(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】缶ボディメーカ診断
(51)【国際特許分類】
B21D 22/28 20060101AFI20230612BHJP
B21D 51/26 20060101ALI20230612BHJP
G01N 27/90 20210101ALI20230612BHJP
【FI】
B21D22/28 L
B21D51/26 X
B21D22/28 F
G01N27/90
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566464
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2021060197
(87)【国際公開番号】W WO2021219431
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598168106
【氏名又は名称】クラウン パッケージング テクノロジー、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルステッド、ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー、ダミアン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】エガートン、ダニエル
【テーマコード(参考)】
2G053
4E137
【Fターム(参考)】
2G053AA21
2G053AA24
2G053AB21
2G053BA03
2G053BA27
2G053BC02
2G053BC14
2G053CA03
2G053DA01
4E137AA08
4E137AA21
4E137BA05
4E137BB04
4E137CA07
4E137CA11
4E137CA24
4E137EA07
4E137EA11
4E137FA02
4E137FA10
4E137FA12
4E137FA22
4E137FA23
4E137FA25
4E137GA02
4E137GB17
(57)【要約】
缶ボディメーカ内における缶ボディの製造の間に、前記缶ボディの側壁内の欠陥または劣化を検出する方法。各缶ボディは、往復運動する突き棒のパンチの上に取り付けられたカップを、前記ボディメーカのツール・パック内に収められた1または複数の鋳型を通して押すことによって形成される。前記方法は、前記ツール・パックの外側の前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに配置された1または複数の渦電流センサから出力信号を獲得することと、前記出力信号を処理して前記センサを通り過ぎる缶ボディ側壁の開放端の通過を検出し、それによって缶ボディ側壁の高さまたは厚さの測度を決定することと、前記決定された測度を分析して缶ボディ側壁の欠陥または劣化を識別することと、を包含する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶ボディメーカ内における缶ボディの製造の間に、前記缶ボディの側壁内の欠陥または劣化を検出する方法であって、各缶ボディが、往復運動する突き棒上のパンチに取り付けられたカップを、前記ボディメーカのツール・パック内に収められた1または複数の鋳型を通して押すことによって形成され、
前記ツール・パックの外側の前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに配置された1または複数の渦電流センサから出力信号を獲得することと、
前記出力信号を処理して前記センサを通り過ぎる缶ボディ側壁の開放端の通過を検出し、それによって缶ボディ側壁の高さまたは厚さの測度を決定することと、
前記決定された測度を分析して缶ボディ側壁の欠陥または劣化を識別することと、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記1または複数のセンサは、前記突き棒の軸周りに互いから角度上離間された複数のセンサを包含し、前記決定された測度は、前記缶ボディの周囲の2以上の場所についての、前記缶ボディ側壁の前記高さまたは厚さの測度を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記渦電流センサまたは各渦電流センサは、ストリッパフィンガが備えられたストリッパを包含するストリッパ・ハウジング内に取り付けられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記測度のそれぞれがあらかじめ決定された範囲内にあるか否かを決定すること、を包含する、先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記測度は、缶の側壁の高さの測度であり、前記あらかじめ決定された範囲は、10mm未満、または5mm未満、または2mm未満の幅を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記信号と、前記突き棒の軸に沿って前記突き棒の位置を示すデータとを相関させること、を包含する、先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記位置データは、リニア・エンコーダから、または前記突き棒の駆動に使用されるシャフトによって回転されるべく構成されたロータリ・エンコーダから獲得される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
缶ボディ側壁の欠陥または劣化が識別された場合に、オペレータに対するアラームまたは通知を生成すること、を包含する、先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項9】
缶ボディメーカを駆動する方法であって、先行するいずれかの請求項に記載の方法を使用して製造の間の前記缶ボディ側壁の欠陥または劣化を検出することと、当該検出があった場合には、前記ボディメーカ、または前記ボディメーカが置かれている製造ラインの1または複数の動作パラメータを調整して、前記欠陥または前記劣化の発生を軽減することと、を包含する、方法。
【請求項10】
前記1または複数の動作パラメータは、製造レートを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記動作パラメータは、前記ボディメーカの上流または下流にある前記製造ラインの構成要素、たとえばカップ・プレス機のパラメータである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
先行するいずれかの請求項に記載の方法を実施するべく構成されたプロセッサを包含する、コンピュータ・デバイス。
【請求項13】
コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実行させるインストラクションを包含する、コンピュータ・プログラム・プロダクト。
【請求項14】
缶ボディメーカ内における缶ボディの製造の間に、前記缶ボディの側壁内の欠陥または劣化を検出するための装置であって、各缶ボディが、往復運動する突き棒上のパンチに取り付けられたカップを、前記ボディメーカのツール・パック内に収められた1または複数の鋳型を通して押すことによって形成され、
