(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】近赤外線吸収体を組み込むことによる太陽熱利得係数改善
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20230612BHJP
H10K 30/87 20230101ALI20230612BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/87
G02B5/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569442
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 US2021031321
(87)【国際公開番号】W WO2021231216
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515087787
【氏名又は名称】ユビキタス エナジー, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】UBIQUITOUS ENERGY, INC.
【住所又は居所原語表記】3696 Haven Avenue, Suite B, Redwood City, California 94063 The United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【氏名又は名称】穐場 仁
(72)【発明者】
【氏名】パンディ,リチャ
(72)【発明者】
【氏名】サイクス,マシュー イー.
(72)【発明者】
【氏名】バール,マイルス シー.
(72)【発明者】
【氏名】ラブ,ジョン エー.
【テーマコード(参考)】
2H148
5F251
【Fターム(参考)】
2H148CA05
2H148CA12
2H148CA17
2H148FA05
2H148FA09
2H148FA12
5F251AA11
5F251DA03
5F251DA07
5F251DA15
5F251FA03
5F251FA04
5F251FA06
5F251FA23
5F251GA03
5F251HA04
5F251XA01
5F251XA32
(57)【要約】
可視透明光起電力デバイスは、可視透明基板と、可視透明基板上の第1の可視透明電極と、第2の電極と、第1の可視透明電極と第2の電極との間の可視透明光活性層であって、近赤外光又は紫外光のうちの少なくとも一方を光電流に変換するように構成される可視透明光活性層と、近赤外光を吸収して可視光を透過するように構成される近赤外吸収材料層とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視透明基板と、
前記可視透明基板上の第1の可視透明電極と、
第2の電極と、
前記第1の可視透明電極と前記第2の電極との間の可視透明光活性層であって、近赤外光又は紫外光のうちの少なくとも一方を光電流に変換するように構成される、可視透明光活性層と、
前記近赤外光を吸収して可視光を透過する近赤外吸収材料層と、
を備える可視透明光起電力デバイス。
【請求項2】
前記近赤外吸収材料層は、650nmよりも長い波長におけるピーク吸光係数によって特徴付けられる、請求項1に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項3】
前記ピーク吸光係数が0.4よりも大きい、請求項2に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項4】
前記近赤外吸収材料層がSnNcCl
2、SnNc、又は、BBTを含む、請求項2に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項5】
前記近赤外吸収材料層が前記可視光のための反射防止層を含む、請求項1に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項6】
前記反射防止層は、前記可視透明基板上又は前記第2の電極上にある、請求項5に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項7】
前記近赤外吸収材料層が前記可視透明光活性層内にある、請求項1に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項8】
正孔輸送層を更に備え、前記近赤外吸収材料層が前記正孔輸送層内にある、請求項1に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項9】
前記正孔輸送層は、MoO
3、WO
3、NiOx、ITO、又はV
2O
5のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項10】
電子輸送層を更に備え、前記近赤外吸収材料層が前記電子輸送層内にある、請求項1に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項11】
前記電子輸送層は、ZnO、In
2O
3、SnO
2、TiO
2、AZO、FTO、Al:MoO
3、又はBaSnO
3のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項12】
反射防止層、正孔輸送層、及び、電子輸送層を更に備え、前記近赤外吸収材料層は、前記反射防止層、前記正孔輸送層、前記電子輸送層、又は、前記可視透明光活性層のうちの少なくとも1つの内にある、請求項1に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項13】
前記第2の電極は、前記近赤外光を少なくとも部分的に反射するように構成される、請求項1に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項14】
前記第2の電極は、20nm以下の厚さを特徴とする銀層を含む、請求項13に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項15】
前記近赤外吸収材料層が60nm未満の厚さを特徴とする、請求項1に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項16】
0.45以上の平均可視透過率を特徴とする、請求項1に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項17】
1.5以上の選択性を特徴とする、請求項1に記載の可視透明光起電力デバイス。
【請求項18】
可視透明基板と、
前記可視透明基板上の第1の可視透明誘電体層と、
前記第1の可視透明誘電体層上にあり、近赤外光を少なくとも部分的に反射するように構成される近赤外反射層と、
前記近赤外反射層上の第2の可視透明誘電体層と、
を備え、
前記第1の可視透明誘電体層及び前記第2の可視透明誘電体層のうちの少なくとも一方は、近赤外光を吸収して可視光を透過する近赤外吸収材料を含む、
窓パネル。
【請求項19】
前記近赤外吸収材料は、SnNcCl
2、SnNc、又は、BBTのうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の窓パネル。
【請求項20】
前記近赤外反射層が銀層を含む、請求項18に記載の窓パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]この出願は、その内容全体があらゆる目的のために参照により本願に組み入れられる、「近赤外線吸収体を組み込むことによる太陽熱利得係数改善」と題される2020年5月15日に出願された米国仮特許出願第63/025,840号の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]低コストで、可視透明又は半透明光起電力(PV)デバイスは、家庭、高層ビル、自動車、及び、他の構造物の窓ガラスに組み込まれて、可視光で構造物の内部を照らしながら、太陽エネルギーハーベスティングのための表面積を大幅に増大させることができる。例えば、建物一体型光起電力セルを使用して、建物に照射された太陽エネルギーを、建物で使用もしくは貯蔵することができる又は電力網にフィードバックすることができる電気エネルギーに変換し、太陽エネルギー(例えば、赤外光)による建物の加熱を低減することができる。従来のPVセルは、不透明性及び審美的な問題を有する場合があり、幾つかの窓ガラスでの使用には適さない場合がある。
【0003】
[0003]更に、窓は、ガラス、窓ガラス、及び、フレームを通じた直接的な伝導、並びに、窓を通じた熱の放射(例えば、太陽からの放射)によって熱を得る又は失う場合がある。PVセルを組み込んだ窓ガラスが、気候、向き、外部陰影などの周囲環境の状態に基づいて熱の利得又は損失を調節するための特定の熱エネルギー性能を有することがしばしば望ましい。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本明細書に開示される技術は、一般に窓コーティングに関する。より詳細には、限定するものではないが、本明細書には、窓に組み込まれるとともに近赤外光を選択的に吸収して可視光を透過することができる材料及びデバイスが開示される。材料及びデバイスは、窓に使用される透明又は半透明の光起電性デバイスに組み込まれてもよく、又は、通常の窓にコーティングされてもよい。材料及びデバイスは、熱伝達を低減し、窓を通じた可視光透過を改善するのに役立つことができる。材料、材料の組み合わせ、デバイス、システム、モジュール、方法などを含む様々な本発明の実施形態が本明細書中に記載されている。
【0005】
[0005]本発明の様々な実施形態の概要が例のリストとして以下で与えられる。以下で使用されるように、一連の例への任意の言及は、それらの例のそれぞれへの言及として選言的に理解されるべきである(例えば、「例1-4」は、「例1、2、3又は4」と理解されるべきである)。
【0006】
[0006]例1は、可視透明基板と、可視透明基板上の第1の可視透明電極と、第2の電極と、第1の可視透明電極と第2の電極との間の可視透明光活性層であって、近赤外光又は紫外光のうちの少なくとも一方を光電流に変換するように構成される、可視透明光活性層と、近赤外光を吸収して可視光を透過する近赤外吸収材料層とを備える可視透明光起電力デバイスである。
【0007】
[0007]例2は、近赤外吸収材料層が650nmよりも長い波長におけるピーク吸光係数によって特徴付けられる、例1の可視透明光起電力デバイスである。
【0008】
[0008]例3は、ピーク吸光係数が0.4よりも大きい、例2の可視透明光起電力デバイスである。
【0009】
[0009]例4は、近赤外吸収材料層がSnNcCl2、SnNc、又は、BBTを含む、例2-3の可視透明光起電力デバイスである。
【0010】
[0010]例5は、近赤外吸収材料層が可視光のための反射防止層を含む、例1-4の可視透明光起電力デバイスである。
【0011】
[0011]例6は、反射防止層が可視透明基板上又は第2の電極上にある、例5の可視透明光起電力デバイスである。
【0012】
[0012]例7は、近赤外吸収材料層が可視透明光活性層内にある、例1-6の可視透明光起電力デバイスである。
【0013】
[0013]例8は、正孔輸送層を更に備え、近赤外吸収材料層が正孔輸送層内にある、例1-6の可視透明光起電力デバイスである。
【0014】
[0014]例9は、正孔輸送層がMoO3、WO3、NiOx、ITO、又はV2O5のうちの少なくとも1つを含む、例8の可視透明光起電力デバイスである。
【0015】
[0015]例10は、電子輸送層を更に備え、近赤外吸収材料層が電子輸送層内にある、例1の可視透明光起電力デバイスである。
【0016】
[0016]例11は、電子輸送層がZnO、In2O3、SnO2、TiO2、AZO、FTO、Al:MoO3、又はBaSnO3のうちの少なくとも1つを含む、例10の可視透明光起電力デバイスである。
【0017】
[0017]例12は、反射防止層、正孔輸送層、及び、電子輸送層を更に備え、近赤外吸収材料層が、反射防止層、正孔輸送層、電子輸送層、又は、可視透明光活性層のうちの少なくとも1つにある、例1の可視透明光起電力デバイスである。
【0018】
[0018]例13は、第2の電極が近赤外光を少なくとも部分的に反射するように構成される、例1-12の可視透明光起電力デバイスである。
【0019】
[0019]例14は、第2の電極が20nm以下の厚さを特徴とする銀層を含む、例13の可視透明光起電力デバイスである。
【0020】
[0020]例15は、近赤外吸収材料層が60nm未満の厚さを特徴とする、例1-14の可視透明光起電力デバイスである。
【0021】
[0021]例16は、0.45以上の平均可視透過率を特徴とする、例1-15の可視透明光起電力デバイスである。
【0022】
[0022]例17は、1.5以上の選択性を特徴とする、例1-16の可視透明光起電力デバイスである。
【0023】
[0023]例18は、可視透過光活性層がドナー材料及びアクセプタ材料を含む、例1-17の可視透過光起電デバイスである。
【0024】
[0024]例19は、可視透明光活性層がバルクヘテロ接合を含む、例1-18の可視透明光起電デバイスである。
【0025】
[0025]例20は、可視透明基板と、可視透明基板上の第1の可視透明誘電体層と、第1の可視透明誘電体層上にあり、近赤外光を少なくとも部分的に反射するように構成される近赤外反射層と、近赤外反射層上の第2の可視透明誘電体層とを備え、第1の可視透明誘電体層及び第2の可視透明誘電体層のうちの少なくとも一方が近赤外光を吸収して可視光を透過する近赤外吸収材料を含む、窓パネルである。
【0026】
[0026]例21は、近赤外吸収材料がSnNcCl2、SnNc、又は、BBTのうちの少なくとも1つを含む、例20の窓パネルである。
【0027】
[0027]例22は、近赤外反射層が銀層を含む、例20-21の窓パネルである。
【0028】
[0028]従来技術に優る本開示に記載される技術を使用して、多くの利点が得られる。本開示の実施形態は、太陽熱利得を低減し、透明光起電力及び低放射率窓コーティングにおける選択性を改善するために近赤外放射線を吸収するための材料及びデバイスの組み合わせを提供する。好適には、これらの光学特性は、高い平均可視光透過率を依然として可能にしながら、従来の手法に対して相補的な透明光起電力及び低放射率コーティングの熱性能を高めるための代替経路を表わす。
【0029】
[0029]本発明のこれら及び他の実施形態及び態様は、その利点及び特徴の多くと共に、以下の本文及び添付の図面と併せてより詳細に説明される。
【0030】
[0030]この概要は、特許請求の範囲に記載される主題の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図するものでも、特許請求の範囲に記載される主題の範囲を決定するために単独で使用されることを意図するものでもない。主題は、この開示の明細書全体の適切な部分、任意の又は全ての図面、及び、各請求項を参照することによって理解されるべきである。以上は、他の特徴及び例と共に、以下の明細書、特許請求の範囲、及び、添付図面において以下により詳細に説明される。
【0031】
[0031]例示的な実施形態は、以下の図に関連して以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】特定の実施形態に係る可視透明光起電力デバイスの一例を示す簡略図である。
【
図2A】特定の実施形態に係る可視透明光起電力デバイスにおける光活性層の様々な構成を示す。
【
図2B】特定の実施形態に係る可視透明光起電力デバイスにおける光活性層の様々な構成を示す。
【
図2C】特定の実施形態に係る可視透明光起電力デバイスにおける光活性層の様々な構成を示す。
【
図2D】特定の実施形態に係る可視透明光起電力デバイスにおける光活性層の様々な構成を示す。
【
図2E】特定の実施形態に係る可視透明光起電力デバイスにおける光活性層の様々な構成を示す。
【
図3】光波長に応じた透明光起電力デバイスの一例の太陽スペクトル、人間の眼感度、及び、吸収スペクトルを示す簡略プロットである。
【
図4A】特定の実施形態に係る窓用の断熱ガラスユニット(IGU)の例を示す。
【
図4B】特定の実施形態に係る窓用の断熱ガラスユニット(IGU)の例を示す。
【
図4C】特定の実施形態に係る窓用の断熱ガラスユニット(IGU)の例を示す。
【
図4D】特定の実施形態に係る窓用の断熱ガラスユニット(IGU)の例を示す。
【
図5】特定の実施形態に係る近赤外(NIR)吸収材料を含むことができる複数の層を含む可視透明光起電力デバイスの一例を示す。
【
図6】特定の実施形態に係るIGUにおけるコーティング層に使用することができる材料の例の吸光係数を示す。
【
図7A】特定の実施形態に係るそれぞれの異なる厚さを有する透明反射防止(AR)層としてHAT-CNをそれぞれ含む透明光起電力(TPV)デバイスの例を示す。
【
図7B】
図7Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされた性能を示す。
【
図8A】特定の実施形態に係る異なるそれぞれの厚さを有するAR層内に選択的NIR吸収材料としてSnNcCl
2をそれぞれが含むTPVデバイスの例を示す。
【
図8B】
図8Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされた性能を示す。
【
図9A】特定の実施形態に係るそれぞれの異なる厚さを有するAR層内に選択的NIR吸収材料としてSnNcをそれぞれが含むTPVデバイスの例を示す。
【
図9B】
図9Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされた性能を示す。
【
図10A】特定の実施形態に係る異なるそれぞれの厚さを有するAR層内に選択的NIR吸収材料としてBBTをそれぞれが含むTPVデバイスの例を示す。
【
図10B】
図10Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされた性能を示す。
【
図11A】特定の実施形態に係る異なるそれぞれの厚さを有するAR層内に選択的NIR吸収材料としてNiDTをそれぞれが含むTPVデバイスの例を示す。
【
図11B】
図11Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされた性能を示す。
【
