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特表2023-525763抗ウイルスドライクリーニングプロセス
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  • 特表-抗ウイルスドライクリーニングプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】抗ウイルスドライクリーニングプロセス
(51)【国際特許分類】
   D06L 1/02 20060101AFI20230612BHJP
   C12N 7/04 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
D06L1/02
C12N7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567896
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2021030237
(87)【国際公開番号】W WO2021225897
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/021,788
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/171,362
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522435377
【氏名又は名称】グリーンアース・クリーニング・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・リエン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・マックスウェル
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065BD08
4B065BD13
(57)【要約】
ウイルスで汚染された材料を処理する方法であって、材料を蒸気へ曝露することを含み、蒸気がドライクリーニング溶媒を加熱し及び/または蒸発させることによって生成され、方法がウイルスを少なくとも部分的に不活化する、方法が本明細書で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2ウイルスまたはその変異体で汚染された材料を処理する方法であって、前記材料を蒸気、熱、及びドライクリーニング溶媒へ曝露することを含み、前記蒸気が、ドライクリーニング溶媒を加熱し及び/または蒸発させることによって生成され、前記方法が前記ウイルスを少なくとも部分的に不活化する、前記方法。
【請求項2】
前記材料が、ドライクリーニングプロセスの洗浄サイクル中、ドライクリーニングプロセスの乾燥サイクル中、または両方の組み合わせの間に前記熱、蒸気、及びドライクリーニング溶媒へ曝露される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料及びドライクリーニング溶媒が、ドライクリーニング機のチャンバへ添加される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、
a)前記材料をドライクリーニング溶媒へ曝露するステップ、続いて、
b)前記ドライクリーニング溶媒を加熱して蒸気を形成するステップ
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ドライクリーニング溶媒が、さらに水を含み、蒸気が、ドライクリーニング溶媒及び水を加熱することによって生成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記材料が、前記蒸気へ3~75分間曝露される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記材料が、布である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記布が、衣料品または家庭用布製品である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記材料が、ポリプロピレン繊維を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記蒸気が、ドライクリーニングプロセスの一部として生成される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記蒸気が、ドライクリーニングプロセスの乾燥サイクル中に生成される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記蒸気が、ドライクリーニングプロセスの洗浄サイクル中に生成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記蒸気が、少なくとも70℃の温度に達する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ドライクリーニング溶媒が、少なくとも60℃の引火点を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ウイルスが脂質含有コーティングを有し、前記方法が前記脂質含有コーティングを破壊する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記蒸気が、ドライクリーニング溶媒及び水を加熱し及び/または蒸発させることによって生成される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記蒸気が、前記ウイルスの前記脂質含有コーティングに浸透する溶媒のミクロンレベルに満たない液体粒子を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ドライクリーニング溶媒が、シロキサン系溶媒である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記シロキサン系溶媒が、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、オクタメチルテトラシクロシロキサン、またはドデカメチルヘキサシクロシロキサンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記シロキサン系溶媒が、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記蒸気が、回転ドラム内で生成され、前記ドラムは、前記蒸気が前記材料に接触するように前記材料を転がす、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記蒸気が、0.5psi~1000psiの圧力で前記回転ドラム内へと注入される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記材料が、毛、ポリエステル及び/またはポリエステル混紡繊維を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記材料が、綿、麻、毛、レーヨン、ポリエステル、アクリル、絹、もしくはナイロン、またはそれらの混紡物を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
SARS-CoV-2ウイルスまたはその変異体で汚染された材料を処理する方法であって、前記材料をドライクリーニング溶媒へ曝露すること、続いて前記溶媒が除去される45℃~85℃の乾燥ステップを含み、前記方法が前記ウイルスを少なくとも部分的に不活化する、前記方法。
