(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】二配線電子スイッチおよび調光器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20230612BHJP
H05B 45/31 20200101ALI20230612BHJP
【FI】
H02M7/12 F
H05B45/31
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567875
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 US2020044930
(87)【国際公開番号】W WO2022031276
(87)【国際公開日】2022-02-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522434820
【氏名又は名称】アンバー セミコンダクター,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テレフス,マーク
【テーマコード(参考)】
3K273
5H006
【Fターム(参考)】
3K273AA10
3K273BA03
3K273BA32
3K273BA35
3K273CA02
3K273FA03
3K273FA14
3K273FA23
3K273FA30
3K273GA02
3K273GA08
3K273GA22
3K273GA28
3K273GA29
3K273HA17
5H006CA02
5H006CA07
5H006DB01
5H006DC02
5H006FA02
(57)【要約】
AC電源から負荷への電力を制御するための双方向スイッチおよび調光器が記載される。本手法は、パワーMOSFETを双方向スイッチサブ回路構成(浮動AC/DC電源および固体双極スイッチを含む)(負荷へのAC電源の接続と、AC/DC電源へのAC電源の周期的接続との間で交番させる)で用いる。スイッチおよび調光器構成により、2つの配線のみを用いて既存の単相回路への挿入が可能となる。本設計により、回路全体を単一チップ上で製造することが可能となる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子および第2端子を有するAC電源(101)と、第1端子および第2端子を有する負荷(102)との間の、交流電流(AC)回路において、電流をスイッチングするための双方向電子スイッチシステム(400)であって、
a.AC電源(101)の第1端子に接続される入力端子(103)と、負荷(102)の第1端子に接続される出力端子(104)とを備え、AC電源(101)の第2端子(105)および負荷(102)の前記第2端子は、前記双方向スイッチシステムの外部で相互接続され、
b.制御回路システム(107)に接続される第1(404)および第2(405)出力端子に、直流電流(DC)で前記AC電源(101)からエネルギーを提供するための第1(402)および第2(403)入力端子を有するAC/DC変換システム(106)を備え、
c.電子スイッチ(401)に制御信号を提供するための第1(408)および第2(409)出力端子を有する前記制御回路システム(107)を備え、
d.前記入力端子(103)および双方向スイッチ出力端子(104)の間に接続される前記電子スイッチ(401)を備え、制御システム出力端子(408、409)間に表れる前記制御信号の状態が、前記スイッチの状態を決定する、
双方向電子スイッチシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の双方向電子スイッチシステムであって、
前記AC/DC変換システムは、
a.制御回路システム(107)の両端に接続される分圧器(501、502)と、
b.第1スイッチ(503)であって、入力(510)および出力(511)を有し、その入力(510)を介して前記分圧器に接続される、第1スイッチ(503)と、
c.第2スイッチ(506)であって、入力(512)および出力(513)を有し、その入力(512)は、電流制限抵抗器(505)を介して前記第1スイッチ(503)の前記出力(511)に接続される、第2スイッチ(506)と、
