IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョージアミューン・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-525758AKT3モジュレーターおよびその使用方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】AKT3モジュレーターおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230612BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230612BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20230612BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALN20230612BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALN20230612BHJP
   C12N 5/079 20100101ALN20230612BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20230612BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20230612BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P25/28
A61P1/14
A61P3/04
A61P29/00
A61P35/00
A61P27/02
A61P37/06
A61P17/02
A61P25/16
A61P21/02
A61P25/02
A61P25/14
A61P39/02
A61P25/00
A61P3/08
A61P1/16
A61P3/06
A61P37/08
A61P11/06
A61P11/14
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K31/4709
A61P11/00
A61P43/00 111
C12N5/0783 ZNA
C12N5/0781
C12N5/0786
C12N5/079
C07K16/18
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567883
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2021031372
(87)【国際公開番号】W WO2021226510
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/021,797
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522434554
【氏名又は名称】ジョージアミューン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Georgiamune Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】クレイフ,サミル
(72)【発明者】
【氏名】ムクルティチャン,ミカエル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC14
4B065CA44
4C084AA17
4C084AA19
4C084AA20
4C084NA05
4C084ZA021
4C084ZA161
4C084ZA221
4C084ZA331
4C084ZA591
4C084ZA621
4C084ZA69
4C084ZA751
4C084ZA891
4C084ZB081
4C084ZB111
4C084ZB131
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC331
4C084ZC351
4C084ZC371
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZA22
4C086ZA33
4C086ZA59
4C086ZA62
4C086ZA69
4C086ZA75
4C086ZA89
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC33
4C086ZC35
4C086ZC37
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
Akt3を調節する組成物および方法がここに開示される。また開示されるのは、種々の疾患の処置または予防におけるそれらの使用方法である。Akt3のアクティベーターおよび阻害剤が種々の疾患の処置および予防における使用について記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とする対象における疾患を処置する方法であって、対象に、Akt3モジュレーターを含む組成物を、Akt3シグナル伝達を調節し、疾患を処置または進行遅延するのに有効な量で投与することを含む、方法。
【請求項2】
疾患が神経変性疾患、カヘキシー、摂食障害、肥満合併症、炎症性疾患、ウイルス誘導炎症反応、湾岸戦争症候群、結節性硬化症、網膜色素変性症、移植片拒絶、がん、虚血性組織傷害、外傷性組織傷害およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
疾患が神経変性疾患である、請求項2の方法。
【請求項4】
神経変性疾患がパーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、運動神経疾患、ハンチントン病、HIV誘導神経変性、レビー小体病、脊髄性筋萎縮、プリオン病、脊髄小脳失調、家族性アミロイドポリニューロパチーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3の方法。
【請求項5】
疾患がカヘキシーまたは摂食障害である、請求項2の方法。
【請求項6】
疾患が肥満合併症である、請求項2の方法。
【請求項7】
肥満合併症がグルコース不耐性、脂肪肝、異脂肪血症およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6の方法。
【請求項8】
疾患が炎症性疾患である、請求項2の方法。
【請求項9】
炎症性疾患がアトピー性皮膚炎、アレルギー、喘息およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8の方法。
【請求項10】
疾患がウイルス誘導炎症反応である、請求項2の方法。
【請求項11】
ウイルス誘導炎症反応がSARS誘導炎症性肺炎、コロナウイルス疾患2019またはそれらの組み合わせである、請求項10の方法。
【請求項12】
疾患が湾岸戦争症候群または結節性硬化症である、請求項2の方法。
【請求項13】
疾患が網膜色素変性症または移植片拒絶である、請求項2の方法。
【請求項14】
疾患が虚血性組織傷害または外傷性組織傷害である、請求項2の方法。
【請求項15】
疾患ががんである、請求項2の方法。
【請求項16】
がんが成人T細胞白血病/リンパ腫、膀胱、脳、乳、子宮頚、結腸直腸、食道、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、膵臓、前立腺、皮膚、胃、子宮、卵巣および精巣のがんからなる群から選択される、請求項15の方法。
【請求項17】
がんが白血病である、請求項15の方法。
【請求項18】
白血病が成人T細胞白血病/リンパ腫である、請求項17の方法。
【請求項19】
成人T細胞白血病/リンパ腫がヒトT細胞リンパ球向性ウイルスにより引き起こされる、請求項18の方法。
【請求項20】
Akt3が免疫細胞で調節される、請求項1~19の何れかの方法。
【請求項21】
免疫細胞がT細胞、B細胞、マクロファージおよびグリア細胞からなる群から選択される、請求項20の方法。
【請求項22】
グリア細胞がアストロサイト、ミクログリアまたはオリゴデンドロサイトである、請求項21の方法。
【請求項23】
T細胞がT制御性細胞である、請求項21の方法。
【請求項24】
Akt3モジュレーターがAkt3シグナル伝達を活性化する、請求項1または2の方法。
【請求項25】
Akt3モジュレーターがAkt3シグナル伝達を阻害する、請求項1または2の方法。
【請求項26】
Akt3モジュレーターがT制御性細胞活性または産生を増加させる、請求項1または2の方法。
【請求項27】
Akt3モジュレーターがT制御性細胞活性または産生を減少させる、請求項1または2の方法。
【請求項28】
Akt3のモジュレーターが式I:
【化1】
の化合物またはその薬学的に許容されるエナンチオマー、塩もしくは溶媒和物であり、ここで:
環A、BおよびCが独立してフェニル、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、キナゾリン、イソキノリン、ナフタレン、ナフチリジン、インドール、イソインドール、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、プテリジン、プリンおよびベンゾイミダゾールからなる群から選択される、0個以上のN原子を含む6員アリールまたはN含有ヘテロアリール単環または二環式環系であり;
が場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1個以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基であり;
X、YおよびZが独立して=O、-NH、-S、-N-(C-C30)-アルキルまたは-(C-C30)-アリールであり;
【化2】
が-CH((C-C30)-アルキル))-、-(C=O)-、-CH(OH)、-SO-、-SO-または-CH(SOCH)-であり;そして
が場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1個以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基である、
請求項1~27の何れかの方法。
【請求項29】
Akt3モジュレーターが式II:
【化3】
の化合物またはその薬学的に許容されるエナンチオマー、塩もしくは溶媒和物であり、ここで:
が場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1個以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基であり;
X、YおよびZが独立して-O、-NH、-S、-N-(C-C30)-アルキルまたは-(C-C30)-アリールであり;
【化4】
が-CH((C-C30)-アルキル))-、-(C=O)-、-CH(OH)、-SO-、-SO-または-CH(SOCH)-であり;そして
が場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1個以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基である、
請求項1~28の何れかの方法。
【請求項30】
Akt3モジュレーターが式III:
【化5】
の化合物またはその薬学的に許容されるエナンチオマー、塩もしくは溶媒和物であり、ここで:
が場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1個以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基であり;
X、YおよびZが独立して-O、-NH、-S、-N-(C-C30)-アルキルまたは-(C-C30)-アリールであり;
【化6】
が-CH((C-C30)-アルキル))-、-(C=O)-、-CH(OH)、-SO-、-SO-または-CH(SOCH)-であり;そして
が-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンである、
請求項1~28の何れかの方法。
【請求項31】
Akt3モジュレーターが式IV:
【化7】
の化合物またはその薬学的に許容されるエナンチオマー、塩もしくは溶媒和物である、請求項1~28の何れかの方法。
【請求項32】
対象に第二治療剤を投与することをさらに含む、請求項1~31の何れかの方法。
【請求項33】
第二治療剤が栄養補充、化学療法剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、コリンエステラーゼ阻害剤、抗うつ剤、抗不安剤、抗精神病剤、リルゾール、エダラボン、ドーパミンアゴニスト、MAO B阻害剤、カテコールO-メチルトランスフェラーゼ阻害剤、抗コリン剤、抗痙攣剤、テトラベナジン、カルビドパ-レボドパ、鎮痙剤、抗体、融合タンパク質、酵素、核酸、リボ核酸、抗増殖性、細胞毒性剤、食欲刺激剤、5-HT3アンタゴニスト、Cox-2阻害剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32の方法。
【請求項34】
処置を必要とする対象におけるカヘキシーを処置する方法であって、対象にAkt3の選択的阻害剤を含む組成物を、脂肪細胞においてAkt3シグナル伝達を阻害し、脂肪生成を活性化する有効な量で投与することを含む、方法。
【請求項35】
対象に第二治療剤を投与することをさらに含む、請求項34の方法。
【請求項36】
第二治療剤が食欲刺激剤、栄養補充、5-HT3アンタゴニスト、Cox-2阻害剤、化学療法剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、コリンエステラーゼ阻害剤、抗うつ剤、抗不安剤、抗精神病剤、リルゾール、エダラボン、ドーパミンアゴニスト、MAO B阻害剤、カテコールO-メチルトランスフェラーゼ阻害剤、抗コリン剤、抗痙攣剤、テトラベナジン、カルビドパ-レボドパ、鎮痙剤、抗体、融合タンパク質、酵素、核酸、リボ核酸、抗増殖性、細胞毒性剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項35の方法。
【請求項37】
第二治療剤が食欲刺激剤、栄養補充、5-HT3アンタゴニストまたはCox-2阻害剤である、請求項36の方法。
【請求項38】
対象が神経変性疾患、カヘキシー、摂食障害、肥満合併症、炎症性疾患、ウイルス誘導炎症反応、湾岸戦争症候群、結節性硬化症、網膜色素変性症、移植片拒絶、がんおよびそれらの組み合わせを有する、請求項34~37の何れかの方法。
【請求項39】
Akt3阻害剤が次のものからなる群から選択される、化合物である、請求項1~38の何れかの方法。
【化8】
【化9】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月8日出願の米国仮出願63/021,797に基づく利益および優先権を主張し、この出願の内容を、引用により全体として本明細書に包含させる。
【0002】
引用による取り込み
ここで引用するあらゆる特許、特許公開、刊行物またはその他文献は、引用により全体として明示的に本明細書に包含させる。
【0003】
発明の分野
本発明は、一般にAkt3シグナル伝達の調節により疾患を処置および予防する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
慢性疾病および疾患は、治療の継続を必要とし、一般に患者のクオリティ・オブ・ライフに負に影響する、持続する状態である。慢性疾患は、米国における能力障害および死亡の筆頭原因である。一般的慢性疾患は、炎症性疾患、神経変性疾患、病原性感染、免疫不全障害、体重減少障害、ホルモン不均衡、結節性硬化症、網膜色素変性症およびうっ血性心不全を含むが、これらに限定されない。米国で大まかに成人10名中6名が慢性疾患を有し、10名中4名が2個以上の慢性疾患を有すると推定されている。慢性疾患はまた米国で年間3兆3000億ドルの医療費の代表的駆動要因でもある(National Center for Chronic Disease Prevention and Health Promotion参照)。これらの驚異的統計資料は、慢性疾病および疾患の新規かつ改善された処置および予防的介入の必要性を強調する。
【0005】
神経変性疾患は、ニューロンとも称される神経細胞の変性および細胞死の進行により特徴づけられる、不治の、衰弱性状態である。ニューロンは神経系の構成要素であり、通常損傷または死滅したとき、自身で再生または置き換えされない。神経変性疾患を有する患者におけるニューロンの喪失または機能不全は、体の動きおよび脳機能に影響を与え得る。一般的神経変性疾患は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、プリオン病、運動神経疾患、脊髄小脳失調および脊髄性筋萎縮を含むが、これらに限定されない。進行した神経変性疾患の症状は破壊的であり得て、患者は記憶、運動の制御および人格を失う。現在神経変性疾患は治癒されず、症状の管理に焦点を当てた処置は、典型的に患者にクオリティ・オブ・ライフを損なう負の副作用をもたらす。
【0006】
神経変性疾患などの慢性疾患の重篤な合併症は、カヘキシーまたは消耗性症候群である。カヘキシーは、慢性疾病の存在下、12カ月以内での体重の5%を超える体重減少として定義される。カヘキシーの他の症状は、筋肉萎縮、疲労、脱力およびしばしば食欲減退を含む。カヘキシーに付随する体重減少は、脂肪だけでなく、筋肉量の減少のせいでもある。カヘキシーを有する患者は、しばしば、まだ通常の食事をしていても、体重が減少する。多くの慢性疾患関連死をもたらすカヘキシーに対する有効な処置は現在ない。
【0007】
慢性疾患および慢性疾患に付随する合併症に対するより有効かつ許容される処置および予防的介入に対する必要性が増え続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故に、慢性疾患を処置および予防する方法を提供するのが、本発明の目的である。
【0009】
カヘキシーなどの慢性疾患の合併症を処置および予防する方法の提供も、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
Akt3を選択的に調節する化合物および医薬組成物がここに開示される。種々の疾患および障害を処置または予防するために化合物を使用する方法も開示される。疾患の非限定的例は、炎症性疾患、神経変性疾患、病原性感染、免疫不全障害、体重減少障害、ホルモン不均衡、結節性硬化症、網膜色素変性症、うっ血性心不全およびそれらの組み合わせを含む。
【0011】
Akt3は脳に高度に発現され、その調節不全はいくつかの神経変性疾患と関連付けられている。それ故に、開示されるAkt3モジュレーターは、神経変性疾患の処置に有用であり得る。
【0012】
処置を必要とする対象において神経変性疾患を処置する方法が開示される。ある実施態様において、方法は、対象に脳組織においてAkt3を活性化し、Akt3の下流で神経保護シグナル伝達に有効な量でAkt3のアクティベーターを投与することを含む。他の実施態様において、方法は、対象に脳組織においてAkt3を阻害し、Akt3の下流で神経炎症性シグナル伝達に有効な量でAkt3の阻害剤を投与することを含む。
【0013】
ある実施態様において、処置される神経変性疾患は、てんかん、脊髄の一過性虚血または脳虚血からなる群から選択される、急性神経変性疾患である。神経変性疾患は、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、脊髄性筋萎縮または筋萎縮性側索硬化症からなる群から選択される慢性神経変性疾患でもあり得る。
【0014】
Akt3はまた脂肪組織および脂肪細胞でも高度に発現される。Akt3シグナル伝達は、脂肪生成と関連づけられている。それ故に、開示されるAkt3モジュレーターは、過度の体重減少により特徴づけられる疾患および障害の処置に有用であり得る。
【0015】
カヘキシーなどの状態に付随する過度の体重減少および摂食障害を処置する方法が開示される。方法は、典型的に脂肪細胞におけるAkt3シグナル伝達を阻害し、脂肪生成を促進するのに有効な量でAkt3の阻害剤を対象に投与することを含む。
【0016】
ある実施態様において、対象は、カヘキシーによる過度の体重減少を有する。カヘキシーは、後天性免疫不全症候群(AIDS)、セリアック病、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、関節リウマチ、うっ血性心不全、結核、家族性アミロイドポリニューロパチー、クローン病、未処置および重度1型糖尿病、拒食症、甲状腺機能亢進症およびホルモン欠乏などの慢性疾患に付随し得る。
【0017】
開示される方法は、対象に第二治療剤を投与することも含み得る。神経変性疾患に対する、第二治療剤は、鎮痙剤、筋弛緩剤、鎮痛剤、抗うつ剤、抗精神病剤、抗痙攣剤、抗コリン剤または抗不安剤であり得る。過度の体重減少がある対象に対する、第二治療剤は食欲刺激剤、栄養補充、5-HT3アンタゴニストまたはCox-2阻害剤であり得る。
【0018】
ある態様において、対象に、Akt3モジュレーターを含む組成物を、Akt3シグナル伝達を調節し、疾患を処置または進行遅延するのに有効な量で投与することを含む、処置を必要とする対象における疾患を処置する方法が記載される。
【0019】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、疾患は、神経変性疾患、カヘキシー、摂食障害、肥満合併症、炎症性疾患、ウイルス誘導炎症反応、湾岸戦争症候群、結節性硬化症、網膜色素変性症、移植片拒絶、がん、虚血性組織傷害、外傷性組織傷害およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0020】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、疾患は神経変性疾患である。
【0021】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、神経変性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、運動神経疾患、ハンチントン病、HIV誘導神経変性、レビー小体病、脊髄性筋萎縮、プリオン病、脊髄小脳失調、家族性アミロイドポリニューロパチーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0022】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、疾患はカヘキシーまたは摂食障害である。
【0023】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、疾患は肥満合併症である。
【0024】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、肥満合併症はグルコース不耐性、脂肪肝、異脂肪血症およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0025】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、疾患は炎症性疾患である。
