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特表2023-525665ヒトIL-4Rαにおける特異的エピトープとの抗体結合及び抗体の適用
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  • 特表-ヒトIL-4Rαにおける特異的エピトープとの抗体結合及び抗体の適用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】ヒトIL-4Rαにおける特異的エピトープとの抗体結合及び抗体の適用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230612BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230612BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230612BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230612BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230612BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230612BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230612BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N1/15
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K48/00
A61P1/00
A61P1/04
A61P3/10
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/06
A61P17/00
A61P17/04
A61P17/06
A61P19/02
A61P25/00
A61P27/02
A61P43/00 111
A61K35/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564230
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(85)【翻訳文提出日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 CN2021088139
(87)【国際公開番号】W WO2021213329
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】202010331685.3
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521414818
【氏名又は名称】スーチョウ コネクト バイオファーマシューティカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100193172
【弁理士】
【氏名又は名称】上川 智子
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シン
(72)【発明者】
【氏名】チャン リミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジエ
(72)【発明者】
【氏名】シァ ジン
(72)【発明者】
【氏名】パン ウービン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ウェイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA86X
4B065AA87X
4B065AA87Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB19
4B065BD39
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084MA52
4C084MA55
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA02
4C084ZA33
4C084ZA34
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB13
4C084ZB15
4C084ZB26
4C084ZC35
4C084ZC41
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085EE01
4C085GG08
4C085GG10
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB65
4C087CA12
4C087MA52
4C087MA55
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA02
4C087ZA33
4C087ZA34
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA89
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB13
4C087ZB15
4C087ZB26
4C087ZC35
4C087ZC41
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
ヒトIL-4R抗体又はその抗原結合フラグメントを開示する。抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトIL-4Rαと特異的に結合し、ヒトIL-4Rαの特異的エピトープと結合する。さらに、本発明では、ヒトIL-4/IL-13シグナル伝達経路に対するヒトIL-4R結合剤若しくは遮断剤のスクリーニングにおける該エピトープの使用、又は該特異的エピトープを用いることによる結合剤若しくは遮断剤の有効性の評定における使用も提供される。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであって、ヒトIL-4Rのアルファ鎖(IL-4Rα)に位置し、配列番号1に示すアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基D92、V94、D97、L67、L68、A96、H156、C207、Q63、及びL64を含むエピトープに結合する、抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記エピトープが、配列番号1に示すアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基D92、V94、及びD97を含み、より好ましくは、前記エピトープが、配列番号1に示すアミノ酸配列中の以下のアミノ酸残基:
(1)D92、
(2)D97、
(3)D92、V94及びD97、
(4)D92及びV94、
(5)D92及びD97、又は、
(6)V94及びD97、
を含み、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号1に示すアミノ酸配列中の以下のアミノ酸残基:(i)Q63及びL64を含むヒトIL-4Rαのエピトープに結合する、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、カニクイザルIL-4Rに対して異種間結合活性を有さず、好ましくは、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、カニクイザルIL-4Rに結合せず、より好ましくはカニクイザルIL-4Rαに結合せず、更に好ましくは配列番号2に示すアミノ酸配列に結合せず、好ましくは前記エピトープが、配列番号1に示すアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基L67、L68及びA96を含み、好ましくは前記エピトープが、
1.L67及びL68、
2.L67、L68及びA96、又は、
3.A96、
を含み、
より好ましくは、前記エピトープが、配列番号1に示すアミノ酸配列中の以下のアミノ酸残基:
(A)L67、L68、A96、H156及びC207、
(B)A96、H156及びC207、
(C)L67、L68、H156及びC207、
(D)L67、L68、A96及びC207、又は、
(E)L67、L68、A96及びH156、
を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記エピトープが、配列番号1に示すアミノ酸配列中の以下のアミノ酸残基:
(P-1)D97、L67及びL68、
(P-2)D97、L67、L68、A96及びD92、
(P-3)D97、L67、L68及びD92、
(P-4)D97、Q63及びL64、
(P-5)D97、Q63、L64及びD92、
(P-6)D97、Q63、L64、D92及びA96、又は、
(P-7)D97、Q63、L64、L67及びL68、
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域において、以下:
(1)配列番号35、配列番号36及び配列番号37に示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに配列番号53、配列番号54及び配列番号55に示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、
(2)配列番号41、配列番号42及び配列番号43に示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに配列番号59、配列番号60及び配列番号61に示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、
(3)配列番号44、配列番号45及び配列番号46に示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに配列番号56、配列番号57及び配列番号62に示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、
(4)配列番号44、配列番号47及び配列番号46に示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに配列番号63、配列番号64及び配列番号65に示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、
(5)配列番号48、配列番号49及び配列番号46に示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに配列番号66、配列番号67及び配列番号68に示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、
(6)配列番号44、配列番号50及び配列番号51に示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに配列番号56、配列番号57及び配列番号69に示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は、
(7)配列番号52、配列番号36及び配列番号37に示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに配列番号53、配列番号54及び配列番号55に示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、
の重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、HCDR3と、軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3とを含み、
