(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(54)【発明の名称】腫瘍を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/13 20150101AFI20230613BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20230613BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20230613BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230613BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230613BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230613BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230613BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230613BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230613BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20230613BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230613BHJP
A61K 31/409 20060101ALI20230613BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230613BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230613BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20230613BHJP
【FI】
A61K35/13
A61K41/00
A61K47/54
A61K47/64
A61K39/395 Y
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K38/19
A61K39/39
A61K31/409
A61K39/00
C12N15/13
C07K16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568693
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(85)【翻訳文提出日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 US2021032339
(87)【国際公開番号】W WO2021231795
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518055877
【氏名又は名称】ラクテン・メディカル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア-グスマン ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】デ マガリャエス フィリォ シー. ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB40
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
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4C084ZC75
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4C085EE01
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4C085GG10
4C086AA01
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4C086CB04
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA28
(57)【要約】
がんまたは腫瘍を処置するための方法および使用が提供される。いくつかの局面では、提供される方法および使用は、例えば腫瘍細胞を含有する試料を、腫瘍細胞上のタンパク質に結合するターゲティング分子にコンジュゲートされたフタロシアニン色素と接触させること、および前記フタロシアニン色素の活性化に適した波長の光を前記試料に照射することを含む。いくつかの局面では、前記方法および使用はまた、照射された前記試料を、対象、例えばがんまたは腫瘍を有する対象に投与することを含む。本明細書に記載の方法および使用は、前記対象における抗がん免疫応答の刺激、ならびに、前記対象におけるがん、腫瘍、および腫瘍細胞の、成長の低減、および/または排除を提供する。提供される方法で使用するための組成物および組み合わせも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍または病変を処置する方法であって、
照射された試料を含む組成物を第1の対象に投与する工程を含み、
前記照射された試料が、光免疫療法によりエクスビボで処理された腫瘍細胞を含み、
前記光免疫療法が、
i)腫瘍細胞の試料を、ターゲティング分子に連結されたシリコンフタロシアニン色素を含むコンジュゲートとエクスビボで接触させること;および
ii)前記コンジュゲートと接触させた後、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で前記試料を照射して、前記照射された試料を得ること
を含み、
前記照射された試料内の前記腫瘍細胞またはその一部が、免疫原性細胞死(ICD)の1つまたは複数のマーカーを提示する、
前記方法。
【請求項2】
腫瘍または病変を処置する方法であって、
腫瘍細胞の試料を、ターゲティング分子に連結されたシリコンフタロシアニン色素を含むコンジュゲートとエクスビボで接触させる工程;
前記コンジュゲートと接触させた後、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で前記試料を照射して、照射された試料を得る工程;および
前記照射された試料を含む組成物を第1の対象に投与する工程
を含み、
前記照射された試料内の前記腫瘍細胞またはその一部が、免疫原性細胞死(ICD)の1つまたは複数のマーカーを提示する、
前記方法。
【請求項3】
ICDの前記1つまたは複数のマーカーが、アネキシン、アデノシン三リン酸放出、インターフェロンα放出、インターフェロンβ放出、高移動度I群タンパク質の放出、HSP70の細胞表面発現、HSP90の細胞表面発現、およびカルレティキュリンの細胞表面発現からなる群より選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が投与前に100%未満の細胞死を示す、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が投与前に約30%~約70%の細胞死を示す、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記試料が、前記第1の対象に由来する腫瘍細胞、または前記第1の対象から得られる腫瘍細胞を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記試料が、第2の対象に由来する腫瘍細胞、または第2の対象から得られる腫瘍細胞を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記試料が、前記コンジュゲートと接触する前にインビトロで成長したまたは培養された腫瘍細胞を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記試料が、前記コンジュゲートと接触する前にオルガノイドへと成長したまたは培養された腫瘍細胞を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、前記第1の対象への投与前に細胞成長または細胞増大を防止するために処理される、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、細胞成長または細胞増大を防止するために照射によって処理される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記照射がγ線照射を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記第1の対象が、ある種類のがんを有すると診断されているか、またはそれを有すると疑われる、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記試料が、同じまたは類似の種類のがんに由来する腫瘍細胞を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記種類のがんが、結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸がん、紡錘細胞新生物、肝細胞がん、肝がん、胆管がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、血液のがん、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記組成物を投与する工程が、前記第1の対象における抗がん免疫応答の刺激をもたらす、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記組成物を投与する工程が、前記第1の対象における腫瘍、病変、または転移の、成長の低減、サイズの縮小、体積の縮小、または排除をもたらす、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が注射によってまたは注入によって前記第1の対象に投与される、請求項1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が移植によって前記第1の対象に投与される、請求項1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記ターゲティング分子が抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項1~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記ターゲティング分子が細胞表面分子に結合する、請求項1~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記細胞表面分子が、腫瘍微小環境における第1の腫瘍細胞上または第1の細胞上に存在し、任意で、前記試料が、前記腫瘍微小環境における前記第1の腫瘍細胞または前記第1の細胞を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記細胞表面分子が、HER1/EGFR、HER2/ERBB2、CD20、CD25(IL-2Rα受容体)、CD33、CD52、CD133、CD206、CEA、CEACAM1、CEACAM3、CEACAM5、CEACAM6、がん抗原125(CA125)、α-フェトプロテイン(AFP)、ルイスY、TAG72、Caprin-1、メソテリン、PDGF受容体、PD-1、PD-L1、CTLA-4、IL-2受容体、血管内皮成長因子(VEGF)、CD30、EpCAM、EphA2、グリピカン-3、gpA33、ムチン、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド、VEGF受容体(VEGFR)、VEGFR2、VEGF-A、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、テネイシン、AFP、BCR複合体、CD3、CD18、CD44、CTLA-4、gp72、HLA-DR 10 β、HLA-DR抗原、IgE、MUC-1、nuC242、PEM抗原、メタロプロテイナーゼ、エフリン受容体、エフリンリガンド、HGF受容体、CXCR4、CXCR4、ボンベシン受容体、SK-1抗原、Bcr-abl、RET、MET、TRKB、TIE2、ALK、ROS、EML4-ALK、ROS1、BRAFV600E、SRC、c-KIT、PDGFR、mTOR、TSC1、TSC2、BTK、KIT、BRCA、CDK 4/6、JAK1、JAK2、BRAF、FLT-3、MEK1、MEK2、およびSMOからなる群より選択される、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
前記ターゲティング分子が、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、リツキシマブ(リツキサン、マブセラ)、イブリツモマブチウキセタン(ゼバリン)、ダクリズマブ(ゼナパックス)、ゲムツズマブ(マイロターグ)、アレムツズマブ、CEAスキャンFab断片、OC125モノクローナル抗体、ab75705、B72.3、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、バシリキシマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、MK-3475、BMS-936559、MPDL3280A、イピリムマブ、トレメリムマブ、IMP321、BMS-986016、LAG525、ウレルマブ、PF-05082566、TRX518、MK-4166、ダセツズマブ、ルカツムマブ、SEA-CD40、CP-870、CP-893、MED16469、MEDI6383、MEDI4736、MOXR0916、AMP-224、PDR001、MSB0010718C、rHIgM12B7、ウロクプルマブ、BKT140、バリルマブ(CDX-1127)、ARGX-110、MGA271、リリルマブ(BMS-986015、IPH2101)、IPH2201、AGX-115、エマクツズマブ(Emactuzumab)、CC-90002、およびMNRP1685A、ならびにそれらの任意の抗原結合断片からなる群より選択される、請求項1~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記シリコンフタロシアニン色素がIR700である、請求項1~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
第2の処置を前記第1の対象に実施する工程をさらに含み、前記第2の処置が、
第2のターゲティング分子に連結された第2のフタロシアニン色素を含む第2のコンジュゲートを前記第1の対象に投与すること、および
前記第2のコンジュゲートを投与した後に、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、かつ、25J/cm
2もしくは約25J/cm
2から、400J/cm
2もしくは約400J/cm
2の線量、または2J/cmもしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmもしくは約500J/cmファイバー長の線量で、前記第1の対象の腫瘍または病変を照射すること
を含む、請求項1~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
前記第2の処置が、前記組成物を前記第1の対象に投与した後に実施される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記第2の処置が、前記組成物を前記第1の対象に投与する前に実施される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記第2の処置が、前記第1の対象への前記組成物の投与の前に実施される、請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が免疫調節物質と組み合わせて投与される、請求項1~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