【0026】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、炎症性疾患はアトピー性皮膚炎、アレルギー、喘息およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0027】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、疾患はウイルス誘導炎症反応である。
【0028】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、ウイルス誘導炎症反応はSARS誘導炎症性肺炎、コロナウイルス疾患2019またはそれらの組み合わせである。
【0029】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、疾患は湾岸戦争症候群または結節性硬化症である。
【0030】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、疾患は網膜色素変性症または移植片拒絶である。
【0031】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、疾患は虚血性組織傷害または外傷性組織傷害である。
【0032】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、疾患はがんである。
【0033】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、がんは成人T細胞白血病/リンパ腫、膀胱、脳、乳、子宮頚、結腸直腸、食道、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、膵臓、前立腺、皮膚、胃、子宮、卵巣および精巣のがんからなる群から選択される。
【0034】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、がんは白血病である。
【0035】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、白血病は成人T細胞白血病/リンパ腫である。
【0036】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、成人T細胞白血病/リンパ腫はヒトT細胞リンパ球向性ウイルスにより引き起こされる。
【0037】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、Akt3は免疫細胞で調節される。
【0038】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、免疫細胞はT細胞、B細胞、マクロファージおよびグリア細胞からなる群から選択される。
【0039】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、グリア細胞はアストロサイト、ミクログリアまたはオリゴデンドロサイトである。
【0040】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、T細胞はT制御性細胞である。
【0041】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、Akt3モジュレーターはAkt3シグナル伝達を活性化する。
【0042】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、Akt3モジュレーターはAkt3シグナル伝達を阻害する。
【0043】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、Akt3モジュレーターはT制御性細胞活性または産生を増加させる。
【0044】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、Akt3モジュレーターはT制御性細胞活性または産生を減少させる。
【0045】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、Akt3のモジュレーターは、式I:
【化1】
の化合物またはその薬学的に許容されるエナンチオマー、塩もしくは溶媒和物であり、ここで:
環A、BおよびCは独立してフェニル、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、キナゾリン、イソキノリン、ナフタレン、ナフチリジン、インドール、イソインドール、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、プテリジン、プリンおよびベンゾイミダゾールからなる群から選択される、0個以上のN原子を含む6員アリールまたはN含有ヘテロアリール単環または二環式環系であり;
は場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基であり;
X、YおよびZは独立して=O、-NH、-S、-N-(C-C30)-アルキルまたは-(C-C30)-アリールであり;
【化2】
は-CH((C-C30)-アルキル))-、-(C=O)-、-CH(OH)、-SO-、-SO-および-CH(SOCH)-からなる群から選択され;そして
は場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基である。
【0046】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、Akt3モジュレーターは式II:
【化3】
の化合物またはその薬学的に許容されるエナンチオマー、塩もしくは溶媒和物であり、ここで:
は場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基であり;
X、YおよびZは独立して-O、-NH、-S、-N-(C-C30)-アルキルまたは-(C-C30)-アリールであり;
【化4】
は-CH((C-C30)-アルキル))-、-(C=O)-、-CH(OH)、-SO-、-SO-および-CH(SOCH)-からなる群から選択され;そして
は場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基である。
【0047】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、Akt3モジュレーターは式III:
【化5】
の化合物またはその薬学的に許容されるエナンチオマー、塩もしくは溶媒和物であり、ここで:
は場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基であり;
X、YおよびZは独立して-O、-NH、-S、-N-(C-C30)-アルキルまたは-(C-C30)-アリールであり;
【化6】
は-CH((C-C30)-アルキル))-、-(C=O)-、-CH(OH)、-SO-、-SO-または-CH(SOCH)-であり;そして
は-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンである。
【0048】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、Akt3モジュレーターは式IV:
【化7】
の化合物またはその薬学的に許容されるエナンチオマー、塩もしくは溶媒和物である。
【0049】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、方法は、対象に第二治療剤を投与することをさらに含む。
【0050】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、第二治療剤は栄養補充、化学療法剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、コリンエステラーゼ阻害剤、抗うつ剤、抗不安剤、抗精神病剤、リルゾール、エダラボン、ドーパミンアゴニスト、MAO B阻害剤、カテコールO-メチルトランスフェラーゼ阻害剤、抗コリン剤、抗痙攣剤、テトラベナジン、カルビドパ-レボドパ、鎮痙剤、抗体、融合タンパク質、酵素、核酸、リボ核酸、抗増殖性、細胞毒性剤、食欲刺激剤、5-HT3アンタゴニスト、Cox-2阻害剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0051】
他の態様において、対象にAkt3の選択的阻害剤を含む組成物を、脂肪細胞においてAkt3シグナル伝達を阻害し、脂肪生成を活性化する有効な量で投与することを含む、処置を必要とする対象におけるカヘキシーを処置する方法が記載される。
【0052】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、方法は、対象に第二治療剤を投与することをさらに含む。
【0053】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、第二治療剤は食欲刺激剤、栄養補充、5-HT3アンタゴニスト、Cox-2阻害剤、化学療法剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、コリンエステラーゼ阻害剤、抗うつ剤、抗不安剤、抗精神病剤、リルゾール、エダラボン、ドーパミンアゴニスト、MAO B阻害剤、カテコールO-メチルトランスフェラーゼ阻害剤、抗コリン剤、抗痙攣剤、テトラベナジン、カルビドパ-レボドパ、鎮痙剤、抗体、融合タンパク質、酵素、核酸、リボ核酸、抗増殖性、細胞毒性剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0054】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、第二治療剤は食欲刺激剤、栄養補充、5-HT3アンタゴニストまたはCox-2阻害剤である。
【0055】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、対象は神経変性疾患、カヘキシー、摂食障害、肥満合併症、炎症性疾患、ウイルス誘導炎症反応、湾岸戦争症候群、結節性硬化症、網膜色素変性症、移植片拒絶、がんおよびそれらの組み合わせを有する。
【0056】
ここに記載する実施態様の何れかにおいて、Akt3阻害剤は、次のものからなる群から選択される、化合物である。
【化8】
【化9】
【0057】
発明の詳細な記載
I. 定義
本発明はここに記載する組成物および方法ならびに記載する実験条件に限定されず、それらは変わり得ることは認識されるべきである。本発明の範囲は添付する特許請求の範囲によってのみ限定されるため、ここで使用する用語は、ある実施態様を説明する目的のみで使用し、限定する意図はないことも理解されるべきである。
【0058】
他に定義しない限り、ここで使用する全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により共通して理解されるのと同じ意味を有する。ここに記載するものに類似するまたは等価のあらゆる組成物、方法および物質を、本発明の実施または試験に使用し得る。ここに記載する全ての刊行物は、引用によりその全体として本明細書に包含させる。
【0059】
ここに請求する発明の記載(特に特許請求の範囲における記載)における単数表現の使用は、ここで特に断らない限りまたは文脈に明らかに反しない限り、単数および複数両方を包含すると解釈されるべきである。
【0060】
ここでの値の範囲の記載は、ここで特に断らない限り、単に当該範囲内に入る各個々の値をいう省略法として提供することが意図され、各別々の値は、ここに個別に言及されているのと同程度に本明細書に包含される。
【0061】
用語「約」の使用は記載する値の上下約±10%の範囲の値をいうことを意図し;他の実施態様において、値は記載する値の上下約±5%の範囲内の値の範囲であってよく;他の実施態様において、値は記載する値の上下約±2%の範囲内の値の範囲であってよく;他の実施態様において、値は記載する値の上下約±1%の範囲内の値の範囲であってよい。前述の範囲は文脈から明らかとなることが意図され、さらなる限定を意味するものではない。ここに記載する全ての方法は、ここで特に断らない限りまたは文脈に明らかに反しない限り、任意の適当な順番で実施し得る。ここに提供される任意かつ全ての例または例示的用語(例えば、「などの」)は、特に断らない限り、単に本発明の理解をより容易にすることを意図し、本発明の範囲に限定を課さない。本明細書におけるいかなる用語も、何れかの特許請求の範囲に記載されていない要素が、本発明の実施に必須であるものして解釈されてはならない。
【0062】
ここで使用する用語「がん」および、同等に、「腫瘍」は、宿主起源の異常に複製される細胞が、対象に検出可能な量で存在する状態をいう。がんは悪性または非悪性がんであり得る。がんまたは腫瘍は、成人T細胞白血病/リンパ腫(ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV-1)が原因のものを含む)、胆管がん;脳がん;乳がん;子宮頚がん;絨毛がん;結腸がん;子宮内膜がん;食道がん;胃(胃体)がん;上皮内腫瘍;白血病;リンパ腫;肝臓がん;肺がん(例えば、小細胞および非小細胞);黒色腫;神経芽腫;口腔がん;卵巣がん;膵臓がん;前立腺がん;直腸がん;腎(腎臓)がん;肉腫;皮膚がん;精巣がん;甲状腺がん;ならびに他のがん腫および肉腫を含むが、これらに限定されない。ここで使用する用語「リンパ腫」は、リンパ球から進展する、リンパ系のがんまたは血液がんをいう。がんは原発性または転移性であり得る。がん以外の疾患が、Rasシグナル伝達経路の要素の変異的改変と関連し得て、ここに開示する化合物をこれら非がん疾患の処置に使用し得る。このような非がん疾患は、神経線維腫症;レオパード症候群;ヌーナン症候群;レジウス症候群;コステロ症候群;心臓・顔・皮膚症候群;遺伝性歯肉線維腫症1型;自己免疫性リンパ増殖性症候群;および毛細血管奇形-動静脈奇形を含む。
【0063】
用語「発現を刺激」は、例えば、発現または活性を誘導するまたは正常、健常対照に対して増加した/大きな発現または活性を誘導するよう、発現に影響することを意味する。
【0064】
用語「免疫活性化応答」、「活性化免疫応答」および「免疫刺激応答」は、自然または適応免疫の活性化の開始、誘導、増強または増加またはそれらの効率化の応答をいう。このような免疫応答は、例えば、レシピエント患者のペプチドに対する有益な液性(抗体介在)および/または細胞性(抗原特異的T細胞またはその分泌産物介在)応答の進展をいう。このような応答は、免疫原投与により誘導された能動応答または抗体または感作T細胞投与により誘導された受動応答であり得る。細胞免疫応答は、抗原特異的CD4+Tヘルパー細胞および/またはCD8+細胞毒性T細胞を活性化するための、クラスIまたはクラスII主要組織適合性複合体(「MHC」)分子と結合したポリペプチドエピトープの提示により誘発される。応答はまた単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、好塩基球、樹状細胞、アストロサイト、ミクログリア細胞、好酸球の活性化、好中球または自然免疫の他の成分の活性化または動員も含み得る。細胞介在免疫学的応答の存在は、増殖アッセイ(CD4+T細胞)または細胞毒性Tリンパ球(「CTL」)アッセイにより決定され得る。免疫原の保護的または治療的効果に対する液性および細胞応答の相対的寄与は、免疫化同系動物から抗体およびT細胞を別々に単離し、第二対象における保護的または治療的効果を測定することにより、区別され得る。
【0065】
用語「抑制性免疫応答」および「免疫抑制性応答」は、自然または適応免疫の活性化または効率を低減または防止する応答をいう。
【0066】
ここで使用する用語「免疫寛容」は、有害な可能性のある免疫応答を予防する、抑制するまたは非有害免疫応答にシフトする何れかの機構をいう(引用により全体としてここに包含させるBach, et al., N. Eng. J. Med., 347:911-920 (2002))。
【0067】
ここで使用する用語「寛容化ワクチン」は、典型的に全体的免疫機能はインタクトのまま、自己反応性Tおよび/またはB細胞応答を減弱するのに使用される抗原特異的治療である。
【0068】
「免疫原性剤」または「免疫原」は、所望によりアジュバントと組み合わせて、哺乳動物への投与によりそれに対する免疫学的応答を誘導できる。
【0069】
ここで使用する用語「免疫細胞」は、好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞、B細胞、T細胞およびNK細胞を含むリンパ球を含む、自然および獲得免疫系の細胞をいう。
【0070】
ここで使用する「通常型T細胞」は、αβ T細胞受容体(TCR)ならびに共受容体CD4またはCD8を発現するTリンパ球である。通常型T細胞は、末梢血、リンパ節および組織に存在する。引用により全体として本明細書に包含させるRoberts and Girardi, “Conventional and Unconventional T Cells”, Clinical and Basic Immunodermatology, pp. 85-104, (Gaspari and Tyring (ed.)), Springer London (2008)参照。
【0071】
ここで使用する「非通常型T細胞」は、γδ TCRを発現するリンパ球であり、一般に、皮膚、消化管または泌尿生殖器管などの上皮性環境に常在し得る。非通常型T細胞の他のサブセットは、通常型T細胞の表現型および機能的能力ならびにナチュラルキラー細胞の特性(例えば、細胞溶解活性)を有する、インバリアントナチュラルキラーT(NKT)細胞である。同文献参照。
【0072】
ここで使用する「Treg」は、1以上の制御性T細胞をいう。制御性T細胞は、免疫系を調節し、自己抗原に対する耐容性を維持し、その他に他の細胞の免疫刺激または活性化応答を抑制する、T細胞の亜集団である。制御性T細胞は多数の形態があり、最も良く理解されているのは、CD4、CD25およびFoxp3を発現するものである。
【0073】
ここで使用する「天然Treg」または「nTreg」は、胸腺で発達する1以上の制御性T細胞をいう。
【0074】
ここで使用する「誘導型Treg」または「iTreg」は、胸腺外で成熟CD4+通常型T細胞から発達する1以上の制御性T細胞をいう。
【0075】
Akt3の「生理活性」は、Akt3ポリペプチドの生物学的機能をいう。生理活性は、ポリペプチドの基底レベルの活性の増減、ポリペプチドの基底レベルのアビディティーの増減、ポリペプチドの量、リペプチドのAkt3のAktの他のアイソフォーム(例えば、Akt1またはAkt2)タンパク質の1個以上に対する比、ポリペプチドの発現レベルの増減(Akt3のmRNA発現の増減を含む)またはそれらの組み合わせにより増減され得る。例えば、生体利用可能Akt3ポリペプチドは、キナーゼ活性を有し、Akt3の基質に結合し、リン酸化できる、ポリペプチドである。生体利用可能ではないAkt3ポリペプチドは、誤った場所に局在化したまたはAkt基質に結合し、リン酸化できないAkt3ポリペプチドである。
【0076】
ここで使用する標的に「特異的に結合する」または「特異的結合を示す」分子なる用語は、他の生体因子(biologics)の異種性集団の存在下、該分子の存在を決定づける結合反応をいう。
【0077】
指定のイムノアッセイ条件下、特定の分子は特定の標的に優先的に結合し、サンプルに存在する他の生体因子に有意な量で結合しない。このような条件下での抗体の標的への特異的結合は、抗体が該標的に対するその特異性に対して選択される必要がある。多様なイムノアッセイ形式を使用して、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択し得る。例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)は、あるタンパク質と特異的免疫反応をするモノクローナル抗体を選択するのに日常的に使用される。例えば、特異的免疫反応性の決定に使用され得るイムノアッセイ形式および条件の記載について、Harlow and Lane (1988), Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New York(引用により全体として本明細書に包含させる)参照。
【0078】
用語「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」は、一般に非修飾RNAもしくはDNAまたは修飾RNAもしくはDNAであり得るあらゆるポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドをいう。故に、例えば、ここで使用する「ポリヌクレオチド」は、とりわけ、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNAおよび一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖またはより典型的に、二本鎖または一本鎖および二本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子をいう。用語「核酸」または「核酸配列」は、上に定義したポリヌクレオチドも含む。
【0079】
さらに、ここで使用する「ポリヌクレオチド」は、RNAまたはDNAまたはRNAおよびDNA両者を含む三本鎖領域をいう。このような領域における鎖は、同じ分子または異なる分子からであり得る。領域は、1個以上の分子の全てを含み得るが、より典型的にいくつかの分子の領域のみを含む。三重らせん領域の分子の1個は、しばしばオリゴヌクレオチドである。
【0080】
ここで使用する用語「ポリヌクレオチド」は、1個以上の修飾塩基を含む上記DNAまたはRNAを含む。故に、安定性または他の理由で修飾された主鎖を有するDNAまたはRNAは、本明細書で意図される用語としての「ポリヌクレオチド」である。さらに、単なる例として2つ挙げるイノシンなどの異常塩基またはトリチル化塩基などの修飾塩基を含むDNAまたはRNAは、ここで使用する用語としてのポリヌクレオチドである。
【0081】
ここで使用する用語「ポリペプチド」は、修飾(例えば、リン酸化またはグルコシル化)と関係なく、あらゆる長さのアミノ酸の鎖をいう。用語「ポリペプチド」は、タンパク質およびそのフラグメントを含む。ポリペプチドは、「異種」である、すなわち、細菌細胞により産生されるヒトポリペプチドなどの、利用される宿主細胞に対して外来であることを意味する、「外因性」であり得る。ポリペプチドは、ここでアミノ酸残基配列として記載する。これらの配列は、アミノ末端からカルボキシ末端方向で左から右に記載される。標準的命名法に従い、アミノ酸残基配列は下記のとおり三文字表記または一文字表記で示す:アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リシン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)およびバリン(Val、V)。
【0082】
