(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】新規マロニトリル誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 233/64 20060101AFI20230612BHJP
A61K 31/4164 20060101ALI20230612BHJP
C07D 413/12 20060101ALI20230612BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20230612BHJP
C07D 275/02 20060101ALI20230612BHJP
A61K 31/426 20060101ALI20230612BHJP
C07D 495/04 20060101ALI20230612BHJP
A61K 31/4365 20060101ALI20230612BHJP
C07D 261/08 20060101ALI20230612BHJP
A61K 31/42 20060101ALI20230612BHJP
C07D 249/08 20060101ALI20230612BHJP
A61K 31/4192 20060101ALI20230612BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20230612BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20230612BHJP
A61K 31/501 20060101ALI20230612BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230612BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230612BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230612BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230612BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230612BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230612BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230612BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230612BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20230612BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
C07D233/64 106
A61K31/4164
C07D413/12 CSP
A61K31/4439
C07D275/02
A61K31/426
C07D495/04
A61K31/4365
C07D261/08
A61K31/42
C07D249/08 535
A61K31/4192
A61K31/517
A61K31/497
A61K31/501
A61P37/02
A61P17/00
A61P1/00
A61P11/00
A61P1/16
A61P3/06
A61P25/00
A61P19/02
A61P19/06
A61P3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570519
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2021063037
(87)【国際公開番号】W WO2021233851
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】デコレット,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ガレイ,グイド
(72)【発明者】
【氏名】グレープケ・ツビンデン,カトリン
(72)【発明者】
【氏名】グーバ,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】フンツィカー,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C063
4C071
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC51
4C063CC92
4C063DD12
4C063DD15
4C063DD28
4C063DD31
4C063DD34
4C063DD51
4C063EE01
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC02
4C071CC21
4C071DD40
4C071EE15
4C071FF05
4C071GG01
4C071HH17
4C071JJ04
4C071LL01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC60
4C086BC67
4C086BC82
4C086CB22
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZC33
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、式(I)
(式中、R
1~R
2は、明細書および特許請求の範囲で定義されるとおりである)の化合物に関する。式(I)の化合物は、医薬として使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、
R
1は、アルキルイソキサゾリル、アルキルトリアゾリル、アルキルイミダゾリル、アルキルイソチアゾリルまたはオキサゾリルであり;
R
2は、アルキル-ジオキシド-7,8-ジヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-d]ピリミジニル、アルコキシ-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、(アルコキシフェニル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロイソキノリニル、ジアルキルフェニルアミノカルボニルピリジル、アルコキシピラジニル、ピリジル、ナフタレニル、アルコキシピリジル、アルコキシピリダジニル、オキソ-ピリジル、(N-アルキル)オキソ-ピリジル、オキソ-インダニル、ハロアルキルフェニル、アルコキシカルボニルフェニル、(アルコキシカルボニル)アルキルチオフェニルまたは(アルコキシカルボニル)チオフェニルである)
