(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】アルミニウム合金製部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/28 20210101AFI20230612BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20230612BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20230612BHJP
B22F 10/64 20210101ALI20230612BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230612BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230612BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230612BHJP
【FI】
B22F10/28
C22C21/00 L
B22F1/00 N
B22F10/64
B33Y10/00
B33Y80/00
B33Y70/00
C22C21/00 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568498
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 FR2021050800
(87)【国際公開番号】W WO2021156582
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519367223
【氏名又は名称】シーテック コンステリウム テクノロジー センター
【氏名又は名称原語表記】C-TEC CONSTELLIUM TECHNOLOGY CENTER
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】シェアブ,ベシール
(72)【発明者】
【氏名】シャアニ,ラヴィ
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA14
4K018AB02
4K018AB04
4K018BA08
4K018BB04
(57)【要約】
本発明は、連続する固体金属層(20
1・・・20
n)の形成を含む部品の製造方法において、各層が溶加材と呼ばれる金属(25)の堆積によって形成されており、溶加材が:- 質量分率にしたがって、0.60~1.40%のZr;- 質量分率にしたがって、2.00~5.00%のMn;- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%のNi;- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%のCu;という合金元素を少なくとも含むアルミニウム合金である方法に関する。本発明に係る付加製造方法において使用される合金は、傑出した特性を有する部品を得ることを可能にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ね合わされた連続する固体金属層(20
1・・・20
n)の形成を含む部品の製造方法において、各層がデジタルモデル(M)から定義されたパターンを描き、各層が溶加材と呼ばれる金属(25)の堆積によって形成されており、溶加材が、エネルギー供給を受けて溶融しかつ凝固することによって前記層を構成するようになっており、溶加材が粉末(25)の形態をしており、この粉末をエネルギービーム(32)に曝露した結果として溶融およびそれに続く凝固がもたらされて固体層(20
1・・・20
n)を形成することになる方法であって、
溶加材(25)が、
- 質量分率にしたがって、0.60~1.40%、好ましくは0.70~1.30%、好適には0.80~1.2%、より好適には0.85~1.15%、さらに一層好適には0.90~1.10%のZr、
- 質量分率にしたがって、2.00~5.00%、好ましくは3.00~5.00%、好適には3.50~4.50%のMn、
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは2.00~4.00%、好適には2.50~3.50%のNi、
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは1.00~3.00%、好適には1.50~2.50%のCu、
- 任意には、質量分率にしたがって、各々5.00%以下、好ましくは3.00%以下、かつ合計で15.00%以下、好ましくは12.00%以下、さらに一層好適には5.00%以下の、Hf、Cr、Ti、Er、W、Nb、Ta、Y、Yb、Nd、Ce、Co、Mo、Lu、Tm、Vおよび/またはミッシュメタルの中から選択された少なくとも1つの元素、
- 任意には、質量分率にしたがって、各々1.00%以下、好ましくは0.50%以下、好適には0.30%以下、より好適には0.10%以下、さらに一層好適には700ppm以下、かつ合計で2.00%以下、好ましくは1.00%以下の、Fe、Si、Mg、Zn、Sc、La、Sr、Ba、Sb、Bi、Ca、P、B、Inおよび/またはSnの中から選択された少なくとも1つの元素、
- 任意には、質量分率にしたがって0.06~1.00%のAg、質量分率にしたがって0.06~1.00%のLiの中から選択された少なくとも1つの元素、
- 任意には、質量分率にしたがって、各々0.05%(つまり500ppm)未満、かつ合計で0.15%未満の不純物、
- 残余がアルミニウム、
という合金元素を少なくとも含むアルミニウム合金であることを特徴とする方法。
【請求項2】
互いに重ね合わされた連続する固体金属層(20
1・・・20
n)の形成を含む部品の製造方法において、各層がデジタルモデル(M)から定義されたパターンを描き、各層が溶加材と呼ばれる金属(25)の堆積によって形成されており、溶加材が、エネルギー供給を受けて溶融しかつ凝固することによって前記層を構成するようになっており、溶加材が粉末(25)の形態をしており、この粉末をエネルギービーム(32)に曝露した結果として溶融およびそれに続く凝固がもたらされて固体層(20
1・・・20
n)を形成することになる方法であって、
溶加材(25)が、
- Zrが以下の百分率範囲の10%から100%未満までを占めるということを知った上で、質量分率にしたがって、合計0.60~1.40%、好ましくは0.70~1.30%、好適には0.80~1.20%、より好適には0.85~1.15%、さらに一層好適には0.90~1.10%の、Ti、V、Sc、Hf、Er、Tm、YbおよびLuの中から選択された少なくとも1つの元素およびZr、
- 質量分率にしたがって、2.00~5.00%、好ましくは3.00~5.00%、好適には3.50~4.50%のMn、
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは2.00~4.00%、好適には2.50~3.50%のNi、
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは1.00~3.00%、好適には1.50~2.50%のCu、
