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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】三次元バイオプロセッサー
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230612BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230612BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568823
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 US2021031361
(87)【国際公開番号】W WO2021231222
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】16/872,823
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500116694
【氏名又は名称】サウスウェスト リサーチ インスティテュート
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ジマーン クレッグ エー
(72)【発明者】
【氏名】ミローネ マイケル シー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA21
4B029AA23
4B029BB11
4B029CC01
4B029DG08
4B029HA10
4B065AA94X
(57)【要約】
自動化されたコスト効率が高いT細胞の処理および製造プラットフォームとしてのビーズを含まないバイオプロセッサーが本明細書に記載される。T細胞は、がん処置のためのCAT T細胞療法におけるコア構成要素であるが、臨床的に意義のある量のスケールで製造することは困難である。3Dバイオプロセッサーは、がん免疫療法においてCAR T細胞療法を使用するための、スケーラブルな、ビーズを含まない、使用が容易で、コスト効率が高い代替のデバイスを提供する。CAR T細胞適用に加えて、このプラットフォーム技術は、がん細胞単離などの多くの他の適用に対する可能性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の球、および前記複数の球と相互接続されている複数のロッドを含む3Dバイオプロセッサーを供給すること;
前記バイオプロセッサーの表面領域上にコーティングを提供すること;
付着されるタンパク質を前記コーティングに提供すること;
前記タンパク質上に固定化される1つ以上のビオチン化抗体を提供すること;
前記バイオプロセッサーを通して細胞を流すことであって、前記細胞が前記1つ以上のビオチン化抗体に結合する、流すこと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記細胞が、T細胞を含み、前記T細胞の受容体が、前記1つ以上のビオチン化抗体に結合し、活性化され、T細胞の拡大増殖を促進するシグナル伝達分子を含有する灌流媒体に前記活性化されたT細胞を曝露することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティングが、タンパク質コーティングであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質が、四量体タンパク質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記四量体タンパク質が、アビジンまたはストレプトアビジンを含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上のビオチン化抗体が、抗CD3抗体、抗CD28抗体、および抗CD2抗体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記シグナル伝達分子が、サイトカインシグナル伝達分子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記3Dバイオプロセッサーが、少なくとも0.01GPaの引張弾性率を有する材料から形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記3Dバイオプロセッサーが、生体適合性である材料から形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
加水分解の量が、存在する前記材料の5.0重量%を超えないように、前記3Dバイオプロセッサーが、細胞培養の間の加水分解に対して感受性ではない材料から形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
球状ビーズの直径が、約10μm~約10mmであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記球状ビーズの直径が、約1mm~約3mmであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
円柱状ロッドの長さが、約0.1μm~約10mmであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記円柱状ロッドの長さが、約100μm~約3mmであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の球および前記複数のロッドが、1つ以上の層中で組織化されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の層が、少なくとも2つの層を含み、各層が、隣接する層からオフセットされていることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1の方法によって作製された多量のT細胞。
【請求項18】
