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特表2023-525872水中サンプリングのための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】水中サンプリングのための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/00 20060101AFI20230612BHJP
   B63C 11/34 20060101ALI20230612BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20230612BHJP
【FI】
B63C11/00 C
B63C11/34 A
B63B35/00 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569254
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(85)【翻訳文提出日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 IB2021054125
(87)【国際公開番号】W WO2021229509
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】2020/02705
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522442892
【氏名又は名称】ラッセル10984・(プロプライエタリー)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Russel 10984 (Pty) Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ローテンバック,ラッセル ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューニス,フランソワ ペトルス
(72)【発明者】
【氏名】デュ プレシス,アルウィン
(57)【要約】
水中のパラメータをサンプリングするための装置および方法が提供される。装置は、水中ケーブル回収作業中に、水中ケーブルに取外し可能に固定され、水中ケーブルの長さに沿って操縦されるように構成される。装置は、装置が水中ケーブルの長さに沿って移動する間に、水中のパラメータを収集するように構成された1以上のサンプリング要素を含んでいてもよい。装置は、1以上のサンプリング要素と通信する演算ユニットを含んでいてもよく、演算ユニットは、1以上のサンプリング要素の出力データを受信し、その後の分析のために出力データを記録するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中のパラメータをサンプリングするための装置であって、
水中ケーブルと取外し可能に係合するための係合構造と、前記水中のパラメータを動作可能に収集するように構成された1以上のサンプリング要素と、を備え、
前記水中ケーブルが水中で配置されている場所に向けて前記水中ケーブルに沿って移動するように構成されている、装置。
【請求項2】
前記1以上のサンプリング要素と通信する演算ユニットを含み、
前記演算ユニットが、前記1以上のサンプリング要素から出力データを受信し、適時適所に前記出力データを記録するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
当該装置は、前記係合構造によって前記水中ケーブルに取外し可能に固定され、前記係合構造が、前記装置の前記水中ケーブルに対する移動を調整するように構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記係合構造は、少なくとも1つのV溝ホイールを含み、前記V溝ホイールは、前記ケーブルと係合し、前記ケーブルの長さに沿って前記装置を案内するように構成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
当該装置は、前記装置と前記ケーブルとの間に形成される電気的接続を介し、前記水中ケーブルにより給電される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置に給電し、及び/又はバッテリを再充電するように構成された発電ユニットを含み、前記バッテリは、前記装置の使用中に前記装置に給電するように構成されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記発電ユニットは、前記装置の前記水中ケーブルに沿った摩擦移動に応じて発電するように構成された摩擦発電ユニットである、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記1以上のサンプリング要素は、カメラと、センサと、音波発信器および受信器の組合せと、レーダと、微粒子分析器と、土壌収集器、水収集器又はサンプル収集器と、時間データを生成するための計時装置のうち、少なくとも1つを含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記演算ユニットが、前記1以上のサンプリング要素からの前記出力データを記録するための記憶部を含む、
請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記記憶部は、当該装置に搭載された記憶装置である、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記記憶部は、遠隔演算装置で管理されているデータベースである、
請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記水中ケーブルに設けられたリピータを介して前記遠隔演算装置に前記出力データを送信するように構成された通信部を含む、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記遠隔演算装置により制御されて監視される位置決定装置を含み、
前記位置決定装置は、前記装置の位置を決定し、前記位置データおよび前記出力データを前記記憶装置で記録および保存すべく位置データを前記出力データと紐付けして前記遠隔演算装置に送信するように構成されている、
請求項11又は請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置の正確な操縦を容易化するため安定化機構と、前記装置が損傷するのを防ぐべく前記装置に作用している所定圧力又は所定温度に応じて前記装置を前記水中ケーブルから解放するように構成された安全機構との、少なくともいずれか一方を含む、
請求項1から13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記装置の移動を操縦するため、前記演算ユニットと通信する制御ユニットを含む、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記安定化機構及び/又は前記安全機構は、前記制御ユニットによって制御される、
請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記装置は、密度に対する強度の比が高い耐腐食性材料で製造された携帯装置である、
請求項1から16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
水中のサンプリング装置で水中のパラメータをサンプリングするための方法であって、
前記サンプリング装置を水中ケーブルに取外し可能に固定し、
前記水中ケーブルの長さに沿って前記サンプリング装置を操縦し、
前記水中ケーブルの前記長さに沿って前記サンプリング装置を操縦している間に、前記水中のパラメータを動作可能に収集するように構成された1以上のサンプリング要素を用いて、前記水中のパラメータを収集する、
工程を備える、方法。
【請求項19】
収集された水中のパラメータを含むサンプリングデータを記憶部に送信し、
前記サンプリングデータをデータベースに記録させる、
工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記サンプリング装置を前記水中ケーブルの水上端に固定し、