好ましくは、前記重鎖可変領域が、以下の配列:配列番号3、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号23若しくは配列番号27に示すアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は好ましくは、前記軽鎖可変領域が、以下の配列:配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号28、配列番号33若しくは配列番号34に示すアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントにおいて、
(1)前記重鎖可変領域が、配列番号3に示すアミノ酸配列又は配列番号3に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号4に示すアミノ酸配列又は配列番号4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(2)前記重鎖可変領域が、配列番号7に示すアミノ酸配列又は配列番号7に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号8に示すアミノ酸配列又は配列番号8に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(3)前記重鎖可変領域が、配列番号9に示すアミノ酸配列又は配列番号9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号10に示すアミノ酸配列又は配列番号10に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(4)前記重鎖可変領域が、配列番号11に示すアミノ酸配列又は配列番号11に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号12に示すアミノ酸配列又は配列番号12に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(5)前記重鎖可変領域が、配列番号15に示すアミノ酸配列又は配列番号15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号16に示すアミノ酸配列又は配列番号16に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(6)前記重鎖可変領域が、配列番号17に示すアミノ酸配列又は配列番号17に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号18に示すアミノ酸配列又は配列番号18に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(7)前記重鎖可変領域が、配列番号19に示すアミノ酸配列又は配列番号19に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号20に示すアミノ酸配列又は配列番号20に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(8)前記重鎖可変領域が、配列番号27に示すアミノ酸配列又は配列番号27に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号34に示すアミノ酸配列又は配列番号34に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(9)前記重鎖可変領域が、配列番号27に示すアミノ酸配列又は配列番号27に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号33に示すアミノ酸配列又は配列番号33に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(10)前記重鎖可変領域が、配列番号27に示すアミノ酸配列又は配列番号27に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号28に示すアミノ酸配列又は配列番号28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(11)前記重鎖可変領域が、配列番号23に示すアミノ酸配列又は配列番号23に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号34に示すアミノ酸配列又は配列番号34に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(12)前記重鎖可変領域が、配列番号23に示すアミノ酸配列又は配列番号23に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号33に示すアミノ酸配列又は配列番号33に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、又は、
(13)前記重鎖可変領域が、配列番号23に示すアミノ酸配列又は配列番号23に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号28に示すアミノ酸配列又は配列番号28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)に、好ましくはヒトIL-4Rのアルファ鎖(IL-4Rα)に、より好ましくはヒト可溶型IL-4Rα(sIL-4Rα)に結合し、
好ましくは、前記抗体がモノクローナル抗体又は一本鎖抗体であり、
好ましくは、前記抗体がマウス抗体、キメラ抗体又は完全若しくは部分的にヒト化された抗体であり、好ましくは、前記抗原結合フラグメントがIL-4R又はIL-4Rαに特異的に結合することができる抗体のフラグメントである、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、ヒト又はマウスの定常領域、好ましくはヒト又はマウスの重鎖定常領域(CH)及び/又は軽鎖定常領域(CL)を更に含み、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合フラグメントが重鎖及び軽鎖を含み、
好ましくは、前記抗体が免疫グロブリン、特にIgA、IgD、IgE、IgG又はIgM、例えば、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgM、より好ましくはヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブタイプであり、
より好ましくは、前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、IgG、IgA、IgM、IgD若しくはIgEの重鎖定常領域、及び/又はカッパ型若しくはラムダ型の軽鎖定常領域を含み、例えば、前記重鎖定常領域がIgG(例えば、IgG1又はIgG4)型のものであり、前記軽鎖定常領域がカッパ型のものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖、及び/又は軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項11】
請求項9に記載の核酸分子若しくは請求項10に記載のベクターを含む宿主細胞、又は請求項9に記載の核酸分子若しくは請求項10に記載のベクターで形質転換若しくはトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント、請求項9に記載の核酸分子、請求項10に記載のベクター、又は請求項11に記載の宿主細胞を含む組成物。
【請求項13】
前記組成物が医薬組成物であり、好ましくは、前記医薬組成物が、薬学的に許容され得る賦形剤を含み、
好ましくは、前記医薬組成物が、経口投与用及び非経口投与用の剤形に調製される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ヒトインターロイキン4受容体(IL-4R)に関連する疾患若しくは障害、又はヒトインターロイキン4(IL-4)若しくはヒトインターロイキン13(IL-13)のシグナル伝達経路に関連する疾患若しくは障害の予防、治療又は改善のための医薬品の製造における、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、請求項9に記載の核酸分子、請求項10に記載のベクター、請求項11に記載の宿主細胞、又は請求項12若しくは13に記載の組成物の使用。
【請求項15】
疾患又は障害を予防、治療、又は改善する方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント、請求項9に記載の核酸分子、請求項10に記載のベクター、請求項11に記載の宿主細胞、又は請求項12若しくは13に記載の組成物を(例えば、治療有効量)、それを必要とする被験体に投与することを含み、前記疾患又は障害が、ヒトインターロイキン4受容体(IL-4R)に関連しているか、又はヒトインターロイキン4(IL-4)若しくはヒトインターロイキン13(IL-13)のシグナル伝達経路に関連している、方法。
【請求項16】
前記疾患又は障害が、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、腫瘍、又は癌を含み、
好ましくは、前記疾患又は障害が、自己免疫疾患又はアレルギー性疾患、例えば皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)、喘息(例えば、2型炎症性喘息等の炎症性喘息)、慢性食道炎(例えば、好酸球性食道炎)、湿疹、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、鼻ポリープ(例えば、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎)、結膜炎、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病)、炎症性神経障害、関節炎(例えば、関節リウマチ)、多発性硬化症、紅斑性狼瘡、乾癬、又はインスリン及び非インスリン依存性糖尿病、並びにその他の免疫又はアレルギーに関連する疾患を含み、
或いは、好ましくは、前記疾患又は障害が、腸癌、黒色腫、皮膚癌、乳癌、子宮癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、精巣癌、中皮腫、前立腺癌、膀胱癌、肛門癌、神経膠芽腫、星細胞腫、肝臓癌、腎臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、頭頸部癌、骨髄腫、骨癌、エイズ関連カポジ肉腫、ホジキンリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫、前立腺癌、前立腺腫瘍、リンパ腫、及び膵臓癌等の腫瘍又は癌を含む、請求項14に記載の使用又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬品が、請求項16に規定される1つ以上の疾患又は障害の予防、治療又は改善のためのものであり、
好ましくは、前記被験体が哺乳動物、好ましくは霊長類であり、より好ましくは、前記被験体がヒトである、請求項14~16のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項18】
ヒトインターロイキン4受容体(IL-4R)に特異的に結合する結合剤又はヒトインターロイキン4(IL-4)若しくはヒトインターロイキン13(IL-13)のシグナル伝達経路を特異的に遮断する遮断剤をスクリーニングする方法であって、スクリーニングされる薬剤をヒトIL-4R又はその一部と接触させる工程と、次いで、該薬剤が請求項1~3のいずれか一項に規定されるエピトープと結合可能かどうかを検出する工程とを含む、方法。
【請求項19】
薬剤の有効性を評価する方法であって、評価される薬剤をヒトインターロイキン4受容体(IL-4R)又はその一部と接触させる工程と、次いで、該薬剤が請求項1~3のいずれか一項に規定されるエピトープと結合可能かどうかを検出する工程とを含む、方法。
【請求項20】
スクリーニング又は評価される前記薬剤が、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体等の抗体であり、
好ましくは、前記抗体が、ヒトIL-4R又はその一部を免疫原として動物に免疫することによって得られ、
