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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】反射防止および防眩ガラス積層板
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20230612BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
C03C15/00 Z
C03B17/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568834
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 US2021030834
(87)【国際公開番号】W WO2021231146
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/024,784
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ボトゥ,ヴェンカテッシュ
(72)【発明者】
【氏名】デ ファルシー,アッティラ ラング
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジン ス
(72)【発明者】
【氏名】コッホ,カール ウィリアム ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】リー,アイザァ
(72)【発明者】
【氏名】トライス,ジェイムズ パトリック
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AB13
4G059AC02
4G059BB04
4G059BB12
4G059BB14
4G059BB16
(57)【要約】
ガラス積層板を形成する方法は、コア層および少なくとも1つのクラッド層を有する基板を提供する工程、熱処理後に少なくとも1つのクラッド層が相分離しているような温度で基板を熱処理する工程、および少なくとも10秒間に亘り基板をエッチング処理する工程を有してなる。相分離したガラス積層板は、コア層および少なくとも1つの相分離したクラッド層を有する基板を備え、よって、ガラス積層板は少なくとも96%の%透過率を有し、少なくとも1つのクラッド層は、10nmから1μmの範囲の粒径、または5nm超の段階的ガラス屈折率を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス積層板を形成する方法であって、
コア層および少なくとも1つのクラッド層を有する基板を提供する工程、
熱処理後に前記少なくとも1つのクラッド層が相分離しているような温度で前記基板を熱処理する工程、および
少なくとも10秒間に亘り前記基板をエッチング処理する工程、
を有してなる方法。
【請求項2】
前記基板が、フュージョン積層過程により形成され、前記コア層が非晶質コア層であり、前記少なくとも1つのクラッド層が、前記熱処理前に非晶質クラッド層である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記熱処理が、400℃から1300℃の範囲の温度で行われ、該熱処理が、4時間から64時間の範囲の時間に亘り行われ、前記エッチング処理が、1秒から24時間の範囲の時間に亘り行われる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記エッチング処理が、HCl、HNO、HSO、HPO、HBO、HBr、HClO、HF、酢酸、クエン酸、NHF、重フッ化アンモニウム酸、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、HO、またはその組合せの内の少なくとも1つから選択される湿式化学エッチング液を使用して行われ、該エッチング液が、全溶液体積の0.25体積%から5体積%の範囲の濃度で存在する、請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記相分離した少なくとも1つのクラッド層が、10nmから1μmの範囲の粒径を有し、該少なくとも1つのクラッド層および前記コア層は、前記熱処理後に相分離しており、該相分離した少なくとも1つのクラッド層の粒径が、前記相分離したコア層の粒径よりも小さい、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、ここに全て引用される、2020年5月14日に出願された米国仮特許出願第63/024784号からの米国法典第35編第119(e)条の下での優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、光学的性能が改善された反射防止(AR)および防眩(AG)ガラス積層板に関する。
【背景技術】
【0003】
非AR被覆ガラス表面での光の反射は、空気とガラスの界面で生じ、フレネル方程式から予測されるように、垂直入射で反射する光の8%までであることがある。反射を最小にするための従来技術に、反射光の強度を減少させるためにガラス表面上に配置されたARコーティングの使用がある。反射防止コーティングは、多くの場合、積層体内の異なる反射を相殺的に干渉する低屈折率と高屈折率の多数の材料の層からなる。ARコーティングの代替案に、入射光が正反射方向から離れて散乱するように、ガラスの表面にエッチングパターン形成すること、テクスチャコーティング、またはバルク散乱体によるAG加工がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のARおよびAG技術の両方とも、(A)費用と時間の制限(例えば、ARコーティングは、多くの場合、様々な組成の多数のコーティングを必要とする)を負わされ、(B)制御するのが困難なことがあり、(C)併せて最適化するのが難題である(すなわち、ARコーティングおよびAG特徴は、各々の効果を個別に取り消すことがある)。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は、ディスプレイおよびセンサ用途における光学的性能が向上した、改良型反射防止(AR)および防眩(AG)ガラス積層板を開示する。
【0006】
いくつかの実施の形態において、ガラス積層板を形成する方法は、コア層および少なくとも1つのクラッド層を有する基板を提供する工程、熱処理後に少なくとも1つのクラッド層が相分離しているような温度で基板を熱処理する工程、および少なくとも10秒間に亘り基板をエッチング処理する工程を有してなる。
