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特表2023-525870オメガ-グリコシド及びアルキルグリコシドの効率的な合成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】オメガ-グリコシド及びアルキルグリコシドの効率的な合成
(51)【国際特許分類】
   C12P 1/02 20060101AFI20230612BHJP
   C12N 9/02 20060101ALI20230612BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230612BHJP
   C12P 19/00 20060101ALI20230612BHJP
   C12R 1/72 20060101ALN20230612BHJP
【FI】
C12P1/02 D
C12N9/02
C12N1/19
C12P19/00
C12R1:72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569247
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2021062756
(87)【国際公開番号】W WO2021229017
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】20174471.1
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522442825
【氏名又は名称】アンフィスター
(71)【出願人】
【識別番号】514185611
【氏名又は名称】ユニベルシテイト ゲント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT GENT
【住所又は居所原語表記】Sint-Pietersnieuwstraat 25, B-9000 Gent, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スータート,ウィム
(72)【発明者】
【氏名】ローランツ,ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】デルベーク,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ルイテン,ゲーデル
(72)【発明者】
【氏名】パラ,メリケ
(72)【発明者】
【氏名】レメリー,ジェル
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B064AF41
4B064AF45
4B064BJ10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA02
4B065AA72X
4B065AA73X
4B065AA75X
(57)【要約】
本発明は、新規のバイオ界面活性剤の製造の分野に関する。より詳細には、本発明は、10%未満、好ましくは1%未満のω-1グリコシドを有する短鎖状のω-グリコシドを、真菌株、例えば、機能不全のCYP52M1シトクロムP450モノオキシゲナーゼ及び機能不全のFAO1脂肪アルコールオキシダーゼを有する酵母菌スタルメレラ・ボンビコラ(Starmerella bombicola)を使用して、効率的に発生させて、汚染α,ω-1ボラグリコシドを含まない多量の所謂不飽和(対称)α,ω-ボラグリコシドを生成すること、並びに、当該不飽和(対称)α,ω-ボラグリコシドを、例えば水中で実施されるオゾン分解を通してなどの、当該二重結合(複数可)の破壊を誘導する条件に供することに関する。より詳細には、本発明は、(アセチル化)C9:0ω-ソホロシドアルデヒド、C9:0ω-グルコシドアルデヒド、C9:0ω-糖脂質、C9:0ω-ソホロ脂質、C9:0ω-ソホロシドアルコール及びC9:0ω-グルコシドアルコール並びにこれらのさらなる誘導体の発生を開示する。本発明は、アルキルソホロシドを、増加した比で生成する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルグリコシドを製造するための方法であって、好適な微生物株により好適な基質(複数可)を転換してアルキルグリコシドを含む培養液を生成する工程を含み、前記微生物株が、機能不全のシトクロムP450モノオキシゲナーゼCYP52M1若しくはそのホモログ及び機能不全の脂肪アルコールオキシダーゼFAO1若しくはそのホモログを有するように変異されている真菌株であり、又は前記微生物株が、機能不全のシトクロムP450モノオキシゲナーゼCYP52M1、機能不全の脂肪アルコールオキシダーゼFAO1若しくはそのホモログ、及び機能不全の、ソホロ脂質生合成経路において第2グルコシル化工程に関与するグルコシルトランスフェラーゼUGTB1若しくはそのホモログ、を有するように変異されている真菌株であり、前記真菌株が、少なくとも1つの、機能不全の、長鎖脂肪アルコールのω-酸化に関与する酸化酵素、を有するようにさらに変異されている、前記方法。
【請求項2】
前記真菌株が、天然SL生成真菌株である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記真菌株が、スタルメレラ(カンジダ)ボンビコラ(Starmerella (Candida) bombicola)、スタルメレラ(カンジダ)アピコラ(Starmerella (Candida) apicola)、スタルメレラ(カンジダ)マグノリアエ(Starmerella (Candida) magnoliae)、カンジダ・グロペンギエセリ(Candida gropengiesseri)、スタルメレラ(カンジダ)バチスタエ(Starmerella (Candida) batistae)、スタルメレラ(カンジダ)フロリコラ(Starmerella (Candida) floricola)、カンジダ・リオドセンシス(Candida riodocensis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、スタルメレラ(カンジダ)ステラータ(Starmerella (Candida) stellata)、スタルメレラ(カンジダ)クオイ(Starmerella (Candida) kuoi)、カンジダ種(Candida sp.)NRRL
Y-27208、シュードハイホジーマ(ロドトルラ、カンジダ)ボゴリエンシス種(Pseudohyphozyma (Rhodotorula, Candida) bogoriensis sp.)、Wickerhamiella domericqiae、及びスタルメレラ分岐群(Starmerella clade)のソホロ脂質生成株;からなる群から選択される酵母菌である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記の長鎖脂肪アルコールのω-酸化に関与する酸化酵素が、配列番号:101に記載されているアミノ酸配列を含むA1、配列番号:103に記載されているアミノ酸配列を含むA2、配列番号:105に記載されているアミノ酸配列を含むA3、配列番号:107に記載されているアミノ酸配列を含むA4、配列番号:109に記載されているアミノ酸配列を含むA5、配列番号:111に記載されているアミノ酸配列を含むA6、及び配列番号:113に記載されているアミノ酸配列を含むA7を含む群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記真菌株が、少なくとも、機能不全の、配列番号:105に記載されているアミノ酸配列を含む酸化酵素A3、及び機能不全の、配列番号:107に記載されているアミノ酸配列を含む酸化酵素A4、を有するように変異されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記真菌株が、少なくとも、機能不全の、配列番号:105に記載されているアミノ酸配列を含む酸化酵素A3、機能不全の、配列番号:107に記載されているアミノ酸配列を含む酸化酵素A4、及び機能不全の、配列番号:101に記載されているアミノ酸配列
を含む酵素A1、を有するように変異されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルキルグリコシドが、アルキルグルコシド又はアルキルソホロシドである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
10%未満、好ましくは1%未満のω-1グリコシド、ω-2グリコシド及び/又はω-3グリコシドを含有するω-グリコシドを製造する方法であって、前記ω-グリコシドが、グリコシド結合を介して脂肪族炭素鎖の第1級又は末端炭素原子に結合している炭水化物を含み:
a.好適な微生物株により好適な基質(複数可)を転換して10%未満、好ましくは1%未満のα,ω-1ボラグリコシド、α,ω-2ボラグリコシド及び/又はα,ω-3ボラグリコシドを含有する不飽和α,ω-ボラグリコシドを含む培養液を生成する工程であって、前記微生物株が、機能不全のシトクロムP450モノオキシゲナーゼCYP52M1若しくはそのホモログ及び機能不全の脂肪アルコールオキシダーゼFAO1若しくはそのホモログを有するように変異されている真菌株であり、又は前記微生物株が、機能不全のシトクロムP450モノオキシゲナーゼCYP52M1、機能不全の脂肪アルコールオキシダーゼFAO1若しくはそのホモログ、及び、機能不全の、ソホロ脂質生合成経路において第2グルコシル化工程に関与しているグルコシルトランスフェラーゼUGTB1若しくはそのホモログ、を有するように変異されている真菌株であり、
前記不飽和α,ω-ボラグリコシドが、グリコシド結合を介して脂肪族炭素鎖の第1級又は末端炭素原子にそれぞれ結合している2つの炭水化物を含み、前記脂肪族炭素鎖が少なくとも1つの二重結合を含む、工程
b.任意選択的に、工程a)の培養液から前記不飽和α,ω-ボラグリコシドを精製する工程、並びに
c.工程a)において生成した前記培養液内の前記不飽和α,ω-ボラグリコシドを、前記不飽和α,ω-ボラグリコシド内の少なくとも1つの不飽和の開裂可能な脂肪族結合を破壊するオゾン分解反応若しくは酵素反応に供する、又は工程b)において精製された前記不飽和α,ω-ボラグリコシドを、前記不飽和α,ω-ボラグリコシド内の少なくとも1つの不飽和の開裂可能な脂肪族結合を破壊するオゾン分解反応若しくは酵素反応に供する工程
を含む、前記方法。
【請求項9】
前記酵素反応が、リポキシゲナーゼ、ヒドロキシペルオキシドリアーゼ、モノオキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ/モノオキシゲナーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ/モノオキシゲナーゼ、リパーゼ、又はこれらのいずれかの組み合わせ、好ましくはリポキシゲナーゼ及びヒドロキシペルオキシドリアーゼの組み合わせ又はモノオキシゲナーゼ、エポキシドヒドロラーゼ及びアルコールデヒドロゲナーゼ/モノオキシゲナーゼの組み合わせによって媒介される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ω-グリコシドが、ω-ソホロシド、又はω-グルコシドである、請求項8又は9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ω-グリコシドが、ω-グリコシドアルデヒド、ω-グリコシドアルコール及び/若しくはω-糖脂質、又はこれらの誘導体である、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記好適な基質が、好適な親水性基質と好適な疎水性基質との組み合わせであり、前記好適な親水性基質が、炭水化物及びポリオールを含む群から選択され、前記好適な疎水性基質が、少なくとも6個の炭素の脂肪族鎖長を有する、アルコール、好ましくはモノアル
コール、脂肪酸、アルケン及び/又はアルカンを含む群から選択され、好ましくは、前記疎水性基質が、不飽和第1級脂肪アルコールである、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記不飽和α,ω-ボラグリコシドが、対称である、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記真菌株が、天然SL生成真菌株である、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記真菌株が、スタルメレラ(カンジダ)ボンビコラ(Starmerella (Candida) bombicola)、スタルメレラ(カンジダ)アピコラ(Starmerella (Candida) apicola)、スタルメレラ(カンジダ)マグノリアエ(Starmerella (Candida) magnoliae)、カンジダ・グロペンギエセリ(Candida gropengiesseri)、スタルメレラ(カンジダ)バチスタエ(Starmerella (Candida) batistae)、スタルメレラ(カンジダ)フロリコラ(Starmerella (Candida) floricola)、カンジダ・リオドセンシス(Candida riodocensis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、スタルメレラ(カンジダ)ステラータ(Starmerella (Candida) stellata)、スタルメレラ(カンジダ)クオイ(Starmerella (Candida) kuoi)、カンジダ(Candida)種NRRL Y-27208、シュードハイホジーマ(ロドトルラ、カンジダ)ボゴリエンシス種(Pseudohyphozyma (Rhodotorula, Candida) bogoriensis sp.)、Wickerhamiella domericqiae、及びスタルメレラ分岐群(Starmerella clade)のソホロ脂質生成株からなる群から選択される酵母菌である、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記不飽和α,ω-ボラグリコシドが、アセチル化されている、請求項8~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ω-グリコシドが、ω-C9ソホロシド又はω-C9グルコシドである、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
オゾン分解の際、プロトン性求核試薬が溶媒として使用される、請求項8~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記プロトン性求核試薬が水である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程c)において得られた前記ω-グリコシドを、アシル化、アルキル化、アミド化、アミン化、アリール化、ビオチン化、カルバモイル化、カルボニル化、環付加、カップリング反応、エーテル化、エステル化、グリコシル化、ハロゲン化、メタル化、メタセシス、ニトリル形成、オレフィン化、酸化、ホスフィニル化、ホスホニル化、ホスホリル化、4級化、転位反応、還元、シリル化、チオール化、加硫、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される化学的誘導体化経路に供する工程をさらに含む、請求項8~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ジオール、好ましくはα,ω-ジオールの生成のための、配列番号:101に記載されているアミノ酸配列を含む酵素A1若しくはそのホモログ、配列番号:105に記載されているアミノ酸配列を含む酵素A3若しくはそのホモログ、又は、配列番号:107に記
載されているアミノ酸配列を含む酵素若しくは酵素A4若しくはそのホモログの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(バイオ)界面活性剤として有用であり及び/又は抗微生物特性を保有する-例えば-ソホロシド及びグルコシドなどの有用なオメガ-グリコシドを効率的に製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、10%未満の汚染(不飽和)アルファ,オメガ-1-ボラグリコシドを含む不飽和アルファ,オメガ-ボラ(bola)グリコシドを生成する転換工程、続いての、当該不飽和アルファ,オメガ-ボラグリコシドを少なくとも1つの開裂可能な結合を破壊する反応条件に供する工程を含む方法を開示する。後者の方法は、10%未満の汚染オメガ-1-グリコシドを含む高収率のオメガ-グリコシドの生成を結果として生じさせる。
【背景技術】
【0002】
化石資源の供給及びこれらの使用に関連する環境への懸念に対処する必要性を縮小することは、化学物質の生成に関して、持続可能な、安全且つ環境に配慮した技術の開発を必要としている(Sheldon,2014;Tuck et al.,2012)。環境に優しく且つ持続可能な代替物への消費者の圧力は、市場のますます重要な原動力となってきている。環境に優しい化学の他の原理に固着しつつ再生可能なバイオマスを原料として利用すること(Anastas & Eghbali,2010)は、これらの目標を達成するための選択肢であると考えられている。しかし、バイオベースの化学物質の生成は、現在の化石ベースの経済から循環型のバイオベースの経済への移行を容易にするために、化石由来の化学物質のものと比較して経済的競争力も有するべきである(Philp
et al.,2013)。バイオベースの化学物質の商業的開発は、(従来の類似物若しくは暫定的なものとは対照的に)優れた特性を有する全く新しい産業の化学物質を生成することによって並びに/又は(例えば、発酵プロセスの生産性を増加させること及び/若しくは化学(誘導体化)プロセスの所望の最終製品を生じる反応工程の数を減少させることによって)生成の効率を改良することによって、よりふさわしいものとなり得る(Farmer & Mascal,2015)。これらの目標は、いずれも、最終製品におけるバイオベース原料の構造及び機能性を役立てることによって実現され得る。バイオ界面活性剤又はバイオベースの界面活性剤は、かかるバイオベースの生化学物質の例である。バイオ界面活性剤は、化学的又は生物学的手段を通して生成され得、細菌性又は微生物性バイオ界面活性剤は、2030年よりも前に商業化されるべき最上の新興のバイオベース製品の1つと認定されている(Fabbri et al.,2018)。バイオ界面活性剤は多様な分子構造及びタイプを構成するが、これら全てが両親媒性特性を付与する少なくとも1つの親水性部及び少なくとも1つの疎水性部を有するという共通点がある。商業化されている微生物性バイオ界面活性剤の分野は、タイプ及び生成者/供給者についてかなり限定されている。まとめると、商業化されている製品は、糖脂質(ソホロ脂質(SL)、ラムノリピド(RL)及びマンノシルエリトリトール脂質(MEL))、リポペプチド、リン脂質/脂肪酸並びに粒子状及び高分子のバイオ界面活性剤である。
【0003】
グリコシド(GS)は、1つ以上の炭水化物分子がグリコシド結合を介して少なくとも1つの他の化合物に共有結合しているクラスの化合物である。「他の化合物」は-例えば-炭素分子の(官能化)脂肪族鎖であり得る。グリコシドは、化学的手段を通して、例えば、アルキルポリグルコシドを生じる、グルコース及び脂肪アルコールからの常套的なフィッシャー合成を通して(McCurry et al.,1996)、又は、生物学的手段を通して、例えば、ボラ-及び/若しくはアルキル/アルコール-ソホロシド(SS)及び-グルコシド(GLuS)を生じる、例えば、グルコース及び脂肪アルコールからの(全細胞)生体触媒による転換を通して(Van Renterghem et al.,2018)生成され得る。化学及び生物学的方法の組み合わせは、例えば、化学的に
合成されたアルキルポリグルコシドのさらなる生体触媒によるグリコシル化である(Adlercreutz et al.,2012)。アルキルソホロシド(アルキルSS)、ボラソホロシド(ボラSS)、ボラグルコシド(ボラGLuS)、アルキルグルコシド(アルキルGLuS)は、グリコシド微生物性バイオ界面活性剤の非限定例である。
【0004】
糖脂質(GLy)は、1つ以上の炭水化物分子(複数可)が脂質分子に共有結合しているクラスの化合物である。糖脂質は、例えば、スクロース及び脂肪酸から出発して(Yamagishi et al.,1974)スクロースエステルに至る化学的手段を通して生成され得、又は、生物学的手段を通して、例えば、例えばグルコース及び脂肪酸/植物油からSLへの(全細胞)生体触媒による転換を通して生成され得る(Roelants et al.,2019;Siebenhaller et al.,2018)。
【0005】
ソホロ脂質(SL)、ボラソホロ脂質(ボラSL)、糖脂質(GL)、ラムノリピド(RL)、マンノシルエリトリトール脂質(MEL)は、糖脂質微生物性バイオ界面活性剤の非限定例である。
【0006】
上記のグリコシド-及び糖脂質微生物性バイオ界面活性剤は、再生可能な炭素源、例えば、第1世代のバイオマス、例えば、グルコース、植物油、脂肪酸/-アルコールを使用する(Lodens et al.,2020;Roelants et al.,2019;Saerens,Zhang,et al.,2011;Van Renterghem et al.,2018)、並びに、さらには廃棄物及び支流、例えば、廃棄の料理用油、糖蜜、食品廃棄物などからの(Kaur et al.,2019;Roelants et al.,2019;M.Takahashi et al.,2011)(修飾された)微生物株を使用して生成され得る。
【0007】
ソホロ脂質(SL)は、最もよく知られている微生物性バイオ界面活性剤のうちの1つであり、且つ、商業化されるべき最初のもののうちの1つである。S.ボンビコラ(bombicola)は、高い力価(200gL-1超)を有するSLを生成するときSL生成を目的として好ましく適用される酵母菌株であるが(Roelants et al.,2019;Van Renterghem et al.,2018)、2g/L.hを超える生産性が報告されている(Dolman et al.,2017;Gao et al.,2013)。SLの特異的な表面活性特性は、関連のある応用分野に使用することを対象としており(D.W.G.Develter & Lauryssen,2010;Lourith & Kanlayavattanakul,2009)、いくつかの環境保護の洗浄液及びパーソナルケア製品において現在商業的に適用されている。SLはまた、生物活性特性を保有することも報告されており(例えば、抗微生物性、抗ウイルス性、抗菌性)(Kim et al.,2002;Roelants et al.,2019;Sen et al.,2017)、この特定の理由で、特に、化粧品/パーソナルケア製品、例えば、にきび抑制石鹸及び制汗剤の用途も見出されている。他の微生物性糖脂質バイオ界面活性剤、例えば、ラムノリピドなどもまた、最近商業化されている。微生物性バイオ界面活性剤の市場全体でのボリューム及び商業的採用は、主に:これらのコスト及び分子多様性の欠失;という2つの理由であるが、依然として制限されたままである。コストの側面は、低い生成規模及び最適化されていない且つ不充分な生成技術を主な原因とする。(微生物性)バイオ界面活性剤の商業的採用は、故に、効率を増加させることによって及び利用可能な化合物/分子構造の多様性を増加させることによって加速され得る。分子多様性は、様々な物理化学的/生物学的特性につながり、後に、より多数の潜在的な応用分野へとつながり得る(Roelants et al.,2014)。分子多様性を増加させることは、全く新しい性質のバイオ界面活性剤を生成することを目標として微生物を遺伝子操作することを通して並びに/又は(既存の)微生物性バイオ界面活性剤の化学的及び/若しくは酵素的修飾によって実現され得る。両方のストラテ
ジーの組み合わせもまた適用され得る。
【0008】
微生物性バイオ界面活性剤糖脂質/グリコシドの、及び、より詳細にはSLの特定のタイプの化学的修飾に関しては、Gross et al.(SyntheZyme),Delbeke et al.(Ghent University)及びDevelter et al.(Ecover)のグループが、その後の化学的誘導体化のための出発物質としての、酵母菌スタルメレラ・ボンビコラ(Starmerella bombicola)によって生成される野生型(ラクトン)SLの使用のための方法を記載している(Delbeke,Movsisyan,et al.,2015;D.Develter & Fleurackers,2011;Gross et al.,2013;Van Bogaert et al.,2011)。SLは、天然には、オメガ-(ω)及びオメガ-1(ω-1)SLの混合体であり、S.ボンビコラ(bombicola)によって生成される主な化合物はω-1 C18:1であり、そのSL、ラクトンバージョンは、図1Aに示されている(D.Develter & Fleurackers,2008;Konishi et al.,2008;Tulloch et al.,1962)。上記のグループは、多様性を増加させること並びに化学-及び/又は化学酵素経路を使用した新しいバイオ界面活性剤化合物の製品ラインアップを作り出すことを目標として前駆体としてSLを使用することを記載している。このことは、興味深い物理化学及び生物学的(例えば、抗微生物性)特性を有する新しい化合物、例えば、短鎖(オメガ-1)ソホロシドアルデヒド、短鎖(オメガ-1)ソホロ脂質、オメガ-1第4級アンモニウムソホロ脂質(QASL)、SSアミンオキサイド、SSアミン、ボラ両親媒性SSなどの大きなライブラリーを結果として生じさせた(Delbeke,2016;Delbeke et al.,2018;Delbeke,Lozach,et al.,2016;Delbeke,Movsisyan,et al.,2015;Delbeke,Roelants,et al.,2016;Delbeke,Roman,et al.,2015;D.Develter & Fleurackers,2008;Gross et al.,2013;Van Bogaert et al.,2011)。抗微生物特性を示すことに加えて、多くの合成されたQASLがまた、高いトランスフェクション効率を示した(Delbeke,Lozach,et al.,2016;Delbeke,Roman,et al.,2015)。明白に、かかる適用は、家庭用洗剤における適用と比較して、より高い値を作り出すこと/より高いコストを許容することが予期される。野生型SL(ω-1及びωの混合物、主にω-1)から出発する、記載されている化学的誘導経路は、典型的には、かなり複雑な合成誘導体化経路に従う。例えば、(Delbeke,Roman,et al.,2015)によって記載されている方法において、酵母菌由来のラクトンSLは、まず、SLメチルエステルに変換され、(糖頭部基を保護するために)過アセチル化され、その後、オゾン分解に供されて、SLに存在する二重結合を破壊し、最終的に、ω-1C9ソホロシドアルデヒドビルディングブロック(ωC9ソホロシドアルデヒドの存在量が少ない)、及び、除去されなければならない副生成物としてC9アルキル鎖分離物を得る(Delbeke,Roman,et al.,2015)。この最後の態様は、野生型SLから出発するこの誘導体化方法に関する収率に負に影響し、最初の炭素原子のうちの30%(30のうち9)がこのプロセスにおいて失われる。さらに、C9副生成物は-言及されているように-C9ソホロシドアルデヒド生成物から除去されなければならず、これは、さらなる工程(同じく収率を低減する)及びコストの両方をプロセスに付加する。これらの障害にもかかわらず、上記のω-1C9ソホロシドアルデヒドビルディングブロックを、上記で既に言及されているようにバイオ界面活性剤の製品ラインアップにさらに誘導体化した。これらの誘導体もまた、そのため、ω-1(主)及びω-グリコシドの混合物である。これまでのところ、化学的及び/又は酵素的誘導体化と組み合わせたバイオプロセス工程に基づいた多様なω-グリコシドの生成は、主にω-1グリコシドが存在し且つω-グリコシドが非常に低量で存在する混合物を結果として生じさせた。混合物に存在するω-グリコシドの存在度が