前記免疫調節物質が、前記組成物の前、前記組成物と同時、および/または前記組成物の後に投与される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記免疫調節物質が、アジュバント、免疫チェックポイント阻害物質、サイトカイン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項30または31記載の方法。
【請求項33】
前記腫瘍細胞が、複数の腫瘍源から得られる、請求項1~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
前記試料が、結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸がん、紡錘細胞新生物、肝細胞がん、肝がん、胆管がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、血液がん、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるがんに関連する腫瘍または病変に由来する腫瘍細胞を含む、請求項1~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
光免疫療法で処理された腫瘍細胞を含み、前記腫瘍細胞が、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化されている、薬学的組成物。
【請求項36】
前記薬学的組成物における前記腫瘍細胞またはその一部が、免疫原性細胞死(ICD)の1つまたは複数のマーカーを提示する、請求項35記載の薬学的組成物。
【請求項37】
ICDの前記1つまたは複数のマーカーが、アネキシン、アデノシン三リン酸放出、インターフェロンα放出、インターフェロンβ放出、高移動度I群タンパク質の放出、HSP70の細胞表面発現、HSP90の細胞表面発現、およびカルレティキュリンの細胞表面発現からなる群より選択される、請求項35または36記載の薬学的組成物。
【請求項38】
前記薬学的組成物内の前記腫瘍細胞が100%未満の細胞死を示す、請求項35~37のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項39】
前記薬学的組成物内の前記腫瘍細胞が約30%~約70%の細胞死を示す、請求項35~38のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項40】
単一の対象に由来する腫瘍細胞を含む、請求項35~39のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項41】
複数の対象に由来する腫瘍細胞を含む、請求項35~39のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項42】
結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸がん、紡錘細胞新生物、肝細胞がん、肝がん、胆管がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、血液がん、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるがんに由来する腫瘍細胞を含む、請求項35~41のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、「METHODS AND COMPOSITIONS FOR TREATING A TUMOR」と題された、2020年5月14日に出願された米国特許仮出願第63/025,085号、および「METHODS AND COMPOSITIONS FOR TREATING A TUMOR」と題された、2020年6月3日に出願された米国特許仮出願第63/034,250号の優先権を主張し、これらの内容は、その全体が参照により組み入れられる。
【0002】
分野
本開示は、がんまたは腫瘍を処置するための方法および使用に関する。いくつかの局面では、提供される方法および使用は、例えば腫瘍細胞を含有する試料を、腫瘍細胞上のタンパク質に結合するターゲティング分子にコンジュゲートされたフタロシアニン色素と接触させること、およびフタロシアニン色素の活性化に適した波長の光を試料に照射することを含む。いくつかの局面では、前記方法および使用はまた、照射された試料を、対象、例えばがんまたは腫瘍を有する対象に投与することを含む。本明細書に記載の方法および使用は、対象における抗がん免疫応答の刺激、ならびに、対象におけるがん、腫瘍、および腫瘍細胞の、成長の低減、および/または排除を提供する。本開示はまた、提供される方法で使用するための組成物および組み合わせに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
毎年、免疫チェックポイント阻害物質、小分子標的療法、および他の抗がん治療薬を含む、がんを処置するための多くの治療薬が開発されている。しかしながら、一部の患者は、これらの治療薬に対して応答性でも完全に応答性でもなく、疾患の進行およびがん関連の死亡につながる。新規な組成物および方法が、これらの臨床的課題に対処するために緊急に必要とされている。そのような必要性を満たす方法、使用、および組成物が提供される。
【発明の概要】
【0004】
概要
原発性腫瘍または病変と転移性腫瘍細胞とを含む腫瘍または病変を処置する方法が本明細書で提供される。腫瘍または病変の予防的処置などの腫瘍成長を防止する方法も本明細書で提供される。
【0005】
いくつかの態様では、腫瘍または病変を処置する方法が提供され、前記方法は、細胞の試料を、ターゲティング分子に連結されたフタロシアニン色素、例えば、シリコンフタロシアニン色素を含むコンジュゲートと接触させる工程;コンジュゲートと接触させた後、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で試料を照射して、照射された試料を得る工程;および照射された試料を第1の対象に投与する工程を含む。
【0006】
腫瘍または病変を処置する方法が本明細書で提供され、前記方法は、照射された試料を含む組成物を第1の対象に投与する工程を含み、照射された試料は、光免疫療法によりエクスビボで処理された腫瘍細胞を含む。任意の態様のいくつかでは、光免疫療法は、腫瘍細胞の試料を、ターゲティング分子に連結されたフタロシアニン色素、例えば、シリコンフタロシアニン色素を含むコンジュゲートとエクスビボで接触させること;およびコンジュゲートと接触させた後、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で試料を照射して、照射された試料を得ることを含む。任意の態様のいくつかでは、照射された試料内の腫瘍細胞またはその一部は、免疫原性細胞死(ICD)の1つまたは複数のマーカーを提示する。
【0007】
腫瘍または病変を処置する方法も提供され、前記方法は、腫瘍細胞の試料を、ターゲティング分子に連結されたフタロシアニン色素、例えば、シリコンフタロシアニン色素を含むコンジュゲートとエクスビボで接触させる工程;コンジュゲートと接触させた後、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で試料を照射して、照射された試料を得る工程;照射された試料を含む組成物を第1の対象に投与する工程を含む。
【0008】
任意の態様のいくつかでは、照射された試料内の腫瘍細胞またはその一部は、免疫原性細胞死(ICD)の1つまたは複数のマーカーを提示する。任意の態様のいくつかでは、ICDの1つまたは複数のマーカーは、アネキシン、アデノシン三リン酸放出、インターフェロンα放出、インターフェロンβ放出、高移動度I群タンパク質の放出、HSP70の細胞表面発現、HSP90の細胞表面発現、およびカルレティキュリンの細胞表面発現からなる群より選択される。
【0009】
任意の態様のいくつかでは、試料は、第1の対象に由来する腫瘍細胞、または第1の対象から得られる腫瘍細胞を含む。試料は、第2の対象に由来する腫瘍細胞、または第2の対象から得られる腫瘍細胞を含む。任意の態様のいくつかでは、細胞の試料は、第1の対象の生検から得られる。任意の態様のいくつかでは、細胞の試料は、第2の対象から得られる。任意の態様のいくつかでは、細胞の試料は、複数の対象から得られる。
【0010】
いくつかの態様では、試料は、コンジュゲートと接触する前にインビトロで成長したまたは培養された腫瘍細胞を含む。任意の態様のいくつかでは、試料は、コンジュゲートと接触する前にインビトロで成長するかまたは培養される。任意の態様のいくつかでは、試料は、コンジュゲートと接触する前にオルガノイドへと成長するかまたは培養される。任意の態様のいくつかでは、試料は、コンジュゲートと接触する前にオルガノイドへと成長したまたは培養された腫瘍細胞を含む。
【0011】
提供される態様のいずれかのいくつかでは、照射された試料は、注射によってまたは注入によって第1の対象に投与される。任意の態様のいくつかでは、照射された試料は、移植によって第1の対象に投与される。
【0012】
任意の態様のいくつかでは、ターゲティング分子は、抗体またはその抗原結合断片を含む。任意の態様のいくつかでは、ターゲティング分子は、細胞表面分子に結合する。任意の態様のいくつかでは、細胞表面分子は、腫瘍微小環境における腫瘍細胞上または細胞上に存在する。任意の態様のいくつかでは、細胞の試料は、腫瘍微小環境における腫瘍細胞または細胞を含む。任意の態様のいくつかでは、細胞表面分子は、腫瘍微小環境における第1の腫瘍細胞上または第1の細胞上に存在する。任意の態様のいくつかでは、試料は、腫瘍微小環境における第1の腫瘍細胞または第1の細胞を含む。
【0013】
任意の態様のいくつかでは、細胞表面分子は、HER1/EGFR、HER2/ERBB2、CD20、CD25(IL-2Rα受容体)、CD33、CD52、CD133、CD206、CEA、CEACAM1、CEACAM3、CEACAM5、CEACAM6、がん抗原125(CA125)、α-フェトプロテイン(AFP)、ルイスY、TAG72、Caprin-1、メソテリン、PDGF受容体、PD-1、PD-L1、CTLA-4、IL-2受容体、血管内皮成長因子(VEGF)、CD30、EpCAM、EphA2、グリピカン-3、gpA33、ムチン、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド、VEGF受容体(VEGFR)、VEGFR2、VEGF-A、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、テネイシン、AFP、BCR複合体、CD3、CD18、CD44、CTLA-4、gp72、HLA-DR 10 β、HLA-DR抗原、IgE、MUC-1、nuC242、PEM抗原、メタロプロテイナーゼ、エフリン受容体、エフリンリガンド、HGF受容体、CXCR4、CXCR4、ボンベシン受容体、SK-1抗原、Bcr-abl、RET、MET、TRKB、TIE2、ALK、ROS、EML4-ALK、ROS1、BRAFV600E、SRC、c-KIT、PDGFR、mTOR、TSC1、TSC2、BTK、KIT、BRCA、CDK4/6、JAK1、JAK2、BRAF、FLT-3、MEK1、MEK2、およびSMOからなる群より選択される。
【0014】
提供される態様のいずれかのいくつかでは、フタロシアニン色素は、シリコンフタロシアニン色素である。任意の態様のいくつかでは、シリコンフタロシアニン色素は、IR700である。
【0015】
任意の態様のいくつかでは、ターゲティング分子は、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、リツキシマブ(リツキサン、マブセラ)、イブリツモマブチウキセタン(ゼバリン)、ダクリズマブ(ゼナパックス)、ゲムツズマブ(マイロターグ)、アレムツズマブ、CEAスキャンFab断片、OC125モノクローナル抗体、ab75705、B72.3、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、バシリキシマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、MK-3475、BMS-936559、MPDL3280A、イピリムマブ、トレメリムマブ、IMP321、BMS-986016、LAG525、ウレルマブ、PF-05082566、TRX518、MK-4166、ダセツズマブ、ルカツムマブ、SEA-CD40、CP-870、CP-893、MED16469、MEDI6383、MEDI4736、MOXR0916、AMP-224、PDR001、MSB0010718C、rHIgM12B7、ウロクプルマブ、BKT140、バリルマブ(CDX-1127)、ARGX-110、MGA271、リリルマブ(BMS-986015、IPH2101)、IPH2201、AGX-115、エマクツズマブ(Emactuzumab)、CC-90002、およびMNRP1685A、ならびにそれらの任意の抗原結合断片からなる群より選択される。
【0016】
任意の態様のいくつかでは、前記方法は、第2の処置を第1の対象に実施する工程をさらに含み、第2の処置は、第2のターゲティング分子に連結された第2のフタロシアニン色素を含む第2のコンジュゲートを第1の対象に投与する工程、および、第2のコンジュゲートを投与した後に、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、かつ、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2の線量、または2J/cmもしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmもしくは約500J/cmファイバー長の線量で、第1の対象の腫瘍または病変を照射する工程を含む。そのような態様のいくつかでは、第2の処置は、第1の対象への照射された試料の投与の後に実施される。任意の態様のいくつかでは、第2の処置は、第1の対象への照射された試料の投与の前に実施される。任意の態様のいくつかでは、第2の処置は、第1の対象への照射された試料の投与の前および投与の後に実施される。
【0017】
提供される態様のいずれかでは、照射された試料は、免疫調節物質と組み合わせて投与され得る。いくつかの態様では、組成物は、免疫調節物質と組み合わせて投与される。任意の態様のいくつかでは、免疫調節物質は、照射された試料の前、照射された試料と同時、および/または照射された試料の後に投与される。任意の態様のいくつかでは、免疫調節物質は、アジュバント、免疫チェックポイント阻害物質、サイトカイン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0018】
提供される態様のいずれかのいくつかでは、細胞の試料は、腫瘍から得ることができる。任意の態様のいくつかでは、細胞の試料は、腫瘍細胞を含む。任意の態様のいくつかでは、腫瘍細胞は、複数の腫瘍源から得られる。
【0019】
任意の態様のいくつかでは、第1の対象は、ある種類のがんを有すると診断されているか、またはそれを有すると疑われる。提供される態様のいずれかのいくつかでは、第1の対象は、結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸がん、紡錘細胞新生物、肝細胞がん、肝がん、胆管がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、血液がん、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるがんを有するか、それを有すると診断されているか、またはそれを有すると疑われる。
【0020】
提供される態様のいずれかのいくつかでは、細胞の試料は、結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸がん、紡錘細胞新生物、肝細胞がん、肝がん、胆管がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、血液がん、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるがんに関連する腫瘍または病変からの細胞を含む。任意の態様のいくつかでは、試料は、第1の対象が有すると診断されているかまたは第1の対象が有すると疑われるのと同じまたは類似の種類のがんに由来する腫瘍細胞を含む。