【請求項26】
前記材料が、布である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記布が、衣料品または家庭用布製品である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ドライクリーニングプロセスの一部である、請求項25~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ドライクリーニング溶媒が、シロキサン系溶媒である、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記シロキサン系溶媒が、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、オクタメチルテトラシクロシロキサン、またはドデカメチルヘキサシクロシロキサンである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記シロキサン系溶媒が、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記乾燥サイクルが、3~75分にわたって行われる、請求項25~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記材料が、毛、ポリエステル及び/またはポリエステル混紡繊維を含む、請求項25~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記材料が、綿、麻、毛、レーヨン、ポリエステル、アクリル、絹、もしくはナイロン、またはそれらの混紡物を含む、請求項25~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
SARS-CoV-2またはその変異体で汚染された材料を処理する方法であって、前記材料を蒸気へ曝露することを含み、前記蒸気が、ドライクリーニング溶媒を加熱し及び/または蒸発させることによって生成され、前記方法が前記ウイルスを少なくとも部分的に不活化する、前記方法。
【請求項36】
SARS-CoV-2またはその変異体で汚染された材料を処理する方法であって、前記材料を熱及びドライクリーニング溶媒へ曝露することを含み、前記方法が前記ウイルスを少なくとも部分的に不活化する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年4月6日出願の米国仮出願第63/171,362号、及び2020年5月8日出願の米国仮出願第63/021,788号の優先権を主張する。これらの出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ウイルスは、生物の生細胞内でのみ複製する超顕微鏡的感染因子である。多くのウイルスは、動物及びヒトからの免疫応答を回避し、慢性感染症をもたらす。COVID-19を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2は、一般的にヒトの間で循環しかつ風邪のような軽症の病気を引き起こすコロナウイルスと同じではない。SARS-CoV-2が衣類上でどれだけ長く生き残ることができるかは依然として不明であるが、専門家は、ウイルスの伝播を制御するのを助けるよう、衣類及び他の材料を洗濯するときに注意することを推奨している。
【0003】
ウイルスを安全に除去するために、衣類、家庭用布製品、及び個人用保護具を適切に処理する必要性がなおも存在する。
【発明の概要】
【0004】
SARS-CoV-2ウイルスまたはその変異体で汚染された材料を処理する方法であって、材料を蒸気、熱、及びドライクリーニング溶媒へ曝露することを含み、蒸気が、ドライクリーニング溶媒を加熱し及び/または蒸発させることによって生成され、方法がウイルスを少なくとも部分的に不活化する、方法が本明細書で提供される。
【0005】
本方法の実施形態において、材料は、ドライクリーニングプロセスの洗浄サイクル中、ドライクリーニングプロセスの乾燥サイクル中、または両方の組み合わせの間に熱、蒸気、及びドライクリーニング溶媒へ曝露される。本方法の別の実施形態において、材料及びドライクリーニング溶媒は、ドライクリーニング機のチャンバへ添加される。
【0006】
本方法の実施形態において、蒸気は蒸発プロセス中に生成され、液体は気体へ変換される。本方法の実施形態において、蒸発プロセスが行われ、熱の適用で液体が気体へ変換される。本方法の別の実施形態において、蒸発プロセスが行われ、圧力の適用で液体が気体へ変換される。
【0007】
本方法の実施形態において、蒸気は、ドライクリーニングプロセスの一部として生成される。蒸気は、ドライクリーニングプロセスの乾燥サイクル、またはドライクリーニングプロセスの洗浄サイクル中に生成することができる。本方法の実施形態において、蒸気は少なくとも70℃の温度に達する。本方法の別の実施形態において、ドライクリーニングのチャンバは、70℃~85℃の温度に加熱される。
【0008】
本方法のさらに別の実施形態において、本方法は、
a)材料をドライクリーニング溶媒へ曝露し、続いて、
b)ドライクリーニング溶媒を加熱して蒸気を形成すること
を含む。
【0009】
本方法の実施形態において、ドライクリーニング溶媒はさらに水を含み、蒸気は、ドライクリーニング溶媒及び水を加熱することによって生成される。
【0010】
本方法の実施形態において、材料は、蒸気へ3~75分間曝露される。
【0011】
本方法の実施形態において、材料は、布である。さらなる実施形態において、布は、衣料品または家庭用布製品である。さらに別の実施形態において、材料はポリプロピレン繊維を含む。
【0012】
本方法の実施形態において、蒸気は、ドライクリーニングプロセスの一部として生成される。さらなる実施形態において、蒸気は、ドライクリーニングプロセスの乾燥サイクル中に生成される。さらに別の実施形態において、蒸気は、ドライクリーニングプロセスの洗浄サイクル中に生成される。実施形態において、蒸気は少なくとも70℃の温度に達する。本方法の別の実施形態において、ドライクリーニングのチャンバは、70℃~85℃の温度に加熱される。
【0013】
実施形態において、ドライクリーニング溶媒は、少なくとも60℃の引火点を有する。実施形態において、材料は、蒸気へ3~75分間曝露される。実施形態において、蒸気は、ドライクリーニング溶媒及び水を加熱し及び/または蒸発させることによって生成される。
【0014】
実施形態において、ウイルスは脂質含有コーティングを有し、本方法はこの脂質含有コーティングを破壊する。実施形態において、蒸気は、ウイルスの脂質コーティングに浸透する溶媒のミクロンレベルに満たない液体粒子を含む。実施形態において、ウイルスは脂質含有コーティングまたは脂質含有エンベロープを有し、本方法はこの脂質含有コーティングを破壊しまたは崩壊させる。実施形態において、蒸気は、ウイルスの脂質含有コーティングに浸透する溶媒のミクロンレベルに満たない液体粒子を含む。
【0015】
実施形態において、蒸気は、ドライクリーニング溶媒及び水を加熱し及び/または蒸発させることによって生成される。さらなる実施形態において、蒸気は、ウイルスの脂質含有コーティングに浸透する溶媒のミクロンレベルに満たない液体粒子を含む。
【0016】
本方法の実施形態において、ドライクリーニング溶媒は、シロキサン系溶媒である。本方法のさらなる実施形態において、シロキサン系溶媒は、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、オクタメチルテトラシクロシロキサン、またはドデカメチルヘキサシクロシロキサンである。本方法のさらに別の実施形態において、シロキサン系溶媒は、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)である。
