(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】新型コロナウイルス肺炎治療用漢方薬組成物、その調製方法、検出方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 36/9068 20060101AFI20230612BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230612BHJP
A61K 36/752 20060101ALI20230612BHJP
A61K 36/284 20060101ALI20230612BHJP
A61K 36/575 20060101ALI20230612BHJP
A61K 36/484 20060101ALI20230612BHJP
A61K 36/532 20060101ALI20230612BHJP
A61K 36/882 20060101ALI20230612BHJP
A61K 36/725 20060101ALI20230612BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230612BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230612BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230612BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20230612BHJP
G01N 30/90 20060101ALI20230612BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20230612BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20230612BHJP
B01J 20/287 20060101ALI20230612BHJP
G01N 30/74 20060101ALI20230612BHJP
G01N 30/06 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
A61K36/9068
A61P11/00
A61K36/752
A61K36/284
A61K36/575
A61K36/484
A61K36/532
A61K36/882
A61K36/725
A61P43/00 121
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/69
G01N30/90
G01N30/88 C
G01N30/26 A
B01J20/287
G01N30/74 E
G01N30/06 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567780
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2020128753
(87)【国際公開番号】W WO2021223397
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】202010384148.5
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521202112
【氏名又は名称】北京漢典制薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】Beijing Handian Pharmaceutical Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 232, Shuiyuan Road, Economic Development Zone, Miyun District, Beijing, China
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】林 徳良
【テーマコード(参考)】
4C076
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA29
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA48
4C076AA53
4C076BB01
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4C076GG09
4C076GG14
4C088AB26
4C088AB38
4C088AB60
4C088AB62
4C088AB65
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4C088AB81
4C088BA09
4C088CA05
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4C088MA37
4C088MA41
4C088MA43
4C088MA52
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA59
4C088ZC75
(57)【要約】
新型コロナウイルス肺炎治療用漢方薬組成物、その調製方法、検出方法およびその使用を提供する。前記漢方薬組成物は、重量部に対して、主に、陳皮250-400重量部、蒼朮100-200重量部、厚朴100-200重量部、甘草200-300重量部、カワミドリ200-300重量部、石菖蒲200-300重量部、大棗250-330重量部および生姜100-200重量部の配合比の原料で調製される。本開示はまた、前記漢方薬組成物の調製方法および検出方法を提供する。本開示の調製方法は、漢方薬組成物のヘスペリジンの含有量とヘスペリジンの転移率の両方を向上させる。本開示の各原料成分は組み合わせた後、副作用が少なく、寒湿の治療に使用でき、特に新型コロナウイルス肺炎の治療に優れた効果がある。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量部に対して、
主に、陳皮250-400重量部、蒼朮100-200重量部、厚朴100-200重量部、甘草200-300重量部、カワミドリ200-300重量部、石菖蒲200-300重量部、大棗250-330重量部および生姜100-200重量部の配合比の原料で調製され、
好ましくは、主に、陳皮270-350重量部、蒼朮130-175重量部、厚朴130-175重量部、甘草200-260重量部、カワミドリ200-260重量部、石菖蒲200-260重量部、大棗280-330重量部および生姜150-180重量部の配合比の原料で調製され、
より好ましくは、主に、陳皮340.9重量部、蒼朮170.5重量部、厚朴170.5重量部、甘草255.7重量部、カワミドリ255.7重量部、石菖蒲255.7重量部、大棗318.2重量部および生姜163.6重量部の配合比の原料で調製される
ことを特徴とする新型コロナウイルス肺炎治療用漢方薬組成物。
【請求項2】
500-700重量部の補助物質をさらに含み、
好ましくは、前記補助物質は充填剤であり、
より好ましくは、前記補助物質はデキストリン、可溶性デンプンまたはラクトースである
請求項1に記載の漢方薬組成物。
【請求項3】
前記漢方薬組成物は、経口液剤、顆粒剤、粉末剤、ドリッピングピル、カプセル、発泡剤または錠剤である
請求項1または2に記載の漢方薬組成物。
【請求項4】
前記重量部配合比の原料に水を加えて浸潤させた後、煎じて抽出し、ろ過して抽出液を得、減圧濃縮し、噴霧乾燥させて、スプレーパウダーを得、接着剤を添加して混合し、湿式法で顆粒を調製するステップを含み、
好ましくは、
重量部の割合で各原料成分を秤量してとるステップ(1)と、
15倍重量部の水を加えて0.5時間浸潤させた後、1回当たり0.5時間ずつ2回煎じて抽出し、煎じ液を合わせて、ろ過して抽出液を得て、準備するステップ(2)と、
ステップ(2)の抽出液を70℃で減圧濃縮し、50℃で測定された相対密度が1.10~1.20g/mLである濃縮液を得るステップ(3)と、
ステップ(3)の濃縮液を取り、噴霧乾燥させて、スプレーパウダーを得るステップ(4)と、
ステップ(4)のスプレーパウダーを取り、デキストリンを添加して混合し、湿式法で顆粒を調製するステップ(5)と、を含む
請求項1または2に記載の漢方薬組成物の調製方法。
