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特表2023-525965αエノラーゼ抗体を含む薬物複合体及びこれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(54)【発明の名称】αエノラーゼ抗体を含む薬物複合体及びこれらの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230613BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230613BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20230613BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20230613BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230613BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 C
A61K39/395 P
A61K39/395 L
A61K47/68
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P29/00
A61P37/02
A61P35/00
A61P25/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P1/04
A61P17/00
A61P37/06
A61P11/00
A61P37/08
A61P17/06
A61P3/10
A61P9/10 101
A61P19/10
A61P31/12
A61P13/12
A61P35/02
A61P1/16
A61P13/08
A61P15/00
A61P1/18
A61P13/10
A61P13/02
A61P1/02
A61P11/02
A61P11/04
A61P35/04
A61K51/10 100
C07K16/40 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563173
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 CN2021092811
(87)【国際公開番号】W WO2021228044
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/022,702
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522405691
【氏名又は名称】フニライフ バイオテクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ユアン タ-トゥン
(72)【発明者】
【氏名】チェン チ-クアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン マオ-リン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA12
4C084AA17
4C084NA10
4C084ZA011
4C084ZA341
4C084ZA451
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA671
4C084ZA681
4C084ZA751
4C084ZA891
4C084ZA961
4C084ZA971
4C084ZB071
4C084ZB081
4C084ZB111
4C084ZB131
4C084ZB151
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB331
4C084ZC351
4C084ZC411
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA25
4C085CC23
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA70
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA10
4H045FA74
(57)【要約】
免疫複合体は、抗ENO1抗体又はこれらの結合フラグメント、及び治療薬又は標識を含み、式:Ab-(L-D)mを有し、式中、Abは抗ENO1抗体又はこれらの結合フラグメントであり、Lはリンカー又は直接結合であり、Dは治療薬又は標識であり、mは1~12の整数である。抗体は、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体であり得るモノクローナル抗体であり得る。炎症性疾患、免疫障害、又は癌を治療する方法は、そのような治療を必要とする被験者に、ENO1に対する抗体、又はこれらの結合フラグメント、及び抗体と共有結合した治療薬を含む免疫複合体の薬学的有効量を投与することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ENO1に特異的に結合する免疫複合体であって、
一般式:Ab-(L-D)m(I)を含み、
式中、Abは抗ENO1抗体又はこれらの結合フラグメントであり、Lはリンカー又は直接結合であり、Dは治療薬又は標識であり、及びmは1~12の整数である
免疫複合体。
【請求項2】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項3】
前記抗体が、マウス抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はこれらの抗体フラグメントである、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項4】
前記治療薬が、細胞毒性剤、免疫調節剤、放射性同位元素、及び毒素を含む、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項5】
前記細胞毒性剤が、メイタンシノイド1(DM1)、メイタンシノイド4(DM4)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、アントラサイクリン、ピロロベンゾジアゼピン、α-アマニチン、ツブリシン、ベンゾジアゼピン、エルロチニブ、ボルテゾミブ、フルベストラント、スニチニブ、レトロゾール、メシル酸イマチニブ、PTK787/ZK222584、オキサリプラチン、ロイコボリン、ラパマイシン、ラパチニブ、ロナファルニブ、ソラフェニブ、ゲフィチニブ、AG1478、AG1571、アルキル化剤、例えばチオテパ又はシクロホスファミド;スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファン、又はピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、又はウレドパ;エチレンイミン及びメチルアメラミン、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロメラミン;アセトゲニン;カンプトテシン;ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065;クリプトフィシン;ドラスタチン;デュオカルマイシン;エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、又はウラシルマスタード;ニトロスレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、又はラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質、例えばカリチアマイシン、特にカリチアマイシンガンマ1I及びカリチアマイシンオメガI1;ジネミシン、例えばジネミシンA;ビスホスホネート、例えばクロドロネート;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発光団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えばフォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えばメイタンシン及びアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;多糖類複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド;シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、パクリタキセル、アルブミン結合型のパクリタキセルのナノ粒子製剤、及びドセタキセル;クロランブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;カペシタビン;並びに上記いずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体を含む、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項6】
