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特表2023-525583DEHPフリーの血液保存及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(54)【発明の名称】DEHPフリーの血液保存及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/14 20150101AFI20230609BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230609BHJP
   A61K 35/18 20150101ALI20230609BHJP
   A61K 35/19 20150101ALI20230609BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20230609BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230609BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
A61K35/14
A61K9/10
A61K47/02
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/20
A61K35/18
A61K35/19
A61K35/15
A61K47/12
A61J1/10 331A
A61J1/10 331B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569113
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 US2021032091
(87)【国際公開番号】W WO2021231650
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/024,190
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507318956
【氏名又は名称】ヘマネクスト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ソウェミモ-コーカー サミュエル オー
【テーマコード(参考)】
4C047
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C047AA11
4C047BB12
4C047BB17
4C047BB22
4C047BB24
4C047CC01
4C047GG40
4C076AA16
4C076BB11
4C076CC14
4C076DD25
4C076DD26
4C076DD43
4C076DD56
4C076DD59
4C076DD60
4C076DD66
4C076DD67
4C076FF36
4C076FF63
4C076GG41
4C087AA01
4C087AA10
4C087BB34
4C087BB36
4C087BB37
4C087BB38
4C087CA03
4C087DA10
4C087MA16
4C087NA03
4C087NA20
4C087ZA51
(57)【要約】
本開示は、血液を保存するための二酸化炭素透過性容器、並びに全血及び血液成分の改善された保存のための方法に関する。血液及び血液成分の採取のための改善されたデバイス及び方法は、二酸化炭素のレベルを低減させた全血及び血液成分、並びに可塑剤DEHPの除去を提供する。デバイス及び方法は、輸血された血液の全体的な質を改善し、患者の健康転帰を改善し、DEHPに関連するリスクを低減する、保存のための二酸化炭素枯渇血液及び血液成分の調製を提供する。デバイス及び方法はまた、保存中の血液及び血液成分中の低い酸素含有量の維持も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液製剤の保存方法であって、
30%を超えるSO2%を有する血液製剤を入手することと、
前記血液製剤に添加剤溶液を添加して、保存可能な血液製剤を調製することと、
前記保存可能な血液製剤を、25℃、約1atmにおいて、1平方センチメートル当たり少なくとも0.62立方センチメートル(cm3/cm2)の二酸化炭素に関するガス透過性を有する、ジ-2-エチルヘキシルフタレートフリー(DEHPフリー)血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグ内に保存することと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記保存可能な血液製剤が、前記保存の前に脱酸素化されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記保存可能な血液製剤が、前記保存中に脱酸素化されない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
保存中に、前記保存可能な血液製剤から酸素を枯渇させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記BC二酸化炭素透過性バッグが、0.3cm cm3/cm2未満の酸素透過性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記BC二酸化炭素透過性バッグが、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート(DEHT)を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記BC二酸化炭素透過性バッグが、可塑剤として、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)又はブチリルトリヘキシルシトレート(BTHC)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記BC二酸化炭素透過性バッグが、酸素及び二酸化炭素に対して不透過性の外側バッグ内に封入されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
DEHPフリー二酸化炭素透過性かつ酸素不透過性材料を含む、血液保存用容器であって、前記材料が、25℃で1atmにおいて0.05cm3/cm2未満の酸素に関するガス透過性、及び25℃で1atmにおいて1平方センチメートル当たり少なくとも0.62立方センチメートル(cm3/cm2)の二酸化炭素に関するガス透過性を有する、前記容器。
【請求項10】
前記材料が、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン、シリコーン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)、ポリプロピレン(PP)、又はポリウレタンからなる群から選択される、請求項9に記載の容器。
【請求項11】
前記材料が、可塑剤として、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)又はブチリルトリヘキシルシトレート(BTHC)を含む、請求項9に記載の容器。
【請求項12】
血液製剤の取扱い方法であって、
前記血液製剤に添加剤溶液を添加することと、前記血液製剤を、25℃、約1atmにおいて、少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に関するガス透過性を有する、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグ内に保存することを含み、前記保存が、少なくとも7日間であり、前記血液製剤が、前記7日間の保存における酸素レベルを含み、これが保存1日目の前記血液製剤内の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである、前記方法。
【請求項13】
前記BC二酸化炭素透過性バッグが、PVC又はポリオレフィンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記BC二酸化炭素透過性バッグが、可塑剤として、PVC中20~70%重量/重量の1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)又はブチリルトリヘキシルシトレート(BTHC)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
保存可能な血液を保存するための方法であって、
血液製剤を、
25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性、及び約1atmにおいて0.3cm3/cm2以下の酸素に対する透過性を有するDEHPフリー血液適合性(BC)材料、及び
二酸化炭素吸着剤を含む、保存容器内に設置することと、
前記保存可能な血液を含む前記容器を一定期間保存して、保存された血液を調製することと、を含む前記方法。
【請求項16】
赤血球を保存するための方法であって、
前記赤血球を、
25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性、及び約1atmにおいて0.3cm3/cm2以下の酸素に対する透過性を有する材料からなる、DEHPフリー血液適合性(BC)の透過可能で内側に折り畳み可能な容器を封入し、二酸化炭素吸着剤、酸素吸着剤、又は酸素及び二酸化炭素吸着剤を、前記内側バッグと外側バッグとの間に封入する、外側酸素及び二酸化炭素不透過性容器を備える、保存容器内に設置することと、
前記赤血球を含む前記容器を少なくとも7日間保存して、保存された血液製剤を調製することと、を含む、前記方法。
【請求項17】
血液製剤中の2,3-DPGのレベルを維持するための方法であって、
少なくとも10%の酸素飽和度を含む血液製剤を、
25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性、及び約1atmにおいて0.3cm3/cm2以下の酸素に対する透過性を有する、血液適合性(BC)材料を封入し、二酸化炭素吸着剤を、前記内側バッグと外側バッグとの間に封入する、外側酸素及び二酸化炭素不透過性容器を備える、保存容器内に設置することと、
前記血液製剤を含む前記容器を保存することを含み、前記2,3-DPGのレベルが、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、最大14日間の保存の間増加する、前記方法。
【請求項18】
血液製剤のATPのレベルを維持するための方法であって、
少なくとも10%の酸素飽和度を含む血液製剤を、
25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性、及び約1atmにおいて0.3cm3/cm2以下の酸素に対する透過性を有する、血液適合性(BC)材料を封入し、二酸化炭素吸着剤を、前記内側バッグと外側バッグとの間に封入する、外側酸素及び二酸化炭素不透過性容器を備える、保存容器内に設置することと、
前記血液製剤を含む前記容器を保存することであって、前記ATPのレベルが、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、42日間の保存後に増加する、保存することと、を含む、前記方法。
【請求項19】
全血、血小板、及び白血球からなる群から選択された血液製剤と、
重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、リン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、アデニン、グアノシン、グルコース、マンニトール、N-アセチル-システイン、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及びl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む添加剤溶液と、を含む、組成物。
【請求項20】
添加剤組成物であって、ある濃度の、
N-アセチル-システイン、
6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及び
l-アスコルビン酸を含み、前記添加剤組成物が、8~9のpHを含む、前記添加剤組成物。
【請求項21】
全血、血小板、及び白血球からなる群から選択された血液製剤と、
ある濃度のリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、1~2mMのグルコース、及びマンニトールの濃度を含む、クエン酸ナトリウム、アデニン、グアノシンを含む添加剤溶液と、を含む、組成物。
【請求項22】
実質的に示され、説明される通りである、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月13日に出願された、米国仮出願第63/024,190号の利益を主張し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、血液及び血液製剤の保存及び二酸化炭素低減のための容器に関する。本開示はまた、血液及び血液成分の改善された保存のための、保存中の二酸化炭素を管理する方法に関する。本開示は更に、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DEHP)フリー(DEHPフリー)の保存された血液の調製のための方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
血液及び血液成分の供給は、血液を保存する従来の慣行において使用される利用可能な保存システムによって現在制限されている。従来の保存慣行としては、抗凝固剤溶液への血液の採取、血漿の除去による赤血球濃縮物の調製、白血球除去、及び添加剤溶液中の赤血球濃縮物の保存が挙げられる。従来の保存システムを使用して包装された赤血球調製物は、約4℃で約42日間の冷蔵保存期間後に有効期限が切れる。
【0004】
現在、赤血球は、世界で最も広く輸血されている血液成分である。これにより、保存に基づく病変を最小限に抑えながら、血液の保存時間を増加させるための保存手順の開発が必須となる。
【0005】
保存中、生化学的及び生物物理学的変化(総称して、保存病変(「病変」)と呼ばれる)の蓄積は、保存中の赤血球(RBC)の質を徐々に低減させる。Yoshida T.,et al.“Red blood cell storage lesion:causes and potential clinical consequences,” Blood Transfus.27(17):27-52(2019)、Zimring JC.,“Established and theoretical factors to consider in assessing the red cell storage lesion,” Blood 125(4):2185-2189(2015)、Donadee C,et al.,“Nitric oxide scavenging by red blood cell microparticles and cell-free hemoglobin as a mechanism for the red cell storage lesion,” Circulation.124(4):465-476(2011)を参照されたい。代謝産物レベルの低減(例えば、アデノシン三リン酸(ATP)及び2,3ジホスホグリセレート(2,3-DPG))、遊離ヘモグロビン、溶血、非トランスフェリン結合鉄、微粒子、及びホスファチジルセリンへの曝露のレベルの増加などのインビトロで測定されたパラメータにおける変化は、生化学的保存病変の一部である。生理学的には、赤血球は、保存中に変形性の低減を経験する。
【0006】
保存病変は、インビボ回復及び血液の質における低減と関連付けられる。臨床研究は、保存誘発性変化が、これらの細胞が輸血されるときに、異なる患者集団における臨床転帰に悪影響を及ぼし得ることを示唆している。Triulzi DJ,et al.“Clinical studies of the effects of blood storage on patient outcomes.”Transfus Apher Sci.43(1):95-106(2010)、Voorhuis FT,et al.“Storage time of red blood cell concentrates and adverse outcomes after cardiac surgery:a cohort study.”Ann Hematol.92(12):1701-1706(2013)、及びSpinella PC,et al.“Duration of red blood cell storage is associated with increased incidence of deep vein thrombosis and in hospital mortality in patients with traumatic injuries”.Crit Care.13(5):R151(2009)を参照されたい。
【0007】
長年にわたり、RBCの冷蔵中の保存病変を低減させるためにいくつかの戦略が検討されてきた。Lagerberg JW,et al.“Prevention of red cell storage lesion:a comparison of five different additive solutions.”Blood Transfus.15(5):456-462(2017)、D’Alessandro A,et al.“Metabolic effect of alkaline additives and guanosine/gluconate in storage solutions for red blood cells.”Transfusion.58(8):1992-2002(2018)、及びStowell SR,et al.,“Addition of ascorbic acid solution to stored murine red blood cells increases posttransfusion recovery and decreases microparticles and alloimmunization,” Transfusion.53(10):2248-57(2013)を参照されたい。
【0008】
輸血用赤血球内の保存病変に対する一因は、保存中に血液中に存在する酸素から形成されるヒドロキシ、ペルオキシル、及びアルコキシラジカルを含む、反応性酸素種(ROS)による脂質及びタンパク質の酸化損傷である。Yoshida T,et al.“Extended storage of red blood cells under anaerobic conditions.”Vox Sang.92:22-31(2007)、及びYoshida T,et al.“Anaerobic storage of red blood cells.”Blood Transfus.8(4):220-36(2010)を参照されたい。したがって、保存されたRBCの質及びインビボ回復を改善するために示される1つのアプローチは、保存前にRBCからのO2の除去、及び保存期間を通じて嫌気的状態を維持することである。嫌気性保存の2つの形態は、保存中に血球の質を維持するために評価されている。1つのアプローチでは、酸素は、保存の開始前に低減される(例えば、枯渇及び保存)。Yoshida et al.“Extended storage of red blood cells under anaerobic conditions.”Vox Sang.92:22-31(2007)、及びYoshida et al.,“Anaerobic storage of red blood cells,”Blood Transfus.8(4):220-36(2010)、Yoshida et al.,“The effects of additive solution pH and metabolic rejuvenation on anaerobic storage of red cells,”Transfusion.48(10):2096-2105(2008)、Dumont et al.,“Anaerobic storage of red blood cells in a novel additive solution improves in vivo recovery,”Transfusion.49(3):458-464(2009)、D’Alessandro et al.,“Hypoxic storage of red blood cells improves metabolism and post-transfusion recovery,”Transfusion.[published online ahead of print(Feb.2020)]、Yoshida,T.らの国際公開第2016/172645号及びWolf,M.らのWO2016/145210を参照されたい。酸素枯渇条件下での血液の保存が、ATP及び2,3-DPGのレベルを、同様の時間で従来の方式で保存された血液と比較して増加させ、42日後に0.8%を下回る溶血レベルを維持する。保存前脱酸素を伴わない無酸素条件下で包装された赤血球の保存を伴う代替的アプローチが、研究されている(例えば、保存及び枯渇)。Hogman et al.,“Effects of oxygen on red cells during liquid storage at +4 degrees C,”Vox Sang.51(1):27-34(1986)を参照されたい。保存及び枯渇方法は、より便利であるが、本明細書まで枯渇及び保存アプローチの質を一致させることができなかった。
【0009】
更なる研究は、二酸化炭素レベルが、枯渇及び保存方法における脱酸素と組み合わせたときに、RBCにおける2,3-ジホスホグリセリン酸(DPG)レベルを強化することに直接寄与することを実証する。国際公開第2012/027582号(「’582公開物」)を参照されたい。‘582公開物は、2,3DPG強化が、pH、つまり、制御していると考えられていた状態とは無関係であることを更に示す。Dumont et al.,“CO2 dependent metabolic modulation in red blood cells stored under anaerobic condition,”Transfusion 56(2):392-403(2016)を参照されたい。
【0010】
様々な保存溶液が、保存病変の有害な影響を低減し、RBCの質及び臨床転帰を改善するために開発されている。保存溶液中の変化は、ATP、2,3-DPGの生成を増加させ、溶血を低減させることが知られている。RBCに対する酸化的損傷を低減するための努力は、抗酸化物質を保存配合物中に組み込むことを含む。Hogman et al.,“Storage of red blood cells with improved maintenance of 2,3-bisphosphoglycerate,”Transfusion.46(9):1543-52(2006)、Radwanski et al.,“Red cell storage in E-Sol 5 and Adsol additive solutions:paired comparison using mixed and non-mixed study designs,”Vox Sang 106(4):322-329(2014)、Cancelas et al.,“Additive solution-7 reduces the red blood cell cold storage lesion,”Transfusion 55(3):491-498(2015)、Lagerberg et al.,“Prevention of red cell storage lesion:a comparison of five different additive solutions,”Blood Transfus.15(5):456-462(2017)、及びPallotta et al.,“Storing red blood cells with vitamin C and N-acetylcysteine prevents oxidative stress-related lesions:a metabolomics overview,”Blood Transfus.12(3):376-387(2014)を参照されたい。
