(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】最小限の動作圧力を用いた冷却ユニットの運転
(51)【国際特許分類】
B21B 37/74 20060101AFI20230612BHJP
B21B 37/76 20060101ALI20230612BHJP
B21B 45/02 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B21B37/74
B21B37/76 A
B21B45/02 320T
B21B45/02 320U
B21B45/02 320H
B21B45/02 320R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562567
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2021058174
(87)【国際公開番号】W WO2021209251
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516128728
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ヴァインツィール
【テーマコード(参考)】
4E124
【Fターム(参考)】
4E124BB08
4E124EE14
(57)【要約】
液体冷却剤(6)は、ポンプアセンブリ(5)を用いてヘッダーライン(4)に供給される。制御弁(11aから11d)が配置されている、分岐ライン(9aから9d)は、ヘッダーライン(4)から適用ユニット(10aから10d)へと分岐する。冷却剤(6)は、適用ユニット(10aから10d)を用いて金属製の熱間圧延材料(2)に適用され、これにより圧延材料(2)は冷却される。制御弁(11aから11d)の限界変調値(kLim)について、冷却ユニット(3)の制御ユニット(12)は、適用ユニット(10aから10d)の設定点流量(Ka*からKd*)を使用して、設定点流量(Ka*からKd*)が分岐ライン(9aから9d)に流れるためにヘッダーライン(4)内で優勢でなければならない個別の動作圧力(pAaからpAd)を決定する。次いで、ポンプアセンブリ(5)の暫定的動作状態(Z)を決定し、その結果、設定点流量(Ka*からKd*)の合計がヘッダーライン(4)に供給される、それと同時に、少なくとも個々の最高動作圧力(pAaからpAd)に対応する暫定的動作圧力(pAv)はヘッダーライン(4)内で優勢になる。暫定的動作状態(Z)を使用することで、総流量(K)がヘッダーライン(4)に供給され、それと同時にヘッダーライン(4)内で最終動作圧力(pAe)が優勢になるように、ポンプアセンブリ(5)の最終動作状態(Z′)を決定する。次いで、最終動作圧力(pAe)を使用して制御弁(11aから11d)の動作値(AaからAd)を決定し、その結果、設定点流量(Ka*からKd*)は分岐ライン(9aから9d)内を流れる。これは、ポンプアセンブリ(5)及び制御弁(11aから11d)をしかるべく動作させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属から作られた熱間圧延材料(2)を冷却するための冷却ユニット(3)を運転させるための運転方法であって、
- 前記冷却ユニット(3)が、ヘッダーライン(4)を有しており、液状の冷却剤(6)が、ポンプアセンブリ(5)によって前記ヘッダーライン(4)に供給され、複数の分岐ライン(9a~9d)が、前記ヘッダーライン(4)から適用ユニット(10a~10d)に分岐しており、
- 前記ポンプアセンブリ(5)が、複数のポンプ(8)を有しており、制御弁(11a~11d)が、前記分岐ライン(9a~9d)それぞれに配置されており、前記冷却剤(6)が、少なくとも幾つかの前記適用ユニット(10a~10d)によって前記熱間圧延材料(2)に適用され、
- 前記適用ユニット(10a~10d)に供給されるべき設定点流量(Ka*~Kd*)が、前記冷却ユニット(3)の制御ユニット(12)に伝達され、
- 前記制御ユニット(12)が、最終動作状態(Z′)に従って前記ポンプアセンブリ(5)を動作させ、且つ、動作値(Aa~Ad)に従って前記制御弁(11a~11d)を動作させる、前記運転方法において、
前記ポンプアセンブリ(5)の前記最終動作状態(Z′)と前記制御弁(11a~11d)の前記動作値(Aa~Ad)とを決定するために、前記制御ユニット(12)が、
- 個別の動作圧力(pAa~pAd)が前記ヘッダーライン(4)において優勢となり、前記設定点流量(Ka*~Kd*)それぞれが前記分岐ライン(9a~9d)それぞれを流れるように、前記制御弁(11a~11d)それぞれの限界変調値(kLim)についての前記制御弁(11a~11d)それぞれの前記個別の動作圧力(pAa~pAd)を決定し、
- 前記設定点流量(Ka*~Kd*)の合計値に対応する冷却剤(6)の総流量(K)が、前記ポンプアセンブリ(5)によって前記ヘッダーライン(4)に供給されると同時に、前記個別の動作圧力(pAa~pAd)の最大圧力と少なくとも同じ高さである暫定的動作圧力(pAv)が前記ヘッダーライン(4)において優勢となるように、前記ポンプアセンブリ(5)の暫定的動作状態(Z)を決定し、
- 冷却剤(6)の前記総流量(K)が前記ポンプアセンブリ(5)によって前記ヘッダーライン(4)に供給されると同時に、最終動作圧力(pAe)が前記ヘッダーライン(4)において優勢になるように、前記ポンプアセンブリ(5)の前記暫定的動作状態(Z)を使用して、前記ポンプアセンブリ(5)の前記最終動作状態(Z′)を決定し、
- 前記設定点流量(Ka*からKd*)それぞれが前記分岐ライン(9aから9d)それぞれで流れるように、前記最終動作圧力(pAe)を使用して、前記制御弁(11a~11d)の前記動作値(Aa~Ad)を決定することを特徴とする、運転方法。
【請求項2】
前記制御弁(11a~11d)の前記限界変調値(kLim)が、前記制御弁(11a~11d)の最大変調値であるか、又は前記制御弁(11a~11d)の前記最大変調値の近傍の値であることを特徴とする請求項1に記載の運転方法。
【請求項3】
