(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】人工抗原提示細胞システム及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0784 20100101AFI20230612BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230612BHJP
【FI】
C12N5/0784
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567826
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 CN2021092173
(87)【国際公開番号】W WO2021223742
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522434451
【氏名又は名称】セルテック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フー,チェ‐ミン ジャック
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジュン‐チェン
(72)【発明者】
【氏名】スー,チュン‐ヤオ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065BD40
4B065CA44
(57)【要約】
1つ以上のゲル化ヒト樹状細胞と、1つ以上のサイトカインを放出することができる制御放出システムと、を含む、人工抗原提示細胞システム。ゲル化ヒト樹状細胞を産生するための方法及び免疫細胞を活性化するための人工抗原提示細胞システムの使用もまた本明細書において提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工抗原提示細胞複合体であって、
(a)1つ以上のゲル化ヒト樹状細胞と、
(b)1つ以上のサイトカインと会合した制御放出システムと、を含み、
前記1つ以上のゲル化ヒト樹状細胞が、前記制御放出システムに付着している、人工抗原提示細胞複合体。
【請求項2】
前記1つ以上のゲル化ヒト樹状細胞の表面上にディスプレイされた抗原ペプチドを更に含む、請求項1に記載の人工抗原提示細胞複合体。
【請求項3】
前記制御放出システムが、前記1つ以上のサイトカインを封入する微粒子を含む、請求項1又は2に記載の人工抗原提示細胞複合体。
【請求項4】
前記1つ以上のサイトカインが、IL-2、IL-3、IL-4、IL-6、IL-7、IL-9、IL-12、IL-15、IL21、IL-23、IL-10、TNF-α、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IFNλ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の人工抗原提示細胞。
【請求項5】
前記微粒子が、1つ以上の分解性ポリマーを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の人工抗原提示細胞複合体。
【請求項6】
前記1つ以上の分解性ポリマーが、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリアクリレート、又はそれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の人工抗原提示細胞複合体。
【請求項7】
前記抗原ペプチドが、前記ゲル化ヒト樹状細胞上の主要組織適合遺伝子複合体クラスI分子によってディスプレイされる、請求項2~6のいずれか一項に記載の人工抗原提示細胞複合体。
【請求項8】
前記ゲル化ヒト細胞が、細胞内架橋ポリエチレングリコールジアクリレート(PEG-DA)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の人工抗原提示細胞複合体。
【請求項9】
ゲル化ヒト樹状細胞を産生するための方法であって、
(a)ヒト樹状細胞の集団を提供することと、
(b)ゲル化緩衝液を前記ヒト樹状細胞中に透過させることであって、前記ゲル化緩衝液が、光開始剤、ポリマー又は重合性モノマー、及びジメチルスルホキシドを含む、透過させることと、
(c)前記ゲル化緩衝液を透過させた前記ヒト樹状細胞を光に曝露して、前記ポリマーの架橋を引き起こし、それによって前記ゲル化ヒト樹状細胞を形成することと、を含む、方法。
【請求項10】
(d)前記ゲル化ヒト樹状細胞を、1つ以上のサイトカインと会合している制御放出システムにカップリングすることを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ゲル化緩衝液が、アクリルポリマーである前記ポリマーを含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記アクリルポリマーが、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEG-DA)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アクリルポリマーが、約250~約2,000ダルトンの平均分子量を有するPEG-DAである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記PEG-DAが、約600~約800ダルトンの平均分子量を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ゲル化緩衝液が、前記重合性モノマーを含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項16】
前記重合性モノマーが、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、(ヒドロキシエチル)メタクリレート、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、エチレングリコールジメタクリレート、又はそれらの組み合わせである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記光開始剤が、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンである、請求項9~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項9~17のいずれか一項に記載の方法によって産生される、人工抗原提示ヒト樹状細胞。
【請求項19】
免疫細胞を活性化する方法であって、
(i)請求項1~8及び18のいずれか一項に記載の人工抗原提示細胞複合体を提供することと、
(ii)前記人工抗原提示細胞複合体を、抗原ペプチドを用いてプライミングして、前記人工抗原提示細胞複合体中の前記ゲル化ヒト樹状細胞の表面上に前記ペプチドをディスプレイすることと、
(iii)ステップ(ii)において産生された前記人工抗原提示細胞複合体を、免疫細胞を含む細胞集団と接触させて、前記免疫細胞を活性化することと、を含む、方法。
【請求項20】
前記免疫細胞が、T細胞を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ペプチドが、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、寄生虫抗原、がん抗原、又は自己免疫疾患に関連する自己抗原に由来する、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(iii)において産生された前記活性化された免疫細胞を、それを必要とする対象に投与することを更に含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月8日に出願された米国仮出願第63/022,289号の米国特許法第119条(e)の下の利益を主張し、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
抗原提示細胞(APC)(天然に存在するAPC又は人工APC(aAPC)を含む)を介したT細胞及びそれらの機能の直接的な調節は、がん、ウイルス感染、及び自己免疫疾患に及ぶ疾患に対する魅力的な治療戦略である。Constantino et al.,Transl Res 2016,168,74-95、及びPalucka et al.,Nat Rev Cancer 2012,12(4),265-77.最近の臨床上の関心及びT細胞ベースの養子細胞療法の進歩は、エクスビボT細胞調節のためのAPCの更なる採用を導き、これは、ネオ抗原特異的T細胞、腫瘍浸潤リンパ球、ウイルス標的化T細胞の拡大、並びに後の遺伝子改変ための一般のT細胞拡大を可能にする。Constantino et al.,2016、及びFucikova et al.,Front Immunol,2019,10,2393.
【0003】