前記標識が、診断又はイメージング試薬を含む、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項7】
前記抗体が、
HCDR1(GYTFTSCVMN;配列番号1)、
HCDR2(YINPYNDGTKYNEKFKG;配列番号2)、及び
HCDR3(EGFYYGNFDN;配列番号3)
を含む3つの相補領域を有する重鎖可変ドメイン;並びに
LCDR1(RASENIYSYLT;配列番号4)、
LCDR2(NAKTLPE;配列番号5)、及び
LCDR3(QHHYGTPYT;配列番号6)
を含む3つの相補領域を有する軽鎖可変ドメイン
を含む、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項8】
前記抗体が、
HCDR1(GYTFTSXVMN、ここでXはシステイン以外の任意のアミノ酸;配列番号7)、
HCDR2(YINPYNDGTKYNEKFKG;配列番号2)、及び
HCDR3(EGFYYGNFDN;配列番号3)
を含む3つの相補領域を有する重鎖可変ドメイン;並びに
LCDR1(RASENIYSYLT;配列番号4)、
LCDR2(NAKTLPE;配列番号5)、及び
LCDR3(QHHYGTPYT;配列番号6)
を含む3つの相補領域を有する軽鎖可変ドメイン
を含む、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項9】
ENO1を発現する診断若しくはイメージング細胞又は組織のための組成物であって、請求項6に記載の免疫複合体を含む組成物。
【請求項10】
炎症性疾患、免疫障害、又はENO1発現癌の治療に使用するための医薬組成物であって、請求項1~5のうちいずれか一項に記載の免疫複合体を含む医薬組成物。
【請求項11】
前記抗体が、
HCDR1(GYTFTSCVMN;配列番号1)、
HCDR2(YINPYNDGTKYNEKFKG;配列番号2)、及び
HCDR3(EGFYYGNFDN;配列番号3)
を含む3つの相補領域を有する重鎖可変ドメイン、並びに
LCDR1(RASENIYSYLT;配列番号4)、
LCDR2(NAKTLPE;配列番号5)、及び
LCDR3(QHHYGTPYT;配列番号6)
を含む3つの相補領域を有する軽鎖可変ドメイン
を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記抗体が、
HCDR1(GYTFTSXVMN、ここでXはシステイン以外の任意のアミノ酸;配列番号7)、
HCDR2(YINPYNDGTKYNEKFKG;配列番号2)、及び
HCDR3(EGFYYGNFDN;配列番号3)
を含む3つの相補領域を有する重鎖可変ドメイン、並びに
LCDR1(RASENIYSYLT;配列番号4)、
LCDR2(NAKTLPE;配列番号5)、及び
LCDR3(QHHYGTPYT;配列番号6)
を含む3つの相補領域を有する軽鎖可変ドメイン
を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記炎症性疾患又は前記免疫障害が、多発性硬化症、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、非アルコール性脂肪性肝炎、喘息、アレルギー、乾癬、乾癬性関節炎、1型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症、全身性硬化症、ウイルス性肺炎、又はマクロファージ活性化症候群を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記癌が、白血病、多発性骨髄腫、胃癌種、皮膚癌、肺癌、メラノーマ、腎臓癌、肝臓癌、骨髄腫、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、胃腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、血液癌、リンパ腫、白血病、皮膚癌、卵巣癌、膀胱癌、尿路上皮癌、頭頸部癌、又は前記癌の転移巣を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項15】
炎症性疾患、免疫障害、又は癌を治療する方法であって、必要とする被験者に、請求項1~8のうちいずれか一項に記載の免疫複合体、又は請求項10~14のうちいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項16】
炎症性疾患、免疫障害、又はENO1発現癌を治療する薬剤を製造するための、請求項1~8のうちいずれか一項に記載の免疫複合体、又は請求項10~14のうちいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月11日に出願された米国仮特許出願第63/022,702号の利益を主張するものであり、同出願は全ての目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、抗ヒトαエノラーゼタンパク質(ENO1)抗体を含む抗体薬物複合体、及び治療におけるこれらの使用に関する。また本発明は、抗ENO1 ADCを被験者に投与することによって、炎症性疾患若しくは免疫障害を治療する方法、又は腫瘍増殖及び転移を抑制する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
抗体薬物複合体(ADC)は癌などの様々な疾患や状態を治療する標的療法を実現できる。ADCは細胞毒性剤又は細胞毒性薬などの生物活性剤が抗体に結合した複合分子である。抗体薬物複合体は、抗体独自の標的指向性と薬物の治療効果とを組み合わせることによって正常な細胞と癌細胞を区別することができ、それにより副作用を最小限に抑える。ADCは通常、マーカー、例えば腫瘍マーカーを特異的に標的とする抗体と結合した細胞毒性薬(例えば、チューブリン阻害剤又はDNAアルキル化剤)を含む。抗体は体内でこれらのタンパク質を突き止め、癌細胞の表面に付着する。抗体と標的タンパク質(抗原)が結合すると腫瘍細胞の信号が作動し、これによりADCが細胞内に移行する。ADCが細胞内に移行すると、細胞毒性薬が放出され、癌細胞を殺し得る。特異的標的指向性があるため、薬剤の副作用は減少する。
αエノラーゼ(エノラーゼ1、ENO1)は解糖系の主要酵素として最初に発見された多機能タンパク質である。通常の条件下では、ENO1はサイトゾルで発現する。しかしながら、ENO1は多くの癌細胞表面でプラスミノーゲン受容体として、並びに好中球、リンパ球、及び単球などの活性化造血細胞上で発現することもわかっている。プラスミノーゲン受容体タンパク質の上方制御は、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化系のカスケード反応を引き起こすことがあり、細胞外基質分解をもたらすことが知られている。その結果、癌細胞の転移や免疫細胞の浸潤が増加する。炎症刺激、例えばLPSは、翻訳後の修飾と細胞表面への移動によって、ヒト血液単球及びU937単核球細胞上のENO1細胞表面発現を上方制御する。
ENO1の移動はMAPキナーゼのシグナル伝達系によって制御されていると考えられている。これは、細胞表面のENO1発現の増加が、炎症性疾患において重要な役割を果たし得ることを示唆している。ENO1に対する自己抗体は、エリテマトーデス、全身性硬化症、ベーチェット病、潰瘍性疾患、及びクローン病など様々な自己免疫疾患や炎症性疾患で認められている。ENO1は、そのプラスミノーゲン受容体活性により、単球やマクロファージの浸潤活性を高めることによって、関節リウマチの疾患進行に重要な役割を果たすことが知られている。
要するに、細胞表面でのプラスミノーゲン受容体としてのENO1発現が上方制御され、浸潤活性が高まった単球は、多発性硬化症、関節リウマチ、及び関連免疫障害の疾患進行に非常に重要となる。従って、単球の細胞表面のENO1を標的とすることは、多発性硬化症、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、及び全身性エリテマトーデスなどの炎症性疾患、又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アレルギー、乾癬、1型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、及び骨粗鬆症などの関連免疫障害の治療に有効な可能性がある。
更に、プラスミノーゲン受容体としてENO1が癌細胞表面に発現することによって、癌細胞の浸潤活性が高まる可能性がある。従って、ENO1も癌治療の潜在的な標的である。
