(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】バイオプリンタおよびバイオプリンタを較正する方法
(51)【国際特許分類】
B05C 11/00 20060101AFI20230612BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20230612BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20230612BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20230612BHJP
【FI】
B05C11/00
B05C11/10
B05C5/00 101
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568415
(86)(22)【出願日】2021-05-03
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 SE2021050409
(87)【国際公開番号】W WO2021230789
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522214521
【氏名又は名称】セリンク バイオプリンティング アー・ベー
【氏名又は名称原語表記】CELLINK Bioprinting AB
【住所又は居所原語表記】Laangfilsgatan 5,412 77 Goeteborg, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アントン アンドレン
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ファルトピール
(72)【発明者】
【氏名】エリク シュテルノ
(72)【発明者】
【氏名】アダム ミシャ
(72)【発明者】
【氏名】アリ チャクル
(72)【発明者】
【氏名】ヘクトル マルティネス
(72)【発明者】
【氏名】エリク ガテンホルム
【テーマコード(参考)】
4B029
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC02
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA02
4F041BA04
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA34
4F042BA08
4F042CB03
4F042CB07
4F042DH09
(57)【要約】
ノズル(5)を備えた少なくとも1つの印刷ヘッド(4a,4b,4c)と、印刷ヘッド(4a,4b,4c)がインクを印刷するために上部に配置された印刷ベッド(20)と、印刷ベッド(20)に配置された超音波センサ装置と、印刷ヘッド/ノズル(4a,4b,4c;5)の移動を制御し、超音波センサ装置からの情報に基づいて印刷ヘッド/ノズル(4a,4b,4c;5)の較正を実行するように構成されたコントローラ(7)とを備えた、バイオプリンタ(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル(5)が設けられた少なくとも1つの印刷ヘッド(4a,4b,4c)と、
前記印刷ヘッド(4a,4b,4c)がインクを印刷するために上部に配置されている印刷ベッド(20)と、
前記印刷ベッド(20)に配置された超音波センサ装置であって、前記ノズル(5)の延長部に対して垂直な第1の方向に延在する第1の超音波コーンを提供するように調整された第1のセンサ装置(6a)と、前記ノズル(5)の前記延長部に対して垂直な第2の方向に延在する第2の超音波コーンを提供するように調整された第2のセンサ装置(6b)とを含み、前記第1のセンサ装置(6a)および前記第2のセンサ装置(6b)が、前記ノズル(5)がそれぞれの超音波コーンに進入してきた時点を検出するように調整され、好ましくは、前記第1の方向と前記第2の方向とが相互に垂直である、超音波センサ装置と、
前記印刷ヘッド/ノズル(4a,4b,4c;5)の移動を制御するように調整されたコントローラ(7)と
を備え、
