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▶ サンコーク テクノロジー アンド ディベロップメント リミテッド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(54)【発明の名称】高品質コークス製品
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20230613BHJP
【FI】
C01B32/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567031
(86)(22)【出願日】2021-05-03
(85)【翻訳文提出日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 US2021030520
(87)【国際公開番号】W WO2021225988
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/019,405
(32)【優先日】2020-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513028038
【氏名又は名称】サンコーク テクノロジー アンド ディベロップメント リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン フランシス クアンチ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン パーキンス
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA22
4G146AB05
4G146AC01A
4G146AC02A
4G146AC23A
4G146AC27A
4G146AC30A
4G146AD40
4G146CB13
(57)【要約】
最適化された配合炭から、熱回収炉、非回収炉、トムソン炉などの水平炉で製造される高品質なコークス製品。このコークス製品は、細長い形状、改善された反応後コークス強度(CSR)、および改善されたコークス反応度指数(CRI)のような独特の特性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い形状を有するコークスであって、該コークスの長さ:幅の比が、少なくとも1.1、少なくとも1.5、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、少なくとも4.5、少なくとも5.0、少なくとも5.5、少なくとも6.0、少なくとも6.5、少なくとも7.0、少なくとも7.5、少なくとも8.0、少なくとも8.5、少なくとも9.0、少なくとも9.5、または、少なくとも10.0であることを特徴とするコークス。
【請求項2】
長さ:幅の比が、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、少なくとも4.5、少なくとも5.0、少なくとも5.5、または少なくとも6.0であることを特徴とする請求項1記載のコークス。
【請求項3】
長さ:幅の比が少なくとも2.0であることを特徴とする、請求項1または2に記載のコークス。
【請求項4】
長さ:幅の比が少なくとも3.0であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のコークス。
【請求項5】
長さ:幅の比が少なくとも4.0である、請求項1~4のいずれかに記載のコークス。
【請求項6】
長さが、2インチと36インチとの間、3インチと15インチとの間、4インチと12インチとの間、または4インチと10インチとの間であり、幅が、1.5インチと12インチとの間、2インチと8インチとの間、3インチと7インチとの間、2インチと4インチとの間、または4インチと6インチとの間であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のコークス。
【請求項7】
長さが、少なくとも2インチ、少なくとも3インチ、少なくとも4インチ、少なくとも5インチ、少なくとも6インチ、少なくとも7インチ、少なくとも8インチ、少なくとも9インチ、少なくとも10インチ、少なくとも11インチ、少なくとも12インチ、少なくとも13インチ、少なくとも14インチ、少なくとも15インチ、少なくとも16インチ、少なくとも17インチ、少なくとも18インチ、少なくとも19インチ、at20インチ、少なくとも21インチ、少なくとも22インチ、少なくとも23インチ、少なくとも24インチ、少なくとも25インチ、少なくとも26インチ、少なくとも27インチ、少なくとも28インチ、少なくとも29インチ、少なくとも30インチ、少なくとも31インチ、少なくとも32インチ、少なくとも33インチ、少なくとも34インチ、少なくとも35インチ、または、少なくとも36インチであることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のコークス。