d.前記第2スイッチ(506)の前記出力(513)に、ダイオード(207)を介して接続される、蓄電コンデンサ(208)と、
e.ツェナー電圧を有するツェナーダイオード(508)であって、前記第2スイッチ(506)の前記入力(512)および出力(513)の間に接続され、シャントコンデンサ(509)が前記ツェナーダイオード(508)と並列に接続され、これによって、前記第2スイッチ(506)の前記入力(512)および前記出力(513)の間の電圧を、前記ツェナーダイオード(508)の前記ツェナー電圧にクランプする、ツェナーダイオード(508)と、
f.前記蓄電コンデンサ(208)に接続される前記制御回路システム(107)と、
を備える、双方向電子スイッチシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のAC/DC変換システムであって、
前記蓄電コンデンサ(208)および前記制御回路システム(107)の間に挿入される直列電圧制御回路をさらに備え、
前記直列電圧制御回路は、特性閾値電圧(V
T)を有し前記制御回路システム(107)に接続される通過トランジスタ(1003)と、前記通過トランジスタにわたって接続されるバイアス抵抗器(1004)とを備え、ツェナー電圧(V
Z)を有するツェナーダイオード(1005)が前記バイアス抵抗器に接続され、これによって、前記制御回路システム(107)への出力電圧がV
Z-V
Tに維持される、AC/DC変換システム。
【請求項4】
請求項2に記載のAC/DC変換システムであって、
前記第2スイッチ506を介して流れる電流を制限するために、前記第2スイッチ(506)と前記蓄電コンデンサ(208)の間に挿入される電流制限電子回路をさらに備え、
前記電流制限電子回路は、
a.前記第2スイッチ(506)の前記出力(513)と、前記制御回路システム(107)との間に接続される、検知抵抗器(1002)と、
b.前記制御回路システムと、前記第2スイッチ(506)の前記入力(512)との間に接続されるバイポーラトランジスタ(1001)と、
を含む、AC/DC変換システム。
【請求項5】
請求項2に記載のAC/DC変換システムであって、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチはいずれもN-MOSFETである、AC/DC変換システム。
【請求項6】
請求項2に記載のAC/DC変換システムであって、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチはいずれもバイポーラトランジスタである、AC/DC変換システム。
【請求項7】
請求項1に記載のAC/DC変換システムであって、すべての半導体デバイスが単一の集積回路チップ上に製造される、AC/DC変換システム。
【請求項8】
請求項2に記載のAC/DC変換システムであって、すべての半導体デバイスが単一の集積回路チップ上に製造される、AC/DC変換システム。
【請求項9】
請求項4に記載のAC/DC変換システムであって、すべての半導体デバイスが単一の集積回路チップ上に製造される、AC/DC変換システム。
【請求項10】
請求項1に記載の双方向電子スイッチシステムであって、前記スイッチ制御回路(107)出力信号(408、409)は、前記AC電源(101)と同期してパルスされ、前記負荷(102)に伝達されるAC電力の相制御を提供する、双方向電子スイッチシステム。
【請求項11】
請求項1に記載の双方向電子スイッチシステムであって、
前記制御回路システム(107)出力信号(408、409)は、前記AC電源(101)と同期したパルス列を備え、
前記パルス列は、前記負荷(102)に伝達される平均電流/電力を実効的に制御するための調節可能なパルス幅を有し、
これによって、光源負荷に対して減光効果を提供し、ACモータ負荷に対してスピード制御を提供する、
双方向電子スイッチシステム。
【請求項12】
請求項1に記載の双方向電子スイッチシステムであって、
前記電子スイッチ(401)は、
a.直列接続された第3(301)および第4(302)電子スイッチデバイスを備え、
各スイッチデバイスはドレイン端子(309、310)、ソース端子(311、312)およびゲート端子(313、314)を有し、