人工APCの開発は、維持、貯蔵、及び無菌要件の考慮に起因して関心事であった。Sunshine et al.,Nanomedicine(Lond)2013,8(7),1173-89、Turtle et al.,Cancer J 2010,16(4),374-81、Durai et al.,Cancer,Immunol Immunother 2009,58(2),209-20、Latouche et al.,Nat Biotechnol 2000,18(4),405-9、及びSasawatari et al.,Immunol Cell Biol 2006,84(6),512-21.しかしながら、生存樹状細胞(DC)などの天然に存在するAPCを大いに模倣し得るaAPCを構築することは依然として課題である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、少なくとも部分的に、(a)抗原ペプチドをT細胞に提示することができるゲル化ヒト樹状細胞と、(b)1つ以上のサイトカインを分泌することができる制御放出システムと、を含む、効率的な人工抗原提示細胞(aAPC)システムの開発に基づいている。ヒト樹状細胞は、遺伝子改変され得る。あるいは、ヒト樹状細胞は、天然に存在し得る。本明細書に開示されるaAPCシステムは、MHC/ペプチド複合体のT細胞受容体との咬合によってトリガーされる一次シグナル伝達経路、T細胞上の共刺激受容体とそのリガンドとの間の相互作用によってトリガーされる共刺激シグナル伝達経路、及び刺激サイトカインの免疫細胞上のその受容体への結合によってトリガーされるシグナル伝達経路を含む、3つのシグナル伝達経路をトリガーすることを介して、T細胞などの免疫細胞を完全に活性化することができる。
【0005】
したがって、本開示の一態様は、人工抗原提示細胞複合体であって、(a)1つ以上のゲル化ヒト樹状細胞と、(b)1つ以上のサイトカインと会合した制御放出システムと、を含む、人工抗原提示細胞複合体を提供する。1つ以上のゲル化ヒト樹状細胞は、制御放出システムに付着して、人工抗原提示細胞複合体を形成する。いくつかの実施形態では、人工抗原提示細胞複合体は、1つ以上のゲル化ヒト樹状細胞の表面上にディスプレイされた抗原ペプチドを更に含み得る。
【0006】
いくつかの実施形態では、制御放出システムは、1つ以上のサイトカインを封入し得る微粒子を含む。例示的なサイトカインとしては、IL-2、IL-3、IL-4、IL-6、IL-7、IL-9、IL-12、IL-15、IL21、IL-23、IL-10、TNF-α、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IFNλ、及び/又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、微粒子は、1つ以上の分解性ポリマー、例えば、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリアクリレート、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、抗原ペプチドは、ゲル化ヒト樹状細胞上の主要組織適合遺伝子複合体クラスI分子によってディスプレイされ得る。いくつかの実施形態では、ゲル化ヒト細胞は、細胞内架橋ポリエチレングリコールジアクリレート(PEG-DA)を含み得る。
【0008】
別の態様では、本開示は、ゲル化ヒト樹状細胞を産生するための方法であって、(a)ヒト樹状細胞の集団を提供することと、(b)ゲル化緩衝液をヒト樹状細胞中に透過させることであって、ゲル化緩衝液が、光開始剤、ポリマー又は重合性モノマー、及びジメチルスルホキシドを含む、透過させることと、(c)ゲル化緩衝液を透過させたヒト樹状細胞を光に曝露して、ポリマーの架橋を引き起こし、それによってゲル化ヒト樹状細胞を形成することと、を含む、方法を特徴とする。いくつかの場合では、方法は、(d)ゲル化ヒト樹状細胞を、1つ以上のサイトカインと会合している制御放出システムにカップリングすることを更に含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、ゲル化緩衝液中のポリマーは、アクリルポリマー、例えば、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEG-DA)であり得る。いくつかの例では、アクリルポリマーは、約250~約2,000ダルトンの平均分子量を有し得るPEG-DAである。他の例では、PEG-DAは、約600~約800ダルトンの平均分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、ゲル化緩衝液は、重合性モノマー、例えば、wh 2-ヒドロキシエチルメタクリレート、(ヒドロキシエチル)メタクリレート、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、エチレングリコールジメタクリレート、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンである。
【0011】
本明細書に開示される任意の方法によって産生される任意の人工抗原提示ヒト樹状細胞もまた本開示の範囲内である。
【0012】
更に別の態様では、本開示は、免疫細胞を活性化する方法であって、(i)本明細書に開示される任意の人工抗原提示細胞複合体を提供することと、(ii)人工抗原提示細胞複合体を、抗原ペプチドを用いてプライミングして、人工抗原提示細胞複合体中のゲル化ヒト樹状細胞の表面上にペプチドをディスプレイすることと、(iii)ステップ(ii)において産生された人工抗原提示細胞複合体を、免疫細胞を含む細胞集団と接触させて、免疫細胞を活性化することと、を含む、方法を提供する。任意選択で、方法は、ステップ(iii)において産生された活性化された免疫細胞を、それを必要とする対象に投与することを更に含み得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、寄生虫抗原、がん抗原、又は自己免疫疾患に関連する自己抗原に由来する。
【0014】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明において記載される。本発明の他の特徴又は利点は、以下の図面及びいくつかの実施形態の詳細な説明から、また並びに添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A-1D】DMSO媒介性モノマー及び光開始剤透過を介したゲル化樹状細胞(G-DC)の調製及び特徴付けを示す図である。
図1Aは、DMSOの存在下での細胞の細胞内ドメイン中へのヒドロゲルモノマー及び光開始剤の直接透過後のゲル化樹状細胞の調製を示す模式図である。UVクロスリンカーを、光活性化架橋のために使用する。
図1B:10重量%PEG-DAゲル化緩衝液中でのインキュベーション後の細胞のPEG定量化は、細胞内PEG-DAモノマー濃度が、5分間のインキュベーションの後に飽和に近づくことを示す。
図1C:フルオレセイン-DAを用いて調製したゲル化樹状細胞の蛍光及び明視野顕微鏡観察は、ゲル化樹状細胞が、PBS中及び水中の懸濁に際して構造的完全性を保持することを示す。
図1D:G-DCの安定性を、PBS中での21日間の懸濁後に評価する。
【
図2A-2F】G-DC抗原提示が、細胞内ヒドロゲル化後のペプチドパルスによって調節され得ることを示す図である。
図2A:ペプチド抗原が、細胞内ヒドロゲル化後にJAWSII細胞に付加され得ることを示す模式図。
図2B~2C:JAWSII細胞を、LPSで処理し、次いで、光活性化ヒドロゲルシステムによってゲル化した。非活性化G-DC群において、ペプチド及びLPS活性化なしの対照JAWSII細胞をゲル化のために調製した。活性化G-DC群において、SIINFEKLペプチドを、細胞内ヒドロゲル化前のJAWSIIのLPS活性化の間に添加した。LPS処理G-DC群において、JAWSIIをSIINFEKLペプチドの非存在下で活性化し、SIINFEKLペプチドを、LPS処理G-DC付加OT-Iペプチド群に細胞内ヒドロゲル化後に添加した。全ての群の表面上のH-2K
b/SIINFEKL複合体を、フローサイトメトリーによって観察した。非活性化、活性化及びLPS処理細胞を含む対照群もまた、表面マーカー比較のためにゲル化した。ヒストグラム(
図2B)及び棒グラフ(
図2C)は、回収したCD8
+細胞集団上のH-2K
b/SIINFEKL複合体の%を示す。非染色T細胞群(灰色ヒストグラムの塗りつぶしとして示す)を陰性対照フローサイトメトリーとして使用した。エラーバーは、平均±SEM(n=3)を表す。(
図2D~2F)ペプチド交換されたG-DC及びその対照群の、CFSE染色OT-I特異的CD8+T細胞との共培養は、ペプチド交換され活性化されたG-DCによるT細胞拡大を示したが、非活性化及びLPS処理G-DCによるT細胞拡大は示されなかった。ヒストグラムは、CFSE増殖プロファイルを示し、CFSE希釈ピークは、細胞分裂の程度を示す(
図2D)。棒グラフは、様々な分裂の世代にある細胞のパーセンテージを示す(
図2E)。様々なG-DCとの共培養の後の細胞数及び相対的倍率変化を(
図2F)に示す。各培養条件は、3:1のT細胞/G-DC比で、ウェル当たり8×10
4個の固定数のDCを含有した。棒グラフにおける棒の配置は、左から右へ、非活性化、LPS処理及びOTIパルス、LPS処理のみ、並びにLPS処理及びゲル化後OTIパルスである。
【
図3A-3F】G-DCを凍結及び凍結乾燥の両方によって貯蔵した後に、CD80がペプチド交換されたG-DCの表面上に提示されることを示す図である。10重量%PEG-DAを用いて調製したゲル化JAWSII細胞を、10%スクロース中で-20℃で凍結したか(
図3C及び3D)、又は凍結乾燥した(
図3E及び3F)。72時間の貯蔵の後、G-DCを、水中での融解又は再懸濁に際して観察した。細胞表面上のMHCクラスI/SIINFEKL複合体の発現をフローサイトメトリーによって検出した。ヒストグラム(
