(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】抗IL-23p19抗体を含む製剤、その調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230612BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230612BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230612BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230612BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230612BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230612BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230612BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230612BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20230612BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/26
A61K9/19
A61P37/02
A61P29/00
C07K16/24 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568950
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 CN2021093219
(87)【国際公開番号】W WO2021228113
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】202010404834.4
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519274183
【氏名又は名称】イノベント バイオロジクス(スーチョウ)カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】マー リーチアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン インチュエ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ カイソン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA31
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB17
4C076CC04
4C076CC07
4C076DD09F
4C076DD43Z
4C076DD51Q
4C076DD51Z
4C076DD67Q
4C076EE23F
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF61
4C076FF63
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA74
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、抗IL-23p19抗体を含む製剤に関し、特に抗IL-23p19抗体、緩衝剤、安定化剤および界面活性剤を含む医薬製剤に関する。さらに、本発明は、疾患の治療または予防のためのこれらの製剤の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)抗IL-23p19抗体と、
(ii)緩衝剤と、
(iii)安定化剤と、
(iv)界面活性剤と、
を含む液体抗体製剤であって、前記抗IL-23p19抗体は以下の6つのCDR:
- GYTFTSYLMH(配列番号1)の重鎖VH CDR1と、
- YINPYNEGTN(配列番号2)の重鎖VH CDR2と、
- NWDLPY(配列番号3)の重鎖VH CDR3と、
- RASQSISDYLH(配列番号4)の軽鎖VL CDR1と、
- YASQSMS(配列番号5)の軽鎖VL CDR2と、
- QQGHSFPFT(配列番号6)の軽鎖VL CDR3と、を含み、
前記CDRは、AbM規則によって境界が決定され、
好ましくは、前記液体抗体製剤は、約5.2~6.3、例えば、約5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3のpHを有し、好ましくは、約6.0±0.3のpHを有する、液体抗体製剤。
【請求項2】
前記液体抗体製剤における前記抗IL-23p19抗体は、約25mg/mL~250mg/mLの濃度であり、好ましくは、約50mg/mL~200mg/mLの濃度である、請求項1に記載の液体抗体製剤。
【請求項3】
前記液体抗体製剤は、ヒスチジン-ヒスチジン塩酸塩緩衝系から選択される緩衝剤、またはクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝系から選択される緩衝剤を含み、
好ましくは、前記液体抗体製剤における前記緩衝剤は、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1または2に記載の液体抗体製剤。
【請求項4】
前記緩衝剤は、以下から選択され、
(i) 約0.775mg/mL~3.1mg/mLのヒスチジン、好ましくは、前記ヒスチジンが約1.55mg/mLの濃度であり、または
(ii) ヒスチジンとヒスチジン塩酸塩との組み合わせ、ここで、前記ヒスチジンの含有量が約0.38mg/mL~1.52mg/mL、前記ヒスチジン塩酸塩の含有量が約0.54mg/mL~2.16mg/mLであり、好ましくは、前記ヒスチジンと前記ヒスチジン塩酸塩がそれぞれ、約0.76mg/mLと約1.08mg/mLの濃度である、請求項3に記載の液体抗体製剤。
【請求項5】
前記安定化剤は、以下から選択され
(i)約25mg/mL~100mg/mLのソルビトール、好ましくは40mg/mL~60mg/mLのソルビトール、
(ii)約40mg/mL~160mg/mLのスクロース、好ましくは70mg/mL~90mg/mLのスクロース、
(iii)ソルビトールとアルギニンとを含む組み合わせ、前記組み合わせにおいて、前記ソルビトールが約15mg/mL~60mg/mLであってもよく、好ましくは約20mg/mL~40mg/mLであってもよく、前記アルギニンが約6.97mg/mL~27.88mg/mLであってもよく、好ましくは10.45mg/mL~17.42mg/mLであり、および、
(iv)スクロースとアルギニンとを含む組み合わせ、前記組み合わせにおいて、前記スクロースが約25mg/mL~100mg/mLであってもよく、好ましくは約40mg/mL~60mg/mLであってもよく、前記アルギニンが約6.97mg/mL~27.88mg/mLであってもよく、好ましくは10.45mg/mL~17.42mg/mLである、請求項1~4のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項6】
前記液体抗体製剤における前記界面活性剤は、ポリソルベート系界面活性剤、ポロキサマー、ポリエチレングリコールおよびそれらの組み合わせから選択され、好ましくはポリソルベート80またはポリソルベート20である、請求項1~5のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項7】
前記界面活性剤は約0.1mg/mL~1mg/mL、好ましくは約0.2mg/mL~0.8mg/mL、例えば約0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、または0.8mg/mLの濃度である、請求項1~6のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項8】
前記抗IL-23p19抗体は重鎖可変領域VHおよび軽鎖可変領域VLを含み、前記重鎖可変領域は配列番号7の配列またはそれと少なくとも90%、95%、98%または99%の同一性を有する配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号8の配列またはそれと少なくとも90%、95%、98%または99%の同一性を有する配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項9】
前記抗IL-23p19抗体はIgG1型抗体であり、好ましくは、配列番号9またはそれと少なくとも90%、95%、98%または99%の同一性を有する重鎖配列と、配列番号10またはそれと少なくとも90%、95%、98%または99%の同一性を有する軽鎖配列とを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項10】
前記抗IL-23p19抗体は、HEK 293細胞またはCHO細胞で組換え発現される、請求項1~9のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項11】
前記液体製剤は注射剤であり、好ましくは皮下注射もしくは静脈内注射または輸注剤に使用され、例えば静脈内輸注に使用される、請求項1~10のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の液体抗体製剤であって、前記液体抗体製剤が、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.775mg/mL~3.1mg/mLのヒスチジンと、
(iii)約40mg/mL~60mg/mLのソルビトールと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有し、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.775mg/mL~3.1mg/mLのヒスチジンと、
(iii)約20mg/mL~40mg/mLのソルビトール、約10.45mg/mL~17.42mg/mLのアルギニンと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有し、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.775mg/mL~3.1mg/mLのヒスチジン緩衝剤と、
(iii)約70mg/mL~90mg/mLのスクロースと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有し、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.775mg/mL~3.1mg/mLのヒスチジンと、
(iii)約40mg/mL~60mg/mLのスクロース、約10.45mg/mL~17.42mg/mLのアルギニンと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有し、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.38mg/mL~1.52mg/mLのヒスチジン、約0.54mg/mL~2.16mg/mLのヒスチジン塩酸塩と、
(iii)約40mg/mL~60mg/mLのソルビトールと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤のpHは6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有し、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.38mg/mL~1.52mg/mLのヒスチジン、約0.54mg/mL~2.16mg/mLのヒスチジン塩酸塩と、
(iii)約20mg/mL~40mg/mLのソルビトール、約10.45mg/mL~17.42mg/mLのアルギニンと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有し、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.38mg/mL~1.52mg/mLのヒスチジン、約0.54mg/mL~2.16mg/mLのヒスチジン塩酸塩と、