直列接続された前記第3および第4スイッチデバイスのそれぞれは、前記ゲート端子(313、314)および前記ソース端子(311、312)の間の特性閾値電圧を有し、
前記第3スイッチデバイス(301)の前記ドレイン端子(309)は、前記固体双方向スイッチ(400)の前記第1入力端子を備え、
前記第4スイッチデバイス(302)のドレイン端子(310)は、前記固体双方向スイッチ(400)の前記第1出力端子を備え、
前記第1および第2スイッチデバイス(301、302)の前記ソース端子(311、312)は、第1制御端子(315)において相互接続され、
前記第1および第2スイッチデバイスの前記ゲート端子(313、314)は、第2制御端子(316)において相互接続される、
双方向電子スイッチシステム。
【請求項13】
請求項12に記載の双方向電子スイッチシステムであって、
前記第3スイッチデバイス(301)の前記ドレイン端子(309)と前記入力端子(103)との間に接続される安定器回路(1007)をさらに備え、
前記安定器回路は、第5スイッチ(1102)および安定器抵抗器(1101)を含み、
前記安定器抵抗器および前記第5スイッチは並列に接続され、
前記第5スイッチは、前記電子制御システム(107)によって制御され、
これによって、
前記第5スイッチは、第1状態において閉成され、前記負荷(102)への前記双方向電子スイッチシステム(400)を介した電流は、前記安定器抵抗器(1101)をバイパスし、
前記第5スイッチは、第2状態において開離され、前記負荷(102)への前記双方向電子スイッチシステム(400)を介した電流は、前記安定器抵抗器(1101)によって制限される、
双方向電子スイッチシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理システム、ならびに、電子スイッチおよび調光制御を提供する方法に関する。
【0002】
[関連出願への相互参照]
適用なし。
【0003】
[連邦出資の研究または開発に関する記述]
適用なし。
【0004】
[関連する背景技術]
従来、家庭およびビジネス環境における、交流(AC)電力へのアクセスは、施設電気系に有線接続された機械的なコンセントによって提供されている。これらのコンセントは、ヒューズおよび回路ブレーカ等の電気機械素子を用いて、過剰な電気的負荷や潜在的に危険な接地事故から保護される。同様に、従来の室内用電気機器(照明や天井ファン等)の制御は、電気機械的スイッチを用いて行われる。これらの基本的に機械的な制御素子は、単純なオン・オフ制御を提供して不可避的に摩耗し、時間が経過すると、短絡や潜在的に危険なアーク放電を起こし得る。
【0005】
一般的な電気機器の、よりニュアンス化された制御は、典型的には、AC主波形をサイクル単位で割り込み可能とするトライアック等の電子的素子によって提供される(いわゆる相制御)。トライアックは、以前からあった加減抵抗器や単巻変圧器よりは大幅に効率的であるが、大規模な電気的負荷を制御するための小型筐体内で効果的に用いるには依然として非効率に過ぎ、施設電気系へと電気的ノイズを発生し得る。さらに、それらは、健康への悪影響について責任のある現代の発光ダイオード(LED)ランプにおいてちらつきを起こし得る。
【0006】
最先端のACスイッチは、所望の負荷へのAC電力の適用を制御するために、高電圧半導体デバイス(バイポーラトランジスタまたはMOSFET等)を採用する。これらの現代の回路は、AC/DC電源と、トランジスタ化された制御回路(典型的な単相回路内で3本の配線(AC主電源からのホットリード、スイッチングされる負荷へのリード、および共通中性リード)すべてにアクセスを要するもの)とを組み込む。そのような最先端の三配線システムの例は、国際公開第2019/133110号パンフレット(電子スイッチおよび調光器、Telefus他、2018年11月7日国際出願)を含む。
【0007】
施設電気系において、広範な用途に対して、より信頼性があり高度に効率的な制御オプションを幅広く提供する、改良された電子AC制御システムが必要である。さらに、そのような制御システムとして、先進的電力制御機能のために他の回路に組み込むことが可能な半導体素子を用いて実現可能であり、低コストで製造可能なものと、2本の配線(ホットAC主電源リードおよび負荷)のみを用いて簡単に設置可能な制御システムとが必要である。