【0021】
いくつかの提供される方法では、照射された試料は、第1の対象への投与前に100%未満の細胞死を含む。いくつかの提供される方法では、照射された試料は、第1の対象への投与前に少なくとも30%~70%の細胞死を含む。提供される態様のいずれかのいくつかでは、試料は、第1の対象への投与前に細胞成長または細胞増大を防止するために処理される。任意の態様のいくつかでは、試料は、投与前に照射により処理される。任意の態様のいくつかでは、照射は、γ線照射を含む。任意の態様のいくつかでは、照射は、γ線照射である。
【0022】
任意の態様のいくつかでは、組成物を投与することは、第1の対象における抗がん免疫応答の刺激をもたらす。任意の態様のいくつかでは、組成物を投与することは、第1の対象における腫瘍、病変、または転移の、成長の低減、サイズの縮小、体積の縮小、または排除をもたらす。
【0023】
本明細書では、光免疫療法で処理された腫瘍細胞を含む薬学的組成物が提供される。任意の態様のいくつかでは、薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む。本明細書では、光免疫療法で処理された腫瘍細胞を含み、前記腫瘍細胞が、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化されている、薬学的組成物が提供される。腫瘍または病変の処置に使用するための提供される薬学的組成物のいずれかも本明細書で提供される。腫瘍または病変の処置における、提供される薬学的組成物のいずれかの使用も提供される。腫瘍または病変を処置するための医薬の製造における、提供される薬学的組成物のいずれかの使用も提供される。
【0024】
任意の態様のいくつかでは、薬学的組成物における腫瘍細胞またはその一部は、免疫原性細胞死(ICD)の1つまたは複数のマーカーを提示する。任意の態様のいくつかでは、ICDの1つまたは複数のマーカーは、アネキシン、アデノシン三リン酸放出、インターフェロンα放出、インターフェロンβ放出、高移動度I群タンパク質の放出、HSP70の細胞表面発現、HSP90の細胞表面発現、およびカルレティキュリンの細胞表面発現からなる群より選択される。
【0025】
任意の態様のいくつかでは、薬学的組成物は、単一の対象に由来する腫瘍細胞を含む。任意の態様のいくつかでは、薬学的組成物は、複数の対象に由来する腫瘍細胞を含む。
【0026】
任意の態様のいくつかでは、薬学的組成物は、結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸がん、紡錘細胞新生物、肝細胞がん、肝がん、胆管がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、血液がん、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるがんに由来する腫瘍細胞を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】抗体-IR700コンジュゲートと共にインキュベートし、続いて光を照射した(PIT後;白いバー)、または光を照射しなかった(PITなし;黒いバー)、A431、BxPC3、およびFaDu細胞から放出されたアネキシンA1のレベル(pg/mL)を示す。
【
図2】抗体-IR700コンジュゲートと共にインキュベートし、続いて光を照射した(PIT後;白いバー)、または光を照射しなかった(PITなし;黒いバー)、4T1-EpCam、A431、BxPC3、CT26-EphA2、およびLL/2-EphA2細胞から放出されたアデノシン三リン酸(ATP、x10
-7M)のレベルを示す。
【
図3A】PIT(コンジュゲート+光;白いバー)の26時間後の4T1-EpCam、A431、BxPC3、CT26-EphA2、FaDu、およびLL/2-EphA2細胞、または未処理細胞(処理なし;黒いバー)から放出されたATPのレベル(10
-7M)を示す。
【
図3B】PITに応答して放出されたATPの時間経過(10
-7M;実線)および細胞死の割合(破線)を示す。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、それぞれ、抗体-IR700コンジュゲートと共にインキュベートし、照射した(コンジュゲート+光;白いバー)、または未処理の(処理なし;黒いバー)A431、BxPC3、およびFaDu細胞からのインターフェロンα2(IFN-α2)およびインターフェロンβ(IFN-β)の放出(pg/mL)を示す。
【
図5】抗体-IR700コンジュゲートと共にインキュベートし、照射あり(白いバー)または照射なし(黒いバー)の、A431およびFaDu細胞からの高移動度群タンパク質B1(HMGB1)放出(ng/mL)の放出をそれぞれ示す。
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、それぞれ、抗体-IR700コンジュゲートと共にインキュベートし、照射あり(白いバー)または照射なし(黒いバー)の、A431細胞およびFaDu細胞上の熱ショックタンパク質およびカルレティキュリン表面発現の増加を示す。
【
図7】
図7Aは、抗体-IR700コンジュゲートと共にインキュベートし、照射あり(白いバー)および照射なし(黒いバー)の、腫瘍細胞の上清への曝露後の、樹状細胞(DC)上の分化86(CD86)マーカーおよび主要組織適合遺伝子複合体II(MHCII)マーカーの発現の変化倍率を示す。
図7Bは、抗体-IR700コンジュゲートと共にインキュベートし、照射あり(白いバー)および照射なし(黒いバー)の、腫瘍細胞の上清への曝露後の、炎症促進性サイトカインである腫瘍壊死因子(TNF)、IFN-γ誘導性タンパク質10(IP-10)、MIP-1α(マクロファージ炎症性タンパク質-1α)、MIP-1β(マクロファージ炎症性タンパク質-1β)、インターロイキン-1β(IL-1β)、およびインターロイキン-8(IL-8)の樹状細胞産生を示す。
【
図8A】抗EphA2コンジュゲート単独(白丸)、抗EphA2-PIT(黒丸)、および抗CD40Lで先行処置後に抗EphA2-PIT(黒三角)で処置したマウスの経時的な平均腫瘍体積を示す。
【
図8B】腫瘍細胞を接種したナイーブマウスおよび腫瘍細胞で再チャレンジした抗腫瘍PIT後の完全奏効(CR)マウスの経時的な腫瘍体積を示す。
【
図8C】抗EphA2コンジュゲート単独(白丸)、抗EphA2-PIT(黒丸)、および抗CD40L処置と一緒に抗EphA2-PIT(黒三角)で処置したマウスの経時的な平均腫瘍体積を示す。
【
図8D】抗EphA2コンジュゲート単独(白丸)、抗EphA2-PIT(黒丸)、抗PD1単独(白四角)、抗PD1および抗EphA2-PIT(黒四角)、ならびに抗CD8投与によるCD8
+T細胞の枯渇を伴う抗PD1および抗EphA2-PIT(黒三角)で処置したマウスの経時的な平均腫瘍体積を示す。
【
図9】シスプラチンと共にインキュベートしたCT26-EphA2細胞(シスプラチン群)または例示的な抗体-IR700コンジュゲートとインキュベートし、光照射で処理したCT26-EphA2細胞(PIT群)を投与したマウスにおける移植腫瘍(腫瘍移植後約5~24日)の実験段階および腫瘍体積変化を経時的に示す概略図を示す。
【
図10】
図10A~
図10Cは、細胞死が起きているPIT処理腫瘍細胞(
図10A)、100%死滅したPIT処理腫瘍細胞(
図10B)、または生理食塩水のみ(
図10C)をワクチン接種した個々のマウスの経時的な腫瘍体積を示す。
図10Dおよび
図10Eにそれぞれ、瀕死のPIT処理腫瘍細胞(黒三角)、死んだPIT処理腫瘍細胞(白三角)をワクチン接種した動物、または生理食塩水対照動物(白丸)の平均腫瘍および無再発生存率をプロットする。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
がんの処置に使用するための組成物および方法が本明細書で提供される。いくつかの局面では、がん、腫瘍、または病変を処置するための方法および使用が提供される。いくつかの態様では、前記組成物および方法は、がんもしくは腫瘍細胞の集団を有する対象、またはがん性病変を有すると疑われる対象において、抗がん免疫応答などの免疫応答を刺激するか、増強するか、増大させるか、またはブーストするためのワクチンを提供する。いくつかの態様では、前記組成物および方法は、抗がん免疫などの免疫を生成するか、または既存の免疫を刺激するか、増強するか、増大させるか、またはブーストする。いくつかの態様では、前記組成物および方法は、治療剤に対する免疫原性応答を刺激するか、増強するか、増大させるか、またはブーストするために使用される。本明細書に記載の方法および使用は、対象における抗がん免疫応答の刺激、ならびに、対象におけるがん、腫瘍、および腫瘍細胞の、成長の低減、および/または排除を提供する。
【0029】
本明細書で提供される方法および使用、ならびにそれと共に使用するための組成物は、細胞、例えば腫瘍細胞を含有する試料などの試料のエクスビボ処理と、それに続く、例えば投与による、処理された試料の対象への導入とを含む。いくつかの態様では、提供される方法および使用は、がんまたは腫瘍を含有する試料を得ること、試料を、腫瘍細胞上のタンパク質に結合するターゲティング分子にコンジュゲートされたフタロシアニン色素、例えばIR700-抗体コンジュゲートと接触させること、およびフタロシアニン色素の活性化に適した波長の光を試料に照射することを含む。いくつかの態様では、前記方法および使用はまた、照射された試料(または照射された試料を含む組成物)を、対象、例えばがんまたは腫瘍を有する対象に投与することを含む。いくつかの態様では、照射された試料は、細胞死が起きている細胞を含有する。提供される方法および使用において使用するための組成物および組み合わせも提供される。
【0030】
いくつかの局面では、照射された試料、例えば、腫瘍細胞を含む照射された試料は、提供される組成物、組み合わせ、方法、および使用において用いられる。使用には、治療方法などのそのような方法における組成物の使用、および治療レジメンなどの処置、ならびにそのような治療方法および処置を実施するための医薬の調製におけるそのような組成物の使用が含まれる。腫瘍、病変、またはがんの処置に使用するためのそのような組成物も提供される。いくつかの局面では、そのような使用は、本明細書に記載の方法または処置、例えば任意の治療方法または治療レジメンを実施することを含む。いくつかの態様では、照射された試料または照射された試料を含む組成物は、例えば、ターゲティング分子に連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートと試料を接触させる工程、および、例えば、エクスビボなどで光を試料に照射する工程を含む、光免疫療法を含む方法によって調製される。
【0031】
本出願で言及される特許文献、科学論文、およびデータベースを含むすべての刊行物は、あたかも各個々の刊行物が参照により個別に組み入れられたと同程度に、すべての目的のためにその全体が参照により組み入れられる。本明細書に記載の定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開出願、および他の刊行物に記載の定義に反するかまたは矛盾する場合、本明細書に記載の定義は、参照により本明細書に組み入れられる定義よりも優先する。
【0032】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成上の目的のためだけであり、記載された主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0033】
I. 試料およびエクスビボ照射
本明細書の組成物および方法は、対象から生物学的試料などの試料を得ることを含む。いくつかの局面では、試料は生細胞を含む。いくつかの態様では、対象は1つまたは複数の腫瘍を有し、生細胞は1つまたは複数の腫瘍から採取される。いくつかの態様では、対象は、がんを有することが疑われ、生細胞の試料が、がん性細胞または前がん性細胞を有することが疑われる組織または器官または細胞型から採取される。いくつかの態様では、試料は、血液、骨髄またはリンパ節から採取される。
【0034】
いくつかの態様では、試料は、がん、例えば結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸がん、紡錘細胞新生物、肝細胞がん、肝がん、胆管がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがんからなる群より選択されるがんを有するか、または有すると疑われる対象から収集される。いくつかの態様では、試料は、血液がんを有するか、または有すると疑われる対象から収集される。例示的な血液がんには、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫などの骨髄腫が含まれる。
【0035】
試料は、1つまたは複数の生細胞を含む。いくつかの態様では、試料は、単一細胞型である。いくつかの態様では、試料は、複数の細胞型で構成される。いくつかの態様では、試料は、単一細胞である。いくつかの態様では、試料は、白血球アフェレーシスなどによって血液から単離された細胞で構成される。
【0036】
いくつかの態様では、例えばインビトロで生細胞を含有する試料を成長させることによって、増大させた試料が生成される。いくつかの態様では、試料を、細胞培養物として成長させる。いくつかの態様では、試料を、1つまたは複数のオルガノイドへと成長させる。いくつかの態様では、試料または共培養試料を処理または操作して、1つまたは複数の細胞型を単離または選択する。いくつかの態様では、生細胞の試料は、他の細胞と共培養される。いくつかの態様では、共培養で使用される他の細胞は、樹状細胞である。試料または共培養試料は、少なくとも1、2、3、4、5日間、例えば1~5日間、1~10日間、1週間、2週間、3週間または3週間超などの期間にわたってインビトロで成長させることができる。いくつかの態様では、例えば細胞を含有する試料は、特定の密度または細胞数まで成長させることができる。いくつかの態様では、例えば細胞を含有する試料は、特定のオルガノイド形態などの一定の形態を形成するまで成長させることができる。
【0037】
試料または増大させた試料(またはその一部)は、免疫原性細胞死を誘導するために光免疫療法により処理される。いくつかの態様では、光免疫療法は、細胞表面上のタンパク質に結合するターゲティング分子に連結されたフタロシアニン色素のコンジュゲートを使用して適用される。いくつかの態様では、光免疫療法は、例えば細胞を含有する試料または増大させた試料を、試料または増大させた試料中に存在する細胞の表面などの細胞表面上のタンパク質に結合するターゲティング分子に連結されたフタロシアニン色素のコンジュゲートと接触させることによって適用される。いくつかの態様では、コンジュゲートは、細胞の表面上のタンパク質に結合する抗体、その抗原結合断片または抗体様分子(ナノボディ、アフィボディなど)などのターゲティング分子に連結されたフタロシアニン色素である。いくつかの局面では、本明細書で提供される方法で用いられる例示的なフタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲートは、本明細書、例えばセクションIIIに記載されるいずれかを含む。いくつかの局面では、試料は、エクスビボまたは体外での光免疫療法により処理される。例えば、いくつかの局面では、腫瘍細胞を含有する試料が、対象から得られ、対象の体外で採取され、光免疫療法に供される。
【0038】
いくつかの態様では、コンジュゲートは、試料中に存在するがん細胞などのがん細胞に結合する。いくつかの態様では、コンジュゲートのフタロシアニン色素は、シリコンフタロシアニン色素である。いくつかの態様では、コンジュゲートのフタロシアニン色素は、IR700Dye(LiCor)である。
【0039】
フタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲートまたはそのようなコンジュゲートを含有する組成物と接触させた後、試料またはその一部は照射される(本明細書では光免疫療法(PIT)処理とも呼ばれる)。いくつかの局面では、試料は、600~850nmの波長または660~740nmの波長で照射される。いくつかの態様では、照射量は、少なくとも1J/cm2、例えば少なくとも1J/cm2、少なくとも10J/cm2、少なくとも50J/cm2、少なくとも100J/cm2、例えば1.0~500J/cm2である。いくつかの態様では、波長は、660~710nmである。いくつかの態様では、照射は、690±50nmの波長または690±20nmの波長で行われる。いくつかの態様では、照射は、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回の別々の照射など、試料に対して2回以上行われる。いくつかの態様では、照射は、エクスビボ、すなわち、試料が得られた対象の体外で行われる。いくつかの局面では、試料を増大させた後、エクスビボで照射が行われる。
【0040】
いくつかの局面では、フタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲートと試料、例えば細胞を含有する試料との接触、それに続く本明細書に記載の波長での照射は、試料中の細胞の一部または全部の免疫原性細胞死をもたらす。免疫原性細胞死は、壊死細胞によって示される特定の種類の細胞死であり、免疫刺激マーカーの提示および放出の増加を特徴とする。ICDを提示する細胞は、熱ショックタンパク質90の表面発現上昇、ならびにATPおよび高移動度群ボックスタンパク質(HMGB1)などの危険関連分子パターン(DAMP)として知られる可溶性細胞内マーカーの分泌などの膜変化を示す(Kromer et al.(2013)Annual Review of Immunology,31:51-72)。いくつかの局面では、本明細書に記載の方法に従って照射された試料は、免疫原性細胞死が起きているか、または起きた細胞を含有する。いくつかの局面では、照射された試料の対象への投与は、対象において、抗がん免疫応答などの免疫原性応答を刺激するか、増強するか、増大させるか、またはブーストすることができる。
【0041】
II. 照射された試料を使用して対象を処置する方法
いくつかの局面では、前記方法はまた、照射された試料を、がんまたは腫瘍などの疾患、障害、または病変を有する対象に投与する工程(例えば、導入する工程)を含む。いくつかの局面では、対象から試料を得た後、上記のように、試料はフタロシアニン-ターゲティング分子コンジュゲートと接触させられ、照射される(例えば、PIT処理)。いくつかの局面では、フタロシアニン-ターゲティング分子コンジュゲートとの接触および照射は体外で行われる。いくつかの局面では、照射は、エクスビボで行われる。いくつかの態様では、PITの後、エクスビボで照射された(例えば、PIT処理)試料は、がんまたは腫瘍を有する対象に投与される。いくつかの態様では、照射された試料は、注射によって投与される。いくつかの態様では、照射された試料は、対象への移植によって投与される。いくつかの態様では、処置は予防的処置であり得る。いくつかの態様では、処置は治療的処置であり得る。
【0042】
いくつかの態様では、PIT処理細胞は、エクスビボ細胞の照射の約15分間~約24時間後、例えばエクスビボ細胞の照射の15分間~12時間後、0~8時間後、2~6時間後に、がんまたは腫瘍を有する対象に投与される。いくつかの例では、PIT処理細胞は、エクスビボ細胞を照射した15分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、9時間後、10時間後、11時間後、12時間後、13時間後、14時間後、15時間後、16時間後、17時間後、18時間後、19時間後、20時間後、21時間後、22時間後、23時間後、または24時間後に投与される。
【0043】
いくつかの態様では、PIT処理細胞は、細胞がPIT媒介性細胞死、例えばPIT媒介性免疫原性細胞死を開始すると、対象に投与される。いくつかの態様では、PIT処理細胞は、試料が少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の細胞死を示す場合に投与される。いくつかの例では、PIT処理細胞は、試料中の細胞の100%未満が細胞死を示す場合に投与される。特定の例では、PIT処理細胞は、細胞が約30%~70%生存しているか、または30%~70%の細胞死を示す場合に投与される。いくつかの態様では、細胞は、細胞が約50%生存している場合に投与される。細胞死の割合は、細胞生存率アッセイを使用して測定することができる。そのようなアッセイの多くは公知であり、投与前にPIT処理細胞の生存率を評価するために使用することができる。
【0044】
いくつかの態様では、PIT処理細胞は、静脈内投与などによって全身投与される。いくつかの態様では、PIT処理細胞は、ボーラス用量または注入の形態で静脈内投与される。いくつかの態様では、PIT処理細胞は、腫瘍または病変の近位に投与される。いくつかの態様では、PIT処理細胞は、腫瘍内注射によって投与される。いくつかの態様では、PIT処理細胞は、皮下経路を介して投与される。いくつかの態様では、PIT処理細胞は、筋肉内経路を介して投与される。
【0045】
いくつかの態様では、PIT処理細胞は、対象への投与前に細胞増大または細胞分裂を防止するための追加の処理で処理される。いくつかの態様では、PIT処理細胞は、対象への投与前にγ線照射される。追加の処置は、投与前に、細胞のPIT処理の前または後に実施することができる。
【0046】
いくつかの態様では、試料が対象から得られ、PIT(例えば、フタロシアニン-ターゲティング分子コンジュゲートと接触させ、照射された)に供され、同じ対象に再導入される。いくつかの局面では、自己試料(例えば、投与される対象由来の試料)が得られ、PIT処理され、同じ対象に投与される。
【0047】
いくつかの態様では、試料が対象から得られ、PIT(例えば、フタロシアニン-ターゲティング分子コンジュゲートと接触させ、照射された)に供され、異なる対象に投与される。いくつかの局面では、異種試料(例えば、異なる供給源からの試料)が得られ、PIT処理され、対象に投与される。いくつかの局面では、照射された試料(例えば、PIT処理試料)は、自己試料および異種試料の両方からのものであるか、または1つもしくは複数の異なる異種試料から得られる。
【0048】
いくつかの態様では、処置は、同じ腫瘍型またはがんを有する対象の集団などの複数の対象から、例えば生細胞を含有する試料を採取することを含む。複数の対象は、例えば、腫瘍またはがんの根底にある突然変異の代表的な集団を提供するように選択される。試料をインビトロで成長させ、次いで、本明細書に記載の免疫原性細胞死を誘導するために光免疫療法により処理する。処理された試料の収集は、同じまたは類似のがんを有する他の対象を処置するために個別に、または一緒にプールして使用することができる「ワクチンバンク」を生成する。いくつかの態様では、ワクチンバンクは、処理された試料のプールを含む。いくつかの態様では、ワクチンバンクは、突然変異型などによって分離されたものなど、複数の別々の処理された試料を含む。
【0049】
いくつかの態様では、対象は、エクスビボPIT処理試料を対象に投与する前に、最初に、第1の治療剤を含み得る治療的処置で処置される。いくつかの態様では、第1の治療的処置は、手術である。いくつかの態様では、第1の治療的処置は、放射線である。いくつかの態様では、第1の治療剤は、抗がん剤である。いくつかの態様では、第1の治療剤は、免疫調節因子、例えばチェックポイント阻害物質、抗PD-L1抗体、抗PD1抗体、抗CTLA-4抗体、抗CD25抗体である。いくつかの態様では、第1の治療剤は、化学療法剤である。いくつかの態様では、第1の処置は、フタロシアニン色素-ターゲティング分子を使用する光免疫療法である。場合によっては、第1の処置に使用されるフタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲートは、試料のエクスビボPIT処理に使用されるコンジュゲートと同じである。場合によっては、第1の処置に使用されるフタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲートは、試料のエクスビボPIT処理に使用されるコンジュゲートとは異なる。
【0050】
いくつかの態様では、第1の治療的処置または第1の治療剤は、エクスビボPIT試料の投与前に、例えば、エクスビボ試料の投与の1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、8日前、9日前、10日前、11日前、12日前、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、1ヶ月前、2ヶ月前、3ヶ月前、4ヶ月前、5ヶ月前、6ヶ月前、または6ヶ月超前に投与される。いくつかの態様では、第1の治療的処置または第1の治療剤は、エクスビボPIT試料の投与前に1回または複数回、例えば1回、2回、3回、4回、5回、または5回超投与される。
【0051】
いくつかの態様では、対象は、エクスビボPIT処理試料を投与され、次いで第2の治療的処置または第2の治療剤が対象に投与される。いくつかの態様では、第1の治療的処置は、手術である。いくつかの態様では、第1の治療的処置は、放射線である。いくつかの態様では、第2の治療剤は、抗がん剤である。いくつかの態様では、第2の治療剤は、免疫調節因子、例えばチェックポイント阻害物質、抗PD-L1抗体、抗PD1抗体、抗CTLA-4抗体、抗CD25抗体である。いくつかの態様では、第2の治療剤は、化学療法剤である。いくつかの態様では、第2の処置は、フタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲートを使用する光免疫療法である。場合によっては、光免疫療法処置は、試料のエクスビボPIT処理に使用されるコンジュゲートと同じフタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲートを使用する。場合によっては、光免疫療法処置は、試料のエクスビボPIT処理に使用されるコンジュゲートとは異なるフタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲートを使用する。
【0052】
いくつかの態様では、第2の治療的処置または治療剤は、エクスビボPIT試料の投与後、例えば、1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後、または6ヶ月超後に投与される。いくつかの態様では、第2の治療的処置または治療剤は、エクスビボ試料の投与後に1回または複数回、例えば1回、2回、3回、4回、5回、または5回超投与される。
【0053】
III. 前記方法と共に使用するためのコンジュゲート
いくつかの局面では、本明細書で提供される方法で用いられる例示的なフタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲートは、本明細書に記載されるいずれかを含む。いくつかの局面では、他の例示的なフタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲートは、例えば、国際公開公報第2017/031363号および国際公報公開第2017/031367号に記載されているものを含み、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0054】
本明細書の組成物および方法で使用するためのフタロシアニン色素に連結されたターゲティング分子のコンジュゲートとしては、ターゲティング分子が、細胞膜リン脂質、原核生物ペプチドグリカン、細菌細胞エンベロープタンパク質、ウイルスキャプシドタンパク質、ACTHR、内皮細胞Anxa-1、アミノペプチダーゼN、IL-6R、α-4-インテグリン、α-5-β-3インテグリン、α-5-β-5インテグリン、α-フェトプロテイン(AFP)、ANPA、ANPB、APA、APN、APP、1AR、2AR、AT1、B1、B2、BAGE1、BAGE2、B細胞受容体BB1、BB2、BB4、カルシトニン受容体、がん抗原125(CA 125)、CCK1、CCK2、CD5、CD10、CD11a、CD13、CD14、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD38、CD45、CD52、CD56、CD68、CD90、CD133、CD7、CD15、CD34、CD44、CD206、CD271、CEA(がん胎児性抗原)、CGRP、ケモカイン受容体、細胞表面アネキシン-1、細胞表面プレクチン-1、クリプト-1、CRLR、CXCR2、CXCR4、DCC、DLL3、E2糖タンパク質、EGFR、EGFRvIII、EMR1、エンドシアリン、EP2、EP4、EpCAM、EphA2、ET受容体、FAP、フィブロネクチン、フィブロネクチンED-B、FGFR、フリズルド受容体、GAGE1、GAGE2、GAGE3、GAGE4、GAGE5、GAGE6、GLP-1受容体、ファミリーAのGタンパク質共役受容体(ロドプシン様)、ファミリーBのGタンパク質共役受容体(セクレチン受容体様)、ファミリーCのGタンパク質共役受容体(代謝型グルタミン酸受容体様)、GD2、GP100、GP120、グリピカン-3、ヘマグルチニン、ヘパリンサルフェート、HER1、HER2、HER3、HER4、HMFG、HPV 16/18およびE6/E7抗原、hTERT、IL11-R、IL-13R、ITGAM、カリクリエン(Kalikrien)-9、ルイスY、LH受容体、LHRH-R、LPA1、MAC-1、MAGE 1、MAGE 2、MAGE 3、MAGE 4、MART1、MC1R、メソテリン、MUC1、MUC16、Neu(細胞表面ヌクレオリン)、ネプリライシン、ニューロピリン-1、ニューロピリン-2、NG2、NK1、NK2、NK3、NMB-R、Notch-1、NY-ESO-1、OT-R、変異型p53、p97メラノーマ抗原、NTR2、NTR3、p32(p32/gC1q-R/HABP1)、p75、PAC1、PAR1、Patched(PTCH)、PDGFR、PDFG受容体、PDT、プロテアーゼ切断型コラーゲンIV、プロテイナーゼ3、プロヒビチン、タンパク質チロシンキナーゼ7、PSA、PSMA、プリン作動性P2Xファミリー、P2X1-5、変異型Ras、RAMP1、RAMP2、RAMP3 patched、RET受容体、プレキシン、スムーズンド、sst1、sst2A、sst2B、sst3、sst4、sst5、substance P、TEMs、T細胞CD3受容体、TAG72、TGFBR1、TGFBR2、Tie-1、Tie-2、Trk-A、Trk-B、Trk-C、TR1、TRPA、TRPC、TRPV、TRPM、TRPML、TRPP、TRPV1-6、TRPA1、TRPC1-7、TRPM1-8、TRPP1-5、TRPML1-3、TSH受容体、VEGF受容体、VEGFR1、Flt-1、VEGFR2、FLK-1/KDR、VEGF-3、FLT-4、電位依存性イオンチャネル、VPAC1、VPAC2、ウィルムス腫瘍1、Y1、Y2、Y4、およびY5の中より選択される細胞表面標的分子に結合するものが挙げられる。
【0055】
いくつかの態様では、本明細書の組成物または方法のコンジュゲートのターゲティング分子によって結合される細胞表面標的分子は、HER1/EGFR、HER2/ERBB2、CD20、CD25(IL-2Rα受容体)、CD33、CD52、CD133、CD206、CEA、CEACAM1、CEACAM3、CEACAM5、CEACAM6、がん抗原125(CA125)、α-フェトプロテイン(AFP)、ルイスY、TAG72、Caprin-1、メソテリン、PDGF受容体、PD-1、PD-L1、CTLA-4、IL-2受容体、血管内皮成長因子(VEGF)、CD30、EpCAM、EphA2、グリピカン-3、gpA33、ムチン、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド(例えば、GD2、GD3、GM1、およびGM2)、VEGF受容体(VEGFR)、VEGFR2、VEGF-A、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、テネイシン、AFP、BCR複合体、CD3、CD18、CD44、CTLA-4、gp72、HLA-DR 10 β、HLA-DR抗原、IgE、MUC-1、nuC242、PEM抗原、メタロプロテイナーゼ、エフリン受容体、エフリンリガンド、HGF受容体、CXCR4、CXCR4、ボンベシン受容体、SK-1抗原、Bcr-abl、RET、MET、TRKB、TIE2、ALK、ROS、EML4-ALK、ROS1、BRAFV600E、SRC、c-KIT、PDGFR、mTOR、TSC1、TSC2、BTK、KIT、BRCA、CDK 4/6、JAK1、JAK2、BRAF、FLT-3、MEK1、MEK2、およびSMOの中より選択される。
