(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】主貯蔵部および毛細管バッファ貯蔵部を備えるエアロゾル発生物品
(51)【国際特許分類】
A24F 40/42 20200101AFI20230612BHJP
A24F 40/10 20200101ALI20230612BHJP
A24F 40/465 20200101ALI20230612BHJP
A24F 40/48 20200101ALI20230612BHJP
【FI】
A24F40/42
A24F40/10
A24F40/465
A24F40/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567765
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2022-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2021062569
(87)【国際公開番号】W WO2021228911
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】クルバ ジェローム クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ミロノフ オレク
(72)【発明者】
【氏名】オズスン オズギュル
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA05
4B162AA22
4B162AB14
4B162AB23
4B162AC17
4B162AC18
4B162AC22
4B162AC27
(57)【要約】
本発明は、エアロゾル発生装置とともに使用するためのエアロゾル発生物品に関する。物品は、エアロゾル形成液体を貯蔵するための主貯蔵部と、毛細管現象に起因して、エアロゾル形成液体を貯蔵するための主貯蔵部と流体連通する毛細管バッファ貯蔵部と、を備える。物品は、毛細管バッファ貯蔵部および主貯蔵部の外部への境界面においてエアロゾル形成液体を提供するための、少なくとも毛細管バッファ貯蔵部と流体連通する液体導管をさらに備える。本発明はさらに、エアロゾル発生システムであって、かかる物品と、該物品とともに使用するためのエアロゾル発生装置と、を備える、エアロゾル発生システムに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置とともに使用するためのエアロゾル発生物品であって、前記物品が、
エアロゾル形成液体を貯蔵するための主貯蔵部と、
毛細管現象に起因して、エアロゾル形成液体を貯蔵するための前記主貯蔵部と流体連通する毛細管バッファ貯蔵部と、
前記毛細管バッファ貯蔵部および前記主貯蔵部の外部への境界面においてエアロゾル形成液体を提供するための、少なくとも前記毛細管バッファ貯蔵部と流体連通する液体導管と、を備え、前記液体導管が、フィラメントの束を含み、前記フィラメントの束が、第一のサセプタ材料を含むか、または前記第一のサセプタ材料から作製されている、複数の第一のフィラメントを含む、エアロゾル発生物品。
【請求項2】
前記毛細管バッファ貯蔵部の少なくとも一部分を画定する二つの対向する壁間の最大寸法が、0.2ミリメートル~5ミリメートル、特に0.5ミリメートル~3ミリメートル、好ましくは1ミリメートル~2.5ミリメートルの範囲内である、請求項1に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項3】
前記毛細管バッファ貯蔵部が、最大60立方ミリメートル、特に最大50立方ミリメートル、好ましくは最大40立方ミリメートル、より好ましくは最大30立方ミリメートル、最も好ましくは最大20立方ミリメートルの総体積を備える、先行請求項のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項4】
前記毛細管バッファ貯蔵部が、ラメラ構造を備える、先行請求項のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項5】
前記主貯蔵部が、前記毛細管バッファ貯蔵部へと直接広がっているか、または前記主貯蔵部および前記毛細管バッファ貯蔵部が、少なくとも第一の液体チャネルを介して互いに流体連通する、先行請求項のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項6】
前記第一の液体チャネルが、前記物品を通る液体の流れを、少なくとも90度、特に180度、転向するように構成されている、請求項5に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項7】
前記物品を通る液体の流れに関して、前記毛細管バッファ貯蔵部が、前記主貯蔵部の下流にあり、前記液体導管が、前記毛細管バッファ貯蔵部の下流にある、先行請求項のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項8】
前記物品を通る液体の流れに関して、前記流体導管の少なくとも一部分が、前記毛細管バッファ貯蔵部の下流部分に、または前記下流部分の中に配設されている、先行請求項のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項9】
前記毛細管バッファ貯蔵部が、前記主貯蔵部に隣接して配設されている、先行請求項のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項10】
前記主貯蔵部の少なくとも一部分および前記毛細管バッファ貯蔵部の少なくとも一部分の両方を画定する仕切り壁をさらに備える、先行請求項のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項11】
前記主貯蔵部の少なくとも一部分および前記毛細管バッファ貯蔵部の少なくとも一部分が、互いに一体的に形成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項12】
前記物品が、気化ゾーンを備え、前記液体導管が、前記気化ゾーン内を通過するか、または前記気化ゾーンに面する、先行請求項のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項13】
前記主貯蔵部、前記バッファ貯蔵部、および前記加熱ゾーンが、直列に流体接続されている、先行請求項のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項14】
前記バッファ貯蔵部が、いずれの毛細管材料または液体保有材料も含まない、先行請求項のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項15】
エアロゾル発生システムであって、エアロゾル発生装置と、前記装置とともに使用するための、先行請求項のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品と、を備える、エアロゾル発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアロゾル形成液体を貯蔵するための少なくとも一つの液体貯蔵部を備える、エアロゾル発生装置とともに使用するためのエアロゾル発生物品に関する。本開示はさらに、エアロゾル発生システムであって、かかる物品と、該物品とともに使用するためのエアロゾル発生装置と、を備える、エアロゾル発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル形成液体を加熱することによって吸入可能なエアロゾルを発生することは、従来技術から一般的に公知である。このために、液体エアロゾル形成基体は、液体導管、例えば、芯要素によって、液体貯蔵部から貯蔵部の外部の領域に搬送されてもよい。そこで、液体はヒーターによって気化され、その後、吸入可能なエアロゾルを形成するように空気経路に露出されてもよい。液体貯蔵部および液体導管の両方は、物品内に貯蔵されたエアロゾル形成液体を気化するためにエアロゾル発生装置の中に挿入されるように構成されたエアロゾル発生物品の一部であってもよい。
【0003】
実践により、かかるシステムを使用したエアロゾル発生は、時折、確実に機能しないことが示されている。特に、エアロゾル発生は、エアロゾル発生システムが動作中にユーザーによって保持される位置に依存し得る。
【0004】
したがって、先行技術の解決策の利点を有する一方で、先行技術の制限を軽減する、エアロゾル形成液体からエアロゾルを発生させるための、エアロゾル発生物品およびエアロゾル発生システムを有することが望ましいであろう。特に、エアロゾル形成液体からエアロゾルを確実に発生させるための、エアロゾル発生物品およびエアロゾル発生システムを有することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、エアロゾル発生装置とともに使用するためのエアロゾル発生物品が提供される。物品は、エアロゾル形成液体を貯蔵するための主貯蔵部と、毛細管現象に起因して、エアロゾル形成液体を貯蔵するための主貯蔵部と流体連通する毛細管バッファ貯蔵部と、を備える。物品は、毛細管バッファ貯蔵部および主貯蔵部の外部への境界面においてエアロゾル形成液体を提供するための、少なくとも毛細管バッファ貯蔵部と流体連通する液体導管をさらに備える。