図12A】特定の実施形態に係る異なるそれぞれの厚さを有するAR層内に選択的NIR吸収材料としてQQTをそれぞれが含むTPVデバイスの例を示す。
【
図12B】
図12Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされた性能を示す。
【
図13】特定の実施形態に係るAR層に様々な材料を含むTPVデバイスにおける選択性対平均可視透過率(AVT)を示す。
【
図14A】特定の実施形態に係る正孔輸送層(HTL)内にそれぞれの異なる厚さの選択的NIR吸収材料をそれぞれが含むTPVデバイスの例を示す。
【
図14B】
図14Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされた性能を示す。
【
図15A】特定の実施形態に係るそれぞれの異なる厚さのAg電極を伴う透明AR層をそれぞれが含むTPVデバイスの例を示す。
【
図15B】
図15Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされた性能を示す。
【
図16A】特定の実施形態に係るそれぞれの異なる厚さのAg電極を伴うAR層内に選択的NIR吸収材料としてSnNcCl
2をそれぞれが含むTPVデバイスの例を示す。
【
図16B】
図16Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされた性能を示す。
【
図17A】特定の実施形態に係るそれぞれの異なる厚さのAg電極を伴うAR層内に選択的NIR吸収材料としてSnNcをそれぞれが含むTPVデバイスの例を示す。
【
図17B】
図17Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされた性能を示す。
【
図18A】特定の実施形態に係るそれぞれの異なる厚さのAg電極を伴うAR層内に選択的NIR吸収材料としてBBTをそれぞれが含むTPVデバイスの例を示す。
【
図18B】
図18Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされた性能を示す。
【
図19】特定の実施形態に係る所定の厚さの異なるAR層及び異なる厚さのAg電極を伴うTPVデバイスの例に関する選択性対AVTを示す。
【
図20】特定の実施形態に係るTPVデバイスのAVT及び選択性を改善するための技術を示す。
【
図21A】特定の実施形態に係る透明AR層としてのHAT-CN及びそれぞれの異なる厚さのAg電極をそれぞれが含むTPVデバイスの例を示す。
【
図21B】
図21Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされて測定された性能を示す。
【
図22A】特定の実施形態に係るNIR吸収AR層としてのSnNcCl
2と異なるそれぞれの厚さのAg電極とをそれぞれが含むTPVデバイスの例を示す。
【
図22B】
図22Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされて測定された性能を示す。
【
図23A】特定の実施形態に係るNIR吸収AR層としてのNiDT及び異なるそれぞれの厚さのAg電極とを含むTPVデバイスの一例を示す。
【
図23B】
図23Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされて測定された性能を示す。
【
図24A】太陽スペクトルのAM1.5Gエネルギー束及び人間の眼の明所視応答を示す。
【
図24B】特定の実施形態に係る透明又はNIR吸収AR層のいずれかを含む2つのTPVデバイスの透過(T)スペクトル及び吸収(A)スペクトルを示す。
【
図25A】特定の実施形態に係るAR層をそれぞれが含む2つのTPVデバイスの可視太陽放射照度スペクトルを示す。
【
図25B】特定の実施形態に係るそれぞれが反射防止層を含む2つのTPVデバイスの透過太陽放射照度を示す。
【
図25C】特定の実施形態に係るそれぞれが反射防止層を含む2つのTPVデバイスの吸収太陽放射照度を示す。
【
図26A】2つのZnO層間に挟まれた薄い銀層を含む低eコーティング構造の一例を示す。
【
図26B】特定の実施形態に係る
図26Aに示される低eコーティング構造における第1のZnO層をSnNcCl
2層で置き換えた低eコーティング構造の一例を示す。
【
図26C】特定の実施形態に係る
図26Aに示される低eコーティング構造における第2のZnO層をSnNcCl
2層で置き換えた低eコーティング構造の一例を示す。
【
図26D】特定の実施形態に係る
図26Aに示される低eコーティング構造におけるZnO層をSnNcCl
2層で置き換えた低eコーティング構造の一例を示す。
【
図27】特定の実施形態に係る可視透明光起電力デバイスを製造するための方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[0080]図面は、例示のみを目的として本開示の実施形態を示す。例えば、幾つかの図における透過曲線又は吸収曲線は、例示のみを目的としており、実際のTPVデバイスで使用される材料の透過曲線又は吸収曲線を表わさない場合がある。当業者であれば以下の説明から容易に分かるように、本開示の原理又は宣伝されている利点から逸脱することなく、図示されている構造及び方法の別の実施形態が使用され得る。
【0034】
[0081]添付の図面では、同様の構成要素及び/又は特徴が同じ参照ラベルを有することができる。更に、同じタイプの様々な構成要素は、参照ラベルの後にダッシュ及び類似の構成要素を区別する第2のラベルを続けることによって区別することができる。最初の参照ラベルのみが明細書中で使用される場合、記述は、第2の参照ラベルにかかわらず同じ最初の参照ラベルを有する同様の構成要素のうちのいずれか1つに適用される。
【0035】
[0082]本開示は、一般に窓コーティングに関する。より具体的には、限定ではないが、本明細書では、窓の十分な平均可視透過率(AVT)を維持しながら、窓を通じた熱(例えば、太陽からの熱)の放射を低減するために窓に組み込まれ得る材料及びデバイスが開示される。材料及びデバイスは、NIR光を選択的に吸収し、可視光を透過することができ、窓に使用される透明又は半透明の光起電性デバイスの様々な層に組み込まれてもよく、又は、通常の窓にコーティングされてもよい。例えば、材料は、単独で又は光起電力デバイス内の他の層と組み合わせて、太陽エネルギーから電気エネルギーを生成することに加えて、窓のAVT、太陽熱利得係数(SHGC)、及び、AVTとSHGCとの間の光-太陽熱利得比(又は選択性)を改善することができる。材料、材料の組み合わせ、デバイス、システム、モジュール、方法などを含む様々な本発明の実施形態が本明細書中に記載されている。
【0036】
[0083]特定の実施形態によれば、高AVT及び低SHGCの両方を達成するために、SnNcCl2、SnNcなどの様々な選択的NIR吸収材料を、活性層、可視光における反射防止(AR)層、又は、キャリア輸送層などの透明光起電力(TPV)デバイスの異なる層に組み込むことができる。幾つかの実施形態において、高AVT及び低SHGCは、NIR吸収材料と銀層などの金属層の両方を使用して達成することができる。金属層は、TPVデバイスにおける可視透明電極としても機能し得る。
【0037】
[0084]本発明の様々な実施形態において活性/バッファ(輸送層)/光学材料として利用することができる材料の例としては、NIR吸収材料及び/又は電磁スペクトルのNIR領域における強い吸収ピークを特徴とする材料が挙げられる。NIR吸収材料としては、フタロシアニン、ポルフィリン、ナフタロシアニン、スクアライン、ホウ素-ジピロメテン、ナフタレン、リレン、ペリレン、テトラシアノキノイドチオフェン化合物、テトラシアノインダセン化合物、カルバゾールチアポルフィリン化合物、金属ジチオレート、ベンゾチアジアゾール含有化合物、ジシアノメチレンインダノン含有化合物、これらの組み合わせなどが挙げられる。例示的な材料は、それぞれが2017年6月16日に出願された米国仮出願第62/521,154号、第62/521,158号、第62/521,160号、第62/521,211号、第62/521,214号、及び、第62/521,224号に記載されており、これらは参照によりその全体が本願に組み入れられる。
【0038】
[0085]一例において、可視透明光起電力デバイスは、可視透明基板と、可視透明基板上の第1の可視透明電極と、第2の電極と、第1の可視透明電極と第2の電極との間の可視透明光活性層と、NIR吸収AR層(例えば、受動的な非光起電力層)とを含むことができる。可視透明光活性層は、NIR光又は紫外光の少なくとも一方を光電流に変換するように構成されてもよい。NIR吸収材料層は、NIR帯域における高い吸収及び可視帯域における非常に低い吸収を特徴とし得る。このように、可視透明光活性層によって吸収され得ないNIR光は、NIR吸収AR層によって吸収されることができ、NIR光の吸収された熱のごく一部のみが構造の内部に対流及び/又は放射され得る。これにより、SHGCを低減することができ、AVTを維持することができ、選択性を向上させることができる。
【0039】
[0086]一般に、本明細書で使用される用語及び語句は、当業者に知られている標準的なテキスト、定期刊行物文献、及び文脈を参照することによって見出すことができる、当技術分野で認識されている意味を有する。以下の定義は、本開示の文脈におけるそれらの具体的な使用を明確にするために提供される。
【0040】
[0087]本明細書で使用される「可視光」という用語は、約380nm~約750nm、約400nm~約700nm、又は約450nm~約650nmの波長範囲内の光を指し得る。
【0041】
[0088]本明細書で使用される場合、「可視透明」(又は単に「透明」)及び「可視半透明」(又は単に「半透明」)などの用語は、約0-70%以内、例えば、70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、又は、約20%以下の可視帯域の全体的な吸収、平均吸収、又は、最大吸収を示す材料又はデバイスの特徴を指し得る。別の言い方をすれば、可視透明材料は、入射可視光の30%-100%、例えば、入射可視光の約80%以上、入射可視光の約75%以上、入射可視光の約70%以上、入射可視光の約65%以上、入射可視光の約60%以上、入射可視光の約55%以上、入射可視光の約50%以上、入射可視光の約45%以上、入射可視光の約40%以上、入射可視光の約35%以上、又は、入射可視光の約30%以上を透過することができる。材料又はデバイスを透過しなかった光の一部は、材料によって散乱、反射、又は吸収され得る。可視透明材料は、一般に、人間が見ると少なくとも部分的に透けて見える(すなわち、完全に不透明ではない)と考えられる。可視透明光起電力デバイスは、単にTPVデバイスと呼ばれることがある。
【0042】
[0089]本明細書で使用される場合、「最大吸収強度」という用語は、紫外帯域(200nm~450nm又は280nm~450nm)、可視帯域(450nm~650nm)、又は近赤外帯域(650nm~1400nm)などの特定のスペクトル領域における最大吸収値を指す。幾つかの例では、最大吸収強度は、吸収帯域又はピークなどの局所的又は絶対的な最大値である吸収特徴の吸収強度に対応することができ、ピーク吸収と呼ばれることがある。幾つかの例では、特定の帯域の最大吸収強度は、局所的又は絶対的な最大値に対応しなくてもよく、代わりに特定の帯域の最大吸収値に対応してもよい。そのような構成は、例えば、吸収特徴が複数の帯域(例えば、可視及び近赤外)に及び、吸収特徴のピークが紫外帯域内に位置するが吸収特徴の尾部が可視帯域まで延在する場合など、可視帯域内で生じる吸収特徴からの吸収値が近赤外帯域内で生じる吸収値よりも小さい場合に起こり得る。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の可視透明光活性化合物は、約650ナノメートルを超える波長(すなわち、近赤外)又は約450ナノメートル未満の波長(すなわち、紫外線において)に吸収ピークを有してもよく、可視透明光活性材料の吸収ピークは、約450~650ナノメートルの任意の波長における可視透明光活性材料の吸収より大きくてもよい。
【0043】
[0090]本明細書で使用される「太陽熱利得係数(SHGC)」という用語は、直接伝達される部分と吸収された後に内側に再放射される部分との両方を含む、窓を通じて入る入射太陽放射線の割合を指すことができる。SHGCは、0と1との間の数によって記述され得る。一般に、窓の太陽熱利得係数が低いほど、透過する太陽熱が少なくなる。幾つかの実施形態において、窓のSHGCは、以下にしたがって決定することができる。
SHGC=Tsol+Asol×N、
ここで、Tsolは太陽エネルギー透過率であり、AsolはAM1.5Dにおける窓の太陽エネルギー吸収率であり、Nは対流と放射の両方によって窓を通じて内側に流れる吸収熱の割合である。Tsol及びAsolは、それぞれ窓によって直接に透過及び吸収される入射太陽放射線の割合であることに留意されたい。
【0044】
[0091]本明細書で使用される「平均可視透過率(AVT)」という用語は、太陽スペクトルにおける可視光の加重平均透過率を指すことができ、重みは、それぞれの波長ごとの人間の眼の明所視応答及び太陽エネルギー束に基づいて決定することができる。幾つかの実施形態において、AVTは、以下にしたがって決定することができる。
【数1】
式中、λは波長であり、T(λ)は波長λを伴う光に関するデバイスの透過率であり、P(λ)は波長λを伴う光に対する人間の眼の明所視応答であり、S(λ)は窓用途における波長λでの太陽エネルギー束(例えば、D65)であり、又は、幾つかの他の用途では1である。
【0045】
[0092]本明細書で使用される「選択性」又は「光-太陽利得比(LSGR)」という用語は、窓のAVTとSHGCとの間の比を指すことができる。
【0046】
[0093]本明細書で使用される「断熱ガラスユニット(IGU)」という用語は、縁部の周りの断熱スペーサによって分離された2つ以上のガラス片を含むアセンブリを指すことができる。隣接するガラス片の各対間のキャビティは、真空であってもよく、又は、ユニットを通じた対流熱伝達を低減するためにアルゴンなどの不活性ガスが充填されてもよい。また、ユニットは、縁部の周りの枠組みによって取り囲まれてもよい。幾つかの実施形態において、IGUのSHGCは、ガラス片の中心のSHGCを指すことができるが、SHGCに対する枠組みなどの不透明要素の影響は考慮されない場合がある。
【0047】
[0094]本明細書で使用される「光学反射防止(OAR)層」という用語は、基板又は上部電極(例えば、金属膜)上に堆積され、基板又は上部電極での反射率を低減するために使用される層を指すことができる。TPVデバイスのAVTを最大化するために、OAR層として1つ以上の可視透明(可視スペクトルで吸収しない)材料を使用することがしばしば有利である。
【0048】
[0095]本明細書で使用される「正孔輸送層(HTL)」及び「電子輸送層(ETL)」という用語は、デバイスの電気抵抗を著しく増大させないように、正孔(例えば、HTL)又は電子(例えば、ETL)のいずれかに対して高い導電性を有する層を指すことができる。HTL又はETLの材料は、他のタイプの電荷キャリアをブロックしながら正孔又は電子のいずれかを選択的に伝導し得るように選択され得る。幾つかの実施形態において、ETL及び/又はHTLは光電流にも寄与し得る。
【0049】
[0096]本開示で利用され得る幾つかの材料(例えば、幾つかのNIR又はUV吸収材料)における略語の例としては、
TPBi:2,2’、2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール);
HAT-CN:ジピラジノ[2,3-f:2’、3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11ヘキサカルボニトリル;
ZnO:酸化亜鉛;
MoO3:三酸化モリブデン;
C60:フラーレン-C60;
SnNc:スズ(II)2,3-ナフタロシアニン;
SnNcCl2:スズ(IV)2,3-ナフタロシアニンジクロリド;
BBT:4,8-ビス[5-(N,N-ジフェニルアミノ)-2-チオフェン]ベンゾ[1,2-c:4,5-c(]ビス[1,2,5]チアジアゾール;
NiDT:ビス(ジチオベンジル)ニッケル(II);
QQT:2,2’-[(3,4-ジブチル-2,5-チオフェンジイリデン)ジ-5,2-チオフェンジイリデン]ビス[プロパンジニトリル];及び
UE-D-100:独自のNIR吸収ドナー材料、
が挙げられる。
【0050】
[0097]以下の説明では、説明の目的のために、本開示の例の完全な理解を与えるために具体的な詳細が記載される。しかしながら、これらの具体的な詳細を伴うことなく様々な例を実施できることは明らかである。例えば、デバイス、システム、構造、アセンブリ、方法、及び他の構成要素は、例を不必要に詳細に不明瞭にしないために、ブロック図形式の構成要素として示されてもよい。他の例では、例を不明瞭にすることを避けるために、周知のデバイス、プロセス、システム、構造、及び技術を必要な詳細を伴うことなく示すことができる。図及び説明は、限定を意図するものではない。この開示で使用される用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、また、そのような用語及び表現の使用において、示され説明された特徴又はその一部の均等物を除外する意図はない。「例」という用語は、本明細書では「例、事例、又は、例示として役立つ」ことを意味するべく使用される。本明細書中で「例」として説明される任意の実施形態又は形態は、必ずしも他の実施形態又は形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。
【0051】
[0098]
図1は、特定の実施形態に係る可視帯域で色中立である可視透明光起電力(TPV)デバイス100の一例を示す簡略図である。
図1に示されるように、可視透明光起電力デバイス100は、幾つかの層及び要素を含むことができる。前述したように、可視透明とは、光起電力デバイスが例えば約450nm~約650nmの可視波長帯域外の波長で光エネルギーを吸収する一方で可視波長帯域内の光を実質的に透過することを示す。例に示されるように、UV光及び/又はNIR光は、光起電力デバイスの層及び要素によって強く吸収され得るが、可視光はデバイスを実質的に透過し得る。
【0052】
