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特表2023-525935APIの安全な投与のための経口フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】APIの安全な投与のための経口フィルム
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20230612BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 23/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 31/60 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 31/515 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 31/4174 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20230612BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
A61K9/70
A61P29/02
A61P25/30
A61P25/20
A61P25/22
A61P23/00
A61P25/00
A61P3/00
A61P43/00 111
A61P21/00
A61P23/02
A61P25/04
A61P25/24
A61P25/08
A61P29/00
A61P25/06
A61P3/10
A61P7/00
A61P17/00
A61P3/06
A61K45/00
A61K38/22
A61K38/28
A61K47/30
A61K31/4545
A61K31/573
A61K31/60
A61K31/515
A61K31/5513
A61K31/4174
A61K31/05
A61K31/135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571188
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2021063311
(87)【国際公開番号】W WO2021234008
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】20175523.8
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522452684
【氏名又は名称】ラブテク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ルベノフ, ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】ニーゼ, スヴェンヤ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】エルンスト, ステフェン
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ, エーファ ザスキア マライケ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA89
4C076BB22
4C076CC01
4C076CC05
4C076CC14
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC30
4C076DD22
4C076DD22Z
4C076DD30
4C076DD30Z
4C076DD38
4C076EE09
4C076EE09A
4C076EE16
4C076EE16A
4C076EE23
4C076EE23A
4C076EE30
4C076EE30A
4C076EE32
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4C076EE47
4C076EE47A
4C076EE48
4C076EE48A
4C076EE49
4C076EE49A
4C076FF01
4C076FF68
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4C084AA03
4C084AA17
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4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA041
4C084ZA042
4C084ZA051
4C084ZA052
4C084ZA061
4C084ZA062
4C084ZA081
4C084ZA082
4C084ZA121
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4C084ZA891
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4C086NA07
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4C206NA06
4C206NA07
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4C206ZA06
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4C206ZA89
4C206ZA94
4C206ZB11
4C206ZC03
4C206ZC33
4C206ZC35
4C206ZC39
4C206ZC41
(57)【要約】
本発明は、鎮痛薬、弛緩薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、麻薬、麻酔薬、ならびに/または末梢神経および/もしくは中枢神経への効果を有する他の医薬品有効成分(API)などのAPIの投与のための、特に、疼痛、代謝障害、および中枢神経系(CNS)の疾患の処置での使用のための、経口フィルムの投薬単位に関する。より具体的には、本発明は、過剰投与などの誤用および乱用に陥りやすい弛緩薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、麻薬、麻酔薬、および/または鎮痛薬を含む経口フィルムの投薬単位に関する。より具体的には、本発明は、プロポフォールを含む経口フィルムの投薬単位に関する。さらなる態様では、本発明は、片頭痛を患っている対象の処置での使用のための、プロポフォールを含む経口フィルムの投薬単位に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品有効成分(API)を含む、対象、好ましくはヒト対象における疾患の処置での使用のための粘膜付着性経口フィルムの投薬単位であって、前記対象の口のすべての非角化部分を複数の前記投薬単位で覆う場合に前記APIの毒性効果が防止されるように、前記APIの用量が選択されることを特徴とする、投薬単位。
【請求項2】
前記対象が、完全に成長したヒト対象および完全には成長していないヒト対象の群から選択され、
a.完全に成長したヒト対象で、前記口の前記非角化部分が、約150cm、約130cm、約110cmの面積を有するか、または
b.完全には成長していないヒト対象で、前記口の前記非角化部分が、最大150cm、最大130cm、最大110cmの面積、好ましくは、45~150cm、45~130cm、45~110cmの面積を有することを特徴とする、
請求項1に記載の投薬単位。
【請求項3】
前記APIが、ホルモン、特定のプロテオホルモン、代謝調節剤、成長因子、内因性ペプチド類似体、精神医学的薬品、同化剤、ベータ2アゴニスト、幻覚薬、筋弛緩薬、鎮痛薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、および/または麻酔薬の群から選択されることを特徴とする、請求1および2のいずれか1項または複数項に記載の投薬単位。
【請求項4】
鎮痛薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、および/または麻酔薬が、トリプタン、ラスミジタンなどのジタン、NSAID、グルココルチコイドステロイド、サリチレートおよび誘導体、フェニル酢酸誘導体、2-フェニルプロピオン酸誘導体、4-アミノフェノール誘導体、ピラゾロン、選択的COX2阻害薬、抗うつ薬、抗けいれん薬、オピオイド、筋弛緩薬、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、エトミデート、ケタミン、プロポフォール、抗ヒスタミン薬、または局所麻酔薬の群から選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項または複数項に記載の投薬単位。
【請求項5】
ホルモン、特にプロテオホルモンが選択され、前記代謝障害が、酸塩基不均衡、代謝性脳疾患、カルシウム代謝障害、DNA修復欠損障害、グルコース代謝障害、高乳酸血症、鉄代謝障害、脂質代謝障害、吸収不良症候群、メタボリックシンドロームX、先天性代謝異常症、ミトコンドリア病、リン代謝障害、ポルフィリン症、タンパク質恒常性欠損、代謝性皮膚疾患、消耗症候群、および水電解質不均衡の群から選択されることを特徴とする、代謝障害を処置することを必要とする対象、好ましくはヒト対象における代謝障害の処置での使用のための、請求項3に記載の投薬単位。
【請求項6】
前記APIが、プロテオホルモン、特にインスリンであり、前記疾患が、グルコース代謝障害、特に糖尿病として選択されることを特徴とする、請求項5に記載の投薬単位。
【請求項7】
神経系疾患を処置することを必要とする対象、好ましくはヒト対象における神経系疾患の処置での使用のための、請求項1から4のいずれか1項または複数項に記載の投薬単位。
【請求項8】
前記神経系疾患が、一次性頭痛、好ましくは片頭痛であることを特徴とする、請求項7に記載の投薬単位。
【請求項9】
前記一次性頭痛が、前兆を伴わない片頭痛、前兆を伴う片頭痛、頭痛なしで前兆を伴う片頭痛、頭痛ありで前兆を伴う片頭痛、脳幹性前兆を伴う片頭痛、片麻痺性片頭痛、網膜性片頭痛、慢性片頭痛、小児片頭痛、月経片頭痛、難治性片頭痛、治療抵抗性片頭痛、または急性錯乱性片頭痛(ACM)から選択される片頭痛として選択されることを特徴とする、請求項7から8のいずれか1項または複数項に記載の投薬単位。
【請求項10】
少なくとも1cm、少なくとも2cm、少なくとも3cm、少なくとも4cm、少なくとも5cm、少なくとも6cm、少なくとも7cm、少なくとも8cm、少なくとも9cm、少なくとも10cm、少なくとも11cm、または少なくとも12cm、好ましくは少なくとも6cmの範囲から選択される面積を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項または複数項に記載の投薬単位。
【請求項11】
前記APIの用量が、治療量以下の用量で選択されること、治療用量の、好ましくは1/10以下、より好ましくは1/35以下で選択されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項または複数項に記載の投薬単位。
【請求項12】
前記投薬単位が滞留時間を有し、前記滞留時間が、前記APIの全身半減期と少なくとも同じ長さになるように選択されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項または複数項に記載の投薬単位。
【請求項13】
前記投薬単位を製造するための組成物の感覚受容特色が、前記投薬単位の味をマスキングしないことを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項または複数項に記載の投薬単位。
【請求項14】
前記投薬単位を製造するための前記組成物が、香味剤および/または甘味剤を本質的に含まないことを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項または複数項に記載の投薬単位。
【請求項15】
前記投薬単位の前記フィルムを製造するための前記組成物が、
a.最大95重量%、最大90重量%、最大80重量%、最大70重量%、または最大60重量%の溶媒と、
b.最大35重量%、最大30重量%、最大25重量%、または最大25重量%のポリマーと、
c.最大30重量%、最大20重量%、最大10重量%、または最大5重量%のAPIと、
d.必要に応じて、最大15重量%、最大10重量%、または最大5重量%の可塑剤と
を含み、
好ましくは、前記ポリマーが親水性ポリマーであることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項または複数項に記載の投薬単位。
【請求項16】
前記投薬単位の前記フィルムを製造するための前記組成物が、
a.固形分の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%(w/w)のポリマーと、
b.固形分の最大30%、好ましくは最大25%、より好ましくは最大20%(w/w)の可塑剤と、
c.固形分の最大25%、好ましくは22.5%、より好ましくは最大20%(w/w)のAPIとしてのプロポフォールと
を含み、
好ましくは、前記ポリマーが親水性ポリマーであることを特徴とする、片頭痛の処置での使用のための、請求項1から15のいずれか1項または複数項に記載の投薬単位。
【請求項17】
前記APIがプロポフォールとして選択され、投薬量が治療鎮静用量の1/10以下で選択され、滞留時間が少なくとも1分であり、前記投薬単位の面積が少なくとも6cmであり、前記投薬単位を製造するための前記組成物が香味剤および甘味剤を本質的に含まないことを特徴とする、片頭痛の処置での使用のための、請求項1から16のいずれか1項または複数項に記載の投薬単位。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、鎮痛薬、弛緩薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、麻薬、麻酔薬、ならびに/または末梢神経および/もしくは中枢神経への効果を有する他の医薬品有効成分(API)などのAPIの投与のための、特に、疼痛、代謝障害、および中枢神経系(CNS)の疾患の処置での使用のための、経口フィルムの投薬単位に関する。より具体的には、本発明は、過剰投与などの誤用および乱用に陥りやすい弛緩薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、麻薬、麻酔薬、および/または鎮痛薬を含む経口フィルムの投薬単位に関する。より具体的には、本発明は、プロポフォールを含む経口フィルムの投薬単位に関する。
【0002】
さらなる態様では、本発明は、片頭痛を患っている対象の処置での使用のための、プロポフォールを含む経口フィルムの投薬単位に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
鎮痛薬、麻酔薬、麻薬、鎮静薬、催眠薬、抗不安薬、またはホルモンなどの医薬品有効成分(API)は、強力な治療効果を及ぼし、誤用、乱用、嗜癖の発生、特に過剰投与の恐れがあるため、そのようなAPIは、通常、臨床現場で、または訓練を受けた医療従事者によって投与される。これらのAPIは、代謝障害、神経系の疾患、疼痛、およびそれらの組合せを含む疾患の処置および管理において、組合せでも投与されることが頻繁である。全身効果を達成するために、これらのAPIは、多くの場合、注射または注入によって投与される。APIの全身投与の別の経路は経口投与であるが、これは、口腔または胃腸管の環境によってAPIが不活性化され得る、または血液循環への再吸収が不十分もしくは大幅な時間の遅れを伴って生じ得ることから、あらゆるAPIに適しているわけではない。
【0004】
同様に、代謝障害またはCNS疾患の関連で投与されるAPIは、ホルモンおよび酵素などの巨大分子を含む。これらのAPIは、誤用、乱用、嗜癖の発生、および過剰投与の恐れがあり得る。そのため、これらのAPIは、臨床現場で、または訓練を受けた医療従事者による採用後に投与されることが頻繁である。
【0005】
薬物の剤形は、錠剤、カプセル剤、または液剤などの、その薬物製品の物理的特徴である。様々な剤形が、ある特定の投与経路に適している。剤形は、API、および賦形剤、充填剤、香味料、保存剤、乳化剤などの他の成分を含有する。粘膜付着特性を有する口腔内崩壊フィルム(ODF)および経口フィルムは、従来の剤形からの代替的な剤形であると考えられる。これらは、トローチ剤、発泡性錠剤、散剤、液剤製造のための顆粒剤、または経口投与のための他の固体医薬品調製物などの十分に確立された剤形とは異なる。粘膜付着特性を有するODFおよび経口フィルムは、含まれるAPIの局所送達または全身再吸収のために適用され得る。APIの一部は、通常、口腔内の粘膜で再吸収され、APIの他の部分は、APIの嚥下後に、時間の遅れを伴って胃腸管から再吸収される。ODFは、APIを迅速に提供するために、特にAPIをCNSに迅速に提供するために使用されることが頻繁である。
【0006】
潜在的に致死性であり得る、鎮痛薬、麻酔薬、麻薬、鎮静薬、催眠薬、および/またはホルモンなどの強力なAPIの過剰投与は、注射によって行われることが頻繁である。インスリンなどのホルモンまたはインターフェロンベータなどの糖タンパク質は、通例は注射によって投与される。さらに、遅延製剤を有するものを含む経口剤形は、誤用者または乱用者が砕いてから注射することが頻繁である。代替的な投与経路のための剤形は、そのような試みをより難しくする。しかしながら、誤用、乱用、非合法使用、および過剰投与は、代替的な投与経路を介しても生じる。乱用は、一般に、薬の意図的、永続的、または散発的な過剰使用であり、その結果として、身体的または心理的な損傷が伴うと考えられる(RL2011/83/EGまたはMedicinal Products Act修正第16条を参照)。薬物乱用の文脈において、APIは、快楽または自殺目的で薬物の影響を受けることを意図して消費される。乱用は、一般に、意図的に行われるが、誤用、嗜癖の発症、および過剰投与は、意図的または意図せずに生じることがある。例えば、パラセタモールの過剰投与は、欧州および米国で急性肝不全の最も頻繁な原因であり、現在、他のすべての病因の合計よりも多くの場合で、急性肝不全の原因となっている(Jaeschke H. Acetaminophen: Dose-Dependent Drug Hepatotoxicity and Acute Liver Failure in Patients. Dig Dis 2015;33:464-471; Ghanem C.I., Perez M.J., Manautou J.E., Mottino A.D., Maria J.P. Acetaminophen from liver to brain: New insights into drug pharmacological action and toxicity. Pharm. Res. 2016;109:119-131. doi: 10.1016/j.phrs.2016.02.020)。そのようなパラセタモールの過剰投与は、多くの場合、意図せずに生じる。そのため、多くのAPIは、有害または毒性効果を及ぼす用量でのそれらの投与を可能にする剤形および投薬単位の問題がある。
【0007】
これは、小児に投与されるAPIにさらにより該当する。小児は、一般に、APIの用量の選択に関して感受性がより高く、投与用量がわずかに増加しただけでも、小児に有害または毒性効果が引き起こされ得る。したがって、毒性効果を防止するために、非ヒトおよびヒトの患者、特に小児における潜在的に有害なAPIの送達を制限する必要がある。特に、単一または多数の投薬単位で適用可能な用量を制限する必要がある。
【0008】
鎮痛薬および/または麻酔薬などのAPIの送達のための異なるアプローチは、剤形を含むAPIの経口または粘膜適用を通じたものである。WO2011/061332には、口または鼻の粘膜を介してまたは吸入によって投与され得る液体製剤またはゲル剤としての、プロポフォールを含む組成物が記載されている。さらに、鎮痛薬、麻酔薬、麻薬もしくは鎮静薬、例えばトリプタンをAPIとして含む経口適用のための溶解フィルム(WO2010/062688A1またはWO2018/091473A1)またはリドカインをAPIとして含む経鼻適用のための溶解フィルム(WO2005/055977A2)が当技術分野で公知である。同様に、経口、頬側、舌下、または経皮投与のためのフィルムである、ホルモンを含む剤形の投薬単位が公知である(WO2018/208701A1)。
【0009】
したがって、一般に投与される鎮痛薬、麻酔薬、麻薬、鎮静薬、および/または催眠薬などのAPIの全身送達のための1つのアプローチは、経口溶解可能な薄いフィルムストリップを通じたものである。US2011/0269844A1には、可食であり得るプロポフォールの投与のためのまたはプロポフォールの経皮送達のための経口溶解可能な薄いフィルムストリップが記載されている。対応する可食フィルムストリップから放出されたプロポフォールは、血流中に再吸収され得る。