- 任意には、質量分率にしたがって、各々5.00%以下、好ましくは3.00%以下、かつ合計で15.00%以下、好ましくは12.00%以下、さらに一層好適には5.00%以下の、Cr、W、Nb、Ta、Y、Nd、Ce、Co、Moおよび/またはミッシュメタルの中から選択された少なくとも1つの元素、
- 任意には、質量分率にしたがって、各々1.00%以下、好ましくは0.50%以下、好適には0.30%以下、より好適には0.10%以下、さらに一層好適には700ppm以下、かつ合計で2.00%以下、好ましくは1.00%以下の、Fe、Si、Mg、Zn、La、Sr、Ba、Sb、Bi、Ca、P、B、Inおよび/またはSnの中から選択された少なくとも1つの元素、
- 任意には、質量分率にしたがって0.06~1.00%のAg、質量分率にしたがって0.06~1.00%のLiの中から選択された少なくとも1つの元素、
- 任意には、質量分率にしたがって、各々0.05%(つまり500ppm)未満、かつ合計で0.15%未満の不純物、
- 残余がアルミニウム、
という合金元素を少なくとも含むアルミニウム合金であることを特徴とする方法。
【請求項3】
La、Bi、Mg、Er、Yb、Y、Scおよび/またはZnの添加が回避され、これらの元素の各々の好ましい質量分率がこのとき0.05%未満、好ましくは0.01%未満である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
アルミニウム合金がまた、各々50kg/トン以下、好ましくは20kg/トン以下、さらに一層好適には12kg/トン以下、かつ合計で50kg/トン以下、好ましくは20kg/トン以下の量にしたがって、結晶粒を微細化するための少なくとも1つの成分、例えばAlTiCまたはAlTiB2を含む、請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
層(20
1・・・20
n)の形成の後、
- 典型的には少なくとも100℃、かつ多くとも500℃、好ましくは300~450℃の温度での熱処理、および/または
- 熱間等方圧加圧、
を含む請求項1から4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
部品が、25~150℃、好ましくは50~130℃、好適には80~110℃の温度か、または250℃超から350℃未満、好ましくは280~330℃の温度で製造される、請求項1から5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の方法によって得られる金属部品。
【請求項8】
- 質量分率にしたがって、0.60~1.40%、好ましくは0.70~1.30%、好適には0.80~1.20%、より好適には0.85~1.15%、さらに一層好適には0.90~1.10%のZr、
- 質量分率にしたがって、2.00~5.00%、好ましくは3.00~5.00%、好適には3.50~4.50%のMn、
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは2.00~4.00%、好適には2.50~3.50%のNi、
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは1.00~3.00%、好適には1.50~2.50%のCu、
- 任意には、質量分率にしたがって、各々5.00%以下、好ましくは3.00%以下、かつ合計で15.00%以下、好ましくは12.00%以下、さらに一層好適には5.00%以下の、Hf、Cr、Ti、Er、W、Nb、Ta、Y、Yb、Nd、Ce、Co、Mo、Lu、Tm、Vおよび/またはミッシュメタルの中から選択された少なくとも1つの元素、
- 任意には、質量分率にしたがって、各々1.00%以下、好ましくは0.50%以下、好適には0.30%以下、より好適には0.10%以下、さらに一層好適には700ppm以下、かつ合計で2.00%以下、好ましくは1.00%以下の、Fe、Si、Mg、Zn、Sc、La、Sr、Ba、Sb、Bi、Ca、P、B、Inおよび/またはSnの中から選択された少なくとも1つの元素、
- 任意には、質量分率にしたがって0.06~1.00%のAg、質量分率にしたがって0.06~1.00%のLiの中から選択された少なくとも1つの元素、
- 任意には、質量分率にしたがって、各々0.05%(つまり500ppm)未満、かつ合計で0.15%未満の不純物、
- 残余がアルミニウム、
という合金元素を少なくとも含むアルミニウム合金を含む粉末。
【請求項9】
- Zrが以下の百分率範囲の10%から100%未満までを占めるということを知った上で、質量分率にしたがって、合計0.60~1.40%、好ましくは0.70~1.30%、好適には0.80~1.20%、より好適には0.85~1.15%、さらに一層好適には0.90~1.10%の、Ti、V、Sc、Hf、Er、Tm、YbおよびLuの中から選択された少なくとも1つの元素およびZr、
- 質量分率にしたがって、2.00~5.00%、好ましくは3.00~5.00%、好適には3.50~4.50%のMn、
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは2.00~4.00%、好適には2.50~3.50%のNi、
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは1.00~3.00%、好適には1.50~2.50%のCu、
- 任意には、質量分率にしたがって、各々5.00%以下、好ましくは3.00%以下、かつ合計で15.00%以下、好ましくは12.00%以下、さらに一層好適には5.00%以下の、Cr、W、Nb、Ta、Y、Nd、Ce、Co、Moおよび/またはミッシュメタルの中から選択された少なくとも1つの元素、
- 任意には、質量分率にしたがって、各々1.00%以下、好ましくは0.50%以下、好適には0.30%以下、より好適には0.10%以下、さらに一層好適には700ppm以下、かつ合計で2.00%以下、好ましくは1.00%以下の、Fe、Si、Mg、Zn、La、Sr、Ba、Sb、Bi、Ca、P、B、Inおよび/またはSnの中から選択された少なくとも1つの元素、
- 任意には、質量分率にしたがって0.06~1.00%のAg、質量分率にしたがって0.06~1.00%のLiの中から選択された少なくとも1つの元素、
- 任意には、質量分率にしたがって、各々0.05%(つまり500ppm)未満、かつ合計で0.15%未満の不純物、
- 残余がアルミニウム、
という合金元素を少なくとも含むアルミニウム合金を含む粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、アルミニウム合金製部品の製造方法であり、付加製造技術を利用するものである。
【背景技術】
【0002】
1980年代以降、付加製造技術は発展した。これらの技術は、素材の付加によって部品を成形することにあり、このことは、素材を切削することを目ざす加工技術とは逆である。付加製造は、以前はプロトタイピングに限定されていたが、今では、金属部品も含めて工業製品を大量生産するために実用化されている。
【0003】
