(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(54)【発明の名称】補体の活性化を検出するための細胞外小胞の使用方法、並びに補体性疾患の処置を評価及び/又は監視するためのその使用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230609BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230609BHJP
G01N 33/552 20060101ALI20230609BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230609BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20230609BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20230609BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20230609BHJP
A61K 48/00 20060101ALN20230609BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20230609BHJP
A61K 31/7105 20060101ALN20230609BHJP
A61K 31/713 20060101ALN20230609BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/53 Y
G01N33/53 U
G01N33/543 541A
G01N33/552
C07K16/18
C12N15/113 Z
C12N5/071
A61P43/00 111
A61K48/00
A61K39/395 N
A61K31/7105
A61K31/713
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569106
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 US2021032241
(87)【国際公開番号】W WO2021231720
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ミルマン, エレン イー.
(72)【発明者】
【氏名】キャメット, トビン ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AC14
4B065BA25
4B065CA46
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZC411
4C084ZC412
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC41
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
生物学的試料における補体の活性を検出する方法が本明細書に開示されている。本開示はまた、対象における補体性疾患の診断又は予後評価のための方法、及び対象における補体モジュレーターを用いた補体性疾患の処置に対する応答を監視するための方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象由来の生物学的試料において補体活性を検出する方法であって、
(a)細胞外小胞(EV)又はその膜結合部分を含む前記生物学的試料の一部を、少なくとも1つの第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片で単離して、前記EV又は前記その膜結合部分の上において、EV特異的マーカー又は前記EV上に表示される組織特異的マーカーを含む第1のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(b)場合により、前記試料の一部を少なくとも1つの第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、前記EV又はその膜結合部分の上において第2のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(c)前記捕捉されたEV又は前記その膜結合部分の上の補体系関連構成要素の存在又はレベルを、前記補体系関連構成要素に特異的である少なくとも1つの検出抗体又はその抗原結合断片を用いて定性的に又は定量的に検出し、それにより前記生物学的試料における補体活性化を検出することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の捕捉マーカーが、EV特異的マーカーを含み、場合による前記第2の捕捉マーカーが、前記EV又は前記その膜結合部分の上に表示される組織特異的マーカーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の捕捉マーカー及び前記第2の捕捉マーカーがいずれも存在しており、EV特異的マーカーを含む前記第1の捕捉マーカー、及び組織特異的マーカーを含む第2の捕捉マーカーが検出される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的試料が、組織、臓器、又は体液由来である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的試料が、膀胱細胞、腎細胞、全血、赤血球、血小板、血清、血漿、血清若しくは血漿以外の血液画分、リンパ液、脳脊髄液(CSF)、唾液、涙、膣分泌物、精液、腺分泌物、滲出液、嚢胞若しくは糞便の内容物、洗浄液、又は腹水由来の、EV又はその膜結合部分を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的試料が、腎臓の糸球体足細胞、曲尿細管、又は膀胱上皮、又は赤血球(RBC)由来の、EV又はその膜結合部分を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の捕捉抗体又は前記その抗原結合断片が、第1の固体支持体へ結合しており、場合により前記第2の捕捉抗体又は前記その抗原結合断片が、第2の固体支持体へ結合しており、及び検出抗体が、検出可能なマーカーへ結合している、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記生物学的試料の一部を、前記第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片及び前記第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含み、前記第1の捕捉抗体又は前記その抗原結合断片及び前記第2の捕捉抗体又は前記その抗原結合断片が、同じ支持体又は異なる支持体へ結合している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記検出可能なマーカーが、フルオロホア、色原体、及びビオチンからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記検出可能なマーカーは、吸収極大が500nm~1000nmの間にあり、且つ発光極大が550nm~1100nmの間にあるフルオロホアである、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記検出可能なマーカーが、フィコエリトリン(PE)である、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記検出可能なマーカーが、ビオチンである、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1及び第2の固体支持体が独立して、ナノ粒子、ミクロ粒子、ビーズ、磁気ビーズ、ナノ構造、組織培養プレート、シリカ、及びナノマトリックスからなる群から選択される、請求項7~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のマーカーが、細胞外小胞関連タンパク質からなる群から選択され、
場合により、前記第2のマーカーが、組織特異的細胞外小胞関連タンパク質からなる群から選択され、並びに
前記補体系関連構成要素が、(a)代替的な補体経路(AP)の構成要素、(b)従来の経路(CP)と関連した構成要素、及び(c)レクチン経路(MBL)と関連した構成要素からなる群から選択される、請求項1~13のいずれかの記載の方法。
【請求項15】
前記補体系関連構成要素が、(a)代替的な経路(AP)の構成要素、及び(b)従来の経路(CP)と関連した構成要素からなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記補体系関連構成要素が、C3、C5b-9、C4、Clq、C9、C3b、iC3b、TF、CRP、pCRP、MAC、CD59、CD55、CR1、C5aRl、及びC5aからなる群から選択されるタンパク質である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のマーカーが、ALIX、TSG101、CD9、CD63、CD81、CD40L、CD26、CD31、CD45、CD2、CD11a、CD24、CD55、CD59、CF106、CD56、CD51、CD82、インテグリン、テトラスパニン、アネキシン、HSP90、HSP70、シンテニン1、ADAM10、EHD4、アクチン、Rab5、クラスリン、フロチリン1、MHCI、MHCII、アクチニン4、GP96、EHD4、ミトフィリン、及びLAMP2からなる群から選択され、
前記第2のマーカーが、ポドカリキシン(PODXL)、アクアポリン2(AQP2)、ウロプラキン1b(UPK1b)、ポドシン(NPHS2)、グリコホリンA(GYPA)、ムチン1、2型Na-K-2C1共輸送体(NKCC2)、アクアポリン1(AQP 1)、α-グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(アルファ-GST)、Tamm-Horsfallタンパク質(TH)、カルビンディン-D28K(CalD)、メガリン、キュビリン、ネフリン(Nphsl)、クローディン1、アネキシンV、シナプトポディン(Synpo)、ウィルム腫瘍タンパク質(Wtl)、バンド3、ストマチン(STOM)、BGP1、グロビン、グリコホリンB、Rhポリペプチド、及びRh糖タンパク質からなる群から選択され、並びに
前記補体タンパク質が、MAC、C3、C5b-9、C4、Clq、及びC9からなる群から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記生物学的試料が、腎臓細胞由来のEVを含み、前記第2のマーカーが、ポドカリキシン(PODXL)、アクアポリン2(AQP 2)、ウロプラキン1b(UPK1b)、及びポドシン(NPHS2)からなる群から選択される腎臓特異的EVマーカーである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記試料が、赤血球(RBC)由来のEVを含み、前記第2のマーカーが、グリコホリンA(GYPA)から選択されるRBC特異的EVマーカーである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記試料が、第1のマーカーとしてのCD81及び/又は第2のマーカーとしてのウロプラキン1B(UPK1B)に対して陰性である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記捕捉マーカー及び前記検出マーカーが、同じEV又はその膜結合部分の中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記EV又は前記その膜結合部分の上にある前記補体経路の前記構成要素の前記存在又はレベルを対照と比較することを含む、前記対象が補体性疾患に罹患しているかどうか又は補体性疾患を発症するリスクがあるかどうかを判定することをさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記対照が、健常対象由来の同等の試料を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記対象から得られた前記EV又は前記その膜結合部分の上の前記補体経路の前記構成要素の前記レベル又は前記存在が、前記対照と比較して高い場合、前記対象が、補体性疾患に罹患していること又は補体性疾患を発症するリスクがあることを示すことを含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
対象における補体性疾患の診断又は予後評価のための方法であって、
(a)前記対象由来の細胞外小胞(EV)又はその膜結合部分を含む試料を得ることと、
(b)前記試料の一部を少なくとも1つの第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、前記EV又は前記その膜結合部分の上において第1のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(c)場合により、前記試料の一部を少なくとも1つの第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、前記EV又は前記その膜結合部分の上において第2のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(d)前記少なくとも1つの第1のマーカーと場合により前記少なくとも1つの第2のマーカーとを含む前記捕捉されたEV又はその膜結合部分を、補体系関連構成要素に特異的な少なくとも1つの検出抗体又はその抗原結合断片と接触させることと、
(e)前記検出抗体又は前記その抗原結合断片を定性的に又は定量的に検出して、前記EV又は前記その膜結合部分の上の前記補体経路の前記構成要素の存在又はレベルを測定し、対照と比較して、前記対象の試料における前記補体経路の前記構成要素の前記存在又はレベルが高いと、前記対象が前記補体性疾患に罹患していること又は前記補体性疾患を発症するリスクがあることを示すことと
を含む、方法。
【請求項26】
前記第1のマーカーが、EV特異的マーカー又はEV上に表示される組織特異的マーカーを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のマーカーが、EV特異的マーカーを含み、前記第2のマーカーが、EV上に表示される組織特異的マーカーを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
対象において補体モジュレーターを用いた補体性疾患の処置に対する応答を監視するための方法であって、
(a)前記処置の前及び後の前記対象由来の細胞外小胞(EV)又はその膜結合部分を含む試料を得ることと、
(b)前記試料の一部を少なくとも1つの第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、前記EV又は前記その膜結合部分の上において第1のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(c)場合により、前記試料の一部を少なくとも1つの第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、前記EV又は前記その膜結合部分の上において第2のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(d)前記少なくとも1つの第1のマーカーと場合により前記少なくとも1つの第2のマーカーとを含む前記捕捉されたEV又はその膜結合部分を、補体系関連構成要素に特異的な少なくとも1つの検出抗体又はその抗原結合断片と接触させることと、
(e)前記検出抗体又は前記その抗原結合断片を定性的に又は定量的に検出して、前記EV又は前記その膜結合部分の上の補体経路の構成要素の存在又はレベルを測定し、前記補体モジュレーターを用いた処置の前と比較して、前記補体モジュレーターを用いた処置の後の前記対象の試料における前記補体経路の前記構成要素の前記存在又はレベルが減弱していると、前記対象が前記補体モジュレーターに応答していることを示すことと
を含む、方法。
【請求項29】
前記補体のメディエーターが、補体5(C5)阻害剤、補体5a(C5a)阻害剤、補体5受容体(C5R1)阻害剤、補体3(C3)阻害剤、D因子(FD)阻害剤、H因子(FH)阻害剤、B因子(FB)阻害剤、MASP2阻害剤、MASP3阻害剤、プロペルジン阻害剤、又はこれらの組み合わせである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記疾患が、炎症性疾患又は血栓性疾患である、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記疾患が、血栓性血液学的疾患又は血栓性腎疾患である、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記疾患が、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、C3糸球体症(C3G)、デンスデポジット病(DDD)、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、ループス腎炎(LN)、IgA腎症(IN)、ループス腎炎(LN)、膜性腎症(MN)、移植患者における血液透析による合併症、抗体関連型拒絶反応(AMR)、及び抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)からなる群から選択される腎疾患である、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記疾患が、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、実質臓器の移植又は造血性幹細胞の移植による二次性HUS、血栓性微小血管症(TMA)、及び寒冷凝集素症(CAD)からなる群から選択される血液学的疾患である、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記検出が、免疫検定法(例えば、ELISA又はRIA)、電子顕微鏡法(EM)、タンデムマスタグ(TMT)、発光アッセイ(例えば、LUMINEX)、又は蛍光免疫検定法(FIA)を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
検出ステップが、マルチプレックスフォーマットにおいて行われる、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
検出ステップが、1つの試料におけるいくつかの別個の組織中のマーカーを測定することによって、並びに/又は単一のアッセイにおける複数の有望な補体タンパク質及び補体経路を監視することによって行われる、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1のマーカー及び場合により前記第2のマーカーが、前記個々の抗体又は前記その抗原結合断片と接触する前に、EV濃縮ステップが行われる、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記生物学的試料が、非侵襲的な液体生検プロトコルから獲得される、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
対象の腎組織における補体活性化を検出する方法であって、
