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特表2023-525911ポンプノイズを低減したモバイル型陰圧創傷治療装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】ポンプノイズを低減したモバイル型陰圧創傷治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
A61M27/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570522
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2021063749
(87)【国際公開番号】W WO2021239654
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】20176280.4
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507226709
【氏名又は名称】メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ニクラス フラック
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA39
4C267JJ09
4C267JJ20
(57)【要約】
入口と、前記入口と流体流れ接続されたキャニスタと、前記キャニスタ内に負圧を確立するための前記キャニスタに流体流れ接続されたポンプ入口と、当該ポンプを通って輸送される空気を出力するためのポンプ出口と、を有するポンプケーシングを備えるポンプと、前記ポンプを少なくとも部分的に包囲するエラストマージャケットであって、前記ポンプ出口によって出力される空気を受けるように配置された第1先端部と、前記第1先端部から離間し、前記ポンプ出口によって出力される前記空気を排出するための第2先端部とを有し、前記第2先端部へ続く通路が通る流路を画定するように構成される前記エラストマージャケットと、前記モバイル型NPWT装置の動作を制御する制御ユニットと、前記モバイル型NPWT装置に電力を供給するためのバッテリー装置と、少なくとも前記ポンプ、前記エラストマージャケット、前記制御ユニット、及び前記バッテリー装置を包囲するハウジングとを備える、モバイル型陰圧創傷治療(NPWT)装置。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル型陰圧創傷治療(NPWT)装置であって:
創傷部位と流体流れ接続する入口と;
前記創傷部位から液体を収集するために前記入口と流体流れ接続するキャニスタと;
前記キャニスタ内の負圧を確立するために、前記キャニスタに流体流れ接続するポンプ入口と、当該ポンプを通って輸送される空気の出力のためのポンプ出口と、を有するポンプケーシング、を備えるポンプと;
前記ポンプを少なくとも部分的に包囲するエラストマージャケットであって、前記エラストマージャケットは、前記ポンプ出口によって出力される空気を受けるように配置された第1先端部と、前記第1先端部と離間し、前記ポンプ出口によって出力される前記空気を排出するための第2先端部とを有し、前記第2先端部へ続く通路が通る流路を画定するように構成される、エラストマージャケットと;
前記モバイル型NPWT装置の動作を制御する制御ユニットと;
前記モバイル型NPWT装置に電力を供給するバッテリー装置と、少なくとも前記ポンプ、前記エラストマージャケット、前記制御ユニット、及び前記バッテリー装置を包囲するハウジングと、を備える、モバイル型NPWT装置。
【請求項2】
前記流路が前記エラストマージャケット及び前記ポンプケーシングの組み合わせによって画定される、請求項1に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項3】
前記エラストマージャケットの内側は、前記ポンプケーシングと接触する第1表面部分と、前記ポンプケーシングから離間する第2表面部分とを有するように構成され、前記第2表面部分は、前記ポンプケーシングとともに前記流路を画定する、請求項3に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項4】
前記流路の断面積が前記ポンプ出口の断面積より小さい、請求項1~3のうちいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項5】
前記流路が、前記流路の前記第1先端部から前記流路の前記第2先端部まで少なくとも5mm延在している、請求項1~4のうちいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項6】
前記流路が、前記流路の前記第1先端部から前記流路の前記第2先端部までの非直線経路に沿って延在している、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項7】