【0010】
しかしながら、過剰用量で投与した場合、有害または毒性効果を及ぼし得るAPIの大量の急速な送達により、活性物質の乱用および誤用、嗜癖の発症、ならびに過剰投与の潜在性が促進される。そのため、当技術分野では、前記剤形の乱用および誤用を技術的に制限することによって、含まれるAPIの乱用および誤用を防止し、非毒性用量の投与を可能にする、改善された投薬単位が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2011/061332号
【特許文献2】国際公開第2010/062688号
【特許文献3】国際公開第2018/091473号
【特許文献4】国際公開第2005/055977号
【特許文献5】国際公開第2018/208701号
【特許文献6】米国特許出願公開第2011/0269844号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Jaeschke H. Acetaminophen: Dose-Dependent Drug Hepatotoxicity and Acute Liver Failure in Patients. Dig Dis 2015;33:464-471
【非特許文献2】Ghanem C.I., Perez M.J., Manautou J.E., Mottino A.D., Maria J.P. Acetaminophen from liver to brain: New insights into drug pharmacological action and toxicity. Pharm. Res. 2016;109:119-131. doi: 10.1016/j.phrs.2016.02.020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、鎮痛薬、麻酔薬、麻薬、鎮静薬、催眠薬、および/またはホルモンなどのそれぞれのAPIの治療用量よりも高い用量で投与された場合に有害または毒性効果を及ぼし得るAPIを含む経口フィルムの投薬単位であって、毒性効果を及ぼすそれぞれのAPIの用量の投与を防止する投薬単位を提供することである。さらに、本発明の目的は、APIを含む経口フィルムの投薬単位であって、1つまたは多数の前記投薬単位が同時にまたはある特定の時間枠内で順次適用される場合にAPIのある特定の用量を上回り得ることを技術的に防止する、投薬単位を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
この目的は、請求項1に記載の粘膜付着性経口フィルムの投薬単位によって、すなわち、APIを含む投薬単位であって、複数の前記投薬単位により対象の口のすべての非角化部分を覆う場合にAPIが毒性効果を有する用量でAPIを投与することができないように前記APIの投薬が制限されている、投薬単位によって解決される。
【0015】
本発明者等は、体循環への経粘膜送達が達成され得る口内の適用面積が口腔において制限されているという認識から出発した。本発明者等はさらに、鎮痛薬、麻酔薬、麻薬、鎮静薬、催眠薬、および/またはホルモンなどの毒性効果を有し得るAPIの経粘膜送達によって調節される有効全身用量が、制限された適用面積の技術的な制限の組合せを提供する口腔粘膜付着性の薄いフィルムの投薬単位によって、前記APIの治療用量を上回ることおよび/もしくは毒性効果を及ぼすことを防止することができること、ならびに/またはAPIの制限された用量が、過剰投与などの乱用および誤用を防止することを見出した。さらに、本発明者等は、対応する投薬単位が、鎮痛、麻酔、麻薬、鎮静、および/もしくは催眠治療用量を上回らないか、またはそれよりもはるかに低い、鎮痛薬および/または麻酔薬などの強力なAPIの用量を含み得ること、すなわち、本発明による投薬単位が、例えば、鎮痛、麻酔、麻薬、鎮静、および/または催眠治療効果に必要な用量よりも低いおよび/または治療量以下であるが、含まれるAPIがこれらのより低いおよび/または治療量以下の用量レベルで他の望ましい治療効果を及ぼすことを可能にする、含まれるAPIの用量を送達することができることを見出した。より低いまたは治療量以下の用量レベルでのAPIの治療効果は、鎮痛、麻酔、麻薬、鎮静、または催眠治療用量レベルでの効果とは異なるメカニズムを介して生じ得、送達される用量は、鎮痛、麻酔、麻薬、鎮静、および/または催眠効果に関して治療量以下である。より低いおよび/または治療量以下の用量の送達は、本発明の請求項1に記載のAPI投薬量についての技術的制限によって、ならびに/または口内の非角化粘膜部分に対する経粘膜および/もしくは経頬送達に影響を与える手段によってもたらすことができる。
【0016】
本発明による解決策は、投薬単位に含まれるAPIの乱用および誤用、例えば過剰投与を防止し、有害事象の発生が容易に予想することができる投薬量の投与を防止する。したがって、本発明は、安全かつ有効なリスクベネフィットバランスのために推奨される投薬量よりも高い投薬量で適用された場合に毒性効果を及ぼし得るAPIまたは安全なリスクベネフィットバランスを有しないAPIを含む口腔粘膜付着性フィルムの投薬単位に関する。そのようなAPIは、鎮痛薬、麻酔薬、麻薬、鎮静薬、催眠薬、またはホルモンなどのAPIから選択することができ、これらについて、口のすべての非角化部分を覆い得る多数のそれぞれの投薬単位によって送達され得る総適用用量は、制限された適用面積と制限されたAPI用量との組合せによって制限されており、それによって、それらの合計のAPI投薬量、すなわち、前記APIの送達可能な総用量が技術的に制限される。
【0017】
さらに、本発明は、疼痛、特に片頭痛による疼痛を患っている対象の処置での投薬単位の医学的使用に関する。本発明は、片頭痛、特に疼痛を伴わない片頭痛などの中枢神経系の疾患などの神経疾患を患っている対象の処置での前記投薬単位の医学的使用にも関する。さらに、本発明は、頭痛、特に一次性頭痛を患っている対象の処置、より具体的には、片頭痛、最も具体的には疼痛を伴うまたは伴わない片頭痛を患っている対象の処置での投薬単位の医学的使用に関する。有利なことに、本発明による投薬単位によって送達可能なAPI投薬量の技術的制限、ならびに乱用および/または誤用の防止によって、処方箋なしでまたは処方箋に応じてそれぞれの投薬単位を店頭で販売することが可能になり、それによって、監督されない自己投与、早急な使用、および/または外来使用が可能になる。
【0018】
本発明者等は、完全に成長した成人の対象の口が、約220cmの表面積を有し、そのうち、約50%、すなわち約110cmが、体循環に入れるためのAPIが投与され得る非角化部分、いわゆる非角化口腔粘膜であると認識した。同様に、本発明者等は、完全には成長していないヒト対象の口の粘膜の非角化表面積が制限されていると認識した。完全には成長していないヒト対象の口の粘膜の非角化表面積は、通常、完全に成長したヒト対象の口における非角化表面積を上回らない。通常、完全には成長していないヒト対象の口の粘膜の非角化表面積は、おおよそ45~110cmの間の範囲である。完全には成長していない新生児のヒト対象は、通常、約45cmの口の粘膜の非角化表面積を有する。この面積は、完全には成長していないヒト対象が年を取り、完全に成長したヒト対象へとさらに発達するにつれて増加する。
【0019】
そのため、本発明者等は、口腔におけるフィルムを含むAPIの適用面積が制限されており、API、特に過剰投与などの乱用および誤用に陥りやすいAPIの送達量を技術的に制限するために使用され得ると認識した。本発明による投薬単位は、全身送達を適時確実にする粘膜付着によって、この非角化口腔粘膜と直接的に接触することができる。投薬単位当たりの制限された面積および制限されたAPI用量の組合せを通じて非角化口腔粘膜全体を介して本発明による1つまたは多くの前記投薬単位によって送達され得るAPIの合計投薬量を制限することによって、毒性効果を及ぼす投薬量が適用されるのが防止される。そのため、それぞれのAPIの投与が安全になり、乱用および誤用が防止される。
【0020】
本発明での使用に最も好適なAPIは、粘膜摂取によって非常に良好に送達することができ、胃腸管から吸着された場合に低い経口バイオアベイラビリティを有する、APIである。好ましくは、APIは嚥下後に不活化される。好適なAPIは、作用の迅速な開始、強力もしくは非常に強力な効果、短い血漿半減期、または比較的低い蓄積を有し得る。そのようなAPIは、WHO疼痛ラダー群のステップ2およびステップ3で適用される鎮痛薬の群、ならびに/または軽い鎮静から深い鎮静を可能にする麻酔薬、麻薬、鎮静薬もしくは催眠薬の群に属し得る。そのようなAPIは、乱用、誤用、または過剰投与の恐れが非常にあり得る。典型的には、そのようなAPIは、過剰投与されると致命的な結果をもたらす可能性がある。本発明での使用に非常に好適なさらなるAPIは、ホルモン、特にプロテオホルモン、より具体的には生物同一性ホルモンの群に属する。ホルモンは、例えば能力強化薬としての関連で誤用されることが頻繁である。したがって、ホルモンは、容易に過剰投与され得るAPIである。軽い鎮静から深い鎮静は、リッチモンド興奮鎮静スケール(RASS)で-2以下のスコアとして分類することができる。そのようなAPIの一例は、鎮静作用のあるプロポフォール(2,6-ジイソプロピルフェノールまたはプロポフォラム(propofolum))であり、これは、麻酔薬の群、より具体的には鎮静薬の群からのAPIである。本発明での使用のための他の好ましいAPIは、麻酔薬、オピオイド、筋弛緩薬、ベンゾジアゼピン、エトミデート(etomidiat)、バルビツレート、およびホルモンであり、本発明の最も好ましいAPIは、プロポフォールである。
【0021】
本発明での使用に最も好適な剤形は、経口フィルムの剤形である。経口フィルムによって、含まれるAPIを乱用および誤用のために抽出する試みが難しくなる。これらは、多くの場合、低濃度のAPIを含み、剤形が溶解しにくくなり得、APIを抽出するのが難しいおよび/または非経済的である。
【0022】
この原理は、プロポフォール(C1218O)で例示される。プロポフォールは麻酔薬の群に属し、麻酔薬の群内で、これは鎮静催眠APIとして分類される。プロポフォールはINNであり、プロポフォールのACD/IUPAC用語は2,6-ジイソプロピルフェノールである。ATCコードはAX10、CAS番号は2078-54-8である。現在利用可能な剤形は専ら注射であり、これらの剤形は、通常、穿刺ボトル内で10mg/mlに濃縮されているか、または非経口用途の単回使用バイアルにおいて利用可能である。1%のプロポフォール溶液またはエマルションは、1ml当たり10mgのプロポフォールを含有する溶液またはエマルションであり、同様に、2%のプロポフォール溶液は、1ml当たり20mgのプロポフォールを含有する。プロポフォールは、例えば、Disoprivan(登録商標)、Diprivan(登録商標)、またはRecofol(登録商標)という商品名で、同様にジェネリックでも市販されている。これは、ガンマ-アミノ酪酸(GABA)のレセプターを介して少なくとも部分的に機能すると考えられる。
【0023】
Diprivan(登録商標)のSMPCなどの、1%のプロポフォール溶液の麻酔の開始についての現在の静脈内投与スキームでは、前投薬なしまたは前投薬ありの患者において、臨床徴候が麻酔の開始を示すまで、1%のプロポフォール溶液を患者の応答に対して滴定するべきであることが推奨されている。麻酔の導入に必要な用量は、55歳未満の年齢のほとんどの成人患者では、通常、1%のプロポフォール溶液1.5~2.5mg/kg体重の間である。この年齢よりも高い患者では、通常、要件はより低い。1%のプロポフォール溶液を使用した麻酔の導入についてのより年齢の高い患者の推奨用量要件は、55歳未満の年齢の患者と比較して低減している。生後1ヶ月未満の小児における1%のプロポフォール溶液の使用は推奨されない。生後1ヶ月超の小児における麻酔の導入の用量要件については、臨床徴候が麻酔の開始を示すまで、1%のプロポフォール溶液をゆっくりと滴定するべきであることが推奨されている。8歳超の小児において1%のプロポフォール溶液を使用する麻酔の導入に必要な用量は、通常、約2.5mg/kg体重である。生後1ヶ月~8歳の小児において1%のプロポフォール溶液を使用する麻酔の導入に必要な用量は、通常、2.5~4mg/kg体重の間である。あるいは、プロポフォールの治療用量は、4mg/kg体重/時間を上回るべきではない。
【0024】
プロポフォールの麻酔治療効果の誘導に必要なプロポフォールの最小有効濃度に関して、大規模な手術では4.05±1.01μg/mlの平均血中濃度が必要であるが、小規模な外科的手技では2.97±1.07μg/mlのレベルで十分である。1.5~2.0μg/mlのより低い血中レベルがプロポフォールの鎮静効果に必要である(Dhir et al., 2016)。プロポフォールの不要な毒性効果を防止するために、平均血中濃度が4.05±1.01μg/mlにならないようにする必要がある。鎮静の開始後に、プロポフォールは、鎮静効果を維持するために静脈内注射および注入による継続的な投与が必要である。必要な投与速度は、患者間で大きく異なる。通常、55歳未満の成人では、4~12mg/kg体重/時間の間の速度で麻酔効果が維持される。生後1ヶ月超の小児では、9~15mg/kg体重/時間の範囲の速度で麻酔が維持される。あるいは、生後1ヶ月超の小児では、ボーラス注射を繰り返すことによって麻酔が維持され得る。より年齢の低い小児では、麻酔の維持の用量要件は、9~15mg/kg体重/時間よりも高くなり得る。
【0025】
本発明の一実施形態では、本発明による1つまたは複数の投薬単位は、少なくとも1.5~2.0μg/mlのプロポフォールの有効全身濃度に達し得ないようにする。本発明の異なる実施形態では、本発明による1つまたは複数の投薬単位は、4.05±1.01μg/mlのプロポフォールの有効全身濃度に達し得ないようにする。本発明の異なる実施形態では、本発明による1つまたは複数の投薬単位は、少なくとも1.5mg/kg体重のプロポフォールの用量に達し得ないようにし、特に、完全に成長した対象において少なくとも1.5mg/kg体重のプロポフォールの用量に達し得ないようにする。本発明の異なる実施形態では、本発明による1つまたは複数の投薬単位は、少なくとも2.5mg/kg体重のプロポフォールの用量に達し得ないようにし、特に、完全には成長していない対象において少なくとも2.5mg/kg体重のプロポフォールの用量に達し得ないようにする。
【0026】
プロポフォールの現在の投与レジメンは、静脈内(i.v.)注射および注入による投与である。鎮静の開始の誘導については、1.5(最小)~2.5(最大)mg/kg体重のプロポフォールの催眠用量が推奨され、これは、70kgの対象の場合、鎮静の誘導のためのプロポフォールの最小用量105.0mgおよび最大用量175.0mgに相当する。したがって、70kgの対象の場合、プロポフォールの治療鎮静用量は、105.0~175.0mgの範囲であると考えることもでき、治療的な鎮静量以下の用量のプロポフォールは、105mg/kg体重未満の用量であると考えることができる。70kgの対象の鎮静治療用量を上回らないようにするために、1つまたは多くの投薬単位によって提供される投薬量は、口の非角化部分を覆うために組み合わされる場合、105~175.0mgを上回るべきではない。異なる実施形態では、プロポフォールの鎮静量以下の用量は、1.5~2.0μg/ml未満の有効全身濃度について考慮することができる。
【0027】
したがって、本発明による投薬単位の場合、プロポフォールの用量(the dose propofol)は、例えば、投薬単位の最大用量として10.0mg以下で選択することができるであろう。次のステップでは、投薬単位の面積が選択される。この選択は、投薬単位の面積が、さらなる前記投薬単位と組み合わされて経粘膜送達のための口内の非角化粘膜部分(これは、完全に成長したヒトでは約110cmの面積を覆い、完全には成長していないヒトでは45~110cmなどのより少ない表面積を覆い得る)の面積ほどの合計面積になる場合、合計API用量、すなわち、粘膜に適用される総API用量を、治療効果を誘導するおよび/または毒性効果を防止するために安全に適用することができる用量以下に制限するように実施される。言い換えるなら、投薬単位当たりのある特定のプロポフォール用量を選択する場合、口内の非角化部分への投薬単位の適用のための表面積は、そのように選択され、すなわち、催眠効果を上回って毒性効果が生じ得る程度で複数の前記フィルムを適用する能力を技術的に制限するように最大化される。したがって、合計API用量を175.0mgに制限するために、10.0mgのプロポフォールを含む対応する投薬単位の面積は、口腔粘膜の非角化部分に同時に配置することができる前記投与単位が17個以下であるため、少なくとも約6.3cmの面積から選択され得る。したがって、10mgのプロポフォール用量を有する17個の前記投薬単位は、最大170mgのプロポフォールを送達することができ、175.0mgのプロポフォールの安全かつ効率的な投薬限界を上回る可能性はなく、不要な毒性効果が防止される。したがって、投薬単位当たりのAPI用量が低減されると、この最小面積も低減される。同様に、プロポフォールの用量が105.0mgを上回ってはならない場合、そうでないと不要な毒性効果が生じ得るため、10.0mgのプロポフォールを含む投薬単位の面積は、少なくとも約10.5cmの面積から選択され得る。有利なことに、プロポフォールについて、複数の前記投薬単位によって前記対象の口のすべての非角化部分を覆う場合に鎮静効果の用量未満に留まる投薬単位の用量を選択する際に適用される総用量は、催眠効果とは異なる作用機序でプロポフォールの治療効果をさらに可能にする。
【0028】
あるいは、投薬単位の面積を最初に選択することができ、APIの投薬量を第2のステップで決定してもよく、完全に成長した成人の口の非角化粘膜部分の面積、すなわち、約110cmの面積(これは、完全には成長していないヒトではより少なくなり得る)に等しい合計面積に対する1つまたは多くの本質的に等しい投薬単位の合計投薬量は、APIによって毒性効果が及ぼされることを防止するように制限される。プロポフォールについて例示するなら、投薬単位の面積は、治療鎮静効果に好適な最大175.0mgのプロポフォールを有する6cmになるように選択することができ、すなわち、プロポフォールの合計用量がより高いと、これは毒性効果を及ぼし得る。したがって、投薬単位の投薬量は、約9.5mg以下となるように選択することができるであろう。同様に、鎮静治療効果に好適なプロポフォールの最大量が105.0mgであるならば、6cmの投薬単位では、投薬単位の投薬量は、約5.7mg以下となるように選択することができるであろう。
【0029】
本発明の好ましい態様では、APIは、麻酔薬として、好ましくは鎮静催眠薬として、さらにより好ましくはプロポフォールとして選択され、プロポフォールを含む投薬単位の面積(the area a dosage unit)は、少なくとも6cmで選択される。
【0030】
本発明の異なる好ましい態様では、APIは、麻酔薬、好ましくは鎮静催眠薬、さらにより好ましくはプロポフォールとして選択され、投薬単位の投薬量は、投薬単位当たり5mg未満で選択され、投薬単位の面積は、少なくとも6cmで選択される。
【0031】
本発明の投薬単位の異なる態様では、本発明の投薬単位に含まれるAPIは、APIの異なる群から選択され得る。
【0032】
さらなる態様では、投薬単位は、特定の疾患の処置のために選択される。本発明による投薬単位は、異なる疾患に適用することができる。
【0033】
さらに、本発明者等は、経口フィルムの粘膜付着性投薬単位が、粘膜上に再吸収される投薬単位に含まれるAPIの量を増加および最大化することができると認識した。したがって、さらなる態様では、本発明による一般原理は、投薬単位の滞留時間、すなわち、投薬単位が口の非角化部分と接触している間の時間が制限されている場合に特に有利である。滞留時間は、例えば、投薬単位の粘膜付着時間および/または崩壊時間によって影響を受け得る。滞留時間は、投薬単位に含まれるAPIの送達時間を制限するために使用され得る。有利なことに、この態様では、APIの送達時間が、APIの全身レベルの平坦化の時間に本質的に等しい時間に制限され得る、またはAPIの送達時間が、滞留時間によって、APIの全身レベルの平坦化の時間を上回るように制限され得ることから、いくつかの前記投薬単位を順次適用しても、APIの有効全身レベルにさらなる効果はない。特に好ましい態様では、APIの送達時間は、投薬単位の滞留時間に本質的に対応する。
【0034】
本発明のさらなる態様では、滞留時間は、投薬単位に含まれるAPIの半減期、特に全身半減期に関連して選択され得る。有利なことに、滞留時間は、APIの半減期とほぼ等しく、またはそれよりも長く選択される。この態様では、APIの全身レベルは、投薬単位を使用してAPIが投与され得るのとほぼ同じまたはそれよりも速い速度で低下する。好ましくは、この態様では、APIは、鎮痛薬、麻酔薬、麻薬、催眠薬、および/または鎮静薬として選択される。
【0035】