「バリアント」は、対照ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと異なるが、必須の性質を保持するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。ポリペプチドの典型的バリアントは、他の、対照ポリペプチドとアミノ酸配列が異なる。一般に、差異は、対照ポリペプチドおよびバリアントの配列が全体として密接に類似し、多くの領域で、同一であるように限定的である。バリアントおよび対照ポリペプチドは、1個以上の修飾(例えば、置換、付加および/または欠失)によりアミノ酸配列が異なり得る。置換または挿入アミノ酸残基は、遺伝コードによりコード化されるものでもされないものでもよい。ポリペプチドのバリアントは、アレルバリアントなどの天然に存在するものであってよく、または天然に存在することが知られていないバリアントであり得る。
【0083】
修飾および変化は、本発明のポリペプチドの構造になされ、なお、ポリペプチドとして類似の性質を有する分子を得ることができる(例えば、保存的アミノ酸置換)。例えば、あるアミノ酸を、活性の感知できる喪失なく、配列において他のアミノ酸に置換し得る。ポリペプチドの生物学的機能的活性を規定するのはポリペプチドの相互作用的能力および性質であるため、あるアミノ酸配列置換をポリペプチド配列において行い、それにも関わらず、類似の性質を有するポリペプチドを得ることができる。
【0084】
このように変化させるために、アミノ酸の疎水性親水性指標が考慮され得る。ポリペプチドに相互作用的生物学的機能を付与する際の疎水性親水性アミノ酸指標の重要性は、一般に当分野で理解される。あるアミノ酸を、類似の疎水性親水性指標またはスコアを有する他のアミノ酸に置換し、なお、類似の生物学的活性を有するポリペプチドが得られ得ることは知られている。各アミノ酸は、疎水性および荷電特性に基づき、疎水性親水性指標が割り当てられている。これらの指標はイソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタメート(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパルテート(-3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)である。
【0085】
アミノ酸の相対的疎水性親水性指標特徴は、得られるポリペプチドの二次構造を決定し、続いてこれが、ポリペプチドと酵素、基質、受容体、抗体、抗原および補因子などの他の分子の相互作用を決定すると考えられる。アミノ酸を類似の疎水性親水性指標を有する他のアミノ酸で置換し、なお、機能的に等しいポリペプチドを得ることができることは当分野で知られる。このような変化において、好ましくは、アミノ酸の置換はそれらの疎水性親水性指標が±2以内、特に好ましくは±1以内およびさらにより特に好ましくは±0.5以内である。
【0086】
類似アミノ酸の置換は、特に作製される生物学的機能的等価ポリペプチドまたはペプチドが免疫学的実施態様での使用が意図されるとき、親水性に基づいてもなされ得る。次の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパルテート(+3.0±1);グルタメート(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);プロリン(-0.5±1);スレオニン(-0.4);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);およびトリプトファン(-3.4)。アミノ酸を、類似の親水性値を有する他のものに置換し、なお、生物学的に等しい、特に、免疫学的に等しいポリペプチドを得ることができることは理解される。このような変化において、好ましくは、アミノ酸の置換はそれらの親水性値が±2以内、特に好ましくは±1以内およびさらにより特に好ましくは±0.5以内である。
【0087】
上に概説のとおり、アミノ酸置換は、一般にアミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、荷電、サイズなどに基づく。種々の前記特徴を考慮に入れた置換の例は当業者に周知であり、(元の残基:例示的置換):(Ala:Gly、Ser)、(Arg:Lys)、(Asn:Gln、His)、(Asp:Glu、Cys、Ser)、(Gln:Asn)、(Glu:Asp)、(Gly:Ala)、(His:Asn、Gln)、(Ile:Leu、Val)、(Leu:Ile、Val)、(Lys:Arg)、(Met:Leu、Tyr)、(Ser:Thr)、(Thr:Ser)、(Trp:Tyr)、(Tyr:Trp、Phe)および(Val:Ile、Leu)を含む。本発明の実施態様は、故に、上記ポリペプチドの機能的または生物学的等価を意図する。特に、ポリペプチドの実施態様は、目的のポリペプチドと約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するバリアントを含み得る。
【0088】
用語「パーセント(%)配列同一性」は、最大パーセント配列同一性を達成するために、配列を整列し、必要であれば、ギャップを導入した後の、対照核酸配列におけるヌクレオチドまたはアミノ酸と同一である候補配列におけるヌクレオチドまたはアミノ酸のパーセンテージとして定義される。パーセント配列同一性を決定する目的でのアラインメントは、当業者の技術範囲内である種々の方法により、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2またはMegalign(DNASTAR)などの公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して、達成できる。比較する配列の完全長にわたり最大アラインメントを達成するのに必要な何れかのアルゴリズムを含むアラインメントを測定するための適切なパラメータは、既知方法により決定され得る。
【0089】
ここでの目的で、あるヌクレオチドまたはアミノ酸配列Cの、ある核酸配列Dに対して、配列Dとまたは配列Dに対する%配列同一性(あるいは、これはある配列Dに対して、配列Dとまたは配列Dに対するある%配列同一性を有するまたは含むある配列Cということができる)は、次のとおり計算される:
100×分数W/Z
(式中、Wは、配列アラインメントプログラムにより、CおよびDのそのプログラムのアラインメントで同一マッチとしてスコアリングされたヌクレオチドまたはアミノ酸の数であり、ZはDにおけるヌクレオチドまたはアミノ酸の総数である)。配列Cの長さが配列Dの長さと等しくないとき、CのDに対する%配列同一性はDのCに対する%配列同一性と等しくないことは認識される。
【0090】
用語「担体」は、活性成分が適用を促進するために組み合わせられる、天然または合成の、有機または無機成分をいう。
【0091】
用語「薬学的に許容される」は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨害しない非毒性材料を意味する。
【0092】
用語「薬学的に許容される担体」は、ヒトまたは他の脊椎動物への投与に適する、1個以上の適合性の固体または液体充填剤、希釈剤または封入物質を意味する。
【0093】
用語「有効量」または「治療有効量」は、処置する障害、疾患または状態を処置するまたは他に所望の薬理学的および/または生理学的効果を提供するのに十分な投与量をいう。厳密な投与量は、対象依存的変数(例えば、年齢、免疫系健康など)、疾患および実施される処置などの多様な因子により変わる。
【0094】
用語「個体」、「対象」および「患者」はここでは相互交換可能に使用され、ヒト、マウスおよびラットなどの齧歯類ならびに他の実験動物を含むが、これらに限定されない哺乳動物をいう。
【0095】
ここで使用する用語「運動神経」は、細胞体が運動皮質、脳幹または脊髄に位置し、軸索がエフェクター臓器、主に筋肉および腺を直接的または間接的に制御するように、脊髄または脊髄外に突出する、ニューロンをいう。
【0096】
II. Akt3シグナル伝達の調節により疾患を処置および予防する方法
Akt3シグナル伝達の調節により疾患を処置および予防する方法がここに開示される。疾患の非限定的例は、神経変性疾患、カヘキシー、摂食障害、肥満合併症、炎症性疾患、ウイルス誘導炎症反応、湾岸戦争症候群、結節性硬化症、網膜色素変性症、移植片拒絶、がん、虚血性組織傷害、外傷性組織傷害およびそれらの組み合わせを含む。ある実施態様において、ここに開示する化合物はAkt3シグナル伝達を調節し、PI3K/Aktシグナル伝達の機能不全が疑われる種々の他の疾患および障害の処置に使用され得る。
【0097】
ある実施態様において、開示されるAkt3阻害剤を摂食障害と診断された対象に、脂肪生成を促進し、過度の体重減少を回復させる有効な量で投与し得る。
【0098】
神経変性疾患の処置のためのAkt3調節
ある実施態様は、対象に、Akt3モジュレーターを含む組成物を、Akt3シグナル伝達を調節し、疾患を処置または進行遅延するのに有効な量で投与することを含む、処置を必要とする対象における神経変性疾患を処置または予防する方法を提供する。神経変性疾患の非限定的例は、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、運動神経疾患、ハンチントン病、HIV誘導神経変性、レビー小体病、脊髄性筋萎縮、プリオン病、脊髄小脳失調、家族性アミロイドポリニューロパチーおよびそれらの組み合わせを含む。
【0099】
神経変性疾患は、脳または末梢神経系における神経細胞が時間と共に機能を失い、最終的に死亡するとき生ずる。神経変性疾患の多くで、慢性神経炎症が疾患進行に寄与する。現在の処置は、神経変性疾患に関連する身体的または精神的症状の一部の軽減を助けるが、現在疾患進行を遅延する方法はなく、治癒は知られていない。
【0100】
神経変性過程を引き起こす機序は広く未知であるが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、脊髄性筋萎縮および筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患の病因における免疫および免疫系の重要な役割を示唆する証拠が増えている。制御性T細胞(Treg)は免疫応答を抑制し、自己耐容性および免疫恒常性の必須のメディエーターである、CD4+ T細胞のサブセットである(Sakaguchi, et al., Cell, 133, 775-787 (2008);引用によりその全体として本明細書に包含させる)。Tregが神経変性疾患の進行に重要な役割を有することを示す、いくつかの証拠がある。Akt3は、天然Tregの抑制性機能および誘導型Tregの分極化を調節し、それ故に、免疫細胞におけるAkt3調節は、免疫応答を調節できることが判明している。より具体的に、活性化免疫細胞におけるAkt3は免疫抑制性応答を引き起こし、一方免疫細胞におけるAkt3阻害は免疫抑制性応答現象を引き起こす。何れかの一つの理論に拘束されないが、免疫細胞におけるAkt3シグナル伝達調節は、神経変性疾患の処置および予防に使用できると考えられる。
【0101】
ある実施態様は、対象にAkt3アクティベーターを免疫抑制性応答を誘導し、疾患を処置するまたは進行を遅延させるのに有効な量で投与することにより、処置を必要とする対象における、Akt3アクティベーターを処置または予防する方法を提供する。ある実施態様において、Akt3アクティベーターは、免疫抑制性細胞の抑制性機能の増加により、免疫応答を調節する。ある実施態様において、Akt3は免疫細胞において選択的に活性化される。免疫細胞の例は、T細胞、B細胞、マクロファージおよびグリア細胞、例えばアストロサイト、ミクログリアおよびオリゴデンドロサイトを含むが、これらに限定されない。好ましい実施態様において、Akt3はTregで活性化される。Akt3アクティベーターは、Tregの活性または産生の増加または促進、TregからのIL-10などのサイトカインの産生増加、Tregの分化の増加、Treg数の増加またはTregの生存の増加のためにも使用され得る。
【0102】
他の実施態様は、免疫抑制性応答を阻害し、対象にAkt3阻害剤を疾患を処置または進行を予防するのに有効な量で投与することにより、処置を必要とする対象における、神経変性疾患を処置または予防する方法を提供する。ある実施態様において、Akt3阻害剤は、免疫抑制性応答減少または免疫刺激応答増加により、免疫応答を調節する。ある実施態様において、Akt3は免疫細胞において選択的に阻害される。免疫細胞の例は、T細胞、B細胞、マクロファージおよびグリア細胞、例えばアストロサイト、ミクログリアおよびオリゴデンドロサイトを含むが、これらに限定されない。好ましい実施態様において、Akt3はTregで阻害される。
【0103】
1. 処置する対象
a. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
ある実施態様において、開示されるAkt3モジュレーターは、ALSを処置または予防できる。ALSは、ルー・ゲーリック病とも称され、脳および脊髄における運動神経に影響する進行性神経変性疾患である。ALSの症状は、発話、嚥下、歩行、移動および呼吸の困難を含むが、これらに限定されない。ALは、通常40~70歳の男女に影響する。散発性および家族性の2種の異なるALSがある。米国で本疾患の最も一般的形態である散発性は、全症例の90~95パーセントを占める。家族性ALSは、Cu/Znスーパーオキシドディスムターゼ(SOD1)の変異と関連する。酸化ストレス、ミトコンドリア機能不全、興奮毒性、タンパク質凝集、小胞体ストレス、軸索輸送機能障害、ニューロン-グリア相互作用の調節不全およびアポトーシスは、全て、変異体OD1の存在下で、運動神経傷害に寄与することが示されている。
【0104】
何れかの一つの理論に拘束されないが、Treg機能不全がALSの進展に役割を有し、Akt3モジュレーターの投与によりALSの処置または進行の予防をし得ると考えられる。急速に進行するALSを有する一部対象は、Treg抑制性機能の機能障害に至るTregマスター転写因子FOXP3の欠損を有することが発見されている。ある実施態様は、Akt3アクティベーターを、免疫細胞におけるAkt3を活性化し、免疫抑制性応答を誘導する有効量で、それを必要とする対象に投与することを含む、それを必要とする対象においてALSを処置する方法を提供する。好ましい実施態様において、Akt3はTregで活性化される。
【0105】
ある実施態様において、ALSを有する対象へのAkt3アクティベーターの投与は、疾患進行を減速し、対象の生存を延長する。
【0106】
開示されるAkt3アクティベーターを使用して処置または予防され得る他の運動神経疾患は、進行性球麻痺、仮性球麻痺、原発性側索硬化症、脊髄性筋萎縮およびポリオ後症候群を含むが、これらに限定されない。
【0107】
b. パーキンソン病
パーキンソン病は、黒質と称される脳の特定の領域において主にドーパミン産生ニューロンに影響する神経変性障害である。パーキンソン病は、障害されまたは死滅するニューロンが増えるため、経時的に悪化する進行性疾患である。パーキンソンにおける神経細胞死の原因は知られていない。パーキンソン病の症状は、手、腕、脚、顎または頭の振戦、肢および胴体の硬化、動作緩慢および平衡および協調の障害を含むが、これらに限定されない。
【0108】
ある実施態様は、Akt3モジュレーターを、それを必要とする対象に、免疫細胞におけるAkt3を活性化または阻害し、免疫抑制性応答を誘導する有効量で投与することを含む、パーキンソン病を処置する方法を提供する。ある実施態様において、パーキンソン病を有する対象へのAkt3アクティベーターの投与は、脳の影響を受けていない領域への疾患進行を緩徐化または停止させる。
【0109】
ある実施態様において、開示されるAkt3アクティベーターを、対象がパーキンソン病または他の神経変性疾患の家族歴を有するならば、対象に予防的に投与し得る。Akt3アクティベーターは、ニューロンを疾患誘導から保護するまたは疾患の誘導を減速する。
【0110】
c. ハンチントン病
ハンチントン病は進行性神経変性疾患である。本疾患は、脳における神経細胞の進行性崩壊により特徴づけられる。ハンチントン病の症状は、不随意運動問題および随意運動における機能障害、例えば、不随意痙攣、筋肉硬直、眼運動緩徐化または異常、歩調、姿勢および平衡の障害、音声の物理的出力または嚥下の困難;認知機能障害、例えば、課題の整理、優先順位付けまたは集約の困難、柔軟性欠如または考え、行動または活動に固執する傾向、衝動制御の欠如、自分の行動および能力の自覚の欠如、思案または言葉探しの緩慢さおよび新しい情報の学習困難;および精神障害、例えばうつ病を含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、開示するAkt3モジュレーターは、ハンチントン病の症状を軽減しまたは進行を遅延する。
【0111】
ある実施態様は、Akt3モジュレーターを、対象に免疫細胞におけるAkt3を活性化または阻害し、免疫抑制性応答を誘導する有効の量で投与することによる、それを必要とする対象におけるハンチントン病を処置する方法を提供する。ある実施態様において、Akt3モジュレーターは、ハンチントン病を有する対象の疾患症状進行を減速または停止させる。他の実施態様において、Akt3モジュレーターは、Treg/Th17平衡を変え得る。
【0112】
ハンチントン病は大部分は遺伝性である;ハンチントン病を有する親の子供全て、疾患を遺伝する50/50の確率がある。ある実施態様において、ハンチントン病の家族歴を有する対象に、疾患の症状が出現する前に開示するAkt3モジュレーターを予防的に投与し、疾患症状の顕在化を予防または減速し得る。
【0113】
d. アルツハイマー病
アルツハイマー病は、脳細胞の変性および最終的に細胞死を引き起こす、進行性の障害である。アルツハイマー病は認知症 - 人が独立して働く能力を妨害する思考、行動および社会的技能の連続的減少 - の最も多い原因である。アルツハイマー病の症状は、記憶喪失、思考および推論能力の機能障害、判断および決定の実施困難ならびに人格および行動の変化を含むが、これらに限定されない。アルツハイマー病の正確な原因は完全には理解されていないが、中核となる問題は、ニューロン機能を妨害し、一連の毒性事象を解き放つ脳タンパク質における機能障害と考えられる。損傷は、最も多くは脳の記憶を制御する領域から始まるが、最初の症状の数年前にこの過程は始まる。ニューロン喪失は脳の他の領域に、ある程度予想可能なパターンで広がる。疾患後期に、脳は顕著に委縮する。ベータ-アミロイド斑およびタウタンパク質濃縮体が、アルツハイマー病におけるニューロンの損傷および機能障害の大部分に最も頻繁に寄与する。
【0114】
ある実施態様は、Akt3アクティベーターを、TregにおけるAkt3を過性化し、脳における下流神経保護的経路を活性化する有効量で、対象に投与することによる、対象におけるアルツハイマー病を処置する方法を提供する。他の実施態様において、対象は、アルツハイマー病の症状を低減もしくは排除するまたは疾患進行を減速する有効量のAkt3アクティベーターを投与される。
【0115】
他の実施態様は、Akt3阻害剤を、対象に、TregにおけるAkt3を阻害し、免疫応答を誘導するまたは免疫抑制性応答を低減する有効量で投与することによる、対象におけるアルツハイマー病を処置または進行を予防する方法を提供する。ある実施態様において、TregにおけるAkt3の阻害はベータ-アミロイド斑クリアランス、神経炎症性応答緩和および認知低下の回復に至る。
【0116】
ある実施態様において、アルツハイマー病の家族歴を有する対象にAkt3モジュレーターを予防的に投与して、アルツハイマー病の顕在化を予防または減速できる。
【0117】
e. 脊髄性筋萎縮
脊髄性筋萎縮(「SMA」)は、運動神経の進行性喪失および筋肉消耗により特徴づけられる、一群の慢性神経筋疾患である。SMAは、重症度および疾患が顕在化する間のライフステージが異なる4タイプに一般に分類される。これらのタイプは:
0~6カ月齢の間に顕在化するSMA1またはウェルドニッヒ・ホフマン病(「小児」SMA);
6~18カ月齢の間に顕在化するSMA2またはデュボビッツ病(「中間」SMA);
1歳以降顕在化するSMA3またはクーゲルベルグ・ウェランダー病(「若年性」SMA);および
成人の間に発症するSMA4(「成人発症」SMA)。
最も重症の形態のSMA1は、SMA0(「重度小児」SMA)と称されることもある。SMAの徴候および症状はタイプにより異なるが、最も共通して、体がしっかりしないまたは転倒傾向、座位、立位または歩行困難、呼吸器筋肉の強度喪失、攣縮ならびに食事および嚥下困難を含むが、これらに限定されない。全てのタイプのSMAは、SMNタンパク質の発現を阻止する、SMN1遺伝子におけるエクソン欠損および/または点変異と関連している。タイプによって、SMAは種々の遺伝子治療、栄養および呼吸補助、整形外科学ならびにそれらの組み合わせで処置され得る。神経保護的薬物は、運動神経喪失を安定化する方法として有望であるが、現在利用可能な候補は、臨床試験で完全な進歩がまだ成功していない。それ故に、さらなる候補神経保護的薬物が、SMAの処置に必要である。
【0118】
ある実施態様は、対象に、Akt3アクティベーターを運動神経の生存を可能とする有効な量で投与することによる、対象におけるSMAを処置する方法を提供する。他の実施態様において、対象は、SMAの症状を低減もしくは排除するまたは疾患進行を減速する有効量のAkt3モジュレーターを投与される。
【0119】
過度の体重減少の処置のためのAkt3阻害
カヘキシーおよび摂食障害などの疾患および障害と関連する過度の体重減少を処置または予防する方法がここに開示される。例示的方法は、それを必要とする対象におけるAkt3を阻害することを含む。何れかの一つの理論に拘束されないが、Akt3は、脂肪生成に重要な役割を有すると考えられる。白色脂肪生成は、FOXO1、C/EBPファミリーのいくつかのメンバーおよびPPARγを含むが、これらに限定されない、いくつかの転写因子の逐次的誘導に関与する、転写カスケードの活性化を必要とする。FOXO1は、脂肪生成の必須の負の制御因子であり、Aktを含む酵素による複数残基のリン酸化/アセチル化により主に制御される。FOXO1はまたセリン/スレオニンタンパク質キナーゼSGK1によっても制御され得る。SGK1はPI3Kの下流であり、リン酸化によりFOXO1を阻害できる。SGK1はセリン/スレオニンタンパク質キナーゼWNK1により制御され、これはまたAktおよびSGK1によっても制御され得る。Akt3は、WNK1のリン酸化を介して脂肪生成を抑制し、SGK1活性の下方制御およびFOXO1のSGK-1介在阻害に至る。ある実施態様において、TregにおけるAkt3の阻害は脂肪生成を促進し、疾患誘導体重減少を逆転し得る。
【0120】
1. 処置する対象
a. カヘキシー
カヘキシーまたは消耗性症候群は、慣用の栄養サポートでは完全に回復できず、進行性機能障害に至る、骨格筋の喪失の進行により特徴づけられる、多因子的症候群である。カヘキシーは、体が栄養不足を感知したとき、他のエネルギー源、すなわち骨格筋および脂肪組織を利用するほど、破壊的である。感染と戦う能力、処置耐容性、治療に対する応答、クオリティ・オブ・ライフおよび余命と関連する。
【0121】