前記流路は、前記流路の前記第1先端部から前記流路の前記第2先端部まで蛇行経路を形成する、請求項6に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項8】
前記流路が、前記流路の前記第1先端部に隣接する第1最大断面積を有する第1流路部分、前記流路の前記第2先端部に隣接する第2最大断面積を有する第2流路部分、及び前記第1流路部分と前記第2流路部分との間の第3流路部分を有し、前記第3流路部分は、前記第1断面積及び前記第2断面積よりも大きい最大断面積を有する、請求項1~7のうちいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項9】
前記エラストマージャケットは、ポリウレタン、EPDM、又はシリコーンゴムで作られている、請求項1~8のうちいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項10】
前記ポンプが隔膜ポンプである、請求項1~9のうちいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項11】
前記制御ユニットは:
前記バッテリー装置の供給電圧を示す測定値を取得し;
取得された測定値に基づいて、前記ポンプに供給される電圧を、前記供給電圧より低い一定の平均電圧になるように制御するように構成されている、請求項1~10のうちいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項12】
前記制御ユニットは、パルス幅変調を使用して、前記一定の平均電圧になるように、前記ポンプに供給される電圧を制御するように構成される、請求項11に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項13】
陰圧創傷治療(NPWT)システムであって:
創傷部位に配置され、負圧を確立するためのチャンバであって、出口を有するチャンバと;
請求項1~12のうちいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置と;
前記チャンバの前記出口と前記モバイル型NPWT装置の入口を接続する管類と、を有する、NPWTシステム。
【請求項14】
前記チャンバは、さらに、フィルタを通して周囲と流れ接続し、前記チャンバ内への空気の連続的な漏出を提供する入口を有する、請求項13に記載のNPWTシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル型陰圧創傷治療(NPWT)装置、及び当該モバイル型NPWT装置を含むNPWTシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
陰圧創傷治療(NPWT)は、陰圧ポンプを用いて、創傷に負の(すなわち、準大気圧(sub-atmospheric))圧力を加えることにより、例えば、手術創、急性創傷、慢性創傷の治癒を促進する技術である。NPWT法は創傷の外乱を少なくし、余剰の体液を創傷部位から離れるように輸送する。一般的に、NPWT技術はこれまで主に病院環境で適用されてきた。しかし、最近の製品開発により、家庭環境でこの技術を使用することが可能になっている。
【0003】
ユーザがNPWTの恩恵を受けやすく、より快適にするために、モバイル型NPWT装置が開発されている。このようなNPWT装置が十分に持ち運び可能であるためには、小型で軽量である必要がある。小型で軽量なNPWT装置に対するこの要求は、モバイル型NPWT装置によって放射される音を、モバイル型NPWT装置のユーザに対して十分に目立たない状態に保つことを困難にする。
【発明の概要】
【0004】
改良されたモバイル型NPWT装置、特により静粛なモバイル型NPWT装置を提供することが本発明の目的である。
【0005】
したがって、本発明によれば、創傷部位と流体流れ接続する入口と、創傷部位から液体を収集するために前記入口と流体流れ接続するキャニスタと、前記キャニスタ内に負圧を確立するために前記キャニスタに流体流れ接続するポンプ入口と、ポンプを通って輸送される空気を出力するためのポンプ出口と、を有するポンプケーシングを備えるポンプと、前記ポンプを少なくとも部分的に包囲するエラストマージャケットであって、前記ポンプ出口によって出力される空気を受けるように配置された第1先端部と、前記第1先端部と離間し、前記ポンプ出口によって出力される前記空気を排出するための第2先端部とを有し、前記第2先端部へ続く通路が通る流路を画定するように構成される前記エラストマージャケットと、前記モバイル型NPWT装置の動作を制御する制御ユニットと、前記モバイル型NPWT装置に電力を供給するバッテリー装置と、少なくとも前記ポンプ、前記エラストマージャケット、前記制御ユニット、及び前記バッテリー装置を包囲するハウジングとを備える、モバイル陰圧創傷治療(NPWT)装置が提供される。