【請求項8】
幅が、少なくとも1.5インチ、少なくとも2インチ、少なくとも3インチ、少なくとも4インチ、少なくとも5インチ、少なくとも6インチ、少なくとも7インチ、少なくとも8インチ、少なくとも9インチ、少なくとも10インチ、少なくとも11インチ、少なくとも12インチ、少なくとも13インチ、少なくとも14インチ、少なくとも15インチ、少なくとも16インチ、少なくとも17インチ、少なくとも18インチであることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のコークス。
【請求項9】
単一の製造工程または単一の炉から製造されるコークス製品の集団であって、
少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも80%、少なくとも80%のコークス製品が細長い形状を有し、前記細長い形状は、
2インチと36インチとの間、3インチと15インチとの間、4インチと12インチとの間、または4インチと10インチとの間の長さ、ならびに、1.5インチと12インチの間、2インチと8インチの間、3インチと7インチの間、2インチと4インチの間、または4インチと6インチの間の幅、または、
少なくとも1.1、少なくとも1.5、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、少なくとも4.5、少なくとも5.0、少なくとも5.5、少なくとも6.0、少なくとも6.5、少なくとも7.0、少なくとも7.5、少なくとも8.0、少なくとも8.5、少なくとも9.0、少なくとも9.5、または、少なくとも10.0である長さ:幅の比
を有することを特徴とするコークス製品の集団。
【請求項10】
コークス製品が水平炉によって製造されることを特徴とする、請求項9に記載のコークス製品の集団。
【請求項11】
単一の製造工程または単一の炉から製造されるコークス製品の集団であって、
少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%のコークス製品が細長い形状を有し、前記細長い形状は、
2インチと36インチとの間、3インチと15インチとの間、4インチと12インチとの間、または4インチと10インチとの間の長さ、ならびに、1.5インチと12インチとの間、2インチと8インチとの間、3インチと7インチとの間、2インチと4インチとの間、または4インチと6インチとの間の幅、または、
少なくとも1.1、少なくとも1.5、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.5、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、少なくとも4.5、少なくとも5.0、少なくとも5.5、少なくとも6.0、少なくとも6.5、少なくとも7.0、少なくとも7.5、少なくとも8.0、少なくとも8.5、少なくとも9.0、少なくとも9.5または少なくとも10.0である長さ:幅の比
を有することを特徴とするコークス製品の集団。
【請求項12】
コークスの実直径よりも大きな水力直径(Dh)を有するコークスであって、前記コークスは、20%と45%との間の反応性指数(CRI)、および5%と60%との間の反応後のコークス強度(CSR)を有することを特徴とする、コークス。
【請求項13】
Dhが、少なくとも2インチ、少なくとも2.5インチ、少なくとも3インチ、少なくとも3.5インチ、少なくとも4インチ、少なくとも4.5インチ、少なくとも5インチ、少なくとも5.5インチ、少なくとも6インチ、少なくとも6.5インチ、少なくとも7インチ、少なくとも7.5インチ、少なくとも8インチ、少なくとも8.5インチ、少なくとも9インチ、少なくとも9.5インチ、少なくとも10インチ、少なくとも10.5インチ、少なくとも11インチ、少なくとも11.5インチ、少なくとも12インチ、少なくとも12.5インチ、少なくとも13インチ、少なくとも13.5インチ、少なくとも14インチ、少なくとも14.5インチ、少なくとも15インチ、少なくとも15.5インチ、少なくとも16インチ、少なくとも16.5インチ、少なくとも17インチ、少なくとも17.5インチ、または、少なくとも18インチであることを特徴とする請求項12に記載のコークス。
【請求項14】
CRIが、40%未満、25%と40%との間、または31%と37%との間であることを特徴とする、請求項12または13に記載のコークス。
【請求項15】
CSRが、5%と50%との間、または15%と40%との間であることを特徴とする、請求項12から14のいずれかに記載のコークス。
【請求項16】
CRIが25%と40%との間であり、CSRが15%と50%との間であることを特徴とする、請求項12から15のいずれかに記載のコークス。
【請求項17】
落下粉砕試験において少なくとも4インチの寸法を有する出発材料を使用した場合に、処理済みコークスは、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の4インチ落下粉砕度を有することを特徴とする、請求項12から16のいずれかに記載のコークス。