【0017】
本方法の別の実施形態において、蒸気は、蒸気が材料に接触するように材料を転がさせる回転ドラム内で生成される。本方法のさらに別の実施形態において、蒸気は、0.5psi~1000psiの圧力で回転ドラム内へと注入される。
【0018】
本方法のさらに別の実施形態において、布は、衣料品または家庭用繊維製品である。本方法の別の実施形態において、材料は、毛、ポリエステル及び/またはポリエステル混紡繊維を含む。本方法のさらに別の実施形態において、材料は、綿、麻、毛、レーヨン、ポリエステル、アクリル、絹、もしくはナイロン、またはそれらの混紡物を含む。
【0019】
別の態様において、SARS-CoV-2ウイルスまたはその変異体で汚染された材料を処理する方法であって、材料をドライクリーニング溶媒へ曝露すること、続いて溶媒が除去される45℃~85℃の乾燥ステップを含み、方法がウイルスを少なくとも部分的に不活化する、方法が本明細書で提供される。
【0020】
実施形態において、本方法は、ドライクリーニングプロセスの一部である。
【0021】
本方法の実施形態において、乾燥サイクルは、3~75分にわたって行われる。
【0022】
本方法の実施形態において、ドライクリーニング溶媒は、シロキサン系溶媒である。さらなる実施形態において、シロキサン系溶媒は、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、オクタメチルテトラシクロシロキサン、またはドデカメチルヘキサシクロシロキサンである。好ましい実施形態において、シロキサン系溶媒は、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)である。
【0023】
本方法の別の実施形態において、材料は、布である。本方法の別の実施形態において、布は、衣料品または家庭用繊維製品である。本方法の別の実施形態において、材料は、毛、ポリエステル及び/またはポリエステル混紡繊維を含む。本方法のさらに別の実施形態において、材料は、綿、麻、毛、レーヨン、ポリエステル、アクリル、絹、もしくはナイロン、またはそれらの混紡物を含む。別の実施形態において、材料はまた、ポリプロピレン繊維を含むこともできる。さらに別の実施形態において、材料は、天然皮革を含む。
【0024】
別の態様において、SARS-CoV-2またはその変異体で汚染された材料を処理する方法であって、材料を蒸気へ曝露することを含み、蒸気が、ドライクリーニング溶媒を加熱し及び/または蒸発させることによって生成され、方法がウイルスを少なくとも部分的に不活化する、方法が本明細書で提供される。
【0025】
さらに別の態様において、SARS-CoV-2またはその変異体で汚染された材料を処理する方法であって、材料を熱及びドライクリーニング溶媒へ曝露することを含み、方法がウイルスを少なくとも部分的に不活化する、方法が本明細書で提供される。
【0026】
別の実施形態において、蒸気は、蒸気が材料に接触するように材料を転がさせる回転ドラム内で生成される。実施形態において、材料は、SARS-CoV-2で汚染されていると特定されているか、またはSARS-CoV-2で汚染されている可能性がある材料である。さらに別の実施形態において、蒸気は、0.5psi~1000psiの圧力で回転ドラム内へと注入される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】試験系の図を示す。
図2】SARS-CoV-2に感染した毛混紡布材料の失活における模倣されたドライクリーニングプロセス及び全プロセスの各々の低減有効性の対数百分率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ウイルスで汚染された材料を処理する方法が本明細書で提供される。材料は、衣料品または、ブランケット、タオル、もしくはテーブルクロスなどの家庭用布製品などの、布であり得る。材料はまた、衣類、リネン、シート、ブランケット、ラグ、カーペット、ドレープ、コート、及びその混合物でもあり得る。他の実施形態において、材料は、布で作られたいずれかの物品である。他の実施形態において、材料は、天然皮革で作られたいずれかの物品である。
【0029】
実施形態において、材料は、SARS-CoV-2で汚染されていると特定されているか、またはSARS-CoV-2で汚染されている可能性がある材料である。
【0030】
実施形態において、本方法は、ウイルスを不活化するために材料へ導入される蒸気に依存している。必要に応じて、蒸気は、特定の温度及び/または圧力で生成される。蒸気は、ドライクリーニングプロセスの一部として材料へ曝露することができる。蒸気の供給源は、D5などのドライクリーニング溶媒など、溶媒であり得る。蒸気は、ドライクリーニングプロセスの洗浄サイクルまたは乾燥サイクルなど、ドライクリーニングプロセスの1つ以上のサイクル中に生成することができる。蒸気の供給源はまた、水蒸気を単独で、またはドライクリーニング溶媒と組み合わせて生成する、水でもあり得る。
【0031】
したがって、態様において、ウイルスで汚染された材料を処理する方法であって、材料を蒸気、熱、及びドライクリーニング溶媒へ曝露することを含む、方法が本明細書で提供される。実施形態において、ウイルスは、SARS-CoV-2またはその変異体である。蒸気は、ドライクリーニング溶媒を加熱し及び/または蒸発させることによって生成することができる。蒸気、熱、及びドライクリーニング溶媒は、ドライクリーニングプロセスの一部として材料へ曝露することができる。実施形態において、ドライクリーニング溶媒は、D5である。蒸気の供給源は、D5などのドライクリーニング溶媒など、溶媒であり得る。蒸気は、ドライクリーニングプロセスの洗浄サイクルまたは乾燥サイクルなど、ドライクリーニングプロセスの1つ以上のサイクル中に生成することができる。蒸気の供給源はまた、水蒸気を単独で、またはドライクリーニング溶媒と組み合わせて生成する、水でもあり得る。
【0032】
したがって、態様において、ウイルスで汚染された材料を処理する方法であって、材料を熱及びドライクリーニング溶媒へ曝露することを含む、方法が本明細書で提供される。実施形態において、ウイルスは、SARS-CoV-2またはその変異体である。熱及びドライクリーニング溶媒は、ドライクリーニングプロセスの一部として材料へ曝露することができる。実施形態において、ドライクリーニング溶媒は、D5である。材料は、ドライクリーニングプロセスの洗浄サイクルまたは乾燥サイクルなど、ドライクリーニングプロセスの1つ以上のサイクル中に熱へ曝露することができる。
【0033】
材料は、衣類、リネン、シート、ブランケット、ラグ、カーペット、ドレープ、コート、及びそれらの混合物などの衣料品または家庭用布製品など、布であり得る。材料はまた、n95マスクなどの個人用保護具においてみつけることができるポリプロピレン繊維を含むこともできる。材料はまた、毛、ポリエステル及び/またはポリエステル混紡繊維を含むことができる。
【0034】
材料は、綿、麻、毛、レーヨン、ポリエステル、アクリル、絹、もしくはナイロン、またはそれらの混紡物を含む。
【0035】