前記ツール・パックに隣接して配置され、中に1または複数の渦電流センサが取り付けられたハウジングであって、前記ハウジングおよびセンサが、前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに前記センサまたは各センサが配置されるように前記缶ボディメーカ内における取り付けのために構成される、ハウジングと、
前記センサまたは各センサと有線または無線通信し、前記センサの出力信号を前記センサから受け取り、前記出力信号を処理して前記センサを通り過ぎる缶ボディ側壁の開放端の通過を検出し、それによって缶ボディ側壁の高さまたは厚さの測度を決定し、かつ前記決定された測度を分析して缶ボディ側壁の欠陥または劣化を識別するべく構成されたコンピュータ処理ユニットと、
を包含する、装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置との組み合わせで缶ボディメーカを包含するシステムであって、前記缶ボディメーカが、往復運動する突き棒上に取り付けられるパンチと、ツール・パック内に収められる1または複数の鋳型とを包含し、前記ハウジングおよびセンサが、前記缶ボディメーカ内に、前記センサまたは各センサが、前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに配置されるように取り付けられる、システム。
【請求項16】
缶ボディメーカ内における缶ボディの製造の間に、前記缶ボディの側壁内の欠陥または劣化の発生を軽減する前記缶ボディメーカを駆動する方法であって、各缶ボディが、往復運動する突き棒のパンチに取り付けられたカップを、前記ボディメーカのツール・パック内に収められた1または複数の鋳型を通して押すことによって形成され、
前記ツール・パックの外側の前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに配置された1または複数のセンサから出力信号を獲得することと、
前記出力信号を処理して前記センサを通り過ぎる缶ボディ側壁の開放端の通過を検出し、それによって缶ボディ側壁の高さまたは厚さの測度を決定することと、
前記決定された測度を分析して缶ボディ側壁の欠陥または劣化を識別することと、
前記ボディメーカの、または前記ボディメーカが置かれている製造ラインの別の構成要素の1または複数の動作パラメータを調整して、前記欠陥または前記劣化の発生を軽減することと、
を包含する、方法。
【請求項17】
前記1または複数の動作パラメータは、
製缶レート(前記缶ボディメーカの設定速度)と、
前記ツール・パックの動作温度と、
前記ツール・パックへの冷却剤の供給レートまたは温度と、
前記ツール・パックへの潤滑剤の供給レートと、
前記突き棒の軸に対するドーマの位置と、
から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
カップから缶ボディを製造するためのシステムであって、
往復運動する突き棒のパンチの上に取り付けられたカップを、前記ボディメーカのツール・パック内に収められた1または複数の鋳型を通して押すことによって缶ボディを形成する缶ボディメーカと、
前記ツール・パックに隣接して配置され、中に1または複数のセンサが取り付けられたハウジングであって、前記ハウジングおよびセンサが、前記センサまたは各センサが、前記缶ボディメーカ内に、前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに配置されるように取り付けられる、ハウジングと、
前記センサまたは各センサと有線または無線通信し、前記センサの出力信号を前記センサから受け取り、前記出力信号を処理して前記センサを通り過ぎる缶ボディ側壁の開放端の通過を検出し、それによって缶ボディ側壁の高さまたは厚さの測度を決定し、前記決定された測度を分析して缶ボディ側壁の欠陥または劣化を識別し、かつ前記ボディメーカの、または前記ボディメーカが置かれている製造ラインの別の構成要素の1または複数の動作パラメータを調整して、前記欠陥または前記劣化の発生を軽減するべく構成されたコンピュータ処理ユニットと、
を包含する、システム。
【請求項19】
前記1または複数の動作パラメータは、
製缶レート(前記缶ボディメーカの設定速度)と、
前記ツール・パックの動作温度と、
前記ツール・パックへの冷却剤の供給レートまたは温度と、
前記ツール・パックへの潤滑剤の供給レートと、
前記突き棒の軸に対するドーマの位置と、
から選択される、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶ボディメーカのための診断に関する。特に本発明は、缶ボディメーカによって製造されている缶ボディの監視のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
『絞りしごき』(DWI)プロセスによる薄肉金属の2ピース缶ボディを製造するための周知の缶ボディメーカにおいて、金属のカップがボディメーカへ供給され、続いてそれが突き棒の端部のパンチによって担持されて一連の鋳型に通され、所望のサイズならびに厚さの缶ボディが製造される。一連の鋳型は、カップの直径を減じ、かつそれの側壁を延ばすための再絞り鋳型と、カップを缶ボディにしごき加工するための1または複数のしごき鋳型とを含むことができる。中に鋳型が置かれるボディメーカ・フレームのエリアまたはクレードルは、『ツール・パック』として知られる。パンチ上に担持される缶ボディは、缶の基部にドーム等の形状が形成されるように、最終的にボトム成形ツールまたは『ドーマ』と接触することができる。例示的なボディメーカが、特許文献1に述べられている。
【0003】
缶ボディメーカは、通常、長期間にわたり、毎分約300から400個を超える高い缶ボディの製造速度において駆動される。しかしながら、製造される缶ボディの品質は、たとえば、機械の構成要素のアライメント、冷却剤の温度ならびに流速、機械の潤滑、および/または到来するカップの品質(たとえば、カップが作られる金属コイルの品質における変動に起因)における変化のために、経時的に有意に変動し得る。
【0004】
DWIプロセスの間においては、パンチが金属をしごき鋳型に強制的に通すときにそれが荷重を受ける。しかしながら、これらの荷重の大きさおよび分布が、行程の間および行程と行程の間の両方において変化し、製造される缶ボディの品質の変動を導く。たとえば、摩擦力および一般的な摩損は、経時的に突き棒のアライメントのわずかな変化を生じさせる。それに加えて、高速で往復運動する突き棒は、缶ボディに対する突き棒の衝撃、および突き棒が完全に延びた位置から、またそこへ移動するときのそれの不定の『自重湾曲』に起因して少なくともある種の振動を概して受ける。
【0005】
さらなる例として述べれば、突き棒が缶ボディを担持してドーマと接触させるとき、どのようなミスアライメントでも缶ボディの端部の割れを、特に缶ボディがアルミニウムから作られるときには導く可能性がある。ミスアライメントがわずかであれば、割れ(しばしば『スマイル』として知られる)が直ちに裸眼で確認できないことがあり、缶ボディの充填が済んでからその割れが缶の破裂を招くことがある。これが、充填済みの缶が購入されてから生じることもある。
【0006】