用語「付加製造」は、仏規格XP E67-001によると、「デジタルオブジェクトから物理オブジェクトを、素材の付加によって、層ごとに製造することを可能にする一連の方法」と定義されている。規格ASTM F2792(2012年1月)もまた、付加製造を定義している。規格ISO/ASTM 17296-1において、さまざまな付加製造方式もまた定義および記述されている。国際公開第2015/006447号において、低気孔率のアルミニウム製部品を作製するために付加製造を用いることが記述された。相次ぐ層の適用は一般的に、フィラー材と呼ばれる材料の適用、ついでレーザービーム、電子ビーム、プラズマトーチまたはアークタイプのエネルギー源を用いた、フィラー材の溶融または焼結によって実現される。適用される付加製造方式がどうであろうと、付加される各層の厚みは、およそ数十ミクロンまたは数百ミクロンである。
【0004】
付加製造の1つの手段は、粉末形態のフィラー材の溶融または焼結である。これは、エネルギービームによる溶融または焼結であり得る。
【0005】
特に、レーザーによる選択的焼結技術(選択的レーザー焼結、SLSまたは直接金属レーザー焼結、DMLS)が知られており、金属または金属合金の粉末層が、製造すべき部品上に適用され、レーザービーム由来の熱エネルギーを用いてデジタルモデルにしたがって選択的に焼結される。別のタイプの金属形成方法は、レーザーによる選択的溶融(選択的レーザー溶融、SLM)または電子ビームによる溶融(電子ビーム溶融、EBM)を含み、誘導されたレーザーまたは電子ビームによって供給される熱エネルギーは、金属粉末を(焼結する代りに)選択的に溶解させるために使用され、こうして金属粉末は、冷却し凝固するにつれて融合することになる。
【0006】
レーザー溶融による堆積(レーザー溶融堆積、LMD)も知られており、粉末は、レーザービームにより投入と同時に溶解させられる。
【0007】
国際公開第2016/209652号は、おおよそ所望される通りの単数または複数の粉末サイズおよびおおよその形態を有する微粒化されたアルミニウム粉末の調製;付加製造により製品を形成するための粉末の焼結;溶体化処理;焼入れ;および付加製造されたアルミニウムの焼戻しを含む、高い機械的強度を有するアルミニウムの製造方法について記述している。
【0008】
SLMの利用分野向けの高温において使用可能で高い強度を有するアルミニウム合金に対する需要は高まりつつある。4xxx合金(主としてAl10SiMg、Al7SiMgおよびAl12Si)は、SLMの利用分野向けの最も成熟したアルミニウム合金である。これらの合金は、SLM方法に対する非常に優れた適性を提供するものの、機械的特性が限定的であるという問題を抱えている。
【0009】
APWorksにより開発されたScalmalloy(登録商標)(独国特許出願公開第102007018123号明細書)は(325℃で4時間の製造後熱処理を用いて)周囲温度での優れた機械的特性を提供する。しかしながら、この解決法は、スカンジウムの高含有量(約0.7%のSc)および特殊な微粒化プロセスの必要性に関連する粉末形態での高コストという問題を抱えている。この解決法は、例えば150℃超の温度といった高温での機械的特性が不良であることも問題である。
【0010】
NanoAlにより開発されたAddalloy(登録商標)(国際公開第2018/00935号)は、AlMgZr合金である。この合金は、高温での機械的特性が限定的であるという問題を抱えている。
【0011】
Honeywellにより開発された合金8009(Al Fe V Si)(米国特許出願公開第2013/13801662号明細書)は、周囲温度と350℃までの高温の両方で、製造未加工状態で優れた機械的特性を提供する。しかしながら、合金8009は、おそらくは製造未加工状態でのその高い硬度に関連して加工性の問題(割れの危険性)に悩まされている。
【0012】
付加製造によって得られるアルミニウム部品の機械的特性は、溶加材を形成する合金、そしてより厳密にはその組成、付加製造方法のパラメータ、ならびに適用される熱処理によって左右される。発明者らは、付加製造方法において使用された場合に、傑出した特性を有する部品を得ることを可能にする合金の組成を決定した。詳細には、本発明により得られる部品は、特に200℃での弾性限界およびSLM方法の際の割れ感受性の観点から見て、先行技術に比べ改善された特性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2015/006447号
【特許文献2】国際公開第2016/209652号
【特許文献3】独国特許出願公開第102007018123号明細書
【特許文献4】国際公開第2018/00935号
【特許文献5】米国特許出願公開第2013/13801662号明細書
【発明の概要】
【0014】
発明者らは、場合によって製造温度(詳細には製造用トレーの温度)の最適化に関連する、Zr含有量の最適化によって:
- 割れ感受性の問題を除去すること;
- 製造未加工状態における弾性限界を制御すること;
- 硬化能力(製造未加工状態と約400℃での熱処理後の状態との間の周囲温度における機械的強度の差異)を改善すること;および
- 周囲温度および高温における優れた機械的性能を提供すること;
が可能になる、ということを発見した。
【0015】
本発明の第1の対象は、互いに重ね合わされた連続する固体金属層の形成を含む部品の製造方法において、各層がデジタルモデルから定義されたパターンを描き、各層が溶加材と呼ばれる金属の堆積によって形成されており、溶加材が、エネルギー供給を受けて溶融しかつ凝固することによって前記層を構成するようになっており、溶加材が粉末の形態をしており、この粉末をエネルギービームに曝露した結果として溶融およびそれに続く凝固がもたらされて固体層を形成することになる方法であって、溶加材が:
- 質量分率にしたがって、0.60~1.40%、好ましくは0.70~1.30%、好適には0.80~1.20%、より好適には0.85~1.15%;さらに一層好適には0.90~1.10%のZr;
- 質量分率にしたがって、2.00~5.00%、好ましくは3.00~5.00%、好適には3.50~4.50%のMn;
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは2.00~4.00%、好適には2.50~3.50%のNi;
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは1.00~3.00%、好適には1.50~2.50%のCu;
- 任意には、質量分率にしたがって、各々5.00%以下、好ましくは3.00%以下、かつ合計で15.00%以下、好ましくは12.00%以下、さらに一層好適には5.00%以下の、Hf、Cr、Ti、Er、W、Nb、Ta、Y、Yb、Nd、Ce、Co、Mo、Lu、Tm、Vおよび/またはミッシュメタルの中から選択された少なくとも1つの元素;
- 任意には、質量分率にしたがって、各々1.00%以下、好ましくは0.50%以下、好適には0.30%以下、より好適には0.10%以下、さらに一層好適には700ppm以下、かつ合計で2.00%以下、好ましくは1.00%以下の、Fe、Si、Mg、Zn、Sc、La、Sr、Ba、Sb、Bi、Ca、P、B、Inおよび/またはSnの中から選択された少なくとも1つの元素;