好ましくは、前記薬剤が前記エピトープに結合可能かどうかを検出することが、ヒトIL-4R又はその一部の部位特異的変異導入により前記エピトープによって含まれる1つ以上のアミノ酸残基を変異させること、変異後の前記ヒトIL-4R又はその一部に対する及び薬剤の結合活性又は結合親和性を変異前のものと比較すること、及び前記変異したヒトIL-4R又はその一部に対する前記薬剤の結合活性又は結合親和性が著しく低いか、更には失われている場合、前記薬剤が前記エピトープに結合可能であると同定することによって行われる、請求項18に記載の結合剤若しくは遮断剤をスクリーニングする方法、又は請求項19に記載の薬剤の有効性を評価する方法。
【請求項21】
前記方法が、
1)ヒトIL-4R又はその一部の部位特異的変異導入により前記エピトープによって含まれる1つ以上のアミノ酸残基を変異させ、ヒトIL-4R又はその一部の変異体を得る工程と、
2)スクリーニングされる薬剤又は評価される薬剤を、ヒトIL-4R又はその一部、及びヒトIL-4Rの変異体又はその一部とそれぞれ接触させ、それに対する結合活性又は結合親和性をそれぞれ検出する工程と、
3)前記変異したヒトIL-4R又はその一部に対する前記薬剤の結合活性又は結合親和性が、ヒトIL-4R又はその一部に対する前記薬剤の結合活性又は結合親和性と比較して著しく低いか、更には失われている場合、前記薬剤が前記エピトープに結合可能であると同定する工程と、
を含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の結合剤若しくは遮断剤をスクリーニングする方法、又は薬剤の有効性を評価する方法。
【請求項22】
工程1)において前記エピトープによって含まれる1つ以上のアミノ酸残基をアラニン又は対応する位置のカニクイザルインターロイキン4受容体のアミノ酸残基に変異させ、ヒトIL-4Rの変異体又はその一部を得て、
好ましくは、前記ヒトIL-4Rの一部が、ヒトIL-4Rのアルファ鎖、更にヒトsIL-4Rαであり、
好ましくは、前記方法がヒトIL-4Rαを用いて行われ、ヒトIL-4Rαの変異体が得られ、
好ましくは、前記方法がヒトsIL-4Rαを用いて行われ、工程1)における前記変異体として、本明細書の表3に列挙される1つ以上のヒトsIL-4Rαの変異体を使用する、請求項18~21のいずれか一項に記載の結合剤若しくは遮断剤をスクリーニングする方法、又は薬剤の有効性を評価する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年4月24日に出願された中国特許出願第202010331685.3号の優先権の利益を主張し、その全体が引用することで本明細書に包含される。
【0002】
本開示は、バイオ医薬の分野に関し、特に、ヒトIL-4Rαの特異的エピトープに結合可能な抗体及びその適用に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトインターロイキン4受容体(IL-4R)は、全身の様々な組織及び臓器、特に扁桃、虫垂、リンパ節、脾臓、及び骨髄等の免疫器官に広く発現されるI型膜貫通型タンパク質である。IL-4Rは、インターロイキン4(IL-4)及びインターロイキン13(IL-13)等のリガンドに結合すると、例えば、Th2細胞の分化促進、B細胞によるIgE抗体の分泌調節、及びマクロファージの代替活性化の刺激等、様々な免疫調節作用を発揮することができる。
【0004】
IL-4Rは2本のポリペプチド鎖で構成されるヘテロダイマーであり、そのうちの1本のα鎖(IL-4Rα)はIL-4に対して高い親和性を持つ。また、IL-4Rαは、IL-13の細胞表面受容体のα鎖(IL-13Rα)と別の形態のIL-4Rヘテロダイマーを形成しているため、IL-13に対しても高い親和性を持つ。
【0005】
IL-4Rαからは、可溶型(sIL-4Rα)のタンパク質を製造することができる。かかる可溶型のタンパク質は、例えば、IL-4が媒介する細胞増殖及びT細胞が媒介するIL-5のアップレギュレーション等、炎症に関連する様々なシグナル伝達を阻害することができる。したがって、このタンパク質を標的とした遮断抗体は、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、喘息又は湿疹、及びその他の疾患の治療及び緩和に有益である。また、IL-4及びIL-13はいずれも、活性化されたT細胞、単球、肥満細胞、好塩基球、及び好酸球によって最も多く産生される、炎症に関わる様々な反応に関与する非常に幅広い生物活性を持つサイトカインである。この2つのインターロイキンは、生物学的機能において多くの共通点があり、主な生物学的作用として、TH2細胞の分化及び増殖に対する刺激作用、活性化B細胞によるIgE抗体分泌に対する刺激作用等が挙げられる。IL-4及びIL-13は、自己免疫疾患、アレルギー疾患、腫瘍、及びその他の疾患の免疫反応を媒介する上で非常に重要な役割を担っていることが研究により明らかにされており、常に人々が注目する研究ホットスポットの1つとなっている。
【0006】
sIL-4RαはIL-4への結合を支配し、他のサイトカインとも関連することから、現在、sIL-4Rαを標的とした抗体の研究が多く行われており、この標的に対するヒトモノクローナル抗体が喘息、アトピー性皮膚炎等の疾患の緩和及び治療に有効であることが臨床的に実証されている。しかしながら、免疫反応におけるsIL-4Rαのエピトープはほとんど研究されておらず、特異的なエピトープはまだ明確に分かっていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記技術的課題に対して、本発明者らは、sIL-4Rαのエピトープについて検討した。本発明者らは、新たに得られた抗体がヒトsIL-4Rα及びカニクイザルsIL-4Rαと反応した場合に抗体によって示される種特異性に従い、sIL-4Rαの幾つかの位置を選択し、その位置を変異させて関連する実験を行うことで、結合エピトープの幾つかの重要なアミノ酸を見出した。エピトープに関するこれらの結果は、sIL-4Rα及び関連抗体に関する更なる研究にとって非常に重要である。
【0008】
したがって、本開示の目的は、ヒトインターロイキン4受容体(IL-4R)に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを提供することであり、抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトIL-4Rのアルファ鎖(IL-4Rα)の特異的エピトープに特異的に結合する。
【0009】
本開示によって提供される抗体又はその抗原結合フラグメントに基づいて、本開示の別の目的は、本開示による抗体又はその抗原結合フラグメントにおけるキードメイン(複数の場合もある)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供すること、核酸分子を含むベクターを提供すること、該ベクターを含む宿主細胞を提供すること、抗体又はその抗原結合フラグメントを製造する方法を提供すること、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供すること、及び抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は医薬組成物の医薬への使用を提供することである。
【0010】
本開示によって提供されるヒトIL-4Rのアルファ鎖の特異的エピトープに基づいて、本開示の更なる目的は、ヒトIL-4Rの結合剤若しくはヒトIL-4/IL-13シグナル伝達経路の遮断剤の調製における該エピトープの使用、又は結合剤若しくは遮断剤の有効性の評価における該エピトープの使用を提供することである。
【0011】
本開示は、以下の技術的解決策を提供する。
【0012】
1つの態様では、本開示は、ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであって、ヒトIL-4Rのアルファ鎖(IL-4Rα)に位置し、配列番号1に示すアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基D92、V94、D97、L67、L68、A96、H156、C207、Q63、及びL64を含むエピトープに結合する、抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0013】
好ましくは、エピトープは、配列番号1に示すアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基D92、V94、及びD97を含む。
【0014】
本開示の特定の実施の形態によれば、エピトープは、配列番号1に示すアミノ酸配列中の以下のアミノ酸残基:
(1)D92、
(2)D97、
(3)D92、V94及びD97、
(4)D92及びV94、
(5)D92及びD97、又は、
(6)V94及びD97、
を含む。
【0015】
及び/又は、本開示による抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1に示すアミノ酸配列中の以下のアミノ酸残基:(i)Q63及びL64を含むヒトIL-4Rαのエピトープに結合する。
【0016】
さらに、本開示による抗体又はその抗原結合フラグメントは、カニクイザルIL-4Rに対して異種間結合活性を有しない。好ましくは、抗体又はその抗原結合フラグメントは、カニクイザルIL-4Rに結合せず、より好ましくはカニクイザルIL-4Rαに結合せず、更に好ましくは配列番号2に示すアミノ酸配列に結合しない。
【0017】
上記異種間結合活性に関して、本開示は、ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを提供し、抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトIL-4Rのアルファ鎖(IL-4Rα)上に位置し、配列番号1に示すアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基L67、L68及びA96を含むエピトープに結合する。
【0018】
好ましくは、エピトープは、配列番号1に示すアミノ酸配列中の以下のアミノ酸残基:
1.L67及びL68、
2.L67、L68及びA96、又は、
3.A96、
を含む。
【0019】
本開示の特定の実施の形態によれば、エピトープは、配列番号1に示すアミノ酸配列中の以下のアミノ酸残基:
(A)L67、L68、A96、H156及びC207、
(B)A96、H156及びC207、
(C)L67、L68、H156及びC207、
(D)L67、L68、A96及びC207、又は、
(E)L67、L68、A96及びH156、
を含む。
【0020】
特に好ましくは、本開示によるエピトープは、配列番号1に示すアミノ酸配列中の以下のアミノ酸残基:
(P-1)D97、L67及びL68、
(P-2)D97、L67、L68、A96及びD92、
(P-3)D97、L67、L68及びD92、
(P-4)D97、Q63及びL64、
(P-5)D97、Q63、L64及びD92、
(P-6)D97、Q63、L64、D92及びA96、又は、
(P-7)D97、Q63、L64、L67及びL68、
を含む。
【0021】
本開示で提供される抗体の抗原IL-4Rαへの結合を検出したところ、本開示の抗体は、EC50値が50ng/ml、30ng/ml、20ng/ml又は10ng/ml以下のsIL-4Rαへの結合活性を有することが判明した。また、100μl×2500ng/mlの本開示の抗体は、100μl×0.5μg/mlでコーティングされたsIL-4Rα-97に対して結合活性を示さず、sIL-4Rα-97は、sIL-4Rα中の97位のアミノ酸残基DからAへの変異により得られることが分かった。さらに、100μl×2500ng/mlの本開示の抗体は、100μl×0.5μg/mlでコーティングされたsIl-4Rα-QSMDH及びsIl-4Rα-63/64から選択される少なくとも1つの変異抗原に対して結合活性を全く示さないか又は著しく低い結合活性を示すことがわかった。結合活性を、本開示の「発明を実施するための形態」のサブタイトル下の「(I)結合活性検出方法」の部分に記載された手順に従って測定した。
【0022】