前記暫定的動作状態(Z)を決定する際に、前記制御ユニット(12)が、前記ポンプアセンブリ(5)に関係する二次的な条件を考慮することを特徴とする請求項1又は2に記載の運転方法。
【請求項4】
前記暫定的動作状態(Z)を決定する際に、前記制御ユニット(12)が、前記制御弁(11a~11d)に関係する二次的な条件を考慮することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項5】
前記ポンプアセンブリ(5)の前記最終動作状態(Z′)を決定する際に、前記制御ユニット(12)が、前記ポンプアセンブリ(5)の少なくとも1つの以前の最終動作状態(Z′)及び/又は将来予想される前記ポンプアセンブリ(5)の少なくとも1つの暫定的動作状態(Z)を考慮することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項6】
金属から作られた熱間圧延材料(2)を冷却するための冷却ユニット(3)の制御ユニット(12)によって実行される機械コード(14)を具備するコンピュータプログラムであって、
前記制御ユニット(12)が前記機械コード(14)を実行することによって、前記制御ユニット(12)が、請求項1~5のいずれか一項に記載の運転方法に従って前記冷却ユニット(3)を運転する、コンピュータプログラム。
【請求項7】
金属から作られた熱間圧延材料(2)を冷却するための冷却ユニット(3)の制御ユニットであって、
前記制御ユニットが、前記制御ユニットが請求項1~5のいずれか一項に記載の運転方法に従って前記冷却ユニット(3)を運転するように、請求項6に記載のコンピュータプログラム(13)を用いてプログラムされる、制御ユニット。
【請求項8】
金属から作られた熱間圧延材料(2)を冷却するための冷却ユニットであって、
- 前記冷却ユニットが、ヘッダーライン(4)と、ポンプアセンブリ(5)と、複数の適用ユニット(10a~10d)とを有しており、
- 液体冷却剤(6)が、少なくとも幾つかの前記適用ユニット(10a~10d)によって前記熱間圧延材料(2)に適用され、
- 前記適用ユニット(10a~10d)が、分岐ライン(9a~9d)それぞれを介して前記ヘッダーライン(4)に接続されており、
- 前記ポンプアセンブリ(5)が、前記液体冷却剤(6)を前記ヘッダーライン(4)に供給するための複数のポンプ(8)を有しており、
- 制御弁(11a~11d)が、前記分岐ライン(9a~9d)それぞれに配置されており、
- 前記冷却ユニットが、請求項1~5のいずれか一項に記載の運転方法に従って前記冷却ユニットを運転する、請求項7に記載の制御ユニット(12)を有している、冷却ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の熱間圧延材料を冷却するための冷却ユニットの運転方法から始まり、
- 冷却ユニットはヘッダーラインを有し、そこに液体冷却剤がポンプアセンブリを用いて供給され、そこから複数の分岐ラインが適用ユニットへと分岐し、
- ポンプアセンブリは幾つかのポンプを有し、制御弁が分岐ラインの各々に配置され、冷却剤は適用ユニットのうちの少なくとも幾つかを用いて圧延材料に適用され、
- 適用ユニットに供給されるべき設定点流量は、冷却ユニットの制御ユニットに伝達され、
- 制御ユニットは、最終動作状態に従ってポンプアセンブリを動作させ、動作値に従って制御弁を動作させる。
【0002】
本発明は、さらに、金属製の熱間圧延材料を冷却するための冷却ユニットの制御ユニットによって実行され得る機械コードを含むコンピュータプログラムから始まり、制御ユニットにより機械コードが実行されることによって、制御ユニットはこの種の運転方法に従って冷却ユニットを運転する。
【0003】
本発明は、さらに、金属製の熱間圧延材料を冷却するための冷却ユニットの制御ユニットから始まり、制御ユニットは、この種のコンピュータプログラムによりプログラムされ、その結果、制御ユニットはこの種の運転方法に従って冷却ユニットを運転する。
【0004】
本発明は、さらに、金属製の熱間圧延材料を冷却するための冷却ユニットから始まり、
- 冷却ユニットは、ヘッダーラインと、ポンプアセンブリと、複数の適用ユニットとを有し、
- 液体冷却剤が、適用ユニットの少なくとも幾つかを用いて圧延材料に適用され、
- 適用ユニットは、それぞれの分岐ラインを介してヘッダーラインに接続され、
- ポンプアセンブリは、幾つかのポンプを有し、そのポンプによって液体冷却剤がヘッダーラインに供給され、
- 制御弁が、分岐ラインの各々に配置され、
- 冷却ユニットは、この種の運転方法に従って冷却ユニットを運転する、この種の制御ユニットを有する。
【背景技術】
【0005】
上述の主題は周知の知識である。
【0006】
例えば、特許文献1は、金属製の熱間圧延材料を冷却するための冷却ユニットを開示しており、この冷却ユニットでは、液体冷却剤がポンプアセンブリを用いてヘッダーラインに供給され、そこから分岐ラインが適用ユニットへと分岐し、それによって冷却剤が圧延材料に適用される。制御弁が分岐ライン内に配置されている。制御ユニットにとって既知であり、適用ユニットに供給されるべき設定点流量に基づき、制御ユニットは、ポンプアセンブリの動作状態及び制御弁の動作値を決定し、それに応じてポンプアセンブリ及び制御弁を動作させる。特許文献1では、ヘッダーラインは、高圧下又は低圧下のいずれかにある。冷却剤のより高い圧力は、それが実際に必要とされるときにのみ生じさせられる。高圧の要件は、低圧において、少なくとも1つの弁の開位置が、限界値として指定されている特定の開位置を超える場合に存在すると考えられる。
【0007】
特許文献2は、同様に、金属製の熱間圧延材料を冷却するための冷却ユニットを開示しており、この冷却ユニットでは、液体冷却剤がポンプアセンブリを用いてヘッダーラインに供給され、そこから分岐ラインが適用ユニットへと分岐し、それによって冷却剤が圧延材料に適用される。制御弁が分岐ライン内に配置されている。適用ユニットに供給されるべき設定点流量は、冷却ユニットの制御ユニットに伝達される。制御ユニットは、制御弁の対応する動作値を決定し、この方法で制御弁も動作させる。特許文献2には、ポンプの(任意選択で可変の)動作に関する記述はない。
【0008】