【0006】
本発明によれば、液体導管が特定の位置でのみエアロゾル形成液体に適切に沈められるという事実により、多くのシステムにおいてエアロゾル発生は不十分であることが見出されている。しかしながら、特定の位置では、例えば、エアロゾル発生システムが逆さまにされた場合、エアロゾル形成液体が貯蔵部内で位置を変える場合があり、そのため、液体導管はもう液体と接触していない。結果として、貯蔵部の外側の気化ゾーンへのエアロゾル形成液体の送達が中断され、これにより、エアロゾル形成の急速な低下、またはさらには機能停止が引き起こされる。加えて、エアロゾル形成液体の欠如に起因して、液体導管が気化ゾーンで過熱する可能性があり、これは次に、エアロゾル形成液体または物品材料のいずれかから来る有害な成分の発生を引き起こす場合がある。
【0007】
これを是正するために、本発明は、主貯蔵部および液体導管と流体連通する小さい体積の毛細管バッファ貯蔵部を使用することを提案する。バッファ貯蔵部は、物品位置とは独立して、バッファ貯蔵部と流体連通している液体導管に十分な量のエアロゾル形成液体を確実に提供するために、毛細管現象に起因して、エアロゾル形成液体を貯蔵するように構成されている。この程度まで、毛細管バッファ貯蔵部の体積が十分に小さく選ばれた場合、毛細管効果が重力に対して優位となることが見出されている。結果として、エアロゾル形成液体がバッファ貯蔵部内に充填された後に、特に、物品の向きが、例えば、実質的に直立位置から実質的に水平位置、またはさらには逆さまの位置へと変化した場合、エアロゾル形成液体が、主貯蔵部内に戻るように流れることが防止される。基本的に、本発明によるエアロゾル発生物品の毛細管バッファ貯蔵部は、万年筆のバッファ貯蔵部のように作用する。
【0008】
理論上、異なる表面張力および密度を有する液体の場合、毛細管の長さが大きく変わることが予想されるであろう。しかしながら、実際には、毛細管の長さは、概して、ほとんどの液体に対して数ミリメートルほどである。異なる液体に対して毛細管の長さの範囲がこのように狭い理由は、とりわけ、表面の欠陥、接触角ヒステリシス、および表面の清浄性にある。したがって、毛細管バッファ貯蔵部の寸法は、毛細管バッファ貯蔵部の少なくとも一部分を画定する二つの対向する壁間の最大寸法が、0.2ミリメートル~5ミリメートル、特に0.5ミリメートル~3ミリメートル、好ましくは1ミリメートル~2.5ミリメートルの範囲内となるように選ばれ得る。これらの値は、十分な毛細管現象を確実にする一方で、依然として十分な量のエアロゾル形成液体を貯蔵するための十分に大きなバッファ体積を提供することを可能にする。特に、バッファ貯蔵部の一つの寸法のみが有効な毛細管の長さよりも小さければ十分であることが見出されている。特に、バッファ貯蔵部の毛細管現象は、毛細管バッファ貯蔵部の少なくとも一部分を画定する二つの対向する壁間の最大寸法が、0.2ミリメートル~5ミリメートル、特に0.5ミリメートル~3ミリメートル、好ましくは1ミリメートル~2.5ミリメートルの範囲内であることに起因し得る。
【0009】
毛細管バッファ貯蔵部は、最大60立方ミリメートル、特に最大50立方ミリメートル、好ましくは最大40立方ミリメートル、より好ましくは最大30立方ミリメートル、最も好ましくは最大20立方ミリメートルの総体積を有してもよい。これらの体積は、依然として適切な毛細管現象を確保する。
【0010】
その逆も可であり、毛細管バッファ貯蔵部の総体積は、少なくとも5立方ミリメートル、特に少なくとも10立方ミリメートル、好ましくは少なくとも15立方ミリメートルであってもよい。これらの体積は、依然として少なくとも数回の吸煙の間持続するのに十分な量のエアロゾル形成液体を閉じ込めて、毛細管バッファ貯蔵部内に提供するのに十分に大きい。
【0011】
毛細管バッファ貯蔵部は、ラメラ構造を備える。ラメラ構造を使用することにより、有利には、バッファ貯蔵部の内表面を増加させ、ひいては、毛細管現象を増加させることができる。ラメラ構造は、基本的に、万年筆のラメラ構造のように作用する。
【0012】
特に、ラメラ構造は、複数のラメラを備え得る。複数のラメラは、互いに隣り合って、特に横並びの構成で、互いに間隙を介して配設され得る。バッファ貯蔵部の対向する壁間の最大寸法に関して上で概して考察されるように、隣接するラメラ間の最大寸法は、有利には、0.2ミリメートル~5ミリメートル、特に0.5ミリメートル~2.5ミリメートル、好ましくは1ミリメートル~2ミリメートルの範囲内であってもよい。
【0013】
特に、バッファ貯蔵部は、いずれの毛細管材料および液体保有材料も含まない場合がある。より具体的には、バッファ貯蔵部は、エアロゾル形成液体で充填されない限り、空洞または空の空間であってもよい。
【0014】
概して、主貯蔵部および毛細管バッファ貯蔵部は、異なる方法で互いに流体連通し得る。
【0015】
一例として、主貯蔵部は、毛細管バッファ貯蔵部へと直接広がっていてもよい。つまり、主貯蔵部および毛細管バッファ貯蔵部は一緒になって、共同の貯蔵部を形成することができ、主貯蔵部および毛細管バッファの各1つは、共同の貯蔵部の一部分を形成する。有利には、かかる構成は、製造が容易かつ安価である。
【0016】
別の例として、主貯蔵部および毛細管バッファ貯蔵部は、少なくとも第一の液体チャネルを介して互いに流体連通し得る。この構成では、主貯蔵部および毛細管バッファ貯蔵部は、互いに分離されており、少なくとも第一の液体チャネルのみによって流体接続されている。有利には、この構成は、特に、毛細管現象が一時的に、エアロゾル形成液体を毛細管バッファ貯蔵部内に適切に閉じ込めるのに不十分であった場合に、毛細管バッファ貯蔵部から主貯蔵部へのエアロゾル形成液体の環流を遅らせることができる。
【0017】
第一の液体チャネルは、物品を通る液体の流れを、少なくとも90度、特に180度、転向するように構成され得る。これにより、互いに隣り合って配設された主貯蔵部および毛細管バッファ貯蔵部を有する、エアロゾル発生物品のコンパクトな設計が可能となる。
【0018】
第一の液体チャネルに加えて、主貯蔵部および毛細管バッファ貯蔵部はまた、少なくとも第二の液体チャネルを介して互いに流体連通し得る。第二のチャネルは、エアロゾル発生システムの使用である液体導管を介して毛細管バッファ貯蔵部内のエアロゾル形成液体が枯渇している間または枯渇した後に、主貯蔵部からの毛細管バッファ貯蔵部の再充填を容易にすること、特に促進することができる。
【0019】
有利には、第一の流体チャネルおよび第二の流体チャネルのうちの少なくとも一つが、エアロゾル形成液体に対する毛細管バッファとしての役割を果たすこともできる。したがって、第一の流体チャネルまたは第二の流体チャネルのうちの少なくとも一つの少なくとも一部分をそれぞれ画定する二つの対向する壁間の最大寸法は、0.2ミリメートル~5ミリメートル、特に0.5ミリメートル~4ミリメートル、好ましくは1ミリメートル~3ミリメートル、最も好ましくは2ミリメートル~3ミリメートルの範囲内であってもよい。特に、第一の流体チャネルおよび第二の流体チャネルのうちの少なくとも一つ直径は、0.2ミリメートル~5ミリメートル、特に0.5ミリメートル~4ミリメートル、好ましくは1ミリメートル~3ミリメートル、最も好ましくは2ミリメートル~3ミリメートルの範囲内であってもよい。
【0020】
物品を通る液体の流れに関して、毛細管バッファ貯蔵部は、主貯蔵部の下流にあることが好ましい。同様に、液体導管は、物品を通る液体の流れに関して、毛細管バッファ貯蔵部の下流にあることが好ましい。
【0021】
さらに、物品を通る液体の流れに関して、流体導管の少なくとも一部分は、毛細管バッファ貯蔵部の下流部分に、または下流部分の中に配設されている。有利には、この配設により、液体導管が、毛細管バッファ貯蔵部内に閉じ込められたエアロゾル形成液体に適切に沈められることを確実にする。これは次に、バッファ貯蔵部から、エアロゾル形成液体が気化され得る主貯蔵部およびバッファ貯蔵部の外部領域へのエアロゾル形成液体の適切な送達を確実にする。
【0022】
特に、主貯蔵部、バッファ貯蔵部、および加熱ゾーンは、直列に流体接続され得る。
【0023】
上で既にさらに言及されたように、毛細管バッファ貯蔵部は、主貯蔵部に隣接して配設され得る。この配設は、エアロゾル発生物品のコンパクトな設計に関して、特にエアロゾル発生物品の短い長さの寸法に関して、有利であることが証明されている。本発明によるエアロゾル発生物品が手持ち式エアロゾル発生装置とともに使用されることが好ましいという事実に関して、コンパクトな設計が特に好ましい。
【0024】
エアロゾル発生物品は、シンプルな設計を有し得る。物品は、主貯蔵部および毛細管バッファ貯蔵部を備える、物品ハウジングを有し得る。ハウジングは液体に対して不浸透性の材料を備える剛性のハウジングであることが好ましい。本明細書で使用される「剛直なハウジング」とは、自立型のハウジングを意味する。ハウジングは、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、またはPET(ポリエチレンテレフタレート)のうちの一つを含むか、またはそれらから作製され得る。PP、PE、およびPETは特にコスト効果が高く、成形、特に押出成形が容易である。ハウジングはまた、可撓性セクションまたは虚脱セクションを含んでもよい。ハウジングは、体積補正のための少なくとも一つの呼吸孔をさらに含み得る。