ENO1に対する抗体は有益であるものの、引き続き抗ENO1 ADCを用いた治療薬を改良する必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ENO1抗体を含む抗体薬物複合体、及び治療におけるこれらの使用に関する。
本発明の一態様は、免疫複合体に関する。本発明の一実施形態による免疫複合体は、抗ENO1抗体又はこれらの結合フラグメント、及び治療薬又は標識を含み、式:Ab-(L-D)mを有し、式中、Abは抗ENO1抗体又はこれらの結合フラグメントであり、Lはリンカー又は直接結合であり、Dは治療薬又は標識であり、mは1~12の整数である。
本発明の任意の実施形態に従って、Abは、HCDR1(GYTFTSCVMN;配列番号1)、HCDR2(YINPYNDGTKYNEKFKG;配列番号2)、及びHCDR3(EGFYYGNFDN;配列番号3)を含む3つの相補領域を有する重鎖可変ドメインと、LCDR1(RASENIYSYLT;配列番号4)、LCDR2(NAKTLPE;配列番号5)、及びLCDR3(QHHYGTPYT;配列番号6)を含む3つの相補領域を有する軽鎖可変ドメインとを含み得る。
本発明の任意の実施形態に従って、Abは、HCDR1(GYTFTSXVMN、ここでXはシステイン以外の任意のアミノ酸;配列番号7)、HCDR2(YINPYNDGTKYNEKFKG;配列番号2)、及びHCDR3(EGFYYGNFDN;配列番号3)を含む3つの相補領域を有する重鎖可変ドメインと、LCDR1(RASENIYSYLT;配列番号4)、LCDR2(NAKTLPE;配列番号5)、及びLCDR3(QHHYGTPYT;配列番号6)を含む3つの相補領域を有する軽鎖可変ドメインとを含み得る。
リンカーであるLは、ペイロードであるDと、抗体又はこれらの結合フラグメントとを直接つなぐ(結合させる)直接結合であってよい。リンカーは、短ペプチド(例えば、val-cit)、短い有機分子リンカー(例えば、SMCC、スクシンイミジル-4(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)などのような、タンパク質修飾又は結合で一般に使用される任意のリンカーであってよい。
ペイロードであるDは、細胞毒性剤などの治療薬であってよい。本発明の実施形態で使用し得る細胞毒性剤の例に、メイタンシノイド(例えば、DM1又はDM4)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、パクリタキセルなどがあり得る。
ペイロードであるDは、診断又はイメージングの標識又は薬剤であってよい。造影剤の例に、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)又はDOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)があり得る。
【0005】
本発明のいくつかの実施形態に従って、抗体は、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体であり得るモノクローナル抗体であり得る。
本発明の一態様は、ENO1を発現する細胞又は組織を診断又はイメージングする方法に関する。本発明の一実施形態による方法は、被験者に上述の免疫複合体を投与することを含み得る。
本発明の特定の実施形態に従って、ヒトENO1タンパク質関連疾患又は障害は、ヒトENO1タンパク質の異常活性化又は発現から生じる任意の状態であり得る。このような疾患の例として、ヒトENO1タンパク質がそのリガンドと異常に相互作用し、それによって細胞接着性又は細胞シグナル伝達性が変化する場合がある。このような細胞接着性又は細胞シグナル伝達性の変化は、腫瘍性疾患及び/又は炎症性若しくは免疫性疾患を引き起こす可能性がある。
本発明の一態様は、多発性硬化症、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデスなどの炎症性疾患若しくは免疫障害、又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、非アルコール性脂肪性肝炎、喘息、アレルギー、乾癬、乾癬性関節炎、1型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症、全身性硬化症、ウイルス性肺炎、若しくはマクロファージ活性化症候群などの関連免疫障害を治療する方法に関する。
本発明の一態様は、癌を治療する方法に関する。本発明の一実施形態による方法は、癌治療を必要とする被験者に、薬学的有効量の上述の免疫複合体を投与することを含み得る。癌は、肺癌、乳癌、膵癌、肝癌、結腸直腸癌、及び前立腺癌などENO1を高発現する癌である。
当業者は、薬学的有効量が、患者の状態、年齢、病態、投与経路など様々な因子によって異なること、またそのような有効量は、過度の実験なしに日常業務においてこれらの因子に基づいて決定し得ることを理解するであろう。
本発明の他の態様は、以下の説明で明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】HuL001-SMCC-DM1のPLRP-HPLC結果を示すグラフ。実施例7に、結合反応が実質的に完了し、抗ENO1抗体及びADCの残量のみが残ったことを記述する。
図2】HuL001-SPP-DM4のPLRP-HPLC結果を示すグラフ。実施例7に、結合反応が実質的に完了し、抗ENO1抗体及びADCの残量のみが残ったことを記述する。
図3】HuL001-mal-vc-MMAEのHIC結果を示すグラフ。実施例7に、結合反応が実質的に完了し、抗ENO1抗体及びADCの残量のみが残ったことを記述する。
図4】HuL001-Ph-MMAFのPLRP-HPLC結果を示すグラフ。実施例7に、結合反応が実質的に完了し、抗ENO1抗体及びADCの残量のみが残ったことを記述する。
図5】HuL001-mal-vc-ステロイドのHIC結果を示すグラフ。実施例7に、結合反応が実質的に完了し、抗ENO1抗体及びADCの残量のみが残ったことを記述する。
図6】HuL001-SMCC-DM1のLC/MS結果を示すグラフ。詳細は実施例8に記述する。
図7】HuL001-SPP-DM4のLC/MS結果を示すグラフ。詳細は実施例8に記述する。
図8】HuL001-mal-vc-MMAEのLC/MS結果を示すグラフ。詳細は実施例8に記述する。
図9】HuL001-Ph-MMAFのLC/MS結果を示すグラフ。詳細は実施例8に記述する。
図10】HuL001-mal-vc-ステロイドのLC/MS結果を示すグラフ。詳細は実施例8に記述する。
図11】LPS刺激性B細胞癌細胞株DHL-4におけるHuL001-SPP-DM4のin vitro細胞毒性結果を示すグラフ。詳細は実施例9に記述する。
図12】LPS刺激にかかわらず、単離された正常なヒトB細胞にHuL001-SMCC-DM1の検出可能なin vitro細胞毒性が存在しないことを示すグラフ。詳細は実施例9に記述する。
図13】LPS刺激にかかわらず、単離された正常なヒトB細胞にHuL001-mal-vc-MMAEの検出可能なin vitro細胞毒性が存在しないことを示すグラフ。詳細は実施例9に記述する。
図14】LPS処理ヒト単球細胞株THP-1におけるTNF-α及びCCL2分泌について、HuL001と比較した、HuL001-mal-vc-ステロイドの優れた抗炎症作用を示すグラフ。詳細は実施例10に記述する。
図15】PC-3異種移植前立腺癌モデルにおけるHuL001-SMCC-DM1のin vivo有効性を示す。HuL001-SMCC-DM1を用いた治療は、溶媒対照群と比べて腫瘍増殖を阻害できた。詳細な手順は実施例11に記載するように実施した。
図16】C57BL/6 EAE疾患モデルにおけるHuL001-SMCC-DM1のin vivo有効性を示すグラフ。HuL001-SMCC-DM1を用いた治療は、PBS対照群、更にCOPAXONE(登録商標)群と比べて、EAEマウスの疾患症状の進行を遅らせることができた。詳細な手順は実施例12に記載するように実施した。
図17】C57BL/6ブレオマイシン誘発肺線維症疾患モデルにおけるHuL001-SMCC-DM1のin vivo有効性を示すグラフ。HuL001-SMCC-DM1を用いた治療は、ブレオマイシン治療群と比べて、肺線維症マウスの体重減少及び肺質量増加を減弱できた。詳細な手順は実施例13に記載するように実施した。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一般的定義