【0011】
プラスチック保存容器、特にPVCの開発の予想外の利点は、ほとんどのPVC系血液保存バッグにおいて使用される可塑剤DEHPの保護効果である。Estepに発行された米国特許第4,386,069号を参照されたい。しかしながら、最近では、DEHPが内分泌撹乱物質として機能することがあるという懸念から、当局は血液バッグからDEHPを除去することを検討している。しかしながら、DEHPの除去は、DEHPの存在が病変を覆うか、又は低減させるため問題であることが証明されている。D’Alessandro,A.,et al.“Rapid detection of DEHP in packed red blood cells stored under European and US standard conditions.”Blood Transfus.14(2):140-144(2016)を参照されたい。保存システムから可塑剤を除去することは、以下の赤血球の質において著しい変化をもたらす。1)赤血球溶血の増加、2)添加剤溶液中の赤血球の保存期間が現在の42日未満に減少、3)赤血球内のインビボ回復の減少、4)赤血球浸透圧脆性の増加、5)微小胞形成の増加、6)赤血球変形性の減少、及び7)赤血球形態スコアの減少。したがって、DEHPのこれらの利点の各々が冷蔵温度での長期保存中に赤血球の安定性及び質を維持するため、血液保存バッグにおけるDEHPの交換は、著しい技術的課題を提示する。本開示は、技術的課題の全てを克服し、優れた質を有する赤血球及び保存の終了時に0.8%未満の規制要件を満たす赤血球溶血を生成する。
【0012】
保存病変の予防及び低減は、依然として課題である。供給からDEHPを除去することへの関心の高まりは、これまでのDEHPによって提供された利点を置き換える新しい保存容器及び方法の開発を必要とする。更に、DEHPが除去されるときに良好かつ安全に機能し、保存条件に適合する添加剤溶液の開発が必要である。
【0013】
現在の技術に照らして、輸血に関連する罹患率を最小限に抑えるのに役立つように、輸血の前に、保存される赤血球などの血液及び血液成分の質を改善し、かつかかる血液及び血液成分の保存寿命を延ばす必要がある。規制要件に準拠し、信頼性を確保するために、赤血球の調製及び処理は、限られた期間内に完了しなければならない。更に、低減された二酸化炭素血液及び血液成分を調製するプロセスは、限定されるものではないが、血液の溶血、を含む病変を導入してはならない。最後に、改善された質の血液及び血液成分を得るために、既存の抗凝固剤及び添加剤溶液と互換性のある方法及びデバイスが必要である。
【0014】
かかる必要性及び他の必要性に対処するために、本開示は、二酸化炭素、又は二酸化炭素及び酸素低減血液及び血液成分の調製が提供者採取段階で開始される、血液及び血液成分の保存のためのデバイス、組成物、及び方法論を含み、かつ提供する。
【0015】
本明細書では、DEHPフリーのガス透過性生体適合性ポリマーを含む血液のための保存バッグは、従来の方式で保存された細胞と比較して低減されたレベルのCO2及びO2を有する血液製剤を保存する方法において構築され、かつ使用される。本明細書の方法及び容器は、保存前の酸素の初期枯渇が20%未満の状態で、嫌気性保存アプローチを改善する。本明細書は、CO2レベルを低減し、保存中の酸素化を防止することが、従来の保存並びに枯渇及び保存嫌気性方法の両方よりも優れたRBCの衛生を維持することを初めて示す。
【発明の概要】
【0016】
本開示は、血液製剤の保存に関する方法であって、30%を超えるSO2%を有する血液製剤を取得することと、保存可能な血液製剤を調製するために、添加剤溶液を血液製剤に添加することと、保存可能な血液製剤を、25℃、約1atmにおいて、1平方センチメートル当たり少なくとも0.62立方センチメートル(cm3/cm2)の二酸化炭素に関するガス透過性を有する、ジ-2-エチルヘキシルフタレートフリー(DEHPフリー)血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグ内に保存することと、を含む、方法を提供し、かつ含む。
【0017】
本開示は、DEHPフリー二酸化炭素透過性及び酸素不透過性材料を含む血液を保存するための容器を提供し、かつ含み、材料は、25℃で1atmにおいて、0.05cm3/cm2未満の酸素に関するガス透過性、及び25℃で1atmにおいて1平方センチメートル当たり少なくとも0.62立方センチメートル(cm3/cm2)の二酸化炭素に関するガス透過性を有する。
【0018】
本開示はまた、血液製剤を取り扱うための方法であって、血液製剤に添加剤溶液を添加することと、血液製剤を、25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に関するガス透過性を有する、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグ内に保存することであって、保存は、少なくとも7日間であり、血液製剤は、7日間の保存における酸素レベルを含み、これは保存1日目の血液製剤内の酸素レベルより減少したか、又はほぼ同じである、保存することと、を含む、方法を提供し、かつ含む。
【0019】
更に、本開示は、保存可能な血液を保存するための方法であって、25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性、及び約1atmにおいて0.3cm3/cm2以下の酸素に対する透過性を有する、DEHPフリーの血液適合性(BC)材料と、二酸化炭素吸着剤と、を含む保存容器内に血液製剤を設置することと、保存可能な血液を含む容器をある期間保存して、保存された血液を調製することと、を含む、方法を提供し、かつ含む。
【0020】
また、本開示は、赤血球を保存するための方法であって、25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性、及び約1atmにおいて0.3cm3/cm2以下の酸素に対する透過性を有する材料からなる、DEHPフリー血液適合性(BC)の透過可能で内側に折り畳み可能な容器を封入し、二酸化炭素吸着剤、酸素吸着剤、又は酸素及び二酸化炭素吸着剤を、内側バッグと外側バッグとの間に封入する、外側酸素及び二酸化炭素不透過性容器を備える保存容器内に赤血球を設置することと、赤血球を含む容器を少なくとも7日間保存して、保存された血液製剤を調製することと、を含む、方法を提供し、かつ含む。
【0021】
本開示は、血液製剤中の2,3-DPGのレベルを維持するための方法であって、25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性、及び約1atmにおいて0.3cm3/cm2以下の酸素に対する透過性を有する血液適合性(BC)材料を封入し、内側バッグと外側のバッグとの間に二酸化炭素吸着剤を封入する、外側酸素及び二酸化炭素不透過性容器を備える保存容器中に、少なくとも10%の酸素飽和度を含む血液製剤を設置することと、血液製剤を含む容器を保存することであって、2,3-DPGのレベルが、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、最大14日間の保存の間に増加する、保存することと、を含む、方法を更に提供し、かつ含む。
【0022】
本開示は、血液製剤中のATPのレベルを維持するための方法であって、25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性、及び約1atmにおいて0.3cm3/cm2以下の酸素に対する透過性を有する血液適合性(BC)材料を封入し、内側バッグと外側バッグとの間に二酸化炭素吸着剤を封入する、外側酸素及び二酸化炭素不透過性容器を備える保存容器中に、少なくとも10%の酸素飽和度を含む血液製剤を設置することと、血液製剤を含む容器を保存することであって、ATPのレベルが、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、42日間の保存後に増加する、保存することと、を含む、方法を提供し、かつ含む。
【0023】
本開示は、全血、血小板、及び白血球からなる群から選択される血液製剤と、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、リン二塩基酸ナトリウム(Na2HPO4)、アデニン、グアノシン、グルコース、マンニトール、N-アセチル-システイン、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及びl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む添加剤溶液と、を含む組成物を更に提供し、かつ含む。
【0024】
本開示は、ある濃度の、N-アセチル-システイン、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及びl-アスコルビン酸を含む添加剤組成物を更に提供し、かつ含み、添加剤組成物は、pH8~9を含む。
【0025】
本開示は、全血、血小板、及び白血球からなる群から選択される血液製剤と、ある濃度のリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、クエン酸ナトリウム、アデニン、グアノシン、グルコース、及びマンニトールの濃度を含む添加剤溶液と、を含む組成物を更に提供し、かつ含む。
【0026】
本開示のいくつかの態様は、単なる例として、添付の図面を参照して本明細書において説明される。ここで、図面を詳細に具体的に参照すると、示される詳細は、例としてであり、本開示の実施形態の例示的な考察の目的のためであることが強調される。この点に関して、図面とともに解釈される説明は、本開示の態様がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本開示の態様による、実験的設定の概略図である。
図2A】ガス不透過性バリアバッグの有無にかかわらず、DEHPフリーの二酸化炭素透過性バッグ内の保存21日目におけるATPのレベルを示すグラフである。
図2B】本開示の態様による、アルカリ添加剤溶液(AS7G-NAC)中の赤血球ヘモグロビンの酸素飽和パーセント(SO2%)、二酸化炭素分圧(pCO2)、溶血、及びATPにおいて、ガス不透過性バリアバッグの有無にかかわらず、DEHPフリー二酸化炭素透過性バッグ内の保存42日後のATPレベルを示すグラフである。データは、10の独立した試験(N=10)の平均±SDである。
図3A-3B】本開示の態様では、保存21日後(図3A)又は保存42日後(図3B)のアルカリ添加剤溶液(AS7G-NAC)中の赤血球における2,3-DPGのレベルにおいて、ガス不透過性バリアバッグの有無にかかわらず、DEHPフリー二酸化炭素透過性バッグ中の血液の保存の効果を示すグラフである。データは、10の独立した試験(N=10)の平均±SDである。
図4A-4B】本開示の態様による、AS3添加剤溶液中の、SO2%、pCO2、溶血、及びATPのレベルにおいて、ガス不透過性バリアバッグの有無にかかわらず、DEHPフリー二酸化炭素透過性バッグ中の血液の保存の効果を示すグラフである。図4Aは、21日後のATPレベルを示し、図4Bは、42日後のATPレベルを示す。データは、5つの独立した試験(N=5)の平均±SDである。
図5A-5B】本開示の態様による、AS3添加剤溶液中の、SO2%、pCO2、溶血、及び2,3-DPGのレベルにおいて、ガス不透過性バリアバッグの有無にかかわらず、DEHPフリー二酸化炭素透過性バッグ中の血液の保存の効果を示すグラフである。図5Aは、21日目の2,3-DPGレベルを提示し、図5Bは、42日目の2,3-DPGレベルを提示する。データは、5つの独立した試験(N=5)の平均±SDである。
図6A-6B】本開示の態様による、AS7G-NAC(SOLX-NAC)添加剤溶液中の、SO2%、pCO2、溶血、及び2,3-DPGのレベルにおいて、ガス不透過性バリアバッグの有無にかかわらず、DEHPフリー二酸化炭素透過性バッグ中の血液の保存の効果を示すグラフである。図6Aは、21日目の2,3-DPGレベルを提示し、図6Bは、42日目の2,3-DPGレベルを提示する。データは、3つの独立した試験(N=3)の平均±SDである。
図7A-7B】本開示の態様による、21日間の保存後又は42日間の保存後のAS7G-NAC添加剤溶液中の赤血球におけるATPのレベルにおいて、ガス不透過性バリアバッグの有無にかかわらず、DEHPフリー二酸化炭素透過性バッグ中の血液の保存の効果を示すグラフである。図7Aは、21日目のATPレベルを提示し、図7Bは、42日目のATPレベルを提示する。データは、3つの独立した試験(N=3)の平均±SDである。
【0028】
対応する参照符号は、いくつかの図全体にわたって対応する部分を示す。本明細書において記載される実施例は、本発明のいくつかの実施形態を例示するが、いかなる方法においても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
別途定義されない限り、本明細書において使用される技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。当業者は、本開示の実施において使用可能な多くの方法を認識するであろう。実際、本開示は、説明される方法及び材料に決して限定されない。本明細書で引用される任意の参照文献は、参照によってその全体が組み込まれる。本開示の目的のために、以下の用語は、以下で定義される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0031】
「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」、及びそれらの同根語は、「含むが、これらに限定されない」を意味する。
【0032】
「からなる(consisting of)」という用語は、「を含み、これに限定する」ことを意味する。
【0033】
「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法、又は構造が、追加の成分、工程、及び/又は部品が、特許請求される組成物、方法、又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にのみ、追加の成分、工程、及び/又は部品を含み得ることを意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明示的に別途示さない限り、複数の参照を含む。例えば、「1つの化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、それらの混合物を含む、複数の化合物を含み得る。
【0035】
本出願を通じて、本開示の様々な実施形態は、範囲フォーマットで提示され得る。したがって、範囲の記載は、全ての可能な部分範囲並びにその範囲内の個々の値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、「1~6」などの範囲の説明は、「1~3」、「1~4」、「1~5」、「2~4」、「2~6」、「3~6」などのサブ範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示しているとみなされるべきである。更に、「1~3」は、1及び3の両方を含む。これは、範囲の幅に関係なく適用される。本明細書で使用される場合、「間」は、範囲が、全ての可能なサブ範囲、並びにその範囲内の個々の数値を含むが、外部値を含まないことを意味する。例えば、「1~7」は、値1又は7を含まず、「0~7」は、値0又は7を含まない。
【0036】
本明細書で使用される場合、「方法」という用語は、化学、薬理学、生物学、生化学、及び医学分野の実践者によって既知の様式、手段、技術、及び手順から既知であるか、又はそれらから容易に開発される様式、手段、技術、及び手順を含むが、これらに限定されない、所与のタスクを達成するための様式、手段、技術、及び手順を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「バッグ」という用語は、可撓性材料から調製される折り畳み可能な容器を指し、ポーチ、チューブ、及びマチ袋を含む。特定の態様では、バッグは、非折り畳み可能な容器を指す。本明細書で使用され、本開示において含まれる場合、バッグという用語は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のひだを有し、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の側面上で封止されるか又は結合される、折り畳まれたバッグを含む。バッグは、1つ以上の材料のシートの結合を含む、当該技術分野において既知の様々な技術を使用して調製され得る。バッグを形成するための材料を結合する方法は、当該技術分野において既知である。国際公開第2016/145210号を参照されたい。本開示には、射出及びブロー成形によって調製される容器も含まれ、かつ提供される。ブロー成形容器及び射出成形容器を調製する方法は、当該技術分野において既知である。米国特許第4,280,859号、及び同第9,096,010号を参照されたい。好ましいタイプのブロー成形又は射出成形容器は、酸素の低減に関して血液又は血液成分を収容するために拡張することが可能でありながら、効率的な包装及び出荷のためにサイズを低減させることができる可撓性容器である。それらはまた、完全に拡張するまで、血液の体積に適合するように設計され得る。本開示を通して使用される場合、バッグは、折り畳み可能な容器の形態であり、2つの用語は、本開示を通して互換的に使用される。
【0038】
本明細書で使用される場合、「血液」及び「血液製剤」という用語は、全血、白血球低減RBC、血小板低減RBC、白血球及び血小板低減RBC、血小板、並びに白血球を指す。血液という用語は、濃厚赤血球、血小板低減濃厚赤血球、白血球低減濃厚赤血球(LRpRBC)、並びに白血球及び血小板低減濃厚赤血球を更に含む。血液の温度は、採取プロセスの段階とともに変化し、採取時及び採取地点において通常の体温37℃で開始するが、患者の身体から一旦除去されると、急速に約30℃まで低下する。採取した血液は、未処理の場合、約6時間で室温まで冷却される。実際には、血液は、24時間以内に処理され、約2℃~6℃、通常は4℃で冷蔵される。
【0039】
本明細書で使用される場合、「全血」という用語は、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、血漿中に懸濁された血小板を含有し、電解質、ホルモン、ビタミン、抗体などを含む血球の懸濁液を指す。特定の態様では、全血は、白血球化全血である。いくつかの態様では、全血は、病原体が低減した、又は病原体が不活性化した全血である。別の態様では、全血は、照射された全血である。全血において、白血球は通常4.5~11.0×109細胞/Lの範囲で存在し、海面での通常のRBC範囲は、男性では4.6~6.2×1012/L、女性では4.2~5.4×1012/Lである。通常のヘマトクリット、又は充填細胞体積パーセントは、男性では約40~54%、女性では約38~47%である。血小板数は、通常、男性、女性ともに150~450x109/Lである。全血は、血液提供者から採取され、通常、抗凝固剤と組み合わせられる。全血は、採取されるとき、最初は約37℃であり、採取中及び採取直後に約30℃まで急速に冷却されるが、約6時間にわたって周囲温度までゆっくりと冷却される。全血は、採取時、30~37℃で開始するか、又は室温(典型的には約25℃)で本開示の方法に従って処理され得る。本明細書で使用される場合、血液の「単位」は、抗凝固剤を含む約450~500mlである。
【0040】
本明細書で使用される場合、「血液提供者」は、通常、静脈切開又は静脈穿刺によって全血が採取される健常な個体を指し、提供された血液は処理され、後で使用するために血液バンクに保持され、最終的に提供者とは異なる受容者によって使用される。血液提供者は、提供者の血液中に提示されるバイオマーカに基づいて、選択され得る。血液提供者は、手術又は他の治療のためにスケジュールされた対象であり得、自己献血として知られるプロセスにおいて自身のために血液を提供することができる。代替的に、最も一般的に、血液は、異種輸血として知られるプロセスにおいて、別の人による使用のために提供される。提供者から引き出される全血試料の採取、又は患者からの自己輸血の場合は、献血又はアフェレーシスなどの当該技術分野において既知の技術によって達成され得る。静脈穿刺を使用して提供者から取得された新鮮な全血は、抗凝固剤の添加後、約30%~約88%の飽和酸素(SO2)の範囲の酸素飽和度を有する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「赤血球」(RBC)は、全血中に存在するRBC、白血球低減RBC、血小板低減RBC、並びに白血球及び血小板低減RBCを含む。インビボのヒト赤血球は、動的状態にある。赤血球は、全身に酸素を運び、赤血球にその色を与える鉄分含有タンパク質である、ヘモグロビンを含有する。赤血球で構成される血液量のパーセンテージは、ヘマトクリットと呼ばれる。本明細書で使用される場合、別途限定されない限り、RBCは、濃厚赤血球(pRBC)も含む。濃厚赤血球は、当該技術分野において一般的に既知の技術を使用して全血から調製される。
【0042】
血小板は、血管の内膜に付着することによって凝固プロセスを促進し、活性化されると成長因子を放出することによって治癒を促進する血液の小細胞成分である。血小板は、赤血球と同様に、骨髄によって作られ、脾臓によって除去されるまでの9~10日間、循環系内に残る。血小板は、多くの場合、血漿層と赤血球のペレットとの間に挟持された軟膜から血小板を分離するために遠心分離機を使用して調製される。
【0043】
血小板の保存は、温度、pH、O2及びCO2濃度を含む最も好ましい条件を識別するために広く研究されている。この研究の結果は、輸血後の受容者内で保存された血小板が持続するためには、血小板が、酸素にアクセスし、室温で保存する必要があるという結論であった。Murphy及びGardnerは、1975年に、望ましくない形態変化が酸素消費量の低減と関連していることに言及した。Murphy et al.,“Platelet storage at 22 degrees C:role of gas transport across plastic containers in maintenance of viability,”Blood 46(2):209-218(1975)を参照されたい。著者らは、酸素へのアクセスが増加すると、好気性代謝(酸化的リン酸化)が可能になり、乳酸生成速度が低減することを観察した。低いPO2レベルでは、乳酸生成は、パスツール効果と一致して増加する。Moroffらは、保存された血小板のpHをpH7に維持するためには、連続的な酸素消費が必要であることに言及した。Moroff et al.,“Factors Influencing Changes in pH during Storage of Platelet Concentrates at 20-24℃,”Vox Sanguinis 42(1):33-45(1982)を参照されたい。特別に調整された容器システムは、二酸化炭素並びに酸素に対する透過性を可能にして、pHの致死的な低下を防止する。Kakaiya et al.,“Platelet preservation in large containers,”Vox Sanguinis 46(2):111-118(1984)によって示されるように、血小板の質を維持することは、ガス交換のために利用可能な表面積を増加させて取得された、ガス交換条件の改善の結果であった。血小板保存中の酸素レベル維持の重要性は、ガス透過性容器の開発及び酸素濃縮雰囲気中の血小板の保存につながった。1984年6月19日にGrodeに発行された米国特許第4,455,299号を参照されたい。保存された血小板の生存率に対する酸素の重要性は、劣悪な酸素環境下では、乳酸レベルが5~8倍増加するという観察によって強化された。Kilkson et al.,“Platelet metabolism during storage of platelet concentrates at 22 degrees C.,”Blood 64(2):406-14(1984)を参照されたい。Wallvik et al.,“Platelet Concentrates Stored at 22℃ Need Oxygen The Significance of Plastics in Platelet Preservation,”Vox Sanguinis 45(4):303-311(1983)は、保存の最初の5日間に酸素を維持することが、血小板の保存にとって重要であることを報告した。また、Wallvik及び同僚は、保存バッグの酸素拡散容量の決定に基づいて、5日間保存可能な最大血小板数が予測可能であることを示した。Wallvik et al,“The platelet storage capability of different plastic containers,”Vox Sanguinis 58(1):40-4(1990)を参照されたい。適切なガス交換特性を有する血液バッグを提供することにより、pHは維持され、ATPの喪失及びアルファ顆粒血小板第4因子(PF4)の放出を防止した。前述の参照文献の各々、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0044】