特許文献3は、同様に、金属製の熱間圧延材料を冷却するための冷却ユニットを開示しており、この冷却ユニットでは、液体冷却剤がポンプアセンブリを用いてヘッダーラインに供給され、そこから分岐ラインが適用ユニットへと分岐し、それによって冷却剤が圧延材料に適用される。制御弁が分岐ライン内に配置されている。冷却ユニットの制御ユニットは、適用ユニットに供給されるべき設定点流量に基づき、総流量を決定し、総流量に基づきポンプアセンブリの動作状態を決定する。ヘッダーラインの動作圧力は、最小値と最大値の間に設定され得る。制御弁は、全閉位置と全開位置との間で調整され得る。個別の設定点流量を設定するために、制御ユニットは、弁の開位置と、ポンプがヘッダーライン内に発生させるライン圧の両方を変化させる。
【0009】
特許文献4は、同様に、金属製の熱間圧延材料を冷却するための冷却ユニットを開示しており、この冷却ユニットでは、液体冷却剤がポンプアセンブリを用いてヘッダーラインに供給され、そこから分岐ラインが適用ユニットへと分岐し、それによって冷却剤が圧延材料に適用される。制御弁が分岐ライン内に配置されている。制御ユニットは、適用ユニットに供給されるべき設定点流量に応じて、ポンプアセンブリに対する動作状態を決定する。制御ユニットは、供給される水の総量に加えて、水量の変化及びライン抵抗を考慮する。制御弁の開位置が、可能な最小の開位置及び可能な最大の開位置からの最小距離を下回る場合に、ポンプの動作状態、したがって動作圧力も適応される。
【0010】
特許文献5は、金属製の熱間圧延材料を冷却するための冷却ユニットを開示しており、この冷却ユニットでは、液体冷却剤が複数の適用ユニットによって圧延材料に適用される。適用ユニットは、各々専用のポンプを用いて供給を受ける。それぞれのポンプとそれぞれの適用ユニットとの間の弁は、連続的に全開状態に保たれる。送達される冷却剤の量は、ポンプの対応する時間可変動作によってのみ設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2013/143925号
【特許文献2】国際公開第2014/124867号
【特許文献3】国際公開第2014/124868号
【特許文献4】国際公開第2019/115145号
【特許文献5】国際公開第2020/020868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特に集中冷却の場合、ただし時には層流冷却の場合にも、制御弁はポンプを用いて供給を受ける。この場合、典型的な構成は、ヘッダーラインを介した複数の制御弁への供給であり、ヘッダーラインはポンプアセンブリによって冷却剤を供給される。ポンプアセンブリは、1台のポンプ又は複数のポンプを有することができる。
【0013】
冷却剤は、適用ユニット(スプレーバーとして設計されることが多い)を用いて圧延材料に適用される。幾つかの場合において、冷却剤を圧延材料に適用するのではなく、どこか他の箇所で冷却剤を放出する追加の適用ユニットが存在し得る。これは、例えば、送達される冷却剤の量を全体としてより均一にするために有用である。
【0014】
本発明の目的は、従来の冷却ユニット、すなわち、制御弁の動作を介して圧延材料に施される冷却剤の計量が行われる冷却ユニットが、改善された方式で運転され得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
目的は、請求項1の特徴を有する運転方法を用いて達成される。有利な改良は、従属請求項2から5の主題を成す。
【0016】
本発明によれば、最初に述べた種の運転方法は、ポンプアセンブリの最終動作状態及び制御弁の動作値を決定するために、制御ユニットが
- それぞれの制御弁のそれぞれの限界変調値に対する制御弁のそれぞれの個別の動作圧力を決定し、この動作圧力は、それぞれの設定点流量がそれぞれの分岐ライン内で流れるようにヘッダーラインにおいて優勢でなければならないこと、
- ポンプアセンブリの暫定的動作状態を決定し、その結果、設定点流量の合計に対応する冷却剤の総流量が、ポンプアセンブリを用いてヘッダーラインに供給され、それと同時に、個別の動作圧力のうちの最大圧力と少なくとも同程度の高さである暫定的動作圧力がヘッダーライン内で優勢になるようにすること、
- ポンプアセンブリの暫定的動作状態を使用して、冷却剤の総流量がポンプアセンブリを用いてヘッダーラインに供給され、それと同時に最終動作圧力がヘッダーライン内で優勢になるように、ポンプアセンブリの最終動作状態を決定すること、
- 最終動作圧力を使用して、それぞれの設定点流量がそれぞれの分岐ライン内に流れるように、制御弁の動作値を決定することを行うように、構成される。
【0017】
これは、冷却ユニットのポンプアセンブリが可能な最低の最終動作圧力で、したがって可能な最低のエネルギー消費で運転され、それにもかかわらず、圧延材料は常に必要な設定点流量に従って冷却されることを確実にする。
【0018】
制御弁の限界調節を制御弁の最大調節とすることが可能である。しかしながら、一定の制御余力を得るためには、制御弁の限界調節がこれよりわずかに下回る、すなわち制御弁の最大調節のごく近くにあると、有利であり得る。後者の場合、制御弁の限界調節は、したがって、制御弁の最大調節の高い割合、例えば、80%、90%、又は95%に対応する。もちろん、限界調節は、他の値を有することもできる。特に、しかしながら、80%の値に達しないことはあるべきではない。数値データは、また、冷却剤流量、すなわちそれぞれの制御弁の動作の結果生じる効果に関係する。他方では、これらは、制御弁が動作される際の操作変数には関係しない。限界調節は、それぞれの制御弁について必要に応じて個別に指定され得るか、又はすべての制御弁に対して一様に指定され得る。また、グループ単位で指定することも可能である。
【0019】
暫定的動作状態の決定の一環として、制御ユニットは、好ましくは、ポンプアセンブリに関係する二次的な条件を考慮する。これは、ポンプアセンブリが常に許容可能動作範囲内で運転されることを確実にすることを可能にする。制御ユニットは、例えば、ポンプアセンブリの許容可能動作状態を決定できるかどうかを確認することができ、ポンプアセンブリは、一方では、要求される総流量を送達し、他方では、ヘッダーライン内の決定された個別の動作圧力のうちの最大圧力を発生する。その場合、この動作圧力又はこの動作圧力から直接導出される値が、最終動作圧力として使用され得る。そうでない場合、制御ユニットは、ポンプアセンブリの許容可能動作状態が見つかるまで暫定的動作圧力から始めて、動作圧力を段階的に高めることができる。