【請求項18】
落下粉砕試験において少なくとも4インチの寸法を有する出発材料を使用した場合に、処理済みコークスが、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の2インチ落下粉砕度を有することを特徴とする、請求項12から17のいずれかに記載のコークス。
【請求項19】
落下粉砕試験において少なくとも4インチの寸法を有する出発材料を使用した場合に、前処理済みコークスが、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の4インチ落下粉砕度を有することを特徴とする、請求項12から18のいずれかに記載のコークス。
【請求項20】
落下粉砕試験において少なくとも4インチの寸法を有する出発材料を使用した場合に、前処理済みコークスが、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の2インチ落下粉砕度を有することを特徴とする、請求項12から19のいずれかに記載のコークス。
【請求項21】
少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の固定炭素量を有することを特徴とする、請求項12から20のいずれかに記載のコークス。
【請求項22】
5%と12%との間、10%未満、9.5%未満、8%未満、7.5%未満、または7%未満の灰分、ならびに、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、または0.5%の硫黄含有量を有することを特徴とする、請求項12から21のいずれかに記載のコークス。
【請求項23】
1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、または0.5%未満の硫黄含有量を有することを特徴とする、請求項12から22のいずれかに記載のコークス。
【請求項24】
2%未満、1%未満、または0.4%と1%との間、または0.5%と0.3%との間の揮発性物質(VM)含有量を有することを特徴とする、請求項12から23のいずれかに記載のコークス。
【請求項25】
15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、または1%と10%との間の水分含有量を有することを特徴とする、請求項12から24のいずれかに記載のコークス。
【請求項26】
灰色または淡灰色を有することを特徴とする、請求項12から25のいずれかに記載のコークス。
【請求項27】
コークスが水平炉で製造される、請求項12から26のいずれかに記載のコークス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱回収炉、非回収炉、トンプソン(Thompson)炉などの水平炉を含む炉で製造される、独特の特性を有する高品質のコークス製品に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、参照によりその全体が本明細書の一部をなすものとする、2020年5月3日に出願された米国特許仮出願第63/019,405号の優先権を主張する。
【0003】
コークスは、鉄鋼の生産において鉄鉱石を溶融および還元するために使用される固体炭素燃料および炭素源である。鋳物用コークスは、非常に大きな寸法(通常は直径4インチ以上)を有し、ならびに、非常に少ない不純物の含有量、かつ、非常に高い炭素含有量、非常に高い強度、非常に高い安定性のような非常に優れた品質を有するコークスである。鋳物用コークスは、鋳造用キュポラで鉄を溶融し、鋳鉄製品およびダクタイル鋳鉄製品を製造するために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鋳物用コークスの製造コスト(製造コスト、輸送コストおよび環境コストを含む)は高い。したがって、当技術分野では、製造プロセスを改善し、それによって、より高い歩留まりおよび/またはより低コストで、高品質の鋳物用コークスを得ることの必要性が存在する。本発明は、多くの独特かつ改善された特性を有する高品質の鋳物用コークスを提供することにより、この必要性を満たすものである。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】10重量%の粉コークスとともに製造されるHD+(商標)鋳物用コークスの形状、大きさ、色を市販の鋳物用コークスと比較した図である。市販鋳物用コークス1は、米国で従来の副産物工場で製造されており、8.5インチ×11インチの紙の上に示されている。市販鋳物用コークス2は、非常に高い密度を有し、外国でスタンプチャージ式の副産物工場で製造されており、8.5インチ×11インチの紙の上に示されている。