【0008】
[発明の簡単なサマリー]
本発明は、単純なコンセントオン・オフ切り替えから、印加されるAC電力の連続的変化にまでわたる、施設電気系を通したAC電力の制御(たとえば電灯の調光)のための新規な手法に関する。より詳細には、本発明は、一実施形態においてオン・オフおよびAC主波形の相制御の双方を提供する機能の組み合わせに関する。
【0009】
一実施形態は、AC主電源と所望の負荷との間に接続される、非常に低い「オン」抵抗を持つ電子スイッチとして、パワーMOS電界効果トランジスタ(MOSFET)を用いる。典型的なパワーMOSFETは、本質的に導電チャネルと平行にボディダイオードを組み込んでいるため、素子対をバックツーバック構成で接続してソース端子を共通とし、真に双方向の(AC)スイッチ構成が提供される。パワーMOSFETのスイッチング動作を制御するために、新規な浮動AC/DC電源が含まれ、これはMOSFETスイッチの動作を介して、AC主電源波形と同期して周期的にリフレッシュされる。個別の例は、本発明の概念を応用例に限定するよう意図されるものではない。本発明の他の態様および利益は、添付図面および詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】基本的な従来の三配線スイッチ/調光器回路のブロック図。
【
図2】従来のスイッチングされるAC/DC電源の概略図。
【
図3A】従来の双方向スイッチの基本的要素の概略図。
【
図3B】全スイッチデバイスにわたる追加の負荷を含む、
図3Aの回路の変形。
【
図3C】各スイッチデバイスが「オフ」である場合に追加の負荷を流れる電流を示す、
図3Bの回路である。
【
図4】二配線スイッチ/調光器回路の実施形態のブロック図である。
【
図5】MOSFETを用いた
図2のAC/DC電源の実施形態の概略図である。
【
図6】
図5のAC/DC電源および
図3Aの基本的なスイッチ回路の変形を用いた
図1の三配線回路の実施形態の概略図である。
【
図7】
図4の二配線回路を製造するために各要素が再接続された
図6の実施形態の概略図である。
【
図8A】双方向スイッチ内の各MOSFETが「オフ」であり、中性ラインがホットラインに対して正である場合の、
図7の回路の実効的構成を示す。
【
図8B】双方向スイッチ内の各MOSFETが「オフ」であり、ホットラインが中性ラインに対して正である場合の、
図7の回路の実効的構成を示す。
【
図9】双方向スイッチ内の各MOSFETが「オン」である場合の、
図7の回路の実効的構成を示す。
【
図10】過電流保護および出力DC電圧制御のための追加のサブ回路を有する、
図7の回路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、固体スイッチデバイスを採用した基本的な従来技術の三配線スイッチ/調光器ユニット100のブロック図である。AC主電源101は、負荷104および中性105出力接続に接続された負荷102へのスイッチ/調光器回路100を介したホット103および中性105入力接続を提供する。スイッチデバイス108は、AC/DC電源106によって電源を供給されるDC電源を備えるスイッチ制御回路107によって駆動される。スイッチモードでは、閉成を維持するために、連続的なDCバイアスが制御回路107によってスイッチデバイス108に供給される。調光器モードでは、AC主電源101波形と同期したパルスとして、動作バイアスが制御回路107によって提供され、これらのパルスのデューティサイクルが負荷に供給される総電力の比率を確立する。調光器動作について、コントローラ107はパルス生成回路を備え、従来既知のようにAC主電源と同期する。コントローラは、所望の電力を負荷に入力するためのユーザインタフェースを含んでもよい。一実施形態では、ユーザインタフェースは制御回路107内に物理的に組み込まれる。別の実施形態では、制御回路は無線通信回路を含み、ユーザインタフェースは制御回路107とは物理的にリモートに配置される。スイッチ/調光器ユニットを設置するために、最小で3つの接続(103~105)が必要であるということに留意すべきである。
【0012】