【請求項5】
前記重量部配合比の原料を水蒸気蒸留法により抽出するとともに、揮発性オイルを収集するステップと、
煎じ液から残留物をろ過して抽出液を得、抽出液を減圧濃縮し、噴霧乾燥させてスプレーパウダーを得るステップと、
揮発性オイルに無水エタノール溶液を添加し、β-シクロデキストリン水溶液を包接してシクロデキストリン包接物(clathrate)を調製するステップと、
スプレーパウダーおよび揮発性オイル包接物(clathrate)に接着剤を添加して混合し、湿式法で顆粒を調製するステップと、を含む
請求項1または2に記載の漢方薬組成物の調製方法。
【請求項6】
前記水蒸気蒸留法において、8~15倍の水を添加して揮発性オイルを抽出し、2-3回抽出し、毎回得た抽出液を合わせて、次のステップに使用し、
好ましくは、前記β-シクロデキストリン水溶液において、β-シクロデキストリンの重量は揮発性オイル重量の8-12倍であり、水の重量はβ-シクロデキストリンの重量の10-20倍であり、好ましくは、β-シクロデキストリンの重量は揮発性オイル重量の10倍であり、水の重量はβ-シクロデキストリンの重量の15倍である
請求項5に記載の漢方薬組成物の調製方法。
【請求項7】
ヘスペリジン薄層クロマトグラフィー定性的同定とヘスペリジンの含有量測定を含み、
好ましくは、6-ジンゲロール、甘草とマグノロールの薄層クロマトグラフィー定性的同定をさらに含む
請求項1または2に記載の漢方薬組成物の品質検出方法。
【請求項8】
薄層クロマトグラフィー定性的同定は、
前記漢方薬組成物で調製された顆粒粉末2gを取り、水25mlを加えて溶解させ、酢酸エチルで1回当たり20mLずつ2回振とう抽出し、抽出液を合わせて、揮発乾燥させ、残留物にメタノール1mLを入れて溶解させ、試験品溶液として使用し、別途でヘスペリジン対照品を取り、メタノールを添加して飽和溶液として調製して、対照品溶液として使用し、薄層クロマトグラフィー試験方法により、試験品溶液2-5μLを吸い取り、対照品溶液5μLを吸い取り、それぞれ同じシリカゲルG薄層プレートにスポットし、体積比20:3:2の酢酸エチル-メタノール-水を展開溶媒として展開し、取り出して乾燥させ、5%の三塩化アルミニウムエタノール溶液をスプレーし、105℃で5~10分間加熱し、紫外線ランプ365nmで検視し、試験品のクロマトグラフィーで、対照薬材のクロマトグラフィーに該当する位置に同じ色の斑点が現れるステップ(1)と、
ステップ(1)の試験品溶液を試験品として使用し、また、6-ジンゲロールを対照品として取り、酢酸エチルを加えて1mLあたり1mgを含有する溶液を調製して、対照品溶液として使用し、薄層クロマトグラフィー試験方法により、試験品溶液3-10μLと対照品溶液1μLを吸い取り、それぞれ同じシリカゲルG薄層プレートにスポットし、体積比2:1:1の石油エーテル(60~90℃)-トリクロロメタン-酢酸エチルを展開溶媒として展開し、取り出して乾燥させ、2%バニリン硫酸(Vanillin sulfuric acid)溶液をスプレーし、105℃で斑点が鮮明に現れるまで加熱し、試験品のクロマトグラフィーで、対照品のクロマトグラフィーに該当する位置に同じ色の斑点が現れるステップ(2)と、
前記漢方薬組成物で調製された顆粒3gを取り、水40mlを加えて溶解させ、n-ブタノールで1回当たり20mLずつ3回振とう抽出して、n-ブタノール液を合わせ、1回当たり20mLずつn-ブタノール液を蒸発乾燥させ、残留物にメタノール1mLを入れて溶解させ、試験品溶液として使用し、別途で甘草対照薬材1gを取り、水40mlを加えて1時間還流させ、冷却し、ろ過して、n-ブタノールで1回当たり20mLずつ3回振とう抽出して、n-ブタノール液を合わせ、1回当たり20mLずつn-ブタノール液を蒸発乾燥させ、残留物にメタノール1mLを加えて溶解させ、対照品溶液として使用し、薄層クロマトグラフィー試験方法により、前記試験品溶液2-5μLを吸い取り、対照薬材溶液5μLを吸い取り、それぞれシリカゲルG薄層プレートにスポットし、体積比15:1:1:2の酢酸エチル-ギ酸-氷酢酸-水を展開溶媒として展開し、取り出して乾燥させ、10%硫酸-エタノール溶液をスプレーし、105℃で斑点が鮮明に現れるまで加熱し、紫外線ランプ365nmで検視し、試験品のクロマトグラフィーで、対照薬材のクロマトグラフィーに該当する位置に同じ色の蛍光主斑点が現れるステップ(3)と、
前記漢方薬組成物で調製された顆粒6gを取り、微細に研磨し、酢酸エチル40mlを加え、30分間超音波処理し、濾過し、ろ液を蒸発乾燥させ、残留物にメタノール1mLを加えて溶解し、試験品溶液として使用し、別途でマグノロールを取り、メタノールを加えて1mLあたり1mgを含有する混合溶液を調製し、対照品溶液として使用し、薄層クロマトグラフィー試験方法により、試験品溶液10-15μLと対照品溶液5μLを吸い取り、それぞれ同じシリカゲルG薄層プレートにスポットし、体積比18:3:1のトルエン-酢酸エチル-メタノールを展開溶媒として展開し、取り出して乾燥させ、1%バニリン硫酸(Vanillin sulfuric acid)溶液をスプレーし、105℃で斑点が鮮明に現れるまで加熱し、試験品のクロマトグラフィーで、対照品のクロマトグラフィーに該当する位置に同じ色の斑点が現れるステップ(4)と、を含む
請求項7に記載の漢方薬組成物の品質検出方法。
【請求項9】
高性能液体クロマトグラフィーを用いてヘスペリジンの含量測定を行い、具体的には、
オクタデシルシラン結合シリカゲル(Octadecyl silane chemically bonded silicagel、ODS)を充填剤として使用し、アセトニトリル:0.1%リン酸溶液=19:81の体積比を移動相として使用し、
検出波長は283nm、流速は1.0ml/分であり、
ヘスペリジンピークに基づいて計算された理論段数(Number of theoretical plate)は2000より大きいか等しくし、
ヘスペリジン対照品を適量取り、精密に秤量し、メタノールを加えて1mL当たり15μgを含有する溶液を調製して、対照品溶液を調製し、
前記漢方薬組成物を取り、微細に研磨し、No.5の篩にかけて、0.3gを取り、精密に秤量し、栓のある三角フラスコに入れ、10%メタノール50mLを精密に加え、秤量し、30分間超音波処理し、冷やして再び秤量し、メタノールで損した重量を補い、よく振ってから、濾過し、その後のろ液をとって、試験品溶液を調製し、
対照品溶液と試験品溶液をそれぞれ10μLずつ精密に吸い取り、液体クロマトグラフィーに注入して測定する方法を測定方法として使用し、
1gあたりの本組成物の顆粒は、ヘスペリジン(C
28H
34O
15)に対して、2.325mgより多いか等しく含有する
請求項7または8に記載の漢方薬組成物の品質検出方法。
【請求項10】
請求項1ないし3のいずれかに記載の漢方薬組成物の使用であって、
寒湿、特にウイルス性肺炎治療用薬物の調製、好ましくは新型コロナウイルス肺炎治療用薬物の調製における使用である
ことを特徴とする漢方薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関係出願の相互参照:本開示は、2020年05月08日に中国専利局に提出された、特許文献1であり、名称が「新型コロナウイルス肺炎治療用漢方薬組成物、その調製方法、検出方法およびその使用」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その全ての内容が、参照により本出願に組み込まれる。
本開示は、漢方薬の技術分野に関し、具体的には、寒湿治療用漢方薬組成物に関し、特に新型コロナウイルス肺炎治療用漢方薬組成物、その調製方法、検出方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
寒疫は病邪の性質によって違い、「季節性寒疫」と「瘟疫寒疫」に分けられる。瘟疫寒疫とは、陰、寒、毒、悪の気運によって発生する流行性、伝染性の強い外感疾患である。瘟疫寒疫は寒瘟疫(寒癘疫)、寒湿疫、寒燥湿疫、陰毒疫の四種類に分けられる。その中で、寒湿疫は比較的に一般的であり、臨床表現は、悪寒発熱、無汗頭痛、四肢関節の痛み、口内の苦みとわずかな喉の渇き、舌苔が薄く白くてやや脂っぽいなどであり、浮脈または浮緊脈は寒邪と穢湿が混ざって発生する場合が多く、「散寒除湿、避穢化濁」を一般的な治療原則とする。