【0056】
いくつかの態様では、コンジュゲートのターゲティング分子によって結合される細胞表面標的分子は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アンジオテンシンII、心房性ナトリウム利尿因子(ANF)、ボンベシン、ブラジキニン、脳由来神経栄養因子(BDNF)、骨形成タンパク質2(BMP-2)、骨形成タンパク質6(BMP-6)、骨形成タンパク質7(BMP-7)、カルシトニン、カルジオトロフィン1(BMP-2)、CD22、CD40、コレシストキニン(CCK)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、CCL1-CCL28、CXCL1-CXCL17、XCL1、XCL2、CX3CL1、クリプト-1結合ペプチド、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、上皮成長因子(EGF)、エンドセリン1、エンドセリン1/3、FASリガンド、線維芽細胞成長因子1(FGF-1)、線維芽細胞成長因子2(FGF-2)、線維芽細胞成長因子4(FGF-4)、線維芽細胞成長因子5(FGF-5)、線維芽細胞成長因子6(FGF-6)、線維芽細胞成長因子1(FGF-7)、線維芽細胞成長因子1(FGF-10)、Flt-3、ガストリン、ガストリン放出ペプチド(GRP)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージ刺激因子(GM-CSF)、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、肝細胞成長因子(HGF)、インターフェロンα(IFN-α)、インターフェロンβ(IFN-β)、インターフェロンγ(IFNγ)、インスリン様成長因子1(IGF-1)、インスリン様成長因子2(IGF-2)、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン9(IL-9)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン11(IL-11)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン13(IL-13)、インターロイキン15(IL-15)、インターロイキン17(IL-17)、インターロイキン19(IL-19)、黄体形成ホルモン(LH)、黄体形成放出ホルモン(LHRH)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、マクロファージ炎症性タンパク質3a(MIP-3a)、マクロファージ炎症性タンパク質3b(MIP-3b)、神経成長因子(NGF)、ニューロメジンB、ニューロトロフィン3(NT-3)、ニューロトロフィン4(NT-4)、ニューロテンシン、ニューロペプチドY、オキシトシン、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、血小板由来成長因子AA(PDGF-AA)、血小板由来成長因子AB(PDGF-AB)、血小板由来成長因子BB(PDGF-BB)、血小板由来成長因子CC(PDGF-CC)、血小板由来成長因子DD(PDGF-DD)、ネトリン-1(NTN1)、ネトリン-2(NTN2)、ネトリン-4(NTN4)、ネトリン-G1(NTNG1)およびネトリン-G2(NTNG2)、エフリンA1(EFNA1)、エフリンA2(EFNA2)、エフリンA3(EFNA3)、エフリンA4(EFNA4)、エフリンA5(EFNA5)、セマフォリン3A(SEMA3A)、セマフォリン3B(SEMA3B)、セマフォリン3C(SEMA3C)、セマフォリン3D(SEMA3D)、セマフォリン3F(SEMA3F)、セマフォリン3G(SEMA3G)、セマフォリン4A(SEMA4A)、セマフォリン4B(SEMA4B)、セマフォリン4C(SEMA4C)、セマフォリン4D(SEMA4D)、セマフォリン4F(SEMA4F)、セマフォリン4G(SEMA4G)、セマフォリン5A(SEMA5A)、セマフォリン5B(SEMA5B)、セマフォリン6A(SEMA6A)、セマフォリン6B(SEMA6B)、セマフォリン6D(SEMA6D)、セマフォリン7A(SEMA7A)、SLIT1、SLIT2、SLIT3、SLITおよびNTRK様ファミリー、メンバー1(SLITRK1)、SLITおよびNTRK様ファミリー、メンバー2(SLITRK2)、SLITおよびNTRK様ファミリー、メンバー3(SLITRK3)、SLITおよびNTRK様ファミリー、メンバー4(SLITRK4)、SLITおよびNTRK様ファミリー、メンバー5(SLITRK5)、SLITおよびNTRK様ファミリー、メンバー6(SLITRK6)、プロスタグランジンE2(PGE2)、RANTES、ソマトスタチン14、ソマトスタチン28、幹細胞因子(SCF)、間質細胞由来因子1(SDF-1)、サブスタンスP、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、トランスフォーミング成長因子α(TGF-α)、トランスフォーミング成長因子β(TGF-b)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、トロンビン、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、Wnt1、Wnt2、Wnt2b/13、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt7c、Wnt8、Wnt8a、Wnt8b、Wnt8c、Wntl0a、Wntl0b、Wnt11、Wnt14、Wnt15、またはWnt16、ソニックヘッジホッグ、デザートヘッジホッグ、インディアンヘッジホッグの中より選択される。
【0057】
いくつかの態様では、コンジュゲートのターゲティング分子は、そのような細胞表面標的に結合する抗体、抗体の抗原結合断片または抗体様分子である。いくつかの態様では、コンジュゲートのターゲティング分子は、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、リツキシマブ(リツキサン、マブセラ)、イブリツモマブチウキセタン(ゼバリン)、ダクリズマブ(ゼナパックス)、ゲムツズマブ(マイロターグ)、アレムツズマブ、CEAスキャンFab断片、OC125モノクローナル抗体、ab75705、B72.3、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、バシリキシマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、MK-3475、BMS-936559、MPDL3280A、イピリムマブ、トレメリムマブ、IMP321、BMS-986016、LAG525、ウレルマブ、PF-05082566、TRX518、MK-4166、ダセツズマブ、ルカツムマブ、SEA-CD40、CP-870、CP-893、MED16469、MEDI6383、MEDI4736、MOXR0916、AMP-224、PDR001、MSB0010718C、rHIgM12B7、ウロクプルマブ、BKT140、バリルマブ(CDX-1127)、ARGX-110、MGA271、リリルマブ(BMS-986015、IPH2101)、IPH2201、AGX-115、エマクツズマブ、CC-90002、およびMNRP1685Aの中より選択されるか、またはそれらの抗原結合断片である。いくつかの態様では、ターゲティング分子は、抗体または抗原結合抗体断片である。いくつかの態様では、抗体は、Fab、単一VHドメイン、単鎖可変断片(scFv)、多価scFv、二重特異性scFvまたはscFv-CH3二量体である抗原結合抗体断片である。
【0058】
本明細書の組成物および方法で使用するためのコンジュゲートは、フタロシアニン色素を含む。いくつかの態様では、フタロシアニン色素は、シリコンフタロシアニン色素である。いくつかの態様では、フタロシアニン色素は、式:
を含み、
式中、
Lは、リンカーであり、
Qは、ターゲティング分子に色素を結合させるための反応基であり、
R
2、R
3、R
7、およびR
8は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキルおよび置換されていてもよいアリールの中より選択され、
R
4、R
5、R
6、R
9、R
10、およびR
11は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルカノイル、置換されていてもよいアルコキシカルボニル、置換されていてもよいアルキルカルバモイル、およびキレート化リガンドの中より選択され、ここで、R
4、R
5、R
6、R
9、R
10、およびR
11のうちの少なくとも1つは、水溶性基を含み、
R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、およびR
23は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換されていてもよいアルキルチオ、置換されていてもよいアルキルアミノ、および置換されていてもよいアルコキシの中より選択され、かつ
X
2およびX
3は、それぞれ独立して、ヘテロ原子によって分断されていてもよいC
1~C
10アルキレンである。
【0059】
いくつかの態様では、フタロシアニン色素は、式:
を含み、
式中、
X
1およびX
4は、それぞれ独立して、ヘテロ原子によって分断されていてもよいC
1~C
10アルキレンであり、
R
2、R
3、R
7、およびR
8は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキルおよび置換されていてもよいアリールの中より選択され、
R
4、R
5、R
6、R
9、R
10、およびR
11は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルカノイル、置換されていてもよいアルコキシカルボニル、置換されていてもよいアルキルカルバモイル、およびキレート化リガンドの中より選択され、ここで、R
4、R
5、R
6、R
9、R
10、およびR
11のうちの少なくとも1つは、水溶性基を含み、かつ
R
16、R
17、R
18、およびR
19は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換されていてもよいアルキルチオ、置換されていてもよいアルキルアミノ、および置換されていてもよいアルコキシの中より選択される。
【0060】
本明細書で提供される方法および使用のいくつかの態様では、Si-フタロシアニン色素は、IRDye 700DX(IR700)である。いくつかの態様では、反応基を含有するフタロシアニン色素は、IR700 NHSエステル、例えば、IRDye 700DX NHSエステル(LiCor 929-70010、929-70011)である。
【0061】
いくつかの態様では、色素は、以下の式:
を有する化合物である。
【0062】
本明細書において、「IR700」、「IRDye 700」、または「IRDye 700DX」という用語は、色素が例えば反応基を介して抗体などにコンジュゲートされる場合の上記式を含む。
【0063】
IV. 前記方法と共に使用するための免疫調節因子
本明細書の方法のいくつかの態様では、免疫調節物質が、エクスビボ処理の前、エクスビボ処理と同時、および/またはエクスビボ処理の後に含まれる。使用される免疫調節物質としては、アジュバント、免疫チェックポイント阻害物質、サイトカイン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの局面では、免疫調節物質を含む、本明細書で提供される方法および使用に従って使用される組み合わせも提供される。
【0064】
組み合わせで使用するためのサイトカインは、例えば、アルデスロイキン(PROLEUKIN)、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b(イントロンA)、ペグインターフェロンα-2b(SYLATRON/PEG-Intron)、またはIFNAR1/2経路、IL-2/IL-2R経路を標的とするサイトカインであり得る。組み合わせで使用するためのアジュバントは、例えば、ポリICLC(HILTONOL/イミキモド)、4-1BB(CD137;TNFRS9)、OX40(CD134)OX40-リガンド(OX40L)、Toll様受容体2アゴニストSUP3、Toll様受容体TLR3およびTLR4アゴニスト、ならびにToll様受容体7(TLR7)経路を標的とするアジュバント、TNFRおよびTNFスーパーファミリーの他のメンバー、他のTLR2アゴニスト、TLR3アゴニストおよびTLR4アゴニストであり得る。
【0065】
本明細書の方法で使用するための免疫チェックポイント阻害物質には、小分子、抗体、または抗原結合断片などのPD-1阻害物質が含まれる。例示的な抗PD-1抗体としては、限定されないが、ペンブロリズマブ(MK-3475、Keytruda)、ニボルマブ(OPDIVO)、セミプリマブ(LIBTAYO)、トリパリマブ(JS001)、HX008、SG001、GLS-010、ドスタルリマブ(TSR-042)、チスレリズマブ(BGB-A317)、セトレリマブ(JNJ-63723283)、ピジリズマブ(CT-011)、ゲノリムズマブ(genolimzumab)(APL-501、GB226)、BCD-100、セミプリマブ(REGN2810)、F520、シンチリマブ(IBI308)、GLS-010、CS1003、LZM009、カムレリズマブ(SHR-1210)、SCT-I10A、MGA012、AK105、PF-06801591、AMP-224、AB122、AMG 404、BI 754091、HLX10、JTX-4014、MEDI0680、Sym021、MGD019、MGD013、AK104、XmAb20717、RO7121661、CX-188、およびスパルタリズマブが挙げられる。
【0066】
本明細書の方法で使用するための免疫チェックポイント阻害物質には、小分子、抗体、または抗原結合断片などのPD-L1阻害物質が含まれる。例示的な抗PD-L1抗体としては、限定されないが、アテゾリズマブ(MPDL3280A、TECENTRIQ)、アベルマブ(BAVENCIO)、デュルバルマブ(MEDI4736、IMFINZI)、LDP、NM-01、STI-3031、KN035、LY3300054、M7824(MSB0011359C)、BMS-936559、MSB2311、BCD-135、BGBA333、CBT-502、コシベリマブ(CK-301)、CS1001、FAZ053、MDX-1105、SHR-1316、TG-1501、ZKAB001、INBRX-105、MCLA-145、KN046、LY3415244、REGN3504、およびHLX20が挙げられる。
【0067】
V. 定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語、表記ならびに他の技術的および科学的用語または用法は、特許請求される主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有することが意図される。場合によっては、一般に理解される意味を有する用語は、明確にするためおよび/または容易に参照するために本明細書で定義され、本明細書にそのような定義を含めることは、当技術分野で一般に理解されるものとの実質的な違いを表すと必ずしも解釈されるべきではない。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味する。本明細書に記載の局面および変形は、局面および変形「からなる」および/または「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0068】