低い理由は、微生物、例えば、S.ボンビコラ(bombicola)を生成する大部分の野生型SLによる脂肪性基質の酵素的ヒドロキシル化が、ω又はω-1位におけるヒドロキシル化の相対量が脂肪族分子における構造体の長さと相関するため、かなり特異的であるという事実に起因している。二重結合は、例えば、脂肪酸鎖長を空間的に短くすることにより、オレイン酸のω及びω-1(主)の両方をヒドロキシル化させる一方で、ステアリン酸は明らかにω-ヒドロキシル化には長過ぎ、故に、ω-1位において排他的にヒドロキシル化される(D.Develter & Fleurackers,2008;Konishi et al.,2008;Tulloch et al.,1962)。この酵素的ヒドロキシル化は、S.ボンビコラ(bombicola)の場合にはCYP52M1酵素(Van Bogaert et al.,2013)及び微生物種を生成する他のSLにおいてはその機能的ホモログ(複数可)の活性を通して起こる。
【0009】
SL生成酵母菌株の遺伝子操作は、これらの課題のいくつかに対するいくつかの解決策を付与し得る。例えば、Van Renterghem et al.(2018)は、最近、ボラ形態ソホロシド(ω及びω-1の混合)の生成が、S.ボンビコラ(bombicola)ノックアウト株ΔatΔsbleΔfao1によって達成され得ることを示した(Van Renterghem et al.,2018)。これらの化合物はまた、Takahashi et al.(2016)によって、別のS.ボンビコラ(bombicola)ノックアウト株、すなわち、Δfao1によって生成されることが報告された。ボラ形態SS又はボラSSは、2つの同一の親水性ソロホース頭部基を含み、これらは両方が疎水性(不飽和)炭化水素リンカーとグルコシドによって連結されている。不飽和炭化水素リンカーに存在する二重結合は-野生型SLに関する場合と同様に-例えば、オゾンによって開裂しやすく、これは、二重結合の開裂のためのプロセス条件に応じてアルファ位においてアルデヒド(ソホロシドアルデヒド)、アルコール(ソホロシドアルコール)又はカルボン酸(ソホロ脂質)官能性を有する2つのより短い鎖状のソホロシド単位(ω及びω-1の混合)の生成を理論的には結果として生じさせ得る。これは、野生型SLを使用する場合における上記のアルキル部分割の損失を避けることができる。これらの新しい株によって生成されるこれらの化合物は、故に、いくつかの解決策を付与し得るが、得られるより短い鎖状のソホロシド単位及びこれらの誘導体もまた、そのω及びω-1化合物の混合物から構成され、これらの比(ω/ω-1)は、上流の発酵プロセスの変動を生じやすく、故に、バッチ間変動を生じやすい。化合物の比のかかる変動は、小さな分子変異さえも誘導生成物の対応する特性に劇的な影響を与え得るため、特定の混合物の特性の変動を生じる(Baccile et al.,2016;Roelants et al.,2019)。さらに、両方の上記のS.ボンビコラ(bombicola)株が、副生成物としてのいくつかの他のタイプの(ボラ)SLを依然として生成し(F.Takahashi et al.,2016;Van Renterghem et al.,2018)、そのため、同じく誘導体化を複雑にし且つさらなる精製工程を必要とし、同じくプロセスの際の炭素の損失並びにこれによる低い収率及び高いコストを結果として生じさせる。
【0010】
二重結合を開裂する方法の例は-上記で言及されているように-オゾン分解である。実際、オゾン分解は、オレフィン性化合物における二重結合の酸化開裂のための効率的な方法である(Frische et al.,2003;Goebel et al.,1957;Oehlschlaeger & Rodenberg,1968)。そのため、オゾン分解は、植物油(例えば、ヒマワリ油、菜種油)に由来する油脂化学物質に広範に適用される。油脂化学物質のオゾン分解を介してのバイオベースの化学物質の生成について、意図するところは、アルデヒド、アルコール、モノ-若しくはジカルボン酸又はこれらの混合物を最終生成物として又は機能性中間体としてのいずれかで生成することである(Hannen et al.,2013;Kockritz & Martin,2011;Omonov et al.,2014;Tran et al.,2005)
。オゾン分解はまた-上記で言及されているように-機能性短鎖ソホロシドアルデヒド、短鎖SLカルボン酸(Delbeke,Roman,et al.,2015;D.Develter & Fleurackers,2008)及び多くのさらなる誘導体化オプション(Delbeke,Roman,et al.,2015)の形成も可能にする。オゾン分解反応の高い原子効率及び酸化体のオンサイト発生に起因する減少したリスクにもかかわらず、オゾン分解は、依然として、安全への懸念に悩まされている(Nobis & Roberge,2011)。後者は、大部分が、高度に不安定な副生成物、例えば、爆発し得るオゾニド及びペルオキシドの発生から生じる(Nobis & Roberge,2011)。これらの課題は、反応系及び反応条件の注意深い考慮によって取り組まれ得る(Irfan et al.,2011)。さらに、関与する溶媒、例えば、水又は第1級アルコールの使用が、形成を制限し得る。しかし、いくつかの油脂化学物質は、低い水溶性に悩まされるため、後者の溶液の使用を制限する。これはまた、野生型SLに関する場合もそうである。水中でのオゾン分解に基づく野生型SLの誘導体化方法が開示されているが、多数の工程及びケアが、発泡の課題とのトレードにおいてラクトンSLの可溶化を保証するために必要とされる(D.Develter & Fleurackers,2011)。
【0011】
二重結合を開裂する方法の別の例は、酵素の作用によるものである。実際、酵素は、広範囲の活性を有する万能なタンパク質である。二重結合を開裂する酵素、例えば、ヘム及び非ヘムオキシゲナーゼが記載されている(Mutti,2012)。生体触媒による方法の例は、2つの酵素、すなわち、リポキシゲナーゼ及び脂肪酸ヒドロキシペルオキシドリアーゼの使用における、脂肪族オレフィン性二重結合の酸化開裂に産業的に適用されている(Stolterfoht et al.,2019)。リポキシゲナーゼは、不飽和脂肪酸の過酸化を触媒し、得られるヒドロキシペルオキシ脂肪酸が、ヒドロキシルペルオキシドリアーゼによってアルデヒド及びオキソ酸にさらに変換される。アルデヒドは、アルコールヒドロゲナーゼの逆の作用によってさらに第1級アルコールに還元され、又はアルデヒドオキシダーゼを使用してそれぞれのカルボン酸に酸化され得る。両方のタイプのオキシドレダクターゼが市販されている。伝統的な産業的方法は、これらの酵素の供給源として植物抽出物を適用する。しかし、最近、微生物細胞工場での、かかるタイプの酵素、例えば、S.セレビシエ(cerevisiae)の異種共発現が、これらの酵素を(共-)発現するための実行可能な選択肢として出現している。二重結合を開裂する別の生体触媒方法は、エポキシド化であり、これは、ペルオキシダーゼ及び/又はモノオキシゲナーゼを使用する酸化を通して達成され得る(Toda et al.,2014)。得られるエポキシドは、その後、エポキシドヒドロラーゼによって近接のジオールに変換され得る(Kotik et al.,2012)。これらのジオールは、アルコールヒドロゲナーゼによってケトン-アルコール若しくはジケトンにさらに酸化され得、又はモノオキシゲナーゼによってアルデヒド若しくはカルボン酸に酸化開裂され得る。
【0012】
ソホロシドアルデヒドは、さらに化学的-だけでなく酵素的な誘導体化も目的とした極めて万能な化合物である。これらは、アルコールヒドロゲナーゼの逆の作用を通して、上記で言及されているように、第1級アルコールにさらに還元され得、アルデヒドオキシダーゼ又はアルデヒドヒドロゲナーゼを適用することによってそれぞれのカルボン酸に酸化され得る。無数の化合物へのさらなる誘導体化は-化学的誘導体化について上記で言及されているように-生体触媒手段を通して達成することもできる。全ての記載されている生体触媒反応(複数可)はまた、ソホロ脂質/ソホロシド生成宿主におけるそれぞれの酵素の(異種)発現を通して生成プロセス内に一体化されてもよい。
【0013】
SLから新しいバイオベースの分子を生成するためのオゾン分解を用いる以前の作業をまとめると、分割アルキル部と一緒になったω及びω-1(主にω-1)ソホロシドアルデヒド、ソホロ脂質(ジ)カルボン酸及び/又はソホロシドアルコールの混合物を、典型
的には、オレフィン性二重結合の位置及びワークアップ条件に応じて得ている(D.Develter & Fleurackers,2008;Omonov et al.,2014)。かかる混合物は、複雑な下流の処理(例えば、分離、精製)を必要とすることにより、最終製品(ω-1グリコシド及びω-1糖脂質並びにこれらの誘導体)のコストを増加させる。そのため、高度に効率的な、高い収率(炭素の損失を避ける)、溶解性の課題を回避したグリコシド(複数可)及び糖脂質(複数可)(ビルディングブロック)の選択的生成、並びにω及びω-1グリコシドの混合物の生成を可能にする方法を設計する緊急の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来技術の上記の問題の1つ以上を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様において、10%未満、好ましくは1%未満のω-1グリコシド、ω-2グリコシド及び/又はω-3グリコシドを含有するω-グリコシドを製造する方法であって、上記ω-グリコシドが、グリコシド結合を介して脂肪族炭素鎖の第1級又は末端炭素原子に結合している炭水化物を含んでおり:
a.好適な微生物株により好適な基質(複数可)を転換して10%未満、好ましくは1%未満のα,ω-1ボラグリコシド、α,ω-2-ボラグリコシド及び/又はα,ω-3-ボラグリコシドを含有する不飽和α,ω-ボラグリコシドを含む培養液を生成する工程であって、上記微生物株が、機能不全のシトクロムP450モノオキシゲナーゼCYP52M1若しくはそのホモログ及び機能不全の脂肪アルコールオキシダーゼFAO1若しくはそのホモログを有するように変異されている真菌株であり、又は上記微生物株が、機能不全のシトクロムP450モノオキシゲナーゼCYP52M1、機能不全の脂肪アルコールオキシダーゼFAO1若しくはそのホモログ、及び、機能不全の、ソホロ脂質生合成経路において第2グルコシル化工程に関与しているグルコシルトランスフェラーゼUGTB1若しくはそのホモログ、を有するように変異されている真菌株であり、
上記不飽和α,ω-ボラグリコシドが、グリコシド結合を介して脂肪族炭素鎖の第1級又は末端炭素原子にそれぞれ結合している2つの炭水化物を含み、上記脂肪族炭素鎖が少なくとも1つの二重結合を含む、工程
b.任意選択的に、工程a)の培養液から上記不飽和α,ω-ボラグリコシドを精製する工程、並びに
c.工程a)による上記培養液内の上記不飽和α,ω-ボラグリコシドを上記不飽和α,ω-ボラグリコシド内の少なくとも1つの不飽和の開裂可能な脂肪族結合を破壊するオゾン分解反応若しくは酵素反応に供する、又は、工程b)によって精製された上記不飽和α,ω-ボラグリコシドを上記不飽和α,ω-ボラグリコシド内の少なくとも1つの不飽和の開裂可能な脂肪族結合を破壊するオゾン分解反応若しくは酵素反応に供する工程
を含む、上記方法を提供する。
【0016】
上記方法は、いくつかの明確な利点を付与する。1)工程a)において得られるα,ω不飽和ボラグリコシドの「ボラ」性質は、二重結合の開裂が、炭素の損失を回避するもの(図12Aを参照されたい)の代わりに2つのより短い鎖状のω-グリコシドを生じるため、高い収率(唯一の二重結合が不飽和α,ω-ボラグリコシドに存在する場合には100%)を生じる。2)1つの二重結合が脂肪族リンカーの中ほどに存在すること(図7を参照されたい)を意味している、不飽和α,ω-ボラグリコシドが「対称」である実施形態は、2つの同一のω-グリコシドが二重結合の開裂後に得られるため、高い均一性を生じる(図7を参照されたい)。3)ボラグリコシドの高い親水性の性質、すなわち、これらの高い水溶性は、二重結合(複数可)を開裂する環境に優しい方法の開発を有意に容易にする、なぜなら、この方法が、有機溶媒の使用を回避しつつ、溶解性などを増加させる
いずれの適合又は制御も無しに水中で実施され得るからである。さらに、オゾン分解が二重結合を開裂する方法として使用される場合には、水中でのこの方法の実行は、環境に優しい性質だけでなく、プロセスの安全も劇的に増加させる。
【0017】
さらなる態様は、アルキルグリコシドを製造するための方法であって、上記の、好適な微生物株により好適な基質(複数可)を転換してアルキルグリコシドを含む培養液を生成することを含み、上記微生物株が、機能不全のシトクロムP450モノオキシゲナーゼ、特に、CYP52M1若しくはそのホモログ、及び機能不全の脂肪アルコールオキシダーゼ、特に、FAO1若しくはそのホモログを有するように変異されている真菌株であり、又は上記微生物株が、機能不全のシトクロムP450モノオキシゲナーゼ、特に、CYP52M1若しくはそのホモログ、機能不全の脂肪アルコールオキシダーゼ、特に、FAO1若しくはそのホモログ、及び、機能不全の、ソホロ脂質生合成経路において第2グルコシル化工程に関与しているグルコシルトランスフェラーゼ、特に、UGTB1若しくはそのホモログ、を有するように変異されている真菌株であり、上記真菌株が、機能不全の、長鎖脂肪アルコール及び/又はアルカン/アルケンのω-酸化に関与している1つ以上の酸化酵素、好ましくは:配列番号:101に記載されているアミノ酸配列を含むA1又はそのホモログ、配列番号:103に記載されているアミノ酸配列を含むA2又はそのホモログ、配列番号:105に記載されているアミノ酸配列を含むA3又はそのホモログ、配列番号:107に記載されているアミノ酸配列を含むA4又はそのホモログ、配列番号:109に記載されているアミノ酸配列を含むA5又はそのホモログ、配列番号:111に記載されているアミノ酸配列を含むA6又はそのホモログ、及び配列番号:113に記載されているアミノ酸配列を含むA7又はそのホモログ;からなる群から選択される1つ以上の酸化酵素、を有するようにさらに変異されており、上記真菌株が、好ましくは天然ソホロ脂質生成真菌株、より好ましくは、スタルメレラ(カンジダ)ボンビコラ(Starmerella (Candida) bombicola)、スタルメレラ(カンジダ)アピコラ(Starmerella (Candida) apicola)、カンジダ・マグノリアエ(Candida magnoliae)、カンジダ・グロペンギエセリ(Candida gropengiesseri)、スタルメレラ(カンジダ)バチスタエ(Starmerella (Candida) batistae)、スタルメレラ(カンジダ)フロリコラ(Starmerella (Candida) floricola)、カンジダ・リオドセンシス(Candida riodocensis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、スタルメレラ(カンジダ)ステラータ(Starmerella (Candida) stellata)、スタルメレラ(カンジダ)クオイ(Starmerella (Candida)
kuoi)、カンジダ種(Candida sp.)NRRL Y-27208、シュードハイホジーマ(ロドトルラ、カンジダ)ボゴリエンシス種(Pseudohyphozyma (Rhodotorula, Candida) bogoriensis sp.)、Wickerhamiella domericqiae、及び(スタルメレラ分岐群(Starmerella clade)の)ソホロ脂質生成株(Santos
et al.,2018)からなる群から選択される酵母菌である、上記方法に関する。
【0018】
酸化酵素A1~A7のうちの1つ以上における、特に、少なくともA3及びA4における、より特定的には、少なくともA3、A4及びA1におけるさらなる変異は、アルキルソホロシドの生成の相対的増加(すなわち、ボラソホロシドの共生成が無い、少ない又は最小である)の利点を付与する。
【0019】
なおさらなる態様は、ジオール、好ましくはα,ω-ジオールの生成のための、配列番号:101に記載されているアミノ酸配列を含む酵素A1若しくはそのホモログ、配列番号:105に記載されているアミノ酸配列を含む酵素A3若しくはそのホモログ、又は、
配列番号:107に記載されているアミノ酸配列を含む酵素若しくは酵素A4若しくはそのホモログの使用に関する。
【0020】
本発明の上記及びさらなる態様及び好ましい実施形態を以下のセクション及び添付の特許請求の範囲に記載する。添付の特許請求の範囲の主題は、本明細書においてここに具体的に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ω-1糖脂質(A及びC)(カルボン酸機能が存在することを示す灰色円)並びにω-1グリコシド(B及びD)の例。(A)野生型ラクトンソホロ脂質(B)α,ω-1-ボラソホロシド(C)ボラソホロ脂質(D)ω-1ソホロシドアルデヒド。
図2】C9:0ω-ソホロシドアルデヒド。
図3-1】振とうフラスコにおける、親のΔcyp52M1株(〇)と比較した、Δcyp52M1Δfao1株(●)の特性決定のための重要なパラメータ。平均値及びそれぞれの標準偏差をA)log(CFU/mL)、B)pH及びC)グルコース濃度(g/L)で提示する。1.8(w/v)%のオレイルアルコールを疎水性基質として培養の48時間後に添加した。
図3-2】同上。
図4】全てに1.8(w/v)%のオレイルアルコールを供給した(全て3x希釈)、A)Δcyp52M1Δfao1株、B)Δcyp52M1株、及びC)Δcyp52M1Δfao1ΔugtB1株についての振とうフラスコ実験の最終サンプルのUPLC-ELSDクロマトグラム。UPLC-MSによって求めたそれぞれの質量をそれぞれのピークの上に示す。太字で、アルキルSSに対応する質量を示す。
図5】オレイルアルコールを供給したときのΔcyp52M1Δfao1株におけるアルキルソホロシド(SS)の提案された生成経路。(1)脂肪アルコールオキシダーゼfao1、(2)脂肪アルデヒドヒドロゲナーゼFAD、(3)シトクロムP450モノオキシゲナーゼCYP52M1、(4)グルコシルトランスフェラーゼUGTA1、(5)グルコシルトランスフェラーゼUGTB1、(6)アセチルトランスフェラーゼAT及び(7)SLトランスポータMDR。fao1及びcyp52M1遺伝子(クロスで示す)をノックアウトすることにより、脂肪アルコールは、対応する脂肪アルデヒドにも、対応するジオール(この場合、1,18-オクタデセンジオール)にも変換されず、デノボ脂肪酸がヒドロキシル化されず(クロスで示す)次いでSL生合成に入る。このようにして、蓄積するアルコールがグルコシルトランスフェラーゼUGTA1及びUGTB1によって直接グルコシル化され、それぞれ脂肪アルコール及びアルキルグルコシド骨格においてグルコース分子を逐次的に付加する。非アセチル化アルキルSSが得られ、これがアセチルトランスフェラーゼATによってアセチル化されて、非、モノ-及びジ-アセチル化アルキルSSの混合物を生じることとなる。最終的に、これらのグリコシドは、推定上、野生型SLの分泌に関与しているMDRトランスポータによって細胞の外側にトランスポートされる傾向にある(Van Bogaert et al.,2013)。
図6】Δcyp52M1Δfao1株を使用し且つこれにオレイルアルコールを供給する生成経路の概要。cyp52M1遺伝子をノックアウトすることにより、経路Aにおいて示唆されるようにグリコシル化のみが実施され得、アルキルSSのアセチル化混合物(最大2のアセチル化)を生じることが予期された。アセチル化をR基として提示する。しかし、S.ボンビコラ(bombicola)における予期されない酵素的活性に起因して、脂肪アルコールのヒドロキシル化が観察され、グリコシル化後にアセチル化ボラSS(最大4のアセチル化)を生じた。最後に、主にボラSS及び少しのアルキルSSの混合物が見られた。ヒドロキシル化は、Van Renterghem et al.,(2018)によって報告されているΔatΔsbleΔfao1株と対照的に、排他的に末端で(オメガ)起こった。
図7】Δcyp52M1Δfao1株によって生成される精製されたオレイルベース(C18:1)ボラSSの構造的に確認された構成。末端(ω)ヒドロキシル化された化合物のみが生成されることが見出される。
図8】異なる第1級アルコールを供給したときの(ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル又はオレイルアルコール)、培養時間の関数でのΔcyp52M1Δfao1株の、A)log(CFU/mL)及びB)グルコース濃度。平均値及びそれぞれの標準偏差を提示する。それぞれ1.8(w/v)%のアルコールを培養の48時間後に添加した。
図9】培養の48時間後、1.8(w/v)%の(A)ラウリルアルコール、(B)ミリスチルアルコール、(C)パルミチルアルコール、(D)ステアリルアルコール又は(E)オレイルアルコールを供給した、Δcyp52M1Δfao1株についての最終のUPLC-ELSDクロマトグラム。全ての最終培養液を3x希釈する。アルキル(最大2の起こり得るアセチル化)及びボラSS(最大4の起こり得るアセチル化)についての保持時間を示す。太字で、それぞれの供給アルコールがボラSS(暗灰色)及びアルキルSS(黒)、アルコールGLuS及びアルキルGLuS(淡灰色)に組み込まれたときのグリコシド化合物を示す。保持時間<1分のピークは、糖、タンパク質及び塩としてサンプルに存在する強力に親水性の化合物の混合物に相当する。
図10-1】1.8(w/v)%のそれぞれの第1級アルコールを培養の48時間後に供給したときの、培養時間の関数でのΔcyp52M1Δfao1株のボラSS(A)及びアルキルSS生成(B)。生成をUPLC-ELSDによって求められるピーク面積(V.秒)の総計として表す。(C)培養の48時間後に、1.8(w/v)%のラウリルアルコール(黒)、ミリスチルアルコール(暗灰色)、パルミチルアルコール(中程度の灰色)、ステアリルアルコール(淡灰色)又はオレイルアルコール(白)を供給した、異なるグリコシドタイプのUPLC-ELSDによって求めたS.ボンビコラ(bombicola)Δcyp52M1Δfao1株の最終培養液の相対ピーク面積(%)。
図10-2】同上。
図11】トリプルノックアウト株Δcyp52M1Δfao1ΔugtB1は、(アセチル化)アルファ,オメガ-ボラグルコシド(ボラGLuS又はボラGS)を生成する。図は、(アセチル化)対称ボラグルコシドを合成する経路を示す。下の図は、実際の(アセチル化)対称ボラグルコシドC18:1を示す。R=COCH3又はH。
図12】A)オゾン分解を使用した、対称C18:1α,ω-ボラソホロシドの1分子の二重結合の開裂、結果として生じる2つのC9:0ω-ソホロシドアルデヒド分子の発生の概略図。B)C9:0ω-ソホロシドの化学的誘導体化経路の例の概略図。オゾン分解プロセス条件に応じて、C9:0ω-ソホロシドアルデヒド、C9:0ω-ソホロシドアルコール又はC9:0ωソホロ脂質が生じ、これらは、それぞれが、いくつかの非制限例が示されている適切な化学的-、酵素的-及び/又は化学酵素プロセスによってさらなる誘導体に変換され得る。
図13】オゾン分解反応を実施後及び実施中のNMR分析であり、上が(1)C9:0ω-1-アルデヒドを生じるC18:1ソホロ脂質ラクトン、下が(2)C9:0ω-1-ソホロシドアルデヒドを検出することなくC9:0ω-ソホロシドアルデヒドを生じるC18:1(非アセチル化)対称α,ω-ボラソホロシドについてのものである。上のNMRスペクトルにおける21.3ppmのピークは、サブ末端位置でのCH基に相当する(21.3ppm、CH)。以下のスペクトルにおけるこの化学シフトにおいていずれのピークも存在しない。そのため、C9:0ω-ソホロシドアルデヒドのみが、本発明に記載されているC18:1α,ω-ボラソホロシドのオゾン分解後に形成される。C9:0ω-1-ソホロシドアルデヒド(上)((S)-8-([2”,3’,3”,4’,4”,6’,6”-ヘプタアセトキシ-2’-O-β-D-グルコピラノシル-β-D-グルコピラノシル]-オキシ)-ノナナール) 13C-NMR(100MHz、CDCl):δ20.3(C=O),20.4(2xC=O),20.5(C=O),20.6(C=O),20.6(C=O),20.7(C=O),21.3(CH),22.1(CH(C=O)H),24.6((CH),29.3((CH),29.4((CH),36.4(CHCH),43.7((C=O)H),61.9(OAc),62.1(OAc),68.2(HOC),68.7(HOC),71.2(HOC),71.5(HOC),71.6(HOC),72.9(HOC),74.6(HOC),77.3(HOC),77.9(HOC),100.3(H(O)),101.2(H(O)),169.3(CH =O),169.4(CH =O),169.6(CH =O),169.9(CH =O),170.1(CH =O),170.4(CH =O),170.5(CH =O),202.9(H=O).C9:0ω-ソホロシドアルデヒド(下)(9-[(2’-O-β-D-グルコピラノシル-β-D-グルコピラノシル)オキシ]ノナナール):13C NMR(100MHz,DMSO-d):δ22.0(CH(C=O)H),25.9((CH),29.0((CH),29.2((CH),29.3((CH),29.7(CHOCH ),43.5((C=O)H),61.35(OH),61.39(OH),69.1(CHOCH),70.2(HOC),70.3(HOC),75.3( 2’’H),76.5( 3’H),76.6( 3’’H),77.1(HOC),77.5(HOC),82.8( 2’H),101.8( 1’H),104.6( 1’’H),203.9(H=O).