[0099]可視透明光起電(TPV)デバイス100は、図示されている他の層及び構造に十分な機械的支持を与えるガラス又は他の可視透明材料であり得る基板105を含んでもよい。基板材料の例としては、様々なガラス及び硬質又は可撓性のポリマーが挙げられる。積層体などの多層基板も利用することができる。基板は、例えば、0.5mm~20mmの厚さなど、他の層及び構造に必要な機械的支持をもたらすのに適した任意の厚さを有してもよい。場合によっては、基板は、窓ガラス、表示デバイスなどの他の構造に対する可視透明光起電力デバイス100の適用を可能にする接着フィルムを含んでもよい。基板105は、光学層110,112を支持することができる。これらの光学層は、反射防止(AR)特性、波長選択反射又は分布ブラッグ反射特性、屈折率整合特性、カプセル化などを含む様々な光学特性を与えることができる。光学層110,112は、好適には、可視透明であってもよい。更なる光学層114は、例えば、ARコーティング、屈折率整合層、受動的な可視光、赤外光、又は、紫外光吸収層などとして利用することができる。任意選択的に、光学層110~114は、可視光、紫外光、及び/又は近赤外光を透過してもよく、又は、可視、紫外、及び/又は近赤外帯域の波長の少なくともサブセットを透過してもよい。構成に応じて、更なる光学層114は受動可視光吸収層であってもよい。
【0053】
[0100]デバイスは、全体として、可視透明性、例えば、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、或いは、最大で100%又はほぼ100%の透明性を450~650nm範囲で示し得るが、個々に採取された特定の材料は、可視スペクトルの少なくとも一部で吸収を示し得ることが理解される。任意選択的に、可視透明光起電力デバイス内における個々の材料又は層はそれぞれ、可視範囲内で高い透明性、例えば30%を超える(すなわち、30%~100%)高い透明性を有する。透過率又は吸収率は、パーセンテージとして表わすことができ、材料の吸光度特性、吸収材料を貫く厚さ又は経路長、及び、吸収材料の濃度に依存してもよく、それにより、吸収材料を貫く経路長が短い及び/又は吸収材料が低濃度で存在する場合、可視帯域に吸光度を伴う材料は、低い吸収率又は高い透過率を示し得る。
【0054】
[0101]ここで及び以下で記載されるように、様々な光活性層中の光活性材料は、好適には、可視帯域において最小の吸収率(例えば、20%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、又は、70%未満)を示し、近赤外帯域及び/又は紫外帯域において高い吸収率(例えば、50%超、60%超、70%超又は80%超の吸収ピーク)を示す。幾つかの用途では、可視帯域での吸収率が70%もの大きさとなり得る。基板、光学層、及び、バッファ層などの他の材料の様々な形態は、材料が若干の可視吸収率を示し得る場合でも、これらの材料が全体的な可視透明性をもたらすことができるようにし得る。例えば、AgやCu等の金属の薄膜が透明電極に含まれていてもよい。金属は可視光を吸収し得るが、薄膜形態で設けられる場合、膜の全体的な透明性は高くなり得る。同様に、光学層又はバッファ層に含まれる材料は、可視範囲で吸収を示し得るが、可視光吸収の全体量が低く可視透明性をもたらすような濃度又は厚さで与えられてもよい。
【0055】
[0102]また、可視透明光起電力デバイス100は、電極120,122間に位置される光活性層140を伴う一組の透明電極120,122も含む。酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、薄い金属膜、又は、他の適切な可視透明材料を使用して製造することができる電極120,122は、図示された様々な層のうちの1つ以上に対する電気的接続をもたらす。例えば、銅、銀、又は、他の金属の薄膜は、これらの金属が可視帯域の光を吸収し得る場合であっても、可視透明電極としての使用に適し得る。約1nm~約200nm(例えば、約5nm、約10nm、約15nm、約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nm、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm、約100nm、約105nm、約110nm、約115nm、約120nm、約125nm、約130nm、約135nm、約140nm、約145nm、約150nm、約155nm、約160nm、約165nm、約170nm、約175nm、約180nm、約185nm、約190nm、又は約195nm)の厚さを有する膜などの薄膜として設けられる場合、可視帯域における薄膜の全透過率は、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、又は、90%超など、高いままであってもよい。好適には、金属薄膜は、透明電極として使用される場合、幾つかの半導体透明導電性酸化物が、紫外帯域でバンドギャップを有し、したがって紫外光を高度に吸収する又は透過しないため、ITOなどの透明電極として有用であり得る他の半導体材料よりも紫外帯域で低い吸収を示し得る。しかしながら、場合によっては、紫外光が特定の材料を劣化させる場合があるため、紫外線吸収透明電極を使用して、紫外光の少なくとも一部を下方にある構成要素から遮蔽することができる。
【0056】
[0103]原子層堆積、化学蒸着、物理蒸着、熱蒸着、スパッタ堆積、エピタキシなどの真空堆積技術を含む様々な堆積技術を使用して透明電極を生成することができる。場合によっては、スピンコーティングなどの溶液ベースの堆積技術も使用することができる。更に、透明電極は、リソグラフィ、リフトオフ、エッチングなどを含む、微細加工の技術を使用してパターニングされてもよい。
【0057】
[0104]バッファ層130,132及び光活性層140は、光起電力デバイスの電気的及び光学的な特性を実現するために利用される。これらの層は、単一の材料の層であってもよく、又は、特定の用途に適した複数の副層を含んでもよい。したがって、「層」という用語は、単一の材料の単一の層を示すことを意図するものではなく、同じ又は異なる材料の複数の副層を含むことができる。幾つかの実施形態において、バッファ層130、光活性層140、及び、バッファ層132は、積層形態で繰り返されて、多接合セルなどのタンデムデバイス形態をもたらす。幾つかの実施形態において、光活性層140は、ドナー及びアクセプタとも称される電子ドナー材料及び電子アクセプタ材料を含んでもよい。これらのドナー及びアクセプタは、可視透明であるが、可視波長帯域外を吸収して光電流を生成し得る。
【0058】
[0105]バッファ層130,132は、電子輸送層、電子ブロッキング層、正孔輸送層、正孔ブロッキング層、励起子ブロッキング層、光学スペーサ、物理バッファ層、電荷再結合層、又は、電荷生成層として機能し得る。バッファ層130,132は、所望の緩衝効果をもたらすのに適した任意の厚さを有してもよく、任意選択的に存在しても存在しなくてもよい。バッファ層130,132は、存在する場合、約1nm~約100nmの厚さを有してもよい。更に、バッファ層130,132は、幾つかの実施形態では、光活性層に対して相補的な吸収性を有してもよい。フラーレン材料、カーボンナノチューブ材料、グラフェン材料、金属酸化物、例えば酸化モリブデン、酸化チタン、酸化亜鉛など、ポリマー、例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホン酸、ポリアニリンなど、コポリマー、ポリマー混合物、及び、小分子、例えばバソクプロインを含む様々な材料がバッファ層として使用されてもよい。バッファ層は、堆積プロセス(例えば、熱蒸発)又は溶液処理方法(例えば、スピンコーティング)を使用して形成することができ、1つ以上の層を含むことができる。
【0059】
[0106]テトラシアノキノイドチオフェン化合物、テトラシアノインダセン化合物、カルバゾールチアポルフィリン化合物、及び/又はジチオフェンスクアリン化合物などの様々な化合物を、バッファ層、光学層、及び/又は光活性層の1つ以上として使用することができる。これらの化合物は、コア構造の電気的及び/又は光学的特性を改質するための適切に官能化されたバージョンを含むことができる。一例として、開示される化合物は、可視波長帯域の吸収を約450nmから約650nmに減少させ、約650nmを超える波長でNIR帯域の吸収を増大させる官能基を含むことができる。
【0060】
[0107]本発明の様々な実施形態において活性材料/緩衝材料(輸送層)/光学材料として利用され得る材料の例としては、近IR吸収材料、UV吸収材料、及び/又は、電磁スペクトルの近IR領域又はUV領域における強い吸収ピークによって特徴付けられる材料が挙げられる。近IR吸収材料の例としては、フタロシアニン、ポルフィリン、ナフタロシアニン、スクアライン、ホウ素-ジピロメテン、ナフタレン、リレン、ペリレン、パラ-フェニレン、テトラシアノキノイドチオフェン化合物、テトラシアノインダセン化合物、カルバゾールチアポルフィリン化合物、金属ジチオレート、ベンゾチアジアゾール含有化合物、ジシアノメチレンインダノン含有化合物、これらの組み合わせなどを挙げることができる。UV吸収材料の例としては、フラーレン、リレン、ペリレン、ベンズイミダゾール、ヘキサカルボニトリル、トリアリールアミン、ビストリアリールアミン、フェナントロリン、パラ-フェニレン、それらの組み合わせなどが挙げられる。
【0061】
[0108]様々な実施形態において、可視透明光起電力デバイス100は、透明電極120、光活性層140、及び、透明電極122を含むことができ、一方、基板105、光学層110,112、114、及び、バッファ層130、132のいずれか1つ以上は、任意選択的に含まれるか又は除外されてもよいことに留意されたい。
【0062】
[0109]
図2A~
図2Eは、光活性層140における様々な例示的な接合構成を示す。光活性層140は、任意選択的に、平面ドナー/アクセプタ形態(
図2Aに示すように)、混合ドナー/アクセプタ(バルクヘテロ接合)形態(
図2Bに示すように)、平面及び混合ドナー/アクセプタ形態(
図2Cに示すように)、勾配ドナー/アクセプタ形態(
図2Dに示すように)、又は、積層ヘテロ接合形態(
図2Eに示すように)に対応してもよい。
【0063】
[0110]紫外帯域又は近赤外帯域で吸収するが可視帯域では仮に吸収するとしても最小限しか吸収しない材料など、様々な材料が光活性層140として使用されてもよい。このようにして、光活性材料を使用して、紫外吸収及び/又は近赤外吸収によって外部回路に給電するための電子-正孔対を生成することができ、それにより、可視光を比較的乱さずに残して可視透明性を与えることができる。図示のように、光活性層140は、別個のドナー層及びアクセプタ層を含む平面ヘテロ接合を備えてもよい。或いは、光活性層140は、別個のアクセプタ層及びドナー層並びに混合ドナー-アクセプタ層を含む平面混合ヘテロ接合構造を備えてもよい。或いは、光活性層140は、完全に混合されたアクセプタ-ドナー層を含む混合ヘテロ接合構造、又は、様々な相対濃度勾配を伴う混合ドナー-アクセプタ層を含む混合ヘテロ接合構造を備えてもよい。
【0064】
[0111]光活性層は、任意の適切な厚さを有してもよく、所望のレベルの透明性及び紫外/近赤外吸収特性をもたらすために、任意の適切な濃度又は組成の光活性材料を有することができる。光活性層の厚さの例は、約1nm~約1μm、約1nm~約300nm、又は、約1nm~約100nmの範囲であってもよい。場合によっては、光活性層は、
図2A~
図2Eに示されるように、適切な光起電力発電特性を与えるために、個々の副層又は層の混合物で構成されてもよい。
図2A~
図2Eに示される様々な形態が、使用されてもよいとともに、有利な光起電力発電をもたらすために使用される特定のドナー及びアクセプタ材料に依存してもよい。例えば、幾つかのドナーとアクセプタとの組み合わせは特定の形態から利益を得ることができるが、他のドナーとアクセプタとの組み合わせは他の特定の形態から利益を得ることができる。ドナー材料及びアクセプタ材料は、適切な太陽光発電特性をもたらすために任意の比率又は濃度で提供されてもよい。混合層の場合、アクセプタに対するドナーの相対濃度は、約20:1~約1:20であってもよい。場合により、アクセプタに対するドナーの相対濃度は任意選択的に約5:1~約1:5である。場合により、ドナー及びアクセプタは1:1の比率で存在する。
【0065】
[0112]様々な可視透明光活性化合物は、電子ドナー光活性材料として有用であり、また、幾つかの実施形態では、光起電力デバイスに有用な光活性層を設けるために適切な電子アクセプタ光活性材料と対にされてもよい。様々な可視透明光活性化合物は、電子アクセプタ光活性材料として有用であり、光起電力デバイスに有用な光活性層をもたらすために適切な電子ドナー光活性材料と対にすることができる。ドナー材料及びアクセプタ材料の例は、それぞれが2017年6月16日に出願された米国仮出願第62/521,154号、第62/521,158号、第62/521,160号、第62/521,211号、第62/521,214号、及び、第62/521,224号に記載されており、これらの出願はその全体が参照により本願に組み入れられる。
【0066】
[0113]幾つかの実施形態において、様々な光活性化合物の化学構造は、材料に望ましい電気的特性を与えるために、電子供与基、電子求引基、又はコア金属原子の周りもしくはコア金属原子への置換などの1つ以上の指向基で官能化することができる。例えば、幾つかの実施形態において、光活性化合物は、光起電力デバイスにおいて電子ドナーとして機能する材料の能力を向上させるために、アミン基、フェノール基、アルキル基、フェニル基、又は、他の電子供与基で官能化される。他の例として、幾つかの実施形態において、光活性化合物は、光起電力デバイス内の電子アクセプタとして機能する材料の能力を向上させるために、シアノ基、ハロゲン、スルホニル基、又は他の電子吸引基で官能化される。
【0067】
[0114]実施形態において、光活性化合物は、望ましい光学特性を与えるために官能化される。例えば、幾つかの実施形態において、光活性化合物は、材料の吸収プロファイルを再シフトさせるために拡張された共役で官能化されてもよい。共役は、分子内のpi電子の非局在化を指してもよく、また、分子構造内の単結合と多重結合とを交互に繰り返すことを特徴としてもよいことが理解される。例えば、電子共役を拡張する官能化は、1つ以上の芳香族基を材料の分子構造に融合することを含んでもよい。拡張された共役を与え得る他の官能化としては、例えばビニル基によるアルケン官能化、芳香族又はヘテロ芳香族官能化、例えばアシル基によるカルボニル官能化、スルホニル官能化、ニトロ官能化、シアノ官能化などが挙げられる。様々な分子官能化は、光活性化合物の光学特性及び電気特性の両方に影響を及ぼし得ることが理解される。
【0068】
[0115]デバイス機能は、固体状態の活性層の形態によって影響を受け得ることが理解される。励起子拡散長及び大きな界面面積の規模での寸法を有する離散領域への電子ドナー及びアクセプタの分離は、高いデバイス効率を達成するために有利であり得る。好適には、光活性材料の分子フレームワークは、材料の形態を制御するように調整され得る。例えば、本明細書中に記載される官能基の導入は、そのような改質が材料のエネルギー特性又は電子特性に影響を及ぼすかどうかにかかわらず、固体状態の材料の形態に大きな影響を及ぼし得る。そのような形態学的変動は、純粋な材料において、また、特定の材料が対応するドナー又はアクセプタとブレンドされるときに観察され得る。形態を制御するための有用な機能性としては、アルキル鎖、共役リンカー、フッ素化アルカン、嵩高い基(例えば、tert-ブチル、フェニル、ナフチル又はシクロヘキシル)の付加、並びに、過剰な結晶化を抑制するために構造の一部を分子の平面から押し出すように設計されたより複雑なカップリング手順が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
[0116]実施形態において、他の分子構造特性は、光活性化合物において望ましい電気的及び光学的特性を与え得る。例えば、幾つかの実施形態において、光活性化合物は、電子供与性として特徴付けられ得る分子の部分を示すことができ、一方、分子の他の部分は電子受容性として特徴付けられ得る。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、交互の電子供与部及び電子受容部を含む分子は、交互の電子供与部及び電子受容部を欠く類似の分子と比較して、分子の吸収特性を再シフトさせ得る。例えば、交互の電子供与部及び電子受容部は、最高占有分子軌道と最低非占有分子軌道との間のより低いエネルギーギャップを減少させ又はさもなければもたらし得る。有機ドナー及び/又はアクセプタ基は、可視透明光活性化合物中の任意のアリール、芳香族、ヘテロアリール、ヘテロ芳香族、アルキル又はアルケニル基などのR基置換基として有用であり得る。
【0070】
[0117]ドナー/アクセプタ材料が電子ドナー又は電子アクセプタのいずれかとして透明光起電力デバイス内の光活性層として組み込まれる場合、層厚は、デバイス出力、吸光度、又は、透過率を変化させるように制御され得る。例えば、ドナー層又はアクセプタ層の厚さを増大させると、その層の光吸収率を増大させることができる。場合によっては、ドナー層中又はアクセプタ層中のドナー/アクセプタ材料の濃度を増大させると、その層の光吸収率が同様に増大し得る。しかしながら、幾つかの実施形態では、活性材料層がドナー/アクセプタ材料の純粋もしくは実質的に純粋な層又はドナー/アクセプタ材料の純粋もしくは実質的に純粋な混合物を備える場合など、ドナー/アクセプタ材料の濃度が調整可能ではない場合がある。場合により、ドナー/アクセプタ材料は、溶媒中に供給されてもよく又はバッファ層材料などのキャリア中に懸濁されてもよく、その場合、ドナー/アクセプタ材料の濃度が調整されてもよい。幾つかの実施形態において、ドナー層濃度は、生成される電流が最大化される場合に選択される。幾つかの実施形態では、アクセプタ層濃度は、生成される電流が最大化される場合に選択される。
【0071】
[0118]しかしながら、電荷収集効率は、電荷キャリアの「走行距離」が増大するため、ドナー又はアクセプタの厚さが増大するにつれて減少する可能性がある。したがって、層の厚さが増大するにつれて吸収率が増大することと電荷収集効率が低下することとの間にはトレードオフがあり得る。したがって、厚さ当たりの光吸収率の増大を可能にするために、高い吸収係数及び/又は濃度を有する材料を選択することが有利となり得る。幾つかの実施形態において、ドナー層の厚さは、生成される電流が最大化される場合に選択される。幾つかの実施形態において、アクセプタ層の厚さは、生成される電流が最大化される場合に選択される。