ある実施態様において、カヘキシーは、AIDS、セリアック病、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、関節リウマチ、うっ血性心不全、結核、家族性アミロイドポリニューロパチー、クローン病、未処置および重度1型糖尿病、拒食症、甲状腺機能亢進症およびホルモン欠乏などの、しかしこれらに限定されない慢性疾患により引き起こされる。
【0122】
ある実施態様は、対象にカヘキシーの症状を低減するのに有効な量でAkt3阻害剤を投与することによる、処置を必要とする対象におけるカヘキシーを処置する方法を提供する。他の実施態様は、対象における脂肪生成を促進するのに有効な量でAkt3阻害剤を投与することによる、処置を必要とする対象における体重増加を促進する方法を提供する。ある実施態様において、ここに開示する化合物は、T制御性細胞の調節ではなく、Akt3の調節によりカヘキシーを処置するために使用される。
【0123】
ある実施態様において、カヘキシーに罹患しやすい疑いのある対象(例えば、他の疾患を有すると診断されている対象)に、Akt3阻害剤を予防的に投与して、カヘキシー症候群の顕在化を予防または減速させ得る。
【0124】
b. 摂食障害
拒食症は、体重減少または成長期の小児の体重増加の欠如、身長、年齢および背丈に適合する体重の維持の困難およびしばしば歪んだボディイメージにより特徴づけられる、摂食障害である。摂食障害の処置の最初の目的の一つは、正常体重の回復である。ある実施態様において、式Iのここに開示する化合物は、摂食障害を有する対象において増加しているエストラジオール、レベルにより過活性化されている、Akt3を阻害する。ある実施態様において、式Iのここに開示する化合物を、摂食障害の処置に使用し得る。
【0125】
肥満および肥満合併症の処置のためのAkt3調節
ある実施態様において、Akt3を調節するここに開示する化合物を、肥満および/または肥満の合併症の処置に使用する。ある実施態様において、肥満の合併症はグルコース不耐性、脂肪肝、異脂肪血症およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。ある実施態様において、ここに開示する化合物を、T制御性細胞の調節ではなく、Akt3の調節により、肥満および/または肥満の合併症を処置するのに使用する。
【0126】
炎症性疾患の処置のためのAkt3調節
Akt3シグナル伝達は、炎症性疾患に寄与する慢性または急性炎症と関連している。ある実施態様は、対象に、Akt3モジュレーターを含む組成物を、Akt3シグナル伝達を調節し、疾患を処置または進行を遅延する有効量で投与することを含む、それを必要とする対象における炎症性疾患を処置または予防する方法を提供する。ある実施態様において、Akt3モジュレーターはAkt3シグナル伝達を活性化および/またはTreg活性または産生を増加し、免疫抑制性効をもたらす。
【0127】
炎症性疾患の非限定的例は、アトピー性皮膚炎、アレルギー、喘息およびそれらの組み合わせを含む。
【0128】
ウイルス誘導炎症反応の処置のためのAkt3調節
Akt3シグナル伝達は、重度急性呼吸器症候群(「SARS」)およびコロナウイルス疾患2019(「COVID-19」)などのウイルス誘導炎症性疾患に起因する急性免疫応答と関連している。それ故に、ある実施態様において、それを必要とする対象におけるウイルス誘導炎症性疾患を処置する方法は、対象に、Akt3モジュレーターを疾患進行を逆転または減速させる有効量で投与することを含む。
【0129】
がんの処置のためのAkt3調節
ある実施態様において、対象への有効量のここに開示する化合物の投与によるAkt3シグナル伝達の調節を含む、それを必要とする対象におけるがんを処置または予防する方法が提供される。ある実施態様において、ここに開示する化合物はAkt3シグナル伝達を阻害および/またはTreg活性または産生を減少し、免疫応答活性化効果をもたらす。
【0130】
ある実施態様において、がんは、成人T細胞白血病/リンパ腫、膀胱がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、鼻咽頭がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、子宮がん、卵巣がん、精巣がんおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0131】
ある実施態様において、ここに開示する化合物および組成物は、白血病の処置に有用である。ある実施態様において、Akt3を阻害するここに開示する化合物および組成物は、白血病の処置に有用である。これらの実施態様において、Akt3を阻害するここに開示する化合物および組成物は、免疫応答刺激治療としてインビボおよびエクスビボで有用である。Akt3を阻害するおよびそれ故にTreg介在免疫抑制を阻害または低減させ能力は、より強固な免疫応答を可能とする。ある実施態様において、ここに開示する化合物および組成物は、T細胞が関与する免疫刺激または活性化応答の刺激または増強にも有用である。ある実施態様において、ここに開示する化合物および組成物は、選択的にAkt3を阻害することにより、白血病の処置のための宿主における免疫応答の刺激または増強に有用である。これらの実施態様において、ここに開示する化合物および組成物を、対象におけるT細胞を刺激する有効量で対象に投与し得る。ここに開示する化合物および組成物で処置され得る白血病のタイプは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)および慢性骨髄単球性白血病(CMML)を含むが、これらに限定されない。
【0132】
ある実施態様において、ATLLはほとんど排他的に成人で診断され、中央年齢は60代半ばである。ある実施態様において、(1)急性、(2)慢性、(3)くすぶり型および(4)リンパ腫性の4タイプのATLLがある。ある実施態様において、急性ATLLは最も一般的な形態であり、高白血球数、高カルシウム血症、臓器肥大および高ラクトースデヒドロゲナーゼを特徴とする。ある実施態様において、リンパ腫性ATLLは、リンパ節で顕在化し、循環リンパ球の1%未満である。ある実施態様において、慢性およびくすぶり型ATLLは、あまり攻撃的でない臨床経過および長期生存が可能であることが特徴である。ある実施態様において、急性およびリンパ腫性ATLLの4年生存率は5%未満である。ある実施態様において、慢性およびくすぶり型形態のATLLの4年生存率は、それぞれ26.9%および62%である。ある実施態様において、成人T細胞白血病/リンパ腫は、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV-1)により引き起こされる。
【0133】
ある実施態様において、ここに開示する化合物および組成物は、ATLLの処置に有用である。ある実施態様において、Akt3を阻害するここに開示する化合物および組成物は、ATLLの処置に有用である。ある実施態様において、CD25およびFoxP3を発現するTregは、ATLL細胞にがん化する。ある実施態様において、ATLL細胞は活性化ヘルパー/インデューサーT細胞表現型を示すが、強い免疫抑制性活性を示す。ある実施態様において、Akt3を阻害するここに開示する化合物および組成物は、ATLL細胞の免疫抑制性応答を低減する。他の実施態様において、Akt3を阻害するここに開示する化合物および組成物は免疫刺激応答を増強し、ATLL細胞の強い免疫抑制性活性に打ち勝つ。
【0134】
ある実施態様において、白血病またはATLLの処置に有用であるここに開示する化合物および組成物は、天然Treg(nTreg)細胞の免疫抑制性機能および従来型T細胞の誘導型Treg(iTreg)への誘導を含むが、これらに限定されない免疫抑制性応答を低減または阻害する。これらの実施態様において、低減または阻害されるnTreg細胞における免疫抑制性機能は、IL10、TGFβまたはそれらの組み合わせなどの、しかし、これらに限定されない1個以上の抗炎症性サイトカインの分泌である。ある実施態様において、白血病または成人T細胞白血病/リンパ腫を処置する方法は、対象に、抗悪心薬物、化学療法薬物または増強剤(例えば、シクロホスファミド)などの、しかし、これらに限定されない第二活性剤を投与することを含む。
【0135】
他の適応症
ある実施態様において、ここに開示する化合物はAkt3を調節し、湾岸戦争症候群、結節性硬化症、網膜色素変性症または移植片拒絶の処置に使用される。ある実施態様において、移植片拒絶は移植片対宿主病である。ある実施態様において、ここに開示する化合物を、T制御性細胞の調節ではなく、Akt3の調節により、網膜色素変性症の処置に使用する。ある実施態様において、ここに開示する化合物を虚血性組織傷害または外傷性組織傷害の処置に使用する。ある実施態様において、虚血性組織傷害または外傷性組織傷害は、脳の虚血性組織傷害または外傷性組織傷害である。
【0136】
Akt3を調節する方法
Akt3は、RAC-ガンマセリン/スレオニン-タンパク質キナーゼとも称され、ヒトにおいてAkt3遺伝子によりコードされる酵素である。Aktキナーゼは、インスリンおよび増殖因子に応答する細胞シグナル伝達の制御因子であり、細胞増殖、分化、アポトーシスおよび腫瘍形成ならびにグリコーゲン合成およびグルコース取り込みを含むが、これらに限定されない広範な生物学的過程に関与することが知られている。Akt3は、血小板由来増殖因子(「PDGF」)、インスリンおよびインシュリン様増殖因子1(「IGF1」)により刺激されることが示されている。
【0137】
Akt3キナーゼ活性は、ある範囲の下流基質のセリンおよび/またはスレオニンリン酸化に介在する。Akt3の核酸配列は当分野で知られる。例えば、引用によりその全体として包含し、次の核酸配列を提供するGenbank accession no. AF124141.1: Homo sapiens protein kinase B gamma mRNA, complete cds参照:
AGGGGAGTCATCATGAGCGATGTTACCATTGTGAAGGAAGGTTGGGTTCAGAAGAGGGGA
GAATATATAAAAAACTGGAGGCCAAGATACTTCCTTTTGAAGACAGATGGCTCATTCATA
GGATATAAAGAGAAACCTCAAGATGTGGATTTACCTTATCCCCTCAACAACTTTTCAGTG
GCAAAATGCCAGTTAATGAAAACAGAACGACCAAAGCCAAACACATTTATAATCAGATGT
CTCCAGTGGACTACTGTTATAGAGAGAACATTTCATGTAGATACTCCAGAGGAAAGGGAA
GAATGGACAGAAGCTATCCAGGCTGTAGCAGACAGACTGCAGAGGCAAGAAGAGGAGAGA
ATGAATTGTAGTCCAACTTCACAAATTGATAATATAGGAGAGGAAGAGATGGATGCCTCT
ACAACCCATCATAAAAGAAAGACAATGAATGATTTTGACTATTTGAAACTACTAGGTAAA
GGCACTTTTGGGAAAGTTATTTTGGTTCGAGAGAAGGCAAGTGGAAAATACTATGCTATG
AAGATTCTGAAGAAAGAAGTCATTATTGCAAAGGATGAAGTGGCACACACTCTAACTGAA
AGCAGAGTATTAAAGAACACTAGACATCCCTTTTTAACATCCTTGAAATATTCCTTCCAG
ACAAAAGACCGTTTGTGTTTTGTGATGGAATATGTTAATGGGGGCGAGCTGTTTTTCCAT
TTGTCGAGAGAGCGGGTGTTCTCTGAGGACCGCACACGTTTCTATGGTGCAGAAATTGTC
TCTGCCTTGGACTATCTACATTCCGGAAAGATTGTGTACCGTGATCTCAAGTTGGAGAAT
CTAATGCTGGACAAAGATGGCCACATAAAAATTACAGATTTTGGACTTTGCAAAGAAGGG
ATCACAGATGCAGCCACCATGAAGACATTCTGTGGCACTCCAGAATATCTGGCACCAGAG
GTGTTAGAAGATAATGACTATGGCCGAGCAGTAGACTGGTGGGGCCTAGGGGTTGTCATG
TATGAAATGATGTGTGGGAGGTTACCTTTCTACAACCAGGACCATGAGAAACTTTTTGAA
TTAATATTAATGGAAGACATTAAATTTCCTCGAACACTCTCTTCAGATGCAAAATCATTG
CTTTCAGGGCTCTTGATAAAGGATCCAAATAAACGCCTTGGTGGAGGACCAGATGATGCA
AAAGAAATTATGAGACACAGTTTCTTCTCTGGAGTAAACTGGCAAGATGTATATGATAAA
AAGCTTGTACCTCCTTTTAAACCTCAAGTAACATCTGAGACAGATACTAGATATTTTGAT
GAAGAATTTACAGCTCAGACTATTACAATAACACCACCTGAAAAATATGATGAGGATGGT
ATGGACTGCATGGACAATGAGAGGCGGCCGCATTTCCCTCAATTTTCCTACTCTGCAAGT
GGACGAGAATAAGTCTCTTTCATTCTGCTACTTCACTGTCATCTTCAATTTATTACTGAA
AATGATTCCTGGACATCACCAGTCCTAGCTCTTACACATAGCAGGGGCACCTTCCGACAT
CCCAGACCAGCCAAGGGTCCTCACCCCTCGCCACCTTTCACCCTCATGAAAACACACATA
CACGCAAATACACTCCAGTTTTTGTTTTTGCATGAAATTGTATCTCAGTCTAAGGTCTCA
TGCTGTTGCTGCTACTGTCTTACTATTA
(配列番号1)。
【0138】
アミノ酸配列も当分野で知られる。例えば、引用によりその全体として包含し、次のアミノ酸配列を提供する、UniProtKB/Swiss-Prot accession no. Q9Y243 (Akt3_HUMAN)参照:
MSDVTIVKEGWVQKRGEYIKNWRPRYFLLKTDGSFIGYKEKPQDVDLPYPLNNFSVAKCQ
LMKTERPKPNTFIIRCLQWTTVIERTFHVDTPEEREEWTEAIQAVADRLQRQEEERMNCS
PTSQIDNIGEEEMDASTTHHKRKTMNDFDYLKLLGKGTFGKVILVREKASGKYYAMKILK
KEVIIAKDEVAHTLTESRVLKNTRHPFLTSLKYSFQTKDRLCFVMEYVNGGELFFHLSRE
RVFSEDRTRFYGAEIVSALDYLHSGKIVYRDLKLENLMLDKDGHIKITDFGLCKEGITDA
ATMKTFCGTPEYLAPEVLEDNDYGRAVDWWGLGVVMYEMMCGRLPFYNQDHEKLFELILM
EDIKFPRTLSSDAKSLLSGLLIKDPNKRLGGGPDDAKEIMRHSFFSGVNWQDVYDKKLVP
PFKPQVTSETDTRYFDEEFTAQTITITPPEKYDEDGMDCMDNERRPHFPQFSYSASGRE
(配列番号2)。
【0139】
Akt3のドメイン構造はRomano, Scientifica, Volume 2013 (2013), Article ID 317186, 12頁(引用により本明細書に包含させる)にレビューされ、N末端プレクストリン相同性ドメイン(PH)、続く触媒的キナーゼドメイン(KD)およびC末端制御性疎水性領域を含む。触媒的ドメインおよび制御性ドメインは、いずれもAktタンパク質キナーゼにより介在される生物学的作用に重要であり、3Aktアイソフォーム間での相同性の程度が最大である。PHドメインは、ホスファチジルイノシトール(3,4)ジホスフェート(PIP2)およびホスファチジルイノシトール(3,4,5)トリホスフェート(PIP3)などの脂質基質に結合する。ATP結合部位は触媒的キナーゼドメインのほぼ中央に位置し、p70 S6キナーゼ(S6K)およびp90リボソーム6キナーゼ(RSK)、タンパク質キナーゼA(PKA)およびタンパク質キナーゼB(PKB)などのAGCキナーゼファミリーの他の要素と相当な程度の相同性を有する。疎水性制御性部分は、AGCキナーゼファミリーの典型的特性である。配列番号2、Akt 3は、一般に次に概説する分子プロセシングおよびドメイン構造を有すると考えられる。
【表1】

【0140】
配列番号2の開始メチオニンはAkt3機能では使い捨てである。それ故に、ある実施態様において、化合物は次のアミノ酸配列を有するAkt3の発現またはバイオアベイラビリティを直接的または間接的に調節する:
SDVTIVKEGWVQKRGEYIKNWRPRYFLLKTDGSFIGYKEKPQDVDLPYPLNNFSVAKCQ
LMKTERPKPNTFIIRCLQWTTVIERTFHVDTPEEREEWTEAIQAVADRLQRQEEERMNCS
PTSQIDNIGEEEMDASTTHHKRKTMNDFDYLKLLGKGTFGKVILVREKASGKYYAMKILK
KEVIIAKDEVAHTLTESRVLKNTRHPFLTSLKYSFQTKDRLCFVMEYVNGGELFFHLSRE
RVFSEDRTRFYGAEIVSALDYLHSGKIVYRDLKLENLMLDKDGHIKITDFGLCKEGITDA
ATMKTFCGTPEYLAPEVLEDNDYGRAVDWWGLGVVMYEMMCGRLPFYNQDHEKLFELILM
EDIKFPRTLSSDAKSLLSGLLIKDPNKRLGGGPDDAKEIMRHSFFSGVNWQDVYDKKLVP
PFKPQVTSETDTRYFDEEFTAQTITITPPEKYDEDGMDCMDNERRPHFPQFSYSASGRE
(配列番号3)。
【0141】
一方はキナーゼドメイン(配列番号2を参照してThr-305)および他方はC末端制御性領域(配列番号2を参照してSer-472)にある2個の特定の部位が、Akt3の完全活性化のためにリン酸化される必要がある。Akt3のPHドメインおよびTCL1Aの間の相互作用はAkt3リン酸化および活性化を増強する。IGF-1は、細胞生存制御に役割を有し得るAkt3の活性化に至る。
【0142】
Akt3活性を選択的に調節するための組成物およびその使用方法がここに開示される。種々の疾患の処置または予防のために開示されるAkt3モジュレーターを使用する方法も記載される。
【0143】
A. Akt3アクティベーター化合物
Akt3を選択的に活性化するための組成物がここに提供される。Akt3アクティベーターの例は、国際出願PCT/US2018/49715(引用により全体として本明細書に包含させる)に記載され、下に記載する。
【0144】
ある実施態様は、式I:
【化10】
の化合物またはその薬学的に許容されるエナンチオマー、塩もしくは溶媒和物を提供し、ここで:
環A、BおよびCは独立してフェニル、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、キナゾリン、イソキノリン、ナフタレン、ナフチリジン、インドール、イソインドール、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、プテリジン、プリンおよびベンゾイミダゾールなどの6員アリールまたはN含有ヘテロアリール単環または0個以上のN原子を含む二環式環系であり;
は場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1個以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基から選択され;
X、YおよびZは独立して=O、-NH、-S、-N-(C-C30)-アルキルまたは-(C-C30)-アリールから選択され;
【化11】
は-CH((C-C30)-アルキル))-、-(C=O)-、-CH(OH)、-SO-、-SO-または-CH(SOCH)-であり;そして
は場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1個以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基から選択される。
【0145】
他の実施態様は、式II:
【化12】
の化合物またはその薬学的に許容されるエナンチオマー、塩もしくは溶媒和物を提供し、ここで:
は場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1個以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基から選択され;
X、YおよびZは独立して-O、-NH、-S、-N-(C-C30)-アルキルまたは-(C-C30)-アリールから選択され;
【化13】
は-CH((C-C30)-アルキル))-、-(C=O)-、-CH(OH)、-SO-、-SO-または-CH(SOCH)-であり;そして
は場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1個以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基から選択される。
【0146】
他の実施態様は式III:
【化14】
の化合物またはその薬学的に許容されるエナンチオマー、塩もしくは溶媒和物を提供し、ここで:
は場合により-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される1個以上の置換基で置換されている-(C-C30)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-(C-C20)-アリールまたは-(C-C20)-ヘテロアリール基から選択され;
X、YおよびZは独立して-O、-NH、-S、-N-(C-C30)-アルキルまたは-(C-C30)-アリールから選択され;
【化15】
は-CH((C-C30)-アルキル))-、-(C=O)-、-CH(OH)、-SO-、-SO-または-CH(SOCH)-であり;そして
は-(C-C12)-アルキル、-(C-C12)-シクロアルキル、-(C-C12)-ヘテロシクロアルキル、-O-(C-C12)-アルキル、-O-(C-C12)-アルキル-(C-C20)-アリール、-O-(C-C12)-シクロアルキル、-S-(C-C12)-アルキル、-S-(C-C12)-シクロアルキル、-COO-(C-C12)-アルキル、-COO-(C-C12)-シクロアルキル、-CONH-(C-C12)-アルキル、-CONH-(C-C12)-シクロアルキル、-CO-(C-C12)-アルキル、-CO-(C-C12)-シクロアルキル、-N-[(C-C12)-アルキル]、-(C-C20)-アリール、-(C-C20)-アリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-アリール-O-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール、-(C-C20)-ヘテロアリール-(C-C12)-アルキル、-(C-C20)-ヘテロアリール-O-(C-C12)-アルキル、-COOH、-OH、-SH、-SOH、-CN、-NHまたはハロゲンから選択される。
【0147】
さらに他の実施態様は、式IV:
【化16】
の化合物またはその薬学的に許容されるエナンチオマー、塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0148】