(a)細胞外小胞(EV)又はその膜の上に表示されるEV特異的マーカー又は組織特異的マーカーである第1のマーカーを含むEV又はその膜結合部分を含む、前記対象由来の尿試料を、前記第1のマーカーに特異的な第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させ、それにより、前記第1のマーカーを含有するEV又は膜を捕捉することと、
(b)場合により、前記試料を第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、前記第1のマーカーとは異なる第2の捕捉マーカーを含むEV又はその膜結合部分を捕捉することと、
(c)前記捕捉されたEV又は前記その膜結合部分の上の補体経路の構成要素の存在又はレベルを、前記構成要素に特異的な抗体又はその抗原結合断片を用いて定性的に又は定量的に検出し、それにより前記生物学的試料における補体活性化を検出することと
を含む、方法であって、
前記EV特異的マーカーが、CD9、CD63、及びCD81からなる群から選択され、
前記組織特異的マーカーが、
(1)糸球体における足細胞に特異的なポドカリキシン(PODXL)、
(2)曲尿細管上皮に特異的なアクアポリン2(AQP2)、
(3)膀胱上皮に特異的なウロプラキン1b(UPK1b)、及び
(4)赤血球(RBC)に特異的なグリコホリンA(GYPA)
からなる群から選択され、並びに
前記補体経路の前記構成要素が、MAC、C3、C5b-9、C4、C1q、及びC9からなる群から選択される、方法。
【請求項40】
少なくとも1つの第1の標的を捕捉するための少なくとも1つの第1の捕捉抗体、少なくとも1つの第2の標的を捕捉するための少なくとも1つの第2の捕捉抗体、及び捕捉された前記少なくとも1つの第1の標的の量、捕捉された前記少なくとも1つの第2の標的の量、又はその両方の量を検出するための、補体タンパク質に特異的な少なくとも1つの検出抗体の、使用。
【請求項41】
補体調節について試験化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)補体性疾患に罹患している対象(例えば、マウス、ウサギ、ハムスター、ヒツジ、ラマ、イヌ、サル、チンパンジーなどの動物、又はヒト)への前記試験化合物の投与の前及び後の、前記対象由来の細胞外小胞(EV)又はその膜結合部分を含有する試料を得ることと、
(b)前記試料の一部を少なくとも1つの第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、前記EV又は前記その膜結合部分の上において第1のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(c)場合により、前記試料の一部を少なくとも1つの第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、前記EV又は前記その膜結合部分の上において第2のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(d)前記捕捉されたEV又はその膜結合部分を、補体系関連構成要素に特異的な少なくとも1つの検出抗体又はその抗原結合断片と接触させることと、
(e)前記検出抗体又は前記その抗原結合断片を定性的に又は定量的に検出して、前記EV又は前記その膜結合部分の上の前記補体構成要素の存在又はレベルを測定し、前記試験化合物の投与前と比較した、前記試験化合物の投与後の前記対象の試料中の前記補体構成要素の前記存在又はレベルの調節(例えば、上昇又は低下、好ましくは低下)が、前記試験化合物が補体を調節することができることを示すことと
を含む、方法。
【請求項42】
前記試験化合物が、Clq、Cl、Cls、C2、MASP-2、MASP-3、D因子、B因子、プロペルジン(P因子)、H因子、C3/C5コンベルターゼ、C5、C5a/C5aR、C3a/C3aR、C6、又はCD59を特異的に調節することができる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記試験化合物が、モノクローナル抗体又は小分子又はsiRNA/RNAiである、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記試験化合物の調節活性が、補体調節活性を有する分子の調節活性と比較される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記分子が、表Aにおいて提供される、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月15日出願の米国仮特許出願第63/025,557号の優先権及び利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、生物学的試料における補体の活性化を検出する方法に関する。本開示はまた、対象における補体性疾患の診断又は予後評価のための方法、並びに補体モジュレーターを用いた補体性疾患の処置中及び処置後の応答を監視するための方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
補体系は、先天免疫系の一部であり、細胞性病原体及びウイルス性病原体の侵入から身体を防御する他の免疫学的な系とともに作用する。補体経路には少なくとも25のタンパク質があり、循環血漿タンパク質と細胞膜補因子とからなる複合体の集合体としてみられる。血漿タンパク質は、脊椎動物の血清中のグロブリンの約10%を構成する。補体タンパク質は、不活性前駆体として血中を循環し、いくつかのトリガのうちの1つによって刺激されると、当該系におけるプロテアーゼが特異的タンパク質を開裂させて、サイトカインを放出し、更なる開裂の増幅カスケードを開始させる。
【0004】
補体の構成要素は、細胞表面の複雑なシリーズ、並びに酵素による正確な開裂及び原形質膜結合事象を包含する流体相相互作用を活性化することによって、当該構成要素の免疫防御機能を達成する。結果として生じる補体カスケードは、オプソニン化機能、免疫調節機能、溶解機能を持つ生成物の生成につながる。
【0005】
補体カスケードは、従来の経路、代替的な経路、又はレクチン経路を介して進行する。これらの経路は、多くの構成要素を共有し、初期段階は異なるものの、標的細胞の活性化及び破壊の原因となる同じ「終末補体」構成要素(C5~C9)を共有する。
【0006】
従来の経路(CP)は典型的には、標的細胞の抗原性部位を抗体が認識し結合することによって開始される。代替的な経路(AP)は、抗体非依存性であり、病原体表面上のある特定の分子によって自動活性化できる。加えて、レクチン経路は典型的には、高マンノース基質へのマンノース結合レクチン(MBL)の結合で開始される。これらの経路は、補体の構成要素C3が活性のあるプロテアーゼによって開裂してC3a及びC3bを生じる地点で収束する。補体の攻撃を活性化する他の経路は後に、補体の機能の種々の態様につながる事象の流れにおいて作用することができる。
【0007】
この補体の系は、疾患を攻撃するためにヒトの体内で極めて重要な役割を担っており、補体の系における構成要素の測定は、疾患の診断及び/又は予後に、並びに補体性疾患の処置に対する応答を監視するのに有用であり得る。
【0008】
組織生検は、ほとんどの疾患の診断のための最終的な臨床エビデンスを提供し、疾患の病理発生における補体についての役割を確認するための直接的な方法であり得る。しかしながら、生検は有痛且つ高価であり、その手順と関係したリスクがある。反復組織生検はあまり行われない。それゆえ、複数回局所組織生検を介した処置に対する縦断的な応答を監視することはできない。
【0009】
細胞外小胞(EV)は、細胞によって作られる小さな膜結合型の被覆された粒子(30~100nm)である。EVは、親細胞の原形質膜(PM)から放出され、機能的な膜及び細胞質のタンパク質、脂質、及びRNAを含有する。EVについての他の用語としては、微小胞、エクトソーム、小胞、脱粒小胞、ミクロ粒子、及びエキソソームがある。EV外膜は、EV特異的タンパク質マーカー、及び親細胞に特異的なPMマーカーを含有する。EV膜タンパク質の向きは、親PMと同じである。細胞外小胞は、タンパク質のテトラスパニンスーパーファミリーのメンバーであるCD9、CD63、又はCD81などの正準EVマーカーを保有する。テトラスパニンは、EVの最も豊富な膜タンパク質である。いくつかのEVはまた、CD55及びCD59など、当該EVの表面上に補体調節因子も保有する。健常者の尿はおおよそ109個尿EV/mL(uEV/mL)を含有し、これは、腎臓、尿路上皮、及び(男性では)生殖器から主として生じる。ストレス下での細胞は、EV産生を上昇させるであろう。
【0010】
補体診断薬及び補体療法の分野において現在満たされていない必要性は、終末補体複合体の局所化した組織配置を測定するための高感度、特異的、且つ非侵襲的な臨床検査である。処置中の細胞表面補体活性の頻繁な縦断的監視を可能にする非侵襲的な検査は、具体的な臓器の局所レベルで療法の薬物動態作用についての新規の情報を提供するであろうし、このことは、流体相補体活性の測定に制限される現行の方法に対し有意な進展を表す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
様々な補体性疾患に罹患している患者における処置応答を診断及び/又は監視するための非侵襲的な、高感度の、且つ特異的な検査として細胞外小胞を使用する方法が本明細書に提供される。一態様において、EVは、尿を含む生物学的流体から単離された液体生検源とみなすことができる。本開示は部分的に、EVにおける補体沈着の発見に基づいており、当該知見は、インビボでの補体活性を監視するためのサロゲートとしての患者の試料のエクスビボ分析、補体経路を調節する薬物の効能を監視するための方法、患者を経時的に監視するための方法、並びに全身的な及び/又は局所的な組織表面補体活性を調節する試験化合物をスクリーニングするための方法など、多くの応用に対して活用することができる。
【0012】
本アッセイは、臓器特異的な組織のレベルでの補体活性及び調節不全、並びに処置中の調節を定量するための免疫蛍光検出を備えたビーズ系免疫捕捉プロトコルを利用する。尿試料を用いた例証される概念実証に基づいて、本方法は、抗体タグ付ビーズ及びフルオロホアを含むタンパク質及び組織特異的検出試薬を用いたいずれかの液体マトリックスにおける補体攻撃の下でいずれかの臓器又は組織を監視するために広範に適用することができる。本アッセイの原理及び尿中で行われる概念実証は、終末補体複合体沈着によって損傷を受けた組織由来のEVを含む他の組織/臓器由来の脱粒したEVの分析のために、血液及び脳脊髄液へ潜在的に拡大することができる。
【0013】
一態様において、本開示は、EVを単離及び濃縮するための、並びに治療介入前、治療介入中、及び治療介入後のEVの表面上の補体の半定量監視のための容易に使用される方法を提供する。本方法は、広範な種々のアッセイフォーマットへ容易にマルチプレックス処理及び適応させることができ、並びに/又は種々の分析技術、例えば、ナノ粒子追跡分析(NTA)、質量分析(MS)若しくは超解像顕微鏡と組み合わせることができる。
【0014】
本開示は、以下の非限定的な態様に関する。
【0015】
本開示は、生物学的試料における補体活性を検出する方法であって、
(a)細胞外小胞(EV)又はその膜結合部分を含む生物学的試料の一部を、少なくとも1つの第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片で単離して、EV又はその膜結合部分の上において、EV特異的マーカー又はEV上に表示される組織特異的マーカーを含む第1のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(b)場合により、試料の一部を少なくとも1つの第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、EV又はその膜結合部分の上において第2のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(c)捕捉されたEV又はその膜結合部分の上の補体系関連構成要素の存在又はレベルを、補体系関連構成要素に特異的である少なくとも1つの検出抗体又はその抗原結合断片を用いて定性的に又は定量的に検出し、それにより生物学的試料における補体活性化を検出することと
を含む、方法を提供する。
【0016】
第1及び/又は第2のマーカーは、独立して、膜貫通である場合はEVの膜上にあってもよく、又は可溶性の場合(C5など)はEVの内側にあってもよく、したがって、「の上に」はまた「の中に」又は「の内側に」も含む。
【0017】
一実施形態において、第1の捕捉マーカーは、EV特異的マーカーを含み、場合による第2の捕捉マーカーは、EV又はその膜結合部分の上に表示される組織特異的マーカーを含む。一実施形態において、第1の捕捉マーカー及び第2の捕捉マーカーはいずれも存在しており、第1の捕捉マーカーはEV特異的マーカーを含み、第2の捕捉マーカーは組織特異的マーカーを含み、これらが検出される。
【0018】
一実施形態において、生物学的試料中の細胞外小胞は、尿などの液体生検由来である。この生物学的試料は、液体生検プロトコルから獲得される。
【0019】
一実施形態において、生物学的試料は、組織、臓器、又は体液由来である。一実施形態において、生物学的試料は、膀胱細胞、腎細胞、全血、赤血球、血小板、血清、血漿、血清若しくは血漿以外の血液画分、リンパ液、脳脊髄液(CSF)、唾液、涙、膣分泌物、精液、腺分泌物、滲出液、嚢胞若しくは糞便の内容物、洗浄液、又は腹水由来の、EV又はその膜結合部分を含む。一実施形態において、生物学的試料は、腎臓の糸球体足細胞、曲尿細管、又は膀胱上皮、又は赤血球(RBC)由来の、EV又はその膜結合部分を含む。一態様において、生物学的試料は、尿試料である。一態様において、生物学的試料は、赤血球(RBC)試料である。
【0020】
一実施形態において、第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片は、第1の固体支持体へ結合しており、場合により第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片は、第2の固体支持体へ結合しており、検出抗体は、検出可能なマーカーへ結合している。一実施形態において、本明細書に開示される方法は、生物学的試料の一部を第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片及び第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含み、第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片及び第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片が、同じ支持体又は異なる支持体へ結合している。
【0021】
一実施形態において、検出可能なマーカーは、フルオロホア、色原体、及びビオチンからなる群から選択される。一実施形態において、検出可能なマーカーは、吸収極大が約500nm~約900nmの間、約600nm~約1000nmの間、又は約500nm~約1000nmの間にあり、且つ発光極大が約550nm~約900nmの間、約600nm~約1000nmの間、又は約550nm~約1100nmの間にあるフルオロホアである。一実施形態において、検出可能なマーカーは、ストレプトアビジンと結合した又は結合していないフィコエリトリン(PE)である。一実施形態において、検出可能なマーカーは、ストレプトアビジン-フィコエリトリン(SAPE)とともに使用するためのビオチンである。
【0022】
一実施形態において、第1及び第2の固体支持体は独立して、ナノ粒子、ミクロ粒子、ビーズ、磁気ビーズ、ナノ構造、組織培養プレート、シリカ、及びナノマトリックスからなる群から選択される。
【0023】
一実施形態において、第1のマーカーは、細胞外小胞関連タンパク質からなる群から選択され、場合により接触している第2のマーカーは、組織特異的細胞外小胞関連タンパク質からなる群から選択され、補体系関連構成要素は、(a)代替的な補体経路(AP)の構成要素、(b)従来の補体経路(CP)の構成要素、及び(c)レクチン補体経路(MBL)の構成要素からなる群から選択される。好ましい実施形態では、補体系関連構成要素は、(a)代替的な経路(AP)の構成要素、及び(b)従来の経路(CP)の構成要素からなる群から選択される。
【0024】
一実施形態において、補体系関連構成要素は、C1q、C1r、C1s、C2、C2a、C2b、C3、C3a、C3b、iC3b、C4、C4a、C4b、C5、C5a、C5b、C6、C7、C8、C9、C5b-9(膜攻撃複合体(MAC))、TF、CRP、pCRP、CD59、CD55、CR1、CR2、CR3、C5aR1、プロペルジン、H因子、H因子関連タンパク質、及びI因子からなる群から選択されるタンパク質である。
図11(Karasu,E.,et al.Frontiers in Immunology 9(721),2018から改作した画像)を参照されたい。
【0025】
一実施形態において、第1のマーカーは、ALIX、TSG101、CD9、CD63、CD81、CD40L、CD26、CD31、CD45、CD2、CD11a、CD24、CD55、CD59、CF106、CD56、CD51、CD82、インテグリン、テトラスパニン、アネキシン、HSP90、HSP70、シンテニン1、ADAM10、EHD4、アクチン、Rab5、クラスリン、フロチリン1、MHCI、MHCII、アクチニン4、GP96、EHD4、ミトフィリン、及びLAMP2からなる群から選択され、第2のマーカーは、ポドカリキシン(PODXL)、アクアポリン2(AQP2)、ウロプラキン1b(UPK1b)、ポドシン(NPHS2)、グリコホリンA(GYP A)、ムチン1、2型Na-K-2C1共輸送体(NKCC2)、アクアポリン1(AQP 1)、α-グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(アルファ-GST)、カルビンディン-D28K(CalD)、メガリン、キュビリン、ネフリン(Nphsl)、クローディン1、アネキシンV、シナプトポディン(Synpo)、ウィルム腫瘍タンパク質(Wtl)、バンド3、ストマチン(STOM)、BGP1、グロビン、グリコホリンB、Rhポリペプチド、及びRh糖タンパク質からなる群から選択され、補体タンパク質は、C3、C5b-9、C4、Clq、及びC9からなる群から選択される。
【0026】
一実施形態において、生物学的試料は、腎臓系由来のEVを含み、第2のマーカーは、ポドカリキシン(PODXL)、アクアポリン2(AQP 2)、ウロプラキン1b(UPK1b)、及びポドシン(NPHS2)からなる群から選択される腎臓特異的EVマーカーである。
【0027】
一実施形態において、試料は、赤血球(RBC)由来のEVを含み、第2のマーカーは、グリコホリンA(GYPA)から選択されるRBC特異的EVマーカーである。
【0028】
一実施形態において、試料は、第1のマーカーとしてのCD81に対して陰性である、第2のマーカーとしてのウロプラキン1B(UPK1B)に対して陰性である、又は第1のマーカーとしてのCD81及び第2のマーカーとしてのUPK1Bの両方に対して陰性であるEVを含む。
【0029】
一実施形態において、捕捉マーカー及び検出マーカーは、同じEV又はその膜結合部分の中に存在する。
【0030】
一実施形態において、方法はさらに、EV又はその膜結合部分の上にある補体経路の構成要素の存在又はレベルを対照と比較することを含む、対象が補体性疾患に罹患しているかどうか又は補体性疾患を発症するリスクがあるかどうかを判定することを含む。一実施形態において、対照は、健常対象者由来の同等の試料を含む。一実施形態において、方法は、対象から得られたEV又はその膜結合部分の上の補体経路の構成要素のレベル又は存在が、対照と比較して高い場合、すなわち、対象から得られたレベルが、補体性疾患と診断されていない対照対象由来の試料と比較して高い場合、対象が、補体性疾患に罹患していること又は補体性疾患を発症するリスクがあることを示す。