【0020】
暫定的動作状態の決定の一環として、制御ユニットは、好ましくは、制御弁に関係する二次的な条件を考慮する。例えば、一方では、要求される総流量を送達し、他方では、少なくとも個別の動作圧力のうちの最大圧力と同程度の高さである動作圧力をヘッダーライン内に生じさせるポンプアセンブリの許容可能動作状態について、制御ユニットが制御弁の関連する動作値を決定し、望ましくない状態が発生するかどうか、及び該当する場合、それがどの程度であるかを確認することが可能である。その場合、望まれない状態が受け入れられ得るか、又はポンプアセンブリの動作状態が適合され得るかのいずれかである。取られるべき措置はケースバイケースで決めることができる。
【0021】
ポンプアセンブリの最終動作状態の決定の一環として、制御ユニットは、好ましくは、それに加えて、ポンプアセンブリの少なくとも1つの以前の最終動作状態及び/又は将来予想されるポンプアセンブリの少なくとも1つの暫定的動作状態を考慮する。例えば、制御ユニットは、暫定的動作状態のモデル予測による決定を実行することができる。制御ユニットは、また、例えば、一方では暫定的動作圧力の本発明による最小化、他方ではさらなる状況を含む最適化問題を設定することができる。そのような状況の例は、暫定的又は最終動作圧力の変化と、ポンプアセンブリの動作状態の変化である。
【0022】
目的は、請求項6の特徴を有するコンピュータプログラムを用いてさらに達成される。本発明によれば、コンピュータプログラムの実行は、制御ユニットで本発明による運転方法に従って冷却ユニットを運転する効果を有する。
【0023】
目的は、請求項7の特徴を有する制御ユニットを用いてさらに達成される。本発明によれば、制御ユニットは、本発明によるコンピュータプログラムによりプログラムされ、その結果、制御ユニットは本発明による運転方法に従って冷却ユニットを運転する。
【0024】
目的は、請求項8の特徴を有する金属製の熱間圧延材料を冷却するための冷却ユニットを用いて達成される。本発明によれば、最初に述べた種の冷却ユニットは、本発明による運転方法に従って冷却ユニットを運転する本発明による制御ユニットを有する。
【0025】
本発明の上で説明されている特性、特徴、及び利点、ならびにこれらが達成される際の方式は、図面と組み合わせてより詳細に説明される、例示的な実施形態の次の説明と併せて、より明確かつ明瞭に理解されるであろう。ここで概略図として以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1の冷却ユニットを有する圧延ラインを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1によれば、圧延ラインは、少なくとも1つの圧延スタンド1を有する。
図1は、単一の圧延スタンド1のみを示している。しかしながら、多くの場合、複数の圧延スタンド1が直列に配置されており、したがって、圧延ラインは、圧延機列として設計される。圧延ラインでは、熱間圧延材料2が圧延される、すなわち、その断面が縮小される。圧延材料2は、例えば、鋼鉄又はアルミニウムからなることができる。しかしながら、他の金属、例えば真鍮又は銅からなることもできる。圧延材料2は、例えば帯状又は板状の平坦な圧延材料であってもよい。しかしながら、棒状であるか、又は断面形状として若しくは管として設計される、他の形状を有していてもよい。
【0028】
圧延ラインは、さらに、冷却ユニット3を有する。
図1の図解によれば、冷却ユニット3は、圧延スタンド1の下流に配置されている。しかしながら、これは絶対に必要なことではない。冷却ユニット3は、同様に、例えば、マルチスタンド仕上げ列の仕上げスタンド間のいわゆるスタンド間冷却手段の形態で、又はマルチスタンド仕上げ列の第1の仕上げスタンドと粗延機との間の粗面化帯材冷却手段の形態で、圧延スタンド1の上流に配置され得る。他の配置も可能である。
【0029】
冷却ユニット3は、ヘッダーライン4を有する。液体冷却剤6はポンプアセンブリ5を用いてヘッダーライン4に供給される。この目的のために、ポンプアセンブリ5は、例えば、入口側でリザーバ7に接続され得る。しかしながら、他の実施形態、例えば配水網を介したポンプアセンブリ5の直接供給も可能である。
図1の図解によれば、ポンプアセンブリ5は、複数のポンプ8を備えることができる。
図1による実施形態では、ポンプ8は、互いに並列に接続されている。しかしながら、ポンプ8は、互いに直列に配置されることも可能である。このアプローチの組合せ、例えば、3つのラインも可能であり、各ラインの中に、2つのポンプ8が互いに直列に配置される。また、単一のポンプ8だけが存在することも可能である。冷却剤6は、通常、水であるか、又は少なくとも実質的に(98%以上)水からなる。
【0030】
分岐ライン9aから9dは、ヘッダーライン4から適用ユニット10aから10dへと分岐する。適用ユニット10aから10dは、したがって、分岐ライン9aから9dを介してヘッダーライン4に接続される。適用ユニット10aから10dを用いることで、冷却剤6は、圧延材料2に適用される。適用ユニット10aから10dは、例えば、いわゆるクーリングバーやスプレーバーとして設計され得る。
【0031】
図1の図解によれば、適用ユニット10aから10dは、圧延材料2より上に配置され、その結果、上から圧延材料2に冷却剤6を適用する。しかしながら、これは絶対に必要なことではない。適用ユニット10aから10dは、同様に、圧延材料2より下に配置されるか、又は他の何らかの場所に配置されることも可能である。また、適用ユニット10aから10dが、異なる側面から冷却剤6を圧延材料2に適用することも可能である。また、適用ユニット10aから10dのすべてが冷却剤6を圧延材料2に適用するのではなく、適用ユニット10aから10dの少なくとも1つ(その場合、通常は1つ又は2つ)が冷却剤6を圧延材料2に適用しないことも可能である。対応する実施形態及びその理由は、例えば特許文献4において説明されている。
【0032】
さらに、
