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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(54)【発明の名称】医薬製剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/47 20060101AFI20230613BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61K31/47
A61K47/32
A61K9/20
A61K9/48
A61P29/00
A61P39/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568553
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 US2021032335
(87)【国際公開番号】W WO2021231792
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/024,193
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】507387033
【氏名又は名称】アルデイラ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ブラディー, トッド
(72)【発明者】
【氏名】ブロックマン, アダム
(72)【発明者】
【氏名】マチャサ, スティーブン ギツ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076DD05F
4C076DD25V
4C076DD29
4C076DD29C
4C076DD38
4C076DD41C
4C076DD43Z
4C076DD55F
4C076DD67
4C076EE07
4C076EE11
4C076EE12
4C076EE16
4C076EE16B
4C076EE31
4C076EE32B
4C076EE32H
4C076EE42H
4C076EE48
4C076EE49
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF09
4C076FF21
4C076FF43
4C076GG09
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086BC28
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA11
4C086ZB11
4C086ZC37
(57)【要約】
本発明は、炎症性疾患、呼吸器疾患、臓器疾患、ウイルス感染、ならびに急性呼吸窮迫症候群などの後遺症および関連状態などの疾患、障害または状態の処置に有用な、キノリン化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、医薬組成物および単位剤形に関する。I-1などのキノリン化合物または薬学的に許容されるその塩を含む単位剤形は、本明細書に記載されているものなどの、疾患、障害または状態を処置するため、改善するため、または予防するため、患者に投与するのに好適である。したがって、一態様では、本発明は、開示されているキノリン化合物または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を含む単位剤形を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)メタクリル酸-メタクリル酸メチルコポリマーおよび化合物I-1
【化37】
または薬学的に許容されるその塩を含む、噴霧乾燥固体分散体、
b)1種またはそれより多種の充填剤、
c)1種またはそれより多種の結合剤、
d)1種またはそれより多種の崩壊剤、
e)1種またはそれより多種の流動促進剤、
f)1種またはそれより多種の滑沢剤、
g)必要に応じて、1種またはそれより多種の界面活性剤、および
h)必要に応じて、1種またはそれより多種の発泡性構成成分
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記1種またはそれより多種の充填剤が、ラクトース、微結晶セルロースおよびマンニトールの組合せ物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記1種またはそれより多種の結合剤が、Kollidon VA64を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記1種またはそれより多種の崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドンまたはそれらの混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記1種またはそれより多種の流動促進剤が、コロイド状二酸化ケイ素、CAB-O-SIL(商標)、ヒュームドシリカ(Aerosil)およびアスベスト不含タルクから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記1種またはそれより多種の滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
a)化合物I-1:
【化38】
または薬学的に許容されるその塩、
b)微結晶セルロース、マンニトールおよびラクトース一水和物のうちの少なくとも1つを含む、1種またはそれより多種の充填剤、
c)Kollidon VA64を含む1種またはそれより多種の結合剤、
d)クロスカルメロースナトリウムおよびクロスポビドンのうちの少なくとも1つを含む1種またはそれより多種の崩壊剤、
e)ヒュームドシリカを含む1種またはそれより多種の流動促進剤、
f)ステアリン酸マグネシウムを含む1種またはそれより多種の滑沢剤、
g)必要に応じて、ラウリル硫酸塩を含む1種またはそれより多種の界面活性剤、および
h)必要に応じて、1種またはそれより多種の発泡性構成成分
を含む、医薬組成物。
【請求項8】
化合物I-1または薬学的に許容されるその塩が、前記医薬組成物中に、Eudragit L100を含む噴霧乾燥固体として存在する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
約15%~約60%w/wの化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
化合物I-1または薬学的に許容されるその塩が、Eudragit L100と混合した噴霧乾燥固体として提供され、約0.9mg~約3.6mgのEudragit L100が、それぞれ1mgのI-1または薬学的に許容されるその塩と混合されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
約1%~20%w/wの前記充填剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
約1%~20%w/wの前記崩壊剤を含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
約2%~約18%w/wの前記結合剤を含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
約0.05%~約2.0%w/wの前記滑沢剤を含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
約0.05%~2.0%w/wの前記流動促進剤を含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
約0.05%~2.0%w/wの前記界面活性剤を含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
約0.05%~2.0%w/wの前記発泡性構成成分を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む単位剤形。
【請求項19】
カプセル剤または錠剤の形態にある、請求項18に記載の単位剤形。
【請求項20】
前記カプセル剤または錠剤が、約5mg~約500mgのI-1または薬学的に許容されるその塩を含む、請求項19に記載の単位剤形。
【請求項21】
20mg、50mg、100mg、200mg、400mg、700mgまたは1200mgの1日用量でヒト対象に経口投与すると、以下に示されている薬物動態結果:
【表23】
を提供する、請求項19に記載の単位剤形。
【請求項22】
約50mg BID、約150mg BID、約350mg BIDまたは約600mg BIDの用量でヒト対象に経口投与すると、以下に示されている薬物動態結果:
【表24】
を提供する、請求項18~21のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項23】
ヒト対象に経口投与すると、前記ヒト対象におけるt1/2が、約3~約8時間である、請求項19に記載の単位剤形。
【請求項24】
ヒト対象に経口投与すると、I-1または薬学的に許容されるその塩の投与された用量の少なくとも70%の経口生体利用率を提供する、請求項19に記載の単位剤形。
【請求項25】
対象における1種またはそれより多種の毒性アルデヒドのレベルを低下させる方法であって、前記対象に、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物、または請求項18~24のいずれか一項に記載の単位剤形を投与するステップを含む、前記方法。
【請求項26】
前記毒性アルデヒドが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、グリオキサール、メチルグリオキサール、ヘキサデカナール、オクタデカナール、ヘキサデセナール、コハク酸セミアルデヒド、マロンジアルデヒド、4-ヒドロキシノネナール、4-ヒドロキシ-2E-ヘキセナール、4-ヒドロキシ-2E,6Z-ドデカジエナール、レチンアルデヒド、ロイコトリエンB4アルデヒドおよびオクタデセナールから選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
化合物I-1が、化合物5:
【化39】
の固体形態であり、前記形態が、形態Aまたは形態Bである、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物または請求項18~24のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項28】
化合物5が、約13.9、約15.8および約24.3度の2シータのピークから選択される1つまたはそれより多くのそのXRPDのピークを有するか、または約13.9、約15.8および約24.3度の2シータのピークから選択される少なくとも2つのそのXRPDのピークを有する、請求項27に記載の医薬組成物または単位剤形。
【請求項29】
化合物5が、約10.2、約17.0および約28.8度の2シータのピークから選択される1つまたはそれより多くのそのXRPDのピークを有するか、または約10.2、約17.0および約28.8度の2シータのピークから選択される少なくとも2つのそのXRPDのピークを有する、請求項27に記載の医薬組成物または単位剤形。
【請求項30】
化合物I-1が、形態Aの化合物A:
【化40】
の固体形態である、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物または請求項18~24のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項31】
化合物Aが、約10.4、約17.5および約20.9度の2シータのピークから選択される2つまたはそれより多くのそのXRPDのピークを有する、請求項30に記載の医薬組成物または単位剤形。
【請求項32】
医薬組成物であって、
(a)前記組成物の約15重量%~約60重量%として、化合物I-1:
【化41】
または薬学的に許容されるその塩、
(b)前記組成物の約27.5重量%~約80重量%として、Eudragitポリマー、
(c)前記組成物の約1.0重量%~約6.0重量%として、マンニトール、ラクトースおよび微結晶セルロースのうちの1つまたはそれより多くを含む、充填剤、
(d)前記組成物の約3.5重量%~約14重量%として、Kollidon(登録商標)結合剤を含む結合剤、
(e)前記組成物の約0.25重量%~約2重量%として、シリカ流動促進剤を含む流動促進剤、
(f)前記組成物の約0.25重量%~約2.0重量%として、ステアリン酸マグネシウムを含む滑沢剤、および
(g)必要に応じて、前記組成物の0重量%~約8.0重量%として、クロスカルメロースナトリウム
を含む、医薬組成物。
【請求項33】
医薬組成物であって、
(a)前記組成物の約25重量%~約40重量%として、化合物I-1:
【化42】
または薬学的に許容されるその塩、
(b)前記組成物の約40重量%~約68重量%として、Eudragitポリマー、
(c)前記組成物の約1.0重量%~約4.0重量%として、マンニトール、ラクトースおよび微結晶セルロースのうちの1つまたはそれより多くを含む、充填剤、
(d)前記組成物の約4.0重量%~約10重量%として、Kollidon(登録商標)結合剤を含む結合剤、
(e)前記組成物の約0.25重量%~約2.0重量%として、シリカ流動促進剤を含む流動促進剤、
(f)前記組成物の約0.25重量%~約2重量%として、ステアリン酸マグネシウムを含む滑沢剤、および
(g)必要に応じて、前記組成物の0重量%~約8.0重量%として、クロスカルメロースナトリウム
を含む、医薬組成物。
【請求項34】
表F、G、H、IおよびJのいずれか1つに記載されている全てまたは実質的に全ての構成成分を含む医薬組成物を含む単位剤形。
【請求項35】
前記単位剤形が、錠剤またはカプセル剤である、請求項32または33に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記単位剤形が、ボトル中粉末の形態である、請求項32または33に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記組成物が、約10mg、約100mg、約250mg、約300mgまたは約600mgの化合物I-1を含む、請求項32~36のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年5月13日出願の米国仮特許出願第63/024,193号の米国特許法第119条(e)の下での利益を主張し、この米国仮特許出願のすべての全内容が、それへの参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、本明細書に記載されているキノリン化合物または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物およびその使用に関する。本発明は、例えば、疾患、障害もしくは状態の処置、予防、改善またはそれらの重症度の軽減における、このような組成物の使用にさらに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
身体における毒性アルデヒド種の蓄積または不適切な処理は、皮膚、肺、眼および全身性状態などの神経学的状態、自己免疫状態および炎症状態の根底にあるか、またはこれらに関連している。細胞における代謝過程および炎症過程は、マロンジアルデヒド(MDA)、4-ヒドロキシル-2-ノネナール(4-HNE)、グリオキサールおよびメチルグリオキサールなどの毒性アルデヒドを生じる。これらのアルデヒドは、タンパク質、炭水化物、脂質およびDNAと高度に反応性があり、化学修飾された生物学的分子、NF-カッパBなどの炎症性メディエータの活性化および多種多様な臓器の損傷をもたらす。例えば、レチンアルデヒドは、ホスファチジルエタノールアミン(PE)と反応して、加齢黄斑変性(AMD)の発症および進行に関与していると考えられるリポフスチンの構成成分であるA2Eと呼ばれる高度に毒性の化合物を形成する恐れがある。多数の身体防御機構が機能し、アルデヒドデヒドロゲナーゼによる代謝、グルタチオン(GSH)などの分子による緩衝化、およびABCA4などのトランスポーターによる潜在的毒性の部位からの除去を含めた、毒性アルデヒドを除去するまたはそのレベルを低下させる。新規な低分子治療剤を使用して、網膜における「逃れた」レチンアルデヒドを捕捉し、こうしてA2Eの形成を低減し、AMDのリスクを低減することができる(Jordanら(2006年))。
【0004】
アルデヒドは、ドライアイ、白内障、円錐角膜、角膜におけるフックス角膜内皮ジストロフィー、ぶどう膜炎、アレルギー性結膜炎、眼部瘢痕性類天疱瘡、レーザー屈折矯正角膜切除術(PRK)治癒または他の角膜治癒に関連する状態、涙液脂質分解または涙腺機能不全に関連する状態、眼型酒さなどの炎症性眼状態(マイボーム腺機能不全を含むまたは含まない)、および非眼障害または状態(皮膚がん、乾癬、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、尋常性ざ瘡など)、シェーグレン-ラルソン症候群、虚血性-再灌流損傷、炎症、糖尿病、神経変性(例えば、パーキンソン病)、強皮症、筋萎縮性側索硬化症、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス[SLE]および関節リウマチ)、心血管障害(例えば、アテローム性動脈硬化)、炎症性腸疾患(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、およびびらん剤の傷害作用に関連する状態などの多様な病的状態に関連している(Negre-Salvayre et al. (2008), Nakamura et al. (2007), Batista et al. (2012), Kenney et al. (2003), Int J Dermatol 43: 494 (2004), Invest Ophthalmol Vis Sci 48: 1552 (2007), Graefe’s Clin Exp Ophthalmol 233: 694 (1994), Molecular Vision 18: 194 (2012))。
したがって、アルデヒド毒性が関連する様々な障害のための有効な処置が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Int J Dermatol 43: 494 (2004)
【非特許文献2】Invest Ophthalmol Vis Sci 48: 1552 (2007)
【非特許文献3】Graefe’s Clin Exp Ophthalmol 233: 694 (1994)
【非特許文献4】Molecular Vision 18: 194 (2012)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要約
一態様では、本発明は、本明細書に記載されているキノリン化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、医薬組成物、製剤および剤形を提供する。本発明の一部の実施形態では、組成物は、一般式Iのキノリン化合物:
【化1】
または薬学的に許容されるその塩(式中、各可変基は、本明細書において定義されている通りである)を含む。
【0007】
一部の実施形態では、キノリン化合物は、以下の構造:
【化2】
または薬学的に許容されるその塩である。
【0008】
I-1などのキノリン化合物または薬学的に許容されるその塩を含む単位剤形は、本明細書に記載されているものなどの、疾患、障害または状態を処置するため、改善するため、または予防するため、患者に投与するのに好適である。したがって、一態様では、本発明は、開示されているキノリン化合物または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を含む単位剤形を提供する。一部の実施形態では、本発明の単位剤形は、I-1などのキノリン化合物、または薬学的に許容されるその塩を約5mg~約400mg含む。一部の実施形態では、本発明の単位剤形は、経口投与に好適である。一部の実施形態では、本発明の単位剤形は、1種もしくはそれより多種の薬学的に許容される賦形剤または担体を含む。一部の実施形態では、1種もしくはそれより多種の薬学的に許容される賦形剤または担体は、Eudragit L100、微結晶セルロース、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(Kollidon CL)、Kollidon VA64などのビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのうちの1つまたはそれより多くから選択される。一部の実施形態では、本発明の単位剤形は、本明細書に記載されている薬物動態結果を示す。
【0009】
別の態様では、本発明は、対象における、1種またはそれより多種の毒性アルデヒドのレベルを低下させる方法であって、それを必要とする対象に本明細書に記載されている医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0010】
一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、グリオキサール、メチルグリオキサール、ヘキサデカナール、オクタデカナール、ヘキサデセナール、コハク酸セミアルデヒド、マロンジアルデヒド、4-ヒドロキシノネナール、4-ヒドロキシ-2E-ヘキセナール、4-ヒドロキシ-2E,6Z-ドデカジエナール、レチンアルデヒド、ロイコトリエンB4アルデヒドおよびオクタデセナールから選択される。
【0011】
一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、ホルムアルデヒドである。一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、アセトアルデヒドである。一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、アクロレインである。一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、グリオキサールである。一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、メチルグリオキサールである。一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、ヘキサデカナールである。一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、オクタデカナールである。一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、ヘキサデセナールである。一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、コハク酸セミアルデヒド(SSA)である。一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、マロンジアルデヒド(MDA)である。一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、4-ヒドロキシノネナールである。一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、レチンアルデヒドである。一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、4-ヒドロキシ-2E-ヘキセナールである。一部の実施形態では、毒性アルデヒドは、4-ヒドロキシ-2E,6Z-ドデカジエナールである。一部の実施形態では、アルデヒドは、ロイコトリエンB4アルデヒドである。一部の実施形態では、アルデヒドは、オクタデセナールである。
【0012】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されている疾患、障害または状態を処置する方法であって、本明細書に記載されている通り、それを必要とする対象に医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0013】
一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、炎症状態である。一部の実施形態では、炎症性障害は、全身性である。一部の実施形態では、炎症性障害は、特定の組織または臓器に局在する。
【0014】
一部の実施形態では、本開示の化合物により処置する疾患、障害または状態は、脂肪肝である。一部の実施形態では、本開示の化合物により処置する疾患、障害または状態は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎(UC)、乾癬、IBS(過敏性腸症候群または痙攣性結腸)、強直性脊椎炎、骨粗鬆症、関節リウマチ(RA)、乾癬性関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アテローム性動脈硬化、肺動脈性高血圧症、ピリドキシン依存性てんかん、アトピー性皮膚炎、アトピー性湿疹、酒さ、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、敗血症、好酸球性食道炎、慢性腎疾患(CKD)、腎線維症、慢性好酸球性肺炎、外因性アレルギー性肺胞炎、子癇前症、子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、女性の受胎能低下、精子生存率および運動性の低下またはシクロホスファミド誘発性出血性膀胱炎である。
【0015】
一部の実施形態では、本開示の化合物により処置するための疾患、障害または状態は、肺慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患(ILD)、特発性肺線維症(IPF)、嚢胞性線維症(CF)、アルファ-1抗トリプシン欠乏症による気腫、または肺動脈性高血圧症(PAH)である。
【0016】
一部の実施形態では、本開示の化合物により処置する疾患、障害または状態は、軽鎖沈着症、IgA腎症、末期腎疾患、痛風、偽痛風、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、外傷性脳損傷、ノイズ誘発性聴力喪失、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、子宮平滑筋腫、サルコイドーシスまたは慢性腎疾患である。
【0017】
一部の実施形態では、本開示の化合物により処置する疾患、障害または状態は、眼の炎症性障害である。一部の実施形態では、眼の炎症性障害は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、アトピー性角結膜炎(AKC)、春季カタル(VKC)、加齢黄斑変性(AMD)、ドライアイ疾患(DED)、アレルギー性結膜炎(AC)、アレルギー性結膜炎を伴うドライアイ疾患、非感染性前部ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎、汎ぶどう膜炎、術後眼疼痛および炎症である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、神経栄養性角膜炎である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、角膜の移植片対宿主病である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、強膜炎である。
【0018】
一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、慢性の咳である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、肺炎である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、喘息である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、アトピー性喘息である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、アレルギー性喘息である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、アレルギー性鼻炎である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、副鼻腔炎である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、花粉症である。
【0019】
一部の実施形態では、アトピー性(またはアレルギー性)喘息は、花粉、ダスト、動物(例えば、ネコのふけまたはイヌの毛髪)、またはイエダニを含めた、室内、室外または職業性アレルゲンなどのアレルゲンを引き金とする。一部の実施形態では、アトピー性喘息患者はまた、季節性アレルギー、湿疹および食物アレルギーから選択される別の状態を有する。
【0020】
一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、肺敗血症である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、敗血症または敗血症性ショックである。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、角膜炎である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、角膜移植または臓器移植後の移植片対宿主病などの移植片対宿主病である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、関節炎、骨関節炎または関節リウマチである。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、多発性硬化症である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、筋萎縮性側索硬化症である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、アルツハイマー病である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、ハンチントン病である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、パーキンソン病である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、線維症である。
【0021】
一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、アルコール性肝炎である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、微小変化型疾患である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、巣状分節性糸球体硬化症である。
【0022】
一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である。一部の実施形態では、ARDSは、ウイルス感染に関連する。
【0023】
一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、SARS-CoV2などのウイルス感染である。
【0024】
一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、アトピー性皮膚炎である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、アトピー性湿疹である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、乾癬である。
【0025】
一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、糖尿病性黄斑浮腫である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、シュタルガルト病である。
【0026】
一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、角膜炎である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、神経栄養性角膜炎である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、強膜炎である。
【0027】
一部の実施形態では、単位剤形は、全身投与される。