【0031】
本発明はさらに、対象における補体性疾患の診断又は予後評価のための方法であって、
(a)対象由来の細胞外小胞(EV)又はその膜結合部分を含む試料を得ることと、
(b)試料の一部を少なくとも1つの第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、EV又はその膜結合部分の上において第1のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(c)場合により、試料の一部を少なくとも1つの第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、EV又はその膜結合部分の上において第2のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(d)少なくとも1つの第1のマーカーと場合により少なくとも1つの第2のマーカーとを含む捕捉されたEV又はその膜結合部分を、補体系関連構成要素に特異的な少なくとも1つの検出抗体又はその抗原結合断片と接触させることと、
(e)検出抗体又はその抗原結合断片を定性的に又は定量的に検出して、EV又はその膜結合部分の上の補体経路の構成要素の存在又はレベルを測定し、対照と比較して、対象の試料における補体経路の構成要素の存在又はレベルが高いと、対象が補体性疾患に罹患している又は補体性疾患を発症するリスクがあることを示すことと
を含む、方法を提供する。
【0032】
本発明はまた、先に論議したステップ(a)~ステップ(e)を含む、対象が補体性疾患に罹患しているかどうか又は罹患しているリスクがあるかどうかを示す方法も提供する。
【0033】
一実施形態において、第1のマーカーは、EV特異的マーカー又はEV上に表示される組織特異的マーカーを含む。一実施形態において、第1のマーカーは、EV特異的マーカーを含み、第2のマーカーは、EV上に表示される組織特異的マーカーを含む。
【0034】
本発明はさらに、対象において補体モジュレーターを用いた補体性疾患の処置に対する応答を監視するための方法であって、
(a)処置の前及び後の対象由来の細胞外小胞(EV)又はその膜結合部分を含む試料を得ることと、
(b)試料の一部を少なくとも1つの第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、EV又はその膜結合部分の上において第1のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(c)場合により、試料の一部を少なくとも1つの第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、EV又はその膜結合部分の上において第2のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(d)少なくとも1つの第1のマーカーと場合により少なくとも1つの第2のマーカーとを含む捕捉されたEV又はその膜結合部分を、補体系関連構成要素に特異的な少なくとも1つの検出抗体又はその抗原結合断片と接触させることと、
(e)検出抗体又はその抗原結合断片を定性的に又は定量的に検出して、EV又はその膜結合部分の上の補体経路の構成要素の存在又はレベルを測定し、補体モジュレーターを用いた処置の前と比較して、補体モジュレーターを用いた処置の後の対象の試料における補体経路の構成要素の存在又はレベルが減弱していると、対象が補体モジュレーターに応答していることを示すことと
を含む、方法を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態において、補体モジュレーターは、表Aに列挙される分子である。好ましくは、補体モジュレーターは、C1q、C1、C1s、C2、MASP-2、MASP-3、D因子、B因子、プロペルジン(P因子)、H因子、C3/C5コンベルターゼ、C5、C5a/C5aR、C3a/C3aR、C6、及び/又はCD59から選択される補体構成要素の活性を調節する(例えば、上昇させる又は低減させる、好ましくは低減させる)分子である。特に、補体モジュレーターは、補体構成要素の小分子阻害剤、又は補体構成要素を標的とするsiRNA/RNAi、又は補体構成要素へ特異的に結合する抗体である。
【0036】
一実施形態において、補体メディエーターは、補体5(C5)阻害剤、補体5a(C5a)阻害剤、補体5受容体(C5R1)阻害剤、補体3(C3)阻害剤、D因子(FD)阻害剤、H因子(FH)阻害剤、B因子(FB)阻害剤、MASP2阻害剤、MASP3阻害剤、プロペルジン阻害剤、又はこれらの組み合わせである。
【0037】
一実施形態において、疾患は、炎症性疾患又は血栓性疾患である。一実施形態において、疾患は、血栓性血液学的疾患又は血栓性腎疾患である。一実施形態において、疾患は、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、C3糸球体症(C3G)、デンスデポジット病(DDD)、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、ループス腎炎(LN)、IgA腎症(IN)、ループス腎炎(LN)、膜性腎症(MN)、移植患者における血液透析による合併症、抗体関連型拒絶反応(AMR)、及び抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)からなる群から選択される腎疾患である。一実施形態において、疾患は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、実質臓器の移植又は造血性幹細胞の移植による二次性HUS、血栓性微小血管症(TMA)、及び寒冷凝集素症(CAD)からなる群から選択される血液学的疾患である。一実施形態において、疾患は、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、全身型重症筋無力症(gMG)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び原発性進行性多発性硬化症(PPMS)から選択される神経学的疾患である。
【0038】
一実施形態において、検出は、免疫検定法(例えば、ELISA又はRIA)、電子顕微鏡法(EM)、タンデムマスタグ(TMT)、発光アッセイ(例えば、LUMINEX)、又は蛍光免疫検定法(FIA)(免疫蛍光検定法(IF)とも呼ばれる)を含む。一実施形態において、検出ステップは、マルチプレックスフォーマットにおいて行われ、すなわち、検出は、1つの試料におけるいくつかの別個の組織中のマーカーを測定することによって、並びに/又は単一のアッセイにおける複数の有望な補体タンパク質及び補体経路を監視することによって行われる。
【0039】
本発明はさらに、対象の腎組織における補体活性化を検出する方法であって、
(a)細胞外小胞(EV)又はその膜の上に表示されるEV特異的マーカー又は組織特異的マーカーである第1のマーカーを含むEV又はその膜結合部分を含む、対象由来の尿試料を、第1のマーカーに特異的な第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させ、それにより、第1のマーカーを含有するEV又は膜を捕捉することと、
(b)場合により、尿試料を第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、第1のマーカーとは異なる第2の捕捉マーカーを含むEV又はその膜結合部分を捕捉することと、
(c)捕捉されたEV又はその膜結合部分の上の補体経路の構成要素の存在又はレベルを、この構成要素に特異的な抗体又はその抗原結合断片を用いて定性的に又は定量的に検出し、それにより尿試料における補体活性化を検出することと
を含む、方法であって、
EV特異的マーカーが、CD9、CD63、及びCD81からなる群から選択され、
組織特異的マーカーが、
(1)糸球体における足細胞に特異的なポドカリキシン(PODXL)、
(2)曲尿細管上皮に特異的なアクアポリン2(AQP2)、
(3)膀胱上皮に特異的なウロプラキン1b(UPK1b)、及び
(4)赤血球(RBC)に特異的なグリコホリンA(GYPA)
からなる群から選択され、並びに
補体経路の構成要素が、MAC、C3、C5b-9、C4、C1q、及びC9からなる群から選択される、方法を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態において、本開示は、補体調節について試験化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)補体性疾患に罹患している対象(例えば、マウス、ウサギ、ハムスター、ヒツジ、ラマ、イヌ、サル、チンパンジーなどの動物、又はヒト)への試験化合物の投与の前及び後の、この対象由来の細胞外小胞(EV)又はその膜結合部分を含有する試料を得ることと、
(b)試料の一部を少なくとも1つの第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、EV又はその膜結合部分の上において第1のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(c)場合により、試料の一部を少なくとも1つの第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、EV又はその膜結合部分の上において第2のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、
(d)捕捉されたEV又はその膜結合部分を、補体系関連構成要素に特異的な少なくとも1つの検出抗体又はその抗原結合断片と接触させることと、
(e)検出抗体又はその抗原結合断片を定性的に又は定量的に検出して、EV又はその膜結合部分の上の補体構成要素の存在又はレベルを測定し、試験化合物の投与前と比較した、試験化合物の投与後の対象の試料中の補体構成要素の存在又はレベルの調節(例えば、上昇又は低下、好ましくは低下)は、試験化合物が補体を調節することができることを示すことと
を含む、方法に関する。
【0041】
いくつかの実施形態において、試験化合物は、Clq、Cl、Cls、C2、MASP-2、MASP-3、D因子、B因子、プロペルジン(P因子)、H因子、C3/C5コンベルターゼ、C5、C5a/C5aR、C3a/C3aR、C6、及び/又はCD59から選択される補体構成要素を特異的に調節することができる。いくつかの実施形態において、試験化合物は、モノクローナル抗体又は低分子又はsiRNA/RNAiである。いくつかの実施形態において、試験化合物の調節活性は、表Aにおいて提供される分子など、補体調節活性を有する分子(例えば、陽性対照又は標準物質)の活性と比較される。
【0042】
本発明はさらに、少なくとも1つの第1の標的を捕捉するための少なくとも1つの第1の捕捉抗体の使用、少なくとも1つの第2の標的を捕捉するための少なくとも1つの第2の捕捉抗体の使用、及び捕捉された少なくとも1つの第1の標的の量、捕捉された少なくとも1つの第2の標的の量、又はその両方を検出するための補体タンパク質に特異的な少なくとも1つの検出抗体の使用を準備する。
【0043】
また、本明細書で説明されるようなバイオマーカーへ結合する1つ以上の抗体を含有するキットも提供される。本明細書で説明されるキットのいくつかの実施形態において、このキットは、免疫検定法、例えば、酵素結合免疫吸着検定法である。本明細書で説明されるキットのいずれかが、本明細書で説明される方法のいずれかを実行するために使用することができる。いくつかの実施形態において、このキットはさらに、本明細書で説明される方法のいずれかを実行するための説明書を含むことができる。かかるキットはまた、非限定例として、試料を調製する上で有用な試薬、細胞外小胞を濃縮するのに有用な試薬、固定された抗体への試料中の標的タンパク質又は構成要素の結合を検出するのに有用な試薬、精製された標的タンパク質/構成要素を含む対照試料、及び/又は使用のための説明書、のうちの1つ以上を含むこともできる。
【0044】
例えば、本明細書で説明される方法において有用なキットは、本明細書で説明されるようなバイオマーカーへ特異的に結合する1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15の)抗体又はその断片を含むことができる。例えば、このキットにおいて提供される1つ以上の抗体は、表面上に(例えば、ELISAアッセイ又は遺伝子チップアレイの形態で)固定することができる。
【0045】
特許又は出願のファイルは、カラーで描かれた少なくとも1つの図面を含有する。カラーの図面を伴う本特許又は本特許出願の複写は、申請及び必要な料金の支払いを行うと、特許庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1A】
図1のパネル(A)及びパネル(B)は、NTAによる尿ExoQuick Enrichment中のEVマーカーの相対量を示す。抗体はすべてBiolegend製であり、Ms-α-CD9=PE、クローンHI9a、Ms-α-CD63=PE、クローンH5C6、Ms-α-CD81=PE、クローン5A6であって、Particle Metrix GmbHによるZetaView PMX110において分析を実施。
【
図1B】
図1のパネル(A)及びパネル(B)は、NTAによる尿ExoQuick Enrichment中のEVマーカーの相対量を示す。抗体はすべてBiolegend製であり、Ms-α-CD9=PE、クローンHI9a、Ms-α-CD63=PE、クローンH5C6、Ms-α-CD81=PE、クローン5A6であって、Particle Metrix GmbHによるZetaView PMX110において分析を実施。
【
図2】
図2は、尿EV(A)及び非EV粒子(B)の電子顕微鏡画像を示す。
【
図3】
図3は、電子顕微鏡画像物体におけるフェレット径の分布を示す。
【
図4】
図4は、PSMによる上位25のタンパク質の相対量を示す。
【
図5】
図5は、Luminexによる尿EV部分セットの検出を示す。CD9:クローンMM2/57(Southern Biotech)、CD63:クローンH5C6(Biolegend)、CD81:クローン1D6(Abcam)、Ms IgG:クローンMG1-45(Biolegend)。
【
図6】
図6は、腎PODXLが、CD9+EVにおいてのみ検出されることを示す。(1):Rb-α-PODXL:USBカタログ番号212672-ビオチン、(2):Rb-α-PODXL:LSBioカタログ番号LS-C141161。
【
図7】
図7は、Luminexビーズが、糸球体特異的EVを特定することができることを示す。Rb-α-PODXL(USB212672)は、CD9又はCD40Lを含有するEV上で検出することができるが、CD63又はCD81を含有するEV上では検出することができない。シグナルが、2つの異なるα-PODXL抗体を用いて認められた。このことは、両方のタンパク質が同じ構造上にある場合にのみ生じ得る。
【
図8】
図8は、ネフロン特異的EVレベルが、疾患に伴い上昇することを示す。対照の尿中よりもIgAN尿中でPODXL+EVが多い。上昇は、CD9+/PODXL+及びCD40+/PODXL+EVの両集団においてみられる。CD63+及びCD81+EVはなお陰性である。
【
図9】
図9のパネル(A)及びパネル(B)は、LuminexビーズがEV膜上で補体を測定することができることを示すグラフを示す。C3c及びC5b-9は、CD9+及びPODXL+の両ビーズ上でLN患者の尿中で検出されるが、CD63+又はCD81+の上では検出されない。これらの結果は、10のLN、6のIgAN、及び7の対照試料において確認された(データは示されていない)。LN及びIgANの両試料は、対照試料と比較してPODXL+及びAQP2+の両EVの上でC3、C5b-9、C4、及びC1qの沈着を有し得るが、これらに限定されない。
【
図10-1】
図10のパネル(A)、パネル(B)、及びパネル(C)は、ラブリズマブ処置に伴う糸球体C5b-9沈着の低下を示すグラフを示す。aHUS患者は、足細胞膜上に沈着するC3、C5b-9、C1q、及びC4(示されていない)のうちのいずれかの組み合わせを服用してよい。C3は、ラブリズマブ処置中、変化しない。EV上のC5b-9及びC1qのレベルは、ラブリズマブ処置中、迅速に低減する。
【
図10-2】
図10のパネル(A)、パネル(B)、及びパネル(C)は、ラブリズマブ処置に伴う糸球体C5b-9沈着の低下を示すグラフを示す。aHUS患者は、足細胞膜上に沈着するC3、C5b-9、C1q、及びC4(示されていない)のうちのいずれかの組み合わせを服用してよい。C3は、ラブリズマブ処置中、変化しない。EV上のC5b-9及びC1qのレベルは、ラブリズマブ処置中、迅速に低減する。
【
図12】
図12は、ビーズ蛍光系検定法を用いたEV濃縮尿試料の分析からのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
定義
「約」という語は、その値のプラス10%又はマイナス10%の範囲を意味し、例えば、「約5」は4.5~5.5を意味し、本開示の文脈が、別段に示さない限り、又はかかる解釈と矛盾しない限り、そうである。例えば、「約49、約50、約55」など数値の列挙において、「約50」は、その前の値とその後の値との間隔の半分に至らない範囲、例えば、49.5よりも大きく52.5よりも小さいことを意味する。
【0048】
値の範囲が本開示において提供される場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値、及びその記載された範囲内のいずれかの他の記載された値又は介在値が、本開示内に包含されることは意図される。例えば、1mM~8mMの範囲が記載されている場合、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、及び7mMもまた、明白に開示されることが意図されている。
【0049】
本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれより多数であり得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「検出すること」という用語は、試料中の1つ以上のパラメータの測定によって試料と関係する1つの値、又は複数の値からなる1つのセットを決定するプロセスを指しており、さらに、試験試料を基準試料と比較することを含んでもよい。本開示に従って、補体マーカーの検出には、1つ以上のマーカーを同定すること、アッセイすること、測定すること、及び/又は定量することを含む。
【0051】
「細胞外小胞」という語によって意味されるのは、対象から得られた試料(例えば、生物学的流体)中に存在する、脂質系のミクロ粒子若しくはナノ粒子、又は高タンパク質凝集体である。細胞外小胞はまた、当該技術分野及び本明細書でエキソソーム、ミクロ小胞、又はナノ小胞とも称される。本開示において、細胞外小胞は、直径約30nm~約1000nmの間である。細胞外小胞は、様々な異なる哺乳動物細胞型から分泌され又は脱粒する。細胞外小胞の非限定例、及び哺乳動物対象から得られる試料(例えば、生物学的流体)から細胞外小胞を濃縮するための方法の非限定例が、本明細書で説明される。細胞外小胞の追加の例、及び哺乳動物対象から得られる試料から細胞外小胞を濃縮するための方法の追加の例は、当該技術分野で公知である。
【0052】