図1には、合計4つの適用ユニット10aから10dが例示されている。本発明は、この数の適用ユニット10aから10dと併せて説明される。しかしながら、適用ユニット10aから10dの数は、より多くても少なくてもよい。1より大きければよい。したがって、2つの分岐ライン9aから9dを介してヘッダーライン4に接続される少なくとも2つの適用ユニット10aから10dがあり、分岐ライン9aから9dの各々において制御弁11aから11dが配置される。
【0033】
制御弁11aから11dは、分岐ライン9aから9dの各々の中に配置される。制御弁11aから11dは、例えば、ボール弁として設計され得る。しかしながら、その具体的な設計にかかわらず、制御弁11aから11dは、連続的に調整され得る。「連続的に調整する」という文言は、制御弁11aについての
図2の図解を参照しつつ以下に説明される。制御弁11bから11dについても、同様の記述が当てはまる。
【0034】
図2によれば、制御弁11aは、動作値Aaを用いて動作される。動作値Aaは、最小動作値Aminと最大動作値Amaxとの間にある。動作値Aaは、連続的に又は少なくとも複数のステップで変化させることができる。したがって、動作値Aaは、最小動作値Aminと最大動作値Amaxとの間の(任意選択で調整精度の範囲内の)複数の可能な値を取ることができる。例えば、ボール弁の場合、最小動作値Amin及び最大動作値Amaxは、0°及び90°とすることができ、動作値Aaは、これら2つの極値Amin、Amax間で、例えば、0.1°又は0.2°のステップで調整され得る。
【0035】
制御弁11aの入口側に存在する基準圧力pRにおいて、対応する基準冷却剤流量KRは、動作値Aaに応じて、制御弁11aを通って、したがって対応する分岐ライン9aを通って流れる。制御弁11aを連続的に調整することが可能であるので、基準冷却剤流量KRは、最小値KRmin(通常は0)と最大値KRmax(もちろん、最小値KRminよりも大きい)との間の対応する値の連続範囲をも通る。最大値KRmaxで除算された基準冷却剤流量KRは、制御弁11aの変調kaに対応する。変調kaは、1の最大値を有し、通常、0の最小値を有する。
【0036】
動作値Aaの関数としての基準冷却剤流量KR(又はそれと等価なものとしての変調ka)の関数関係は、制御弁11aの特性曲線に対応する。
図2の図解によれば、特性曲線はしばしば非線形である。しかしながら、通常、一方の動作値Aaと、基準冷却剤流量KR又は変調kaとの間に厳密な単調関係がある。また、当業者には知られているように、所与の動作値Aaにおいて、制御弁11aの入口側に存在する動作圧力pAが分かっていると仮定すれば、実際の冷却剤流量Ka、すなわち制御弁11aを通って実際に流れる冷却剤6の量、は容易に決定され得る。特に、特性曲線それ自体から取得される値は、動作圧力pAと基準圧力pRの商の平方根でスケーリングされるだけでよい。また、動作圧力pAと基準圧力pRは、オフセットによって補正されなければならない場合もある。所与の変調ka及び知られている最大基準冷却剤流量KRmax及び知られている動作圧力pAがあるとすると、冷却剤流量Kaは、式
【0037】
【0038】
となる。
ρは冷却剤6の密度であり、gは重力による加速度であり、haは適用ユニット10aから10dに対して一様である基準レベルに関する弁出口(又は適用ユニット10a)の高さである。基準レベルに関する弁出口の配置に応じて、hAは0より大きくも小さくもなり得る。基準レベルは、必要に応じて選択され得る。例えば、これは圧延材料2を冷却ユニット3を通して搬送するためのローラーテーブルのレベルと一致し得る。関連する動作値Aaは、変調kaを決定した後に特性曲線から直接取得される。
【0039】
冷却ユニット3は、さらに、冷却ユニット3を制御し、運転する制御ユニット12を有する。一般に、制御ユニット12は、ソフトウェアプログラム可能ユニットとして設計されている。これは、
図1において、マイクロプロセッサに対する記号「μP」が制御ユニット12内にあるように描かれていることによって示されている。制御ユニット12は、コンピュータプログラム13によってプログラムされる。コンピュータプログラム13は、制御ユニット12によって実行され得る機械コード14を含む。コンピュータプログラム13によるプログラミング又は機械コード14の実行に基づき、制御ユニット12は、
図3と併せて次により詳細に説明される運転方法に従って冷却ユニット3を運転する。
【0040】
ステップS1において、設定点流量Ka*からKd*は、制御ユニット12に伝達される。設定点流量Ka*からKd*は、例えばリットル/秒を単位として、それぞれの適用ユニット10aから10dに供給され、それぞれの適用ユニット10aから10dによって放出され、特に圧延材料2に適用されるべき冷却剤6の量を示している。例えば、制御ユニット12の設定点流量Ka*からKd*は、外部から指定され得るか、又は他の条件に基づき制御ユニット12によって独立して決定され得る。適切な手順は、当業者の間では周知の知識である。
【0041】
ステップS2において、制御ユニット12は、制御弁11aの限界変調値kLimに対する個別の動作圧力pAaを決定する。限界変調値kLimは、制御ユニット12に対して指定される。限界変調値kLimは、制御弁11aの最大変調であってもよい。しかしながら、多くの場合において、
図2の図解によれば、制御弁11aの最大変調に近いものの、それを下回る値であると有利である。この場合、限界変調値kLimは、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%であるべきである。しかしながら、概して98%という値を超えるべきではない。限界変調値kLimは、したがって、制御弁11aの最大変調の高い割合に対応する。形式上、限界変調値kLimは制御弁11aの変調kaに関係し、制御弁11aの動作Aaに関係しないことが明確にされるべきである。
【0042】
制御ユニット12は、動作圧力pAa及び制御弁11aの限界変調値kLimにおいて、所望の設定点流量Ka*が分岐ライン9aに流れるように、個別の動作圧力pAaを決定する。制御ユニット12は、動作圧力pAaを、例えば、式
【0043】
【0044】
に従って決定する。
【0045】