低品質の缶ボディは、製缶における浪費およびダウンタイムを導くことがある。それは、たとえば、ボディメーカ自体の再アライメントまたは修理(熟練したオペレータを必要とする)を行わなければならないことから、あるいは製造されている低品質の缶によって製造ラインのさらに下流のそのほかの機械が有害な影響を受けることから生じ得る。残念ながら、失われる製造時間は、製缶産業の高速、大量製造の特性から、製造者にとって非常に損失の大きいものとなり得ることを意味する。
【0007】
缶の欠陥の1つのタイプは、一般に『シュガー・スクープ』と呼ばれる、曲がった、エッジがトリムされていない缶ボディであり、缶ボディがこのタイプの家庭用品の椀形の端部に似ていることがその理由である。シュガー・スクープ欠陥は:(i)ボディメーカへ提供されるカップ自体が曲がっていること(また、その欠陥がDWIプロセスによって悪化されることがある);(ii)カップがパンチに対して正しく中心合わせされていないこと(たとえば、パンチがカップ・ロケータおよび/または再絞りスリーブと整列されていないことによる);(iii)側壁の一方の側が他方より薄くなる缶ボディが導くパンチに対するしごき鋳型のミスアライメントがあること;または、(iv)再絞り鋳型および/またはしごき鋳型が損傷しているか、または摩損していること、といった多くの形で生じ得る。
【0008】
場合によっては、缶ボディが機械的に損なわれるほど缶ボディの欠陥が著しく、缶ボディの一部が缶ボディメーカ内に破片として置き去りにされるいわゆる『ショート缶』または『ちぎれ』を導くことがある。通常、ボディメーカの構成要素が損傷することまたは低品質の缶が製造されることを回避するために、破片が取り除かれるまで製缶が停止されなければならない。したがって、そのような突発故障が生じる前に缶ボディの欠陥の診断を可能にすることは重要である。
【0009】
缶ボディの品質を評価する1つのすでに周知の方法は、機械的なゲージのアームを缶ボディのリムに対して押し当て、その缶ボディをそれの軸周りに回転させて、リムの高さに依存する変化量によってアームに変位を生じさせることを伴う。この方法は、製造される缶ボディの精密な測定を行うことを可能にするが、製造される缶毎に行うにはあまりにも遅く、また製造ラインから定期的に缶ボディを取り出す(標本抽出する)必要がある。したがって、しばしば問題が診断されずに看過されることがあり、有意な数の低品質の缶が製造されることを許し、ちぎれが生じるリスクを増加させる。
【0010】
缶ボディ診断方法および装置は、周知である。たとえば、特許文献2は、缶ボディメーカの突き棒および/またはパンチ、またはパンチ上に保持されている缶ボディの半径方向のミスアライメントを検出するための半径方向オフセット・モニタを包含する缶ボディメーカのためのストリッパ・アッセンブリを述べている。『ショート缶センサ』製品は、Sencon(UK) LTD(センコン(ユーケー)エル・ティー・ディー)から商的に入手可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第9934942号
【特許文献2】国際公開第2018/020207号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、缶ボディメーカ内における缶ボディの製造の間に、前記缶ボディの側壁内の欠陥または劣化を検出する方法が提供される。各缶ボディは、往復運動する突き棒のパンチの上に取り付けられたカップを、前記ボディメーカのツール・パック内に収められた1または複数の鋳型を通して押すことによって形成される。前記方法は、前記ツール・パックの外側の前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに配置された1または複数の渦電流センサから出力信号を獲得することと、前記出力信号を処理して前記センサを通り過ぎる缶ボディ側壁の開放端の通過を検出し、それによって缶ボディ側壁の高さまたは厚さの測度を決定することと、前記決定された測度を分析して缶ボディ側壁の欠陥または劣化を識別することと、を包含する。
【0013】
前記1または複数のセンサは、前記突き棒の軸周りに互いから角度上離間された複数のセンサを包含することができる。前記決定された測度は、前記缶ボディの周囲の2以上の場所についての、前記缶ボディ側壁の前記高さまたは厚さの測度を包含することができる。
【0014】
前記渦電流センサまたは各渦電流センサは、ストリッパフィンガが備えられたストリッパを包含するストリッパ・ハウジング内にマウントすることができる。
【0015】
前記方法は、前記測度のそれぞれがあらかじめ決定された範囲内にあるか否か決定することを包含することができる。前記測度は、缶の側壁の高さの測度とすることができ、前記あらかじめ決定された範囲は、10mm未満、または5mm未満、または2mm未満の幅を有する。
【0016】
前記方法は、前記信号と、前記突き棒の軸に沿って前記突き棒の位置を示すデータとを相関させることを包含できる。前記位置データは、リニア・エンコーダから、または前記突き棒の駆動に使用されるシャフトによって回転されるべく構成されたロータリ・エンコーダから獲得することができる。
【0017】
前記方法は、缶ボディ側壁の欠陥または劣化が識別された場合に、オペレータに対するアラームまたは通知を生成することを包含できる。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、缶ボディメーカを駆動する方法が提供される。前記方法は、製造の間に前記缶ボディの側壁内の欠陥または劣化を検出する本発明の第1の態様について上に述べられている方法を使用することと、当該検出があった場合には、前記ボディメーカ、または前記ボディメーカが置かれている製造ラインの1または複数の動作パラメータを調整して、前記欠陥または前記劣化の発生を軽減することと、を包含する。
【0019】
前記1または複数の動作パラメータは、製造レートを含むことができる。
【0020】
前記動作パラメータは、前記ボディメーカの上流または下流にある前記製造ラインの構成要素、たとえばカップ・プレス機のパラメータとすることができる。
【0021】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1および/または第2の態様について上に述べられている方法を実施するべく構成されたプロセッサを包含するコンピュータ・デバイスが提供される。
【0022】
本発明の第4の態様によれば、コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに、前記本発明の第1および/または第2の態様について上に述べられている方法を実行させるインストラクションを包含するコンピュータ・プログラム・プロダクトが提供される。
【0023】
本発明の第5の態様によれば、缶ボディメーカ内における缶ボディの製造の間に、前記缶ボディの側壁内の欠陥または劣化を検出するための装置が提供される。各缶ボディは、往復運動する突き棒のパンチの上に取り付けられたカップを、前記ボディメーカのツール・パック内に収められた1または複数の鋳型を通して押すことによって形成される。前記装置は、前記ツール・パックに隣接して配置され、中に1または複数の渦電流センサが取り付けられたハウジングを包含する。前記ハウジングおよびセンサは、前記センサまたは各センサが、前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに配置されるように前記缶ボディメーカ内における取り付けのために構成される。前記装置は、さらに、前記センサまたは各センサと有線または無線通信し、前記センサの出力信号を前記センサから受け取り、前記出力信号を処理して前記センサを通り過ぎる缶ボディ側壁の開放端の通過を検出し、それによって缶ボディ側壁の高さまたは厚さの測度を決定し、かつ前記決定された測度を分析して缶ボディ側壁の欠陥または劣化を識別するべく構成されたコンピュータ処理ユニットを包含する。