「膜結合」という用語は、生物学的膜、すなわち、半透性遮蔽を形成する細胞及び小器官の外側被覆を含有するいずれかの構造を意味する。この用語は典型的には、外側の細胞膜に由来する、又はゴルジ装置、小胞体、核、若しくはミトコンドリアなど小器官に由来する、リン脂質及びタンパク質を含有する構造を指す。
【0053】
本明細書で使用されるような「膜タンパク質」という用語は、EVの生物学的膜の一部と相互作用する、又は当該一部である、タンパク質を指す。膜タンパク質には、内在性膜タンパク質及び表在性膜タンパク質があり得るがこれらに限定されない。
【0054】
本明細書で使用されるような「疾患特異的膜タンパク質」という用語は、特定の疾患、例えば、aHUSなど補体性疾患に関係する膜タンパク質を指す。この疾患特異的膜タンパク質は、個々に疾患をコードし得、或いは疾患特異的膜タンパク質の群が疾患をコードし得る。
【0055】
「試料」又は「生物学的試料」という用語が意味するのは、哺乳動物対象から得られるいずれかの生物学的流体(例えば、血液、血漿、血清又は他の血液画分、リンパ液、尿、脳脊髄液、腹水、唾液、母乳、涙、膣分泌物、羊水、洗浄液、精液、腺分泌物、滲出液、嚢胞又は糞便の内容物)である。好ましい実施形態において、この試料は、血液、血清、又は血漿を含む。
【0056】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、抗原、例えば、補体タンパク質に対する高い結合親和性を有する抗体、又はその機能的な部分若しくは断片を意味する。この用語は、最も広範な意味で使用され、一本鎖可変断片(scFv)、及び単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片を含む断片抗原結合(Fab)断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fv断片、組換えIgG(rIgG)断片、一本鎖抗体断片を含む、インタクトな抗体及び機能的(抗原結合)抗体断片を含むポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含む。この用語は、IgG及びその下位クラス、IgM、IgE、IgA、並びにIgDを含む、いずれかのクラス又は下位クラスの天然抗体、遺伝子操作された抗体、並びに/又はその他の改変抗体を包含する。
【0057】
「抗原」という用語は、抗体又はその抗原結合断片へ特異的に結合することができるいずれかの分子、例えば、タンパク質又はその断片を指す。
【0058】
「抗原断片」という用語は、抗原特異的抗体によって認識されることができる抗原の一部を指す。
【0059】
「ビーズ」は、所望の捕捉抗体が固定された粒子を指す。このビーズは概して、単一の濾過マトリックス内で均一の大きさであるが、異なる濾過マトリックス間で約1nm~約10,000nmの範囲の大きさで様々であってよい。好ましい形状は球形であるが、いずれかの他の形状の粒子を採用することができ、その理由は、このパラメータが本発明の性質に重要ではないからである。
【0060】
「ストリップ」は、所望の捕捉ビーズ又は所望の捕捉抗体が固定された細長い平らな要素を指す。ストリップは概して、大きさが均一の薄いフィルムであるが、固定される捕捉抗体の量及びタイプに応じて、大きさ及び色が様々であってよい。
【0061】
「マルチプレックス」という用語は、単一の試料にわたる複数のマーカーの検出、及び/又は複数の試料にわたる少なくとも1つのマーカーの検出を指す。
【0062】
本明細書で使用されるような「マルチプレックスビーズアレイプラットフォーム」という用語は、識別可能な粒子又はミクロ粒子を利用するいずれかのプラットフォームを指す。かかる識別可能な粒子は、例えば、マルチプレックス免疫検定法又は分子プローブ系アッセイを行うために利用され得る。代表例としては、Luminex(登録商標)xMAP(登録商標)Technologyがある。
【0063】
本明細書で使用されるような「分類色素」という用語は、機器が粒子を選別及び分類することができる分類色素の混合物を有する、マルチプレックスアッセイにおいて使用されるミクロ粒子又はビーズのいずれかの混合物又は組み合わせを指す。
【0064】
「レポーター分子」という用語には、アッセイにおいて検出分子へ結合するありとあらゆる蛍光タグを含むが、これらに限定されない。ヒト抗体を測定するよう設計された免疫検定法の場合、検出分子は、例えば、フィコエリトリンで標識されたヤギ抗ヒトIgGであり得る。
【0065】
補体活性化と関係する生物学的活性の簡潔な要約は、例えば、The Merck Manual,16th Editionにおいて提供されている。
【0066】
本明細書で使用されるような「対象」は、いずれかの哺乳動物であり得る。対象は、例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル、ヒヒ、又はチンパンジー)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、アレチネズミ、ハムスター、ラット、又はマウスであり得る。形質転換動物又は遺伝子改変(例えば、ノックアウト又はノックイン)動物が含まれる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「予防の必要のある」、「処置の必要ある」、又は「その必要のある」対象は、適切な医療従事者(例えば、医師、看護師、又はヒトの場合、看護実務者、非ヒト哺乳動物の場合、獣医)の判断によって、補体性疾患又は補体性障害を処置するための所与の処置、すなわち、特定の治療薬から合理的に利益があるであろうものを指す。
【0068】
「補体構成要素」又は「補体タンパク質」とは、補体系の活性化に関与する、又は1つ以上の補体介在性活性において参画する分子である。従来の補体経路の構成要素には、例えば、C1q、C1r、C1s、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9及びC5b-9複合体があり、これらは、膜攻撃複合体(MAC)及び上述のいずれかの活性断片又は酵素開裂産物とも称される(例えば、C3a、C3b、C4a、C4b、C5aなど)。代替的な経路の構成要素には、例えば、B因子、D因子、H因子、及びI因子、並びにプロペルジンがあり、H因子並びにI因子は、当該経路の負の調節因子である。レクチン経路の構成要素には、例えば、MBL2、MASP-1及びMASP-2がある。補体構成要素にはまた、可溶性補体構成要素のための細胞結合受容体もある。かかる受容体には、例えば、C5a受容体(C5aR1及びC5aR2)、C3a受容体(C3aR)、補体受容体1(CR1)、補体受容体2(CR2)、補体受容体3(CR3)などがある。「補体構成要素」という用語が、補体活性化のための「トリガ」として機能するこれらの分子及び分子構造、例えば、抗原-抗体複合体、又は微生物表面若しくは人工表面などの上に認められる外来構造を含むよう意図するものではないことは理解されるであろう。この用語には、いずれかの補体調節タンパク質(例えば、B因子、D因子、P因子、H因子、I因子、CD46、CD55、及びCD59)が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書で使用されるような「処置すること」は、処置を提供すること、すなわち、対象のいずれかの種類の医学的管理又は外科的管理を提供することを指す。この処置は、障害若しくは容態の進行を逆転させる、緩和する、阻害する、障害若しくは容態の確度を防止する若しくは低減させる、又は障害若しくは容態の1つ以上の症状若しくは症状発現の進行を逆転させる、緩和する、阻害する、若しくは防止する、障害若しくは容態の1つ以上の症状若しくは症状発現の確度を防止する若しくは低減させるために提供することができる。「防止する」は、少なくともいくつかの個体においてかかる障害若しくは容態、又は症状若しくは症状発現を少なくともある期間生じさせないことを指す。処置することは、補体性容態を示す1つ以上の症状又は症状発現の発症後に、治療薬/補体モジュレーターを対象へ投与して、例えば、容態の重症度を逆転させる、緩和する、低減させることができ、及び/又は容態の進行を阻害する若しくは防止することができ、及び/又は容態の重症度を逆転させる、緩和する、低減させることができ、及び/又は容態の1つ以上の症状若しくは症状発現を阻害することができる。本明細書で説明される方法によると、組成物/補体モジュレーターは、補体性疾患若しくは補体性容態を発症した、又は一般的な集団のメンバーと比較して、かかる障害を発症するリスクが高い、対象へ投与することができる。かかる組成物/モジュレーターは、予防として、すなわち、容態のいずれかの症状又は症状発現の発症の前に投与することができる。典型的には、この場合、対象は、補体活性化組成物、例えば、治療薬を封入した粒子又はナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子など、によって送達される遺伝子療法又は治療薬において使用されるウイルス粒子へ曝露されると、容態を発症させるリスクがあるであろう。
【0070】
治療薬又は補体モジュレーターなど活性のある作用薬の「有効量」は、所望の生物学的応答を惹起するのに(又は、等価に、望ましくない生物学的応答を阻害するのに)十分な、活性のある作用薬の量を指す。有効である特定の作用薬の絶対量は、所望の生物学的評価項目、送達される作用薬、標的組織などの因子に応じて変わり得る。「有効量」は、単回用量で投与され得、又は複数回用量の投与によって達成され得る。治療薬の有効量は、例えば、障害の少なくとも1つの症状を軽減するのに十分な量であり得る。有効量は、慢性的且つ進行性の障害の進行を遅滞させて、例えば、障害の1つ以上の症状若しくは徴候それ自体を顕在化させる前の時間を延長させるのに、又は障害に罹患している個体がある特定のレベルの悪化に到達するまでの時間を延長させるのに十分な量であり得る。有効量は、この作用薬の非存在下で生じるであろう損傷からより迅速に又はより大きく回復させることができるのに十分な量であり得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、「診断」という用語は、補体性疾患を含むがこれに限定されない所与の疾患又は容態に対象が罹患している可能性があるかどうかの判断を下すことができる方法を指す。当業者は、1つ以上の診断指標、例えば、マーカーを基に診断を行うことが多く、その存在、非存在、量、又は量の変化は、疾患又は容態の存在、重症度、又は非存在を示す。他の診断指標には、患者の病歴、身体的な症状、例えば、生命事象又は表現型、遺伝子型、又は環境因子若しくは遺伝的因子の不明な変化を含むことができる。当業者は、「診断」という用語が、ある特定の経過又は結果が生じるであろう確率が高いこと、すなわち、経過又は結果が所与の特徴、例えば、診断指標の存在又はレベルを呈する患者において生じる可能性が、その特徴を呈さない個体と比較すると大きい確率が高いことを指す。本開示の診断方法は、独立して、又は他の診断方法と組み合わせて使用して、経過又は結果が、所与の特徴を呈する患者において生じる可能性がより高いかどうかを判定することができる。
【0072】
「確度」という用語は、本明細書で使用される場合、概して、確率、相対的な確率、存在若しくは非存在、又は程度を指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、「マーカー」という用語は、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、又は治療介入に対する薬理学的応答、例えば、補体阻害剤を用いた処置、の指標として客観的に測定することができる特徴を指す。マーカーの代表的なタイプには、例えば、マーカーのレベル、濃度、活性、又は特性の変化を含む、マーカーの構造(例えば、配列又は長さ)又は数の分子レベルの変化を含む。
【0074】
「対照」という用語は、本明細書で使用される場合、健常細胞から単離された対照EV及びこれに類するものなど、試験試料についての参照を指す。「参照試料」は、本明細書で使用される場合、比較のために使用される、疾患を有していても有していなくてもよい組織又は細胞の試料を指す。したがって、「参照」試料はこれにより、別の試料、例えば、EVを含有する尿試料を比較することができる基点を提供する。対照的に、「試験試料」は、参照試料と比較される試料を指す。参照試料は、参照試料及び試験試料が同じ患者から時間によって分離されて得られたときなど、疾患非含有である必要はない。
【0075】
「レベル」という用語は、特定の分子種の存在を示す、二進法の(例えば、非存在/存在)、定性的な(例えば、非存在/低/中/高)、又は定量的な情報(例えば、数、頻度、又は濃度に比例した値)を指すことができる。
【0076】
「実質的に」という用語は、意図した目的に対して作用するのに十分であることを意味する。したがって、「実質的に」という用語は、当該技術分野の当業者が期待するであろうような、しかし、全体的な成績に明らかに影響を及ぼすことがない(例えば、±10%)、絶対的な又は完全な状態、寸法、測定、結果、又はこれらに類するものからのわずかな、有意ではない変化を許容する。
【0077】
「補体性」障害又は「補体性」疾患という用語は、対象の自己保護機序(例えば、CD55(崩壊加速性因子)、CD59(プロテクチン)、H因子、及びこれらに類するものを含む、自己保護タンパク質)を超越する、且つ対象の細胞及び/又は組織に対して損傷を生じる補体活性化を包含する障害を指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、疾患又は障害についての「リスクがある」という用語は、特定の疾患に易罹患性である対象(例えば、ヒト)を指す。この易罹患性は、遺伝的であり得る(又は他の因子(例えば、環境条件、高血圧、活性レベル、メタボリックシンドロームなど)により得る)。したがって、本開示が、いずれかの特定のリスクに限定されるべきであることが意図されておらず、本発明が補体に関するいずれかの特定の種類の障害又は機能不全(例えば、aHUS)に限定されるべきであることも意図されていない。
【0079】
様々な補体性疾患に罹患している患者において処置応答を診断及び/又は監視するための非侵襲性、高感度且つ特異的な試験としての非侵襲性液体生検プロトコル由来の細胞外小胞を用いるための方法が本明細書で提供される。免疫沈降/免疫分析を用いてEV表面マーカーを単離及び分析する治療介入の前、その間、及びその後のEV上での表面補体の発現を監視するための半定量法が説明されている。これらの方法は、インビボ活性のためのサロゲートとしての補体の沈着のエクスビボ監視のためにEVをうまく活用することができる。したがって、これらの方法を用いて、研究者及び医師は、ツールを用いて、腎臓の複数の領域など別個の特定可能な組織の補体攻撃を、処置の経過の間、直接的に監視する。
【0080】
生検は、補体性疾患の部分セットの差次的診断のための現行標準である。しかしながら、重症の合併症についてのリスクは、患者の選別及び試験の頻度を制限する。細胞外小胞は、処置前及び処置中、特定の組織において進行中の補体沈着を監視するための容易に接近可能な機会を提供する。細胞外小胞はまた、組織の補体攻撃の正確な細胞レベルの特定も提供することができる。独特なPMマーカーを備えた目的のいずれかの細胞型又は組織は、補体沈着を調べるために使用され得る。
【0081】
免疫沈降/免疫分析
本開示の免疫沈降/免疫分析は、補体攻撃の下にある特定の組織を正確に示すことができ、且つ処置応答を監視することができる、免疫蛍光検出を用いたビーズ系免疫捕捉プロトコルを使用する。この技術は、正しいセットの抗体ツールを与えられたいずれかの液体マトリックスにおいて補体攻撃の下にあるいずれかの臓器又組織を監視するよう広範に適用することができる。本明細書で論議される方法の一態様は、EV濃縮と、脱粒したEVの表面上に存在する組織特異的バイオマーカーの免疫捕捉との組み合わせである。捕捉バイオマーカーは、正準EV特異的タンパク質(CD9、CD63、CD81など)又は組織特異的タンパク質のいずれかであり得る。検出抗体は、C5b-9、C3、C4、C1q、及びC9など、補体構成要素に特異的である。尿中の組織特異的標的の例としては、糸球体における足細胞に特異的なポドカリキシン(PODXL)、曲尿細管上皮に特異的なアクアポリン2(AQP2)、又は膀胱上皮に特異的なウロプラキン1b(UPK1b)がある。更なる態様は、捕捉標的及び検出標的が同じ構造上に存在するときに正のシグナルが生じるのみであり得ることである。
【0082】
例えば、腎生検は、慢性腎疾患の差次的診断のための現行標準である。しかしながら、腎生検は、侵襲的手順である。しかしながら、尿中細胞外小胞(uEV)は、ネフロンのすべての部分を含む腎臓系に沿ったあらゆる細胞型を起源とする、小胞とバイオマーカーとからなる複合体の源である。例えば、PODXLは、糸球体における足細胞上でのみ作られ、AQP2は、近位曲尿細管及び遠位曲尿細管に由来し、RBC由来のグリコホリンA(GYPA)は、血漿から濾液へのEV漏出を測定するために使用することができる。炎症又は悪性腫瘍など、ある特定の病状は、細胞によって脱粒されるuEVの数を増加させる。正準EVマーカーとともに、uEVは、腎臓系の「健康状態」への新規の洞察を提供し得る、親細胞に由来する原形質膜結合タンパク質を運搬する。
【0083】
実施例の節及び他の個所において、本開示の様々な実施形態を行う上で有用である抗体の代表的なタイプが、例えば、特定の販売業者及び/又はカタログ番号に関する情報とともに提供される。本開示が、特定の販売業者/製造元からの抗体検出試薬を利用する例示的な実施形態に限定されないことは、理解されるべきである。本開示のバイオマーカー/分析物に対する抗体は、Biolegend(San Diego,CA)、Southern Biotech(Birmingham,AL)、United States Biological(USB)(Salem,MA)、Lifespan Biosciences(LSBIO)(Seattle,WA)、Abcam(Cambridge,United Kingdom)、Cell Signaling Technology(Danvers,MA)、及びSigma-Aldrich(St.Louis,MO)を含むいずれかの製造元から得ることができる。例えば、ウサギ抗PODXL抗体は、USB(カタログ番号212672)、LSBIO(カタログ番号LS-C141161)、Abcam(カタログ番号ab205350)及びSigma-Aldrich(カタログ番号HPA002110)から購入することができ、抗CD9抗体のクローンMM2/57は、Southern Biotech(カタログ番号9310)、EMD Millipore(カタログ番号CBL162)、VWR(カタログ番号89366)、及びBIO RAD(カタログ番号MCA469G)から購入することができる。抗体はまた、従来技術、例えば、マウス若しくはウサギなどの哺乳動物の免疫化及び/又はハイブリドーマ技術を用いても生成され得る。
【0084】
EVの特徴づけ
細胞外小胞(EV)は、尿中細胞外小胞(uEV)など、同時の免疫沈降/免疫分析、すなわち、Luminex(登録商標)xMAP(登録商標)Technologyプラットフォームによって特徴づけられることができ、表面の表現型及びEVの部分セットの組織起源を判定するために問い合わせシグナルを与えることができる。
【0085】
Luminex Corporation(登録商標)は、装置及び、免疫沈降を多重免疫検定法と組み合わせるxMAP(商標)技術を作っている。xMAP(商標)は、捕捉抗体で被覆することができる一連の専売の色分けされたミクロスフェアである。開放アーキテクチャのxMAP(商標)技術は、ELISA、ウエスタンブロット法、PCR、及び従来のアレイなど、従来の方法を上回る生物学的試験(アッセイ)の多重化、時間、労力、及び経費の削減ができる。xMAP(商標)技術を用いたシステムは、ミクロスフェアとして公知の色分けされたビーズの表面上で別個のアッセイを行い、次に、コンパクトな解析装置において読み取る。複数のレーザ又はLED及び高速デジタル信号プロセッサを用いて、解析装置は、各個々のミクロスフェア上で生じる反応を報告することによって、多重アッセイ結果を読み取る。