図14】オゾン分解反応時間の関数として、C9:0ω-ソホロシドアルデヒド(△)及びC9:0ω-ソホロ脂質カルボン酸(◇)の相対含有率の展開と一緒にプロットしたアセチル化α,ω-ボラソホロシド(gL-1)(ドット)の濃度。
図15】7つの対象遺伝子(GOI):a1、a2、a3、a4、a5、a6又はa7のうちの1を欠失させるためのノックアウトカセットを含むベクターの一般図。選択を、ura3選択マーカーを使用して行う。
図16-1】長鎖脂肪アルコール及び/又はアルカン/アルケンのω-酸化に関与している酸化酵素と同定された酵素(A1~A7)をコードする遺伝子(a1~a7)のヌクレオチド及びアミノ酸配列。a1(配列番号:100);A1(配列番号:101);a2(配列番号:102);A2(配列番号:103);a31(配列番号:104);A3(配列番号:105);a4(配列番号:106);A4(配列番号:107);a5(配列番号:108);A5(配列番号:109);a6(配列番号:110);A6(配列番号:111);a7(配列番号:112);A7(配列番号:113)。
図16-2】同上。
図16-3】同上。
図16-4】同上。
図16-5】同上。
図17】A)Δcyp52M1Δfao1株、B)Δcyp52M1Δfao1Δa3Δa4株及びC)Δcyp52M1Δfao1Δa1Δa3Δa4株についての振とうフラスコ実験の最終サンプルのUPLC-ELSDクロマトグラム。全ての株に1.8(w/v)%のオレイルアルコールを供給した。UPLC-MSを用いて求めたそれぞれの質量をそれぞれのピークの上に示す。
図18】オゾン分解を使用した、(アセチル化)対称C18:1α,ω-ボラグルコシドの1分子の二重結合の開裂、結果として生じる、(アセチル化)C9:0ω-グルコシドアルデヒド及び(アセチル化)C9:0ω-糖脂質酸分子の発生の概略図、並びに、実施例1(下のスペクトル)において生成される(アセチル化)グルコシド及びDMSO中でのオゾン分解(上のスペクトル)後の最終サンプルの1H NMRスペクトルの比較。下のスペクトルにおいて存在するC18分子からの5.33ppm(CH=CH)におけるアルケンプロトンの多重項ピークは、上のスペクトルにおいて、オゾン分解の際に消失した。9.65ppm(HC=O)及び2.39ppm(CH2(C=O)H)におけるC9:0ω-グルコシドアルデヒドのピーク並びに2.04ppm(CH2(C=O)H)におけるC9:0ω-糖脂質酸のピークが最終サンプルのスペクトルにおいて現れた(上のパネル)。
図19】リポキシゲナーゼ及びヒドロキシペルオキシドリアーゼの組み合わせを使用した、(アセチル化)対称C18:1α,ω-ボラグリコシド(ソホロシド(A)及びグリコシド(B))の二重結合の開裂、結果として生じる(アセチル化)C9:0ω-グリコシドの発生の概略図。
図20】モノオキシゲナーゼ、エポキシドヒドロラーゼ及びアルコールヒドロゲナーゼ/モノオキシゲナーゼの組み合わせを使用した、(アセチル化)対称C18:1α,ω-ボラグリコシド(ソホロシド(A)及びグリコシド(B))の二重結合の開裂、結果として生じる(アセチル化)C9:0ω-グリコシドの発生の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
別途定義されていない限り、技術的及び科学的用語を含めた、本発明を開示する際に使用されている全ての用語は、本発明が属する分野における当業者によって一般的に理解されている意味を有する。さらなるガイダンスによって、本発明の教示をより認識するために用語の定義を含む。
【0023】
本明細書において使用されているとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が別途明らかに示さない限り、単数及び複数の両方の指示対象を含む。
【0024】
用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「構成される(comprised of)」は、本明細書において使用されているとき、「含む(including)」、「含む(includes)」又は「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的であり又はオープンエンドであり、さらなる列挙されていない部材、要素、又は方法工程を排除するものではない。ある特定の要素又は工程を含むとして実施形態を参照しているとき、これは、列挙されている要素又は工程から本質的になる実施形態も包含する。
【0025】
本発明は、実質的に均一なω-グリコシド(すなわち、炭水化物がω位以外の位置で官能化脂肪族炭素鎖に接続している汚染グリコシド、例えば、ω-1グリコシド、ω-2グリコシド及び/又はω-3グリコシドなどが無い又は最小である)の生成を開示する。「ω-グリコシド」又は「オメガ-グリコシド」は、本明細書に開示されているように(例えば、図2)、グリコシド結合が炭水化物を官能化脂肪族炭素鎖の第1級又は末端炭素原子に接続させるグリコシドである一方で、「ω-1グリコシド」又は「オメガ-1グリコシド」においては、このグリコシド結合が炭水化物を第2級又はサブ末端炭素原子に接続させる(例えば、図2におけるω-ソホロシドアルデヒド対図1Dにおけるω-1ソホロシドアルデヒドを参照されたい)。本明細書に開示されているω-グリコシドは、所謂不飽和α,ω-ボラグリコシドに由来しており、これらは、上記不飽和α,ω-ボラグリコシドの少なくとも1つの二重結合の開裂を好む反応条件を介して、10%未満、例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、1又は0%未満の汚染(不飽和)α,ω-1-ボラグリコシド、α,ω-2-ボラグリコシド及び/又はα,ω-3-ボラグリコシドを有して生成される。より詳細には、後者の反応条件は、水中でのオゾン分解又は酵素の使用に関係し得る。より詳細には及び非限定例として、汚染のω-1、ω-2及び/又はω-3同種を含まない、C9:0ω-ソホロシドアルデヒド、C9:0ω-ソホロシドアルコール及びC9:0ω-ソホロ脂質カルボン酸、並びにこれらの誘導体の選択的生成を好む条件が開示されている。
【0026】
故に、本発明は、第1態様において、特に、10%未満、好ましくは9、8、7、6、5、4、3、2又は1%未満のω-1グリコシド、ω-2グリコシド及び/又はω-3グリコシドを含有するω-グリコシドを選択的に製造する方法であって:
a.好適な微生物株により好適な基質(複数可)を転換して10%未満、例えば、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%未満の(不飽和)α,ω-1-ボラグリコシド、α,ω-2-ボラグリコシド及び/又はα,ω-3-ボラグリコシドを含有する不飽和α,ω-ボラグリコシドを含む培養液を生成する工程;
b.任意選択的に、工程a)の培養液からの上記不飽和α,ω-ボラグリコシドを精製する工程、並びに
c.工程a)による上記培養液内の上記不飽和α,ω-ボラグリコシドを上記不飽和α,ω-ボラグリコシド内の少なくとも1つの不飽和の開裂可能な脂肪族結合を破壊する反応に供する、又は、工程b)によって精製された上記不飽和α,ω-ボラグリコシドを上記不飽和α,ω-ボラグリコシド内の少なくとも1つの不飽和の開裂可能な脂肪族結合を破壊する反応に供する工程;
を含む上記方法に関する。
【0027】
不飽和α,ω-ボラグリコシドに存在する結合した少なくとも1つの不飽和脂肪族の開裂は、有利には、アルキル部を損失せずに、プロセス条件に応じてアルデヒド(ω-グリコシドアルデヒド)、アルコール(ω-グリコシドアルコール)又はカルボン酸(ω-糖脂質)官能性を有する2つのより短い鎖状のω-グリコシド単位の生成を結果として生じさせ、これにより、改良された収率を生じる。
【0028】
10%未満の(不飽和)α,ω-1-ボラグリコシドを含有する不飽和α,ω-ボラグリコシドを含む培養液はまた、90%超、例えば、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%超の不飽和α,ω-ボラグリコシドを含む培養液とも称され得る。
【0029】
用語「グリコシド」は、少なくとも1つの炭水化物分子がグリコシド結合を介して別の分子に共有結合している分子を概して称する。本明細書に開示されているグリコシドは、より詳細には、グリコシド結合を介して脂肪族炭素鎖の第1級又は末端炭素に共有結合しており、「オメガ-グリコシド」又は「ω’-グリコシド」と称され、これらの用語は、本明細書において互換可能に使用される。上記脂肪族炭素鎖は、好ましくは、上記脂肪族鎖のα位において、例えば、限定されないが、アルデヒド、カルボキシル若しくはアルコール官能性又はこれらの誘導体によって官能化されていてよい。カルボキシル基によってα位において官能化されている脂肪族炭素鎖に炭水化物分子がグリコシド結合を介して共有結合しているグリコシドもまた、本明細書において「糖脂質」と称される。そのため、本発明の枠組みにおいて、「糖脂質」は、1つ以上の炭水化物分子(複数可)が脂質分子に共有結合していて、これらの脂質の少なくとも1つが、カルボキシル官能性を含有する少なくとも6つの炭素原子の脂肪族炭素鎖(複数可)、例えば、脂肪酸などである化合物である。
【0030】
用語「ボラグリコシド」は、本明細書において使用されているとき、少なくとも2つの炭水化物を含有するグリコシド分子であって、炭水化物の両方が疎水性脂肪族リンカー、特に、かかる2つの炭水化物を接続させる脂肪族炭素原子鎖に結合している、上記グリコシド分子を称する。用語「α,ω-ボラグリコシド」は、2つの炭水化物分子がそれぞれ(官能化)脂肪族炭素鎖の「第1級」又は「末端」炭素原子に接続しているという事実を指す(例えば、図6及び11を参照されたい)。上記炭水化物の一方が末端炭素原子以外の別の炭素原子において脂肪族鎖に接続している場合、本明細書において、「サブ末端」炭素原子への連結の場合には「α,ω-1-ボラグリコシド」又は「β,ω-ボラグリコシド」と言及する(例えば、図1Bを参照されたい)。同様に、用語「α,ω-2-ボラグリコシド」及び「γ,ω-ボラグリコシド」は、炭水化物の一方の、それぞれの側からカウントを開始して脂肪族鎖の3番目の炭素原子への連結を指し、用語「α,ω-3-ボラグリコシド」及び「δ,ω-ボラグリコシド」は、炭水化物の一方の、脂肪族鎖の4番
目の炭素原子への連結を指す。用語「不飽和」は、α,ω-ボラグリコシド及びα,ω-1-ボラグリコシドとの接続において使用されているとき、少なくとも1つの二重結合が両方の炭水化物分子を接続する脂肪族炭素鎖に存在するという事実を指す。「対称不飽和α,ωボラグリコシド」は、本明細書において使用されているとき、1つの二重結合が、2つの炭水化物を接続する脂肪族炭素原子鎖に存在する、及び上記二重結合が、上記疎水性リンカーの中ほどに位置しているという事実を指す。
【0031】
そのため、本明細書に開示されているω-グリコシドは、脂肪族炭素鎖を含み、α炭素で官能化されていてよく且つω炭素において炭水化物を含有する。上記「炭水化物」は、当該分野において公知のいずれであってもよいが、好ましくはグルコース、ソロホース、マンノース、ラムノース、キシロース、アラビノース、トレハロース、セロビオース又はラクトースである。故に、本発明は、好ましくは、上記で記載されている方法であって、上記ω-グリコシドが、ω-グルコシド、ω-ソホロシド、ω-マンノシド、ω-ラムノシド、ω-キシロシド、ω-アラビノシド、ω-トレハロシド、ω-セロビオシド又はω-ラクトシドである、上記方法に関する。生成されるω-グリコシドのタイプは、例えば、微生物株(例えば、天然ソホロ脂質生成酵母菌株、例えば、スタルメレラ・ボンビコラ(Starmerella bombicola))の適当な選択を通して、及び/又は当該微生物株のさらなる遺伝子修飾を通して、当業者に知られているように適合され得る。例えば、グルコシルトランスフェラーゼUGTB1をスタルメレラ・ボンビコラ(Starmerella bombicola)セロビオシドにおけるトウモロコシ黒穂病菌のグルコシルトランスフェラーゼUGT1遺伝子によって置き換える際に、ソホロシドの代わりに生成される(Roelants et al.2013.Biotechnol
Bioeng.110:2494-2503)。
【0032】
本明細書に記載されている方法の好ましい実施形態において、ω-グリコシドは、特に、脂肪族鎖のα位において、アルデヒド基(ω-グリコシドアルデヒド)、アルコール基(ω-グリコシドアルコール)又はカルボン酸基(ω-糖脂質)によって官能化されている。上記ω-グリコシドアルデヒド、ω-グリコシドアルコール及びω-糖脂質は、本明細書において使用されているとき、用語「ω-グリコシド」に包含される。
【0033】
ω-グリコシドアルデヒドの生成が望ましいある特定の実施形態において、カタラーゼが、オゾン分解反応又は酵素反応に供される培養液(不飽和α,ω-ボラグリコシドを含有する)に添加されてよい。
【0034】
ω-糖脂質の生成が望ましいある特定の実施形態において、オゾン分解反応は、好ましくは少なくとも3時間だけ、又は、算出された反応時間の少なくとも1000%だけ、好ましくは少なくとも1200%だけ、より好ましくは少なくとも1400%だけ延長されてよい。
【0035】
ω-糖脂質の生成が望ましい他の実施形態において、上記の方法は、酸化体(例えば、Oxone(登録商標))を、オゾン分解反応若しくは酵素反応後の反応媒体に、又は上記反応媒体から回収したω-グリコシドアルデヒドに添加する工程をさらに含んでいてよい。
【0036】
ω-グリコシドアルコールの生成が望ましいある特定の実施形態において、上記の方法は、還元剤(例えば、ピコリン-ボラン)を、オゾン分解反応若しくは酵素反応後の反応媒体に、又は上記反応媒体から回収したω-グリコシドアルデヒドに添加する工程をさらに含んでいてよい。
【0037】
これらのω-グリコシド、特に、これらのω-グリコシドアルデヒド、ω-グリコシド
アルコール及びω-糖脂質は、次いで、当該分野で記載されている化学的誘導体化経路、例えば、限定されないが:例えば、(Delbeke,2016;Delbeke et
al.,2018;Delbeke,Lozach,et al.,2016;Delbeke,Movsisyan,et al.,2015;Delbeke,Roelants,et al.,2016;Delbeke,Roman,et al.,2015;D.Develter & Fleurackers,2008;Gross et
al.,2013;Van Bogaert et al.,2011)によって記載されている野生型SLに関する分野において記載されている、例えば、限定されないが、ω-第4級アンモニウムSL(QASL)、ω-SSアミンオキサイド、ω-SSアミン、ω-ボラ両親媒性SSなどへの、アシル化、アルキル化、アミド化、アミン化、アリール化、ビオチン化、カルバモイル化、カルボニル化、環付加、カップリング反応、エーテル化、エステル化、グリコシル化、ハロゲン化、メタル化、メタセシス、ニトリル形成、オレフィン化、酸化、ホスフィニル化、ホスホニル化、ホスホリル化、4級化、転位反応、還元、シリル化、チオール化、加硫、又はこれらのいずれかの組み合わせ;を通してさらに誘導体化され得る。用語「ω-グリコシド」は、本明細書において使用されているとき、上記ω-グリコシドアルデヒド、ω-グリコシドアルコール及びω-糖脂質の誘導体も包含する。
【0038】
本明細書に記載されている方法の実施形態において、上記の方法は、工程c)において得られたω-グリコシド、特に、工程c)において得られたω-グリコシドアルデヒド、ω-グリコシドアルコール及び/又はω-糖脂質を、本明細書においていずれかの箇所に記載されている化学的誘導体化経路、例えば、アシル化、アルキル化、アミド化、アミン化、アリール化、ビオチン化、カルバモイル化、カルボニル化、環付加、カップリング反応、エーテル化、エステル化、グリコシル化、ハロゲン化、メタル化、メタセシス、ニトリル形成、オレフィン化、酸化、ホスフィニル化、ホスホニル化、ホスホリル化、4級化、転位反応、還元、シリル化、チオール化及び/又は加硫などに供する工程をさらに含む。
【0039】
そのため、ω-グリコシドアルデヒド、ω-グリコシドアルコール及びω-糖脂質の誘導体を製造するための方法であって:
a.好適な微生物株により好適な基質(複数可)を転換して10%未満、例えば、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%未満の(不飽和)α,ω-1-ボラグリコシド、α,ω-2-ボラグリコシド及び/又はα,ω-3-ボラグリコシドを含有する不飽和α,ω-ボラグリコシドを含む培養液を生成する工程;
b.任意選択的に、工程a)の培養液から上記不飽和α,ω-ボラグリコシドを精製する工程;
c.工程a)による上記培養液内の上記不飽和α,ω-ボラグリコシドを上記不飽和α,ω-ボラグリコシド内の少なくとも1つの不飽和の開裂可能な脂肪族結合を破壊する反応に供する、又は、工程b)によって精製された上記不飽和α,ω-ボラグリコシドを上記不飽和α,ω-ボラグリコシド内の少なくとも1つの不飽和の開裂可能な脂肪族結合を破壊する反応に供する工程;並びに
d.工程c)において得られたω-グリコシドを、化学的誘導体化経路、好ましくは:アシル化、アルキル化、アミド化、アミン化、アリール化、ビオチン化、カルバモイル化、カルボニル化、環付加、カップリング反応、エーテル化、エステル化、グリコシル化、ハロゲン化、メタル化、メタセシス、ニトリル形成、オレフィン化、酸化、ホスフィニル化、ホスホニル化、ホスホリル化、4級化、転位反応、還元、シリル化、チオール化及び/又は加硫;を含む群から選択される化学的誘導体化経路に供する工程;
を含む上記方法も本明細書に開示する。
【0040】
本明細書に記載されている方法は、10%未満の汚染(不飽和)α,ω-1-ボラグリ
コシド、α,ω-2-ボラグリコシド及び/又はα,ω-3-ボラグリコシドを含む不飽和α,ω-ボラグリコシドを生成する、「好適な微生物株」による好適な基質(複数可)の「転換」工程を含む。
【0041】
好ましくは、この「転換」は、「全細胞の生体触媒転換」、すなわち、1つ以上の微生物によって実行される代謝生物学的プロセスであり、(生)化学的変化は、好適な微生物、例えば、細菌又は真菌に存在する一連の酵素の作用を通して好適な有機基質(複数可)に導入される。「好適な基質(複数可)」は、そのため、発現、及び、その後の、「好適な微生物株」によって一連の酵素をコードする一連の遺伝子の作用を通して、最終生成物(例えば、不飽和α,ω-ボラグリコシド)に変換される。
【0042】
好ましくは「好適な微生物株」は、天然SL生成酵母菌であり、ここで、少なくとも、(1)天然SL生合成の第1工程としての脂肪酸のヒドロキシル化(S.ボンビコラ(bombicola)において主にサブ末端(ω-1))に関与している遺伝子(複数可)が欠失しており(すなわち、野生型SL生合成がそれ以上起こらない)、合わせて、(2)脂肪アルデヒドへの脂肪アルコールの転換に関与している遺伝子(複数可)が欠失している。より詳細には及びそれぞれ、他のSL生成酵母菌株におけるS.ボンビコラ(bombicola)又はこれらのホモログの場合でのCYP52M1(Van Bogaert et al.,2013)及びFAO1(F.Takahashi et al.,2016;Van Renterghem et al.,2018)遺伝子が、好適な微生物株において欠失している。実施形態において、好適な微生物株は、機能不全のアセチルトランスフェラーゼ及び/又は機能不全のラクトナーゼを有さない。
【0043】
不飽和α,ω-ボラグリコシドの生合成に関与している特定の生合成酵素は、UDP-グルコース前駆体、(官能化)脂肪族炭素鎖前駆体、好ましくは(飽和)脂肪アルコール、及び、アセチル化の場合にはアセチル-CoAも利用する。
【0044】
SL生成では、SL生成酵母菌株が、典型的には、生成培地、例えば、好適な疎水性基質、例えば菜種油又はオレイン酸と組み合わせて、高いレベルの好適な親水性基質、例えば、グルコースを含有する、Lang et al.,(2000)(a.o.)によって記載されているものにおいて培養される。親水性及び疎水性の両方の炭素源の組み合わせの供給は、最も高いSL生産性を結果として生じるため、大抵は好ましい。親水性炭素源は-グルコースさえも-異化されて糖新生を経て、グルコースは、合成及び活性化されてUDP-グルコースとなる。疎水性炭素源は、β-及び/又はω-酸化を通して部分的に異化され得るが、SLにも直接組み込まれ得る。
【0045】
SL生成微生物、例えば、S.ボンビコラ(bombicola)もまた、親水性又は疎水性のいずれかの炭素源において供給されるとき、SLを生成することができる(Cavalero & Cooper,2003)。これは、内因性代謝経路が、後の解糖及び脂肪酸生合成経路の作用を通して、親水性炭素源、例えば、グルコースを脂肪酸に転換させるという事実に起因する。まず、アセチル-CoAを生じ、その後、後者を通して脂肪酸に変換される。(供給された親水性炭素源、例えば、グルコースに由来する)UPD-グルコースと一緒に、これらの(デノボ)脂肪酸が、SL生合成経路のビルディングブロックである(Van Bogaert et al.,2013)。反対のこと、例えば、その後のβ-酸化及び糖新生の生合成経路の作用を通してのグルコースへの疎水性炭素源、例えば、脂肪酸の転換もそうである。まず、脂肪酸をアセチル-coAに変換し、これが、後者を通してグルコースにさらに変換され得る(Lin et al.,2001)。
【0046】
したがって、実施形態において、好適な微生物株に、親水性炭素源(好ましくはグルコ
ース)及び/又は疎水性炭素源(好ましくは(不飽和)第1級脂肪アルコール、好ましくはオレイルアルコール)、好ましくは親水性炭素源及び疎水性炭素源が供給されて、工程a)における上記炭素源(複数可)を変換して、10%未満、例えば、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%未満の(不飽和)α,ω-1-ボラグリコシド、α,ω-2-ボラグリコシド及び/又はα,ω-3-ボラグリコシドを含有する不飽和α,ω-ボラグリコシドを含む培養液とする。
【0047】
実施形態において、本明細書に記載されている好適な微生物株は、さらなる遺伝子修飾を有することで、親水性炭素源、例えばグルコース(疎水性炭素源を供給しない)、又は、疎水性炭素源、例えば脂肪酸若しくは植物油(親水性炭素源を供給しない)のいずれかの、10%未満のα,ω-1-ボラグリコシド、α,ω-1-ボラグリコシド及び/又はα,ω-3ボラグリコシドを有する不飽和α,ω-ボラグリコシドの生成のための使用を可能にする。
【0048】
特に、上記の好適な微生物株は、当該分野において記載されている方法によってさらに操作されて、適合した株が、上記の方法にしたがって、親水性炭素源が供給されていない疎水性基質として、脂肪酸、例えば、オレイン酸、又は植物油、例えば、高オレインヒマワリ油(HOSO)を使用することを可能にし得る。このことは、供給した植物油/脂肪酸をかかる好適な株において脂肪アルコールに効率的に変換する2つの酵素の(過剰)発現によって達成され得る。かかる酵素の例は、例えば、カルボン酸レダクターゼ酵素であり(Kalim Akhtara et al.,2013)、脂肪酸を脂肪アルデヒドに変換し、これが、その後、例えば、アルデヒドレダクターゼ又はアルデヒドデカルボキシラーゼの同時発現によって脂肪アルコールに変換され得る(Fatma et al.,2016;Kang & Nielsen,2017)。完全飽和脂肪酸もまた、供給されて、脂肪酸デサチュラーゼのさらなる発現を通して不飽和脂肪酸に変換され得る(Cifre et al.,2013)。上記の好適な株におけるかかるさらなる操作は、得られる株に、親水性炭素源を同時に供給することなく脂肪酸及び/又は脂肪酸含有油/脂肪を専ら供給して、10%未満の汚染α,ω-1-ボラグリコシド、α,ω-2-ボラグリコシド及び/又はα,ω-3-ボラグリコシドを有する不飽和α,ω-ボラグリコシドの生成をさらに可能にする。脂肪酸は、すなわち、上記で記載されているように脂肪アルコールに変換されるが、β-酸化を通してアセチル-CoAにも変換され、次いで、糖新生を介してUDP-グルコースに同じく変換される。共に、これらは-上記で言及されているように-α,ω-ボラグリコシドへの生合成経路に入る所要の前駆体である。しかし、かかる新しい操作された株には-上記で定義されているように-好ましくは、親水性炭素源(好ましくはグルコース)と、より高い生産性を生じる疎水性炭素源(好ましくは(不飽和)第1級脂肪アルコール、好ましくはオレイルアルコール)との組み合わせが供給される。
【0049】
上記の好適な微生物株はまた、疎水性炭素源を供給することなく、親水性炭素源、例えば、グルコース、グリセロール、スクロース、フルクトース、マルトデキストリン、デンプン加水分解物、ラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、糖蜜など又はこれらの混合物を使用して、10%未満の汚染(不飽和)α,ω-1ボラグリコシド、α,ω-2-ボラグリコシド及び/又はα,ω-3-ボラグリコシドを含む不飽和α,ω-ボラグリコシドを生成するのに使用され得る。記載されている株は、その内因性経路を使用して、親水性炭素源、例えば、グルコースを、解糖(アセチル-CoAを生じる)、続いてのデノボ脂肪酸生合成を通して、脂肪酸に変換することができる。これらの脂肪酸は、その後、上記の遺伝子/酵素の発現によって脂肪アルコールにさらに変換され得る。供給された親水性炭素源に由来する、UDP-グルコースと共に、これらの脂肪アルコールは、不飽和α,ω-ボラグリコシドへの生合成経路に入る。
【0050】
