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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20230612BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20230612BHJP
   H01M 8/0213 20160101ALI20230612BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/2465
H01M8/0213
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569246
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 US2021030949
(87)【国際公開番号】W WO2021231153
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/025,234
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519297300
【氏名又は名称】イーエスエス テック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ESS Tech,Inc.
【住所又は居所原語表記】26440 SW Parkway Avenue,Wilsonville,Oregon 97070 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス クレイグ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー ショーン
(72)【発明者】
【氏名】グローバーグ ティアゴ
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヤン
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA14
5H126AA22
5H126GG06
5H126GG18
5H126RR01
(57)【要約】
レドックスフロー電池及び電池システムが提供される。一例では、レドックスフロー電池は、セルスタックアセンブリを含み、セルスタックアセンブリは、セルスタックアセンブリの横側面に配置されたプレートアセンブリであって、導電板のセクションに嵌合した凹部を含み、横方向及び垂直方向の少なくとも一方に柔軟な弾性フランジと、弾性フランジに結合されたプレートフレームとを含むプレートアセンブリを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルスタックアセンブリを含み、
前記セルスタックアセンブリは、
前記セルスタックアセンブリの横側面に配置されたプレートアセンブリであって、
導電板のセクションと嵌合する凹部を含み、横方向及び垂直方向の少なくとも一方に柔軟な弾性フランジと、
前記弾性フランジに結合されたプレートフレームと、
を含む前記プレートアセンブリ
を含む、レドックスフロー電池。
【請求項2】
前記凹部が、前記導電板の2つの側面の少なくとも一部分を取り囲む、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記弾性フランジが、前記プレートフレームに熱溶接される、請求項1又は2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記導電板が黒鉛を含む、請求項1~3のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
前記導電板が単極板である、請求項1~4のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
前記導電板が双極板である、請求項1~5のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項7】
前記導電板が、前記弾性フランジに接着結合される、請求項1~6のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項8】
前記導電板が、前記弾性フランジに接着結合される、請求項1~7のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項9】
前記弾性フランジが、前記導電板の表面に接着剤で取り付けられたテクスチャ加工された表面を含む、請求項1~8のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項10】
前記弾性フランジがゴムを含む、請求項1~9のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項11】
前記プレートアセンブリがエンドプレートアセンブリであり、前記プレートフレームが圧力板に結合されたエンドプレートフレームである、請求項1~10のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項12】
前記弾性フランジが前記導電板と嵌合して二重ラップジョイントを形成する、請求項11に記載のレドックスフロー電池。
【請求項13】
セルスタックアセンブリを含み、
前記セルスタックアセンブリは、
前記セルスタックアセンブリの横側面に配置されたプレートアセンブリであって、
導電板のセクションに嵌合した凹部を含み、垂直方向及び/または横方向に柔軟な弾性フランジと、
前記弾性フランジに結合されたプレートフレームと、
を含む前記プレートアセンブリを含み、
縦方向に整列した間隙が、前記プレートフレームのセクションと前記弾性フランジとの間に形成される、
レドックスフロー電池。
【請求項14】
前記弾性フランジが、前記プレートフレームの周辺フランジから縦方向にオフセットされている、請求項13に記載のレドックスフロー電池。
【請求項15】
前記プレートアセンブリがエンドプレートアセンブリであり、前記プレートフレームが圧力板に結合されたエンドプレートフレームである、請求項13又は14に記載のレドックスフロー電池。
【請求項16】
前記凹部と前記導電板との間の嵌合界面が、二重ラップジョイントを形成する、請求項13~15のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項17】
前記弾性フランジがゴムを含み、前記導電板が黒鉛を含む、請求項13~16のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項18】
前記弾性フランジが、前記導電板の表面と面を共有して接触するテクスチャパターンを有するテクスチャ加工された表面を含む、請求項13~17のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項19】
前記導電板が単極板である、請求項13~18のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項20】
前記導電板が双極板である、請求項13~19のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月15日に出願された「REDOX FLOW BATTERY AND BATTERY SYSTEM」という名称の米国仮出願第63/025,234号に対する優先権を主張する。前述の出願の全内容が、あらゆる目的で、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本説明は、一般に、レドックスフロー電池及び電池システムに関する。
【背景技術】
【0003】
レドックスフロー電池は、電力及び容量を個別にスケーリングでき、また、従来の電池技術と比較して、性能損失を抑えながら数千サイクルの充電及び放電を行うことができるため、グリッドスケールの貯蔵用途に適している。鉄ハイブリッドレドックスフロー電池は、セルスタックに低コストの材料が組み込まれているため、特に魅力的である。鉄レドックスフロー電池(IFB)は、電解質として鉄、塩、及び水に依存している。一部の実施形態では、IFBで使用されるこれらの地球に豊富で安価な材料は、刺激の強い化学物質を省くとともに、電池の環境フットプリントを削減する。
【0004】
鉄レドックスフロー電池(IFB)は、電解質として鉄、塩、および水に依存しているため、地球に豊富に存在する安価な材料を含み、一部の実施形態では、刺激の強い化学物質を組み込む必要がなく、それによって電池の環境フットプリントを削減する。
【0005】
セルスタックの熱管理は、レドックスフロー電池の設計にさまざまな課題をもたらす。例えば、従来のセルスタックは、スタックの異なるコンポーネントの不均衡な熱膨張/収縮に十分に対応できない場合がある。結果として、電池使用中にセルスタックが反る場合がある。それによって、電解質のフローパターンが影響を受けて、例えば、電池効率、電池出力、及び/または電池の構造的完全性が低下し得る。セルスタックのサイズが大きくなる、または単一の電池モジュールに複数のスタックが含まれているとき、セルスタックの反りが悪化する可能性がある。さらに、特定のセルスタックレイアウトでは、隣接するコンポーネントが圧力及び/または熱応力によって変形する可能性がある。具体的には、特定のシナリオでは、フレームフランジが交差圧力によってたわみ、セルスタックチャネルの電解質の流れを妨げる可能性がある。
【0006】
本発明者らは、従来のレドックスフロー電池の上述の欠点を認識し、欠点を少なくとも部分的に克服するレドックスフロー電池を開発した。一例では、レドックスフロー電池は、セルスタックアセンブリの横側面に配置されたプレートアセンブリを有するセルスタックアセンブリを含む。プレートアセンブリは、導電板の一部と嵌合し、縦方向のコンプライアンスを備えて設計された凹部を有する弾性フランジを含む。プレートアセンブリは、弾性フランジに結合されたプレートフレームも含む。弾性フランジは、スタックの温度勾配によって引き起こされるセルスタックの膨張/収縮に対応する。その結果、望ましくないスタックの反りの可能性が減少する。
【0007】
一例では、弾性フランジは、プレートフレームに熱溶接されてもよい。必要に応じて、弾性フランジをプレートフレームに熱溶接することで、フランジとフレームとの間の接着接合を省略することができる。その結果、プレートフレームと弾性フランジとの間により強い界面が形成され、フレームとフランジが分離する可能性を低減し得る。
【0008】
当然ながら、上記概要は、発明を実施するための形態にさらに記載される概念の一部を簡単な形で紹介するために提供されている。特許を請求する主題の重要なまたは必須の特徴を特定することを意図したものではなく、主題の範囲は、発明を実施するための形態に続く請求項によって一意に定義される。さらに、特許を請求する主題は、上記または本開示のいずれかの部分に記載した欠点を解決する実施態様に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】レドックスフロー電池システムの例の概略図を示す。
図2】圧縮アセンブリを有するレドックスフロー電池の例の分解図を示す。
図3図2に示したレドックスフロー電池の組立図を示す。
図4図3に示したレドックスフロー電池に含まれる加圧板を示す。
図5図3に示したレドックスフロー電池の断面図を示す。
図6図3に示したレドックスフロー電池に第2のレドックスフロー電池を積み重ねた電池システムの例を示す。
図7図3に示したレドックスフロー電池に含まれるサイドボルトカムアセンブリの詳細な図を示す。
図8図7に示したサイドボルトカムアセンブリのより詳細な図を示す。
図9図3に示したレドックスフロー電池の熱負荷の使用事例を示す。
図10】複数のセルスタックを含むレドックスフロー電池の第2の例を示す。
図11図10に示したレドックスフロー電池の第2の例の側面図を示す。
図12図10に示したレドックスフロー電池の第2の例の断面図を示す。