(iii)約70mg/mL~90mg/mLのスクロースと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有し、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.38mg/mL~1.52mg/mLのヒスチジン、約0.54mg/mL~2.16mg/mLのヒスチジン塩酸塩と、
(iii)約40mg/mL~60mg/mLのスクロース、約10.45mg/mL~17.42mg/mLのアルギニンと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の液体抗体製剤。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の液体抗体製剤を固化することによって得られる固体抗体製剤であって、前記固体抗体製剤は、例えば、注射用凍結乾燥粉末の形態である、固体抗体製剤。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の液体抗体製剤または請求項13に記載の固体抗体製剤を含む送達装置。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の液体抗体製剤または請求項13に記載の固体抗体製剤を含み、静脈内注射または筋肉内注射において使用するための薬剤充填済み注射器。
【請求項16】
免疫系疾患、例えば、自己免疫系疾患または炎症を治療するための送達装置、薬剤充填済み注射器または薬物を調製するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の液体抗体製剤または請求項13に記載の固体抗体製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体製剤の分野に関する。より具体的には、本発明は、抗IL-23p19抗体を含む医薬製剤、特に安定な液体製剤、凍結乾燥製剤と再構成された安定な液体製剤、および上記医薬製剤を調製するための方法、ならびに上記医薬製剤の治療的および/または予防的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、出願日が2020年5月13日である中国特許出願2020104048344の優先権を主張する。本願は、上記中国特許出願の全文を引用する。
【0003】
インターロイキン(IL)-12は、2つのジスルフィド結合グリコシル化タンパク質サブユニットからなる分泌されたヘテロ二量体サイトカインであり、この2つのサブユニットは、それらの近似分子量のためにp35およびp40と命名されている。IL-12のp40タンパク質サブユニットは、p19と命名された単離されたタンパク質サブユニットに結合して新しいサイトカイン、すなわち、インターロイキン-23(IL-23)を形成することが見出されている。
【0004】
インターロイキン-23(IL-23)は、IL-23特有のp19(Il-23p19)と、IL-12(IL-12)に共通のp40(IL-12p40)との2つのサブユニットを含むヘテロ二量体サイトカインである。p19サブユニットは、IL-6、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)およびIL-12のp35サブユニットと構造的に関連している。IL-23は、IL-23受容体特有のIL-23RとIL-12受容体に共通のIL-12Rb1との2つのサブユニットを含むヘテロ二量体受容体との結合によってシグナル伝達を仲介する。
【0005】
多くの初期の研究により、p40における遺伝的欠損(p40ノックアウトマウス、p40KOマウス)の結果は、p35欠損マウス(例えばp35KO)で観察されたものよりも深刻であることが証明されている。これらの結果は、一般的に、p40ノックアウトがIL-12の発現だけでなく、IL-23の発現も阻害すると解釈されている。例えば、Oppmann et al.(2000)Immunity 13:715-725; Wiekowski et al.(2001)J.Immunol.166:7563-7570;Parham et al.(2002)J.Immunol. 168:5699-708;Frucht(2002) Sci STKE 2002,E1-E3;Elkins et al.(2002)Infection Immunity 70:1936-1948)が参照される。最新の研究により、IL-23の抑制は、IL-23p19欠損マウスまたはIL-23の特異性抗体の中和によって、抗IL-12p40戦略に匹敵する利益を提供できることが確認されている(Cua et al.、2003、Murphy et al.、2003、Benson et al.2004)。したがって、免疫介在性疾患におけるIL-23の特異的作用の増加の証拠が存在する。IL-23の中和は、IL-12経路を抑制しないので、免疫介在性疾患の効果的な治療を提供することができるとともに、重要な宿主防御免疫機構に対して限定された影響を有する。これは、現在の治療選択の顕著な改善を表すであろう。したがって、この分野では、新しいIL-23p19抗体が必要とされている。IL-23p19抗体は、例えば、特許出願PCT/CN2019/121261に記載されている。
【0006】
医薬品の安定性は、医薬品の有効性および安全性を確保する重要な指標の一つである。良好な製剤処方の取得は、医薬品が貯蔵期間にその有効性および安全性を維持することを確保するための重要な条件である。しかし、抗体自体およびその分解経路の複雑さのため、現在、抗体安定性の最適化に必要な製剤条件を予測することがまだできない。特に、異なる抗体は通常、非常に異なるCDR配列を有し、これらの配列の相違は、異なる抗体が溶液で異なる安定性特性を有することにつながると考えられる。したがって、ヒト用抗体への安全性および有効性における厳しい要求に基づき、それぞれの抗体に対して最適な製剤処方の最適化を個別に行う必要がある。
【0007】
いくつかのIL-23p19抗体製剤が既に提案されたが、この分野では、十分に安定し、ヒト対象への投与に適するIL-23p19を含む新しい医薬製剤が依然として必要とされている。なお、このような抗体製剤に対しては、製剤処方のシンプルさおよび使いやすさを求めることも有利である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、IL-23p19に特異的に結合する抗体を含む医薬製剤を提供することで、上記の需要を満たす。本発明の抗体製剤は、異なる温度および時間の条件下で、良い安定性を有する。
【0009】
したがって、一態様において、本発明は、(i)抗IL-23p19抗体と、(ii)緩衝剤と、(iii)安定化剤と、(iv)界面活性剤と、を含む液体抗体製剤を提供する。
【0010】
一実施形態において、抗IL-23p19抗体は重鎖可変領域VHおよび軽鎖可変領域VLを含み、前記重鎖可変領域は配列番号7の配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号8の配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有する配列を含む:
配列(配列番号7)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYLMHWVRQAPGQGLEWMGYINPYNEGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARNWDLPYWGQGTLVTVSS、
配列(配列番号8)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISDYLHWYQQKPGKAPKLLIKYASQSMSGVPSRFSGSGSGSDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGHSFPFTFGQGTKLEIK。
【0011】
一実施形態において、前記抗IL-23p19抗体は、
- GYTFTSYLMH(配列番号1)の重鎖VH CDR1と、
- YINPYNEGTN(配列番号2)の重鎖VH CDR2と、
- NWDLPY(配列番号3)の重鎖VH CDR3と、
- RASQSISDYLH(配列番号4)の軽鎖VL CDR1と、
- YASQSMS(配列番号5)の軽鎖VL CDR2と、
- QQGHSFPFT(配列番号6)の軽鎖VL CDR3と、
を含む。
【0012】
一実施形態において、前記IL-23p19抗体は、配列番号9の配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号10の配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖と、を含むIgG1型抗体である。
配列(配列番号9)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYLMHWVRQAPGQGLEWMGYINPYNEGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARNWDLPYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列(配列番号10)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISDYLHWYQQKPGKAPKLLIKYASQSMSGVPSRFSGSGSGSDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGHSFPFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0013】
好ましくは、前記IL-23p19抗体は、PCT出願番号PCT/CN2019/121261(国際出願日:2019年11月27日)に開示された抗IL-23p19抗体17D1-YTEであり、当該抗体は配列番号9の重鎖配列と配列番号10の軽鎖配列からなる。
【0014】
一実施形態において、前記IL-23p19抗体は、HEK 293細胞またはCHO細胞において組換え発現される。
【0015】
一実施形態において、本発明の液体抗体製剤におけるIL-23p19抗体は、約1mg/mL~300mg/mLの濃度である。別の実施形態において、本発明の液体抗体製剤におけるIL-23p19抗体は、約25mg/mL~250mg/mL、好ましくは50mg/mL~200mg/mLの濃度であり、例えば、約50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mLの濃度である。
【0016】
一実施形態において、本発明の液体抗体製剤における緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤から選択される。好ましくは、前記緩衝剤は、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩およびそれらの組み合わせから選択される。一実施形態において、前記ヒスチジン緩衝剤は、約0.775mg/mL~3.1mg/mLのヒスチジンから選択され、好ましくは、ヒスチジンは約1.55mg/mLの濃度である。一実施形態において、前記ヒスチジン緩衝剤は、ヒスチジンとヒスチジン塩酸塩の組み合わせであり、ここで、ヒスチジンの含有量は約0.38mg/mL~1.52mg/mL、ヒスチジン塩酸塩の含有量は約0.54~2.16mg/mLであり、好ましくは、ヒスチジンとヒスチジン塩酸塩はそれぞれ、約0.76mg/mLと約1.08mg/mLの濃度である。
【0017】
一実施形態において、本発明の液体製剤は、ソルビトールを単一の安定化剤として含む。この実施形態において、本発明の液体製剤におけるソルビトールの量は、約25mg/mL~100mg/mLであってもよく、例えば40mg/mL~60mg/mLである。例えば、ソルビトールは、約40mg/mL、42mg/mL、44mg/mL、46mg/mL、48mg/mL、50mg/mL、52mg/mL、54mg/mL、56mg/mL、58mg/mLまたは60mg/mLの量で存在してもよく、好ましくは約50mg/mLの量で存在する。
【0018】
