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特表2023-525873灌流撮像シーケンスの血管関数を求めるための、コンピュータにより実現される方法、システムおよびコンピュータプログラム製品
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  • 特表-灌流撮像シーケンスの血管関数を求めるための、コンピュータにより実現される方法、システムおよびコンピュータプログラム製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】灌流撮像シーケンスの血管関数を求めるための、コンピュータにより実現される方法、システムおよびコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20230612BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230612BHJP
   G06V 10/82 20220101ALI20230612BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
A61B5/055 380
G06T7/00 350C
G06V10/82
G06T7/00 612
A61B5/055 383
A61B6/03 360Z
A61B6/03 375
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569266
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2021062561
(87)【国際公開番号】W WO2021228906
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】20174533.8
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522442962
【氏名又は名称】アイコメトリクス・ナムローゼ・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ICOMETRIX NV
(71)【出願人】
【識別番号】599098493
【氏名又は名称】カトリーケ・ユニフェルシテイト・ルーヴァン
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ・ラ・ロサ,エセキエル
(72)【発明者】
【氏名】ロベン,ダビド
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA24
4C093FF21
4C093FF32
4C093FF36
4C096AA11
4C096AD14
4C096DC22
4C096DC32
5L096AA09
5L096BA06
5L096EA18
5L096EA39
5L096HA11
5L096JA03
5L096KA04
(57)【要約】
本発明は、灌流撮像シーケンス(1)の血管関数(5)を求めるための、コンピュータにより実現される方法に関し、複数のボクセルについてボクセル時系列を含む灌流撮像シーケンス(1)を受け取るステップと、ボクセルごとの重み(3)を受け取るために、灌流撮像シーケンスに、訓練された分類器(2)を適用するステップと、分類器(2)からボクセルごとの重み(3)を受け取るステップと、血管関数(5)をボクセル時系列の加重和(4)として求めるステップとを含み、分類器は、例のセットを使用して、予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の類似性を最適化することによって、訓練される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
灌流撮像シーケンス(1)の血管関数(5)を求めるための、コンピュータが実行する方法であって、
i.複数のボクセルについてボクセル時系列を含む灌流撮像シーケンス(1)を受け取るステップと、
ii.ボクセルごとの重み(3)を受け取るために、前記灌流撮像シーケンス(1)に、訓練された分類器(2)を適用するステップと、
iii.前記分類器(2)からボクセルごとの重み(3)を受け取るステップと、
iv.前記血管関数(5)を前記ボクセル時系列の加重和(4)として求めるステップとを含み、
前記分類器は、例のセットを使用して、予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の類似性を最適化することによって、訓練される、方法。
【請求項2】
前記血管関数(5)は、動脈入力関数または静脈出力関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ボクセルごとの重み(3)は正規化される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分類器は、第1の人工ニューラルネットワークである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の人工ニューラルネットワークは空間的正規化を使用し、前記空間的正規化は好ましくはSoftmax演算である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記分類器の前記訓練は、第2の人工ニューラルネットワークを作成することと、前記例のセットを使用して、予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の類似性によって前記第2の人工ニューラルネットワークを最適化することとを含む、間接的訓練であり、
