(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(54)【発明の名称】mRNA又はmRNA組成物、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/50 20060101AFI20230612BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20230612BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230612BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230612BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230612BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230612BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
C12N15/50 ZNA
A61K39/215
A61K31/7105
A61P31/14
A61P37/04
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571198
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 CN2021093741
(87)【国際公開番号】W WO2021233213
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】202010419984.2
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522452787
【氏名又は名称】康希諾(上海)生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】朱涛
(72)【発明者】
【氏名】王浩猛
(72)【発明者】
【氏名】李▲じん▼
(72)【発明者】
【氏名】晏巧玲
(72)【発明者】
【氏名】▲しぇん▼春林
(72)【発明者】
【氏名】邵忠▲き▼
(72)【発明者】
【氏名】李軍強
(72)【発明者】
【氏名】宇学峰
(72)【発明者】
【氏名】巣守柏
【テーマコード(参考)】
2G045
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045DA37
4C085AA03
4C085BA71
4C085CC08
4C085CC40
4C085EE01
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、mRNA又はmRNA組成物、及びmRNA又はmRNA組成物を含むmRNAワクチンを提供する。前記mRNA又はmRNA組成物は新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、を含む。本発明はまた、mRNA又はmRNA組成物及びmRNA又はmRNA組成物を含むmRNAワクチンの、新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染に起因する疾患を予防及び/又は治療する医薬品(特にワクチン)の調製における使用を提供する。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、を含むことを特徴とするmRNA又はmRNA組成物。
【請求項2】
前記新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列とは、同一のSARS-CoV-2突然変異株又は異なるSARS-CoV-2突然変異株に由来することを特徴とする請求項1に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項3】
前記Sタンパク質又はそのバリアントは野生型全長Sタンパク質又は融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質を含み、好ましくは、前記融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質は682RRAR685位突然変異を含む、及び/又は986KV987位を突然変異して、Sタンパク質を融合前立体構造として固定化し、さらに好ましくは、前記融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質は野生型全長Sタンパク質の682RRAR685をGSAGに突然変異した、及び/又は986KV987をPPに突然変異したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項4】
前記野生型全長Sタンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1と70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%の同一性を有するアミノ酸配列であり、前記融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:15、又はSEQ ID NO:2若しくは15と70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%の同一性を有するアミノ酸配列であることを特徴とする請求項3に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項5】
前記Sタンパク質又はそのバリアントは、シグナルペプチドを含まない、野生型Sタンパク質のシグナルペプチドを含むか、又は野生型Sタンパク質のシグナルペプチドを含むとともに、そのシグナルペプチドの前に強いシグナルペプチドを追加し、前記強いシグナルペプチドは好ましくは組織プラスミノーゲンアクチベータのシグナルペプチド又は血清免疫グロブリンEのシグナルペプチドであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項6】
前記RBDのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:13、又は、SEQ ID NO:3若しくは13と70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%の同一性を有するアミノ酸配列であることを特徴とする請求項1に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項7】
前記RBD又はそのバリアントは、シグナルペプチドを含まない、野生型Sタンパク質のシグナルペプチドを含むか、又は野生型Sタンパク質のシグナルペプチドを含むとともに、そのシグナルペプチドの前に強いシグナルペプチドを追加し、前記強いシグナルペプチドは好ましくは組織プラスミノーゲンアクチベータのシグナルペプチド又は血清免疫グロブリンEのシグナルペプチドであることを特徴とする請求項1又は6に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項8】
前記新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列とは、個別の2本のmRNA配列又は1本に連結されたmRNA配列であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項9】
1本に連結されたmRNA配列では、5’から3’への連結順序は、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列にSタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列が続くか、又は、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列に新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列が続き、好ましくは、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列とは内部リボソーム進入部位により連結され、前記内部リボソーム進入部位は、小RNAウイルス、コレラウイルス、ポリオウイルス、脳心筋炎ウイルス、口蹄疫ウイルス、C型肝炎ウイルス、豚熱ウイルス、マウス角膜白斑ウイルス、サル免疫不全ウイルス又はコオロギ麻痺ウイルスから選ばれることを特徴とする請求項8に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項10】
前記mRNA又はmRNA組成物は、5’キャップ構造、5’非コード領域及びポリアデニル酸テールをさらに含むことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項11】
前記mRNA又はmRNA組成物は、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、3’保存配列要素及び3’非コード領域のうちの1種又は2種以上の組み合わせをさらに含むことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項12】
前記mRNAは従来のmRNA、自己増幅型mRNA又はトランス増幅型mRNAであることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項13】
新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列とを連結した1本のmRNA配列を含み、このmRNA配列は、
A)5’キャップ構造、5’非コード領域、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
B)5’キャップ構造、5’非コード領域、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
C)5’キャップ構造、5’非コード領域、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、内部リボソーム進入部位(IRES)、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
D)5’キャップ構造、5’非コード領域、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
E)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
F)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
G)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素、及びポリアデニル酸テールからなる配列、又は
H)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素、及びポリアデニル酸テールからなる配列のいずれか1群であることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項14】
2本のmRNA配列の組み合わせを含み、この2本のmRNA配列は、
a)5’キャップ構造、5’非コード領域、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、
b)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、
c)5’キャップ構造、5’保存配列要素、サブゲノムプロモータ、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、RNA複製酵素コード領域、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、
d)5’キャップ構造、5’保存配列要素、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、RNA複製酵素コード領域、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、
e)5’キャップ構造、5’保存配列要素、サブゲノムプロモータ、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、RNA複製酵素コード領域、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、又は