一実施形態において、本発明の液体製剤は、スクロースを単一の安定化剤として含む。この実施形態において、本発明の液体製剤におけるスクロースの量は、約40mg/mL~160mg/mLであってもよく、好ましくは70mg/mL~90mg/mLであり、例えば、スクロースは、約70mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、85mg/mLまたは90mg/mLの量で存在してもよく、好ましくは約80mg/mLの量で存在する。一実施形態において、本発明の液体製剤は、ソルビトールとアルギニンの組み合わせを安定化剤として含む。当該組み合わせにおいて、ソルビトールは、約15mg/mL~60mg/mL、好ましくは20mg/mL~40mg/mLの量で存在してもよく、例えば、約20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mLまたは40mg/mLであってもよい。当該組み合わせにおいて、アルギニンは、約6.97mg/mL~27.88mg/mL、好ましくは10.45mg/mL~17.42mg/mL、特に約13.94mg/mLの量で存在してもよい。好ましくは、本発明の液体製剤は、約20mg/mL~40mg/mLのソルビトールおよび約10.45mg/mL~17.42mg/mLのアルギニンを含む。より好ましくは、本発明の液体製剤は、約30mg/mLのソルビトールおよび約13.94mg/mLのアルギニンを含む。
【0019】
一実施形態において、本発明の液体製剤は、スクロースとアルギニンの組み合わせを安定化剤として含む。当該組み合わせにおいて、スクロースは、約25mg/mL~100mg/mLであってもよく、好ましくは40mg/mL~60mg/mLであり、例えば40mg/mL、42mg/mL、44mg/mL、46mg/mL、48mg/mL、50mg/mL、52mg/mL、54mg/mL、56mg/mL、58mg/mL、60mg/mLである。当該組み合わせにおいて、アルギニンは、約6.97mg/mL~27.88mg/mL、好ましくは10.45mg/mL~17.42mg/mL、特に約13.94mg/mLの量で存在してもよい。好ましくは、本発明の液体製剤は、約40mg/mL~60mg/mLのスクロースおよび約10.45mg/mL~17.42mg/mLのアルギニンを含む。より好ましくは、本発明の液体製剤は、約50mg/mLのスクロースおよび約13.94mg/mLのアルギニンを含む。
【0020】
一実施形態において、本発明の液体抗体製剤における界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。一実施形態において、前記界面活性剤は、ポリソルベート系界面活性剤、ポロキサマー、ポリエチレングリコールから選択される。一実施形態において、前記界面活性剤はポリソルベート系界面活性剤から選択される。一具体的な実施形態において、本発明の液体抗体製剤における界面活性剤は、ポリソルベート80またはポリソルベート20である。一実施形態において、本発明の液体抗体製剤における界面活性剤は、約0.1mg/mL~1mg/mL、好ましくは約0.2mg/mL~0.8mg/mL、例えば約0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mLの濃度である。
【0021】
一実施形態において、前記液体製剤は、5.2~6.3(すなわち、5.5±0.3~6.0±0.3)のうちの任意の値、例えば約5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3のpH値を有する。好ましくは、前記製剤は6.0±0.3のpHを有する。
【0022】
一実施形態において、本発明の液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.775mg/mL~3.1mg/mLのヒスチジンと、
(iii)約40mg/mL~60mg/mLのソルビトールと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有し、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.775mg/mL~3.1mg/mLのヒスチジンと、
(iii)約20mg/mL~40mg/mLのソルビトール、約10.45mg/mL~17.42mg/mLのアルギニンと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有し、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.775mg/mL~3.1mg/mLのヒスチジンと、
(iii)約40mg/mL~60mg/mLのスクロース、約10.45mg/mL~17.42mg/mLのアルギニンと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有し、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.775mg/mL~3.1mg/mLのヒスチジンと、
(iii)約70mg/mL~90mg/mLのスクロースと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有し、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.38mg/mL~1.52mg/mLのヒスチジン、約0.54mg/mL~2.16mg/mLのヒスチジン塩酸塩と、
(iii)約40mg/mL~60mg/mLのソルビトールと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有し、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.38mg/mL~1.52mg/mLのヒスチジン、約0.54mg/mL~2.16mg/mLのヒスチジン塩酸塩と、
(iii)約20mg/mL~40mg/mLのソルビトール、約10.45mg/mL~17.42mg/mLのアルギニンと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有し、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.38mg/mL~1.52mg/mLのヒスチジン、約0.54mg/mL~2.16mg/mLのヒスチジン塩酸塩と、
(iii)約40mg/mL~60mg/mLのスクロース、約10.45mg/mL~17.42mg/mLのアルギニンと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有し、
または、前記液体抗体製剤は、
(i)約50mg/mL~200mg/mL、例えば約50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mLの抗IL-23p19抗体と、
(ii)約0.38mg/mL~1.52mg/mLのヒスチジン、約0.54mg/mL~2.16mg/mLのヒスチジン塩酸塩と、
(iii)約70mg/mL~90mg/mLのスクロースと、
(iv)約0.2mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
ここで、前記液体製剤は6.0±0.3のpHを有し、好ましくは、6.0のpHを有する。
【0023】
本発明の液体製剤は、例えば、少なくとも12ヶ月またはそれ以上の期間など、長期間にわたり安定に保存することができる。一実施形態において、本発明の液体製剤は、約-80℃~約45℃、例えば-80℃、約-40℃、約-30℃、約-20℃、約0℃、約5℃、約25℃、約35℃、約38℃、約40℃、約42℃または約45℃の条件下で、少なくとも10日、少なくとも20日、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも24ヶ月、少なくとも36ヶ月またはそれ以上の期間に保存することができ、かつ安定している。
【0024】
一実施形態において、本発明の液体製剤は、少なくとも12ヶ月間安定に保存することができる。更なる実施形態において、本発明の液体製剤は、少なくとも40℃で安定している。更なる実施形態において、本発明の液体製剤は、約2℃~8℃で少なくとも3ヶ月、好ましくは少なくとも12ヶ月、より好ましくは少なくとも24ヶ月間安定に保持されている。一実施形態において、本発明の液体製剤は、室温または例えば約25℃で少なくとも2ヶ月、好ましくは少なくとも3ヶ月、より好ましくは少なくとも6ヶ月間安定に保持されている。
【0025】
一実施形態において、製剤の外観、可視異物、タンパク質含有量、濁度、純度、および/または電荷変異体の変化を検出することにより、製剤の安定性を示すことができる。一実施形態において、高温ストレス下での強制実験において、例えば、40℃±2℃で少なくとも1週間、2週間または好ましくは1ヶ月間保存した後、または加速実験において、例えば、25℃±2℃で少なくとも1ヶ月または2ヶ月間保存した後、または長期実験において、例えば、5℃±3℃で少なくとも2ヶ月または3ヶ月間保存した後、本発明の液体製剤の安定性を検出することができる。一実施形態において、例えば、保存0日目の初期値に対して、本発明の液体製剤の安定性を検出する。
【0026】
一実施形態において、保存後、本発明の液体製剤は、外観で透明から微乳白光のままであり、無色から淡黄色の液体で、異物がない。一実施形態において、透明度測定器により目視で検査すると、製剤には可視異物がない。一実施形態において、保存後、タンパク質含有量の変化を測定することにより、本発明の液体製剤の安定性を検査し、ここで、例えば、紫外線分光光度(UV)法によると、初期値に対して、タンパク質含有量の変化率は20%以下、好ましくは10%以下、例えば7%~8%、より好ましくは5%、2%または1%以下である。一実施形態において、保存後、本発明の液体製剤の純度の変化を測定することにより、本発明の液体製剤の安定性を検査し、ここで、体積排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)によると、初期値に対して、モノマー純度の変化値(または主ピークの変化値)は10%以下、例えば5%、4%、3%以下であり、例えば、変化値は2%以下、好ましくは1%以下である。一実施形態において、保存後、本発明の液体製剤の純度の変化を測定することにより、本発明の液体製剤の安定性を検査し、ここで、非還元型ドデシル硫酸ナトリウムキャピラリー電気泳動(CE-SDS)法によると、初期値に対して、モノマー純度の変化値(または主ピークの変化値)の降下は10%以下、例えば5%、4%、3%、2%または1%以下である。一実施形態において、保存後、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)により、本発明の液体製剤の安定性を検出し、ここで、初期値に対して、製剤における電荷変異体(例えば、主成分または酸性成分または塩基性成分)の百分率の変化値は40%以下、例えば30%以下、20%以下であり、または電荷変異体(主成分、酸性成分および塩基性成分)の百分率の変化値の合計は60%以下、例えば50%以下、40%以下である。
【0027】
一実施形態において、実際の生産プロセスの品質基準として、本発明の液体製剤は保存された後、例えば、5℃±3℃で少なくとも12ヶ月間保存された後、安定しており、好ましくは以下の特徴の1つまたは複数を有する:保存0日目の初期値に対して、
(i)SEC-HPLC法で測定すると、製剤は95%よりも高い純度、好ましくは96%、97%、98%、99%よりも高い純度を有し、
(ii)非還元型CE-SDS法で測定すると、製剤は90%よりも高い純度、好ましくは95%、96%、97%、98%よりも高い純度を有し、
(iii)CEX-HPLC法で測定すると、製剤における主成分の含有量は50%よりも高く、好ましくは60%、70%よりも高い。
(iv)UV法で測定すると、タンパク質含有量の変化率は10%よりも低く、好ましくは5%、4%、3%、2%よりも低い変化率である。
【0028】
一態様において、本発明の液体製剤は医薬製剤であり、好ましくは注射剤であり、より好ましくは皮下注射剤または静脈内注射剤である。
別の態様において、本発明は、本発明の液体抗体製剤に対して固化処理を行うことで得られる固体抗体製剤を提供する。前記固化処理は、例えば、結晶法、噴霧乾燥法または冷凍乾燥法により実施される。一好ましい実施形態において、前記固体抗体製剤は、例えば、注射用凍結乾燥粉末の形態である。固体抗体製剤は、使用前に適切な溶媒に再構成されることにより、本発明の再構成製剤を形成することができる。前記再構成製剤も、本発明の液体抗体製剤である。一実施形態において、前記適切な溶媒は、注射用水、注射用有機溶媒から選択され、注射用油、エタノール、プロピレングリコールなど、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0029】