前記第2の人工ニューラルネットワークは、前記第1の人工ニューラルネットワークを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記類似性は、前記予測された血管関数と前記グラウンドトゥルース血管関数との間の相関として求められる、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
灌流撮像シーケンス(1)の血管関数(5)を求めるためのシステムであって、
-灌流撮像シーケンス(1)を受け取るための手段を備え、前記灌流撮像シーケンス(1)は、複数のボクセルについてボクセル時系列を含み、前記システムは、さらに、
-訓練された分類器(2)を備え、前記分類器(2)は、前記灌流撮像シーケンス(1)からボクセルごとの重みを求めるよう構成され、前記分類器は、例のセットを使用して、予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の類似性を最適化することによって、訓練され、前記システムはさらに、
-ボクセルごとの重みを受け取るために、前記灌流撮像シーケンス(1)に、前記訓練された分類器(2)を適用するための手段(3)と、
-前記血管関数(5)を前記ボクセル時系列の加重和(4)として求める手段(9)とを含むことを特徴とする、システム。
【請求項9】
前記システムは、さらに、
-少なくとも1つの処理ユニットと、
-請求項1~7のいずれか1項に記載の方法を実行するための手段とを備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記分類器は、複数の層を含む第1の人工ニューラルネットワークとして実現される、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数の層は、前記ボクセルごとの重み(3)を出力するよう構成される最後の層(Pvol)を含み、前記最後の層は、前記ボクセルごとの重み(3)を空間的に正規化するための空間的Softmax層である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムは、第2の人工ニューラルネットワークをさらに備え、前記第1の人工ニューラルネットワークは、前記第2の人工ニューラルネットワークの一部であり、前記分類器は、前記例のセットを使用して、予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の類似性によって前記第2の人工ニューラルネットワークを最適化することによって、間接的に訓練される、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の人工ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワークとして実現され、前記畳み込みニューラルネットワークは、K個の畳み込み層L~Lを含み、各層Lは、3×3×3カーネルを有する23+k個のフィルタを含む、請求項10~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記畳み込みニューラルネットワークは、さらに、前記K個の畳み込み層(6)の後ろに追加の畳み込み層(Lout)をわずか1つのフィルタとともに含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
請求項8~14のいずれか1項に記載のシステムに、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法を実行させるためのコンピュータ可読命令を含む、灌流撮像シーケンス(1)の血管関数を求めるためのコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灌流撮像シーケンスの血管関数(vasucular function)を求めるための、コンピュータが実行する方法、システムおよびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中は、現在、世界で第2位の主要な死亡原因であり、第3位の主要な身体障害の原因である。急性虚血性脳卒中の治療法は、再灌流技術に依存し、その主な目標は、罹患した領域における血流供給を再確立することである。灌流撮像では、造影剤またはトレーサーの注入後に臓器の一連の画像が取得される。これらの画像は、臓器を通る造影剤の通過を示す。灌流画像は、3つの空間次元および1つの時間次元を有する4Dボリュームと考えることができる。代替的に、各ボクセルにおいて時系列を有し、造影剤による経時的な画像強度の変化がどのようであるかを示す3Dボリュームと考えることができる。これらの時系列は、造影剤注入プロトコルおよび心臓系によって影響を受けるので、個々に解釈することができない。しかしながら、逆畳み込み解析を通して、これらの測定値は定量化され、血液量、血流、到着時間等の生理的灌流パラメータを与えることができる。
【0003】
