した。
【0162】
実施例20.セリア上の8%の酸化ニオブ/7%の酸化鉄/1%の酸化銅
セリア上に8%の酸化ニオブ、7%の酸化鉄(Feとして)、及び1%の酸化銅(CuOとして)を含有する触媒材料を、実施例18に従って調製したが、追加の硝酸鉄を使用した。
【0163】
実施例2~20は、以下の表2の組成及び調製技術に関して要約されている。
【表2】
【0164】
実施例21.NO転化性能
実施例1~20の例についてのNO転化性能を、疑似定常状態条件下で250,000h-1のガスの毎時の体積ベースの空間速度で、500ppmのNO、500ppmのNH、10%のO、5%のCO(使用される場合)、5%のHO、残りはNのガス混合物中で、実験室用反応器中で測定した。触媒性能は、25℃間隔で100~450℃において測定した。本開示の実施形態による触媒サンプルは、「新鮮な」形態(調製された)でか、又は「エージングした」触媒としてのいずれかで評価した。エージングした形態の触媒材料を提供するために、材料を空気中、10%の水蒸気の存在下で650℃において50時間、700℃において20時間、又は800℃において16時間加熱した。
【0165】
セリア単独のサンプルを、4%、8%、及び12%のニオブ(酸化ニオブとして、Nb、それぞれ実施例2、3、及び4)を含浸させたセリアのサンプルを、NO転化について評価した(HO及びCOの非存在下で)。結果は、セリア単独では活性がほとんどないことを実証したが、ニオブを含浸した実施例の各々は、高レベルのNO転化活性を有し、実施例3(8%のNb)は、低温で最高の転化を有した(表3、図6)。
【表3】
【0166】
セリア単独のサンプルを、10%、15%、及び20%のタングステン(酸化タングステンとして、WO、それぞれ実施例5、6、及び7)を含浸させたセリアのサンプルを、NO転化について評価した(HO及びCOの非存在下で)。結果は、セリア単独では活性がほとんどないことを再び実証したが、タングステンを含浸した実施例の各々は、高レベルのNO転化活性を有した(表4、図7)。WOの最適充填量は、WO/CeOについては15重量%であった(実施例5)。実施例5の触媒は、高い低温SCR活性を示したが、800℃で16時間エージングした後、著しく劣化した。
【0167】
5%、10%、15%、及び20%のタングステン(酸化タングステンとして、WO、それぞれ実施例8、9、10、及び11)を含浸させたセリア-ジルコニア(Ce40ZrO、Ce40ZrOに対して40重量%のCeO)のサンプルを、NO転化について評価した。結果は、WOの最適充填量が、WO/Ce40ZrO(実施例9)について10重量%であることを実証し、これは、実施例5よりも低い活性を示した(表4)。実施例9の触媒は、800℃で16時間エージングした後、活性が低下したことを示した。
【表4】
【0168】
実施例3及び6の新鮮な触媒とエージングした触媒との比較は両方とも、Cu-CHA参照実施例1と同等又はそれ以上のNO転化性能を示した(図8)。しかし、タングステン及びニオブを含浸させたセリアのサンプル(それぞれ実施例3及び6)は、エージング後に表面積が大幅に減少することを示した(表5)。
【表5】
【0169】
参照実施例1(Cu-CHA)及び実施例3(Nb/CeO)のNO転化性能を、実施例8の触媒(Nb/CuO/CeO)と比較した。試験流中に水蒸気が存在しない場合、実施例8は、エージングの前後の両方で、いずれの参照物よりもはるかに高い活性を呈し、酸化銅の含有が、Nb/CeO単独と比較して、低温SCR活性及び熱安定性を増強したことを実証した(図9試験流中に水蒸気及びCOが存在する場合でも、実施例8は、エージングの前後の両方で、いずれの参照物よりも高い活性を呈し、酸化銅の含有が、Nb/CeO単独と比較して、低温SCR活性及び熱安定性を増強したことを再び実証した(図10本発明のNb/CuO/CeO触媒(実施例8、新鮮なもの及びエージングしたものの両方)は、参照実施例1と比較して、低温でのNO形成が低いことも見出された(図11)。
【0170】
試験流中に水蒸気及びCOが存在する場合、Nb-MnO/CeO(実施例15、新鮮なもの及びエージングしたもの両方)は、エージングの前後の両方で、参照Nb/CeO(実施例3)及びCu-CHA(実施例1)よりも高い活性を呈し、酸化マンガンの含有が、Nb/CeO単独と比較して、低温SCR活性及び熱安定性を増強したことを実証した(図12本発明の実施例15は、新鮮なもの及びエージングしたものの両方で、参照実施例1の触媒より低温でより活性であったが、高温でより多い量のNOを生成する傾向があった(図13)。Mn-Nb-Ceベースの触媒については、Mn-Nb共含浸(実施例15)は、いずれかの順序での逐次的な含浸によって生成されたもの(実施例16及び17、図14)よりも活性な触媒を提供することが見出された。
【0171】
触媒NO転化活性に対する銅源の効果を、試験流中に水蒸気が存在する場合と存在しない場合とで、新鮮なサンプル及びエージングしたサンプルで評価した。水蒸気なしで試験した場合、新鮮な実施例8(塩基性銅源([Cu(NH)]2+)は、新鮮な実施例9(酸性銅酸化物前駆体で調製)より低い低温活性を示した。しかしながら、エージングした実施例8は、エージングした実施例9と比較して、水蒸気の非存在下でのNO転化に関して、熱エージングに対してはるかに安定であった(図15)。しかし、試験ガス流にHO蒸気が存在すると、実施例間の性能差は減少し(図16)、活性はより低い温度範囲(<200℃)でのみ抑制された。実施例8はそれでも、エージングの前後で参照実施例1及び3よりも高い活性を呈し、本発明の触媒が、優れた低温SCR活性及び熱安定性を有することを示した。