【0006】
本発明は、特に、創傷部位における制御された連続的な空気の漏れを有するNPWTシステムに含まれる移動NPWT装置に関して、ポンプからのノイズは、ユーザの利便性及び快適性のための最も重要な要素の1つであるという認識に基づいている。本発明者は、更に、従来の消音器又はマフラーが、モバイル型NPWT装置で使用するには大きすぎること、及び、ポンプにより出力される空気のための流路を画定するように構成されたエラストマージャケットでポンプケーシングを少なくとも部分的に囲むことにより、良好な消音を達成できることを認識した。
【0007】
このようなエラストマージャケットは、ポンプの振動によって引き起こされるノイズ、並びにポンプ出口からの空気の流れによって運ばれる音響ノイズを減衰する二重の機能を提供することができる。流路の寸法決めによる既知のマフラー原理を本質的に使用して達成することが可能な減衰に加えて、エラストマージャケットの原料は音響エネルギーを吸収し、音の減衰に寄与する。
【0008】
様々な態様において、エラストマージャケットは、流路が少なくとも部分的にエラストマージャケットとポンプケーシングによって画定されるように構成されてもよい。これらの実施形態は、より小型なソリューションを提供し、エラストマージャケットの製造を容易にすることができる。
【0009】
エラストマ性ジャケットの内側は、有利には、ポンプケーシングと接触する第1表面部分と、ポンプケーシングから離間された第2表面部分とを有するように構成してもよく、第2表面部分は、ポンプケーシングと共に流路を画定する。
【0010】
様々な態様によれば、さらに、流路の最小断面積は、ポンプ出口の断面積よりも小さくてもよい。従って、ポンプ出口によって出力される空気の圧力を制御して減少させることができ、これによりノイズの強度を減少させることができる。流路の少なくとも一部は、徐々に増加する断面積を示すことがある。
【0011】
流路は、流路の第1先端部から流路の第2先端部まで少なくとも5mm延在してもよい。さらに好ましくは、流路は少なくとも10mm伸長し得、これにより、流路断面積に対する許容誤差の要件がさらに緩くなり、エラストマージャケットの製造を容易にするであろう。
【0012】
流路は、流路の第1先端部から流路の第2先端部まで、好ましくは蛇行経路に沿って非直線経路に沿って延在してもよい。非直線形状は、流路による圧力低減を向上し、より緩やかにすることができる。
【0013】
様々な態様によれば、流路は、流路の第1先端部に隣接する第1最大断面積を有する第1流路部分と、流路の第2先端部に隣接する第2最大断面積を有する第2流路部分と、第1流路部分と第2流路部分との間の第3流路部分とを有してもよく、第3流路部分は、第1断面積及び第2断面積よりも大きい最大断面積を有する。これらの実施形態では、ポンプによって出力される圧縮空気の膨張は、エラストマージャケットにより規定された空間内で行われるように制御することができ、これにより、エラストマージャケットが、圧縮空気によって運ばれるエネルギーを吸収するように変形することが可能になり、ポンプからのノイズを減衰させるのにさらに寄与する。
【0014】
本発明によるモバイル型NPWT装置の実施形態では、制御ユニットは、バッテリー装置の供給電圧を示す測定値を取得するように構成されてもよく、取得された測定値に基づいて、ポンプに供給される電圧を、供給電圧よりも低い一定の平均電圧になるように制御する。
【0015】
音の減衰に加えて、携帯型NPWTをユーザに更に目立たなくする要素は、放射された音の均一性又は不変性であることを見出した。周波数が変化する放出音は、実質的に一定の周波数の音よりも目立つ場合がある。
【0016】
NPWT装置は、キャニスタ内の圧力を感知するように配置された圧力センサを含んでもよい。NPWTのこのような実施形態では、圧力センサは、キャニスタ内の圧力を直接感知するように配置される必要はないが、圧力センサは、感知された圧力がキャニスタ内の圧力を示す、NPWT装置内の別の位置で圧力を感知するように配置されてもよいことに留意されたい。さらに、圧力センサは、圧力の変化を推測することができる力又は撓みなどの別の特性を感知することができる。
【0017】
本発明の実施形態によるモバイル型NPWT装置は、陰圧創傷治療(NPWT)システムに含めてもよく、更に、負圧の確立のために創傷部位に配置されるチャンバを含み、前記チャンバは出口を有し、且つチャンバの出口とNPWT装置の入口とを接続する管類を有する。
【0018】
要約すると、本発明は、入口と、前記入口と流体流れ接続されたキャニスタと、前記キャニスタ内に負圧を確立するための前記キャニスタに流体流れ接続されたポンプ入口と、当該ポンプを通って輸送される空気を出力するためのポンプ出口と、を有するポンプケーシングを備えるポンプと、前記ポンプを少なくとも部分的に包囲するエラストマージャケットであって、前記ポンプ出口によって出力される空気を受けるように配置された第1先端部と、前記第1先端部から離間し、前記ポンプ出口によって出力される前記空気を排出するための第2先端部とを有し、前記第2先端部へ続く通路が通る流路を画定するように構成される前記エラストマージャケットと、前記モバイル型NPWT装置の動作を制御する制御ユニットと、前記モバイル型NPWT装置に電力を供給するためのバッテリー装置と、少なくとも前記ポンプ、前記エラストマージャケット、前記制御ユニット、及び前記バッテリー装置を包囲するハウジングとを備える、モバイル型陰圧創傷治療(NPWT)装置に関する。