本開示を通して、特許請求される主題の様々な局面は、範囲形式で提示される。範囲形式での説明は、単に便宜および簡潔さのためのものであり、特許請求される主題の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値、およびその記載された範囲内の任意の他の記載値または介在値は、特許請求される主題内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲に独立して含まれてもよく、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界を条件として、特許請求される主題内に包含される。記載された範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方または両方を除外した範囲も、特許請求される主題に含まれる。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0069】
本明細書で使用される「約」という用語は、この技術分野の当業者に容易に知られているそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」の値またはパラメータについての言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする態様を含む(および記載する)。例えば、「約X」に関する説明は、「X」の説明を含む。
【0070】
本明細書で使用される場合、「コンジュゲート」は、1つまたは複数の他のポリペプチドまたは化学部分に直接または間接的に連結されたポリペプチドを指す。そのようなコンジュゲートには、融合タンパク質、化学的コンジュゲートによって産生されるもの、および任意の他の方法によって産生されるものが含まれる。例えば、コンジュゲートは、1つまたは複数の他のポリペプチドまたは化学部分、例えば細胞表面タンパク質に結合するかまたは細胞表面タンパク質を標的とするターゲティング分子に直接的または間接的に連結されたフタロシアニン色素、例えばIR700分子を指すことができる。
【0071】
本明細書で使用される場合、組成物は、細胞を含む2つ以上の産物、物質、または化合物の任意の混合物を指す。それは、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0072】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」または「薬学的製剤」は、そこに含まれる活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態であり、製剤が投与される対象にとって許容できないほどに毒性である追加の成分を含まない調製物を指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、対象に対して非毒性である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、限定されないが、緩衝剤、賦形剤、安定剤または保存剤が挙げられる。
【0074】
本明細書で使用される場合、組み合わせは、2つ以上のアイテム間の任意の関連を指す。組み合わせは、2つ以上の別々のアイテム、例えば2つの組成物または2つの収集物であってもよく、それらの混合物、例えば2つ以上のアイテムの単一の混合物、またはそれらの任意の変形であってもよい。組み合わせの要素は、一般に、機能的に関連付けられるか、または関連する。
【0075】
本明細書で使用される場合、誘導体は、参照薬物または参照薬剤から変更または改変を受けたが、参照薬物または薬剤と比較して活性を依然として保持する(例えば、活性の増加または減少を示す)薬物の形態を指す。典型的には、化合物の誘導体形態は、化合物の側鎖が改変または変更されていることを意味する。
【0076】
本明細書で使用される場合、薬物または薬剤の類似体または類似物は、参照薬物に関連するが、その化学的および生物学的活性は異なり得る薬物または薬剤である。典型的には、類似体は、参照薬物または参照薬剤と同様の活性を示すが、活性を増加または減少させるか、または他の方法で改善することができる。典型的には、化合物または薬物の類似体形態は、構造の骨格コアが参照薬物と比較して改変または変更されていることを意味する。
【0077】
本明細書で使用される場合、キットは、追加の試薬、および組み合わせまたはその要素を使用するための説明書などの他の要素を任意で含むパッケージ化された組み合わせである。
【0078】
「添付文書」という用語は、治療用製品の市販パッケージに通例含まれる説明書であって、そのような治療用製品の使用に関する適応症、用法、用量、投与、併用療法、禁忌および/または警告に関する情報を含む、説明書を指すために使用される。
【0079】
本明細書で使用される場合、「製造品」は、製造され、場合によっては販売可能な製品である。いくつかの態様では、この用語は、容器などの包装品に含まれる組成物を指すことができる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「併用療法」は、単一の疾患を処置するために、対象に少なくとも2つまたは少なくとも3つの治療剤などの2つ以上の治療剤が投与される処置を指す。いくつかの態様では、各治療は独立した薬学的効果をもたらすことができ、一緒になって相加的または相乗的な薬学的効果をもたらすことができる。特定の局面では、「併用療法」は、免疫調節物質または抗がん剤などの追加の治療剤と組み合わせて、対象に光免疫療法(PIT)が施される処置を指す。いくつかの局面では、本明細書で使用される場合、「併用療法」は、免疫調節物質などの追加の治療剤と組み合わせた、ターゲティング分子-フタロシアニン色素コンジュゲートおよび光処理の投与を指す。
【0081】
本明細書で使用される場合、「疾患または障害」は、限定されないが、感染、後天性状態、遺伝的状態を含む原因または状態から生じ、同定可能な症状を特徴とする生物における病理学的状態を指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、疾患または状態を有する対象を「処置する」とは、処置後に対象の症状が部分的または完全に緩和されるか、または静止したままであることを意味する。したがって、処置は、予防、治療および/または治癒を包含する。予防とは、潜在的な疾患の防止および/または症状の悪化もしくは疾患の進行の防止を指す。
【0083】
本明細書で使用される場合、「処置」は、状態、障害もしくは疾患の症状または他の徴候が改善されるか、または他の方法で有益に変化する任意の様式を意味する。
【0084】
本明細書で使用される場合、「治療効果」は、疾患もしくは状態の症状を変化させる、典型的には良くするかもしくは改善する、または疾患もしくは状態を治癒する対象の処置から生じる効果を意味する。
【0085】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」または「治療有効用量」は、治療効果を生じるのに少なくとも十分な化合物を含有する薬剤、化合物、材料または組成物の量を指す。したがって、それは、疾患または障害の症状の防止、治癒、改善、停止または部分的停止に必要な量である。
【0086】
本明細書で使用される場合、薬学的組成物または他の治療薬の投与などの処置による特定の疾患または障害の症状の改善は、永続的または一時的、持続的または一過性であるかどうかにかかわらず、組成物または治療薬の投与に起因または関連して症状が軽減することを指す。
【0087】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトなどの哺乳動物を含む動物を指す。
【0088】
本明細書で使用される場合、「任意選択の」または「任意で」は、続いて記載される事象または状況が発生するか、または発生しないことを意味し、その説明は、前記事象または状況が発生する場合と発生しない場合とを含む。例えば、任意で置換されている基は、その基が非置換であるかまたは置換されていることを意味する。
【0089】
VI. 例示的な態様
提供される態様の中には以下がある。
1. 腫瘍または病変を処置する方法であって、
照射された試料を含む組成物を第1の対象に投与する工程を含み、
照射された試料が、光免疫療法によりエクスビボで処理された腫瘍細胞を含み、
光免疫療法が、
i)腫瘍細胞の試料を、ターゲティング分子に連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートとエクスビボで接触させること;および
ii)コンジュゲートと接触させた後、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で試料を照射して、照射された試料を得ること
を含む、
方法。
2. 腫瘍または病変を処置する方法であって、
照射された試料を含む組成物を第1の対象に投与する工程を含み、
照射された試料が、光免疫療法によりエクスビボで処理された腫瘍細胞を含み、
光免疫療法が、
i)腫瘍細胞の試料を、ターゲティング分子に連結されたシリコンフタロシアニン色素を含むコンジュゲートとエクスビボで接触させること;および
ii)コンジュゲートと接触させた後、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で試料を照射して、照射された試料を得ること
を含む、
方法。
3. 照射された試料内の腫瘍細胞またはその一部が、免疫原性細胞死(ICD)の1つまたは複数のマーカーを提示する、態様1または2の方法。
4. 腫瘍または病変を処置する方法であって、
照射された試料を含む組成物を第1の対象に投与する工程を含み、
照射された試料が、光免疫療法によりエクスビボで処理された腫瘍細胞を含み、
光免疫療法が、
i)腫瘍細胞の試料を、ターゲティング分子に連結されたシリコンフタロシアニン色素を含むコンジュゲートとエクスビボで接触させること;および
ii)コンジュゲートと接触させた後、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で試料を照射して、照射された試料を得ること
を含み、
照射された試料内の腫瘍細胞またはその一部が、免疫原性細胞死(ICD)の1つまたは複数のマーカーを提示する、
方法。
5. 腫瘍または病変を処置する方法であって、
腫瘍細胞の試料を、ターゲティング分子に連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートとエクスビボで接触させる工程;
コンジュゲートと接触させた後、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で試料を照射して、照射された試料を得る工程;および
照射された試料を含む組成物を第1の対象に投与する工程
を含む、方法。
6. 腫瘍または病変を処置する方法であって、
腫瘍細胞の試料を、ターゲティング分子に連結されたシリコンフタロシアニン色素を含むコンジュゲートとエクスビボで接触させる工程;
コンジュゲートと接触させた後、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で試料を照射して、照射された試料を得る工程;および
照射された試料を含む組成物を第1の対象に投与する工程
を含む、方法。
7. 照射された試料内の腫瘍細胞またはその一部が、免疫原性細胞死(ICD)の1つまたは複数のマーカーを提示する、態様5または6の方法。
8. 腫瘍または病変を処置する方法であって、
腫瘍細胞の試料を、ターゲティング分子に連結されたシリコンフタロシアニン色素を含むコンジュゲートとエクスビボで接触させる工程;
コンジュゲートと接触させた後、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で試料を照射して、照射された試料を得る工程;および
照射された試料を含む組成物を第1の対象に投与する工程
を含み、
照射された試料内の腫瘍細胞またはその一部が、免疫原性細胞死(ICD)の1つまたは複数のマーカーを提示する、
方法。
9. ICDの1つまたは複数のマーカーが、アネキシン、アデノシン三リン酸放出、インターフェロンα放出、インターフェロンβ放出、高移動度I群タンパク質の放出、HSP70の細胞表面発現、HSP90の細胞表面発現、およびカルレティキュリンの細胞表面発現からなる群より選択される、態様3、4、7、および8のいずれかの方法。
10. 組成物が投与前に100%未満の細胞死を示す、態様1~9のいずれかの方法。
11. 組成物が投与前に約30%~約70%の細胞死を示す、態様1~10のいずれかの方法。
12. 試料が、第1の対象に由来する腫瘍細胞、または第1の対象から得られる腫瘍細胞を含む、態様1~11のいずれかの方法。
13. 試料が、第2の対象に由来する腫瘍細胞、または第2の対象から得られる腫瘍細胞を含む、態様1~11のいずれかの方法。
14. 試料が、コンジュゲートと接触する前にインビトロで成長したまたは培養された腫瘍細胞を含む、態様1~13のいずれかの方法。
15. 試料が、コンジュゲートと接触する前にオルガノイドへと成長したまたは培養された腫瘍細胞を含む、態様14の方法。
16. 組成物が、第1の対象への投与前に細胞成長または細胞増大を防止するために処理される、態様1~15のいずれかの方法。
17. 組成物が、細胞成長または細胞増大を防止するために照射によって処理される、態様16の方法。
18. 照射がγ線照射を含む、態様17の方法。
19. 第1の対象が、ある種類のがんを有すると診断されているか、またはそれを有すると疑われる、態様1~18のいずれかの方法。
20. 試料が、同じまたは類似の種類のがんに由来する腫瘍細胞を含む、態様19の方法。
21. 種類のがんが、結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸がん、紡錘細胞新生物、肝細胞がん、肝がん、胆管がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、血液のがん、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、態様19または20の方法。
22. 組成物を投与する工程が、第1の対象における抗がん免疫応答の刺激をもたらす、態様1~21のいずれかの方法。
23. 組成物を投与する工程が、第1の対象における腫瘍、病変、または転移の、成長の低減、サイズの縮小、体積の縮小、または排除をもたらす、態様1~22のいずれかの方法。
24. 組成物が注射によってまたは注入によって第1の対象に投与される、態様1~23のいずれかの方法。
25. 組成物が移植によって第1の対象に投与される、態様1~23のいずれかの方法。
26. ターゲティング分子が抗体またはその抗原結合断片を含む、態様1~25の方法。
27. ターゲティング分子が細胞表面分子に結合する、態様1~26の方法。
28. 細胞表面分子が、腫瘍微小環境における第1の腫瘍細胞上または第1の細胞上に存在し、任意で、試料が、腫瘍微小環境における第1の腫瘍細胞または第1の細胞を含む、態様27記載の方法。
29. 細胞表面分子が、HER1/EGFR、HER2/ERBB2、CD20、CD25(IL-2Rα受容体)、CD33、CD52、CD133、CD206、CEA、CEACAM1、CEACAM3、CEACAM5、CEACAM6、がん抗原125(CA125)、α-フェトプロテイン(AFP)、ルイスY、TAG72、Caprin-1、メソテリン、PDGF受容体、PD-1、PD-L1、CTLA-4、IL-2受容体、血管内皮成長因子(VEGF)、CD30、EpCAM、EphA2、グリピカン-3、gpA33、ムチン、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド、VEGF受容体(VEGFR)、VEGFR2、VEGF-A、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、テネイシン、AFP、BCR複合体、CD3、CD18、CD44、CTLA-4、gp72、HLA-DR 10 β、HLA-DR抗原、IgE、MUC-1、nuC242、PEM抗原、メタロプロテイナーゼ、エフリン受容体、エフリンリガンド、HGF受容体、CXCR4、CXCR4、ボンベシン受容体、SK-1抗原、Bcr-abl、RET、MET、TRKB、TIE2、ALK、ROS、EML4-ALK、ROS1、BRAFV600E、SRC、c-KIT、PDGFR、mTOR、TSC1、TSC2、BTK、KIT、BRCA、CDK 4/6、JAK1、JAK2、BRAF、FLT-3、MEK1、MEK2、およびSMOからなる群より選択される、態様27または28の方法。
