(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池用電極アセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20230612BHJP
H01M 8/248 20160101ALI20230612BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/248
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569273
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 US2021030970
(87)【国際公開番号】W WO2021231155
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519297300
【氏名又は名称】イーエスエス テック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ESS Tech,Inc.
【住所又は居所原語表記】26440 SW Parkway Avenue,Wilsonville,Oregon 97070 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー ショーン
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】グローバーグ ティアゴ
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヤン
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA24
5H126BB10
5H126FF03
5H126JJ09
(57)【要約】
レドックスフロー電池システムのための方法及びシステムが提供される。一例では、レドックスフロー電池システムは、レドックスフロー電池の端部を規定する末端構造間で圧縮されたセルスタックを含む。セルスタックは、複数のセルから形成されてよく、各セルは、膜セパレータの第1の面と接触する変形可能な正極と、正極よりも圧縮性が低く構成され、膜セパレータの第2の面に配置される負極とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックスフロー電池であって、
前記レドックスフロー電池の端部を規定する末端構造間に圧縮されたセルスタックであって、複数のセルから形成される前記セルスタックを含み、前記複数のセルの各セルは、
変形可能な正極であって、前記正極の機械的圧縮に基づいた透過性を有し、膜セパレータの第1の面と面を共有して接触している、前記正極と、
前記正極より圧縮性が小さいように構成され、前記正極の反対側の前記膜セパレータの第2の面に配置された負極と、
前記正極と接触している電解質と
を含む、レドックスフロー電池。
【請求項2】
前記正極が、多孔質で導電性のフェルトから形成され、
前記フェルトが圧縮されると、前記フェルトの厚さ及び透過性が減少し、前記厚さは、前記レドックスフロー電池の縦軸に沿って規定される、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記正極の第1の平面が、前記膜セパレータと面を共有して接触し、前記正極の前記第1の平面の反対側の第2の平面が、第1の双極板と面を共有して接触している、先行請求項のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記負極が、前記膜セパレータに直接接触するリブを備えたメッシュから形成され、
前記リブは、前記レドックスフロー電池の縦軸に垂直な面に沿って等間隔に配置され、各リブは、前記膜セパレータと第2の双極板との間で前記縦軸に沿って延びる、先行請求項のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
前記負極が、前記レドックスフロー電池の縦軸と平行な第1の方向に前記膜セパレータを通して前記正極に圧力を加え、
前記圧力の量は、前記末端構造によって与えられる前記レドックスフロー電池の圧縮の量に対応する、先行請求項のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
前記正極が、前記レドックスフロー電池の縦軸に沿って前記負極のメッシュのリブと整列した第1のゾーンのセットで圧縮され、前記正極は、前記縦軸に沿って前記負極の前記メッシュの前記リブ間の空間と整列した第2のゾーンのセットで、より少なく圧縮され、
前記第1のゾーンのセットは、前記正極の平面に沿って、前記第2のゾーンのセットと交互になっており、前記平面は前記レドックスフロー電池の縦軸に垂直である、先行請求項のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項7】
第1の双極板が、前記負極によって加えられた圧力と反対の第2の方向に前記正極の第2の平面に圧力を加え、
前記第1の双極板によって加えられた前記圧力は、前記正極の前記第2の平面にわたって均一である、先行請求項のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項8】
前記正極の第1のゾーンのセットが、低い電解質透過性の領域であり、
前記正極の第2のゾーンのセットが、高い電解質透過性の領域である、先行請求項のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項9】
前記正極の第2のゾーンのセットが、第1のゾーンのセットよりも多くの電解質が前記正極を通って流れるのを可能にするフローチャネルであり、
前記フローチャネルは、前記複数のセルの各セルの正極コンパートメントを通る電解質の流れを誘導及び分配するように構成される、先行請求項のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項10】
前記正極が、前記レドックスフロー電池の前記負極、前記第1の双極板、及び前記末端構造より圧縮性が高く構成され、且つ、前記膜セパレータ及び前記第1の双極板より透過性が高く構成される、請求項3に記載のレドックスフロー電池。
【請求項11】
レドックスフロー電池用の電極アセンブリであって、
双極板と、
第1の透過性を備えた正極であって、前記正極の第1の面で前記双極板と面を共有して接触し、第2の低下した透過性の領域を有する、前記正極と、
前記正極の第2の反対側の面と面を共有して接触している膜セパレータと、
前記正極の反対側で、前記膜セパレータと接触している負極とを含み、
前記負極は、前記正極の表面に垂直な方向に前記正極を圧縮することによって、前記第2の低下した透過性の前記領域を前記正極に形成するように構成される、
前記電極アセンブリ。
【請求項12】
前記正極が、圧縮性の多孔性材料のシートから形成され、前記第1の透過性を備えた領域が、前記正極の平面に沿って、前記第2の低下した透過性の前記領域と交互になっている、請求項11に記載の電極アセンブリ。
【請求項13】
前記負極を形成するメッシュをさらに含み、前記メッシュは、クロス筋交いによって接続された複数のリブを有し、前記複数のリブは、前記正極の平面と平行な平面に配置され、前記クロス筋交いは、前記複数のリブに垂直に、且つ、前記正極の前記平面と平行な前記平面に配置され、
前記負極は、前記正極より圧縮性が小さい、請求項11に記載の電極アセンブリ。
【請求項14】
前記負極によって前記正極に加えられる圧縮力が、前記膜セパレータを通して伝えられ、前記双極板によって抵抗され、
前記圧縮力は、前記負極の前記複数のリブが前記膜セパレータに接触する領域でのみ加えられる、請求項13に記載の電極アセンブリ。
【請求項15】
前記正極の前記表面に垂直な方向に沿って、前記負極の前記複数のリブが前記膜セパレータと接触する領域と整列する前記正極の前記領域が、前記正極の前記第2の低下した透過性の前記領域である、請求項13~14のいずれか1項に記載の電極アセンブリ。
【請求項16】
前記第1の透過性の前記領域の電解質の流れが、前記第2の低下した透過性の前記領域の電解質の流れより大きく、
前記第2の低下した透過性の領域を流れる電解質は、前記第2の低下した透過性の領域が圧縮されていないときと比較して、前記正極の厚さが減少したゾーンを通って流れる、請求項13~15のいずれか1項に記載の電極アセンブリ。
【請求項17】
レドックスフロー電池を動作させる方法であって、
第1の透過性を備えた第1のゾーンのセットと、第2のより低い透過性を備えた第2のゾーンのセットとを有する圧縮性の正極を通って正の電解質を流すこと
を含む、前記方法。
【請求項18】
負の電解質を負極を横切って流すことをさらに含み、
前記負極は、前記正極に圧縮力を加えるように構成されたメッシュから形成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記正の電解質を前記正極を通して流すことは、
前記第2のゾーンのセットより前記第1のゾーンのセットにより多くの正の電解質を流すことを含む、請求項17~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記正の電解質を前記第2のゾーンのセットを通して流すことは、
前記正の電解質を前記正極と前記負極の間に配置された膜セパレータに隣接して流すことと、
前記膜セパレータを横切って前記正の電解質と負の電解質の間でイオン交換を可能にすることと、を含む、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月15日に出願された「ELECTRODE ASSEMBLY FOR A REDOX FLOW BATTERY」という名称の米国仮出願第63/025,227号に対する優先権を主張する。前述の出願の全内容が、あらゆる目的で、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本説明は、一般に、レドックスフロー電池のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
レドックスフロー電池は、電力と容量を個別にスケーリングでき、また、従来の電池技術と比較して、性能損失を抑えながら数千サイクルの充電と放電を行うことができるため、グリッドスケールの蓄電用途に適している。全鉄ハイブリッドレドックスフロー電池は、低コストで地球に豊富な材料が組み込まれているため、特に魅力的である。鉄レドックスフロー電池(IFB)は、電解質として鉄、塩、及び水に依存しているため、シンプルで地球に豊富に存在する安価な材料を含み、刺激の強い化学物質を組み込む必要がないため、IFBが環境に与える悪影響を最小限に抑えることができる。
【0004】
IFBの電気化学セルは、スタックに配置された正極、膜セパレータ、負極、及び双極板を含み得る。一部の例では、双極板は、セルを介して電解質の流れを方向付けるために互いにかみ合わされた流れ場(IDFF)チャネルに適合されたネットシェイプ成形構造であってよい。双極板は、負極と正極の第1の面との間に配置され、膜セパレータは、正極の第2の反対側の面と隣接するセルの負極との間に配置される。正極は、例えばガス拡散層(GDL)紙から形成されてよく、これは、IDFFチャネル上の双極板上に圧縮されてよい。双極板のIDFFチャネルと組み合わせてフロースルー多孔性電極として正極を実装することによって、IFBの性能を向上させてよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者らは、GDL紙から正極を形成すると、双極板のIDFFチャネルを通る電解質の流れを妨げる場合があることを認識した。例えば、IDFFチャネルで十分な電解質質量の輸送を可能にするには、GDL紙の高い圧縮圧力を必要とし得る。このような高い圧力によって、より高い荷重に耐えるIFBコンポーネントの使用が必要となり、コストを押し上げ得る。IFBシステムのコストは、正極の形成に高価なGDL紙材料を使用することによってさらに増加し得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一例では、上記課題は、レドックスフロー電池システムであって、レドックスフロー電池の端部を規定する末端構造間に圧縮されたセルスタックであって、複数のセルから形成されるセルスタックを含み、複数のセルの各セルが、正極の機械的圧縮に基づいた透過性を有し、膜セパレータの第1の面と面を共有して接触している変形可能な正極と、正極より圧縮性が小さく構成され、正極の反対側の膜セパレータの第2の面に配置された負極と、正極と接触している電解質とを含む、レドックスフロー電池システムによって対処されてよい。このように、鉄レドックスフロー電池(IFB)システムは、高い電池性能を促進する低コストの電極アセンブリを含み得る。