図3A、3C、及び3E)並びに棒グラフ(
図3B、3D、及び3F)は、回収した細胞集団における最大の%を示す。
図3A及び3Bは、対照、非凍結又は非凍結乾燥細胞である。同様のパターンは、LPS処理及びOTIパルス、LPS処理並びにLPS処理及びゲル化後OTIパルスG-DCにおいて観察された。棒グラフにおける棒の配置は、左から右へ、非活性化、LPS処理及びOTIパルス、LPS処理のみ、並びにLPS処理及びゲル化後OTIパルスである。
【
図4A-4G】G-DCの機能性が凍結又は凍結乾燥での貯蔵後に保持されることを示す図である。
図4A:ゲル化JAWSIIについての凍結によるか又は凍結乾燥による貯蔵を示す模式図。非活性化G-DC群において、ペプチド及びLPS活性化なしの対照JAWSII細胞をゲル化のために調製した。活性化G-DC群において、SIINFEKLペプチドを、細胞内ヒドロゲル化前のJAWSIIのLPS活性化の間に添加した。LPS処理G-DC群において、JAWSIIをSIINFEKLペプチドの非存在下で活性化し、SIINFEKLペプチドを、細胞内ヒドロゲル化後のLPS処理G-DCに添加した。PBS中に懸濁した対照細胞及び様々なG-DCの明視野顕微鏡法。様々な貯蔵及び再懸濁後のG-DCの真球度を、ImageJを使用して定量化した。
図4B~4D:様々なG-DCを-80Cで凍結し、T細胞拡大のために融解した。全ての群の、CFSE染色OT-I特異的CD8+T細胞との共培養は、活性化G-DC及びパルス後群によるT細胞拡大を示したが、非活性化及びLPS処理G-DCによるT細胞拡大は示されなかった。ヒストグラムは、そのCFSE増殖プロファイルを示し、CFSE希釈ピークは、分裂した時間を示した。棒グラフは、全ての群における世代のパーセント及び細胞数を示した。各培養条件は、3:1のT細胞/G-DC比で、ウェル当たり8×10
4個の固定数のDCを含有した。染色対照T細胞を参照として黒色でプロットする。
図4E~4G:様々なG-DCを、凍結乾燥し、次いで、T細胞拡大のために培地中で再構成した。エラーバーは、平均±SEM(n=3)を表す。棒グラフにおける棒の配置は、左から右へ、非活性化、LPS処理及びOTIパルス、LPS処理のみ、並びにLPS処理及びゲル化後OTIパルスである。
【
図5A-5D】G-DCを凍結及び凍結乾燥の両方によって貯蔵した後に、MHCクラス-I/SIINFEKL複合体がペプチド交換されたG-DCの表面上に提示されることを示す図を含む。10重量%PEG-DAを用いて調製したゲル化JAWSII細胞を、10%スクロース中で-20℃で凍結したか、又は凍結乾燥した。72時間の貯蔵後、G-DCを、水中での融解又は再懸濁に際して観察した。細胞表面上のMHCクラスI/SIINFEKL複合体の発現をフローサイトメトリーによって検出した。ヒストグラム(
図5A及び5C)並びに棒グラフ(
図5B及び5D)は、回収した細胞集団における最大の%を示す。同様のパターンは、LPS処理及びOTIパルスG-DCとLPS処理及びゲル化後OTIパルスG-DCとの間で観察された。棒グラフにおける棒の配置は、左から右へ、非活性化、LPS処理及びOTIパルス、LPS処理のみ、並びにLPS処理及びゲル化後OTIパルスである。
【
図6】G-DCが、凍結及び凍結乾燥の両方によって成功裏に貯蔵され得ることを示す写真を含む。10重量%PEG-DAを注入したゲル化JAWSII細胞を、10%スクロース中で-20℃で凍結するか、又は10%スクロース中で凍結乾燥するかした。72時間の貯蔵の後、G-DCを、H
2O中での融解又は再懸濁に際して観察した。様々な貯蔵条件下のG-DCについて、識別可能な形態の変化は観察されなかった。スケールバー=100μm。
【
図7A-7E】凍結又は凍結乾燥での貯蔵後のG-hDCの調製及び特徴付けを示す図を含む。
図7A:光活性化架橋後のG-hDCの調製を示す模式図。
図7B:G-hDCを、凍結又は凍結乾燥での貯蔵後に顕微鏡を使用して画像化した。
図7C:フルオレセイン-DAを用いて調製したG-hDCの蛍光及び明視野顕微鏡観察は、G-hDCが、PBS中及び水中での懸濁に際して構造的完全性を保持することを示す。
図7D~7E:hDCを光活性化ヒドロゲルシステムによってゲル化した。細胞表面上の表面マーカーの発現をフローサイトメトリーによって検出した。ヒストグラム及び棒グラフは、回収したCD8
+細胞集団上のヒトMHCクラスI及びMHCクラスII(
図7D)並びにCD80及びCD86(
図7E)複合体の%を示す。非染色T細胞群(灰色ヒストグラムの塗りつぶしとして示す)を陰性対照フローサイトメトリーとして使用した。エラーバーは、平均±SEM(n=3)を表す。
【
図8A-8E】G-DCがサイトカイン放出、抗原提示スフェロイドの調製に適応可能であることを示す図を含む。
図8A:G-DCをサイトカインロード微粒子(GC-MP)に組み込むことによる人工抗原提示細胞の構築を示す模式図。
図8B:代表的なGC-MPを共焦点顕微鏡法下で観察した。PLGAベースのMPを、ダブルエマルジョンプロセスを使用してPLGA及びスルホ-cy5を混合することによって合成した。MPを、蛍光顕微鏡を使用して画像化した。ポリ-L-リジンでのコーティング後、MPをGCと混合し、次いで、カルボシアニン膜色素であるDiOで染色した。GC-MPを、共焦点顕微鏡を使用して画像化した。
図8C:GC-MPのサイズ分布を、顕微鏡法画像のImageJ分析を通じて決定した。
図8D:GC-MPは、高度に安定であり、30日間の観察に際して構造的完全性を保持する。
図8E:GC-MPのインビトロ放出プロファイルを4℃及び37℃で行った。
【
図9】37及び4Cでの様々な組成の微粒子による放出速度論を示すチャートである。
【
図10A-10E】抗腫瘍療法のためのGC-MPによる抗原特異的T細胞の拡大を示す図を含む。JAWSII細胞を、活性化のためにLPS及びOTIペプチドパルスで処理し、次いで、光活性化ヒドロゲルシステムによってゲル化した。
図10A~10C:CFSE染色OT-I特異的CD8+T細胞の、培地のみ、IL2ロード微粒子(MP-IL-2;GCコーティングなし)、GC-MP(IL-2なし)、又はGC-MP-IL-2との共培養は、GC-MP及びGC-MP-IL-2によるT細胞拡大を示した。
図10A:ヒストグラムは、CFSE増殖プロファイルを示し、CFSE希釈ピークは、分裂のレベルを表す。
図10B:棒グラフは、様々な細胞の世代にある細胞のパーセントを示す。
図10C:様々なaAPCシステムとの3及び6日間の共培養後の、全ての群におけるCD8
+T細胞の相対的倍率変化。
図10D:EG7-OVA腫瘍治療のためのT細胞拡大及び投与スキームを示す模式図。
図10E:E.G7-OVA細胞(5×10
5個の細胞)を背側側腹部領域中の皮下に皮下移植し、拡大した抗原特異的CD8
+T細胞をi.v.によって0日目に投与した。腫瘍サイズをモニターし、(W
2×L)/2(式中、Wは幅であり、Lは長さである)として計算した。各培養条件は、3:1のT細胞/G-DC比で、ウェル当たり8×10
4個の固定数のDCを含有した。エラーバーは、平均±SEM(n=3)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
人工抗原提示細胞(aAPC)を作製するための従来の合成アプローチとは対照的に、本開示は、細胞内ゲル化を介して生存ヒト樹状細胞をaAPCに変換するためのアプローチに関する。ゲル化ヒト樹状細胞は、サイトカインを分泌して、本明細書に開示されるように免疫細胞を完全に活性化することができる人工抗原提示細胞複合体を形成することができる制御放出システムと会合され得る。ゲル化細胞を作製するための方法は、JAWSIIマウスDC細胞株及びヒト初代DCを、凍結又は凍結乾燥を介して貯蔵されることができる堅牢なaAPCに成功裏に転換した。JAWSII由来aAPCを使用して、ペプチド抗原交換を介した構築物のモジュール性及び微粒子カップリングを通じた持続性サイトカイン放出をすることができるゲル化細胞スフェロイドの調製が実証された。DC由来aAPCは、抗原特異的T細胞の拡大を成功裏にトリガーし、マウスにおける養子T細胞療法の抗がん有効性を向上させた。
【0017】
したがって、生存ヒト樹状細胞から変換され得るゲル化ヒト樹状細胞、及び、任意選択で、サイトカインを分泌するための制御放出システムを含む人工抗原提示細胞システム、生存ヒト樹状細胞からゲル化ヒト樹状細胞を産生するための方法、並びに本明細書に開示されるaAPCシステムを使用してT細胞などの免疫細胞を活性化するための方法が、本明細書に開示される。
【0018】
I.人工抗原提示細胞複合体
いくつかの態様では、本開示は、人工抗原提示細胞(aAPC)複合体であって、生存ヒト樹状細胞に由来する1つ以上のゲル化ヒト樹状細胞と、1つ以上のサイトカインを包含する制御放出システムと、を含む、人工抗原提示細胞を提供する。開示されるaAPC複合体は、免疫細胞を完全に活性化することができる。
【0019】
(i)ゲル化ヒト樹状細胞
本明細書に開示されるゲル化ヒト樹状細胞は、細胞内ゲル化を介して生存ヒト樹状細胞から変換され得る。本明細書で使用される場合、ゲル化ヒト樹状細胞は、天然に存在するヒト樹状細胞に対して非天然である、細胞内架橋ポリマー(すなわち、ゲル化)を含むヒト樹状細胞を指す。ゲル化ヒト樹状細胞は、ヒトドナーから得られたヒト樹状細胞から変換され得る。あるいは、ゲル化ヒト樹状細胞は、インビトロで培養されたヒト樹状細胞株から変換され得る。
【0020】