本発明のさらなる別の態様では、プロポフォールを含む投薬単位は、片頭痛の処置のために使用することができ、片頭痛は、必要に応じて、疼痛ありで前兆を伴う片頭痛、疼痛なしで前兆を伴う片頭痛、例えば、無痛性片頭痛、眼性片頭痛、または網膜性片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、慢性片頭痛、小児片頭痛、月経片頭痛、治療抵抗性片頭痛、難治性片頭痛、または急性錯乱性片頭痛(ACM)から選択される。
【0036】
さらなる別の態様では、本発明は、投薬単位の組成物に関する。好都合で快適な感覚受容特色は、APIの乱用および誤用の可能性を高める。したがって、投薬単位の組成物は、投薬単位の味をマスキングしない。好ましくは、この目的のために、組成物は、香味剤および/または甘味剤を本質的に含まない。対応する組成物は、API、溶媒、ポリマー、および必要に応じて可塑剤を含む。
【0037】
本発明の他の目的、特色、利点、および態様は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から当業者に明らかとなる。
【0038】
しかしながら、本願の好ましい実施形態を示す以下の説明、添付の特許請求の範囲、および特定の実施例は、単なる例示として与えられていることを理解されたい。開示されている発明の本質および範囲内の様々な変更および改変は、以下を読むことで当業者に容易に明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
発明の詳細な説明
本明細書で使用される場合、本明細書で定義される表現は、一般に、それらが使用される文脈から別のことが示される場合を除いて、好ましくは以下に記載のような意味を有することを意図している。
【0040】
本明細書で定義されるパーセンテージ値は、一般に、特に示されていない限り、重量当たりの重量パーセンテージ値を指す。好ましい実施形態では、本明細書で与えられる値は、±5%、好ましくは±2%または±1%の範囲を包含する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「含む」という表現は、その文字通りの意味のみならず、同様に、「から本質的になる」および「からなる」という表現を含み、具体的にはこれらを指す。したがって、「含む」という表現は、具体的に列挙されている要素を「含む」主題がさらなる要素を含まない実施形態、ならびに具体的に列挙されている要素を「含む」主題がさらなる要素を包含し得るおよび/または実際に包含する実施形態を指す。同様に、「有する」という表現は、「含む」という表現として理解するべきであり、同様に、「から本質的になる」および「からなる」という表現を含み、具体的にはこれらを指す。
【0042】
本発明の文脈で使用される場合、「投薬単位」という用語は、特定の用量の医薬製品を指す。本発明の文脈において、投薬単位は、少なくとも1つのAPIを送達するために使用され得る。投薬単位は、特定の投薬量を有する医薬製品の単位を指す。投薬単位は、経口、経鼻、皮膚、眼、非経口、局部、座薬、または吸入投与のための剤形などの異なる剤形を指すことがある。投薬単位は、固体、液体、または気体の医薬製品を指すこともある。好ましくは、投薬単位は、経鼻または経口投与のための、最も好ましくは経口投与のための医薬製品を指す。好ましくは、投薬単位は、固体の医薬製品を指す。特に、投薬単位は、医薬製品、例えば、特定の用量および面積の経口フィルムを指す。有利なことに、本発明による投薬単位は、それぞれのAPIの過剰投与および/または潜在的に致死用量の投与を含む乱用および誤用からもたらされる効果などの毒性効果を防止し、それぞれの投薬単位を処方箋なしで店頭で販売することを可能にし、対応する投薬単位中のそれぞれのAPIの早急な使用および/または外来適用が可能になる。
【0043】
本発明の文脈で使用される場合、「投薬量」は、含まれるAPIの選択された用量を指す。投薬単位に含まれるAPIの選択された用量は、前記投薬単位の1つまたは複数が口内の粘膜の非角化面積に適用されるかどうかに関係なく、毒性効果が防止されるように選択される。さらに、投薬単位は、APIを送達することができる非角化粘膜との投薬単位の接触面積である適用面積を有し得る。好ましい実施形態では、本発明による投薬単位は、粘膜付着性経口フィルムの投薬単位である。有利なことに、粘膜付着によって、投薬単位と粘膜との間の直接的な接触の維持が可能になり、投薬単位に含まれるAPIの全身送達が改善される。したがって、経口フィルムの粘膜付着性投薬単位は、粘膜上に再吸収される投薬単位に含まれるAPIの比率を増加および最大化する。そのため、胃腸管および/または口腔内にそれらが存在する間に不活化されるAPIの全身送達を改善することができる。典型的には、投薬単位に含まれるAPIの用量は、最初に、面積よりも前に選択される。あるいは、投薬単位の面積は、最初に、用量を選択する前に選択され得る。一実施形態では、投薬単位のAPIの用量は、投薬単位の面積および投薬単位の滞留時間と組み合わせて選択される。投薬単位は、APIの用量と投薬単位の面積との組合せと呼ばれることがある。そのため、投薬単位は、ある特定の適用面積に適用可能なAPIの量を制限することができる。有利なことに、投薬単位は、対象の口の理論的に利用可能なすべての非角化部分が前記投薬単位によって覆われる場合に、含まれるAPIの毒性効果が防止されるように、含まれるAPIの治療用量に関して予め定義された範囲から選択される用量のAPIを含む。
【0044】
好ましい実施形態では、APIは、胃腸管内で不活化される本発明による投薬単位のために選択される。この実施形態では、APIは、本質的に口内の非角化粘膜を介して再吸収され、初回通過代謝を迂回するように全身的に吸収される。
【0045】
投薬単位に含まれるAPIの用量は、投薬単位の面積と組み合わせて選択される。用量を最初に選択することができ、投薬単位中のAPIの選択された用量に応じて面積を選択するか、または面積を最初に選択し、投薬単位の選択された面積に応じて用量を選択する。一実施形態では、用量を最初に選択する。異なる実施形態では、面積を最初に選択する。さらなる異なる実施形態では、含まれるAPIの用量および投薬単位の面積を同時に選択する。投薬単位当たりのAPIの用量の選択は、選択されたAPIの治療用量に基づいて実施され、治療用量は、安全かつ有効なリスクベネフィットバランスに従って推奨される用量であるか、またはリスクベネフィットバランスがない場合は安全かつ有効であると当業者に公知の用量である。選択されたAPIが鎮痛薬を含む場合、鎮痛薬の用量は、鎮痛薬としての治療効果の最大用量、すなわち、APIが鎮痛機能を及ぼすが毒性効果は及ぼさない用量よりも多くならないように選択される。選択されたAPIが麻酔薬を含む場合、麻酔薬の用量は、麻酔薬としての治療効果の最大用量、すなわち、APIが、鎮静、催眠、および/または麻酔効果を及ぼすが毒性効果は及ぼさない用量よりも多くならないように選択される。選択されたAPIがホルモンを含む場合、ホルモンの用量は、ホルモンとしての治療効果の最大用量、すなわち、APIがホルモンとしての治療効果を及ぼすが毒性効果は有しない用量よりも多くならないように選択される。
【0046】
鎮痛薬がAPIとして選択される実施形態では、投薬単位当たりの鎮痛薬の用量は、選択された鎮痛薬の200mg以下、150mg以下、100mg以下、80mg以下、50mg以下、10mg以下、5mg以下、約5mg、5mg未満、1~2.5mg、2.5~5mg、5~10mg、10~15mg、または15~20mgであり得る。好ましくは、鎮痛薬の用量は、5mg未満、1~2.5mg、または2.5~5mgで選択される。
【0047】
麻酔薬がAPIとして選択される実施形態では、投薬単位当たりの麻酔薬の用量は、選択された麻酔薬の約5mg、5mg未満、1~2.5mg、2.5~5mg、5~10mg、10~15mg、または15~20mgであり得る。好ましくは、麻酔薬の用量は、5mg未満、1~2.5mg、または2.5~5mgで選択される。
【0048】
鎮静薬がAPIとして選択される実施形態では、投薬単位当たりの鎮静薬の用量は、選択された鎮静薬の約5mg、5mg未満、1~2.5mg、2.5~5mg、5~10mg、10~15mg、または15~20mgであり得る。好ましくは、鎮静薬の用量は、5mg未満、1~2.5mg、または2.5~5mgで選択される。
【0049】
催眠薬がAPIとして選択される実施形態では、投薬単位当たりの催眠薬の用量は、選択された催眠薬の約5mg、5mg未満、1~2.5mg、2.5~5mg、5~10mg、10~15mg、または15~20mgであり得る。好ましくは、催眠薬の用量は、5mg未満、1~2.5mg、または2.5~5mgで選択される。
【0050】
鎮痛薬および麻酔薬がAPIとして選択される実施形態では、投薬単位当たりの麻酔薬の用量は、選択された麻酔薬の約5mg、5mg未満、1~2.5mg、2.5~5mg、5~10mg、10~15mg、または15~20mgであり得、投薬単位当たりの鎮痛薬の用量は、選択された鎮痛薬の約5mg、5mg未満、1~2.5mg、2.5~5mg、5~10mg、10~15mg、または15~20mgであり得る。好ましくは、鎮痛薬の用量は、約5mg、5mg未満、1~2.5mg、または2.5~5mgで選択され、麻酔薬の用量は、約5mg、5mg未満、1~2.5mg、または2.5~5mgで選択される。
【0051】
プロポフォールがAPIとして選択される実施形態では、投薬単位当たりのプロポフォールの用量は、プロポフォールの約5mg、5mg未満、1~2.5mg、2.5~5mg、5~10mg、10~15mg、または15~20mgであり得る。好ましくは、プロポフォールの用量は、5mg未満、1~2.5mg、または2.5~5mgで選択される。
【0052】
ホルモンがAPIとして選択される実施形態では、投薬単位当たりのホルモンの用量は、ホルモンの約5mg、5mg未満、5~10mg、10~15mg、または15~20mgであり得る。ホルモンがAPIとして選択される異なる実施形態では、投薬単位当たりのホルモンの用量は、100IU未満、100~500IU、500~1000IU、または1000~2000IUであり得る。
【0053】
好ましい実施形態では、投薬単位は、APIを含む経口フィルムの投薬単位であり、APIは、鎮痛薬および/または麻酔薬として選択される。
【0054】
別の好ましい実施形態では、投薬単位は、疼痛の処置での使用のための、経口フィルムの投薬単位であり、疼痛は、好ましくは頭痛による疼痛から、より好ましくは一次性頭痛から、さらにより好ましくは片頭痛から、最も好ましくは疼痛を伴う片頭痛から選択され、APIとして麻酔薬を含み、麻酔薬は、抗うつ薬、神経弛緩薬、麻薬、鎮静薬、または催眠薬の群から選択され、好ましくは鎮静薬から選択され、最も好ましくはプロポフォールとして選択される。
【0055】
別の好ましい実施形態では、投薬単位は、中枢神経系の疾患、好ましくは一次性頭痛、より好ましくは片頭痛、最も好ましくは疼痛を伴わない片頭痛などの神経疾患の処置での使用のための、経口フィルムの投薬単位であり、APIとして麻酔薬を含み、麻酔薬は、抗うつ薬、神経弛緩薬、麻薬、鎮静薬、または催眠薬の群から選択され、好ましくは鎮静薬から選択され、最も好ましくはプロポフォールとして選択される。
【0056】
別の好ましい実施形態では、投薬単位は、片頭痛の処置での使用のための、経口フィルムの投薬単位であり、APIとして麻酔薬を含み、麻酔薬は、抗うつ薬、神経弛緩薬、麻酔薬、麻薬、鎮静薬、または催眠薬の群から選択され、好ましくは鎮静薬および催眠薬から選択され、より好ましくはプロポフォールとして選択される。
【0057】
本発明の文脈で使用される場合、「面積」という用語は、本質的に平面状に広がっていることを指すことがある。用語は、粘膜、好ましくは口内の粘膜、さらにより好ましくは口内の粘膜のすべての非角化部分と接触した面積である投薬単位の適用面積を指すこともある。本発明の文脈で使用される場合、「面積」という用語は、投薬単位が第1および第2の次元に広がる面積である面積尺度を指すこともある。投薬単位では、投薬単位の面積をAPIの用量と組み合わせて、適用可能なAPIの用量を制限することができる。面積を最初に選択することができ、投薬単位の選択された面積に応じて用量を選択するか、または用量を最初に選択し、投薬単位の選択された用量に応じて面積を選択する。
【0058】
本発明の文脈で使用される場合、「毒性効果」という用語は、リスクベネフィットバランスに従った選択されたAPIが有効かつ安全な治療機能を及ぼさない適用用量を指すことがある。「毒性効果」は、副作用の合計が選択されたAPIの潜在的な利益よりも勝る適用用量を指すことがある。「毒性効果」は、有害効果の可能性が増加し、適用が当業者によっては安全であると考えられないであろう適用用量を指すことがある。「毒性効果」は、リスクベネフィットバランスが利用可能ではなく、選択された用量が、第II相臨床研究または臨床用量設定研究における最大治療用量として当業者によって選択されるであろう用量よりも高い、APIの用量を指すことがある。「毒性効果」は、治療効果が得られず、選択された用量が、深刻な、特に、致命的な、有害な、または毒性の効果を引き起こすと公知の、APIの選択された用量を指すことがある。「毒性効果」は、治療血漿濃度よりも高いAPIの血漿濃度によって達成される効果を指すこともあり、血漿濃度の増加は、適用されるAPIのある特定の用量の結果である。例えば、リスクベネフィットバランスに従って、プロポフォールの治療用量は、1.5~2.5mg/kg体重で選択するべきであり、最大用量は、1時間当たり4mg/kgである。したがって、4mg/kgよりも高い用量では、当業者は、プロポフォールの適用が毒性効果を及ぼすと予想することができる。異なる例では、1型糖尿病の毎日のインスリン必要量は、一般に、1日当たり0.5~1IU/kg体重の間であり、重度のインスリン抵抗性の場合、1日当たり2IU超/kg体重または1日当たり200IUが必要とされ得る。しかしながら、インスリン200IUよりもはるかに高い日用量は避けるべきである。したがって、200IUよりも多いインスリンの用量では、当業者は、インスリンの適用が毒性効果を及ぼすと、すなわちこれを有すると予想することができる。
【0059】
本発明による用量と面積との好ましい組合せは、投薬単位当たりに含まれるAPIの用量を最初に選択する場合、後続の表1から得ることができる。目標の合計API用量は、複数の前記投薬単位を組み合わせて口のすべての非角化部分を覆う場合に上回るべきではない、選択されたAPIのおおよその用量を指す。目標の合計API用量は、リスクベネフィットバランスに従ってそれぞれの治療効果を誘導するために当業者によって使用されるAPIの最大用量であり得、したがって、毒性効果はそれによって防止される。
【0060】
あるいは、異なる実施形態では、複数の前記投薬単位の目標の合計API用量は、一次治療効果を誘導するために当業者によって使用されるAPIの最小用量未満に留まるように制限され、二次治療効果を可能にする。この実施形態では、二次治療効果の用量を上回ることでは、通常、毒性効果はもたらされないが、一次治療効果はもたらされる。異なる用量で生じる一次および二次効果は、異なる作用メカニズムからもたらされ得る。APIの適用される用量および/または血漿濃度が、一次効果に必要な用量および/または血漿濃度未満に低下するおよび/またはそれ未満に留まるため、二次治療効果が生じることが可能になり得る。この実施形態では、多数の前記投薬単位によって適用可能なAPIの総用量は、一次効果の治療量以下の範囲内に留まるように制限されるが、前記APIの二次効果の治療効果は上回らないように制限される。例えば、プロポフォールを含むこの実施形態による投薬単位は、多数の前記投薬単位が口のすべての非角化部分を覆うように適用される場合に、適用されるプロポフォールの総用量が、鎮静または催眠効果、すなわち一次治療効果を達成するが、抗片頭痛効果、すなわち二次治療効果を達成する用量は上回らない最小用量未満に留まるように制限され得る。
【0061】
好ましい実施形態では、対象、好ましくは完全に成長したヒト対象の口の非角化部分の面積は、おおよそ110cmである。同様に、この面積は、完全には成長していないヒト対象の場合、約45~110cmである。本発明による投薬単位で覆うべきおおよその最小面積は、目標の合計API用量(D)を第1のステップにおいて投薬単位当たりの選択されたAPIの選択された用量(d)で割ることによって計算することができる。第2のステップでは、好ましい実施形態では110cmである口の非角化部分のおおよその面積(A)を第1のステップで得られた商xの値で割り、単一の投薬単位で覆うべきおおよその最小面積(a)を得る。好ましい実施形態では、対象は完全に成長したヒトであり、含まれるAPIはプロポフォールであり、毒性効果を防止するために上回るべきではない目標の合計API用量は175mgである。
【0062】
この計算は、以下のように視覚化することができる:
ステップ1(dの選択):D/d=x
ステップ2(aの決定):A/x=a
式中、
D:目標の合計API用量の値[mg]
d:単一の投薬単位に含まれるAPIの選択された用量[mg]
x:目標の合計API用量を選択された用量で割った商
A:口の非角化部分の面積、好ましい実施形態では、これはヒト対象の場合に110cmである[cm
a:それぞれの(respected)選択されたAPI用量についての投薬単位で覆うべきおおよその最小面積[cm
【0063】
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】
【0064】
本発明による用量と面積との好ましい組合せは、投薬単位の面積を最初に選択する場合、後続の表2から得ることができる。目標の合計API用量は、複数の前記投薬単位を組み合わせて口のすべての非角化部分を覆う場合に上回るべきではない、選択されたAPIのおおよその用量を指す。目標の合計API用量は、リスクベネフィットバランスに従ってそれぞれの治療効果を誘導するために当業者によって使用されるAPIの最大用量であり得、したがって、毒性効果はそれによって防止される。
【0065】
あるいは、目標の合計API用量は、一次治療効果を誘導するために当業者によって使用されるAPIの最小用量未満に留まるように制限され得る。したがって、一次治療効果に必要な目標の合計API用量未満の目標の合計API用量で二次治療効果を達成することが可能になる。一次治療効果に必要な用量未満のAPI用量での二次治療効果は、一次治療効果とは異なるメカニズムによって生じ得る。
【0066】
好ましい実施形態では、対象の口の非角化部分の面積は、おおよそ110cmである。同様に、この面積は、完全には成長していないヒト対象の場合、約45~110cmである。本発明による投薬単位の選択可能なおおよその最大用量は、好ましい実施形態では110cmである口の非角化部分のおおよその面積(A)を第1のステップにおいて投薬単位の選択された面積(a)で割ることによって計算することができる。第2のステップでは、目標の合計API用量(D)を第1のステップで得られた商yで割り、単一の投薬単位当たりの選択可能なおおよその最大API用量(d)を得る。好ましい実施形態では、含まれる鎮痛薬および/または鎮静薬はプロポフォールであり、目標の合計API用量は175mgである。好ましい実施形態では、対象はヒトであり、含まれるAPIはプロポフォールであり、口内の非角化部分の面積は約110cmであり、目標の合計API用量は175mgである。
【0067】
この計算は、以下のように視覚化することができる:
ステップ1(aの選択):A/a=y
ステップ2(dの決定):D/y=d
式中、
A:口の非角化部分の面積、好ましい実施形態では、これはヒト対象の場合に110cmである[cm
a:投薬単位の選択された面積[cm
y:口の非角化部分の面積を投薬単位の選択された面積で割った商
D:目標の合計API用量の値[mg]
d:単一の投薬単位当たりの選択可能なおおよその最大API用量[mg]
【0068】
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

【表2-4】
【0069】
一実施形態では、投薬単位は、少なくとも1cm、少なくとも2cm 少なくとも3cm、少なくとも4cm、少なくとも5cm、少なくとも6cm、少なくとも7cm、少なくとも8cm、少なくとも9cm、少なくとも10cm、少なくとも11cm、または少なくとも12cm、好ましくは少なくとも6cmの範囲から選択される面積を有する。
【0070】
本発明の文脈において、「フィルム」という用語は、APIを結合するか、吸収するか、または別の方法で受け入れるのに適した固体または半固体の担体である。本発明の文脈において、「フィルム」は、APIを送達するために、特に粘膜付着などの付着の際にAPIを送達するために使用され得る。フィルムは、好ましくは層であり、特に粘着性の固体またはゼラチン状の層である。フィルムは、溶媒中に溶解または分散されたフィルムを形成するのに好適なポリマーと、必要に応じて可塑剤およびAPIなどのさらなる成分とを含有する組成物を、表面上にキャスティングするか、または別の方法で適用することによって形成することができる。フィルムは、押出、半固体キャステキング法、圧延、または3D印刷などの印刷によっても製造することができる。好ましくは、本発明による投薬単位は、フィルムから得ることができる。
【0071】