【0007】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、基板は、フュージョン積層過程により形成される。
【0008】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、コア層は非晶質コア層であり、少なくとも1つのクラッド層は、熱処理前に非晶質クラッド層である。
【0009】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、熱処理は、400℃から1300℃の範囲の温度で行われる。
【0010】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、熱処理は、1分から200時間の範囲の時間に亘り行われる。
【0011】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、熱処理は、4時間から64時間の範囲の時間に亘り行われる。
【0012】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、エッチング処理は、1秒から24時間の範囲の時間に亘り行われる。
【0013】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、エッチング処理は、HCl、HNO、HSO、HPO、HBO、HBr、HClO、HF、酢酸、クエン酸、NHF、重フッ化アンモニウム酸(ammonium bifluoride acid)、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、HO、またはその組合せの内の少なくとも1つから選択される湿式化学エッチング液を使用して行われる。
【0014】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、エッチング液は、全溶液体積の少なくとも0.1体積%の濃度で存在する。
【0015】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、エッチング液は、全溶液体積の0.25体積%から5体積%の範囲の濃度で存在する。
【0016】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、エッチング処理は、イオンビームエッチング、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、またはその組合せの内の少なくとも1つから選択されるドライエッチング過程を使用して行われる。
【0017】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、相分離した少なくとも1つのクラッド層は、10nmから1μmの範囲の粒径を有する。
【0018】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、少なくとも1つのクラッド層およびコア層は、熱処理後に相分離している。
【0019】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、相分離した少なくとも1つのクラッド層の粒径は、相分離したコア層の粒径よりも小さい。
【0020】
いくつかの実施の形態において、相分離したガラス積層板は、コア層および少なくとも1つの相分離したクラッド層を有する基板を備え、ガラス積層板は少なくとも96%の%透過率を有し、少なくとも1つのクラッド層は、10nmから1μmの範囲の粒径、または5nm超の段階的ガラス屈折率を有する。
【0021】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、コア層は、相分離したコア層である。
【0022】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、少なくとも1つの相分離したクラッド層の粒径は、相分離したコア層の粒径よりも小さい。
【0023】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、ガラス積層板は、少なくとも98%の%透過率および30%未満の像鮮明性を有する。
【0024】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、少なくとも1つのクラッド層は、1μmから5μmの範囲の段階的ガラス屈折率を有する。
【0025】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、少なくとも1つのクラッド層は、コア層の平均熱膨張係数(CTEコア)と異なる平均熱膨張係数(CTEクラッド)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示は、添付図面と共に解釈されたときに、以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
図1】いくつかの実施の形態による、第1のクラッド層と第2のクラッド層との間に置かれたコア層を含む三層基板の概略図
図2】いくつかの実施の形態による、フュージョンドローされた積層ガラス処理過程の説明図
図3A】いくつかの実施の形態による、図2の処理前のカバーガラスを通る入射光の透過およびフレネル反射を示す説明図
図3B】いくつかの実施の形態による、図2の処理後のカバーガラスを通る入射光の透過およびフレネル反射を示す説明図
図4A】いくつかの実施の形態による、ある時間と温度での熱処理後の積層板のクラッド部分の画像
図4B】いくつかの実施の形態による、ある時間と温度での熱処理後の積層板のクラッド部分の画像
図4C】いくつかの実施の形態による、ある時間と温度での熱処理後の積層板のクラッド部分の画像
図4D】いくつかの実施の形態による、ある時間と温度での熱処理後の積層板のクラッド部分の画像
図4E】いくつかの実施の形態による、ある時間と温度での熱処理後の積層板のクラッド部分の画像
図4F】いくつかの実施の形態による、ある時間と温度での熱処理後の積層板のクラッド部分の画像
図5A】いくつかの実施の形態による、ある時間と温度での熱処理後の積層板のクラッド部分における相分離の走査型電子顕微鏡(SEM)画像
図5B】いくつかの実施の形態による、ある時間と温度での熱処理後の積層板のクラッド部分における相分離の走査型電子顕微鏡(SEM)画像
図5C】いくつかの実施の形態による、ある時間と温度での熱処理後の積層板のクラッド部分における相分離の走査型電子顕微鏡(SEM)画像