【0172】
ニオブ/銅/セリア触媒に対する銅充填量の影響を、0.5%、1%、1.5%、及び3%の銅(CuOとして、それぞれ実施例12、8、13、14)で評価した。図17の結果は、CuO充填量がNO転化に大きく影響することを示し、実施例8(1%のCuO)は、試験条件下で最適性能を実証した。
【0173】
セリアへの銅及びニオブの含浸の順序も、活性にとって重要であることが見出された(図18)。最初に銅を含浸させ、次にニオブを含浸させると(実施例8)、最初にニオブを含浸させ、次に銅を含浸させて調製したもの(実施例11)、又は共含浸(実施例10)と比較して、最高の活性及び安定性を有する触媒が得られた。
【表6】
【0174】
CuO/Nb/CeO触媒への酸化鉄添加のNO転化に対する影響を調査した(図19)。試験流中に水蒸気が存在する場合、5%の酸化鉄を含有する実施例19は、エージングの前後の両方で、Nb/CeO(実施例3)及びCu-CHA(実施例1)よりも高い活性を呈し、酸化鉄でドープされた触媒も優れた低温SCR活性及び熱安定性を有したことを示す。
【0175】
ニオブ/銅/セリア触媒に対する鉄充填量の影響を、Feとしての3、5、及び7%の鉄で評価した(それぞれ実施例18、19、及び20、図20)。試験流中に水蒸気が存在する場合、実施例19は、最高の活性を呈し、Feの最適なドーパント充填量が5重量%であることを示した。鉄含有銅-ニオブ-セリウム触媒(実施例19)の性能を、銅-ニオブ-セリウム触媒(実施例8、図21)の性能と直接比較した。触媒実施例19は、実施例8と比較して、エージング前後の低温NO転化活性に関して良好に機能した。
【0176】
実施例19を、硫酸化形態と非硫酸化形態の両方における実施例1及び3と比較して、硫酸化形態対非硫酸化形態で更に評価した(図22)。触媒材料を硫酸化形態で提供するために、材料を、20ppmのSO、10%のO、5%のHO、及び残りはNのガス流で、500SCCMの総流量、100,000h-1のGHSVで300℃において45分間処理した。SO堆積の量は、0.5g/Lであった。硫酸化後の実施例19では、活性のわずかな減少が観察された。対照的に、硫酸化参照触媒(実施例1)及び実施例3の性能には明らかな減少があった。実施例19は、硫酸化の前後で、実施例1、実施例3、及び実施例8よりもはるかに高い低温SCR活性を示し、実施例19の触媒材料の良好な低温SCR活性及びSO耐性を実証した。硫酸化及び非硫酸化の実施例8及び19の性能の直接比較が図23に示され、これは、硫酸化後の実施例8の活性の著しい減少を実証したが、実施例19のエージングした硫酸化触媒では活性のわずかな損失しか観察されなかった。
【0177】
実施例22.アンモニア(NH)の昇温脱着(TPD)
実施例1、3、及び8のサンプル(各々、新鮮なもの及びエージングしたものの両方)のアンモニア脱着プロファイルを、検出として質量分析(MS)を使用して昇温脱着(TPD)によって評価した。各触媒のサンプル(30mg)を機器に充填し、200℃で30分間、空気流(200SCCM)の中で前処理した。前処理後、各サンプルを40℃まで冷却し、1体積%のHOを含有するNのキャリアガス(合計200SCCM)を含む500ppmのNHで1時間飽和させた。次いで、サンプルを、1体積%のHOを含有するN(200SCCM)で同じ温度にて1時間フラッシュして、ガス状の弱く吸着されたNHを除去した。最後に、1体積%のHOを含有するN(200SCCM)の流れの中で、サンプルを10℃/分の速度で700℃まで加熱した。
【0178】
参照実施例1(Cu-CHA)は、実施例3(Nb/CeO)及び実施例8(Nb/CuO/CeO)触媒よりも広くて強いNH脱着ピークを示した(図24)。新鮮な触媒と比較して、NH吸着能力は、エージングした触媒より減少し、酸性部位の減退を示唆した。参照実施例1のNH脱着量は、実施例3及び8のそれよりも5倍以上多かった(図25)。実施例3と比較して、実施例8ではより多くの酸部位が検出され、Cuによる修飾が、Nb/CeO材料の低温還元可能性を増強させただけでなく、酸部位の数も増加させたことを示唆した。
【0179】
実施例23.触媒組成物の水素昇温還元(TPR)
昇温還元(H-TPR)は、水素消費による金属種含有化合物の還元可能性を定量的に特徴付けるための容易な方法である。還元を受ける金属種としては、金属イオン及び金属酸化物の両方が挙げられる(例えば、Cu+2、Cu+1、及びCuO)。一般に、還元ガス混合物(アルゴン又は窒素又はヘリウム中で希釈された3%~17%の水素)が、サンプル上を流れる。熱伝導率検出器(TCD)は、ガス流の熱伝導率における変化を測定して、時間及び温度の関数としての水素消費データを提供するために使用される。金属含有ゼオライトを評価するためのこの技術の使用は、文献、例えば、Yan et al.,Journal of Catalysis,161,43-54(1996)で実証されており、この開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。良好な低温還元可能性を有する触媒は、通常、NH-SCRに対して良好に機能する。より高い総水素消費、及び水素吸収の開始のためのより低い温度は、一般に、全体及び低温の触媒活性の増加と相関関係にある。