前記コントローラ(7)は、較正スキーマに基づく前記印刷ヘッド/ノズルの制御を構成する前記印刷ヘッド/ノズル(4a,4b,4c;5)の較正を実行するとともに、前記ノズル(5)が前記較正スキーマに従って移動している間に、前記第1のセンサ装置(6a)と前記第2のセンサ装置(6b)とによる検出に基づいて、前記印刷ヘッド/ノズルと、前記第1の超音波コーンおよび前記第2の超音波コーンとの間の関係を決定するように調整されており、
前記較正において、前記コントローラ(7)は、前記第2の方向において前記第1の超音波コーンに対して前記ノズルを制御する位置決定スキーマに従って、前記ノズルの移動を制御するように調整されており、
前記第1の超音波センサ装置(6a)は、前記第2の方向における前記第1の超音波コーンの境界の位置を検出するように調整されており、
前記コントローラは、前記第1の方向において前記第2の超音波コーンに対して前記ノズルを制御する位置決定スキーマに従って前記ノズルの移動を制御するように調整されており、
前記位置決定スキーマは、前記第1の超音波コーンの境界の位置と、前記第1の超音波センサ装置(6a)と前記第2の超音波センサ装置(6b)との間の空間関係とに基づいており、
前記第2の超音波センサ装置は、前記第1の方向において前記第2のコーンの境界の位置を検出するように調整されており、これにより、前記第1の方向および前記第2の方向における前記ノズルの位置が、前記第1の超音波コーンの境界の位置と前記第2の超音波コーンの境界の位置とに基づいて決定され得、
これにより、少なくとも前記第1の方向および前記第2の方向における、好ましくは前記ノズル(5)の前記延長部に沿った方向における、前記印刷ヘッド/ノズルの較正された位置を得ることができ、
前記コントローラ(7)は、さらに、実行された較正に従って前記印刷ヘッド/ノズルの移動を制御するように調整されている、
バイオプリンタ(1)。
【請求項2】
前記第1のセンサ装置(6a)および/または前記第2のセンサ装置(6b)は、超音波センサと、前記センサからのビームを配向して、前記ノズル(5)の前記延長部に対して垂直な前記第1の方向/前記第2の方向に延在するコーンを形成するように調整された少なくとも1つの固体表面とを備える、請求項1記載のバイオプリンタ(1)。
【請求項3】
前記第1のセンサ装置(6a)および/または前記第2のセンサ装置(6b)は、超音波センサと、前記センサからのビームを配向して、前記ノズル(5)の前記延長部に対して垂直な前記第1の方向/前記第2の方向に延在するコーンを形成するように調整された湾曲音響管とを備える、請求項1または2記載のバイオプリンタ(1)。
【請求項4】
バイオプリンタ(1)における印刷ヘッド(4a,4b,4c)を較正する方法であって、
前記印刷ヘッドにはノズル(5)が設けられており、前記バイオプリンタ(1)は、さらに、
前記印刷ヘッド(4a,4b,4c)がインクを印刷するために上部に配置されている印刷ベッド(20)と、
前記印刷ベッド(20)に配置された超音波センサ装置であって、前記ノズル(5)の延長部に対して垂直な第1の方向に延在する第1の超音波コーンを提供するように調整された第1のセンサ装置(6a)と、前記ノズル(5)の前記延長部に対して垂直な第2の方向に延在する第2の超音波コーンを提供するように調整された第2のセンサ装置(6b)とを含み、前記第1のセンサ装置および前記第2のセンサ装置が、前記ノズルが超音波コーンに進入してきた時点を検出し、好ましくは、前記第1の方向と前記第2の方向とが相互に垂直である、超音波センサ装置と
を備え、前記方法が、
較正スキーマに従って前記印刷ヘッド/ノズル(4a,4b,4c;5)を制御するステップ(100)と、
前記印刷ヘッド/ノズル(4a,4b,4c;5)が、前記較正スキーマに従って移動しているときの前記第1のセンサ装置(6a)および前記第2のセンサ装置(6b)による検出に基づいて、前記ノズル(5)と、前記第1の超音波コーンおよび前記第2の超音波コーンとの間の関係を決定するステップ(200)と
を含み、
前記ノズルは、前記第1の超音波センサ装置により前記第2の方向における前記第1の超音波コーンの境界の位置を検出するように、前記第2の方向において前記第1の超音波コーンに対して前記ノズルを制御する位置決定スキーマに従って移動するように制御され、
前記ノズルは、前記第1の方向において前記第2の超音波コーンに対して前記ノズルを制御する位置決定スキーマに従って移動するように制御され、