図2は、従来技術のスイッチングされるAC/DC電源106の概略図である。回路は、分圧器ネットワーク201、202(出力ノード204を有し、AC主電源101の両端に接続される)を含む。コンパレータ回路203は、分圧器出力ノード204に接続される反転入力と、非反転入力に接続され基準電圧V
Rを有する電圧基準205とを有する。コンパレータ203は直列スイッチ206を制御し、直列スイッチ206は、分圧器出力電圧V
Dが基準電圧V
Rを超えると、ホット入力103を後続の回路から切断する(スイッチ206を開離する)。スイッチ206が閉成されると、コンデンサ208が、直列ダイオード207を介して充電される。ダイオード207は、分圧器出力電圧が低下した場合に、スイッチ206を介してコンデンサ208が逆に充電されることを防止する。このように、ダイオード207およびコンデンサ208の組み合わせは「ピーク検出器」回路を形成し、これは、後続のレギュレータ回路および負荷209に供給するために、AC主電源サイクルの各半分においてエネルギーを蓄える。コンデンサ208の両端の電圧は、後続のレギュレータ回路および負荷209のエネルギー要件を満足するのに十分な大きさであればよい。後続のレギュレータ209への入力電圧は、AC主電源のrms値に比べて実質的に低減される。「ピーク検出器」回路の動作により、分圧器出力204における電圧がV
Rより大きく維持されている限り、AC主電源のピーク電圧のふらつきに関わらず、コンデンサ208に蓄えられる定常電圧は常にV
Rとなることが保証される。スイッチング回路のこの実施形態は、電圧レギュレータ回路そのものとして動作する。
【0013】
図3Aは、AC電源101から負荷102に伝達される電力を制御する双方向電子スイッチを作製するためにパワーMOSFETを用いた従来技術の双方向スイッチ108の基本的な要素を示す概略図である。パワーMOSFET301および302は、それぞれボディダイオード303および304を含む。スイッチ306は、パワーMOSFET301および302に印加されるゲート・ソースバイアス電圧を制御する。「オン」307位置では、バイアス電圧305は各パワーMOSFET301、302のゲート端子313、314に印加される。電圧305は、各パワーMOSFETの閾値電圧(典型的には5~10ボルト)より高く、反転層を形成して、各素子のドレイン309、310からソース311、312まで延びる導電チャネルを生成する。この「オン」状態では、各パワーMOSFETのドレインからソースまでの振る舞いは、低値抵抗器R
dsとしてモデル化できる。ドレインとソースとの間の電圧降下が約0.6ボルト未満に留まる限り、ボディダイオードは非導通のままであり、無視できる。「オン」状態では、
図3Aの回路は、AC電源101に2R
dsの値の直列抵抗を介して接続される負荷102と等価である。
【0014】
スイッチ306の「オフ」308位置では、各パワーMOSFET301、302のゲート端子313、314がソース端子311、312に短絡され、ドレイン・ソース間電圧が各ボディダイオードの降伏電圧未満に留まる限り、ドレイン・ソース間の導電チャネルが消失する。「オフ」状態では、
図1の回路は、AC電源101にバックツーバックボディダイオード303および304を介して接続される負荷102と等価であり、実質的に負荷102を電源101から切り離す。
【0015】
「オフ」状態において、各パワーMOSFETのドレイン・ソース間電圧がボディダイオードVbrの降伏電圧未満に留まるという要件は、ボディダイオードの降伏電圧がAC電源101のピーク電圧を超えることを要求する。したがって、たとえば、電源101が一般的な120ボルト(rms)AC主電源に対応すると仮定すると、各ボディダイオードの降伏電圧は、170ボルトというピーク電源電圧を超えなければならない。
【0016】
パワーMOSFET構造のより詳細な分析によれば、ボディダイオードは、実質的に、MOSFETチャネルと並列に接続されたバイポーラトランジスタのベース・コレクタ接合である。追加の寄生要素は、ベース・コレクタ接合の容量と、ベース・エミッタ間の寄生抵抗とである。このAC結合回路は、ベース・エミッタ接合の順バイアスを回避するために、ドレイン・ソース間電圧の変化率dVds/dtに制約を課し、これによって、MOSFETチャネルが「オフ」である間、バイポーラトランジスタを導通させる。結果として生じる漏れ電流は、負荷102に電力を供給するには不十分な可能性があるが、効率や安全性の懸念を追加で発生させるほど大きい可能性がある。