【0007】
当然ながら、上記概要は、発明を実施するための形態でさらに説明される概念の一部を簡単な形で紹介するために提供されている。特許を請求する主題の重要なまたは必須の特徴を特定することを意図したものではなく、主題の範囲は、発明を実施するための形態に続く特許請求の範囲によって一意に定義される。さらに、特許を請求する主題は、上記または本開示のいずれかの部分に記載した欠点を解決する実施態様に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】電極及び膜セパレータを備えた電池セルを含むレドックスフロー電池システムの例の概略図を示す。
【
図2】レドックスフロー電池システムの第1の実施形態の斜視図を示す。
【
図3】レドックスフロー電池システムの第2の実施形態の斜視図を示す。
【
図4】
図2のレドックスフロー電池システムの第1の実施形態の分解図を示す。
【
図5】
図2のレドックスフロー電池システムの第1の実施形態の背面図を示す。
【
図6】
図2のレドックスフロー電池システムの第1の実施形態の側面図を示す。
【
図7】レドックスフロー電池システムで実装され得る電極アセンブリの第1の例の分解図を示す。
【
図8】正極を備えた
図7の電極アセンブリの部分分解図を示す。
【
図9】完全に組み立てられた
図8の電極アセンブリを示す。
【
図10】セルスタックの第1の例の一部分の第1の断面を示す。
【
図11】レドックスフロー電池システム用の電極アセンブリを製造する方法の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図2~10はほぼ一定の縮尺で示されているが、必要に応じて他の寸法を使用してよい。
【0010】
以下の記載は、蓄電コストが低減されたレドックスフロー電池を製造するためのシステム及び方法に関する。別個の正の電解質チャンバと負の電解質チャンバとを有する一体型マルチチャンバタンクを備えたレドックスフロー電池を
図1に示す。一部の例では、レドックスフロー電池は、全鉄フロー電池(IFB)の負極及び正極の両方で鉄の酸化還元化学を利用するIFBであってよい。電解質チャンバは1つまたは複数の電池セルに結合されてよく、各セルは、負極及び正極を含む。1つまたは複数の電池セルは、共通の軸に沿って積み重ねられてセルスタックを形成してよく、セルスタックは、IFBの第1の実施形態の斜視図である
図2、及び
図4の分解図に示すように、加圧板等の末端構造の間に挟まれてよい。IFBは、IFBの第2の実施形態で
図3に示すように、複数のセルスタックを有し得る。電解質は、加圧板の少なくとも1つの複数の入口及び出口を通ってIFBに流入及びIFBから流出してよい。複数の入口及び出口は
図5のIFBの背面図に示され、IFBを通る電解質流路は、IFBの側面図である
図6に示されている。IFBのセルスタックの各セルは、正極、負極、双極板、及び膜セパレータから形成される電極アセンブリを含み得る。正極は、フェルトのシートから形成され、それによって、正極を、透過性が圧縮に基づいて変わり得る多孔質で変形可能にすることができる。電極アセンブリの第1の例の分解図を、正極無しで
図7に示す。正極は、
図8の部分分解図と
図9に完全に組み立てられて示される、電極アセンブリの双極板と接触して、電極アセンブリに結合されてよい。セルスタックの詳細な切り欠き図が
図10に示されており、電極アセンブリのコンポーネント間の界面と、正極に沿った高透過性領域と低透過性領域が示されている。電極アセンブリがフェルトから形成された正極を含む
図10の電極アセンブリ等の低コストの電極アセンブリを製造する方法が、
図11に示されている。
【0011】
図2~10は、様々なコンポーネントの相対的位置を伴う構成例を示している。互いに直接接触している、または直接結合していることが示されている場合、そのような要素は、少なくとも一例では、それぞれ直接接触している、または直接結合していると称されてよい。同様に、互いに連続または隣接して示されている要素は、少なくとも一例では、それぞれ、互いに連続または隣接していてよい。例として、互いに面を共有して接触しているコンポーネントは、面を共有して接触していると称されてよい。別の例として、少なくとも1つの例では、その間に空間だけがあり、他のコンポーネントがない状態で互いに離れて配置された要素は、そのように称されてよい。さらに別の例として、互いの上/下、互いに反対側、または互いの左/右に示される要素は、互いに対してそのように称されてよい。さらに、図に示されるように、最上部の要素または要素の点は、少なくとも1つの例では、コンポーネントの「最上部」と呼ばれ、最下部の要素または要素の点は、コンポーネントの「底部」と呼ばれてよい。本明細書で使用される場合、最上部/底部、上部/下部、上/下は、図の垂直軸に対してであってよく、互いに対する図の要素の位置を説明するために使用されてよい。したがって、一例では、他の要素の上に示される要素は、他の要素の垂直方向の上に位置する。さらに別の例として、図面内に示される要素の形状は、それらの形状(例えば、円形、直線、平面、湾曲、丸み、面取り、角度付きなど)を有すると称されてよい。さらに、少なくとも1つの例において、互いに交差するように示される要素は、交差する要素または互いに交差するものと称されてよい。さらに、一例では、別の要素内に示される、または別の要素の外側に示される要素は、そのように称されてよい。
【0012】
ハイブリッドレドックスフロー電池は、電極上に固体層として電気活性材料の1つまたは複数を堆積することを特徴とするレドックスフロー電池である。ハイブリッドレドックスフロー電池は、例えば、電池充電プロセス全体を通して基板上に固体として電気化学反応によってめっきする化学物質を含み得る。電池の放電中、めっきされた種は電気化学反応によってイオン化し、電解質に溶解し得る。ハイブリッド電池システムでは、レドックス電池の充電容量(例えば、蓄えられるエネルギーの最大量)は、電池充電中にめっきされた金属の量によって制限される場合があり、したがって、めっきシステムの効率、ならびにめっきに利用可能な体積及び表面積に依存し得る。
【0013】
図1に示すように、レドックスフロー電池システム10において、負極26はめっき電極と呼ばれてよく、正極28はレドックス電極と呼ばれてよい。電池セル18のめっき側(例えば、負極コンパートメント20)内の負の電解質は、めっき電解質と呼ばれてよく、電池セル18のレドックス側(例えば、正極コンパートメント22)の正の電解質は、レドックス電解質と呼ばれてよい。一部の例では、負極26は、メッシュで形成されてよく、第1の双極板36と膜セパレータ24との間のスペーサとして働いてよい。正極28は、多孔質で変形可能なフェルトで形成されてよく、フェルトの透過性は、フェルトに加えられる圧縮量に基づいて変わってよく、透過性は、電池セル18の正極コンパートメント22を通る電解質の流れに影響を与える。負極26及び正極28の詳細を、
図7~11を参照して以下にさらに記載する。
【0014】
アノードは電気活性材料が電子を失う電極を指し、カソードは電気活性材料が電子を得る電極を指す。電池の充電中、正の電解質は負極26で電子を獲得する、したがって負極26は電気化学反応のカソードである。放電中、正の電解質は電子を失う、したがって、負極26は反応のアノードである。あるいは、放電中、負の電解質及び負極は、それぞれ、電気化学反応のアノード液及びアノードと呼ばれてよく、正の電解質及び正極は、それぞれ、電気化学反応のカソード液及びカソードと呼ばれてよい。充電中、負の電解質及び負極は、それぞれ、電気化学反応のカソード液及びカソードと呼ばれてよく、正の電解質及び正極は、それぞれ、電気化学反応のアノード液及びアノードと呼ばれてよい。簡単にするために、正及び負という用語は、本明細書では、レドックス電池フローシステムの電極、電解質、及び電極コンパートメントを指して使用される。
【0015】
ハイブリッドレドックスフロー電池の一例は、全鉄レドックスフロー電池(IFB)であり、IFBでは、電解質は鉄塩(例えば、FeCl2、FeCl3など)の形態の鉄イオンを含み、負極は金属鉄を含む。例えば、負極26では、電池充電中に、第一鉄イオンFe2+が2つの電子を受け取り、鉄金属として負極26にめっきし、電池放電中に、鉄金属Fe0が2つの電子を失い、Fe2+として再溶解する。正極では、充電中にFe2+が電子を失って第二鉄イオンFe3+を形成し、放電中にFe3+が電子を獲得してFe2+を形成する。電気化学反応は式(1)と(2)にまとめられる。ここで、正反応(左から右)は電池充電中の電気化学反応を示し、逆反応(右から左)は電池放電中の電気化学反応を示す。
Fe2++2e-←→Fe0-0.44V (負極) (1)
Fe2+←→2Fe3++2e- +0.77V(正極) (2)
【0016】
上記のように、IFBで使用される負の電解質は、充電中にFe2+が負極から2つの電子を受け取ってFe0を形成し、基板上にめっきできるように、十分な量のFe2+を提供し得る。放電中、めっきされたFe0は2つの電子を失い、Fe2+にイオン化し、溶解されて電解質内に戻ってよい。上記の反応の平衡電位は-0.44Vであり、したがって、この反応は所望のシステムに負の端子を提供する。IFBの正極側では、電解質は充電中にFe2+を提供し、これが電子を失い、Fe3+に酸化する。放電中、電解質によって提供されたFe3+は、電極によって提供された電子を吸収することによってFe2+になる。この反応の平衡電位は+0.77Vであり、所望のシステムの正の端子を作成する。
【0017】
IFBは、非再生電解質を利用する他のタイプの電池とは異なり、電解質を充電及び再充電する能力を備える。充電は、端子40及び42を介して電極間に電流を印加することによって達成される。負極26は端子40を介して電圧源の負側に電気的に結合されてよく、それによって、電子が正極を介して負の電解質に供給されてよい(例えば、Fe2+が、正極コンパートメント22内の正の電解質中でFe3+に酸化される)。負極26(例えば、めっき電極)に供給される電子は、負電解質中のFe2+を還元して、めっき基板でFe0を形成し、それを負極26上にめっきすることができる。
【0018】
放電は、Fe0が酸化のために負の電解質で利用可能なままであり、Fe3+が還元のために正の電解質で利用可能なままである間、持続することができる。例として、Fe3+の利用可能性は、外部の正の電解質タンク52などの外部ソースを介して追加のFe3+イオンを提供するために、セル18の正極コンパートメント22側への正の電解質の濃度または体積を増加させることによって維持することができる。より一般的には、放電中のFe0の利用可能性は、IFBシステムで問題になる可能性があり、放電に利用できるFe0は、負極基板の表面積及び体積とめっき効率とに比例し得る。充電容量は、負極コンパートメント20内のFe2+の利用可能性に依存し得る。例として、Fe2+の利用可能性は、外部の負の電解質チャンバ50などの外部ソースを介して追加のFe2+イオンを提供して、セル18の負極コンパートメント20側への負の電解質の濃度または体積を増加させることによって維持することができる。
【0019】
IFBにおいて、正の電解質は、第一鉄イオン、第二鉄イオン、第二鉄錯体、またはそれらの任意の組み合わせを含み、負の電解質は、IFBシステムの充電状態に応じて、第一鉄イオンまたは第一鉄錯体を含む。前述のように、負の電解質と正の電解質の両方で鉄イオンを利用すると、電池セルの両側で同じ電解種を利用することが可能になり、これにより、電解質の相互汚染を減らし、IFBシステムの効率を高めることができて、結果として、他のレドックスフロー電池システムと比較して、電解質の交換が少なくなる。
【0020】
IFBにおける効率損失は、セパレータ24(例えば、イオン交換膜バリア、微多孔膜など)を通過する電解質クロスオーバーに起因する場合がある。例えば、正の電解質中の第二鉄イオンは、第二鉄イオン濃度勾配及びセパレータを横切る電気泳動力によって負の電解質に向かって駆動され得る。次に、膜バリアを透過し、負極コンパートメント20に移動する第二鉄イオンは、クーロン効率の損失をもたらす場合がある。低pHのレドックス側(例えば、より酸性度の高い正極コンパートメント22)から高pHのめっき側(例えば、より酸性度の低い負極コンパートメント20)に移動する鉄イオンは、Fe(OH)3の沈殿をもたらし得る。Fe(OH)3の沈殿は、セパレータ24を劣化させ、永続的な電池性能及び効率の損失を引き起こす場合がある。例えば、Fe(OH)3の沈殿は、イオン交換膜の有機官能基を化学的に汚したり、イオン交換膜の小さな微細孔を物理的に詰まらせたりする場合がある。いずれの場合も、Fe(OH)3の沈殿により、時間の経過とともに膜のオーム抵抗が上昇し、電池性能が低下する場合がある。沈殿物は電池を酸で洗浄することで除去し得るが、定期的なメンテナンスとダウンタイムは、商用電池用途には不都合な場合がある。さらに、洗浄は電解質の定期的な調製に依存する場合があり、追加の処理コストと複雑さの原因となる。あるいは、電解質のpH変化に応じて正の電解質と負の電解質に特定の有機酸を添加すると、全体的なコストを押し上げることなく、電池の充電及び放電サイクル中の沈殿物形成を軽減し得る。さらに、鉄イオンのクロスオーバーを阻害する膜バリアを実装すると、汚染も軽減し得る。