図2】5重量%の粉コークス配合量(ダイヤモンド)および8.5重量%の粉コークス配合量(丸)とともに得られるHD+(商標)鋳物用コークスのCSRおよびCRIを、文献(Diez et al., International Journal of Coal Geology 50: 389-412 (2002))から得られる通常の製司コークス(Met Coke)(正方形)のCSRとCRIと比較した図である。
図3A】均一な寸法(10インチ×10インチ)のコークス片に関する充填試験のシミュレーション結果を示す図である。
図3B】均一な寸法(4インチ×10インチ)のコークス片に関する充填試験のシミュレーション結果を示す図である。
図3C】ランダムな寸法のコークス片に関する充填試験のシミュレーション結果を示す図である。
図4】キュポラの充填試験のシミュレーションの確率的性質に由来する繰り返し実行による変動性を示す図である。
図5】水力半径の計算の例、およびその計算結果のユーザー出力の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本願は、少なくとも1枚のカラー図面を含む。カラー図面を含む本願の写しは、請求と必要な費用の支払いに応じて事務局から提供される。
【0007】
本明細書において、高品質のHD+(商標)コークス製品、特に、独特の特性を有するHD+(商標)鋳物用コークスを開示する。コークス化工程では、種々のサイズのコークスを種々の分率で生産する。慣用的には、コークス製品は実質的に球状の形状を有し、寸法に基づいて以下のように分類される:直径4インチより大きい寸法を有する鋳物用コークス、2~4インチの寸法を有するエッグ(egg、産業用コークス)、1~2インチまたは1~1.5インチのサイズを有するストーブ(stove)、3/8~1インチのサイズを有するナット(nut)、および3/8インチ未満のサイズを有する粉コークス(breeze)。本開示の態様において、本明細書に開示されるHD+(商標)コークス製品は、熱回収炉、非回収炉、またはトンプソン炉などの水平炉において、特定比率の不活性物質または粉コークスを含む所定の石炭ブレンドを用いる独自のコークス化プロセスによって製造される。HD+(商標)コークス製品は、種々の分類をすることができる。1つの例では、HD+(商標)コークス製品は、3.5インチ超の水力直径を有するHD+(商標)鋳物用コークス、1.5~3.5インチの水力直径を有するHD+(商標)エッグコークス、0.5~1.5インチの水力直径を有するHD+(商標)粉コークス、0.5インチ未満のサイズを有するHD+(商標)廃棄微粉を含む。HD+(商標)粉コークスの全ては3/8インチ以下に破砕し、コークス化プロセス用の混合炭にリサイクルすることができるが、廃棄微粉は、潜在的な燃焼損失および高灰分に起因して熱回収の問題を提起するおそれがある。そのため、コークス化プロセスに応じて、一部または全ての廃棄微粉はリサイクルされる。HD+(商標)エッグコークスは、追加の粉コークス配合量が必要な場合のみリサイクルされるが、大抵の場合、HD+(商標)エッグコークスは販売され、テンサイ生産およびミネラルウールまたはロックウール生産に使用される。
【0008】
特定の実施形態において、本明細書は、市販の鋳物用コークス(実質的に球状の形状および少なくとも4インチの直径を有する)と区別できる形状を有するHD+(商標)コークスを開示する。慣用の球状の黒色鋳物用コークスとは異なり、本明細書に開示されるHD+(商標)鋳物用コークスは、図1に示すような細長い「指状の形状」を有する。特定の実施形態において、本明細書に開示されるHD+(商標)コークスは、灰色または淡灰色を有する。
【0009】
特定の実施形態において、HD+(商標)鋳物用コークスは、大きなアスペクト比(幅に対する長さの比)を有する。たとえば、HD+(商標)鋳物用コークスは、2インチおよび36インチの間、3インチおよび15インチの間、4インチおよび12インチの間、または4インチおよび10インチの間の長さと、1.5インチおよび12インチの間、2インチおよび8インチの間、3インチおよび7インチの間、2インチおよび4インチの間、または4インチおよび6インチの間の幅を有する。いくつかの実施形態において、HD+(商標)鋳物用コークスは、少なくとも2インチ、少なくとも3インチ、少なくとも4インチ、少なくとも5インチ、少なくとも6インチ、少なくとも7インチ、少なくとも8インチ、少なくとも9インチ、少なくとも10インチ、少なくとも11インチ、少なくとも12インチ、少なくとも13インチ、少なくとも14インチ、少なくとも15インチ、少なくとも16インチ、少なくとも17インチ、少なくとも18インチ、少なくとも19インチ、少なくとも20インチ、少なくとも21インチ、少なくとも22インチ、少なくとも23インチ、少なくとも24インチ、少なくとも25インチ、少なくとも26インチ、少なくとも27インチ、少なくとも28インチ、少なくとも29インチ、少なくとも30インチ、少なくとも31インチ、少なくとも32インチ、少なくとも33インチ、少なくとも34インチ、少なくとも35インチ、または、少なくとも36インチの長さを有してもよい。