【0028】
一部の実施形態では、単位剤形は、経口投与される。
【0029】
一部の実施形態では、医薬組成物は、液体である。一部の実施形態では、医薬組成物は、経鼻胃管を介して液体として投与される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、データ点(マーカー)およびモデル予測(実線)による、化合物I-1(群1;静脈内投与)の投与を受けたビーグル犬における血中時間-濃度プロファイルを示す。
【0031】
図2図2は、データ点(マーカー)およびモデル予測(実線)による、化合物I-1(群2;強制経口投与)の投与を受けたビーグル犬における血中時間-濃度プロファイルを示す。
【0032】
図3図3は、データ点(マーカー)およびモデル予測(実線)による、化合物I-1(群3;カプセル剤)の投与を受けたビーグル犬における血中時間-濃度プロファイルを示す。
【0033】
図4図4は、第1相試験において、I-1を経口投与されたヒト対象の血漿中のマロンジアルデヒド(MDA)の血漿中全曲線下面積(AUC)を示す。
【0034】
図5図5は、第1相試験において、1日目および8日目における、I-1を経口投与されたヒト対象の血漿中のマロンジアルデヒド(MDA)の曲線下面積(AUC)を示す。最高用量(600mg、BID)では、1700ng/mL(ほぼ8.5mM)のCmaxのおよび7220hng/mLのAUC0-12が観測された。
【0035】
図6図6は、Sprague-DawleyラットにおけるPO投与した化合物I-1およびADX-102(レプロキサラップ)の薬物動態プロファイルを示す。化合物I-1は、50mg/kgで投与したので、比較するため、レプロキサラップの場合の10mg/kgデータに5を乗算する。
【0036】
図7図7は、Sprague-DawleyラットにおけるPO投与した化合物I-1およびADX-102(レプロキサラップ)の用量による正規化後の薬物動態プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細説明
1.本発明のある特定の態様の一般説明
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されているキノリン化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、医薬組成物、製剤および単位剤形を提供する。一部の実施形態では、医薬組成物は、経口投与に好適である。一部の実施形態では、単位剤形は、経口投与に好適である。一部の実施形態では、単位剤形は、経口投与向けのカプセル剤または錠剤である。一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されているものなどの、疾患、障害もしくは状態の処置、改善、予防、および/またはそのリスクの低減のための化合物、組成物および方法を提供する。
【0038】
一態様では、本開示は、式I:
【化3】

の化合物
(式中、 R、RおよびRはそれぞれ、独立して、H、D、ハロゲン、-NH、-CN、-OR、-SR、必要に応じて置換されているC1~6脂肪族、または
【化4】

であり、R、RおよびRの1つは、-NHであり、R、RおよびRの1つは、
【化5】

であり、
は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)、-N(R)C(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)、-N(R)S(O)R、-SON(R)、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)Rおよび-S(O)Rから選択され、
は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)、-N(R)C(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)、-N(R)S(O)R、-SON(R)、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)Rおよび-S(O)Rから選択され、
は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)、-N(R)C(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)、-N(R)S(O)R、-SON(R)、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)Rおよび-S(O)Rから選択され、
は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)、-N(R)C(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)、-N(R)S(O)R、-SON(R)、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)Rおよび-S(O)Rから選択され、
6aは、1個、2個もしくは3個の重水素原子またはハロゲン原子により必要に応じて置換されているC1~4脂肪族であり、
6bは、1個、2個もしくは3個の重水素原子またはハロゲン原子により必要に応じて置換されているC1~4脂肪族であるか;またはR6aおよびR6bは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、窒素、酸素および硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子を含有する3~8員のシクロアルキル環またはヘテロシクリル環を形成し、
Rはそれぞれ、水素、重水素、ならびにC1~6脂肪族;3~8員の飽和または部分不飽和単環式炭素環式環;フェニル;8~10員の二環式アリール環;窒素、酸素および硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~8員の飽和または部分不飽和単環式複素環式環;窒素、酸素および硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員の単環式ヘテロアリール環;窒素、酸素および硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する6~10員の飽和または部分不飽和二環式複素環式環;および窒素、酸素および硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する7~10員の二環式ヘテロアリール環から選択される必要に応じて置換されている基から独立して選択される)
または薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される賦形剤または担体を含む医薬組成物を提供する。
【0039】
別の態様では、本開示は、式II:
【化6】

の化合物(式中、
は、H、Dまたはハロゲンであり、
は、H、Dまたはハロゲンであり、
は、H、Dまたはハロゲンであり、
は、H、Dまたはハロゲンであり、
は、H、Dまたはハロゲンであり、
6aは、1個、2個もしくは3個の重水素原子またはハロゲン原子により必要に応じて置換されているC1~4脂肪族であり、
6bは、1個、2個もしくは3個の重水素原子またはハロゲン原子により必要に応じて置換されているC1~4脂肪族である)
または薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される賦形剤または担体を含む医薬組成物を提供する。
【0040】
2. 定義
本発明の化合物は、本明細書において一般に上に記載されているものを含み、本明細書において開示されているクラス、部分クラスおよび種によりさらに例示される。本明細書で使用する場合、特に示さない限り、以下の定義が適用されるものとする。本開示の目的のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements, CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 75th Edに従って特定される。さらに、有機化学の一般的な原理は、それらの全内容が参照により本明細書に組み込まれている、”Organic Chemistry,” Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999および”March’s Advanced Organic Chemistry,” 5th Ed., Ed.: Smith, M.B. and March, J., John Wiley & Sons, New York (2001)に記載されている。
【0041】
用語「脂肪族」または「脂肪族基」は、本明細書で使用する場合、完全に飽和であるか、または1つもしくはそれより多くの不飽和単位を含有する、直鎖状(すなわち、非分岐状)もしくは分岐状の置換または無置換炭化水素鎖、あるいは完全に飽和であるか、または1つもしくはそれより多くの不飽和単位を含有するが、芳香族ではない単環式炭化水素または二環式炭化水素(本明細書において、「炭素環」、「脂環式」または「シクロアルキル」とも称される)を意味し、これらは、分子の残部への1つの結合点を有する。別段の指定がない限り、脂肪族基は、1~6個の脂肪族炭素原子を含有する。一部の実施形態では、脂肪族基は、1~5個の脂肪族炭素原子を含有する。他の実施形態では、脂肪族基は、1~4個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態では、脂肪族基は、1~3個の脂肪族炭素原子を含有し、さらに他の実施形態では、脂肪族基は、1~2個の脂肪族炭素原子を含有する。一部の実施形態では、「脂環式」(または「炭素環」もしくは「シクロアルキル」)とは、完全に飽和であるか、または1つもしくはそれより多くの不飽和単位を含有するが、芳香族ではない単環式C~C炭化水素を指し、これは、分子の残部への1つの結合点を有する。好適な脂肪族基には、以下に限定されないが、直鎖もしくは分岐状の、置換または無置換アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、および(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルなどのそれらの混成体が含まれる。
【0042】
用語「低級アルキル」は、C1~4直鎖状または分岐状アルキル基を指す。例示的な低級アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよびtert-ブチルである。
【0043】
用語「低級ハロアルキル」は、1個またはそれより多くのハロゲン原子により置換されている直鎖状または分岐状C1~4アルキル基を指す。
【0044】
用語「ヘテロ原子」は、酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素(窒素、硫黄、リンまたはケイ素の任意の酸化形態を含む;任意の塩基性窒素または複素環式環の置換可能な窒素の四級化形態、例えば、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルにおけるような)、NH(ピロリジニルにおけるような)またはNR(N-置換ピロリジニルにおけるような))のうちの1つまたは複数を意味する。
【0045】
用語「不飽和」は、本明細書で使用する場合、ある部分が1つまたはそれより多くの不飽和単位を有することを意味する。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「二価のC1~8(またはC1~6)飽和または不飽和な、直鎖状または分岐状炭化水素鎖」とは、本明細書において定義されている、二価の直鎖状または分岐状アルキレン鎖、アルケニレン鎖およびアルキニレン鎖を指す。
【0047】
用語「アルキレン」は、二価アルキル基を指す。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、すなわち-(CH-であり、nは、正の整数、好ましくは1~6、1~4、1~3、1~2または2~3である。置換アルキレン鎖は、1個またはそれより多くのメチレン水素原子が置換基により置きかえられているポリメチレン基である。好適な置換基には、置換脂肪族基に関して、以下に記載されているものを含む。
【0048】
用語「アルケニレン」とは、二価アルケニル基を指す。置換アルケニレン鎖は、1個またはそれより多くの水素原子が置換基により置きかえられている、少なくとも1つの二重結合を含有するポリメチレン基である。好適な置換基には、置換脂肪族基に関して、以下に記載されているものを含む。
【0049】
用語「ハロゲン」とは、F、Cl、BrまたはIを意味する。
【0050】
単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」もしくは「アリールオキシアルキル」における場合のようなより大きな部分の一部として使用されている用語「アリール」は、合計が5~14個の環メンバーを有する単環式環系または二環式環系を指し、これらの系中の少なくとも1つの環は芳香族であり、これらの系中の各環は、3~7個の環メンバーを含有する。用語「アリール」は、用語「アリール環」と互換的に使用することができる。一部の実施形態では、単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」もしくは「アリールオキシアルキル」における場合のような、より大きな部分の一部として使用されている用語「アリール」は、合計が5~10個の環メンバーを有する単環式環系および二環式環系を指し、これらの系中の少なくとも1つの環は芳香族であり、これらの系中の各環は、3~7個の環メンバーを含有する。化合物のある特定の実施形態では、「アリール」とは、以下に限定されないが、1つまたはそれより多くの置換基を有することがある、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシルなどを含む芳香族環系を指す。同様に、用語「アリール」の範囲には、本明細書において使用されている通り、芳香族環が、インダニル、フタルイミジル、ナフトイミジル、フェナントリジニルまたはテトラヒドロナフチルなどの、1つまたはそれより多くの非芳香族環に縮合している基も含まれる。
【0051】
単独で、またはより大きな部分、例えば、「ヘテロアラルキル」もしくは「ヘテロアラルコキシ」の一部として使用されている用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ(heteroar-)」は、5~10個の環原子、好ましくは5個、6個または9個の環原子、環式配列中に共有されている6個、10個または14個のπ電子を有する基であって、炭素原子に加えて、1~5個のヘテロ原子を有する基を指す。用語「ヘテロ原子」とは、窒素、酸素または硫黄を指し、窒素または硫黄の任意の酸化形態、および塩基性窒素の任意の四級化形態を含む。ヘテロアリール基には、非限定的に、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニルおよびプテリジニルが含まれる。用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ(heteroar-)」はまた、本明細書で使用する場合、複素芳香族環が、1つもしくはそれより多くのアリール環、脂環式環またはヘテロシクリル環に縮合している基を含み、ラジカルまたは結合点は、複素芳香族環上に存在する。非限定例には、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルおよびピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンが含まれる。ヘテロアリール基は、単環式または二環式とすることができる。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」または「複素芳香族」と互換的に使用することができ、これらの用語のいずれも、必要に応じて置換されている環を含む。用語「ヘテロアラルキル」とは、ヘテロアリールによって置換されているアルキル基であって、アルキル部分およびヘテロアリール部分が、独立して、必要に応じて置換されている、アルキル基を指す。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環式ラジカル」および「複素環式環」は、互換的に使用されており、飽和または部分不飽和のいずれかである、安定な5~7員の単環式複素環式部分または7~10員の二環式複素環式部分であって、炭素原子に加えて、1個またはそれより多くの、好ましくは1~4個の上で定義したヘテロ原子を有する、上記の複素環式部分を指す。複素環の環原子を参照して使用する場合、用語「窒素」は、置換されている窒素を含む。一例として、酸素、硫黄および窒素から選択される0~3個のヘテロ原子を有する、飽和または部分不飽和環では、窒素は、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルの場合のような)、NH(ピロリジニルの場合のような)またはNR(N-置換ピロリジニルの場合のような)であってもよい。
【0053】
複素環式環は、安定な構造をもたらす、任意のヘテロ原子または炭素原子において、そのペンダント基に結合することができ、これらの環原子のいずれも、必要に応じて置換され得る。このような飽和または部分不飽和複素環式ラジカルの例には、非限定的に、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル ピロリジニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニルおよびキヌクリジニルが含まれる。用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環式基」、「複素環式部分」および「複素環式ラジカル」は、本明細書において互換的に使用されており、同様に、ヘテロシクリル環が、インドリニル、3H-インドリル、クロマニル、フェナントリジニルまたはテトラヒドロキノリニルなどの1つまたはそれより多くのアリール、ヘテロアリールまたは脂環式環に縮合しており、これらのラジカルまたは結合点が、ヘテロシクリル環上に存在している基を含む。ヘテロシクリル基は、単環式または二環式とすることができる。用語「ヘテロシクリルアルキル」とは、ヘテロシクリルによって置換されているアルキル基を指し、アルキル部分およびヘテロシクリル部分は、独立して、必要に応じて置換されている。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「部分不飽和」とは、少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む環部分を指す。用語「部分不飽和な」は、複数の不飽和部位を有する環を包含することが意図されているが、本明細書において定義されている、アリール部分またはヘテロアリール部分を含むことは意図されていない。
【0055】
本明細書に記載されている通り、本開示の化合物は、「必要に応じて置換されている」部分を含有することがある。一般に、用語「置換されている」とは、用語「必要に応じて」が前にあろうがなかろうが、指定部分の1個またはそれより多くの水素が好適な置換基により置きかえられていることを意味する。特に示さない限り、「必要に応じて置換されている」基は、この基の置換可能な各位置に好適な置換基を有することがあり、任意の所与の構造中の1つより多い位置が、指定基から選択される1つより多い置換基により置換されていてもよい場合、この置換基は、各位置において、同一であってもよく、または異なっていてもよい。本明細書の化合物について想起される置換基の組合せは、好ましくは、安定なまたは化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。用語「安定な」とは、本明細書で使用する場合、その生成、検出、ならびにある特定の実施形態では、本明細書において開示されている1つまたは複数の目的のために、その回収、精製および使用を可能にする条件に供された場合に実質的に変質しない化合物を指す。
【0056】
「必要に応じて置換されている」基の置換可能な炭素原子上の好適な一価の置換基は、独立して、ハロゲン、-(CH0~4R°;-(CH0~4OR°;-O(CH0~4、-O-(CH0~4C(O)OR°;-(CH0~4CH(OR°);-(CH0~4SR°;R°により置換されていてもよい-(CH0~4Ph;R°により置換されていてもよい-(CH0~4O(CH0~1Ph;R°により置換されていてもよい-CH=CHPh;R°により置換されていてもよい-(CH0~4O(CH0~1-ピリジル;-NO;-CN;-N;-(CH0~4N(R°);-(CH0~4N(R°)C(O)R°;-N(R°)C(S)R°;-(CH0~4N(R°)C(O)NR°;-N(R°)C(S)NR°;-(CH0~4N(R°)C(O)OR°;-N(R°)N(R°)C(O)R°;-N(R°)N(R°)C(O)NR°;-N(R°)N(R°)C(O)OR°;-(CH0~4C(O)R°;-C(S)R°;-(CH0~4C(O)OR°;-(CH0~4C(O)SR°;-(CH0~4C(O)OSiR°;-(CH0~4OC(O)R°;-OC(O)(CH0~4SR-、SC(S)SR°;-(CH0~4SC(O)R°;-(CH0~4C(O)NR°;-C(S)NR°;-C(S)SR°;-SC(S)SR°、-(CH0~4OC(O)NR°;-C(O)N(OR°)R°;-C(O)C(O)R°;-C(O)CHC(O)R°;-C(NOR°)R°;-(CH0~4SSR°;-(CH0~4S(O)R°;-(CH0~4S(O)OR°;-(CH0~4OS(O)R°;-S(O)NR°;-(CH0~4S(O)R°;-N(R°)S(O)NR°;-N(R°)S(O)R°;-N(OR°)R°;-C(NH)NR°;-P(O)R°;-P(O)R°;-OP(O)R°;-OP(O)(OR°);SiR°;-(C1~4直鎖状または分岐状アルキレン)O-N(R°);または-(C1~4直鎖状または分岐状アルキレン)C(O)O-N(R°)であり、R°はそれぞれ、以下に定義されている通り置換されていてもよく、独立して、水素、C1~6脂肪族、-CHPh、-O(CH0~1Ph、-CH-(5~6員のヘテロアリール環)、または窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、5~6員の飽和環、部分不飽和環もしくはアリール環であるか、または上記の定義である場合でも、独立して存在する2つのR°が、その介在原子と一緒になって、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、3~12員の飽和単環式環もしくは二環式環、部分不飽和単環式環もしくは二環式環、またはアリール単環式環もしくは二環式環を形成し、これらは、以下に定義されている通り置換されていてもよい。
【0057】
R°上の好適な一価の置換基(または、独立して存在する2つのR°が、それらの介在原子と一緒になることにより形成される環)は、独立して、ハロゲン、-(CH0~2、-(ハロR)、-(CH0~2OH、-(CH0~2OR、-(CH0~2CH(OR;-O(ハロR)、-CN、-N、-(CH0~2C(O)R、-(CH0~2C(O)OH、-(CH0~2C(O)OR、-(CH0~2SR、-(CH0~2SH、-(CH0~2NH、-(CH0~2NHR、-(CH0~2NR 、-NO、-SiR 、-OSiR 、-C(O)SR、-(C1~4直鎖状または分岐状アルキレン)C(O)ORまたは-SSRであり、Rはそれぞれ、無置換であるか、または「ハロ」が前に付く場合、1個またはそれより多くのハロゲンのみによって置換されており、C1~4脂肪族、-CHPh、-O(CH0~1Ph、ならびに窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、5~6員の飽和環、部分的不飽和環またはアリール環から独立して選択される。R°の飽和炭素原子上の好適な二価の置換基は、=Oおよび=Sを含む。
【0058】
「必要に応じて置換されている」基の飽和炭素原子上の好適な二価の置換基には、以下:=O、=S、=NNR 、=NNHC(O)R、=NNHC(O)OR、=NNHS(O)、=NR、=NOR、-O(C(R ))2~3O-または-S(C(R ))2~3S-が含まれ、独立して存在するRはそれぞれ、水素、以下に定義されている通り置換されていてもよいC1~6脂肪族、ならびに窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する無置換の5~6員の飽和環、部分不飽和環またはアリール環から選択される。「必要に応じて置換されている」基の隣接する置換可能な炭素に結合している好適な二価の置換基には、-O(CR 2~3O-が含まれ、独立して存在するRはそれぞれ、水素、以下に定義されている通り置換されていてもよいC1~6脂肪族、ならびに窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する無置換の5~6員の飽和環、部分不飽和環またはアリール環から選択される。
【0059】
の脂肪族基上の好適な置換基には、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR または-NOが含まれ、Rはそれぞれ、無置換であるか、または「ハロ」が前に付いている場合、1個またはそれより多くのハロゲンのみによって置換されており、独立して、C1~4脂肪族、-CHPh、-O(CH0~1Ph、または窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、5~6員の飽和環、部分不飽和環もしくはアリール環である。
【0060】
「必要に応じて置換されている」基の置換可能な窒素上の好適な置換基には、-R、-NR 、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)C(O)R、-C(O)CHC(O)R、-S(O)、-S(O)NR 、-C(S)NR 、-C(NH)NR または-N(R)S(O)が含まれ、Rはそれぞれ、独立して、水素、以下に定義されている通り置換されていてもよいC1~6脂肪族、無置換-OPh、または窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する無置換の5~6員の飽和環、部分不飽和環もしくはアリール環であるか、あるいは上記の定義であっても、独立して存在する2つのRは、それらの介在する原子と一緒になって、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、無置換の3~12員の飽和単環式環もしくは二環式環、部分不飽和単環式環もしくは二環式環、またはアリール単環式環もしくは二環式環を形成する。
【0061】
の脂肪族基上の好適な置換基は、独立して、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR または-NOであり、Rはそれぞれ、無置換であるか、または「ハロ」が前に付いている場合、1個またはそれより多くのハロゲンのみによって置換されており、独立して、C1~4脂肪族、-CHPh、-O(CH0~1Ph、または窒素、酸素および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、5~6員の飽和環、部分不飽和環もしくはアリール環である。
【0062】
本明細書において使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などがなく、妥当な医療的判断の範囲内でヒトおよび下等動物の組織に接触させて使用するのに好適であり、かつ妥当な利益/リスク比に見合う塩を指す。薬学的に許容される塩は、当分野において周知である。例えば、S.M.Bergeらが、参照により本明細書に組み込まれている、J. Pharmaceutical Sciences, 1977, 66, 1-19に薬学的に許容される塩を詳細に記載している。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、好適な無機酸および有機酸、ならびに無機塩基および有機塩基から誘導されるものを含む。薬学的に許容される非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸と共に形成される、またはイオン交換などの当分野において使用されている他の方法を使用することによる、アミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベシル酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが含まれる。
【0063】
適切な塩基から誘導される塩には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびN(C1~4アルキル)塩が含まれる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらに、薬学的に許容される塩には、適切な場合、非毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、およびハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、低級アルキルスルホン酸イオンおよびアリールスルホン酸イオンなどの対イオンを使用して形成されるアミン陽イオンが含まれる。
【0064】
特に明記しない限り、本明細書において図示されている構造は、該構造のすべての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー異性体および幾何(または立体配座)異性体)、例えば、各不斉中心に関してRおよびS立体配置、ZおよびE二重結合異性体、ならびにZおよびE立体配座異性体を含むことがやはり意図されている。したがって、単一立体化学異性体、ならびに化合物の鏡像異性体、ジアステレオマー異性体および幾何(または立体配座)異性体の混合物が、本発明の範囲内にある。特に明記しない限り、本発明の化合物のすべての互変異性体が、本発明の範囲内にある。
【0065】
血清薬物動態パラメータは、標準ノンコンパートメント法またはコンパートメント法を使用して、WinNonlinバージョン3.2(Pharsight(登録商標)、Mountain View、CA)を使用して計算することができる。本明細書において使用する場合、用語「Cmax」とは、濃度対時間データから直接、推定される試験化合物の観測される最大血清中濃度を指す。本明細書において使用する場合、用語「Tmax」とは、Cmaxの最初の発生時間を指す。本明細書において使用する場合、用語「AUC(0-tlast)」とは、時間0からTlast(線形/log台形概数を使用して推定した最後の定量可能な濃度の時間)までの血清中濃度対時間曲線下面積を指す。終末期消失速度定数(kel)は、終末期のLog線形相の間に得られる血清中濃度-時間データの線形最小二乗回帰分析を使用して推定することができる。本明細書において使用する場合、用語「AUC(0-inf)」とは、無限まで外挿したAUC(0-tlast)を指し、これは、AUC(0-tlast)およびCest/kelの和として計算され、Cestは、最後の定量可能な時間点における、log線形回帰分析から得られる予期される血漿中濃度である。本明細書において使用する場合、用語「t1/2」は、ln(2)/kelとして計算される終末期半減期を指す。本明細書において使用する場合、用語「AUC(last-inf)」とは、Tlastから無限までの血清中濃度対時間曲線下面積を指し、これは、Cpest/kelとして推定され、Cpestは、上述の回帰分析に基づいて、時間Tlastにおける推定濃度を表した。本明細書において使用する場合、用語「AUCτ」とは、投与間隔にわたる、血清中濃度対時間曲線下面積を指す。本明細書において使用する場合、用語「Rac」とは、血清中の試験化合物の蓄積比を指し、これは、1日目と比較した、定常状態における薬物の蓄積量の尺度として計算される。
【0066】
尿薬物動態パラメータは、尿中に変化しないまま排泄された親薬物の量を評価するために使用することができる。尿薬物動態パラメータは、所与の経口投与期間の間に、投与間隔の経過中に変化しないまま尿中で排泄された試験化合物の量は、投与の最終日に定常状態にあるという仮定の下で計算することができる。本明細書において使用する場合、用語「A」とは、(尿中の化合物濃度×尿体積)によって計算される、経口投与の最終日の投与後の0~12時間に排泄された親薬物の量を指す。本明細書において使用する場合、用語「A/用量」は、(A/用量)×100によって計算される、経口投与の最終日における、変化しないまま腎臓により排泄された用量の割合を指す。本明細書において使用する場合、用語「CL」とは、(A/AUCτ)によって計算される、経口投与の最終日における腎クリアランスを指す。本明細書において使用する場合、用語「CL/Fu」とは、(CL/Fu)によって計算される、非結合薬物の腎クリアランスを指し、タンパク質に結合していない血清中の薬物の割合(Fu)は、in vitroでのヒト血清タンパク質結合データから求められる。