【0180】
-TPRは、TCD検出器を備えた自動触媒特性評価システムAutosob iQで実行した。30mgの触媒サンプルを機器に充填し、5%のO/He(40SCCM)の流れの中で、300℃において1時間、前処理した。室温まで冷却した後、触媒サンプルを10%のH/Ar(40SCCM)にさらし、10℃/分の加熱速度で850℃まで加熱した。
【0181】
実施例3の低温還元可能性は、Cu修飾(実施例8)によって大幅に増強され、これは、250℃未満で明らかな還元ピークを示した(図26)。エージング後に実施例8の触媒の還元可能性に著しい変化は観察されず、材料が現在のエージング条件下で安定であったことを示唆した。
【0182】
実施例8の新鮮な触媒及びエージングした熟成触媒では、250℃未満の温度で2つの還元ピークが観察されたが、実施例9の新鮮な触媒及びエージングした触媒では1つの還元ピークのみが観察された(図27)。文献によると、179℃での2番目の還元ピークは、Cu-O-Ce種に割り当てることができ、実施例8のCu種とCeO担体との間の強い相互作用を示唆した。実施例8と9の触媒の間で、実施例9は、144℃で最低の還元ピークを示し、これは、200℃未満の温度で最高の低温SCR活性に対応する。エージング後、最初の還元ピークは、実施例9ではより高い温度に推移したが、実施例8では明らかな推移は観察されず、Cu-O-Ce種での、塩基性銅前駆体で調製された触媒材料のより良好な熱安定性を示唆した。理論に束縛されるものではないが、良好な低温還元可能性、及びCu種とCeOとの間の強い相互作用により、実施例8の触媒が、より高いSCR活性及び優れた熱安定性を呈することが可能になったと考えられる。
【0183】
表7とともに、図28A、28B、及び28Cに提供される結果は、ニオブで含浸されたセリア(実施例3)へのCuO(実施例8、10、及び11)の添加が、低温還元可能性を増強することを実証した。還元可能性に対するエージングの影響は、含浸の順序に依存した。実施例8(銅に続くNb堆積)は、実施例10及び13(それぞれ、Nbと銅との共含浸、及びNbに続く銅)と比較して、エージング後に最高の還元可能性を示した。
【表7】
【0184】
実施例24.異なるMnO充填量を有するMnO-WO/CeO触媒
セリア上に10%の酸化タングステン、並びに2%、5%、及び8%の酸化マンガン(MnOとして)を含有する触媒材料を、初期湿潤含浸によって調製した。タングステン酸アンモニウム(H284112)及び硝酸マンガン(Mn(NO)の溶液を調製した。所定の体積の溶液を、CeO上に初期湿潤含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。触媒材料のNO転化は、実施例21のように行った。結果が表8に示され、これは、MnOの添加によりWO/CeOの低温活性が増強されたが、高温領域での活性が減少したことを実証した。
【表8】
【0185】
実施例25.異なるNb充填量によるセリア/ジルコニア触媒上のNb
重量による40%のセリアと60%のジルコニアの混合酸化物上に4%、8%、及び12%の酸化ニオブを含有する触媒材料を、所定の体積のシュウ酸ニオブ酸アンモニウム(CNNbO)溶液(1.0M)の混合酸化物上への初期湿潤含浸、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成によって調製した。結果が表9に示され、これは、Nbの最適負荷が、xNb/Ce40Zr60Oに対して8重量%であったことを実証した。
【表9】
【0186】
実施例26.ドープされたセリア触媒上のNb
ドープされたセリアベースの酸化物(Zr、Gd、La、Pr、及びY修飾されたCeO)に8%の酸化ニオブを含有する触媒材料を、所定の体積のシュウ酸ニオブ酸アンモニウム(CNNbO)溶液(1.0M)のドープされた酸化物上への初期湿潤含浸、続いて昇温速度5℃/分、550℃での2時間の焼成によって調製した。ある特定のサンプルは、800℃でエージングした(「エージングしたもの」)。結果が表10に示され、これは、Gd及びPrでドープされたCeO上に担持された8%のNbが、800℃で16時間エージングした後でも良好な熱安定性を示したことを実証した。
【表10-1】
【表10-2】
【0187】
実施例27.異なるSn充填量によるSnでドープされたセリア上のNb
スズ(Sn)でドープされたセリアベースの酸化物(1、3、8、20、及び40のCe対Snのモル比)上に8%の酸化ニオブを含有する触媒材料を、初期湿潤含浸によって調製した。Ce(NOとSnClの混合物をNH・HOによってpH10に調整した。沈殿物を濾過し、DI水によって洗浄し、続いて110℃で8時間乾燥させた。得られた固体を550℃で2時間焼成した。所定の体積のシュウ酸ニオブ酸アンモニウム(CNNbO)溶液(1.0M)を、ドープされた酸化物上に含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。ある特定のサンプルは、800℃でエージングした(「エージングしたもの」)。結果が表11に提供され、これは、スズでドープされたセリア触媒上のNbが、良好な低温SCR活性を示したことを実証した。最適なCe/Snモル比は8であり、エージング後の低温活性が最も高くなった。
【表11】
【0188】
実施例28.セリア上の8%の酸化ニオブ/x%の酸化銅(酸性銅源)