新型コロナウイルスは、これまで人体に現れたことのない新しいコロナウイルス新規菌株である。ヒトがコロナウイルスに感染した後の一般的な症状には、呼吸器症状、発熱、咳、息切れと呼吸困難などがある。よりひどい病例の場合、感染は肺炎、重症急性呼吸器症候群または腎不全、さらには死亡に至る可能性もある。新型コロナウイルスによる疾患に対する特異性治療方法は現在存在しない。確診された新型コロナウイルス患者のうち、舌体が大きくて腫れ、歯痕があり、舌苔が厚く脂っぽい患者が多く、さらには腐った舌苔を持つ者も多く、すべて「湿」の特徴を示す。2019年の新型コロナウイルス肺炎の臨床症状と結合して、今回の新型コロナウイルス肺炎は「湿」を中心に、寒または熱を兼ねた。したがって、寒湿治療用、特に新型コロナウイルス肺炎治療用漢方薬組成物を提供する必要がある。
これらの点を考慮し、本開示を提出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願CN202010384148.5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の第1の目的は、寒湿、特に新型コロナウイルス肺炎を治療に顕著な治療効果がある漢方薬組成物を提供することである。
【0005】
本開示の第2の目的は、漢方薬組成物の有效成分を十分に抽出することができ、バイオアベイラビリティが高く、その調製方法が簡単で、特別な設備を必要とせず、産業生産に適した前記漢方薬組成物の調製方法を提供することである。
【0006】
本開示の第3の目的は、寒湿の治療用、特に新型コロナウイルス肺炎の治療用薬物の調製における前記漢方薬組成物の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本出願で採用した技術方案は次のとおりである。
新型コロナウイルス肺炎治療用漢方薬組成物において、重量部に対して、主に、陳皮250-400重量部、蒼朮100-200重量部、厚朴100-200重量部、甘草200-300重量部、カワミドリ200-300重量部、石菖蒲200-300重量部、大棗250-330重量部および生姜100-200重量部の配合比の原料で調製される。
【0008】
一つの好ましい方案において、前記漢方薬組成物は主に、陳皮270-350重量部、蒼朮130-175重量部、厚朴130-175重量部、甘草200-260重量部、カワミドリ200-260重量部、石菖蒲200-260重量部、大棗280-330重量部および生姜150-180重量部の配合比の原料で調製される。
【0009】
陳皮:ミカン科の植物であるみかんおよびその変種の乾燥、成熟した果物の皮である。香りが良く、性質が暖かく、肺と脾の経絡に作用する。理気健脾と燥湿化痰の効果がある。陳皮の主成分は主に、フラボノイド系化合物、揮発性オイル類、リモノイド系、アルカロイド系と微量元素(カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、鉄、亜鉛またはマンガンなど)などである。
【0010】
本開示において、陳皮の典型的な含有量は、250重量部、270重量部、290重量部、310重量部、330重量部、350重量部、370重量部、390重量部または400重量部であるが、これに限定されない。
蒼朮:キク科の植物である茅蒼朮または北蒼朮の乾燥した根茎である。酸っぱく、苦く、および/または性質が暖かい。脾、胃および/または肝臓の経絡に作用する。燥湿健脾、去風散寒、明目の効果がある。臨床では、湿阻中焦、胃腹脹満、下痢、水腫、脚気、風湿痺痛、風寒風邪、夜盲、目昏の治療に使用される。実験により、蒼朮には抗炎症、抗菌の作用があることが確認された。蒼朮は主に、一連のセスキテルペン(sesquiterpene)、ポリエチレンアルキン(polyethylene alkynes)系および少量のフェノール系および/または有機酸系成分からなる揮発性オイルを含有し、またセスキテルペンラクトン、セスキテルペン配糖体、多糖類および少量のフラボノイド系成分を含有し、その中の主な活性成分はセスキテルペン系とポリエチレンアルキン(polyethylene alkynes)系成分である。
【0011】
本開示において、蒼朮の典型的な含有量は、100重量部、110重量部、120重量部、130重量部、140重量部、150重量部、160重量部、170重量部、180重量部、190重量部または200重量部であるが、これに限定されない。
厚朴:モクレン科の植物である厚朴または凹葉厚朴の乾燥した皮、根皮および枝皮である。苦く、辛く、性質が暖かい。脾、胃、肺および/または大腸の経絡に作用する。燥湿消痰、下気除満の効果がある。臨床では、湿滞傷中、胃腹のつまりと吐瀉、食積気滞、腹腫便秘、痰飲喘咳の治療に使用される。実験により、厚朴には抗ウイルス、抗菌、鎮痛、抗炎症などの作用があることが確認された。厚朴は主に、リグナン(lignans)、アルカロイド、フェニルエタノイド配糖体、フェノール配糖体および/または揮発性オイル成分を含有している。
【0012】
本開示において、厚朴の典型的な含有量は、100重量部、110重量部、120重量部、130重量部、140重量部、150重量部、160重量部、170重量部、180重量部、190重量部または200重量部であるが、これに限定されない。
甘草:マメ科の植物である甘草、腫果甘草または光果甘草の乾燥した根と根茎である。甘平で、心臓、肺、脾胃の経絡に作用する。補脾益気、清熱解毒、去痰止咳、緩急止痛、諸薬の調和の効果がある。臨床では脾胃虚弱、倦怠乏力、心悸気短、咳痰多、胃腹および/または四肢痙攣急疼痛瘻腫瘡毒(carbuncle and swelling toxin)の治療、薬物の毒性、烈性の緩和に使用される。実験により、甘草には抗炎症、抗菌および/または去痰止咳などの効果があることが確認された。甘草の化学成分は主に、トリテルペン系、フラボノイド系と甘草多糖類を含有している。
【0013】
本開示において、甘草の典型的な含有量は、200重量部、210重量部、220重量部、230重量部、240重量部、250重量部、260重量部、270重量部、280重量部、290重量部または300重量部であるが、これに限定されない。
カワミドリ:シソ科の植物であるパチョリの乾燥した地上部分である。味が酸っぱく、性質がやや暖かい。脾、胃および/または肺の経絡に作用する。芳香化濁、止嘔、発表解暑の効果がある。臨床では、湿濁中阻、胃腹のつまりと嘔吐、暑湿表証、湿温初起、発熱倦怠、胸悶不舒、寒湿閉暑、腹痛吐瀉、鼻淵頭痛の治療に使用される。実験により、カワミドリには、抗ウイルス、抗菌、鎮痛、抗炎症などの作用があることが確認された。カワミドリの主な活性成分はパチョリアルコール(patchouli alcohol)とポゴストン(pogostone)である。
【0014】
本開示において、カワミドリの典型的な含有量は、200重量部、210重量部、220重量部、230重量部、240重量部、250重量部、260重量部、270重量部、280重量部、290重量部または300重量部であるが、これに限定されない。
石菖蒲:サトイモ科の植物である石菖蒲の乾燥した根茎である。酸っぱく、苦く、性質が暖かい。心臓、胃の経絡に作用する。開竅豁痰、醒神益智、化湿開胃の効果がある。臨床では、神昏てんかん、健忘失眠、耳鳴難聴、胃もたれと不飢、噤口下痢の治療に使用される。実験により、石菖蒲は様々な解痙平喘成分を含有しており、その煎剤は消化液の分泌を促進し、腸の平滑筋の痙攣を緩和できることが確認された。現代の薬理学の研究で、その化学成分は主に揮発性成分と非揮発性成分に分かれている。現在、揮発性部分に対する研究は多いが、非揮発性部分に対する研究は少ない。揮発性成分は既知の成分が60種類以上で比較的複雑であり、主な構造タイプはフェニルプロパノイド系(簡単な形態のフェニルプロパノイド、リグナン(lignans)およびクマリン系)とテルペン系(モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペンおよびトリテルペン系)化合物である。非揮発性成分は主に、アルカロイド系、アルデヒドと酸系、キノンとケトン系、ステロール系、アミノ酸系および糖類などである。
【0015】
本開示において、石菖蒲の典型的な含有量は、200重量部、210重量部、220重量部、230重量部、240重量部、250重量部、260重量部、270重量部、280重量部、290重量部または300重量部であるが、これに限定されない。