図5D】いくつかの実施の形態による、ある時間と温度での熱処理後の積層板のクラッド部分における相分離の走査型電子顕微鏡(SEM)画像
図5E】いくつかの実施の形態による、ある時間と温度での熱処理後の積層板のクラッド部分における相分離の走査型電子顕微鏡(SEM)画像
図6A】いくつかの実施の形態による、熱処理工程およびエッチング工程における温度条件の関数としての積層板の光学的性質の測定値のグラフ
図6B】いくつかの実施の形態による、熱処理工程およびエッチング工程における温度条件の関数としての積層板の光学的性質の測定値のグラフ
図6C】いくつかの実施の形態による、熱処理工程およびエッチング工程における温度条件の関数としての積層板の光学的性質の測定値のグラフ
図6D】いくつかの実施の形態による、熱処理工程およびエッチング工程における温度条件の関数としての積層板の光学的性質の測定値のグラフ
図7】いくつかの実施の形態による、64時間に亘り700℃で熱処理し、その後、30秒間に亘り2体積%のHFでエッチングした対照試料と試験試料の全透過率(%)を示すグラフ
図8A】いくつかの実施の形態による、エッチング時間と酸濃度の関数としての全透過率(%)のグラフ
図8B】いくつかの実施の形態による、エッチング時間と酸濃度の関数としての全透過率(%)のグラフ
図8C】いくつかの実施の形態による、エッチング時間と酸濃度の関数としての像鮮明性(DOI)のグラフ
図8D】いくつかの実施の形態による、エッチング時間と酸濃度の関数としての像鮮明性(DOI)のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで、添付図面に示された例示の実施の形態を詳しく参照する。できるときはいつでも、図面に亘り、同じまたは同様の部分を称するために、同じ参照番号が使用される。図面における構成要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、そうではなく、例示の実施の形態の原理を説明する際に、強調されている。本出願は、説明に述べられた、または図面に示された詳細または方法論に限定されないことを理解すべきである。専門用語は、説明目的のためだけであり、限定と解釈すべきではないことも理解すべきである。
【0028】
それに加え、本明細書に述べられたどの例も、限定ではなく、説明に役立つものであり、請求項に記載された発明の多くの可能な実施の形態のいくつかを述べているに過ぎない。当該技術分野で通常遭遇し、当業者に明白であろう、様々な条件およびパラメータの他の適切な変更および適用が、本開示の精神および範囲に含まれる。
【0029】
定義
パーセント(%)透過率は、ある厚さの材料を透過する入射光の百分率と定義される。パーセント(%)反射率は、入射光がある媒体から別の媒体へ、例えば、空気からガラスに伝搬するときに、界面で反射する入射光の百分率と定義される。%透過率および%反射率の両方とも、不連続界面と傾斜界面を含む多数の界面の系について定義されることもある。
【0030】
像鮮明性(DOI)は、透過または反射中に散乱によって正規の方向からの光伝搬の方向の偏差の定量化である。
【0031】
光沢は、表面がどれだけ輝いて見えるかを決定する、表面から反射した光の量に比例する測量と定義される。ヘイズは、反射コントラストの低下を生じ、光源の周りに丸い光の輪を出現させる;これらの望ましくない効果は、表示品質を劇的に低下させる。相分離は、多くの場合、化学的性質が異なる、2つ以上の区別できる均質材料への均質媒体の分離と定義される。ガラス屈折率は、材料の屈折率と定義される。
【0032】
熱膨張係数(CTE)は、約20℃から約300℃の温度範囲に亘り平均化されたガラス組成物の熱膨張係数と定義される。
【0033】
「含む」などの用語は、包含するが、限定されない、すなわち、包括的であって、排他的ではないことを意味する。
【0034】
ここに用いられているように、「およそ」、「約」、「実質的に」という用語、および類似の用語は、本開示の主題が関連する技術分野における当業者によって一般的に受け入れられている使用法と調和する広い意味を有することが意図されている。本開示を検討する当業者には、これらの用語は、これらの特徴の範囲を提供された正確な数値範囲に制限することなく、記載され請求された特定の特徴の説明を可能にすることを意図していることが理解されるべきである。したがって、これらの用語は、記載され請求された主題の実質的でないまたは取るに足らない修正または変更が、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内にあるとみなされることを示すと解釈されるべきである。
【0035】
例えば、本開示の実施の形態を説明する際に採用される、組成物中の成分の量、濃度、体積、工程温度、工程所要時間、収率、流量、圧力、粘度、およびそのような値、並びに範囲、または構成要素の寸法、およびそのような値、並びに範囲の修正において、「約」または同様の用語が、例えば、材料、組成物、複合体、濃縮物、構成部品、製造品、または使用処方の調製に用いられる典型的な測定および取扱い手順によって;これらの手順における不注意な誤りによって;方法の実施に用いられる出発材料または成分の製造、供給源、または純度の違いによって;および同様の考慮事項によって、起こり得る数値量の変動を指す。用語「約」(または類似の用語)はまた、特定の初期濃度または混合物を有する組成物または製剤の熟成により異なる量、および特定の初期濃度または混合物を有する組成物または製剤を混合または処理することにより異なる量も包含する。
【0036】
ここに用いられているように、「随意的な」、「必要に応じて」などは、その後に説明される事象または状況が起こり得る、または起こり得ないこと、並びに説明に、その事象または状況が起こる例と起こらない例とが含まれることを意味する意図がある。ここに用いられる名詞は、特に明記のない限り、少なくとも1つ、または1つ以上の対象を指す。
【0037】
要素の位置(例えば、「頂部」、「底部」、「上」、「下」など)に対するここでの言及は、図中の様々な要素の向きを説明するために使用されているに過ぎない。様々な要素の向きは、他の例示の実施の形態に従って異なってもよく、そのようなバリエーションは、本開示によって包含される意図があることに留意されたい。
【0038】
当業者に周知の略語を使用することができる(例えば、時間については「h」または「hrs」、グラムについては「g」または「gm」、ミリリットルについては「mL」、室温については「rt」、ナノメートルについては「nm」、および同様の略語)。
【0039】