実施形態において、本明細書に記載されている好適な微生物株は、当該分野において記載されている方法によってさらに操作されて、アルカン及び/又はアルケンから選択される疎水性基質の供給を可能にして、10%未満の(不飽和)α,ω-1-ボラグリコシド、α,ω-2-ボラグリコシド及び/又はα,ω-3-ボラグリコシドを含む不飽和α,ω-ボラグリコシドの合成を可能にし得る。特に、好適な微生物株は、アルカンをアルケンに変換する任意選択的には(内因性)デサチュラーゼ、及び、(内因性)酸化酵素、例えば、対応する不飽和脂肪アルコールへのアルケンの酸化を可能にするCYP52M1酵素のさらなる(過剰)発現によってさらに操作されて、次いで、上記で記載されているように不飽和α,ω-ボラグリコシドにさらに変換され得る。
【0051】
実施形態において、「好適な基質(複数可)」は、親水性基質、例えば、グルコース及び/又は疎水性基質、好ましくは、親水性基質、例えば、グルコース及び疎水性基質の組み合わせ、より好ましくは、親水性基質、例えば、グルコース及び不飽和の疎水性基質、例えば、少なくとも6個の炭素の脂肪族のテール鎖長を有する脂肪アルコールの組み合わせを称する。
【0052】
親水性基質(複数可)の非限定例は、炭水化物、例えば、グルコース、グリセロール、スクロース、フルクトース、マルトデキストリン、デンプン加水分解物、ラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、糖蜜など又はこれらの混合物を含有する基質である。疎水性基質(複数可)の非限定例は、脂肪アルコール、脂肪酸、植物若しくは動物油/脂肪、飽和及び/若しくは不飽和炭化水素、例えば、直鎖状アルカン、アルケンなど並びに/又はこれらの混合物である。好ましくは脂肪アルコールが使用され、非限定例は、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、オクタデセノール、イソステアリルアルコール、ノナデカノール、イコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、ドコセノール及び/又はこれらの混合物である。さらなる実施形態において、(脂肪)アルコールは、最大1つのヒドロキシル基を有し(すなわち、モノアルコール)、好ましくは(脂肪)アルコールは、第1級脂肪アルコールである。さらなる実施形態において、(脂肪)アルコールは、ジオールではない。より好ましくは、第1級、不飽和の直鎖状脂肪アルコールが使用され、上記脂肪アルコール内の二重結合は、上記アルコール内のいずれかの隣の炭素原子対の間に位置し得るが、さらなる分子では、好ましくは、上記アルコールの「中ほど」に位置している。この最後の場合では、これの誘導された不飽和α,ω-ボラグリコシドが「対称」であり、すなわち、二重結合が疎水性脂肪族リンカーの中ほどに存在し、炭水化物によって両側に位置する。二重結合が、供給されたアルコールに存在しない場合、かかる不飽和は、微生物に存在する内因性「デサチュラーゼ」酵素(複数可)の作用を通して導入され得る。代替的には、異種「デサチュラーゼ」遺伝子/酵素は、好適な株において発現され得る。故に、さらなる実施形態において、好適な疎水性基質は、少なくとも6個の炭素の脂肪族鎖長を有する不飽和脂肪アルコール、好ましくは、C9位に(すなわち、C18リンカーの中ほどに)存在する二重結合を有して18個の炭素原子の鎖長を有する不飽和脂肪アルコールである。本発明の方法の実施形態において、上記不飽和α,ω-ボラグリコシドは完全に対称である。本発明の方法の実施形態において、脂肪アルコールは、望ましくない且つ汚染のα,ω-1-ボラグリコシド、α,ω-2-ボラグリコシド及び/又はα,ω-3-ボラグリコシドを形成することなく、上記脂肪アルコールを不飽和α,ω-ボラグリコシドに変換するために、好適な微生物によって代謝される。
【0053】
実施形態において、好適な微生物株に、ジオールが供給されていない。
【0054】
本明細書に記載されている方法の任意選択的な工程において、不飽和α,ω-ボラグリ
コシドは-当該分野において公知のいずれの方法によって-例えば、微生物細胞を除去する精密ろ過、続いての二段階の限外ろ過プロセスによって、大きい及び小さい両方のサイズの汚染物質を、これらの分子が作製されたバイオプロセス培養液から除去して、精製されたα,ω-ボラグリコシド液体ストリームを結果として生じ、任意選択的に凍結乾燥され得ることによって、精製され得る(Roelants et al.,2016;Van Renterghem et al.,2018)
【0055】
本明細書に記載されている方法のさらなる工程において、バイオプロセス培養液に存在する、任意選択的に精製されている不飽和α,ω-ボラグリコシドは、不飽和α,ω-ボラグリコシドにおける少なくとも1つの二重結合の開裂を好む反応条件に供される。かかる反応条件の非限定例は、オゾン分解反応であり、上記不飽和α,ω-ボラグリコシドの二重結合(複数可)の酸化開裂を結果として生じて、ボラグリコシド分子当たり2つのより短い鎖状のω-グリコシド分子の形成を生じる。実施形態において、ボラグリコシド当たり2つの同一のオメガ-グリコシドが、上記不飽和α,ω-ボラグリコシドが対称である場合に生じ得る。本明細書においていずれかの箇所に記載されているように、上記のより短い鎖状のオメガ-グリコシドは、アルデヒド基、アルコール基又はカルボン酸基によって-α位において-さらに官能化され得る。α位にアルデヒド(ソホロシドアルデヒド)、アルコール(ソホロシドアルコール)又は酸性(ソホロ脂質)基を有するこれらのより短い鎖状のω-グリコシドは、不飽和α,ω-ボラグリコシドの二重結合を開裂する特定のプロセス条件を変動することによって選択的に作製され得る(Delbeke,2016;Delbeke,Roman,et al.,2015;Lorer,2017)。
【0056】
不飽和α,ω-ボラグリコシド(対称であり得る)を生成する好適な微生物は、例えば、機能不全の、SL生合成経路における第1ヒドロキシル化工程に関与しているシトクロムP450モノオキシゲナーゼ、特に、CYP52M1若しくはそのホモログ、並びに、機能不全の、対応する脂肪アルデヒド(及び、アルデヒドヒドロゲナーゼの作用によってさらに脂肪酸となる)への脂肪アルコールの転換に関与している脂肪アルコールオキシダーゼ、特に、FAO1若しくはそのホモログ、を有する変異されている真菌株、又は、機能不全の、SL生合成経路において第1ヒドロキシル化工程に関与しているシトクロムP450モノオキシゲナーゼ、特に、CYP52M1若しくはそのホモログ、機能不全の、対応する脂肪アルデヒド(及び、アルデヒドヒドロゲナーゼの作用によってさらに脂肪酸となる)への脂肪アルコールの転換に関与している脂肪アルコールオキシダーゼ、特に、FAO1若しくはそのホモログ、並びに、機能不全の、SL生合成経路において第2グルコシル化工程に関与している、グルコシルトランスフェラーゼ、特に、UGTB1若しくはそのホモログ、を有する変異されている真菌株であり、上記真菌株は、好ましくは、スタルメレラ・ボンビコラ(Starmerella bombicola)(以前はカンジダ(Candida))、最初はT.マグノリア(magnolia)と同定されたスタルメレラアピコラ(Starmerella apicola)(Gorin et al.,1961)(以前はカンジダ(Candida))、C.ボンビコラ(bombicola)(Spencer et al.,1970)、Wickerhamiella domericqiae(Chen et al.,2006)、シュードハイホジーマ・ボゴリエンシス(Pseudohyphozyma bogoriensis)(以前はロドトルラ(Rhodotorula)又はカンジダ(Candida))(Tulloch et al.,1968)、スタルメレラ・バチスタエ(Starmerella batistae)(Konishi et al.,2008)(以前はカンジダ(Candida))、スタルメレラ・フロリコラ(Starmerella floricola)(Imura et al.,2010)(以前はカンジダ(Candida))、カンジダ・リオドセンシス(Candida riodocensis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、スタルメレラ・
ステラータ(Starmerella stellata)(以前はカンジダ(Candida))及びカンジダ種(Candida sp.)NRRL Y-27208(Kurtzman et al.,2010)、スタルメレラ・クオイ(Starmerella kuoi)(Kurtzman,2012)(以前はカンジダ(Candida))、カンジダ・グロペンギエセリ(Candida gropengiesseri)、カンジダ・マグノリアエ(Candida magnoliae)、カンジダ・アンタークティカ(Candida Antarctica)、シュードジマ・アンタークティカ(Pseudozyma Antarctica)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)並びにいずれか他の(スタルメレラ分岐群(Starmerella clade)の)SL生成株からなる群から選択される酵母菌である。
【0057】
用語「変異されている真菌株」は、酵素CYP52M1又はそのホモログ及びFAO1又はそのホモログが非機能性又は機能不全であるように変異されている、上記で定義されている真菌株を指す。CYP52M1又はそのホモログ(複数可)に関しては、このことは、(生成したデノボ)脂肪酸のω-1(又はω-2)ヒドロキシル化が起こり得ないが、脂肪アルコールのかかるヒドロキシル化がこの酵素によってこれ以上起こり得ず、かかる株によって生成するSLが結果として存在しないことを意味する(Van Bogaert et al.,2013)。FAO1又はそのホモログ(複数可)に関しては、このことは、(α,ω-ボラグリコシドへの生合成経路の)脂肪アルコール前駆体に存在するOH基が対応するアルデヒドに酸化し、かかるアルデヒドが、脂肪酸に次いでさらに酸化され、次いで、ヒドロキシル化されてSLに組み込まれることがこれ以上起こり得ないことを意味する。より詳細には、(デノボ)脂肪酸及び脂肪アルコール(脂肪酸に変換される)からのSL生成への経路が遮断される。理論において及び当該分野における情報に基づくと、これにより、この株に脂肪アルコール(複数可)及び親水性炭素源、例えば、グルコースを供給する際にアルキルソホロシド(汚染SLを含まない)の選択的生成を生じることになる。驚くべきことに、この株は、少量のアルキルソホロシドと一緒に脂肪アルコール(複数可)及びグルコースが供給されたときに、代わりに、不飽和α,ω-ボラソホロシドを生成する。有利には、これらの株は、不飽和α,ω-ボラソホロシドを選択的に生成し、すなわち、脂肪酸由来のソホロ脂質、例えば、CYP52M1又はそのホモログによって変異されていない対応する株によって産生される酸性のラクトン又はボラソホロ脂質を含まない又はこれを最小で含む。したがって、本明細書に記載されている方法のその後の工程において得られるω-グリコシドもまた、これらのソホロ脂質又はこれらのソホロ脂質の誘導体によって汚染されておらず、または汚染が最小である。
【0058】
用語「機能不全の」は、「正常に」機能していない、及び/又は、機能が存在しない若しくは損なわれている、遺伝子又はタンパク質を概して意味する。当該用語は、そのため:a)存在しないため機能性でない、b)依然として存在しているが非機能性にされている、又はc)存在するが、機能が弱められている若しくは低減されている遺伝子又はタンパク質、例えば、対応する野生型遺伝子又はタンパク質の機能又は活性の90%、80、70%、60%又は50%、40%又は30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、さらにより好ましくは5%未満、例えば、4%、3%、2%又は1%未満である機能又は活性を保持している遺伝子又はタンパク質を指す。用語「機能不全の」は、完全に機能性の酵素CYP52M1若しくはそのホモログ(複数可)及びFAO1若しくはそのホモログ(複数可)についてコードするその能力を損失している遺伝子、又は、そのCYP52M1及びFAO1活性を完全又は部分的のいずれかで損失しているポリペプチド/タンパク質を具体的には指す。「部分的に」は、後者の酵素の活性-当該分野において公知のいずれの方法によって測定される-が上記酵素の野生型カウンターパートの活性と比較したとき有意に低い(p<0.05)、例えば、上記酵素の野生型カウンターパートの活性と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少
なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%又は少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、97%、98%又は99%低いことを意味する。
【0059】
「機能不全の」核酸分子は、上記で定義されているように、変異によって、又は上記核酸の転写若しくは翻訳をサイレンシングするいずれか公知の手段によって得られ得る。後者は、核酸フラグメント、マーカー遺伝子、若しくは、標的遺伝子におけるいずれか他の分子の挿入、標的遺伝子の変異若しくは除去、特異的なsiRNAs、miRNA若しくはこれらの組み合わせの使用、又は当業者に公知のいずれか他の手段を含む。
【0060】
用語「変異」は、上記真菌株のゲノムにおける、自発的変異並びに/又は誘導及び/若しくは定方向変異を指す。上記変異は、点変異、欠失、フレームシフト、挿入又はいずれか他のタイプの変異であり得る。
【0061】
同様に、「機能不全の」ポリペプチドは、上記で定義されているように、本明細書に記載されている標的遺伝子の機能を弱める又は妨げるいずれかの(小)化合物又は手段によって得られ得る。転写若しくは翻訳をサイレンシングする手段、又は、本発明の標的遺伝子の機能を妨げる手段、又は、標的遺伝子の必要なレギュレータ/アクチベータタンパク質の機能を妨げる手段は、いずれかの分子、例えば-限定されないが-抗体、アミノ酸、ペプチド、小分子、アプタマー、リボザイム、RNA干渉(RNAi)を開始するのに使用されるdsRNAのようなオリゴリボヌクレオチド配列、又はアンチセンス核酸の使用を含む。かかる分子は、そのため、標的タンパク質若しくはそのアクチベータ/レギュレータタンパク質において結合することが可能であり、又は-例えば-標的タンパク質若しくはそのアクチベータ/レギュレータについての結合及びmRNAのコーディング劣化によって、標的酵素若しくはそのアクチベータ/レギュレータの細胞合成に干渉することが可能である。
【0062】
「機能不全の」CYP52M1又はそのホモログ(複数可)及びFAO1又はそのホモログ(複数可)は、当業者に公知のいずれかの方法によって得られる、活性が低減した酵素を指す。上記方法の非限定例は、点変異の導入、切断又は変異酵素の使用、インヒビタ又は抗体の使用、及び上記の方法のいずれかである。
【0063】
用語「機能不全の」はまた、そのため、適用された真菌株のゲノムにおける上記の特定の遺伝子(cyp52M1及びfao1)の非存在を指す。
【0064】
遺伝子並びにこれらのコードされた酵素CYP52M1及びFAO1及びUGTB1は、当該分野において周知であり、且つ-例えば-特許WO2011154523号(Soetaert et al.,2010)(CYP52M1、UGTB1)及びTakahashi et al.,(2016)(FAO1)に記載されている。
【0065】
この後者の株は、当該分野において公知のいずれの方法によって作製されてもよく、上記に記載されている。
【0066】
さらなる実施形態において、上記で記載されているように変異されている真菌株は、機能不全の、ソホロ脂質/ソホロシド生合成経路において第2グルコシル化工程に関与しているグルコシルトランスフェラーゼ、特に、UGTB1又はそのホモログ、をさらに含む。
【0067】
用語「SL生合成経路において第2グルコシル化工程に関与しているグルコシルトランスフェラーゼ」は、WO2011154523(Soetaert et al.,20
10)に詳細に記載されている。実際、WO2011154523は、SL経路において第1グリコシル化(WO2011154523の実施例2を参照されたい)及び第2グリコシル化工程(WO2011154523の実施例3を参照されたい)が存在し、「第1」(すなわち、UGTA1又はそのホモログ)及び「第2」グリコシルトランスフェラーゼ(すなわち、Genbank受託番号HM440974を有し、Saerens,et
al.,(2011)においても詳細に記載されているUGTB1又はそのホモログ)が関与していることを開示している。
【0068】
不飽和α,ω-ボラグリコシドの生成に向けた所要の酵素工程を表す当該分野において記載されている方法によって修飾され(Van Bogaert et al.,2013,2016;Van Renterghem et al.,2018)且つα,ω-1又はα,ω-2又はα,ω-3(不飽和)ボラグリコシドのいずれか1つ以上の生合成を結果として生じる酵素活性を有さないいずれか他の微生物宿主株が本発明の方法において使用され得る。
【0069】
実施形態において、上記不飽和α,ω-ボラグリコシドは、(テトラ-、トリ-、ジ-、モノ-及び/又は非)アセチル化され得、二重結合の破壊後にジ-又はモノ-アセチル化された誘導されたω-グリコシドを結果として生じさせる。
【0070】
用語「アセチル化」により、具体的には、上記ボラグリコシドに存在する糖部位の6’又は6’’位に「アセチル」官能性を含有するグリコシドが意図される。用語「アセチル化」(又はエタノイル化)は、より一般には、アセトキシ基を結果として生じる化学的化合物にアセチル官能基を導入する反応、すなわち、活性水素原子をアセチル基で置換することを記載している。アセチル基(CHCO)によるヒドロキシル基の水素原子の置き換えを含む反応は、特定のエステル、アセテートを生じさせる。
【0071】
特定の実施形態において、生成されるω-グリコシドは、C9:0ω-ソホロシド又はC9:0ω-グルコシドである。
【0072】
実施形態において、本発明は、オゾン分解の際のプロトン性求核試薬、好ましくは水が、オゾン分解による安全性の懸念を克服し、プロセスの環境に優しい性質を増加させるために、溶媒として使用される、上記で記載されている方法に関する。
【0073】
特定の実施形態において、C9:0ω-ソホロシドを製造するための方法であって:
a.グルコース及びオレイルアルコールの転換により、10%未満のC18:1α/ω-1ボラソホロシド及び/又はC18:1α/ω-2ボラソホロシドを含有する対称C18:1α,ω-ボラソホロシドをS.ボンビコラ(bombicola)株と共に含む培養液を生成する工程であって、遺伝子cyp52M1及びfao1遺伝子がノックアウトされている工程;
b.任意選択的に、上記対称C18:1α,ω-ボラソホロシドを精製する工程;
c.工程a)による上記培養液内の上記対称C18:1α,ω-ボラソホロシドを、オゾン分解反応、好ましくは水中でのオゾン分解反応に供する工程;並びに
d.工程c)において得られたC9:0ω-ソホロシドを、好適な化学的誘導体化経路、好ましくは:アシル化、アルキル化、アミド化、アミン化、アリール化、ビオチン化、カルバモイル化、カルボニル化、環付加、カップリング反応、エーテル化、エステル化、グリコシル化、ハロゲン化、メタル化、メタセシス、ニトリル形成、オレフィン化、酸化、ホスフィニル化、ホスホニル化、ホスホリル化、4級化、転位反応、還元、シリル化、チオール化及び/又は加硫;を含む群から選択される化学的誘導体化経路に任意選択的に供する工程;
を含む上記方法が提供される。
【0074】
特定の実施形態において、C9:0ω-グルコシドを製造するための方法であって:
a.グルコース及びオレイルアルコールの転換により、10%未満の対称C18:1α,ω-1ボラグルコシド及び/又はC18:1α,ω-2ボラグルコシドを含有する対称C18:1α,ω-ボラグルコシドを、S.ボンビコラ(bombicola)株と共に含む培養液を生成する工程であって、遺伝子cyp52M1、fao1遺伝子及びugtB1遺伝子がノックアウトされている工程
b.任意選択的に、上記対称C18:1α,ω-ボラグルコシドを精製する工程
c.工程a)による上記培養液内の上記対称α,ω-ボラグルコシドを、オゾン分解反応、好ましくは水中でのオゾン分解反応に供する工程
d.工程c)において得られたC9:0ω-グルコシドを、好適な化学的誘導体化経路、好ましくは:アシル化、アルキル化、アミド化、アミン化、アリール化、ビオチン化、カルバモイル化、カルボニル化、環付加、カップリング反応、エーテル化、エステル化、グリコシル化、ハロゲン化、メタル化、メタセシス、ニトリル形成、オレフィン化、酸化、ホスフィニル化、ホスホニル化、ホスホリル化、4級化、転位反応、還元、シリル化、チオール化及び/又は加硫;を含む群から選択される化学的誘導体化経路に任意選択的に供する工程
を含む上記方法が提供される。
【0075】
本発明はまた、α位において官能化されていないためα位において非官能化メチル機能によって特徴付けられるグリコシドを生成する方法も提供する。α位において官能化されていない上記グリコシドは、本明細書において「アルキルグリコシド」と称される。「アルキルグリコシド」は、本明細書に記載されているように、そのため、少なくとも1つの炭水化物分子がα位において官能化されていない脂肪族炭素鎖にグリコシド結合を介して共有結合している分子を指す。少なくとも1つの炭水化物分子が、脂肪族炭素鎖の第1級若しくは末端炭素(すなわち、ω-アルキルグリコシド)又は脂肪族炭素鎖の第2級若しくはサブ末端炭素原子(例えば、ω-1-アルキルグリコシド、ω-2-アルキルグリコシド)に結合している。好ましい実施形態において、アルキルグリコシドは、ω-アルキルグリコシドである。アルキルグリコシドは、ジ-、モノ-及び/又は非アセチル化されていてよい(すなわち、アルキルグリコシドは、上記アルキルグリコシドに存在する糖部位の6’又は6’’にアセチル官能性を含有し得る。アルキルグリコシドの非限定例は、アルキルソホロシド及びアルキルグルコシドである。
【0076】
増加した比でアルキルグリコシドを生成する改良された方法を本明細書において提供する。特に、アルキルグリコシドを生成する方法であって、好適な微生物株により好適な基質(複数可)を転換してアルキルグリコシドを含む培養液を生成する工程を含む、上記方法を提供する。「好適な基質(複数可)」は、本明細書においていずれかの箇所に記載されているω-グリコシドを選択的に生成する方法における使用に好適である基質であり、好ましい基質は第1級脂肪アルコールである。ω-1アルキルグリコシド及びω-2アルキルグリコシドの生成のために、上記の株にそれぞれ第2級又は第3級脂肪アルコールが供給され得る。「好適な株」は、本明細書においていずれかの箇所に記載されているω-グリコシドを選択的に生成する方法における使用に好適である株、より詳細には、上記で記載されているSL生成株であり、これらは、CYP52M1遺伝子若しくはそのホモログ(複数可)において変異されており且つFAO1遺伝子若しくはそのホモログ(アルキルソホロシドの生成のため)において変異されており;又は、CYP52M1遺伝子若しくはそのホモログ(複数可)において変異されており且つFAO1遺伝子において変異されており且つUGTB1遺伝子若しくはそのホモログ(複数可)(アルキルグルコシドの生成のため)において変異されている。好ましくは、「好適な株」は、長鎖脂肪アルコール及び/又はアルカン/アルケンのω-酸化に関与している「酸化性遺伝子/酵素」をコードする、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのかかる、より好ましくは少なく
とも3つの内因性遺伝子においてさらに変異されており、より特定的には、長鎖脂肪アルコール及び/又はアルカン/アルケンのω-酸化に関与している酸化酵素をコードする少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つの内因性遺伝子が、上記酸化酵素が機能不全又は非機能性、好ましくは非機能性であるようにさらに変異されていて、アルキルグリコシド比の増加を結果として生じる。上記酸化酵素(複数可)は、α,ω-ボラグリコシドにさらに組み込まれ得る長鎖α,ω-脂肪ジオールの発生を生じる第1級脂肪アルコールの酸化に関与している。実施形態において、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つの酸化酵素が:配列番号:101に記載されているアミノ酸配列を含むA1又はそのホモログ、配列番号:103に記載されているアミノ酸配列を含むA2又はそのホモログ、配列番号:105に記載されているアミノ酸配列を含むA3又はそのホモログ、配列番号:107に記載されているアミノ酸配列を含むA4又はそのホモログ、配列番号:109に記載されているアミノ酸配列を含むA5又はそのホモログ、配列番号:111に記載されているアミノ酸配列を含むA6又はそのホモログ及び配列番号:113に記載されているアミノ酸配列を含むA7又はそのホモログ;を含む群から選択される。
【0077】