これらの知見は、とりわけ、輸血後の生存率を最大化するために、室温保存中の血小板の酸素化を確保するための標準化を実践することにつながった。しかしながら、より最近の研究では、全血への酸素枯渇の影響が示されている。例えば、Yoshidaらは、低温保存が血小板の嫌気保存を可能にし、全血中の濃厚赤血球において観察される嫌気保存RBCの既知の利点を提供することを発見した。パラグラフ[0009]の国際公開第2016/187353号を参照されたい。「より具体的には、悪影響をもたらすことなく、予想外に凝血性を維持しながら、脱酸素化された全血は、改善された2,3,-DPGレベルを提供する。」idを参照されたい。
【0045】
血漿は、タンパク質塩溶液であり、赤血球、白血球、血小板が懸濁された血液の液体部分である。血漿は、90%水であり、血液量の約55パーセントを占める。血漿の1つの機能は、血液凝固及び免疫を補助することである。血漿は、血液の液体部分を細胞から分離することによって取得される。多くの場合、血漿は、遠心分離によって細胞から採取される。
【0046】
活性酸素種(ROS)は、正常な細胞代謝の結果として生体によって産生される。高濃度で、適切な酸化剤/抗酸化剤バランスなしで、ROSは、細胞成分に有害な変位を産生させる。理論に限定されるものではないが、追加の酸素が蓄積することを防止する限り、保存溶液中の抗酸化剤と組み合わせたRBC中に天然に発生する抗酸化剤は、例えば、RBC膜に対する酸化損傷の影響を低減するのに十分であると考えられる。初期の抗酸化能力を考慮すると、観察された酸化損傷の多くは、初期レベルのO2の結果ではなく、むしろ蓄積及び継続的な曝露の結果であると考えられる。本明細書に提示される結果は、酸素低減の利点が、保存中の細胞への酸素侵入を防止することによって達成され得ることを示す。これは、天然に発生する抗酸化物質の飽和に必要な量をはるかに下回る酸素レベルを維持することをもたらす。更に、アルカリ添加剤溶液を有する高い二酸化炭素透過性の条件下では、高レベルの2,3-DPGを、高酸素飽和レベルでも維持することができる。対照的に、従来の方法下での保存中の酸素及び二酸化炭素レベルは、保存期間を通じて増加し、ATP及び2,3-DPGレベルの低下が観察される。酸素の侵入を防止するか、又は酸素の侵入を防止し、処理要件中に血液中の初期の低レベルの酸素を維持することによって、保存中に存在する酸素が、細胞の抗酸化能力を圧倒しないように低減させることができる。以下に提示される結果は、保存中のCO2のレベルを低減させることは、保存期間中に酸素を管理するために外部バリア及び吸着剤と組み合わせると、2,3-DPGの濃度の増加、並びに2,3-DPG及びATPのレベルを増加させることをもたらすことを実証する。
【0047】
この結果を達成するために、本開示は、血液製剤の保存に関する方法であって、30%を超えるSO2%を有する酸素化血液製剤を取得することと、添加剤溶液を該血液製剤に添加することと、血液製剤を、25℃、約1atmにおいて、1平方センチメートル当たり少なくとも0.62立方センチメートル(cm3/cm2)の二酸化炭素に関するガス透過性を有する、ジ-2-エチルヘキシルフタレートフリー(DEHPフリー)血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグ内に保存することと、を含む、方法を提供し、かつ含む。ある態様では、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグは、ブチリルトリヘキシルシトレート(butyryltrihexylcitrate)(BTHC)を更に含む。別の態様では、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグは、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)を更に含む。
【0048】
方法
酸素制御のないCO2透過性バッグ内の保存
本開示のある態様では、方法は、該(DEHPフリー)血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグ内に少なくとも7日間保存される血液製剤を提供する。態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液中のレベルを上回って増加する。別の態様では、方法は、少なくとも14日間保存される血液製剤を提供する。更に別の態様では、方法は、少なくとも21日間保存される血液製剤を提供する。別の態様では、方法は、少なくとも28日間保存される血液製剤を提供する。更に別の態様では、方法は、少なくとも35日間保存される血液製剤を提供する。更なる態様では、血液製剤は、少なくとも40日間保存される。本方法は、56日間保存される血液製剤を更に提供する。注目すべきことに、これは、56日目で輸血可能な質の血液を提供する保存条件の最初の報告である。別の態様では、血液製剤は、最大7日間、14日間、21日間、35日間、42日間、又は56日間保存される。更に別の態様では、血液製剤は、1~7日間、1~14日間、1~21日間、1~35日間、1~42日間、1~56日間、7~14日間、7~21日間、7~35日間、7~42日間、7~56日間、14~21日間、14~28日間、14~35日間、14~42日間、14~56日間、21~35日間、21~42日間、35~42日間、又は35~56日間保存される。
【0049】
本開示の方法は、酸素を低減させるために処理されず、DEHPフリー)血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグに保存する前に30~100%の範囲の初期SO2%を有する、静脈採取血液製剤の保存を提供する。本開示のある態様では、方法は、保存期間の開始時(例えば、ゼロ日)において40%を超えるSO2%を有する静脈採取された血液製剤の保存を提供する。別の態様では、方法は、50%を超えるSO2%を有する酸素化血液製剤の保存を提供する。別の態様では、方法は、60%を超えるSO2%を有する酸素化血液製剤の保存を提供する。別の態様では、酸素化血液製剤は、70%を超えるSO2%を有する。別の態様では、酸素化血液製剤は、80%を超えるSO2%を有する。別の態様では、酸素化血液製剤は、90%を超えるSO2%を有する。別の態様では、酸素化血液製剤は、30~80%のSO2%を有する。別の態様では、酸素化血液製剤は、50~90%のSO2%を有する。別の態様では、酸素化血液製剤は、40~100%のSO2%を有する。別の態様では、酸素化血液製剤は、少なくとも30%のSO2%を有する。別の態様では、酸素化血液製剤は、少なくとも50%のSO2%を有する。
【0050】
本開示は、血液製剤の保存に関する方法であって、30%を超えるSO2%を有する静脈採取された血液製剤を取得することと、添加剤溶液を該血液製剤に添加することと、血液製剤を、25℃、約1atmにおいて、1平方センチメートル当たり少なくとも0.62立方センチメートル(cm3/cm2)の二酸化炭素に関するガス透過性を有する、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグ内に保存することと、を含む、方法を提供し、かつ含む。ある態様では、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグは、BTHCを更に含む、PVCバッグである。ある態様では、DEHPフリーBC二酸化炭素透過性バッグは、DINCHを更に含むPVCバッグである。更に別の態様では、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグは、EXP500を更に含む。
【0051】
本開示のある態様では、保存された血液製剤は、初期採血中に125mmHg未満のpCO2を有する。別の態様では、血液製剤は、100mmHg未満のpCO2を有する。別の態様では、血液製剤は、75mmHg未満のpCO2を有する。別の態様では、血液製剤は、50mmHg未満のpCO2を有する。別の態様では、血液製剤は、25mmHg未満のpCO2を有する。別の態様では、血液製剤は、125~100mmHgのpCO2を有する。別の態様では、血液製剤は、100~75mmHgのpCO2を有する。別の態様では、血液製剤は、75~25mmHgのpCO2を有する。方法の態様では、保存された血液製剤中の2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、少なくとも10%増加する。他の態様では、保存された血液製剤中のATPレベルは、該保存中に、従来の方式で保存された血液製剤のATPレベルと比較して、該保存可能な血液製剤中で少なくとも10%増加する。更に他の態様では、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPG及びATPレベルと比較して、保存された血液製剤中の2,3-DPGレベルは、少なくとも10%増加し、ATPレベルは、少なくとも10%増加する。方法の態様では、保存された血液製剤中の2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、少なくとも15%増加する。更に他の態様では、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPG及びATPレベルと比較して、2,3-DPGレベルは、少なくとも10%増加し、ATPレベルは、少なくとも15%増加する。
【0052】
本開示の態様では、該方法は、最大56日間の保存期間後に、保存期間中のCO2を125mmHg~25mmHgのレベルまで枯渇させて、CO2低減保存血液製剤を生成することを更に含む。ある態様では、保存された血液製剤は、少なくとも7日間の保存後、125mmHg未満のpCO2及び20%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、100mmHg未満のpCO2及び20%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、75mmHg未満のpCO2及び20%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、50mmHg未満のpCO2及び20%を超えるSO2%を有する。別の態様では、保存56日目に、血液製剤は、25mmHg未満のpCO2及び20%を超えるSO2%を有する。別の態様では、保存56日目に、血液製剤は、125mmHg~25mmHg、及び20%を超えるSO2%を有する。別の態様では、保存56日目に、血液製剤は、125mmHg~25mmHg、及び5%を超えるSO2%を有する。別の態様では、保存56日目に、血液製剤は、125mmHg~25mmHg、及び3~20%のSO2%を有する。更に別の態様では、血液製剤は、125mmHg未満のpCO2及び15%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、100mmHg未満のpCO2及び15%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、75mmHg未満のpCO2及び15%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、50mmHg未満のpCO2及び15%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、25mmHg未満のpCO2及び15%を超えるSO2%を有する。更なる態様では、血液製剤は、125mmHg未満のpCO2及び10%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、100mmHg未満のpCO2及び10%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、75mmHg未満のpCO2及び10%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、50mmHg未満のpCO2及び10%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、25mmHgを超えるpCO2及び10%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、125mmHg未満のpCO2及び5~30%のSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、100mmHg未満のpCO2及び5~30%のSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、75mmHg未満のpCO2及び5~30%のSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、50mmHg未満のpCO2及び5~30%のSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、25mmHg未満のpCO2及び5~30%のSO2%を有する。
【0053】
別の態様では、方法は、21日間の保存期間の後、保存期間中にCO2を125mmHg~25mmHgのレベルまで枯渇させて、20%を超えるSO2%を有し、かつ従来の方式で保存された血液製剤と比較して増加した2,3-DPGレベルを有するCO2低減保存血液製剤を生成することを提供する。ある態様では、方法は、21日間の保存期間の後、保存期間中にCO2を125mmHg~25mmHgのレベルまで枯渇させて、20%を超えるSO2%を有し、かつ従来の方式で保存された血液製剤と比較して増加した2,3-DPGレベル及びATPレベルを有するCO2低減保存血液製剤を生成することを提供する。ある態様では、保存された血液製剤は、125mmHg未満のpCO2及び20%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、100mmHg未満のpCO2及び20%を超えるSO2%を有する。別の態様では、保存21日目に、血液製剤は、75mmHg未満のpCO2及び20%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、50mmHg未満のpCO2及び20%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、25mmHg未満のpCO2及び20%を超えるSO2%を有する。更に別の態様では、血液製剤は、125mmHg未満のpCO2及び15%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、100mmHg未満のpCO2及び15%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、75mmHg未満のpCO2及び15%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、50mmHg未満のpCO2及び15%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、25mmHg未満のpCO2及び15%を超えるSO2%を有する。更なる態様では、血液製剤は、125mmHg未満のpCO2及び10%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、100mmHg未満のpCO2及び10%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、75mmHg未満のpCO2及び10%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、50mmHg未満のpCO2及び10%を超えるSO2%を有する。別の態様では、血液製剤は、25mmHg未満のpCO2及び10%を超えるSO2%を有する。方法の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、少なくとも10%増加する。他の態様では、ATPレベルは、該保存中に、従来の方式で保存された血液製剤のATPレベルと比較して、該保存可能な血液製剤中で少なくとも10%増加する。更に他の態様では、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPG及びATPレベルと比較して、2,3-DPGレベルは、少なくとも10%増加し、ATPレベルは、少なくとも10%増加する。方法の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、少なくとも15%増加する。更に他の態様では、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPG及びATPレベルと比較して、2,3-DPGレベルは、少なくとも10%増加し、ATPレベルは、少なくとも15%増加する。
【0054】
酸素制御のあるCO2透過性バッグ内の保存
本開示は、血液製剤の保存方法であって、30%を超えるSO2%を有する酸素化血液製剤を取得することと、添加剤溶液を該血液製剤に添加することと、血液製剤を、25℃、約1atmにおいて、1平方センチメートル当たり少なくとも0.62立方センチメートル(cm3/cm2)の二酸化炭素に関するガス透過性を含み、かつ酸素の遺伝子移入及び血液の飽和を防止するための酸素不透過性バリアバッグ及び吸着剤を更に含む、ジ-2-エチルヘキシルフタレートフリー(DEHPフリー)血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグ内に保存することと、を含む、方法を提供し、かつ含む。ある態様では、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグは、BTHCを更に含む。別の態様では、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグは、DINCHを更に含む。
【0055】
ある態様では、方法は、酸素の遺伝子移入及び血液の飽和を防止するための酸素不透過性バリアバッグを更に備える。ある態様では、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグは、BTHCを更に含む。別の態様では、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグは、DINCHを更に含む。更に別の態様では、本開示の方法は、血液製剤に添加剤溶液を添加することと、25℃、約1atmにおいて、少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に関するガス透過性を有する、血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグ内に血液製剤を保存することと、を含む、血液製剤を取り扱うことを提供し、該保存バッグは、酸素及び二酸化炭素に対して不透過性の外側バッグを更に含み、外側バッグは、該BC二酸化炭素透過性バッグと該外側バッグとの間に設置された二酸化炭素及び酸素吸着剤を封入する。方法の態様では、保存は、少なくとも7日であり、血液製剤は、7日間の保存で5~30%の酸素レベルを含み、これは、保存1日目の血液製剤中の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである。別の態様では、血液製剤は、14日間の保存で5~30%の酸素レベルを含み、これは、保存1日目の血液製剤中の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである。別の態様では、血液製剤は、保存21日目に5~30%の酸素レベルを含み、これは、保存1日目の血液製剤中の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである。別の態様では、血液製剤は、保存28日目に5~30%の酸素レベルを含み、これは、保存1日目の血液製剤中の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである。別の態様では、血液製剤は、保存32日目に5~30%の酸素レベルを含み、これは、保存1日目の血液製剤中の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである。別の態様では、血液製剤は、保存38日目に5~30%の酸素レベルを含み、これは、保存1日目の血液製剤中の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである。別の態様では、血液製剤は、保存42日目に5~30%の酸素レベルを含み、これは、保存1日目の血液製剤中の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである。
【0056】
更に別の態様では、本開示の方法は、血液製剤に添加剤溶液を添加することと、25℃、約1atmにおいて、少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に関するガス透過性を有する、血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグ内に血液製剤を保存することと、を含む、血液製剤を取り扱うことを提供し、該保存バッグは、酸素及び二酸化炭素に対して不透過性の外側バッグを更に含み、外側バッグは、該BC二酸化炭素透過性バッグと該外側バッグとの間に設置された二酸化炭素及び酸素吸着剤を封入する。方法の態様では、保存は、少なくとも7日であり、血液製剤は、7日間の保存で30%を超える酸素レベルを含み、これは、保存1日目の血液製剤中の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである。別の態様では、血液製剤は、14日間の保存で30%を超える酸素レベルを含み、これは、保存1日目の血液製剤中の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである。別の態様では、血液製剤は、21日間の保存で30%を超える酸素レベルを含み、これは、保存1日目の血液製剤中の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである。別の態様では、血液製剤は、28日間の保存で30%を超える酸素レベルを含み、これは、保存1日目の血液製剤中の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである。別の態様では、血液製剤は、32日間の保存で30%を超える酸素レベルを含み、これは、保存1日目の血液製剤中の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである。別の態様では、血液製剤は、38日間の保存で30%を超える酸素レベルを含み、これは、保存1日目の血液製剤中の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである。別の態様では、血液製剤は、42日間の保存で30%を超える酸素レベルを含み、これは、保存1日目の血液製剤中の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである。方法の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、少なくとも10%増加する。他の態様では、ATPレベルは、該保存中に、従来の方式で保存された血液製剤のATPレベルと比較して、該保存可能な血液製剤中で少なくとも10%増加する。更に他の態様では、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPG及びATPレベルと比較して、2,3-DPGレベルは、少なくとも10%増加し、ATPレベルは、少なくとも10%増加する。方法の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、少なくとも15%増加する。更に他の態様では、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPG及びATPレベルと比較して、2,3-DPGレベルは、少なくとも10%増加し、ATPレベルは、少なくとも15%増加する。