【0017】
同様に、「オン」状態における制約の考慮は、各パワーMOSFETのドレイン・ソース間電圧降下(Rds*Iloadによって与えられる)が約0.6ボルト未満であることを要求する。潜在的により重要なのは、過剰な温度上昇を避けるために、「オン」状態において各パワーMOSFETで散逸する電力(Rds*Iload2によって与えられる)が数ワット未満に留まらなければならないということである。したがって、たとえば、20アンペアの典型的な制限を有する、120ボルトAC主電源からの一般的な家庭回路をスイッチングすることは、各パワーMOSFETのRdsが0.005オーム(5ミリオーム)未満であることを要求する。
【0018】
ボディダイオードの降伏電圧は、デバイスの構造およびドーピングレベルを変化させることにより、Rdsの値に対して有利にトレードオフできるということが、従来技術において周知である。とくに、Rdsの値はVbr
2.5に比例することが示されている。したがって、たとえば、Vbrを半分にカットすると、結果としてRdsが係数5.7だけ減少する。
【0019】
図3Aの回路によれば、スイッチ306および電圧源305を備える概念的バイアススイッチング回路が、バックツーバックのパワーMOSFET301および302の共通ソース端子を有して電気的に浮動するということが示され、これは電源101のピークツーピーク範囲全体にわたって電圧において変化する。概念的には単純であるが、この浮動バイアス回路を低コストで実現するのは困難な可能性がある。
【0020】
図3Bは、
図3Aの回路の変更を示し、そこにおいて、追加の負荷デバイス317がパワーMOSFET301および302と並列に接続され、制御スイッチ306は「オン」位置にあり、パワーMOSFETゲート313、314を電圧305に接続する。電流は、AC電源101からパワーMOSFETチャネルを介して負荷102へと流れ、経路318に従い、追加の負荷デバイス317を実効的にバイパスする。
図3Cは、制御スイッチ306が「オフ」位置へと変化し、パワーMOSFETゲート電極313、314をソース端子311、312に接続した場合の
図3Bの回路を示す。この場合には、各パワーMOSFETデバイスは導通せず、電流はAC電源101から追加の負荷317を介して流れる。電流は経路319に従い、追加の負荷317および負荷102を介して流れ、AC電源101に戻る。このように、双方向スイッチ回路は、二極スイッチのように作用し、各パワーMOSFETが「オン」である場合に負荷102に満電流を供給し、各パワーMOSFETが「オフ」である場合に追加の負荷317に低減された電力を供給する。
【0021】
図4は、二配線スイッチ/調光器400の実施形態のブロック図である。
図1と対比して、電子スイッチおよび調光器400は、接続および動作のために2つの配線103、104しか必要としない。電子スイッチ要素401は、AC主電源101を直接的に負荷102に接続する。供給ライン402、403を介してAC電力がAC/DCコンバータ106に提供され、フィルタリングされ調節されたDC電力が、DC出力ライン404、405を介して後続の回路に供給される。制御回路107には入力ライン406、407を介してDC電力が供給され、スイッチ401の状態を制御するための制御信号が、制御ライン408、409を介して提供される。
図1の回路のように、調光器モードでは、
スイッチ401のための動作バイアスは、AC主電源101波形と同期したパルスとして制御回路107から提供され、これらのパルスのデューティサイクルが、負荷に適用される総電力の比率を確立する。スイッチモードでの連続的なフルパワー動作には、スイッチ401が周期的に開離して、AC/DC電源106(リフレッシュ動作とリフレッシュ動作の間に動作DC電力を提供するために十分なエネルギー蓄電を組み込まねばならない)をリフレッシュすることが必要である。
【0022】
図5は、MOSFETを用いた
図2のAC/DC電源の実施形態の概略図であり、1つのMOSFET503は入力/ゲート510と出力511とを有して簡単なコンパレータ回路(
図2の203)を形成し、1つのMOSFET506は、スイッチ(