前記サンプリング装置が前記ケーブルの水没部位に向かって前記ケーブルを下って移動できるようにし、
前記サンプリング装置を船まで定期的に浮上させ、
前記サンプリング装置が前記船に近接している又は前記船上にある間に、記録されたサンプリングデータを前記サンプリング装置から回収する、
工程を含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年5月13日付け提出に係る南アフリカ仮特許出願第2020/02705号に基づく優先権を主張し、参照によりここに援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、水中で使用するための装置に関する。より具体的には、本発明は、水中作業中のパラメータのサンプリングおよび記録に使用するための装置に関する。更に具体的には、本発明は、水中ケーブルの回収中に連続的な環境データを記録するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
地球表面の約70%が海洋で覆われていることが、よく知られている。この70%という地球の海洋のうち、探査されたり海図化されたりしてきたのは、たった5%に過ぎないということが、広く報じられてきた。特に、海面下の海洋は、人間にはほとんど未発見、未観測のままである。
【0004】
海洋探査、特に海面下の探査は、困難且つ費用が嵩む作業である。海洋が非常に広大であるだけでなく、海洋および海底のマッピングに使用されてきた技術は比較的新しい。深海潜水艦、高機能ソナー、研究用ブイ、および遠隔操作車両といった最先端システムの一部は、この40~50年間でしか使用および開発されていない。
【0005】
何らかの植物や海洋生物が存在するか否かを判断するために、水温、水位、および水の色を記録してマッピングするために、衛星画像が使用されてきた。しかし、衛星は、海洋の表面の研究には非常に有用であるが、海面下の海洋環境の研究にはあまり効果的ではない。
【0006】
技術が進歩する前は、人間であるダイバーが、自ら海洋に潜って探索していた。しかし、窒素中毒、酸素中毒、減圧症、および高圧神経症候群等、ダイビング界でよく知られているいくつかの要因で、人間が潜水可能な深度は非常に限られている。大深度テクニカルダイビングも、平均的には約60メートルである。したがって、海洋に関するデータを収集可能にするため、海洋探査のための他の方法に対するニーズがある。
【0007】
光が開放水域の奥深くまで浸透しないために水中をはっきりと観測できない場合、海洋の海面下の研究に対し、さらなる制約が課せられる。潜水用語で有光層、真光層、浅海層、あるいは日光層(sunlight zone)として知られる200メートルを超えると、光が大幅に減衰し始めることが、よく文献に記録されている。
【0008】
深海探査に伴う危険のため、他の様々な方法が試験されてきた。これらの方法の一部は、深海を探査するため、水中のへその緒(アンビリカルコード)とも呼ばれる接続線によりデータ収集車両を引きずる潜水艦あるいは輸送船を用いる。しかし、どちらの方法も、法外なコスト、操縦の難しさ、サイズの制約によるアクセスの制限により、非常に制限されている。
【0009】
上記方法の問題を軽減するために、最新の研究は、海洋を調査してデータを収集するために遠隔操作車両(remotely operated vehicle:ROV)を使用することについての開発に焦点を当てている。無人水上機(unmanned surface vehicle:USV)や、無人水中機(unmanned underwater vehicle:UUV)等のROVを使用することにより、科学者は、海洋および海中環境についてより多くのことを発見し、学ぶことができる。ROVにより、水深200mから1000mの中深層に関する多数の貴重なデータを取得することが可能になった。ROVの比較的新しいという性質に起因して、ROVは、非常に高価であり、機能も限られている。例えば、ROVは、非常に深い場所で、部品の故障や通信の損失が発生することが知られており、深刻な金銭的損失およびデータ損失を招く可能性がある。水は信号を歪めることがよく知られており、深海研究への適用に際してROVを効果的に使用するにあたり、深海でのROVとの効率的な通信が依然として主な障壁となっていることも、よく知られている。
【0010】
上記の欠点により、いわゆる「深夜帯」(漸深層)は、ほとんど未探査のままであり、ROVは、このような深度では動作できないことが多い。
【0011】
したがって、本件出願人は、改善の余地を検討する。
【0012】
本発明の背景に関する上記論考は、本発明の理解を容易にすることのみを目的とする。当然ながら、この論考は、参照された資料のいずれかが、本出願の優先日において当該技術分野における一般常識の一部であった旨を承認あるいは自認するものではない。
【発明の概要】
【0013】
本発明の一形態によれば、水中のパラメータをサンプリングするための装置が提供される。装置は、水中ケーブルと取外し可能にする係合構造と、水中のパラメータを動作可能に(operatively)収集するように構成された1以上のサンプリング要素とを備える。装置は、ケーブルが水中で配置されている場所に向けて水中ケーブルに沿って移動するように構成されている。
【0014】
装置は、1以上のサンプリング要素と通信する演算ユニットを含んでいてもよい。演算ユニットは、1以上のサンプリング要素から出力データを受信し、適時適所に出力データを記録するように構成されていてもよい。
【0015】
サンプリング要素は、1以上の、データ取得要素あるいはサンプル収集器等を含んでいてもよい。
【0016】
装置は、装置の水中ケーブルに対する移動を調整し得る係合構造により、水中ケーブルに取外し可能に固定されていてもよい。いくつかの実施形態において、係合構造は、ケーブルと係合して装置をケーブルの長さに沿って案内するように構成された、少なくとも1つのV溝ホイールを含んでいてもよい。
【0017】
ある実施形態において、装置は、装置とケーブルとの間に形成される電気的接続を介し、水中ケーブルによって給電されてもよい。別の実施形態において、装置は、バッテリ、例えば充電池によって給電されてもよい。
【0018】
装置は、装置に給電し、及び/又は装置の使用中にバッテリを再充電するように構成された発電ユニットを含んでいてもよい。発電ユニットは、水中ケーブルに沿った装置の摩擦移動に応じて発電するように構成された、ダイナモ等の摩擦発電ユニットであってもよい。
【0019】
1以上のサンプリング要素が、カメラと、深度センサ、温度センサ及び/又は圧力センサ等のセンサと、音波発信器および受信器の組合せと、レーダと、微粒子分析器と、土壌収集器、水収集器又は他のサンプルの収集器と、タイムスタンプ等の時間データを生成するための計時装置、のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0020】
装置の演算ユニットは、記憶部を含んでいてもよく、記憶部には、1以上のサンプリング要素からの出力データが記録されてもよい。ある実施形態において、記憶部は、当該装置に搭載された記憶装置であってもよい。代わりに、いくつかの実施形態において、記憶部は、遠隔演算装置にて管理されているデータベースであってもよい。
【0021】
演算ユニットは、通信部を更に含んでいてもよい。通信部は、出力データを遠隔演算装置に送信するように構成されていてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、水中ケーブルに設けられたリピータを介して遠隔演算装置に出力データを送信するように構成されていてもよい。リピータは、遠隔演算装置に中継されるべき出力データを増幅または再構成してもよく、これにより、出力データの品質が保持され、出力データの損失が低減されるとの効果を奏する。
【0023】
装置は、遠隔演算装置により制御され監視され得る位置決定装置を含んでいてもよい。位置決定装置は、装置の位置を決定し、位置データおよび出力データを記憶装置で記録および保存すべく位置データを出力データと紐付けして遠隔演算装置に送信するように構成されていてもよい。
【0024】
装置は、装置の正確な操縦を容易化する、ジャイロスコープやフィン等の安定化機構、及び/又は、装置の損傷を防ぐべく、装置に作用している所定圧力又は所定温度に応じて装置を水中ケーブルから解放するように構成された安全機構、を更に含んでいてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、装置は、装置の運動を操縦するための制御ユニットを含んでいてもよい。