一態様において、本発明は、本発明の液体抗体製剤または固体抗体製剤を含む送達装置を提供する。一実施形態において、本発明の送達装置は、本発明の液体抗体製剤または固体抗体製剤を含む薬剤充填済み注射器の形態で提供され、例えば、静脈内、皮下、皮内または筋肉内注射、静脈内輸注に用いられる。
【0030】
さらに別の態様において、本発明は、IL-23p19抗体タンパク質を哺乳動物などの対象に送達する方法であって、本発明の液体抗体製剤または固体抗体製剤を前記対象に投与するステップを含む方法を提供し、前記送達は、例えば、薬剤充填済み注射器を利用する送達装置により実施される。
【0031】
さらに別の態様において、本発明は、免疫系疾患、例えば、自己免疫系疾患または炎症を治療するための送達装置、薬剤充填済み注射器または薬物を調製するための、本発明の液体抗体製剤または固体抗体製剤の使用を提供し、前記疾患は、乾癬、クローン病、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎などを含むが、これらに限定されない。
【0032】
本発明の他の実施形態は、後述する詳細な説明を参照することにより明らかになる。
以下の図面と合わせて読めば、次に詳細に記載される本発明の好ましい実施形態がより良く理解される。本発明を説明するために、図面には現在の好ましい実施形態が示されている。しかしながら、本発明は、図面に示される実施形態の精確な配置と手段に限定されないと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】pHスクリーニング試験による電荷変異体-酸性成分の変化図(iCIEF法、40℃±2℃)である。
【
図2】pHスクリーニング試験による電荷変異体-主成分の変化図(iCIEF法、40℃±2℃)である。
【
図3】処方決定実験による電荷変異体-酸性成分の変化図(CEX-HPLC法、40℃±2℃)である。
【
図4】処方決定実験による電荷変異体-主成分の変化図(CEX-HPLC法、40℃±2℃)である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を詳しく説明するに先立ち、前記方法および条件は変更可能であるため、本発明は、本明細書における特定の方法および実験条件に限定されないと理解しておくべきである。なお、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、限定する意図はない。
【0035】
定義
別に定義しない限り、本明細書に用いられるすべての技術と科学用語はいずれも、当業者に通常に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の目的のために、以下、下記用語を定義する。
「約」という用語は、数字または数値とともに使用される場合、下限として指定された数字または数値より5%小さく、上限として指定された数字または数値より5%大きい範囲内の数字または数値をカバーすることを意味する。
「および/または」という用語は、2つまたは複数のオプションの接続に使用される場合、オプションのうちのいずれか1項またはオプションのうちのいずれか2項もしくは複数項を指すと理解すべきである。
【0036】
本明細書に使用されるように、「包含する」または「含む」という用語は、記載される要素、整数またはステップを含むが、任意の他の要素、整数またはステップを排除しないことを意味する。本明細書において、「包含する」または「含む」という用語を用いる場合、特記しない限り、言及される要素、整数またはステップからなる場合も含まれる。例えば、ある具体的な配列の抗体可変領域を「包含する」ことに言及する場合、この具体的な配列からなる抗体可変領域を含むことも意図する。
【0037】
IL-23のp19サブユニット(本明細書では「IL-23p19」および「p19サブユニット」とも呼ばれる)は、21アミノ酸を有するリーダー配列を含む189アミノ酸を有するポリペプチドであり(Oppmann et al.,Immunity 13:715(2000),配列番号181)、A、B、C、およびDと呼ばれる4つの圧縮された(packed)αヘリックスを含み、上-上-下-下トポロジーを有する。4つのヘリックスは、3つのポリペプチドループによって連結されている。A-BおよびC-Dループは、平行ヘリックスを連結するので、比較的長く作られている。短いB-Cループは、逆平行のBおよびCヘリックスを連結する。IL-23のp19サブユニットは、らせん状サイトカインのIL-6ファミリーのメンバーである。当該サイトカインのファミリーは、3つの保存エピトープ(部位I、IIおよびIII、BravoおよびHeath(2000)EMBO J.19:2399-2411)を介してその同族受容体と結合する。p19サブユニットは、3つのサイトカイン受容体サブユニットと相互作用して、コンピテントシグナル伝達複合体を形成する。細胞内に発現される場合、p19サブユニットはまずp40サブユニットと複合体を形成し、p19サブユニットはIL-12とp40サブユニットを共有する。p19p40複合体は、ヘテロ二量体タンパク質として細胞から分泌され、IL-23と呼ばれる。一実施形態において、本発明のIL-23p19は、ヒト(NCBI:AAG37232)またはカニクイザル(NCBI:AEY84629)に由来する。
【0038】
本明細書に使用される「抗IL-23p19抗体」、「抗IL-23p19」、「IL-23p19抗体」または「IL-23p19と結合する抗体」という用語は、(ヒトまたはカニクイザル)IL-23p19を標的とする診断剤および/または治療剤として使用できるように、十分な親和性で(ヒトまたはカニクイザル)IL-23p19サブユニットまたはその断片と結合できる抗体を指す。
【0039】
本明細書において、「抗体」という用語は、抗原結合部位を含むタンパク質を指すように最も広い意味で使用され、様々な構造の天然抗体および人工抗体を包含し、無傷抗体および抗体の抗原結合断片を含むが、これらに限定されない。
【0040】
「全抗体」、「全長抗体」、「完全抗体」および「無傷抗体」という用語は、本明細書において互いに交換して、ジスルフィド結合を介して互いに接続される少なくとも2本の重鎖(H)と2本の軽鎖(L)を含む糖タンパク質を指すことに使用可能である。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)と重鎖定常領域とからなる。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3の3つのドメインからなる。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)と軽鎖定常領域とからなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。VH領域およびVL領域は、さらに、その間に保存的な領域(フレームワーク領域(FR))が介在している超可変領域(相補性決定領域(CDR)に分けることができる。それぞれのVHおよびVLは、3つのCDRと4つのFRとからなり、アミノ末端からカルボキシル末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列されている。定常領域は、抗体と抗原の結合に直接関与しないが、種々のエフェクター機能を示している。
【0041】
「相補性決定領域」または「CDR領域」または「CDR」は、抗体可変ドメインで、配列において超可変であるとともに構造上に形成されて決定されたループ(「超可変ループ」)であり、および/または抗原接触残基(「抗原接触点」)を含む領域である。CDRは、主に抗原エピトープに結合する役割を果たす。重鎖と軽鎖のCDRは通常、CDR1、CDR2とCDR3と呼ばれ、N末端から順に番号付けられる。抗体の重鎖可変ドメイン内に位置するCDRはHCDR1、HCDR2、HCDR3と呼ばれ、抗体の軽鎖可変ドメイン内に位置するCDRはLCDR1、LCDR2、LCDR3と呼ばれる。
【0042】
1つの所定の軽鎖可変領域または重鎖可変領域のアミノ酸配列において、各CDRの精確なアミノ酸配列の境界は、多くの公知の抗体CDR割り当てシステムのいずれか1種またはその組み合わせにより決定することができ、前記割り当てシステムは、例えば、抗体の3次元構造とCDRループのトポロジーに基づくChothia(Chothia et al.(1989)Nature 342:877-883,Al-Lazikani et al.,「Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins」,Journal of Molecular Biology,273,927-948(1997))、抗体配列の可変性に基づくKabat(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,4th edition,U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987))、AbM(University of Bath)、Contact(University College London)、国際ImMunoGeneTics database(IMGT)(www.imgt.cines.fr/にて利用可能)、および大量の結晶構造が利用されるアフィニティ伝播クラスタリング(affinity propagation clustering)に基づくNorth CDR定義を含む。
【0043】
特に断らない限り、本発明において、抗体可変領域における残基位置(重鎖可変領域残基と軽鎖可変領域残基を含む)に言及する場合、Kabat番号付けシステム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))に基づいた番号付け位置を指す。
【0044】
一実施形態において、本発明の抗体のCDRは、AbM規則によって境界が決定される。
【0045】
「抗体断片」とは、無傷抗体の一部を含むとともに無傷抗体に結合された抗原と結合する、無傷抗体とは異なる分子を指す。抗体断片の非限定的な例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、二重抗体、線状抗体、単鎖抗体(例えば、scFv)、単一ドメイン抗体、二価抗体もしくは二重特異性抗体またはその断片、ラクダ科由来の抗体、および抗体断片により形成された二重特異性抗体または多重特異性抗体を含む。
【0046】
「抗体製剤」という用語は、活性成分としての抗体の生物活性が効果的に発揮できる形態であるとともに、当該製剤が投与される対象にとって許容できない毒性を有する他の成分を含まない調製物を指す。このような抗体製剤は、通常、滅菌のものである。通常、抗体製剤には、薬学的に使用可能な賦形剤が含まれる。「薬学的に使用可能な」賦形剤は、製剤に使用される活性成分の有効投与量が対象に送達できるように、被験哺乳動物に適当に投与可能な試薬である。賦形剤の濃度は、投与方式に対応し、例えば、注射に許容可能な濃度であってもよい。
【0047】
本明細書において、「本発明の抗体製剤」とも略称される「抗IL-23p19抗体製剤」は、活性成分として抗IL-23p19抗体タンパク質を含むとともに薬学的に使用可能な賦形剤を含む調製物を意味する。抗IL-23p19抗体タンパク質が薬学的に使用可能な賦形剤と組み合わせた後、活性成分としての抗IL-23p19抗体タンパク質は、ヒトまたは非ヒト動物への治療的または予防的投与に適する。本発明の抗体製剤は、例えば、すぐに使用できる薬剤充填済み注射器のような水性形態の液体製剤に調製してもよく、または、使用直前に生理的に許容可能な溶液に溶解および/または懸濁されることで再構成(すなわち、再溶解)される凍結乾燥製剤に調製してもよい。いくつかの実施形態において、抗IL-23p19抗体タンパク質製剤は、液体製剤形態である。
【0048】