の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、立体異性体もしくは互変異性体。
【請求項2】
R
1がアルキルイソキサゾリルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1がメチルイソキサゾリルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R
2が、メチル-ジオキシド-7,8-ジヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-d]ピリミジニル、メトキシ-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、(メトキシフェニル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロイソキノリニル、ジメチルフェニルアミノカルボニルピリジル、メトキシピラジニル、ピリジル、ナフタレニル、メトキシピリジル、メトキシピリダジニル、オキソ-ピリジル、(N-メチル)オキソ-ピリジル、オキソ-インダニル、トリフルオロメチルフェニル、メチルオキシカルボニルフェニル、(エトキシカルボニル)メチルチオフェニルまたは(メトキシカルボニル)チオフェニルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R
2が、オキソ-ピリジル、(N-メチル)オキソ-ピリジルまたはオキソインダニルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-(4-メチル-6,6-ジオキシド-7,8-ジヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-d]ピリミジン-2-イル)-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-(4-メトキシ-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-2-イル)-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(4-フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-2-イル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-(3-(3-メトキシフェニル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロイソキノリン-6-イル)-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)アクリルアミド;
(Z)-5-(2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)アクリルアミド)-N-(2,6-ジメチルフェニル)ピコリンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-(5-メトキシピラジン-2-イル)-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(4-ピリジル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(ナフタレン-2-イル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(ナフタレン-1-イル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-(6-メトキシ-3-ピリジル)-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(2-オキソ-1H-ピリジン-4-イル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(1-メチル-2-オキソ-4-ピリジル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,3トリアゾール-5-イル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(1-オキソインダン-5-イル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-5-イル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(3-ピリジル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソチアゾール-4-イル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(4-メチルイソキサゾール-5-イル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(オキサゾール-5-イル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド;
メチル(Z)-4-(2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(3-メチルイソキサゾール-4-イル)アクリルアミド)ベンゾエート;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(3-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド;
エチル(Z)-2-(2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)アクリルアミド)-4-メチルチオフェン-3-カルボキシレート;および
メチル(Z)-3-(2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)アクリルアミド)チオフェン-2-カルボキシレート;
から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、立体異性体もしくは互変異性体。
【請求項7】
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(2-オキソ-1H-ピリジン-4-イル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(1-メチル-2-オキソ-4-ピリジル)プロプ-2-エンアミド;および
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(1-オキソインダン-5-イル)プロプ-2-エンアミド;