【0026】
安定化機構及び/又は安全機構は、演算ユニットと通信可能な制御ユニットによって制御されてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、水中ケーブルは、既存の水中ケーブルであってもよい。既存のケーブルとは、例えば海底電気通信ケーブルであるが、これに限定されない。代わりに、水中ケーブルは、水域内に配備され、装置の移動を案内するためのガイドとして使用されるように構成された特注のケーブルであってもよい。
【0028】
装置は、密度に対する強度の比が高い軽量の耐腐食性材料で製造された携帯装置であってもよい。
【0029】
本発明の別の形態によれば、水中のサンプリング装置で水中のパラメータをサンプリングするための方法が提供される。当該方法は、
サンプリング装置を水中ケーブルに取外し可能に固定し、
サンプリング装置を水中ケーブルの長さに沿って操縦し、
水中ケーブルの長さに沿ってサンプリング装置を操縦している間に、水中のパラメータを動作可能に収集するように構成された1以上のサンプリング要素を使用して水中のパラメータを収集する、
工程を備える。
【0030】
方法は、サンプリングデータを記憶部に送信し、サンプリングデータをデータベースに記録する工程を含んでいてもよい。記憶部は、装置に付属していてもよく、遠隔の記憶部であってもよい。
【0031】
方法は、既存の水中ケーブル等の水中ケーブルを水上の船から回収している間に実行されてもよい。方法は、サンプリング装置を水中ケーブルの水上端に固定し、サンプリング装置がケーブルの水没部位に向かってケーブルを下って移動できるようにし、サンプリング装置を船まで定期的に浮上させ、装置が船に近接し又は船上にある間に記録されたサンプルデータをサンプリング装置から回収する工程を含んでいてもよい。
【0032】
以下、添付図面を参照し、例示のみを目的として本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】水中のパラメータをサンプリングするための装置の第1実施例を上、前、および左から見て示す斜視図。
図2図1の装置を下、後、および左から見て示す斜視図。
図3図1の装置の背面図。
図4図1の装置の正面図
図5図1の装置の底面図。
図6図1の装置の平面図。
図7】水中のパラメータをサンプリングするための装置の第2実施例を示す斜視図。
図8図7の装置の断面図。
図9図1の装置が使用されるケーブル回収システムの一例を示す概念図。
図10】装置の展開および運転中に実行される工程の方法の一例を示すフロー図である。
図11図10の演算ユニットのハイレベルブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書において、用語「サンプリング(sampling)」は、センサによるデータの収集、土壌サンプルあるいは水サンプル等の水中サンプルの収集だけでなく、適切な記録装置による映像信号、光信号、あるいは音声信号の記録も含むように、広く解釈されるべきである。同様に、用語「パラメータ(parameter)」は、物理的サンプルだけでなく環境状態及び/又はデータを含むと解釈されるべきである。環境状態及び/又はデータとは、例えば、温度、大気圧、および濁度などであるが、これに限定されない。物理的サンプルとは、ほんの数例を挙げれば、土壌サンプル、水サンプル、植物サンプル、あるいは他の有機物サンプルである。当業者であれば、本発明に係るサンプリング装置が、水中の物質または水中の状態の「サンプル」を収集及び/又は記録できることを十分に理解するであろう。
【0035】
本明細書において「装置(device)」に対して言及する場合、本開示に係るデータ収集及び/又はサンプリング装置を意味するものとして解釈されるべきである。「データ取得装置(data capturing device)」に対して言及する場合、これは、データの取得とサンプルの収集との両方を実行できる装置を含むと解釈されるべきである。したがって、「データ収集装置(data collecting/collection device)」および「サンプリング装置(sampling device)」は、同義で使用される。同様に、用語「データ取得要素(data capturing element)」は、文脈から不適当と思われる場合を除き、サンプル収集要素を含むと解釈されるべきである。
【0036】
本発明は、水中のデータを記録して水中のサンプルを収集するための、データ取得およびサンプリング装置および方法を提供する。本発明は、水産業者、科学者、深海ダイバー等の関心のある人に水中環境に関連するパラメータを提供できる可能性があり、また、水中の系および現象についてより深く理解する一助となる可能性がある。
【0037】
装置は、使用中、既存の水中ケーブル等の水中ケーブルに固定されてもよい。海洋には、何百万キロにもわたって伸びる多くのケーブルがあり、それらは、陸上基地局間の海底に敷設され、海と海の広がりを越えて通信信号を伝送する。これらの水中ケーブルは、当該技術分野では海底通信ケーブルとして知られており、1850年代から通信事業で使用されてきた。これらのケーブルの多くは使用されなくなったが、貴重な素材が依然として含まれており、動作可能な状態にある可能性がある。これらのケーブルは、便利な場所にあり、非常に長く、入手しやすいため、非常に価値がある。
【0038】
本出願では、このようなケーブルが、装置の移動ナビゲーション中に、データ取得およびサンプリング装置のためのガイドラインとして使用され得る。ケーブルをガイドラインとして使用するには、データ取得およびサンプリング装置がケーブルに固定される必要がある。したがって、装置は、装置を水中ケーブルに取外し可能に固定することを可能にする係合構造を含んでいてもよい。また、装置は、必要に応じて装置を水中ケーブルから解放するように構成された安全機構を含んでいてもよい。安全機構は、極度の圧力や温度等の極端な状態が検出されたときに、装置を保護して装置への損傷を制限すべく、装置を自動的に水中ケーブルから解放するように構成されてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、装置が、水域に配備されるように構成されたカスタムケーブルに固定されてもよい。このようなカスタムケーブルは、重りが付いたケーブル、すなわち、端に重りを付けた任意の標準ケーブルであり得る。このような実施形態では、既存の水中ケーブルが存在しないエリアの水中データが、水中ケーブルが使用される場合と同様にして、同様の方法を使用して取得されてもよい。例えば、カスタムケーブルは、ロープの端をプーリに固定し、重りが付いたケーブルの端を水域に落とすことにより、配備されてもよい。重りが付いた端が好適な深さに達するまでの期間を待機した後に、カスタムケーブルが、装置の移動ナビゲーション中のガイドラインとして使用されてもよい。
【0040】
装置は、装置の使用中に水中のパラメータを収集するように構成された1以上のサンプリング要素を含んでいてもよく、サンプリング要素には、例えば、カメラ、センサ、レーダ、粒子分析器、土壌サンプル収集器、音波発信器および受信器(ソナー)等が含まれる。水中パラメータのサンプリングには、水中環境に関連するサンプルの収集および記録が含まれてもよい。記録又は収集されるサンプルは、レーダ画像または測定値、写真、動画、温度測定値、圧力測定値、放射線測定値、土壌分析、土壌、水、又は他の流体サンプル等のように、どのようなサンプルであってもよい。1以上のサンプリング要素は、記録されたデータが送信され得る演算ユニットと電子的に通信し得る。演算ユニットは、フラッシュメモリ(USB)またはデータベースを含むデータ記憶装置等の記憶部を含んでいてもよい。データは、記憶部に保存され、エンドユーザによってアクセスされる。
【0041】
上記で想定されているように、いくつかの実施形態では、1以上のサンプリング要素が、土壌サンプル等の物理的な水中サンプルを収集するように構成されてもよい。土壌サンプルは、例えば、堆積物微生物学的試験や、メタン石油およびガス探査や、硝酸塩およびリン酸塩試験等を実施するために使用される可能性がある。
【0042】