大棗:クロウメモドキ科の植物であるナツメの乾燥、成熟した果実である。甘く、性質が暖かい。脾、胃および/または心臓の経絡に作用する。補中益気、養血安神の効果がある。臨床では、脾虚食少、乏力便溏、婦人臓躁の治療に使用される。実験により、大棗は、神経抑制作用、肝保護作用、筋力増強作用、抗がん、抗突然変異、抗脂質過酸化作用などの作用があることが確認された。大棗の揮発性オイル成分は主に、ジメチルフタレート(Dimethyl phthalate)、エチルトリデカノエイト(Ethyl tridecanoate)、ジイソブチルフタレート(Diisobutyl phthalate)、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、プルプリルアルコール(Furfurylalcohol)、2-シクロペンテン-1,4-ジオン、パルミチン酸エチルエステル(Palmitic acid ethyl ester)および/またはリノレン酸メチル(Methyl linolenate)などである。
【0016】
本開示において、大棗の典型的な含有量は、250重量部、260重量部、270重量部、280重量部、290重量部、300重量部、310重量部、320重量部または330重量部であるが、これに限定されない。
生姜:ショウガ科の植物の新鮮な根茎である。酸っぱく、性質がやや暖かい。肺、脾および/または胃の経絡に作用する。本製品は、解表散寒、温中止嘔、化痰止咳、魚・カニ解毒の効果がある。風寒風邪、胄寒嘔吐、寒痰咳、魚・カニ中毒の治療に使われる。実験により、生姜には神経抑制作用、肝保護作用、筋力増強作用、抗がん、抗突然変異、抗脂質過酸化作用などの作用があることが確認された。現代の研究によると、生姜の主成分は、揮発性オイル類、6-ジンゲロール系とジフェニルヘプタン系である。
【0017】
本開示において、生姜の典型的な含有量は、100重量部、110重量部、120重量部、130重量部、140重量部、150重量部、160重量部、170重量部、180重量部、190重量部または200重量部であるが、これに限定されない。
【0018】
一つの好ましい方案において、本開示の漢方薬組成物は、重量部に対して、主に、陳皮340.9重量部、蒼朮170.5重量部、厚朴170.5重量部、甘草255.7重量部、カワミドリ255.7重量部、石菖蒲255.7重量部、大棗318.2重量部および生姜163.6重量部の配合比の原料で調製される。
【0019】
一実施方案において、本開示の漢方薬組成物は一定重量部の補助物質をさらに含み、好ましくは500-700重量部の補助物質であり、好ましくは、前記補助物質は充填剤である。
【0020】
より好ましくは、前記充填剤は、デキストリン、可溶性デンプンまたはラクトースである。
【0021】
本開示の漢方薬組成物は、当技術分野における従来の技術によって、経口液剤、顆粒剤、粉末剤、ドリッピングピル、カプセル、発泡剤または錠剤などを含むがこれらに限定されない様々な製剤に調製することができる。
【0022】
一実施方案において、本開示の漢方薬組成物の調製方法は、
前記重量部配合比の原料に水を加えて浸潤させた後、煎じて抽出し、ろ過して抽出液を得、減圧濃縮し、噴霧乾燥させて、スプレーパウダーを得、接着剤を添加して混合し、湿式法で顆粒を調製するステップを含む。
【0023】
一つの具体的な実施方案において、本開示の漢方薬組成物の調製方法は、
重量部の割合で各原料成分を秤量してとるステップ(1)と、
15倍重量部の水を加えて、0.5時間浸潤させた後、1回当たり0.5時間ずつ2回煎じて抽出し、煎じ液を合わせて、ろ過して抽出液を得て、準備するステップ(2)と、
ステップ(2)の抽出液を70℃で減圧濃縮し、50℃で測定された相対密度が1.10~1.20g/mLである濃縮液を得るステップ(3)と、
ステップ(3)の濃縮液を取り、噴霧乾燥させて、スプレーパウダーを得るステップ(4)と、および
ステップ(4)のスプレーパウダーを取り、デキストリンを添加して混合し、湿式法で顆粒を調製するステップ(5)と、を含む。
一つの好ましい実施方案において、前記ステップ(4)の噴霧乾燥条件は、入口温度125℃、圧力102.5Mpa、送風率(blow)80%、流速20-30/sである。
【0024】
他の実施方案において、本開示の漢方薬組成物の調製方法は、
前記重量部配合比の原料を水蒸気蒸留法により抽出するとともに、揮発性オイルを収集するステップと、
煎じ液から残留物をろ過して抽出液を得、抽出液を減圧濃縮し、噴霧乾燥させてスプレーパウダーを得るステップと、
揮発性オイルに無水エタノール溶液を添加し、β-シクロデキストリン水溶液を包接してシクロデキストリン包接物(clathrate)を調製するステップと、および
スプレーパウダーおよび揮発性オイル包接物(clathrate)に接着剤を添加して混合し、湿式法で顆粒を調製するステップと、を含む。
【0025】
一つの好ましい実施方案において、本開示の漢方薬組成物の調製方法において、水蒸気蒸留法により、2~3回抽出し、毎回得た抽出液を合わせて次のステップに使用する。
【0026】
一つの好ましい実施方案において、本開示の漢方薬組成物の調製方法において、水蒸気蒸留法において、8~15倍の水を添加して揮発性オイルを抽出する。
【0027】
一つの好ましい方案において、前記β-シクロデキストリン水溶液において、β-シクロデキストリンの重量は揮発性オイル重量の8-12倍であり、水の重量はβ-シクロデキストリンの重量の10-20倍であり、好ましくはβ-シクロデキストリンの重量は揮発性オイル重量の10倍であり、水の重量はβ-シクロデキストリンの重量の15倍である。
【0028】
他の具体的な実施方案において、本開示の漢方薬組成物の調製方法は、
各原料成分を重量部で秤量して取り、粗粉に粉砕するステップ(a)と、
8-15倍重量部の水を加えて0.5時間浸潤させた後、水蒸気蒸留法で抽出するとともに、揮発性オイルを収集し、煎じ液から残留物をろ過して抽出液を得て準備するステップ(b)と、
ステップ(b)で得た抽出液を取り、60℃で測定した相対密度が1.10-1.20g/mLであるまで減圧濃縮して濃縮液を得るステップ(c)と、
ステップ(c)の濃縮液を噴霧乾燥させて、スプレーパウダーを得るステップ(d)と、
ステップ(b)で收集した揮発性オイルに無水エタノール溶液を添加し、β-シクロデキストリン水溶液を3時間撹拌しながら包接し、冷蔵し、ろ過し、ろ過物を乾燥して揮発性オイル包接物(clathrate)を得るステップ(e)と、および
ステップ(d)のスプレーパウダーおよびステップ(e)の揮発性オイル包接物(clathrate)にデキストリンを添加して混合し、湿式法で顆粒を調製するステップ(f)と、を含む。
【0029】
一つの好ましい方案において、ステップ(b)において、前記残留物に8~15倍の水を添加して、引き続き水蒸気蒸留法によって1時間抽出し、煎じ液をろ過して抽出液を得、2回で得た抽出液を合わせて次のステップに使用する。
【0030】
一つの好ましい方案において、ステップ(b)において、70℃で減圧濃縮し、ステップ(c)において、噴霧乾燥条件は、空気流入口の温度が160-180℃、空気排出口の温度が80-90℃である。
【0031】
一つの好ましい方案において、ステップ(e)において、前記β-シクロデキストリン水溶液におけるβ-シクロデキストリンの重量は揮発性オイル重量の8-12倍であり、水の重量はβ-シクロデキストリンの重量の10-20倍であり、好ましくはβ-シクロデキストリンの重量は揮発性オイル重量の10倍であり、水の重量はβ-シクロデキストリンの重量の15倍である。
【0032】
一つの実施方案において、本開示はヘスペリジン薄層クロマトグラフィー定性的同定とヘスペリジンの含有量測定を含み、好ましくは、6-ジンゲロール、甘草および/またはマグノロールの薄層クロマトグラフィー定性的同定をさらに含む前記漢方薬組成物の品質検出方法を提供する。
【0033】
一つの具体的な実施方案において、薄層クロマトグラフィー定性的同定は、
前記漢方薬組成物で調製された顆粒粉末2gを取り、水25mlを加えて溶解させ、酢酸エチルで1回当たり20mLずつ2回振とう抽出し、抽出液を合わせ、揮発乾燥させ、残留物にメタノール1mLを入れて溶解させ、試験品溶液として使用し、別途でヘスペリジン対照品を取り、メタノールを添加して飽和溶液として調製して、対照品溶液として使用し、薄層クロマトグラフィー試験方法により、試験品溶液2-5μLを吸い取り、対照品溶液5μLを吸い取り、それぞれ同じシリカゲルG薄層プレートにスポットし、体積比20:3:2の酢酸エチル-メタノール-水を展開溶媒として展開し、取り出して乾燥させ、5%の三塩化アルミニウムエタノール溶液をスプレーし、105℃で5~10分間加熱し、紫外線ランプ365nmで検視し、試験品のクロマトグラフィーで、対照薬材のクロマトグラフィーに該当する位置に同じ色の斑点が現れるステップ(1)と、