いくつかの実施形態では、HD+(商標)鋳物用コークスは、少なくとも1.5インチ、少なくとも2インチ、少なくとも3インチ、少なくとも4インチ、少なくとも5インチ、少なくとも6インチ、少なくとも7インチ、少なくとも8インチ、少なくとも9インチ、少なくとも10インチ、少なくとも11インチ、少なくとも12インチ、少なくとも13インチ、少なくとも14インチ、少なくとも15インチ、少なくとも16インチ、少なくとも17インチ、少なくとも18インチの幅を有する。特定の実施形態において、HD+(商標)鋳物用コークスは、少なくとも1.1、少なくとも1.5、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、少なくとも4.5、少なくとも5.0、少なくとも5.5、少なくとも6.0、少なくとも6.5、少なくとも7.0、少なくとも7.5、少なくとも8.0、少なくとも8.5、少なくとも9.0、少なくとも9.5、または少なくとも10.0の、長さ:幅の比を有する。いくつかの実施形態において、HD+(商標)鋳物用コークスは、少なくとも2.0、少なくとも3.0、または少なくとも4.0の長さ:幅の比を有する。
【0010】
特定の実施形態において、HD+(商標)鋳物用コークスは、独自のプロセスにより、熱回収炉、非回収炉、またはトンプソン炉などの水平炉で製造される。特定の実施形態では、単一の製造工程または単一の炉からのコークスの総量の少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%が、上記の長さ、幅および長さ:幅の比の範囲内に収まる。特定の実施形態では、単一の生産工程または単一の炉からの全鋳物用コークスの少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%が、上記の長さ、幅および長さ:幅の比の範囲内に収まる。
【0011】
特定の実施形態では、HD+(商標)鋳物用コークスは、その実直径または有効直径よりも大きな水力直径(Dh)を有する。一方、慣用の円形状の鋳物用コークスは、実直径と実質的に同一であるDhを有する。Dhは、水力半径(Rh)の関数であり、以下の式で定義される。
【0012】
【数1】
【0013】
式中、εbは、コークス床の粒子間空隙率であり、以下の式で計算される。
【0014】
【数2】
【0015】
式中、ρbはコークスのかさ密度であり、ρaはコークスの見かけ密度である。Dpは調和平均粒径である。Dpは、不均一なコークスと同じ表面積:体積比を有する均一なコークスの寸法を表し、以下の式で計算される。
【0016】
【数3】
【0017】
式中、fiは、直径Diを持つコークスの重量分率である。均一な寸法のコークスの場合、Dp=Diである。
【0018】
特定の実施形態において、HD+(商標)鋳物用コークスは、少なくとも2インチ、少なくとも2.5インチ、少なくとも3インチ、少なくとも3.5インチ、少なくとも4インチ、少なくとも4.5インチ、少なくとも5インチ、少なくとも5.5インチ、少なくとも6インチ、少なくとも6.5インチ、少なくとも7インチ、少なくとも7.5インチ、少なくとも8インチ、少なくとも8.5インチ、少なくとも9インチ、少なくとも9.5インチ、少なくとも10インチ、少なくとも10.5インチ、少なくとも11インチ、少なくとも11.5インチ、少なくとも12インチ、少なくとも12.5インチ、少なくとも13インチ、少なくとも13.5インチ、少なくとも14インチ、少なくとも14.5インチ、少なくとも15インチ、少なくとも15.5インチ、少なくとも16インチ、少なくとも16.5インチ、少なくとも17インチ、少なくとも17.5インチ、または、少なくとも18インチの水力直径を有する。特定の実施形態において、HD+(商標)エッグは、1.5インチと3.5インチとの間、または1.5インチと2インチの間の水力直径を有する。
【0019】
コークス反応性指数(CRI)は、2時間にわたる加熱キルン内でのブードワ(Boudouard)反応(CO2+C(コークス)=2CO)後の重量減少の割合を示す。反応後コークス強度(CSR)は、CRIキルン反応後に残存するコークスのタンブル(tumble)強度試験に基づく。キュポラ内の鋳物用コークスの表面で起こるブードワ反応は好ましくない。なぜなら、鉄の溶解から熱を奪い、プロセスの効率を低下させるためである。そのため、ブードワ反応を妨げるのに充分に不活性なコークスにするために、より小さいCRIが望ましい。一方、コークスを不活性として燃焼を妨げるほどに、CRIが低すぎてはならない。図2に示すように、CSRおよびCRIは反比例の関係にある。慣用の鋳物用コークスのCSRは10%から15%であり、このCSRは60%以上の高いCRIと相関する。
【0020】