演算ユニットは、データ取得要素のサンプリングされたパラメータに関連する収集された出力データを遠隔演算装置に送信するように構成された通信部を含んでいてもよい。これにより、データをほぼリアルタイムで監視及び/又は記録できる可能性がある。例えば、データ記憶装置は、後に使用するためにデータを記憶してもよく、通信部は、エンドユーザがほぼリアルタイムでデータを監視することを可能にする。いくつかの実施形態では、通信部は、遠隔演算装置によって維持管理されるデータベースに出力データを送信するために使用されてもよい。装置と遠隔演算装置との間の信号および通信の損失の可能性を考慮するために、通信ユニットは、水中ケーブル上に配置されたリピータと通信するように構成されてもよい。通信ユニットは、遠隔演算装置に送信される信号を増幅するために、リピータを使用してもよい。水中ケーブルに配置されたリピータを使用することによって、遠隔演算装置と演算ユニットとの間で交換されている信号を、より長い距離にわたって送信できる。例えば、装置をナビゲートするために、演算ユニットと通信する制御ユニットは、より長い距離にわたって制御信号を受信する必要がある。これは、既存のケーブルに配置されたリピータを使用することによって可能になる。装置は、装置の正確なナビゲーションを容易にするために、ジャイロスコープやフィン等の複数のナビゲーション要素を更に含んでいてもよい。
【0043】
演算ユニットおよびデータ取得要素により、水中の環境データのリアルタイム記録が可能になる。データは、装置と関連付けられたレコード内のデータベースに保存および記録され、権限を有するエンドユーザによってアクセスされる。このデータにより、エンドユーザは、これまで未発見であった海域を研究することが可能になり、様々な用途で使用されることがわかる。用途は、ほんの数例を挙げれば、ケーブルの経路と関連する海底のマッピング、新種生物に対する地形の発見および探査、水中生物の群集の生態学的機能の研究、メタン石油およびガス探査の実行、ドキュメンタリー用のビデオ映像の記録であり、地形に起因するケーブル破損を完全に理解したり、膨大な量の水中データを蓄積したり、気候変動を理解したりすることが可能になる。
【0044】
当然ながら、本書に記載の装置は用途が広く、例えば河川探査、ダム探査等にも応用可能である。結果として、用語「海洋(ocean)」は、あらゆる水域であるものとして解釈されるべきであり、大洋水に限定されるべきではない。
【0045】
用語「水中ケーブル」は、水中で見つかるあらゆるケーブルを意味すると解釈されるべきであり、海底通信ケーブルに限定されるべきではない。
【0046】
以降、添付図面を参照してデータ取得及び/又はサンプリング装置について説明する。ここで、同様の特徴及び構成を示すために、同様の参照符号が使用される。
【0047】
図1図6は、本発明に係る水中サンプリング装置(100)の例示的な実施形態を異なる視点から示している。同様の特徴は、同様の参照符号によって示されている。装置(100)は、1以上のサンプリング要素(102)、装置を水中ケーブルに固定するための係合構造(104)、演算ユニット(106)、記憶部(108)、および電源(110)を含んでいてもよい。
【0048】
装置は、装置の構成要素の少なくともいくつかを収容する保護ケーシング(112)を含んでいてもよい。ケーシング(112)は、完全に密閉可能である必要があり、深海での作業に関連する極端な圧力及び温度等の極端な海面下条件に耐えるように構成される必要がある。装置(100)が海面下での用途に使用されることを考慮すると、装置(100)が、完全に水没してもよい防水装置であってもよいことを当業者は容易に理解するであろう。さらに、海水の腐食性、および装置(100)が晒される可能性のある圧力を考慮すると、装置は、理想的には、好ましくは耐食性が高く、強度密度比が高い材料から製造されてもよい。したがって、装置は、アクリロニトリルブタジエンスチレンプラスチック等の高い強度密度比を有するプラスチックから、またはクロムおよび他の元素を含むニッケルベースの金属合金などの金属合金から、製造できることを理解されたい。保護ケーシング(112)は、装置の本体(114)と一体的に形成されてもよく、または本体に取外し可能に固定可能なケーシングであってもよいことを理解されたい。
【0049】
いくつかの実施形態では、装置(100)の電気部品の少なくともいくつかは、油が充填され、水密の、あるいは他の密閉された区域(compartment)、または1気圧の区域に収容されてもよく、それにより、これらの部品が、腐食およびその他の回路の問題を引き起こす海水で汚染されたり、装置に作用する極端な圧力によって損傷したりするのを防ぐことができる。電気部品を保護するためのこのような区域は、好ましくは、疎水性材料、または疎水性コーティングで被覆可能な材料から製造され、長期の使用期間にわたって装置から水をはじくことができる。当業者は、区域が、プラスチック、軽量ゴム、ポリマーまたは複合材料、金属など、剛性材料または弾性材料を含む任意の材料から作られ得ることを理解するであろう。
【0050】
理想的には、装置(100)は、迅速な配備を可能にし且つ携帯性を高めるため、コンパクトで軽量な装置であるべきである。しかし、いくつかの実施形態では、装置は、以下でより詳細に説明するような移動ナビゲーションのための制御ユニットを要さず、ケーブルの長さに沿って単純にスライド落下できるように質量が大きいコンパクトな装置であってもよい。
【0051】
装置(100)の係合構造(104)は、図9に示されるように、装置を水中ケーブルに取外し可能に固定するように構成できる。好ましい実施形態では、係合構造(104)は、図2に示されるように、ケーブルの少なくとも一部を受け取り、装置(100)をケーブルに固定するように構成された複数のV溝ホイールベアリング(113)を含んでいてもよい。隣接するホイールベアリング(113)は、ケーブルの反対側と係合するようにオフセットでき、それにより、効果的にケーブルを部分的に包囲するか、ケーブルを拘束して保持し、装置を固定する。いくつかの実施形態では、係合構造(104)は、水中ケーブルの直径よりも大きい直径を有する留め具/クリップであってもよく、その場合、水中ケーブルの本体の一部の周りに留め具/クリップを固定することにより、装置を水中ケーブルに固定するように構成される。さらなる実施形態では、係合構造(104)は、装置(100)の本体(114)に沿って少なくとも途中まで延びる溝またはスロットであってもよく、ケーブルの本体の一部が溝に受け入れられたときにケーブルを密封あるいは固定することができる。
【0052】
係合構造(104)は、水中ケーブルに対する装置(100)の移動を調整するように構成されてもよい。これは、例えば、V溝ホイールベアリングのような、一連のベアリングまたはローラによって実現されてもよい。したがって、水中ケーブルは、装置(100)のナビゲーションを容易化/促進すべく、列車と軌道の形態と同様に、ガイドレール/ラインおよびアンカーとして使用されてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、係合構造(104)は、装置(100)が水中ケーブルに固定されている間に、装置(100)が少なくとも制限されてはいるものの自由に移動することを許容するように構成されてもよい。例えば、係合構造は、クラスプまたはフック等のファスナ、およびコード等のテザーを含んでいてもよい。テザーの一端はファスナに接続され、他端は装置(100)に接続されてもよく、装置が、ケーブルへの接続点の周りで制限されてはいるものの自由に移動することが可能になる。
【0054】
実世界での適用では、装置(100)が晒される圧力、流れ、視界の欠如等の環境上の課題により、水中ナビゲーションが困難になる可能性がある。水中ケーブルをガイドレール/ラインとして使用することにより、このような環境上の課題の影響が軽減され、装置(100)のナビゲーションが大幅に改善される。
【0055】