【0034】
ステップ(1)の試験品溶液を試験品として使用し、また、6-ジンゲロールを対照品として取り、酢酸エチルを加えて1mLあたり1mgを含有する溶液を調製して、対照品溶液として使用し、薄層クロマトグラフィー試験方法により、試験品溶液3-10μLと対照品溶液1μLを吸い取り、それぞれ同じシリカゲルG薄層プレートにスポットし、体積比2:1:1の石油エーテル(60~90℃)-トリクロロメタン-酢酸エチルを展開溶媒として展開し、取り出して乾燥させ、2%のバニリン硫酸(Vanillin sulfuric acid)溶液をスプレーし、105℃で斑点が鮮明に現れるまで加熱し、試験品のクロマトグラフィーで、対照品のクロマトグラフィーに該当する位置に同じ色の斑点が現れるステップ(2)と、
【0035】
前記漢方薬組成物で調製された顆粒3gを取り、水40mlを加えて溶解させ、n-ブタノールで1回当たり20mLずつ3回振とう抽出して、n-ブタノール液を合わせ、1回当たり20mLずつn-ブタノール液を蒸発乾燥させ、残留物にメタノール1mLを入れて溶解させ、試験品溶液として使用し、別途で甘草対照薬材1gを取り、水40mlを加えて1時間還流し、冷却し、ろ過して、n-ブタノールで1回当たり20mLずつ3回振とう抽出して、n-ブタノール液を合わせ、1回当たり20mLずつn-ブタノール液を蒸発乾燥させ、残留物にメタノール1mLを加えて溶解させ、対照品溶液として使用し、薄層クロマトグラフィー試験方法により、前記試験品溶液2-5μLを吸い取り、対照薬材溶液5μLを吸い取り、それぞれシリカゲルG薄層プレートにスポットし、体積比15:1:1:2の酢酸エチル-ギ酸-氷酢酸-水を展開溶媒として展開し、取り出して乾燥させ、10%硫酸-エタノール溶液をスプレーし、105℃で斑点が鮮明に現れるまで加熱し、紫外線ランプ365nmで検視し、試験品のクロマトグラフィーで、対照薬材のクロマトグラフィーに該当する位置に同じ色の蛍光主斑点が現れるステップ(3)と、および
【0036】
前記漢方薬組成物で調製された顆粒6gを取り、微細に研磨し、酢酸エチル40mlを加え、30分間超音波処理し、濾過し、ろ液を蒸発乾燥させ、残留物にメタノール1mLを加えて溶解させ、試験品溶液として使用し、別途でマグノロールを取り、メタノールを加えて1mLあたり1mgを含有する混合溶液を調製し、対照品溶液として使用し、薄層クロマトグラフィー試験方法により、試験品溶液10-15μLと対照品溶液5μLを吸い取り、それぞれ同じシリカゲルG薄層プレートにスポットし、体積比18:3:1のトルエン-酢酸エチル-メタノールを展開溶媒として展開し、取り出して乾燥させ、1%のバニリン硫酸(Vanillin sulfuric acid)溶液をスプレーし、105℃で斑点が鮮明に現れるまで加熱し、試験品のクロマトグラフィーで、対照品のクロマトグラフィーに該当する位置に同じ色の斑点が現れるステップ(4)と、を含む。
【0037】
一つの具体的な実施方案において、高性能液体クロマトグラフィーを用いてヘスペリジンの含量測定を行い、具体的には、
オクタデシルシラン結合シリカゲル(Octadecyl silane chemically bonded silicagel、ODS)を充填剤として使用し、
アセトニトリル:0.1%リン酸溶液=19:81の体積比を移動相として使用し、
検出波長は283nm、流速は1.0ml/分であり、
ヘスペリジンピークに基づいて計算された理論段数(Number of theoretical plate)は2000より大きいか等しくし、
ヘスペリジン対照品を適量取り、精密に秤量し、メタノールを加えて1mL当たり15μgを含有する溶液を調製して、対照品溶液の調製し、
本出願の漢方薬組成物を取り、微細に研磨し、No.5の篩にかけて、0.3gを取り、精密に秤量し、栓のある三角フラスコに入れ、10%メタノール50mlを精密に加え、秤量し、30分間超音波処理し、冷やして再び秤量し、メタノールで損した重量を補い、よく振ってから、濾過し、その後のろ液を取って、試験品溶液を調製し、
対照品溶液と試験品溶液をそれぞれ10μLずつ精密に吸い取り、液体クロマトグラフィーに注入して、測定する方法を測定方法とし、
1gあたりの本組成物の顆粒は、ヘスペリジン(C28H34O15)に対して、真皮を2.325mgより多いか等しく含有する。
【0038】
本開示は、漢方薬組成物顆粒中のヘスペリジンの含有量を測定することにより、顆粒品質の安定性と品質制御性を確保する一方、ヘスペリジンの物理化学的特性が安定的であるため、ヘスペリジン含有量および転移率測定を通じて漢方薬組成物の有效成分の含有量を確保し、製品の品質をより効果的に制御できるようにする。
【0039】
本開示は、寒湿治療用薬物薬の調製における前記漢方薬組成物の使用、選択的に、新型コロナウイルス肺炎治療用薬物の調製における前記漢方薬組成物の使用を提供する。
【発明の効果】
【0040】
本出願の有益な効果は次のとおりである。
本開示で提供する漢方薬製剤は、一定重量部の配合比の陳皮、蒼朮、厚朴、甘草、カワミドリ、石菖蒲、大棗、生姜からなり、これらのいくつかの薬剤の活性成分は互いに補完し、互いに協力し合い、各原料薬の配合関係を通じて得た漢方薬製剤は副作用が少なく、寒湿を治療することができ、特に新型コロナウイルス肺炎を治療することができ、顕著な治療効果がある。
【0041】
本開示の調製方法は、漢方薬製剤の有效成分を十分に抽出し、バイオアベイラビリティが高く、その調製方法が簡単で、特別な設備を必要とせず、産業生産に適している。本開示の調製方法は、漢方薬組成物のヘスペリジンの含有量とヘスペリジンの転移率の両方を向上させる。
【0042】
本開示の検出方法は、漢方薬組成物の品質を効果的に制御することができ、良好な安定性と再現性を持たせる。
【0043】
本出願の漢方薬成分はほとんど揮発性オイル成分を含有しており、水蒸気蒸留法抽出及び揮発性オイルを包接する総合的な方法は、揮発性オイルの損失を減らし、工程時間を短縮し、漢方薬製剤完成品における揮発性オイルの利用率を向上させることにより、漢方薬組成物の薬効をよりよく発揮するようにする。
以下では、図面に結び、本発明の実施方案を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本開示の実施例6におけるヘスペリジン薄層クロマトグラフィー定性的同定のための薄層クロマトグラムであり、左1列は対照品溶液、右3列は本開示の漢方薬顆粒の試験品溶液である。
【
図2】本開示の実施例6における6-ジンゲロール薄層クロマトグラフィー定性的同定のための薄層クロマトグラムであり、左1列は対照品溶液、右3列は本開示の漢方薬顆粒の試験品溶液である。
【
図3】本開示の実施例6における甘草薄層クロマトグラフィー定性的同定のための薄層クロマトグラムであり、左1列は対照品溶液、右3列は本開示の漢方薬顆粒の試験品溶液である。
【
図4】本開示の実施例6におけるマグノロール薄層クロマトグラフィー定性的同定のための薄層クロマトグラムであり、左1列は対照品溶液、右3列は本開示の漢方薬顆粒の試験品溶液である。
【
図5】本開示の実施例7におけるヘスペリジン含有量測定における本開示の漢方薬顆粒試験品の高性能液体クロマトグラムである。
【
図6】本開示の実施例7におけるヘスペリジン含有量測定における対照品の高性能液体クロマトグラムである。
【
図7】本開示の漢方薬抽出物がCOVID-19疑似ウイルス(pseudovirus)感染症のHEK293-ACE2細胞に対する抑制効果を示し、スチューデントのt検定(Student´st-test)、陰性対照群と比較して、***P<0.001、**P<0.01である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、実施例と組み合わせて本開示の実施方案を具体的に説明するが、当業者は、以下の実施例は本開示を説明するためにのみ使用され、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解することができる。実施例に具体的な条件が明示されていない場合、従来の条件またはメーカーが提案する条件に従って実施する。メーカーが表示されていない使用された試薬または機器は、すべて市販されている従来品である。
【0046】
以下、実施例1-7および比較例1-3と組み合わせて本発明の漢方薬組成物についてさらに詳細に説明する。
【0047】
実施例1