本発明の文脈において、「粘膜付着性」という用語は、粘膜、特に口腔の粘膜、より具体的には口腔粘膜の非角化部分にはり付く投薬単位の能力を指す。投薬単位の粘膜付着性は、口腔の粘膜への投薬単位の密接な付着を可能にする。有利なことに、口腔の粘膜への投薬単位の付着の促進は、改善によって粘膜上に再吸収される投薬単位に含まれるAPIの割合を増加および改善することができる。粘膜への付着の促進によって、投薬単位に含まれるAPIの浸透および/または透過を改善することができる。好ましい実施形態では、含まれるAPIの送達は、優先的にはおよび/またはほとんど専ら口の非角化部分を介して行われ、より優先的には、含まれるAPIの化合物の送達は、専ら口の非角化部分を介して行われる。好ましい実施形態では、投薬単位の粘膜付着性の時間を選択することができる。粘膜付着時間の選択は、投薬単位の滞留時間を制限するために使用され得る。
【0072】
本発明の文脈において、「疼痛」という用語は、感覚的または感情的な経験から生じる苦痛の感覚を指すことがある。疼痛は、末梢神経系の侵害受容器によって誘発される複雑な感覚的な感覚を指すこともある。疼痛知覚は、中枢神経系(CNS)で処理および解釈される。疼痛知覚と対象の精神状態との間には密接な相互作用がある。疼痛は、強いまたは有害な刺激によって引き起こされることがある。疼痛は、片頭痛などの疾患の症状および/または疾患そのものを指すことがある。疼痛は長期間にわたって知覚されることがあり、根本的な原因は、処置することができないか、ほとんど処置することができないか、またはまったく同定することができない。
【0073】
疾患としての疼痛の一例は、慢性疼痛または疼痛症候群である。そのような場合、対象の身体は、疼痛の状態を学習した可能性がある。疼痛の状態が繰り返されると、疼痛の閾値が低下するため、より強く、かつより長い疼痛の感覚がもたらされ得る。そのため、疼痛の早期の十分な処置が一般に推奨される。しかしながら、ドイツを含む多くの国では、疼痛の処置は、多くの場合、不十分である。これは、嗜癖を発現することも鎮痛剤の過剰投与を適用することもないようにとの慎重な心理状態が強いことが要因であり得る。
【0074】
疼痛は、誘発をもたらす感覚に応じて、生理学的疼痛、神経障害性疼痛、または対象の身体の機能的問題の結果としての疼痛に分けることができる。生理学的疼痛では、疼痛は、典型的には、侵害受容器によって知覚され得る。神経障害性疼痛では、ウイルス感染または切断後などの神経系に対する損傷の結果として疼痛が生じ得る。対象の身体の機能的問題の結果としての疼痛は、身体のある部分が機能的に欠損しているか、または外部刺激に対する身体の反応が欠損している結果として知覚され得る。例えば、血液循環の調節不全は片頭痛をもたらし得る。
【0075】
生理学的疼痛では、疼痛知覚は、いわゆる疼痛レセプターまたは侵害受容器で生じる。侵害受容器は自由神経終末であり得る。侵害受容器は様々な刺激に反応し得、それによって、疼痛知覚がもたらされ得る。侵害受容器が定性的に反応する刺激は、熱もしくは寒さなどの熱的刺激、圧力もしくは損傷などの機械的刺激、または炎症、酸、毒素などの化学的刺激を含む。侵害受容器において疼痛知覚を誘発するために、刺激には閾値レベルがある。さらに、侵害受容器は、何度も繰り返される刺激などに適応せず、興奮性の低下を誘導しない。そのため、定性的に疼痛知覚を誘発することができる刺激は、疼痛知覚を誘発するのに十分なほど強くない可能性がある。したがって、疼痛は、疼痛知覚でもあり得る。侵害受容器の興奮性は、いわゆる疼痛メディエーターを含む分子によってモジュレートされ得る。典型的には、侵害受容器の興奮性は増加する。疼痛メディエーターは、プロスタグランジン、ブラジキニン、およびセロトニンを含む。侵害受容器の興奮性は、組織内の低酸素症、組織内のCO増加の場合などのpH値の低下、または血液中の電解質濃度の変化の場合にも増加し得る。
【0076】
疼痛はまた、その持続時間によって急性および慢性疼痛に分類することができる。急性疼痛は、シグナル伝達効果を有し、問題のある原因を示し得るため、原因の除去および疼痛の処置が可能になる(enabling removal of the cause the treatment of the pain)。急性疼痛の処置は、例えば、WHO疼痛緩和ラダーに従ってAPIを使用することによって、または局所もしくは全身鎮静薬を適用することによって実施され得る。急性疼痛の強度に応じて、疼痛の処置は、異なる強度のAPIまたは異なるAPIの組合せを含み得る。6ヶ月間超知覚される疼痛は、慢性疼痛と呼ばれ得る。さらに、片頭痛による疼痛のような月に少なくとも15日繰り返し生じる疼痛は、慢性疼痛であると考えることができる。慢性疼痛では、疼痛は、一般に、本来の疾患とは独立した別個の疾患として存在する。慢性疼痛では、疼痛知覚は、そのシグナル伝達効果を失っている。慢性疼痛は、例えば、WHO疼痛緩和ラダーに従ってAPIを適用することによって、または局所もしくは全身鎮静薬を適用することによって処置され得る。慢性疼痛の処置が不十分であるか存在しないと(insufficient of absent treatment of chronic pain)、疼痛記憶の発現がもたらされ得る。疾患としての疼痛は、睡眠障害、労働時の能率の低下、労働不能、または身体的および精神的な回復力の有意な制限、ならびにうつ病の発症などの二次的効果をもたらし得る。そのような二次的効果の場合、薬品による処置だけでは、感染した対象の生活の質を取り戻すには不十分であり得る。有利なことに、本発明による投薬単位は、これらが過剰投与を防止することから、疼痛のより良好な早期処置を可能にする。そのため、慢性疼痛の発生を防止することができる。
【0077】
疼痛は、その性質および強さに従って分類することもできる。疼痛は、情動的な疼痛の質または感覚的な疼痛の質に従って分類することができる。情動的な疼痛の質は、暴力、麻痺、苦悩、苦しみ、または恐ろしさなどの、疼痛の主観的な知覚を指す。感覚的な疼痛知覚は、例えば、引っ張られる痛み、鈍痛(dull)、キリで刺すような痛み(drilling)、刺痛(stabbing)、刺すような痛み(stinging)、圧迫通、灼熱通、または強打通などの疼痛の実際の知覚を指す。
【0078】
対象の疼痛知覚も機能不全になり得る。機能不全の疼痛知覚を有する対象は、疼痛知覚に対して感受性より高い場合があるか、または対象は、疼痛知覚に対して感受性がより低い場合がある。機能不全の疼痛知覚は、例えば、痛覚過敏、痛覚鈍麻、またはアロディニアを罹患した対象に生じ得る。疼痛に対するそれらの感受性を増加させる状態を罹患した対象は、鎮痛剤の過剰投与により陥りやすいことがある。
【0079】
疼痛は、それが知覚される箇所に従って分類することもできる。例は、頭痛、例えば、片頭痛、群発頭痛、緊張性頭痛または発作性片側頭痛、顔面痛、例えば、三叉神経痛またはコステン症候群、歯痛、咽頭痛、例えば、咽頭炎またはアンギナ扁桃炎(angina tonsillaris)、首痛、例えば、頸椎症候群、頸部上腕痛または頚頭痛(cervicocephalgia)、胴体の疼痛、例えば、胸痛、例えば、狭心症または心筋梗塞(myocarcial infarction)における胸骨後疼痛、背部痛、例えば、腰椎痛、坐骨神経痛、胸椎症候群、腰椎症候群、梨状筋症候群、仙骨痛または尾骨痛、側腹部痛、鼠蹊部痛、腹部痛、例えば、上腹部痛または下腹部痛、四肢の疼痛、例えば、脚痛、腕痛または肩痛を含む。他の場合では、原因となる刺激の箇所とは異なる箇所で疼痛を知覚することがある。いわゆる関連痛では、原因となる刺激の部位とは異なる箇所で疼痛を知覚することがある。関連痛では、疼痛は、脊髄の対応する区分の特定の皮膚分節または筋節に投射されることがある。例は、虫垂炎の初期段階における臍周囲痛または胆嚢炎を罹患した対象の右肩痛を含む。
【0080】
さらに、疼痛は、軽度、中程度、および強い疼痛に分類することができる。疼痛は、当業者に公知の標準化された強度スケールに従って分類することができる。疼痛スケールは、数値スケール、例えば、数値評価スケール(NRS-11)、顔面痛スケール、例えば、Wong-Baker FACES(登録商標)疼痛評価スケール、グローバル疼痛スケール、視覚疼痛スケール、McGill疼痛スケール、Mankoski疼痛スケール、色疼痛スケール、視覚類推スケール(VAS)、言語数値評価スケール(VNRS)、言語記述スケール(VDS)、または小児疼痛スケールを含む。例えば、NRS-11では、評価0は疼痛なしを指し、評価1~3は軽度の疼痛を指し、評価4~6は中程度の疼痛を指し、このスケールの評価7~10は強いまたは重度の疼痛を指す。
【0081】
頭痛は、「一次性」、「二次性」、および「有痛性脳神経障害、他の顔面痛、および他の頭痛」に大きく分類することができる(Cephalalgia. 2018 Jan;38(1):1-211)。一次性頭痛の例は、片頭痛、緊張性頭痛、または群発頭痛を含む。二次性頭痛の例は、感染症、炎症、頭部外傷、心的外傷、脳卒中、血管障害、脳出血、および腫瘍からの頭痛を含む。脳神経障害、顔面痛、および他の頭痛の例は、三叉神経の病変または疾患に起因する疼痛および舌咽神経の病変または疾患に起因する疼痛を含む。
【0082】
片頭痛からの疼痛は、軽度、中程度、または重度として知覚され得る。片頭痛による疼痛は一時的であり得る。片頭痛による疼痛は、慢性的になり、いわゆる慢性片頭痛をもたらし得る。片頭痛が1ヶ月に少なくとも8日生じたときにも慢性片頭痛と診断することができる。片頭痛による頭痛はさらに、前兆を伴わない片頭痛および前兆を伴う片頭痛に分類することができる。前兆を伴わない片頭痛は、中程度から重度のズキズキする疼痛によって特徴付けることができ、疼痛は、4~72時間持続する。前兆を伴わない片頭痛は、突然生じ、一般に片側性であり、罹患した対象が動くことによって悪化する。前兆を伴わない片頭痛を罹患した対象は、吐き気、食欲不振、光恐怖症、または音恐怖症も経験し得る。前兆を伴う片頭痛では、罹患した対象は、最大60分間持続し得、かつ片頭痛による頭痛へと進行する視覚または感覚障害を含み得る、前兆段階を経験する。男性も女性も片頭痛を罹患する可能性があり、男性よりも女性の方が影響を受けやすいことが見出されている。女性の片頭痛の特定の形態は、月経片頭痛である。小児も、片頭痛、特に小児片頭痛を罹患する可能性がある。片頭痛は、難治性または治療抵抗性に分類することもできる。難治性および治療抵抗性片頭痛は、従来の片頭痛処置に応答しない、高頻度、重度の能力障害、またはこれらの特色の組合せを有する、片頭痛を含む。難治性または治療抵抗性片頭痛は、European Headache Federationからの、またはAmerican Headache Society(AHS)のRefractory Headache Special Interest Section(RHSIS)からのガイドラインなどのガイドラインに従って診断することができる。急性錯乱性片頭痛(ACM)は、稀な形態の片頭痛障害であり、罹患した対象は錯乱状態を提示する。ACMは小児にも生じ得る。片頭痛発作の重症度は、VASまたはNRS_11などの疼痛スケールを使用してスコア付けすることができる。一実施形態では、片頭痛は、神経障害または神経系疾患であり得る。この実施形態では、罹患した対象は、前兆、吐き気、光恐怖症、片麻痺、音恐怖症などの症状を経験し得るが、疼痛は経験せず、特に頭痛は経験しない。この形態の片頭痛は、頭痛なしで前兆を伴う片頭痛と呼ばれることもある。また、これは、眼性片頭痛とも呼ばれる、頭痛なしで純粋に視覚的な前兆を伴う片頭痛と区別することができる。神経障害としての片頭痛の処置は、疼痛疾患としての片頭痛の場合と同じであり得る。片頭痛発作は、ベータ遮断薬、抗けいれん薬、三環系薬、カルシウムチャネル遮断薬、トリプタン、ラスミジタンなどのジタン、ジヒドロエルゴタミン(DHE)、NSAID、ドーパミン拮抗薬、麦角アルカロイド、オピオイド、グルココルチコイドステロイド、抗うつ薬、トピラメートまたはバルプロ酸ナトリウムなどの抗発作薬、オナボツリヌス毒素A、アセトアミノフェンなどの群から選択されるAPIまたは薬品で処置することができる。バックアップ薬の有効性の低下と組み合わせてあらゆる片頭痛発作を処置する必要性によって、薬品の過剰投与の発生が決定され得る。
【0083】
本発明の文脈で使用される場合、「疼痛の処置」という用語は、疼痛からの保護、疼痛知覚からの保護、疼痛の予防、疼痛知覚の予防、疼痛の軽減、疼痛知覚の軽減、および処置対象の幸福度の増加を指すことがある。疼痛からの保護および疼痛知覚からの保護という用語は、疼痛の発症または疼痛知覚の発症前に開始され、疼痛の発症または疼痛知覚の発症後に継続される処置を含む。疼痛からの予防および疼痛知覚からの予防という用語は、疼痛の発症または疼痛知覚の発症前に開始される処置を含む。「処置」という用語は、症状の緩和、症状の発症の遅延、症状の軽減、および疼痛の治癒も含む。疼痛の軽減または疼痛知覚の軽減という用語は、疼痛の発症もしくは疼痛知覚の発症とともに、またはその後に開始される処置を含む。本発明の文脈で使用される場合、「疼痛の処置」という用語は、対象の身体的および/または精神的状態、すなわち、処置対象の幸福度の改善を指すこともある。身体的状態の改善は、改善された反応、強度、および持久力または労働能力を含む。精神状態の改善は、改善された回復力、集中力、および感情安定性を含む。一実施形態では、対象が処置の2時間後に無痛である場合、疼痛、特に片頭痛による疼痛が処置されている。疼痛は、例えば、少なくとも1つの麻酔薬または少なくとも1つの鎮痛薬を適用することによって処置することができる。疼痛は、少なくとも1つの麻酔薬および少なくとも1つの鎮痛薬を適用することによっても処置することができる。鎮痛薬と組み合わせて麻酔薬を適用することは、鎮静管理(analgosedation)と称される手技で呼ばれることがある。
【0084】
本発明の文脈で使用される場合、「代謝障害」または「代謝疾患」という用語は、対象の体内の少なくとも1つの代謝プロセスの変化によって引き起こされる任意の疾患または障害を指すことがある。代謝障害は、先天性または遺伝性の代謝疾患を指すことがあり、遺伝子異常、特に単一遺伝子異常、さらにより具体的には常染色体劣性遺伝子の単一遺伝子異常からもたらされる生理学的結果を言い表し得る。先天性代謝疾患の一例は、1型糖尿病である。代謝障害は、後天性代謝疾患を指すこともあり、異なる原疾患からもたらされる生理学的結果を言い表し得る。後天性代謝疾患の一例は、腎疾患からもたらされる代謝疾患である。
【0085】
代謝障害は、体内の代謝プロセスの代謝物または基質に従って分類することができ、その処理は、代謝疾患の結果として影響を受ける。代謝障害は、代謝疾患の結果として影響を受ける代謝プロセスに従って分類することができる。
【0086】
本発明の一実施形態では、代謝障害は、酸塩基不均衡、代謝性脳疾患、カルシウム代謝障害、DNA修復欠損障害、グルコース代謝障害、高乳酸血症、鉄代謝障害、脂質代謝障害、吸収不良症候群、メタボリックシンドロームX、先天性代謝異常症、ミトコンドリア病、リン代謝障害、ポルフィリン症、タンパク質恒常性欠損(proteostasis deficiency)、代謝性皮膚疾患、消耗症候群、および水電解質不均衡の群から選択される障害を指すことがある。
【0087】
別の実施形態では、代謝障害は、1型アデノシン一リン酸デアミナーゼ欠乏症、副腎性器症候群、3-メチルグルタコン酸尿症、アルファ-1アンチトリプシン欠乏症、アルカプトン尿症、糖尿病、中性脂質蓄積症、シスチン尿症、赤芽球増殖性プロトポルフィリン症、食物不耐症、ガラクトース血症、痛風、1型グルタル酸尿症、糖原病、尿素サイクル異常症、橋本甲状腺炎、ハートナップ病、腸性先端皮膚炎、遺伝性ヘモクロマトーシス、ホモシスチン尿症、高脂血症、低ホスファターゼ症、甲状腺機能低下症、ケトアシドーシス、ケトーシス、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠乏症、アセトン尿症、レッシュ・ナイハン症候群、スフィンゴリピドーシス、マロトー・ラミー症候群、メチルマロンアジド尿症(methylmalonaziduria)、アジソン病、原発性アルドステロン症、クッシング病、ファブリー病、ゴーシェ病、ハンター症候群、モルキオ症候群、ウィルソン病、嚢胞性線維症、骨粗鬆症、フェニルケトン尿症、ポルフィリン症(porphyries)、および蓄積症の群から選択することができる。
【0088】
本発明の文脈で使用される場合、「代謝障害の処置」という用語は、代謝障害からの保護、代謝障害の予防、代謝障害の症状の軽減、および代謝障害を患っている処置対象の幸福度の増加を指すことがある。代謝障害からの保護という用語は、代謝障害の発症前に開始され、代謝障害の発症後に継続される処置を含む。代謝障害からの予防という用語は、代謝障害の発症前に開始される処置を含む。「処置」という用語は、症状の緩和、症状の発症の遅延、症状の軽減、および代謝障害の治癒も含む。代謝障害の軽減という用語は、代謝障害の発症とともに、またはその後に開始される処置を含む。本発明の文脈で使用される場合、「代謝障害の処置」という用語は、対象の身体的および/または精神的状態、すなわち、処置対象の幸福度の改善を指すこともある。身体的状態の改善は、改善された反応、強度、および持久力または労働能力を含む。精神状態の改善は、改善された回復力、集中力、および感情安定性を含む。代謝障害は、例えば、代謝障害において存在しないまたは機能不全の少なくとも1つの酵素を適用することによって処置することができる。代謝障害は、代謝障害において存在しないまたは機能不全の酵素の特異的基質の量を減少させる薬剤を適用することによって処置することもできる。代謝障害は、代謝障害において存在しないまたは機能不全の少なくとも1つの酵素を適用し、代謝障害において存在しないまたは機能不全の酵素の特異的基質の量を減少させる薬剤を適用することによって処置することもできる。
【0089】
「中枢神経系(CNS)疾患」、「神経系疾患」、または「神経障害」という用語は、脳および/または脊髄の機能の構造に影響を及ぼす疾患または障害を指すことがある。CNS疾患は、疾患の原因に従って分類することができる。したがって、CNS疾患は、自己免疫CNS疾患、心的外傷関連のCNS疾患、感染関連のCNS疾患、変性CNS疾患、構造欠陥関連のCNS疾患、がん関連のCNS疾患、遺伝性CNS疾患、代謝関連のCNS疾患、神経障害性CNS疾患、および脳卒中関連のCNS疾患に分けることができる。
【0090】
自己免疫CNS疾患は、急性脱髄性脳脊髄炎、多発性硬化症、視神経炎、視神経脊髄炎、放射線学的に孤立した症候群、および臨床的に孤立した症候群の群から選択され得る。変性CNS疾患は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、フリードライヒ運動失調症、ハンチントン病、レビー小体病、パーキンソン病、および脊髄性筋萎縮症の群から選択され得る。
【0091】
CNS疾患の一実施形態では、CNS疾患は、神経障害性CNS疾患である。この実施形態では、中枢神経系または中枢神経系および末梢神経系の神経構造が損傷を受ける。神経障害性CNS疾患は、脊髄、脳幹、視床、皮質下構造、および皮質における病変などの、CNSの一次プロセスにおける病変によって引き起こされ得る。この実施形態では、神経障害性CNS疾患は、神経障害性疼痛または神経障害性疼痛の知覚を伴い得る。この実施形態では、神経障害性CNS疾患を罹患した対象は、非神経障害性疼痛、特に生理学的疼痛および/または対象の身体の機能的問題の結果としての疼痛も経験し得る。この実施形態では、CNS疾患は、対象が疼痛を経験しない前兆を伴う片頭痛であり得る。この実施形態では、片頭痛は神経障害である。この実施形態では、片頭痛は、サイレント片頭痛または無痛性片頭痛と呼ばれることもある。無痛性片頭痛では、罹患した対象は、前兆、吐き気、光恐怖症、片麻痺、音恐怖症、または他の片頭痛の症状を経験し得るが、疼痛は経験せず、特に頭痛は経験しない。片頭痛は、眼性片頭痛または網膜性片頭痛と呼ばれることもある。眼性片頭痛では、罹患した対象は、頭痛を経験することなく視覚的な前兆または視覚の変化を経験し得る。網膜性片頭痛では、罹患した対象は、頭痛を経験することなく、両目ではなく片目において、短期間の視力低下または見えなくなることの繰り返しの発作を経験し得る。
【0092】
別の実施形態では、CNS疾患は、嗜癖、クモ膜嚢胞、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、自閉症、双極性障害、カタレプシー、うつ病、脳炎、てんかん/発作、感染症、閉じ込め症候群、髄膜炎、片頭痛、多発性硬化症、脊髄症、神経障害性疼痛トゥレット病、ならびにアルツハイマー病、ハンチントン病およびパーキンソン病を含む神経変性疾患の群から選択され得る。
【0093】
本発明の文脈で使用される場合、「麻酔薬」という用語は、感覚および/または意識の一時的な喪失をもたらし、かつ抗不安、催眠、鎮静、および/または麻薬効果を有するAPIを指すことがある。麻酔薬という用語は、抗不安薬、催眠薬、鎮静薬、および/または麻薬を含むように使用されることがある。同様に、「麻酔用量」または「治療麻酔用量」は、抗不安、催眠、鎮静、および/または麻酔効果を及ぼすAPIの用量を指すことがある。麻酔薬の一例は、プロポフォールである。
【0094】