【0086】
Luminexプラットフォームを用いることで、免疫検定法の前に免疫沈降によるEV濃縮が可能となる。このことは、最初の試料加工/EV濃縮についての必要性を取り除き、したがって、潜在的な誤結果を制限する。
【0087】
多重化フォーマットを用いることで、1つの試料上のいくつかの個別の組織の監視が可能となる。多重ウェルプレートフォーマットにおいて作業することで、複数の潜在的な補体タンパク質と、1つのアッセイにおける複数の潜在的な補体タンパク質及び補体経路の監視が可能となる。
【0088】
概して、捕捉ビーズは、標的特異的抗体へ結合している。結合したビーズは、マトリックスからの(例えば、尿など液体試料からの)標的タンパク質を免疫沈降させるために使用される。フィコエリトリン(PE)又はビオチン+ストレプトアビジン-フィコエリトリン(SAPE)などの標識へ結合した検出抗体は、分析中にビーズ捕捉標的を検出及び定量するために使用される。
【0089】
CD9、CD63、及びCD81など、正準小胞マーカーに対する抗体を用いて被覆されたxMAPビーズのアレイは、尿など、生物学的試料由来の別個のEV部分セットを濃縮するために使用される。各ビーズセットは次に、部分セットの表現型を規定し、組織起源に結びつける他のバイオマーカーの存在について解析し、次に、補体経路タンパク質の存在についてさらに解析する。このように、非侵襲的「液体生検」法は、差次的診断、予後評価、及び/又は処置に対する応答の縦断的な監視について、特定の組織(腎臓など)の疾患のカギとなるバイオマーカーを試料採取及び監視するために構築される。
【0090】
標的タンパク質の結合
溶液中の又はアレイ上に固定された抗体に対する標的タンパク質の結合は、当該技術分野で公知の検出技術を用いて検出することができる。かかる技術の例としては、競合的結合アッセイ及びサンドイッチアッセイなどの免疫学的技術、共焦点スキャナ、共焦点顕微鏡、又はCCD系システムなどの機器を用いた蛍光検出、蛍光、蛍光偏光(FP)、蛍光共鳴エネルギー転移法(FRET)、全内反射蛍光(TIRF)、蛍光補正分光法(FCS)などの技術、比色/分光法技術、表面に吸着された材料の質量の変化を測定することができる表面プラズモン共鳴法、従来の放射性同位体結合及びシンチレーション近接アッセイ(SPA)を含む、放射性同位体を用いる技術、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)、HPLC-MS、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化質量分析(MALDI)及びMALDI飛行時間型(TOF)質量分析などの質量分析、タンパク質フィルムの厚さを測定するための光学的な方法である偏光解析法、表面に吸着する材料の質量を測定するための非常に高感度な方法である水晶微量天秤(QCM)、原子力顕微鏡(AFM)及び走査型電子顕微鏡(SEM)などの走査型プローブ顕微鏡、並びに電気化学的検出、インピーダンス検出、音響検出、マイクロ波検出、及び赤外線(IR)/ラマン検出などの技術がある。
【0091】
補体の阻害/調節の測定
いずれかの適切な方法は、補体活性化(又はいずれかの他の関連特性)を阻害する作用因子又は作用因子を含有する組成物の能力を評価するために使用することができる。いくつかのインビトロアッセイを使用することができる。従来の又は代替的な補体経路を阻害する作用因子の能力は、例えば、作用因子の有無の下で赤血球(例えば、抗体感受性又は非感受性ウサギ又はヒツジ赤血球)の補体介在性溶血をヒト血清又は1セットの補体構成要素によって測定することによって評価することができる。C3、C5、C6、C7、C8、C9、B因子又はD因子など1つ以上の補体構成要素へ結合する作用因子の能力は、例えば、等温滴定熱量測定法又は液相中で行うのに適した他の方法を用いて評価することができる。補体構成要素へ結合する作用因子の能力は、例えば、ELISAアッセイを用いて測定することができる。他の使用方法としては、表面プラズモン共鳴、平衡透析などがある。
【0092】
インビトロ又はインビボで起こる全身性又は局所性補体活性化を測定するための方法、及びかかる活性を阻害する補体阻害因子の能力を決定するため方法は、当該技術分野で公知である。C3a、C5a、C3bBb、C5b-9など補体活性化産物の測定は例えば、補体活性化の程度の示度を提供する。かかる産物の量の低下は、補体活性化の阻害を示す。いくつかの実施形態において、活性のある開裂産物とその不活性デスアルギニン(desArg)形態との比が測定される(例えば、C3a/C3adesArg)。当業者は、ジモサン、リポ多糖、免疫複合体など測定される補体活性化産物及び/又は補体の適切な活性化因子の適切な選択によって、従来の経路と、代替経路と、レクチン経路とを識別することができる。他の方法は、終末複合体形成の結果としての赤血球の補体性溶血を測定することを包含する。
【0093】
インビボでの補体活性化及び/又は補体阻害因子によるその阻害は、適切な生物学的試料において測定することができる。全身性補体活性化及び/又は補体阻害因子によるその阻害は、例えば、血液試料中で測定することができる。補体阻害因子の投与前に開始する連続測定は、補体阻害因子が補体活性化を阻害する程度の示度、並びに阻害の時間経過及び持続時間を提供する。活性化産物の低下は、補体阻害因子の投与の前に存在する活性化産物が分解又は除去されると、明らかとなるに過ぎない可能性があることは認識されるであろう。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書で説明される補体調節因子は、対象における補体性障害を処置又は治療するのに有用な、追加の活性のある作用因子とともに製剤することができる。対象における補体性障害を処置するための追加の作用因子としては、抗高血圧薬(例えば、アンギオテンシン変換酵素阻害剤)、抗凝固薬、コルチコステロイド(例えば、プレドニソン)、又は免疫抑制薬(例えば、ビンクリスチン又はシクロスポリンA)、抗凝固薬(例えば、ワルファリン(クマジン)、ヘパリン、フェニンジオン、フォンダパリヌックス、イドラパリヌックス)、トロンビン阻害薬(例えば、アルガトロバン、レピルジン、ビバリルジン、又はダビガトラン)、線維素溶解薬(例えば、アンクロッド、ε-アミノカプロン酸、抗プラスミン薬a1、プロスタサイクリン、及びデフィブロチド)、脂質低下薬、又はリツキシマブなどの抗CD20薬があるが、これらに限定されない。
【0095】
比較法
本明細書で説明されるいくつかの実施形態において、方法は、補体バイオマーカーの検出されたレベルを参照レベルと比較することを含む。いくつかの実施形態において、参照は、健常対照、すなわち、補体性疾患と診断されなかった対象におけるバイオマーカーのレベルを表す。いくつかの実施形態において、参照レベルは、参照コホートにおける中央値又はカットオフ値レベル、例えば、統計的に有意に異なる群を規定するカットオフ値、例えば、参照コホートの上位又は下位の三分位数、四分位数、五分位数、又は他の百分位数である。
【0096】
検出されるタンパク質バイオマーカーの同一性に応じて、参照レベルを上回る又は下回るレベルは、疾患の存在又は高いリスクを示し得、すなわち、高いレベル(すなわち、参照を上回るレベル)又は低いレベル(すなわち、参照を下回るレベル)は、疾患の存在又は低下を示す。
【0097】
いくつかの実施形態において、参照レベルを上回る高いレベルは、統計的に有意であり、又は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%、若しくは1000%高い。上昇は、本明細書で説明されるように、閾値又はベースライン値(例えば、タンパク質の有無を決定するためのアッセイの閾値検出レベル、又は参照対象(例えば、健常参照)における参照タンパク質の参照レベルとの比較によって決定することができる。いくつかの実施形態において、参照レベルを下回る低いレベルは、統計的に有意であり、又は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、若しくは95%低い。低下は、本明細書で説明されるように、閾値又はベースライン値(例えば、タンパク質の有無を決定するためのアッセイの閾値検出レベル、又は参照対象(例えば、健常参照対象又は補体性疾患に罹患していない対象)におけるタンパク質の参照レベルとの比較によって決定することができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、方法は、対象試料におけるタンパク質バイオマーカーのレベルと参照レベルとの比を計算することと、この比が閾値比よりも大きな場合、対象は本明細書で説明されるような補体性疾患に罹患している又はこの補体性疾患を発症するリスクがあると判定することと、を含む。いくつかの実施形態において、比が正か負かを判定され、正又は負の比の存在は、対象が本明細書で説明されるような補体性疾患に罹患していること又はこの補体性疾患を発症するリスクがあることを示す。なお、正の比又は負の比が疾患の存在、又は高いリスク若しくは低いリスクを示しているのかは、本明細書の本開示により容易に判定することができる。
【0099】
補体系は、病原体の除去において免疫系を支援するよう機能する生化学的カスケードへと組織化されたいくつかの小さなタンパク質から構成される。補体タンパク質は、不活性前駆体として血中を循環している。いくつかのトリガの1つによって刺激されると、この系におけるプロテアーゼは、特異的なたんぱく質を開裂させて、サイトカインを放出し、更なる開裂のカスケードの増幅を開始する。
【0100】
補体活性化の測定
インビトロ又はインビボで生じる全身性又は局所性の補体活性化を測定するための方法は、当該技術分野で公知である。C3a、C5a、C3bBb、C5b-9などの補体活性化産物の測定は、例えば、補体活性化の程度の示度を提供する。かかる産物の量の低下は、補体活性化の阻害を示す。いくつかの実施形態において、活性のある開裂産物とその不活性desArg形態との比が測定される(例えば、C3a/C3a desArg)。当業者は、ジモサン、リポ多糖、免疫複合体など測定される補体活性化産物及び/又は補体の適切な活性化因子の適切な選択によって、従来の経路と、代替経路と、レクチン経路とを識別することができる。他の方法は、終末複合体(MAC)形成の結果としての赤血球の補体性溶血を測定することを包含する。
【0101】
補体性応答の1つ以上の特徴を模擬する病理学的特徴を有するいくつかの異なる動物モデルは、当該技術分野で公知である。補体性疾患の処置のための補体モジュレーターの適用は、障害を呈する、又は適切なプロトコルへ供することによって障害が実験的に誘発された、マウス、ラット、イヌ、霊長類などへ様々な用量で投与することができる。この障害の1つ以上の徴候又は症状を予防又は処置するモジュレーターの能力は、標準的な方法及び基準を用いて評価される。
【0102】
許容され得る安全性や、ヒト対象における関連する小胞外の場所において補体性疾患を有効に処置すると期待される用量を投与する実行可能性など、動物試験において有望な結果を示す化合物又は補体モジュレーターは、例えば、試験下の特定の障害のための療法についての臨床試験のための標準プロトコル及び評価項目を用いて、ヒトにおいて検査され得る。
【0103】
上述の組成物は、とりわけ、対象における様々な補体関連障害を処置又は予防するための方法において有用である。この組成物は、対象、例えば、ヒト対象へ、投与経路に部分的に依存する様々な方法を用いて投与することができる。この経路は、例えば、静脈内注射若しくは静脈内注入(IV)、皮下注射(SC)、腹腔内(IP)注射、又は筋肉内注射(IM)であり得る。
【0104】
投与は、例えば、局所的な注入、注射によって、又はインプラントによって達成することができる。インプラントは、シラスティック膜などの膜、又は繊維を含む、多孔性の、非多孔性の、又はゼラチン状の材料からできていることができる。インプラントは、対象への組成物の徐放又は周期性放出のために構成されることができる(米国特許出願公開第20080241223号明細書、米国特許第5,501,856号明細書、同第4,863,457号明細書、及び同第3,710,795号明細書、欧州特許第488401号明細書、並びに欧州特許第430539号明細書;各開示の全体が参照により本明細書に援用される)。組成物は、例えば、分散性、腐食性、又は対流系に基づいて、例えば、浸透圧ポンプ、生分解性インプラント、電気分散系、電気浸透圧系、蒸気圧ポンプ、電解性ポンプ、発泡性ポンプ、圧電性ポンプ、腐食性の系、又は電気機械系に基づいた植込み型装置によって、対象へ送達することができる。
【0105】
いくつかの実施形態において、治療薬は、対象へ局所投与によって送達される。本明細書で使用される場合、「局所投与」又は「局所送達」は、組成物又は作用因子をその意図した標的組織又は標的部位へ循環器系を介して輸送することに頼らない送達を指す。この組成物は、例えば、組成物若しくは作用因子の注入若しくは埋め込みによって、又は組成物若しくは作用因子を含有する装置の注入若しくは埋め込みによって送達することができる。標的組織又は標的部位の近傍における局所投与に続いて、この組成物若しくは作用因子、又はその1つ以上の構成要素は、意図される標的組織又は標的部位へ拡散し得る。
【0106】
実施例の節において詳細に概略されるように、本開示のアッセイ方法は、EVにおける補体構成要素の発現又はレベルの変化の測定を含む。EVは、尿、血液、リンパ液、脳脊髄液、腹水、膿、胸水、ヘモグロビン、乳、羊水、滑液、粘液、唾液、痰、眼房水、硝子体、又はこれらに類するものなど、いずれかの生物学的試料を源とすることができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、差次的超遠心、密度勾配超遠心、サイズ排除クロマトグラフィー、限外濾過、及び親和性/免疫親和性捕捉法などのアプローチが、生物学的試料からEVを濃縮するために使用され得るが、このステップは場合による。好ましくは、EV濃縮ステップは、第1のマーカー及び場合により第2のマーカーが個々の抗体又は抗原結合断片と接触する前に行われる。
【0108】
次に、EVは、集団レベル又は単一粒子レベルで特徴づけられる。ここで、タンパク質、脂質、又は核酸など、EVの中の分子の組成及びレベルが分析される。技術は、光散乱顕微鏡法又は分光法から、プロテオミクスを用いた分子フィンガープリント法にまで及ぶ。独特な分子の全体的なレベルはまた集団内で測定することができる。単一粒子分析については、光学顕微鏡法及びフローサイトメトリー(EV>200nmの場合)、単一粒子干渉反射画像法(>40nm)、ナノフローサイトメトリー(約40nm)、並びに電子顕微鏡法など特化した方法が使用される。特に、電子顕微鏡法及びフローサイトメトリーは、生物学的マトリックスからの分離の前に特段の注力をすることなく個々のEVの試験を可能にする。
【0109】
いくつかの実施形態において、EVは、溶解緩衝液、例えば、RIPA緩衝液(20mMトリスHCl(pH7.5)、150mM NaCl、1mM Na2EDTA 1mM EGTA、1%NP-40、1%デオキシコール酸ナトリウム、2.5mMピロリン酸ナトリウム、1mM b-グリセロリン酸、1mM Na3VO4、1μg/mlロイペプチン)により溶解し得る。
【0110】
EVの特徴づけは、EV上のマーカー(例えば、典型的にはタンパク質又はペプチドだが、他の抗原を含み得る)へ特異的に結合する捕捉抗体の使用を含み得る。いくつかの実施形態において、EVマーカーに特異的である単一の捕捉抗体が使用される。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの捕捉抗体が使用され、この中で、第1の捕捉抗体はEV特異的マーカーに対して特異的であり、第2の捕捉抗体はEV上に表示される組織特異的マーカーに対して特異的である。
【0111】
EV特異的マーカーとしては、ALIX(UNIPROT:Q8WUM4)、TSG101(UNIPROT:Q99816)、CD9(UNIPROT:P21926)、CD63(UNIPROT:P08962)、CD81(UNIPROT:P60033)、CD40L(UNIPROT:P29965)、CD26(UNIPROT:P27487)、CD31(UNIPROT:P16284)、CD45(UNIPROT:P08575)、CD2(UNIPROT:P06729、Q53F96)、CD11a(UNIPROT:P20701)、CD24(UNIPROT:P25063)、CD55(UNIPROT:P08174)、CD59(UNIPROT:P13987、Q6FHM9)、CF106(UNIPROT:Q9H6K1)、CD56(UNIPROT:P13591)、CD51(UNIPROT:P06756)、CD82(UNIPROT:P27701)、インテグリン、テトラスパニン、アネキシン、HSP90(UNIPROT:P07900(α1)、Q14568(α2)、P14625(β))、HSP70(例えば、UNIPROT:P11021)、シンテニン1(UNIPROT:O00560)、ADAM10(UNIPROT:O14672)、EHD4(UNIPROT:Q9H223)、アクチン、Rab5(UNIPROT:P20339(α)、P61020(β)、P51148(γ))、クラスリン(UNIPROT:P09496(α)、P09497(β)、Q00610(H))、フロチリン1(UNIPROT:O75955)、MHC I、MHC II、アクチニン4(UNIPROT:O43707)、GP96(UNIPROT:P14625)、EHD4(UNIPROT:Q9H223)、ミトフィリン(UNIPROT:Q16891)、及びLAMP2(UNIPROT:P13473)、又はこれらの断片があるが、制限されない。
【0112】
組織特異性に関して、腎臓の糸球体足細胞、曲尿細管、又は膀胱上皮に特異的なEVは、腎臓病学的疾患の研究において有用であり、赤血球(RBC)由来のEVは、血液学的疾患の研究において有用である。いくつかの実施形態において、組織特異的EVとしては、以下のものがあるが、これらに限定されない。
PODXL(UNIPROT:O00592)は、ファロピー管、子宮、及び精子小胞における糸球体足細胞、上皮細胞、腺細胞に多く発現している。
AQP2(UNIPROT:P41181)は、腎臓の集合管主細胞の頂端細胞膜において、及び細胞内小胞において認められる。
UPK1b(UNIPROT:O75841)は、膀胱の非対称性二重膜において認められる。
NPHS2(UNIPROT:Q9NP85)は、胎児及び成体の腎糸球体の足細胞において発現している。
GYPA(UNIPROT:P02724)は、モノクローナル抗体TER119によって特異的に認識される、赤血球の主要内在性膜タンパク質である。
ムチン1(UNIPROT:P15941、Q7Z551)は、前者が特に気道、乳房、及び子宮の上皮細胞の頂端表面上に発現しており、後者がT細胞において発現しており、乳癌又は卵巣癌など上皮腫瘍において、及び非上皮腫瘍細胞においても過剰発現している。
NKCC2(UNIPROT:Q13621)は、腎臓特異的腎Na、K及びCl共輸送体である。
AQP1(UNIPROT:P29972)は、赤血球及び腎臓近位尿細管の原形質膜において発現している。
GST-アルファとしては、例えば、主として小腸及び大腸並びに結腸において発現しリンパ球においては弱く発現しているGSTα1(UNIPROT:P08263)、脳、胎盤、及び骨格筋において高レベルで発現しているGSTα2(UNIPROT:P09210)、GSTα3(UNIPROT:Q16772)、及びGSTα4(UNIPROT:O15217)、並びにGSTα5(UNIPROT:Q7RTV2)がある。
THP(UNIPROT:P07911)は、腎臓の尿細管細胞において、特に厚いヘンレ係蹄上行脚及び遠位尿細管管腔の上皮細胞の近傍に発現している。