【0024】
本発明の第6の態様によれば、前記本発明の第5の態様の装置との組み合わせで缶ボディメーカを包含するシステムが提供される。前記缶ボディメーカは、往復運動する突き棒の上に取り付けられるパンチと、ツール・パック内に収められる1または複数の鋳型を包含し、ハウジングおよびセンサは、前記缶ボディメーカ内に、前記センサまたは各センサが前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに配置されるように取り付けられる。
【0025】
本発明の第7の態様によれば、缶ボディメーカ内における缶ボディの製造の間における前記缶ボディの側壁内の欠陥または劣化の発生を軽減する、缶ボディメーカを駆動する方法が提供される。各缶ボディは、往復運動する突き棒のパンチの上に取り付けられたカップを、前記ボディメーカのツール・パック内に収められた1または複数の鋳型を通して押すことによって形成される。前記方法は、前記ツール・パックの外側の前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに配置された1または複数のセンサから出力信号を獲得することと、前記出力信号を処理して前記センサを通り過ぎる缶ボディ側壁の開放端の通過を検出し、それによって缶ボディ側壁の高さまたは厚さの測度を決定することと、を包含する。前記方法は、さらに、前記決定された測度を分析して缶ボディ側壁の欠陥または劣化を識別することと、前記ボディメーカの、または前記ボディメーカが置かれている製造ラインの別の構成要素の1または複数の動作パラメータを調整して、前記欠陥または前記劣化の発生を軽減することと、を包含する。
【0026】
前記1または複数の動作パラメータは、
製缶レート(前記缶ボディメーカの設定速度)と、
前記ツール・パックの動作温度と、
前記ツール・パックへの冷却剤の供給レートまたは温度と、
前記ツール・パックへの潤滑剤の供給レートと、
前記突き棒の軸に対するドーマの位置と、
から選択することができる。
【0027】
本発明の第8の態様によれば、カップから缶ボディを製造するためのシステムが提供される。前記システムは、缶ボディメーカを包含し、前記缶ボディメーカは、往復運動する突き棒のパンチの上に取り付けられたカップを、前記ボディメーカのツール・パック内に収められた1または複数の鋳型を通して押すことによって缶ボディを形成する。また前記システムは、前記ツール・パックに隣接して配置され、かつ中に1または複数のセンサが取り付けられたハウジングも包含する。前記ハウジングおよびセンサは、前記缶ボディメーカ内に、前記センサまたは各センサが、前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに配置されるように取り付けられる。前記システムは、さらに、前記センサまたは各センサと有線または無線通信し、前記センサの出力信号を前記センサから受け取り、前記出力信号を処理して前記センサを通り過ぎる缶ボディ側壁の開放端の通過を検出し、それによって缶ボディ側壁の高さまたは厚さの測度を決定するべく構成されたコンピュータ処理ユニットを包含する。また前記コンピュータ処理ユニットは、前記決定された測度を分析して缶ボディ側壁の欠陥または劣化を識別し、かつ前記ボディメーカの、または前記ボディメーカが置かれている製造ラインの別の構成要素の1または複数の動作パラメータを調整して、前記欠陥または前記劣化の発生を軽減するべく構成される。
【0028】
前記1または複数の動作パラメータは、
製缶レート(前記缶ボディメーカの設定速度)と、
前記ツール・パックの動作温度と、
前記ツール・パックへの冷却剤の供給レートまたは温度と、
前記ツール・パックへの潤滑剤の供給レートと、
前記突き棒の軸に対するドーマの位置と、
から選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】2つのセンサの間における突き棒の端部上の缶ボディの移動を示した缶ボディメーカの一部の略図的な断面図である。
【
図3】
図2のセンサのうちの1つからの出力信号を時間の関数として図解したグラフである。
【
図4】センサのアレイによって生み出された出力信号から導出された測定値を図解したグラフである。
【
図5】ストリッパ・ハウジング内に統合された複数のセンサの略図的な斜視図である。
【
図6】ハウジングにストリッパが取り付けられた
図5のストリッパ・ハウジングの略図的な断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、シート・メタルから絞られたカップから缶ボディを作るためのモジュラ・ボディメーカ101の略図的な斜視図である。ボディメーカ101は、突き棒アッセンブリ105とともにマシン・ベッド103を支持するベース102を包含する。突き棒アッセンブリ105は、一端にマウントされたパンチ(図示せず)を伴って往復運動する突き棒106を包含する。ボディメーカ101の前進行程の間に、パンチが、ツール・パック107内の突き棒の通路内に保持されたカップ(図示せず)と接触する。パンチは、ツール・パック107内に収められた再絞り鋳型(図示せず)を通してカップを押して引き延ばされた缶ボディを形成する。缶ボディは、パンチ上に担持されてドーマ・モジュール109によって収容されているボトム形成ツール108と接触し、その結果、缶の基部にドーム等の形状が形成される。ボディメーカ101の戻り行程においては、缶ボディが、ツール・パック107のストリッパ(図示せず)によってパンチから取り外される。缶ボディは、ツール・パック107とドーマ・モジュール109の間に位置する送り込み-排出モジュール111の缶排出タレット110によって突き棒の軸から運び去られる。
【0031】
ツール・パック107は、再絞りプロセスの間におけるカップの位置決めのための再絞り鋳型(図示せず)の正面に位置する再絞りスリーブ・モジュール112も包含する。再絞りスリーブ・モジュール212は、送り込み-排出モジュール111の送り込みメカニズム114からカップを受け取るカップ・ロケータ(図示せず)を伴った支持構造113を包含する。支持構造113は、突き棒と同軸で整列され、かつパンチの通過を可能にする中心ボアを有している往復運動する再絞りスリーブ115を支持する。再絞りスリーブ115の後端は、突き棒106の両側に位置するペアのプッシュ・ロッド117a、117bによって駆動されて往復運動する再絞りキャリッジ116に結合されている。パンチが缶と接触する前に、再絞りスリーブ115がカップの開放端に入り込み、カップに再絞り鋳型との接触を強制する。再絞りスリーブ115は、カップより直径が小さい再絞り鋳型の開口を通してパンチがカップを押すとき、カップを再絞り鋳型に対して適切にかつ堅固に保持する。カップがパンチによって再絞り鋳型を通して絞られるとき、それの直径が減じられ、かつその側壁が延ばされる。ツール・パック107は、1または複数のしごき鋳型またはそのほかの、再絞り鋳型の後に缶ボディを形成するためのツーリングも収めることができる。その後パンチは、引き延ばされたカップを、再絞りスリーブ・モジュールから、残りのしごき鋳型およびツーリングを通して運び去る。