セリア上に8%のNbを有する触媒を、異なるCuO充填量(0.25重量%~5.0重量%)及び異なる含浸の順序で酸性銅源から調製した。
【0189】
いくつかの実施例を、異なる量のCu(NO)2及びCNNbOの1M溶液を使用する共含浸(CO)、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間の焼成によって調製して、0.5重量%、2.5重量%、3.75重量%、及び5.0重量%のCuO含有量を有する触媒を得た。これらは、CuO-Nb/CeOに指定した。
【0190】
いくつかの実施例を、CNNbO溶液のCeOへの含浸、その後の焼成、次いで異なる量のCu(NO溶液の1M溶液を使用した銅の含浸、続いて5℃/分の昇温速度、550℃で2時間の焼成によって調製して、0.25重量%、0.5重量%、1.0重量%、及び2.0重量%のCuO含有量を有する触媒を得た。これらは、CuO/Nb/CeOと指定した。
【0191】
いくつかの実施例を、異なる量の1MのCu(NO溶液を使用した銅での含浸、続いて5℃/分の昇温速度、550℃で2時間の焼成、続いて1MのCNNbO溶液のCuで修飾されたCeO上への含浸、続いて焼成によって調製して、1.0重量%のCuO含有量を有する触媒を得た。これは、Nb/CuO/CeOと指定した。
【0192】
触媒を異なる条件下(650℃、700℃、及び800℃)でエージングし、NO転化について評価した。結果が表12に示され、これは、最適なCuO充填量が、酸性銅源で調製されたNb/CuO/CeOに対して1.0重量%であったことを実証した。この実施例は、表12で評価された触媒実施例の中で最も高いSCR活性を示した。
【表12-1】
【表12-2】
【0193】
実施例29.セリア上の8%の酸化ニオブ/x%の酸化鉄
セリア上に8%のNbを有する触媒を、異なる鉄充填量で調製した。所定の体積のFe(NO溶液及びCNNbO溶液を、CeO上に共含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成して、1.25重量%、2.5重量%、及び3.75重量%のFeとしての鉄充填量を有する触媒を得た。結果が表13に示され、これは、Feの最適充填量が、xFe-Nb/CeOに対して2.5重量%であることを実証した。
【表13】
【0194】
実施例30.ドープされたセリア担体上の8%の酸化ニオブ/x%の酸化銅
5%のニオブ又は5%のガドリニウムでドープされたセリア上に8%の酸化ニオブ及び1%の酸化銅(CuOとして)を含有する触媒材料を、初期湿潤含浸によって調製した。
【0195】
Cu(NH(NO溶液を、16のモル比n(NH3)/n(Cu)で、25%のNH・HOをCu(NO溶液に添加することによって調製した。95%のセリア及び5%のニオビアを含有する混合セリア-ニオブ酸化物上への所定の体積のCu(NH(NO溶液の初期湿潤含浸の後に、昇温速度5℃/分、550℃で2時間の焼成が続いた。この材料を、所定の体積のCNNbO溶液で初期湿潤含浸し、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成した。触媒は、Nb/CuO/Ce95Nb5Oと指定した。
【0196】
Cu(NH(NO溶液を、16のモル比NH/Cuで、25%のNH・HOをCu(NO溶液に添加することによって調製した。95%のセリア及び5%のガドリニアを含有する混合セリア-ガドリニア酸化物上への所定の体積のCu(NH(NO溶液の初期湿潤含浸の後に、昇温速度5℃/分、550℃で2時間の焼成が続いた。この材料を、所定の体積のCNNbO溶液で初期湿潤含浸し、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成して、Nb/CuO/Ce95Gd5Oと指定された触媒を得た。
【0197】
結果が表14に提供され、これは、全てのドープされたセリア触媒が、中程度の低温活性で良好な熱安定性を示したことを実証した。
【表14】
【0198】
実施例31.セリアでドープされたアルミナ担体
セリアでドープされたアルミナを含有する担体材料を、初期湿潤含浸によって調製した。Ce(NO溶液を調製し、種々な所定の体積を使用して初期湿潤をアルミナ上に含浸させて、重量で10%、15%、20%、又は25%のセリアを含有するドープされたアルミナを得た。結果が表15に示され、これは、xCeO/Alに対するCeOの最適充填量が、20重量%であると決定されたことを実証した。
【表15】
【0199】
実施例32.セリアでドープされたアルミナ触媒上の酸化銅又は酸化鉄
各々アルミナ上に担持された、銅とセリア、又は鉄とセリアとの混合酸化物を含有する触媒材料を、初期湿潤含浸によって調製した。
【0200】
Ce(NO及び異なる濃度のCu(NOの溶液を、Al上に共含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成して、アルミナ上に20重量%のセリア及び0.5%、1.25%、2.5%、又は3.75重量%のCuOを含有する触媒を得た。
【0201】
Ce(NO及び異なる濃度のFe(NOの溶液を、Al上に共含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成して、アルミナ上に20重量%のセリア及び1.25%、2.5%、3.75%、又は5重量%のFeを含有する触媒を得た。
【0202】