- 任意には、質量分率にしたがって0.06~1.00%のAg、質量分率にしたがって0.06~1.00%のLiの中から選択された少なくとも1つの元素;
- 任意には、質量分率にしたがって、各々0.05%(つまり500ppm)未満、かつ合計で0.15%未満の不純物;
- 残余がアルミニウム;
という合金元素を少なくとも含むアルミニウム合金であることを特徴とする方法である。
【0016】
理論によって束縛されないものの、本発明に係る合金は、割れ感受性と特に引張りにおける機械的強度との間の優れた妥協案を提示するために極めて有利であると思われる。
【0017】
以下の実施例において実証されるように、Zrの量は、アルミニウム合金の割れ感受性に対する優越した影響因子であると思われる。他の元素もZrの効果と同等の効果を有するということは、当業者にとって公知である。特に、Ti、V、Sc、Hf、Er、Tm、YbまたはLuを挙げることができる。したがって、本発明の一変形形態によると、好ましくはZrの質量分率の90%まで、Ti、V、Sc、Hf、Er、Tm、YbおよびLuの中から選択された少なくとも1つの元素によって、Zrを部分的に置換することができる。
【0018】
本発明のこの変形形態によると、本発明の第2の対象は、互いに重ね合わされた連続する固体金属層(201・・・20n)の形成を含む部品の製造方法において、各層がデジタルモデル(M)から定義されたパターンを描き、各層が溶加材と呼ばれる金属(25)の堆積によって形成されており、溶加材が、エネルギー供給を受けて溶融しかつ凝固することによって前記層を構成するようになっており、溶加材が粉末(25)の形態をしており、この粉末をエネルギービーム(32)に曝露した結果として溶融およびそれに続く凝固がもたらされて固体層(201・・・20n)を形成することになる方法であって、
溶加材(25)が:
- Zrが以下の百分率範囲の10%から100%未満までを占めるということを知った上で、質量分率にしたがって、合計0.60~1.40%、好ましくは0.70~1.30%、好適には0.80~1.20%、より好適には0.85~1.15%;さらに一層好適には0.90~1.10%の、Ti、V、Sc、Hf、Er、Tm、YbおよびLuの中から選択された少なくとも1つの元素およびZr;
- 質量分率にしたがって、2.00~5.00%、好ましくは3.00~5.00%、好適には3.50~4.50%のMn;
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは2.00~4.00%、好適には2.50~3.50%のNi;
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは1.00~3.00%、好適には1.50~2.50%のCu;
- 任意には、質量分率にしたがって、各々5.00%以下、好ましくは3.00%以下、かつ合計で15.00%以下、好ましくは12.00%以下、さらに一層好適には5.00%以下の、Cr、W、Nb、Ta、Y、Nd、Ce、Co、Moおよび/またはミッシュメタルの中から選択された少なくとも1つの元素;
- 任意には、質量分率にしたがって、各々1.00%以下、好ましくは0.50%以下、好適には0.30%以下、より好適には0.10%以下、さらに一層好適には700ppm以下、かつ合計で2.00%以下、好ましくは1.00%以下の、Fe、Si、Mg、Zn、La、Sr、Ba、Sb、Bi、Ca、P、B、Inおよび/またはSnの中から選択された少なくとも1つの元素;
- 任意には、質量分率にしたがって0.06~1.00%のAg、質量分率にしたがって0.06~1.00%のLiの中から選択された少なくとも1つの元素;
- 任意には、質量分率にしたがって、各々0.05%(つまり500ppm)未満、かつ合計で0.15%未満の不純物;
- 残余がアルミニウム;
という合金元素を少なくとも含むアルミニウム合金であることを特徴とする方法である。
【0019】
好ましくは、本発明に係る合金、特に本発明の第1および第2の対象に係る合金は、少なくとも80%、より好適には少なくとも85%の質量分率のアルミニウムを含む。
【0020】
粉末の溶融は、部分的または完全なものであり得る。好ましくは曝露された粉末の50~100%、より好適には80~100%が溶融する。
【0021】
各々の層は特に、デジタルモデルから定義されたパターンを描き得る。
【0022】
元素Hf、Cr、Ti、Er、W、Nb、Ta、Y、Yb、Nd、Ce、Co、Mo、Lu、Tm、Vおよびミッシュメタルは、得られた材料の硬度を増大させることのできる分散質または細かい金属間相の形成を導き得る。当業者にとっては公知のように、ミッシュメタルの組成は、概して約45~50%のセリウム、25%のランタン、15~20%のネオジムおよび5%のプラセオジムである。
【0023】
一実施形態によると、La、Bi、Mg、Er、Yb、Y、Scおよび/またはZnの添加は回避され、これらの元素の各々の好ましい質量分率はこのとき0.05%未満、好ましくは0.01%未満である。
【0024】
別の実施形態によると、Feおよび/またはSiの添加は回避される。ただし、当業者にとって、これら2つの元素が概して上記で定義された通りの含有量で一般的なアルミニウム合金中に存在することは公知である。したがって、上述の含有量は、FeおよびSiについての不純物含有量にも対応し得る。
【0025】
元素AgおよびLiは、硬化析出によってかまたは固溶体特性に対するそれらの効果によって、材料の強度に作用し得る。
【0026】
任意には、合金は、各々50kg/トン以下、好ましくは20kg/トン以下、さらに一層好適には12kg/トン以下、かつ合計で50kg/トン以下、好ましくは20kg/トン以下の量にしたがって、結晶粒を微細化するための少なくとも1つの成分、例えばAlTiCまたはAlTiB2(例えばAT5BまたはAT3Bの形態)を含むこともできる。
【0027】
一実施形態によると、該方法は、層の形成の後、
- 典型的には少なくとも100℃、かつ多くとも500℃、好ましくは300~450℃の温度での熱処理;
- および/または熱間等方圧加圧(HIC);
を含むことができる。
【0028】
熱処理は特に、残留応力の除去および/または硬化相の追加析出を可能にすることができる。
【0029】
HIC処理は、特に、伸び特性および疲労特性の改善を可能にし得る。熱間等方圧加圧は、熱処理の前、後または熱処理の代りに実施可能である。
【0030】
有利には、熱間等方圧加圧は、250℃~550℃、好ましくは300℃~450℃の温度、500~3000バールの圧力で、0.5~10時間実施される。
【0031】
構造的硬化の合金に適合した別の実施形態によると、溶体化処理とそれに続く形成された部品の焼入れおよび焼戻しおよび/または熱間等方圧加圧を実施することができる。この場合、有利にも熱間等方圧加圧を溶体化処理の代用とすることができる。しかしながら、本発明に係る方法は、好ましくは溶体化処理とそれに続く焼入れを必要としないことから、有利である。溶体化処理は、分散質または細かい金属間相の増大に寄与することにより、一部の事例において機械的強度に対して悪影響を及ぼす可能性がある。その上、複雑な形状の部品上では、焼入れ作業が部品の歪みを導く可能性があり、これが、最終的またはほぼ最終的なその形状で直接に部品が得られるという、付加製造を使用することの第1の利点を制限することになる。