図2の206)として入力/ゲート512および出力513を有する。コンパレータへの入力はMOSFET503のゲート510であり、
図2の電圧基準205のアナログがMOSFET503の閾値電圧となる。MOSFET503および506はいずれも、それぞれ504および507として明記されるボディダイオードを組み込んでいる。AC主電源101の両端に表れるのではなく、抵抗器501および502を備える分圧器が、DC出力ノード514にわたって実効的に表れる。このように、DC出力514が、MOSFET503の閾値電圧ならびに抵抗器501および502によって確立される分圧器比率によって決定される値に達すると、MOSFET503がオンに切り替わり、これによって、スイッチMOSFET506をオフに切り替える。この回路は、AC主電源101のホットリード103が中性リード105に対して正である場合に、上述のように動作するということに留意すべきである。中性リード105がホットリード103に対して正である場合には、電流は、ボディダイオード504、電流制限抵抗器505、ツェナーダイオード508およびコンデンサ509からなる並列ネットワーク、を介して流れ、ボディダイオード507を介してAC主電源101へと戻る。これによって、コンデンサ509は、ツェナー電圧(AC主電源101の極性が反転した場合に、スイッチMOSFET506が完全にオンとなることを保証するのに十分なほどスイッチMOSFET506の閾値電圧を超えるよう選択される)に充電される。この回路構成は、順方向導通モードにあるスイッチMOSFET506で消散する電力を実質的に低減し、これによって回路の効率を実質的に増大させる。
【0023】
図6は、
図5のAC/DC電源および
図3Aの基本的なスイッチ回路の変形を用いた
図1の三配線回路100の実施形態の概略図である。スイッチ回路は、パワーMOSFET301および302(それぞれボディダイオード303および304を含む)を備え、AC/DC電源によって提供される複数の制御電圧レベルを可能にするために、AC主電源101中性ライン105に再配置される。
図3のスイッチ306の機能は、制御回路107(浮動制御出力408および409を提供し、
図5に示すAC/DC電源回路によって電力を供給される)を用いることによって直接的に達成される。
【0024】
図7は、
図4の二配線回路400を製造するために各要素が代替的に接続された
図6の実施形態の概略図である。この新たな構成は、主に、AC電源101のホットリード103を、それまで中性ライン105であったものに再接続することと、負荷を、それまでAC主電源101ホットリード103であったものからAC主電源101中性リード105に再接続することと、MOSFET506のドレイン701を、AC主電源101のホットリード103であったものから双方向スイッチ出力ノード702に再接続することと、浮動中性404ライン(コンデンサ208と、制御回路107と、MOSFETスイッチデバイス301および302の共通ソース接続に接続される)を、AC主電源101中性ライン105であったものから分離することとを含む。
図6に示すように、制御回路107は、浮動制御出力408および409を提供する。まとめると、第1端子および第2端子を有するAC電源101と、第1端子および第2端子を有する負荷102との間の交流電流(AC)回路において電流をスイッチングするための双方向電子スイッチシステム400であって、AC電源101の第1端子に接続される入力端子103と、負荷102の第1端子に接続される出力端子104とを有し、AC電源101の第2端子と、負荷102の第2端子とは、双方向スイッチシステムの外部で相互接続され、さらに、
a.制御回路システム107に接続される第1(404)および第2(405)出力端子に直流電流(DC)でAC電源101からエネルギーを提供するための第1(402)および第2(403)入力端子を有するAC/DC変換システム106と、
b.前記AC/DC変換システム106の第1(404)および第2(405)出力にそれぞれ接続される第1(406)および第2(407)DC入力端子と、電子スイッチ401に制御信号を提供するための第1(408)および第2(409)出力端子とを有する制御回路システム107と、