式IVの化合物は、mJJ64Aとも称され、そのエナンチオマー、多形、薬学的に許容される塩および誘導体を免疫細胞におけるAkt3生理活性の誘導促進または増加に使用できる。
【0149】
ある実施態様において、Atk3アクティベーターは、式I、式II、式IIIまたは式IVの誘導体である。ここで使用する用語「誘導体」または「誘導体化」は、式I、式II、式IIIまたは式IVまたはそのエナンチオマー、多形または薬学的に許容される塩の1個以上の化学修飾を含む。すなわち、「誘導体」は、ある対象における薬理学的機能的活性および/または行動応答の改善を誘導できる、式I、式II、式IIIまたは式IVの機能的等価物であり得る。このような化学修飾の例は、水素のハロ基、アルキル基、アシル基またはアミノ基による置換である。
【0150】
式I、式II、式IIIまたは式IVまたはそのエナンチオマー、多形または薬学的に許容される塩の化学修飾は、化合物とその標的の間の水素結合相互作用、荷電結合相互作用、疎水性結合相互作用、ファン・デル・ワールス結合相互作用または双極子-双極子結合相互作用を増強または低減し得る。
【0151】
ある実施態様において、式I、式II、式IIIまたは式IVの化合物は、化合物の等価物であり、ある対象における薬理学的機能的活性および/または効果および/または行動応答の改善を誘導できる、他の誘導体化合物の開発のためのモデル(例えば、鋳型)として役立ち得る。
【0152】
式I、式II、式IIIまたは式IVの化合物はそのラセミ化合物および/または光学活性異性体であり得る。これに関して、化合物の一部は不斉炭素原子を有し、それ故に、ラセミ混合物または個々の光学異性体(例えば、エナンチオマー)として存在し得る。キラル中心を含むここに記載する化合物は、2個のエナンチオマーのラセミ混合物を含む組成物および実質的に他のエナンチオマーがない個別の各エナンチオマーを含む組成物を含む、化合物の全ての可能な立体異性体を含む。故に、例えば、ここで意図されるのは、Rエナンチオマーが実質的にない化合物のSエナンチオマーまたはSエナンチオマーが実質的にないRエナンチオマーを含む組成物である。記載する化合物が1を超えるキラル中心を含むならば、本発明の範囲はまた複数ジアステレオマーの混合物を種々の比率で含む組成物および他のジアステレオマーの1個以上が実質的にない1個以上のジアステレオマーを含む組成物も含む。「実質的にない」は、組成物が少ないほうのエナンチオマーまたはジアステレオマーを約25%、15%、10%、8%、5%、3%未満または約1%未満で含むことを意味する。
【0153】
B. Akt3阻害剤化合物
Akt3を選択的に阻害する組成物および方法がここに開示される。Akt3阻害剤の例は、米国特許公開US2017/0202956および2017/0202829(各々引用により全体として本明細書に包含させる)に記載され、下に記載する。
【0154】
4-[(6-ニトロキノリン-4-イル)アミノ]-N-[4-(ピリジン-4-イルアミノ)フェニル]ベンズアミドがAkt3活性を選択的に阻害することが判明した。4-[(6-ニトロキノリン-4-イル)アミノ]-N-[4-(ピリジン-4-イルアミノ)フェニル]ベンズアミドは、CAS No. 50440-30-7を有し、次の化学構造である:
【化17】
【0155】
Akt3を選択的に阻害する他の化合の例は、次のものおよびそのエナンチオマー、多形、薬学的に許容される塩および誘導体を含む。
【化18】
【化19】
【0156】
ある実施態様において、Akt3阻害剤は、開示する化合物の何れかの誘導体である。ここで使用する用語「誘導体」または「誘導体化」は、開示する化合物の何れか、そのエナンチオマー、多形または薬学的に許容される塩の1個以上の化学修飾を含む。すなわち、「誘導体」は、ある対象における薬理学的機能的活性および/または行動応答の改善を誘導できる、開示する化合物の何れかの機能的等価であり得る。このような化学修飾の例は、水素のハロ基、アルキル基、アシル基またはアミノ基による置換である。
【0157】
開示する化合物の何れかまたはそのエナンチオマー、多形または薬学的に許容される塩の化学修飾は、化合物とその標的の間の水素結合相互作用、荷電結合相互作用、疎水性結合相互作用、ファン・デル・ワールス結合相互作用または双極子結合相互作用を増強または低減し得る。
【0158】
ある実施態様において、開示する化合物の何れかの化合物は、化合物の等価物であり、ある対象における薬理学的機能的活性および/または効果および/または行動応答の改善を誘導できる、他の誘導体化合物の開発のためのモデル(例えば、鋳型)として役立ち得る。
【0159】
開示する化合物はそのラセミ化合物および/または光学活性異性体であり得る。これに関して、化合物の一部は不斉炭素原子を有し、それ故に、ラセミ混合物または個々の光学異性体(例えば、エナンチオマー)として存在し得る。キラル中心を含むここに記載する化合物は、2個のエナンチオマーのラセミ混合物を含む組成物および実質的に他のエナンチオマーがない個別の各エナンチオマーを含む組成物を含む、化合物の全ての可能な立体異性体を含む。故に、例えば、ここで意図されるのは、Rエナンチオマーが実質的にない化合物のSエナンチオマーまたはSエナンチオマーが実質的にないRエナンチオマーを含む組成物である。記載する化合物が1を超えるキラル中心を含むならば、本発明の範囲はまた複数ジアステレオマーの混合物を種々の比率で含む組成物および他のジアステレオマーの1個以上が実質的にない1個以上のジアステレオマーを含む組成物も含む。「実質的にない」は、組成物が少ないほうのエナンチオマーまたはジアステレオマーを約25%、15%、10%、8%、5%、3%未満または約1%未満で含むことを意味する。
【0160】
開示する化合物は、は、Akt1およびAkt2と比較してAkt3を選択的に調節する。ある実施態様において、開示する化合物の何れかは、統計的に有意な程度にAkt1およびAkt2を調節しない。他の実施態様において、開示する化合物によるAkt3の調節は、Akt1および/またはAkt2の調節より約5倍、10倍、15倍、50倍、100倍、1000倍または5000倍大きい。
【0161】
C. 免疫調節剤または結合部分
AKT3のアゴニストおよびアンタゴニストを含む免疫調節剤または結合部分が提供される。AKT3のアゴニストは、典型的にAKT3介在シグナル伝達を誘導、促進または増強する。AKT3のアンタゴニストは典型的にAKT3介在シグナル伝達を阻害、低減または遮断する。開示する組成物および方法は、例えば、単球、Treg、腫瘍関連マクロファージ(TAMs)、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、T細胞、Th2細胞、抗原提示細胞(例えば、単球、マクロファージまたは樹状細胞)を含む骨髄細胞、T細胞、NK細胞またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、免疫細胞における、AKT3および/または対抗受容体シグナル伝達の調節に使用され得る。ある実施態様において、組成物は、1個以上の細胞型を特異的に標的化できる。ある実施態様において、開示する組成物を、腫瘍細胞に使用できる。
【0162】
ある実施態様において、抗AKT3アゴニストは、既知リガンドまたは未知対抗受容体を介して、該既知または未知対抗受容体とのAKT3結合相互作用を介して、AKT3介在シグナル伝達を誘導、促進または増強する。例えば、ある実施態様において、AKT3アゴニストは、結合して、AKT3介在シグナル伝達を誘導、促進または立体構造変化創成または他に促進する。
【0163】
ある実施態様において、抗AKT3アンタゴニストは、既知または未知対抗受容体を介して、該既知または未知対抗受容体とのAKT3結合相互作用の遮断により、シグナル伝達を阻害、低減、遮断または他に妨害する。例えば、ある実施態様において、AKT3アンタゴニストは、結合して、AKT3介在シグナル伝達を阻害、遮断、立体構造変化創成または他に妨害する。
【0164】
1. 抗体
ある実施態様において、免疫調節剤または結合部分は抗体である。適当な抗体は、当業者により調製され得る。AKT3の核酸およびポリペプチド配列は当分野で知られ、配列の例は上に提供される。配列は、下にさらに詳述するとおり、AKT3に特異的な抗体またはその抗原結合フラグメントを製造するために、当業者により使用され得る。抗体または抗原結合フラグメントは、それ故に、AKT3介在シグナル伝達のアゴニストまたはアンタゴニストであり得る。
【0165】
AKT3に特異的な抗体またはその抗原結合フラグメントの活性は、下記アッセイを含む、当分野で知られる機能的アッセイを使用して、決定され得る。典型的に、アッセイは、抗体またはその抗原結合フラグメントがAKT3を介するシグナル伝達を増加(すなわち、アゴニスト)または減少(すなわち、アンタゴニスト)させるかの決定を含む。
【0166】
ある実施態様において、開示される抗体および抗原結合そのフラグメントは、ヒトまたはマウスAKT3に免疫特異的に結合する。ある実施態様において、抗体は、ヒトまたはマウスAKT3の細胞外ドメインに結合する。
【0167】
AKT3に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを調製するために、AKT3に対する精製タンパク質、ポリペプチド、フラグメント、融合体またはエピトープまたはその核酸配列から発現されたポリペプチドが使用され得る。抗体または抗原結合そのフラグメントを、下にさらに詳述するような当分野で知られる何れかの適当な方法を使用して調製し得る。
【0168】
a. ヒトおよびヒト化抗体
ある実施態様において、抗体はヒト化抗体である。多くの非ヒト抗体(例えば、マウス、ラットまたはウサギ由来のもの)は、本来ヒトで抗原性であり、故に、ヒトに投与したとき、望まない免疫応答を生じ得る。それ故に、方法におけるヒトまたはヒト化抗体の使用は、ヒトに投与された抗体が望まない免疫応答を誘発する可能性を減らすことに役立つ。
【0169】
免疫化により、内因性免疫グロブリン産生の非存在下に、ヒト抗体の完全レパートリーを産生できるトランスジェニック動物(例えば、マウス)が用いられ得る。例えば、キメラおよび生殖細胞系変異体マウスにおける抗体重鎖ジョイニング領域(J(H))遺伝子のホモ接合型欠失は、内因性抗体産生の完全阻害をもたらす。このような生殖細胞系変異体マウスにおけるヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイの伝達は、抗原負荷によりヒト抗体の産生をもたらす。
【0170】
所望により、抗体は他の種で産生され、ヒトへの投与のために「ヒト化」される。ヒト化形態の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンの最小配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(例えば抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab’)2または他の抗原結合部分配列)である。ヒト化抗体は、レシピエント抗体の相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例で、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基で置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも移入CDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基も含み得る。一般に、ヒト化抗体は、全てまたは実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応しかつ全てまたは実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1個および典型的に2個の、可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、所望によりまた、典型的にヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含む。
【0171】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1個以上のアミノ酸残基を含む。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「移入」残基と称され、典型的に「移入」可変ドメイン由来である。抗体ヒト化技術は、一般に抗体分子の1個以上のポリペプチド鎖をコードするDNA配列を操作するための、組み換えDNAテクノロジーの使用を含む。ヒト化は、本質的に齧歯類CDRまたはCDR配列のヒト抗体の対応する配列への置換により実施され得る。従って、ヒト化形態の非ヒト抗体(またはそのフラグメント)は、実質的にインタクトヒト可変ドメイン未満が、非ヒト種からの対応する配列により置換されている、キメラ抗体またはフラグメントである。実施に際し、ヒト化抗体は、典型的に一部CDR残基およびおそらく一部FR残基が齧歯類抗体における類似位置からの残基で置換されている、ヒト抗体である。
【0172】
ヒト化抗体を製造するための、軽および重両者の、ヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低減するために、きわめて重要である。「最良適合」方法により、齧歯類抗体の可変ドメインの配列を、既知ヒト可変ドメイン配列の完全ライブラリーに対してスクリーニングする。次いで、齧歯類のものに最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として受け入れる。他の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループの全ヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体で使用し得る。
【0173】
抗体が抗原に対する高親和性および他の有利な生物学的性質を保持して、ヒト化されることはさらに重要である。この目的を達成するために、ヒト化抗体を、親およびヒト化配列の三次元モデルを使用する親配列および種々の観念的ヒト化産物の分析過程により、調製し得る。三次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者になじみ深い。選択した候補免疫グロブリン配列の可能性が高い三次元立体構造を説明し、提示するコンピュータープログラムが利用可能である。これらの提示を調査することにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性の高い役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンが抗原に結合する能力に影響する残基の分析が可能となる。この方法で、標的抗原に対する親和性の増加などの所望の抗体特徴が達成されるように、コンセンサスおよび移入配列からFR残基を選択し、組み合わせ売る。一般に、CDR残基は、抗原結合に対する影響に直接的かつ最も実質的に関与する。
【0174】
抗体を基質と結合させるかまたは検出可能部分で標識するかまたは結合かつ標識の両方をしてよい。本組成物で考慮される検出可能部分は、蛍光、酵素および放射性マーカーを含む。
【0175】
b. 一本鎖抗体
ある実施態様において、抗体は一本鎖抗体である。一本鎖抗体を産生する方法は当業者に周知である。一本鎖抗体を、短ペプチドリンカーを使用して重鎖および軽鎖の可変ドメインを融合し、それにより、単一分子に抗原結合部位を再構築する。一方の可変ドメインのC末端が他方の可変ドメインのN末端に15~25アミノ酸ペプチドまたはリンカーを介して接続された、一本鎖抗体可変フラグメント(scFvs)が、抗原結合または結合の特異性を著しく破壊することなく、開発されている。リンカーは、重鎖および軽鎖が適切な立体配向で結合されることを可能とするように選択される。これらのFvは、天然抗体の重鎖および軽鎖に存在する定常領域(Fc)を欠く。
【0176】
c. 単価抗体
ある実施態様において、抗体は単価抗体である。インビトロ方法もまた単価抗体の調製に適する。抗体のそのフラグメント、特に、Fabフラグメントを産生するための消化は、当分野で知られる日常的な技術を使用して、達成され得る。例えば、消化は、パパインを使用して実施され得る。抗体のパパイン消化は、典型的にFabフラグメントと称される2個の同一抗原結合フラグメントを産生し、各々単一抗原結合部位および残存Fcフラグメントである。ペプシン処理により、2個の抗原の組み合わせ部位を有し、なお抗原架橋できる、F(ab’)2フラグメントと称されるフラグメントが得られる。
【0177】
抗体消化により産生されるFabフラグメントはまた軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一定常ドメインを含む。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1個以上のシステインを含む、重鎖ドメインのカルボキシ末端での数残基付加により、Fabフラグメントと異なる。F(ab’)2フラグメントは、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2個のFab’フラグメントを含む、二価フラグメントである。Fab’-SHは、ここでは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を含むFab’を意味する。抗体フラグメントは、元々ヒンジシステインを間に有するFab’フラグメントのペアにより産生された。抗体フラグメントの他の化学カップリングも知られる。
【0178】
d. ハイブリッド抗体
ある実施態様において、抗体はハイブリッド抗体である。ハイブリッド抗体において、一方の重鎖および軽鎖対は、あるエピトープに対して誘発された抗体で見られるのと相同であるのに対し、他方の重鎖および軽鎖対は、他のエピトープに対して誘発された抗体で見られる対と相同である。これにより、多機能的結合価の性質、すなわち、同時に少なくとも2個の異なるエピトープに結合する能力が得られる。このようなハイブリッドは、各構成要素抗体を産生するハイブリドーマの融合または組み換え技術により形成され得る。このようなハイブリッドは、当然、キメラ鎖を使用しても形成され得る。
【0179】
e. 抗体フラグメントのコンジュゲートまたは融合体
ある実施態様において、抗体は、抗体フラグメントのコンジュゲートまたは融合体である。抗体のターゲティング機能は、抗体またはそのフラグメントと治療剤をカップリングすることにより、治療に使用され得る。抗体またはフラグメント(例えば、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部)と治療剤のこのようなカップリングは、抗体または抗体フラグメントおよび治療剤を含む、イムノコンジュゲートの製造または融合タンパク質の製造により達成され得る。
【0180】
抗体またはフラグメントと治療剤のこのようなカップリングは、抗体または抗体フラグメントおよび治療剤を含むイムノコンジュゲートの製造または融合タンパク質の製造または抗体またはフラグメントのsiRNAなどの核酸への連結により達成され得る。
【0181】
ある実施態様において、抗体は、半減期を改変するために修飾される。ある実施態様において、循環または処置部位に長時間存在するよう、抗体の半減期を延長することが望ましい。例えば、循環または処置位置で長時間抗体の力価を維持することが望まれ得る。抗体を、例えば、XtendTM抗体半減期延長 テクノロジー(Xencor, Monrovia, CA)を使用して、半減期を延長するFcバリアントで操作し得る。他の実施態様において、抗DNA抗体の半減期を、副作用の可能性を低減するために短縮させる。開示するコンジュゲートを、ある生物学的応答の修飾に使用し得る。薬物部分は、古典的化学療法剤に限定されると解釈されない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。このようなタンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素またはジフテリア毒素などの毒素である。
【0182】
2. タンパク質およびポリペプチド
a. タンパク質およびポリペプチド組成物
免疫調節剤または結合剤は、AKT3タンパク質、ポリペプチドまたは融合タンパク質であり得る。例えば、免疫調節剤または結合部分は、AKT3の単離または組み換えタンパク質またはポリペプチドまたはその機能的フラグメント、バリアントもしくは融合タンパク質であり得る。
【0183】
AKT3タンパク質またはポリペプチドまたはその機能的フラグメント、バリアントもしくは融合タンパク質は、アゴニストまたはアンタゴニストであり得る。例えば、ある実施態様において、AKT3のアンタゴニストは、AKT3のリガンドに結合するAKT3ポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは融合タンパク質である。ポリペプチドは、可溶性フラグメント、例えば、AKT3の細胞外ドメインまたはその機能的フラグメントもしくはその融合タンパク質である。ある実施態様において、AKT3の可溶性リガンドは、AKT3介在シグナル伝達を低減する、アンタゴニストとして役立ち得る。
【0184】
AKT3のタンパク質またはポリペプチドまたはそのあらゆるフラグメント、バリアントまたは融合タンパク質の活性は、下記アッセイを含む、当分野で知られる機能的アッセイを使用して、決定され得る。典型的に、アッセイは、タンパク質、ポリペプチドまたはそのフラグメント、バリアントまたは融合タンパク質がAKT3受容体を介するシグナル伝達を増加(すなわち、アゴニスト)または減少(すなわち、アンタゴニスト)するかの決定を含む。ある実施態様において、アッセイは、タンパク質、ポリペプチドまたはそのフラグメント、バリアントまたは融合タンパク質がAKT3と関連する免疫応答を増加(すなわち、アゴニスト)または減少(すなわち、アンタゴニスト)するかの決定を含む。典型的に、アッセイは、タンパク質、ポリペプチドまたはそのフラグメント、バリアントまたは融合タンパク質がAKT3を介するシグナル伝達を増加(すなわち、アゴニスト)または減少(すなわち、アンタゴニスト)するかの決定を含む。ある実施態様において、アッセイは、タンパク質、ポリペプチドまたはそのフラグメント、バリアントまたは融合タンパク質がAKT3により制御される免疫応答を減少(すなわち、アゴニスト)または増加(すなわち、アンタゴニスト)するかの決定を含む。ある実施態様において、アッセイは、タンパク質、ポリペプチドまたはそのフラグメント、バリアントまたは融合タンパク質がAMLおよびALL幹細胞の自己再生能力を低減させる、急性骨髄性白血病(AML)細胞および急性リンパ芽球性白血病(ALL)細胞のアポトーシスおよび分化を増加(すなわち、アンタゴニスト)させるかの決定を含む。
【0185】