「安定な」抗体製剤は、製剤における抗体が特定条件下で保存された後、または振とうされた後、または繰り返し凍結融解された後に許容可能な程度の物理的安定性および/または化学的安定性を保持しているものを指す。抗体製剤に含まれる抗体は保存、振とうまたは繰り返し凍結融解された後にその化学構造を100%維持できない可能性があるが、通常、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%の抗体の構造または機能が維持されると、抗体製剤が「安定」であると考えられる。いくつかの具体的な実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体タンパク質製剤は製造、調製、輸送および長期保存の過程で検出できないほど低い抗体の凝集、分解または化学修飾を示していることで、抗IL-23p19抗体タンパク質の生物学的活性の損失が極めて少なく、さらになく、高い安定性を示している。
【0049】
この分野では、タンパク質の安定性の測定に使用できる解析技術が複数知られており、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs(1991)and Jones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)が参照される。選定された温度および選定された保存時間で安定性を測定することができる。例えば、予期する製剤の貯蔵期間に基づいて保存時間を選択することができる。場合により、加速安定性試験を使用することができる。いくつかの実施形態において、抗体製剤に対して種々のストレス試験を実施することで安定性試験が行われる。これらの試験は、調製された抗体製剤が製造、保存または輸送期間に遭遇可能な苛酷条件を表してもよく、非製造、保存または輸送期間に抗体製剤における抗体の不安定性を加速可能な条件を表してもよい。例えば、調製された抗IL-23p19抗体タンパク質製剤をガラスバイアルに充填して高温ストレス下での抗体の安定性を確認してもよい。
【0050】
一定の期間保存した後、製剤は凝集、沈殿、混濁および/または変性を示さず、または非常に少ない凝集、沈殿、混濁および/または変性を示せば、抗体は製剤において「その物理的安定性が保たれる」と考えられる。製剤における抗体の凝集により、患者の免疫反応を潜在的に増加させて、安全性の問題を引き起こすがあり得る。したがって、製剤における抗体の凝集を最小化するか、または凝集を防止する必要がある。SEC-HPLCは、製剤における可溶性凝集物の測定に用いることができる。また、目視で製剤の外観、色および/または清澄度を検査し、OD350nm法により製剤の濁度を検出し、あるいは非還元型CE-SDS法により製剤の純度を測定することで、製剤の安定性を示すことができる。一実施形態において、特定の温度で特定の期間保存した後の抗体モノマーの百分率を測定することにより、製剤の安定性を測定し、ここで、製剤における抗体モノマーの百分率が大きいほど、製剤の安定性が高くなる。
【0051】
「許容可能な程度の」物理的安定性は、特定の温度で特定の期間保存した後、製剤から少なくとも約90%の抗IL-23p19抗体タンパク質モノマーが検出されたことを示すことができる。いくつかの実施形態において、特定の温度で少なくとも2週間、少なくとも28日、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも24ヶ月またはそれ以上の期間保存した後、許容可能な程度の物理的安定性は、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の抗IL-23p19抗体タンパク質モノマーを示す。物理的安定性を評価する場合、医薬製剤が保存される特定の温度は、約-80℃~約45℃のいずれか1つの温度であってもよく、例えば、約-80℃、約-30℃、約-20℃、約0℃、約4℃~8℃、約5℃、約25℃、約35℃、約37℃、約40℃、約42℃または約45℃で保存される。
【0052】
一定の期間保存した後、製剤における抗体が顕著な化学変化が示されない場合、抗体は製剤において「その化学的安定性が保たれる」と考えられる。化学的不安定性のほとんどは、抗体の共有結合修飾形態(例えば、抗体の電荷変異体)が形成されたことに由来する。例えば、アスパラギン酸異性化、NおよびC末端修飾により塩基性変異体を形成することができ、脱アミド化、シアル酸化および糖化により酸性変異体を形成することができる。化学的安定性は、抗体の化学的変化形態を検出および/または定量することで評価することができる。例えば、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)またはイメージングキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)により、製剤における抗体の電荷変異体を検出することができる。一実施形態において、特定の温度で特定の期間保存した後の製剤における抗体の電荷変異体の百分率の変化値を測定することにより、製剤の安定性を測定し、ここで、当該変化値が小さいほど、製剤の安定性が高くなる。
【0053】
「許容可能な程度」の化学的安定性は、特定の温度で特定の期間保存した後、製剤における電荷変異体(例えば、主成分または酸性成分または塩基性成分)の百分率の変化値が40%以下、例えば30%以下、20%以下であり、または電荷変異体(主成分、酸性成分および塩基性成分)の百分率の変化値の合計が60%以下、例えば50%以下、30%以下であることを示すことができる。いくつかの実施形態において、特定の温度で少なくとも2週間、少なくとも28日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも7ヶ月間、少なくとも8ヶ月間、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月間、少なくとも11ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間またはそれ以上の期間保存した後、許容可能な程度の化学的安定性は、主成分である電荷変異体の百分率の変化値が約50%、40%、30%、20%または15%以下、または電荷変異体の百分率変化値の合計が約60%、50%または30%以下であることを示すことができる。化学的安定性を評価する場合に、医薬製剤を保存する温度は約-80℃~約45℃のいずれか1つの温度であってもよく、例えば、約-80℃、約-30℃、約-20℃、約0℃、約4℃~8℃、約5℃、約25℃または約45℃で保存される。
【0054】
「凍結乾燥製剤」という用語は、液体製剤の冷凍乾燥処理により得られ、または取得可能な組成物を指す。好ましくは、それは5%よりも少ない、好ましくは3%よりも少ない水含有量を有する固体組成物である。
【0055】
「再構成製剤」という用語は、固体製剤(例えば、凍結乾燥製剤)を生理的に許容可能な溶液に溶解および/または懸濁することで得られた液体製剤を指す。
明細書に使用される「室温」という用語は、15℃~30℃を指し、好ましくは20℃~27℃、より好ましくは25℃の温度である。
【0056】
「ストレス条件」とは、例えば、高温、振とうおよび凍結融解など、許容できない抗体タンパク質の不安定化をもたらせる、化学的および/または物理的に抗体タンパク質に不利な環境を指す。「高温ストレス」とは、抗体製剤が室温またはそれ以上の温度(例えば、40℃±2℃)で一定の期間保存されることを指す。高温ストレス加速試験によって、抗体製剤の安定性を検査することができる。
【0057】
本明細書に使用されるように、「非経口投与」という用語は、経腸および局所投与以外の投与方式を指し、通常、注射または輸注によるものであり、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下(subcuticular)、関節内、嚢下、クモ膜下、脊椎内、硬膜外と胸骨内の注射および輸注を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の安定な抗IL-23p19抗体製剤は、対象に非経口投与される。一実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体製剤は、皮下、皮内、筋肉内または静脈内注射により対象に投与される。
【0058】
I.抗体製剤
本発明により提供される安定な液体抗体製剤は、(i)抗IL-23p19抗体と、(ii)緩衝剤と、(iii)安定化剤と、(iv)界面活性剤と、を含み、前記抗体製剤は約5.2~6.3のpHを有する。一好ましい実施形態において、本発明の液体抗体製剤は注射製剤形態である。
(i)抗IL-23p19抗体
いくつかの実施形態において、本発明の抗体製剤における抗IL-23p19抗体は、配列番号7またはそれと少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変領域(VH)と、配列番号8またはそれと少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)とを含む。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体製剤における抗IL-23p19抗体は、配列番号7に示される重鎖可変領域におけるVH CDR1、2および3配列と、配列番号8に示される軽鎖可変領域におけるVL CDR1、2および3配列とを含む。一実施形態において、本発明の抗IL-23p19抗体は、配列番号1のVH CDR1、配列番号2のVH CDR2、配列番号3のVH CDR3、および配列番号4のVL CDR1、配列番号5のVL CDR2、配列番号6のVL CDR3を有する。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体製剤における抗IL-23p19抗体は、配列番号7と少なくとも90%、95%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する重鎖可変領域(VH)、および/または配列番号8と少なくとも90%、95%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含んでもよい。本明細書において、「配列同一性」は、比較ウィンドウにおける1つずつのヌクレオチドまたは1つずつのアミノ酸に基づく配列が同一である程度を指す。「配列同一性百分率」は次の方法により算出することができる:2つの最適にアラインメントされた配列を比較ウィンドウで比較し、2つの配列における同じ核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同じアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysとMet)の存在する位置の数を決定することでマッチングした位置の数を取得し、マッチングした位置の数を比較ウィンドウにおける位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で除算し、結果に100を乗算して配列同一性の百分率を得る。配列同一性百分率を決定するために行われる最適なアラインメントは、この分野で知られている種々の方式により、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公的に入手可能なコンピュータソフトウェアで実現することができる。当業者は、比較されている全長配列範囲内または目標配列領域内での最大アラインメントを実現するために必要な任意のアルゴリズムを含め、配列をアラインメントするための適切なパラメータを決定することができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体のVH配列は、配列番号7と比べて10個以下、好ましくは5個、4個または3個以下の異なる残基を有し、好ましくは、前記異なる残基は、保存的なアミノ酸で置換される。いくつかの実施形態において、本発明の抗体のVL配列は、配列番号8と比べて10個以下、好ましくは5個、4個または3個以下の異なる残基を有し、好ましくは、前記異なる残基は、保存的なアミノ酸で置換される。「保存的な置換」は、あるアミノ酸を化学的に類似したアミノ酸に置換することを引き起こすアミノ酸変化を指す。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、この分野でよく知られているものである。
【0061】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体製剤における抗IL-23p19抗体は、IgG形態の抗体である。「IgG形態の抗体」は、抗体の重鎖定常領域の属するIgG形態を指す。IgG形態が同じであるすべての抗体の重鎖定常領域はいずれも同じであり、IgG形態が異なる抗体同士の重鎖定常領域は異なる。例えば、IgG1形態の抗体は、その重鎖定常領域のIgドメインがIgG1のIgドメインであるものを指す。