図13図10に示したレドックスフロー電池に第2のレドックスフロー電池を積み重ねた電池システムの第2の例を示す。
図14】レドックスフロー電池における例示的なセルスタックのセクションの断面図を示す。
図15図14に示したセルスタック内のエンドプレートアセンブリの詳細な図を示す。
図16図14に示したセルスタック内のエンドプレートアセンブリの詳細な図を示す。
図17】双極板アセンブリを示す。
図18図17に示した双極板アセンブリの分解図を示す。
図19図17に示した双極板アセンブリの一部分の詳細な断面図を示す。
図20】双極板アセンブリの別の例を示す。
図21図20に示した双極板アセンブリの熱負荷の使用事例を示す。
図22】双極板アセンブリの例を示す。
図23】双極板アセンブリの例を示す。
図24】双極板アセンブリの例を示す。
図25】双極板アセンブリの例を示す。
図26】フランジ材料と材料テクスチャリングの使用事例を示す。
図27】フランジ材料と材料テクスチャリングの使用事例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図2~27は、ほぼ一定の縮尺で描かれている。しかし、他の実施形態では、他の相対的な寸法が使用される場合がある。
【0011】
以下の説明は、レドックスフロー電池の製造コストを削減するのに役立つシステム及び方法に関する。製造コストの削減を実現するために、電池システムは、セルスタックを圧縮し、電池を構造的に補強するように設計されたスペース効率の良い圧縮アセンブリを含み得る。圧縮アセンブリは、板ばねによって前述の利点を実現してもよく、板ばねは、加圧板の側面を下方に延び、セルスタックに内向きの予荷重を及ぼす。板ばねは、セルスタックの圧縮をコンパクトに提供して、動作中の電池のアクティブ領域のたわみを低減(防止)する。加圧板は、圧縮アセンブリを構造的に補強できるようにする補強リブを含み得る。
【0012】
レドックスフロー電池はまた、必要に応じて、電池システムを費用効果的にスケーリングできるようにするモジュラー機能を含み得る。例えば、電池内の加圧板は、加圧板のフランジに積み重ね突起及び積み重ね戻り止めを組み込んでもよい。突起及び戻り止めは、隣接する電池の対応する突起及び戻り止めと嵌合して、電池ユニットの積み重ねを容易にする。その結果、必要に応じて、効率的なシステムのスケーリング(例えば、電力及び/または容量のスケーリング)を実現することができる。
【0013】
電池システムは、導電板(例えば、双極板または単極板)と嵌合する凹部を備えた弾性フランジを有するプレートアセンブリをさらに含み得る。弾性フランジにより、電池動作中のセルスタック内の熱膨張係数(CTE)が異なるコンポーネントの熱膨張と収縮が可能になる。その結果、電池動作中の望ましくないセルスタックの変形の可能性が低減される。1つの具体的な例では、弾性フランジは、フランジのセクションが縦方向にオフセットされたセクション間に延びるS字形を有し得る。S字形のフランジにより、電池セルスタックのより高い圧縮が実現できる。スタック圧縮の増大は、複数のセルスタックを有する電池において特に有益であり得る。
【0014】
図1に示すように、レドックスフロー電池システム10において、負極26はめっき電極と呼ばれてもよく、正極28はレドックス電極と呼ばれてもよい。第1の電池セル18のめっき側(例えば、負極コンパートメント20)内の負の電解質は、めっき電解質と呼ばれてもよく、第1の電池セル18のレドックス側(例えば、正極コンパートメント22)の正の電解質は、レドックス電解質と呼ばれてもよい。
【0015】
ハイブリッドレドックスフロー電池は、電極上に固体層として電気活性材料の1つまたは複数を堆積することを特徴とするレドックスフロー電池である。ハイブリッドレドックスフロー電池は、例えば、電池充電プロセス全体を通して基板上に固体として電気化学反応によってめっきする化学物質を含み得る。電池の放電中、めっきされた種は電気化学反応によってイオン化し、電解質に溶解し得る。ハイブリッド電池システムでは、レドックス電池の充電容量(例えば、蓄えられるエネルギーの最大量)は、電池充電中にめっきされた金属の量によって制限される場合があり、めっきシステムの効率、ならびにめっきに利用可能な体積及び表面積に依存し得る。
【0016】
アノードは電気活性材料が電子を失う電極を指し、カソードは電気活性材料が電子を得る電極を指す。電池の充電中、正の電解質は負極26で電子を獲得する、したがって負極26は電気化学反応のカソードである。放電中、正の電解質は電子を失う、したがって、負極26は反応のアノードである。あるいは、放電中、負の電解質及び負極は、それぞれ、電気化学反応のアノード液及びアノードと呼ばれてもよく、正の電解質及び正極は、それぞれ、電気化学反応のカソード液及びカソードと呼ばれてもよい。充電中、負の電解質及び負極は、それぞれ、電気化学反応のカソード液及びカソードと呼ばれてもよく、正の電解質及び正極は、それぞれ、電気化学反応のアノード液及びアノードと呼ばれてもよい。簡単にするために、正及び負という用語は、本明細書では、レドックス電池フローシステムの電極、電解質、及び電極コンパートメントを指して使用される。
【0017】
ハイブリッドレドックスフロー電池の一例は、全鉄レドックスフロー電池(IFB)であり、IFBでは、電解質は鉄塩(例えば、FeCl、FeClなど)の形態の鉄イオンを含み、負極は金属鉄を含む。例えば、負極26では、電池充電中に、第一鉄イオンFe2+が2つの電子を受け取り、鉄金属として負極26にめっきし、電池放電中に、鉄金属Feが2つの電子を失い、Fe2+として再溶解する。正極では、充電中にFe2+が電子を失って第二鉄イオンFe3+を形成し、放電中にFe3+が電子を獲得してFe2+を形成する。電気化学反応は式(1)及び(2)にまとめられる。ここで、正反応(左から右)は電池充電中の電気化学反応を示し、逆反応(右から左)は電池放電中の電気化学反応を示す。
Fe2++2e-←→Fe -0.44V (負極) (1)
Fe2+←→2Fe3++2e- +0.77V (正極) (2)
【0018】
上記のように、IFBで使用される負の電解質は、充電中にFe2+が負極から2つの電子を受け取ってFeを形成し、基板上にめっきできるように、十分な量のFe2+を提供し得る。放電中、めっきされたFeは2つの電子を失い、Fe2+にイオン化し、溶解されて電解質内に戻ってもよい。上記の反応の平衡電位は-0.44Vであり、したがって、この反応は所望のシステムに負の端子を提供する。IFBの正極側では、電解質は充電中にe2+を提供し、これが電子を失い、Fe3+に酸化する。放電中、電解質によって提供されたFe3+は、電極によって提供された電子を吸収することによってFe2+になる。この反応の平衡電位は+0.77Vであり、所望のシステムに正の端子を提供する。
【0019】
IFBは、非再生電解質を利用する他のタイプの電池とは異なり、電解質を充電及び再充電する能力を備える。充電は、端子40及び42を介して電極間に電流を印加することによって達成される。負極26は端子40を介して電圧源の負側に電気的に結合されてもよく、それによって、電子が正極を介して負電解質に供給されてもよい(例えば、Fe2+が、正極コンパートメント22内の正の電解質中でFe3+に酸化される)。負極26(例えば、めっき電極)に供給される電子は、負電解質中のFe2+を還元して、めっき基板でFeを形成し、それを負極26上にめっきすることができる。
【0020】
放電は、Feが酸化のために負の電解質で利用可能なままであり、Fe3+が還元のために正の電解質で利用可能なままである間、持続することができる。例として、Fe3+の利用可能性は、外部の正の電解質タンク52などの外部ソースを介して追加のFe3+イオンを提供するために、第1の電池セル18の正極コンパートメント22側への正の電解質の濃度または体積を増加させることによって維持することができる。より一般的には、放電中のFeの利用可能性は、IFBシステムで問題になる可能性があり、放電に利用できるFeは、負極基板の表面積及び積とめっき効率とに比例し得る。充電容量は、負極コンパートメント20内のFe2+の利用可能性に依存し得る。例として、Fe2+の利用可能性は、外部の負の電解質チャンバ50などの外部ソースを介して追加のFe2+イオンを提供して、第1の電池セル18の負極コンパートメント20側への負の電解質の濃度または体積を増加させることによって維持することができる。
【0021】
IFBにおいて、正の電解質は、第一鉄イオン、第二鉄イオン、第二鉄錯体、またはそれらの任意の組み合わせを含み、負の電解質は、IFBシステムの充電状態に応じて、第一鉄イオンまたは第一鉄錯体を含む。前述のように、負の電解質と正の電解質の両方で鉄イオンを利用すると、電池セルの両側で同じ電解種を利用することが可能になり、これにより、電解質の相互汚染を減らし、IFBシステムの効率を高めることができて、結果として、他のレドックスフロー電池システムと比較して、電解質の交換が少なくなる。
【0022】
IFBにおける効率損失は、セパレータ24(例えば、イオン交換膜バリア、微多孔膜など)を通過する電解質クロスオーバーに起因する場合がある。例えば、正の電解質中の第二鉄イオンは、第二鉄イオン濃度勾配及びセパレータを横切る電気泳動力によって負の電解質に向かって駆動され得る。次に、膜バリアを透過し、負極コンパートメント20に移動する第二鉄イオンは、クーロン効率の損失をもたらす場合がある。低pHのレドックス側(例えば、より酸性度の高い正極コンパートメント22)から高pHのめっき側(例えば、より酸性度の低い負極コンパートメント20)に移動する鉄イオンは、Fe(OH)の沈殿をもたらし得る。Fe(OH)の沈殿は、セパレータ24を劣化させ、恒久的な電池性能及び効率の損失を引き起こす場合がある。例えば、Fe(OH)の沈殿は、イオン交換膜の有機官能基を化学的に汚したり、イオン交換膜の小さな微細孔を物理的に詰まらせたりする場合がある。いずれの場合も、Fe(OH)の沈殿により、時間の経過とともに膜のオーム抵抗が上昇し、電池性能が低下する場合がある。沈殿物は電池を酸で洗浄することで除去し得るが、定期的なメンテナンスとダウンタイムは、商用電池用途には不都合な場合がある。さらに、洗浄は電解質の定期的な調製に依存する場合があり、追加の処理コストと複雑さの原因となる。あるいは、電解質のpH変化に応じて正の電解質と負の電解質に特定の有機酸を添加すると、全体的なコストを押し上げることなく、電池の充電及び放電サイクル中の沈殿物形成を軽減し得る。さらに、鉄イオンのクロスオーバーを阻害する膜バリアを実装すると、汚染も軽減し得る。
【0023】
追加のクーロン効率の損失は、H(例えば、プロトン)の還元とそれに続くH(例えば、水素ガス)の形成、及び負極コンパートメント20内のプロトンとめっきされた鉄金属電極で供給される電子との反応による水素ガスの形成によって引き起こされる場合がある。
【0024】
IFB電解質(例えば、FeCl、FeCl、FeSO、Fe(SOなど)は容易に入手可能であり、低コストで製造することができる。IFB電解質は、負の電解質及び正の電解質に同じ電解質を使用できるため、より高い再生価値を提供し、その結果、他のシステムと比較して相互汚染の問題が減少する。さらに、鉄は、その電子配置のために、負極基板上へのめっき中にほぼ均一な固体構造に固化し得る。ハイブリッドレドックス電池で一般的に使用される亜鉛やその他の金属の場合、めっき中に固体の樹枝状構造が形成される場合がある。IFBシステムの安定した電極形態は、他のレドックスフロー電池と比較して電池の効率を高め得る。さらに、鉄レドックスフロー電池は有毒な原材料の使用を減らし、他のレドックスフロー電池電解質と比較して相対的に中性のpHで動作することができる。したがって、IFBシステムは、現在生産されている他のすべての高度なレドックスフロー電池システムと比較して、環境への影響を軽減する。
【0025】