【0032】
図2は、しごき鋳型4の後に位置決めされ、突き棒106の往復運動が沿う軸A-A’に中心を置く円の円周の周りに等間隔で8個のセンサ2(図においては、そのうちの2つである2A、2Bだけを見ることができる)を包含するセンサ・アレイ3を含む缶ボディメーカ101の部分の特定の内部構成要素を図解している。この図は、突き棒106の前進行程の間にパンチ8上に取り付けられた缶ボディ8がしごき鋳型4を通過した後のある瞬間におけるパンチ10および突き棒106の位置を示す。
【0033】
センサ2は、導電性の対象までの距離の非常に高い精度、たとえば1ミクロン未満の精度を伴う測定に使用することが可能な、Micro-Epsilon
TM(マイクロ・イプシロン)によって製造されているeddyNCDT
TMレンジ等の渦電流センサである。好都合なことに、これは対象との接触がまったく必要なく、その結果、この測定には摩損がない。渦電流センサ2は、それぞれ、外側のケーシングの内側にコイル(図示せず)を包含する。それらのコイルには、電磁界を生み出すために、高周波交流電流が供給される。コイルの電磁界は、導電性材料(缶ボディ10の材料等)の中に渦電流を誘導し、それがコイルによって生み出された磁界に対抗する逆磁界をレンツの法則に従って作り出す。センサ2は、コイルから導電性材料までの距離によって決定される逆磁界の強度に依存する電圧出力を生み出すべく構成される。センサ2は、検出可能な出力信号が生み出されるために、導電性材料が位置する必要がある作用エリアまたは『スポット・サイズ』を有する。たとえば、センサが、約3mmの距離にある導電性材料の検出に使用されるときには、作用エリアを約1cm
2とすることができるが、必要であれば、シールドを使用してその面積をより小さくすることが可能である。
図2には、示されている2つのセンサ2A、2Bについての作用エリア12A、Bが図解されている。センサ2は、それらそれぞれの作用エリアを、缶ボディがパンチ8によって軸A-A’に沿って運ばれるときにそれが通過するように軸A-A’に向けて向き付けされる。
【0034】
渦電流センサは、使用される強磁性体コアの周波数応答によって制限されて、より低い時間分解能、たとえば約50Hz(すなわち、毎秒の測定値)未満の時間分解能を一般的に有する誘導性近接センサ等の他のタイプのセンサより好ましい。
【0035】
上で触れたとおり、渦電流センサは、以前にパンチ/突き棒の半径方向のアライメント(または、オフセット)の監視のために使用された。これを行うために、通常、単一の行程の途中か、または複数行程にわたるかのいずれかにおいてセンサからの出力信号が処理されて、経時的なパンチ/突き棒の角度偏差の軌跡が作られる。その信号がパンチ/突き棒を検出するセンサによって支配されることから、当該軌跡は、センサに対するこれらの構成要素の半径方向のアライメントについての有用な診断情報を提供することが可能である。たとえば、ドーマに対する突き棒の半径方向のミスアライメントは、中心を外れてドーマを叩くパンチによりもたらされる突き棒に発生した比較的大きな振動運動によって識別可能である。しかしながら、驚くべきことに、渦電流出力信号は、缶ボディの側壁の高さについての有用な診断情報の獲得にも使用することが(後述するとおり)可能である。これは、薄い缶の側壁から発生した信号が、突き棒/パンチから発生する信号より小さい大きさ、より短い持続時間を有するという事実にもかかわらず可能である。渦電流センサは、ほかのタイプの誘導性センサより遙かに高い周波数(たとえば、MHz台の周波数)において動作可能であり、そのことが、センサを通り過ぎる缶の動きの精密な解明を充分に高い時間的分解能をもって可能にすることから、これらのタイプの測定を行うために特に好ましい。渦電流センサを使用するさらなる利点は、パンチの構成における変動を相殺するためのそれらの較正を不要にし得ることである。
【0036】
図3は、センサのうちの1つから獲得された例示的な出力信号300(垂直軸上に示されている)を時間(水平軸上に示されている)の関数として図解している。信号300は(時間が増加する順に):缶ボディの基部がセンサの作用エリア内に入る前の時間に対応する低い値(たとえば、0)の初期部分302と;作用エリアが缶ボディによって占められる割合の増加によってもたらされる立ち上がりエッジ304と;(a)信号が値s
1を伴って概略で一定となる、缶ボディが完全にセンサの作用エリアを占めていることに対応する平坦域部分306と;(b)作用エリアを離れる缶ボディの割合の減少およびパンチに関連付けされる立ち下がりエッジ308と;(b)信号が値s
2を伴って概略で一定となる、センサがパンチだけを検出していることに対応する後期平坦領域310と、を包含する。
【0037】
センサによって集合的に生み出される出力信号300は、作用エリアに入る缶ボディ上の所定の角度位置に関連付けされる進入時間t
0と、後の、作用エリア12を出る角度位置に関連付けされる退出時間t
1を決定するべく処理される。
図3に示されている例においては、進入時間t
0が、出力信号300の立ち上がりエッジ304から、信号の平坦域部分306と関連付けされる値を(たとえば、信号300のデータ・ポイントを通る直線当て嵌めによって)識別し、その後、値s
1の半分(または、何らかのそのほかの端数)に信号が到達する立ち上がりエッジ部分304内の時間を決定することによって決定され、たとえば、立ち上がりエッジ304に対して補間関数(多項式またはスプライン関数等)を当て嵌め、求根アルゴリズム(ニュートン法等)を使用することによって進入時間t
0を決定する。類似する手順を使用して退出時間t
1を、隣接する平坦領域306、310と関連付けされる値s
1、s
2を使用して信号300の立ち下がりエッジ部分308から決定することが可能である。信号300の立ち上がりおよび/または立ち下がりエッジの位置を突き止めるこのほかの方法も使用することが可能である。また進入時間t
0および退出時間t
1を、種々の既知の高さの缶についての進入および退出時間の較正によって獲得されたヒューリスティック関数を使用して補正することも可能である。
【0038】
パンチおよび/または突き棒から生じる信号300への影響は、パンチ上の缶ボディを伴わずに駆動される缶ボディメーカの『バックグラウンド』信号を記録し、その後、そのバックグラウンド信号を、缶ボディメーカが正常に駆動されるときに獲得される信号300から差し引くことによって除去することが可能である。場合によっては、バックグラウンド信号を、パンチ上の缶ボディを伴わずに獲得された2以上の信号の代表値(たとえば、平均値)とすることができる。
【0039】
図4は、センサ・アレイの8つのセンサのそれぞれからの信号300を処理することによって獲得された退出時間400(グラフの垂直軸)を、突き棒の軸A-A’周りの各センサの角度(グラフの水平軸)の関数としてプロットしたグラフを示している。角度に対する退出時間400の変動は、缶ボディの側壁の高さ(
図2に、参照番号14A、Bによって識別されている)のそれの軸周りの変動から生じる。たとえば、缶ボディの側壁の高さ14Aが缶ボディの直径方向に反対側の側壁の高さ14Bに満たないことから、センサ2Aの信号300から決定された退出時間400Aは、センサ2Bの信号300から決定された退出時間400Bより手前になる。
【0040】