さらに、本開示で提供される抗体は、IL-4又はIL-13のIL-4Rへの結合を遮断することができるため、IL-4若しくはIL-13のIL-4Rへの結合の遮断剤、又はIL-4/IL-13シグナル伝達経路の遮断剤として使用することができる。
【0023】
よって、含まれるドメインのアミノ酸配列に関して、本開示による抗体又はその抗原結合フラグメントは、以下のような重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2、HCDR3と、軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3との組合せ:
(1)配列番号35、配列番号36及び配列番号37に示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに配列番号53、配列番号54及び配列番号55に示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、
(2)配列番号41、配列番号42及び配列番号43に示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに配列番号59、配列番号60及び配列番号61に示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、
(3)配列番号44、配列番号45及び配列番号46に示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに配列番号56、配列番号57及び配列番号62に示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、
(4)配列番号44、配列番号47及び配列番号46に示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに配列番号63、配列番号64及び配列番号65に示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、
(5)配列番号48、配列番号49及び配列番号46に示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに配列番号66、配列番号67及び配列番号68に示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、
(6)配列番号44、配列番号50及び配列番号51に示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに配列番号56、配列番号57及び配列番号69に示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は、
(7)配列番号52、配列番号36及び配列番号37に示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、並びに配列番号53、配列番号54及び配列番号55に示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、
を含む。
【0024】
本明細書で提供される軽鎖CDR及び重鎖CDRの組合せは、本開示で提供される特定の抗体又はそのフラグメントに由来する。所与の抗体又はその抗原結合フラグメントの可変領域アミノ酸配列に含まれるCDRは、当業者が日常的に決定することができる。例えば、本開示の特定の実施の形態によれば、IMGTツールを使用して、可変領域のアミノ酸配列におけるCDRを定義した。当該技術分野で既知の方法によって定義された軽鎖CDR及び重鎖のCDRの組合せは、全て本開示の範囲に包含される。
【0025】
本開示による抗体又はその抗原結合フラグメントにおいて、好ましくは、重鎖可変領域は、以下の配列:配列番号3、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号23若しくは配列番号27に示すアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は好ましくは、軽鎖可変領域は、以下の配列:配列番号4、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号28、配列番号33若しくは配列番号34に示すアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0026】
本開示の特定の実施の形態によれば、本開示による抗体又はその抗原結合フラグメントにおいて、
(1)重鎖可変領域は、配列番号3に示すアミノ酸配列又は配列番号3に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号4に示すアミノ酸配列又は配列番号4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(2)重鎖可変領域は、配列番号7に示すアミノ酸配列又は配列番号7に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号8に示すアミノ酸配列又は配列番号8に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(3)重鎖可変領域は、配列番号9に示すアミノ酸配列又は配列番号9に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号10に示すアミノ酸配列又は配列番号10に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(4)重鎖可変領域は、配列番号11に示すアミノ酸配列又は配列番号11に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号12に示すアミノ酸配列又は配列番号12に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(5)重鎖可変領域は、配列番号15に示すアミノ酸配列又は配列番号15に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号16に示すアミノ酸配列又は配列番号16に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(6)重鎖可変領域は、配列番号17に示すアミノ酸配列又は配列番号17に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号18に示すアミノ酸配列又は配列番号18に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(7)重鎖可変領域は、配列番号19に示すアミノ酸配列又は配列番号19に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号20に示すアミノ酸配列又は配列番号20に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(8)重鎖可変領域は、配列番号27に示すアミノ酸配列又は配列番号27に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号34に示すアミノ酸配列又は配列番号34に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(9)重鎖可変領域は、配列番号27に示すアミノ酸配列又は配列番号27に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号33に示すアミノ酸配列又は配列番号33に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(10)重鎖可変領域は、配列番号27に示すアミノ酸配列又は配列番号27に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号28に示すアミノ酸配列又は配列番号28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(11)重鎖可変領域は、配列番号23に示すアミノ酸配列又は配列番号23に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号34に示すアミノ酸配列又は配列番号34に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(12)重鎖可変領域は、配列番号23に示すアミノ酸配列又は配列番号23に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号33に示すアミノ酸配列又は配列番号33に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、又は
(13)重鎖可変領域は、配列番号23に示すアミノ酸配列又は配列番号23に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号28に示すアミノ酸配列又は配列番号28に示すアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0027】
特に、本開示による抗体又はその抗原結合フラグメントは、少なくとも重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、その両方が、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4のような配置で上記CDR及びフレームワーク領域(FR)を含む。更に代替的には、「少なくとも75%の同一性」によるアミノ酸配列中の25%までの差は、重鎖可変領域若しくは軽鎖可変領域の任意のフレームワーク領域、又は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域以外の本開示による抗体若しくはその抗原結合フラグメントの任意のドメイン若しくは配列中に存在し得る。この差は、任意の位置におけるアミノ酸の欠失、付加又は置換に起因するものであってもよく、その置換は保存的置換であっても非保存的置換であってもよい。
【0028】
好ましくは、本開示による抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトインターロイキン-4受容体(IL-4R)に、好ましくはヒトIL-4Rのアルファ鎖(IL-4Rα)に、より好ましくはヒト可溶型IL-4Rα(sIL-4Rα)に結合する。
【0029】
好ましくは、本開示による抗体は、モノクローナル抗体又は一本鎖抗体であり得る。好ましくは、抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、又は完全若しくは部分的にヒト化された抗体である。好ましくは、抗原結合フラグメントは、標的に特異的に結合可能な抗体のフラグメントである。例えば、抗原結合フラグメントは、抗体のFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、又はFvフラグメント(例えば、scFv)である。
【0030】
好ましくは、抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒト又はマウスの定常領域、好ましくは、ヒト又はマウスの重鎖定常領域(CH)及び/又は軽鎖定常領域(CL)を更に含む。更に好ましくは、抗体又はその抗原結合フラグメントは重鎖及び軽鎖を含む。例えば、抗体は、免疫グロブリン、特にIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMであり、例えば、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgM、より好ましくはヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブタイプである。
【0031】