【0067】
本明細書において使用する場合、用語「空腹状況」、「空腹状態」、「空腹にされた状況」または「空腹にされた状態」とは、食物および飲料のすべて(水を除く)を少なくとも約8時間、絶食した後の状況または状態を指す。一部の実施形態では、対象は、朝に投与を受ける前に、少なくとも8時間、食物および飲料のすべて(水を除く)を絶ち、昼食まで絶食を継続することになる。
【0068】
本明細書において使用する場合、用語「摂食状況」または「摂食状態」とは、標準化高脂肪食の摂取後の状況または状態を指す。一部の実施形態では、摂食状況での投与は、標準FDA高脂肪朝食後の投与を指す。一部の実施形態では、摂食レジメンを受ける対象は、試験食を摂食する前の少なくとも8時間、食物および飲料のすべて(水を除く)を絶つ。一部の実施形態では、対象は、1日目の投与前に、摂食するため、バターでの目玉焼き2個、ベーコン2片、2塊のバター付きトースト2枚、ハッシュブラウン4オンスおよび全乳8オンスから構成される標準FDA高脂肪朝食を供され、20分以内に完全に食す。この朝食は、約150kcalのタンパク質、250kcalの炭水化物および500~600kcalの脂肪を含む。一部の実施形態では、代替食が提供されてもよく、ただし、この食事は、類似した組成およびカロリー含有量を有することを条件とする。
【0069】
本明細書において使用する場合、数値を参照する「約」または「ほぼ」は、明記されている数値が、この明記されている値の最大で10%、変動してもよいことを意味する。例えば、「約10」とは、9.9~10.1(10+/-0.1)という値を指す。
3.実施形態の詳細説明
【0070】
本明細書において記載されている化合物は、アルデヒド捕捉活性を有し、かつ毒性アルデヒドの作用に伴う障害および疾患の処置に使用するために記載されている、キノリン化合物である。例えば、それらの各々が、参照により本明細書に組み込まれている、PCT特許公開WO2006127945、WO2014116836、WO2017035077およびWO2017035082を参照されたい。本明細書における化合物の合成は、それらの各々が、参照により本明細書に組み込まれている、PCT公開WO2006127945、WO2017035082およびWO2018039192;および米国特許出願公開US2013/0190500に記載されている。本開示に記載されている通り、ある特定のキノリン化合物は、本明細書に記載されている、疾患、障害または状態を処置するのに有用である。
【0071】
さらに、以下の特許出願の開示が、参照により本明細書に組み込まれている:2018年10月10日出願のWO2019/075136;および2021年3月24日出願のPCT/US2021/023884。これらの出願は、本明細書に記載されているキノリン化合物に関連する追加の開示を提供し、ある特定の疾患の処置におけるそれらの使用を含む。
【0072】
一部の実施形態では、化合物I-1は、医薬品有効成分として選択されて、薬物製品にコンパウンディングする前に、加工されてその最も安定な多形などのその固体形態に製造される。一部の実施形態では、固体形態、例えば、多形は、参照により本明細書に組み込まれている、WO2020/223685として公開されているPCT/US2020/031138に記載されているものの1つである。
【0073】
したがって、一態様では、本開示は、式I:
【化7】

の化合物
(式中、 R、RおよびRはそれぞれ、独立して、H、D、ハロゲン、-NH、-CN、-OR、-SR、必要に応じて置換されているC1~6脂肪族、または
【化8】

であり、R、RおよびRの1つは、-NHであり、R、RおよびRの1つは、
【化9】

であり、
は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)、-N(R)C(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)、-N(R)S(O)R、-SON(R)、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)Rおよび-S(O)Rから選択され、
は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)、-N(R)C(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)、-N(R)S(O)R、-SON(R)、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)Rおよび-S(O)Rから選択され、
は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)、-N(R)C(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)、-N(R)S(O)R、-SON(R)、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)Rおよび-S(O)Rから選択され、
は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)、-N(R)C(O)N(R)、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)、-N(R)S(O)R、-SON(R)、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)Rおよび-S(O)Rから選択され、
6aは、1個、2個もしくは3個の重水素原子またはハロゲン原子により必要に応じて置換されているC1~4脂肪族であり、
6bは、1個、2個もしくは3個の重水素原子またはハロゲン原子により必要に応じて置換されているC1~4脂肪族であるか;またはR6aおよびR6bは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、窒素、酸素および硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子を含有する3~8員のシクロアルキル環またはヘテロシクリル環を形成し、
Rはそれぞれ、水素、重水素、ならびにC1~6脂肪族;3~8員の飽和または部分不飽和単環式炭素環式環;フェニル;8~10員の二環式アリール環;窒素、酸素および硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3~8員の飽和または部分不飽和単環式複素環式環;窒素、酸素および硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員の単環式ヘテロアリール環;窒素、酸素および硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する6~10員の飽和または部分不飽和二環式複素環式環;および窒素、酸素および硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する7~10員の二環式ヘテロアリール環から選択される必要に応じて置換されている基から独立して選択される)
または薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される賦形剤または担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0074】
別の態様では、本開示は、式II:
【化10】

の化合物(式中:
は、H、D、またはハロゲンであり;
は、H、D、またはハロゲンであり;
は、H、D、またはハロゲンであり;
は、H、D、またはハロゲンであり;
は、H、D、またはハロゲンであり;
6aは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族であり;そして
6bは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である)
またはその薬学的に許容される塩の有効量と、薬学的に許容される賦形剤または担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0075】
下記の実施形態は、式Iに適用可能である。
【0076】
式Iの一部の実施形態では、R6aがC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6aは、1、2、または3個のジュウテリウム原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6aは、1、2、または3個のハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である。
【0077】
式Iの一部の実施形態では、R6aがC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6aは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて値環されたC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6aは、1、2、または3個のハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6aは、1、2、または3個のハロゲン原子で必要に応じて置換されたメチルまたはエチルである。一部の実施形態では、R6aがメチルである。
【0078】
上記にて一般に定義されるように、R6bは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である。
【0079】
式Iの一部の実施形態では、R6bがC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6bが、1、2、または3個のジュウテリウム原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6bは、1、2、または3個のハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である。
【0080】
式Iの一部の実施形態では、R6bがC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6bが、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6bが、1、2、または3個のハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6bが、1、2、または3個のハロゲン原子で必要に応じて置換されたメチルまたはエチルである。一部の実施形態では、R6bがメチルである。
【0081】
上記にて一般に定義されるように、一部の実施形態では、R6aおよびR6bは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子を含有する3から8員シクロアルキルまたはヘテロシクリル環を形成する。
【0082】
式Iの一部の実施形態では、R6aおよびR6bは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、3から8員シクロアルキルを形成する。一部の実施形態では、R6aおよびR6bは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子を含有する3から8員ヘテロシクリル環を形成する。
【0083】
式Iの一部の実施形態では、R6aおよびR6bは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロプロピル、シクロブチル、またはシクロペンチル環を形成する。一部の実施形態では、R6aおよびR6bは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、またはアジリジンを形成する。
【0084】
式Iの一部の実施形態では、R、R、およびRの1つにある-NHならびにR、R、およびRのその他にあるカルビノールが、ピリジン部分の隣接する炭素原子上にある。
【0085】
一部の実施形態では、化合物が、式I-a、I-b、またはI-c:
【化11】

の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中:
、R、およびRのそれぞれは、存在する場合、独立してH、D、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、必要に応じて置換されたC1~6脂肪族、または
【化12】
であり、ここでR、R、およびRの1つが
【化13】
であり;かつ
、R、R、R、R6a、R6b、R、およびRは、式Iに関して定義された通りである。
【0086】
一部の実施形態では、本方法における使用のための化合物が、式I-d、I-e、I-f、またはI-g:
【化14】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中:
およびRは、独立して、H、D、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、必要に応じて置換されたC1~6脂肪族であり;かつ
、R、R、R、R6a、R6b、R、R、およびRは、式Iに関して定義された通りである。
【0087】
下記の実施形態は、式IIに適用可能である。
【0088】
上記にて一般に定義されるように、RはH、D、またはハロゲンである。
【0089】
一部の実施形態では、RがHである。一部の実施形態では、RがDである。一部の実施形態では、Rがハロゲンである。一部の実施形態では、RがClである。一部の実施形態では、RがBrである。
【0090】
上記にて一般に定義されるように、RはH、D、またはハロゲンである。
【0091】
一部の実施形態では、RがHである。一部の実施形態では、RがDである。一部の実施形態では、Rがハロゲンである。一部の実施形態では、RがClである。一部の実施形態では、RがBrである。
【0092】
上記にて一般に定義されるように、RはH、D、またはハロゲンである。
【0093】
一部の実施形態では、RがHである。一部の実施形態では、RがDである。一部の実施形態では、Rがハロゲンである。一部の実施形態では、RがClである。一部の実施形態では、RがBrである。
【0094】
上記にて一般に定義されるように、RはH、D、またはハロゲンである。
【0095】
一部の実施形態では、RがHである。一部の実施形態では、RがDである。一部の実施形態では、Rがハロゲンである。一部の実施形態では、RがClである。一部の実施形態では、RがBrである。
【0096】
上記にて一般に定義されるように、RはH、D、またはハロゲンである。
【0097】
一部の実施形態では、RがHである。一部の実施形態では、RがDである。一部の実施形態では、Rがハロゲンである。一部の実施形態では、RがClである。一部の実施形態では、RがBrである。
【0098】
上記にて一般に定義されるように、R6aは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である。
【0099】
一部の実施形態では、R6aは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で置換されたC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6aはC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6aはC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6aは、メチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルである。一部の実施形態では、R6aがメチルである。
【0100】
上記にて一般に定義されるように、R6bは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である。
【0101】
一部の実施形態では、R6bは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で置換されたC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6bはC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6bはC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6bは、1、2、または3個のフッ素原子で必要に応じて置換されたC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6bは、メチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルである。一部の実施形態では、R6bがメチルである。
【0102】
一部の実施形態では、R6aおよびR6bがメチルまたはエチルである。一部の実施形態では、R6aおよびR6bがメチルである。一部の実施形態では、R6aおよびR6bが-CDである。
【0103】
一部の実施形態では、化合物が、式II-a:
【化15】
のものまたはその薬学的に許容される塩であり、式中:
、R、R、R、R6a、およびR6bのそれぞれは、上記にて提供されたように定義され、単独および組合せの両方で本明細書の実施形態に記述される。
【0104】
一部の実施形態では、化合物が、式II-b:
【化16】
のものまたはその薬学的に許容される塩であり、式中:
、R、R、R6a、およびR6bのそれぞれは、上記にて提供されたように定義され、単独および組合せの両方で本明細書の実施形態に記述される。
【0105】
一部の実施形態では、化合物は、式II-c、II-d、II-e、またはII-f:
【化17】
のいずれか1つのものまたはその薬学的に許容される塩であり、式中:
、R、R、R6a、およびR6bのそれぞれは、上記にて提供されたように定義され、単独および組合せの両方で本明細書の実施形態に記述される。
【0106】
一部の実施形態では、化合物は、式II-g:
【化18】
のものまたはその薬学的に許容される塩であり、式中:
6aおよびR6bのそれぞれは、上記にて提供されたように定義され、単独および組合せの両方で本明細書の実施形態に記述される。
【0107】
一部の実施形態では、開示される医薬組成物は、下記の表1に示されるものから選択される化合物を含む。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0108】
一部の実施形態では、本開示は、上記表1に示される化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤または担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0109】
一部の実施形態では、本発明は、開示されている医薬組成物を含む単位剤形を提供する。
【0110】
一部の実施形態では、単位剤形は、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を含む、噴霧乾燥医薬組成物を含む。一部の実施形態では、単位剤形は、構成用経口粉末(oral-powder-for-constitution:OPC)製剤の形態にある。
【0111】
一部の実施形態では、単位剤形は、約1mg~約2000mgの開示されているキノリン化合物または薬学的に許容されるその塩を含む。
【0112】
一部の実施形態では、単位剤形は、約1mg~約2000mgのI-1または薬学的に許容されるその塩を含む。
【0113】
一部の実施形態では、単位剤形は、約1mg~約1000mgのI-1または薬学的に許容されるその塩を含む。
【0114】
一部の実施形態では、単位剤形は、約1mg~約800mg、5mg~約500mg、10mg~約600mgまたは約10mg~約350mgのI-1または薬学的に許容されるその塩を含む。
【0115】
一部の実施形態では、単位剤形は、約1mg、約5mg、約10mg、約30mg、約40mg、約350mgまたは約450mgの化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を含む。
【0116】
一部の実施形態では、単位剤形は、約10mg、約25mg、約50mg、約75mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約400mg、約500mg、約750mgまたは約1000mgの化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を含む。
【0117】
一部の実施形態では、単位剤形は、全身投与に好適である。
【0118】
一部の実施形態では、単位剤形は、非経口投与または経口投与に好適である。
【0119】
一部の実施形態では、単位剤形は、経口投与に好適である。
【0120】
一部の実施形態では、本発明は、約1mg~約2000mgのI-1または薬学的に許容されるその塩、および水を含む、医薬組成物を含む、液体形態の単位剤形を提供する。
【0121】
一部の実施形態では、単位剤形は、カプセル剤または錠剤である。
【0122】
一部の実施形態では、1種もしくはそれより多種の薬学的に許容される賦形剤または担体は、Eudragit L100、微結晶セルロース、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(Kollidon CL)、Kollidon VA64などのビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのうちの1つまたはそれより多くから選択される。
【0123】
一態様では、本開示は、以下:
a)化合物I-1:
【化19】
または薬学的に許容されるその塩、
b)1種またはそれより多種の充填剤、
c)1種またはそれより多種の結合剤、
d)1種またはそれより多種の崩壊剤、
e)1種またはそれより多種の流動促進剤、
f)1種またはそれより多種の滑沢剤、
g)必要に応じて、1種またはそれより多種の界面活性剤、および
h)必要に応じて、1種またはそれより多種の発泡性構成成分
を含む医薬組成物を提供する。
【0124】
一部の実施形態では、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩が、噴霧乾燥固体として、医薬組成物に存在する(例えば、噴霧乾燥分散液(spray drying dispersion:SDD)から得られる)。
【0125】
一部の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載されている薬物動態結果を示す。
【0126】
一部の実施形態では、噴霧乾燥固体は、濃度向上ポリマーを含む。
【0127】
例示的な濃度向上ポリマーは、それらの各々が、参照により本明細書中に組み込まれている、US7,780,988またはUS10,004,719に記載されているものを含む。一部の実施形態では、噴霧乾燥固体は、それらの各々が、参照により本明細書中に組み込まれている、US7,780,988およびUS10,004,719に記載されている通りに実質的に調製される。
【0128】
一部の実施形態では、濃度向上ポリマーは、イオン化可能なセルロースポリマー、イオン化不可能なセルロースポリマーおよびイオン化可能な非セルロースポリマー、およびそれらのブレンドからなる群から選択される。
【0129】
一部の実施形態では、濃度向上ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレートおよびセルロースアセテートトリメリテートおよびそれらのブレンドからなる群から選択される。
【0130】
一部の実施形態では、噴霧乾燥固体は、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルをベースとするものなどの、陰イオン性コポリマーを含む。一部の実施形態では、陰イオン性コポリマーは、Eudragitポリマーである。一部の実施形態では、陰イオン性コポリマーは、Eudragit L100である。
【0131】
一部の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載されている通り、ヒト対象への経口投与後に、PK結果を示す。
【0132】
一部の実施形態では、1種またはそれより多種の充填剤は、アルギン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、セルロースアセテート、圧縮糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース)、トウモロコシデンプン、デクストレート、エリスリトール、エチルセルロース、パルミトステアリン酸グリセリル、イソマルト、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、中鎖トリグリセリド、微結晶セルロース、アルファ化デンプン、ポリデキストロース、ポリメタクリレート、ケイ酸、シメチコン、アルギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、デンプン、球状糖、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、タルク、トラガカント、トレハロースおよびキシリトール、またはそれらの組合せから選択される。
【0133】
一部の実施形態では、充填剤は、微結晶セルロースである。一部の実施形態では、充填剤は、ラクトースである。一部の実施形態では、充填剤は、デンプンである。一部の実施形態では、充填剤は、デンプンとラクトースとの組合せ物である。
【0134】
一部の実施形態では、充填剤は、ラクトース、微結晶セルロースおよびマンニトールの組合せ物である。
【0135】
一部の実施形態では、1種またはそれより多種の結合剤は、アカシアガム、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、カルボマー(例えば、アクリル酸ポリマー、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシセルロース、カラゲナン、セルロースアセテートフタレート、セラトニア、キトサン、コポビドン、トウモロコシデンプン、綿実油、デクストレート、デキストリン、デキストロース、エチルセルロース、ゼラチン、ベヘン酸グリセリル、グアーガム、水素化植物油タイプI、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロース、イヌリン、ラクトース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ペクチン、ポロキサマー、ポリカルボフィル(polycarbohil)、ポリデキストロース、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリレート(polymetharylate)、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ステアリン酸、スクロース、トリカプリリン、ビタミンE コハク酸ポリエチレングリコールおよびゼインから選択される。
【0136】
一部の実施形態では、結合剤は、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーである。一部の実施形態では、結合剤は、Kollidon VA64である。
【0137】
一部の実施形態では、1種またはそれより多種の崩壊剤は、寒天、ベントナイト、セルロース(例えば、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース)、木材生成物、海綿、陽イオン交換樹脂、アルギン酸、ガム(例えば、グアーガムおよびVeegum HV)、柑橘パルプ、架橋セルロース(例えば、クロスカルメロース)、架橋ポリマー(例えば、クロスポビドン)、架橋デンプン、炭酸カルシウム、微結晶セルロース(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム)、ポラクリリンカリウム、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、タピオカデンプンおよびアルファ化デンプン)、クレイおよびアライン(align);およびそれらの混合物から選択される。
【0138】
一部の実施形態では、1種またはそれより多種の流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素、CAB-O-SIL(商標)(Cabot Co.(Boston、MA))、ヒュームドシリカ(Aerosil)およびアスベスト不含タルクから選択される。
【0139】
一部の実施形態では、1種またはそれより多種の流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素およびヒュームドシリカから選択される。
【0140】
一部の実施形態では、1種またはそれより多種の滑沢剤は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、軽質鉱物油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル(ethyl laureate)、寒天およびそれらの混合物から選択される。一部の実施形態では、1種またはそれより多種の滑沢剤は、syloidシリカゲル(AEROSIL200)、合成シリカの凝固エアロゾル(Degussa Co.(Plano、Tex.)により販売)、CAB-O-SIL(商標)およびそれらの混合物から選択される。
【0141】
一部の実施形態では、1種またはそれより多種の界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(例えば、Tween(登録商標)-20)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(例えば、Tween(登録商標)-80)、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium laurel sulfate)およびドデシル硫酸ナトリウムから選択される。
【0142】
一部の実施形態では、界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムを含む。
【0143】
一部の実施形態では、1種またはそれより多種の発泡性構成成分は、炭酸水素塩含有構成成分などの二酸化炭素放出性構成成分から選択される。一部の実施形態では、発泡性構成成分は、炭酸水素ナトリウムと有機酸との圧縮混合物などの炭酸水素ナトリウムを含む。一部の実施形態では、有機酸は、クエン酸または酒石酸である。
【0144】
一部の実施形態では、医薬組成物は、抗酸化剤またはキレート剤を必要に応じて含む。一部の実施形態では、抗酸化剤は、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ステアリン酸カルシウム、クエン酸、チオ硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、ビタミンEまたは3,4-ジヒドロキシ安息香酸である。一部の実施形態では、キレート剤は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはEDTA二ナトリウムである。
【0145】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1種またはそれより多種の希釈剤を必要に応じて含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、微結晶セルロース(例えば、AVICEL),マイクロファインセルロース、アルファ化デンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、糖、デクストレート、デキストリン、デキストロース、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸三カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、ポリメタクリレート(例えば、EUDRAGIT)、塩化カリウム、塩化ナトリウム、ソルビトールおよびタルク;またはアルギン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、セルロースアセテート、圧縮糖、粉砂糖、デクストレート、デキストリン、デキストロース、エリスリトール、エチルセルロース、フルクトース、フマル酸、パルミトステアリン酸グリセリル、イソマルト、カオリン、ラクチトール(lacitol)、ラクトース、マンニトール、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、中鎖トリグリセリド、微結晶セルロース、微結晶シリコン化セルロース、粉末セルロース、ポリデキストロース、ポリメチルアクリレート、シメチコン、アルギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、スクロース、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、タルク、トラガカント、トレハロースおよびキシリトールから選択される1種またはそれより多種の希釈剤を含む。