本発明の文脈で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を指すことがある。好ましくは、「対象」は、ヒトを指す。「対象」という用語は、完全に成長したヒト、完全に成長した非ヒト動物、完全には成長していないヒト、および/または完全には成長していない非ヒト動物を指すこともある。完全に成長したヒトは、成人であり得る。完全には成長していないヒトは、小児であり得る。好ましくは、「対象」という用語は、完全に成長したヒトを指す。さらに好ましくは、「対象」という用語は、完全には成長していないヒトを指す。最も好ましくは、用語は、完全に成長したヒトおよび/または完全には成長していないヒトを指す。
【0095】
本発明の文脈で使用される場合、「口」という用語は、対象の口、特に口の組織を指す。「口」という用語は、消化管の最上部を形成する、対象の頭部の体腔、口腔、および周囲の軟組織を指すこともある。対象が完全に成長したヒトである好ましい実施形態では、口は、食物および空気が口に入る開口部である。この好ましい実施形態では、口の部分は、唇に囲まれた口裂と、一方では唇と頬との間に、他方では上顎および下顎と歯の列との間に位置する口の前庭と、口の基部または口底、舌、ならびに硬口蓋および軟口蓋を含む口腔とを含む。
【0096】
本発明の文脈において、「粘膜」という用語は、動物の体の様々な空洞を被覆して内臓の表面を覆う粘膜を指す。口腔の文脈において、用語は、口腔をほぼ連続的に被覆し、口腔の最も外側の湿った被覆をもたらす口腔粘膜を指す。口腔粘膜は、管または唾液腺による穿孔があり得る。これは、本質的に3つの異なる機能:分泌、感覚、および保護を果たす。口腔粘膜は、皮膚と連続しているが、口腔内の様々な機能によって、組成および構造が異なる。口腔粘膜は、おそらくより深い粘膜下層を有する結合組織固有層(connective tissue proper)または粘膜固有層の上にある重層扁平上皮で構成されている。基底膜は、扁平上皮と粘膜固有層との間に位置し得る。典型的には、上皮は、体表面の外層と、消化管の被覆と、体腔を含む中空構造の壁とを構成する。口腔粘膜の上皮は、ケラチノサイトと呼ばれることもある。なぜなら、前記上皮の細胞は、ケラチノサイトが以前にケラチンを生成しなかった場合でも、生理学的レベルの生理学的状態で、または上皮が外傷を受けた場合により高いレベルで、ケラチンを生成することができるからである。生理学的レベルは、ケラチノサイトによるケラチン生成の欠如も含む。
【0097】
さらに、3つの異なるタイプの粘膜を、口腔において、組織学的および機能的特色に基づいて、被覆粘膜、咀嚼粘膜、および特殊粘膜に分けることができる。
【0098】
被覆粘膜のタイプは、唇、頬粘膜、口唇粘膜、歯槽粘膜、舌腹側面、口底、中咽頭、および軟口蓋に見ることができる。その臨床的外観は、より柔らかい表面テクスチャ、ほとんどの表面、ならびに伸縮および圧縮されることでクッションとして作用する能力によって特徴付けることができる。その微視的外観は、滑らかな界面を有する非角化上皮が存在し、乳頭間隆起および結合組織乳頭がほとんどないが、粘膜固有層および粘膜下層に弾性繊維が存在することによって特徴付けることができる。乳頭間隆起は、網状突起または網状ペグと呼ばれることもあり、粘膜において下にある結合組織に突き出た上皮の延長部を言い表す。
【0099】
咀嚼粘膜のタイプは、歯肉、硬口蓋、および舌背面に見ることができる。その臨床的外観は、ゴムのような表面テクスチャおよび弾力性によって特徴付けることができるため、これは、堅い基部として機能し得る。その微視的外観は、粘膜下層の薄い層ありまたはまったくなしの、多くの乳頭間隆起および結合組織乳頭を伴った、角化上皮および相互にかみ合った界面によって特徴付けることができる。咀嚼粘膜が骨の上にある場合、粘膜下層の有無にかかわらず、咀嚼粘膜は、組織の堅さを増加させることができる。
【0100】
特殊粘膜のタイプは、舌背面、特に、有郭乳頭、葉状乳頭(folate papillae)、茸状乳頭、および糸状乳頭に見ることができる。その臨床的外観は、舌乳頭とのそれらの繋がりによって特徴付けることができる。その微視的外観は、咀嚼粘膜に似ていると特徴付けることができる。特殊粘膜は角化され得る。さらに、これは、乳頭または味蕾などの、上皮および粘膜固有層の個別の構造におけるその存在によって特徴付けることができる。
【0101】
被覆粘膜、咀嚼粘膜、および特殊粘膜の比率は、動物種の対象間で様々であり得、例えば、比率は、そのような対象間の発達段階または成長段階が異なるため、様々であり得る。比率は、異なる種の対象間でも様々であり得る。対象が完全に成長したヒト対象である好ましい実施形態では、被覆粘膜が口および/または口腔の部分の約60%を覆い、咀嚼粘膜が約25%を覆い、特殊粘膜が約15%を覆う。
【0102】
さらに、上皮におけるケラチンの存在に基づいて、口および/または口腔の部分は、角化口腔粘膜および非角化口腔粘膜にグループ化することができる。ケラチンは、他の機能のなかでも中間フィラメントネットワークを形成し、さらなる構造的完全性を提供することができる、構造タンパク質の多様な群である。
【0103】
非角化粘膜は、上皮が角化していない粘膜を指す。非角化粘膜上皮は、表面細胞および/または最外細胞層が生細胞である上皮を指すことがある。非角化上皮は、上皮細胞にケラチンが存在しないことを指すこともある。非角化上皮は、水を通す上皮を指すこともある。非角化上皮は、擦過に対して中程度の保護を提供する上皮を指すこともある。非角化上皮は、頬腔、咽頭、および/または食道の被覆を指すこともある。
【0104】
「角化口腔粘膜」という用語は、上皮が角化した粘膜を指す。角化上皮は、オルト角化および/またはパラ角化粘膜を含み得る。角化上皮は、陸上脊椎動物の表皮を指すことがある。角化上皮は、表面細胞および/または最外細胞層が死細胞である上皮を指すことがある。角化上皮は、表面細胞および/または最外細胞層が細胞質の大部分がケラチンで置き換わった細胞である上皮を指すことがある。角化上皮は、水を通さない上皮を指すことがある。角化上皮は、擦過に対して良好な保護を提供する上皮を指すことがある。
【0105】
角化口腔粘膜は、パラ角化粘膜および/またはオルト角化粘膜を含み得る。咀嚼粘膜は、パラ角化および/またはオルト角化粘膜を含み得る。パラ角化粘膜は、部分的な角化、または角化上皮を形成する細胞がケラチンおよび核を含む角化粘膜を指すことがある。オルト角化粘膜は、完全な角化、または角化上皮を形成する細胞がケラチンを含み核を欠いている角化粘膜を指すことがある。
【0106】
口の部分をどの程度覆うかについての異なるタイプの粘膜の比率は様々である。非角化粘膜および角化粘膜の比率は様々であり得る。比率は、動物種の対象間で様々であり得、例えば、比率は、そのような対象間の発達段階または成長段階が異なるため、様々であり得る。比率は、異なる種の対象間でも様々であり得る。対象が完全に成長したヒト対象である好ましい実施形態では、口および/または口腔の部分における非角化粘膜の比率は、総表面積の50%~60%の範囲である。対象が完全には成長していないヒト対象である別の好ましい実施形態では、口および/または口腔の部分における非角化粘膜の比率は、口の部分の総表面積の50~70%の範囲である。
【0107】
一実施形態では、口の部分は、約220cmの面積を有する。この実施形態では、非角化部分は、約150cm、約130cm、または約110cmの面積を覆う。
【0108】
好ましい実施形態では、口は、完全に成長したヒトの口である。この実施形態では、口の部分は、約220cmの面積を有し得る。この実施形態では、非角化部分は、約150cm、約130cm、または約110cmの面積を覆い得る。
【0109】
別の好ましい実施形態では、口は、完全には成長していないヒトの口である。この実施形態では、口の部分は、最大220cmの面積を有し得る。完全には成長していない新生児のヒト対象では、口の部分は、約90cmまたはそれよりも大きな面積を有し得る。完全には成長していないヒト対象の発達段階に応じて、口の部分は、90~220cmの範囲で選択される面積を有し得る。この実施形態では、口の部分は、完全には成長していないヒト対象の成長状態に応じた面積を有し得る。特に、口の面積は、完全に成長したヒトの口の面積と等しいか、またはそれよりも小さい。この実施形態では、非角化部分は、口の部分すべての30~90%、具体的には口の部分すべての40~80%、より具体的には口の部分すべての50~70%、最も具体的には口の部分すべての約60%の表面積を覆い得る。完全には成長していないヒトの発達段階に応じて、口の非角化部分は、45~150cm、45~130cm、または45~110cm、好ましくは45~110cmの面積を覆い得る。
【0110】
さらなる好ましい実施形態では、口は、完全に成長した非ヒト動物、特に農業用動物の口である。農業用動物は、消費用に飼育された動物、飼養した反芻動物、または畜産を含む、農業または経済的な関連で使用されているまたは使用されていた動物であり得る。農業用動物は、ラクダ、ラマ、ウマ、ロバ、ラバ、ウシ、バッファロー、去勢雄ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、およびイヌであり得る。この実施形態では、口の部分は、220cmよりも大きな面積、特に220cm~500cmの面積を有し得る。この実施形態では、口および/または口腔の部分における非角化粘膜の比率は、20~80%の範囲、より具体的には30~70%の範囲である。
【0111】
「鎮痛または鎮静治療用量を上回る」という用語は、それぞれの鎮痛薬または鎮静薬の最高治療用量よりも高い、少なくとも1つの投薬単位を介して投与される前記鎮痛薬または鎮静薬の用量を指すことがある。用語は、前記鎮痛薬または鎮静薬の過剰投与を指すこともある。鎮痛薬および鎮静薬の治療用量は、当業者に公知である。用語は、鎮痛薬および/または鎮静薬の致死用量を指すこともある。用語は、それぞれの鎮痛薬または鎮静薬の治療用量が当業者に公知でない場合、鎮痛薬または鎮静薬の毒性用量、特に致死毒性用量を指すこともある。「鎮痛または鎮静治療用量を上回る」という用語は、それぞれのAPIの治療鎮痛および/または鎮静血清レベルよりも高い全身用量に達する(achies)用量を指すこともある。鎮痛薬または鎮静薬の血清レベルは、例えば、対象の血液サンプルからの治療薬モニタリングによって決定することができ、当業者に公知である。「鎮痛または鎮静治療用量を上回る」という用語は、投与された鎮痛および/または鎮静治療用量未満であるが、それぞれのAPIの治療鎮痛および/または鎮静血清レベルよりも高い全身用量に達するそれぞれの鎮痛薬および/または鎮静薬の用量を指すこともある。「鎮痛または鎮静治療用量を上回る」という用語は、それぞれのAPIの毒性全身用量、特に致死毒性用量に達するそれぞれの鎮痛薬および/または鎮静薬の用量を指すこともある。
【0112】
本発明の文脈で使用される場合、「治療用量を上回る」という用語は、少なくとも1つの投薬単位を介して投与されるAPIの最高治療用量よりも高い、前記APIの用量を指すことがある。用語は、APIの過剰投与を指すこともある。APIの治療用量は、当業者に公知である。APIの最大治療用量を上回ると、毒性効果が生じ得る。「治療用量を上回る」という用語は、APIの致死用量を指すこともある。用語は、それぞれのAPIの治療用量が当業者に公知でない場合、APIの毒性用量、特に致死毒性用量を指すこともある。「治療用量を上回る」という用語は、それぞれのAPIの治療全身血清または血漿レベルよりも高い全身用量に達する用量を指すこともある。APIの全身用量は、APIの血清レベルであり得る。APIの血清レベルは、例えば、対象の血液サンプルからの治療薬モニタリングによって決定することができる。APIの全身レベルを決定するためのさらなる方法は、採血、および当業者に公知の蛍光法、SDS-PAGE、CE-SDS、ELISAまたは質量分析などの方法を含む。「治療用量を上回る」という用語は、治療用量未満であるが、それぞれのAPIの治療血清レベルよりも高い全身用量に達する、それぞれのAPIの投与用量を指すこともある。「治療用量を上回る」という用語は、それぞれのAPIの毒性全身用量、特に致死毒性用量に達するそれぞれのAPIの用量を指すこともある。「治療用量を上回る」という用語は、毒性、特に致死的に毒性である、および/またはAPIが送達される時間にわたってそれぞれのAPIの治療血清レベルよりも高い用量に達するそれぞれのAPIの用量を指すこともある。「治療用量を上回る」という用語は、それぞれのAPIの経時的な治療用量よりも高いそれぞれのAPIの用量を指すこともある。経時的な鎮痛および/または鎮静治療用量の例は、プロポフォールの場合、1時間当たり4mg/kg(体重)の治療用量である。経時的なホルモン治療用量のさらなる例は、インスリンの場合、1日当たり1IU/kg体重である。
【0113】
本発明の文脈で使用される場合、「毒性効果」という用語は、少なくとも1つの投薬単位を介して投与されるAPIの最高治療用量よりも高い、前記APIの用量の効果を指すことがある。用語は、APIの過剰投与の効果を指すこともある。APIの治療用量は、当業者に公知である。APIの最大治療用量を上回ると、毒性効果が生じ得る。「毒性効果」という用語は、APIの致死用量の効果を指すこともある。用語は、それぞれのAPIの治療用量が当業者に公知でない場合、APIの毒性用量、特に致死的に毒性の用量を指すこともある。「毒性効果」という用語は、それぞれのAPIの治療全身血清レベルよりも高い全身用量に達する用量の効果を指すこともある。APIの全身用量は、APIの血清レベルであり得る。APIの血清レベルは、例えば、対象の血液サンプルからの治療薬モニタリングによって決定することができる。APIの全身レベルを決定するためのさらなる方法は、採血、および当業者に公知のELISAまたは質量分析などの方法を含む。「毒性効果」という用語は、最大治療用量未満であるが、それぞれのAPIの最大治療血清レベルよりも高い全身用量に達する、APIの投与用量の効果を指すこともある。「毒性効果」という用語は、それぞれのAPIの毒性全身用量、特に致死毒性用量に達するAPIの用量の効果を指すこともある。「毒性効果」という用語は、毒性、特に致死的に毒性である、および/またはAPIが送達される時間にわたってそれぞれのAPIの治療血清レベルである用量に達するAPIの用量の効果を指すこともある。「毒性効果」という用語は、それぞれのAPIの経時的な治療用量よりも高いAPIの用量の効果を指すこともある。プロポフォールの場合、1時間当たり4mg/kg(体重)の治療用量を上回ると、経時的な鎮痛および/または鎮静治療用量の一次有害効果の例が生じ得る。1日当たり1IU/kg体重のインスリンの治療用量を上回ると、経時的なホルモン治療用量の一次有害効果のさらなる例が生じ得る。
【0114】
有利なことに、本発明による投薬単位は、医師、薬剤師、または看護師などの技能のある従事者による監視なしで、過剰投与などの乱用および誤用の恐れがあるAPIの外来患者使用を可能にする。特に片頭痛の処置において、技能のある従事者による監督とは独立した外来患者使用は、患者にとって可能な限り障害の少ない治療を補助し、病院、薬局、医療機関、および他の医療制度の施設が費やす必要のあるコストおよび労力を削減した。
【0115】
本発明の文脈で使用される場合、「乱用」という用語は、快楽目的でAPIまたは活性物質の影響を受けるためのAPIまたは活性物質の意図的な投与を指す。多幸感を生み出すためにAPIまたは活性物質の乱用的な適用が行われ得る。APIまたは活性物質の乱用の有害効果は、嗜癖の発症と死を含む身体的または心理的な損傷であり得る。有害効果を伴う乱用または使用は、APIまたは活性物質の意図的、永続的、または散発的な過剰使用であり、その結果として、身体的または心理的な損傷が伴い得る[RL2011/83/EGまたはMedicinal Products Act修正第16条を参照]。例えば、処方されたまたは当業者によって推奨されるAPIが、快楽目的でAPIの影響を受けることを意図して処方または推奨された用量よりも高い用量で使用される場合、乱用は誤用ともなり得る。例えば、活性物質が致死用量で快楽目的で適用される場合、乱用は過剰投与ともなり得る。
【0116】
本発明の文脈で使用される場合、「誤用」という用語は、処方された、当業者によって推奨された、安全であることが知られている、または一次有害効果を及ぼさないことが知られている用量よりも高い用量のAPIの意図的または非意図的な適用を指す。APIの誤用の有害効果は、嗜癖の発症と死を含む身体的または心理的な損傷であり得る。誤用という用語は、処方された、当業者によって推奨された、安全であることが知られている、または一次有害効果を及ぼさないことが知られている用量がないAPIの文脈でも使用され得る。この場合、誤用用量は、有害な用量、特に致死用量であり得る。例えば、安全な用量が知られていないAPIの用量が快楽目的で適用される場合、誤用は乱用ともなり得る。例えば、処方された、当業者によって推奨された、安全であることが知られている、または一次有害効果を及ぼさないことが知られている用量よりも高い用量のAPIが適用される場合、誤用は過剰投与ともなり得る。
【0117】
本発明の文脈で使用される場合、「過剰投与」という用語は、処方された、当業者によって推奨された、安全であることが知られている、または一次有害効果を及ぼさないことが知られている用量よりも高い用量のAPIまたは物質の適用を指す。過剰投与の有害効果は、嗜癖の発症と死を含む身体的または心理的な損傷であり得る。過剰投与は、死をもたらすための致死用量のAPIまたは物質の意図的な適用を指すことがある。過剰投与は、治療効果、治療指数、または治療範囲が知られていない物質の投与を指すこともある。例えば、物質が致死用量で快楽目的で適用される場合、過剰投与は乱用となり得る。例えば、処方された、当業者によって推奨された、安全であることが知られている、または一次有害効果を及ぼさないことが知られている用量よりも高い用量のAPIが適用される場合、過剰投与は誤用ともなり得る。
【0118】
本発明で使用される場合、「治療用量」という用語は、リスクベネフィットバランスに従って治療効果が達成される選択された適応における選択されたAPIの投与範囲を指す。選択されたAPIの治療用量は、それぞれのAPIの治療指数から推測することができる。選択されたAPIの治療用量は、それぞれのAPIの治療範囲から決定することもできる。治療用量は、最小有効用量から最小毒性用量までの投与範囲を指すことができる。治療用量は、一次治療用量であり得る。一次治療用量は、一次適応における選択されたAPIの治療用量を指すことがある。治療用量は、安全かつ有効な一次治療効果を及ぼすことができる。
【0119】
本発明の文脈において、「治療量以下」という用語は、特定のAPIの治療用量未満に低下するおよび/またはそれ未満に留まるAPIの用量に関する。治療量以下という用語は、適用されたAPIの用量の結果として特定のAPIの治療血漿濃度未満に低下するおよび/またはそれ未満に留まるAPIの血漿濃度を指すこともある。治療用量および/または治療血漿濃度が不明である場合、治療量以下は、当業者が治療効果を予想する濃度範囲未満に低下するおよび/またはそれ未満に留まる用量および/または血漿濃度を指すことがある。治療量以下の用量は、APIの単一用量または投与レジメンを指すことがある。治療量以下の用量は、一次治療効果を指すことがあり、一次治療量以下用量と呼ばれることがある。治療量以下の用量では、異なる効果が生じることがあり、例えば、治療量以下の用量では、関連する一次治療効果は達成されず、異なる適応もしくは二次適応の治療効果が達成されることがあり、および/または必ずしも治療的ではない異なる効果が達成される。
【0120】
一実施形態では、鎮静の開始のためのプロポフォールの治療麻酔用量は、1.5~2.5mg/kg体重のプロポフォールである。鎮静の開始のためのプロポフォールの治療麻酔用量は、完全に成長したヒト対象において1.5mg/kg体重であり、毒性効果は、1.5mg/kg体重よりも高いと生じ得る。鎮静の開始のためのプロポフォールの治療麻酔用量は、完全には成長していないヒト対象において2.5mg/kg体重であり、毒性効果は、2.5mg/kg体重よりも高いと生じ得る。異なる実施形態では、プロポフォールの治療鎮静全身レベルは、約1.5~2.5μg/ml血液、深い鎮静または催眠の場合には、最大4μg/ml血液である。この実施形態では、毒性効果は、4μg/mlプロポフォールよりも高い全身濃度で生じ得る。異なる実施形態では、プロポフォールの治療麻酔用量はまた、1時間当たり4mg/kg体重以下であり得る。そのため、プロポフォールの一次治療用量は、1.5mg/kg体重であり得る。この実施形態では、一次適応は、麻酔での使用であり、治療量以下の用量は、二次治療効果の場合には1.5mg/kg体重未満の用量である。
【0121】