好ましい実施形態において、好適な株は、少なくとも、(配列番号:105に記載されているアミノ酸配列を含むA3をコードする)配列番号:104に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a3又はそのホモログ及び(配列番号:107に記載されているアミノ酸配列を含むA4をコードする)配列番号:106に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a4又はそのホモログにおいてさらに変異されている。好ましい実施形態において、好適な株は、少なくとも、(配列番号:105に記載されているアミノ酸配列を含むA3をコードする)配列番号:104に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a3又はそのホモログ、(配列番号:107に記載されているアミノ酸配列を含むA4をコードする)配列番号:106に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a4又はそのホモログ、及び(配列番号:101に記載されているアミノ酸配列を含むA1をコードする)配列番号:100に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a1又はそのホモログにおいてさらに変異されている。少なくとも遺伝子a3及びa4におけるさらなる変異(少なくとも機能不全又は非機能性のA3及びA4を有するように)は、アルキルグリコシド生成を(選択的に)増加させ;少なくとも遺伝子a3、a4及びa1におけるさらなる変異(少なくとも機能不全又は非機能性のA3、A4及びA1を有するように)は、選択的アルキルグリコシド生成をさらに増加させる(すなわち、ボラ形態ソホロシドの共生成が少ない)。
【0078】
実施形態において、好適な株は、(配列番号:101に記載されているアミノ酸配列を含むA1をコードする)配列番号:100に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a1又はそのホモログ、(配列番号:103に記載されているアミノ酸配列を含むA2をコードする)配列番号:102に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a2又はそのホモログ、(配列番号:105に記載されているアミノ酸配列を含むA3をコードする)配列番号:104に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a3又はそのホモログ、(配列番号:107に記載されているアミノ酸配列を含むA4をコードする)配列番号:106に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a4又はそのホモログ、(配列番号:109に記載されているアミノ酸配列を含むA5をコードする)配列番号:108に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a5又はそのホモログ、(配列番号:111に記載されているアミノ酸配列を含むA6をコードする)配列番号:110に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a6又はそのホモログ、及び(配列番号:113に記載されているアミノ酸配列を含むA7をコードする配列番号:112に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a7又はそのホモログにおいてさらに変異されている。
【0079】
さらなる態様は、ジオール、好ましくはα,ω-ジオールの生成のための、配列番号:101に記載されているアミノ酸配列を含む酵素A1若しくはそのホモログ、配列番号:105に記載されているアミノ酸配列を含む酵素A3若しくはそのホモログ、又は、配列番号:107に記載されているアミノ酸配列を含む酵素若しくは酵素A4若しくはそのホモログの使用に関する。
【0080】
関連態様は、ジオール、好ましくはα,ω-ジオールの生成のための方法であって、脂肪アルコール、好ましくは第1級脂肪アルコールを、配列番号:101に記載されているアミノ酸配列を含む酵素A1若しくはそのホモログ、配列番号:105に記載されているアミノ酸配列を含む酵素A3若しくはそのホモログ、又は、配列番号:107に記載されているアミノ酸配列を含む酵素若しくは酵素A4若しくはそのホモログと接触させて、ジオール、好ましくはα,ω-ジオールを生成するようにすることを含む、上記方法を対象とする。
【0081】
本明細書に記載されているいくつかの方法は、本明細書に開示されている第1級脂肪アルコールの酸化に関与している(精製された)酸化酵素、特に、酵素A1、A3又はA4、及び脂肪アルコール基質、好ましくは第1級脂肪アルコール基質を使用した、ジオール、好ましくはα,ω-ジオールの生成に関する。例えば、宿主細胞は、本明細書に開示されている第1級脂肪アルコールの酸化に関与している酸化酵素、特に、酵素A1、A3又はA4を(過剰)発現するように遺伝子操作され得る。組換え宿主細胞は、酸化酵素の(過剰)発現を可能にするのに充分な条件下で培養され得る。細胞不含抽出物は、次いで、公知の方法を使用して生じ得る。例えば、宿主細胞は、洗剤を使用して又は超音波処理によって溶解され得る。過剰発現した酸化酵素は、公知の方法を使用して精製され得、又は細胞不含抽出物は、ジオールの生成のためにこうして使用され得る。宿主細胞はまた、本明細書に開示されている第1級脂肪アルコールの酸化に関与している酸化酵素、特に、酵素A1、A3又はA4を(過剰)発現する、並びに、上記酸化酵素を培養培地内で分泌するように遺伝子操作され得る。分泌シグナル配列は、酸化酵素をこの末端までコードする核酸に操作可能に連結され得る。これに関連して、「操作可能に連結される」は、分泌シグナルペプチドをコードする配列及び分泌されるポリペプチドをコードする配列がインフレーム又はインフェイスで接続されて、その結果、発現の際にシグナルペプチドがこのようにリンクされたポリペプチドの分泌を容易にするようになっていることを示す。分泌された酸化酵素は、次いで、培養培地から分離され、細胞不含抽出物を含有する必要性が無く、公知の方法を使用して任意選択的に精製され得る。
【0082】
次に、脂肪アルコール、好ましくは、第1級脂肪アルコールは、細胞不含抽出物又は(精製された)酸化酵素に添加されて、脂肪アルコール基質又は第1級脂肪アルコール基質の末端ヒドロキシル化を可能にする条件下で維持され得、これにより、それぞれジオール又はα,ω-ジオールを生成する。ジオール又はα,ω-ジオールは、公知の技術を使用して分離及び精製され得る。
【0083】
本明細書に記載されている他の方法は、ジオール、好ましくはα,ω-ジオールの生成に関し、当該方法は、ジオール、好ましくはα,ω-ジオールの生成を可能にするように、培養培地において遺伝子操作された宿主細胞を培養することを含み、上記宿主細胞は、本明細書に開示されている第1級脂肪アルコールの酸化に関与している酸化酵素をコードする遺伝子(すなわち、上記遺伝子操作された宿主細胞は、本明細書に開示されている第1級脂肪アルコールの酸化に関与している酸化酵素をコードする(組換え)核酸を含む)、特に、(配列番号:101に記載されているアミノ酸配列を含むA1をコードする)配列番号:100に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a1若しくはそのホモログ、(配列番号:105に記載されているアミノ酸配列を含むA3をコードする)配列番号:104に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a3若しくはそのホモログ、
又は(配列番号:107に記載されているアミノ酸配列を含むA4をコードする)配列番号:106に記載されているヌクレオチド配列を含む遺伝子a4若しくはそのホモログを(過剰)発現するように遺伝子操作される。
【0084】
本明細書に記載されているジオールの生成のための方法における使用に好適な宿主細胞の非限定例として、油性真菌、例えば、ヤロウイア(Yarrowia)(例えば、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))、カンジダ(Candida)(例えば、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis))、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、及びリポミセス(Lipomyces)属からの酵母菌、並びに、本明細書においていずれかの箇所に記載されている天然ソホロ脂質生成真菌株、例えば、スタルメレラ(カンジダ)ボンビコラ(Starmerella (Candida) bombicola)、スタルメレラ(カンジダ)アピコラ(Starmerella (Candida) apicola)、カンジダ・マグノリアエ(Candida magnoliae)、カンジダ・グロペンギエセリ(Candida gropengiesseri)、スタルメレラ(カンジダ)バチスタエ(Starmerella
(Candida) batistae)、スタルメレラ(カンジダ)フロリコラ(Starmerella (Candida) floricola)、カンジダ・リオドセンシス(Candida riodocensis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、スタルメレラ(カンジダ)ステラータ(Starmerella (Candida) stellata)、スタルメレラ(カンジダ)クオイ(Starmerella (Candida) kuoi)、カンジダ種(Candida sp.)NRRL Y-27208、シュードハイホジーマ(ロドトルラ、カンジダ)ボゴリエンシス種(Pseudohyphozyma (Rhodotorula, Candida) bogoriensis sp.)、Wickerhamiella domericqiae、及びスタルメレラ分岐群(Starmerella
clade)のソホロ脂質生成株が挙げられ、上記天然ソホロ脂質生成真菌株は、機能不全の、ソホロ脂質生合成経路においてグリコシル化工程(複数可)に関与しているグルコシルトランスフェラーゼ(複数可)、例えば、機能不全のUGTA1又はそのホモログ及び機能不全のUGTB1又はそのホモログを有するように好ましくは変異されている。
【0085】
遺伝子操作された又は組換え宿主細胞は、宿主細胞によって、ジオール、好ましくはα,ω-ジオールの生成に好適な条件下で培養される。より特定的には、このことは、本明細書に開示されている酸化酵素をコードする遺伝子、特に、遺伝子a1、a3又はa4の「(過剰)発現を可能にするのに充分な条件」を示唆しており、本明細書に記載されているように、宿主細胞が、本明細書に開示されている酸化酵素を(過剰)生成することを可能にするあらゆる条件を意味する。ジオール、好ましくはα,ω-ジオールの生成に好適な条件は、宿主細胞に含まれる組換え核酸によってコードされる酸化酵素によって末端がヒドロキシル化されている、少なくとも1つの脂肪アルコール基質、好ましくは少なくとも1つの第1級脂肪アルコール基質を含む培養培地において宿主細胞を培養することをさらに示唆し得る。
【0086】
さらなる実施形態において、ジオール、好ましくはα,ω-ジオールを生成するための方法であって、上記に記載されている工程に加えて、宿主細胞又は培養培地からジオール又はα,ω-ジオールを回収する工程を含む、上記方法を提供する。好適な精製は、当業者に公知の方法によって、例えば、溶解方法、抽出、イオン交換、電気透析、限外ろ過、ナノろ過などを使用することによって実施され得る。
【0087】
なおさらなる態様は、本明細書に開示されている方法によって得られ得るジオール、好
ましくはα,ω-ジオールに関する。
【0088】
本発明は、ここで、以下の非限定例によってさらに示される。
【実施例
【0089】
実施例1:α,ω-1-ボラソホロシドを含まない(アセチル化)(対称)α,ω-ボラソホロシド及びα,ω-1-ボラグルコシドを含まない(アセチル化)(対称)α,ω-ボラグルコシドの生成
材料及び方法
株、培地及び培養条件
親株として、SL欠損Δcyp52M1株S.ボンビコラ(bombicola)を使用した(Van Bogaert et al.,2013)。ノックアウトしたS.ボンビコラ(bombicola)脂肪アルコールオキシダーゼfao1を、ura3遺伝子を自身のプロモータ及びチロシンキナーゼ(tk)ターミネータの調節制御下にΔcyp52M1株におけるfao1遺伝子座において一体化することによって、Van Renterghem et al.,(2018)によって記載されているものと同様に得た。新しい株の3つの形質転換細胞コロニーをΔcyp52M1親株と並行して成長及び糖脂質生成に関して評価した。培養、選択及び形質転換を、Lodens et al.,(2018)に記載されているように実施した。
【0090】
S.ボンビコラ(bombicola)を使用した生成実験を、Lang et al.,(2000)によって記載されている生成培地を使用して実施した。振とうフラスコ実験では、5mLの試験管培養を24時間(30℃)に設定し、その後、振とうフラスコに移した(4%イノキュレーション)。生成実験を培養の48時間後に添加した脂肪アルコール:オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール又はセチルアルコールを供給して実施した。Δcyp52M1Δfao1株もまた疎水性アルコールを添加せずにアセスメントした。生成実験毎に、グルコースが培地から枯渇したら培養を停止した。実験を二重に実施した。平均値を標準偏差と共に提示する。
【0091】
分子技術
一般的な技術
一般的な分子技術をGreen & Sambrook,(2012)によって記載されているように用いた。線状欠失カセットを、pGEM-T(Promega)及びpJET(Thermo Fisher)ベクターをベースとして、大腸菌においてクローン化及び維持したベクター骨格から生じさせた。クローニング工程を以下に記載する。全てのプライマー配列を表1に表す。
【0092】
【表1】

【0093】
Δcyp52M1Δfao1ノックアウト株の作製
fao1ノックアウトカセットの作製は、Van Renterghem et al.,(2018)に記載されている。これを使用してS.ボンビコラ(bombicola)Δura3::0Δcyp52M1::Pgapd_hph_Ttk株、又はさらにはΔura3Δcyp52M1株と呼ばれる;を形質転換した。hph遺伝子をストレプ
トミセスヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopus)から単離し、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ耐性についてコードした(Gritz & Davies,1983)。形質転換後、ura3陽性コロニーを選択的SD培地において選択した。カセットの正確な統合をコロニーPCRによって確認した。新たに作り出されたΔura3::0Δcyp52M1::Pgapd_hph_tTK Δfao1::Pura3_ura3_Ttk株では、さらにはΔcyp52M1Δfao1と呼ばれるものにおいて、それぞれ、3つの成功したコロニーを選んだ。
【0094】
下流の処理及び特性決定
オレイルを供給したときに生じたΔcyp52M1Δfao1株の生成物の精製を、アルカリ加水分解(pH12、5M NaOH、37℃、1時間)を実施して糖脂質を完全に脱アセチル化することによって行い、分析用のより均一な生成物を得た。精製及び乾燥した生成物をNMR分析用分取液体クロマトグラフィ(PLC)(以下参照)によってさらに精製した。
【0095】
分取層クロマトグラフィ(PLC)
環境に優しい蛍光指示薬(F254)(Analtech)を含浸した2mmシリカゲルでコーティングしたUniplate20×20cm PLCプレートを使用した。まず、100mgのサンプルをMilliQ水に溶解した。その後、溶液を当該プレートの底部から2cmにおいて長い画線として適用した。PLCプレートを、SL溶媒混合物クロロホルム/メタノール/水(65/15/2、v/v/v)を含有する溶媒チャンバに置いた(Asmer et al.,1988)。溶媒展開及びそれぞれの蒸発後、プレートを254nmのUV光下に置いた。その後、対象となるハイライトしたゾーンを、外科用メスを使用して擦り落とし、擦り落とされたシリカゲルを収集した。化合物を、その後、20mLのMilliQ水をファルコンに添加することによって分割し、4500rpmで10分間遠心分離した。上清を収集し、プロセスを繰り返した。ボラSS生成物を含有する全上清をろ過し(カットオフ0.22μm、Millex(登録商標)GV)、残余シリカゲル粒子を除去した。最後に、アルファ1-4凍結乾燥製剤(Christ)を使用して水を除去して、NMR分析に好適な乾燥した高度に純粋な生成物を得た。
【0096】
分析技術
成長の追跡
培養の光学密度(OD)を、生理溶液(9g/L NaCl)で希釈した1mLサンプルについてJasco V630 Bio spectrophotometer(Jasco Europe)を使用して600nmで測定した。培養実験における酵母菌細胞の生存率を、培養体積当たりのCFUの平均の対数をlog(CFU/mL)として表したコロニー形成単位(CFU)を求めることによってアセスメントした(Saerens,Saey,et al.,2011)。代替的には、細胞乾燥重量(CDW)を、風袋の重さを量ったエッペンドルフ管において1mLの発酵サンプルを14000rpmで5分間遠心分離し、その後、細胞ペレットを1mLの生理溶液で2回洗浄することによって求めた。残存する細胞ペレットを70℃のオーブンに5日間置き、次いでその後、秤量した。エッペンドルフ管の空の重量を除算した後にCDW(g/L)を算出した。
【0097】
グルコース濃度の追跡
グルコース濃度を、2700Select生化学分析器(YSI Inc.)を使用して、又は、蒸発光散乱検出器(Waters Acquity ELSD Detector)をカップリングした超高速液体クロマトグラフィ(Waters Acquity
H-Class UPLC)(UPLC-ELSD)を使用して求めた。UPLC分析では、Acquity UPLC BEH Amideカラム(130Å、1.7μm、2.1×100mm)(Waters)を35℃で使用し、0.5mL/分の定組成流量
の75%アセトニトリル及び0.2%トリエチルアミン(TEA)を適用した(5分/サンプル)。ELS検出では、ネブライザを15℃に冷却し、ドリフト管を50℃の温度で保った。線形範囲が、ELS検出で100のゲインを使用して0~5g/Lのグルコースにあることを見出した(Empowerソフトウェア)。グルコース消費を表すために、UPLC-ELSDによって得られたグルコース濃度を通して線形曲線をフィッティングし、それぞれの傾きを採取してグルコース消費速度(g/L.h)として示した。
【0098】
糖脂質/グリコシドの分析
糖脂質分析用のサンプルを、1mLの純粋なエタノール及び0.5mLの発酵培養液の混合物を5分間激しく振とうすることによって調製した。その後、15000rpmで5分間遠心分離後、細胞ペレットを除去し、上清をPTFEフィルタ(カットオフ0.22μm、Novolab)を使用してろ過し、50%エタノール(別途記述されていない限り)において適切に希釈した後、(超)高速液体クロマトグラフィ-質量分析((U)HPLC-MS)及び(U)HPLC-ELSD(蒸発光散乱検出器)において分析した。
【0099】
HPLC-MSを、MS(Micromass Quattro LC)検出システムにカップリングしたLC(Shimadzu)を使用して実施した。異なる成分を、Chromolith Performance RP-18 Endcapped 100-4.6mmカラム(Merck KGaA)において30℃で極性によって分離した。LC-MS方法は、2つの溶媒:0.5%酢酸を含むMilliQ、及び純粋なアセトニトリル(ACN);に基づいた勾配溶離を使用する。分析の際、1mL/分の流量を適用した。勾配は5%アセトニトリルで開始し、40分にわたって95%まで線形増加させる。この後、95%アセトニトリルをさらに10分間保持し、その後、これを5分で5%アセトニトリルまで戻す。サンプル当たりの合計分析時間は60分/サンプルである。MSの走査範囲を215~1100g/molに設定した。HPLC-MSについて言及したものと同様の条件を使用して、HPLC-ELSD分析を、2000ES ELSD(Alltech)をカップリングしたVarian Prostar HPLC(ThermoScientific)によって40℃で実施した。全ての他の条件は、HPLC-MSについて言及したものと同様である。
【0100】
UPLC-ELSD分析を、UPLC-MSと同じカラム及び分析方法を用いて、Acquity H-Class UPLC(Waters)及びAcquity ELSD
Detector(Waters)において実施した。ELSD検出では、ネブライザを12℃で冷却し、ドリフト管を50℃の温度で保ち、ゲインを200に設定した。糖脂質を定量化するために、精製された生成物を希釈系列で調製した。市販のC18:1アセチル化ボラSSの精製されたバッチ(バッチ番号SL24A)及び精製されたアセチル化C16:0アルキルSSバッチ(バッチ番号aAlkC16_2)をそれぞれボラSS及びアルキルSSの定量化に用いた。
【0101】
代替的には、UPLC-MSを、Accela(ThermoFisher Scientific)及びExactive Plus Orbitrap質量分析計(ThermoFisher Scientific)を用いて実施した。糖脂質分析では、Acquity UPLC CSH C18カラム(130Å、1.7μm、2.1mm×50mm)(Waters)並びに0.6mL/分の流量でのmilliQ中0.5%酢酸(A)及び100%アセトニトリル(B)に基づく勾配溶離システムを適用した。方法は以下の通りであった:初期濃度の5%のB(95%のA)は、最初の6.8分の間に95%のB(5%のA)まで線形増加し、次いで、1.8分の間に5%のB(95%のA)までさらに線形減少した。その後、ランの終わりまで5%のB(95%のA)を維持する(10分/サンプル)。陰イオンモードを使用し、2μLのサンプルを注入した。MS検出を、加熱したエレクトロスプレーイオン化(HESI)源によって行い、条件を、定性的
な方法で215~1300m/zの範囲の質量を検出するように設定した。
【0102】
全てのH及び13C NMRスペクトルを、H/BB z-勾配プローブ(BBO、5mm)を装備したBruker Avance IIIにおいてそれぞれ400及び100.6MHzで記録した。DMSO-[D6]を溶媒として及び内部化学シフト標準として使用した(Hでは2.50ppm及び13Cでは39.52ppm)。全てのスペクトルを、TOPSPIN3.2ソフトウェアを使用して処理した。アタッチドプロトンテスト(APT)、13C、COSY、及びHSQCのスペクトルを、Brukerパルスプログラムライブラリにおいて利用可能な標準配列を通して取得した。文献(Gheysen et al.,2008;Petersen et al.,2006)にしたがって、カスタム設定をHMBC(32スキャン)、TOCSY(100ミリ秒のMLEVスピンロック、0.1秒の混合時間、1.27秒の緩和遅延、16スキャン)、及びH2BC(21.8ミリ秒の混合時間、1.5秒の緩和遅延、16スキャン)に使用した。
【0103】
統計的分析
2つの異なる基を比較するときには、ウエルチの検定を、GraphPad Prism7.04ソフトウェアを使用して、95%の信頼水準で実施した。複数の群の比較では、GraphPad Prism7.04ソフトウェアを使用して95%の信頼水準でボンフェローニの多重比較検定補正を用いる分散分析(ANOVA)を用いた。パラメータpH、CFU、OD及びグルコース消費では、(培養の48時間後)酵母菌細胞を静止期に取得したときの平均値を採取した。概して、グラフに表されているデータは、2回の実験の繰り返しの平均および標準偏差である(別途記述されていない限り)。
【0104】
結果
ノックアウト株の構成
脂肪アルコールオキシダーゼfao1ノックアウトカセット(Van Renterghem et al.,2018)において記載されている)を使用して、S.ボンビコラ(bombicola)Δcyp52M1Δura3株を形質転換した。選択的SDプレートにおけるura3コロニーの選択後、ノックアウトカセットの両側における正確な統合を、2つのプライマー組み合わせを使用してコロニーPCRを実施することによって制御した(表1を参照されたい)。新たに作り出されたΔcyp52M1Δfao1株の3つの正確なコロニーを選択し、さらに特性決定した。新規の株の3つの選択された形質転換細胞は、OD、CFU、グルコース消費及び糖脂質生成の観点において互いに類似する挙動を示した。そのため、成長、pH、グルコース消費及び糖脂質生成の観点での親Δcyp52M1株との比較について次のセクションにおいて1つのコロニーのみを検討する。
【0105】
ノックアウト株の最初の特性決定
野生型S.ボンビコラ(bombicola)では、菜種油(60~80%のオレイン酸)又は純粋なオレイン酸が、最も良好なSL力価を結果として生じる(Asmer et al.,1988;Rau et al.,2001)(すなわち、C18炭素鎖長を有する疎水性基質)。そのため、新たに作り出されたfao1ノックアウト株を、まず、疎水性基質としてC18脂肪アルコール、すなわち、オレイルアルコール(C18:1)を供給した振とうフラスコにおいてアセスメントした。
【0106】
成長、pH及びグルコース消費
重要なパラメータ、例えば、log(CFU/mL)、pH及びグルコース消費を図3に示す。アセスメントした2回分の平均値及び標準偏差を提示する。OD600の展開は、オレイルアルコール基質による測定の干渉に起因して、提示しなかった。培養時間の関
数でのlog(CFU/mL)値の観点で(図3A)、新しい株と参照株との間にCFU値の有意な差は観察されなかった。観察されたpH降下は等しかった(図3B)。Δcyp52M1Δfao1及び親株についてのグルコース消費速度は、図3Cに提示されているように、類似している(0.47±0.06及び0.47±0.01g/L.h)。