【0032】
一実施形態によると、本発明に係る方法はさらに、任意には、機械加工処理、および/または、化学的、電気化学的または機械的表面処理、および/またはトライボ仕上げを含む。これらの処理は、特に粗度を削減しかつ/または耐食性を改善しかつ/または疲労割れの開始に対する耐性を改善するために実施され得る。
【0033】
任意には、例えば付加製造の後および/または熱処理の前に、部品の機械的変形を実施することが可能である。
【0034】
任意には、公知の接合方法によって単数または複数の他の部品との接合作業を実施することが可能である。例えば、接合方法として以下のものを挙げることができる:
- ボルト締め、リベット締めまたは他の機械的接合方法;
- 融接;
- 摩擦圧接;
- ろう付け。
【0035】
好ましくは、部品は、25~150℃、好適には50~130℃、さらに好適には80~110℃の温度か、または250℃超から350℃未満、好適には280~330℃の温度で製造される。最適化された温度のこの選択については、以下の実施例の中でさらに詳細に説明される。付加製造における部品の製造用チャンバー(ひいては粉末床)を加熱する手段は複数存在する。例えば、組立用ヒートトレーの利用、あるいは、レーザーによる、誘導による、加熱ランプによる、または組立用トレーの下および/または内部および/または粉末床の周りに設置され得る発熱体による加熱、を挙げることができる。
【0036】
一実施形態によると、該方法は、高い製造速度による組立方法であり得る。製造速度は例えば4mm3/s超、好ましくは6mm3/s超、より好適には7mm3/s超であり得る。製造速度は、スキャン速度(mm/s単位)、偏差ベクトル(mm単位)および層厚み(mm単位)の間の積として計算される。
【0037】
一実施形態によると、該方法は、一つのレーザー、任意には複数のレーザーを利用することができる。
【0038】
本発明の第3の対象は、本発明の第1または第2の対象に係る方法によって得られる金属部品である。
【0039】
本発明の第4の対象は、
- 質量分率にしたがって、0.60~1.40%、好ましくは0.70~1.30%、好適には0.80~1.20%、より好適には0.85~1.15%;さらに一層好適には0.90~1.10%のZr;
- 質量分率にしたがって、2.00~5.00%、好ましくは3.00~5.00%、好適には3.50~4.50%のMn;
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは2.00~4.00%、好適には2.50~3.50%のNi;
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは1.00~3.00%、好適には1.50~2.50%のCu;
- 任意には、質量分率にしたがって、各々5.00%以下、好ましくは3.00%以下、かつ合計で15.00%以下、好ましくは12.00%以下、さらに一層好適には5.00%以下の、Hf、Cr、Ti、Er、W、Nb、Ta、Y、Yb、Nd、Ce、Co、Mo、Lu、Tm、Vおよび/またはミッシュメタルの中から選択された少なくとも1つの元素;
- 任意には、質量分率にしたがって、各々1.00%以下、好ましくは0.50%以下、好適には0.30%以下、より好適には0.10%以下、さらに一層好適には700ppm以下、かつ合計で2.00%以下、好ましくは1.00%以下の、Fe、Si、Mg、Zn、Sc、La、Sr、Ba、Sb、Bi、Ca、P、B、Inおよび/またはSnの中から選択された少なくとも1つの元素;
- 任意には、質量分率にしたがって0.06~1.00%のAg、質量分率にしたがって0.06~1.00%のLiの中から選択された少なくとも1つの元素;
- 任意には、質量分率にしたがって、各々0.05%(つまり500ppm)未満、かつ合計で0.15%未満の不純物;
- 残余がアルミニウム;
という合金元素を少なくとも含むアルミニウム合金を含む、好ましくはこのアルミニウム合金で構成された粉末である。
【0040】
本発明の第5の対象は、
- Zrが以下の百分率範囲の10%から100%未満までを占めるということを知った上で、質量分率にしたがって、合計0.60~1.40%、好ましくは0.70~1.30%、好適には0.80~1.20%、より好適には0.85~1.15%;さらに一層好適には0.90~1.10%の、Ti、V、Sc、Hf、Er、Tm、YbおよびLuの中から選択された少なくとも1つの元素およびZr;
- 質量分率にしたがって、2.00~5.00%、好ましくは3.00~5.00%、好適には3.50~4.50%のMn;
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは2.00~4.00%、好適には2.50~3.50%のNi;
- 質量分率にしたがって、1.00~5.00%、好ましくは1.00~3.00%、好適には1.50~2.50%のCu;
- 任意には、質量分率にしたがって、各々5.00%以下、好ましくは3.00%以下、かつ合計で15.00%以下、好ましくは12.00%以下、さらに一層好適には5.00%以下の、Cr、W、Nb、Ta、Y、Nd、Ce、Co、Moおよび/またはミッシュメタルの中から選択された少なくとも1つの元素;
- 任意には、質量分率にしたがって、各々1.00%以下、好ましくは0.50%以下、好適には0.30%以下、より好適には0.10%以下、さらに一層好適には700ppm以下、かつ合計で2.00%以下、好ましくは1.00%以下の、Fe、Si、Mg、Zn、La、Sr、Ba、Sb、Bi、Ca、P、B、Inおよび/またはSnの中から選択された少なくとも1つの元素;
- 任意には、質量分率にしたがって0.06~1.00%のAg、質量分率にしたがって0.06~1.00%のLiの中から選択された少なくとも1つの元素;
- 任意には、質量分率にしたがって、各々0.05%(つまり500ppm)未満、かつ合計で0.15%未満の不純物;
- 残余がアルミニウム;
という合金元素を少なくとも含むアルミニウム合金を含む、好ましくはこのアルミニウム合金で構成された粉末である。
【0041】
本発明の第5の対象は、Ti、V、Sc、Hf、Er、Tm、YbおよびLuの中から選択された少なくとも1つの元素が、好ましくはZrの質量分率の90%までで、Zrの部分的置換として使用される、本発明の第4の対象の一変形形態に対応する。
【0042】
好ましくは、本発明に係る粉末の合金は、少なくとも80%、より好適には少なくとも85%の質量分率のアルミニウムを含む。
【0043】
本発明に係る粉末のアルミニウム合金は、以下の選択肢のうちの1つを単独でまたは組合せて含むこともできる:
- La、Bi、Mg、Er、Yb、Y、Scおよび/またはZnの添加は回避され、これらの元素の各々の好ましい質量分率はこのとき0.05%未満、好ましくは0.01%未満である;および/または
- Feおよび/またはSiの添加は回避される。ただし、当業者にとって、これら2つの元素が概して上記で定義された通りの含有量で一般的なアルミニウム合金中に存在することは公知である。したがって、上述の含有量は、同様に、FeおよびSiについての不純物含有量に対応し得る;および/または