好ましくは、ゲル化ヒト樹状細胞中の架橋ポリマーは、生体適合性である。当該技術分野で知られている任意の生体適合性ポリマーが、ゲル化ヒト樹状細胞を作製するために使用され得る。1つの例は、ポリエチレングリコール(PEG)であり、これは、官能基、例えば、アクリル官能基を含み得る。別の例は、N(2-ヒドロプロピル)メタクリルアミド(HPMA)である。
【0021】
いくつかの実施形態では、ゲル化ヒト樹状細胞は、樹状細胞の表面上に発現されたMHC分子と複合体形成した抗原ペプチドを含む。いくつかの例では、抗原ペプチドは、MHCクラスI分子によってゲル化樹状細胞の表面上にディスプレイされる。他の例では、抗原ペプチドは、MHCクラスII分子によってゲル化樹状細胞の表面上にディスプレイされる。抗原ペプチドは、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、寄生虫抗原、がん抗原、又は自己免疫疾患に関連する自己抗原の断片であり得る。いくつかの場合では、抗原ペプチドは、MHCクラスI拘束性ペプチドであり得る。例えば、抗原ペプチドは、HLA-A(例えば、A*0201若しくはA*2402)、HLA-B、又はHLA-Cに拘束され得る。他の場合では、抗原ペプチドは、MHCクラスII拘束性ペプチドであり得る。例えば、抗原ペプチドは、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DRA、又はHLA-DRB1に拘束され得る。1つ以上の特異的MHCクラスI分子及び/又はMHCクラスII分子を発現するゲル化ヒト樹状細胞は、必要とされるMHC分子を有するヒトドナーから得られ得る。
【0022】
(ii)サイトカイン分泌のための制御放出システム
本明細書に開示される人工抗原提示細胞複合体は、本明細書に開示されるゲル化ヒト樹状細胞のうちの1つ以上と会合した制御放出システムを更に含み得る。制御放出システムは、1つ以上のサイトカインと会合しており、例えば、サイトカインのうちの1つ以上を封入している。制御放出システムは、1つ以上のサイトカインが延長された期間にわたって放出され得るように、会合したサイトカインを制御された速度で放出することができる送達システムである。いくつかの実施形態では、制御放出システムは、1つ以上のサイトカインが予め設計された様式で放出され得るようにして、1つ以上のサイトカインと慎重に組み合わされている1つ以上の生体適合性ポリマー(例えば、天然又は合成)を含む。サイトカインの放出は、長期間にわたって一定であり得る。あるいは、サイトカインの放出は、長期間にわたって周期的であり得るか、又は環境若しくは他の外部事象によってトリガーされ得る。制御放出システムは、それにサイトカインが共有結合的又は非共有結合的な相互作用(例えば、静電相互作用又は水素結合)を介して会合され得る、1つ以上の生体適合性材料を含み得る。生体適合性材料は、ポリマー、例えば、ヒドロゲルを形成する親水性ポリマーであり得る。ヒドロゲルは、親水性であるポリマー鎖のネットワークである。ヒドロゲルネットワークにおいて、親水性ポリマーは、ポリマーの架橋によって三次元構造を形成し得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される制御放出システムは、1つ以上のサイトカインと会合した微粒子又はナノ粒子を含む。いくつかの場合では、微粒子は、サイトカインを封入し得る。他の場合では、サイトカインは、微粒子に付着され得る。微粒子は、制御放出薬物送達システムにおいて一般的に使用されるポリマーを含む、1つ以上の好適なポリマーによって作製され得る。いくつかの例では、微粒子を作製するためのポリマーは、生分解性である。例としては、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリアクリレート、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
微粒子は、ゲル化ヒト樹状細胞のうちの1つ以上がそれに付着することを可能にする好適なサイズのものであり得る。例えば、微粒子は、約1~約1,000ミクロン、例えば、約10~100、約100~200、約200~400、約400~600、約600~800、又は約800~1,000ミクロンの平均サイズを有し得る。いくつかの例では、本明細書に開示される微粒子の平均サイズは、約50~100ミクロン、例えば、約75ミクロンであり得る。
【0025】
他の実施形態では、本明細書に開示される制御放出システムは、サイトカインと会合したリポソーム又は平面基材を含み得る。
【0026】
制御放出システム中に含有されるサイトカインは、T細胞などの免疫細胞を活性化し得るものを含み得る。例としては、IL-2、IL-3、IL-4、IL-6、IL-7、IL-9、IL-12、IL-15、IL21、IL-23、IL-10、TNF-α、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IFN-λ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書に開示される任意の制御放出システム、例えば、微粒子は、従来の方法によって調製され得る。例えば、以下の実施例2を参照されたい。次いで、制御放出システムは、任意のゲル化ヒト樹状細胞と、直接的に又はリンカー、例えば、ポリ-リジン分子を介してのいずれかでカップリングされ得る。
【0028】
II.ゲル化ヒト樹状細胞を産生するための方法
本明細書に開示されるものなどの、ゲル化ヒト樹状細胞を産生するための方法もまた本明細書において提供される。生体適合性ポリマーの細胞内架橋を有するゲル化細胞を作製するために、得られたゲル化細胞が細胞形態及び特定の機能、例えば、抗原提示を維持するように、ポリマーは、細胞膜構造を破壊することなしにインサイツ重合のために細胞中に送達される必要がある。伝統的に、凍結融解アプローチが、細胞にポリマーを注入するために使用された。例えば、WO2018/026644を参照されたい。このアプローチは制限を有する。なぜなら、それは脆弱な細胞に好適ではなく、スケーラビリティが発せられることを課し得るからである。それとは異なって、本明細書に開示される方法は、DMSO媒介性ポリマー注入アプローチの使用を含む。驚くべきことに、DMSOの存在下で、低分子量ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEG-DA)が、高効率で生存ヒト樹状細胞の形質膜を通して成功裏に透過したことが本明細書において示された。得られたゲル化樹状細胞は抗原提示活性を示し、これは、DMSO媒介性注入アプローチが、ゲル化細胞の膜構造の完全性を維持したことを実証する。
【0029】
したがって、ゲル化ヒト樹状細胞を産生するための方法であって、(a)ヒト樹状細胞の集団を提供することと、(b)ゲル化緩衝液をヒト樹状細胞中に透過させることであって、ゲル化緩衝液が、光開始剤、ポリマー、及びジメチルスルホキシドを含む、透過させることと、(c)ゲル化緩衝液を透過させたヒト樹状細胞を光に曝露して、ポリマー又は重合性モノマーの架橋を引き起こし、それによってゲル化ヒト樹状細胞を形成することと、を含む、方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、方法は、ゲル化ヒト樹状細胞を、1つ以上のサイトカインと会合している制御放出システムにカップリングすることを更に含み得る。
【0030】
ヒト樹状細胞の集団は、体液ドナーに由来し得る。例えば、ヒト樹状細胞は、ヒト血液細胞又はヒト骨髄細胞から単離又は濃縮され得る。あるいは、ヒト樹状細胞の集団は、インビトロで培養されたDC細胞株であり得る。
【0031】
ゲル化緩衝液は、光開始剤、ポリマー又は重合性モノマー、及びジメチルスルホキシド(DMSO)を含み得る。いくつかの実施形態では、ゲル化緩衝液は、活性化に際して互いに反応して、ポリマーの架橋を導き得る架橋部分を含むポリマーを含む。フリーラジカルなどの反応性種の存在下で架橋されて、ゲルを形成し得る任意の生体適合性ポリマーは、本明細書に開示されるゲル化ヒト樹状細胞を作製するために使用され得る。例えば、ポリマーは、熱、光、特定のpH条件、又は化学物質によってトリガーされた架橋を形成し得る。いくつかの場合では、ポリマーは、架橋部分、例えば、アクリルポリマーを含む。いくつかの例では、アクリルポリマーは、ジアクリレート部分を含み得る。特定の例では、アクリルポリマーは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEG-DA)、例えば、約250~2,000ダルトンの平均分子量を有するPEG-DAである。いくつかの例では、本明細書で使用されるPEG-DAは、約600~約800ダルトン(例えば、約700ダルトン)の平均分子量を有し得る。ゲル化ヒト樹状細胞の作製における使用のための他の例示的なポリマーとしては、ポリアクリルアミド誘導体、例えば、PEG-PLGA-PEGトリブロックコポリマー、ヒドロキシエチルメタクリレート-メチルメタクリレート(HEMA-MMA)、ポリアクリロニトリル-ポリ塩化ビニル(PAN-PVC)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(polyNIPAM)、ポリ(N-ビニルカプロラクタム)、セルロース誘導体、エチレンオキシド-プロピレン、又はMatrigelが挙げられる。
【0032】