引き続き図1を参照すると、レドックスフロー電池システム10の概略図が示されている。レドックスフロー電池システム10は、マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110に流体接続された第1のレドックスフロー電池セル18を含み得る。第1のレドックスフロー電池は一般に、負極コンパートメント20、セパレータ24、及び正極コンパートメント22を含み得る。セパレータ24は、正の電解質と負の電解質とのバルク混合を防ぎ、特定のイオンの伝導を可能にする電気絶縁性イオン伝導バリアを含み得る。例えば、セパレータ24は、イオン交換膜及び/または微多孔膜を含み得る。
【0026】
負極コンパートメント20は、負極26を含んでよく、負の電解質は、電気活性材料から少なくとも部分的に形成されてもよい。正極コンパートメント22は、正極28を含んでよく、正の電解質は、電気活性材料を含み得る。一部の例では、複数のレドックスフロー電池セル18を直列または並列に組み合わせて、レドックスフロー電池システムでより高い電圧または電流を生成し得る。例えば、一部の例では、レドックスフロー電池システム10は、図10図13に示すように、2つのセルスタックを含んでよく、各セルスタックは複数の電池セルから形成される。例として、第1の電池セル18と、第1の電池セル18と同様に構成された第2の電池セル19とを有するレドックスフロー電池システム10を図1に示す。したがって、第1の電池セル18について本明細書に記載されるすべての構成要素及びプロセスは、第2の電池セル19にも同様に見出され得る。
【0027】
第1の電池セル18は第1のセルスタックに含まれてもよく、第2の電池セル19は第2のセルスタックに含まれてもよい。第1及び第2のセルは、互いに流体結合されていても流体結合されていなくてもよいが、それぞれ電解質貯蔵タンク110及びリバランス反応器80、82に流体結合されている。例えば、図1に示すように、第1及び第2の電池セル18、19のそれぞれは、第1及び第2の電池セル18及び19のそれぞれに分岐する共通の通路を介して、負の電解質ポンプ30及び正の電解質ポンプ32に接続されてもよい。同様に、電池セルはそれぞれ、電池セルをリバランス反応器80、82に結合する共通の通路に合流する通路を有し得る。
【0028】
図1にさらに示されるのは、負の電解質ポンプ30及び正の電解質ポンプ32であり、両方ともフロー電池システム10を通して電解質溶液を汲み上げるために使用される。電解質は、セル外部の1つまたは複数のタンクに貯蔵され、負の電解質ポンプ30及び正の電解質ポンプ32を介して、それぞれ電池の負極コンパートメント20側及び正極コンパートメント22側を通して汲み上げられる。
【0029】
レドックスフロー電池システム10は、第1の双極板36及び第2の双極板38をさらに含んでよく、それぞれ、負極26及び正極28の後面側、例えば、セパレータ24に面する側の反対側に沿って配置される。第1の双極板36は負極26と接触してもよく、第2の双極板38は正極28と接触してもよい。しかしながら、他の例では、双極板は、近接して配置されてもよいが、それぞれの電極コンパートメント内で電極から離間して配置されてもよい。いずれの場合でも、双極板36及び38は、端子40及び42に、直接接触するか、または、それぞれ、負極26及び正極28を介して、電気的に結合されてもよい。IFB電解質は、双極板36、38の材料の導電特性に起因して、第1の双極板36及び第2の双極板38によって負極26及び正極28の反応サイトに輸送されてもよい。電解質の流れは、負の電解質ポンプ30及び正の電解質ポンプ32によって補助され、第1のレドックスフロー電池セル18を通る強制対流を促進し得る。反応した電気化学種は、強制対流と、第1の双極板36及び第2の双極板38の存在との組み合わせによって、反応サイトから離れる方向に向けられてもよい。
【0030】
図1に示すように、第1のレドックスフロー電池セル18は、負の電池端子40及び正の電池端子42をさらに含み得る。充電電流が電池端子40及び42に印加されると、正の電解質は正極28で酸化され(1つまたは複数の電子を失う)、負の電解質は負極26で還元される(1つまたは複数の電子を得る)。電池の放電中、電極で逆レドックス反応が生じる。言い換えると、正の電解質は正極28で還元され(1つまたは複数の電子を得る)、負の電解質は負極26で酸化される(1つまたは複数の電子を失う)。電池全体の電位差は、正極コンパートメント22及び負極コンパートメント20における電気化学的レドックス反応によって維持され、反応が持続している間、集電体を通して電流を誘導し得る。レドックス電池に蓄えられるエネルギー量は、電解質の全体積と電気活性材料の溶解度に応じて、放電のための電解質内の利用できる電気活性材料の量によって制限される。
【0031】
フロー電池システム10は、統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110をさらに含み得る。マルチチャンバ貯蔵タンク110は、隔壁98によって分割されてもよい。隔壁98は、正及び負の電解質の両方を単一のタンク内に含めることができるように、貯蔵タンク内に複数のチャンバを形成してもよい。負の電解質チャンバ50は、電気活性材料を含む負の電解質を保持し、正の電解質チャンバ52は、電気活性材料を含む正の電解質を保持する。隔壁98は、負の電解質チャンバ50と正の電解質チャンバ52との間に所望の容積比をもたらすために、マルチチャンバ貯蔵タンク110内に配置されてもよい。一例では、隔壁98は、負のレドックス反応と正のレドックス反応との間の化学量論比に従って、負及び正の電解質チャンバの容積比を設定するように配置されてもよい。図1は、貯蔵タンク110の充填高さ112をさらに示し、これは各タンクコンパートメント内の液体レベルを示し得る。図1は、負の電解質チャンバ50の充填高さ112の上に位置するガスヘッドスペース90、及び正の電解質チャンバ52の充填高さ112の上に位置するガスヘッドスペース92を示す。ガスヘッドスペース92は、レドックスフロー電池の動作によって(例えば、プロトン還元及び腐食副反応により)生成され、第1のレドックスフロー電池セル18から電解質を戻してマルチチャンバ貯蔵タンク110に運ばれた水素ガスを貯蔵するために利用されてもよい。水素ガスは、マルチチャンバ貯蔵タンク110内の気液界面(例えば、充填高さ112)で自然に分離され、それによって、レドックスフロー電池システムの一部として追加の気液分離器を有することを排除し得る。電解質から分離されると、水素ガスはガスヘッドスペース90及び92を満たしてもよい。このように、貯蔵された水素ガスは、マルチチャンバ貯蔵タンク110から他のガスをパージするのを助けることができ、それによって、電解質種の酸化を減らすための不活性ガスブランケットとして機能し、レドックスフロー電池容量の損失を減らすのを助けることができる。このように、統合されたマルチチャンバ貯蔵タンク110を利用することにより、従来のレドックスフロー電池システムに共通の別個の負及び正の電解質貯蔵タンク、水素貯蔵タンク、及び気液分離器を持たずに済ませ、それによってシステム設計を簡素化し、システムの物理的フットプリントを軽減し、システムコストを削減し得る。
【0032】
図1は、ガスヘッドスペース90と92との間の隔壁98に開口部を形成し、2つのチャンバ間のガス圧を等しくする手段を提供するスピルオーバーホール96を示す。スピルオーバーホール96は、充填高さ112よりも上の閾値高さに配置されてもよい。スピルオーバーホールはさらに、電池クロスオーバーの場合に、正及び負の電解質チャンバのそれぞれの電解質を自己平衡化する能力を可能にする。全鉄レドックスフロー電池システムの場合、同じ電解質(Fe2+)が負極コンパートメント20と正極コンパートメント22の両方で使用されるため、負の電解質チャンバ50と正の電解質チャンバ52との間で電解質があふれ出て、システム全体の効率が低下し得るが、全体的な電解質組成、電池モジュールの性能、及び電池モジュールの容量は維持される。漏れのない連続加圧状態を維持するために、マルチチャンバ貯蔵タンク110の入口及び出口のすべての配管接続にフランジ継手を利用してもよい。マルチチャンバ貯蔵タンク110は、負及び正の電解質チャンバのそれぞれからの少なくとも1つの出口と、負及び正の電解質チャンバのそれぞれへの少なくとも1つの入口とを含み得る。さらに、水素ガスをリバランス反応器80及び82に向けるために、ガスヘッドスペース90及び92から1つまたは複数の出口接続が設けられてもよい。
【0033】
図1には示されていないが、一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110は、負の電解質チャンバ50及び正の電解質チャンバ52のそれぞれに熱的に結合された1つまたは複数のヒータをさらに含み得る。代替例では、負及び正の電解質チャンバの一方のみが、1つまたは複数のヒータを含み得る。正の電解質チャンバ52のみが1つまたは複数のヒータを含む場合、負の電解質は、パワーモジュールの電池セルで生成された熱を負の電解質に伝達することによって加熱されてもよい。このようにして、パワーモジュールの電池セルは加熱し、負の電解質の温度調整を容易にし得る。1つまたは複数のヒータは、コントローラ88によって作動されて、負の電解質チャンバ50及び正の電解質チャンバ52の温度を別々にまたは一緒に調節してもよい。例えば、電解液温度が閾値温度を下回ったことに応答して、コントローラ88は、電解質への熱流束が増加するように、1つまたは複数のヒータに供給される電力を増加させてもよい。電解質温度は、センサ60及び62を含む、マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110に取り付けられた1つまたは複数の温度センサによって示されてもよい。1つまたは複数のヒータは、電解質流体に浸漬されたコイル型ヒータもしくは他の浸漬ヒータ、または負及び正の電解質チャンバの壁を通して伝導的に熱を伝達してその中の流体を加熱する表面マントル型ヒータを含み得る。本開示の範囲から逸脱することなく、他の既知のタイプのタンクヒータを採用してもよい。さらに、コントローラ88は、液体レベルが固体充填閾値レベルを下回ったことに応答して、負及び正の電解質チャンバ50、52内の1つまたは複数のヒータを停止してもよい。言い方を変えると、コントローラ88は、液体レベルが固体充填閾値レベルを上回ったことのみに応答して、負及び正の電解質チャンバ50、52内の1つまたは複数のヒータを作動してもよい。このようにして、正及び/または負の電解質チャンバ内に十分な液体がない状態で1つまたは複数のヒータを作動することを回避し、それによってヒータの過熱または焼損のリスクを低減することができる。
【0034】
さらに、フィールド水和システム(図示せず)から負の電解質チャンバ50、及び正の電解質チャンバ52のそれぞれに1つまたは複数の入口接続が設けられてもよい。このようにして、フィールド水和システムは、最終使用場所でのシステムの設置、充填、及び水和を含む、レドックスフロー電池システムの試運転を容易にすることができる。さらに、最終使用場所で試運転する前に、レドックスフロー電池システムは、システムを最終使用場所に配送する前に、システムを充填及び水和することなく、最終使用場所とは異なる電池製造施設で乾式組み立てされてもよい。一例では、最終使用場所は、レドックスフロー電池システム10が設置され、オンサイトエネルギー貯蔵のために利用される場所に対応し得る。言い換えれば、最終使用場所に設置され水和されると、レドックスフロー電池システム10の位置は固定され、レドックスフロー電池システム10はもはや携帯用の乾式システムとは見なされなくなると考えられる。したがって、レドックスフロー電池システムのエンドユーザの観点から、乾式携帯型レドックスフロー電池システム10は現場に配送され、その後、レドックスフロー電池システム10が設置され、水和され、試運転される。水和前のレドックスフロー電池システム10は、乾式携帯システムと呼ばれてもよく、レドックスフロー電池システム10は、水及び湿った電解質を含まない、または水及び湿った電解質が無い。水和されると、レドックスフロー電池システム10は、湿式非携帯システムと呼ばれてもよく、レドックスフロー電池システム10は、湿った電解質を含む。
【0035】