f)5’キャップ構造、5’保存配列要素、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、RNA複製酵素コード領域、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせのいずれか1群であることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項15】
前記RNA複製酵素コード領域はαウイルス、小RNAウイルス、フラビウイルス、パラミクソウイルス及びカリシウイルスから選ばれることを特徴とする請求項13又は14に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物を含むことを特徴とするmRNAワクチン。
【請求項17】
前記mRNAワクチン中の新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNAと、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNAとの質量比が(1~5):(1~5)であることを特徴とする請求項16に記載のmRNAワクチン。
【請求項18】
前記mRNAワクチンはカチオン又はポリカチオン化合物をさらに含むことを特徴とする請求項16又は17に記載のmRNAワクチン。
【請求項19】
前記mRNAワクチンは脂質をさらに含むことを特徴とする請求項16~18のいずれか1項に記載のmRNAワクチン。
【請求項20】
前記mRNAワクチンはリポソーム、脂質複合体又は脂質ナノ粒子であることを特徴とする請求項16~19のいずれか1項に記載のmRNAワクチン。
【請求項21】
請求項1~15のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物とカチオン又はポリカチオン化合物とを混合したものを脂質でパッケージングすることを含むことを特徴とするmRNAワクチンの調製方法。
【請求項22】
請求項1~15のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物又は請求項16~20のいずれか1項に記載のmRNAワクチンの使用であって、前記使用は、
A)新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染に起因する疾患を予防及び/又は治療する医薬品の調製における使用、又は、
B)抗新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染薬の調製における使用を含み、
好ましくは、前記新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染に起因する疾患はCOVID-19であることを特徴とする使用。
【請求項23】
請求項1~15のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物、又は請求項16~20のいずれか1項に記載のmRNAワクチンを対象に投与することを含むことを特徴とする抗体スクリーニング方法。
【請求項24】
請求項1~15のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物、又は請求項16~20のいずれか1項に記載のmRNAワクチンを対象に投与することを含むことを特徴とする対象の中和抗原特異的免疫応答の誘導方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチンの開発の技術分野に関し、具体的には、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質(Sタンパク質)又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中の受容体結合ドメイン(RBD)又はそのバリアントをコードするmRNA配列とを含む。本発明は、1種又は2種のmRNAを含む組成物、及び前記mRNA又は組成物の、新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染を予防及び/又は治療する医薬品(特にワクチン)の調製における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルスはセグメント無しの一本鎖正鎖RNAウイルスであり、ニドウイルス(Nidovirales)コロナウイルス(Coronaviridae)オルトコロナウイルス亜科(Orthocoronavirinae)に属し、コロナウイルス亜科は血清型とゲノムの特徴によりα、β、γ、δの4つの属に分類される。これまでに、α属の229EとNL63、β属のOC43とHKU1、中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERSr-CoV)、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARSr-CoV)、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の合計7種類のコロナウイルスがヒトに感染している。このうち後者の3つだけが、深刻な人間の疾患や死に至ることになる。
【0003】
コロナウイルスはエンベロープがあり、粒子は円形や楕円形をしており、多形性であるものが多く、直径は通常50~200nmである。Sタンパク質はウイルスの表面に位置して棒状構造を形成し、ウイルスの主要な抗原タンパク質の一つとして、タイピングに用いられる主要な遺伝子である。Nタンパク質はウイルスゲノムを包み込み、診断抗原として有用である。コロナウイルスの理化学的特性に対する理解の多くはSARS-CoVとMERS-CoVの研究によるものである。SARS-CoVの全長Sタンパク質に基づいて設計されたワクチンは大量の非中和抗体を誘導し、動物モデルでウイルス攻撃に失敗し、深刻な副反応を引き起こし、例えば発病率を増加させ、肝部組織の強い炎症反応と肝損傷を引き起こすことが報告されている(文献:「Evaluation of modified vaccinia virus ankara based recombinant SARS vaccine in ferrets」,Vaccine 23,2273-2279.を参照)。そのため、ワクチン設計において免疫優位性を持つ非中和エピトープの暴露を避けることはワクチンの安全性を保障する基礎である。
【0004】
SARS-CoVとMERS-CoVのRBDは高度に類似した1つのコア構造と違いが非常に大きい1セグメントの受容体結合モチーフ(RBM)との2つの部分から構成されている。RBMの違いにより、SARS-CoVとMERS-CoVはそれぞれ異なる受容体を認識する。SARS-CoVはアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)を認識し、MERS-CoVはジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)を認識する。
【0005】
現在、SARS-CoVとMERS-CoVワクチンの研究開発に関わるワクチンプラットフォームは、ウイルスベクターワクチン、DNAワクチン、サブユニットワクチン、ウイルス様粒子(VLP)ワクチン、全ウイルス不活化ワクチン及び弱毒化ワクチンがある。
【0006】
全ウイルス不活化ワクチンは、理論上、迅速に生産して新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染の爆発に対応できるが、ウイルスの培養には生物安全性3級実験室が必要で、ワクチン企業は一般的にその生産要求を満たすことが難しい一方、安全性にも問題があるかもしれないが、研究開発中のSARS-CoVとMERS-CoVの全ウイルス不活化ワクチンはいずれもマウスモデルでウイルスを攻撃した後、肺部にアレルギー病理現象を発見することが報告されている(文献:「Immunization with inactivated middle east respiratory syndrome coronavirus vaccine leads to lung immunopathology on challenge with live virus」,Hum. Vaccin. Immunother. 12,2351-2356.を参照)ため、全ウイルス不活化ワクチンの形式はCOVID-19ワクチンの研究開発に最適な選択ではない。
【0007】
高齢者や免疫力が低下した人もSARS-CoV-2感染の宿主であり、弱毒化生ワクチンプラットフォームで製造されたワクチンは高齢者や免疫力が低下した対象には適さないため、COVID-19ワクチンの研究開発には適さない。
【0008】
DNAワクチンとウイルスベクターワクチンはいずれもDNAをワクチン接種者の細胞内に送達して発現することであり、例えばアデノウイルスベクターワクチンに基づいたワクチンは現在、ゲノムに組み込まれて組み換えられたという報告がないが、この可能性を完全に排除することはできず、依然として一定の安全リスクがある。サブユニットワクチンとVLPワクチンは最適化発現、精製方法を確立する必要があり、しかも一般的に適切なアジュバントを必要とし、このため、研究には数年間の時間がかかり、急速に発展する疫病に対応することは難しい。
【0009】
近年RNA分子分野の関連技術が画期的に進展し、mRNAワクチンはインフルエンザウイルス、エボラウイルスやジカウイルスなど多くの感染症で一定の研究成果を遂げており、mRNAワクチンはmRNAを細胞に送達し、タンパク質を発現・産生することで、生体に免疫保護を付与する。従来の組換えタンパク質ワクチン、不活化ワクチンや弱毒化ワクチンと比べ、mRNAワクチンの調製ステップは簡単で、伝染性疾患の制御に対して重大な意義がある。また、mRNAワクチンは従来の組み換えワクチンよりも高温により強く、またより安定している。また、mRNAワクチンは強力なCD4+やCD8+のT細胞応答を引き起こすことができ、DNA免疫接種と異なり、mRNAワクチンは1、2回の低用量接種で抗体を動物体内で産生することができる。
【0010】
したがって、本発明は、他のワクチンプラットフォームの欠点を回避し、安全で信頼性の高いmRNAワクチンを提供する。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1態様は、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質(スパイクタンパク質)又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD(受容体結合ドメイン)又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、を含むmRNA又はmRNA組成物を提供する。
【0012】
前記新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列とは、同一のSARS-CoV-2突然変異株又は異なるSARS-CoV-2突然変異株に由来する。
【0013】
好ましくは、前記Sタンパク質又はそのバリアントは、野生型全長Sタンパク質又は融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質を含む。
【0014】
さらに好ましくは、安定立体構造であり、前記融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質は682RRAR685位突然変異を含む、及び/又は986KV987位を突然変異して、Sタンパク質を融合前立体構造として固定化する。最も好ましくは、前記融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質は野生型全長Sタンパク質の682RRAR685をGSAGに突然変異した、及び/又は986KV987をPPに突然変異したものである。
【0015】
また、従来の特許で開示された一部の内容も本発明の技術的解決手段をサポートし、例えば、第1セグメントのヘプタペプチドリピート領域に近づく、又は第1セグメントヘプタペプチドリピート領域において1つ又は2つのアミノ酸をプロリンに変更することは立体構造を極めて効率的に安定化することができる(出願番号20200061185、PREFUSION CORONAVIRUS SPIKE PROTEINS and THEIR USEの米国特許を参照)。
【0016】