前記位置決定スキーマは、前記第2の超音波センサ装置により前記第1の方向における前記第2のコーンの境界の位置を検出するように、前記第1の超音波コーンの境界の位置と、前記第1の超音波センサ装置と前記第2の超音波センサ装置との間の空間関係とに基づいており、
これにより、前記第1の超音波コーンの境界の位置および前記第2の超音波コーンの境界の位置に基づいて、前記第1の方向および前記第2の方向における前記ノズルの位置が決定され得、
これにより、少なくとも前記第1の方向および前記第2の方向における、好ましくは前記ノズルの前記延長部に沿った方向における、前記印刷ヘッド/ノズル(4a,4b,4c;5)の較正された位置を得ることができる(300)、
方法。
【請求項5】
前記ノズルを前記較正スキーマに従って制御するステップ、ならびに前記ノズルが前記較正スキーマに従って移動しているときの前記第1のセンサ装置および前記第2のセンサ装置による検出に基づいて、前記ノズルと、前記第1の超音波コーンおよび前記第2の超音波コーンとの間の関係を決定するステップは、さらに、
-前記第2の方向において前記第1の超音波コーンに対して前記ノズルを制御する位置決定スキーマに従って前記ノズルの移動を制御するステップであって、前記位置決定スキーマが、前記第1の超音波センサ装置により前記第2の方向における前記第1の超音波コーンの境界の更新された位置を検出するように、少なくとも前記第2の超音波コーンの境界の位置と、前記第1の超音波センサ装置と前記第2の超音波センサ装置との間の空間関係とに基づいている、ステップを含み、
これにより、前記第1の超音波コーンの境界の更新された位置と前記第2の超音波自コーンの境界の更新された位置とに基づいて、前記第1の方向および前記第2の方向における前記ノズルの位置が決定される、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記第1の方向および前記第2の方向における前記ノズルの位置の知識に基づいて、前記ノズルの前記延長部に実質的に沿って延在する方向における前記ノズルの位置を決定するステップをさらに含む、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
-前記ノズルの前記延長部に沿った方向において、前記第1の超音波コーンおよび前記第2の超音波コーンの外側にある開始位置へと前記ノズルを制御するステップと、
-前記第1の超音波コーンを検出するように、超音波コーン発見パターンに従って前記開始位置から移動するように前記ノズルを制御し、これに応じて前記較正スキーマに従った制御を開始するステップと
をさらに含む、請求項4から6までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、生物学的材料の付加製造の分野に関する。特に、本開示は、バイオプリンタおよびバイオプリンタにおける印刷ヘッド/ノズルを較正する方法に関する。
【0002】
背景技術
付加製造技術である印刷は、細胞、生体材料および生物学的分子の配置を空間的に制御する能力につき、かなりの注目を集めている。結果として、これは、組織および臓器の再生、基礎研究、および薬剤スクリーニングの将来にとって無限の可能性を提供している。3Dプリンタは、X方向、Y方向およびZ方向に移動しながら材料を分配することができ、これにより、複雑な構造をボトムアップで作り上げることができる。さらに、当該技術は患者の医療画像を使用してCAD/CAM技術と組み合わせることができるので、当該技術によって標的組織または標的臓器に特異的な生体模倣型3Dストラクチャの生体製造が可能となる。
【0003】
マルチヘッドバイオプリンタの重要な一側面は、全ての印刷ヘッドによって同じ場所に正確に印刷を行う能力である。組立て中および使用中、印刷ヘッドの配向における小さな偏差が生じると、エンドエフェクタすなわちノズル端部の位置がその理想位置からずれてしまう。
【0004】
複数のヘッドを使用して良好な品質の印刷を達成するには、エンドエフェクタの較正のための正確な手段が必要である。例えばBIO X(商標)機器の場合、エンドエフェクタは20~50μmの精度で較正されなければならない。
【0005】