【0146】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1つまたはそれより多くの追加の結合剤、充填剤、希釈剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、流動促進剤、着色剤、色素移動阻止剤(dye-migration inhibitor)、甘味剤、着香剤、乳化剤、懸濁化剤および分散剤、保存剤、抗酸化剤、キレート剤、溶媒、非水性液体、有機酸および二酸化炭素源を必要に応じてさらに含む。
【0147】
一態様では、本開示は、以下:
a)化合物I-1:
【化20】
または薬学的に許容されるその塩、
b)微結晶セルロース、マンニトールおよびラクトース一水和物のうちの少なくとも1つを含む、1種またはそれより多種の充填剤、
c)少なくともKollidon VA64を含む1種またはそれより多種の結合剤、
d)クロスカルメロースナトリウムおよびクロスポビドンのうちの少なくとも1つを含む1種またはそれより多種の崩壊剤、
e)ヒュームドシリカを含む1種またはそれより多種の流動促進剤、
f)ステアリン酸マグネシウムを含む1種またはそれより多種の滑沢剤、
g)必要に応じて、ラウリル硫酸塩を含む1種またはそれより多種の界面活性剤、および
h)必要に応じて、1種またはそれより多種の発泡性構成成分
を含む医薬組成物を提供する。
【0148】
一部の実施形態では、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩は、噴霧乾燥固体として、医薬組成物に存在する(例えば、噴霧乾燥分散液(SDD)から得られる)。一部の実施形態では、噴霧乾燥固体は、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルをベースとするものなどの、陰イオン性コポリマーを含む。一部の実施形態では、陰イオン性コポリマーは、Eudragitポリマーである。一部の実施形態では、陰イオン性コポリマーは、Eudragit L100である。
【0149】
一部の実施形態では、単位剤形は、本明細書に記載されている薬物動態結果を示す。
【0150】
一態様では、本開示は、以下:
a)化合物I-1:
【化21】
または薬学的に許容されるその塩、
b)微結晶セルロース、マンニトールおよびラクトース一水和物、
c)Kollidon VA64、
d)クロスカルメロースナトリウムおよびクロスポビドン、
e)ヒュームドシリカ、
f)ステアリン酸マグネシウム、
g)必要に応じて、ラウリル硫酸塩、および
h)必要に応じて、1種またはそれより多種の発泡性構成成分
を含む医薬組成物を提供する。
【0151】
一部の実施形態では、ラウリル硫酸塩が、存在する。一部の実施形態では、発泡性構成成分が存在し、炭酸水素ナトリウムとクエン酸との混合物である。一部の実施形態では、発泡性構成成分は、Efferソーダおよびクエン酸である。
【0152】
一部の実施形態では、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩は、噴霧乾燥固体として、医薬組成物に存在する(例えば、噴霧乾燥分散液(SDD)から得られる)。一部の実施形態では、噴霧乾燥固体は、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルをベースとするものなどの、陰イオン性コポリマーを含む。一部の実施形態では、陰イオン性コポリマーは、Eudragitポリマーである。一部の実施形態では、陰イオン性コポリマーは、Eudragit L100である。
【0153】
一部の実施形態では、単位剤形は、本明細書に記載されている薬物動態結果を示す。
【0154】
一態様では、本開示は、以下:
a)Eudragit L100および化合物I-1:
【化22】
または薬学的に許容されるその塩の混合物を含む噴霧乾燥固体、
b)微結晶セルロース、マンニトールおよびラクトース一水和物、
c)Kollidon VA64、
d)クロスカルメロースナトリウムおよびクロスポビドン、
e)ヒュームドシリカ、
f)ステアリン酸マグネシウム、
g)ラウリル硫酸塩、および
h)必要に応じて、1種またはそれより多種の発泡性構成成分
を含む医薬組成物を提供する。
【0155】
一部の実施形態では、発泡性構成成分は、存在しない。一部の実施形態では、発泡性構成成分が存在し、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムおよびクエン酸の混合物である。
【0156】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約5%~約75%w/wの活性成分を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約15%~約60%w/wの活性成分を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約20%~約40%w/wの活性成分を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約25%~約37%w/wの活性成分を含む。
【0157】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%w/wの活性成分を含む。
【0158】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約31%w/wの活性成分を含む。
【0159】
一部の実施形態では、活性成分は、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩である。
【0160】
一部の実施形態では、I-1または薬学的に許容されるその塩は、Eudragit L100と混合した噴霧乾燥固体として提供される。一部の実施形態では、約0.9mg~約3.6mgのEudragit L100が、それぞれ1mgのI-1または薬学的に許容されるその塩と混合される。一部の実施形態では、約1.0mg~約3.0mgのEudragit L100が、それぞれ1mgのI-1または薬学的に許容されるその塩と混合される。一部の実施形態では、約1.5mg~約2.2mgのEudragit L100が、それぞれ1mgのI-1または薬学的に許容されるその塩と混合される。一部の実施形態では、約1.8mgのEudragit L100が、それぞれ1mgのI-1または薬学的に許容されるその塩と混合される。
【0161】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約16%~40%w/wのI-1または薬学的に許容されるその塩、および約29.3%~約80%w/wのEudragit L100を含む。
【0162】
一部の実施形態では、単位剤形は、本明細書に記載されている薬物動態結果を示す。
【0163】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約1%~約20%w/wの本明細書に記載されている充填剤含む。
【0164】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約1%~約20%w/wの本明細書に記載されている崩壊剤含む。
【0165】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約2%~約18%w/wの本明細書に記載されている結合剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約4%~約16%w/wの本明細書に記載されている結合剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約5%~約10%w/wの本明細書に記載されている結合剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約7%w/wの本明細書に記載されている結合剤を含む。
【0166】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.05%~約2.0%w/wの本明細書に記載されている滑沢剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.1%~約1.0%w/wの本明細書に記載されている滑沢剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.25%~約0.75%w/wの本明細書に記載されている滑沢剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.5%w/wの本明細書に記載されている滑沢剤を含む。
【0167】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.05%~約2.0%w/wの本明細書に記載されている流動促進剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.1%~約1.0%w/wの本明細書に記載されている流動促進剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.25%~約0.75%w/wの本明細書に記載されている流動促進剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.5%w/wの本明細書に記載されている流動促進剤を含む。
【0168】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.05%~約2.0%w/wの本明細書に記載されている界面活性剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.1%~約1.0%w/wの本明細書に記載されている界面活性剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.25%~約0.75%w/wの本明細書に記載されている界面活性剤を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.5%w/wの本明細書に記載されている界面活性剤を含む。
【0169】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.05%~約2.0%w/wの本明細書に記載されている発泡性構成成分を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.1%~約1.0%w/wの本明細書に記載されている発泡性構成成分を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.25%~約0.75%w/wの本明細書に記載されている発泡性構成成分を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.5%w/wの本明細書に記載されている発泡性構成成分を含む。
【0170】
一態様では、本開示は、以下:
【表4】
を含む医薬組成物を提供する。
【0171】
一態様では、本開示は、以下:
【表5】
を含む医薬組成物を提供する。
【0172】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されている医薬組成物を含む単位剤形を提供する。
【0173】
一部の実施形態では、単位剤形は、カプセル剤または錠剤の形態にある。一部の実施形態では、カプセル剤は、ゼラチンカプセル剤である。一部の実施形態では、カプセル剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセル剤である。
【0174】
一部の実施形態では、単位剤形は、約1mg~約800mg、5mg~約500mg、10mg~約600mgまたは約10mg~約350mgのI-1または薬学的に許容されるその塩を含む。
【0175】
一部の実施形態では、単位剤形は、約10mgの化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を含む。一部の実施形態では、単位剤形は、約100mgの化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を含む。一部の実施形態では、単位剤形は、約300mgの化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を含む。
【0176】
一部の実施形態では、本発明は、医薬組成物であって、
(a)組成物の約15重量%~約60重量%として、化合物I-1:
【化23】
または薬学的に許容されるその塩、
(b)組成物の約27.5重量%~約80重量%として、Eudragitポリマー、
(c)組成物の約1.0重量%~約6.0重量%として、マンニトール、ラクトースおよび微結晶セルロースのうちの1つまたはそれより多くを含む、充填剤、
(d)組成物の約3.5重量%~約14重量%として、Kollidon(登録商標)結合剤を含む結合剤、
(e)組成物の約0.25重量%~約2重量%として、シリカ流動促進剤を含む流動促進剤、
(f)組成物の約0.25重量%~約2.0重量%として、ステアリン酸マグネシウムを含む滑沢剤、および
(g)必要に応じて、組成物の0重量%~約8.0重量%として、クロスカルメロースナトリウム
を含む、医薬組成物を提供する。
【0177】
一部の実施形態では、本発明は、医薬組成物であって、
(a)組成物の約25重量%~約40重量%として、化合物I-1:
【化24】
または薬学的に許容されるその塩、
(b)組成物の約40重量%~約68重量%として、Eudragitポリマー、
(c)組成物の約1.0重量%~約4.0重量%として、マンニトール、ラクトースおよび微結晶セルロースのうちの1つまたはそれより多くを含む、充填剤、
(d)組成物の約4.0重量%~約10重量%として、Kollidon(登録商標)結合剤を含む結合剤、
(e)組成物の約0.25重量%~約2.0重量%として、シリカ流動促進剤を含む流動促進剤、
(f)組成物の約0.25重量%~約2重量%として、ステアリン酸マグネシウムを含む滑沢剤、および
(g)必要に応じて、組成物の0重量%~約8.0重量%として、クロスカルメロースナトリウム
を含む、医薬組成物を提供する。
【0178】
一部の実施形態では、本発明は、表F、G、H、IおよびJのいずれか1つに記載されている全てまたは実質的に全ての構成成分を含む医薬組成物を含む単位剤形を提供する。
【0179】
一部の実施形態では、単位剤形は、カプセル剤、錠剤またはボトル中粉末の形態である。
【0180】
一部の実施形態では、本開示の単位剤形は、本明細書に記載されている薬物動態結果を示す。
【0181】
一部の実施形態では、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を含む本明細書に記載されている単位剤形は、20mg、50mg、100mg、200mg、400mg、700mgまたは1200mg(または場合によっては約このような用量であり得る)の1日用量でヒト対象に経口投与すると、以下の表に示されている薬物動態結果を提供する:
【表2】
【0182】
一部の実施形態では、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を活性成分として含む本明細書に記載されている単位剤形は、50mg BID、150mg BID、350mg BIDまたは600mg BIDの用量(または場合によっては約このような用量であり得る)でヒト対象に経口投与すると、以下の表に示されている薬物動態結果を提供する:
【表3】
【0183】
一部の実施形態では、ヒト対象は、健常なヒト対象である。
【0184】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている薬物動態結果は、健常なヒト対象において得られる。
【0185】
一部の実施形態では、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を活性成分として含む、開示されている単位剤形は、約50mg BID、150mg BID、350mg BIDまたは600mg BIDでヒト対象に経口投与すると、投与の1日目に、上記の表に示されている薬物動態結果を提供する。
【0186】
一部の実施形態では、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を活性成分として含む、開示されている単位剤形は、約50mg BID、150mg BID、350mg BIDまたは600mg BIDでヒト対象に経口投与すると、投与の1日目の後であるが10日目の前に、上記の表に示されている薬物動態結果を提供する。
【0187】
一部の実施形態では、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を活性成分として含む、開示されている単位剤形は、約50mg BID、150mg BID、350mg BIDまたは600mg BIDでヒト対象に経口投与すると、投与の10日目に、上記の表に示されている薬物動態結果を提供する。
【0188】
一部の実施形態では、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を活性成分として含む、開示されている単位剤形は、約50mg BID、150mg BID、350mg BIDまたは600mg BIDでヒト対象に経口投与すると、投与の10日目の後に、上記の表に示されている薬物動態結果を提供する。
【0189】
一部の実施形態では、開示されている単位剤形の投与後のヒト対象におけるt1/2は、約3~約8時間である。
【0190】
一部の実施形態では、開示されている単位剤形の投与後のヒト対象におけるt1/2は、約3.5~約7.5時間である。
【0191】
一部の実施形態では、開示されている単位剤形の投与後のヒト対象におけるt1/2は、約3.5、約4.8、約6.0、約6.4、約6.15、約6.8、約7.3または約7.7時間である。
【0192】
一部の実施形態では、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を含む開示されている単位剤形は、少なくとも70%の経口生体利用率を提供する。
【0193】
一部の実施形態では、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を含む開示されている単位剤形は、少なくとも75%の経口生体利用率を提供する。
【0194】
一部の実施形態では、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を含む開示されている単位剤形は、少なくとも80%の経口生体利用率を提供する。
【0195】
一部の実施形態では、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩を含む開示されている単位剤形は、少なくとも80%、85%、90%または95%の経口生体利用率を提供する。
【0196】
一部の実施形態では、本開示は、疾患、障害または状態を処置する開示方法に使用するための、本明細書に記載されている化合物または薬学的に許容されるその塩を含む医薬製剤を提供する。本明細書において使用する場合、用語「処置(treatment)」、「処置する(treat)」および「処置すること(treating)」とは、本明細書に記載されている通り、疾患、障害もしくは状態;または1つもしくはそれより多くのそれらの症状を反転させる、軽減する、それらの発生を遅延させる、またはそれらの進行を阻害することを指す。一部の実施形態では、処置は、1つまたはそれより多くの症状が発症した後に行われる。他の実施形態では、処置は、症状の非存在下で行われる。例えば、処置は、症状の発生前に、感受性の高い個体に行われる(例えば、症状歴に照らし合わせる、および/または遺伝的もしくは他の感受性因子に照らし合わせる)。一部の場合、処置は、症状の解決した後に、例えば、その再発を予防するため、遅延させるため、またはその重症度を低下させるために継続される。
【0197】
別の態様では、本発明は、対象における、1種またはそれより多種の毒性アルデヒドのレベルを低下させる方法であって、それを必要とする対象に本明細書に記載されている医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0198】
別の態様では、本発明は、生体試料における、1種またはそれより多種の毒性アルデヒドのレベルを低下させる方法であって、生体試料に本明細書に記載されている医薬組成物を接触させるステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、in vitroで行われる。
【0199】
別の態様では、発明は、疾患、障害または状態を処置する方法であって、それを必要とする対象に本明細書に記載されている医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0200】
一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、ウイルス感染である。
【0201】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、コロナウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、デング熱ウイルス、黄熱ウイルス、ジカ熱ウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸系発疹ウイルス(RSV)、ノロウイルス、ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エボラウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)-1および-2、エプスタイン-バールウイルス、ラッサウイルスまたはクリミア-コンゴ出血性熱ウイルスによって引き起こされる。
【0202】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、コロナウイルスによって引き起こされる。一部の実施形態では、コロナウイルスは、アルファ、ベータ、ガンマまたはデルタコロナウイルスである。一部の実施形態では、コロナウイルスは、SARSなどの重症な呼吸器症状に関連するものである。
【0203】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、コロナウイルスによって引きこされ、コロナウイルスは、229E(アルファコロナウイルス)、NL63(アルファコロナウイルス)、OC43(ベータコロナウイルス)、HKU1(ベータコロナウイルス)、MERS-CoV(中東呼吸器症候群、すなわちMERSを引き起こすベータコロナウイルス)、SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群、すなわちSARSを引き起こすベータコロナウイルス)またはSARS-CoV-2(コロナウイルス疾患2019、すなわちCOVID-19)である。
【0204】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、SARS-CoV-2によって引き起こされる。
【0205】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、インフルエンザウイルスによって引き起こされる。
【0206】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、インフルエンザウイルスによって引き起こされ、ウイルス感染は、A型インフルエンザおよびB型インフルエンザから選択される。一部の実施形態では、インフルエンザウイルスは、B/YamagataまたはB/Victoriaである。
【0207】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、H5N1、H1N1およびH3N2から選択されるインフルエンザウイルスによって引き起こされる。
【0208】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、ジカ熱ウイルスによって引き起こされる。
【0209】
一部の実施形態では、第2の治療剤が患者に投与され、この場合、第2の治療剤は、抗ウイルス剤、抗生物質およびNSAIDから選択される。
【0210】
一部の実施形態では、第2の治療剤は、抗ウイルス剤であり、この場合、抗ウイルス剤は、ウイルス感染を処置するのに適切である。
【0211】
一部の実施形態では、第2の治療剤は、クロロキン、レムデシビル、ヒドロキシクロロキン、インターフェロン、リバビリン、ウミフェノビル、テイコプラニン、ロピナビル、リトナビル、ニタゾキサニド、カモスタット、ファビピラビル、トシリズマブおよび受動的抗体療法から選択される。
【0212】
一部の実施形態では、本発明は、アトピー性皮膚炎、アトピー性湿疹および乾癬から選択される皮膚の疾患、障害もしくは状態、または糖尿病性黄斑浮腫およびシュタルガルト病から選択される眼の疾患、障害もしくは状態を処置する、予防するおよび/またはそれらのリスクを低減する方法であって、それを必要とする患者に、開示されているキノリン化合物を含む開示医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0213】
一部の実施形態では、本開示は、アトピー性皮膚炎、アトピー性湿疹および乾癬から選択される皮膚の疾患、障害もしくは状態、または糖尿病性黄斑浮腫およびシュタルガルト病から選択される眼の疾患、障害もしくは状態を処置、予防および/あるいはそれらのリスクを低減する医薬の製造における、本明細書に記載されている医薬組成物の使用を提供する。
【0214】
一部の実施形態では、本開示の方法は、アトピー性皮膚炎の処置を対象とする。一部の実施形態では、アトピー性皮膚炎を処置するまたはそのリスクを低減する方法は、それを必要とする患者に有効量の本明細書において開示されている化合物を投与するステップを含む。一般に、アトピー性皮膚炎は、紅斑、掻痒、落屑、苔癬化および小水疱性丘疹を呈する皮膚の炎症状態として特徴付けられる。アトピー性皮膚炎の病因は、多元的であり、表皮障壁の破壊、IgE調節異常、皮膚の細胞媒介性免疫応答の欠損および遺伝的因子を含めた、複雑な免疫学的カスケードを含む。
【0215】
一部の実施形態では、処置される患者は、アトピー歴(アトピー性疾患)を有する。一般に、アトピーは、アトピー性湿疹、喘息およびアレルギーの個人歴または家族歴を指す。
【0216】
一部の実施形態では、処置されるアトピー性皮膚炎は、アトピー性皮膚炎を再発している。アトピー性皮膚炎の再発は、疾患、障害または状態の寛解後のアトピー性皮膚炎のフレア、増悪または再発である。
【0217】
一部の実施形態では、処置される患者は、プロフィラグリン(FLG)変異の機能喪失を有すると特定される。不活性な前駆体プロフィラグリンタンパク質は、表皮の顆粒細胞層において目視可能なケラトヒアリンF顆粒の主要構成物質である、大型の、複雑な高度にリン酸化されているポリペプチドである。FLG遺伝子における様々な変異が、アトピー性皮膚炎の個体において特定されており、アトピー性皮膚炎のリスク因子となっている(例えば、O’Regan et al., J Allergy Clinical Immunol., 2009; 124(3) Supplement 2:R2-R6を参照されたい)。
【0218】
一部の実施形態では、患者は、プロフィラグリン(FLG)タンパク質発現の低下をもたらす、FLG変異の機能喪失を有する。
【0219】
一部の実施形態では、処置されるアトピー性皮膚炎は、軽度から中度のアトピー性皮膚炎である。
【0220】
一部の実施形態では、処置されるアトピー性皮膚炎は、中度から重度のアトピー性皮膚炎である。
【0221】
一部の実施形態では、処置されるアトピー性皮膚炎は、急性期にある。一部の実施形態では、急性アトピー性皮膚炎は、小胞、滲出、痂皮形成性発疹を呈する。
【0222】
一部の実施形態では、処置されるアトピー性皮膚炎は、亜急性期にある。一部の実施形態では、亜急性アトピー性皮膚炎は、乾燥した鱗状の紅斑性丘疹およびプラークを呈する。
【0223】
一部の実施形態では、処置されるアトピー性皮膚炎は、慢性期にある。一部の実施形態では、慢性アトピー性皮膚炎は、繰り返されるひっかきに起因する、苔癬化を示す。
【0224】
一部の実施形態では、本開示の方法は、乾癬の処置を対象とする。一部の実施形態では、乾癬を処置するまたはそのリスクを低減する方法は、それを必要とする患者に有効量の本明細書において開示されている化合物を投与するステップを含む。一般に、乾癬は、皮膚表面の、盛り上がった赤色の鱗状斑点を特徴とする、慢性の免疫媒介性疾患である。これらの状態は、一部には、皮膚細胞の成長サイクルの加速から生じる。
【0225】
一部の実施形態では、処置される乾癬は、尋常性乾癬である。尋常性乾癬は、大抵の場合、肘、膝、頭皮および腰部に銀色がかった白色の鱗屑によって覆われた、盛り上がりのある炎症した赤色病変として通常、現れる。
【0226】
一部の実施形態では、処置される乾癬は、滴状乾癬である。滴状乾癬は、多くの場合、小児期または成人期に始まる。滴状乾癬は、皮膚表面の小さな赤色の個別のスポットとして現れ、この場合、スポットは、通常、尋常性乾癬における病変ほど厚くも、皮殻質にもならない。
【0227】
一部の実施形態では、処置される乾癬は、逆乾癬である。逆乾癬は、通常、尋常性乾癬において起こる鱗屑がない、赤色病変として現れる。この病変は、滑らかで光る恐れがあり、腋窩、鼠径部、胸部において、および皮膚のひだにおいて起こり得る。
【0228】
一部の実施形態では、処置される乾癬は、膿疱性乾癬である。膿疱性乾癬は、白色膿疱、または周囲皮膚が赤色の非感染性膿の水膨れとして現れる。膿疱性乾癬は、手足、または身体の大部分などの、身体のある特定の領域に罹患し得る。
【0229】
一部の実施形態では、処置される乾癬は、乾癬性紅皮症である。乾癬性紅皮症は、炎症であり、重症な痒みおよび疼痛を伴う、皮膚の剥離または剥がれとして現れる。浮腫もまた現れることがある。
【0230】
一部の実施形態では、処置される乾癬は、軽度乾癬である。軽度の形態は、全皮膚表面の約10%またはそれ未満に罹患する。
【0231】
一部の実施形態では、処置される乾癬は、中度から重度の乾癬である。中度から重度の形態は、全皮膚表面の>10%またはそれより広く罹患し、治療剤の経口投与または全身投与を必要とすることがある。
【0232】
一部の実施形態では、処置される乾癬は、早期発生乾癬(I型乾癬)である。
【0233】
一部の実施形態では、処置される乾癬は、晩生発症性乾癬(II型乾癬)である。
【0234】
一部の実施形態では、本開示の方法は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)の処置を対象とする。一部の実施形態では、糖尿病性黄斑浮腫(DME)を処置するまたはそのリスクを低減する方法は、それを必要とする患者に有効量の本明細書において開示されている化合物を投与するステップを含む。一般に、DMEは、糖尿病の合併症であり、時として、糖尿病性網膜症と称される。糖尿病から発生する網膜の微小血管への損傷により、網膜に流体が漏出する恐れがあり、これによって、斑点を含めた周囲組織の腫れをもたらし、これによって視力喪失に至る恐れがある。
【0235】
一部の実施形態では、処置される患者は、1型糖尿病と診断される。
【0236】
一部の実施形態では、処置される患者は、2型糖尿病と診断される。
【0237】
一部の実施形態では、処置されるDMEは、臨床的に深刻な黄斑浮腫(CSME)である。臨床的に、CSMEは、以下の通りに現れる診断基準の少なくとも1つを満たすDMEとして定義される:(a)斑点の中心部または中心部から500μm以内の網膜の肥厚化;(b)隣接網膜の肥厚化を伴う場合、斑点の中心部または中心部から500μm以内の酷い滲出液(網膜の肥厚化が消えた後に残る、酷い残留滲出液を計算に含まない);および(c)1乳頭面積またはそれより大きな任意の区域の網膜肥厚化であって、そのいずれの任意の部分も、斑点の中心部の1乳頭径以内に存在する、網膜肥厚化。
【0238】