c.入力端子103および双方向スイッチ出力端子104の間に接続される電子スイッチ401と、
とを備え、制御システム出力端子408、409の間に表れる制御信号の状態が、スイッチの状態を決定する。
【0025】
図8Aは、双方向スイッチ内のMOSFET301および302が「オフ」であり、AC主電源101ホットライン103がAC主電源101中性ライン105に対して正である場合の、
図7の回路の実効的構成を示す。電流は、ボディダイオード504、電流制限抵抗器505、ツェナーダイオード508およびコンデンサ509からなる並列ネットワーク、を介して流れ、ボディダイオード507および負荷102を介してAC主電源101へと戻る。これによって、コンデンサ509は、ツェナー電圧(AC主電源101の極性が反転した場合に、スイッチMOSFET506が完全にオンとなることを保証するのに十分なほどスイッチMOSFET506の閾値電圧を超えるよう選択される)に充電される。
【0026】
図8Bは、双方向スイッチ内の各MOSFETが「オフ」であり、AC主電源101中性ライン105がAC主電源101ホットライン103に対して正である場合の、
図7の回路の実効的構成を示す。電流は、負荷102を介して、MOSFET506のチャネルを介して、および、ピーク検出ダイオード207を介して流れ、コンデンサ208を、MOSFET503の閾値電圧と抵抗器501および502を備える分圧器とによって決定される電圧に充電し、順方向バイアスされたボディダイオード303を介してAC主電源101へと戻る。
【0027】
図9は、双方向スイッチ内の各MOSFETが「オン」である場合の、
図7の回路の実効的構成を示す。AC/DC電源回路はバイパスされ、全電流がAC主電源101から負荷102を介して流れる。
【0028】
図10は、過電流保護および出力DC電圧制御のための追加のサブ回路を有し、LED照明のための安定器を提供する、
図7の回路を示す。電流サンプリング抵抗器1002およびnpnバイポーラトランジスタ1001が、過電流保護回路を形成する。抵抗器1002は、パワーMOSFET506の最大電流定格によって決定される非常に小さい値(1オームよりはるかに小さい)を有する。抵抗器1002の両端の電圧降下が約0.6V(シリコントランジスタの場合)を超えると、バイポーラトランジスタ1001は導通し、MOSFET506のゲートをそのソースに接続し、電流を低減させる。系列は、簡単な電圧制御回路を形成するMOSFET1003、バイアス抵抗器1004、ツェナーダイオード1005およびフィルタコンデンサ1006を通過する。出力電圧514は、ダイオード1005のツェナー電圧から通過MOSFET1003の閾値電圧を減じたものによって与えられる値に制御される。一実施形態では、二配線スイッチは、さらに、負荷電流のさらなる制御を提供する安定器回路1007を含む。回路1007は、スイッチ301、302と直列に接続される。安定器回路1007は、制御回路107によって制御され、1108を介してスイッチ制御回路107に接続される。接続1008は、制御回路107への有線または無線接続とすることができる。
【0029】
図11に示す一実施形態では、安定器回路1007は、並列に配線される安定器抵抗器1101およびスイッチ1102を含む。スイッチ1102は、制御回路107によって、接続1008を介して制御される。LED照明を調光するための一実施形態では、スイッチ1102は常時閉であり、0%出力にまで減光する際に開離され、これによって、安定器抵抗器1101は、接続されたLED負荷を通る電流を、LEDを点灯させるのに必要な閾値未満に低減する。一実施形態では、スイッチ1102はリレースイッチである。別の実施形態では、制御ライン1008は、制御回路107への無線接続である。
【0030】
[サマリー]
AC電源から負荷への電力の制御のための双方向スイッチおよび調光器が記載される。本手法は、負荷へのAC電源の接続と、AC/DC電源へのAC電源の周期的接続とを交番させる固体双極スイッチおよび浮動AC/DC電源を含む双方向スイッチサブ回路構成においてパワーMOSFETを用いる。スイッチおよび調光器回路構成により、2つの配線のみを用いる既存の単相回路への挿入が可能となる。この設計により、回路全体を単一のチップ上で製造することが可能となる。
【国際調査報告】