自動較正のための現行の方法は、プラスチック製のジョイスティックにプリンタノズルを接触させることから成る。当該方法は、幾つかの理由から、すなわち、エンドエフェクタがジョイスティックを取り落とすことがあること;ジョイスティックが壊れやすいこと;全てのノズルが同じジョイスティックに接触しており、このため相互汚染が生じうることから、最適ではない。したがって、非接触較正のためのロバストな方法が必要である。
【0006】
概要
本発明の課題は、改善された、または少なくとも代替となるバイオプリンタ、およびバイオプリンタにおける印刷ヘッド/ノズルを較正する方法を提供することである。
【0007】
第1の態様によれば、ノズルが設けられた少なくとも1つの印刷ヘッドと、印刷ヘッドがインクを印刷するために上部に配置された印刷ベッドと、印刷ベッドに配置された超音波センサ装置であって、ノズルの延長部に対して垂直な第1の方向に延在する第1の超音波コーンを提供するように調整された第1のセンサ装置と、ノズルの延長部に対して垂直な第2の方向に延在する第2の超音波コーンを提供するように調整された第2のセンサ装置とを含み、第1のセンサ装置および第2のセンサ装置が、ノズルがそれぞれの超音波コーンに進入してきた時点を検出するように調整されており、好ましくは、第1の方向と第2の方向とが相互に垂直である、超音波センサ装置とを備えた、バイオプリンタが提供される。コントローラは、印刷ヘッド/ノズルの移動を制御し、較正スキーマに基づく印刷ヘッド/ノズルの制御を構成する印刷ヘッド/ノズルの較正を実行するとともに、ノズルが較正スキーマに従って移動している間に、第1のセンサ装置と第2のセンサ装置とによる検出に基づいて、ノズルと、第1の超音波コーンおよび第2の超音波コーンとの間の関係を決定するように調整されており、これにより、少なくとも第1の方向および第2の方向における、好ましくはノズルの延長部に沿った方向における、印刷ヘッド/ノズルの較正された位置が得られ、前記コントローラは、実行された較正に従って印刷ヘッド/ノズルの移動を制御するようにさらに調整されている。
【0008】
バイオプリンタは、インクを分配するためのバイオディスペンサであってもよい。
【0009】
第1のセンサ装置および/または第2のセンサ装置は、超音波センサと、センサからのビームを配向して、ノズルの延長部に対して垂直な第1の方向/第2の方向に延在するコーンを形成するように調整された少なくとも1つの固体表面とを備えうる。
【0010】
代替的に、第1のセンサ装置および/または第2のセンサ装置は、超音波センサと、センサからのビームを配向して、ノズルの延長部に対して垂直な第1の方向/第2の方向に延在するコーンを形成するように調整された湾曲音響管とを備えていてもよい。
【0011】
第2の態様によれば、バイオプリンタにおける印刷ヘッドを較正する方法であって、印刷ヘッドにはノズルが設けられており、バイオプリンタはさらに、印刷ヘッドがインクを印刷するために上部に配置されている印刷ベッドと、印刷ベッドに配置された超音波センサ装置とを備え、前記超音波センサ装置は、ノズルの延長部に対して垂直な第1の方向に延在する第1の超音波コーンを提供するように調整された第1の超音波センサ装置と、ノズルの延長部に対して垂直な第2の方向に延在する第2の超音波コーンを提供するように調整された第2の超音波センサ装置とを備え、第1のセンサ装置および第2のセンサ装置は、ノズルが超音波コーンに進入してきた時点を検出し、好ましくは第1の方向と第2の方向とが相互に垂直である、方法が提供される。方法は、較正スキーマに従って印刷ヘッド/ノズルを制御するステップと、印刷ヘッド/ノズルが較正スキーマに従って移動しているときの第1のセンサ装置および第2のセンサ装置による検出に基づいて、ノズルと第1の超音波コーンおよび第2の超音波コーンとの間の関係を決定するステップとを含み、これにより、少なくとも第1の方向および第2の方向における、好ましくはノズルの延長部に沿った方向における、印刷ヘッド/ノズルの較正された位置が得られる。
【0012】
ノズルを較正スキーマに従って制御するステップ、ならびにノズルが較正スキーマに従って移動しているときの第1のセンサ装置および第2のセンサ装置による検出に基づいて、ノズルと第1の超音波コーンおよび第2の超音波コーンとの間の関係を決定するステップは、
-第1の超音波センサ装置により第2の方向における第1の超音波コーンの境界の位置を検出するように、第2の方向において第1の超音波コーンに対してノズルを制御する位置決定スキーマに従ってノズルの移動を制御するステップと、