一部の実施形態では、処置されるDMEは、中心部関与DMEである。中心部関与DMEでは、中心部の斑点は、一般に、網膜の最も厚い部分であり、正常な幾何形状の反転部である。
【0239】
一部の実施形態では、処置されるDMEは、非中心部関与DMEである。非中心部DMEは、斑点の中心部の関与がない。
【0240】
一部の実施形態では、処置されるDMEは、限局性DMEである。限局性浮腫は、時として、酷い滲出液の不完全な輪によって囲まれた、微細動脈瘤のクラスターを伴って起こることが多い。限局性浮腫は、斑状肥厚化が少ない、良好な視力および網膜症の重症度がそれほど重症ではないことを伴うことがある。
【0241】
一部の実施形態では、処置されるDMEは、びまん型DMEである。びまん性黄斑浮腫は、網膜における網膜毛細血管の拡張に起因し、一層大きな領域の網膜の肥厚化を含む。
【0242】
一部の実施形態では、処置されるDMEには、網膜剥離または重症な非クリア硝子体出血を伴う。
【0243】
一部の実施形態では、処置される患者は、焦点レーザー光凝固療法を受けている。
【0244】
一部の実施形態では、処置される患者は、グリッドレーザー光凝固治療法を受けている。
【0245】
一部の実施形態では、本開示の方法は、シュタルガルト病の処置を対象とする。一部の実施形態では、シュタルガルト病を処置するまたはそのリスクを低減する方法は、それを必要とする患者に有効量の本明細書において開示されている化合物を投与するステップを含む。一般に、シュタルガルト病は、特徴的な黄斑萎縮および後極における網膜色素上皮(RPE)のレベルでの黄白色の斑点を伴う、色覚異常および中心暗点を含む、両側性失明を特徴とする黄斑ジストロフィーの遺伝形態である。シュタルガルト病はまた、シュタルガルト黄斑ジストロフィー、若年性黄斑変性または黄色斑眼底とも呼ばれることがある。シュタルガルト病の発生は、小児期が最も一般的であり、次のピークは、成人期の早い段階であり、最も頻度が低いのは、成人期の遅い段階である。優れた予後は、一般に、後期発生に伴う。
【0246】
一部の実施形態では、処置されるシュタルガルト病は、小児期発症シュタルガルト病である。
【0247】
一部の実施形態では、処置されるシュタルガルト病は、成人発症または晩期発症シュタルガルト病である。
【0248】
一部の実施形態では、シュタルガルト病の重症度は、電気生理学的評価に基づいて分類することができる(例えば、Tanna et al., British Journal of Ophthalmology 2017; 101:25-30を参照されたい)。
【0249】
一部の実施形態では、処置されるシュタルガルト病は、グループ1に分類される。グループ1のシュタルガルト病は、正常な全視野網膜電図(ERG)を伴う、重症なパターンのERG異常(黄斑機能不全)を示す。
【0250】
一部の実施形態では、処置されるシュタルガルト病は、グループ2に分類される。グループ2のシュタルガルト病は、グループ1の特徴を示し、円錐機能のより一般的な喪失をさらに有する。グループ2の患者は、中間的な予後変数を有する。
【0251】
一部の実施形態では、処置されるシュタルガルト病は、グループ3に分類される。グループ3のシュタルガルト病は、円錐機能および桿体機能の両方のさらなる一般的な喪失を示す。グループ3の患者は、最悪の予後を示す。
【0252】
一部の実施形態では、処置される患者は、網膜特異的ATP結合カセットトランスポーター(ABCA4)遺伝子に変異を有し、ABCA4機能の低下または欠陥が生じていると特定されている。ABCA4の変異は、遺伝性シュタルガルト病の最も一般的な形態である。
【0253】
一部の実施形態では、処置される患者は、小児期発症シュタルガルト病に関連するABCA4遺伝子の変異を有すると特定されている。小児期発症シュタルガルト病に関連する例示的な変異は、とりわけ、634C>T、768G>T、1317G>A、1531C>T、1557C>A、5308T>G、6088C>Tまたは6449G>Aを含む。
【0254】
一部の実施形態では、処置される患者は、成人発症または晩期発症シュタルガルト病に関連するABCA4遺伝子に変異を有すると特定されている。成人発症または晩期発症シュタルガルト病に関連する例示的な変異は、とりわけ、769-784C>T、2486C>T、5603A>Tまたは5882G>Aを含む。
【0255】
以下にさらに議論されている通り、本明細書に記載されている化合物または薬学的に許容されるその塩は、全身投与されて、本明細書に記載されている適応症を処置することができる。一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩は、固体医薬組成物の部分として、経口投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、液体である。一部の実施形態では、医薬組成物は、経鼻胃管により液体として投与される。
【0256】
一部の実施形態では、糖尿病性黄斑浮腫またはシュタルガルト病の眼の適応症の場合、化合物または薬学的に許容されるその塩は、硝子体内投与される。
【0257】
一部の実施形態では、化合物は、I-1または薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、化合物は、I-2または薬学的に許容されるその塩である。
【0258】
一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である。一部の実施形態では、ARDSは、ウイルス感染に関連する。一部の実施形態では、ウイルス感染は、ウイルス性敗血症を伴う。
【0259】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、ウイルス性肺炎を伴う。
【0260】
一部の実施形態では、ARDSを処置する方法は、ウイルス感染に起因するまたはこれに関連するARDSを有する患者に、有効量の本明細書において開示されている医薬組成物を投与するステップを含む。
【0261】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、コロナウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、デング熱ウイルス、黄熱ウイルス、ジカ熱ウイルス、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、ヘルペスウイルス、呼吸系発疹ウイルス(RSV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エボラウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)-1および-2、エプスタイン-バールウイルス、ラッサウイルスまたはクリミア-コンゴ出血性熱ウイルスよって引き起こされる。
【0262】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、コロナウイルスによって引き起こされる。一部の実施形態では、ウイルス感染は、229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoVおよびSARS-CoV-2から選択されるコロナウイルスによって引き起こされる。
【0263】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、コロナウイルスによって引き起こされる。一部の実施形態では、コロナウイルスは、アルファ、ベータ、ガンマまたはデルタコロナウイルスである。一部の実施形態では、コロナウイルスは、SARSなどの重症な呼吸器症状に関連するものである。
【0264】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、コロナウイルスによって引きこされ、コロナウイルスは、229E(アルファコロナウイルス)、NL63(アルファコロナウイルス)、OC43(ベータコロナウイルス)、HKU1(ベータコロナウイルス)、MERS-CoV(中東呼吸器症候群、すなわちMERSを引き起こすベータコロナウイルス)、SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群、すなわちSARSを引き起こすベータコロナウイルス)またはSARS-CoV-2(コロナウイルス疾患2019、すなわちCOVID-19)である。
【0265】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、呼吸系発疹ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス、コロナウイルスまたはヘルペスウイルスによるものである。
【0266】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、コロナウイルスによるものである。
【0267】
一部の実施形態では、コロナウイルスは、229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoVおよびSARS-CoV-2から選択される。
【0268】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、SARS-CoV-2によるものである。
【0269】
一部の実施形態では、ウイルス感染は、インフルエンザウイルスによるものである。
【0270】
一部の実施形態では、インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザまたはB型インフルエンザである。
【0271】
一部の実施形態では、インフルエンザウイルスは、B/YamagataまたはB/Victoriaである。
【0272】
一部の実施形態では、インフルエンザウイルスは、H5N1、H1N1またはH3N2である。
【0273】
一部の実施形態では、ARDSは、細菌感染に関連する。
【0274】
一部の実施形態では、細菌感染は、細菌性敗血症を伴う。
【0275】
一部の実施形態では、細菌感染は、細菌性肺炎を伴う。
【0276】
一部の実施形態では、細菌感染は、Streptococcus pneumoniae、Staphylococcus aureus、Legionella pneumophila、Pneumocystis jiroveciiまたはHaemophilus influenzaによるものである。
【0277】
一部の実施形態では、ARDSは、化学毒素または身体外傷によって引き起こされた肺への急性損傷に関連する。
【0278】
一部の実施形態では、肺への急性損傷は、化学毒素による。
【0279】
一部の実施形態では、急性肺損傷を引き起こす化学毒素は、窒息剤、発疱薬または神経ガスである。
【0280】
一部の実施形態では、化学毒素は、窒息剤であり、この場合、窒息剤は、塩素ガス、ホスゲン、カルボニルクロリド、硫化水素またはアンモニアである。
【0281】
一部の実施形態では、化学毒素は発疱薬であり、この場合、発疱薬はサルファマスタードまたはナイトロジェンマスタードである。
【0282】
一部の実施形態では、化学毒素は、神経ガスであり、神経ガスは、タブン、サリン、ソマンまたはVXである。
【0283】
一部の実施形態では、ARDSは、生物毒素によって引き起こされる肺への急性損傷に関連する。
【0284】
一部の実施形態では、生物毒素は、リシン、ボツリヌス毒素、またはstaphylococcal enterotoxin Bである。
【0285】
一部の実施形態では、患者は、機械換気によって処置されている。
【0286】
一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、炎症状態である。一部の実施形態では、炎症性障害は、全身性である。一部の実施形態では、炎症性障害は、特定の組織または臓器に局在する。一部の実施形態では、本開示の化合物により処置する疾患、障害または状態は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎(UC)、乾癬、IBS(過敏性腸症候群または痙攣性結腸)、例えば、痙攣性結腸、強直性脊椎炎、骨粗鬆症、関節リウマチ(RA)、乾癬性関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アテローム性動脈硬化、肺動脈性高血圧症、ピリドキシン依存性てんかん、アトピー性皮膚炎、アトピー性湿疹、酒さ、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、敗血症、好酸球性食道炎、慢性腎疾患(CKD)、腎線維症、慢性好酸球性肺炎、外因性アレルギー性肺胞炎、子癇前症、子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、女性の受胎能低下、精子生存率および運動性の低下またはシクロホスファミド誘発性出血性膀胱炎である。
【0287】
一部の実施形態では、本開示の化合物により処置するための疾患、障害または状態は、肺慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患(ILD)、特発性肺線維症(IPF)、嚢胞性線維症(CF)、アルファ-1抗トリプシン欠乏症による気腫、または肺動脈性高血圧症(PAH)である。
【0288】
一部の実施形態では、本開示の化合物により処置する疾患、障害または状態は、軽鎖沈着症、IgA腎症、末期腎疾患、痛風、偽痛風、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、外傷性脳損傷、ノイズ誘発性聴力喪失、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、子宮平滑筋腫、サルコイドーシスまたは慢性腎疾患である。
【0289】
一部の実施形態では、本開示の化合物により処置する疾患、障害または状態は、眼の炎症性障害である。一部の実施形態では、眼の炎症性障害は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、アトピー性角結膜炎(AKC)、春季カタル(VKC)、加齢黄斑変性(AMD)、ドライアイ疾患(DED)、アレルギー性結膜炎(AC)、アレルギー性結膜炎を伴うドライアイ疾患、非感染性前部ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎、汎ぶどう膜炎、術後眼疼痛および炎症である。一部の実施形態では、疾患、障害または状態は、参照により本明細書中に組み込まれている、WO2019/075136に記載されているものの1つである。
【0290】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約10mg~約10,000mgである。
【0291】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約10mg~約7500mgである。
【0292】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約50mg~約3600mgである。
【0293】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約150mg~約1200mgである。
【0294】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約250mg~約2400mgである。
【0295】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約600mg~約5000mgである。
【0296】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約1000mg~約7500mgである。
【0297】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約400mg~約1200mgである。
【0298】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約500mg~約1000mgである。
【0299】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約300mg~約1000mgである。
【0300】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約400mg~約800mgである。
【0301】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約500mg~約700mgである。
【0302】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約600mg~約1200mgである。
【0303】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約250mg~約2400mgである。
【0304】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約600mg~約5000mgである。
【0305】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約1000mg~約7500mgである。
【0306】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩は、1日1回、2回、3回または4回、投与される。一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩は、1日2回、投与される。
【0307】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、BID(すなわち、1日2回)で約600mg;BIDで1.2g;またはBIDで約2.4gである。
【0308】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、BIDで約200mg、BIDで300mg、BIDで400mg、BIDで500mg、BIDで600mg、BIDで700mgまたはBIDで約800mgである。
【0309】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、BIDで約300mgである。
【0310】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり、約10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3500mg、4000mg、5500mg、6000mg、6500mg、7000mg、7500mgまたは約8000mgである。
【0311】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、全身投与である。
【0312】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、経口投与である。
【0313】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、空腹状況で患者に投与される。一部の実施形態では、患者は、投与前の少なくとも2時間、および投与後の少なくとも1時間、食物を摂取しない。
【0314】
一部の実施形態では、化合物は、I-1または薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、化合物は、I-2または薬学的に許容されるその塩である。
【0315】
一部の実施形態では、化合物は、患者における全身性炎症を軽減する。
【0316】
一部の実施形態では、化合物は、IL-1β、IL-6、IL-10および腫瘍壊死因子アルファから選択されるバイオマーカーの血漿中レベルを低下させる。一部の実施形態では、化合物は、RASPから選択されるバイオマーカーの血漿中レベルを低下させる。一部の実施形態では、RASPは、マロンジアルデヒド(MDA)および/または4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)である。
【0317】
一部の実施形態では、方法は、マロンジアルデヒド(MDA)または4-ヒドロキシノネナール(HNE)などの患者の血液中の反応性アルデヒド種(reactive aldehyde species:RASP)のレベルの低下をさらに含む。
【0318】
一部の実施形態では、RASPのレベルは、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%、低下する。一部の実施形態では、RASPのレベルは、約30%~75%低下する。一部の実施形態では、RASPのレベルは、約20%~約60%、または約20%~約50%、または約20%~約30%低下する。
【0319】
一部の実施形態では、医薬組成物は、液体である。一部の実施形態では、医薬組成物は、経鼻胃管により液体として投与される。
【0320】
一部の実施形態では、方法は、有効量のARDSを処置するのに好適な第2の治療剤を患者に投与するステップをさらに含む。
【0321】
一部の実施形態では、第2の治療剤は、ステロイド、抗GM-CSF抗体および肺サーファクタントから選択される抗炎症剤である。
【0322】
慢性の咳、肺炎、および肺敗血症は、臨床的に異なる呼吸器の疾患、障害、または状態である。慢性の咳は、一般に8週間よりも長く続く咳であって、細菌またはウイルス感染;慢性閉塞性肺疾患(COPD)およびその他の非喘息性肺疾患;肺または食道のがん;肺炎;間質性肺疾患;および閉塞型睡眠時無呼吸などからの基本的な熱を伴う咳を除外したものと定義される。肺炎は、細菌、ウイルス、または真菌などの病原体による肺の感染である。これは、病原体による感染とは無関係の肺の急性損傷によって引き起こされる可能性のある急性呼吸窮迫症候群とは区別される。肺炎は通常、病歴、身体検査および/または臨床検査、ならびに胸部X線(CXR)からの臨床診断の組合せによって診断され、肺炎を他の気道感染から区別することができる。肺敗血症も肺に影響を及ぼすが、肺の感受性に起因して、および敗血症が病原体による肺の感染から発症する可能性があるので、敗血症から生じる可能性がある。
【0323】
アルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症は、肺よりも肝臓または腎臓に影響を及ぼす。アルコール性肝炎は、アルコールの慢性乱用に起因し、肝臓の損傷を特徴とする。際立った特徴には、高ビリルビン血症、ならびに肝機能マーカーであるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベル、が含まれる。微小変化型疾患および巣状分節性糸球体硬化症は、腎臓に影響を及ぼす疾患、障害、または状態である。微小変化型疾患および巣状分節性糸球硬化症の両方は、ネフローゼ症候群のより広範な障害の範囲内にあり、タンパク尿を特徴とする。微小変化型疾患は、巣状分節性糸球体硬化症に進行する可能性があり、後者では、巣状の分節性パターンでの腎臓の損傷および瘢痕化がなされる。
【0324】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている医薬組成物は、慢性の咳、アトピー性喘息、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、花粉症、肺炎および肺敗血症から選択される呼吸器疾患、障害もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器疾患、障害もしくは状態を処置、予防および/あるいはそれらのリスクを低減するために使用される。
【0325】
上で明記されている通り、一態様では、本開示は、慢性の咳、アトピー性喘息、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、花粉症、肺炎および肺敗血症から選択される呼吸器疾患、障害もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器疾患、障害もしくは状態を処置する、これらを予防する、および/あるいはそれらのリスクを低減する方法であって、有効量の本明細書に記載されている医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0326】
一部の実施形態では、本開示は、慢性の咳、アトピー性喘息、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、花粉症、肺炎および肺敗血症から選択される呼吸器疾患、障害もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器疾患、障害もしくは状態を処置、予防および/あるいはそれらのリスクを低減する医薬の製造における、本明細書に記載されている医薬組成物の使用を提供する。
【0327】
一部の実施形態では、慢性の咳、アトピー性喘息、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、花粉症、肺炎および肺敗血症から選択される呼吸器疾患、障害もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器疾患、障害もしくは状態の処置、予防および/あるいはそれらのリスクの低減に使用するための化合物は、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩である。
【0328】
一部の実施形態では、本開示の方法は、慢性の咳の処置を対象とする。一部の実施形態では、慢性の咳を処置するまたはそのリスクを低減する方法は、それを必要とする患者に有効量の本明細書において開示されている医薬組成物を投与するステップを含む。一般に、慢性の咳は、8週間を超える期間、継続する咳と特徴付けられる(例えば、Irwin et al., Chest, 2018; 153(1):196-209; Morice, A.H., European Respiratory J., 2004; 24:481-492を参照されたい)。慢性の咳は、喘息、胃食道逆流症(GERD)、非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)および上気道咳嗽症候群(他には、後鼻漏症候群として知られている)などの、様々な根本原因が引き金となり得る、および/またはこれらに起因し得る。慢性の咳の識別診断は、細菌感染またはウイルス感染;慢性閉塞性肺疾患(COPD)および他の非喘息性肺疾患;肺または食道のがん;肺炎;間質性肺疾患;および閉塞型無呼吸に起因するなどの、発熱を伴う咳を除外する(例えば、Perotin et al., Ther Clin Risk Manag, 2018: 14:1041-1051を参照されたい)。
【0329】
一部の実施形態では、処置する慢性の咳は、上気道咳嗽症候群に関連する。
【0330】
一部の実施形態では、処置する慢性の咳は、胃食道逆流症または咽喉頭逆流症に関連する。
【0331】
一部の実施形態では、処置する慢性の咳は、喘息に関連する。
【0332】
一部の実施形態では、処置する慢性の咳は、非喘息性好酸球性気管支炎に関連する。
【0333】
一部の実施形態では、処置される患者は、以下:アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤による処置、喫煙、喘息、環境呼吸器刺激物への曝露および気管支炎のうちの1つまたはそれより多い病歴を有する。
【0334】
一部の実施形態では、本開示の方法は、肺炎の処置を対象とする。一部の実施形態では、肺炎は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)とは無関係であるか、または同時に起こる。
【0335】
一部の実施形態では、処置される患者は肺炎を有し、肺炎は、好酸球性肺炎とは異なる診断を有する(すなわち、肺炎は、好酸球性肺炎とは無関係である)。
【0336】
一部の実施形態では、処置される肺炎は、市中感染肺炎である。
【0337】
一部の実施形態では、処置される肺炎は、院内感染肺炎である。
【0338】
一部の実施形態では、処置される肺炎は、細菌性肺炎またはウイルス性肺炎である。
【0339】
一部の実施形態では、処置される患者は、とりわけ、Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、S. aureus、Group A streptococci、Moraxella catarrhalis、Klebsiella pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Legionella spp、Mycoplasma pneumoniae、Chlamydia pneumoniaeまたはC.psittaciによる細菌感染と診断される。
【0340】
一部の実施形態では、処置される患者は、インフルエンザウイルス(例えば、インフルエンザAまたはインフルエンザB)、呼吸系発疹ウイルス(RSV)、パラインフルエンザ、メタニューモウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス、ハンタウイルスまたはアデノウイルスによるウイルス感染と診断される。
【0341】
一部の実施形態では、処置される肺炎は、大葉性肺炎である。
【0342】
一部の実施形態では、処置される肺炎は、上葉性、中葉性または下葉性肺炎である。
【0343】
一部の実施形態では、処置される肺炎は、巣状肺炎、肺胞性肺炎または間質性肺炎である。
【0344】
一部の実施形態では、処置される肺炎は、気管支肺炎である。
【0345】
一部の実施形態では、本開示の方法は、アトピー性喘息の処置を対象とする。一部の実施形態では、本開示の方法は、アレルギー性鼻炎の処置を対象とする。
【0346】
一部の実施形態では、本開示の方法は、敗血症の処置、またはそのリスクの低減を対象とする。一部の実施形態では、本開示の方法は、肺敗血症または敗血症誘発性肺損傷の処置を対象とする。一部の実施形態では、肺敗血症または敗血症誘発性肺損傷を処置するまたはそのリスクを低減する方法は、それを必要とする患者に、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩などの、有効量の本明細書において開示されている化合物を投与するステップを含む。一般に、肺敗血症または敗血症誘発性肺損傷は、敗血症から生じる肺損傷を特徴とする。主に、肺炎は、敗血症過程の開始点となることが多く、播種性感染過程は、全身性炎症反応(SIRS)に関連し、この場合、罹患する最初の臓器は、通常、肺であるので、肺は、敗血症によって最も頻繁に罹患する臓器である。
【0347】
一部の実施形態では、処置される肺敗血症または敗血症誘発性肺損傷は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)がない(すなわち、これを伴わない)。
【0348】
一部の実施形態では、本開示の方法は、アルコール中毒の処置を対象とする。一部の実施形態では、本開示の方法は、アルコール性肝炎の処置を対象とする。一部の実施形態では、アルコール性肝炎を処置するまたはそのリスクを低減する方法は、それを必要とする患者に、化合物I-1または薬学的に許容されるその塩などの、有効量の本明細書において開示されている化合物を投与するステップを含む。一般に、アルコール性肝炎は、慢性的なアルコールの乱用から生じる、肝臓損傷および関連炎症状態を含む。この疾患に関する顕著な特徴またはマーカーは、高ビリルビン血症である。一部の実施形態では、アルコール性肝炎は可逆性に思われる一方、肝硬変は、肝臓への恒久的な損傷である点で、アルコール性肝炎は肝硬変とは区別される。
【0349】
一部の実施形態では、アルコール性肝炎は、肝硬変がない(すなわち、肝硬変を伴わない)。
【0350】
一部の実施形態では、アルコール性肝炎を処置される患者は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)および/またはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルが、アルコール性肝炎に罹患していない対照群におけるレベルと比べて向上していると判定される。
【0351】
一部の実施形態では、対照群(すなわち、アルコール性肝炎がない)におけるASTのレベルは、約8~48IU/Lであり、対照群におけるALTのレベルは、約7~55IU/Lである。
【0352】
一部の実施形態では、処置される患者は、2:1より高いAST:ALT比を有する。この比は、アルコール性肝疾患を有する患者において特徴的である。アルコール乱用歴を有するが、深刻な肝臓のアルコール性肝炎または肝硬変のない患者は、1.0未満のAST/ALT比を通常、有する。
【0353】