本発明の実施では、別段の指示がない限り、当該技術分野の範囲内である分子生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来技術を用いる。このような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989);DNA Cloning,Volumes I and II(D.N.Glover ed.,1985);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,Vols.154 and 155(Wu et al.eds.)、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Antibodies:A Laboratory Manual,by Harlow and Lane s(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988);及びHandbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986)を参照のこと。
【0008】
用語「抗体」及び「免疫グロブリン」は、広義で同じ意味で用いられ、モノクローナル抗体(例えば、全長又はインタクトモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、一価抗体、多価抗体、多特異性抗体(例えば、所望の生物活性を示す限りにおいて二重特異性抗体)を含み、また特定の抗体フラグメント(本明細書で更に詳しく説明する)も含み得る。抗体は、キメラ、ヒト、ヒト化、及び/又は親和性成熟抗体であってよい。
用語「可変」は、可変ドメインの一定の部分が、抗体間で配列が広範囲に異なり、特定の抗原に対する各特定の抗体の結合や特異性に用いられることを指す。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメイン全体に均一に分布しているわけではない。軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの両方で、相補性決定領域(CDR)又は超可変領域と呼ばれる3つの区域に集中している。可変ドメインのより高度に保存されている部分はフレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、3つのCDRによって接続された、大部分がβシート構成を取る4つのFR領域からなり、CDRは、βシート構造を接続する、また場合によってはその一部を形成するループを形成する。各鎖のCDRはFR領域によって互いに近接して保持され、もう一方の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接的には関与しないが、抗体依存性細胞毒性への抗体の関与など、種々なエフェクター機能を呈する。
【0009】
抗体は全長であってよい、又はFab、F(ab’)2、Fab’、F(ab)’、Fv、短鎖Fv(scFv)、二価scFv(bi-scFv)、三価scFv(tri-scFv)、Fd、dAbフラグメント(例えば、Ward et al,Nature,341:544-546(1989))、CDR、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、線状抗体、短鎖抗体分子、及び抗体フラグメントから形成された多特異性抗体を含むがこれらに限定されない、抗原結合部分を有する抗体のフラグメント(又は複数のフラグメント)を含んでよい。組換え方法、又は合成リンカーを用いて抗体フラグメントを連結して産生した短鎖抗体も本発明に包含される(Bird et al.Science,1988,242:423-426.Huston et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1988,85:5879-5883)。
参照抗体によって産生された抗体の可変重鎖領域及び可変軽鎖領域と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%相同である可変重鎖領域及び可変軽鎖領域を有し、且つENO1と結合もできる抗体。相同性は、アミノ酸又はヌクレオチド配列レベルのいずれかに存在することが可能である。
用語「Kabatにおける可変ドメイン残基番号付け」又は「Kabatにおけるアミノ酸位置番号付け」及びこれらの変形は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)において抗体収集の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに用いられる番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用することで、実際の直鎖アミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはHVRの短縮、又はこれへの挿入に対応する、より少ない又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(Kabatでは残基52a)及び重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、Kabatでは残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。残基のKabat番号付けは、抗体の配列と、「標準的な」Kabat番号付け配列とを相同領域で整列させることによって、所定の抗体について決定し得る。
【0010】
「癌」及び「癌性」は、一般に、制御されていない細胞成長/増殖を特徴とする哺乳類の生理的状態を指す、又は説明するものである。癌の例に、癌腫、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、及び白血病があるがこれらに限定されない。このような癌のより具体的な例に、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝細胞癌、白血病などのリンパ増殖性障害、及び各種頭頸部癌がある。
本明細書で使用する「治療」は、治療される個体又は細胞の自然な経過を変えるための臨床的介入を指し、予防のため、又は臨床病理の経過中に行うことができる。治療の望ましい効果に、疾患の発生又は再発の防止、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的結果の軽減、炎症及び/又は組織/器官損傷の防止又は低減、疾患進行速度の低下、疾患状態の回復又は緩和、並びに寛解又は予後の改善がある。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、疾患又は障害の発症を遅延させるために使用される。
「個体」又は「被験者」は脊椎動物である。特定の実施形態では、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物には、家畜(ウシ等)、競技用動物、ペット(ネコ、イヌ、ウマ等)、霊長類、マウス、及びラットなどがいるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、脊椎動物はヒトである。
【0011】
「有効量」は、所望の治療又は予防の結果を得るために必要な投与量及び期間において有効な量を指す。
本発明の物質/分子の「治療上有効な量」は、個体の病態、年齢、性別、及び体重、並びに個体で所望の反応を引き出す物質/分子の能力などの要因によって変化し得る。治療上有効な量とは、物質/分子の治療上有益な作用が、毒性又は有害な作用を上回る量のことでもある。「予防的に有効な量」は、所望の予防的結果を得るために必要な投与量及び期間において有効な量を指す。必ずではないが、通常、予防的用量は疾患の発症前又は初期段階に被験者に使用されるため、予防的に有効な量は、治療上有効な量よりも少なくなる。
本明細書で使用する用語「治療薬」は、細胞の機能を阻害若しくは阻止する、及び/又は細胞破壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射性同位元素(例えば、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、60C、並びにルテチウム177、ストロンチウム89、及びサマリウム(153Sm)の放射性同位元素)、免疫調節剤、細胞毒性剤、並びに細菌、真菌、植物、若しくは動物由来の低分子毒素又は酵素活性毒素などの毒素(これらの合成類似体及び誘導体を含む)を含むことを意図する。
【0012】