カルビンディン-D28K(CalB1)(UNIPROT:P05937)は、哺乳動物腎臓において認められ、また、いくつかのニューロン細胞及び内分泌細胞、特に小脳において発現している。
メガリン(UNIPROT:P98164)は、多くの吸収上皮細胞の原形質膜において認められる多重リガンド結合受容体である。
キュビリン(CUBN)(UNIPROT:O60494)は、腎臓及び小腸において発現している。
ネフリン(Nphs1)(UNIPROT:O60500)は、腎臓糸球体の足細胞において発現している。
クローディン1(CLDN1)(UNIPROT:O95832)は、肝臓及び腎臓において強く発現しており、心臓、脳、脾臓、肺、及び精巣において発現している。
アネキシンV(ANXA5)(UNIPROT:P08758)は、多くの組織及び血球において発現している。
シナプトポディン(Synpo、Q8N3V7)は、ニューロン及び大脳皮質において発現している。
ウィルム腫瘍タンパク質(Wt1、P19544)は、腎臓及び、造血細胞の部分セットにおいて発現している。
アニオン輸送タンパク質であるバンド3(SLC4A1、P02730)は、赤血球において発現しており(PMID:7506871、PMID:26542571)、アイソフォーム2は、腎臓において発現している(PMID:7506871)。
ストマチン(STOM、P27105)は、赤血球において検出され、広く発現している。
癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(BGP1、P13688)は、結腸の円柱上皮細胞において(PMID:10436421)、T細胞において(PMID:18424730)発現し、顆粒球及びリンパ球において発現している。
グロビン(例えば、サイトグロビン(CYGB)、Q8WWM9)は、心臓、胃、膀胱、及び小腸において発現している。
グリコホリンB(GYPB、P06028)は、腎臓の内皮及び上皮において発現している。
Rhポリペプチド、Rh糖タンパク質(RHAG、Q02094)は、赤血球において発現している。
【0113】
次に、捕捉されたEV上の補体系関連構成要素の存在又はレベルが検出される。いずれかの方法が、例えば、補体構成要素に特異的である検出抗体又はその抗原結合断片を用いた補体構成要素の検出において使用され得、アプタマーもまた使用され得る。検出のための実例となる方法としては、例えば、免疫組織化学的染色、ウエスタンブロット法、細胞内ウエスタン、免疫蛍光染色、ELISA、RIA、及び蛍光標示式細胞分取(FACS)、又は当該技術分野で公知のいずれかの方法がある。
【0114】
概して、抗原上のエピトープの検出に使用される2つの戦略があり、直接法及び間接法である。直接法は、1段階染色を含み、EV上/内の抗原と直接反応する標識化抗体(例えば、FITC結合抗体)を包含し得る。間接法は、体液又は組織の抗原と反応する標識されていない一次抗体と、この一次抗体と反応する標識済みの二次抗体とを含む。標識には、放射性標識、蛍光標識、ビオチンなどのハプテン標識、セイヨウワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼなどの酵素があり得る。これらのアッセイを実施する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Harlow et al.(Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory,N Y,1988)、Harlow et al.(Using Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,N Y,1999)、Virella(Medical Immunology,6th edition,Informa HealthCare,New York,2007)、及びDiamandis et al.(Immunoassays,Academic Press,Inc.,New York,1996)を参照されたい。これらのアッセイを実施するためのキットは、例えば、Clontechから市販されている。
【0115】
広範な種々の補体タンパク質は、本方法を用いて検出され得、例えば、(a)代替経路(AP)の構成要素、(b)従来の経路(CP)と関係する構成要素、及び(c)レクチン経路(MBL)と関係する構成要素を含む。いくつかの実施形態において、異なる経路由来の複数の構成要素、例えば、AP及びCP由来の構成要素が検出され得る。
【0116】
好ましい実施形態において、補体系関連構成要素は、例えば、C3、C5b-9、C4、C1q、C9、C3b、iC3b、TF、CRP、pCRP、MAC、CD59、CF55、CR1、C5aR1、及びC5から選択されるAP又はCPの構成要素であり、好ましくはMAC、C3、C5b-9、C4、C1q、及びC9である。様々な構成要素の組み合わせ、例えば、C3とC5の組み合わせが検出され得る。この中で、構成要素は、膜攻撃複合体(MAC)であり、方法はMAC、例えば、C5b、C6、C7、C8、及びC9分子のいずれかのサブユニット又はすべてのサブユニットの検出を含み得る。
【0117】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、ある特定のマーカー、例えば、CD81(UNIPROT:P60033)などのエキソソーム特異的マーカー、B細胞上に発現するタンパク質(PMID:20237408)、単球/マクロファージ(PMID:12796480)、肝細胞(PMID:12483205)、さらにはCD4陽性T細胞(PMID:22307619)を欠失するEVを用いて測定することを含む。
【0118】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、目的以外の組織、例えば、尿路系の脈絡においては膀胱に対して特異的であるEVを用いて測定することを含む。例としては、例えば、膀胱上皮において発現するUPK1B(UNIPROT:O75841)がある。
【0119】
通例の方法を使用して、所望ではないマーカーに対して陽性であるEVを選別することができ、例えば、FACSである。
【0120】
下流でのアッセイ法の適用
生物学的試料において補体活性化を検出するための本方法は、下流での多くの適用において使用され得る。例えば、この方法は、(生物学的試料が得られた)対象が補体性疾患に罹患しているかどうか又は補体性疾患を発症するリスクがあるかどうかを判定するために使用され得る。補体性障害の発症又はリスクの測定は、EV又はその膜結合部分上の補体経路の構成要素の存在又はレベルを対照(又は参照標準物質)と比較することによって行われる。典型的には、対照又は参照標準物質は、健常対象由来の同等の生物学的試料から単離されたEVを含有する。通例の方法は、異なる対象から得られた試料の加工及び正規化について実行されてもよい。
【0121】
同様に、本方法はまた、補体性疾患の進行又は退縮を経時的に判定するためにも使用され得る。このことは、2つの異なる時点(例えば、t1及びt2であって、t2>t1)の対象の試料におけるEV又はその膜結合部分上の補体経路の構成要素の存在又はレベルを比較することによって実施される。t1と比較したt2での補体の存在/レベルの低減は、補体状態の改善及び補体疾患の退縮を示し、t2での補体の存在/レベルがt1と比較して高い場合、逆もまた真である。測定間の間隔(例えば、t2-t1)は、疾患の性質に依存し得、何日間から何年間に及び得、例えば、数週間、1か月、3か月、6か月、1年、2年、3年、5年、10年、又はそれより長く、例えば、20年であり得る。
【0122】
薬物の効能の測定
本開示の方法及びアッセイは、補体モジュレーターを用いた補体性疾患の処置に対する応答を監視するために使用することができる。補体モジュレーターは、直接的又は間接的に、補体構成要素、例えば、構成要素タンパク質を調節することができる、例えば、活性化することができるか又は阻害することができる分子である。いずれかの様式で制限されることなく、本明細書で説明される方法により効能が検査され得る代表的な補体モジュレーターは、表Aにおいて提供される。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
例として、本開示は、様々な補体性疾患の療法の効能を監視するための以下の方法に関する。
(A)抗C1qモノクローナル抗体を用いた、対象における自己免疫疾患(例えば、GBS、wAIHA、自己抗体疾患)又は神経変性疾患(例えば、ALS、HD、緑内障/地図状萎縮(GA))の処置に対する応答を監視するための方法。
(B)C1-INH(例えば、BERINERT、RUCONEST、CYNRIZE)を用いた、対象における遺伝性血管浮腫(HAE)の処置に対する応答を監視するための方法。
(C)(1)抗C1sモノクローナル抗体(例えば、BIVV020又は活性化型抗C1s抗体)を用いた、対象における寒冷凝集素症(CAD)における溶血事象の処置に対する応答を監視するための方法。
(C)(2)C1sペプチドを用いた、対象における寒冷凝集素症(CAD)、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(wAIHA)、神経変性疾患(例えば、HD、AD、ALS、GBS)から選択される補体性疾患の処置に対する応答を監視するための方法。
(D)抗C2モノクローナル抗体(例えば、PRO-02)を用いた、対象における抗体介在性炎症又は虚血再灌流損傷の処置に対する応答を監視するための方法。
(E)α-MASP-2モノクローナル抗体(例えば、ナルソプリマブ)を用いた、対象における造血幹細胞移植関連血栓性微小血管症(HSCT-TMA)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、又はIgA腎症(IgAN)の処置に対する応答を監視するための方法。
(F)α-MASP-3モノクローナル抗体(例えば、OMS906)を用いた、対象における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)などの補体性疾患の処置に対する応答を監視するための方法。
(G)α-D因子(FD)モノクローナル抗体(例えば、ラムパリズマブ)を用いた、対象における地図状移植(GA)/加齢黄斑変性(AMD)の処置に対する応答を監視するための方法。
(H)小分子D因子(FD)阻害剤(例えば、ダニコパン(ACH-4471)又はACH-5228)を用いた、対象における輸血依存性貧血、溶血を伴うPNH(EVH)の処置に対する応答を監視するための方法。
(I)小分子D因子(FD)阻害剤(例えば、BCX9930又は参照により本明細書に援用される米国特許第9388199号明細書におけるFD阻害剤)を用いた、対象における補体性障害の処置に対する応答を監視するための方法。
(J)B因子(FB)阻害剤(例えば、B因子siRNA IONIS-FB-LRX又はα-FBモノクローナル抗体)を用いた、対象におけるIgA腎症(IgAN)などの補体性障害の処置に対する応答を監視するための方法。
(K)B因子(FB)阻害剤(LNP023)を用いた、対象におけるPNH、C3糸球体症(C3G)、膜性糸球体腎炎及び他の腎疾患の処置に対する応答を監視するための方法。
(L)α-プロペルジン(P因子)モノクローナル抗体(例えば、CLG561)を用いた、対象における腎疾患又は変性疾患(例えば、AMD又はGA)の処置に対する応答を監視するための方法。
(M)H因子(FH)モジュレーター(例えば、ミニH因子、AMY-201、又はCR2-H因子/TT30)を用いた、対象における歯周病又はPNHの処置に対する応答を監視するための方法。
(N)コンプスタチン又はその誘導体(例えば、APL2、APL9、AMY-101)又はsCR1/TP10又はミロコセプトを用いた、GA、PNH、寒冷凝集素症(CAD)、wAIHA、補体性腎症(CDN)、及びC3Gから選択される補体性障害の対象の処置、又は歯周病、移植片拒絶反応、同種移植片における虚血再灌流損傷、若しくは遺伝子療法におけるアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)の拒絶の減衰に対する応答を監視するための方法。
(O)抗C5モノクローナル抗体(例えば、エクリズマブ又はそのバイオ後続品、例えば、ABP959、Elizaria、又はSB12)を用いた、PNH、aHUS、重症筋無力症(gMG)、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の対象の処置に対する応答を監視するための方法。
(P)(1)ノマコパン(コバーシン、rVA576)を用いた、PNH、aHUS、水疱性類天疱瘡(BP)、ぶどう膜炎、血栓性微小血管症(TMA)、角結膜炎、関節リウマチ(RA)の対象の処置に対する応答を監視するための方法。
(P)(2)ジルコプラン(RA101495)を用いた、gMG、ALS、免疫性壊死性ミオパチー(IMNM)、又は腎疾患の対象の処置に対する応答を監視するための方法。
(P)(3)抗C5siRNAセムジシラン(ALN-CC5)を用いた、aHUSの対象の処置に対する応答を監視するための方法。
(P)(4)ジムラ(Zimura)(ARC1905)を用いたGA/AMD、血管新生AMD、又はStargardt病の対象の処置に対する応答を監視するための方法。
(Q)改善された抗C5モノクローナル抗体(例えば、ラブリズマブ)を用いた、PNH、aHUS、gMG、NMOSD、造血性幹細胞移植(HSCT)-TMA、ALS、補体性TMA、又は重症COVID-19の対象の処置に対する応答を監視するための方法。
(R)(1)抗C5アフィボディ(例えば、SOBI005)を用いた、補体性障害の対象の処置に対する応答を監視するための方法。
(R)(2)抗C5抗体テシドルマブ(LFG316)を用いた、移植後微小血管症(TAM)、全ぶどう膜炎、AMD、GA、PNH、又は腎移植拒絶反応の対象の処置に対する応答を監視するための方法。
(R)(3)ポゼリマブ又はクロバリマブ(SKY059)である抗C5抗体を用いた、PNHの対象の処置に対する応答を監視するための方法。
(S)(1)アバコパン(CCX-168)を用いた、抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)関連血管炎の対象の処置に対する応答を監視するための方法。
(S)(2)抗C5モノクローナル抗体(例えば、オレンダリズマブ(ALXN1007)又はBDB-001又はIFX2)を用いた、GVHD又はCOVID-19の対象の処置に対する応答を監視するための方法。
(T)(1)抗C6モノクローナル抗体及びC6アンチセンスRNAから選択される補体C6阻害剤を用いた、自己免疫疾患又は重症筋無力症(MG)の対象の処置に対する応答を監視するための方法。
(T)(2)補体C6阻害剤CP010を用いた、神経変性障害の対象の処置に対する応答を監視するための方法。
(U)可溶性CD59(HMR59)をコードするアデノ随伴ベクター(AAV)を用いた、萎縮型及び滲出型のAMDの対象の処置に対する応答を監視するための方法。
【0128】
処置に対する応答を測定するための上述の代表的な方法は概して、EVにおける補体タンパク質を検出するための先の方法に従って、例えば、(a)処置の前及び後で対象から細胞外小胞(EV)又はその膜結合部分を含有する試料を得ること、(b)この試料の一部を少なくとも1つの第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、EV又はその膜結合部分上において第1のマーカーを少なくとも1つ捕捉すること、(c)場合により、試料の一部を、少なくとも1つの第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、EV又はその膜結合部分上において第2のマーカーを少なくとも1つ捕捉すること、(d)捕捉したEV又はその膜結合部分を、補体系関連構成要素に特異的な少なくとも1つの検出抗体又はその抗原結合断片と接触させること、並びに(e)検出抗体又はその抗原結合断片を定性的に又は定量的に検出して、EV又はその膜結合部分上の補体経路の構成要素のレベルの存在を測定することによって実施され、この中で、補体モジュレーターを用いた処置前と比較した、処置後の対象の試料における補体経路の構成要素の存在又はレベルの調節(例えば、上昇又は低下、好ましくは低下)は、対象が補体モジュレーターに応答していることを示す。
【0129】
いくつかの実施形態において、補体モジュレーターは、C1q、C1、C1s、C2、MASP-2、MASP-3、D因子、B因子、プロペルジン(P因子)、H因子、C3/C5コンバターゼ、C5、C5a/C5aR、C3a/C3aR、C6、又はCD59のモジュレーターであり、好ましくは、表Aに示されるように、モノクローナル抗体又は小分子阻害剤又はsiRNA/RNAiなどの補体阻害剤である。
【0130】
先の方法は、例えば、C5軸又はC3軸における終末補体の活性化又は活性を阻害する分子の効能を検査するのに特に有用である。特に、先の方法は、C5阻害剤、例えば、エクリズマブ又はラブリズマブなどの後続の分子の効能を検査するのに特に適用可能である。
【0131】
検査化合物を調節する補体についてスクリーニングする方法
いくつかの実施形態において、本開示は、補体調節について試験化合物をスクリーニングする方法であって、(a)補体性疾患に罹患している対象(例えば、マウス、ウサギ、ハムスター、ヒツジ、ラマ、イヌ、サル、チンパンジー、又はヒトなどの動物)への試験化合物の投与の前及び後の、対象由来の細胞外小胞(EV)又はその膜結合部分を含有する試料を得ることと、(b)試料の一部を少なくとも1つの第1の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、EV又はその膜結合部分の上において第1のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、(c)場合により、試料の一部を少なくとも1つの第2の捕捉抗体又はその抗原結合断片と接触させて、EV又はその膜結合部分の上において第2のマーカーを少なくとも1つ捕捉することと、(d)捕捉されたEV又はその膜結合部分を、補体系関連構成要素に特異的な少なくとも1つの検出抗体又はその抗原結合断片と接触させることと、(e)検出抗体又はその抗原結合断片を定性的に又は定量的に検出して、EV又はその膜結合部分の上の補体構成要素の存在又はレベルを測定し、試験化合物の投与前と比較した、試験化合物の投与後の対象の試料中の補体構成要素の存在又はレベルの調節(例えば、上昇又は低下、好ましくは低下)が、試験化合物が補体を調節することができることを示すことと、を含む、方法に関する。好ましくは、試験化合物は、C1q、C1、C1s、C2、MASP-2、MASP-3、D因子、B因子、プロペルジン(P因子)、H因子、C3/C5コンバターゼ、C5、C5a/C5aR、C3a/C3aR、C6、若しくはCD59、又はこれらの組み合わせである補体を調節することができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、試験化合物の調節活性は、表Aにおいて提供される分子など、補体調節活性を有する分子(例えば、陽性対照又は標準物質)の調節活性と比較される。
【0133】
C5の活性化又は活性を阻害する化合物
代表的な実施形態において、先の方法に従って活性が試験又はスクリーニングされる補体モジュレーターは、C5の活性化を阻害する分子であり、それにより補体介在効果を低減、抑制、及び/又は排除する(例えば、CSR又はCARPA)。C5の開裂は、有力なアナフィラトキシン且つ走化性因子であるC5aを放出し、溶解性種末補体複合体であるC5b-9の形成につながる。C5a及びC5b-9はまた、加水分解性酵素、活性酸素種、アラキドン酸代謝産物及び様々なサイトカインなどの下流の炎症性因子の放出を増幅することによって多面的な細胞活性化特性も有する。