から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、立体異性体もしくは互変異性体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物の調製のためのプロセスであって、式(A1)
【化2】
の化合物を、式
【化3】
(式中、R
1およびR
2は、請求項1~7のいずれか一項に記載のとおりであり、Xは、ハロゲン、メシラートまたはトシラートなどの脱離基である)
の化合物と、塩基の存在下でカップリングさせることを含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載のプロセスに従って製造された場合の、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
治療活性物質としての使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物と、治療不活性担体とを含む、医薬組成物。
【請求項12】
全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚筋炎または皮膚ループス等の皮膚疾患、間質性肺線維症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、若年性炎症性関節炎、強直性脊椎炎、痛風またはエカルディ・グティエール症候群(AGS)の処置または予防のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項13】
全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚筋炎または皮膚ループス等の皮膚疾患、間質性肺線維症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、若年性炎症性関節炎、強直性脊椎炎、痛風またはエカルディ・グティエール症候群(AGS)の処置または予防のための医薬の調製のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項14】
全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚筋炎または皮膚ループス等の皮膚疾患、間質性肺線維症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、若年性炎症性関節炎、強直性脊椎炎、痛風またはエカルディ・グティエール症候群(AGS)の処置または予防での使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚筋炎または皮膚ループス等の皮膚疾患、間質性肺線維症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、若年性炎症性関節炎、強直性脊椎炎、痛風またはエカルディ・グティエール症候群(AGS)の処置のための方法であって、有効量の請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項16】
先に記載したとおりの発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物における治療および/または予防に有用な有機化合物、特にcGAS活性を調節する化合物に関する。
【0002】
本発明は、特に式(I):
【化1】
(式中、
R
1は、アルキルイソキサゾリル、アルキルトリアゾリル、アルキルイミダゾリル、アルキルイソチアゾリルまたはオキサゾリルであり、
R
2は、アルキル-ジオキシド-7,8-ジヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-d]ピリミジニル、アルコキシ-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、(アルコキシフェニル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロイソキノリニル、ジアルキルフェニルアミノカルボニルピリジル、アルコキシピラジニル、ピリジル、ナフタレニル、アルコキシピリジル、アルコキシピリダジニル、オキソ-ピリジル、(N-アルキル)オキソ-ピリジル、オキソ-インダニル、ハロアルキルフェニル、アルコキシカルボニルフェニル、(アルコキシカルボニル)アルキルチオフェニルまたは(アルコキシカルボニル)チオフェニルである)
の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、立体異性体もしくは互変異性体に関する。
【背景技術】
【0003】
サイトカインは自然免疫応答の調節に関与しており、炎症促進性サイトカインの調節不全は重度の全身性炎症および自己免疫疾患に関連しており、それらの多くは今日では効率的な治療法を欠いている。
【0004】
脊椎動物は、病原体および他の課題に対する防御として自然免疫系および適応免疫系を有する。自然免疫系は、脊椎動物を超えて存在する進化的に古い系である。適応免疫系とは異なり、プライミングまたはトレーニングを必要としないが、一般的な物理的障壁(例えば、皮膚)として、または特定のパターンの検出によって機能する。自然免疫系を誘因する1つの普遍的なパターンは、I型インターフェロン応答をもたらす細胞質二本鎖DNAの検出である。細胞質dsDNAの供給源は、細菌感染またはウイルス感染に由来し得るが、蓄積した自己DNAにも由来し得る。
【0005】
細胞質酵素サイクリックGMP-AMPシンターゼ(cGAS)は、細胞質二本鎖DNAのセンサーである。dsDNAの結合は、ATPおよびGTPの酵素的結合による環状ジ-ヌクレオチド2,3-cAMPの生成をもたらす。2,3-cGAMPは、二次メッセンジャーとして作用し、小胞体に存在するインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)に結合する。2,3-cGAMP,STINGが結合すると、核周囲ゴルジに移動し、そこでTANK結合キナーゼ1(TBK1)と結合し、インターフェロン応答因子3(IRF3)をリクルートおよびリン酸化する。最終的に、これは、I型インターフェロン(I IFN)、IL-6、TNFα、IL1およびケモカインのような他のサイトカインの産生をもたらし、これは侵入病原体に対する宿主防御のための必須因子である。しかしながら、I型IFNおよび他の炎症促進性サイトカインの不適切なまたは慢性的な産生は、重度の全身性炎症および自己免疫疾患に関連する。例えば、IFNシグナル伝達は、SLE、皮膚疾患(皮膚筋炎および皮膚ループス)、間質性肺線維症、シェーグレン症候群およびI型糖尿病に関与する(G.Triinchieri,J Exp Med.2010 207(10):2053-63)。TNFαおよびIL 1β等の他の炎症促進性サイトカインは、炎症性腸疾患、NASH、若年性炎症性関節炎、強直性脊椎炎および痛風において重要な役割を果たす。