他の実施形態において、材料は、毛から構成された布で作られたいずれかの物品である。他の実施形態において、材料は、ポリエステルから構成された布で作られたいずれかの物品である。他の実施形態において、材料は、ポリエステル及び毛から構成された布で作られたいずれかの物品である。他の実施形態において、材料は、ポリエステル混紡物から構成された布で作られたいずれかの物品である。さらに別の実施形態において、布は、毛、ポリエステル及び/またはポリエステル混紡物の組み合わせから構成される。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「COVID-19」は、コロナウイルスSARS-CoV-2及びその新興変異体によって引き起こされる伝染病を指す。Covid-19としても公知のCOVID-19は、2019年12月に中国武漢市を起源とした世界的パンデミックを招いたウイルス性疾患である。COVID-19は、無症状から生命を脅かす疾患にまで及ぶ広範な症状を特徴とする。重症の症例は、典型的には、呼吸器系の易感染性及び/または心血管系の虚脱を包含し、多臓器不全及び/または死亡につながる可能性がある。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ウイルスを不活化する」とは、宿主細胞に感染する、及び/または宿主細胞内で複製する、ウイルスの能力を低減させることを意味する。いくつかの実施形態において、「ウイルスを不活化する」は、対象において疾患を引き起こすウイルスの能力を低減させることを意味する。いくつかの実施形態において、「ウイルスを不活化する」は、重症の疾患が呼吸系の不全もしくは不全症及び/または心血管系の不全もしくは不全症を特徴とする対象において、重度の疾患を引き起こすウイルスの能力を低減させることを意味する。例えば、以下に限定するものではないが、ウイルスの脂質含有コーティングまたは脂質含有エンベロープの破壊または崩壊は、ウイルスの不活化をもたらす。SARS-CoV-2は、脂質二重層によって取り囲まれたエンベロープつきのウイルスである。
【0038】
SARS-CoV-2またはその変異体など、ウイルスは、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%不活化することができる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」は、ウイルスに感染することができるいずれかの細胞を指す。ある特定の実施形態において、宿主細胞は、天然に存在する哺乳動物細胞である。ある特定の実施形態において、宿主細胞は、細胞株の一部である。ある特定の実施形態において、宿主細胞は、ウイルスに感染することができるように改変された哺乳動物細胞である。ある特定の実施形態において、宿主細胞は、対象の細胞である。
【0040】
本明細書で使用される場合、「対象」は、哺乳動物である。ある特定の実施形態において、対象は、マウス、ラット、コウモリ、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ウシ、非ヒト霊長類、及びヒトからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、対象は、ヒトである。
【0041】
実施形態において、溶媒及び/または水を含む蒸気が、本明細書に説明する温度及び/または圧力でシステム内へと導入される、水含有または非含有の溶媒を用いた標準的なドライクリーニングプロセス中に、コロナウイルスなどのウイルスは不活化される。別の実施形態において、コロナウイルスなどのウイルスは、洗浄サイクルまたは乾燥サイクルのいずれかの途中で、D5などのドライクリーニング溶媒から生成された蒸気で不活化される。実施形態において、ドライクリーニング溶媒蒸気は、水からの水蒸気を含まない。別の実施形態において、ドライクリーニング溶媒蒸気は、D5と、水からの水蒸気と、を含む。さらに別の実施形態において、蒸気は水からの水蒸気であり、蒸気はいかなるドライクリーニング溶媒も含まない。別の実施形態において、コロナウイルスなどのウイルスは、洗浄サイクルまたは乾燥サイクルのいずれかの途中で、D5などのドライクリーニング溶媒で不活化される。別の実施形態において、コロナウイルスなどのウイルスは、洗浄サイクルまたは乾燥サイクルのいずれかの途中で、熱及び、D5などのドライクリーニング溶媒で不活化される。
【0042】
したがって、ウイルスで汚染された材料を処理する方法であって、材料を蒸気へ曝露することを含み、蒸気が、ドライクリーニング溶媒を加熱し及び/または蒸発させることによって生成され、方法がウイルスを少なくとも部分的に失活させる、方法が本明細書で提供される。材料は、衣類、リネン、シート、ブランケット、ラグ、カーペット、ドレープ、コート、及びそれらの混合物などの衣料品または家庭用布製品など、布であり得る。材料はまた、n95マスクなどの個人用保護具においてみつけることができるポリプロピレン繊維を含むこともできる。材料はまた、毛、ポリエステル及び/またはポリエステル混紡繊維を含むことができる。
【0043】
実施形態において、材料は、SARS-CoV-2で汚染されていると特定されているか、またはSARS-CoV-2で汚染されている可能性がある材料である。
【0044】
実施形態において、材料が、本明細書に説明する温度及び/または圧力でドライクローニング溶媒へ曝露される、熱及びドライクリーニング溶媒を用いた標準的なドライクリーニングプロセス中に、コロナウイルスなどのウイルスは不活化される。別の実施形態において、コロナウイルスなどのウイルスは、洗浄サイクルまたは乾燥サイクルのいずれかの途中で、D5などのドライクリーニング溶媒で不活化される。別の実施形態において、ドライクリーニング溶媒は、D5と、水と、を含む。
【0045】
ウイルスで汚染された材料を処理する方法であって、材料を熱及びドライクリーニング溶媒へ曝露することを含む、方法であって、ウイルスを少なくとも部分的に不活化する、方法が、本明細書に提供される。材料は、衣類、リネン、シート、ブランケット、ラグ、カーペット、ドレープ、コート、及びそれらの混合物などの衣料品または家庭用布製品など、布であり得る。材料はまた、n95マスクなどの個人用保護具においてみつけることができるポリプロピレン繊維を含むこともできる。材料はまた、綿、麻、毛、レーヨン、ポリエステル、アクリル、絹、もしくはナイロン、またはそれらの混紡物を含むこともできる。
【0046】
実施形態において、材料が、本明細書に説明する温度及び/または圧力でドライクローニング溶媒へ曝露される、蒸気、熱及びドライクリーニング溶媒を用いた標準的なドライクリーニングプロセス中に、コロナウイルスなどのウイルスは不活化される。別の実施形態において、蒸気は、本明細書に説明する温度及び/または圧力でシステム内へと導入される。別の実施形態において、コロナウイルスなどのウイルスは、洗浄サイクルまたは乾燥サイクルのいずれかの途中で、D5などのドライクリーニング溶媒で不活化される。別の実施形態において、ドライクリーニング溶媒は、D5と、水と、を含む。別の実施形態において、コロナウイルスなどのウイルスは、洗浄サイクルまたは乾燥サイクルのいずれかの途中で、D5などのドライクリーニング溶媒から生成された蒸気で不活化される。実施形態において、ドライクリーニング溶媒蒸気は、水からの水蒸気を含まない。別の実施形態において、ドライクリーニング溶媒蒸気は、D5と、水からの水蒸気と、を含む。さらに別の実施形態において、蒸気は水からの水蒸気であり、蒸気はいかなるドライクリーニング溶媒も含まない。
【0047】
ウイルスで汚染された材料を処理する方法であって、材料を蒸気、熱及びドライクリーニング溶媒へ曝露することを含み、方法がウイルスを少なくとも部分的に不活化する、方法が、本明細書に提供される。材料は、衣類、リネン、シート、ブランケット、ラグ、カーペット、ドレープ、コート、及びそれらの混合物などの衣料品または家庭用布製品など、布であり得る。材料はまた、n95マスクなどの個人用保護具においてみつけることができるポリプロピレン繊維を含むこともできる。材料はまた、綿、麻、毛、レーヨン、ポリエステル、アクリル、絹、もしくはナイロン、またはそれらの混紡物を含むこともできる。