逆畳み込み解析にとって重要なのは、基準時系列の利用可能性、すなわち、動脈入力関数(AIF)および静脈出力関数(VOF)-またはより一般的には、血管関数である。これらの血管関数は、放射線科医が制御することができる逆畳み込みプロセスへの最も重要な入力である。これらの関数のわずかな変化でも、推定される灌流マップを強く変更し得、灌流逆畳み込みについての最も重要な選択を変え得る。
【0004】
動脈入力関数は、基準時系列、すなわち臓器の栄養動脈における時系列であり、その臓器における他の時系列を解析するために使用される。歴史的に、動脈入力関数の位置は、手動で示される必要がある。いくつかの特許は、AIF選択のプロセスを自動化するための技術を記載しており、それらのほとんどは、正しいボクセルをどのように選択するかに関する発見的ルールに依拠している。
【0005】
例えば、US2014/0163403 A1は、最大勾配、最大強調、ピーク時間、ウォッシュアウト時間、およびウォッシュアウト勾配などの特徴的なパラメータを抽出することによってAIF選択のプロセスを自動化する技術を開示している。抽出された特性パラメータ間の関係を示す特性パラメータマップが生成され、特性パラメータマップは複数の2次元プロットに変換される。非AIF組織の自動化されたセグメンテーション、およびAIF領域の判定は、複数の2次元プロット上のAIF領域の各位相の山および谷を自動的に見つけることによって達成することができる。
【0006】
灌流コンピュータ断層撮影(CTp)撮像において血管関数を求めるためのさらなる例は、US2013/0011037 A1およびUS 8,837,800 B1に開示されており、これもルールベースの手法を使用する。
【0007】
Fan et al.による科学論文「An Automatic Estimation of Arterial Input Function Based on Multi-Stream 3D CNN」(2019)は、マルチストリーム3D畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に基づいてAIFを推定することを開示しており、これは、空間的特徴と時間的特徴とを組み合わせて、AIF関心領域(ROI)を推定する。灌流画像(すなわち、複数の被験体)の収集物から開始して、グラウンドトゥルースAIFマスクが、各データセットについて(すなわち、各被験体について)構築される。このグラウンドトゥルースAIFマスクは、各ボクセルについて、それがAIFの一部であるか否かを示す二値画像である。その後、CNNが、灌流画像からそのようなセグメンテーションを生じさせるように訓練される。訓練は、グラウンドトゥルース関数と予測されたAIFマスクとの類似度上で勾配降下を行うことによって行われる。訓練されたCNNは、未見の灌流画像をセグメント化するために使用することができる。結果として得られるAIFマスクは、すべての選択されたボクセルの平均時系列としてAIFを最終的に生成するために使用される。したがって、Fan et al.は、灌流撮像シーケンスの血管関数を求めるための教師ありセグメンテーション手法を提案している。
【0008】
教師ありセグメンテーションに基づく手法は技術的に困難であり、臨床診療との類似性が限られている。特定の血管のROIをセグメント化することによって血管関数を推定することは、ボクセル候補を空間的に準最適関数選択に制約するかもしれない。AIF/VOF選択は、主に、臨床診療において、血管時系列プロファイルに基づいて行われ、したがって、患者ごとに、ある特定の血管およびROIが、凝血塊場所、罹患脳半球、および血管信号の質(SNR、ピーク濃度値、到達時間、部分体積効果など)に応じて、適切となるであろう。さらに、グラウンドトゥルースAIFマスクの作成は、各ボクセルについて、それがROIの一部であるか否かを手動で指示することを必要とし、これは、大きな3Dボリュームの場合には面倒なタスクである。(臨床診療において灌流分析のために行われるであろうように)AIFマスクとして単に単数またはいくつかのボクセルを示すことを試みることは、グラウンドトゥルースが今度は多くの偽陰性ボクセルを含むため、不充分であり、ネットワークの訓練に影響を及ぼすであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする客観的な技術的課題は、血管関数の判定を強化し、人間の評価者のタスクを簡略化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題は、独立請求項に係る発明によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0011】
第1の局面では、本発明は、灌流撮像シーケンスの血管関数を求めるための、コンピュータにより実現される方法であって、
i.複数のボクセルについてボクセル時系列を含む灌流撮像シーケンスを受け取るステップと、
ii.ボクセルごとの重みを得るために、灌流撮像シーケンスに、訓練された分類器を適用するステップと、
iii.分類器からボクセルごとの重みを受け取るステップと、
iv.血管関数をボクセル時系列の加重和として求めるステップとを含み、
分類器は、例のセットを使用して、予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の類似性を最適化することによって、訓練される。
【0012】