AKT3の核酸およびポリペプチド配列は当分野で知られ、タンパク質およびペプチド配列の例は、上に提供する。配列は、下にさらに詳述するとおり、AKT3のあらゆるタンパク質またはポリペプチドまたはそのあらゆるフラグメント、バリアントまたは融合タンパク質を製造するために、当業者により使用され得る。一般に、AKT3のタンパク質、ポリペプチド、そのフラグメント、バリアントおよび融合体は、シグナル配列をコードする配列を含む核酸から発現される。シグナル配列は、一般に未成熟ポリペプチドから開裂され、シグナル配列を欠く成熟ポリペプチドを産生する。シグナル配列は、シグナル配列を有するおよび有しないポリペプチドAKT3タンパク質の発現レベル、分泌、溶解度または他の性質に影響するよう、標準分子生物学技術を使用して、他のポリペプチドのシグナル配列に置き換え得る。ある場合、当分野で知られるまたは記載される成熟タンパク質、すなわち、シグナル配列がないタンパク質配列は、推定上成熟タンパク質である。正常な細胞発現の間、シグナル配列は細胞ペプチダーゼにより除去されて、成熟タンパク質となり得る。成熟タンパク質の配列は、当分野で知られる方法を使用して決定または確認され得る。
【0186】
i. フラグメント
ここで使用するAKT3のフラグメントは、完全長タンパク質より少なくとも1個アミノ酸短い、ポリペプチドのあらゆるサブセットをいう。有用なフラグメントは、天然リガンドまたはリガンドへの結合能を保持するものを含む。何れかの完全長AKT3のフラグメントであるポリペプチドは、典型的に完全長タンパク質と比較して、天然リガンドに結合する能力が、少なくとも約20パーセント、30パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、90パーセント、95パーセント、98パーセント、99パーセント、100パーセントまたは100パーセントを超えるものである。
【0187】
AKT3のフラグメントは、無細胞フラグメントを含む。無細胞ポリペプチドは、産生細胞から脱落、分泌またはその他抽出され得る、完全長、膜貫通、ポリペプチドのフラグメントであり得る。ポリペプチドの無細胞フラグメントは、ポリペプチドの細胞外ドメインの一部または全てを含み、完全長タンパク質の細胞内および/または膜貫通ドメインの一部または全てを欠くことができる。ある実施態様において、ポリペプチドフラグメントは、完全長タンパク質の細胞外ドメイン全体を含む。他の実施態様において、ポリペプチドの無細胞フラグメントは、完全長タンパク質の生物学的活性を保持する、細胞外ドメインのフラグメントを含む。細胞外ドメインは、膜貫通ドメインの1、2、3、4または5連続アミノ酸および/またはシグナル配列の1、2、3、4または5連続アミノ酸を含み得る。あるいは、細胞外ドメインは、C末端、N末端または両者から除去された、1、2、3、4、5またはそれ以上のアミノ酸を有し得る。ある実施態様において、細胞外ドメインは、フラグメントの唯一の機能的ドメイン(例えば、リガンド結合ドメイン)である。
【0188】
ii. バリアント
AKT3のバリアントおよびそのフラグメントも提供される。ある実施態様において、バリアントは、配列番号1または2の何れかと少なくとも約50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、85パーセント、90パーセント、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセントまたは99パーセント同一である。有用なバリアントは、ここに記載するアッセイの何れかにより示される生物学的活性を増加するまたはタンパク質の半減期または安定性を増大するものを含む。AKT3のタンパク質およびポリペプチドおよびそのフラグメント、バリアントおよび融合タンパク質は、生物学的活性が増加するよう操作され得る。例えば、ある実施態様において、AKT3ポリペプチド、タンパク質またはそのフラグメント、バリアントまたは融合体は、機能を増加する少なくとも1個のアミノ酸置換、欠失または挿入により修飾されている。
【0189】
最後に、バリアントポリペプチドは、野生型に比して半減期が延長されるよう操作され得る。これらのバリアントは、一般に酵素分解に抵抗するよう修飾される。修飾の例は、酵素分解に抵抗する修飾アミノ酸残基および修飾ペプチド結合を含む。これを達成するための種々の修飾は、当分野で知られる。バリアントは、血清およびエンドソームpHでのタンパク質、ポリペプチド、フラグメントまたはその融合体の半減期に対する受容体に対する親和性の影響を調節するよう、修飾され得る。
【0190】
iii. 融合タンパク質
融合ポリペプチドは、第二ポリペプチドに直接または第二ポリペプチドに融合したリンカーペプチド配列を介して融合した、ヒトまたはマウスAKT3ポリペプチドの全てまたは一部を含む、第一融合パートナーを有する。ある実施態様において、ヒトまたはマウスAKT3のECDまたはそのフラグメントは第二ポリペプチドに融合する。融合タンパク質は、所望により2以上の融合タンパク質を二量体化または多量体化するために機能するドメインを含む。ペプチド/ポリペプチドリンカードメインは別のドメインであってよいかまたはそれとは別に融合タンパク質の他のドメインの一方(第一ポリペプチドまたは第二ポリペプチド)に含まれてよい。同様に、融合タンパク質を二量体化または多量体化するために機能するドメインは別のドメインであってよいかまたはそれとは別に融合タンパク質の他のドメインの一方(第一ポリペプチドまたは第二ポリペプチド)に含まれてよい。ある実施態様において、二量体化/多量体化ドメインおよびペプチド/ポリペプチドリンカードメインは同じである。
【0191】
ここに開示する融合タンパク質は、式A:
N-P1-P2-P3-C
であって、ここで、「N」は融合タンパク質のN末端を表し、「C」は融合タンパク質のC末端を表す。ある実施態様において、「P1」はAKT3のポリペプチドまたはタンパク質またはそのフラグメントもしくはバリアントであり、「P2」は任意のペプチド/ポリペプチドリンカードメインであり、「P3」は第二ポリペプチドである。あるいは、P3はAKT3のポリペプチドまたはタンパク質またはそのフラグメントもしくはバリアントであってよく、P1は第二ポリペプチドであってよい。ある実施態様において、AKT3ポリペプチドは細胞外ドメインである。
【0192】
二量体化または多量体化は、二量体化または多量体化ドメインを介して、2以上の融合タンパク質間で生じ得る。あるいは、融合タンパク質の二量体化または多量体化は、化学架橋により起こり得る。形成される二量体または多量体は、ホモ二量体/ホモ多量体またはヘテロ二量体/ヘテロ多量体であり得る。
【0193】
ある実施態様において、融合タンパク質は、先に記載のとおり(Chapoval, et al., Methods Mol. Med., 45:247-255 (2000);引用によりその全体として本明細書に包含させる)、Ig Fc領域に融合したAKT3の細胞外ドメインまたはそのフラグメントもしくはバリアントを含む。組み換えIg融合タンパク質が、細胞外ドメインまたはそのフラグメントもしくはバリアントのコード領域のヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4またはマウスIgG2aまたは他の適当なIgドメインのFc領域への融合により製造され得る。
【0194】
iv. ポリペプチド修飾
ポリペプチドおよび融合タンパク質は、通常の細胞環境におけるポリペプチドに存在し得る化学部分により修飾、例えば、リン酸化、メチル化、アミド化、硫酸化、アシル化、グルコシル化、スモ化およびユビキチン化し得る。融合タンパク質はまた、放射性同位体および蛍光化合物を含むが、これらに限定されない、直接的にまたは間接的に、検出可能シグナルを提供できるラベルで修飾もされ得る。
【0195】
ポリペプチドおよび融合タンパク質はまた細胞環境におけるポリペプチドで通常付加されない化学部分によっても修飾され得る。例えば、開示される融合タンパク質は、ポリエチレングリコールポリマー(PEG)鎖(すなわち、ペグ化)を含むが、これに限定されない、ポリマー鎖の共有結合によっても修飾され得る。マクロ分子のPEGへのコンジュゲーションは、多様な薬物の薬物動態(PK)プロファイルを改変し、それにより治療能を改善するための有効な戦略として最近登場している。PEGコンジュゲーションは、酵素消化に対する保護、腎臓による濾過緩徐化および中和抗体産生減少により、循環中の薬物の保持を増加する。さらに、PEGコンジュゲートは、融合タンパク質の多量体化を可能とするために使用され得る。
【0196】
修飾は、ポリペプチドの標的アミノ酸残基と、選択した側鎖または末端残基と反応できる有機誘導体化剤の反応により、分子に導入され得る。他の修飾は、タンパク質の環化である。
【0197】
ポリペプチドの化学誘導体の例は、コハク酸無水物または他のカルボン酸無水物で誘導体化したリシニルおよびアミノ末端残基を含む。環状カルボン酸無水物での誘導体化は、リシニル残基の荷電を逆転する効果を有する。アミノ含有残基誘導体化のための他の適当な薬剤は、ピコリンイミド酸メチルなどのイミドエステル;ピリドキサールリン酸;ピリドキサール;クロロボロハイドライド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O-メチルイソ尿素;2,4-ペンタンジオン;およびグリオキシル酸とのトランスアミナーゼ触媒反応を含む。カルボキシル側鎖基、アスパルチルまたはグルタミルは、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-(4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドなどのカルボジイミド(R-N=C=N-R’)との反応により選択的に修飾され得る。さらに、アスパルチルおよびグルタミル残基は、アンモニアとの反応により、アスパラギニルおよびグルタミニル残基に変換され得る。融合タンパク質はまた1個以上のL-アミノ酸の代替である1個以上のD-アミノ酸も含み得る。
【0198】
v. 修飾結合性質
タンパク質、ポリペプチド、そのフラグメント、バリアントおよび融合体の結合性質は、投与すべき用量および用量レジメンに関連する。ある実施態様において、開示されるタンパク質、ポリペプチド、そのフラグメント、バリアントおよび融合体は、結合部位(例えば、リガンド上)の占拠が、結合する他の受容体分子と比較して、長期または高いパーセンテージを示す、AKT3またはAKT3リガンドへの結合性質を有する。他の実施態様において、開示されるタンパク質、ポリペプチド、そのフラグメント、バリアントおよび融合体は、野生型タンパク質に比して、AKT3への結合親和性が低減している。
【0199】
ある実施態様において、タンパク質、ポリペプチド、そのフラグメント、バリアントおよび融合体は、AKT3に比較的高親和性であり、それ故に、比較的ゆっくりした解離速度を有する。他の実施態様において、タンパク質、ポリペプチド、そのフラグメント、バリアントおよび融合体は、免疫応答を減弱させるために、数日、数週または数カ月の期間にわたり間欠的に投与され、これは次の投与の前までの回復を可能とし、免疫応答を完全に開始または停止させずに、免疫応答を改変させるために役立ち得て、長期副作用を回避し得る。
【0200】
3. 単離核酸分子
AKT3タンパク質、ポリペプチド、そのフラグメント、バリアントおよび融合体をコードする単離核酸配列がここに開示される。ここで使用する「単離核酸」は、哺乳動物ゲノムの核酸の片側または両側に通常隣接している核酸を含む、哺乳動物ゲノムに存在する他の核酸分子から離された核酸をいう。核酸に関連してここで使用する用語「単離」は、何れかの天然に存在しない核酸配列の組み合わせも、このような天然で存在しない配列が本来見られず、天然に存在するゲノムにおけるすぐに連続する配列を有しないため、含む。
【0201】
単離核酸は、例えば、天然に存在するゲノムにおいてDNA分子にすぐ隣接する核酸配列の1個が除去または欠失している限り、DNA分子であり得る。故に、単離核酸は、他の配列(例えば、化学合成された核酸またはcDNAまたはPCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理により産生されたゲノムDNAフラグメント)独立した別の分子として存在するDNA分子ならびにベクター、自己複製プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス)または原核生物または真核生物のゲノムDNAに取り込まれた組み換えDNAを含むが、これらに限定されない。さらに、単離核酸は、ハイブリッドまたは融合核酸の一部である組み換えDNA分子などの操作した核酸を含む。cDNAライブラリーまたはゲノムライブラリー、ゲノムDNAの制限消化物を含むゲルスライスなどの数億から数百万の核酸の中に存在する核酸は、単離核酸とはみなされない。
【0202】
タンパク質、ポリペプチド、そのフラグメント、バリアントおよび融合体をコードする核酸は、選択した発現宿主における発現のために最適化し得る。コドンは、核酸配列が由来する哺乳動物と発現宿主の間のコドン使用頻度を考慮して、同じアミノ酸をコードする別のコドンに置換され得る。この方法で、核酸は、発現宿主優先コドンを使用して合成され得る。
【0203】
核酸はセンスまたはアンチセンス配向であってよくまたはAKT3のポリペプチドまたはタンパク質をコードする対照配列と相補的であり得る。核酸は、DNA、RNAまたは核酸アナログであり得る。核酸アナログは塩基部分、糖部分またはリン酸主鎖で修飾され得る。このような修飾は、例えば、核酸の安定性、ハイブリダイゼーションまたは溶解度を改善し得る。塩基部分の修飾は、デオキシチミジンについてデオキシウリジンおよびデオキシシチジンについて5-メチル-2’-デオキシシチジンまたは5-ブロモ-2’-デオキシシチジンを含み得る。糖部分の修飾は、2’-O-メチルまたは2’-O-アリル糖を形成するリボース糖の2’ヒドロキシルの修飾を含み得る。デオキシリボースリン酸主鎖は、修飾して各塩基部分が6員、モルホリノ環に連結しているモルホリノ核酸またはデオキシリン酸主鎖がシュードペプチド主鎖に置き換えられ、4塩基が保持されているペプチド核酸を産生できる。例えば、Summerton and Weller (1997) Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 7:187-195; and Hyrup et al. (1996) Bioorg. Med. Chem. 4:5-23参照(各々引用により全体として本明細書に包含させる)。さらに、デオキシリン酸主鎖を、例えば、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート主鎖、ホスホロアミダイトまたはアルキルホスホトリエステル主鎖に置き換え得る。
【0204】
ポリペプチドをコードする核酸を、それを必要とする対象に投与し得る。核酸送達は、「外来」核酸の細胞への導入と、最終的に、生存動物への導入を含む。対象に核酸を送達する組成物および方法は当分野で知られる(Understanding Gene Therapy, Lemoine, N.R., ed., BIOS Scientific Publishers, Oxford, 2008参照;引用によりその全体として本明細書に包含させる)。
【0205】
4. ベクターおよび宿主細胞
タンパク質、ポリペプチド、そのフラグメント、バリアントおよび融合体をコードするベクターも提供される。上記のような核酸を、細胞における発現のためにベクターに挿入し得る。ここで使用する「ベクター」は、他のDNAセグメントが挿入セグメントの複製をもたらすように挿入され得る、プラスミド、ファージ、ウイルスまたはコスミドなどのレプリコンである。ベクターは発現ベクターであり得る。「発現ベクター」は、1個以上の発現制御配列を含むベクターであり、「発現制御配列」は、他のDNA配列の転写および/または翻訳を調節および制御するDNA配列である。
【0206】
ベクターにおける核酸は、1個以上の発現制御配列と操作可能に連結され得る。ここで使用する「操作可能に連結」は、発現制御配列が目的のコード配列の発現を効率的に制御するように、遺伝子構築物に組み込まれることを意味する。発現制御配列の例は、プロモーター、エンハンサーおよび転写停止領域を含む。プロモーターは、典型的に転写が開始する点の上流100ヌクレオチド以内の、DNA分子の領域からなる発現制御配列である(一般にRNAポリメラーゼIIの開始部位近辺)。コード配列をプロモーターの制御下とするために、ポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部を、プロモーターの1~約50ヌクレオチド下流に配置する必要がある。エンハンサーは、時間、場所およびレベルに関して発現特異性を提供する。プロモーターと異なり、エンハンサーは、転写部位から種々の距離に位置するとき、機能できる。エンハンサーはまた転写開始部位から下流にも位置し得る。コード配列は、RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写でき、次いで、それがコード配列によりコードされるタンパク質に翻訳され得るならば、細胞において発現制御配列と「操作可能に連結し」かつ「制御下にある」。
【0207】
適当な発現ベクターは、プラスミドおよび、例えば、バクテリオファージ、バキュロウイルス、タバコモザイクウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス由来のウイルスベクターを含むが、これらに限定されない。多数のベクターおよび発現系が、Novagen(Madison, WI)、Clontech(Palo Alto, CA)、Stratagene(La Jolla, CA)およびInvitrogen Life Technologies(Carlsbad, CA)などの業者から商業的に入手可能である。
【0208】
発現ベクターはタグ配列を含み得る。タグ配列は、典型的にコード化ポリペプチドとの融合体として発現される。このようなタグは、カルボキシル末端またはアミノ末端を含む、ポリペプチドのどの場所にも挿入できる。有用なタグの例は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオン-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c-myc、ヘマグルチニン、FlagTMタグ(Kodak, New Haven, CT)、マルトースE結合タンパク質およびタンパク質Aを含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、開示されるポリペプチドの1個をコードする核酸分子は、例えば、ヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ、CH2およびCH3領域に対応するアミノ酸配列を有する、Ig重鎖定常領域の1個以上のドメインをコードする核酸を含むベクターに存在する。
【0209】
発現すべき核酸を含むベクターを、宿主細胞に伝達し得る。用語「宿主細胞」は、組み換え発現ベクターがづ大丹生され得る原核生物および真核生物細胞を含むことが意図される。ここで使用する「トランスフォーム」および「トランスフェクト」は、いくつかの技術の一つによる、核酸分子(例えば、ベクター)の細胞への導入を含む。特定の技術に限定されないが、いくつかのこれらの技術は、当分野で十分確立されている。原核生物細胞を、例えば、エレクトロポレーションまたは塩化カルシウム介在形質転換により、核酸でトランスフォームし得る。核酸を、例えば、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン介在トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションを含む技術により、哺乳動物細胞にトランスフェクトし得る。宿主細胞(例えば、CHO細胞などの原核生物細胞または真核生物細胞)を使用して、例えば、ここに記載するタンパク質、ポリペプチド、そのフラグメント、バリアントおよび融合体を産生できる。
【0210】
記載するベクターを使用して、細胞においてタンパク質、ポリペプチド、そのフラグメント、バリアントおよび融合体を発現させ得る。ベクターの例は、アデノウイルスベクターを含むが、これに限定されない。一つの方法は、培養中の初代細胞への核酸伝達、続くトランスフォーム細胞の宿主へのエクスビボでの、全身または特定の臓器もしくは組織への自己移植を含む。エクスビボ方法は、例えば、対象から細胞を採取し、細胞を培養し、発現ベクターを使用して形質導入し、コード化ポリペプチドの発現に適する条件下に細胞を維持する工程を含む。これらの方法は、分子生物学の分野で知られる。形質導入工程は、例えば、リン酸カルシウム、リポフェクション、エレクトロポレーション、ウイルス感染および微粒子銃遺伝子伝達を含む、エクスビボ遺伝子治療で使用される標準手段の何れかにより達成され得る。あるいは、リポソームまたはポリマー微粒子が使用され得る。形質導入が成功した細胞を、次いで、例えば、コード配列または薬物耐性遺伝子の発現について選択し得る。次いで、細胞を致死的に照射し(所望により)、対象に注入または移植し得る。ある実施態様において、融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを、それを必要とする対象に投与する細胞にトランスフェクトする。
【0211】
インビボ核酸治療は、インビボで哺乳動物体性組織または臓器に機能的に活性なDNAを直接伝達することにより、達成され得る。例えば、ここに開示するポリペプチドをコードする核酸を、リンパ系組織に直接投与できる。あるいは、リンパ系組織特異的ターゲティングを、Bリンパ球、Tリンパ球または樹状細胞特異的TREなどのリンパ系組織特異的転写制御因子(TRE)を使用して達成し得る。リンパ系組織特異的TREは当分野で知られる。
【0212】
核酸を、ウイルス手段によってもインビボで投与し得る。融合タンパク質をコードする核酸分子を、当分野で周知のとおり、複製欠損レトロウイルスを産生するパッケージング細胞株を使用して、レトロウイルスベクターに包装させ得る。非複製とさせ得る組み換えアデノウイルスおよびワクシニアウイルスを含む他のウイルスベクターも使用し得る。ネイキッドDNAまたはRNAまたはウイルスベクターに加えて、操作された細菌をベクターとして使用し得る。
【0213】
核酸を、リポソーム、ポリマーミクロおよびナノ粒子およびアシアロ糖タンパク質/ポリリシンなどのポリカチオンを含む他の担体によっても送達し得る。
【0214】
インビボでのウイルスおよび担体介在遺伝子伝達に加えて、プラスミドDNA投与および微粒子銃介在遺伝子伝達を含む、当分野で周知の物理的手段をDNAの直接伝達に使用できる。
【0215】
5. 小分子
免疫調節剤は小分子であり得る。小分子アゴニストおよびアンタゴニストAKT3は当分野で知られまたは日常的スクリーニング方法を使用して同定され得る。
【0216】
ある実施態様において、スクリーニングアッセイは、試験化合物の大ライブラリーのランダムスクリーニングを含み得る。あるいは、アッセイは、AKT3のレベルの調節が疑われる特定のクラスの化合物に焦点を絞るために使用され得る。アッセイは、AKT3介在シグナル伝達活性の決定を含み得る。他のアッセイは、核酸転写または翻訳、mRNAレベル、mRNA安定性、mRNA分解、転写速度および翻訳速度の決定を含み得る。
【0217】
D. 医薬組成物
ある実施態様は、開示されるAkt3アクティベーターまたは阻害剤の製剤化およびそれを含む医薬組成物を提供する。一般に、ここに開示する化合物の投与量レベルは、約0.0001mg/kg体重~約1,000mg/kg体重、より好ましくは0.001~500mg/kg体重であり、より好ましくは1日あたり0.01~50mg/kg体重が哺乳動物に投与される。