【0048】
本明細書で提供される方法は、いずれかの数のウイルスを処理するために使用することができる。本明細書で開示される方法によって処理することができるウイルスとしては、例えば、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス、肝炎、及びポリオウイルスがある。実施形態において、ウイルスは、コロナウイルスである。別の実施形態において、ウイルスは脂質含有コーティングを有し、本方法はこの脂質含有コーティングを破壊しまたは崩壊させる。
【0049】
非限定的な実施形態において、衣料品または家庭用布製品など、布は、機械の中枢部を構成する洗浄チャンバまたは抽出チャンバ(「バスケット」または「ドラム」と称される)内に置かれる。洗浄チャンバは、外殻内で回転する有孔ドラムを備えている。回転ドラムが衣類の負荷を保持している間、この外殻は溶媒を保持する。
【0050】
態様において、SARS-CoV-2ウイルスまたはその変異体で汚染された材料を処理する方法であって、材料を蒸気、熱、及びD5へ曝露することを含み、蒸気が、D5を加熱し及び/または蒸発させることによって生成され、方法がウイルスを少なくとも部分的に不活化する、方法が本明細書で提供される。
【0051】
ドライクリーニングプロセス
実施形態において、ドライクリーニングプロセスは、ウイルスを不活化する追加のステップを有する通常のドライクリーニングプロセスの要素を含有する。実施形態において、ウイルスは、SARS-CoV-2またはその変異体である。ドライクリーニングプロセスは、2つのサイクル、すなわち、洗浄サイクル及び乾燥サイクルのコースにわたって実施される。ウイルスの不活化は、洗浄サイクル、乾燥サイクル、または両方のサイクルにおいて行うことができる。各サイクルは、いくつかのステップを組み合わせることによって行われる。各ステップは、所望の結果を生むようにカスタマイズすることができる。ドライクリーニング機は、清潔にしたい衣類または布の種類に応じて様々なプロセスを実行することができる。
【0052】
第1のサイクルは、洗浄サイクルである。洗浄サイクル中、チャンバは衣類を濡らす溶媒で部分的に満たされ、チャンバは回転し始める。回転は、清潔にしたい衣類または他の布を揺り動かす。実施形態において、溶媒温度は、外界温度であり得る。別の実施形態において、溶媒温度は、必要に応じて温度を上昇または低下させることによって制御することができる。洗浄ステップ中、チャンバ内の溶媒は、チャンバから出て循環し、次いでチャンバ内へと戻り、衣類または他の布を飽和させる。別の実施形態において、溶媒は、チャンバへ戻る前に、フィルタを通過する。別の実施形態において、溶媒フィルタは、フィルタが使用される前の所与の時間、迂回される。このプロセスは、洗浄ステップとして公知であり、洗浄の持続時間に継続される。別の実施形態において、次いで溶媒が除去され、蒸留チャンバと濃縮器とからなる蒸留ユニットへ送られる。濃縮溶媒は、溶媒中の水が溶媒から分離される分離部へと供給される。次いで、残りの溶媒が「清潔な溶媒」タンクへと供給される。別の実施形態において、溶媒は次いで、取り出され、保持タンクに戻される。
【0053】
典型的な洗浄ステップは、本明細書に説明する分レベルの時間数だけ続く。ドライクリーニング溶媒に加えて、ドライクリーニング石鹸または他の洗浄助剤を添加することもできる。
【0054】
実施形態において、ウイルスの不活化は、洗浄サイクルへと組み込まれる。ウイルスの不活化は、衣類が転がっている間にチャンバ内へと導入された蒸気からなる。蒸気は、シリコーン流体から構成される。蒸気は、外部でつくられ、チャンバへ導入することができる。蒸気はまた、すでにチャンバ内にある流体によってつくることもできる。
【0055】
実施形態において、衣類は、シリコーン流体で飽和させ、次いで加熱する。流体は蒸発し、衣類はその存在下で転がされる。これは、蒸気ステップと呼ばれる。蒸気ステップは、所定の時間続く。蒸気ステップは、洗浄ステップの前、洗浄ステップ中、または洗浄ステップの後であり得る。別の実施形態において、蒸気ステップは洗浄ステップに取って代わる。
【0056】
洗浄ステップの終了時に、本機は、溶媒タンクの1つから分注された新たに蒸留または濾過された溶媒で布をすすぐ、すすぎステップを開始することができる。このプロセスは、「第2の浴」または「すすぎステップ」として公知である。実施形態において、蒸気ステップは、すすぎステップ中に行われる。別の実施形態において、蒸気ステップは、すすぎステップの後に行われる。
【0057】
すすぎステップの後、本機は、衣類または他の布に残っている溶媒の一部を、遠心力を介して抽出する抽出ステップを開始する。現代の機械は、採用される溶媒の大部分を回収することができる。抽出ステップは、溶媒を洗浄チャンバから排出し、バスケットを40rpmから1000rpmまで加速させることによって開始し、溶媒のほとんどを布からスピンして遊離させる。実施形態において、抽出は、単一の速度で行われる。別の実施形態において、抽出は、一連のステップにわたって複数の速度で行われる。抽出後、本機は乾燥サイクルを開始する。
【0058】
乾燥サイクルは、2つのステップからなる。第1のステップは、乾燥ステップである。乾燥ステップ中、衣類は、バスケットを通って循環する温風流の中で転がされる。空気の温度は、所望の温度へ制御される。衣類または織物内の残りの溶媒は、暖気中で蒸発する。次いで、暖気排出物は、空気流よりも低温の冷却蒸発器上に引き込まれ、溶媒は濃縮する。次いで、濃縮溶媒は、溶媒中の水が溶媒から分離される分離部へと供給される。次いで、残りの溶媒が、再利用のために保持タンクへと供給される。現代のドライクリーニング機は、冷却された空気が再加熱及び再循環される閉ループ系を採用している。これにより、高い溶媒回収率及び空気排出量の低減をもたらす。
【0059】
乾燥ステップが完了した後、クールダウンステップが開始される。このステップにおいて、熱がなくなり、空気がバスケット、次いで、冷却蒸発器上を通過し続けることができる。次いで、冷空気はバスケット内へ戻り、さらにバスケット及びバスケット内の衣類を冷却する。このことは、所望の温度に達するまでバスケット内部の空気温を下げる効果を有する。温度がより低いと、しわが減ることができ、完成した衣類を作業者が安全に取り扱うことができる。
【0060】
実施形態において、蒸気ステップは、乾燥サイクル内へ組み込まれる。蒸気ステップは、乾燥ステップの前、乾燥ステップ中、または乾燥ステップの後に行うことができる。蒸気ステップは、クールダウンステップの前、クールダウンステップ中、またはクールダウンステップの後に行うこともできる。実施形態において、衣類は洗浄サイクルの後に穏やかに抽出される。光抽出は、低い抽出速度または高い抽出速度を短時間利用することによって行うことができる。乾燥ステップが始まり、衣類が加熱される。衣類が十分な温度に達すると、バスケット内での空気の移動が一時的に停止され、蒸気が衣類とより長く接触したままになれる。衣類は、多量の蒸気との接触を促進するために蒸気中で転がされる。十分な時間の後、乾燥ステップは、最大空気循環に戻る。一実施形態において、衣類は、乾燥ステップを再開する前にもう一度抽出を受ける。乾燥サイクル内では複数の蒸気ステップが存在し得る。
【0061】
クールダウンステップの後、乾燥サイクルはここで完了し、したがってドライクリーニングプロセスは完了する。ドライクリーニングプロセスの後、衣類は清潔であり、プレス加工及び仕上げ加工の準備ができている。
【0062】