「細胞毒性剤」は癌の治療に有用な化合物である。化学療法薬の例に、メイタンシノイド1(DM1)、メイタンシノイド4(DM4)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、アントラサイクリン、ピロロベンゾジアゼピン、α-アマニチン、ツブリシン、ベンゾジアゼピン、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millenium Pharm.)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、Astrazeneca)、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、PTK787/ZK222584(Novartis)、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、ロイコボリン、ラパマイシン(Sirolimus、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、GlaxoSmithKline)、ロナファルニブ(SARASAR(登録商標)、SCH66336)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、BAY43-9006、Bayer Labs.)、及びゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、Astrazeneca)、AG1478、AG1571(SU5271;Sugen)、アルキル化剤、例えばチオテパ及びCYTOXAN(登録商標)、シクロホスファミド;スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、及びウレドパ;エチレンイミン及びメチルアメラミン(methylamelamine)、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロメラミン;アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体のトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビセレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体のKW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロスレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えばカリチアマイシン、特にカリチアマイシンガンマ1I及びカリチアマイシンオメガI1(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.(1994)33:183-186);ジネミシン、例えばジネミシンA;ビスホスホネート、例えばクロドロネート;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えばフォリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えばメイタンシン及びアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products、オレゴン州ユージーン);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン(特に、T-2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology、ニュージャージー州プリンストン)、ABRAXANE(登録商標)アルブミン結合型のパクリタキセルのクレモフォール無添加のナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、イリノイ州シャンバーグ)、及びTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(doxetaxel)(Rhone-Poulenc Rorer、フランス、アントニー);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;カペシタビン(ゼローダ(登録商標)、Roche);並びに上記いずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体がある。
【0013】
例示的なADCリンカー
ADCのための好適な例示的リンカーは、例えば、米国特許第7,595,292号明細書(国際公開第2005/007197号)に記載されている。リンカーに関する内容全体が、ここに参照により本明細書に援用される。リンカー(L)は、ジスルフィド基を含まない1つ又は複数の共有結合を介して抗体を薬物部分につなぐ。リンカーは、1つ又は複数の治療薬又は標識(D)と抗体ユニット(Ab)を結合させて式(I)の抗体薬物複合体(ADC)を形成するのに使用できる二官能基又は多官能基である。抗体薬物複合体(ADC)は、薬物と抗体に結合するための反応官能性を有するリンカーを用いて簡便に調製できる。抗体(Ab)のシステインチオール又はアミン、例えばリジンなどのN-末端又はアミノ酸側鎖は、リンカー試薬、薬物部分、又は薬物-リンカー試薬の官能基との結合を形成できる。
リンカーは、好ましくは細胞外で安定している。細胞内に輸送又は送達されるまで、抗体薬物複合体(ADC)は、好ましくは完全な形で安定している、即ち抗体が薬物部分に結合した状態を保っている。リンカーは標的細胞外で安定しており、細胞内である程度の有効な速度で切断され得る。有効なリンカーは:(i)抗体の特異的な結合特性を維持する;(ii)複合体又は薬物部分の細胞内送達を可能にする;(iii)安定性と完全性を保つ、即ち複合体が標的部位に送達又は輸送されるまで切断されない;並びに(iv)治療薬又は標識部分の細胞毒性、殺細胞作用、又は細胞静止作用を維持する。ADCの安定性は質量分析、HPLC、分離/分析技術LC/MSなどの標準的な分析技術によって測定し得る。
【0014】
抗体と治療薬又は標識部分との共有結合には、リンカーが2つの反応性官能基を持つこと、即ち反応性という意味で二価であることが必要となる。ペプチド、核酸、薬物、毒素、抗体、ハプテン、及びレポーター基などの2つ以上の官能基又は生物活性部分を結合するのに有益な二価リンカー試薬が知られており、複合体を得る方法が記述されている(Hermanson,G.T.(1996)Bioconjugate Techniques;Academic Press:New York,p234-242)。
通常、抗体薬物複合体化合物は、治療薬又は標識ユニットと抗体ユニットの間にリンカーユニットを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは細胞内条件下で切断可能であり、リンカーの切断によって細胞内環境で抗体から薬物ユニットが放出される。更に他の実施形態では、リンカーユニットは切断不可能であり、例えば、抗体の分解によって薬物が放出される。
いくつかの実施形態では、リンカーは細胞内環境(例えば、リソソーム又はエンドソーム又はカベオラ(caveolea)内)に存在する切断剤によって切断できる。リンカーは、例えば、リソソーム又はエンドソームプロテアーゼを含むがこれらに限定されない細胞内ペプチダーゼ又はプロテアーゼ酵素によって切断されるペプチジルリンカーであってよい。いくつかの実施形態では、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長又は少なくとも3アミノ酸長である。切断剤は、カテプシンB及びD、並びにプラスミンを含んでよく、これらは全て、ジペプチド薬物誘導体を加水分解して標的細胞内で活性薬物を放出することが知られている(例えば、Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67-123参照)。最も一般的なのは、158P1D7発現細胞に存在する酵素によって切断可能なペプチジルリンカーである。例えば、癌組織中で高度に発現しているチオール依存性プロテアーゼカテプシンBによって切断可能なペプチジルリンカーが使用できる(例えば、Phe-Leu又はGly-Phe-Leu-Glyリンカー)。そのようなリンカーの他の例は、例えば、米国特許第6,214,345号明細書に記載されており、同明細書は参照によりその全体が全ての目的のために本明細書に援用される。特定の実施形態では、細胞内プロテアーゼによって切断可能なペプチジルリンカーは、Val-Citリンカー又はPhe-Lysリンカーである(例えば、val-citリンカーを用いたドキソルビシンの合成について記載している米国特許第6,214,345号明細書参照)。治療薬の細胞内タンパク質分解放出を使用する利点の1つは、薬剤は結合すると通常減弱し、且つ複合体の血清安定性が通常高いことである。
【0015】