【0057】
本開示は、血液製剤中の2,3-DPGのレベルを維持するための方法であって、25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性を有し、かつ約1atmにおいて0.3cm3/cm2以下の酸素に対する透過性を有する血液適合性(BC)材料を含む保存容器中に非脱酸素化血液製剤を設置することであって、保存バッグが、二酸化炭素吸着剤を更に封入する酸素及び二酸化炭素に対する不透過性の外側バッグ内に封入され、血液製剤が、少なくとも10%の初期酸素飽和度を含む、設置することと、血液製剤を含む容器を保存することであって、2,3-DPGのレベルが、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、14日間の保存で増加する、保存することと、を含む、方法を提供し、かつ含む。別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、21日間の保存で増加する。別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、28日間の保存で増加する。別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、35日間の保存で増加する。別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、42日間の保存で増加する。ある態様では、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグは、BTHCを更に含むPVCバッグである。ある態様では、DEHPフリーBC二酸化炭素透過性バッグは、DINCHを更に含むPVCバッグである。更に別の態様では、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグは、EXP500を更に含む。
【0058】
別の態様では、血液製剤中の2,3-DPGのレベルを維持するための方法は、従来の方式で保存された血液と比較して、10%~70%の2,3-DPGレベルの増加を提供する。ある態様では、方法は、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、又はそれ以上増加する、2,3-DPGレベルを提供する。特定の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、7日間の保存で少なくとも10%増加する。別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、14日間の保存で少なくとも10%増加する。別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、21日間の保存で少なくとも10%増加する。特定の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、28日間の保存で少なくとも10%増加する。更に別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、42日間の保存で少なくとも10%増加する。特定の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、7日間の保存で少なくとも20%増加する。別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、14日間の保存で少なくとも20%増加する。別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、21日間の保存で少なくとも20%増加する。特定の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、28日間の保存で少なくとも20%増加する。更に別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、42日間の保存で少なくとも20%増加する。特定の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、7日間の保存で少なくとも30%増加する。別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、14日間の保存で少なくとも30%増加する。別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、21日間の保存で少なくとも30%増加する。特定の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、28日間の保存で少なくとも30%増加する。更に別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、42日間の保存で少なくとも30%増加する。更なる態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、28日間の保存で少なくとも40%増加する。更に別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、42日間の保存で少なくとも40%増加する。別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、28日間の保存で少なくとも50%増加する。更に別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、42日間の保存で少なくとも50%増加する。別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、42日間の保存で少なくとも60%増加する。別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、42日間の保存で少なくとも70%増加する。更に別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、42日間の保存で少なくとも80%増加する。更なる態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、42日間の保存で少なくとも90%増加する。更に別の態様では、2,3-DPGレベルは、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、42日間の保存で50~90%増加する。
【0059】
本開示は、血液製剤中のATPのレベルを維持するための方法であって、25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性を有し、かつ約1atmにおいて0.3cm3/cm2以下の酸素に対する透過性を有する血液適合性(BC)材料を含む保存容器中に酸素化血液製剤を設置することであって、保存バッグが、二酸化炭素及び酸素吸着剤を更に封入する、酸素及び二酸化炭素に対する不透過性の外側バッグ内に封入され、該血液製剤が、少なくとも10%の初期酸素飽和度を含む、設置することと、該血液製剤を含む容器を保存することであって、ATPのレベルが、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、7日間の保存後に増加する、保存することと、を含む、方法を提供し、かつ含む。別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、14日間の保存で増加する。別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、21日間の保存で増加する。別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、最大28日間の保存で増加する。別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、最大35日間の保存で増加する。別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、最大42日間の保存で増加する。別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、又はそれ以上増加する。特定の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、7日間の保存で、少なくとも10%増加する。別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、14日間の保存で少なくとも10%増加する。別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、21日間の保存で少なくとも10%増加する。特定の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、28日間の保存で、少なくとも10%増加する。更に別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、42日間の保存で少なくとも10%増加する。特定の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、7日間の保存で、少なくとも20%増加する。別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、14日間の保存で少なくとも20%増加する。別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、21日間の保存で少なくとも20%増加する。特定の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、28日間の保存で、少なくとも20%増加する。更に別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、42日間の保存で少なくとも20%増加する。特定の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、7日間の保存で、少なくとも30%増加する。別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、14日間の保存で少なくとも30%増加する。別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、21日間の保存で少なくとも30%増加する。特定の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、28日間の保存で、少なくとも30%増加する。更に別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、42日間の保存で少なくとも30%増加する。更なる態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、28日間の保存で少なくとも40%増加する。更に別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、42日間の保存で少なくとも40%増加する。別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、28日間の保存で少なくとも50%増加する。更に別の態様では、ATPレベルは、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、42日間の保存で少なくとも50%増加する。ある態様では、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグは、BTHCを更に含むPVCバッグである。ある態様では、DEHPフリーBC二酸化炭素透過性バッグは、DINCHを更に含むPVCバッグである。更に別の態様では、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグは、EXP500を更に含む。
【0060】
本開示は、DEHPの非存在下で7日間の保存後に、血液製剤中の溶血のレベルを0.8%未満に維持するための方法を提供し、かつ含む。別の態様では、血液製剤中の溶血のレベルは、14日間の保存後に、0.8%未満に維持される。別の態様では、血液製剤中の溶血のレベルは、21日間の保存後に、0.8%未満に維持される。別の態様では、血液製剤中の溶血のレベルは、28日間の保存後に、0.8%未満に維持される。別の態様では、血液製剤中の溶血のレベルは、35日間の保存後に、0.8%未満に維持される。別の態様では、血液製剤中の溶血のレベルは、42日間の保存後、0.8%未満に維持される。
【0061】
DEHP及び他の可塑剤
折り畳み可能な血液容器の製造におけるPVCの使用は、当該技術分野において周知である。様々ンPVC配合物における様々な可塑剤の使用もまた、当該技術分野において周知であり、具体的には、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)は、赤血球の長期保存に広く採用されている。PVCの可撓性を増加させることに加えて、DEHPはまた、PVCの酸素に対する透過性を増加させる。これらの理由から、DEHPは、赤血球を保存するための可塑剤として使用されている。例示的なPVC-DEHPフィルムは、Renolit ES-3000フィルム(American Renolit Corp.、City of Commerce,CA)である。
【0062】
DEHPは、赤血球の保存性を改善するが、最近、DEHPの安全性についての懸念が提起されている。PVC-DEHPバッグ内に保存されるRBC組成物は、バッグからDEHPを抽出する。研究は、保存28日目までに、PVC-DEHP内に保存されたRBCは、約80μg/mLのDEHPを有することを示した。Rock et al.,“Distribution of di(2-ethylhexyl) phthalate and products in blood and blood components,” Environ Health Perspect.65:309-316(1986)。依然として論争があり、議論されているが、いくつかの報告は、DEHPが、正常なホルモン機能を妨げる可能性があり、喘息、乳がん、肥満及び2型糖尿病、脳発達問題、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害、及び男性の生殖能力の低下に干渉する可能性があることを示唆している。他の研究では、DEHPは、赤血球の懸濁液中で、口腔細胞の形成を誘導し、ホスファチジルセリンの曝露を増加させることが示されている。Melzak et al.,“The Blood Bag Plasticizer Di-2-Ethylhexylphthalate Causes Red Blood Cells to Form Stomatocytes,Possibly by Inducing Lipid Flip-Flop” Transfus Med Hemother.45(6):413-422(2018)を参照されたい。このため、欧州は、DEHP曝露から人々を保護するための措置の採用を検討している。
【0063】
血液保存に好適なDEHPフリー材料を調べる研究の過程では、結果は、保存中に高レベルの主要な代謝産物(例えば、2,3-DPG及びATP)を維持する際のCO2枯渇単独の役割を初めて明らかにする。以下に提供される結果に先立ち、保存中のCO2の制御は、pHへの変化及びCO2感受性試薬との反応を防止することに大きく限定された。例えば、1978年4月4日にTalcottに発行された米国特許第4,228,032号は、アルカリ性保存環境を維持するために、BAGPAMなどの重炭酸塩含有緩衝液の保存中のCO2吸収を教示した。Talcottは、Ca(OH)2と化合したシリコーンゴムによる保存中のCO2吸収は、アルカリ性pHを維持することを示す。しかしながら、Talcottは、血液の保存におけるCO2のいずれの特定の効果を教示するか、若しくは示唆せず、又は血液代謝産物のレベルが、保存中CO2により影響を受けることを示唆しない。代わりに、Talcottは、2,3-DPGのレベルを維持するためにアルカリ性保存環境を維持することを教示する。より最近では、酸素枯渇pRBCの保存中の二酸化炭素の役割は、2,3-DPGレベルにおけるCO2の役割を示唆した。2012年3月1日に公開された、国際特許公開第2012/027582号(「582PCT」)を参照されたい。‘582PCTは、保存前に酸素の枯渇を約10mmHgに、及び二酸化炭素枯渇を5mmHgに除去することで、従来の方式で保存された血液に対して、2,3-DPG及びATPレベルを改善することができることを示した。‘582PCTはまた、2,3-DPGへの影響が、二酸化炭素枯渇の影響によるところが大きいことを示した。本開示は、保存中のCO2の枯渇及び酸素レベルの維持が、保存中の2,3-DPG及びATPレベルを維持することができることを最初に示す。本開示に先立ち、研究は、保存前のpH及び酸素枯渇の重要性を示しており、2,3-DPG及びATPを含む、主要な代謝産物の維持のための保存中のCO2単独の枯渇(一方で酸素を維持すること)の重要性ではない。保存中のガス交換の管理が、枯渇及び保存方法と同様の結果を達成することができるという予期しない発見は、保存及び輸血のための血液の準備を大幅に簡素化する。更に、本結果は、CO2効果が、‘582PCTにおいて試験されたものよりも10倍以上高いCO2レベルで達成され得ることを実証する。
【0064】
本開示は、DEHPの代わりに使用され得る様々な材料及び可塑剤を提供する。本開示は、二酸化炭素透過性が増加した好適な材料を提供する。
【0065】
本開示は、二酸化炭素に実質的に透過性である折り畳み可能な血液容器における使用のための好適なPVC材料を提供する。約5μm~約250μm、及びより好ましくは、約10μm~約100μmの厚さを有する、Renolit ES-4000(American Renolit Corp.、City of Commerce,CA)などのPVC-シトレートフィルムの使用は、高い二酸化炭素透過性、高周波(RF)溶接及び接合、並びに高引張強度の所望の特性を有する折り畳み可能な血液容器を提供するのに好適である。RF溶接はまた、高周波溶接又は誘電溶接として当該技術分野において既知である。RF溶接は、高周波電磁エネルギーを使用して材料又はフィルムの薄いシートをともに接合して、材料を融合させる方法である。本開示の態様では、RF溶接は、折り畳み可能な血液容器を形成しながら、ガス漏出又は侵入を回避するために、フィルムをともに融合させるために使用される。
【0066】
特定の態様では、折り畳み可能な血液容器の調製における使用に好適な二酸化炭素透過性膜は、可塑剤ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DEHP)を有しないPVCを含む。別の態様では、折り畳み可能な血液容器の調製における使用に好適な二酸化炭素透過性膜は、ジ-2-エチルヘキシルテレフタレート(DEHT)を有しないPVCを含む。別の態様では、折り畳み可能な血液容器の調製における使用に好適な二酸化炭素透過性膜は、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)を有するPVCを含む。別の態様では、折り畳み可能な血液容器の調製における使用に好適な二酸化炭素透過性膜は、ブチリルトリヘキシルシトレート(BTHC)を有するPVCを含む。特定の態様では、可塑剤の濃度は、PVC中20~70%重量/重量である。特定の態様では、可塑剤の濃度は、PVC中20~40%重量/重量である。特定の態様では、可塑剤の濃度は、PVC中40~70%重量/重量である。別の態様では、可塑剤の濃度は、PVC中20%重量/重量を超える。別の態様では、可塑剤の濃度は、PVC中30%重量/重量を超える。別の態様では、可塑剤の濃度は、PVC中40%重量/重量を超える。別の態様では、可塑剤の濃度は、PVC中50%重量/重量を超える。別の態様では、可塑剤の濃度は、PVC中60%重量/重量を超える。特定の態様では、可塑剤DINCHは、より好ましくは、PVC中20~45%重量/重量である。特定の態様では、可塑剤DINCHは、PVC中20%重量/重量を超える。特定の態様では、可塑剤DINCHは、PVC中30%重量/重量を超える。特定の態様では、可塑剤DINCHは、PVC中40%重量/重量を超える。
【0067】
別の態様では、折り畳み可能な血液容器の調製における使用に好適な二酸化炭素透過性膜は、ポリオレフィンを含む。更なる態様では、折り畳み可能な血液容器の調製における使用に好適な二酸化炭素透過性膜は、シリコーンを含む。別の態様では、折り畳み可能な血液容器の調製における使用に好適な二酸化炭素透過性膜は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むが、これらの膜は、保存するのに十分な強度ではなく、溶血の増加を更にもたらす。別の態様では、折り畳み可能な血液容器の調製における使用に好適な二酸化炭素透過性膜は、ポリスルホン(PS)を含むが、PVDFと同様に、溶血及び脆性の増加を呈する。別の態様では、折り畳み可能な血液容器の調製における使用に好適な二酸化炭素透過性膜は、ポリプロピレン(PP)を含む。別の態様では、折り畳み可能な血液容器の調製における使用に好適な二酸化炭素透過性膜は、ポリウレタンを含む。
【0068】
内側バッグの材料及び透過性
本開示は、二酸化炭素に対して透過性であり、かつ酸素に対して不透過性である二酸化炭素透過性バッグを含む、保存中に血液から二酸化炭素を枯渇させるために提供する、血液保存容器を提供し、かつ含む。好ましくは、血液保存容器は、DEHPフリー二酸化炭素透過性材料から調製される。
【0069】
本開示は、主に二酸化炭素に対する透過性を特徴とする膜から調製されたDEHPフリーの二酸化炭素透過性バッグを提供し、かつ含む。
【0070】
本開示はまた、二酸化炭素に対して透過性である膜を提供し、かつ含む。二酸化炭素に対して透過性である膜は、二酸化炭素透過性バッグ、好ましくは、DEHPフリー二酸化炭素透過性膜の調製のために本開示において使用される。特定の態様では、二酸化炭素に対して透過性である膜はまた、生体適合性膜であり、患者に輸血される血液との長期接触のために承認され、かつ好適である。実質的に不透過性の膜と同様に、実質的に透過性の膜は、単層を含み得、又は2つ以上の層を有する積層構造を含んでもよい。
【0071】