好ましくは、本開示による抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG、IgA、IgM、IgD若しくはIgEの重鎖定常領域、及び/又はカッパ型若しくはラムダ型の軽鎖定常領域を含む。例えば、重鎖定常領域はIgG(例えば、IgG1又はIgG4)型のものであり、軽鎖定常領域はカッパ型のものである。更に好ましくは、モノクローナル抗体の重鎖定常領域は、配列番号70若しくは配列番号71に示す核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、又は配列番号70若しくは配列番号71に示す核酸配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、モノクローナル抗体の軽鎖定常領域は、配列番号72に示す核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、又は配列番号72に示す核酸配列によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0032】
本開示の文脈で、「少なくとも75%の同一性」は、75%、80%、85%、90%、更には91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性等の75%~100%の間の任意のパーセント同一性である。
【0033】
別の態様では、本開示はまた、本開示による抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖、及び/又は軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。
【0034】
本開示による核酸分子は、ベクターにクローニングすることができ、さらにこのベクターは宿主細胞に形質転換又はトランスフェクトされる。したがって、更なる態様では、本開示はまた、本開示による核酸分子を含むベクターを提供する。ベクターは、真核生物発現ベクター、原核生物発現ベクター、人工染色体、ファージベクター等であり得る。
【0035】
本開示によるベクター又は核酸分子は、保存又は抗体発現等のために宿主細胞に形質転換又はトランスフェクトするために使用され得る。したがって、更なる態様では、本開示は、本開示による核酸分子及び/又はベクターを含む宿主細胞、又は本開示による核酸分子及び/又はベクターで形質転換若しくはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。宿主細胞は、任意の原核生物細胞又は真核生物細胞、例えば細菌若しくは昆虫、真菌、植物又は動物の細胞であり得る。
【0036】
本開示による抗体又はその抗原結合フラグメントは、当該技術分野において既知の任意の方法を用いて得ることができる。例えば、抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、又は抗体の重鎖及び/又は軽鎖を本開示による核酸分子から取得することができ、次いでそれらを抗体の任意の他のドメインと集合させることにより、抗体を得る。或いは、本開示による宿主細胞を、宿主細胞が抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、又は抗体の重鎖及び/又は軽鎖を発現し、それらを抗体に集合させることを可能にする条件下で培養する。任意に、上記方法は、産生された抗体を回収する工程を更に含んでもよい。
【0037】
本開示による抗体又はその抗原結合フラグメント、核酸分子、ベクター及び/又は宿主細胞は、実際に必要とされる様々な目的のために、組成物、より詳細には医薬製剤等の医薬組成物に含まれ得る。したがって、更なる態様では、本開示は、本開示による抗体若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター及び/又は宿主細胞と、任意に薬学的に許容され得る賦形剤とを含む、組成物、好ましくは医薬組成物も提供する。
【0038】
医薬組成物を、好ましくは経口投与及び非経口投与(皮下、筋肉内及び静脈内の投与を含む)のために、限定されるものではないが、固体剤形、液体剤形、半液体剤形、エアゾル剤形及び坐剤の剤形等を含む或る特定の剤形に調製することができる。例えば、経口投与に適した剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒、散剤、丸剤、粉末、トローチ、シロップ、及び懸濁液が挙げられ、非経口投与に適した剤形としては、水性又は非水性溶液、及びエマルジョン、例えば、皮下注射剤が挙げられる。
【0039】
好ましくは、本開示による医薬組成物は、抗体医薬にとって治療上有効な非経口又は非経口ではない(non-parenteral)(非経腸)経路を介して投与することができる。例えば、本開示による医薬組成物は、全身投与又は局所投与のための薬学的に許容され得る賦形剤(例えば、ビヒクル)を含む製剤に形成される。
【0040】
なお更なる態様では、本開示は、医薬品の製造における、抗体若しくはその抗原結合フラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞及び/又は組成物の使用も提供する。好ましくは、医薬品は、ヒトインターロイキン4受容体(IL-4R)に関連する疾患若しくは障害、又はヒトインターロイキン4(IL-4)若しくはヒトインターロイキン13(IL-13)のシグナル伝達経路に関連する疾患若しくは障害の予防、治療又は改善のためのものである。
【0041】
別の態様では、本開示はまた、疾患又は障害を予防、治療、又は改善する方法を提供し、該方法は、本開示による抗体若しくはその抗原結合フラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞、及び/又は組成物を(例えば、治療有効量)、それを必要とする被験体に投与することを含む。好ましくは、疾患又は障害は、上記のように、ヒトインターロイキン4受容体(IL-4R)、又はヒトインターロイキン4(IL-4)若しくはヒトインターロイキン13(IL-13)のシグナル伝達経路と関連している。
【0042】
本開示によって提供される上記の使用又は方法において、疾患又は障害は、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、腫瘍、又は癌を含む。
【0043】
好ましくは、疾患又は障害は、自己免疫疾患又はアレルギー性疾患、例えば皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)、喘息(例えば、2型炎症性喘息等の炎症性喘息)、慢性食道炎(例えば、好酸球性食道炎)、湿疹、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、鼻ポリープ(例えば、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎)、結膜炎、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病)、炎症性神経障害、関節炎(例えば、関節リウマチ)、多発性硬化症、紅斑性狼瘡、乾癬、又はインスリン及び非インスリン依存性糖尿病、並びにその他の免疫又はアレルギーに関連する疾患を含む。
【0044】
或いは、疾患又は障害は、腸癌、黒色腫、皮膚癌、乳癌、子宮癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、精巣癌、中皮腫、前立腺癌、膀胱癌、肛門癌、神経膠芽腫、星細胞腫、肝臓癌、腎臓癌、食道癌、胃癌、肺癌、頭頸部癌、骨髄腫、骨癌、エイズ関連カポジ肉腫、ホジキンリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫、前立腺癌、前立腺腫瘍、リンパ腫、膵臓癌等の腫瘍又は癌を含む。
【0045】
好ましくは、医薬品は、上記の1つ以上の疾患又は障害の予防、治療又は改善のためのものである。
【0046】
好ましくは、被験体は哺乳動物、好ましくは霊長類であり、より好ましくは、被験体はヒトである。
【0047】
本開示により提供されるヒトIL-4Rのアルファ鎖(IL-4Rα)の特異的エピトープに基づいて、本開示は、ヒトIL-4Rの結合剤若しくはヒトIL-4/IL-13シグナル伝達経路の遮断剤のスクリーニングにおける特異的エピトープの使用、又は結合剤若しくは遮断剤の有効性の評価における特異的エピトープの使用も提供する。上記のように、エピトープは、配列番号1に示すアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基D92、V94、D97、L67、L68、A96、H156、C207、Q63、及びL64を含む。
【0048】
好ましくは、エピトープは、配列番号1に示すアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基D92、V94、及びD97を含む。
【0049】
本開示の特定の実施の形態によれば、エピトープは、配列番号1に示すアミノ酸配列中の以下のアミノ酸残基:
(1)D92、
(2)D97、
(3)D92、V94及びD97、
(4)D92及びV94、
(5)D92及びD97、又は、
(6)V94及びD97、
を含む。
【0050】
及び/又は、エピトープは、配列番号1に示すアミノ酸配列中の以下のアミノ酸残基:(i)Q63及びL64を含む。
【0051】
及び/又は、エピトープは、配列番号1に示すアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基L67、L68及びA96を含む。
【0052】
好ましくは、エピトープは、配列番号1に示すアミノ酸配列中の以下のアミノ酸残基:
1.L67及びL68、
2.L67、L68及びA96、又は、
3.A96、
を含む。
【0053】
本開示の特定の実施の形態によれば、エピトープは、配列番号1に示すアミノ酸配列中の以下のアミノ酸残基:
(A)L67、L68、A96、H156及びC207、
(B)A96、H156及びC207、
(C)L67、L68、H156及びC207、
(D)L67、L68、A96及びC207、又は、
(E)L67、L68、A96及びH156、
を含む。
【0054】
特に好ましくは、本開示によるエピトープは、配列番号1に示すアミノ酸配列中の以下のアミノ酸残基:
(P-1)D97、L67及びL68、
(P-2)D97、L67、L68、A96及びD92、
(P-3)D97、L67、L68及びD92、
(P-4)D97、Q63及びL64、
(P-5)D97、Q63、L64及びD92、
(P-6)D97、Q63、L64、D92及びA96、又は、
(P-7)D97、Q63、L64、L67及びL68、
を含む。
【0055】
上記のような特異的エピトープの使用に基づいて、本開示は、ヒトインターロイキン4受容体(IL-4R)に特異的に結合する結合剤、又はヒトインターロイキン4(IL-4)若しくはヒトインターロイキン13(IL-13)のシグナル伝達経路を特異的に遮断する遮断剤をスクリーニングする方法であって、スクリーニングされる薬剤をヒトIL-4R又はその一部と接触させる工程と、次いで、該薬剤が本開示によるエピトープと結合可能かどうかを検出する工程とを含む、方法を提供する。本開示によるエピトープに結合可能な薬剤が検出される場合、その薬剤は結合剤又は遮断剤として同定される。
【0056】
或いは、本開示は、薬剤の有効性を評価する方法であって、評価される薬剤をヒトインターロイキン4受容体(IL-4R)又はその一部と接触させる工程と、次いで、該薬剤が本開示によるエピトープと結合可能かどうかを検出する工程とを含む、方法も提供する。本開示によるエピトープに結合可能な薬剤が検出される場合、その薬剤は、ヒトインターロイキン4受容体(IL-4R)に特異的に結合する結合剤、又はヒトインターロイキン4(IL-4)若しくはヒトインターロイキン13(IL-13)のシグナル伝達経路を特異的に遮断する遮断剤として同定され、したがって、本開示に記載の疾患又は障害を予防、治療、又は改善するための有効性を有する。
【0057】
本開示による、結合剤若しくは遮断剤をスクリーニングする方法、又は薬剤の有効性を評価する方法において、好ましくは、スクリーニング又は評価される薬剤は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体等の抗体である。より好ましくは、抗体は、ヒトIL-4R又はその一部を免疫原として動物に免疫することによって得られる。
【0058】