【0006】
cGAS/STINGの慢性活性化は、重度の全身性炎症を引き起こす。臨床における炎症におけるその役割の証拠は、単一遺伝子疾患に由来する。Trex1、RNaseH 2およびSAMHD1のような核酸修飾酵素の欠損を有する患者は、エカルディ・グティエール症候群(AGS)に罹患している。cGAS/STINGの関与は、AGSのモデルとして機能するTrex1欠損マウスにおいて支持された。
【0007】
したがって、サイトカインを媒介する疾患の上流にあるcGAS経路の阻害は、複数の自己免疫疾患からの患者の処置における新規な戦略である。適応症には、IFNシグナル伝達に関連するもの、またはTNFαおよびIL1βによって駆動されるものが含まれ得る。
【0008】
今日では、自然免疫系の調節不全によって引き起こされる多くの疾患は、効率的な治療法を欠いている。
【発明の概要】
【0009】
本発明の化合物はcGASに結合し、その活性を調節する。
【0010】
式(I)の化合物は、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚筋炎もしくは皮膚ループス等の皮膚疾患、間質性肺線維症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、若年性炎症性関節炎、強直性脊椎炎、痛風またはエカルディ・グティエール症候群(AGS)の処置または予防に特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、用語「アルキル」は、単独でまたは組み合わせて、1~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、特に1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、より具体的には1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基を意味する。直鎖および分岐鎖C1-C8アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、異性体ペンチル、異性体ヘキシル、異性体ヘプチル、および異性体オクチル、特に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、およびペンチルである。アルキルの特定の例は、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチルおよびペンチルである。メチルは、式(I)の化合物における「アルキル」の特定の例である。
【0012】
「アルコキシ」または「アルキルオキシ」という用語は、単独でまたは組み合わせて、用語「アルキル」が、前に示される意味を有する、式アルキル-O-の基、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシおよびtert-ブトキシを表す。「アルコキシ」の特定の例はメトキシである。
【0013】
「オキシ」という用語は、単独でまたは組み合わせて、-O-基を意味する。
【0014】
「オキソ」という用語は、単独でまたは組み合わせて、=O基を意味する。
【0015】
「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、単独でまたは組み合わせて、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味し、特に、フッ素、塩素、または臭素、より具体的にはフッ素を意味する。「ハロ」という用語は、別の基と組み合わせて、少なくとも1つのハロゲン、特に、1つから5つのハロゲンで置換された、特に、1つから4つのハロゲン、すなわち、1つ、2つ、3つ、または4つのハロゲン置換された前記基の置換を意味する。
【0016】
「ハロアルキル」という擁護は、単独でまたは組み合わせて、少なくとも1つのハロゲンで置換された、特に1つから5つのハロゲン、特に1つから3つのハロゲンで置換されたアルキル基を意味する。特定の「ハロアルキル」はフルオロメチルである。
【0017】
「ヒドロキシル」および「ヒドロキシ」という用語は、単独でまたは組み合わせて、-OH基を意味する。
【0018】
「カルボニル」という用語は、単独でまたは組み合わせて、-C(O)-基を意味する。
【0019】
「アミノ」という用語は、単独でまたは組み合わせて、第一級アミノ基(-NH2)、第二級アミノ基(-NH-)、または第三級アミノ基(-N-)を意味する。
【0020】
「薬学的に許容され得る塩」という用語は、生物学的にまたはそれ以外の点で望ましくないものではない、遊離塩基または遊離酸の生物学的な有効性および特性を保持する塩を指す。塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、特に塩酸、ならびに、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、N-アセチルシステインなどの有機酸と共に形成される。更に、これらの塩は、遊離酸への無機塩基または有機塩基の添加から調製され得る。無機塩基から誘導される塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムの塩が含まれるがこれらに限定されない。有機塩基から誘導される塩としては、第一級、第二級、および第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環式アミンおよび塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、リジン、アルギニン、N-エチルピペリジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂の塩が挙げられるが、これらに限定されない。式(I)の化合物は、双性イオンの形態でも存在し得る。特に好ましくは、式(I)の化合物の薬学的に許容され得る塩は、トリフルオロ酢酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、およびメタンスルホン酸の塩である。
【0021】
式(I)の化合物は、互変異性体(I’)、すなわち、特に溶液中で式(I)の化合物と相互変換するもしくは構造異性体として存在し得る。
【0022】
式(I)の化合物とその互変異性形態(I’)との互変異性平衡は、以下:
【化2】
のように表し得る。
【0023】
式(I)の化合物は、立体異性体(I’’)、すなわち、特に溶液中で式(I)の化合物と相互変換する構造異性体として存在し得る。
【0024】
式(I)の化合物とその立体異性体(I’’)との異性体平衡は、以下:
【化3】
のように表し得る。
【0025】