-第1の方向において第2の超音波コーンに対してノズルを制御する位置決定スキーマに従ってノズルの移動を制御するステップであって、位置決定スキーマが、第2の超音波センサ装置により第1の方向における第2のコーンの境界の位置を検出するように、第1の超音波コーンの境界の位置と、第1の超音波センサ装置と第2の超音波センサ装置との間の空間関係とに基づいている、ステップと
を含むことができ、
-これにより、第1の超音波コーンの境界の位置と第2の超音波コーンの境界の位置とに基づいて、第1の方向および第2の方向におけるノズルの位置が決定され得る。
【0013】
ノズルを較正スキーマに従って制御するステップ、ならびにノズルが較正スキーマに従って移動しているときの第1のセンサ装置および第2のセンサ装置による検出に基づいて、ノズルと第1の超音波コーンおよび第2の超音波コーンとの間の関係を決定するステップは、さらに、
-第2の方向において第1の超音波コーンに対してノズルを制御する位置決定スキーマに従ってノズルの移動を制御するステップであって、位置決定スキーマが、第1の超音波センサ装置により第2の方向における第1の超音波コーンの境界の更新された位置を検出するように、少なくとも第2の超音波コーンの境界の位置と、第1の超音波センサ装置と第2の超音波センサ装置との間の空間関係とに基づいている、ステップ
を含むことができ、これにより、第1の超音波コーンの境界の更新された位置および第2の超音波コーンの境界の更新された位置に基づいて、第1の方向および第2の方向におけるノズルの位置が決定される。
【0014】
方法は、さらに、第1の方向および第2の方向におけるノズルの位置の知識に基づいて、ノズルの延長部に実質的に沿って延在する方向におけるノズルの位置を決定するステップを含むことができる。
【0015】
方法は、ノズルの延長部に沿った方向において、第1の超音波コーンおよび第2の超音波コーンの外側にある開始位置へとノズルを制御するステップと、
-第1の超音波コーンを検出するように、超音波コーン発見パターンに従って開始位置から移動するようにノズルを制御し、これに応じて較正スキーマに従った制御を開始するステップと
さらに含む。
【0016】
上述したバイオプリンタおよび較正方法を用いることにより、バイオプリンタ内の印刷ヘッド、複数の印刷ヘッド、マルチヘッドまたは交換可能な印刷ヘッドを較正することができ、これにより、印刷ベッドでのそれぞれ異なる印刷ヘッドによって同一の場所での印刷が可能になる。これにより、組立て中および使用中に生じて結果としてノズルの位置およびノズル端部をその理想位置からずれさせてしまう、印刷ヘッドおよびその上部に設けられたノズルの配向の偏差が、最小化されうる。本バイオプリンタおよび本方法は、非接触での較正、自動較正のためのロバストなバイオプリンタを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】バイオプリンタ/バイオディスペンサを示す側面図である。
【
図2】
図1におけるバイプリンタの印刷ベッドを上面図(左)および側面図(右)として示す図である。
【
図3】バイオプリンタにおける印刷ヘッド/ノズルを較正する方法を概略的に示す図である。
【0018】
詳細な説明
付加製造技術である印刷は、細胞、生体材料および生物学的分子の配置を空間的に制御する能力につき、かなりの注目を集めている。結果として、これは、組織および臓器の再生、基礎研究、および薬剤スクリーニングの将来にとって無限の可能性を提供している。
【0019】
3Dバイオプリンタ/バイオディスペンサは、X方向、Y方向およびZ方向に移動しながら材料を分配することができる。これにより、複雑な構造物をボトムアップで作り上げることができる。さらに、当該技術は患者の医療画像を使用してCAD/CAM技術と組み合わせることができるので、当該技術によって標的組織または標的臓器に特異的な生体模倣型3Dストラクチャの生体製造が可能となる。
【0020】
図1には、本開示によるバイオプリンタ/バイオディスペンサ1の一例が開示されている。バイオプリンタ1は、3次元で作り上げられる生物学的組織の製造のために使用可能である。バイオプリンタは、動物もしくはヒトの体内への移植、例えば組織の修復もしくは交換、局所適用、美容適用、薬剤テスト、創薬適用もしくは疾患モデルとしての適用、または医薬品、医療、化学、パーソナルケア、スキンケアもしくは化粧品産業もしくは3D印刷された構造物が使用されうる任意の他の産業における他の研究、調査または開発を目的とした適用、から選択される用途のうちのいずれかにおける使用に適した構造物の印刷において使用されうる。