- 各々50kg/トン以下、好ましくは20kg/トン以下、さらに一層好適には12kg/トン以下、かつ合計で50kg/トン以下、好ましくは20kg/トン以下の量にしたがって、結晶粒を微細化するために選択される少なくとも1つの成分、例えばAlTiCまたはAlTiB2(例えばAT5BまたはAT3Bの形態)が添加される。
【0044】
他の利点および特徴は、以下に列挙する図に表現されている、以下の説明および非限定的な実施例からより明確になるものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】SLMまたはEBMタイプの付加製造方法を例示する図である。
【
図2】実施例中で使用される割れ試験片を示す。参照番号1は、金属組織学的観察のために使用される面に対応し、参照番号2は、割れの測定臨界ゾーンに対応し、参照番号3は、製造方向に対応している。
【
図3】割れに対する添加元素Ni、CuおよびZrの効果を決定するための、実施例1の実験計画に由来する統計学的分析の結果を提示するグラフである。縦座標の軸は、μm単位の割れの長さを表わし、横座標の軸は質量百分率を表わす。
【
図4】実施例2中で使用された引張り試験を実施するために使用された試験片の幾何形状である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
明細書中、別段の指示の無いかぎり:
- アルミニウム合金の呼称は、アルミニウム協会によって作成された用語に準拠する;
- 化学元素の含有量は、%単位で示され、質量分率を表わす。
【0047】
図1は、概して、本発明に係る付加製造方法が使用されている一実施形態を描いている。この方法によると、フィラー材25は、本発明に係る合金粉末の形態を呈している。エネルギー源、例えばレーザー源または電子源31はエネルギービーム、例えばレーザービームまたは電子ビーム32を発出する。エネルギー源は、光学系または電磁レンズシステム33によってフィラー材に結合されており、こうしてデジタルモデルMに応じてビームの動きを決定することができる。エネルギービーム32は、長手方向平面XYに沿った動きをたどり、デジタルモデルMに応じたパターンを描く。粉末25は、組立用トレー10上に置かれる。エネルギービーム32と粉末25の相互作用は、この粉末の選択的溶融とそれに続く凝固を生み出し、結果として層20
1・・・20
nの形成をもたらす。層が形成された時点で、それは溶加材の粉末25で被覆され、予め作製された層に重ね合わされた別の層が形成される。層を形成する粉末の厚みは、例えば10~200μmであり得る。製造に際して、粉末床を加熱することができる。この付加製造様式は典型的には、エネルギービームがレーザービームである場合、レーザーによる選択的溶融(選択的レーザー溶融、SLM)の名称で知られており、この場合、該方法は有利には、大気圧で実行され、エネルギービームが電子ビームである場合には、電子ビームによる溶融(電子ビーム溶融、EBM)の名称で知られ、この場合、該方法は有利には典型的には0.01bar未満、そして好ましくは0.1mbar未満の減圧で実行される。
【0048】
別の実施形態において、層はレーザーによる選択的焼結(選択的レーザー焼結、SLSまたは直接金属レーザー焼結、DMLS)によって得られ、本発明に係る合金粉末層は、レーザービームにより供給される熱エネルギーを用いて選択されたデジタルモデルにしたがって選択的に焼結される。
【0049】
図1によって描かれていない別の実施形態においては、粉末は、概してレーザービームによって投入と同時に溶解される。この方法は、レーザー溶融による堆積(レーザー溶融堆積)の名称で知られている。
【0050】
他の方法、特に直接エネルギー堆積(Direct Energy Deposition、DED)、直接金属堆積(Direct Metal Deposition、DMD)、直接レーザー堆積(Direct Laser Deposition、DLD)、レーザー堆積技術(Laser Deposition Technology、LDT)、レーザー金属堆積(Laser Metal Deposition、LMD)、レーザー加工ネットシェイピング(Laser Engineering Net Shaping、LENS)、レーザークラッディング技術(Laser Cladding Technology、LCT)またはレーザーフリーフォーム製造技術(Laser Freeform Manufacturing Technology、LFMT)の名称で知られているものを使用することができる。
【0051】
一実施形態において、本発明に係る方法は、従来の圧延および/または押出し加工および/または鋳造および/または鍛造と任意にはそれに続く機械加工によって得られた部分と、付加製造によって得られた強固に結合された部分とを含むハイブリッド部品の製作のために使用される。この実施形態は、従来の方法によって得られた部品の修理にも適している可能性がある。
【0052】
また、本発明の一実施形態において、付加製造によって得られた部品の修理のために本発明に係る方法を使用することもできる。
【0053】
連続する層の形成後に、未加工部品つまり製造未加工状態にある部品が得られる。
【0054】
好ましくは、本発明にしたがって得られた製造未加工状態の部品の弾性限界は450MPa未満、好適には400MPa未満、より好適には200~400MPa、そしてさらに一層好適には200~350MPaである。
【0055】
好ましくは、溶体化処理も焼入れ操作も含まない熱処理後の本発明に係る部品の弾性限界は、この同じ部品の製造未加工状態での弾性限界よりも高い。好ましくは、前述の通りの熱処理後の本発明に係る部品の弾性限界は、350MPa超、好適には400MPa超である。
【0056】
本発明に係る粉末は、少なくとも以下の特徴のうちの1つを有し得る:
- 3~100μm、好ましくは5~25μm、または20~60μmの平均粒度。示された値は、粒子の少なくとも80%が、規定の範囲内の平均粒度を有することを意味している;
- 球形状。粉末の真球度は例えば、モルフォグラニュロメーターを使用して決定可能である;
- 優れた鋳造性。粉末の鋳造性は、例えばASTM B213規格またはISO 4490:2018規格にしたがって決定され得る。ISO 4490:2018規格によると、フロー時間は、好ましくは50秒未満である;
- 好ましくは0~5体積%、より好適には0~2体積%、さらに一層好適には0~1体積%の低い気孔率。気孔率は特に、走査型電子顕微鏡法またはヘリウムピクノメトリーによって決定可能である(ASTM B923規格参照);
- より大きな粒子に接着する、サテライト粒子と呼ばれる小さな粒子(粉末の平均サイズの1~20%)が不在または少量(10体積%未満、好ましくは5体積%未満)。
【0057】
本発明に係る粉末は、液体または固体の形態をした本発明に係る合金から従来の微粒化方法により得ることができ、代替的には、一次粉末の様々な組成が本発明に係る合金の組成に対応する平均的組成を有し、エネルギービームに対する曝露の前に一次粉末を混合することによって粉末を得ることも可能である。
【0058】