【0072】
[0119]個々の光活性層の厚さに加えて、透明光起電力デバイスにおける他の層の厚さ及び組成も、光活性層内の吸収を増強するように選択され得る。他の層(バッファ層、電極など)は、一般に、薄膜デバイス積層体及び結果として生じる光学キャビティとの関連でそれらの光学特性(屈折率及び吸光係数)に基づいて選択される。例えば、近赤外吸収光活性層は、それがデバイスによってもたらされる吸収及び結果として生じる電流を最大にするために吸収する近赤外波長における光場のピークに位置され得る。これは、第2の光活性層及び/又は光学層をスペーサとして使用して光活性層を電極から適切な距離を隔てて離間させることによって達成され得る。同様の方式を紫外線吸収光活性層に関して使用することができる。多くの場合、より長い波長の光場のピークは、より短い波長の光場のピークと比較してより反射性がある2つの透明電極からより遠くに位置される。したがって、別個のドナー及びアクセプタ光活性層を使用する場合、ドナー及びアクセプタは、より赤吸収性の(より長い波長の)材料をより反射性の電極からより遠くに配置し、より青吸収性の(より短い波長の)材料をより反射性の電極の近くに配置するように選択することができる。
【0073】
[0120]幾つかの実施形態では、ドナーがドナー層で吸収して光吸収率を増大させ、したがってドナー層によって生成される電流を増大させる波長での光場の強度を増大させるために光学層が含まれてもよい。幾つかの実施形態では、アクセプタがアクセプタ層で吸収して光吸収率を増大させ、したがってアクセプタ層によって生成される電流を増大させる波長での光場の強度を増大させるために、光学層が含まれてもよい。幾つかの実施形態では、光学層を使用して、可視吸収又は可視反射のいずれかを減少させることによって積層体の透明性を向上させることができる。更に、電極材料及び厚さは、可視範囲内の光を優先的に透過させながら、光活性層内の可視範囲外の吸収を増強するように選択されてもよい。
【0074】
[0121]任意選択的に、可視透明光起電力デバイスのスペクトルカバレッジを高めることは、
図1に関連して説明したように、バッファ層130、光活性層140、及び、バッファ層132の複数の積層された事例として含まれ得る、タンデムセルと称される、可視透明光起電力デバイスのマルチセル直列積層体を使用することによって達成される。この構造は2つ以上の光活性層を含み、これらの光活性層は、一般に、例えば、バッファ層及び/又は薄い金属層の組み合わせによって分離される。この構造において、各サブセルで生成される電流は、対向する電極に直列に流れ、したがって、セル内の正味電流は、例えば、特定のサブセルによって生成される最小電流によって制限される。開回路電圧(V
OC)は、サブセルのV
OC値の合計に等しい。太陽スペクトルの異なる領域で吸収する異なるドナー-アクセプタ対で製造されたサブセルを組み合わせることにより、単一接合セルと比較して効率の大幅な向上を得ることができる。
【0075】
[0122]
図3は、光波長の関数としての透明光起電力デバイスの一例の太陽スペクトル310、人間の眼感度330、及び、吸収スペクトル320を示す簡略プロット300である。
図3に示されるように、本開示における実施形態は、約450nm~約650nmの可視波長帯域において低い均一な吸収を有するが、UV及びNIR帯域において、すなわち、可視波長帯域の外側において強く吸収し、可視透明光起電動作を可能にする光起電構造を利用してもよい。紫外線帯域は、実施形態において、約200nm~約450nmの光の波長として説明することができる。地上レベルでの有用な太陽輻射は、約280nm未満の波長を伴う限られた量の紫外線を有してもよく、したがって、紫外線帯域又は紫外線領域は、幾つかの実施形態では、約280nm~450nmの光の波長として説明されてもよいことが理解される。近赤外帯域は、実施形態では、約650nm~約1400nmの光の波長として説明することができる。
【0076】
[0123]様々な組成物及び化合物は、UVピーク322及び/又はNIRピーク324、並びに、NIR領域又はUV領域よりも小さい可視帯域における最大吸収強度を含む吸収を示し得る。これらの組成物及び化合物の幾つかは、光活性であってもよく、可視光帯域外の太陽光を電気に変換するために前述及び後述する可視透明光起電力デバイスに使用されてもよい。例えば、光活性化合物は、場合により近赤外帯域にピーク吸収を示してもよい。光活性化合物は、紫外帯域にピーク吸収を有していてもよい。所望の光学特性を達成するために、可視透明光活性化合物は、紫外又は近赤外光の光子を吸収するための分子電子構造を有することができ、これにより、電子がより低い分子軌道レベルからより高い分子軌道レベルに促進でき、より低い分子軌道レベルとより高い分子軌道レベルとの間のエネルギー差は、吸収された光子のエネルギーと一致し得る。拡張された芳香族性又は拡張された共役を示す化合物は、拡張された芳香族性又は拡張された共役を有する化合物が紫外光子及び/又は近赤外光子のエネルギーと一致するエネルギーで電子吸収を示し得るので、有益である。しかしながら、場合によっては、拡張された芳香族性又は拡張された共役は、可視帯域(すなわち、約450nm~約650nm)での吸収ももたらし得る。共役及び芳香族性に加えて、吸収特徴は、窒素又は硫黄原子などの可視透明光活性化合物の有機構造にヘテロ原子を含めることによって調節され得る。これに加えて又は代えて、吸収特徴は、金属原子及び有機金属結合の存在及び位置によって調節されてもよい。これに加えて又は代えて、吸収特徴は、可視透明光活性化合物のコア又はサブ構造に結合したハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基などの電子供与基又は電子求引基の存在及び位置によって調節され得る。更に、吸収特徴は、光活性化合物内の電子ドナー基又は電子アクセプタ基の存在によって任意選択的に調節されてもよい。
【0077】
[0124]可視透明光起電力デバイスにおける光活性層に使用され得る光活性化合物の例としては、キノイド構造、テトラシアノキノイドチオフェン構造、テトラシアノインダセン構造、カルバゾールチアポルフィリン構造、及びジチオフェンスクアリン構造を組み込んだものが挙げられる。
【0078】
[0125]可視透明光起電力デバイスに使用される他の層は、透明光起電力デバイスの動作に適した組成及び特性を示し得る。例えば、透明ガラス、透明ポリマーなどを含む様々な可視透明基板を使用することができる。幾つかの実施形態では、可視透明基板は、近赤外光(例えば、650nmを超える波長を有する光)及び/又は紫外光(例えば、450nm未満の波長を有する光)を透過してもよい。このようにして、可視透明基板は、可視透明光起電力デバイスによる光起電力エネルギー生成に適した近赤外光及び/又は紫外光を吸収しない場合がある。しかしながら、幾つかの実施形態において、可視透明基板は、赤外線及び/又は紫外線を吸収することができ、これは、例えば、可視透明基板が、光活性層を通過した後の過剰な赤外線又は可視放射線入射放射を遮断して、全体的な紫外線及び/又は赤外線透過を防止又は低減するのに役立つ形態に有用であり得る。有用な可視透明基板は、約50nm~約30mmの厚さを有するものを含むが、これらに限定されない。
【0079】
[0126]可視透明電極の例としては、インジウムスズ酸化物(ITO)、又は銅、金、銀、アルミニウムなどの導電性金属の薄い透明膜、又は関連する金属合金が挙げられる。可視透明電極が導電性金属を含む場合、可視透明電極の厚さは、導電性金属がバルク中で不透明であっても、薄膜として使用される場合、導電性金属が依然として可視光の透過を可能にし得るような厚さであり得る。有用な可視透明電極は、約1nm~約500nmの厚さを有するものを含むが、これらに限定されない。
【0080】
[0127]前述したように、本明細書に記載の可視透明光起電力デバイスには、他の層も存在し得る。例えば、可視透明光起電力デバイスは、任意選択的に、第1の可視透明電極と第1の可視透明光活性層との間に配置された第1のバッファ層及び/又は第1の(又は第2の)可視透明光活性層と第2の可視透明電極との間に配置された第2のバッファ層などの1つ以上のバッファ層を含んでもよい。バッファ層は、様々な目的を果たしてもよく、様々な組成物を含み得る。例えば、場合によっては、バッファ層は、本明細書に記載の光活性材料又は化合物を含むことができる。任意選択的には、バッファ層は、約1nm~約500nmの厚さを有してもよい。
【0081】
[0128]前述のTPVデバイスは、例えば、窓のIGUに使用することができる。IGUは、異なる構成を有してもよい。説明の目的で、特定の本発明の実施形態の完全な理解を与えるために、特定の例を説明する。しかしながら、これらの例は限定的であることを意図していない。例えば、幾つかの例では、IGUは二重ガラスユニットとして示されているが、当業者であれば容易に分かるように、本明細書に開示された技術が、3枚、4枚、又は更に多数のガラス板又はライトを有するガラスユニットに適用できる。
【0082】
[0129]
図4A~
図4Dは、特定の実施形態に係る二重板IGU内のPV層430の様々な構成を示す。二重板IGUは、間にギャップ440を形成する第1のガラス板410及び第2のガラス板420を含むことができる。第1のガラス板410は、外部環境により近いガラス板であってもよく、第2のガラス板420は、建物に設置された後、建物の内部により近くてもよい。ギャップ440は、IGUを通じた対流熱伝達を低減するために、例えばArなどの不活性ガスが充填されてもよい。太陽光は、最初に第1のガラス板410を通じてIGUに入ることができる。一例では、IGUは、1m×1mの面積及び約20mmの厚さを有することができる。例えば、第1のガラス板410は、約1mm(例えば、約0.7mm)の厚さを有することができ、第2のガラス板420は、1mm(例えば、>約5mm)を超える厚さを有することができ、ギャップ440は、約15mmの長さを有することができる。
【0083】
[0130]前述したように、PV層430は、本開示において前述及び後述するように、1つ以上の活性層、2つの透明電極層、及び他の層を含むことができる。例えば、幾つかの実施態様では、PV層430は、金属層などの1つ以上の反射層、及び/又は選択的NIR吸収層などの1つ以上の吸収層を含むことができる。PV層430は、約数ミクロン未満、又は約数百ナノメートル未満の厚さを有することができる。
図4A~
図4Dに示すように、PV層430は、任意のIGUガラス板410又は420の任意の表面上に堆積させることができ、IGUの外面又はIGUの内面上のIGU積層体に組み込むことができる(例えば、ギャップ440を形成する表面)。例えば、
図4Aでは、PV層430は、ギャップ440に面する第1のガラス板410の表面上に堆積されてもよい。
図4Bでは、PV層430は、ギャップ440に面する第2のガラス板420の表面上に堆積されてもよい。
図4Cでは、PV層430は、外部環境に面する第1のガラス板410の表面上に堆積させることができる。
図4Dでは、PV層430は、建物の内部に面する第2のガラス板420の表面上に堆積させることができる。
【0084】
[0131]IGUの様々な実施形態では、PV層は、3つ以上のガラス板(例えば、トリプルグレージングユニット)を有するIGU内の任意の位置に配置することができる。例えば、PV層は、前面ガラス板又は背面ガラス板上の任意の位置、並びに三重ガラスユニット用の内部ガラス片のいずれかの両側に配置することができる。また、PV層は、n枚のガラス板を有する多重ガラスユニットのガラス板のいずれかの両側に配置されてもよい。以下に説明される例では、
図4Aに示されるIGU構造は、例示目的のみのために、説明、シミュレーション、及び測定に使用され得る。本明細書に記載の技術は、IGUが光活性層を含んでも含まなくてもよい他のIGU構造で使用することができる。
【0085】
[0132]
図4A~
図4Dに示すIGUなどのIGUは、ガラス、グレージング、及びフレームを通じた直接伝導、並びに窓を通じた熱の放射によって熱を獲得又は損失することができる。SHGCを減少させる技術は、NIR光の大部分を反射する高反射率金属の薄層を使用している。この技術は、高い選択性をもたらし得るが、同時にAVTを減少させ得る。
【0086】
[0133]特定の実施形態によれば、窓の十分に高いAVT(例えば、>0.45)を維持しながら、窓を通じた熱(例えば、太陽からのNIR光)の放射を低減するために、選択的NIR吸収材料は、IGUに使用されるTPVデバイスの様々な層に組み込まれてもよく、又は通常の窓にコーティングされてもよい。NIR吸収材料は、熱源(例えば、太陽)からのNIR光を選択的に吸収して、依然として可視光を透過しながら対流又は放射を介してIGUを通じて伝えられる熱を低減することができる。幾つかの実施形態では、高AVT及び低SHGCは、NIR吸収材料と銀層などの金属層の両方を使用して達成され得る。
【0087】
[0134]前述したように、IGUのSHGCは、SHGC=Tsol+Asol×Nにしたがって決定することができる。対流及び放射に起因してIGUを通じて内側に流れる吸収熱の割合Nは、約20%未満、約10%未満、又は約5%未満など、小さくてもよい。したがって、IGUの太陽光吸収率Asolをmパーセント増大させると、窓の太陽光透過率Tsolをmパーセント減少させることができるが、吸収された熱の内向きの流れを僅かに増大させるだけである。したがって、窓のSHGCは、例えば、0.8×mパーセント(例えば、N=20%の場合)に近く、0.95×mパーセント(例えば、N=5%の場合)以上低減され得る。したがって、選択的NIR吸収材料を含むIGUは、高い断熱性(又はより低いSHGC)及び高い選択性の両方を有することができる。
【0088】
[0135]
図5は、特定の実施形態に係る近赤外吸収材料を含むことができる複数の層を含む可視透明光起電力デバイス500の一例を示す。可視透明光起電力デバイス500は、基板510と、2つの透明電極と、2つの電極間の積層体と、透明電極の一方の上の光学層570とを含んでもよい。基板510は、例えば、ガラス、ポリマー、又は他の可視透明材料を含むことができ、任意の適切な厚さを有することができる。光学層570は、可視波長での光学反射防止(OAR)特性、波長選択反射特性、屈折率整合特性などを含む様々な光学特性を提供することができる。例えば、光学層570は、可視透明光起電力デバイス500と空気との間の界面での可視光の反射を低減するために使用されてもよい。幾つかの実施形態では、可視透明光起電力デバイス500は、基板510の片側又は両側に1つ以上の光学層(光学層110及び112など)を含むこともできる。
【0089】
[0136]2つの透明電極は、アノード及びカソードを含むことができ、アノード及びカソードは、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)などの金属及び/又は導電性酸化物の薄層を含むことができる。
図5に示す例では、アノードは、例えばITO層515を含んでもよく、カソードは、例えばZnO層550上に銀層560を含んでもよい。
【0090】
[0137]2つの透明電極間の積層体は、HTL層520、1つ以上の活性層530、及びETL層540を含んでもよい。HTL層520は、正孔に関して高導電性であってもよく、例えば、MoO
3、WO
3、NiOx、又はV
2O
5などの導電性金属酸化物、ITO、PEDOT:PSSなどのポリマーなどを含んでもよい。ETL層540は、電子に関して高導電性であってもよく、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化スズ(SnO
2)、酸化チタン(TiO
2)、スズ酸バリウム(BaSnO
3)、AZO、FTO、Al:MoO
3、PEIEなどの金属酸化物の薄層を含んでもよい。幾つかの実施形態では、ZnO層550は、ETL層540の一部であってもよい。1つ以上の活性層530は、1つ以上のドナー材料及び1つ以上のアクセプタ材料、又は例えば
図1の光活性層140及び
図2A~
図2Eに示す光活性層の例に関して前述した1つ以上の混合ドナー/アクセプタ材料を含む光活性層を含むことができる。
【0091】
[0138]選択的NIR吸収材料は、更なる層として可視透明光起電力デバイス500に組み込まれてもよく、又は例えば、HTL層520、ETL層540、光学層570、及び活性層530のうちの1つ以上の層に組み込まれてもよい。HTL層520、ETL層540、光学層570、及び活性層530はそれぞれ、
図1~
図2Eに関して前述したように、層状構造又は混合構造の1つ以上の材料を含んでもよい。したがって、選択的NIR吸収材料は、HTL層520、ETL層540、光学層570、及び活性層530のうちの1つにおける別個の層であってもよく、又はHTL層520、ETL層540、光学層570、及び活性層530における他の材料と混合されてもよい。選択的NIR吸収材料の例としては、SnNcCl
2、SnNc、BBT、NiDT、QQTなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
[0139]
図6は、特定の実施形態に係るIGU内のコーティング層に使用することができる材料の例の吸光係数を示すチャート600である。等方性材料の光学特性は、一般に複素屈折率∧=n-ikを使用して説明することができ、ここでnは通常の屈折率であってもよく、kは吸光係数であってもよい。n及びkの両方は正の実数であってもよく、材料内を伝播する光の波長の関数であってもよい。
図6に示す材料としては、HAT-CN、SnNcCl
2、SnNc、BBT、NiDT、QQTなどの化合物を挙げることができる。
【0093】
[0140]HAT-CNの吸光係数は、
図6の曲線610によって示すことができ、これは約400nm未満の波長にピークを有することができ、約400nmを超える波長ではゼロに近くなり得る。したがって、HAT-CNは、可視透明UV吸収材料であり得る。更に、HAT-CNは、近赤外光を透過してもよい。SnNcCl
2、SnNc、BBT、NiDT、及びQQTの吸光係数は、それぞれ曲線620、曲線630、曲線640、曲線650、及び曲線660によって示すことができ、約600nmより長い波長にピークを有することができる。したがって、SnNcCl
2、SnNc、BBT、NiDT、及びQQTは、NIR吸収材料と考えることができる。これらの材料の中で、QQTは、曲線660によって示されるように可視帯域の部分において高い吸光係数を有することができ、したがって窓コーティングに使用される場合、AVTを低減することができる。BBT及びNiDTは、曲線640及び650によって示されるように、NIR帯域においてより低い吸光係数を有することができ、したがって、より低いNIR吸収率を有することができる。SnNcCl