【0218】
送達媒体を伴うまたは伴わない開示されるAkt3モジュレーターを含む医薬組成物が提供される。医薬組成物は、非経腸(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)または皮下注射)、経腸、経粘膜(経鼻、膣、直腸または舌下)または経皮(受動的またはイオン泳動もしくはエレクトロポレーションを使用)投与経路により投与するためにまたは生体分解可能挿入物を使用して製剤化でき、各投与経路に適する投与形態に製剤化され得る。
【0219】
ある実施態様において、組成物を、例えば処置すべき部位(例えば、腫瘍)に直接注射することにより、局所に投与する。ある実施態様において、組成物を、処置が意図される部位またはそれに近接(例えば、腫瘍に近接)した血管組織上の脈管構造に注入するかまたは他に直接投与する。典型的に、局所投与は、組成物の全身投与で達成され得るより大きい局在化濃度の増加を引き起こす。
【0220】
非経腸投与用製剤
化合物およびその医薬組成物を、水溶液で、非経腸注射により投与し得る。製剤は懸濁液またはエマルジョンの形態であり得る。一般に、有効量の活性剤を含み、所望により薬学的に許容される希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/または担体を含む医薬組成物が提供される。このような組成物は、希釈剤無菌水、種々の緩衝液内容物(例えば、Tris-HCl、酢酸、リン酸)、pHおよびイオン強度の緩衝化食塩水;および所望により、界面活性剤および可溶化剤(例えば、ポリソルベート20または80とも称されるツイーン(登録商標)20、ツイーン(登録商標)80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)および防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)および増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)などの添加物を含む。非水性溶媒または媒体の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油およびトウモロコシ油などの植物油、ゼラチンおよびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。製剤を凍結乾燥し、使用直前に再溶解/再懸濁し得る。製剤を、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過、組成物への滅菌剤の組み込み、組成物の照射または組成物の加熱により滅菌し得る。
【0221】
2. 経腸製剤
適当な経口投与形態は、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、シロップおよびロゼンジを含む。錠剤を、当分野で周知の圧縮または鋳造技術を使用して、製造できる。ゼラチンまたは非ゼラチンカプセルを、当分野で周知の技術を使用して、液体、固体および半固体充填材料を封入できる硬または軟カプセル殻として調製できる。
【0222】
製剤を薬学的に許容される担体を使用して調製し得る。一般にここで使用される限り、「担体」は、希釈剤、防腐剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、腫脹剤、充填剤、安定化剤およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0223】
担体はまた可塑剤、色素、着色剤、安定化剤および流動促進剤を含み得るコーティング組成物の全構成要素も含む。遅延放出剤形を、標準的参考書に記載のとおり調製し得る。これらの参考書は、錠剤およびカプセならびに遅延放出投与形態の錠剤、カプセルおよび顆粒の調製のための担体、材料、装置および過程についての情報を提供する。
【0224】
適当なコーティング剤の例は、フタル酸酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートなどのセルロースポリマー;ポリビニルアセタートフタレート、アクリル酸ポリマーおよびコポリマーおよび商品名オイドラギット(登録商標)(Roth Pharma, Westerstadt, Germany)の下に商業的に入手可能なメタクリル樹脂、ゼイン、シェラックおよび多糖を含むが、これらに限定されない。
【0225】
さらに、コーティング剤は可塑剤、色素、着色剤、流動促進剤、安定化剤、細孔形成剤および界面活性剤などの慣用の担体を含み得る。
【0226】
任意の薬学的に許容される添加物は、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、安定化剤および界面活性剤を含むが、これらに限定されない。「充填剤」とも称される希釈剤は、典型的に錠剤圧縮またはビーズおよび顆粒形成のための実際的なサイズが提供されるように、固体投与形態の嵩を増やすのに必要である。適当な希釈剤は、リン酸二カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、加水分解デンプン、アルファ化デンプン、二酸化ケイ素、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム・マグネシウムおよび粉末糖を含むが、これらに限定されない。
【0227】
結合剤は、固体剤形に粘着性を与え、錠剤またはビーズまたは顆粒が投与形態の形成後完全なままであるように使用される。適当な結合剤材料は、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロース、ラクトースおよびソルビトールを含む)、ポリエチレングリコール、蝋、天然および合成ガム、例えばアカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウムおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースを含むセルロースおよびビーガムおよび合成ポリマー、例えばアクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリル酸コポリマー、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸およびポリビニルピロリドンを含むが、これらに限定されない。
【0228】
滑沢剤は、錠剤製造を容易にするために使用される。適当な滑沢剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、タルクおよび鉱油を含むが、これらに限定されない。
【0229】
崩壊剤は、投与後の投与形態の崩壊または「分解」を促進するために使用され、一般には、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルファ化デンプン、クレイ、セルロース、アルギニン、ガムまたは架橋PVP(GAF Chemical CorpのPolyplasdone(登録商標)XL)などの架橋ポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0230】
安定化剤は、一例として、酸化反応を含む薬物分解反応を阻止または遅延させるために使用される。適当な安定化剤は、抗酸化剤、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);アスコルビン酸、その塩およびエステル;ビタミンE、トコフェロールおよびその塩;メタ重亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩;システインおよびその誘導体;クエン酸;没食子酸プロピルおよびブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含むが、これらに限定されない。
【0231】
カプセル、錠剤、溶液および懸濁液などの経口投与形態は、制御放出のために製剤化され得る。例えば、1個以上の化合物および任意の1個以上のさらなる活性剤をナノ粒子、微粒子およびそれらの組み合わせに製剤化し、軟または硬ゼラチンまたは非ゼラチンカプセルに封入するかまたは分散媒体に分散させて経口懸濁液またはシロップを形成することができる。粒子は、薬物および制御放出ポリマーまたはマトリクスの形であり得る。あるいは、薬物粒子を、最終投与形態に取り込む前に1個以上の制御放出コーティングでコーティングし得る。
【0232】
他の実施態様において、1個以上の化合物および任意の1個以上のさらなる活性剤を、体液などの水性媒体との接触によりゲル化または乳化するマトリクス材に分散させる。ゲルの場合、マトリクスは活性剤を封入して膨張し、活性剤が拡散および/またはマトリクス材の分解により経時的にゆっくり放出される。このようなマトリクスを、錠剤または硬および軟カプセルの充填材料として製剤化し得る。
【0233】
さらに他の実施態様において、1個以上の化合物および任意の1個以上のさらなる活性剤が錠剤またはカプセルなどの販売経口投与形態に製剤化され、固体投与形態は遅延放出コーティングまたは持続放出コーティングなどの1個以上の制御放出コーティングでコーティングされる。1以上のコーティングは本化合物および/またはさらなる活性剤も含み得る。
【0234】
持続放出投与形態
持続放出製剤は、一般に当分野で知られる拡散または浸透系として調製される。拡散系は、典型的にリザーバーおよびマトリクスの2タイプのデバイスからなり、当分野で周知であり、記載されている。マトリクスデバイスは、一般に薬物と徐々に溶解するポリマー担体を錠剤形態に圧縮することにより調製される。マトリクスデバイスの調製に使用される主要な3タイプの材料は、不溶性可塑剤、親水性ポリマーおよび脂肪化合物である。可塑性マトリクスは、メチルアクリレート-メチルメタクリレート、ポリビニルクロライドおよびポリエチレンを含むが、これらに限定されない。親水性ポリマーは、セルロースポリマー、例えばメチルおよびエチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシプロピル-セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびカーボポール(登録商標)934、ポリエチレンオキシドおよびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。脂肪化合物は、種々の蝋、例えばカルナウバ蝋およびトリステアリン酸グリセリルおよび水素化ヒマシ油または水素化植物油を含む蝋型物質またはこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0235】
ある好ましい実施態様において、可塑性材料は、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレート、メチルメタクリル酸コポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリル酸コポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミンコポリマーポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸)(無水物)、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸無水物)およびグリシジルメタクリル酸コポリマーを含むが、これらに限定されない、薬学的に許容されるアクリル酸ポリマーである。
【0236】
ある好ましい実施態様において、アクリル酸ポリマーは1個以上のアンモニオメタクリル酸コポリマーからなる。アンモニオメタクリル酸コポリマーは、当分野で周知であり、4級アンモニウム基を低含量で有するアクリル酸およびメタクリル酸エステルの完全重合コポリマーとして、NF XVIIに記載される。
【0237】
ある好ましい実施態様において、アクリル酸ポリマーは、商品名オイドラギット(登録商標)の下にRohm Pharmaから商業的に入手可能であるようなアクリル酸樹脂ラッカーである。さらに好ましい実施態様において、アクリル酸ポリマーはそれぞれ商品名オイドラギット(登録商標)RL30Dおよびオイドラギット(登録商標)RS30Dの下にRohm Pharmaから商業的に入手可能である2種のアクリル酸樹脂ラッカーの混合物を含む。オイドラギット(登録商標)RL30Dおよびオイドラギット(登録商標)RS30Dは、4級アンモニウム基を低含量で有するアクリル酸およびメタクリル酸エステルのコポリマーであり、アンモニウム基対残りの中性(メタクリル)アクリル酸エステルのモル比は、オイドラギット(登録商標)RL30Dで1:20およびオイドラギット(登録商標)RS30Dで1:40である。平均分子量は約150,000である。オイドラギット(登録商標)S-100およびオイドラギット(登録商標)L-100も好ましい。コード名称RL(高透過性)およびRS(低透過性)は、これらの薬剤の透過性をいう。オイドラギット(登録商標)RL/RS混合物は水および消化液に不溶性である。しかしながら、それらを含むよう形成された多粒子系は水溶液および消化液に膨潤性かつ透過性である。
【0238】
オイドラギット(登録商標)RL/RSなどの上記ポリマーを、最終的に所望の溶解プロファイルを有する持続放出製剤を得るために、任意の所望の比率で混合し得る。所望の持続放出多粒子系は、例えば、100%オイドラギット(登録商標)RL、50%オイドラギット(登録商標)RLおよび50%オイドラギット(登録商標)RSおよび10%オイドラギット(登録商標)RLおよび90%オイドラギット(登録商標)RSから得られ得る。当業者は、例えば、オイドラギット(登録商標)Lなどの、他のアクリル酸ポリマーも使用し得ることを認識する。
【0239】
あるいは、持続放出製剤を、浸透系を使用してまたは投与形態に半透過性コーティングを適用することにより、調製され得る。後者の場合、所望の薬物放出プロファイルが、適当な比率で低透過性および高透過性コーティング剤を合わせることにより、達成され得る。
【0240】
上記の異なる薬物放出機構を備えたデバイスを、単一または複数単位を含む最終投与形態で組み合わせ得る。複数単位の例は、多層錠剤および錠剤、ビーズまたは顆粒を含むカプセルなどを含むが、これらに限定されない。
【0241】
持続放出コアの最上部にコーティングまたは圧縮過程を使用して即時放出層を適用することによりまたは持続および即時放出ビーズを含むカプセルなどの複数単位系の手段により、即時放出部分を持続放出系に付加できる。
【0242】
親水性ポリマーを含む持続放出錠剤は、直接圧縮、湿式造粒または乾式造粒過程などの当分野で一般に知られる技術により調製される。それらの製剤は、通常ポリマー、希釈剤、結合剤および滑沢剤ならびに活性医薬成分を含む。通常の希釈剤は、デンプン、粉末セルロース、特に結晶および微結晶セルロース、フルクトース、マンニトールおよびスクロースなどの糖、穀粉および類似の可食粉末などの不活性粉末物質を含む。典型的希釈剤は、例えば、種々のタイプのデンプン、ラクトース、マンニトール、カオリン、リン酸カルシウムまたは硫酸カルシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩および粉末糖を含む。粉末セルロース誘導体も有用である。典型的錠剤結合剤は、デンプン、ゼラチンならびにラクトース、フルクトースおよびグルコースなどの糖などの物質を含む。アカシア、アルギネート、メチルセルロースおよびポリビニルピロリドンを含む天然および合成ガムも使用できる。ポリエチレングリコール、親水性ポリマー、エチルセルロースおよび蝋も結合剤として役立ち得る。滑沢剤は、錠剤およびパンチが金型に粘着するのを阻止するために、錠剤製剤において必要である。滑沢剤は、タルク、マグネシウムおよびステアリン酸カルシウム、ステアリン酸および水素化植物油などの滑沢性固体から選択される。
【0243】
蝋材料を含む持続放出錠剤は、一般に直接混合方法、凝固方法および水性分散方法などの当分野で知られる方法を使用して、調製される。凝固方法において、薬物を蝋材料と混合し、噴霧凝固させまたは凝固させて篩い、加工する。
【0244】
遅延放出投与形態
遅延放出製剤は、胃の酸性環境で不溶性であり、小腸の中性環境で可溶性であるポリマーフィルムで固体投与形態をコーティングすることにより、作ることができる。
【0245】
遅延放出投与量単位を、例えば、薬物または薬物含有組成物を選択したコーティング剤でコーティングすることにより、調製し得る。薬物含有組成物は、例えば、カプセルに取り込むための錠剤、「被覆コア」投与形態の内部コアとして使用する錠剤または錠剤またはカプセルに取り込むための複数の薬物含有ビーズ、粒子または顆粒であり得る。好ましいコーティング剤は、生体分解可能、徐々に加水分解可能、徐々に水可溶性および/または酵素分解可能なポリマーを含み、慣用の「腸溶性」ポリマーであり得る。腸溶性ポリマーは、当業者により認識されるとおり、消化管下部の高pH環境で可溶性となるかまたは投与形態が消化管を通過するに連れてゆっくり浸食され、一方酵素分解可能なポリマーは、消化管下部、特に結腸に存在する細菌酵素により分解される。遅延放出をもたらす適当なコーティング剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテート、フタル酸酢酸セルロース、トリメリト酸酢酸セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロースポリマー;好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレートおよび/またはエチルメタクリレートから形成されるアクリル酸ポリマーおよびコポリマーおよびオイドラギット(登録商標)L30D-55およびL100-55(pH5.5以上で可溶性)、オイドラギット(登録商標)L-100(pH6.0以上で可溶性)、オイドラギット(登録商標)S(高度なエステル化の結果としてpH7.0以上で可溶性)およびオイドラギット(登録商標)NE、RLおよびRS(種々の程度の透過性および拡張性を有する水不溶性ポリマー)を含む商品名オイドラギット(登録商標)(Rohm Pharma; Westerstadt, Germany)の下に商業的に入手可能である他のメタクリル酸樹脂;ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、酢酸ビニルフタル酸、酢酸ビニルクロトン酸コポリマーおよびエチレン-酢酸ビニルコポリマーなどのビニルポリマーおよびコポリマー;アゾポリマー、ペクチン、キトサン、アミロースおよびグアーガムなどの酵素分解可能なポリマー;ゼインおよびシェラックを含むが、これらに限定されない。異なるコーティング剤の組み合わせも使用され得る。種々のポリマーを使用する多層コーティングも適用され得る。
【0246】
特定のコーティング剤の好ましいコーティング重量は、異なる量の種々のコーティング剤で調製した錠剤、ビーズおよび顆粒の個々の放出プロファイルの評価により、当業者は容易に決定し得る。臨床治験からしか決定できない、所望の放出特徴を生ずる材料、方法および適用形態の組み合わせである。
【0247】
コーティング組成物は、可塑剤、色素、着色剤、安定化剤、流動促進剤などの慣用の添加物を含み得る。可塑剤は、通常コーティングの脆弱性を軽減するために存在し、一般にポリマーの乾燥重量の約10重量%~50重量%を占める。典型的可塑剤の例は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、ヒマシ油およびアセチル化モノグリセリドを含む。安定化剤は、好ましくは分散している粒子を安定化するために使用する。典型的安定化剤は、ソルビタンエステル、ポリソルベートおよびポリビニルピロリドンなどの非イオン性乳化剤である。流動促進剤は、フィルム形成および乾燥中の粘着効果を低減するために推奨され、一般にコーティング溶液中のポリマー重量の約25重量%~100重量%を占める。ある有効な流動促進剤はタルクである。ステアリン酸マグネシウムおよびモノステアリン酸グリセロールなどの他の流動促進剤も使用され得る。二酸化チタンなどの色素も使用され得る。シリコーン(例えば、シメチコン)などの小量の消泡剤もコーティング組成物に加え得る。
【0248】
肺および粘膜投与用製剤
活性剤およびその組成物を、肺または粘膜投与のために製剤化し得る。投与は、肺、経鼻、経口(舌下、頬側)、膣または直腸粘膜への組成物の送達を含む。
【0249】
ある実施態様において、化合物は、鼻腔内投与または経口吸入などの肺送達のために製剤化される。呼吸管は、雰囲気と血流の間のガス交換に関与する構造である。肺は、最終的にガス交換が起こる場所である肺胞で終わる分岐構造である。肺胞表面積は呼吸器系で最大であり、薬物吸収が起こる場所である。肺胞は、繊毛または粘液層がない薄上皮で覆われ、界面活性剤リン脂質を分泌する。呼吸管は、中咽頭および喉頭を含む気道、続いて、気管を含む気道を含み、続いて気管支および細気管支に分枝する。上部および下部気道は、誘導気道と呼ばれる。次いで、末端細気管支が呼吸器細気管支に分かれ、続いて、呼吸領域、肺胞または深部肺に至る。深部肺または肺胞は、全身薬物送達のための吸入治療エアロゾルの一次標的である。
【0250】
低分子量薬物からなる治療組成物の肺投与は観察されており、例えば、喘息を処置するためのベータ-アンドロゲン性アンタゴニストである。肺で活性である他の治療剤は、全身性に投与されており、肺吸収により標的化される。経鼻送達は、次の理由により、治療剤の投与に有望な技術であると考えられる:鼻は多数の微絨毛による上皮性表面の被覆により薬物吸収に利用可能な表面積が大きい、上皮下の層は高度に血管形成されている、鼻からの静脈血は直接全身循環に通過し、肝臓における初回通過効果による薬物の喪失が回避される、低用量が可能である、治療血中レベルにより迅速に達成する、薬理学的活性の発生が速い、副作用が少ない、cmあたり高総血流である、多孔性内皮基底膜および到達しやすい。
【0251】
ここで使用する用語エアロゾルは、噴射剤を使用して産生されたものであれ、違うのであれ、溶液または懸濁液であり得る粒子の微細霧のあらゆる製剤をいう。エアロゾルは、超音波処理または高圧処理などの標準技術を使用して、産生され得る。
【0252】
肺製剤の担体は、乾燥粉末製剤用および溶液として投与するためのものに分けることができる。呼吸管への治療剤の送達のためのエアロゾルは当分野で知られる。呼吸管上部を経る投与のために、製剤を、液滴またはスプレーとして鼻腔内投与するための、溶液、例えば、水または、緩衝化されたまたは緩衝化されていない等張食塩水または懸濁液に製剤化できる。好ましくは、このような溶液または懸濁液は、鼻分泌物に比して等張であり、例えば、約pH4.0~約pH7.4または約pH6.0~約pH7.0の範囲のほぼ同じpHを有する。緩衝液は生理学的に適合性でなければならず、単なる例として、リン酸緩衝液を含む。例えば、代表的鼻うっ血除去剤は、約6.2のpHに緩衝化されるとして記載される。経鼻および/または上部呼吸器投与用の無害な水溶液の適当な食塩水含量およびpHを当業者は容易に決定できる。
【0253】