構成成分、成分、添加剤、寸法、条件、時間、および同様の態様について開示された特定の値および好ましい値、並びにその範囲は、説明のためだけであり、それらは、他の定義された値または定義された範囲内の他の値を除外するものではない。本開示の組成物、物品、および方法は、明示的または暗黙的な中間値および範囲を含む、ここに記載された値、特定の値、より特定の値、および好ましい値の内の任意の値または任意の組合せを含むことができる。
【0040】
本明細書における実質的に任意の複数および/または単数の用語の使用に関して、当業者は、文脈および/または用途に適切であるように、複数から単数へおよび/または単数から複数へ変換することができる。様々な単数/複数の変更は、明瞭さのために、ここに明白に記載されることがある。
【0041】
先に説明したように、ガラス表面上の反射を最小にするための従来技術には、ARコーティングおよびAGテクスチャリングの使用がある。しかしながら、従来のARおよびAG技術は両方とも、(A)費用と時間の制限(例えば、ARコーティングは、多くの場合、様々な組成の多数のコーティングを必要とする)を負わされ、(B)制御するのが困難なことがあり、(C)併せて最適化するのが難題である(すなわち、ARコーティングおよびAG特徴は、各々の効果を個別に取り消すことがある)。
【0042】
本開示において、AR/AG表面として積層ガラスのクラッド層を使用する新たな手段が記載される。この目的を達成するために、二段階工程(エッチングを含む)を使用して、AR用途におけるクラッド層の相分離化学を活用する。AG用途について、一段階工程しか必要ない(エッチングはない)。それゆえ、AG用途における積層ガラスは、AR用途における積層ガラスと比べて、コア層の粒径が大きく、クラッド層の粒径が小さくなるように構成することができる。ディスプレイ用途(例えば、自動車の内装、ラップトップ型コンピュータのカバー、スマートウォッチなど)のための改善された光学的性能(例えば、表面での約1%の全反射率、より低い光沢、およびより低いDOI)を有する段階的屈折率タイプの材料の形成を可能にする熱処理と表面エッチングのサイクルが開発される。このガラスの積層構造は、単独ガラス系よりも強力である。いくつかの実施の形態において、クラッド層、コア層、またはその組合せの内の少なくとも1つが、特定用途向けカバーガラスの設計を最適化するために、異なる粒径で相分離されることがある。
【0043】
ここで図面を参照すると、図1は、いくつかの実施の形態による、第1のクラッド層104aと第2のクラッド層104bとの間に置かれたコア層102を含む三層基板(すなわち、積層板)を示している。コア層102、第1のクラッド層104a、および第2のクラッド層104bは、独立して、ガラス系材料(例えば、ガラス材料、ガラスセラミック材料、セラミック材料、またはその組合せ)から作られている。いくつかの実施の形態において、コア層102は、第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bのガラス組成物とは異なるガラス組成物から作られている。第1のクラッド層104aおよび第2のクラッド層104bは、それぞれ、第1のクラッドガラス組成物および第2のクラッドガラス組成物から形成されることがある。いくつかの実施の形態において、第1のクラッドガラス組成物および第2のクラッドガラス組成物は、同じ材料であることがある。他の実施の形態において、第1のクラッドガラス組成物および第2のクラッドガラス組成物は、異なる材料であることがある。
【0044】
図1は、第一面102aおよびこの第一面102aと反対にある第二面102bを有するコア層102を示す。第1のクラッド層104aは、コア層102の第一面102aに直接融合されており、第2のクラッド層104bは、コア層102の第二面102bに直接融合されている。ガラスクラッド層104aおよび104bは、コア層102とクラッド層104aおよび104bとの間に配置された、接着剤、高分子層、コーティング層などのいずれの追加の材料も用いずに、コア層102に融合することができる。それゆえ、この例では、コア層102の第一面102aは第1のクラッド層104aに直接隣接しており、コア層102の第二面102bは第2のクラッド層104bに直接隣接している。いくつかの実施の形態において、コア層102と、ガラスクラッド層104aおよび104bは、フュージョン積層過程(例えば、フュージョンドロー法)により形成されている。拡散層(図示せず)が、コア層102とクラッド層104aとの間、またはコア層102とクラッド層104bとの間、もしくはその両方に形成されることがある。
【0045】
第1と第2のクラッド層は、多孔質基質を作るスピノーダル様式で相分離するどの組成物であってもよい。例えば、第1と第2のクラッド層は、45質量%から75質量%の範囲(例えば、約60質量%)の濃度を有する二酸化ケイ素(SiO)、8質量%から19質量%の範囲(例えば、約12質量%)の濃度を有するアルミナ(Al)、5質量%から23質量%の範囲(例えば、約18質量%)の濃度を有する三酸化ホウ素(B)、3質量%から21質量%の範囲の濃度を有するアルカリ酸化物(例えば、LiO、NaO、KO、RbOなど)、および1質量%から15質量%の範囲の濃度を有するアルカリ土類酸化物(例えば、MgO(約1~5質量%)、CaO(約1~10質量%)、SrO(約1~5質量%)など)を含む組成物から形成されることがある。クラッド層は、クラッド層の分解速度がコア層の分解速度より少なくとも10倍大きくなるように、ヒ素(As)およびカドミウム(Cd)を実質的に含まないことがある。ある例では、クラッド層は、高B含有アルミノケイ酸塩ガラスであることがある。第1のクラッド層および第2のクラッド層の厚さの各々は、独立して、50μmから1000μm、または50μmから750μm、または50μmから500μm(例えば、400μm)、または50μmから250μm、または100μmから750μm、または150μmから600μm、または200μmから500μm、または500μmから1000μm、または500μmから750μm、または750μmから1000μmの範囲、もしくはここに開示された任意の値または範囲にあることがある。
【0046】