血管関数は、血液供給領域内のトレーサーまたは造影剤の濃度を経時的に示す。灌流撮像シーケンスは、造影剤の注入後の臓器から得られる一連の画像である。灌流撮像シーケンスは、磁気共鳴断層撮影(MRT)または灌流コンピュータ断層撮影(CTp)によって得られてもよい。造影剤としては、MRT用のガドリニウム造影剤およびCTp用のヨウ素造影剤を用いてもよい。造影剤は検出の変化を引き起こし、それを造影剤濃度に変換することができる。
【0013】
ボクセルとは、3次元空間における規則的なグリッド上の値を指す。2Dビットマップ内のピクセルと同様に、ボクセル自体は、典型的には、それらの位置(座標)がそれらの値で明示的に符号化されない。代わりに、レンダリングシステムが、ボクセルの位置を、そのボクセルの、他のボクセルに対する位置に基づいて、推定することができる。
【0014】
本発明の枠組み内では、複数のボクセルは、少なくとも2つのボクセルを意味する。したがって、複数のボクセルは、60×60×1~2048×2048×1280個のボクセル、好ましくは256×256×2~512×512×320個のボクセルを有するグリッドを含んでもよい。最も好ましい実施形態では、複数のボクセルは、256×256個のピクセルを2~80個のスライスにおいて有する画像を含む。好ましくは、灌流撮像系列は、40~120秒で取得される10~120の画像を含む。
【0015】
本発明の枠組み内では、分類器は、分類を実現するアルゴリズムである。好ましくは、分類器は、機械学習アルゴリズムとして実現され、システムに含まれ、灌流撮像シーケンスの血管関数を求めるための処理ユニットによって実行される。
【0016】
本発明の枠組み内では、ボクセルごとの重みは複数の重みを意味し、ボクセルの各々は重みの1つに割り当てられ、重みの各々はそれぞれボクセルの1つに割り当てられる。したがって、ボクセルおよび重みの割り当ては全単射である。
【0017】
好ましくは、分類器は、例のセットを使用して、予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の類似性を最適化することによって、訓練される。言い換えれば、訓練は、予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の差の最小化を含む。
【0018】
「グラウンドトゥルース」という文言は、特定の質問に関する真実の知識、すなわち理想的な期待される結果に対する概念的な文言を指す。グラウンドトゥルース血管関数は、人間の評価者または別の信頼できる判断プロセスによって求められてもよい。
【0019】
特許請求される方法は、血管関数の選択をROI、すなわち訓練画像において人間の評価者によってラベル付けされた血管に制約することを回避する。代わりに、画像全体、したがってすべてのボクセル時系列が、血管関数を求めるための入力として使用される。これは、準最適関数またはROI選択を防止し、グラウンドトゥルース注釈を容易にする。人間の評価者は、各ボクセルについて、それがROIの一部であるか否かを示す代わりに、訓練画像およびそれらの「グラウンドトゥルース」血管関数を選択するだけでよい。分類器が適切に訓練された後、本方法は自動的に実行されてもよい。
【0020】
ある実施形態では、血管関数は、動脈入力関数(AIF)または静脈出力関数(VOF)である。AIFは、被検臓器の栄養動脈における造影剤の濃度の時系列を示す。VOFは、被検臓器の排出静脈における造影剤の濃度の時系列を示す。
【0021】
好ましくは、各時点yは、血管関数yを予測するために体積xの全ボクセルの加重平均として表される。任意の時点iについて、血管関数は以下であってもよく、
【0022】
【数1】
【0023】
ここで、Pvolは、血管関数に対するボクセルごとの寄与を伴う3D確率的体積計算である。平均化ステップの利点は、得られるAIFが単一のボクセルよりも高い信号対雑音比を有することになることである。
【0024】
ある実施形態では、ボクセルごとの重みは正規化される。好ましくは、ボクセルごとの重みは1に正規化される。
【0025】
【数2】
【0026】
有利には、重みの正規化は、ボクセルについて、相対的な重みを与えてもよく、ボクセルを、より比較可能にする。さらに、正規化は、医用撮像における撮像システムの制限された解像度のために小さな物体または領域における活動に対して生じる部分容積効果を補償してもよい。
【0027】
ある実施形態では、分類器は、第1の人工ニューラルネットワークである。好ましくは、人工ニューラルネットワークは畳み込みニューラルネットワーク(CNN)である。
【0028】
CNNは、入力層および出力層、ならびに複数の隠れ層からなる。CNNの隠れ層は、典型的には、乗算、別のドット積、例えばスライディングドット積、または相互相関を用いて畳み込む一連の畳み込み層からなる。これは、重みが特定の指標点でどのように求められるかに影響を及ぼす。
【0029】
CNNの入力は、形状(画像数)x(画像幅)x(画像高さ)x(画像深度)のテンソルである。画像深度はまた、スライスとして表されてもよい。好ましくは、毎分60個の画像が使用され、各画像は、256×256個のピクセル(幅および高さ)ならびに2~80個のスライスを有する。しかしながら、毎分それより多いもしくは少ない画像、それより大きいもしくはより小さい画像、またはそれより多いもしくは少ないスライスを使用してもよい。
【0030】
畳み込み層を通過した後、画像は、形状(画像の数)x(特徴マップ幅)x(特徴マップ高さ)x(特徴マップ深度)x(特徴マップチャネル)を有する特徴マップに抽象化される。
【0031】