ウイルスの不活化は通常、標準的なドライクリーニングプロセスへと組み込まれているが、実施形態では、ウイルスの不活化は、ドライクリーニングプロセスの非存在下で行うことができる。例えば、衣類を蒸気に通し、次いで連続プロセスで乾燥させることができる。一実施形態において、ウイルスで汚染された材料は、ドライクリーニング溶媒を使用して物品をドライクリーニングするためのシステム及び方法によって処理される。
【0063】
実施形態において、材料及びドライクリーニング溶媒がチャンバに入れられる。材料は、濾過の有無にかかわらず、または段階的な組み合わせで所与の時間、洗浄される。実施形態において、ドライクリーニング溶媒の一部は、所与の速度で所与の時間、チャンバを加速することによって抽出される。実施形態において、チャンバは、より低速の所与の速度で加速し、所与の温度に達するまで加熱される。実施形態において、加熱が停止し、蒸気が材料の周りに及び材料を通過するように形成される。さらなる実施形態において、このステップは所与の期間続き、その後、チャンバは所与の速度まで加速し、材料から残りの溶媒を除去する。
【0064】
したがって、SARS-CoV-2で汚染された材料を処理する方法であって、材料を蒸気、熱、及びドライクリーニング溶媒へ曝露することを含む、方法が本明細書で提供される。実施形態において、材料は、D5などのドライクリーニング溶媒へ曝露される。このステップは、「洗浄サイクル」と称することができ、ドライクリーニング機のチャンバ内で行うこともできる。曝露は、本明細書に説明するいずれかの継続時間で行うことができる。次いで、ドライクリーニング溶媒の一部を場合により、例えば、抽出によって除去することができる。次いで、材料及びドライクリーニング溶媒は、本明細書に説明する温度のいずれかに加熱され、ドライクリーニング溶媒蒸気が材料の周り及び材料を通過するように形成される。このステップは、「乾燥サイクル」と称することができる。このステップはまた、ドライクリーニング機のチャンバ内で行うこともできる。材料は、本明細書に説明するいずれかの継続時間で蒸気へ曝露される。次いで、溶媒及び蒸気を除去することができる。このプロセスは、SARS-CoV-2を不活化する。本方法の実施形態において、ドライクリーニングのチャンバは、0℃~85℃の温度にある。本方法の別の実施形態において、ドライクリーニングのチャンバは、70℃~85℃の温度に加熱される。本方法のさらに別の実施形態において、ドライクリーニングのチャンバは、70℃~85℃の温度に加熱される。本方法のさらに別の実施形態において、ドライクリーニングのチャンバは、70℃の温度に加熱される。これらの温度は、洗浄サイクル中、乾燥サイクル中、またはその両方の間に生じ得る。
【0065】
ドライクリーニングプロセスは、いずれかの数のドライクリーニング機で行うことができる。かかる機械は、米国特許第8,613,804号及び第8,123,819号に説明されており、これらは両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
本明細書で有用なドライクリーニング溶媒には、いずれかの炭化水素及び、他の化学物質がブレンドされたいずれかの炭化水素が含まれる。加えて、本発明の方法で使用される溶媒は、有機シリコーン、すなわち有機/無機複合溶媒を含むことができる。本明細書で有用な有機シリコーンには、環状状シロキサン及び直鎖状シロキサンが含まれる。これらの環状シロキサン及び直鎖状シロキサンの化学的特徴は、本発明の例示的な実施形態によるドライクリーニングシステムが蒸留に依存せずに作動することを可能にする。
【0067】
その全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,042,618号に説明されているものなど、いずれかの適切な環状シロキサンまたは直鎖状シロキサンが、本発明とともに使用することができる。これらのシロキサンのうち、通常D5と称される五量体であるデカメチルシクロペンタシロキサンが現に好ましい。
【0068】
実施形態において、ドライクリーニング溶媒は、シロキサン系溶媒である。実施形態において、シロキサン系溶媒は、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、オクタメチルテトラシクロシロキサン、またはドデカメチルヘキサシクロシロキサンである。さらに別の実施形態において、シロキサン系溶媒は、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)である。
【0069】
実施形態において、ドライクリーニング溶媒は、少なくとも43℃、49℃、54℃、60℃、66℃、71℃、または77℃の引火点を有する。別の実施形態において、引火点は、54℃~66℃である。別の実施形態において、引火点は、57℃~63℃である。別の実施形態において、引火点は、少なくとも60℃である。別の実施形態において、引火点は、77℃である。
【0070】
実施形態において、材料は、蒸気へ3~75分間、10~70分間、15~65分間、20~60分間、25~55分間、30~50分間、または35~45分間曝露される。他の実施形態において、材料は、蒸気へ3、5、10、15、20、25、30、35、40,45、50、55、60、65、70、または75分間曝露される。この方法において、蒸気は、少なくとも50℃、少なくとも55℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、または少なくとも90℃の温度に達する。蒸気は、50℃~90℃、55℃~85℃、60℃~80℃、65℃~75℃、または68℃~72℃の温度に達することができる。
【0071】
実施形態において、材料は、ドライクリーニング溶媒へ3~75分間、5~75分間、10~70分間、15~65分間、20~60分間、25~55分間、30~50分間、または35~45分間曝露される。他の実施形態において、材料は、ドライクリーニング溶媒へ3、5、10、15、20、25、30、35、40,45、50、55、60、65、70、または75分間曝露される。
【0072】
この方法において、ドライクリーニング溶媒は、少なくとも50℃、少なくとも55℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃の温度に達する。乾燥溶媒は、50℃~90℃、55℃~85℃、60℃~80℃~、65℃~75℃、または68℃~72℃の温度に達することができる。本明細書で提供される方法の実施形態において、蒸気は、ドライクリーニングプロセスの一部として生成される。本方法の実施形態において、蒸気は、ドライクリーニングプロセスの乾燥サイクル中に生成される。他の実施形態において、蒸気は、ドライクリーニングプロセスの洗浄サイクル中に生成される。
【0073】
蒸気は、蒸気が材料に接触するように材料を転がさせる回転ドラム内で生成される。蒸気は、70psi、80psi、90psi、100psi、110psi、120psi、130psi、140psi、150psi、160psi、170psi、180psi、190psi、200psi、210psi、または220psiなどの0.5psi~1000psiなど、適切な圧力で回転ドラム内へ導入することができる。
【0074】
本方法の実施形態において、ドライクリーニングの回転ドラムまたはチャンバは、0℃~85℃の温度にある。本方法の別の実施形態において、ドライクリーニングの回転ドラムまたはチャンバは、70℃~85℃の温度に加熱される。本方法のさらに別の実施形態において、ドライクリーニングの回転ドラムまたはチャンバは、70℃~85℃の温度に加熱される。本方法のさらに別の実施形態において、ドライクリーニングの回転ドラムまたはチャンバは、70℃の温度に加熱される。これらの温度は、洗浄サイクル中、乾燥サイクル中、またはその両方の間に生じ得る。
【0075】