他の実施形態では、切断可能なリンカーはpH感受性がある、即ち特定のpH値で加水分解しやすい。通常、pH感受性リンカーは、酸性条件下で加水分解性である。例えば、リソソーム(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シス-アコニットアミド、オルトエステル、アセタール、ケタール等)中で加水分解性である酸不安定性リンカーを使用できる(例えば、米国特許第5,122,368号明細書;米国特許第5,824,805号明細書;米国特許第5,622,929号明細書;Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67-123;Neville et al.,1989,Biol.Chem.264:14653-14661参照)。そのようなリンカーは、血液中などの中性pH条件下で比較的安定しているが、リソソームのおおよそのpHであるpH5.5又は5.0未満では不安定である。特定の実施形態では、加水分解性リンカーはチオエーテルリンカーである(例えば、アシルヒドラゾン結合を介して治療薬に結合したチオエーテル(例えば、米国特許第5,622,929号明細書参照))。更に他の実施形態では、リンカーは還元条件下で切断可能である(例えばジスルフィドリンカー)。当該技術分野では様々なジスルフィドリンカーが知られており、例えば、SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオ酢酸)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)酪酸)、並びにSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン)、SPDB及びSMPTを用いて形成できるものがある(例えば、Thorpe et al.,1987,Cancer Res.47:5924-5931;Wawrzynczak et al.,In Immunoconjugates:Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer,C.W.Vogel ed.,Oxford U.Press,1987参照。更に米国特許第4,880,935号明細書参照)。
更に他の特定の実施形態では、リンカーはマロン酸リンカー(Johnson et al.,1995,Anticancer Res.15:1387-93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lau et al.,1995,Bioorg-Med-Chem.3(10):1299-1304)、又は3’-N-アミド類似体(Lau et al.,1995,Bioorg-Med-Chem.3(10):1305-12)である。更に他の実施形態では、リンカーユニットは切断不可能であり、抗体の分解によって薬物が放出される(米国特許出願公開第2005/0238649号明細書参照。同明細書は参照によりその全体が全ての目的のために本明細書に援用される)。
【0016】
通常、リンカーは細胞外環境に対して実質的に感受性がない。本明細書でリンカーの文脈において使用する「細胞外環境に対して実質的に感受性がない」という文言は、抗体薬物複合体化合物が細胞外環境(例えば血漿中)に存在する場合に、抗体薬物複合体化合物試料中のリンカーの約20%以下、典型的には約15%以下、より典型的には約10%以下、及び更により典型的には約5%以下、約3%以下、又は約1%以下が切断されることを意味する。リンカーが細胞外環境に対して実質的に感受性がないかどうかは、例えば、抗体薬物複合体化合物を血漿と共に所定の時間(例えば、2、4、8、16、又は24時間)インキュベートし、次いで血漿中に存在する遊離薬物の量を定量化することによって決定できる。
他の相互排他的でない実施形態では、リンカーは細胞内移行を促進する。特定の実施形態では、リンカーは治療薬に結合すると(即ち、本明細書に記載する抗体薬物複合体化合物のリンカー-治療薬部分の環境において)、細胞内移行を促進する。
本発明の構成及び方法と共に使用できる様々な例示的なリンカーが、国際公開第2004-010957号、米国特許出願公開第2006/0074008号明細書、米国特許出願公開第20050238649号明細書、及び米国特許出願公開第2006/0024317号明細書に記載されている(いずれの明細書も、参照によりその全体が全ての目的のために本明細書に援用される)。
【0017】
本発明の実施形態は、ENO1抗体を含む抗体薬物複合体、及び治療におけるこれらの使用に関する。ENO1は多機能タンパク質であり、多くの癌細胞表面でプラスミノーゲン受容体として、並びに好中球、リンパ球、及び単球などの活性化造血細胞上で発現することがわかっている。従って、ENO1に対する抗体をベースとするADCは、有用な診断薬及び/又は治療薬であり得る。
しかしながら、治療抗体の迅速な細胞内移行又はADCC活性の欠如によって、抗体が無効になり耐性が生じる可能性がある。そのため、抗ENO1をベースとする治療法の治療効果を強化する必要がある。手法の1つが、ペイロードと抗ENO1抗体(即ち抗体薬物複合体)を結合させることである。抗ENO1抗体をペイロードと結合させること(即ちADC)によって、本発明の実施形態は裸の抗ENO1抗体よりも強力になり、それにより使用する抗体を減らすことができる。
本発明の実施形態に従って、抗ENO1抗体又はこれらの結合フラグメントは、薬物、診断薬、又は治療薬に結合させ得る。従って、本明細書で使用する用語「抗体薬物複合体」(ADC)は、ペイロード(薬物、診断薬、又は治療薬であってよい)と結合した抗体部分(抗体全体又はその結合フラグメントであってよい)を指し得る。
本発明のADCは、治療又は診断用途に設計されたペイロードを含む。これらのADCは、より良好な生物活性を有し、裸の抗ENO1抗体と比べて少ない量で所望の効果を達成できるであろう。
本発明の実施形態を、以下に特定の実施形態に従って説明する。当業者であれば、これらの実施例は説明のみを目的とするものであり、本発明の範囲を逸脱することなく他の修正及び変形が可能であることを理解するであろう。
【実施例
【0018】
別段の記載がない限り、1H NMRデータはそれぞれ500MHzで得た。本明細書では、特に指定のない限り、以下の略語を使用する。Bu:ブチル;Bn:ベンジル;BOC:t-ブチルオキシカルボニル;BOP:ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリ/ジメチルアミノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスファート;DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド;DMF:N,N-ジメチルホルムアミド;DMAP:4-ジメチルアミノピリジン;EDC:1-(3-ジメチルアミノプロピル)3-エチルカルボジイミド塩酸塩;EtOAc:酢酸エチル;Eq.:当量;HOBt:ヒドロキシベンゾトリアゾール(hydroxybenztriazole);LAH:水素化アルミニウムリチウム;MeOH:メタノール;MHz:メガヘルツ;MS(ES):質量分析計(エレクトロスプレー);NMP:N-メチルピロリジノン;Ph:フェニル;Pr:プロピル;TEA:トリエチルアミン;THF:テトラヒドロフラン(tetrahdrofuran);TLC:薄層クロマトグラフィー;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム。
【0019】
実施例1
抗ENO1抗体の調製
本発明の実施形態に従って、抗ENO1抗体を作製する一般的な方法は、ENO1に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることを含む。モノクローナル抗体を産生する方法は当該技術分野において知られており、本明細書には詳述しない。簡単に説明すると、マウスを適切なアジュバントと共に抗原(ENO1)に曝露する。次いで、免疫マウスの脾臓細胞を収集して、ハイブリドーマと融合させた。陽性クローンは、ELISAなど既知の方法を用いて、ENO1抗原を結合させる能力を確認し得る。一実施形態では、抗ENO1抗体はHuL001である。例示的な抗体HuL001は米国特許出願公開第2019/0322762号明細書に記載されており、同明細書の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
請求項に係る発明の抗体薬物複合体(ADC)は、特異的にENO1を標的とすることができる。これらのADCは、ENO1に特異的に結合する任意の抗体を使用できる。例えば、請求項に係る発明のADCは、マウス若しくはヒト化抗ENO1抗体、又はこれらのscFv若しくはFabフラグメントを使用し得る。例示的な抗ENO1抗体、例えばHuL001は、HCDR1(GYTFTSCVMN;配列番号1)、HCDR2(YINPYNDGTKYNEKFKG;配列番号2)、及びHCDR3(EGFYYGNFDN;配列番号3)を含む3つの相補領域を有する重鎖可変ドメイン、並びにLCDR1(RASENIYSYLT;配列番号4)、LCDR2(NAKTLPE;配列番号5)、及びLCDR3(QHHYGTPYT;配列番号6)を含む3つの相補領域を有する軽鎖可変ドメインを含み得る。別の例示的な抗ENO1抗体は、HCDR1(GYTFTSXVMN、ここでXはシステイン以外の任意のアミノ酸;配列番号7)、HCDR2(YINPYNDGTKYNEKFKG;配列番号2)、及びHCDR3(EGFYYGNFDN;配列番号3)を含む3つの相補領域を有する重鎖可変ドメイン、並びにLCDR1(RASENIYSYLT;配列番号4)、LCDR2(NAKTLPE;配列番号5)、及びLCDR3(QHHYGTPYT;配列番号6)を含む3つの相補領域を有する軽鎖可変ドメインを含み得る。