2及びSnNcは、曲線620及び630に示すように、NIR帯域では高い吸光係数を有し、可視帯域では非常に低い吸光係数を有することができ、したがって、NIR光を強く吸収し、可視光を透過させることができる。
【0094】
[0141]
図7Aは、特定の実施形態に係るそれぞれの異なる厚さを有する透明AR層としてHAT-CNをそれぞれが含むTPVデバイス700の例を示す。各TPVデバイス700は、可視透明光起電力デバイス500の一例であってもよく、基板710と、基板710上に形成された複数の層とを含んでもよい。例えば、TPVデバイス700のHTL層720は、HTL層520と同様であってもよく、薄いMoO
3層を含んでもよい。TPVデバイス700の層770は、銀層560の一例であってもよく、カソードとして使用されてもよい。TPVデバイス700の層760は、ZnO層550の一例であってもよく、ETL層540などのETL層として使用されてもよい。層780は、光学層570の一例であり、可視光の反射防止層を含んでいてもよい。
【0095】
[0142]
図7Aに示す例では、活性層は、UE-D-100:C
60バルクヘテロ接合(BHJ)層730、バックミンスターフラーレン(C
60)層740(例えば、電子アクセプタとして使用される)、及びTPBi:C
60輸送層750を含むことができる。UE-D-100:C
60層730は、電子ドナーとしてのUE-D-100及び電子アクセプタとしてのC
60を含んでもよく、ここで、UE-D-100及びC
60は、混合物を形成するために混合されてもよく、又は異なる層にあってもよい。TPBi:C
60バッファ層750は、ワイドバンドギャップホストとしてのTPBi及び電子輸送材料としてのC
60を含むことができ、TPBi及びC
60は混合物であってもよく、又は異なる層であってもよい。幾つかの例では、UE-D-100:C
60層730及びTPBi:C
60層750は、例えば、それぞれ体積で約20:80及び約75:25の比を有し得る。
【0096】
[0143]層780は、光学層及び/又はカソード用の封入層(例えば、層770)であってもよい。
図7Aに示す例では、層780は、透明OAR層としてHAT-CNを含むことができる。
図7Aに示す異なるTPVデバイス700では、層780は、約30nm~約70nmなどの異なるそれぞれの厚さを有することができる。
図6に示すように、HAT-CNは、UV帯域に吸収ピークを有し、可視帯域及びNIR帯域に非常に低い吸収率を有し、それを透過させることができる。
【0097】
[0144]
図7Bは、特定の実施形態に係る
図4Aに示されるIGU構造における
図7Aに示されるTPVデバイスの例のシミュレートされた性能を示す。
図7Bに示される性能パラメータは、例えば、AVT、SHGC、及び選択性を含み得る。本開示に記載された幾つかのシミュレーションでは、本開示の様々な実施形態によるIGUの光学特性及び熱特性を計算するために、Lawrence Berkeley National LabによるWINDOWコードを使用することができる。
図7Bによって示されるように、HAT-CN層の厚さを変化させても、デバイス構造700について0.62を超えるAVT及び1.5を超える選択性は改善されない可能性がある。最も高いAVT及び選択性は、HAT-CN層(例えば、層780)の厚さが約50nmである場合に達成され得る。したがって、以下に記載される多くの実施形態において、50nmのHAT-CN層を有するTPVデバイスは、このHAT-CN層の厚さ及びNIR吸収を示さないという事実によって達成される比較的高いAVT及び選択性値に起因して、性能比較のための制御デバイス又は基準デバイスとして使用され得る。
【0098】
[0145]
図8Aは、特定の実施形態に係るそれぞれの異なる厚さを有する選択的NIR吸収AR層としてSnNcCl
2をそれぞれが含むTPVデバイス800の例を示す。TPVデバイス700として、TPVデバイス800はそれぞれ、可視透明光起電力デバイス500の一例であってもよく、基板810と、基板810上に形成された複数の層とを含んでもよい。例えば、TPVデバイス800の層820は、HTL層720などのHTL層であってもよく、薄いMoO
3層を含んでもよい。TPVデバイス800の層870は、層770と同様の銀層であってもよく、カソードとして使用されてもよい。TPVデバイス800の層860は、層760と同様のZnO層を含むことができ、ETL層としても使用することができる。活性層は、UE-D-100:C
60層830及びC
60層840を含むことができ、これらはそれぞれ、UE-D-100:C
60層730及びC
60層740と同様であり得る。また、各TPVデバイス800は、TPVデバイス700内のTPBi:C
60層750としてのバッファ層であり得るTPBi:C
60層850を含むこともできる。
【0099】
[0146]光学層880は、光学層570の一例であってよく、可視光用のAR層を含んでよい。
図8Aに示される例では、光学層880は、層780のような透明HAT-CN層ではなく、可視光の光学AR層としてNIR吸収SnNcCl
2層を含んでもよい。
図8Aに示す異なるTPVデバイス800では、光学層880は、約30nm~約80nmなどの異なるそれぞれの厚さを有することができる。
図6に示すように、SnNcCl
2は、NIR帯域に吸収ピークを有し、可視帯域に非常に低い吸収率を有し得る。
【0100】
[0147]
図8Bは、特定の実施形態に係る
図4Aに示されるIGU構造における
図8Aに示されるTPVデバイス800の例のシミュレートされた性能を示す。TPVデバイス800の例は、異なる厚さの光学層880を含むことができる。各光学層880は、選択的NIR吸収SnNcCl
2材料を含むことができる。
図8Bに示される性能パラメータは、例えば、AVT、SHGC、及び選択性を含み得る。
図8Bに示すように、光学層880の厚さを変化させると、SHGCが減少し、選択性が増大する可能性がある。SnNcCl
2材料層(例えば、光学層880)の厚さが約30nm~約50nmである場合、より高いAVT及び選択性が達成され得る。例えば、TPVデバイス800の選択性は、SnNcCl
2材料層の厚さが約30nm~約50nmである場合、同等のAVT(例えば、0.55超)を維持しながら、TPVデバイス700よりも大幅に改善されて、約1.67~1.71まで高まり得る。
【0101】
[0148]
図9Aは、特定の実施形態に係るそれぞれの異なる厚さを有する選択的NIR吸収AR層としてSnNcをそれぞれが含むTPVデバイス900の例を示す。TPVデバイス700の場合と同様に、TPVデバイス900はそれぞれ、可視透明光起電力デバイス500の一例であってもよく、基板910と、基板910上に形成された複数の層とを含んでもよい。例えば、TPVデバイス900の層920は、HTL層720などのHTL層であってもよく、薄いMoO
3層を含んでもよい。TPVデバイス900の層970は、層770と同様の銀層であってもよく、カソードとして使用されてもよい。TPVデバイス900の層960は、層760と同様のZnO層を含むことができ、ETL層としても使用することができる。活性層は、UE-D-100:C
60層930及びC
60層940を含むことができ、これらはそれぞれ、UE-D-100:C
60層730及びC
60層740と同様であり得る。各TPVデバイス900はまた、TPVデバイス700内のTPBi:C
60層750としてのバッファ層であり得るTPBi:C
60層950を含むことができる。
【0102】
[0149]光学層980は、光学層570の一例であってよく、可視光用のAR層を含んでよい。
図9Aに示される例において、光学層980は、層780としての透明HAT-CN層ではなく、可視光の光学AR層としてのNIR吸収SnNc層を含んでもよい。
図9Aに示す異なるTPVデバイス900では、光学層980は、約30nm~約70nmなどの異なるそれぞれの厚さを有することができる。
図6に示すように、SnNcは、NIR帯域に高い吸収ピークを有し、可視帯域に低い吸収率を有し得る。
【0103】
[0150]
図9Bは、特定の実施形態に係る
図4Aに示されるIGU構造における
図9Aに示されるTPVデバイス900の例のシミュレートされた性能を示す。TPVデバイス900の例は、異なる厚さの光学層980を含むことができる。各光学層980は、様々な厚さの選択的NIR吸収SnNc材料を含むことができる。
図9Bに示される性能パラメータは、例えば、AVT、SHGC、及び選択性を含み得る。
図9Bによって示されるように、光学層980の厚さを変えることにより、SHGCが減少し、選択性が増大し得る。SnNc材料層(例えば、光学層980)の厚さが約40nm~約50nmである場合、より高いAVT及び選択性を達成することができる。例えば、TPVデバイス900の選択性は、SnNc材料層の厚さが約40nmである場合に、同等のAVT(例えば、約0.55)を維持しながら、TPVデバイス700よりも大幅に改善して、約1.65に高まり得る。
【0104】
[0151]
図10Aは、特定の実施形態に係る異なるそれぞれの厚さを有する選択的NIR吸収AR層としてBBTをそれぞれが含むTPVデバイス1000の例を示す。TPVデバイス700の場合と同様に、TPVデバイス1000はそれぞれ、可視透明光起電力デバイス500の一例であってもよく、基板1010と、基板1010上に形成された複数の層とを含んでもよい。例えば、TPVデバイス1000の層1020は、HTL層720などのHTL層であってもよく、薄いMoO
3層を含んでもよい。TPVデバイス1000の層1070は、層770と同様の銀層であってもよく、カソードとして使用されてもよい。TPVデバイス1000の層1060は、層760と同様のZnO層を含むことができ、ETL層としても使用することができる。活性層は、UE-D-100:C
60層1030及びC
60層1040を含むことができ、これらはそれぞれ、UE-D-100:C
60層730及びC
60層740と同様であり得る。また、各TPVデバイス1000は、TPVデバイス700内のTPBi:C
60層750としてのバッファ層であり得るTPBi:C
60層1050を含むこともできる。
【0105】
[0152]光学層1080は、光学層570の一例であってよく、可視光用のAR層を含んでよい。
図10Aに示される例において、光学層1080は、層780としての透明HAT-CN層ではなく、可視光用の光学AR層としてのNIR吸収BBT層を含んでもよい。
図10Aに示す異なるTPVデバイス1000では、光学層1080は、約30nm~約70nmなどの異なるそれぞれの厚さを有することができる。
図6に示すように、BBTは、NIR帯域においてSnNc及びSnNcCl
2よりも低い吸収ピークを有し、可視帯域において低い吸収率を有し得る。
【0106】
[0153]
図10Bは、特定の実施形態に係る
図4Aに示されるIGU構造における
図10Aに示されるTPVデバイス1000の例のシミュレートされた性能を示す。TPVデバイス1000の例は、異なる厚さの光学層1080を含むことができる。各光学層1080は、選択的NIR吸収BBT材料を含むことができる。
図10Bに示される性能パラメータは、例えば、AVT、SHGC、及び選択性を含み得る。
図10Bによって示されるように、光学層1080の厚さを変えることにより、SHGCが減少し、選択性が増大し得る。BBT材料層(例えば、光学層1080)の厚さが約40nm~約50nmである場合、より高いAVT及び選択性が達成され得る。例えば、TPVデバイス1000の選択性は、BBT材料層の厚さが約50nmである場合、同等のAVT(例えば、約0.58)を維持しながら、TPVデバイス700よりも改善された約1.62となり得る。
【0107】
[0154]
図11Aは、特定の実施形態に係るそれぞれの異なる厚さを有する選択的NIR吸収AR層としてNiDTをそれぞれが含むTPVデバイス1100の例を示す。TPVデバイス700として、TPVデバイス1100はそれぞれ、可視透明光起電力デバイス500の一例であってもよく、基板1110と、基板1110上に形成された複数の層とを含んでもよい。例えば、TPVデバイス1100の層1120は、HTL層720などのHTL層であってもよく、薄いMoO
3層を含んでもよい。TPVデバイス1100の層1170は、層770と同様の銀層であってもよく、カソードとして使用されてもよい。TPVデバイス1100の層1160は、層760と同様のZnO層を含むことができ、ETL層としても使用することができる。活性層は、UE-D-100:C
60層1130及びC
60層1140を含むことができ、これらはそれぞれ、UE-D-100:C
60層730及びC
60層740と同様であり得る。また、各TPVデバイス1100は、TPVデバイス700内のTPBi:C
60層750としてのバッファ層であり得るTPBi:C
60層1150を含むこともできる。
【0108】
[0155]光学層1180は、光学層570の一例であってよく、可視光用のAR層を含んでよい。
図11Aに示す例では、光学層1180は、層780としての透明HAT-CN層ではなく、可視光用の光学AR層としてNIR吸収NiDT層を含んでもよい。
図11Aに示す異なるTPVデバイス1100では、光学層1180は、約30nm~約60nmなどの異なるそれぞれの厚さを有することができる。
図6に示すように、NiDTは、NIR帯域に低い吸収ピークを有し、可視帯域に低い吸収率を有し得る。
【0109】
[0156]
図11Bは、特定の実施形態に係る
図4Aに示されるIGU構造における
図11Aに示されるTPVデバイス1100の例のシミュレートされた性能を示す。TPVデバイス1100の例は、異なる厚さの光学層1180を含むことができる。各光学層1180は、選択的NIR吸収NiDT材料を含むことができる。
図11Bに示される性能パラメータは、例えば、AVT、SHGC、及び選択性を含み得る。
図11Bによって示されるように、光学層1180の厚さを変化させても、NiDTのより低いNIR吸収及び低い可視吸収に起因して、SHGCを有意に減少させない又はAVTもしくは選択性を増大させない場合がある。NiDTはNIRのBBTと同等のピーク吸光係数を有するが、そのNIR吸収は比較的狭帯域である。これは、透明HAT-CNコントロールと比較して、可視透明のための最適な厚さにおいて不十分なNIR吸収をもたらし得る。例えば、NiDT材料層の厚さが約50nm(例えば、45nm)である場合、TPVデバイス1100の選択性は約1.53であってもよく、AVTは約0.57であってもよい。これに対して、HAT-CNを含む光学層780の厚さが約50nmである場合、TPVデバイス700の選択性は約1.50となる場合があり、AVTは約0.62となり得る。したがって、光学層1180にNiDTを組み込むことは、TPVデバイス1100の選択性を著しく改善し得ない。
【0110】
[0157]
図12Aは、特定の実施形態に係る異なるそれぞれの厚さを有する選択的NIR吸収AR層としてQQTをそれぞれが含むTPVデバイス1200の例を示す。TPVデバイス700として、TPVデバイス1200はそれぞれ、可視透明光起電力デバイス500の一例であってもよく、基板1210と、基板1210上に形成された複数の層とを含んでもよい。例えば、TPVデバイス1200の層1220は、HTL層720などのHTL層であってもよく、薄いMoO
3層を含んでもよい。TPVデバイス1200の層1270は、層770と同様の銀層であってもよく、カソードとして使用されてもよい。TPVデバイス1200の層1260は、層760と同様のZnO層を含むことができ、ETL層としても使用することができる。活性層は、UE-D-100:C
60層1230及びC
60層1240を含むことができ、これらはそれぞれ、UE-D-100:C
60層730及びC
60層740と同様であり得る。また、各TPVデバイス1200は、TPVデバイス700内のTPBi:C
60層750としてのバッファ層であり得るTPBi:C
60層1250を含むこともできる。
【0111】
[0158]光学層1280は、光学層570の一例であってよく、可視光用のAR層を含んでよい。
図12Aに示される例において、光学層1280は、可視光のための光学AR層として、層780として透明HAT-CN層ではなく、NIR吸収QQT層を含んでもよい。
図12Aに示す異なるTPVデバイス1200では、光学層1280は、約10nm~約40nmなどの異なるそれぞれの厚さを有することができる。
図6に示すように、QQTは、可視帯域及びNIR帯域の少なくとも一部において高い吸収率を有し得る。
【0112】
[0159]
図12Bは、特定の実施形態に係る
図4Aに示されるIGU構造における
図12Aに示されるTPVデバイス1200の例のシミュレートされた性能を示す。TPVデバイス1200の例は、異なる厚さの光学層1280を含むことができる。各光学層1280は、選択的NIR吸収QQT材料を含み得る。
図12Bに示される性能パラメータは、例えば、AVT、SHGC、及び選択性を含み得る。
図12Bによって示されるように、光学層1280の厚さを変えることにより、SHGC並びに選択性を低下させることができる。QQTの使用は、そのNIR吸収に起因してTPVデバイスのSHGCを減少させ得るが、その強い可視吸収に起因してAVTも有意に減少させ得る。これは、選択性における利得を最大化するために、最小限の可視吸収を有する選択的NIR吸収体の必要性を強調している。例えば、QQT材料層の厚さが約10nmである場合、TPVデバイス1200の選択性は、約1.36にすぎない場合があり、AVTは、約0.4にしかなり得ない。これに対して、HAT-CNを含む光学層780の厚さが約50nmである場合、TPVデバイス700の選択性は約1.50となる場合があり、AVTは約0.62となり得る。したがって、光学層1280にQQTを組み込むことは、選択性を改善し得ない。
【0113】
[0160]
図11A~
図12Bは、選択性を改善するために、選択的なNIR吸収を有し、可視吸収がほとんど又は全くない材料を使用することができることを示す。NIR帯域及び可視帯域の両方で吸収する材料は、選択的にNIR吸収性ではない。これは、SHGCを減少させる可能性があるが、AVTも著しく減少させる可能性があり、したがってTPVデバイスの選択性を改善しない可能性がある。同様に、NIR吸収AR層の場合に実現される選択性利得のために、NIRにおける吸光係数は、SHGCがAVTが最大化された層厚で低減されるように、十分に大きいか又は広帯域である必要があり得る。