畳み込み層は、入力を畳み込み、その結果を次の層に渡す。全結合されたフィードフォワードニューラルネットワークを使用して、特徴を学習し、データを分類することができるが、CNNを画像に適用する方が、共通の人工ニューロンネットワークを適用するよりも、有利である。CNNを適用すると、必要とされるニューロンの数は、特に、各ピクセルまたはボクセルが関連変数である画像または3Dデータに関連付けられる大きい入力サイズの場合に、より少ない。畳み込み演算は、自由パラメータの数を低減し、より少ないパラメータでネットワークをより深くすることを可能にするので、この問題に対する解決策をもたらす。
【0032】
ある実施形態では、第1の人工ニューラルネットワークは、空間的正規化を使用する。好ましくは、空間的正規化はSoftmax演算である。Softmax演算は、Softmax演算のみを実現する専用のSoftmax層として実現されてもよい。
【0033】
Softmax層は、Softmax関数を実現する層である。本発明の枠組み内では、Softmax関数は、入力としてn個の実数のベクトルを取り、それを入力数の指数に比例するn個の確率からなる確率分布に正規化する関数である。
【0034】
ある実施形態では、分類器の訓練は、第2の人工ニューラルネットワークを作成することと、例のセットを使用して、予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の類似性によって第2の人工ニューラルネットワークを最適化することとを含む、間接的訓練である。この実施形態では、第2の人工ニューラルネットワークは、第1の人工ニューラルネットワークを含む。第2のニューラルネットワークは、第1のニューラルネットワークの出力重みを使用して、血管関数を求める。
【0035】
訓練中、第2のニューラルネットワークの出力、すなわち、血管関数は、グラウンドトゥルース血管関数と比較される。類似度が低い場合、ボクセルごとの重みの決定は最適でなく、第2のニューラルネットワーク内のノード、したがって第1のニューラルネットワーク内のノードは、グラウンドトゥルース血管関数とのより高い類似度を有する血管関数が出力されるまで適合された。
【0036】
好ましくは、第2の人工ニューラルネットワークは、第1の人工ニューラルネットワークよりも大きい人工ニューラルネットワークであり、すなわち、より多くのニューロンおよび/またはより多くの層を有する。好ましくは、第1の人工ニューラルネットワークは、層、ニューロン、またはより一般的には第2のニューラルネットワークの一部として実現される。
【0037】
有利には、第2の人工ニューラルネットワークの最適化は、予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の類似性を最適化することによって、分類器の重みのエンドツーエンドの勾配ベースの最適化を可能にする。
【0038】
ある実施形態では、類似性は、予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の相関として求められる。好ましくは、類似性メトリックは、ピアソン相関係数を使用するピアソン相関である。
【0039】
ピアソン相関係数Lは、2つの変数、すなわち予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の線形相関の測度である。Cauchy-Schwarz不等式によれば、それは、+1と-1との間の値を有し、ここで、+1は、完全に正の線形相関であり、0は、線形相関なしであり、-1は、完全に負の線形相関である。したがって、予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の類似性を最適化するためには、Lは+1に近くなければならない。
【0040】
好ましくは、ピアソン相関係数Lは、以下により求められ、
【0041】
【数3】
【0042】
式中、yはグラウンドトゥルース血管関数であり、ypredは予測された血管関数である。
【0043】
代替実施形態では、類似性は、平均二乗誤差を使用して求められる。
別の局面では、本発明は、灌流撮像シーケンスの血管関数を求めるためのシステムに関し、本システムは、灌流撮像シーケンスを受け取るための手段を備え、灌流撮像シーケンスは、複数のボクセルについて時系列を含む。本システムは、さらに、訓練された分類器を備え、分類器は、灌流撮像シーケンスからボクセルごとの重みを求めるよう構成される。分類器は、例のセットを使用して、予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の類似性を最適化することによって、訓練される。本システムは、さらに、ボクセルごとの重みを受け取るために、訓練された分類器を灌流撮像シーケンスに適用するための手段と、血管関数をボクセル時系列の加重和として求めるための手段とを備える。
【0044】
一実施形態では、システムは、少なくとも1つの処理ユニットと、前述の方法を実行するための手段とをさらに備える。
【0045】
処理ユニットは、好ましくは、グラフィックス処理ユニット(GPU)、中央処理ユニット(CPU)、または任意の他の好適な処理ユニットであってもよい。
【0046】
ある実施形態では、分類器は、複数の層を含む第1の人工ニューラルネットワークとして実現される。人工ニューロンネットワークは、パターン認識および信号分類に使用される好ましい機械学習アルゴリズムである。
【0047】