【0025】
特に、エアロゾル発生物品は、主貯蔵部の少なくとも一部分および毛細管バッファ貯蔵部の少なくとも一部分の両方を画定する仕切り壁を備え得る。この構成は、コンパクトな物品の設計をさらに強化する。仕切り壁は、物品ハウジングの一部であってもよい。
【0026】
さらに、主貯蔵部の少なくとも一部分および毛細管バッファ貯蔵部の少なくとも一部分を互いに一体的に形成することが可能である。このため、エアロゾル発生物品は、特に製造が容易かつ安価である。例えば、少なくとも主貯蔵部および毛細管バッファ貯蔵部の配分、貯蔵部本体は、押出成形された貯蔵部本体、特に一体部品の押出成形された貯蔵部本体として一体的に形成され得る。
【0027】
主貯蔵部および毛細管バッファ貯蔵部の外部領域へと気化されるエアロゾル形成液体の送達をさらに強化するために、液体導管もまた、主貯蔵部と直接流体連通し得る。つまり、カウントされる液体は、毛細管バッファ貯蔵部および主貯蔵部の両方と流体連通し得る。
【0028】
液体導管を主貯蔵部と流体連結するために、エアロゾル発生物品は、主貯蔵部を迂回する、主貯蔵部と流体導管との間の直接流体連通を提供するバイパスチャネルを備え得る。
【0029】
代替的にまたは加えて、エアロゾル発生物品は、三つの交差する流体チャネルを備えることができ、三つの交差する流体チャネルの各々は、主貯蔵部、毛細管バッファ貯蔵部、および流体導管のうちの一つに接続されて、主貯蔵部、毛細管バッファ貯蔵部、および流体導管の各二つの間にノードの流体連通(nodal fluid communication)を提供する。
【0030】
上述のように、流体導管の少なくとも一部分は、毛細管バッファ貯蔵部の下流部分に、または下流部分の中に配設され得る。その目的のために、液体導管は、毛細管バッファ貯蔵部の少なくとも一部分を画定する壁を通過し得る。壁は、例えば、気化ゾーンから毛細管バッファ貯蔵部を分離する、分離壁またはブッシングであってもよい。気化ゾーンは、エアロゾル形成液体が液体導管によって搬送され、搬送されたエアロゾル形成液体が、エアロゾル発生装置での物品の使用時に中で気化される、ゾーンであってもよい。したがって、エアロゾル発生物品は、気化ゾーン、特にエアロゾル形成液体を気化させるための気化空洞を備え得る。
【0031】
気化ゾーン内にエアロゾル形成液体を提供するために、液体導管は、気化ゾーン内を通過し得るか、または気化ゾーンに面し得る。本明細書で使用される場合、「気化空洞に面する」という用語は、液体導管が、気化ゾーンと流体連通するが、気化ゾーンを通過しない、構成を指す。
【0032】
概して、液体導管は、毛細管バッファ貯蔵部から気化ゾーンに搬送するのに適した任意の形状および構成を有し得る。特に、液体導管は、芯要素を含んでもよい。芯要素の構成は、十分な空隙率を有するストランド状ワイヤ、ストランド状の材料のロープ、メッシュ、メッシュ管、いくつかの同心メッシュ管、布、材料のシート、または発泡体(または他の多孔質固体)、微細金属メッシュのロール、または金属箔、繊維もしくはメッシュの何らかの他の配設、または本明細書に記載されるウィッキング作用を実行するように適切にサイズ設定および構成された任意の他の形状であってもよい。
【0033】
液体導管、特に芯要素は、複数のフィラメントを含むフィラメントの束を含み得る。フィラメントの束は、非ストランド状のフィラメントの束であることが好ましい。非ストランド状のフィラメントの束では、フィラメントの束のフィラメントは、相互に交差することなく、好ましくはフィラメントの束の全長の延長に沿って、相互に隣接して延びる。同様に、フィラメントの束は、フィラメントの束のフィラメントがストランド化されているストランド状部分を含み得る。ストランド状部分は、フィラメントの束の機械的安定性を強化し得る。
【0034】
一例として、フィラメントの束は、複数のフィラメントが互いに平行に配設され得る、その長さ延長部の少なくとも一部分に沿った平行束部分を含み得る。平行束部分は、フィラメントの束の一方の端部分に、またはフィラメントの束の両端部分間に配設されてもよい。代替的に、平行束部分は、フィラメントの束の長さ寸法全体に沿って延びてもよい。
【0035】
別の実施例として、フィラメントの束は、第一の浸漬セクション、第二の浸漬セクション、および第一の浸漬セクションと第二の浸漬セクションとの間の中間セクションを含み得る。少なくとも中間セクションに沿って、複数のフィラメントは互いに平行に配設されてもよい。バッファ貯蔵部および気化ゾーンを有する物品の特定の構成に関して、第一の浸漬セクションおよび第二の浸漬セクションの各々は、毛細管バッファ貯蔵部内に少なくとも部分的に配設されてもよく、中間セクションは、毛細管バッファ貯蔵部の外部の領域内、特に気化ゾーン内に配設されてもよい。
【0036】
フィラメントは本質的に毛細管現象を提供するため、液体を搬送するためにフィラメントを使用することは特に有利である。さらに、フィラメントの束では、束ねられたときに複数のフィラメント間に形成される狭い空間に起因して、毛細管現象がさらに強化される。特に、これは、フィラメント間の狭い空間が平行な配設に沿って変化しないため、それに沿って毛細管現象が一定であるフィラメントの平行な配設に当てはまる。
【0037】
フィラメントは、固体材料フィラメントであることが好ましい。固体材料フィラメントは安価で、かつ製造が簡単である。加えて、固体材料フィラメントは、良好な機械的安定性を提供し、それ故にフィラメントの束を頑丈にする。概して、これらは、特に束ねられたときに、エアロゾル形成液体を搬送するのに適した任意の断面形状を有し得る。したがって、フィラメントは、円形、楕円形、長円形、三角形、長方形、四角形、六角形、または多角形断面を有してもよい。フィラメントは、実質的に円形、長円形、または楕円形の断面を有することが好ましい。こうした断面を有するため、フィラメントは、互いに面積接触ではなく線接触しているのみであり、複数のフィラメント間に毛細管空間をそれ自体上に形成する。
【0038】
毛細管現象は一般滴に、二つの別個の表面である、フィラメントの液体表面および固体表面の表面エネルギーの減少に依存する。毛細管現象は、液体表面およびフィラメントの両方の曲率半径に依存する効果を含む。したがって、大きな表面積および小さな曲率半径に対する必要性があり得、これらは両方ともフィラメントの小さな直径によって達成される。したがって、複数の第一のフィラメントは、最大で0.025ミリメートル、最大で0.05ミリメートル、最大で0.1ミリメートル、最大で0.15ミリメートル、最大で0.2ミリメートル、最大で0.25ミリメートル、最大で0.3ミリメートル、最大で0.35ミリメートル、最大で0.4ミリメートル、最大で0.45ミリメートル、または最大で0.5ミリメートルの直径を有してもよい。
【0039】
概して、フィラメントの束は、線形フィラメントの束、すなわち、実質的に真っ直ぐな、非湾曲または非屈曲フィラメントの束であってもよい。この構成は、フィラメントの束のわずかな屈曲、すなわち、フィラメントの束の長さ延長部に沿った大きな曲率半径を除外するものではない。本明細書で使用される場合、大きな曲率半径とは、フィラメントの束の全長より10倍、特に20倍、または50倍、または特に100倍大きい曲率半径を含み得る。代替的に、フィラメントの束は湾曲していてもよい。特に、フィラメントの束は、実質的にU字形状、またはC字形状、またはV字形状であってもよい。
【0040】
複数のフィラメントは、表面処理されてもよい。特に、複数のフィラメントは、少なくとも部分的に表面コーティング、例えば、エアロゾル化強化表面コーティング、液体接着表面コーティング、撥液表面コーティング、または抗菌表面コーティングを含み得る。エアロゾル化強化表面コーティングは、有利なことに、特に、様々なユーザーの体験を強化し得る。液体接着剤表面コーティングは、フィラメントの束の毛細管現象の強化に関して有益であり得る。抗菌表面コーティングは、細菌汚染を低減するように機能し得る。特にフィラメントの先端での撥液表面コーティングは、液体滴下を回避し得る。
【0041】
利用可能な空間、フィラメントの寸法、および搬送および加熱されるエアロゾル形成液体の量に応じて、フィラメントの束は、3~100個のフィラメント、特に10~80個のフィラメント、好ましくは20~60個のフィラメント、より好ましくは30~50個のフィラメント、例えば40個のフィラメントを含み得る。
【0042】