【0021】
バイオプリンタ1は印刷ベッド20を含む。印刷ベッド20は例えばペトリ皿を含む。ペトリ皿は、細胞の培養に使用される浅い円筒形のガラス製もしくはプラスチック製の蓋付き皿として定義される。印刷ベッド20は、一例ではマイクロプレートとしても知られるマイクロウェルを含む。印刷ベッド20は、一例では、スライドガラスを含む。
【0022】
バイオプリンタはさらに、少なくとも1つの印刷ヘッド4a,4b,4cを含む。バイオプリンタ1は、単一印刷ヘッド、マルチヘッド、または複数の印刷ヘッドを有していてもよい。
図1では、3つの印刷ヘッド4a,4b,4cを有するバイオプリンタが示されている。印刷ヘッドは交換可能でありうる。さらに、印刷ヘッドは、インク、すなわちバイオインクを印刷ベッド20上に印刷するように構成されうる。印刷ヘッドの例には、空気圧式押し出しヘッド、シリンジポンプヘッド、インクジェットヘッド、高温押し出しヘッドなどが含まれる。
【0023】
少なくとも1つの印刷ヘッド4a,4b,4cにはノズル5が設けられており、このノズル5は、印刷ヘッドに取り外し可能に配置されうる。ノズルは押し出しニードルであってもよい。印刷ヘッド4a,4b,4cと印刷ベッド20とは相互に可動でありうる。これにより、バイオプリンタは、押し出し要素によってノズル5を通した押し出しを制御し、印刷ベッドとノズル/印刷ヘッドとの間の相対移動を制御することによって、印刷ベッド上に3D物品を印刷するように構成されている。
【0024】
一例では、印刷ベッドの位置を固定したまま、ノズル/印刷ヘッドの移動が所定のスキーマに従って制御される。一例では、ノズル/印刷ヘッドの位置を固定したまま、印刷ベッドの移動が所定のスキーマに従って制御される。
【0025】
図1および
図2に示されているように、超音波センサ装置が印刷ベッド20に配置されている。超音波センサ装置は、ノズル5の延長部に対して垂直な第1の方向(
図2のx方向)に延在する第1の超音波コーンを提供するように調整された第1のセンサ装置6aと、ノズル5の延長部に対して垂直な第2の方向(
図2のy方向)に延在する第2の超音波コーンを提供するように調整された第2のセンサ装置6bとを備える。第1のセンサ装置6aおよび第2のセンサ装置6bは、ノズル5がそれぞれの超音波コーンに進入した時点を検出するように調整されている。第1の方向と第2の方向とは、好ましくは、
図2に示されているように相互に垂直である。
【0026】
超音波センサ装置は、少なくとも1つの印刷ヘッド/ノズルの位置を較正するために使用されうる。
【0027】
第1のセンサ装置6aおよび第2のセンサ装置6bは、それぞれ超音波センサすなわち超音波距離センサを有していてもよく、当該超音波距離センサは、音波を放出し、センサの前方にある対象物から反射されてセンサへ戻ってきた音波の飛行時間を測定することによって、距離を測定する。様々な距離での複数の反射が生じる場合、センサは、最も近い反射音波のみを検出する。放出された音波はコーンのように見える。超音波距離センサは、プラスチック(例えばポリプロピレン)および金属(例えばステンレス鋼)の両方から成る小さな対象物を検出することができ、種々異なる材料のノズルが使用されうる理由である。例えば、SICK UC4-13347などのセンサを使用することができる。このようなセンサは、測定分解能が100μm以上であり、かつ再現性が±0.15%である。
【0028】
超音波センサは、放出された音響コーンがx/y方向において配向されるよう、垂直に印刷ベッドに配置されうる。
【0029】
使用される超音波センサは、200μmの分解能で、150mmまでの対象物に対する距離を測定することができる。
【0030】
ノズルの延長部に対して垂直な第1の方向/第2の方向に延在する超音波コーンが形成される限り、超音波センサは印刷ベッド20のどこに配置されてもよい。
【0031】