結合剤若しくは遮断剤をスクリーニングする方法、又は薬剤の有効性を評価する方法において、好ましくは、薬剤が本開示によるエピトープに結合可能かどうかを検出することを、ヒトIL-4R又はその一部の部位特異的変異導入により、本開示によるエピトープによって含まれる1つ以上のアミノ酸残基を変異させること、変異後のヒトIL-4R又はその一部に対する薬剤の結合活性又は結合親和性を変異前のものと比較すること、及び変異したヒトIL-4R又はその一部に対する薬剤の結合活性又は結合親和性が著しく低いか、更には失われている場合、該薬剤が本開示によるエピトープに結合可能であると同定することによって行うことができる。
【0059】
特に、本開示による、結合剤若しくは遮断剤をスクリーニングする方法、又は薬剤の有効性を評価する方法は、
1)ヒトインターロイキン4受容体(IL-4R)又はその一部の部位特異的変異導入により本開示によるエピトープによって含まれる1つ以上のアミノ酸残基を変異させ、ヒトIL-4R又はその一部の変異体を得る工程と、
2)スクリーニングされる薬剤又は評価される薬剤を、ヒトIL-4R又はその一部、及びヒトIL-4Rの変異体又はその一部とそれぞれ接触させ、それに対する結合活性又は結合親和性をそれぞれ検出する工程と、
3)変異したヒトIL-4R又はその一部に対する薬剤の結合活性又は結合親和性が、ヒトIL-4R又はその一部に対する薬剤の結合活性又は結合親和性と比較して著しく低いか、更には失われている場合、薬剤が本開示によるエピトープに結合可能であると同定する工程と、
を含み得る。
【0060】
当業者は、結合活性又は結合親和性が著しく低いか、又は失われているかどうかを日常的に判断することができる。例えば、ヒトIL-4Rの変異体又はその一部に対する薬剤の結合活性又は結合親和性が、変異前の結合活性又は結合親和性の10分の1であれば、結合活性又は結合親和性が著しく低いと判断することができる。
【0061】
好ましくは、工程1)においてエピトープによって含まれる1つ以上のアミノ酸残基をアラニン又は対応する位置のカニクイザルインターロイキン4受容体のアミノ酸残基に変異させ、ヒトIL-4Rの変異体又はその一部を得る。
【0062】
好ましくは、本開示による方法において使用されるヒトIL-4Rの一部は、ヒトIL-4Rのアルファ鎖、更にヒトsIL-4Rアルファである。よって、好ましくは、上記方法は、ヒトIL-4Rαを用いて行われ、ヒトIL-4Rαの変異体が得られる。さらに、上記方法をヒトsIL-4Rαを用いて行うことができ、工程1)における変異体として、以下の表3に列挙される1つ以上のヒトsIL-4Rαの変異体を使用する。
【0063】
本開示において、ヒトIL-4Rαは、NCBIアクセッション番号NP_000409.1による配列を指し、ヒトsIL-4Rαのアミノ酸配列は、配列番号1に示され、カニクイザルsIL-4Rαのアミノ酸配列は、配列番号2に示される。
【0064】
実験は、本開示による抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトインターロイキン4受容体(IL-4R)のアルファ鎖(IL-4Rα)上に位置するエピトープに結合し、該エピトープは配列番号1に示すアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基D92、V94、D97、L67、L68、A96、H156、C207、Q63及びL64を含むことを証明する。免疫反応におけるsIL-4Rαのエピトープは、これまであまり研究されていなかったが、本開示において、抗IL-4R抗体のIL-4Rへの結合における重要な位置が初めて定義された。
【0065】
したがって、本開示は、IL-4Rの新規エピトープに結合する、ヒトIL-4R、特にIL-4Rαに対する抗体を提供する。この抗体は、ヒトIL-4R、特にIL-4Rαに対する新規な、有用で有効な抗体であり得る。さらに、本開示は、本開示によって提供される抗体のヒトIL-4Rαへの結合における重要な位置を解明することによって、IL-4R、特にヒトIL-4Rαに対する可能性のある抗体又は薬剤の開発に対する代替アプローチを提供する。
【0066】
本開示の実施形態を、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】ヒトIL-4Rα(配列_1;配列番号1)及びカニクイザルIL-4Rα(配列_2;配列番号2)のアラインメントを示す図である。
図2】本開示の抗体の安定性を示す図であり、パネル2Aは、40℃で2週間保存した後の結果を示し、パネル2Bは、40℃で4週間保存した後の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本開示において、「エピトープ」という用語は、抗体又はそのフラグメントが抗原に結合した場合に結合部位に対応する抗原のアミノ酸残基(複数の場合もある)、及び抗原の配列中のアミノ酸残基(複数の場合もある)の対応する位置(複数の場合もある)を指し、またエピトープのアミノ酸残基(複数の場合もある)の変異は、後述の「(I)結合活性の検出方法」に記載の手順に従って測定した場合に、結合活性が10ng/mlを超えて低下するか、又は結合活性が失われている。
【0069】
本開示には、以下の実験手順又は定義が含まれる。本開示は、当該技術分野における他の従来技術によっても実施することができ、以下の実験手順に限定されるものではないことに留意されたい。
【0070】
(I)結合活性の検出方法
1.試薬の調製
抗原の調製:抗原をPBS中の100μg/ml溶液に調製し、小分けにした後、-20℃の冷蔵庫で保存した。
【0071】
検出される抗体の調製:1%BSAを含むPBSで検出される抗体を、0ng/ml、0.032ng/ml、0.16ng/ml、0.8ng/ml、4ng/ml、20ng/ml、100ng/ml、500ng/ml、及び2500ng/mlの所望の濃度に希釈した。
【0072】
二次抗体作業溶液の調製:二次抗体原液(ヤギ抗ヒトIgG-Fc二次抗体(HRP)、sino biological、カタログ番号SSA001)を、1%BSAを含むPBSで16000倍に希釈し、作業溶液を得た。例えば、1%BSAを含むPBS 15999μlに1μlの二次抗体原液を加え、得られた混合物を上下の反転を繰り返してよく混合した。実験要件に応じてスケールアップすることで、所望の容積の二次抗体作業溶液を調製することができる。
【0073】
2.ELISA検出
100μg/mlの抗原溶液50μlを9.95mlのPBSに加え、得られた混合物を上下に反転させてよく混合し、0.5μg/mlの抗原コーティング溶液を得た。調製した抗原コーティング溶液を、12チャネルピペット(RAININ)を用いてピペッティングし、96ウェルプレート(Corning)に、1ウェルあたり100μlずつ加えた。96ウェルプレートを防腐フィルムで包み(又は覆い)、4℃の冷蔵庫で一晩インキュベートした。翌日、96ウェルプレートを取り出し、中の溶液を捨て、清潔なペーパータオルの上でプレートを静かに叩いて乾燥させた。96ウェルプレートにPBSを1ウェルあたり300μlずつ加えた。プレートを室温で3分間放置した後、その中の溶液を捨て、清潔なペーパータオルの上でプレートを軽く叩いて乾燥させた。次いで、プレートを3回洗浄した。2%BSAを含むPBSを96ウェルプレートに、1ウェルあたり300μlずつ加えた。96ウェルプレートを防腐フィルムで包み(又は覆い)、37℃の恒温インキュベーターで2時間インキュベートした。96ウェルプレートを取り出し、その中の溶液を捨て、96ウェルプレートを清潔なペーパータオルの上で静かに叩いて乾燥させた。0.05%Tween-20(Beyotime、カタログ番号ST825)を含むPBSを96ウェルプレートに、1ウェルあたり300μlずつ加えた。プレートを室温で3分間放置した後、その中の溶液を捨て、清潔なペーパータオルの上でプレートを軽く叩いて乾燥させた。その後、プレートを3回洗浄した。
【0074】
上記で順次希釈した検出される抗体をそれぞれ対応するウェルに、1ウェルあたり100μlずつ加え、各試料を3ウェルで複製した。96ウェルプレートを防腐フィルムで包み(又は覆い)、37℃の恒温インキュベーターで1時間インキュベートした。96ウェルプレートを取り出し、その中の溶液を捨て、96ウェルプレートを清潔なペーパータオルの上で静かに叩いて乾燥させた。0.05%Tween-20を含むPBSを96ウェルプレートに、1ウェルあたり300μlずつ加えた。プレートを室温で3分間放置した後、その中の溶液を捨て、清潔なペーパータオルの上でプレートを軽く叩いて乾燥させた。その後、プレートを3回洗浄した。二次抗体作業溶液を96ウェルプレートに、1ウェルあたり100μlずつ加えた。96ウェルプレートを防腐フィルムで包み(又は覆い)、37℃の恒温インキュベーターで1時間インキュベートした。次いで、96ウェルプレートを取り出し、中の溶液を捨て、清潔なペーパータオルの上でプレートを静かに叩いて乾燥させた。0.05%Tween-20を含むPBSを96ウェルプレートに、1ウェルあたり300μlずつ加えた。プレートを室温で3分間放置した後、その中の溶液を捨て、清潔なペーパータオルの上でプレートを軽く叩いて乾燥させた。次いで、プレートを3回洗浄した。TMB基質溶液(SurModics、カタログ番号TMDS-1000-01)を96ウェルプレートに、1ウェルあたり100μlずつ加えた。次いで、プレートを37℃の恒温インキュベーターで5分間インキュベートした後、直ちに2M HSO溶液を96ウェルプレートに加え、反応を停止させた。96ウェルプレートをflexstation 3(Molecular Devices)に入れ、OD450値を読み取り、計算及び解析のためのデータを収集した。
【0075】
(II)細胞機能活性の検出方法
1.試薬の調製
ヒトIL-4(Invivogen、カタログ番号rhIL-4)の調製:ヒトIL-4をPBS中の100μg/ml溶液に調製し、小分けにした後-20℃の冷蔵庫で保存した。
【0076】
ヒトIL-13(Invivogen、カタログ番号rhIL-13)の調製:ヒトIL-13をPBS中の100μg/ml溶液に調製し、小分けにした後-20℃の冷蔵庫で保存した。
【0077】
Quanti-blue(I)溶液の調製:Quanti-blue(商標)粉末1パックを滅菌250mLボトルに注ぎ、次いで、そこに滅菌水100mLを加えた。得られた混合物を静かに混合し、ボトルを37℃の浴槽に30分間入れた。粉末が完全に溶解したら、ボトルを4℃の冷蔵庫に入れ、暗所で一晩置いた。その後、その中の溶液を小分けにし、チューブ1本あたり10mLで-20℃の暗所に保存した。この溶液は、6ヶ月間保存することができる。
【0078】
検出される抗体の調製:検出される抗体を10%FBS(Hyclone、カタログ番号SV30184.02)を含むDMEM培地(HyClone、カタログ番号SH30022.01)で、所望の濃度(1000ng/ml、200ng/ml、40ng/ml、8ng/ml、1.6ng/ml、0.32ng/ml、0.064ng/ml、0.0128ng/ml、0.00256ng/ml、及び0ng/ml)に希釈した。
【0079】
2.細胞培養
凍結したHEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞(Invivogen、カタログ番号hkb-il413)を液体窒素から取り出し、37℃の水浴中で穏やかに振盪して急速に溶解させた。溶解した細胞懸濁液を15ml遠心管に移し、DMEM培地(10%FBS、10μg/mlブラストサイジン(Blasticidin)、100μg/mlゼオシン(Zeocin)、及び100μg/mlノルモシン(Normocin)を含む)を10mlまでチューブに加えた後、このチューブを800rpmで5分間遠心分離した。上清を吸引し、残った細胞ペレットを1回洗浄した。DMEM培地10mlを細胞に加え、細胞密度を1×10細胞/ml~1×10細胞/mlに調整した。次いで、細胞懸濁液をT75細胞培養ボトル(Nunc)に移し、定常培養のため、37℃、5%COのインキュベーター(Thermo)に入れた。2日~3日ごとに細胞懸濁液を採取し、800rpmで5分間遠心分離し、得られた細胞を10mlの培養培地に再懸濁し、そこから1×10個の細胞を数え、新しいT75細胞培養ボトルに移し、そこに同時に培養培地を10mlまで補充した。細胞を2回~3回続けて継代し、細胞の増殖状態が良好(細胞が透明で、紡錘形であり、接着している)になってから、以下の実験を行うことができた。
【0080】
3.ブロッキング実験