他に指定されない限り、本明細書に記載される全てのパーセンテージは重量パーセントである。特定の実施形態において、本明細書に開示されるHD+(商標)鋳物用コークスは、5%と60%との間、5%と50%との間、15%と50%との間、または15%と40%との間の範囲のCSRを有する。特定の実施形態において、HD+(商標)コークスは、40%未満、20%と45%との間、25%と40%との間、または31%と37%との間のCRIを有する。コークス化工程中の粉コークス配合量の割合は、HD+(商標)コークスのCSRに影響を与え、図2に示すように、粉コークス配合量が多いほどCSRが低下する。本開示の態様によれば、CSRが著しく増加した場合であっても、CRIは低いままである。本開示の1つの実施形態によれば、本明細書に開示されるHD+(商標)コークスは、25%と40%との間のような低いCRIと、15%と50%との間のような中高域のCSRとの組合せを有する。
【0021】
特定の実施形態において、HD+(商標)エッグコークスは、上記のHD+(商標)鋳物用コークスと同一または実質的に同一のCSRを有する。特定の実施形態において、HD+(商標)エッグコークスは、上記のHD+(商標)鋳物用コークスと同一または実質的に同一のCRIを有する。
【0022】
炉から生産された後、顧客に出荷・配送する前に、HD+(商標)鋳物用コークスの品質管理および選別が行われる。本明細書で使用される場合、用語「前処理済み(pre-processed)」コークス製品は、コークス製品がオーブンから生産されたばかりで、選別、出荷、および顧客への配送の前にあることを意味し、用語「処理済み(processed)」コークス製品は、コークス製品がスクリーニング、出荷および顧客への配送を経たものであることを意味する。特定の実施形態において、業界標準の落下粉砕試験に少なくとも4インチの寸法を有する出発材料を使用した場合に、前処理済みHD+(商標)鋳物用コークスは、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または、少なくとも90%の4インチ落下粉砕度を有する。特定の実施形態において、業界標準の落下粉砕試験に少なくとも4インチの寸法を有する出発材料を使用した場合に、前処理済みHD+(商標)鋳物用コークスは、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の2インチ落下粉砕度を有する。特定の実施形態において、業界標準の落下粉砕試験に少なくとも4インチの寸法を有する出発材料を使用した場合に、処理済みHD+(商標)鋳物用コークスは、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の4インチ落下粉砕度を有する。特定の実施形態では、業界標準の落下粉砕試験に少なくとも4インチの寸法を有する出発材料を使用した場合に、処理済みHD+(商標)鋳物用コークスは、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の2インチ落下粉砕度を有する。
【0023】
特定の実施形態において、HD+(商標)鋳物用コークスは、以下のようなカスタマイズ基準を有する。
5%と12%との間、10%未満、9.5%未満、9%未満、8%未満、7.5%未満、または7%未満の灰分含有量;
1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、または0.5%未満の硫黄含有量;
2%未満、1%未満、0.4%と1%との間、約0.5%、または約0.3%の揮発性物質(VM)含有量;
15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、または1%と10%の間の水分含有量;および
少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の固定炭素量。
【0024】
特定の実施形態において、独自のプロセスによって製造される全コークスは、以下のような寸法分布を有する:HD+(商標)鋳物用コークスは、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%であり;HD+(商標)エッグコークスおよびHD+(商標)粉コークスを含む中寸法コークスは、5%と35%との間、10%と30%との間、または15%と20%との間であり、廃棄微粉は、10%未満、8%未満、または5%未満である。好ましくは、HD+(商標)鋳物用コークスの分率は、製造された全コークスの中で可能な限り高いパーセンテージである。
【0025】
その独特の寸法および形状に起因して、本明細書に開示されるHD+(商標)コークスは、以下の実施例で実証されるような望ましい充填密度を達成する利点を有する。
【実施例
【0026】
(例1:充填試験)
この例では、単純化された2次元ランダム充填モデルによるキュポラ充填のシミュレーションを示す。均一な寸法のコークスと比較して、炉に投入される際に、広い粒度分布を有するコークスは、より大きいかさ密度、より大きな表面積、より低いベッド気孔率を有することが期待される。
【0027】