他の実施形態では、ゲル化緩衝液は、重合性モノマーを含み得、これは、例えば、フリーラジカルなどの反応性種の存在下で、活性化に際してポリマー又はヒドロゲルを形成することができる任意のモノマーである。重合性モノマーの例としては、アクリレート又はジアクリレート化合物が挙げられるが、これらに限定されない。例としては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、(ヒドロキシエチル)メタクリレート、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、及びエチレングリコールジメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。活性化に際して、そのような重合性モノマーは、対応するポリマー、例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ(アクリル酸)、又はポリ(エチレングリコールジメタクリレート)を形成し得る。
【0033】
光開始剤は、エネルギー源(例えば、可視又はUVなどの光、熱など)に曝露されるときに反応性種、例えば、フリーラジカル、カチオン、又はアニオンを作る分子である。任意の光開始剤が、本明細書に開示される方法において使用され得る。光開始剤の例としては、カチオン性光開始剤(例えば、オニウム塩、有機金属、及びピリジニウム塩)、並びにフリーラジカル光開始剤(例えば、ベンゾフェノン、キサントン、キノン、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンゾイルオキシム、及びアシルホスフィン)が挙げられるが、これらに限定されない。1つの特定の例では、光開始剤は、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンであり得る。他の光開始剤は、例えば、sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/Aldrich/General_Information/photoinitiators.pdf(その関連する開示は、本明細書で言及される目的及び主題のために参照により組み込まれる)で見出され得る。
【0034】
「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値についての許容可能な誤差範囲内を意味し、これは、その値がいかにして測定又は決定されるか、すなわち、測定システムの制約に部分的に依存する。例えば、「約」は、当該技術分野における慣例によって、許容可能な標準偏差内を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の最大±20%、好ましくは最大±10%、より好ましくは最大±5%、より好ましくはなお最大±1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的なシステム又はプロセスに関して、この用語は、値の1桁以内、好ましくは2倍以内を意味し得る。特定の値が本出願及び特許請求の範囲において記載される場合、別段の記述がない限り、「約」という用語は黙示的であり、この文脈において、特定の値についての許容可能な誤差範囲内を意味する。
【0035】
光開始剤、ポリマー又は重合性モノマーがヒト樹状細胞中に入るとき、細胞はエネルギー源に曝露され得、この下で、光開始剤はフリーラジカルなどの反応性種を放出して、ポリマーの架橋をトリガーし、それによってゲル化ヒト樹状細胞を産生する。架橋部分を含むポリマーが使用されるとき、架橋は架橋部分を介して生じ得る。あるいは、架橋剤が使用されるとき、架橋剤はポリマーの架橋を媒介し得る。エネルギー源は、UV光又は可視光などの光であり得る。
【0036】
本明細書に開示される方法によって産生される任意のゲル化ヒト樹状細胞もまた、本開示の範囲内である。そのようなゲル化ヒト樹状細胞は、開示される任意の制御放出システムとともに、ゲル化細胞の制御放出システムとの複合体形成を可能にするために好適な条件下で好適な期間インキュベートされ得、それによって本明細書に開示される人工抗原提示細胞複合体を産生する。このカップリングプロセスは、ポリ-リジン分子の存在下で実施され得る。
【0037】
III.免疫細胞活性化のための人工抗原提示細胞複合体の使用
本明細書に開示される任意の人工抗原提示細胞複合体を使用して、T細胞などの免疫細胞を活性化し得る。したがって、免疫細胞を活性化する方法であって、(i)本明細書に開示される任意の人工抗原提示細胞複合体を提供することと、(ii)人工抗原提示細胞複合体を抗原ペプチドを用いてプライミングして、人工抗原提示細胞複合体中のゲル化ヒト樹状抗原提示細胞の表面上にペプチドをディスプレイすることと、(iii)ステップ(ii)において産生された人工抗原提示細胞複合体を、免疫細胞を含む細胞集団と接触させて、免疫細胞を活性化することと、を含む、方法もまた本明細書において提供される。
【0038】
aAPC複合体をプライミングするためのペプチドの選択は、活性化しようとするT細胞などの免疫細胞の特異性に依存する。例えば、抗腫瘍T細胞を活性化しようとする場合、腫瘍抗原に由来する抗原ペプチドを使用して、aAPCをプライミングし得る。標的ペプチドが決定されると、好適なaAPCが、活性化のために標的ペプチドをT細胞に提示するために使用され得る。好適なaAPC複合体は、抗原提示のためにMHC/ペプチド複合体を形成することができる好適なMHCクラスI又はMHCクラスII分子を有するゲル化ヒト樹状細胞を含む。活性化のために標的ペプチド及び免疫細胞に基づいて好適なaAPC複合体を選択することは、当業者の知識の範囲内である。
【0039】
いくつかの実施形態では、抗腫瘍T細胞を活性化するために、腫瘍抗原に由来する抗原ペプチドを使用して、aAPC複合体をプライミングする。次いで、得られた活性化抗腫瘍T細胞は、腫瘍抗原を担持する腫瘍を治療するために使用され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、病原体に特異的なT細胞を活性化するために、病原体抗原(例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、又は寄生虫抗原)に由来する抗原ペプチドを使用して、aAPC複合体をプライミングし得る。得られた活性化T細胞は、病原体によって引き起こされる感染症を治療するために使用され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、刺激性自己反応性ヘルパーT細胞及び細胞傷害性T細胞を抑制し得るT細胞、例えば、制御性T細胞(例えば、FoxP3+制御性T細胞)を活性化するために、自己免疫疾患に関連する自己抗原に由来する抗原ペプチドを使用して、aAPC複合体をプライミングし得る。aAPC複合体を使用して、表面ディスプレイされたMHC-II/ペプチド複合体を介してそのような制御性T細胞を活性化し、任意選択で、免疫抑制性サイトカイン、例えば、IL10及びTGF-ベータを放出させ得る)。
【0042】
一般技術
本開示の実行は、別段の指示がない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の技術を用い、これは、当該技術分野の技術の範囲内である。そのような技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press、Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1989)Academic Press、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.1987)、Introuction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.1993-8)J.Wiley and Sons、Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.1994)、Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)、Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999)、Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997)、Antibodies(P.Finch,1997)、Antibodies:a practice approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989)、Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000)、Using antibodies:a laboratory manual (E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999)、The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.Harwood Academic Publishers,1995)、DNA Cloning:A practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985)、Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1985>>、Transcription and Translation(B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984>>、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986>>、Immobilized Cells and Enzymes(lRL Press,(1986>>、及びB.Perbal,A practical Guide To Molecular Cloning(1984)、F.M.Ausubel et al.(eds.)などの文献において十分に説明されている。