本発明の1つの特定実施形態では、前記野生型全長Sタンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1、又はSEQ ID NO:1と70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%の同一性を有するアミノ酸配列である。
【0017】
本発明の1つの特定実施形態では、前記融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:15、又は、SEQ ID NO:2若しくは15と70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%の同一性を有するアミノ酸配列である。
【0018】
好ましくは、前記Sタンパク質又はそのバリアントは、シグナルペプチドを含まない、野生型Sタンパク質のシグナルペプチドを含むか、又は野生型Sタンパク質のシグナルペプチドを含むとともに、そのシグナルペプチドの前に強いシグナルペプチドを追加し、前記強いシグナルペプチドは好ましくは組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)のシグナルペプチド又は血清免疫グロブリンE(lgE)のシグナルペプチドである。
【0019】
本発明の1つの特定実施形態では、シグナルペプチドを含まない野生型2019-nCoV Sタンパク質をコードするヌクレオチド配列はSEQ ID NO:6に示される。
【0020】
本発明の1つの特定実施形態では、前記RBDのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:13、又はSEQ ID NO:3又は13と70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%の同一性を有するアミノ酸配列である。
【0021】
好ましくは、前記RBD又はそのバリアントは、シグナルペプチドを含まない、野生型Sタンパク質のシグナルペプチドを含むか、又は野生型Sタンパク質のシグナルペプチドを含むとともに、そのシグナルペプチドの前に強いシグナルペプチドを追加し、前記強いシグナルペプチドは好ましくは組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)のシグナルペプチド又は血清免疫グロブリンE(lgE)のシグナルペプチドである。
【0022】
本発明の1つの特定実施形態では、IgEシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2のRBDをコードするヌクレオチド配列はSEQ ID NO:7、9-11のいずれか1つに示される。
【0023】
好ましくは、前記mRNAはモノシストロン、ビスシストロン又はポリシストロンmRNAである。前記ビスシストロン又はポリシストロンmRNAは2つ以上のコード領域を含有するmRNAである。
【0024】
好ましくは、前記新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列とは、個別の2本のmRNA配列又は1本に連結されたmRNA配列である。
【0025】
さらに好ましくは、1本に連結されたmRNA配列では、5’から3’への連結順序は、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列にSタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列が続くか、又はSタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列に新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列が続く。よりさらに好ましくは、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列とは内部リボソーム進入部位(IRES)により連結される。
【0026】
ここでは、前記IRESは2つのコード領域を隔てることに用いられてもよい。
【0027】
本発明の1つの特定実施形態では、前記IRES配列は、小RNAウイルス(例えばFMDV)、コレラウイルス(例えばCFFV)、ポリオウイルス(例えばPV)、脳心筋炎ウイルス(例えばECMV)、口蹄疫ウイルス(例えばFMDV)、C型肝炎ウイルス(例えばHCV)、豚熱ウイルス(例えばCSFV)、マウス角膜白斑ウイルス(例えばMLV)、サル免疫不全ウイルス(例えばSIV)又はコオロギ麻痺ウイルス(例えばCrPV)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0028】
好ましくは、前記mRNA又はmRNA組成物は5’キャップ構造、5’非コード領域及びポリアデニル酸テールをさらに含む。
【0029】
さらに好ましくは、前記mRNA又はmRNA組成物は、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、3’保存配列要素及び3’非コード領域のうちの1種又は2種以上の組み合わせをさらに含む。
【0030】
好ましくは、前記mRNAは従来のmRNA、自己増幅型mRNA又はトランス増幅型mRNAである。
【0031】
本発明の1つの特定実施形態では、前記mRNAは従来のmRNAであり、即ち、前記mRNAは、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列に加えて、5’キャップ構造、5’非コード領域、3’非コード領域及び/又はポリアデニル酸テールからなるmRNA配列をさらに含む。
【0032】
本発明の1つの特定実施形態では、前記mRNAは自己増幅型mRNAであり、即ち、前記mRNAは、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列に加えて、5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるものをさらに含む。ここでは、使用可能なRNA複製酵素コード領域は、αウイルス(例えばSFV)、小RNAウイルス(例えばFMDV)、フラビウイルス(例えばDENV)、パラミクソウイルス(例えばHMPV)又はカリシウイルス(例えばNV)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明の1つの特定実施形態では、前記mRNAはトランス増幅型mRNAであり、即ち、前記標的遺伝子をコードするmRNAは、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列に加えて、5’キャップ構造、5’保存配列要素、サブゲノムプロモータ、3’保存配列要素、及びポリアデニル酸テールからなるものをさらに含み、RNA複製酵素は単独した従来のmRNAによりコードされる。
【0034】
本発明の1つの特定実施形態では、前記mRNA又はmRNA組成物は、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列とを連結した1本のmRNA配列を含み、このmRNA配列は以下のいずれか1群である。
【0035】
A)5’キャップ構造、5’非コード領域、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域、及びポリアデニル酸テールからなる配列
B)5’キャップ構造、5’非コード領域、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
C)5’キャップ構造、5’非コード領域、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、内部リボソーム進入部位(IRES)、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
D)5’キャップ構造、5’非コード領域、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
E)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
F)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
G)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素、及びポリアデニル酸テールからなる配列、又は
H)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなる配列。
本発明の1つの特定実施形態では、前記mRNA又はmRNA組成物は、2本のmRNA配列の組み合わせを含み、この2本のmRNA配列は以下のいずれか1群である。
【0036】
a)5’キャップ構造、5’非コード領域、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、
b)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、
c)5’キャップ構造、5’保存配列要素、サブゲノムプロモータ、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、RNA複製酵素コード領域、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、
d)5’キャップ構造、5’保存配列要素、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、RNA複製酵素コード領域、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、
e)5’キャップ構造、5’保存配列要素、サブゲノムプロモータ、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、RNA複製酵素コード領域、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、又は
f)5’キャップ構造、5’保存配列要素、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、RNA複製酵素コード領域、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ。
本発明の1つの特定実施形態では、前記mRNA又はmRNA組成物に含まれるmRNA配列は、SEQ ID NO:16~19のいずれか1つ又は2つ以上の組み合わせを含む。
【0037】
好ましくは、前記mRNA又はmRNA組成物はカチオン又はポリカチオン化合物をさらに含む。
【0038】
好ましくは、前記カチオン又はポリカチオン化合物は遊離するか、又はmRNAに結合される。
【0039】
本発明の1つの特定実施形態では、前記mRNA又はmRNA組成物をより安定的にするために、カチオン又はポリカチオン化合物が前記mRNAに結合された形態が使用される。
【0040】
好ましくは、前記mRNA又はmRNA組成物は脂質をさらに含む。
【0041】
さらに好ましくは、前記脂質は、ウイルスサイズの粒子(~100nm)の自己集合形成を促進し得るリポソーム、mRNAをエンドソームから細胞内に放出させるリポソーム、リン脂質二分子層構造を支持するリポソーム又は安定化剤として機能するリポソームを含むが、これらに限定されるものではない。
【0042】
より好ましくは、LNP(脂質ナノ粒子)の半減期を延ばすために、前記脂質はPEG化脂質をさらに含んでもよい。
【0043】
本発明の1つの特定実施形態では、前記脂質はカチオン脂質、PEG化脂質、コレステロール及び/又はリン脂質を含む。
【0044】
本発明の前記mRNA又はmRNA組成物はリポソーム、脂質複合体又は脂質ナノ粒子であってもよい。前記リポソームは、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)リポソーム、1,2-ジリノレオイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレオイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)リポソームの形態で調製されるリポソームであってもよい。前記脂質複合体又は脂質ナノ粒子は、DLin-DMA、DLin-K-DMA、98N12-5、C12-200、DLin-MC3-DMA、DLin-KC2-DMA、DODMA、PLGA、PEG、PEG-DMG、ポリエチレングリコール化脂質及びアミノアルコール脂質から選ばれる脂質で形成されてもよい。
【0045】