増殖状態の良い細胞を含むT75細胞ボトルを取り、その中の上清を捨て、付着した細胞を10mlのPBSで静かに剥離した。剥離した細胞を15mlの遠心管に移し、次いでこれを800rpmで5分間遠心し、細胞ペレットを10mlのPBSに再懸濁した。細胞を、再び800rpmで5分間遠心し、上清を捨て、残った細胞ペレットを、10%FBSを含むDMEM培地5mlに再懸濁し、細胞数を計数した後、培地を補充して細胞密度を6.6×10細胞/mlに調整した。細胞懸濁液を384ウェルプレートに、1ウェルあたり30μlずつ加えた。上記のようにして調製した異なる濃度の検出される抗体を、384ウェルプレートのウェル中の細胞に、1ウェルあたり10μlずつ加えた(各試料を3ウェルに複製した)。ヒトIL-4又はヒトIL-13を、10%FBSを含むDMEM培地で2.5ng/mlに希釈し、各ウェルの最終細胞数が2×10個、ヒトIL-4又はヒトIL-13の最終濃度が0.5ng/ml、384ウェルプレートの各ウェル内の最終容積が50μlとなるように、384ウェルプレートの対応するウェルに1ウェルあたり10μlずつ2.5ng/mlのヒトIL-4又はヒトIL-13を加えた。384ウェルプレートを、細胞を定常培養するために37℃、5%COインキュベーターに入れた。
【0081】
4.データ統計
384ウェルプレートを5%COインキュベーターで22時間インキュベートした後、新たな384ウェルプレートの各ウェルに45μlのQuanti-blue溶液を加えた。22時間インキュベートしたプレートの各ウェルの上清をピペッティングし、新たな384ウェルプレートの対応するウェルに、1ウェルあたり5μlずつ加え、次いで、37℃で60分間インキュベートした。384ウェルプレートをflexstation 3に入れ、OD650値を読み取り、計算及び解析のためのデータを収集した。
【0082】
以下に本開示を、具体例を参照して説明する。これらの実施例は本開示の単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を何ら限定するものではないことが当業者には理解されよう。
【0083】
以下の実施例における実験手順は、特に明示がない限り、全て慣用のものである。以下の実施例で用いた原材料及び試薬は、特に明示がない限り、いずれも市販品である。
【0084】
ヒトsIL-4Rα:NP_000409.1、Met1-His232、配列番号1に示す。
カニクイザルsIL-4Rα:EHH60265.1、Met1-Arg232、配列番号2に示す。
【実施例
【0085】
実施例1 マウス抗体、キメラ抗体、及びヒト化抗体の作製
ヒトsIL-4Rα(配列番号1)により10匹のマウスを免疫した。マウスの血液を採取し、「(I)結合活性の検出方法」及び「(II)細胞機能活性の検出方法」に記載の手順に従って検出した。2つの検出結果の総合的な分析に従い、最も良い結果を示した2匹のマウスをそれぞれ融合に選択した。
【0086】
異なる融合体から得られた上清を、再度「(I)結合活性の検出方法」及び「(II)細胞機能活性の検出方法」に記載の手順に従って検出した。2つの検出結果の総合的な分析に従い、最も高い活性を示した親クローンをサブクローニングに選択した。「(I)結合活性の検出方法」及び「(II)細胞機能活性の検出方法」に記載した手順に従い検出を行い、最終的に14種類のマウスモノクローナル抗体をスクリーニングすることで得た。14種類のモノクローナル抗体の塩基配列を決定し、9組の新たな配列を持つ抗体を得た。以下に、抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示し、IMGTツールで定義されたCDRを下線で示す。
【0087】
Y0188-1
重鎖可変領域(配列番号3;CDRは順次:配列番号35、配列番号36、配列番号37)
EVQLVESGGGLVQPKGSLKLSCAASGFTFNTYGMHWVRQAPGKGLEWVAHIRSKSSNYATYYADSVKDRFTISRDDSQSMLYLQMNNLKTEDTAMYYCVRWFRAMDYWGQGTSVTVSS
軽鎖可変領域(配列番号4;CDRは順次:配列番号53、配列番号54、配列番号55)
DIVMTQSHKFMSTSVGDRVSITCKASQDVSTAVAWYQEKPGQSPKLLIYWASTRHTGVPDRFTGSGSGTDYTLTISSVQAEDLALYYCQQHYSTPLTFGAGTKLELK
Y0188-2
重鎖可変領域(配列番号5;CDRは順次:配列番号38、配列番号39、配列番号40)
EVQLIESGGGLVQPKGSLKLSCAASGFTFNMYAMDWVRQAPGKGLEWVARIRSKGSNFETNYADSVKDRFTISRDDSQSMVYLQMINLKTEDTAMYYCVRHRGGAWFAYWGQGTLVSVSA
軽鎖可変領域(配列番号6;CDRは順次:配列番号56、配列番号57、配列番号58)
DIVVTQSPASLAVSLGQRATISCRASKSVSTSGYSYMHWYQQKPGQPPKLLIYLASNLESGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPVEEEDVAIYYCQHSRELPLTFGAGTKLELK
Y0188-3
重鎖可変領域(配列番号7;CDRは順次:配列番号41、配列番号42、配列番号43)
QVQLVETGGGLVRPGNSLKLSCVTSGFTFSNYRMHWLRQPPGKRLEWIAVITVKSNNYGANYAESVKGRFAISRDDSKSSVYLEMNRLREEDTATYFCSRERAYGNPFDYWGQGTTLTVSS
軽鎖可変領域(配列番号8;CDRは順次:配列番号59、配列番号60、配列番号61)
DIQMTQSPSSLSASLGERVSLTCRASQEISGYLSWLQQKPDGTIKRLIYAASTLDSGVPKRFSGSRSGSDYSLTISSLESEDFADYYCLQYGSYPYTFGGGTKLEIK
Y0188-4
重鎖可変領域(配列番号9;CDRは順次:配列番号44、配列番号45、配列番号46)
EVQLVESGGGLVQPKGSLKLSCAASGFTFNMYAMNWVRQAPGQGLEWVARIRSKSNNYATYYADSVKDRFIISRDDSESMVYLQMSNLRAADTAMYYCVRHLRAMDYWGQGTSVTVSS
軽鎖可変領域(配列番号10;CDRは順次:配列番号56、配列番号57、配列番号62)
DIVLTQSPASLTVSLGQRATISCRASKSVSTSGYSYMHWYQQKPGQPPKLLIYLASNLESGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPVEEEDAATYYCQHSRELPITFGSGTKLEIK
Y0188-6
重鎖可変領域(配列番号11;CDRは順次:配列番号44、配列番号47、配列番号46)
EVQLVESGGGLVQPKGSLKLSCAASGFSFNMYAMNWVRQAPGKGLEWVARIRTKSNHYSTYYADSVKDRFTISRDDSASMFYLQMNNLKTEDTAMYFCVRHLRAMDYWGQGTSVTVSS
軽鎖可変領域(配列番号12;CDRは順次:配列番号63、配列番号64、配列番号65)
DIVLTQSPASLVVSLGQRATISCRASQSVSTSGYSYMHWYQQKPGQPPKLLIYLASNVQSGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPVEEEDVATYYCHHNRDLPFTFGSGTKLEIK
Y0188-8
重鎖可変領域(配列番号13;CDRは順次:配列番号38、配列番号39、配列番号40)
EVQLIESGGGLVQPKGSLKLSCAASGFTFNMYAMDWVRQAPGKGLEWVARIRSKGSNFETNYADSVKDRFTISRDDSQSMVYLQMNNLKTEDTAMYYCVRHRGGAWFAYWGQGTLVTVSA
軽鎖可変領域(配列番号14;CDRは順次:配列番号56、配列番号57、配列番号58)
DIVVTQSPASLAVSLGQRATISCRASKSVSTSGYSYMHWYQQKPGQPPKLLIYLASNLESGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPVEEEDVAIYYCQHSRELPLTFGAGTKLELK
Y0188-9
重鎖可変領域(配列番号15;CDRは順次:配列番号48、配列番号49、配列番号46)
EVQLVESGGGLVRPKGSLKLSCAASGFSFNTYAMNWVRQAPGKGLEWIVWIRSKSHNYATYYADSVKDRFTISRDDSESMLYLQMNNLKTEDTAMYYCVRHLRAMDYWGQGTSVTVSS
軽鎖可変領域(配列番号16;CDRは順次:配列番号66、配列番号67、配列番号68)
DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASKSVSASGYSYMHWYQQKPGQPPKLLIYLASNLQSGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPVEEEDAATYYCQHSRELPPTFGGGTKLEIK
Y0188-10
重鎖可変領域(配列番号17;CDRは順次:配列番号44、配列番号50、配列番号51)
EVRLVESGGGLVQPKGSLKLSCEASGFSFNMYAMNWVRQAPGKGLEWITHIRSKSNNYATYYADSVKDRFIISRDDSESMVYLQMNNLKTEDTAMYYCVRLLRALDYWGQGTSVTVSS
軽鎖可変領域(配列番号18;CDRは順次:配列番号56、配列番号57、配列番号69)
DIVLTQSPASLAVFLGQRATISCRASKSVSTSGYSYMHWYQQKAGQPPKLLIYLASNLESGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPVEEEDAATYYCHHSRELPITFGSGTKLEMK
Y0188-14
重鎖可変領域(配列番号19;CDRは順次:配列番号52、配列番号36、配列番号37)
EVQLVESGGGLVQPKGSLKLSCAASGFTFNMYGMHWVRQAPGKGLEWVAHIRSKSSNYATYYADSVKDRLTISRDDSQSMLYLQMNNLKTEDTAMYYCVRWFRAMDYWGQGTSVTVSS
軽鎖可変領域(配列番号20;CDRは順次:配列番号53、配列番号54、配列番号55)
DIVMTQSHKFMSTSVGDRVSITCKASQDVSTAVAWYQEKPGQSPKLLIYWASTRHTGVPDRFTGSGSGTDYTLTISSVQAEDLALYYCQQHYSTPLTFGAGTKLELK
【0088】
上記の可変領域配列を用い、重鎖定常領域をコードする配列として配列番号71に示す配列を、軽鎖定常領域をコードする配列として配列番号72に示す配列を使用して、9種類のキメラ抗体を構築した。9種類のキメラ抗体を発現及び精製し、マウス抗体名プラスQと命名した。キメラ抗体のIC50値を「(II)細胞機能活性の検出方法」に記載の手順に従って検出し、ヒトsIL-4Rαに対するキメラ抗体の親和性(KD)をBIACORE装置で測定した。結果を下の表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
クローン番号14のキメラ抗体(Y0188-14Q)を選択してヒト化し、重鎖可変領域の7つのヒト化配列と軽鎖可変領域の7つのヒト化配列を得た。以下に、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のヒト化したアミノ酸配列を示し、IMGTツールで定義されたCDRを下線で示す。
【0091】
重鎖可変領域:
>HV3-15-14H(配列番号21;CDRは順次:配列番号52、配列番号36、配列番号37)
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSMYGMHWVRQAPGKGLEWVGHIRSKSSNYATYYADSVKDRFTISRDDSKNTLYLQMNSLKTEDTAVYYCTTWFRAMDYWGQGTLVTVSS