【0019】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、ここで、本発明の実施形態を示す添付図を参照して、より詳細に記述されるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態による例示的なモバイル型NPWTシステムの例示である;
図2図2は、ポンプ及びエラストマージャケットを示すために、ハウジング壁が部分的に除かれた、本発明の実施形態によるNPWT装置の側面図である;
図3図3は、図2のNPWT装置に含まれるポンプ及びエラストマージャケットの実施例の斜視図であり;
図4A図4A図4Bは、ポンプ及びエラストマージャケットの構成例について、ポンプを通る空気の流れ及びエラストマージャケットによって画定される流路を模式的に示す;
図4B図4A図4Bは、ポンプ及びエラストマージャケットの構成例について、ポンプを通る空気の流れ及びエラストマージャケットによって画定される流路を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、現在のところ好ましい本開示の実施形態が示されている添付の図を参照して、以下でより完全に説明される。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に示された実施形態に限定されて解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、徹底及び完全性のために提供され、本開示の技術的範囲を当業者に完全に伝えるものである。同様の参照文字は、全体を通して同じ要素を示す。
【0022】
図面及び特に図面1を参照して、本発明の実施形態に従って、モバイル型NPWT装置3を含む、陰圧創傷治療(NPWT)システム1を概念的に図示する。NPWTシステム1はさらに、創傷部位に配置されたチャンバ6を有する創傷カバー5を含む。チャンバ6を含む創傷カバー5は、ユーザの皮膚などの創傷面9によって一部に画定される密閉空間7をユーザの創傷部又はその周囲に作成するように適合している。図1に概略的に示すように、チャンバ6は、入口8及び出口10を有する。チャンバ6の出口10は、チューブ11を用いてモバイル型NPWT装置3に流れ接続され、チャンバ6の入口8は、チャンバ6内への空気の連続的な漏出を提供するために、フィルタ(図1では見えない)を通して周囲(ユーザの周囲の空気)と流れ接続されている。チューブ11は、エラストマー及び/又はポリマー材料から製造される任意の適切な柔軟なチューブであってもよい。
【0023】
図1に概略的に示されているように、NPWT装置3は、陰圧ポンプ13が作動するように制御されるときに負圧を確立するようになっている陰圧ポンプ13を備えている。陰圧ポンプ13は、生体適合性であり、適切かつ治療的な陰圧レベルを維持又は引き出す任意のタイプのポンプであってもよい。好ましくは、達成すべき陰圧レベルは、約-2666.5Pa(-20mmHg)~約-39996.7Pa(-300mmHg)の範囲でよい。本開示の可能な実施形態では、約-10665.8Pa(-80mmHg)~約-18665.1Pa(-140mmHg)の陰圧範囲を用いてもよい。本発明の可能な実施形態では、陰圧ポンプ13は、横隔膜タイプ又は蠕動タイプのポンプである。
【0024】
陰圧ポンプ13はキャニスタ15に流体流れ接続されており、キャニスタ15もNPWT装置3の一部を形成する。キャニスタ15は、例えば、成形プラスチック等から形成することができ、NPWT装置3の着脱可能な構成要素であってもよい。キャニスタ15の残存容量を測定する際にユーザを補助するために、キャニスタ15の内部を観察することができるように、キャニスタ15が少なくとも部分的に透過/半透過であることが好ましい。
【0025】
キャニスタ15には、チューブ11への接続を可能にするための入口ポート17が形成されている。入口ポート17は、しかしながら、キャニスタ15に流体的に接続されたままで、NPWT装置3の別の場所に形成することもできる。入口ポート17とチューブ11との間の接続は密閉接続であり、したがって、NPWT装置3の通常動作中に入口ポート17に漏れが形成されないことが保証される。チューブ11は、摩擦嵌め、差込み継手、スナップ嵌め、係止爪付コネクタ等を含む従来の手段を介して、入口ポート17に取り外し可能に接続されることが好ましい。入口ポート17は、キャニスタ15を形成すると同時に、及び/又は同じ材料から成形/形成され得る。同様の密閉接続(例えば、フランジ絶縁体/「Oリング」を使用する)が、キャニスタ15と陰圧ポンプ13との間に形成されてもよい。