本発明の前記mRNA又はmRNA組成物は薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよい。前記薬学的に許容される賦形剤は担体、希釈剤、アジュバント又はアジュバントをコードするヌクレオチド配列、可溶化剤、粘着剤、潤滑剤、懸濁助剤、トランスフェクション促進剤などであってもよい。前記トランスフェクション促進剤は、免疫刺激複合体などの界面活性剤、フロイント(Freunds)不完全アジュバント、LPS類縁体(例えばモノホスホリル脂質A)、ムラミルペプチド、ベンゾキノン類縁体、スクアレン、ヒアルロン酸、脂質、リポソーム、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、カチオン、ポリカチオン(例えばポリ-L-グルタミン酸(LGS))又はナノ粒子、又は他の公知のトランスフェクション促進剤を含むが、これらに限定されるものではない。前記アジュバントをコードするヌクレオチド配列は、GM-CSF、IL-17、IFNg、IL-15、IL-21、抗PD1/2、ラクトフェリン、プロタミン、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、INF-α、INF-γ、Lymphotoxin-α、hGH、MCP-1、MIP-1a、MIP-1p、IL-8、RANTES、L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン、CD34、GlyCAM-1、MadCAM-1、LFA-1、VLA-1、Mac-1、pl50.95、PECAM、ICAM-1、ICAM-2、ICAM-3、CD2、LFA-3、M-CSF、CD40、CD40L、血管成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、血管内皮成長因子、Apo-1、p55、WSL-1、DR3、TRAMP、Apo-3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL-R2、TRICK2、DR6、カスパーゼICE、Fos、c-jun、Sp-1、Ap-1、Ap-2、p38、p65Rel、MyD88、IRAK、TRAF6、IkB、不活性なNIK、SAP K、SAP-1、JNK、NFkB、Bax、TRAIL、TRAILrec、TRAILrecDRC5、TRAIL-R3、TRAIL-R4、RANK、RANK LIGAND、Ox40、Ox40LIGAND、NKG2D、MICA、MICB、NKG2A、NKG2B、NKG2C、NKG2E、NKG2F、TAP1、TAP2及びそれらの機能性断片のうちの少なくとも1種のアジュバントをコードするヌクレオチド配列である。
【0046】
本発明の第2態様は、本発明のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物を含むmRNAワクチンを提供する。
【0047】
好ましくは、前記mRNAワクチンにおいて、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードする配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードする配列とは、それぞれ、異なるSARS-CoV-2突然変異株に由来し、これにより、異なるSARS-CoV-2突然変異株に対するクロスプロテクションを免疫学的に発生させる。本発明の1つの特定実施形態では、前記mRNAワクチンにおいて、IgEシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2をコードするRBDには、501Y.V2系統のK417N、E484K及びN501Y突然変異が含まれ、好ましくは、そのアミノ酸配列はSEQ ID NO:13に示され、682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質をコードする配列はWuhan-Hu-1 isolateに由来し、これには、501Y.V2系統のL18F、D80A、D215G、L242-L244削除突然変異(L242-244del)、R246I、K417N、E484K、N501Y及びA701Vが含まれ、好ましくは、そのアミノ酸配列はSEQ ID NO:15に示される。
【0048】
本発明の1つの特定実施形態では、前記mRNAワクチンは、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、を含み、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントのアミノ酸配列はSEQ ID NO:15に示され、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントはSEQ ID NO:13に示される。
【0049】
本発明の別の特定実施形態では、前記mRNAワクチンは、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、を含み、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントのアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示され、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントはSEQ ID NO:13に示される。
【0050】
本発明の別の特定実施形態では、前記mRNAワクチンは、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、を含み、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントのアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示され、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントはSEQ ID NO:3に示される。好ましくは、前記mRNAワクチンにおいて、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNAと、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNAとの質量比が(1~5):(1~5)である。
【0051】
本発明の1つの特定実施形態では、前記mRNAワクチンにおいて、IgEシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2のRBDをコードするmRNAと、682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質をコードするmRNAとの質量比が、(1~2):(1~2)である。
【0052】
好ましくは、前記mRNAワクチンはカチオン又はポリカチオン化合物をさらに含む。
【0053】
好ましくは、前記カチオン又はポリカチオン化合物は遊離するか、又はmRNAに結合される。
【0054】
本発明の1つの特定実施形態では、前記mRNAワクチンをより安定的にするために、カチオン又はポリカチオン化合物が前記mRNAに結合された形態が使用される。
【0055】
好ましくは、前記mRNAワクチンは脂質をさらに含む。
【0056】
さらに好ましくは、前記脂質は、ウイルスサイズの粒子(~100nm)の自己集合形成を促進し得るリポソーム、mRNAをエンドソームから細胞内に放出させるリポソーム、リン脂質二分子層構造を支持するリポソーム又は安定化剤として機能するリポソームを含むが、これらに限定されるものではない。
【0057】
より好ましくは、LNPの半減期を延ばすために、前記脂質はPEG化脂質をさらに含んでもよい。
【0058】
本発明の1つの特定実施形態では、前記脂質はカチオン脂質、PEG化脂質、コレステロール及び/又はリン脂質を含む。
【0059】
本発明の前記mRNAワクチンはリポソーム、脂質複合体又は脂質ナノ粒子であってもよい。前記リポソームは、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)リポソーム、1,2-ジリノレオイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレオイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)リポソームの形態で調製されるリポソームであってもよい。前記脂質複合体又は脂質ナノ粒子は、DLin-DMA、DLin-K-DMA、98N12-5、C12-200、DLin-MC3-DMA、DLin-KC2-DMA、DODMA、PLGA、PEG、PEG-DMG、ポリエチレングリコール化脂質及びアミノアルコール脂質から選ばれる脂質で形成されてもよい。
【0060】
本発明の前記mRNAワクチンは薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよい。前記薬学的に許容される賦形剤は担体、希釈剤、アジュバント又はアジュバントをコードするヌクレオチド配列、可溶化剤、粘着剤、潤滑剤、懸濁助剤、トランスフェクション促進剤などであってもよい。前記トランスフェクション促進剤は、免疫刺激複合体などの界面活性剤、フロイント(Freunds)不完全アジュバント、LPS類縁体(例えばモノホスホリル脂質A)、ムラミルペプチド、ベンゾキノン類縁体、スクアレン、ヒアルロン酸、脂質、リポソーム、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、カチオン、ポリカチオン(例えばポリ-L-グルタミン酸(LGS))又はナノ粒子、又は他の公知のトランスフェクション促進剤を含むが、これらに限定されるものではない。前記アジュバントをコードするヌクレオチド配列は、GM-CSF、IL-17、IFNg、IL-15、IL-21、抗PD1/2、ラクトフェリン、プロタミン、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、INF-α、INF-γ、Lymphotoxin-α、hGH、MCP-1、MIP-1a、MIP-1p、IL-8、RANTES、L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン、CD34、GlyCAM-1、MadCAM-1、LFA-1、VLA-1、Mac-1、pl50.95、PECAM、ICAM-1、ICAM-2、ICAM-3、CD2、LFA-3、M-CSF、CD40、CD40L、血管成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、血管内皮成長因子、Apo-1、p55、WSL-1、DR3、TRAMP、Apo-3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL-R2、TRICK2、DR6、カスパーゼICE、Fos、c-jun、Sp-1、Ap-1、Ap-2、p38、p65Rel、MyD88、IRAK、TRAF6、IkB、活性のないNIK、SAP K、SAP-1、JNK、NFkB、Bax、TRAIL、TRAILrec、TRAILrecDRC5、TRAIL-R3、TRAIL-R4、RANK、RANK LIGAND、Ox40、Ox40LIGAND、NKG2D、MICA、MICB、NKG2A、NKG2B、NKG2C、NKG2E、NKG2F、TAP1、TAP2及びそれらの機能性断片のうちの少なくとも1種のアジュバントをコードするヌクレオチド配列である。
【0061】
本発明の第3態様は、mRNAとカチオン又はポリカチオン化合物とを混合したものを脂質でパッケージングすることを含むmRNA又はmRNA組成物の調製方法を提供する。
【0062】
好ましくは、前記脂質は、ウイルスサイズの粒子(~100nm)の自己集合形成を促進し得るリポソーム、mRNAをエンドソームから細胞内に放出させるリポソーム、リン脂質二分子層構造を支持するリポソーム又は安定化剤として機能するリポソームを含むが、これらに限定されるものではない。より好ましくは、LNPの半減期を延ばすために、前記脂質はPEG化脂質をさらに含んでもよい。
【0063】
本発明の1つの特定実施形態では、前記脂質はカチオン脂質、PEG化脂質、コレステロール及び/又はリン脂質を含む。
【0064】
本発明の第4態様は、本発明のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物とカチオン又はポリカチオン化合物とを混合したものを脂質でパッケージングすることを含むmRNAワクチンの調製方法を提供する。好ましくは、脂質ナノ粒子としてパッケージングする。