本発明の出発物質または式(I)の化合物のうちの1つが、1つ以上の反応ステップの反応条件下で安定でないか、または反応性である1つ以上の官能基を含む場合、適切な保護基(例えば、T.W.GreeneおよびP.g.M.Wuts による’’Protectivegroups in Organic Chemistry’’第3版,1999,Wiley,New Yorkに記載されているもの)を、当該技術分野でよく知られている方法を適用する重要なステップの前に導入し得る。このような保護基は、文献に記載されている標準的な方法を用いて、合成の後の段階において除去し得る。保護基の例は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、9-フルオレニルメチルカルバメート(Fmoc)、2-トリメチルシリルエチルカルバメート(Teoc)、カルボベンジルオキシ(Cbz)、およびp-メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz)である。
【0026】
式(I)の化合物は、数個の不斉中心を含み得、光学的に純粋なエナンチオマー、例えばラセミ体などのエナンチオマーの混合物、ジアステレオ異性体の混合物、ジアステレオ異性体ラセミ体またはジアステレオ異性体ラセミ体の混合物として存在し得る。
【0027】
「不斉炭素原子」という用語は、4つの異なる置換基を有する炭素原子を意味する。カーン・インゴルド・プレローグ順位則によれば、不斉炭素原子は、「R」または「S」立体配置のものであり得る。
【0028】
したがって、本発明は、次のものに関する:
R1が、メチルイソキサゾリル、メチルトリアゾリル、メチルイミダゾリル、メチルイソチアゾリルまたはオキサゾリルである、本発明による化合物;
R1がアルキルイソキサゾリルである、本発明による化合物;
R1がメチルイソキサゾリルである、本発明による化合物;
R2が、メチル-ジオキシド-7、8-ジヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-d]ピリミジニル、メトキシ-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル,フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、(メトキシフェニル)-1-オキソ-1、2-ジヒドロイソキノリニル、ジメチルフェニルアミノカルボニルピリジル、メトキシピラジニル、ピリジル、ナフタレニル、メトキシピリジル、メトキシピリダジニル、オキソ-ピリジル、(N-メチル)オキソ-ピリジル、オキソ-インダニル、トリフルオロメチルフェニル、メチルオキシカルボニルフェニル、(エトキシカルボニル)メチルチオフェニルまたは(メトキシカルボニル)チオフェニルである、本発明による化合物;
R2が、オキソ-ピリジル、(N-アルキル)オキソ-ピリジルまたはオキソインダニルである、本発明による化合物;
R2が、オキソ-ピリジル、(N-メチル)オキソ-ピリジルまたはオキソインダニルである、本発明による化合物。
【0029】
本発明はさらに、
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-(4-メチル-6,6-ジオキシド-7,8-ジヒドロ-5H-チオピラノ[4,3-d]ピリミジン-2-イル)-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-(4-メトキシ-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-2-イル)-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(4-フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン-2-イル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-(3-(3-メトキシフェニル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロイソキノリン-6-イル)-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)アクリルアミド;
(Z)-5-(2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)アクリルアミド)-N-(2,6-ジメチルフェニル)ピコリンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-(5-メトキシピラジン-2-イル)-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(4-ピリジル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(ナフタレン-2-イル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(ナフタレン-1-イル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-(6-メトキシ-3-ピリジル)-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-N-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(2-オキソ-1H-ピリジン-4-イル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(1-メチル-2-オキソ-4-ピリジル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,3トリアゾール-5-イル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(1-オキソインダン-5-イル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-5-イル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(3-ピリジル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソチアゾール-4-イル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(4-メチルイソキサゾール-5-イル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(オキサゾール-5-イル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド;
メチル(Z)-4-(2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(3-メチルイソキサゾール-4-イル)アクリルアミド)ベンゾエート;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(3-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド;