【0026】
NPWT装置3は、NPWT装置3に電力を供給するためのバッテリー19をさらに備える。バッテリー19は、好ましくは、充電可能なタイプのものであってもよいが、代わりに使い捨てもよい。特別に適合されたバッテリーパックは、本開示のいくつかの実施形態に関連して使用され得る。
【0027】
また、NPWT装置3は、移動NPWT装置3の動作を制御するための制御ユニット21と、キャニスタ15内の圧力を感知するように配置された少なくとも1つの圧力センサ23と、ユーザフィードバック及び/又は警告を提供するためのスピーカ24とを備える。
【0028】
バッテリー19によって動力を与えられ、ポンプ13、圧力センサ23、及びスピーカ24に結合される制御ユニット21は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラム可能なデジタル信号プロセッサ、又は別のプログラム可能な装置を含んでもよい。また、制御ユニット21も同様に、あるいはその代わりに、特定用途向け集積回路、プログラム可能なゲートアレイ又はプログラム可能なアレイ論理、プログラム可能な論理デバイス、又はデジタル信号プロセッサを含んでもよい。制御ユニット21が、上述のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又はプログラム可能なデジタル信号プロセッサ等のプログラム可能な装置を含んでいる場合、プロセッサはさらに、プログラム可能な装置の動作を制御するコンピュータ実行可能なコードを含んでいてもよい。
【0029】
NPWT装置3の使用中、使用者の創傷部位に創傷カバー5が配置され、密閉空間7が形成される。チューブ11は、創傷カバー5内のチャンバ6の出口10をNPWT装置3の入口ポート17に流体的に接続するために設けられている。治療を開始するために、モバイル型NPWT装置3は、次いで、開始/一時停止ボタン(図1には示されていない)を押すことにより、ユーザによって、例えば、起動されることがある。治療処置を開始するためのこの要求に応えて、制御ユニット21は、陰圧ポンプ13を作動するように制御してもよい。作動時には、陰圧ポンプ13は、キャニスタ15、入口ポート17、チューブ11、及びチャンバ6によって形成された密閉空間7を通して、創傷カバー5内で空気を排気し始めるであろう。したがって、密閉空間7内に負圧が生じることになる。創傷部位に液体が形成されている場合、創傷部位からのこの液体は、チャンバ6の入口8によって提供される連続的な限定された漏出により、創傷部位から、チューブ11、入口ポート17を通って、キャニスタ15内に少なくとも部分的に「引き出される」ことができる。創傷から採取してキャニスターに採取する液体(滲出液と呼ばれることもある)の量は、治療する創傷のタイプ使用する創傷被覆材の種類によって異なる。例えば、吸収性の被覆材が使用される場合、液体は、キャニスター及び創傷被覆材の両方に吸収され、収集されてもよく、一方、吸収能力がないか又はほとんどない被覆材が使用される場合、創傷部位からの液体の大部分又はすべてがキャニスターに収集されてもよい。キャニスタ15から陰圧ポンプ13に液体が通過しないことを確実にするために、キャニスタ15と陰圧ポンプ13との間に適当なフィルタ部材(図1には示されていない)を配置してもよい。
【0030】
図2は、本発明の実施形態によるNPWT装置3の側面図である。図1を参照して前述したように、NPWT装置3はポンプ13を備える。ノイズ抑制のために、NPWT装置3はさらに、ポンプ13を少なくとも部分的に封入するエラストマージャケット25を含む。エラストマージャケット25の構成例、及びポンプ13との関係については、図3、及び図4A~Bを参照して、以下により詳細に説明する。
【0031】
まず、図2のNPWT装置3に含まれるポンプ13及びエラストマージャケット25の一例の斜視図である図3を参照すると、ポンプ13は、ポンプ入口29及びポンプ出口31を有するポンプケーシング27を有する。図2に概略的に示されているように、ポンプ入口29は、キャニスタ15内に負圧を確立するためにキャニスタ15と流体流れ接続している。ポンプ13を通って輸送された空気は、ポンプ出口31を通って出力される。
【0032】
図3に見られるように、エラストマージャケット25は、少なくとも部分的にポンプ13を封入し、流路33を規定するように構成されており、これは、図3に部分的に見ることができる。
【0033】
図3及び図4A~Bの構成例では、ポンプケーシング27は、実質的に扁平な外壁を有し、流路33は、エラストマージャケット25及びポンプケーシング27の組み合わせによって画定される。
【0034】
特に、図4Aで最もよく見られるように、エラストマージャケット25の内側表面は、ポンプケーシング27と接触している第1表面部分35とポンプケーシング27とは離れている第2表面部分37を有するように構造化されている。第2表面部分37は、ケーシング27とともに流路33を画定する。