図3Aは、10インチ×10インチの均一な寸法を有するコークスの2次元シミュレーション充填試験を示す。円は、半径60インチのキュポラの断面を表す。正方形の各々は、一辺が10インチの立方体である鋳物用コークス片を表す。コークス片は、ランダムな位置かつランダムな回転において、順次的に追加を試みた。新しいコークス片が前の片のいずれと重ならなければ当該コークス片を配置し、そうでなければ当該コークス片を廃棄した。重畳は、コークス端の交差によって判断した。このシミュレーションでは、10,000個のコークス片が試され、61個しかフィットしなかった。
【0028】
このモデルの全体的な前提は以下の通りである。(1)コークス片の次の層は、この層の上に重なる、(2)円の外にはみ出したコークス片は些細な誤差として無視する、(3)この断面はキュポラの他の断面と本質的に等価である、(4)コークス充填の相対密度は、円全体の面積に対する正方形の領域の合計の比に比例する、(5)厳密に正確ではないが、相対表面積はコークス片の周辺長の合計にほぼ比例する。
【0029】
10インチ×10インチのコークス片(図3Aに図示)と4インチ×10インチのコークス片(図3Bに図示)のフィッティングの並列の比較において、被覆面積とコークス片の周辺長の合計との比を比較する。10インチ×10インチの片では、58個のコークス片が配置され、その結果、11,309平方インチのキュポラ面積の51%被覆([10×10×58]/11309=51%)、および2,320インチの周辺長の合計(2×[10+10]×58=2320)が得られた。4インチ×10インチのコークス片では、58個のコークス片が配置され、その結果、11,309平方インチのキュポラ面積の49%被覆([4×10×138]/11309=49%)、および3,864インチの周辺長の合計(2×[4+10]×138=3864)が得られた。
【0030】
シミュレーションの次の改良点は、
(1) コークス片の長さおよび幅の変動を、ユーザーが定義した最大値と最小値の間で許容し、各片は、正方形の小端を有すること(すなわちL×W×W)とする、および
(2) コークス片を傾けて、片のより小さい「角」が許容される空間にフィットできるようにする
ことである。傾きの全範囲を許容した場合、シミュレーションは、コークス片が小端上に起立することを優先した。よって、恣意的に、最大傾斜角度を30度に制限した。
【0031】
この仮定に基づいて、図3Cに示すように、種々の寸法のコークスを半径60インチのキュポラにフィッティングした。コークス片は、4インチから10インチの長さ、および3インチから5インチの幅を有し、10,000回のフィッティングを試みた。種々の寸法の片に関して、209個のコークス片が配置され、その結果、11,309平方インチのキュポラ面積の47%被覆(5,365/11,309=47%)、および4,383インチの周辺長の合計が得られた。したがって、図3A図3Cの充填シミュレーションと比較して相対表面積が著しく増加する一方で、充填試験は、コークスの積載密度は大きく変化しないことを実証する。この結果を以下の第1表にまとめる。
【0032】
【表1】
【0033】
図4は、シミュレーションの確率的性質に由来する繰り返し実行による変動性を示す。
【0034】
(例2:水力半径の計算)
測定されたサイズ分布、底部スクリーンカット推定値、ならびに、前述の式を用いるかさ密度に基づいて、Excelのモデルを使用して鋳物用コークスの水力半径を計算した。
【0035】
本発明のコークスは細長い形状であるため、まばらな充填密度、ひいては有効水力半径の増大をもたらす可能性がある。これにより、コークスの表面で起こるCO2およびコークスからCOを形成する反応における潜熱損失を減少させて、鋳造所のキュポラ性能を向上させる。コークス表面積に対する間隙体積の比率の増大は、この要因を補助する。
【0036】
小さなコークスを切り取ることによっても、水力半径を改善できるが、収率を損なう。細長いコークス形状は、キュポラの性能に大きな利点をもたらすことが証明される可能性がある。
【0037】
選別されたコークスのかさ密度、ならびに選別されていないコークスのかさ密度を、同様に測定し、計算に使用することができる。計算結果を図5に示す。
【0038】
以上から、本技術の特定の実施形態を例示のために本明細書に記載したが、本技術の真意および範囲から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが理解されるであろう。さらに、特定の実施形態のコンテクストで説明した新技術の特定の態様は、他の実施形態と組み合わされるか、または排除される可能性がある。さらに、本技術の特定の実施形態のコンテクストにおいてそれら実施形態に関連する利点を説明したが、他の実施形態もその利点を示すことができるが、実施形態が本技術の範囲に入るために必ずしも全ての実施形態がその利点を示す必要はない。したがって、本開示および関連技術は、本明細書において明示的に示されないまたは説明されない他の実施形態を包含することができる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲以外で制限されることはない。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
【国際調査報告】