図1にさらに示されるのは、マルチチャンバ貯蔵タンク110に典型的に貯蔵される電解質溶液が、負の電解質ポンプ30及び正の電解質ポンプ32によってフロー電池システム10を通して汲み上げられる。負の電解質チャンバ50に貯蔵された電解質は、負の電解質ポンプ30を介して負極コンパートメント20側を通って汲み上げられ、正の電解質チャンバ52に貯蔵された電解質は、電池の正極コンパートメント22側を通して正の電解質ポンプ32によって汲み上げられる。
【0036】
2つの電解質リバランス反応器80及び82は、レドックスフロー電池システム10において、それぞれ第1の電池セル18の負極側及び正極側で電解質の再循環流路とインラインまたは並列に接続されてもよい。1つまたは複数のリバランス反応器を電池の負極側及び正極側で電解質の再循環流路と一直線に接続されてもよく、他のリバランス反応器が、冗長性のため(例えば、リバランス反応器は電池とリバランス操作を中断することなく修理されてもよい)と、リバランス容量を増やすために並列に接続されてもよい。一例では、電解質リバランス反応器80及び82は、それぞれ負極コンパートメント20及び正極コンパートメント22から正の電解質チャンバ50及び負の電解質チャンバ52への戻り流路に配置されてもよい。電解質リバランス反応器80及び82は、本明細書に記載されるように、副反応、イオンクロスオーバーなどによって生じるレドックスフロー電池システムにおける電解質電荷の不均衡をリバランスするのに役立ち得る。一例では、電解質リバランス反応器80及び82はトリクルベッド反応器を含んでよく、電解質リバランス反応を行うために水素ガスと電解質とが充填床の触媒表面で接触する。他の例では、リバランス反応器80及び82は、水素ガス及び電解液と接触し、充填触媒床の非存在下でリバランス反応を行うことができるフロースルータイプの反応器を含み得る。
【0037】
レドックスフロー電池システム10の動作中、センサ及びプローブは、電解液のpH、濃度、充電状態などの電解質の化学的特性を監視及び制御してもよい。例えば、図1に示すように、センサ62及び60は、それぞれ、正の電解質チャンバ52及び負の電解質チャンバ50における正の電解質及び負の電解質の状態を監視するように配置されてもよい。別の例では、センサ62及び60はそれぞれ、正の電解質チャンバ52及び負の電解質チャンバ50内の電解質のレベルをそれぞれ示す1つまたは複数の電解質レベルセンサを含み得る。別の例として、図1に示すように、センサ72及び70は、それぞれ、正極コンパートメント22及び負極コンパートメント20における正の電解質及び負の電解質の状態を監視してもよい。センサ72、70は、pHプローブ、光プローブ、圧力センサ、電圧センサなどであってもよい。センサは、電解質の化学的特性及び他の特性を監視するために、レドックスフロー電池システム10全体の他の位置に配置されてもよい。
【0038】
例えば、センサを外部の酸タンク(図示せず)に配置して、外部の酸タンクの酸量またはpHを監視してもよく、外部の酸タンクからの酸は、電解質中の沈殿物形成を減少させるために、外部ポンプ(図示せず)を介してレドックスフロー電池システム10に供給される。レドックスフロー電池システム10に他の添加剤を供給するために、追加の外部タンク及びセンサが設置されてもよい。例えば、フィールド水和システムの温度センサ、導電率センサ、及びレベルセンサを含む様々なセンサが、コントローラ88に信号を送信してもよい。さらに、コントローラ88は、レドックスフロー電池システム10の水和中に、フィールド水和システムのバルブ及びポンプなどのアクチュエータに信号を送信することができる。センサ情報はコントローラ88に送信され、コントローラ88はポンプ30及び32を作動させて、例として、第1の電池セル18を通る電解質の流れを制御するか、または他の制御機能を実行し得る。このようにして、コントローラ88は、センサ及びプローブの1つまたは組み合わせに応答してもよい。
【0039】
レドックスフロー電池システム10は、水素ガス源をさらに含み得る。一例では、水素ガス源は、別個の専用水素ガス貯蔵タンクを含み得る。図1の例では、水素ガスは、一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110に貯蔵され、そこから供給されてもよい。一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110は、追加の水素ガスを正の電解質チャンバ52及び負の電解質チャンバ50に供給してもよい。一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110は、追加の水素ガスを電解質リバランス反応器80及び82の入口に交互に供給し得る。例として、質量流量計または他の流量制御装置(コントローラ88によって制御されてもよい)は、一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110からの水素ガスの流れを調節し得る。一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110は、レドックスフロー電池システム10で生成された水素ガスを補給してもよい。例えば、レドックスフロー電池システム10でガス漏れが検出されたとき、または低い水素分圧で還元反応速度が低すぎるとき、正の電解質と負の電解質における電気活性種の電荷の状態をリバランスするために一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110から水素ガスを供給してもよい。例として、コントローラ88は、pHの測定された変化に応答して、または電解質もしくは電気活性種の電荷の状態の測定された変化に応答して、一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110から水素ガスを供給してもよい。
【0040】
例えば、負の電解質チャンバ50または負極コンパートメント20のpHの上昇は、水素がレドックスフロー電池システム10から漏れていること、及び/または利用可能な水素分圧に対して反応速度が遅すぎることを示す場合があり、コントローラ88は、pHの上昇に応答して、一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110からレドックスフロー電池システム10への水素ガスの供給を増加させてもよい。さらなる例として、コントローラ88は、第1の閾値pHを超えて上昇するか、または第2の閾値pHを超えて低下するpHの変化に応答して一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110から水素ガスを供給してもよい。IFBの場合、コントローラ88は追加の水素を供給して、第二鉄イオンの還元速度及びプロトンの生成速度を増加させ、それによって正の電解質のpHを低下させてもよい。さらに、負の電解質のpHは、正の電解質から負の電解質にクロスオーバーする第二鉄イオンの水素還元によって、または正極側で生成されたプロトンがプロトン濃度勾配及び電気泳動力により負の電解質にクロスオーバーすることによって低下させてもよい。このようにして、Fe(OH)としての第二鉄イオンの沈殿(正極コンパートメントからのクロスオーバー)のリスクを低減しながら、負の電解質のpHを安定領域内に維持してもよい。
【0041】
酸素還元電位(ORP)メータまたは光学センサなどの他のセンサによって検出される、電解液のpHの変化または電解質の電荷状態の変化に応答して、一体型マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110からの水素ガスの供給速度を制御するための他の制御スキームが実装されてもよい。さらに、コントローラ88のアクションをトリガするpHまたは電荷状態の変化は、一定期間にわたって測定された変化率または変化に基づいてもよい。変化率の期間は、予め決定、またはレドックスフロー電池システム10の時定数に基づいて調整されてもよい。例えば、再循環率が高い場合、期間は短縮されてもよく、時定数が小さい可能性があるため、濃度の局所的な変化(例えば、副反応またはガス漏れによる)が迅速に測定され得る。
【0042】
図2は、第1の加圧板202と第2の加圧板204との間にセルスタック206が配置されたレドックスフロー電池200(例えば、鉄レドックスフロー電池(IFB))の例を示す。具体的には、加圧板の内側205は、セルスタック206の反対側と接するように設計されてもよい。当然ながら、図2に示されるレドックスフロー電池200、及び、本明細書に記載の他のレドックスフロー電池及びシステムは、図1に示すレドックスフロー電池システム10の例である。したがって、図1に示されるレドックスフロー電池システム10の構造的及び/または機能的特徴は、本明細書に記載されている他のレドックスフロー電池及び電池システムにおいて示され得るか、またはその逆であり得る。
【0043】
引き続き図2について、レドックスフロー電池200は、電池構成要素を構造的に補強するために、電池に重量とコストを追加し得る外部ハウジングに依存しなくてもよい。むしろ、レドックスフロー電池は、電池内のセルスタックを相乗的に支持し、圧縮するコンパクトなシステムを提供する。したがって、フロー電池のコストとプロファイルを削減し得る。その結果、複数の電池モジュールを組み込む電池システムは、より費用効果が高く、スペース効率的に製造され、必要に応じて、効率的な電池システムのスケーリングが可能になる。
【0044】
参照のため、図2~25に軸システム201が記載されている。z軸は重力軸に平行であってもよい。y軸は縦軸であってもよい、及び/またはx軸は横軸であってもよい。しかし、他の実施形態では、軸の他の向きが使用される場合がある。
【0045】
セルスタック206は、第1の加圧板202の内側に配置され、第1の加圧板202の内面と面を共有して接触する第1のエンドプレート208を含む。電流を流すように構成された第1の集電体210は、第1のエンドプレート208と第1の加圧板202との間に配置されてもよい。第1の加圧板202及び第2の加圧板204は、レドックスフロー電池200の対向する末端212に配置される。
【0046】
セルスタック206では、第1の双極板アセンブリ214が、第1のセルスタック206の第1のエンドプレート208と第2のエンドプレート216との間に配置される。さらに、y軸に沿って積層された双極板アセンブリ219が示されている。双極板アセンブリは、y軸に沿って積層された複数のフレームプレート215を含む。複数のフレームプレート215は、セルスタック206に構造的支持を提供する。複数のフレームプレート215の各フレームプレートは、セルスタックのセルをフレームで囲むように同様に構成されてもよい。各セルは、各フレームプレートの少なくとも1つの開口部に挿入された少なくとも1つの双極板217を含む。さらに、双極板は、各セルの負極と正極との間に配置され、電極は、双極板の対向する面に沿って配置される。さらに、負極は双極板と膜セパレータ(例えば、図1のセパレータ24)との間に配置される。このように、各フレームプレートアセンブリは、膜セパレータ、負極、双極板、及び正極を含む構成要素のスタックを有し、構成要素のスタックは、セルスタック206内の連続するフレームプレートアセンブリごとに繰り返される。しかし、当然ながら、他の例では、他の適切なセルスタック配置が展開されてもよい。
【0047】
第2のエンドプレート216は、第2の加圧板204と面を共有して接触してもよい。第2の集電体218は、第2のエンドプレート216と第2の加圧板204との間に配置されてもよい。
【0048】
図2は、複数のフローポート220を示す。フローポート220は、セルスタック206に出入りする電解質(例えば、正または負の電解質)を流すように設計されている。したがって、フローポート220は、第2の加圧板204の開口部を通って延びるように示されている。
【0049】