【0021】
追加のクーロン効率の損失は、H+(例えば、プロトン)の還元とそれに続くH2(例えば、水素ガス)の形成、及び負極コンパートメント20内のプロトンとめっきされた鉄金属電極で供給される電子との反応による水素ガスの形成によって引き起こされる場合がある。
【0022】
IFB電解質(例えば、FeCl2、FeCl3、FeSO4、Fe2(SO4)3など)は容易に入手可能であり、低コストで製造することができる。IFB電解質は、負の電解質と正の電解質に同じ電解質を使用できるため、より高い再生価値を提供し、その結果、他のシステムと比較して相互汚染の問題が減少する。さらに、鉄は、その電子配置のために、負極基板上へのめっき中にほぼ均一な固体構造に固化し得る。ハイブリッドレドックス電池で一般的に使用される亜鉛やその他の金属の場合、めっき中に固体の樹枝状構造が形成される場合がある。IFBシステムの安定した電極形態は、他のレドックスフロー電池と比較して電池の効率を高め得る。さらに、鉄レドックスフロー電池は有毒な原材料の使用を減らし、他のレドックスフロー電池電解質と比較して相対的に中性のpHで動作することができる。したがって、IFBシステムは、現在生産されている他のすべての高度なレドックスフロー電池システムと比較して、環境への害を軽減する。
【0023】
引き続き
図1を参照すると、レドックスフロー電池システム10の概略図が示されている。レドックスフロー電池システム10は、マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110に流体接続されたレドックスフロー電池セル18を含み得る。レドックスフロー電池セル18は一般に、負極コンパートメント20、セパレータ24、及び正極コンパートメント22を含み得る。セパレータ24は、正の電解質と負の電解質とのバルク混合を防ぎ、特定のイオンの伝導を可能にする電気絶縁性イオン伝導バリアを含み得る。例えば、セパレータ24は、イオン交換膜及び/または微多孔膜を含み得る。
【0024】
負極コンパートメント20は、負極26を含んでよく、負の電解質は、電気活性材料から形成されてよい。正極コンパートメント22は、正極28を含んでよく、正の電解質は、電気活性材料から形成されてよい。一部の例では、複数のレドックスフロー電池セル18を直列または並列に組み合わせて、レドックスフロー電池システムでより高い電圧または電流を生成し得る。
図1にさら示されるのは、負の電解質ポンプ30及び正の電解質ポンプ32であり、両方ともフロー電池システム10を通して電解質溶液を汲み上げるために使用される。電解質は、セル外部の1つまたは複数のタンクに貯蔵され、負の電解質ポンプ30及び正の電解質ポンプ32を介して、それぞれ電池の負極コンパートメント20側及び正極コンパートメント22側を通して汲み上げられる。
【0025】
レドックスフロー電池システム10は、第1の双極板36及び第2の双極板38も含んでよく、それぞれ、負極26及び正極28の後面側、例えば、セパレータ24に面する側の反対側に沿って配置される。第1の双極板36は負極26と接触してよく、第2の双極板38は正極28と接触してよい。しかしながら、他の例では、双極板は、近接して配置されてよいが、それぞれの電極コンパートメント内で電極から離間して配置されてよい。IFB電解質は、第1の双極板36及び第2の双極板38の材料の導電特性に起因して、双極板36、38によって負極26及び正極28の反応サイトに輸送されてよい。電解質の流れはまた、負の電解質ポンプ30及び正の電解質ポンプ32によって補助されて、レドックスフロー電池セル18を通る強制対流を促進し得る。反応した電気化学種はまた、強制対流と、第1の双極板36及び第2の双極板38の存在との組み合わせによって、反応サイトから離れる方向に向けられてよい。
【0026】
図1に示すように、レドックスフロー電池セル18は、負の電池端子40及び正の電池端子42をさらに含み得る。充電電流が電池端子40及び42に印加されると、正の電解質は正極28で酸化され(1つまたは複数の電子を失う)、負の電解質は負極26で還元される(1つまたは複数の電子を得る)。電池の放電中、電極で逆レドックス反応が生じる。言い換えると、正の電解質は正極28で還元され(1つまたは複数の電子を得る)、負の電解質は負極26で酸化される(1つまたは複数の電子を失う)。電池全体の電位差は、正極コンパートメント22及び負極コンパートメント20における電気化学的レドックス反応によって維持され、反応が持続している間、導体を通して電流を誘導し得る。レドックス電池に蓄えられるエネルギー量は、電解質の全体積と電気活性材料の溶解度に応じて、放電のための電解質内の利用できる電気活性材料の量によって制限される。
【0027】
フロー電池システム10は、一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110をさらに含み得る。マルチチャンバ貯蔵タンク110は、隔壁98によって分割されてよい。隔壁98は、正及び負の電解質の両方を単一のタンク内に含めることができるように、貯蔵タンク内に複数のチャンバを形成してよい。負の電解質チャンバ50は、電気活性材料から形成された負の電解質を保持し、正の電解質チャンバ52は、電気活性材料から形成された正の電解質を保持する。隔壁98は、負の電解質チャンバ50と正の電解質チャンバ52との間に所望の容積比をもたらすために、マルチチャンバ貯蔵タンク110内に配置されてよい。一例では、隔壁98は、負のレドックス反応と正のレドックス反応の間の化学量論比に従って、負及び正の電解質チャンバの容積比を設定するように配置されてよい。図は、貯蔵タンク110の充填高さ112をさらに示し、これは各タンクコンパートメント内の液体レベルを示し得る。図はまた、負の電解質チャンバ50の充填高さ112の上に位置するガスヘッドスペース90、及び正の電解質チャンバ52の充填高さ112の上に位置するガスヘッドスペース92を示す。ガスヘッドスペース92は、レドックスフロー電池の動作によって(例えば、プロトン還元及び腐食副反応により)生成され、レドックスフロー電池セル18から電解質を戻してマルチチャンバ貯蔵タンク110に運ばれた水素ガスを貯蔵するために利用されてよい。水素ガスは、マルチチャンバ貯蔵タンク110内の気液界面(例えば、充填高さ112)で自然に分離され、それによって、レドックスフロー電池システムの一部として追加の気液分離器を有することを排除し得る。電解質から分離されると、水素ガスはガスヘッドスペース90及び92を満たしてよい。このように、貯蔵された水素ガスは、マルチチャンバ貯蔵タンク110から他のガスをパージするのを助けることができ、それによって、電解質種の酸化を減らすための不活性ガスブランケットとして機能し、レドックスフロー電池容量の損失を減らすのを助けることができる。このように、一体型マルチチャンバ貯蔵タンク110を利用することにより、従来のレドックスフロー電池システムに共通の別個の負及び正の電解質貯蔵タンク、水素貯蔵タンク、及び気液分離器を持たずに済ませ、それによってシステム設計を簡素化し、システムの物理的フットプリントを軽減し、システムコストを削減し得る。
【0028】
図1はまた、ガスヘッドスペース90と92との間の隔壁98に開口部を形成し、2つのチャンバ間のガス圧を等しくする手段を提供するスピルオーバーホール96を示す。スピルオーバーホール96は、充填高さ112よりも上の閾値高さに配置されてよい。スピルオーバーホールはさらに、電池クロスオーバーの場合に、正及び負の電解質チャンバのそれぞれの電解質を自己平衡化する能力を可能にする。全鉄レドックスフロー電池システムの場合、同じ電解質(Fe
2+)が負極コンパートメント20と正極コンパートメント22の両方で使用されるため、負の電解質チャンバ50と正の電解質チャンバ52の間で電解質があふれ出て、システム全体の効率が低下し得るが、全体的な電解質組成、電池モジュールの性能、及び電池モジュールの容量は維持される。漏れのない連続加圧状態を維持するために、マルチチャンバ貯蔵タンク110の入口及び出口のすべての配管接続にフランジ継手を利用してよい。マルチチャンバ貯蔵タンク110は、負及び正の電解質チャンバのそれぞれからの少なくとも1つの出口と、負及び正の電解質チャンバのそれぞれへの少なくとも1つの入口とを含み得る。さらに、水素ガスをリバランス反応器80及び82に向けるために、ガスヘッドスペース90及び92から1つまたは複数の出口接続が設けられてよい。
【0029】
図1には示されていないが、一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110は、負の電解質チャンバ50及び正の電解質チャンバ52のそれぞれに熱的に結合された1つまたは複数のヒータをさらに含み得る。代替例では、負及び正の電解質チャンバの一方のみが、1つまたは複数のヒータを含み得る。正の電解質チャンバ52のみが1つまたは複数のヒータを含む場合、負の電解質は、パワーモジュールの電池セルで生成された熱を負の電解質に伝達することによって加熱されてよい。このようにして、パワーモジュールの電池セルは加熱し、負の電解質の温度調整を容易にし得る。1つまたは複数のヒータは、コントローラ88によって作動されて、負の電解質チャンバ50及び正の電解質チャンバ52の温度を別々にまたは一緒に調節してよい。例えば、電解液温度が閾値温度を下回ったことに応答して、コントローラ88は、電解質への熱流束が増加するように、1つまたは複数のヒータに供給される電力を増加させてよい。電解質温度は、センサ60及び62を含む、マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110に取り付けられた1つまたは複数の温度センサによって示されてよい。例として、1つまたは複数のヒータは、電解質流体に浸漬されたコイル型ヒータもしくは他の浸漬ヒータ、または負及び正の電解質チャンバの壁を通して伝導的に熱を伝達してその中の流体を加熱する表面マントル型ヒータを含み得る。本開示の範囲から逸脱することなく、他の既知のタイプのタンクヒータを採用してよい。さらに、コントローラ88は、液体レベルが固体充填閾値レベルを下回ったことに応答して、負の電解質チャンバ50及び正の電解質チャンバ52内の1つまたは複数のヒータを停止してよい。言い方を変えると、コントローラ88は、液体レベルが固体充填閾値レベルを上回ったことのみに応答して、負の電解質チャンバ50及び正の電解質チャンバ52内の1つまたは複数のヒータを作動してよい。このようにして、正及び/または負の電解質チャンバ内に十分な液体がない状態で1つまたは複数のヒータを作動することを回避し、それによってヒータの過熱または焼損のリスクを低減することができる。
【0030】
さらに、フィールド水和システム(図示せず)から負の電解質チャンバ50、及び正の電解質チャンバ52のそれぞれに1つまたは複数の入口接続が設けられてよい。このようにして、フィールド水和システムは、最終使用場所でのシステムの設置、充填、及び水和を含む、レドックスフロー電池システムの試運転を容易にすることができる。さらに、最終使用場所で試運転する前に、レドックスフロー電池システムは、システムを最終使用場所に配送する前に、システムを充填及び水和することなく、最終使用場所とは異なる電池製造施設で乾式組み立てされてよい。一例では、最終使用場所は、レドックスフロー電池システム10が設置され、オンサイトエネルギー貯蔵のために利用される場所に対応し得る。言い方を変えると、最終使用場所に設置され水和されると、レドックスフロー電池システム10の位置は固定され、レドックスフロー電池システム10はもはや携帯用の乾式システムとは見なされなくなると考えられる。したがって、レドックスフロー電池システムのエンドユーザの観点から、乾式携帯型レドックスフロー電池システム10は現場に配送され、その後、レドックスフロー電池システム10が設置され、水和され、試運転される。水和前のレドックスフロー電池システム10は、乾式可搬システムと呼ばれてよく、レドックスフロー電池システム10は、水及び湿った電解質を含まない、または水及び湿った電解質がない。水和されると、レドックスフロー電池システム10は、湿式非携帯システムと呼ばれてよく、レドックスフロー電池システム10は、湿った電解質を含む。
【0031】
図1にさらに示されるのは、マルチチャンバ貯蔵タンク110に典型的に貯蔵される電解質溶液が、負の電解質ポンプ30及び正の電解質ポンプ32によってフロー電池システム10を通して汲み上げられる。負の電解質チャンバ50に貯蔵された電解質は、負電解質ポンプ30を介して負極コンパートメント20側を通って汲み上げられ、正の電解質チャンバ52に貯蔵された電解質は、電池の正極コンパートメント22側を通して正の電解質ポンプ32によって汲み上げられる。