【0114】
[0161]
図13は、特定の実施形態に係るAR層中に様々な材料を含むTPVデバイスの例に関するAR層厚に応じたAVT及び選択性の傾向を示す図である。
図13は、
図7B、
図8B、
図9B、
図10B、
図11B及び
図12Bに示すデータの散布図を含む。いずれの場合も、選択性及びAVTが同時に最大化されるAR層厚さが存在し得る。例えば、曲線1310上のデータ点は、
図7Bに示すように、AR層としてHAT-CNを含むTPVデバイスのデータ点に対応する。曲線1310は、AR層においてHAT-CNを使用して高いAVT値が達成され得るが、選択性値は制限され得ることを示す。最も高い選択性は、AVTが最大化される厚さで達成される。この厚さの上下では、AVTと選択性が同時に低下する。
【0115】
[0162]曲線1320上のデータ点は、
図8Bに示すように、SnNcCl
2をAR層として使用するTPVデバイスに対応する。曲線1320は、透明AR層としてHAT-CNを使用するデバイスと比較して、NIR吸収AR層としてSnNcCl
2を使用して、より高い選択値及び同様に高いAVT値が達成され得ることを示す。これは、透明AR層の曲線1310に対する選択性AVT曲線1320の垂直シフトによって視覚化することができる。最も高い選択性は、AVTが最大化される厚さで達成される。この厚さの上下では、AVTと選択性が同時に低下する。
【0116】
[0163]曲線1330上のデータ点は、
図9Bに示すように、SnNcをAR層として使用するTPVデバイスに対応する。曲線1330は、
図6に見られるように、SnNc及びSnNcCl
2の同様の吸光係数に起因して曲線1320と同様の傾向をたどる。しかしながら、AR層としてSnNcを使用するTPVデバイスについて達成可能な最大AVTは、SnNcCl
2を使用するものよりも低く、したがって曲線1330の最高選択性及びAVTは、曲線1320と比較して僅かに減少する。曲線1330は、透明AR層としてHAT-CNを使用するデバイスと比較して、NIR吸収AR層としてSnNcを使用して、より高い選択値及び同様に高いAVT値が達成され得ることを示す。これは、透明AR層の曲線1310に対する選択性AVT曲線1330の垂直シフトによって視覚化することができる。最も高い選択性は、AVTが最大化される厚さで達成される。この厚さの上下では、AVTと選択性が同時に低下する。
【0117】
[0164]曲線1340上のデータ点は、
図10Bに示すように、AR層としてBBTを使用するTPVデバイスに対応する。曲線1340は、透明AR層としてHAT-CNを使用するデバイスと比較して、NIR吸収AR層としてBBTを使用して、より高い選択値及び同様に高いAVT値が達成され得ることを示す。
図6に示すように、SnNcCl
2と比較してNIR中のBBTの吸光係数が低いため、最大AVTでのSHGCは、BBTをAR層として使用するTPVデバイスでより高い。したがって、曲線1340のピーク選択性は曲線1320のピーク選択性よりも低い。しかしながら、曲線1340は、透明AR層としてHAT-CNを使用するデバイスと比較して、NIR吸収AR層としてBBTを使用して、より高い選択値及び同様に高いAVT値が達成され得ることを依然として示している。これは、透明AR層の曲線1310に対する選択性AVT曲線1340の垂直シフトによって視覚化することができる。最も高い選択性は、AVTが最大化される厚さで達成される。この厚さの上下では、AVTと選択性が同時に低下する。
【0118】
[0165]曲線1350上のデータ点は、
図11Bに示すように、AR層としてNiDTを使用するTPVデバイスに対応する。曲線1350は、透明AR層としてHAT-CNを使用するデバイスと比較して、NIR吸収AR層としてNiDTを使用して、より低いAVT値で同等の選択性値が達成され得ることを示す。
図6に示すように、NIRにおけるNiDTの比較的低い狭帯域吸光係数に起因して、可視透明の最適な層厚でのNIR吸収量は不十分であり、SHGCを大幅に減少させる。結果として、選択性は、透明HAT-CN制御に対して改善を示さず、曲線1310に対する1350の選択性-AVT曲線の垂直シフトはない。AVTが最大化される厚さでも最高の選択性が達成される。この厚さの上下では、AVTと選択性が同時に低下する。
【0119】
[0166]曲線1360上のデータ点は、
図12Bに示すように、AR層としてQQTを使用するTPVデバイスに対応する。曲線1360は、AR層としてHAT-CNを有するTPVデバイスと比較して、選択性及びAVT値の両方が、AR層としてQQTを使用して有意に低減され得ることを示す。したがって、QQT又は可視光吸収を伴うNIR光を選択的に吸収しない他の材料をTPVデバイスに組み込むことは、所望の高いAVT及び高い選択性を達成し得ない。
【0120】
[0167]
図14Aは、特定の実施形態に係るHTL層内に異なるそれぞれの厚さを有する選択的NIR吸収材料をそれぞれが含むTPVデバイス1400の例を示す。TPVデバイス700と同様に、TPVデバイス1400はそれぞれ、基板1410と、基板1410上に形成された複数の層とを含むことができる。例えば、TPVデバイス1400の層1490は、層770と同様の銀層であってもよく、カソードとして使用されてもよい。TPVデバイス1400の層1480は、層760と同様のZnO層を含むことができ、ETL層としても使用することができる。光学層1495は、可視光の反射防止層を含んでもよく、例えば、厚さ50nmのHAT-CN層を含んでもよい。活性層は、UE-D-100:C
60層1450及びC
60層1460を含むことができ、これらはそれぞれ、UE-D-100:C
60層730及びC
60層740と同様であり得る。また、各TPVデバイス1400は、TPBi:C
60バッファ層1470を含むこともできる。
【0121】
[0168]
図14Aに示す例では、SnNcCl
2層1430をHTL層の一部として挿入することができ、これは、SnNcCl
2層1430を挟む薄いMoO
3層1420及び薄いMoO
3層1440を含むことができる。
図14Aに示す異なるTPVデバイス1400では、SnNcCl
2層1430は、約10nm~約30nmなどの異なるそれぞれの厚さを有することができる。このように、SnNcCl
2は、NIR帯域に吸収ピークを有し、可視域の吸収率が非常に低いため、選択的なNIR吸収材料である。幾つかの実施形態では、SnNcCl
2層1430は、MoO
3又は他の材料と混合することができる。
【0122】
[0169]
図14Bは、特定の実施形態に係る
図4Aに示されるIGU構造における
図14Aに示されるTPVデバイス1400の例のシミュレートされた性能を示す。各TPVデバイス1400は、異なるそれぞれの厚さのSnNcCl
2層1430を含むことができる。SnNcCl
2層1430は、各TPVデバイス1400内のHTL層の一部と考えることができる。
図14Bに示される性能パラメータは、AVT、SHGC、及び選択性を含む。
図14Bによって示されるように、SnNcCl
2層1430をHTL層に組み込むことにより、たとえAVTが僅かに低下し得るとしても、SHGCが減少し、選択性が増大し得る。これは、SnNcCl
2 HTLによるNIR光の選択的吸収によるものであり、厚さが増大するにつれてAVTよりもSHGCが大きく減少する。例えば、TPVデバイス1400の選択性は、SnNcCl
2層1430の厚さが約30nmである場合、AVTが0.5を超えて約1.8(TPVデバイス700の約1.5と比較して)まで改善することができる。したがって、選択的NIR吸収材料をTPVデバイスの他の層に組み込むことは、TPVデバイスのSHGC及び選択性も改善し得る。
【0123】
[0170]幾つかの実施形態では、銀層を含むことができ、電極として使用することができる層770などの金属層の厚さを変更することによって、TPVデバイスのSHGC及び選択性を更に改善することができる。金属層の厚さを増大させると、SHGCを減少させることができるが、同時にAVTを減少させることもできる。したがって、金属層の厚さは、比較的高いAVTを維持しながら選択性を改善するように選択することができる。
図14に示すように、選択的NIR吸収材料層(例えば、SnNcCl
2層1430)が金属層(例えば、層1490)よりも基板(例えば、基板1410)に近い場合がある幾つかの実施形態では、金属層によって反射されたNIR光は、再び選択的NIR吸収材料層に到達し、吸収され得る。したがって、より薄い選択的NIR吸収材料層を使用して、光学AR層においてより厚い選択的NIR吸収材料層を有するTPVデバイス(例えば、光学層880又は980)と比較して同等のSHGC、AVT、及び選択性能を達成することができる。
【0124】
[0171]
図15Aは、特定の実施形態に係るそれぞれの異なる厚さの金属層をそれぞれが含むTPVデバイス1500の例を示す。TPVデバイス1500はTPVデバイス700と同様であってもよく、基板1510は基板710と同様であってもよく、基板1510上の複数の層1520~1580は層720~780と同様であってもよい。例えば、TPVデバイス1500の層1520は、HTL層720などのHTL層であってもよく、薄いMoO
3層を含んでもよい。TPVデバイス1500の層1570は、層770と同様の銀層であってもよく、カソードとして使用されてもよい。薄い銀層などの薄い金属層は、NIR光を優先的に反射しながら、可視光に対して半透明のままであってもよい。
図15Aに示すTPVデバイス1500の層1570の厚さは、約14nm~約20nmで変化してもよい。TPVデバイス1500の層1560は、層760と同様のZnO層を含むことができ、ETL層としても使用することができる。活性層は、UE-D-100:C
60層1530及びC
60層1540を含むことができ、これらはそれぞれ、UE-D-100:C
60層730及びC
60層740と同様であり得る。TPBi:C
60層1550は、バッファ層であってもよい。光学層1580は、TPVデバイス1500と周囲環境(例えば、空気、Ar、又は真空)との間の界面での可視光の反射を低減するためのAR層(例えば、厚さ50nmのHAT-CN層)を含むことができる。透明HAT-CN AR層の厚さは50nmに固定され、これは
図7B及び
図13に係るAVT及び選択性に最適な厚さであることが示されている。
【0125】
[0172]
図15Bは、特定の実施形態に係る
図4Aに示されるIGU構造における
図15Aに示されるTPVデバイス1500のシミュレートされた性能を示す。
図15Bに示される性能パラメータは、AVT、SHGC、及び選択性を含む。
図15Bに示すように、金属層(例えば、層1570)の厚さを増大させると、SHGCが減少し、選択性が増大する可能性があるが、同時にAVTも減少する可能性がある。例えば、TPVデバイス1500の選択性は、銀層の厚さが約20nmであるとき、0.5を超えるAVT値を維持しながら、約1.67まで改善することができる。
【0126】
[0173]
図16Aは、特定の実施形態に係る選択的NIR吸収AR層としてのSnNcCl
2と異なるそれぞれの厚さの金属層とをそれぞれが含むTPVデバイス1600の例を示す。SnNcCl
2層の厚さは40nmに固定され、これは
図8B及び
図13に係るAVT及び選択性に最適な厚さであることが示されている。TPVデバイス1600はTPVデバイス700と同様であってもよく、基板1610は基板710と同様であってもよく、基板1610上の複数の層1620~1680は層720~780と同様であってもよい。例えば、TPVデバイス1600の層1620は、HTL層720などのHTL層であってもよく、薄いMoO
3層を含んでもよい。TPVデバイス1600の層1670は、層770と同様の銀層であってもよく、カソードとして使用されてもよい。薄い銀層などの薄い金属層は、NIR光を優先的に反射しながら、可視光に対して半透明のままであってもよい。
図16Aに示すTPVデバイス1600の層1670の厚さは、約14nm~約20nmで変化してもよい。TPVデバイス1600の層1660は、層760と同様のZnO層を含むことができ、ETL層としても使用することができる。活性層は、UE-D-100:C
60層1630及びC
60層1640を含むことができ、これらはそれぞれ、UE-D-100:C
60層730及びC
60層740と同様であり得る。TPBi:C
60層1650は、バッファ層であってもよい。光学層1680は、TPVデバイス1600と周囲環境(例えば、空気、Ar、又は真空)との間の界面での可視光の反射を低減するためのAR層を含むことができる。
【0127】
[0174]
図16Bは、特定の実施形態に係る
図4Aに示されるIGU構造における
図16Aに示されるTPVデバイス1600のシミュレートされた性能を示す。
図16Bに示される性能パラメータは、AVT、SHGC、及び選択性を含む。
図16Bに示すように、金属層(例えば、層1670)の厚さを増大させると、SHGCが減少し、選択性が増大する可能性があるが、同時にAVTも減少する可能性がある。各銀層の厚さにおいて、TPVデバイス1600の選択性は、TPVデバイス1500の選択性よりも高くてもよい。例えば、TPVデバイス1600の選択性は、銀層の厚さが約18nmであるとき、0.5を超えるAVT値を維持しながら、約1.82まで改善することができる。銀層の厚さが増大するにつれて選択性が更に増大し得るとしても、銀層の厚さが更に増大すると、AVTは約50%未満になり得る。
【0128】
[0175]
図17Aは、特定の実施形態に係る選択的NIR吸収AR層としてのSnNcと異なるそれぞれの厚さの金属層とをそれぞれが含むTPVデバイス1700の例を示す。SnNc層の厚さは40nmに固定され、これは
図9B及び
図13によるAVT及び選択性に最適な厚さであることが示されている。TPVデバイス1700はTPVデバイス700と同様であってもよく、基板1710は基板710と同様であってもよく、基板1710上の複数の層1720~1780は層720~780と同様であってもよい。例えば、TPVデバイス1700の層1720は、HTL層720などのHTL層であってもよく、薄いMoO
3層を含んでもよい。TPVデバイス1700の層1770は、層770と同様の銀層であってもよく、カソードとして使用されてもよい。薄い銀層などの薄い金属層は、NIR光を優先的に反射しながら、可視光に対して半透明のままであってもよい。
図17Aに示すTPVデバイス1700の層1770の厚さは、約14nm~約20nmで変化してもよい。TPVデバイス1700の層1760は、層760と同様のZnO層を含むことができ、ETL層としても使用することができる。活性層は、UE-D-100:C
60層1730及びC
60層1740を含むことができ、これらはそれぞれ、UE-D-100:C
60層730及びC
60層740と同様であり得る。TPBi:C
60層1750は、バッファ層であってもよい。光学層1780は、TPVデバイス1700と周囲環境(例えば、空気、Ar、又は真空)との間の界面での可視光の反射を低減するためのAR層を含むことができる。
【0129】
[0176]
図17Bは、特定の実施形態に係る
図4Aに示されるIGU構造における
図17Aに示されるTPVデバイス1700のシミュレートされた性能を示す。
図17Bに示される性能パラメータは、AVT、SHGC、及び選択性を含む。
図17Bに示すように、金属層(例えば、層1770)の厚さを増大させると、SHGCが減少し、選択性が増大する可能性があるが、同時にAVTも減少する。各銀層の厚さにおいて、TPVデバイス1700の選択性は、TPVデバイス1500の選択性よりも高くてもよいが、TPVデバイス1600の選択性よりも低くてもよい。例えば、銀層の厚さが約16nmである場合、TPVデバイス1700の選択性は約1.70であってもよく、TPVデバイス1700のAVTは約0.51であってもよい。銀層の厚さが増大するにつれて選択性が更に増大し得るとしても、銀層の厚さが更に増大すると、AVTは約50%未満になり得る。
【0130】
[0177]
図18Aは、特定の実施形態に係る選択的NIR吸収AR層としてのBBTと異なるそれぞれの厚さの金属層とをそれぞれが含むTPVデバイス1800の例を示す。BBT層の厚さは40nmに固定され、
図10B及び
図13によるAVT及び選択性に最適な厚さであることが示されている。TPVデバイス1800はTPVデバイス700と同様であってもよく、基板1810は基板710と同様であってもよく、基板1810上の複数の層1820~1880は層720~780と同様であってもよい。例えば、TPVデバイス1800の層1820は、HTL層720などのHTL層であってもよく、薄いMoO
3層を含んでもよい。TPVデバイス1800の層1870は、層770と同様の銀層であってもよく、カソードとして使用されてもよい。薄い銀層などの薄い金属層は、NIR光を優先的に反射しながら、可視光に対して半透明のままであってもよい。
図18Aに示すTPVデバイス1800の層1870の厚さは、約14nm~約20nmで変化してもよい。TPVデバイス1800の層1860は、層760と同様のZnO層を含むことができ、ETL層としても使用することができる。活性層は、UE-D-100:C
60層1830及びC
60層1840を含むことができ、これらはそれぞれ、UE-D-100:C
60層730及びC
60層740と同様であり得る。TPBi:C
60層1850は、バッファ層であってもよい。光学層1880は、TPVデバイス1800と周囲環境(例えば、空気、Ar、又は真空)との間の界面での可視光の反射を低減するためのAR層を含むことができる。
【0131】
[0178]
図18Bは、特定の実施形態に係る
図4Aに示されるIGU構造における
図18Aに示されるTPVデバイスのシミュレートされた性能を示す。
図18Bに示される性能パラメータは、AVT、SHGC、及び選択性を含む。
図18Bに示すように、金属層(例えば、層1870)の厚さを増大させると、SHGCが減少し、選択性が増大する可能性があるが、同時にAVTも減少する可能性がある。各銀層の厚さにおいて、TPVデバイス1800の選択性は、TPVデバイス1500の選択性よりも高くてもよいが、TPVデバイス1600の選択性よりも低くてもよい。例えば、銀層の厚さが約18nmである場合、TPVデバイス1800の選択性は約1.72であってもよく、TPVデバイス1800のAVTは約0.5であってもよい。銀層の厚さが増大するにつれて選択性が更に増大し得るとしても、銀層の厚さを18nmを超えて更に増大させると、AVTが約50%未満になり得る。