【0062】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載の抗体は、Fc領域に置換変異(M252Y/S254T/T256E)を導入して、ヒトFcRnへの結合能を向上させることにより、そのインビボでの半減期を延ばす。
【0063】
一好ましい実施形態において、本発明の抗体製剤における抗IL-23p19抗体は、PCT/CN2019/121261(国際出願日:2019年11月27日)に開示された抗IL-23p19抗体17D1-YTEであり、それは配列番号9の重鎖と配列番号10の軽鎖を有する。一実施形態において、当該抗IL-23p19抗体は、CHO細胞の組換え発現により産生されて精製されたIgG1型抗体である。
【0064】
本発明の抗体製剤に含まれる抗体またはその抗原結合断片の量は、製剤の特定の目的特性、特定の環境、および製剤が使用される特定の目的によって変化することができる。いくつかの実施形態において、抗体製剤は液体製剤であり、ここで、IL-23p19抗体は、約1mg/mL~300mg/mLの濃度である。別の実施形態において、本発明の液体抗体製剤におけるIL-23p19抗体は、約25mg/mL~250mg/mL、好ましくは50mg/mL~200mg/mLの濃度であり、例えば、約50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mLの濃度である。
【0065】
(ii)緩衝剤
緩衝剤は、溶液のpHを許容可能な範囲に維持することができる試薬である。いくつかの実施形態において、本発明の製剤に使用される緩衝剤は、本発明の製剤のpHを約5.0~6.0のpH範囲、例えば、約5.5~6.0のpHに制御することができる。いくつかの具体的な実施形態において、本発明の抗体製剤は、約5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2または6.3のpHを有する。例えば、本発明の抗体製剤におけるpHは、5.5±0.3または6.0±0.3であり、好ましくはpHは6.0である。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明の製剤は、ヒスチジン-ヒスチジン塩酸塩緩衝系、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝系、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝系、リン酸塩緩衝系から選択される緩衝系を含み、好ましくはヒスチジン-ヒスチジン塩酸塩緩衝系である。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の製剤に用いられる緩衝剤は、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩とそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、本発明の緩衝剤におけるヒスチジンは、約0.775mg/mL~3.1mg/mLの濃度であり、好ましくは、約1.55mg/mLの濃度である。別の実施形態において、本発明の製剤に用いられる緩衝剤は、ヒスチジンとヒスチジン塩酸塩からなり、ここで、ヒスチジンの含有量は約0.38mg/mL~1.52mg/mL、ヒスチジン塩酸塩の含有量は約0.54mg/mL~2.16mg/mLであり、好ましくは、ヒスチジンとヒスチジン塩酸塩はそれぞれ約0.76mg/mLと約1.08mg/mLの濃度である。
【0068】
(iii)安定化剤
本発明に使用される適切な安定化剤は、糖類、ポリオール、アミノ酸およびそれらの組み合わせから選択されてもよい。安定化剤としての糖類は、スクロース、トレハロース、マルトースおよびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。安定化剤としてのポリオールは、ソルビトール、マンニトールまたはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。安定化剤としてのアミノ酸は、アルギニン、アルギニン塩酸塩、メチオニン、グリシン、プロリンおよびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0069】
例えば、いくつかの実施形態において、安定化剤は、以下のものから選択される1つまたは複数を含む。
【0070】
一実施形態において、本発明の液体製剤は、ソルビトールを単一の安定化剤として含む。この実施形態において、本発明の液体製剤におけるソルビトールの量は、約25mg/mL~100mg/mLであってもよく、例えば40mg/mL~60mg/mLである。例えば、ソルビトールは、約40mg/mL、42mg/mL、44mg/mL、46mg/mL、48mg/mL、50mg/mL、52mg/mL、54mg/mL、56mg/mL、58mg/mLまたは60mg/mLの量で存在してもよく、好ましくは約50mg/mLの量で存在する。
【0071】
一実施形態において、本発明の液体製剤は、ソルビトールとアルギニンの組み合わせを安定化剤として含む。当該組み合わせにおいて、ソルビトールは、約15mg/mL~60mg/mL、好ましくは20mg/mL~40mg/mLの量で存在してもよく、例えば、約20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mLまたは40mg/mLであってもよい。当該組み合わせにおいて、アルギニンは、約6.97mg/mL~27.88mg/mL、好ましくは10.45mg/mL~17.42mg/mL、特に約13.94mg/mLの量で存在してもよい。好ましくは、本発明の液体製剤は、約20mg/mL~40mg/mLのソルビトールおよび約10.45mg/mL~17.42mg/mLのアルギニンを含む。より好ましくは、本発明の液体製剤は、約30mg/mLのソルビトールおよび約13.94mg/mLのアルギニンを含む。
【0072】
一実施形態において、本発明の液体製剤は、スクロースを単一の安定化剤として含む。この実施形態において、本発明の液体製剤におけるスクロースの量は、約40mg/mL~160mg/mLであってもよく、好ましくは70mg/mL~90mg/mLであり、例えば、スクロースは、約70mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、85mg/mLまたは90mg/mLの量で存在してもよく、好ましくは約80mg/mLの量で存在する。
【0073】
一実施形態において、本発明の液体製剤は、スクロースとアルギニンの組み合わせを安定化剤として含む。当該組み合わせにおいて、スクロースは、約25mg/mL~100mg/mLであってもよく、好ましくは40mg/mL~60mg/mLであり、例えば40mg/mL、42mg/mL、44mg/mL、46mg/mL、48mg/mL、50mg/mL、52mg/mL、54mg/mL、56mg/mL、58mg/mL、60mg/mLである。当該組み合わせにおいて、アルギニンは、約6.97mg/mL~27.88mg/mL、好ましくは10.45mg/mL~17.42mg/mL、特に約13.94mg/mLの量で存在してもよい。好ましくは、本発明の液体製剤は、約40mg/mL~60mg/mLのスクロースおよび約10.45mg/mL~17.42mg/mLのアルギニンを含む。より好ましくは、本発明の液体製剤は、約50mg/mLのスクロースおよび約13.94mg/mLのアルギニンを含む。
【0074】
(iv)界面活性剤
本明細書に使用されるように、「界面活性剤」という用語は、両親媒性構造を有する有機物質を指し、すなわち、それらは、反対の溶解性傾向を持つ基からなり、通常、油溶性の炭化水素鎖および水溶性のイオン基からなる。
【0075】
一実施形態において、本発明の液体製剤における界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えば、アルキルポリ(オキシレン)である。本発明の製剤に包含可能な特定の非イオン性界面活性剤は、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリソルベート60、またはポリソルベート40のようなポリソルベート、およびポロキサマーなどを含む。一好ましい実施形態において、本発明の液体製剤において、ポリソルベート80またはポリソルベート20を界面活性剤として含む。
【0076】
本発明の抗体製剤に含まれる界面活性剤の量は、製剤の特定の目的特性、特定の環境、および製剤が使用される特定の目的によって変化することができる。いくつかの好ましい実施形態において、製剤は、約0.1mg/mL~1mg/mL、好ましくは約0.2mg/mL~0.8mg/mL、例えば約0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mLの界面活性剤、特にポリソルベート80、好ましくは約0.5mg/mLのポリソルベート80を含んでもよい。
【0077】
(v)他の賦形剤
本発明の抗体液体製剤には、場合により他の賦形剤が含まれる。前記他の賦形剤は、例えば、抗微生物剤、静電防止剤、酸化防止剤、キレート剤、ゼラチンなどを含む。これらの賦形剤、その他の既知の薬物賦形剤、および/または本発明の製剤に適用される添加剤は、この分野で公知されているものであり、例えば、「The Handbook of Pharmaceutical Excipients,4th edition,edited by Rowe et al.,American Pharmaceuticals Association(2003)およびRemington:the Science and Practice of Pharmacy,21th edition,edited by Gennaro,Lippincott Williams&Wilkins(2005)」に挙げられたものである。
【0078】
II.製剤の調製
本発明は、抗IL-23p19抗体タンパク質を含む安定な製剤を提供する。本発明の製剤に使用される抗IL-23p19抗体タンパク質は、この分野における既知の抗体生産用技術により調製することができる。例えば、抗体を組換えによって調製することができる。一好ましい実施形態において、本発明の抗体は、293細胞またはCHO細胞において組換えによって調製される。
【0079】
現在、抗体は、薬物の活性成分として幅広く適用されている。治療用抗体を薬用レベルまで精製するための技術は、この分野で公知されているものである。例えば、Tugcuら(Maximizing productivity of chromatography steps for purification of monoclonal antibodies,Biotechnology and Bioengineering 99(2008)599-613)により、タンパク質A捕捉ステップの後にイオン交換クロマトグラフィー(アニオンIEXおよび/またはカチオンCEXクロマトグラフィー)を利用するモノクローナル抗体の3カラム精製方法が記載されている。Kelleyら(Weak partitioning chromatography for anion exchange purification of monoclonal antibodies,Biotechnology and Bioengineering 101(2008)553-566)により、タンパク質A親和性クロマトグラフィーの後に弱分配性アニオン交換樹脂を利用する2カラム精製方法が記載されている。
【0080】
一般的に、組換えにより産生されたモノクローナル抗体は、抗体製剤調製用の十分な繰り返し性および適切な純度を有する薬物物質を提供するために、通常の精製方法により精製することができる。例えば、抗体が組換え発現細胞から培地に分泌された後、商業的に入手可能なタンパク質濃縮フィルター、例えば、Amiconの限外ろ過装置により、当該発現系からの上清液を濃縮することができる。その後、例えば、クロマトグラフィー、透析と親和性精製などにより抗体の精製を行うことができる。タンパク質Aは、親和性リガンドとしてIgG1、IgG2およびIgG4型抗体の精製に適用される。例えば、イオン交換クロマトグラフィーなど、他の抗体精製方法を使用してもよい。十分な純度の抗体を得た後に、この分野における既知の方法により、抗体が含まれる製剤を調製することができる。