結果が表16に提供され、これは、xCuO-CeO/Alに対するCuOの最適充填量が、1.25重量%であることを実証した。Fe充填量の増加に伴い、Fe-CeO/Alの低温活性は増加したが、1.25%CuO-CeO/Al触媒のそれよりも低いままであった。
【表16】
【0203】
実施例33.セリアでドープされたアルミナ担体上の酸化タングステン
セリアでドープされたアルミナ担体材料上の酸化タングステンを、初期湿潤含浸によって調製した。様々な量のCe(NO及びH284112の溶液を調製し、様々な所定の体積を使用してアルミナ上に初期湿潤含浸させて、重量で20重量%、30重量%、又は40重量%のセリア及び重量で5重量%、10重量%、15重量%、又は20重量%のWO(xWO-yCeO/Al)を含有する触媒を得た。結果が表17に示され、これは、評価された触媒の中で、20%のWO-40%のCeO/Al触媒が、最も高い低温活性を有し、800℃でのエージング後に活性の著しい損失が観察されたことを実証した。
【表17】
【0204】
実施例34.セリア上の8%の酸化ニオブ及び様々な量の酸化マンガン
触媒を、所定量のMn(NO及びCNNbOの1M溶液を使用する共含浸、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間の焼成によって調製して、xMnO-Nb/CeOと指定されるCeOの8%のNb及び1%、2%、又は5%のMnO含有量を有する触媒を得た。触媒を異なる条件下(650℃、700℃、及び800℃)でエージングし、NO転化について評価した。結果が表19に示され、これは、最適なMnO充填量が、2重量%であり、この触媒が、800℃でエージングした後でも良好なSCR活性を示したことを実証した。
【表18】
【0205】
実施例35.セリア上の8%の酸化ニオブ及び2%の酸化マンガン
セリア上の8%のNbを有する触媒を、異なる含浸順序を使用して、2%のマンガン充填量で調製した。
【0206】
触媒を、所定量のMn(NOの1M溶液を使用するマンガンでの含浸、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間の焼成、続いて1MのCNNbO溶液の、Mnで修飾されたCeO上への含浸、続いて焼成によって調製して、2.0重量%のMnO含有量を有する触媒を得た。(Nb/MnO/CeOと指定)。
【0207】
触媒を、CNNbO溶液のCeO上への含浸、続いて焼成、次いでMn(NOの1M溶液での含浸、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間の焼成によって調製して、2.0重量%のMnO含有量を有し、MnO/Nb/CeOと指定される触媒を得た。
【0208】
触媒を、所定量のMn(NO及びCNNbOの1M溶液を使用する共含浸、昇温速度5℃/分、550℃で2時間の焼成によって調製して、2.0重量%のMnO含有量を有し、MnO-Nb/CeOと指定される触媒を得た。
【0209】
触媒を異なる条件下(650℃、700℃、及び800℃)でエージングし、NO転化について評価した。結果が表18に示され、これは、CeO上へのMnO及びNbの共含浸(MnO-Nb/CeO)によって調製された触媒が、エージングの前後で最高のSCR活性を示したことを実証した。この触媒は、700℃未満のエージング温度に耐えた。
【表19】
【0210】
実施例36.セリア上に8%の酸化ニオブ、2%のMnO、及び1%のCuOを有する触媒
セリア上に8%のNb、2%のMnO、1%のCuOを含有する一連の触媒を調製し、異なる含浸順序及び異なる銅源を使用して調製した。
【0211】
触媒を、所定量のMn(NO及びCu(NO)の1M溶液を使用するCeO上への共含浸、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間の焼成によって調製した。この材料を、1MのCNNbO溶液で含浸させ、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成して、Nb/CuO-MnO/CeO-Aと指定される触媒を得た。
【0212】
触媒を、Cu(NH(NO溶液のCeO上への含浸、続いて焼成、次いで所定の体積のCNNbO及びMn(NO溶液での共含浸、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間の焼成によって調製して、MnO-Nb/CuO/CeOと指定される触媒を得た。
【0213】
触媒を、Cu(NO)の溶液のCeO上への含浸、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間の焼成によって調製した。これに続いて、所定の体積のCNNbO及びMn(NO溶液の共含浸、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間焼成して、MnO-Nb/CuO/CeO-Aと指定される触媒を得た。
【0214】
触媒を、所定量のCNNbO溶液、Cu(NO溶液、及びMn(NO溶液を使用するCeO上への共含浸、続いて昇温速度5℃/分、550℃で2時間の焼成によって調製して、CuO-MnO-Nb/CeO-Aと指定される触媒を得た。
【0215】