【0132】
[0179]
図19は、特定の実施形態に係る異なるAR層材料を有するTPVデバイスにおける様々な金属層厚さに伴うAVT対選択性の傾向を示す。
図19は、
図15B、
図16B、
図17B及び
図18Bに示すデータの散布図を含む。例えば、曲線1910上のデータ点は、
図15Bに示すように、AR層においてHAT-CNを使用するTPVデバイスのデータ点に対応する。曲線1920上のデータ点は、
図16Bに示すように、SnNcCl
2をAR層として使用するTPVデバイスのデータに対応する。曲線1930上のデータ点は、
図17Bに示すように、SnNcをAR層として使用するTPVデバイスのデータに対応する。曲線1940上のデータ点は、
図18Bに示すように、AR層としてBBTを使用するTPVデバイスのデータに対応する。
【0133】
[0180]
図19は、金属層の厚さを増大させると、より低いAVTを犠牲にしてより高い選択性が得られ得ることを示す。AR層として透明材料HAT-CNを使用すると、最高のAVTが達成されるが、選択性は、所与のAVT値について示された例の中で最も低い。AR層として選択的NIR吸収体を含むTPVデバイスの場合、透明AR層の曲線1910に対する選択性-AVT曲線の垂直シフトが存在する。これは、所定のAVT値でより高い選択性値を達成すると理解することができる。示されている例のうち、SnNcCl
2は依然として無視できる可視吸収(
図6に示すように、)を維持しながら、NIRにおいて最大の吸光係数(最も強い吸収)を示すので、AR層にSnNcCl
2を使用すると、最も高い選択性-AVTの組み合わせ(曲線1920によって示されている)が達成される。
【0134】
[0181]
図20は、特定の実施形態に係る金属及びAR層の変化によってTPVデバイスにおけるAVT及び選択性を改善するための技術を示す図である。曲線2010は、曲線1310と同様となり得るものであり、HAT-CN AR層の厚さの変化に伴うAVT及び選択性値の変化を示し得る。曲線2020は、曲線1910と同様となり得るものであり、金属層(例えば、銀陰極)の厚さの変化に伴うAVT及び選択性値の変化を示し得る。曲線2020は、AVT及び選択性値が最大化される曲線2010上のデータ点2012から開始することができる。これは、特定の厚さ(例えば、約14nm)の銀層及び異なるそれぞれの厚さの光学AR層を有するTPVデバイスに対応し、HAT-CN AR層の厚さを変化させずに(例えば、約50nmで)、銀層の厚さを変化させる(例えば、約14nm~約20nm)ことによってもたらすことができる。
【0135】
[0182]曲線2030は、曲線1320と同様となり得るものであり、SnNcCl2AR層の厚さの変化に伴うAVT及び選択性値の変化を示し得る。曲線2040は、曲線1920と同様となり得るものであり、金属層(例えば、銀陰極)の厚さの変化に伴うAVT及び選択性値の変化を示し得る。曲線2040は、AVT及び選択性値が最大化される曲線2030上のデータ点2032から開始することができる。これは、特定の厚さ(例えば、約14nm)の銀層及び異なるそれぞれの厚さのAR層を有するTPVデバイスに対応し、SnNcCl2AR層の厚さを変化させずに(例えば、約40nmで)、銀層の厚さを変化させる(例えば、約14nm~約20nm)ことによってもたらすことができる。
【0136】
[0183]
図20は、銀層の厚さを増大させることによる選択性の改善が、より低いAVTを犠牲にしてより高い選択性をもたらし得ることを示す。これに対し、AR層にNIR吸収材料(例えば、SnNcCl
2)を使用すると、より高い選択値とより高いAVT値の両方を達成することができる。2つの技術を組み合わせて、選択的NIR吸収層の厚さを変化させ、金属層の厚さを変化させて、所望のAVT及び選択性の最適な組み合わせを選択することによって、所望のAVT及び選択性を達成することができる。
【0137】
[0184]
図21Aは、特定の実施形態に係るそれぞれの異なる厚さの透明AR層及び金属層をそれぞれが含むTPVデバイス2100の例を示す。TPVデバイス2100は、TPVデバイス1500の具体例であってもよい。基板2110は、基板1510と同様であってもよく、基板2110上に形成された複数の層2120~2180は、層1520~1580と同様であってもよい。例えば、TPVデバイス2100の層2120は、層1520などのHTL層であってもよく、薄いMoO
3層を含んでもよい。TPVデバイス2100の層2170は、層1570と同様の銀カソードであってもよい。
図21Aに示すTPVデバイス2100の層2170の厚さは、約14nm又は約18nmであってもよい。TPVデバイス2100の層2160は、層1560と同様のZnO層を含むことができ、ETL層としても使用することができる。活性層は、UE-D-100:C
60層2130及びC
60層2140を含むことができ、これらはそれぞれ、UE-D-100:C
60層1530及びC
60層1540と同様であり得る。TPBi:C
60層2150は、バッファ層であってもよい。層2180は、TPVデバイス2100と周囲環境(例えば、空気、Ar、又は真空)との間の界面での可視光の反射を低減するためのAR層(例えば、厚さ50nmのHAT-CN層)を含むことができる。
【0138】
[0185]
図21Bは、
図21Aに示すTPVデバイス2100の例のシミュレートされた性能と測定された性能との比較を示す。AR層2180(50nmのHAT-CN層を含む)及び14nm又は18nmの銀層をそれぞれが有する2つのTPVデバイス2100を作製し、測定した。
図21Bに示すように、シミュレーション値は、両方のTPVデバイス2100の実験結果とほぼ一致している。
【0139】
[0186]
図22Aは、特定の実施形態に係るNIR吸収AR層と異なるそれぞれの厚さを有する金属層とをそれぞれが含むTPVデバイス2200の例を示す。TPVデバイス2200は、TPVデバイス1600の具体例であってもよい。基板2210は、基板1610と同様であってもよく、基板2210上に形成された複数の層2220~2280は、層1620~1680と同様であってもよい。例えば、TPVデバイス2200の層2220は、層1620などのHTL層であってもよく、薄いMoO
3層を含んでもよい。TPVデバイス2200の層2270は、層1670と同様の銀カソードであってもよい。
図22Aに示すTPVデバイス2200の層2270の厚さは、約14nm又は約18nmであってもよい。TPVデバイス2200の層2260は、層1660と同様のZnO層を含むことができ、ETL層としても使用することができる。活性層は、UE-D-100:C
60層2230及びC
60層2240を含むことができ、これらはそれぞれ、UE-D-100:C
60層1630及びC
60層1640と同様であり得る。TPBi:C
60層2250は、バッファ層であってもよい。層2280は、TPVデバイス2200と周囲環境(例えば、空気、Ar、又は真空)との間の界面での可視光の反射を低減するためのAR層(例えば、厚さ約40nmのSnNcCl
2層)を含むことができる。AR層中のSnNcCl
2は、最小限の損失で可視光を透過させながら、NIR光を選択的に吸収することができる。
【0140】
[0187]
図22Bは、
図22Aに示すTPVデバイス2200の例のシミュレートされた性能と測定された性能との比較を示す。AR層2280(40nmのSnNcCl
2層を含む)及び14nm又は18nmの銀層をそれぞれが含む2つのTPVデバイス2200を作製し、測定した。
図22Bに示すように、シミュレーション値は、両方のTPVデバイス2200の実験結果と密接に一致している。
図21B及び
図22Bに示される実験結果は、選択的NIR吸収材料を使用したSHGC及び選択性の有意な改善も確認する。
【0141】
[0188]
図23Aは、特定の実施形態に係るNIR吸収AR層及び金属層を含むTPVデバイス2300の一例を示す。TPVデバイス2300は、TPVデバイス1100の具体例であってもよい。基板2310は、基板1110と同様であってもよく、基板2310上に形成された複数の層2320~2380は、層1120~1180と同様であってもよい。例えば、TPVデバイス2300の層2320は、層1120などのHTL層であってもよく、薄いMoO
3層を含んでもよい。TPVデバイス2300の層2370は、層1170と同様の銀カソードであってもよい。
図23Aに示すTPVデバイス2300の層2370の厚さは、約14nmであってもよい。TPVデバイス2300の層2360は、層1160と同様のZnO層を含むことができ、ETL層としても使用することができる。活性層は、UE-D-100:C
60層2330及びC
60層2340を含むことができ、これらはそれぞれ、UE-D-100:C
60層1130及びC
60層1140と同様であり得る。TPBi:C
60層2350は、バッファ層であってもよい。光学層2380は、TPVデバイス2300と周囲環境(例えば、空気、Ar、又は真空)との間の界面での可視光の反射を低減するためのAR層(例えば、約50nmの厚さを有するNiDT層)を含むことができる。AR層中のNiDTは、
図6に示すように、SnNcCl
2と比較して低いNIR吸光を有し得る。
【0142】
[0189]
図23Bは、
図23Aに示す例示的なTPVデバイス2300のシミュレートされた性能と測定された性能との比較を示す。AR層2380(50nmのNiDT層を含む)及び14nmの銀層を有するTPVデバイス2300を作製し、測定した。
図23Bに示すように、シミュレートされた値は、TPVデバイス2300の実験値とほぼ一致している(誤差は約10%未満)。
図21B及び
図23Bに示される実験結果は、AR層内のNIRにおいて低い吸光係数を有するNIR吸収材料を使用する場合、無視できる選択性の改善があることも確認する。
【0143】
[0190]以下の節は、特定の実施形態に係るTPVデバイスのAVT、Tsol、Asol、及びSHGCを決定するために使用される方法の例を記載する。
【0144】
[0191]
図24Aは、太陽スペクトルのAM1.5Gエネルギー束及び人間の眼の明所視応答を示す。曲線2410は、太陽スペクトルのAM1.5Gエネルギー束を表わし、可視及びIR帯域に高いエネルギー束を有する。曲線2420は、人間の眼の明所視反応を表わしており、緑色光に対して最高の応答を有し、赤色光及び青色光に対してより低い応答を有する。曲線2410及び2420を使用して、上記及び下記のようにAVT、T
sol、A
sol、及び/又はSHGCを計算することができる。
【0145】
[0192]
図24Bは、特定の実施形態に係る50nmのHAT-CN層又は40nmのSnNcCl
2層を含むAR層をそれぞれが含む2つのTPVデバイスの透明(T)及び吸収(A)スペクトルを示す。曲線2430は、デバイス700内に50nmのHAT-CN層を含むAR層を有するTPVデバイスの透過スペクトルを示す。曲線2440は、デバイス800内に40nmのSnNcCl
2層を含むAR層を有するTPVデバイスの透過スペクトルを示す。曲線2450は、50nmのHAT-CN層を含むAR層を有するTPVデバイスの吸収スペクトルを示す。曲線2460は、40nmのSnNcCl
2層を含むAR層を有するTPVデバイスの吸収スペクトルを示す。
図24Bは、40nmのSnNcCl
2層を有するTPVデバイスが、50nmのHAT-CN層を有するTPVデバイスよりもNIR帯域においてはるかに高い吸収及び低い透過率を有し得ることを示す。
【0146】
[0193]
図25Aは、特定の実施形態に係る50nmのHAT-CN層又は40nmのSnNcCl
2層を含むAR層をそれぞれが含む2つのTPVデバイスの可視太陽放射照度スペクトルを示す図である。各デバイスの可視太陽放射照度スペクトルは、
図24Bに示すデバイスの透過スペクトルと、
図24Aに示すAM1.5Gスペクトル(例えば、曲線2410)及び明所視応答(例えば、曲線2420)との積を使用して決定することができる。曲線2510は、50nmのHAT-CN層を含むAR層を有するTPVデバイスの可視太陽放射照度スペクトルを示す。曲線2520は、40nmのSnNcCl
2層を含むAR層を有するTPVデバイスの可視太陽放射照度スペクトルを示す。
【0147】
[0194]
図25Bは、特定の実施形態に係るそれぞれが50nmのHAT-CN層又は40nmのSnNcCl
2AR層を含む2つのTPVデバイスの透過太陽放射照度を示す。透過太陽放射照度は、
図24Bに示すデバイスの透過スペクトルと、
図24Aに示す太陽スペクトルのAM1.5Gエネルギー束との積として計算することができる。
図25Bの曲線2530は、50nmのHAT-CNAR層を有するTPVデバイスの透過太陽放射照度を示す。曲線2540は、40nmのSnNcCl
2層AR層を有するTPVデバイスの透過太陽放射照度を示す。斜線領域2535によって示されるように、40nmのSnNcCl
2層を有するTPVデバイスの透過太陽放射照度は、SnNcCl
2による選択的吸収に起因して、約700nm~約900nmの波長を有するNIR光に対して著しく減少する。
【0148】
[0195]
図25Cは、特定の実施形態に係るそれぞれが50nmのHAT-CN層又は40nmのSnNcCl
2AR層を含む2つのTPVデバイスの吸収された太陽放射照度を示す。吸収された太陽放射照度は、
図24Bに示す吸収スペクトルと
図24Aに示す太陽スペクトルのAM 1.5Gエネルギー束との積として計算することができる。
図25Cの曲線2550は、50nmのHAT-CN AR層を有するTPVデバイスの吸収された太陽放射照度を示す。曲線2560は、40nmのSnNcCl
2AR層を有するTPVデバイスの吸収された太陽放射照度を示す。
図25Cに示すように、約700nm~約900nmの波長範囲では、SnNcCl
2による選択的吸収に起因して、40nmのSnNcCl
2層を有するTPVデバイスの吸収された太陽放射照度は、50nmのHAT-CN層を有するTPVデバイスよりも著しく高い。
【0149】
[0196]太陽透過率(Tsol)は、伝えられた太陽放射照度の積分をAM 1.5Dスペクトル放射照度の積分に正規化することによって計算される。太陽光吸収率(Asol)は、吸収された太陽光放射照度の積分をAM1.5Dスペクトル放射照度の積分に正規化することによって計算される。SHGCを決定するために、AsolにN(例えば、約0.1)を掛け、SHGC=Tsol+Asol×NにしたがってTsolと合計することができる。結果として、40nmのSnNcCl2層を有するTPVデバイスのSHGCは、(因子Nに起因して)Asolよりも高い割合でのTsolの減少に起因して減少し得る。
【0150】
[0197]選択的近IR吸収材料は、標準的な窓コーティングなどの透明光起電力デバイスを含まない場合があるIGUのSHGC及び選択性を改善するために使用することもできる。低放射率(低e)窓コーティングは、一般に、ガラスの表面に堆積された特定の酸化物などの非吸収性誘電体層の間に挟まれた薄い銀層を含むことができる。銀層は、可視光を部分的に透過させながら、NIRにおいて光を優先的に反射することができる。2つの誘電体層によって挟まれた銀層を含むコーティングでは、誘電体層が可視光のAR層として機能するように、誘電体層の厚さを調整することができる。また、2つ以上の銀層は、可視光を選択的に通過させながらNIR透明を低減するように光学キャビティが形成及び調整され得るように、窓コーティング内の誘電体層によって分離されてもよい。
【0151】
[0198]特定の実施形態によれば、このような低eコーティングに選択的NIR吸収材料を使用することは、より透明な誘電体(例えば、酸化物)層を使用するものよりも改善された選択性を達成するのを助けることができる。例えば、2つの酸化亜鉛(ZnO)層の間に挟まれた銀薄膜を含むコーティングでは、ZnO層の一方又は両方をSnNcCl2などの選択的NIR吸収材料で置き換えることができる。
【0152】
[0199]
図26Aは、2つのZnO層2614,2618間に挟まれた薄い銀層2616を含む低eコーティング構造2610の一例を示す。図示の例では、低eコーティング構造2610は、例えば前述の基板510,710,810,910、1010などと同様であり得る基板2612を含む。第1のZnO層2614は基板2612上に被覆されてもよく、薄い銀層2616は第1のZnO層2614上に被覆されてもよく、第2のZnO層2618は薄い銀層2616上に被覆されてもよい。薄い銀層2616は、可視光を少なくとも部分的に透過しながら、NIR帯域の光を優先的に反射することができる。
図26Aに示すZnO層2614,2618及び薄い銀層2616の厚さは、最良の選択性のために最適化されている。
【0153】
[0200]
図26Bは、特定の実施形態に係る
図26Aに示される低eコーティング構造2610の第1のZnO層2614をSnNcCl
2層2624で置き換えた低eコーティング構造2620の一例を示す。
図26Bに示す例では、低eコーティング構造2620は、
図26Aの基板2612と同様であり得る基板2622を含む。SnNcCl
2層2624を基板2622上にコーティングすることができ、薄い銀層2626をSnNcCl
2層2624上にコーティングすることができ、ZnO層2628を薄い銀層2626上にコーティングすることができる。薄い銀層2626は、可視光を少なくとも部分的に透過しながら、NIR帯域の光を優先的に反射することができる。
図26Bに示すSnNcCl
2層2624、ZnO層2628、及び薄い銀層2626の厚さは、最良の選択性のために最適化されている。
【0154】
[0201]
図26Cは、特定の実施形態に係るSnNcCl
2層2638が低eコーティング構造2610の第2のZnO層2618に取って代わる低eコーティング構造2630の一例を示す。
図26Cに示す例では、低eコーティング構造2630は、
図26Aの基板2612と同様であり得る基板2632を含む。ZnO層2634を基板2632上にコーティングすることができ、薄い銀層2636をZnO層2634上にコーティングすることができ、SnNcCl
2層2638を薄い銀層2636上にコーティングすることができる。薄い銀層2636は、可視光を少なくとも部分的に透過しながら、NIR帯域の光を優先的に反射することができる。
図26Cに示すSnNcCl
2層2638、ZnO層2634、及び薄い銀層2636の厚さは、最良の選択性のために最適化されている。
【0155】
[0202]
図26Dは、特定の実施形態に係るSnNcCl
2層2644,2648が低eコーティング構造2640のZnO層2614,2618に取って代わる低eコーティング構造2610の一例を示す。