【0065】
好ましくは、前記脂質は、ウイルスサイズの粒子(~100nm)の自己集合形成を促進し得るリポソーム、mRNAをエンドソームから細胞内に放出させるリポソーム、リン脂質二分子層構造を支持するリポソーム又は安定化剤として機能するリポソームを含むが、これらに限定されるものではない。より好ましくは、LNPの半減期を延ばすために、前記脂質はPEG化脂質をさらに含んでもよい。
【0066】
本発明の1つの特定実施形態では、前記脂質はカチオン脂質、PEG化脂質、コレステロール及び/又はリン脂質を含む。
【0067】
本発明の第5態様は、本発明のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物又はmRNAワクチンの、新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染に起因する疾患の予防及び/又は治療における使用を提供する。
【0068】
好ましくは、前記新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染に起因する疾患は、COVID-19を含むが、これに限定されるものではない。
【0069】
本発明の第6態様は、本発明のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物又はmRNAワクチンの、抗新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染における使用を提供する。
【0070】
本発明の第7態様は、本発明のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物又はmRNAワクチンの、新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染に起因する疾患を予防及び/又は治療する医薬品の調製における使用を提供する。
【0071】
好ましくは、前記新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染に起因する疾患は、COVID-19を含むが、これに限定されるものではない。
【0072】
本発明の第8態様は、本発明のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物又はmRNAワクチンの、抗新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染薬の調製における使用を提供する。
【0073】
本発明の第9態様は、対象に本発明のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物、又はmRNAワクチンの有効量を投与することを含む新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染に起因する疾患の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0074】
本発明の第10態様は、新型コロナウイルスSARS-CoV-2を感染していない対象に本発明の前記mRNAワクチンの有効量を投与することを含む新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染の予防方法を提供する。
【0075】
本発明の第11態様は、新型コロナウイルスSARS-CoV-2を感染した対象に本発明の前記mRNA又はmRNAを含む組成物又はmRNAワクチンの有効量を投与することで、対象の体内で中和抗体を産生して新型コロナウイルスSARS-CoV-2に対応することを含む新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染の治療方法を提供する。
【0076】
本発明の第12態様は、対象に本発明のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物、又はmRNAワクチンの有効量を投与するステップを含む抗体スクリーニング方法を提供する。
【0077】
ここでは、前記抗体スクリーニング方法は治療方法ではない。該方法は中和抗体をスクリーニングし、抗体の薬効について検出や比較を行って、どの抗体が医薬品として有用であるか、どの抗体が医薬品として好適ではないかを決定するか、又は、各医薬品の薬効感度を比較し、即ち治療効果は必然的なものであり、可能性のあるものに過ぎない。
【0078】
本発明の第13態様は、対象に本発明のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物、又はmRNAワクチンを投与することを含む対象の中和抗原特異的免疫応答の誘導方法を提供する。
【0079】
好ましくは、前記抗原特異的免疫応答はT細胞応答及び/又はB細胞応答を含む。
【0080】
本発明の第14態様は、本発明の前記mRNA又はmRNA組成物によりコードされるタンパク質を提供する。
【0081】
好ましくは、前記タンパク質は、融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質である。さらに好ましくは、前記融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質は、682RRAR685位突然変異を含む、及び/又は986KV987位を突然変異して、Sタンパク質を融合前立体構造として固定化する。最も好ましくは、前記融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質は、野生型全長Sタンパク質の682RRAR685をGSAGに突然変異した、及び/又は986KV987をPPに突然変異したものである。
【0082】
本発明の第15態様は、本発明の前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列を提供する。
【0083】
本発明の第16態様は、本発明の前記ヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0084】
本発明の第17態様は、本発明の前記タンパク質、前記ヌクレオチド配列及び/又は前記ベクターを含む細胞を提供する。
【0085】
本発明の前記mRNA又はmRNA組成物、及びmRNA又はmRNA組成物を含むmRNAワクチンの優位性は以下の通りである。1、インビトロで合成するので、細胞培養が不要であり、動物由来汚染のリスクがない。2、研究・開発、生産が効率的であり、標準化生産が行われ、量産や品質制御が容易であり、同一の生産プロセスが複数の製品に適用できる。3、所定時間内で持続的な発現ができ、これにより、抗原暴露時間が長くなり、免疫反応の強度及び品質が向上する。4、自然感染の過程を模擬して、ヒト細胞内で翻訳、修飾され、MHC I類分子に提示されて、より強い細胞免疫を誘発することができる。5、細胞内タンパク質、膜貫通タンパク質、VLPなど、多種類のタンパク質形式をサポートし、しかもVLPの生産量が低いことによる精製の問題を避けることができる。6、自己アジュバント効果があり、アジュバントスクリーニングを行う必要がない。7、感染、ゲノム組み込みのリスクがない。8、既得免疫がなく、何度も免疫ができる。
【0086】
本発明の前記mRNA又はmRNA組成物の発現産物は、RBD又はそのバリアントと、Sタンパク質又はそのバリアントと、を含み、RBDは主要な中和エピトープを含み、高レベルの中和抗体力価を誘発することができ、さらに、非中和エピトープが比較的少ないので、安全性が高い。全長Sタンパク質は高レベルの特異的細胞免疫を誘導することができ、中和抗体のRBDを特異的に誘導し、極めて優れた免疫効果を果たすことができる。さらに、実施例によっても、本発明の前記mRNA又はmRNA組成物の発現産物は人体で高レベルの中和抗体及びサイトカインの産生を誘発できることが証明されている。
【0087】
また、従来技術で開示された内容の一部も本発明の技術的解決手段をサポートし、例えばSARS-CoV-2のRBDの配列を解析し、その構造のシミュレーション予測を行うことにより、SARS-CoV-2のSタンパク質がSARS-CoVのSタンパク質とACE2が相互作用する構造立体構造を維持することが考えられる(Xintian, Xら(2020),Evolution of the novel coronavirus from the ongoing Wuhan outbreak and modeling of its spike protein for risk of human transmission,Sci China Life Sci.を参照)。MERS-CoVのRBDの異なる断片を比較することにより、タンパク質断片377~588が主要中和ドメインであり、即ち、マウス及びウサギのモデルにおいて最高の中和抗体力価を引き起こし得ることが確認され、しかも、この主要中和ドメインはまだ受容体hDPP4と結合することができ、これによって、構造立体構造を維持することが確認され、線形エピトープに加えて、構造エピトープを提供することもできる(Cuiqing, Mら(2014),Searching for an ideal vaccine candidate among different MERS coronavirus receptor-binding fragments--the importance of immunofocusing in subunit vaccine design,Vaccine. 32(46):6170-6176.を参照)。
【0088】
本発明の前記「対象」は哺乳類とヒトを含む。前記哺乳類は、げっ歯類(例えばマウス、ラット)、サル、ゼブラフィッシュ、ブタ、ニワトリ、ウサギなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0089】
本発明の前記「予防」とは、疾患発症前又は後に本発明の前記製品を投与することにより症状を回避するか、又は特定の症状進行を遅延させる全ての行為であり、好ましくは、前記予防は本発明の前記mRNA又はmRNAを含む組成物をワクチンとして使用することを含む。
【0090】
本発明の前記「治療」とは、疾患進行の場合疾患又は病態の徴候、症状などを改善する治療的介入であり、好ましくは、前記治療は、本発明の前記mRNA又はmRNAを含む組成物に結合する抗体をスクリーニングして、治療に用いることを含む。
【0091】
本発明の前記「有効量」とは、単一又は複数の用量で患者又は器官に投与した後、期待される治療又は予防を付与する本発明の前記製品の量又は用量である。
【0092】
本発明の前記「Sタンパク質」とは、新型コロナウイルスSARS-CoV-2を構成する構造タンパク質であり、名称がスパイクタンパク質である。
【0093】
本発明の前記「RBD」とは、新型コロナウイルスSARS-CoV-2を構成する構造タンパク質であり、名称がスパイクタンパク質受容体結合ドメインである。
【0094】
本発明の前記「同一性」とは、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列を使用する上、使用する配列が従来技術により得られる配列と比較して、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%(含むが、これらに限定されるものではない)の相同性を有するとともに、元のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列と同じ又は類似の機能を有し、例えば元の配列と同一性を有するアミノ酸配列も中和抗体をインビボで誘発してサイトカインを産生する機能を有し、元の配列と同一性を有するmRNA配列発現産物も中和抗体をインビボで誘発し、サイトカインを産生する機能を有するように、当業者が実際のニーズに応じて配列を調整してもよいことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【
図1】tPAシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2のRBDをコードする配列の配列決定結果である。
【
図2】
図2A及び
図2Bの組み合わせは野生型SARS-CoV-2のSタンパク質をコードする配列の配列決定結果である。
【
図3】T7プロモータ、5’UTR、3’UTR、及びpolyAテールを含む基礎プラスミドテンプレートの配列図である。
【
図4】ホルムアルデヒド変性ゲルを用いてキャップ化により精製されたmRNAを検出し、ここで、Mはマーカーであり、1はtPAシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2のRBDをコードするmRNAであり、2は682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質をコードするmRNAである。