粉末の微粒化の前、および/または粉末の堆積の際、および/または一次粉末の混合の際に、浴内に非可溶性で非可融性の粒子、例えば酸化物、または二ホウ化チタンTiB2粒子または炭化チタンTiC粒子を添加することもできる。これらの粒子は、微細構造を精錬するのに役立ち得る。これらの粒子は、ナノメートルサイズのものである場合に合金を硬化させるのにも役立つことができる。これらの粒子は、30%未満、好ましくは20%未満、より好適には10%未満の体積分率にしたがって存在し得る。
【0059】
本発明に係る粉末は、例えば、ガスジェット噴霧、プラズマ噴霧、ウォータジェット噴霧、超音波噴霧、遠心力噴霧、電解と球状化または粉砕と球状化、によって得ることができる。
【0060】
好ましくは、本発明に係る粉末は、ガスジェット噴霧によって得られる。ガスジェット噴霧方法は、ノズルを通した溶解金属の流し込みで始まる。次に、場合によって他の気体が付随する窒素またはアルゴンなどの中性ガスが溶解金属に到達し、この金属は非常に小さい液滴へと微粒化され、これらの液滴は冷却して微粒化塔の内部に落下しながら凝固する。その後、粉末は、缶の中に収集される。ガスジェット噴霧方法には、不規則な形状を有する粉末を生成するウォータジェット噴霧とは異なり、球形状を有する粉末を生成するという利点がある。ガスジェット噴霧の別の利点は、特に球形状および粒度分布による優れた粉末密度にある。この方法のさらに別の利点は、粒度分布の優れた再現性にある。
【0061】
本発明に係る粉末は、その製造後、特にその水分を削減する目的で定温器に入れることができる。粉末はまた、その製造と使用の間で包装され保管され得る。
【0062】
本発明に係る粉末は、特に以下の利用分野において使用可能である:
- 選択的レーザー焼結(英語でSelective Laser SinteringまたはSLS);
- 直接金属レーザー焼結(英語でDirect Metal Laser SinteringまたはDMLS);
- 選択的加熱焼結(英語でSelective Heat SinteringまたはSHS);
- 選択的レーザー溶融(英語でSelective Laser MeltingまたはSLM);
- 電子ビーム溶融(英語でElectron Beam MeltingまたはEBM);
- レーザー溶融堆積(英語でLaser Melting Deposition);
- 直接エネルギー堆積(英語でDirect Energy DepositionまたはDED);
- 直接金属堆積(英語でDirect Metal DepositionまたはDMD);
- 直接レーザー堆積(英語でDirect Laser DepositionまたはDLD);
- レーザー堆積技術(英語でLaser Deposition TechnologyまたはLDT);
- レーザー加工ネットシェイピング(英語でLaser Engineering Net ShapingまたはLENS);
- レーザークラッディング技術(英語でLaser Cladding TechnologyまたはLCT);
- レーザーフリーフォーム製造技術(英語でLaser Freeform Manufacturing TechnologyまたはLFMT);
- レーザー金属堆積(英語でLaser Metal DepositionまたはLMD);
- コールドスプレーコンソリデーション(英語でCold Spray ConsolidationまたはCSC);
- 付加摩擦撹拌(英語でAdditive Friction StirまたはAFS);
- 電界支援焼結法または放電プラズマ焼結(英語でField Assisted Sintering Technology、FAST、またはspark plasma sintering);または
- 慣性回転摩擦溶接(Inertia Rotary Friction WeldingまたはIRFW)。
【0063】
本発明は、以下の実施例の中でさらに詳述される。
【0064】
本発明は、以上の説明中または以下の実施例中に記載の実施形態に限定されず、本明細書に付属されている特許請求の範囲によって定義されている本発明の範囲内で大幅に変動し得るものである。
【0065】
[実施例]
実施例1:
3つの変数(Ni%、Cu%、およびZr%)による田口タイプの実験計画法の範囲内で、4つの合金(B、C、DおよびE)について研究を行なった。ICP(誘導結合プラズマ)によって質量%単位で決定された組成は、下表1に記されている。これら4つの合金は、ガス(Ar)ジェット噴霧を用いてSLM方法用の粉末の形態で得られた。粒度は、本質的に3μm~100μmであり、D10は8~10μm、D50は24~28μm、D90は48~56μmであった。
【0066】
【0067】
EOS290(供給業者EOS)タイプのSLM機を用いて、割れに対するこれらの合金の感受性を研究する目的で、割れ試験片を作製した。
【0068】
図2中に表現されているこれらの試験片は、割れを開始させ易い危険な部位を有する特殊な幾何形状を有する。これらの試験片のプリントの際に、使用された主要なレーザーパラメータは、以下の通りであった:レーザー出力370W;スキャン速度1400mm/s;偏差ベクトル0.11mm;層厚み60μm。使用された機械EOSM290は、加熱要素により組立用トレーを200℃の温度まで加熱することができる。この機械を用いて200℃のトレー温度で、割れ試験片をプリントした。あらゆる場合において、試験片は、製造後に300℃で4時間の応力除去処理を受けた。
【0069】
製造後、試験片を、
図2に示された面のレベル(参照番号1)で1μmまで機械的に研磨した。試験片の危険な開始部位に存在する割れの全長を、光学顕微鏡を用いて50倍の倍率で測定した。結果は、下表2にまとめられている。
【0070】
【0071】
この実験計画に由来する結果の統計学的分析を、
図3に表わされている通りの添加元素の主要な効果のグラフの形態で実施した。このグラフは、1つの因子(ここでは添加元素の含有量)が、観察された応答(ここでは割れサンプル上で測定した割れの長さ)に対しどのような影響を及ぼすかを示している。そのために、各因子レベルについての応答の平均を計算しグラフ上に配置し、各因子レベルの点を1本の線で結んでいる。
【0072】
線が水平である場合には、主要な効果は全く存在しない(すなわち、各因子レベルは、測定された応答に対して同じように影響を及ぼす)。線が水平でない場合には、主要な効果が存在する(したがって2つの因子レベルは、測定される応答に対して異なる形で影響を及ぼす)。この線の勾配が大きければ大きいほど、結果としての主要な効果は大きいものとなる。
【0073】
図3のグラフは、研究対象の組成範囲にわたり、Niが1%減少すると平均割れ長さに90μmの増大がひき起こされ;Cuが1%減少すると平均割れ長さに175μmの減少がひき起こされ、Zrが1%減少すると平均割れ長さに2724μmの減少がひき起こされるということを示している。
【0074】
この実施例の結果は、研究対象の組成範囲にわたり、Zrが割れに対し優越した効果を有することを示している。より厳密には、割れ感受性を制限するためには、Zr含有量を減少させることが好ましい。
【0075】
この実施例において、割れ感受性に対する添加元素の影響を効果的に比較できるようにするために、発明者らによって、意図的に割れを促進することにつながる条件下に試験片が置かれたということを指摘しておかなければならない。それほど複雑でない形状を有する試験片を利用したとすれば、十分な判別はできなかったであろう。したがって、本実施例は、割れ感受性に対する添加元素の影響を示すためにのみ役立つものである。