本開示の漢方薬組成物の調製において、陳皮7.5g、蒼朮3.75g、厚朴3.75g、甘草5.625g、カワミドリ5.625g、石菖蒲5.625g、大棗3.5g及び生姜1.8gの重量部で原料薬を称量してとる。重量部の割合で各原料成分を秤量してとり、適量の水を加えて、弱火で煎じ、400mLまで煮出して、湯剤を調製する。
【0048】
実施例2
本開示の漢方薬組成物の調製において、陳皮250g、蒼朮100g、厚朴100g、甘草200g、カワミドリ200g、石菖蒲200g、大棗250g及び生姜100gの重量部で原料薬を称量してとる。重量部の割合で各原料成分を秤量してとり、15倍重量部の水を加え、0.5時間浸潤させた後、1回当たり0.5時間ずつ2回煎じて抽出し、煎じ液を合わせて、ろ過して抽出液を得て、準備する。抽出液を70℃で減圧濃縮し、50℃で測定された相対密度が1.10-1.20g/mLである濃縮液を得る。濃縮液を噴霧乾燥させて、スプレーパウダーを得る。スプレーパウダーを取り、デキストリンを適量加えて混合し、湿式法で顆粒を調製する。
【0049】
実施例3
本開示の漢方薬組成物の調製において、陳皮400g、蒼朮200g、厚朴200g、甘草300g、カワミドリ300g、石菖蒲300g、大棗330g及び生姜200gの重量部で原料薬を称量してとる。重量部の割合で各原料成分を秤量してとり、15倍重量部の水を加え、0.5時間浸潤させた後、1回当たり0.5時間ずつ2回煎じて抽出し、煎じ液を合わせてろ過して抽出液を得て、準備する。抽出液を70℃で減圧濃縮し、50℃で測定された相対密度が1.10-1.20g/mLである濃縮液を得る。濃縮液を噴霧乾燥させて、スプレーパウダーを得る。スプレーパウダーを取り、デキストリンを添加して混合し、湿式法で顆粒を調製する。
【0050】
実施例4
本開示の漢方薬組成物の調製において、陳皮375g、蒼朮187.5g、厚朴187.5g、甘草281.3g、カワミドリ281.3g、石菖蒲281.3g、大棗330g及び生姜180gの重量部で原料薬を称量してとる。重量部の割合で各原料成分を秤量してとり、15倍重量部の水を加え、0.5時間浸潤させた後、1回当たり0.5時間ずつ2回煎じて抽出し、煎じ液を合わせて、ろ過して抽出液を得て、準備する。抽出液を70℃で減圧濃縮し、50℃で測定された相対密度が1.10-1.20g/mLである濃縮液を得る。濃縮液を噴霧乾燥させて、スプレーパウダーを得る。スプレーパウダーを取り、デキストリンを添加して混合し、湿式法で顆粒を調製する。
【0051】
実施例5
本開示の漢方薬組成物の調製において、陳皮340.9g、蒼朮170.5g、厚朴170.5g、甘草255.7g、カワミドリ255.7g、石菖蒲255.7g、大棗318.2g及び生姜163.6gの重量部で原料薬を称量してとる。重量部の割合で各原料成分を秤量してとり、粗粉に粉砕する。15倍重量部の水を加え、0.5時間浸潤させた後、水蒸気蒸留法で4時間抽出すると同時に揮発性オイルを収集する。水煎じ液から残留物をろ過して抽出液を得て、準備し、残留物に15倍重量部の水を加え、水蒸気蒸留法で1時間抽出し、煎じ液を取り出して、準備し、抽出液を合わせて濾過する。得た抽出液を取り、減圧濃縮して60℃で測定した相対密度が1.10-1.20g/mLである濃縮液を得る。濃縮液を噴霧乾燥させて、スプレーパウダーを得る。収集した揮発性オイルに無水エタノール溶液を添加し、β-シクロデキストリン水溶液を使用して3時間撹拌しながら包接し、冷蔵し、ろ過し、ろ過物を乾燥させて揮発性オイル包接物(clathrate)を得る。スプレーパウダーおよび揮発性オイル包接物(clathrate)にデキストリンを添加して混合し、湿式法で顆粒を調製する。
【0052】
実施例6
薄層クロマトグラフィー方法を採用して実施例4で調製した漢方薬組成物顆粒を同定した。具体的には次のとおりである。
【0053】
前記漢方薬組成物で調製された顆粒粉末2gを取り、水25mlを加えて溶解させ、酢酸エチルで1回当たり20mLずつ2回振とう抽出し、抽出液を合わせ、揮発乾燥させ、残留物にメタノール1mLを入れて溶解させ、試験品溶液として使用し、別途でヘスペリジン対照品を取り、メタノールを添加して飽和溶液として調製して、対照品溶液として使用し、薄層クロマトグラフィー試験方法により、試験品溶液2-5μLを吸い取り、対照品溶液5μLを吸い取り、それぞれ同じシリカゲルG薄層プレートにスポットし、体積比20:3:2の酢酸エチル-メタノール-水を展開溶媒として展開し、取り出して乾燥させ、5%の三塩化アルミニウムエタノール溶液をスプレーし、105℃で5~10分間加熱し、紫外線ランプ365nmで検視し、試験品のクロマトグラフィーで、対照薬材のクロマトグラフィーに該当する位置に同じ色の斑点が現れるるステップ(1)。
【0054】
ステップ(1)の試験品溶液を試験品として使用し、また、6-ジンゲロールを対照品として取り、酢酸エチルを加えて1mLあたり1mgを含有する溶液を調製して、対照品溶液として使用し、薄層クロマトグラフィー試験方法により、試験品溶液3-10μLと対照品溶液1μLを吸い取り、それぞれ同じシリカゲルG薄層プレートにスポットし、体積比2:1:1の石油エーテル(60~90℃)-トリクロロメタン-酢酸エチルを展開溶媒として展開し、取り出して乾燥させ、2%バニリン硫酸(Vanillin sulfuric acid)溶液をスプレーし、105℃で斑点が鮮明に現れるまで加熱し、試験品のクロマトグラフィーで、対照品のクロマトグラフィーに該当する位置に同じ色の斑点が現れるステップ(2)。
【0055】
前記漢方薬組成物で調製された顆粒3gを取り、水40mlを加えて溶解させ、n-ブタノールで1回当たり20mLずつ3回振とう抽出して、n-ブタノール液を合わせ、1回当たり20mLずつn-ブタノール液を蒸発乾燥させ、残留物にメタノール1mLを入れて溶解させ、試験品溶液として使用し、別途で甘草対照薬材1gを取り、水40mlを加えて1時間還流し、冷却し、ろ過して、n-ブタノールで1回当たり20mLずつ3回振とう抽出して、n-ブタノール液を合わせ、1回当たり20mLずつn-ブタノール液を蒸発乾燥させ、残留物にメタノール1mLを加えて溶解させ、対照品溶液として使用し、薄層クロマトグラフィー試験方法により、前記試験品溶液2-5μLを吸い取り、対照薬材溶液5μLを吸い取り、それぞれシリカゲルG薄層プレートにスポットし、体積比15:1:1:2の酢酸エチル-ギ酸-氷酢酸-水を展開溶媒として展開し、取り出して乾燥させ、10%の硫酸-エタノール溶液をスプレーし、105℃で斑点が鮮明に現れるまで加熱し、紫外線ランプ365nmで検視し、試験品のクロマトグラフィーで、対照薬材のクロマトグラフィーに該当する位置に同じ色の蛍光主斑点が現れるステップ(3)。
【0056】
前記漢方薬組成物で調製された顆粒6gを取り、微細に研磨し、酢酸エチル40mlを加え、30分間超音波処理し、濾過し、ろ液を蒸発乾燥させ、残留物にメタノールを加えて溶解し、試験品溶液として使用し、別途でマグノロールをとり、メタノールを加えて1mLあたり1mgを含有する混合溶液を調製し、対照品溶液として使用し、薄層クロマトグラフィー試験方法により、試験品溶液10-15μLと対照品溶液5μLを吸い取り、それぞれ同じシリカゲルG薄層プレートにスポットし、体積比18:3:1のトルエン-酢酸エチル-メタノールを展開溶媒として展開し、取り出して乾燥させ、1%のバニリン硫酸(Vanillin sulfuric acid)溶液をスプレーし、105℃で斑点が鮮明に現れるまで加熱し、試験品のクロマトグラフィーで、対照品のクロマトグラフィーに該当する位置に同じ色の斑点が現れるステップ(4)。
試験品および対照品の薄層クロマトグラムは、
図1-
図4を参照する。
【0057】
実施例7
高性能液体クロマトグラフィー方法を採用して実施例4で調製した漢方薬組成物顆粒に対して含有量測定を行う。具体的には次のとおりである。
クロマトグラフィー条件とシステム適用性試験:オクタデシルシラン結合シリカゲル(Octadecyl silane chemically bonded silicagel、ODS)を充填剤として使用し、アセトニトリル:0.1%リン酸溶液=19:81の体積比を移動相として使用し、検出波長は283nmである。ヘスペリジンピークに基づいて計算された理論段数(Number of theoretical plate)は2000より大きいか等しい。
【0058】
対照品溶液の調製:ヘスペリジン対照品を取り、精密に秤量し、メタノールを加えて1mL当たり50μgを含有する溶液を調製して得る。
【0059】