30. ターゲティング分子が、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、リツキシマブ(リツキサン、マブセラ)、イブリツモマブチウキセタン(ゼバリン)、ダクリズマブ(ゼナパックス)、ゲムツズマブ(マイロターグ)、アレムツズマブ、CEAスキャンFab断片、OC125モノクローナル抗体、ab75705、B72.3、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、バシリキシマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、MK-3475、BMS-936559、MPDL3280A、イピリムマブ、トレメリムマブ、IMP321、BMS-986016、LAG525、ウレルマブ、PF-05082566、TRX518、MK-4166、ダセツズマブ、ルカツムマブ、SEA-CD40、CP-870、CP-893、MED16469、MEDI6383、MEDI4736、MOXR0916、AMP-224、PDR001、MSB0010718C、rHIgM12B7、ウロクプルマブ、BKT140、バリルマブ(CDX-1127)、ARGX-110、MGA271、リリルマブ(BMS-986015、IPH2101)、IPH2201、AGX-115、エマクツズマブ、CC-90002、およびMNRP1685A、ならびにそれらの任意の抗原結合断片からなる群より選択される、態様1~29のいずれかの方法。
31. シリコンフタロシアニン色素がIR700である、態様2~4および6~30のいずれかの方法。
32. 第2の処置を第1の対象に実施する工程をさらに含み、第2の処置が、
第2のターゲティング分子に連結された第2のフタロシアニン色素を含む第2のコンジュゲートを第1の対象に投与すること、および
第2のコンジュゲートを投与した後に、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、かつ、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2の線量、または2J/cmもしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmもしくは約500J/cmファイバー長の線量で、第1の対象の腫瘍または病変を照射すること
を含む、態様1~31のいずれかの方法。
33. 第2の処置が、組成物を第1の対象に投与した後に実施される、態様32の方法。
34. 第2の処置が、組成物を第1の対象に投与する前に実施される、態様32の方法。
35. 第2の処置が、組成物を第1の対象に投与する前または投与した後に実施される、態様32の方法。
36. 組成物が免疫調節物質と組み合わせて投与される、態様1~35のいずれかの方法。
37. 免疫調節物質が、組成物の前、組成物と同時、および/または組成物の後に投与される、態様36の方法。
38. 免疫調節物質が、アジュバント、免疫チェックポイント阻害物質、サイトカイン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、態様36または37の方法。
39. 腫瘍細胞が、複数の腫瘍源から得られる、態様1~38のいずれかの方法。
40. 試料が、結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸がん、紡錘細胞新生物、肝細胞がん、肝がん、胆管がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、血液がん、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるがんに関連する腫瘍または病変に由来する腫瘍細胞を含む、態様1~39のいずれかの方法。
41. 光免疫療法で処理された腫瘍細胞を含み、腫瘍細胞が、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化されている、薬学的組成物。
42. 薬学的組成物における腫瘍細胞またはその一部が、免疫原性細胞死(ICD)の1つまたは複数のマーカーを提示する、態様41の薬学的組成物。
43. ICDの1つまたは複数のマーカーが、アネキシン、アデノシン三リン酸放出、インターフェロンα放出、インターフェロンβ放出、高移動度I群タンパク質の放出、HSP70の細胞表面発現、HSP90の細胞表面発現、およびカルレティキュリンの細胞表面発現からなる群より選択される、態様41または42の薬学的組成物。
44. 薬学的組成物内の腫瘍細胞が100%未満の細胞死を示す、態様41~43のいずれかの薬学的組成物。
45. 薬学的組成物内の腫瘍細胞が約30%~約70%の細胞死を示す、態様41~44のいずれかの薬学的組成物。
46. 単一の対象に由来する腫瘍細胞を含む、態様41~45のいずれかの薬学的組成物。
47 複数の対象に由来する腫瘍細胞を含む、態様41~45のいずれかの薬学的組成物。
48. 結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸がん、紡錘細胞新生物、肝細胞がん、肝がん、胆管がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、血液がん、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるがんに由来する腫瘍細胞を含む、態様41~47のいずれかの薬学的組成物。
49. 腫瘍または病変の処置に使用するための、態様41~48のいずれかの薬学的組成物。
50. 腫瘍または病変の処置における、態様41~48のいずれかの薬学的組成物の使用。
51. 腫瘍または病変を処置するための医薬の製造における、態様41~48のいずれかの薬学的組成物の使用。
52. 腫瘍または病変を処置する方法であって、
細胞の試料を得る工程;
試料を、ターゲティング分子に連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートと接触させる工程;
コンジュゲートと接触させた後、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で試料を照射して、照射された試料を得る工程;
照射された試料を第1の対象に投与する工程
を含む、方法。
53. 細胞の試料が第1の対象の生検から得られる、態様1~40および態様52のいずれかの方法。
54. 細胞の試料が第2の対象から得られる、態様1~40および態様52のいずれかの方法。
55. コンジュゲートと接触させる前に、試料をインビトロで成長させるかまたは培養する工程をさらに含む、態様1~40および52~54のいずれかの方法。
56. 試料が、コンジュゲートと接触する前に、オルガノイドへと成長するかまたは培養される、態様1~40および55のいずれかの方法。
57. 照射された試料が注射によってまたは注入によって第1の対象に投与される、態様1~40および52~56のいずれかの方法。
58. 照射された試料が移植によって第1の対象に投与される、態様1~40および52~56のいずれかの方法。
59. ターゲティング分子が抗体またはその抗原結合断片を含む、態様1~40および態様52~58のいずれかの方法。
60. ターゲティング分子が細胞表面分子に結合する、態様1~40および態様52~59のいずれかの方法。
61. 細胞表面分子が腫瘍微小環境における腫瘍細胞上または細胞上に存在し、任意で、細胞の試料が腫瘍微小環境における腫瘍細胞または細胞を含む、態様1~40および60のいずれかの方法。
62. フタロシアニン色素がシリコンフタロシアニン色素である、態様1、5、および52~61のいずれかの方法。
63. シリコンフタロシアニン色素がIR700である、態様1~40および62のいずれかの方法。
64. ターゲティング分子が、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、リツキシマブ(リツキサン、マブセラ)、イブリツモマブチウキセタン(ゼバリン)、ダクリズマブ(ゼナパックス)、ゲムツズマブ(マイロターグ)、アレムツズマブ、CEAスキャンFab断片、OC125モノクローナル抗体、ab75705、B72.3、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、バシリキシマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、MK-3475、BMS-936559、MPDL3280A、イピリムマブ、トレメリムマブ、IMP321、BMS-986016、LAG525、ウレルマブ、PF-05082566、TRX518、MK-4166、ダセツズマブ、ルカツムマブ、SEA-CD40、CP-870、CP-893、MED16469、MEDI6383、MEDI4736、MOXR0916、AMP-224、PDR001、MSB0010718C、rHIgM12B7、ウロクプルマブ、BKT140、バリルマブ(CDX-1127)、ARGX-110、MGA271、リリルマブ(BMS-986015、IPH2101)、IPH2201、AGX-115、エマクツズマブ、CC-90002、およびMNRP1685A、ならびにそれらの任意の抗原結合断片からなる群より選択される、態様1~40および52~63のいずれかの方法。
65. 第2の処置を第1の対象に実施する工程をさらに含み、第2の処置が、
第2のターゲティング分子に連結された第2のフタロシアニン色素を含む第2のコンジュゲートを第1の対象に投与すること、および
第2のコンジュゲートを投与した後に、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、かつ、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2の線量、または2J/cmもしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmもしくは約500J/cmファイバー長の線量で、第1の対象の腫瘍または病変を照射すること
を含む、態様52~64のいずれかの方法。
66. 第2の処置が、第1の対象への照射された試料の投与の後に実施される、態様1~40および65のいずれかの方法。
67. 第2の処置が、第1の対象への照射された試料の投与の前に実施される、態様1~40および65のいずれかの方法。
68. 第2の処置が、第1の対象への照射された試料の投与の前および投与の後に実施される、態様1~40および65のいずれかの方法。
69. 照射された試料が免疫調節物質と組み合わせて投与される、態様1~40および52~68のいずれかの方法。
70. 免疫調節物質が、照射された試料の前、照射された試料と同時、および/または照射された試料の後に投与される、態様1~40および69のいずれかの方法。
71. 免疫調節物質が、アジュバント、免疫チェックポイント阻害物質、サイトカイン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、態様1~40および69のいずれかまたは態様1~40および70のいずれかの方法。
72. 細胞の試料が腫瘍から得られる、態様1~40および52~71のいずれかの方法。
73. 細胞の試料が腫瘍細胞を含む、態様1~40および52~72のいずれかの方法。
74. 腫瘍細胞が、複数の腫瘍源から得られる、態様1~40および52~73のいずれかの方法。
75. 第1の対象が、結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸がん、紡錘細胞新生物、肝細胞がん、肝がん、胆管がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、リンパ腫、および多発性骨髄腫からなる群より選択されるがんを有するか、それを有すると診断されているか、またはそれを有すると疑われる、態様1~40および52~74のいずれかの方法。
76. 細胞の試料が、結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸がん、紡錘細胞新生物、肝細胞がん、肝がん、胆管がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、リンパ腫、および多発性骨髄腫からなる群より選択されるがんに関連する腫瘍または病変からの細胞を含む、態様1~40および52~75のいずれかの方法。
77. 照射された試料が投与前に少なくとも30%~70%の細胞死を含む、態様1~40および52~76のいずれかの方法。
78. 試料が、第1の対象への投与前に細胞成長または細胞増大を防止するために処理される、態様1~40および52~77のいずれかの方法。
79. 試料が、第1の対象への投与前に細胞成長または細胞増大を防止するために処理される、態様1~40および78のいずれかの方法。
80. 照射がγ線照射である、態様1~40および79のいずれかの方法。
【実施例】
【0090】
VII. 実施例
以下の実施例は、例示のみを目的として含まれ、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0091】
実施例1:免疫原性細胞死(ICD)指標物質の放出および発現
免疫原性細胞死(ICD)を示すいくつかのタンパク質の放出および発現を、例示的なターゲティング分子-フタロシアニン色素コンジュゲートとのインキュベーションおよび光照射による光免疫療法(PIT)処理後に評価した。
【0092】
A. アネキシンA1(ANXA1)放出
EGFR発現A-431類表皮がん(ATCC(登録商標)CRL-1555)、BxPC3膵がん(ATCC(登録商標)CRL-1687)、およびFaDu(ATCC(登録商標)HTB43)扁平上皮がん細胞を、例示的な抗体-IR700コンジュゲート、抗EGFR(セツキシマブ)-IRDye 700DX(CTX-IR700)と共にインキュベートし、光照射(PIT)に供した。A-431、BxPC3、およびFaDu細胞は、690nmレーザーを用いて16J/cm
2で照射された。上清中に放出されたANXA1のレベルを、MesoScaleDiscovery ANXA1アッセイを使用して測定した。
図1に示すように、処置の24時間後、PITは、照射されなかった対照群と比較して、細胞からのアネキシンA1(ANXA1)の強い放出をもたらした。結果は、ANXA1の放出がPIT媒介性標的細胞死の際に増加したことを示し、これは、ICDの特徴を示し、免疫応答を活性化する可能性を有するPIT処理細胞と一致していた。
【0093】
B. アデノシン三リン酸(ATP)放出
いくつかの局面では、がん細胞からのATPの放出は免疫原性細胞死(ICD)と一致し、マクロファージおよび樹状細胞の誘引物質となり得る。
【0094】
上皮細胞接着分子(4T1-EpCam)を発現するように操作された4T1マウス乳腺細胞、A-431類表皮がん、BxPC3膵臓腺がん、およびエフリンA型受容体2(CT26-EphA2)を発現するように操作されたCT26マウス大腸がん細胞、およびEphA2を発現するLL/2マウス肺癌細胞を、3つの例示的な抗体-IR700コンジュゲート(4T1-EpCam細胞と共にインキュベートした抗EpCam-IR700、A-431、BxPC3およびFaDu細胞を含む抗EGFR-IR700、ならびにCT26-EphA2およびLL/2-EphA2を含む抗EphA2-IR700)と共にインキュベートし、照射に供した。培地中に放出されたATPを生物発光プレートアッセイによって測定した。
【0095】
図2に示されるように、抗体-IR700コンジュゲートとのインキュベーションおよび照射は、照射されなかった対照群と比較して、細胞からの迅速かつ広範なATP放出をもたらした。結果は、ATPの放出が、3つの異なる抗体-IR700コンジュゲートを使用して5つの異なるがん細胞株においてPIT媒介性標的細胞死の際に実質的に増加したことを示し、これは、ICDの特徴を示し、免疫応答を活性化する可能性を有するPIT処理細胞と一致していた。
【0096】