【0032】
2つの電解質再平衡反応器80及び82は、レドックスフロー電池システム10において、それぞれ電池セル18の負側及び正極側で電解質の再循環流路とインラインまたは並列に接続されてよい。1つまたは複数の再平衡化反応器を電池の負極側及び正極側で電解質の再循環流路と一直線に接続されてよく、他の再平衡化反応器が、冗長性のため(例えば、再平衡化反応器は電池とリバランス操作を中断することなく修理されてよい)と、リバランス容量を増やすために並列に接続されてよい。一例では、電解質再平衡反応器80及び82は、それぞれ正の電解質チャンバ20及び負の電解質チャンバ22から正の電解質チャンバ50及び負の電解質チャンバ52への戻り流路に配置されてよい。電解質リバランス反応器80及び82は、本明細書に記載されるように、副反応、イオンクロスオーバーなどによって生じるレドックスフロー電池システムにおける電解質電荷の不均衡をリバランスするのに役立ち得る。一例では、電解質リバランス反応器80及び82はトリクルベッド反応器を含んでよく、電解質リバランス反応を行うために水素ガスと電解質が充填床の触媒表面で接触する。他の例では、リバランス反応器80及び82は、水素ガス及び電解液と接触し、充填触媒床の非存在下でリバランス反応を行うことができるフロースルータイプの反応器を含み得る。
【0033】
レドックスフロー電池システム10の動作中、センサ及びプローブは、電解液のpH、濃度、充電状態などの電解質の化学的特性を監視及び制御してよい。例えば、
図1に示すように、センサ62及び60は、それぞれ、正の電解質チャンバ52及び負の電解質チャンバ50における正の電解質及び負の電解質の状態を監視するように配置されてよい。別の例では、センサ62及び60はそれぞれ、正の電解質チャンバ52及び負の電解質チャンバ50内の電解質のレベルをそれぞれ示す1つまたは複数の電解質レベルセンサを含み得る。別の例として、
図1にも示すように、センサ72及び70は、それぞれ、正極コンパートメント22及び負極コンパートメント20における正の電解質及び負の電解質の状態を監視してよい。センサは、電解質の化学的特性及び他の特性を監視するために、レドックスフロー電池システム10全体の他の位置に配置されてよい。
【0034】
例えば、センサを外部の酸タンク(図示せず)に配置して、外部の酸タンクの酸量またはpHを監視してよく、外部の酸タンクからの酸は、電解質中の沈殿物形成を減少させるために、外部ポンプ(図示せず)を介してレドックスフロー電池システム10に供給される。レドックスフロー電池システム10に他の添加剤を供給するために、追加の外部タンク及びセンサが設置されてよい。例えば、フィールド水和システムの温度センサ、導電率センサ、及びレベルセンサを含む様々なセンサが、コントローラ88に信号を送信してよい。さらに、コントローラ88は、レドックスフロー電池システム10の水和中に、フィールド水和システムのバルブ及びポンプなどのアクチュエータに信号を送信することができる。センサ情報はコントローラ88に送信され、コントローラ88はポンプ30及び32を作動させて、例として、セル18を通る電解質の流れを制御するか、または他の制御機能を実行し得る。このようにして、コントローラ88は、センサ及びプローブの1つまたは組み合わせに応答してよい。
【0035】
レドックスフロー電池システム10は、水素ガス源をさらに含み得る。一例では、水素ガス源は、別個の専用水素ガス貯蔵タンクを含み得る。
図1の例では、水素ガスは、一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110に貯蔵され、そこから供給されてよい。一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110は、追加の水素ガスを正の電解質チャンバ52及び負の電解質チャンバ50に供給してよい。一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110は、追加の水素ガスを電解質リバランス反応器80及び82の入口に交互に供給し得る。例として、質量流量計または他の流量制御装置(コントローラ88によって制御されてよい)は、一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110からの水素ガスの流れを調節し得る。一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110は、レドックスフロー電池システム10で生成された水素ガスを補給してよい。例えば、レドックスフロー電池システム10でガス漏れが検出されたとき、または還元反応速度が低い水素分圧で低すぎるとき、正の電解質と負の電解質における電気活性種の電荷の状態をリバランスするために一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110から水素ガスを供給してよい。例として、コントローラ88は、pHの測定された変化に応答して、または電解質もしくは電気活性種の電荷の状態の測定された変化に応答して、一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110から水素ガスを供給してよい。
【0036】
例えば、負の電解質チャンバ50または負極コンパートメント20のpHの上昇は、水素がレドックスフロー電池システム10から漏れていること、及び/または利用可能な水素分圧に対して反応速度が遅すぎることを示す場合があり、コントローラ88は、pHの上昇に応答して、一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110からレドックスフロー電池システム10への水素ガスの供給を増加させてよい。さらなる例として、コントローラ88は、第1の閾値pHを超えて上昇するか、または第2の閾値pHを超えて低下するpHの変化に応答して一体型マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110から水素ガスを供給してよい。IFBの場合、コントローラ88は追加の水素を供給して、第二鉄イオンの還元速度及びプロトンの生成速度を増加させ、それによって正の電解質のpHを低下させてよい。さらに、負の電解質のpHは、正の電解質から負の電解質にクロスオーバーする第二鉄イオンの水素還元によって、または正極側で生成されたプロトンがプロトン濃度勾配及び電気泳動力により負の電解質にクロスオーバーすることによって低下させてよい。このようにして、Fe(OH)3としての第二鉄イオンの沈殿(正極コンパートメントからのクロスオーバー)のリスクを低減しながら、負の電解質のpHを安定領域内に維持してよい。
【0037】
酸素還元電位(ORP)メータまたは光学センサなどの他のセンサによって検出される、電解液のpHの変化または電解質の電荷状態の変化に応答して、一体型マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110からの水素ガスの供給速度を制御するための他の制御スキームが実装されてよい。さらに、コントローラ88のアクションをトリガするpHまたは電荷状態の変化は、一定期間にわたって測定された変化率または変化に基づいてよい。変化率の期間は、予め決定、またはレドックスフロー電池システム10の時定数に基づいて調整されてよい。例えば、再循環率が高い場合、期間は短縮されてよく、時定数が小さい可能性があるため、濃度の局所的な変化(例えば、副反応またはガス漏れによる)が迅速に測定され得る。
【0038】
IFBシステム、例えば、
図1のフロー電池システム10は、共通の軸に沿って積み重ねられ、セルスタックを形成する
図1の電池セル18等の複数の電池セルを含み得る。IFBシステムのIFBは、様々なハードウェアをさらに含んでよく、ハードウェアは、IFBに構造的支持を提供し、そのハードウェアとセルのアセンブリを可搬ユニットにするのを可能する。IFB202の第1の例の実施形態が、
図2に斜視
図200として示されている。y軸、x軸、及びz軸を示す参照軸のセット201が提供されている。IFB202は、第1の加圧板206と第2の加圧板208の間に挟まれたセルスタック204を備えたサンドイッチ構造を有してよく、セルスタック204と加圧板は、縦軸、例えば、z軸に沿って整列している。
【0039】
第1の加圧板206は、第1端210に配置されてよく、第2の加圧板208は、IFB202の第2端212に配置されてよい。第1の加圧板206及び第2の加圧板208は、IFB202に硬い支持とz軸に沿った圧縮を与えるIFB202の端壁であってよい。例えば、第1の加圧板206及び第2の加圧板208によって、セルスタック204を加圧板間で圧縮して、IFB202の内部402内のIFB202のコンポーネント及び電解質を封止することができる。内部402は、
図4に示すIFB202の分解
図400に示されている。
【0040】
図4を参照して、第1端210から第2端212に向かう方向に沿って、IFB202の要素を説明する。セルスタック204は、第1の加圧板206の内側に配置された第1のまたは負極のエンドプレート404と、負極エンドプレート404と第1の加圧板206の間に配置された第1の集電体406とを含む。第1の集電体406は、負極エンドプレート404及び第1の加圧板206のいずれよりもy軸に沿って低い高さを有し得る。負極エンドプレート404は、第1の加圧板206の内面と少なくとも部分的に面を共有して接触してよい。言い換えると、IFB202の内部402に面している第1の加圧板206の表面は、第1の集電体406の周りでIFB202の内部402から外方向に向いている負極エンドプレート404と接触している。
【0041】
双極板アセンブリ408は、セルスタック204の負極エンドプレート404と第2の正極エンドプレート410の間に配置される。双極板アセンブリ408は、z軸に沿って積み重ねられた複数のフレームプレート412を含み、複数のフレームプレート412は、セルスタック204に構造的支持を提供する。複数のフレームプレート412の各フレームプレートは、同様に、第1のセルスタック312の1つまたは複数のセルをフレームで囲むように構成され、各フレームプレートの少なくとも1つの開口部のそれぞれに挿入された双極板414を含む。さらに、双極板414は、(
図7~10に示すように)1つまたは複数のセルの負極と正極の間に配置され、両電極は、双極板414の対向する面に沿って配置される。負極は、双極板414と
図1のセパレータ24等の膜セパレータの間に配置される。このように、各フレームプレートは、膜セパレータ、負極、双極板414、及び正極を含むコンポーネントのスタックを有し、コンポーネントのスタックは、セルスタック204の各フレームプレートごとに繰り返される。
【0042】
上記のように、セルスタック204は、IFB202の第1端210の負極エンドプレート404からIFB202の第2端212の正極エンドプレート410にz軸に沿って延びている。第2の集電体416は、第1の集電体406同様、正極エンドプレート410と第2の加圧板208の間に配置されてよく、第2の集電体416も電流を流すように構成される。第2の集電体416は、正極エンドプレート410または第2の加圧板208のいずれよりもy軸に沿って高さが低くてよい。正極エンドプレート410は、第2の加圧板208と少なくとも部分的に面を共有して接触してよい。言い換えると、IFB202の内部402から外方向に向いている正極エンドプレート410の表面は、第2の集電体416の周りで、IFB202の内部402に面している第2の加圧板208と接触している。
【0043】
負極エンドプレート404及び正極エンドプレート410は、セルスタックに固体の端壁を提供して、セルスタック204内部に電解質等の流体を封止してよい。セルスタック204は、例えば、ボルト418、ナット420、及び他のタイプの締結部品を含む様々なハードウェアによって、第1の加圧板206及び第2の加圧板208に固定されてよい。第1の加圧板206及び第2の加圧板208は、一例として、209kN等の所望の量の力でIFB202を圧縮するのを可能にする。IFB202の圧縮は、IFBのコンポーネントをz軸に沿って順番に一緒に固定する締結部品によって維持される。
【0044】
当然ながら、
図2に示すIFB202は、本明細書に記載の要素と適合し得るIFBの非制限的な例である。IFB202は、第1の加圧板206と第2の加圧板208との間に圧縮された1つのセルスタック204を示すが、他の例は、異なる数のセルスタックを備えたシステムを含み得る。例として、IFB302の第2の実施形態が、斜視
図300として
図3に示されている。IFB302は、IFB302の第1端306に第1の加圧板304とIFB302の第2端310に第2の加圧板308とを有する。
【0045】