一部の実施形態では、本開示の方法は、時として、リポイドネフローゼ(lipoid nephrosis)またはリポイドネフローゼ(nil disease)と称される、微小変化型疾患の処置を対象とする。一部の実施形態では、微小変化型疾患を処置するまたはそのリスクを低減する方法は、それを必要とする患者に有効量の本明細書において開示されている化合物を投与するステップを含む。一般に、微小変化型疾患は、糸球体における組織病理的病変から生じる腎疾患であり、浮腫および血管内容量の低下に至る、尿タンパクを特徴とする。微小変化型疾患は、ネフローゼ症候群の共通の形態である。
【0354】
一部の実施形態では、処置される微小変化型疾患は、ネフローゼ症候群に関連する。
【0355】
一部の実施形態では、処置される微小変化型疾患は、尿タンパク、特に過度の尿タンパクと同時に起こる。
【0356】
微小変化型疾患はまた、巣状分節性糸球体硬化症へと進行する恐れがある。したがって、一部の実施形態では、本開示の方法は、巣状分節性糸球体硬化症(FGS)の処置を対象とする。一部の実施形態では、FGSを処置するまたはそのリスクを低減する方法は、それを必要とする患者に有効量の本明細書において開示されている化合物を投与するステップを含む。一般に、FGSは、進行性腎疾患および過度の尿タンパクおよびポドサイト損傷のいずれにも共通した病変を説明する。腎臓の損傷および瘢痕化は、分節性パターンでの限局性関与を特徴とする。FGSはまた、ネフローゼ症候群の共通の原因である。
【0357】
一部の実施形態では、処置されるFSGSは、一次FSGSである。
【0358】
一部の実施形態では、処置されるFSGSは、二次FSGSである。
【0359】
一部の実施形態では、処置されるFSGSは、家族性FSGSである。常染色体優性FSGSは、逆ホルミン2(INF2)をコードする遺伝子、アルファ-アクチニン-4遺伝子ACTN4;TRPC6陽イオンチャネルタンパク質をコードする遺伝子;およびFilGAPタンパク質をコードする遺伝子ARHGAP24の変異に関連する(例えば、Pollak, M.R., Adv Chronic Kidney Dis., 2014, 21(5): 422-425を参照されたい)。FSGSの劣性型は、ネフリンをコードする遺伝子NPHS1;およびホスホリパーゼCイプシロン1をコードする遺伝子PLCE1の変異に関連する(例えば、Pollak、上記を参照されたい)。
【0360】
一部の実施形態では、処置されるFSGSは、ネフローゼ症候群に関連する。
【0361】
一部の実施形態では、処置されるFSGSは、腎不全および/または尿タンパク、特に過度の尿タンパクと同時に起こる。
【0362】
一部の実施形態では、FSGSを処置される患者は、微小変化型疾患の前歴を有する。
【0363】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物または薬学的に許容されるその塩を含む本開示の医薬組成物は、本明細書に記載されている適応症を処置するために全身投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、経口投与される。
【0364】
一部の実施形態では、医薬組成物は、液体である。一部の実施形態では、医薬組成物は、経鼻胃管により液体として投与される。
【0365】
一部の実施形態では、化合物は、I-1または薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、化合物は、I-2または薬学的に許容されるその塩である。
4.医薬組成物、投与および投与量
【0366】
化合物および組成物は、本発明の方法によれば、上記の疾患を処置するまたはその重症度を低下させるのに有効な任意の量および任意の投与経路を使用して投与される。必要な正確な量は、対象の種、年齢および一般状態、感染の重症度、具体的な薬剤、その投与様式などに応じて、対象ごとに様々となろう。本発明の化合物は、投与を容易にするためおよび投与量を均質とするために、単位剤形で好ましくは製剤化される。「単位剤形」という表現は、本明細書において使用する場合、処置される患者にとって適切な、物理的に個別の薬剤の単位を指す。しかし、本発明の化合物および組成物の1日あたりの合計使用量は、妥当な医療的判断の範囲内で、主治医により決定されることが理解されよう。任意の特定の患者または生物に対する具体的に有効な用量レベルは、処置される障害および障害の重症度、使用される具体的な化合物の活性、使用される具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康、性別および食事、投与時間、投与経路および使用される具体的な化合物の排出速度、処置期間、使用される具体的な化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物を含めた様々な因子、ならびに医療分野において周知の同様の因子に依存するであろう。
【0367】
本発明の薬学的に許容される組成物は、ヒトおよび他の動物に、処置される疾患の重症度に応じて、経口、直腸、非経口、嚢内、髄腔内、経皮、経粘膜、眼内、吸入により、膣内、腹腔内、局所(散剤、軟膏剤または点眼剤によるような)、口内、経鼻(経口噴霧剤または鼻腔噴霧剤として)などで投与され得る。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、所望の治療効果を得るため、1日あたり1回またはそれより多い回数で、1日あたり、対象の体重1kgあたり、約0.01mg~約50mg、例えば、約1mg~約25mgの投与量レベルで、経口投与または非経口投与される。
【0368】
本発明の単位剤形は、経口投与向けに製剤化され得る。経口投与に好適な医薬組成物/製剤は、以下に限定されないが、錠剤、迅速融解剤(fastmelt)、チュアブル錠剤、カプセル剤、丸剤、ストリップ剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、パステル剤、カシェ剤、ペレット剤、薬用チューイングガム剤、バルク散剤、発泡性もしくは非発泡性散剤、または発泡性もしくは非発泡性散顆粒剤、経口ミスト剤、溶液剤、エマルション剤、懸濁液剤、ウェハ剤、スプリンクル剤、エリキシル剤およびシロップ剤などの、離散性剤形として提供することができる。一部の実施形態では、このような剤形は、所定量の活性成分を含有し、当業者に公知の調剤方法によって調製することができる。一般に、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton Pa. (1990)を参照されたい。本明細書において使用する場合、経口投与には、口内、舌上および舌下投与も含む。
【0369】
一部の実施形態では、製剤は、1種もしくはそれより多種の薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む。
【0370】
当業者は、医薬製剤成分が、製剤内で複数の目的を果たし得ることを認識している。したがって、当業者は、ある特定の製剤構成成分は、複数の機能に応じて、分類され得ることを認識している(例えば、ある構成成分は、充填剤と結合剤の両方になり得る)。
【0371】
一部の実施形態では、本明細書において提供される単位剤形は、慣用的な医薬品のコンパウンディング技法に準拠して、以下に限定されないが、結合剤、充填剤、希釈剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、流動促進剤、着色剤、色素-移動阻止剤、甘味剤、着香剤、乳化剤、懸濁化剤および分散剤、保存剤、溶媒、非水性液体、有機酸および二酸化炭素源を含めた、1種もしくはそれより多種の薬学的に許容される賦形剤または担体との密な混合物に活性成分を一緒にすることによって調製される。賦形剤または担体は、投与に望ましい調製物の形態に応じて、幅広い形態をとることができる。例えば、経口用液体剤形またはエアロゾル剤形での使用に好適な賦形剤または担体は、以下に限定されないが、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存剤および着色剤を含む。固形経口剤形(例えば、散剤、錠剤、カプセル剤およびカプレット剤)で使用するのに好適な賦形剤または担体の例には、以下に限定されないが、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤が含まれる。
【0372】
一部の実施形態では、化合物I-1などの活性成分または薬学的に許容されるその塩は、噴霧乾燥散剤または顆粒剤として医薬組成物に組み込まれる。流体フィードストックから散剤を生成するための噴霧乾燥の使用は周知であり、用途は、粉ミルクからバルク化学品および医薬品までの範囲に及ぶ。米国特許第4,187,617号およびMujumbar et al., 91 Drying, pages 56-73 (1991)を参照されたい。薬物の固体アモルファス分散体および濃度向上ポリマーを形成するための噴霧乾燥の使用も公知である。それらのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれている、共同所有の欧州特許出願第0901786号、同第1027886号、同第1027887号、同第1027888号、ならびに共同所有のPCT出願番号WO00/168092およびWO00/168055を参照されたい。典型的な噴霧乾燥装置は、乾燥チャンバー、溶媒含有液体フィードを乾燥チャンバーに噴霧するための噴霧手段、乾燥チャンバーに向かう加熱乾燥ガスの供給源、および乾燥生成物を乾燥チャンバーから出た後の冷却済み乾燥ガスと蒸発溶媒流とから分離するための乾燥生成物回収手段を備える。そのような装置の例には、NiroモデルPSD-1、PSD-2およびPSD-4(Niro A/S、Soeborg、デンマーク)が含まれる。
【0373】
噴霧乾燥散剤または顆粒剤は、濃度向上ポリマーなどのポリマーとの組合せ物中に活性化合物を一般に含む。本発明により使用するのに好適な1つのクラスのポリマーは、イオン化不能な(中性の)非セルロースポリマーを含む。例示的なポリマーには、ヒドロキシル、アルキルアシルオキシおよび環式アミドからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するビニルポリマーおよびコポリマー;加水分解されていない(酢酸ビニル)形態のその繰り返し単位を少なくとも一部を有するポリビニルアルコール;ポリビニルアルコールポリ酢酸ビニルコポリマー;ポリビニルピロリドン;およびポリエチレンポリビニルアルコールコポリマー;およびポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーが含まれる。
【0374】
例示的な中性の非セルロースポリマーは、少なくとも1つの親水性ヒドロキシル含有繰り返し単位および少なくとも1つの疎水性アルキル-またはアリール含有繰り返し単位からなるビニルコポリマーから構成される。このような中性のビニルコポリマーは、「両親媒性ヒドロキシル官能性ビニルコポリマー」と命名される。両親媒性ヒドロキシル官能性ビニルコポリマーは、溶解度が低い疎水性の薬物と相互作用するのに十分な疎水性基と、やはりまた良好な溶解にとって十分な水溶解度を有するほど十分な親水性基の両方をもたらす、このようなコポリマーが両親媒性であるために、高濃度向上を提供すると考えられる。両親媒性ヒドロキシル官能性ビニルコポリマーのコポリマー構造により、親水性および疎水性を、特定の低溶解度薬物との性能を最大化するよう調節することも可能である。
【0375】
本発明により使用するのに好適な別のクラスのポリマーは、イオン化可能な非セルロースポリマーを含む。例示的なポリマーには、Rohm Tech Inc.(Malden、Mass.)によって製造されているEUDRAGIT(商標)シリーズなどの、カルボン酸官能基化ポリメタクリレートおよびカルボン酸官能基化ポリアクリレートなどのカルボン酸官能基化ビニルポリマー;アミン官能基化ポリアクリレートおよびポリメタクリレート;ゼラチンおよびアルブミンなどのタンパク質;およびグリコール酸デンプンなどのカルボン酸官能基化デンプンが含まれる。
【0376】
両親媒性である非セルロースポリマーとは、比較的親水性のモノマーと比較的疎水性のモノマーからなるコポリマーのことである。例には、アクリレートとメタクリレートとのコポリマーを含む。このようなコポリマーの例示的な市販グレードには、メタクリレートとアクリレーとのコポリマーである、EUDRAGIT(商標)シリーズが含まれる。
【0377】
追加のクラスのポリマーは、少なくとも1つのエステル連結置換基および/またはエーテル連結置換基を有するイオン化可能なセルロースポリマーおよび中性の(すなわちイオン化不可能な)セルロースポリマーであって、該ポリマーが、各置換基に関して、少なくとも0.05の置換度を有する、上記のセルロースポリマーを含む。本明細書において使用されるポリマー命名法では、エーテル連結置換基は、エーテル基に結合した部分として「セルロース」の前に列挙されていることに留意すべきである。例えば、「エチル安息香酸セルロース」は、エトキシ安息香酸置換基を有する。同様に、エステル連結置換基は、カルボキシレートとして「セルロース」の後ろに列挙される。例えば、「セルロースフタレート」は、ポリマーにエステル連結した各フタル酸エステル部分のカルボン酸を1つおよび未反応の他のカルボン酸を有する。
【0378】
「セルロースアセテートフタレート」(CAP)などのポリマー名称は、エステル連結基を介して、かなりの割合のセルロースポリマーのヒドロキシル基に結合した酢酸エステル基およびフタル酸エステル基を有する、セルロースポリマーのファミリーのいずれかを指すことにやはり留意すべきである。一般に、各置換基の置換度は、ポリマーの他の基準を満たしている限り、0.05~2.9の範囲とすることができる。「置換度」とは、置換されたセルロース鎖上のサッカライド繰り返し単位あたり3つのヒドロキシルの数平均を指す。例えば、セルロース鎖上のヒドロキシルがすべてフタル酸エステルに置換されている場合、フタル酸エステルの置換度は3である。同様に、各ポリマーファミリータイプ内には、ポリマーの性能を実質的に改変しない、比較的少量で付加された追加の置換基を有するセルロースポリマーが含まれる。
【0379】
両親媒性セルロース化合物は、親セルロースポリマーが、各サッカライド繰り返し単位上に存在する3つのヒドロキシル基のいずれかまたはすべてにおいて、少なくとも1つの比較的疎水性の置換基により置換されているポリマーを含む。疎水性置換基は、十分に高いレベルまたは置換度まで置換されている場合、セルロースポリマーを本質的に水溶性にすることができる、本質的に任意の置換基とすることができる。疎水性置換基の例には、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのエーテル連結アルキル基;または酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステルなどのエステル連結アルキル基;ならびにフェニル、安息香酸エステルまたはフェニレートなどのエーテルおよび/またはエステル連結アリール基が含まれる。ポリマーの親水性領域は、無置換ヒドロキシルが、それ自体、比較的親水性であるので、比較的、置換されていないそのような部分となり得るか、または親水性置換基により置換されているそのような領域となり得るかのどちらか一方である。親水性置換基には、ヒドロキシアルキル置換基、すなわちヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルなどのエーテルまたはエステル連結されたイオン化不可能な基、およびエトキシエトキシまたはメトキシエトキシなどのアルキルエーテル基が含まれる。特に、好ましい親水性置換基は、カルボン酸、チオカルボン酸、置換フェノキシ基、アミン、リン酸エステルまたはスルホン酸エステルなどの、エーテルまたはエステル連結されているイオン化可能な基であるものである。
【0380】
セルロースポリマーのクラスの1つは、中性ポリマーを含み、このポリマーは、水溶液中では、実質的にイオン化不可能であることを意味する。このようなポリマーは、イオン化不可能な置換基を含み、これは、エーテル連結されているか、またはエステル連結されているかのどちらか一方とすることができる。例示的なエーテル連結されているイオン化不可能な置換基には、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル基;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシアルキル基;およびフェニルなどのアリール基が含まれる。例示的なエステル連結されているイオン化不可能な置換基には、酢酸エステル、プロピオンエステル、酪酸エステルなどのアルキル基;およびフェニレートなどのアリール基が含まれる。しかし、アリール基が含まれている場合、ポリマーが、1~8の任意の生理的に関連するpHにおいて、少なくとも一部が水溶解性を有するよう、このポリマーは、十分な量の親水性置換基を含む必要があることがある。
【0381】
ポリマーとして使用され得る、例示的なイオン化不可能なセルロースポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースアセテートおよびヒドロキシエチルエチルセルロースを含む。
【0382】
中性セルロースポリマーの例示的なクラスは、両親媒性のものである。例示的なポリマーには、無置換ヒドロキシル置換基またはヒドロキシプロピル置換基に比べて、比較的数が多いメチル置換基または酢酸エステル置換基を有するセルロース繰り返し単位が、ポリマー上の他の繰り返し単位に比べて、疎水性の領域を構成する、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースアセテートが含まれる。
【0383】
セルロースポリマーの特定のクラスは、生理的に関連するpHにおいて少なくとも部分的にイオン化可能なポリマーを含み、少なくとも1つのイオン化可能な置換基を含み、これは、エーテル連結されているか、またはエステル連結されているかのどちらかとすることができる。例示的なエーテル連結したイオン化可能な置換基には、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、サリチル酸などのカルボン酸;エトキシ安息香酸またはプロポキシ安息香酸などのアルコキシ安息香酸、エトキシフタル酸およびエトキシイソフタル酸などのアルコキシフタル酸の様々な異性体、エトキシニコチン酸などのアルコキシニコチン酸の様々な異性体、およびエトキシピコリン酸などのピコリン酸の様々な異性体;チオ酢酸などのチオカルボン酸;ヒドロキシフェノキシなどの置換フェノキシ基など;アミノエトキシ、ジエチルアミノエトキシ、トリメチルアミノエトキシなどのアミンなど;ホスフェートエトキシなどのリン酸エステル;およびスルホネートエトキシなどのスルホン酸エステルが含まれる。例示的なエステル連結されているイオン化可能な置換基には、コハク酸エステル、クエン酸エステル、フタル酸エステル、テレフタル酸エステル、イソフタル酸エステル、トリメリット酸エステルなどのカルボン酸、およびピリジンジカルボン酸などの様々な異性体;チオコハク酸エステルなどのチオカルボン酸;アミノサリチル酸などの置換フェノキシ基;アラニンまたはフェニルアラニンなどの天然または合成アミノ酸などのアミン;アセチルリン酸エステルなどのリン酸エステル;およびアセチルスルホン酸エステルなどのスルホン酸エステルが含まれる。芳香族置換ポリマーが必要な水溶解度も有するためには、ヒドロキシプロピルまたはカルボン酸官能基などの十分な親水性基がポリマーに結合して、少なくとも任意のイオン化可能な基がイオン化されるpHの値において、ポリマーを水溶性にすることがやはり望ましい。一部の場合、フタル酸エステルまたはトリメリット酸エステル置換基などの芳香族置換基は、それ自体、イオン化可能となり得る。
【0384】
生理的に関連するpHにおいて少なくとも部分的にイオン化される例示的なセルロースポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシエチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートフタレート、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、エチルカルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、エチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネートフタレート、セルロースプロピオネートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースブチレートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、メチルセルロースアセテートトリメリテート、エチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテートスクシネート、セルロースプロピオネートトリメリテート、セルロースブチレートトリメリテート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート、セルロースアセテートピリジンジカルボキシレート、サリチル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルサリチル酸セルロースアセテート、エチル安息香酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルエチル安息香酸セルロースアセテート、エチルフタル酸セルロースアセテート、エチルニコチン酸セルロースアセテートおよびエチルピコリン酸セルロースアセテートが含まれる。
【0385】
親水性領域および疎水性領域を有する、両親媒性の定義を満たす、例示的なセルロースポリマーには、1つまたはそれより多くのアセテート置換基を有するセルロース繰り返し単位が、アセテート置換基を有さないもの、あるいは1つもしくはそれより多くのイオン化フタレートまたはトリメリテート置換基を有するものに比べて、疎水性である、セルロースアセテートフタレートおよびセルロースアセテートトリメリテートなどのポリマーを含む。
【0386】
イオン化可能なセルロースポリマーのさらなるサブセットは、カルボン酸官能性芳香族置換基と、アルキレート置換の両方を有するものであり、すなわち、両親媒性である。例示的なポリマーには、セルロースアセテートフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、エチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレートスクシネート、セルロースプロピオネートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースブチレートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、メチルセルロースアセテートトリメリテート、エチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテートスクシネート、セルロースプロピオネートトリメリテート、セルロースブチレートトリメリテート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート、セルロースアセテートピリジンジカルボキシレート、サリチル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルサリチル酸セルロースアセテート、エチル安息香酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルエチル安息香酸セルロースアセテート、エチルフタル酸セルロースアセテート、エチルニコチン酸セルロースアセテートおよびエチルピコリン酸セルロースアセテートが含まれる。
【0387】
イオン化可能なセルロースポリマーの別のサブセットは、非芳香族カルボキシレート置換基を有するものである。例示的なポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシエチルセルロースアセテートスクシネートおよびカルボキシメチルエチルセルロースが含まれる。生理的に関連するpHにおいて少なくとも部分的にイオン化されるこれらのセルロースポリマーのなかで、本発明者らは、以下:ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテートおよびカルボキシメチルチルセルロースが最も好ましいことを見出した。最も好ましいものは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)である。
【0388】
別のクラスのポリマーは、中和された酸性ポリマーからなる。「中和された酸性ポリマー」とは、多くの割合の「酸性部分」または「酸性置換基」が「中和されている」、すなわち、その脱プロトン化形態で存在する、任意の酸性ポリマーを意味する。「中和された酸性セルロースポリマー」とは、多くの割合の「酸性部分」または「酸性置換基」が「中和されている」、任意のセルロースの「酸性ポリマー」を意味する。「酸性ポリマー」とは、かなりの数の酸性部分を有する任意のポリマーを意味する。一般に、かなりの数の酸性部分が、1グラムのポリマーあたり、約0.1ミリ等量の酸性部分より多いか、またはこれに等しいと思われる。「酸性部分」は、水に接触するか、または水に溶解すると、水に水素陽イオンを少なくとも一部供与することができ、したがって、水素イオン濃度を増加させることができる、十分に酸性である任意の官能基を含む。この定義は、任意の官能基または「置換基」を含み、なぜなら、それらは、官能基が、約10未満のpKを有するポリマーに共有結合により結合している場合に呼ばれるからである。上記に含まれる、例示的なクラスの官能基には、カルボン酸、チオカルボン酸、リン酸塩、フェノール性基およびスルホン酸塩を含む。このような官能基は、ポリアクリル酸の場合などの、ポリマーの一次構造を構築することがあるが、より一般には、親ポリマーの主鎖に共有結合により結合しており、したがって、「置換基」と呼ばれる。
【0389】
噴霧乾燥分散体中に存在する薬物の量に対する濃度向上ポリマーの量は、薬物および濃度向上ポリマーに依存し、薬物対ポリマー重量比が0.01~5まで、幅広く変わり得る。しかし、大部分の場合、薬物用量が非常に低い場合、例えば、25mgまたはそれ未満である場合を除き、薬物対ポリマー比は、0.05より大きく、2.5未満であることが好ましく、多くの場合、薬物濃度または相対生体利用率の向上は、薬物対ポリマー比が1もしくはそれ未満において、または一部の薬物の場合、0.2またはそれ未満でさえ観察される。薬物用量が、約25mgまたはそれ未満である場合、薬物対ポリマー重量比は、0.05よりもかなり小さくてもよい。一般に、用量に関わらず、薬物濃度または相対生体利用率の向上は、薬物対ポリマー重量比が低下するにつれて向上する。しかし、錠剤、カプセル剤または懸濁液剤の合計質量を低く維持することに実用上の限界があるために、満足する結果が得られる限り、比較的高い薬物対ポリマー比を使用することが多くの場合、望ましい。満足する結果をもたらす薬物:ポリマーの比の最大値は、薬物ごとに様々となり、下記のin vitroおよび/またはin vivoでの溶解試験で最良に求められる。
【0390】
本明細書に記載されている噴霧乾燥固体は、本明細書に記載されている化合物および薬学的に許容されるポリマーを含有する、固体分散体とすることができる。本明細書に記載されているある特定の化合物は、一般に、水溶解度が低く、in vivoでのそれらの吸収により、溶解速度が限定される。化合物を含有する固体分散体は、化合物の溶解度/溶解を増大し、それによって、化合物の生体利用率を改善することができる。
【0391】
本明細書における用語「固体分散体」とは、不活性ポリマーマトリックス中に、固体状態の薬学的活性成分、例えば、本明細書において記載されている化合物の分散体を指す。固体分散体は、当分野で周知の方法、例えば、噴霧乾燥またはホットメルト押出成形によって調製することができる。マトリックスは、結晶性またはアモルファスのどちらか一方とすることができる。固体分散体は、薬学的活性成分および1種またはそれより多種の水溶性ポリマーの共沈殿物を含有し、この場合、薬学的活性成分は、該ポリマーから形成されるポリマーマトリックス内に一様に分散されている。薬学的活性成分は、アモルファス状態、結晶性分散形態またはそれらの組合せで存在することができる。薬学的活性成分はまた、ポリマーマトリックス中に、単一分子として微細に分散され得るか、または溶解することができる。固体分散体は、通常、噴霧乾燥法またはホットメルト押出成形法によって調製される。
【0392】
固体分散体を調製する方法は、(i)本明細書に記載されている化合物およびポリマーを有機溶媒中で混合し、フィーダー溶液を得る工程、および(ii)このフィーダー溶液をノズルから微細噴霧体としてチャンバーに噴霧乾燥し、ここで、溶媒を素早く蒸発させて、化合物およびポリマーを含有する粒子を生成する工程を含む。固体分散体の形成後に、得られた噴霧乾燥粒子は、二次乾燥工程を受けて、残留溶媒が除去される。二次乾燥工程は、静的乾燥器または撹拌式乾燥器で行うことができる。ガス、加湿ガス、真空を二次乾燥工程に適用することができ、このような適用は、噴霧乾燥粒子に依然として存在する残留溶媒を一層迅速に除去するのに有用である。
【0393】
上記の化合物およびポリマーを容易に溶解する、または分散させることができる任意の有機溶媒を使用することができる。有機溶媒の例には、炭素数がより少ないアルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノール;ケトン、例えば、メチルエチルケトンおよびブタノン;ならびにそれらの組合せが含まれる。
【0394】
一部の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤および担体は、充填剤、結合剤、希釈剤、崩壊剤、流動促進剤および滑沢剤から選択される。
【0395】
一部の実施形態では、本発明は、固形剤形の形態で提供された医薬組成物を含むカプセル剤または錠剤を提供する。一部の実施形態では、本発明は、カプセル剤を提供する。一部の実施形態では、本発明は、錠剤を提供する。
【0396】
ある特定の実施形態では、剤形は錠剤であり、錠剤は、標準的な当分野において認識されている錠剤加工手順および装置を使用して製造される。ある特定の実施形態では、錠剤を形成する方法は、本明細書において提供される固体形態を単独で、または例えば担体、添加物、ポリマーなどの1種もしくはそれより多種の賦形剤または担体と組み合わせて含む、粉状結晶性組成物および/または粒状組成物の直接圧縮である。ある特定の実施形態では、直接圧縮の代替として、錠剤は、湿式造粒法または乾式造粒法を使用して調製することができる。ある特定の実施形態では、錠剤は、湿っているか、またはそうではない場合、加工しやすい物質から始め、圧縮するよりもむしろ、成形される。ある特定の実施形態では、圧縮および造粒技法が使用される。
【0397】
ある特定の実施形態では、剤形はカプセル剤であり、カプセル剤は、標準的な当分野において認識されているカプセル剤加工手順および装置を使用して製造することができる。ある特定の実施形態では、カプセルが、本明細書において提供されている固体形態、および植物油または非水性の水混和性物質(例えば、ポリエチレングリコールなど)などを含む混合物を含有する、軟質ゼラチンカプセルが調製されてもよい。ある特定の実施形態では、例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、アミロペクチン、セルロース誘導体またはゼラチンなどの固体粉状担体と組み合わせて、本明細書において提供される固体形態の顆粒を含有する硬質ゼラチンカプセルを調製することができる。ある特定の実施形態では、硬質ゼラチンカプセルシェルは、ゼラチン、およびグリセロールなどの少量の可塑剤を含有する、カプセル用組成物から調製されてもよい。ある特定の実施形態では、ゼラチンの代替として、カプセルシェルは、炭水化物物質から作製されてもよい。ある特定の実施形態では、カプセル用組成物は、必要な場合、ポリマー、着色剤、着香剤および乳白剤をさらに含んでもよい。ある特定の実施形態では、カプセル剤は、HPMCを含む。
【0398】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1種またはそれより多種の充填剤を含む。ある特定の実施形態では、充填剤は、アルギン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、セルロースアセテート、圧縮糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース)、トウモロコシデンプン、デクストレート、エリスリトール、エチルセルロース、パルミトステアリン酸グリセリル、イソマルト、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、中鎖トリグリセリド、微結晶セルロース、アルファ化デンプン、ポリデキストロース、ポリメタクリレート、ケイ酸、シメチコン、アルギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ソルビトール、デンプン、球状糖、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、タルク、トラガカント、トレハロースおよびキシリトールまたはそれらの組合せから選択される。