図26Dに示される例において、低eコーティング構造2640は、
図26Aの基板2612と同様であり得る基板2642を含む。第1のSnNcCl
2層2644を基板2642上にコーティングすることができ、薄い銀層2646を第1のSnNcCl
2層2644上にコーティングすることができ、第2のSnNcCl
2層2648を薄い銀層2646上にコーティングすることができる。薄い銀層2646は、可視光を少なくとも部分的に透過しながら、NIR帯域の光を優先的に反射することができる。
図26Dに示す第1のSnNcCl
2層2644、第2のSnNcCl
2層2648及び薄い銀層2646の厚さは、最良の選択性のために最適化されている。
【0156】
[0203]
図26Eは、特定の実施形態に係る
図26A~
図26Dに示される低eコーティング構造2610~2640の例のシミュレートされた性能を示す表2650を含む。表2650に示すように、2つの酸化物誘電体層を含む
図26Aに示す積層体(積層体Aと呼ぶ)は、最も低い選択性を示す。
図26Bに示される層積層体(積層体Bと呼ばれる)、
図26Cに示される層積層体(積層体Cと呼ばれる)、及び
図26Dに示される層積層体(積層体Dと呼ばれる)などの選択性吸収体を含む層積層体のそれぞれは、高いAVTを維持しながら、改善された選択性(例えば、約2.0に近いか又はそれを超える)を示す。
【0157】
[0204]
図27は、特定の実施形態に係るTPVデバイスを製造するための方法の一例を示す簡略フローチャート2700である。フローチャート2700は、透明基板が用意されるブロック2705で開始することができる。有用な透明基板は、ガラス、プラスチック、石英などの可視透明基板を含んでもよいことが理解される。様々な実施形態では、可撓性基板及び硬質基板が有用である。任意選択的に、透明基板は、上面及び/又は下面に適用される1つ以上の光学層を備える。
【0158】
[0205]ブロック2710では、1つ以上の光学層が、任意選択的に、透明基板の上面及び/又は底面など、透明基板上に又は透明基板を覆って形成される。任意選択的に、1つ以上の光学層が、介在層又は透明導体などの材料などの他の材料上に形成される。任意選択的に、1つ以上の光学層は、可視透明基板に隣接して及び/又は接触して位置される。光学層の形成は任意選択的であり、幾つかの実施形態は、透明基板に隣接する及び/又は透明基板と接触する光学層を含まなくてもよいことが理解される。光学層は、めっき、化学溶液堆積、スピンコーティング、浸漬コーティング、化学気相堆積、プラズマ化学気相堆積、及び原子層堆積などの1つ以上の化学堆積法、又は、熱蒸着、電子ビーム蒸発、分子線エピタキシ、スパッタリング、パルスレーザ堆積、イオンビーム堆積、及びエレクトロスプレー堆積などの1つ以上の物理堆積法を含むがこれらに限定されない様々な方法を使用して形成することができる。有用な光学層は、可視透明光学層を含むことが理解される。有用な光学層は、例えば、反射防止特性、波長選択反射又は分布ブラッグ反射特性、屈折率整合特性、カプセル化などを含む1つ以上の光学特性を与えるものを含む。有用な光学層は、場合により、紫外光及び/又は近赤外光を透過する光学層を含んでもよい。しかしながら、形態に応じて、幾つかの光学層は、任意選択的に、受動的な赤外線及び/又は紫外線吸収を与えてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、SnNcCl2、SnNc、BBTなどの選択的NIR吸収材料の薄層を、前述の様々な堆積技術を使用して光学層に形成することができる。選択的NIR吸収材料の層の厚さは、TPVデバイスの所望のAVT、SHGC、及び/又は選択性に基づいて選択されてもよい。
【0159】
[0206]ブロック2715では、第1の透明電極が形成される。前述のように、第1の透明電極は、アノードであってもよく、ITO膜、FTO膜、又は、他の透明導電膜、例えば、金属薄膜(例えば、Ag、Cuなど)、金属薄膜(例えば、Ag、Cuなど)及び誘電体材料を備える多層積層体、又は、導電性有機材料(例えば、導電性ポリマーなど)を含んでもよい。透明電極は、可視透明電極を含むことが理解される。透明電極は、原子層堆積、化学蒸着、物理蒸着、熱蒸着、スパッタ堆積、エピタキシなどの真空堆積技術を含む1つ以上の堆積プロセスを使用して形成することができる。場合によっては、スピンコーティングなどの溶液ベースの堆積技術も使用することができる。更に、透明電極は、リソグラフィ、リフトオフ、エッチングなどの微細加工技術によってパターニングされてもよい。
【0160】
[0207]ブロック2720において、正孔輸送層などの第1のキャリア輸送層が、任意選択的に、例えば第1の透明電極上に形成されてもよい。正孔輸送層は、例えば、MoO3、WO3、NiOx、又は、V2O5を含んでもよく、また、めっき、化学溶液堆積、スピンコーティング、浸漬コーティング、化学気相堆積、プラズマ強化化学気相堆積、及び、原子層堆積などの1つ以上の化学堆積法、又は、熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシ、スパッタリング、パルスレーザ堆積、イオンビーム堆積、及び、エレクトロスプレー堆積などの1つ以上の物理堆積法を含むがこれらに限定されない様々な方法を使用して形成されてもよい。幾つかの実施形態において、第1のキャリア輸送層は、例えば、電子ブロッキング層、光学スペーサ、物理バッファ層、電荷再結合層、又は電荷発生層を含んでもよい。幾つかの実施形態では、SnNcCl2、SnNc、BBTなどの選択的NIR吸収材料の薄層を、前述の様々な堆積技術を使用して第1のキャリア輸送層に形成することができる。選択的NIR吸収材料の層の厚さは、TPVデバイスの所望のAVT、SHGC、及び/又は選択性に基づいて選択されてもよい。
【0161】
[0208]ブロック2725において、例えばキャリア輸送層上又は透明電極上に1つ以上の光活性層が形成される。前述のように、光活性層は、電子アクセプタ層及び電子ドナー層又は電子ドナー及びアクセプタの共堆積層(例えば、UE-D-100:C60又はTPBi:C60)を含んでもよい。有用な光活性層は、本明細書中に記載の可視透明光活性化合物を備えるものを含む。前述のように、幾つかの実施形態では、SnNcCl2、SnNc、BBTなどの選択的NIR吸収材料の薄層を、前述の様々な堆積技術を使用して光活性層に形成することができる。選択的NIR吸収材料の層の厚さは、TPVデバイスの所望のAVT、SHGC、及び/又は選択性に基づいて選択されてもよい。光活性層は、めっき、化学溶液堆積、スピンコーティング、浸漬コーティング、化学気相堆積、プラズマ化学気相堆積、及び、原子層堆積などの1つ以上の化学堆積法、又は、熱蒸着、電子ビーム蒸発、分子線エピタキシ、スパッタリング、パルスレーザ堆積、イオンビーム堆積、及び、エレクトロスプレー堆積などの1つ以上の物理堆積法を含むがこれらに限定されない様々な方法を使用して形成することができる。
【0162】
[0209]幾つかの例において、光活性層に有用な可視透明光活性化合物は、熱蒸着などの真空蒸着技術を使用して堆積させることができる。真空蒸着は、真空チャンバ内で、例えば約10-5Torr~約10-8Torrの圧力で行なわれてもよい。一例では、真空蒸着は約10-7Torrの圧力で行なうことができる。前述したように、様々な堆積技術を適用することができる。幾つかの実施形態では、熱蒸発が使用される。熱蒸発は、堆積されるべき材料の供給源(すなわち、可視透明光活性化合物)を200℃~2700℃の温度に加熱することを含むことができる。材料の供給源の温度は、約0.01nm/s~約1nm/sの薄膜成長速度を達成するように選択されてもよい。例えば、0.1nm/sの薄膜成長速度を用いてもよい。これらの成長速度は、数分から数時間にわたって約1nm~2700nmの厚さを有する薄膜を生成するのに有用である。堆積される材料の様々な特性(例えば、分子量、揮発性、熱安定性)が、供給源温度又は最大有用供給源温度を決定するか又はそれに影響を及ぼし得ることが理解される。例えば、堆積される材料の熱分解温度は、供給源の最高温度を制限し得る。別の例として、揮発性の高い堆積される材料は、揮発性の低い材料と比較して、目標の堆積速度を達成するためにより低いソース温度を必要とする場合があり、目標の堆積速度を達成するためにより高いソース温度が必要とされる場合がある。堆積される材料は、供給源から蒸発すると、より低い温度で表面(例えば、基板、光学層、透明電極、バッファ層など)に堆積され得る。例えば、表面は、約10℃~約100℃の温度を有してもよい。場合によっては、表面の温度を能動的に制御することができる。場合によっては、表面の温度を能動的に制御しなくてもよい。
【0163】
[0210]ブロック2730において、電子輸送層などの第2のキャリア輸送層が、例えば光活性層上に任意選択的に形成されてもよい。第2のキャリア輸送層は、例えば、ZnO、In2O3、SnO2、TiO2、AZO、FTO、Al:MoO3、BaSnO3などを含むことができ、ブロック2720で形成された第1のキャリア輸送層と同様に形成することができる。幾つかの実施形態において第2のキャリア輸送層は、例えば、正孔ブロッキング層、光学スペーサ、物理バッファ層、電荷再結合層、又は、電荷発生層を含んでもよい。幾つかの実施形態では、SnNcCl2、SnNc、BBTなどの選択的NIR吸収材料の薄層を、前述の様々な堆積技術を使用して第2のキャリア輸送層に形成することができる。選択的NIR吸収材料の層の厚さは、TPVデバイスの所望のAVT、SHGC、及び/又は選択性に基づいて選択されてもよい。更に、ブロック2720,2725,2730における動作は、例えば、光活性層及び任意選択的に様々なキャリア輸送層を含む材料の多層積層体を形成するために、一回又は複数回繰り返されてもよいことが理解され得る。
【0164】
[0211]ブロック2735では、第2の透明電極を、例えばキャリア輸送層上又は光活性層上に形成することができる。第2の透明電極は、ブロック2715における第1の透明電極の形成に適用可能な技術を用いて形成されてもよい。
【0165】
[0212]ブロック2740において、第2の透明電極上などに、1つ以上の光学層が任意選択的に形成されてもよい。前述のように、幾つかの実施形態において、光学層は、SnNcCl2、SnNc、BBTなどの選択的NIR吸収材料の層を含むことができる。選択的NIR吸収材料の層の厚さは、TPVデバイスの所望のAVT、SHGC、及び/又は選択性に基づいて選択されてもよい。
【0166】
[0213]
図27に示される特定のステップは、本発明の様々な実施形態に係る可視透明光起電力デバイスを製造する特定の方法を提供することを理解すべきである。別の実施形態によれば、他の一連のステップを実行することもできる。例えば、本発明の別の実施形態は、上記で概説したステップを異なる順序で実行してもよい。更に、
図27に示される個々のステップは、個々のステップに適切であるように様々な順序で実行することができる複数のサブステップを含むことができる。更に、特定の用途に応じて、更なるステップを追加又は削除することができる。多くの変形、修正、及び代替が使用され得ることが理解される。
【0167】
[0214]
図27によって示される方法は、任意選択的に、電気エネルギーを生成する方法に拡張されてもよい。例えば、電気エネルギーを生成するための方法は、方法にしたがって可視透明光起電力デバイスを形成することなどによって、可視透明光起電力デバイスを用意することを含むことができる。電気エネルギーを生成するための方法は、例えば、電気エネルギーを生成するために、前述したように、電子-正孔対の形成及び分離をもたらすべく、可視光、紫外光及び/又は近赤外光に可視透明光起電力デバイスを曝露することを更に含んでもよい。可視透明光起電力デバイスは、光活性材料、緩衝材料、及び/又は光学層として本明細書に記載の可視透明光活性化合物を含むことができる。
【0168】
[0215]この開示全体にわたる全ての引用文献、例えば、発行又は付与された特許又は同等物を含む特許文書;特許出願公開公報及び非特許文献又はその他の原資料は、参照により個々に組み込まれているかのように、その全体が参照により本願に組み入れられる。
【0169】
[0216]本開示で言及される全ての特許及び刊行物は、本発明が関係する当業者の技術レベルを示す。本明細書に引用された参考文献は、場合によっては出願日の最新技術を示すためにその全体が参照により本明細書に組み込まれ、この情報は、必要に応じて、先行技術にある特定の実施形態を除外する(例えば、特許請求の範囲)ために本明細書で使用できることが意図されている。例えば、化合物が特許請求される場合、本明細書に開示された参考文献(特に参照された特許文献)に開示された特定の化合物を含む、先行技術で公知の化合物は、特許請求の範囲に含まれることを意図しないことを理解されるべきである。
【0170】
[0217]置換基の群が本明細書に開示される場合、それらの群の全ての個々のメンバー並びに置換基を使用して形成され得る全てのサブグループ及びクラスが別々に開示されることが理解される。マーカッシュグループ又は他のグループ化が本明細書で使用される場合、グループの全ての個々のメンバー及びグループの可能な全ての組み合わせ及びサブ組み合わせは、本開示に個別に含まれることが意図される。本明細書で使用される「及び/又は」は、「及び/又は」によって分離されたリスト内の項目の1つ、全て、又は任意の組み合わせがリストに含まれることを意味する。例えば、「1、2及び/又は3」は「「1」又は「2」又は「3」又は「1及び2」又は「1及び3」又は「2及び3」又は「1、2及び3」」と等価である。
【0171】
[0218]特に明記しない限り、記載又は例示した成分のあらゆる製剤又は組み合わせを使用して本発明を実施することができる。当業者が同じ材料に異なる名称を付けることができることが知られているので、材料の特定の名称は例示的であることを意図している。方法、デバイス要素、出発材料、及び具体的に例示されたもの以外の合成方法は、過度の実験に頼ることなく本発明の実施に使用することができることが理解される。任意のそのような方法、デバイス要素、出発材料、及び合成方法の当技術分野で公知の機能的等価物は全て、本発明に含まれることが意図されている。本明細書で範囲、例えば温度範囲、時間範囲、又は組成範囲が与えられるときはいつでも、全ての中間範囲及び部分範囲、並びに与えられた範囲に含まれる全ての個々の値が本開示に含まれることが意図される。
【0172】
[0219]本明細書中で使用される「備える」は、「含む」、「包含する」、「有する」又は「によって特徴付けられる」と同義であり、包括的又非制約的であり、更なる列挙されていない要素又は方法ステップを排除しない。本明細書で使用される「から成る」は、特許請求の範囲の要素で指定されていない任意の要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書中で使用される「から本質的に成る」は、特許請求の範囲の基本的且つ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップを排除しない。特に組成物の成分の説明又はデバイスの要素の説明における「備える」という用語の本明細書における列挙は、列挙された成分又は要素から本質的に成る及び列挙された成分又は要素から成るそれらの組成物及び方法を包含すると理解される。本明細書に例示的に記載された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つ以上の要素、1つ以上の限定がない状態で適切に実施され得る。
【0173】
[0220]本明細書中で使用される用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」及び本開示を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)同様の指示対象は、本明細書中で別段に示唆されなければ或いは文脈によって明らかに矛盾しなければ、単数形及び複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。「接続される」という用語は、たとえ何かが介在する場合でも、~内に部分的又は全体的に含まれる、~に取り付けられる、又は、互いに接合されると解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中で別段に示唆されなければ、その範囲内にあるそれぞれの別個の値に個別に言及する簡略化された方法として役立つように単に意図されているにすぎず、それぞれの別個の値は、あたかも本明細書中に個別に記載されているかのように本明細書中に組み入れられる。本明細書中で与えられる任意の全ての例又は典型的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本開示の実施形態をより良く明らかにすることを意図しているにすぎず、特許請求の範囲に別段に記載されなければ、本開示の範囲に制限を課さない。本明細書中の言語は、特許請求の範囲に記載されない任意の要素を本開示の実施に必須であると示すものと解釈されるべきではない。
【0174】
[0221]表現「X、Y又はZのうちの少なくとも1つ」などの選言的な言語は、別段具体的に明記しなければ、一般に使用される文脈内で、項目、用語などがX、Y又はZ或いはそれらの任意の組み合わせ(例えば、X、Y及び/又はZ)のいずれかであり得ることを提示すように理解されるべく意図される。したがって、そのような選言的な言語は、一般に、Xの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、又は、Zの少なくとも1つがそれぞれ存在することを特定の実施形態が要することを意味しようとするものではなく且つ意味するべきではない。
【0175】
[0222]使用された用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語及び表現の使用において、示され説明された特徴又はその一部の均等物を除外する意図はないが、特許請求される発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明は好ましい実施形態及び任意選択の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の修正及び変形は当業者によって使用されてもよく、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であると考えられることを理解されたい。
【国際調査報告】