触媒を異なる条件下(650℃、700℃、及び800℃)でエージングし、NO転化について評価した。結果が表20に示され、これは、異なるIWI法によって、かつ異なる銅源を用いて調製されたセリア触媒上のCu/Mn/Nb触媒の中で、MnO-Nb/CuO/CeO触媒が、SCR活動に関して最も良く機能した。
【表20】
【0216】
実施形態の例:
限定するものではないが、本開示によるいくつかの実施形態としては、以下が挙げられる。
【0217】
実施形態1.窒素酸化物(NO)の軽減のための選択的触媒還元(SCR)触媒組成物であって、
セリアを含む還元可能な金属酸化物担体と、
1つ以上の遷移金属酸化物を含むレドックス促進剤と、
ニオブ、タングステン、ケイ素、モリブデン、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む酸性促進剤と、を含み、レドックス促進剤及び酸性促進剤が、還元可能な金属酸化物担体上に担持されている、選択的触媒還元触媒組成物。
【0218】
実施形態2.還元可能な金属酸化物担体が、酸化物基準で、還元可能な金属酸化物担体の約20重量%~約100重量%の範囲の量のセリアを含む、実施形態1に記載の組成物。
【0219】
実施形態3.還元可能な金属酸化物担体が、ジルコニア、アルミナ、シリカ、チタニア、バリア、ニオビア、酸化スズ、酸化イットリウム、希土類金属の酸化物、又はそれらの組み合わせを更に含む、実施形態1に記載の組成物。
【0220】
実施形態4.希土類金属が、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、及びガドリニウムから選択される、実施形態3に記載の組成物。
【0221】
実施形態5.レドックス促進剤及び酸性促進剤の両方が、還元可能な金属酸化物担体上に含浸される、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組成物。
【0222】
実施形態6.レドックス促進剤の少なくとも一部分及び酸性促進剤の少なくとも一部分が、混合金属酸化物の形態で還元可能な金属酸化物担体上に担持される、実施形態1~5のいずれか1つに記載の組成物。
【0223】
実施形態7.レドックス促進剤が、還元可能な金属酸化物に含浸され、酸性促進剤の少なくとも一部分が、レドックス促進剤上に配置される、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組成物。
【0224】
実施形態8.レドックス促進剤が、触媒組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約10重量%の範囲の量で存在する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の組成物。
【0225】
実施形態9.酸性促進剤が、触媒組成物の総重量に基づいて、約2重量%~約20重量%の範囲の量で存在する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0226】
実施形態10.酸性促進剤が、触媒組成物の総重量に基づいて、約6重量%~約10重量%の範囲の量で存在する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組成物。
【0227】
実施形態11:酸性促進剤が、ニオブ、タングステン、ケイ素、モリブデン、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物。
【0228】
実施形態12:酸性促進剤が、WOである、実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物。
【0229】
実施形態13.酸性促進剤が、酸化ニオブ(V)(Nb)である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の組成物。
【0230】
実施形態14.レドックス促進剤が、触媒組成物の総重量に基づいて、約0.2重量%~約10重量%の範囲の量で存在する、実施形態1~13のいずれか1つに記載の組成物。
【0231】
実施形態15.レドックス促進剤が、触媒組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%~約3重量%の範囲の量で存在する、実施形態1~14のいずれか1つに記載の組成物。
【0232】
実施形態16.レドックス促進剤が、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、カドミウム、ランタン、ハフニウム、タンタル、タングステン、水銀、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の組成物。
【0233】
実施形態17.レドックス促進剤が、銅、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の組成物。
【0234】
実施形態18.レドックス促進剤が、銅、マンガン、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の組成物。
【0235】
実施形態19.レドックス促進剤が、鉄の酸化物を更に含む、実施形態18の組成物。
【0236】
実施形態20.組成物が、還元不可能な耐火性金属酸化物担体を更に含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の組成物。
【0237】
実施形態21.