一連の缶ボディのそれぞれについての退出時間400を互いに比較して、それらの缶ボディの側壁の品質を評価することが可能である(角度情報を保持するか、または缶ボディ毎の平均の側壁の高さを考察するかのいずれか)。たとえば、退出時間400の最大と最小の間の差、または退出時間400の標準偏差/分散等の退出時間400の広がりの測度を計算することが可能である。この測度は、突き棒の速度を乗ずることによって距離に変換することが可能である。測度(または、距離測度)があらかじめ定義済みの範囲の外側に落ちる場合には、製造される缶ボディを、特定の品質レーティングを有するとして識別することができ、たとえば、50ミクロン以下の距離測度は、許容可能として識別することができるが、50ミクロンを超える距離測度は、缶ボディのエッジの一様性が乏しいこと、たとえば、その缶ボディが『シュガー・スクープ』欠陥を抱えていることが示されたと見做す。
【0041】
それに代えて、またはそれに加えて、退出時間400を監視して、それらのうちのいずれもあらかじめ決定された範囲の外側に落ちていないことの確認が可能である。たとえば、異なる(たとえば、連続する)缶ボディについて獲得される退出時間400を、ボディメーカのツーリング(たとえば、しごき鋳型)の摩損または損傷、またはカップが作られる金属コイル内の変動によって生じることがある缶ボディメーカ内へ供給されるカップの一様性の欠落を示し得るアウトライヤまたは傾向について監視することが可能である。
【0042】
信号300および/または退出時間400は、各行程の間にわたる突き棒についての(したがって、パンチについての)長さ方向の位置データと相関させることが可能である。このデータは、たとえば、突き棒の往復運動の駆動に使用されるシャフトによって回転される高分解能ロータリ・エンコーダから、または突き棒の長さ方向の位置を直接測定する高分解能リニア・エンコーダから獲得することができる。この相関は、センサによって検出されることがあるノイズまたはパンチ/突き棒の部品から生じるそのほかの特徴よりはむしろ、缶ボディに対応する信号データ内の特徴の識別をより容易にする。たとえば、センサの作用エリアに近いか、またはそれの中に位置するパンチの端部に対応する信号300の一部だけが分析を必要とされるように、時間よりはむしろ突き棒の位置の関数として信号300を処理するべく位置データを使用することが可能である。それに加えて、時間の関数として信号300について上に述べられている処理を、突き棒の位置の関数としての信号300のために類似に実行することが可能であり、このことは推定されることになる各缶ボディの側壁の高さの直接的な推定を、突き棒の速度(行程毎に異なることがあり得る)を推定することを必要とせずに可能にする。
【0043】
突き棒の軸周りの複数のセンサは、缶ボディ側壁の高さにおける変動の決定を可能にするが、それにもかかわらず、単一のセンサだけを使用して有用なデータを獲得することは可能である。たとえば、アライメントの悪化、摩損、および/または原料金属の変動を示すことができる行程毎の傾向について、および/またはアウトライヤについて監視するべく単一のセンサからのデータを使用することが可能である。
【0044】
センサ・アレイから獲得された信号300の処理は、アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)を使用して信号300をデジタル化するコンピュータ・デバイス(図示せず)によって実行され、信号は、有線または無線接続によってコンピュータ・デバイスへ提供される。コンピュータ・デバイスは、上に述べられている方法に従って信号300を処理するためのインストラクションをストアしているメモリと、当該インストラクションを実行するためのプロセッサとを包含する。インストラクションは、コンピュータ可読非一過性ストレージ媒体から、またはそのほかの、インターネットからダウンロードされるコンピュータ・プログラム等のコンピュータ・プログラム・プロダクトからコンピュータ・デバイスへ提供することができる。センサ・データ300および/またはデータの処理によって獲得された時間を、コンピュータ・デバイスが、その後に取り出して分析するために、または、製缶の特定期間の、またはひとまとまりの缶の『品質管理』レポートを生成するために、たとえばデータベース内に記録することができる。またコンピュータ・デバイスは、たとえば、退出時間400が1または複数の評価基準を満たさない場合に製缶を停止すること、または退出時間400に応じて缶ボディメーカの1または複数の駆動パラメータ(設定速度/反復レート等)を調整することといった、センサ信号300の処理によって獲得される退出時間400に基づく缶ボディメーカのコントロールに使用することもできる。
【0045】
製缶の間にセンサ・アレイ500から獲得された測定値300は、機械学習、分析および/または人工知能テクニックを使用して、どのようにすれば缶ボディメーカの動作を改善することが可能であるかを決定するべく分析することが可能である。たとえば、退出時間400に基づいて(たとえば、あらかじめ決定された範囲内にある側壁の高さを伴って製造された缶の割合に基づいて)フィットネス・メトリックに従って缶ボディメーカの動作パラメータを変更するべく、進化アルゴリズム(または、別のタイプの最適化アルゴリズム)を使用することが可能である。
【0046】
アルゴリズムへ提供されるか、かつ/またはコントロールされる缶ボディメーカのための動作パラメータは:製缶レート(缶ボディメーカの設定速度)と、ツール・パックの動作温度と、ツール・パックへの冷却剤の供給レートと、ツール・パックへの潤滑剤の供給レートと、ボディメーカ内へのブランクの供給レートと、突き棒の軸に対するドーマの位置(アライメント)と、のうちの1つ以上を含むことができる。アルゴリズムは、缶ボディメーカの保守点検または再構成を最後に行ってから経過した時間、現在の鋳型のセットを使用して製造した缶の数、および/またはボディメーカへ供給されるカップの厚さまたは重さ等のフィードストックの品質の測定値といったほかのタイプのデータを入力として取ることもできる。
【0047】
場合によっては、最適化アルゴリズムを使用して特定のパラメータを最適化(たとえば、最大化)することが、センサ・アレイ500からのデータ300から決定されたとおりの缶の側壁の高さの制約を条件として可能であり、たとえば、側壁の高さを許容可能な範囲内にとどめることを条件として(かつ、そのほかの動作パラメータも許容可能/安全範囲内にとどめることを前提にして)製缶レートを最適化することが可能である。
【0048】
缶ボディメーカ内の構成要素の摩損または移動によって生じる缶ボディメーカの経時的な変化を補償するために、フィードバック・コントロールもまた、缶ボディメーカの動作パラメータのうちの1つ以上を調整するべく、使用することが可能である。たとえば、比例積分微分(PID)コントローラを使用して缶ボディメーカの動作パラメータを変更し、その缶ボディメーカの動作パラメータの関数として退出時間400から決定される誤差信号を最小化することが可能である。
【0049】
フィードバック・コントロールは、ボディメーカを含めた、製缶ラインの上流および下流にあるそのほかの構成要素に拡張することが可能である。たとえば、上流にあるカップ・プレス機等の構成要素のコントロールにフィードバックを使用することが可能である。ボディメーカの上流にブランクの供給源がいくつかある場合には、特定のカップ・プレス機まで欠陥の検出をトレースバックし、相応じてそのプレス機をコントロール、たとえばシャットダウンすることができる。また、特定の金属コイル供給まで欠陥をトレースバックすることもできる。