【0043】
更なる詳述なしに、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明をその最大の程度まで利用し得ると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単に例示的であるとして解釈されるべきものであり、いかにしても本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で引用される全ての刊行物は、本明細書で参照される目的又は主題のために参照により組み込まれる。
【実施例】
【0044】
本開示をその特定の実施形態を参照して説明したが、本開示の真の趣旨及び範囲から逸脱することなしに種々の変更がなされ得、等価物が代わりとなり得ることを当業者は理解するはずである。加えて、特定の状況、材料、物質の組成物、プロセス、プロセスステップ又はステップを、本開示の目的、趣旨、及び範囲に適応させるために多くの改変がなされ得る。全てのそのような改変は、本開示の範囲内であることが意図される。
【0045】
実施例1.細胞内ヒドロゲル化を介したゲル化樹状細胞の調製及びゲル化樹状細胞の特徴付け
免疫療法及び養子細胞療法の発展は、T細胞活性化及び拡大のための天然抗原提示細胞を模倣する生体材料開発の漸増する関心を促した。合成基材にT細胞活性化のキューを積層することを目的とする従来のボトムアップアプローチとは対照的に、本研究は、生存樹状細胞(DC)を人工抗原提示細胞(aAPC)に直接的に転換するための容易なヒドロゲル化技術を実証する。DMSO媒介性細胞内ヒドロゲルモノマー透過及びUV活性化ラジカル重合を通じて、細胞内ヒドロゲル化がDC中で迅速に生じ、凍結及び凍結乾燥によって貯蔵可能な、ペプチド抗原交換を受け入れる高度に堅牢なモジュールの細胞-ゲルハイブリッド構築物がもたらされる。
【0046】
材料及び方法
(i)細胞内ゲル化
ゲル化緩衝液を、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)中に溶解した1.5g/mLの2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure D-2959;Sigma-Aldrich)20μLを用いて調製し、200μLのポリ(エチレングリコール)-ジアクリレート(「PEG-DA」)(これは、Sigma-Aldrichから市販されていた)と混合した。PEG-DAは、700Daの平均分子量(Mn)を有する。5×106個のJAWSII細胞を収集し、1×プロテアーゼ阻害剤を含有するフェノールレッド不含ダルベッコ改変イーグル培地(「DMEM」)1mL中に懸濁した。DMEMは、ThermoFisher Scientificから、番号CA21063-029の下で市販されていた。細胞懸濁液中10重量%のPEG-DA濃度に達するように、細胞懸濁液に、ゲル化緩衝液を1:10の体積比で添加した。室温での5分間のインキュベートの後、細胞をペレット化し、ゲル化緩衝液を含まないフェノレッド不含DMEM 500μl中に再懸濁し、UVオーブン(UVP Crosslinker,Analytik Jena、US)中で5分間365nmの青色光照射に供した。得られたゲル化細胞(「GC」)を、更なる実験の前にリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)で洗浄した。
【0047】
ヒドロゲルの蛍光標識のために、18mg/mLのフルオレセインO,O’-ジアクリレート(これは、Sigma-Aldrichから入手可能であった)100μLをDMSO中に溶解し、PEG-DA、次いで、Irgacure D-2959と上記のように混合した。蛍光性ゲル化緩衝液を、細胞ゲル化のために、フェノールレッド不含DMEM及び収集した上清と混合した。
【0048】
(ii)細胞内PEG-DAの定量化
細胞内PEG-DA濃度の定量化を、ヨウ素ベースの定量化方法を使用して行った。G-DCを生成するために、4×105個のJAWSII細胞を、指示された時間に10重量%のゲル化緩衝液を含有するフェノールレッド不含DMEM 1mLを用いて懸濁した。G-DCをPBSで洗浄した後、細胞内PEG-DAを、1mLの蒸留水処理を使用してG-DCから遊離させ、凍結融解プロセスに供した。細胞片を3000×gで5分間の遠心分離を介してスピンダウンした。上清を収集し、BaCl2及びヨウ素溶液と8:2:1の比率で15分間の発色のために混合した。試料中のPEG-DA濃度を、535nmにおける光吸収を測定することによって決定した。標準曲線を、段階希釈したPEG-DAを用いて用意した。次いで、測定したPEG-DA含有量を、JAWSII細胞の総体積で割って、細胞内PEG-DA濃度を決定した。
【0049】
(iii)T細胞単離及び蛍光標識
OT-I細胞(H2-Kb文脈においてOVA257-264ペプチドに特異的なCD8+T細胞)を、OT-Iトランスジェニックマウスから単離した。マウスを屠殺した後、その脾臓を取り出し、10%FBSを含むRPMI1640完全培地中に入れた。単一脾細胞を回収するために、脾臓を粉砕し、無菌の40μmナイロンセルストレーナー(BD Biosciences Falcon,#352340)に対して5mlシリンジを用いて引いた。脾細胞を、RBC枯渇のためにBD Pharm Lyse溶解緩衝液(BD Biosciences,#555899)とともに3分間インキュベートした。その後、OT-I細胞を、Mouse CD8a+ T Cell Isolation Kit(BD Biosciences,#19853 A)によって脾細胞から単離した。OT-I細胞の標識のために。細胞を5μMのCFSE(Sigma-Aldrich,#21888)を含有するPBSとともに37℃で5分間インキュベートすることによって、OT-IT細胞をカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)で染色した。細胞を完全培地で3回洗浄した。CFSE標識OT-I細胞を、続く実験研究のために回収した。
【0050】
結果
(i)DMSO媒介性ヒドロゲル注入を介した容易な細胞内ヒドロゲル化
氷プレート上でのヒドロゲル架橋のための一過性UV曝露の後、DMSO媒介性2-ヒドロキシル-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン光開始剤(I2959)及びポリ(エチレングリコール)ジアクリレートモノマー(PEG-DA;Mn 700)を含有するゲル化緩衝液の直接透過によって、ゲル化細胞(GC)を調製した(
図1A)。細胞固定のための細胞内ゲル化の実現可能性を評価するために、本発明者らは、JAWSIIマウスDCを使用して、10重量%でゲル化樹状細胞(G-DC)を調製した。5分間のみのインキュベーション後に、細胞にPEG-DAが理論的総細胞内体積までほぼ完全に浸潤した(
図1B)。細胞内部のヒドロゲルを可視化するために、G-GCを、緑色蛍光をヒドロゲルに共有結合的に染め込むフルオレセイン-ジアクリレート(F-DA)を含有するゲル化緩衝液によって調製した。F-DAでの膜染色の後、GCは、内側のヒドロゲル成分を有した(
図1C)。生存DCと比較して、光学顕微鏡下でのG-DCにおける著しい形態変化は存在しない(
図1C)。更に、G-DCは、低浸透圧下で水中で安定であったが、生存DCは直ちに破裂し、これは、G-GCにおける構造的完全性が内部のヒドロゲルネットワーク形成によって保存され得ることを示す(
図1C)。更に、G-DCは、PBS中での30日間の懸濁後に構造的完全性及び形態を保持したが、生存DCは崩壊し、これは、G-DCが生存DCよりも安定であることを示す(
図1D)。
【0051】
まとめると、これらの結果は、本明細書におけるゲル化アプローチの開示が、厳しい条件下で安定であり、抗原提示などの意図される生物活性のために細胞膜完全性を保持するG-GCを産生するための効率的な方法であることを示す。
【0052】
(ii)G-DC細胞は細胞内ヒドロゲル化後のペプチド置換を通じて表面上に抗原を成功裏に提示した
生存樹状細胞は、本明細書に開示される手順に従って、ゲル化樹状細胞(G-DC)に成功裏に転換された(例えば、
図1を参照されたい)。細胞内ヒドロゲル化後のMHCクラスI-ペプチド複合体の形成を介したG-DCによる抗原提示を調べた。ヒドロゲル化後に、G-DCを、培地、LPSのみ、及びLPS-OTIペプチドで処理した。LPSによる処理の後、DCを、細胞内ヒドロゲル化後にOTIペプチドに曝露した。この群を、LPS処理及びゲル化後OTIパルス群と名付ける。
【0053】
フローサイトメトリーを使用して、CD80発現(シグナル2)を、LPS処理G-DC、LPS処理/OTIパルスG-DC並びにLPS処理及びゲル化後OTIパルス群において観察した(
図3)。この結果は、ヒドロゲル化及びペプチド置換の両方が、DC表面マーカー発現に対する影響をほとんど有しないことを示す。加えて、MHC-I-SIINFEKL複合体の発現(シグナル1)は、LPS処理/OTIパルスG-DCの98.1%及びLPS処理及びゲル化後OTIパルスG-DCの99.5%において見出され、一方、LPS処理G-DCの2.1%のみが、MHC-I-SIINFEKL複合体を発現する(シグナル1)ことが見出された(