本発明の実施形態に従って、抗体はマウス抗体であり得る。別法として、抗体はキメラ抗体(例えば、ヒト抗体の定常領域をマウス抗体の可変領域に連結したもの)又はヒト化抗体(例えば、マウスのCDRをヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域に移植したもの)又は完全にヒト抗体であり得る。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマからCDR配列を取得し、CDR配列をヒトフレームワーク配列にクローニングしてヒト化抗体を産生することによってヒト化できる。CDR配列の同定には、当該技術分野で既知の任意の一般的な方法を使用し得る。本発明におけるCDRの領域は、Kabat番号スキームを用いて同定される。まず、抗ENO1のハイブリドーマ(例えばマウスハイブリドーマ)を作製した。そのようなハイブリドーマは、モノクローナル抗体を産生するための標準的な手順を用いて作製し得る。次いで、ハイブリドーマの全RNAを、例えばTRIzol(登録商標)試薬を用いて単離した。次に、例えば、第1鎖cDNA合成キット(Superscript III)及びオリゴ(dT20)プライマー又はIg-3’定常領域プライマーを用いて、全RNAからcDNAを合成した。
続いて、免疫グロブリン遺伝子の重鎖可変及び軽鎖可変領域をcDNAからクローニングした。例えば、抗ENO1 mAbのVH及びVL可変領域は、マウスIg-5’プライマーセット(Novagen)を用いて、PCRによってマウスハイブリドーマcDNAから増幅した。PCR生成物は、CloneJet(登録商標)PCRクローニングキット(Ferments)を用いて、好適なベクター(例えばpJET1.2ベクター)に直接クローニングし得る。pJET1.2ベクターは致死性挿入物を含んでおり、この致死性領域に所望の遺伝子をクローニングした場合のみ、選択条件下で生存できる。これにより、組換えコロニーの選択が容易になる。最後に、組換えコロニーをスクリーニングして所望のクローンを得て、それらのクローンのDNAを単離し、配列を決定した。免疫グロブリン(IG)のヌクレオチド配列は、国際的なImMunoGeneTics情報システム(IGMT)のウェブサイトで解析し得る。
【0020】
抗体の発現と精製
抗体産生のために、任意の好適な細胞内で単離したクローンを発現させ得る。一例として、プラスミドを発現する抗ENO1 mAbでF293細胞(Life technologies)をトランスフェクトし、7日間培養した。抗ENO1抗体はタンパク質Aアフィニティカラム(GE)を用いて培地から精製した。タンパク質濃度はBio-Radタンパク質アッセイキットで決定し得、当該技術分野で既知の手順を用いて、又は製造業者の指示に従って、12%SDS-PAGEで分析した。
本発明の実施形態に従って、これらの抗ENO1抗体のいずれかを使用して、以下の実施例で説明するように、抗体薬物複合体(ADC)を調製し得る。
【0021】
実施例2
HuL001-SMCC-DM1複合体の調製
【化1】
本実施例では、ADCは、癌治療のために開発されたメイタンシノイドであるDM1を含む。ベンゾアンサマクロライドであるメイタンシンは、有糸分裂停止を誘導し、ナノモル以下の濃度で腫瘍細胞を死滅させる非常に強力な微小管標的化合物である。DM1は微小管の先端に結合し、微小管の動的性(dynamicity)を抑制する、即ち微小管の集合を阻害する。DM1は、メイタンシンよりも全身毒性が低いメイタンシノイドである。本実施例では、DM1に反応性リンカーSMCCが結合したSMCC-DM1を用いて抗体と反応させ、抗体薬物複合体を作製する。SMCC-DM1は、MedKoo Biosciences,Inc.又はALB Technologyなどから市販されている。
例えば、HuL001の緩衝液(70mg)をpH6.5のクエン酸ナトリウム緩衝液に交換し、5mg/mLに調整した。SMCC-DM1の溶液(DMA中5mM、16eq)をHuL001溶液にゆっくり添加した。反応混合液を37℃の振とうインキュベーター(150rpm)で18時間インキュベートした。NMWLが30kDaのAmicon Ultra-15遠心分離フィルターとpH6.5の25mMクエン酸ナトリウムを使用して、HuL001-SMCC-DM1の濃縮とSMCC-DM1の除去を行った。ADC濃度:5.478mg/mL、ADC収量:16.5mg(23.5%)、平均DAR:3.87。
【0022】
実施例3
HuL001-SPP-DM4複合体の調製
【化2】
本実施例では、ADCは別のメイタンシン類似体であるDM4を含む。DM4も、有糸分裂時に細胞の増殖を阻害する強力な微小管標的化合物である。本発明のいくつかの実施形態ではDM4を使用し得る。
本実施例では、HuL001の緩衝液(70mg)をpH6.5のクエン酸ナトリウム緩衝液に交換し、5mg/mLに調整した。SPP-DM4の溶液(DMA中10mM、15eq)をHuL001溶液にゆっくり添加した。反応混合液を37℃の振とうインキュベーター(150rpm)で18時間インキュベートした。NMWLが30kDaのAmicon Ultra-15遠心分離フィルターとpH6.5の25mMクエン酸ナトリウムを使用して、HuL001-SPP-DM4の濃縮とSPP-DM4の除去を行った。ADC濃度:3.65mg/mL、ADC収量:34.3mg(49%)、平均DAR:3.18。
【0023】
実施例4
HuL001-mal-vc-MMAE複合体の調製
【化3】
モノメチルアウリスタチンE(MMAE)は、チューブリンの重合を阻止することによって細胞分裂を阻害する抗悪性腫瘍薬である。海洋性無殻軟体動物で発生するペプチドに由来する(ドラスタチン)。MMAEはADCの有益なペイロードであることが示されている。
ADCのリンカーは生物活性に大きな影響をもたらし得る。例えば、in vivo試験では、ペプチド結合複合体が、60倍もの治療指数で定着腫瘍異種移植の退縮と治癒をもたらしたことが実証された。これらの複合体は、安全且つ有効な癌治療用mAb薬物複合体の開発におけるリンカー技術、薬効、及び結合方法の重要性を示している。
本発明のいくつかの実施形態は、ADCの有効性を向上させることが示されている、リソソームで切断可能なジペプチドであるバリン-シトルリン(vc)を介して抗体に結合したMMAEに関する。本実施例では、HuL001の緩衝液(1mg)をpH7.4のPBS/EDTA緩衝液に交換し、5mg/mLに調整した。TCEPの水溶液(10mM、3eq)をHuL001溶液にゆっくり添加した。37℃で2時間インキュベートして、抗体のジスルフィド結合を還元した。次いでmal-PEG2-vc-PAB-MMAEの溶液(DMA中10mM、10eq)をタンパク質溶液にゆっくり添加した。反応混合液を25℃の振とうインキュベーター(150rpm)で2時間インキュベートした。次いで、100mM NAC(20eq)を使用して、余分なmal-vc-ステロイドをクエンチした。NMWLが10kDaのAmicon Ultra-15遠心分離フィルターと緩衝液(pH6.0PBS、137mM NaCl)を使用して、HuL001-mal-vc-MMAEの濃縮とmal-PEG2-vc-PAB-MMAEの除去を行った。ADC濃度:3.7mg/mL、ADC収量:0.481mg(48.1%)、平均DAR:3.64。
【0024】
実施例5
HuL001-Ph-MMAF複合体の調製
【化4】
本発明のいくつかの実施形態は、MMAEの類似体であるモノメチルアウリスタチンF(MMAF)を含むADCに関する。HuL001の緩衝液(37mg)をpH7.4のPBS緩衝液に交換し、5mg/mLに調整した。OSu-ph-MMAFの溶液(DMA中5mM、5eq)をタンパク質溶液にゆっくり添加した。反応混合液を37℃の振とうインキュベーター(150rpm)で1時間インキュベートした。NMWLが30kDaのAmicon Ultra-15遠心分離フィルターとpH6.5の25mMクエン酸ナトリウムを使用して、HuL001-ph-MMAFの濃縮とOSu-ph-MMAFの除去を行った。ADC濃度:7.8mg/mL、ADC収量:34.1mg(92.1%)、平均DAR:3.09。
【0025】
実施例6
HuL001-mal-vc-ステロイド複合体の調製
【化5】