コア層は、アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラス(例えば、Corning Eagle XG(登録商標))、Corning FotoForm(登録商標)Glass、Corning Iris(商標)Glass、またはCorning Gorilla(登録商標)Glassの内の少なくとも1つから形成されることがある。例えば、コア層は、79.3質量%のSiO、1.6質量%のNaO、3.3質量%のKO、0.9質量%のKNO、4.2質量%のAl、1.0質量%のZnO、0.0012質量%のAu、0.115質量%のAg、0.015質量%のCeO、0.4質量%のSb、および9.4質量%のLiOの組成を有するガラスから形成されることがある。ある例では、コア層は、第1と第2のクラッド層について先に記載されたような範囲内に入るガラス組成物から形成されることがある。例えば、コア層は、56.57質量%のSiO、16.75質量%のAl、10.27質量%のB、4.54質量%のCaO、3.18質量%のKO、3.79質量%のMgO、4.74質量%のSrOの組成を有するガラスから形成されることがある。いくつかの実施の形態において、コア層は、例えば、超低自己蛍光のために、「Corning Eagle XG」Glassまたは「Corning Iris」Glassの少なくとも一方から作られる。コア層の厚さは、1μmから200μm、または5μmから150μm、または10μmから100μm(例えば、50μm)、または25μmから75μm、または100μmから200μm、または100μmから150μm、または150μmから200μm、または1μmから100μm、または1μmから50μm、または50μmから100μmの範囲、もしくはここに開示された任意の値または範囲にあることがある。コア層は、コア層/クラッド層の界面での応力集中層によりクラッド層に構造強度を与える。
【0047】
ある例では、コア層は、20℃から300℃の範囲で約40×10-7/℃以上の平均熱膨張係数(CTEコア)を有するガラス組成物から形成されることがある。ある例では、コア層のガラス組成物の平均CTEコアは、20℃から300℃の範囲で約60×10-7/℃以上であることがある。ある例では、コア層のガラス組成物の平均CTEコアは、20℃から300℃の範囲で約80×10-7/℃以上であることがある。ある例では、第1と第2のクラッド層は、コア層の平均熱膨張係数(CTEコア)と異なる平均熱膨張係数(CTEクラッド)を有する。ある例では、第1と第2のクラッド層は、コア層の平均熱膨張係数(CTEコア)より低い平均熱膨張係数(CTEクラッド)を有する。ある例では、第1と第2のクラッド層は、コア層の平均熱膨張係数(CTEコア)より高い平均熱膨張係数(CTEクラッド)を有する。
【0048】
図2は、いくつかの実施の形態による、フュージョンドロー積層ガラス処理過程を示す。ガラス屈折率の勾配変化(挿入図)は、表面に屈折率分布効果を示しており、これは、表面のフレネル反射の最小化に関与する。初期のフュージョンドローガラス積層板は、少なくとも1つの非晶質クラッド層(一方または両方)および非晶質コア層を有する、先の図1に記載された構造と等しい。クラッド層104aおよび104bは、第1の熱処理工程により、クラッド層104cおよび104dに相分離し、一方で、コア層102は非晶質のままである。
【0049】
工程1-熱処理
熱処理は、室温で始まり、所定の温度まで昇温されるThermo Scientific Furnace(PDL)内で行われることがある。試料を1分から60分(例えば、20分)に亘り加熱し、次いで、冷却ベンチ上で急冷することによって、その後、冷却した。ある例では、相分離は、熱、電子線、レーザ、またはその組合せによっても、誘発されることがある。
【0050】
ある例では、熱処理は、400℃から1300℃、または450℃から1250℃、または500℃から1200℃、または550℃から1150℃、または600℃から1100℃、または650℃から1050℃、または700℃から1000℃、または400℃から700℃、または450℃から650℃、または1000℃から1200℃、または1050℃から1150℃、または725℃から975℃、または750℃から950℃、または775℃から925℃、または800℃から900℃、または700℃から850℃、または850℃から1000℃の範囲、もしくはここに開示された任意の介在する値または範囲内の温度で行われることがある。ある例では、熱処理は、400℃、または425℃、または450℃、または475℃、または500℃、または525℃、または550℃、または575℃、または600℃、または625℃、または650℃、または675℃、または700℃、または725℃、または750℃、または775℃、または800℃、または825℃、または850℃、または875℃、または900℃、または925℃、または950℃、または975℃、または1000℃、または1025℃、または1050℃、または1075℃、または1100℃、または1125℃、または1150℃、または1175℃、または1200℃、または1225℃、または1250℃、または1275℃、または1300℃、もしくはここに開示された任意の介在する値の温度で行われることがある。
【0051】
ある例では、熱処理は、1分から200時間、0.1時間から100時間、または0.5時間から75時間、または1時間から50時間、または2時間から40時間、または4時間から35時間、または6時間から30時間、または8時間から25時間、または10時間から25時間、または4時間から64時間、または8時間から32時間、または4時間から32時間、または4時間から16時間、または8時間から64時間、または16時間から64時間、または32時間から64時間の範囲、もしくはここに開示された任意の介在する値または範囲の時間で行われることがある。ある例では、熱処理は、1分、0.1時間、または0.5時間、または1時間、または2時間、または4時間、または6時間、または8時間、または10時間、または12時間、または14時間、または16時間、または20時間、または24時間、または28時間、または32時間、または36時間、または40時間、または44時間、または48時間、または52時間、または56時間、または60時間、または64時間、または72時間、または80時間、または88時間、または96時間、または100時間、または120時間、または140時間、または160時間、または180時間、または200時間、もしくはここに開示された任意の介在する値の時間で行われることがある。
【0052】
ある例では、任意の温度または温度範囲が、任意の時間または時間範囲とは関係なく選択される。例えば、熱処理は、64時間に亘り700℃で、または32時間に亘り750℃で、または16時間に亘り800℃で、または8時間に亘り850℃で、または4時間に亘り900℃で、などで行われることがある。
【0053】
第2のエッチング処理工程において、相分離したクラッド層104cおよび104d並びにコア層102に、液体または蒸気エッチングが施される。
【0054】
工程2-エッチング処理