一実施形態では、本発明による投薬単位は、選択されたAPIの一次治療効果が達成され得ることを、最大適用可能用量を一次適応の治療量以下の用量に制限することによって防ぐために使用され得る。この実施形態では、一次治療量以下用量は、異なる適応または二次適応に対する治療効果を可能にし得、二次治療効果を可能にし得る。この実施形態では、投薬単位に含まれるAPIが麻酔薬として選択された場合、一次治療効果は麻酔効果であり得、および/または投薬単位に含まれるAPIが鎮痛薬として選択された場合、一次効果は鎮痛効果であり得る。この実施形態では、対象の口のすべての非角化部分を複数の前記投薬単位で覆う場合に一次治療効果が防止されるように、選択されるAPIの用量が選択され、適用されるAPIの総用量は、一次治療効果の最小用量未満に留まるように制限されている。投薬単位の投薬量と面積との好ましい組合せは、表1~4に見ることができる。この実施形態では、表1~4に記載されているような目標の合計API用量は、二次治療効果の最大用量を指す。
【0122】
本発明で使用される場合、「一次治療効果」という用語は、API、適応、および必要に応じてAPIの用量の組合せを指す。本発明で使用される一次治療効果は、選択されたAPIを適用すべき一次適応における治療効果を指すことがある。この文脈において、「一次適応」は、主要または主な適応として理解され得る。適応は、疾患または目的であり得る。選択されたAPIがある特定の適応において一般に適用される場合、この適応は、選択されたAPIの一次適応と呼ばれることがある。選択されたAPIがこの一次適応において有する効果は、一次治療効果と呼ばれることがある。一次治療効果は、選択されたAPIの治療用量の適用によって達成され得る。選択されたAPIのより低い用量または治療量以下の用量での適用により、完全または最適な治療効果がもたらされ得る。一次適応の存在は、APIが治療効果を有し得るさらなる適応があることを示唆し得る。そのようなさらなる適応は、当業者に公知であることもあれば、公知でないこともある。例えば、プロポフォールの一次適応は、麻酔での使用である。ヒトでは、鎮静効果は、プロポフォールが血中に1.5~2.0μg/mlのレベルで存在する場合に達成され得、プロポフォールの催眠効果は、プロポフォールが4.05±1.01μg/ml以下のレベルで全身に存在する場合に達成され得る。この実施形態では、毒性効果を防止するため(In this embodiment, to prevent a toxic effect.)。麻酔薬としてのプロポフォールの一次治療効果は、1.5~2.0μg/mlの全身レベルで達成され得る。したがって、鎮静の開始を誘導するためには、1.5mg/kg体重のプロポフォールの最小用量を適用する必要がある。そのため、プロポフォールの二次治療効果は、最大1.5μg/mlの全身レベルで達成され得る。あるいは、プロポフォールの二次治療効果は、1.5mg/kg体重未満で達成され得る。
【0123】
一実施形態では、一次治療効果は、APIが一般に適用される適応における選択されたAPIの治療効果を指すこともある。この実施形態では、一次治療は、疾患に対して与えられる最初の処置であり得、第一選択治療または導入治療と呼ばれることがある。これは、所定の適応のためにある特定の処置が最初に適用されることが一般的である場合に当てはまり得る。投与されるAPIは、手術および薬物治療などの組合せ処置の一部であっても、または1つより多くのAPIの組合せであってもよい。この実施形態の例は、がんにおける第一選択治療であり得る。
【0124】
「医薬品有効成分」(API)という用語は、対象において薬理学的効果を及ぼす化合物を指す。したがって、APIは、薬理学的活性を付与すること、またはそうでなければ疾患の診断、治癒、軽減、処置もしくは予防における効果を有すること、または対象の生理学的機能を回復、補正もしくは改変することにおいて効果を有することを意図している。具体的には、APIは、小分子、巨大分子、タンパク質、ペプチド、ペプチド断片、核酸、ヌクレオチド断片、遺伝子、アプタマー、または上記のものの任意の組合せであり得る。有利なことに、投薬単位について選択されたAPIは、特に口腔の非角化粘膜上での、経口摂取および/または経粘膜送達に好適である。そのようなAPIは当業者に公知である。
【0125】
本発明の好ましい実施形態では、フィルムの製剤は、最大25%(w/w)のAPI、さらにより好ましくは最大22.5%(w/w)のAPI、最も好ましくは最大20%(w/w)のAPIからなる。
【0126】
本発明の一実施形態では、APIは、ホルモン、特定のプロテオホルモン、代謝調節剤、成長因子、内因性ペプチド類似体、精神医学的薬品、同化剤、ベータ2アゴニスト、幻覚薬、筋弛緩薬、鎮痛薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、麻薬、および/または麻酔薬の群から選択される。好ましい実施形態では、鎮痛薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、および/または麻酔薬が選択され、さらにより好ましくは、トリプタン、ラスミジタンなどのジタン、NSAID、グルココルチコイドステロイド、サリチレートおよび誘導体、フェニル酢酸誘導体、2-フェニルプロピオン酸誘導体、4-アミノフェノール誘導体、ピラゾロン、選択的COX2阻害薬、抗うつ薬、抗けいれん薬、オピオイド、筋弛緩薬、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、エトミデート、ケタミン、プロポフォール、抗ヒスタミン薬、または局所麻酔薬の群からの鎮痛薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、麻薬、および/または麻酔薬が選択される。
【0127】
本発明の異なる実施形態では、投薬単位は、ホルモン、特にプロテオホルモンが選択され、代謝障害が、酸塩基不均衡、代謝性脳疾患、カルシウム代謝障害、DNA修復欠損障害、グルコース代謝障害、高乳酸血症、鉄代謝障害、脂質代謝障害、吸収不良症候群、メタボリックシンドロームX、先天性代謝異常症、ミトコンドリア病、リン代謝障害、ポルフィリン症、プロテオスタシスの群から選択され、好ましくは、プロテオホルモン、特にインスリンを含む投薬単位が、グルコース代謝障害、特に糖尿病の処置での使用のために選択されることを特徴とする、代謝障害を処置することを必要とする対象、好ましくはヒト対象における代謝障害の処置での使用のためのものである。
【0128】
本発明の異なる実施形態では、投薬単位は、鎮痛薬および/または麻酔薬が選択され、神経系疾患が、嗜癖、クモ膜嚢胞、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、自閉症、双極性障害、カタレプシー、うつ病、脳炎、てんかん/発作、感染症、閉じ込め症候群、髄膜炎、片頭痛、多発性硬化症、脊髄症、神経障害性疼痛トゥレット病、ならびにアルツハイマー病、ハンチントン病およびパーキンソン病を含む神経変性疾患の群から選択され、好ましくは、APIが麻酔薬として選択され、疾患が片頭痛として選択され、より好ましくは、APIがプロポフォールとして選択され、疾患が片頭痛として選択され、最も好ましくは、APIが5mg未満の用量のプロポフォールとして選択され、投薬単位の面積が6cmで選択され、疾患が片頭痛として選択されることを特徴とする、神経系疾患を処置することを必要とする対象、好ましくはヒト対象における神経系疾患の処置での使用のためのものである。
【0129】
本発明の文脈で使用される場合、「面積重量(area weight)」という用語は、投薬単位またはフィルムがその面積に対して有する重量を指すことがある。典型的には、面積重量はg/mで示される。面積重量は、調製されたフィルムのAPI含有量を定義することから、フィルムの投薬単位の関連する品質属性である。フィルムの面積重量は、例えば、溶剤キャスティング中のコーティングナイフのギャップ高さを定義することによって調整され得る。APIを含むマトリックスを基材上に堆積させた後に、面積重量を、例えば製造中にコーティングナイフのギャップ高さを縮小させることによって調整することができる。フィルムの所望の面積重量が満たされるまで、このステップを繰り返すことができる。フィルムおよび/または投薬単位の好ましい面積重量は、5~500g/m、好ましくは10~400g/m、さらに好ましくは20~350g/m、さらに好ましくは30~300g/m、さらに好ましくは40~250g/m、さらに好ましくは50~200g/m、さらに好ましくは60~150g/m、さらに好ましくは70~130g/m、さらに好ましくは80~120g/m、さらに好ましくは90~110g/mの範囲、さらに好ましくは100g/mである。特に、APIがプロポフォールとして選択される実施形態では、70~130g/m、好ましくは80~120g/m、さらに好ましくは90~110g/m、さらに好ましくは100g/mの面積重量が投薬単位にとって好ましい。
【0130】
好ましい実施形態では、プロポフォールが麻酔薬として選択され、70~130g/m、好ましくは80~120g/m、さらに好ましくは90~110g/m、さらに好ましくは100g/mの面積重量が選択され、5mg未満の投薬単位の用量が選択され、6cmの面積が選択される。
【0131】
本発明の好ましい実施形態では、APIは、鎮痛薬および/または麻酔薬であり、70~130g/m、好ましくは80~120g/m、さらに好ましくは90~110g/m、さらに好ましくは100g/mの面積重量が選択される。さらなる好ましい実施形態では、APIは、少なくとも1つの鎮痛薬と1つの麻酔薬との組合せであり、70~130g/m、好ましくは80~120g/m、さらに好ましくは90~110g/m、さらに好ましくは100g/mの面積重量が選択される。
【0132】
一実施形態では、APIは、少なくとも1つの麻酔薬を含み、麻酔薬は、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、または麻薬から選択され得る。
【0133】
一実施形態では、APIは、少なくとも1つの麻酔薬を含み、麻酔薬は、-2以下のRASSスコアを反映する鎮静を達成するために投与される、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、または麻薬から選択され得る。
【0134】
さらに好ましくは、麻酔薬は、少なくとも鎮静を達成するために投与される麻酔薬からなる群から選択され得、鎮静は、-2以下のRASSスコア(RASSスコア≦-2)を反映し得る。-2以下のRASSスコアを反映する鎮静状態は、対象が呼びかけられて少なくとも10秒間アイコンタクトを維持することができない状態と呼ばれることもある。鎮静を達成するために投与される麻酔薬は、エトミデート、ケタミン、およびプロポフォール、ベンゾジアゼピンまたはバルビツレートを含む、筋弛緩薬、麻薬、および催眠薬を含む。ベンゾジアゼピンの群は、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、ジアゼパム、クロラゼプ酸二カリウム(chlorazepate dipotassium)、フルニトラゼパム(flnitrazepam)、フルラゼパム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メダゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、テマゼパム、テトラゼパム、トリアゾラム、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロン、およびそれらの誘導体を含む。バルビツレートの群は、バルビツレート、アモルバルビタール、セコバルビタール、ブタバルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、ブタルバルビタール、メトヘキシタール、ヘキソバルビタール、シクロバルビタール、ペントバルビタール、およびそれらの誘導体または塩を含む。
【0135】
一実施形態では、APIは、少なくとも1つの鎮痛薬を含み、少なくとも1つの鎮痛薬は、WHO疼痛緩和ラダーのステップ1~3のいずれか1つまたは複数で投与される鎮痛薬から選択され得る。
【0136】
より好ましくは、APIは、WHO疼痛緩和ラダーのステップ1~3のいずれか1つまたは複数で投与される鎮痛薬を含む群から選択され得る。WHO鎮痛緩和ラダーのステップ1~3のいずれか1つまたは複数で投与される鎮痛薬は、非オピオイドおよびオピオイドを含む。WHO疼痛緩和ラダーのステップ1で投与され得る鎮痛薬は、トリプタン、ラスミジタンなどのジタン、NSAID、グルココルチコイドステロイド、サリチレート、フェニル酢酸、2-フェニルプロピオン酸、4-アミノフェノール誘導体、ピラゾロンおよびそれらの誘導体、抗うつ薬、ならびに抗けいれん薬を含む。WHO疼痛緩和ラダーのステップ2で投与され得るオピオイドは、軽度から中程度の疼痛のためのオピオイドを含み、この群の例示的なオピオイドは、コデイン、トラマドール、プロポキシフェン、ペンタゾシン、ブトルファノール、ナルブフィン、ブプレノルフィン、オキシコドン、およびそれらの誘導体を含む。WHO疼痛緩和ラダーのステップ3で投与され得るオピオイドは、中程度から重度の疼痛のためのオピオイドを含み、この群の例示的なオピオイドは、モルヒネ、フェンタニル、メタドン、ペチジン、アルフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、ヒドモルフォン、およびオキシコドン、ならびにそれらの誘導体を含む。
【0137】
一実施形態では、APIは、鎮痛薬および/または麻酔薬の群から選択され、好ましくは麻酔薬となるように選択される。麻酔薬は、さらに好ましくは、鎮静催眠薬として選択される。鎮静催眠薬は、プロポフォールとしてさらに選択される。
【0138】
本明細書で使用される場合、「鎮痛薬」という用語は、急性および慢性疼痛の処置に使用され得るAPIを指す。一部の鎮痛薬はまた、解熱薬であるか、または熱に対して保護するか(解熱薬)、および/または抗炎症薬(消炎薬)である。他の分類のなかでも、鎮痛薬は、活性物質によって制御される体内の構造に従って分類され得る。鎮痛薬は、それらが使用されるWHO鎮痛緩和ラダーのレベルに応じて、異なる群に分けられ得る。
【0139】
WHOは、もともと緩和処置において開発された医薬疼痛治療(medicinal pain therapy)および腫瘍疾患の疼痛治療のための独自の3ステップ手順を推奨している(World Health Organization: Cancer pain relief. With a guide to opioid availability (2nd ed.). WHO (Geneva). 1996)。この手順は、ステップ1で、場合によってアジュバントと組み合わされた非オピオイド鎮痛薬による薬物処置で始まり、有効性が不十分である場合には段階的に拡大していく。ステップ2では、場合によって非オピオイド鎮痛薬および/またはアジュバントと組み合わせて、弱オピオイドが投与される。最後に、ステップ3の処置は、場合によって非オピオイド鎮痛薬および/またはアジュバントと組み合わされた強オピオイドの投与を必要とする。疼痛のための薬物治療の代替案は侵襲的治療であり、これは、多くの場合、薬物治療が上手くいかなかったときに使用される。侵襲的措置は、疼痛治療の手順のステップ4、すなわち後薬物治療と呼ばれることもある。侵襲的措置は、例えば、硬膜外注射、脊椎注射、末梢局所麻酔、脊髄刺激、または神経節遮断を含む。本発明の文脈で使用される場合、特に非侵襲的ステップ1~3の鎮痛薬が含まれる。
【0140】
本発明の文脈で使用される場合、「麻酔薬」という用語は、末梢および/または中枢神経系の機能を減衰させるために使用され得るAPIを含む。「麻酔薬」という用語は、鎮痛薬としての付随機能を有する麻酔薬および鎮痛薬としての付随機能を有しない麻酔薬を含む。用語は、抗不安薬、筋弛緩薬、鎮静薬、催眠薬、および麻薬を含み得る。そのため、用語は、麻薬および催眠薬、ならびに鎮静効果を有する筋弛緩薬、抗うつ薬および神経弛緩薬などの全身(general)または全身(systemic)麻酔に使用されるAPI、ならびにリドカインまたはメピバカインなどの局所麻酔に使用されるAPIを含み得る。抗うつ薬は、トラゾドン、ドキセピン、トリミプラミン、アミトリプチリン、ミルタザピン、ミアンセリン、アゴメラチンを含み得る。神経弛緩薬は、プロメタジンなどのフェノチアジン、クロルプロチキセンなどのチオキサンテン、ハロペリドールなどのブチロフェノン、またはプロチペンジルを含み得る。本発明による投薬単位は、鎮静を誘導するための非気体状鎮静薬を優先的に含み、鎮静は、-2以下のRASSスコア(RASSスコア≦-2)を反映し得る。鎮痛薬を同時に鎮静薬として投与する場合、処置は鎮静管理と呼ばれる。
【0141】
患者の鎮静状態は、異なるスケールを使用した臨床診断によってスコア付けされ得る。リッチモンド興奮鎮静スケール(RASS)は、患者の鎮静状態を決定するための10のステップを含むスケールである。RASSによる-2およびそれ未満の鎮静状態は、少なくとも軽度の鎮静であると考えられる。RASSは、医療判定基準の標準であると考えられる。鎮静状態を臨床的に診断するために使用されるさらなるスケールは、ラムゼイ鎮静スケールまたはラムゼイスコアを含む。あるいは、患者の鎮静状態は、当業者に公知の多くの手法で電子的に測定され得る。例は、バイスペクトル指数(bispectral index)(BIS)または聴覚誘発電位(AEP)指数(aepEX)を含む。例えば、バイスペクトル指数(BIS)モニターを使用して脳波図を測定してもよく、または聴覚誘発電位(AEP)を測定してもよい。BISモニターによって脳波図を記録し、アルゴリズムによってCNSの活動に対する麻酔薬の催眠効果の0~100のスケールの数値尺度を提供する。90超のBISスコアは目が覚めている患者を、71~90は軽度から中程度の鎮静を、61~70は深い鎮静を、40~60は全身麻酔を示す。
【0142】
本発明の一実施形態では、鎮痛薬および/または麻酔薬は、トリプタン、ラスミジタンなどのジタン、NSAID、グルココルチコイドステロイド、サリチレート誘導体、フェニル酢酸誘導体、2-フェニルプロピオン酸誘導体、4-アミノフェノール誘導体、ピラゾロン、選択的COX2阻害薬、抗うつ薬、抗けいれん薬、オピオイド、抗ヒスタミン薬、抗不安薬、局所鎮静薬、鎮静薬、麻薬、催眠薬、筋弛緩薬、または神経弛緩薬の群から選択される。より好ましくは、鎮痛薬および/または鎮静薬は、オピオイド、麻薬、催眠薬、鎮静薬、または抗不安薬の群から、好ましくは麻薬および鎮静催眠薬から、最も好ましくはプロポフォールとして選択される。
【0143】
一実施形態では、疼痛は、軽度および中程度の疼痛の群から選択される。軽度および中程度の疼痛は、例えば、WHO疼痛ラダーまたは疼痛評価スケールによって識別され得る。疼痛は、その局在性に基づいてさらに区別することができる。疼痛は、頭痛、顔面痛、歯痛、喉痛、首痛、胸痛、背部痛、側腹部痛、鼠蹊部痛、胃痛、または四肢の疼痛の群から選択され得る。頭痛による疼痛は、一次性または二次性頭痛から選択され得る。
【0144】
一実施形態では、疼痛は、頭痛、好ましくは一次性頭痛、さらに好ましくは片頭痛、さらにより好ましくは、前兆を伴わない片頭痛、前兆を伴う片頭痛、慢性片頭痛 小児片頭痛、月経片頭痛、難治性片頭痛、治療抵抗性片頭痛、または急性錯乱性片頭痛(ACM)から選択される片頭痛として選択される。
【0145】
一実施形態では、投薬単位は、プロポフォールとして選択される鎮痛薬および/または麻酔薬をAPIとして含むように選択され、用量は、5mg未満で選択され、面積は、疼痛の処置での使用のために6cmで選択され、疼痛は、頭痛による軽度の疼痛、好ましくは一次性頭痛、最も好ましくは片頭痛として選択される。
【0146】
一実施形態では、投薬単位は、プロポフォールとして選択される鎮痛薬および/または麻酔薬をAPIとして含むように選択され、用量は、5mg未満で選択され、面積は、6cmで選択され、疾患は、片頭痛として処置され、片頭痛は、前兆を伴う片頭痛、例えば、無痛性片頭痛、眼性片頭痛、または網膜性片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、慢性片頭痛、小児片頭痛、月経片頭痛、治療抵抗性片頭痛、難治性片頭痛、または急性錯乱性片頭痛(ACM)から選択され得る。
【0147】
一実施形態では、投薬単位は、プロポフォールとして選択される鎮痛薬および/または麻酔薬をAPIとして含むように選択され、用量は、5mg未満で選択され、面積は、6cmで選択され、処置される疼痛は、頭痛による中程度の疼痛、好ましくは一次性頭痛、最も好ましくは片頭痛として選択される。
【0148】
一般に、鎮痛薬および/または麻酔薬の送達時間、すなわち、投薬単位の適用から、含まれる鎮痛薬および/または麻酔薬の循環に入るまでの時間は、投薬単位からの全APIの放出、非角化粘膜へのAPIの透過、および体循環へのAPIの浸透の時間によって影響を受け得る。送達時間の制限によって、所定の期間にわたって投与される複数の投薬単位の合計API用量の制限が可能になる。そのため、本発明によるAPIに含まれるAPIの送達時間は、滞留時間よりも長く、これと本質的に等しく、またはこれよりも短くなり得る。
【0149】