ステップS3において、制御ユニット12は、制御弁11bから11dについて完全に類似する方法で、個別の動作圧力pAbからpAdを決定する。他の制御弁11bから11dの限界変調値kLim、最大基準冷却剤流量KRmax及び基準圧力pRは、制御弁11aの限界変調値kLim、最大基準冷却剤流量KRmax及び基準圧力pRと同じ値を有することができる。代替的に、これらは、適切であれば、他の制御弁11bから11d内でも制御弁11bから11dから制御弁11bから11dへ変化し得る他の値であってもよい。しかしながら、各場合において、制御ユニット12は、他の制御弁11bから11dの個別の動作圧力pAbからpAdを互いに独立して、また制御弁11aの個別の動作圧力pAaから独立して決定する。
【0046】
ステップS4において、制御ユニット12は、次いで、ポンプアセンブリ5の動作状態Zを決定する。動作状態Zは、動作状態Zに従って運転されることを条件として、ポンプアセンブリ5が設定点流量Ka*からKd*の合計に対応する総流量Kを送達するように決定される。総流量Kの送達の結果、冷却剤6の総流量Kは、ポンプアセンブリ5を用いてヘッダーライン4にも供給される。それと同時に、動作状態Zは、個別の動作圧力pAaからpAdのうち最も高い圧力と少なくとも同程度の高さの動作圧力pAvがヘッダーライン4において優勢となるように決定される。しかしながら、動作状態Z及び動作圧力pAvはいずれも暫定的なものにすぎない。動作状態Zは、少なくともポンプアセンブリ5の各ポンプ8について必要な回転速度nを含む。
【0047】
この文脈において、ポンプアセンブリ5の動作が連続的に、又は少なくとも複数のステップで、変化させることができることが重要である。したがって、2つ又は3つの固定された離散的な動作状態Zの間で切り替えることが可能であるだけでなく、可能な動作状態Zは連続範囲又は仮想的な連続範囲を形成する。純粋に例として、ポンプ8の1つが100回転/分の最低回転速度nminと800回転/分の最高回転速度nmaxとの間で運転され得る場合、回転速度nは、100回転/分と800回転/分との中間値、例えば無段階に調整可能である場合に150回転/分、227回転/分、又は593回転/分にも設定でき、段階的に調整可能な場合には少なくとも10段階、例えば100、150、200、250などの異なる段階に、最大800回転/分まで、設定することもできる。もちろん、記載された数値は例としてのみ解釈されるべきである。
【0048】
ステップS4の一部として、制御ユニット12が、ポンプアセンブリ5によって静的に発生させられる圧力のみを考慮することが可能である。したがって、ステップS4の一部として、制御ユニット12が、ポンプアセンブリ8の出口側で発生する圧力が制御弁11aから11dの入口側の圧力に対応すると仮定することが可能である。しかしながら、制御ユニット12において追加の状況を考慮に入れることも同様に可能である。そのような状況の例は、時間に関する設定点流量Ka*からKd*の変化及び時間に関する総流量Kの関連する変化及び水量の関連する加速度である。そのような状況のさらなる例は、ポンプアセンブリ5とヘッダーライン4との間の、又はヘッダーライン4内の流動抵抗であり、これに基づき、制御弁11aから11dの入口側で発生する圧力は、常に、ポンプアセンブリ8によって発生する圧力より小さい。両方の状況について、特許文献4に、それらを考慮することに対する対応する可能性が記載されている。一方におけるポンプアセンブリ8と、他方におけるヘッダーライン4又はヘッダーライン4の基準レベルとの間の高さの差が、一定のオフセットを用いてさらに考慮され得る。
【0049】
単一のポンプ8のみがある最も単純な場合、例えば、制御ユニット12が、
図4の図解に示されているように、特定の総流量Kで特定の圧力増大δpをもたらすためにポンプ8に必要なポンプ8の回転速度nを記憶する特性曲線の族にアクセスすることによって前記ポンプの回転速度nを決定することが可能である。したがって、ポンプアセンブリ5の入口側で優勢な吸引圧力pSと併せて、必要な圧力増大δp=pS-pAvは、容易に決定され得る。吸引圧力pSは、測定に基づいて、又は他の何らかの方法で、制御ユニット12に知られ得る。
【0050】
多くの場合において、個別の動作圧力pAaからpAdのうちの最大圧力に対して決定された動作状態はそれ自体、すでにポンプアセンブリ5の許容可能動作状態である。この場合、この動作状態が、暫定的動作状態Zとして直接採用され得る。他の可能性及び実施形態については後述する。
【0051】
ステップS5において、制御ユニット12は、次いで、ポンプアセンブリ5の動作状態Z′を決定する。動作状態Zと対照的に、動作状態Z′は最終的である。制御ユニット12は、ポンプアセンブリ5の暫定的動作状態Zを使用してポンプアセンブリ5の最終動作状態Z′を決定する。ステップS5における決定は、冷却剤6の総流量Kがポンプアセンブリ5を用いてヘッダーライン4に供給されるような決定である。それと同時に、ポンプアセンブリ5が最終動作状態Z′に従って動作されると仮定すると、最終動作圧力pAeがヘッダーライン4内で優勢になる。最も単純な場合、制御ユニット12は、暫定的動作状態Zを最終動作状態Z′として直接かつ即座に仮定する。暫定的動作圧力pAvを極めて小さい加算オフセットだけ増加させるか、又は1よりわずかに大きい係数を乗算し、それによって最終動作圧力pAeを決定することも可能である。これらのアプローチは、1よりわずかに小さい限界変調値kLimの使用への効果について類似している。最終動作圧力pAeを決定する他の可能性及び実施形態は、以下で説明される。
【0052】
最終動作状態Z′は、所望の総流量Kがポンプアセンブリ8によってヘッダーライン4内に送達されることを条件として、ヘッダーライン4内の最終動作圧力pAeをもたらす。したがって、制御ユニット12は、ステップS6において、最終動作圧力pAeを用いて、制御弁11aから11dの動作値AaからAdを決定する。この決定は、それぞれの分岐ライン9aから9dにおいてそれぞれの設定点流量Ka*からKd*が流れるように実行される。
【0053】
ステップS6における決定の一環として、制御ユニット12は、ヘッダーライン4において最終動作圧力pAeが優勢であると仮定する。制御弁11aについては、例えば、変調kaは、したがって、
【0054】
【0055】
となる。
【0056】