【0081】
例えば、(1)発酵終了後、上清が得られるように発酵液を遠心分離して細胞などの不純物を除去するステップと、(2)親和性クロマトグラフィー(例えば、IgG1、IgG2およびIgG4型抗体に対して特異的な親和性を有するタンパク質Aカラム)により抗体を捕捉するステップと、(3)ウィルスの不活化を行うステップと、(4)精製する(一般的にCEXカチオン交換クロマトグラフィーを採用することができる)ことにより、タンパク質における不純物を除去するステップと、(5)(ウイルス力価が例えば4log10以上低減されるように)ウィルスをろ過するステップと、(6)限外ろ過/浸透ろ過する(タンパク質をその安定性に寄与する製剤緩衝液に置換して注射用に適切な濃度に濃縮するために用いることができる)ステップと、により調製することができる。例えば、B.Minow、P.Rogge、K.Thompson、BioProcess International、Vol.10、No.6、2012、pp.48~57が参照される。
【0082】
III.製剤の解析方法
バイオ製品の安定性研究は、一般的に、実際の保存条件下でのリアルタイム安定性研究(長期安定性研究)、加速安定性研究および強制条件試験研究を含む。安定性研究は、研究目的および製品自身の特性に基づいて研究条件を模索し最適化し、様々な影響要因に対して、長期、加速および/または強制条件試験などの安定性研究計画を策定すべきである。加速および強制条件試験は、保存条件から短期的に逸脱された場合および極端な場合での製品の安定性状況を把握すると共に、有効期間および保存条件の決定のために裏付けデータを提供することに役立つ。
【0083】
抗体製剤の保存過程において、抗体は凝集、分解または化学修飾が発生されることで、抗体不均一性(サイズ不均一性および電荷不均一性を含む)および凝集物と断片などが引き起こされ、抗体製剤の品質に影響を与える恐れがある。したがって、抗体製剤の安定性を監視する必要がある。
【0084】
この分野では、抗体製剤の安定性の検出に利用可能な方法が複数知られている。例えば、還元型CE-SDS、非還元型CE-SDSとSEC-HPLCなどの方法により、抗体製剤の純度の解析および抗体の凝集レベルの評価を行うことができ、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)、イメージングキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)とイオン交換クロマトグラフィー(IEX)などにより、抗体製剤における電荷変異体を解析することができる。なお、製剤の外観を目視で検出することにより、製剤の安定性を急速に判断することができる。なお、紫外線分光光度法(UV法)により、製剤におけるタンパク質含有量の変化を検出することができる。
【0085】
非還元型CE-SDS法は、キャピラリーを分離通路として行われる抗体純度の測定方法である。CE-SDSにおいて、タンパク質の移行は、SDS結合による表面電荷により駆動されるが、当該表面電荷は、タンパク質の分子量に正比例する。すべてのSDS-タンパク質複合体は、いずれも類似の質量-電荷比を有するため、キャピラリーのモレキュラーシーブゲルマトリックスにおいて、分子のサイズまたは流体力学半径に基づく電気泳動分離を実現することができる。当該方法は、変性された無傷抗体の純度の監視に広く適用されている。一般的に、非還元型CE-SDS法において、供試試料をSDS試料緩衝液およびヨードアセトアミドと混合する。その後、混合物は68℃~72℃で約10~15分間インキュベートされてよく、室温まで冷却された後に遠心分離された上清液は分析に使用される。紫外線検出器によりタンパク質の移行を検出し、電気泳動図を得る。抗体製剤の純度は、すべてのピーク面積の合計に対するIgG主ピークのピーク面積の百分率として算出することができる。CE-SDS法についての更なる記載は、例えば、Richard R.et al.,Application of CE SDS gel in development of biopharmaceutical antibody-based products,Electrophoresis,2008,29,3612~3620を参照してよい。
【0086】
体積排除高速液体クロマトグラフィー、すなわち、SEC-HPLC法は、抗体の基準および品質管理に使用されるもう1つの重要な方法である。当該方法は、主に分子のサイズまたは流体力学半径の差に基づいて分子の分離を行う。SEC-HPLCにより、抗体は、高分子量形態(HMMS)、主ピーク(主に抗体モノマー)と低分子量形態(LMMS)という3つの主な形態に分離することができる。抗体の純度は、クロマトグラムにおけるすべてのピーク面積の合計に対する主ピーク面積の百分率として算出することができる。SEC-HPLC法により、製剤製品における抗体モノマーの百分率を測定して、可溶性凝集物およびせん断物の含有量の情報を与えることができる。SEC-HPLC法についての更なる記載は、例えば、J.Pharm.Scien.,83:1645~1650,(1994)、Pharm.Res.,11:485(1994)、J.Pharm.Bio.Anal.,15:1928(1997)、J.Pharm.Bio.Anal.,14:1133~1140(1986)を参照してよい。また、例えば、R.Yang et al.,High resolution separation of recombinant monoclonal antibodies by size exclusion ultra-high performance liquid chromatography(SE-UHPLC),Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis(2015),http://dx.doi.org/10.1016/j.jpba.2015.02.032、およびAlexandre Goyon et al.,Protocols for the analytical characterization of therapeutic monoclonal antibodies.I-Non-denaturing chromatographic techniques,Journal of Chromatography,http://dx.doi.org/10.1016/j.jchromb.2017.05.010を参照してもよい。
【0087】
カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)により、抗体製剤における抗体の電荷変異体を測定することができる。当該測定法において、主ピーク(または主成分)の保持時間よりも早くCEX-HPLCカラムから溶出されるピークは、「酸性ピーク」(または酸性成分)と標識され、主ピークの保持時間よりも遅くCEX-HPLCカラムから溶出されるピークは、「塩基性ピーク」(または塩基性成分)と標識される。
加速安定性研究は、製品の安定性特性の検査に用いることができ、安定な医薬製剤の形態のスクリーニングに寄与する。例えば、製剤試料を上昇した温度、例えば、約40℃±2℃、25℃±2℃の条件下に置き、加速安定性研究を行うことができる。製品安定性の検出指標は、外観、可視異物、タンパク質含有量、濁度、純度(SEC-HPLC法、非還元型CE-SDS法)および電荷変異体(iCIEF法、CEX-HPLC法)を含むことができる。
【0088】
IV.製剤の使用
本発明は、対象においてIL-23関連疾患を治療する製剤を提供する。前記対象は、霊長類などの哺乳動物であってもよく、好ましくは、人間(例えば、本明細書に記載の疾患に罹患しているかまたは本明細書に記載の疾患に罹患するリスクのある患者)などの高等霊長類である。一実施形態において、前記対象は本明細書に記載の疾患(例えば、本明細書に記載のIL-23関連疾患、例えば免疫系疾患(例えば、自己免疫疾患または炎症)に罹患しており、または本明細書に記載の疾患に罹患するリスクがある。一部の実施形態において、前記対象は、抗炎症薬または免疫抑制剤治療および/または放射線治療などの他の治療を受けるか、または既に受けた。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のIL-23関連疾患は、自己免疫疾患および炎症性疾患などの免疫系疾患を含む。前記疾患は、乾癬、クローン病、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎などを含むが、これらに限定されない。
【0090】
一実施形態において、免疫系疾患は、レベルが上昇したIL-23p19を発現した疾患である。
【0091】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の予防または治療方法は、本明細書に開示される抗体分子または医薬組成物または免疫複合体、および1種以上の他の療法、例えば、治療法および/または他の治療剤を前記対象または個体に併用投与することをさらに含む。
【0092】
本発明は、哺乳動物に抗IL-23p19抗体タンパク質を送達するための薬物の調製における本発明の製剤の使用も提供する。
【0093】
様々な経路で本発明の抗体製剤を対象または患者に投与することができる。例えば、投与は、輸注または注射器により行われてもよい。したがって、一態様において、本発明は、本発明の抗体製剤(例えば、薬剤充填済み注射器)を含む送達装置(例えば、注射器)を提供する。患者は、主な活性成分として抗IL-23p19抗体タンパク質を、有効量、すなわち、標的疾患または病症の治療、改善または予防に十分な量で受ける。
【0094】
治療効果は、生理的症状の軽減を含むことができる。いずれかの特定の対象に使用される抗体の最適な有効量と濃度は、患者の年齢、体重、健康状態および/または性別、疾患の性質と程度、特定の抗体の活性、抗体に対する体のクリアランスを含むとともに、前記抗体製剤と組み合わせて投与される任意の可能な他の治療も含む種々の要因によって決定される。具体的な場合に、伝達される有効量は、臨床医の判断範囲内で決定することができる。
【0095】
本発明の理解を補助するために、以下の実施例を説明する。如何なる方法によって、実施例を、本発明の請求範囲を制限するものと解釈する意図もなく、そうすべきでもない。
【0096】
【0097】
本発明の抗IL-23p19抗体17D1-YTEは、信達生物製薬(蘇州)有限公司で自社開発された抗体であり、PCT出願番号PCT/CN2019/121261に開示されている。
【0098】
本発明の抗体の長期安定保存に適用されるとともに簡単で使用されやすい注射製剤処方を開発するために、40℃での強制および25℃での加速安定性実験によって、当該抗体タンパク質の質量に対する異なるpH値、異なる安定化剤の含有量の影響を調べ、最終的にその安定性に有益な製剤処方をスクリーニングした。研究の全過程で使用される材料および方法は、以下の通りである。
【0099】
材料および方法
【0100】
【0101】
【0102】
1.3.製剤安定性の検出項目および検出方法
研究の全過程における検出項目は、主に、(1)外観および可視異物の有無の検出と、(2)紫外線法(UV法)による製剤におけるタンパク質含有量の測定と、(3)すべてのピーク面積の合計に対する主ピーク面積の百分率として表される、体積排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)による抗体製剤の純度の測定と、(4)すべてのピーク面積の合計に対する主ピーク面積の百分率として表される、非還元型ドデシル硫酸ナトリウムキャピラリー電気泳動(非還元型CE-SDS)による抗体製剤の純度の測定と、(5)主成分、酸性成分および塩基性成分の百分率として表される、CEX-HPLC法による抗体製剤における電荷変異体の測定と、(6)主成分、酸性成分および塩基性成分の百分率として表される、iCIEF法による抗体製剤における電荷変異体の測定と、を含む。
【0103】
可視異物の検査および不溶性粒子の検出
『中華人民共和国薬典』に記載された方法に従い、透明度測定器(天津天大天発製、型番YB-2)を用いて試料における可視異物を検査した。不溶性粒子検出器(天津天大天発製、型番GWJ-8)を用いて試料における不溶性粒子を検出した。
【0104】
タンパク質含有量の測定
紫外線分光光度計(日本島津製、型番UV-1800)またはマルチチャンネル顕微分光光度計(アメリカThermo製、型番Nanodrop 8000)により、試料におけるタンパク質含有量を測定した。
【0105】
純度(SEC-HPLC法)