ある実施形態では、複数の層は、ボクセルごとの重みを出力するよう構成される最後の層を含み、最後の層は、ボクセルごとの重みを空間的に正規化するための空間的Softmax層である。
【0048】
ある実施形態では、本システムは、第2の人工ニューラルネットワークをさらに備え、第1の人工ニューラルネットワークは、第2の人工ニューラルネットワークの一部であり、分類器は、例のセットを使用して、予測された血管関数とグラウンドトゥルース血管関数との間の類似性によって第2の人工ニューラルネットワークを最適化することによって、間接的に訓練される。
【0049】
ある実施形態では、第1の人工ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワークとして実現され、畳み込みニューラルネットワークは、K個の畳み込み層L~Lを含み、各層Lは、3×3×3カーネルを有する23+k個のフィルタを含む。
【0050】
好ましくは、カーネルは対称である。しかしながら、カーネルは、より大きくても、またはより小さくてもよい。したがって、層は、23+kより多い、または少ないフィルタを含んでもよい。より深い層は、より広い空間的コンテキストを表現しなければならないので、より多くのフィルタは、有益な効果を有さない。
【0051】
Kは、畳み込み層の総数を規定する任意の整数であってもよい。例えば、これに限定されず、Kは1、3、4、5、10、またはそれより多くてもよい。Kが大きいほど、方法の感度はより高くなる。しかしながら、より大きいKは、より多くのメモリを必要とする。
【0052】
一実施形態では、畳み込みニューラルネットワークは、さらに、K個の畳み込み層の後ろに追加の畳み込み層をわずか1つのフィルタとともに含む。追加の畳み込み層は、先行する層を単一の確率的ボリュームにマッピングする。
【0053】
別の局面では、本発明は、本発明の実施形態によるシステムに本発明の実施形態による方法を実行させるためのコンピュータ可読命令を含む、灌流撮像シーケンスの血管関数を求めるためのコンピュータプログラム製品に関する。
【0054】
本発明は、以下が示される図面に示される例を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】一実施形態の概略図である。
図2】分類器をより詳細に示す一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、提案される方法の実施形態の概略図を示す。まず、灌流撮像シーケンス1が提供される。灌流撮像シーケンス1は、灌流画像のシーケンスを含み、各画像は3つの空間次元を含む。代替実施形態では、灌流画像は、2つの空間次元のみを備えてもよい。
【0057】
各画像は、均質なサイズの要素であるボクセルに分割される。例えば、各画像は、256×256×2のボクセルを含む。しかしながら、任意の方向における、より大きいまたはより小さい画像が、可能であってもよい。好ましくは、灌流撮像シーケンス1は、10~120の画像を含む。
【0058】
好ましくは、灌流撮像シーケンス1は、40秒から120秒の間で行われる。したがって、灌流撮像シーケンス1は、毎秒0.08~3つの画像を含む。
【0059】
訓練された分類器2が、灌流撮像シーケンス1に適用される。分類器は、好ましくは、予測された血管関数、すなわち出力と、グラウンドトゥルース血管関数、すなわち例のセットの実血管関数との間の類似性の逆伝播による最適化によって訓練される。グラウンドトゥルース血管関数は、人間の評価者または別の信頼できる判断プロセスによって求められてもよい。
【0060】
灌流撮像シーケンス1を分類器2に適用することは、ボクセルごとの重み3をもたらす。言い換えれば、分類器2は、灌流撮像シーケンス1の各画像のボクセルごとに重み3を出力する。
【0061】
すべてのボクセル時系列は加重され、加算される。これにより、ボクセル時系列の加重和4が求められる。加重和4は、経時的な血液中の造影剤の強度の関数である血管関数5を与える。
【0062】
図2は、分類器2の概略図を示す。本実施形態では、分類器2は畳み込みニューラルネットワークである。上述のように、分類器は、灌流撮像シーケンス1を受け取る。灌流撮像シーケンス1は、時系列の画像x~xを含む。これらの画像から、分類器2は、血管関数ypredを表す時系列における加重和に加重されたボクセルを加算するためのボクセルごとの重みを求める。
【0063】
分類器は、K個の畳み込み層6(L~L)を含む。各層Lは、1つが、入力画像または先行する層の1つ1つの入力チャネルに対する、2(3+k)個のフィルタを含む。したがって、第1の層Lは2=16個のフィルタを含み、第2の層Lは2=32個のフィルタを含み等となる。
【0064】
分類器2は、さらに、1つのフィルタのみを伴う追加の畳み込み層Loutを含む。追加の畳み込み層Loutは、畳み込み層を単一の確率的ボリュームにマッピングする。
【0065】
分類器2の最後の層は、ボクセルごとの重みを空間的に正規化するための層Pvolである。最後の層は、好ましくは、ボクセルごとの重みを空間的に正規化するためにSoftmax演算を実現するSoftmax層であってもよい。正規化された重みは、加重和4、したがって血管関数5を求めるための手段に出力される。
【符号の説明】
【0066】
参照符号
1 灌流撮像シーケンス
2 分類器
3 ボクセルごとの重み
4 加重和
5 血管関数
6 畳み込み層L~L
out 追加の畳み込み層
vol ボクセルごとの重みを空間的に正規化するための層Pvol
~x 画像
図1
図2
【国際調査報告】