他の制御弁11bから11dについても、状況は同様である。したがって、制御弁11aから11dの現在知られている変調kaからkdに基づき、関連する特性曲線を使用して、制御弁11aから11dの必要な動作値AsからAdを決定することが可能である。
【0057】
ステップS7において、制御ユニット12は、ポンプアセンブリ5及び制御弁11aから11dを動作させる。ポンプアセンブリ5は、最終動作状態Z′に従って動作される。制御弁11aから11dは、動作値AaからAdに従って動作される。
【0058】
ステップS7の実行により、本発明による運転方法が実行されたことになる。しかしながら、ステップS7を実行した後、制御ユニット12は、一般的に、ステップS1に戻る。すなわち、制御ユニット12は、一連のステップS1からS7を反復的に繰り返して実行する。概して、実行は固定されたサイクルタイムで実行される。固定されたサイクルタイムは、一般的に0.1秒から1.0秒、通常は0.2秒から0.5秒、例えば約0.3秒である。
【0059】
図3のステップS4の可能な一実施形態、すなわち暫定的動作状態Zを決定する可能な一方法が、
図5と併せて以下で説明される。
図5による実施形態の一部として、
図3のステップS4は、ステップS11からS14に細分される。
【0060】
ステップS11において、制御ユニット12は、総流量Kを送達し、それと同時に、吸引圧力pSから決定された個別の動作圧力pAaからpAdのうち最大圧力までの必要な圧力増大δpを引き起こすために必要なポンプアセンブリ5の運転状態を決定する。例えば、ポンプ8が1台しかない場合、制御ユニット12は、ポンプ8の対応する回転速度nを決定することができる。
【0061】
ステップS12において、制御ユニット12は、決定された暫定的状態Zが許容可能かどうか、例えば決定された回転速度nがポンプ8の許容可能回転速度範囲内にあるかどうか、すなわちポンプ8の動作点が
図4において斜線が入っていない範囲内にあるかどうかを確認する。こうして確認することは、ポンプアセンブリ5に関係する二次的な条件に適合しているかどうかを確認することを意味する。
【0062】
回転速度nがポンプ8の許容可能回転速度範囲内にあることが可能である(それが通常のケースですらある)。例えば、ポンプ8の許容可能速度範囲内にあるポンプ8の動作点AP1は、総流量K及び個別の動作圧力pAaからpAdのうちの最大圧力によって決定され得る。回転速度nがポンプ8の許容可能回転速度範囲内にある場合、制御ユニット12は、ステップS13に進む。ステップS13で、制御ユニット12は、それ以上の措置を講じない。決定された回転速度nは、直接使用され得る。
【0063】
しかしながら、回転速度nがポンプ8の許容可能回転速度範囲にないことも同様に(稀だとしても)あり得る。例えば、ポンプ8の動作点AP2又は動作点AP3は、総流量K及び決定された個別の動作圧力pAaからpAdのうちの最大圧力によって決定され得る。確かに、動作点AP2の場合、ポンプ8は、決定された個別の動作圧力pAaからpAdのうちの最大圧力を容易に発生することができる。しかしながら、ポンプ8の許容可能速度範囲のせいで、ポンプ8によって送達される体積流量は、必然的に、要求される総流量Kよりも大きくなる。動作点AP3の場合、状況は逆転される。確かに、ポンプ8は要求される総流量Kを容易に生成することができる。しかしながら、ポンプ8の許容可能速度範囲のせいで、要求される最小値よりも大きな圧力増大δpがポンプ8によって必然的に発生する。
【0064】
回転速度nがポンプ8の許容可能回転速度範囲内にない場合、制御ユニット12は、ステップS14に進む。ステップS14で、制御ユニット12は、暫定的動作状態Zを修正する。
【0065】
動作点AP2の場合、制御ユニット12は、例えば短絡弁15(
図6参照)に対して開状態を決定することができる。
図6の図解によれば、短絡弁15は、ポンプ8と並列に接続されている。これは、ポンプアセンブリ5の一部とみなすこともできるし、さらなる適用ユニットのための制御弁とみなすこともできる。制御ユニット12は、短絡弁15を介して直接的に又は間接的にリザーバ7に戻される冷却剤6の量が、ヘッダーライン4に供給される結果として残る体積流量が所望の総流量Kに対応するように、該当する場合、開状態を決定する。
【0066】
動作点AP3の場合、制御ユニット12は、例えば、ポンプ8のみが動作される(その結果、短絡弁15は、もし存在すれば、閉じたままとなる)が、所望の総流量Kにおいて暫定的動作状態Zで発生する暫定的動作圧力pAvが、個別の動作圧力pAaからpAdのうちの最大圧力よりも高くなるように暫定的動作状態Zを修正することが可能である。この場合、暫定的動作圧力pAvは、好ましくは、可能な値及び許容可能な値のうちの最小値に設定される。
【0067】
図3のステップS4のさらに可能な実施形態は、
図7と併せて以下で説明される。
図7による実施形態の一部として、
図3のステップS4は、ステップS21からS24に細分される。
図7の手順は、必要ならば、
図5の手順と組み合わされるか、又はそれとは独立して実施され得る。組み合わせる場合、ステップS21は省略されてよく、ステップS13及びS14の後にそれぞれステップS22からS24が実行される。
【0068】
ステップS21において、
図5のステップS11に類似する方法で、制御ユニット12は、総流量Kを送達し、それと同時に、吸引圧力pSから決定された個別の動作圧力pAaからpAdのうちの最大圧力への必要な圧力増大δpを引き起こすために必要なポンプ8の回転速度nを決定する。
【0069】
ステップS22において、制御ユニット12は、その結果得られた暫定的動作圧力pAvにおいて制御弁11aから11dの動作が許容可能であるかどうかを確認する。制御ユニット12は、例えば、制御弁11aから11dの動作値AaからAdが変更される際の調整速度が、所定の限界に適合しているかどうかを確認することができる。こうして確認することは、制御弁に関係する二次的な条件に適合しているかどうかを確認することを意味する。
【0070】
二次的な条件が満たされることもあり得る(それが通常のケースですらある)。この場合、制御ユニット12は、ステップS23に進む。ステップS23で、制御ユニット12は、それ以上の措置を講じない。決定された回転速度nは、直接使用され得る。
【0071】