本実施例では、HuL001(1mg)の緩衝液をpH7.4のPBS/EDTA緩衝液に交換し、10mg/mLに調整した。TCEPの水溶液(10mM、4eq)をタンパク質溶液にゆっくり添加した。37℃で1.5時間インキュベートして、抗体のジスルフィド結合を還元した。次いで、mal-vc-ステロイドの溶液(DMSO中10mM、10eq)をタンパク質溶液にゆっくり添加した。反応混合液を0℃の振とうインキュベーター(150rpm)で18時間インキュベートした。次いで、100mM NAC(20eq)を使用して、余分なmal-vc-ステロイドをクエンチした。NMWLが30kDaのAmicon Ultra-15遠心分離フィルターと緩衝液(pH6.0PBS、137mM NaCl)を使用して、HuL001-mal-vc-ステロイドの濃縮とmal-vc-ステロイドの除去を行った。ADC濃度:2.2mg/mL、ADC収量:0.33mg(33%)、平均DAR:5.2。
【0026】
実施例7
PLRP-HPLC又はHIC分析
請求項に係る発明の実施形態による様々なADCをPLRP-HPLC又はHICで分析した。図1~5は、結合反応が実質的に完了し、抗ENO1抗体及びADCの残量のみが残ったことを示している。
【0027】
実施例8
インタクト又は還元LC/MS分析
薬物抗体比(DAR)の評価は、標的抗体に対するペイロード結合効率を監視するために重要である。薬物抗体比は抗ENO1 ADC生成物の治療効果に影響を及ぼし得る。インタクト液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)は、リジン結合抗体-薬物複合体(ADC)の薬物抗体比(DAR)及び薬物負荷分布を決定するのに選択される方法である。還元LC-MSは、システイン結合ADCのDAR及び薬物負荷分布を決定するのに選択される方法である。ピーク面積百分率は、特定の薬物負荷ADC種の相対分布を表す。次に、ピーク面積百分率情報と薬物負荷数を用いて加重平均DARを算出する。
図5~10は、請求項に係る発明の実施形態によるADC(抗ENO1 ADC)のLC-MS分析の例を表す。これは、抗体に結合している薬剤の数の分布を示し、最も多い種は1~12の薬物が抗体に結合している。これらの実施例における平均薬物抗体比(DAR)の範囲は3.18~5.2である。1つの抗体に複数の薬剤が結合していれば、細胞内により効率的に薬剤を送達できる。
【0028】
実施例9
細胞毒性アッセイ
抗ENO1 ADC生成物のサイトカイン誘導細胞毒性効果は、リンパ腫、肺癌、乳癌、膵臓癌、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を含む様々なヒト癌に由来するENO1依存性細胞株で示されている。様々な細胞株、例えば、U937、A549、MDA-MB-231、MCF-7、MBA-MD-453、MBA-MD-175、PANC-1、Raji、SU-DHL-4、Toledo、GA-10、又はHTは、それぞれサイトカインTGF-β、MCP-1、又はIL-6によって4時間活性化させて炎症性腫瘍の微小環境を模倣し、連続希釈抗体溶液を用いて更に72時間インキュベートした。細胞生存率は細胞計数(CCK-8)キットを用いて測定し、IC50値を算出した。試験した細胞におけるHuL001のIC50は、試験した最高濃度(1000nM)を上回っている。結果から、抗ENO1 ADC生成物は、様々な細胞株のサイトカイン誘導(20ng/mL TGF-β、100ng/mL MCP-1、50ng/mL IL-6)炎症促進性表面ENO1を特異的に抑制することが示された。表1及び表2は、大部分の細胞株において、HuL001-SMCC-DM1及びHuL001-mal-vc-MMAEのIC50が、活性化後、細胞毒性効果を反映し、単一デジタルレベルまで劇的に低下したことを示している。図11は、DLBCL細胞株DHL-4におけるIC50が単一デジタルレベルのHuL001-SPP-DM4を示す。図12及び図13は、LPS刺激の存在下又は不在下で単離された正常なヒトB細胞において、HuL001又はHuL001-SMCC-DM1のいずれかとHuL001-mal-vc-MMAEの検出可能なin vitro細胞毒性が存在しないことを示す。要約すると、本開示によるADCは、特にサイトカイン刺激に対し、正常な細胞の生存率に影響を及ぼすことなく、癌細胞を効果的に殺す。これは標的癌治療の有力候補と考えられる。
【表1】

【表2】
【0029】
実施例10
サイトカインアッセイ
ヒト単球細胞株THP-1において抗ENO1-ステロイドADCの抗炎症作用が示された。THP-1細胞をLPSで刺激し、ENO1の表面発現と炎症促進性サイトカインTNF-α及びCCL2の分泌を誘発した。図14は、抗ENO1抗体と比較した、抗ENO1-ステロイドADCの優れた抗炎症作用を示す。
【0030】
実施例11
抗ENO1 ADCの前立腺癌モデル
実験用去勢抵抗性前立腺癌モデルでHuL001-SMCC-DM1を評価した。4~6週齢の雄ヌード(nu/nu)マウスを使用した(Lasco Co.,Ltd.、台湾)。接種前に、ヒト去勢抵抗性前立腺癌細胞株PC-3細胞をPBSで洗浄し、1:1のPBSとマトリゲルで再懸濁して、終濃度を107細胞/mLとした。細胞(106/100μL)はマウスの右側腹部に皮下移植した。平均腫瘍体積が100mm3に達した後(移植6日後)、マウスを対照群と治療群に無作為に割り付け、溶媒対照のPBS(5mL/kg)又はHuL001-SMCC-DM1(1又は9mg/kg)をそれぞれ投与した。HuL001-SMCC-DM1は、試験終了まで6日間ごとに1回、計2回腹腔内投与した。体重と腫瘍体積の測定は毎日実施した。皮下腫瘍の体積は、次の式に従って決定した。腫瘍体積=短径2×長径/2。腹腔内注射により投与した。図15は、HuL001-SMCC-DM1が体重減少をもたらさずに腫瘍増殖を阻害することを示している。
【0031】
実施例12
抗ENO1 ADCのEAE疾患モデル
ヒト炎症性脱髄性疾患である多発性硬化症の最も一般的に使用される実験モデルであるC57BL/6マウスを用いて、実験用自己免疫性脳脊髄炎(EAE)でHuL001-SMCC-DM1を評価した。10~12週齢の雌C57BL/6マウスに、完全フロイント(Freud’s)アジュバント中の100μgのMOG p35-55を皮下投与し、次いで、100ngの百日咳毒素を腹腔内に注射した。2日目に、もう1度100ngの百日咳毒素を投与した。マウスは毎日観察し、臨床症状を以下のように評価した。0:徴候なし;尾緊張度の低下;2:軽度の不全単麻痺又は不全麻痺;3:重度の不全対麻痺;4:対麻痺及び/又は四肢不全対麻痺(quadparaparesis);5:瀕死又は死亡。マウスは無作為に3群(対照群10匹、COPAXONE(登録商標)(Teva pharmaceuticals)群10匹、HuL001-SMCC-DM1群5匹)に割り付けた。疾患発症日(疾患スコア≧1)を1日目とした。HuL001-SMCC-DM1群のEAEマウスには、1、8、及び15日目に皮下投与を行った。COPAXONE群のEAEマウスには、1日目から18日目までの毎日皮下投与を行った。図16は、HuL001-SMCC-DM1を用いた治療が、PBS対照群、更にCOPAXONE(登録商標)群と比べて、EAEマウスの疾患症状の進行を遅らせることができたことを示している。
【0032】
実施例13
抗ENO1 ADCのIPF疾患モデル
ヒト線維性疾患である特発性肺線維症の最も一般的に使用される実験モデルであるC57BL/6マウスを用いて、ブレオマイシン誘発肺線維症でHuL001-SMCC-DM1を評価した。7~9週齢の雄C57BL/6マウスに、1回用量のブレオマイシン(3mg/kg)を気管内投与した。マウスは無作為に3群(シャム群3匹、ブレオマイシン群6匹、HuL001-SMCC-DM1群6匹)に割り付けた。ブレオマイシンに曝露した日を0日目とした。HuL001-SMCC-DM1群のマウスには、1、8、及び15日目に皮下投与を行った。図17は、HuL001-SMCC-DM1を用いた治療が、ブレオマイシン群と比べて、体重減少及び肺質量増加を減弱できたことを示している。肺のヒドロキシプロリン含有量及び気管支肺胞洗浄液(BALF)中のTGF-β濃度が、HuL001-SMCC-DM1治療によって低下した。
【0033】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語と科学用語、及び任意の略語は、本発明の分野における当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似又は同等の情報を伝達するための任意の組成物、方法、キット、及び手段を本発明の実施に使用することができるが、情報を伝達するための好ましい組成物、方法、キット、及び手段を本明細書に記載する。
本明細書に引用する全ての文献は、法律で認められている最大限の範囲において、参照により本明細書に援用される。これらの文献の考察は、それらの著者によってなされた主張を要約することのみを意図している。任意の文献(又は任意の文献の一部)が関連先行技術であることを認めるものではない。出願人は、引用した文献の正確性及び妥当性に異議を唱える権利を留保する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
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【国際調査報告】