エチル(Z)-2-(2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)アクリルアミド)-4-メチルチオフェン-3-カルボキシレート;および
メチル(Z)-3-(2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)アクリルアミド)チオフェン-2-カルボキシレート;
から選択される式(I)の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、立体異性体もしくは互変異性体に関する。
【0030】
本発明はさらに、
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(2-オキソ-1H-ピリジン-4-イル)プロプ-2-エンアミド;
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(1-メチル-2-オキソ-4-ピリジル)プロプ-2-エンアミド;および
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(5-メチルイソキサゾール-4-イル)-N-(1-オキソインダン-5-イル)プロプ-2-エンアミド;
から選択される式(I)の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、立体異性体もしくは互変異性体に関する。
【0031】
式(I)の化合物の合成は、例えば、スキーム1に従って達成し得る。
スキーム1
【化4】
【0032】
スキーム1において、R1およびR2は上記で定義したとおりであり、Xは、ハロゲン、メシラートまたはトシラートなどの脱離基である。
【0033】
工程A:適切なアミンを、場合によりジクロロメタン、THF、アセトニトリル、酢酸エチルまたはDMFなどの溶媒中、トリエチルアミン、DIPEAまたはピリジンなどの塩基の存在下で、DCC、HATU、EDCIまたはプロピルホスホン酸無水物などのカップリング試薬を使用して、または場合によりアセトニトリル、THF、ジクロロメタン、トルエンまたはジオキサンなどの溶媒中、トリエチルアミン、DIPEAなどの塩基の存在下で塩化オキサリル/DMF、塩化チオニル/DMFまたはメタンスルホニルクロリド/3-メチルピリジンで酸塩化物を介して酸を活性化することによって、室温~約80℃の温度で2~12時間、シアノ酢酸とカップリングさせる。
【0034】
工程B:式(I)の化合物は、シアノアセトアミドを塩基で脱プロトン化し、続いてTHF、ジクロロメタンまたはそれらの混合物などの溶媒中、ハロゲン、メシラートまたはトシラートなどの脱離基Xで置換された酸と反応させることによって得られる。好都合な条件は、THFおよびジクロロメタンの混合物中の塩基としてNaHを、室温付近で約5~20時間の使用である。好都合には、Xはハロゲン、特に塩化物である。
【0035】
したがって、本発明はまた、本発明による化合物の調製のためのプロセスであって、式(A1)
【化5】
の化合物を、式(A2)
【化6】
(式中、R
1およびR
2は、前記に定義したとおりであり、Xは、ハロゲン、メシラートまたはトシラートなどの脱離基である)
の化合物と、塩基の存在下でカップリングさせることを含む、プロセスに関する。
【0036】
好都合には、Xはハロゲン、特に塩化物である。
【0037】
カップリングは溶媒中で好都合に実施し得る。溶媒は、例えば、THF、ジクロロメタンまたはそれらの混合物であり得る。
【0038】
カップリングにおいて、塩基は、例えばNaHまたはtert-ブトキシドであり得る。好都合には、塩基はNaHである。
【0039】
カップリングのための好都合な条件は、約0℃~100℃、特に約5℃~80℃、より具体的には約10℃~50℃であり得る。
【0040】
カップリングのための好ましい条件は、室温付近で約1~24時間、特に約5~20時間、THFおよびジクロロメタンの混合物中でのNaHの使用である。
【0041】
本発明はまた、本発明のプロセスに従って製造された場合の本発明による化合物に関する。
【0042】
本発明の他の実施形態は、本発明の化合物と、治療不活性担体、希釈剤または賦形剤とを含有する医薬組成物または医薬、ならびにこのような組成物および医薬を調製するために本発明の化合物を使用する方法を提供する。一例では、式(I)の化合物は、生理学的に許容され得る担体、すなわち、生薬の投与形態に使用される用量および濃度でレシピエントに対して毒性でない担体と、適切なpHと所望の純度で、周囲温度で混合することによって製剤化されてもよい。製剤のpHは、特定の用途および化合物の濃度に主に依存するが、好ましくは約3~約8の範囲である。一例では、式(I)の化合物は、pH5の酢酸緩衝剤中で製剤化される。他の実施形態では、式(I)の化合物は無菌である。化合物は、例えば、固体もしくは非晶質組成物として、凍結乾燥製剤として、または水溶液として保管され得る。
【0043】
組成物は、良好な医療行為と一致した様式で製剤化、投薬、および投与される。これに関連して考慮すべき要因としては、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的症状、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、および医療従事者に既知である他の要因が挙げられる。
【0044】
本発明の化合物は、経口、局所(頬側および舌下を含む)、直腸、膣、経皮、非経口、皮下、腹腔内、肺内、皮内、髄腔内、硬膜外および鼻腔内、ならびに局所処置のために所望される場合、病巣内投与を含む任意の適切な手段によって投与され得る。非経口輸液には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、または皮下投与が含まれる。
【0045】
本発明の化合物は、例えば、錠剤、散剤、カプセル剤、溶液、分散液、懸濁液、シロップ剤、スプレー、坐剤、ゲル、乳濁液、パッチ等の任意の簡便な投与形態で投与してもよい。このような組成物は、医薬品における従来の構成成分、例えば希釈剤、担体、pH調整剤、甘味料、充填剤、および更なる活性剤を含有してもよい。
【0046】