複数の球、および前記複数の球と相互接続されている複数のロッドを含む装置であって、球状ビーズの直径が、約10μm~約10mmであり、円柱状ロッドの長さが、約0.1μm~約10mmであり、前記複数の球および前記複数のロッドが、2つ以上の層中で組織化されており、各層が、隣接する層からオフセットされていることを特徴とする、装置。
【請求項19】
前記球状ビーズの直径が、約1mm~約3mmであり、前記円柱状ロッドの長さが、約100μm~約3mmであることを特徴とする、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記装置の表面上にタンパク質コーティングを含むことを特徴とする、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記タンパク質コーティングに付着した1つ以上のビオチン化抗体を含むことを特徴とする、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
抗CD3抗体、抗CD28抗体、および抗CD2抗体からなる群から選択される1つ以上のビオチン化抗体を含むことを特徴とする、請求項21に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2020年5月12日に出願された米国特許出願第16/872,823号に対する優先権を主張し、これをここに本願に引用してその全体を援用する。
【0002】
連邦政府支援の研究または開発に関する陳述
本発明は、米国国立標準技術研究所によって付与された助成番号70NANB17H002の政府支援により行われた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、細胞を処理するための3Dバイオプロセッサーの設計、製造および適用に関する。
【背景技術】
【0004】
がん免疫療法は、医学におけるバイオテクノロジー革命の最も最近の局面のシンボルになっている。2017年に、FDAは、2つのCAR T細胞に基づく免疫療法を承認した。2019年に、推定で412の臨床試験が、CAR T細胞療法の分野において、世界中で進行中である。がん免疫療法は、がんを処置するために患者自身の免疫系を使用する。最も刺激的な免疫療法アプローチうちの1つは、キメラ抗原受容体(CAR)と称される人工免疫受容体を使用する。CARは、T細胞の抗原特異性の総合的な制御を可能にする。
【0005】
典型的なCAR T細胞療法のプロセスは、Tリンパ球を患者自身の血液から収集し、T細胞ががん細胞を認識および攻撃することができるように、それらの表面上で特定の受容体CARを産生するように遺伝子操作するものである。操作されたCAR T細胞は、実験室で成長させ、数十億もの数まで拡大させ、次いで患者に注射して戻して、がん細胞を死滅させる。
【0006】
Bリンパ球抗原のCD19を標的にするCARを発現するように操作されたT細胞を使用して、1年で80%超の完全寛解率および60%の全生存が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の患者において達成され得る。CAR T療法なしでは、これらの患者は、6か月未満の予想生存期間中央値を有する。このアプローチはまた、下記の表1において示されるように、米国単独で100,000人よりも多くの個人に影響を及ぼす、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)および多発性骨髄腫(MM)を含む他のB系列血液悪性腫瘍の患者において、持続的な完全寛解を達成している。現在、承認された操作されたT細胞療法、例えば、チサゲンレクルユーセルおよびアキシカブタゲンシロロイセルは、単一製品が、図1において示されるように、患者自身のT細胞を使用して各患者のために作製される自家療法である。
【0007】
【表1】
【0008】
CAR T細胞療法の成功で、次の議題は、それを安全かつコスト効率が高いものにする方法である。現在のT細胞を操作するプロセスは、まだ一般には、T細胞と一緒にインキュベートするために磁気ビーズを使用することに基づく。磁気ビーズは、それらの表面上にCD3およびCD28がコーティングされて、T細胞を活性化する抗原として作用し、そのようにしてそれらが増殖し得る。T細胞とともに細胞培養培地中に懸濁されたマイクロビーズは、CD3およびCD28に接触および一時的に結合し、次いで活性化するために、T細胞のための比較的大きな表面積を提供する。T細胞がある特定の密度まで成長した後、T細胞および磁気ビーズを、比較的大きなバイオプロセッサーに移動させて、刺激および拡大増殖のプロセスを続ける。プロセスを複数回繰り返して、相対的に多数のT細胞を成長させる。回収の際に、T細胞は、磁気分離器を使用してビーズから分離されなければならない。したがって、現在のT細胞の拡大増殖プロセスは、一般に、磁気ビーズ、多段階の処理、および手作業の説明書に依拠し、コスト効率が高くない。加えて、これは開放システムであり、汚染物が容易に導入され得、優良製造規範(GMP)の要件を満たすために相対的により高価なものにされ得る。
【0009】
大学病院で主に開発された現在の製造アプローチは、他の目的(例えば、移植のための造血幹細胞)のために元々は開発された市販製品の混合物を使用する。これらのデバイスは、T細胞の製造における使用のために適合されており、一致した製造プロセスを作成するためにかなりのプロセス工学を必要とする。磁気マイクロビーズに基づくACTの製造は、cGMPのプロセスに成功裏に調整された。しかしながら、この製造プラットフォームの有効性は、白血病患者においてかなり低減し、ここで、白血病細胞の頻度は、T細胞の頻度を大いに超えた。製造の失敗データは、これまでに、ほとんどの報告された研究において公開されていないが、本発明者らの見解は、CLLの患者の約15~20%が、製造の失敗に起因して標的細胞を満足することができていないことを実証する。これは、白血病細胞の免疫抑制効果に起因し得る。エクスビボのT細胞の拡大増殖の失敗に加えて、非T細胞によって汚染された製品は、追加のコストおよび安全性の懸念を導入する。非T細胞の汚染はまた、標的遺伝子移入を達成するためにより多くのウイルスベクターの量を余儀なくさせ、製造のコストを増加させる。遺伝子改変非T細胞も、潜在的な安全性の懸念を導入する。特に、ALL細胞へのCD19特異的CARの導入は、少なくとも1つの疾患の再発に関連している。これは、CD19とのCAR相互作用の結果であると思われるCD19抗原の喪失に起因し、白血病細胞の発現を限定的にした。