【0035】
図4A~Bは、エラストマージャケット25によって画定される流路33の一例の構成を示すのに加えて、ポンプ13が作動しているときのポンプ13及び流路33を通る空気の流れを模式的に示す。図4Aは、ポンプ13の出口31を介してキャニスタ15の出口から流路33の第1先端部39までの空気の流れの第1の部分を示し、図4Bは、流路33の第1先端部39から流路33の第2先端部41までの空気の流れの第2の部分を示す。
【0036】
まず図4Aを参照すると、ポンプ13は、作動中、キャニスタ15(図4Aには示されていない)の出口から図4Aのブロック矢印で示された空気をポンプ13の入口29に吸い込み、上述したように、キャニスタ15内に負圧を確立する。空気は、多数の、それ自体公知の空気輸送機構の1つを用いてポンプ13を通って輸送され、ポンプ出口31を通って出力される。ポンプ出口31に接続されており、エラストマージャケット25は、ポンプ出口31を通して出力された空気を受け入れ、方向を変えるための略ドーム形状のリザーバ43を備えている。図4Aに概略的に示されるように、リザーバ43は、流路33の第1先端部39に流体流れ接続されている。
【0037】
次に図4Bを参照すると、流路33が非直線経路に沿ってどのように延在して、ポンプ出口31からの空気の出力を第1先端部39から流路33の第2先端部41に導くかが分かる。ダイヤフラムポンプのような種々の種類の適当なポンプの型13に対して、空気は定常流ではポンプ出口31では出力されず、加圧空気の噴出で出力される。流路33に沿って、空気はまず徐々に減圧され、次いで集められ、より定常的な流れとして流路33の第2先端部41を通って流出することができる。このことが、ユーザによって知覚されるポンプのノイズの実質的な縮小をもたらすことを、試験は明らかにした。
【0038】
これを達成するために、流路33は、流路33の第1先端部39に隣接する第1最大断面積を有する第1流路部分45と、流路33の第2先端部41に隣接する第2最大断面積を有する第2流路部分47と、第1流路部分45と第2流路部分47との間の第3流路部分49とを有することができる。第3流路部分の最大断面積は、第1流路部分45の第1最大断面積及び第2流路部分47の第2最大断面積よりも大きい。有利には、さらに、第1流路部分の断面積は、流路33の第1先端部39からの距離の増加とともに徐々に増加してもよく、第2流路部分47の断面積は、流路33の第2先端部41までの距離の減少とともに徐々に減少してもよい。
【0039】
流路33は、第1先端部39から第2先端部41まで少なくとも5mm延在してもよく、第1先端部39から第2先端部41まで少なくとも10mm延在するように流路33を設計することは有益であり得る。流路33の長さをより長くすることにより、流路33の断面積(幅及び深さ)に関する許容誤差の要件を緩和することができ、これにより、生産が簡素化され、より均一な性能が得られる。
【0040】
エラストマージャケットに適した材料の例としては、ポリウレタン、EPDM、及びシリコーンゴムが挙げられ得る。
【0041】
流路33の他の多くの構成が可能であることに注意すべきである。例えば、流路はエラストマージャケット25の1つ以上の壁の構造内部に延在してもよい。図4Bに示される例示的な経路以外の他の経路の選択も可能であり、そのような経路の選択は、ポンプの種類、流路33を通る空気の意図された流れ、及びNPWT装置3の一般的な構成などの様々な要因に応じて有益であり得る。
【0042】
音の減衰に加えて、携帯型NPWTをユーザにとってより目立たないようにする要因は、放射された音の均一性又は不変性であることが見出された。周波数が変化する放出音は、実質的に一定の周波数の音よりも目立つ場合がある。
【0043】
バッテリー19が放電状態になると、バッテリー電圧は次第に低下する。バッテリー電圧でポンプ13に直接電力を供給することは、ポンプ13が発する音の周波数に対応する変化をもたらすであろう。
【0044】
ポンプ13によって発せられる音の周波数のこのような変化を排除するか、又は少なくとも減少させるために、制御ユニット21は、バッテリー19の供給電圧を示す測定値を取得し;そして取得された測定値に基づいて、ポンプ13に供給される電圧を、供給電圧より低い一定の平均電圧になるように制御するように構成されてもよい。
【0045】
これは、それ自体既知の、パルス幅変調、又は当該技術分野で公知の他の任意の適切な技術を用いて有利に達成され得る。
【0046】
請求項において、「含む」という単語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、また、不定物品「a」又は「an」は、複数を排除するものではない。ある手段が相互に異なる従属項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示しているわけではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