【0050】
上に述べられているシステムを使用して識別された欠陥の原因のトレースは、ボディメーカ内に供給されたブランク上のマーク、またはそのほかの可読データによって補助することができる。たとえば、レーザ・エッチングされたマークをボディメーカ内、またはそれの出力部において読み取り、缶の品質データと相関させることができる。
【0051】
また、たとえば、ツール・パック構成要素のうちの1つ以上(鋳型のうちの1つ等)の損傷、または突き棒のミスアライメントが生じてきた結果としてもたらされる、製造されている缶の品質における変化の識別にクラスタリングまたはそのほかのタイプの分類アルゴリズムを使用することも可能である。
【0052】
図5は、概して環状のリングの形式を取るストリッパ・ハウジング502の外側周囲に収容される複数のセンサ500A-Dを包含する例示的なセンサ・アレイ500を図解している。この例においては、ストリッパ・ハウジング502の周りに等間隔で4つのセンサ500A-Dが存在するが、(上に述べられているとおり)より少ない、または追加のセンサを使用することができる。ハウジング502は、パンチの上に位置する特定の直径の缶ボディを収容するべく構成された内部ボアを包含する。ストリッパ・ハウジング502は、ツール・パック・クレードル(図示せず)の後のツール・パック107に取り付けられる。ストリッパ・ハウジング502内におけるセンサ500A-Dの位置決めは、ツーリング(すなわち、ツール・パック構成要素)が変更されないままとなることを可能にし、かつツーリングの交換時にある程度のセンサのための保護を与える。
【0053】
図6は、ツール・パック107(図示せず)に取り付けられるアダプタ・プレート600の断面斜視図であり、それの上にストリッパ・ハウジング502が取り付けられる。ストリッパ・ハウジング502上には、保持リング604およびストリッパ・アダプタ・リング606によってスチール・ストリッパ604が適切に保持されている。この例においては、スチール・ストリッパ8bが示されているが、プラスチック・ストリッパ、または代替のストリッパを使用することも可能である。各センサ面608周りには、センサ面608がストリッパ・ハウジング502と接触しないように空隙が提供される。
【0054】
ストリッパ・ハウジング502は、それぞれが各渦電流センサ500A-Dに隣接する4つの調整メカニズムを収容するべく構成される。この例においては、各調整メカニズムが、小型高精度ボールねじ610とガイド・メカニズム612とを包含している。ボールねじ610は、回転運動を直線運動に変換する。各ねじ610は、ガイド・メカニズム612に取り付けられた可動カラー614を包含し、続いてそのガイド・メカニズム612が、渦電流センサ500A-Dと隣接して取り付けられる。
【0055】
ボールねじ610のマニュアルまたは自動調整時には、カラー614、ガイド・メカニズム612、したがって渦電流センサ500Aを、ストリッパ・ハウジング502の内側の面と直交する方向に調整することが可能である。言い換えると、渦電流センサ500Aは、センサ面608がストリッパ・ハウジング502の内側の面から突出するか、それと面一になるか、または中に入り込むかのいずれかとなるように調整すること、または締め込むことまたは戻すことが可能である。認識されることになろうが、センサ面500Aの位置は、使用されることになる突き棒106の直径に応じて、または缶ボディというよりはむしろパンチから生じる『バックグラウンド』信号が最小化されるように、センサ500A-Dから獲得される信号300を最適化するべく調整することが可能である。
【0056】
原理的には、渦電流センサ以外の(または、それをはじめとして)ほかのセンサを、適切な出力信号の獲得に使用することは可能である。たとえば、光学センサ(たとえば、フォト鋳型オード)を使用して缶ボディを撮像すること、またはその光学センサの正面を通過する缶ボディによって生じる反射率の変化を測定することが可能である。光学センサは、オイル、塵、および汚れの蓄積を防止するべく規則的に(たとえば、それらにわたって連続的にクリーニング流体を流すことによって)クリーニングする必要がある。したがって、非光学センサ(渦電流センサ等)が好ましい。
【0057】
この分野の当業者は認識するであろうが、本発明の範囲からの逸脱を伴うことなく、上に述べられている実施態様に対して多様な修正を行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
2 センサ、渦電流センサ
2A センサ
2B センサ
3 センサ・アレイ
4 しごき鋳型
8 パンチ
10 パンチ、缶ボディ
12 作用エリア
12A 作用エリア
14A 側壁の高さ
14B 側壁の高さ
2A、2B センサ
101 モジュラ・ボディメーカ、ボディメーカ、缶ボディメーカ
102 ベース
103 マシン・ベッド
105 突き棒アッセンブリ
106 突き棒
107 ツール・パック
108 ボトム形成ツール
109 ドーマ・モジュール
110 缶排出タレット
111 送り込み-排出モジュール
112 再絞りスリーブ・モジュール
113 支持構造
114 送り込みメカニズム
115 再絞りスリーブ
116 再絞りキャリッジ
300 信号、出力信号、センサ・データ、センサ信号、データ、測定値
302 初期部分
304 立ち上がりエッジ、立ち上がりエッジ部分
306 平坦域部分
308 立ち下がりエッジ
310 後期平坦領域
400 退出時間
400A 退出時間
400B 退出時間
500 センサ・アレイ
500A 渦電流センサ、センサ、センサ面
500A-D センサ、渦電流センサ
502 ストリッパ・ハウジング、ハウジング
600 アダプタ・プレート
604 スチール・ストリッパ、保持リング
606 ストリッパ・アダプタ・リング
608 センサ面
610 ボールねじ、ねじ
612 ガイド・メカニズム
614 可動カラー、カラー
12A、12B 作用エリア
117a、117b プッシュ・ロッド
【手続補正書】
【提出日】2023-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶ボディメーカ内における缶ボディの製造の間に、前記缶ボディの側壁内の欠陥または劣化を検出する方法であって、各缶ボディが、往復運動する突き棒上のパンチに取り付けられたカップを、前記ボディメーカのツール・パック内に収められた1または複数の鋳型を通して押すことによって形成され、
前記ツール・パックの外側の前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに配置された1または複数の渦電流センサから出力信号を獲得することと、
前記出力信号を処理して前記センサを通り過ぎる缶ボディ側壁の開放端の通過を検出し、それによって缶ボディ側壁の高さまたは厚さの測度を決定することと、