装置(100)は、所定の状況で装置をケーブルから解放できるように構成された安全機構(図示せず)を含んでいてもよい。安全機構は、装置に作用する所定の圧力、温度、抗力、または他の潜在的に望ましくない力に応じて、装置(100)への損傷を防止すべく、ケーブルを解放または分離するように構成されてもよい。安全機構は、係合構造(104)の一部を形成してもよく、単に独立した安全機構であってもよい。例えば、係合構造(104)がクラスプ型の係合構造(104)である実施形態では、安全機構は、クラスプの遠位端に位置するゲート部材であってもよく、ゲート部材が開くと、装置(100)は、ケーブルから解放されて独立して移動することを許容される。いくつかの実施形態では、安全機構は、クラスプの近位端に配置され、装置とクラスプとの分離を可能にするように構成されてもよい。このような実施形態では、安全機構は、圧力、力、または温度等の所定の条件に耐えるように特別に設計された分離点であってもよく、このような所定の条件を超えた場合、安全機構は、装置が係合構造(104)から分離して独立して移動することを許容する。係合構造(104)が一組のV溝ホイールベアリングである実施形態では、ホイールベアリングの少なくともいくつかは、装置のケーブルからの解放を可能にするように構成されてもよい。
【0056】
上述のように、装置(100)は、装置のナビゲーションおよび制御がますます困難になるか、時には不可能になる可能性がある相当な深さで水中用途に使用できる。したがって、安全機構により装置がケーブルから解放されたときに、装置(100)を海面に向けて手動でナビゲーションすることは、望ましくなく、または非現実的である可能性がある。したがって、安全機構は、装置がケーブルから切り離された地点から海面への装置の復帰を容易にする、浮力制御コンポーネント、収縮された膨張可能チャンバなどの構成要素を含むように構成されてもよい。例示的な実施形態では、安全機構は、安全機構の作動時に駆動される圧縮機によって膨張できる膨張可能チャンバを含んでいてもよい。膨張可能チャンバにより、装置が海面に戻ることができ、そこで装置を回収できる。安全機構は、さらに、装置(100)が浮上したときにユーザが装置(100)の位置を特定できるようにする、ホーミング信号、点滅するLED等の遭難信号を送信するように構成されていてもよい。
【0057】
安全機構は、装置(100)に設けられた演算ユニット(106)と通信してもよい。演算ユニット(106)は、装置(100)内または装置(100)上に配置された1以上のサンプリング要素(102)から受信された出力データ/サンプリングデータを記録および処理するように構成されてもよい。例えば、安全機構は、圧力センサと通信する演算ユニット(106)から、所定の圧力を超えた旨の信号を受信してもよい。受信した信号に応じて、安全機構は、上でより詳細に説明したように、デバイス(100)をケーブルから解放させることができる。いくつかの実施形態では、安全機構は、演算ユニット(106)と通信する制御ユニットにより制御されてもよい。このような制御ユニットの例示的な実施形態は、以下でより詳細に説明される。
【0058】
1以上のサンプリング要素(102)は、カメラ、温度センサ、圧力センサ、深度センサ、音波発信器および受信器の音響エミッタおよびレシーバの組合せ、レーダ、微小粒子分析器、IC555タイマ等のタイミングデータを生成するための計時装置、放射線試験器、硝酸塩およびリン酸塩試験器等のうち、任意の少なくとも1つを含むことができる。なお、装置(100)は、各サンプリング要素(102)を少なくとも1つ含んでいてもよく、装置は、カメラ等のサンプリング要素を1つだけ含んでいてもよい。装置(100)が、張力検出要素、速度センサ等の他の装置を備えていてもよいことも想定されるべきである。なお、サンプリング要素(102)のいくつかは、装置(100)の外面に取り付けられてもよい一方、レギュレータ、プロセッサ、メモリ、ドライバ等を含む回路等のサンプリング要素付属品は、装置のケーシング(112)又は本体(114)の内部に配置されていてもよい。
【0059】
1以上のサンプリング要素(102)の各々が、水中環境に関連するパラメータを効果的に(operatively)サンプリングするように構成されてもよい。例えば、サンプリング要素がカメラである場合、カメラは、装置の周辺領域のパラメータを記録するように構成された360度カメラであってもよい。レーダ、またはソナー等の音波発信器および受信器の組合せが、海底をマッピングするために使用されてもよい。なお、各サンプリング要素(102)は、異なるパラメータを取得し、必要に応じて動作するように予め構成されていてもよい。
【0060】
データを記録するように構成されたサンプリング要素(102)のうちの少なくとも1つの出力は、必要に応じて、演算ユニット(106)に送信されてもよい。演算ユニット(106)は、出力を受信し、データを処理してもよい。データの処理には、別の構成要素で使用するため、あるいは装置(100)または装置の特定の配備に関連付けることができる1組のデータを生成するために、データを読取り可能な指示に変換することが含まれる。例えば、各装置は、サンプリング要素(102)のうちの少なくとも1つが特定の出力を発信した正確な日時を記録するために使用される固有の識別子および内部クロックを有する演算ユニット(106)を有していてもよい。したがって、特定のサンプリング要素の出力データは、装置(100)を使用して出力が記録された正確な日時、すなわちリアルタイムと紐付けされる。プロセッサの固有の識別子は、データの取得元の装置を特定するために使用でき、装置に関連付けられたシリアル番号、製造者、型番、または製造日等の日付のうち、任意の少なくとも1つを含むことができる。
【0061】
演算ユニット(106)は、サンプリング要素(102)のうち少なくとも1つの出力データを記憶部(108)に送信するように構成されてもよい。記憶部(108)は、装置(100)内または装置(100)上に設けられた、装置に搭載された記憶部であってもよいし、リモートサーバ、パーソナルコンピュータ、ラップトップ等の遠隔演算装置で維持管理されるデータベース等の遠隔記憶部であってもよい。
【0062】
記憶部(108)がリモートサーバで維持されるデータベースである実施形態では、データベースは、特定の装置(100)に関連付けされたレコードを含んでいてもよい。レコードは、固有の装置識別子と、記録された出力データとを格納できる。このような実施形態では、記憶部(108)が、データを受信するための受信器を含んでいてもよい。
【0063】
演算ユニット(106)は、演算ユニット間での及び/又は遠隔演算装置へのデータ転送を可能にするネットワーク環境で、演算ユニット(106)の動作のための通信インターフェースを含む通信部を含んでいてもよい。通信インターフェースを介して転送されるデータは、電子信号、電磁気信号、光信号、無線信号、または他のタイプの信号等の信号の形態であってもよい。通信部は、演算ユニット(106)と遠隔演算装置との間のデータの送信を可能にする。
【0064】
なお、演算ユニット(106)は、装置(100)の構成要素を最終的に接続するため、Bluetooth(登録商標)、シリアルポート、および様々な他のインターフェース等の接続を介し、記憶部(108)または他のサンプリング要素(102)のいずれかと通信するように構成されてもよい。
【0065】
海洋等の水域が信号を歪め、それにより水上の装置と水面下の装置との間での通信が特に複雑になるおそれがあることが、よく知られている。
したがって、通信部は、水中ケーブルに設けられたリピータを介し、記録された出力データ等のデータを遠隔演算装置に送信するように構成されていてもよい。既存の水中ケーブルのほとんどが、その長さに沿って信号の送信に使用されるリピータユニットを備える。一般に、このようなリピータユニットは、約15~150km間隔で配置される。水中ケーブルに配置されたリピータの各々は、あるデバイスから別のデバイスに中継される信号を増幅または再構築するように構成されている可能性がある。したがって、通信部は、出力データ等の信号を特定のリピータユニットの各々の周波数に合致する周波数で遠隔演算装置に送信することにより、遠隔演算装置と通信するように構成されてもよい。
【0066】