【手続補正書】
【提出日】2022-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル型陰圧創傷治療(NPWT)装置であって:
創傷部位と流体流れ接続する入口と;
前記創傷部位から液体を収集するために前記入口と流体流れ接続するキャニスタと;
前記キャニスタ内の負圧を確立するために、前記キャニスタに流体流れ接続するポンプ入口と、当該ポンプを通って輸送される空気の出力のためのポンプ出口と、を有するポンプケーシング、を備えるポンプと;
前記ポンプを少なくとも部分的に包囲するエラストマージャケットであって、前記エラストマージャケットは、前記ポンプ出口によって出力される空気を受けるように配置された第1先端部と、前記第1先端部と離間し、前記ポンプ出口によって出力される前記空気を排出するための第2先端部とを有し、前記第2先端部へ続く通路が通る流路を画定するように構成される、エラストマージャケットと;
前記モバイル型NPWT装置の動作を制御する制御ユニットと;
前記モバイル型NPWT装置に電力を供給するバッテリー装置と、少なくとも前記ポンプ、前記エラストマージャケット、前記制御ユニット、及び前記バッテリー装置を包囲するハウジングと、を備える、モバイル型NPWT装置。
【請求項2】
前記流路が前記エラストマージャケット及び前記ポンプケーシングの組み合わせによって画定される、請求項1に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項3】
前記エラストマージャケットの内側は、前記ポンプケーシングと接触する第1表面部分と、前記ポンプケーシングから離間する第2表面部分とを有するように構成され、前記第2表面部分は、前記ポンプケーシングとともに前記流路を画定する、請求項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項4】
前記流路の断面積が前記ポンプ出口の断面積より小さい、請求項1~3のうちいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項5】
前記流路が、前記流路の前記第1先端部から前記流路の前記第2先端部まで少なくとも5mm延在している、請求項1~4のうちいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項6】
前記流路が、前記流路の前記第1先端部から前記流路の前記第2先端部までの非直線経路に沿って延在している、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項7】
前記流路は、前記流路の前記第1先端部から前記流路の前記第2先端部まで蛇行経路を形成する、請求項6に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項8】
前記流路が、前記流路の前記第1先端部に隣接する第1最大断面積を有する第1流路部分、前記流路の前記第2先端部に隣接する第2最大断面積を有する第2流路部分、及び前記第1流路部分と前記第2流路部分との間の第3流路部分を有し、前記第3流路部分は、前記第1断面積及び前記第2断面積よりも大きい最大断面積を有する、請求項1~7のうちいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項9】
前記エラストマージャケットは、ポリウレタン、EPDM、又はシリコーンゴムで作られている、請求項1~8のうちいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項10】
前記ポンプが隔膜ポンプである、請求項1~9のうちいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項11】
前記制御ユニットは:
前記バッテリー装置の供給電圧を示す測定値を取得し;
取得された測定値に基づいて、前記ポンプに供給される電圧を、前記供給電圧より低い一定の平均電圧になるように制御するように構成されている、請求項1~10のうちいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項12】
前記制御ユニットは、パルス幅変調を使用して、前記一定の平均電圧になるように、前記ポンプに供給される電圧を制御するように構成される、請求項11に記載のモバイル型NPWT装置。
【請求項13】
陰圧創傷治療(NPWT)システムであって:
創傷部位に配置され、負圧を確立するためのチャンバであって、出口を有するチャンバと;
請求項1~12のうちいずれか一項に記載のモバイル型NPWT装置と;
前記チャンバの前記出口と前記モバイル型NPWT装置の入口を接続する管類と、を有する、NPWTシステム。
【請求項14】
前記チャンバは、さらに、フィルタを通して周囲と流れ接続し、前記チャンバ内への空気の連続的な漏出を提供する入口を有する、請求項13に記載のNPWTシステム。
【国際調査報告】