【0107】
糖脂質生成
図4に示されている、アセスメントした株の糖脂質生成を見ると、Δcyp52M1親株と比較して、Δcyp52M1Δfao1株について明らかに異なる生成プロファイルを観察することができる。
【0108】
親Δcyp52M1株(図4B)は、糖脂質/グリコシドを全く生成しなかった(又は非常に少量で生成した)(<7分)。オレイン酸に相当する小さなピーク(282g/mol)が、より後の保持時間(>7分)において明らかである(Δcyp52M1Δfao1株について観察されたものと類似)。アルキルSSがほとんど検出されないという事実は、供給されたオレイルアルコールが、主に、依然として機能性のω-酸化経路によって、対応するオレイン酸に酸化されるということを示している(FAOがノックアウトされていないため)。その後、オレイン酸のヒドロキシル化は、cyp52M1ノックアウトによって阻害されるため、グルコシルトランスフェラーゼは、脂肪酸をグリコシル化することができず、そのため、オレイン酸が蓄積する又はβ-酸化経路によって分解される。
【0109】
親株とは対照的に、Δcyp52M1Δfao1株(図4A)ではグリコシド生成が明らかに観察される。3.0~4.5分の保持時間では相当量のグリコシドが見られ、5.5~6.5分では少量のグリコシドが見られた。UPLC-MS分析後、驚くべきことに、初期の保持時間(3~4.5分)における質量が、実際には、目的としたアルキルSS(550~700g/molの範囲)の代わりに、ボラSS(900~1100g/molの範囲)に対応したことが見出された。アルキルSSは実際に検出されたが、5.5~6.5分において上記の少量のみであった。このボラSS合成は、この株においては理論的に(当該技術を基準にして)不可能である、なぜなら、供給された脂肪アルコールのヒドロキシル化を通しての(ボラSS合成に必要な)ジオール形成(図5を参照されたい)が、cyp52M1遺伝子の欠失に起因して可能であるはずがないからである。実際、かかる作用は、親株において観察されておらず(図4Bを参照されたい)、当該技術において言及されているように、実際、オレイルアルコール(図4Bを参照されたい)又はオレイン酸及び/若しくは菜種油(Van Bogaert et al.,2013)へのいずれの酸化/ヒドロキシル化活性も示していない。
【0110】
そのため、驚くべきことに、Δcyp52M1Δfao1株は、オレイルアルコールが供給されたとき主にボラSSを生成し(図6)、初期の保持時間(3.0~4.5分)に対応する。AT遺伝子はこの株においてノックアウトされないため(ボラSSを生成するように設計されている株(Soetaert et al.,2013;Van Renterghem et al.,2018)とは対照的)、ボラSSのアセチル化もまた、この上記の新しい株において観察される。4.4分におけるテトラ-アセチル化C18:1ボラSS(1100g/mol)は、生成されるボラSSの最も豊富な成分であり、続いて豊富であるのは、トリ-及びジ-アセチル化されたものである(それぞれ1016及び1058g/mol)。非及びモノ-アセチル化C18:1ボラSSも検出された(それぞれの932及び974g/mol)。モノ-、ジ-及びトリ-アセチル化ボラSSが2つの異なるピーク4.05及び4.15分において現れるという事実は、文献(A.M.Davila et al.,1993;Saerens,2012;Saerens,Saey,et al.,2011)において示されている酸性SLについて示されているのと同様に、分子の異なるアセチル化パターンによって恐らくは説明される。C1
8:1ボラSSの他にも、供給されたオレイルアルコール基質(基質中にセチルアルコール又は1-ヘキサデカノールが2~10%の汚染量で存在する)におけるC16の量から生じた、C16:0ベースのSS(906g/mol)も検出される。少量のアルキルSSも生成され、主に、C18:1非、モノ-及びジ-アセチル化アルキルSSが検出された(それぞれ592/634/676g/mol)が、微量のC16:0アルキルSSも見られた(それぞれ566/608/650g/mol)。
【0111】
そのため、供給されたアルコールは、対応するジオールに好ましくはヒドロキシル化されるため、単に蓄積してアルキルSSとなる代わりに、UGTA1及びUGTB1のグリコシル化サイクルを2回経てボラSSを生じるようである(図6を参照されたい)。アルコールが供給された親株は、オレイルアルコールで供給したときにこれらの化合物を生成しなかったため、cyp52M1及びfao1ノックアウトの組み合わせは、重要且つ予想外の両方であるようである。
【0112】
生成された化合物の詳細な特性決定を可能にするために、ボラSS及びアルキルSSを上記のように混合物から精製した。
【0113】
NMR構造分析
NMR分析を、Δcyp52M1Δfao1株の培養液に由来する精製された非アセチル化C18:1ボラSS生成物において実施した。
【0114】
驚くべきことに、NMR分析は、生成されたボラSSにおいて、両方のソロホース部位が、図7に提示されている、C18:1疎水性リンカーに末端(ω)形式で専ら連結されていることを示した。完全対称グリコシド分子は、化学式C427622を有して、こうして得られる。用語「対称」は、二重結合が化合物の中ほどに存在することを示すのに使用される。
【0115】
異なる鎖長の脂肪アルコールの供給
予想外に、オレイルアルコールを供給したときにはΔcyp52M1Δfao1株についてアルキルSSの均一な生成の成功は得られなかった。代わりに、ボラSS及びアルキルSSの混合物が見られたが、新規のグリコシドの大部分が(アセチル化)ボラSSであり、ほんの少量のアルキルSSを生成した。テトラ-アセチル化ボラSSの生成は予期されなかった、なぜなら、CYP52M1酵素が、S.ボンビコラ(bombicola)における糖脂質生成の第1工程に関与する唯一の重要なヒドロキシ化/酸化酵素であるとされたからである。グリコシド生成への第1級アルコールの鎖長に対する影響をアセスメントするために、異なる基質をΔcyp52M1Δfao1株に供給した。親株Δcyp52M1を並行してアセスメントした。中及び長鎖アルコールを、アルカンについて報告されている(A.-M.Davila et al.,1994)のと同様に、12~18の鎖長間で選択した。上記の実験と同様に、疎水性基質を培養の48時間後に添加した。
【0116】
成長、pH及びグルコース消費
ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール又はオレイルアルコールの添加は、Δcyp52M1Δfao1株と比較して、Δcyp52M1についてCFU値に充分に影響しなかった(図8)。しかし、全ての他の供給した基質とは対照的に、ラウリルアルコールを添加したとき、CFUの有意な降下が顕著であった(図8A)。セチル又はステアリルアルコールと比較して、ミリスチル又はオレイルアルコールを供給したとき、有意により高いグルコース消費速度が見られた(0.48g/L.h対0.38g/L.h)。ラウリルアルコールの添加後(イノキュレーション後48時間)、グルコース消費を停止した。Δcyp52M1Δfao1株についてのみ、全てのグルコースが
枯渇するまで、基質添加後100時間でグルコース消費を再び開始した(0.33g/L.h)。これは、CFUの展開と一致している(図8A)。
【0117】
疎水性基質を添加しなかったときのΔcyp52M1Δfao1株も研究した。CFU及びグルコース消費は、アルコール(ラウリルアルコールを除く)を供給した培養と大きく異ならなかった。
【0118】
グリコシド生成
第1級アルコールの添加前、Δcyp52M1Δfao1及びΔcyp52M1培養は、定量化可能な糖脂質生成を示さなかった。このことは、デノボ脂肪酸がcyp52M1ノックアウトに起因して糖脂質生成経路内に組み入れられ得ないため、また、当該アルコールが新規のグリコシド生成を開始するために供給されなければならないため、予期されたことであった。後者は、上記で記載されているように酵母菌株がデノボ合成された脂肪酸を脂肪アルコールに変換することを可能にし得るさらなる操作を通して避けられ得る。例えばアルデヒドレダクターゼ又はアルデヒドデカルボキシラーゼの同時発現によってその後脂肪アルコールに変換され得る(Fatma et al.,2016;Kang & Nielsen,2017)脂肪アルデヒドに脂肪酸を酵素変換する、例えば、カルボン酸レダクターゼの発現(Kalim Akhtara et al.,2013)は、このことを可能にし得る。
【0119】
Δcyp52M1株の疎水性基質の添加後、ELSDにおける分析後にピークが見られず、このことは、上記の予測及び当該分野において記載されていること(Van Bogaert et al.,2013)と一致している。UPLC-ELSDにおいて分析した異なる供給された第1級アルコールについてのΔcyp52M1Δfao1株のグリコシド末端生成プロファイルを図9に表し、実験全体を通してのこれらの外観を図10A及びBに表し、これらのそれぞれの比を図10Cに表す。供給した各アルコールについて、アセチル化ボラ及びアルキルSSの混合物を生成した。予期した通り、全ての生成したグリコシドが、供給されたアルコールから直接生じたものであった。後者は、cyp52M1遺伝子がノックアウトされたという事実に起因しているため、いずれのデノボ(主にC16-C18)又は発生した(アルコールの起こり得る酸化)脂肪酸の組み入れも排除した。
【0120】
ラウリルアルコールでは、非アセチル化からテトラまでのアセチル化のC12:0ボラSSが検出された(580/934/976/1018g/mol)。C12:0ボラSSに加えて、後の保持時間で非アセチル化からジアセチル化のC12:0アルキルSS(510/552/594g/mol)が検出された。しかし、クロマトグラムにおける最も豊富なピークは、C12:0アルキルグルコシド(GLuS)(348g/mol)に対応した。
【0121】
ミリスチル及びセチルアルコールでは、非常に類似する生成プロファイルが観察された。C14:0又はC16:0ボラSS(3.00~4.00分及び3.00~4.3分)及びC14:0又はC16:0アルキルSS(4.5~5.8分及び5.2~6.5分)に対応する明確な保持時間がそれぞれのアセチル化物と識別された。MSを使用してC14:0及びC16:0非アセチル化アルキルGLuS(376及び404g/mol)が検出された。少量のジ-アセチル化C14:0/又はC16:0アルコールSS(又はボラGL)(638又は666g/mol)が検出された。
【0122】
Δcyp52M1Δfao1株にステアリルアルコールを供給すると、アセチル化C18:0ボラSS(934/976/1018/1060/1102g/mol)及びC18:0アルキルSS(594/636/678g/mol)の再びの混合生成が観察され
る。加えて、少量のC18:0アルキルGLuS(432g/mol)が検出された。ミリスチル及びセチルアルコールと同様に、ジ-アセチル化C18:0アルコールSS(又はボラGS)(694g/mol)が検出された。
【0123】
オレイルアルコールの添加は、上記の糖脂質生成プロファイルを結果として生じた。非、モノ-及びジ-アセチル化C16:0及びC18:1アルキルSS(それぞれ566/608/650g/mol及び592/634/676g/mol)並びに非アセチル化C16:0及びC18:1アルキルGLuS(404及び430g/mol)も検出された。他のアルコールと同様に、ジ-アセチル化C18:1アルコールSS(又はボラGL)(692g/mol)も検出された。
【0124】
対称ボラグルコシドの生成のためのトリプルノックアウト株(ΔCYP52M1ΔFAO1ΔUGTB1)の発生。
【0125】
トリプルノックアウト株(ΔCYP52M1ΔFAO1ΔUGTB1)の発生のために、ura3マーカーを、まず、Lodens et al.,(2018)によって記載されているようにダブルノックアウト株(ΔCYP52M1 ΔFAO1)から除去した。ura3マーカーによる線状UGTB1ノックアウトカセットを、PfuUltra High Fidelity PCR(Stratagene)並びにプライマー対GTII-472F及びGTII+239R(GTII-472For:5’-GAGAGTGGGACCTGATTC-3’(配列番号19)/GTII+239Rev:5’-CTGCTCTCAACACCGAGTGTAG-3’(配列番号20))を使用してSaerens,Zhang,et al.,(2011)によって記載されているプラスミド「pGKO ugtB1」から生じさせた。この欠失カセットをura3陰性ΔCYP52M1ΔFAO1株に形質転換し、正確な形質転換細胞を選択した。
【0126】
得られる株は、図11に模式的に示されているように、(アセチル化)対称α,ω-ボラグルコシドを生成した。
【0127】
3つのコロニーを選択し、成長及び糖脂質生成の観点で評価して、Δcyp52M1Δfao1親株と比較した。生成実験を疎水性基質としてのオレイルアルコールの供給により実施した。培養条件及び分析技術は上記で言及されている通りであった。CDW、pH及びグルコース消費についての値、並びにこれらの生成プロファイルは、3つの選択されたコロニーのものと非常に類似した。pH降下は、Δcyp52M1ΔfaoΔugtb1株及びΔcyp52M1Δfao1株に関するものとほぼ同一であった。
【0128】
Δcyp52M1Δfao1ΔugtB1株のアセスメントされたコロニーのうちの1つのUPLC-ELSDクロマトグラムを、UPLC-MS分析を使用して検出したグリコシド質量と一緒に図4Cに示す。モノ-及びジ-アセチル化C18:1ボラグルコシド(GLuS)は最も豊富な化合物であった(それぞれ、4.45分において650g/mol及び4.85分において692g/mol)。非アセチル化C18:1ボラGLuS(608g/mol)は4.05分で溶離した。他のグリコシド(ボラGLuSの中間体)も検出された:非アセチル化C18:1アルコールGLuS(4.72分において446g/mol)及び非アセチル化C18:1アルキルGLuS(6.38分において430g/mol)。
【0129】
アルコール-、及びオレイルアルコールに基づくボラグルコシドの生成経路を図11に示す。アルキルグルコシドを、アルキルソホロシドについての図6に示されているものと同様に、ヒドロキシル基におけるオレイルアルコール基質の直接のグルコシル化によって生成した。他の鎖長を有する脂肪アルコールの供給は、ボラSSについて上記で記載され
ているものと同様に供給された基質(複数可)の鎖長に関連する他の鎖長を有するボラGluSを生じた。
【0130】
実施例2:ω(アセチル化)C9:0ω-ソホロシドアルデヒド及びC9:0ω-ソホロ脂質の生成
材料
化学物質及び前駆体
全ての化学試薬(DMSO-d、MeOD-d4、CDCl)をSigma Aldrichから購入し、さらに精製せずに使用した。酸素(99.9%、Air Liquide)をオゾン発生の出発物質として使用した。アセチル化及び非アセチル化C18:1対称α,ω-ボラソホロシド(C18:1)(図12)を、実施例1に記載されているように且つ(Van Renterghem et al.,2018)に先に記載されているように生成した。
【0131】
合成手順
実験室スケールでのオゾン分解を介してのC9:0ω-ソホロシドアルデヒドの生成
反応を、フリットディスクを備える、300mlの容量を有する実験室型ガス洗浄ボトルにおいて実施した。ボトルをオゾン発生器(Ozonia Triogen Model LAB2B)に接続した。O/O混合物の流れをマスフローメータ(Bronkhorst Flow-Bus E-7000)を使用して測定した。オフガスストリームにおけるオゾンの濃度をオゾン分析器(Anseros Ozomat GM非分散型UV-分析器)によってモニタリングした。典型的な実験において、脱塩水(100mL)に溶解した10gのアセチル化(10.72mmol)又は非アセチル化(9.09mmol)対称C18:1α,ω-ボラソホロシドをガス洗浄ボトルに入れた。溶液を600rpmの速度で磁気攪拌器によって混合した。供給ガスとしての乾燥酸素(99.9%、Air Liquide)を、オゾン発生器を通過させることによって、オゾンを生成した。オゾンを、ガス洗浄ボトルの底部に位置するガラスフリットを介して微細に分散された気泡として反応媒体に導入した。合計反応時間を以下の式にしたがって算出/推定した。
【0132】
【数1】

【0133】
式中:
t=反応時間(分)、
n=二重結合のモル(mmol)、
MWO=オゾンの分子量(mg/mmol-1)、
O3=ガスストリーム中のオゾン濃度(mg/l-1
Q=ガスストリームの流量(L/分-1
【0134】
反応を、オゾン分析器によってオフガスオゾン濃度をモニタリングすることによって追跡した。反応が進行するにつれて、オフガスオゾン濃度が最終的には入口ガスと同じ濃度まで増加し、これは、基質が完全に変換されたことを示唆した。反応においてこの点に達した後、供給ガスを算出反応時間の1/5を超えて供給し続け、出発物質の完全な転換を確実にした。反応の終わりに、得られた反応混合物を0.05mbarで凍結乾燥して、オフホワイトの粉末を得た。
【0135】
小規模パイロットスケールにおけるオゾン分解を介してのC9:0ω-ソホロシドアルデヒドの生成
パイロットスケールにおけるオゾン分解反応を、7Lの反応器容量を有するステンレス鋼発酵槽において実施した。反応器は、温度センサ、pHプローブ、オゾン/酸素ガス混合物を導入するためのエアスパージャー、及び100~1000rpmで作動することができる直径0.08mのインペラを備えた。反応器を、オフガスを連続的に除去する2つの排気装置を設けたLexanキャビネットに入れた。Midasオゾン検出センサを設けて、あらゆる起こり得るガス漏れを検出した。オゾン分解反応を、Anseros COM-Ad-08オゾン発生器(流量範囲:0~300Lh-1、及び、オゾン濃度:300Lh-1において最大40gh-1)を使用して実施した。酸素ガスを使用してオゾンを発生させた。マスフローメータを使用して酸素/オゾンガス流を制御した。(アセチル化)対称C18:1α,ω-ボラソホロシド生成物をRO水に溶解し、反応器に移した。反応の進行をオフラインHPLC-ELSD分析によって追跡した。ボラソホロシド濃度がゼロまで減少したら、オゾン発生を停止させ、溶液をOで数分間、次いでNで30分間フラッシングして、あらゆる残存オゾンを除去した。終わりに、反応溶液をガスボトル内に出口を通して収集し、4℃で保った。最終工程として、反応溶液を、Virtis Genesisパイロット凍結乾燥器を使用することによって凍結乾燥した。
【0136】
分析手順
NMR分光法
H-NMR(400MHz)及び13C-NMR(100MHz)スペクトルをBruker Avance III Nanobay 400MHz NMR分光計において25℃で記録した。H及び13C化学シフトをppmで報告し、残りの溶媒ピークを参照する。化合物を重水素化溶媒(DMSO-d又はMeOD-d)に溶解した。異なるピークの割り当てを、2D-HSQC及び2D-COSYスペクトルを使用して実施した。
【0137】
HPLC-ELSD、UPLC-ELSD及びUPLC-MS分析用のサンプル処理
グリコシド分析用のサンプルを、1mLの純粋なエタノール及び0.5mLの発酵培養液の混合物を5分間激しく振とうすることによって調製した。その後、15000rpmで5分間遠心分離後、細胞ペレットを除去し、上清をPTFEフィルタ(カットオフ0.22μm、Novolab)を使用してろ過し、50%エタノール(別途記述されていない限り)において適切に希釈した後、(超)高速液体クロマトグラフィ-質量分析((U)HPLC-MS)及び(U)HPLC-ELSD(蒸発光散乱検出器)において分析した。
【0138】
HPLC-ELSDクロマトグラフィ
UPLC-ELSD分析を、UPLC-MSと同じカラム及び分析方法を用いて、Acquity H-Class UPLC(Waters)及びAcquity ELSD
Detector(Waters)において実施した。ELSD検出では、ネブライザを12℃で冷却し、ドリフト管を50℃の温度で保ち、ゲインを200に設定した。糖脂質を定量化するために、精製された生成物の希釈系列で調製した。精製されたアセチル化対称C18:1α,ω-ボラソホロシドバッチ(バッチ番号SL24A)をボラSSの定量化に用いた。
【0139】
LC-MSクロマトグラフィ
2.7μmの融合コア粒子(細孔径90Å)を含むSupelco Ascentis
Express C18カラム(L3cm×ID4.6mm)を備えたAgilent装置をLC-MS分析に使用した。この装置はUV検出器(220.8nm、254.8
nm及び280.8nmで動作する)を備えており、エレクトロスプレーイオン化幾何学(geometry)(ESI70eV)を有し且つ質量選択検出器(シングル四重極)を使用するAgilent1100シリーズのLC/MSD型質量分析計に接続した。
【0140】
代替的には、UPLC-MSを、Accela(ThermoFisher Scientific)及びExactive Plus Orbitrap質量分析計(ThermoFisher Scientific)を用いて実施した。糖脂質分析では、Acquity UPLC CSH C18カラム(130Å、1.7μm、2.1mm×50mm)(Waters)並びに0.6mL/分の流量でのmilliQ中0.5%酢酸(A)及び100%アセトニトリル(B)に基づく勾配溶離システムを適用した。方法は以下の通りであった:初期濃度の5%のB(95%のA)は、最初の6.8分の間に95%のB(5%のA)まで線形増加し、次いで、1.8分の間に5%のB(95%のA)までさらに線形減少した。その後、ランの終わりまで5%のB(95%のA)を維持する(10分/サンプル)。陰イオンモードを使用し、2μLのサンプルを注入した。MS検出を、加熱したエレクトロスプレーイオン化(HESI)源によって行い、条件を、定性的な方法で215~1300m/zの範囲の質量を検出するように設定した。
【0141】
結果
C18:1α,ω-ボラソホロシドの生成。
【0142】
アセチル化及び非アセチル化対称α,ω-ボラソホロシドC18:1を、上記で記載されているS.ボンビコラ(bombicola)ΔCYP52M1ΔFAO1株を使用して、且つ、以前に報告されている発酵及び精製方法(Van Renterghem et al.,2018)にしたがって、調製した。生成したアセチル化及び非アセチル化対称α,ω-ボラソホロシドを、その後、出発物質/原材料/原料として使用して、オゾン分解を介した二重結合の開裂によってC9:0ω-ソホロシド(SS)を生成した(図12)。オゾン分解反応を水中で実施して、この方法の環境に優しい特質を保持した。さらに、水の存在下でのオゾン分解は、より安全な反応環境、及び、不安定なオゾニド構造の生成を制限することによるアルデヒドの直接合成のための手段を付与する。ボラソホロシドは、ラクトンソホロ脂質とは対照的に、かなり水溶性であり、この方法を簡潔にする。
【0143】
対称C18:1α,ω-ボラソホロシドのオゾン分解。
【0144】
オゾン分解実験を実験室及びパイロットスケールで実施した。実験室スケールにおいて適用した実験パラメータの概要を表2に付与する。両方の基質について、実験を三重に実施した。
【0145】
【表2】

【0146】
反応混合物はバイオ界面活性剤であるソホロシドからなるため、発泡を、オゾン分解実験の際に反応器の外への基質の同伴を引き起こし得る操作的な課題と同定した。そのため、発泡を制限した予備試験に基づいて、両方の基質について100g/L-1の最適な基質濃度を選択した。実験の間、非AcボラSSのフォーム安定性は、AcボラSSと比較して高かった(すなわち、より持続性)。
【0147】
非アセチル化α,ω-ボラソホロシド(非AcボラSS)の溶液は、10g/L-1の低濃度でさえもゲル化し、連動するのにむしろ難しい基質とした。そのため、全ての実験を通して、反応混合物の適当な混合を確実にした。オゾンの供給が開始されたら、ゲル化は、非AcボラSSからC9:0ω-ソホロシドアルデヒドへの転換に起因して徐々に消失した。両方の基質についての反応時間の僅かな差は、両方の一連の実験を同一のO流量で実施したため、これらの分子量の差に関連した(反応時間の算出については実験のセクションを参照されたい)。
【0148】
オゾン分解を、オゾニド分解の発熱の性質に起因して低温条件で典型的には実施するが、実験の際、温度の有意な増加は観察されなかった。この観察は、酸化カルボニル中間体が水によって効果的に捕捉されて、オゾニドの形成を制限し得ることを示唆している。
【0149】
結果のNMRスペクトルを図13に示し、(Delbeke,Roelants,et
al.,2016)によって記載されているように野生型SLにおいてオゾン分解を実施することについて得られたNMRスペクトルと比較する。上方のNMRスペクトルにおける21.3ppmでの二重項ピークは、サブ末端位置におけるCH基(21.3ppm、C CH)に相当する。下方のスペクトルにおいては、この化学シフトでのいずれのピークも存在しない。そのため、本発明に記載されているα,ω-ボラソホロシドのオゾン分解後に、C9:0ω-ソホロシドアルデヒドのみが形成されている。
【0150】