>HV3-48-14H(配列番号22;CDRは順次:配列番号52、配列番号36、配列番号37)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSMYGMHWVRQAPGKGLEWVSHIRSKSSNYATYYADSVKDRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARWFRAMDYWGQGTLVTVSS
>HV3-73*2-14H(配列番号23;CDRは順次:配列番号52、配列番号36、配列番号37)
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSMYGMHWVRQASGKGLEWVGHIRSKSSNYATYYADSVKDRFTISRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAVYYCTRWFRAMDYWGQGTLVTVSS
>HV3-72-14H(配列番号24;CDRは順次:配列番号52、配列番号36、配列番号37)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSMYGMHWVRQAPGKGLEWVGHIRSKSSNYATYYADSVKDRFTISRDDSKNSLYLQMNSLKTEDTAVYYCARWFRAMDYWGQGTLVTVSS
>Y01-14H(配列番号25;CDRは順次:配列番号52、配列番号36、配列番号37)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSMYGMHWVRQAPGKGLEWVSHIRSKSSNYATYYADSVKDRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARWFRAMDYWGQGTLVTVSS
>162-14H(配列番号26;CDRは順次:配列番号52、配列番号36、配列番号37)
EVQLVESGGGLEQPGGSLRLSCAGSGFTFRMYGMHWVRQAPGKGLEWVSHIRSKSSNYATYYADSVKDRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKWFRAMDYWGQGTTVTVSS
>VH73-14H(配列番号27;CDRは順次:配列番号52、配列番号36、配列番号37)
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSMYGMHWVRQASGKGLEWVGHIRSKSSNYATYYADSVKDRFTISRDDSKNTAYLQMNSLKTEDTAVYYCTRWFRAMDYWGQGTTVTVSS
軽鎖可変領域:
>Y01-14L(配列番号28;CDRは順次:配列番号53、配列番号54、配列番号55)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCKASQDVSTAVAWYQQKPGQAPRLLIYWASTRHTGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQHYSTPLTFGQGTKVEIK
>164-14L(配列番号29;CDRは順次:配列番号53、配列番号54、配列番号55)
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCKASQDVSTAVAWYLQKSGQSPQLLIYWASTRHTGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGFYYCQQHYSTPLTFGQGTKLEIK
>KV4-14L(配列番号30;CDRは順次:配列番号53、配列番号54、配列番号55)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKASQDVSTAVAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRHTGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQHYSTPLTFGGGTKVEIK
>KV1-27-14L(配列番号31;CDRは順次:配列番号53、配列番号54、配列番号55)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVSTAVAWYQQKPGKVPKLLIYWASTRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQHYSTPLTFGGGTKVEIK
>KV1-9-14L(配列番号32;CDRは順次:配列番号53、配列番号54、配列番号55)
DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCKASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASTRHTGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYSTPLTFGGGTKVEIK
>KV1-NL1-14L(配列番号33;CDRは順次:配列番号53、配列番号54、配列番号55)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLLYWASTRHTGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQHYSTPLTFGGGTKVEIK
>KV1D-43-14L(配列番号34;CDRは順次:配列番号53、配列番号54、配列番号55)
AIRMTQSPFSLSASVGDRVTITCKASQDVSTAVAWYQQKPAKAPKLFIYWASTRHTGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQHYSTPLTFGGGTKVEIK
【0092】
軽鎖可変領域と重鎖可変領域の対のヒト化配列を用い、重鎖定常領域をコードする配列として配列番号71に示す配列を、軽鎖定常領域をコードする配列として配列番号72に示す配列を使用して、49種類のヒト化抗体を構築した。ヒト化抗体を発現させ、「(II)細胞機能活性の検出方法」に記載の手順に従って抗体のIC50値を検出し、BIACORE装置で抗体の細胞機能活性(KD)を確認した。好ましい6種類の可変領域の組合せを得た。結果を以下の表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
実施例2 結合エピトープに関する研究
2.1 抗体のヒトIL-4Rα及びカニクイザルIL-4Rαへの結合における種差
抗原としてカニクイザルsIL-4Rα(EHH60265.1、Met1-Arg232;配列番号2)を用い、「(I)結合活性の検出方法」に記載の手順に従って、抗原に対する抗体の結合活性を検出した。
【0095】
2.2 抗原配列中の変異させる位置の選択
ヒトIL-4Rα及びカニクイザルIL-4Rαの配列を、図1に示すようにアラインメントした。ヒトIL-4Rαの配列とカニクイザルIL-4Rαの配列で異なる幾つかの位置は、抗体のIL-4Rαへの結合を担う重要な位置であり、抗体がカニクイザルの配列ではなくヒトの配列に結合できるようにする可能性が高いと推測される。そこで、ヒトIL-4Rα配列において、アミノ酸(複数の場合もある)が、カニクイザルIL-4Rα配列中のアミノ酸(複数の場合もある)と異なる位置(複数の場合もある)を単一の点変異又は複合変異に供して、アミノ酸(複数の場合もある)をカニクイザルIL-4Rα配列中の対応する位置(複数の場合もある)のアミノ酸(複数の場合もある)に変更し、また、異なるアミノ酸(複数の場合もある)が存在する位置(複数の場合もある)の近傍にある非アラニンアミノ酸(複数の場合もある)を単一の点変異又は複合変異に供して、アミノ酸(複数の場合もある)をアラニンに変更した。次いで、異なる変異の組合せを有するヒトsIL-4Rαの変異体を構築し(下記表3を参照されたい)、「(II)細胞機能活性の検出方法」に記載の手順に従って、それらの活性を検証した。
【0096】
【表3】
【0097】
2.3 結合活性の検出
6種類のヒト化高活性抗体の抗原に対する結合活性は、ヒトsIL-4Rαタンパク質及び表3に示すsIL-4Rαの種々の変異体を抗原として、またこれらの抗体を一次抗体として使用して、「(I)結合活性の検出方法」に記載の手順に従って、検出した。結果を表4に示す。
【0098】
ヒトsIL-4Rαタンパク質及び表3に示すsIL-4Rαの種々の変異体を抗原として、またこれらの抗体を一次抗体として使用して、9種類のキメラ抗体の抗原に対する結合活性を同様に検出した。結果を表5に示す。
【0099】
スクリーニングにより、ヒトとカニクイザルのsIL-4Rαの間で異なるアミノ酸を有するこれらの位置及びその近傍に変異アミノ酸(複数の場合もある)を伴うsIL-4Rα変異体に対する抗体の結合活性は、sIL-4Rαに対する結合活性と比較して変化するか、更には逆転することがわかった。
【0100】
【表4】
【0101】
表4のデータから明らかなように、L67、L68、A96、H156及びC207の5つの位置に関して、そのうちのいずれか1つのアミノ酸残基が、カニクイザルIL-4Rαの対応する位置のアミノ酸残基に変異しており、L67及びL68が変異位置の組合せに含まれていた場合、本開示で提供されるヒト化抗体の結合活性は、sIL-4R-Hisに対するそれらの結合活性と比較して著しく低いが、一方で、L67とL68を個別に変異させた場合、本開示のヒト化抗体は、sIL-4R-Hisに対するそれら本来の結合活性を維持した。
【0102】
D92、V94及びD97の3つの位置に関して、それらのうちのいずれか1つのアミノ酸残基がアラニンに変異しており、変異位置の組合せにD97が含まれていた場合、又はD97のみが変異していた場合、本開示で提供されるヒト化抗体の結合活性はsIL-4R-Hisに対するそれらの結合活性と比較して著しく低かった。
【0103】
【表5】
【0104】
表5のデータから明らかなように、D92、V94及びD97の3つの位置に関して、そのうちのいずれか1つのアミノ酸残基がアラニンに変異しており、変異位置の組合せにD97が含まれていた場合、又はD97のみが変異していた場合、本開示で提供されるキメラ抗体の結合活性は、Y0188-2Q及びY0188-8Qを除いて、sIL-4R-Hisに対するそれらの結合活性と比較して著しく低かった。
【0105】
L67、L68、A96、H156及びC207の5つの位置に関して、そのうちのいずれか1つのアミノ酸残基が、カニクイザルIL-4Rαの対応する位置のアミノ酸に変異しており、L67及びL68、又はL67、L68及びA96が変異位置の組合せに含まれていた場合、キメラ抗体Y0188-1Q、Y0188-3Q、及びY0188-10Qの結合活性は、sIL-4R-Hisに対するそれらの結合活性と比較して著しく低かったが、一方で、L67及びL68を個別に変異させた場合、キメラ抗体は、Y0188-2Q及びY0188-8Qを除いて、いずれもsIL-4R-Hisに対するそれら本来の結合活性を維持したままであった。さらに、A96に関しては、変異位置の組合せにA96が含まれていた場合、キメラ抗体Y0188-3Qの結合活性はsIL-4R-Hisに対する結合活性と比較して著しく低かった。
【0106】
Q63とL64の2つの位置に関して、両位置がアラニンに変異していた場合、キメラ抗体の結合活性は、Y0188-1Q、Y0188-2Q及びY0188-8Qを除いて、sIL-4R-Hisに対するそれらの結合活性と比較して著しく低かった。
【0107】
実施例3 抗体の安定性
抗体E5及び抗体B5を、10mMヒスチジン、150mM NaCl、pH6において、それぞれ0.59mg/mL、0.54mg/mL及び6.44mg/mLで調製し、40℃で2週間及び4週間保存し、「(II)細胞機能活性の検出方法」に記載の手順に従って検出した。抗体濃度対OD650値のグラフをプロットし(図2)、次いで、そこからIC50(ng/mL)を算出した。結果を以下の表6に示す。
【0108】
【表6】
【0109】
本発明の実施形態に関する以上の説明は、本発明を限定することを意図するものではなく、当業者は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で本発明に種々の変更及び修正を加えることができ、これは添付の特許請求の範囲に含まれるべきである。
図1
図2
【配列表】
2023525665000001.app
【国際調査報告】