第1の加圧板202及び第2の加圧板204は、共に、アセンブリ時に、レドックスフロー電池200を構造的に補強し、セルスタックに予荷重を加えるように設計されている。構造的補強を達成するために、リブ222(以下、補強リブ)は、第1の加圧板202及び第2の加圧板204の外側224を下方に延びる。詳述すると、補強リブ222は、最終用途の設計目的に従って構造的支持を調整するために、プレートを横方向及び/または垂直方向に横断して延びてもよい。さらに、補強リブ222は、互いに交差して、リブの配置の構造的一体性を高め、コンパクトなプレート配置を提供することが示されている。一部の例では、ラッキングアセンブリなどの追加の補強構造は、加圧板によって提供される構造補強のために、システムから省かれてもよい。このようにして、加圧板は自立することができる。
【0050】
第1の加圧板202及び/または第2の加圧板204は、金属(例えば、アルミニウム、鋼、チタンなど)から製造されてもよい。1つの特定の例では、加圧板は、例えば鋼板と比較してプレートの強度対重量比を増加させるためにアルミニウムから構築されてもよい。したがって、一使用事例では、目的の構造的完全性を維持しながら、電池の重量を減らすためにアルミニウム製の加圧板が使用されてもよい。アルミニウム加圧板の使用は、鋼板と比較して、加圧板とセルスタックとの間の電磁相互作用を実質的に減少(例えば、防止)し得る。さらに、一部の例では、複数のプレート部分を互いに溶接する製造方法と比較して、プレートの構造的完全性をさらに改善するために、加圧板を鋳造してもよい。それにもかかわらず、他の例では、フライス加工及び/または他の適切なプレート製造技術を使用してもよい。当然ながら、加圧板を鋳造またはフライス加工することにより、プレートがモノリシック構造を形成し、構成要素の強度を高めることができる。
【0051】
加圧板202、204は、上部フランジ226及び下部フランジ228を含み、各フランジは、セルスタック206から外側に延びるように示されている。具体的には、図示の例では、フランジ226及び228は水平に配置されている。しかしながら、他のフランジ輪郭が想定されてきた。例えば、フランジは、非平面プロファイルを有してもよい、及び/または水平方向に整列していなくてもよい。突起230は、上部フランジ226に含まれる。戻り止め232は、図3に示すように、下部フランジ228に含まれる。しかし、他の例では、下側フランジが突起を含み、上側フランジが戻り止めを含んでもよく、または各フランジが突起と戻り止めの両方を含んでもよい。当然ながら、突起230及び戻り止め232は、レドックスフロー電池200の上または下に配置された電池内の対応する突起及び戻り止めと嵌合するように構成されている。突起及び戻り止めは、突起及び戻り止めの滑らかな嵌合を可能にするように、水平断面において丸みを帯びてもよい。しかし、多角形などの他の形状の突起及び戻り止めが考えられている。
【0052】
加圧板202、204は、電池の構築、設置、整備などの間にフォークリフトが加圧板に係合することを可能にする複数のフォークリフト開口部234を含み得る。結果として、電池ユニットは、必要に応じて、フォークリフトによって効率的に操作され得る。フォークリフト開口部は、フォークリフト機のフォークの延長部と嵌合するように寸法決めされてもよい。しかし、他の例では、加圧板を使用して電池を持ち上げやすくするために、フォークリフトのフォークの端にアダプタが配置されてもよい。フォークリフトの開口部は、加圧板を通って縦方向に延びているのが示されている。しかしながら、フォークリフトの開口部の他の向きが想定されてきた。戻り止め232は、フォークリフト開口部234と垂直方向に整列して示されている。このように戻り止めとフォークリフトの開口部とを整列させると、電池積層時に戻り止めと突起を容易に整列させることを可能にし得る。しかし、他の例では、戻り止めとフォークリフト開口部は、交互の相対位置を有してもよい。
【0053】
レドックスフロー電池200は、電池動作中のセルスタック(例えば、セルスタックの活性領域)のたわみを低減するために、セルスタック206に予荷重力を及ぼすように設計された圧縮アセンブリ236を含む。圧縮アセンブリ236は、加圧板202、204の外側224に沿って延びる板ばね238を含む。具体的には、図示の例では、板ばね238は、プレートの側面を垂直に下方に延びる。しかしながら、他の例では、ばねは、プレートを横切って横方向に延びてもよい、またはばねが垂直及び横方向の両方に延びる対角配置で延びてもよい。当然ながら、スタック変形の予想される方向は、板ばね238の配置を知らせ得る。したがって、ある使用事例では、スタックの縦方向の拡張に対応するために板ばねが垂直方向に整列される。板ばね238は、一例では、鋼から構築されてもよい。しかしながら、ばねは、チタンもしくは他の金属、ポリマー材料、それらの組み合わせなどの他の適切な材料から構築されてもよい。板ばねを作るために使用される材料(複数可)を選択する際には、材料のコスト、強度、及び屈曲特性を考慮に入れてもよい。したがって、特定の使用事例では、鋼からばねを作ると、他の金属よりも低コストで望ましい屈曲特性を提供し得る。
【0054】
レドックスフロー電池200は、複数のタイロッド240をさらに含む。タイロッド240は、板ばね238、加圧板202、204、及びセルスタック206を通って延びるように設計されている。他のタイロッドは、加圧板202、204及びセルスタック206を通って延びてもよく、板ばね238を通らない場合がある。レドックスフロー電池200には、セルスタック206に圧縮を加えることができるようにタイロッド240と螺合するように設計されたナット242が含まれる。
【0055】
図3は、組み立てられた構成のレドックスフロー電池200を示す。タイロッド240の一部は、板ばね238を通って延びるように示されている。詳細には、タイロッド240は、板ばね238の上部及び下部セクションを通って延び、ばねの屈曲を容易にする。加圧板202、204及びセルスタック206を通って延びる追加のタイロッド240が示されている。本明細書でより詳細に説明されるサイドボルト300は、加圧板202、204を通って延びるように示されている。タイロッド240のヘッド302、及び図2に示されるタイロッドに連結されたナット242は、電池組立中にセルスタックの圧縮を設定できるように締め付けられてもよい。
【0056】
フォークリフト開口部234は、セルスタック206から垂直方向にオフセットされて図3に示されており、これにより、フォークリフトとのセルスタックの干渉を避ける。このようにして、フォークは、セルスタック206の一部の下または上にスライドされてもよい。そのため、フォークリフトのフォークがセルスタックに衝突する可能性が低減される。あるいは、フォークリフトの開口部は、電池スタックと整列されてもよいが、これは、フォークリフトまたは他の機械を使用して電池スタックを効率的に移動させるのに障害となる可能性がある。
【0057】
図3は、電解質の流れがセルスタック206に出入りするのを可能にするフローポート220を示す。具体的には、一例では、ポート304は流入ポートであってもよく、ポート306は流出ポートであってもよい。しかしながら、電池の他の流入及び流出方式が考えられてきた。詳細には、レドックスフロー電池200に正の電解質流入ポートと負の電解質流入ポートを設けてもよい。同様に、レドックスフロー電池200に正の電解質流出ポートと負の電解質流出ポートを設けてもよい。図3は、第1の加圧板202の上部フランジ226及び下部フランジ228を示す。下部フランジ228の戻り止め232が図3に示されている。図5の断面を示す切断面A-A’が、図4に示されている。
【0058】
図4は、第1の加圧板202の詳細図を示す。補強リブ222、上部フランジ226、下部フランジ228、戻り止め232、及びフォークリフト開口部234が再び示されている。図4は、図3に示したタイロッド240用の開口部400を示している。図4は、図3に示したサイドボルト300用のスロット402をさらに示している。スロット402は、スタック幅のより大きな公差範囲を可能にし、図7及び8を参照して本明細書でより詳細に記載される。
【0059】
図5は、レドックスフロー電池200の断面図を示す。加圧板202、204、セルスタック206、板ばね238、タイロッド240、及びナット242が再び示されている。タイロッド240は、特にセルスタック圧縮のために板ばね238の開口部500を通って延びてもよい。板ばねの屈曲に対応するために、タイロッドは、板ばねの反対側に配置されてもよい。
【0060】
板ばね238は、図5ではチューブ板ばねとして示されている。これにより、構造的完全性と屈曲の望ましいバランスを提供し得る。しかしながら、代替例では、平棒タイプの板ばねが使用されてもよい。チューブ板ばねは、内部キャビティ504の境界となる壁502を含む。様々なばね定数を実現するように壁の厚さとプロファイルを選択してもよい。電池にチューブ板ばねを使用すると、スペース効率の良い方法で電池セルスタックを圧縮することができる。チューブ板ばねは、他のタイプのばねと比較して、他のタイプのばねよりも高い慣性モーメントを有し、たわみによる応力が減少し、より堅牢なばねを提供し得る。しかし、他の例では、板が順次層状に積み重ねられた板ばねなど、他の適切なタイプの板ばねが、電池内に配備されてもよい。
【0061】
加圧板202、204は、支点506を有し得る。支点506は、セルスタック圧縮中の反力の場所として機能する。このようにして、セルスタックの荷重は、標的の場所で発生し得る。具体的には、支点506は、ばね238のそれぞれを通って延びるタイロッド240の対の間に垂直に配置される。図5はさらに、加圧板204のフランジ228内の戻り止め232を示している。当然ながら、一例では、加圧板202、204の補強リブ222及び支点506は、製造を合理化し、コストを削減するために、鋳造によって同期的に構築されてもよい。このようにして、製造をさらに簡素化してコストを下げることができる。しかし、他の例では、フライス加工及び/または他の適切な製造技術を使用して、支点を形成してもよい。
【0062】
図6は、電池システム600のレドックスフロー電池200の上に積み重ねられた第2のレドックスフロー電池602の例を示す。第2のレドックスフロー電池602は、形態及び機能においてレドックスフロー電池200と類似していてもよい。したがって、第2のレドックスフロー電池602は、戻り止め及び突起を有するフランジ606を備えた加圧板604を含む。前述のように、異なる電池の加圧板のフランジにある戻り止めと突起を合わせることで、ユニットを積み重ねることができる。このように電池を積み重ねることで、電池システムのサイズを必要に応じて効率的にスケールアップすることができる。その結果、電池システムは、最終用途の設計パラメータ(例えば、電力目標、ハイブリッドレドックスフロー電池の場合の貯蔵容量目標)を満たすように迅速に適合させることができる。当然ながら、グリッド貯蔵、住宅用エネルギー貯蔵、産業用エネルギー貯蔵などの多種多様な用途のエネルギー需要を達成するために、システム内で複数の電池が使用されてもよい。したがって、一例では、システムはエネルギーを一般的なエネルギー消費装置に供給し得る。
【0063】
電池システム600の拡大側面図が610で示されている。拡大図は、第2のレドックスフロー電池602内の対応する戻り止め612と嵌合したレドックスフロー電池200内の突起230の1つを示す。
【0064】
突起230及び戻り止め612は、垂直方向に先細になっていてもよい。突起と戻り止めの先細りにより、構成要素を嵌合係合に導くことができ、積み重ね中に電池の位置がずれる可能性を低減する。そのため、電池の取り付け、修理などの際にユーザーがエラーを起こす可能性が減少する。言い換えると、嵌合する戻り止めと突起が「ポカヨケ」(誤差軽減機構)の役割を果たす。
【0065】
図6に示される突起230及び戻り止め612は、整列した(例えば、垂直に整列した)スルーホール614を有することも示されている。概略的に示された取り付け装置616(例えば、ピンボルトなどのボルト、ねじなど)は、スルーホール614を通って延び、レドックスフロー電池200及び第2のフロー電池602をよりしっかりと取り付けることを可能にし、さらに電池ユニットの位置ずれの可能性を低減し、システムを構造的に補強する。
【0066】