第1のセルスタック312及び第2のセルスタック314は、第1の加圧板304と第2の加圧板308の間に配置されてよい。第1のセルスタック312及び第2のセルスタック314は、それぞれ、
図2及び4のIFB202のセルスタック204と類似していてよい。第1のセルスタック312は、z軸に沿って整列してよく、セルスタック間の流体の交換を遮るサブスタックセパレータプレート316によって区切られてよい。このように、IFB302のエネルギー貯蔵容量は、IFBを可搬ユニットに組み立てるために加圧板、ボルト、ナット等のハードウェアコンポーネントの数を増やすことなく、
図2及び4のIFB202に比べて、増加させることができる。
【0046】
図2及び4のIFB202の背面
図500を
図5に示す。別の例では、
図5に示すIFBは、
図3に示すIFB302の第2の実施形態であってよい。
図2及び4に示すように、IFB202の第2端212に配置された第2の加圧板208は、第2の加圧板208の厚さを通って延びる複数のポート502を有してよく、厚さはz軸に沿って規定される。一例では、IFB202の第2端212は、IFB202の正極端部であってよい。複数のポート502の第1のポート504は、負の電解質をIFB202に流入させる負極入口であってよい。複数のポート502の第2のポート506は、IFB202に正の電解質を流入させる正極入口であってよい。複数のポート502の第3のポート508は、IFB202から負の電解質を流出させる負極出口ポートであってよく、複数のポート502の第4のポート510は、IFB202から正の電解質を流出させる正極出口ポートであってよい。したがって、IFB202に入るすべての電解質は、第2の加圧板208を通って入り、IFB202を出るすべての電解質は、第2の加圧板208を通って出る。
【0047】
第1のポート504及び第2のポート506は両方とも、IFB202のy軸に関して下端512に配置されてよく、x軸に沿って互いに整列してよい。第3のポート508及び第4のポート510は、IFB202のy軸に関して上端514に配置されてよく、これらもx軸に沿って互いに整列してよい。したがって、負の電解質は、IFB202の側面
図600として
図6に示され、矢印602で示すように、第1のポート504でIFB202に入り、第2の加圧板208から第1の加圧板206に第1の方向に沿って負極流路を辿る。負極流路は、(
図5に示す背面
図500に関して)左に曲がり、第2の加圧板208と第1の加圧板206の間でz軸に沿った複数の箇所で、矢印604で示すように(y軸に沿って)上方に曲がってよい。流路は、再度、垂直に曲がって、矢印606で示すように、第1の加圧板206から第2の加圧板208に第2の方向に沿って流れ、第3のポート508から出てよい。
【0048】
同様に、正の電解質は、第2のポート506でIFB202に入り、
図6の矢印602で示すように第1の方向に沿って正極流路を辿り、正極流路は、(
図5に示す背面
図500に関して)右に曲がり、第2の加圧板208と第1の加圧板206の間のz軸に沿った箇所で(y軸に沿って)上方に曲がる。流路は再度、垂直に曲がり、第1の加圧板206から第2の加圧板208に、
図6の矢印606で示すように、第2の方向に沿って流れ、第4のポート510から出る。
【0049】
当然ながら、
図2及び4~6に示すIFB202は、非制限的な例であり、他の例は、本開示の範囲を逸脱することなく、電解質流路の変形形態を含み得る。例えば、電解質流路は、代わりに、IFBの上部領域でIFBに入り、IFBの下部領域でIFBを出てよい、または、電解質流路は、上部領域と下部領域の間の中間領域で出てよく、入ってよい。さらに、負の電解質または正の電解質は、IFBの対向する側ではなく同じ側に沿って、IFBに流入及びIFBから流出してよい。
【0050】
IFBの性能は、IFBの電池セル内の電解質の流量と、電池セル内のコンポーネントの表面と電解質との接触とによって影響を受ける可能性がある。電解質流量は、電池セルの電極の透過性によって抑えられてよく、電解質と膜セパレータ等の反応型コンポーネント間の接触は、電池セルコンポーネントの形状によって調整されてよい。例えば、電池セルコンポーネントの1つまたは複数は、電解質の流れを導くチャネルに適合され、それによって、電池セルを通る流量を増加させ、電解質と電池セルの対象領域の間の接触を促進してよい。
【0051】
一例では、フェルトを使用して正極を形成してよい。フェルトは、炭素または黒鉛等の材料、または何等かの他の費用対効果の良い導電材料であってよく、これらは、負極によってフェルトに加えられる圧力によって圧縮されると、高透過性及び低透過性の領域を提供して、そこを通る電解質の流れを制御し得る。負極を通る流れもIFBの性能に影響を与え得る。負極は、フェルトから形成される場合、IFBの充電サイクル中に鉄が負極上にメッキされると、負極が詰まってしまう。代替として、負極は、メッシュから構成されてよく、それによって、負極の表面積を増加させ、電解質が負極の表面に沿って流れるのを容易にすることができる。
【0052】
正極のフェルトは、多孔質で、変形可能、及び圧縮性であってよい。IFBに、例えば、GDL紙ではなく、フェルトの正極を実装することによって、例えば、
図2及び4の第1の加圧板206及び第2の加圧板208等の加圧板のセットの間にあるIFBの圧縮を低減してよい。圧縮の低減によって、よりコストが低く、耐荷重性の低いコンポーネントをIFBで使用することが可能になる。さらに、例えば、IFBの電極アセンブリの他のコンポーネントと比べて、透過性と圧縮性がより高い正極をIFBに組み込むことによって、コストの高いネットシェイプ成形の双極板の使用を排除して、IDFFチャネルを双極板にインプリントするのではなく、正極の物理的特性を修正することによって電解質の流れの調整を可能にしてよい。
【0053】
電池セル内で、負極と正極は、膜セパレータで区切られてよい。膜セパレータは、負極によって加えられた圧縮力が膜セパレータを通して伝えられ、正極に加えられるように、薄く、柔軟であってよい。負極メッシュが膜セパレータと接触する領域は、正極の圧縮力が増加した領域を表してよく、正極フェルトにかかる圧力は、膜セパレータに対して正極の反対側に配置された双極板によって支持される。双極板の配置によって、負極から加えられる圧力に抵抗し、その結果、正極のフェルトが圧縮され、圧縮された領域の正極の透過性を変える。正極の圧縮と、IFBの電極アセンブリの他のコンポーネントの位置の詳細を、
図7~14を参照して以下にさらに記載する。
【0054】
ここで
図7を参照すると、IFBの電極アセンブリ702の第1の例の分解
図700が示されている。電極アセンブリ702は、電極アセンブリ702の各層の中心を通って縦方向に延びる中心軸701を有し、中心軸701は、z軸と平行である。電極アセンブリ702のコンポーネントは、中心軸701に沿って積み重ねられ、スタックの最上部から底部の方向に沿って、双極板アセンブリ704、メッシュ706、及び膜セパレータアセンブリ708を含み得る。IFBにおいて、電極アセンブリ702は、各電極アセンブリが少なくとも1つの他の電極アセンブリ702に隣接するように、連続的に何度も繰り返されてよく、ここで、すべての電極アセンブリは、セルスタック内に積み重ねられ、
図2~6に示すようにz軸に沿って整列している。電解質は、例えば、
図6に示す流路に従って各電極アセンブリを通って流れてよい。
【0055】
双極板アセンブリ704は、双極フレームプレート710の開口部に配置された双極板712をフレームで囲む双極フレームプレート710を含む。双極板712は、例として、電極アセンブリ702の負極コンパートメント間の電解質の交換を妨げながら、導電性を提供する圧縮された不透過性の黒鉛または炭素のシートであってよい。双極フレームプレート710は、双極板712に構造的支持を提供してよく、IFBのセルスタックの他のコンポーネントへの双極板アセンブリ704の結合を可能にし得る。例えば、双極フレームプレート710と膜セパレータアセンブリ708の膜フレームプレート732とは、それぞれ、
図4のボルト418等の締結部品を受け入れる開口715を有してよい。開口715は、締結部品を構造的に補強し得るタブ717に設けられて、IFBのセルスタックの力の分散を大きくすることができる。他の例では、しかしながら、他のプレートの輪郭を使用してよい。
【0056】
電極アセンブリ702は、負の電解質入口716、負の電解質出口718、正の電解質入口720、及び正の電解質出口722も含み、これらは、双極板アセンブリ704に少なくとも部分的に配置され、膜セパレータアセンブリ708に部分的に配置される。当然ながら、電解質の入口及び出口は、双極板アセンブリ704と膜セパレータアセンブリ708との嵌合によって形成される。
【0057】
双極板アセンブリ704の第1の表面724、例えば、z軸に沿って上方を向いている双極板アセンブリ704の面は、正の電解質入口720及び正の電解質出口722から延びている正極分岐チャネル726を含み得る。正極分岐チャネル726は、正極分岐チャネル726の長さを増加させてシャント電流を低下させることができるように曲がりくねった形状であってよい。結果として、電池システムは、エネルギー電力出力、場合によっては、蓄電容量に関して、より効率的に動作され得る。当然ながら、特定の例では、分岐チャネルの断面積も、シャント電流を減少させるために低減されてよい。さらに、正極分岐チャネル726の他の適切な電解質流路が想定されている。
【0058】
さらに、双極の第1の表面724は、正極入口及び出口分配チャネル728も含み得る。正極入口及び出口分配チャネル728は、電極アセンブリ702の活性領域730から正の電解質を分配及び捕捉するのを可能にする。したがって、正極入口及び出口分配チャネル728は、正極分岐チャネル726と流体連通してよい。
【0059】
双極フレームプレート710の他の形状は、膜セパレータアセンブリ708の膜フレームプレート732の外形に一致し得る。膜フレームプレート732は、双極フレームプレート710及び双極板712と同様、膜フレームプレート732の開口部に配置された膜734をフレームで囲んでよい。膜734は、双極板712とサイズ及び形状が類似していてよく、z軸に沿って双極板712と整列してよい。あるいは、膜734は、別個のパネルでなくてもよく、代わりに、膜フレームプレート732の開口部全体に延びている1つの連続したパネルであってよい。膜734は、負の電解質と正の電解質の間の電荷バランスを維持するためにイオンの選択的輸送を可能にするように構成された、
図1のセパレータ24の非制限的な例であってよい。膜734は、薄く、柔軟で、電解質が膜フレームプレート732と膜734の縁との間を流れないように膜フレームプレート732と封止係合してよい。
【0060】
電解質のフローチャネルは、双極板アセンブリ704と膜セパレータアセンブリ708との界面に形成されてよい。詳細に述べると、負極分岐チャネル736は、組み立てられると、膜セパレータアセンブリ708の第1の表面738、例えば、z軸に沿って上方に面している膜セパレータアセンブリ708の面に沿って、電極アセンブリ702の負の電解質入口716及び負の電解質出口718から延びてよい。負極分岐チャネル736はまた、双極板アセンブリ704の第2の表面740、例えば、z軸に沿って下方に向いている双極板アセンブリ704の面に沿って延びてよい。負極分岐チャネル736は、正極分岐チャネル726と同様、曲がりくねった形であってよい。膜セパレータアセンブリ708は、電極アセンブリ702の活性領域730から負の電解質を分配及び捕捉可能にする負極分配チャネル742も含み得る。したがって、負極分配チャネル742は、負極分岐チャネル736と流体連通してよい。
【0061】
当然ながら、電極アセンブリ702の電解質(例えば、正または負の電解質)が進む一般的な流路は、次のようになる。(i)電解質は、最初に、電解質入口を通って対応する分岐チャネルに流入する、(ii)電解質は次に、分岐チャネルから入口分配チャネルに流入する、(iii)電解質は次に、入口分配チャネルから膜/双極板界面内に流入する、(iv)電解質は次に、膜/双極板界面から出口分配チャネル内に流入する、(v)電解質は次に、出口分配チャネルから関連する分岐チャネルに流入する、そして、(vi)次に、電解質は、分岐チャネルから各電解質出口に流入する。
【0062】
双極板アセンブリ704と膜セパレータアセンブリ708との間に配置されたメッシュ706は、双極板712及び膜734の寸法と一致する寸法を有するパネル744に分割されてよい。より具体的には、メッシュ706のパネル744は、双極板712のそれぞれとz軸に沿って整列された膜734のそれぞれとの間に挟まれる、例えば積み重ねられるように構成されてよい。したがって、双極板712は、中心軸701に沿って規定される厚さであるメッシュ706の厚さだけ少なくとも、膜734から離間されてよい。
【0063】