さらに別の実施例として、液体導管は、互いに部分的に交差する二つのフィラメントアレイを含んでもよい。特に、液体導管は、並んで配設された長軸方向フィラメントのアレイ、ならびに並んで配設され、かつ長軸方向フィラメントの長さ延長部に対して横断方向に長軸方向フィラメントのアレイと交差する横断方向フィラメントのアレイを含み得る。横断方向フィラメントのアレイは、液体導管が少なくとも一つのグリッド部分および少なくとも一つの非グリッド部分を含むように、長軸方向フィラメントのアレイの長さ部分に沿ってのみ延びてもよい。一例として、長軸方向フィラメントのアレイは、実質的に円筒状の形状、特に中空円筒状の形状を有してもよい。別の実施例として、長軸方向フィラメントのアレイは、実質的に円錐形状または実質的に円錐台形状、特に実質的に中空円錐形状または実質的に中空円錐台形状を有してもよい。これらの構成のいずれにおいても、長軸方向フィラメントは、円筒状、円錐状、円錐台状、中空円筒状、中空円錐状、または中空円錐台形状のシェル表面をそれぞれ形成する。それぞれの形状の長さ軸は、実質的に長軸方向フィラメントの長さ延長部に沿って延びる。有利なことに、前述の形状のいずれかは、固有の機械的寸法安定性を提供する。横断方向フィラメントのアレイは、これらの構成のいずれかにおいて実質的にリング形状を有することが好ましい。すなわち、横断方向フィラメントは、サセプタアセンブリのグリッド部分における長軸方向フィラメントの円筒状、円錐状、円錐台状、中空円筒状、中空円錐状、または中空円錐台状の形状のアレイの外周に沿って延びる。全体として見ると、サセプタアセンブリは、前述の構成のいずれかにおいて実質的に冠形状を有する。さらに、円錐状、円錐台状、中空円錐状、または中空円錐台状の形状の場合、長軸方向フィラメントは、それぞれの形状の基部に向かって互いから分岐する。したがって、円錐状、円錐台状、中空円錐状、または中空円錐状の形状の長軸方向フィラメントのアレイは、ファンアウト部分の提供を容易にする。
【0043】
液体導管は、誘導加熱可能であり得ることが好ましい。例えば、液体導管は、誘導加熱可能なフィラメントの束を含み得るか、または誘導加熱可能なフィラメントの束のうちの一つであってもよい。このように、液体導管は有利なことに、エアロゾル形成液体の搬送および加熱の両方の機能を実施する能力を有する。有利なことに、この二重機能は、搬送および加熱のための別個の手段を有することなく、液体導管の材料を非常に節約し、かつコンパクトな設計を可能にする。加えて、熱源、すなわち、液体導管とそれに接着されたエアロゾル形成液体との間には直接的な熱接触がある。ヒーターが飽和された芯と接触する場合とは異なり、液体導管と少量の液体との間の直接的な接触は、有利なことに、フラッシュ加熱、すなわち、蒸発の迅速な開始を可能にする。この点で、液体導管は、液体搬送サセプタアセンブリであるか、または液体搬送サセプタアセンブリを含むとみなされ得る。本明細書で使用される「誘導加熱可能」という用語は、交番磁界に供されたときに電磁エネルギーを熱へと変換する能力を有するサセプタ材料を含む液体導管を指す。これは、その電気的特性および磁性に応じてサセプタ材料内で誘発されるヒステリシス損失または渦電流のうちの少なくとも一つの結果であり得る。ヒステリシス損失は、交流電磁場の影響下で切り替えられる材料内の磁区に起因して、強磁性またはフェリ磁性のサセプタ材料の中で生じる。渦電流は、導電性サセプタ材料内に誘発される。導電性の強磁性またはフェリ磁性サセプタ材料である場合、渦電流およびヒステリシス損失の両方によって熱が発生する。
【0044】
したがって、誘導加熱可能な液体導管は、少なくとも第一のサセプタ材料を含み得る。第一のサセプタ材料は、それぞれ、導電性および強磁性またはフェリ磁性のうちの少なくとも一つである材料を含んでもよく、またはそれらで作製されてもよい。すなわち、第一のサセプタ材料は、フェリ磁性材料、強磁性材料、または導電性材料、または導電性フェリ磁性材料もしくは導電性強磁性材料のうちの一つを含み得るか、またはそれらで作製され得る。
【0045】
加えて、液体導管は、第二のサセプタ材料を含んでもよい。第一のサセプタ材料は、熱損失、およびそれ故に加熱効率について最適化され得、第二のサセプタ材料は温度マーカーとして使用され得る。このため、第二のサセプタ材料は、フェリ磁性材料または強磁性材料のうちの一つを含むことが好ましい。特に、第二のサセプタ材料は、所定の加熱温度に対応するキュリー温度を有するように選ばれ得る。そのキュリー温度にて、第二のサセプタ材料の磁性は強磁性またはフェリ磁性から常磁性に変化し、その電気抵抗の一時的な変化が伴う。それゆえに、誘導源によって吸収された電流の対応する変化を監視することによって、第二のサセプタ材料がそのキュリー温度に達したときに、およびそれゆえに、所定の加熱温度に達したときに、その変化を検知することができる。第一のサセプタ材料は、第二のサセプタ材料とは異なることが好ましい。第二のサセプタ材料は、摂氏500度より低いキュリー温度を有することが好ましい。特に、第二のサセプタ材料は、摂氏350度を下回る、好ましくは摂氏300度を下回る、より好ましくは摂氏250度を下回る、さらにより好ましくは摂氏200度を下回る、最も好ましくは摂氏150度を下回るキュリー温度を有してもよい。キュリー温度は、エアロゾル内に有害な成分が発生するのを防止するために、気化されるエアロゾル形成液体の沸点を下回るように選ばれることが好ましい。
【0046】
特に、液体導管は、一つ以上のサセプタ材料のみで作製された誘導加熱可能な液体導管であってもよい。
【0047】
一例として、液体導管は、第一のサセプタ材料を含むか、または第一のサセプタ材料で作製される複数の第一のフィラメントを含み得る。加えて、液体導管は、第二のサセプタ材料を含むか、または第二のサセプタ材料で作製される複数の第二のフィラメントを含んでもよい。温度マーカーとして十分に機能させるためには、数個の第二のフィラメントが必要であるのみである。したがって、第一のフィラメントの数は、第二のフィラメントの数よりも多くてもよく、特に、2倍、または3倍、または4倍、または5倍、または6倍、または7倍、または8倍、または9倍、または10倍よりも多くてもよい。好ましくは、第一および第二のフィラメントの直径は、十分な量の渦電流を誘発し、それ故に交番磁界に露出されたときに十分な量の熱エネルギーを生成するために、表皮深さの2倍よりも大きい。表皮深さは、誘導加熱されたときに導電性サセプタ材料内で電気伝導がどの程度遠くまで起こるかの尺度である。したがって、使用される交番磁界の材料および周波数に応じて、第一および第二のフィラメントは、少なくとも0.015ミリメートル、少なくとも0.02ミリメートル、少なくとも0.025ミリメートル、少なくとも0.05ミリメートル、少なくとも0.075ミリメートル、少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.125ミリメートル、少なくとも0.15ミリメートル、少なくとも0.2ミリメートル、少なくとも0.3ミリメートル、または少なくとも0.4ミリメートルの直径を有してもよい。第二のフィラメントは、液体導管全体を通してランダムに分布されてもよい。有利なことに、ランダムな分布は、液体導管の製造中にわずかな労力を必要とするのみである。
【0048】
前述の複数の第一のフィラメントおよび随意の複数の第二のフィラメントは、上述の液体導管の構成、例えば、少なくとも一つの平行束部分を含むフィラメントの束、二つの浸漬セクションおよび中間部分を含むフィラメントの束、または少なくとも一つのグリッド部分および少なくとも一つの非グリッド部分を形成するように、互いに部分的に交差する二つのフィラメントアレイを含む液体導管、のうちのいずれかで使用され得る。
【0049】
液体導管が誘導加熱可能である場合、フィラメントは、エアロゾル発生物品の幾何学的中心軸に対して中心を外れて配設され得る。このため、液体導管は、液体導管を加熱するためにその中にエアロゾル発生物品が挿入され得る、誘導加熱エアロゾル発生装置によって発生される交番磁界の対称軸に対して、中心を外れて配設可能であってもよい。有利なことに、中心を外れた配設、すなわち、非対称配設のために、液体導管は、対称中心配設と比較して、より高い磁場密度を有する交番磁界の領域内に配設される。結果として、加熱効率が強化される。
【0050】
エアロゾル発生物品は、単回使用のためのエアロゾル発生物品、または複数回使用のためのエアロゾル発生物品であってもよい。後者の場合、エアロゾル発生物品は再充填可能であってもよい。つまり、主貯蔵部は、エアロゾル形成液体で再充填可能であってもよい。任意の構成では、エアロゾル発生物品は、主貯蔵部および毛細管バッファ貯蔵部のうちの少なくとも一つの中に含有されるエアロゾル形成液体をさらに含み得る。
【0051】
本明細書で使用される「エアロゾル形成液体」という用語は、エアロゾル形成液体の加熱に伴いエアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有する液体に関する。エアロゾル形成液体は、加熱されることが意図される。エアロゾル形成液体は、固体のエアロゾル形成材料または構成要素と、液体のエアロゾル形成材料または構成要素との両方を含んでもよい。エアロゾル形成液体は、加熱に伴い液体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含むたばこ含有材料を含んでもよい。代替的に、または追加的に、エアロゾル形成液体は非たばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成液体は、エアロゾル形成体をさらに含んでもよい。適切なエアロゾル形成体の例はグリセリンおよびプロピレングリコールである。エアロゾル形成液体はまた、その他の添加物および成分(ニコチンまたは風味剤など)も含んでもよい。特に、エアロゾル形成液体は水、溶媒、エタノール、植物抽出物、および天然の風味または人工の風味を含んでもよい。エアロゾル形成液体は、水性エアロゾル形成液体、または油性エアロゾル形成液体であってもよい。
【0052】