【0134】
ある特定の治療薬(例えば、粒子又はナノ粒子に封入された治療薬)の治療上の投与中に生じる補体介在性効果を低減、抑制、及び/又は排除する上で使用するのに適した補体阻害剤は、C5へ結合し得る。例示的な作用因子としては、抗体、抗体断片、ポリペプチド、小分子、及びアプタマーがある。例示的な抗体は、米国特許第6,534,058号明細書において、及びWang,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:8955-8959,1995において説明されている。C5へ結合しこれを阻害する例示的な化合物は、米国特許第7,348,401号明細書及び同第7,999,081号明細書において説明されている。ある特定の実施形態において、補体阻害剤は、米国特許第6,534,058号明細書において説明されている抗体と実質的に同じ、C5上の結合部位へ結合する抗体、小分子、アプタマー、若しくはポリペプチド、又は米国特許第7,348,401号明細書において説明されるペプチドである。米国特許第7,538,211号明細書は、C5へ結合してこれを阻害するアプタマーを開示している。C5又はCSRの局所発現を阻害するRNAi作用因子もまた、本明細書で説明される方法において使用することができる。
【0135】
他の実施形態において、この作用因子は、C5a受容体(C5aR)のアンタゴニストである。
【0136】
C5aは、代替的なC5コンバターゼ又は従来のC5コンバターゼのいずれかによってC5のアルファ鎖から開裂する。コンバターゼ作用についての開裂部位は、C5aのアルファ鎖のアミノ酸残基733に、又はそのすぐ近くにある。この開裂部位で、又はその近くで結合するであろう化合物は、この開裂部位に対するC5コンバターゼ酵素の接近を遮断する能力を有するであろうし、それにより相補体阻害剤として作用するであろう。開裂部位に対して遠位の部位でC5へ結合する化合物はまた、例えば、C5とC5コンバターゼとの相互作用の立体障害阻害によって、C5開裂を遮断する能力も有し得る。例示的なC5a受容体アンタゴニストとしては、米国特許第6,821,950号明細書、米国特許出願公開第2009/0117171号明細書、及び/若しくは国際公開第2006/099330号パンフレットにおいて説明されているものなど、様々な小分子ペプチド、又はモノクローナル抗体BB5.1(Frei Y.et al.,Mol.Cell.Probes,1:141-9,1987)、BB5.1の一本鎖可変断片(scFV)、又は抗BB5.1Fab(Peng et al.,J Clin Invest.,115(6):1590-1600,2005)があり、C5a及びC5bの形成を防止する。
【0137】
ある特定の実施形態において、補体阻害剤は、抗C5抗体を含む。本明細書での使用に適した抗C5抗体(又はそれに由来するVH/VLドメイン)は、当該技術分野で公知の方法を用いて同定することができる。或いは、当該技術分野で認識されている抗C5抗体を使用することができる。C5に対して結合するための当該技術で認識されているこれらの抗体のいずれかと競合する抗体も使用することができる。
【0138】
CDRの実際の境界は、異なる方法によって異なって定義されてきた。いくつかの実施形態において、軽鎖可変ドメイン又は重鎖可変ドメイン内でのCDR又はフレームワーク領域の位置は、Kabat et al.[(1991)“Sequences of Proteins of Immunological Interest.”NIH Publication No.91-3242,U.S.Department of Health and Human Services,Bethesda,MD]によって定義されているようにあり得る。かかる場合において、CDRは、「Kabat CDR」と称することができる(例えば、「Kabat LCDR2」又は「Kabat HCDR1」)。いくつかの実施形態において軽鎖可変領域又は重鎖可変領域のCDRの位置は、Chothia,C.et al.(Nature,342:877 83,1989)によって定義されるとおりであり得る。したがって、これらの領域は、「Chothia CDR」(例えば、「Chothia LCDR2」又は「ChothiaHCDR3」)と称することができる。いくつかの実施形態において、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のCDRの位置は、Kabat Chothiaの組み合わされた定義によって定義されるとおりであり得る。かかる実施形態において、これらの領域は、「組み合わされたKabat Chothia CDR」(Thomas,T.et al.,Mol.Immunol.,33:1389 401,1996)が、Kabatの定義及びChothiaの定義により、CDR境界の同定を例示していると称することができる。
【0139】
別の例示的な抗C5抗体は、その教示が参照により本明細書に援用される国際公開第2015/134894号パンフレット及び米国特許第9,079,949号明細書において説明されるように、抗体BNJ421である。
【0140】
抗C5抗体は、例えば、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)へ結合する可変ヒトFc定常領域を含むことができ、この中で、可変ヒトFc CH3定常領域は、EU番号付けにおいて各々、天然のヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基において、Met-429-Leu置換及びAsn-435-Ser置換を含む。
【0141】
別の例示的な抗C5抗体は、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書において説明されている7086抗体である。
【0142】
別の例示的な抗C5抗体はこれもまた、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書において説明されている8110抗体である。
【0143】
別の例示的な抗C5抗体は、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第9,765,135号明細書において説明されている305LO5抗体である。
【0144】
別の例示的な抗C5抗体は、SKY59抗体である(Fukuzawa,T.et al.,Sci.Rep.,7:1080,2017であり、その開示が参照により本明細書に援用される)。
【0145】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許出願公開第2017/0355757号明細書又は国際公開第2017218515号パンフレットにおいて説明されているREGN3918抗体(H4H12166PPとしても公知)であり、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0146】
別の実施形態において、この抗体は、先に記載の抗体(例えば、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体、又はREGN3918抗体)と同じ、C5上のエピトープとの結合について競合し、及び/又はこのエピトープへ結合する。抗C5抗体は、例えば、先に記載の抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の可変領域同一性)を有することができる。
【0147】
本明細書に説明される抗C5抗体は、いくつかの実施形態において、変異体ヒトFc定常領域が由来する天然のヒトFc定常領域の親和性よりも大きな親和性でヒト新生児Fc受容体(FcRn)へ結合する変異体ヒトFc定常領域を含む。Fc定常領域は、例えば、変異体ヒトFc定常領域が由来する天然のヒトFc定常領域に対する1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、若しくは8又はそれより多数)のアミノ酸置換を含むことができる。例えば、置換は、相互作用のpH依存性を維持しながら、変異体Fc定常領域を含有するIgG抗体のpH6.0でのFcRnに対する結合親和性を増大させることができる。抗体のFc定常領域における1つ以上の置換が、(相互作用のpH依存性を維持しながら)pH6.0でFcRnに対するFc定常領域の親和性を増大させるかどうかを試験するための方法は、当該技術分野で公知であり、作業例において例示されている(国際公開第2015134894号パンフレット及び米国特許第9,079,949号明細書;各開示が全体として参照により本明細書に援用される)。
【0148】
FcRnに対する抗体Fc定常領域の結合親和性を増強する置換としては、(1)M252Y/S254T/T256E三重置換(Dall’Acqua,W.et al.,J.Biol.Chem.,281:2351424,2006)、(2)M428L置換又はT250Q/M428L置換(Hinton,P.et al.,J.Biol.Chem.,279:6213 6,2004、Hinton,P.et al.,J.Immunol.,176:34656,2006)、及び(3)N434A置換又はT307/E380A/N434A置換(Petkova,S.et al.,Int.Immunol.,18:1759 69,2006)がある。追加の置換対形成、例えば、P257I/Q311I、P257I/N434H、及びD376V/N434Hもまた、説明されている(Datta-Mannan,A.et al,J.Biol.Chem.,282:1709 17,2007)。引用される参考文献の各々の全体的な教示は、参照により本明細書に援用される。
【0149】
いくつかの実施形態において、変異体定常領域は、EUアミノ酸残基255でバリンに対する置換を有する。いくつかの実施形態において、変異体定常領域は、EUアミノ酸残基309でアスパラギンに対する置換を有する。いくつかの実施形態において、変異体定常領域は、EUアミノ酸残基312でイソロイシンに対する置換を有する。いくつかの実施形態において、変異体定常領域は、EUアミノ酸残基386でる置換を有する。
【0150】
いくつかの実施形態において、変異体Fc定常領域は、由来する天然の定常領域に対して30以下(例えば、29以下、28以下、27以下、26以下、25以下、24以下、23以下、22以下、21以下、20以下、19以下、18以下、17以下、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下)のアミノ酸の置換、挿入、又は欠失を含む。いくつかの実施形態において、変異体Fc定常領域は、M252Y、S254T、T256E、N434S、M428L、V259I、T250I、及びV308Fからなる群から選択される1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、変異体ヒトFc定常領域は、位置428でメチオニンを、及び位置434でアスパラギンを含み、各々EU番号付けである。いくつかの実施形態において、変異体Fc定常領域は、例えば、その開示が全体として参照により本明細書に援用される米国特許第8,088,376号明細書において説明されるような428L/434S二重置換を含む。
【0151】
いくつかの実施形態において、これらの突然変異の正確な位置は、抗体操作により、天然のヒトFc定常領域から移行され得る。IgG2/4キメラFcにおいて使用されるときの428L/434S二重置換は、例えば、その開示が全体として参照により本明細書に援用される米国特許第9,079,949号明細書において説明されるM429L変異体及びN435S変異体と同様に、429L及び435Sに対応し得る。
【0152】
いくつかの実施形態において、変異体定常領域は、天然のヒトFc定常領域に対してアミノ酸位置237、238、239、248、250、252、254、255、256、257、258、265、270、286、289、297、298、303、305、307、308、309、311、312、314、315、317、325、332、334、360、376、380、382、384、385、386、387、389、424、428、433、434、又は436(EU番号付け)で置換を含む。いくつかの実施形態において、この置換は、位置237でのグリシンに対するメチオニン、位置238でのプロリンに対するアラニン、位置239でのセリンに対するリジン、位置248でのリジンに対するイソロイシン、位置250でのトレオニンに対するアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、メチオニン、グルタミン、セリン、バリン、トリプトファン又はチロシン、位置252でのメチオニンに対するフェニルアラニン、トリプトファン、又はチロシン、位置254でのセリンに対するトレオニン、位置255でのアルギニンに対するグルタミン酸、位置256でのトレオニンに対するアスパラギン酸、グルタミン酸、又はグルタミン、位置257でのプロリンに対するアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、セリン、トレオニン、又はバリン、位置258でのグルタミン酸に対するヒスチジン、位置265でのアスパラギン酸に対するアラニン、位置270でのアスパラギン酸に対するフェニルアラニン、位置286でのアスパラギンに対するアラニン又はグルタミン酸、位置289でのトレオニンに対するヒスチジン、位置297でのアスパラギンに対するアラニン、位置298でのセリンに対するグリシン、位置303でのバリンに対するアラニン、位置305でのバリンに対するアラニン、位置307でのトレオニンに対するアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリン、トリプトファン、又はチロシン、位置308でのバリンに対するアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、プロリン、グルタミン、又はトレオニン、位置309でのロイシン又はバリンに対するアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、又はアルギニン、位置311でのグルタミンに対するアラニン、ヒスチジン、又はイソロイシン、位置312でのアスパラギン酸に対するアラニン又はヒスチジン、位置314でのロイシンに対するリジン又はアルギニン、位置315でのアスパラギンに対するアラニン又はヒスチジン、位置317でのリジンに対するアラニン、位置325でのアスパラギンに対するグリシン、位置332でのイソロイシンに対するバリン、位置334でのリジンに対するロイシン、位置360でのリジンに対するヒスチジン、位置376でのアスパラギン酸に対するアラニン、位置380でのグルタミン酸に対するアラニン、位置382でのグルタミン酸に対するアラニン、位置384でのアスパラギン又はセリンに対するアラニン、位置385でのグリシンに対するアスパラギン酸又はヒスチジン、位置386でのグルタミンに対するプロリン、位置387でのプロリンに対するグルタミン酸、位置389でのアスパラギンに対するアラニン又はセリン、位置424でのセリンに対するアラニン、位置428でのメチオニンに対するアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、又はチロシン、位置433でのヒスチジンに対するリジン、位置434でのアスパラギンに対するアラニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、セリン、トリプトファン、又はチロシン、及び位置436でのチロシン又はフェニルアラニンに対するヒスチジンからなる群から選択され、すべてEU番号付けである。
【0153】
一実施形態において、抗体は、pH7.4且つ25℃で(及び、さもなくば生理学的条件下で)、C5に対して少なくとも0.1nM(例えば、少なくとも0.15nM、0.175nM、0.2nM、0.25nM、0.275nM、0.3nM、0.325nM、0.35nM、0.375nM、0.4nM、0.425nM、0.45nM、0.475nM、0.5nM、0.525nM、0.55nM、0.575nM、0.6nM、0.625nM、0.65nM、0.675nM、0.7nM、0.725nM、0.75nM、0.775nM、0.8nM、0.825nM、0.85nM、0.875nM、0.9nM、0.925nM、0.95nM、又は0.975nM)である親和性解離定数(KD)で結合する。いくつかの実施形態において、抗C5抗体又はその抗原結合断片のKDは、1nM以下(例えば、0.9nM以下、0.8nM以下、0.7nM以下、0.6nM以下、0.5nM以下、0.4nM以下、0.3nM以下、又は0.2nM)である。
【0154】
他の実施形態において、[(pH6.0、25℃でのC5に対する抗体のKD)/(pH7.4、25℃でのC5に対する抗体のKD)]は、21より大きい(例えば、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、又は8000より大きい)。
【0155】
B因子の活性化又は活性を阻害する化合物
ある特定の実施形態において、補体阻害剤は、B因子の活性化を阻害する。補体阻害剤は、例えば、B因子へ結合することができ、それにより活性化を阻害する。例示的な作用因子としては、抗体、抗体断片、ペプチド、小分子、及びアプタマーがある。B因子を阻害する例示的な抗体は、米国特許出願公開第20050260198号明細書において説明されている。ある特定の実施形態において、単離された抗体又は抗原結合断片は、第3の短いコンセンサス反復(SCR)ドメイン内でB因子へ選択的に結合する。ある特定の実施形態において、抗体は、C3bBb複合体の形成を防止する。ある特定の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、D因子によってB因子の開裂を防止又は阻害する。ある特定の実施形態において、補体阻害剤は、米国特許出願公開第20050260198号明細書において説明される抗体と実質的に同じ、B因子上の結合部位へ結合する抗体、小分子、アプタマー、若しくはポリペプチドであり、又はB因子の局所発現を阻害するRNAi作用因子である。B因子へ結合してこれを阻害するペプチドは、当該技術分野で公知の方法を用いて同定することができる。
【0156】
D因子の活性を阻害する化合物
ある特定の実施形態において、補体阻害剤はD因子を阻害する。補体阻害剤は、例えば、D因子へ結合し、それによりD因子を阻害し得る。例示的な作用因子としては、抗体、抗体断片、ペプチド、小分子、及びアプタマーがある。D因子はその比較的低い血清濃度と代替的な経路の活性化を阻害する能力との結果として、全身性補体阻害のための所望の標的と示唆されてきたが、本開示は、D因子を阻害する局所的に投与される作用因子の治療能に関する。D因子を阻害する例示的な抗体は、米国特許第7,112,327号明細書において説明される。ある特定の実施形態において、補体阻害剤は、米国特許第7,112,327号明細書において説明される抗体と実質的に同じ、D因子上の結合部位へ結合する抗体、小分子、アプタマー、又はポリペプチドである。代替的な経路の活性化を阻害し、D因子を阻害すると考えられている例示的なポリペプチドは、米国特許出願公開第20040038869号明細書において開示されている。D因子へ結合しこれを阻害するペプチドは、当該技術分野で公知の方法を用いて同定することができる。
【0157】
多重モードの補体阻害剤/モジュレーター
本明細書に説明される方法において有用な補体阻害剤は、1つを超える補体タンパク質へ結合することができ、且つ/又は補体活性化経路における1つを超えるステップを阻害することができる。かかる補体阻害剤は、「多重モード」と本明細書で称される。
【0158】