【0010】
図2において示されるように、現在の製造は、一般に、製品を生成するために複数の手作業のステップを必要とする。これは、必要なスタッフの雇用および訓練に対する課題とともにかなりの人件費の原因となる。提案されたプラットフォームでは、T細胞、B細胞、NK細胞および単球を含む末梢血単核細胞(PBMC)が、アフェレーシスを介して患者の血液から単離され、伝統的な細胞培養Tフラスコ中でCD3およびCD28分子に対するアゴニスト抗体を保持する磁気マイクロビーズとともにインキュベートされる。PBMC中のT細胞は、CD3/CD28がコーティングされたマイクロビーズと衝突した後、拡大増殖のために活性化される。次いで、T細胞がそれらの表面上でCARを発現して、がん細胞を標的にすることができるように、T細胞は、フラスコ中でレンチウイルスベクターにより形質導入される。活性化および形質導入後、T細胞は、さらなる拡大増殖のために大きなバイオプロセッサーバッグに移動される。最後に、T細胞は、回収の間にマイクロビーズから単離される。
【0011】
コストを低減し、容易にスケーリングアウトが可能な高効率の製造アプローチは、これらの複雑な自家CAR-T細胞療法を世界中に届けるための製造ニーズを満足させることが必須である。細胞療法および遺伝子療法における細胞処理のための、低コストで、製造が容易で、使用しやすく、使い捨ての3Dバイオプロセッサーが本明細書に記載される。これは、調節可能な構造パラメーターおよびスケーラビリティを有する、高い表面と体積比の固定床を提供する。記載される3Dバイオプロセッサーはまた、同種CAR T細胞療法のスケールアップのために適用することもできる。さらにまた、3Dバイオプロセッサーは、細胞の分離、単離および精製のために使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2019/194842号
【特許文献2】国際公開第2020/68840号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
一方法によれば、複数の球、および複数の球と相互接続されている複数のロッドを含む3Dバイオプロセッサーを供給し、バイオプロセッサーの表面領域上にコーティングを提供し、次いで、コーティングに付着するタンパク質を提供し、それに続いてタンパク質上に固定化される1つ以上のビオチン化抗体を提供する。バイオプロセッサーを通して細胞を流すことによって、細胞は、1つ以上のビオチン化抗体に結合する。他の実施形態において、細胞は、T細胞を含み得、T細胞の受容体は、1つ以上のビオチン化抗体に結合し、活性化され、T細胞の拡大増殖を促進するシグナル伝達分子を含有する灌流媒体に活性化されたT細胞を曝露するステップをさらに含む。他の実施形態において、コーティングは、タンパク質コーティングである。他の実施形態において、タンパク質は、四量体タンパク質を含む。他の実施形態において、四量体タンパク質は、アビジンまたはストレプトアビジンを含む。他の実施形態において、1つ以上のビオチン化抗体は、抗CD3抗体、抗CD28抗体、および抗CD2抗体のうちの1つ以上である。他の実施形態において、シグナル伝達分子は、サイトカインシグナル伝達分子を含む。他の実施形態において、3Dバイオプロセッサーは、少なくとも0.01GPaの引張弾性率を有する材料から形成される。他の実施形態において、3Dバイオプロセッサーは、生体適合性である材料から形成される。他の実施形態において、加水分解の量が、存在する材料の5.0重量%を超えないように、3Dバイオプロセッサーは、細胞培養の間の加水分解に対して感受性ではない材料から形成される。他の実施形態において、球状ビーズの直径は、約10μm~約10mmである。他の実施形態において、球状ビーズの直径は、約1mm~約3mmである。他の実施形態において、円柱状ロッドの長さは、約0.1μm~約10mmである。他の実施形態において、円柱状ロッドの長さは、約100μm~約3mmである。他の実施形態において、複数の球および複数のロッドは、1つ以上の層中で組織化されている。他の実施形態において、1つ以上の層は、少なくとも2つの層を含み、各層は、隣接する層からオフセットされている。
【0014】
複数の球、および複数の球と相互接続されている複数のロッドを含む上述の3Dバイオプロセッサーを供給し、バイオプロセッサーの表面領域上にコーティングを提供し、次いで、コーティングに付着するタンパク質を提供し、それに続いてタンパク質上に固定化される1つ以上のビオチン化抗体を提供する方法によって作製された多量のT細胞も本明細書に記載される。前記バイオプロセッサーを通して細胞を流すことによって、細胞は、1つ以上のビオチン化抗体に結合する。
【0015】
複数の球、および複数の球と相互接続されている複数のロッドを含む装置であって、球状ビーズの直径が、約10μm~約10mmであり、円柱状ロッドの長さが、約0.1μm~約10mmであり、複数の球および複数のロッドが、2つ以上の層中で組織化されており、各層が、隣接する層からオフセットされている、装置が本明細書に記載される。他の実施形態において、球状ビーズの直径は、約1mm~約3mmであり、円柱状ロッドの長さは、約100μm~約3mmである。他の実施形態において、タンパク質コーティングは、装置の表面上にある。他の実施形態において、1つ以上のビオチン化抗体は、タンパク質コーティングに付着されている。他の実施形態において、1つ以上のビオチン化抗体は、抗CD3抗体、抗CD28抗体、および抗CD2抗体のうちの1つである。
【0016】
上記の概要は、本発明のそれぞれの実施形態またはすべての態様を表すことを意図するものではない。本発明の追加の特徴および利益は、下記に記載される詳細な説明および図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】白血病のためのCAR T細胞療法の典型的なプロセスを表す。