本明細書で提供される方法の実施形態において、ウイルスの100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%が不活化される。
【0076】
実施形態において、本明細書で提供される方法は、材料上のウイルスの量を低減させる。別の実施形態において、ウイルスの100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%が低減する。
【0077】
用語「蒸発させること」は、蒸気へと移行または変換することを指す。
【0078】
実験
I.目的
SARS-CoV-2に起因するCOVID-19感染と、その高率の伝播と関係する重症疾患及び死者と、に関する喫緊の脅威は、有効な対策の迅速な開発及び評価のために必要とされる応答を生み出した。試験及び評価は、SARS-CoV-2汚染布に対する模擬試験における修正されたドライクリーニングプロセスで行われた。ドライクリーニング流体、ドライクリーニング熱、洗浄サイクル及びスピンサイクル、ならびに乾燥プロセスにおける模擬洗浄サイクル中及び模擬乾燥サイクル中の蒸気効果の増強を、SARS-CoV-2の破壊における有効性を測定するための独立した試験で評価した。
【0079】
II.機器
1.熱源と、再循環ファンと、乾燥ごとくと、蒸気曝露マニホルドと、を備えた加熱キャビネット
2.K型熱電対を有するオメガデジタル温度モニタ
3.温度調節されたヒートブロックを有するSKC蒸気拡散セル
4.オメガデジタル流量計及び流量制御装置
5.Beckman社製遠心分離及びボルテックス機
6.電動タンブラー
【0080】
III.方法-試験の説明
試験されたクリーニング液は、シリコーン系の環境に優しく、非毒性で、危険のない、かつ石油化学物質に対する極めて穏やかな代替品として使用される。シリコーン系溶液は、ドライクリーニングプロセスにおける媒体として使用される。シリコーン媒体は、従来の洗浄に対する持続可能な代替物を提供し、必要とされる水量及び必要とされるエネルギー量を低減させる。この試験は、模擬ドライクリーニング試行における衣類材料からのSARS-CoV-2除染における有効性についてシリコーン系溶液を評価した。
【0081】
試験布は、71%の毛と、25%のポリエステルと、4%のポリエステルを密な材料の織り方で混紡したものからなっていた。シリコーンは、純粋なデカメチルシクロペンタシロキサン(100%D5)からなっていた。溶液(100%、D5)は、高い引火点(77℃)及び弱い表面張力(17.42ダイン/cm)を有し、ドライクリーニングプロセス中に布材料を通過して蒸発及び浸透を提供する。
【0082】
個々のドライクリーニングプロセスステップにおける具体的なドライクリーニング溶液(100%D5)、及び全体的なドライクリーニングプロセスを評価するために試験を行い、SARS-CoV-2汚染布の破壊における有効性を評価した。
【0083】
ドライクリーニングプロセスの対数低減効果を、エンベロープウイルス(SARS-CoV-2)株USA-WA1/2020に対して試験した。USA-WA1/2020の完全ゲノムは、すでに配列決定されている。分離株は、GenBank:MN985325であり、Vero細胞における1回継代後の株は、GenBank:MT020880である。SARS-CoV-2株USA-WA1/2020の完全ゲノムは、Database for Reference Grade Microbial Sequence(FDA-ARGOS)と協働して、4回継代後に配列決定されている(GenBank:MT246667)。研究に使用した各バイアルは、SARS-CoV-2分離株USA-WA1/2020に感染したCercopithecus aethiops腎細胞からのおおよそ0.5mLの細胞溶解物及び上清を含有していた。
【0084】
温度及び湿度が制御された生物学的レベル3の実験室環境において改変及び利用されるドライクリーニングプロセス。試験では、100% D5溶液洗浄培地を添加した、SARS-CoV-2接種毛混紡布試験片と、生存ウイルスの不活化における乾燥プロセス中に洗浄助剤、ドライクリーニング熱、及びシリコーン培地蒸気生成のない布試験片と、を試験した。
【0085】
追加の試験を行って、毛試験片由来のウイルスの洗浄及びすすぎ除去/不活化を評価した。試験結果の評価のために、陽性対照試験片を試験片と同様に調製し、試験した試験片と同じ時間経過にわたって標準的な室内環境条件で維持し、ドライクリーニングプロセスのいずれにも供しなかった。陽性対照試験片はウイルス濃度の標準として機能し、試験片由来のSARS-CoV-2ウイルスを不活化するうえでの様々なドライクリーニングプロセス条件の有効性を規定した。関係する試験、ヘッダ内の試験日、試験片の試験用加工、曝露条件、及び試料を示す試験マトリックスを表1に示す。
【表1】
【0086】
本研究の開始に先立って、毛混紡布材料試験試料をオートクレーブ蒸気滅菌して、試験布の潜在的な生物学的汚染または試料分析における汚染干渉を排除した。15分、30分、または45分のいずれかの3つの時間変数にわたって試験を行った。すべての試験についての検査試験片及び陽性ウイルス対照試験片を、既知の力価(範囲1×10~1×10pfu/mL)を有する一般的なウイルスストックを使用してクラス2の生物学的安全キャビネット内で調製した。溶液助剤で予め湿らせたか、乾燥させたか、または洗浄/すすぎ加工したかの(試験による)いずれかの個々の布試験片を、試験片及び試験識別を標識した滅菌ペトリ皿内に置いた。較正済みのマイクロピペットを用いて、試験片を、200mLのSARS-CoV-2ウイルスを含有している標準ストックウイルス懸濁液から接種した。次いで、このウイルス懸濁液を、滅菌細胞延展器を用いて試験片上を均一にコーティングした。コーティングした検査用試験片及び陽性対照試験片を、検査前に生物学的レベル2の安全キャビネット内で標準的な実験室条件で同じ時間経過(30~50分)にわたって風乾させた。ドライクリーニングサイクル中の以下の(1)熱、(2)熱及びシリコーン液体、ならびに(3)熱、シリコーン液体、及び蒸気生成、を評価するために検査を実施し、独立した試験試行において特性評価した。検査は、SARS-CoV-2の不活化における3つのドライクリーニングプロセスの各々を模擬するように装備された環境チャンバを使用して実施した。このチャンバは、滅菌済みの生物学的レベル2の安全キャビネット内に格納され、内部ヒータと、温度調節装置と、モニタと、制御装置と、を備えていた。クリーニングプロセスの乾燥相における熱レベルを模擬するすべての試験片曝露試験について、試験チャンバ内部温度を70℃に維持した。ファンを弱い流量で使用して試験チャンバ内に熱再循環及び温度均一性を提供し、較正済みのデジタル温度モニタを装備したチャンバの中心に配置されたK型熱電対プローブを使用して測定した。本研究の蒸気試験相のために、ヒートブロックで温度調節される拡散セルを試験チャンバに格納し、(D5)溶液蒸気の70℃フロー流への拡散のために80℃に調節した。各布試験片蒸気曝露試験に先立って、拡散セルを10mLの(D5)溶液で満たした。この拡散セルを、ドライクリーニングプロセスの乾燥サイクル中に生成された(D5)布洗浄溶液蒸気を模擬するために3つの試験片保持チューブのうちの1つに3つの検査用試験片を同時に格納するように設計された三分岐試験マニホルドに取り付けた。フローマニホルドは、試験片を横切る蒸気輸送のための内径1.5インチのチューブから構成された。空気流(70℃)を試験チャンバから拡散セルを横切って配向させ、3つの試験片保持位置の各々に蒸気負荷を提供した。1.5L/分の総流量を維持して、3つの検査用試験片の各々にわたって同時に、少量の流量(500cc/分)のシリコーン蒸気希釈物の送達を提供した。拡散セルからの(D5)溶液のおおよその蒸発速度は、45分間の試験継続時間にわたって3.6mLであった。この蒸気拡散速度は80μL/分に、体積生成速度は56μL/L空気に等しかった。蒸気マニホルド送達流には、バルブ制御を備えたGast回転ベーン真空ポンプと、試験中の流量を監視するためのデジタル流量計と、を設けた。非シリコーン蒸気曝露した試験片(熱にのみ供される)を、環境試験チャンバ内の穿孔鋼ラック上に置いた。試験系の図を図1に示す。