【
図5】ウエスタンブロット(WB:Western Blot)検出結果であり、ここで、1はtPAシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2のRBDをコードするmRNAの発現上清であり、2は陰性対照である。
【
図7】動的光散乱(DLS:Dynamic Light Scattering)によるmRNA-LNPの粒径及び粒径分布の検出結果であり、ここで、AはRBD+S-1-LNPを表し、BはRBD+S-2-LNPを表し、CはRBD+S-3-LNPを表し、DはRBD-LNPを表し、EはS-LNPを表す。
【
図8】ホルムアルデヒド変性ゲルを用いたパッケージング後のサンプルのmRNA完全性の検出結果であり、ここで、1はtPAシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2のRBDをコードするmRNAであり、2はRBD+S-1であり、3はRBD+S-2であり、4はRBD+S-3であり、5は682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異する融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質をコードするmRNAである。
【
図9】一次免疫、二次免疫後のSタンパク質の特異的抗体の力価であり、ここで、Negativeは陰性対照である。
【
図10】ELISpot(酵素結合免疫スポット法)によるインターフェロンγ(IFN-γ)の検出結果であり、ここで、縦座標は脾臓細胞100万個当たりのスポット形成単位(SFU:spot forming unit)であり、Negativeは陰性対照である。
【
図11】CD4 CK細胞内染色法(ICS)によるIFN-γ、インターロイキン-2(IL-2)及び腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の検出結果である。
【
図12】CD8 CK細胞内染色法(ICS)によるIFN-γ、インターロイキン-2(IL-2)及び腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の検出結果である。
【
図13】ホルムアルデヒド変性ゲルを用いてキャップ化により精製されたmRNAを検出し、ここで、Mはマーカーであり、1は実施例1で調製された、682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質をコードするmRNAであり、2は682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された501Y.V2系統の全長Sタンパク質をコードするmRNAであり、3は、IgEシグナルペプチドを含む501Y.V2系統の野生型SARS-CoV-2のRBD配列をコードするmRNAである。その結果、mRNAはサイズが正しく、ほぼ分解していない。
【
図14】WBの検出結果であり、ここで、1は、IgEシグナルペプチドを含む501Y.V2系統の野生型SARS-CoV-2のRBD配列をコードするmRNAの発現上清であり、2は682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された501Y.V2系統の全長Sタンパク質をコードするmRNAの発現上清であり、3は陰性対照の細胞上清であり、4はIgEシグナルペプチドを含む501Y.V2系統の野生型SARS-CoV-2のRBD配列をコードするmRNAの発現細胞沈殿であり、5は682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された501Y.V2系統の全長Sタンパク質をコードするmRNAの発現細胞沈殿であり、6は陰性対照の細胞沈殿である。
【
図15】動的光散乱(DLS:Dynamic Light Scattering)によるmRNA-LNPの粒径及び粒径分布の検出結果である。
【
図16】一次免疫、二次免疫後の501Y.V2系統に対するSタンパク質特異的抗体の力価である。
【
図17】一次免疫、二次免疫後のWuhan-Hu-1 isolateに対するSタンパク質特異的抗体の力価である。
【
図18】替代性中和抗体力価の結果であり、左の4群はWuhan-Hu-1 isolateに対する替代性中和抗体力価であり、右の4群の501Y.V2系統に対する替代性中和抗体力価である。
【
図19】CD4+T細胞Th1細胞の免疫応答の検出結果である。
【
図20】CD8+T細胞Th1細胞の免疫応答の検出結果である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下、本発明の実施例の図面を参照しながら、本発明の実施例の技術的解決手段を明確かつ完全に説明するが、明らかに、説明する実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではない。当業者が本発明の実施例に基づいて創造的な努力を必要とせずに得る他の全ての実施例は本発明の特許範囲に属する。
【0097】
実施例に使用される試薬の由来
替代性中和抗体の検出はワクチン免疫マウスの血清中の中和抗体の検出であり、ACE2タンパク質とRBDタンパク質の競合結合を利用する。
【0098】
特異的抗体の検出はワクチン免疫マウスの血清中の特異的抗体の検出であり、RBDタンパク質を利用する。
【0099】
Wuhan-Hu-1 isolateに対する検出に使用されるRBDタンパク質は野生型RBDタンパク質である(製造元:ジェンスクリプト社、品番:Z03483-1)。
【0100】
501Y.V2系統に対する検出に使用されるRBDタンパク質は501Y.V2系統突然変異を含むRBDタンパク質である(製造元:上海近岸科技有限公司、品番:DRA125)。
【0101】
実施例1:mRNAの調製及び検出
1、抗原設計用の遺伝子配列をそれぞれ人工合成した。
2、固相ホスホロアミダイトトリエステルによって短ヌクレオチド鎖(プライマー)を合成した。
3、プライマーを互いのテンプレートとしてPCR増幅を行った。
4、ステップ3の増幅産物をpUC57ベクターに連結し、形質転換して配列決定した。
5、配列決定の結果、配列は予測した通りであり、結果は
図1~2に示される。具体的には、
図1は、tPAシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2のRBDをコードする配列の配列決定結果を示し、そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO:4に示され、アミノ酸配列はSEQ ID NO:3に示される。
図2は、682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質をコードする配列の配列決定結果であり、そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO:5に示され、アミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示される。
6、T7プロモータ、5’UTR、3’UTR、及びpolyAテールを含む、配列が
図3(SEQ ID NO:8)に示される基礎プラスミドテンプレートを準備した。
7、基礎プラスミドテンプレートと相同であるプライマーによりPCRを行った結果、正しいものである。
【0102】
基礎プラスミドテンプレートを制限エンドヌクレアーゼBsmBIで線形化した。PCR産物をそれぞれ相同組換えにより基礎プラスミドテンプレートに連結し、それぞれXl1-Blue菌株に形質転換し、配列決定を行って配列が正しいと確認すると、転写テンプレートを構築した。振とうフラスコを用いて菌株を発酵し、エンドトキシンフリープラスミド大量抽出キットで精製し、転写テンプレートを得た。
【0103】
転写テンプレートを制限エンドヌクレアーゼBbsIで線形化した。T7インビトロ転写キットで転写し、SEQ ID NO:4~5のキャップ化されていないmRNA(mRNAの具体的な配列はそれぞれSEQ ID NO:16~17である)をそれぞれ得た。DNaseIで転写テンプレートをそれぞれ消化して、沈殿法によりmRNAを精製した。Cap1キャップ化キットを用いてmRNAをキャップ化し、mRNA精製キットを用いてキャップ化後のmRNAをそれぞれ精製した。精製後のmRNAを酸性クエン酸ナトリウム緩衝液に溶解し、保管しておく。
【0104】
ホルムアルデヒド変性ゲルを用いて、キャップ化により精製されたmRNAを検出し、
図4に示すように、1はtPAシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2のRBDをコードするmRNAであり、2は682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質をコードするmRNAである。その結果、mRNAはサイズが正しく、ほぼ分解していない。
【0105】
24ウェルプレートの3つのウェルにHEK293細胞を接種し、これらのうち、ウェル1、2のそれぞれでは、lipofectamine 2000を用いて、キャップ化により精製されたtPAシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2のRBDをコードするmRNAと、コード682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質のmRNAと、を0.5μgトランスフェクションし、ウェル3では、陰性対照としてlipofectamine 2000トランスフェクション試薬を加えた。24hトランスフェクション後、ウェル1、3内の細胞上清を取ってWB検出を行い、ウェル2、3内の細胞を固定化した後、抗Sタンパク質多価抗体で免疫蛍光検出を行った。WB検出結果を
図5に示し、ここで、1はtPAシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2のRBDをコードするmRNAの発現上清であり、2は陰性対照である。その結果、発現させたタンパク質のサイズが正しい。免疫蛍光結果を
図6に示し、682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質をコードするmRNAが正常に発現できることが証明された。
【0106】
実施例2:mRNAワクチンの調製及び免疫
1、原料の準備
1)カチオン脂質D-Lin-MC3-DMA、ジステアロイルホスファチジルコリンDSPC、コレステロール、PEG化脂質PEG-DMGの4つの成分を50:10:38.5:1.5のモル比でエタノールに溶解して混合した。
2)実施例1で調製された、tPAシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2のRBDをコードするmRNAと、682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質をコードするmRNAの2種のmRNAを1:1、2:1、1:2の質量比でそれぞれ混合し、混合後のmRNAを得て、RBD+S-1、RBD+S-2及びRBD+S-3と略称した。
2、試験ステップ
脂質混合物:mRNAを、1:3の流速比で、Precision Nanosystems社製のナノ粒子製造装置Igniteにてそれぞれ混合し、RBD+S-1、RBD+S-2、RBD+S-3、tPAシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2のRBDをコードするmRNA、及び682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質をコードするmRNAをパッケージングした。パッケージングしたmRNA-LNP(LNPは脂質ナノ粒子)を透析し、限外濾過してDPBS内に濃縮させ、無菌ろ過すると、後続の動物実験用のサンプルを得た。DLSによりmRNA-LNPの粒径及び粒径分布を検出し、検出結果を