ある態様では、二酸化炭素透過性膜は、0.6~2.5cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性を有する。ある態様では、DEHPフリーBC二酸化炭素透過性バッグの構築のための材料は、25℃、約1atmにおいて、1平方センチメートル当たり約0.6立方センチメートル(cm3/cm2)を超える二酸化炭素透過性を有する。かかるバッグは、0.43cm3/cm2の二酸化炭素透過性を有する従来のDEHP含有PVCから調製されたバッグよりも改善されている。別の態様では、約0.7cm3/cm2を超える二酸化炭素に対する透過性を有するDEHPフリーBC二酸化炭素透過性材料が、二酸化炭素透過性バッグの調製のために使用される。別の態様では、約0.8cm3/cm2を超える二酸化炭素に対する透過性を有するDEHPフリーBC二酸化炭素透過性材料が、二酸化炭素透過性バッグの調製のために使用される。更に別の態様では、約1.5cm3/cm2を超える二酸化炭素に対する透過性を有する二酸化炭素透過性材料が、二酸化炭素透過性バッグの調製のために使用される。特定の態様では、約2cm3/cm2を超える二酸化炭素に対する透過性を有する二酸化炭素透過性材料が、二酸化炭素透過性バッグの調製のために使用される。他の態様では、約2.2cm3/cm2を超える二酸化炭素に対する透過性を有するDEHPフリーBC二酸化炭素透過性材料が、二酸化炭素透過性バッグの調製のために使用される。他の態様では、0.6~0.8、0.7~0.9、2~2.5、及び0.6~2.5cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性を有する二酸化炭素透過性材料が、二酸化炭素透過性バッグの調製のために使用される。更に別の態様では、二酸化炭素透過性材料は、表1によって提供される材料から選択される。ある特定の態様では、二酸化炭素透過性材料は、0.6~0.8、0.7~0.9、2~2.5、及び0.6~2.5cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性を有するPVC膜であり、二酸化炭素透過性バッグの調製のために使用される。別の態様では、二酸化炭素透過性材料は、0.6~0.8、0.7~0.9、2~2.5、及び0.6~2.5cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性を有するポリオレフィン膜であり、二酸化炭素透過性バッグの調製のために使用される。好ましくは、二酸化炭素透過性材料は、DEHPフリーBC二酸化炭素透過性膜である。
【表1】
【0072】
ある態様では、二酸化炭素透過性膜はまた、酸素に対して透過性である。しかしながら、好ましい態様では、二酸化炭素透過性バッグの調製における使用のための二酸化炭素透過性膜は、酸素に対して不透過性であり、外側バリアフリー血液保存容器の調製に特に好適である。別の態様では、25℃、約1atmにおいて、約0.6cm3/cm2を超える二酸化炭素に対する透過性、及び0.15cm3/cm2を超える酸素に対する透過性を有する二酸化炭素透過性膜は、血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグの調製のために使用される。別の態様では、25℃、約1atmにおいて、約0.6cm3/cm2を超える二酸化炭素に対する透過性、及び0.2cm3/cm2を超える酸素に対する透過性を有する二酸化炭素透過性膜は、BC二酸化炭素透過性バッグの調製に対して使用される。別の態様では、25℃、約1atmにおいて、約0.6cm3/cm2を超える二酸化炭素に対する透過性、及び3.0cm3/cm2未満の酸素に対する透過性を有する二酸化炭素透過性膜は、BC二酸化炭素透過性バッグの調製に対して使用される。別の態様では、25℃、約1atmにおいて、約0.6cm3/cm2を超える二酸化炭素に対する透過性、及び2.5cm3/cm2未満の酸素に対する透過性を有する二酸化炭素透過性膜は、BC二酸化炭素透過性バッグの調製に対して使用される。別の態様では、25℃、約1atmにおいて、約0.6cm3/cm2を超える二酸化炭素に対する透過性、及び3cm3/cm2未満の酸素に対する透過性を有する二酸化炭素透過性膜は、BC二酸化炭素透過性バッグの調製に対して使用される。更に別の態様では、25℃、約1atmにおいて、約0.6cm3/cm2を超える二酸化炭素に対する透過性、及び0~3cm3/cm2の酸素に対する透過性を有する二酸化炭素透過性膜が、BC二酸化炭素透過性バッグの調製ために使用される。
【0073】
本明細書で使用される場合、DEHPフリー二酸化炭素透過性バッグは、二酸化炭素に対して透過性である。特定の態様では、DEHPフリー二酸化炭素透過性バッグは、酸素及び二酸化炭素に対して透過性である。他の態様では、DEHPフリー二酸化炭素透過性バッグは、酸素に対して不透過性であり、かつ二酸化炭素に対して透過性である。
【0074】
本開示の態様では、本開示による方法及びデバイスのための他の好適なDEHPフリーBC二酸化炭素透過性膜には、高密度膜、多孔質膜、非対称膜、及び複合膜が挙げられる。特定の態様では、好適な膜は、多層膜であってもよい。他の態様では、好適な膜は、無機材料から調製される。高密度膜は、細孔又は空隙を有しない固体材料から調製された膜である。材料は、溶液及び拡散のプロセスによって高密度の膜に浸透する。高密度の膜の例としては、シリコーン膜(ポリジメチルシロキサン(PDMS))が挙げられる。また、本開示に含まれ、かつ提供されるのは、サイズ排除に基づいて分離する特定のサイズ範囲の細孔を有する多孔質膜である。本開示による使用に好適な多孔質膜の例としては、PVDF及びポリスルホン膜が挙げられる。
【0075】
外側バリアバッグ
本開示はまた、二酸化炭素に対して実質的に不透過性であるガス不透過性バリアバッグ、二酸化炭素に対して透過性であるDEHPフリー二酸化炭素透過性バッグ、及びガス不透過性バリアバッグ内に位置する二酸化炭素吸着剤を含む、保存中に血液から二酸化炭素を枯渇させるためのガス不透過性バリアバッグ内に封入された血液を保存するための二酸化炭素透過性容器を提供し、かつ含む。特に、外側バリアバッグ及び吸着剤の追加は、2,3-DPGレベル及びATPレベルの両方を増加させることができるが、高い二酸化炭素透過性を有する特定のバッグは、42日間の保存に対して、著しく高いレベルの2,3-DPGを維持することができる。図3A、3Bを参照されたい。したがって、高い二酸化炭素透過性及び低い酸素透過性を有する材料から調製された保存バッグは、バリアの必要性を排除することができる。酸素透過性バッグは、外側バリアバッグ及び吸着剤の組み合わせの追加により最も恩恵を受けるが、酸素が能動的に除去されて、強化されたATPレベルにつながるため、低酸素透過性膜であっても恩恵を受けることが予想される。図2~6を参照されたい。
【0076】
本開示は、フィルムからのガス不透過性バリアバッグ及び膜からのDEHPフリー二酸化炭素透過性バッグの調製を提供し、かつ含む。本明細書で使用される場合、膜は、概して、DEHPフリー二酸化炭素透過性バッグを調製するために使用される材料を指し、フィルムは、ガス不透過性バリアバッグを調製するために使用される材料を指すために使用される。特定の材料が製造業者によって「膜」と称されてもよく、又は概して、「膜」として既知であってもよいことは理解されるが、明確にするために、別途指示がない限り、フィルムは、実質的に不透過性であるとみなされる。膜は、1つ以上の物質がシートの一方の側面からシートの他方の側面に通過することを可能にするシートの形態の1つ以上の材料層を含む。本明細書で使用される場合、外側受容体は、二酸化炭素に対して実質的に不透過性であり、かつ任意選択的に、酸素に対して不透過性である材料から調製される。特定の態様では、ガス不透過性バリアバッグは、可撓性フィルム材料から調製される。他の態様では、ガス不浸透性バリアバッグは、剛性、又は非可撓性フィルム材料から調製される。
【0077】
本開示は、二酸化炭素に対して実質的に不透過性のガス不透過性バリアバッグを提供し、かつ含む。本明細書で使用される場合、二酸化炭素に対して実質的に不透過性であるガス不透過性バリアバッグは、3ヶ月の期間にわたって受容体の内側に10cc以下の二酸化炭素、より好ましくは、6ヶ月にわたって5cc以下の二酸化炭素を可能にするように、二酸化炭素に対して十分に不透過性である。本明細書で使用される場合、二酸化炭素に対して実質的に不透過性(SICO)という用語は、42日間以上にわたって、二酸化炭素の分圧における著しい増加を防止するのに十分な、バリアの一方から他方への二酸化炭素の通過に対するバリアを提供する、材料及び組成物を指す。
【0078】
別途指示がない限り、「実質的に不透過性の膜」とは、二酸化炭素に対して実質的に不透過性である膜を指す。本明細書で使用される場合、実質的に二酸化炭素に対して不透過性であるとは、1日当たり、1平方メートル当たり約1.0cc未満の二酸化炭素の二酸化炭素に対する透過性を意味する。しかしながら、特定のデバイス及び方法では、膜は、酸素に対する透過性又は不透過性によって更に特徴付けられ得る。特定の用途のために、膜材料は、二酸化炭素に対して実質的に不透過性であり、血液、血液成分、又は複数の成分からなる採血キットへの二酸化炭素の導入に対するバリアを提供する。かかる実質的に不透過性の膜は、概して、本開示の外側受容体を調製するために使用される。好適な実質的に不透過性の膜はまた、デバイス及びキットの接続構成要素のためのチューブを調製するために使用されてもよい。実質的に不透過性の膜は、単層を含んでもよく、又は2つ以上の層を有する積層シート若しくはチューブであってもよい。
【0079】
本開示はまた、酸素に対して実質的に不透過性である、ガス不透過性バリアバッグを提供し、かつ含む。本明細書で使用される場合、実質的に酸素に対して不透過性であるとは、1日当たり、1平方メートル当たり約1.0cc未満の酸素の酸素に対する透過性を意味する。特定の態様では、ガス不透過性バリアバッグ及び本開示の他の要素の調製における使用に好適なフィルムは、約0.140バレル未満のバレル値によって特徴付けられる材料である。
【0080】
ガス不透過性バリアバッグを調製するための材料及び方法は、当該技術分野において既知である。例えば、Gawrylらに発行された米国特許第7,041,800号、及びGustafssonらに発行された米国特許第6,007,529号、及びMcDormanによる米国特許出願公開第3013/0327677号を参照された。その各々は、参照により、それらの全体が本明細書に組み込まれる。不透過性材料は、当該技術分野において規定通りに使用され、任意の好適な材料が、使用され得る。成形ポリマーの場合、酸素及び二酸化炭素バリア特性を強化するために、添加剤が規定通りに添加される。例えば、Satoらに発行された米国特許第4,837,047号を参照されたい。例えば、Smithらに発行された米国特許第7,431,995号は、酸素及び二酸化炭素侵入に対して不透過性である、エチレンビニルアルコールコポリマー及び変性エチレンビニルアセテートコポリマーの層からなる酸素及び二酸化炭素不透過性受容体を記載する。別の態様では、ガス不透過性バリアバッグは、酸素及び二酸化炭素に対して不透過性である。
【0081】
特定の態様では、二酸化炭素、酸素、又は二酸化炭素及び酸素の両方に対して実質的に不透過性であるフィルムは、積層フィルムであってもよい。ある態様では、二酸化炭素、酸素、又は二酸化炭素及び酸素の両方に対して実質的に不透過性である積層フィルムは、積層箔フィルムである。フィルム材料は、箔及びポリマーの組み合わせである、ポリマー又は多層構造であり得る。ある態様では、積層フィルムは、アルミニウムで積層されたポリエステル膜であってもよい。酸素に対して実質的に不透過性である、積層箔としても既知である、好適なアルミニウム積層フィルムの例は、当該技術分野において既知である。例えば、Sugisawaの米国特許第4,798,728号は、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、及び塩化ビニリデンのアルミニウム積層箔を開示する。他の積層フィルムは、当該技術分野において既知である。例えば、Chowらの米国特許第7,713,614号は、酸素に対して実質的に不透過性であるエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)樹脂を含む、多層容器を開示する。ある態様では、ガス不透過性バリアバッグは、ヒートシールによって3つ又は4つの側面をシールすることによって構築されたバリアバッグであってもよい。バッグは、二酸化炭素及び酸素バリア特性の強化を提供する材料を含む、多層構造で構築される。バッグは、二酸化炭素及び酸素バリア特性の強化を提供する材料を含む、多層構造で構成される。かかる材料としては、0.01cc/100in2/24時間の酸素透過率を有する、Rollprint Clearfoil(登録商標)V2フィルム、0.004cc/100in2/24時間の酸素透過率を有する、Rollprint Clearfoil(登録商標)Xフィルム、及び0.0008cc/100in2/24時間の酸素透過率を有するClearfoil(登録商標)Zフィルム(Rollprint Packaging Products、Addison,IL)が挙げられる。他の製造業者は、Renolit Solmed Wrapflex(登録商標)フィルム(American Renolit Corp.、City of Commerce,CA)など、同様の酸素透過率を有する同様の製品を作製する。酸素に対して実質的に不透過性である、積層箔としても既知である、好適なアルミニウム積層フィルムの例は、Protective Packaging Corp.(Carrollton,TX)から取得可能である。
【0082】
SICO材料の調製に適用可能な別のアプローチとしては、ヒドロヨウ素酸及びアスコルビン酸によるグラフェンオキシド積層体の穏やかな化学還元によって作製される多層グラファイトフィルムが挙げられる。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Su et al.“Impermeable barrier films and protective coatings based on reduced graphene oxide,” Nature Communications 5:4843(2014)を参照されたい。酸素バリア特性を強化するためのナノ粒子はまた、当該技術分野で既知であり、例えば、Tera-Barrier(Tera-Barrier Films Pte,Ltd、The Aries,Singapore)によって提供される多層バリア積層フィルムであり、3014年8月12日のPackaging Digest Magazine内でRick Lingleによって記載されている。
【0083】
本開示による態様では、ガス不透過性バリアバッグは、ガス不透過性プラスチックから調製され得る。一実施形態では、ガス不透過性プラスチックは、積層体であり得る。特定の実施形態では、積層体は、透明バリアフィルム、例えば、ナイロンポリマーであり得る。実施形態では、積層体は、ポリエステルフィルムであり得る。一実施形態では、積層体は、Mylar(登録商標)であり得る。特定の実施形態では、積層体は、金属化フィルムであり得る。一実施形態では、金属化フィルムは、アルミニウムでコーティングされ得る。別の実施形態では、コーティングは、酸化アルミニウムであり得る。別の実施形態では、コーティングは、低密度ポリエチレン(LDPE)の層の間で積層されたエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)であり得る。
【0084】
本開示のガス不透過性バリアバッグは、プラスチック又は他の耐久性のある軽量材料を含む、ガス不透過性材料から調製される1つ以上の部品から形成され得る。いくつかの実施形態では、筐体は、2つ以上の材料から形成され得る。一実施形態では、ガス不透過性バリアバッグは、ガス不透過性筐体を調製するための材料から形成され得、かつガス不透過性材料でコーティングされ得る。一実施形態では、剛性又は可撓性のガス不透過性バリアバッグは、射出成形され得るプラスチックから調製され得る。本開示による実施形態では、プラスチックは、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はナイロンから選択され得る。一実施形態では、ガス不透過性バリアバッグ材料は、ポリエステル(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、高衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリアミド(PA)(例えば、ナイロン)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリカーボネート/アクリロニトリルブタジエンスチレン(PC/ABS)、ポリウレタン(PU)、メラミンホルムデヒド(MF)、プラスチック材料、フェノリックス(PF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)(Ultem)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、尿素ホルムアルデヒド、及びエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)からなる群から選択され得る。特定の実施形態では、ガス不透過性バリアバッグは、ポリエチレンであり得る。いくつかの実施形態では、ポリエチレンガス不透過性バリアバッグは、ともに溶接される1つ以上のポリエチレン成分を含み得る。特定の態様では、外側受容体は、ポリエチレン外側層、ポリエステル内側層、及び内側層と外側層との間に分散された酸化アルミニウムバリア層を有する多層フィルム、例えば、0.0008cc/100 in2/24時間の酸素透過率を有するClearfoil(登録商標)Zフィルム(Rollprint Packaging Products、Addison,IL)からなる。
【0085】
本開示は、ヒートシール、ブロー成形、及び射出成形技術を使用するガス不透過性バリアバッグの調製を提供し、かつ含む。ヒートシール、ブロー成形、及び射出成形を使用してガス不透過性バリアバッグを調製するための好適な材料としては、PET、標準及び多層、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ABS、及び当業者に既知の他のポリマーが挙げられる。ブロー成形及び射出成形ガス不透過性バリアバッグを調製するための方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、多層構造は、ポリプロピレン(PP)の2つの層の間に位置し、Kortec(Kortec,Inc.、Rowley,MA)によって提供され、Slatに発行された米国特許第5,906,285号にも記載された、エチルビニルアルコール(EVOH)又はエチルビニルアセテート(EVA)のバリア層からなる。成形前、又はそれらの配合中、又は設定中に、ポリマーの酸素及びCO2バリア特性を強化する添加剤は、当該技術分野において既知である。一例は、多層ポリマー共噴射であり、多層PETをもたらす。かかるバリア樹脂は、典型的には、両側上にPETを有する内側層としてプリフォーム段階において組み込まれ、PETを液体接触層、並びに外側層を作製する。以下に提供されるように、好適なブロー成形又は射出成形ガス不透過性バリアバッグは、酸素に対して不透過性である。特定の態様では、好適なヒートシール、ブロー成形、又は射出成形ガス不透過性バリアバッグは、酸素及び二酸化炭素の両方に対して実質的に不透過性である。
【0086】
吸着剤
本開示は、酸素、二酸化炭素、又は酸素及び二酸化炭素に結合し、並びに環境から酸素、二酸化炭素、又は酸素及び二酸化炭素を除去することができる吸着剤を提供し、かつ含む。別途規定のない限り、「吸着剤」という用語は、酸素、二酸化炭素、又は酸素及び二酸化炭素吸着剤及び捕捉剤を指す。本開示のある態様では、二酸化炭素吸着剤は、酸化カルシウムを含む。他の好適な二酸化炭素吸着剤としては、水酸化ナトリウムナノ粒子、水酸化カルシウム及びシリカ混合物、塩化カルシウム、水酸化カリウム、パーライト、活性炭、ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲル、及び固体アミンが挙げられる。別の態様では、二酸化炭素吸着剤は、酸素吸着剤を更に含む。
【0087】
本明細書で使用される場合、「酸素捕捉剤」又は「酸素吸着剤」は、使用条件下でO2に不可逆的に結合するか、又はO2と組み合わせる材料である。本明細書で使用される場合、「二酸化炭素捕捉剤」又は「二酸化炭素吸着剤」は、使用条件下でCO2に不可逆的に結合するか、又はCO2と組み合わせる材料である。「酸素吸着剤」又は「二酸化炭素吸着剤」という用語は、本明細書では、それぞれ「酸素捕捉剤」又は「二酸化炭素」と互換的に使用され得る。本開示による特定の態様では、材料は、酸素又は二酸化炭素に不可逆的に結合するか、又はそれらと組み合わせることができる。他の態様では、酸素又は二酸化炭素は、吸着剤材料に結合し、非常に遅い放出速度、koffを有し得る。ある態様では、酸素又は二酸化炭素は、材料のいくつかの成分と化学的に反応し、別の化合物に変換され得る。結合した酸素のオフレートが血液の滞留時間よりもはるかに少ない任意の材料は、酸素捕捉剤としての役割を果たすことができる。更に、結合した二酸化炭素のオフレートが血液の滞留時間よりもはるかに少ない任意の材料は、二酸化炭素捕捉剤としての役割を果たすことができる。
【0088】
本明細書で使用される場合、吸着剤の量は、標準温度及び圧力(例えば、0℃(273.15Kelvin)及び1.01×105pa(100kPa、1bar、0.986atm、760mmHg)の圧力)で、体積(例えば、立方センチメートル(cc)又はミリリットル(ml))によって測定される一定の酸素結合能力を有するものとして提供される。他の態様では、酸素吸着剤及び捕捉剤は、二酸化炭素に結合し、環境から二酸化炭素を除去することが更に可能である。特定の態様では、吸着剤は、無毒の無機及び/又は有機塩と、酸素、二酸化炭素、若しくは酸素及び二酸化炭素に対して高い反応性を有する二価鉄又は他の材料との混合物であり得る。特定の態様では、酸素吸着剤又は捕捉剤は、二酸化炭素吸着剤と組み合わせられる。他の態様では、酸素吸着剤の二酸化炭素結合能力の有無は、必要ではない。
【0089】
好適な酸素吸着剤又は捕捉剤は、当該技術分野において既知である。本開示による好適な酸素吸着剤は、0.44ml/分の最小酸素吸着率を有する。好適な吸着プロファイルを有する吸着剤は、60分以内に少なくとも45mlのO2、120分以内に70mlのO2、及び180分以内に80mlのO2に結合する。好適な吸着剤は、より高い容量及び結合率の両方を有し得る。
【0090】
酸素捕捉剤又は吸着剤の非限定的な例としては、鉄粉末及び有機化合物が挙げられる。O2吸着剤の例としては、コバルト、鉄、及びシッフ塩基のキレートが挙げられる。O2吸着剤に関する追加の非限定的な例は、Bulowらに発行された米国特許第7,347,887号、Ramprasadらに発行された米国特許第5,208,335号、及びSieversらに発行された米国特許第4,654,053号において見出され得、これらの各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。酸素吸着剤材料は、繊維、マイクロファイバ、微小球、微粒子、及び発泡体に形成されるか、又は組み込まれてもよい。
【0091】
特定の態様では、好適な吸着剤としては、Multisorb Technologies(Buffalo,NY)、Sorbent Systems/Impak Corporation(Los Angeles,CA)、又はMitsubishi Gas Chemical America(MGC)(New York,NY)から取得可能なものが挙げられる。例示的な酸素吸着剤としては、Multisorb Technologies StabilOx(登録商標)パケット、Sorbent Systems P/N SF100PK100 100 cc酸素吸収剤、及びMitsubishi Gas Chemical America Ageless(登録商標)SS-200酸素吸収剤が挙げられる。MGCはまた、本開示の方法及びデバイスに好適な吸着剤を提供する。かかる好適な酸素吸着剤としては、MGC Ageless(登録商標)及びSS-200酸素吸収剤が挙げられる。