体積排除クロマトグラフィーカラムにより分離し、流動相がリン酸塩緩衝液(3.12gのリン酸二水素ナトリウム二水和物、8.77gの塩化ナトリウムと34.84gのアルギニンを秤量し、超純水で溶解した後に塩酸でpHを6.8に調節して1000mLに定容した)であり、クロマトグラフィーカラム保護液が0.05%(w/v)のNaN3であり、試料注入量が50μLであり、流速が0.5mL/分であり、採取時間が30分間であり、カラム温度が25℃であり、検出波長が280nmである。測定すべき試料を超純水で2mg/mLまで希釈し、供試品溶液とした。製剤緩衝液を取って上記と同様に希釈した後、ブランク溶液とした。ブランク溶液、供試品溶液をそれぞれ50μL取って液体クロマトグラフに注入し、検出を開始した。
【0106】
純度(非還元型CE-SDS法)
キャピラリーゲル電気泳動法により検出した。キャピラリーはコーティングされていないキャピラリーであり、内径が50μmであり、全長が30.2cmであり、有効長が20.2cmである。電気泳動前にそれぞれ0.1mol/Lの水酸化ナトリウム、0.1mol/Lの塩酸、超純水、電気泳動ゲルにより70psiでキャピラリーカラムを洗浄した。測定すべき試料を適量の超純水で2.0mg/mLまで希釈し、上記希釈した試料50μLを1.5mLの遠心分離管に注入し、その中にpH6.5の試料緩衝液45μL(0.32gのクエン酸一水和物、2.45gのリン酸水素二ナトリウム十二水和物を秤量し、45mLの超純水に溶解し、50mLに定容し、クエン酸-リン酸塩緩衝液を調製し、200μLの当該緩衝液を精密に秤量し、10%(w/v)のドデシル硫酸ナトリウム溶液80μLを加え、1mLになるまで水を加え、均一に混合することで得た)、1μLの内部標準液(10kDaのタンパク質、5mg/mL)(Beckman Coulter、製品番号:390953)および250mmol/LのNEM溶液5μL(62mgのN-エチルマレイミドを秤量し、2mLの超純水に溶解した)をそれぞれ加え、十分に均一に混合した後、70℃±2℃で10分間±2分間加熱し、室温まで冷却させてから試料フラスコに移して供試品溶液とした。供試品と同じ体積の製剤緩衝液を取り、上記方法と同様に操作し、ブランク溶液を調製した。試料注入条件:-5kV 20秒、分離電圧:-15kV 35分。キャピラリーカラムの温度は25℃に制御され、検出波長は220nmである。
【0107】
電荷変異体(CEX-HPLC法)
カチオン交換クロマトグラフィー(CEX-HPLC法)により検出した。MabPac SCX-10強カチオン交換クロマトグラフィーカラムにより分離し、流動相Aが10mmol/Lのリン酸塩緩衝液(1.33gのNaH2PO4・2H2O、0.54gのNa2HPO4・12H2Oを秤量し、800mLの超純水に溶解し、1000mLに定容し、Φ0.22μmのろ過膜でろ過した)であり、流動相Bが10mmol/Lのリン酸塩+500mmol/Lの塩化ナトリウム緩衝液(1.33gのNaH2PO4・2H2O、0.54gのNa2HPO4・12H2Oおよび29.22gのNaClを秤量し、800mLの超純水に溶解し、1000mLに定容し、Φ0.22μmのろ過膜でろ過した)である。超純水で試料を2.0mg/mLまで希釈し、供試品溶液とした。製剤緩衝液を取って上記と同様に希釈した後、ブランク溶液とした。ブランク溶液、供試品溶液をそれぞれ50μL取って、液体クロマトグラフに注入し、流動相の流速が1.0mL/minであり、採取時間が35分間であり、カラム温度が35℃であり、検出波長が280nmであり、試料盤の温度が10℃である。試料を注入して分析し、面積正規化法により、主成分、酸性成分および塩基性成分の含有量を算出した。
【0108】
電荷変異体(iCIEF法)
イメージングキャピラリー等電点電気泳動法(iCIEF法)により検出した。キャピラリーは、内径100μm、全長5cmである。試料の電気泳動前に、それぞれ0.5%のメチルセルロース溶液(以下、MC溶液とも略す)、超純水によりキャピラリーカラムを洗浄する必要がある。真空注入法により試料を55秒間注入し、プレフォーカシング電圧および時間が1.5kVおよび1分間であり、フォーカシング電圧および時間が3kVおよび8分間であり、試料注入時間が55秒間であり、試料盤の温度が10℃であり、キャピラリーカラム温度が室温であり、検出波長が280nmである。陰極安定化剤(Cathodic Stabilizer)は500mmol/Lのアルギニン溶液であり、3mol/Lの尿素はタンパク質の溶解性を向上させ、0.5%のMC溶液はタンパク質とキャピラリーとの間の粘着を低下させた。供試品を水で1mg/mLまで希釈し、上記希釈された供試品溶液20μLを取り、その中に78μLの予混合液を入れて十分に均一に混合して、測定すべき試料溶液を得た。製剤緩衝液と同様に操作してブランク溶液を得た。
【実施例】
【0109】
実施例1.IL-23p19抗体の調製と精製
PCT出願番号PCT/CN2019/121261の記載に基づいて、IL-23p19に特異的に結合される抗体17D1-YTEを得た。当該抗体は、配列番号9の重鎖配列と配列番号10の軽鎖配列を有する。PCT出願番号PCT/CN2019/121261は、ここで全体で本明細書に参照として組み込まれている。
要するに、抗体をCHO細胞に組換え発現し、親和性クロマトグラフィーにより精製して本発明のpHスクリーニング実験に使用されるIL-23p19抗体試料を得て、カチオン交換クロマトグラフィーにより精製して本発明の処方スクリーニング実験に使用されるIL-23p19抗体試料を得た。
【0110】
実施例2.pHスクリーニング試験
2.1 実験手順
本実施例は、優れたpH値の範囲を得るために、実施例1の精製されたIL-23p19抗体の安定性に対するpH5.0、pH5.5、pH6.0およびpH6.5のクエン酸緩衝系の影響を調べた。
【0111】
20mMのクエン酸ナトリウムと150mMの塩化ナトリウムを調製し、塩酸でpHをそれぞれ5.0、5.5、6.0および6.5に調節し、実施例1の精製されたIL-23p19抗体を限外ろ過により上記の様々なpH値の緩衝液に置換し、タンパク質含有量を50mg/mLに調節し、ろ過してバイアルに分注し、栓で密封し、蓋をかけた。上記試料を40℃±2℃の恒温恒湿器に置き、0日目、1日目、3日目、5日目、10日目にサンプリングし、サンプリングした後に超低温冷凍庫で凍結保存し、解凍して均一に混合した後に一括して検出に送った。
【0112】
2.2 実験結果
(1)外観および可視異物
40℃±2℃の条件下で10日間放置した後、各群の外観は、いずれも透明から微乳白光で、無色から淡黄色の液体であり、異物が認められなかった。すなわち、各群の外観、可視異物はいずれも合格した。
(2)タンパク質含有量
タンパク質含有量の検出結果は表1に示されている。結果によると、40℃±2℃の条件下で10日間放置した後、各群の試料のタンパク質含有量はいずれも、明らかに変化していない(変化率≦10%)ことが示されている。
【0113】
【0114】
(3)純度
純度(SEC-HPLC法):40℃±2℃の条件下で10日間放置した後、各群の試料の純度はいずれも、明らかに変化しておらず(純度変化値≦1%)、結果は表2に示されている。
純度(非還元型CE-SDS法):40℃±2℃の条件下で10日間放置した後、各群の試料の純度はいずれも、明らかに変化しておらず(純度変化値≦2%)、結果は表3に示されている。
【0115】
【0116】
【0117】
(4)電荷変異体
電荷変異体(iCIEF法)の結果は表4に示され、その変化傾向は
図1と
図2に示されている。結果によると、40℃±2℃の条件下で10日間放置すると、各群の試料における電荷変異体の変化は主に、酸性成分の増加と主成分の減少として表されていることが示されている。酸性成分の変化値は、それぞれ7.3%、6.2%、4.5%、7.7%であり、pH5.5~pH6.0の試料の酸性成分の変化が小さく、主成分の変化値は、それぞれ7.8%、6.0%、4.8%、7.5%であり、pH5.5~pH6.0の試料の主成分の変化が小さい。
【0118】
【0119】
以上をまとめると、pHスクリーニング実験の結果から、抗体製剤の処方クエン酸緩衝系のpHは5.5~6.0にあることが比較的に好適であることが示されている。pHを約6.0±0.3に選定し、次の処方決定実験を行った。
【0120】
実施例3.処方決定実験
3.1 実験手順
上記のpHスクリーニング実験結果に基づき、製剤処方開発プラットフォームの経験に合わせて、抗体タンパク質の安定性に対する様々な安定化剤(ソルビトール、スクロースおよびアルギニン)の影響を調べ、合計4つの処方を設計したが、詳細な処方情報は表5に示されている。
【0121】
【0122】
表5にしたがって、各処方の緩衝液を調製し、塩酸でpHを6.0に調節し、抗体タンパク質を限外ろ過によりそれぞれの処方溶液に置換した。置換完了後、各処方のタンパク質含有量を約100mg/mLに調節し、2Rのバイアルに無菌で分注し、栓で密封し、蓋をかけ、ラベルを付けた後に、優れた製剤処方が得られるように、加速実験を行った。実験条件およびサンプリング計画は、表6に示されている。
【0123】
【0124】
3.2 実験結果
(1)外観、可視異物
3つの異なる温度の実験条件下で、4群の処方の外観と可視異物は、いずれも合格した。
【0125】
(2)タンパク質含有量
40℃±2℃、25℃±2℃および5℃±3℃の条件下で、4群の処方のタンパク質含有量はいずれも、明らかに変化しておらず(変化率≦10%)、結果は表7に示されている。
【0126】
【0127】
(3)純度
純度(SEC-HPLC法):各温度条件下で、処方1~処方4の純度はいずれも、明らかに変化しておらず(純度変化値≦1%)、結果は表8に示されている。
純度(非還元型CE-SDS法):各温度条件下で、処方1~処方3の純度はいずれも、明らかに変化しておらず(純度変化値≦2%)、処方4の試料は、25℃±2℃で3ヶ月間加速した場合、および5℃±3℃で2ヶ月間保存した場合に、その濃度の変化が処方1~処方3よりも大きく、結果は表9に示されている。
【0128】
【0129】
【0130】
(4)電荷変異体
電荷変異体(CEX-HPLC法)の結果は表10に示され、その変化傾向は
図3および
図4に示されている。結果によると、40℃±2℃の条件下で、各群の試料における電荷変異体の変化は主に、酸性成分の増加と主成分の減少として表され、ここで、処方2の酸性成分の変化度(21%)と主成分の変化度(23.8%)は、処方1の酸性成分の変化度(24.3%)と主成分の変化度(26.1%)よりも小さく、処方4の酸性成分の変化度(18.7%)と主成分の変化度(22.3%)は、処方3の酸性成分の変化度(20.8%)と主成分の変化度(23.6%)よりも小さいことが示されており、本発明の抗体には、安定化剤としてソルビトールがスクロースよりも優れることが分かる。25℃±2℃の条件下で3ヶ月間加速し、電荷変異体は変化したが、処方1と処方2、および処方3と処方4を比較すると、処方間で有意差がなかった(処方間の変化差異≦2%)。5℃±3℃の条件下で2ヶ月間放置し、4つの処方の電荷変異体はいずれも、明らかに変化しなかった(主成分および酸性と塩基性の各成分の変化値≦2%)。
【0131】
【0132】
実施例4.プロセス検証実験
実施例3の各実験の結果をまとめると、処方2を最適な処方として選択した。実際の生産プロセスにおける安定性と利便性への要求を同時に考慮すると、一定の配合比のヒスチジン塩酸塩とヒスチジンを選択してpH6.0±0.3の処方を調製し、すなわち、100mg/mLの組換え抗インターロイキン23p19サブユニット抗体、0.76mg/mLのヒスチジン、1.08mg/mLのヒスチジン塩酸塩、50.00mg/mLのソルビトール、0.50mg/mLのポリソルベート80、pH6.0±0.3の処方が使用された。
パイロット規模で3バッチの製剤完成品が製造され、実際のpH値はいずれもpH6.2であり、5℃±3℃で長期安定性を調べ、0ヶ月目、3ヶ月目、6ヶ月目、9ヶ月目および12ヶ月目にサンプリング検出が行われた。結果は表11に示されている。結果によると、当該処方におけるタンパク質の安定性が良好であり、各バッチ間で有意差がなく、実際の生産プロセスの品質基準を満たすことが示されている。
【0133】
【0134】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、当業者は、これらの開示が単に例示的なものであり、本発明の範囲内で種々の他の置換、適用と修正を行うことができると理解すべきである。したがって、本発明は、本明細書に挙げられた具体的な実施形態に限定されない。
【配列表】
【国際調査報告】