図2】代表的な従来のエクスビボのT細胞の拡大増殖プロセス:段階1(精製、活性化、形質導入)および段階2(増殖、回収)を表す。不利な点:1)磁気ビーズを必要とする、2)自動化の欠如、3)開放システム、4)非T細胞の汚染、および5)高価なウイルスベクターおよび他の試薬の高効率の使用が欠如する。
図3】球および相互接続されているロッドを含む3Dバイオプロセッサーの特有の構造を表す。
図4】細胞処理のための灌流フローシステムにおける構成要素を形成するための入口および出口が詰め込まれた、方法における使用のための3Dバイオプロセッサーを表す。
図5】バイオプロセッサーを通して流体が流れるのを可能にする入口および出口構造と一緒に、3D印刷されたバイオプロセッサーを表す。
図6】3Dバイオプロセッサー(a)および(b)の例を表す。このバイオプロセッサーは、全径D=14.75mm、および高さH=6.53mmを有する。(c)球-ロッドユニットは、球の直径Sφ=1.75mm、ロッドの直径Rφ=0.40mm、およびロッドの長さRL=0.25mmを有する。3Dバイオプロセスは、互いに相互接続され、3D空間に一緒に隙間なく詰められた、多数の球-ロッドユニットから構成される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
現在の製造方法は、開放プロセス下で操作されているT細胞を生成し、かなりの人件費だけでなく、GMP設備のコストも生じる。生きている薬物としての細胞は、低分子薬物のように最後に滅菌できないので、高コストのISO5またはクラス100のクリーンルームが、汚染を防止または阻害するために、全製造プロセスの間に必要とされる。T細胞製造の自動化は、ビーズに基づく技術を構築した少数の市販製品を用いた開発の活発な領域である。これらは、市場に達し始めているが、しかしながら、これらのシステムの成功は不確定である。
【0019】
CAR T細胞の製造における他の課題は、磁気マイクロビーズを使用することに関する問題である。第1に、PBMC中の単球は、磁気ビーズを取り込み、T細胞精製において変動性を引き起こし得る。高いパーセンテージの単球を含有するPBMCは、多くの場合、上記の製造プロセスにおける直接使用には不適切である。第2に、脱磁気ビーズ化プロセスおよび下流の定量化ステップは、オペレーター時間および費用をさらに増加させる。第3に、産業で通常使用されている磁気ビーズは2種類しかなく、1種類は研究用にのみ利用可能であり、CAR T細胞製造者には単一のマイクロビーズの供給源が残されている。この供給の制限は、製造のための長いリードタイムを作り出す。いくつかの新しい生分解性ビーズが、現在、T細胞を活性化するために利用可能であるが、しかしながら、それらは、また商業的に使用されていない。要約すると、着実でコスト効率が高いT細胞に基づく療法を製造する課題は、この非常に有効ながん療法から利益を得ることができる患者の数を著しく限定する。
【0020】
本発明は、細胞療法および遺伝子療法における細胞処理のための、低コストで、製造が容易で、使用しやすく、使い捨ての3Dバイオプロセスを開示する。このバイオプロセスは、調節可能な構造パラメーターおよびスケーラビリティを有する、高い表面と体積比の固定床を提供する。ここで、複数の球は、実質的に均一な固定構造で、ロッドによって相互接続されている。これらの相互接続された球-ロッドユニットの設計は、マイクロビーズアプローチの各種の利益を捕らえるが、それらの不利益は除去する。利点としては、細胞とバイオプロセッサー表面との間の反応性を増加させる高い表面積と体積の比が挙げられ、細胞取り込みが、マイクロビーズおよび固定構造の両方よりも大きくなるのを防止する。開放されたマイクロビーズとは違って、この設計は、反復可能でランダムではないメッシュ構造を形成する。これは、細胞に対するバイオプロセスおよび流体力の一貫性を確実にすること、タンパク質のためのより均一な生化学的表面、抗体結合、またはT細胞活性化のための接触を含む各種の実質的な利益を提供する。
【0021】
一方法によれば、複数の球、および複数の球と相互接続されている複数のロッドを有する3Dバイオプロセッサーを供給し、その後バイオプロセッサーの表面領域上にコーティングを提供し、次いで、付着されるタンパク質をコーティングに提供する。次いで、タンパク質上に固定化される1つ以上のビオチン化抗体を提供し、バイオプロセッサーを通して細胞を流し、ここで、細胞は、1つ以上のビオチン化抗体に結合する。細胞は、細胞の集団のうちの1つに特異的な抗体との細胞の混合集団であり得る。ある特定の細胞は、バイオプロセッサーを通して流れ、バイオプロセッサーによって捕捉されないが、細胞の集団のうちの1つに特異的な抗体は、集団を捕捉し、これは、他の集団から単離または分離される。分離された集団は、さらに分析され得る。
【0022】
他の変形形態において、方法は、複数の球、および複数の球と相互接続されている複数のロッドを含む3Dバイオプロセッサーが供給されることを含む。細胞の拡大増殖のためにバイオプロセッサーの表面領域上にコーティングを提供し、付着されるタンパク質を前記コーティングに提供し、前記タンパク質上に固定化される1つ以上のビオチン化抗体を付着させ、次いで、バイオプロセッサーを通して細胞を流して、1つ以上のビオチン化抗体に細胞が結合するのを推進する。
【0023】
他の変形形態において、3Dバイオプロセッサーは、複数の球と、複数の球と相互接続されている複数のロッドを含む。バイオプロセッサーの表面領域上にコーティングを提供して、細胞を拡大させ、次いで、タンパク質をコーティングに付着させ、タンパク質にビオチン化抗体を固定化し、その後バイオプロセッサーを通して細胞を流して、1つ以上のビオチン化抗体への細胞結合をもたらす。シグナル伝達分子を含有する灌流媒体に細胞を曝露することで、細胞の拡大増殖を促進する。
【0024】