【0399】
一部の実施形態では、充填剤は、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微結晶セルロース、粉末セルロース、デクストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプンおよびそれらの混合物から選択される。
【0400】
一部の実施形態では、充填剤は、微結晶セルロースである。一部の実施形態では、充填剤は、ラクトースである。一部の実施形態では、充填剤は、デンプンである。一部の実施形態では、充填剤は、デンプンとラクトースとの組合せ物である。一部の実施形態では、充填剤は、ラクトースおよび微結晶セルロースの組合せ物である。一部の実施形態では、充填剤は、上で列挙した、2種または3種の構成成分の組合せ物である。一部の実施形態では、充填剤は、少なくとも微結晶セルロース、ラクトースおよびマンニトールを含む。
【0401】
ある特定の実施形態では、本明細書において提供される剤形は、1種またはそれより多種の希釈剤を含む。希釈剤は、例えば、実用的なサイズの錠剤またはカプセル剤が最終的に得られるよう、嵩を増加させるために使用され得る。好適な希釈剤としては、特に、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、微結晶セルロース(例えば、AVICEL),マイクロファインセルロース、アルファ化デンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、糖、デクストレート、デキストリン、デキストロース、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸三カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、ポリメタクリレート(例えば、EUDRAGIT)、塩化カリウム、塩化ナトリウム、ソルビトールおよびタルクが挙げられる。希釈剤としては、また、例えば、アルギン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、セルロースアセテート、圧縮糖、粉砂糖、デクストレート、デキストリン、デキストロース、エリスリトール、エチルセルロース、フルクトース、フマル酸、パルミトステアリン酸グリセリル、イソマルト、カオリン、ラクチトール(lacitol)、ラクトース、マンニトール、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、中鎖トリグリセリド、微結晶セルロース、微結晶シリコン化セルロース、粉末セルロース、ポリデキストロース、ポリメチルアクリレート、シメチコン、アルギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、スクロース、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、タルク、トラガカント、トレハロースおよびキシリトールが挙げられる。
【0402】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1種またはそれより多種の結合剤を含む。結合剤は、例えば、錠剤またはカプセル剤に粘着性を付与するために使用され、こうして、製剤は、圧縮後に無傷のままで確実に存在することができる。一部の実施形態では、結合剤は、アカシアガム、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、カルボマー(例えば、アクリル酸ポリマー、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラゲナン、セルロースアセテートフタレート、セラトニア、キトサン、コポビドン、トウモロコシデンプン、綿実油、デクストレート、デキストリン、デキストロース、エチルセルロース、ゼラチン、ベヘン酸グリセリル、グアーガム、水素化植物油タイプI、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロース、イヌリン、ラクトース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ペクチン、ポロキサマー、ポリカルボフィル、ポリデキストロース、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ステアリン酸、スクロース、トリカプリリン、ビタミンE コハク酸ポリエチレングリコールおよびゼインから選択される。
【0403】
好適な結合剤には、以下に限定されないが、とりわけ、デンプン(バレイショデンプン、トウモロコシデンプンおよびアルファ化デンプンを含む)、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロースおよびラクトースを含む)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ワックス、ならびに天然および合成ガム、例えば、アカシア アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、セルロースポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースなどを含む)、veegum、カルボマー(例えば、carbopol)、ナトリウム、デキストリン、グアーガム、水素化植物油、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、ポビドン(例えば、KOLLIDON、PLASDONE)、微結晶セルロースが含まれる。結合剤にはまた、例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、カルボマー(cabomer)、カラゲナン、セルロースアセテートフタレート、セラトニア、キトサン、粉砂糖、コポビドン、デクストレート、デキストリン、デキストロース、エチルセルロース、ゼラチン、ベヘン酸グリセリル、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒプロメロース、イヌリン、ラクトース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、メチルセルロース、ポロキサマー、ポリカルボフィル、ポリデキストロース、ポリエチレンオキシド、ポリメチルアクリレート、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、アルファ化デンプン、ステアリン酸、スクロースおよびゼインが含まれる。
【0404】
微結晶セルロースの好適な形態には、以下に限定されないが、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103 AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(FMC Corporation、Marcus Hook、Pa)およびそれらの混合物として販売されている物質を含む。一部の実施形態では、特定の結合剤は、AVICEL RC-581として販売されている、微結晶セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物である。好適な無水のもしくは低水分の賦形剤または添加物には、AVICEL-PH-103(商標)およびStarch1500LMが含まれる。
【0405】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1種またはそれより多種の崩壊剤を含む。ある特定の実施形態では、崩壊剤は、アルギン酸、アルギン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロース、キトサン、コロイド状二酸化ケイ素、トウモロコシデンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ドキュセートナトリウム、グリシン、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、アルファ化デンプン、ポラクリリンカリウム、ポビドン、シリケート、アルギン酸ナトリウム(sodium aliginate)、炭酸ナトリウムおよびデンプングリコール酸ナトリウムから選択される。
【0406】
好適な崩壊剤には、以下に限定されないが、寒天;ベントナイト;メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどのセルロース;木材生成物;海綿;陽イオン交換樹脂;アルギン酸;グアーガムおよびVeegum HVなどのガム;柑橘パルプ;クロスカルメロースなどの架橋セルロース;クロスポビドンなどの架橋ポリマー;架橋デンプン;炭酸カルシウム;デンプングリコール酸ナトリウムなどの微結晶セルロース;ポラクリリンカリウム;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、タピオカデンプンおよびアルファ化デンプンなどのデンプン;クレイ;アライン;およびそれらの混合物が含まれる。
【0407】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1種またはそれより多種の界面活性剤を含む。一部の実施形態では、界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(例えば、Tween(登録商標)-20)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(例えば、Tween(登録商標)-80)、ラウリル硫酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウムから選択される。
【0408】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1種またはそれより多種の細孔形成剤を含む。一部の実施形態では、細孔形成剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、poloaxamer188、ポビドン(例えば、Kollidon K25/K30)または糖(例えば、グルコース、マンノース、フルクトースおよびスクロース)から選択される。
【0409】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1種またはそれより多種の流動促進剤を含む。一部の実施形態では、流動促進剤は、リン酸カルシウム、セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、ヒュームドシリカ、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウムおよびタルクから選択される。好適な流動促進剤には、以下に限定されないが、コロイド状二酸化ケイ素、CAB-O-SIL(商標)(Cabot Co.(Boston、MA))およびアスベスト不含タルクが含まれる。
【0410】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1種またはそれより多種の滑沢剤を含む。一部の実施形態では、滑沢剤は、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水素化ヒマシ油、水素化植物油、軽質鉱物油,ミリスチン酸、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、固体ポリエチレングリコール、ステアリン酸およびタルクから選択される。
【0411】
医薬組成物および剤形に使用することができる滑沢剤には、以下に限定されないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、軽質鉱物油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天およびそれらの混合物が含まれる。さらなる滑沢剤には、例えば、syloidシリカゲル(AEROSIL200、W.R. Grace Co.(Baltimore、Md)により製造)、合成シリカの凝固エアロゾル(Degussa Co.(Plano、Tex)によって上市)、CAB-O-SIL(Cabot Co.(Boston、Mass)により販売されている発熱性二酸化ケイ素生成物)およびそれらの混合物が含まれる。
【0412】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1種またはそれより多種のフィルムコーティング剤を含む。一部の実施形態では、フィルムコーティング剤は、ポリ(ビニルアルコール)基剤を含む。一部の実施形態では、フィルムコーティング剤は、着色剤または顔料を含む。一部の実施形態では、フィルムコーティング剤は、Opadry II(登録商標)イエローなどのOpadry II(登録商標)である。
【0413】
好適な着色剤には、以下に限定されないが、承認、保証がされている水溶性FD&C色素、およびアルミナ水和物上に懸濁させた水不溶性FD&C色素、およびレーキ顔料、ならびにそれらの混合物のいずれかが含まれる。レーキ顔料は、重金属の水和酸化物に水溶性色素を吸着させることによる組合せ物であり、色素を不溶性形態にする。
【0414】
好適な着香剤は、以下に限定されないが、果実などの植物から抽出された天然の風味剤、ならびにペパーミントおよびサリチル酸メチルなどの心地よい味覚を生じる化合物の合成ブレンドを含む。
【0415】
好適な甘味剤は、以下に限定されないが、スクロース、ラクトース、マンニトール、シロップ、グリセリン、ならびにサッカリンおよびアスパルテームなどの人工甘味剤を含む。
【0416】
好適な乳化剤には、以下に限定されないが、ゼラチン、アカシア、トラガカント、ベントナイト、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)-20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80(Tween(登録商標)-80)およびオレイン酸トリエタノールアミンなどの界面活性剤が含まれる。
【0417】
好適な懸濁化剤および分散剤には、以下に限定されないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガカント、Veegum、アカシア、カルボメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンが含まれる。
【0418】
好適な保存剤には、以下に限定されないが、グリセリン、メチルおよびプロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウムおよびアルコールが含まれる。
【0419】
好適な湿潤剤には、以下に限定されないが、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ジエチレングリコールおよびポリオキシエチレンラウリルエーテルが含まれる。
【0420】
好適な溶媒には、以下に限定されないが、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコールおよびシロップが含まれる。
【0421】
エマルションに利用される好適な非水性液体には、以下に限定されないが、鉱物油および綿実油が含まれる。
【0422】
好適な有機酸には、以下に限定されないが、クエン酸および酒石酸が含まれる。
【0423】
好適な二酸化炭素源としては、以下に限定されないが、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが含まれる。
【0424】
経口投与するための本明細書において提供される医薬組成物は、圧縮錠剤、錠剤状粉薬剤(tablet triturate)、チュアブルロゼンジ剤、迅速溶解錠剤、多重圧縮剤、または腸溶コーティング錠剤、糖コーティング錠剤またはフィルムコーティング錠剤として提供され得る。腸溶コーティング錠剤は、胃酸の作用に耐性であるが、腸で溶解するか、または崩壊する物質によってコーティングされた圧縮錠剤であり、したがって、胃の酸性環境から活性成分を保護する。腸溶コーティング剤には、以下に限定されないが、脂肪酸、脂肪、サリチル酸フェニル、ワックス、シェラック、アンモニア処理シェラック(ammoniated shellac)およびセルロースアセテートフタレートが含まれる。糖コーティング錠剤は、不快な味または臭いの覆い隠し、および錠剤の酸化からの保護に有益となり得る、糖コーティング剤によって囲まれた圧縮錠剤である。フィルムコーティング錠剤は、水溶性物質の薄層またはフィルムにより被覆された圧縮錠剤である。フィルムコーティング剤には、以下に限定されないが、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000およびセルロースアセテートフタレートが含まれる。フィルムコーティング剤は、糖コーティング剤と同じ一般特性を付与する。多重圧縮錠剤は、層状錠剤、および圧縮コーティング錠剤または乾燥コーティング錠剤を含めた、1つより多い圧縮サイクルによって作製される圧縮錠剤である。
【0425】
錠剤剤形は、粉末形態、結晶形態または粒状形態の活性成分から単独で、または結合剤、崩壊剤、制御放出ポリマー、滑沢剤、希釈剤および/もしくは着色剤を含めた、本明細書に記載されている1種もしくはそれより多種の担体または賦形剤と組み合わせて調製することができる。
【0426】
本開示の錠剤は、迅速放出、持続放出、徐放放出または調節放出向けに製剤化され得る。
【0427】
一部の実施形態では、本発明の単位剤形は、微結晶セルロース、ラクトース一水和物(修飾されている)、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムから選択される、1種またはそれより多種の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0428】
経口投与向けの液状剤形には、以下に限定されないが、薬学的に許容されるエマルション剤、マイクロエマルション剤、溶液剤、懸濁液剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、液状剤形は、例えば、水、またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などの他の溶媒、可溶化剤および乳化剤などの当分野において一般に使用される不活性希釈剤を含有してもよい。不活性希釈剤の他に、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、着香剤および芳香剤などのアジュバントを含むことができる。
【0429】
公知技術に従い、好適な分散剤または湿潤剤、および懸濁化剤を使用して、注射調製物、例えば注射可能な滅菌水性懸濁液剤または油性懸濁液剤が製剤化されてもよい。滅菌注射調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液剤として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の注射可能な滅菌溶液剤、懸濁液剤またはエマルション剤とすることもできる。使用することができる許容されるビヒクルおよび溶媒のなかには、水、リンゲル液、U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌不揮発油が、溶媒または懸濁媒体として慣用的に使用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性不揮発油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製に使用される。
【0430】
注射可能な製剤は、使用前に、例えば、細菌保持フィルターにろ過することにより、あるいは滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体中に溶解または分散することができる滅菌固体組成物の形態の殺菌剤を配合することにより滅菌され得る。
【0431】
本発明の化合物の作用を延長するため、皮下または筋肉内の注射からの化合物の吸収を減速させることが望ましいことが多い。これは、水への溶解度に乏しい、結晶性物質またはアモルファス性物質の液体懸濁液の使用により行うことができる。次に、化合物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、ひいては、結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。代替として、非経口的に投与される化合物形態の吸収遅延は、油性ビヒクル中に化合物を溶解または懸濁することにより行われる。ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に、化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成させることにより、注射可能なデポ形態が作製される。化合物のポリマーに対する比、および使用される特定のポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。注射可能なデポ製剤はまた、身体組織と適合可能なリポソームまたはマイクロエマルション中に化合物を捕捉することにより調製される。
【0432】
直腸または膣投与向けの組成物は、本発明の化合物を、周囲温度では固体であるが、体温では液体であり、したがって直腸または膣腔内で融解して活性化合物を放出する、カカオ脂、ポリエチレングリコールまたは坐剤用ワックスなどの好適な非刺激性賦形剤または担体と混合することにより調製することができる坐剤が好ましい。
【0433】
上記の通り、活性化合物はまた、1種またはそれより多種の賦形剤とのマイクロカプセル封入形態にあることもできる。錠剤、ドラジェ剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固形剤形は、医薬調合分野において周知の、腸溶コーティング剤、放出制御コーティング剤および他のコーティング剤などのコーティング剤およびシェルを用いて調製することができる。このような固形剤形では、活性化合物は、スクロース、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1種の不活性希釈剤と混合されてもよい。このような剤形はまた、通常作業の通り、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロースなどの錠剤化用滑沢剤および他の錠剤化助剤を含んでもよい。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は、緩衝化剤も含んでもよい。それらは、乳白剤を必要に応じて含有してもよく、それらは、腸管のある特定の部分において、必要に応じて遅延させて、活性成分だけをまたは活性成分を優先的に放出する組成物とすることもできる。使用することができる組成物を埋め込む例には、ポリマー物質およびワックスが含まれる。
【0434】
本発明の化合物の局所投与または経皮投与向け剤形には、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、溶液剤、噴霧剤、吸入薬またはパッチ剤が含まれる。活性構成成分は、滅菌条件下において、薬学的に許容される担体、および任意の必要な保存剤、または必要となることがある緩衝化剤と混合される。眼科用製剤、点耳剤および点眼剤も、本発明の範囲内にあることがやはり企図されている。さらに、本発明は、身体への化合物の制御送達の提供という追加の利点を有する、経皮パッチ剤の使用を企図する。このような剤形は、適切な媒体中に化合物を溶解または分注することにより作製することができる。吸収促進剤はまた、化合物の皮膚への流れを増大させるために使用することもできる。この速度は、速度制御膜を設けること、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に化合物を分散させることのどちらか一方によって制御することができる。
【0435】
一部の実施形態では、本発明は、開示されている化合物のプロドラッグを含む、本明細書に記載されている組成物を対象とする。用語「プロドラッグ」は、本明細書において使用する場合、化合物に対する代謝手段によって(例えば、加水分解によって)、in vivoで変換可能な化合物を意味する。それらの各々の全体が参照により本明細書に組み込まれている、例えば、Bundgaard, (ed.), Design of Prodrugs, Elsevier (1985); Widder, et al. (ed.), Methods in Enzymology, vol. 4, Academic Press (1985); Krogsgaard-Larsen, et al., (ed). Design and Application of Prodrugs, Textbook of Drug Design and Development, Chapter 5, 113-191 (1991), Bundgaard, et al., Journal of Drug Delivery Reviews, 8:1-38(1992), Bundgaard, J. of Pharmaceutical Sciences, 77:285 et seq. (1988);およびHiguchi and Stella (eds.) Prodrugs as Novel Drug Delivery Systems, American Chemical Society (1975)に議論されているものなどの、プロドラッグの様々な一般形態が当分野において公知である。
【0436】
錠剤またはカプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル剤)の形態での経口投与の場合、活性薬物構成成分は、エタノール、グリセロール、水などの経口用の非毒性の薬学的に許容される不活性担体と一緒にすることができる。さらに、望ましい場合または必要な場合、好適な結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤を混合物に配合することもできる。好適な結合剤には、デンプン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン、グルコースまたはベータ-ラクトースなどの天然糖、コーン甘味剤、アカシア、トラガカントなどの天然および合成ガム、またはアルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ワックスなどが含まれる。これらの剤形において使用される滑沢剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、シリカ、滑石、ステアリン酸、そのマグネシウムもしくはカルシウム塩、および/またはポリエチレングリコールなどが含まれる。崩壊剤には、非限定的に、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムデンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または発泡剤混合物、クロスカルメロースもしくはそのナトリウム塩などが含まれる。希釈剤には、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシンが含まれる。
【0437】
錠剤は、錠剤の製造に好適な非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物に活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアカシアおよび滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクとすることができる。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、または胃腸管において崩壊および吸収を遅延させるために公知技法によってコーティングされて、これにより、一層長い期間にわたる持続作用を提供することができる。
【0438】
経口用製剤中の本明細書に記載されている化合物の治療有効用量は、1日あたりの、患者の体重1kgあたり0.01mg~50mg、より詳細には0.01~10mgと様々であってもよく、これは、1日あたりの単回用量または多回用量で投与することができる。経口投与の場合、薬物は、1mg~500mg、具体的には、1mg、5mg、10mg、20mg、50mg、100mg、250mgおよび500mgの活性成分を含有する錠剤またはカプセル剤の形態で、または少なくとも1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%(w/w)の活性成分を含有する錠剤もしくはカプセル剤の形態で送達することができる。例えば、カプセル剤は、50mgの活性成分、または5~10%(w/w)の活性成分を含有することができる。例えば、錠剤は、100mgの活性成分、または20~50%(w/w)の活性成分を含有することができる。例えば、錠剤は、活性成分に加えて、崩壊剤またはエモリエント(例えば、クロスカルメロースまたはそのナトリウム塩およびメチルセルロース)、希釈剤(例えば、微結晶セルロース)および滑沢剤(例えば、ステアリン酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)を含有することができる。薬物は、毎日、1日1回、2回またはそれより多い回数のいずれかで投与することができる。
【0439】
吸入による投与の場合、化合物は、好適な噴射剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含有する加圧容器もしくはディスペンサーから、またはネブライザーからのエアロゾル噴霧剤の形態で送達することができる。
【0440】
経粘膜または経皮投与の場合、浸透される障壁に適切な浸透剤が、製剤で使用される。このような浸透剤は、一般に、当分野で公知であり、例えば、経粘膜投与の場合、洗剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、点鼻薬または坐剤の使用によって行うことができる。経皮投与の場合、活性化合物は、一般に当分野で公知の軟膏剤、膏薬、ゲル剤またはクリーム剤に製剤化される。浸透促進剤は、角膜の障壁から薬物の浸透を促進し、上皮細胞層の完全性を変化させる。眼用製剤において高い頻度で使用される浸透促進剤には、シクロデキストリン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリココール酸ナトリウムおよび関連するコール酸塩、Tween(登録商標)20(非イオン性ポリソルベート界面活性剤)、Brij35(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、サポニンおよび胆汁酸塩が含まれる。一般に、EDTAおよびコール酸塩などの浸透促進剤は、角膜上皮の隣接細胞間の密着結合を一過的に緩める。したがって、浸透促進剤は、眼に局所施用されると、タンパク質およびペプチドを角膜上皮に通過させて送達するために首尾よく施用される。一部の実施形態では、本明細書に記載されている製剤には、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウムまたはタウロコール酸ナトリウムなどの浸透促進剤が含まれる。
【0441】
一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤または経粘膜用製剤における薬学的に許容される賦形剤は、シクロデキストリンである。シクロデキストリンは、浸透促進剤および粘膜付着剤として働くことが知られている。一部の実施形態では、シクロデキストリンは、α-、β-またはγ-シクロデキストリンである。一部の実施形態では、シクロデキストリンは、以下に限定されないが、α-、β-およびγ-シクロデキストリンのヒドロキシアルキル誘導体(とりわけ、β-シクロデキストリンおよびγ-シクロデキストリンのヒドロキシエチルおよびヒドロキシプロピル誘導体)、ランダムにメチル化されているβ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルγ-シクロデキストリン、ならびにグルコシル-β-シクロデキストリンおよびグルコシル-γ-シクロデキストリンなどのいわゆる分岐β-およびγ-シクロデキストリン誘導体を含めた、シクロデキストリンの薬学的に許容される誘導体である。天然シクロデキストリンは、単独で、または2種もしくはそれより多種のシクロデキストリンの混合物、非限定例として、γ-シクロデキストリンとさらに水溶性のヒドロキシプロピルγ-シクロデキストリン、またはγ-シクロデキストリンとスルホブチルエーテルγ-シクロデキストリン、またはβ-シクロデキストリンとヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、またはβ-シクロデキストリンとスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンの混合物でのどちらかで使用される。