前記決定された測度を分析して缶ボディ側壁の欠陥または劣化を識別することと、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記1または複数のセンサは、前記突き棒の軸周りに互いから角度上離間された複数のセンサを包含し、前記決定された測度は、前記缶ボディの周囲の2以上の場所についての、前記缶ボディ側壁の前記高さまたは厚さの測度を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記渦電流センサまたは各渦電流センサは、ストリッパフィンガが備えられたストリッパを包含するストリッパ・ハウジング内に取り付けられる、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記測度のそれぞれがあらかじめ決定された範囲内にあるか否かを決定すること、を包含する、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記測度は、缶の側壁の高さの測度であり、前記あらかじめ決定された範囲は、10mm未満、または5mm未満、または2mm未満の幅を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記信号と、前記突き棒の軸に沿って前記突き棒の位置を示すデータとを相関させること、を包含する、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記位置データは、リニア・エンコーダから、または前記突き棒の駆動に使用されるシャフトによって回転されるべく構成されたロータリ・エンコーダから獲得される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
缶ボディ側壁の欠陥または劣化が識別された場合に、オペレータに対するアラームまたは通知を生成すること、を包含する、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
缶ボディメーカを駆動する方法であって、
請求項1に記載の方法を使用して製造の間の前記缶ボディ側壁の欠陥または劣化を検出することと、当該検出があった場合には、前記ボディメーカ、または前記ボディメーカが置かれている製造ラインの1または複数の動作パラメータを調整して、前記欠陥または前記劣化の発生を軽減することと、を包含する、方法。
【請求項10】
前記1または複数の動作パラメータは、製造レートを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記動作パラメータは、前記ボディメーカの上流または下流にある前記製造ラインの構成要素、たとえばカップ・プレス機のパラメータである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法を実施するべく構成されたプロセッサを包含する、コンピュータ・デバイス。
【請求項13】
コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに
請求項1に記載の方法を実行させるインストラクションを包含する、コンピュータ・プログラム・プロダクト。
【請求項14】
缶ボディメーカ内における缶ボディの製造の間に、前記缶ボディの側壁内の欠陥または劣化を検出するための装置であって、各缶ボディが、往復運動する突き棒上のパンチに取り付けられたカップを、前記ボディメーカのツール・パック内に収められた1または複数の鋳型を通して押すことによって形成され、
前記ツール・パックに隣接して配置され、中に1または複数の渦電流センサが取り付けられたハウジングであって、前記ハウジングおよびセンサが、前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに前記センサまたは各センサが配置されるように前記缶ボディメーカ内における取り付けのために構成される、ハウジングと、
前記センサまたは各センサと有線または無線通信し、前記センサの出力信号を前記センサから受け取り、前記出力信号を処理して前記センサを通り過ぎる缶ボディ側壁の開放端の通過を検出し、それによって缶ボディ側壁の高さまたは厚さの測度を決定し、かつ前記決定された測度を分析して缶ボディ側壁の欠陥または劣化を識別するべく構成されたコンピュータ処理ユニットと、
を包含する、装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置との組み合わせで缶ボディメーカを包含するシステムであって、前記缶ボディメーカが、往復運動する突き棒上に取り付けられるパンチと、ツール・パック内に収められる1または複数の鋳型とを包含し、前記ハウジングおよびセンサが、前記缶ボディメーカ内に、前記センサまたは各センサが、前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに配置されるように取り付けられる、システム。
【請求項16】
缶ボディメーカ内における缶ボディの製造の間に、前記缶ボディの側壁内の欠陥または劣化の発生を軽減する前記缶ボディメーカを駆動する方法であって、各缶ボディが、往復運動する突き棒のパンチに取り付けられたカップを、前記ボディメーカのツール・パック内に収められた1または複数の鋳型を通して押すことによって形成され、
前記ツール・パックの外側の前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに配置された1または複数のセンサから出力信号を獲得することと、
前記出力信号を処理して前記センサを通り過ぎる缶ボディ側壁の開放端の通過を検出し、それによって缶ボディ側壁の高さまたは厚さの測度を決定することと、
前記決定された測度を分析して缶ボディ側壁の欠陥または劣化を識別することと、
前記ボディメーカの、または前記ボディメーカが置かれている製造ラインの別の構成要素の1または複数の動作パラメータを調整して、前記欠陥または前記劣化の発生を軽減することと、
を包含する、方法。
【請求項17】
前記1または複数の動作パラメータは、
製缶レート(前記缶ボディメーカの設定速度)と、
前記ツール・パックの動作温度と、
前記ツール・パックへの冷却剤の供給レートまたは温度と、
前記ツール・パックへの潤滑剤の供給レートと、
前記突き棒の軸に対するドーマの位置と、
から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
カップから缶ボディを製造するためのシステムであって、
往復運動する突き棒のパンチの上に取り付けられたカップを、前記ボディメーカのツール・パック内に収められた1または複数の鋳型を通して押すことによって缶ボディを形成する缶ボディメーカと、
前記ツール・パックに隣接して配置され、中に1または複数のセンサが取り付けられたハウジングであって、前記ハウジングおよびセンサが、前記センサまたは各センサが、前記缶ボディメーカ内に、前記ツール・パックの出口端部に隣接して前記突き棒の軸周りに配置されるように取り付けられる、ハウジングと、
前記センサまたは各センサと有線または無線通信し、前記センサの出力信号を前記センサから受け取り、前記出力信号を処理して前記センサを通り過ぎる缶ボディ側壁の開放端の通過を検出し、それによって缶ボディ側壁の高さまたは厚さの測度を決定し、前記決定された測度を分析して缶ボディ側壁の欠陥または劣化を識別し、かつ前記ボディメーカの、または前記ボディメーカが置かれている製造ラインの別の構成要素の1または複数の動作パラメータを調整して、前記欠陥または前記劣化の発生を軽減するべく構成されたコンピュータ処理ユニットと、
を包含する、システム。
【請求項19】
前記1または複数の動作パラメータは、
製缶レート(前記缶ボディメーカの設定速度)と、
前記ツール・パックの動作温度と、
前記ツール・パックへの冷却剤の供給レートまたは温度と、
前記ツール・パックへの潤滑剤の供給レートと、
前記突き棒の軸に対するドーマの位置と、
から選択される、請求項18に記載のシステム。
【国際調査報告】