【0092】
本開示による態様では、吸着剤は、ポリマー骨格及び複数のペンダント基を有する酸化可能な有機ポリマーであり得る。ポリマー骨格を有する吸着剤の例としては、飽和炭化水素(<0.01%の炭素-炭素二重結合)が挙げられる。いくつかの態様では、骨格は、エチレン又はスチレンのモノマーを含有することができる。ある態様では、ポリマー骨格は、エチレン系であり得る。別の態様では、酸化可能な有機化合物は、エチレン/ビニルシクロヘキセンコポリマー(EVCH)であり得る。置換部分及び触媒の追加の例は、Yangらによる米国特許公開第2003/0183801号内に提供され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。追加の態様では、酸化可能な有機ポリマーはまた、置換炭化水素部分も含むことができる。酸素捕捉性ポリマーの例としては、Chingらの国際特許公開第99/48963号によって記載されたものが挙げられ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。酸素捕捉性材料は、Ebnerらに発行された米国特許第7,754,798号、Ebnerらに発行された米国特許第7,452,601号、又はEbnerらに発行された米国特許第6,387,461号内に提供されたものが挙げられ得、これらの各々は、参照により、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0093】
本明細書で使用される場合、本開示の吸着剤は、遊離であるか、又は透過性の筐体、容器、包みなど内に含有されてもよい。特定の態様では、吸着剤は、高い多孔性を有し、気体の輸送に本質的に耐性を有しない材料から作製された1つ以上の袋中に提供される。かかる材料の例としては、紡績ポリエステルフィルム、穿孔金属箔、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
本開示は、酸素に実質的に不透過性の外側物品の1つ以上の積層層として組み込まれた吸着剤を更に含み、かつ提供する。上で説明されたものなどのポリマー吸着剤は、ソフトコンタクト積層、熱積層、又は溶媒積層を含む、当該技術分野において既知の方法を使用して、外側受容体を調製するために使用されるシートに積層され得る。
【0095】
本開示は、多孔質マイクロガラス繊維の細孔の内側に形成されるか、又は他の不活性材料中に封入される吸着剤を更に含み、かつ提供する。多孔質材料の細孔内の遷移金属錯体の封入は、より小さい前駆体を反応させることによって最終分子が細孔内側で調製される、シップインボトル合成を使用することによって達成され得る。かかる封入された吸着剤の例は、例えば、Kuraokaらの“Ship-in-a-bottle synthesis of a cobalt phthalocyanine/porous glass composite membrane for oxygen separation,” Journal of Membrane Science,286(1-2):12-14(2006)によって説明されるように、当該技術分野において既知であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの態様では、多孔質ガラス繊維は、Beaverに発行された米国特許第4,748,121号に提供されるように製造され得、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。別の態様では、吸着剤は、製紙/不織布湿式敷設装置を使用して、多孔質シート製品として形成することができる。O2捕捉性配合物を有するシートは、Inoueに発行された米国特許第4,769,175号に説明される通りであり得、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、これが形成され、次いでシリコーンフィルムで封入され得る。
【0096】
本明細書で使用される場合、「二酸化炭素捕捉剤」又は「二酸化炭素吸着剤」は、使用条件下で二酸化炭素に結合するか、又は二酸化炭素と組み合わせる材料である。「二酸化炭素吸着剤」という用語は、本明細書で「二酸化炭素捕捉剤」と互換的に使用され得る。特定の態様では、二酸化炭素吸着剤は、非反応性であるか、又は酸素との最小限の反応性であり得る。他の実施形態では、酸素吸着剤は、二酸化炭素捕捉性の二次的な機能を呈し得る。二酸化炭素捕捉剤には、金属酸化物及び金属水酸化物が挙げられる。金属酸化物は、水と反応して、金属水酸化物を生成する。金属水酸化物は、二酸化炭素と反応して、水及び金属炭酸塩を形成する。本開示による特定の態様では、材料は、CO2に不可逆的に結合するか、又はCO2と結合し得る。本開示による態様では、材料は、ヘモグロビンよりも高い親和性でCO2に結合し得る。他の態様では、吸着剤材料は、血液又はRBC細胞質内に存在する炭酸が吸着剤によって放出され、及び吸収されるように、高い親和性でCO2に結合してもよい。他の態様では、CO2は、吸着剤材料に結合し、非常に遅い放出速度、koffを有する。ある態様では、二酸化炭素は、材料のいくつかの成分と化学的に反応し、別の化合物に変換され得る。
【0097】
二酸化炭素捕捉剤は、当該技術分野において既知である。本開示による特定の態様では、二酸化炭素捕捉剤は、酸化カルシウムであり得る。酸化カルシウムの水との反応は、二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウム及び水を形成し得る、水酸化カルシウムを生成する。本開示による特定の態様では、水酸化カルシウムの生成のための水は、血液由来の水蒸気の内部の酸素透過性容器を通る拡散を介して取得される。別の態様では、水は、酸素に対して実質的に不透過性である外側受容体を通して環境によって提供され得る。更に別の態様では、水は、ガス不透過性バリアバッグ内に封入された血液を保存するための二酸化炭素透過性容器の外側受容体に含まれ得る。
【0098】
CO2捕捉剤の非限定的な例としては、Multisorb Technologies(Buffalo,NY)によって提供される酸素捕捉剤及び二酸化炭素捕捉剤が挙げられる。酸素捕捉剤は、二酸化炭素捕捉性の二次的な機能を呈し得る。
【0099】
本開示による態様では、O2枯渇媒体及びCO2枯渇媒体は、所望の比率に配合されて、所望の結果を達成し得る。
【0100】
本開示は、袋内に含有された捕捉剤又は吸着剤を含み、かつ提供する。本明細書で使用される場合、「袋」は、酸素吸着剤、二酸化炭素吸着剤、又は酸素及び二酸化炭素吸着剤の組み合わせを封入、かつ含有する任意の筐体である。本開示による袋は、酸素及び二酸化炭素の両方が透過性である、オーバーラップ材料内に含有される。特定の実施形態では、オーバーラップ材料は、2つ以上の材料の組み合わせであってもよく、材料のうちの少なくとも1つは、酸素及び二酸化炭素透過性である。好適なオーバーラップ材料は、既知の生体適合性プロファイルを有するか、又は国際標準化機構(ISO)10993を満たしている。
【0101】
吸着剤の内容物がオーバーラップ材料内に完全に含有され、吸着剤がオーバーラップ包装から漏れるか、又は別様に出たりしないように、袋は封止される。袋は、任意の形状を取り得るが、典型的には、長方形又は正方形の形状を取り得る。ある態様では、袋は、約50×60mmである。ある態様では、酸素吸着剤は、標準温度及び圧力(STP)において、1袋当たり30ccの酸素に結合する。ある態様では、酸素吸着剤は、STPにおいて、1袋当たり60ccの酸素に結合する。ある態様では、酸素吸着剤は、STPにおいて、1袋当たり120ccの酸素に結合する。ある態様では、酸素吸着剤は、STPにおいて、1袋当たり30~120ccの酸素に結合する。ある態様では、酸素吸着剤は、STPにおいて、1袋当たり30~120ccの酸素に結合する。ある態様では、酸素吸着剤は、STPにおいて、1袋当たり50~200ccの酸素に結合する。本開示による特定の態様では、袋は、STPにおいて、100ccO2の総酸素吸着能力を有する。本開示の特定の他の態様では、袋は、STPにおいて、少なくとも200ccO2の総酸素吸収能力を有する。
【0102】
本開示による態様では、酸素吸着剤は、1つ以上の袋内に提供され得る。別の態様では、酸素吸着剤は、単一のより大きい袋内に提供される。他の態様では、酸素吸着剤は、DEHPフリーの二酸化炭素透過性バッグとガス不透過性バリアバッグとの間のヘッドスペース内に分散された2つの袋内に提供される。更に他の態様では、酸素吸着剤は、DEHPフリーの二酸化炭素透過性バッグとガス不透過性バリアバッグとの間のヘッドスペース内に分散された4つの袋内に提供される。本開示による態様では、ガス不透過性バリアバッグ内に封入された血液を保存するための二酸化炭素透過性容器は、2~20の吸着剤包装を備え得る。
【0103】
本開示によるいくつかの態様では、血液を保存するための二酸化炭素透過性容器は、ガス不透過性バリアバッグ内に封入され、1つ以上の袋内に含有された1~50グラムの吸着剤を含む。ある態様では、ガス不透過性バリアバッグ内に封入された血液を保存するための二酸化炭素透過性容器は、1つ以上の袋内に含有された1~100gの吸着剤を含む。ある態様では、ガス不透過性バリアバッグ内に封入された血液を保存するための二酸化炭素透過性容器は、1つ以上の袋内に含有された25~75グラムの吸着剤を含む。更なる態様では、ガス不透過性バリアバッグ内に封入された血液を保存するための二酸化炭素透過性容器は、約25グラムの吸着剤を含む。更に別の態様では、ガス不透過性バリアバッグ内に封入された血液を保存するための二酸化炭素透過性容器は、約50gの吸着剤を含む。ある態様では、ガス不透過性バリアバッグ内に封入された血液を保存するための二酸化炭素透過性容器は、1つ以上の袋内に含有された約35又は45グラムの吸着剤を含む。ある態様では、ガス不透過性バリアバッグ内に封入された血液を保存するための二酸化炭素透過性容器は、1つ以上の袋内に含有された約10又は15グラムの吸着剤を含む。袋は、正方形、長方形、円形、又は楕円形であり得、40~150mmの外周を有する。
【0104】
本開示による袋は、二酸化炭素吸着剤を更に含み得る。ある態様では、酸素吸着剤はまた、二酸化炭素吸着も提供する。ある態様では、酸素吸着剤は、STPにおいて、30ccの二酸化炭素に結合する。ある態様では、酸素吸着剤は、少なくとも170ccの酸素及び少なくとも30ccの二酸化炭素に結合し、両方の気体は、STPにおいて測定される。
【0105】
添加剤溶液/組成物
本開示は、添加剤溶液を含む組成物、及び添加剤溶液を血液製剤に添加するための方法を提供し、かつ含む。別の態様では、組成物及び方法は、赤血球に添加剤溶液を添加することを含む。別の態様では、組成物及び方法は、血小板に添加剤溶液を添加することを含む。別の態様では、組成物及び方法は、全血に添加剤溶液を添加することを含む。別の態様では、組成物及び方法は、添加剤溶液を充填RBCに添加して、懸濁液を形成することを含む。
【0106】
特定の態様では、添加剤溶液は、単独で又は組み合わせて、添加剤溶液(AS)-1、AS-3(Nutricel(登録商標))、AS-5、AS7(SOLX)、SAGM、PAGG-SM、PAGG-GM、MAP、ESOL、EAS61、OFAS1、及びOFAS3からなる群から選択され得る。表2を参照されたい。
【表2-1】
【表2-2】
【0107】
更なる態様では、添加剤溶液は、5.0~7.0のpHを有し得る。別の態様では、添加剤溶液は、7.0~9.0のpHを有する。別の態様では、添加剤は、抗酸化物質を含み得る。本開示によるいくつかの態様では、抗酸化剤は、クエルセチン、アルファ-トコフェロール、アスコルビン酸、又はオキシダーゼのための酵素阻害剤であり得る。別の態様では、添加剤溶液は、クエルセチンを更に含む。別の態様では、添加剤溶液は、アルファ-トコフェロールを更に含む。別の態様では、添加剤溶液は、アスコルビン酸を更に含む。更に別の態様では、添加剤溶液は、オキシダーゼのための酵素阻害剤を更に含む。別の態様では、添加剤溶液は、N-アセチルシステイン、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及びl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む。
【0108】
本開示の態様では、添加剤溶液は、表3に提供されるように、AS7、AS7G-NAC、又はグルコネートを有するAS7-NAC(AS7GG-NAC)からなる群から選択される。本開示の態様では、添加剤溶液は、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、リン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、アデニン、グアノシン、グルコース、マンニトール、N-アセチル-システイン、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及びl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む。別の態様では、添加剤溶液は、10~60mMの重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、10~20mMのリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、0~5mMのアデニン、0~5mMのグアノシン、50~100mMのグルコース、40~80mMのマンニトール、0~1mMのN-アセチル-システイン、0~1mMの6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸、及び0~1mMのl-アスコルビン酸を含む。特定の態様では、添加剤溶液は、40mMの重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、12mMのリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、2mMのアデニン、1.4mMのグアノシン、80mMのグルコース、55mMのマンニトール、0.5mMのN-アセチル-システイン、0.5mMの6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸、及び0.25mMのl-アスコルビン酸を含む。特定の態様では、添加剤溶液は、40mMの重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、12mMのリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、2mMのアデニン、1.4mMのグアノシン、80mMのグルコース、55mMのマンニトール、0.5mMのN-アセチル-システイン、0.5mMの6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸、0.25mMのl-アスコルビン酸、及び4mMのグルコネートを含む。
【表3】
【0109】
本開示の別の態様では、添加剤溶液は、表4に提供されるように、Erythrosol-5、5mMのグルコネートを有するErythrosol-5G(Erythrosol-5GG)、又はグルコネートを有しないErythrosol-5Gからなる群から選択される。別の態様では、添加剤溶液は、N-アセチル-システイン、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及びl-アスコルビン酸(ビタミンC)を更に含む。本開示の態様では、添加剤溶液は、10~40mMのNa2HPO4、10~40mMのクエン酸ナトリウム、0.5~3mMのアデニン、30~60mMのグルコース、及び80~130mMのマンニトールを含む。別の態様では、添加剤溶液は、10~40mMのNa2HPO4、10~40mMのクエン酸ナトリウム、0.5~3mMのアデニン、30~60mMのグルコース、80~130mMのマンニトール、及び0.5~3mMのグアノシンを含む。別の態様では、添加剤溶液はまた、2~8mMのグルコネートも含む。更に別の態様では、添加剤溶液は、7.5~9のpHを有する。別の態様では、添加剤溶液は、少なくとも7.0、7.2、7.4、7.5、7.6、7.8、8.0、8.2、8.4、8.5、8.6、及び8.8のpHを有する。別の態様では、添加剤溶液は、7.0~7.5、7.5~8、8~8.2、8~8.4、8~8.6、8~8.8、8.4~9のpHを有する。
【0110】
本開示の特定の態様では、添加剤溶液は、20mMのNa2HPO4、25mMのクエン酸ナトリウム、1.5mMのアデニン、45.5mMのグルコース、110mMのマンニトール、及び8.8のpHを含む。別の態様では、添加剤溶液は、20mMのNa2HPO4、25mMのクエン酸ナトリウム、1.5mMのアデニン、45.5mMのグルコース、110mMのマンニトール、5mMのグルコネート、及び8.8のpHを含む。
【表4】
【0111】
本開示は、全血、血小板、及び白血球からなる群から選択される血液製剤と、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、リン二塩基酸ナトリウム(Na2HPO4)、アデニン、グアノシン、グルコース、マンニトール、N-アセチル-システイン、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及びl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む添加剤溶液と、を含む、組成物を提供し、かつ含む。
【0112】
本開示は、全血、血小板、及び125mmHg未満のpCO2を有する白血球からなる群から選択される血液製剤と、ある濃度のリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、クエン酸ナトリウム、アデニン、グルコース、及びマンニトールを含む添加剤溶液と、を含む組成物を更に提供し、かつ含む。
【0113】
本開示は、125mmHg未満のpCO2、20%を超えるSO2%、並びに40mMの重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、12mMのリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、2mMのアデニン、1.4mMのグアノシン、80mMのグルコース、55mMのマンニトール、0.5mMのN-アセチル-システイン、0.5mMの6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及び0.25mMのl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む添加剤溶液を含む、保存された血液製剤を提供し、かつ含む。ある態様では、保存された血液組成物は、42日間の保存後に少なくとも4μmol/g HbのATP濃度、60mmHg未満のCO2濃度を更に含む。ある態様では、保存された血液組成物は、21日間の保存後に、少なくとも6μmol/g Hbの2,3-DPG濃度を更に含む。ある態様では、保存された血液組成物は、42日間の保存後、少なくとも4μmol/gHbの2,3-DPG濃度を更に含む。
【0114】
別の態様では、血液製剤は、100mmHg未満のpCO2、20%を超えるSO2%、40mMの重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、12mMのリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、2mMのアデニン、1.4mMのグアノシン、80mMのグルコース、55mMのマンニトール、0.5mMのN-アセチル-システイン、0.5mMの6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及び0.25mMのl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む添加剤溶液を有する。ある態様では、保存された血液組成物は、保存42日目の従来の方式で保存された赤血球中の3μmol/gHb、92mmHgのpCO2、及び89%のSO2%と比較して、保存42日後の少なくとも4μmol/gHbのATP濃度、50mmHg未満のpCO2、及び50%未満のSO2%を更に含む。ある態様では、保存された血液組成物は、21日間の保存後、少なくとも6μmol/gHbの2,3-DPG濃度を更に含む。ある態様では、保存された血液組成物は、保存42日目において0.5μmol/gHbの2,3DPG濃度、及び92mmHgのpCO2を有する従来の方式で保存された赤血球と比較して、50mmHg未満のpCO2において、42日間の保存後、少なくとも4μmol/gHbの2,3-DPG濃度を更に含む。
【0115】
別の態様では、血液製剤は、75mmHg未満のpCO2、20%を超えるSO2%、40mMの重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、12mMのリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、2mMのアデニン、1.4mMのグアノシン、80mMのグルコース、55mMのマンニトール、0.5mMのN-アセチル-システイン、0.5mMの6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及び0.25mMのl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む添加剤溶液を有する。
【0116】
別の態様では、血液製剤は、25mmHg未満のpCO2、20%を超えるSO2%、並びに40mMの重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、12mMのリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、2mMのアデニン、1.4mMのグアノシン、80mMのグルコース、55mMのマンニトール、0.5mMのN-アセチル-システイン、0.5mMの6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及び0.25mMのl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む添加剤溶液を有する。
【0117】
別の態様では、血液製剤は、125mmHg未満のpCO2、5~30%のSO2%、40mMの重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、12mMのリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、2mMのアデニン、1.4mMのグアノシン、80mMのグルコース、55mMのマンニトール、0.5mMのN-アセチル-システイン、0.5mMの6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及び0.25mMのl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む添加剤溶液を有する。
【0118】
別の態様では、血液製剤は、100mmHg未満のpCO2、5~30%のSO2%、並びに40mMの重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、12mMのリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、2mMのアデニン、1.4mMのグアノシン、80mMのグルコース、55mMのマンニトール、0.5mMのN-アセチル-システイン、0.5mMの6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及び0.25mMのl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む添加剤溶液を有する。
【0119】