補体阻害剤は、例えば、ウイルス補体制御タンパク質(VCCP)であり得る(米国特許第7,947,267号明細書及び国際公開第2006042252号パンフレット)。ある特定の実施形態において、VCCPは、ポックスウイルス補体制御タンパク質(PVCCP)、又はヘルペスウイルス補体制御タンパク質(HVCCP)である。
【0159】
VCCPは、従来の補体経路、代替的な補体経路、レクチン経路、又はこれらのいずれかの2つ以上を阻害し得る。VCCP、例えば、PVCCPは、例えば、C3b、C4b、又はその両方へ結合することができる。PVCCPは、1つ以上の推定ヘパリン結合部位(K/R--X--K/R)を含むことができ、且つ/又は全体的な正の電荷を有する。いくつかの実施形態において、PVCCPは、少なくとも3つのSCRモジュール(例えば、モジュール1~3)、例えば、4つのSCRモジュールを含む。PVCCPタンパク質は、成熟PVCCPの前駆体であり得(すなわち、このタンパク質がウイルス感染した細胞において発現するとき正常に開裂するシグナル配列を含むことができる)、又は成熟型であり得る(例えば、シグナル配列を欠失している)。
【0160】
ワクシニア補体制御タンパク質(VCP)は、C3及びC4へ結合してこれらの構成要素のI因子介在性開裂のための補因子として作用する能力を介して、並びに既存のコンバターゼの崩壊を促進することを介して、補体活性化の従来の経路を阻害することが示されている(Kotwal,G.et al.,Science,250:827-30,1990、McKenzie,R.et al.,J.Infect.Dis.,166:1245-50,1992)。また、C3bをiC3bへと開裂させ、それにより代替的な経路であるC3コンバターゼの形成を防止することによって、代替的な経路を阻害することも示されている(Sahu,A.et al.,J.Immunol.,160,5596-604,1998)。VCPは、したがって、複数のステップで補体の活性化を遮断し、炎症促進性走化性因子C3a、C4a、及びC5aのレベルを低減させる。補体酵素の痘瘡阻害剤(SPICE)など、VCPのホモログ、例えば、4つのSCRを含有するSPICE関連ポリペプチドは、本明細書に説明される方法において使用することができる。その上、牛痘ウイルス(IMP)又はサル痘ウイルス(MCP)由来の補体制御タンパク質もまた、本明細書に説明される方法において使用することができる。
【0161】
VCCPに加えて、補体経路において1つ以上のステップに干渉するいくつかの他のウイルスタンパク質が存在し、本明細書に説明される方法において使用することができ、例えば、HSV-1、HSV-2、VZV、PRV、BHV-1、EHV-1、及びEHV-4由来の糖タンパク質gCである(Schreurs,C.et al.,J.Virol.,62:2251-7,1988)。VZVの例外はあるが、これらのウイルスによってコードされるgCタンパク質は、C3bへ結合し(Friedman,H.et al,Nature,309:633-5,1984)、gC1(HSV-1由来)は、従来の経路であるC3コンバターゼの崩壊を加速させ、C3に対するプロペルジン及びC5の結合を阻害する。上述のタンパク質は、ウイルス補体干渉タンパク質(VCIP)と集約的に称される。補体活性化の1つ以上のステップに干渉すること、補体構成要素の崩壊を加速させること、及び/又は補体調節タンパク質の活性を亢進することなど、様々な手段のいずれかによって、これらのVCIPは補体を阻害するといわれる。これらのタンパク質、又はその誘導体、その断片、若しくはその変異体のいずれかを、本明細書に説明される方法において治療薬として使用することができる。
【0162】
補体を阻害する追加の作用因子、モジュレーター、混合物、及び修飾物
様々な他の補体阻害剤を、本明細書に説明する方法の種々の実施形態において使用することができる。いくつかの実施形態において、補体阻害剤は、天然に生じる哺乳動物補体調節タンパク質又はその断片若しくは誘導体である。補体調節タンパク質は、例えば、CR1、DAF、MCP、CFH、又はCFIであり得る。いくつかの実施形態において、補体調節ポリペプチドは、その天然に生じる状態で通常、膜結合型であるものである。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメイン及び/又は細胞内ドメインの一部又はすべてを欠失するかかるポリペプチドの断片が使用される。例えば、補体受容体1の可溶性形態(sCR1)を使用することができる。例えば、TP10又はTP20(Avant Therapeutics)として公知の化合物を使用することができる。C1阻害剤(C1-INH)もまた使用される。いくつかの実施形態において、可溶性補体制御タンパク質、例えば、CFHが使用される。いくつかの実施形態において、このポリペプチドは、その溶解度を高めるよう修飾される。
【0163】
C1sの阻害剤が使用される(例えば、米国特許第6,515,002号明細書は、C1sを阻害する化合物(フラニルアミジン及びチエニルアミジン、複素環式アミジン、並びにグアニジン)を説明しており、米国特許第6,515,002号明細書及び同第7,138,530号明細書は、C1sを阻害する複素環式アミジンを説明しており、米国特許第7,049,282号明細書は、従来の経路の活性化を阻害するペプチドを説明しており、米国特許第7,041,796号明細書は、C3b/C4b補体受容体様分子、及び補体の活性化を阻害するためのその使用を開示しており、米国特許第6,998,468号明細書は、補体の活性化の抗C2/C2a阻害剤を開示しており、米国特許第6,676,943号明細書は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)由来のヒト補体C3分解タンパク質を開示している)。
【0164】
2つ以上の補体阻害剤を用いる併用療法は、本明細書に説明される方法に包含される。この2つ以上の補体阻害剤は、同じ組成物中に提供され得る。ある特定の実施形態において、補体阻害剤は、2つ以上の異なる補体構成要素へ結合する。ある特定の実施形態において、補体阻害剤は、2つ以上の異なる可溶性補体タンパク質へ結合する。ある特定の実施形態において、補体阻害剤は、C3、C5、C6、C7、C8、C9、B因子、及びD因子から選択される少なくとも2つの補体タンパク質の活性化又は活性を阻害する。
【実施例】
【0165】
実施例1
Luminex(登録商標)xMAP(登録商標)Technologyプラットフォームを用いた同時免疫沈降/免疫分析による尿細胞外小胞(uEV)の特徴づけ。
【0166】
抗体で被覆したxMAPビーズのアレイを正準小胞マーカーCD9、CD63、及びCD81に対して使用して、尿からの個別のEV部分セットを濃縮した。次いで、各ビーズセットを、部分セットの表現型を規定し、それを組織起源と結びつける他のバイオマーカーの存在について分析した。このように、非侵襲的「液体生検」法を構築して、差次的診断、予後評価、及び/又は処置に対する応答の縦断的な監視のために、特定の腎疾患のカギとなるバイオマーカーを試料採取及び監視した。
【0167】
電子顕微鏡法
電子顕微鏡法用の試料調製
1)新鮮な尿+プロテアーゼ阻害剤で出発する。2.5K×gで遠心分離、上清を回収、
2)ExoQuick Ultra TCキットを用いて300μLまで濃縮、
3)EV及び総粒子密度について生成物±ExoGlowのNTA、
4)Microcon 10K mvcoにおいて調製物を30μLまで濃縮、
5)等量のKarnovsky固定液を添加、
6)総粒子密度のみについてNTAを反復、
7)撮像のために加工。
【0168】
NTAによる尿ExoQuick EnrichmentにおけるEVマーカーの相対量を
図1に示す。尿のEV粒子及び非EV粒子の電子顕微鏡画像を
図2に示す。
図3に示されている電子顕微鏡画像の対物のフェレット径の分布。
【0169】
質量分析
タンデムマスタグ(TMT)標識
1)新鮮な尿+プロテアーゼ阻害剤で出発する。300×gで遠心分離し、上清を回収、
2)ExoQuick-Ultra TCキットを用いて濃縮、
3)還元し、アミダートスルフヒドリル結合、
4)総タンパク質を80%アセトン中で、-20℃で一晩沈殿、
5)緩衝液中で再構成し、トリプシンで消化、
6)断片をTMT(商標)Isobaric標識で標識、
7)試料を合わせ、乾燥、
8)Ultimate3000によって断片を分離、
9)OrbiTrap LumosによってLC画分を分析。
【0170】
PSMによる上位25のタンパク質の相対量を
図4に示す。
【0171】
【0172】
Luminexアッセイの開発
dUC試料の調製
1)新鮮な尿+プロテアーゼ阻害剤で出発する。300×gで遠心分離、上清を回収、
2)S300をUltra-Clear(商標)チューブへ移し、4℃、200K×gで一晩遠心分離、
3)ペレットを冷PBS+プロテアーゼ阻害剤+200mg/mL DTT中で再懸濁しプール、
4)4℃、200K×gで6時間遠心分離、
5)ペレットをPBS+プロテアーゼ阻害剤中で再懸濁、
6)分注し、-70℃以下で保存。
【0173】
EVのFSL-ビオチンタグづけ
FSL-ビオチンは、疎水性表面をビオチンで標識するよう設計されたKode(商標)Technology構築物である。FSL-ビオチンは、マレイミド担持型カルボキシメチルグリシン系リンカーへ結合したビオチン(ビタミンB7)のモノマーから構成され、これを次いで、ジオレイルホスファチジルエタノールアミンの活性化型アジパート誘導体(KODE Biotechウェブサイト:kodebiotech.com/sales/products/product_info.php?id=129&cat=rdt(2018年9月27日にアクセス))へ結合した。
【0174】
Luminexアッセイ設計
1)dUCで濃縮したuEVの1E6EV/ウェルを使用、
2)等量の標識済みMagPlex(商標)ビーズを添加、
3)4℃で一晩、穏やかに振盪しながらインキュベート、
4)PBSで2回洗浄
5)次のいずれかを添加
a.PBS/BSA中のビオチン化ポリクローナル抗体+SAPE
b.PBS中のFSLB+SAPE
6)室温で1時間、穏やかに振盪しながらインキュベート、
7)PBSで2回洗浄
8)シース液で2回洗浄、
9)Luminex機で高PMTで読み取り。
【0175】
図5は、Luminexによる尿EVの部分セットの検出を示す。
図6は、CD9
+EVでのみ検出された腎PODXLを示す。
【0176】
これらの結果は、uEV及びCD9+部分セットについての本プロトコルの濃縮物が、腎組織起源のマーカーであるPODXLを含有していることを示している。感度及び特異性を改善した本プロトコルの最適化は、uEV濃縮を改善し、より多量の腎バイオマーカーを同定すべきである。いったん最適化されると、本方法論は、健常ドナーと比較して差次的分析についての様々な疾患集団に適用され得る。
【0177】
実施例2
Luminex(登録商標)xMAP(登録商標)Technologyプラットフォームを用いた尿細胞外小胞(uEV)の同時免疫沈降/免疫分析による臓器及び組織における補体沈着の評価。
【0178】
抗体で被覆したxMAPビーズのアレイを、既定のネフロン領域に対して使用した。ポドカリキシン(PODXL)を糸球体足細胞用に、アクアポリン2(AQP2)を曲尿細管用にした。次いで、各ビーズセットを起源細胞の原形質膜(PM)上に沈着した補体マーカーの存在について分析した。このように、差次的診断、予後評価、及び/又は処置に対する応答の縦断的な監視について、尿EVを使用して、ネフロン中の補体の沈着を監視することができる。
【0179】
EVは、その親細胞由来の表面マーカーを保有している。これらのマーカーを使用して、細胞起源に基づいたEVを免疫単離することができる。PODXLは、糸球体における足細胞上でのみ作られる。AQP2は、近位曲尿細管及び遠位曲尿細管に由来する。RBC由来のグリコホリンA(GYPA)を使用して、血漿から濾液へのEVの漏出を測定することができる。循環EV濃度は、炎症性容態及び血栓性容態において高くなっている。一部のEVは、その表面上にCD55及びCD59などの補体調節因子を保有している。細胞は、EVを使用して、その表面から低濃度のMAC複合体を脱粒させることができる。EVは、トロンビン生成のための座として作用し得る。
【0180】
Luminexアッセイの開発
アッセイ設計の目標
腎生検のための有用且つ実用的な代用物であるように、本アッセイは典型的には、(a)凍結試料で出発する能力、(b)目標を達成するための最低限の加工を必要とする、(c)複数の使用を同時に且つ一貫して分析する単純性及び能力、並びに(e)膜の統合性を保持することなどの特徴を含む。このことは、Luminexビーズ免疫沈降の前の小胞手段の事前濃縮選別が典型的には最小限となることを意味する。
【0181】
Luminexアッセイ設計
1)PBS/BSA中で1:2に希釈した50μL/ウェルの尿を使用、
2)1000/ウェルの標識済みxMAP(商標)ビーズを添加、
3)4℃で一晩、穏やかに振盪しながらインキュベート、
4)PBSで2回洗浄、
5)PBS/BSA中のビオチン化ポリクローナル抗体+SAPEを添加、
6)室温で穏やかに振盪しながら1時間インキュベート、
7)PBSで2回洗浄、
8)シース液で2回洗浄、
9)Luminex機で、高PMTで読み取り。
【0182】
【0183】
Luminexビーズは、子宮体特異的EVを同定することができる。
図7においてみられるように、Rb-α-PODXLは、CD9又はCD40Lを含有するEV上で検出することができるが、CD63又はCD81を含有するEV上では検出することができず、シグナルは、2つの異なるα-PODXL抗体を用いて認められ、両方のタンパク質が同じ構造上にある場合にのみ生じることができる。
【0184】
本結果は、ネフロン特異的EVレベルが、疾患に伴って上昇することを示している。
図8においてみられるように、対照尿においてよりも多量のIgAN尿中PODXL+EVがあり、上昇は、CD9+/PODXL+集団及びCD40+/PODXL集団の両方においてみられ、CD63+及びCD81+EVはなお陰性である。
【0185】
Luminexビーズは、EV膜上の補体を測定することができる。
図9においてみられるように、C3c及びC5b-9は、CD9+ビーズ及びPODXL+ビーズの両方でLN患者尿において検出されるが、CD63+又はCD81+においては検出されず、これらの結果は、10個のLN試料、6個のIgAN試料、及び7個の対照試料(データ非表示)において確認され、LN試料及びIgAN試料の両方とも、対照試料と比較してPODXL+EV及びAQP2+EVの両方の上にC3、C5b-9、C4及びC1q沈着を有することができる。
【0186】
本結果はまた、糸球体C5b-9沈着が、ラブリズマブ処置とともに低下することも示す。
図10にみられるように、aHUS患者は、足細胞膜上にC3、C5b-9、C1q、及びC4のうちのいずれかの組み合わせを有し得、C3はラブリズマブ処置の間中、変化せず、C5b-9及びC1qのEV上でのレベルはラブリズマブ処置の間中、迅速に低減する。
【0187】
腎生検は、慢性腎疾患の差次的診断のための現行標準である。しかしながら、重症合併症についてのリスクは患者の選択及び検査の頻度を制限する。EVは、処置の前及び間中の腎臓の膜の上での進行中の補体沈着を監視するための容易に接近可能な機会を提供する。また、ネフロンに沿った補体攻撃の正確な細胞レベルでの特定も可能となる。
【0188】
この技術は、腎臓及び尿を超えていずれかの生物学的試料へ拡張することができる。独特なPMマーカーとともに目的のいずれかの細胞型又は組織は補体の沈着を調べるために使用され得る。
図11は、本開示に従って分析され得るマーカーの概略図を提供する。
【0189】
実施例3:EVデータを正規化するために修飾された膜結合フルオロホアを用いたバイオアッセイ
アッセイの頑強性を改善するために、各捕捉抗体で被覆されたLUMINEXビーズ上に単離された膜小胞の数を測定することは重要である。いくつかの態様において、「正規化」ステップは、個々のドナー内及びドナー間で、ビーズあたりの小胞の、及び試料マトリックス1mLあたりの小胞の変化により行われる。したがって、修飾された膜結合フルオロホア-システイン-リジン-パルムトイル(palmtoyl)基(mCLING、Synaptic Systems、カタログ番号710-MCK)がアッセイを改善し得ることが企図された。一態様において、mCLINGを、ビオチニル化を介して修飾し、修飾されたmCLINGを、免疫ビーズを保続したEVの複製ウェル内の各試験試料へ添加した。各ビーズセットを洗浄した後、ストレプトアビジンフィコエリトリン(SA-PE)を添加し、蛍光強度をmCLING試料及び符合する分析物試料について測定した。
【0190】
一試験において、尿EVを健常ボランティア(対照)並びにループス腎炎(LN)患者及びIgA腎症(IgAN)患者から取得し、抗体捕捉ビーズのパネルで濃縮し、次いで、(a)ビオチン化mCLINGを用いた総EV、又は(b)Quidel抗体A710(モノクローナル、新生抗原特異的)を用いた補体iC3bのいずれかについて複製ウェルにおいて表面表現型分類を行った。分析物(iC3b)について正規化したシグナルは、iC3bシグナル及びビオチン化したmCLINGについてのシグナルの比(シグナル=(b)/(a))を取ることによって生成された。結果を、iC3bについての代表的な正規化したEVデータである
図12に示す。正規化した応答(y軸に示す)は、各マーカーについて報告された平均蛍光強度値(x軸に示す)を、対応するmCLING平均蛍光強度値によって除したものを表す。
【0191】
対照は、健常ドナーからの同等の試料を表す。患者(LN又はIgAN)は、各マーカーについて一緒に提示される。
【0192】
データは、ある特定のEV、例えばCD9及びPODXLについて陽性であるものが、(
図12において横方向の破線によって示されるような)背景レベルを上回る補体(例えば、iC3b)沈着を選択的に含有することを示している。データは、iC3bなどの活性化型補体経路タンパク質が、それぞれ2つの疾患部分セットLN及びIgANから得られるEVにおいて示されるように、補体性疾患の病理生理学的特徴と関係していることを示している。
【0193】
本明細書のいたるところで与えられるあらゆる最大数値限界が、あらゆるより低い数値限界を含むことは、かかるより高い数値限界が明らかに本明細書に記載されているかのように理解されるべきである。本明細書のいたるところで与えられるあらゆる最小数値限界は、あらゆるより高い数値限界を、かかるより高い数値限界がすべて明らかに本明細書に記載されているかのように含むであろう。本明細書のいたるところで与えられるあらゆる数的範囲は、かかるより狭い数的範囲がすべて明らかに本明細書に記載されているかのように、かかるより広い数的範囲内に収まるあらゆるより狭い数的範囲を含むであろう。
【0194】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。方法及び材料は、本発明における使用のために本明細書に説明されている。当該技術分野で公知の他の適切な方法及び材料も使用することができる。材料、方法、及び例は、実例であるに過ぎず、制限しているよう意図するものではない。引用文献、特許出願、特許、配列、データベースエントリー(例えば、PUBMED、NCBI、又はUNIPROT受入番号)、及び本明細書で述べられている他の参考文献は、その全体が参照により援用されている。矛盾がある場合、本明細書が、定義を含め、優先される。
【0195】
本発明の特定の実施形態が例示及び説明されてきたが、様々な他の変更及び改変が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなくなされ得ることは当業者に明白であろう。それゆえ、添付の特許請求の範囲において、本発明の範囲内であるかかる変更及び改変をすべて網羅するよう意図されている。
【国際調査報告】