エッチング処理は、以下のように行うことができる。2体積パーセント(2体積%)のフッ化水素(HF)溶液を調製した。試料の片面からテープを剥がして、片面エッチングを行った。いくつかの試料を様々な時間(例えば、30秒)に亘りある体積のHF溶液中でエッチングし、次いで、脱イオン(DI)水で濯ぎ、圧縮窒素で乾燥させた。
【0055】
ある例では、ガラス物品を分解または溶解できる適切な成分を使用して、湿式化学エッチングが行われる。例えば、適切な湿式エッチング化学物質としては、酸(例えば、HCl、HNO、HSO、HPO、HBO、HBr、HClO、HF、酢酸、クエン酸、NHF、重フッ化アンモニウム酸)、塩基(例えば、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH))、HO、またはその組合せが挙げられる。ある例では、湿式化学エッチング液は、0.1体積%から10体積%、または0.2体積%から9体積%、または0.3体積%から8体積%、または0.4体積%から7体積%、または0.5体積%から6体積%、または0.6体積%から5体積%、または0.25体積%から5体積%、または0.25体積%から3体積%、または0.25体積%から2体積%の範囲、もしくはここに開示された任意の介在する値または範囲の濃度を有する。
【0056】
ある例では、湿式化学エッチング液は、0.1体積%、または0.15体積%、または0.2体積%、または0.25体積%、または0.3体積%、または0.35体積%、または0.4体積%、または0.45体積%、または0.5体積%、または0.55体積%、または0.6体積%、または0.65体積%、または0.7体積%、または0.75体積%、または0.8体積%、または0.85体積%、または0.9体積%、または0.95体積%、または1体積%、または1.1体積%、または1.2体積%、または1.3体積%、または1.4体積%、または1.5体積%、または1.6体積%、または1.7体積%、または1.8体積%、または1.9体積%、または2体積%、または2.25体積%、または2.5体積%、または3体積%、または3.5体積%、または4体積%、または4.5体積%、または5体積%、または6体積%、または7体積%、または8体積%、または9体積%、または10体積%、もしくはここに開示された任意の介在する値の濃度を有する。
【0057】
ある例では、ドライエッチング過程が、酸素含有、窒素含有、ハロゲン含有、またはフッ素含有、もしくはその組合せなどの、その中の適切な気体を使用して、イオンビームエッチング、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、またはその組合せの内の少なくとも1つで行われる。
【0058】
ある例では、エッチング処理は、1秒から24時間、5秒から20時間、10秒から16時間、20秒から12時間、30秒から8時間、45秒から4時間の範囲、もしくはここに開示された任意の介在する値または範囲の時間で行われることがある。ある例では、エッチング処理は、1秒から300秒、または5秒から250秒、または10秒から200秒、または20秒から150秒、または10秒から120秒、または20秒から120秒、または30秒から120秒、または45秒から120秒、または60秒から120秒、または90秒から120秒の範囲、もしくはここに開示された任意の介在する値または範囲の時間で行われることがある。ある例では、エッチング処理は、1秒、または5秒、または10秒、または20秒、または30秒、または45秒、または60秒、または75秒、または90秒、または105秒、または120秒、または150秒、または180秒、または210秒、または240秒、または270秒、または300秒、または4時間、または8時間、または12時間、または16時間、または20時間、または24時間、もしくはここに開示された任意の介在する値の時間で行われることがある。
【0059】
ある例では、エッチング液は、任意の時間または時間範囲および濃度または濃度範囲とは関係なく選択される。例えば、エッチング処理は、0.5体積%のHFなどを使用して、湿式化学エッチングとして行われることがある。
【0060】
それゆえ、相分離後の工程2において、シリカの少ない相領域のサイズおよび熱処理条件により決定される通路幅を有する多孔質表面構造を形成するために、ガラス試料にエッチングが行われる。言い換えると、エッチング処理により、クラッドガラス/空気界面近くのホウ素または他の元素の除去により、5nm超(例えば、50nm)、または1nmから100nm、または100nmから1μm、または1μmから5μmの程度の段階的ガラス屈折率が生じる。
【0061】
ここに記載されたエッチング処理によって、ホウ素が豊富な相が除去される。相分離により、一方が優先的に高いかまたは低い速度でエッチングされる、二相が生じる限り、エッチング処理は、クラッド組成物の特定の元素を優先的に標的とすることができる。しかしながら、優先的なエッチングは、ガラスに依存する。例えば、ホウケイ酸ガラスにおいて、典型的に、ホウ素基質が、ケイ酸塩基質よりも速くエッチングを受ける。ホウ素を含まない他の系(例えば、アルミノケイ酸塩ガラス)において、相分離は、特有の化学的性質に固有に生じる。
【0062】
図3Aおよび3Bは、いくつかの実施の形態による、図2の処理前(図3A)と、処理後(図3B)のカバーガラスを通る入射光の透過とフレネル反射を示している。入射光の約8%は、2つの媒体の屈折率変化の結果として、クラッドガラス/空気の界面で生じるフレネル反射によるものである。フレネル効果を経験するディスプレイの観察者にとって、ディスプレイから来る光の透過の減少は、視聴体験に悪影響を及ぼす。透過光と干渉する、ディスプレイの外部の周囲光(すなわち、「グレア」)がある場合には、これは悪化する。図3Aは、入射光の減少した透過および増加したグレアから生じる、低下したディスプレイの視認性を図で例示している。
【0063】
図3Bは、工程1の熱処理および工程2のエッチング処理の後の相分離したガラスの光学的挙動を示している。ディスプレイからの入射光は、無視できる程の反射(すなわち、最小化されたフレネル反射)を伴って、通過(すなわち、透過)することができる。相分離したクラッドガラス層(図2の104cおよび104d)の粒径に基づいて、減少したグレアまたは高まったヘイズおよび透明度などの光学的性質は、用途に応じて、ディスプレイを見る観察者にとって、最適化することができる。ある例では、特定のクラッドガラス組成物および熱処理条件により、1nmから10μm、または10nmから1μm、または100nmから500nmの範囲、もしくはここに開示された任意の介在する値または範囲にある粒径を有する相分離ガラスを製造することができる。
【0064】