試験品溶液の調製:実施例4で調製した顆粒を取り、均一に混合し、微細に研磨し、0.3gを取り、精密に秤量し、栓のある三角フラスコに入れ、メタノール50mlを精密に加え、ぎっしり詰め込み、秤量し、30分間超音波処理(電力500W、周波数40kHz)した後、冷やして再び秤量し、メタノールで損した重量を補い、よく振ってから、濾過し、その後のろ液を取って得る。
【0060】
測定方法:対照品溶液と試験品溶液をそれぞれ10μLずつ精密に吸い取り、液体クロマトグラフィーに注入して、測定する。
【0061】
ヘスペリジン含有量の測定において、本開示の漢方薬顆粒試験品の高性能液体クロマトグラムは
図5を参照し、対照品の高性能液体クロマトグラムは
図6を参照する。
【0062】
比較例1
漢方薬組成物の調剤において、陳皮375g、蒼朮187.5g、厚朴187.5g、甘草281.3g、カワミドリ281.3gおよび石菖蒲281.3gの重量部で原料薬を称量してとる。重量部の割合で各原料成分を秤量してとり、15倍重量部の水を加え、0.5時間浸潤させた後、1回当たり0.5時間ずつ2回煎じて抽出し、煎じ液を合わせて、ろ過して抽出液を得て、準備する。抽出液を70℃で減圧濃縮し、50℃で測定された相対密度が1.10-1.20g/mLである濃縮液を得る。濃縮液を噴霧乾燥させて、スプレーパウダーを得る。スプレーパウダーを取り、デキストリンを添加して混合し、湿式法で顆粒を調製する。
【0063】
比較例2
高性能液体クロマトグラフィー方法を採用して比較例1で調製した漢方薬組成物顆粒に対して含有量測定を行う。具体的には次のとおりである。
クロマトグラフィー条件とシステム適用性試験:オクタデシルシラン結合シリカゲル(Octadecyl silane chemically bonded silicagel,ODS)を充填剤として使用し、アセトニトリル:0.1%リン酸溶液=19:81の体積比を移動相として使用し、検出波長は283nmである。ヘスペリジンピークに基づいて計算された理論段数(Number of theoretical plate)は2000より大きいか等しい。
対照品溶液の調製:ヘスペリジン対照品を取り、精密に秤量し、メタノールを加えて1mL当たり50μgを含有する溶液を調製して得る。
試験品溶液の調製:比較例1で調製した顆粒を取り、均一に混合し、微細に研磨し、0.3gを取り、精密に秤量し、栓のある三角フラスコに入れ、メタノール50mlを精密に加え、ぎっしり詰め込み、秤量し、30分間超音波処理(電力500W、周波数40kHz)した後、冷やして再び秤量し、メタノールで損した重量を補い、よく振ってから、濾過し、その後のろ液を取って得る。
測定方法:対照品溶液と試験品溶液をそれぞれ10μLずつ精密に吸い取り、液体クロマトグラフィーに注入して、測定する。
【0064】
比較例3
陳皮7.5g、蒼朮3.75g、厚朴3.75g、甘草5.625g、カワミドリ5.625g、石菖蒲5.625g、大棗1粒およびスライス生姜3枚の重量部で原料薬を称量してとり、前述の6種類の薬剤とは別に、大棗と生姜を煎じて、湯剤を調製する。
【0065】
【0066】
検出結果、実施例7の有效成分ヘスペリジンの含有量および転移率が比較例2より著しく高いことが明らかになり、その原因は、大棗または生姜成分が水でのヘスペリジンの安定性を高めるためであると考えられる。
【0067】
投与薬物毒性試験
本試験において、動物試験に関連する内容と手順はすべて、実験動物の使用と管理に関する法律と規定、本機関の実験動物の使用と管理委員会(Institutional Animal Care and Use Committee、IACUC)の関連規定に準拠している。
【0068】
材料及び方法:本試験では、40匹の健康なSDラットをランダムに溶媒対照群、本出願の漢方薬組成物の低用量、中用量及び高用量グループの4つのグループに分け、グループあたり10匹ずつ、雄半分、雌半分とした。各グループのラットに投与量20mL/kg/回で、毎回4時間以上の間隔で3回投与し、溶媒対照品(純水)または異なる濃度の本出願の漢方薬組成物を経口投与方式で投与した。ここで、本出願の漢方薬組成物の低用量、中用量及び高用量グループの投与量はそれぞれ3、9、37.5g抽出物/kgである。投与後14日間連続観察し、最初の投与当日を試験1日目とした。試験期間中、各グループのSDラットの一般的な状態を毎日観察し、試験1、4、8、14日目に体重を測定し、試験2、5、8、12日目に食物摂取量を測定し、試験15日目に、各グループのラットに予定通り安楽死を実施し、肉眼で大体の解剖観察を行った。
【0069】
結果:(1)一般的な状況:試験1日目、高用量グループの雌と雄ラットはすべて軟便症状が表れ、尿の色は異常で、薄い緑色であり、試験2日目から前記症状が消え、各グループのラットの一般的な症状、行為活動、呼吸状態、五官、体の表面、大小便および生殖器などにはっきりした異常表現がなく、試験期間中に動物の死亡もなかった。(2)体重および食物摂取量:試験期間中に各グループのラットの体重、食物摂取量には異常な変化がなかった。(3)肉眼解剖学観察:試験15日目に肉眼解剖観察を行い、各グループのラットの心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓および胸腺など主要臓器または組織の色、形、大きさおよび質感にははっきりした異常な変化がなかった。
【0070】
結論:本試験の条件下で、SDラットに毎回の経口投与方式で3、9、37.5g抽出物/kgの本開示の漢方薬組成物を投与した場合、最大耐量(MTD)は37.5g抽出物/kgであり、168.5g生薬/kgに相当する。
【0071】
臨床試験
実施例1で調製した漢方薬組成物を採用して臨床試験を実施した。
(1)対象:丹江口市中医院の新型コロナウイルス肺炎(核酸検査陽性)に感染した患者で、年齢は13-54歳である。これらの患者は、発熱(体温≧38℃)と咳を伴い、一般血液検査で総白血球数とリンパ球数が減少し、肺に異なる程度のスリガラス様陰影などの症状がみられた。
(2)治療方法:1日2回、朝晩1回ずつ、200mL/回、3日間服用する。
(3)治癒または緩和の診断基準は次のとおりである。
1.白血球とリンパ球が正常に戻る。
2.患者の肺のスリガラス様陰影が吸収され消える。
3.リアルタイム蛍光RT-PCR検出で新型コロナウイルス核酸が陰性に転換される。
4.その他の器質性障害がない。
【0072】
典型的な臨床例
1.郭氏、患者の基本情報:29歳の女性、患者はコロナ地域での勤務歴がある。症状:発熱、咳、喀痰、倦怠感、食欲不振。映像学検査:左肺下葉、右肺中葉、左肺上葉舌側と右肺下葉に感染。病原体検査:新型コロナウイルス核酸検査で陽性に診断された。本開示の漢方薬で治療後、発熱が消え、咳嗽と喀痰が緩和され、倦怠感と食欲不振が改善された。肺部炎症が吸収された。新型コロナウイルス核酸検査で陰性に診断され、期間中にその他の副作用はみられなかった。
2.沈氏、患者の基本情報:25歳の男性。症状:発熱、体の痛み、食欲不振と倦怠感。映像学検査:右肺下葉の感染。病原体検査:新型コロナウイルス核酸検査で陽性に診断された。本開示の漢方薬で治療後、発熱が消え、体の痛みが消え、倦怠感と食欲不振が改善された。肺の炎症が吸収された。新型コロナウイルス核酸検査で陰性に診断され、期間中にその他の副作用はみられなかった。
【0073】
本開示の漢方薬組成物のインビトロ薬物効果実験:
本開示の漢方薬組成物がCOVID-19疑似ウイルスに感染したACE2受容体を安定的に発現する細胞株HEK293に対する抑制効果を研究した。
1.試験品および投与製剤の調製:
試験品:本開示の漢方薬組成物抽出物(実施例4の抽出物)の黄褐色粉末16g。ヘスペリジン含有量:13.12mg/g。供給源:北京漢典製薬有限公司。
投与製剤の調剤:漢方薬抽出物粉末20mgを称量してとり、DMSO1mLに加え、均一に混合して母液20mg/mLを得る。
母液100μLを取り、DMEM培地3900μLに加えて5mg/mLの濃度に調製する。0.5mg/mLの溶液400μLを取り、DMEM培地600μLに加えて濃度が0.2mg/mLである溶液を調製する。0.2mg/mLの溶液500μLを取り、DMEM培地500μLに加えて濃度が0.1mg/mLである溶液を調製する。濃度が0.1mg/mLの溶液500μLを取り、DMEM培地500μLに加えて濃度が0.05mg/mLである溶液を調製する。濃度が0.05mg/mLの溶液500μLを取り、DMEM培地500μLに加えて濃度が0.025mg/mLである溶液を調製する。
2.陽性対照品および投与製剤の調剤:
陽性対照品:リン酸クロロキン白色または淡黄色粉末、5g。供給源:bidepharm医薬。製品番号:BD263139-5g。ロット番号:BNA684。
投与製剤の調剤:リン酸クロロキン2.24mgを秤量してとり、DMEM1.085mlに加えて、均一に混合して濃度が4mMである予備溶液を得る。母液100μLを取り、DMEM細胞培地3900μLに加え、濃度が100μMである溶液を調製する。
3.試験用細胞
名称またはコード:ACE2受容体を安定的に発現する細胞株HEK293。
種の供給源:ヒト胎児腎細胞細胞。組織供給源:正常な腎臓細胞。成長特性:壁に付着して成長。
培地:DMEM培地90%、FBS、10%;
4.試験用の組換え新型コロナウイルス
名称:COVID-19疑似ウイルス
ウイルス:広州派真生物技術有限公司(packgene Biotech)
ロット番号:LV-nCov1-2
生産:擬似型レンチウイルスシステムベクターを使用して、複数のプラスミド共同形質感染哺乳動物細胞システムで疑似ウイルスを生産し、疑似ウイルスキャプシドタンパク質またはエンベロープタンパク質(envelope protein)で包まれて形成された感染性疑似ウイルス類似顆粒を生産する。作用:前記組換え新型コロナ疑似ウイルスは、疑似ウイルスの侵入を中和する試験品の能力の検出に使用でき、生物学的安全性レベルIIの実験室で操作する必要がある。
5.試験方法:
D1、対数増殖期(logarithmic phase)のHEK293-ACE2細胞を取り、細胞濃度を6.25×104個/mLに調整し、96ウェルプレートの2-7列と9列B-D行に5000細胞/ウェル/80μLを添加し、8列B-D行に新しく調製されたDMEM培地80μLを添加し、37℃、5%CO2で一晩培養する。
D2、2-6列で、B-D行の試験品グループにを濃度が50μg/mL、20μg/mL、10μg/mL、5μg/mLおよび2.5μg/mLの試験品10μLを順番に加え、同時に疑似ウイルス液10μLを加え、7列で、B-D行の陽性対照群にリン酸クロロキン10μLを加え、同時に疑似ウイルス液10μLを加え、ブランク対照群(8列のB-D行)に培地20μLを加え、陰性対照群(9列のB-D行)に疑似ウイルス液10μLと0.25%DMSOを含む溶媒対照10μLを加える。37℃、5%CO2で48時間培養した後、1×Reporter Lysis Buffer40μLを加え、-80℃で2時間放置し、再び解凍した後4000r/分で5分間遠心分離し、上層液20μLを取り、96ウェルホワイトELISAプレートに加え、ルシフェラーゼアッセイ試薬(Luciferase Assay Reagent)100μLを加え、ルシフェラーゼ活性(RLU、RLU値が高いと、細胞を感染させ、細胞に進入した疑似ウイルスが多いことを表す)を検出した。プレートのレイアウトは次のとおりである。
【0074】
【0075】
結果:薬物作用48時間後、陽性対照群のRLU/RLUc値(実験群の蛍光値と陰性対照群の平均蛍光強度の比)は0.05±0.01であり、試験品は高濃度から低濃度(50μg/mL、20μg/mL、10μg/mL、5μg/mLおよび2.5μg/mL)の順にそのRLU/RLUc比は順番に0.14±0.04、0.09±0.03、0.14±0.04、0.11±0.01および0.17±0.14であり、陰性対照群と比較して、試験品の各用量グループと陽性対照群のRLU/RLUc比は、すべて顕著な差があった(***P<0.001、**P<0.01)。
図7は、COVID-19疑似ウイルス感染HEK293-ACE2細胞に対する漢方薬抽出物の抑制効果を示した。
【0076】
試験結果:前記結果から、本試験条件下で、前記漢方薬抽出物の濃度が2.5μg/mL~50μg/mLである場合、COVID-19疑似ウイルスに対する抑制率が50%以上に達し、漢方薬抽出物H157が、COVID-19疑似ウイルス感染ACE2受容体を安定的に発現する細胞株HEK293に非常に良い抑制効果があることを示している。
【0077】
寒湿(すなわち、ウイルス性肺炎)に対する本開示の漢方薬組成物の臨床治療效果:
本開示で調製した漢方薬組成物を採用して臨床試験を実施した。
対象:丹江口市中医院の患者
病例1:陳氏、年齢13歳、治療前の影像診断レポートでは、右肺の上葉、中葉、下葉に斑点状の密度が増加した影が多数見られ、一部はスリガラス様陰影変化を示した。新型コロナウイルス検査は陰性に診断された。診断:右肺感染性ウイルス、ウイルス性肺炎と考えられる。本開示の漢方薬組成物で薬物治療を行った後、影像診断によると、右肺感染性病変が薬物使用前より吸収された。
病例2:王氏、年齢32歳、治療前の影像診断レポートでは、右肺の上葉および左肺の下葉に斑点形態および板状スリガラス様の密度が増加した陰影が多数見られ、一部は病変の実際の変化があり、その中に、特に右上に空気気管支像(air bronchogram)が見られた。新型コロナウイルス検査は陰性に診断された。診断:右肺の上葉および左肺の下葉に感染性病変があり、ウイルス肺炎と最初に考慮する。本開示の漢方薬組成物で薬物治療を行った後、影像診断によると、右肺の上葉および左肺の下葉における感染性病変が以前より吸収され、好転された。
病例3:謝氏、年齢54歳、治療前の影像診断レポートでは、右肺の上葉に斑点形態の密度が増加した影が見られ、縁がぼやけており、その中に空気気管支造影が見られた。新型コロナウイルス検査は陰性に診断された。診断:右下肺に感染性病変がある。本開示の漢方薬組成物で薬物治療を行った後、影像診断によると、右下肺の感染性病変が病変前より吸収され、好転された。再検査を提案する。
病例4:17歳の男性、発熱3日間、入院。症状:発熱と悪寒、空咳、喉の痛み、全身の痛み、多汗。映像学検査:右下肺感染、ウイルス性肺炎の可能性がある。病原体検査:新型コロナウイルス核酸検査で陰性に診断された。本開示の漢方薬組成物で薬物治療を行った後、発熱が消え、喉の痛みが消え、咳が緩解され、肺の炎症が吸収された。
病例5:41歳の男性、咳と痰半月以上、入院。症状:咳と痰。映像学検査:右上肺感染、ウイルス性肺炎の可能性あり。病原体検査:新型コロナウイルス核酸検査で陰性に診断された。本開示の漢方薬組成物で14日間の薬物治療を行った後、咳と痰が消え、肺の炎症が吸収され、治療効果が顕著だった。
病例6:19歳の男性、息切れとめまいを伴う発熱2日間、入院。症状:発熱、倦怠感、めまい、喉の痛み、咳。映像学検査:双肺に感染性病変があり、ウイルス性肺炎の可能性が高い。病原体検査:新型コロナウイルス核酸検査で陰性に診断された。本開示の漢方薬組成物で3日間の薬物治療を行った後、発熱が消え、咳嗽と痰が緩和され、倦怠感と食欲不振が改善され、肺の炎症が吸収され、治療効果が顕著だった。
病例7:30歳の女性、咳嗽と痰3日間、入院。症状:咳嗽、痰と喉の渇き。映像学検査:右下肺感染、ウイルス性肺炎の可能性がある。病原体検査:新型コロナウイルス核酸検査で陰性に診断された。本開示の漢方薬組成物で4日間の薬物治療を行った後、咳嗽と痰が緩和され、喉の渇きが改善され、肺の炎症が吸収され、治療効果が顕著だった。
病例8:23歳の男性、間欠的発熱5日間、入院。症状:発熱悪寒、咳、食欲不振と睡眠不足。映像学検査:左肺の下葉感染、ウイルス性肺炎の可能性がある。病原体検査:新型コロナウイルス核酸検査で陰性に診断された。本開示の漢方薬組成物で7日間の薬物治療を行った後、発熱と悪寒が消え、咳が改善され、肺部の炎症が吸収され、治療効果が顕著だった。
病例9:31歳の男性、発熱15日間、胸の圧迫感と痛み7日間、入院。症状:頭痛、食欲不振と倦怠感。映像学検査:双肺多発性感染、ウイルス性肺炎の可能性がある。病原体検査:新型コロナウイルス核酸検査で陰性に診断された。本開示の漢方薬組成物で6日間の薬物治療を行った後、頭痛が消え、倦怠感と食欲不振が改善され、肺の炎症が吸収され、治療効果が顕著だった。
【0078】
本開示の漢方薬組成物は、ウイルス性肺炎を効果的に緩和または治療し、治療後、患者の胸部影像では炎症が吸収されたと見られ、肺機能が回復した。
最後に説明すべきことは、前記各実施例は本開示の技術方案を説明するために使用されたものであり、それを限定するためのものではなく、前述の各実施例を参照して本開示について詳細に説明したものの、当業者であれば、前述の各実施例に記載された技術方案について修正、またはその一部または全部の技術特徴について同等の交換を行うことができ、このような修正または交換により、関連技術方案の本質が本開示の各実施例の技術方案の範囲を逸脱しないことを理解することができる。
【国際調査報告】