したがって、プライバシーを維持し、水中ケーブルに配置された中継器を介して送信されるデータ信号に対する、信号傍受等の不正アクセスを防止するために、データが暗号化されてもよい。送信されたデータ信号は、データの送信元の特定の装置に関連付けられたセキュリティキーを含んでいてもよい。例えば、暗号化されたセキュリティキーは、デバイス(100)に関連付けられた公開鍵であってもよく、装置のシリアル番号等のハッシュを含んでいてもよい。遠隔演算装置またはそのユーザは、暗号化されたデータ信号を受信し、装置に関連付けられた秘密鍵を使用して復号してもよい。いくつかの実施形態では、データは、単にパスワードで保護され、それにより許可されたエンティティのみがデータにアクセスできるようにしてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、装置(100)は、演算ユニット(106)とインターフェースを介して接続される内部記憶装置と外部記憶装置の両方を含んでいてもよい。内部記憶装置に保存されたデータは、出力データのバックアップとして、または単に遠隔のデータベースにアップロードするためのバッファリング領域として使用されてもよい。例えば、外部記憶装置と演算ユニット(106)との間の接続が中断される実施形態では、内部記憶装置はデータを記録し、データを格納できる。内部記憶装置の記憶容量は、ケーブル回収中に装置(100)を1回配備して得られるデータのみを取得するように制限される場合がある。また、装置は、記録された全てのデータを装置搭載の記憶ユニットに記録してもよく、装置が定期的に水面に浮上され、例えばケーブル内のリピータの1つに到達したときに、装置がケーブルの次のセクションに再び配備される前に、装置搭載の記憶ユニットのデータが、船上のより大きな記憶設備にダウンロードされてもよい。
【0068】
装置(100)は、演算ユニット(106)と通信する制御ユニット(116)をさらに含んでいてもよい。制御ユニット(116)は、装置(100)の使用時に装置(100)の移動を制御するように構成されてもよい。制御ユニット(116)は、演算ユニット(106)によって受信された1以上のサンプリング要素(102)からの出力データに応じて、演算ユニット(106)からの制御指示を受信してもよい。装置(100)の移動を制御し、装置のオペレータが装置を操縦できるようにするため、制御ユニット(116)は、機械的な駆動歯車装置のような安定化機構や推進機構(118)等の複数のナビゲーション部と通信できる。例えば、装置(100)は、ドライブハウジング(118)内に収容された駆動歯車装置等を含んでいてもよく、これを使用して、装置をケーブルの上方または下方の好ましい方向に推進できる。駆動晴馬装置は、例えば、制御ユニット(116)で受信される制御信号に応じて装置を推進するため、V溝ホイールベアリングの回転を容易にする電気モータを駆動してもよい。なお、このような機械的なV溝ホイールに基づく駆動装置は、ケーブルに沿った装置の正確な移動を可能にし得る。装置(100)は、装置を操縦するために使用され得る複数のフィン(120)をさらに含んでいてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、推進機構は、制御ユニット(116)で受信される信号に応じて装置を推進するように構成された、1以上のバウスラスタ、アジマススラスタ等を備えてもよい。スラスタは、また、装置を操縦するために使用されてもよい。
【0070】
安定化機構は、データ取得、サンプル収集、及び/又はナビゲーション中に、装置(100)を安定させるように構成されたジャイロスコープであってもよい。なお、制御ユニット(116)を使用して、演算ユニット(106)から受信された指示に応じて安全機構を制御できることを理解されたい。
【0071】
装置(100)は、バッテリ等の少なくとも1つの電源(110)によって給電されてもよい。いくつかの実施形態では、装置(100)は、少なくとも部分的に電力を自給してもよい。例えば、係合構造(104)は、装置(100)と水中ケーブルとの間の摩擦移動に応じて発電するように構成されたダイナモ等の発電ユニット(図示せず)を含んでいてもよい。発電ユニットは、ケーブルの引き摺りにより生成された機械力を、装置への給電に使用され得る電気エネルギーに変換してもよい。発電ユニットによって発生された電力は、装置デバイスに直接給電するため、及び/又は装置の使用中にバッテリ(110)を再充電するために使用されてもよい。発電ユニットは、装置の外面に配置されてもよい。例えば、装置が、使用中にケーブルと係合するクラスプおよび1以上のV溝ホイールベアリング等の係合構造(104)を含む場合、発電ユニットがホイールに接続されてもよい。発電ユニットは、装置の構成要素に直接接続されてもよいし、電池(110)に接続されてもよい。発電ユニットが装置の構成要素に直接接続される実施形態では、レギュレータまたはインバータ等の追加の電力構成要素が設けられてもよい。レギュレータは、電流及び/又は電圧が装置の構成要素の定格電力内の振幅を持つことを保証するために使用され、インバータは、得られた電力を交流から直流に、またはその逆に変換するために使用される。
【0072】
バッテリは、鉛酸バッテリ、リチウムイオンバッテリ、海水バッテリ等の任意の充電可能バッテリ(110)であってもよい。発電ユニットは、発生された電力/エネルギーを必要とされる時までバッテリー(110)に貯蔵できる。
【0073】
なお、現実には、バッテリ(110)は、バッテリを外部因子から保護するために収容される。例示された実施形態では、電池が装置のケーシング(112)内に収容されている。
【0074】
いくつかの実施形態では、装置(100)は、装置とケーブルそのものとの間の電気的接続により、水中ケーブルから給電されてもよい。ケーブルは、リピータユニット等のケーブルの様々な構成要素に電力を分配できる被覆銅線を含んでいてもよい。したがって、装置(100)は、装置とケーブルとの間の電気的接続を容易化するように構成された電気端子により、電池(110)を充電するための電力の少なくとも一部を取得するように構成されてもよい。なお、装置の構成要素は、電気端子と直接接続され、ケーブルにより直接給電されてもよい。
【0075】
装置(100)は、海中記録作業を容易化する高輝度LED(126)等の少なくとも1つの高輝度ライトを含んでいてもよい。好ましくは、装置(100)は、LED(126)のアレイを含むことができる。このようなLEDアレイは、視認性を高め、したがって、カメラの画質等のサンプリング要素(102)によって取得されたデータを改善できる。
【0076】
当業者は、いくつかの実施形態において、1以上のサンプリング要素によってサンプリングされるべきパラメータが物理パラメータであることを理解するであろう。その場合、1以上のサンプリング要素(102)は、水中サンプルを収集するために使用されるマニピュレータアーム、吸引採取器、デトリタス採取器等の1以上のサンプル収集器を含んでいてもよい。例えば、吸引採取器は土壌サンプルの収集に使用でき、マニピュレータアームは植物材料用、デトリタス採取器は動物プランクトン等の有機物用である。1以上のサンプル収集器の各々は、サンプルが収集されるべきときに対応するサンプル収集器を駆動および制御するために使用される制御ユニット(116)と電気的に通信し得る。1以上のサンプル収集器によって収集された任意のサンプルは、装置が海水から回収されるとき回収されてもよい。収集されたサンプルは、例えば、装置(100)の本体(114)に沿って設けられたサンプル保管場所(124)に保管されてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、装置(100)の本体(114)は、追加のセンサ、電子機器、安全装置等を収容するため、収集され得るより大きなサンプルの保管場所を画定してもよい。装置の本体(114)は、水中での装置の移動に対する抵抗を最小にするように形成および構成されてもよい。例えば、本体(114)は、本体(114)を通過する水を案内し、水没時に装置(100)の移動を補助する複数の水路チャネルを含んでいてもよい。実際には、海藻等の不所望な粒子の侵入を防ぐために、チャネルにはフィルタが設けられていてもよい。いくつかの実施形態では、本体は、装置(100)の移動を容易化するために、バウスラスタ、アジマススラスタ等を水通路チャネル内に収容してもよい。
【0078】
装置(100)が多数の追加のセンサおよび機能を含む実施形態も想定され得る。例えば、特定の実施形態では、装置は、全地球測位システム(GPS)装置等の位置決定装置、または全地球航法衛星システム(GLONASS)や、北斗またはガリレオ(衛星航法)システム等の同様の位置決定技術を使用する装置を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、装置を遠隔追跡するために、テレマティクス装置または追跡装置が設けられる。なお、位置決定装置は、遠隔演算装置から制御および監視されてもよい。位置決定装置は、遠隔演算装置と通信する演算ユニット(106)と電子通信してもよい。演算ユニット(106)は、位置データを1以上のサンプリング要素(102)から受け取った出力データと紐付け、データをデータパッケージ内に組み込むように構成できる。データパッケージは、記憶部(108)に送信されてもよい。位置データを出力データに紐付けることにより、エンドユーザは、例えば、特定のデータが記録された正確な位置と時刻を特定できるようになる。