本発明の文脈で使用される場合、「滞留時間」という用語は、投薬単位が対象の粘膜と接触している時間を指す。滞留時間は、選択されたAPIの用量の送達時間を制限するように、特に、均一な連続送達によってAPIの用量の送達時間を制限するように選択され得る。滞留時間は、投薬単位によって送達可能なAPIの治療鎮痛および/または麻酔用量を制限するように選択され得る。滞留時間を選択することの利点は、投薬単位に含まれるAPIの乱用および誤用をさらに防止することができることである。有利なことに、滞留時間がそのように選択される場合、含まれるAPI用量の送達時間が、滞留時間によって、APIの全身レベルの平坦化の時間に本質的に等しくなるように、またはこれを上回るように制限され得ることから、いくつかの投薬単位を順次適用しても、送達されるAPIの治療用量にさらなる効果はない。滞留時間の調節は、粘膜付着および/または崩壊の時間の調節によって達成され得る。滞留時間が投薬単位の粘膜付着の時間によって調節される場合、送達時間は、滞留時間よりも短く、これと本質的に等しく、またはこれよりも長くなり得る。滞留時間が投薬単位の崩壊によって調節される場合、送達時間は、滞留時間よりも短く、これと本質的に等しく、またはこれよりも長くなり得る。一実施形態では、滞留時間は、送達時間と本質的に等しい、および/またはこれよりも長い。
【0150】
本発明の文脈で使用される場合、「送達時間」という用語は、APIが循環に入る時間までに剤形の投薬単位が適切な投与経路を介して適用された時間に関する。送達時間は、APIがある位置に適用された時点からAPIが血流に到達するまでにAPIが必要とする時間に関することもある。実施形態では、送達時間は、APIの浸透および透過時間を含み得る。
【0151】
さらに、滞留時間は、鎮痛薬および/または麻酔薬の半減期に基づいて選択され得る。一実施形態では、滞留時間は、鎮痛薬および/もしくは麻酔薬の半減期と本質的に等しくなるように、または鎮痛薬および/もしくは麻酔薬の半減期よりも長くなるように選択され得る。「半減期」という用語は、局所除去半減期(local elimination half-life)または状況感受性半減期または全身半減期を指すことがある。好ましくは、「半減期」という用語は、全身半減期を指す。
【0152】
一実施形態では、滞留時間は、少なくとも5秒、10秒、30秒、1分、2分、5分、10分、30分、60分、90分、120分、150分、180分、210分、または240分であり、優先的には、滞留時間は、少なくとも5秒、10秒、30秒、1分、2分、5分、10分、30分、60分、90分、または120分であり、より優先的には、滞留時間は、少なくとも5秒、10秒、30秒、1分、2分、5分、10分、または30分である。
【0153】
一実施形態では、鎮痛薬および/または麻酔薬の半減期は、1分、5分、10分、30分、60分、90分、120分、150分、180分、210分、または240分以下であり、優先的には、1分、5分、10分、30分、60分、90分、または120分以下であり、より優先的には、1分、5分、10分、または30分である。
【0154】
滞留時間が投薬単位の粘膜付着の時間によって調節される場合、投薬単位は、粘膜付着が停止すると頬粘膜から離れる。滞留時間が投薬単位の崩壊時間によって調節される場合、滞留時間は、投薬単位が崩壊したときに終了する。
【0155】
投薬単位に含まれる麻酔薬としてプロポフォールが選択される実施形態では、滞留時間は、プロポフォールの半減期と本質的に等しくなるように選択され得る。特に、滞留は、少なくとも1分になるように選択される。
【0156】
一実施形態では、選択された鎮痛薬および/または麻酔薬の選択された用量、面積、および滞留時間の組合せによって、鎮痛または麻酔治療用量が経時的に上回り得ることを防止する。例えば、プロポフォールの最大麻酔治療用量は、1時間当たり4mg/kg体重である。したがって、70kgの対象の場合、プロポフォールの最大治療用量は、1時間当たり280mgであると考えることができる。
【0157】
本発明による用量と、面積と、滞留時間との好ましい組合せは、投薬単位当たりに含まれる鎮痛薬および/または麻酔薬の用量を最初に選択し、面積を次に選択する場合、後続の表3から得ることができる。本発明による用量と、面積と、滞留時間との好ましい組合せは、投薬単位当たりに含まれる鎮痛薬および/または麻酔薬の用量を最初に選択し、滞留時間を次に選択する場合、後続の表4から得ることができる。
【0158】
目標の合計API用量は、前記投薬単位を組み合わせて口のすべての非角化部分を覆う場合に経時的に存在する選択された鎮痛薬および/または麻酔薬の用量を指す。好ましい実施形態によると、口の非角化部分は、110cmの面積を覆う。目標の合計API用量は、制限された時間にわたって、例えば1時間にわたって鎮痛および/または麻酔効果を誘導するために当業者によって使用される鎮痛薬および/または麻酔薬の最大用量であり得る。
【0159】
好ましい実施形態では、対象、好ましくは完全に成長したヒト対象の口の非角化部分の面積は、おおよそ110cmである。同様に、この面積は、完全には成長していないヒト対象では、約45~110cmである。目標の合計API用量は、1時間にわたって280mgで選択され、APIは、プロポフォールとして選択され、用量は、投薬単位当たり5mg未満で選択され、投薬単位の面積は、6cmで選択される。
【0160】
好ましい実施形態では、対象、好ましくはヒト対象の口の非角化部分の面積は、おおよそ110cmである。目標の合計API用量は、1時間にわたって280mgで選択され、APIは、プロポフォールとして選択され、用量は、投薬単位当たり5mg未満で選択され、投薬単位の滞留時間は、10分で選択される。
【0161】
第1のステップでは、投薬単位の用量(d)を選択し、経時的な目標の合計API用量の値(D)を(d)で割り、商(x)を得る。好ましい実施形態では、(D)は、約280mg/時間である。第2のステップでは、滞留時間(r)と単一の投薬単位によって覆うべき面積(a)との最大の積は、口の非角化部分の面積(A)を(x)で割ることによって決定される。好ましい実施形態では、Aは、約110cmである。第3のステップでは、面積(a)または滞留時間(r)を値(z)として選択する。第4のステップでは、最小滞留時間(r)または覆うべき最小面積(a)は、(A)および(x)の商を選択された値(z)で割ることによって決定される。
【0162】
この計算は、以下のように視覚化することができる:
ステップ1(dの選択):D/d=x
ステップ2(aおよびrの積の決定):A/x=a
ステップ3(zとしてのaまたはrの選択):A/x=zrまたはA/x=a
ステップ4(最小のaまたはrの決定):A/x/z=rまたはA/x/z=a
式中、
:時間tにわたる、例えば1時間当たりの目標の合計API用量の値[mg/時間]
d:投薬単位に含まれるAPIの選択された用量[mg]
:時間tにわたる目標の合計API用量の商
A:口の非角化部分の面積、好ましい実施形態では、これはヒト対象の場合に110cmである[cm
a:それぞれの(respected)選択されたAPI用量についての投薬単位で覆うべきおおよその最小面積[cm
r:単一の投薬単位の滞留時間[時間]
z:aまたはrの選択された値
【0163】
【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】

【表3-4】
【0164】
【表4-1】

【表4-2】

【表4-3】

【表4-4】
【0165】
投薬単位の粘膜付着性は、単位に混合するポリマーの比率および/またはタイプに由来し得る。あるいは、これは、投薬単位に含まれる可塑剤またはAPIの比率および/またはタイプからもたらされ得る。あるいは、これは、投薬単位に含まれるポリマーおよび可塑剤の比率および/もしくはタイプの組合せ、ポリマーおよびAPIの比率および/もしくはタイプの組合せ、可塑剤およびAPIの比率および/もしくはタイプの組合せ、またはポリマー、可塑剤、およびAPIの比率および/もしくはタイプの組合せからもたらされ得る。
【0166】
本発明の文脈で使用される場合、「崩壊する」という用語は、口腔に適用された場合に、特に非角化粘膜に適用された場合に最終的に溶解する投薬単位の能力を指す。崩壊時間は、投薬単位が本質的に完全に崩壊するのにかかる時間を指す。好ましい実施形態では、投薬単位の崩壊時間は、制限され得る。崩壊時間の制限は、投薬単位の滞留時間を制限するために使用され得る。
投薬単位のフィルムを製造するための組成物
【0167】
さらなる実施形態では、ポリマーまたはポリマーの混合物と、溶媒と、選択されたAPI、例えば、選択された鎮痛薬および/または麻酔薬とを含む製剤は、可塑剤を含まないが、可塑化特性を示す。この実施形態では、可塑化特性は、製剤中に存在するアジュバント、API、またはポリマーに由来し得、特に、可塑化特性は、製剤中に存在するポリマーに由来し得る。可塑化特性を有するポリマーは、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含む群から選択され得る。ヒドロキシプロピルセルロース群のポリマーは、市販のHPC製品、例えば、Klucel EF、Klucel EX、Klucel EXF、Klucel JX、およびKlucel JXF(Ashland Aqualon Functional Ingredients、USA)を含む。
【0168】
好ましくは、本発明による投薬単位の製剤は、溶媒、ポリマー、および選択されたAPIを含む。必要に応じて、本発明による投薬単位の製剤は、可塑剤を含み得る。したがって、異なる実施形態では、本発明による投薬単位の製剤は、溶媒、ポリマー、可塑剤、およびAPIを含む。他の成分または添加剤は、様々な目的でブレンドに添加することができ、利益をもたらし得るが投薬単位マトリックスの形成または投薬単位の医薬活性にとって必須ではない、増量剤、結合剤、増粘剤、軟化剤、界面活性剤、安定剤、緩衝剤、乳化剤、崩壊剤、香味剤、甘味剤、着色料などを含むが、これらに限定されることはない。
【0169】
好ましい実施形態では、投薬単位のフィルムを製造するための組成物は、
a.最大95重量%、最大90重量%、最大80重量%、最大70重量%、または最大60重量%の溶媒と、
b.最大35重量%、最大30重量%、最大25重量%、または最大20重量%のポリマーと、
c.最大30重量%、最大20重量%、最大10重量%、または最大5重量%のAPIと、
d.必要に応じて、最大15重量%、最大10重量%、または最大5重量%の可塑剤と
を含み、
好ましくは、ポリマーは親水性ポリマーである。
【0170】
好ましい実施形態では、投薬単位のフィルムを製造するための組成物は、
a.溶媒:50~95重量%、好ましくは60~85重量%、より好ましくは60~75重量%と、
b.ポリマー:1~35重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~25重量%と、
c.API:0.1~30重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは1~10重量%と、
d.必要に応じて、可塑剤:0.1~15重量%、好ましくは1~10重量%、より好ましくは2~6重量%と
を含み、
好ましくは、ポリマーは親水性ポリマーである。
【0171】
さらなる好ましい実施形態では、投薬単位のフィルムを製造するための組成物の固形分は、
a.固形分の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%(w/w)のポリマーと、
b.固形分の最大30%、好ましくは最大25%、より好ましくは最大20%(w/w)の可塑剤と、
c.固形分の最大25%、好ましくは22.5%、より好ましくは最大20%(w/w)のAPIと
を含み、
好ましくは、ポリマーは親水性ポリマーである。
【0172】
さらなる実施形態では、片頭痛の処置での使用のための投薬単位は、
a.固形分の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%(w/w)のポリマーと、
b.固形分の最大30%、好ましくは最大25%、より好ましくは最大20%(w/w)の可塑剤と、
c.固形分の最大25%、好ましくは22.5%、より好ましくは最大20%(w/w)のAPIとしてのプロポフォールと
を含み、
好ましくは、ポリマーが親水性ポリマーである、フィルムを製造するための組成物から得ることができる。
【0173】
好ましくは、本発明の投薬単位は、水に溶解可能である。次いで、粘膜に適用されると、フィルムは溶解し得る。そのようにフィルムが溶解すると、APIは、より容易に粘膜を通じて浸透および透過する。この実施形態の投薬単位は、投薬単位に含まれるAPIの経粘膜全身送達に特に好適である。さらなる好ましい実施形態では、投薬単位の崩壊時間は、制限され得る。崩壊時間の制限は、投薬単位の滞留時間を制限するために使用され得る。崩壊時間の制限は、最小崩壊時間を制限する観点で、または最大崩壊時間を制限する観点で生じ得る。最小崩壊時間を制限することは、投薬単位の水溶性を低下させることによって達成され得、その一方で、最大崩壊時間を制限することは、投薬単位の水溶性を増加させることによって達成され得る。
【0174】
投薬単位は、好ましくは、ポリマーによって、特に親水性ポリマーによって形成される。ポリマーは、投薬単位の粘膜付着性に影響を与え得、例えば、選択されたポリマーのタイプまたは製剤中のポリマーの比率は、投薬単位の粘膜付着性に影響を与え得る。したがって、本発明の医薬品調製物におけるフィルムは、好ましくは、少なくとも1つの親水性ポリマーを含む。特に好ましい実施形態では、フィルムのすべてのポリマーは親水性ポリマーである。ポリマーは、粘膜付着時間を改変するために、キトサンおよび誘導体の群から選択され得る。ポリマーは、粘膜付着性を増加させることによって滞留時間を増加させるために、キトサン、PVP、ポリアクリル酸、および/またはポロキサマーの群から選択され得る。有利なことに、滞留時間は、ポリマーの選択によって改変され得る。優先的には、粘膜付着性を増加させることで投薬単位の滞留時間を増加させるために、キトサンがポリマーとして選択される。
【0175】
「ポリマー」という用語は、重合された繰り返しモノマー単位を含み、かつ融解、再成形、および冷却してフィルムを形成することができる、フィルムの構成成分を指す。本発明の文脈で使用される場合、「ポリマー」は、炭素-炭素結合によって形成される、いわゆるモノマーであるより小さな繰り返し単位の鎖である分子を指すことがある。ポリマーの炭素-炭素結合は、線状ポリマーとして公知の長い直鎖を形成することができ、ポリマーの一部が、鎖から分岐して、主鎖を側鎖から区別することができるいわゆる分岐状ポリマーを形成するか、または2つもしくはそれよりも多くのポリマー鎖が、架橋ポリマーを形成するそのような側鎖分岐によって二次元的もしくは三次元的に共有結合的に連結され得る。ポリマーは、例えば、分岐の程度およびタイプ、結晶構造、ならびに分子量によって特徴付けることができる。
【0176】
ポリマーは、石油および他の炭化水素から作製された合成ポリマー、またはデンプンなどの天然に存在するポリマーに区別することができる。合成ポリマーの例は、モノマー状のエチレン分子から形成されたポリマーであり、最も一般的なプラスチックである、ポリエチレン(PE)を含む。天然に存在するポリマーは、グルコースモノマーの長い直鎖から作製されたデンプンおよびセルロースを含む。
【0177】
「親水性ポリマー」という用語は、ポリマーまたはコポリマーを水に可溶性にする極性または荷電官能基を含有するポリマーまたはコポリマーも指す。好ましくは、投薬単位のフィルムを製造するために使用される組成物のポリマー構成成分は、水溶性または親水性ポリマーである。
【0178】
以下、「ポリマー」という用語は、特に言及されていない限り、ポリマーおよびコポリマーを総称的に指す。
【0179】
投薬単位の製剤は、最大15重量%のポリマー、好ましくは1~10重量%の間のポリマーを含み得る。
【0180】
本発明の好ましい実施形態では、フィルムの製剤は、少なくとも60%(w/w)の親水性ポリマー、さらにより好ましくは70%(w/w)の親水性ポリマー、最も好ましくは少なくとも80%(w/w)の親水性ポリマーからなる。
【0181】
本発明の好ましい実施形態では、親水性ポリマーは、少なくとも50%(w/w)、さらにより好ましくは少なくとも60%(w/w)、最も好ましくは少なくとも70%(w/w)の、極性基または荷電基を含有するモノマー残基からなる。好ましい実施形態では、親水性ポリマーは、デンプンおよびその誘導体、例えば、高アミラーゼデンプン、セルロースおよびそれらの誘導体、ヒドロキシプロピル化された高アミラーゼデンプン、デキストリン、マルトデキストリンまたはプルラン、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(ビニルピロリドン-co-ビニルアルコール)、多糖、アルギネート、グリコーゲン、アミロペクチン、ペクチン、キチン、カロース、エチレンオキシド(ethylenoxid)およびプロピレンオキシド(propylenoxid)ブロックポリマー、例えばポリエチレングリコール、ならびにキサンタンガム、トラガカントガム、グアーガム、アカシアガム、アラビアガム、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルポリマー、レバン、エルシナン、コラーゲン、ゼイン、グルテン、ダイズタンパク質分離物、ホエイタンパク質分離物、カゼイン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、ポリマーは、プルラン、ポリビニルピロリドン(PVP)、多糖、高アミロースデンプン、アミロペクチン、ペクチン、キチン、カロース、セルロース、およびそれらの誘導体(例えば、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシメチルセルロース(HMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC))、ならびにそれらの2つもしくはそれよりも多くのポリマーまたはコポリマーの組合せから選択される。さらにより好ましくは、親水性ポリマーは、プルラン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、多糖、およびセルロース(上記の誘導体を含む)、またはそれらの混合物からなる群から選択される。プルラン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、セルロース、およびそれらの誘導体(例えば、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシメチルセルロース(HMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC))、ならびにそれらの2つもしくはそれよりも多くのポリマーまたはコポリマーの組合せからなる群が、さらにより好ましい。最も好ましくは、ポリマーは、プルランまたはポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidione)(PVP)から選択される。
【0182】
特に好ましい実施形態では、親水性ポリマーは、10~25%の比率を有するプルランと、45~65%の比率を有するヒドロキシプロピルセルロースと、20~40%の比率を有するカルボキシメチルセルロースとの混合物である。ポリマーの比率は、混合物中のポリマーの総量に対する相対量を指す。したがって、10%のプルランを含むポリマー混合物では、製剤に含まれるすべてのポリマーの10%がプルランである。
【0183】
さらなる特に好ましい実施形態では、親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)の2つの変種であるKollidon 90FとKollidon VA64との混合物であり、Kollidon 90Fは、混合物中のポリマーの総量の65~90%の比率を有し、Kollidon VA64は、10~35%の比率を有する。
【0184】
さらなる特に好ましい実施形態では、親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの混合物であり、ポリビニルアルコールは、混合物中のポリマーの総量の45~60%の比率を有し、ポリビニルピロリドンは、40~55%の比率を有する。
【0185】
本発明の文脈において、「溶媒」という用語は、投薬単位を形成する製剤の成分を溶解する物質を指す。溶媒は、好ましくは極性溶媒である。より好ましくは、極性溶媒は、水、アルキルアルコール、特にエタノール、酸、特にHCl、および塩基、特にNaOHから選択される。投薬単位の製剤は、最大(up to of up to)95重量%の溶媒、1~90重量%の溶媒、1~80重量%の溶媒、1~70重量%の溶媒、1~60重量%の溶媒を含み得る。
【0186】
本発明の文脈で使用される場合、「可塑剤」は、材料の可塑性および柔軟性を増加させる剤である。「可塑剤」は、経口フィルムの柔軟性、可塑性、または流動性を増加させる剤である。可塑剤は、投薬単位の物理的特性を変化させる剤である。可塑剤は、ポリマー鎖間の引力を減少させて、これらをより柔軟にする。可塑化の2つの主要な原理(principals)は、内部可塑化および外部可塑化で区別することができる。ポリマーまたはモノマーを化学的に改変することによってポリマーを内部可塑化することができ、それによって、柔軟性が増加する。この原理(principal)では、可塑剤は、ポリマーと共重合し、ポリマー鎖の不可欠な部分になる。他方で、外部可塑剤は、ポリマーに添加され、ポリマー鎖と相互作用するが一次結合によってはこれらに化学的に付着されない、低揮発性の物質である。さらに、可塑剤は、一次および二次可塑剤に、または水溶性および水不溶性に分けることができる。