還元可能な金属酸化物担体が、還元可能な金属酸化物担体の重量で少なくとも約20重量%のセリアを含み、
レドックス促進剤が、銅の酸化物、マンガンの酸化物、又はその両方であって、存在する各酸化物が、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約0.5重量%~約10重量%の範囲の量である銅の酸化物、マンガンの酸化物、又はその両方と、任意選択的に、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約0.1重量%~約10重量%の範囲の量の鉄の酸化物と、を含み、
酸性促進剤が、酸化ニオブ(V)(Nb)であり、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約6重量%~約10重量%の範囲の量で存在する、実施形態1に記載の組成物。
【0238】
実施形態22.鉄の酸化物が、Feであり、触媒組成物の総重量に基づいて、酸化物基準で、約2重量%~約8重量%の範囲の量で存在する、実施形態21の組成物。
【0239】
実施形態23.アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、及びそれらの組み合わせから選択される還元不可能な耐火性金属酸化物担体を更に含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の組成物。
【0240】
実施形態24.触媒組成物のアンモニア貯蔵容量が、40℃のNH吸着温度で昇温脱着(TPD)によって測定される場合、触媒組成物1グラム当たり
【数1】
である、実施形態1~23のいずれか1つに記載の組成物。
【0241】
実施形態24.10%の水蒸気の存在下、空気中で650℃において50時間エージングさせた後、200℃のガス流中の窒素酸化物(NO)の転化が、触媒組成物が以下の条件下:250,000h-1の排気ガスの毎時の体積ベースの空間速度(排気ガスは、500ppmのNO、500ppmのNH、10%のO、5%のCO、5%のHO、及び残りはNのガス混合物を含む)で試験されたとき、約70%より大きい、実施形態1~23のいずれか1つに記載の組成物。
【0242】
実施形態25.窒素酸化物(NO)を軽減するためのSCR触媒物品であって、SCR触媒物品が、基材であって、その少なくとも一部の上に配置された請求項1~24のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)触媒組成物を有する基材を備える、SCR触媒物品。
【0243】
実施形態26.ウォッシュコートが、SCR触媒組成物を含む、実施形態25に記載の物品。
【0244】
実施形態27.基材が、ハニカム基材である、実施形態25及び26のいずれか1つの物品。
【0245】
実施形態28.ハニカム基材が、フロースルー基材又はウォールフローフィルタである、実施形態27に記載の物品。
【0246】
実施形態29.排気ガス流を生成する内燃エンジンから下流に、かつそれと流体連通して位置する、実施形態25~28のいずれか1つに記載の物品を備える、排気ガス処理システム。
【0247】
実施形態30.SCR触媒物品が、密結合の位置にあり、排気ガス処理システムが、SCR触媒物品から下流に、かつそれと流体連通して位置する、従来のSCR触媒物品を更に備え、従来のSCR触媒物品が、銅促進ゼオライト又は鉄促進ゼオライトを含む、実施形態29に記載の排気ガス処理システム。
【0248】
実施形態31.ディーゼル酸化触媒(DOC)、煤フィルタ(触媒化又は無触媒化され得る)、尿素注入構成要素、アンモニア酸化触媒(AMOx)、低温NOx吸収剤(LT-NA)、リーンNOxトラップ(LNT)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の追加の構成要素を備える、実施形態30に記載の排気ガス処理システム。
【0249】
実施形態32.SCR触媒物品から上流に、かつそれと流体連通して配置される、第1の尿素注入器と、SCR触媒物品から下流に配置され、従来のSCR触媒物品から上流に、かつそれと流体連通して配置される、第2の尿素注入器と、を備える、実施形態30に記載の排気ガス処理システム。
【0250】
実施形態33.排気ガス流を処理する方法であって、該方法が、内燃エンジンからの排気ガス流を、実施形態25~28のいずれか1つに記載の触媒物品又は実施形態29~32のいずれか1つに記載の排気ガス処理システムと、排気ガス流中の窒素酸化物(NO)のレベルを低減するために十分な時間及び温度で接触させることを含む、方法。
【0251】
実施形態34.セリアを含む還元可能な金属酸化物担体と、1つ以上の遷移金属酸化物を含むレドックス促進剤と、ニオブ、タングステン、ケイ素、又はそれらの組み合わせの酸化物を含む酸性促進剤と、を含む選択的触媒還元(SCR)触媒組成物を調製するための方法であって、レドックス促進剤及び酸性促進剤が、還元可能な金属酸化物担体上に担持され、該方法が、