先に説明され、図3Bに示されるように、ディスプレイ用途にとって、クラッドガラス/空気の界面で反射した周囲光は、観察者に戻るように反射し、グレアを生じる。工程2による加工後に、少なくとも一部には、相分離したクラッドガラス層の粒径のために、周囲光は、主にガラスを通過することができ、内部のディスプレイ構成要素からの反射による背面反射は、減少したグレアのために、相分離形態である程度散乱される。
【実施例
【0065】
実施例1-相分離の確認
図4A~4Fは、いくつかの実施の形態による、様々な時間および温度での熱処理後(上記の工程1後)の積層板のクラッド部分の画像を示している。熱処理は、64時間に亘り700℃(図4B)、32時間に亘り750℃(図4C)、16時間に亘り800℃(図4D)、8時間に亘り850℃(図4E)、および4時間に亘り900℃(図4F)で、試験された。対照試料(図4A)に熱処理は行わなかった。
【0066】
温度が700℃から900℃に上昇するにつれて、分離したガラス相における違いも、光の散乱により生じる乳白色の丸い光の輪で示されるように、増す。温度が上昇するにつれて、より大きい「粒」径から明らかなように、相分離の程度も増す。二相の長さスケールが増すにつれて、これにより、光学散乱が生じ、乳白色/丸い光の輪の効果として知られている、不透明ガラスが生じる。それゆえ、ガラス試料が透明なままであるように、相分離の程度を最小に維持することが望ましい。
【0067】
図5A~5Eは、いくつかの実施の形態による、様々な時間および温度での熱処理後(上記の工程1後)の積層板のクラッド部分における相分離のSEM画像を示している。走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、走査型電子顕微鏡(Zeiss Gemini 500)によって得た。試料を1時間に亘り熱処理して、ガラス組成物の相分離に対する温度の役割を検討した。相分離は、光の波長が、我々が観察する光学的利益を提供できるよりもずっと小さい(例えば、<100nm)ことが分かった。
【0068】
図4Aから5Eのデータに基づいて、ある例では、熱処理(工程1)の最適温度と時間は、20分に亘る800℃であると決定された。
【0069】
実施例2-特徴付け
透過率(%)および透過ヘイズの測定を、CIE No15、ASTM D1003、ISO 7724/1の内の少なくとも1つに規定された基準を使用して、Ci7860 X-Rite分光光度計(入射光の角度は8°である)を使用して行った。DOIおよび光沢の測定は、ASTM E430(DOIについて)および光沢について(20°、60°、および85°の角度で測定):ISO 2813、ISO 7668、ASTM D523、ASTM D2457、DIN 67530、JIS 8741、JIS K 5600-4-7の内の少なくとも1つに記載された基準を使用して、Rhopoint IQ光沢計器を使用して行った。
【0070】
図6A~6Dは、いくつかの実施の形態による、積層板(延伸ガラス)のフュージョンドロー法、熱処理工程およびエッチング工程における温度条件の関数としての積層板の光学的性質の測定値を示している。大まかに言えば、ガラス表面が、反射防止または防眩能力を有するか否かを確認するために、%透過率は、延伸ガラスからエッチング工程へと増加すべきであり、一方で、光沢とDOIは減少すべきである。図6Aおよび6Cが示すように、64時間に亘る700℃での熱処理により、%透過率において最も著しい増加(約92%(または8%の反射率)から約96%の透過率(または4%の反射率))および減少した光沢(任意の光沢単位)が生じる。64時間に亘る700℃での熱処理で、DOIの減少も観察される。700℃より高い温度では、光沢とDOIが両方とも相当減少したにもかかわらず、%透過率について感知できるほどの増加は観察されない(例えば、750℃および800℃)か、または実際に、%透過率は減少する(例えば、850℃および900℃)。図6Dに示されるように、700℃から900℃で試験したヘイズ値は、2%未満であった。
【0071】
観測した測定をさらに確認するために、図7は、対照試料と、64時間に亘る700℃(試料A-1からA-12およびB-1からB-5について)または20分に亘る800℃(試料C-1からC-4について)での熱処理を施し、その後、30秒に亘り0.5体積%のHF(試料A-1からA-12について)または30秒に亘り2.0体積%のHF(試料B-1からB-5およびC-1からC-4について)でのエッチング処理を施した多数(21)の試験試料の全透過率(%)を示す。平均で、試料A-1からA-12は、94%に近い全透過率を有し、一方で、試料B-1からB-5およびC-1からC-4は、99%に近い全透過率を有した。全ての試料は、対照試料(約91.5%)よりもずっと大きい全透過率を有した。
【0072】
図8A~8Dは、いくつかの実施の形態による、エッチング時間と酸濃度の関数としての全透過率(%)および像鮮明性(DOI)を示している。言い換えると、エッチング条件が、元のガラスを上回って光学的性能(例えば、%透過率)に影響を与えるか否かを決定するために、(i)0.5体積%のHFの酸濃度のエッチング液について、エッチング時間を変更し、(ii)30秒のエッチング時間について、酸濃度を変更した。
【0073】
図8Aおよび8Bから、工程2のエッチング処理の性能は、特定のエッチング時間(図8Aにおけるような)または特定の酸濃度(図8Bにおけるような)にかかわらず、対照試料よりも高い%透過率を生じるようであることが分かる。例えば、透過率は、0.5%(10~20秒のエッチング時間について)から約6%(90秒のエッチング時間について)の範囲で改善される。図8Bから、透過率は、0.5%(0.25体積%のHFで)から約7%(約1.50体積%を超えるHFで)の範囲で改善される。DOIについて、ほとんどのエッチング時間および酸濃度で、対照試料よりも低いDOIが生じるようである。例えば、DOIは、10秒から120秒(図8C)の範囲の全てのエッチング時間およびほとんどのHF濃度(図8D)で減少する。図8Aから8Dのデータに基づいて、ある例では、エッチング処理(工程2)の最適濃度および時間は、時間と費用を最小にするために、30秒に亘る2体積%であると決定された。
【0074】
これらの結果は、(A)熱処理の温度と時間、および(B)エッチング時間と酸濃度を制御することによって、98%超の透過率および30%未満のDOIを達成できることを示す。工程パラメータを調節する能力により、この解決策を生産レベルに拡大できる。
【0075】
実施例3-相分離されたクラッド層およびコア層