別の態様では、血液製剤は、75mmHg未満のpCO2、5~30%のSO2%、40mMの重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、12mMのリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、2mMのアデニン、1.4mMのグアノシン、80mMのグルコース、55mMのマンニトール、0.5mMのN-アセチル-システイン、0.5mMの6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及び0.25mMのl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む添加剤溶液を有する。
【0120】
別の態様では、血液製剤は、50mmHg未満のpCO2、5~30%のSO2%、40mMの重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、12mMのリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、2mMのアデニン、1.4mMのグアノシン、80mMのグルコース、55mMのマンニトール、0.5mMのN-アセチル-システイン、0.5mMの6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及び0.25mMのl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む添加剤溶液を有する。
【0121】
別の態様では、血液製剤は、25mmHg未満のpCO2、5~30%のSO2%、及び40mMの重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、12mMのリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、2mMのアデニン、1.4mMのグアノシン、80mMのグルコース、55mMのマンニトール、0.5mMのN-アセチル-システイン、0.5mMの6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及び0.25mMのl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む添加剤溶液を有する。
【0122】
更に別の態様では、血液製剤は、50mmHg未満のpCO2、5~30%のSO2%、表3又は表4に提供される添加剤溶液を有する。
【0123】
本開示は、以下の実施形態を提供し、かつ含む。
【0124】
実施形態1。血液製剤の保存方法であって、30%を超えるSO2%を有する血液製剤を取得することと、血液製剤に添加剤溶液を添加して、保存可能な血液製剤を調製することと、保存可能な血液製剤を、25℃、約1atmにおいて、1平方センチメートル当たり少なくとも0.62立方センチメートル(cm3/cm2)の二酸化炭素に関するガス透過性を有する、ジ-2-エチルヘキシルフタレートフリー(DEHPフリー)血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグ内に保存することと、を含む、方法。
【0125】
実施形態2。該保存可能な血液製剤が、該保存の前に脱酸素化されない、実施形態1に記載の方法。
【0126】
実施形態3。該保存可能な血液製剤が、該保存中に脱酸素されない、実施形態1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【0127】
実施形態4。保存中に、該保存可能な血液製剤から酸素を枯渇させることを含む、実施形態2に記載の方法。
【0128】
実施形態5。該BC二酸化炭素透過性バッグが、0.3cm cm3/cm2未満の酸素透過性を有する、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
【0129】
実施形態6。該BC二酸化炭素透過性バッグが、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート(DEHT)を含まない、実施形態1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0130】
実施形態7。該BC二酸化炭素透過性バッグが、可塑剤として、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)又はブチリルトリヘキシルシトレート(BTHC)を含む、実施形態1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0131】
実施形態8。該BC二酸化炭素透過性バッグが、酸素及び二酸化炭素に対して不透過性の外側バッグ内に封入されている、実施形態1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0132】
実施形態9。該外側バッグが、該BC二酸化炭素透過性バッグと該外側バッグとの間に設置された二酸化炭素吸着剤を更に封入する、実施形態1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0133】
実施形態10。2,3-DPGレベルが、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、該保存中に、該保存可能な血液製剤中で少なくとも10%増加する、実施形態1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0134】
実施形態11。2,3-DPGレベルが、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、該保存中に、該保存可能な血液製剤中で少なくとも15%増加する、実施形態1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0135】
実施形態12。ATPレベルが、従来の方式で保存された血液製剤のATPレベルと比較して、該保存中に、該保存可能な血液製剤中で増加する、実施形態1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0136】
実施形態13。ATPレベルが、従来の方式で保存された血液製剤のATPレベルと比較して、該保存中に、該保存可能な血液製剤中で少なくとも10%増加する、実施形態12に記載の方法。
【0137】
実施形態14。該添加剤溶液が、7.0~8.5のpHを有する、実施形態1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
実施形態15。該添加剤溶液が、少なくとも8.5のpHを有する、実施形態1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0139】
実施形態16。該二酸化炭素吸着剤が、酸素吸着剤を更に含む、実施形態9に記載の方法。
【0140】
実施形態17。該BC二酸化炭素透過性バッグが、25℃で、24時間(hrs.)、少なくとも0.05センチメートル3(cm3)/cm2/atm24時間(hrs.)の酸素に関するガス透過性を有する、実施形態1~16のいずれか一項に記載の方法。
【0141】
実施形態18。該BC二酸化炭素透過性バッグが、25℃で、24時間、少なくとも0.15cm3/cm2/atmの酸素に関するガス透過性を有する、実施形態17に記載の方法。
【0142】
実施形態19。該BC二酸化炭素透過性バッグが、25℃で、24時間、約0.22cm3/cm2/気圧の酸素に関するガス透過性を有する、実施形態18に記載の方法。
【0143】
実施形態20。該血液製剤が、最大42日間の該保存中に、15%を超える飽和酸素(SO2)を含む、実施形態1~19のいずれか一項に記載の方法。
【0144】
実施形態21。該血液製剤が、最大42日間の該保存中に、20%を超えるSO2を含む、実施形態20に記載の方法。
【0145】
実施形態22。該血液製剤が、最大42日間の該保存中に、125mmHg未満のpCO2を含む、実施形態1~21のいずれか一項に記載の方法。
【0146】
実施形態23。該血液製剤が、最大42日間の該保存中に、100mmHg未満のpCO2を含む、実施形態22に記載の方法。
【0147】
実施形態24。該血液製剤が、最大42日間の該保存中に、75mmHg未満のpCO2を含む、実施形態23に記載の方法。
【0148】
実施形態25。該血液製剤が、最大42日間の該保存中に、50mmHg未満のpCO2を含む、実施形態24に記載の方法。
【0149】
実施形態26。該保存が、42日間未満である、実施形態1~25のいずれか一項に記載の方法。
【0150】
実施形態27。該保存が、28日間未満である、実施形態10、11、12、又は13のいずれか一項に記載の方法。
【0151】
実施形態28。該保存が、21日間未満である、実施形態10、11、12、又は13のいずれか一項に記載の方法。
【0152】
実施形態29。該保存が、14日間未満である、実施形態10、11、12、又は13のいずれか一項に記載の方法。
【0153】
実施形態30。該保存が、7日間未満である、実施形態10、11、12、又は13のいずれか一項に記載の方法。
【0154】
実施形態31。該添加剤溶液が、AS7、AS7G-NAC、4mMのグルコネートを有するAS7G-NAC(AS7GG-NAC)、グルコネートを有するAS3、erythrosol-5、erythrosol-5G、5mMのグルコネートを有するerythrosol-5G(erythrosol-5GG)からなる群から選択される、実施形態1~30のいずれか一項に記載の方法。
【0155】
実施形態32。該血液製剤が、42日間の該保存後に、0.8%以下の溶血を含む、実施形態1~31のいずれか一項に記載の方法。
【0156】
実施形態33。該血液製剤が、全血、血小板、白血球、又は赤血球を含む、実施形態1~32のいずれか一項に記載の方法。
【0157】
実施形態34。該BC二酸化炭素透過性バッグが、ポリ塩化ビニル(PVC)又はポリオレフィン、シリコーン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)、ポリプロピレン(PP)又はポリウレタン(PU)を含む、実施形態1~33のいずれか一項に記載の方法。
【0158】
実施形態35。DEHPフリー二酸化炭素透過性及び酸素不透過性材料を含む血液を保存するための容器であって、該材料が、25℃で1atmにおいて0.05cm3/cm2未満の酸素に関するガス透過性、及び25℃で1atmにおいて1平方センチメートル当たり少なくとも0.62立方センチメートル(cm3/cm2)の二酸化炭素に関するガス透過性を有する、容器。
【0159】
実施形態36。該材料が、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン、シリコーン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)、ポリプロピレン(PP)、又はポリウレタンからなる群から選択される、実施形態35に記載の容器。
【0160】
実施形態37。該材料が、可塑剤として、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)又はブチリルトリヘキシルシトレート(BTHC)を含む、実施形態35~36のいずれか一項に記載の方法。
【0161】
実施形態38。血液製剤を取り扱うための方法であって、
該血液製剤に添加剤溶液を添加することと、該血液製剤を、25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に関するガス透過性を有する、DEHPフリー血液適合性(BC)二酸化炭素透過性バッグ内に保存することであって、該保存が、少なくとも7日間であり、該血液製剤が、該7日間の保存における酸素レベルを含み、これが保存1日目の該血液製剤内の酸素レベルより減少するか、又はほぼ同じである、保存することと、を含む、方法。
【0162】
実施形態39。該血液製剤が、全血、血小板、白血球、又は赤血球を含む、実施形態38に記載の方法。
【0163】
実施形態40。該BC二酸化炭素透過性バッグが、PVC又はポリオレフィンを含む、実施形態38~39のいずれか一項に記載の方法。
【0164】
実施形態41。該BC二酸化炭素透過性バッグが、可塑剤として、PVC中20~70%重量/重量の1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)又はブチリルトリヘキシルシトレート(BTHC)を含む、実施形態40に記載の方法。
【0165】
実施形態42。該可塑剤が、PVC中20~45重量%のBTHC/重量である、実施形態41に記載の方法。
【0166】
実施形態43。該BC二酸化炭素透過性バッグが、25℃、約1atmにおいて、少なくとも2.0cm3/cm2の二酸化炭素に関するガス透過性を有する、実施形態38~42のいずれか一項に記載の方法。
【0167】
実施形態44。該BC二酸化炭素透過性バッグが、酸素及び二酸化炭素に対して不透過性の外側バッグを更に備える、実施形態38~43のいずれか一項に記載の方法。
【0168】
実施形態45。該BC二酸化炭素透過性バッグと該外側バッグとの間の二酸化炭素吸着剤を更に含む、実施形態38~44のいずれか一項に記載の方法。
【0169】
実施形態46。該二酸化炭素吸着剤が、酸素吸着剤を更に含む、実施形態45に記載の方法。
【0170】
実施形態47。該BC二酸化炭素透過性バッグが、25℃で、24時間、少なくとも0.05cm3/cm2/atm4の酸素に関するガス透過性を有する、実施形態38~46のいずれか一項に記載の方法。
【0171】
実施形態48。該BC二酸化炭素透過性バッグが、25℃で、24時間、少なくとも0.15cm3/cm2/atm4の酸素に関するガス透過性を有する、実施形態47に記載の方法。
【0172】
実施形態49。該BC二酸化炭素透過性バッグが、25℃で、24時間、約0.2cm3/cm2/気圧4の酸素に関するガス透過性を有する、実施形態48に記載の方法。
【0173】
実施形態50。該血液製剤が、少なくとも7日間の保存後に、15%を超えるSO2を含む、実施形態38~49のいずれか一項に記載の方法。
【0174】
実施形態51。該血液製剤が、少なくとも7日間の保存後に、20%を超えるSO2を含む、実施形態50に記載の方法。
【0175】
実施形態52。該血液製剤が、125mmHg未満のpCO2を含む、実施形態38~51のいずれか一項に記載の方法。
【0176】
実施形態53。該血液製剤が、100mmHg未満のpCO2を含む、実施形態52に記載の方法。
【0177】
実施形態54。該血液製剤が、75mmHg未満のpCO2を含む、実施形態53に記載の方法。
【0178】
実施形態55。該血液製剤が、50mmHg未満のpCO2を含む、実施形態54に記載の方法。
【0179】
実施形態56。該保存が、少なくとも14日間である、実施形態38~55のいずれか一項に記載の方法。
【0180】
実施形態57。該保存が、少なくとも21日間である、実施形態56に記載の方法。
【0181】
実施形態58。該保存が、少なくとも28日間である、実施形態57に記載の方法。
【0182】
実施形態59。該保存が、少なくとも42日間である、実施形態58に記載の方法。
【0183】
実施形態60。該保存が、少なくとも56日間である、実施形態59に記載の方法。
【0184】
実施形態61。該添加剤溶液が、添加剤溶液7(AS7)、AS7G-NAC、4mMのグルコネートを有するAS7G-NAC(AS7GG-NAC)、Erythrosol-5、Erythrosol-5G、5mMのグルコネートを有するErythrosol-5Gからなる群から選択される、実施形態38~60のいずれか一項に記載の方法。
【0185】
実施形態62。該血液製剤が、0.8%以下の溶血を含む、実施形態38~61のいずれか一項に記載の方法。
【0186】
実施形態63。該血液製剤が、全血、血小板、白血球、又は赤血球を含む、実施形態38~62のいずれか一項に記載の方法。
【0187】
実施形態64。保存可能な血液を保存するための方法であって、
25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性、及び約1atmにおいて0.3cm3/cm2以下の酸素に対する透過性を有する、DEHPフリーの血液適合性(BC)材料と、二酸化炭素吸着剤と、を含む保存容器内に血液製剤を設置することと、該保存可能な血液を含む該容器をある期間保存して、保存された血液を調製することと、を含む、方法。
【0188】
実施形態65。該保存可能な血液が、全血、血小板、白血球、又は赤血球を含む、実施形態64に記載の方法。
【0189】
実施形態66。該保存可能な血液が、42日間の保存後に0.8%以下の溶血を含む、実施形態64~65のいずれか一項に記載の方法。
【0190】
実施形態67。該血液が、42日間の保存後、0.5%以下の溶血を含む、実施形態64~66のいずれか一項に記載の方法。
【0191】
実施形態68。該血液が、56日間の保存後、0.5%以下の溶血を含む、実施形態66に記載の方法。
【0192】
実施形態69。該血液が、56日間の保存後、0.4%以下の溶血を含む、実施形態66に記載の方法。
【0193】
実施形態70。該2,3-DPGレベルが、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、該血液製剤中で該保存の7日目、21日目、28日目、35日目、42日目、又は56日目において増加する、実施形態64~69のいずれか一項に記載の方法。
【0194】
実施形態71。該2,3-DPGレベルが、10、20、30、40、50、60、70、又は80%増加する、実施形態70に記載の方法。
【0195】
実施形態72。該2,3-DPGレベルが、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、該血液製剤中で最大21日間の該保存で増加する、実施形態64~71のいずれか一項に記載の方法。
【0196】
実施形態73。該2,3-DPGレベルが、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、該血液製剤中で最大28日間の該保存で増加する、実施形態64~72のいずれか一項に記載の方法。
【0197】
実施形態74。該2,3-DPGレベルが、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、該血液製剤中で最大35日間の該保存で増加する、実施形態64~73のいずれか一項に記載の方法。
【0198】
実施形態75。該2,3-DPGレベルが、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、該血液製剤中で該保存の最大42日間増加する、実施形態64~74のいずれか一項に記載の方法。
【0199】
実施形態76。該2,3-DPGレベルが、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGレベルと比較して、該血液製剤中で最大56日間の該保存で増加する、実施形態64~75のいずれか一項に記載の方法。
【0200】
実施形態77。該ATPレベルが、従来の方式で保存された血液製剤のATPレベルと比較して増加する、実施形態64~76のいずれか一項に記載の方法。
【0201】
実施形態78。該ATPレベルが、21日間の保存後に、従来の方式で保存された血液製剤のATPレベルと比較して増加する、実施形態64~77のいずれか一項に記載の方法。
【0202】
実施形態79。該ATPレベルが、28日間の保存後に、従来の方式で保存された血液製剤のATPレベルと比較して増加する、実施形態64~78のいずれか一項に記載の方法。
【0203】
実施形態80。該ATPレベルが、35日間の保存後に、従来の方式で保存された血液製剤のATPレベルと比較して増加する、実施形態64~79のいずれか一項に記載の方法。
【0204】
実施形態81。該ATPレベルが、42日間の保存後に、従来の方式で保存された血液製剤のATPレベルと比較して増加する、実施形態64~80のいずれか一項に記載の方法。
【0205】
実施形態82。該ATPレベルが、56日間の保存後に、従来の方式で保存された血液製剤のATPレベルと比較して増加する、実施形態64~81のいずれか一項に記載の方法。
【0206】
実施形態83。該BC材料が、可塑剤として、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)又はブチリルトリヘキシルシトレートBTHCを含む、実施形態64~82のいずれか一項に記載の方法。
【0207】
実施形態84。該可塑剤が、PVC中、20~40%、25~45%、20~70%、及び40~70%重量/重量である、実施形態83に記載の方法。
【0208】
実施形態85。該保存容器が、該BC材料と外側バッグとの間に酸素吸着剤を更に含む、実施形態64~84のいずれか一項に記載の方法。
【0209】
実施形態86。該血液製剤に添加剤溶液を添加することを更に含み、AS7、AS7G-NAC、4mMのグルコネートを有するAS7G-NAC(AS7GG-NAC)、Erythrosol-5、Erythrosol-5G、5mMのグルコネートを含むErythrosol-5Gからなる群から選択される、実施形態64~85のいずれか一項に記載の方法。
【0210】
実施形態87。該BC材料が、ポリ塩化ビニル(PVC)又はポリオレフィンを含む、実施形態64~86のいずれか一項に記載の方法。
【0211】
実施形態88。該血液製剤が、保存の1日目、7日目、14日目、21日目、42日目、又は56日目に10%を超えるSO2を含む、実施形態64~87のいずれか一項に記載の方法。
【0212】
実施形態89。該血液製剤が、20%を超えるSO2を含む、実施形態61に記載の方法。
【0213】
実施形態90。該BC材料が、25℃、約1atmにおいて、少なくとも2cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性を有する、実施形態64~89のいずれか一項に記載の方法。
【0214】
実施形態91。該保存容器が、該BC材料と外側バッグとの間に酸素吸着剤を更に含む、実施形態64~90のいずれか一項に記載の方法。
【0215】
実施形態92。赤血球を保存するための方法であって、25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性、及び約1atmにおいて0.3cm3/cm2以下の酸素に対する透過性を有する材料からなる、DEHPフリー血液適合性(BC)の透過可能で内側に折り畳み可能な容器を封入し、二酸化炭素吸着剤、酸素吸着剤、又は酸素及び二酸化炭素吸着剤を、内側バッグと外側バッグとの間に封入する、外側酸素及び二酸化炭素不透過性容器を備える保存容器内に該赤血球を設置することと、該赤血球を含む該容器を少なくとも7日間保存して、保存された血液製剤を調製することと、を含む、方法。
【0216】
実施形態93。該保存が、4℃である、実施形態92に記載の方法。
【0217】
実施形態94。血液製剤中の2,3-DPGのレベルを維持するための方法であって、25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性、及び約1atmにおいて0.3cm3/cm2以下の酸素に対する透過性を有する血液適合性(BC)材料を封入し、該内側バッグと外側バッグとの間に二酸化炭素吸着剤を封入する、外側酸素及び二酸化炭素不透過性容器を備える保存容器中に、少なくとも10%の酸素飽和度を含む血液製剤を設置することと、該血液製剤を含む該容器を保存することであって、該2,3-DPGのレベルが、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、最大14日間の保存の間に増加する、保存することと、を含む、方法。
【0218】
実施形態95。該2,3-DPGが、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、最大21日間の保存の間増加する、実施形態94に記載の方法。
【0219】
実施形態96。該BC材料が、PVC又はポリオレフィンを含む、実施形態94に記載の方法。
【0220】
実施形態97。該BC材料が、DINCH又はBTHC可塑剤を含む、実施形態94に記載の方法。
【0221】