加えて、物品はマウスピースを備えてもよい。本明細書で使用される場合、「マウスピース」という用語は、物品からエアロゾルを直接吸い込むために、ユーザーの口に入れられる物品の一部分を意味する。マウスピースはフィルターを含むことが好ましい。フィルターは、エアロゾルの望ましくない構成成分を濾別するために使用されてもよい。フィルターはまた、追加材料、例えば、エアロゾルに添加される風味材料も含んでもよい。
【0053】
本発明によると、本発明による、かつ本明細書に記載のエアロゾル発生装置およびエアロゾル発生物品を備えるエアロゾル発生システムも提供されている。物品は、エアロゾル発生装置とともに使用するために構成されている。
【0054】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」という用語は、物品内のエアロゾル形成液体を加熱することによってエアロゾルを発生するように、少なくとも一つのエアロゾル形成液体を含む少なくとも一つのエアロゾル発生物品と相互作用する能力を有する電気的に作動する装置を記述するために使用される。エアロゾル発生装置は、ユーザーによってユーザーの口を通して直接吸入可能なエアロゾルを発生するための吸煙装置であることが好ましい。特に、エアロゾル発生装置は手持ち式のエアロゾル発生装置である。
【0055】
装置は、エアロゾル発生物品の少なくとも一部分を取り外し可能に受容するための受容空洞を備え得る。
【0056】
加えて、エアロゾル発生装置は、電気加熱配設を備え得る。加熱配設は、バッファ貯蔵部から(および該当する場合には、主貯蔵部から)、バッファ貯蔵部および主貯蔵部の外部領域、特に上述の気化ゾーンへと液体導管によって搬送されるエアロゾル形成液体を加熱するように構成され得る。
【0057】
加熱配設は、エアロゾル形成液体を加熱するための抵抗発熱体を含む抵抗加熱配設であってもよい。抵抗発熱体は、例えば、加熱ワイヤまたは加熱コイルであってもよい。使用時、抵抗発熱体は、エアロゾル発生物品がエアロゾル発生装置内に受容されたときに、液体導管、特に、エアロゾル発生物品の気化ゾーン内に配設される液体導管の一部に熱的に接触して、または熱的に近接して配設される。
【0058】
代替的に、加熱配設は、誘導加熱配設であってもよい。すなわち、エアロゾル発生装置は、誘導加熱エアロゾル発生装置であってもよい。この構成は、物品の液体導管が誘導加熱可能である場合に特に好ましい。誘導加熱はまた、エアロゾル発生物品が、エアロゾル発生物品の気化ゾーンに配設される液体導管、特に、液体導管の一部に熱的に接触して、または熱的に近接して配設される(別個の)サセプタ要素を備える場合に機能し得る。また、エアロゾル発生装置自体が、エアロゾル発生物品がエアロゾル発生装置内に受容されたときに、液体導管、特に、エアロゾル発生物品の気化ゾーン内に配設された液体導管の一部と熱的に接触して、または熱的に近接して配設されるサセプタ要素を備えることも可能である。後者の構成、すなわち、液体導管自体が誘導加熱可能でない場合には、サセプタ要素は、例えば、液体導管を囲むサセプタスリーブまたはサセプタコイル、特に、エアロゾル発生物品の気化ゾーンに配設される液体導管の一部であってもよい。
【0059】
誘導加熱エアロゾル発生装置、特に誘導加熱配設は、物品がエアロゾル発生装置内に受容されたときに、エアロゾル発生物品内のエアロゾル形成液体を誘導加熱するために、受容空洞内に交番磁界を発生させるように構成および配設された少なくとも一つの誘導源を含んでもよい。
【0060】
交番磁界を発生させるために、誘導源は少なくとも一つのインダクタ、好ましくは受容空洞の周りに配設された少なくとも一つの誘導コイルを含み得る。液体導管が誘導加熱可能である場合、誘導コイルは、物品が受容空洞内に、特にエアロゾル発生物品の気化ゾーン内に配設される液体導管の一部の周りに受容されたときに、液体導管の周りに配設される。
【0061】
少なくとも一つの誘導コイルは、らせん状コイルまたはフラット平面状コイル、特にパンケーキコイルまたは湾曲した平面状コイルであり得る。フラットスパイラルコイルの使用は、頑丈でかつ製造が安価なコンパクトな設計を可能にする。らせん状誘導コイルの使用は有利なことに、均質な交番磁界を発生することを可能にする。本明細書で使用される「フラットスパイラルコイル」は、一般的に平面の、コイルの巻線の軸がコイルが置かれた表面に対して垂直であるコイルを意味する。フラットスパイラル誘導コイルは、コイルの平面内で任意の所望の形状を有することができる。例えば、フラットスパイラルコイルは円形の形状を有してもよく、または概して楕円形もしくは長方形の形状を有してもよい。しかしながら、本明細書で使用される「フラットスパイラルコイル」という用語は、平面状のコイルと、曲面に適合するように成形されたフラットスパイラルコイルとの両方を網羅する。例えば、誘導コイルは、好ましくは円筒状のコイル支持体(例えば、フェライトコア)の周囲に配設された「湾曲した」平面状コイルであってもよい。さらに、フラットスパイラルコイルは、例えば四回巻きフラットスパイラルコイルの二層、または四回巻きフラットスパイラルコイルの単層を備えてもよい。少なくとも一つの誘導コイルは、エアロゾル発生装置の主本体またはハウジングのうちの少なくとも一つ内に保持され得る。
【0062】
エアロゾル発生物品は、存在する場合、誘導加熱可能な液体導管が、物品がエアロゾル発生装置の受容空洞内に受容されたときに、誘導源によって発生される交番磁界の対称軸に対して中心を外れて配設されるように構成されてもよい。上述のように、中心を外れた配設、すなわち、非対称配設のために、液体導管は、対称中心配設と比較して、より高い磁界密度を有する交番磁界の領域内に配設される。結果として、加熱効率が強化される。
【0063】
誘導源は交流(AC)発電機を備えてもよい。AC発電機はエアロゾル発生装置の電源によって電力供給されてもよい。AC発電機は少なくとも一つの誘導コイルに動作可能に連結される。特に、少なくとも一つの誘導コイルは、AC発電機の一体型の部分であってもよい。AC発電機は、交番磁界を発生させるために少なくとも一つの誘導コイルを通過する高周波振動電流を発生するように構成されている。AC電流はシステムの起動後、少なくとも一つの誘導コイルに連続的に供給されてもよく、または、例えば、毎回の吸煙ごとに断続的に供給されてもよい。
【0064】
誘導源は、LCネットワークを含むDC電源に接続されたDC/ACコンバータを備え、LCネットワークはコンデンサおよびインダクタの直列接続を備えることが好ましい。
【0065】
誘導源は、高周波磁場を発生するように構成されていることが好ましい。本明細書において参照される通り、高周波磁場は、500kHz(キロヘルツ)~30MHz(メガヘルツ)、特に5MHz(メガヘルツ)~15MHz(メガヘルツ)、好ましくは5MHz(メガヘルツ)~10MHz(メガヘルツ)の範囲内であり得る。
【0066】
エアロゾル発生装置は、特に、所定の動作温度へのエアロゾル形成液体の加熱を制御するために、好ましくは閉ループ構成における、加熱プロセスの動作を制御するように構成されたコントローラをさらに備えてもよい。エアロゾル形成液体を加熱するのに使用される動作温度は、摂氏100度~摂氏300度、特に、摂氏150度~摂氏250度の範囲、例えば、摂氏230度であってもよい。これらの温度は、エアロゾル形成基体を加熱するが燃焼させないための典型的な動作温度である。
【0067】
コントローラは、エアロゾル発生装置の総合コントローラであってもよく、またはエアロゾル発生装置の総合コントローラの一部であってもよい。コントローラは、マイクロプロセッサ、例えばプログラマブルマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または特定用途向け集積回路チップ(ASIC)もしくは制御を提供する能力を有するその他の電子回路を備えてもよい。コントローラは、少なくとも一つのDC/ACインバータ、および/または電力増幅器、例えば、クラスC電力増幅器、またはクラスD電力増幅器、またはクラスE電力増幅器など、さらなる電子構成要素を含んでもよい。特に、誘導源はコントローラの一部であってもよい。
【0068】
エアロゾル発生装置は電源、特に誘導源にDC供給電圧およびDC供給電流を提供するように構成されたDC電源を備え得る。電源はリン酸鉄リチウム電池などの電池であることが好ましい。代替として、電源は、コンデンサなどの別の形態の電荷蓄積装置であってもよい。電源は再充電を必要とし得る、すなわち、電源は充電可能であり得る。電源は、一回以上のユーザー体験のために十分なエネルギーの貯蔵を可能にする容量を有する場合がある。例えば、電源は約六分間、または六分の倍数の時間にわたるエアロゾルの連続的な発生を可能にするのに十分な容量を有してもよい。別の実施例において、電源は所定の吸煙回数、または誘導源の不連続的な起動を可能にするのに十分な容量を有してもよい。
【0069】
誘導加熱エアロゾル発生装置の場合、エアロゾル発生装置は、誘導コイルの少なくとも一部分の周りに配設され、かつ少なくとも一つの誘導源の交番磁界を受容空洞に向かって歪めるように構成された磁束コンセントレータをさらに備え得る。したがって、物品が受容空洞内に受容されたとき、交番磁界は、存在する場合、誘導加熱可能な液体導管に向かって歪む。磁束コンセントレータは、磁束コンセントレータ箔、特に、多層磁束コンセントレータ箔を含むことが好ましい。
【0070】
本発明によるエアロゾル発生システムのさらなる特徴および利点は、本発明によるエアロゾル発生物品に関してすでに上述されており、等しく適用される。