【0079】
なお、いくつかの実施形態では、装置のナビゲーションがケーブルによって純粋に容易化されるため、制御ユニットは必ずしも必要ではない。例えば、いくつかの実施形態では、装置は、ケーブルに取外し可能に固定され、重力でケーブルの底部に向かって案内されるように構成された、約120kgのコンパクトで重い装置であってもよい。図7および図8は、水中データ取得のための装置(200)の第2の例示的な実施形態を示す。装置は、重力のみによってケーブル(202)を下方へ移動するように構成された小型の装置であり、重みが付いている。これらの図では、図1から図6を参照して言及されたものと同様の特徴は、同様の数字によって示される。
【0080】
装置の係合構造は、装置(200)をケーブルに固定すべく、ケーブルの両側でケーブル(202)と係合するように構成された一組のV溝ホイールベアリング(113)であってもよい。V溝ホイールベアリング(113)は、矢印(A)によって示されるように、装置を通る水の流れを一方向のみに促進するように、水置換用のチャネル(204)を含むように構成されてもよく、それにより、ケーブルの長さに沿った装置の移動を改善する。係合構造(104)は、ケーブル(202)上に配置されたリピータに到達すると、装置(200)が係留されてケーブルのさらに下方へ進むことができないように構成されてもよい。装置(200)は、ケーブル(202)を回収することによって回収されてもよく、装置は、装置(200)の海面への復帰を容易化する浮力制御部、収縮された膨張可能チャンバ等の1以上の構成要素を含んでいてもよい。
【0081】
図9は、上述の水中サンプリング装置(100/200)が使用されるシステム(300)の一例を示す概略図である。システム(300)は、船(302)、好ましい位置にある装置(100/200)、および既存の水中ケーブル(304)を含んでいてもよく、装置は、船(302)から配備されることになる。
【0082】
船(302)は、海底(307)からケーブルを回収するように構成された電動ウインチ部(306)を装備した水中ケーブル回収船であってもよい。実際には、水中ケーブルの回収を成功させるには、長く複雑なプロセスを要する可能性がある。明確化のため、回収プロセスの一例について以下に簡単に説明する。
【0083】
ケーブル回収輸送船(302)は、既知の水中ケーブル(304)が海底(307)上に敷設されている所定の場所に配備される。輸送船(302)は、対象の水中ケーブル(304)を切断するか、持ち上げてから切断するために、切断鉤(cutting grapnel)またはフックを使用できる。ケーブル(304)が切断されると、切断鉤は船(302)に回収される。切断鉤の回収後、保持鉤(holding grapnel)が海洋内に配備される。この保持鉤は、ロープで海底に降ろされ、切断されたケーブル(304)の一端が係合されるまで海底に沿って引きずられる。次に、係合されたケーブル(304)が水面まで持ち上げられて船(302)上に回収される。ほとんどの回収操作において、持ち上げられたケーブルの端は、ケーブルの端をマークするブイ(306)に取り付けられる。次に、ケーブルのもう一方の端を回収するために、同じプロセスが行われる。
【0084】
図10のフロー図では、ケーブル回収システム(300)に装置(100)を配備する方法(400)の一例が示されている。この方法は、装置(100)の1以上のエンドユーザ/オペレータによって実行されてもよい。なお、この方法は単なる例示的な方法であり、異なる実施形態に対して異なるステップが実行されてもよい。
【0085】
ケーブル回収クルー、またはその他の責任者が、図9を参照して説明された手順を含むケーブル回収プロセスを開始してもよい。ケーブル(304)が海底(307)から持ち上げられ、ケーブルを牽引するためにケーブルの端がウインチ(306)に取り付けられた後、装置(100)が駆動され、水中ケーブル(304)に固定されてもよい(402)。水中ケーブル(304)への装置(100)の固定(402)は、エンドユーザ、またはエンドユーザによって許可されたユーザのいずれかによる手動操作であってもよく、この手動操作において、係合構造(104)により装置がケーブルに取り付けられる(403)。いくつかの実施形態では、装置が水中に配置され、制御ユニットによりケーブルに向かって操縦/ナビゲートされ、ケーブルに取り付けられる(403)。次いで、装置(100)がケーブル(304)に固定されると(492)、装置は、重力またはその推進機構(118)によってケーブルをその好ましい位置までナビゲート(404)できる。実際には、ケーブル(304)は、回収プロセス中に自重で懸垂線を形成する。懸垂線の性質と、装置(100)がケーブルをさほど困難なく上下に移動できることを考慮すると、装置(100)の好ましい位置は懸垂線に沿ったものであり得る。
【0086】
装置(100)がその好ましい位置に到達するとすぐに、装置は安定化機構によってその位置で安定化され(406)、ケーブルを巻き上げることによってケーブル回収が行われる。ケーブル(304)が巻き上げられると、装置はケーブルに沿って推進される。事実上、糸と針の形態と同様にして、装置(100)は、船(302)に対して静止したままに見えても、海底(307)に対してケーブルに沿って横方向に移動する。ケーブルが装置(100)の係合構造を通って走行するとき、装置は、装置とケーブルとの相対移動によって生じる摩擦力に起因して、自家的に発電できる。発生された電力は、収集され、1以上のサンプリング要素(102)への給電に使用される。1以上のサンプリング要素は、装置の起動時に起動されてもよく、いくつかの実施形態では、サンプリング要素は、遠隔制御装置によって遠隔で起動されてもよい(408)。1以上のサンプリング要素(102)が作動すると(408)、要素(102)は、それらの環境に関連するパラメータ(410)をサンプリングする。なお、上述のステップ(406)はオプションであり、したがって、水中パラメータのサンプリング中の装置の安定化は必須要件ではない。これは、水中パラメータをサンプリングする方法の単なる好ましいステップである。
【0087】
装置(100)は、リピータユニットが検出されるたびに、1以上のサンプリング要素(102)の出力データ/サンプリングデータを含む信号を遠隔演算装置に送信する(412)。なお、リピータユニットは、多くの場合、水中ケーブル(304)よりも拡径されている。したがって、係合構造(104)がクラスプタイプの係合構造であるいくつかの実施形態では、装置は、リピータユニットをナビゲート/通過できない場合がある。上記を考慮すると、リピータユニットは、ケーブル(304)の巻上げ中に装置(100)を水面に向かって持ち上げるための持上げ機構として使用できることが想定される。リピータユニットがウインチに近づくとすぐに、装置(100)をケーブル(304)から切り離し、リピータの反対側でケーブルに再び取り付けることができる。このような実施形態では、ケーブルの長さに応じて上述のステップを繰り返すことができる。必要に応じて装置がリピータを通り越してナビゲートできるように、装置の係合構造は、リピータが検出/到達されたときにケーブルを少なくとも部分的に解放するように構成され得ることは、当然想定されるべきである。例えば、ケーブルが浅い箇所にリピータを有する場合、オペレータはリピータを通過して移動させたい場合があり、したがって、装置は、少なくとも部分的にケーブルから解放されてリピータを通り超えて移動することにより、リピータを通過するようにしてナビゲートされるように構成されてもよい。装置がリピータを通過するとすぐに、装置は以前のようにケーブルと再係合してもよい。
【0088】