還元可能な金属酸化物担体を、レドックス促進剤前駆体及び酸性促進剤前駆体と接触させることと、
還元可能な金属酸化物担体を、任意選択的に焼成することと、を含む、方法。
【0252】
実施形態35.接触することが、順次、還元可能な金属酸化物担体を最初にレドックス促進剤前駆体に含浸させること、続いて酸性促進剤前駆体による2回目の含浸を含む、実施形態34に記載の方法。
【0253】
実施形態36.接触することが、順次、還元可能な金属酸化物担体を最初に酸性促進剤前駆体に含浸させること、続いてレドックス促進剤前駆体による2回目の含浸を含む、実施形態34に記載の方法。
【0254】
実施形態37.接触することが、還元可能な金属酸化物担体をレドックス促進剤前駆体及び酸性促進剤前駆体に共含浸させることを含む、実施形態34に記載の方法。
【0255】
実施形態38.焼成することが、1回目の含浸後に還元可能な金属酸化物担体を焼成することと、2回目の含浸後に還元可能な金属酸化物担体を焼成することと、を含む、実施形態35又は36に記載の方法。
【0256】
実施形態39.酸性促進剤前駆体が、ニオブ(V)塩又はタングステン(VI)塩である、実施形態34~38のいずれか1つに記載の方法。
【0257】
実施形態40.酸性促進剤前駆体が、シュウ酸ニオブアンモニウムである、実施形態34~39のいずれか1つに記載の方法。
【0258】
実施形態41.レドックス促進剤前駆体が、銅、マンガン、鉄、又はそれらの任意の組み合わせの塩を含む、実施形態35~40のいずれか1つに記載の方法。
【0259】
実施形態42.レドックス促進剤前駆体が、酸性銅塩を含む、実施形態35~41のいずれか1つに記載の方法。
【0260】
実施形態43.レドックス促進剤前駆体が、塩基性銅塩を含む、実施形態35~41のいずれか1つに記載の方法。
【0261】
実施形態44.レドックス促進剤前駆体が、[Cu(NH)]2+を含む、実施形態43に記載の方法。
【0262】
本発明のいくつかの例示的な実施形態をここで説明したが、前述のものは単なる例示であり、限定ではなく、単なる例として提示されたものであることは、当業者には明らかであるはずである。多数の修正及び他の実施形態は、当業者の範囲内であり、本開示の範囲内にあると考えられる。特に、本明細書に提示される例の多くは、方法行為又はシステム要素の特定の組み合わせを伴うが、それらの行為及びそれらの要素は、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わされ得ることが理解されたい。
【0263】
更に、当業者は、本明細書に記載のパラメータ及び構成が例示的なものであり、実際のパラメータ及び/又は構成は、本発明のシステム及び技術が使用される特定の用途に依存することを理解すべきである。当業者はまた、本発明の特定の実施形態と同等のものを、日常的な実験のみを使用して認識するか、又は確認することができるはずである。したがって、本明細書に記載の実施形態は、単なる例として提示されており、添付の特許請求の範囲及びそれに相当するものの範囲内であることが理解されるべきであり、本発明は、具体的に記載されている以外の方法で実施され得る。
【0264】
本明細書で使用された表現及び用語は、説明を目的としたものであり、限定的なものとみなされるべきではない。本明細書で使用されるとき、「複数」という用語は、2つ以上の項目又は構成要素を指す。「含む(comprising)」、「含む(including)」、「運搬する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、及び「伴う(involving)」という用語は、書面による説明又は特許請求の範囲などのいずれにおいても、制限のない用語であり、すなわち、「含むが、これらに限定されない」を意味する。それゆえ、かかる用語の使用は、その後にリストされた項目、及びその同等物、並びに追加の項目を包含することを意味する。特許請求の範囲に関して、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」の移行句のみが、それぞれ、閉鎖的な、又は半閉鎖的な移行句である。特許請求の範囲の要素を修正するための特許請求の範囲中の「第1」、「第2」、「第3」などの序数用語の使用は、それ自体では、ある特許請求の範囲要素のいかなる優先順位、優先権、又は順序も、方法の動作が実行される別の順序、又は一時的な順序に対して暗示するものではないが、特定の名前を有する1つの特許請求の範囲の要素を、同じ名前を有する別の要素から区別するためのラベルとしてのみ使用されて(ただし、序数用語を使用)、特許請求の範囲の要素を区別する。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【国際調査報告】