【0442】
一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤または経粘膜用製剤におけるシクロデキストリンは、0~20%w/vの濃度である。一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤中のシクロデキストリンは、1~18%w/v、1~16%w/v、1~14%w/v、2~12%w/v、4~10%w/v、5~9%w/vまたは6~8%w/vの濃度にある。一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤におけるシクロデキストリンは、7%~11%w/vの濃度である。一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤におけるシクロデキストリンは、約1%w/v、2%w/v、3%w/v、4%w/v、5%w/v、6%w/v、7%w/v、8%w/v、9%w/v、10%w/v、11%w/v、12%w/v、13%w/v、14%w/v、15%w/v、16%w/v、17%w/v、18%w/v、19%w/vまたは20%w/vの濃度にある。
【0443】
一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤または経粘膜用製剤における薬学的に許容される賦形剤は、特に、約7%w/vなどの上記で指定した濃度および濃度範囲のいずれかにおけるスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンである。一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤における薬学的に許容される賦形剤は、特に、約7%w/vなどの上記で指定した濃度および指定した濃度範囲のいずれかでのヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。
【0444】
一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤は、薬学的に許容される緩衝化剤を含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される緩衝化剤は、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、tris緩衝液、ヒスチジン緩衝液または酢酸緩衝液である。
【0445】
一部の実施形態では、薬学的に許容される緩衝化剤は、リン酸二ナトリウムである。一部の実施形態では、薬学的に許容される緩衝化剤は、リン酸一ナトリウムである。一部の実施形態では、薬学的に許容される緩衝化剤は、リン酸二ナトリウムとリン酸一ナトリウムとの混合物である。一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤は、約0.083%w/vのリン酸二ナトリウムおよび約0.017%w/vのリン酸一ナトリウムを含む。
【0446】
一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤は、ほぼ中性pHにある。一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤は、6.5~8のpHにある。一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤は、6.9~7.7のpHにある。一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤は、7.1~7.5のpHにある。一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤は、約7.3のpHにある。
【0447】
薬学的に許容される酸および/または塩基を眼科用溶液剤に使用して、pHを調節することができる。一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤は、薬学的に許容される酸を含む。一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤は、薬学的に許容される塩基を含む。一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤は、薬学的に許容される酸および塩基を含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される酸は、塩酸である。一部の実施形態では、薬学的に許容される塩基は、水酸化ナトリウムである。
【0448】
一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤は、等張化剤を含む。一部の実施形態では、等張化剤は、デキストロース、塩化カリウム、プロピレングリコールおよび塩化ナトリウムからなる群から選択される。一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤は、約0.5%w/v未満の濃度で等張化剤を含む。一部の実施形態では、本発明の眼科用溶液剤は、約0.45%、0.4%、0.35%、0.3%、0.25%、0.2%、0.15%または0.1%w/vの濃度で等張化剤を含む。一部の実施形態では、等張化剤は、塩化ナトリウムである。
【0449】
本明細書に記載されている化合物を含む非経口用製剤は、等張性水溶液または懸濁液で調製することができ、坐剤は、脂肪エマルションまたは懸濁液から調製するのが有利である。製剤は、滅菌されていてもよく、かつ/または保存剤、安定化剤、湿潤剤もしくは乳化剤、溶液促進剤、浸透圧を調節するための塩および/または緩衝剤などのアジュバントを含有してもよい。さらに、それらはまた、他の治療上有益な物質を含有してもよい。組成物は、従来の方法によって調製され、本明細書に記載されている化合物を約0.1~75%、好ましくは約1~50%含むことができる。
【0450】
「非経口投与」および「非経口投与される」という言い回しは、当分野で認識されている用語であり、経腸および局所投与以外の、注射などによる投与様式を含み、非限定的に、静脈内、筋肉内、胸膜内、血管内、心膜内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内および胸骨内注射ならびに注入を含む。
【0451】
皮膚への局所投与向け製剤は、薬学的に許容される担体に一級アミン化合物を含む、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤およびペースト剤を含むことができる。局所使用向けの一級アミン化合物の製剤は、当業者に周知の通り、油性または水溶性の軟膏剤用基剤の調製を含む。例えば、これらの製剤は、植物油、動物脂肪、および例えば、石油から得られる半固体炭化水素を含んでもよい。使用される具体的な構成成分は、白色軟膏、黄色軟膏、セチルエステルワックス、オレイン酸、オリーブ油、パラフィン、ワセリン、白色ワセリン、鯨蝋、グリセリンデンプン、白蝋、黄蝋、ラノリン、無水ラノリンおよびモノステアリン酸グリセリルを含んでもよい。グリコールエーテルおよび誘導体、ポリエチレングリコール、ステアリン酸ポリオキシル40およびポリソルベートを含めた、軟膏剤用の様々な水溶性基剤も使用してもよい。
【0452】
局所投与向け製剤は、0.001~10%、0.05~10%、0.1~10%、0.2~10%、0.5~10%、1~10%、2~10%、3~10%、4~10%、5~10%もしくは7~10%(重量/体積)の範囲、または0.001~2.0%、0.001~1.5%もしくは0.001~1.0%(重量/体積)の範囲、または0.05~2.0%、0.05~1.5%もしくは0.05~1.0%(重量/体積)の範囲、または0.1~5.0%、0.1~2.0%、0.1~1.5%もしくは0.1~1.0%(重量/体積)の範囲、または0.5~5.0%、0.5~2.0%、0.5~1.5%もしくは0.5~1.0%(重量/体積)の範囲、または1~5.0%、1~2.0%もしくは1~1.5%(重量/体積)の範囲の濃度で、本出願において使用される化合物を含有することができる。局所投与向け製剤はまた、0.001~2.5%、0.01~2.5%、0.05~2.0%、0.1~2.0%、0.2~2.0%、0.5~2.0%もしくは1~2.0%(重量/重量)の範囲、または0.001~2.0%、0.001~1.5%、0.001~1.0%もしくは0.001~5%(重量/重量)の範囲の濃度で、本出願に使用される化合物を含有することができる。
【0453】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩は、全身投与される。一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩は、固体医薬組成物の部分として、経口投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、液体である。一部の実施形態では、医薬組成物は、経鼻胃管により液体として投与される。
【0454】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約10mg~約10,000mgである。一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約10mg~約7500mgである。一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約50mg~約3600mgである。一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約250mg~約2400mgである。一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約600mg~約5000mgである。一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、1日あたり約1000mg~約7500mgである。
【0455】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩は、1日1回、2回、3回または4回、投与される。一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩は、1日2回、投与される。
【0456】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩の用量は、BID(すなわち、1日2回)で約600mg;BIDで1.2g;またはBIDで2.4gである。
【0457】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1つまたはそれより多くに分割された用量で毎日投与される。一部の実施形態では、組成物は、1日1回(qua diem;QD)、投与される。一部の実施形態では、組成物は、1日2回(bis in die:BID)、投与される。一部の実施形態では、組成物は、1日3回(ter in die:TID)、投与される。一部の実施形態では、組成物は、1日4回、(quater in die:QID)、投与される。一部の実施形態では、組成物は、4時間毎(quaque four hours;q4h)に投与される。
【0458】
一部の実施形態では、化合物I-1は、医薬品有効成分として選択されて、薬物製品にコンパウンディングする前に、加工されてその最も安定な多形などのその固体形態に製造される。一部の実施形態では、固体形態、例えば、多形は、参照により本明細書に組み込まれている、WO2020/223685として公開されているPCT/US2020/031138に記載されているものの1つである。
【0459】
一部の実施形態では、化合物I-1の固体形態は、実質的にアモルファスもしくは結晶性であるか、またはそれらの混合物である。一部の実施形態では、固体形態は、不純物を実質的に含まない。
【0460】
ある特定の実施形態では、化合物I-1は、結晶性固体である。一部の実施形態では、化合物I-1は、アモルファス化合物I-1を実質的に含まない結晶性固体である。本明細書において使用する場合、用語「アモルファス化合物I-1を実質的に含まない」は、この化合物が有意な量のアモルファス化合物I-1を含まないことを意味する。一部の実施形態では、結晶性化合物I-1が少なくとも約95重量%存在する。本発明のさらに他の実施形態では、結晶性化合物I-1は、少なくとも約99重量%存在する。
【0461】
化合物I-1は、様々な固体形態で存在することができることが見出されている。例示的なこのような形態は、以下に記載されているものなどの多形を含む。
【0462】
一部の実施形態では、化合物I-1は、アモルファスである。一部の実施形態では、化合物I-1はアモルファスであり、結晶性化合物I-1を実質的に含まない。
【0463】
一部の実施形態では、化合物I-1は、化合物5:
【化25】
(形態は、形態Aまたは形態Bである)から選択される、PCT/US2020/031138における固体形態である。一部の実施形態では、化合物は、結晶性である。一部の実施形態では、化合物は、アモルファス化合物5を実質的に含まない結晶性固体である。一部の実施形態では、化合物は、不純物を実質的に含まない。一部の実施形態では、化合物は、約13.9、約15.8および約24.3度の2シータのピークから選択される1つまたはそれより多くのそのXRPDのピークを有する。一部の実施形態では、化合物は、約13.9、約15.8および約24.3度の2シータのピークから選択される少なくとも2つのそのXRPDのピークを有する。一部の実施形態では、化合物は、形態Aである。一部の実施形態では、化合物は、PCT/US2020/031138の図21に図示されているXRPDと実質的に類似したXRPDを有する。一部の実施形態では、化合物は、約10.2、約17.0および約28.8度の2シータのピークから選択される1つまたはそれより多くのそのXRPDのピークを有する。一部の実施形態では、化合物は、約10.2、約17.0および約28.8度の2シータのピークから選択される少なくとも2つのそのXRPDのピークを有する。一部の実施形態では、化合物は、形態Bである。一部の実施形態では、化合物は、PCT/US2020/031138の図23に図示されているXRPDと実質的に類似したXRPDを有する。
【0464】
一部の実施形態では、化合物I-1は、PCT/US2020/031138に記載されている、以下:
形態Aの化合物A:
【化26】
形態Aまたは形態Bの化合物1:
【化27】
形態Aの化合物2:
【化28】
形態A、形態B、形態Cまたは形態Dの化合物3:
【化29】
形態Aまたは形態Bの化合物4:
【化30】
形態Aまたは形態Bの化合物6:
【化31】
形態Aまたは形態Bの化合物7:
【化32】
形態Aの化合物8:
【化33】
形態A、形態Bまたは形態Cの化合物9:
【化34】
形態Aの化合物10:
【化35】
および
形態Aの化合物11:
【化36】
からなる群から選択される、固体形態である。
【0465】
一部の実施形態では、本発明は、化合物Aの形態の化合物I-1の固体形態を含む、医薬組成物または単位剤形であって、化合物Aは約10.4、約17.5および約20.9度の2シータのピークから選択される1つまたはそれより多いピークを有する、医薬組成物または単位剤形を提供する。一部のこのような実施形態では、本発明は、約10.4、約17.5および約20.9度の2シータのピークから選択される少なくとも2つのそのXRPDのピークを有する、化合物Aを提供する。一部のこのような実施形態では、本発明は、形態Aである化合物Aを提供する。一部の実施形態では、本発明は、PCT/US2020/031138の図1に図示されているXRPDと実質的に類似したXRPDを有する、化合物Aを提供する。
【0466】
一部の実施形態では、キノリン化合物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第10,550,085号に記載されている重水素に富む化合物である。
【0467】
本出願において引用されているすべての刊行物、特許、特許出願および他の文書は、個々の刊行物、特許、特許出願または他の文書が、すべての目的のために、参照により組み込まれているよう個々に示されているかのごとく同じ程度に、その全体がすべての目的のため、参照により本明細書に組み込まれている。
【0468】
本発明の態様の各々のすべての特徴は、すべての他の態様に変更すべきところは変更して適用される。
【実施例
【0469】
(実施例1)
固形経口投与製剤
化合物I-1を、医薬品有効成分として選択した。この場合、I-1の最も安定な多形を製剤に使用した。I-1薬物製品に使用した賦形剤はすべて、それぞれの公定のモノグラフに適合する。使用する賦形剤のいずれも、ヒトまたは動物起源ではない。
製剤開発
【0470】
化合物I-1を、10mgおよび100mgの単位用量カプセルに製剤化した。さらなる強度の将来的な導入を可能にするよう提案した臨床製剤を開発する。
【0471】
噴霧乾燥をこの化合物の製剤に選択した。安定なアモルファス固体分散体中にポリマーを含む化合物を共沈殿させることによって、噴霧乾燥が溶解速度を改善し、生体利用率を増大させた。I-1原薬は、水性媒体中では溶解度に乏しい疎水性物質であるが、非極性溶媒中では、溶解度が増大する。これによって、I-1は、噴霧乾燥分散体(SDD)による製剤の適用にとって適切な候補になる。
賦形剤適合性試験および選択:
【0472】
I-1と適合可能なポリマーとしてEudragit L100を選択し、I-1と噴霧乾燥した場合、許容される安定性および分散体特徴となることを実証した。I-1およびEudragit L100をメタノールに溶解し、噴霧乾燥して、噴霧乾燥中間体(spray dried intermediate:SDI)を生成し、これを次に、賦形剤選択の試験に適用した。
【0473】
適合性に関して、ならびにゼラチンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルとの適合性について、I-1 SDIを用いて複数の賦形剤を試験した。賦形剤は、ブレンド生成に際し、公知の物理特性および製造性に基づいて選択した(表A)。
【表6】
SDIと賦形剤との混合物を調製し、化学的安定性および物理的安定性に関して評価した。各ブレンドの試料を25℃/60%RH(2週間だけ開放)、40℃/75%RH(開放)および60℃(密閉)で保管し、28日目まで試験した。試料は、物理的安定性(目視)、X線粉末回折(XRPD)による構造安定性、および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による純度に関して分析した。
【0474】
100mgの化合物I-1を含むカプセル剤を、非滅菌噴霧乾燥粒状パウダーブレンドとして製造した。次に、このブレンドを経口送達用のカプセルに充填した。このカプセル剤を高密度ポリエチレン製ボトルに包装した。100mgのカプセル剤の量的組成を表Bに示す。
【表7】
USP=米国薬局方; EP=欧州薬局方; JP=日本薬局方; NF=国民医薬品集。
(実施例2)
イヌにおける、静脈内、経口(カプセル剤)および経口(強制投与)投与経路による化合物I-1の薬物動態
略称の一覧表示
【表8】
【0475】
薬物動態研究は、カプセル剤および懸濁液剤の経口用製剤対静脈用製剤の生体利用率を比較するために行った。
生物学的分析の要約
【0476】
標準曲線を1~2,000ng/mLで用意した。QC試料を30、30、および750ng/mLで調製した。希釈QCは、10倍希釈で調製した。重水素化(d)I-1(化合物I-7)を内部標準として使用した。50μLとなる一定分量の試料を、アセトニトリル中、150μLの冷内部標準に加え、タンパク質沈殿を行った。得られた上清をLCMSによって分析した。希釈試料データは、曲線外結果に対してのみ利用した。
薬物動態の要約
【0477】
静脈内データを分析し、1.82時間の半減期(t1/2)と求めた。クリアランス(CL)は、12.2ml/kg/分と中度であった。定常状態の分布容積は、1,385mL/kgと推定した。カプセル剤および強制経口投与経路に関する生体利用率の結果は、それぞれ、83%および75%と同様であった。生体利用率に関しては、カプセル剤と強制投与経路との間に、実験の誤差範囲内で差異はなかった。カプセル剤経路のTmaxは、2.37時間であり、強制経口投与経路のTmaxは、0.518時間であった。
実験設計
【0478】
手短に述べると、9匹の雄の非ナイーブなビーグル犬を3つの用量群へと3つの群に割り当てた。群1には、静脈内経路によって、20%スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(SBECD)のビヒクルで3mg/kgを投与した。群2には、強制経口投与経路によって、0.5%メチルセルロース(MC)のビヒクル中で10mg/kgを投与した。群3には、100mgのカプセル剤を投与した。
【0479】
100mgのI-1のカプセル剤を、非滅菌噴霧乾燥粒状パウダーブレンドとして製造する。次に、このブレンドを経口送達用のカプセルに充填する。このカプセル剤を高密度ポリエチレン製ボトルに包装する。100mgのI-1のカプセル剤の量的組成を上の表Bに示す。
投与
【0480】
製剤は、適切な日に時間0で動物に投与する。
【0481】
手順:(PO)強制投与:製剤をゴム製の強制経口投与用の管を介して投与し、次いで、飲料水10mLで勢いよく流す。(PO)錠剤:錠剤は、咽頭の裏側に錠剤を置き、次いで水10mLで勢いよく流すことによって、経口投与する。
サンプリング
【0482】
頻度:投与前、投与後(IV)の5、15、30分間、1、2、4、8および12時間時;投与前、投与後(強制投与によるPOおよびカプセル剤によるPO)の15、30分間、1、2、4、8および12時間時。
【0483】
血液採集:各血液試料をイヌの頚静脈または他の利用可能な静脈から直接の静脈穿刺により採取し、KEDTAを含有する予めラベルを張り付けた管に入れ、遠心分離するまで氷上に維持する。
【0484】
血漿調製および保管:4C、3,000×で5分間、遠心分離する。分析するまで、冷凍庫に保管する。
薬物動態
【0485】
非GLP試験のためのツールとして、WinNonLin(商標)に対して薬物動態パッケージPKSolver2.0(商標)をバリデートし、これを使用して、薬物動態データを処理した。
【0486】
各経路に関して、平均データをノンコンパートメントモデル、1コンパートメントモデルおよび2コンパートメントモデルで処理した。a)重み付けなし、b)1/観察された濃度、またはc)1/観察された濃度の二乗のいずれかを用いて、これらのモデルの適合度およびこれらのモデルの精度を評価して、2相データを評価した。1/予測濃度、および1/予測濃度の二乗の重み付けもまた、最良あてはめのために評価した。カプセル剤データの場合、1匹の動物が、0.25時間の時間点において、71.5ng/mLで観察され、他の2匹の対象はゼロであった。ゼロを71.5の値と平均して、平均結果は23.8となった。群2(PO強制投与)では、対象3は、30mLの嘔吐を経験し、そこで、その対象に割り当てた用量を7.46とした。すべての場合において、対象を個別にモデル化し、個々のPKパラメータを平均して、最終パラメータを得た。
【0487】
群1(静脈内)の場合、選択した最終モデルは、1/観察された濃度の二乗の重み付けで、2コンパートメントモデルとした。対象1、2および3は、それぞれ、0.9942、0.9941および0.9905のR2値、ならびにそれぞれ、-5.68、-8.67および-3.18のAICを有した。
【0488】
群2(強制経口投与)の場合、最終モデルは、1/予測濃度の二乗の重み付けで、2コンパートメントモデル血管外モデルとした。対象1、2および3は、それぞれ、0.9641、0.9807および0.9397のR2値、ならびにそれぞれ、-3.75、-7.63および2.29のAICを有した。
【0489】
群3(経口カプセル剤)の場合、最終モデルは、時間差および重み付けなしで、1コンパートメントモデル血管外モデルとした。対象1、2および3は、それぞれ、0.8561、0.8738および0.7615のR2値、ならびにそれぞれ、87.9、96.5および99.4のAICを有した。mg/kgの用量を各個体に割り当てるために、各動物の体重を使用した。対象1には、7.69mg/kgで投与した。対象2には、6.94mg/kg、および対象3は、6.99mg/kgとした。
結果
【0490】
個々の時間-濃度プロファイルを表Cに詳述する。時間-濃度プロファイルのプロットを図1、2および3に図示する。このPKパラメータを表Cに詳述する。
【表9-1】
【表9-2】
【表10-1】
【表10-2】
結論
【0491】
カプセル剤と0.5%のメチルセルロース懸濁製剤との間の生体利用率は、それぞれ、75%および83%と実験の誤差範囲内で同様である。Tmaxは、懸濁液剤では0.518時間に対し、カプセル剤では2.37時間とより大きい。
(実施例3)
化合物I-1の第1相臨床試験
【0492】
この第1相試験は、ファーストインヒューマンの無作為化した二重盲検のプラセボ制御した試験とし、I-1およびプラセボを3:1に無作為化した。この試験は、単回投与漸増試験(SAD)プロトコルおよび反復投与漸増試験(MAD)プロトコルから構成した。MAD薬物曝露は、1日2回(BID)投与を10日間とした。
【0493】
全体として、I-1は、安全で耐容可能であることが判明した。I-1の有害事象プロファイルは、プラセボに比べると有利であった:プラセボを服用した対象4名(19.1%)に比較して、I-1を服用した対象の合計6名(9.4%)が、試験治療下で発現した有害事象(TEAE)を有した。試験薬物投与の中断または中止はなかった。
【0494】
トランスアミナーゼ(ALTおよびAST)、AlkPhos(ALP)、アミラーゼ、GGT、ビリルビン、クレアチニンキナーゼおよびクレアチニンを含めた、肝臓または腎臓の分析対象において、臨床的に有意な変化は観察されなかった。血清グルコースの変化は観察されなかった。心拍数(HR)、血圧(収縮期、拡張期および起立性変化)、呼吸速度、パルスオキシメトリまたは体温に、臨床的に有意な変化は観察されなかった。臨床的に深刻な血液学的変化は、観察されなかった。I-1は、QTcF長期化をもたらさなかった。QTcF≧500m秒、またはベースラインからの≧60m秒の変化を有する対象はいなかった。5名の対象が、ベースラインから>30m秒の変化を有したが、介入または試験薬物の中断、または中止を必要とすることはなく、すべての対象が、無症候性を維持した。これらの5名の対象のうちの3名が、この試験のSAD部にあり(1名ずつ、100mg、200mgおよび700mgの用量コホート)、残りの2名の対象は、この試験のMAD部にあった(1名ずつ、BIDで150mgおよびBIDで300mgの用量のコホート)。
【0495】
用量の増加と共に、線形相関関係が、CmaxおよびAUCに観察された。半減期(t1/2)は、コホートおよび日数間で一致し、複数の日数の曝露における平均値は、3.49~6.83時間の間の範囲であった。すべてのコホートにわたり、薬物の蓄積はほとんどまたは全く認められなかった。
【0496】
図4は、この第1相試験において、I-1を経口投与されたヒト対象の血漿中のマロンジアルデヒド(MDA)の血漿中の全曲線下面積(AUC)を示す。図5は、I-1を経口投与されたヒト対象の血漿中の1日目および8日目における、マロンジアルデヒド(MDA)の曲線下面積(AUC)を示す。上限用量(600mg BID)では、1700ng/mL(ほぼ8.5mM)のCmaxおよび7220時*ng/mLのAUC0-12が、適性なモル比と一致し、反応性アルデヒド種の向上に対して、化学量論量の効力を提供した(reactive aldehyde species:RASP;毒性アルデヒドとも称される)。遊離MDAレベルの低下が、健常な志願者の血漿において観察された。
単回投与漸増試験(SAD)
【0497】
合計で54名の健常な志願者を、様々な用量からなる2つのコホート間に無作為化した:41名の対象がI-1を服用し、13名の対象がプラセボを服用した。どちらもI-1を服用した2名(4.9%)の対象が、この試験から早期に離脱した(試験薬物に無関係の理由のため)。
【表11】
【0498】
対象は、主に男性(M:F-34:20)の黒人またはアフリカ系アメリカ人(67%)、および非ヒスパニック系(93%)であった。年齢およびBMIの公平なバランスが、コホート全体に観察された。平均年齢およびBMI範囲は、それぞれ、30.0~38.5歳および24.3~26.5であった。
【0499】
I-1を服用した2名(3.7%)の対象がTEAを経験した。100mgの用量コホートの対象は、強度が中程度の1分間未満の気絶が続くという事象を有し、試験薬物に関係があるように思われた。対象は、体位性起立性頻拍症候群および背痛も有した。他の対象は、強度が軽度の鼻づまりというAEを有し、I-1に無関係に思われた。この対象は、700mgの単回用量を服用した。
【0500】
薬物動態データを以下に提示する。
【表12】
反復投与漸増試験(MAD)
【0501】
31名の対象を様々な用量に無作為化した:23名の対象がI-1を服用し、8名の対象が、プラセボを服用した。試験薬物の中断が必要な対象はなく、対象のすべてが、薬物投与パープロトコルを完了した。
【表13】
【0502】
対象を性別(F=15およびM=16)間でほとんど等しく分け、黒人またはアフリカ系アメリカ人は、この試験集団の58%を構成し、87%が非ヒスパニック系であった。平均年齢およびBMI範囲は、それぞれ、33.2~40.3歳および23.9~28.1であった。試験薬物(10日間のBID)への処置コンプライアンスは、100%であった。
【0503】
合計で8名の対象がTEAEを有した。4名(50%)の対象がプラセボを服用し、4名(17.4%)がI-1を服用した。TEAEを以下の表に提示する。TEAEはすべて軽度であり、試験薬物とは無関係に思われた。
【表14】
【0504】
PKデータを以下に提示する。
【表15】
(実施例4)
ラットモデルにおける、ADX-102(レプロキサラップ)と化合物I-1の薬物動態比較
【0505】
略称の一覧表示
【表16-1】
【表16-2】
【表16-3】
【表16-4】
【0506】
化合物I-1は、ADX-102の脱クロロアナログである。それらは同様の構造であるにも関わらず、化合物I-1は、全身用量としてのADX-102よりも一般に良好に耐容されることが驚くべきことに見出され、ラットに投与した場合、ほぼ2倍のAUC(濃度-時間曲線下面積)を示した。したがって、本発明者らは、ラットおよびイヌにおける90日間の毒性学試験、ならびにヒトにおける10日間の試験において、化合物I-1を試験した。本発明者らは、2種の試験物品の薬物動態を対比する2組のデータセットを比較した。Sprague-Dawleyラットにおいて、メチルセルロース懸濁液を使用して、化合物I-1の50mg/kgの経口用量でのPK試験を行った。Sprague-Dawleyラットにおいて、Tween(登録商標)80をやはり含有するメチルセルロース懸濁液中の10mg/kgの用量で、ADX-102の薬物動態研究も行った。どちらの試験も、クリアランスおよび定常状態の分布容積を算出するため、カプチソールでの静脈内投与を組み入れた。
【表17】
*CLおよびVssに使用したカプチソール製剤を使用した静脈内データ。
**BLQにより8を超える時間点を切り捨てる。
【0507】
分析方法
【0508】
どちらの試験も強制経口投与によって投与した。生体分析は、LC-MS/MSを使用して行った。実験手法のさらなる詳細は、個別の報告書に見出すことができる。
【0509】
薬物動態プロファイル
【0510】
2つの化合物を対比する薬物動態プロファイルが図6に示されている。図7では、用量による正規化後のプロファイルが示されており、比較目的で、ADX-102用量からの10mg/kgのデータを5倍に乗算した。
【0511】
結論
【0512】
重要な知見は、用量による正規化後のAUC結果に関係する。用量に関して正規化した後、化合物I-1は、ADX-102製剤に乳化剤を使用したにも関わらず、ADX-102のAUCのほぼ2倍になることを示した。
(実施例5)
化合物I-1の剤形
【0513】
化合物I-1の薬物製品を非滅菌噴霧乾燥粒状パウダーブレンドとして製造し、経口送達用のカプセルに充填する。この薬物製品を、10mgおよび100mgの単位用量カプセル剤の強度;600mgのボトル中粉末;ならびに250mgおよび300mgの単位用量の錠剤強度で供給する。
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】