【0076】
実施例2:
6つの合金A、F、G、H、IおよびJについて研究を行なった。ICP(誘導結合プラズマ)によって質量%単位で決定された6つの合金の組成は、下表3に記されている。これら6つの合金は、ガス(Ar)ジェット噴霧を用いてSLM方法により粉末の形態で得られた。粒度は、本質的に3μm~100μmであり、D10は8~36μm、D50は24~48μm、D90は48~67μmであった。
【0077】
【0078】
割れ試験片(実施例1のものと同一)および円筒形試験片(以下の説明による)を、前出の表3の合金から作製した。
【0079】
EOSM290(供給業者EOS)タイプのSLM機を用いて、組立方向(方向Z)に対して垂直な円筒形サンプルを、合金の機械的特性を決定する目的で作製した。これらのサンプルは、11mmの直径と46mmの高さを有する。これらのサンプルのプリントの際、使用された主要なレーザーパラメータは、以下の通りであった:レーザー出力370W;スキャン速度1400mm/s;偏差ベクトル0.11mm;層厚み60μm。製造用トレーの加熱温度は100℃であった。あらゆる場合において、サンプルは、製造後に300℃で4時間の応力除去処理を受けた。
【0080】
円筒形サンプルを機械加工して、下表4および
図4に記載されている通りの次のような特性を有する引張り試験片を得た。
【0081】
【0082】
前出の表4および
図4において、φは試験片の中央部分の直径を表わし;Mは試験片の両端部の幅を;LTは試験片の全長を;Rは試験片の中央部分と端部の間の曲率半径を;Lcは試験片の中央部分の長さを、そしてFは試験片の両端部の長さを表わす。
【0083】
試験片はその後、NF EN ISO6892-1(2009-10)規格にしたがって、周囲温度(25℃)、応力除去未加工状態(応力除去以外の補足的熱処理無し)で引張り試験に付された。主要な結果は、下表5に示されている。
【0084】
【0085】
前出の表5の結果は、100℃の製造トレーの温度について、1.3%以下のZr含有量(合金F~J)により、割れ試験片上の割れを完全に除去することが可能になったことを示している。
【0086】
表5の結果は、同様に、400MPa未満、好ましくは370MPa未満の応力除去未加工状態におけるRP02の値が、割れ感受性を制限するために有利であることも示している。
【0087】
実施例3:
実施例2の研究と類似の研究を、5つの合金について実施した。ICP(誘導結合プラズマ)によって質量%単位で決定されたこれら5つの合金の組成は、下表6に記されている。
【0088】
これら5つの合金は、ガス(Ar)ジェット噴霧を用いてSLM方法により粉末の形態で得られた。粒度は、本質的に3μm~100μmであり、D10は8~36μm、D50は24~48μm、D90は48~67μmであった。
【0089】
【0090】
EOSM290(供給業者EOS)タイプのSLM機を用いて、組立方向(方向Z)に対して垂直な円筒形サンプルを、合金の機械的特性を決定する目的で作製した。これらのサンプルは、11mmの直径と46mmの高さを有する。これらのサンプルのプリントの際、使用された主要なレーザーパラメータは、以下の通りであった:レーザー出力370W;スキャン速度1400mm/s;偏差ベクトル0.11mm;層厚み60μm。組立用トレーを温度100℃に加熱した。
【0091】
あらゆる場合において、サンプルは、製造後に300℃で4時間の応力除去処理を受けた。
【0092】
円筒形サンプルを機械加工して、前出の実施例2の試験片と類似の形で引張り試験片を得た。
【0093】
機械加工後、一部の試験片は400℃で1時間の熱処理を受けた。400℃で1時間の熱処理によって、最終的部品の100℃~300℃の使用温度での長時間時効または熱間等方圧加圧の製造後作業の時効をシミュレートすることが可能になる。
【0094】
試験片はその後、NF EN ISO 6892-1(2009-10)規格にしたがって、周囲温度(25℃)で、そしてNF EN ISO 6892-2(2018)規格にしたがって高温(200℃)で引張り試験に付された。主要な結果は、下表7に示されている。
【0095】
【0096】
前出の表7によると、応力除去未加工状態(応力除去以外の製造後熱処理無し)において、テストされたすべての合金は、25℃で310MPa未満の弾性限界を有し、このことは、製造の際の残留応力レベルを制限して合金の加工性にとって有益である。400℃で1時間の熱処理後の周囲温度での最高の機械的特性は、合金F(420MPaのRP02)とそれに続く合金HおよびI(291MPa)の場合に得られる。最低の性能は、それぞれ、合金GおよびJで、187および222MPaの場合に得られる。これらの結果は、硬化処理後の機械的性能に対するZr含有量のプラスの影響を示している。したがって、400℃で1時間の熱処理後に250MPaの最小RP02を有するためには、0.6%という最小のZr含有量が必要である。
【0097】
200℃の引張り試験について、前出の表7の結果は、テストされたすべての合金について、応力除去未加工状態が、400℃で1時間の製造後熱処理を伴う状態に比べて有利であることを示している。
【0098】
400℃で1時間の熱処理は、200℃での非常に長期にわたる時効の効果をシミュレートすることを可能にする。400℃で1時間の熱処理後の200℃での最高の性能は、合金Fとそれに続く合金HおよびIについて得られた。最低の性能は、再び、合金GおよびJについて得られた(RP02<200MPa)。
【0099】
したがって、200℃での機械的特性の優れた熱安定性を得るためには、0.6%という最小Zr含有量が好ましいと思われる。
【0100】
ここでは示されていない補足的試験の範囲内で、500℃の温度までの加熱トレーを有する別のSLM機上で本発明に係る組成を用いて、発明者らは、250~350℃、そして好適には280~330℃のトレー温度が、周囲温度および200℃での機械的性能を劣化させることなく、割れ試験片上の割れを回避することをも可能にすることを実証した。意外にも、トレーの温度の上昇にもかかわらず、未加工状態におけるまたは熱処理後の機械的特性の低下は無かった。理論により束縛されることなく、これらの条件下で本発明に係る合金が、固溶体での添加元素、および特にZrの捕捉に対する優れた適性を維持することを可能にすると思われる。例えば400℃または500℃へのトレー温度の追加上昇は、SLM方法の際の凝固速度を低下させ、こうして固溶体でのZrの捕捉を制限することを可能にすると思われ、このことが、未加工状態での機械的特性ならびに、例えば製造後400℃での熱処理の際の合金の追加硬化適性を低下させると思われる。結論として、割れ感受性を最大化すると思われるトレーの温度範囲は、150℃~250℃に位置する。
【0101】
したがって、本発明にしたがった組立用トレーの推奨温度範囲は、25~150℃、好適には50~130℃、より好適には80~110℃か、または250℃超から350℃未満まで、好適には280~330℃の温度である。
【符号の説明】
【0102】
10 組立用トレー
25 フィラー材
31 エネルギー源
32 エネルギービーム
33 光学系または電磁レンズ
【国際調査報告】