実施形態98。血液製剤中のATPのレベルを維持するための方法であって、25℃、約1atmにおいて少なくとも0.62cm3/cm2の二酸化炭素に対する透過性、及び約1atmにおいて0.3cm3/cm2以下の酸素に対する透過性を有する血液適合性(BC)材料を封入し、該内側バッグと外側バッグとの間に二酸化炭素吸着剤を封入する、外側酸素及び二酸化炭素不透過性容器を備える保存容器中に、少なくとも10%の酸素飽和度を含む血液製剤を設置することと、該血液製剤を含む該容器を保存することであって、該ATPのレベルが、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、42日間の保存後に増加する、保存することと、を含む、方法。
【0222】
実施形態99。該ATPが、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、少なくとも10%増加する、実施形態98に記載の方法。
【0223】
実施形態100。該ATPが、従来の方式で保存された血液製剤のATPのレベルと比較して、少なくとも20%増加する、実施形態98に記載の方法。
【0224】
実施形態101。該2,3-DPGが、従来の方式で保存された血液製剤の2,3-DPGのレベルと比較して、最大21日間の保存の間増加する、実施形態98に記載の方法。
【0225】
実施形態102。該2,3-DPGが、意味的に保存された該血液製剤と比較して、少なくとも10%増加する、実施形態101に記載の方法。
【0226】
実施形態103。該BC材料が、PVC又はポリオレフィンを含む、実施形態98に記載の方法。
【0227】
実施形態104。該BC材料が、DINCH又はBTHC可塑剤を含む、実施形態98に記載の方法。
【0228】
実施形態105。全血、血小板、及び白血球からなる群から選択される血液製剤と、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、リン二塩基酸ナトリウム(Na2HPO4)、アデニン、グアノシン、グルコース、マンニトール、N-アセチル-システイン、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及びl-アスコルビン酸(ビタミンC)を含む添加剤溶液と、を含む、組成物。
【0229】
実施形態106。グルコネートを更に含む、実施形態105に記載の組成物。
【0230】
実施形態107。該重炭酸ナトリウムの濃度が、10~60ミリモル(mM)である、実施形態105に記載の組成物。
【0231】
実施形態108。該リン酸二ナトリウム(Na2HPO4)の濃度が、10~20mMである、実施形態105に記載の組成物。
【0232】
実施形態109。該グルコネートの濃度が、0~10mMである、実施形態105に記載の組成物。
【0233】
実施形態110。該アデニンの濃度が、0~5mMである、実施形態105に記載の組成物。
【0234】
実施形態111。該グアノシンの濃度が、0~5mMである、実施形態105に記載の組成物。
【0235】
実施形態112。該グルコースの濃度が、50~100mMである、実施形態105に記載の組成物。
【0236】
実施形態113。該マンニトールの濃度が、40~80mMである、実施形態105に記載の組成物。
【0237】
実施形態114。該N-アセチル-システインの濃度が、0~1mMである、実施形態105に記載の組成物。
【0238】
実施形態115。該Troloxの濃度が、0~1mMである、実施形態105に記載の組成物。
【0239】
実施形態116。該ビタミンCの濃度が、0~1mMである、実施形態105に記載の組成物。
【0240】
実施形態117。該組成物が、6~7のpHを含む、実施形態105に記載の組成物。
【0241】
実施形態118。添加剤組成物であって、ある濃度の、
N-アセチル-システイン、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、及びl-アスコルビン酸を含み、該添加剤組成物が、8~9のpHを含む、組成物。
【0242】
実施形態119。ある濃度の、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、リン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、アデニン、グアノシン、グルコース、及びマンニトールを更に含む、実施形態118に記載の組成物。
【0243】
実施形態120。グルコネートを更に含む、実施形態118に記載の組成物。
【0244】
実施形態121。該重炭酸ナトリウムの濃度が、10~60ミリモル(mM)である、実施形態119に記載の組成物。
【0245】
実施形態122。該重炭酸ナトリウム(NaHCO3)の該濃度が、20~50mMである、実施形態121に記載の組成物。
【0246】
実施形態123。該重炭酸ナトリウム(NaHCO3)の該濃度が、25~45mMである、実施形態122に記載の組成物。
【0247】
実施形態124。該重炭酸ナトリウム(NaHCO3)の該濃度が、26mMである、実施形態123に記載の組成物。
【0248】
実施形態125。該重炭酸ナトリウム(NaHCO3)の該濃度が、40mMである、実施形態122に記載の組成物。
【0249】
実施形態126。該重炭酸ナトリウム(NaHCO3)の該濃度が、少なくとも25mMである、実施形態106に記載の組成物。
【0250】
実施形態127。該リン酸二ナトリウム(Na2HPO4)の濃度が、10~20mMである、実施形態119に記載の組成物。
【0251】
実施形態128。該リン酸二ナトリウムの濃度(Na2HPO4)が、少なくとも10mMである、実施形態119に記載の組成物。
【0252】
実施形態129。該リン酸二ナトリウム二塩基酸(Na2HPO4)の該濃度が、12mMである、実施形態119に記載の組成物。
【0253】
実施形態130。該グルコネートの濃度が、0~10mMである、実施形態120に記載の組成物。
【0254】
実施形態131。該グルコネートの該濃度が、約4mMである、実施形態130に記載の組成物。
【0255】
実施形態132。該アデニンの濃度が、0~5mMである、実施形態119に記載の組成物。
【0256】
実施形態133。該アデニンの該濃度が、2mMである、実施形態132に記載の組成物。
【0257】
実施形態134。該グアノシンの濃度が、0~5mMである、実施形態119に記載の組成物。
【0258】
実施形態135。該グアノシンの該濃度が、1~2mMである、実施形態119に記載の組成物。
【0259】
実施形態136。該グアノシンの該濃度が、約1.4mMである、実施形態135に記載の組成物。
【0260】
実施形態137。該グルコースの濃度が、50~100mMである、実施形態119に記載の組成物。
【0261】
実施形態138。該グルコースの該濃度が、約80mMである、実施形態137に記載の組成物。
【0262】
実施形態139。該マンニトールの濃度が、40~80mMである、実施形態119に記載の組成物。
【0263】
実施形態140。該マンニトールの該濃度が、約55mMである、実施形態139に記載の組成物。
【0264】
実施形態141。該N-アセチル-システインの濃度が、0~1mMである、実施形態118に記載の組成物。
【0265】
実施形態142。該N-アセチル-システインの該濃度が、約0.5mMである、実施形態141に記載の組成物。
【0266】
実施形態143。該Troloxの濃度が、0~1mMである、実施形態118に記載の組成物。
【0267】
実施形態144。該6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)の該濃度が、約0.5mMである、実施形態143に記載の組成物。
【0268】
実施形態145。該ビタミンCの濃度が、0~1mMである、実施形態118に記載の組成物。
【0269】
実施形態146。該ビタミンCの該濃度が、約0.25mMである、実施形態145に記載の組成物。
【0270】
実施形態147。該組成物が、pH8.75を含む、実施形態118に記載の組成物。
【0271】
実施形態148。全血、血小板、及び白血球からなる群から選択される血液製剤と、ある濃度のリン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、クエン酸ナトリウム、アデニン、グアノシン、グルコース、及びマンニトールを含む添加剤溶液と、を含む組成物。
【0272】
実施形態149。該グアノシンが、1~2mMの濃度である、実施形態148に記載の組成物。
【0273】
実施形態150。該グアノシンが、1.5mMである、実施形態149に記載の組成物。
【0274】
実施形態151。2~8mMの濃度のグルコネートを更に含む、実施形態148に記載の組成物。
【0275】
実施形態152。該グルコネートが、5mMである、実施形態148に記載の組成物。
【0276】
実施形態153。該リン酸二ナトリウム二塩基酸(Na2HPO4)の濃度が、10~30mMである、実施形態148に記載の組成物。
【0277】
実施形態154。該リン酸二ナトリウム二塩基酸(Na2HPO4)の該濃度が、少なくとも15mMである、実施形態148に記載の組成物。
【0278】
実施形態155。該リン酸二ナトリウム二塩基酸(Na2HPO4)の該濃度が、20mMである、実施形態148に記載の組成物。
【0279】
実施形態156。該クエン酸ナトリウムの濃度が、10~30mMである、実施形態148に記載の組成物。
【0280】
実施形態157。該クエン酸ナトリウムの該濃度が、約25mMである、実施形態148に記載の組成物。
【0281】
実施形態158。該アデニンの濃度が、0~5mMである、実施形態148に記載の組成物。
【0282】
実施形態159。該アデニンの該濃度が、約1.5mMである、実施形態148に記載の組成物。
【0283】
実施形態160。該グルコースの濃度が、30~60mMである、実施形態148に記載の組成物。
【0284】
実施形態161。該グルコースの該濃度が、約45.5mMである、実施形態160に記載の組成物。
【0285】
実施形態162。該マンニトールの濃度が、80~140mMである、実施形態148に記載の組成物。
【0286】
実施形態163。該マンニトールの該濃度が、約110mMである、実施形態162に記載の組成物。
【0287】
実施形態164。該組成物が、8.8のpHを含む、実施形態148に記載の組成物。
【実施例
【0288】
実施例1:サンプリングのためのRBCの調製及び保存
約450~500mLの全血を、健康な血液提供者から採取し、クエン酸リン酸二重デキストロース(CP2D)抗凝固剤(Haemonetics,Braintree,MA,Catalog number HAE PN 129-92 CP2D/AS3 set)にいれる。白血球低減型充填RBC(LR-pRBC)は、Rhode Island Blood Center(RIBC)における標準的なプロトコルに従って、白血球低減及び室温での遠心分離後に全血から調製される。AS7G-NAC(実施例1、3及び5)又はAS3(実施例4)の添加剤溶液は、LR-pRBCに添加されて、LR-RBCを調製する。図1を参照されたい。各試験について、5つのユニットの添加剤溶液中のABO一致LR-RBC(各300~350mL)を、3リットルの非DEHPプーリングバッグにともにプールした。等量のアリコート(各300mL)を、表5に提供されるように、単一のバッグを有する血液バッグか、又は酸素及び二酸化炭素吸着剤[Mitsubishi Gas Chemical Company、Tokyo,Japan、Mitsubishi SS-200 catalog number COM-600-0011、Desicare Inc.,Mississippi,USA; Catalog number M1200BO3が内側バッグと上包との間に配設される状態で、ガス不透過性バリア(例えば、酸素及び二酸化炭素不透過性バッグ又は上包)内に封入された血液バッグのいずれかに移送させた。
【0289】
血液保存バッグは、周囲温度(対照、バッグA)又は1~4℃(バッグB~F)の下、周囲空気中に最大56日間保存される。
【表5】
【0290】
実施例2:AS3保存溶液を有するASB保存バッグ中のRBCの保存は、従来の保存と比較して、より高い主要な代謝産物のレベルを維持する
この実施例では、AS3中のLR-RBC(300mL)のユニットを、Rhode Island Blood Center(Rhode Island,US)から入手し、150mLの等量のアリコートに分割し、各々150mLの体積用に構成された単一の標準PVC DEHPバッグA、又は酸素及び二酸化炭素吸着剤が内側バッグと上包との間に配設される状態で、ガス不透過性バリア(例えば、酸素及び二酸化炭素不透過性バッグ又は上包)内に封入された同様の血液バッグBのいずれかに分割する。
【0291】
アリコートは、0日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目、及び42日目に、バッグA及びバッグBから採取される。アリコートは、血液ガス、p50、pH、乳酸、グルコース(コオキシメータ、Radiometer、Denmarkを備えたABL90ガス分析器を使用する)、ATP、2,3-DPG、及び溶血について分析された。p50に関するデータは、pH7.4、40mmHgのpCO2、及び37℃の温度において、Hemox分析器(TCS scientific、New Hope,PA,USA)で測定したp50値からの線形回帰方程式を使用して、ガス分析器(コオキシメータを有するABL90、Radiometer)からのデータから計算し、較正曲線と比較して、ABL90からのp50データをHemox分析器の値に変換される。
【0292】
複製試料から採取されたデータは、0.05未満の確率レベルが顕著であると考えられる、Neuman-Keuls多重比較試験を使用する分散分析(ANOVA)によって分析される。結果は、平均(SEM)又は標準偏差(SD)の平均±標準誤差として提示される。
【0293】
飽和酸素の割合(SO2%)は、従来のバッグA内に保存されているRBCの保存期間の関数として増加した(表6)。対照的に、レベルは、O2/CO2不透過性バリアを有するASBバッグB内に保存されているRBCのわずかな減少を有し、一定のままである(表7)。pCO2は、最初に保存バッグA及びB内に保存される両方のRBCについて、最大28日間増加し、続いて28~42日間の保存中に徐々に減少する。従来の方式で保存されたRBCにおけるpCO2レベルは、保存期間中の全ての測定日において、ASB保存バッグにおけるRBCよりも著しく高い(p<0.0001)。従来の保存バッグ及びASB保存バッグ内のRBCにおける溶血の結果もまた、表6及び表7に要約される。保存期間中、従来の保存条件とHemanextの保存条件の間に著しい溶血の差はない(p>0.05)。
【0294】
バッグB内のRBCの保存(表7)は、保存の28日目、35日目及び42日目の従来の保存と比較するとき、著しく高いATP濃度をもたらす(p<0.005、表6)。ASBバッグBの保存条件は、従来の方式で保存された血液と比較して、保存7日目及び14日目において著しく高い2,3-DPG濃度をもたらす(p<0.05)。2,3-DPG濃度は、21日目までに、レベルが、0.25μmol/gHbでのアッセイの検出の限界に達するように、保存中に急速に低下する。バッグB内に保存されたRBCはまた、従来の方式で保存されたRBCと比較して、保存期間中に、乳酸及びp50レベルの著しい増加を示す(全てのデータポイントについて乳酸p<0.0001、7~42の時点でp50 p<0.001)。更に、pHレベルは、バッグA内に従来の方式で保存されたRBCと比較して、ASB保存バッグ(B)内に保存されたRBCにおいて著しく高いままである。重要なことに、2,3-DPGレベルは、pHと相関しなかった。例えば、pHは、従来の保存では、6.631±0.075~6.279±0.052に変化し、Hemanext保存では、6.638±0.076~6.329±0.054に変化する。
【0295】
データp50は、pH7.4、40mmHgのpCO2、及び37℃の温度で、Hemox分析器(TCS scientific、New Hope,PA,USA)で測定したp50値からの線形回帰方程式を用いて、ガス分析器(コオキシメータを有するABL90、Radiometer)からのデータを使用して計算される。
【表6】
【表7】
【0296】
実施例3:CO2に対する透過性が増加したバッグ内のRBCの保存は、従来の保存と比較してより高い主要な代謝産物のレベルを維持する
DEHP及び透過性の役割は、DEHPを有するバッグ(バッグA)の結果をDEHPなしのバッグ(バッグC、D、E、F)と比較することによって試験される。表8を参照されたい
【表8】
【0297】
RBC中のSO2%は、従来の保存バッグA並びにバッグC及びバッグE中で42日間の保存にわたって増加する。バッグD及びバッグFに酸素及び二酸化炭素不透過性オーバーラップを添加すると、1日目と比較してSO2%の維持又は減少をもたらす。同様に、pCO2は、0日目の値と比較して従来のバッグA内の保存42日目で増加する(p<0.05)。従来の方式で保存されたRBCとは対照的に、RBCがオーバーラップの有無にかかわらず、42日間において、高いCO2透過性保存バッグ内に保存されたとき、pCO2は著しく減少する。
【0298】
理論に制限されることなく、データは、CO2のレベルを枯渇させながら、O2のレベルを一定又は減少させることを維持することによって、ATPが、DEHPを含有する従来のバッグと比較して変化しないままであることを示す。バリアバッグをBTHCを有するPVC(バッグC)及びDINCHを有するPVC(バッグE)に添加して、O2のレベルを30%未満に低下させ、ATPのレベルを、それぞれ12%及び14%著しく増加させる。例えば、ATPの濃度は、バリアを有しない対照DEHP又はBTHC及びDINCHバッグのいずれかと比較するとき、ガス不透過性バリアを有するDINCHバッグ(バッグD)及びBTHCバッグ(バッグE)において著しく高い。図2B及び表9を参照されたい。
【表9】
【0299】
驚くべきことに、高いCO2透過性バッグ(バッグC及びバッグD)内に血液を設置することによって、CO2を枯渇させながらO2のレベルを維持することは、従来の保存と比較して2,3-DPGのレベルにおける著しい増加をもたらす。DEHPバッグ(バッグA)内に保存される、RBC中の2,3-DPGの濃度は、開始レベルと比較するとき、保存21日目に約79%で急速に低下する(図3)。BTHC及びDINCHの両方における2,3-DPGのレベルは、21日後に従来の方式で保存されたRBCよりも高い。2,3-DPGのレベルは、バリアなしのBTHC及びDINCHバッグと比較して、21日後にBTHC及びDINCHの両方においてガス不透過性バリアを用いて約20%増加する。重要なことに、2,3-DPGレベルに対するCO2の効果は、pHの効果ではないようであり、むしろCO2レベルと密接に相関している。これは、多くの文献が原因因子としてのpHに焦点を当てているため、驚くべきことである。
【0300】
重要なことに、溶血は、DEHPの有無にかかわらず、それぞれ、米国及び欧州規制当局によって確立された1%及び0.8%の最大安全レベルを下回ったままであった(表10、表11、及び表12)。
【0301】
要約すると、本データは、(枯渇又は維持のいずれかを通じる)保存中のCO2の枯渇及びO2増加の予防は、様々な保存病変の有害な効果を低減するための改善された方法として実証される。それゆえ、少なくとも2つの特徴を組み込む保存システムは、冷蔵保存中にRBCの品質を維持するための能力を増加させる。まず、1~6℃における長期保存中に、開始O2含有量を維持するか又は減少させることによって、RBC中のO2レベルの増加を防止する保存バッグは、ATPレベルを維持するのに役立つ。このO2レベルにおける維持又は減少は、ポリマーの選択的透過性、及び任意選択的に、O2/CO2吸着剤並びにCO2及びO2の両方に対して不透過性である外側ラップ又はポリマーの存在を提供するポリマーの選択を通して好都合に達成することができる。第2に、保存バッグはまた、保存中に低レベルのCO2を維持し、2,3-DPGのレベルの増加をもたらし、驚くべきことに、2,3-DPGを保存前レベル又はそれに近いレベルに維持する。
【表10】
【表11】
【表12】
【0302】
実施例4:増加したガス透過性を有するバッグ内に保存されたAS3添加剤溶液中のRBC
実施例3の研究は、AS3を有して繰り返されて、AS3を添加剤溶液として使用するときに、上記で提供されたように様々な非DEHPバッグ内で観察された代謝産物(例えば、ATP及び2,3-DPG)における改善が安定したままであるかどうかを判定する。
【0303】
AS7G-NAC(図2A、2B、3A、及び3B)で見られるように、SO2%レベルは、バリアバッグを有しないDEHP、DINCH、及びBTHCバッグと比較して、ガス不透過性バリアバッグを有するDINCH及びBTHCバッグにおいて42日後に著しく減少する。酸素レベルとは異なり、pCO2レベルは、ガス不透過性外側バリアバッグの有無にかかわらず、各非DEHPバッグ選択(BTHC又はDINCH)において同様のままである。DINCH及びBTHCの両方は、21日間の保存後のDEHPと比較して、減少したpCO2レベルを示す(図4及び5)。
【0304】
AS7G-NAG添加剤溶液の結果と同様に、ATP及び2,3-DPGレベルは、外側バッグがなく、従来の方式で保存されたDINCH及びBTHCバッグのRBCと比較して、ガス不透過性バリアバッグを有するDINCH及びBTHC内側バッグ内に保存されるRBCにおいて増加する(図4及び5)。全てのRBC試料はまた、必要とされる溶血カットオフを下回ったままであった。重要なことに、溶血は、DEHPの有無にかかわらず、それぞれ、米国及び欧州規制当局によって確立された1%及び0.8%の最大安全レベルを下回ったままであった(表13、表14、及び表15)。
【表13】
【表14】
【表15】
【0305】
実施例5:増加したガス透過性を有するバッグ内に保存されたAS7G-NAC添加剤溶液中のRBC
実施例1及び2に提供されるように、赤血球は、AS7G-NAC添加剤溶液で調製される。次いで、RBCは、以下のバッグのうちの1つに設置される。
A.従来型-DEHPを有するPVC
C.BTHCを有するPVC
D.CO2/O2不透過性の外側バリアを備えたBTHC内側バッグを有するPVC
F.ポリオレフィン
G.CO2/O2不透過性外側バリアを有するポリオレフィン内側バッグ
【0306】
DEHPバッグに保存される、RBC中の2,3-DPGの濃度は、開始レベルと比較するとき、保存21日目までに減少する(図6)。BTHC(バッグC)及びポリオレフィン(EXP500、バッグF)の両方における2,3-DPGのレベルは、21日後に従来の方式で保存されたRBCよりも高い。これらのレベルは、内側バッグがガス不透過性外側バリアバッグによって封入されているとき、BTHC及びポリオレフィンバッグ内で更に増加する。
【0307】
ATPの濃度はまた、バリアを有しない対照DEHP又はBTHC及びポリオレフィンバッグのいずれかと比較するとき、ガス不透過性バリアを有するBTHC及びポリオレフィンバッグにおいて著しく高い(図7)。
【0308】
溶血は、米国及び欧州規制当局によって、それぞれ、確立された1%及び0.8%の必要とされるカットオフレベルを下回ったままであった(図6及び7)。
【表16】
【表17】
【表18】
【0309】
本発明は、特定の実施形態に関して説明されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われ得、及び同等物がその要素に対して置き換えられ得ることを当業者は理解するであろう。加えて、本発明の範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正が行われ得る。
【0310】
したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の形態として開示される特定の実施形態に限定されず、本発明は、添付の請求項の範囲及び趣旨内に該当する全ての実施形態を含むことが意図される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
【国際調査報告】