球-ロッドユニットの寸法は、図6において示されるように、(1)球の直径(Sφ)、(2)ロッドの直径(Rφ)、および(3)ロッドの長さ(RL)に依存する。球の直径(Sφ)は、約25μm~約25mmの範囲であり得、好ましい範囲は、約250μm~約6mmである。これは、約2mmの球を含む。ロッドの直径(Rφ)は、約12.5μm~約12.5mmの範囲であり得、好ましい範囲は、約125μm~約3mmである。ロッドの長さ(RL)は、約0.1μm~約25mmの範囲であり得、好ましい範囲は、約100μm~約3mmである。球-ロッドの寸法の変化は、3Dバイオプロセスの表面と体積の比を変化させる。ロッドの直径Rφが球の直径Sφの半分未満であることが好ましい。例えば、約1~3mmの球の直径Sφ、例えば、約2mmの球の直径Sφ、約125μm~約3mmのロッドの直径Rφ、約100μm~約3mmのロッドの長さRLである。ロッドの直径Rφが球の直径Sφの半分未満であることが好ましい。一例において、図6は、25.49cmの総表面積、および約1mLの体積を有し、これは、25.49cm/Lの表面と体積の比をもたらした。
【0025】
別の方法において、T細胞の拡大増殖は、複数の球、および複数の球と相互接続する複数のロッドを有する3Dバイオプロセッサーを供給すること、細胞の拡大増殖のために前記バイオプロセッサーの表面領域上にコーティングを提供すること、付着されるタンパク質をコーティングに付着させること、タンパク質に1つ以上のビオチン化抗体を固定化すること、T細胞受容体を有するバイオプロセッサーを通してT細胞を流すことを含み、ここで、活性化は、1つ以上のビオチン化抗体へのT細胞受容体の結合によって起こる。シグナル伝達分子を含有する灌流媒体に活性化されたT細胞を曝露することで、T細胞の拡大増殖を促進する。コーティングは、タンパク質コーティング、例えば、アビジンまたはストレプトアビジンなどの四量体タンパク質であり得る。方法における使用のためのビオチン化抗体は、抗CD3抗体、抗CD28抗体、および抗CD2抗体を含む。灌流媒体中のシグナル伝達分子は、サイトカインシグナル伝達分子を含む。
【0026】
別の方法において、細胞の混合集団は、混合集団中の1つ以上の細胞型の単離を伴って、バイオプロセッサーを通して流される。これは、例えば、これらの1つ以上の細胞型に特異的な抗体を使用することによるT細胞、NK細胞、B細胞の単離を伴って、免疫学的細胞を含む。単離の後、バイオプロセッサー中の捕捉された細胞型のそれぞれは、例えば、サイトカインなどのシグナル伝達分子を有する活性化媒体の存在下で培養することによって、拡大され得る。他の実施形態において、接着細胞などの細胞は、バイオプロセッサーを通して流されて、分化が促進され得る。
【0027】
3Dバイオプロセッサーは、少なくとも0.01GPaの引張弾性率を有する材料から形成され得る。加水分解の量が、存在する材料の5.0重量%を超えないように、3Dバイオプロセッサーは、例えば、細胞培養の間の加水分解に対して感受性ではない材料を含む、生体適合性である材料から形成され得る。
【0028】
球-ロッドユニットの寸法は、図6において示されるように、(1)球の直径(Sφ)、(2)ロッドの直径(Rφ)、および(3)ロッドの長さ(RL)に依存する。球の直径(Sφ)は、約25μm~約25mmの範囲であり得、好ましい範囲は、約250μm~約6mmである。これは、約2mmの球を含む。ロッドの直径(Rφ)は、約12.5μm~約12.5mmの範囲であり得、好ましい範囲は、約125μm~約3mmである。ロッドの長さ(RL)は、約0.1μm~約25mmの範囲であり得、好ましい範囲は、約100μm~約3mmである。球-ロッドの寸法の変化は、3Dバイオプロセスの表面と体積の比を変化させる。ロッドの直径Rφが球の直径Sφの半分未満であることが好ましい。さまざまな構成において、複数の球および複数のロッドは、1つ以上の層中で組織化する。他の実施形態において、1つ以上の層は、少なくとも2つの層を含み、各層は、隣接する層からオフセットされている。複数の球における球は、4、5、6、7、8つ以上のロッドによってそれぞれ接続され得る。
【0029】
T細胞結合を最大化するために特定のせん断応力を課すために、ある流速で多くの細胞を適用するバイオプロセッサーにT細胞を導入することができる。一例は、0.1Pa~1.2Paの間の範囲のせん断応力、および多様な流速(0.06~6ml/時間)を含む。
【0030】
目的のある特定の数の細胞を生成するために、基本的な設計のサイズを調整することができる。例えば、自家療法は、5×10個のCAR T細胞と、インプット細胞の数の約60倍のT細胞の拡大増殖を必要とし得、患者のPBMC試料中のT細胞のパーセンテージは、5%~50%の範囲であり得、CAR T 細胞の拡大増殖プロセスへのインプットとして使用される典型的な試料は、20~200×10個の範囲のPBMCを含有する。したがって、200×10個のPBMC中のT細胞を活性化するために、250cmの表面積を有する3Dバイオプロセッサーは、自家臨床適用のために十分である。
【0031】
他の実施形態において、方法は、細胞の集団から稀な細胞型を単離するためのものである。例えば、3Dバイオプロセッサーは、複数の球と、複数の球と相互接続されている複数のロッドを含む。バイオプロセッサーの表面領域上にコーティングを提供し、次いで、タンパク質をコーティングに付着させ、ビオチン化抗体をタンパク質に固定化する。抗体は、1つまたはいくつかの細胞型に結合する標的である。バイオプロセッサーを通して混合型の細胞を流す場合、1つ以上のビオチン化抗体への細胞結合の特定の群をもたらし、バイオリアクター中に保持される。細胞の残りは、バイオプロセッサーから流出する。バイオリアクター中で結合した細胞は、削除されたと呼ばれる。バイオプロセッサーの細胞の流出は、負に選択される。これは、細胞の分離もしくは単離のためにバイオプロセスを使用する例であり、または細胞精製と称される。
【0032】
複数の球、および複数の球と相互接続されている複数のロッドを有する3Dバイオプロセッサーを供給し、その後バイオプロセッサーの表面領域上にコーティングを提供し、次いで、付着されるタンパク質をコーティングに提供する方法によって作製された多量の細胞が本明細書に記載される。次いで、タンパク質上に固定化される1つ以上のビオチン化抗体を提供し、バイオプロセッサーを通して細胞を流し、ここで、細胞は、1つ以上のビオチン化抗体に結合する。細胞は、細胞の集団のうちの1つに特異的な抗体との細胞の混合集団であり得る。ある特定の細胞は、バイオプロセッサーを通して流れ、バイオプロセッサーによって捕捉されないが、細胞の集団のうちの1つに特異的な抗体は、集団を捕捉し、これは、単離、分離およびさらなる分析のために溶出され得る。