典型的な製剤は、本発明の化合物と担体または賦形剤とを混合することによって調製される。好適な担体および賦形剤は、当業者によく知られており、例えば、Ansel,Howard C.ら、「アンセルの医薬剤形と薬物送達系(Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)」、Philadelphia:Lippincott,Williams&Wilkins,2004;Gennaro,Alfonso R.ら、「レミントン:調剤の科学および実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)」、Philadelphia:Lippincott,Williams&Wilkins,2000;およびRowe,Raymond C.「医薬賦形剤ハンドブック(Handbookof Pharmaceutical Excipients)」 Chicago,Pharmaceutical Press,2005に詳細に記載されている。製剤はまた、医薬(すなわち、本発明の化合物またはその医薬組成物)の的確な提示を提供する、または医薬組成物(すなわち、医薬品)の製造を補助するために、1つ以上の緩衝剤、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、潤滑剤、乳化剤、懸濁化剤、防腐剤、抗酸化剤、乳白剤(opaquing agent)、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味剤、芳香剤、香味剤、希釈剤および他の既知の添加剤も含み得る。
【0047】
本発明はまた、特に、
治療活性物質としての使用のための式(I)の化合物;
式(I)の化合物と、治療不活性担体とを含む、医薬組成物;
cGASによって調節される疾患の処置への使用のための式(I)の化合物;
全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚筋炎もしくは皮膚ループス等の皮膚疾患、間質性肺線維症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、若年性炎症性関節炎、強直性脊椎炎、痛風またはエカルディ・グティエール症候群(AGS)の処置または予防のための、式(I)の化合物の使用、
全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚筋炎もしくは皮膚ループス等の皮膚疾患、間質性肺線維症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、若年性炎症性関節炎、強直性脊椎炎、痛風またはエカルディ・グティエール症候群(AGS)の処置または予防のための医薬を調製するための、式(I)の化合物の使用、
全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚筋炎もしくは皮膚ループス等の皮膚疾患、間質性肺線維症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、若年性炎症性関節炎、強直性脊椎炎、痛風またはエカルディ・グティエール症候群(AGS)の処置または予防に使用のための式(I)の化合物、および
全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚筋炎もしくは皮膚ループス等の皮膚疾患、間質性肺線維症、シェーグレン症候群、I型糖尿病、炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、若年性炎症性関節炎、強直性脊椎炎、痛風またはエカルディ・グティエール症候群(AGS)の処置または予防のための方法であって、有効量の式(I)の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法に関する。
【0048】
これより、本発明を、限定的な特徴を有しない以下の実施例によって説明する。
【実施例】
【0049】
略語
ATP=アデノシン三リン酸;BSA=ウシ血清アルブミン;DCC=ジシクロヘキシル尿素;DIPEA=ジイソプロピルアミン;DMF=ジメチルホルムアミド;DMSO=ジメチルスルホキシド;DNA=デオキシリボ核酸;EDCI=1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド;ESI=エレクトロスプレーイオン化;EtOAc=酢酸エチル;GTP=グアノシン三リン酸;HATU=ヘキサフルオロホスフェートアザベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム;MeOH=メタノール;MS=質量分析;RT=室温;SD=標準偏差;THF=テトラヒドロフラン;TRIS=トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン。
【0050】
実施例1
(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-5-イル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド
【化7】
工程1:1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボニルクロリド
アルゴン雰囲気下、室温で、1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸(500mg、3.96mmol)のTHF(8mL)中攪拌懸濁液に、2滴のDMF、引き続いて塩化オキサリル(554mg、369μl、4.36mmol)を添加した。混合物はすぐに黒くなった。室温での撹拌を3時間30継続した。反応混合物を濃縮乾固すると、未精製の生成物が褐色固体(568mg)として残った。
【0051】
工程2:2-シアノ-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
アルゴン雰囲気下、室温で、2-シアノ酢酸(4.17g、49mmol)の酢酸エチル(85mL)中攪拌溶液に、4-(トリフルオロメチル)アニリン(5g、3.9mL、31mmol)を一度に添加した。得られた透明な淡黄色溶液に、DCC(7.05g、34.2mmol)の酢酸エチル(45mL)溶液を20分間かけて滴加した。添加が完了したら(すぐに白色固体が沈殿した:DCCからの尿素)、室温での撹拌を一晩続けた。不溶性尿素をフィルタにかけて除去し、ケーキ(白色粉末)をEtOAcで洗浄した。濾液を飽和NaHCO3水溶液、次いで1NHCl、次いで食塩水で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO4)、フィルタにかけ、濃縮すると、未精製の生成物が淡黄色固体として残った。未精製の生成物をイソプロパノール(85mL)に溶解し、透明な淡黄色溶液が得られるまで撹拌しながら懸濁液を80℃(油浴温度)に加熱した。混合物を室温まで冷却すると、固体が沈殿した。懸濁液を室温でさらに1時間撹拌した。生成物を濾過によって回収し、2-プロパノールで洗浄し、乾燥させて、標題の化合物を白色固体として得た。濾液は依然としていくらかの生成物を含有する。これを濃縮すると、淡黄色の粘着性固体が残った。これを10mLのMeOH中で研和した。懸濁液を室温で1時間撹拌した。固体を濾過によって回収し、MeOHで洗浄し、乾燥させた。更に1.03gの標題化合物を白色固体として得た。総収量:5.58g、77%。MS:227.1[M-H]-ESIneg.