第1のセンサ装置6aおよび/または第2のセンサ装置6bは、超音波センサと、センサからのビームを配向して、ノズルの延長部に対して垂直な第1の方向/第2の方向に延在するコーンを形成するように調整された少なくとも1つの固体表面(図示せず)とを備えていてもよい。表面は、例えば、超音波センサからのビームに対して45°の角度で配置されうる。当該実施形態では、センサ装置の超音波センサは、印刷ベッド20における利用可能な空間をより良好に利用するために、バイオプリンタ1において水平方向に配向可能である。超音波センサの水平方向での取り付けは、音響コーンをx/y方向に放出させることができるよう、方向転換を必要とする。
【0032】
代替的に、第1のセンサ装置および/または第2のセンサ装置は、超音波センサと、センサからのビームを配向してノズルの延長部に対して垂直な第1の方向/第2の方向に延在するコーンを形成するように調整された湾曲音響管(図示せず)とを備えていてもよい。
【0033】
バイオプリンタはさらに、印刷ヘッド/ノズル4a,4b,4c;5の移動を制御するように調整されたコントローラ7を備えている。コントローラ7は、印刷ヘッド/ノズル4a,4b,4c;5の、
図3に示されている較正を行うように調整されている。当該較正は、較正スキーマに従って印刷ヘッド/ノズルを制御するステップ100と、ノズル5が較正スキーマに従って移動している間の第1のセンサ装置6aおよび第2のセンサ装置6bによる検出に基づいてノズル5と第1の超音波コーンおよび第2の超音波コーンとの間の関係を決定するステップ200とを含み、これにより、ステップ300で、少なくとも第1の方向および第2の方向、好ましくはノズル5の延長部に沿った方向における印刷ヘッド/ノズルの較正された位置が得られる。
【0034】
コントローラ7はさらに、実行された較正に従って印刷ヘッド/ノズルの移動を制御するように調整されうる。
【0035】
ノズルを較正スキーマに従って制御するステップ、ならびにノズルが較正スキーマに従って移動しているときの第1のセンサ装置および第2のセンサ装置による検出に基づいて、ノズルと第1の超音波コーンおよび第2の超音波コーンとの間の関係を決定するステップは、
-第1の超音波センサ装置により第2の方向における第1の超音波コーンの境界の位置を検出するために、第2の方向において第1の超音波コーンに対してノズルを制御する位置決定スキーマに従ってノズルの移動を制御するステップと、
-第1の方向において第2の超音波コーンに対してノズルを制御する位置決定スキーマに従ってノズルの移動を制御するステップであって、位置決定スキーマが、第2の超音波センサ装置により第1の方向における第2のコーンの境界の位置を検出するように、第1の超音波コーンの境界の位置と、第1の超音波センサ装置と第2の超音波センサ装置との間の空間関係とに基づいている、ステップと
を含むことができ、
-これにより、第1の超音波コーンの境界の位置と第2の超音波コーンの境界の位置とに基づいて、第1の方向および第2の方向におけるノズルの位置を決定することができる。
【0036】
ノズルを較正スキーマに従って制御するステップ、ならびにノズルが較正スキーマに従って移動しているときの第1のセンサ装置および第2のセンサ装置による検出に基づいて、ノズルと第1の超音波コーンおよび第2の超音波コーンとの間の関係を決定するステップは、さらに、
-第2の方向において第1の超音波コーンに対してノズルを制御する位置決定スキーマに従ってノズルの移動を制御するステップであって、位置決定スキーマが、第1の超音波センサ装置により第2の方向における第1の超音波コーンの境界の更新された位置を検出するように、少なくとも第2の超音波コーンの境界の位置と、第1の超音波センサ装置と第2の超音波センサ装置との間の空間関係とに基づいている、ステップ
を含むことができ、これにより、第1の超音波コーンの境界の更新された位置および第2の超音波コーンの境界の更新された位置に基づいて、第1の方向および第2の方向におけるノズルの位置が決定される。
【0037】
当該方法はさらに、第1の方向および第2の方向におけるノズルの位置の知識に基づいて、ノズルの延長部に実質的に沿って延在する方向におけるノズルの位置を決定するステップを含むことができる。
【0038】
当該方法はさらに、ノズルの延長部に沿った方向で第1の超音波コーンおよび第2の超音波コーンの外側にある開始位置までノズルを制御するステップと、
-超音波コーン発見パターンに従って開始位置から移動するようにノズルを制御して第1の超音波コーンを検出し、これに応じて較正スキーマに従った制御を開始するステップと
を含む。
【国際調査報告】