図7~8は、レドックスフロー電池200内のサイドボルトカムアセンブリ700の詳細図を示す。サイドボルトカムアセンブリ700は、電池使用中のフレームプレート215の側壁702のたわみを低減するように設計されている。サイドボルトカムアセンブリ700は、セルスタック内のセルの横方向の変動に対応するために、横方向のコンプライアンスを備えて設計されている。スロット402は、サイドボルト300を貫通して動作可能に受容するために、各加圧板の対向する横側面に配置される。サイドボルト300と螺合するナット710は、サイドボルトカムアセンブリ700によって加えられる縦方向の圧縮を可能にする。スロット402はそれぞれ、サイドボルトが電池を横切って縦方向に延びることを可能にするために、各加圧板の同様の垂直及び横方向の位置に含まれもよい。しかしながら、加圧板上の異なるスロット位置が考えられてきた。サイドボルト300は、セルスタック幅のより大きな公差範囲を可能にするように選択された角度及び長さを有するスロット402と嵌合すると同時に、電池動作中のセルスタック(例えば、セルスタック内のフレーム)の横方向のたわみも低減する。当然ながら、スタックの横方向のたわみは、熱膨張及び/またはセルスタックの加圧によって引き起こされる場合がある。セルスタック幅の変動に対応することで、例えば予想よりも大きい横幅を有するスタック内のセルを変更または交換する必要なく、電池をより簡単に組み立てることができる。レドックスフロー電池200が前述のように組み立てられるとき、スロット402は横軸800に対して角度が付けられる。スロット角度は、図8の802で示される。一例では、スロット角度802は、70度から89度の範囲であってもよい。当然ながら、横方向のコンプライアンスと加圧板の動きとの間のトレードオフを評価することによって、スロット角度を選択してもよい。例えば、スロットの角度を大きくすると、圧縮構造の横方向のコンプライアンスが増加すると同時に、加圧板が望ましくない動きをする可能性も高くなる。上述の角度範囲は、場合によっては、これらの2つの競合する設計パラメータ間の望ましいバランスを提供し得る。
【0067】
サイドボルト300は、スロット402に沿ってスタックから離れて上向きに移動し、重力によってカムをセルスタックの側面に係合するニュートラル位置まで下向きに付勢及び推進してもよい。ナット710は、サイドボルト300を隣接する加圧板に固定する。サイドボルトを加圧板に固定するためにナット710を締めると、カムをスロットに沿って移動させるのに必要な力が増加する。したがって、サイドボルト300は、所定のクランプ力を提供し、それによって、サイドボルト300をそれらの位置から移動させるのに必要な力を調整することができる。
【0068】
図9を参照すると、加圧及び/または熱負荷がかかったときのレドックスフロー電池200の例示的な変形を示す使用事例の変形図が示されている。電池動作中、セルスタックの側壁702は、サイドボルト300に向かって外側に延びる傾向がある。セルスタックの側壁が拡大すると、サイドボルトが外側に押し出され、サイドボルトはこの外側への力に抵抗する。このようにして、サイドボルト300は側壁の過剰な撓みを制限する。その結果、電池は、使用中に所望のプロファイルに適合し得る。
【0069】
図10は、レドックスフロー電池1000の別の例を示す。当然ながら、図10に示されるレドックスフロー電池1000は、図2~9に示したレドックスフロー電池200と類似の特徴を含む。したがって、簡潔にするために冗長な説明は省略される。
【0070】
レドックスフロー電池1000は、サブスタックセパレータプレート1006を介して分割された第1のセルスタック1002及び第2のセルスタック1004を含む。このようにして、電池内のセルの数を増やすことができ、電池システムの電力と場合によっては貯蔵容量を効率的に拡大することができる。一例では、セルスタックのそれぞれは、機能及び形態が類似していてもよい。しかしながら、他の例では、セルスタックは、サイジング、機能性などが相違していてもよい。
【0071】
レドックスフロー電池1000は、圧縮アセンブリ1012内に加圧板1008及び板ばね1010を含む。圧縮アセンブリ1012及び対応する構成要素は、図2~9に示される圧縮アセンブリ236と同様であってもよい。単セルスタック及び二重セルスタックの電池配置に同様の圧縮アセンブリを使用すると、経済規模に関して製造コストを削減できる。しかしながら、他の例では、単一及び二重スタックの電池構成で展開される圧縮アセンブリは異なり得る。二重セルスタックの電池構成により、複数のセルスタックが圧縮アセンブリ、加圧板、及びタイロッドなどの共通のハードウェアを使用して、セルスタックを圧縮し、構造的にサポートすることができる。このようにして、必要に応じて、システムの冗長性を減らして製造コストを下げるだけでなく、電池システムのプロファイル及び重量を減らすことができる。
【0072】
図11は、レドックスフロー電池1000の側面図を示す。加圧板1008及び板ばね1010を有する圧縮アセンブリ1012が再び示されている。加圧板1008に含まれるフォークリフト開口部1100が図11に示されている。しかしながら、フォークリフト開口部は、他の例では省略されてもよい。電解質フローポート1102も図11に示されている。詳しく述べると、加圧板1008の下側に入口ポート1104が設けられている。当然ながら、入口ポートは、正の電解質入口ポート及び負の電解質入口ポートを含む。しかしながら、代わりの入口及び/または出口ポートの位置が考えられてきた。レドックスフロー電池1000の反対側の加圧板は、同様の電解質フローポート構成を有し得る。図12の断面を示す切断面B-B’が、図11に示されている。入口ポート1104は、正の電解質入口フローポート及び負の電解質入口フローポートを含む。同様に、出口ポート1106は、正の電解質出口フローポート及び負の電解質出口フローポートを含む。
【0073】
図12は、レドックスフロー電池1000の断面図を示しており、第1のセルスタック1002及び第2のセルスタック1004内の一般的な電解質流路が示されている。詳しく説明すると、負の電解液の流路が示されている。しかしながら、正の電解質の流路は、負の電解質の流路と同様の方向性を有し得る。他の例では、正及び負の電解質の異なる流路が使用されてもよい。
【0074】
矢印1200は、入口ポート1201から縦方向に第1のセルスタック1002に流入する電解質の最初の方向を示す。このように、電解質の流れは、スタック内の連続したセルを通過する。矢印1202は、電池スタックを垂直に通過する電解質の流れの方向を示す。したがって、平行チャネル内の電解質の流れは、第1のセルスタック1002を垂直に横断する。矢印1204は、縦方向で出口ポート1206に向かう電解質の流れの方向を示す。このようにして、負の電解質は、第1のセルスタック1002内で循環されてもよい。図12は、第1のセルスタック1002と同様の流れパターンを示す第2のセルスタック1004を示す。
【0075】
さらに、ポンプは、入口ポート1104と流体連通して、電解質の流れの変化を可能にし得る。第2のセルスタックは、ポンプに結合されて、電解液の流れの調整能力を達成し得る。一例では、第1及び第2のポンプは別個に制御されてもよい。ただし、2つのポンプの調整されたポンピング制御戦略が想定されている。
【0076】
図13は、第2の二重スタック電池1302がレドックスフロー電池1000の上に積み重ねられた電池システム1300を示す。このようにして、電池システムの電力と、場合によっては容量をさらに拡張することができる。当然ながら、図11に示される加圧板1008の突起1152は、図6に示される電池システム600と同様に、電池モジュールの効率的な積み重ねを容易にする。詳しく説明すると、図11に示される突起1152は、第2の二重スタック電池1302内の対応する戻り止めと嵌合する。
【0077】
図14は、例示的なセルスタック1400の一部の断面図を示す。当然ながら、図14に示されるセルスタック1400は、一部の例において、本明細書に記載の他のセルスタックの1つまたは複数と共通の機能的及び/または構造的特徴を共有し得る、またはその逆もある。
【0078】
セルスタック1400は、加圧板1402を含む。加圧板1402は、本明細書に記載の他の加圧板と同様に、スタック内の内部セルに圧縮力を及ぼすように設計されてもよい。セルスタック1400は、電池から選択された外部システムへ、またはその逆のエネルギー伝達を可能にする集電体1404を含む。セルスタック1400は、図示の例では、エンドプレートフレーム1406及びフランジシム支持体1408をさらに含む。しかしながら、他の例では、フランジシムはスタックから省かれてもよい。
【0079】
セルスタック1400は、スタック内の異なる材料/構成要素の熱膨張/収縮の差に対応する多数の弾性特徴を含み得る。したがって、セルスタックは、望ましくないセルスタックの反りの可能性を低減する調整されたコンプライアンスを示し得る。スタックの反りは、電池の効率、出力、及び構造的完全性を低下させる可能性のあるセル内のフローパターンに影響を与える可能性がある。そのため、セルスタックの反りに対応するために弾性特徴を組み込むことで、これらの影響が軽減される(例えば、回避される)。
【0080】
弾性特徴は、エンドプレート弾性フランジ1410を含み得る。セルスタック1400は、エンドプレート弾性フランジ1410と嵌合する導電板1412(例えば、黒鉛板)をさらに含み得る。セルスタック1400は、導電板1412と面を共有して接触する別の導電板1414をさらに含み得る。当然ながら、場合によっては、導電板1412、1414は単極板であってもよい。
【0081】
セルスタック1400は、導電板1414に隣接するフェルト1416の層をさらに含み得る。しかしながら、他の例では、フェルト層はセルスタックから省かれてもよい。
【0082】
セルスタック1400は、エンドプレートフレーム1406と積み重ねられた(例えば、対応して嵌合された)膜フレームプレート1418をさらに含む。セルスタックは、膜フレームプレート1418に隣接し、その上に積み重ねられたフレームプレート1420(例えば、双極フレームプレート)をさらに含む。弾性フランジ1422は、膜フレームプレート1418と双極フレームプレート1420との間に配置されてもよい。導電板1424(例えば、双極導電板)は、弾性フランジ1422と膜フレームプレート1418との間に配置されてもよい。このようにして、セルスタック1400は、導電板1414を支持してもよい。双極フレームプレート1420、弾性フランジ1422、及び双極導電板1414は、双極板アセンブリ1426を形成し得る。弾性フランジ1422は、スタック内のエンドプレートフレームの調整されたコンプライアンスを可能にする。したがって、セルスタック構成要素の不均等な膨張/収縮は、スタックコンポーネント間の柔軟な接触面を使用して管理されてもよい。
【0083】
図14に示すように、セルスタック1400は、膜フレームプレート、双極フレームプレート、弾性フランジ、双極導電板、フェルトなどの連続層をさらに含む。スタック内の層の数は、所望のシステム電力及び/または容量、スタックの加圧及びスタックの熱負荷によって引き起こされる予想されるセルスタックの変形、たわみなどに基づいて選択されてもよい。
【0084】
図15は、エンドプレートフレーム1406、エンドプレート弾性フランジ1422、及び導電板1412、1414の詳細図を示す。図に示すように、エンドプレート弾性フランジ1422は、エンドプレートフレーム1406の凹部1500に配置される。エンドプレート弾性フランジ1422は、導電板1412、1414の周囲に延びる。一部の例では、弾性フランジ1422は、エンドプレートフレーム1406の周辺フランジ1502からオフセットされてもよい。このようにして、弾性フランジはフレームプレートの積み重ねを妨げない場合がある。
【0085】