図2B及び2C)。これらの結果は、細胞内ゲル化後にG-DCにペプチド抗原を成功裏にロードし得、ヒドロゲル化後のペプチド置換は、G-DC上に見出される膜結合リンパ球活性化シグナルを損なわなかったことを実証する。
【0054】
次に、MHCクラスI-ペプチド複合体/TCR相互作用を介したT細胞拡大をトリガーすることに対するペプチド抗原提示G-DCの活性を、OT-Iトランスジェニックマウスに由来するCFSE標識CD8
+T細胞をG-DCとともにインキュベートすることによって調べた。ペプチド抗原提示G-DCは、標的Tリンパ球の拡大を有効にトリガーし、LPS処理及びOTIパルスG-DCと比較して、同様のレベルの増殖、世代、及び細胞数を示した。(
図2D及び2E)。T細胞数の増加もまた、時間依存的様式で観察され(
図2F)、これは、細胞内ヒドロゲル化後ペプチドパルスプロセスが、抗原特異的T細胞応答を調節するG-DCの機能性に影響しないことを示す。
【0055】
総合すると、これらのデータは、抗原提示が、ヒドロゲル化後のG-DC上で置換及び調節され得ることを示す。
【0056】
(iii)凍結及び凍結乾燥プロセスはG-DCの機能性に影響を及ぼさなかった
次に、凍結又は凍結乾燥のいずれかによる本明細書に開示されるG-DCの貯蔵を検討した。
図4Aに示すように、G-DCを、凍結又は凍結乾燥(lymphilization)後の形態、表面マーカー、及び機能性の保持について検討した)。上記の種々の群のG-DCを、まず10%スクロース中で凍結又は凍結乾燥し、次いで、水中で再構成した。
図4に示すように、G-DCは、凍結又は凍結乾燥後にその形状を維持した。対照細胞、LPS処理G-DC、LPS処理/OTIパルスG-DC、並びにG-DCに対するLPS処理及びゲル化後OTIパルスにおいて、構造的交代は観察されず(
図6)、これは、G-DCの細胞形態が、凍結及び/又は凍結乾燥プロセス後に有効に保存されたことを示す。
【0057】
凍結及び凍結乾燥試料の機能性を更に評価した。凍結又は凍結乾燥プロセスが様々なG-DCの生物学的機能に対して何らかの影響を有したかどうかを調べるために、種々の群のG-DCを、本明細書に開示される表面マーカー検出アッセイ(
図3及び6)並びにT細胞増殖アッセイ(
図3B~3G)において検討した。興味深いことに、シグナル1(
図6)並びにシグナル2(
図3B及び3C)の同様の発現パターンが、非凍結/非凍結凍結G-DCと比較して、凍結又は凍結乾燥G-DCにおいて依然として維持された(
図3A及び3B)。LPS処理及びゲル化後OTIパルスした凍結及び凍結乾燥の両方のG-DCは、T細胞増殖をトリガーし、OT-IT細胞の数の増加をもたらした(
図4B~4G)。これらの結果は、凍結又は凍結乾燥後、G-DCが、その生物活性、例えば、T細胞の活性化を依然として保持したことを示す。
【0058】
(iv)ゲル化ヒト樹状細胞(G-hDC)は凍結又は凍結乾燥での貯蔵後にMHC抗原複合体及び共刺激リガンドをその表面上に保持した。
更に、本明細書に開示される方法によって調製したゲル化ヒト樹状細胞が、凍結又は凍結乾燥後でさえも、安定性及びT細胞の活性化における生物活性を示したことが本明細書で実証された。
【0059】
例示的な実験手順を
図7Aに示す。明視野画像及び蛍光シグナルは、10%のPEGDAでのゲル化hDC内のヒドロゲルネットワーク構造を示した。
図7B及び7C。これは、hDCが成功裏にゲル化されたことを示す。興味深いことに、hG-DCにおける細胞膜完全性の維持の成功に起因して、10重量%GC(10重量%PEG-DAを使用して調製した)は、水が細胞質に入ることを有効に排除して、構造を維持した(
図7C)。hDC上のリンパ球活性化シグナル1/2がDCのゲル化後に適正にディスプレイされ得るかどうかを更に調べるために、ヒト初代樹状細胞をモデル細胞として使用した。フローサイトメトリーを使用して、MHCクラスI、MHCクラスII、CD80及びCD80を含む全ての表面マーカーが、生存ヒトDC上のこれらの表面マーカーの発現レベルと同様に、ゲル化ヒトDC上で高レベルで(それぞれ、99.6%、98.9%、95.5%及び94.8%)発現されることが観察された。
図7D及び7E。驚くべきことに、表面マーカーの同様の発現レベルは、G-hDC、凍結G-hDC、及び凍結乾燥G-hDCにおいて観察され、これは、凍結及び凍結乾燥プロセスが、処理したG-hDC上の表面マーカーに影響しなかったことを示す(
図7D及び7E)。
【0060】
これらの結果は、臨床適用のために使用され得る人工抗原提示細胞(aAPC)としてゲル化ヒト初代DCを調製することの実現可能性を実証する。
【0061】
実施例2:ゲル化樹状細胞及び微粒子を含むサイトカイン放出システム
本実施例は、サイトカインを封入する微粒子と会合した上記実施例1に記載されるように調製したゲル化樹状細胞(G-DC)を含むサイトカイン放出システムを記載する。
【0062】
方法
(i)PLGA微粒子の合成
色素を含有するPLGA微粒子(MP)を、ダブルエマルジョン方法、それに続く溶媒蒸発によって合成した。様々な粘度のPLGAを使用し、ここで、固有粘度0.15~0.25dL/gのPLGAをPLGA(A)、粘度0.55~0.75dL/gのものをPLGA(B)と表示する。以下の一連のポリマー重量比を実施した:
PLGA(A):PLGA(B)=100:0、65:35、50:50、35:65、又は20:80。
【0063】
簡単に述べると、PLGAをジクロロメタン(DCM)中に溶解して(100mg/ml)、油相を形成し、赤色色素を100mM pH8 Na2HPO4中に溶解して水相を形成した。次いで、250uLの油相及び10uLの水相(体積比=25:1)を、40%の振幅並びに1及び2秒のオンオフ持続時間を1分間のパルスモード下で、氷中でプローブソニケーターによって乳化した。次いで、エマルジョンを氷浴中の体積5mLの高速撹拌緩衝液(10mM pH8 Na2HPO4、1000rpmで撹拌)に滴加して、DCM蒸発を防止しながら微小液滴を分配した。エマルジョンを1000rpmで5分間撹拌した。その後、エマルジョンを35℃で35分間加熱して、DCMを蒸発させ、加熱プロセスの間の撹拌速度をポリマー比に応じて調整した。PLGA(B)≧50%(PLGA(A):PLGA(B)=50:50、35:65、又は20:80)については、撹拌速度を1000rpmに保った。ポリマーB<50%(PLGA(A):PLGA(B)=100:0、又は65:35)については、撹拌速度は500rpmまで低下させた。その後、全ての群の撹拌速度は200rpmまで低下させ、20分間保って、DCM蒸発の間の粒子の破壊を防止した。DCMが完全に蒸発された後、微粒子を、500rpmで3分間の遠心分離、それに続く1mLのpH7 PBS中のペレットの再懸濁によって2回洗浄した。最後に、粒子をpH7リン酸緩衝液中で保存した。
【0064】
(ii)封入効率決定
封入効率(EE)を、以下の式を使用して計算した:
EE=粒子中の色素(mg)/総色素(mg)。
【0065】
粒子を、80%アセトン、それに続く溶媒蒸発によって破壊した。溶媒を蒸発させた後、水を添加して、色素を溶解した。PLGAの破片を、30,000gでの遠心分離によって除去した。上清を収集し、光スペクトル(512nm)によって検出して、色素濃度を評価し、したがって、粒子中の色素の量を得た。
【0066】
(iii)放出研究
色素の放出を37℃及び4℃で研究した。ヒト身体における放出を研究するために、3mgのMPを、10mlのpH7.4 PBS中に37℃で水浴中で150rpmの撹拌速度で懸濁した。放出された色素の量を決定するために、MPを10分間沈澱させ、PBS上清を特定の期間で収集した。PBSを512nmの波長の光スペクトルによって分析した。4℃の放出研究を、2mgの粒子を2mlのpH7リン酸緩衝液中に保つことによって行った。同様に、PBS上清を光吸収分析のために収集した。両方の研究における緩衝液を12時間以内に更新して、pH値の一貫性を確実にした。
【0067】
結果
(i)GC-MP複合体はサイトカイン放出ゲル化細胞スフェロイドとして作用した
生存抗原提示細胞(APC)は、T細胞活性化における主要な役割を果たすリンパ球活性化サイトカインを分泌する。生存APCを模倣するための、サイトカイン(IL2を例として使用した)を封入する微粒子と複合体形成したゲル化樹状細胞を含むサイトカイン放出システム(GC-MP)を本明細書において報告する。
図8Aに示すように、PLGAベースのMP及びG-DCで構成されるGC-MPは、T細胞活性化のための3つ全てのリンパ球活性化シグナル、すなわち、一次シグナル伝達、二次シグナル伝達、及びサイトカインシグナル伝達をトリガーするための成分を持つ。
【0068】
MPを、上記に開示したダブルエマルジョンプロセスによって調製した。親水性スルホ-Cy5色素を例示的なカーゴとして使用して、カーゴの封入及び放出の成功を検証した。
図8A及び8Bに示すように、MP中へのカーゴロードを、明視野顕微鏡法(
図4A)及び蛍光顕微鏡法の両方によって観察した。G-DC及びカーゴロードMPの複合体形成を、ポリ-リジンを使用して媒介した。複合体形成の成功を、共焦点顕微鏡法を使用して観察した。
図8A。G-DC、MP、及びGC-MPのサイズ分布は、それぞれ20、75及び125umであった(
図8C)。とりわけ、G-DCは、30日間の貯蔵の間、MPの表面に堅く付着したままであった(
図8D)。GC-MPのインビトロ放出プロファイルにおいて、IL-2は、37℃でゆっくりと放出されたが、4℃では放出されなかった。
【0069】
IL-2放出速度論を