しかしながら、二次的な条件が満たされないこと、例えば過度に高い調整速度が発生することも同様に(稀だとしても)あり得る。この場合、制御ユニット12は、ステップS24に進む。ステップS24では、個別の場合の状況に応じて、制御ユニット12は、所定の限界の超過を受け入れるか、又はポンプアセンブリ5の暫定的動作状態Zを適合させることができる。特に、幾つかの状況において、制御弁11aから11dの動作の対応する変化により、所定の限界がもはや超えられないか、又は少なくとも比較的小さな程度だけ超えられることを確実にするために暫定的動作圧力pAvの増大が利用され得る。
【0072】
図3のステップS5の可能な一実施形態、すなわちポンプアセンブリ5の暫定的動作状態Zを使用して最終動作状態Zを決定する可能な一方法が、
図8と併せて以下で説明される。
図8による実施形態の一部として、
図3のステップS5は、ステップS41で置き換えられる。ステップS41で、ステップS4で現在決定されている暫定的動作状態Zに加えて、制御ユニット12は、少なくとも1つのさらなる動作状態を考慮に入れる。これは、例えば、直前の最終動作状態Z′又は複数の前の最終動作状態Z′であってもよい。最終動作状態Z′の急激な変化は、例えば、ローパスフィルタリング又は同様の手段によって回避され得る。
【0073】
設定点流量Ka*からKd*が、複数のサイクルタイム、例えば5回、8回、又は10回のサイクルタイム、の予測期間内でモデル予測によって予測されることも同様に可能であり、したがって、予測期間において将来予想されるポンプアセンブリ5の暫定的動作状態Zを決定することもまた可能である。この場合、ポンプアセンブリ5の将来予想される暫定的動作状態Zも、現在の最終動作状態Z′の決定に含まれ得る。
【0074】
図8による実施形態の一部として、取得された最終動作圧力pAeが、ステップS2及びS3の個別の動作圧力pAaからpAdのうちの最大圧力よりも低い(一般に、わずかに低いだけであっても)ことがあり得る。したがって、
図8による実施形態の一部として、制御弁11aから11dの限界変調値kLimがそれらの可能な最大変調よりも小さい場合、及び/又は、まず初めに、さらなる動作状態を考慮する前に、暫定的動作圧力pAvに小さなオフセットが加えられるか、又は暫定的動作圧力pAvが1よりもわずかに大きい係数でスケーリングされる場合、有利である。
【0075】
本発明は、ポンプアセンブリ5が単一のポンプ8のみを有する実施形態と併せて上で説明された。しかしながら、ポンプアセンブリ5が複数のポンプ8を有する実施形態も容易に可能である。この場合、ポンプ8は、すべてのポンプ8が完全に停止され、それらが存在していないかのように扱われるか、又は同じ暫定的動作圧力pAv及び同じ最終動作圧力pAeを発生するように動作されなければならない。しかしながら、個別のポンプ8の間の総流量Kの分配に関して自由度がある。この自由度を解決するために、例えば、ポンプ8間の総流量Kを一様に、又はポンプ8の揚水量に比例して分配することが可能である。代替的に、可能な最小数のポンプ8のみを常に能動的に運転することも可能である。この場合、ヘッダーライン4には、可能であれば、単一のポンプ8を用いた供給がなされる。次のポンプ8は、その前に運転されたポンプ8が、要求される暫定的動作圧力pAv又は要求される最終動作圧力pAeで要求された総流量Kをもはや送達することができないときにのみ、スイッチオンされる。同様に、各場合における次のポンプ8は、その前に運転されたポンプ8が、要求される暫定的動作圧力pAv又は要求される最終動作圧力pAeで要求された総流量Kをもはや送達することができないときにのみ、スイッチオンされる。
【0076】
本発明は、また、単一の冷却ユニット3に関して上で説明された。しかしながら、冷却ユニット3がさらにあることが容易に可能である。この場合、さらなる冷却ユニット3は、要件に応じて、制御ユニット12によって、又は他の何らかの制御ユニットによって制御され得る。制御ユニット12による制御の場合、冷却ユニット3は、互いに独立して運転され得る。
【0077】
本発明は多くの利点を有する。特に、非常に低いエネルギー消費が達成される。一定の最終動作圧力pAeを有する冷却ユニット3の運転と比較して、少なくとも25%、時には80%をはるかに超える節減が達成される。最終動作圧力pAeが各圧延材料2に対して個別に適合され、それぞれの圧延材料2の冷却の期間だけ一定のレベルに保たれるアプローチと比較しても、依然として大きな省エネが実現される。確かに、最終動作圧力pAeの低下により、ポンプアセンブリ5の効率の大幅な悪化が生じ、エネルギー消費が増大することは理論的には想像できる。しかしながら、実際にはこれは起こらない。さらに、制御弁11aから11dの力学及びポンプアセンブリ5の力学の両方が保存される。これは、概して、制御弁11aから11dが可能な限り広く開くように運転された場合に、制御弁11aから11dには有利であるためである。同様に、可能な限り低速で運転された場合に、ポンプアセンブリ5には有利である。他方、圧延材料2の冷却には、そのようなものとして、悪影響はない。
【0078】
本発明は、好ましい例示的な実施形態を用いてより詳細により具体的に例示され説明されたが、本発明は、開示されている例によって制限されず、また本発明の保護の範囲を超えることなく当業者によってそれらから他の変更形態が導出され得る。
【符号の説明】
【0079】
1 圧延スタンド
2 圧延材料
3 冷却ユニット
4 ヘッダーライン
5 ポンプアセンブリ
6 冷却剤
7 リザーバ
8 ポンプ
9aから9d 分岐ライン
10aから10d 適用ユニット
11aから11d 制御弁
12 制御ユニット
13 コンピュータプログラム
14 機械コード
15 短絡弁
AaからAd 動作値
Amax 最大動作値
Amin 最小動作値
AP1からAP3 動作点
K 総流量
kaからkd 変調
KaからKd 冷却剤流量
Ka*からKd* 設定点流量
kLim 限界変調値
KR 基準冷却剤流量
KRmax 最大基準冷却剤流量
KRmin 最小基準冷却剤流量
n 回転速度
nmax 最高回転速度
nmin 最低回転速度
pA、pAv、pAe 動作圧力
pAaからpAd 個別の動作圧力
pR 基準圧力
pS 吸引圧力
S1からS41 ステップ
Z、Z′ 動作状態
δp 圧力増大
【国際調査報告】