図16は、エンドプレートフレーム1406、エンドプレート弾性フランジ1422、及び導電板1412、1414(例えば、単極板)の一部のより詳細な図を示し、フェルト1416の層が図16に示されている。エンドプレート弾性フランジ1422は、導電板1412の一部と嵌合する凹部1600を含むように示されている。具体的に示されるように、エンドプレート弾性フランジ1422の凹部1600は、導電板1412の3つの側面1602を部分的に取り囲む。したがって、エンドプレート弾性フランジ1422と導電板1412との間の界面の間に二重ラップジョイントが形成され得る。その結果、弾性フランジと導電板との間の接続が強化され得る。しかしながら、他の例では、エンドプレート弾性フランジ1422は、フランジが導電板の2つの側面のみを部分的に取り囲むプロファイルなど、別の適切なプロファイルを有してもよい。
【0086】
弾性フランジの厚さ1604は、セルスタック内の他のコンポーネントのサイズ、レイアウト、及び材料構成などの様々なパラメータに基づいて、所望の量のコンプライアンスを達成するように選択されてもよい。1つの使用事例では、厚さ1604は、0.2ミリメートル(mm)~2mmの間の範囲にあってもよい、及び/または弾性フランジは、所望の柔軟性を達成するために30A~80Aの間のデュロメータ範囲を有してもよい。しかしながら、多数の適切なフランジ厚さ及び/またはハーネスが利用されてもよい。
【0087】
エンドプレート弾性フランジ1422は、矢印1606によって示される方向に順応するように設計されている。その結果、望ましくない物質におけるスタックの反りの可能性が減少し得る。
【0088】
エンドプレートフレーム1406及びエンドプレート弾性フランジ1422は、1608で示されるように、互いに熱溶接されてもよい。そのような例では、エンドプレートフレーム1406とエンドプレート弾性フランジ1422の両方が、コンポーネントが熱溶接されるときに、より強い化学結合を可能にするモノマーを有し得る。追加的または代替的に、接着剤結合を使用して、エンドプレートフレームをエンドプレート弾性フランジに取り付けてもよい。
【0089】
エンドプレートフレーム1406とエンドプレート弾性フランジ1422との間にギャップ1610を保持して、異なるコンポーネントの不均等な熱膨張/収縮を可能にしてもよい。ギャップ1610は、スタックの反りを戦略的に管理することを可能にする。
【0090】
導電板1412は、凹部1600でエンドプレート弾性フランジ1422に接着剤で取り付けられてもよい。さらに、導電板1412、1414は、適切な導電性接着剤によって互いに結合されてもよい。
【0091】
エンドプレート弾性フランジ1422のコンプライアンスは、弾性ポリマー(例えば、合成ゴム、天然ゴムなど)等の弾性材料によって達成されてもよい。一例では、弾性材料は、熱可塑性加硫物(TPV)(例えば、Santoprene(登録商標))であってもよく、双極板の弾性フランジ及びフレームの両方は、熱可塑性ポリマー(例えば、ガラス繊維充填PPなどのポリプロピレン(PP))を有してもよい。)。TPVフランジ構造は、場合によっては、目標とする量の弾力性を提供し得る。さらに、PPからフレームを構築すると、より化学的に不活性で低コストの構造を提供する。しかしながら、他の例では、他のフレーム材料が使用されてもよい。
【0092】
図17は、双極板1702、弾性フランジ1704、及び双極フレームプレート1706を含む双極板アセンブリ1700の例を示す。当然ながら、双極板アセンブリ1700は、図14に示されるセルスタック1400に含まれてもよい。双極板アセンブリ1700は、電解質ポート1708と、電解質を双極板1702に向けるためのフローチャネル1710とを含む。
【0093】
図18は、双極板アセンブリ1700の分解図を示す。双極板1702、弾性フランジ1704、及び双極フレームプレート1706が図18に示されている。双極板1702は、組み立て時に、双極フレームプレート1706のフランジ1704内に入れ子にされてもよい。この配置は、セルスタックのコンパクトさを増すだけでなく、双極板を構造的に補強して、プレートの変形を回避し得る。
【0094】
図19は、双極板アセンブリ1700の詳細な断面図を示す。双極フレームプレート1706、弾性フランジ1704の1つ、及び双極板1702の1つが示されている。膜フレームプレート1900が図19に示されている。双極板1702と弾性フランジ1704との間に接着剤の層1901が塗布されてもよい。図19に示す弾性フランジ1704は、S字形である。したがって、S字形に形成される場合、フランジ1704のセクション1903は、y軸に沿ってオフセットされたフランジの2つの部分の間に延びる。弾性フランジ1704を「S」字形にすることにより、接着層が塗布されるフランジの側でフランジの剥離強度を低くすることができる。さらに、フランジをS字形に成形することにより、圧縮力の経路がスタックを介して所望の経路をたどり、必要に応じて、より高いセルスタック圧縮の達成を可能にする。S字形のプレートは、フランジが膜フレームプレートの隣接チャネルに食い込み、電解液の流れを制限する可能性を低減し得る。
【0095】
さらに、弾性フランジ1704は、1906で示される双極フレームプレート1706に熱溶接されてもよい。このようにして、フレームと導電板との間に強化された接続が形成されてもよい。フレームをフランジに熱溶接することにより、一部の例では、コンポーネント間の接着結合をなくすことができる。しかしながら、他の例では、接着接合と熱溶接の両方を使用して、フレームをフランジに結合してもよい。膜フレームプレート1900に配置されたメッシュ1902及び膜1904が図19に示されている。
【0096】
図20は、双極板アセンブリ2000の別の例の側面図を示す。双極板アセンブリ2000も、双極フレーム2002、双極板2004、及びフレームと双極板との間の界面に弾性フランジ2006を含む。双極板2004を弾性フランジ2006に接合する接着剤層2008が示されている。弾性フランジ2006も、S字形にプロファイルされ、スタック圧縮、剥離強度などに関して前述の利点を提供する。
【0097】
図21は、アセンブリに熱負荷が加えられたときの双極板アセンブリ2000を示す。図に示すように、弾性フランジ2006、特にセクション2100は実質的にたわむことはなく、電池スタック内の電解質チャネルの流れに望ましくない影響を与えることはない。
【0098】
図22~25は、双極板アセンブリの他の例を示している。双極板アセンブリ2200を示す図22を特に参照する。双極板アセンブリ2200は、双極フレーム2202、双極板2204、及びフレームとプレートとの間に延びる弾性フランジ2206を含む。弾性フランジ2206は、設置を簡単にし得る平面形状を有する。図22に示される双極板アセンブリ2200の成形形状は、本明細書に記載の他の双極板アセンブリよりも製造が容易であり、安価な部品を有し得る。
【0099】
図23は、双極フレーム2302、双極板2304,弾性フランジ2306を含む双極板アセンブリ2300を示す。弾性フランジ2306は双極板2304の一部を部分的に取り囲み、接着剤2305が、フランジと板との間に塗布されてもよい。弾性フランジ2306は、双極フレーム2302の側面2308に沿って延び、双極板2304とフレームとの間にギャップ2310を形成する。図23に示される双極板アセンブリ2300は、本明細書に記載の他の双極板アセンブリよりも複雑な成形形状を有し、より高価な部品を使用する可能性があるが、より大きい封止面を提供する。
【0100】
図24は、双極板2402、双極フレーム2404,弾性フランジ2406を含む双極板アセンブリ2400を示す。接着剤(例えば、エポキシ)2408が、弾性フランジ2406の両方の垂直側面に塗布されて示されている。図24に示される双極板アセンブリ2400は、本明細書に記載の他の双極板アセンブリほど複雑ではない成形形状を有し、より安価な部品を使用し得る。
【0101】
図25は、双極フレーム2502、双極板2504,弾性フランジ2506を含む双極板アセンブリ2500を示す。図25に示す例では、双極板2504と双極フレーム2502との間にギャップ2508が形成される。図25に示される双極板アセンブリ2500は、本明細書に記載の他の双極板アセンブリ用の類似の部品及び製造成形ツールを使用しながら、より大きな封止面(例えば、2倍の封止面)を有する。
【0102】
図26~27は、図14に示される弾性フランジ1422または図20~25に示される弾性フランジなどの弾性フランジを作るために使用され得る材料2600及び2700の例を示す。双極板と弾性フランジとの間の接着強度を改善するためにテクスチャ加工された表面を含む材料が示されている。一例では、テクスチャ加工は、接着剤が塗布される予定のゾーンで弾性フランジに適用されてもよい。
【0103】
図26は、テクスチャ加工された表面2602を有する弾性材料2600を示す。正方形のパターンを有するテクスチャ加工された表面が示されている。しかしながら、図27に示される弾性材料2700のテクスチャ加工された表面2702上のダイヤモンドパターン等の他のパターンが想定されている。弾性フランジの表面をテクスチャ加工すると、フランジと双極板との間に塗布できる接着剤の量が増えるため、フランジと双極板間の接着強度が向上する。テクスチャ加工された表面は、テクスチャ加工のために予定された表面に対して金属ヤスリを押し付けることによって作成されてもよい。
【0104】
具体的には、1つの使用事例では、金属板(例えば、チタンメッシュ)が、弾性材料(例えば、TPVゴム)の層に再度押し付けられてもよい。さらに、そのような例では、シリコーン発泡体などの発泡体の層が、弾性材料の下に配置されてもよく、フランジの圧縮中に熱を加えてテクスチャ加工された表面が作成されてもよい。しかし、フランジの表面をテクスチャ加工するための他の適切な技術が考えられてきた。
【0105】
レドックスフロー電池に積み重ね可能な戻り止めと加圧板の突起を提供することの技術的効果は、電池のモジュール性を高め、電池システムの電力及び/または貯蔵容量の効率的なスケーリングを可能にすることである。レドックスフロー電池に弾性フランジを提供することの技術的効果は、セルスタックの反りに対応し、反りが電池内の電解質の流れを制限する可能性を減らすことである。
【0106】
図2~27は、様々なコンポーネントの相対的な配置を伴う構成例を示している。互いに直接接触している、または直接結合していることが示されている場合、そのような要素は、少なくとも一例では、それぞれ直接接触している、または直接結合していると称されてもよい。同様に、互いに連続または隣接して示される要素は、少なくとも一例では、それぞれ、互いに連続または隣接していてもよい。例として、互いに面を共有して接触しているコンポーネントは、面を共有して接触していると称されてもよい。別の例として、少なくとも1つの例では、その間に空間だけがあり、他のコンポーネントがない状態で互いに離れて配置された要素もそのように称されてもよい。さらに別の例として、互いの上/下、互いに反対側、または互いの左/右に示される要素は、互いに対してそのように称されてもよい。さらに、図に示されるように、最上部の要素または要素の点は、少なくとも1つの例では、コンポーネントの「上部」と呼ばれ、最下部の要素または要素の点は、コンポーネントの「底部」と呼ばれてもよい。本明細書で使用される場合、最上部/底部、上部/下部、上/下は、図の垂直軸に対して相対的であり、互いに対する図の要素の位置を説明するために使用されてもよい。したがって、一例では、他の要素の上に示される要素は、他の要素の垂直方向の上に配置される。さらに別の例として、図面内に示される要素の形状は、それらの形状(例えば、円形、直線、平面、湾曲、丸み、面取り、角度付きなど)を有すると称されてもよい。さらに、少なくとも1つの例において、互いに交差するように示される要素は、交差する要素または互いに交差するものと呼ばれることがある。さらに、一例では、別の要素内に示される、または別の要素の外側に示される要素は、そのように参照されてもよい。
【0107】
本発明は、以下の段落でさらに説明される。一態様では、セルスタックアセンブリを含むレドックスフロー電池であって、セルスタックアセンブリは、セルスタックアセンブリの横側面に配置されたプレートアセンブリであって、導電板のセクションに嵌合した凹部を含み、横方向及び垂直方向の少なくとも一方で柔軟な弾性フランジと、弾性フランジに結合されたプレートフレームとを含むプレートアセンブリを含む、レドックスフロー電池が提供される。