【0071】
本発明は特許請求の範囲に定義される。しかしながら、以下に非限定的な実施例の非網羅的なリストを提供している。これらの実施例のいずれか一つ以上の特徴は、本明細書に記載の別の実施例、実施形態、または態様のいずれか一つ以上の特徴と組み合わされてもよい。
実施例Ex1:エアロゾル発生装置とともに使用するためのエアロゾル発生物品であって、物品が、
エアロゾル形成液体を貯蔵するための主貯蔵部と、
毛細管現象に起因して、エアロゾル形成液体を貯蔵するための主貯蔵部と流体連通する毛細管バッファ貯蔵部と、
毛細管バッファ貯蔵部および主貯蔵部の外部への境界面においてエアロゾル形成液体を提供するための、少なくとも毛細管バッファ貯蔵部と流体連通する液体導管と、を備える、エアロゾル発生物品。
実施例Ex2:毛細管バッファ貯蔵部の少なくとも一部分を画定する二つの対向する壁間の最大寸法が、0.2ミリメートル~5ミリメートル、特に0.5ミリメートル~3ミリメートル、好ましくは1ミリメートル~2.5ミリメートルの範囲内である、実施例Ex1に記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex3:毛細管バッファ貯蔵部が、最大でも60立方ミリメートル、特に最大でも50立方ミリメートル、好ましくは最大でも40立方ミリメートル、より好ましくは最大でも30立方ミリメートル、最も好ましくは最大でも20立方ミリメートルの総体積を備える、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex4:毛細管バッファ貯蔵部が、少なくとも5立方ミリメートル、特に少なくとも10立方ミリメートル、好ましくは少なくとも15立方ミリメートルの総体積を備える、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex5:毛細管バッファ貯蔵部が、ラメラ構造を備える、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex6:ラメラ構造が、複数のラメラを含み、隣接するラメラ間の最大寸法が、0.2ミリメートル~5ミリメートル、特に0.5ミリメートル~2.5ミリメートル、好ましくは1ミリメートル~2ミリメートルの範囲内である、実施例Ex5に記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex7:主貯蔵部が、毛細管バッファ貯蔵部へと直接広がっている、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex8:主貯蔵部および毛細管バッファ貯蔵部が、少なくとも第一の液体チャネルを介して互いに流体連通する、先行実施例Ex1~Ex6のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex9:第一の液体チャネルが、物品を通る液体の流れを、少なくとも90度、特に180度、転向するように構成されている、実施例Ex8に記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex10:主貯蔵部および毛細管バッファ貯蔵部が、第二の液体チャネルを介して互いに流体連通する、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex11:第一の流体チャネルおよび第二の流体チャネルのうちの少なくとも一つの少なくとも一部分を画定する二つの対向する壁間の最大寸法、特に、第一の流体チャネルおよび第二の流体チャネルのうちの少なくとも一つの直径が、0.2ミリメートル~5ミリメートル、特に0.5ミリメートル~4ミリメートル、好ましくは1ミリメートル~3ミリメートル、最も好ましくは2ミリメートル~3ミリメートルの範囲内である、実施例Ex9またはEx10に記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex12:物品を通る液体の流れに関して、毛細管バッファ貯蔵部が、主貯蔵部の下流にある、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex13:物品を通る液体の流れに関して、液体導管が、毛細管バッファ貯蔵部の下流にある、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex14:物品を通る液体の流れに関して、流体導管の少なくとも一部分が、毛細管バッファ貯蔵部の下流部分に、または下流部分の中に配設されている、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex15:毛細管バッファ貯蔵部が、主貯蔵部に隣接して配設されている、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex16:主貯蔵部の少なくとも一部分および毛細管バッファ貯蔵部の少なくとも一部分の両方を画定する仕切り壁をさらに備える、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex17:主貯蔵部の少なくとも一部分および毛細管バッファ貯蔵部の少なくとも一部分が、互いに一体的に形成されている、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex18:液体導管が、主貯蔵部と直接流体連通する、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex19:主貯蔵部を迂回する、主貯蔵部と流体導管との間の直接流体連通を提供するバイパスチャネルをさらに備える、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex20:三つの交差する流体チャネルをさらに備え、三つの交差する流体チャネルの各々が、主貯蔵部、毛細管バッファ貯蔵部、および流体導管のうちの一つに接続されて、主貯蔵部、毛細管バッファ貯蔵部、および流体導管の各二つの間にノードの流体連通を提供する、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex21:液体導管が、毛細管バッファ貯蔵部の少なくとも一部分を画定する壁を通過する、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex22:物品が、気化ゾーンを備える、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex23:液体導管が、気化ゾーン内を通過するか、または気化ゾーンに面する、実施例Ex22に記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex24:液体導管が、芯要素、特にフィラメントの束、好ましくは非ストランド状のフィラメントの束、またはメッシュを備える、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex25:液体導管が、誘導加熱可能である、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex26:液体導管が、液体搬送サセプタアセンブリを含む、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex27:主貯蔵部および毛細管バッファ貯蔵部のうちの少なくとも一つの中に含有されるエアロゾル形成液体をさらに含む、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品。
実施例Ex28:エアロゾル発生システムであって、エアロゾル発生装置と、該装置とともに使用するための、先行実施例のいずれか一つに記載のエアロゾル発生物品と、を備える、エアロゾル発生システム。
【0072】
ここで、以下の図を参照しながら実施例をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】本発明によるエアロゾル発生物品の第一の実施形態を概略的に図示する。
【
図2】
図1によるエアロゾル発生物品を線A-Aに沿って通る断面を示す。
【
図3】
図1によるエアロゾル発生物品を線B-Bに沿って通る断面を示す。
【
図4】
図1による物品と、該物品とともに使用するためのエアロゾル発生装置と、を備える、本発明によるエアロゾル発生システムの例示的な実施形態を概略的に図示する
【
図5】
図1に示される物品と同様であるが、仕切り壁を含まない、エアロゾル発生物品を示す。
【
図6】実質的に水平な位置にある、
図1によるエアロゾル発生物品を示す。
【
図7】逆さまの位置にある、
図1によるエアロゾル発生物品を示す。
【
図8】本発明によるエアロゾル発生物品の第二の実施形態を概略的に図示する。
【
図9】本発明によるエアロゾル発生物品の第三の実施形態を概略的に図示する。
【
図10】逆さまの位置にある、
図9によるエアロゾル発生物品を示す。
【
図11】本発明によるエアロゾル発生物品の第四の実施形態を概略的に図示する。
【
図12】
図11によるエアロゾル発生物品を線C-Cに沿って通る断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図1は、本発明の第一の実施形態によるエアロゾル発生物品40を概略的に図示する。