【0033】
複数のロッドによって相互接続された複数の球を有する3Dバイオプロセッサーを供給し、バイオプロセッサーの表面領域にコーティングを提供して、細胞を拡大させ、コーティングにタンパク質を付着させ、1つ以上のビオチン化抗体を固定化する方法によって作製された多量のT細胞も本明細書に記載される。これに続いて、T細胞受容体を有するバイオプロセッサーを通してT細胞を流し、ここで、T細胞受容体は、前記1つ以上のビオチン化抗体に結合し、活性化される。次いで、シグナル伝達分子を含有する灌流媒体に対して、活性化されたT細胞を拡大することができる。複数の球における球は、4、5、6、7、8つ以上のロッドによってそれぞれ接続され得る。
【0034】
自家療法のためのT細胞の量は、約2、3、4、または5×10個以上のCAR T細胞である。T細胞の拡大増殖は、インプット細胞の約20~30倍、30~40倍、40~50倍、50~60倍、60倍以上であり得、PBMC試料の5%~50%がT細胞を含み、方法は、20~200×10個の範囲のPBMCの使用を必要とし得る。例えば、200×10個のPBMC中のT細胞を活性化することは、250cmの表面積を有する3Dバイオプロセッサーの使用が、臨床適用のために十分であることを示唆するであろう。
【0035】
複数のロッドによって相互接続された複数の球である装置が本明細書にさらに記載される。球の直径(Sφ)は、約25μm~約25mmの範囲であり得、好ましい範囲は、約250μm~約6mmである。これは、約2mmの球を含む。ロッドの直径(Rφ)は、約12.5μm~約12.5mmの範囲であり得、好ましい範囲は、約125μm~約3mmである。ロッドの長さ(RL)は、約0.1μm~約25mmの範囲であり得、好ましい範囲は、約100μm~約3mmである。球-ロッドの寸法の変化は、3Dバイオプロセスの表面と体積の比を変化させる。ロッドの直径Rφが球の直径Sφの半分未満であることが好ましい。さまざまな構成において、複数の球および複数のロッドは、1つ以上の層中で組織化する。他の実施形態において、1つ以上の層は、少なくとも2つの層を含み、各層は、隣接する層からオフセットされている。複数の球における球は、4、5、6、7、8つ以上のロッドによってそれぞれ接続され得る。
【0036】
装置は、装置の表面上にタンパク質コーティングを含み得る。抗CD3抗体、抗CD28抗体、および抗CD2抗体を含む、1つ以上のビオチン化抗体をタンパク質コーティングに付着させることができる。
【0037】
球-ロッドユニットの寸法は、(1)球の直径(Sφ)、(2)ロッドの直径(Rφ)、および(3)ロッドの長さ(RL)に依存する。球の直径(Sφ)は、約25μm~約25mmの範囲であり得、好ましい範囲は、約250μm~6mmである。ロッドの直径(Rφ)は、約12.5μm~約12.5mmの範囲であり得、好ましい範囲は、約125μm~約3mmである。ロッドの長さ(RL)は、0~約25mmの範囲であり得、好ましい範囲は、約100μm~約3mmである。
【0038】
例えば、約1~約3mmの球の直径Sφ、例えば、約2mmの球の直径Sφ、約125μm~約3mmのロッドの直径Rφ、約100μm~約3mmのロッドの長さRLである。ロッドの直径Rφが球の直径Sφの半分未満であることが好ましい。
【0039】
球-ロッドの寸法の変化は、3Dバイオプロセッサーの表面と体積の比を変化させる。複数の球における球は、4、5、6、7、8つ以上のロッドによってそれぞれ接続され得る。本明細書に記載されるように、約250cmの表面積を有する3Dバイオプロセスは、ある特定の臨床適用のために十分である。
【0040】
バイオプロセッサーは、FDM(熱溶解積層法)3D印刷技術において使用されるポリスチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)などの生体適合性または生体不活性ポリマー材料製であってもよい。生体適合性または生体不活性への言及は、細胞の培養に非毒性である材料として理解されるべきである。加えて、3Dバイオプロセッサーのためのポリマー材料は、好ましくは、加水分解の量が、存在するポリマー材料の5.0重量%を超えない、より好ましくは、2.5重量%を超えない、最も好ましくは、1.0重量%を超えないように、細胞培養の間の加水分解に対して感受性ではないポリマーから選択される。バイオプロセッサーはまた、SLA(光造形法)およびDLP(デジタル光処理)3D印刷技術において使用される光重合生体適合性材料(例えば、ポリ(メチルメタクリレート)またはPMMAなど)製であってもよい。
【0041】
さらにまた、本明細書における3Dバイオプロセッサーは、好ましくは、少なくとも0.01GPaの引張弾性率を有する材料から作製されたものである。より好ましくは、引張弾性率は、0.01GPaの増分で、約0.01~約20.0GPaの範囲内である値を有する。さらにより好ましくは、3Dバイオプロセッサーのための材料についての引張弾性率は、約0.01~約10.0GPa、または約1.0~約10GPaの範囲内である。例えば、本明細書における3Dバイオプロセッサーの製造のために適切な前に言及されたポリマー材料に関して、ポリスチレンは約3.0GPa、ポリカーボネートは約2.6GPa、ABSは約2.3GPa、PLAは約3.5GPa、PCLは約1.2GPa、およびPMMAは約3.0GPaの引張弾性率を示す。
【0042】
他の支援情報は、米国特許出願公開第US2019/0309250A1号に見出され、これは、完全に本願に引用して援用される。
【0043】
<実施例1>
細胞の拡大培養のための球およびロッドの設計
3Dバイオプロセッサーは、図3において示されるように、3D空間に隙間なく配置され、円柱状ロッドと相互接続された球状ビーズで構成される。球状ビーズ間の空間は、流体が流れることを可能にする。3Dバイオプロセッサーは、図1(c)において示される多数の球-ロッドユニットで構成される。一緒に隙間なく詰められた密集して相互接続された球-ロッドユニットは、反復可能でランダムではないメッシュ構造を形成し、これは、大きな表面と体積の比を有する。構造は、壁に囲まれ、これは、細胞のような生きている生体に栄養素および酸素を送達するために、メッシュ構造を通る流体の灌流を推進する。