実験室スケールで実施した実験の結果を表3に提示する。オゾン分解実験の再現性は良好であった。両方の基質についての主な同定された生成物は、C9:0ω-ソホロシドアルデヒドであった。少量で存在する別の生成物は、C9:0ω-ソホロ脂質カルボン酸(C9:0ω-ソホロ脂質)と同定された。C9:0ω-ソホロシドアルデヒド及びC9:0ω-ソホロ脂質の相対含有率は、両方の基質について同様であった。ソロホース単位におけるアセチル基の存在又は非存在は、オゾン分解の結果に顕著な影響を及ぼさなかったようである。還元性又は酸化性ワークアップを実施してアルデヒド及び酸生成物を得る必要性を排除することは、用いられる反応系の利点とみなされ得る。(共)溶媒としてのHOの使用は、同様の結果を与えることが報告されており、水による酸化カルボニル中間体の捕捉に起因した(Schiaffo & Dussault,2008)。
【0151】
【表3】

【0152】
実験室スケールで実施した最初の一連の実験にしたがって、AcボラSS及び非Acボ
ラSSを使用するオゾン分解実験を専用のオゾン分解セットアップにおいてパイロットスケールで行った。パイロットスケールの実験の際に用いた実験条件の概要を表4に提示する。温度増加は実験室スケールの実験の際に観察されなかったが、より多量のオゾン及び基質を使用したため、パイロットスケールにおける必要な予防措置を依然として取った。例えば、基質の濃度は、あらゆる起こり得るオゾニド分解の影響を含むことができるように50gL-1に制限した。
【0153】
【表4】

【0154】
アセチル化ボラSSの濃度プロファイルを、C9:0ω-ソホロシドアルデヒド及びC9:0ω-ソホロ脂質化合物の相対含有率の展開と共に図14に示す。(オフラインHPLC-ELSD分析によってモニタリングした)アセチル化ボラSSの量は、反応が進行するにつれて減少し、240分後にはほぼ終了した。しかし、C9:0ω-ソホロシドアルデヒド及びC9:0ω-ソホロ脂質の相対含有率の展開は、過酸化が、C9:0ω-ソホロ脂質対C9:0ω-ソホロシドアルデヒドの相対比が300分後に75:25となる程度まで起こったことを示した。
【0155】
次に、非AcボラSSのオゾン分解もまた、パイロットスケールで実施した。溶液(25gL-1)の濃度は、高濃度での非AcボラSSのゲル化傾向に起因してAcボラSSのもの(50gL-1)より低かった。反応混合物へのO/Oの導入の際、かなりの発泡が起こった。そのため、より低いO/O流量(すなわち、より低いオゾン濃度)を非AcボラSSのオゾン分解実験の間に適用した。Nによる反応器のヘッドスペース圧(5bar)の増加は、発泡の低減を助けた。しかし、反応は、pH(12.0~6.5)が降下してC9:0ω-ソホロ脂質の形成を有意に示唆したため、153分後に停止した。より低いオゾン濃度の適用及びより高い初期pHにもかかわらず、C9:0ω-ソホロ脂質が依然として形成された。反応の終わりに、C9:0ω-ソホロ脂質に対するC9:0ω-ソホロシドアルデヒドの相対含有率は、H NMR分析によって求めると、65~35であった。C9:0ω-ソホロシドアルデヒドをオフホワイトの粉末として得た一方で、C9:0ω-ソホロシドアルデヒド/C9:0ω-ソホロ脂質混合物を凍結乾燥後にオフホワイトのゲルとして得た。
【0156】
オゾン分解を通して二重結合を破壊することによってボラ分子当たり2つのC9:0ω-ソホロシドアルデヒド単位を発生させるための(アセチル化)対称C18:1α,ωボラソホロシドの使用は、野生型SL並びにω-及びω-1化合物の混合物について記載されている炭素の損失を回避する興味深い経路である。さらに、これらの革新的化合物の高い水溶性は、野生型SLについて当該分野において記載されているように(D.Develter & Fleurackers,2008)、pHなどを適応させる必要無く溶媒としての水の使用を可能にする。さらに、反応溶媒としての水の使用は、当該分野にお
けるものと比較して第2の利点を有し、すなわち、C9:0ω-ソホロシドアルデヒド又はC9:0ω-ソホロ脂質を誘導体化するのにさらなるワークアップを必要とせず、これは、重大な利点である。結果として、(アセチル化)対称C18:1α,ω-ボラソホロシドのオゾン分解は、汚染C9:0ω-1ソホロシドを含まないC9:0ω-ソホロシドを生成する魅力的な選択肢である。
【0157】
実施例3:アルキルソホロシドの選択的生成。
材料及び方法
株、培地及び培養条件
大腸菌Top10株を使用してプラスミドを保存及び複製した。大腸菌株を、溶原性培養液(LB)培地(10g/Lトリプトン、5g/L酵母菌抽出物、5g/L NaCl(Brenntach)、15g/L寒天)において、37℃、200rpmで成長させた。プラスミド形質転換大腸菌株を、50mg/mLアンピシリンを補充したLB培地において選択した。
【0158】
スタルメレラ・ボンビコラ(Starmerella bombicola)ATCC22214を野生型(WT)株として使用し、実施例1にて記載されている、それに由来するΔcyp52M1Δfao1株を親株として使用した。S.ボンビコラ(bombicola)の成長のために、酵母菌抽出物Peptone Dextrose(YPD)培地を使用した(20g/Lグルコース.H2O、10g/L酵母菌抽出物、20g/L
Bactoペプトン、20g/L寒天)。3C-寒天固体培地(110g/Lグルコース.H2O、酵母菌抽出物10g/L、尿素1g/L、寒天20g/L)を使用してコロニー形成単位(CFU)をカウントした。使用する選択的培地は左右され:ura3マーカーを損失したコロニーを選択するために、5-フルオロオロチン酸(FOA)を含有する培地であるが、ウラシルを含まない選択的最小培地を使用してura3陽性コロニー用に選択した(Van Bogaert et al.(2007))。
【0159】
S.ボンビコラ(bombicola)を使用した生成実験を、Lang et al.,(2000)によって記載されている生成培地を使用して実施した。振とうフラスコ実験では、5mL管での培養を24時間(30℃)に設定し、その後、振とうフラスコに移した(4%イノキュレーション)。生成実験を疎水性基質:培養の48時間後に添加したオレイン酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール又はセチルアルコール;を供給して実行した。グルコースが培地から枯渇したら培養を停止した。
【0160】
分子技術
Sambrook & Russell(2001)によって記載されている一般的な分子技術を適用した。S.ボンビコラ(bombicola)からのゲノムDNA(gDNA)抽出をRoelants et al.(2013)によって記載されているように実施した。環状ポリメラーゼ抽出クローニング(CPEC)を、線状DNAフラグメント(挿入片及び骨格)からの環状プラスミドを作り出すために使用した。ノックアウト株を作製するために、S.ボンビコラ(bombicola)を、Lodens et al.(2018)によって記載されているように線状化したDNAによるエレクトロポレーションによって形質転換し、選択的培地上にプレーティングし、コロニーが現れるまで30℃でインキュベートした。新規のS.ボンビコラ(bombicola)ノックアウト株が発生したら、クライオチューブを生じさせ、次の工程において、導入したura3マーカーは、ura3ターミネータ(T)に融合されたura3プロモータ(P)からなるura3PT回収カセットによって新規の株を形質転換すること、及びVan Bogaert et al.(2007)によって記載されているようにura3陽性株には毒性の5-FOA(5-フルオロ-オロチン酸)含有選択培地においてura3陰性株に
ついて選択することによって、再び除去した。
【0161】
ノックアウトカセットの正確な統合をコロニーPCRによって確認した。
【0162】
a1遺伝子(配列番号:100)が欠失された株の発生及びチェックに使用したプライマー及びこれらの配列:
・oCARBO9757:ATTGTCCTCCAAGTAACTCGCGGTGGCAGTATAGTGAGTCGTATTACAATTCACTGGC(配列番号:21)
・oCARBO9758:CGGCCAGTGAATTGTAATACGACTCACTATACTGCCACCGCGAGTTACTTGGAGGAC(配列番号:22)
・oCARBO9759:
CGAACACTGCCATCATGGTTCAACCTCACGAGGCCGTATTGAACAGTTTGGACACTCTTG(配列番号:23)
・oCARBO9760:
CAAGAGTGTCCAAACTGTTCAATACGGCCTCGTGAGGTTGAACCATGATGGCAGTGTTCG(配列番号:24)
・oCARBO9761:
ACTCATGATATGTATGCTCGAAGCACAGAACCGGGTATACTAGTGATTTGAACAAACG(配列番号:25)
・oCARBO9762:
GGTCGTTTGTTCAAATCACTAGTATACCCGGTTCTGTGCTTCGAGCATACATATCATGAG(配列番号:26)
・oCARBO9763:CTCCCATATGGTCGACCTGCAGGCGGCCAGTGCGCCGATCTCACGCCGTGCTCATGC(配列番号:27)
・oCARBO9764:AGCATGAGCACGGCGTGAGATCGGCGCACTGGCCGCCTGCAGGTCGACCATATGGGAGAG(配列番号:28)
・oCARBO9958:CTGCCACCGCGAGTTACTTGGAGGACAATA(配列番号:29)
・oCARBO9959:TGCGCCGATCTCACGCCGTGCTCATGCTTAG(配列番号:30)
・oCARBO10025:GGCATCATCATGACCACAAGAAGGAGGAGAAC(配列番号:31)
・oCARBO10026:GAAAGTCGGGCGAGTCCGTTTCTTCTCAGC(配列番号:32)
【0163】
a2遺伝子(配列番号:102)が欠失された株の発生及びチェックに使用したプライマー及びこれらの配列。
・oCARBO10076:
TCAGAAGCGTATTTCATCAGTTATCGGCCGCCTGCAGGTCGACCATATG(配列番号:33)
・oCARBO10077:
ATCTATGCTCAGACAGGGCTGACGTATTATGAAATCCCGCGGCCATGGC(配列番号:34)
・oCARBO10078:CGGCCGCCATGGCCGCGGGATTTCATAATACGTCAGCCCTGTCTGAGCATAG(配列番号:35)
・oCARBO10079:
CAGTGTACTTCATTGATCAGAATTCGAACACTAGACAATGTTTCAAAGGTTCTTAAG(配列番号:36)
・oCARBO10080:
GCCTTAAGAACCTTTGAAACATTGTCTAGTGTTCGAATTCTGATCAATG(配列番号:37)
・oCARBO10081:
CTCATGGCGTGGCTTATGCGTAAAATAACCGGAAACAAACGACCCAACACC(配列番号:38)
・oCARBO10082:
CGCACGGGTGTTGGGTCGTTTGTTTCCGGTTATTTTACGCATAAGC(配列番号:39)
・oCARBO10083:
CTCTCCCATATGGTCGACCTGCAGGCGGCCGATAACTGATGAAATACGC(配列番号:40)
・oCARBO10189:TCATAATACGTCAGCCCTGTC(配列番号:41)
・oCARBO10190:ATAACTGATGAAATACGCTTCTG(配列番号:42)
・P202:CAGCCTCTTCTAGTCCGCTCACAATTCC(配列番号:43)
・oCARBO10386:GCGTTCGGTTTCAGAATC(配列番号:44)
【0164】
a3遺伝子(配列番号:104)が欠失された株の発生及びチェックに使用したプライマー及びこれらの配列。
・oCARBO10084:
TTCTTATCGGAGGTTTTATATACGTGGCCGCCTGCAGGTCGACCATATGG(配列番号:45)
・oCARBO10085:
ATAGTGCTTTCCCTAGCTTGAAATCCCGCGGCCATGGCGGCCGGGAGCATG(配列番号:46)
・oCARBO10086:
GCCGCCATGGCCGCGGGATTTCAAGCTAGGGAAAGCACTATC(配列番号:47)
・oCARBO10087:
CTTCATTGATCAGAATTCGAACACTAGACAATGTTGGAGAGGTTAGGCACTATTGG(配列番号:48)
・oCarbo10088:
GTGCCTAACCTCTCCAACATTGTCTAGTGTTCGAATTCTGATCAATGAAG(配列番号:49)
・oCARBO10089:
ATGGCGTGGTATATGCTTGAAATAACTGGAAACAAACGACCCAACACC(配列番号:50)
・oCARBO10090:
AACGCACGGGTGTTGGGTCGTTTGTTTCCAGTTATTTCAAGCATATACCACGCCATGAG(配列番号:51)
・oCARBO10091:
TCTGGAGGATCATGTGTGTTGTCGGCCGCCTGCAGGTCGACCATATG(配列番号:52)
・oCARBO10191:TCAAGCTAGGGAAAGCACTATC(配列番号:53)
・oCARBO10192:ACGTATATAAAACCTCCGATAAG(配列番号:54)
・oCARBO10384:AGCGGTGTACAGGTTAGG(配列番号:55)
・p202:CAGCCTCTTCTAGTCCGCTCACAATTCC(配列番号:43)
【0165】
a4遺伝子(配列番号:106)が欠失された株の発生及びチェックに使用したプライマー及びこれらの配列。
・oCARBO10094:TCTGGAGGATCATGTGTGTTGTCGGCCGCCTGCAGGTCGACCATATG(配列番号:56)
・oCARBO10095:AAAGTGCCGAGCACCCCTTACAGAATCCCGCGGCCATGGCGGCCGGGAGCATG(配列番号:57)
・oCARBO10096:GCCGCCATGGCCGCGGGATTCTGTAAGGGGTGCTCGGCACTTTC(配列番号:58)
・oCARBO10098_HR1E6:CATTGATCAGAATTCGAACACTGGGCTGTGTTGAACAGTTTAGACAC(配列番号:59)
・oCARBO10099:
GAGTGTCTAAACTGTTCAACACAGCCCAGTGTTCGAATTCTGATC(配列番号:60)
・oCARBO10100:
GACATATGTCCAAAGCTACAGGGAACAAACGACCCAACACCCGTGCGTTTTATTC(配列番号:61)
・oCARBO10101:
ACGGGTGTTGGGTCGTTTGTTCCCTGTAGCTTTGGACATATGTC(配列番号:62)
・oCARBO10102:
CCATATGGTCGACCTGCAGGCGGCCGACAACACACATGATCCTCCAGAG(配列番号:63)
・oCARBO10178:CTGTAAGGGGTGCTCGGCACTTTC(配列番号:64)
・oCARBO10179:AAACCAACAGTTCCTCGACATATTTTG(配列番号:65)
・P202:CAGCCTCTTCTAGTCCGCTCACAATTCC(配列番号:43)
・oCARBO10388:CTCATGTTGTGGGTTCTG(配列番号:66)
【0166】
a5遺伝子(配列番号:108)が欠失された株の発生及びチェックに使用したプライマー及びこれらの配列。
・oCARBO9731:GCAACGATGATATGATTGACGGGAATCCCGCGGCCATGGCGG(配列番号:67)
・oCARBO9732:CAGACGTCTTGTTCGCTTCGGCCGCCTGCAGGTCGACCATATG(配列番号:68)
・oCARBO9733:CCGCCATGGCCGCGGGATTCCCGTCAATCATATCATCGTTGC(配列番号:69)
・oCARBO9734:GCCATCATGGTTCAACCTCACGTGAATATAGATTCGAATGAAAGGAG(配列番号:70)
・oCARBO9735:CTCCTTTCATTCGAATCTATATTCACGTGAGGTTGAACCATGATGGC(配列番号:71)
・oCARBO9736:GGGTTGGAAGGCGAAAGAGACCCGGGTATACTAGTGATTTG(配列番号:72)
・oCARBO9737:CAAATCACTAGTATACCCGGGTCTCTTTCGCCTTCCAACCC(配列番号:73)
・oCARBO9738:CATATGGTCGACCTGCAGGCGGCCGAAGCGAACAAGACGTCTG(配列番号:74)
・oCARBO10015:CCCGTCAATCATATCATCGTTGCC(配列番号:75)
・oCARBO10016:GAAGCGAACAAGACGTCTG(配列番号:76)
・oCARBO10118:CAAGATCTCCTCGACACAATGG(配列番号:77)
・p202:CAGCCTCTTCTAGTCCGCTCACAATTCC(配列番号:43)
【0167】
a6遺伝子(配列番号:110)が欠失された株の発生及びチェックに使用したプライマー及びこれらの配列。
・oCARBO10097:CAGTTTGTAAACTCGGCTCCGAACAGGCCGCCTGCAGGTCGACCATATGGGAGAG(配列番号:78)
・oCARBO10103:CTGTTGCCCTTCGAGCTGGAAATCCCGCGGCCATGGCGGCCGGGAGCATG(配列番号:79)
・oCARBO10104:CCGGCCGCCATGGCCGCGGGATTTCCAGCTCGAAGGGCAACAGGGTAG(配列番号:80)
・oCARBO10105:TTGATCAGAATTCGAACACTACTTCATCCTTTCCCAACCCATGAAATCC(配列番号:81)
・oCARBO10106:GGGTTGGGAAAGGATGAAGTAGTGTTCGAATTCTGATCAATGAAG(配列番号:82)
・oCARBO10107:TCTTCCCATTAGATCTTATTTCACAAACAAACGACCCAACACCCGTGCGTTTTATTC(配列番号:83)
・oCARBO10108:ACGCACGGGTGTTGGGTCGTTTGTTTGTGAAATAAGATCTAATGGGAAGAG(配列番号:84)
・oCARBO10109:TATGGTCGACCTGCAGGCGGCCTGTTCGGAGCCGAGTTTACAAACTG(配列番号:85)
・oCARBO10193:TCCAGCTCGAAGGGCAACAG(配列番号:86)
・oCARBO10194:TGTTCGGAGCCGAGTTTAC(配列番号:87)
・P202:CAGCCTCTTCTAGTCCGCTCACAATTCC(配列番号:43)
・oCARBO10904:GTCTTGGTTAGAACGTGAGCAGATA(配列番号:88)
【0168】
a7遺伝子(配列番号:112)が欠失された株の発生及びチェックに使用したプライマー及びこれらの配列。
・oCARBO10217:GGCTGCAATGTCTCTTCTCGATACTTACGGCCGCCTGCAGGTCGACCATATG(配列番号:89)
・oCARBO10218:TGGTGTCCGCGGGCACAATTTCTTAATCCCGCGGCCATGGCGGCCGGGAG(配列番号:90)
・oCARBO10219:CATGCTCCCGGCCGCCATGGCCGCGGGATTAAGAAATTGTGCCCGCGGAC(配列番号:91)
・oCARBO10220:GTGTACTTCATTGATCAGAATTCGAACACTACTTCATCCCTTCCCAACCCATGAAATCC(配列番号:9
2)
・oCARBO10221:GGATTTCATGGGTTGGGAAGGGATGAAGTAGTGTTCGAATTCTGATCAATG(配列番号:93)
・oCARBO10222:GTGGCTCTTCCCATTAGATCGTATTTCACGAACAAACGACCCAACAC(配列番号:94)
・oCARBO10223:ACGCACGGGTGTTGGGTCGTTTGTTCGTGAAATACGATCTAATGGGAAGAG(配列番号:95)
・oCARBO10224:CCATATGGTCGACCTGCAGGCGGCCGTAAGTATCGAGAAGAGACATTG(配列番号:96)
・oCARBO11493:AAGAAATTGTGCCCGCGGAC(配列番号:97)
・oCARBO11494_N3CASS_REV:GTAAGTATCGAGAAGAGACATTG(配列番号:98)
・oCARBO11495:AGCTGTAGTATTTGACTTC(配列番号:99)
・p202:CAGCCTCTTCTAGTCCGCTCACAATTCC(配列番号:43)
【0169】
分析技術
成長の追跡
培養の光学密度(OD)を、生理溶液(9g/L NaCl)で希釈した1mLサンプルについてJasco V630 Bio spectrophotometer(Jasco Europe)を使用して600nmで測定した。培養実験における酵母菌細胞の生存率を、培養体積当たりのCFUの平均の対数をlog(CFU/mL)として表したコロニー形成単位(CFU)を求めることによってアセスメントした(Saerens,Saey,et al.,2011)。代替的には、細胞乾燥重量(CDW)を、風袋の重さを量ったエッペンドルフ管において1mLの発酵サンプルを14000rpmで5分間遠心分離し、その後、細胞ペレットを1mLの生理溶液で2回洗浄することによって求めた。残存する細胞ペレットを70℃のオーブンに5日間置き、次いでその後、秤量した。エッペンドルフ管の空の重量を除算した後にCDW(g/L)を算出した。
【0170】
グルコース濃度の追跡
グルコース濃度を、2700Select生化学分析器(YSI Inc.)を使用して、又は、蒸発光散乱検出器(Waters Acquity ELSD Detector)をカップリングした超高速液体クロマトグラフィ(Waters Acquity
H-Class UPLC)(UPLC-ELSD)を使用して求めた。UPLC分析では、Acquity UPLC BEH Amideカラム(130Å、1.7μm、2.1×100mm)(Waters)を35℃で使用し、0.5mL/分の定組成流量の75%アセトニトリル及び0.2%トリエチルアミン(TEA)を適用した(5分/サンプル)。ELS検出では、ネブライザを15℃に冷却し、ドリフト管を50℃の温度で保った。ELS検出について100のゲインを使用して0~5g/Lのグルコースにおける線形範囲を見出した(Empowerソフトウェア)。グルコース消費を表すために、UPLC-ELSDによって得られたグルコース濃度を通して線形曲線をフィッティングし、それぞれの傾きを採取してグルコース消費速度(g/L.h)として示した。
【0171】
糖脂質/グリコシドの分析
糖脂質分析用のサンプルを、1mLの純粋なエタノール及び0.5mLの発酵培養液の混合物を5分間激しく振とうすることによって調製した。その後、15000rpmで5分間遠心分離後、細胞ペレットを除去し、上清をPTFEフィルタ(カットオフ0.22μm、Novolab)を使用してろ過し、50%エタノール(別途記述されていない限
り)において適切に希釈した後、(超)高速液体クロマトグラフィ-質量分析((U)HPLC-MS)及び(U)HPLC-ELSD(蒸発光散乱検出器)において分析した。
【0172】
HPLC-MSを、MS(Micromass Quattro LC)検出システムにカップリングしたLC(Shimadzu)を使用して実施した。異なる成分を、Chromolith Performance RP-18 Endcapped 100-4.6mmカラム(Merck KGaA)において30℃で極性によって分離した。LC-MS方法は、2つの溶媒:0.5%酢酸を含むMilliQ、及び純粋なアセトニトリル(ACN);に基づいた勾配溶離を使用する。分析の際、1mL/分の流量を適用した。勾配は5%アセトニトリルで開始し、40分にわたって95%まで線形増加させる。この後、95%アセトニトリルをさらに10分間保持し、その後、これを5分で5%アセトニトリルまで戻す。サンプル当たりの合計分析時間は60分/サンプルである。MSの走査範囲を215~1100g/molに設定した。HPLC-MSについて言及したものと同様の条件を使用して、HPLC-ELSD分析を、2000ES ELSD(Alltech)をカップリングしたVarian Prostar HPLC(ThermoScientific)によって40℃で実施した。全ての他の条件は、HPLC-MSについて言及したものと同様である。
【0173】
UPLC-ELSD分析を、UPLC-MSと同じカラム及び分析方法を用いて、Acquity H-Class UPLC(Waters)及びAcquity ELSD
Detector(Waters)において実施した。ELSD検出では、ネブライザを12℃で冷却し、ドリフト管を50℃の温度で保ち、ゲインを200に設定した。糖脂質を定量化するために、精製された生成物の希釈系列で調製した。市販のC18:1アセチル化ボラSSの精製されたバッチ(バッチ番号SL24A)及び精製されたアセチル化C16:0アルキルSSバッチ(バッチ番号aAlkC16_2)をそれぞれボラSS及びアルキルSSの定量化に用いた。
【0174】
代替的には、UPLC-MSを、Accela(ThermoFisher Scientific)及びExactive Plus Orbitrap質量分析計(ThermoFisher Scientific)を用いて実施した。糖脂質分析では、Acquity UPLC CSH C18カラム(130Å、1.7μm、2.1mm×50mm)(Waters)並びに0.6mL/分の流量でのmilliQ中0.5%酢酸(A)及び100%アセトニトリル(B)に基づく勾配溶離システムを適用した。方法は以下の通りであった:初期濃度の5%のB(95%のA)は、最初の6.8分の間に95%のB(5%のA)まで線形増加し、次いで、1.8分の間に5%のB(95%のA)までさらに線形減少した。その後、ランの終わりまで5%のB(95%のA)を維持する(10分/サンプル)。陰イオンモードを使用し、2μLのサンプルを注入した。MS検出を、加熱したエレクトロスプレーイオン化(HESI)源によって行い、条件を、定性的な方法で215~1300m/zの範囲の質量を検出するように設定した。