図7に示し、パッケージング後のサンプルは全て粒径が70nm~100nmであり、PDIが0.2未満である。ここで、RBD+S-1-LNP:粒径平均値77.15nm、PDI値0.038、インターセプト(intercept)0.958、具体的には表1を参照し、RBD+S-2-LNP:粒径平均値77.04nm、PDI値0.055、インターセプト(intercept)0.959、具体的には表2を参照し、RBD+S-3-LNP:粒径平均値91.43nm、PDI値0.049、インターセプト(intercept)0.974、具体的には表3を参照し、RBD-LNP:粒径平均値77.92nm、PDI値0.036、インターセプト(intercept)0.954、具体的には表4を参照し、S-LNP:粒径平均値76.89nm、PDI値0.031、インターセプト(intercept)0.977、具体的には、表5を参照する。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
ホルムアルデヒド変性ゲルを用いて、パッケージング後のサンプルのmRNA完全性を検出し、結果を
図8に示し、ここで、1はtPAシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2のRBDをコードするmRNAであり、2はRBD+S-1であり、3はRBD+S-2であり、4はRBD+S-3であり、5は682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質をコードするmRNAである。以上から、mRNAはほぼ分解していない。
【0113】
6週齢程度のBALB/c雌マウスを6匹ずつ6群にランダムに分けた。それぞれ0日目及び28日目に免疫後、脚の筋肉に10μgを接種し、28日目及び42日目にSタンパク質の特異的抗体力価を検出し、42日目にマウスを殺してサイトカインを検出した。
【0114】
3、実験結果
一次免疫、二次免疫後のSタンパク質の特異的抗体力価を
図9に示し、S全長単独で二次免疫後の特異的抗体力価はRBD単独免疫の場合よりもはるかに低く、SとRBDの組み合わせで免疫した3群のうち、2群は、RBD単独免疫の場合と比較して、特異的抗体力価に有意差がなく、RBD+S-1では、相乗効果が認められ、特異的抗体力価はRBD単独免疫の場合よりもはるかに高いことが分かった。ELISpotによるインターフェロンγ(IFN-γ)の検出結果を
図10に示し、S全長単独免疫によるIFN-γ分泌のレベルはRBD単独免疫の場合よりもはるかに高く、SとRBDの組み合わせで免疫した3群のうち、2群はS全長単独免疫の場合と比較して、IFN-γ分泌レベルには有意差がなく、RBD+S-3では、相乗効果が認められ、IFN-γ分泌レベルはS全長単独免疫の場合よりもはるかに高いことが分かった。CK細胞内染色法(ICS)によるIFN-γ、インターロイキン-2(IL-2)及び腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の検出結果を
図11及び
図12に示す。CD4+T細胞は、反応が低く、対象の違いが大きく、指導意義が低く、一方、CD8+T細胞の検出結果はELISpotの検出結果とほぼ一致し、SとRBDの組み合わせで免疫した3群のうち、2群はS全長単独免疫の場合と比較して、IFN-γ、IL-2及びTNF-αの分泌レベルには有意差がなく、RBD+S-3では、有意な相乗効果が認められた。S全長とRBDの組み合わせはS全長の細胞免疫の優位性とRBDの体液免疫の優位性とを組み合わせるに加えて、相乗効果を果たし、2019-nCoV型冠状ウイルス感染の予防において優れた効果が得られることが示された。
【0115】
実施例3:配列が異なるSARS-CoV-2突然変異株に由来のmRNAの調製及び検出
1、プライマーを互いのテンプレートとして増幅し、IgEシグナルペプチドを含む野生型SARS-CoV-2のRBDをコードする配列を合成し、ここで、この配列は、501Y.V2系統のK417N、E484K及びN501Y突然変異を含み、そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO:12に示され、アミノ酸配列はSEQ ID NO:13に示される。
【0116】
2、プライマーを互いのテンプレートとして増幅し、682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された501Y.V2系統の全長Sタンパク質をコードする配列を合成し、この配列は、501Y.V2系統のL18F、D80A、D215G、L242-L244削除突然変異(L242-244del)、R246I、K417N、E484K、N501Y及びA701Vを含み、そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO:14に示され、アミノ酸配列はSEQ ID NO:15に示される。
【0117】
3、T7プロモータ、5’UTR、3’UTR、及びpolyAテールを含む、配列が
図3(SEQ ID NO:8)に示される基礎プラスミドテンプレートを準備した。
【0118】
4、基礎プラスミドテンプレートと相同であるプライマーによりPCRを行った結果、正しいものである。
【0119】
基礎プラスミドテンプレートを制限エンドヌクレアーゼBsmBIで線形化した。PCR産物をそれぞれ相同組換えにより基礎プラスミドテンプレートに連結し、それぞれXl1-Blue菌株に形質転換し、配列決定を行って配列が正しいと確認すると、転写テンプレートを構築した。振とうフラスコを用いて菌株を発酵し、エンドトキシンフリープラスミド大量抽出キットで精製し、転写テンプレートを得た。
【0120】
転写テンプレートを制限エンドヌクレアーゼBbsIで線形化した。T7インビトロ転写キットで転写し、SEQ ID NO:12、14のキャップ化されていないmRNA(mRNAの具体的な配列はそれぞれSEQ ID NO:18、19である)をそれぞれ得た。DNaseIで転写テンプレートをそれぞれ消化して、沈殿法によりmRNAを精製した。Cap1キャップ化キットを用いてmRNAをキャップ化し、mRNA精製キットを用いてキャップ化後のmRNAをそれぞれ精製した。精製後のmRNAを酸性クエン酸ナトリウム緩衝液に溶解し、保管しておく。
【0121】
ホルムアルデヒド変性ゲルを用いて、キャップ化により精製されたmRNAを検出し、
図13に示すように、1は実施例1で調製された、682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質をコードするmRNAであり、2は682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された501Y.V2系統の全長Sタンパク質をコードするmRNAであり、3はIgEシグナルペプチドを含む501Y.V2系統の野生型SARS-CoV-2のRBD配列をコードするmRNAである。その結果、mRNAはサイズが正しく、ほぼ分解していない。
【0122】
24ウェルプレートの3つのウェルにHEK293細胞を接種し、これらのうち、ウェル1、2のそれぞれでは、lipofectamine 2000を用いて、キャップ化により精製されたIgEシグナルペプチドを含む501Y.V2系統の野生型SARS-CoV-2のRBD配列をコードするmRNAと、682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された501Y.V2系統の全長Sタンパク質をコードするmRNAを0.5μgトランスフェクションし、ウェル3では、陰性対照とした。24hトランスフェクション後、遠心分離して、細胞上清及び細胞沈殿を得て、それぞれWB検出に供した。WB検出結果を
図14に示し、ここで、1はIgEシグナルペプチドを含む501Y.V2系統の野生型SARS-CoV-2のRBD配列をコードするmRNAの発現上清であり、2は682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された501Y.V2系統の全長Sタンパク質をコードするmRNAの発現上清であり、3は陰性対照の細胞上清であり、4はIgEシグナルペプチドを含む501Y.V2系統の野生型SARS-CoV-2のRBD配列をコードするmRNAの発現細胞沈殿であり、5は682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された501Y.V2系統の全長Sタンパク質をコードするmRNAの発現細胞沈殿であり、6は陰性対照の細胞沈殿である。その結果、発現させたタンパク質のサイズが正しい。
【0123】
実施例4:配列が異なるSARS-CoV-2突然変異株に由来のmRNA組み合わせワクチンの調製及び免疫
1、原料の準備
1)カチオン脂質D-Lin-MC3-DMA、ジステアロイルホスファチジルコリンDSPC、コレステロール、PEG化脂質PEG-DMGの4つの成分を50:10:38.5:1.5のモル比でエタノールに溶解して混合した。
【0124】
2)実施例1で調製された、682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質をコードするmRNAと、実施例3で調製された、682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された501Y.V2系統の全長Sタンパク質をコードするmRNAと、実施例3で調製された、IgEシグナルペプチドを含む501Y.V2系統の野生型SARS-CoV-2のRBD配列をコードするmRNAを準備した。
【0125】
3)実施例3で調製された、682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された501Y.V2系統の全長Sタンパク質をコードするmRNAと、実施例3で調製された、IgEシグナルペプチドを含む501Y.V2系統の野生型SARS-CoV-2のRBD配列をコードするmRNAと、を1:2の質量比で混合し、混合後のmRNAを得て、combo Aと略称した。
【0126】
4)実施例1で調製された、682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質をコードするmRNAと、実施例3で調製された、IgEシグナルペプチドを含む501Y.V2系統の野生型SARS-CoV-2のRBD配列をコードするmRNAと、を1:2の質量比で混合し、混合後のmRNAを得て、combo Bと略称した。
【0127】
2、試験ステップ
脂質混合物:mRNAを、1:3の流速比で、Precision Nanosystemsのナノ粒子製造装置Igniteにてそれぞれ混合し、combo A、combo B、実施例3で調製された、682RRAR685がGSAGに突然変異し、986KV987がPPに突然変異した融合前立体構造として固定化された501Y.V2系統の全長Sタンパク質をコードするmRNAと、実施例3で調製された、IgEシグナルペプチドを含む501Y.V2系統の野生型SARS-CoV-2のRBD配列をコードするmRNAとをパッケージングし、パッケージングしたmRNA-LNPを得て、それぞれcombo A-LNP、combo B-LNP、S-SA-LNP及びRBD-SA-LNPと略称した。パッケージングしたmRNA-LNPを透析し、限外濾過してDPBS内に濃縮させ、無菌ろ過すると、後続の動物実験用のサンプルを得た。DLSによりmRNA-LNPの粒径及び粒径分布を検出し、検出結果を
図15に示し、パッケージング後のサンプルは全て粒径が70nm~100nmであり、PDIが0.2未満である。ここで、combo A-LNP:粒径平均値79.87nm、PDI値0.132、インターセプト(intercept)0.962、具体的には表6を参照し、combo B-LNP:粒径平均値80.61nm、PDI値0.123、インターセプト(intercept)0.958、具体的には表7を参照し、S-SA-LNP:粒径平均値81.13nm、PDI値0.159、インターセプト(intercept)0.939、具体的には表8を参照し、RBD-SA-LNP:粒径平均値82.74nm、PDI値0.112、インターセプト(intercept)0.960、具体的には表9を参照する。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
6週齢程度のBALB/c雌マウスを6匹ずつ5群にランダムに分けた。それぞれ0日目及び14日目に免疫後、脚の筋肉に5μgを接種し、14日目及び第28日目にSタンパク質の特異的抗体力価を検出し、28日目にマウスを殺してサイトカインを検出した。
【0133】
3、実験結果
一次免疫、二次免疫後の501Y.V2系統のSタンパク質の特異的抗体力価を
図16に示し、各群間で有意差がなかった。一次免疫、二次免疫後のWuhan-Hu-1 isolateのSタンパク質の特異的抗体力価を
図17に示し、その結果、SとRBDの組み合わせの2群では、免疫による特異的抗体力価には有意差がないが、S全長単独とRBD単独で二次免疫後の特異的抗体力価は、いずれも異なるSARS-CoV-2突然変異株に由来のmRNA組み合わせ(combo B)よりも低かった。一方、替代性中和抗体力価の結果からも、(