【0044】
層ごとにオフセットされる位置を有する球状ビーズは、流体がすべての球状ビーズ表面上を流れるのを確実にし、これは、流体と球状ビーズとの間の相互作用を著しく増強する。循環腫瘍細胞を検出するためのマイクロチップ技術において使用される柱状構造といくつかの類似の特徴を有するこの構造は、球状ビーズの表面上の適当な抗体コーティングにより、がん細胞(細胞単離の適用)および任意の他の標的細胞の単離を推進する可能性を有する。細胞の単離に加えて、球状ビーズの表面が、T細胞を刺激する抗CD3、CD28のような抗体でコーティングされる場合、バイオプロセッサーは、T細胞の活性化および形質導入についての可能性を有する。
【0045】
<実施例2>
3D印刷された構造
その複雑なトポロジーを有する新規3Dバイオプロセッサーは、伝統的な射出成型製造プロセスを用いて製造することが困難である。本発明者らは、図5において示される構造を正確に製造するために、積層造形または3D印刷を使用する方法を開発した。本発明者らは、光造形法(SLA)またはデジタル光処理(DLP)技術を使用してバイオプロセッサーを印刷し、これらは、他の3D印刷法よりも滑らかな表面を有するバイオリアクターを与えた。
【0046】
<実施例3>
3D印刷された構造の詳細および追加情報
3Dバイオプロセッサーの例は、図6において図示され、球-ロッドユニットの寸法は、1)球の直径(Sφ)、2)ロッドの直径(Rφ)、およびロッドの長さ(RL)に依存する。球-ロッドの寸法の変化は、3Dバイオプロセスの表面と体積の比を変化させ、ロッドの長さは、設計中の空隙を増加させ、設計体積の主なドライバーである。
【0047】
図6における3Dバイオプロセッサーの例は、25.49cmの総表面積、および約1mLの体積を有し、これは、25.49cm/Lの表面と体積の比をもたらした。
【0048】
<実施例4>
製造スケール - 臨床使用
バイオプロセスの表面が抗CD3抗体で固定化される場合、その結果、CDバイオプロセスを通るT細胞の灌流は、抗CD3抗体と結合することができ、したがって、活性化され得る。例として図6において図示される3Dバイオプロセスを使用して、25.49cmの総表面積は、3.5μmの直径の6.6×10個の磁気ビーズの総表面積におよそ等しい。これらの磁気ビーズの数は、典型的には、T細胞の拡大増殖のために、約2.2×10個の末梢血単核細胞(PBMC)を処理することができる。3Dバイオプロセスが、その内部表面上により小さい密度の抗体を固定化することができる場合、3Dバイオプロセスは、T細胞の拡大増殖のために、同等の数のPBMCを処理すると予想される。
【0049】
典型的な自家CAR T細胞療法処置は、およそ5×10個のCAR T細胞を必要とする。T細胞の拡大増殖を考慮すると、最終ステップにおける倍数は、通常、約60倍であり、患者のPBMC試料中のT細胞のパーセンテージは、5%~50%の範囲であり得、CAR T 細胞の拡大増殖プロセスへのインプットとして使用される典型的な試料は、20~200×10個の範囲のPBMCを含有する。したがって、200×10個のPBMC中のT細胞を活性化するために、250cmの表面積を有する3Dバイオプロセスは、臨床適用のために十分である。
【0050】
本発明者らは、25,000cmの内部表面を有するバイオリアクターを製造しており、これは、同種CAR T細胞療法のために適切であり得る。製造技法として3D印刷を使用する理由のために、3Dバイオプロセスは、異なる適用のためのスケールアップ、スケールダウン、およびスケールアウトが容易である。
【0051】
<実施例5>
CAR-Tのための特異的な利点
3Dバイオプロセスの別の特徴は、T細胞がその構造を通して灌流する場合に、3Dバイオプロセスの内部表面とのT細胞相互作用を制御することができることである。開放されたマイクロビーズとは違って、その内部構造は、規則正しくも均一でもなく、使用者は、細胞と抗体がコーティングされた表面との間の所望の相互作用を達成するように、パラメーターを制御することができる。
【0052】
注目すべき例は、T細胞に対するせん断応力を、灌流の流速によって制御することができることである。いくつかの研究グループが、表面への細胞付着に対する体積流量およびせん断応力の効果を研究している。抗原を保持する樹状細胞へのCD8+およびCD4+T細胞付着の研究は、0.1Pa~1.2Paの間の範囲のせん断応力、および多様な流速(0.06~6ml/時間)が、最大のT細胞結合をもたらしたことを示す。
【0053】
上記に記載されたさまざまな方法および技法は、本発明を行うためのいくつかの方法を提供する。当然ながら、必ずしも記載されるすべての目的または利点が本明細書に記載される任意の特定の実施形態に従って達成されないことがあることが理解されるべきである。そのため、例えば、当業者は、方法を、本明細書で教示または示唆され得る他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書に教示される1つの利点または利点の群を達成または最適化する様式で行うことができることを認識するであろう。各種の有利な代替および不利な代替が、本明細書において挙げられる。いくつかの好ましい実施形態は、1つ、別の、またはいくつかの有利な特徴を具体的に含むが、他は、1つ、別の、またはいくつかの不利な特徴を具体的に排除し、さらに他は、1つ、別の、またはいくつかの有利な特徴の包含によって、現在の不利な特徴を具体的に軽減することが理解されるべきである。
【0054】
さらにまた、当業者は、異なる実施形態からのさまざまな特徴の適用可能性を認識するであろう。同様に、上記で議論されたさまざまな要素、特徴およびステップ、ならびにそれぞれのそのような要素、特徴またはステップについての他の公知の等価物を、本明細書に記載される原理に従って方法を行うために、当業者によって混合およびマッチさせることができる。さまざまな要素、特徴、およびステップの中で、いくつかは、具体的に含まれ、他は、多様な実施形態において具体的に排除されるであろう。