メッシュ706は、リブと、リブ間に延びて、リブを構造的に補強するクロス筋交いとを含み得る。一例では、メッシュ706は、適切なポリマー(例えば、ポリプロピレン)から構成されて、電解質と化学的に干渉することなく、セルスタックの構造的補強を可能にし得る。別の例では、メッシュ706は、電極アセンブリ702に構造的補強を提供することに加えて、負極として構成されてよい。したがって、メッシュ706は、親水性または導電性の層でコーティングされてよい。例えば、コーティングは、メッシュ706の表面に沿って鉄のめっき及びめっき除去を促すカーボンインク、金属酸化物、または親水性ポリマーを含み得る。メッシュ706は、負の電解質流路を規定する双極板アセンブリ704の第2の表面740と膜セパレータアセンブリ708の第1の表面との間に流れる負の電解質と直接接触してよい。これについては、
図10~13を参照して以下にさらに記載する。
【0064】
膜フレームプレート732及び/または双極フレームプレート710は、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)等の適切なポリマーから構成されてよい。膜734は、一使用事例では、コーティングされたNafion(商標)から構成されてよい。しかし、他の適切な膜材料が想定されている。膜セパレータアセンブリ708及び双極板アセンブリ704は、組み立てられるとき、一緒に接着結合されてよい。膜734を膜フレームプレート732に、及び/または双極板712を双極フレームプレート710に接着するためにも接着結合を使用してよい。しかしながら、これらのコンポーネントを取り付けるために、熱溶接等の他の適切な取り付け技術も考えられている。
【0065】
IFBのセルスタックを形成するために、正極も電極アセンブリ702に含まれる。電極アセンブリ702の部分分解
図800が
図8に示され、完全に組み立てられた電極アセンブリ702が
図9に示されている。
図8及び9に、双極板アセンブリ704が、メッシュ706が間に配置されて膜セパレータアセンブリ708に結合されて、単一の連続したユニットを形成しているのが示されている。フェルト802は、双極板アセンブリ704の第1の表面724に結合されてよい。より具体的には、フェルト802は、双極板アセンブリ704の双極板712と同様のサイズ及び形状のパネル804に分割されてよい。フェルト802の各パネル804は、双極板712のそれぞれの第1の表面724と面を共有して接触してよい。
【0066】
フェルト802は、組み立てられるとき、接着、熱溶接等によって、双極フレームプレート710の開口部内に維持されてよい。フェルト802は、IFBの正の電解質と直接接触する電極アセンブリ702の正極を形成してよく、IFBの性能を強化する特定の物理的特性を有し得る。例えば、フェルト802は、フェルト802を通して電解質の所望の透過性を提供するために、z軸に沿って規定された2~6.5mmの厚さを有し得る。しかしながら、フェルト802の厚さは、フェルトの多孔性、及び/または正の電解質の粘度によって異なり得る。別の例として、フェルトは、5~60%の圧縮性を有し得る。圧縮性は、IFB全体にかかる圧縮量に影響を与えて、電極アセンブリ702の所望の質量輸送を実現することによって、IFBの効率を制御し得る。
【0067】
IFBの電池セルが積み重ねられ、加圧板のセットの間で圧縮されると、双極板712の各表面に沿って浅いコンパートメントが形成されてよく、浅い各コンパートメントは、各双極板712の第2の表面740に沿って負極コンパートメント、または各双極板712の第1の表面724に沿って正極コンパートメントを形成する。負極コンパートメントは、負の電解質で満たされてよく、正極コンパートメントは、正の電解質で満たされてよい。各コンパートメントは、双極フレームプレート710の表面と膜フレームプレート732の表面とがz軸に沿って一緒に押し付けられると、それらの表面間の接触によって封止される。
【0068】
電極アセンブリ702のうちの1つまたは複数は、IFBのセルスタックに含まれてよい。電極アセンブリ702は、正極コンパートメントと負極コンパートメントがz軸に沿って交互に並ぶように、z軸に沿って積み重ねられてよい。電極アセンブリの積み重ねは、電極アセンブリの断面
図1000の一部として、
図10により詳細に示されている。例えば、断面
図1000の一部は、IFBのセルスタックの(
図9に示す)線A-A’と類似の線に沿った部分であってよい。
【0069】
z軸に沿って第2の電極アセンブリ1005の上に積み重ねられた第1の電極アセンブリ1003を含むセルスタック1050を
図10に示す。第1の電極アセンブリ1003及び第2の電極アセンブリ1005のそれぞれは、
図7~9の電極アセンブリ702と同様に構成されてよい。第1の電極アセンブリ1003は、第1の膜フレームプレート1052、第1の膜1002、及び第1の負極1004を備えた第1の膜セパレータアセンブリ1007と、第1の双極フレームプレート1054、第1の双極板1006、及び第1の正極1008を備えた第1の双極板アセンブリ1009とを有する。第1の電極アセンブリ1003の各コンポーネントは、直接上のコンポーネント及び直接下のコンポーネントと接触していてよい。同様に、第2の電極アセンブリ1005は、第2の膜フレームプレート1056を備えた第2の膜セパレータアセンブリ(
図10に示さず)、第2の双極フレームプレート1058を備えた第2の双極板アセンブリ1011、第2の負極1012、第2の双極板1014、及び第1の膜1002の真下に配置された第2の正極1010を有する。第2の電極アセンブリ1005の各コンポーネントは、直接上のコンポーネント及び直接下のコンポーネントと接触している。
【0070】
上記のように、第1の負極1004及び第2の負極1012は、メッシュから形成されてよい。したがって、各負極は、メッシュの開口部によってx軸及びy軸に沿って等間隔に配置された材料の部分を有する。例えば、第1の負極1004は、第1の双極板1006に接触して直接下に配置され、第1の膜1002と接触して直接上に配置された複数のリブ1016を有する。クロス筋交い1015は、複数のリブ1016の間に延びて複数のリブ1016を互いに接続してよい。当然ながら、クロス筋交い1015は、y軸に沿ってクロス筋交い1015間に空間を含み、これらの空間は、複数のリブ1016の各々の間の空間と類似してよい。したがって、負極は、負極の厚さ全体を貫通して延びている、等間隔の開口部を含み得る。
【0071】
第1の双極板1006(及び、第2の双極板1014)は、第1の膜1002より厚く、より硬くてよい。それにより、IFBに加えられる圧縮力は、第1の膜1002を通して容易に伝達される。例えば、セルスタック1050が、加圧板のセットの間で圧縮されるとき、第1の印加圧力は、第2の正極1010、第1の膜1002、及び第1の負極1004に矢印1018で示されるように、第1の双極板1006によって、z軸に関して下方に加えられてよい。反対方向の第2の印加圧力は、第2の正極1010、第1の膜1002、及び第1の負極1004に、矢印1020で示されるように、第2の双極板1014によってz軸に関して上方に加えられてよい。したがって、第2の正極1010、第1の膜1002、及び第1の負極1004は、第1の双極板1006と第2の双極板1014との間で圧縮される。
【0072】
正極、膜、及び負極のうち、正極のみが、実質的に圧縮性の材料から形成される。上記のように、正極のフェルトは、加えられる圧縮の予測量に基づいて、所定の量だけ圧縮するように構成されてよい。負極のメッシュは、圧縮性の低いプラスチックなどのより硬い材料から形成されてよい。
図10に示すように、第2の正極1010の平らな底面1022は、第2の双極板1014の平らな上面1024と面を共有して接触してよい。したがって、矢印1020によって示すように、第2の双極板1014によって第2の正極1010に加えられる圧力は、第2の正極1010の底面1022の表面にわたって均一に加えられる。
【0073】
第2の正極1010の平らな上面1026で、第2の正極1010は第1の負極1004によって第1の双極板1006から離間される。矢印1018によって示される、第1の双極板1006によって加えられる圧縮力は、第1の負極1004の複数のリブ1016と第1の膜1002とを通して、第2の正極1010の上面1026に伝達される。したがって、第2の正極1010の上面1026での圧縮は、局所化され、第1の負極1004の複数のリブ1016と第2の正極1010の交点に集中する。
【0074】
例えば、第2の正極1010の圧縮は、z軸に沿って第1の負極1004の複数のリブ1016のそれぞれの下で整列された第1のゾーンのセット1028で起こり得る。複数のリブ1016は、矢印1018によって示されるように、第2の正極1010の上面1026に力を加えてよい。第1のゾーンのセット1028で、第2の正極1010の厚さ1030は、第2の正極1010の第2のゾーンのセット1032と比較して低減されてよく、第2のゾーンのセット1032は、第1のゾーンのセット1028の間に配置される。第2のゾーンのセット1032は、z軸に沿って、第1の負極1004のクロス筋交い1015と、且つ、y軸に沿って、第1の負極1004の開口部、例えば、クロス筋交い1015間の空間と整列してよい。第2のゾーンのセット1032は、第1の負極1004の複数のリブ1016によって加えられる圧縮のx-y平面に沿った伝達による圧縮を受けるが、圧縮量は第1のゾーンのセット1028で加えられる圧縮量よりは小さい第2の正極1010の部分を表してよい。
【0075】
第1のゾーンのセット1028(以下、高圧縮ゾーン1028)は、第2の正極1010のフェルトの高圧縮によって透過性の低い領域であってよい。フェルトが圧縮されると、フェルトの多孔性が減少し、それによって、そこを通る電解質の流れを妨げ得る。第2のゾーンのセット1032(以下、低圧縮ゾーン1032)は、高圧縮ゾーン1028より高い透過性を有し得る。したがって、セルスタック1050の各正極は、x軸及びy軸の両方に沿って交互に、xy平面にわたって高透過性及び低透過性が交互になった領域を有し得る。高透過性の領域は、空間を電解質で満たし得る負極メッシュの開口部に対応する(例えば、z軸に沿って整列する)。高透過性の領域は、圧縮されていないフェルトの多孔性に基づく最大透過性を有し得る。
【0076】
正極内に高透過性の領域と低透過性の領域を形成することにより、低透過性の領域に比べて電解質の流れが多い高透過性領域に沿って、正極を通るフローチャネルが形成される。電極アセンブリ及びスタックを通る流れは、負極の形状に基づいて正極に高透過性領域及び低透過性領域を形成することによって導かれてよい。例えば、正極を通るより長いフローチャネルが望まれる場合、複数のリブの各リブの間により長い空間を有するメッシュが使用されてよい。別の例として、短くて狭いフローチャネルが必要な場合は、開口部が小さいメッシュが使用されてよい。さらに、高透過性領域に対する低透過性領域の全表面積比は、複数のリブの幅または奥行(それぞれx軸及びy軸に沿った)、ならびに複数のリブの間の開口部の相対的な幅及び奥行に基づいて調整されてよい。
【0077】
正極の低透過性ゾーンでは、電解質の流れは、例えば、70~90%低減され得る。少量の電解質が、正極の圧縮領域に浸透可能であってよい。低透過性ゾーンの圧縮により、正極の厚さが減少した領域が生じ、電解質が高透過性ゾーンよりも膜の近くを流れる。低透過性ゾーンにおける電解質の膜への接近は、電解質と膜の間のより大きな接触を促し、したがって、膜を通るイオンのより高い交換を促進し、電荷バランスを維持し、IFBの性能を向上させるようにIFBの効率を高める。正極の領域を選択的に圧縮して正極を通るフローチャネルを形成することにより、双極板上にIDFFチャネルを製造する必要がなくなり、正極と双極板の両方をより少ない処理で低コストの材料から形成できるようになる。
【0078】
レドックスフロー電池を動作させる方法1100を
図11に示す。レドックスフロー電池は、IFBの縦軸に沿って整列した少なくとも1つのセルスタックを有するように適合されたIFBであってよい。少なくとも1つのセルスタックは複数のセルを含み、複数のセルの各セルは、
図7の電極アセンブリ702などの1つまたは複数の電極アセンブリで形成されてよい。1つまたは複数の電極アセンブリの正極はフェルトから形成されてよく、1つまたは複数の電極アセンブリの負極はメッシュから形成されてよく、正極は膜セパレータによって負極から分離されてよい。正極のフェルトは、1つまたは複数の電極アセンブリの負極、双極板、ならびにIFBの末端に配置された加圧板よりも変形可能かつ圧縮可能であるように構成される。加圧板は少なくとも1つのセルスタックを圧縮してよく、これは、負極が正極に圧縮力を加えるように誘導し、圧縮力は、負極の反対側にある正極の双極板配置によって抵抗され得る。
【0079】