図18に示すように、左の4群はWuhan-Hu-1 isolateに対する替代性中和抗体力価であり、右の4群は501Y.V2系統に対する替代性中和抗体力価)、combo Bは、Wuhan-Hu-1 isolateに対する替代性中和抗体力価が、同じSARS-CoV-2突然変異株(501Y.V2系統)に由来のmRNA組み合わせ(combo A)、S全長単独とRBD単独よりもはるかに高く、combo Bは、501Y.V2系統に対する替代性中和抗体力価がcombo A及びRBD単独の場合と比較して、有意差がなく、S全長単独の場合よりも遥かに高いことが示された。これは、S全長とRBDの組み合わせはS全長単独と比較して、体液免疫の優位性を持ち、しかも、異なるSARS-CoV-2突然変異株に由来のmRNA組み合わせは、体液免疫においては、同じSARS-CoV-2突然変異株に由来のmRNA組み合わせよりも、良好なクロスプロテクション効果を付与することを証明した。
【0134】
CD4+T細胞Th1細胞の免疫応答の検出結果は
図19に示され、CD8+T細胞Th1細胞の免疫応答の検出結果は
図20に示され、その結果、S全長とRBDの組み合わせは、RBD単独の場合と比較して、細胞免疫の優位性を持つ。これも、S全長とRBDの組み合わせの設計はワクチンの使用上優位性があることを検証した。
【0135】
以上は本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本発明は上記実施形態の詳細に限定されるものではなく、本発明の技術的構想を逸脱することなく、本発明の技術的解決手段について様々な変形を行うことができ、これらの簡単な変形は全て本発明の特許範囲に属する。
【0136】
なお、上記の具体的な実施形態に記載の各特定技術的特徴は、矛盾しない限り、任意の適切な方式で組み合わせられてもよく、不要な重複を回避しないように、本発明は各種の可能な組み合わせの形態については、再度説明しない。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、を含む
、mRNA又はmRNA組成物。
【請求項2】
前
記SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、
前記Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列とは、同一のSARS-CoV-2突然変異株又は異なるSARS-CoV-2突然変異株に由来する
、請求項1に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項3】
前記Sタンパク質又はそのバリアントは野生型全長Sタンパク質又は融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質を含
む、請求項
1に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項4】
前記融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質は682RRAR685位突然変異、及び/又は986KV987位突然変異を含む、請求項1に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項5】
前記野生型全長Sタンパク質は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列と70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記融合前立体構造として固定化された全長Sタンパク質は、SEQ ID NO:2、SEQ若しくはID NO:15のアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:2若しくは15と70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項6】
前記Sタンパク質又はそのバリアントは、シグナルペプチドを含まず、野生型Sタンパク質のシグナルペプチドを含むか、又は野生型Sタンパク質のシグナルペプチドを含むとともに、そのシグナルペプチドの前に強いシグナルペプチドを含む、請求項1に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項7】
前記RBDは、SEQ ID NO:3若しくはSEQ ID NO:13のアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:3若しくは13と70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項8】
前記RBD又はそのバリアントは、シグナルペプチドを含まず、野生型Sタンパク質のシグナルペプチドを含むか、又は野生型Sタンパク質のシグナルペプチドを含むとともに、そのシグナルペプチドの前に強いシグナルペプチドを含む、請求項1に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項9】
前記SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列と、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列とは、個別の2本のmRNA配列又は1本に連結されたmRNA配列である、請求項1に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項10】
1本に連結されたmRNA配列では、5’から3’への連結順序は、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列にSタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列が続くか、又は、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列にSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列が続く、請求項9に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項11】
前記mRNAは従来のmRNA、自己増幅型mRNA又はトランス増幅型mRNAである、請求項1に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項12】
SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列及びSタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列からなるmRNA配列を含み、該mRNA配列が、
A)5’キャップ構造、5’非コード領域、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
B)5’キャップ構造、5’非コード領域、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
C)5’キャップ構造、5’非コード領域、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、内部リボソーム進入部位(IRES)、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
D)5’キャップ構造、5’非コード領域、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
E)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
F)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
G)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素、及びポリアデニル酸テールからなる配列、並びに
H)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素、及びポリアデニル酸テールからなる配列、
のいずれかから選択される、請求項1に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項13】
2本のmRNA配列の組み合わせを含み、前記2本のmRNA配列が、
a)5’キャップ構造、5’非コード領域、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、
b)5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’保存配列要素、RNA複製酵素コード領域、サブゲノムプロモータ、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、
c)5’キャップ構造、5’保存配列要素、サブゲノムプロモータ、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、RNA複製酵素コード領域、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、
d)5’キャップ構造、5’保存配列要素、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、IRES、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、RNA複製酵素コード領域、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、
e)5’キャップ構造、5’保存配列要素、サブゲノムプロモータ、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、RNA複製酵素コード領域、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、並びに
f)5’キャップ構造、5’保存配列要素、サブゲノムプロモータ、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNA配列、SARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNA配列、3’保存配列要素及びポリアデニル酸テールからなるmRNAと、5’キャップ構造、5’非コード領域、RNA複製酵素コード領域、3’非コード領域及びポリアデニル酸テールからなるmRNAとの組み合わせ、
のいずれかから選択される、請求項1に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項14】
前記RNA複製酵素コード領域はαウイルス、小RNAウイルス、フラビウイルス、パラミクソウイルス及びカリシウイルスから選択される、請求項13に記載のmRNA又はmRNA組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物を含む、mRNAワクチン。
【請求項16】
前記mRNAワクチン中のSARS-CoV-2のSタンパク質又はそのバリアントをコードするmRNAと、Sタンパク質中のRBD又はそのバリアントをコードするmRNAとの質量比が(1~5):(1~5)である、請求項15に記載のmRNAワクチン。
【請求項17】
前記mRNAワクチンが、リポソーム、脂質複合体又は脂質ナノ粒子である、請求項15に記載のmRNAワクチン。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物、又は請求項15~17のいずれか1項に記載のmRNAワクチンの使用であって、前記使用は、
A)SARS-CoV-2感染に起因する疾患を予防及び/又は治療する医薬品の調製における使用、又は、
B)抗SARS-CoV-2感染薬の調製における使用を含み、
好ましくは、前記SARS-CoV-2感染に起因する疾患はCOVID-19である、使用。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物、又は請求項15~17のいずれか1項に記載のmRNAワクチンを個体に投与することを含む、抗体をスクリーニングするための方法。
【請求項20】
請求項1~14のいずれか1項に記載のmRNA又はmRNA組成物、又は請求項15~17のいずれか1項に記載のmRNAワクチンを個体に投与することを含む、個体の中和抗原特異的免疫応答を誘導するための方法。
【国際調査報告】