【0055】
本発明は、ある特定の実施形態および例の文脈において開示されているが、本発明の実施形態が、具体的に開示された実施形態を超えて、他の代替の実施形態および/または使用、ならびにその変形および等価物に及ぶことが当業者によって理解されるであろう。
【0056】
多くの変形形態および代替の要素を、本発明の実施形態において開示してきた。またさらなる変形形態および代替の要素は、当業者に明らかであろう。これらの変動の中には、限定されないが、装置の設計、そのような設計を使用するプロセス、そのような装置と適合する細胞、ならびにそのような細胞の生成の方法および組成物、例えば培地処方、関連するバイオプロセス技法、ならびに本発明の他の変形形態がある。本発明のさまざまな実施形態は、これらの変形形態または要素のいずれかを具体的に含むか、または排除することができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明のある特定の実施形態を説明し、特許請求の請求に記載するために使用される、成分の量、濃度などの性質、反応条件などを表す数字は、「約」という用語によっていくつかの例において修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、いくつかの実施形態において、明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメーターは、特定の実施形態によって得ようとする所望の性質に応じて変わり得る近似値である。いくつかの実施形態において、数値パラメーターは、報告された有効桁数に照らして、および通常の丸め技法を適用することによって、解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の広範な範囲を記載する数値範囲およびパラメーターが近似値であるにもかかわらず、具体例に記載された数値は、実施可能な限り正確に報告される。本発明のいくつかの実施形態において提示される数値は、それらの個々の試験の測定値において見出される標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を含有し得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、「a」および「an」および「the」という用語、ならびに本発明の特定の実施形態を記載する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲のある特定の文脈において)使用される類似の言及は、単数形および複数形の両方を包含すると解釈することができる。本明細書における値の範囲の列挙は、範囲内にあるそれぞれ別々の値を個々に指す簡便な方法としての役割を果たすことが単に意図される。本明細書において他に指示されない限り、それぞれの個々の値は、本明細書で個々に列挙されたかのように本明細書に援用される。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書において他に指示されない限り、またはそうでなければ文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書におけるある特定の実施形態に関して提供されるありとあらゆる例または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、本発明の理解をより良くし、他に特許請求の範囲に記載される本発明の範囲に限定をもたらすものではないことが単に意図される。本明細書における言語は、本発明の実施に必須の任意の特許請求の範囲に記載されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0059】
本明細書に開示される本発明の代替の要素または実施形態の群分けは、限定として解釈されるべきではない。それぞれの群のメンバーは、個々に、または群の他のメンバーもしくは本明細書において見出される他の要素との任意の組み合わせを指し、特許請求の範囲に記載され得る。群の1つ以上のメンバーは、利便性および/または特許性の理由のために、群に含めることができ、または群から削除することができる。任意のそのような包含または削除が起こると、ここで、本明細書は、変形された群を含有すると見なされ、したがって、添付の特許請求の範囲において使用されるすべてのマーカッシュ群の明細書の記載を充足する。
【0060】
本発明の好ましい実施形態は、本発明を行うための発明者に公知の最良の形態を含んで、本明細書に記載される。これらの好ましい実施形態に対する変形形態は、先述の説明を読むと当業者に明らかになるであろう。当業者が、そのような変形形態を必要に応じて用いることができること、および本発明を、本明細書に具体的に記載される以外で実施することができることが企図される。したがって、本発明の多くの実施形態は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された主題のすべての変形および等価物を含む。また、そのすべての可能な変形形態における上述の要素の任意の組み合わせは、本明細書において他に指示されない限り、またはそうでなければ文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0061】
さらにまた、本明細書全体を通して、特許および刊行物に対して多数の言及を行った。上記の引用された文献および刊行物のそれぞれは、個々に、それらの全体が本願に引用して援用される。
【0062】
最後に、本明細書に開示される本発明の実施形態は、本発明の原理の例示であることが理解されるべきである。用いることができる他の変形は、本発明の範囲内であり得る。そのため、例として、限定ではないが、本発明の代替の構成を、本明細書における教示に従って利用することができる。したがって、本発明の実施形態は、正確に示され、説明されたものに限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】