1102において、この方法は、少なくとも1つのセルスタックを通して電解質を流すことを含み、ここで電解質は一般に正の電解質及び負の電解質を指す。少なくとも1つのセルスタックを通して電解質を流すことは、1104において正極の高透過性ゾーン、例えば、圧縮領域より高い透過性を有するゾーンを通して正の電解質を流すことを含み得る。高透過性ゾーンは、縦軸に沿って、負極のメッシュ内の空間または開口部に対応し得る。高透過性ゾーンは、フェルトを通る正の電解質の流れが最も多い正極の圧縮されていない領域であってよい。
【0080】
少なくとも1つのセルスタックを通して電解質を流すことは、1106で正極のフェルトの低透過性ゾーン、例えば高透過性ゾーンよりも透過性の低いゾーンを通して正の電解質を流すことも含む。低透過性ゾーンは、縦軸に沿って、負極のメッシュのリブとの整列に対応し得る。メッシュのリブの縁部は、膜セパレータに接触し、膜セパレータと接触している正極の表面に膜セパレータを介して伝えられる圧力量で膜セパレータに押し付けられる。負極によって正極に加えられる圧力は、正極のフェルトを圧縮して、例えば、正極が圧縮されていない場合に比べて正極の厚さを機械的に減少させて、低透過性ゾーンを形成する。低透過性ゾーンの透過性は高透過性ゾーンに比べて低下するが、少量の電解質が低透過性ゾーンに浸透し得る。低透過性ゾーンでのフェルトの厚さの減少により、少量の電解質が膜セパレータに隣接して流れるようになり、それによって正の電解質と負の電解質の間で膜セパレータを通してイオン交換が可能になる。
【0081】
少なくとも1つのセルスタックを通して電解質を流すことは、負極1108に沿って負の電解質を流すことをさらに含み得る。負の電解質は、負極のメッシュのリブによって導かれて、メッシュの空間または開口部を通って流れ、膜セパレータに接触し得る。1110において、少なくとも1つのセルスタックを通して電解質を流すことは、正極と負極との間の電荷バランスを維持するために、膜セパレータを通してイオンを交換することも含み得る。例えば、膜セパレータが陰イオン交換膜から形成される場合、Cl-またはOH-などの陰イオンが膜セパレータを通って輸送されてよい。あるいは、膜セパレータが陽イオン交換膜から形成される場合、K+またはH+などの陽イオンが膜セパレータを通って輸送されてよい。別の例では、膜セパレータは、膜セパレータを通るイオン勾配に応じて陰イオンと陽イオンの両方の交換を可能にする微孔性基材であってよい。
【0082】
このようにして、低コストの電極アセンブリが、IFBシステムに含まれてよく、電極アセンブリは圧縮可能な正極を組み込んでいる。正極は、フェルトなどの多孔性で透過性の材料から形成されてよく、フェルトの透過性は、正極の領域を選択的に圧縮することによって調整されてよい。フェルト正極を、フェルトよりも圧縮性の低いメッシュから形成された負極と結合することにより、メッシュの形状が、正極に沿った低透過性ゾーンと高透過性ゾーンの交互パターンを決定する。低透過性ゾーンは、負極のリブによって正極に加えられる(及び膜セパレータを通して伝えられる)圧力によって形成される。正極の高透過性ゾーンは、負極のメッシュの空間または開口部と整列しており、したがって、圧縮がほとんどまたはまったくないフェルトの領域を提供する。正極の低圧縮、高透過性ゾーンは、電解質のより大きな浸透と流れを可能にし、電極アセンブリを通る電解質の流れを導くフローチャネルを提供する。正極に沿った圧力降下が減少し、正極での反応性が高く維持される。
【0083】
圧縮可能な正極をIFBシステムに実装することの技術的効果は、システム全体のコストを低く維持しながら、IFBシステムの性能が向上することである。
【0084】
本開示はまた、レドックスフロー電池の端部を規定する末端構造間に圧縮されたセルスタックを含むレドックスフロー電池をサポートし、セルスタックは複数のセルから形成され、複数のセルの各セルは、正極の機械的圧縮に基づいた透過性を有し、膜セパレータの第1の面と面を共有して接触している変形可能な正極と、正極より圧縮性が低く構成され、正極と反対側の膜セパレータの第2の面に配置された負極と、正極と接触している電解質とを含む。システムの第1の例では、正極は、多孔性で導電性のフェルトから形成され、フェルトが圧縮されると、フェルトの厚さ及び透過性が減少し、厚さは、レドックスフロー電池の縦軸に沿って規定される。オプションで第1の例を含むシステムの第2の例では、正極の第1の平面は膜セパレータと面を共有して接触し、第1の平面の反対側の正極の第2の平面は、第1の双極板と面を共有して接触している。オプションで第1及び第2の例を含むシステムの第3の例では、負極は、膜セパレータに直接接触するリブを有するメッシュから形成され、リブは、縦軸に垂直な平面に沿って等間隔に配置され、各リブは、膜セパレータと第2の双極板との間で縦軸に沿って延びる。オプションで第1~第3の例を含むシステムの第4の例では、負極は、縦軸と平行な第1の方向に膜セパレータを通して正極に圧力を加え、圧力の量は、末端構造によって提供されるレドックスフロー電池の圧縮量に対応する。オプションで第1~第4の例を含むシステムの第5の例では、正極は、負極のメッシュのリブと縦軸に沿って整列する第1のゾーンのセットで圧縮され、正極は、縦軸に沿った負極のメッシュのリブ間の空間と整列した第2のゾーンのセットで、より少なく圧縮され、第1のゾーンのセットは、正極の平面に沿って、第2のゾーンのセットと交互になっており、この平面は縦軸に垂直である。オプションで第1~第5の例を含むシステムの第6の例では、第1の双極板は、負極によって加えられる圧力とは反対の第2の方向に、正極の第2の平面に圧力を加え、第1の双極板によって加えられる圧力は、正極の第2の平面にわたって均一である。オプションで第1~第6の例を含むシステムの第7の例では、正極の第1のゾーンのセットは、低い電解質透過性を有する領域であり、正極の第2のゾーンのセットは、高い電解質透過性を有する領域である。オプションで第1~第7の例を含むシステムの第8の例では、正極の第2のゾーンのセットは、第1のゾーンのセットよりも多くの電解質が正極を通って流れるのを可能にするフローチャネルであり、フローチャネルは、複数のセルの各セルの正極コンパートメントを通るように電解質の流れを誘導及び分配する。オプションで第1~第8の例を含むシステムの第9の例では、正極は、レドックスフロー電池の負極、第1の双極板、及び末端構造より圧縮性が高く構成され、且つ、膜セパレータ及び第1の双極板より透過性が高く構成される。
【0085】
本開示はまた、レドックスフロー電池用の電極アセンブリをサポートする。電極アセンブリは、双極板と、第1の透過性を有する正極であって、正極の第1の面で双極板と面を共有して接触し、第2の低下した透過性の領域を有する正極と、正極の第2の反対側の面と面を共有して接触している膜セパレータと、正極の反対側で膜セパレータと接触している負極とを含み、負極は、正極の表面に垂直な方向に正極を圧縮することによって、第2の低下した透過性の領域を正極に形成するように構成される。システムの第1の例では、正極は、圧縮可能な多孔性材料のシートで形成され、正極の平面に沿って、第1の透過性を有する領域が、第2の低下した透過性の領域と交互になっている。オプションで第1の例を含むシステムの第2の例では、システムは、負極を形成するメッシュをさらに含み、メッシュは、クロス筋交いによって接続された複数のリブを有し、複数のリブは、正極の平面と平行な平面に配置され、クロス筋交いも、複数のリブに垂直に、且つ、正極の平面に平行な平面に配置され、負極は、正極より圧縮性が低い。オプションで第1及び第2の例を含むシステムの第3の例では、負極によって正極に加えられる圧縮力は、膜セパレータを介して伝達され、双極板によって抵抗され、圧縮力は、負極の複数のリブが膜セパレータに接触する領域でのみ加えられる。オプションで第1~第3の例を含むシステムの第4の例では、正極の表面と垂直な方向に沿って、負極の複数のリブが膜セパレータと接触する領域と整列する正極の領域は、正極の第2の低下した透過性の領域である。オプションで第1~第4の例を含むシステムの第5の例では、第1の透過性の領域の電解質の流れは、第2の低下した透過性の領域の電解質の流れより大きく、第2の低下した透過性の領域を流れる電解質は、第2の低下した透過性の領域が圧縮されていないときと比べて、正極の厚さが減少したゾーンを通って流れる。
【0086】
本開示はまた、レドックスフロー電池を動作させる方法をサポートする。方法は、第1の透過性を備えた第1のゾーンのセットと、第2のより低い透過性を備えた第2のゾーンのセットとを有する圧縮性の正極を通して正の電解質を流すことを含む。方法の第1の例において、方法は、負極を横切って負の電解質を流すことをさらに含み、負極は、正極に圧縮力を加えるように構成されたメッシュから形成される。オプションで第1の例を含む方法の第2の例において、正の電解質を正極を通して流すことは、第2のゾーンのセットよりも多くの正の電解質を第1のゾーンのセットを通して流すことを含む。オプションで第1及び第2の例を含む方法の第3の例において、第2のゾーンのセットを通して正の電解質を流すことは、正極と負極の間に配置された膜セパレータに隣接して正の電解質を流すことと、膜セパレータを横切って正の電解質と負の電解質のイオン交換を可能にすることとを含む。
【0087】
以下の特許請求の範囲は、新規かつ非自明であると見なされる特定の組み合わせ及びサブコンビネーションを特に指摘している。これらの請求項は、「ある(an)」要素または「第1の(a first)」要素、またはそれらの均等物を指してよい。そのような請求項は、2つ以上のそのような要素を要求も排除もせず、1つまたは複数のそのような要素の組み込みを含むと理解されるべきである。開示された特徴、機能、要素、及び/または特性の他の組み合わせ及びサブコンビネーションは、現在の請求項の補正を通じて、または本出願もしくは関連出願における新しい請求項の提示を通じて請求されてよい。そのような請求項は、元の特許請求の範囲より広いか、狭いか、等しいか、または異なるかに関係なく、本開示の主題内に含まれるものと見なされる。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックスフロー電池であって、
前記レドックスフロー電池の端部を規定する末端構造間に圧縮されたセルスタックであって、複数のセルから形成される前記セルスタックを含み、前記複数のセルの各セルは、
変形可能な正極であって、前記正極の機械的圧縮に基づいた透過性を有し、膜セパレータの第1の面と面を共有して接触している、前記正極と、
前記正極より圧縮性が小さいように構成され、前記正極の反対側の前記膜セパレータの第2の面に配置された負極と、
前記正極と接触している電解質と
を含む、レドックスフロー電池。
【請求項2】
前記正極が、多孔質で導電性のフェルトから形成され、
前記フェルトが圧縮されると、前記フェルトの厚さ及び透過性が減少し、前記厚さは、前記レドックスフロー電池の縦軸に沿って規定される、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記正極の第1の平面が、前記膜セパレータと面を共有して接触し、前記正極の前記第1の平面の反対側の第2の平面が、第1の双極板と面を共有して接触している、
請求項1又は2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記負極が、前記膜セパレータに直接接触するリブを備えたメッシュから形成される、
請求項1~3のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
前記リブは、前記レドックスフロー電池の縦軸に垂直な面に沿って等間隔に配置され、各リブは、前記膜セパレータと第2の双極板との間で前記縦軸に沿って延びる、
請求項1~4のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
前記負極が、前記レドックスフロー電池の縦軸と平行な第1の方向に前記膜セパレータを通して前記正極に圧力を加え、
前記圧力の量は、前記末端構造によって与えられる前記レドックスフロー電池の圧縮の量に対応する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項7】
前記正極が、前記レドックスフロー電池の縦軸に沿って前記負極のメッシュのリブと整列した第1のゾーンのセットで圧縮され、前記正極は、前記縦軸に沿って前記負極の前記メッシュの前記リブ間の空間と整列した第2のゾーンのセットで、より少なく圧縮され、
前記第1のゾーンのセットは、前記正極の平面に沿って、前記第2のゾーンのセットと交互になっており、前記平面は前記レドックスフロー電池の縦軸に垂直である、
請求項1~6のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項8】
第1の双極板が、前記負極によって加えられた圧力と反対の第2の方向に前記正極の第2の平面に圧力を加え、