【0087】
洗浄及びすすぎプロセスを評価するために追加の試験を行った。すべての試験で使用したのと同じ種類の衣類(混毛)からのSARS-CoV-2の洗浄及びすすぎサイクルの除去/不活化の評価について、追加の試験を行った。これらの試験については、回転タンブラーを使用して、8ozの転置用メイソンジャー(displacement mason jar)内で、個々のSARS-CoV-2接種済み検査布試験片を転動させた。ジャーを3oz.または89mLの(100%D5)溶液で満たして、ドライクリーニングプロセスにおいて使用される実際の洗浄部の洗浄溶液量の転置を模擬した。これらの検査用布試験片を、ジャー壁に布が付着するのを防ぐワイヤフレームにピン留めし、実際の洗浄プロセスを厳密に模擬するために実際の布の転動及びフラッシング作用を可能にした。これらの検査用試験片(3枚)を、個々のジャー内でおおよそ35RPMで16分間回転式に転動させた。洗浄サイクルの模擬後、試験片を、個々に標識した50mLのフィルタ分離円錐チューブ内へ滅菌移動させ、実験室の遠心分離機で500rpmで4分間スピンさせた。これらの試験を、個々のドライクリーニングプロセスの洗浄サイクル部分、及びSARS-CoV-2汚染布の不活化/破壊におけるプロセスの組み合わせの合計を評価するために行った。
【0088】
IV.方法-ウイルス試験片の調製
寸法が2インチ×2インチの正方形の混毛織物試験片に、較正済みのピペットを使用して、200μlの純粋なウイルス接種原料をウイルスストック(1×10~1×10pfu/mLの範囲)から接種した。次いで、ウイルス接種原料を中央領域-1.5インチ×1.5インチの各検査用試験片上に均一に延展した。3つの試験片を陽性対照濃度ベースライン試験片と命名した。ウイルスのベースライン及び検査プロセス用試験片を、クラス2の生物学的安全キャビネット(BL2)内でおおよそ30~50分間風乾した。3つの陽性対照ウイルス濃度ベースライン試験片を、ドライクリーニングプロセス試験中にBL2キャビネットの内部で室温に保った。陽性対照ベースライン濃度クーポンを抽出し、試験プロセス用試験片と同じ時点でのドライクリーニングプロセス試験後にウイルス力価について播種した。検査用試験片及び陽性対照ベースライン試験片を、2mLのDMEM培地を含有する個々に標識した50mLコニカルチューブ内に入れた。次いで、ウイルス抽出のために試料を50%速度で1分間ボルテックスし、ウイルス計数及びウイルス不活化効率の計算についてアッセイした。
【0089】
V.試料の分析及び結果
検査用及び対照用の試験片への接種に使用したストックウイルス(SARS-CoV-2のUSA-WA1/2020株)を系列希釈によって濃度を力価滴定して、50%組織培養感染量(TCID50)を得た。これは、十分な量のウイルスが試験に使用可能であることを確実なものにするために行われた。未処理ウイルス対照濃度を評価して、力価が一致しているままであったことを確認した。細胞及びウイルスの培養のために、7%ウシ胎児血清(HyClone)、GlutaMax(Gibco)、及びペニシリン-ストレプトマイシン-ネオマイシン抗生物質混合物(Gibco)を補充した滅菌済みDMEM(Mediatech)を利用した。ATCC(CRL-1586)から最初に得られたVeroE6細胞(サル腎臓細胞)を、ASFVを用いたアッセイに使用した。すべての細胞を加湿雰囲気中の36°~38℃及び5%COに維持し、細胞を増殖のためにフラスコ内へ播種し、SARS-CoV-2ウイルスの滴定のために96ウェルプレートへと延展した。細胞を70%の集密度でウイルス試験片試料抽出物に感染させ、感染後4~5日間、細胞変性効果(CPE)の存在について観察した。試験片試料ウイルス抽出物の10倍系列希釈物を、プレート宿主細胞内へのウイルス増殖の存在について最大8対数希釈因子で細胞アッセイプレートへ適用した。プレートに各希釈レベルで5つの複製試料を接種し、複製物の各行はウイルス細胞感染性検出のために前の行で使用したものより10倍薄く希釈した。ウイルス増殖プレートの読み取りを、ウイルス宿主細胞の感染性について各プレート細胞の高倍率下で行い、陽性(+)または陰性(-)のウイルス増殖に対する試料試験ログについて記録した。試料濃度測定及びTCID50(ウイルスの50%組織培養感染量)の決定のために、データをReed・Muench計算へと入力した。
【0090】
VI.検査結果
SARS-CoV-2接種、乾燥、曝露試験、抽出、及び細胞アッセイ用播種を含む試験片調製を、滅菌済みのクラス2の生物学的安全キャビネット内で行った。4日間のプレートアッセイウイルスインキュベーション期間の後、プレートをウイルス感染性について読み取り、データをTCID50試験ログに記録した。結果を、結果及び、陽性試験対照試料のウイルス力価濃度とドライクリーニングプロセス曝露試験片結果との比較のために、Reed Muenchデータ解析プログラム内へと入力した。個々の乾燥サイクルの模擬、個々の洗浄サイクルの模擬、及び完全なドライクリーニングプロセスを用いたTCID50試験結果から作表したデータは、SARS-CoV-2を不活化するうえでの有効性を判定している。各ドライクリーニングプロセス条件で検査した検査用試験片の平均ウイルスTCID50不活化を表2に示す。個々の試験試料のTCID50の結果を表3に作表する。


【表2】

【表3-1】
【表3-2】
【0091】
表2に示すデータは、各プロセス時間での各試験片セットについての対照試料に対する個々のドライクリーニングプロセスの対数低減百分率、及びウイルス不活化に対する各プロセスの平均低減百分率を表す。シリコーン洗浄及びスピンすすぎ試験を、熱、シリコーン液体、及び蒸気曝露のプロセスの結果と組み合わせて、完全なドライクリーニングプロセスの全体的なウイルス低減百分率を規定した。SARS-CoV-2に感染した混毛布材料の不活化における模擬したドライクリーニングプロセスの各々及び全プロセスの対数低減有効性の百分率を示すプロットを図2に示す。
【0092】
VII.考察
試験の結果は、(100%D5)溶液のドライクリーニングプロセスがSARS-CoV-2汚染衣類の低減において高レベルの有効性を有することを示唆するであろう。この試験は、実験室環境における特許を許可されたドライクリーニングプロセスの正確な模擬を提供するために行わった。熱と乾燥洗浄溶媒(D5)とを組み合わせるプロセスにおける乾燥サイクルの模擬は、生存ウイルスのおおよそ75.4%の低減をもたらした。熱、蒸気及びドライクリーニング溶媒(D5)を乾燥サイクルと組み合わせるプロセスは、さらに良好に機能し、生存ウイルスのおおよそ96.7%の低減をもたらした。ドライクリーニング溶媒(D5)を含む洗浄サイクルと、熱、蒸気及びドライクリーニング溶媒(D5)を組み合わせたものを含む乾燥サイクルとの組み合わせは、生存ウイルスのおおよそ98.6%を低減させ、最も良好に機能した。
【0093】
乾燥サイクルの1つの模擬において、熱、蒸気、及び液体条件の組み合わせが、ウイルス対照に対する98.00%という対数低減百分率をもたらしたことに着目されるべきである。この1つの試験結果を平均洗浄サイクルの模擬試験結果と組み合わせた場合、56.18%の洗浄サイクルの低減と98.00%の乾燥サイクルの減少との連続的な組み合わせは、平均ウイルス対照に対する99.12%という対数低減の最適化された計算結果を生じるであろう。
図1
図2
【国際調査報告】