【0175】
全てのH及び13C NMRスペクトルを、H/BB z-勾配プローブ(BBO、5mm)を装備したBruker Avance IIIにおいてそれぞれ400及び100.6MHzで記録した。DMSO-[D6]を溶媒として及び内部化学シフト標準として使用した(Hでは2.50ppm及び13Cでは39.52ppm)。全てのスペクトルを、TOPSPIN3.2ソフトウェアを使用して処理した。アタッチドプロトンテスト(APT)、13C、COSY、及びHSQCのスペクトルを、Brukerパルスプログラムライブラリにおいて利用可能な標準配列を通して取得した。文献(Gheysen et al.,2008;Petersen et al.,2006)にしたがって、カスタム設定をHMBC(32スキャン)、TOCSY(100ミリ秒のMLEVスピンロック、0.1秒の混合時間、1.27秒の緩和遅延、16スキャン)、及び
H2BC(21.8ミリ秒の混合時間、1.5秒の緩和遅延、16スキャン)に使用した。
【0176】
結果
欠失株Δcyp52M1Δfao1 Δa1 Δa2 Δa3 Δa4 Δa5 Δa6 Δa7の発生
実施例1にて記載されているΔcyp52M1Δfao1株を親株として使用した。この株を、ura3陽性Δcyp52M1Δfao1株をura3ターミネータ(T)に融合したura3プロモータ(P)からなるura3PT回収カセットによって形質転換すること、及びVan Bogaert et al.(2007)によって記載されているようにura3陰性コロニーを選択することによってura3マーカーを再び選択的に除去することによって、再びura3陰性とした。
【0177】
その後、ura3陰性Δcyp52M1Δfao1株をさらに修飾して、a1~a7遺伝子を1つずつノックアウトした。これらのそれぞれのノックアウトカセットを、ura3遺伝子を選択マーカーとして使用して、且つ、並行するワークフローにしたがって、全て発生させた。新規のS.ボンビコラ(bombicola)ノックアウト株を(ura3陽性)を発生させたら、得られた株を、次いで、ura3遺伝子を選択マーカーとして再び使用して、その後の欠失期間に使用した。このことは、図15に示されているベクターシステムの使用を可能にし、7つの全ての酸化酵素A1~A7の特定のノックアウトカセットを発生させた。
【0178】
線状ノックアウトカセットを、発生させたプラスミドから発生させ、線状DNA(およそ1000ng)を使用して特定のS.ボンビコラ(bombicola)株を形質転換し、その後、材料及び方法に記載されている適切な選択的培地においてプレーティングした。a1、a2、a3、a4、a5、a6及び/又はa7ノックアウトカセットによって形質転換した欠失株について、ura3陽性株の選択を、Van Bogaert et
al.(2007)によって記載されているように行った。30℃におけるインキュベーション後、複数のコロニーがプレートに現れた。それぞれ形質転換された株からの10個のコロニーを、当該プレート及びLodens et al.(2018)によって記載されている酵母菌コロニーPCRからピックアップした。対象の遺伝子(ノックアウトカセットの組み込み)の欠失を確認するために使用したプライマーセットは、a1:oCARBO10025及びoCARBO10026用、a2:P202及びoCARBO10386、a3:p202及びoCARBO10384用、a4:P202及びoCARBO10388用、a5:p202及びoCARBO10118用、a6:P202及びoCARBO10904用、並びにa7:p202及びoCARBO11495用であった。
【0179】
新規のS.ボンビコラ(bombicola)株の評価
発生した、上記に記載されている新規のS.ボンビコラ(bombicola)株(各形質転換工程において、新規のS.ボンビコラ(bombicola)株を発生させた)を、材料のセクション下で記載されている多数のパラメータについて評価した。Δcyp52M1Δfao1Δa3Δa4及びΔcyp52M1Δfao1Δa1Δa3Δa4株の成長に連結した一般的特徴及び全生存率は、親株PT36;Δcyp52M1及びΔcyp52M1Δfao1と同様に残存した。
【0180】
グリコシド/糖脂質生成プロファイルは、株間で変動した。Δcyp52M1株は、UPLC-ELSDによって検出可能な糖脂質/グリコシド、又は油、脂肪酸若しくは脂肪アルコールを生成しなかったが、Δcyp52M1Δfao1株は、実施例1下に記載されている及び図17Aに示されている脂肪アルコールを供給したとき、相当な量の(アセ
チル化)α,ω-ボラソホロシドを生成した。a1~a7遺伝子の1つ以上がさらに欠損した新規の発生したS.ボンビコラ(bombicola)のうちのいくつか、特に、a3及びa4遺伝子が欠失した株は、アルキルソホロシドの富化した生成プロファイルを特徴とした(Δcyp52M1Δfao1Δa3Δa4株については図17B及びΔcyp52M1Δfao1Δa1Δa3Δa4株については図17Cを参照されたい)。Δcyp52M1Δfao1Δa1Δa3Δa4株の生成プロファイル(図17Cに示すUPLC-ELSDクロマトグラム)は、Δcyp52M1Δfao1株について3~4.5分の間で溶離したC18:1ボラSSの非存在下で、Δcyp52M1Δfao1株の生成プロファイルとはさらに異なった。代わりに、モノ-アセチル化C18:1アルキルSS(5.75分において634g/mol)は、最も主要な生成物ピークを形成した。非及びジ-アセチル化C18:1アルキルSSの存在(それぞれ592及び676g/mol)をHPLC-MSによって同じく確認した。他の鎖長を有するアセチル化及び非アセチル化アルキルソホロシドも検出された。成長実験において生成したアルキルソホロシドのアルキル鎖は、生成培地に供給した特定の脂肪アルコールの鎖長に対応する。
【0181】
得られたノックアウト株(複数可)におけるugtB1遺伝子のさらなる欠失は、アルキルソホロシドの代わりに、対応するアルキルグルコシドの生成を生じた。
【0182】
実施例4:(アセチル化)C9:0ω-ソホロシドアルデヒド、C9:0ω-ソホロ脂質及びC9:0ω-ソホロシドアルコールの生成並びに(アセチル化)C9:0ω-グルコシドの生成の最適化。
材料及び方法
化学物質及び前駆体
化学試薬(Oxone(登録商標)(2KHSO・KHSO・KSO)、DMSO-d、MeOD-d)をSigma Aldrichから購入し、リン酸塩(NaHPO.2HO、NaHPO.2HO)をそれぞれAcros Organics及びVWR Chemicalsから購入した。Catazyme(登録商標)25LをNovozymesから購入した。これらをさらに精製せずに使用した。酸素(99.9%、Air Liquide)を出発物質として使用して、オゾンを生じさせた。アセチル化及び非アセチル化C18:1対称α,ω-ボラソホロシド(C18:1)を実施例1に記載されているように生成した。
【0183】
小規模パイロットスケールにおけるカタラーゼの存在下でのオゾン分解を介してのC9:0ω-ソホロシドアルデヒドの生成
小規模パイロットスケールでのオゾン分解反応を、実施例2において上記で記載されているようにステンレス鋼7L反応器において実施した。HによるC9:0ω-ソホロ脂質酸へのC9:0ω-ソホロシドアルデヒドの過酸化を抑制するために、カタラーゼ溶液(Catazyme(登録商標)25L)(インサイチュで形成されるHに対して10当量)を実験前に反応混合物に添加した。確実にpHがカタラーゼ酵素に最適となるようにするために、オゾン分解を2L緩衝剤溶液(pH=6.9~7.1)において実施した。反応パラメータの概要を表5に提示する。
【0184】
持続的オゾン分解を介してのジアセチル化及び非アセチル化ωC9:0ソホロ脂質の生成
ジアセチル化及び非アセチル化C9:0ω-ソホロ脂質酸を、実験室スケール及び小規模パイロットスケールでジアセチル化又は非アセチル化対称C18:1α,ω-ボラソホロシドの持続的オゾン分解を介して生成した。同じ機器セットを上記で記載されているように使用して、オゾン分解を介してC9:0ω-ソホロシドアルデヒドを生成した。反応パラメータを表7に示す。
【0185】
Oxone(登録商標)による酸化を介してのジアセチル化及び非アセチル化ωC9:0ソホロ脂質の生成
ジアセチル化及び非アセチル化C9:0ω-ソホロシドアルデヒドをOxone(登録商標)による酸化に供して、対応するC9:0ω-ソホロ脂質を得た。簡潔には、ジアセチル化又は非アセチル化C9:0ω-ソホロシドアルデヒド(1当量)を50mLのフラスコにおいて25mLの脱塩水に溶解した。Oxone(0.5当量)を反応混合物に添加し、室温で一晩(18時間)撹拌した。その後、反応混合物を減圧下で濃縮し、メタノールに再溶解して、Oxone(登録商標)塩を析出させた。塩のろ過の際、ろ液を減圧下で濃縮した。
【0186】
ジアセチル化及び非アセチル化ωC9:0ソホロシドアルコールの生成
ジアセチル化及び非アセチル化C9:0ω-ソホロシドアルデヒドを、還元剤として(Kulkarni & Ramachandran(2017)による手順にしたがって合成された)ピコリン-ボランを用いる還元に供し、対応するC9:0ω-ソホロシドアルコールを得た。簡潔には、ジアセチル化又は非アセチル化C9:0ω-ソホロシドアルデヒド(1当量)を50mLのフラスコにおいて15mLの脱塩水に溶解した。ピコリン-ボラン(1当量)を反応混合物に添加し、これを酢酸によってpH=6まで酸性化した。反応混合物を室温で一晩(18時間)撹拌した。その後、反応媒体をトルエンで洗浄した。水相を減圧下で濃縮し、C9:0ω-ソホロシドアルコールを白色固体として得た。
【0187】
実験室スケールにおけるω(アセチル化)C9:0ω-グルコシドアルデヒド及びC9:0ω-糖脂質の生成
(アセチル化)C18:1対称α,ω-ボラグルコシド(C18:1)を実施例1に記載されているように生成し、基質として使用して、オゾン分解を介してC9:0α,ω-グルコシドを生成した。同じ実験室スケールのオゾン分解機器を上記で記載されているように使用してC9:0α,ω-ソホロシドを生成した。簡潔には、0.06Lの脱塩水に溶解した0.52gの基質を、ガス洗浄ボトルにおいて室温でオゾン分解(オゾン送達:2.4mg/分)に供した。溶液を実験の際に600rpmで混合した。反応混合物のpHを、0.1N NaOH水溶液をある特定の間隔で添加することによって実験全体にわたって8~10の間に維持した。実験を19分後に終了させた。生成物溶液をH NMR及びHPLC-MSによって分析した。
【0188】
分析手順
NMR分光法及びLC-MSクロマトグラフィを、実施例2に記載しているように実施した。
【0189】
結果
ジアセチル化及び非アセチル化ωC9:0ソホロシドアルデヒドの生成
オゾン分解の際にインサイチュ形成されるHによる、C9:0ω-ソホロ脂質へのC9:0ω-ソホロシドアルデヒドの過酸化を軽減するために、オゾン分解反応をカタラーゼ酵素の存在下で実施した。これらの実験に用いた反応パラメータは表5に見ることができる。結果を表6に示す。
【0190】
【表5】

【0191】
カタラーゼが反応媒体中に存在するとき、C9:0ω-ソホロシドアルデヒドの選択性の増加が生じた(表6)。
【0192】
【表6】

【0193】
ジアセチル化及び非アセチル化ωC9:0ソホロ脂質の生成
(i)Oxone(登録商標)によるC9:0ω-ソホロシドアルデヒドの酸化を介する
オゾン分解の終わり得られたC9:0ω-ソホロシドアルデヒドを、Oxone(登録商標)を酸化体として使用する酸化に供した。有利には、当該反応は、水を除去することなくオゾン分解の直後に実施することができる。ジアセチル化及び非アセチル化の両方のωC9:0ソホロ脂質を、対応するC9:0ω-ソホロシドアルデヒドから出発して98%の収率で得た。
【0194】
(ii)C18:1α,ω-ボラソホロシドの持続的オゾン分解を介する
代替的には、オゾン分解時間を延長することによって、形成されたC9:0ω-ソホロシドアルデヒドの酸化によりC9:0ω-ソホロ脂質とした。実験室スケール及び小規模パイロットスケールにおける持続的オゾン分解実験に対応する反応パラメータを表7に提示する。
【0195】
【表7】

【0196】
実験室スケールの実験において、ジアセチル化及び非アセチル化C9:0ω-ソホロシドアルデヒドの完全な転換に必要とされるオゾン量は、対応するC18:1α,ω-ボラソホロシドと比較して48及び22当量であった。ジアセチル化C9:0ω-ソホロシドアルデヒドの脱アセチル化は、延長されたオゾン分解の間に起こり、結果として、より多くのオゾン消費を引き起こした。パイロットスケールの実験の場合において、15及び16当量のオゾンが、それぞれ、ジアセチル化及び非アセチル化C9:0ω-ソホロシドアルデヒドの完全な転換に必要であった。これらの持続的オゾン分解実験の終わりに、C9:0ω-ソホロシドアルデヒドを対応するωC9:0ソホロ脂質に変換し、これは、反応混合物の凍結乾燥後に、粘性のオフホワイトのゲルとして現れた。
【0197】
ジアセチル化及び非アセチル化ωC9:0ソホロシドアルコールの生成
オゾン分解の終わりに得られたC9:0ω-ソホロシドアルデヒドを、ピコリン-ボランを還元剤として使用して対応するアルコールに還元した。ジアセチル化及び非アセチル化ωC9:0ソホロシドアルコールを、反応混合物をトルエンで洗浄し、続いて水相を減圧下で蒸発させた後に、白色固体として得た。ジアセチル化及び非アセチル化ωC9:0ソホロシドアルコールをそれぞれ81%及び97%の収率で得た。
【0198】
実験室スケールでのC9:0α,ω-グルコシドの生成
アセチル化度が変動するC18:1α,ω-ボラグルコシドを実験室スケールにおける脱塩水でのオゾン分解に供した。オゾン分解実験の終わりに、終点サンプル及び出発物質を、H NMRを通して比較した(図18を参照されたい)。この比較は、図18に模式的に示されているように、出発物質(α,ωC18:1ボラグルコシド)に存在する二重結合が開裂され、これによりC9:0ω-グルコシドアルデヒド及びC9:0ω-糖脂質酸分子の形成と共にC18:1分子が変換されることを示している。
【0199】
実施例5:不飽和α,ω-ボラグリコシドにおける不飽和脂肪族結合の酵素的開裂
図19に模式的に示されているように、二工程の酵素的経路を適用して、不飽和α,ω-ボラグリコシドにおける二重結合を開裂する:第1工程において、ヒドロペルオキシド(HPO)官能基を、ダイズリポキシゲナーゼ-1(SBLO-1)によって不飽和アルキル鎖の二重結合において導入する(Clapp et al.(2006))。その後の工程において、ヒドロペルオキシドを、ヒドロキシペルオキシドリアーゼによって(S
tolterfoht et al.(2019))、酸性条件下で自発的に分解するヘミアセタールの形成を伴ってさらに変換する。
【0200】
実施例6:不飽和α,ω-ボラグリコシドにおける不飽和脂肪族結合の酵素的開裂
図20に模式的に示されているように、三工程の酵素的経路を適用して、不飽和α,ω-ボラグリコシドにおける二重結合を開裂する:第1工程において、脂肪族アルケンを、ロドコッカス(Rhodococcus)種からのスチレンモノオキシゲナーゼを含有する生体触媒系を使用してエポキシアルカンに変換する(Toda et al.(2015))。次の工程において、エポキシドヒドロラーゼ(Archelas et al.(2016))を使用してオキシラン環を開環し、これにより隣接ジオールを生じさせる。その後の工程において、隣接ジオールにおけるC-C結合を酸化酵素シトクロムP450酵素によって開裂する(Ortiz(2005))。
【0201】
記述
本発明は、特に、以下のナンバリングされた態様及び実施形態のいずれか1つ、又は、これらのうちの1つ以上と、いずれか他の態様、記述及び/若しくは実施形態とのいずれかの組み合わせによって捉えられる:
態様1:10%未満のω-1グリコシド、ω-2グリコシド及び/又はω-3グリコシドを含有するω-グリコシドを製造する方法であって:
a.好適な微生物株により好適な基質(複数可)を転換して10%未満のα,ω-1ボラグリコシド、α,ω-2ボラグリコシド及び/又はα,ω-3ボラグリコシドを含有する不飽和α,ω-ボラグリコシドを含む培養液を生成する工程、
b.任意選択的に、工程a)の培養液からの前記不飽和α,ω-ボラグリコシドを精製する工程、並びに
c.工程a)において生成した前記培養液内の前記不飽和α,ω-ボラグリコシドを、前記不飽和α,ω-ボラグリコシド内の少なくとも1つの不飽和の開裂可能な脂肪族結合を破壊する反応に供する、又は、工程b)において精製された前記不飽和α,ω-ボラグリコシドを、前記不飽和α,ω-ボラグリコシド内の少なくとも1つの不飽和の開裂可能な脂肪族結合を破壊する反応に供する工程
を含む、前記方法。
【0202】
態様2:結合している少なくとも1つの不飽和の開裂可能な脂肪族を破壊する前記反応が、オゾン分解反応若しくは酵素反応である、態様1に記載の方法。
【0203】
態様3:前記酵素反応が、リポキシゲナーゼ、ヒドロキシペルオキシドリアーゼ、モノオキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ/モノオキシゲナーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、アルコールヒドロゲナーゼ/モノオキシゲナーゼ、又はこれらのいずれかの組み合わせによって媒介される、態様2に記載の方法。
【0204】
態様4:前記ω-グリコシドが、ω-ソホロシド、ω-グルコシド、ω-マンノシド、ω-ラムノシド、ω-キシロシド、ω-アラビノシド、ω-トレハロシド、ω-セロビオシド又はω-ラクトシドである、態様1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0205】
態様5:前記ω-グリコシドが、ω-グリコシドアルデヒド、ω-グリコシドアルコール及び/若しくは糖脂質、又はこれらの誘導体である、態様1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
態様6:前記好適な基質が、好適な親水性基質と好適な疎水性基質との組み合わせであり、前記好適な親水性基質が、炭水化物及びポリオールを含む群から選択され、前記好適な疎水性基質が、少なくとも6個の炭素の脂肪族鎖長を有するアルコール、脂肪酸、アル
ケン及び/又はアルカンを含む群から選択される、態様1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0207】
態様7:前記不飽和α,ω-ボラグリコシドが、対称である、態様1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0208】
態様8:前記微生物株が、機能不全のシトクロムP450モノオキシゲナーゼCYP52M1若しくはそのホモログ及び機能不全の脂肪アルコールオキシダーゼFAO1若しくはそのホモログを有するように変異されている天然SL生成真菌株であり、又は、機能不全のシトクロムP450モノオキシゲナーゼCYP52M1若しくはそのホモログ、及び、機能不全の脂肪アルコールオキシダーゼFAO1若しくはそのホモログ、及び、機能不全の、ソホロ脂質生合成経路において第2グルコシル化工程に関与しているグルコシルトランスフェラーゼUGTB1若しくはそのホモログ、を有するように変異されている天然SL生成真菌株であり、前記のSL生成真菌株が、スタルメレラ(カンジダ)ボンビコラ(Starmerella (Candida) bombicola)、スタルメレラ(カンジダ)アピコラ(Starmerella (Candida) apicola)、スタルメレラ(カンジダ)マグノリアエ(Starmerella (Candida) magnoliae)、カンジダ・グロペンギエセリ(Candida gropengiesseri)、スタルメレラ(カンジダ)バチスタエ(Starmerella (Candida) batistae)、スタルメレラ(カンジダ)フロリコラ(Starmerella (Candida) floricola)、カンジダ・リオドセンシス(Candida riodocensis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、スタルメレラ(カンジダ)ステラータ(Starmerella (Candida) stellata)、スタルメレラ(カンジダ)クオイ(Starmerella (Candida) kuoi)、カンジダ種(Candida sp.)NRRL Y-27208、シュードハイホジーマ(ロドトルラ、カンジダ)ボゴリエンシス種(Pseudohyphozyma)(Rhodotorula, Candida) bogoriensis sp.)、Wickerhamiella domericqiae、及び(スタルメレラ分岐群(Starmerella clade)の)ソホロ脂質生成株から選択される好ましくは酵母菌である、態様1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0209】
態様9:前記不飽和α,ω-ボラグリコシドが、アセチル化されている、態様1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0210】
態様10:前記ω-グリコシドが、ω-C9ソホロシド又はω-C9グルコシドである、態様7~9のいずれか1つに記載の方法。
【0211】
態様11:オゾン分解の際、プロトン性求核試薬が溶媒として使用される、態様3~10のいずれか1つに記載の方法。
【0212】
態様12:前記プロトン性求核試薬が水である、態様11に記載の方法。
【0213】
態様13:工程c)において得られたω-グリコシドを:アシル化、アルキル化、アミド化、アミン化、アリール化、ビオチン化、カルバモイル化、カルボニル化、環付加、カップリング反応、エーテル化、エステル化、グリコシル化、ハロゲン化、メタル化、メタセシス、ニトリル形成、オレフィン化、酸化、ホスフィニル化、ホスホニル化、ホスホリル化、4級化、転位反応、還元、シリル化、チオール化、加硫、及びこれらの組み合わせ;を含む群から選択される化学的誘導体化経路に供する工程をさらに含む、態様1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
態様14:アルキルグリコシドを製造するための方法であって、好適な微生物株により好適な基質(複数可)を転換してアルキルグリコシドを含む培養液を生成することを含み、前記微生物株が、機能不全のシトクロムP450モノオキシゲナーゼCYP52M1若しくはそのホモログ及び機能不全の脂肪アルコールオキシダーゼFAO1若しくはそのホモログを有するように変異されており、又は、前記微生物株が、機能不全のシトクロムP450モノオキシゲナーゼCYP52M1、機能不全の脂肪アルコールオキシダーゼFAO1若しくはそのホモログ、及び、機能不全の、ソホロ脂質生合成経路において第2グルコシル化工程に関与しているグルコシルトランスフェラーゼ、UGTB1若しくはそのホモログ、を有するように変異されており、前記微生物株が、機能不全の、長鎖脂肪アルコールのω-酸化に関与している少なくとも1つの酸化酵素、を有するようにさらに変異されており、前記微生物株が、好ましくは天然SL生成真菌株、より好ましくは、スタルメレラ(カンジダ)ボンビコラ(Starmerella (Candida) bombicola)、スタルメレラ(カンジダ)アピコラ(Starmerella (Candida)apicola)、スタルメレラ(カンジダ)マグノリアエ(Starmerella (Candida) magnoliae)、カンジダ・グロペンギエセリ(Candida gropengiesseri)、スタルメレラ(カンジダ)バチスタエ(Starmerella (Candida) batistae)、スタルメレラ(カンジダ)フロリコラ(Starmerella (Candida) floricola)、カンジダ・リオドセンシス(Candida riodocensis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、スタルメレラ(カンジダ)ステラータ(Starmerella (Candida) stellata)、スタルメレラ(カンジダ)クオイ(Starmerella (Candida) kuoi)、カンジダ(Candida)種NRRL Y-27208、シュードハイホジーマ(ロドトルラ、カンジダ)ボゴリエンシス種(Pseudohyphozyma (Rhodotorula, Candida) bogoriensis sp.)、Wickerhamiella domericqiae、及び、スタルメレラ分岐群(Starmerella clade)のソホロ脂質生成株からなる群から選択される酵母菌である、前記方法。
【0215】
態様15:前記の長鎖脂肪アルコールのω-酸化に関与している酸化酵素が:配列番号:101に記載されているアミノ酸配列を含むA1、配列番号:103に記載されているアミノ酸配列を含むA2、配列番号:105に記載されているアミノ酸配列を含むA3、配列番号:107に記載されているアミノ酸配列を含むA4、配列番号:109に記載されているアミノ酸配列を含むA5、配列番号:111に記載されているアミノ酸配列を含むA6及び配列番号:113に記載されているアミノ酸配列を含むA7;を含む群から選択される、態様14に記載の方法。
【0216】
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【国際調査報告】