図4に関して以下でより詳細に説明するように、エアロゾル発生物品40は、エアロゾル発生物品40によって提供されるエアロゾル形成液体50を気化させるために、誘導加熱エアロゾル発生装置とともに使用されるように構成されている。物品40は、液体不浸透性の剛直な材料、例えば、PP(ポリプロピレン)で作製された実質的に円筒状の物品ハウジングを備える。物品ハウジングは、円筒状の貯蔵部本体42、貯蔵部本体42の一方の端の底部端キャップ43、および貯蔵部本体42の反対側の端の上部端キャップ44を備える。物品は、貯蔵部本体42の内側空隙を、第一の区画および第二の区画に仕切る、仕切り壁41をさらに備える。第一の区画および第二の区画は、貯蔵部本体42の長軸方向軸に沿って互いに隣接して横方向に配設される。第一の区画は、エアロゾル形成液体50を貯蔵するための主貯蔵部51としての役割を果たす。第二の区画内で、物品40は、貯蔵部本体42の長さ延長部の約半分のところで、実質的にディスク形状のブッシング45を備える。ブッシング45は、第二の区画の内側空隙を二つの部分、すなわち、気化空洞53、および毛細管現象に起因して、エアロゾル形成液体を貯蔵するための毛細管バッファ貯蔵部52に分離する。これについては、以下でさらにより詳細に説明する。底部端キャップ43の陥凹部を介して、毛細管バッファ貯蔵部52は、主貯蔵部51と流体連通する。底部端キャップ43の陥凹部は、主貯蔵部51が毛細管バッファ貯蔵部52へと直接広がり、エアロゾル形成液体50が主貯蔵部51から毛細管バッファ貯蔵部52内へと自由に流れることを可能にするように形成されている。底部端キャップ43に面する仕切り壁41の自由端の周りの液体の流れを容易にするために、仕切り壁41の自由端は、丸みのある縁を含む。特に、丸みのある縁は、仕切りの端の周りを流れるように、空気が貯蔵部にしみ込むのを容易にする。対照的に、鋭利な縁は、接触線のピン留めにより気泡閉じ込め部である可能性がある。
【0075】
概して、エアロゾル発生物品40は、単回使用のためのエアロゾル発生物品、または複数回使用のためのエアロゾル発生物品であってもよい。後者の事例では、エアロゾル発生物品40は再充填可能であってもよい。つまり、主貯蔵部51は、枯渇後にエアロゾル形成液体50で再充填可能であってもよい。
【0076】
物品40は、エアロゾル形成液体50を毛細管バッファ貯蔵部52から気化空洞53内に搬送するための、毛細管バッファ貯蔵部52と流体連通する液体導管70をさらに備える。液体導管70のさらなる詳細は、
図2および
図3に図示されており、これらの図は、
図1によるエアロゾル発生物品を、それぞれ線A-Aおよび線B-Bに沿って通るそれぞれの断面を示している。本実施形態では、液体導管70は、互いに平行に配設された複数のフィラメント71、72を備える、非ストランド状のフィラメントの束として実現されている。フィラメントの束におけるフィラメント71、72の配設に起因して、およびフィラメント71、72の小さな直径に起因して、液体導管70は、フィラメント71とフィラメント72との間に形成された狭いチャネルを備える。これらのチャネルは、液体導管70の長さ延長部に沿って毛細管現象を提供し、それ故に、エアロゾル形成液体50を毛細管バッファ貯蔵部52から気化空洞53へと搬送することを可能にする。
【0077】
液体搬送特性に加えて、液体導管70は、誘導加熱のためにも構成されている。その目的のために、液体導管70は、熱発生に関して最適化された第一のサセプタ材料を含む少なくとも複数の第一のフィラメント71を含む。液体導管70はまた、上述のように、温度マーカーとして機能する第二のサセプタ材料を含む、複数の第二のフィラメント72を含んでもよい。フィラメント材料の感受性の強い性質に起因して、液体導管70は、交番磁界内で誘導加熱される能力を有し、それ故に、フィラメント71、72と熱的に接触しているエアロゾル形成液体を気化する能力を有する。したがって、液体導管70は、エアロゾル形成液体の搬送および加熱という二つの機能を実行する能力を有する。この理由のために、液体導管は、液体搬送サセプタアセンブリとしても示される。
【0078】
図1に見ることができるように、液体導管70は、液体導管70の第一の部分がバッファ貯蔵部52内に配設され、第二の部分が気化空洞53内に配設されるように、ブッシング45の開口部を通過する。ブッシング45を通る開口部は、液体導管のフィードスルーとしてだけでなく、フィラメント71、72を束ねるため、つまり、フィラメント71、72を一緒に保つための役割を果たす。さらに、開口部は、物品ハウジングに対する液体導管70の位置を固定するための役割を果たす。
図2および
図3にさらに見ることができるように、液体導管70のフィラメントの束は、実質的に円形断面を有し、これは、特に製造が簡単である。
【0079】
液体導管70の第一の部分は、バッファ貯蔵部52内に配設され、ひいては、エアロゾル形成液体50に沈められるため、エアロゾル形成液体50をバッファ貯蔵部52から液体導管70の第二の部分へと搬送するための浸漬セクション75として作用する。気化空洞53では、第二の部分は、フィラメント71、72を誘導的に加熱するために交番磁界に露出されたときに、エアロゾル形成液体50を気化させるための加熱セクション76として少なくとも部分的に作用する。これは
図4に関して、以下でより詳細に説明される。
【0080】
図1でさらに見ることができるように、物品40は、貯蔵部本体42を通って気化空洞53内への少なくとも一つの空気吸込み口46を備え、これにより、空気が気化空洞53に入ることを可能にする。空気吸込み口46は、液体導管70の加熱セクション76に、またはその周りに気流を提供するように構成され得る。空気吸込み口46は、貯蔵部本体42を通る穴であってもよい。同様に、空気吸込み口46は、気流を液体導管70の特定の標的場所に方向付けるように構成されたノズルであってもよい。加えて、物品40は、上部端キャップ44に取り付けられ、かつ吸煙のためにユーザーの口の中に取り込まれるように構成されている、先細り形状のマウスピース47を備える。マウスピース47は、フィルター(図示せず)および空気出口48をさらに含む。マウスピース47は、上部端キャップ44内の出口49を通して気化空洞45と流体連通している。そのため、ユーザーがマウスピース47で吸煙すると、空気が、空気吸込み口46を通って気化空洞53内に引き出される。そこから、空気は、開口49を通ってマウスピース47の中へと通過し、さらにフィルター55および空気出口48を通ってユーザーの口の中へと通過する。気化空洞53では、液体導管70の加熱セクション76から気化されたエアロゾル形成液体は、エアロゾルを形成するように、物品40を通過する空気に露出され、次いで、エアロゾルが、マウスピース47を通って引き出され得る。
【0081】
図4は、本発明の例示的な実施形態によるエアロゾル発生システム80を概略的に図示する。システム80は、
図1~3に示すエアロゾル発生物品40、ならびにエアロゾルを発生するために物品40と相互作用する能力を有する電気的に作動するエアロゾル発生装置60を備える。このため、エアロゾル発生装置60は、装置60の近位端に、装置ハウジング61内に形成された受容空洞62を含む。受容空洞62は、エアロゾル発生物品40の少なくとも一部分を取り外し可能に受容するように構成されている。特に、エアロゾル発生装置は、浸漬セクション75を介して毛細管バッファ貯蔵部52から気化空洞53内の加熱セクション76へと搬送されるエアロゾル形成液体50を気化するために、液体導管70の加熱セクション76を誘導加熱するように構成されている。このため、エアロゾル発生装置60は、誘導コイル32を含む誘導源を備える。本実施形態では、誘導コイル32は、受容空洞62内に実質的に均質な交番磁界を発生するように配設および構成される単一のらせん状コイルである。
図4に見ることができるように、誘導コイル32は、エアロゾル発生物品40が受容空洞62内に受容されたときに、液体導管70の加熱セクション76を囲むのみであるように、受容空洞62の近位端部分の周りに配設される。したがって、装置60の使用時、誘導コイル32は、物品40の気化空洞53内の液体導管70の加熱セクション76を貫通するのみである、交番磁界を発生する。対照的に、局所加熱に起因して、液体導管70の浸漬セクション75は、気化温度を下回る温度のままである。したがって、毛細管バッファ貯蔵部52および主貯蔵部51内のエアロゾル形成液体50の沸騰が防止される。したがって、使用時に、液体導管70は、高温および低温のセクションを有する、その長さ延長部に沿った温度プロファイルを含む。より具体的には、温度プロファイルは、浸漬セクション75内のエアロゾル形成液体50の気化温度T_vapを下回る温度から、加熱セクション76内のそれぞれの気化温度を超える温度への温度上昇を示す。
【0082】
サセプタアセンブリ10の使用時に形成される実際の温度プロファイルは、熱伝導率および液体導管70の長さに依存する。したがって、浸漬セクション75と加熱セクション76との間に十分な温度勾配を有するために、液体導管70は、特定の全長を必要とする。本実施形態に関して、液体導管70の全長は、5ミリメートル~50ミリメートル、特に10ミリメートル~40ミリメートル、好ましくは10ミリメートル~30ミリメートル、より好ましくは10ミリメートル~20ミリメートルの範囲内であってもよい。