前記第1の双極板によって加えられた前記圧力は、前記正極の前記第2の平面にわたって均一である、
請求項1~7のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項9】
前記正極の第1のゾーンのセットが、低い電解質透過性の領域であり、
前記正極の第2のゾーンのセットが、高い電解質透過性の領域である、
請求項1~8のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項10】
前記正極の第2のゾーンのセットが、第1のゾーンのセットよりも多くの電解質が前記正極を通って流れるのを可能にするフローチャネルであり、
前記フローチャネルは、前記複数のセルの各セルの正極コンパートメントを通る電解質の流れを誘導及び分配するように構成される、
請求項1~9のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項11】
前記正極が、前記レドックスフロー電池の前記負極、前記第1の双極板、及び前記末端構造より圧縮性が高く構成され、且つ、前記膜セパレータ及び前記第1の双極板より透過性が高く構成される、請求項3に記載のレドックスフロー電池。
【請求項12】
レドックスフロー電池を動作させる方法であって、
第1の透過性を備えた第1のゾーンのセットと、第2のより低い透過性を備えた第2のゾーンのセットとを有する圧縮性の正極を通って正の電解質を流すこと
を含む、方法。
【請求項13】
負の電解質を負極を横切って流すことをさらに含み、
前記負極は、前記正極に圧縮力を加えるように構成されたメッシュから形成される、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記正の電解質を前記正極を通して流すことは、
前記第2のゾーンのセットより前記第1のゾーンのセットにより多くの正の電解質を流すことを含む、請求項
12~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記正の電解質を前記第2のゾーンのセットを通して流すことは、
前記正の電解質を前記正極と前記負極の間に配置された膜セパレータに隣接して流すことと、
前記膜セパレータを横切って前記正の電解質と負の電解質の間でイオン交換を可能にすることと、を含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
アノードは電気活性材料が電子を失う電極を指し、カソードは電気活性材料が電子を得る電極を指す。電池の充電中、負の電解質は負極26で電子を獲得する、したがって負極26は電気化学反応のカソードである。放電中、負の電解質は電子を失う、したがって、負極26は反応のアノードである。あるいは、放電中、負の電解質及び負極は、それぞれ、電気化学反応のアノード液及びアノードと呼ばれてよく、正の電解質及び正極は、それぞれ、電気化学反応のカソード液及びカソードと呼ばれてよい。充電中、負の電解質及び負極は、それぞれ、電気化学反応のカソード液及びカソードと呼ばれてよく、正の電解質及び正極は、それぞれ、電気化学反応のアノード液及びアノードと呼ばれてよい。簡単にするために、正及び負という用語は、本明細書では、レドックス電池フローシステムの電極、電解質、及び電極コンパートメントを指して使用される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
ハイブリッドレドックスフロー電池の一例は、全鉄レドックスフロー電池(IFB)であり、IFBでは、電解質は鉄塩(例えば、FeCl2、FeCl3など)の形態の鉄イオンを含み、負極は金属鉄を含む。例えば、負極26では、電池充電中に、第一鉄イオンFe2+が2つの電子を受け取り、鉄金属として負極26にめっきし、電池放電中に、鉄金属Fe0が2つの電子を失い、Fe2+として再溶解する。正極では、充電中にFe2+が電子を失って第二鉄イオンFe3+を形成し、放電中にFe3+が電子を獲得してFe2+を形成する。電気化学反応は式(1)と(2)にまとめられる。ここで、正反応(左から右)は電池充電中の電気化学反応を示し、逆反応(右から左)は電池放電中の電気化学反応を示す。
Fe2++2e-←→Fe0 -0.44V (負極) (1)
Fe2+←→Fe
3+
+e- +0.77V (正極) (2)
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
第1のセルスタック312及び第2のセルスタック314は、第1の加圧板304と第2の加圧板308の間に配置されてよい。第1のセルスタック312及び第2のセルスタック314は、それぞれ、
図2及び4のIFB202のセルスタック204と類似していてよい。第1のセルスタック312
及び第2のセルスタック314は、z軸に沿って整列してよく、セルスタック間の流体の交換を遮るサブスタックセパレータプレート316によって区切られてよい。このように、IFB302のエネルギー貯蔵容量は、IFBを可搬ユニットに組み立てるために加圧板、ボルト、ナット等のハードウェアコンポーネントの数を増やすことなく、
図2及び4のIFB202に比べて、増加させることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
さらに、双極板アセンブリの第1の表面724は、正極入口及び出口分配チャネル728も含み得る。正極入口及び出口分配チャネル728は、電極アセンブリ702の活性領域730から正の電解質を分配及び捕捉するのを可能にする。したがって、正極入口及び出口分配チャネル728は、正極分岐チャネル726と流体連通してよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
z軸に沿って第2の電極アセンブリ1005の上に積み重ねられた第1の電極アセンブリ1003を含むセルスタック1050を
図10に示す。第1の電極アセンブリ1003及び第2の電極アセンブリ1005のそれぞれは、
図7~9の電極アセンブリ702と同様に構成されてよい。第1の電極アセンブリ1003は、第1の膜フレームプレート1052、第1の膜1002、及び第1の負極1004を備えた第1の膜セパレータアセンブリ1007と、第1の双極フレームプレート1054、第1の双極板1006、及び第1の正極1008を備えた第1の双極板アセンブリ1009とを有する。第1の電極アセンブリ1003の各コンポーネントは、直接上のコンポーネント及び直接下のコンポーネントと接触していてよい。同様に、第2の電極アセンブリ1005は、第2の膜フレームプレート1056を備えた第2の膜セパレータアセンブリ(
図10に示さず)
、第2の負極1012、第2の双極フレームプレート1058を備えた第2の双極板アセンブリ1011、第2の双極板1014、及び第1の膜1002の真下に配置された第2の正極1010を有する。第2の電極アセンブリ1005の各コンポーネントは、直接上のコンポーネント及び直接下のコンポーネントと接触している。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
第1のゾーンのセット1028(以下、高圧縮ゾーン1028)は、第2の正極1010のフェルトの高圧縮によって透過性の低い領域であってよい。フェルトが圧縮されると、フェルトの多孔性が減少し、それによって、そこを通る電解質の流れを妨げ得る。第2のゾーンのセット1032(以下、低圧縮ゾーン1032)は、高圧縮ゾーン1028より高い透過性を有し得る。したがって、セルスタック1050の各正極は、x軸及びy軸の両方に沿って、xy平面にわたって高透過性及び低透過性が交互になった領域を有し得る。高透過性の領域は、空間を電解質で満たし得る負極メッシュの開口部に対応する(例えば、z軸に沿って整列する)。高透過性の領域は、圧縮されていないフェルトの多孔性に基づく最大透過性を有し得る。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
本開示はまた、レドックスフロー電池の端部を規定する末端構造間に圧縮されたセルスタックを含むレドックスフロー電池をサポートし、セルスタックは複数のセルから形成され、複数のセルの各セルは、正極の機械的圧縮に基づいた透過性を有し、膜セパレータの第1の面と面を共有して接触している変形可能な正極と、正極より圧縮性が低く構成され、正極と反対側の膜セパレータの第2の面に配置された負極と、正極と接触している電解質とを含む。レドックスフロー電池の第1の例では、正極は、多孔性で導電性のフェルトから形成され、フェルトが圧縮されると、フェルトの厚さ及び透過性が減少し、厚さは、レドックスフロー電池の縦軸に沿って規定される。オプションで第1の例を含むレドックスフロー電池の第2の例では、正極の第1の平面は膜セパレータと面を共有して接触し、第1の平面の反対側の正極の第2の平面は、第1の双極板と面を共有して接触している。オプションで第1及び第2の例を含むレドックスフロー電池の第3の例では、負極は、膜セパレータに直接接触するリブを有するメッシュから形成され、リブは、縦軸に垂直な平面に沿って等間隔に配置され、各リブは、膜セパレータと第2の双極板との間で縦軸に沿って延びる。オプションで第1~第3の例を含むレドックスフロー電池の第4の例では、負極は、縦軸と平行な第1の方向に膜セパレータを通して正極に圧力を加え、圧力の量は、末端構造によって提供されるレドックスフロー電池の圧縮量に対応する。オプションで第1~第4の例を含むレドックスフロー電池の第5の例では、正極は、負極のメッシュのリブと縦軸に沿って整列する第1のゾーンのセットで圧縮され、正極は、縦軸に沿った負極のメッシュのリブ間の空間と整列した第2のゾーンのセットで、より少なく圧縮され、第1のゾーンのセットは、正極の平面に沿って、第2のゾーンのセットと交互になっており、この平面は縦軸に垂直である。オプションで第1~第5の例を含むレドックスフロー電池の第6の例では、第1の双極板は、負極によって加えられる圧力とは反対の第2の方向に、正極の第2の平面に圧力を加え、第1の双極板によって加えられる圧力は、正極の第2の平面にわたって均一である。オプションで第1~第6の例を含むレドックスフロー電池の第7の例では、正極の第1のゾーンのセットは、低い電解質透過性を有する領域であり、正極の第2のゾーンのセットは、高い電解質透過性を有する領域である。オプションで第1~第7の例を含むレドックスフロー電池の第8の例では、正極の第2のゾーンのセットは、第1のゾーンのセットよりも多くの電解質が正極を通って流れるのを可能にするフローチャネルであり、フローチャネルは、複数のセルの各セルの正極コンパートメントを通るように電解質の流れを誘導及び分配する。オプションで第1~第8の例を含むレドックスフロー電池の第9の例では、正極は、レドックスフロー電池の負極、第1の双極板、及び末端構造より圧縮性が高く構成され、且つ、膜セパレータ及び第1の双極板より透過性が高く構成される。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
本開示はまた、レドックスフロー電池用の電極アセンブリをサポートする。電極アセンブリは、双極板と、第1の透過性を有する正極であって、正極の第1の面で双極板と面を共有して接触し、第2の低下した透過性の領域を有する正極と、正極の第2の反対側の面と面を共有して接触している膜セパレータと、正極の反対側で膜セパレータと接触している負極とを含み、負極は、正極の表面に垂直な方向に正極を圧縮することによって、第2の低下した透過性の領域を正極に形成するように構成される。電極アセンブリの第1の例では、正極は、圧縮可能な多孔性材料のシートで形成され、正極の平面に沿って、第1の透過性を有する領域が、第2の低下した透過性の領域と交互になっている。オプションで第1の例を含む電極アセンブリの第2の例では、電極アセンブリは、負極を形成するメッシュをさらに含み、メッシュは、クロス筋交いによって接続された複数のリブを有し、複数のリブは、正極の平面と平行な平面に配置され、クロス筋交いも、複数のリブに垂直に、且つ、正極の平面に平行な平面に配置され、負極は、正極より圧縮性が低い。オプションで第1及び第2の例を含む電極アセンブリの第3の例では、負極によって正極に加えられる圧縮力は、膜セパレータを介して伝達され、双極板によって抵抗され、圧縮力は、負極の複数のリブが膜セパレータに接触する領域でのみ加えられる。オプションで第1~第3の例を含む電極アセンブリ第4の例では、正極の表面と垂直な方向に沿って、負極の複数のリブが膜セパレータと接触する領域と整列する正極の領域は、正極の第2の低下した透過性の領域である。オプションで第1~第4の例を含む電極アセンブリの第5の例では、第1の透過性の領域の電解質の流れは、第2の低下した透過性の領域の電解質の流れより大きく、第2の低下した透過性の領域を流れる電解質は、第2の低下した透過性の領域が圧縮されていないときと比べて、正極の厚さが減少したゾーンを通って流れる。
【国際調査報告】