【0108】
別の態様では、セルスタックアセンブリを含むレドックスフロー電池であって、セルスタックアセンブリは、セルスタックアセンブリの横側面に配置されたプレートアセンブリであって、導電板のセクションと嵌合した凹部を含み、垂直方向及び/または横方向に柔軟な弾性フランジと、弾性フランジに結合されたプレートフレームとを含むプレートアセンブリを含み、縦方向に整列された間隙が、プレートフレームのセクションと弾性フランジとの間に形成される、レドックスフロー電池が提供される。
【0109】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、凹部は、導電板の2つの側面の少なくとも一部分を取り囲んでもよい。
【0110】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、弾性フランジは、プレートフレームに熱溶接されてもよい。
【0111】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、導電板は黒鉛を含み得る。
【0112】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、導電板は単極板であってもよい。
【0113】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、導電板は双極板であってもよい。
【0114】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、導電板は弾性フランジに接着結合されてもよい。
【0115】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、導電板は弾性フランジに接着結合されてもよい。
【0116】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、弾性フランジは、導電板の表面に接着剤で取り付けられたテクスチャ加工された表面を含み得る。
【0117】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、弾性フランジはゴムを含み得る。
【0118】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、プレートアセンブリはエンドプレートアセンブリであってもよく、プレートフレームは圧力板に結合されたエンドプレートフレームである。
【0119】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、弾性フランジは、導電板と嵌合して二重ラップジョイントを形成してもよい。
【0120】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、弾性フランジは、プレートフレームの周辺フランジから縦方向にオフセットされてもよい。
【0121】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、プレートアセンブリはエンドプレートアセンブリであってもよく、プレートフレームは圧力板に結合されたエンドプレートフレームであってもよい。
【0122】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、凹部と導電板との間の嵌合界面は、二重ラップジョイントを形成してもよい。
【0123】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、弾性フランジはゴムを含んでよく、導電板は黒鉛を含む。
【0124】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、弾性フランジは、導電板の表面と面を共有して接触するテクスチャパターンを有するテクスチャ加工された表面を含み得る。
【0125】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、導電板は単極板であってもよい。
【0126】
態様または態様の組み合わせのいずれかにおいて、導電板は双極板であってもよい。
【0127】
以下の特許請求の範囲は、新規かつ非自明であると見なされる特定の組み合わせ及びサブコンビネーションを特に指摘している。これらの請求項は、「ある」要素または「第1の」要素、またはそれらの均等物を指す場合がある。そのような請求項は、2つ以上のそのような要素を要求も排除もせず、1つまたは複数のそのような要素の組み込みを含むと理解されるべきである。開示された特徴、機能、要素、及び/または特性の他の組み合わせ及びサブコンビネーションは、現在の請求項の補正を通じて、または本出願もしくは関連出願における新しい請求項の提示を通じて請求されてもよい。そのような請求項は、元の特許請求の範囲より広いか、狭いか、等しいか、または異なるかに関係なく、本開示の主題内に含まれるものとみなされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2023-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルスタックアセンブリを含み、
前記セルスタックアセンブリは、
前記セルスタックアセンブリの横側面に配置されたプレートアセンブリであって、
導電板のセクションと嵌合する凹部を含み、横方向及び垂直方向の少なくとも一方に柔軟な弾性フランジと、
前記弾性フランジに結合されたプレートフレームと、
を含む前記プレートアセンブリ
を含む、レドックスフロー電池。
【請求項2】
前記凹部が、前記導電板の2つの側面の少なくとも一部分を取り囲む、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記弾性フランジが、前記プレートフレームに熱溶接される、請求項1又は2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記導電板が黒鉛を含む、請求項1~3のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
前記導電板が単極板である、請求項1~4のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
前記導電板が双極板である、請求項1~5のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項7】
前記導電板が、前記弾性フランジに接着結合される、請求項1~6のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項8】
前記導電板が、前記弾性フランジに接着結合される、請求項1~7のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項9】
前記弾性フランジが、前記導電板の表面に接着剤で取り付けられたテクスチャ加工された表面を含む、請求項1~8のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項10】
前記弾性フランジがゴムを含む、請求項1~9のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項11】
前記プレートアセンブリがエンドプレートアセンブリであり、前記プレートフレームが圧力板に結合されたエンドプレートフレームである、請求項1~10のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項12】
前記弾性フランジが前記導電板と嵌合して二重ラップジョイントを形成する、請求項11に記載のレドックスフロー電池。
【請求項13】
前記弾性フランジが、前記プレートフレームの周辺フランジから縦方向にオフセットされている、請求項1~12のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項14】
前記プレートアセンブリがエンドプレートアセンブリであり、前記プレートフレームが圧力板に結合されたエンドプレートフレームである、請求項1~13のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【請求項15】
前記導電板が単極板である、及び/または前記導電板が双極板である、請求項1~14のいずれかに記載のレドックスフロー電池。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
図3は、電解質の流れがセルスタック206に出入りするのを可能にするフローポート220を示す。具体的には、一例では、ポート304は流入ポートであってもよく、ポート306は流出ポートであってもよい。しかしながら、電池の他の流入及び流出方式が考えられてきた。詳細には、レドックスフロー電池200に正の電解質流入ポートと負の電解質流入ポートを設けてもよい。同様に、レドックスフロー電池200に正の電解質流出ポートと負の電解質流出ポートを設けてもよい。図3は、第1の加圧板202の上部フランジ226及び下部フランジ228を示す。下部フランジ228の戻り止め232が図3に示されている。図の断面を示す切断面A-A'が、図4に示されている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
図11は、レドックスフロー電池1000の側面図を示す。加圧板1008及び板ばね1010を有する圧縮アセンブリ1012が再び示されている。加圧板1008に含まれるフォークリフト開口部1100が図11に示されている。しかしながら、フォークリフト開口部は、他の例では省略されてもよい。電解質フローポート1102も図11に示されている。詳しく述べると、加圧板1008の下側に入口ポート1104が設けられている。当然ながら、入口ポートは、正の電解質入口ポート及び負の電解質入口ポートを含む。しかしながら、代わりの入口及び/または出口ポートの位置が考えられてきた。レドックスフロー電池1000の反対側の加圧板は、同様の電解質フローポート構成を有し得る。図10の断面を示す切断面B-B'が、図11に示されている。入口ポート1104は、正の電解質入口フローポート及び負の電解質入口フローポートを含む。同様に、出口ポート1106は、正の電解質出口フローポート及び負の電解質出口フローポートを含む。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
図16は、エンドプレートフレーム1406、エンドプレート弾性フランジ1422、及び導電板1412、1414(例えば、単極板)の一部のより詳細な図を示し、フェルト1416の層が図16に示されている。エンドプレート弾性フランジ1422は、導電板1412の一部と嵌合する凹部1600を含むように示されている。具体的に示されるように、エンドプレート弾性フランジ1422の凹部1600は、導電板1412の3つの側面1602を部分的に取り囲む。したがって、エンドプレート弾性フランジ1422と導電板1412との間の界面に二重ラップジョイントが形成され得る。その結果、弾性フランジと導電板との間の接続が強化され得る。しかしながら、他の例では、エンドプレート弾性フランジ1422は、フランジが導電板の2つの側面のみを部分的に取り囲むプロファイルなど、別の適切なプロファイルを有してもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
弾性フランジの厚さ1604は、セルスタック内の他のコンポーネントのサイズ、レイアウト、及び材料構成などの様々なパラメータに基づいて、所望の量のコンプライアンスを達成するように選択されてもよい。1つの使用事例では、厚さ1604は、0.2ミリメートル(mm)~2mmの間の範囲にあってもよい、及び/または弾性フランジは、所望の柔軟性を達成するために30A~80Aの間のデュロメータ範囲を有してもよい。しかしながら、多数の適切なフランジ厚さ及び/または硬度が利用されてもよい。

【国際調査報告】