さらなる研究では、4T1-EpCam、A-431、BxPC3、CT26-EphA2、FaDuヒト扁平上皮がん、およびLL/2-EphA2細胞を、抗EpCam-IR700、抗EGFR-IR700、または抗EphA2-IR700(上記と同じ細胞-抗体コンジュゲートの組み合わせ、および抗EGFR-IR700と共にインキュベートしたFaDu)と共にインキュベートし、上記のように照射に供した。細胞によって放出されたATPを生物発光アッセイによって測定し、照射の0、1、3、6、および26時間後に未処理細胞から放出されたATPと比較した。同じ時点で、処理細胞の細胞死をCellToxGreenアッセイ(Promega)によって測定した。
【0097】
図3Aに示す26時間の時点での処理細胞および未処理細胞からのATP放出により、試験したがん細胞がPIT処理に応答してATPを放出することが確認された。PIT処理細胞のATP放出の時間経過(実線;左軸)および細胞死の割合(破線;右軸)を
図3Bに示す。これらの結果は、細胞がPIT処理後に死んでいくのでATPが放出されるが、最大ATP放出は最大細胞死の数時間前に起こり、PITに応答したATP分泌の能動的機構を暗示することを示す。
【0098】
C. インターフェロンαおよびインターフェロンβ
いくつかの局面では、がん細胞からのインターフェロン-αタンパク質(IFNα)および/またはインターフェロン-β(IFNβ)の放出は、免疫原性細胞死(ICD)と一致しており、先天性および適応性の細胞機能性を増強することができる。A-431、BxPC3およびFaDu細胞を抗EGFR-IR700と共にインキュベートし、照射に供して、上記のようにPIT処理を行った。未処理細胞を対照とした。処理の1時間後、IFN-α2およびIFN-βを、MesoScaleDiscovery IFN-α2およびIFN-βアッセイを使用して、処理細胞および未処理細胞の培地において測定した。PIT処理後、A-431類表皮がん細胞は、未処理細胞よりも有意に多くのIFN-α2およびIFN-βを放出した(それぞれ、
図4Aおよび
図4B)。試験した他の細胞株について、同様の増加は観察されなかった。
【0099】
D. 高移動度群タンパク質B1(HMGB1)放出
EGFR発現A-431(ATCC(登録商標)CRL-1555(商標))類表皮がん、およびFaDu(ATCC(登録商標)HTB-43(商標))扁平上皮がん細胞を、抗EGFR-IRDye 700DXと共にインキュベートした。腫瘍細胞は、標的細胞のPIT媒介性殺滅のために32J/cm2で照射され、培養上清は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用してHMGB1の分泌について評価された。光で処理しなかった細胞を対照とした。
【0100】
図5に示されるように、EGFR発現A-431細胞およびFaDu細胞をCTX-IR700と共にインキュベーションした後のPIT処理は、光処理を受けなかった対照群と比較して、培養物の上清中への核ICDマーカーHMGB1の放出の大きな増加をもたらした。
【0101】
E. 熱ショックタンパク質およびカルレティキュリン(CRT)の表面発現
HSP70、HSP90、およびカルレティキュリン(CRT)の細胞表面発現を、ICDのさらなる指標として、例示的な抗体-IR700コンジュゲートとのインキュベーションおよび光処理(PIT)の後に評価した。
【0102】
EGFR発現A-431(ATCC(登録商標)CRL-1555(商標))類表皮がんおよびFaDu(ATCC(登録商標)HTB-43(商標))扁平上皮がん細胞を、抗EGFR-IRDye 700DXと共にインキュベートした。690nmレーザーを用いて、A-431細胞は6J/cm2で照射され、FaDu細胞は12J/cm2で照射された。HSP70、HSP90、およびカルレティキュリン(CRT)の細胞表面発現を、各タンパク質に特異的な抗体で染色した後、フローサイトメトリーによって測定した。光で処理しなかった細胞を対照とした。
【0103】
図6Aおよび
図6Bに示されるように、EGFR発現A-431細胞およびFaDu細胞をCTX-IR700と共にインキュベーションした後のPIT処理は、光処理を受けなかった対照群と比較して、例示的なICDマーカーであるHSP70、HSP90、およびカルレティキュリン(CRT)の発現の増加を示した。
【0104】
上記の結果は、様々なICDマーカーの発現または放出が、例示的なCTX-IR700コンジュゲートとのインキュベーションおよび光処理後のPIT媒介性標的細胞死の際に増加したことを示し、これは、ICDに特徴的なマーカーを提示し、かつ免疫細胞を活性化する可能性を有するPIT処理細胞と一致していた。
【0105】
実施例2:PIT後の標的細胞の死滅による樹状細胞の活性化
樹状細胞(DC)の活性化を、PIT処理腫瘍細胞への曝露後に評価した。上記の実施例1に記載されているように、PIT処理細胞では免疫原性細胞死が起き、ATPおよびHMGB1の放出の上昇を示し、これは、DCなどの免疫細胞の刺激または活性化を増強し得る。DCが活性化されると、分化抗原群86(CD86)および主要組織適合遺伝子複合体II(MHCII)などのDC成熟/活性化マーカーの表面発現が上昇し、炎症促進性サイトカインの産生がもたらされ得る。
【0106】
概して上記の実施例1に記載されているように、光処理の有無にかかわらず、例示的な抗EGFR-IRDye 700DXコンジュゲートと共にインキュベートされた標的がん細胞にヒトDCを曝露した。標的がん細胞への曝露後、DCを、活性化マーカーCD86およびMHCIIの発現についてフローサイトメトリーによって評価し、腫瘍壊死因子(TNF)、IFN-γ誘導性タンパク質10(IP-10)、MIP-1α(マクロファージ炎症性タンパク質-1α)、MIP-1β(マクロファージ炎症性タンパク質-1β)、インターロイキン-1β(IL-1β)およびインターロイキン-8(IL-8)などの炎症促進性サイトカインの産生を、多重免疫アッセイを使用して評価した。
【0107】
図7Aに示すように、PIT処理腫瘍細胞に曝露したヒトDCは、光処理なしの対照細胞からの上清に曝露したDCと比較して、樹状細胞活性化マーカーCD86およびMHCIIのより高い発現を示した。
図7Bに示すように、ヒトDCは、PIT処理腫瘍細胞への曝露後に、TNF、IP-10、MIP-1α、MIP-1β、IL-1βおよびIL-8を含むより多量のいくつかの炎症促進性サイトカインを産生した。結果は、抗体-IR700コンジュゲートを使用してPITによって殺滅されたがん細胞に曝露した際、DCなどの免疫細胞が活性化され、炎症促進性サイトカインが分泌され得ることを示した。
【0108】
実施例3:光免疫療法および免疫活性化
光免疫療法抗がん活性に対する免疫応答の寄与を判定するために、様々な時点でのCD40-CD40L軸の遮断または抗体媒介性CD8 T細胞枯渇と併せて、光免疫療法(PIT)処置を免疫適格マウスに適用した。
【0109】
A. CD40-CD40Lの処置前遮断
同系マウスモデルを、雌のBALB/cマウス(合計30匹のマウス)の右後側腹部に、エフリンA型受容体2(CT26-EphA2)を発現するように操作された1×10
6個のCT26-EphA2マウス大腸がん細胞を皮下接種することによって確立した。光免疫療法処置に対する既存の免疫の効果を判定するために、30匹のマウスのうち10匹に、接種日(0日目)ならびに接種後1、2、および3日目から抗CD40L抗体を投与した。6日目に、すべてのマウスに抗EphA2-IR700コンジュゲートを投与した。コンジュゲート投与の24±2時間後(7日目)、抗CD40L抗体を受けた10匹のマウスおよびコンジュゲートのみを受けた20匹のマウスのうち10匹のマウスの腫瘍は、100J/cm
2の線量で690nmで照射された。コンジュゲートのみを受けた10匹のマウスは照射されなかった。平均腫瘍体積を20日目まで測定した(
図8A)。
【0110】
抗EphA2コンジュゲートのみを投与したマウスは、研究の経過にわたって腫瘍成長を示した(
図8A;白丸)。PIT(コンジュゲート+光)を受けたマウスは、コンジュゲート処置単独(白丸)と比較して顕著に低減した腫瘍成長を示し(
図8A;黒丸)、5/10のマウスが完全奏効(CR)を達成した。抗CD40L抗体を使用してCD40Lを遮断すると、PITの抗がん活性が完全に無効になった(
図8A;黒三角)。
【0111】
B. 腫瘍再チャレンジ
42日目に、上記パートAのPIT処置後に完全奏効(CR)を達成したマウス(n=5)に、CT26-EphA2腫瘍細胞を再チャレンジし、処置ナイーブマウスに、上記のように対照として、CT26-EphA2細胞を接種した(n=10)。腫瘍成長を20日間モニターした。個々のマウスの腫瘍成長を
図8Bにプロットする。
【0112】
処置ナイーブマウスは、研究の経過にわたってサイズが増加した腫瘍を発症したが(
図8B;上のパネル)、以前のCR PIT処置マウスはいずれも腫瘍再チャレンジを拒絶した(
図8B;下のパネル)。これらの結果は、PIT処置が適応免疫応答を増強し、その後の腫瘍チャレンジに対する耐性を可能にしたことを示している。
【0113】
C. CD40-CD40Lの処置後遮断
上記パートAに記載のように皮下注射によって、マウスにCT26-EphA2細胞を接種した(n=30)。新たなT細胞プライミングを含む抗がん活性を調べるために、接種後6、7、および8日目に10匹のマウスに抗CD40Lを投与した。抗EphA2-IR700コンジュゲートを接種の6日後にすべてのマウスに投与した。コンジュゲート投与の24±2時間後、100J/cm2の690nmの光を光免疫療法処置群の腫瘍に適用した。腫瘍成長を20日間測定した。
【0114】
図8Cに示すように、コンジュゲート単独を投与したマウスは、研究の経過にわたって継続的な腫瘍成長を示したが、PIT(コンジュゲート+光)で処置したマウスは、限定された腫瘍成長を示した(
図8C;それぞれ、白丸対黒丸)。PITに加えて抗CD40Lを投与すると、抗がん活性が低下したことから(
図8C;黒三角)、PITによって誘導される免疫応答には新たなT細胞のプライミングが含まれることが示され、PITによって引き起こされる免疫応答が光免疫療法の有効性において重要な役割を果たすことが実証された。
【0115】
D. CD8 T細胞の枯渇
上記パートAに記載のように皮下注射によって、マウスにCT26-EphA2細胞を接種した(n=50)。接種後4日目および7日目に、10匹のマウスに抗CD8を投与してCD8+T細胞を排除した。コンジュゲートを受けたマウスでは、抗EphA2-IR700を接種の4日後に投与した。コンジュゲート投与の24±2時間後、100J/cm2の690nmの光をPIT処置群の腫瘍に適用した。抗PD1を受けたマウスに、接種後4、6、8、および11日目に抗体を投与した。腫瘍成長を18日間モニターした。
【0116】
コンジュゲート単独で処置したマウスは、研究の経過にわたって、継続的な腫瘍成長を示した(
図8D;白丸)。PITのみ(コンジュゲート+光)または抗PD1のみを受けたマウスは、腫瘍成長の低減を示した(
図8D;それぞれ、黒丸および白四角)。PITの効果は、PITを抗PD1療法と組み合わせることによって増強された(
図8D;黒四角)。抗CD8抗体を投与することによるCD8
+T細胞の排除は、PIT+抗PD1療法の抗がん活性を実質的に低減した(
図8D;それぞれ、黒三角対黒四角)。これらの結果は、PIT+抗PD1療法の有効性がCD8 T細胞の活性に依存することを示している。パートA、BおよびCからの結果と共に、これらの結果により、PITの抗がん効果に対する適応免疫系の重要性が確認された。
【0117】
実施例4:ターゲティング分子-フタロシアニン色素コンジュゲートを使用してエクスビボPITに供されたがん細胞によるがんワクチン接種
本実施例は、例示的なターゲティング分子-フタロシアニン色素コンジュゲートとのインキュベーションおよび光照射によるエクスビボ光免疫療法(PIT)に供されたがん細胞を投与することによる例示的ながんワクチン接種を記載する。
【0118】
エフリンA型受容体2(CT26-EphA2)を発現するように操作されたCT26マウス大腸がん細胞を、1-STACK Chamber(Corning)において1時間、EphA2に特異的に結合する例示的な抗体-IR700コンジュゲートと共にインキュベートした。次いで、細胞は、トリプシン処理され、円錐管内のPBSに再懸濁され、管の中心に挿入された放射状ディフューザーを用いて、2cmファイバーを使用して50J/cmで照射され(PIT群)、再プレーティングされた。対照として、プレーティングしたCT26-EphA2細胞を150μMシスプラチンと共にインキュベートした(シスプラチン群)。細胞傷害性を両群についてモニターし、細胞が50%の細胞死を達成したとき、瀕死のPIT処理およびシスプラチン処理CT26-EphA2細胞試料をマウスに皮下注射した(200μL/マウスで1.5×106個の細胞)。1週間後、次いで、生きている未処理のCT26-EphA2腫瘍細胞の側腹部移植によってマウスにチャレンジし、導入された腫瘍の体積を経時的にモニターした。
【0119】
図9に示すように、PIT処理試料を投与した9匹のマウス(PIT群)のうち8匹がチャレンジ腫瘍を拒絶し、腫瘍は消失した。対照的に、シスプラチンで処理した試料を投与した10匹すべてのマウス(シスプラチン群)では、導入された腫瘍の体積が経時的に実質的に増加した。これらの結果は、さらなる研究によって確認された(データは示さず)。結果は、投与されたPIT処理試料が対象にがんに対するワクチン接種を行ったことを示した。結果は、例示的なターゲティング分子-フタロシアニン色素コンジュゲートおよび光照射を使用したPITに供された腫瘍試料を投与することを用いる例示的な方法の有用性と一致し、対象における抗がん免疫応答を刺激するか、増強するか、または増大させ、がんワクチン接種をもたらした。シスプラチン処理細胞ではなく、PIT処理細胞によるワクチン接種後の腫瘍細胞の拒絶は、PIT誘導性ICDが、単に細胞毒性だけでなく、処置された対象において免疫応答を誘発し、それが腫瘍耐性をもたらしたことを実証している。
【0120】
実施例5:細胞生存状態およびPIT媒介性腫瘍免疫
完全に死滅したPIT処理CT26-EphA2細胞(100%細胞死;死細胞)を、依然としてPIT媒介性細胞死(50%細胞死;瀕死の細胞)が起きている過程にあるか、または生理食塩水処理のみの細胞と比較して、CT26-EphA2腫瘍成長に対してPIT媒介性免疫を付与する能力について調べた。この目的のために、CT26-EphA2細胞をエクスビボPIT療法に供し、照射の約4時間後(瀕死の細胞:50%細胞死)または約24時間後(死細胞:100%の細胞死)に、マウス(各条件についてn=10)に皮下注射した(200μL/マウスで1.5×106個)。マウスには、対照として生理食塩水のみも注射した(n=10)。1週間後、生きている未処理のCT26-EphA2腫瘍細胞の側腹部移植によってマウスにチャレンジした。導入された腫瘍の体積および無再発生存率を23日間にわたって2~5日ごとに測定した。
【0121】
以下に記載されるように、個々のマウスの腫瘍体積を
図10A~
図10Cにプロットし、平均腫瘍体積を
図10Dにプロットし、無再発生存率を
図10Eに示す。PIT処理CT26-EphA2細胞を投与し、同じCT26-EphA2細胞でチャレンジした10匹のマウスのうち9匹が腫瘍を拒絶し、腫瘍が消失した(
図10A)。対照的に、死んだPIT処理細胞で処理した細胞を投与した10匹のマウスのうち8匹は腫瘍成長を示し、腫瘍の体積は研究の経過にわたって増加した(
図10B)。生理食塩水処置マウスについても同様の結果が観察された(
図10C)。死んだPIT処理細胞を投与したマウスからの平均腫瘍成長および無再発生存率は、生理食塩水処置マウスと同様であったが、瀕死のPIT処理細胞を投与したマウスは、腫瘍拒絶および90%の無再発生存率を示した(
図10D~
図10E)。これらの結果は、死んだ腫瘍細胞ではなく瀕死の腫瘍細胞によるワクチン接種が腫瘍免疫を付与することを示している。これらの結果はまた、PITによって引き起こされるICDが免疫系を刺激して抗がん免疫を生じさせ、PIT誘導性ICDが起きている細胞を使用して対象にワクチン接種して将来のがん成長を防止することができることを裏付けている。
【0122】
本発明は、例えば本発明の様々な局面を説明するために提供される特定の開示された態様に範囲が限定されることを意図しない。記載される組成物および方法に対する様々な改変は、本明細書の記載および教示から明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および精神から逸脱することなく実施することができ、本開示の範囲内に入ることが意図される。
【国際調査報告】