【0187】
可塑剤は、投薬単位の粘膜付着性に影響を与え得、例えば、可塑剤のタイプまたは投薬単位の製剤中の可塑剤の比率は、投薬単位の粘膜付着性に影響を与え得る。本発明による可塑剤は、特に、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、クエン酸トリエチル ソルビトール、ジリトール(dylitol)、シリトール(sylitol)、1,3-ブタンジオール、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジブチル、パラフィン油、およびそれらの組合せを含む群から選択される。投薬単位のフィルムを製造するための組成物での使用のための可塑剤は、好ましくは、親水性および/または水溶性である。可塑剤の好ましい例は、グリセロールである。投薬単位の製剤は、最大15重量%の可塑剤、好ましくは1~10重量%の間の可塑剤を含み得る。好ましくは、可塑剤は、グリセロールおよびポリエチレングリコールから、より好ましくはグリセロールおよび低分子ポリエチレングリコールから選択される。最も好ましくは、可塑剤は、グリセロールおよびポリエチレングリコール400(PEG400)から選択される。
【0188】
本発明の好ましい実施形態では、フィルムの製剤は、最大30%(w/w)の可塑剤、さらにより好ましくは最大25%(w/w)の可塑剤、最も好ましくは最大20%(w/w)の可塑剤からなる。
【0189】
本発明の文脈で使用される場合、「甘味剤」は、人工または天然の甘味料であり、甘味を投薬単位に与える剤である。甘味剤は、スクラロース、アスパルテーム、ネオテーム、アリテーム、サッカリン、および天然糖を含む。甘味剤は、投薬単位の苦味、吐き気を催す味、または不快な味を克服するために添加され得る。好ましくは、本発明による投薬単位の製剤は、甘味剤を含まない。有利なことに、甘味剤が存在しないことによって、前記投薬単位の誤用および乱用が低減および/または防止される。
【0190】
本発明の文脈において使用される場合、「香味剤」は、人工または天然の香味料であり、様々な味、例えば、果物、ミント、甘草、塩味、酸味、苦味、うま味、または甘味を投薬単位に与える剤である。香味剤は、投薬単位の苦味、吐き気を催す味、または不快な味を克服するために添加され得る。香味剤は、味マスキング剤であってもよく、「味マスキング」剤という用語は、投薬単位の味を変化させる剤である。味マスキング剤は、新たな味を与えることができるか、味の知覚を変化させることができるか、または味を遮断することができる。味マスキング剤は、重炭酸ナトリウムもしくはクエン酸を含む発泡剤、ジメンヒドリネート、塩化ナトリウム、または苦味遮断剤、例えば、アデノシンモノホスフェート、リポタンパク質もしくはリン脂質を含む。苦味遮断剤は、苦味活性物質と競合して、苦味を知覚するレセプター部位である舌のGタンパク質共役レセプターに結合することができ、したがって、苦味を抑制する。好ましくは、本発明による投薬単位の製剤は、香味剤を含まない。有利なことに、香味剤が存在しないことによって、前記投薬単位の誤用および乱用が低減および/または防止される。
【0191】
本発明の文脈で使用される場合、「着色料」は、投薬単位の色に影響を与える剤である。着色料は、二酸化チタンなどの顔料、またはFDおよびCカラー、EUカラー、ナチュラルカラー、ならびにカスタムパントンマッチカラーを含む。
【0192】
好ましくは、本発明の投薬単位は、投薬単位の味をマスキングしない感覚受容特性を有する。有利なことに、投薬単位の味をマスキングしない感覚受容特性を有する投薬単位は、それぞれの投薬単位の誤用および乱用を低減および/または防止する。そのような感覚受容特性は、製剤中に甘味剤が存在しないこと、製剤中に香味剤が存在しないこと、または製剤中に甘味剤および香味剤が存在しないことからもたらされ得る。より好ましくは、本発明による投薬単位の製剤は、香味剤および甘味剤を本質的に含まない。
【図面の簡単な説明】
【0193】
図1】垂直フランツセル内でのブタ頬粘膜のex-vivo透過試験における、プロポフォールの飽和溶液と比較した製剤F6の累積透過データ。
【0194】
図2】垂直フランツセル内でのブタ頬粘膜のex-vivo透過試験における、プロポフォールの飽和溶液と比較した製剤F6のフラックスデータ。具体的な実施形態
【0195】
1.医薬品有効成分(API)を含む、対象、好ましくはヒト対象における疾患の処置での使用のための粘膜付着性経口フィルムの投薬単位であって、前記対象の口のすべての非角化部分を複数の前記投薬単位で覆う場合に前記APIの毒性効果が防止されるように、前記APIの用量が選択されることを特徴とする、投薬単位。
【0196】
2.対象が、完全に成長したヒト対象および完全には成長していないヒト対象の群から選択され、
a.完全に成長したヒト対象で、口の非角化部分が、約150cm、約130cm、約110cmの面積を有するか、または
b.完全には成長していないヒト対象で、口の非角化部分が、最大150cm、最大130cm、最大110cmの面積、好ましくは、45~150cm、45~130cm、45~110cmの面積を有することを特徴とする、
実施形態1に記載の投薬単位。
【0197】
3.APIが、ホルモン、特定のプロテオホルモン、代謝調節剤、成長因子、内因性ペプチド類似体、精神医学的薬品、同化剤、ベータ2アゴニスト、幻覚薬、筋弛緩薬、鎮痛薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、および/または麻酔薬の群から選択されることを特徴とする、実施形態1および2のいずれか1つまたは複数に記載の投薬単位。
【0198】
4.鎮痛薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、および/または麻酔薬が、トリプタン、ラスミジタンなどのジタン、NSAID、グルココルチコイドステロイド、サリチレート類および誘導体、フェニル酢酸誘導体、2-フェニルプロピオン酸誘導体、4-アミノフェノール誘導体、ピラゾロン、選択的COX2阻害薬、抗うつ薬、抗けいれん薬、オピオイド、筋弛緩薬、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、エトミデート、ケタミン、プロポフォール、抗ヒスタミン薬、または局所麻酔薬の群から選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つまたは複数に記載の投薬単位。
【0199】
5.ホルモン、特にプロテオホルモンが選択され、代謝障害が、酸塩基不均衡、代謝性脳疾患、カルシウム代謝障害、DNA修復欠損障害、グルコース代謝障害、高乳酸血症、鉄代謝障害、脂質代謝障害、吸収不良症候群、メタボリックシンドロームX、先天性代謝異常症、ミトコンドリア病、リン代謝障害、ポルフィリン症、タンパク質恒常性欠損、代謝性皮膚疾患、消耗症候群、および水電解質不均衡の群から選択されることを特徴とする、代謝障害を処置することを必要とする対象、好ましくはヒト対象における代謝障害の処置での使用のための、実施形態3に記載の投薬単位。
【0200】
6.APIが、プロテオホルモン、特にインスリンであり、疾患が、グルコース代謝障害、特に糖尿病として選択されることを特徴とする、実施形態5に記載の投薬単位。
【0201】
7.神経系疾患を処置することを必要とする対象、好ましくはヒト対象における神経系疾患の処置での使用のための、実施形態1から4のいずれか1つまたは複数に記載の投薬単位。
【0202】
8.神経系疾患が、一次性頭痛、好ましくは片頭痛であることを特徴とする、実施形態7に記載の投薬単位。
【0203】
9.一次性頭痛が、前兆を伴わない片頭痛、前兆を伴う片頭痛、頭痛なしで前兆を伴う片頭痛、頭痛ありで前兆を伴う片頭痛、脳幹性前兆を伴う片頭痛、片麻痺性片頭痛、網膜性片頭痛、慢性片頭痛、小児片頭痛、月経片頭痛、難治性片頭痛、治療抵抗性片頭痛、または急性錯乱性片頭痛(ACM)から選択される片頭痛として選択されることを特徴とする、実施形態7から8のいずれか1つまたは複数に記載の投薬単位。
【0204】
10.少なくとも1cm、少なくとも2cm、少なくとも3cm、少なくとも4cm、少なくとも5cm、少なくとも6cm、少なくとも7cm、少なくとも8cm、少なくとも9cm、少なくとも10cm、少なくとも11cm、または少なくとも12cm、好ましくは少なくとも6cmの範囲から選択される面積を有することを特徴とする、実施形態1から9のいずれか1つまたは複数に記載の投薬単位。
【0205】
11.APIの用量が、治療量以下の用量で選択されること、治療用量の、好ましくは1/10以下、より好ましくは1/35以下で選択されることを特徴とする、実施形態1から10のいずれか1つまたは複数に記載の投薬単位。
【0206】
12.投薬単位が滞留時間を有し、滞留時間が、APIの全身半減期と少なくとも同じ長さになるように選択されることを特徴とする、実施形態1から11のいずれか1つまたは複数に記載の投薬単位。
【0207】
13.投薬単位を製造するための組成物の感覚受容特色が、投薬単位の味をマスキングしないことを特徴とする、実施形態1から12のいずれか1つまたは複数に記載の投薬単位。
【0208】
15.投薬単位を製造するための組成物が、香味剤および/または甘味剤を本質的に含まないことを特徴とする、実施形態1から13のいずれか1つまたは複数に記載の投薬単位。
【0209】
16.投薬単位のフィルムを製造するための組成物が、
a.最大95重量%、最大90重量%、最大80重量%、最大70重量%、または最大60重量%の溶媒と、
b.最大35重量%、最大30重量%、最大25重量%、または最大25重量%のポリマーと、
c.最大30重量%、最大20重量%、最大10重量%、または最大5重量%のAPIと、
d.必要に応じて、最大15重量%、最大10重量%、または最大5重量%の可塑剤と
を含み、
好ましくは、ポリマーが親水性ポリマーであることを特徴とする、実施形態1から14のいずれか1つまたは複数に記載の投薬単位。
【0210】
17.投薬単位のフィルムを製造するための組成物が、
a.固形分の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%(w/w)のポリマーと、
b.固形分の最大30%、好ましくは最大25%、より好ましくは最大20%(w/w)の可塑剤と、
c.固形分の最大25%、好ましくは22.5%、より好ましくは最大20%(w/w)のAPIとしてのプロポフォールと
を含み、
好ましくは、ポリマーが親水性ポリマーであることを特徴とする、片頭痛の処置での使用のための、実施形態1から15のいずれか1つまたは複数に記載の投薬単位。
【0211】
18.APIがプロポフォールとして選択され、投薬量が治療鎮静用量の1/10以下で選択され、滞留時間が少なくとも1分であり、投薬単位の面積が少なくとも6cmであり、投薬単位を製造するための組成物が香味剤および甘味剤を本質的に含まないことを特徴とする、片頭痛の処置での使用のための、実施形態1から16のいずれか1つまたは複数に記載の投薬単位。
【実施例
【0212】
1.プロポフォールを含む投薬単位-面積、用量、および滞留時間の目標値の選択
医薬品有効成分であるプロポフォールを含有する投薬単位を製造することが目的であった。頬側フィルムは、プロポフォールの経口バイオアベイラビリティが非常に低いことから、胃腸管を通過せずに粘膜組織を通じてAPIを血流に送達すると考えられる。i.v.注射を介して適用される鎮静用量と比較して、非常に低いプロポフォール用量を投薬単位に含めることができる。プロポフォールは頬粘膜を通じて血流に直接的に吸収されるため、対応する投薬単位を急性片頭痛発作の処置に使用することができる。粘膜上でのフィルムの崩壊時間とフィルムの粘膜付着との組合せとしての頬粘膜におけるフィルムの滞留時間は、粘膜を通じてAPIを送達するように1~5分の間の範囲で選択される。粘膜付着性の溶解可能な頬プロポフォールフィルムのさらなる目標特色は、表5に列挙されている。目標の投薬単位の投薬強度は、口の非角化部分の総面積が約110cmである完全に成長したヒト対象の場合に約5mgとなるように選択し、上回るべきではない目標の合計プロポフォール用量は100mgで選択した。表1(組合せ番号96)によると、投薬単位で覆うべき最小面積は、5.5cmである。結果として、単一の投薬単位当たり6cmの面積を選択した。そのため、多数の前記投薬単位が、前記完全に成長した対象の口のすべての非角化部分を覆うべき場合、合計API用量は、5mg(投薬単位当たり)110cm(口の非角化面積):6cm(投薬単位当たりの面積)=91.7mgであるため、約91.7mgとなるであろう。
【表5】
【0213】
口の非角化部分における複数の投薬単位の同時適用が、急性片頭痛の処置、および対応する投薬単位での処置のための修正可能な対象の識別、および片頭痛発作を患っている対象の対応する投薬単位での処置のための、鎮静治療用量を上回らない投薬量でプロポフォールを含む投薬単位は、革新をもたらすであろう。さらに、非臨床環境での使用のためのプロポフォールなどの麻酔薬を有する医療品についての薬物承認では、制限が緩和されて一般の人々が利用可能になれば、製品の乱用および誤用を回避するための可能な予防戦略が予想される。プロポフォールの粘膜付着性口腔内崩壊フィルムへの実装により、口腔粘膜における制限された用量および制限された適用面積により、急性片頭痛発作に対するプロポフォールの乱用および誤用を抑止する適用が可能になる。プロポフォールに関するさらなる利点は、嚥下後に経口摂取されたAPI用量のすべての部分が、非常に低い経口バイオアベイラビリティに起因して破壊され、治療効果が経験されないという事実である。
【0214】
以下の項では、実施可能性製剤試験について、それらの組成、それらの取り扱い性、および視覚的特性、さらにいくつかの製剤ではフィルム6cm当たりのプロポフォールの決定された含有量を含めて、説明する。1つの製剤を、ブタの頬粘膜に対するex-vivo透過研究でさらに評価した。
2.プロポフォール投薬単位の初期製剤開発
プロポフォールを含む頬側投薬単位のための製剤の概要
【表6】
【0215】
表6に示されている製剤を、頬プロポフォールフィルムのこの実施可能性研究において調製した。一般に、溶媒を混合容器に充填し、使用する場合にはポリマーおよび可塑剤を、塊を撹拌しながら添加した。ポリマー塊が完全に溶解し、均一な外観を示したときに、APIであるプロポフォールを添加した。おそらくは親油性APIおよび親水性ポリマー塊のエマルション形成により、プロポフォールを塊に添加した後にほぼすべてのポリマー塊が白くなったことは注目に値した。例外は、プロポフォールを添加した後もポリマー塊が透明なままであった製剤F7であったが、これは、プロポフォールが他の製剤よりもこの塊により良好に組み込まれていることを示している。
【0216】
APIを塊へと均一に撹拌してマトリックスを形成したらすぐに、フィルムを溶剤キャスティングによって調製した。溶剤キャスティングプロセスは、コーティングナイフを用いて、PET剥離ライナーなどの基材上にポリマー塊をコーティングすることを含む。定義されたギャップ高さをコーティングナイフで調整し、それによって、湿潤フィルム厚が得られ、乾燥後に、調製されたフィルムの面積重量が得られる。ギャップ高さの調整を含むフィルム製造は、フィルムの所望の面積重量が満たされるまで繰り返す。面積重量は、調製されたフィルムのAPI含有量を定義することから、関連する品質属性である。
【0217】
コーティングステップの後に、湿潤ラミネート(マトリックス)を、固形分および蒸発させる必要がある溶媒の量に応じて、65~90℃の間のオーブン内で20~30分間乾燥させる。湿潤フィルムの白い外観は、乾燥ステップ中に不透明な外観に変化し、わずかに乳白色のフィルムになった。乾燥フィルムを6cmの小片に打ち抜き、次いで、これらをそれらの取り扱い性および視覚的特性に関して評価した。調製されたフィルムのいくつかを、それらのAPI含有量についてさらに分析した。APIの頬吸収を提供するために必要とされる頬側フィルムの粘膜付着は、製剤中の少なくとも1つの粘膜付着性ポリマーを使用することによって確実になった。
【0218】
製剤F3のようなキトサンを含む製剤は、低減された粘膜付着特性を示した。さらに、キトサンは、酸性溶媒にのみ可溶であり、そのため、このポリマーを含有する製剤におけるフィルム調製には塩酸を使用した。フィルムは、非常に乾燥した口当たりを引き起こしたため、良好な味および口当たりを提供しなかった。それによって、対応する投薬単位の誤用、乱用、または過剰投与の可能性が低下する。
【0219】
あるいは、粘膜付着特性を有する他のポリマーを頬プロポフォール投薬単位の成分として試した。異なるKollidon(登録商標)タイプを製剤F1で使用し、ポリアクリル酸をポロキサマーの添加と一緒に製剤F2に組み込んだ。ポリアクリル酸は、良好な粘膜付着特性を示した。
【0220】
これまでに挙げた製剤はすべて、フィルムに十分な取り扱い性および視覚的特性を提供したが、別の粘膜付着性ポリマーを試験して、製剤の味、口当たり、および調製を改善した。ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)は、良好な粘膜付着特性を提供し、良好な取り扱い性および視覚的特性を有するフィルムをもたらした。これらは、さらに加工するのに十分に柔軟性であり、ライナーまたは包装材料にくっつかない。
【0221】
製剤F4、F5、またはF6などのHPC含有フィルムの場合、ポリマー自体がすでにある程度の可塑化特性を示すため、可塑剤は添加しなかった。さらなる可塑剤を添加すると、フィルムがべたつく傾向がある。
【0222】
製剤F4は、所望の5mg/6cm未満のプロポフォール含有量を示した。そのため、製剤F5では、乾燥フィルム中のAPI含有量の正確な調整に関する問題を防止するために、エタノールを溶媒として添加した。フィルムは、良い取り扱い性および視覚的特性を示したが、乾燥プロセス後に低いAPI含有量を示した。そのため、6cmの投薬単位当たり5mgのプロポフォールという目標含有量に到達するために、APIの余剰分を製剤F6のマトリックスに添加して、乾燥中のAPI損失のバランスを取った。この場合、5mgの含有量を正確に満たした。製剤F6も現行の製剤として使用して、頬側フィルムからのプロポフォールの透過能力を決定した。
【0223】
製剤F7では、プルランを含まない製剤にプロポフォールを添加して、製剤の可変性を高めた。フィルムは、十分な視覚的特性および取り扱い性を示したが、API含有量に関してはさらに最適化されなかった。製剤F7は、プロポフォールを添加した後に白くならなかった唯一の製剤であったが、このことは、油性APIのポリマー塊への非常に良好な組み込みを示す。
3.生物学的な例-現行の製剤の浸透および透過
【0224】
浸透および透過実験のために選択された投薬単位製剤(F6)の組成を表6に提示する。フィルムの投薬単位を、100,3g/mの面積重量および5,05±0,05g/6cm(平均±標準偏差)のプロポフォール含有量で調製した。
【0225】
製剤F6から調製された投薬単位を、垂直フランツセル内でのブタ頬粘膜のex-vivo透過について試験した。フィルムの透過挙動を、緩衝液pH7.0のアクセプター媒体中の約167.8μg/mlのプロポフォールの飽和溶液と比較した(図1)。高い標準偏差により、飽和溶液とフィルムとの間に有意差を示すことはできなかった(図1)。しかしながら、頬側フィルムの投薬単位は、飽和溶液よりも高い累積透過量およびフラックス速度に到達する傾向を示す。この最初の透過試験では、フラックス速度の定常状態は2時間後に到達され、F6のフラックス速度は、より高い水準に到達した(図2)。しかしながら、頬側フィルムを含むプロポフォールの透過セルの薬物充填量(0.82cmの1つのフィルム片中のAPI(約0.68mg)および1.5mlの飽和溶液中のAPI(約0.25mg))が飽和溶液の場合よりも高かったことに留意する必要があり、このことは、より高い透過の要因であり得る。
【0226】
6時間以内の透過研究での製剤F6フィルムから透過したAPI量の評価から、透過セルのドナー区画に充填された約4%のAPIがアクセプター区画に到達したことが明らかになった。製剤F6フィルムを用いた透過研究後の粘膜組織の抽出は、粘膜組織に浸透した透過セルのドナー区画に充填されたAPIの約40%がそこに留まり、まだアクセプター相に透過していないことを示した。それによって、プロポフォールを含むフィルムの投薬単位を使用したプロポフォールの経粘膜送達が成功することが、垂直フランツセル内のブタ頬粘膜で示された。
【0227】
図1:垂直フランツセル内でのブタ頬粘膜のex-vivo透過試験における、プロポフォールの飽和溶液と比較した製剤F6の累積透過データ(F6および対照の場合でn=8)。
【0228】
図2:垂直フランツセル内でのブタ頬粘膜のex-vivo透過試験における、プロポフォールの飽和溶液と比較した製剤F6のフラックスデータ(F6および対照の場合でn=8)。
図1
図2
【国際調査報告】