【0083】
液体導管70は、エアロゾル発生物品40の幾何学的中心軸に対して中心から外れて配設される。このため、液体導管70は、物品40が装置60の空洞62内に受容されたときに、誘導コイル32によって発生する交番磁界の対称軸に関して中心から外れて配設される。有利には、中心を外れた配設により、液体導管70は、対称中心配設と比較して、より高い磁場密度を有する交番磁界の領域内に配設される。結果として、加熱効率が強化される。
【0084】
エアロゾル発生装置60は、エアロゾル発生システム80の動作を制御するための、具体的には加熱動作を制御するためのコントローラ64をさらに備える。さらに、エアロゾル発生装置60は、交番磁界を発生するための電力を提供する電源63を備える。電源63は、リン酸鉄リチウム電池などの電池であることが好ましい。電源63は、一回以上のユーザー体験のために十分なエネルギーの貯蔵を可能にする容量を有してもよい。コントローラ64および電源63の両方は、エアロゾル発生装置60の遠位部分に配設される。
【0085】
ここで、毛細管バッファ貯蔵部52の機能を、
図5~
図7に関してより詳細に説明する。
【0086】
図5は、
図1によるエアロゾル発生物品40を示すが、毛細管バッファ貯蔵部を含まない。さらに
図1とは対照的に、
図5は、実質的に水平の向きにある物品40を示す。異なる向きにより、物品40内のエアロゾル形成液体50は、(流体レベルに依存して)液体導管70がエアロゾル形成液体50ともはや接触しないような方法で再分布される。結果として、この向きで物品が特定の時間にわたって使用された場合、気化ゾーン53へのエアロゾル形成液体の送達が中断され、これにより、エアロゾル形成の急速な低下、またはさらには機能停止が引き起こされる。
【0087】
バッファ貯蔵部52の目的は、これを是正することである。基本的に、バッファ貯蔵部52は、主貯蔵部51および液体導管70と流体連通しており、かつ物品の向きとは関係なく、毛細管現象に起因して、特定の量のエアロゾル形成液体を閉じ込めるように構成されている、小さい体積の貯蔵部を提供する。このために、毛細管バッファ貯蔵部52の少なくとも一つの寸法は、有効な毛細管の長さほどであるように選ばれ、この長さは通常、ほとんどの液体に対して数ミリメートルの範囲内である。本実施形態では、バッファ貯蔵部52の毛細管現象は、
図3および
図6に示される、仕切り壁41の対向する部分と貯蔵部本体42の内表面との間の最大距離Dが、ほんの数ミリメートルの範囲内にあるという事実によって引き起こされる。例えば、最大距離Dは、1ミリメートル~5ミリメートルの範囲内であってもよい。このため、毛細管効果は、毛細管バッファ貯蔵部52内で重力に対して優位となる。結果として、エアロゾル形成液体50がバッファ貯蔵部52内に充填された後に、物品の向きが変更されたとき、例えば、物品40が、
図1に示されるような実質的に直立位置から、
図6に示されるような実質的に水平位置、またはさらには
図7に示されるような逆さまの位置へと回されたときに、エアロゾル形成液体50が、主貯蔵部51内に戻るように流れることが防止される。したがって、物品の向きとは関係なく、万年筆のバッファ貯蔵部と同様に、バッファ貯蔵部40は、その小さい体積の毛細管現象に起因して、液体エアロゾル形成を確実に閉じ込める。さらに、液体導管に沿った毛細管現象は、依然として、閉じ込められた液体を毛細管バッファ貯蔵部52から気化ゾーンに搬送するのに十分な大きさである。
【0088】
バッファ貯蔵部の体積は、物品の向きとは関係なく、数回の吸煙に利用可能な十分な液体を提供するように選ばれる。したがって、毛細管バッファ貯蔵部52の総体積は、少なくとも5立方ミリメートル、特に少なくとも10立方ミリメートル、好ましくは少なくとも15立方ミリメートルであってもよい。
【0089】
図8は、本発明によるエアロゾル発生140物品の第二の例示的な実施形態を概略的に図示する。概して、
図8によるエアロゾル発生物品140は、
図1に示されるエアロゾル発生物品40と非常に類似している。したがって、同一または類似の特徴は同一の参照符号で示されているが、100だけ増分されている。
図1に示される第一の実施形態とは対照的に、主貯蔵部151は、毛細管バッファ貯蔵部152へと直接広がっていない。代わりに、主貯蔵部151および毛細管バッファ貯蔵部152は、液体チャネル154を介して互いに流体連通する。第一の液体チャネルは、底部端キャップ143内に形成されており、かつ液体の流れを、主貯蔵部151から毛細管バッファ貯蔵部152に180度、転向するように構成されている。この構成は、毛細管バッファ貯蔵部152から主貯蔵部154へのエアロゾル形成液体の予想外の環流を遅らせることができる。第一の液体チャネル154に加えて、主貯蔵部151および毛細管バッファ貯蔵部152はまた、仕切り壁141を通って、第二の液体チャネル155を介して互いに流体連通し得る。第二のチャネル155は、システムの使用である液体導管170を介して毛細管バッファ貯蔵部内のエアロゾル形成液体が枯渇している間または枯渇した後に、主貯蔵部151からの毛細管バッファ貯蔵部152の再充填を容易にすること、特に促進することができる。
【0090】
図9および
図10は、本発明によるエアロゾル発生240物品の第三の例示的な実施形態を概略的に図示する。概して、
図9および
図10によるエアロゾル発生物品240は、
図1に示されるエアロゾル発生物品40と類似している。したがって、同一または類似の特徴は同一の参照符号で示されているが、200だけ増分されている。
図1に示される物品40とは対照的に、
図9および
図10による物品240は、40の幾何学的中心軸に対して対称的に配設された、液体導管270、バッファ貯蔵部252、および気化ゾーン253を備える。気化空洞253は、円筒状の貯蔵部本体242内に同軸に配設された円筒状の仕切り壁241によって形成されている。実質的に中空円筒状の主貯蔵部251は、円筒状の貯蔵部本体242と円筒状の仕切り壁241との間に形成されている。底部部分では、気化空洞253は、ディスク形状のブッシング245によって閉じられている。同様に、円筒状の貯蔵部本体242は、
図1に示される物品40の底部端キャップ43と同様の陥凹部を備える底部端キャップ243によって閉じられている。そこで、毛細管バッファ貯蔵部252が、一方の側の底部端キャップ243の内表面と、もう一方の側の円筒状の仕切り壁241の端面およびディスク形状のブッシング245との間に形成されている。底部端キャップ243の内表面と、円筒状の仕切り壁241の端面およびディスク形状のブッシング245との間の距離Dは、有効な毛細管の長さほど、例えば、1ミリメートル~5ミリメートルの範囲内であるように選ばれる。このため、エアロゾル形成液体が充填された後、バッファ貯蔵部252は、物品240の向きが変更されたとき、例えば、物品40が、
図9に示されるような実質的に直立位置から、
図10に示されるような逆さまの位置へと回されたときであっても、毛細管現象に起因して、特定の量のエアロゾル形成液体を閉じ込める。したがって、液体導管270の浸漬セクション275は常に、物品の位置とは関係なく、エアロゾル形成液体と接触する。毛細管バッファ貯蔵部252の体積は、閉じ込め可能な量のエアロゾル形成液体が少なくとも数回の吸煙に十分であるように選ばれる。
【0091】
図11および
図12は、本発明によるエアロゾル発生240物品の第四の例示的な実施形態を概略的に図示する。概して、
図11および
図12によるエアロゾル発生物品340は、
図1に示されるエアロゾル発生物品40と同様である。したがって、同一または類似の特徴は同一の参照符号で示されているが、300だけ増分されている。
図1に示される物品40とは対照的に、
図11および
図12による物品340は、仕切り壁341に複数のラメラ358をさらに備える。複数のラメラ358は、有利には、バッファ貯蔵部352の内表面、ひいては、その毛細管現象を増加させる。基本的に、ラメラ構造は、万年筆のラメラ構造のように作用する。現時点で、隣接するラメラ間の距離は、1ミリメートル~2ミリメートルの範囲内であってもよい。
【0092】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的において、別途示されていない限り、量(amounts)、量(quantities)、割合などを表すすべての数字は、すべての場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。また、すべての範囲は、開示された最大点および最小点を含み、かつそれらの任意の中間範囲を含み、これらは本明細書に具体的に列挙されている場合も列挙されていない場合もある。したがって、この文脈では、数AはA±5%として理解される。この文脈内において、数Aは、数Aが修正する特性の測定値に対する一般的な標準誤差内にある数値を含むと考えられてもよい。数Aは、添付の特許請求の範囲で使用されるような一部の事例において、それによってAが逸脱する量が特許請求する本発明の基本的かつ新規の特性実質的に影響を及ぼさないという条件で、上記に列挙される割合だけ逸脱してもよい。また、すべての範囲は、開示された最大点および最小点を含み、かつそれらの任意の中間範囲を含み、これらは本明細書に具体的に列挙されている場合も列挙されていない場合もある。
【国際調査報告】