図9に提供する。以下に示すように、GC-MPからのIL-2の放出は、完全にT細胞の活性化に寄与した。
【0070】
総合すると、結果は、完全にT細胞の活性化のための3つの活性化シグナル伝達経路をトリガーするために必要な全ての成分を含む人工APCシステムの構築の成功を示した。そのような人工APCシステムはまた、サイトカイン分泌のための制御放出能力を有する。
【0071】
(ii)GC-MPはCD8 T細胞の活性化及び増殖を成功裏に誘導するaAPC模倣生体材料として作用した
CD8+T細胞を活性化するための本明細書に開示されるGC-MPシステムの活性を検討した。まず、GC-MPがCD8 T細胞を完全に活性化し得るかどうかを調べた。CFSE標識OT-I T細胞をMP-IL-2、GC-MP又はGC-MP-IL-2と共培養した後、CD8 T細胞増殖をフローサイトメトリーによって検出した。GC-MP及びGC-MP-IL-2群においてT細胞数の増殖及び数の増加が観察されたが、MP-IL-2群においては観察されなかった。
図10A~10C。これは、GC-MP構造がG=DCの免疫調節機能に影響しなかったことを示す。とりわけ、GC-MP-IL-2(3つ全てのシグナル伝達経路をトリガーする)は、GC-MP(一次及び共刺激シグナル伝達経路のみをトリガーする)と比較して、より高いT細胞拡大をもたらした。
図10A~10C。この差異は、GC-MPのサイトカイン放出機能が、免疫細胞の活性化において重要であることを示す。したがって、本明細書に開示されるG-DCは、免疫応答を調節するために他の好適なプラットフォームと併用され得る。
【0072】
養子T細胞療法の改善におけるGC-MPの効力を更に調べるために、GC-MP拡大OTI特異的CD8 T細胞を、EG7-OVAを移植したマウスにおいてインビボで更に評価した(
図10D)。結果は、GC-MP-IL-2 aAPCシステムによって活性化されたCD8 T細胞が、他の群と比較して、インビボで腫瘍サイズを有意に低下させたことを示した。
図10E。
【0073】
他の実施形態
本明細書に開示される特徴の全ては、任意の組み合わせで組み合わされ得る。本明細書に開示される各々の特徴は、同じ、等価な、又は同様の目的を果たす代替の特徴によって置換され得る。したがって、別途の明示的な記述がない限り、開示される各々の特徴は、包括的な一連の等価な又は同様の特徴の単なる一例である。
【0074】
上記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認し得、その趣旨及び範囲から逸脱することなしに、本発明の種々の変更及び改変を、それを種々の使用法及び条件に適応させるようになし得る。したがって、他の実施形態もまた特許請求の範囲内である。
【0075】
等価物
いくつかの発明実施形態を本明細書において記載及び例示したが、当業者は、機能を行うための、並びに/あるいは本明細書に記載される結果及び/又は利点のうちの1つ以上を得るための、多様な他の手段及び/又は構造に容易に想到し、そのような変形及び/又は改変の各々は、本明細書に記載される発明実施形態の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例示的であると意図されること、並びに実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、そのために発明の教示が使用される特定の適用又は複数の適用に依存することを容易に理解する。当業者は、本明細書に記載される特定の発明実施形態に対する多くの等価物を、認識するか、又は日常的な実験にすぎないものを使用して確認することができる。したがって、前述の実施形態は、例としてのみ提示されていること、及び、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内で、発明実施形態は、具体的に記載され請求される以外で実行され得ることを理解されたい。本開示の発明実施形態は、本明細書に記載される各々の個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。加えて、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせは、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0076】
本明細書で定義及び使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文献における定義、及び/又は定義される用語の通常の意味を支配すると理解されたい。
【0077】
本明細書に開示される全ての参照文献、特許及び特許出願は、それについて各々が引用される主題に関して参照により組み込まれ、これは、いくつかの場合では、文献の全体を包含し得る。
【0078】
明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用される不定冠詞「a」及び「an」は、それとは反対に明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されたい。
【0079】
明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用される語句「及び/又は」は、そのように連接される要素の「いずれか又は両方」、すなわち、いくつかの場合では接続的に存在し、他の場合では選言的に存在する要素、を意味すると理解されたい。「及び/又は」を用いて列挙される複数の要素は、同様に、すなわち、そのように連接される要素のうちの「1つ以上」と解釈されたい。「及び/又は」句によって具体的に特定される要素以外の他の要素は、具体的に特定される要素に関係するか又は関係しないかにかかわらず、任意選択で存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む」などのオープネンドの言葉と併せて使用されるとき、一実施形態では、Aのみを(任意選択でB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみを(任意選択でA以外の要素を含む)、更に別の実施形態では、A及びBの両方を(任意選択で他の要素を含む)を指し得る、など。
【0080】
明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、「又は」は、上記で定義される「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されたい。例えば、リスト中の項目を区切るとき、「又は」又は「及び/又は」は、包括的であると解釈される。すなわち、数又は要素のリストのうちの少なくとも1つを含むが、1つ超も含み、任意選択で、追加の列挙されていない項目を含む。「のうちの1つのみ」又は「のうちの正確に1つ」、あるいは、特許請求の範囲で使用されるとき、「からなる」などの、明確にそれとは反対に示される用語のみが、数又は要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で使用される「又は」という用語は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、又は「のうちの正確に1つ」などの、排他性の用語によって先行されるときにのみ、排他的選択肢(すなわち、「一方又は他方であるが両方でない」)を示すものとして解釈される。特許請求の範囲で使用されるとき、「本質的にからなる」は、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有する。
【0081】
明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、1つ以上の要素のリストに関する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト中の要素のうちの任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙される各々及び全ての要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを排除しないと理解されたい。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定される要素に関係するか又は関係しないかにかかわらず、任意選択で存在し得ることを許容する。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、等価に、「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は、等価に、「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ(任意選択で1つ超を含む)のAで、Bは存在せず(及び任意選択でB以外の要素を含む)を、別の実施形態では、少なくとも1つ(任意選択で1つ超を含む)のBで、Aは存在せず(及び任意選択でA以外の要素を含む)を、更に別の実施形態では、少なくとも1つ(任意選択で1つ超を含む)のA、及び少なくとも1つ(任意選択で1つ超を含む)のB(及び任意選択で他の要素を含む)を指し得る、など。
【0082】
それとは反対に明確に示されない限り、1つ超のステップ又は行為を含む本明細書で請求される任意の方法において、方法のステップ又は行為の順序は、方法のステップ又は行為が記載される順序に必ずしも限定されないこともまた理解されたい。
【国際調査報告】