【0052】
工程3:(Z)-2-シアノ-3-ヒドロキシ-3-(1-メチル-1H-イミダゾール-5-イル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアミド
アルゴン雰囲気下、2-シアノ-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド(200mg、877μmol)のTHF(5mL)中攪拌溶液に、水素化ナトリウム60%鉱油分散液(80.6mg、2.02mmol)を添加した。10分間撹拌した後、1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボニルクロリド(158mg、877μmol)のCH2Cl2(0.5ml)中溶液を一度に添加した。室温での撹拌を17時間続けた。混合物を0.5M HCl(3mL)で慎重に処理し、CH2Cl2で希釈した。沈殿物が形成された。固体を濾過によって回収し、CH2Cl2で洗浄した。次いで、この褐色固体を約5mLのMeOH中で粉砕した。懸濁液を室温で17時間撹拌した。生成物を濾過によって回収し、MeOHで洗浄し、乾燥させて、標題の化合物(159mg、51%)を淡褐色固体として得た。MS:337.1[M+H]+ESIpos。
【0053】
実施例1に記載される手順と同様に、実施例2~実施例24(表1)を、第1の工程において適切な酸を使用し、第2の工程において適切なアミンを使用して調製した。
【表1】
【0054】
実施例25
cGAS活性アッセイ-マラカイトグリーン
化合物を、マラカイトグリーンによるリン酸塩検出に基づく結合酵素アッセイにおいてcGAS阻害について試験した。最終アッセイ条件は、80μM ATP(Sigma)、80μM GTP(Sigma)および100nMインターフェロン刺激DNA(ISD)(Microsynth)を補充した20mM TRIS pH7.5(Applichem)、5mM MgCl2(Sigma)および0.01% BSA(Sigma)であった。組換え発現精製したヒトcGAS(残基161~522)を25nMで使用した。
【0055】
全ての化合物をDMSO中10mMストック溶液として調製し、2.5の希釈係数を有するDMSO中16pt希釈系列を調製した。1μLのDMSO希釈系列を32.3μLの反応緩衝液に移し、上下にピペッティングすることによって混合し、3000rpmで1分間回転させ、沈殿について目視検査した。5μLの3倍酵素ストック溶液を空の384ウェルBlack/Clear Flat Bottom Polystyrene NBS(Corning)3~24列に移した。1~2列をアッセイ緩衝液で満たした。プレートを1000rpm(164×g)で10秒間回転させた。化合物中間希釈物5μLを添加し、3~24列までピペッティングすることによって混合した。1~2列を3.1% DMSOアッセイ緩衝液で満たした。プレートを1000rpm(164×g)で10秒間回転させた。3倍ヌクレオチド/DNA混合物5μLを全てのウェルに添加して反応を開始した。プレートを1000rpm(164×g)で10秒間回転させ、暗所において室温(RT)で4時間インキュベートした。4U/mL PPase(Sigma)5μLを全てのウェルに添加した。プレートを1000rpm(164×g)で10秒間回転させた。BioMol green Solution(Enzo Life Sciences)10μLを全てのウェルに添加した。プレートを1000rpm(164×g)で10秒間回転させ、暗所においてRTで30分間インキュベートした。吸光度データをEnVision Multilable Reader(Perkin Elmer)上で620nmで収集し、以下の測定設定を使用した:励起フィルタ測光620nm;上部からの励起;測定高さ1mm;フラッシュ数30;積算フラッシュ数は1であった。
【0056】
全てのプレートを異常についてチェックし、ブランク対照(タンパク質なし、1列)および中性対照(化合物なし、2列)の異常値を3*SD規則を使用して除外する。ブランクおよび中性対照によってデータを0および100%に正規化し、各曲線をフィッティングし、4パラメータロジスティック方程式を使用して判定し、cGAS阻害のIC50を決定した。
【0057】
このアッセイの結果を表2に示す。表2は、上記のアッセイによって測定される本発明の特定の実施例について得られたcGAS阻害についてのIC50値(μM)を提供する。
【表2】
【0058】
実施例A
以下の成分を含有するフィルムコート錠剤を従来の様式で製造し得る:
【表3】
活性成分をふるい分けし、微結晶性セルロースと混合し、混合物をポリビニルピロリドンの水溶液で造粒する。次いで、顆粒物をデンプングリコール酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムと混合し、圧縮してそれぞれ120または350mgのカーネルを得る。カーネルを上記フィルムコートの水性溶液/懸濁液でラッカー処理する。
【0059】
実施例B
以下の成分を含有するカプセルは従来の様式で製造し得る:
【表4】
【0060】
成分をふるいにかけ、混合し、サイズ2のカプセルに充填する。
【0061】
実施例C
注射液は、以下の組成を有し得る:
【表5】
【0062】
ポリエチレングリコール400と注射用水との混合物(部)に活性成分を溶解させる。pHを酢酸の添加により5.0に調整する。残量の水を添加し、体積を1.0mlに調整する。溶液をフィルタにかけ、適切な過量を用いてバイアルに充填し、滅菌する。
【国際調査報告】