ある例では、クラッド層およびコア層の両方とも、工程1の熱処理のために、相分離を経ることができる。この例において、最終用途の所望の光学的性能に応じて、クラッドガラス層とコアガラス層の粒径は、同じであっても異なってもよい。例えば、クラッド層は、工程2の後に、コア層よりも小さい粒径を有し、耐引掻性表面を維持または向上させつつ、段階的屈折率反射防止をもたらすことができる。グレアまたはヘイズを制御するために、経路長が長いコア層を使用することができる。
【0076】
それゆえ、ここに提示されたように、本開示は、ディスプレイ用途において向上した光学的性能を有する改良された反射防止(AR)および防眩(AG)ガラス積層板に関する。形成されたAR/AGガラス積層板の利点として、以下が挙げられる:(1)反射防止および防眩挙動を同時に達成する能力、(2)広帯域フィルタとして機能する単層材料を使用して、全可視スペクトル領域に亘り反射を効果的に減少させること、(3)環境に優しい、耐久性が高く、耐引掻性のガラスを用いた解決策を提供すること、(4)追加のIOX過程によらない、積層板のコアとクラッドとの間の熱膨張係数(CTE)の不一致による強度、(5)均一な光学コーティングを有する様々な3D形状を製造できる加熱成形が可能なこと、(6)最終的な用途に基づいて最適化されたヘイズ、グレア、透明度、および透過。
【0077】
請求項の主題の精神または範囲から逸脱せずに、様々な改変および変更を行えることが、当業者に明白であろう。したがって、請求項の主題は、付随の特許請求の範囲およびその等価物に踏まえることを除いて、制限されるべきではない。
【0078】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0079】
実施形態1
ガラス積層板を形成する方法であって、
コア層および少なくとも1つのクラッド層を有する基板を提供する工程、
熱処理後に前記少なくとも1つのクラッド層が相分離しているような温度で前記基板を熱処理する工程、および
少なくとも10秒間に亘り前記基板をエッチング処理する工程、
を有してなる方法。
【0080】
実施形態2
前記基板が、フュージョン積層過程により形成される、実施形態1に記載の方法。
【0081】
実施形態3
前記コア層が非晶質コア層であり、前記少なくとも1つのクラッド層が、前記熱処理前に非晶質クラッド層である、実施形態1または2に記載の方法。
【0082】
実施形態4
前記熱処理が、400℃から1300℃の範囲の温度で行われる、実施形態1から3のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
実施形態5
前記熱処理が、1分から200時間の範囲の時間に亘り行われる、実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
実施形態6
前記熱処理が、4時間から64時間の範囲の時間に亘り行われる、実施形態5に記載の方法。
【0085】
実施形態7
前記エッチング処理が、1秒から24時間の範囲の時間に亘り行われる、実施形態1から6のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
実施形態8
前記エッチング処理が、HCl、HNO、HSO、HPO、HBO、HBr、HClO、HF、酢酸、クエン酸、NHF、重フッ化アンモニウム酸、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、HO、またはその組合せの内の少なくとも1つから選択される湿式化学エッチング液を使用して行われる、実施形態1から7のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態9
前記エッチング液が、全溶液体積の少なくとも0.1体積%の濃度で存在する、実施形態8に記載の方法。
【0088】
実施形態10
前記エッチング液が、全溶液体積の0.25体積%から5体積%の範囲の濃度で存在する、実施形態8に記載の方法。
【0089】
実施形態11
前記エッチング処理が、イオンビームエッチング、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、またはその組合せの内の少なくとも1つから選択されるドライエッチング過程を使用して行われる、実施形態1から7のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
実施形態12
前記相分離した少なくとも1つのクラッド層が、10nmから1μmの範囲の粒径を有する、実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態13
前記少なくとも1つのクラッド層および前記コア層が、前記熱処理後に相分離している、実施形態1から12のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
実施形態14
前記相分離した少なくとも1つのクラッド層の粒径が、前記相分離したコア層の粒径よりも小さい、実施形態13に記載の方法。
【0093】
実施形態15
相分離したガラス積層板であって、
コア層および少なくとも1つの相分離したクラッド層を有する基板、
を備え、
前記ガラス積層板は少なくとも96%の%透過率を有し、
前記少なくとも1つのクラッド層は、10nmから1μmの範囲の粒径、または5nm超の段階的ガラス屈折率を有する、ガラス積層板。
【0094】
実施形態16
前記コア層が、相分離したコア層である、実施形態15に記載のガラス積層板。
【0095】
実施形態17
前記少なくとも1つの相分離したクラッド層の粒径が、前記相分離したコア層の粒径よりも小さい、実施形態16に記載のガラス積層板。
【0096】
実施形態18
前記ガラス積層板が、少なくとも98%の%透過率および30%未満の像鮮明性を有する、実施形態15から17のいずれか1つに記載のガラス積層板。
【0097】
実施形態19
前記少なくとも1つのクラッド層が、1μmから5μmの範囲の段階的ガラス屈折率を有する、実施形態15から18のいずれか1つに記載のガラス積層板。
【0098】
実施形態20
前記少なくとも1つのクラッド層が、前記コア層の平均熱膨張係数(CTEコア)と異なる平均熱膨張係数(CTEクラッド)を有する、実施形態15から19のいずれか1つに記載のガラス積層板。
【符号の説明】
【0099】
102 コア層
102a コア層の第一面
102b コア層の第二面
104a 第1のクラッド層
104b 第2のクラッド層
104c 相分離した第1のクラッド層
104d 相分離した第2のクラッド層
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
【国際調査報告】