好ましくは、水溶液は、水、塩を含む生理学的に許容される水溶液および/またはリン酸緩衝化食塩水(PBS)などの緩衝液または動物またはヒトへの投与に許容されるあらゆる他の水溶液である。このような溶液は当業者に周知であり、蒸留水、脱イオン水、純水または超純水、食塩水およびPBSを含むが、これらに限定されない。他の適当な水性媒体は、リンゲル液および等張塩化ナトリウムを含むが、これらに限定されない。水性懸濁液は、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドンおよびトラガカントガムおよびレシチンなどの湿潤剤などの懸濁化剤を含み得る。水性懸濁液のための適当な防腐剤は、p-ヒドロキシ安息香酸エチルおよびn-プロピルを含む。
【0254】
他の実施態様において、エタノール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、エチルエーテルおよびプロパノールなどの低毒性有機(すなわち、非水性)クラス3残留溶媒である溶媒が製剤に使用され得る。溶媒は、製剤を容易にエアロゾル化する能力に基づき選択される。溶媒は、本化合物と有害に反応してはならない。本化合物を溶解するまたは本化合物の懸濁液を形成する適切な溶媒が使用されなければならない。溶媒は、溶液または懸濁液のエアロゾルの形成を可能にするのに十分揮発性でなければならない。フレオンなどのさらなる溶媒またはエアロゾル化剤を、溶液または懸濁液の揮発性の増加が望ましいならば、加えてよい。
【0255】
ある実施態様において、組成物は、微量のポリマー、界面活性剤または他の当業者に周知の添加物を含み得る。この文脈で、「微量」は、本化合物の肺における取り込みに影響するまたは介在する添加物が存在せず、存在する添加物が本化合物の肺における取り込みに有害に影響する量で存在しないことを意味する。
【0256】
乾燥脂質粉末を、その疎水性特徴のため、エタノールに分散させ得る。クロロホルムなどの有機溶媒に貯蔵された脂質について、所望の量の溶液をバイアルに入れ、クロロホルムを窒素流下に蒸発させて、ガラスバイアル表面に乾燥薄フィルムを形成させる。エタノールで再構成したとき、フィルムは容易に膨張する。有機溶媒に脂質分子を完全に分配させるために、懸濁液を音波処理する。脂質の非水性懸濁液を、再利用可能PARI LC Jet+ネブライザー(PARI Respiratory Equipment, Monterey, CA)を使用して、無水エタノールに調製し得る。
【0257】
大粒子径の乾燥粉末製剤(「DPF」)は、低凝集、容易なエアロゾル化およびおそらく低い食作用など流動性特徴が改善される。吸入治療のための乾燥粉末エアロゾルは、一般に主に5ミクロン未満の範囲の平均直径を生ずるが、好ましい範囲は、空気動力学径で1~10ミクロンの範囲である。大「担体」粒子(薬物を含まない)は、他のいくつかの利益があるが、十分なエアロゾル化を達成するために、治療エアロゾルと共送達されている。
【0258】
ポリマー粒子は、シングルおよびダブルエマルジョン溶媒蒸発、スプレー乾燥、溶媒抽出、溶媒蒸発、相分離、単純および複合コアセルベーション、界面重合および当業者に周知の他の方法を使用して、調製され得る。粒子は、当分野で知られるマイクロスフェアまたはマイクロカプセルの製造方法を使用して、製造され得る。好ましい製造方法は、界面活性剤を使用する溶液を使用し、所望のサイズの液滴を形成するように噴霧し、溶媒を除去することを含む、スプレー乾燥および凍結乾燥による。
【0259】
粒子を、深部肺または上部気道などの呼吸管の選択領域への局在化送達のための適切な材料、表面粗さ、直径およびタップ密度で作ることができる。例えば、上部気道送達のために、高密度または大型粒子が使用され得る。同様に、同じまたは異なるEGSを備える種々のサイズ粒子の混合物を、一投与で肺の種々の領域を標的とするよう投与し得る。
【0260】
肺送達のための製剤は、単層リン脂質小胞、リポソームまたはリポタンパク質粒子を含む。核酸を含むこのような製剤および製剤を製造する方法は、当業者に周知である。リポソームは、Avanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham, Ala.)を含む種々の業者から提供されるリン脂質を含む。ある実施態様において、リポソームは、リポソームを標的細胞に向けるために、標的細胞表面上の受容体に特異的なリガンド分子を含み得る。
【0261】
4. 経皮
経皮製剤も調製され得る。典型的に軟膏剤、ローション剤、スプレー剤またはパッチ剤であり、これら全て標準的テクノロジーを使用して、調製され得る。経皮製剤は浸透エンハンサーを含み得る。
【0262】
IV. 組み合わせ治療
開示されるAkt3モジュレーターを、それを必要とする対象に単独でまたは1個以上のさらなる治療剤と組み合わせて投与し得る。ある実施態様において、Akt3モジュレーターおよびさらなる治療剤は、別々であるが、同時に投与される。Akt3モジュレーターおよびさらなる治療剤は、同じ組成物の一部としても投与され得る。他の実施態様において、Akt3モジュレーターおよび第二治療剤は別々に異なる時点であるが、同じ処置レジメの一部として投与される。
【0263】
対象は、第一治療剤を、第二治療剤投与の、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間またはそれ以上または1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日またはそれ以上前に投与し得る。ある実施態様において、対象は、第一剤を、第二剤の単回投与前、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、14日、21日、28日、35日または48日毎に1回以上投与され得る。Akt3モジュレーターは、第一治療剤でも第二治療剤でもよい。
【0264】
Akt3モジュレーターおよびさらなる治療剤およびさらなる治療剤を治療レジメンの一部として投与し得る。例えば、第一治療剤を4日毎に対象に投与できるならば、第二治療剤を初日、2日目、3日目または4日目またはそれらの組み合わせに投与できる。第一治療剤または第二治療剤は、処置レジメン全体を通して繰り返し投与され得る。
【0265】
分子の例は、サイトカイン、化学療法剤、放射性同位体、他の免疫療法、酵素、抗生物質、抗ウイルス(特に、プロテアーゼ阻害剤単独またはHIVまたはB型もしくはC型肝炎のためのヌクレオシドと組み合わせ)、抗寄生虫(蠕虫類、原生動物)、増殖因子、成長阻害剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、抗体および生物活性そのフラグメント(ヒト化、一本鎖およびキメラ抗体を含む)、抗原およびワクチン製剤(アジュバントを含む)、ペプチド薬物、抗炎症剤、自然免疫系を活性化するためのトール様受容体に結合するリガンド(CpGオリゴヌクレオチドを含むが、これに限定されない)、適応免疫系を動員および最適化する分子、細胞毒性Tリンパ球、NK細胞およびヘルパーT細胞の作用を活性化または上方制御する他の分子およびサプレッサーまたは制御性T細胞を不活性化または下方制御する他の分子を含むが、これらに限定されない
【0266】
さらなる治療剤は、処置する状態、障害または疾患に基づき、選択される。例えば、Akt3モジュレーターを、免疫応答を増強もしくは促進するまたは免疫応答を低減もしくは阻害するよう機能する1個以上のさらなる薬剤と共投与する。
【0267】
A. 化学療法剤
開示されるAkt3モジュレーターを、1個以上の化学療法剤またはアポトーシス促進剤と組み合わせ得る。代表的化学療法剤は、アムサクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシカルボアミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロイコボリン、リポソームドキソルビシン、リポソームダウノルビシン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、サトラプラチン、ストレプトゾシン、テガフール-ウラシル、テモゾロミド、テニポシド、チオテパ、チオグアニン、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンまたはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。代表的アポトーシス促進剤は、フルダラビン、スタウロスポリン、シクロヘキシミド、アクチノマイシンD、ラクトシルセラミド、15d-PGJ(2)およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0268】
B. 抗炎症剤
他の適当な治療剤は、抗炎症剤を含むが、これらに限定されない。抗炎症剤は非ステロイド性、ステロイド性またはそれらの組み合わせであり得る。ある実施態様は、約1%(w/w)~約5%(w/w)、典型的に約2.5%(w/w)の抗炎症剤を含む、経口組成物を提供する。非ステロイド性抗炎症剤の代表例は、オキシカム、例えばピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカム;サリチル酸、例えばアスピリン、ジサルシド、ベノリレート、トリリサート、サファピリン、ソルプリン、ジフルニサルおよびフェンドサール;酢酸誘導体、例えばジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパク、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセメタシン、フェンチアザク、ゾメピラック、クリンダナク、オキセピナク、フェルビナクおよびケトロラク;フェナメート、例えばメフェナム、メクロフェナム、フルフェナム、ニフルムおよびトルフェナム酸;プロピオン酸誘導体、例えばイブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェンおよびチアプロフェン;ピラゾール、例えばフェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾンおよびトリメタゾンを含むが、これらに限定されない。これら非ステロイド性抗炎症剤の混合物も用いられ得る。
【0269】
ステロイド性抗炎症性薬物の代表例は、コルチコステロイド、例えばヒドロコルチゾン、ヒドロキシル-トリアムシノロン、アルファ-メチルデキサメサゾン、リン酸デキサメサゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デスオキシメタゾン、酢酸デスオキシコルチコステロン、デキサメサゾン、ジクロリゾン、二酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、フルプレドニデン(フルプレドニリデン)アセタート、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフロラゾン、フルラドレノロン、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフロラゾン、フルラドレノロンアセトニド、メドリソン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾンおよびそのエステルのバランス、クロロプレドニゾン、酢酸クロロプレドニゾン、クロコルトロン、クレスシノロン、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシクロペンチルプロピオネート、ヒドロコルタマート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンおよびそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0270】
C. 免疫抑制剤
ある実施態様において、ここに開示する化合物は、Treg活性または産生を減少させる。ある実施態様において、ここに開示する化合物を、がんの導入療法に使用する。ある実施態様において、ここに開示する化合物を、他の免疫治療剤、免疫モジュレーター、共刺激活性化アゴニスト、他のサイトカインおよびケモカインおよび因子、ワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、細胞療法、小分子および標的化療法、化学療法および放射線療法と組み合わせて使用する。ある実施態様において、免疫モジュレーターは、抗PD1、抗CTLA4、抗TIM3、抗LAG3などのチェックポイント阻害剤を含む。ある実施態様において、抗OX40、抗GITRなどを含む共刺激活性化アゴニスト。ある実施態様において、細胞療法は、操作されたT細胞、CAR-T、TCR-T細胞およびその他を含む。
【0271】
ある実施態様において、ここに開示する化合物を、他の免疫治療剤、免疫モジュレーター、生物学(例えば、抗体)、ワクチン、小分子および標的化療法、抗炎症性、細胞療法(例えば、操作されたTregおよび他のタイプの細胞、化学療法および放射線療法と組み合わせて使用する。
【0272】
ある実施態様において、ここに開示する化合物は、単独でまたは他の薬剤と組み合わせて、インビボで患者に、静脈内、筋肉内または他の非経腸手段により投与される。鼻腔内適用、吸入、直腸、膣、局所的、経口またはインプラントとしても投与され得る。他の実施態様において、ここに開示する化合物は、単独でまたは他の薬剤と組み合わせて、エクスビボで、天然Treg、誘導型Treg、操作されたTregおよび他のタイプの抑制性T細胞を含む抑制性Tregの機能を増強するために適用され、これらは、その後所望により患者の処置に使用され得る。
【0273】
ある実施態様において、さらなる治療剤は、免疫抑制剤である。免疫抑制剤は、他のリンパ球表面マーカー(例えば、CD40、アルファ-4インテグリン)またはサイトカインに対する抗体、融合タンパク質(例えば、CTLA-4-Ig(オレンシア(登録商標))、TNFR-Ig(Enbrel(登録商標)))、TNF-αブロッカー、例えばEnbrel、レミケード、シムジアおよびヒュミラ、シクロホスファミド(CTX)(すなわち、エンドキサン(登録商標)、シトキサン(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、RevimmuneTM)、メトトレキサート(MTX)(すなわちリウマトレックス(登録商標)、Trexall(登録商標))、ベリムマブ(例えばBenlysta(登録商標))または他の免疫抑制性薬物(例えば、シクロスポリンA、FK506様化合物、ラパマイシン化合物またはステロイド)、抗増殖剤、細胞毒性剤または免疫抑制を助け得る他の化合物を含むが、これらに限定されない。
【0274】
ある実施態様において、さらなる治療剤はチェックポイント阻害剤であり得る。ある実施態様において、治療剤は、CTLA-4-Ig(アバタセプト)などのCTLA-4融合タンパク質であり得るCTLA-4-Ig融合タンパク質は、抗原提示細胞におけるCD80/CD86(B7-1/B7-2)への結合について、T細胞の共刺激受容体、CD28と競合し、故にT細胞活性化阻害に機能する。他の実施態様において、治療剤は、ベラタセプトとして知られるCTLA-4-Ig融合タンパク質である。ベラタセプトは、インビボでCD86に対するアビディティーを顕著に増加し得る2個のアミノ酸置換(L104EおよびA29Y)を含む。他の実施態様において、治療剤は、Maxy-4である。
【0275】
他の実施態様において、治療剤はシクロホスファミド(CTX)である。シクロホスファミド((エンドキサン(登録商標)、シトキサン(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)およびRevimmuneTMの一般名)は、シトホスファンとしても知られ、オキサゾフォリン群の窒素マスタードアルキル化剤である。
【0276】
治療剤を、抗二本鎖DNA(抗ds DNA)自己抗体の血液または血清レベルを減らすおよび/またはタンパク尿を減らす有効量で、それを必要とする患者に投与され得る。
【0277】
他の実施態様において、治療剤は、血清におけるアデノシンの量を増加させる(例えば、引用により全体として本明細書に包含させるWO08/147482参照)。例えば、第二治療剤は、CD73-Ig、組み換えCD73またはCD73の発現を増加する他の薬剤(例えば、サイトカイン、モノクローナル抗体または小分子)であり得る(例えば引用により全体として本明細書に包含させるWO04/084933参照)。他の実施態様において、治療剤はインターフェロン-ベータである。
【0278】
治療剤は、Th1、Th17、Th22および/またはIL-1β、TNF-α、TGF-ベータ、IFN-γ、IL-18、IL-17、IL-6、IL-23、IL-22、IL-21およびMMPを含むが、これらに限定されない、炎症性分子を分泌するまたは他の細胞に分泌させるその他の細胞による分化、増殖、活性および/またはサイトカイン産生および/または分泌を阻害または低減する小分子であり得る。他の実施態様において、治療剤は、Tregと相互作用し、Treg活性を増強し、TregによるIL-10分泌を促進または増強し、Treg数を増加させ、Tregの抑制性能を増加するまたはそれらの組み合わせをする、小分子である。
【0279】
ある実施態様において、組成物は、Treg活性または産生を増加する。Treg増強剤の例は、グルココルチコイドフルチカゾン、サルメテロール、IL-12、IFN-γおよびIL-4に対する抗体;ビタミンD3およびデキサメサゾンおよびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されないs。
【0280】
ある実施態様において、治療剤は、IL-6、IL-23、IL-22またはIL-21などの炎症促進性分子に対する抗体、例えば、機能遮断抗体である。
【0281】
ここで使用する用語「ラパマイシン化合物」は、中性三環式化合物ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、ラパマイシンアナログおよびラパマイシンと同じ作用機序(例えば、サイトカイン機能阻害)を有すると考えられる、他のマクロライド化合物を含む。用語「ラパマイシン化合物」は、ラパマイシンと構造が類似する化合物、例えば、治療有効性が増強するよう修飾されている類似の大員環構造を有する化合物を含む。ラパマイシン化合物の例は、当分野で知られる(例えばWO95122972;WO95116691;WO95104738;米国特許6,015,809;5,989,591;5,567,709;5,559,112;5,530,006;5,484,790;5,385,908;5,202,332;5,162,333;5,780,462;5,120,727参照;各々引用によりその全体として本明細書に包含させる)。
【0282】
用語「FK506様化合物」は、FK506およびFK506誘導体およびアナログ、例えば、FK506と構造が類似する化合物、例えば、治療有効性が増強するよう修飾されている類似の大員環構造を有する化合物を含む。FK506様化合物の例は、WO00101385(引用によりその全体として本明細書に包含させる)に記載のものを含む。ある実施態様において、ここに使用する用語「ラパマイシン化合物」は、FK506様化合物を含まない。
【0283】
D. 神経変性疾患の処置
開示されるAkt3モジュレーターを、対象の疾患状態に基づき選択される第二治療と投与し得る。第二治療はアルツハイマー病に対する処置であり得る。アルツハイマー病に対する現在の処置は、コリンエステラーゼ阻害剤、例えばドネペジル、リバスチグミンおよびガランタミン;メマンチン;抗うつ剤、例えばシタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリンおよびトラゾドン;抗不安剤、例えばロラゼパムおよびオキサゼパム;および抗精神病剤、例えばアリピプラゾール、クロザピン、ハロペリドール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドンを含むが、これらに限定されない。
【0284】
他の実施態様において、さらなる治療剤は、ALSの処置のためであり得る。ALSについて現在2個の米国FDA承認処置がある:リルゾールおよびエダラボン。両薬物はALSの進行を減速することが示されている。リルゾールおよびエダラボンに加えて、ALSを有する対象はまた疾患の特定の症状を標的とする薬物でも処置され得る。薬物の例は、鎮痙剤(例えば、バクロフェン、ダントロレンおよびジアゼパム)などの痙縮を軽減する薬物;アミトリプチリン、カルバマゼピン、デュロキセチン、ギャバペンチン、ラモトリジン、ミルナシプラン、ノルトリプチリン、プレガバリンおよびベンラフェキシンなどの神経疼痛の管理を助ける薬物;およびトリヘキシフェニジルまたはアミトリプチリンなど患者の嚥下を助ける薬物を含むが、これらに限定されない。
【0285】
ある実施態様において、さらなる治療剤は、パーキンソン病の処置のためであり得る。パーキンソン病の現在の処置は、カルビドパ-レボドパ;プラミペキソール、ロピニロールおよびロチゴチンなどのドーパミンアゴニスト;セレギリン、ラサギリンおよびサフィナミドなどのMAO B阻害剤;エンタカポンおよびトルカポンなどのカテコールO-メチルトランスフェラーゼ阻害剤;ベンズトロピンおよびトリヘキシフェニジルなどの抗コリン剤;およびアマンタジンを含むが、これらに限定されない。
【0286】
第二治療剤はハンチントン病の処置のためであり得る。ハンチントン病の現在の処置は、テトラベナジン;ハロペリドール、クロルプロマジン、リスペリドンおよびクエチアピンなどの抗精神病剤;アマンタジン;レベチラセタム;クロナゼパム;シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチンおよびセルトラリンなどの抗うつ剤;およびバロプロエート、カルバマゼピンおよびラモトリジンなどの抗痙攣剤を含むが、これらに限定されない。
【0287】
E. 体重減少の処置
ある実施態様において、開示されるAkt3モジュレーターを、カヘキシーまたは極度の体重減少の処置に使用するさらなる治療剤と共に対象に投与し得る。カヘキシーおよび極度の体重減少の処置の現在の戦略は、適切な栄養摂取を確実にするための食欲増進剤を使用する食欲の改善である。食欲増進剤、栄養補充、5-HT3アンタゴニストおよびCox-2阻害剤での薬理学的介入ががんカヘキシーの処置に使用されている。
【0288】
ある実施態様において、食欲刺激剤は、亜鉛、チアミンまたは魚油を含むが、これらに限定されない、ビタミン、ミネラルまたはハーブである。他の実施態様において、食欲増進剤は、ドロナビノール、メゲストロールおよびオキサンドロロンを含むが、これらに限定されない医薬である。
【0289】
前記明細書において、本発明はそのある実施態様に関連して記載され、多くの詳細が説明の目的で記載されているが、本発明はさらなる実施態様を受け入れる余地があり、ここに記載する詳細の一部は、本発明の基本的原理から逸脱することなく相当に変え得ることは当業者に認識される。
【0290】
ここに引用する全ての引用文献は、その全体を引用により本明細書に包含させる。本発明は、精神またはその必須の特質から逸脱することなく、他の具体的形態に具現化でき、よって、本発明の範囲を示すものとして、前記明細書ではなく、添付する特許請求の範囲を参照すべきである。
【配列表】
2023525758000001.app
【国際調査報告】