回収プロセスの最後に、または好ましくはすぐに、装置(100)が回収される(414)。装置(100)の回収には、装置のオペレータが海面に向かって装置をナビゲートすること(416)が含まれ、そこで、装置は水中ケーブル(304)から取り外され(417)、停止される(418)。いくつかの実施形態では、装置は、ケーブルに沿って海面および船まで持ち上げられるように、ケーブルをつかむように単純に構成されてもよい。本明細書を通じて述べたとおり、装置(100)は、相当の深度で水中用途に使用できる。このような適用では、圧力や温度等の環境要因が極端に大きくなり、装置のナビゲーションが負担になる場合がある。したがって、装置は、ケーブルの長さに沿ってリピータユニットの1つに係合し、ケーブルを巻き上げるだけで、海面に向かってナビゲートされる(416)。リピータユニットは、装置(100)を回収できる海面に向かって効果的に「押す」ことができる。装置(100)が船に持ち上げられると、装置搭載の記憶ユニットに記録されたデータは、装置がケーブルに再接続されて再び配備される前に、船上のより大きな記憶装置にダウンロードされる。
【0089】
記憶部(108)が船上または陸上の場所などの遠隔地にあるデータベースである実施形態では、エンドユーザは遠隔サーバであってもよい。リモートサーバは、装置を停止し、例えば、装置を回収する当事者に関連付けられたユーザ名とパスワードを使用してインターフェースにログインし、その後の分析のためにデータベースに保存されるデータを収集することにより、データにアクセスできる。
【0090】
ケーブル回収の性質上、回収プロセスの間、データ取得装置が配備され、ケーブルに固定される場合がある。
【0091】
なお、前述のように、水中ケーブル(304)は、既存の水中ケーブルである必要はなく、水中に配備されるように構成された特注の重り付きのケーブルであってもよい。このような実施形態では、ケーブルの一端はウインチ等のケーブル回収構成要素に接続され、ケーブルの反対端は海洋に放出される。ケーブルは、水中に放出されたケーブルの端に取り付けられた重りなどの重量または自重により、海底に向かって落下する。ケーブルが好ましい位置に配備されるとすぐに、装置(100)は、上記の方法ステップで説明したように、作動され、ケーブルに固定される。
【0092】
なお、上記と同じ方法ステップ(402)からステップ(412)までを繰り返し、特注の重り付きのケーブルを用いて水中環境データを記録できる。ケーブルは、装置(100)に給電するために使用される、銅などの既存の水中ケーブルと同様の材料を含むように構成されてもよい。
【0093】
装置(100)の回収およびケーブルの回収は、上述の方法ステップ(414~418)と同様のステップと同様に実行できる。例えば、ケーブルは、既存の水中ケーブルのリピータと同様の持上げ機構として使用できるストッパを含むことができ、回収中のケーブルの牽引に応じて装置(100)を押圧してもよい。
【0094】
演算ユニット(106)の構成要素は、図11のハイレベルブロック図に示される。演算ユニット(106)は、以下に説明する構成要素の機能を実行するプロセッサ(502)を含んでいてもよい。当該構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよく、演算ユニット上で実行されるソフトウェアユニットによって実現されてもよい。ソフトウェアユニットは、メモリ(504)に格納され、ここに記載される構成要素の機能を実行すべく、プロセッサ(502)に指示を与える。メモリ(504)は、装置(100)に関連付けられた固有の識別子を格納できる。
【0095】
演算ユニット(106)は、少なくとも1以上のサンプリング要素(102)の出力パラメータを受信するように構成された受信機(506)を含むことができる。各出力は、特定のサンプリング要素に関連する電気信号であってもよい。出力は、処理信号規格に従って増幅された出力であってもよい。演算ユニット(106)は、出力を、制御ユニット(116)など、演算ユニット(106)と通信する他の構成要素によって読取り可能なデータに変換する変換器(508)を含むことができる。出力データは、演算ユニット(106)の内部クロック(510)によって提供されるリアルタイムデータを含み、1以上のサンプリング要素(102)の出力に効果的にタイムスタンプを付け、出力をこれが取得された特定の日時と紐付けることができる。
【0096】
演算ユニット(106)は、通信部(514)、記憶部(108)、および制御ユニット(116)のうちの1以上のデータを送信するように構成された送信器(512)を含み得る。出力データは、通信部(514)によって、装置(100)に関連付けられた記憶部(108)に送信される。通信部(514)は、演算ユニット(106)から受信した出力データを、水中データケーブル内に配置されたリピータユニットの周波数と一致する周波数を介し、遠隔演算装置に送信することにより、遠隔演算装置と通信するように構成される。
【0097】
制御ユニット(116)は、演算ユニット(106)から受信したデータに応じて、装置の安定化機構、安全機構、および推進機構(118)を制御するように構成され得る。
【0098】
なお、更新された技術が、装置の機能および構成要素の一部と置き換えられてもよい。例えば、記憶部(108)は、USB記憶装置等の物理記憶装置であってもよいが、装置はワイヤレス機能を有していてもよく、記憶装置は、本明細書を通じて記載されているリモートサーバによって維持管理されるクラウドストレージに置き換えられてもよい。
【0099】
本明細書に記載される水中サンプリング装置の様々な用途が存在し得ることは明らかである。このような装置の幅広い用途により、本発明の本質から逸脱しない構成要素および構成の様々な組み合わせが想定され得る。したがって、本発明が求める保護は、掘削アームや異なる本体形状等の付加的な付属品を単に含むような派生的な実施形態を範囲に含むことを目的とする。
【0100】
実際、海洋の各々には、対処して克服する必要がある様々な条件がある。例えば、特定の海洋は、異なる温度と異なる圧力を有し、特定の形態の海洋生物を引き付けたり、特定の水中植物等の成長を促進したりする。このような情報は、気候変動、魚の移動パターン、および新種生物の特定に関連する研究にとって特に重要である。
【0101】
装置は、関連するサンプリング部によって取得されたサンプリングパラメータ/データを自動的に記録するために使用される。長期間にわたって取得されたデータ、つまりデータベースに保存された履歴データは、特定の条件および環境での装置の性能を分析および判断するために使用される。取得されたデータを使用して、特定の海洋の平均温度および深度を計算できる。
【0102】
記録され蓄積されたデータは、海洋およびその状態に関するフィードバックの基礎を形成する可能性があり、科学的な目的だけでなく、産業界、政府、保護活動家、および規制機関によっても使用される可能性がある。
【0103】
これまでの説明は、例示を目的として提示されたものである。包括的であること、または開示された正確な形態に本発明を限定することは意図されていない。当業者は、上記の開示に照らして多くの修正および変更が可能であることを理解できる。例えば、追加のデータケーブルおよび/または電源ケーブルを装置に取り付け、装置と船との間の電力および/または通信に使用されてもよい。これは、装置が作動すると予期される深度に起因して明らかに複雑性を招くが、そのような実施は、本発明の範囲外ではない。さらなる例として、装置は、例えば、装置をケーブルから瞬間的に切り離し、ケーブルの特定の範囲内で動作させ、更なる動作のために再び取り付けることを可能にすることによって、海底ケーブルに対する自由度を少なくともある程度有してもよい。このような実施形態では、装置には、ケーブルに取り付けられたままの可動接続点へのテザーが設けられてもよく、装置が処理中に紛失してケーブルに再取り付け不能になるおそれを軽減できる。
【0104】
明細書で使用される文言は、主に読みやすさと説明の目的で選択されたものであり、発明の主題を描写または制限するために選択されたものではない。したがって、本発明の範囲は、この詳細な説明によってではなく、本明細書に基づく出願に基づく請求項によって限定されることが意図される。したがって、本発明の実施形態の開示は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を例示することを意図するものであり、限定するものではない。
【0105】
最後に、本明細書および付随する特許請求の範囲全体を通じて、文脈上別段の要求がない限り、単語「備える」及びその変化形は、記載された整数または整数のグループの包含を意味し、他の整数または整数のグループの除外は意味しないと理解される。
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【国際調査報告】